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長谷川(正)議員 ただいま議題となりました
法律案について、その提案理由と内容の概要を御
説明申し上げます。
いま東京、大阪等人口急増地域では、人口の社会増と自然増に押され、交通戦争、住宅不足と狭隘化、公害の多発、自然の喪失等、環境条件は著しく劣悪化しており、生活、労働、文化のあらゆる面で
問題点を引き起こしています。
特に、学校では児童生徒の急激な増加に伴って、学級、学校の新増設計画がその実勢に追いつけないため、運動場をつぶしてのプレハブ教室の建築や特別教室の普通教室への転用、あるいは四十六名以上の学級編制等によって急場をしのいでいる学校等が目立っています。
こうした状況の中で、過
大学級、過
大学校は次第に増加し、教室、職員室、運動場、校具等、学校の施設設備は不備のまま異常な形で教育活動が展開され、子供の遊びと遊び場は奪われ、子供同士の人間関係、子供と教職員の人間関係、教職員同士の人間関係は阻害されています。
こうした教育的対人関係の破壊、揺れ動く学校生活の中で、子供の学力の低下、非行の増加等、教育荒廃の現象は次第に進行しつつあります。
一方、地方自治体では子供の学習権を守り、行き届いた教育を保障するためにも児童生徒の急増に対応しながら、学級、学校の新増設計画に取り組んでいます。
しかし、自治体においては、実勢に見合わない現行の国庫補助制度や地価の高騰、校地取得難等のもとで、膨大な教育財政の支出をもたらされています。このことはまた、ただでさえ危機的状況下に置かれている地方財政をますます圧迫し、
一般行政水準を低下させる要因ともなっています。
それだけに、人口急増市町村の財政力をもってしては、正常な教育を行うための施設設備を確保することはもはや困難な状況下にあると言わなければなりません。
幸い、
昭和四十六年度より児童生徒急増市町村に対する校地取得に係る定率補助制度が発足し、
昭和四十八年度には校舎の新増設に対する国庫補助率の引き上げが行われることとなりました。
しかし、これらの措置は一定の効果を果たしてきたとはいえ、いまだ当該市町村の要望をとうてい充足するまでには至っていません。また、公立高校新増設に対する国庫補助制度は、
昭和五十一年度より発足し、その予算は増額されつつありますが、補助条件の制約があることや校地取得費が補助対象となっていないこと等もあって、高校の新増設計画に大きな障害点となっています。
これらの助成措置は、元来義務教育諸学校施設費国庫負担法の抜本的改正等により、その改善、充実を図らなければなりませんが、当面、四十人学級の発足に伴う学級の新増設等人口急増地域に山積する教育上の諸
問題点を解決するためにも、当該県、市町村に対する特別措置を講ずることが緊急の課題となっています。
以上、児童生徒の急増地域における公立の
小学校、中学校及び
高等学校の施設
整備に係る国庫補助制度の実情にかんがみ、これらの施設
整備を一層促進するため、国の行財政上の特別措置をさらに拡充するための法的措置を講じることとし、もって学校教育の円滑な実施を確保するため、本法案を提案する次第であります。
次に、本法案の内容の概要を御
説明いたします。
第一は、この
法律は、児童または生徒が急激に増加しまたは増加する見込みのある地域に係る公立の
小学校、中学校及び
高等学校の施設の
整備に関し必要な特別の措置を定めることにより、学校教育の円滑な実施を確保することを目的としております。
第二は、この
法律において、児童急増地域または生徒急増地域とは、市町村における過去三年間の児童または生徒の増加数などを基準として各年度ごとに
文部大臣が指定する市町村の区域をいうこととしております。
第三は、第二の両急増地域における公立の小中学校に係る校舎及び屋内運動場の新増築費並びに学校給食施設及び水泳プールの
整備費に対する国の負担率または補助率を四分の三に引き上げるとともに、生徒急増地域を通学区域とする公立の
高等学校の水泳プールの
整備費に対する国の補助率についてもこれを二分の一に引き上げることとしております。
第四は、国は、政令で定めるところにより、両急増地域の公立の小中学校の用地取得費についてその二分の一を補助するとともに、第三の公立の
高等学校の用地取得費及びその校舎等の新増築費についてもその二分の一を補助することとしております。
第五は、国は、第三及び第四の児童生徒急増
対策事業に係る地方債の資金について特別の配慮をすることとし、その元利償還金についてもこれを地方交付税で措置することとしております。
第六は、国は、児童生徒急増
対策事業に係る用地取得を容易にするための税制上の優遇措置を講じなければならないこととしております。
第七は、地方公共団体は、その区域内で大規模宅地開発等が行われる場合において、特に必要があると認めるときは、その開発事業者に対し、公立の小中学校または
高等学校の用地の確保を求めることができることとし、その場合の用地確保を開発事業者に義務づけております。
第八は、地方公共団体は、大規模宅地開発等に伴い公立の小中学校または
高等学校の施設の
整備事業を行う場合、財政事情等によりその事業を適時に行うことができないときは、その開発事業者に対してその事業の立てかえ施行の申し出をすることができることとし、申し出を受けた開発事業者は、その地方公共団体との協議に基づき、その事業を行うものとすることにしております。
第九は、この
法律は、
昭和五十六年四月一日から施行することとし、
昭和六十一年三月三十一日までの時限立法としております。
以上が、本法案の提案の理由及び内容の概要であります。
何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
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