○稲葉誠一君 私は、
日本社会党を代表して、
昭和五十五
年度の
一般会計予算外二件に対して、
反対の
討論を行わんとするものであります。(
拍手)
予算案そのものに対する批判に入る前に、私は二つの点を指摘をしておきたいと思います。
大平総理は、施政
方針に関する演説の中で、「政治と
行政が公正かつ清廉で、
国民の信頼にこたえるものでなければなりません。そのためには、政治の倫理を高め、
行政の綱紀を正し、
時代の
変化と
国民の要請に対し適確な展望を示す
努力が不可欠であると考えます。」というふうに述べておられるのであります。
しかし、その言やよし、その行いたるや全く
反対でありまして、何らなすところがないのであります。(
拍手)これでは
自由民主党の内部から批判、
反対の声が起きるのも当然であると私は考えます。(
拍手)
福田赳夫氏は、
昭和五十五年一月九日、
国民政治
研究会で次のように述べておるのであります。私は――私というのはぼくじゃないですよ、福田さんですよ。福田さんは、この四十日間にいろいろな問題について大平総理、あなたと話し合った、その中で、君が総理大臣としてやったこと、それについては私は評価するし、そう荒立てるような考えはないけれども、はなはだ不満であるのは、(発言する者多し)うるさいな、黙っていろ。
自民党の体質問題について全く無関心であること、この点は大変不満なんだという話をしたわけですが、それに対する反応は、大手を広げて飛びついてくるという
状態ではなかったことは事実だ。また再びわが輩をして落胆せしめるような応対であった。中略。また、わが党の総裁の決断でできることはある。それは総裁選挙です。これは予備選挙に金がかかり、本選挙でまた金がかかるのです。これがいまや悪の根源になりつつあると思う。しかし、この悪の根源と言われるものは
自民党の決断一つで停止することはできるのです。総裁の決断一つで停止することはできるのです。こういうふうに言っております。また中略でございますが、党員に投票させると、だれでも構わない党員にする。その金はこちらで立てかえますという傾向がある。これなんか本当の買収選挙です。党員の党費は二千円の二千円で四千円ですから、四千円を投票権を買うため出す。そして、大体五十万人あれば一等賞になる。だから、二十億円ですか、二十億円あれば日本国が買えるのです。だから出しますよ云々、こういうふうに言っておるのであります。
福田さんは正直な人であります。福田さんは正直な人でありますから、本当のことを言ったのでございましょう。しかし、私は、これが
自由民主党の実体であるということに、
国民とともに深い怒りを覚えるものであります。(
拍手)いかに何でもこれはひど過ぎるのではございませんか。こんなことをやっていては、日本の政治は
国民から見放されてしまうのであります。(
拍手)この政治の倫理化、金権政治の一掃ということに全く熱意を持たない大平総理の態度は、遺憾千万であると言わなければなりません。(
拍手)
いまや
世界は、大きく揺れ動いております。激動の八〇年代を迎えておるわけです。ソ連のアフガン侵入は、まことにけしからぬことです。われわれは、声を大にして撤退を求めます。同時に、アメリカの力も相対的に落ちてきております。こうした
情勢の中で、大きく見直されておりまするのは、アジア、アラブ、アフリカ、中近東、中南米、その他に見られる非同盟積極中立
政策の正しさであります。(
拍手)しかるに
政府は、日米安保を拡大解釈し、極東の範囲を広げ、また、リムパックヘの海上自衛隊の参加を決意し、護衛艦二隻、対潜哨戒機八機を参加せしめて、依然としてアメリカのかさの中にあります。かかる行き方は、米ソ超二大国を頂点とする体制よりも、むしろ平和を求める非同盟中立の諸国が
増加し、これがいまや
世界をリードせんとしている事実に目をつぶるものであり、断じて容認できないのであります。(
拍手)いまこそわが党が長年掲げてきた非同盟中立
外交の正しさが実証されたことに対し、深い感懐を覚えるものでございます。(
拍手)
予算案に
反対をする
理由を次に掲げます。
第一、本
予算案は場当たり的であって、将来の展望を全く欠くものであります。
政府が考えておる
財政再建の
目標は、赤字国債の大量償還が始まる
昭和六十
年度以前に、赤字国債
依存度をゼロにするというものでありまするが、国債残高累増の危険は言うまでもございません。特別国債の償還期が始まる、六年後の六十
年度予算には、国債残高は百二十兆に達し、国債費は、来
年度予算の五兆三千億の二倍を超えるのを避けられないのであります。このとき、第二の
財政危機の
時代を迎えることを考えまするというと、われわれは、余りに無
計画な、場当たり的なものに対し、はだにアワを生ずる思いがいたすのであります。(
拍手)
第二に、これは類例のないととろの増税をはらんだ、反
国民的な
予算であると断ぜざるを得ないのであります。
政府は、六十年までに五兆八千億の増税をもくろんでおります。
法人税、所得税、間接税の税
負担が、他の文明国に比べて低いというのが
理由であります。
法人税は、大会社から言われてなかなか上げられない。所得税は、
負担感があらわに出るので、政治上得策でない。それで、間接税の比重の低いことを
理由に、いわゆる一般消費税は、五十五年、五十六
年度は見送るとしても、他の形で、
負担感のない、安定したこの間接税中心に考えようというのが、
政府・
自民党、大蔵官僚のやり方であります。これは、間接税であるから大衆
負担の最たるものでございまして、形はどうあれ、あの
国民の
反対によって引っ込めた一般消費税の再現であり、われわれは断固としてこの実現を阻止するものであります。
第三に、
公共料金値上げを中心とする
国民負担増大の
予算であって、大衆に犠牲を強要するものであります。
政府は、
消費者物価を六・四%の値上げに見ておりまするが、どこの研究所でも七%以上であります。
政府は、春闘をにらみ、意識的に低い数字を挙げておるとしか考えられないのであります。
いわゆる
予算関連の
公共料金としては、米、国鉄、郵便、たばこ、健保、
授業料等がありまするが、メジロ押しに値上げであるほか、電気、ガスの大幅値上げも企図されております。これらのものは、いずれも
国民大衆の生活に深いかかわりを持っておるのであり、特に低所得の
国民に
負担を強いるものであって、容認できません。
第四に、依然として大
企業中心の
経済体制、特に税制の温存をされておることであります。
なるほど
租税特別措置は改廃をされました。しかし、問題は、独占的な大
企業に対して行われる減免
措置は、
租税特別措置に限定して行われておるのではございません。
たとえば、本来益金に算入すべきであるが益金に算入しないもの、受取配当益金、株式プレミアム等の資本取引による収益あるいは資産評価、割賦基準による利益の繰り延べ。また、本来損金に算入すべきでないが損金に算入するものとして、
各種の引当金、
各種の準備金、特別償却あるいは交際費あるいは寄付金、償却不足欠損繰り越しと繰り戻し。国税庁の「
法人企業の実態」によりまするというと、受取配当金の非課税額は三千二十三億でありまして、この受取配当非課税によって
法人税は千百五十九億、
地方税は六百三十億免除をされております。また、
各種引当金は合法的な利益隠しでございまして、これらのもの全体を通じて十一兆二千百三十億が圧縮された。そして
法人税としては四兆二千三十八億、
地方税としては二兆三千百八十二億が免除をされておるのであります。
また、
法人税率が他の諸国に比べて低いということは、
政府も認めるところであります。一%で二千百億円、三%で六千三百億、この程度のものを見込んだと言われながら、経団連の
反対に遭ったのかどうか、これを見送ってしまいました。これは、経団連にそっぽを向かれては参議院選挙の資金が得られないので、仕方なく
要求に屈したのではないかと勘ぐられてもいたし方ないのではないでしょうか。(
拍手)
以上のほか、多くの点を挙げねばなりませんが、時間の
関係で省略をせざるを得ません。毎日まじめに働いておる
国民は、余りにも大
企業中心の優遇税制に怒りを覚えぬ者はないのであります。
自民党員を除いては、ということであります。
最後に、われわれは、
政府の
予算は
国民負担増、
福祉切り捨て
予算であるという共通の
認識に立ち、
福祉の充実、
雇用の安定、生活基盤の充実、
物価の抑制を
目標に、社会、公明、民社三党の緊密な連携のもとに、千四百億以上の
実質修正をかち取りました。これは老人
福祉の問題難病の問題、老人ホームの
負担増の問題、
物価対策、国鉄運賃の引き下げ等々、しかし、単に数字の問題だけではなく、非常に大きな意義を持つものでございます。
これは、三党の連携による勝利が
自民党一党支配の体制を崩してきた、
自民党支配の体制が崩れつつあることを物語っておるのであります。(
拍手)もうこれからは社公民、社会、公明、民社三党の同意がなくては日本の政治は動かないところに来ております。(
拍手)大蔵官僚の支配する
時代は去ったのであります。
自民党の支配する
時代はいまや去りつつあります。
国民は、その生活の向上と
福祉を念願する
国民は、わが党を中心とする躍進に大きな期待を寄せております。
いまや連合の
時代の幕あけであります。夜明けが来たのであります。われわれは、
国民の期待にこたえなければなりません。そして、
自民党一党支配を、いまこそ完全に息の根をとめなくてはならない、かように思うのであります。(
拍手)そして、そのときがいま静かに近づきつつあることを
自民党の諸君は気がつかないのでありまするが、まことに私は残念でなりません。
そのためにこそ、社会党はなお一層の精進をなし、そして
国民諸君に対してその責任を全うすることをお誓いをいたしまして、私の
反対討論を終わらせていただきたい、かように存ずる次第で去ります。(
拍手)