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横山議員 ただいま
議題となりました
政治亡命者保護法案についてその
趣旨を御
説明申し上げます。
一九四八年の
世界人権宣言は、人類の
基本的権利と自由を平等に享受することを明らかにし、国連はあらゆる
機会に
難民に対し深い関心を示し、この
基本的権利と自由を可能な限り最大限に
難民に与えようと努力し、また
難民の
地位に関する
国際条約の
批准を全
世界に求めています。
近代国家として
わが国がいまもなお、
世界の大勢にかかわらず
難民条約の
批准を怠り、
国会に
条約等を
提出しないことは遺憾なことと言わなければなりません。
数年来、
わが国に庇護を求めて入国した
外国人や
強制送還を拒否して
訴訟を起こした
外国人などがあり、その都度政治問題化しております。わが党はこの
課題にこたえて、一九六九年及び七七年の二度にわたって
国会に
法案を
提案いたしましたが、成立には至りませんでした。
この際、
政治亡命者の
在留資格など
最小限度の
要点について、
難民条約の
批准前といえども法定することが緊要と考え、本
法案を
提出した次第であります。
以下、
法案の概要について御
説明申し上げます。
第一に、法の目的として
世界人権宣言第十四条の
規定の
趣旨にかんがみ、
政治亡命者の
保護を図るため、これに対する
在留資格の付与その他必要な
事項について、
出入国管理令等の特例を定めることといたしております。
第二に、
政治亡命者の定義は
難民条約と同様とし、人種、宗教、
国籍、特定の
社会的集団への所属、または
政治的思想を
理由として
自国において
迫害を受けるおそれがあるため、
自国の外にあり、
自国の
保護を受けることができず、または
自国の
保護を受けることを望まない者としております。
第三に、
本邦にある
外国人は
永住許可者を除き、すべて
政治亡命者としての
在留資格の
取得ができるものとし、
不法入国者、
不法残留者なども
法務大臣へ申請することによって
在留資格を
取得できることとしております。
第四に、申請に対する
許可または不
許可の
処分があるまでの間、不
許可の
処分に対する
出訴期間及び
当該処分についての
取り消し訴訟の提起後六十日間は
本邦から退去させることができないものとしております。
第五に、
政治亡命者といえども一定の場合には
退去強制を求めるものとしておりますが、その事由は
出入国管理令二十四条に比して著しく限定しております。
第六に、右の場合の
送還先については、
迫害を受けるおそれのあるときは本国に送還せず、本人の希望する国としております。
第七に、
政治亡命者としての
在留資格を
取得した者については、
当該在留資格の
取得前の
不法入国等の行為は処罰しないものとしております。
その他、
在留資格の変更、更新など、
所要の
規定をしております。以上が本
法案の
趣旨であります。
何とぞ御
審議の上、御賛同あらんことをお願い申し上げます。
最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案について、
提案の
趣旨を御
説明いたします。
最高裁判所は、終審としての
違憲立法審査権、
規則制定権、
最高の
司法行政権を有する
司法裁判所であり、
司法権の独立と
裁判の公正を
保持し、
基本的人権を保障すべき責務を全うするために、当然の事理として
最高裁判所裁判官の
選任人事は慎重かつ適正に行われなければなりません。そしてその
選任人事が慎重かつ適正に行われたことを
国民が
理解し、納得するのでなければ
司法は
国民的な
基盤を失うことになり、その
権威の
保持は
期待できません。
しかるに、
現行法上
最高裁判所裁判官の
指名または
任命は、
内閣の
自由裁量であり、しかも
国民はその
選任人事が慎重かつ適正に行われたかどうかを知ることができません。これらは明らかに法の
不備であり、重大な
欠陥であります。
よって、この法の
不備、
欠陥を是正する必要があります。
なお、一九四七年に、
裁判官任命諮問委員会が
設置されたことがありますが、その
委員会の
構成及び
運営は政令にゆだねられていたため、その成果は
期待に十分こたえるものではなく、翌一九四八年に同
委員会は廃止されるに至りました。この経緯を踏まえ、
諮問委員会の
設置はもちろん、その
構成と
運営についても
法律をもって定めておく必要があると考えます。
右の
理由により本
法案を
提出するものであります。
次に本
法案の
要旨を申し上げます。
第一に、
最高裁判所裁判官任命諮問委員会の
設置だけでなく、その
組織・
運営についても
法律をもって具体的に
規定しております。
第二に、
裁判所法第三十九条第四項として、
内閣は、
最高裁判所裁判官の指命または
任命を行うには、
最高裁判所裁判官諮問委員会に諮問しなければならないこととしております。
第三に、
任命諮問委員会は、
委員二十人をもって
組織することとしております。
その内訳は、
衆参両院議長、
最高裁判所長官、
検事総長、
日本弁護士連合会会長及び
最高裁判所指名の
裁判官五名、
日本弁護士連合会指名の
弁護士五名、さらに
内閣指名の
学識経験者二名、
日本学術会議指名の
学識経験者三名、以上のとおりとなっています。
第四に、
任命諮問委員会が
答申する
候補者の数は、
内閣の
任命権と同
委員会の
権威保持との調和を考慮して、
最高裁長官については二人以内、
最高裁判事については
任命予定者の二倍以内としています。
第五に、
任命諮問委員会は、
裁判官の
適任者として
候補者を推薦するに至った
理由を、
内閣に
答申すると同時にこれを広く
国民の前に公表することとしています。
以上が本
法案の
提案理由並びに
要旨であります。何とぞ御賛同あらんことをお願いいたします。
最高裁判所裁判官国民審査法の一部を
改正する
法律案について、
提案の
趣旨を御
説明いたします。
憲法第七十九条は
最高裁判所の
長官及びその他の
裁判官について、
国民に直接その適否を問う
国民審査の
制定を
規定しています。これは、
主権者である
国民の監視によって、民主的で公正な
裁判を保障する重要な
制度であります。つまり
憲法が
内閣に
最高裁判所長官の
指名権及びその他の
裁判官の
任命権を認めながら、直接
国民の
審査に服さなければならぬとしたことは、
最高裁判所が
憲法と
人権の
守り手として非常な重要な役割を担っていることからみても当然のことであります。
ところが、
公正中立であるべき
最高裁判所が時の
政府の
党利党略的選任による
裁判官で占められ、
政治権力に追従、迎合する判決が近年目立っており、
司法の
反動化はいまや黙過できない状況に至っています。
このような
司法の危機を打開するためにも、不合理な
投票方法をとっている
現行の
国民審査法を改め、
主権者である
国民の
権利行使の一つであるこの
制度を
充実させることは焦眉の急であります。すでに、第七十一
国会の本
委員会において「
政府は、
最高裁判所裁判官国民審査の
方法等について検討すべきである。」との全会一致の附帯決議を採決しているのも、この
制度の
改善が
国民の大きな要求となっているからであります。
右の
理由により本
法律案を
提案するに至った次第であります。
次に本
法律案の
要旨を申し上げます。
第一は記載
方法の
改善であります。
現行国民審査法は罷免を可とする
裁判官に×印を記載することを認めているだけで、その他の白票はそれがたとえ棄権の意思を込めたものでも、すべて罷免を可としない票とみなされるというきわめて不合理、非民主的な
方法であります。
そこで本
法律案は、
国民の意思を正しく反映させるために、罷免を可としない
裁判官には〇印、罷免を可とする
裁判官には×印を記入することとし、無記入投票は棄権とみなすことにより、棄権の自由を保障するものとしています。
第二は点字投票の
改善であります。
点字投票について、
現行では視力障害者の
審査権が行使しにくい面があるので、これを是正するため点字で印刷された用紙を準備し、通常の投票に準じて決められた記号を記入するだけで意思を表示し得るものとしています。
第三は罷免成立の有効投票率の引き上げであります。
投票方法の変更に伴って、罷免が成立する有効投票率を改め、
現行有権者総数の百分の一を、百分の十に引き上げることにより、棄権が大量に出た場合、少数の罷免票で罷免されることの弊害を除いています。
以上が本
法律案の
提案理由並びに
要旨であります。何とぞ御賛同あらんことをお願いいたします。
刑法の一部を
改正する
法律案について、
提案の
趣旨を御
説明申し上げます。
本
法律案は、汚職防止を目的とする
改正と、尊属殺重罰
規定の削除等を目的とする
改正の二件を一本の
法律案にまとめたものであります。
初めに、汚職防止を目的とする
改正につき
趣旨を御
説明申し上げます。
御承知のように、
現行刑法百九十七条ノ四の
斡旋収賄罪は、公務員が他の公務員に、不正な行為をさせ、または相当な行為をさせないようにすることを、他人から請託を受けてしたとき、その報酬として賄賂を受け取り、または要求したり約束したときに三年以下の懲役に処することになっています。
この三年を五年に
改正するなどを
内容とした刑
法改正案が、
政府より
国会に上程されていますが、与党内の意見不統一のため野党の賛成にもかかわらず継続
審議となっています。
ところで、
現行法の適用を免れるため
国会議員等が、その後援会その他の団体等第三者に賄賂を供与させるケースが多いのであります。
このような事例に対処するため、
改正刑法草案は、第百四十二条に周旋
第三者収賄を新たに設けておりますが、本
法律案の
内容の第一は、それをそのまま「斡旋
第三者収賄」として
提案したものであります。
本
法律案と同じ
内容の案が
昭和五十一年十一月ロッキード問題閣僚連絡協議会で合意され、他の諸問題とともに発表されましたが、その後放置されたままとなっています。
ところで、本
法律案の斡旋
第三者収賄罪について若干の意見がないとは言えません。
第一に、公務員特に公選された政治家は、有権者の依頼を受けて民主的な活動をすることもあり、その場合、他の公務員に働きかけて依頼を
実現させることも考えられると思うが、その行動を不当に制限することになりはしないか、ということであります。
第二に、政治家が後援会等に寄付または献金をさせることが、この
改正案に該当した場合、違法となり罰せられるのであるが、一方、実行した公務員は、
行政処分を受けることはあっても
刑法による処罪は受けないのは、公平を欠くのではないか、ということであります。
右の意見の第一については、政治家の民主的活動は多岐にわたっているが、本
法律案にあるように「不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク」他の公務員に働きかけることは、民主的
社会において、してはならないことであります。
いわんやそれによる報酬・賄賂を後援団体等に寄付させることによって、事実上自己の所有に帰することは恥ずべき行為といわなければならない、と考えます。
第二の意見について、「不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク」働きかけられ、その行為をした公務員は、たとえば、国家公務員法等の
処分を受けるが、この場合賄賂を受け取っていなかったとすれば、あっせんした公務員すなわち政治家と比べて責任が軽いことは当然なことと言えるのであります。
ロッキードに続いてグラマン、ダグラス等航空機汚職はこの種の
第三者収賄をどう考えるか、
現行法で防止できるかという問題を提起しています。
また、ロッキード等の汚職の問題の一つは賄賂を受けた者の職務権限があるか否かでありますが、仮に職務権限がない場合には、
刑法百九十七条ノ四の
斡旋収賄罪が適用される可能性も考えられます。しかし、その場合でももし賄賂が本人でなく第三者に供与されているとすれば罪とならないわけでありますから、是正される必要があります。
さらに、最近の汚職が国際的
事件であるにかんがみ、日本
国民が、国外で犯すこの
種事件についても、処罰
規定を設ける必要があります。よって、
現行刑法三条及び四条の国外犯
規定を
改正して、この種事案も国内犯同様適用することにしました。
改正の
要旨は次のとおりであります。
第一に、斡旋
第三者収賄罪の新設であります。
公務員が請託を受けて、他の公務員にその職務上不正の行為をしまたは相当の行為をさせないようにあっせんすることまたはあっせんしたことの報酬として、第三者に賄賂を供与させ、またはその供与を要求し、もしくは約束したときは五年以下の懲役に処するものとすることであります。
第二に、斡旋第三者贈賄罪を
規定します。
すなわち、前項の賄賂を供与し、またはその申込もしくは約束をした者は三年以下の懲役または五千円以下の
罰金に処するものとすることであります。
第三に国外犯
規定の
整備であります。
すなわち、斡旋
第三者収賄罪を
刑法第四条の国外犯とすることと同時に、贈賄罪を
刑法第三条の国外犯とすることであります。
第四に、贈
収賄罪の
法定刑の引き上げであります。
すなわち、
単純収賄、
事前収賄、
第三者収賄、
事後収賄及び
斡旋収賄の各罪に
法定刑の
長期をそれぞれ五年に引き上げること、また、
受託収賄罪の
法定刑の
長期を七年に引き上げること、並びに
斡旋贈賄罪の
法定刑中、懲役の
長期を三年に、
罰金の多額を五千円に引き上げることであります。
次に、尊属殺重罰
規定の削除等を目的とする
改正につき
趣旨を御
説明申し上げます。
最高裁判所は
昭和四十八年四月四日、
昭和二十五年の旧判例を変更して、尊属殺人に特に重罪を科している
刑法二百条は違憲無効であり、尊属殺人についても普通殺人罪の
規定である同法第百九十九条を適用するほかはないことを示しました。これは、
最高裁が
憲法第八十一条に定められた
違憲立法審査権に基づき、
現行法の
規定を違憲無効とした最初の判例でありました。
日本国
憲法第十三条は、「すべて
国民は、個人として尊重される。」べきことを
規定していますが、これは個人の尊厳を尊重し、すべての個人について人格価値の平等を保障することが民主主義の根本理念であるという基本的な考え方を示したものであり、法のもとの平等を定めた
憲法第十四条一項も、右の基本的な考え方に立ち、これと同一の
趣旨を示したものであります。
近代国家の
憲法がひとしく右の意味での法のもとの平等を尊重、確保すべきものとしたのは、封建時代の
権威と隷従の
関係を打破し、人間の個人としての尊厳と平等を回復し、個人がそれぞれ個人の尊厳の自覚のもとに平等の立場において相
協力して、平和な
社会、国家を形成すべきことを
期待したものにほかなりません。日本国
憲法の精神もここにあるものと解すべきであります。
刑法第二百条の尊属殺人に関する
規定が設けられるに至った
思想的背景には、封建時代の尊属殺人重罰の
思想があるものと解され、同条が、
配偶者の直系尊属を殺す場合までも刑を加重するのは旧
憲法下の家の観念を存続させるものであります。
ところが、日本
憲法は、封建
制度の遺制を排除し、家族生活における個人の尊厳と両性の本質的平等を
確立することを根本のたてまえとし、この見地に立って民法の
改正を行ったのであります。
この
憲法の
趣旨に徴すれば、尊属がただ尊属なるがゆえに特別の
保護を受けるべきであるとか、本人のほか
配偶者を含めて卑属の尊属殺人はその背徳性が著しく、特に強い道義的非難に値するとかの
理由によって、尊属殺人に関する特別の
規定を設けることは、一種の身分制道徳の見地に立つものというべきであり、前述の旧家族
制度的倫理観に立脚するものであって、個人の尊厳と人格価値の平等を基本的な立脚点とする民主主義の理念に抵触するものと言えます。
諸外国の
立法例において、尊属殺人重罰の
規定を廃止する
傾向にあるのも、右の民主主義の根本理念が浸透してきたからであります。
親子の情は美しく、自然であります。だが、それは個人の尊厳と人格価値の平等の原理の上に立って、個人の自覚に基づき自発的に守られるべき道徳であって、法によって強制すべきではありません。強制の上に成立する
制度がいかにもろいかは歴史が示しています。
普通殺人と区別して尊属殺人に関する
規定を設け、尊属殺人なるがゆえに差別的取り扱いを認めること自体が民主主義の根本理念に抵触し、直接には
憲法第十四条一項に違反するものであります。
刑法第二百条だけではなく、尊属傷害致死に関する
刑法二百五条二項、尊属遺棄に関する
刑法二百十八条二項及び尊属の逮捕監禁に関する
刑法二百二十条二項の各
規定も、被害者が直系尊属なるがゆえに特に加重
規定を設け差別的取り扱いを認めたものとして、いずれも違憲無効の
規定であります。
この
理由により、本
改正案では右に挙示した諸条項を全面的に削除することとしております。
以上が本
法律案の
趣旨であります。何とぞ御
審議の上御賛同あらんことをお願い申し上げます。
刑事訟訴法の一部を
改正する
法律案について
提案の
趣旨を御
説明申し上げます。
わが国において
人権意識はようやく高まりを見せているとは言うものの、国内の
人権保障の現実には、なおはなはだ危ういものがあります。身に覚えのない
事件のために逮捕され、
裁判でも有罪の判決を受ける者、場合によっては死刑の執行におびえながら無実を訴え続ける者も少なしとしないのであります。もしも無辜の者が国家権力により処罰されるとすれば、およそこれに過ぐる不幸、これにまさる残酷があり得るでありましょうか。このような冤罪者を救済することなくして、
人権擁護も民主主義も存在しないのであります。
一般世人からは、神のごとく至公至正と見られる刑事
裁判においても、不幸にして誤判の数の決して少なくないことを
裁判の歴史は示しています。著名な冤罪
事件として知られる松川
事件、八海
事件、仁保
事件にしても、三審制の中で二度ないし三度にわたって有罪・死罪の判決がなされた後に、辛うじて
最高裁の段階で救われたのであります。また、三審
制度の中ではついに有罪が確定し、服役を終わった後において、再審の結果無罪を獲得したものに、最近においては弘前
事件、加藤老
事件、米谷
事件があります。これらはいずれも厳正を生命とする
裁判においても、ときに誤判のあり得ることを例証しています。しかも弘前
事件、米谷
事件は、真犯人がみずから名のり出ることによって、ようやく再審開始に至ったのであります。
もって再審開始のいかに困難なるかを想像し得るでありましょう。
また、
昭和五十四年に入ってからは死刑確定の
事件のうち、財
田川事件、免田
事件及び松山
事件で再審開始の決定がなされるに至りました。これらは、即時抗告、または特別抗告がなされたことにより、いまだ再審の審理が開始されてはおりませんが、死刑確定の
事件の中にさえ誤判の可能性が存するという深刻な事態を明らかにしております。
日本国
憲法は全文百三条のうち、第三十一条から第四十条に至る実に十カ条にわたって被疑者・被告人の
人権保障を
規定しておりますが、これは戦前・戦中の
司法のあり方を根本的に
改善する必要に迫られたからであります。
憲法の
規定を受けて一九四九年に施行された新
刑事訴訟法も、個人の
基本的人権保障の観点から抜本的な
改正がなされていますが、
刑事訴訟法の「第四編 再審」については、不利益再審の廃止を除いて、旧
刑事訴訟法をほぼそのまま引き継いだ形になっております。
これらの
理由により、再審法の
改正は焦眉の急を要するものと思われます。
したがいまして、再審法を無裏の救済の立場から正しく運用し得るよう、以下のような
改正をしようとするものであります。
第一は、再審要件の緩和及び
理由の拡大であります。
再審請求
事件の大部分は、刑訴法第四百三十五条第六号によるものでありますが、その要件である証拠の新規性と明白性について、従来
裁判所の解釈は厳し過ぎ、そのために再審は「開かずの門」となっておりました。
そこで「再審開始のためには確定判決における事実認定につき合理的な疑いを生ぜしめれば足りるという意味において、「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事
裁判における鉄則が適用される」という
最高裁白鳥決定の
趣旨を踏まえ、刑訴法第四百三十五条第六号を全面的に
改正しようとするものであります。
具体的条文は、
現行法中「明らかな証拠をあらたに」を「事実の誤認があると疑うに足りる証拠を新たに」に改めることであります。
第二は、再審請求人の手続面における
権利保障の明確化及び前審関与の
裁判官の除斥をしようとするものであります。
再審手続は二段階構造をとっておりますが、第一段階が非常に重要であるにもかかわらず、
現行法ではその手続はすべて
裁判所の職権にゆだねられておりますので、これを改め、再審請求段階の国選弁護人
制度、弁護人の秘密交通権及び記録閲覧権・謄写権、記録及び証拠物の保存、審理の公開及び請求人・弁護人の再審請求
理由を陳述する
権利と事実取り調べ請求権の保障等を導入することであります。
また、前審に関与した
裁判官は除斥される旨の
規定を設け、審理の公正を期することであります。
第三は、検察官の反対立証の制限及び不服申し立ての禁止をしようとするものであります。
再審
制度は「有罪の確定判決を受けた者」の利益のためにのみ存在する
制度であり、これを具体化するため、再審請求段階における検察官の立証を一部制限し、そのため検察官は新たな事実の取り調べ請求ができないこととし、ただ請求人・弁護人側から出された新証拠の取り調べに際し証拠の証明力を争うため必要とする適当な
機会を与えられるものとしております。
また、再審開始の決定に対する検察官の不服申し立てを禁止することとしております。
第四は、
訴訟費用の補償についてであります。
再審で無罪が確定した
事件につきその
訴訟費用は、
現行法では再審開始後の公判に要した費用のみ補償されるにとどまっており、一例を挙げれば加藤新一老の場合、最も困難な闘いを要した再審請求段階の費用補償は全く認められず、再審開始後の費用を対象とし、しかも
所要経費の一部が認められたにすぎません。
これを改め、再審請求より再審開始決定に至るまでの費用も補償することであります。
第五は、確定判決にかわる証拠についてであります。
有罪確定判決の証拠となった証言・証拠等が偽証もしくは偽造である等の
理由で再審請求をする場合、
現行法では、偽証・証拠偽造等の事実が確定判決により証明されなければならないとし、確定判決が得られない場合はその事実を証明して再審の請求ができることとしています。この際に刑訴法第四百三十七条ただし書きの解釈として検察官により、偽証・証拠偽造の事実につき公訴提起がなされなかった場合は、再審請求の道を閉ざしているのであります。
これは全く不合理であるのでこれを改め、検察官により公訴提起がなされなかった場合にも再審の道を開くこととすることであります。
第六は、理念
規定の創設及び刑の執行停止を
規定しようとするものであります。
再審
制度は、無事を救済し、その
人権を尊重するためにある旨の理念
規定を設けるとともに、再審請求がなされた場合は、請求人等の申し立てにより、刑の執行を停止することができることとすることであります。
第七は、その他として、不服申し立て期間及び旧刑訴法下の
事件について、
所要の
改正をしようとするものであります。
以上が
刑事訴訟法の一部を
改正する
法律案の
趣旨であります。
何とぞ慎重に御
審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。