○吉井光照君 私は、公明党・
国民会議を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
地方税法等の一部を
改正する
法律案に対し、
総理並びに
関係大臣に
質問するものであります。
初めに、
昭和五十五年度の
経済運営と
地方財政の関連についてお伺いいたします。きわめて深刻な
状況に陥りつつある
物価情勢に対処するために、この十八日、日銀は公定歩合を
引き上げました。狂乱
物価を食いとめるために金融
政策を引き締めぎみに
運用することは、認めるにやぶさかではありません。
しかし、こうした反面、景気の先行きについて考えますと、不安要因が拡大されつつあることもこれまた事実であります。もし景気の後退を招くようなことがあれば、当然税収の落ち込みも予想せざるを得ませんし、
財政の再建に大きな支障となるだけでなく、
地方財政の運営もきわめて困難な局面に立ち至ることも当然予想されるわけであります。私は、
地方税収を
確保するためにも、
物価の安定を図ることを大前提に、景気の持続的回復をどうしても図ることが必要であると考えるのでありますが、
総理の御見解をまずお伺いしたいのであります。
ところで、国税と
地方税の比率は七対三となって、国に
税源が著しく偏っておりますが、
財政支出の面では逆に三対七と逆転いたしております。これは、
地方自治体の
事務の大半が
補助事業で占められていることからも明らかなように、
自治体の
事務は国の枠の中に組み込まれ、
自治体は
補助金によってコントロールされていることを物語っているのであります。
現在の
地方財政の運営の実態は、この
補助金を中心として行われているため、
地方税並びに
交付税は、
地方自治体の
一般財源であるとされているにもかかわらず、
補助金の裏
負担に充てられており、
地方団体独自の計画に基づく事業に充当する額はきわめて少ない実情であります。これでは三割
自治どころか一割
自治にも満たない状態であります。
また、現行の
補助金主体の
全国画一的行政は、
地方自治体においては必然的に
補助金のつく事業を優先するようになり、ますます
中央依存の姿勢を強めております。一方、
地方の
時代と言われる今日、
地域的特性を生かした郷土づくり、
地域に根差した伝統文化を育成しようとする動きが
国民の中に芽生えつつあります。
こうしたときに、
財政、
行政面だけが従来と変わらない
中央集権体制をとり続けていることは、余りにも
時代の流れを無視したものと言わざるを得ません。そこで、現在の
補助金制度を抜本的に
整理合理化して、
補助金を削り、自主
財源である
地方税の拡大を図るべきであると考えるものであります。
総理にお伺いしますが、
総理の持論である
田園都市構想及び
地方分権の立場から、現行の
補助金制度の抜本的見直しについての決意と、具体的なプログラムを明らかにしていただきたいのであります。また、現行の三〇%台の自主
財源の拡大についてどのような考えをお持ちなのか、あわせてお伺いいたします。
さらに、自主
財源の拡大は、当然
事務事業の見直しがその前提とならなければならないと考えるものであります。
昨年、
地方制度調査会の今後の
地方行財政制度の
あり方についての
答申がなされておりますが、その後すでに約半年を経過しようとしておりますが、何ら具体的取り組みがなされておりません。
総理は、この
答申の
実現のめどをこの場で
国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
次に、
住民税についてお伺いいたします。
住民税の
課税最低限は、今回
基礎控除など諸控除の
引き上げで、
夫婦子供二人の
給与所得者の場合百五十八万四千円に
改正されようとしております。しかし、一級地における
標準世帯の
生活保護費は、五十四年度の百五十万五千円から、五十五年度は百六十二万円となると予想されることから見ても、
政府案の
課税最低限は余りにも低いものと言わざるを得ません。
住民の
負担軽減を図るため、
課税最低限を百六十二万円以上にすべきであると考えますが、御見解をお伺いしたいのであります。(
拍手)
また、障害者控除、老年者控除、寡婦控除及び勤労学生控除の額は、それぞれ二万円
引き上げて二十一万円としており、特別障害者控除、老人扶養控除も、同じく二万円ずつ
引き上げて二十三万円としております。障害者、寡婦等は、今日の社会において社会的弱者であり、
税制面からも特別な
福祉的配慮を払うのが当然であります。それにもかかわらず、今回の
改正は、
基礎控除等の三控除の
引き上げに伴う
調整的
引き上げにとどまっております。したがって、こうした方々に対する
税負担の
あり方については、社会
福祉的
観点に立って、これら諸控除の
引き上げはもちろん、根本的に検討すべきときに来ているのではないかと考えるものでありますが、
政府の御見解を伺いたいのであります。(
拍手)
次に、
電気税についてお伺いいたします。
この四月から電気・電力料金を平均六四・四%
引き上げる申請が出されております。このような大幅な電気料の
引き上げは、
国民生活に重大な影響を及ぼすもので、もちろん賛意をあらわすわけにはまいりません。もし電気料金が
引き上げられた場合、
国民は、電気料金の
引き上げと
電気税の実質的増税の二重の
負担を負うことになります。
そこで、お伺いしたいのでありますが、電気料金の
引き上げについてはできるだけこれを低く抑えるべきは当然と考えますが、電気料金の
引き上げに対する見通しと、また、料金
引き上げが行われた場合、これに連動して
免税点の
引き上げか、
税率の引き下げを行う用意があるかどうか、
お尋ねをしたいのであります。
次に、
租税特別措置等についてお伺いします。
われわれは、かねてから、国の
租税特別措置等による
地方税への影響の遮断及び
地方税の減免
措置の
整理について強く
主張してまいりましたが、
政府の取り組み姿勢はきわめて消極的であります。この際、これらに対する
総理の見解を求めるものであります。
また、このような
租税特別措置等による
地方税の減免と
地方税自体の減免
措置は、
地方自治の
本旨に立ち返って考えたとき、
地方の
課税自主権を制約する結果となっております。
地方税の減免
措置は、国の
法律で決めるのではなく、各
地方自治体が実情に応じて、みずからの
政策遂行のために自主的に行うべきであると考えますが、
政府の御見解をお伺いしたいのであります。
次に、
事業所税についてでありますが、現行の
事業所税の
課税団体は人口三十万人以上の
都市とされておりますが、これでは、県庁所在地ですら対象とならない
都市も少なくありません。したがって、
事業所税の
課税団体の拡大に対してどのような見解をお持ちなのか、お伺いしたいのであります。
また、
課税自主権の
見地からも、
事業所税の
課税については、それぞれの
地域の実情により、
地方自治体の選択に任せるべきであると考えますが、この点についての御見解もあわせてお伺いいたします。
最後に、土地
税制についてお伺いいたします。
政府は、五十五年度
税制改正におきまして、宅地供給促進という視点から、個人の長期譲渡
所得課税をさらに
軽減する
措置を講じようとしておりますが、しかし、今日のような地価の高騰含みのときに、しかも時限をつけないこのような
措置を講じてみても宅地供給の促進効果は
期待できません。将来大幅な値上がりが予想される土地を対象に長期譲渡
所得課税を
軽減することは、その資産としての有利さを一層大きくすることになり、土地
所有者はますます土地を手放そうとはしないことになるとともに、
不公平税制を助長することにもなりかねません。したがって、この際、住宅事情の厳しい三大
都市圏においては、宅地供給を促進するために、市街化区域内農地に対して選択的宅地並み
課税制度の
導入の検討を考えているかどうか、
お尋ねをいたします。
この考え方の
基本は、農業経営を続けたい農地には
一定期間、たとえば二十年間くらい宅地転用を禁止するかわりに宅地並み
課税を行わない、しかし、宅地転用の自由を認めてほしい農家には農地の宅地並み
課税を実施するというものであって、農家はこの二つのどちらかを自由に選択することができるという方式であります。このようにして市街化区域内の農地の
あり方を明確にする必要があると考えます。
政府の御見解をお伺いしたいのであります。
以上で私の
質問を終わりますが、
政府の率直かつ明確な答弁を求めるものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣大平正芳君
登壇〕