○
柳館説明員 ただいま
先生が御
指摘のように、銃器とそれから
薬物、これは
治安を支える非常に重要な柱だと考えております。その
薬物が
家庭の
主婦あるいは
中学生まで大変浸透してきているということで私
ども憂慮いたしておりまして、これの
取り締まりに全力を挙げているわけでございます。
簡単に、その
状況につきまして御
説明を申し上げたいと思います。
最初に
覚せい剤でございますけれ
ども、最近の
傾向について申し上げますと、
覚せい剤取締法違反の
検挙の
状況は、
昭和四十五年以降ほぼ一貫して
増加をいたしております。
昭和五十四年は五十三年よりもさらにふえまして、三万一千六百三十七件、人数にいたしますと一万八千二百九十七人を
検挙いたしております。これは十年前の
昭和四十五年に比較いたしますと、件数で十三倍、
人員で十一倍ということになっております。また、こういう
乱用者の
増加に伴いまして、
覚せい剤中毒による突発的な
犯罪あるいは
覚せい剤取引をめぐる
犯罪といったようなものを含めますと、昨年一年間で千百三十一件、七百九十一人を
検挙しているという
状況でございます。
次に、最近における特徴と特異な
事案でございますけれ
ども、最近の特徴的な
傾向といたしましては、
凶悪犯が非常にふえてきているということでございます。
殺人が昨年は三十件、放火が十八件、
人質監禁が十六件、その他
凶悪犯が百五十四件ということで、前年の
昭和五十三年に比較いたしますと、五一%の
増加ということで大変な
増加をしるしているわけでございます。
また、特異な
事例といたしましては、先ほど
先生が
大阪の少女の例を挙げてございましたけれ
ども、あれがやはりかなりの特異な例でございます。これにつきましては、
犯行当時調べたところ、
覚せい剤を使用しているという
状況はなかったのでございますけれ
ども、それ以前に
覚せい剤の
使用歴があるわけでございます。しかしながら
犯行当時の言動から見ますと、学者が
再現症状、
フラッシュバックと言っておりますけれ
ども、
覚せい剤を使用している
状態に、ある時点において戻ることがあるということが言われております。そういう
現象があったのではないかというぐあいに見られておるような
状況でございます。
覚せい剤がどこから来ているかという問題でございますけれ
ども、これは
新聞等で御
承知と思いますけれ
ども、大半が
韓国から来ております。それから、あとは
香港、台湾といったような東南アジアが中心でございます。これを
密売する
組織はほとんどが
暴力団でございまして、
暴力団は
自分で
密売をし、そして
中毒患者をつくり、またその
中毒患者がさらに
自分の薬を得る代金が欲しいということで、みずからまた売人の
組織に加わっていくというような
増殖現象が起こっておるわけでございます。
こういったことで、この
密売組織の壊滅ということに、私
どもこれから大いに力を注いでいかなければならぬと考えておるわけでございます。たまたま今月、二月でございますけれ
ども、
全国一斉の
取り締まり月間ということでやっております。年二回やっておりますけれ
ども、さらに一層力を入れて、この
検挙活動を続けてまいりたいと思っております。
対策でございますけれ
ども、これは大きく分けまして二つあると思っております。
一つは、何と言っても
乱用を徹底的に防遏していくことだと思っております。私
どもは、これを
薬物を拒絶する
環境づくりというようなことを言っておるわけでございますけれ
ども、これにはやはり全
国民の御
協力を得なければ何ともいたし方ない点もございますので、われわれの
検挙活動と同時に、
国民の
皆様方にもどんどんキャンペーンをし、御
協力もいただくということで、
国民総ぐるみの
活動を展開していきたいと思っております。
それからいま
一つは、
密売と
密輸の
組織を徹底的に壊滅していくということでございます。幸い今回は
増員等もある
程度お認めいただいておりますので、これをてこにいたしまして、さらに強力な
対策を講じてまいりたいと考えております。
次は
シンナーでございますけれ
ども、最近の
傾向を申し上げますと、五十四年中に
シンナーを
乱用して補導された
少年は四万四百三十三人ということで、前年に比べまして二・一%、若干ふえておるわけでございます。学校に行っているか、あるいは職業についているかということで見てみますと、
有職の
少年が三八%、
無職の
少年が二三%、
高校生が一九%ということでございます。御
承知のとおり、
高校生が九割近く同年代においては占めておるわけでございますので、やはり
有職、
無職の
少年が圧倒的にこういうものを使っているということが言えると思っております。
それから、どういう
薬物を使っておるかということを申し上げますと、
シンナーが全体の四六・四%でございます。それから
接着剤、これが三四・七%、トルエンが一六・五%というような
状況になっております。最近における特異な
事案でございますけれ
ども、これは先ほど
先生が御
指摘になっておりました、ことしの一月
福岡で起こった二十一歳の
会社員の
事件があったわけでございます。ほかにも五十四年一月、五十四年四月等々において、やはり
殺人事件あるいは
強盗致傷事件といったようなものも起こっておりまして、
シンナー等に対する
警戒というものはさらに強めていかなければならないというぐあいに考えております。
この
シンナーの
入手経路でございますけれ
ども、御
承知のとおり、
シンナー、
接着剤、
塗料、こういったものは全部
日常生活にどうしても必要なものでございます。したがって、デパートであるとかスーパーマーケットあるいは
塗料店、
建材店、
金物店、
文具店、薬局あるいは自転車、自動車の
部品販売店、至るところにあるわけでございます。したかいまして、これを防遇していくということはきわめてむずかしいという
状況にございます。
警察の力のみではとても足りません。そこで、こういう
接着剤であるとか
塗料であるとか
シンナーであるとかを売っている
方々あるいは
家庭の
方々全体が
協力をしまして、こういうものの
乱用を防止していくということに大きな力をかしていかなければいけないというぐあいに考えておるわけでございます。
先ほど
先生も御
指摘がございましたけれ
ども、
シンナーの
取り締まりというのは大変むずかしいわけでございます。現在これが取り締まることができるということになっておりますのは、いたずらに摂取し、吸収し、あるいはそのために
所持しているという者しか処罰できないということになっております。それから、さらにはそういう
事情を知っておって売ったり与えたりした
大人が処罰されるということになっておるわけでございますけれ
ども、そこらの立証その他がかなりむずかしい点もあるわけでございますので、やはり処罰に頼るということだけではなしに、みんなで気をつけていただくということが大切だと思っております。
それで、
対策といたしまして私
ども当面考えておりますのは、
乱用しておる者をとにかく早期に発見して、それを直ちにやめさせるということが第一だと考えております。
それから第二番目は、
暴力団であるとかあるいは悪質な業者が
知情販売、要するに
乱用するということを知っておって売っておるという者がございますので、そういう者を徹底的に
検挙していくということでございます。
それから第三番目として考えておりますことは、自主
規制をもう少し各業者にしていただくということをしなければならないと思って、現在自主
規制の要請をいたしております。相当いま効果を上げつつございますので、さらにこれも徹底してまいりたいというぐあいに考えております。
それから第四番目として、やはり一番大きいのは、
シンナーが薬理作用が少ないというぐあいに考えられている向きもないではないように思いますので、これが非常に有害なものであるということを徹底的にPRしていくということをやらなければいけない。家族ぐるみ、職場ぐるみ、地域ぐるみの
乱用防止というような機運を盛り上げていく必要があろうというぐあいに考えております。