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1980-05-15 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月十五日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 津川 武一君       菊池福治郎君    佐藤 信二君       佐藤  隆君    田名部匡省君       玉沢徳一郎君    西田  司君       保利 耕輔君    堀之内久男君       角屋堅次郎君    新村 源雄君       日野 市朗君    細谷 昭雄君       本郷 公威君    瀬野栄次郎君       武田 一夫君    中川利三郎君       神田  厚君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  武藤 嘉文君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房技術審議官  松山 良三君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君  委員外出席者         総理府人事局参         事官      片山虎之介君         文部省体育局学         校給食課長   坂元 弘直君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 藤井 正美君         農林水産大臣官         房企画室長   鴻巣 健治君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 五月十四日  公共用地取得推進に係る農地法改正に関する  請願井出一太郎紹介)(第六〇七四号)  同(小川平二紹介)(第六〇七五号)  同(小沢貞孝紹介)(第六〇七六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第六〇七七号)  同(倉石忠雄紹介)(第六〇七八号)  同(小坂善太郎紹介)(第六〇七九号)  同(清水勇紹介)(第六〇八〇号)  同(下平正一紹介)(第六〇八一号)  同(中島衛紹介)(第六〇八二号)  同(中村茂紹介)(第六〇八三号)  同(羽田孜紹介)(第六〇八四号)  同(宮下創平紹介)(第六〇八五号)  乳製品の需要拡大に関する請願鈴木善幸君紹  介)(第六〇八九号)  繭価の確保及び蚕糸振興対策強化に関する請  願(鈴木善幸紹介)(第六〇九〇号)  食糧農業基本政策確立に関する請願鈴木  善幸紹介)(第六〇九一号) 同月十五日  公共用地取得推進に係る農地法改正に関する  請願(林百郎君紹介)(第六二九九号)  韓国漁船操業規制実現及び被害漁業者の救済  に関する請願高橋辰夫紹介)(第六三〇〇  号)  転作作物としての飼料用稲栽培等に関する請願  (中川利三郎紹介)(第六三〇一号)  農林水産業対策確立に関する請願福島譲二  君紹介)(第六三〇二号)  松本営林署庁舎改築に伴う跡地払い下げに関す  る請願小沢貞孝紹介)(第六五九七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保利耕輔君
  3. 保利耕輔

    保利委員 私は本日、日本農業問題というよりも、むしろ食糧問題全般について、少し観点を変えた御質問を申し上げたいと思う次第でございます。  私は、長い間機械関係仕事に従事しておりまして、いわば機械工業の分野で生産に従事してきた者でございますが、当農林水産委員会に入れていただきまして、先生方の御質疑と、それから政府の御答弁をいろいろ伺っておりまして、機械工業あるいは工業生産というものと農林水産業生産というものとを対比をしながら、半年近くの間お話を伺っておったわけでございます。したがいまして、どうしても工業生産農業生産というものの対比から、私は幾らか工業生産農業生産は違うなということを少しずつ感じておりまして、これを詳しくお話を申し上げる、あるいは述べる余裕はございませんけれども、また私自身きちんとまとめているわけではございませんけれども、私が感じております農業生産工業生産との違いというものを幾らか申し述べさしていただきますと、工業生産というものは、私はまず天候に左右されることがないというのが特色ではないかと思うわけでございます。いろいろな遠回しの理由で天候に影響されることはあろうかと思いますが、直接的な影響はないと思います。しかし、農業生産というものは天候に左右される確率が非常に大きいわけでございまして、場合によっては、天候によって農業生産の死命が制せられるというような場合があるのではないかということをつくづく感じております。  また、農業生産というものは、生産サイクルの長さが、工業生産と比べて非常に長いということを感じておりまして、工業生産の場合でございますと、短いものでは一日とか二日とか、あるいは長くても一カ月とか二カ月とかいうようなサイクル工業製品ができてくるのに、米を初めとします農業産品というものは、年に一回の収穫であるとか、あるいはせいぜい二回の収穫であるとかというような形で、生産サイクルが比較的長いということ。  それから、第三に、これはわりと重要なことではないかと思うのでございますけれども工業生産というものは、生産調整がわりとやりやすい。しかしながら、農業生産というものは、生産調整がわりとしにくい仕事ではないかという感じを持っております。一遍種をまいてしまったものは、これを刈り入れるまで、調整していくというのは非常にむずかしいということを私も感じております。  いろいろなそういう差異がありますが、しかしながら、物をつくるという観点から考えた場合には、工業生産農業生産も同じ要素を持っているというふうに考えるわけでございます。そして、幾つかの共通点が見出されるわけでございます。すなわち、物をつくるということの始まりは、どういうものが欲しいかということを考えるところから始まるように思うわけでございます。大昔の農業形態でございますと、できたものを食べるという逆の発想があったかもしれません。しかし、最近、技術等の進歩によりまして、欲しいものをつくっていくのだという方向に変わりつつあるような感じを持っているわけでございます。まさに工業生産は、欲しいもの、つまり需要のあるもの、俗な言葉では、売れるものをつくるというのが工業生産あり方のように思います。そして、いまや農業生産も、先ほど申し上げましたとおり、食べたいもの、欲しいものをつくっていかなければいけないというふうに、だんだん変化してきているのではないかということを感じているわけでございます。  そうやって考えてまいりますと、中長期の日本国民食糧需要というものをできる範囲で把握をしていくことが、政府にとっても非常に重要なことであり、これはまた今後の農業生産あり方を規定していくことになるのではないか、重要なファクターなのではないかというふうに感ずる次第でございます。  そこで、最近の食生活変化というものを若干考えてみますと、私たち世代と、またそのワン・ゼネレーション下世代とは、食事の習慣が大分変わってきているということに、私は何となく気がつくのでございます。特に若年層、都会にあってこれは顕著だと思いますけれども肉食方向へ傾斜をしていっているということが、何となく感じられます。実は私の子供も、たとえばフライドチキンであるとかあるいはハンバーグというようなものにどうしても手が伸びてしまうというような傾向があるわけでございまして、どうもこのごろの若い方はお肉が好きだという傾向が見受けられるわけでございます。  しかし、考えてみると、日本民族というのは、長い間農耕漁業民族といいますか、そういう形で栄えてきたわけでございまして、そのために、日本人の腸の長さというものは、ヨーロッパの人の腸の長さに比べて五割近くあるいは五割以上長いということが言われておりまして、これは植物質のものを消化しやすいようにできているのだということを、私はある資料で読んだことがございます。そして、明治以降肉を食べるようになってきたわけでございますけれども、今日子供たちのこうした嗜好というものを考えるときに、日本というのは将来西洋人と同じように肉食民族に移行していくのか、あるいは従来の日本人食生活のパターンというものがそのまま大きな変化なしに続けられていくのか、その辺のところについて農林水産省としてはどういうお考えをお持ちになっていらっしゃるか、一遍お伺いをしたいと私は常日ごろ思っていたわけでございます。もし資料等がございましたらば、中期的あるいは長期的あるいは十年後、二十年後というような形を想定して、主要農産物というものがどういうふうな需要形態になっていくのかということについて、御説明いただければありがたいと思います。
  4. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大変いろいろの、従来の経験に照らしての、経験から農業を見た場合の分析については、私も全く同じ考え方でございます。  ただ、もう一つ加えさせていただくならば、他の工業製品というものは必ずしも、しんぼうしようと思えば、使わなくてもしんぼうできますけれども食糧というものは一日たりともこれはしんぼうするわけにいかない。生きていくためには絶対不可欠なものであるという点が、もう一つ私はやはり工業製品農業製品の違いではなかろうかという感じが、大変先生のおっしゃることすべて私は同感でございますけれども、もう一つそれを加えていただけるならば、私は大変ありがたいのじゃないかと思っているわけでございます。  そこで、いろいろとございましたが、御質問の点は、日本人食生活も非常に変わってきた、特に米食中心からどちらかと言えば肉食へ指向しているのではなかろうかという御意見でございます。後ほど事務当局から詳しい数字説明させますけれども、この国民生活の、私どもは大体三十五年以降の数字を持ってやっておるわけですが、その三十五年以降の数字で見ておりますと、確かにそういう傾向があらわれてきております。そしてその結果、カロリーの吸収も多くなってきているわけでございますが、ただ、そうは言うものの、最近の酪農関係の牛乳がわりあい在庫が多くなったとか、こういうのはやはりわれわれの見込みほどは正直、消費が伸びなかったという点もあるわけでございます。それで、いまこれが今後変化していくか変化していかないかは、これはまた別でございますけれども、いま現時点での日本人食生活の少なくとも脂肪たん白質炭水化物PFCバランスというものは、一番人間の食生活にとって望ましい姿である、理想的な姿であるというのがあるわけでございますけれども、それに一番近いものである。いま御指摘のように、今後肉食により指向していくことは間違いないと思いますけれども、余り指向し過ぎてしまうと、今度やはり脂肪の方が多くなり過ぎて、いわゆる欧米型の食生活になっていく。これは必ずしも欧米型の食生活というものは脂肪が多過ぎて理想的な姿からいけば望ましいものではないと言われておるわけでございまして、そういう点から考えると、指向している、それを強制的に抑制することはできませんけれども国民食生活あり方として、私どもは、機会あるごとにいろいろまた——機会というのは、たとえば料理教室というようなものもあると思いますし、あるいは学校給食というものもあるだろうと思いますし、まあ私どもが関与できる機会はできるだけとらえて、やはりいまの食生活あり方が望ましいものであるのです、ですからこういうようなバランスのとれた食生活をなるべく維持をされる方がいいのではないでしょうかということを、われわれはできるだけ指導していく必要があるのではないかと思っておるわけでございます。  PFC数字その他については、事務当局から説明をさせます。
  5. 鴻巣健治

    鴻巣説明員 お答えいたします。  いま大臣からお話がありましたような、PFCカロリー比と申しますが、Pというのはたん白質でございます、Fは脂肪でございます、Cは炭水化物でございますが、その栄養バランスを見る場合に、たん白質炭水化物脂肪バランスよく組み合わされてとっているかとってないかが大事だと思うのですが、私どもの方は、厚生省日本人栄養所要量から見てますと、全体の食糧カロリーに計算いたしまして、その中のたん白質の割合が一二ないし一三%あればよい、脂肪は二〇ないし三〇%あればよい、炭水化物はまあ大体六割から七割、五七%ないし六八%あればよいと言っておりますが、実際の五十三年の実績では、P、たん白質日本人は一三%でございます。脂肪は二四%でございます。炭水化物は六三%でございます。そういう意味では、日本人の場合は適正比率目標の中に実績もぴったりおさまっているわけでございます。  これをたとえばアメリカ人食生活を比べる場合に、アメリカ人はやはり脂肪のとり過ぎ、それから炭水化物のとり足りなさというのが非常に問題になっていまして、アメリカの上院で、かなり、五、六年にわたって研究がなされた後、最終的には合衆国の栄養目標という形で報告書が出ておりますが、そのマクガバン報告によりますと、アメリカ人の場合は、脂肪を三〇%とればいいというところを四五%というように五割多い、逆に炭水化物の方は五五ないし六〇%とらなければいけないというのに対して四二%というように、脂肪のとり過ぎ炭水化物のとり足りなさというのが問題になっておりまして、そういう点から見て、マクガバン報告等でも日本型の食生活というのを頭に置いて大分いろいろ研究もしていたようですので、アメリカにおいても最近日本型食生活というのが改めて評価され見直されてきているという現状でございます。
  6. 保利耕輔

    保利委員 いまのお話は大体よくわかりました。ただ、現在の日本人食生活が大体ほぼ理想的に近い形であるというふうに考えますならば、今後仮に肉食傾向がとまらない、肉食をする傾向が今後とも伸びていくということであれば、何か歯どめをかけなければいけないというようなことも考えられるわけでございますけれども、その点についていかがでございますか。
  7. 鴻巣健治

    鴻巣説明員 お答え申し上げます。  これからの日本人食生活について、いま先生の御指摘のようないろいろな問題があると思うのです。これからも、傾向的に見ますと、栄養水準としては一人一日当たり二千五百カロリーで大体今後十年間は推移するだろうというように見込まれておりますが、その中で、先ほど先生お話に御指摘ありました、だんだん若い世代が人口の中での支配的な層を占めるようになってきますと、いままでよりも、まだ緩やかではあるけれども肉食傾向が進む。その中で、炭水化物消費が若干ながら減るという傾向は残念ながら続かざるを得ないだろうと見込まれています。そこで、農政審議会等の中での御意見の中でも、それにどういう形で歯どめをかけて日本型食生活維持するのかという議論がいろいろ出ました。一つは、自然のままにほっておいても十年ぐらいは栄養バランスが崩れるようにはならないから大丈夫だという見方もございますが、もう少し強烈に、非常に強制的といいますか、かなり強い指導で何かやったらどうだという御意見まで出ておりますが、大方の御意見は、むしろいまの段階で言いますと、あるいは農林省とか厚生省というのが一緒になって児童、主婦その他一般の日本国民に対して、栄養バランスがいい日本型食生活啓蒙普及すべきであるという御意見が圧倒的に多いわけです。アメリカでもいまのマクガバン報告に基づきまして、アメリカ農務省保健衛生省一緒になってかなり大々的なキャンペーンをやったり、健康に関する研究所をアメリカ国内に三カ所つくったりしてやっておりますが、いずれもそういう意味では、国民生活の自由の中での啓蒙普及という手法を使ってやっておりますので、私たちもこれから基本的には、現在の食生活を見直して、それを啓蒙普及しながらいまの食生活維持、定着させていくことが大事ではないかと考えております。
  8. 保利耕輔

    保利委員 どうもありがとうございました。  次に、先般食糧自給力強化に関する決議というものが衆議院でなされましたが、この自給力というものの限度ということについてお尋ねしたいのでございますけれども自給力が一〇〇%という状態というものは現実的には考えられないだろうと思うわけでございます。農林水産省としては、この自給力強化のめどというものを一体どの辺に置いておられるのか。極端なことを言えば、一〇〇%自給力を目指すのか、あるいは必要な部分というものは従来どおり輸入をしていくのだという考え方にお立ちになるのか、その辺について、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  9. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども、この間国会決議もいただきまして、最近のアメリカ対ソ穀物輸出停止の問題なり、あるいはFAOの二〇〇〇年の姿を想定してのある程度の、非公式ではございますが、試算なりを見ておりますと、やはり今後できる限り国内自給力を高めていく必要があることは当然であると思っております。できる限り努力をしていかなければならないわけでございますけれども、その自給力という意味において、結果的に常に自給率といいますか、現実にいまお話しのように一〇〇%はいかないにしても、相当高いものまでつくっていくかどうかということになりますと、片っ方において、食生活を強制できれば別でございますが、先ほどのお話のように、なかなか強制ができないということになりますと、たとえば、日本の場合には一番自給率が達成できておるのは米でございます。米中心食生活変化をしていくことができれば、これは大変にありがたいわけで、たとえば、米と野菜と果実と、あとは国内でできる動物性たん白質は、国内でできる範囲養鶏養豚の、どちらかといえば自給率の高い肉を中心として、ブロイラーあるいは豚肉を中心とする。こういう姿でいけば、私は必ずしも一〇〇%に近いものが不可能ではないと思うのでございます。  しかし、今度、そうなってまいりますと、これはそのものずばりは確かに自給率は高いのでございますけれども、それを生産するために必要な飼料というものになりますと、いまほとんど一〇〇%と言っていいくらい、特に養豚養鶏の場合には飼料穀物を供給しておられるわけでございます。確かに一部はそれ以外のものもございますけれども、相当高い、一〇〇%近い形の飼料穀物が提供されておる。そしてまた、それは一〇〇%と言っていいくらい輸入に依存しておる。そうすると、結局自給率を総合的に考えてまいりますと、穀物自給率の面を見ますと、非常に低いものでございますから、今度、総体的な総合自給率ということになってくると、結果的に落ちざるを得ないというのが現実の姿でございまして、ですから、たとえば豚とか鶏も、昔のように豚は残飯を食べさせるとか、あるいは鶏には貝がらを削って食べさせるとか、何かそういう姿にもう一度戻っていくということを前提にするならば、その自給率を高めていくということは必ずしも不可能ではないと思うのでございますけれども、そういう姿になってくると、今度は自給率と言っても数量は非常に落ちていくわけでございます。数量が落ちていく中で、果たしてそれでは国民食生活に対応できる量が提供できるかというと、今度はそちらの方が不可能になってくるということでございますので、なかなか——飼料穀物国内自給できるようなことが何かできるならば、私はまた非常に変わってくると思うのでございます。その点がいま現実の問題として非常にむずかしい。  もう一つは、経済的な負担の問題で、たとえばトウモロコシでも、あるいはいま私ども非常にまた皆様方も非常に注目していただいておる飼料米、こういうものがいまの飼料穀物に品質的にはかわり得ると言われておるわけであります。ただ、コスト的な面であるとかいろいろな面で制約があるわけでございまして、そういうものが幾ら高くてもいいのだという国民的な合意がもし得られるとすれば、私は自給率は非常に高くすることは不可能ではないと思っておるわけでございます。その辺が、国民合意がなかなか得られないものでございますから、いまのところ穀物自給率が非常に低いために、結果的に総合自給率も非常に低くなってきている、こういう判断でございまして、なかなかむずかしいのでございますが、しかしそうは言うものの、万が一緊急事態が発生するということも考えられないわけではございませんので、この間のああいう国会決議もありまして、それを踏まえて、私ども緊急事態の場合にそれじゃどうするのだ。先ほどのお話で、農業生産というのは急にそれじゃより多くのものを生産しようと思っても、非常にタームが長いものでございますから、そう簡単に普通の工業製品のようにどんどん大量生産するわけにはいかないわけでございます。そこで、そういう場合に備えて、潜在的な可能耕地面積と申しますか、そういうものをいかに確保していくかということ、それから今度それを耕作するだけの潜在的な労働力をどう確保していくかという問題も、緊急の場合を踏まえれば必要であろう、こういう議論が従来は正直に言って余りなかったわけでございまして、私どもいまこれからそういう議論を、国会決議もございましたので、やっていくという段階でございまして、まだその辺の数字も詰まっていないわけでございますけれども、当然私どもそういう考え方でこれから進めていかなければならない。  そうすると、今後やはりこれが、一体水田利用再編対策を進めていく上にも、どういう形で耕地面積を確保しながら進めていくかということも、一つの大きな考え方を入れてまいりますと、従来以上に多少変わった考え方で対処していかなければならないことも私は出てくるのじゃないかと思っておりますし、あるいは二種兼その他の問題にいたしましても、ただ単純に二種兼はもう要らないのではなくて、やはり一つ潜在農業労働力としてそういうものをどう確保していくかということも非常に大切な問題であると思いますし、これからの農政議論していく場合には、この緊急の場合を想定いたしますと、いままで以上に相当変わった議論も必要であり、ある程度方向づけも多少いままでとは少し修正していかなければならない方向も出てくるのではないか、こう考えておるわけでございます。
  10. 保利耕輔

    保利委員 御高説を拝聴いたしまして、大変にありがとうございました。実は、私は、農林水産省農業生産手段整備を精力的にやっておられるというふうに理解をしておりまして、しからば、農業生産手段整備というものがどういう観点からされているのか。つまり、非常に観念的な話になりますけれども、これだけの需要があって、これだけは大体輸入をするんだ、これだけは自給するんだ、したがって、この自給に見合う生産手段整備をしていくんだという一連の流れというものが何かあってしかるべきだなというふうな感じをいたしておりました。需要というものは大変つかみにくいものでありまして、特にこういう激動する世界情勢の中では、どういうことがあってもこれに対応していくという柔軟性も兼ね備えなければいけないということを考えますと、大変に御苦労なお話だと思いますが、ひとつそこら辺の見通しをしっかり立てていただいて、今後の農政をお進めいただくようにお願いを申し上げたいのでございます。  時間がございませんので少し飛ばしまして、最近、米の消費拡大ということが言われている中で、学校給食の問題が取り上げられております。私も二、三の学校へ参りまして、現場の人からいろいろ話を聞いてみたわけでございますけれども、現在の学校給食の実態、特にお米というものはどのくらいの割合で食べられているのか、それから一食当たりどのくらいのものが児童の給食として使われているのか、あるいは生徒というものはこういう食事に満足をしているのか、おいしいと思って食べているのか、しようがないから食べようとしているのか、そういったことについて、文部省の当局でもしお調べになっていらっしゃれば、ちょっとお伺いしたいと思います。
  11. 坂元弘直

    ○坂元説明員 まず、米飯給食の実情でございますが、御承知のとおりに、昭和五十一年度から五十六年度にかけまして、週二回の米飯給食を各学校現場でやっていただくという計画を立てて、現在鋭意それを進めておる最中でございます。毎年五月現在で私ども米飯給食の実施状況をとっておりますけれども、五十一年度五月から五十四年度五月までの調査を見てみますと、一応毎年順調に数字は伸びておるという実態にございます。五十一年度五月現在で三六%の学校が米飯給食を実施していたのに対して、昨年五月では七八%の学校が米飯給食を実施しておるという状況になってはおりますけれども、ただ、回数の点で申し上げますと、七八・三%の学校が月四・六回、言いかえれば週一回強程度しかなお米飯給食をやっていない。この具体的な実施状況を見ますと、各都道府県あるいは同一都道府県内であっても地域によって差がございます。端的に申し上げますと、大都市を中心とする地域は米飯給食の進捗率が非常に低いという状況にございます。東京の二十三区、大阪市、横浜、川崎、京都、福岡というような大都市の米飯給食をどうやって前へ進めさせるかということが、米飯給食についての私どもの緊急にして最大の課題だということで、関係者にいろいろとお願いをし、現在取り組んでおる最中でございます。  それから、学校給食がどのくらいの経費でやられておるのかという御質問でございますが、これも五月現在で私ども調査しておりますが、昨年の五月現在での調査ですと、大体、小学校で百五十六円から八円、それから中学校で、これはやや量がふえる関係で百七十円弱というような状況になっております。非常に安い値段で学校給食が行われておるというふうに一見おとりになるかもしれませんが、これは食材料費だけの経費でございまして、この百五十六円ないし八円あるいは百七十円弱の中には、たとえば牛乳については現在二百CC五円八十銭の補助金がございます。トータルで百七十四億円。それから、米の値引きにつきましては、五十四年度にいたしましても百億強の値引きのための国の補助金が注がれておりますし、小麦粉の流通経費、全国一律に同じ値段で学校現場に供給するというための流通経費として十億の金が注ぎ込まれておるというようなことで、国の補助金等を抜きにした経費が百五十六円から八円ということでございます。  さらにもっと経費の点を申し上げますと、人件費、光熱水料、あるいは施設設備の維持管理費、これはすべて市町村、設置者が負担しております。この負担の金額を見ますと、大体食材料費とフィフティー・フィフティーであろう。そうしますと、原価約三百円の学校給食を学校に提供しておるということになるわけでして、私ども決して安いというふうには考えてはおりません。  じゃ、学校現場の子供たちがそれについてどういうふうに受け取っておるかということですが、これは子供たちの嗜好それから子供の体質等によって若干の例外がございますが、大半の子供たちは、学校給食が楽しい、おいしいという評価をしているというふうに私ども理解いたしております。
  12. 保利耕輔

    保利委員 いま大変に懇切丁寧な御説明がございまして、大体学校給食の現状というものがわかったのでございますけれども、これは大変断片的な情報というか断片的な聞きかじり事項になるわけでございますので、余り申し上げるのはどうかと思いますが、米飯給食というものに対して、学校給食をやる側の当事者というものはどういうふうに考えているかというと、一般的に言ってめんどくさいということを言っております。私が見た例では、パン食の場合はおかずを大きななべで一回つくればそれでいい。しかし、米飯給食をやります場合には、御飯を炊いて、そして、炊き上がりて蒸らしたところでその御飯をおかまから出して、そのおかまを洗って、その同じなべで、大きななべでございますので一つしかないわけでございますけれども、そのなべでおかずをつくる、こういうことをやっております。また、食事の場合におさらの数がふえるわけでございます。御飯をつぐおさらというものが一枚よけいに要る。これが全校生徒千人とか千五百人とかということになりますと大変な数になる。それから、お米は乾いてしまいますと非常に洗いにくいという問題があるようでございます。したがいまして、米飯給食を拡大していく、あるいはこれ以上に米飯を子供たちに食べさせるということになりますと、やはりそういった障害を除去してやらなければいけないということになろうかと思います。  そこで、もう一つ意見として、お米が余っているから子供たちに食べさせるのかという非常に率直な意見があります。しかし、学校給食というものは、本来、子供たちがお米を食べれば体にいいんだ。先ほど大臣の御説明もあったわけでございますけれども、いまのパン食だけでは栄養が偏ってしまうというような、ある理念といいますか、これが一番いいんだという、いわば給食の理想像というものを描いた上で、米飯給食というものを拡大していくという形で、校長先生なりあるいは教頭先生なりにお話をいたしませんと、先ほどのように、お米が余っているから食べさせるんだろうというような言葉が出てくるのではないかと思うわけでございます。したがいまして、今後そういったところに配慮をされて、米飯給食の拡大に努められるようにお願いを申し上げたいと思います。  また、最近の新聞で見かけるところによりますと、生徒の骨格といいますか骨が非常に弱いという問題が出ております。好きなものを好きなだけ食べている現代にあって、ぼくらが子供のときには本当に煮干しか何かをかじって育ったわけでございますけれども、そういういわば粗食で育ってきた人間たちに比べても、現代の子供たちは骨が弱いというのは一体どういうところから来ているんだろうか、私は実はよくわからないわけでございますけれども、多分運動不足というようなこともあって——本来子供というのはおなかが非常に減って、何でもがつがつ食べてしまうというのが子供のあるべき姿じゃないかという感じもいたします。そうなってくると、これは学校教育全体の問題に絡んでくるわけでございますけれども、もう少し運動をさせて、何でもとにかく食べさせてしまうというような、ちょっとむちゃなことかもしれませんけれども、そういった方向も必要なのじゃないかと思います。米飯給食の問題について、大臣御所見がございますれば、お伺いをいたしたいと思います。
  13. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 確かに、私ども学校給食における米飯というものにつきましては、先ほど申し上げましたように、日本国民食生活がいま非常にいい形になっておるわけで、これはやはり今後とも維持し推進していくべきだと思っておるわけでございます。そういう中にあって、子供のときから米になじんでいく、あくまで日本人食生活米中心であるという考え方を植えつけるという意味においても、学校給食における米飯給食は大変大切なものであると私は考えておるわけでございます。  これは直接は文部省に所管をしてもらっておるわけでございますが、いま文部大臣も、学校給食における米飯給食は非常に理解をもって対処していただいており、文部省当局もそのもとにまた十分理解をしていただいておると私は判断をいたしておりますので、きょうのせっかくの御意見を私から必ず文部大臣にお伝えをし、ぜひそういう考え方一つの理念をもって、学校給食における米飯給食を普及をするようにより一層努力をしていただくように、私からよく申し上げておく、こういうことをお約束をさせていただきます。
  14. 保利耕輔

    保利委員 まだ私はいろいろお伺いしたいことがございます。最近審議をされました農地三法に絡んで、農業の近代化というものが進められていく中での農業の機械化というような問題についても、一遍農林水産省御当局のお考えをいろいろ聞きたいと思いますし、また、いろいろな問題が現場から提起をされておりますので、そういうことも一度機会があればまた御質問させていただきたいと思います。  大変に時間がなくて残念でございますが、最後に、五月十三日の朝日新聞の夕刊でございますが、「「国土防衛」見通し暗く?!」ということでいわゆる松くい虫の被害の問題が大きく報じられております。実は私の出身地は九州でございますけれども、大変にきれいな松原がございます。幅が一キロ、長さが五キロあるというような松原が現在きれいな形で存在しておるわけでございます。この農薬散布の効果が、非常に効いた例としてこの記事でも紹介をされておるわけでございますけれども、年間一千万本に及ぶと言われる松の被害を食いとめるために、林野庁御当局のこれからやっていくべき一つの方針なり方向なりを、簡単に御説明いただければありがたいと思います。
  15. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 お話しのとおり、松くい虫が五十三年度をピークといたしまして大変多く出ておるわけでございますが、これはそれなりの原因があるわけでございますけれども、ただいまこの防除対策の方針を示せというお話でございますので、まず一番大事なことは、やはり被害の発生を事前に防ぎます予防措置が重要であるということでございます。このため、いま虹の松原の例を挙げてお話がございましたが、薬剤の空中散布によります特別防除を今後とも計画的に実施することによりまして、効果的に被害の防止をはかるということにいたしておるわけでございますが、そうは申し上げましても、自然環境あるいは生活環境の保全、農業、漁業に対します被害の未然防止等の観点から、すべての被害松林を対象として特別防除を実施するということは現実には行い得ないという実態にございまして、この場合には地上散布または被害木の伐倒駆除を徹底することにいたしておるわけでございます。今後とも、特別防除等によります予防措置と伐倒駆除を有機的に組み合わせて実施するということによりまして、地域全体としての防除効果を高めるように努めてまいりたいというふうに考えております。  さらに五十三、五十四年度の激甚な被害状況にかんがみまして、防除事業等被害地の森林造成及び復旧を一体的に推進いたします松くい虫被害緊急対策を五十五年度から新たに実施することにいたしておりまして、また、被害木の有効利用を促進いたしまして、あわせて、駆除効果を高めるため、被害木の伐採、搬出等に対します費用を林業改善資金の無利子融資の対象に新たに加えることにいたしておるわけでございます。またさらには、この被害の防止のための新たな防除方法の開発、あるいはマツノザイセンチュウに対して抵抗性を有します松の新品種の創出など、試験研究も積極的に進めておるところでございまして、以上のような総合的な対策を地域の実情に応じ効果的に実施することによりまして、被害の収束に向けて最善の努力を払ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  16. 保利耕輔

    保利委員 どうもありがとうございました。風光明媚な日本の松でございますから、ひとつ林野庁でも力を入れて守っていただきたいと思います。  終わります。
  17. 内海英男

    内海委員長 柴田健治君。
  18. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 もう国会も最終を迎えておるわけですが、林業問題で少し大臣と論戦をしてみたい、こういうことでお尋ねを申し上げますからお答えを願いたい、こう思います。  まず、その前に、毎年恒例であるのですが、米価問題がもう近々に論議されるときが来たわけです。七月上旬に米価が決まるわけですが、ことしは参議院選挙が中に絡んでまいりますからいつごろになるだろうか、選挙よりか農民の立場から言うと米価の問題に重要な関心があるわけですから、およそいつごろ決まるかというのが大きな問題なんですが、大臣考え方として、ことしは米価は七月の二十日を過ぎるのか二十日以前に決まるのか、その点の見通し、米審の予備審査がいつごろ始まるのか、本格米審がいつ始まるのか、いま煮詰まっておればお答えを願いたい、こう思います。
  19. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだ最終的に日程は決めておりませんけれども、いま御指摘のございましたように、参議院選挙もございますので、多少従来よりはおくれるのではなかろうかと思いますが、大体七月の十日前後ぐらいに前広米審をやらしていただきまして、それから従来ですと大体一週間ないし十日後には正式の生産者米価を御審議願う米審を開いていただくということになっているようでございますので、大体その辺の見当で進めなければならないと思っておるわけでございます。
  20. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 われわれはそれに対応して、ひとつことしは米価を上げてもらわなければならぬという気がするわけです。ことし上げないともう三年連続据え置きということになる。先般も農地三法の論議をした中で、われわれの同僚議員は、農政審議会の答申が出ない前にこういう法案を審議することはいかがなものか、こういうことで非常に不満を持っておることも事実であり、それから、農政審議会の答申が今年七月に出る、それに合わせて米価審議会で新しい米価が決まる、こういうことをかみ合わせを考えたときには、ことし米価を抑えられて三年間連続据え置きということになると、これは農民にどんな施策を要求しても、もう農林省の言うことを聞かないようになってくるのではないか、もう政治不信も高まるだろうし、行政不信も高まるだろうし、そういう点をわれわれは心配しておるから、ことしの米価は諸物価の高騰等を考えて上げざるを得ないだろう、こういう判断をして、上げる率はどうなるかわからないが、据え置きということはあり得ないだろう。これから参議院選挙でわれわれは街頭でやるわけですが、政府・自民党は米価は上げないぞと、こういう宣伝をするのがいいのか、多少上がるがいいのか、大臣、あなたも政治家だから、米価を上げますと、こういうことで表明ができるのかどうか、まずその点を聞いておきたいと思う。
  21. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大変むずかしい御質問でございまして、参議院選挙を控えて、政府与党の立場からいけば、それは農民に喜んでいただけるように、米価はできるだけ上げるように努力しますというぐらいのことが言えれば、これは大変ありがたいことなんでございます。しかし、現実には、確かに御指摘のとおり、農業資材その他も上がっておることは事実でございますけれども、一方においては米の大変な過剰を招来をいたしまして、いま何とか需給均衡を図るために、大変御批判をいただきながらも水田利用再編対策を強力に進めて、そして何とか転作をしていただきたいという方向でお願いをいたしておることも、これは事実でございまして、米の消費拡大、もちろん私ども、今後も努力をして政策を強力に進めてまいりますけれども、いま日本人の米の消費が一人当たり大体八十一・六キロ、この八十一・六キログラムが今後全く変わらない、これ以上は減らないんだという見通しが立ってくれば、これは私ども大変ありがたいのでございますが、いまのところなかなかその見通しも立たないものでございますから、そういう点で非常に苦慮いたしておるわけでございまして、いずれにいたしましても、生産者米価を決めるのはやはりルールどおり米価審議会の御審議を願って決めるわけでございますので、先ほど申し上げましたように、政治的にはいまここで、もちろん私どもは上げる方向でありますようなことを言った方がいいことは確かでございますけれども、なかなかそこまで言い切れないのが現状でございまして、もう少し私どももよくいろいろの分析をし、その結果を前広米審にいろいろと御審議願い、そしてその結果を踏まえ、米審において生産者米価についていろいろ検討していただきたい、こう考えておるわけでございます。
  22. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 なかなかあなた、誘導尋問にかからぬわけで……。  いま全国的に農協の総会が各単位内で開かれている。農協の事業内容なり決算を見て感じますことは、購買事業の中で農機具代がトップ、その次が油であります。それから肥料。今度順番が逆になって油代が第二位になっている。ある町村においては油がトップのところもあります。それだけ油の価格が引き上がったということ、そして消費量も伸びたんでしょうが、どちらにしても農家の支出というものは、ほかの作物は余りつくってないから、もう米に関してそれだけ資材費をかけておるということは間違いないですね。それから、貸付金を見ておると、裕福な農協は貸付金が三割台のところもあります。けれども、山村地域の農協の貸付金の率は大体七割は超しておるところがあるのですね。そういうところの農家の金利の負担というものもばかにならない。  そういうことを考えたときに、都市近郊の農協と、中間的な農協、それから完全な山間地の農協の収支のバランスというものを検討したときに、農家の支出が大幅にふえておるということは間違いない。  そういう中で、ことしも米価据え置きということになれば、それは大臣はもう八月の改選で大臣をやめられるんだからいいか知らないが、農民としては、大臣が何様になろうとも、これは爆発的な不満が起きるだろう、こういう気がするので、そういう点は十分踏まえて、米審、米審言うて責任転嫁せずに、結局、諮問案は農林省がつくるわけですから、その点の基礎的な問題には十分配慮すべきではないか。ここで数字を挙げて論議することはいたしませんが、ことしの米価についてはそういう重大な決意で臨んでもらいたい、こういうことをつけ加えて、次に林業問題に入りたいと思います。  ことしの林業白書を見まして、われわれは不満でありますが、自給率が最低になったという原因は、何でそういうことになったのか。これはもう自動的になったのか、人為的になったのか、責任を明らかにしないと、次の林業施策というものは生まれてこない、こういう気持ちを私は持っておるわけです。  それから、なぜ三一%台に自給率が下がったのか。昭和三十五年から言うと、林業関係全体の就労人口は四十五万人おった。それが十八万人に下がった。それだけいろいろ山で働く労働者も減っている。そして素材産出の労働者も、流通の関係で全体に減ってきた。製材工場で働く人も——製材工場も近代化などで整備統合したんだと言うが、あれは整備統合ではない。製材工場は整備統合したんではないんですよ。ほとんど倒産してしまった。そういうことを考えたときに、自給率がなぜ下がったのかということの責任、この点を明らかにすべき必要がある。そういう立場から大臣の所見を聞いておきたい、こう思うのです。
  23. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 いま御指摘のとおり、五十三年度の自給率は三一・五%でございます。この下がった原因は何かという御質問でございますが、大変複雑な要因が絡んでおると思うわけでございます。  たとえば材価の問題でございますが、昭和五十年以降昨年までほとんど上がらずに低迷を続けておったということでございまして、一方、賃金でありますとか、あるいはほかの物価が上がってきておりまして、林業に投資するという意欲がまず失われてきてしまっておるということが一つ言えると思うのでございます。また、いま先生も御指摘ございましたが、いわゆる山村におきます担い手の確保が非常にむずかしくなってきておるということも言えるかと思うのでございます。  そこで、私ども今後の林業の振興の課題といたしまして、いわゆる山村に人が定住していただくということがまず第一でございまして、そういうことによって林業労務の確保ということがまず大事でございます。  また、外材対策といたしましては、やはり将来とも外材を入れていかなければ日本の国の木材需要を満たすことができませんので、やはり安定的にかつ継続的に輸入をしていくいろいろな手だてをしていかなければいかぬというふうに考えておりまして、外材対策と国内対策と両方を並行してやっていかなければ、なかなか自給率を高めるという方向にはいかないというふうに考えております。  また、先生もすでに御承知でございましょうが、わが国の森林の約四〇%に当たります一千万ヘクタールが人工林になっておるわけでございますが、そのうちの七〇%が二十年生未満の幼齢林ということでございまして、そういうような資源の賦存状況も現在の自給率が低いという要因の一つになっておると考えておるのでございます。
  24. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 私は大臣に責任を聞こうと思ったら、長官が、どちらが大臣か、林業問題についてはあれなんですけれども。  今度林政審議会に諮問されて出た答申が閣議決定される。閣議決定されたら、それが日本の林業政策の基本をなすものでありますから、われわれにとっては重要な関心事である。今月いつごろ答申について閣議決定されるのか、大臣、ひとつお答えいただきたいと思います。
  25. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどは過去の分析でございましたので長官からお答えをしたわけでございます。  私も、考え方といたしまして、せっかく先生指摘でございましたので、先ほど人工的か自然的かという御指摘がございましたが、日本の森林資源は一度にそうできるわけではないわけでございまして、戦争中あるいは戦後のいろいろな影響がここへ来て出てきていることも否めない事実であろうと私は思います。  それから、もう一つは、長官から答弁をいたしましたように、就労人口が非常に減ってきておる。これは林業労働者の待遇がまだ必ずしも十分でないという点、特に定職として林業をやっていくような形にまで正直なかなかいっていない、山林労働の就労者がその辺がなかなかうまくいかないというのが実態であろう。片一方において、高度経済成長が非常にありまして就労機会の多くなるものがあったということによって、林業労働者がどんどん減ってきてしまったということではないかと私は考えております。もちろん、それですから、国全体としては大きな一つの、自然だけでない、ある程度の責任があろうかと思いますが、これは林野庁あるいは農林水産省だけの問題ではないのではないかと私は思っております。  それから、今度の審議会で御答申いただいたものを一体いつごろ閣議で決定するのかというのは、今月中、五月下旬ぐらいをめどにいたしております。
  26. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 今度閣議決定されるものは、森林資源に関する基本計画と林産物の需要と供給に関する見通し、この二本立てなんですが、この二本立ての中身をちょっと見ると、どうも思いつきというか場当たり主義で数字を合わせただけではないかという気がするわけです。四十八年に改定されたものと今度の改定案を比べてみると、面積について総数は、今度は二千五百二十六万ヘクタール、四十六年のを押さえたのでしょうが、前回の四十八年のときには二千五百三十六万ヘクタール、十万違うのですね。これらの十万の林地がどういう形で減ったのか。これから順次減さないような計画になっておりますが、この前も減さないような計画だった。二千五百三十六万ヘクタール、これはもう総面積を減さない方向で計画をとった。今度は減って出してきた。これは何でこんなことをするのだろうか。  それから、前の計画は、昭和六十六年、七十六年、八十六年と総面積は一つも変わっていない。変わっていない数字を押さえている。今度は二千五百二十六万ヘクタールで、十万減して昭和九十一年まではずっとそのままで同じ面積で押さえている。前回も同じ面積でずっと来ているのに、今度の改定では十万減して出してきている。なぜこんなふうに面積を減して出したのか。前の計画ではずっと変わっていない。人工造林の面積は、これも食い違いがある。天然林、これは人工林に切りかえる場合がありますが、しかし総面積は変わらないという前提に立って前の計画はできている。今度は急遽減している。そういうことで、数字的にどういう根拠、積算でこうなったのかという疑問が起きるわけですね。この点は長官の責任でやったのだろうから、お答えを願いたい。
  27. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 森林資源基本計画並びに林産物需給の長期見通しの改定の基本的な考え方をまず申し上げてみたいと思います。  資源計画については、森林の機能を高度に発揮し得るように森林資源の整備を図るという基本的な考え方は、前回の現行の計画と同様に考えておるわけでございます。ただ、いま面積の御指摘がございましたが、将来の森林面積については、昭和五十一年に閣議決定をされております国土利用計画におきます森林の目標面積との整合を図ったということでございます。  そのほか、今回の改定計画においては、造林、林道等の整備の目標数値、達成進度等の見直し、あるいは将来の木材需要の多様化と森林の公益的機能の確保のための森林施業の検討などを行いまして、森林資源整備の目標を定めるとともに、その計画の目標の達成を図るための施策の方向を盛り込むことにいたしておるわけでございます。  また、この長期見通しについては、新経済社会七カ年計画の経済成長率等を参酌いたしまして、用途別に需給を見通すほか、特に外材が大きな問題でございますので、世界の木材需給の動向、海外産地国におきます資源内容、森林政策、輸出政策等をできる限り把握いたしまして、外材輸入の的確な見通しに資することにいたしておるわけでございます。
  28. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 この資源整備計画の目標の蓄積のところにおいても、天然林、人工林というものは前のと比べると一つ実績が上がらない。実績が上がらないのに今度の改定では実績を上げるようにしてあるのですが、いままで上がらないものが今度はどういう形で——ことしの五十五年度の予算書を目を通してみて、どうもこの計画どおりいくだろうかという気がするのです。果たして責任が持てるのか。この長期の見通しは、見通しであるから、目標だから仕方がないのだ、こう言われますけれども、責任を持てる目標、計画でなければならない、その目標を達成するために予算をつけなければならぬ、これは当然のことなんですよ。ところが、予算を見ると、これからの問題だからそれはよろしいというようなものではない。前回の計画案に合わせて五十五年度の予算を組んだと言われるのか、新しい方向づけをするために五十五年度の予算には組んでいないというのか、その点の見解を聞いておきたい。
  29. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 五十五年度予算につきましては、現行計画で当然行っておるわけでございますが、実は、今回改定いたします両計画には、いわゆる目標達成のための政策課題を挙げておるわけでございます。  たとえば資源計画におきましては、森林計画制度の充実とその適正な運用、あるいは造林、林道等林業生産基盤の整備拡充、林業構造の改善、健全な山村地域社会の維持形成、保育及び間伐の適正な実施、森林の公益的機能の高度発揮のための施業の推進、林業労働力の確保、国産材の生産・加工・流通の近代化及び合理化、試験研究の推進というような課題を掲げておるわけでございます。また、長期見通しにおきましては、国産材の計画的な供給体制の確立、木材加工業の体質改善の推進、外材輸入の確保、木質系エネルギーの活用促進というような課題を掲げておるわけでございまして、この課題の中にも、五十五年度予算に計上しておるものもたくさんあるわけでございます。
  30. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 われわれは、計画を基本に置いて物を考え、判断をしなければならぬと思うんですね。この計画が余り根拠のないような計画では、この予算との組み合わせを考えたときに、十分理解ができないということが言えると思うのです。  需給の見通しでも、たとえば国内の供給量それから輸入の供給量、今度の改定では、五十一年で言いますが、五十一年の実績でいけば、輸入量が六六・二、前の改定では、当初ではそれがうんと少ないわけですね、五三・六。それくらい食い違いがあるわけですね。一三%から違うわけですね。こういう見通しの甘さというか、こういう案をこしらえてみたところで、一%前後の狂いというものはあるかもしれないけれども、一三%も狂いがあるようなこの輸入計画、まじめに計画どおり努力していると思われないという気がするのですが、この点どうですか。
  31. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 今回の計画の改定の趣旨が実はそこにあるわけでございまして、先生御承知のとおり、現行計画は四十八年二月でございまして、ちょうど高度成長の終わりのころでございます。したがいまして、今後の需給見通し等も相当高い水準で推移をするという見通しを持っておったわけでございますが、その後のわが国の経済基調に合わせまして、木材の需要につきましても、今後はそれほど高い成長は望めないという観点から、今回改定を行っておるわけでございます。したがいまして、いま御指摘のような一三%も違うという数字になってきたわけでございます。
  32. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 それでは、これから住宅の関係との関連があるわけですが、いま都市と農村との住宅構造が違う。農村は依然として木造が多い。ハウスのようなプレハブ方式のものもありますけれども、大体木造。いまわれわれは、日本人なら気象条件、湿度の関係からいうと木造住宅が一番合っておる。それから、湿度の高い国では、鉄筋コンクリートづくりの高層建築というのは健康にはよくないとわれわれは思っておりますね。ところが、土地の条件、そういうものを考えたら、高層ビルというか高層アパートというか、そういうものがどんどん建っていく。けれども、木造住宅の方が、健康からいうと一番合っている。いま四五ないし五五という比例になっておるのか。場所によって違うでありましょうが、林野庁としては、木造住宅をこれからどの程度つくってもらうのがいいか、その考えはありますか。
  33. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 木材需要が住宅着工戸数にもろに影響されておるということはお話のとおりでございまして、たとえば四十八年は百九十万戸を超えておるわけでございますが、五十四年は百四十九万三千戸、大体百五十万戸でございます。  最近の傾向を見ますと、大都市圏におきましては木造住宅率が下がってきておりますが、むしろ地方都市におきましては木造住宅率が上がってきておるという統計がございます。たとえば、大都市圏、東京圏、大阪圏、名古屋圏でございますが、四十四年度は、木造住宅のシェアが五三%ございました。五十三年度は四三%に下がってきておるということでございます。また逆に、地方都市におきましては、四十四年が四七%でございましたのが、五十三年は五七%というふうに上がってきておるわけでございます。  林野庁といたしましては、やはり国民のニーズに合った木造住宅の建設を進めていただきたいということで、在来工法の見直しと、木造住宅に関します研究なり施策をいろいろ進めてきておるわけでございまして、できれば日本の気候風土に合った、しかも日本人の好みに合った木造の住宅を一層推進していきたいという希望でおるわけでございます。
  34. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 何としても、今度閣議決定される基本計画と需給の長期見通しの二つの案については、あくまでも、日本国内の林業を発展させていくという前提に立って計画を立てられるわけですから、これを狂わしてはならない。計画を立てた限りはあくまでも責任を持ってやってもらわなければならぬ。  山の問題については、長期にわたる場合ですから、そういう計画という構想は第一条件要る。その次は人の問題ですよ。山を何としても守って、本当に日本の山をつくり直していく。植林も、つくる一つの方法ではあるけれども、造林という立場で位置づけをして山をつくるんだ。山をつくるためには人が必要だ。人をそれだけ使うためには安定させていかなければならぬ。雇用関係なり、いろんな問題がある。老後の保障も考えなければならぬし、賃金も考えなければならぬ。医療制度も考える。こういうことで、人に関係する諸問題もぜひ解決しなければならぬ問題だ。先ほど大臣が答弁をされた。いろいろおくれておる点がある、こういうことを言われたんですから、そういう認識で、前向きで取り組むなら、解決できないことはないと私は思う。それから、今度の閣議決定はもう絶対守っていくんだ、そういうものを踏まえて、人の問題をどうするかということを考えなければならぬ。その人の問題は、現行制度の中でどことどことが不備があるか。いま一番社会問題になっておるのは白ろう病でしょう。振動病。これすら完全にまだ手が打ってないという弱さがある。これらをこの二、三年のうちに完全になくす。そしていままでお気の毒にもかかった人にはどういう救済措置をするか。そういうものが具体的に出てこなければ、本当の林業政策をやっておるとは言えない。それは要するに、国有林であろうと、公有林であろうと、民有林であろうと、山に関する限りは同列で考えなければならぬ。そういうものを一元的に処理をしていく、解決をしていく、それを具体的に政策として国民の前に明らかにしていく、そういうものがなければならぬと思うのですよ。そういう点について大臣の見解を聞きたい。
  35. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私先ほど申し上げましたように、今日まで林業がわりあいに伸びていないのは、一つには林業労働者の問題が大きくあるということを私は申し上げたわけでございまして、この点については全く先生と同じ意見でございます。今後、林業に就労する人たちがより希望を持って就労していただけるような体制をつくっていかなければいけない。それには、その人たちの住んでおる村落において、これは直接の労働条件とは関係ないですけれども、やはり住んでいる村落を非常に住みやすい環境にするという生活改善もしていかなければならぬのも、一つの当然私はやっていかなければならぬことだと思います。  それから、いま一つは、林業に就労していても、それは一つの生計を立てていく上に十分であるという形にまでいくような努力をしていかなければいけないのじゃなかろうか。そうなってくると、これは個人でやっている人はともかくといたしまして、勤めてやっている方々に対しては、その退職金の制度などについてもっとしっかりした制度をつくっていかなければいけないのじゃなかろうかと私は思っております。何か臨時雇い的な形で行われることのないような方向に持っていかなければならないだろうと思っておりますし、また、いま御指摘ございました白ろう病を含めて、いわゆる労務条件と申しますか、白ろう病が起きないような形に、しっかりした労働条件を完備していかなければならないだろう。また、不幸にして白ろう病にかかられた方々に対しては、極力従来以上に十分な施策を講じていくということが必要ではなかろうかと思います。私も、この間初めて林業関係では公式には秋田の営林局を見せていただいたわけでございますが、現場へも行ってまいりましたけれども、白ろう病対策としては、機械なども研究して相当開発をしておるようでございますので、より一層開発をしていけば、それから時間をきちんと守るようにすれば、新しい、白ろう病にかからないというか、振動の非常に少ない機械も開発されておるようでございますから、今後は、ああいうような形になっていけば、相当防げるのではないかと思って帰ってきたわけでございます。  いずれにいたしましても、いま申し上げたようなことを総合的にやっていくということが大変大切であると思っております。
  36. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 自衛隊には、陸上自衛隊にしても全部で二十五万人ほどおられても、教育機関もあるし、病院もつくるし、至れり尽くせりのことをやっている。十分と言えるかどうかわれわれ知らぬけれども。とにかく山で働く労働者、本当に国土保全、国土防衛、全体の人間の健康、すべてを考えたときには、山にもう少し目を向けなければならぬし、私は常にそれを言うてきて、もう十年一日のごとく、日本の山をどうするかということをお互いにもう少し考える必要がある、こういう気持ちでいろいろの機会に言うてきたわけですね。  それから、いま山で働く労働者の皆さん、後継者育成、若返り法、いろいろ考えてみて、これからは雇用問題を避けて通るわけにいかない重要な政治課題でもあるし、何としても雇用関係を拡大する地域と言ったら、これから山にしかないだろう、こういう気がするわけです。山にもう少し雇用拡大という立場で力を入れなければ、本当の農村の雇用問題は解決しないのではないかという気もする。  そういうことからいって、山で働く労働者の健康管理に万全を期するためには、労働衛生学、予防衛生学、予防医学、臨床医学という一貫性のものがなければならぬ。それは農機具を使うにしても、山林のいろいろな機材を使う場合でも、労働者の人体に与える影響というものを考えて機械の開発をしなければならぬ。ただ合理主義、能率主義でというだけでやってきた。今日それがいろいろな形で弊害を出しておるわけですから、何としても山で働く労働者の身分保障も考えて、国だけでやれるものではないだろう、県も考えなければならぬ。  それから、たとえば無医村解消のためには、自治体が医科大学をつくってお医者の養成をしておるようなもので、山に働くそういう人々の養成機関というものをつくる必要がある。これだけ国土の七二%の面積を持っておる日本の国が、林業大学もない、そういう哀れな姿というものは、われわれは何としても理解できないし、不満がある。教育の面それから人間の健康の管理の面から見て、いろいろな施設をしてやらなければならぬだろう。それらが一歩も前向きで出てこないというのは、それだけ農林水産省は責任を十分果たしていない。私は林野庁長官だけ責めるわけじゃないけれども、これは大臣みずから山に対してもう少し力を入れないと、林野庁だけではできるものじゃない。地方公共団体への呼びかけも大臣みずから呼びかけるべきだ。とにかく林野庁は外局だからうまくやるだろうという程度では、うまくも何もやれないということになる。  この点について、総合的に将来どうするかということをもうこの辺で、長期の見通しなりいろいろ閣議決定されるときを迎えておるわけですから、閣議に臨んでも、大臣が、こういう方向で将来やるのだというぐらいのことは閣議で了承を得るぐらいの発言をしてもらわなければならぬ。ただ書いたものを、ペーパープランに目を通して、これでよろしいかという承認案件で承認をしてもらうという程度のものじゃない。そういうことをわれわれは強く感じますから、ひとつ大臣の今後の考え方を聞いておきたい、こう思うわけです。
  37. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、従来、森林資源の確保が十分でなかったという点においては、やはり林業労働者というものを十分確保していないという点もあるわけでございまして、今後のことを考えれば、日本の国家、先ほどお話のあったように、国土保全という観点からも森林資源というのは大変大切なものでありまして、将来この確保のためには、そこに働いていただける人々が本当に安心して働いていただけるような環境づくりをしていかなければならないことは当然でございまして、私ども決して、林野庁が外局みたいな形になっておるから、農林水産省の中で林野庁が冷たくされているとは考えていませんし、今後、特に治山という観点からいっても、林業に対しては相当力を入れていかなければならぬことは当然であると思っておるわけでございます。特に、私どもも、あちらこちらの山村へ参りますと、林業では働けないという形で出ていかれる方が非常に多いことも承知をいたしておりますので、何とかその辺の改善を考えていきたいと思いますし、閣議においては、ペーパーで一応出しますけれども、私から補足的に、特に林業のあり方に対しての意見を付して決定をさせていただきたい、こう思っております。
  38. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 先ほど長官が、ことしの予算については従前のレールの上を走った、幾分なりとも考え方を入れておる、こう言われたのですが、毎年ですけれども、今年八月には予算要求がある。五十六年度は、この閣議決定の方向でレールに乗せなければならぬ初年度になるわけです。だから、八月の予算の概算要求の時点で各党に呼びかけて、これからの林業をどうするか、林業政策をどう進めるかということで、現状の分析と農林水産省がこれからやろうとする考え方を事前にわれわれに明らかにしてもらいたい。われわれもお互いに、それぞれの党の方針もありましょうけれども、こうしたらどうでしょうかということで意見を言わしてもらいたい、こう思っているわけです。概算要求の段階で多くの皆さんの意見を聞くという姿勢がなければそういうことはできないわけですから、林業団体の意見も聞いたらよろしかろう、けれども、各政党の意見も聞く、そのくらいの熱意があってほしい。概算要求の段階で各党の意見を聞くというお考えがあるかないか、まず大臣に聞いておきたい。
  39. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども政府として、概算要求を八月末に決定いたします場合には、従来から与党とは十分連絡をとりながらやってきておるわけでございますが、いまのお話は、それを野党にまで拡大をして考えろということでございます。私ども、保革伯仲という国会の中にあって、ここ数年来、予算の最終段階で極力野党の御意見も承るようにして決定をいたしておるわけでございます。いま先生は、それをもう一つさかのぼって、概算要求のときにそういうことをしたらどうかという御意見であろうと思うのでございますが、貴重な御意見として検討させていただきます。
  40. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 山の問題は思想的にどうというのではないのです、本当は。いま力を入れないと取り返しのつかないことになるのではないかという心配を私はしておるわけです。だから、何としてもお互いの英知を結集しなければならぬ、そのときが来た、こういう気がしておりますから、ぜひそういう取り計らいをしてもらいたい。強い希望を申し上げておきます。  先ほど保利委員からも御発言がございましたが、松くい虫の問題、森林病害虫対策の問題であります。病害虫というのは野ネズミも何もひっくるめていろいろあるわけですけれども、ことしも野ネズミ対策に予算がついておるわけです。けれども、特に松くい虫の問題です。市町村が防除計画を立てる、その計画に沿って県が強力に進める、そして林野庁がそれを援助しておるという形になっておるわけですが、市町村がもう少し綿密に計画を立てて、早期に予防対策なり発生した場合の防除対策なり、その防除対策には空中散布もある、地上散布もあるだろうし、伐倒駆除もあるでありましょうし、焼却駆除もあるだろうし、いろいろやり方があるだろう。それは地域地域において考えなければならぬ。日本は人口密度の高い国でありますから、人間に与える影響を考えるならば作業のやりにくい点もありましょう。けれども、それを恐れておったのではこの松くい虫は撲滅されないだろう、こういう気がします。  だから、いま拡大しているのか鎮静化の方向に向かっているのか、この点をひとつはっきりとお答えを願いたい。これが第一点。  次は、跡地の問題です。跡地対策も、市町村の計画、それに合わせて県の計画がいま中央にどの程度出ておるのか。こういう方法でやりますという計画がどこの県とどこの県で出ておるのか、全然出てないのか。跡地対策の具体的な中身、こういうものをやりたい、こういう方法でやりたい、こういう計画が出てこなければならぬと私は思う。出てきておる県、町村の数、名前を明らかにしてもらいたい。
  41. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 まず、被害の現況でございますが、五十三年度は残念ながら二百七万立方という数字が出ておりますが、五十四年度につきましては、やはり五十三年の影響も受けておりまして、昨年の九月末現在の中間的な取りまとめでは、五十三年の同期に比べましておよそ一割増というかっこうになっておるわけでございます。したがいまして、鎮静化の方向に向かっているということは残念ながら申し上げられないわけでございます。  それから、実は五十五年度の予算におきまして、市町村が事業計画を樹立する経費を計上してございます。これは松くい虫被害緊急対策事業の一環として行うわけでございますが、特に被害のひどい三百市町村を選びまして、市町村自体が各種の事業計画を立てていただくということにしておるわけでございます。五十五年度が初めての制度でございまして、実はまだ具体的な計画は上がっておりませんが、現在市町村において策定段階である。したがいまして、防除の時期までには十分間に合うということで、今後詰めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  42. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 よくもよくもとあきれるほど蔓延をした、ここまで放任した責任は挙げて農林水産省にある。いままで小手先だけのやり方でやってきた。当初もっと初期防除をしておけば、こんなに広がらなかっただろう。それは昭和四十二、三年が山だったと私は思う。そのときに松くい虫の問題を避けて通ってきた経緯がある。枯れたら、ほうっておけばまた生えるがな、こう甘く見たところに大きな誤りがあったと思う。その償いの意味においても、これは早急に撲滅しなければならぬし、跡地対策を思い切ってやらないと、これはもう国土の荒廃につながってくるし、大変なことになると思う。これは五十五年度の予算を見ても十分とは言えない。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕 人間で言えば伝染病にかかったようなものだ。伝染病は何をほうっておいても処理するわけですよ。総力を挙げてやるわけですよ。ほかの業務をとめてでもやる。これは樹木の一つの伝染病なんだ。ほかの仕事をほうっておいてもこれに全力を挙げなければならぬと思うのです。それを、人の山だから国の山だからというような考え方があるところに問題があると私は思うのです。自分の財産だ、こういう考え方で全力を上げなければいけないと私は思うのです。それがことしの予算で七十億ほど、これで撲滅しやしないですよ。大臣、私が大臣なら恥ずかしいと思いますよ。松くい虫の問題が出たら逃げ隠れしますよ。あんたはずうずうしくもここに座っておられるけれども、もう少し松くい虫について本気でやられる意思があるかどうか、大臣の見解を聞いておきたいのです。
  43. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 どうも金額で御指摘をいただいているものでございますから、確かにことしの予算で全滅ができるような状況ではないことは私も承知をいたしております。そこで、この金高が少なかったから、松くい虫に対して人のものだからというような気持ちを持っているかということでございますが、決してそんな気持ちを持っていないわけでございまして、予算を思い切って取れば取るほどいいのでございますけれども、ことしの予算は非常に窮屈な中で編成をいたしましたので、そういう点では、伸び率で見れば大変高い伸びをいたしておるわけでございますので、その点で御理解をいただきたいと思います。  今後においては、本当にせっかく育ってきた松がそういう形で枯れてしまうということは、何もそれが個人のものであろうがだれのものであろうが、国家にとっても大変損失であり、先ほどもお答えをいたしておりますように、森林資源というのは簡単に短時日に涵養できるものでないわけでございまして、そういう点でも、いままで何十年とかかって育ってきたものが枯れていくというようなことは、何としても私は防がなければいけないと思っておるわけでございます。  私も、ちょうど予算編成が、すでに概算要求ができた後に農林水産省に参りまして、十分なことができなかったのでございますが、今度は、先ほど先生は八月ごろ内閣改造があるということで、私はいつあるか存じませんけれども、もしいまの職にとどまっておる限り、来年度の予算につきましてはできる限りひとつ配慮して努力をしてまいりたい、こう考えております。
  44. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 私は非常に山に関心を持っている男だから、明けても暮れても山——昭和四十二年、三年、二カ年連続して松くい虫で質問したことがあります。その時分にようよう四千万か五千万の予算です。そのときに思い切って予算をつけておったらこんなことはなかった。やかましく言って一億四、五千万になってそれが三億になってと、順次上がったわけですけれども、初めちびちびつけたところに問題があったと私は思うから、取り返しのつかないことをしたな、こういうふうにわれわれを含めて反省をしておるわけですが、何としても林野庁だけでは解決できないので、この問題には全力を挙げてもらいたい。  これはもう風光明媚論なんて言いますけれども、山が荒れるというくらい人間の心を荒らすものはない。いまついでだから申し上げますけれども、国を挙げて防災関係、病害虫も防災対策をしなければならぬが、山火事だってそうでしょう。いまは山に入るのにもう国民の心構えがちょっとおかしいという気がするわけですが、山へ遊びに行って荒らすという気持ちがあるんじゃないか。山には自分の健康のために行くのだ、同時に勉強しに行くのだ、こういう気持ちで山に入ってもらわなければ困る。それをどうも、山に入れば火をつけて焼いたりして山火事が絶えない。この山林火災対策をどうするかということは、農林水産省考えてもらわなければ困るのですよ。一つも減らない。結局だれがつけたかわからぬ。要するに山荒らし、これは国を挙げて山荒らしをしておるのじゃないかという気がするわけで、山荒らしをさせないようなそういう行政指導なりを行い、国民に訴えなければならぬ。松くい虫の防除対策も絶対的必要なんですが、山火事を出さないということも重要な問題だと思う。山を荒らさない、この点について、大臣、もう少し力を入れてもらいたい。これは答弁はよろしいが、つけ加えておきたい、こう思う。  私は、先ほど林業労働者のことをあわせて言っておきましたけれども、次に、木材の流通改善、高度利用、この予算が昨年より減っているわけですね。どの部門でも流通改善ということはみんな言うわけですが、木材においても流通改善ということは避けて通ることのできない重要な問題である。それが昨年から見れば減っておるわけですね。昨年の八億余りがことしは六億三千万、一億七千万から減っておるわけですね。大臣の責任じゃないでしょうけれども、この点をひとつ考え直してもらいたいというのが第一点。  その次は、特用林産物をもう少し奨励してもらいたい。予算をふやすばかりが能じゃないけれども、もう少し力を入れてもらいたいという気持ちでお尋ねを申し上げるわけです。  山林火災も建物火災も、火災というのは人間にとって非常に不幸を与えるわけです。いま年間二千人以上も焼け死んでいく、自殺する者もおりますけれども日本は火災件数から見て被害額が大きいという。要するに、人体に与える損傷というものを考えたときには、新建材の使い方が多過ぎる。私はその点を考えて、これから火を使う部屋はキリの木を使ったらどうか。特殊林産物としてもう少しキリの木を植えさせていく。キリは湿度の調整もできるし、火災予防にもなる。キリの木は燃えにくい。少々油がかかったってなかなか燃えるものじゃない。それから、炊事場その他の危険物を置くところにはキリの木を使わしていく。将来の住宅構造の中にそれを取り入れるべきだ、こういう気持ちから特用林産物の奨励の中で、キリの木を思い切って植えさせたらどうか、奨励したらどうかという気がするわけですが、大臣でも長官でもよろしいが、二つの点についてお答え願いたい。
  45. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 まず、木材の流通改善、高度利用対策でございますが、これはわが国の林産業の健全な進展を図る上から非常に重要な課題であるというふうに考えておるわけでございまして、このために、五十五年度におきましては、特に国産材需要の拡大について、木造在来工法住宅の改善普及事業の拡充ということで、実は五十四年度は八地域でございましたのを、五十五年度は九地域ということに拡大をしておるわけでございます。また、財団法人日本住宅・木材技術センターというのがございますが、ここでいろいろな研究開発をやっておるわけでございますが、この研究開発の充実ということも五十五年度として取り上げておるわけでございます。     〔津島委員長代理退席、片岡委員長代理着席〕  それから、最近一番問題になっております間伐材の利用加工の促進でございますが、間伐材を建築用材、足場丸太、チップ等として総合的に加工利用するための施設等に対します新規助成等の措置を講ずることにいたしております。また、これは引き続きの仕事でございますが、国産材供給の担い手でございます素材生産業の近代化を促進するための事業、あるいは国内産チップの安定供給及び外材の計画的購入等を図るための事業、また、木材流通の核となります木材市場の望ましいあり方を検討するための調査を実施するということにいたしておるわけでございます。  なお、金目が減ったではないかというお話でございますが、間伐材安定流通促進パイロット事業というのがございまして、その中心的事業でございます間伐材安定流通促進事業、これは言ってみますと価格変動準備資金の造成のための経費助成でございますが、三十四道府県におきまして資金の造成が済みましたために、所期の目的を達成したということで減額をしておるわけでございます。御指摘のとおり、予算総額としては前年度より減額しておるわけでございますが、ただいま申し上げました間伐材安定流通促進パイロット事業を除いた予算総額につきましては、財政事情が非常に厳しい中にもかかわりませず前年度を上回る伸び、つまり一一一・二%の伸びを示しておるわけでございます。  次に、特用林産振興対策でございますが、特用林産事業の振興につきましては、昨年の三月、特用林産振興の基本となる事項を定めました基本方針を策定いたしまして、これに基づきまして計画的に振興を図ることにいたしておるわけでございます。  特用林産振興対策事業は、昭和五十三年度を初年度といたします第一次五カ年計画に基づきまして計画的に拡充を図っており、その主要な項目は次のとおりでございます。一つは、特用林産物の需給安定を図るための協議会の開催、それからキノコ原木、竹、キリ、漆などの樹林造成、ほだ場、作業道等の生産基盤の整備、それからシイタケ原木の需給の逼迫に対処いたしまして、路網の整備及び伐採跡地の樹林改良を内容といたしますシイタケ原木供給のためのパイロット事業の実施、それから特用林産物の生産、加工、流通改善施設の整備、特用林産物の需要開発等の調査事業の実施ということをやろうとしておるわけでございます。また、直接特用林産物の予算ではございませんけれども、林業構造改善事業あるいは入会林野等の高度利用促進対策事業及び造林事業等におきましても、樹林の造成、生産基盤の整備生産、流通、加工施設の整備、シイタケ原木育種及び種子林の整備等を実施しているほか、生産性向上等を目的といたしました試験研究、技術開発とその普及に努めておるのでございます。これにつきましても一部の事業種目について予算が確かに減っておりますけれども、この対策事業のうち、生産基盤整備事業及び生産流通改善事業について五十五年度予算が前年よりわずかに減っておるわけでございますが、しかしながら、総額といたしましては、この厳しい財政状況の中で一三二%の伸びを示しておるわけでございます。そういう点で、私どもの意欲的に取り組んでおるということを評価をしていただきたいと思うわけでございます。  また、ただいま非常に貴重な御提案があったわけでございますが、キリ材を火を使う場所に使ったらどうか。確かにキリの特性として火に強いということがございますので、先ほど申し上げましたような樹林造成につきまして、特に今後適地について振興を図っていきたいというふうに考えております。
  46. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 時間の関係でもう二点ほど伺います。  われわれは、森林資源でエネルギー開発の研究を思い切ってやるときがきた、こう思っているのですが、ことしの予算を見ると二千五百八十三万円です。この程度の金で何を研究するのだろうかという気がするわけで、やっておりますという誇大宣伝をするためにこの程度の予算を組んだのか、こういう気がします。今後思い切ってやられる意思があるのかないのか、この点を第一点に聞いておきたい。  次に林道、治山、これは公共事業ですが、国の財政、国債の売れ行きが悪い、いろいろのことを考えたときに、予算は組んだものの抑えられるのではないかという不安がある。予算に組んだものを抑えるということはあり得ないだろう、こう考えておるのですが、この点は大臣考え方を聞いておきたい。  それと同時に、ことしの予算が伸びてない。大規模開発林道は、森林公団がやっている全国八カ所の中でもことしは昨年より伸び率が抑えられている。予算は少しふえたけれども、工事の延長は縮小された。こういう方向で行くとどうも計画どおりいかない。このままいくと、たとえば中国地域の大規模林道については何十年かかるだろうかという気がするわけです。こんな悠長なことでいいのかどうかという気がしますので、背後地の整備も必要だし、いろいろな整備も必要でありますけれども、基本ができなければそれができないわけですから、そういうことのないようにやってもらいたい。  以上、二つの点で簡潔にお願いしたい。私は十二時で終わりますから、そのつもりでお答え願います。
  47. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 木質系エネルギー活用促進対策でございますが、御承知のとおり、木質系エネルギーは長い使用実績を持っておるわけでございまして、かつ、クリーンで再生産が可能であるということから、数々のすぐれたエネルギー特性を有しておりますが、これを現代の社会構造、生活様式に適合した形で利用、開発を図るためには、燃材の供給、流通、貯蔵、利用を一貫したシステムとして技術開発をする必要がございます。このために、木質系エネルギーの賦存状況、需給実態、利用者の意向把握、木質系エネルギーの燃焼技術への応用可能な周辺技術等の基礎調査及びこれらをもとにした数々のタイプごとの活用基本システムの設計を内容といたしておる予算でございます。したがいまして、こういう基本的な設計ができますれば、今後、さらに積極的にこの問題とは取り組んでまいりたいというふうに考えておるのでございます。  また、公共事業の林道、治山についてお尋ねがございましたが、確かに五十五年度は、国全体の公共事業の伸びを抑えるという枠内に林道も治山も入れられておるわけでございますが、御指摘のとおり、林道の計画に対する進捗状況は非常におくれておりますので、私どもとしては、何としてもこの延長を確保したいということで、予算はそれほど伸びておりませんが、内容的にはいろいろ工夫をこらしておるわけでございます。たとえば、施業林道という名前は実現いたしませんでしたけれども、現在作業道として使っておりまして、将来とも林道として使う必要があるというところにつきましては、積極的に安い金で延長を延ばしていくという意味で、間伐林道の変形ということで今回予算化しておるわけでございまして、何とか事業量を確保していきたいというふうに考えておるわけでございます。  また、治山事業につきましては、御承知のとおりの治山五カ年計画に沿いまして事業量を確保すべく、今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  48. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 私の残余の時間は細谷議員にバトンタッチいたしますから、よろしく。
  49. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 細谷昭雄君。
  50. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 武藤大臣にお伺いをしたいと思います。  きのうも政務次官からお伝え願っておりますのですでにおわかりだと思いますし、私の時間は十六分しかございませんので、簡潔にお答え願いたいと思います。  第一に、あなたはこの委員会におけるわれわれ議員の発言または意見というものをどう受け取り、どのようにこれにこたえておられるのか、大臣としての率直な姿勢をまずお聞かせ願いたいと思います。
  51. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いろいろな方の御意見がここで出てくるわけでございまして、私どもは、できる限り尊重できるものは尊重し、どうしてもできないものは御意見として承っておくということで対処しております。
  52. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 委員会の審議の一問一答方式というものにも関係があると思いますけれども大臣のこれまでの答弁、私たちの提起した問題その他のことに対する対応というのは、私はどうもその場限りのものではないかと思われてならないわけでございます。私は、そういう意味ではこれまでの大臣答弁に対してはむしろ不信感さえ持っておるということを率直に申し上げておきたいと思います。  お聞きしたいと思いますのは、あなたは五月一日秋田へ行かれましたけれども、その目的は何であったのでしょうか。
  53. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 たまたまこの間うち農地三法を御審議願っておったわけでございますから、秋田県には大潟村という、太郎潟を干拓して大体一農家平均十五ヘクタール、非常に大きな規模で農業をやっておられるところがあるわけですから、それを見たいというのが一番大きな目的でございました。せっかく参りましたので、秋田杉ということにおいて日本でも秋田営林局管内というのは国有林も非常に多いところでございまして、そういう点で林政を見たい。それから、秋田県の農業試験場は全農から委託を受けてえさ米のことを研究しておられるから、それもあわせて見たい。一番大きな目的は、大潟村を見ていろいろな意見を聞いてみたいということでございました。
  54. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 忙しい中を秋田へ実際に足を運ばれたということについては、私は大いに評価するわけでございますが、問題は、私が四月三日に提起いたしましたいまの第三の、ついでみたいなお話ではありますけれども、えさ稲の問題についても行かれたということでありますので、あえて申し上げますが、私は視察の時期、視察の個所について四月三日の委員会において問題の提起をいたしました。これについてはきのう、近藤政務次官が大臣に確実にお伝えしましたということの確認をとっておるわけであります。とすれば、その結果、えさ米の問題について大臣から何らの報告がないということは、対応の仕方について大変問題があるのじゃないかと思っておりますが、それはさておくとしまして、五月三日の農業新聞を見て私は大変残念に思っておるわけであります。農業新聞によりますと、次のようになっております。  記者会見でいろいろ述べられておりますが、えさ稲の問題では、「秋田でのえさ米視察について「十アール当たり千キロの収穫量は難しく、千五百キロのメドにはとても及ばないので、秋田に関する限り飼料化は難しい」と語り、実用化の困難さを強調、「今度は九州へ見に行く」と語った。」これはリードの文面でありまして、本文では、「一方、秋田県での飼料米の現地視察の印象について、「十アール当たり千キロを超えるのは難しいとのことだった。千五百キロを(実用化の)メドにしていたが、とても難しい。秋田に関する限り飼料化は難しい。寒いこともあるのだろう。暖かいところ(地域)、九州でも視察に行きたい」と述べた。」これは日本農業新聞の五月三日の記事でありますけれども、この記事の内容そのものには間違いありませんね。
  55. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 新聞の記事というのは多少集約してやられますからあれですが、おおよそにおいてはその考え方は間違っていないと私は思います。  私が申し上げたのは、千キロないし千五百キロぐらいの反収のものがつくれるといいけれども、とても秋田ではそれはつくれないという試験場長その他の話であったので、こういう寒いところではなかなかむずかしいのかな、こういうことを言ったわけでございます。
  56. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 農業試験場ではそういう育種がいま始まったばかりですので、そういう品種の段階、しかも、私も農業試験場の試験データは去年もらってあります。その他の地域のももらってあります。去年は幼苗期における天候の不順というのが非常に大きく災いをしておるということは事実なんです。  私は何回もアルボリオといういわばジャポニカ系統の品種でなければならないのだ、これを進めるべきじゃないかということを提起をしたはずなんですけれども、残念ながらまだ全農のこの試験ではアルボリオの系統はやっておりません。ですから、私言いたいことは、この一作で大臣が——しかもあなたは農林水産省の責任者なんですよ。農林水産行政の責任者なんです。民間でも一生懸命このえさ稲の実験、研究に従事しておる人もおりますけれども、いわば公の立場にあるあなたが、秋田に限ってはという言い方、むずかしい、こういうのを言われるというのは、これは大変に問題があるわけです。たった一度の一作でそういう早急の判断をしては困る、こう思うのです。新聞はこう書いておりますけれども、あなたの真意、秋田では未来永劫にこれはできないということではもちろんないと思うのですが、その点について、少なくとも秋田に関してはえさ米の実用化はむずかしいという点は、これは取り消していただきたい。
  57. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま言っているように、秋田ではと限定しているわけではないのでして、寒い地方では、やはり生育期間その他から考えてもなかなかむずかしいということを場長から聞いたから、それを率直に言ったわけであります。  それから、何も未来永劫にだめですと私は言っているわけじゃないわけでありますから、それは新聞記事で、私に取り消せとか取り消すべきだということをおっしゃることは、私は何も新聞記事に責任を持っておるわけでございませんので、私は私の考え方はあるわけで、何も寒冷地でも将来とも未来永劫にいけないというわけではないので、試験場長の説明あるいは大曲でしたか、そこの説明をいろいろ聞く限りにおいては、これは寒いところではなかなかむずかしい、こう判断したということであって、いまの新聞記事に私は責任を持つ必要はないと思っております。
  58. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 新聞の記事はこれはもう私の真意ではないととってもいいわけですね、その点では。そのように解釈をしたいと思います。  ただ、場長がどういうふうに言ったかわかりませんけれども、むしろ秋田県の米の収量というのは日本でも最高なんです。寒冷地だから収量が少ないというのは、これはとんでもない見当違いな考え方なんです。九州なんかよりも秋田県の方がずっと多いのです。これは大臣御承知だと思うのです。ですから、そういうことをうのみにしまして、こういういわゆる短兵急な結論めいた意見というのを言ってもらっては困る。厳重にこれは大臣に抗議をしておきたいと思います。  次に、時間がありませんので選挙関係についてお尋ねをしたいと思います。これもきのう政務次官にお伝え願いたい、こういうふうに言っておきましたのでおわかりだと思います。農林省から現在OBが参議院全国区候補として出ておられるそうです。新聞等にこれが書かれておるわけですね。問題は、この地位利用と見られるような一連の農林省グループによる選挙運動、これは一体大臣としては、責任者として国民の疑惑、不信、こういったものをどのように解消されるつもりなのか、これを明らかにしてもらいたい、私はこう思います。
  59. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農林省のOBで参議院に立候補する人の選挙運動ということでありますが、きのうも決算委員会で私は答弁いたしたのですが、少なくとも公務員法違反に問われるようなそういう選挙運動をやっている人間は農林水産省にはいない、私はこう信じているわけでございまして、その外郭団体がいろいろ農林省OBの人をやってくれることは、法律の許す範囲においては私は決してそれは悪いことではない、結構なことだと思っておるわけでございます。
  60. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 大臣のいまの答弁は、開き直り、これはまことに責任者としても聞き捨てがたい問題だというように思うのです。国民がどう見ているのか。朝日新聞それから日本農業新聞という新聞は、いずれも大変なたくさんの数が発行されておる新聞でございます。こういう新聞に、特に朝日新聞には、私は秋田ですので、「秋田では内ゲバ模様」というような書き方をしているわけで、国民は、またかということ。問題は何なのかということ、国民一人一人は何党を支持し、どなたを支持してもこれは自由なんです。問題は、何にも知らない人が、農林省という補助金やたくさんの権限を持っておる役所の皆さん方が、上からずうっと下まで、末端の業者の問題まで、外郭団体といえども、そういうのを目の当たりに見ておって、農林省というものは、国民の税金を使って選挙運動をしているのか、こういう疑惑と不信を持っておるということなんですよ。あなたは一省の責任者として、外郭団体がやってもらうのは大いに結構です、それはいいことだと思うと、ぬけぬけとそんなことが言えますか。
  61. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、先ほどから申し上げておるように、法律の許す範囲ということを申し上げているわけでございまして、外郭団体という表現が悪いかもしれませんが、農業団体というふうに訂正をさせていただきますけれども農業団体の中で補助金をもらった団体がそのままいろいろな形で政治資金規正法にひっかかるようなことをやることは、これはいけないわけです。しかし、農業団体自体がいろいろな判断で、やはり農林行政をやった経験者が農業に対して非常に理解があると思って、その農業団体が推薦をし、推薦をした結果によって農業団体の皆さんが、一生懸命そういう人が当選するようにということでやることまで抑えるべきではない、私はこう考えているわけでございます。
  62. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これは大臣、もう大変なことなんですよ。あなたは、農林水産省は新聞に言われるようなこういう選挙運動というものをやっておらないという立場で否定しなければならない人なんですよ、本当は。いまのお話を聞きますと、やっておっても、これは法律に違反しておらなければいいじゃないか、こういうように聞こえますよ。それでいいんですか。
  63. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 どうもあなたのお考え方は私はおかしいと思うのですけれども農業団体は何も政治活動をやっていけないとはなっていないわけでありまして、政治資金規正法では、いわゆる補助金をもらった団体が政治献金をしてはいけない、こうなっておるわけでございます。  たとえばきのうも参議院で御指摘ございましたが、農業会議所というのがあるわけです。全国農業会議所がありますが、全国農業会議所には補助金が出ているわけでございまして、全国農業会議所の職員が専従して選挙運動をやっておるということはないかということでございます。そんなことはないということを私は信じておりますと、こういうことを申し上げたわけでございますが、そういうことをやっていくとこれは法律に抵触をしてまいりますけれども、やはり農業団体そのものが、特に補助金を受けてない団体がおやりになることは一向に私は、それは法律に反しているわけじゃないのでありまして、どうも農業団体が全く政治活動してはいけないということは法律のどこにも書いてあるわけじゃないので、それを私が抑えるということは何も必要がない、これは何も間違ってないと私は思っています。
  64. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私が農業団体が政治活動をやってはならぬということを言っているんではないんですよ。農林省のOBが出るからということで、農林省のお役人の皆さん方が、そういう外郭団体なり下部の農業団体なりに圧力をかけておるというふうな新聞記事が出ておるので、それはおかしいじゃないか、こう言っているんですよ。
  65. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 それは私先ほどお答えしたように、そういうことは、私どものいわゆる国家公務員である者がそういう農業団体に対して直接圧力をかけておるような事実はないと先ほどから言っておるわけでございまして、それは新聞が勝手に書いておることでありまして、私はそれに対して同じく責任を持つわけにはいかないわけであります。
  66. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 もう本当に開き直りだとしか見えませんが、あなたは今後そういう疑惑とか、そういう国民に疑惑を持たれるようなことのないようにということを注意する気持ちはないのですか、責任者として。この新聞その他がありますからね。
  67. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、各役所ともそれぞれ事務次官が通達を出しまして、国家公務員として地位利用して選挙運動をやることはいけないということは法律になっているんだから、厳にそういうことはいけないよということは通達を出しておるわけでございます。ですから、その通達もありますし、私どもの職員がそういうことをやっておることはないと私は申し上げておるわけでございまして、新聞がどう書いておるかそれは知りませんけれども、私どもはないと、こう信じておるわけでございますから、それ以上のことは私は申し上げられないわけであります。
  68. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 時間になってしまいましたけれども、最後に、地位利用の疑いというものを持たれておるこれらの動きに対して、先般服務規律の確保についてという通達を出した、いわば農林省を監督する立場にある総理府はどういう見解を持っておるんですか、そしてこれにどう対処するつもりですか。
  69. 片山虎之介

    ○片山説明員 お答えします。  御承知のように、五月六日に今回の参議院議員選挙を主な対象にしました通知を出したところでございますが、先生いま御指摘の件につきましては、人事局は服務規律一般の所掌はいたしておりますけれども、御指摘の事実等についてつまびらかにする立場にございませんので、具体的な見解を言えと言われましても、必ずしもそれははっきり申し上げる立場にございませんが、今後とも各省庁には通達の趣旨を守っていただくように機会あるごとに注意を喚起してまいりたい、こう思っております。
  70. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 時間になってしまいましたのでこれで終わりますけれども、私が言いたいことは、やっぱり国民が不信感を持つ、こんなことで不信感を持たれるということ自体が日本の政治にとっても大変不幸なことだということで、政治家である武藤大臣にこれは何とかひとつ善処してもらいたいという希望を申し上げまして、終わりたいと思います。
  71. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 この際、午後一時十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後一時十六分開議
  72. 内海英男

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  73. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和五十五年産米価問題、農薬対策及び森林害虫対策について、農林水産大臣質問いたします。  昭和五十五年産米価についてお伺いしますが、いよいよ米価シーズンになってきたわけであります。来る六月二十九日の参議院選挙後の米価審議会まで恐らく当委員会の審議日程がとれないのではないか、かように予測されますので、本日、政府の諮問案作成前に大臣の見解を求めておきたい、かような意味質問を申し上げる次第でございます。  御承知のように、全中では来る五月二十二日に要求米価を決定し、六月四日に全国米価要求大会を日本武道館に八千名を結集して行うことになっております。政府としては参議院選挙後に、大臣は七月中旬というようなことを言っておられるようですが、米価決定をすべく、いろいろ日程を考えておられるようでございますが、現在、大方どのような日程の予定でございますか。まずその辺のお答えをいただきたいと思います。
  74. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま御指摘ございましたように、参議院選挙がありますので多少例年よりはおくれる形になるかと思いますが、農業を取り巻く環境、特に稲作を取り巻く環境など、いろいろな点について御審議を願ういわゆる予備米審と申しますか、前広米審と申しますか、これを大体十日前後ぐらいにはお願いしなければならぬのではなかろうか。それから一週間ないし十日以内ぐらいの間に生産者米価を御審議願う米審をお開きいただかなければいけないのじゃなかろうか、そんなような腹づもりでおりますが、まだ具体的に日にちは固まってはおりません。
  75. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ことしの生産者米価決定に当たっては、消費者米価については同時諮問はしない考えであるか、その点もどういうふうに考えておられますか、あわせてお伺いしたいと思います。
  76. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 従来は同時諮問はほとんどなかったわけでございます。今度どうするかということでございますが、まだ米価の中身も全く白紙でございます。同時諮問するかどうかについても全く白紙で、いまのところどう考えておるかというより、全く白紙の段階である、こういうふうにお答えをさしていただくのが適当かと思います。
  77. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産大臣は、五月一日に秋田で記者会見等をなさっていろいろ発表しておられますが、ことしの米価決定は大変苦労しなければならない、依然として米の過剰があり、一方には資材の値上がりがある、その辺をどうするのか決めるのに苦労する年だ、いまのところ全く白紙だ、こういうふうな意味のことをおっしゃっております。今年度の米価に臨む政府の基本的方針というものは現在大臣はどういうようにお考えであるか、その点もお聞かせいただきたいと思います。
  78. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 確かに、私が秋田で発言をいたしておりますように、農業資材関係は農業機械にいたしましても肥料にいたしましても相当上がってきておることは事実でございます。ところが、一方においては従来からの供給過剰傾向というのがいまなお続いておるわけでございまして、私ども何とか一日も早く米の需給均衡を図りたいということから、転作と申しますか、いわゆる水田利用再編対策をお願いをいたしておりますし、また、われわれといたしましては、農業団体その他の協力も得ながら米の消費の拡大ということに積極的に取り組んでおるわけでございます。そうなってくると、そういう需給関係というものも、これは一つの大きな考えなくてはならぬ要素でございますので、そういうものを考え合わせていくと、どういう形に持っていくべきなのか、非常に苦慮する年であるという気持ちがございます。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、まだ白紙の状態でございますので、そういうようないろいろな環境はあるということは事実でございますが、今後いろいろと検討いたしまして、米価審議会にお諮りをする諮問案は考えていかなければならないと考えておるわけでございます。
  79. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 米価引き上げを積極的に検討すべきであるということは、現在全中でも真剣に議論がなされております。と申しますのも、諸資材の高騰、農業所得の減退等によりまして、生産者は米価引き上げをことしは強く要求しておることも事実であります。  私は、米価引き上げの理由として、一つには、十分農林水産大臣も諮問前に聞いていただきたいと思うのですが、全国の稲作農家は、農業の長期的展望も示されない中で、水田利用再編対策など政府の単年度需給均衡化の方針に積極的に協力しておるのであります。これまで二年間は政府の示す目標面積を大幅に上回る実績を上げるなど努力してきたわけです。その報いを米価に期待するというのは、私は農民としては当然のことである、かように思います。  さらに、過去二カ年の生産者米価の据え置きというものは、諸物価高騰の中で、実質かなりの米価引き下げの役割りを果たしておることも事実であります。一方、最近の諸資材、金利等の異常なほどの高騰により生産費が上がり、生産の合理化を進めてもとても追いつかない状況でありまして、農業経営の維持に苦労をしているのも現状であります。私、せんだっても何回か申しましたように、ビールの値上げが行われた、ビールの材料が上がったから上げるのだ。しからば、農家にしても、諸資材、諸物価の値上がりがあれば、労働賃金である米価については、同じ国民として値上げをやってもらいたいというのは当然の要求である、私はかように思うわけであります。  また、最近の農業所得は、前年比六・四%も低下しております。農外所得の伸びも低く、農家の生活は苦しくなるばかりであります。ちなみに、昭和五十三年、五十四年と二年据え置きをやったわけですが、もし五十五年も据え置きとなれば、農業所得、すなわち米の所得を中心として申し上げるわけですけれども、五十二年と比べて約二〇%も所得減となるわけです。一日当たりの労働報酬を見ても、約三〇%減となることは明らかであります。  四つ目に申し上げたいのは、したがって、農家は水田利用再編対策にも協力しておりまして、米価問題はこれらと区分して考え、稲作農家の経営を安定させ、将来の展望を持たせる中で第二期対策と取り組む条件を整備するということで農家にお願いをすることが必要であるのではないか、かように私は思うわけです。  農林水産大臣は、秋田県で五月一日記者会見をされまして、米価と米の需給関係が連動するかについては、五十五年度で単年度需給が図られれば、過去の在庫があるなしにかかわらず、米価を上げないというわけではない、こういうような趣旨の発言をなさっておられます。十分含みのある発言であると私は聞いたわけでありますが、このようなことを考慮して、本年度米価決定に当たっては十分検討をして諮問をしていただく、このように諮問前に当たって私は申し上げるわけでございますけれども、その辺のお考えを、所管大臣としてこの際お聞かせいただきたい、かように思うわけです。
  80. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 秋田での私の発言で、いまの点を新聞は必ずしも的確にとらえていないと思います。もう少し説明を加えさせていただきますけれども、私は先ほど申し上げたような考え方で、片っ方においては、農機具、肥料その他の農業資材が上がっておる、片っ方においては、米というものがなお供給過剰の方向にある。そういう点において非常に苦慮しなければならない、こういうことを申し上げましたら、それに対して新聞記者さんの方から、それじゃ一体、需給関係を重視する場合には、現在約六百五十万トンという在庫がある、農林水産省としてはこれを四年間で解消する予定ではないか、そうすると、その四年間は一切米価は上がらない、こういうことになるのか、こういう御質問がございましたので、私は、いや、必ずしもそうとは言えない、そうとはとれないけれども、今後ずっと毎年毎年需給が均衡していく、今後はもう絶対に供給過剰にならないというような状態がこないと、なかなか踏み切れないのではなかろうかということが一方あるのではないかということを申し上げたわけでございます。それが単年度需給均衡と、こういう表現になっておるわけでございまして、その点はことしだけということではございませんので、ぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、そういうようなことで需給関係というものも私ども相当ウエートを置かざるを得ない。それはなぜかと言えば、先ほど申し上げましたが、水田利用再編対策をお願いをしておる中でもし米価を上げたといたしましたときに、それによって逆にまた米の増産という形につながってまいりますと、せっかくお願いしておる水田利用再編対策もまたうまくいかなくなるわけでございますし、そうなってくると、米の需給関係が非常に供給過剰になって、需要を相当上回るということになりまして、また在庫がふえていくということにもなるものでございますから、そういう点が非常にこれから考えていかなければならぬ点ではなかろうか。  しかし、確かにおっしゃるとおり、農家の現状を見ますれば、所得を何とかしてあげなければならぬということもよくわかるわけでございまして、そういうことで私は大変苦慮をしなければならぬ、こう申し上げているのが私の実感でございます。
  81. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 諮問前であるので、大臣も具体的なことはなかなか発言ができないことはよく承知しておりますけれども、それだけに、私は農家の実情を認識していただくためにも、さらに申し上げるわけです。  大臣も各地を回られて、いろいろ実態を掌握され、生の声を聞いてきておられることも事実でありますので、公開の席では具体的なことがなかなか言えない時期であろうかとも思いますけれども、次に申し上げることも、私はさらにひとつ十分頭に認識していただいて御検討いただきたいと思うわけです。  と申しますのは、水田利用再編対策についてお伺いするわけですけれども、私が申すまでもなく、第一期として、初年度である五十三年は三十九万一千ヘクタールで、生産調整については一一二%の達成をしたわけです。二年目の昭和五十四年は同じく三十九万一千ヘクタールの生産調整で、一二一%の達成、ことし三年目、すなわち昭和五十五年は五十三万五千ヘクタールでありまして、三年は変えないという約束を、いわば三年を待たずして、三年不変の約束違反をいたしたと言っても過言ではございません。それでもこの面積については一〇〇%達成しておる。そこで、農家としてやることはすべて政府の方針どおりに協力してきたことは、十分大臣を初め政府当局も御承知のとおりであります。そこで、コストで上がる分については幾つか当然ではないかと私は考えるわけでございまして、先ほどから答弁いただきましたように、諸資材、諸物価の値上がり等から見まして、これは当然米価の値上げについては考えてやらなければならない、農家の窮状は十分わかるということであろうかと思いますが、とれまた秋田の発言で大臣は、単年度需給均衡の目標を達成したということであれば米価についても配慮するというようなことで、先ほど答弁があったような趣旨のことがあったわけですけれども、私は国民の皆さん方にも十分理解をしていただきたいと思っておるのですけれども、来年、すなわち昭和五十六年からは、いよいよ第二期の生産調整の対策に入ることがもう明らかであります。十年間というものが定めてありますから、これはもう既定の方針で入るわけです。米のいわゆる消費減退、いまようやく消費の減退に歯どめがかかった状況になっておりますが、そういった点からずっと見ましたときに、かなり六十万ヘクタールを超えるような数量になるのじゃなかろうかということで、農家の皆さん方も有識者も心配をしておるわけでございます。そうなりますと、生産調整というものについてさらに来年度はお願いをせなければならぬということにもなりかねない。そういったことから、私は、やはりことしの米価というものが、第二期に入るいわゆる生産調整に対して、農家に対して協力願う上からも、お願いする上からも、十分考えてやらなければならない、いわば決め手になる、かようにも思っております。それだけに、来る六月四日の全国大会初め各農家団体においても、ことしは大変真剣な討議がいま進められておりまして、今後の米価の問題について全国農民は成り行きを見守っております。そういったことを十分認識されて諮問もしてもらいたいし、先ほども触れたわけですけれども、こういったことについてはもう大臣も十分承知はしておられると思いますけれども、こういった農家の声を代表して私は申し上げるわけでございますので、来年度生産調整協力をお願いするについても、その辺はしかと肝に銘じて諮問をなさるように要求をするわけですけれども、さらにひとつ農林水産大臣の所見を承っておきたい。
  82. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまの農家の大変苦しい中を水田利用再編対策に御協力をいただいている点については、心から感謝を申し上げるわけでございます。  ただ、問題は、生産者米価と、それじゃ、その水田利用再編対策を結びつけて考えれば、米価を上げた方がいいのではないかといういまの御指摘かと思うのでございますけれども、そういう御意見も一方においてあろうかと思いますが、また一方においては、下手に米価を余り上げると、今度は水田利用再編対策がうまくいかないのではないかという御意見も一方にあることは事実でございまして、私どもは、その辺をどう判断をしていくのか、先ほど申し上げたような白紙の状態でございますが、いろいろその辺も苦慮しておるところでございまして、農家の御協力をいただいているその姿勢というものには私ども十分感謝をし、またその農家のお気持ちをできるだけ尊重しなければならない、こういう気持ちだけは持っておるわけでございますけれども、もし米価と水田利用再編対策を結びつけた場合には、一方においては米価は余り上げると水田利用再編対策が今度はうまくいかなくなるということもこれはあるのじゃないかという御意見も、私はやはり耳を傾けるべき一つの御意見かと思っておりまして、その辺をいろいろこれから検討をしていく上に、両方の意見をどう調整していくかということを考えなければならないと思っておるわけでございます。
  83. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これまた、五月一日の秋田での記者会見の大臣の発言の問題を、確認の意味でお伺いしておきますけれども、減反第二ラウンドすなわち第二期は、思い切って八十万ヘクタールにふやすというわけではなく、段階的に積み上げていきたい、これは夏から作業に入る、五月二日の農政審議会で、私は八十万ヘクタールにいかなくても済むような形にするよう指示をする、二期対策は五十三万五千ヘクタールで済むとは思っていないが、八月の農政審の答申を踏まえて決めたい、私これは新聞紙上で見たのですけれども、こういった趣旨のことをおっしゃったんだろうと思うのですが、第二期の減反については、おおむねいつごろにはこれを発表するのか、その辺は十分いま検討をされておると思いますけれども、その見通しもこの公開の席で明らかにしていただきたいと思います。
  84. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだ最終的にはいつまでと決めておるわけではございませんけれども、毎年この水田利用再編対策をお願いをしております場合には、やはり翌年の作付の関係から、できるだけ早い機会に、前の年の早い機会にやってほしい、こういう御要望はございまして、昨年も大変この委員会でも御審議を煩わしたわけでございますけれども、たしかあれは十一月に内定をさしていただいたわけでございます。あれは選挙がございましたので十一月末になったわけでございますけれども、ことしは、もう少し早く、できれば秋のなるべく早いうちにもし内定をすることができれば、それがやはり農家のためにもなり、また市町村の御協力いただける方々あるいは農業団体の皆さんのためにもなるのではないかと思っておりまして、いつということではございませんが、秋のなるべく早い機会という感じでいるわけでございます。
  85. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これまた、米価算定の問題で、米価引き上げの要因となる問題をこの機会に申し上げておくわけですけれども、米価算定要素の動向というものは、これまでの算定方式を堅持すれば当然米価引き上げになるということを私はこの機会に念のために明らかにしておきたいと思うのです。  すなわち、昨年どおりの算定方式により試算した場合の上げる要素と下げる要素を見てみますと、上げる要素としては、物財、雇用労働費の高騰によって前年対比六・六%アップしております。その中で農機具は二・五%、肥料が六・四%、農薬が二・〇%、賃借料金が四・三%、光熱が五八・五%、雇用賃金が六%、このように前年対比アップしております。さらに、都市賃金の上昇も対前年比六%のアップで、金利の高騰も前年対比四六・七%アップ、こういうようになっています。また、下げの要素を見ますと、収量の増加は、確かに五十一年から五十三年産米対比五十二年から五十四年の産米とを見まして二・一%アップしたことも事実であります。また、予約限度数量を超えた農家を差し引くことによる低下を見ましても、五十二年産米、五十三年産米は五%ダウンしておる。家族労働時間の減少は、五十一年−五十三年産米対比五十二年−五十四年産米から見まして五・九%ダウン。こういうことで、確かに、上げる方と下げる方がこのような数字になっていることは実情でございます。  それで、私は、結論的に申し上げますと、昨年どおりの算定方式により、以上申し上げた上げる要素と下げる要素とを試算してみましても、当然引き上げ試算になることも明らかであります。こういったことで、当局も十分検討はしておられると思いますけれども、どんなに言っても、米過剰であるという時代を迎えて云々とおっしゃいますけれども、私は、この米過剰に対しては、農家一人一人はまじめに政府の方針を守って生産調整を実行してきたのでありますが、政府は全国をトータルして、需給状況、消費動向、そしてまた今後の日照とか天候とかいろいろなことを加味して目標を定めて農民に示したわけであります。その目標をそれ以上上回ったわけでありますから、一つ一つ目標を達成しているのですから、農民には罪はないわけです。政府の見通しの誤りでこのように厳しくなってきた。だから、この間のアメリカとの交渉のときにも私は強力に、過剰米があるためにいろいろ問題になるのであるから、こういった超過米については東南アジアを初め飢餓国に大いにこれをひとつやれ、そのために相当な努力をせよ、アメリカのプレッシャーに負けぬようにがんばれと申し上げました。また、中国に対しても米を穀物借款で供与して、そして十年、二十年後に返してもらう。また、必要であればエネルギー換算でもって米と大豆あるいはマイロ、トウモロコシ等をいわゆるバーター制で日本に入れる。こういったことを外交ルートを通じて積極的にやって、農家のこの過剰米に対する積極的な対策を講ずべきじゃないかということで、畦畔大豆転作の問題とか新しい農法をいろいろと申し上げているわけです。そういった努力を積極的にやって、そして国民が納得するように、コンセンサスが得られるような米価決定をするようにあらゆる努力をすべきだということを数年前から言ってきておるわけでございまして、きょうにわかに申し上げるわけじゃない。そのことを一々言っていたのでは時間も経過しますので詳しく申しませんが、そういったことをやりながら、私は今日のこのような状況を見ましたときに、米価というものは下げる要素も確かにある。しかし上げる要素の方がはるかに多い。これを加味した場合には、当然これは来年度以降の生産調整をまたお願いするのであれば、農民には希望の持てる米価決定をするということで諮問すべきである、かように思うわけですけれども、こういったことをよく認識されて、本年度米価算定要素のいわゆる算定方式等を十分考えるべきだと思いますが、いかがでございますか。
  86. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどからお答えをいたしておりますように、いろいろな事情は私どもわかっておるつもりでございまして、その辺の算定についても十分配慮していかなければならぬと思っておるわけでございます。  ただ、問題は、そういう算定をしてある程度の試算をしたといたしまして、たとえばそれがある程度アップせざるを得ないという場合、一方において、先ほど申し上げましたように、やはり需給関係というものを念頭に置いて決めていかなければならぬだろうと思うわけでございます。そういう点で、いまここで、それでは算定基準が上がった場合には必ず上げますというようなことはなかなか申し上げられないわけでございまして、その辺これから算定要素もいろいろ見ながら、また、それによって計算したものを見ながら、また一方、需給関係というものも見ながら、最終的に米審の御意見を聞いて決定しなければならぬ、こう考えておるわけでございます。
  87. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 算定要素について大臣は承知であることもよくわかりますけれども、私は、国民の代表として申し上げておかねばならぬと思いますのであえて申し上げますが、米価算定方式、算定要素をどう変えるかという問題でありますけれども、御承知のように統制小作料の問題がございます。米価は一番地代に大きく左右されるわけでございますが、借入地の実納小作料が五十三年二万五千円前後でありました。自作地は、統制小作料が五十三年度五千六百六十一円でありましたが、先般農地法の一部改正等いわゆる農地三法を審議してまいりまして、衆議院を通過し、昨日参議院で可決されたわけでございます。戦後農地改革以来三番目の大改正でございまして、今後の大きな注目をする改正でございました。そこで、五十五年九月で統制小作料が廃止となるわけでございますが、唯一の政府の指導小作料であったわけでございますので、私は、今後の米価算定の方式には重大な影響を来す。またこれが農地三法の審議の際にも、長時間にわたっていろいろ政府の見解をただしてきた問題でございますけれども、当然今年の米価決定に当たってはこれらの問題は早急に検討せねばならぬ段階に来ておることも事実でございます。そういったことで、米価算定方式、算定要素をどう変えるか、また、これは当然もう作業に入って検討しておられると思いますけれども、その辺はどういうふうにいま進めておられるか、また方針はどういう方向で検討しておられるか、この点もあわせて御答弁を求めます。
  88. 松本作衞

    松本(作)政府委員 米価につきましては、ただいま大臣からもお答え申し上げましたように、私どもといたしましては、諸般の事情を現在検討中でございまして、まだ内容としてこういうふうな方向で、算定方式もこういうふうな方向でということを申し上げられるほど詰まっておりませんので、いまの段階では白紙の状態であるというふうに申し上げるほかないわけでございます。
  89. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産大臣、いま私が質問を申し上げたことについて食糧庁長官から答弁がございましたが、いま私が言ったようなことは十分承知して対処するということには間違いないか、一言お答えいただきたい。
  90. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 自作地の地代の取り扱いでございますけれども、統制小作料によって評価してきておりました自作地地代については、実際経営外部への支払いを伴うものではないわけでございますし、その評価の仕方については、家族労働評価その他いろいろな要素等を絡みあわせていかなければならぬと私は思っておるわけでございまして、その点はいま長官から答弁を申し上げましたように、いろいろそういうことを絡みあわせて算定をする場合には十分検討していく、こういうふうに思っておるわけでございます。
  91. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この機会に二、三点あわせてお伺いしておきますが、えさ米のことですけれども、五月一日の秋田の記者会見で農林水産大臣は、えさ米は五十六年度転作奨励金の対象とするのはなかなかむずかしいようだ。今後、農政審で意見を聞き、暖かい方で熱心にえさ米づくりをやっているのも見てみたい。きょう見た限りでは——これは秋田で見られたと思うのですが、収益性、コストの面からいって、外国産飼料と比べて相当かけ離れたコストがかかっている、こういうふうなことをおっしゃったようでございますが、いずれにしてもえさ米について重大な関心を持っておられると思います。私もこれについてはしばしば国会政府の見解をいろいろとただしてきたのですが、今後の水田利用再編対策から見て、当委員会でも他の委員からもいろいろと意見等が出ておりますが、えさ米の研究を積極的に考えるべきではないかということについて農林水産大臣に伺いたいのであります。  いよいよ予算時期にも入っておりますし、来年度ですから、いまからひとつ強力な考えをまとめて対策を講じてもらわないと、また一年も二年もおくれるわけです。参議院選もあって、委員会がしばしば開く状態でございませんので、ここであわせてお伺いするわけでございますが、来年度予算時期に入る前に、特に来年の予算はまたゼロ査定で厳しいということが言われておりますので、こういった重要な問題については積極的な対大蔵折衝をして、推進を図っていただきたい。生産調整が進む中で何をつくればいいかという農民の切なる声があるわけでございまして、農地三法の審議の際にも、これらが重要な問題になってきたわけですが、なかなかビジョンが示されない。私の質問に対して、大臣は、八月の長期見通しの結果が出た上で、中長期のビジョン等も十分考えて検討したいということでいろいろ答弁をいただいておりますが、そういった意味でも私はあえて申し上げるわけです。  現在、えさ米に対しての予算面では、私が調べたところ一千数百万程度しかないようであります。稲転予算が総額三千億近くあるわけでございますので、少なくともその一%、三十億くらいはつぎ込むべきではないかという考えを私は持っておるわけです。  ちなみに、農林省のプロジェクト研究の予算措置を見てみますと、一つ、特別研究として、研究期間三年間で単年度一千五百万から二千万。二つには、一般別枠研究で、研究期間四、五年で一億五千万から二億。三つには、総合的開発研究が、研究期間十年間で五ないし六億。四つ目には、大型研究が、研究期間十年で十億。こういうようなことが挙げられるわけでありますが、せめて私は、三番目に申しました総合的開発研究、十年間で五、六億とありますが、このぐらいのランクぐらいの規模のプロジェクトチームをつくって、早速来年度からはやるべきである、こういうように思うのですが、意欲的に取り組んでいただきたいと思うが、農林水産大臣、どうでございますか。
  92. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この間国会で御決議をいただきました食糧自給力を高めなければいけないという観点、私ども一番頭を痛めておりますのは、総合自給力を高めていく場合に、飼料穀物の問題がやはり一番大きなウィークポイントになっておるわけでございまして、確かに、飼料米がそういう形で現在輸入に依存しておる飼料穀物にかわる形になれば、これは食糧自給力の向上ということにもつながるという点からも非常にプラスでございますし、また、水田を多く抱えておる日本農業からいっても、これは大変プラスなことでございまして、農家にも非常に喜んでいただけることであろうと思うのでございます。そういう意味において、飼料米の技術開発あるいは品種改良、これには極力力を入れていかなければならぬと思っております。  ただ、問題は、国民のコンセンサスを得られるには、私は秋田でも感じたのでございますが、やはり少なくとも十アール当たり千五百キロ近くの収穫ができるような品種が開発されないと、なかなかこれはむずかしい問題ではなかろうかという感じを正直受けてきたわけでございます。そういう点がございますので、そういうものの開発ができればこれは大変ありがたいことでございますので、そういう点については積極的に取り組んでいき、そしてまた、一方においては主食用の米との識別というような問題もやはり引き続いて検討していかなければならぬと思っておりますので、そういう点には極力力を入れて予算配分をしていきたいと考えております。
  93. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 飼料用穀物に対しては、先般も私は何回か政府に申し上げ、提案をしてまいりましたが、私もいま試験的に飼料用の種子を開発しまして、推進を図るべく準備しております。ことしの水田に何カ所かこれを試作しまして、何といっても種を少したくさん集めなければなりませんものですから、ことし数俵でもとれますと、農林省関係また試験場にも見ていただいて、稲わらも相当高いし、背も高いし、収量も多い。十アール当たり約一トンの収量でございますが、食管との関係とか、あるいはこれを普通米に混米云々とか、いろいろなこともあるようですけれども、粒も大きいし、味も若干違うということで区別ができる水稲でございますので、そういったものを、もう少し農林省が納得するような種子を得ました上で、農林省の及び腰を踏み切るように、足腰強く決意して踏み切れるように、また、プロジェクトチームができるような方向にすべくと思って、国会でもやると同時に、下の方からも持ち上げるというようにいかないと、なかなか農林省も重い腰が動かないと感じておりますので、そういうことで、ゆっくり急げというような方向でいま検討しておりますが、十分意にとどめていただくと同時に、試験場あたりでも研究を若干あちこちでやっておられるようですが、積極的な研究をして、対策を早く講じていただくようにお願いしたいということを重ねて要求しておきます。  もう一点、米価問題に関連して、次の問題に入る前にお尋ねしておきます。  この際、確認の意味でお伺いするのですけれども食糧安保という考え方から、農林水産大臣は五月二日の記者会見で、通常時と緊急時の二本立てを検討していくという方針を述べられたのでありますが、この考え方からすると、昨年十一月に農政審が発表した第一次試案を見直すというように私は受けとめておりますけれども、そのような理解でいいのか、この点も重要なことでありますので、この際改めてお伺いしておきたいのです。
  94. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 昨年私どもが十一月に第一次試算としてお出ししたもの、これは通常の場合を想定いたしておるわけでございまして、通常の場合といえどもできるだけ、この間の国会決議にもございましたので、自給力を高めていくという点からいけば、やはり米をもう少し多く供給の中に位置づけていくべきではないかという考え方がございまして、それもひとつある程度再検討していただく問題に農政審ではお願いをいたしております。  いま一つは、第一次試算がいま申し上げましたように通常の場合でございますけれども、世界的な国際関係がどうなっていくかということがわかりませんけれども、万が一非常に緊迫をしてきたというような場合があるといたしますと、そういうときに、果たしていまのような形で外国から入れております小麦やトウモロコシその他のものが順調に入ってくるかわからなくなる、あるいは外貨事情というものもあると思うのでございますが、油がどんどん高くなった場合には、将来は、油を買うかあるいは食糧を買うか、こういう選択を迫られる場合もないとは限らない。そういうようないろいろのケースを想定いたしまして、緊急な場合、大体従来近い二千四百台のカロリー維持する場合と、あるいは昭和三十五年から三十七年ぐらいの二千三百カロリーぐらいのところへ抑える場合と両方想定をいたしまして、それぞれ自給率を七、八割まで高めていくには、それだけのカロリーでなるべく国内自給した場合にはどういう姿になるか、こういう形で一応試算をいたしまして、そして、それを農政審議会にもお願いをし、なおこれは全くラフな計算でございますので、事務当局としてもそれをもう少しきめ細かく計算をしていきたい、こういうことでやろうといまいたしておりまして、それを私が五月二日の記者会見のときに申し上げたわけでございます。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  95. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農薬対策についてお伺いいたします。  農薬スクレックスは、昭和四十五年二月二十五日農薬として登録され、四十八年二月二十四日いわゆる失効して、四十八年二月二十五日から使用できなくなったわけであります。また、農薬スミレックスは現在政府で検討中のようでありますが、俗にこの二つの農薬は幻の農薬と言われておりますが、この点について説明を願いたい。
  96. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からスクレックスとスミレックスという農薬につきましてのお尋ねでございます。  スクレックスの方は、ただいま先生からもお話がございましたように、かつて農薬の登録を認めておったものでございます。キュウリなりトマトなり、そういうものの殺菌剤として非常に卓効のある農薬でございました。しかし、ただいまお話ございましたように、これは失効いたしておりまして、再登録をいたしておらないわけでございます。  それから、スミレックスにつきましては、これは現在登録申請が出ております。現在、農薬検査所におきまして検査をやっております。その結果を待って登録するかどうかを決定いたしたい、こう思っております。
  97. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいまの農薬スクレックスとスミレックスの二つの農薬は、どんな農薬ですか、簡潔にお答えください。
  98. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 スクレックスの方は、かつて登録をしたわけでございますので、これについては先ほども申し上げましたように、キュウリなりトマトなりナスなり、そういう野菜、果樹、花卉の灰色カビ病、菌核病、灰星病等の病害防除に卓効のある殺菌剤というふうに考えております。ただし、先ほど申し上げましたように、現在は再登録しておりませんので、販売禁止になっておる。  それから、スミレックスの方は、現在登録のための検査中でございますのでどうということを申し上げかねるわけでございますけれども、申請の書類等によりますれば、先ほどスクレックスで申し上げたような類似の薬効を持った殺菌剤という意味で登録をしておるというふうに聞いております。
  99. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農薬スクレックスの方についてお伺いしますが、再登録しなかった理由を伺いたいわけです。私が聞き及ぶところによると、農薬製造会社は試験に失敗したのでやり直しするためには五年以上かかる、したがって、期限に間に合わず出せなかったとも言われておりますが、その点どうですか。
  100. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 スクレックスにつきましては、再登録をしなかったということでできなかったということですが、その理由といたしましては、先生御案内のとおり、四十五年のいわゆる公害国会におきまして農薬取締法の改正が行われたわけでございます。したがいまして、それ以降につきましては、この登録を認めます際に、毒性試験につきまして、従来の急性毒性、亜急性毒性というようなことのみならず、慢性毒性なりあるいは物によりましては催奇形性なりというような長期にわたる試験といいますか、そういうことも安全性の確保の観点から試験を義務づけております。したがいまして、再登録する際にこういう慢性毒性等の試験というものもやらなくてはならぬということでございますが、試験設計等におきまして失敗をしたということでございます。したがいまして、有効登録期限までに再登録に必要な試験成績資料、これの作成ができなかった、そこで再登録の申請を断念した、かように聞いております。
  101. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 厚生省環境衛生局藤井食品化学課長が来ておると思いますが、若干の点お伺いします。  いま農林水産省当局にお伺いしました件について、四十八年二月二十五日から使用禁止になりましたところの農薬スクレックスについては、厚生省はそれが禁止になったことは承知しておられましたか。
  102. 藤井正美

    ○藤井説明員 承知いたしております。
  103. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 このことについては、農林水産省から事前に通知なり連絡なりまたは協議がありましたか。
  104. 藤井正美

    ○藤井説明員 私ども、農水省と残留農薬の関係で常に密接な連絡を保ち合っております。先生指摘のスクレックスの件については、わが方に正式に連絡はちょうだいいたしておりませんが、月に何回か行われる会議におきまして、そういうものが存在しているということについては耳にいたしております。
  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農薬スクレックスは、先ほども答弁ありましたように、トマト、ナス、キュウリ、イチゴなど大衆野菜類等に散布されるわけですが、これら野菜を通じて人体に摂取した場合、どのような影響があるかお答えいただきたい。
  106. 藤井正美

    ○藤井説明員 スクレックスが登録されました当時、昭和四十年代の初期でございますので、私どもの方で安全性の検討は、学識経験者によります委員会でやっておりません。また、先ほど二瓶局長が言われました公害国会で土壌汚染防止法ができ上がりまして、その後正式にこの残留農薬の安全性については、農水並びに環境庁等から私どもが安全性についての依頼を受けている次第でございますが、その段階におきましてはスクレックスは再登録の意思がないということで、安全性の問題は学識経験者による委員会の検討を行っておりません。したがいまして、公式の安全性の問題についてお答えはできかねるわけでございますが、事務当局におきまして各種データをとりまして検討いたしました結果、幸いにして低毒性の農薬であるというふうに判断いたしております。
  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまの答弁を聞いていても、低毒性という程度で実態をつかんでいないままの答弁であるようですが、それでは質問しても全然お話にならぬわけです。確かに四十八年二月二十五日から使用禁止になっておるけれども、これが幻の農薬として、現に農家はこの農薬の効果が大きいとして相当使っているわけです。こういったものが国民の健康に重大影響を及ぼすとなれば、これはゆゆしき問題である。こういったことは、農林省と緊密な連絡をとっておるならば、お互いに話し合いながら実態を十分検討して、国民の健康のために厚生省は十分な対策をしなければならぬと思うわけですよ。これがいろいろ問題になっているわけです。いわゆる禁止になる前に相当買いだめをした、またはビニール業者が持ってきて、どこから持ってくるか知らぬけれども現在手に入っている。現在だんだん害虫が強くなって抵抗力が強くなってきたために、どうしても殺菌または殺虫の効力がない、そういったことから、こうしたスクレックスを使ってやろうという農家がかなりあちこちにあるということで実は問題になっているわけです。そういうものが禁止になったからもうあとないんだ、安全性能その他については当時問題にならなかったからいいというような考えでは、私は大変問題であると思うのです。厚生省はこういったことについては農林省にもっと積極的にその内容を聞いて、いま社会問題になっているわけですから、いわゆる食品監視のためモニターを指導して追跡調査をやるなど対策を講じてもらわなければならぬと思うのですが、どうですか。
  108. 藤井正美

    ○藤井説明員 残留農薬の問題につきましては、毎年行われます地方都府県の衛生部長会議等におきまして、さらにモニタリング、監視の強化というものについて常に強い要請を行っておるところでございます。  ただ、食品衛生法上に行われます残留農薬の監視と申しますのは、残留基準の決められた農薬について監視を進めていくというのが第一義的に行う形となっております。先生指摘のように、幻の農薬というものの使用実態が相当あるとなりますと、これについてももちろん食品衛生法上の立場から注視を向けていかなければならないわけでございますが、スクレックスがそのように出回っているということについてはまだ連絡を受けていないわけでございます。十分に把握いたしておりません。  ただ、一つの難点と申しますのは、登録の済んだ農薬あるいはこれから登録を待っている農薬等が不正に使われました場合に、私どもの監視と申しますのは、まず分析技術というものを確立いたしまして、そしてこれを地方庁に流し、さらにそれを推進していくというような形をとらなくてはならないわけでございますし、こういった未知のものに対してあらかじめ分析技術をすべて確立しておくというのはなかなか困難な問題が含まれております。しかし、先生指摘のように、こういった問題が顕在化してまいりますならば、さらにまたその努力を重ねていきたいというふうに考える次第でございます。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産省にお伺いしますが、いまいろいろお尋ねしてきましたように、厚生省からも答弁ございましたように、事実上幻の農薬として相当使われておるし、国民の健康の上にこれがどう影響するのかということが心配であります。すでにもう四十八年二月二十五日から使用禁止になっているわけです。それがやはりこれがよく効く、効くということはまた、摂取した場合人体にも影響があることはもう明らかであります。そういった意味で、私はこの実態を掌握してやってもらいたいと思うのです。  それで、現在農薬スクレックスは、低毒性と厚生省は言うけれども、実は毒性が強い。そして二百グラムが五万円とか三百グラムが二十万円とも言われております。異常な高値で売れていると言われております。そして禁止になると聞いて、禁止になる前に多量に買ったものを使っているとも言われますし、買いだめしているというようなことも言われております。うわさを聞くとそれ以上に流れているんじゃないか、かように思われています。最近はにせものまで出てきているということが言われておりまして、大変憂慮されますけれども、農林省はこれについては実態調査しておりますか。
  110. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 いわゆる幻の農薬が西日本で流通しておるということにつきましては、関係県からの報告等を受けております。したがいまして、国といたしましても、関係の職員、特に農薬検査所の職員を調査に派遣をいたしまして、工場等の生産現場あるいは販売店等の流通現場、こういうところにおきまして実態の把握に努めておるわけでございますが、全体の詳細を把握するには至っておりません。  それから、特に、昨年の七月植物防疫課の職員も派遣をいたしまして調査をさせたわけでございますけれども、具体的事例は、発見といいますか、把握できなかったということでございます。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点お伺いしますが、もう一つの、さっき申しました農薬スミレックスの方は、韓国で製造されて国内に流れているということになっております。百グラムが一袋で一万円ぐらいと言われておりますが、どんなルートかと言うと、韓国と日本の旅行会でこの農薬スミレックスを買うためにツアーがあって、これを買うためにわざわざ行くということが言われております。タイミングがうまくいかないとなかなか買えないということも言われておりますし、ほとんど日本人が買い占めて持ってくる、税関も一ケースぐらいは別に問題がないということで通しているというようなことでございますが、これも十分調査をして、スミレックスの方も、先ほど答弁があったように、日本では政府がいま農薬検査所で検討中だということですけれども、人体に害があるならばこれは大変なことです。まだ登録もされていないけれども、現にそういうものがずいぶん農薬として使われている。こういったことをチェックしないと、わかってからでは遅いわけです。厚生省ともよく連絡をとりながらやってもらいたいと思うが、時間がございませんから簡潔にお答えください。
  112. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 スミレックスの方でございますが、これはフランスなり韓国、台湾等十五カ国におきまして登録ないし仮登録が行われておる、そういう農薬でございます。したがいまして、現在、韓国にツアーで行った日本の方がおみやげ品程度にこのスミレックスを買ってきておるということは耳にもいたしております。したがいまして、まだ日本で登録されていないものでございますから、なるべくそういうことのないようにという指導は一方やるとともに、日本では現在登録申請が上がってきておりまして、現在、農薬検査所で検査中であるわけでございます。したがいまして、この検査におきまして、安全性等に問題がないということが確認されれば、登録をいたしまして、関係生産者の要望にもこたえたい、かように考えております。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が詰まってまいりましたので、通告しておりました林業の害虫問題についてまとめて一点だけお伺いし、答弁を求めます。  林野庁長官おいでだと思いますが、御承知のように、スギノアカネトラカミキリ、これが和歌山県を中心に四百ヘクタールの被害があるというふうに私は承知しております。またスギザイノタマバエが一万ヘクタールの被害、これは特に九州地方が中心である。スギカミキリが京都、兵庫を中心に五十四ヘクタールぐらいの被害が出ている。公式には以上申し上げたようなことであると思うのですけれども、実際にはもっとひどい。いわゆる第二の松くい虫ということであります。松くい虫も大変でありますけれども、これが蔓延しますと、松くい虫と同じように、またそれ以上に大変深刻な問題になることは予測されます。林野庁研究普及課長名で被害状況を調査するために昨年八月通達が出されて、各地の試験所に対して防除方法について報告を求める指示がされておると思いますが、そういうような状況を踏まえて、杉、ヒノキの害虫の発生を中心に、どのような実態であるか、害虫発生の原因とか生態、対策等を簡潔にお答えいただきたい。本日は、時間がございませんので、問題提起というようなところで、申し上げておく程度にとどめまして、細部は次回に譲りたいと思います。  なお、それに関連して、現在法定病害虫にスギザイノタマバエはなっていないわけです。あとの二つはなっております。こういったことで、県の要望が相当強いのです。助成をぜひしてもらいたいというような意見もございます。法定病害虫の対象にぜひ入れて検討すべきじゃないかとも思いますが、それをあわせてひとつ最後に長官から、せっかくおいでいただきましたので御答弁を求めます。
  114. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 昭和五十三年度の被害につきましては、ただいま先生がおっしゃったとおりの被害でございまして、都道府県の報告を集計いたしますと、スギノアカネトラカミキリの被害面積は四百四十一ヘクタール、主として近畿地方に発生しているということでございます。それから、スギカミキリの被害面積は五十五ヘクタールでございまして、主として近畿及び中国地方に発生しておる。それから、スギザイノタマバエの被害面積は一万五千五百九ヘクタールで、九州地方に発生しておるということでございます。  なお、この被害報告は、樹木の生理的、経済的な成長が期待されないものについての報告でございまして、これらの害虫による被害は、外見の変化としてはあらわれにくいために、害虫の分布を明確にしにくいという面がございます。そこで、今後、関係県とも緊密な連携をとりまして、観察体制の整備に努めていきたいというふうに考えておるわけでございます。  この害虫の発生の原因でございますが、これら害虫の発生の原因につきましては、若齢造林地の急速な拡大、林分の手入れ不足等種々の意見があるところでございますけれども、森林の自然生態系の解明を要する分野でございますし、長期にわたる調査研究を要するというふうに考えておるわけでございます。特に害虫の発生環境、害虫密度の変動要因等については、未解明の部分が多いわけでございまして、今後の研究課題と考えておるわけでございます。  そこで、これらの生態の研究の状況でございますが、個々の害虫の生活史の概略はわかっておるわけでございますが、森林内での詳しい生態、特に害虫の防除にとって必要な産卵木選択のメカニズム等につきましては、未解明の部分が多いわけでございまして、今後の研究課題というふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、何らかの防除対策を立てなければならぬわけでございまして、害虫の生態を含め研究する面が多いということはいま申し上げたとおりでございますが、当面は、防除に有効であると言われております枝打ち、間伐等の適切な森林施業により、これら害虫による被害を極力防止するように指導してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、林野庁といたしましては、五十四年度からおおむね二カ年間の計画で、都道府県の林業普及指導職員によってせん孔性の害虫被害実態調査を実施しておるところでございますが、調査が終了次第取りまとめたいというふうに考えておりますけれども、ただ、この調査は、都道府県ごとの被害の有無、それから被害林分の立地条件と被害態様との関係等、今後の試験研究の基礎資料を収集することを目的として調査を進めておるのでございまして、したがいまして、統計的に幾らというふうな数字は出てこないということでございまして、現在すでに四十二県のうち十六県が提出されておりますが、つまり、この病害がありというのが、この三種で、大体スギカミキリが十二、スギノアカネトラカミキリが六、スギザイノタマバエが三、それから、なしが、スギカミキリ四、スギノアカネトラカミキリ十、スギザイノタマバエ十三、十六県の報告が出ておるようでございます。  なお、このスギザイノタマバエが法定害虫に該当していないというのはおっしゃるとおりでございますが、被害の態様によりまして駆除のための国としての助成もできることになっておりますので、態様によって対応してまいりたいと考えております。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が若干経過して恐縮ですが、最後に農林水産大臣に、当分委員会がなかなか開けなさそうでございますので、いま申し上げた幻の農薬問題、さらには林業における森林害虫の問題、これは第二の松くい虫という大変注目すべき問題でありますが、こういった問題について大臣もお聞きいただいたと思いますが、来年度予算編成に当たり、こういったことに対して厳しい中でも十分対策を講じて要望にこたえていただくようにお願いしたいと思うので、大臣の所見を最後にお聞きして質問を終わりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  116. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 松くい虫の場合も、最初の出発と申しますか、昔からあったものにしても、昭和四十何年でございましたか、四十七、八年であったかと思いますが、松くい虫対策が強く言われかけましたころ、必ずしも十分な予算措置がなされなかったためにふえたと言う方もいらっしゃるわけでございまして、そういう点を踏まえまして、いま御指摘のように第二の松くい虫のような形に全国的に広がらないような形で、ぜひその防除対策については来年度予算において考えていきたいと考えております。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で質問を終わります。
  118. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 津川武一君。
  119. 津川武一

    ○津川委員 この国会委員会もこれで終わりかと思いますので、私は、自分たち一つのまとめとして農業全般を、それも農業白書を取り上げて、政府の指針をただしてみたいと思います。  今度出ました農業白書には、二種兼業農家の分析をやるなど、対策においては別な考え方を後に申し上げますけれども、それなりにやったことがあると思って、私も苦労のほどを十分認めるものでございます。  しかし、いろいろな批判が出ております。たとえばその一つに、「農業白書を一読すると、失望せざるをえない。農業の現状をただ平板に触れただけの記述が多く、分析がほとんどなされていない。また単純な繰り返しがしばしばみられ、説得力に欠ける。しかも、農政に対する一貫した視点が見当たらない。」こういうふうな批判が加えられております。「こんどの農業白書で最も物足らないのは、水田利用再編対策についての記述がおざなりになっていることである。同対策は五十三年度を初年度として十年間を目途に実施されているもので、二千億円以上もの血税が使われている。それだけに対策の結果と将来の見通しは、農民だけでなく一般の国民にとっても関心事である。追跡調査と分析だけで白書の三分の一を費やしても惜しくない。」のではないか、こういう批判が出ておりますが、私も全くこのとおり考えているわけです。  そこで、水田利用再編対策の現状をどう見て、いいところはどこであったか、どこに問題があったのかという分析でございますが、白書は三十六ページにいいところがたくさん書いてあります。「しかし、一部には栽培技術、販売体制の上で問題も残り、計画転作についても転作作物の統一など、なお改善の余地が大きい。」問題点の指摘をここいらにとどめておるようでございます。いま四年目に入りましたが、過去三年の追跡調査、検討をし、いいところはうんと伸ばしていく、問題点は遠慮なしにえぐって改善していくという態度がなければ私は農政でないと思いますが、この追跡調査をどう考えておられるか、いままでの分析をもあわせてお答え願います。
  120. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 一般的な白書の記述の方は官房でいたしておりますので、ただいま先生指摘のような、現在の農業上の一番の問題としまして、農業生産の再編成ということで、まさに水田転作の問題、水田利用再編対策についての記述には、私どもとしては十分心を使ったつもりでございます。  御指摘のように、白書の三十六ページにもそうした点での問題点も指摘いたしましたし、その後の問題、水田利用再編対策の現状なりについてはできるだけ分析をしたつもりでございます。  なお、これに伴う今後の具体的な施策に連なる点は、講ずべき施策なり講じた施策という形でのそれぞれの担当の方で担当してまいる、白書はそうした分析なり調査には今後ともできるだけ力を注いでまいりたいと考えております。
  121. 津川武一

    ○津川委員 官房長の答弁、いいでしょう。しかし、それでは問題がちっとも前進しない。具体的な例を挙げてみます。  北海道のタマネギ、皆さん御承知のとおりでしょう。転作でやらせた。そこで、稲転でやった人は補助金をもらえる、いままで畑作でタマネギをやった人たちは価格が暴落して破産する、タマネギは外国の輸入で余る、北海道ではこれを焼く、稲転のこういう分析はされておりますか。皆さんの文章の中では——農業団体からは成功した例を私うんと教えられております。それはそれなりに私はいいと思っていますが、問題は、このタマネギの一件に見られるように、いままでやっておるタマネギの精農家を、そこに命をかけておる農家がつぶれても稲転としてタマネギをやらせる。この場合、外国のタマネギの輸入をそのままにしておく、こういう分析がどこを探してもないのです。だから、こういう批判が出る。これは分析して、どういう教訓を引き出してどうなさるつもりか、お答え願います。
  122. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 おっしゃる趣旨の分析なりはしてございません。このことは事実でございますが、稲作転換全般についての全国的な趨勢なりは私どもなりにとらえておるつもりでございます。個々の作物の状況等いろいろ施策の面においても、水田転作を進める上で競合する問題等についての作物上の取り扱い等は、施策の面でも十分注意を払っておるところでございますし、それらの問題が今後大きな問題としてありましたら、私ども白書でも取り上げるようになろうかと思います。現状はそういうことでございます。
  123. 津川武一

    ○津川委員 大臣、聞かれましたね。稲転で既存の作物をつくっていく。懸命に努めてきた、日本食糧を満たしてきた農家を、どうなろうが構わずに稲転させた。この分析、この考慮が欠けている。  もう一つ、タマネギをやらせる場合に、外国のタマネギをそのままにしておいた。これはかなり大きな転作の条件なんです。そういう意味での分析はしていないそうです。したがって、もう一回追跡調査、分析をする必要があると思いますが、大臣の方針を伺わせていただきます。
  124. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 タマネギの例をいま先生おとりになりましたが、私どももよく聞くのは、従来から野菜の集団産地として非常にやってきておったところの近くで、たまたま水田利用再編対策ということで同じような野菜をつくるようになってきた。そうすると、その野菜を従来からつくっていた人はなかなか奨励金をもらえなくて、片っ方はもらえる。ところが野菜の値段というのは同じであるというところで、いろいろ問題があるということは、農業団体から私どもも聞いておるところでございます。いままだその辺の分析が十分いっていないということでございますので、水田利用再編対策の第二期をやります場合には、そういう点などもどう考えていくべきかということは十分念頭に置いて、私ども対処していかなれけばならないと考えております。
  125. 津川武一

    ○津川委員 北海道のタマネギについては検討して、検討の結果、ことしはどうするという指導をしたか、これをつけて私たちに報告してほしいのです。  もう一つ、青森県の水田対策の湿田地帯にクルミを千二百町歩植えたのです。水田なものだから、クルミの根が生えてきて水のところに行くと死んでしまうんです。ところが、このクルミを営農指導する体制が県にも農業改良普及所にもないのです。したがって、こうなってもだれもどうすることもできないのです。そして、ことしはこれに対してペナルティーなんだ。それで農民は、転作とは一体何かと思う。これは水田の現地を見ないで、適作であるか不適作であるかお構いなしに転作した。もう一つには、転作する作物に対する技術指導が何にもないのです。初めからこれはわかっていることなんです。根が一定のところまで行くと、そこまでは生えるが、地下水に行くと死んでしまうことは、クルミでわかっていること、それを指導する体制がなかった。ここには二つ問題があるわけです。一つは、水をそのままにして植えたこと。もう一つは、指導体制、研究体制を整備してなかったこと。こういう御検討は、この中里の場合されたでしょうか。
  126. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 青森県の転作の際に、クルミに転作をした、その際に、このクルミの関係で十分成果を上げていない、むしろ失敗をしたという事例があることは、県の方からも伺っております。クルミに限らず、従来稲作をやっていた農家に、稲以外の畑作物、果樹を含めて、こういうものをつくってもらいたいということでございますので、技術的な面なりなんなり、こういう面につきましては、やはり十分技術的に御援助を申し上げるということが当然必要でございますし、あるいは実証展示圃というようなものを現につくってみて、そういうつくり方をすれば成功するとか、あるいはこういうところは優良事例があって、そういうところへ見に行けば、それを見ながら自分の地域に合ったようなつくり方をすれば成功するとか、そういう面で、私たちもできるだけのいろいろな技術指導なり助成なりということは心がけておるつもりでございますけれども、十分そういう面に徹底していない向きがあるということも否定し得ないわけでございます。  ただいま御指摘のクルミの件につきましては、青森県当局の方ともいろいろ相談をしておりますけれども、他作物への転換の推進というようなことでやってはどうかということで、目下県の方でも検討中ということでございます。
  127. 津川武一

    ○津川委員 大臣、このとおりなんです。これも局長に言わせれば、一般的に指導する、指導した。ところが、驚いたことには、そこの農業改良普及所に行っても、役場に行っても、県の機関に行っても、クルミのことがわかっている人が一人もいないのです。それで、行ってみたら、始めて二年目、三年目になったら根が枯れることがわかったようだ。そうなってくると、具体的な指導でないと、これはいまの局長みたいなことではどうにもならない。これは小学校の一年生でも言えるんだ。農政じゃないんです。  そこで、この点はぜひ最初から終わりまで追跡調査して、国の、県の、市町村の指導によってクルミを植えた人たちが、いまペナルティーでひどい目に遭っているので、これに何らかの形での国の配慮が必要かと思いますが、この点は、あったら聞かしていただきます。
  128. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 あったら聞かしていただきたいということでございます。いろいろ検討はいたしておりますが、率直に申しまして、まだこれぞという具体的なあれはございません。
  129. 津川武一

    ○津川委員 大臣、これがあなたのやっている水田利用再編対策なんです。やっぱりここは奮起一番して、国民におわびするものはおわびする、そうしなければ前進していきません。この点を強く求めますが、いまの局長の答弁、これでいいかどうか、大臣から答えていただきます。
  130. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 結局いまの話は、果樹の、前のときにやったものを、またそのままなかなかやれない……(津川委員「とは言っていません」と呼ぶ)ということがあるようでございます。その辺のところに大変むずかしい問題があるようでございまして、いずれにしても、今度の二期対策はこれから検討するわけでございますから、二期対策をいろいろ検討する場合には、やはり従来の反省をしなければ、当然二期対策は立てられないわけでございますから、いまの問題、大変むずかしいかと思いますが、一応検討することだけは検討しなければならぬと思っております。
  131. 津川武一

    ○津川委員 検討、ぜひ欲しいね。この国会中に、できたら二十六日までに、どう事情聴取して、どう指導するかということを、ひとつ私のところに、局長——いいかい、二瓶さん、大体の指導方針を出してほしいと思う。  一つは、この土地基盤は水を抜くことですよ。そうしなければ、また同じ轍を繰り返す。そこの水田に合った作物をどう探すかということ。そうすれば、作物が探されます。養蚕なども考えています。だから、そこのところを聞いてやっていただかなければ、いまの話だと二期のときに検討してやると言うから、大臣の言葉に従って、それをひとつ二瓶さん、どうです。
  132. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほども申し上げましたが、この案件につきましては県の方でも前々からも具体的にいろいろ検討しております。何か他作物への転換ということでいけないかというようなことも考えておるというふうにも聞いておりますので、県の方ともその辺十分連携をとってみて、どういう方向で持っていくのか、その辺は調べてみたいというふうに考えます。
  133. 津川武一

    ○津川委員 そこで、畳表の話が出たが、ここはまさにえさ米の適地なんです。そういうことをお考えにならないというのは、私はおかしいと思うんだな。そこでいろんな意見が出ている中で、大豆をまいても紫斑病に見舞われむだになる、鳥の害でほとんど収穫ができなくなった。八十万ヘクタールの転作を実行するには、麦、大豆、飼料作物だけを奨励するのでは不可能という農業関係者の多数意見になりつつある。大豆の生産に適した土地はわが国で限られている。そこで、新しい作物として、えさ専用の米を取り上げようというのが高まっている。水田がそのまま使える。農業にとっては救世主になるのだ。えさ米栽培の研究を始めてはどうか。農林省の技術畑は始めている、こういうことなんです。  そこで、日本農業新聞が三月に、こういうことを出しているんですね。これで農民の皆さんが勉強されている。これはかなり行き渡って広がっている。これは何と言っているか。「えさ米、水田生かす切り札」。これは全農だけでなく、全中だけでないのです。  そこで、六年前に飼料用米生産流通実験事業の原案を農水省がまとめた。その内容は、農協が休耕田の所有者から経営委託を受けて作付する。えさ米の作付を転作と認め、転作奨励金を交付する。農協はえさ米の全量を県連、全農に売り渡し、配合飼料を製造する。価格は農協と県連などとの契約価格とする。これを農水省が六年前通達としてつくりかけた。大蔵省から文句言われて引っ込んじゃった。だから、えさ米の先駆者は農水省なんだ。これほど五十五年度えさ米の世論が起きているときに、六年前に皆さんが立てられたこの方針を——大事な方針です。大蔵省の反対でつぶれました。いま立てて農民団体、国民に支持を訴えると成功すると私は思うのですが、もう一回この六年前の初心に返ってみられて出される御意図、大事な大事なことになりましたので、時間がなかったらそこでじっくり相談してからでもいいですから、お答え願います。
  134. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  先ほど大臣からも、えさ米問題につきましては、農林水産省の試験研究機関においては研究をいたしております。ただ、前々からお話し申し上げますように、これは他の転作作物と異なりまして、やはり主食用の米穀全体の生産流通の流れとの関係、したがいまして、その収益性なり識別性、あるいは今後転作を進める際の問題としては大きな問題をはらんでおります。少なくとも最近におきます状況で、私ども段階で申し上げましたら、その収益性等においては政策上取り上げるべき段階に達してない、このように判断しておるわけでございます。
  135. 津川武一

    ○津川委員 六年前にやり始めたのから、後退どころでない、もう見向きもしないというふうな態度でございますが、官房長、識別の問題と言って、これを読んでくださったでしょう。だれでもがわかるように外国のものでつくれば、そこのところまじる心配がないと言うのだ。仮に同じものであっても、北海道で牛乳どうしています。紅を入れているでしょう。そういうことをおっしゃらないで、識別なんかは皆さんとともにやれば解決するんだ、こういう姿勢を、これからこういう発言を願えませんかな。  もう一つ、この書類の最後に松本作衞さん、びっくりして肩書き見たら食糧庁長官。国の位置づけとしてこれをやることが必要だと言うのだ。みんなで育てようと言うのですよ。条件づくりをやっていきましょうと言うのだ。これが政府の御意見。この松本さんの気持ちと官房長は大分違うのだな。大分というか、こんなに違うのだな。六年前は進めていこう。食糧庁長官も進めていこう、検討していこうと言う。大臣、ここいらを調整してくださいよ。どこに調整するかと言ったら、六年前の状況に。ひとつ大臣の答弁お願いします。
  136. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 六年前のことはもう一回私もよく読ませていただきたいと思っておりますが、私は率直に言って、できる限りえさ米が本当にうまくいくならば大変結構なことだと思っています。それはなぜかと言えば、何といったって日本農業は水田を中心として今日まで栄えてきたわけでございますから、その水田を利用できるという大変なメリットがございますし、また、農家の方もやはりそれだけに稲作というものには非常に執着心もあるし、なれてきておられるわけでございます。ただ、それをえさにするというところに問題があるわけでございまして、えさにするということになりますと、いつも申し上げておることで恐縮でございますが、いま日本飼料穀物、それに相当するいわゆるトウモロコシ、マイロは大体トン当たり三万円そこそこで買っているわけでございまして、やはりそれと大きく違わないコストでできるようにならないと、なかなか国民の理解が得られないのではないかというのが一点でございます。  いま一点は、識別の問題。いろいろあるじゃないか、前にそんなことはできるんじゃないかという話もあったということでございます。しかし、私もこの間秋田へ行ってまいりましたら、全く色の違うものもあるわけでございますし、その辺はいろいろ品種でもって全く色の違うもの、サイズの違うもの、これはできるような感じはいたしました。しかし、私も技術屋じゃございませんので、その辺のところはやはり問題があるのかなと……。ですから、決して私ども役所としてえさ米を否定しているわけではないわけでございまして、国民合意を得るにはなかなか大変なものではなかろうかという点が、やはり収益性といいますか、コストの面から一つ大きく常に頭に覆いかぶさっておる問題でございまして、それを払いのけるためには、よほど収穫量の多いものが開発されなければならないのではなかろうかと思います。  それから、識別の問題もいろいろありますけれども、常にそういう識別が簡単にできるという品種をつくり上げていく必要があるんじゃないか。ですから、そういうものをつくり上げられるという可能性が出てまいりますれば、われわれはそれに対して積極的に取り組むことは一向にやぶさかではないわけでございますけれども、その辺がまだまだ技術的には相当むずかしい、こういう判断であるだけに、われわれは決して後ろ向きではなくて、真剣に取り組んではいますけれども、実際問題としてこれを実用化していくという点については、まだなかなか年月がかかるのではないかというのが私どもの偽らざる判断でございます。
  137. 津川武一

    ○津川委員 大臣のいまの答弁、試験研究やそういうことに使えるかどうか、取り組むというふうに私受け取っていいですか。
  138. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまも取り組んでおるわけでございまして、今後とも真剣にこれは前向きというか、そういう方向にうまく先ほどのような条件がすべて具備されるというのがやはり条件でございますけれども、そういういろいろの客観的な条件が具備されるかどうかということを踏まえて前向きに検討していくことは、私は大切なことだと思っております。
  139. 津川武一

    ○津川委員 そこで、採算性の問題だが、ぼくらは水田利用再編対策転作作物のすべてをえさ米にせいと言っていないのです。問題は、水田のところにソバをまいたのです。農民の皆さんには三千五百俵とれると言ってまかしたのです。とれたのは五十俵。湿田、超湿田のところがある。農業協同組合の、これは二十万ヘクタールのところに百五十万トン、私はそれほどは要らないと見ているのです。百万トンあるいはときによると五十万トンその湿田、超湿田にえさ米を植えると、転作作物で全国で農民からのろいの声が上がっているめちゃくちゃな転作はなくなる。ここのところが私はみそだと思う。いま至るところ転作の重荷で悩んでいるのは、そういう一局部のことが出ているからなんです。このえさ米で救われる湿田もしくは超湿田をやはりえぐってくる、そこでやる。五十万トンやれば三百億ぐらいで済むと思う。百万トンやるとしても、仮に十万円補償するとしてもこれは五百億でいく。水田利用再編対策で三千二、三百億円からやっている。この一部をここに使うとすれば、ほかのものが自主的にでも、奨励金なくてもいける部分が私はいまの状況ではかなり出てくると思う。そこいらの踏ん切りの仕方が問題なんです。  そこで、農林省も技術会議の方で、東京農工大だとか佐賀県だとか青森県の試験場にも依頼したことは私も知っていますが、いま東北の各県は、全部県で予算を出して試験研究をやっている。市町村段階でも予算出してやっているところがある。ここいらの試験研究政府は奨励して援助すべきだと思うのです。これはお金でなくても、やりなさいと言えば奨励になる。それでみんな元気づく。この試験研究を全国の至るところでやる。時によると農家でもやらせる。このことが、大臣が問題を検討する上で大きなものになっていく。  それから、ことしになったら、私のところに、自分で五反歩なり二反歩なり一枚えさ米をやってみたいのだが種がないと言う。大臣も御承知のとおり、えさ米の実験が農民のところで大きく問題になっているのです。そこで、大臣、農民の要求にこたえて、えさ米の試験研究、試作に種を、それもいろいろなバラエティーの種を出してあげた方がよろしいのではないか。この二点をまずお伺いいたします。
  140. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 えさ米の関係でございますが、えさ米に対する基本的な考え方につきましては、ただいま大臣から御答弁のあったとおりでございます。  そこで、問題は、転作をいたします際に、湿田なり超湿田がある。こういうところはなかなか植えるものがない。したがって、えさ米を認めたらどうかというお尋ねでございますが、そういうところに何を植えるかという作物選択、これはあくまでも農家の判断でやるわけでございます。確かに、水稲から畑作物を植えろ、こういう指導でございますから、湿田のような状態のところにおきましては、畑作物なりそういうたぐいのものの選択すべき作物の幅は狭いと思います。レンコンがどうとかあるいはクワイがどうとか、水田養魚でやったらどうかとか、いろいろ農家で苦労しておることはわかっております。したがいまして、水田向きのただいま申し上げたようなもの、あるいはまた、これは実験事業の段階でございますが、今後新作物といたしましてはハト麦なども考えられるのではないかということで、これの実験事業も今年度から開始いたしております。そういうことで、極力その地域に合った姿で、農家の作物選択を、幅は狭いにいたしましても考えていただく。他面また、排水条件の整備等の基盤整備を進めていくということを考えるべきではないかと思っております。  それから、ただいまいろいろなえさ米の研究をやります際に、実験実施やるにしても種が足りぬ、こういうものに対する助成なり世話ができぬかというお話がございました。確かに茨城県等で、ある農家の方がアルボリオ等をつくっておる。そこで、えさ米ということで、全国からその種が欲しいということで殺到して、すごい暴騰をいたしておることを耳にいたしております。しかし、先ほど申し上げましたように、基本的に、アルボリオそのものがわが国でいま栽培を進めていいものなのかどうか、こういう面は技術的な面でもまだ詰めなければならぬこともあるようでございますので、そういうものにつきまして、種子の増殖対策なり何なりということで、国がすぐ助成なり積極的なお世話に乗り出すというのもまだ慎重を要するのではないかということでございます。もちろん、アルボリオその他の問題につきましても、国の試験研究機関等でもいろいろ検討はしておるということは聞いております。
  141. 津川武一

    ○津川委員 大臣局長の答弁を聞きましたね。あれほど皆さんが茨城に種を求めているということを局長は覚えているのだな。それで黙っているのだ。否定的な言葉を出しているのだな。局長、心配しなくてもいい。あなたのおしゃべりは要らないのだ。種をやってごらんなさいよ。農民はどんどん試験研究しますよ。要らぬおしゃべりをして、事情を全部覚えていながらああでもないこうでもないと言っている。これは農民に対する一つの背徳ですよ、求めているのだもの。試験研究で、種を増殖してやりなさいよ。ここのところはどうです。  もう一つ、六年前は皆さんがえさ米を転作の対象作物として奨励金を出している。出してごらんなさいよ、日本のえさ米の問題はかなり早く解決するから。農民も農業団体もすばらしいエネルギーと情熱を持っているのだ。えさ米に対するいまの農民の情熱というのは、あの戦後の土地解放と同じような意欲なんだ。どこへ行ってもその話が出ているでしょう、あなた一番覚えているとおり。この点は二瓶さんの答弁では私——種もみを支度してあげるという点は大臣から伺わなければならないし、六年前の状態にまた戻して転作作物の奨励にね。  大臣、ついでに申し上げますが、秋田に行っていろいろな話が出た。あのとき大臣が見てきたのは実取りでないのです、青刈りなんです。それで大臣がいろいろな発言をしているからだめなのであって、実取りのものをもう一度見直して、認識を新たにしてくれればあの誤解がないのです。大臣に突くわけじゃないけれども、少し心配だったものだから現地の人に来てもらって聞いたら、大臣が見てきたのは青刈りの捨てるやつを見てきているのです。答弁をお願いします。
  142. 松山良三

    ○松山政府委員 米をえさ用にする場合には多収ということが非常に大きな条件でございます。そういう意味で、多収の品種はどういうものがあるかということで、先ほど先生がおっしゃったような、地域によりましてはアルボリオあるいは韓国のミリアン二十三号、そういったような外国稲を使う場合もございます。ただ、日本におきましては、いま申し上げたような品種につきましては、特に東日本では非常に冷害に弱い、寒さに弱いということで、不安定でございます。去年やりました各県の試験場の成績を見ましても、いま申し上げたような水稲の品種は東北地方では収量が低いということで、東北地方におきまして一番収量の高いのは、特に青森県で非常に多く栽培されておりましたアキヒカリでございました。東北ではアキヒカリにまさる品種はない、そういうようなことでございます。  そういうことで、先ほども申したように、米を飼料にする場合の品種というのは、まず多収でなければいかぬ。その場合に、農家にその品種を試験的にせよつくらすということになりますと、やはり多収かつ安定的にとれる品種をもって普及なり指導いたしませんといかないということでございます。
  143. 津川武一

    ○津川委員 どうもさっぱりしないな。ぼくはいま国会議員をやっているけれども、国会議員をやる前はアルコール中毒をやっていた。農民は石灰、窒素をふいているときには酒が飲めなくなる。これが農民の知恵。これでみんなで集まってこの薬をつくるといったら、抗酒剤、禁酒剤ができたんだよ。心配しなくてもいいよ。農民に種をあずけなさいよ。ちゃんとアキヒカリどころかレイメイに接いであげますから。手ぐすね引いて待っているから。そこで新しい試験研究が出てまいります。このことをひとつぜひやってほしい。  えさ米で穴を掘っておったらほかの時間がなくなってしまったが、そこでもう一つ、白書の問題は、外国農産物の輸入なんだけれども、きわめて簡単に聞きます。  百二十八ページから百二十九ページ、百三十ページ、「国民食料の安定的な供給を図るためには、既に述べたように、国内生産が可能な農産物については極力これを国内で賄うことができるよう生産性を高めながら自給力の向上を図ることが重要である。」よろしい。「また、海外に依存せざるを得ない農産物については、輸出国との協調を通じ輸入の安定的確保を図る」、心配なんだな。  そこで、大臣、きょうの農業新聞にも出ているけれども、きのう大臣はアスキュー米通商代表部代表とお会いになっているでしょう。そこでオレンジの話が出ましたね。アメリカとしては五十八年以後オレンジの自由化を求めるような意味のことをおっしゃっている。大臣は、協調だとなってくると、これはやらざるを得ないんだ。日本人でつくったものを育てて、それでも足りないものを外国に依存するという立場を堅持すれば問題が解決する。白書が言うように協調なんだな。これが困るんです。さっき言ったとおり「国際協調を通じ」という同じ文章をここのところに何回か繰り返している。  そこで、今度アスキューに要求されても五十八年度にオレンジを自由化するなどということは毛頭考えていないでしょうということです。  もう一つ、サクランボ。五十三年、五十四年は七月五日から入れる。五十五年は七月一日から入れると、これが協調なんだととらえちゃったんだな。このとき日本のサクランボを守るというんじゃないのです。アメリカと協調するから、五十三年、五十四年には七月五日から、問題はことしなんです。協調すれば七月二日か三日なんだ。これはやはりきっぱり七月五日という線を守っていかないと、協調だとまた言われる。ことしはサクランボは一週間おくれているのです。七月一日に入ってこられたら全滅状態になってくる。こういう点で、協調というんじゃなくして、日本の農民につくっていただいて、自給力を高めるために全力を挙げてがんばる、それでも足りない分を入れるということでなければ、この白書から見れば国際協調ということになっている。この国際協調の考え方と、このオレンジときのうのアスキューさんとの話、それからサクランボ、この二点は具体的に答えていただいて、私はよければ質問を終わります。
  144. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ここの白書にも書いてありますように、「輸入に依存せざるを得ない農産物については、国際協調を通じ」と書いてあるわけでございまして、農産物すべてということではないわけで、私どもは、前から御答弁いたしておりますように、あくまで国内生産のできるものは極力国内生産をしていくという体制をとっていかなければ日本農業の発展はあり得ないわけでございますから、この原則は私どもは今後とも守っていきたいと思っておるわけでございます。  ただ、先ほどの飼料穀物のように、国際価格と比べて、日本でもし万が一つくれば大変割り高になるということにおいて、国民の御理解の得られないものについては、やはり外国から輸入せざるを得ないという考え方に立っておるわけでございまして、白書はそういう意味で書いておると私は思っておるわけでございます。  それから二番目の、アスキューとの会談で出ましたオレンジの問題でございますけれども、新聞はそこまで書いておってくれないのでございますが、これは公開もしておりませんので書いておってくれないわけでございますけれども、私は相当強くアスキューに言ったつもりでございまして、日本農業アメリカ農業は基本的に違う、それは一つは、規模、面積が全く相違しておるということ、また、日本国民あるいはアメリカ国民の中でそれぞれ農民の占めておる、少なくとも所得における地位というものは日本は大変低いのであるし、アメリカの場合は相当のところにあるのだ、そういう点でアメリカ日本と同じように考えてもらっては困る、だからここへ来ていい返事をもらおうと思われておったのでは間違いだということを、私は最初にはっきりお断りをしておいたわけでございます。  それと関連して、オレンジについても、八二年の後半にもう一度協議をすることになっておるから、そのときに協議をすることは当然であるけれども、しかし、いまの時点で考えれば、オレンジの自由化を八四年からするというふうなことは大変むずかしい問題であります、こういうふうに私は答えておるわけでございまして、やはりその辺は日本農業を守っていくという姿勢で私はいるつもりでございます。  サクランボの点については、大変具体的に細かい問題でございますから、農蚕園芸局長からお答えをいたします。
  145. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 サクランボの点についてお答えを申し上げます。  米国産のサクランボの輸入につきましては、先生御案内のとおり、五十三年の一月に解禁をされたわけでございます。その際に、国産サクランボに対します悪影響を極力回避をするということで、輸入期日を七月一日以降とする、これが原則でございます。ただ、解禁当初の混乱を避けるということで、言うなれば激変緩和という考え方で、五十三年度と五十四年度は七月五日、それから五十五年度は七月一日から七月五日の間で日米で協議をして決めます、こういうことで取り決めをいたしたわけでございます。  過去二カ年間の輸入販売状況等から見ますと、国内産のサクランボは米国産のサクランボの販売の時期までに大体九割方以上出荷が済んでおるということ。それから、サクランボと言っても米国産と国産では大分違います。アメリカ産は大粒で、色がどす黒くて甘ったるいというようなことで、外観、味とも違います。したがいまして、過去二年間は国産オウトウに対します大きな影響はなかった、こういうふうに認識をいたしております。  そこで、五十五年度の輸入時期をどうするかということでございます。ことしの四月に日米担当者間の会議をやりました。アメリカ側からは、当然、輸入解禁時期は七月一日に繰り上げてくれという強い要請があったわけでございます。これはそのとおりでございます。  それでは、そういうものも踏まえて、一体いつからやるのかということになります。現在、具体的な期日につきましてはまだ検討をいたしておる段階でございまして、最後的に結論を見ておりませんけれども、ただいま申し上げましたような国産オウトウへの大きな影響もなかったということからいたしまして、繰り上げざるを得ないのではなかろうか、こういうことで考えております。
  146. 津川武一

    ○津川委員 これで終わりますけれども、サクランボはやはりもう一度考え直してほしいし、それから、大臣の言う輸入に依存せざるを得ない果物、これは国民に誤解を与えている。グレープフルーツ、オレンジは輸入せざるを得ないんです、国民が食べているから。私もきのう新宿の百果園に行ってみた。一番多くあるのはグレープフルーツ、その次はオレンジ、その次が晩柑。だから、ここのところは、あなたの話を聞いていると、オレンジなんかは要らないんだという感じですが、そうじゃないんだ。日本の現状ではこれは輸入せざるを得ないんだ。これもまたあなたたちは協調だから困る。柑橘類の輸入は、足りない部分をそこにという考え方をはっきりさせていただかなければならぬ。この白書にあるこういう表現も、だから国民には正しくない。この点をはっきり——グレープフルーツもオレンジも、これは輸入せざるを得ないものに入るのです。それをあなたたちは除かれているみたいな表現をするから後でトラブルが起きる、このことを指摘して質問を終わります。
  147. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 神田厚君。
  148. 神田厚

    ○神田委員 私は本日、魚の問題を中心に御質問を申し上げます。大変限られた時間でございますので、ひとつ答弁の方も要領よくお願いをいたしたいと思います。  まず最初に、北海道漁連の魚の空取引事件、この問題につきまして、農林水産省は、東京に続きまして名古屋で昨日強制立入検査を行った、こういうことがあるわけでありますが、この魚の取引の問題につきましての全国の市場に対する検査の問題、どういう根拠で、どういう会社を対象にして、どういう範囲で、どのくらいの期間でこれを行うのか、この検査の状況について御説明いただきたいと思います。
  149. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございました中央市場の卸に対する監査は、卸売市場法の四十八条に基づく検査でございます。この検査は、通常、年間計画を定めまして実施しておりますが、今回のように問題が指摘された場合には、特に随時実施することとしております。現在検査を実施しておりますのは、東京の中央市場、築地市場の四社、それから名古屋の中央卸売市場の一社、福島の中央市場の一社でございます。また、このほかに船橋の中央市場の一社も近々に実施することにしております。
  150. 神田厚

    ○神田委員 この北海道の魚の空取引事件に関係をした介在業者、これは二十八社と言われておりますね。その中で、いま局長の方から答弁がありました築地と名古屋と福島と船橋の市場だけで、これ以外の関連のところについては検査をやらないのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  151. 森実孝郎

    森実政府委員 あるいは水産庁長官からお答え願った方がいいのかもしれませんが、便宜私から申し上げますと、二十八社のうち中央市場の卸は七社でございます。これについては卸売市場法の規定で、農林大臣が指導監督権限の発動として実施するわけでございます。これ以外に、地方卸売市場の認可を受けてやっているものがございます。これは五社ございます。これにつきましては、県知事の指導監督下にあるものでございますから、長野県、新潟県、茨城県の知事を煩わしまして、それぞれ県当局の事情聴取をお願いしております。それ以外の一般の問屋活動、水産会社の活動につきましては、法令上の根拠はございませんが、水産庁から随時事情を聴取されているという事情でございます。
  152. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、介在している二十八社の業者全部につきまして、これを検査の対象にする、こういうことでございますか。
  153. 森実孝郎

    森実政府委員 ただいまも申し上げましたように、中央市場の卸は法律に基づく監査をやっております。それから、地方市場の卸は県知事が指導監督権限として調査をやっております。その他は水産庁が事情聴取を実施されているということでございます。
  154. 神田厚

    ○神田委員 これは水産庁と県知事と農林省の三つにわたっているわけだけれども、漁連の空売りの問題についてのいわば一つの検査体制を全体に統轄するところはどこになるわけですか。
  155. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ただいま食品流通局長が御説明をいたしましたように、市場関係は市場法に基づきまして、その権限に基づいて検査をいたしておるわけでございますが、その関係を除きました会社につきましては、法律上の立入検査その他の権限はございません。道漁連につきましてはわれわれは検査権限はございますが、道漁連の取引先でございます会社につきましては検査をする権限がございません。しかしながら、事の重要性にかんがみまして、私たちはそれらの会社を招致いたしまして、いろいろと道漁連との取引に関する事実関係の調査をいたしておるところでございます。  道漁連の今回の取引によります欠損金が約百三十億ございますが、これらの欠損の内容でございますとか、あるいは空取引の全体の姿は、市場関係は食品流通局で中央、地方を通じまして取りまとめをいただき、私たちのその他の関係の部分につきましても、それらのことについて取りまとめをいたしたいと考えておる次第でございます。
  156. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、中央、地方の卸売の市場につきましては、市場については流通局、それからその他の関連業者については水産庁がきちんとした検査並びに事情聴取をしてこの事件の問題についてはっきりさせる、こういうことでいいわけですね。  ところで、そうしますと、流通局の方では長野あるいはその関連するところの県知事に対しましては、この問題についてすでに指導、通達はいたしましたか。
  157. 森実孝郎

    森実政府委員 実は地方市場の検査につきましては、去る四月に私どもの方からそれぞれの県知事に調査を依頼しておりまして、各県が現在、私どもと並行して事情聴取及び検査を実施中でございます。結果も並行して取りまとめが行われることになると思っております。
  158. 神田厚

    ○神田委員 一番早く行われたのが東京の築地の業者の問題ですが、伝票等の量も大変多くてその取りまとめに非常に苦労しているというようなことでありますが、全体的なこの問題の集約といいますか、そういうものはいつごろできるというふうにお考えでございますか。
  159. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、中央卸売市場の関係で申し上げますと、築地の四社のうち二社は大体精査が終わりまして、残りの二社について現在精査を実施中でございます。帳簿が長年にわたって非常にたくさんございますし、それから伝票等の整理も倉庫から出してきて確認した上でやる、さらに会社自体の職員がかなり異動しておりますので、そういった既往の職員を集めて事情を聴取するということで手間取っておりますが、築地については大体五月中ぐらいには取りまとめられるのではなかろうか、そして残った中央市場の三社につきましては、それよりは若干おくれて取りまとめが行われることになるのではないかと思っております。  なお、この件は相互に関連している点もございますので、それぞれの精査の上、相互に突合してみるという努力が必要だと思っております。  それから、県の市場の方につきましては、大体概査は終わったようでございますので、現在疑問点の精査をお願いしているところでございまして、これはやはり六月に持ち越すのではなかろうかと思っております。
  160. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、六月に集約された段階で、これらの問題についてすべて公表をするというお考えはお持ちですね。
  161. 森実孝郎

    森実政府委員 検査の結果につきましては、何と申しましても個別企業の営業上の問題でございますので、個々の内容自体を発表することは配慮しなければならないと思いますけれども、全体の概貌、問題となった点等については、わかりやすい何らかの形で整理をいたしまして公表すべきものではなかろうかと思っております。
  162. 神田厚

    ○神田委員 この問題につきまして大臣にちょっとお伺いしたいのでありますが、この北海道漁連問題は、総額千七百億円とも言われている膨大な空取引によって全国の消費者あるいは多くの人たちに大変な迷惑をかけた問題でありますが、このことにつきましては、一つは、これが発覚するまでどうしてわからなかったのだろうかという問題等も含めまして、農林水産省の監督といいますか監視といいますか、それに対する姿勢が非常に問題だという指摘もあったわけであります。そこで、現在こういうふうにして検査が行われているということでありますが、こういう問題が再び起こらないような形にするために、水産庁としてはこの問題をこれからどういうふうに展開させていくのか、その辺をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  163. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 確かに私どもとして反省をしなければならぬ点はいろいろあるわけでございまして、一つは、道漁連の検査のあり方が、いわゆる伝票とか書類とかあるいは金額の動きであるとか、こういうものは調査をしていたわけでございますけれども、物の動きに対しては全く調査をしていなかったわけでございまして、結果的には、それがこういう空売りがなかなか見つからなかった大きな原因ではなかろうかと私は思っております。そういう面においてこれからは、検査に当たりましては、物の動きも含めて検査をするという方向に持っていかなければならぬと思っております。それが今度の場合に一番大きな問題ではなかろうかと思います。  もう一つ、行政指導といたしましては、確かに水協法の場合は、農協法と違いまして五割の員外利用が認められておるわけでございますけれども、これは何も奨励するという意味で員外利用が認められておるわけではないと私は思っておるわけでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、津島委員長代理着席〕 だから、その員外利用のあり方についても、特に今度問題の起きました道漁連の東京営業本部はどうも九〇%以上が員外利用であったようでございまして、トータルとしては、道漁連全体では五〇%以内であるけれども、東京の本部で扱っていたものは九〇%ぐらいが員外利用であった。こういうことから見ると、果たしてそういうあり方が望ましいのかどうかという点は非常に問題があると思いますので、そういう点の員外利用のあり方について行政指導を強めていきたい。私は道漁連の関係についてはまずこの二つはこれからしっかりやらなければいけないと思っておるわけでございます。
  164. 神田厚

    ○神田委員 それで、関係している業者が現実に違反をしている、あるいは調査の結果非常に問題が多いという場合には、農林水産省としてはどういうふうなお考えをお持ちなのか。行政処分その他の問題についてはどういうふうに考えておられますか。
  165. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  従来から概査はやっておりまして、また精査の中間報告も受けております。全体として見ますと、今後取引を改善すべき事項と、現在の市場法令の中で定められているルールに違反しているものと、二つに分かれてくるのではないかと思っております。  このルールの違反につきましては、一定の範囲で従来の卸売市場法令の違反についての処分の先例もございますので、そういった類例との均衡も考えながらしかるべき措置が必要ではないか。ただ、いままでの概査の段階では、全く形式犯の違反が一部あるという程度ではないかと思います。  私、問題は、むしろ、先生指摘のような不当な問題というか、今後の水産物流通のあり方としてどう考えるかという問題が重要ではないかと思います。特に冷凍水産物というのは、頻繁に仲間内取引が行われる商品であることはやむを得ませんが、中央市場の卸をはさんで必ずしも在庫の裏づけがない取引が頻繁に行われるということは、本来の市場運営にも悪影響を来すという点がございますので、そういった点で、改善のための行政指針を定めまして、それを徹底させるということをこの機会考えなければならないと思って、検討いたしたいと思っております。
  166. 神田厚

    ○神田委員 かずのこの問題を見るまでもなく、これは統計的にも見てきますと、品物がなくなってきて値段が高くなってくるというような動きが一般常識でありますが、かずのこは品物はあってもどんどん高くなってきている。これはずっと統計をきちんと追っていけば、確かにそこで何らかの価格の操作がされているということが明らかなわけですね。それにもかかわらず、それらの問題についてなかなか指導なり目が届かなかったということは、明らかに水産庁としての監督の立場を有効に使わなかった、そういう意味では責任は大変重大だと考えているわけであります。  現代のように冷凍食品が多くの食品の中でかなり重要な部分を占めてきている段階におきましては、価格操作等に対するきちんとした監視の目をこれから先も続けていかなければならないわけでありますから、そうい意味で、冷凍食品の問題についての価格操作の防止といいますか、これが高値になるような形のものについて出荷調整等も行われておりますけれども消費者にとりまして不当にそれらの問題で価格操作がされることのないように監督をしてもらいたい、こういうふうなことを要望したいと思うのですが、いかがでございますか。
  167. 今村宣夫

    ○今村政府委員 水産物、一般的には需給状況がそれぞれ異なりまして、たとえばかずのこのように供給が一定限度しかないというふうなものとそうでないものといろいろございます。それからまた、その魚種にどれだけの人が関係をしておるかということによっても違いますので、一概には言えないのですけれども、大勢として申し上げますならば、一般的に申し上げて、生産、流通、輸入の各段階で多数の事業者が関係しておりまして、通常それぞれの段階で需給を把握をいたしておりますから、私は競争的に価格は形成されているのではないかと思います。ただ、かずのこのような需給関係にあるものは、つい競争的な買い付けをし、それからまた数量が限られておるものですから、売り惜しみというふうな形があらわれてくるわけでございます。私たちは、そういう魚種によりまして大体関係があるのかないのか、その他諸般の情勢を十分見きわめながら、特に供給が不足しがちな魚種につきましては十分監視の目を光らして、価格の動向に不自然な動きが見られるような場合におきましては、必要に応じて関係業者に適切な指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  168. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんから、この問題は後で一回時間をとりましてゆっくり質問したいと思っておりますが、大臣に、最後に、こういう問題で、いまの冷凍の問題もそうでございますが、市場内流通、先ほど局長からちょっと答弁がございました流通の問題、やはり卸売市場法の改正、これもすべきではないか、こういう意見一つある。さらには、市場外の流通については規制がないのはおかしいのではないか、何か検討しろというふうなこと、これも出ております。特に冷凍の問題といま言いました市場法の問題、これにつきましてどういうふうな御見解をお持ちでございますか、最後に御答弁を……。
  169. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 自由市場経済のたてまえをとっておるものでございますから、そういう規制という方向で市場法をいまよりも何か強化をするというようなことについては、正直非常にむずかしい問題があると私は思います。  いずれにいたしましても、ですから、いまのところ法律を改正するという気持ちは具体的には持っておりません。その作業もやっていないわけでございますが、今度の北海道漁連の問題、あるいはかずのこ問題、その他いろいろと水産物関係、あるいはまた野菜についてもそういうことがあるのではないかと言われることもありまして、自由市場経済の原理は、私どもはやはり今後とも維持をしていきたいと思っておりますが、その中にあって良識を持っておやりになる場合こういうことはないと私は思うのでございます。もちろんある程度の商売でやることはやむを得ないことだと思いますけれども、良識の商売の範囲以上に行われるような場合の規制がどうあるべきなのか、そういう点の何かメスを入れて、そういう場合はきちんとさせるようなことができないのかどうかというのは、真剣に取り組んでいかなければならない問題だと思っておるわけでございまして、なかなか法律を改正するかどうかというところまではいっておりませんけれども、この問題が一段落したら、前からそういうことを私ども省内で一遍やりたいと思っておりますし、また、現在においても水産庁と食品流通局でもっていろいろと検討もしてもらっておりますので、ひとつ国会でも終わったところでいろいろこの問題については議論をし、何かいい案をひとつ考えてみたい、こう思っておるわけでございます。
  170. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  171. 津島雄二

    ○津島委員長代理 次回は、来る五月二十六日月曜日午後三時理事会、午後四時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十九分散会