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1980-02-15 第91回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十四年十二月二十一日)(金 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 木村武千代君    理事 金子 岩三君 理事 中村  靖君    理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君    理事 楯 兼次郎君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 柴田 睦夫君    理事 中村 正雄君       井出一太郎君    稻葉  修君       上村千一郎君    亀井 静香君       熊川 次男君    佐藤 文生君       白川 勝彦君    田中伊三次君       二階堂 進君    福田  一君       福永 健司君    井上 普方君       北山 愛郎君    下平 正一君       田邊  誠君    飯田 忠雄君       長谷雄幸久君    木下 元二君       岡田 正勝君    田川 誠一君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十五年二月十五日(金曜日)     午前九時三十九分開議  出席委員    委員長 木村武千代君    理事 中村  靖君 理事 保岡 興治君    理事 山崎武三郎君 理事 楯 兼次郎君    理事 横山 利秋君 理事 沖本 泰幸君    理事 柴田 睦夫君 理事 中村 正雄君       佐藤 文生君    田中伊三次君       井上 普方君    北山 愛郎君       下平 正一君    飯田 忠雄君       長谷雄幸久君    木下 元二君       岡田 正勝君    河野 洋平君  出席国務大臣         法 務 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         法務政務次官  平井 卓志君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務大臣官房会         計課長     石山  陽君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         法務大臣官房司         法法制調査部長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 前田  宏君  委員外出席者         議     員 横山 利秋君         議     員 土井たか子君         議     員 沖本 泰幸君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ――――――――――――― 委員の異動 一月二十五日  辞任         補欠選任   田川 誠一君     河野 洋平君 同月三十一日  辞任         補欠選任   亀井 静香君     始関 伊平君   熊川 次男君     塩崎  潤君   白川 勝彦君     江崎 真澄君 同日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     白川 勝彦君   始関 伊平君     亀井 静香君   塩崎  潤君     熊川 次男君 二月七日  辞任         補欠選任   木下 元二君     松本 善明君 同月九日  辞任         補欠選任   松本 善明君     木下 元二君 同月十二日  辞任         補欠選任   岡田 正勝君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     岡田 正勝君 同月十三日  辞任         補欠選任   木下 元二君     松本 善明君 同月十四日  辞任         補欠選任   松本 善明君     木下 元二君     ――――――――――――― 昭和五十四年十二月二十一日  政治亡命者保護法案横山利秋君外五名提出、  第八十九回国会衆法第一号)  国籍法の一部を改正する法律案土井たか子君  外六名提出、第八十九回国会衆法第二号)  最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案(横  山利秋君外五名提出、第八十九回国会衆法第三  号)  最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する  法律案横山利秋君外五名提出、第八十九回国  会衆法第四号)  刑法の一部を改正する法律案横山利秋君外五  名提出、第八十九回国会衆法第五号)  刑事訴訟法の一部を改正する法律案横山利秋  君外五名提出、第八十九回国会衆法第六号) 昭和五十五年二月一日  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八号)  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第九号) 同月十二日  犯罪被害補償法案沖本泰幸君外二名提出、衆  法第二号)  刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法  律案沖本泰幸君外二名提出衆法第三号) 同月十四日  集団代表訴訟に関する法律案宮崎正義君外一  名提出参法第二号)(予) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 一月三十日  国際人権規約に基づく人権擁護体制確立に関す  る陳情書  (第八号)  刑事訴訟法運用改善及び再審に関する法改正  等に関する陳情書  (第九  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八号)  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第九号)  政治亡命者保護法案横山利秋君外五名提出、  第八十九回国会衆法第一号)  最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案(横  山利秋君外五名提出、第八十九回国会衆法第三  号)  最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する  法律案横山利秋君外五名提出、第八十九回国  会衆法第四号)  刑法の一部を改正する法律案横山利秋君外五  名提出、第八十九回国会衆法第五号)  刑事訴訟法の一部を改正する法律案横山利秋  君外五名提出、第八十九回国会衆法第六号)  国籍法の一部を改正する法律案土井たか子君  外六名提出、第八十九回国会衆法第二号)  犯罪被害補償法案沖本泰幸君外二名提出、衆  法第二号)  刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法  律案沖本泰幸君外二名提出衆法第三号)  法務行政検察行政国内治安及び人権擁護に  関する件      ――――◇―――――
  2. 木村武千代

    木村委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政の適正を期するため、本会期中  裁判所司法行政に関する事項  法務行政及び検察行政に関する事項並びに  国内治安及び人権擁護に関する事項について、小委員会設置関係各方面からの説明聴取及び資料要求等方法により、国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村武千代

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 木村武千代

    木村委員長 法務行政検察行政国内治安及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、法務行政等の当面する諸問題について、倉石法務大臣から説明を聴取いたします。倉石法務大臣
  5. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 委員各位には、平素から法務行政の適切な運営につきまして格別の御尽力をいただき、厚く御礼を申し上げます。  この機会法務行政に関する所信一端を申し述べ、委員各位の深い御理解格別の御協力を賜りたいと存じます。  私は、昨年十一月法務大臣に就任いたしまして以来、所管行政の各般を見てまいりましたが、今日、内外の諸情勢がきわめて厳しいこの時期におきまして、わが国国民生活が安定いたしております大きな原因の一つは、その基盤とも言うべき法秩序が揺るぎなく維持され、国民権利がよく保全されていることにあると痛感いたしております。私は、この法秩序維持国民権利保全という法務行政使命の達成のために、今後とも全力を傾注いたし、国民の信頼と期待にこたえるよう、誠心誠意、その職責を尽くしてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  以下、私が考えております当面の施策について要点を申し上げます。  まず、第一は、法秩序維持についてであります。  わが国における最近の犯罪情勢は、おおむね平穏に推移しつつあると認められますものの、内容的には、凶悪殺傷事犯暴力団関係事犯覚せい剤事犯等が依然として後を絶たないばかりでなく、大規模な金融関係事犯、公務員による不正事犯、いわゆる過激派分子による各種不法事犯等も多数発生を見ており、その趨勢には、引き続き警戒を要するものがあると存じます。  私は、これらの不法事犯に対処するため、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、検察体制整備充実に十全の意を用いて厳正な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって、法秩序維持になお一層の努力を傾注する所存であります。  次に、立法関係についてでありますが、いわゆる航空機疑惑再発防止対策の一環として、収賄罪法定刑引き上げ等内容とする刑法の一部を改正する法律案を今国会に改めて提出したほか、国際犯罪に関する捜査共助法制整備についても鋭意検討を進めております。  第二は、矯正及び更生保護行政充実についてであります。  犯罪者及び非行少年改善更生につきましては、刑務所、少年院等における施設内処遇と実社会における社会内処遇とを有機的に連携させることに努め、その効果を高めてまいる所存であります。  そのためには、まず施設内処遇の実態につき広く国民理解を得るとともに、良識ある世論を摂取し、時代の要請にこたえ得る有効適切な処遇実現に努め、他方、社会内処遇におきましては、保護観察官処遇活動を一層充実させるとともに、保護司等民間篤志家との協働態勢を強化し、犯罪者等社会への受け入れ態勢を十分整えるとともに、処遇方法を多様化して有効適切な保護観察を行い、その改善更生の実を上げるよう努める所存であります。  なお、監獄法改正作業につきましては、目下、法制審議会において審議中であり、遠からず答申が得られるものと期待しておりますが、答申を得た後、所要の手続を経て、できる限り速やかに改正法案国会提出したいと考えております。  第三は、民事行政事務等充実についてであります。  一般民事行政事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化傾向にあります。これに対処するため、かねてから種々の方策を講じてきたところでありますが、今後とも人的物的両面における整備充実に努めるとともに、組織・機構の合理化事務処理能率化省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制確立を図り、国民権利保全行政サービスの向上に努めてまいる所存であります。  なお、民事関係立法につきましては、配偶者相続分引き上げ等に関する民法の改正について、かねてから法制審議会において審議を行ってまいりましたが、近くその答申がなされる見通しとなりましたので、その答申が得られ次第、速やかに関係法律案提出して、審議をお願いしたいと考えております。  次に、人権擁護行政につきましては、国民の間に広く人権尊重思想を普及させるため、地域社会に根差した人権擁護委員制度充実を図り、さらに、各種広報手段による啓発活動のほか、人権相談や具体的な人権侵犯事件調査処理を通じて、国民人権意識の一層の高揚に努めてまいる所存であり、いわゆる差別事象についても、関係省庁等と緊密な連携をとりながら、今後とも積極的な啓発活動を続け、その根絶に寄与したいと考えております。  次に、訟務行政につきましては、国の利害に関係のある争訟事件は、最近の社会情勢を反映して、社会的、法律的に新たな問題を含む複雑困難なものが増加してきておりますので、今後とも一層事務処理体制充実強化を図り、この種事件の適正円滑な処理に万全を期するよう努めてまいりたいと存じます。  最後に、出入国管理行政についてであります。  わが国主要空港における出入国者数は引き続き増加しておりますが、特に最近は、地方空港を利用する出帰国者の数が飛躍的に伸びております。また、在留外国人活動範囲も次第に広範となり、出入国管理及び外国人在留管理に関する業務はますます重要なものとなりつつあります。  加えて、いわゆるインドシナ難民対策難民地位に関する条約に加入する動きとの関連において考慮すべき施策は、本行政の当面する課題となっております。  法務省といたしましては、これら諸情勢に対応して国際協調を図りつつ、今後ともわが国出入国管理行政に課せられた使命の円滑・適正な運営に努めてまいる所存であります。  なお、法務省施設につきましては、昨年に引き続いて整備を促進し、事務処理適正化職員執務環境改善を図りたいと考えております。  以上、法務行政の当面の施策について所信一端を申し述べましたが、委員各位の御協力、御支援を得まして、重責を果たしたい所存でありますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
  6. 木村武千代

    木村委員長 この際、委員長から申し上げますが、昭和五十五年度法務省関係予算及び昭和五十五年度裁判所関係予算につきましては、お手元に配付してあります関係資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。      ————◇—————
  7. 木村武千代

    木村委員長 次に、内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、同じく刑法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  政府から、順次趣旨説明を聴取いたします。倉石法務大臣。     ————————————— 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案刑法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官員数増加であります。これは、地方裁判所における特殊損害賠償事件差止訴訟事件民事執行法に基づく執行事件覚せい剤取締法違反等刑事事件及び労働関係民事行政事件の適正迅速な処理を図るため、判事員数を二十二人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所職員員数増加であります。これは、地方裁判所における特殊損害賠償事件差止訴訟事件民事執行法に基づく執行事件覚せい剤取締法違反等刑事事件及び労働関係民事行政事件家庭裁判所における家事調停事件並びに簡易裁判所における民事調停事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所職員員数を十五人増加しようとするものであります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。  次に、刑法の一部を改正する法律案について、提案理由を御説明いたします。  この法律案は、単純収賄事前収賄第三者収賄事後収賄及び斡旋収賄の各罪の法定刑長期をそれぞれ五年に引き上げること、受託収賄罪法定刑長期を七年に引き上げること並びに斡旋贈賄罪法定刑中、懲役の長期を三年に、罰金の多額を五千円(罰金等臨時措置法第三条第一項第一号により百万円)にそれぞれ引き上げることを内容とするものであります。  なお、単純収賄事前収賄第三者収賄事後収賄及び斡旋収賄の各罪の法定刑長期を五年に引き上げることにより、これらの罪の公訴時効の期間が現行の三年から五年に延長されることになります。  このように、収賄罪等法定刑を引き上げる法改正を行うことは、近時、贈収賄事件増加し、かつ、悪質化する傾向にある実情にかんがみ、この種事犯に対し、事案に応じた適切な科刑実現を図り、かつ一般予防的効果を期するため、きわめて緊要なことであると考え、この法律案提出することとした次第であります。  以上が刑法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  9. 木村武千代

    木村委員長 これにて両案に対する趣旨説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  10. 木村武千代

  11. 横山利秋

    横山議員 ただいま議題となりました政治亡命者保護法案についてその趣旨を御説明申し上げます。  一九四八年の世界人権宣言は、人類の基本的権利と自由を平等に享受することを明らかにし、国連はあらゆる機会難民に対し深い関心を示し、この基本的権利と自由を可能な限り最大限に難民に与えようと努力し、また難民地位に関する国際条約批准を全世界に求めています。  近代国家としてわが国がいまもなお、世界の大勢にかかわらず難民条約批准を怠り、国会条約等提出しないことは遺憾なことと言わなければなりません。  数年来、わが国に庇護を求めて入国した外国人強制送還を拒否して訴訟を起こした外国人などがあり、その都度政治問題化しております。わが党はこの課題にこたえて、一九六九年及び七七年の二度にわたって国会法案提案いたしましたが、成立には至りませんでした。  この際、政治亡命者在留資格など最小限度要点について、難民条約批准前といえども法定することが緊要と考え、本法案提出した次第であります。  以下、法案の概要について御説明申し上げます。  第一に、法の目的として世界人権宣言第十四条の規定趣旨にかんがみ、政治亡命者保護を図るため、これに対する在留資格の付与その他必要な事項について、出入国管理令等の特例を定めることといたしております。  第二に、政治亡命者の定義は難民条約と同様とし、人種、宗教、国籍、特定の社会的集団への所属、または政治的思想理由として自国において迫害を受けるおそれがあるため、自国の外にあり、自国保護を受けることができず、または自国保護を受けることを望まない者としております。  第三に、本邦にある外国人永住許可者を除き、すべて政治亡命者としての在留資格取得ができるものとし、不法入国者不法残留者なども法務大臣へ申請することによって在留資格取得できることとしております。  第四に、申請に対する許可または不許可処分があるまでの間、不許可処分に対する出訴期間及び当該処分についての取り消し訴訟の提起後六十日間は本邦から退去させることができないものとしております。  第五に、政治亡命者といえども一定の場合には退去強制を求めるものとしておりますが、その事由は出入国管理令二十四条に比して著しく限定しております。  第六に、右の場合の送還先については、迫害を受けるおそれのあるときは本国に送還せず、本人の希望する国としております。  第七に、政治亡命者としての在留資格取得した者については、当該在留資格取得前の不法入国等の行為は処罰しないものとしております。  その他、在留資格の変更、更新など、所要規定をしております。以上が本法案趣旨であります。  何とぞ御審議の上、御賛同あらんことをお願い申し上げます。  最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案について、提案趣旨を御説明いたします。  最高裁判所は、終審としての違憲立法審査権規則制定権最高司法行政権を有する司法裁判所であり、司法権の独立と裁判の公正を保持し、基本的人権を保障すべき責務を全うするために、当然の事理として最高裁判所裁判官選任人事は慎重かつ適正に行われなければなりません。そしてその選任人事が慎重かつ適正に行われたことを国民理解し、納得するのでなければ司法国民的な基盤を失うことになり、その権威保持期待できません。  しかるに、現行法最高裁判所裁判官指名または任命は、内閣自由裁量であり、しかも国民はその選任人事が慎重かつ適正に行われたかどうかを知ることができません。これらは明らかに法の不備であり、重大な欠陥であります。  よって、この法の不備欠陥を是正する必要があります。  なお、一九四七年に、裁判官任命諮問委員会設置されたことがありますが、その委員会構成及び運営は政令にゆだねられていたため、その成果は期待に十分こたえるものではなく、翌一九四八年に同委員会は廃止されるに至りました。この経緯を踏まえ、諮問委員会設置はもちろん、その構成運営についても法律をもって定めておく必要があると考えます。  右の理由により本法案提出するものであります。  次に本法案要旨を申し上げます。  第一に、最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置だけでなく、その組織運営についても法律をもって具体的に規定しております。  第二に、裁判所法第三十九条第四項として、内閣は、最高裁判所裁判官の指命または任命を行うには、最高裁判所裁判官諮問委員会に諮問しなければならないこととしております。  第三に、任命諮問委員会は、委員二十人をもって組織することとしております。  その内訳は、衆参両院議長最高裁判所長官検事総長日本弁護士連合会会長及び最高裁判所指名裁判官五名、日本弁護士連合会指名弁護士五名、さらに内閣指名学識経験者二名、日本学術会議指名学識経験者三名、以上のとおりとなっています。  第四に、任命諮問委員会答申する候補者の数は、内閣任命権と同委員会権威保持との調和を考慮して、最高裁長官については二人以内、最高裁判事については任命予定者の二倍以内としています。  第五に、任命諮問委員会は、裁判官適任者として候補者を推薦するに至った理由を、内閣答申すると同時にこれを広く国民の前に公表することとしています。  以上が本法案提案理由並びに要旨であります。何とぞ御賛同あらんことをお願いいたします。  最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案について、提案趣旨を御説明いたします。  憲法第七十九条は最高裁判所長官及びその他の裁判官について、国民に直接その適否を問う国民審査制定規定しています。これは、主権者である国民の監視によって、民主的で公正な裁判を保障する重要な制度であります。つまり憲法内閣最高裁判所長官指名権及びその他の裁判官任命権を認めながら、直接国民審査に服さなければならぬとしたことは、最高裁判所憲法人権守り手として非常な重要な役割を担っていることからみても当然のことであります。  ところが、公正中立であるべき最高裁判所が時の政府党利党略的選任による裁判官で占められ、政治権力に追従、迎合する判決が近年目立っており、司法反動化はいまや黙過できない状況に至っています。  このような司法の危機を打開するためにも、不合理な投票方法をとっている現行国民審査法を改め、主権者である国民権利行使の一つであるこの制度充実させることは焦眉の急であります。すでに、第七十一国会の本委員会において「政府は、最高裁判所裁判官国民審査方法等について検討すべきである。」との全会一致の附帯決議を採決しているのも、この制度改善国民の大きな要求となっているからであります。  右の理由により本法律案提案するに至った次第であります。  次に本法律案要旨を申し上げます。  第一は記載方法改善であります。  現行国民審査法は罷免を可とする裁判官に×印を記載することを認めているだけで、その他の白票はそれがたとえ棄権の意思を込めたものでも、すべて罷免を可としない票とみなされるというきわめて不合理、非民主的な方法であります。  そこで本法律案は、国民の意思を正しく反映させるために、罷免を可としない裁判官には〇印、罷免を可とする裁判官には×印を記入することとし、無記入投票は棄権とみなすことにより、棄権の自由を保障するものとしています。  第二は点字投票の改善であります。  点字投票について、現行では視力障害者の審査権が行使しにくい面があるので、これを是正するため点字で印刷された用紙を準備し、通常の投票に準じて決められた記号を記入するだけで意思を表示し得るものとしています。  第三は罷免成立の有効投票率の引き上げであります。  投票方法の変更に伴って、罷免が成立する有効投票率を改め、現行有権者総数の百分の一を、百分の十に引き上げることにより、棄権が大量に出た場合、少数の罷免票で罷免されることの弊害を除いています。  以上が本法律案提案理由並びに要旨であります。何とぞ御賛同あらんことをお願いいたします。  刑法の一部を改正する法律案について、提案趣旨を御説明申し上げます。  本法律案は、汚職防止を目的とする改正と、尊属殺重罰規定の削除等を目的とする改正の二件を一本の法律案にまとめたものであります。  初めに、汚職防止を目的とする改正につき趣旨を御説明申し上げます。  御承知のように、現行刑法百九十七条ノ四の斡旋収賄罪は、公務員が他の公務員に、不正な行為をさせ、または相当な行為をさせないようにすることを、他人から請託を受けてしたとき、その報酬として賄賂を受け取り、または要求したり約束したときに三年以下の懲役に処することになっています。  この三年を五年に改正するなどを内容とした刑法改正案が、政府より国会に上程されていますが、与党内の意見不統一のため野党の賛成にもかかわらず継続審議となっています。  ところで、現行法の適用を免れるため国会議員等が、その後援会その他の団体等第三者に賄賂を供与させるケースが多いのであります。  このような事例に対処するため、改正刑法草案は、第百四十二条に周旋第三者収賄を新たに設けておりますが、本法律案内容の第一は、それをそのまま「斡旋第三者収賄」として提案したものであります。  本法律案と同じ内容の案が昭和五十一年十一月ロッキード問題閣僚連絡協議会で合意され、他の諸問題とともに発表されましたが、その後放置されたままとなっています。  ところで、本法律案の斡旋第三者収賄罪について若干の意見がないとは言えません。  第一に、公務員特に公選された政治家は、有権者の依頼を受けて民主的な活動をすることもあり、その場合、他の公務員に働きかけて依頼を実現させることも考えられると思うが、その行動を不当に制限することになりはしないか、ということであります。  第二に、政治家が後援会等に寄付または献金をさせることが、この改正案に該当した場合、違法となり罰せられるのであるが、一方、実行した公務員は、行政処分を受けることはあっても刑法による処罪は受けないのは、公平を欠くのではないか、ということであります。  右の意見の第一については、政治家の民主的活動は多岐にわたっているが、本法律案にあるように「不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク」他の公務員に働きかけることは、民主的社会において、してはならないことであります。  いわんやそれによる報酬・賄賂を後援団体等に寄付させることによって、事実上自己の所有に帰することは恥ずべき行為といわなければならない、と考えます。  第二の意見について、「不正ノ行為ヲ為サシメ又ハ相当ノ行為ヲ為サザラシム可ク」働きかけられ、その行為をした公務員は、たとえば、国家公務員法等の処分を受けるが、この場合賄賂を受け取っていなかったとすれば、あっせんした公務員すなわち政治家と比べて責任が軽いことは当然なことと言えるのであります。  ロッキードに続いてグラマン、ダグラス等航空機汚職はこの種の第三者収賄をどう考えるか、現行法で防止できるかという問題を提起しています。  また、ロッキード等の汚職の問題の一つは賄賂を受けた者の職務権限があるか否かでありますが、仮に職務権限がない場合には、刑法百九十七条ノ四の斡旋収賄罪が適用される可能性も考えられます。しかし、その場合でももし賄賂が本人でなく第三者に供与されているとすれば罪とならないわけでありますから、是正される必要があります。  さらに、最近の汚職が国際的事件であるにかんがみ、日本国民が、国外で犯すこの種事件についても、処罰規定を設ける必要があります。よって、現行刑法三条及び四条の国外犯規定改正して、この種事案も国内犯同様適用することにしました。  改正要旨は次のとおりであります。  第一に、斡旋第三者収賄罪の新設であります。  公務員が請託を受けて、他の公務員にその職務上不正の行為をしまたは相当の行為をさせないようにあっせんすることまたはあっせんしたことの報酬として、第三者に賄賂を供与させ、またはその供与を要求し、もしくは約束したときは五年以下の懲役に処するものとすることであります。  第二に、斡旋第三者贈賄罪を規定します。  すなわち、前項の賄賂を供与し、またはその申込もしくは約束をした者は三年以下の懲役または五千円以下の罰金に処するものとすることであります。  第三に国外犯規定整備であります。  すなわち、斡旋第三者収賄罪を刑法第四条の国外犯とすることと同時に、贈賄罪を刑法第三条の国外犯とすることであります。  第四に、贈収賄罪法定刑の引き上げであります。  すなわち、単純収賄事前収賄第三者収賄事後収賄及び斡旋収賄の各罪に法定刑長期をそれぞれ五年に引き上げること、また、受託収賄罪法定刑長期を七年に引き上げること、並びに斡旋贈賄罪法定刑中、懲役の長期を三年に、罰金の多額を五千円に引き上げることであります。  次に、尊属殺重罰規定の削除等を目的とする改正につき趣旨を御説明申し上げます。  最高裁判所昭和四十八年四月四日、昭和二十五年の旧判例を変更して、尊属殺人に特に重罪を科している刑法二百条は違憲無効であり、尊属殺人についても普通殺人罪の規定である同法第百九十九条を適用するほかはないことを示しました。これは、最高裁が憲法第八十一条に定められた違憲立法審査権に基づき、現行法規定を違憲無効とした最初の判例でありました。  日本国憲法第十三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。」べきことを規定していますが、これは個人の尊厳を尊重し、すべての個人について人格価値の平等を保障することが民主主義の根本理念であるという基本的な考え方を示したものであり、法のもとの平等を定めた憲法第十四条一項も、右の基本的な考え方に立ち、これと同一の趣旨を示したものであります。  近代国家憲法がひとしく右の意味での法のもとの平等を尊重、確保すべきものとしたのは、封建時代の権威と隷従の関係を打破し、人間の個人としての尊厳と平等を回復し、個人がそれぞれ個人の尊厳の自覚のもとに平等の立場において相協力して、平和な社会、国家を形成すべきことを期待したものにほかなりません。日本国憲法の精神もここにあるものと解すべきであります。  刑法第二百条の尊属殺人に関する規定が設けられるに至った思想的背景には、封建時代の尊属殺人重罰の思想があるものと解され、同条が、配偶者の直系尊属を殺す場合までも刑を加重するのは旧憲法下の家の観念を存続させるものであります。  ところが、日本憲法は、封建制度の遺制を排除し、家族生活における個人の尊厳と両性の本質的平等を確立することを根本のたてまえとし、この見地に立って民法の改正を行ったのであります。  この憲法趣旨に徴すれば、尊属がただ尊属なるがゆえに特別の保護を受けるべきであるとか、本人のほか配偶者を含めて卑属の尊属殺人はその背徳性が著しく、特に強い道義的非難に値するとかの理由によって、尊属殺人に関する特別の規定を設けることは、一種の身分制道徳の見地に立つものというべきであり、前述の旧家族制度的倫理観に立脚するものであって、個人の尊厳と人格価値の平等を基本的な立脚点とする民主主義の理念に抵触するものと言えます。  諸外国の立法例において、尊属殺人重罰の規定を廃止する傾向にあるのも、右の民主主義の根本理念が浸透してきたからであります。  親子の情は美しく、自然であります。だが、それは個人の尊厳と人格価値の平等の原理の上に立って、個人の自覚に基づき自発的に守られるべき道徳であって、法によって強制すべきではありません。強制の上に成立する制度がいかにもろいかは歴史が示しています。  普通殺人と区別して尊属殺人に関する規定を設け、尊属殺人なるがゆえに差別的取り扱いを認めること自体が民主主義の根本理念に抵触し、直接には憲法第十四条一項に違反するものであります。刑法第二百条だけではなく、尊属傷害致死に関する刑法二百五条二項、尊属遺棄に関する刑法二百十八条二項及び尊属の逮捕監禁に関する刑法二百二十条二項の各規定も、被害者が直系尊属なるがゆえに特に加重規定を設け差別的取り扱いを認めたものとして、いずれも違憲無効の規定であります。  この理由により、本改正案では右に挙示した諸条項を全面的に削除することとしております。  以上が本法律案趣旨であります。何とぞ御審議の上御賛同あらんことをお願い申し上げます。  刑事訟訴法の一部を改正する法律案について提案趣旨を御説明申し上げます。  わが国において人権意識はようやく高まりを見せているとは言うものの、国内の人権保障の現実には、なおはなはだ危ういものがあります。身に覚えのない事件のために逮捕され、裁判でも有罪の判決を受ける者、場合によっては死刑の執行におびえながら無実を訴え続ける者も少なしとしないのであります。もしも無辜の者が国家権力により処罰されるとすれば、およそこれに過ぐる不幸、これにまさる残酷があり得るでありましょうか。このような冤罪者を救済することなくして、人権擁護も民主主義も存在しないのであります。  一般世人からは、神のごとく至公至正と見られる刑事裁判においても、不幸にして誤判の数の決して少なくないことを裁判の歴史は示しています。著名な冤罪事件として知られる松川事件、八海事件、仁保事件にしても、三審制の中で二度ないし三度にわたって有罪・死罪の判決がなされた後に、辛うじて最高裁の段階で救われたのであります。また、三審制度の中ではついに有罪が確定し、服役を終わった後において、再審の結果無罪を獲得したものに、最近においては弘前事件、加藤老事件、米谷事件があります。これらはいずれも厳正を生命とする裁判においても、ときに誤判のあり得ることを例証しています。しかも弘前事件、米谷事件は、真犯人がみずから名のり出ることによって、ようやく再審開始に至ったのであります。  もって再審開始のいかに困難なるかを想像し得るでありましょう。  また、昭和五十四年に入ってからは死刑確定の事件のうち、財田川事件、免田事件及び松山事件で再審開始の決定がなされるに至りました。これらは、即時抗告、または特別抗告がなされたことにより、いまだ再審の審理が開始されてはおりませんが、死刑確定の事件の中にさえ誤判の可能性が存するという深刻な事態を明らかにしております。  日本国憲法は全文百三条のうち、第三十一条から第四十条に至る実に十カ条にわたって被疑者・被告人の人権保障を規定しておりますが、これは戦前・戦中の司法のあり方を根本的に改善する必要に迫られたからであります。憲法規定を受けて一九四九年に施行された新刑事訴訟法も、個人の基本的人権保障の観点から抜本的な改正がなされていますが、刑事訴訟法の「第四編 再審」については、不利益再審の廃止を除いて、旧刑事訴訟法をほぼそのまま引き継いだ形になっております。  これらの理由により、再審法の改正は焦眉の急を要するものと思われます。  したがいまして、再審法を無裏の救済の立場から正しく運用し得るよう、以下のような改正をしようとするものであります。  第一は、再審要件の緩和及び理由の拡大であります。  再審請求事件の大部分は、刑訴法第四百三十五条第六号によるものでありますが、その要件である証拠の新規性と明白性について、従来裁判所の解釈は厳し過ぎ、そのために再審は「開かずの門」となっておりました。  そこで「再審開始のためには確定判決における事実認定につき合理的な疑いを生ぜしめれば足りるという意味において、「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判における鉄則が適用される」という最高裁白鳥決定の趣旨を踏まえ、刑訴法第四百三十五条第六号を全面的に改正しようとするものであります。  具体的条文は、現行法中「明らかな証拠をあらたに」を「事実の誤認があると疑うに足りる証拠を新たに」に改めることであります。  第二は、再審請求人の手続面における権利保障の明確化及び前審関与の裁判官の除斥をしようとするものであります。  再審手続は二段階構造をとっておりますが、第一段階が非常に重要であるにもかかわらず、現行法ではその手続はすべて裁判所の職権にゆだねられておりますので、これを改め、再審請求段階の国選弁護人制度、弁護人の秘密交通権及び記録閲覧権・謄写権、記録及び証拠物の保存、審理の公開及び請求人・弁護人の再審請求理由を陳述する権利と事実取り調べ請求権の保障等を導入することであります。  また、前審に関与した裁判官は除斥される旨の規定を設け、審理の公正を期することであります。  第三は、検察官の反対立証の制限及び不服申し立ての禁止をしようとするものであります。  再審制度は「有罪の確定判決を受けた者」の利益のためにのみ存在する制度であり、これを具体化するため、再審請求段階における検察官の立証を一部制限し、そのため検察官は新たな事実の取り調べ請求ができないこととし、ただ請求人・弁護人側から出された新証拠の取り調べに際し証拠の証明力を争うため必要とする適当な機会を与えられるものとしております。  また、再審開始の決定に対する検察官の不服申し立てを禁止することとしております。  第四は、訴訟費用の補償についてであります。  再審で無罪が確定した事件につきその訴訟費用は、現行法では再審開始後の公判に要した費用のみ補償されるにとどまっており、一例を挙げれば加藤新一老の場合、最も困難な闘いを要した再審請求段階の費用補償は全く認められず、再審開始後の費用を対象とし、しかも所要経費の一部が認められたにすぎません。  これを改め、再審請求より再審開始決定に至るまでの費用も補償することであります。  第五は、確定判決にかわる証拠についてであります。  有罪確定判決の証拠となった証言・証拠等が偽証もしくは偽造である等の理由で再審請求をする場合、現行法では、偽証・証拠偽造等の事実が確定判決により証明されなければならないとし、確定判決が得られない場合はその事実を証明して再審の請求ができることとしています。この際に刑訴法第四百三十七条ただし書きの解釈として検察官により、偽証・証拠偽造の事実につき公訴提起がなされなかった場合は、再審請求の道を閉ざしているのであります。  これは全く不合理であるのでこれを改め、検察官により公訴提起がなされなかった場合にも再審の道を開くこととすることであります。  第六は、理念規定の創設及び刑の執行停止を規定しようとするものであります。  再審制度は、無事を救済し、その人権を尊重するためにある旨の理念規定を設けるとともに、再審請求がなされた場合は、請求人等の申し立てにより、刑の執行を停止することができることとすることであります。  第七は、その他として、不服申し立て期間及び旧刑訴法下の事件について、所要改正をしようとするものであります。  以上が刑事訴訟法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  12. 木村武千代

  13. 土井たか子

    ○土井議員 すでに第八十七国会において国際人権規約承認されており、この規約実施のため国内法が現在整備されつつありますが、性別による差別を撤廃し、個人の尊厳性と両性の平等を保障する上から、可及的速やかにその実現が望まれる国籍法の一部を改正する法律案について、私は、日本社会党を代表して、提案趣旨を御説明いたします。  戦後、日本国憲法の施行に伴い、憲法十四条の「法のもとの平等」及び二十四条の「家族生活における個人の尊厳・両性の平等」の趣旨に基づき、旧来の家父長的家制度は根本的に改められることとなり、民法の親族編、相続編は全面改正されたのであります。  国籍法制についても旧国籍法を廃止して、一九五〇年に現行国籍法制定され、その際身分関係の得喪がその国籍に影響を及ぼす点は改められております。しかし、子の国籍取得における父母同権については改められないまま今日に至り、また日本人を配偶者に持つ外国人の帰化要件における男女差別もいまだ改正されるに至っていません。  諸外国の例を見ますと、従来は父系血統主義を採用していた国も最近次々と法改正を行い、フランス、西ドイツ、スイスなどで子の国籍取得における平等が実現しているのであります。また国連で採択されました「婦人に対する差別撤廃条約」の第九条二項には「子供の国籍に関しては、婦人に男性と同等の権利を与える。」と規定されています。これらの例より見て父母両血統主義はいまや国際的趨勢となっております。  次に本法律案要旨を申し上げます。  第一は、出生による日本国籍取得の要件に関する改正であります。  国籍法第二条によれば、出生のときに父が日本国民であれば日本国籍取得できますが、母のみが日本国民の場合は、日本国籍取得できません。日本人母・外国人父を持つ子と、日本人父・外国人母を持つ子とは、同等の権利を持つはずであります。  したがって、現行国籍法の父系血統主義は父母両血統主義に改め、出生の時に父または母が日本国民であるとき、子は日本国籍取得することといたしております。  第二は、日本国民配偶者である外国人の日本への帰化の要件に関する改正であります。  外国人が日本に帰化する場合には、居住歴五年、素行善良、生計能力などの要件が必要であります。そして、日本国民の夫である外国人男性が帰化する場合には、これらの要件のうち居住歴が三年に軽減されるだけであります。一方、日本国民の妻である外国人女性の場合には、居住歴も生計能力も不必要で、日本に入国せぬままに帰化することも可能であります。  ひとしく日本国民配偶者である外国人が、このように性別により明白な差別を受ける規定は、早急に改正する必要があります。  したがって、現行法改正し、現に日本に住所を有する十八歳以上の日本国民の夫、または十六歳以上の日本国民の妻である外国人について、引き続き一年以上日本に住所または居所を有する者は、平等に日本への帰化ができることといたしております。  以上が本法律案趣旨であります。  何とぞ御賛同あらんことをお願いいたします。
  14. 木村武千代

  15. 沖本泰幸

    沖本議員 犯罪被害補償法案につきまして提案趣旨を御説明申し上げます。  労働災害での労災保険、自動車事故での自賠責、一般の疫病、傷害、死亡での健康保険、厚生年金、公害被害での公害健康被害補償制度などのように、私たちが日常生活において生命、身体が損なわれた場合は、不十分だとはいえ、救済の制度が設けられています。  ところが、通り魔的犯罪、無差別爆弾テロなどのいわゆる”いわれなき犯罪”によって被害を受けた人たちは、どこからも特別な救済の手が差し伸べられず、精神的にも肉体的にも悲惨な状況のもとに放置されています。しかも”いわれなき犯罪”は近年次第に増加する傾向を示し、福祉国家を目指すわが国としては被害者をこのまま見過ごしにしておくことはできないところであります。  わが国における犯罪被害の救済は、現在のところ民法上の損害賠償制度による以外にありませんが、同制度訴訟長期化とそれに伴う経費の増大を避けることができないのであります。すなわち、同制度では犯罪被害者の窮状を速やかに救済することは実際的に不可能なのであります。  仮に訴訟を起こしたとしても、加害者側に賠償責任能力に欠ける場合が多く、よくてわずかな見舞金を受ける程度、悪くするとそれすらなく、被害者の大半は泣き寝入りしているのが実情であります。中には、加害者が不明あるいはつかまらない場合も多く、現行民法の損害賠償制度は、犯罪被害の救済に対し、ほとんど効果を上げていないといっても過言ではありません。  このように犯罪被害者に対する社会的救済措置が極端におくれている半面、犯罪者人権保障は刑事制裁の緩和、社会復帰対策の促進、収容施設合理化及び近代化など積極的に推進されています。犯罪者人権保障の充実憲法規定に基づくもので当然のことでありますが、同時に犯罪被害者の人権保障もあわせて充実されるべきであります。犯罪被害者の救済を怠るならば、著しく社会的公正に欠けるとともに、刑事政策上からも片手落ちの観を免れないのであります。  以上の観点から、犯罪によって身体または生命にかかわる被害を受けた場合に、国が速やかに被害者を救済する犯罪被害補償制度を樹立するため本法案提案した次第であります。  以下、この法案内容の概要につきまして御説明申し上げます。  第一に、この法律の目的は、犯罪によって人の身体または生命が害された場合における被害を国が補償し、被害者またはその遺族の生活の安定を図ることとしております。  第二に、補償の対象となる犯罪被害は、日本国内における他人の犯罪行為に起因して、負傷し、疾病にかかり、または死亡した者の当該負傷、疾病または死亡としております。なお、外国人にあっては、日本国内に住所を有している場合に限り、補償の対象としております。  第三に、補償形式は一時金形式をとっておりますが、その種類として、加療期間が二週間を超える傷病の療養については療養補償金を、療養による休業については休業補償金を、後遺障害についてはその程度に応じた額の障害補償金を、死亡については遺族の態様により二千万円または千五百万円の遺族補償金を掲げております。なお、健康保険法、厚生年金保険法、労働者災害補償保険法等により公的給付が支給されることとなる場合にあっては、その額を控除して支給することとしております。  第四に、扶養義務者等が加害者である場合においては、補償を行わないこととするとともに、被害者側にも犯罪行為の誘発等の責めがある場合、報復措置がなされた場合等においては、補償の全部または一部を行わないことができるとして、公平な補償が行われるようにしております。  第五に、補償機関としては、各地方裁判所の所在地ごとに、補償実施機関たる犯罪被害補償地方委員会を、法務大臣の所轄のもとに審査機関たる犯罪被害補償中央審査会を設置することとしております。すなわち、犯罪被害補償地方委員会は、三人以上九人以下の委員組織する合議制行政機関であり、その権限及び所掌事務は、補償申請の裁定、補償給付の支給、加害者の賠償能力及び生活状況の調査等としております。また、犯罪被害補償中央審査会は五人の委員組織し、委員弁護士資格を有する者のうちから国会承認を得て法務大臣任命することとし、その権限及び所掌事務は、犯罪被害補償地方委員会が行った処分に対する審査請求の審査等としております。  第六に、補償の申請は、その申請をすることができるときから二年以内に、犯罪被害補償地方委員会に所定の申請書等を提出しなければならないこととする等補償手続等について規定を設けております。  第七に、この法律の公布日前二十年間に行われた犯罪によって被害を受けた場合も、公布日以後の補償事由について補償することとしております。  以上が本法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。  次に、刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして提案趣旨を御説明申し上げます。  現在の刑事補償法では、心神喪失等の責任無能力の理由によって犯罪が不成立とされ、無罪の判決を受けた者に対しても補償金が支払われることとなっています。  刑事補償の本来の目的は、いわゆる犯罪行為を犯していない者に対する補償を行おうとするもので、現に犯罪類型該当の違法行為を行い、かつ、責任無能力の理由で無罪となった者までをも補償する趣旨のものとは考えられないものであります。  昭和四十三年に、殺人者が、心神喪失中の殺人行為であるとの理由で無罪判決を受けた後に、その殺人者が国に刑事補償金を請求してきた事例において、東京地裁は、決定文の中で、刑事補償金の支払いが、法律上、やむを得ないものと認めつつ、「現行刑事補償法立法的な解決を期待する」と述べております。また当時の法務省刑事局長も「健全常識から見て非常に非常識」と述べているのであります。  速やかな立法的解決こそ望まれるところであります。  しかも、さきにわが党が提案いたしました犯罪被害補償法案では心神喪失等責任無能力の理由によって加害者が無罪となった場合においても、被害者等を救済することとしております。  当該犯罪行為によって、被害者等と加害者の双方が国家から補償を受けるということはきわめて不自然なところであり、常識的にも納得できないところであり、無罪の裁判を受けた責任無能力者に係る刑事補償については、裁判所の健全な裁量によってその一部または全部をしないこととする必要があると考えるのであります。  また、同様の趣旨により、無罪の裁判を受けた者に対する刑事訴訟法規定による裁判費用の補償についても、犯罪類型該当の違法行為を行いながら責任無能力の理由で無罪となった者に対しては、その全部または一部をしないことができることとする必要があると考え、ここに本法案提案する次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  16. 木村武千代

    木村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  17. 木村武千代

    木村委員長 次に、小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  証人及び証言等に関する調査を行うため、小委員十三名より成る証人及び証言等に関する小委員会設置いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 木村武千代

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 木村武千代

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  次に、小委員及び小委員長辞任許可補欠選任に関しては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 木村武千代

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る十九日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十時三十四分散会      ————◇—————