○長田武士君 私は、公明党・
国民会議を代表して、ただいま
運輸大臣より
趣旨説明がありました
日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案について、
総理並びに
関係大臣に対し
質問をいたします。
質問の第一は、今回の
国鉄再建計画によって、
国鉄の
経営の立て直しが本当に可能であるかどうか、その点であります。
国鉄が赤字に転落し、その
再建が叫ばれてからすでに十七年を
経過いたしております。その間、
国鉄再建計画は実に四次にわたって作成され、そのことごとくが目的を達成せず、瓦解していることは周知のとおりであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
第五次に相当する今回の
再建計画も、これまでの
計画と同様、目的を達せず破綻に終わるおそれがきわめて大きいのであります。
計画が瓦解した後、そこに残されたものは何であったか。それは莫大な赤字と
運賃値上げによる
国民の
負担増であり、
利用者の
国鉄離れ、
交通サービスの
低下でありました。まさに「汽車は出ていく、赤字が残る」というのがこれまでの
国鉄再建計画であったと申せましょう。
今回、
政府は、本
法案に基づく
再建計画によって、六十
年度までに
国鉄の
収支均衡を図るとしておりますが、果たしてそれは可能でありましょうか、
総理の確信のほどをお尋ねをいたします。
過去四回にわたる
再建計画は、そのことごとくが
計画の初期の段階で挫折し、破綻してしまったわけでありますが、この
計画破綻に対し、
政府の
責任が明確になっておりません。今回もその轍を繰り返すおそれを抱かざるを得ませんが、過去のこのような破綻に対し、
政府はいかなる
責任を感じておられるのか、
総理の
答弁を求めるものであります。
次に、これまでの
再建計画が破綻した原因と
総合交通政策の関連についてお尋ねをいたします。
計画破綻の原因の一つには、
政府及び行政当局の、
国鉄の
役割りあるいはその性格、位置づけについての明確な政策、また、他の
交通機関との
輸送分野の調整や
交通資本の投資に対する整合性をどうすべきかという総合的な
交通政策の欠如にあると指摘せざるを得ません。
それというのも、
国鉄がモータリゼーションの急激な発展に対応できず
輸送力を急激に
低下させたのも、また、
国鉄の
近代化に必要な投資と適正な
助成を怠ったのも、もとはといえば、
政府並びに行政当局が総合的な
交通政策、また、そうした視点からの
対策が欠けていたからであります。そのため、従来の
再建計画はいずれも対症療法的な域を出ず、その結果として、
国鉄財政の
改善はおろか、かえって今日の莫大な赤字が生まれているのであります。その意味から、
国鉄財政を今日に至らしめた歴代
政府と行政当局の
責任はきわめて重大であります。
そこで、
総理並びに
運輸大臣及び経企庁長官にお尋ねをいたします。
今回の
再建案も
総合交通政策的な視野に立った
再建案とは申せません。幸い、私どもが長い間
提案してまいりました
総合交通政策の見通しも出てきているようでありますので、
総合交通政策をいつごろまでに作成されるのか、また、今回の
国鉄再建計画を、その策定をまって改めて
総合交通政策的視野から見直す考えはないのか、明確な御
答弁を賜りたいのであります。
次に、
政府の
助成措置について、
総理並びに大蔵
大臣にお尋ねをいたします。
過去十数年間、
国鉄に対する国の
助成措置は、
再建計画が作成されるそのたびにネコの目のように変わり、一貫した施策がとられておりません。それは、あるときは
利子補給の拡大、あるときは個別の
助成金の拡大、またあるときは
政府出資というぐあいで、この間には全く整合性がなく、とうてい
国民が納得できるものではありません。わが党は、国の
助成のあり方について、出資、
助成、
利子補給の三つの柱を立て、その整合性を図りながら、しかも
国鉄再建に対する
政府の
責任範囲を明確にすべきだと考えますが、
総理の
所見を伺いたいのであります。(
拍手)
なかんずく、東北、上越両
新幹線、青函トンネル等については、
国鉄の
経営責任とは分離した、より明確な
政府の
財政上の
責任を明らかにすべきであると思いますが、あわせて
答弁を求めるものであります。
続いて、大蔵、運輸両
大臣に伺います。
国鉄財政の悪化の要因の一つに、投資財源のほとんどを
借入金に依存している点が挙げられます。
国鉄が
交通機関の中で独占的シェアを占めていた
時代はともかく、今日では
国鉄の人的、物的
輸送シェアは、他の
交通機関の充実によって極端に減少いたしております。しかし、省エネルギーの立場から再度
国鉄の立場を見直す必要が出ていることも事実であり、特に人的
輸送機関としての
必要性は今日でも無視できません。そこには将来ともにかなり大規模な投資が必要とされております。
ところが、この設備投資ははとんど
借入金によって賄われているため、五十四
年度の長期
債務残は十兆一千六百四十一億円に達し、その支払い利息は五十五
年度で八千三百六十六億円の巨額に達しております。なお、このままでは、さらに
昭和六十
年度における長期
債務は二十兆円を超えることが予想され、その支払い利息だけでも一兆数千億円もしくは二兆円に近いものが予測されるわけであります。したがって、現在の方法の延長線では、
国鉄の
財政悪化が緩和されるとはとても考えられないのであります。
投資に対する基本的方向は、
利子補給とともに
国鉄に対する
政府の直接投資が必要なはずであります。道路には特定財源を充てて投資の拡大を図り、一方
国鉄は借り入れを基本とするようなことでは、
輸送機関としてのシェアはますます自動車に偏り、
国鉄への
経営悪化要因にはね返ってくることは火を見るよりも明らかではありませんか。この問題に関し両
大臣の所信を求めます。
同時に、施設
整備のための
工事費は
借入金に依存すべき部分が大きいために、
国鉄は全体の
財政規模に制約され、
安全性確保のための先行投資を減額せざるを得ず、将来の
安全性が危険にさらされていることは
政府の重大な
責任であると言わざるを得ません。
たとえば、
国鉄の橋梁、トンネルなどの土木施設は、明治、大正、
昭和の初期につくられたものであり、その
老朽化は絶対に看過できない問題であります。すなわち、四十年から五十年の耐用年数を
経過した橋梁は五一%、三十年から六十年を
経過したトンネルは四三%となっており、最近この比率は急激にふえ、数理的に
安全性の悪化を物語っております。そのため、
国鉄は、全国二百五十カ所で徐行運転を行っておるとさえ指摘されておるわけであります。
安全性を第一の使命とすべき
交通機関が、その
責任を
財政上の理由によって放置しているこの事実は、厳しく糾弾されなくてはなりません。
この改修
工事にかかる
費用は、年間総工費約一兆円のうち五千億円程度が必要とされていますが、現在は三千億円程度にとどまっていることから、
安全性は
財政上の問題から後回しとされ、
財政支出のあり方が適切でないことを証明しており、
政府の猛省を促すものであります。この点についても明確なる
答弁を求めます。
次に、
国鉄運賃の法定制緩和以降、毎年恒例化しておる
運賃値上げについて伺います。
国鉄運賃は、
昭和四十九年からことしまで実に七年連続して値
上げされ、特にわが党などの
反対を押し切って
運賃法定制緩和
法案を成立させてからは、値
上げは恒例化してしまったのであります。そのため、家族旅行を
計画しても、余りにも旅費が高いので
計画を断念したという話や、値上がりする通学定期代が教育費
負担の二重のおもしになっているという声を多くの
利用者から聞きます。こうした
利用者の声は、
運賃水準がもはや限界に近いことを示していると言わざるを得ません。
また、法定制緩和以降、
国鉄は毎年のコスト上昇をそのまま自動的に
運賃にはね返すというきわめて安易な姿勢をとっております。このような
経営姿勢は、絶対に改めなければならないのであります。
いずれにせよ、わが党が法定制緩和
法案に
反対した際、その
反対理由として掲げた
利用者負担の増大、安易な
国鉄の
経営姿勢という弊害がすでにここに顕在化しつつあります。
国鉄は、
運賃水準の抑制によって
利用者負担の軽減を図り、もって
利用者の増加を図るべきであります。また、
経営の
合理化、
近代化を
促進する厳しい
努力を
国鉄に求めるためにも、
運賃法定制のあり方を改めて見直す必要があると思うのであります。この点について
運輸大臣の明確な
答弁を求めるものであります。
次に、本
法案の柱の一つである
地方交通線対策について伺います。
地方交通線の赤字解消のために何らかの
対策が必要であると思います。しかし、その場合、
地域の国土的、風土的な特色、
地域の
産業振興、そして周辺の
住民生活などを十分に考慮し、さらに、
対策推進に当たっては、
住民の合意を得るよう努めなければならないのは当然であり、第三セクター方式、
バス転換等だけではなく、国は
責任を持ってその
地域の総合的サービスのあり方を明示すべきであります。
ところが、本
法案に示された
地方交通線対策は、この点がきわめて不十分であります。かつまた、
国鉄が転換もしくは
廃止しようとする路線の選定基準は余りにも画一的で、
地域の実情を考慮しているとは言えないのであります。また、転換後に生ずるであろう運行経費の赤字をどのようにするかという点についても非常にあいまいであります。
さらに、看過できない点は、
地方交通線に線区別
運賃を導入しようとしていることであります。転換後、現在より
地域の
交通サービスが向上するならともかく、路線によっては、
交通サービスが著しく
低下するところも多分にあると予測されます。したがって、現在より割り高な
運賃を導入すれば、低質のサービスに割り高な
運賃という
経済原則に反した
運賃制度が現出することになるのであります。
また、割り増し
運賃は、
利用者の
負担を重くし、特に、
負担能力の低い通学者、老人等に対する打撃は大きく、福祉の拡大が叫ばれている世論に逆行してまいります。さらに、都市周辺に比較して、現在よりも
地域格差を一層拡大することになり、これを容認することはできません。
運輸大臣、線区別
運賃の導入は絶対に避けるべきであり、
法案の中からこの点を削除すべきだと思いますが、この点どのようにお考えか、しかと伺いたいのであります。
最後に、今回の
政府の
国鉄再建計画は、私が数点にわたって指摘したとおり、きわめて問題点の多い
再建計画であります。また、その
計画の裏づけとなる本法も同様であります。
私どもは、
国鉄再建のため、今日まで多くの提言と
努力を重ねてきたつもりでございます。私たちから見ますと、本
法案が成立しても
国鉄再建は全く不可能であると考えます。
政府の
財政措置の方針、
国鉄の企業
努力の明文化等、
国民に納得のできる
再建案を改めて作成すべきであることをこの際強く要求いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣大平正芳君
登壇〕