○豊島
政府委員 最初の
お尋ねの歴史的縁由でございますが、明治十四年に監獄則ができまして、また明治二十三年に
改正監獄則ができておるわけでありますけれども、この監獄則におきましては留置場は監獄の一種であるというふうにされておりまして、刑事被告人を一時留置するほか、拘留刑に処せられた者も、また罰金の換刑
処分としての自由刑に処せられた者も使用することができるというふうにされておったわけであります。
その後、監獄行政と警察行政の所管が司法省と内務省に分かれまして
現行監獄法を明治四十一年に制定するときに、留置場は監獄の種類から除外をした、そしてこれを監獄にかえて使用することができるという形にいたしたわけであります。
それ以後戦前も戦後も結局、代用監獄、警察留置場を拘置所、拘置監のかわりに用いるという形がずっと引き続き行われておるわけでありますけれども、その
理由の大半は、先ほど御
指摘のありました設備の充足ができていないということにあろうかというふうに思うのであります。
そこで第二の御疑問の点でありますけれども、現在それでは代用監獄にどのような意味を付しているのかという点でございます。先ごろ監獄法
改正の部会、小
委員会の中で代用監獄をめぐりまして大変時間をかけて論議をいたしているわけであります。恐らく五分の一ぐらいの時間はかけておるんじゃな
いかというふうに思うのでありますけれども、そういう
議論の中で出てまいりました
意見を見てみますと、一つは、先ほど申した施設の充足が困難だという問題がございます。
充足が困難な
理由はおよそ三つございまして、一つは金がかかるという問題がございます。それからもう一つは、金だけの問題でなくて、これは組織、人を充足しなければ
いかぬという問題がございます。これもしょせんは金の問題になってくるのでありますけれども……。もう一つは、現在の施設の改築とかあるいは新築とかそういった問題を見ましたときに、いつも起こってくる問題でありますけれども、拘置所につきましても大変改築が困難だというような状況がございます。ましていわんや増築は非常に困難だという状況があるわけであります。しかしながら、そういう中で、たとえば名古屋市におきましては、名古屋市内に名古屋拘置所を、これは議員の皆さん方、市民の皆さん方の大変な御協力を得まして新設の運びに至っております。しかし一方では、神戸の拘置所のように、都心から鵯越と火葬場の間に移転を余儀なくされたというような施設もあるわけであります。そういう施設におきましては、
被疑者の親族あるいは弁護士さん、こういう方々の大変な御不便があるわけであります。代用監獄を存置しなければならぬもう一つの
理由として、いまの、不便なところへ行けば
被疑者、弁護人その他
関係人の大変な不便があるだろうということが出てくるわけであります。
それから最近の論議の中でもう一つ大きな論議は、警察留置場のメリット、つまり代用監獄のメリットを主張する
意見がかなり強く出まして、この
議論は
議論された
委員の方々の中でも賛同される方はかなりあるわけであります。その
議論は結局、捜査の迅速適確な遂行という面を
考えますと、警察に付置された留置施設というのは必要なんだ、こういう論議になるわけであります。
それに対しまして、
稲葉委員から御
指摘のありましたような、そこが問題なんだ、先ほどの利害誘導的なことあるいは暴行脅迫的なこと、そういうことによって不当に自白が得られる、それは代用監獄があるがゆえなんだという御
議論が一方ではあるわけであります。
そういう両者の激しい御
議論が今回の監獄法
改正の中でもあったわけでありますけれども、いま申したような設備の増設の困難性とかあるいは捜査遂行上の問題とかあるいは
関係人の便不便とか、そういった点を総合した結果、一応の結論は部会は出しておるわけであります。
もちろん私どもの立場からいたしますと、施設の増設というのはやらなければならぬことでございますので、増設に努めるという点についてはやぶさかでございませんし、従来も国会答弁等において、戦前においてもやはり増設を図ろうという答弁は行われてきておるわけでございます。現在におきましてもその点は変わらないわけでございますけれども、大変困難を伴うことは事実でございます。監獄法の
改正部会におきましても、これは条文になりにくい事柄でございますので、部会の付帯要望事項といたしまして、
法務省傘下の未決
拘禁施設というものを充実せよということを
指摘いただいております。恐らく受けざらなくして代用監獄の廃止論はできないという大
前提があるからだろうと思います。