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1980-02-19 第91回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月十九日(火曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 木村武千代君    理事 金子 岩三君 理事 中村  靖君    理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君    理事 楯 兼次郎君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 柴田 睦夫君       井出一太郎君    上村千一郎君       亀井 静香君    熊川 次男君       白川 勝彦君    二階堂 進君       井上 普方君    下平 正一君       飯田 忠雄君    長谷雄幸久君       木下 元二君    岡田 正勝君       河野 洋平君  出席国務大臣         法 務 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         法務大臣官房司         法法制調査部長 枇杷田泰助君         法務省民事局長 貞家 克己君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省矯正局長 豊島英次郎君         法務省保護局長 稲田 克巳君         法務省訟務局長 蓑田 速夫君         法務省人権擁護         局長      中島 一郎君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         公安調査庁長官 山室  章君  委員外出席者         文化庁文化部長 塩津 有彦君         文化庁文化部宗         務課長     安藤 幸男君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 木村武千代

    ○木村委員長 これより会議を開きます。  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 先般、当委員会法務大臣所信表明を聞きました。  私は、倉石法務大臣所信表明を聞きまして、やや残念な感じを免れなかったわけであります。法務大臣前段で「わが国国民生活が安定いたしております大きな原因の一つは、その基盤とも言うべき法秩序が揺るぎなく維持され、国民権利がよく保全されていることにあると痛感いたしております。」要するに、非常に日本法務行政について楽観をしておるし、あるいはまた全文を通読いたしましても、きわめて平板で訴えるものがない、こういうことを感ぜざるを得ないのであります。  ここで、最高裁長官服部さんの「新年のことば」と比較をしてみますと、どうして一体司法行政の二つの職にある人の考え方が違うのであろうか、こういうことを思うのであります。大臣長官の「新年のことば」をお読みになったと思うのでありますが、服部長官内容が、是非は別といたしまして、私は、適当な機会に最高裁長官ないしは事務総長にいろいろと「新年のことば」の真意をただそうと思っておるわけでありますが、きわめて高い次元に立って、八〇年代におけるわが国裁判所制度司法制度についての問題点指摘しておるということを考えるのであります。たとえば、全文を通読する時間がございませんが、最高裁長官の言葉の中に、国際犯罪がきわめて増加をしておる、それから、法律解釈についていろいろと考えなければならぬことがある、新しい時代への対応が非常におくれておる、あるいはまた、迅速裁判が要求されておるにかかわらず、必ずしもそれに対して十分な対応ができていない等々の問題点を投げかけておるわけであります。  私は、歴代の最高裁長官のいろいろなところにおけるごあいさつを注意深く読んでおるわけでありますが、ときには私どもとしてはがまんのならぬこともあった。けれども、そのときどきにおける問題点提起をされておる。最高裁長官が問題の提起をするということは、ときとして逸脱する場合がないとは言えないが、しかし裁判所行政を担当する者として、ある意味では政府に対して要望事項と受け取れる節と見られないことはないけれども、われわれ立法府として考えなければならぬことが示唆されておると私は思うのであります。その意味において、この種の長官の、あるいは裁判行政の問題が提起をされたことに対して、倉石法務大臣はどうお考えになっておるのか。  この長官の、新年のことば」と倉石法務大臣所信表明とは、接触するところが余りにもないのではないか。国会だから、この委員会における事なかれ主義で、ありようは、体裁よく各局から出てきた問題を整理したにすぎないのではないか。法務大臣としての信念とか、法務行政基本的理念とか、言うならば八〇年代における法務行政のこれからの進路とか、そういうことがまさに皆無ではなかろうか、私にはそう考えられてならないのでありますが、法務大臣としてはどうお考えになりますか。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御指摘最高裁長官の「新年のことば」というのを私も拝見いたしました。おっしゃるように、きわめて次元の高い思想のもとに述べられておる。ことに、いまお話しの中にありましたように、一九八〇年代は国際的にもなかなかいろいろな問題がある時代になってきている、そういうことについての御指摘もありましたし、それからまた、法曹三者の協力と理解のもとに進めていかなければならないという、実際面についてのお考え等も御指摘になっておられます。  私といたしましても、長官のおっしゃることについて、非常にいいことを言っていただいておるという感じは持っておるわけであります。そういう点において、全く同じ考えの上に立って法務行政をやってまいるつもりでありますが、横山さん御存じのように、法務省にはいろいろな所管の部局もございますので、行政の面から、そういうことについても私どもはいずれも力を入れていかなければならないことであるということで、各般のことについて申しておると思いますけれども、物の考え方においては、私は、最高裁長官のおっしゃることは大変わが意を得たりと思っておる次第であります。
  5. 横山利秋

    横山委員 全文を通読するのは避けますが、その一節を同僚諸君にも聞いていただきたいと思うのです。   来るべき一九八〇年代の将来はどのような展開をみせるであろうか。今日の時点でそれを的確に予測することは、極めて困難である。しかし、確実にいえることは、人類の科学技術は一段と高度で精ちな発達を遂げ、それに伴って、国民生活はますます複雑な多様性を帯びるであろうということである。そして、これらを反映して、国民各層の意識や価値観は一層多元化し、各種の利害の対立とこれに基因する社会的紛争は更に多岐にわたり、かつ、困難なものとなることが予想される。   また、物的資源の必ずしも豊かでない我が国の生きる道は平和な国際貿易に依存するところが大きく、諸外国との国際的な交流がより頻繁緊密の度を加えることは、必然である。地球はそれだけ狭く、小さくなり、したがって、法的紛争犯罪国際的規模において発生することも、想像に難くない。   このようにみてくると、一九八〇年代が常に平穏無事の大道を推移するものと期待することは必ずしもできないようである。それは、一九七〇年代にも劣らず、多分に波乱と動揺とを含んだものとみるべきではなかろうか。それだけに、我々は、これに対応し得る覚悟と準備をもって新しい時代を迎える必要があると思う。」 こういう前提のもとに、裁判所行政あるいは訴訟関係者法曹三者のあるべき問題点を列挙されておるのでありますが、私は、この長官の「新年のことば」と倉石法務大臣所信表明と比べてみて、倉石さんのは、国民生活が安定しておりますこと、法秩序が揺るぎなく維持されておること、国民権利がよく保存されておること、こういうことが前段で大きな軸になっておるわけですね。きわめて、今日及び将来に対して安心してといいますか、甘く見てといいますか、そういう情勢分析であることを非常に残念に思うわけであります。  この後段において、いろいろと問題の示唆は出ておりますけれども法務大臣として、これからの八〇年代における司法行政はどういうふうな変化があるか、どういうふうに自分対応しようとするのかというところが片りんもないじゃありませんか。その点を私は言っておるのです。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 わが国治安が、横山さん御存じのように、諸外国状況に比べまして、私はかなりいいところに来ておると思っておるわけであります。これは犯罪統計などを見ましても、そういう感じを受けますが、要は、やはりその衝に当たる人々がどのようにして安定度を増す努力をしてもらえるかということだと思うのであります。  そういう面で、現在のわが国状況を概括して、それぞれの部署を担当しておられる人々努力の結果、大変いいところへ来ているんじゃなかろうか。これを壊さないようにやってまいらなければならぬ。そういうことで、行政諸君努力を増すと同時に、それを指導していただく社会指導者階層方々にも、どうぞひとつ国民が安心してそれぞれの持ち場持ち場で活動することができるように最大の基盤をつくってあげるということが、われわれに課せられたる任務ではなかろうかと、そういう感触をもって進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 各省に比べますと、法務省はきわめて腰が重い。一つのことをやろうとして、なかなかうまくその切りかわりができない。そして前途の大きな変化に対する対応性がない。われわれがここで百万遍言っても、なかなかそのように、それじゃというわけでうまくいかないということが法務省の特徴なんです。これは必ずしも悪いことばかりとは言いません。しかしながら、各省状況変化に対する対応性が速いのにかかわらず、余りにも法務省はいつでもそれがうまくできない。  たとえば、長官の言っておることを具体的な問題に提起をいたしますと、新聞では、犯罪人引渡し条約アメリカとの間に少し拡大があるというわけですが、アメリカとの間の条約改正にかみ合ったところで、本委員会指摘しておる、もっともっと各国と十分にやれという附帯決議はできておるけれども、一向にそれが進展しない。あるいはまた迅速裁判にしたところで、後で触れますけれども、この迅速裁判対応が、検察陣にしたところで裁判官にしたところで、増員が十分できたであろうかとなると、まことに心もとない。  あるいはまた登記所状況などは、私も二、三回、もう国政調査のたびにも、地元にも東京にも行っておるわけでありますが、あのような戦場騒ぎのような登記所の改善がちっともできていない。国民権利がよく保全されておると言うけれども、私は、あれで保全されているというのはちゃんちゃらおかしいと思うのです。  それからまた裁判所機能からいいましても、最近、国家賠償というものが、訟務局の話を聞きますと半分くらいだということなんですね。半分くらいの国家賠償を求める請求に対して、一体十分な機能をいたしておるであろうかどうか。あるいはまた、それらに伴ってマンモス訴訟と言われる、たくさんの国民がその権利を行使して訴訟しておるが、そのことについて一体対応が十分できておるであろうかどうかということが思われる。汚職の問題についてもそうです。  司法共助法が言われてから久しいものがある。このものについて一体進展が十分できているであろうかどうか。あるいはまた出入国においては、ここ数年のうちに五倍になっておるが、そのような状況一体法務省対応しているだろうかどうかということになりますと、法務行政というものが、あなたの言うように、みんなが一生懸命やっておってくれる、だから安心しておる、そんなような問題じゃないですよ。  法務大臣におなりになってから、まだまだあなたは十分法務行政の実態にも、はだえに触れていらっしゃらないかもしらぬけれども各省情勢変化対応する能力と比べますならば、法務省は、あなたがおっしゃるように、部下が一生懸命やっておってくれるから、それで私は安心だというような筋合いの問題じゃないのですよ。そういう点について御認識がちょっと足らないのじゃないですか。法務大臣としてあなたは大物なんだから、副総理格の人なんだから、もう少し政治力を発揮して、予算だって人員だって、いろいろな法律推進だって、あなたの長年のキャリアをここで生かしてもらわなければだめじゃないですか。  あなたの話を聞いていると、本当にうまくいっておるから、私は安心していると言うて私どもにお答えくださるだけでは、倉石法務大臣としての推進力というか、気力というか、政治力というか、そういうものがちっとも働いてないような気がしてしようがない。この法務大臣所信表明一つ見ても、どこに倉石さんの思想なり人格なりあるいは識見なりというものが出ているのでしょうか、私、それを疑うのです。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は、御指摘のとおり、本当に正直に申し上げましてまだ未熟でございまして、この間も実は私は入管局の一番大きなところの視察に参りました。それから登記所に行きまして、何ともはや、こういうところでこの大事な仕事をよく毎日やっていられたものだと思うほどの非常な混雑と多忙でありました。  こういうことにつきましては、やはりそれ相当の地元方々の御要望もありますし、そういうことについて対処しなければならないということに、いままでよりも一層の認識を深めたわけでありますが、それらのことにつきましては、皆様方の御支援のもとに、そういう困難また混雑を解消することのできますように、全力を挙げてまいりたいと思っておるわけであります。ただいま横山さん御指摘のような点は、私みずから自分痛感をいたしておりますので、今後とも皆様方の御支援のもとにひとつ打開いたしてまいりまして、権利の保全はもちろん、その他の問題につきましても最大限の努力をいたしまして、逐次、この困難性を解消してまいりたいと思って努力をいたそうとしておるわけであります。  どうぞ、今後とも御支援のほどをお願いいたします。
  9. 横山利秋

    横山委員 私の言わんとすることは、この最初の前文国民生活がよく安定しておるとは思わないのですよ。  物価は高くなるわ、社会公害は多くなるわ、そういうような状況だと私は思っている。法秩序が揺るぎなく維持されておるかどうか。このごろは暴力団がまたばっこし始めた。きょうの新聞によると、過激派がまたベイルートを脱出したという。国民権利がよく保全されているか。あなたがいまおっしゃったように、登記所業務は必ずしもそうは言いがたい。むしろ逆に言って、そういうことだからこういうことをしなければならぬということなら、話はわかるというのです。  あなたは前文で、国民生活は安定しています、法秩序は揺るぎなく維持されている、国民権利はよく保全されております。そういう認識が私は違うと言うのです。そういう認識が違うのです。あなたは、問い詰めれば、いや登記所へ行ったらこれはえらいことだ、出入国が五倍になっておる、これはえらいことだ。そのえらいことだという気持ちが、この中にないじゃないですか。この前文は恐らくあなたの思想だ。後文はみんな各局から出てきたものを羅列しただけだ。前文にこそ倉石さんの思想なり信条なり情勢認識というものが出ていなければならぬと思うのですが、前文は全く平穏無事、きわめてうまくいっておるということの認識が違うと言うのですよ。あなた、そういう認識を持っていらっしゃるのですか。ここで書いてあることと、いま言っていることと違うのですけれども、どうなんですか。
  10. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 よその国の批評を日本政府閣僚が失礼に当たらないように、たとえば東京サミットにお集まりになる第一流の国家と言われる大統領、総理大臣等が参りますけれども、ああいう方々のお国の状況を見ましても、ひどいものだなと思われる国も、御存じのようにございます。  私は、そういう国を連想しながら考えてみますと、日本裁判検察治安当局はああいう国々に比べて非常にいいなという感じを一市民として持っておりますので、そういうことをひとつできるだけ助長してまいりたい。しかし御指摘のように、法務大臣あいさつの中にも、近時そうでない不安定なものも出てきたのでということをうたってはおりますけれども、ぜひひとつ日本のいまの安定を崩さないように、さらに国民皆さんの御協力のもとにやっていきたいという念願を込めて申しておるわけであります。
  11. 横山利秋

    横山委員 まず大前提として、私は、あなたの認識が不十分である、恐らくこの前文もあなたがお書きになったのじゃなかろうと思うのですよ。しかし、せめてこれからは、年に一回の法務大臣所信表明なり、あるいは検察陣に対する訓示なり、あるいはいろんなところの法務大臣としての部下に対するごあいさつなりなさるときには、あなた、自分で筆をとってくださいよ。  私は、この所信表明の前に、官房長やいろんな皆さんに、このことについて言うてある。この最高裁判所長官のものは、長官だからやや抽象的ではあろうけれども、人の心を打つものがある。だから法務大臣も、ひとつその点においては、いままでの私どものそれに対する賛成、反対は別として、法務大臣所信というものを本当に披瀝するように大臣に言ってくれと言ってあるのです。そう言ってあるけれども、これは何ともない。これでは私は失望をするのもひどいものがある。  あなたは、これからいろんな会合、いろんなところで部下の書いたものを読み上げるだけでなくて、自分信念というものを持ってお話をなさいよ、それでなければかみ合いませんよ。こんな形式的なものをここで読み上げたってかみ合いませんよ。それは与野党政府野党との間に意見の違うことはあろうけれども、本当に腹の底から自分はこう思うというものが出てきて、その是非善悪の議論を通じてコンセンサスが生まれるようにしなければ、私は、法務大臣としてはきわめて遺憾だと思う。これが私のきょうの大前提の問題であります。  その次に、汚職の問題です。ロッキード閣僚懇でいろいろな提言がされました。そして、五十四年の九月五日には航空機疑惑問題等防止対策協議会提言を行いました。いまここに提言全文をあなたもお持ちかと思うのでありますが、そこでまとまった提言が、この国会にどう反映しているかということであります。  私は、何も法務大臣がすべて責任があるとは言いません。しかしながら、ロッキードからグラマンからダグラスに至りますまで、一連の国際汚職航空機汚職を通じて、法務省がその汚職防止政策の最も基本的な柱にならなければならぬ、そう痛感をしておるものであります。にもかかわらず、今回の国会汚職防止政策として何が一体出ておるのでしょうか。この提言内容まつまでもなく、あるいは過ぐるロッキード閣僚懇決定まつまでもなく、一体政府は、大平総理大臣が本会議委員会で言うておることと、現実にこの国会汚職防止政策として提案されているものと比較をいたしますならば、全く皆無と言ってもいいのではないですか。法務大臣として、自分法務行政の枠内だけ自分はやればいいという問題じゃありませんよ。汚職防止の中心的な役割りをなすものは、やはり法務大臣でなければならぬと私は思う。法務大臣がもう少し号令をかけて、汚職防止のためにはかくあらねばならぬ、自分の経験上、自分の体験上から言って、どうしてもこれはやってもらわなければいかぬ、法務省所管ではないけれども、他の省に、これはどうなったああなったということの推進力としての法務大臣でなければならぬと思うのであります。  その点で、このロッキード閣僚懇及び五十四年九月五日にまとまった提言について、一体何がこの国会に具体的に提案されていますか。
  12. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ロッキード事件に際しまして、昭和五十一年十一月十二日のロッキード問題閣僚連絡協議会におきまして、贈収賄罪規定整備等の四項目に上るロッキード事件再発防止対策決定されまして、さらに同五十四年九月五日航空機疑惑問題等防止対策に関する協議会において、制裁法規等整備強化等項目航空機疑惑問題等再発防止対策についての提言がなされましたことは御承知のとおりでございますが、法務省におきましては、これらの決定事項等に基づき、一つは、贈収賄罪法定刑の引き上げを内容とする刑法の一部を改正する法律案を第八十国会以降提出いたしまして御審議願ってまいりましたが、第八十八回国会において廃案となりましたので、右の法律案を改めて今国会に提出いたしたところでございます。  また、国際的犯罪に対処するための引き渡し犯罪を拡大して贈収賄罪を含めることを内容とする新日米犯罪人引渡し条約を締結いたしまして、第八十四回国会において御承認を得るとともに、逃亡犯罪人引渡法の一部を改正するなどいたしまして、国際協力体制整備のため鋭意努力いたしておるところであります。  なお、外国からの要請に基づき、外国において捜査中の犯罪についてわが国内で証拠の収集等を行ういわゆる捜査共助について、その手続を定めるための法制整備についても検討を進めております。  さらにまた、現在、国連経済社会理事会のもとで行われております多国籍企業の不正な活動を規制するための多国籍企業腐敗行為防止協定案作成作業につきましても、担当官を派遣いたしまして討議に参加させる等、引き続き法務省として協力をいたしておるところであります。  また、目下法制審議会商法部会におきましては、会社法改正審議の一環として、企業の財務及び業務内容の開示、監査制度強化並びに取締役の責任明確化等の方策について検討をいたしており、その答申が得られ次第、速やかに法律案を作成して国会に提出したいと考えております。
  13. 横山利秋

    横山委員 いろいろ羅列的におっしゃいましたけれども、実際問題として、この国会に提案されておるものは刑法改正一つですね。そうでしょう。いまあなた五つおっしゃいました。この国会に提案されているものは一つです。しかもその刑法改正案は、あなたがいまいみじくもおっしゃったように継続審議継続審議、そしてまたこの国会へ三度目の上程であります。野党は全部それに賛成したんだ。社会党も公明党も民社党も共産党も申し合わせまして、政府案に賛成するというのが去年の国会状況であります。それにもかかわらず与党が反対して、これが通らないのであります。政府が提案しておいて、一国会のみならず二国会与党の自由民主党がこれに反対するために国会が通らない。そんなばかげたことがありますかね、政党政治の中で。三度目の定の目と言いますが、今回どうなんですか。あなたはまた同じくだりで、与党が反対して通らなかったということを三度やらせるつもりですか。あなたは提案に際して与党の承諾をとりましたか。
  14. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これはこの国会で成立させていただくために、私ども自身もこれからなおさらに努力をしてまいるつもりであります。
  15. 横山利秋

    横山委員 委員長にお伺いをするのですが、いまの法務大臣の御答弁はきわめておかしなことです。  この間そういうことを私が理事会で申し上げた。私は、与党政府の間に話がつかなければ、この問題については議運でお返しする、社会党としてはそういう態度である、こういうように申し上げたはずです。その際に委員長から、政治的責任を十分私は感ずるし、大丈夫ですから、横山さんひとつ了承してくださいと言うので、ああ、そうですかと、委員長が誠意を持っておっしゃったので私は了承した。要するにそれは、政府与党と話し合って、今度は与党も通すということを承知をなさったものとして、私は議運でも法務理事会でも了承しておるのですが、そうすると、法務大臣与党工作をまだ行っていないんですか。与党がこの国会では刑法改正案贈収賄罪の刑の引き上げについては了承したから、三度目の定の目でこの国会へ上程した、私はそう考えておったのでありますが、間違いでございますか。
  16. 木村武千代

    ○木村委員長 それについては委員長から発言します。  この問題につきましては、あなたにお約束したとおりに、委員長としまして最大の努力をするという方針でいっております。もうすでにこの刑法改正案は党の機関を通じまして上程されておりますから、その方針でやっていきたいと思っております。
  17. 横山利秋

    横山委員 お言葉を返すようですが、国会に上程することは、前の国会でもその前の国会でも、自由民主党の機関を通過しているわけです。ただ、国会へ上程するのはいいけれども、おれは反対だよ、通さぬよということで二国会だめになったわけです。今度の国会は、そうは野党としては承知できません。かっこうのいい顔だけ政府がして、実際は通さぬ、そんなばかげたことは国会として三度の定の目許しません。もしそういうことであるならば、議運政府に対してこの国会上程を拒否するように私は申し上げたわけです。  もう一遍法務大臣に伺いますが、与党と話し合って、与党が賛成をするという了承を得てあるのですか、ないのですか。
  18. 木村武千代

    ○木村委員長 ちょっと待ってください。  これは、上程された限りにおきましては、上程の前にやはり与党と話し合いの上で上程はされていると私は思って、あなたにお話をしておるわけなんです。でございますから、上程された限りにおいては、通すか通さぬかということは、これは委員長責任において私はやらしていただきます、もう法務省の手を離れておるわけですから。それは上程されるかされないかというよりは、これからの審議の上の問題においてでございますので、その点につきましては、私は、この委員会において御審議の途中において努力さしていただきたい、こう私は申しているわけですから……。
  19. 横山利秋

    横山委員 委員長のお気持ちはわかりましたが、私が若干委員長の発言を取り違えしておったようであります。  私は、こう申し上げたのです。一回、二回のみならず、三回も政府は出す、与党は反対する、そういう政党政治にあるまじきことがこの国会でいつまでもまかり通ってはいかぬから、今度は、政府が提案するということは与党の了承、つまり賛成するという了承を得て出さなければ、これは受け付けませんよという立場でお話しをしてあるのですから、委員長がこれからの問題だというのならば、私はそのとき了承はしませんでした。  もう一遍法務大臣に伺いますが、あなたは、この上程をするときに、国会へ付議するときに与党と話し合って、今回は与党が賛成するという立場を了承を得て提案されたのですか、そうでないのですか。それをはっきりしてください。法務大臣にお伺いしている。
  20. 木村武千代

    ○木村委員長 委員長としましては、いま申したとおりでございます。
  21. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私ども自由民主党の方のことを申してなにでございますが、法務部会というものがございまして、そこの御了解を得るのが私どもの立場でございます。そういうふうに御了承願います。
  22. 横山利秋

    横山委員 いま私の隣で山崎委員が、了承したよ、くだくだ言いなさるなと言いましたから、これは記録に入っておるわけですから、それならば了承いたします。  汚職防止でいま法務大臣がおっしゃった幾つかの報告といいますか、この国会には結局ロッキード閣僚懇及び五十四年の航空機防止対策協議会、この作文が実際問題としては空文化しておって、いつこれが国会に提案されるのか、いまのところはまことに絵にかいたぼたもちだと言わざるを得ぬのであります。私は先ほど申しましたように、法務大臣が、自分の省に関係のないことであっても、汚職防止については自分責任だとして、この問題を推進をしてもらわなければなりません。その意味から、法務大臣に二、三の問題についてお伺いをいたします。  まず、機密保護法であります。機密保護法について、大平総理大臣は機密保護法をつくるつもりもないということを最終的に言われ、あるいは自衛隊法なり公務員法の改正によって守秘義務を拡大する気持ちもいまのところはないと言われたと私は聞いておりますが、法務大臣もそれについて同感でございますか。つまり、機密の保護について現行法でこれはできる、現行法で今日の機密問題については——後で公安調査庁の問題に触れるのでありますが、現行法で差し支えないとお考えでございますか。
  23. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 機密保護に関する刑罰規定を刑法典に設けるべきであるという説があるわけでありますが、法制審議会で刑法の全面的改正について審議いたしておりました結果、刑法典にこれを入れることは適当でないと、こういう判断があるようであります。しかし重要な問題でありますので、続けて私ども検討してまいるつもりであります。
  24. 横山利秋

    横山委員 よくおっしゃることがわからないのですが、私の質問は、続けて検討するとおっしゃったといま拝聴いたしましたが、機密保護法を法務大臣として制定をなさるおつもりで検討するのか、あるいはまた、自衛隊法や公務員法の改悪によって機密保護の刑あるいは機密の条項の拡大、そういうことをなさるおつもりが法務大臣としてはあるのかどうかという点をお伺いしているのです。  刑法の全面改正の中で削除されたことは、私承知しております。削除の趣旨をくめば機密保護法を新たに制定するつもりはないということになると思うのですが、さらに進んで、自衛隊法や公務員法の改悪をなさるおつもりがあなたの腹の中にあるのかないのかという点をお伺いしているのです。
  25. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 公務員法等は法務省所管でもございませんし、いま機密保護法をつくるかどうかということについてお尋ねいただきましても、私どもは、ただいまのところ、そういうことを考えておりません。
  26. 横山利秋

    横山委員 公安調査庁の課長が自殺をいたしましたね。その自殺の経緯の中で、公安調査庁の書類を取引に使った。この書類は決して秘密の問題ではない、秘密の書類ではない、こうおっしゃる。それから宮永事件で、公表されておるところによりますと、やはり取引に中国関係の文書をソビエトに渡した、したがって国家に危害を与えてはおらぬ、こういうことらしいですね。公安調査庁というところは、警察でもそういう傾向があるのでありますが、向こうの情報を取るについて、こちらの情報を渡すという取引をする習慣がある、私はこういうふうに状況を判断をしておるわけであります。  法務大臣として、秘密でなければこちらの情報を渡してもいいというふうに理解をしておられるのですか。取引が公安調査庁の職員によって行われるという事実を肯定しておるのですか。その点あなたの見解を伺いたい。
  27. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 公安調査庁は、御存じのように破防法に基づいてできておる機関でございまして、情報活動をしておると思いますが、そのことについて、私、情報を持っておりませんので、担当者でよろしければ御説明申し上げさせようと思います。
  28. 横山利秋

    横山委員 担当者は必要ないのですよ。担当者が、公安調査庁が言っているのですからね。それから宮永事件でも、新聞で周知の間柄ですから。  要するに、情報を取るためには情報を渡してなければいかぬ、取引というものは通常行われておる。しかし、その取引というものは、公安調査庁やあるいは宮永の言うのによれば、宮永は中国情報だと言うのだが、公安調査庁はそんなものは大したものではない、だから向こうにやったところで、船長ですか清水ですか、ソビエトに渡そうと別に差し支えない、そういうものなんだ、そういうものでもやはりやらなければ情報はつかめぬ、公安調査庁側はこういう言い分でありますね。そういう情報収集の手段というものについて、あなたはどうお考えですかと言って聞いているのです。
  29. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いかがでしょうか、担当の者に御説明を申し上げさせていただいて、私余り詳細にわかっておりませんので……。
  30. 横山利秋

    横山委員 それでは、担当者に一遍説明をしてもらいましょうか。
  31. 山室章

    ○山室政府委員 お答えいたします。  私ども調査は、破壊活動防止法二十七条によるものでございます。それで、いわゆる任意調査と申しますか、私どもに情報を提供してくださる方と面接いたしまして、その方から話を聞くということでございます。対話でございますから、おのずから問答がありまして、そこで相手方がどういう話を聞きたがっているかということについても、こちらとしてはやはり情報を取る手段でございますし、対話ということから御了解願いたいと思います……。
  32. 横山利秋

    横山委員 意味がわからなかったが、対話というのは取引をすることですか。
  33. 山室章

    ○山室政府委員 さらにお答えいたします。  今回の問題についての御質問でございますが、私ども調査官が、ある種の情報を私どもに情報を提供してくださる方に渡したということでございますけれども、渡した文書につきましてどういうものであるかは、これは捜査当局が知っておることでございまして、私どもといたしましては、捜査当局からの連絡で存じております。  私どもが存じておりますところによりますと、その情報と申しますのは右翼の動き、それはたとえば街頭にいろいろなビラが張ってございます、北方領土を返せとか、あるいはさまざまの右翼の動きでございます。そのような動きを取りまとめたものでございまして、そのようなことを相手方に渡して、その見返りとして相手から話を聞くということは、私どもとしては差し支えないことだというふうに考えております。
  34. 横山利秋

    横山委員 いまその問題のためにとる時間はありませんが、少なくともこの問題については、二月二日にその課長は自殺をいたしましたね。自殺の原因はいまでも不明である。  公安調査庁の話によりますと、一月の初めから一月の中旬にかけて手術をして、声が一時出なくなったという話でございます。しかし、それは治った。その間船長が調べられ、御本人もやはり事情聴取をされたと思うのであります。そういう人がなぜ自殺をしなければならなかったのであろうか、いまもってなぞであります。なぞの中には、手術をしたという精神的な状況もあるけれども、やはりその取引をしたということが検察陣に疑われたというところに、私は精神的なものがあったのではないかと思うのであります。  右翼のビラ、北方領土のビラ、そのぐらいはいい。それはいいかもしれぬ。じゃどこまでいいんだという問題については、これも明確な法務省なり公安調査庁の説明はないのであります。機密とは一体何だ、何が一体機密なんだ、そういう点についても全く法務省内部、公安調査庁内部の裁量にゆだねられて、われわれは、何を渡したら悪いのか、何ならいいのかというようなけじめについては何ら知る由もないのでありまして、あなたの方の自由裁量にゆだねられておる。しかし、そういう状況の中でなぜ一体自殺をしたのだろうかということになりますと、警察もよくやるわけでありますが、いわゆる情報収集のための取引、その取引はこちらの情報を渡すということもあるだろうし、調査費としてお金を渡すこともあるだろう、そういうシステムについて疑念なしとしないのであります。これは私の疑問でありますが、法務大臣、事情はおわかりですね、御見解を承りたい。
  35. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 職員の亡くなりましたことにつきまして、その当時の報告は、いまお話しの中にもありましたように、以前から慢性胃炎で高血圧症の持病がございまして、声帯にポリープができまして、本人はがんではないかと大変心配しておったそうでありますが、本年一月五日から十八日まで入院して手術をいたしまして、その後間もなく自殺をいたしたわけであります。  いまの、何を渡していいか悪いかというふうなことにつきましては、こちらも向こうの情報を取るためにやることでありますから、幾らか向こうにも話をしてやらなければそういうことはできないのではないかと、これは推察をしておるだけでありますが、私どもといたしましては、公安調査庁の仕事を通してやっております事柄につきましては担当者を信頼するよりほかないのでございまして、それ以外の知識は持っておらないわけであります。
  36. 横山利秋

    横山委員 担当者を信頼するよりほかはないというのはいかにも他力本願で、問題究明に対する熱意が疑われるわけであります。  次にお伺いをいたしますが、九月五日のこの提言の中にもございますが、政治家の政治資金の届け出を義務づける政治資金規正法の見直し、国会での倫理規定の確立等々がございます。社会党は、政治家の資産公開法というものを提案をしておるわけであります。この政治家の資産公開法は、年に一回、私ども衆議院議員は衆議院議長に一月一日現在の自分の資産を届け出る、そういうことを義務づけておるわけであります。大平総理大臣は、この問題は国会の問題として国会検討してもらいたい、こういうことであります。法務大臣としていままでの政治家の汚職の疑いその他に関連をして政治倫理の確立も必要ですし、政治家の国民に対するガラス張りの政治姿勢から言っても、資産の公開ということについてどうお考えになりますか。
  37. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政治家が政治活動に資金が要ることは当然なことだと思いますが、これは大変多くの問題を包蔵いたしておる問題でございますので、総理大臣の御答弁は、いまさっき横山さんからお話がありましたが、その範囲で、私どもはいま個人的な見解などを申し上げない方がいいと思います。
  38. 横山利秋

    横山委員 あなたも衆議院議員として一個の政治家であり、法務大臣として、この問題について見解がなかるべからずと私は思うのでありますが、なぜちゅうちょなさるのですか。政治家の資産公開法というものは国際的にも非常に叫ばれておることですし、総理大臣も本会議で、それは賛成だ、しかし国会の問題だから、ひとつ国会で相談してもらいたいと言って前向きに答弁しているのですが、あなたがやや消極的な感じを持っておるというのはちょっと意外ですが、どういうつもりですか。
  39. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 国会の問題でございますので、国会の方で御研究を願いたいというのが本旨でございます。
  40. 横山利秋

    横山委員 次に、先ほど触れました登記の問題。  これは、私は、法務省というところは権力機関であると国民の目には映っているが、同時に国民権利を守る、あなたの所信表明の中にもありました、国民権利を保全するという法務省一つの大黒柱であると思うのであります。その大黒柱、つまりサービス行政というものが国民の中で十分生かされておらない。登記所へあなたもお行きになったそうでありますが、登記所はごった返しておる。それは全国の登記所を回れば即日、甲号にしても乙号にしても、やってくれるところはありますよ。けれども東京や大阪や名古屋の大都市の登記所に行こうものなら、それはもう職員のごった返し、お客様のごった返し、全くサービスも不十分という状況にあります。一時、終戦直後の税務署がそうでありました。しかし、税務署はもうこのごろは木造の税務署なんかほとんどありはしません。入っていっても、きわめてスマートな税務署になっております。国庫収入の単価から言うならば、税務署よりも登記所の方が非常に安上がりで、国庫収入に甚大な裨益をいたしておると私は思うのであります。税務署へ行くと、ときには植木もあるけれども登記所へ行って植木のあるところはありません。登記所へ行って、お茶を飲むところはないかしらんと思って探すのですけれども、なかなかありません。  そういうような登記所が今度の定員の改正でプラス・マイナスわずか四十五人、こういうわけですね。何か聞いてみれば、いや、各省みんな減った中で登記関係の人数がふえたのは、これは大変なことですよと言って、おいばりになるそうでありますが、四十五人ばかりふえたところで、前線へ配置するのは何人か知りませんけれども一つ登記所に一人、まあ、よくいってそんなところでしょう。そんなことで一体国民権利が守られておるかどうか。保全されておるかどうか。  私は、年末にある大阪府の登記所長に電話をかけました。そして、ここをひとつつぶれそうだから早くやってくれ、こう言ったのであります。普通でいくならば三日か四日かからなければならぬけれども、早くやってもらわぬと、これはもう間に合わぬので、すぐやってもらえぬだろうかという電話をかけた。所長がいなかったから次の人にかけたのです。そういうのは私どもわかっているのです。それだけ急にやるわけにいかぬのですよ。私は知っているのですね。だって、台帳がもう登記所の中へいっぱい車で積まれている。倉庫へ行けばあるというわけではないわけですね。それから私の知り合いが頼む前に、その同じ案件について登記を要請しておる人があるかもしれない。幾十となく出ているから。その中で前にお願いした人があるかどうか調べなければならぬ。そうなりますと、私、無理は言うつもりじゃないのだけれども、やってくれと言われて、それだけ最優先に何でもいいからやるというわけにはいかぬのですよ。そういうことは私は承知をしておるけれども、最善の努力をしてくれと言って何とかなったわけですけれども、それも即日ではできませんでした。  そういうような登記所の問題と、もう一つは地図の問題があります。いつの国会でも、司法書士法の改正をやれば司法書士法のときに、土地家屋調査士法の改正をやれば土地家屋調査士法のときに、いつも附滞決議を出しておるのですが、ちっともうまくいかないのであります。この地図の作成が国の予算で、国の費用でできるのは、一体、百年河清を待つようなものだ、私はそう痛感されてならないのであります。  一体、この地図、公図の問題が全国的に改善される展望というものは十年先なのか、二十年先なのか。これで一体国民権利がよく守られておると言えるのでありましょうか。何か前々民事局長時代以来、この登記行政の何カ年計画とかなんとかいうのがあるわけですが、それが民事局の中でいつも終わってしまって、ちっとも法務省全体の軌道に乗らないわけですね。こんなことをやっておって、何が一体国民権利が守られておると言えるのでありましょう。登記所の抜本的な改善、登記行政の抜本的な改善というものが必要だと思うのでありますが、あなたのお考えはどうなんでしょう。
  41. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 登記事務の錯綜をしておることにつきまして特別に御理解のあるお話を承りまして、私も感激いたしておる次第であります。  法務省の仕事の中の権利保全の登記事務というのは大変な仕事でございまして、もう少しちゃんと落ちついたところで仕事のできるようにしたいと、視察をしてまいりまして痛感いたしておる次第であります。これからなお皆様方の御援助をいただきながら、できるだけ完備したものにしなければならぬという決意をしておるところであります。  それから地図でございますが、この地図の整備につきましては先ほど来お話がございました。これもやはり国民権利保全にとって重要な課題と考えておりますが、不動産登記法第十七条に定めますいわゆる地図につきましては、できるだけ早期にこれを整備すべきであると者えまして、そのための施策を講じている次第でありますが、法務局独自の力で全国的にこれを作製、整備することはなかなか困難な状況にございますので、目下のところは、国土調査法に基づく地籍調査等の成果といたしまして送付される地籍図を同条の地図として活用することにいたしておるわけであります。この事業の推進につきましては、国土庁におきまして鋭意取り組んでおる次第でありますが、この事業が順調に進めば、今後十年ないし二十年のうちには、わが国土の平地部分の大部分の地図については、地籍図による法十七条の地図の整備が可能になるのではないかと期待いたして、毎年予算のたびごとにそれに近づくように努力をいたしておるというのが現状でございます。
  42. 横山利秋

    横山委員 一年か二年と言うならわかるけれども、あなた、十年と二十年とはえらい違いますよ。十年か二十年の先には何とかなるという気の遠くなるような話をして、あなた、国民権利がよく保全されておると言えますか。  それで、国民にとってみれば、公図があるからこれが証拠だと言うと、公図なんかだめだ、こう言う。その紛争が絶えないのですよ。それを十年か二十年か待ってと、そんな気の遠い話をしていないで、ここで何か国土庁と話し合って抜本的改善がされるように努力をしてもらいたい、それが私の要望なんです。  私のところでやれぬから国土庁でやってもらう、それで十年か二十年待ってもらう。十年と二十年とは十年間違うのですよ。そんないいかげんな話でなくして、この際国土庁に話して、あるいは政府に話して、この際どうしてもがまんがならぬ、紛争が絶えない、こういう仕掛けを一遍すべきだと思うのですが、どうですか。
  43. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 大分お話が具体的になりましたので、事務当局から御説明申し上げます。
  44. 貞家克己

    貞家政府委員 地図問題、登記所の問題につきましては、横山委員には十分御理解を得ておるところでございますので詳しくは申しません。  国土庁に始終接触いたしておりまして、お願いをしているわけでございまして、十年、二十年という気の遠くなるような話じゃないかとおっしゃいますけれども、国土庁、都道府県も精いっぱいやっておられるわけであります。とにかく日本全土の地図を完成するというのは非常な大事業であると申さなければならないのでございまして、私どもは十年ということを希望するわけでございますけれども、客観的な情勢をいろいろ計算をしてみますと、やはり二十年は覚悟しなければならないのではないかというのが私の率直な観測でございます。  ただ、その順序等につきまして、もちろん日本国土の山林の奥深くまでやるということになりますと、これは確かに先生がおっしゃいますとおりに百年がかりの仕事になるわけでございます。(横山委員「今度は百年か」と呼ぶ)百年というのはたとえでございまして、とにかく私が申し上げたいと思いますのは、国土庁の方でも非常に積極的に取り組まれまして、国土三十七万平方キロメートルのうちかなりの部分が進んでおりまして、二十八万平方キロメートルについて実施計画を立てておられるわけでありますけれども、大体十年の間には十二万平方キロメートルが完成するというような話も非公式ながら聞いておるわけでございます。  そうなりますと、可住地域と申しますか、現実に問題が生ずることの多い人の住める地域については、十年で相当進捗するのではないかというふうな期待を持っているわけでございまして、国土庁にばかり頼っているというのは何事かとおしかりを受けるかもしれませんけれども、これは何と申しましても非常な測量技術を要する事柄でございまして、法務局独自では、これも多少やっておりますけれども、なかなか実際には独力ではむずかしい。こうなりますと、法十七条の地図といたしましては、この地籍図というものが最も有望な給源になるわけでございまして、私ども今後も大いに国土庁と折衝いたしまして、この作業の推進努力していただく、そして、それによって登記所の本来備えるべき正規の地図に速やかに指定をしていきたい、かように考えております。
  45. 横山利秋

    横山委員 きょうは、大臣にしっかり問題の重点を把握してもらいたいと思っているから言うておるのでありますが、そんな十年や二十年、場合によれば百年かかるという途方もない話が議事録に残ることを私は大変残念に思うわけであります。  何もサルやリスのおるところまでやあやあ言っておるつもりはありません。いまの話の可住地域、人の住んでいるところ、紛争のありそうなところ、こういうところは、どんなことがあってもこの際、いままでの国土庁と法務省民事局との折衝に任しておかないで、あなたが一遍前に乗り出してくださいよ。そうして、この際どうしたら可住地域についての地図がきちんと、なるべく数年のうちにできるか、それをひとつ検討してもらいたいと思います。よろしゅうございますね。
  46. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 率直に申し上げますが、実はこういう点について事務当局からずいぶん丁寧な説明を承っておるわけであります。そういうことでじみちな質疑応答が行われるであろうと存じますので、かなり突っ込んでいろいろ話し合いをいたしておるわけでありますが、この点につきましては私どもも同感でございますので、なお一層担当者と相談をいたしまして完備が早くできるように努力をいたしたいと思っております。
  47. 横山利秋

    横山委員 そういうふうにちゃんと聞いておったら、国民権利がよく保全されてなんて書けた話ではないですよ。  それから民事系統から法案が出ております。法案審議の際に申し上げたいと思うのでありますが、まだ法案が出ておりませんから、一応事前に御忠告をしておきたいと思うのであります。  民事訴訟費用に関する法律案が出るそうでありますが、承れば、その中で、訴えの場合訴願が三十万円までの分、五万円までごとに五百円、その現行を十万円までごとに千円にするという話でありますが、それによりますと、二百万、三百万、四百万、五百万、その辺が一番高くなって三十一倍、三十四倍ということになるのであります。  私が心配しますのは、後で触れますけれども、国を相手にして訴訟をする、たとえば吸場川だとかあるいはまた岐阜の長良川だとかあるいはスモンだとか、ああいう最近特に顕著な集団訴訟の場合に、そんな、いまたしか三千三百五十円出せばいいものを一万七百円出せ、これは財産権上の請求でない請求に係る訴えですね。一番この辺が多いのをねらい打ちに高くするということは、集団訴訟やそういう地域住民がそろってやろうとするものに水をぶっかけてしまうということになるわけであります。これはお考え直しを願わなければいかぬ。まだ法律が出てないなら、お考え直しを願わなければいかぬ。恐らくこれは与党皆さんも御賛成なさるまい。まだ法務部会を通ってないでしょう。そう思います。これは言っておきます。  それからもう一つは、この間私はこういう訴えを聞きました。登記所なり裁判所は収入印紙で出すわけですね。収入印紙で出したら、何かの都合でこれは要らないのだと言って返してくれたそうでありますが、返してくれたのが収入印紙で返してくれた。現金で返してくれと言ったら、いかぬと言って収入印紙しか返さぬ、こう言うわけです。庶民の家庭で収入印紙を使うところがどれだけありますか。裁判所登記所で要るから収入印紙を買って出したというのであります。返すというのは収入印紙でしか返さぬ。何でそんなことをやっておるのですか。これはいままでのしきたりかもしれぬけれども、これらの費用については現金で取り扱うようにしたらどうでしょうか。この間も担当者と少しやり合った。そうしたら、ぎょっとして、そんなこと思いもつかぬというような顔をしてみえた。警察だって、あるいは税務署だって、みんな現金を扱っているのだから、裁判所登記所が現金扱っていかぬということはない。現金を扱って不正が起こるというのなら、それこそあなたの言う部下を信頼しておらぬ証拠だ。いわんや収入印紙で出して余ったからといって収入印紙で返す。そんなもの要らぬ、現金くれと言ったら、いかぬと言って収入印紙しか返さぬ。数千円たなの中へしまっておいて十年くらい使えやせぬ。そういうことをお考え直し願いたいと思うのであります。これはいずれ法案のときに言いますが、事前にひとつ御検討をお願いしておきたいと思います。  法務大臣、私の言うのはもっともでしょう。どうですか。もっともなら次に移るが、ひとつお答えをちょうだいいたしたい。
  48. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは担当者がおりますから、担当者の考え方を一遍聞いていただきたいと思います。
  49. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ただいまお話がございましたように、民訴費用法の改正案をいま検討中でございますが、先生御指摘のような多額の増額ではございません。先ほど三十一倍とか三十四倍とかおっしゃいましたが、一応の原案としては三一・何%とか三四%とかの増加のものはございますけれども、三十一倍、三十四倍というふうな、そういうものはございません。  なお、その面につきましても、ただ従来の物価の上昇等を勘案いたしまして単純に計算をすると、そういうことになるということで一応の数字を出しておりますけれども、それが現状に合うか合わないかというような面について、弁護士会側の意見も聞きながら現在検討しているところでございます。先ほどの価額算定不能のものをどうするかというふうなことも抜本的な形で考えております。  なお、印紙の関係につきましては、実際先生のお聞きになりました事案がどのようであるかわかりませんけれども、民事訴訟費用法上では、余った場合には現金でお返しをするというのが原則でございまして、御本人から特に印紙でまた使うからという場合には、印紙でお返しをすることがあるということになっております。ですから、どういう事案で、どのようなことでなされたのかということを伺いませんと、その関係についてははっきりわかりませんけれども法律上のたてまえは現金還付が原則ということに相なっております。  なお、今度の民訴費用法の改正につきましては、先生のいま御指摘になりましたようないろいろな問題点も私どもも十分検討の対象にした上で、法案をまとめて提出いたしたいというふうに考えております。
  50. 横山利秋

    横山委員 五十四年版の犯罪白書によりますと、五十二年前に刑法犯で検挙された少年は十八万三千四百二十七人、前年より二万六百人増、少年犯罪は依然上昇中、ふえたのは窃盗、横領などで、凶悪犯は減少、薬物犯罪の増加が著しい、刑法犯の少年検挙人員の中で女子の割合は、五十三年一九・八%、四十四年は九・四%、十四、五歳の年少少年は四四%と年々アップと記されております。きわめて特徴的なことが年少少年の犯罪の激増であり、かつ、年少婦女子の犯罪の激増であることは、きわめて私は注目に値するところだと考えております。  そこで、更生保護の問題でございます。更生保護の問題には二点問題点があります。  一つは、更生保護関係の立法の統一を叫ばれてから久しいものがあり、すでに数年前私がここでお願いをいたしまして、附帯決議にもなっておるところであります。それにもかかわらず、やれ少年法の改正が、やれ監獄法の改正が、やれ何のかんのと言って、少しもと言うとそうじゃないとおっしゃるかもしれませんが、現実的には少しも国会上程という確定的な雰囲気になっていないことが問題の一つであります。  もう一つは保護司の問題であります。保護司の平均年齢は、私の承知するところ六十歳前後だと思うのであります。全国の保護司の六十歳前後をもってして、この激増する青少年、特に年少少年の犯罪の保護ということで実際問題として相談相手になれるだろうかということであります。しかも、保護司の推薦のあり方というものは、結局は市町村あるいは関係機関の推薦によるものであります。その推薦というのは大抵村や町のボスであります。大体功成り名遂げたおじいさん。ボスと言うと語弊があるかもしれませんが、いいボスもあるから、あえてボスと言うのでありますが、そういう人たちがなっておって、そんな青年や年少少年の相談相手になれるだろうか。私をもっていたしましても、最近の青少年と対話をする機会が少なくなっておるのは、政治家として欠くるところがあると私も自省をしておる人間でございますけれども、本当に激増する青少年犯罪と保護司、そして法律、その三つの対応がきわめておくれておる。保護司の選出基準も思い切って変えなければいかぬ。同時に、大臣に最終的に申請するのは保護観察所長だと思うのでありますが、保護観察所長は各機関から上がってきたものをチェックするだけでなく、自分がこういうような状況を理解しておるとするならば、自分の手駒、自分が探してきた人間もそこへつけ加えるという裁量余地を残すことが必要ではないか。いかにしてこの年少少年の犯罪の激増に法務省対応しておるかということは、まことに十分ではない、そう私は痛感しておるのですが、いかがですか。
  51. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 まず、更生保護関係諸法の整備、統合のことでございますが、衆議院法務委員会におきましても、昭和五十年三月の十四日に速やかに検討すべきである旨の附帯決議がなされておる次第であります。現在保護局におきましては、時代の要請に即応いたしました法制を策定するために、右の附帯決議の趣旨を十分に考慮いたしつつ、鋭意検討中でございます。  それから保護関係のこと、ことに保護司の高齢化現象のことでお話がございましたが、現在保護司のうち約五六%の者が六十歳以上になっております。このような現象は、保護観察に付される者の三分の二近くが二十三歳未満の青少年でありますこと、また、近年社会生活環境の変化等に伴いまして保護観察が複雑困難になっておること等にかんがみまして、必ずしも軽視できない問題であると考えております。法務省といたしましては、極力青少年の保護司適格者の発掘に努めまして活動的な篤志家を獲得するように、さらに保護司の若返りにつきましても努力を続けてまいるつもりでございます。  それから、保護司の活動の実情でございますが、保護司は、御存じのように、地域社会におきまして保護観察、犯罪予防の活動に従事する民間の篤志家でございまして、保護司の持つ地域性、民間性は、保護観察官の持つ専門性と相まって、犯罪者や非行少年の社会復帰に大いに役立っておるばかりでございませんで、犯罪予防にも相当な効果を上げておるところであります。しかし、犯罪や非行の原因が多様化いたしまして複雑化している最近の傾向に伴いまして、その職務も複雑困難の度を加えておりますので、保護司がこうした状況対応し得るために研修その他の方策を講じておるところでございます。
  52. 横山利秋

    横山委員 あなたもいろいろお読みになりながらお考えだと思うのでありますが、おっしゃるように、いまの保護司の体制をもってしては、青少年の相談相手になり切れない。私自身がそう思っているのですから、そんな六十や七十のおじいさんが、十七、八の子供に、おまえそんなことやっていかぬぞと言ったところで、なかなか相談相手になれないのであります。どうあれば青少年の犯罪激増の中で保護司の活躍というのがもっと生き生きとしたものになり得るかについては、抜本的に考えなければいかぬ。  今度四月に叙勲がありますね。私はそういうことを言いたくはないんだけれども、保護司の中には、この次で叙勲になるから、あるいは法務大臣の表彰がもらえるから、もう一期だけやらしてちょうだいという人がかなりあるわけです。それは人情としてわからぬではないけれども、そういうことにたわけてしまって、本当の保護司としての活躍というものが沈滞してしまっておる。この際このまま一遍全部やめてもらって、数年前に全部任命し直しましたことがありましたね、あれと同じように、もう一回青少年の犯罪に適応する保護司の保護行政法律と実際運用と、それを見直す必要があると思いますよ。  次は人権擁護の問題でございますが、人権擁護で私はびっくりいたしました。調べましたところ、五十四年度で一万六千件の人権侵犯事犯の相談をやっておる。それから人権相談では五十四年度で三十五万件の相談をやっておる、こういう話であります。正直なところびっくりいたしました。人権擁護委員は中高年齢層家庭でありますから、人権擁護委員の活動というものは、まだまだある意味では定着をしておるなと私は思ったわけであります。思ったわけだけれども、一方では、本当に個人の家庭の国民生活の一番最前線における人権相談が圧倒的に多いという、それだけだと言っても過言ではないと思うのであります。  私はよく言うのでありますが、法務大臣閣僚の中で人権擁護の総責任者である、その気概を持ってもらいたい、こう言っておったわけであります。少なくとも金大中だとか、あるいは国際的なあるいは国内的に人権に関する問題、同和の問題もそうでありますが、より高い視野で法務大臣に少し動いてもらわなければ、それは家庭の人権相談、地域社会の人権相談ももちろん大事であるけれども、私までがびっくりしたぐらい、活動というものが少しも浮き上がってこない。何か一つ頂門の一針というわけで、法務大臣人権擁護の総本山であるということを社会にPRするためにも、高い次元で閣議の中で、国際的な問題についても国内的な全般の問題についても、人権の問題についてあなたがもっと——、私どももびっくりしたのですから、あなたはよけいびっくりなさると思うのです。そんなにやっておるかとお考えだと思うのです。次元を少し高めて、それらの人権擁護委員が活躍できるようにしてもらわなければいかぬ。  そういう意味法律扶助の問題でも、あれだけあなた方にも理事会でもわれわれ一万円ずつ出し合って、そして法律扶助の予算をふやしてもらいたい、特にあなたには口をきわめて言っておいたのでありますが、七千四百万、去年と一緒であります。補助金が去年と一緒ならいいことだと言って、いばっていらっしゃる人もあるそうですが、とんでもない話であります。これだけ法務委員会が超党派で法律扶助の予算をふやしてやってくれ、あれだけ私どもも、大した金額じゃないけれども、総理大臣から各党委員長までお金を出してもらって努力しておるものがちっとも成果が実らないということは、きわめて遺憾千万なことだと思うのでありますが、法律扶助についてのお考えを伺いたい。
  53. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 人権擁護委員は、御存じのように、市町村長の推薦によって法務大臣が委嘱するものでございまして、これまで約一万一千名が委嘱されております。その推薦につきましては、常日ごろから市町村長に対して人権擁護委員の職務内容の重要性を強調し、人権擁護委員としてふさわしい者が推薦されるように積極的に働きかけておるところでございます。また委嘱された人権擁護委員に対しましては、その資質向上のため各種の研修会等を実施いたしております。  なお、ただいまお話しの中に法律扶助制度の充実を図るためにどのような方策をやっておるかということでございますが、貧困者に対する訴訟援助はきわめて重要でありますので、法律扶助協会に対する補助金につきましては常に最大限の努力を払うなど、その充実に努めてまいったところでありますが、現在のところ、おおむね国民の需要にこたえていると考えておる次第であります。しかしながら、扶助事業の重要性にかんがみまして、その一層の充実を図るために、現在、日弁連、協会及び人権擁護局との間に研究会を設けまして、鋭意検討いたしておる最中でございます。
  54. 横山利秋

    横山委員 おおむね充足しておるなんということはだれが言ったのですか。部下の言うのをうのみにしてはいかぬですよ。  法律扶助がなぜそういう方向にあるかというと、各地の弁護士会、各地の法律扶助協会では銭がないから、あなたは法律扶助に訴えてもだめだと言って断わっておるから、そうなるのですよ。そういう潜在需要を少しも考えないで、おおむね法律扶助が充足しているなんて、そんなことは、だれか部下が言ったかもしれないけれども、うそっぱちですよ。潜在需要がどのくらいあるかということを考えたら、法律扶助というものは人権という問題にも関連をいたしましてきわめて重要な問題でありますから、お考え直しを願わなければなりません。  次に、入管の問題であります。承れば、出入国一千万人時代になるという話であります。十年前と比べて外国人で五倍、日本人で八倍、合計平均して五倍くらいになるというのです。今回、定員の増加をずっと見てみますと、空港、海港における出入国審査、在留管理の整備充実、十七人増ですか、これが削減が十三人あるのですね。そうすると、一体この体制に即応しておるか。登記所もそうなら、出入国管理の、内外の空港なり海港を通じて出入国する人間は一千万人時代が来ると言われておる。十年前の五倍だと言われておる。それで、私どもが空港なんかを通りますときに、もうずっと並びますね。大都市では大分改善をされたと言いながら、あの空港における混雑はまことにどうしようもないですね。これは入管事務ばかりじぁありません、税関事務もいろいろございますけれども、入管事務の問題が一つのポイントだと思うのであります。  それからもう一つは、私ども出入国管理令に反対してきました。今度別な手続法の改正の法律が出るそうでありますが、それは結構だと思うのであります。このままでは出入国事務というものがきわめて大勢に遅れておる、そういうことをあなたも一遍よく考えてもらいたい、こう思うわけであります。  これは、具体的にはまた別途の機会にやることにいたしまして、一つ問題提起をしておきたいと思うのでありますが、永住権と強制退去との関係であります。  永住権というのは、日本に死ぬまでおってもいいということですね。退去強制というのは出ていけということですね。死ぬまでおってもいいということと、それからおまえ外国人だから出ていけということは、どちらが一体優先するでしょうか。いままで法律解釈としては、出ていけという方が優先するように思われる。けれども、現実に永住権というものが、多少は違うところがあっても、日本人と同様に永住をさせるということであるならば、退去強制ということはその人には成り立たぬと私は思うのであります。この点でも、出入国管理の中で人権の問題がございます。大村にも、出ていけと言ったら向こうが受け取らぬというのが百何十人おりますね。その人たちは刑期を終わって、日本では出ていけと言う、ところが本人たちはいたいと言う、韓国も受け取らぬと言う、そういう状況をいつまで放置しておくつもりでしょうか。刑期が終わったならば、その人たちは、普通の日本人だったら一応晴れて社会に出る、そこで罪は消えるという立場でありますが、さらにそれを出ていけということについては少し考え直したらどうか。いわんや、仮にその中に、おるかどうかしりませんが、永住権を持っておる人がおったとするならば、一般論として永住権と強制退去との問題について考え直しが必要ではないかと思うのでありますが、どうですか。
  55. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 出入国管理関係の事務は、御存じのように、逐年増加の一途をたどっておりますので、関係当局に対して、増員及び所要経費の増額につきまして配慮を求めますとともに、事務の簡素化、合理化を図る必要もあると思われますので、外国人登録法の一部改正法案を今国会に提出を予定するなど、今後とも所要の対策を講じてまいる所存でございます。  それから、次の永住権の問題につきましては、専門的になりますので、事務当局から一応御説明申し上げます。
  56. 小杉照夫

    ○小杉政府委員 ただいま先生から御質問ございました永住権と退去強制の関係でございますが、現在の出入国管理令に定められております在留資格の中で、四条一項十四号というのがございますが、これが永住権と通称呼ばれておるものでございます。しかしながら、これは一たんこの資格を得たら未来永劫に日本に在留することを認めるという趣旨のものではございませんで、在留期間更新の申請を行うことなく当分の間いてよろしいという権利でございまして、それに対しましては、当然入管令の二十四条のいわゆる退去強制事由は、主として多くの場合刑罰法令違反でございますが、一定の刑罰の対象になった方については退去強制の手続が実施されるということで、私どもとしては、永住の資格を持っておる方に退去強制をすることは必ずしもおかしいというふうには考えておらないのでございます。
  57. 横山利秋

    横山委員 これはまた別の機会に議論をいたします。  時間がなくなりましたので、あと問題点だけ出しておきますが、たとえば一つは訴訟業務であります。訟務局の問題であります。全国で九千件、いま訟務局担当の訴訟があるそうですね。そして法曹有資格者が七十名、職員が三百五、六十名でやっておるそうであります。訟務局のあり方というものについて、かつて本委員会で言ったことがありますが、勝てばいいというものではなかろう。それから各省、各地方局のこの問題の相手方、私も二、三体験したことがありますけれども、本来、国民から訴えられて、あるいは問題提起されて、そこで話し合いをすればいいんだけれども、会計検査院がうるさいから裁判にしてくれ、判決が出たらわしの方もやりやすいでと言って、和解ができるものを、妥協ができるものを、わざわざ訴訟事務に移している。そして九千件に上っている。そういう小役人根性というものが国を相手の訴訟業務を膨大にさせておるということが言えようかと思うのであります。  しかも国を相手の賠償というものが全部の訴訟業務の半分ぐらいだそうでありますね。そうなりますと、この国を相手の訴訟というものが、国家賠償の請求というものが、まあ二、三年で片がつくわけではなし、五年、十年ということになるわけであります。この間、スモンを例に引きましても、あるいはまた水害訴訟あるいは道路の管理者責任、そういうものをとりましても、それによって国民が受ける被害というものは実にはかりがたいものがあると思うのであります。だから、私がよく言うように、勝てばいいというものではない。法務大臣各省を指揮して、各省の関係の問題について適切、迅速に訴訟指揮をする。これは負けるべきだ、これは妥協すべきだというふうに、国民が国を相手の訴訟についてもっと適切な方法が何かあるのではないか。そういうことを考えますのが訟務行政であります。  それから公安行政であります。先ほどお話がありましたけれども、公安調査庁は、日本共産党と朝鮮総連合をいつまでも破防法の調査活動対象にしておるのですが、いいかげんにそれを外したらどうですか。外して、その余力というものを、いま問題になっております暴力団、過激派、そこに移したらどうですか。何かまたあるかもしれないということで、あたら人員なり予算なりを朝鮮総連合と日本共産党にいつまでもやっておる。それでもって、総理大臣また自由民主党は共産党の首脳部と会っておるというようなこと。何も共産党の味方をして国会で演説しておるわけではないのですけれども、やはり情勢に即応した公安業務のやり方というものを考えるべきではなかろうか。  それから監獄法の問題があります。これも先ほどの話のように、各局との調整等でなかなか作業が進んでおりません。代用監獄の問題も多々ございます。  きょうは、問題提起をした問題について逐一お答えをお願いしようと思いませんが、要するに私は、いまいろいろ例証を挙げて法務大臣にお答えを願ったのは、あなたの前文が、このような深刻な法務行政内部のアキレス腱や、あるいは山積しておる問題についての理解が乏しいのではないか。実情把握に乏しいのではないか。あなたが何をねらい撃ちに、法務大臣としての在任中に、おまえのところはこれ一点にしぼって、おれが政治力をひとつ発揮してみようじゃないかという気持ちがあなたに乏しいのじゃないか、そういう気がしてならぬのであります。ですから、総まくりのようなやり方で問題をすべて提起したとは思いませんけれども、しかし、いま一問一答いたしましたような諸問題は、決して法務行政がうまくいっているんじゃないんだ、国民権利が保全されているわけじゃないんだ、そういうことをあなたに申し上げて、勇猛心をふるい起こして、法務大臣として陣頭指揮に立ってもらわなければいかぬ、こういう意味で申し上げているのであります。お答えを願って、次の問題に移りたいと思います。
  58. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 訟務事件につきまして、事件の処理に当たりまして法的に正しい解決を図るために、和解を相当とすると考えられるものにつきましては、関係省庁に対してその旨の助言、勧告を行っており、今後とも、和解を相当とする事件につきましては、可能な限り和解による拡大を図るよう努める所存でございます。  なお、その他いろいろ公安調査庁等について御高見を拝聴いたしました。私ども参考に承って勉強したいと思います。
  59. 横山利秋

    横山委員 ひとつ問題をかえまして、東本願寺の問題について質問をいたします。  ここに五十五年一月、本年の一月に宗議会無所属議員一同、代表世話人深田英雄名義で、大谷光暢法主に対して建白書が出ておるのであります。この建白書を通読をするのは省略をいたしますが、要するに、ここに書いてありますのは   お内事の借財の根元が巷間伝えられる宗議会議員選挙の選挙費用ではなかったことは、選挙を闘ってきた我々同志が断言しうることであります。されば借財・財産処分の不明瞭は如何としても明確にさるべく、又それなくしては一般門未の御一統への信頼も大きく揺らぎ、ひいては宗門存立の基盤をも危うくすることを憂うるものであります。   台下は一大決意をもって不鮮明な借財・財産処分の内容を内外に公表され、さらに伝えられる一部側近の方々の不始末については、宗祖聖人が凛然として長子善鸞様を義絶せられ法統を明示された如く、真宗法務伝持のため、たとえ万一、その責任が御血縁の方に及ぶとき、親子の情の忍び難きが有るにしても、万難を越えて決断され、毅然たる処置をお取り下さるよう、失礼無類を顧みず、ここに伏して懇願致すものであります。 この建白書の代表世話人深田英雄以下議員一同というのは、要するに法主派の人たちであります。法主派の人たちが一同連名して建白書を出して、そしておれたちはあの問題の銭をもらって選挙をやったわけではない、こう言っておること、それから一部側近の方々の不始末というものを法主派の人たちも認めておること、そして法主に対して、親子の情の忍びがたきがあるにしても毅然たる措置をとれ、こう言っておることがきわめて注目をされるところであります。  そこでまず第一に、借財は選挙費用であったかなかったかという点であります。  昨年、本委員会において法務省要望をいたしまして、これらの問題についての調査を京都地検が誠意を持って行うようにと要望をいたしましたところ、伝え聞くところによれば、京都地検を中心にいたしまして、当時の選挙費用のために使ったと、後で出てまいりますいろいろな不渡り手形あるいはにせ証書等々の京都府警から京都地検に告発を、書類送検をされた銭は、法主側としては選挙費用に使ったと言われ、この建白書では私どもはもらっておらぬ、こういうことになっておるわけでありますが、調査の結果は、借財は選挙費用でなかったかあったか、御報告をいただきたいと思います。
  60. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねのいわゆる東本願寺の事件でございますが、過日もお尋ねを受けまして、その後、京都地検におきましては、いまの点も含めまして鋭意捜査を続けておるわけでございます。その前提といたしまして、前にも御指摘を受けましたように、この捜査に若干時間がかかり過ぎているという御批判があるわけでございまして、その点はおわびを申し上げるわけでございますが、いろいろ御指摘を受けましてからも、京都地検としては一層努力をいたしまして捜査をしておるところでございます。  いまお尋ねの中に出ましたいわゆる建白書でございますが、その点も地検におきましては承知しておりまして、いま、問題の金がどういうふうなことに使われたかということにもかかわることでございますので、その点を中心といたしまして調べをしておるところでございます。  したがいまして、そのことは捜査内容でございまして、いまここで選挙費用かどうかというようなことを明確に申し上げかねるわけでございますが、若干付言いたしますと、いま御指摘の建白書なるものにつきましては、お読み上げのような内容になっておりますが、作成者等についても調査いたしましたところ、必ずしもそうでもないような供述もあるようでございまして、まだその内容について十分究明ができていないというふうに承知しております。
  61. 横山利秋

    横山委員 借財は選挙費用ではなかったという建白書の内容について疑義がある、こういうお話であります。  次に、伝えられる一部側近の方々の不始末という点についてはどうでありますか。
  62. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 この点も、抽象的に言うと同じようなお答えになって恐縮でございますが、恐らくお尋ねの趣旨は、いろいろと捻出された金がどういうふうに流れたかということに帰するわけでございますので、その点も含めて捜査の対象として努力をしているということでございます。
  63. 横山利秋

    横山委員 宗教法人法十九条「規則に別段の定がなければ、宗教法人の事務は、責任役員の定数の過半数で決し、その責任役員の議決権は、各々平等とする。」それから、同じく二十三条の財産処分等の公告、「宗教法人は、」云々、「その行為の少くとも一月前に、信者その他の利害関係人に対し、その行為の要旨を示してその旨を公告しなければならない。」「不動産又は財産目録に掲げる宝物を処分し、又は担保に供すること。」「借入又は保証をすること。」等は宗教法人法に定められておるところであります。そして二十四条の行為の無効、「前条の規定に違反してした行為は、無効とする。」ということであります。  問題の枳殻邸を初め法主側がさまざまなこの十九条、二十三条に違反をしたということについてはお調べでありましたか。その結果はどうでありましたか。
  64. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの点も、当然捜査の対象と申しますか、問題点一つであるということでございます。
  65. 横山利秋

    横山委員 何ですか。
  66. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの点も、当然捜査内容として問題点一つに入っております。
  67. 横山利秋

    横山委員 まあ中間でありますから、なかなかすべてをお話しなさるわけにはいくまいということは承知いたしておりますが、私は、京都地検が処理を仮になさる場合において、この十九条、二十三条、二十四条が当然考慮されるものと確信をいたしておりますから、誤りのないようにしていただきたいと思います。  同じく二十七条の規則の変更の認証の申請、「規則の変更の決定について規則で定める手続を経たことを証する書類」がなければならない。これは文化庁おいでになっておると思いますが、いま真宗大谷派を離脱をするという決議をした百幾つ、実際に離脱をしたのは数カ所しかございませんけれども、この二十七条の規定は当然各都道府県におきましても十分審査をされると思いますが、いかがでございますか。
  68. 塩津有彦

    ○塩津説明員 お答え申し上げます。  規則の認証の変更の審査をする場合に、いまの先生の御質問の点については、当該都道府県において十分に審査の上決定しておる、こういうふうに承知しております。
  69. 横山利秋

    横山委員 七十一条の宗教法人審議会、この審議会について、いまどうなっておりますか。  この宗教法人法は厳密な規定がありまして、いろいろと宗教と政治との関係を明白にし、宗教上の特性及び慣習を尊重することをきちんと決めておる法律ではありますが、しかし、日本の歴史と伝統、日本人の信仰の一つのよりどころとなっております東本願寺が十年にわたり内部紛争を続け、司直の手も煩わしておる実情について、宗教法人審議会はどういう態度をとっておりますか、どうしようとするのでありますか、何もやらないのでありますか。
  70. 塩津有彦

    ○塩津説明員 御指摘のとおり宗教法人審議会がございまして、年数回の総会も行われておるわけでございます。  先生のお話しのとおり、この問題は社会的にも非常に大きい問題でございますので、宗教法人審議会の総会が行われますたびに、私どもといたしましては事情を報告しておるところでございます。しかしながら、問題の部門によりましては書類送検等が行われまして刑事事件になるというような可能性もあるものでございますから、態度の決定については、慎重の上にも慎重を期しておるという状況でございます。
  71. 横山利秋

    横山委員 慎重はわかるのでありますが、京都地検の結論は後で最後にお伺いをしようと思っておるわけでありますが、問題は、わが国の本当に歴史ある、伝統のある、また国民の信仰のよりどころである真宗大谷派の問題が、仮に京都地検の結論が出たにしても、それだけで解決するものではないことは常識的にわかることであります。  そうだとすれば、どこかでこの円満解決の努力がされなければならぬとしたら、まず宗教法人審議会が、あなた方は報告をするばかりでなくて、何らかの問題の提起なり、何らかのアプローチなりするべきではないかと私は思うのでありますが、ただ報告するだけで何もしないというのは、私はいささか残念であり、あるいはさびしいことであり、あるいは怠慢ではないか。一年や二年ならほっておいてよろしい。しかし十年たってこういう状況で、しかも今後もその見通しがないとすれば、宗教法人審議会が百尺竿頭一歩を進めるべきではないかと思うのでありますが、いかがですか。
  72. 塩津有彦

    ○塩津説明員 この問題につきましては、御指摘のとおり歴史と伝統のある、かつ大規模な宗教法人の問題でございまして、社会的影響がありますので、その一日も早い円満な解決ということを願う点では、文化庁といたしましても、あるいは所轄庁である京都府にいたしましても、宗教法人審議会においても同じ考えでございます。  しかしながら、これは釈迦に説法でございますが、宗務行政は、宗教法人法のたてまえは、あくまでも行政による干渉とかあるいは仲介とかを排した、そういうたてまえになっておるものでございますから、私どもとしては、そういう社会的に大きな影響のある事件であり、重大な関心は持ちつつも、基本的には自主的な解決ということにまたざるを得ないし、また、それを期待したいということでございます。
  73. 横山利秋

    横山委員 私は、あえてそれを承知の上で、単に報告をする云々ではなくして、知恵を出すべき時期である、そういうふうに思うわけであります。文化庁長官にも審議会にも、国会側でそういう意見があったということをしかとお伝えを願いたい。  次に、十二月二十日、枳殻邸の問題で京都市中京区の司法書士事務所で現金五億円を積み上げての商談が行われました。大谷光暢法主側は一千万円の札束五十個を持ち込んだが、約束に十一分おくれたために、枳殻邸の現所有者であるビル経営者松本裕夫は、約束が違うと席を立ち、商談は不成立、そのままになっておるのは新聞御存じのとおりであります。  こんなばかげたことが一体どうしてあるだろうと皆さんは言っておる。十一分おくれたから五億円受け取らぬと言うのも言う方だし、それでもって五億円をまた持って帰って、再度交渉も全然話がない。そうだとするならば、全くこれはサル芝居ではないかということが世間の一致した見方であります。同時に、一体五億円は法主側はどこから持ってきたんだろうかという疑惑、法主側が、前門のトラを追うの余り、後門のオオカミを招き寄せつつあるのではないかという疑問があります。この点について松本氏の発言は、この間の状況について地検にも話をしてある、こういう発言を新聞紙上でしております。このお金の出所並びにその経緯はどういうものでありましたか。
  74. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 この事件につきましては、当初送付された事件以外にも、ただいまお話しのありましたような問題が次々に派生していると申しますか、表に出ているわけでございます。  したがいまして、この事件の捜査処理につきましては、いま御指摘の点も含めて十分内容を解明して、御納得のいく処理をしなければならない、かように考えておる次第でございまして、いまの点もいま捜査中のことでございますので、この段階では差し控えさせていただきたいと思います。
  75. 横山利秋

    横山委員 管谷組のある人が、この管谷組というのは山口組系でありますが、姫路の市会議員の某氏、これは柳川組であります、その二人は兄弟分だと言われておりますが、二人の合議で日本土地株式会社社長木本一馬氏にこのお金は依頼したものであるらしい。日本土地株式会社というのは豊中市の玉井町にあって、木本一馬氏は韓国人である。そして五百億くらいの金を持っておるとうわさされている人であります。大阪商銀——商銀というのは韓国系の銀行でありますが、大阪商銀の理事であります。こちらからその金が出たのではないかと言われておりますが、法務省はどう調査をしていますか。
  76. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどと同じお答えのようで恐縮でございますが、やはりその多額な金の出所ということにつきましては、地検の捜査におきましても十分な関心を持っておるところだと思います。
  77. 横山利秋

    横山委員 その五億円弱の借りた金は、借りたところへ戻っていないそうであります。金を出したときには借用書と利子は天引きされておるそうであります。京都信用金庫にいま金があるそうであります。こういうようなことはお調べになっておるでしょうね。いまあなたが、それが事実であるか否かということをどうしても言わなければなんでありますが、少なくとも京都府警や検察陣で当然のことのように御調査がされておると思いますが、いかがでしょうか。
  78. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 私も詳しいところの細かいところまでは承知しておりませんけれども、京都地検におきまして、そういう点につきましてもいろいろと捜査を進めておるということは聞いておるわけでございまして、地検としても、いまお話しのようなことは十分承知していると思いますが、重ねてお話しの点は地検にも伝えたいと思います。
  79. 横山利秋

    横山委員 伝えられるところによりますと、韓国系の人々は、この問題を通じて皇室関係に御縁ができることを非常に期待をしておる、大谷法主一族に取り入っていくことについて非常に期待をしておると言われておるのであります。この姫路の市会議員の某氏は、民主同盟の書記長中川、柳川組でありますが、を通じても関係があると見られておる人であります。  このようなことを考えてみますと、五億円を借りてぽんと持っていった、十一分おくれたために受け取らぬ、受け取らなきゃもう一遍持っていけばいいものを持っていかぬ、借りた人のところへも返さぬ、信用金庫に預けておく、そういうことですが、貸した方も、これをただ貸すわけじゃないのですから、その枳殻邸を新たに自分がもらうということになるわけです。枳殻邸はそれによって買い戻されたけれども、新たなオオカミのとこれへ渡る、こういう状況になると思うのであります。  枳殻邸は一筆ではないわけでありますが、民事局にお伺いをいたしますが、あるいは文化庁でも結構でございますが、こういうような売買で登記ができる、法律的にも登記法上にも通常の売買ができる条件下にあるのでしょうか、ないのでしょうか。
  80. 貞家克己

    貞家政府委員 私、実は実情を詳細に承知しないわけでございますけれども、一般的に、正規の書類が出ました場合には、登記所といたしましては、いわゆる形式審査でございますから、それを迅速に処理するということで受理され、登記はされる。ただし、その実体上の有効、無効は別途問題になるということになるかと思います。
  81. 横山利秋

    横山委員 いまちょっと資料が見当たらぬですが、枳殻邸は一筆ではないのですね、売買の対象はその中の一部なんですよ。あなたは実情をちょっと御存じないようなふうに承るのですけれども、文化庁はその点、御存じですか。
  82. 塩津有彦

    ○塩津説明員 正確にその辺の事情を了知しておりません。
  83. 横山利秋

    横山委員 それでは文化庁にお伺いをいたしますが、この離脱にいたしましても、あるいはまた文化財、国宝あるいは名勝枳殻邸、これらの処分は、宗教法人法によれば、先ほど言ったように二十三条財産処分の公告、二十四条行為の無効、それは明文化されておる法律の規定であります。したがって京都府は、ちょっと警告を出しておりますけれども、いまや事実歴然たるものがあって、法主側がこれらのものを財産処分の公告もしないで、機関も通さないでやったことは明白でありますから、それは当然のことのように、宗教法人法違反で二十四条の無効だよということを言うべきではありませんか。その点は、一体文化庁はどういうふうに指導しているのですか。
  84. 塩津有彦

    ○塩津説明員 宗教法人といえども公益法人でございますので、その財務管理等が適切に行われなければならないのは当然でございまして、その観点から京都府は口頭あるいは文書で、複数に及びますけれども、財産管理に関しては非常に社会的に問題となっている事例も当該法人には数多く見受けられるので、関係法令特に宗教法人法それから本願寺規則を遵守するとともに、かつての指導内容等も十分留意の上、適正にするようにということを指導しておるところでございます。  お尋ねの法律に違反するかどうかの問題でございますけれども、これも先ほどのお答えと関連いたしますけれども、私どもは宗教法人に対しまして法律調査権というようなものがありません。したがいまして、その実態について深く把握するというのはなかなか一朝一夕には困難でございまして、今回の手続が現に宗教法人法の当該規定に違反しているかどうかということを確認するほど十分実態を把握していないと思います。  しかしながら、一般論としては、この法人を含め財産管理というものが適切に行われなければなりませんので、今後もそういった点を注目しながら指導を重ねていきたい、かように考えておるところでございます。
  85. 横山利秋

    横山委員 あなた、調査が十分でなく出席されたね。ここに十二月の新聞がございますが、十二月二十日京都府の府議会文教委員会で、京都府は、売却は宗教法人法に定められた手続がされておらず、違法行為であるとの見解を初めて明らかにしたと、もう新聞に報道されているところであります。人見光和総務部次長は、大谷暢道氏や東本願寺関係者から何度か事情を聞いたが、売却に際し宗教法人法に定められた必要な手続がとられていないことがわかり、正式な手続をするよう指導していると答え、事実上違法との見解を示したと、ちゃんと報道されているのに、この報告は受けてないのですか。
  86. 塩津有彦

    ○塩津説明員 先生の御指摘新聞報道等は拝見いたしておるところでございます。京都府から現在まで報告を受けておるところでは、所定の手続等はとられてないというようなことは確認しておりますけれども、違法であるという判断まではしていないということを聞いておるところでございます。
  87. 横山利秋

    横山委員 二十三条の所定の手続がされていなければ、枳殻邸なんかは売買が行われているのですからね、二十四条で無効である、そういうふうに明白に法律に書いてありながら、所定の手続はしていないことはわかったけれども、違法とは言えないとはどういうことなのですか。何でそんなあいまいな態度をとるのですか。理由があるのですか。現実の行為は行われているのですよ。
  88. 塩津有彦

    ○塩津説明員 ただいま文化庁といたしまして、重要な問題ですから、その辺が確かであるかということを再度確認をして判断をいたしたいということで、京都府にさらに重ねて問い合わせ中でございます。
  89. 横山利秋

    横山委員 私どもは心配をいたしまして、皇室の御連枝であるからといって、尽くすべきところも尽くさないで、折り目をつけるところもつけないで事をあいまいにしてはいかぬということを初めから言っているじゃありませんか。二十三条、二十四条で事理きわめて明白である、手続はされていない、それは何度も聞いた。それにもかかわらず、違法であるかないかということが断言できないは何事ですか。  刑事局にお伺いいたしますが、京都府警が書類送検をいたしましたのはいつで、どういう犯罪容疑でありましたか。
  90. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御案内のとおり、この事件は内容が幾つにも分かれておりますので、一遍ではないわけでございますが、いわゆる宗主派に対する告訴、告発事件が合計五件ございまして、その送付になりましたのは大体五十三年の七月と五十四年の一月ごろということになりますし、逆にいわゆる改革派に対する告訴、告発事件もございまして、これが五十三年の七月あるいは五十四年の九月ということになっております。
  91. 横山利秋

    横山委員 私がこの委員会において速やかに可及的に全力を挙げてこの問題の調査と結論を急げ、こう言ってまいりましたところ、本委員会において年末にはと言い、あるいは年度末までにはと言い、今日いよいよ二月に入って、あと一カ月有半を残すのみとなりました。京都地検の結論は、他に考慮することなく、総理大臣であろうと御連枝であろうと、あるいはだれであろうと違法は違法でありますから、それが背任容疑かあるいは私文書偽造かあるいはそのほかの罪に触れるとしたならば、それはそれで厳正公正に処断をしなければならぬ、そのことを明白に私は申し上げたいと思うのであります。  もとより一方で、私どもとしては、それこそ日本における歴史と伝統の信仰のメッカでありますから、真宗大谷派の紛争が一刻も早く円満に解決をすることを望むものでありますが、そのゆえの余りに京都地検やあるいは文化庁がやるべきこともやらないで、じんぜん日をむなしゅうして問題をあいまいにすることは許されないことであります。できるならば、文化庁の行政指導あるいはこの京都地検なり検察陣の決断とが円満解決への道筋の一つとなることを願いはいたしますけれども、少なくとも政治的配慮をあなた方がして、じんぜん日をむなしゅうすること相ならぬ、時期はもう迫っておる、峠にはもう差しかかっておる、そういう状況であると思います。  さて、いろいろと時間の関係で問題の点だけを聞きましたが、法務大臣としては、いま私が申し上げていることをどうお考えになりますか。法務大臣所信を伺いたいと思います。
  92. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 法務大臣としてお答えをいたし得ることではないと思っておりますが、検察は適正妥当な措置を講ずるものだと信じております。
  93. 横山利秋

    横山委員 その検察が適正妥当な決断を、一年半有余調査をしたことについて、十分な結論を早くつけられるように心から期待をいたしております。  最後に、本願寺はまた機会を改めるにいたしましても、法務大臣、もう一問だけお伺いをいたします。  一つは平沢被告の問題であります。平沢被告が判決を受けて服罪をしておるのでありますが、何しろ高齢者であります。そしてもう長期の刑務所生活で心身が衰弱をしていることはお聞きのとおりであります。仮に罪は罪といたしましても、彼が何回も再審を要望しても却下をされ、もう残る余生にせめて恩赦を求めてと転換をしたことは御存じのとおりであります。私は、その意味におきまして、この際中央更生保護審査会を初め関係機関が十分その点を配慮されることを望みたいし、法務大臣としても善処するように期待をいたしたいところであります。これが一つであります。  それからもう一つは、本委員会で私がもう何回も取り上げてまいりましたサラ金の問題であります。前法務大臣、前々法務大臣は、このサラ金の問題について私どもの熱心なる要望を受けて閣議で何回も発言をされて、政府としてサラ金規制に一歩を進める推進力となっていただきました。しかるところ、政府提案はいたさない、議員提案にしろ、こういう政治雰囲気になりまして、大蔵委員会の問題となったわけであります。  不幸にして、このサラ金をめぐる新聞報道が一昨年でありましたか続きまして、そのために、その政治家にあらぬ疑いがかけられました。そのために、その他の事情もございますけれども、サラ金規制はいま一歩も進んでおりません。大蔵委員会国民感情あるいは現実的な処理、その二つに矛盾を感じまして、一歩も進んでいないのであります。私は当初から言っておりますように、サラ金の問題は政府が決断をすべきである、政府責任を持って政府提案をすべきである、それを各党の選挙の利害に絡んでややこしくすることはいかぬ、こう言って力説をしてきたのでありますが、政府責任をとらずに議員提案というかっこうを期待をいたしましたために、むしろ問題は、政治的諸般の事情も手伝いまして、今国会もまた恐らく成立しない、そういう感じを私は持っておるわけであります。  したがって、法務大臣に期待をいたしたいことは、前法務大臣、前々法務大臣が閣議でいろいろとおっしゃったように、この際サラ金の規制は政府提案として百尺竿頭一歩を進めるべきである、政府責任を持つべきであるということを進言してもらいたいのであります。大蔵省、自治省、経済企画庁、総理府等々の関連がございますが、この問題を推進するのは法務大臣だと私は思います。なぜならば、サラ金の被害はいまもなお決して衰えておりません。そういう点から考えまして、このまま国会の各党の折衝に任すならば、これはこの国会で成立しない。  サラ金の問題は安いにこしたことはない。金利についてもいろいろな問題についても、これは一般の市中金利と並行するように将来しなければなりませんが、現実問題として、いまサラ金の被害が一向絶えない状況であるならば、どこからその規制を始めるか。現実に、法律的に、警察やあるいは地方自治体が実行可能な道は何かという現実的課題から進めなければ、立ち小便したら監獄へぶち込むという法律をつくるのは自由だ、自由だけれども、実際その法執行を担保することができないではないか、そういう感じを持つ一人でありますが、いずれにしても、このままではサラ金の被害が一向絶えないのに、サラ金規制法案は国会を通らない。その点について法務大臣努力を期待したいところでありますが、いかがでございますか。
  94. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お尋ねの平沢の問題につきましては、中央更生保護審査会に依頼をいたしてやっておるのでございますが、その答えを待ちたいと思っております。  もう一つ、いわゆるサラ金問題につきましては、政府といたしましても、貸金業に対する規制法案が成立するように努力を重ねておるところでありますが、私ども法務省といたしましては、関係省庁の一つといたしまして、これに協力をいたしてまいらなければならぬ、こう思っております。
  95. 横山利秋

    横山委員 大臣、一遍その役人の書いたものを横へ置いて、私とさしで話をする気になってくれませんか。  私は、質問要項は出しました。それについて担当の局長がお書きになったなら、それは参考にしてもいいだろう。いいだろうけれども、私はこれだけ声を大きくして言っているのに、あなたはそれを読むだけじゃつまらぬじゃありませんか。私の真意をたまにはくんで、それは横に置いて、わかった、横山君、私はこうしてみようと思うということで、下僚の書いた文章ばかり読まずに、ときにはあなたの信念なり本音をおっしゃってください。平沢を恩赦でやってください、サラ金は政府提案に努力してください、そう言っているのです。
  96. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほど申し上げましたことの中で、平沢に関しまして中央更生保護審査会に依頼をしておると申しましたが、これは間違いでありますので取り消します。
  97. 横山利秋

    横山委員 依頼してでなかったら、何だったのですか。
  98. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 審査会がこれを鋭意検討して、その答えが出てくるはずでありますから、そういうことであります。
  99. 横山利秋

    横山委員 あなたはどう思っているのですか、平沢問題を。
  100. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は、それが妥当だと思っております。  それから、もう一つのサラ金の問題は、やはりいまも進行中でありますので、先ほど申し上げましたように、法務省においても関係省庁の一つとしてこれに協力をいたしておる、こういうことでございます。
  101. 横山利秋

    横山委員 答えにならぬですな。これでやめようと思ったけど、答えにならぬです。  平沢は、中央更生保護審査会初め各機関で相談しているということはわかっている。聞かなくてもわかっている。そこを踏まえて、法務大臣も一再の力をかしてもらいたいと私は言っている。  それから、サラ金問題は進行中だと言うけれども、全然進行しておらぬのですよ。説明したとおりじゃありませんか。何を聞いておったのですか。全然進行しておらぬのは、政治上のことやいろんな国民感情も手伝って、選挙の前だから、選挙に関連すると各党の利害が皆絡まって、それはうまくいきません、このままではこの国会も通過しません、議員提案は成立しませんよと言うのです。だから、この際政府が提案するように骨折ってくれと言っているのです。どうなんですか。
  102. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これはやはり従来の経過もありますので、担当者からさらに十分報告を聞いてまいりたいと思います。
  103. 横山利秋

    横山委員 まああきらめます。しかし、本当に法務大臣、いま膨大な関係のところからの資料で御勉強くださったことは大変結構でございますけれども、これからもそうでございますけれども、それはそれとして、この委員会では、質問する人間と呼吸の合った——いかなければいかぬでよろしい。そこに書いてないことでも、私が聞いたことについて、いかなければいかぬでよろしい、いいならいいで、よし、わかった、それは聞いてなかったけれども一遍努力してみようというぐらいのことは言う気持ちになってもらわぬと、あなたに聞くよりも局長に聞いた方が話が早いということでは、それは困るですよ。ひとつこれからそういうつもりで、それはそれ、しかしながら呼吸の合った質疑応答をしていただくように希望いたしまして、残念ながら質問を終わります。
  104. 木村武千代

    ○木村委員長 次回は、明二十日水曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十六分散会