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1980-05-14 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月十四日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 津川 武一君    理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    菊池福治郎君       佐藤 信二君    佐藤  隆君       菅波  茂君    田名部匡省君       玉沢徳一郎君    西田  司君       福島 譲二君    保利 耕輔君       小川 国彦君    角屋堅次郎君       新村 源雄君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    本郷 公威君       瀬野栄次郎君    武田 一夫君       中川利三郎君    神田  厚君       阿部 昭吾君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    塚田  実君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         食糧庁次長   小野 重和君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君  委員外出席者         国土庁計画・調         整局計画課長  長沢 哲夫君         外務省アジア局         東南アジア難民         対策室長    今川 幸雄君         外務省経済局資         源第二課長   池田  維君         外務省経済協力         局政策課長   坂本重太郎君         文部省初等中等         教育局職業教育         課長      中村賢二郎君         農林水産省経済         局国際部長   古谷  裕君         通商産業省貿易         局農水課長  古澤松之丞君         通商産業省立地         公害局立地指導         課長      稲葉  実君         資源エネルギー         庁長官官房石油         代替エネルギー         対策課長    川田 洋輝君         自治大臣官房企         画室長     金子 憲五君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 羽田孜

    羽田委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島雄二君。
  3. 津島雄二

    津島委員 今回の国会、会期末に近づいておりますけれども農林水産委員会水産関係についての詰めた議論が十分に行われていないということもございまして、また、燃料費が御承知のとおり昨年から非常に高騰をいたしまして、全国各地漁業従事をしておられる方が相当苦況に立っておるということは御案内のとおりでございます。そのことを踏まえて、水産業振興に関する若干の問題について御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、昭和五十三年度のいわゆる漁業白書、「漁業動向に関する年次報告」を私は目を通してみました。かなり豊富な資料を駆使して労作であると考えますが、ただ、ついこの間出たばかりのこの白書が、いまやすでにいささか時代おくれの感がしないでもない内容になっております。それはたとえばこの白書の出だしのところに、わが国漁業の「最近の動向を概観すると、五十二年の激動的な混乱期を経過し、次第に落ち着きを取りもどし、新たな秩序が模索され始めている。」こう書いているのであります。私は、果たして新たな秩序がいま形成されつつあるかどうかに重大な疑問を持っております。  これから逐次御質問を申し上げたいと思いますけれども、昨年来の燃費高騰ということから、またあの五十二年までの激動的な混乱期相当するような一つの挑戦を受けているというのがいまの漁業の現状ではなかろうかと思うのでございます。そのような私の印象につきまして、水産庁長官、この白書をついこの間おまとめになった立場から、燃費がさらにこれほど高騰をいたしました現在、省エネルギーということがいまよりもさらに一層要求されている中で、この漁業白書の基本的な考え方については、なお十分の妥当性を持っているのかどうなのか、あるいは考え方においてある程度の変更が必要なのかどうか、御感触をまず承りたいと思います。
  4. 今村宣夫

    今村政府委員 御指摘のように、漁業白書は、五十三年から五十四年にかけて、できるだけ五十四年にも入り込んで記述をするというたてまえをとっております。したがいまして、五十四年後半から先生指摘のような石油価格高騰という事態を迎えての水産業をめぐる諸条件というものはきわめて激動的でございまして、そういう意味合いにおきましては、白書はそこまで踏み込んで記述をしてないではないかという御指摘は非常にごもっともかと思います。ただ、私たちも、できるだけそういう面に触れるために、イラン政変を契機とした石油の供給の不安定化価格の急騰によって、再び新たな局面を迎えることになっておるということを述べてございますが、確かに、最近におきます石油価格高騰等をめぐります水産業の厳しい環境のもとにおいて再び新しい局面を迎えつつあるということは、御指摘のとおりでございまして、私たちといたしましても、先生ただいまお述べになりましたような認識の上に立っておるつもりでございます。
  5. 津島雄二

    津島委員 この問題をさらに将来にわたって展望いたしてみますと、原油価格は短期的には一応安定状態が出てくるのではないかと言われておりますけれども、さらに三年後あるいは五年後を展望いたしますときに、一部にはバレル当たり五十ドル時代が来るなんというような話もあるくらい、燃料高騰というものが避けられない問題であろうかと思います。  その中で将来を展望いたしまして、従来の区分で遠洋漁業、それから沖合い漁業沿岸漁業それぞれの漁業について、省エネルギーという観点から、いままでどおりのウエートというか分野を期待していいのかどうか、わが国民に対して一千万トンを超える漁業たん白源を供給する使命を負っております漁業あり方として、それぞれの漁業についての将来の展望をいまからはっきり申せというのも無理かもしれませんが、白書の基本的な考え方にどのような変更考える必要があるかどうか、長官からお答えをいただきたいと思います。
  6. 今村宣夫

    今村政府委員 現在わが国漁獲の一千万トンないし一千百万トンの漁獲が、それぞれどういうところといいますか、どういうシェアでとられておるかということを見ますと、非常に大ざっぱに言いまして、遠洋は大体二〇%ぐらいでございます。それから沖合いが大体五〇%ぐらいで、沿岸が大体三〇%というふうなシェアに相なっておるわけであります。かつては沿岸から沖合い沖合いから遠洋へということで、だんだん船が大型化するし、漁獲距離は遠くなっていくという形がとられたわけでございますが、二百海里時代を迎えまして、遠洋はもちろん大切でございますが、日本の周辺の豊かな漁業資源というものを開発するということの必要性というのはますます重要になっておるわけでございます。  そこで、私たちとしましても、沿岸及び沖合い等につきましての漁業振興については、いろいろと力をできるだけ注いできたわけでございますが、石油価格高騰という観点からすれば、沿岸漁業にさらに力を注ぐべきものではないかということは、御指摘のとおりかと思います。ただ、私たちとしましていろいろと分析をいたしてみましたが、沿岸漁業だから必ずしも石油の使い方が少ないということも一概には言えないということもございまするし、それから、現在、やっぱり遠洋におきましては食用水産物でございまするし、沖合いにおきましては五〇%という相当大きなシェアを持っておるということから考えますれば、もちろん沿岸振興にさらに強力に施策を展開すべきことはもとよりでございますけれども遠洋沖合いにつきましても、省エネルギーという観点から、それらの所要の対策を講じていくこともまた必要ではないかというふうに考えているわけでございます。
  7. 津島雄二

    津島委員 長官の御答弁は理解できるところではございますが、すなわち、沿岸沖合い、これの将来のあり方については、漁法効率性というようなことも考えに入れた場合に、一体どちらが省エネルギーとして望ましいというか問題が少ないか、にわかには断定しがたいという点はあると思いますけれども、また同時に、この問題については漁業資源確保という観点も必要ではなかろうかと思うわけでございます。われわれいろいろ勉強してみますと、いわゆる沖合い漁業が大型化し効率化していけばいくほど、漁業資源確保という点から言うと問題になるような漁法が出てくる。たとえば、相当効率的なトロール漁法を使いますと、それは一回のあれにはいいけれども、長い目で見れば非常にぐあいが悪い。また、きのうの議論にもありましたけれどもイカの問題にしてみれば、流し網漁法は効率的にはいいかもしれないけれども、しかし抱卵イカもとってしまうというような問題がございまして、資源確保という点から言いますと、沖合い漁業を大型化し効率化するということだけに突っ走るわけにはいかないと思うわけでございます。そういう観点から、沖合い漁業沿岸漁業それぞれについて、望ましいあり方についてもう少し突っ込んだ研究を今後の白書においては試みていただきたい、これは要望として申し上げておきます。  従来行われてきた具体的な政策の中で、問題点を二つお伺いしておきたいのですが、その第一は、いわゆる漁港整備の問題がございます。従来は、遠洋漁業が華やかなときは、第一種の漁港中心とする大型漁港に集中的に公共投資をおやりになって整備を図った、それはそれなり役割りを果たしたと思うのであります。昨今は中型、小型の全国各地に点在する漁港への配慮というものに相当の力を入れてきておられることは、私は評価をしたいのでありますけれども、しかし、それが必ずしも十分であるとは言いがたい。それから、同時に、何といっても漁港指定を受けている地域というのは非常に限られておるわけでございます。私ども青森県は七百キロという海岸線を持ちまして、これは青森からちょうど上野までの距離相当する長い海岸線を持っているわけでありますが、その中で漁港指定を受けているのはきわめて限られた地域です。ところが、零細漁民中心として漁業従事している方は漁港地域に限らないわけであります。漁港地域指定を受けていないところの漁業者への配慮というものは、いわば水産庁としての施策の非常に大きな限界があるのではなかろうか、そういう方に対して一体どのような姿勢で対応しておられるか、まずこの点についてお伺いをしたいのでございます。
  8. 今村宣夫

    今村政府委員 現在、漁港整備につきましては、第六次の漁港整備長期計画で、五十二年から五十七年度までの計画に基づいて行われておるところでございまして、先生指摘のように、私たちとしましても、沿岸沖合い漁業振興ということに重点を置きまして、その漁港整備を進めてきたつもりでございます。  一例を申し上げますと、六次計画では五次計画よりも採択漁港数が約百八十五港ふえておりますが、そのうち百八十港は一種漁港ないし二種漁港でございます。それから、同時にまた、一、二種漁港の修築でありますとか改修の事業費シェアを見てみますと、五次では約五四%でございますが、六次ではこれを六〇%にいたしておるわけでございます。  そのような観点から、私たちも力を入れてまいったわけでございますが、先生指摘のような観点を今後十分踏まえまして、従来に増してわが国周辺水域資源の見直し、その高度利用を進める必要があるわけでございますから、沿岸沖合い漁業振興という観点から、漁港につきましてもそういう方向で一層積極的に推進をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  9. 津島雄二

    津島委員 ただいまの御答弁で、多少私の質問に対して抜けておりますのは、漁港指定のない地域漁民に対してどのような配慮をするかという問題が一つでありました。それから、同時に、ここで取り上げておきたいのは、昨今、農林業を参考にされたのだと思いますけれども、いわゆる漁村整備といういわば集落整備ということを含めて、漁民の仕事と生活環境を守るということに踏み出しておられる。これは私も評価をしたいわけでありますけれども、ただ、これがいま御指摘申し上げているような漁港指定を受けている地域だけに限られますと、本当に公共配慮の必要な僻地の漁村に対する配慮は行き渡らないということになるわけであります。私が見ている限り、漁港地域指定を受けているところは漁村の中でも恵まれているところであります。比較的交通の便もいいところです。本当に小さな船を操って生命の危険を冒して漁業従事をしておられる方々は、漁港指定もないようなところに相当数おられます。したがって、この二点についてどういうお考えであるかお伺いをいたしたいのであります。
  10. 今村宣夫

    今村政府委員 確かに、御指摘のように、漁港地域につきましては恵まれた地域であって、そういう地域でないところにも国の施策を十分考えるべきではないかという御指摘でございますが、御存じのように、漁港そのものにつきましては、これは漁港地域指定してその地域において漁業を行うということでございますから、やはりそういう地域の拠点的なところに漁港を設置するということにならざるを得ないわけでございますが、そういう漁港という公共事業のほかに、御指摘のように集落を含めてその地域の漁家のためにどういうことができるか。それは、一つは、いまお話のありましたような集落整備ということでありましょうし、あるいはまた場合によっては構造改善という問題でもございましょう。それらの点につきましては、先生指摘の点を踏まえまして、私たちとしましても今後十分に検討してまいりたいと思っております。
  11. 津島雄二

    津島委員 御指摘申し上げたい次の点は、漁法の問題でございますけれども沿岸沖合い漁業について絶えず問題が起こるのは、漁法の違う漁業者の間の調整問題でございます。  一般漁業についてのトロール漁法をどのような範囲内にとどめるかという問題、あるいはイカ漁について流し網による漁法をどの範囲内にとどめるかということについては、従来とも水産庁相当調整のための努力をしてこられた、これは認めるのにやぶさかではないのでありますけれども、私どもの耳に絶えず、そういう調整、現実には線引きが行われているにもかかわらず、苦情が来る。それで、その結果、たとえばイカ漁については流し網漁法は全廃をしてほしいという議論になって出てきているわけでありますが、そういう相対的に大型漁法、しかも資源整備という点から言えば問題のある漁法については、さらに厳しく調整をする必要があるのではないかと思いますが、水産庁としてはどういうふうにお考えなのか、当分の間は従来どおりのやり方でいく以外にないとお考えなのかどうなのか、お伺いをしたいと思います。
  12. 今村宣夫

    今村政府委員 漁業調整の問題は、御指摘のようにきわめてむずかしい問題で、一つ一つのケースがきわめて漁業者の利害に直接結びつく問題でございますから、非常にむずかしい問題でございます。同時にまた、従来の長い経緯もございますので、白紙に線を引くというようなこともできないので、私たちは、この問題につきましては非常に苦慮をいたす面が多いわけでございますが、しかし、限られた資源を有効に利用し、しかも漁業者が円滑に操業ができるという観点から、できるだけの努力を払ってまいりたいと思っておるわけでございます。したがいまして、そういう資源利用あるいは当該漁業種類ごと操業実態等を踏まえまして、今後も適切なる調整にはさらに努力を重ねてまいりたいと思っております。  御指摘のありました、一例の、イカ流し網漁業イカ釣り漁業との調整問題というのは、現在非常に大きな問題に相なっておるわけでございます。イカ資源につきましてもいろいろと問題がございますが、先般、五十三年の秋に一定の調整を行いまして、東経百七十度以西の海域においては禁止するという措置をとったわけでございます。片やイカ流し網漁業ということになりますと、省エネルギー観点から見れば非常にいいではないかということを主張する方もいらっしゃるわけでございますが、私たちとしましては、いろいろ問題のあるイカ資源につきまして、抱卵イカども無差別にとる、あるいは非常に能率的な漁法であるだけに、資源観点から見ていかがなものであるかということでございますから、そういうことの操業実態を厳しく監視しつつ、これについては今後とも十分慎重に対処をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  13. 津島雄二

    津島委員 今後とも賢明な配慮をお願いを申し上げたいと思います。  そこで、きょうの私の質問の最後のあれでございますが、燃料費がこれだけ高騰いたしまして、零細な沿岸漁民中心として非常な苦境に立っていることは御承知のとおりでございます。私どもの地元でも、今月中に危機突破大会をするということになっておりますが、この点については、私の同僚の田名部議員がまた細かく御質問をする予定になっております。  一般的に言いまして、いまのような新しい石油ショックに直面をいたしまして、全国漁民が生きていく道について水産庁としてはどのような見方を持っておられるのか、相当対策が必要であると見ておられるのかどうか、これが第一点であります。  それからもう一点は、私は非常に残念に思っておるのでありますけれども、昨今、生鮮食料品あるいは冷凍食料品についてのいわゆる市場操作あるいは空売りというような問題が指摘されておりますとおり、ちょうど二百海里時代の、まあどさくさに紛れてと言っても差し支えないでしょう、いわば投機資金が流入してきて、現物のない取引中間価格卸価格を上げてしまう。したがって、消費者は当然肉に転換できるところまで消費者価格が上がってしまった。その中で今度は、コスト要因から燃料価格が上がってきて、生産者の方は生産者価格をこれ以上上げてもらわなければやれないというときに、末端価格限度まで上がっているという事態になっているわけであります。そういうことを考えますと、この流通段階合理化というのは絶対に必要だし、二度と空売りのような操作が起こってはならないというのが私の考え方でございますけれども、この点について農林省の方からの御答弁をいただきたいと思います。
  14. 今村宣夫

    今村政府委員 第二の点は、森実食品流通局長からもお答えを申し上げると思いますが、まず第一点の、現在のような灯油高騰あるいは漁業経営をめぐる厳しい状況を踏まえて、政府としては相当対策を講ずるべきではないかというお話でございますが、私たちとしましては、燃油対策につきましては、御高承のとおり、昨年三百億、ことし五百億の石油資金用意をいたしております。漁業者の方からいたしますれば、こういう低利融資ではなしに交付金をもらいたいという気持ちは強いわけでございますが、全体的に考えますと、やはりそういう低利融資をするということ、そのことは水産特殊性に着目をした対策でございまして、これへ交付金という話になりますと、水産のみにとどまらないという非常にむずかしい問題がございます。私たちとしては、石油確保、同時にまた、そういう低利資金融資確保につきましては、今後とも最大限度努力をいたしてまいりたいと思いまするし、同時に、経営維持安定資金三百七十億を用意をいたしておりますので、これによりまして経営の維持安定には対処してまいりたいと思いますが、やはり全体的にどういうふうに省エネルギー型の漁業をつくり上げていくかということが基本的問題でありますが、当面また、できるところから省エネルギー対策をやっていくということが必要であろうかと思います。  たとえば、中型イカ釣り漁業などについて申し上げますならば、集魚灯の規制をやっていただくとか、あるいは漁期の短縮問題というのもございましょうし、そういうできるところのエネルギー対策をやっていく。将来としてはどういうふうにそれぞれの業種についての構造問題を解決していくかという基本的な問題がございます。これにつきましては、それぞれ業界におきましてもいま鋭意真剣に検討をしておるところでございまして、私たちとしましても、今後起こるべき問題は漁業経営問題であろうという認識は十分持っておるわけでございまして、その業界検討進展度合いに応じまして、われわれとして、それを踏まえまして十分指導なりあるいは対策なりについて考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  15. 森実孝郎

    森実政府委員 冷凍水産物中心にいたしました取引あり方の問題の御指摘と理解しております。  一般に、貯蔵性がございましてかつ市況商品である商品につきましては、やはり頻繁に仲間内取引が行われるという実態は、私否定できないと思います。その限りではやはり冷凍水産物も例外でないということは私は事実だろうと思います。  問題は、一つは、冷凍水産物につきましては卸売市場ルートによる売買一般市場外ルートによる売買が競合している、むしろ全体としては後者が多いという実態でありますし、また、それはそれなりに競争的に営まれているわけでございますから評価しなければならないと思っておりますが、卸売市場を経由する取引で、卸売人を間に置いて、必ずしも在庫の裏づけが明白でない取引が頻繁に行われるということは、やはり市場業務の正常な運営に悪影響を与えないかどうかという視点が一つの問題だろうと思います。  もう一つの問題は、こういった頻繁な仲間内取引は、いわゆる生産者の手を離れて商人間だけで行われるというのではなくて、いわば生産者なり生産者の組織も含めて営まれているわけでございますが、やはり明確な需給予測なしに非常に不備な状況のもとで取引が行われると、非常に価格の乱高下を招くという実態があるだろうと思うのです。生産者漁獲した魚を、非常にコストが高い、一方においては市況が低迷している時期に、調整保管してある程度長期計画販売をするということは、それなり評価しなければならないと思いますが、まさに御指摘のように、需給予測を離れてそういった取引が行われると、必ず後で反落なりガラが来る、それが流通混乱を招くということは事実だろうと思います。  そういった意味で、私どもといたしましては、一つ市場行政の問題としまして、卸売人を介在して必ずしも在庫の明白でない裏取引が頻繁に行われないように、そういった点で、現在七社を監査しておりますが、監査結果を待って、新しい改良指針指導方針を打ち出してまいりたいと思っております。  後者の問題については、なかなかむずかしい問題でございます。しかし、やはり冷凍水産物も基本的には生産指標在庫指標によって需給が決まり、それによって価格が決まる本質を持っているわけでございますので、より的確な需給予測、その前提になる在庫指標なり水揚げ指標というものを組織的に情報として流していく体制を整備するという問題に、やはり重要な課題として取り組んでまいりたいと思っております。
  16. 羽田孜

  17. 田名部匡省

    ○田名部委員 関連して、あるいは具体的な例を申し上げて御質問をさしていただきたいと思います。  燃油対策について長官から、なかなか漁業だけにいろいろなことができないという御答弁でありましたが、御承知のとおり、二百海里時代を迎えるとともに遠洋漁業の生産は相当減っておる。また、相次ぐ石油ショックによりまして燃油価格高騰しているわけであります。省エネルギー船の開発、これは大変必要なことでありまして、これからいろいろと取り組むことだろうと思いますけれども、これは長期的な、あるいはもっと時間を要する問題でありまして、特に現在イカ釣り漁業の場合には、集魚灯に大量の重油を使っているわけであります。また、魚群を探しながら操業する釣り漁法が、燃油の消費もまた増大しているという現状にありまして、あるものにはもう出漁をやめるという事態もすでに発生しているわけであります。  そこで、現在A重油の価格は、複雑な中東の状況等も絡んでばらばらな状態でありますけれども、大枠では系統燃油がキロ当たり昨年の四万九千円から五万円のものが、ことしはもうすでに七万五千円、一般燃油で大体七万八千円ぐらいということになっているわけでありますが、これではもう当然採算割れをするということがはっきりしておるわけであります。そこで、この対策がどうしても必要だ、業界の方々は何とか燃油の価格差補給金の緊急な援助ができないのかどうかという強い要望があるわけでありまして、このことについて再度お伺いしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
  18. 今村宣夫

    今村政府委員 御指摘のように、石油価格はきわめて高騰をいたしておるわけでございまして、特にイカ釣りは、業種としてはわりあい石油を消費する形の漁業でございます。したがいまして、その経営はいまきわめてシビアになっているということは、私たちも十分認識をいたしておるわけでございます。     〔羽田委員長代理退席、委員長着席〕  燃油対策としまして、私たちは昨年末からいろいろと低利融資等の措置を講じてきたわけでございまして、その際にも漁民の方々から価格差補給金というお話が出たわけでございますが、いまさら私が申し上げるまでもございませんけれども石油全体の価格の影響というものは国民生活全体に重要な影響を及ぼすものでありまして、単に漁業だけではないわけでございますが、漁業は、魚種によって違いますけれども、油で魚をとってくるというふうな形でございますから、とうていほかの業種の影響と比較できないほど大きいものであるということを強く主張をいたしたわけでございます。そういう観点から、現在八百億の燃油低利融資を行っておるところでございまして、漁民の方々の立場から考えますならば、価格差補給金を交付していきたいという気持ちは、私としてもそれはやまやまでございますけれども、やはり国全体の施策ということから考えますと、現在のような低利融資で対処していかざるを得ないといいますか、そういう状況にあるわけでございます。
  19. 田名部匡省

    ○田名部委員 よく理解できるところでありますけれども、第一次産業であります農業、漁業。農業の中でも野菜等は特にそうでありますけれども、他の産業と違って、労務費、資材、燃油の値上がり分を魚価に上乗せできないという苦しさがあるわけであります。よその産業でありますと、仮に建設資材等でも、これは値上がり分は資材の価格操作ができるわけであります。しかし、このことが漁業の場合にはできない。先般、私、小売をしている市場の人たちといろいろな話をする機会があったわけですが、魚をとっている人たちがおかしくてしようがない、こう言って笑っているのですね。えらい借金をして苦労して命がけで魚をとってきて、それを売った魚の価格というものはまことに安い。先ほど津島委員からもいろいろ御指摘があったように、あとは卸売、仲売、小売、この人たちは幾らで入ってこようとも個々に価格を上乗せして利益を出しているわけであります。  そういうことから考えますと、私は全くおかしな話だ。これでは生産者はもうやる意欲をなくするのではないかという気がして、これはもうよその場合と違うんだという感覚で、しかもいつまでということではなくて、ある程度省エネルギー船の開発だとか、この後私は建造資金の方にも触れさせていただきますけれども、そういうものの体制が整うときまで、何とかめんどう見ることができないのか。先ほど長官は、八百億の融資、こういうことでありましたが、これは個々の漁師の方々にいくときにはもうわずかな金なわけであります。五十四年に水揚げをしたイカ釣り船の燃油代は一体どのくらいかと言うと、キロ当たり五万六百円で一年間に三千百万円払っているわけです。そういうことを考えるととても、融資もありがたいわけでありますけれども、これは返済しなければならぬわけでありますから、その前にもういろいろな制度資金をお借りしてこれも返済期に入っているということからしますと、私は、もういま本当に救ってやらなければいかぬときだという気がするわけでありまして、ひとつ再度御答弁をいただきたいと思います。
  20. 今村宣夫

    今村政府委員 確かに、石油価格高騰をしておる割りに、イカ価格等を見ますと、価格が低迷をしておるということがございます。この前の石油ショックのときには、半年かせいぜい一年おくれまして価格は後ろにくっついていきまして、これは大変なことになると思っておりましたところ、一年くらいで価格が落ちついていきましたものですから、これをうまく乗り切れたわけでございますが、したがいまして、たとえば一年なら一年その価格が落ちついていく間、石油対策といいますか灯油対策を講ずることによってそれをカバーしていくという、この前はそれで成功——成功と言えるかどうかわかりませんが、まず対応していけたわけですが、今度の石油はじりじりとずっと上がってきたものですから、漁家の人も苦しい苦しいと言いながら魚は依然としてとってくるというか、目の前に魚がございますれば安くても高くてもとりたいというのが心情でございましょうから、そういうことでわりあい水揚げの数量が減っていかない、したがって価格も上がっていかない。同時にまた、価格が上がりますと今度魚離れをするというおそれも片一方ございまして、非常にむずかしい状況にあるわけでございます。したがいまして、私としましては、これは消費者の立場ということを考えますといろいろ問題がございますけれども、少なくともコストをカバーするように魚価が追っついていってもらいたいという気持ちを持っておるわけでございますが、なかなかそういうふうな状況にならないというところに、非常に経営が苦しい問題があるかと思います。もちろん長期的には、そういう高い油に対応するような構造をどうしてつくり上げていくかという問題もありますけれども、当面としてはそういう非常に苦しい立場にあるわけでございます。  したがいまして、一つは、何とか石油価格を安定をしていってもらうということと同時に、魚価もまたコストをカバーするように安定をしてもらいたい。その間における対策として石油対策というものを考えておるわけでございますが、一経営体当たりにとりますればそんなにたくさんな金ではないので、国としてこれを何とかめんどうを見られないかという御指摘でございます。この点については、漁業者の強い希望も十分承知をいたしておりまするし、私たちとしましても、そういう漁業特殊性ということについてはずいぶん主張をいたしてきたわけでございますけれども、やはり全体的な物の考え方ということになりますと、漁業特殊性ということに着目した現在の低利融資制度というものは、まず漁業だけについて特別な配慮であるということになっておるわけでございます。同時にまた、経営の維持安定という観点につきましては、私どもとしましても、維持安定資金の三百七十億を活用いたしまして、そういう維持安定につきましてはできる限りのことをやってまいりたいと思っておるわけでございまして、現在の状況としては、先生指摘のような問題がございますけれども、われわれとしてはできるだけの努力をいたしておるというところが現状でございます。
  21. 田名部匡省

    ○田名部委員 時間がございませんので、もう一点政務次官に御質問させていただきます。  漁船の建造資金の借り入れ返済の延長のことについてお伺いしたいと思うのですが、これは昨年も個々にお願いしておったようでありますが、漁業がある程度安定しておった時期に建造した漁業家の方々が、オイルショック、資材の高騰あるいは労務費のアップに加えて、魚価の低迷、あるいは昭和四十八年の秋に発生した第一次石油ショックのときに融資を受けた制度資金の返済負担、漁業経営維持安定資金の返済などで、借り入れの返済計画が当初建造するときの計画と大幅に狂っているということで、この対策についてお願いをしたい。  例を一つだけ申し上げますと、九十九トンのイカ釣り船、これは五十年の四月に建造したものでありますけれども、建造費が一億五千万円、うち公庫の融資を一億二千万円受けているわけであります。一年据え置きで八年返済で、五十三年まで毎年千五百万円の返済をしてきた。しかし、昨年、五十四年の水揚げが九千三百万円であった。この場合の経費は、市場の口銭が三%で二百七十九万円、人件費が三〇%で二千八百万円、燃油が先ほど申し上げたように三千百万円、漁具費が六百万円、消粍品費が六百万円、それから修理、これはエンジンのオーバーホールだとか無線、塗装、これは新しいから六百万円程度で済んでおるわけです。船体保険が三百五十万円、船員保険の船主負担分が三百五十万円、公庫の支払い利息、運転資金等で千二百万円、合わせて九千八百七十九万円なんです。もちろん年間の償却も見たいわけでありますが、これはもう全く見られない。これだけで五百七十九万円の赤字なんです。そこで、これを何とかさらに延長できないのかどうかということを大変願っているわけであります。しかも、この保険の未納が五十三年度全国で五十九億八千二百万円ある。払いたくても払えないんです、油を買うとかいろいろな仕込みの方にお金がほとんど行っちゃうものですから。しかも、私のところの八戸だけで九億も保険の未納が滞っておるということから、いろいろな対策をしていただかなければならぬ。ひとつこれだけはぜひお考えをいただきたい。どうぞよろしく御答弁をお願いしたいと思います。
  22. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 いろいろ先生から御指摘がございましたように、まさに高騰した石油価格、これはもう日本の産業界、社会全般、それぞれ非常に深刻な影響を与えたわけでございますけれども、特に油と密接な関係があるのが漁業でございますから、漁業関係者の方々、特に沿岸で小規模の仕事をやっていらっしゃる方々に対して大変深刻な影響を与えたということにつきまして、私たちも十分に認識をしておりますし、理解もしておるわけでございます。  そういうことでございますので、従来からも漁業近代化資金を通じていろいろお手伝いをさせていただいておりますし、またすでに長官からも説明もしてございます、この高い燃油の購入に必要なための資金として、すでに三百億そして五百億と、八百億の手当てをし、さらに漁業経営安定維持資金として三百七十億ですかやってまいったわけでございますので、それなりにお役に立ってきていると思いますけれども、しかし、さらに事態は深刻である、こういうような御指摘でございます。漁船の建造資金の償還期が来ているのだけれども、なかなかここに金が回ってこないというお話でございますが、一応政府としてもこれまでもいろいろなことをやってきたつもりでございますが、いろいろな具体の問題でむずかしい場合があるのだということでございますので、そういう具体的な問題につきましては、ひとつ個別にまた御相談させていただいて、できるだけ御要望に沿うように私たちとしても今後努力をしてまいりたい、かように考えております。
  23. 田名部匡省

    ○田名部委員 時間ですから終わります。
  24. 内海英男

    ○内海委員長 本郷公威君。
  25. 本郷公威

    ○本郷委員 本日は、食糧問題を中心にしまして政府の姿勢をただしていきたいと思いますが、まず、本論に入る前に、前から懸案となっております二つの問題について、政府としてどのように対処しているか報告を求めたいと思うわけです。  その一つは、四月十五日の農水委員会におきまして、大分県久住町の西組牧場、これは共同利用模範牧場の一つでございますが、これの資金対策について質問をし、局長から、県当局とも相談をしてどのような対策をするか検討する、そして適切な指導もしていきたい、同時に経営診断事業の実施等もする、こういう答弁があっておるわけです。この点につきまして、どのように対処をしてきたかお聞きをしたいのです。
  26. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 大変恐縮でございますが、いま畜産局長が参りておりません。参りましたら早速お答え申し上げますので、私の方からすぐ連絡をとっておりますので、後ほど御答弁申し上げます。
  27. 本郷公威

    ○本郷委員 それでは、いまの問題は後回しにいたします。  林野庁来ていますか。——いま一つは、大分県佐伯市の二平合板の経営再建問題につきまして、先般林野庁の方と折衝し、これに対する善処方を要請してきたところでございます。  若干その経過を申し上げますと、大分県の合板の唯一メーカーであります二平合板が、すでに第一次百八十人、第二次百人、第三次五十人という、三百三十人に上ります人員整理を今日までしてきております。そして、合理化をめぐります交渉が続けられてきましたが、最近になりまして、一応賃金については凍結をする。配置転換七十二名を行いまして、組合と会社側との合理化をめぐる交渉は一応妥結はしておるわけでございますが、経営につきましては非常に困難なものがありまして、特にこの会社に原木を供給しております三井物産、これは大体五〇%、丸紅三〇%、帝人二〇%、この三大商社が原木を供給しておるわけでありますが、この原木の供給が、契約が長くて二、三日という程度で細切れに原木を出しておるわけであります。そのために、原木供給の不安定化、それから資金繰りの困難、こういう問題が出ておりますので、林野庁の方にもこうした問題につきましての善処方を要求してきたところでありますが、これに対する指導なり今日までの経過はどうなっておるか、お聞きをしたいのです。
  28. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 お答えいたします。  御指摘の点につきましては、林野庁といたしましては、早速先般関係者から事情聴取を行いまして、本件の動向について林野庁としても重大な関心を持っておるということを伝えたところでございます。しかしながら、その事情聴取の中で、たとえば原木供給者が圧力を加えておるというような事実はございませんで、一般の商取引で行われておるということでございます。  本件は、基本的には個別企業の経営問題でございますので、行政としての指導にはおのずから限界がございますので、その点は御理解を願いたいと思うのでございます。
  29. 本郷公威

    ○本郷委員 現実に二、三日の細切れで売り渡しておるというこの形は、これは異常なものではないですか。まあ一カ月あるいは何カ月というそういう長期にわたる売り渡しならば大体わかりますが、現に大分県の佐伯湾には原木はたくさん置いてあるわけです。原木は現実にあるのですが、その売り渡しがそういう形でやっておりますために、非常に不安定な営業しかできない。そういう実情を考えたときに、決して圧力をかけていないとかいうようなことにはならないわけですよ。その点いかがですか。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕
  30. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 事情聴取の中で、その原木を供給しております各社、三社ほどございますが、それぞれ低利の融資をやはり行っておるようでございまして、その企業が倒産するということになりますと、供給側にとっても大変な大問題でございますから、それなりの供給をしておると思うわけでございますが、ただ一般論として言いますと、経営に不安のある企業に対しまして、原木供給者が、売掛金回収不能の事態を回避する等の理由から、いまお話しにあるようなことをやっておるのではないかというふうに考えられますが、これは通常の経済行為であるわけでございまして、その点まで私どもがとやかく申し上げる筋ではないというふうに考えておるわけでございます。
  31. 本郷公威

    ○本郷委員 私が聞いておりますのは、そういう常識的に考えても異常な姿になっておるときに、これは商取引であるからやむを得ないというようなことになれば、そこで働く労働者というのはもうそのまま生活が打ち切られるというような事態になってくるわけであります。今日、木材産業界はいろいろな問題があると思うわけですが、特に合板産業の現状というものは非常に厳しいものがあるのじゃないかと思うのです。  きょうはもう時間がありませんから、一応私は問題の指摘だけをしておきまして、今度社会党としましては、二平合板とそれから永大産業、この二つの会社に対しまして、党の調査団を送りまして実態調査をし、いま私が申し上げたそういう実態をひとつ明らかにしていきたいというように考えておるところであります。  ひとつ合板産業部門の現状について、簡単でいいですからお聞かせを願いたいと思います。
  32. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 合板業界は、昭和四十九年以降長期にわたります不況に見舞われておりましたが、昭和五十三年後半以降は市況がおおむね堅調に推移しておるということ、それから稼働率も八〇%以上に回復しているということなどから、全体的に見れば、従来に比べまして業況は好転しておるというふうに見ておるわけでございます。しかしながら、業界をめぐります環境は、一つは、原木産地国の輸出規制の強化によりまして、原木価格水準が高水準になっておりますし、量的にもあるいは質的にも従来のように円滑に確保することが困難になっておるということがございます。もう一つは、石油価格高騰等いろいろなコストの上昇が見られるということ、それからもう一つは、非木質系資材との競合が激化しておるということなどから、依然として厳しいものがあるというふうに私ども見ておるわけでございます。  このため、林野庁といたしましては、合板業界経営の安定を図るために、木材の短期需給見通しの作成、公表、これに基づく関係業界に対する指導、木材情報事業の充実等を通じまして、合板の需給及び価格の安定を図るとともに、新技術の開発、設備の近代化、生産方式の適正化など、合板業界構造改善のための事業について指導しておるわけでございます。また、高度経済成長期に増設されました過剰な生産設備を廃棄する事業の計画的な実施についての指導を行っておるところでございます。そのようなもろもろの施策を講じておるところでございますが、御指摘のとおり、大変厳しい環境下に置かれておるということでございます。
  33. 本郷公威

    ○本郷委員 さっき申し上げましたように、この問題については、いずれ現地調査をいたしまして、十分実態を明らかにし、再度問題を提起していきたいと思っております。  畜産局長見えたようですから、ひとつお聞きしましょう。
  34. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 おくれてまいりまして申しわけございません。  先般本委員会で先生の方から御質問のございました大分県久住町の西組牧場の件でございますが、あの際お答え申し上げましたとおり、その後大分県に対しまして、実情の調査とそれについての必要な対策を講ずるように指導をいたしたところでございます。  大分県が調査をいたしました結果、次のような事実が判明をしております。  一つは、あのときにお答え申し上げましたように、収支状況は黒字であるけれども償還計画の上で金繰りがなかなかつきにくい、その償還計画を改善する必要があるのではないかということでございましたが、近代化資金の一部につきまして、千六百五十万でございますが、その繰り上げ償還を本年の一月にすでに行っておる。そのことによりまして、償還計画上無理があると思われました五十六年の償還所要額が当初見込みの六千万円から約四千五百万円に減少をしてまいっておるということで、償還計画が五十六年において無理があるというその事情はある程度緩和されたというふうに見られるわけでございます。  それからもう一つ、この西組牧場に参加しております組合員の共有地を、これは当面使用する計画のないところでございますが、それを売却いたしまして、この代金を借入金の償還に充てるという計画であるという報告がございました。  こういう事情が判明いたしましたことから、大分県といたしましては、そうした実態を踏まえまして、今後も引き続き経営指導を続けていきますとともに、さらに所要の対策について検討を行ってまいりたいという報告でございます。  私ども畜産局といたしましても、大分県に対しまして、その方向でさらに指導をするように、そのように要請をいたしておるところでございます。
  35. 本郷公威

    ○本郷委員 それでは、本論に入りたいと思いますが、食糧問題を、国際的な側面から、日本農業の再建問題、食糧の安全保障問題等にかかわりまして政府の見解をお聞きしたいと思います。  世界的な食糧不足が忍び寄ってきておるのではないかと言われておるわけでありますが、さきにFAO、国連食糧農業機構が二〇〇〇年の農業展望というのを発表しております、これは御承知のことと思いますが。     〔津島委員長代理退席、委員長着席〕 現在四十三億の人口が二〇〇〇年には六十億を超えると言われております。これを養うのには、現在の程度の栄養水準を維持するためには五〇%の食糧増産が必要であると指摘しておるわけです。このままいけば四億人にも上ります栄養不足人口が出ると言っておりますが、最近の人口の増加あるいは北半球の寒冷化で、世界的な食糧不足というものが考えられているわけでありますが、こうした日本だけではなくて地球上の食糧不足という大きな問題に対して、政府としては、今日までどのように分析をし、あるいはそういう問題に対してどのように対処しようとしておるのか、まず、その点の見解をお聞きしたいと思います。
  36. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 先生指摘のとおり、FAOでは「二〇〇〇年に向けての農業」という報告書を中間的に取りまとめてございますが、御指摘ございましたように、いろんな仮定の上での予測ではございますけれども、現在程度の栄養水準を維持していくためにも五割の食糧増産が必要である、こういうふうに言っているようであります。  そういうことで、今後の農産物の需給でございますけれども、先進国では当面は生産性が上がって余剰が続くであろう。ただ、いわゆる発展途上国、後進国では食糧が不足をするので、先進国の余剰といわゆる開発途上国の不足というものが当面は一応バランスをするような形で推移するような見通しではございますが、しかし、同時に、先生指摘ございましたように、農業生産というのは非常に天候、自然条件に影響を受けまして、そういう意味ではきわめて不安定でございますし、片方で、先ほど先進国ではある程度余剰があると申しましても、今後畜産化が進んでまいりますと相当量の穀物がそちらの方に回ってしまいますし、また片方では、開発途上国で人口がふえてまいりますと、これまた当然人口増に見合い、また所得増に見合っての食糧の需要が増加してまいる、こういうことでございますので、長期的には楽観を許さない、こういう状況であると思います。  したがいまして、こういう認識を踏まえまして、少なくともわが国におきましては、必要な食糧、特に主食についての自給力を向上していかなければならない、こういう基本的な方針で、これまで種々の農業政策をとってまいった次第でございます。
  37. 本郷公威

    ○本郷委員 いま次官も指摘をされたように、先進国と発展途上国の食糧需給というものがきわめてアンバランスになっておるところに、いろいろな問題が出ておると思うのです。現在、世界の人口の二九%は先進国、発展途上国には七一%が住んでいるのですが、穀物生産は前者が五五%、後者が四五%、穀物の生産増加は年率にして前者が三・三%、これに対して二・八%、逆に人口増加は、前者が年率一%弱に対して二・五%、こうなっておるわけです。カロリーの摂取量を見ましても、先進国が三千から三千四百カロリー、これに対して途上国は二千カロリー、こうなっております。発展途上国は、非常に外貨不足の関係もありまして、食糧の確保が現在非常に不十分なために、栄養失調に脅かされておるわけでありますが、現在餓死者が出ておるというほど発展途上国の食糧問題というのは深刻な社会問題にまでなっておるわけです。これに対する政府考え方が、いま次官も話がありましたけれども、とらえ方が不十分ではないか。ここまで来ておるのに、食糧問題を考えるとき、ただ日本が金に任せてアメリカから買いまくっておる、こういう姿というものは、途上国の人々から見れば非常にけしからぬと非難の声すら出ておる現状ではないかと思うのですが、そういうことに対して政府はどう考えておりますか。
  38. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 これは援助全体の問題になりますと、外務省の所管になるわけでございますけれども、農林水産省といたしましては、先ほど申しましたように、今後の食糧生産の自給の見通しを踏まえて、まず何といっても国内の食糧自給力を高めていく、こういう努力を、これにいろいろな困難もございますが、これを解決して進んでまいりたいと思っております。同時に、いわゆる開発途上国における食糧不足に対して、日本も先進国の一つとしてある程度の協力を当然すべきであるというふうに考えてはおります。  ただ、これは率直に申しますと日本の国内の農産物の価格が国際的に割り高でございますので、そういう状況で、食糧の面で開発途上国への協力をするということには、これはいろいろな面での制約がございます。国家財政的な負担の問題その他国際的な影響の問題もまたございますので、その点については十分慎重に考慮しながら、しかし、先進国日本が単に農業政策で国内的な面で見ていることをよしとしないで、国際的な分野の中でもある程度の協力をしていく点については、これはやぶさかではない。いろいろな制約がございますけれども、その中でできることは今後もしなければならないと考えております。
  39. 坂本重太郎

    ○坂本説明員 ただいま先生の方から、開発途上国に対する食糧援助をどう考えておるのかという御質問でございますが、私ども外務省といたしましては、開発途上国に対する食糧援助及びその農業生産増産のための援助、これは三大柱の一つ考えております。  現在、外務省が経済協力の政策に関しまして総合的な戦略を立てておりますが、その一つの柱は、大平総理が申されました人づくり分野における経済協力、それから次の柱は食糧増産、農業援助でございます。そして最後は、開発途上国のエネルギー分野における援助というものをわれわれとしては最大限重視しておりまして、このことは大平総理がUNCTADに行かれましたときとか、それから昨年の東京サミット等においても明らかにしておるところでございます。今後とも私どもは、この食糧援助をわれわれの援助の主要な柱として重視してまいりたい、こう考えております。  ちなみに、食糧援助及び食糧増産援助の予算も毎年増加しておりまして、たとえば昭和五十一年度ではわずかに四十七億円であったものが、現在では大体三百五十億円ほどにふえております。この増勢を今後とも維持しまして、われわれとしては食糧増産援助に重点を置いてまいりたい、こう考えております。
  40. 本郷公威

    ○本郷委員 先ほども指摘をしましたように、従来のように日本が金に任せて食糧を買いあさっていくということはだんだん困難になってきたのではないかと思うわけです。いままでは工業製品を大量輸出をして、その外貨で安い外国食糧を輸入するというのが大体皆さんたち考え方であったと思うのですが、現に七九年度の国際収支を見ましても、石油等の値上がりなどによって、政府が年度当初約七十五億ドルの黒字を見込んでいたのが、年度末には百三十九億ドルの赤字となっておる。このような関係から、いままでのように外貨を無制限に使えないのじゃないか。そういうことを考えると、やはりいままでの食糧の買いあさり、輸入問題を見直す時期が来ておるのではないかと思うのですが、この点、次官、どうですか。
  41. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 御指摘のとおりだと思います。したがいまして、たとえば日本が米の過剰分をベトナム、カンボジア等にKR援助で供給する、こういうことだけではなしに、今後の日本の農業面における海外協力というものは、日本の進んだ農業技術をそれら開発途上国の農業生産の増強に資する形で提供する、こういう形でそれぞれ開発途上国の農業生産水準を上げてまいる。それを場合によっては一部国内の飼料用として輸入をするということも考える。御案内のように、現在日本の飼料は、アメリカを中心として特定地域に限定されておりますから、これは日米関係は外交の基本でございますので、今後とも安定を続けなければなりません。しかし、同時に、やはりいろいろなことを考えて、飼料の海外依存度を多角化するということも重要な政策一つである。そういうことを考えてまいりますと、開発途上国への農業技術面での協力をしながら、その一部を日本の必要とする飼料の供給として充てる、こういうことも私は多角的な今後の日本の経済協力、そして農業関係の中である程度積極的に取り組んでいかなければならない問題ではないか、かように考えております。できたものをただ金をぶつけて買ってくるだけじゃなしに、いろいろな意味の協力関係というものが今後進められていかなければならないのではないか、かように思うわけであります。
  42. 本郷公威

    ○本郷委員 基本的な問題につきまして、いま一つお聞きをしたいと思うのですが、最近食糧が戦略物資だと言われております。食糧を戦略物資と位置づけるのは、人道的にも問題があると従来から言われてきておったわけでありますが、御承知のように、アフガン問題をきっかけにしまして、アメリカがそれに踏み切ったわけであります。アメリカの対ソ穀物の禁輸措置、こういうことについて、日本政府としてはどのように考えておるのか、この問題をどのようにとらえておるのか、お聞きをしたいと思います。
  43. 池田維

    ○池田説明員 お答えいたします。  いま先生指摘ございましたように、戦略物資をどういうように解釈をいたしますかということは、基本的には定義の問題であろうかと思いますけれども、今回のアメリカの対ソ穀物禁輸につきましては、アメリカは二千五百万トンのうち千七百万トンの禁輸措置をとったわけでございますけれども、これを国家安全保障上及び外交上の観点から実施したというように述べております。したがいまして、政府といたしましては、穀物を含めた食糧が外交上の手段として使用されることもあり得るということは十分考慮に入れまして、今後の食糧の安定確保のために、引き続いて努力していく必要があろうかと思います。  対外的に申しますと、食糧の安定確保のためには、主要な食糧生産国との間で友好的な外交関係を引き続いて維持していくということが当然でございますし、また、開発途上国との関係で申しますと、特にアジア諸国の食糧増産のため、わが国が資本、技術、経験等の面でいろいろ協力していく、こういうことによってわが国の食糧の対外的な安定確保を維持していくということが必要であろうと考えております。
  44. 本郷公威

    ○本郷委員 アメリカに穀物のほとんどを頼っておるわが国にとりましては、この問題は対岸の火事ではないと私は考えるわけです。いま問題になっておりますアフガン問題、それからイラン問題、すべてこれはアメリカにかかわっておる問題でありますが、いま米国から、わが国に対しましても、イランに対する経済措置の協力を要請をし、わが国はそれを受け入れております。あるいはソビエトに対しても同じでありますが、もしそういうアメリカの対ソ、対イランの経済措置をわが国が拒否した場合どうなるかということです。これは仮定の問題であるが、国民がそういう意思を持ち、イランあるいはソビエトに対するアメリカの経済措置には同調できない、こういう結論が出た場合には、アメリカもわが国に対して穀物の輸出の規制をするんじゃないか、こういうことが考えられるのです。これはそういうことは現時点であり得ないとはなかなか言われない問題じゃないかと思うのですが、そういう問題につきましても、これはそのときには、政府としてはどういう考え方に立ってそういう国民の不安に対して対処するか、見解があればお聞きしたいのです。
  45. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 日本の外交関係の中で日米関係は基本でございまして、この関係はいかなる国との関係にもかえがたいとかつて日本の総理が言ったことがございますけれども、私はそれぐらい重要なことだと思いますし、だからこそ、実は先般も総理がメキシコ、カナダ訪問の途上であったにしても、カーターと会い、昨日も国会で御報告があったような日米関係の相互理解、協力の関係を進めてまいったわけでございます。  アフガン、イラン問題につきましては、これは基本的に、これも総理も国会でも申しておりましたように、わが国としてはアメリカの立場を了解し、形はともかくとして、これに協力をしようということでございますし、私は、将来にわたっても日米関係が極端に悪化するということはないし、また、してはいけない、こう思うわけであります。  しかし、それはそれとして、先生指摘ございましたように、特定国に日本の主要な食糧の大宗を依存するという状況がいいかどうかということは別の議論でございますので、これにつきましては、先ほども外務省の方からも話がございましたし、私も申しましたが、必要な食糧の輸入先をある程度多角化していくという措置は、これは当然考えていい措置でございますし、そういう形でいわゆる日本の進んだ食糧技術を開発途上国の農業開発に活用するということも、これは十分考えなければならない外交手段である、かように考えておるわけであります。  ただ、あえて申しますが、アメリカのような自由主義経済の国でございますと、日本は何といってもアメリカ最大の食糧のお得意さんの一つでございますから、対日輸出を制限するということも、アメリカのいろいろな体制を考えますと、対ソとの関係は別として、私はその点についてはある程度、楽観とは言いませんが、しかし信頼をしていい、かように考えております。
  46. 本郷公威

    ○本郷委員 あなたの答弁を一口で言うならば、アメリカのかさのもとにおる今日の日本であれば大丈夫だ、そう心配要らないということになるようです。しかし、これはアメリカの従属外交をいつまでも進めていくということについて国民が認めるかどうかということは、また別な問題があるわけですが、私は四十七年に大豆輸出の規制によってわが国が大変な被害をこうむったということが記憶に新しいのです。あの問題一つをとりましても、なおそのときにアメリカが日本のことを考えてくれたかというと、やはりまず優先するのは自国のことが優先をしておるわけです。そういう一つを見ましても、ただ今日の日米関係が続く限り問題ありませんというような楽観的な態度というものは許されないんじゃないかと思うわけです。仮にアメリカの政府がそういう輸出規制をしなくとも、たとえば、アメリカの港湾労働者あるいは交通労働者がストライキをして輸送がとまったというような事態が起こったときには、直ちにわが国に対して大きな影響を与えるわけですね。そういうことを考えますと、いま次官が言うような、安心した、日米関係は今日の状況が続く限り問題ないというようなことで済まされる問題じゃない。いつどのような事態が発生をするかもわからない。それは日本の意思によらないで起こることがあるんじゃないかという危険性を非常に感じておるわけです。  私は、これに関連をして、日本政府がとってきた問題について指摘をしていきたいと思うのですが、先般アメリカの対ソ禁輸措置によって生じました千七百万トンに上る穀物の中から、政府が三十万トン、三菱商事、三井物産、丸紅の三大商社に七十万トン、合計百万トンを買い入れたいという計画が大臣から発表されておったわけです。これはその後余り聞いていないのですが、実行に移されたのか、あるいはどうなっておるのか、その辺をお聞きしたいのですが……。
  47. 古谷裕

    ○古谷説明員 米国の対ソ禁輸に伴いまして、小麦、トウモロコシ等をアメリカから輸入する問題につきましては、しばしばこれまでも議論があったわけでございますが、わが国の立場といたしましては、国内的な問題、米が非常に過剰であるというような状況はございますけれども、他方、わが国はアメリカに対しまして今後とも穀物の安定的な供給を仰がなければいかぬというふうな関係もございますので、わが方として国内の穀物需給に悪影響を及ぼさない形で何らかの協力ができないか、政府部内で検討してきたところでございます。農林水産省といたしましては、小麦の前倒し買い付け十万トン、配合飼料供給安定機構によるトウモロコシの備蓄積み増し十万トンを実施する方向で現在検討中でございます。  なお、民間のお話がございましたが、民間についても検討がされたということでございますが、民間段階での協力は困難であるという結論になったと聞いております。
  48. 本郷公威

    ○本郷委員 そうでなくても、アメリカからの穀物の輸入については過剰ではないかという国内農民からの非難の声が非常に上がっておるわけですが、アメリカがソビエトに経済措置として売らなかった分を日本が肩がわりしていくという形の輸入政策というのは、全く主体性のないアメリカ追随の外交政策そのものではないですか。その点いかがですか。
  49. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 そういうアメリカがソ連に売らなかった分の肩がわりとして日本に買ってくれという要求は、その当時日本に参りましたアメリカの国会議員から総理にあったというふうに私は伝え聞いておりますけれども、少なくともアメリカの政府から正式にそういうことの申し入れがあったというふうに私は理解していないわけであります。ただ、友邦国でございますし、アフガン、イラン問題でアメリカも苦慮しておりますから、協力することはやぶさかではない、こういうことで、いま国際部長からも説明がございましたように、若干のことは私たちのできる範囲内で、まさに若干でございますけれども考えただけでございまして、これは率直に言って、日本側が米が余っておる、その米を買うとか、また要らない飼料を買うとか、国内で必要ない米を買うということでは全くなしに、まさにそういう通常の取引の中で、またその枠外で協力できる面があったら協力しようということでございますから、そのことで日本の外交がアメリカの言いなりになるとか、また、日本の農業政策がアメリカの食糧の圧力のもとに行われているというふうなことにはならないのではないか、私はかように考えております。
  50. 本郷公威

    ○本郷委員 従来このアメリカからの輸入問題についてはずいぶん論議をしてきたところでありますが、とにかくいままでは足らないから輸入しておるのだという答弁を繰り返されておるようです。しかし、現実には足らないから輸入しておるのじゃなくて、アメリカの圧力によって輸入させられておるという面が多々あるわけです。きょうはそういう面に一々触れませんが、ただ、私が指摘しておきたいのは、そうしたアメリカの経済政策の一役を日本が買っておる、こういう一つの印象を国民に与えておる、全く自主性がないじゃないかという点、これは農水省だけでなくて日本政府全体の問題として、肩がわり輸入という問題に非常に不信感を抱いておるわけですよ。だから、いま次官は友邦国とおっしゃったのですが、だんだん同盟国であるというように変わってきておりますけれども、その問題の論議は別にしまして、そうしたアメリカに対する従属的な関係を、食糧の輸入政策の面において打ち切らなくては、それは今後大変な問題になる。一方ではそういう関係を持ちながら、後で指摘をしたいと思うわけですが、過剰米の輸出問題等につきましてもいろいろな相矛盾する問題があるわけでございます。  次にお聞きをしたいのは、難民援助対策の問題でありますが、ベトナム、カンボジアを中心とする難民問題が、今日国際的にも大きな社会問題と化しておるわけでありますけれども、これは外務省で結構ですが、こうした難民の実態を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  51. 今川幸雄

    ○今川説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から難民の実態はどうかという御質問がございましたので、それにお答えいたしますが、現在インドシナの三国から流出しております難民の数でございますけれども、ASEAN諸国等に一時滞在中の難民の数は現在二十三万四千人ばかりでございまして、これがタイ、香港、マレーシア、インドネシア、フィリピン等の各地のキャンプに収容されております。それからこれとは別に、いわゆるカンボジアからタイに流出してまいりました難民というものが非常にたくさんおりまして、これはタイの領内に入っておりまして、キャンプの中におります者が約十五万人。それから、これはいわゆる言葉の意味においてどこまで難民と言えるかやや問題があるかとは思いますが、国境の周辺におりまして、事態の推移に乗じて随時国境を越え、両方の国に移動している難民でございますが、これが約六十万おるという状況でございます。
  52. 本郷公威

    ○本郷委員 このたびの大平総理のアメリカ訪問の中で、カーター大統領との会談で、難民対策のため国連の拠出金を大幅にふやしたい、新聞の報ずるところによれば来年は一億ドル程度引き上げたい、こういう意向を明らかにしておるようですが、わが国の難民対策の現状と、そして大平総理がカーターさんに約束をしたその方針についてお聞かせを願いたいと思います。
  53. 今川幸雄

    ○今川説明員 お答えいたします。  さきに行われました日米首脳会談においてでございますが、総理の方から、わが国は国連難民高等弁務官事務所、つまりUNHCRでございますが、ここの行っておりますインドシナ難民救済計画に対しまして、本年度は拠出を六千万ドル計上しているということ、それからまた、米の援助につきまして、現在積み出し中の二万トンに加えまして、当面約五万トンの供与を行う方針であるという発言がなされた経緯はございますが、その会談におきまして、わが国の難民援助の費用を一億ドルにするとかあるいは合意を見たとか、一部新聞等で伝えられておりますようなそういう事実は全くございません。  それから、第二の御質問でございますが、わが国がどういう難民に対する対策をしておるかということであったかと存じますが、昨年は、当初予算、予備費及び補正予算合わせて総額で約百九十二億円に上ります予算をいただきまして、各種の難民救援を行ったわけでございます。  主なものを申しますと、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRの拠出でございますが、これが一時収容センターをインドネシア及びフィリピンにつくる、そのための経費を含めまして六千五百万ドルでございます。ほかに赤十字国際委員会のカンボジア難民救済計画でございますとか、タイ疎開民のための世界食糧計画でございますとか、その他国際機関が行います難民救済計画への拠出、及びタイ政府自体が行っておりますカンボジア難民救済計画に対する拠出、及びタイにおきましてカンボジア難民に対する医療協力を行い、医療団を派遣し、あるいは医療センターをつくり、また水資源調査を行いまして、現に飲料水が出て非常に喜ばれているという、各分野における政府レベルでの援助を行った次第でございます。それから、難民の日本への定住も促進するため、種々の方策を講じまして、定住促進政策を行っております。
  54. 本郷公威

    ○本郷委員 この難民援助につきましても、カーター大統領から総理が要請された形になっておるわけですね。日本もこの難民援助についてはひとつ努力せよ、もう少し強化せよ、こういう要請を受けた形でカーター大統領との会談をしておるようでありますが、前にわが国の過剰米輸出問題で日米農産物協議が行われたということをめぐって私も質疑をしたわけであります。その中身についてはわかっておりますが、とにかくそのときには、アメリカの政治的な圧力によって、わが国が要求をしました過剰米の輸出については半分以下に抑えられたという経過があるわけです。食糧不足に苦しんでおる東南アジア、アフリカ諸国に対しては、人道的にも日本の米の輸出、あるいは無償援助でも結構ですが、そういう輸出問題に対してアメリカはそれを規制をしてくる、一方では援助をふやせ、こういうアメリカの日本に対する態度を、日本政府はその都度その都度苦労しながら切り抜けておるという実態があるのじゃないですか。たとえば五十四年度は九十一万トンの輸出をしておるわけですけれども、これが今度は半分、四十二万トンに抑えられておるわけです。それならば、去年九十一万トンも輸出できた理由は何ですか。やはり東南アジア、アフリカ等の食糧不足という状況の中で日本の米の輸出が伸びてきたのじゃないかと思うのですが、そう考えますと、やはり今度の難民援助の問題、それからさきに行われました過剰米の輸出問題、すべてアメリカとのかかわりがあり、アメリカの圧力によって日本がそれに左右されておるということが浮き彫りにされておるわけですよ。この点、いかがですか。
  55. 池田維

    ○池田説明員 過剰米の輸出に関します先月の日米農産物協議におきましては、世界の米の需給関係とか、わが国の過剰米の輸出が伝統的な米の輸出市場に対してどういう影響を与えるかというようなことを勘案いたしました結果、わが国から過剰米の輸出目標数量をアメリカ側に説明いたしまして、そして先方がこれを了解したという経緯がございます。  しかしながら、御指摘の無償援助のためのわが国の対外援助につきましては、わが国がどういうように過剰米を手当てするかということにつきましては、これは延べ払い輸出とは別枠であるということについてはアメリカ側も了解しているわけでございます。つまり今回の四月の日米農産物協議においては、延べ払い輸出についての日米間の了解は成立したけれども、特に難民問題、難民援助を含める無償援助協力については別枠であるということについては、アメリカ側も了承しておるわけでございます。  特に、いま御指摘のありましたようなインドシナ難民への食糧援助問題につきましては、わが国として、人道的な見地から独自の立場で難民に対する無償援助を拡大していきたいということでございまして、特にアメリカ側から圧力があったからというわけではございません。
  56. 本郷公威

    ○本郷委員 過剰米輸出については、わが国計画を提示してアメリカと合意したというようなものではないのではないですか。いろいろないきさつを見ると、わが国の要求が削られて押し切られた。だから、外務省と農水省の考え方というのは違うのではないですか。農水省の方はできるだけよけい売りたい、しかし、一方、アメリカのそうした圧力に屈せざるを得ないというような側面があるのではないですか。
  57. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 先生、こういうことだと思うのです。私たち農林水産省が過剰米の処理として一応向こう五年間に百万トンを輸出等で処理しよう、こういう計画をしておったわけでありますが、昨年は、先生指摘のとおり一挙に九十万トンを超える輸出が可能になったわけであります。これはいま先生お話しのような、カンボジアとかアフリカ諸国のような本当に援助を必要としている国に対しての援助という形ではなしに、むしろインドネシア、韓国のように若干資金的に余裕のある国の中で日本米に対する需要が伸びた、こういうことでございまして、実は私たちの予想外の輸出の伸びであったわけであります。ただ、毎年こういう量の米の輸出が日本からなされることに対して、アメリカは伝統的米の輸出国でございますし、自分たちのマーケットに対してある程度の心配を持ってきたのが、御指摘の日米間の米の輸出に関する協議であったわけでございますが、結論として、向こう四年間に百六十万トンでございますから、合計いたしますと昨年を加えて二百五十万を超える米の輸出ということになりまして、私たちが過剰米処理として考えておった百万トンを優に二倍半にもなるような額になるわけでございます。したがいまして、私たちは、今回日米間の話し合いがアメリカの圧力によって云々というふうにはとらえてないで、むしろ、今後の世界の米の国際的な需給バランスを考えた場合に、日本がそのうち四十万トンぐらいを輸出として見ることはある意味では妥当な数字ではないか、かようにも考えておりますし、またFAOの過剰農産物処理の規約の中にも、そういう場合には十分従来からの輸出国と協議しろ、こうなっておりますので、国際的な慣例といいますか取り決めにも沿ったものである、かように考えておるわけであります。
  58. 本郷公威

    ○本郷委員 前回私が質疑をしたときには、食糧庁の長官答弁をしたと思うのですが、私はあのときの印象としては満足しておるというような感じを受けてない。不満である、不満であるが、日米関係を維持するために妥協せざるを得なかったという印象を受けておるわけですよ。何かきょうは、次官の話じゃ、あれで十分である、結構でございますというようなことでありますけれども、そういうものじゃないのじゃないですか。現に二百五十万トンの米を家畜のえさに回すというかっこうになっておるのじゃないですか。家畜のえさにせねばならない日本の過剰米を、この飢餓に苦しんでおる難民に供与したらどうですか。これは外務省どうですか、この余った日本の米を無償供与としてどういう計画を持っておるか、その辺のことについてお聞きしたい。
  59. 坂本重太郎

    ○坂本説明員 ただいま先生指摘のとおり、外務省といたしましても、農林省と協力いたしまして、何とかこの過剰米を援助に使うということについて積極的に協力してまいりたい、こう考えております。他方、先生から御指摘のあったように、アメリカがやはりこの問題についてはある程度神経質になっておる、ほかにタイとかビルマとか伝統的な産米国の立場というものも外務省としては考えざるを得ません。しかし、先生たびたび御指摘のとおり、カンボジア難民、ベトナム難民等食糧不足に悩んでおる難民が多数発生しておりますので、しかも、アメリカとの関係では、先ほど池田課長から説明があったとおり、難民に対する援助は枠外であるという了解がございますので、われわれとしましては、今年度難民に相当の無償援助として過剰米を供出しよう、こう考えております。現在具体的に考えております金額は大体五十億円を予定しております。これでもって、大体そのうちの二十八億円を過剰米輸出、それからまた、第三国米を十七億円ぐらい買おうか、それに輸送費を加えますと大体五十億円、しかも、できれば、今月末ジュネーブでカンボジア難民関係の拠出会議がございますので、その会議の席上この数字等を公表しようか、こう考えております。
  60. 本郷公威

    ○本郷委員 ひとつ難民対策あるいは日本の過剰米の処理の問題は関係づけて、そうした難民の救済に努力してもらいたいと思います。これで外務省は結構です。  それでは、次の問題に移りますが、きのう私は、食糧問題について、特に自給率の引き上げ問題について論議をしたいので資料が欲しい、農政審に出してある資料をひとつ欲しいと言ったら、農政審の審議は非公開でありますから資料をお渡しすることはできませんという返事が返ってきたわけです。農地三法の審議を通じましても、すべて農政審でいま論議中でありますという大臣の答弁が繰り返されたわけでありますが、しかし、日本農政の方向を検討するこの農水委員会に、国民の代表として農政問題を論じようとする農水委員に対して資料も出せない、そういうようなことがいままであったのですか。私は今回初めてですけれども、いままでそういうことで通用しておったのかどうか、そこら辺をお聞きしたいのですが。
  61. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  先生御存じのとおり、農政審議会は総理大臣の諮問機関として設置されておりまして、農政審議会の点について申し上げますと、ここにおきます議事につきまして、委員の間における自由な討議をするという前提で、審議会の規則によりまして非公開とされておりまして、また提出した資料につきましても非公開という前提でこれまで取り扱っておりまして、この点は他の経済審議会等も同様でございます。そうした点で審議期間中の公表は差し控えたい、こういうふうに従来取り扱ってまいっております。ただ、審議会の意見がまとまりました段階では、審議中の資料等は私ども取りまとめて公表するのは当然でございます。農政審議会につきましては従来からそのような取り扱いをしてまいりました。  一言つけ加えさせていただきますと、農政審議会の資料としてお話が出ますればそういうことでございますが、一般的な農政関係の資料につきまして、委員の方からの御要望につきましては、できるだけ私どもとしてできます資料は対応して御提出いたしたい、こういうふうに考えております。
  62. 本郷公威

    ○本郷委員 私は農政審の論議の模様を知らせてくれとかいうようなことを要求したわけじゃないのです。特に、六十五年見通し、これについてはこの二ページの資料をわれわれはあなたたちからもらっておるわけです。これだけでは論議のしようがない。抽象的な結論は書いてあります。たとえば六十年代には八十万ヘクタール程度減反をしていくということは一応書いてある。しかし、それに至る考え方なりについてはわからない。われわれは農政審と論議をするわけじゃないのです。あなたたちと論議をするわけですから、農政審に出した資料をわれわれに提出をすることは何で不都合があるかと言うのです。そうじゃないですか。農政審の論議の模様をひとつ知らせてくれと言えば、それはまだ非公開ですからということですが、あなたたちとわれわれが論議をするとき、農林省はこう考えておりますよ、こういう結論が出たのはこういう経過ですよという、そういう説明までできないという理由がありますか。私は限定をしたのですよ、食糧自給率を引き上げていくというそういう観点に立った資料があるじゃないかと。新聞記者には渡して農水委員に渡せないというそういうことがありますか。
  63. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 農政審に関する限りは先ほど申しましたとおりでございますし、私ども新聞等に公開なり発表した資料は当然先生方にも御提出いたします。その点で特にこれについて秘密的な扱いをしているつもりはございません。また、一般的な資料として先生の方で御関心がある自給率のこうした問題という具体的な御指示をいただきまして、それについての資料は、私どもとしては必要な資料は提出するつもりでございますので、多少連絡等に不行き届きのあった点はおわびいたしますが、私ども先生の御関心の点があれば資料についてまた後刻伺いまして提出いたしたいと存じております。
  64. 本郷公威

    ○本郷委員 いや、きのう、きょう私が質問をするためにそういう資料の要求をしたら、返ってきた答えは、非公開でありますからできません、しかし上司には相談をしたい。そのままになっておるわけなんです。農政審に出した資料でも、委員会論議に必要な資料、特に、農林省はどう考えておるのか、どういう経過で八十万ヘクタールの減反をせねばならない、あるいは穀物の自給率が三四%から三〇%になる、どういう理由でなるのか、そういう資料をあなたたちが持っておるのでしょう。それは出しますか。
  65. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 昨日連絡不行き届きでお答えができなかった点はおわび申し上げます。具体的な先生からのそういう御指示につきましては、個々の問題として私どもで出せる資料は提出する  つもりでございますので、また後ほど詳しく聞かせていただきたいと存じます。
  66. 本郷公威

    ○本郷委員 時間もありませんので、一、二お聞きをしたいと思います。  四月の八日の衆議院の本会議で食糧自給力強化に関する決議というのが全会一致で可決をされまして、大臣からそれに対する所信の表明があったわけですが、国会決議というのは二十二年ぶりということで、それだけ食糧問題、特に自給率の向上問題がわが国の農業にとりましては——農業というよりも国民生活にとりまして緊急な課題であるということが国民の前に明らかになったわけです。その後、農地三法の審議を通じましてもずいぶん各委員から、この国会決議、自給率向上をどのように考えておるのかということが繰り返し質問があったわけですが、先ほどから言うように、目下農政審で審議中であります、論議中でありますという答弁しか返ってこなかったということがあったのです。その後もう大分日時もたっておるのですが、ある程度具体的な考え方がまとまっておりますか。
  67. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  先般、衆議院本会議におきまして食糧自給力強化に関する決議が出まして、私どもも、その趣旨を踏まえまして、農産物の長期需給の見通しなりについてさらに検討を深めることといたしております。それが全体的な観点では一つございます。  同時に、食糧の自給力強化という問題は、いわば食糧の安全保障体制をどう確立するかという観点にもなろうかと思います。そうした意味で、大臣からも特に指示がございまして、平常の自給体制だけではなく、不測の事態が生じた場合に対応できる供給体制をどのように確立しておくかという点で検討を進めております。  一応概略的に申しますと、短期的には備蓄対策等で対応できますが、長期に及んだ場合には、その場合の自給体制をいかがするか。想定といたしましては、食糧の輸入量が二分の一ないし三分の二程度に下がった場合、わが国の国民の食生活並びにこれに対する供給体制はどの程度になるか。概算で、いま手ぶらで恐縮ですが申し上げますと、現在国民の食生活については、大体一日当たり供給ベースで二千五百カロリー程度でございますが、そうした事態におきまして、現在の耕地面積をもってすれば二千三百カロリー程度になろうかと思いますし、その際の主食用の穀物の自給率は八割程度の確保になるというような概算をいたしておりますが、なおこれらの問題は、そうした事態が生じた姿と平常時との結びつきなりをさらに検討しなければならないということで、この食糧の安全保障体制をどのように確立していくかということで目下検討を進めておるという段階でございます。
  68. 本郷公威

    ○本郷委員 いまのような答弁が繰り返される限りにおいては、私は、自給率を引き上げていくという論議は深まらないと思うのですよ。だから、私は、あなた方が具体的にどういう資料を農政審に提出をしてそこで論議をしておるのか、その資料をわれわれももらって、われわれの意見を述べたいと思っておったわけですよ。資料については必要なものは出すということですから、また後日要求をいたしますが、やはりこの自給率を引き上げていくという問題については、いまの御答弁にいろいろな抽象的な計画というものはありますけれども、現実にこの問題とこの問題とをどのように関係づけていくかということを論議をしないと、これはもう作文であって、恐らくまた三年もたたないうちに見直し、ちょうどこのうちの減反を三年もたたないうちに見直したのと同じようになることはもう目に見えているわけですよ。そういう点、私は、ひとつ農林省の今後のこういう問題に対する姿勢を正してもらいたいと思います。  最後に、もう時間がありませんから、一つだけお聞きをいたします。  水田再編成対策で、六十五年見通しの中では、米の過剰対策として、全国的に六十年代に八十万ヘクタールの水田調整を見込んでおるわけであります。特に、五十五年度の減反面積は十四万四千ヘクタール上乗せをして五十三万五千ヘクタールとなっておるわけですが、この減反に対する対応として、当然新しく転作計画といいますか、そういう具体的な新しい作目の指導というものがなされておると思うのですが、本年度の転作指導、転作計画、作目、そういうものについてひとつお聞きをしたいと思います。
  69. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 本年度の転作の指導、その際の作物などはどうかというお尋ねでございます。  転作の作物の関係でございますけれども、これは五十五年度も第一期に属しておりますので、作物につきましては、需給上問題のある一部の作物、たとえばミカンとかブドウとかそういうものは除いておりますが、それ以外のものは幅広く転作の対象ということで認めておるわけでございます。  その際に、転作作物として特に今後主力を担っていただくというものを、特定作物ということで、麦なり大豆なり飼料作物等を決めておるわけでございますけれども、やはり五十五年度におきましても、これらの作物というものを中心に転作の誘導を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、国ベースとして、そういう特定作物というようなことで、やや戦略的にふやしていきたいということでお願いをしているものがございますが、転作目標面積というものを具体的にこなしていく際に、各県などにおきましては、一般作物の中でやはりその県なり地域に合った地域特産物といいますか、そういう形のものもきめ細かく拾い上げていこうというような動きもございます。したがいまして、そういうような対応も含めまして、地域の農業事情に即した自主的な作目選定というものが大切であるというふうに思っており、そういう面もお願いをしているわけでございます。  そのほか、面積をどうこなすかという、転作作物のみならず、転作の質的向上というようなことで、やはり定着化というようなこともあわせて指導をしておるというのが現状でございます。
  70. 本郷公威

    ○本郷委員 時間が来ましたので、終わります。
  71. 内海英男

    ○内海委員長 この際、午後一時十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時十三分開議
  72. 内海英男

    ○内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。細谷昭雄君。
  73. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、実は武藤農林大臣に対して最初にお聞きしたいと思っておったのですけれども、きょうは出席にならないということでありますので、その点については明日に持ち越したい、こういうふうに思いまして、委員長にぜひお願いしたい、こう思うのです。きょうは、私の持ち時間は七十五分でありますけれども、明日の分も入れまして、若干の時間を繰り延べたい、こう委員長にお願いしたいと思っておったのですが、いまの事務局のお話によりますと、それはいかぬということなわけです。私も、きょう大臣が出席するものだ、こう思って準備をしておったわけですが、これはどうしてもやはり大臣に聞かないと、御本人の問題でございますので、近藤さんではなかなか的確な御答弁をかわってやるというわけにいかないと思うのです。その点の御配慮できませんか。
  74. 内海英男

    ○内海委員長 実は先ほどの理事会で大臣の出席時間というものを理事の間で相談をいたしまして、各党に時間割りをいたしたわけであります。したがいまして、大臣は、明日の時間割りが終われば別な会議に出なければならぬというところで、大臣の時間に合わせてああいう時間割りをやったわけです。ですから、社会党の先生方は社会党の先生の中で割り当てを御相談していただきたい、こう思います。
  75. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この問題については、後ほど私の方の理事とも話し合いたいというようには思います。  私が、武藤農林大臣にぜひ真意のほどを聞きたい、こう思っておりましたのは、本委準会におけるわれわれ委員の発言なりないしは問題の提起なり、こういったものを執行部、とりわけ大臣はどのように受けとめられておるのかという点でございました。これは明日に御本人が来てからはっきりお聞きしたいとは思いますけれども、まずそれに関連しまして、近藤政務次官にお聞きしたい。  私自身がたまたま、きょうもそうですけれども、大臣の出席しないときに発言をする、こういった問題について、たとえば政務次官なり政府委員は大臣にそのことを言っておるのですか、どうですか。
  76. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 農林水産委員会でいろいろ御質疑がございました点につきましては、重要な点につきましてはすべて大臣に話をしてございます。
  77. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 言っておるとすれば、農林大臣は健忘症かどうかわかりません、わかりませんが、もし健忘症でないとすれば、人間的には彼はきわめて誠意のない人だというふうに感ぜざるを得ないわけです。  私は、近藤さんにこの前もお話ししました。たとえばえさ米の問題につきましても以前私は具体的に写真を提示しながら、アルボリオという品種について説明をいたしました。しかるに大臣は、その後の予算委員会におけるわが党の委員の質問に対して、アルボリオというのは初めて聞く話だということを言ってみたり、せんだっては、私自身が具体的なえさ米の視察地についてないしは視察する時期について提案をいたしました。これについては近藤さんがしかと大臣にお伝えしておるのかどうか、私は、先ほどの前例からしまして、確実に伝えられておるのかどうか、その点で非常に疑問に思っておったわけでございます。したがって、私的に近藤さんにお聞きしましたら、それは話しましたよということでしたね。もしそうだとすれば、五月一日に私は、夜突然テレビで、私の選挙区にえさ米の視察に武藤さんが来ておられるということを知りました。あれほど具体的な提案をし、問題を提起しておったにもかかわらず、武藤さんがもしも近藤さんのお話ししていることを伝え聞いておるとすれば、それは、こういう委員会のやりとりということよりも、人間的な関係、誠意の問題じゃないか、私には一言の事前の連絡もなければ、きょうは十四日ですけれども、連休を終わりましても、そのときの問題についての印象の報告も何らなければ、官房やその他からも全くございません。そういうものですか、一体。私は、その人間の誠意を疑うわけでございます。そのことを大臣にしかとお聞きしたいと思っておるわけです。  もう一つがまんならないのは、その談話というものが新聞記者の会見で発表になりました。幾つかありますけれども、新聞記事の内容でありますので正確のほどはわかりませんが、県の農業試験場の試験結果を見ると、秋田に限っては少なくともえさ米については見込みがないような意味のことを発言しておるわけであります。この点について、結論的に言うと、私は正式にこの委員会の席で取り消してもらいたいというふうに要求をするわけであります。  この二つについて、しかと近藤さんから武藤さんにお伝え願いたい。その点については、明日それを中心にしてお聞きをしたいと思います。その点、いかがですか。
  78. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 大臣の視察の状況やその後の記者会見につきましては、私、立ち会っておりませんので、官房長から話をさせますが、実は先生からもお話があったわけでありますが、ざっくばらんに申しまして、私たち、選挙で特定の候補者、政治家の応援などに参りますときは、事前に連絡をいたしますし、また本人じゃなくてもその地区の政治家の方々にはあらかじめ御了解をとってまいるということもございます。私自身もいろいろな公務で全国各地へ参りますときは、大体役所の関係でいろいろセットさせまして、その線で参りますので、必ずしもそれぞれの地区地区の政治家の方々に事前に御連絡をしてまいるということは、私自身の経験から申しましても余りございませんので、その点について、大臣も、いわゆる役所の訪問で視察でございますから、同様の考えでおやりになったのではないか、かように考えているわけでございます。
  79. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 大臣が先般秋田県下を訪問いたしましたが、大潟村等各種の視察の一環といたしまして、同県農業試験場等から飼料米の試験成績等につきまして説明を受けてまいり、そのときの印象といたしまして、大臣は飼料米の生産についての反収が経営として成り立つ見込みがあるかどうかということを問題点としてお考えであったと承知しておりますが、大臣の御印象としては予想よりもはるかに低かったという点で、消極的な感想を述べられた。ただ、大臣としては、秋田に限ってと申し上げたのは、秋田における大臣の見聞した範囲においてということで、なお時間をかけて、さらに各地の事例等も勉強したいという御趣旨をもってそのように意見を申されたというふうに承知いたしております。
  80. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私の持っておる農業新聞にはこういうふうに言っているのですよ。「「えさ米は難しい」秋田視察で感想」という見出しでいろいろなことを書いておるのですが、「十アール当たり千キロを超えるのは難しいとのことだった。千五百キロをメドにしていたが、とても難しい。秋田に関する限り飼料化は難しい。」と言っているわけです。これはそういうふうに言ったのですか。本人に聞かないとわからないのですがね。
  81. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 秋田県に関する限りというのは、私ども承知しておりますのは、秋田における事例を大臣が聞いた限りにおきまして、大臣が予想しておったよりも収量的には難点があるのではないかということで申されたというふうに聞いております。
  82. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この問題は、いずれあす大臣にただしたいと思います。この二つの点について、大臣によく伝えていただきたいと思います。  もう一つの点は、これも新聞の記事で、秋田のことを書かれておりますので取り上げていきたい、こういうふうに私は思っておるわけですが、これも大臣にあすお聞きしたいと思うのです。しかし、せっかくの時間ですので、近藤政務次官並びに官房長、それから構造改善局長、この方々にも見解をただしておきたいと思います。  五月九日の朝日新聞によりますと、「早くもZ旗「農水省一家」」という見出し、そして「前幹部二人の出馬にフル回転」「職務中に票集め 全農も応援通達 労使紛糾」「秋田では内ゲバ模様 なりふり構わぬ組織争奪」という言い方で、かなり大きく社会面を割いておるわけです。  もう一つは、日を違えまして、五月十二日の農業新聞に「公務員の抜け穴だらけ選挙活動」という大見出しで、「役所ぐるみOB応援自分を裁く変な“仕組み”」、これもいわゆる地位利用における高級官僚OBの選挙運動について書いておるわけであります。  朝日新聞、日本農業新聞ともそれぞれ全国的な日刊紙でございますので、かなり広範囲に国民の前にこの記事がいわば提示された、こういうふうに思われるわけであります。私もこういった新聞等に問い合わせましたら、かなり多くの反響があるというお話でありました。この記事について、まず近藤政務次官は御存じですか。
  83. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 その新聞に取り上げられております大河原太一郎、岡部三郎の両名は、それぞれ農林水産業各団体の推薦を受けまして、また自由民主党の公認候補として来る参議院選挙で全国区から立候補を予定されておる二人であります。したがいまして、各地で農林水産業各団体がこの両候補者を当選させたいということで一生懸命努力しておりますことは存じておりますし、また、農林水産関係の自由民主党の国会議員、県会議員、市会議員、町会議員、その系統の人たちがそのために努力しておりますことも私はよく存じておりますが、いやしくも公務員がそのための選挙活動をしておるということはないと思いますし、存じてもおりません。
  84. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 それでは官房長にお聞きしたいと思います。  朝日新聞の記事によりますと、「関係者の証言によると」という言い方で書いておりますが、「“大河原選挙本部”は大臣官房。」こうなっております。そういう事実はありますか。
  85. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 そのような事実は全くございません。
  86. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 構造改善局長にお聞きします。  構造改善局の前の次長という方が立候補の予定だそうですね。御存じですか。
  87. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私が直接確かめているわけではございませんが、元農林省の構造改善局に在職しておられた先輩が政界に進出するということで、いろいろお話は承っております。
  88. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この新聞によりますと、岡部三郎さんという前構造改善局次長の選挙本部は構造改善局だというふうな言い方をしておるわけであります。そして、かなり具体的な内容になっているわけですね。いずれもこれは自民党の候補者だということでありますが、恐らく自民党は手をかさないで、役所だけの選挙運動をやっておるというふうに思われる内容なのです。これは地位利用じゃないか、かなりそういうにおいのする記事だというふうに私は受けとったわけですし、現に国民感情から言いましても、ほとんどこれは高級官僚OBのいわば官僚一家の地位利用のぐるみ選挙だ、またかという感じで国民はとっておる、これは間違いない事実でございます。  こういった問題について、やはり農林水産省の立場からしましても、二人もOBが出ておる、さなきだにそういう過去の事例からすれば疑われる、ましてやこういう大新聞ないしは業界の農業新聞に大々的に書かれる——書かれるという事態がもう大変な問題だと思うわけであります。これに対して、それぞれの立場から、私は、あしたは大臣から聞きますけれども、ひとつ政務次官なり、構造改善局長なり、官房長なり、こういうふうに書かれておる、選対本部の悪くすれば委員長じゃないか、こういうふうに疑われてもしようがない記事なのですよ。こういう人たちが今後どういう心構えでこういうふうな記事を否定し、綱紀の粛正に努力するのかという見解をお聞きしておきたい、こう思います。
  89. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  両氏の活動につきましては、それぞれ政治団体として届けられました両氏の後援会の独自の活動でなさっていると思います。農林水産省といたしましてそれに関知するものではございませんが、ただいま御指摘のような点は、私ども役人としては十分注意しなければならない点でございまして、先般五月八日に服務規律に関しまして特にそうした点について事務次官名をもちまして通達を出しまして、およそこのような疑いを生ずることのないよう、末端まで注意をいたしたところでございます。
  90. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いま官房長からお答えしたと全く同じに私ども考えております。通達等も出ておるところでございますし、私どもの組織にもその点は十分徹底させるということで考えております。
  91. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、秋田県の県議会議員当時、実はいやと言うほど農林省OBの選挙運動の実態を見てまいりました。ひどいものなんですよ。末端の土地改良区、農協、業者、こういったものに、上からの指示でそれぞれのいわば補助金ないしは事業の予算化をにおわせながら浸透しておりますね。これはもうまことにひどいものだ。六年前の参議院選挙、三年前の参議院選挙、それぞれ全国区のぐるみ選挙というものが問題になって久しいわけであります。恐らく今回もそういう状態が各地で起こっておるのじゃないか。私が問題にするのは、そういう予算や補助金、こういった国民の国税をてこにしながら当選を図る、そういう卑劣なやり方に対して国民感情がどう考えておるのか、これを重視する立場から申し上げておるわけであります。この記事には具体的に個人名さえも出ております。本人の名誉のためにも大変問題があると思うのです。この点の追及を私はここではしません。一般論として私は申し上げておるわけです。綱紀粛正という立場から、責任ある農林水産大臣がどうお考えなのかということは明日改めてお聞きをしますので、十二分に省内の意見をまとめられてひとつ大臣にお伝え願いたい、改めてお願いしたいと思います。  次に本論に入りたいと思います。  一つは、農村地域定住促進対策事業の問題について、主として構造改善局長にお願いしたい、こう思います。  まず、この事業の由来と申しますか、昭和五十四年度より発足されましたこの事業の生まれてきた経過、こういったものについてお知らせ願いたいと思います。
  92. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 定住事業は若干の経緯があって予算化され、事業として実施されているわけでございます。  その経過を申し上げますと、農家からの出かせぎの解消またはその抑止を図るということのために、昭和五十一年度から昭和五十三年度までの三年間に、全国二十四地域において、出稼地域農業者就業改善対策実験事業というものが実施されたところでございます。これは一地域平均事業費六千万円、補助率二分の一という条件で行われたものでございます。昭和五十四年度になりまして、この事業を発展的に解消いたしまして、出かせぎ等の不安定な就業状態を改善するということとあわせて住みよい環境づくりを推進するということのために、改めて農村地域定住促進対策事業というものを発足させたところでございます。  この農村地域定住促進対策事業は、全国五百地域におきまして三カ年事業で一地域当たり事業費は一億五千万円ないし三億円、補助率は二分の一ということで実施することにいたしております。そこで、昭和五十四年度には八十地域において事業に着手するということにいたしておりまして、昭和五十五年度には新規に百地域において事業に着手するということにいたしておるところでございます。
  93. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 いまのお話にもありましたけれども、この事業のそもそものスタートは、五十一年の出稼地域農業者就業改善対策実験事業、こういう大変長い名称を持つ実験事業が土台になっておるわけですね。この事業というものの背景が何なのかと言いますと、これは出かせぎ農民の、不安定な兼業農家の実態、さらに雇用の不安、これは出かせぎ農民の雇用の不安が、当時オイルショックとかドルショックで大変あったわけでありますので、こういう状況から、全国出稼組合連合会が、出かせぎをしないで農業で食える農政という要求を出しながら皆さん方にお願いをした。農政当局がこれにこたえて、農政の中でもいま言ったような出かせぎとか老齢化した農家とか、どちらかというと日の当たらないこういう方々にきわめて異色な実験事業であった。それで、関係者からは大変に注目された農水省の大変良心的な予算であり、高い評価を受けてきたわけでございます。その点で私は大変敬意を表するわけでありますが、これはいま局長お話しのとおり、この実験事業のほかに農村工業導入促進特別対策事業、それから特定農山村振興特別対策事業、この三本がまとめられて、そして農村地域定住促進対策事業という本事業が発足したというわけですね。したがって、この新発足をした事業の目的は、これらのもとになったこの三つの事業がねらっておる農家経営の安定及び農家の収入安定というものを主目的にしたというふうに考えていいわけですね。
  94. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農家経営の安定は、全般的な農業政策、つまりは生産対策なりあるいは価格対策、そういったものが基本になると考えられますが、いろいろ条件が悪くそれだけではなかなか手の及ばない特別な地域、特に出かせぎ等の多い地域については、そういった基本的な政策を補完する意味で、ただいま申し上げましたような農村地域定住促進対策事業というような形でこれを行っていくということにいたしておるわけでございます。趣旨におきましては先生のおっしゃられたとおりのことでございます。
  95. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 問題は、このねらいというのは、いまお話があったとおり、主目的は少しでも農業内の就労ができ、ないしは収入が安定することである。しかし、そればかりではないから、その他の生活環境なりないしは地域のコミュニティーですか、こういったものを整備をしていく。これはあくまでも補完的な意味で事業のねらいに組み込まれたものだというふうに私は解釈をしておるわけです。それはそうですね。
  96. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農村地域定住促進対策事業は、過疎地域、それから一部山村等の出かせぎ等の不安定兼業農家の比率の高い地域、こういうところを対象にいたしまして、絶対数で言いますと全国三千のうちそういうふうに考えられるところはおおむね千市町村程度でございます。そういうところを対象といたしまして、出かせぎ等の不安定兼業農家の所得の増大、それから就労の安定を図るということのために、集約的な農業生産の推進による農業就業機会の拡大を図る、それから工業の導入等による二次産業あるいは三次産業における雇用機会の創出を促進するということを一つの柱にいたしております。それと同時に、住みよい生活環境をつくって地域住民相互の交流を推進する、そういうことによりまして、地域住民の地元への定住を促進することをまた柱としているわけでございます。この両者はばらばらのものではなくて、就業の機会をつくるということと同時に、喜んで地元に居つくようにしていただくということのためには、やはり住みよい環境づくりをする、そして就農する機会があれば喜んで就農するという農民の意欲を喚起するというところがあわせてねらいとなっているわけでございます。
  97. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 いま局長がいろいろ言われましたが、私は八十七回国会の四分科会における議事録を持ってきております。当時農林水産大臣は渡辺さんでありました。渡辺さんがこの事業のつくられたゆえんのもの、ねらい、こういったものをかなり明確に言っておるわけであります。ですから、いま局長は並列しておりますが、それはそうではなくて、これは少なくとも出かせぎ解消なり就労の安定、農家収入の安定ということが基本なのだということを明確に言っておるわけですよ。あなたは並列しているでしょうが。どこが違うのですか。
  98. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私が申し上げた意味も先生のおっしゃっている意味とは違わないのでございまして、まさに農家収入の安定、就業機会の創出ということを目的としているわけでございます。そのことはそれだけでなくて、むしろ住みよい条件をつくるということによってそれが一層助長されるということがありますので、両者無関係ではないという意味で、一体的にこれをうまく活用していくことが必要であるという意味で申し上げたわけでございます。
  99. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 わかりました。  それでは次は、五十四年度それから五十五年度の事業内容と予算、これの大ざっぱな一つの傾向ないしは総額といったものについて御説明を願いたいと思います。
  100. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 まず事業内容でございますが、一つは、農山漁村就業促進対策事業、それからもう一つ地域社会環境整備事業、この二つに分けられるわけでございます。そして、地域の特性に即して定住条件を総合的にかつ効果的に実現するため、必要な事業種目を自主的に選択して実施するいわゆるメニュー方式がとられております。  そして、前者の農山漁村就業促進対策事業は、出かせぎ、日雇い等の不安定兼業農家等を対象にいたしておりまして、地元就労及び所得の増大を図るため、地域の特性に即して農林漁業及び地域特産物等の生産の振興、農林水産物の加工の推進による農林漁業への就業機会の拡大、さらには工業の導入、観光等の導入による就業機会の拡大、農林漁家の高齢者に生きがいを与えるための条件整備、こういったことを行う事業を内容といたしております。  それから、後者地域社会環境整備事業は、農山漁村の定住環境整備等を図るため、まず、農林漁業者等の健康増進、さらに集落環境整備ということを事業の一つといたしておりますし、また、地域住民の交流を促進する施設の整備ということも事業の一つとしておるところでございます。  それから、これの予算ということでございますが、地域定住の全体の額は、農山漁村就業促進対策事業が八十五億円、それから地域社会環境整備事業が八十四億円ということで、合わせまして百六十九億円、これは五十四年度でございます。いま申し上げましたものは、別なものを含めました総合的な総額でございますので、定住事業だけについて申し上げますならば、五十四年度は二十五億九千二百万円、五十五年度は六十七億四千五百万円ということになります。
  101. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 軒並み予算削減という苦しい財政事情の中から、前年比、二十五億九千万から六十七億ですから、これはもう約二・五倍ぐらいですか、大変な成長率なわけですけれども、大幅増ということは、これは大変注目されていいし、大蔵当局さえもそのねらいというものを大変高く評価した結果だというふうに思います。問題は、この事業内容が事業目的にふさわしいものになっているのかどうかということを私は注目をしたいと思うわけであります。まだ発足一年という単年度の結果だけで私は短兵急に論ずるものではございませんけれども、しかし、初めよければ終わりよしというたとえのとおり、事業発足のたった一年、二年目でありますので、この機会により以上この事業が農民の皆さん方のために有効な効力を発揮するように、少しく内容に立ち入って分析と要望をいたしたいというふうに思っております。  その第一にお聞きしたいと思いますのは、それぞれの市町村より実施要綱というものが上がってくるわけでありますが、先ほど私も言い、そして局長が私と同じことを言っているのだというふうに言われました目的によるチェックは、どの段階で行われておるのですか。
  102. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 この種の事業につきましては、先ほども申し上げましたように、地域の実情に応じてかなり事業の選択の内容が異なってくるわけでございます。これはやはり地域が山村であるのか漁村であるのか、あるいは若干平場地区であるのかというようなことによっても差が出てくるかと思いますし、それから作目が何であるかということによっても差が出てくるわけでございます。計画はやはり一般のこの種の事業と同じように市町村が立てまして、これを県の段階でチェックする、そして県のチェックを経たものが農林水産省の所管のところの窓口に上がってくるということになっております。  今日までの経過を見ますというと、先生もこの点については高く評価してくださっているわけでございますが、地元市町村には非常に喜ばれておりまして、非常に意欲的な、極端に言えばあれもやりたいこれもやりたいというような、意欲が余ってもっとやりたいというような希望意見も出るわけでございますが、充実した計画が出されてまいっております。
  103. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 チェックの段階は県だというふうに言われますけれども、しかもメニュー方式である。メニュー方式というのは大変私もいいとは思います。思いますが、皆さん方がその目的に合致しておるかどうかチェックする文書は、五十四年六月五日付の事務次官から出されました実施要綱によるのではないかというふうに思います。この実施要網によりますと、そのねらいというのが「趣旨」として書かれておるわけであります。この「趣旨」が非常に重要じゃないか。先ほど局長もお読みになっておりましたが、この事業は、「以上のような観点」、いろいろ社会情勢、農村の状況が書かれておる、この観点から、第一に、「出稼ぎ等不安定兼業農家の所得の増大及び就労の安定を図るため、集約的な農業生産の推進による農業就業機会の拡大、工業の導入等による第二次産業及び第三次産業における雇用機会の創出等を促進するとともに、」第二に、「生活環境改善のための施設及び地域住民相互間における交流を促進するための施設の整備等定住条件の整備を行うこととし、これらの対策を総合的に実施しようとするものである。」これが恐らく目的だと思うわけであります。第一と第二というふうに入れたのは、先ほど言ったような経緯から私が入れたわけであります。  この目的によりまして、五十四年度事業の問題を見ますと、必ずしもこの目的にきちっと沿っておるのかどうかという点では、私は多少の疑問を感じざるを得ないわけであります。たとえば五十四年度、五十五年度の秋田県の対象市町村の事業内容を見てみますと、これは当局の意図するメニューになっておらない、こう思わざるを得ません。それでも秋田県は、比内町のトンブリ加工工場、シイタケ栽培など、それから五城目町の大豆処理加工の施設、それから野菜の温室、ドジョウ養殖、こういうふうなものがありますし、湯沢市の酪農におけるバルククーラーの施設整備、これは他の地区と比べますといい方なんです。しかしながら、全般的に見ますと、目立って多いのは何なのかというと、建物、それからふるさとセンターと称するこれはコミュニティーの建物だと思います。それから集会所、グラウンド、テニスコート、圃場整備、農道、こういったものが目立って多いわけであります。先ほどの第一義的なねらいからしますと、質的にも——質というのは予算の面でもです。それから量的にも、圧倒的に第二の補完する方の目的のこういったものが多いのは、一体どこに原因があるのか。どうお考えですか。
  104. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私ども全体の正確な分析を細かく一々の地域についてまでは行っておりませんが、五十四年度に事業に着手した八十地域全体、この事業種目別の事業費構成を見てみますと、不安定兼業農家の所得の増大と就労機会の拡大を図るための農山漁村就業促進対策事業、先生が第一の事業と言われたもの、これに向けられている金額が——これは事業費ベースでございます。予算額そのものではございません。事業費は三年間のうちにこなすわけでございますから。これは八十五億円ということになります。事業費総体の五〇・四%。それから地域社会環境整備事業に属するものが八十四億円。先生が第二のと言われた事業でございますが、これが比率にして四九・六%。ほぼ半々というような状態になっておるわけでございます。この状態は、圧倒的にとは言いませんが、かなり地域社会環境整備事業も大きくなっているということは見受けられるわけでございます。これがどうしてそんなに伸びるのかということでございますが、先生の御趣旨は、恐らく第一の事業の方にもっとウエートがかかってしかるべきではないかという御趣旨を含んでの御発言かと存じますが、私どももそういう趣旨は十分承知しておりますし、実施要領等によって指導もしているところでございますが、やはり地元の市町村にいたしますと、人気があるといいますか地元住民の要望が強いということ、それから比較的そういったものの整備地域全般としておくれているというようなことから、そういう環境整備関係の事業が喜ばれる、わりあいと多額の事業費予算が組まれるということになる傾向があるのかと存じます。
  105. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 いまそれぞれ半分くらいだというお話がございましたが、どういう数字のマジックなのか私はわかりませんが、私の見たところによりますと、とてもじゃないけれどもこういう数字が出てくるような事業内容ではないのですよ。私も分析をいたしました。私の方の全国出稼連でもこの点については検討いたしました。大体一割なのです。私が言うところの第一義的な目的に使われている予算というのはたった一割。九〇%はいわゆる地域環境整備。私が言うのは、一般農政でやれそうなもの、農道とか圃場整備とか集会所とかグラウンド整備、こういったものに使われている。一体全体こういう出かせぎ解消のためにグラウンド、確かにこれは要らないというのではありませんよ。要らないというのではありませんが、第一義的には農業内の就労それから農業収入、農外収入の安定、これにうんと金をかけなければならないはずなのです。しかし、実際は、私の分析によりますとたった一割なのですよ、それは。九〇%が補完する方の第二の目的に使われておる。環境整備、これは大変惜しいと私は思うわけであります。  そこで、具体的に大変いい例がありますので、これをひとつ例に引いてみたいと思います。一つは、私の方の秋田県の河辺町の例、もう一つは隣りの青森県の車力村、いずれも五十四年度です。どちらも似たような農村なのです。車力村の方が失礼な言い方ですがもっと貧困だと思います。  内容を見ますと、車力村はII型です。河辺がI型の三億円の事業。それで見ますと、河辺町の場合は土地改良が全体の事業量の五・九%、ふるさとセンターが一六・六%、建物です。多目的集会所が六六・六%、建物ですよ。それから農地造成、これは土地基盤整備です。これが四%、それから健康増進のためのテニスコート、定住構想にテニスコートは要らないというわけではありませんけれども、テニスコートが六・六%。これから見ますと、私から言いますと、第一義的なものは一つも含まれておらない。一般農政でやっていいものだけ、こういうことになります。  車力村はどうかと言いますと、車力村の場合は全く、私たちが言うところの全部第一義的な目的に使われております。いわばこれは養豚の問題と肉牛団地、この二つなのです。全くこの二つに使われておる。私たちはことしの夏車力村に、現地にお伺いしたいと思っておりますけれども、同じ事業でも町村によって、ないしは県によってこれだけの違いが出てくる。私は決して環境整備をやるなと言うのではありませんよ。ありませんが、少なくとも金の使い方、この目的というものに沿った指導をしないと大変問題が出てくるのじゃないか、こう言いたいわけなのです。  ですから、まだ二年目でございますので、短兵急な批判は差し控えたいとは思いますけれども、いまのこの時点で、少なくとも現場の農民が望んでおる就労の機会をふやす、農業収入をふやす、ないしは農外収入をふやすという立場の第一義的なねらいというのに大部分の金を使ってもらいたい、これは強く期待をしておるわけなのです。これについていままでの第一年度目、初年度目、これを反省しながらいまは五十六年度実施の調査をしておるはずなのです。計画を出してもらっているはずなのです。したがって、五十五年も大体同様の傾向なのです。三カ年計画でございますので、いままでの計画をそれぞれチェックしながら、いま言った第一目的に是正させるような努力をすべきではないかと私は思うわけでありますが、その点、局長の御見解を伺いたいと思います。
  106. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私どもの調べました数字と先生調査されましたのと若干食い違いがあるようでございますが、それはまた別途私の方でも県に問い合わせて実態を分析してみたいと思います。  それから、いずれにいたしましても、環境整備的なことはほどほどにして、本来の第一義目的と先生が言われました「出稼ぎ等不安定兼業農家の所得の増大及び就労の安定」云々という、この実施要領の中でも触れております事業を重点に仕組んでいくべきではないかということ、御指摘ごもっともでございます。私ども環境整備にむやみな重点がかかるようなことを避けるため、この実施要領の徹底、特にその徹底に当たっては都道府県への指導ということを十分に考えてまいりたい、五十五年度以降の計画の認定に当たってはその点を配慮しながら事業に当たってまいりたいと考えております。
  107. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これは十分に期待したいと思います。  五十六年度の実施の個所ですが、私の方でもいただいておりますけれども、この目的に沿ったメニューの内容に近づけるためには、問題は、どこに隘路があったのか、いまこういう努力をしていきたいということはわかりますが、いろいろ現場で事業を出してくる場合の隘路があると思うのです、第一義的な目的に使えないという隘路が。これはどうお考えなのか。  私見によりますと、いろいろ考えてもこれぞという事業がなかなか見つからない。その原因というのは、何と言いましても、この農林水産委員会でも皆さん方がおっしゃるように、やはり生産政策なり価格政策なり流通政策なり、こういった問題がなかなか確立しておらないというところに問題があるのではないか、私自身はそういうふうに考えているわけです。そういう点では、この事業の第一義的な目的にうんと予算が使われる、そのための前提としてそういう計画、メニューが出されるということが必要なわけですが、その点の、いま私が私見として申し上げました外的な条件というものが当然あるわけです。それが隘路になっているのではないかというように思いますので、その点皆さん方の、いわば外的な条件をどう整えるか、その指導をどうするか、そしていまお話があったとおり第一義的なねらいに持っていくためには今後どういう点の努力をするのか、その点を最後にお聞きしたい、こういうふうに思います。
  108. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 一番初めにも申し上げましたように、本当に農家の所得の安定を図るためには、一般的な農業政策価格なり生産対策といった面でその充実が図られることが大前提であろうかと思います。それはそれなりに農林水産省全体として努力しているところでございます。そして今回の、いま御議論になっておられます定住事業、これはそういった足りないところといいますか、地域の特性に応じてそれをカバーし得るようなものがあったらこれを拾い上げていく、そういう補完的な効果を持つものでございます。ときには補完的な効果をねらったものが非常に隆々と発展して非常な成果を上げるということもあり得ますが、一般的にはやはりそういう補完的な効果をねらうものであろうかと思います。一般的な政策の実現に努めるとともに、本当に補完的な機能を果たし得るよう、先生のおっしゃいましたような本来の趣旨にかなうよう、この事業の運営にさらに努力してまいりたいと考えます。
  109. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 その点、よろしくお願いしたいと思います。  次に、これも構造改善局長にぜひ課題として、私、問題を提起をしたいというふうに思いますので、ひとつお考えのあるところをお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。  それは、実はきのう私の方の野坂委員から、用水路、農道、こういった圃場整備問題について問題の提起があり、そして当局がそれについての善処方をお約束をしたわけでございます。これとも多少関連があるわけでありますが、私は、主として用排水路問題について最後にお尋ねをしたい、こう思います。  問題は、用排水路というのは昔と変わりまして、きのうのお話にもありましたとおり、かなり大型のものになりつつあるという点でございます。この問題で私が第一にお聞きしたいと思いますのは、用排水路の所有権と管理権と工事負担率並びに県営圃場整備と団体営の事業費、その中に占める用排水路工事の費用の割合がどうなっておるのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  110. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 用排水路事業というのは、これは圃場整備事業の一部として行われるものでございます。圃場整備は、耕地の区画、形質の変更、それから用排水条件の改良というようなことを主眼といたしまして、高能率農業の展開に可能な基盤を造成するということを目的としているわけでございます。  こういう事業の中で用排水路事業に要する経費がどのくらいかかるのかということでございますが、これは地域の条件、つまり高低差があるのかとか、たんぼの区画が大きいのか小さいのかとか、いろんな事情によって差がありますが、これは平均で見ますと、団体営の小規模なものはなかなか数字がとりにくいのでございますが、県営圃場整備について見た場合はおおむね四六%ということになっております。それから、全体事業費の中で占める排水路工事費の割合はおおむね二五%ということになっておるわけでございます。この傾向でございますが、いま申し上げましたのは五十二年度の比率でございますが、四十五年度にさかのぼって見ますと、水路事業費の割合が四四%、それから全体事業費に占める排水路事業費の割合が二一%ということで、五十二年度の四六%、二五%よりは若干低い。つまり、圃場整備事業の中で水路にせよ排水路にせよ事業費の割合はだんだん高くなってきているという傾向が見受けられるわけでございます。この傾向は、団体営の水路あるいは排水路事業についても同様であろうかと存じます。
  111. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 問題は、用排水路の所有権は国に帰するわけですね。それから管理権というのは、それぞれの水利組合、土地改良区ないしは市町村、こういったものに管理を委託しておるということだと思います。そうして、工事の負担というのは、それぞれ国の補助はありますけれども受益者負担というのが原則だ。その割合というのは、いわば金額的には物価の高騰とともにだんだんに高くなっているということだと思いますし、水路関係については、最近の水路は非常にりっぱである、三面舗装、そして大変大型になってくるということからして、全体的には工事費というのは高騰しておる、負担率も多くなっているということなんですね。そうですね。  そこで、お聞きしたいと思いますが、用排水路というのは国有地である、いわゆる官地である、国の所有権に属するという根拠は一体どこにあるのでしょうか。
  112. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 一般的に国有地ということではなくて、前に国有地であったところのものもあるわけでございますが、換地等によって水路を広げまして、新たな面積部分が水路に加わった場合、それは土地改良区のものであるというような考え方で扱っておるわけでございます。ただ、その管理問題につきましては、これは先ほど先生もおっしゃられましたように、市町村なりあるいは土地改良区に委託しているというような形で実際は行われておるわけでございます。
  113. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 すると、この用排水路というのは完全には国有地でないと言うのですか。
  114. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 国有地の場合もありましょうし、土地改良区財産である場合もあるということでございまして、一般的にすべてが国有地であるということではございません。
  115. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 いまの用排水路は、昔と違って農村でも非常に混在しておる、農家と非農家が混住しておるという状況の中で、昔は確かに用水なり排水というのは、農業と上についているようにほとんど農家の皆さん方だけが使うということが多かったと思うのです。しかし、最近はどうかと言いますと、これはもう非常に様態が変わってきておる、機能が変わってきておる。たとえば道路の問題を考えてみますと、少し前は、終戦間もなくまでは、県道といえども県道の舗装は受益者負担がありました。国道でさえも、部分的には受益者負担があった時代があります。いまはどうでしょう。いまは、これ不特定多数の国民の皆さん方が使用するということで、受益者負担というのはほとんど全部撤廃されております。その理論をもしも用排水路に持ってくるとすれば、様態としては同じだと思うのです。特に排水の問題、用水は別としましても、排水の問題につきましては、実態として農家の排水のみならず、あらゆる排水、道路上の側溝の水も全部入ります。こういう様態に変わってきているわけであります。その点はお認めになりませんか。
  116. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 最近の用排水路の実態は、用排水分離というようなこともございまして、用水路と排水路を区分する、それから排水路が実際に使われておる状態ということになりますと、農業用の排水だけではなしに、特にだんだん都市化するような地域におきましては、一般の家庭用その他の排水にも使われるという実態がある程度出てきているということは事実でございます。
  117. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、昭和四十九年、ちょうど地方議会におりました際にこの問題を取り上げました。秋田県議会でありましたが、私は農政委員会におりました。農水委員会で取り上げまして、少なくとも排水路の工事費については全額国庫負担にすべきじゃないか、この問題提起をし、委員会の全会一致の賛成を得まして、委員会が発議をし、秋田県議会の意見書として政府に提出をしたことがあります。四十九年であります。その提案者になっておりましたので、私自身も当時の構造改善局長、お聞きしますと大山一生局長だそうですけれども、その大山さんの時代に出かけてまいりまして、意見書と同時に陳情したわけです。そうしたら、大山さんが私にこう言いました。大変心強い限りであります。ちょうどそのときは五十年度予算の大蔵省要求を農林省としてやった直後であったわけです。そして、大山さんが言うには、農林水産省部内でも、構造改善局のことだと思うのですけれども、排水路については全額国庫負担にすべきだ、こういう意見がようやくまとまって、ことし初めて大蔵省に対し予算要求をしました。しかしながら、残念ながら、あのときは大変財政困難という時期でありましたので、新規事業一切まかりならぬという厳重な達しがあって、はねられてしまった。しかしながら、これは当然な要望であるし、これによって現場の農民の負担がいかほど軽くなるかはかり知れないものがあるので、ひとつ粘り強くわれわれもお願いをしていきたいし、秋田県議会におきましてもぜひひとつ努力をしていただきたい、協力をしてもらいたい、こういう話があったわけです。しかし、その後農林水産省が大蔵省に対してそういう予算要求を頻繁に行ったという話も聞いておりませんし、現実にもそれは実現しておらないという状況なわけです。しかしながら、四十九年に少なくとも農林省の部内でそういう意思統一をされて予算要求をしたとすれば、その物の考え方というのは現在も生きておるんじゃないかというふうに推察されるわけであります。その点どうでしょう。
  118. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 排水路の問題は、建設費についての負担割合といいますか、地元負担の軽減の問題と、もう一つは、でき上がった排水路が多目的に使われるなら、その目的に応じて、管理費について適正な負担区分が行われてしかるべきではないかという両者の問題があろうかと思います。  前者の問題につきましては、これは排水路というよりは、圃場整備事業一般につきまして、排水事業以外にもそれなりのそれぞれ負担の増高する、またその増高が苦しいという事情もあるわけでございますので、補助率につきまして、また秋田県からそういう御要請もあったことも一つの前提といいますか要素になっているかと思いますが、大蔵省に対して年々要求はいたしているところでございます。従来、四十九年から五十三年度までは、都道府県については、団体でも同じでございますが、五%の引き上げということで、それから五十四年以降は、ことしも含めまして、これをさらに上げて、都道府県については一〇%ということで引き上げを要請いたしているところでございます。ただ、率直に申し上げまして、補助率の引き上げということは、相当大きな財政負担、国庫負担の増高をもたらすということで、最近の国家財政事情等からして、なかなか容易に実現し得ない情勢にあるわけでございます。私どもとしては、困難な問題ではありますが、そういう補助率引き上げの問題については、今後ともできるだけ努力してまいりたいと考えております。
  119. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私が申し上げたいと思いますのは、いま言ったような負担率を軽減するということじゃなくて、理論的に、排水路の機能が昔とは違ってきた、現に不特定多数の皆さん方が使用しているんだ、したがって、受益者負担の原則というのはおかしいじゃないかという理論なんですよ。その理論を、皆さん方は、単に負担率の軽減という点で考えておるのか、それとも、不特定多数の使用という点で、これは工事費を全額国庫負担にすべきだというように考えておられるのか、どちらなのかということをお聞きしたいわけです。
  120. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 お話のように、排水路が多目的に使われているという事態がないわけではございませんが、一般的に私どもが土地改良事業で行っておりますところの排水路は、やはり水田なり、畑ということは例外的かもしれませんが、農地の排水路でございます。むしろ、そういう多目的の、生活排水等を内容とする排水路事業でございますと、これは土地改良事業で行うことがいいかどうかというようなこともございまして、私どもといたしましては、農業用の土地改良施設である限り農業用に使われる、そして農業のその受益者の関係で自己負担がなされるということで考えておるわけでございます。むしろ、そういう排水路が一般的に使われるかどうかということの実態は、地域によって、個々の事情によってずいぶん差があるのではないかと思うわけでございます。  そこで、私、先ほど二つの次元の問題があるということを申し上げたのですが、でき上がった排水路が不幸にして農業用以外の用にも使われるということなら、地域全体の効率的な運用といいますか、排水のあり方という観点からすると、農業用の排水路が生活排水そのほかの用に供されることを全く否定するというわけにはなかなかまいらぬと思います。そういう実態に応じて、管理についての費用の適正な負担区分があってしかるべきではないか。一般住民が受益するならば、それを市町村なり、何らかの形で、農業者だけの負担でないような形で処理することは可能じゃないか。現にそういうような事例も若干出てまいっておるわけでございます。そういうことも含めて対応してまいりたい。そして事業費そのものにつきましては、これは別途、排水路自身が、用排水の分離とか、それから地下水をさらに引き下げるというようなことのため、あるいは排水路をコンクリートで覆うというようなことも出てまいっておりますし、水漏れを防ぐために底張りもする、ふたもするというようなことも出てまいって、施設そのものの水準が上がっていることで、その事業費も大きくなってきているということがある。そういうもろもろのことを考えて、これは一般的な補助率の引き上げによる負担の軽減を図るということを申し上げたわけでございます。排水路の問題、よく承知いたしておりますが、いま申し上げましたようなたくさんの問題がありますので、御意向、お考えになっているところはよくわかっているつもりでございますので、そういうことも含めて努力してまいりたいと考えております。
  121. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 最後に、近藤政務次官に、いまの議論ですね。大蔵省への予算要求がまた近づいておるわけです。農民負担の軽減という問題もあり、そして理論的にも大蔵省を説得するためには、私は大変そういう意味では実態に即した問題だと思うのです。もういま農村においてもほとんど混住しておるという状況の中で、少なくとも排水路は現実に多目的に使われておる。したがって、この理論をひとつもっと整理されまして、予算要求に懸命にがんばっていただきたい、こういうふうに思うのです。  そういう点についての政治的な判断としての政務次官の御見解をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  122. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 ただいま細谷委員から、いろいろ貴重な点について御指摘がございましたので、これは十分に検討させていただいて、予算要求に当たって参考にさせていただきたい、かように考えております。
  123. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 終わります。
  124. 内海英男

    ○内海委員長 武田一夫君。
  125. 武田一夫

    ○武田委員 私は、三全総の問題につきまして、国土庁、自治省、通産省、農水省、それぞれの立場から、数点にわたって質問いたします。  最近、ここ数年のことでありますが、地方都市の見直し論や、再評価がにわかに目立っておりますが、近年、特に八〇年代を迎えまして、地方の時代あるいはまた地域主義ということが世論の高まりとして感じられるわけでありますが、各省庁におきましては、この地方の時代あるいは地域主義という、そうした世論の高まりにつきましていかなる御認識をなされているか。その点、まず要点を、簡単で結構でございますから、各省庁ともひとつ御見解を伺いたいと思います。
  126. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 農林水産省といたしまして、地域農業の振興あるいは活力ある農村社会の形成を図るに当たりまして、農家を初めといたします地域住民や地方公共団体等の自主性なり創意を尊重いたしまして、地域実態に即して施策を進めることが重要であろう。特に最近そうした点に心がけておるつもりでございます。  具体的には、五十年に農振法の改正によりまして農用地利用増進事業をスタートさせました。五十二年にはこれらのベースに立ちまして地域農政特別対策事業もスタートいたしております。あるいは五十三年の新農業構造改善事業、さらには今回の農用地利用増進法の考え方も、こうした地域時代と申しますか、地域農業者の創意なり意欲を生かしてこれからの農政を進めていこうという考え方に立って、各般の事業を進めてまいってきておるところでございます。
  127. 金子憲五

    ○金子説明員 地方の時代なり地域主義についてどのように考えるかということでございますが、これについては、説く人によりましていろいろな意味合いを持って語られておろうかと思います。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  いずれにいたしましても、私ども自治省といたしまして、地域の自主性あるいは自立性を尊重いたしまして、それぞれの地方の個性、特性を重んじた社会を建設するという時代になっている、またそういう意味であろうというふうに考えております。  私どもの方の考え方といたしまして、こういった地域の特性に基づきました豊かな経済、生活あるいは文化を築くためには、地方公共団体が主体となりまして地域づくりができるように、地方団体の財政的な自主性あるいは行政事務処理に当たっての自主性といったものを、できるだけ強化充実していくことが肝心であろうと考えております。
  128. 稲葉実

    ○稲葉説明員 お答え申し上げます。  通産省では、先ごろ産業構造審議会の答申「八〇年代の通商産業政策」いわゆる八〇年代ビジョンというものを公表いたしましたが、その中で地域問題を非常に重要視していろいろな角度から取り上げているわけでございます。  その基本的な考え方といたしましては、まず基幹交通網の整備の進展、それから、最近若年層の地方定住志向が非常に強まっておりますので、そういう意味で地方の発展ポテンシャルがかなり高まっているというふうに思っておりまして、今後そのような地方のポテンシャルの高まりを十分花開かせていくことが必要でございまして、地方の創意工夫を生かして経済運営、産業政策が行われなければならない、このようにビジョンでは指摘しているわけでございます。  通産省といたしましては、そのような考え方のもとに、今後各自治体とも有機的な連携を十分いたしまして、一緒に考えながら、産業政策、エネルギー政策、中小企業政策あるいは産業立地政策といったものを進めてまいりたいと考えております。
  129. 武田一夫

    ○武田委員 国土庁に尋ねます。  いまいろいろと話がありましたけれども、国土庁としましては、各省庁のまとめ役として、現実の作業の進行状況とかいろいろ考えまして、地方の時代というのは間違いなく地方の時代らしくこれから作動していくかという問題について、どういうふうに考えていますか。
  130. 長沢哲夫

    ○長沢説明員 ただいままでにお話がございましたところと考え方はほとんど共通でございますが、私どもといたしましては、地方の時代あるいは地域時代と言われておりますことを、単なるかけ声や風潮にとどまらせることなく、実態的にも行政的にも着実にその定着を図っていくことが非常に大切なことだと考えております。そのためにも、先生よく御案内の三全総の定住構想を、政府各省庁はもとより、自治体、各地域の住民の協力体制をつくりながら、着実に推進していくことが大事なことだと考えて進めております。
  131. 武田一夫

    ○武田委員 三全総の話が出てきましたが、その前に第一次、第二次とありましたね。その目的によってその中身もずいぶん違っていたわけですが、三全総は定住構想がその主体であるというわけです。これは東北、北海道という地方を一つ考えますと、どうも農村が一つの大事な拠点になっているようですが、果たしてそういう地方都市を本当に充実して大切にしていくという発想でこれが出されたのか、あるいは別な意図のもとで出されたのか、その点はどうなんですか。
  132. 長沢哲夫

    ○長沢説明員 三全総の具体化方策といたしまして、モデル定住圏計画を策定しその整備を図っていくということを全国的に進めておるわけでございますが、特に先生がいま挙げられました「北海道・東北地域の構想」という形で三全総では特記をしてございます。  御案内のとおり、北海道・東北地域は、面積や水資源の賦存量から言いますと全国土の四割を占める、しかし人口は一五%程度にとどまっている事実からもわかりますように、わが国土のいわばフロンティアとも言うべき位置を占めている地域でございます。その意味で、三全総においてもこれからの発展可能性を含んだ非常に重要な地域という考え方で、「北海道・東北地域の構想」ということで、この地域に関しては、都市と農村の一体的整備、あるいは農林水産業振興、工業の振興、独自の産業の高度化といったようなことをうたっておるわけでございます。
  133. 武田一夫

    ○武田委員 三全総によりましていわゆるモデル地区が指定されましたね。一県一つですか、そうすると全国で四十一ですか、この中でいまどういう作業が行われているのか。特に東北に限って、地域はどこで、いまどういう作業が行われているのか、まず国土庁から聞きまして、次に、その件につきまして、自治省、通産省、農水省として、関係のある仕事の中身についてこういうふうにバックアップしているのだというものがありましたら、答えていただきたいと思います。
  134. 長沢哲夫

    ○長沢説明員 モデル定住圏計画は、定住構想の具体化の方策として、各県、市町村あるいは地域の自主的、自発的な選択と合意のもとにつくるという基本的な考え方で、いま全国各県、市町村が作業を進めているところでございます。昨年の夏以来その策定作業が始まっておるわけでございますが、比較的順調に進んでいる十七圏域につきましては、すでに去る三月に関係十七省庁によるモデル定住圏計画の合同ヒヤリングを終了したところでございます。合同ヒヤリングと申しますのは、先ほど申しましたように、地域の選択と合意でつくられる計画でありますが、国はそれを支援する立場にある、そういう意味合いから、各県の策定状況を聞かせていただいて、所要の調整を行うという作業を進めておるわけでございます。また、その他の圏域につきましても現在そのヒヤリング作業を進行させているちょうど途上にあるということでございまして、東北地方については比較的順調に計画の策定作業が進んでおりまして、すべての県が合同ヒヤリングを終了しております。そして、現在関係各省庁と調整を行っているところでございまして、今年度、五十五年度の前半には計画策定作業が完了するという見込みでございます。
  135. 武田一夫

    ○武田委員 そうすると、前半で計画策定が完成する、こういうわけですね。そうしますと、いま東北は六県ありますから、そのおのおのの県に、たとえば自治省、通産省あるいは農水省としまして、特にいろいろとアドバイスするなり御相談を受けるなりして話をした中で、同じレベルでこの仕事を進めていかなければならないものもあると思うのですが、その点について、いまどういう作業工程の中にあるのか、自治省、通産省、農水省の各省庁の現在の対応、それをまずちょっと聞かせてもらいたいのです。
  136. 長沢哲夫

    ○長沢説明員 それぞれの省庁の対応はそれぞれの省庁からお答えいただきたいと思っておりますが、そのヒヤリングあるいは調整作業の中で、各省から各地域に対しまして現に適切な指導助言をいただいておりまして、それを含めながら各モデル定住圏計画の中の事業計画等を策定しているところでございます。
  137. 金子憲五

    ○金子説明員 ただいま説明がございましたように、合同ヒヤリングに参加をいたしまして計画を聞き取っておる段階でございますが、この過程を通じまして、市町村の行う事業につきましては、その事業計画妥当性、財政的あるいはその他につきまして適当であるかどうかというようなものを見、さらに、私どもの方で広域市町村圏の計画を持ってここ十年来やってきておりますが、これらの計画との間にも矛盾がないようにということを心がけてやっております。
  138. 稲葉実

    ○稲葉説明員 通産省といたしまして地域のお役に立てるような政策というものは非常にたくさんあるわけでございますが、それを大きく分けますと、一つは魅力のある雇用機会の確保でございますし、もう一つは都市的なサービスの提供、さらにはエネルギー基盤、技術基盤の確立、こういったようなものを通じてお手伝いできるのではないかというふうに考えております。ただいま国土庁の方からお話のございましたように、われわれもヒヤリングに参加させていただきまして、そういったような面からいろいろお話を聞かせていただいているわけでございます。ただいま申し上げたような雇用機会の確保、都市的サービスの充実あるいはエネルギー、技術基盤の確立、こういうような分野におきまして予算上の制約というものがあるのでございますけれども、地元と相談いたしながら、私ども施策を極力活用していただくということにつきまして、前向きに検討させていただいている次第でございます。
  139. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 農林水産省といたしましては、モデル定住圏の整備等につきまして、官房が窓口になりまして、先ほど来御説明のありますように、国土庁を中心とした検討に加わっております。農林水産省としてもこの構想に対して積極的に協力してまいりたい。具体的には、それぞれの県の特別事業なりのテーマに沿いまして、農林水産省の現在の公共、非公共の各般の事業につきまして、地元の御要請等をあるいは他の事業との関連性を持たせながらそれぞれ計画化するようにいたしております。  たとえて申しますと、宮城県の場合には、産業振興というテーマに対しまして、国営の農用地開発事業あるいは広域農業開発の基本調査をいたしますと同時に、家畜市場の再編整備というような問題につきましての事業を進めることについて、それぞれ担当部局に割り振りながら、これらが総合的、有機的に結びついていくように検討しておる段階でございます。
  140. 武田一夫

    ○武田委員 三全総を総合的にやるためにこれは非常に結構なことだと思うのですが、大都市圏が、東京、大阪を中心としたところの過密というものが一つの大きな問題になってきて、そういうところからの機能の分散とか人口の分散ということが言われておる、これは一つの大きな問題であることは否定し得ないと思うのです。そのために、そちらの方に力が加わりまして、肝心の地方都市を育て、農村を中心とした魅力ある都市づくりというものは、いままで都会にいた人のためのものとしてだけ受けとめられるような感じが余りにも強いわけです。言うならば、かつては産業開発、拠点開発によって農村から入口がそちらの方に移動していって農村が過疎になってしまう、そして、産業構造の中でも特に農業等が落ちぶれていった。いまになると、今度はそれをまた逆に、中央が困るから人口をこっちに振り戻せというようなこと、そういうことだけがどうもいろいろなところで強調され過ぎてはいないかという心配がある。  それはさておいて、地域住民の、地方都市のすばらしい自然環境なりいろいろな特殊性というものを生かした町づくりのために、各省庁が一致団結して国土庁のもとにこの作業を進めているかということについて、私はいささか疑問を感ずるものですが、そういうことは間違いなくないということはここで断言できますね。まず国土庁に代表で聞きたいと思うのです。
  141. 長沢哲夫

    ○長沢説明員 先生がおっしゃるような弊害に陥らないように考えておりますのが、いまのわれわれの立場でもあり、また、三全総の基本的な考え方でもあるように思います。大都市圏への集中が四十年代の後半以降とまってまいりまして、人々の動きの中に明らかに地方定住への志向があらわれてきている、あるいは人々の意識の中にも、各地域を大事にしていこうという気持ちがあらわれてきている。それをむしろ大事に育てていくということが基本であって、その意味では、大都市圏もまた重要な地域である、それから大都市圏以外の地域も重要な地域である、こういうふうに考えておるのでありまして、大都市圏の集中した人の受けざらというような考え方をとることは間違いだというふうに考えております。
  142. 武田一夫

    ○武田委員 それから、自治省にちょっとお尋ねします。  これをやるには、計画の策定から実施に至るまで、やはり地方自治体が主体的に動かなくてはいけないわけですね。しかしながら、現今の地方の行財政の弱さというものを考えたときに、それは相当強力にバックアップしなければならないことは御承知のことだと思います。それからまた、言われておるような権限の移譲の問題につきましても、相当思い切った権限の移譲をしなければならないということも覚悟しているのじゃないかと思いますが、そういうバックアップがないことには、三全総におけるそうした定住構想というものを実現する上においては相当地方自治体の苦労というものがあるのじゃないか。こういうことにつきまして、自治省としては相当理解を示していただけるものだと思いますが、その内容、どういう面にどういうふうにしていくかという一つの具体的なお考えがあれば、ひとつお聞きしたいと思うのです。どうでしょうか。
  143. 金子憲五

    ○金子説明員 地方におきまして調和のとれた生活環境整備をしていくということかと思いますが、このためには、計画的にその地域においての公共施設の整備を図っていくということが、地方公共団体にとっては最大の使命であり、それからまた、財政的な負担としてもそれが最大のものであろうかというふうに考えております。さらに、その地域整備につきまして、できるだけ効率的にその地域の特性に合ったものを育てていくためには、地方公共団体が自主的に自律的に整備ができるようにしていかなければならない、こういったようなことから、先ほど申し上げましたように、一つには地方団体の財政面の自主性を強化する、もう一つは行政権限の自主性を強化する、こういったようなことがあろうかと思いますが、具体的には、財政的には一般的に地方交付税あるいは地方税の拡充、充実を図っていく、あるいは地方債の充実を図るということしかないのではなかろうかというふうに思っております。ただ、これ以外の問題といたしまして、事務につきましては、できるだけ地方団体が自主的に判断をして、行政的な権限を行使し得るように事務配分の面につきまして配慮していく、あるいは補助金などの決定につきましても、地方団体の自主性を尊重するような方向に事務処理手続その他について考えていってもらう、こういったようなことが必要かと思いますが、これらにつきましては関係各省庁の御協力を得ていかなければならない、このように考えております。
  144. 武田一夫

    ○武田委員 これは、国のそうしたバックアップがあって地方自治体も相当努力しなくちゃいけない。こういう低経済成長の中ですから、限られた財源だということもわかります。地域住民の福祉の向上等を含めました都市づくりというものには、地方自治体も、俗な言葉で言えば民間的な企業努力のような努力もこれからしていかなくちゃいけない、ただ金をもらうだけではいけない、私もこう思うのですが、見ておりますと、この予算が、非常に財源が不足だということによって、何かにつけて弱いところに必ずしわ寄せが来ますね。そうすると、どうしても大きなところに目が行きがち。そういうようなことは今後ないようにしなければいけない。この計画は十年と一つのめどを立てておるわけですから、その十年間の中に一つの形の上がったものが全部一斉に、たとえば都道府県全部が一斉にということが理想でありましょうが、まあそれは八年に早まるところもあるでしょう、あるいはちょっとおくれるかもしれない。いずれにしても、平均的には十年というめどの中で、きちっと形あるものとして期待されるものが出てくるというような方向に持っていくためには、たとえどういう事情があるとしても計画を狂わせないというだけの、そういう財政的なバックアップもここで約束してもらいたいと私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  145. 金子憲五

    ○金子説明員 定住圏の計画の推進につきましては、国、地方が協力をしてやっていくべきものかと思います。したがいまして、国の方で補助金等について財政上の措置をするものもあろうかと思いますけれども、地方団体の負担すべきものにつきましては、私ども努力してその必要額だけは確保してまいりたいというふうに考えております。
  146. 武田一夫

    ○武田委員 通産省にお尋ねしますが、東北というのは非常に自然に恵まれていまして、いろいろなこれからの開発の仕方によっては相当すばらしい地域になると私は確信しています。  そこで、一つは、エネルギーの確保の問題について、ローカルエネルギーというのですか、こういうものの計画相当進んでいると思うのですが、その東北における今後の見通しをどのようにつかんでおられるのかという点が一点。  それから、もう一つ、低開発地域工業開発地区というのがありますね。これは全国で九十一地区。その中に何と東北地方は三十二地区入っておるわけです。たとえば青森県が青森、弘前、むつ。それから岩手県が盛岡、気仙、恐らくこれは気仙郡ですね、それから北上中部、一関、宮古、久慈。宮城県が古川、仙南、気仙沼。秋田が能代、雄物川中流、本荘、象潟、大館鷹巣。それから山形は山形内陸。福島県が白河、二本松、喜多方、相馬と、三十二地区あります。九十一地区のそういう低開発地域工業開発地区と指定されておる中の三分の一が東北だということは、それほど東北というものがいろいろとこういう面でおくれているという一つの証拠でもあるわけですが、こういうところにもつと重点的に力を入れなくちゃいけないと私は思います。この間の予算委員会でも、佐々木通産大臣には工業誘致、工場誘致の問題については相当しつこく要求をして、いや東北は全国的にはいいのだと言うものの、それはよくてあたりまえであって、御承知のとおり、東北はこれから三全総によって相当力を入れてもらったとしても、その地域別の所得水準の格差を見ますと、これは六十五年でも沖繩に次いで第二番目に低い地域になっていますね。全国を一〇〇としますと、昭和六十五年度で九二、これは全国で最低から二番目なんですよ。だから、自治省、通産省の皆さんも働く場所の必要性というのは定住圏構想で大事だとし、これは国土庁も認めている。となりますと、こうした低開発地域工業開発地区というようなものに対するてこ入れを具体的なスケジュールの中できちっと明確にしながら、一つ一つ希望のある方向性に実効ある行政指導をしてほしいと思うのですが、通産省としてはこの点はいかがでしょうか。この点が今後の東北開発に対しては一番大事な問題です。どうしても農業が大事な東北の産業ですが、それと並行して工業誘致とか工場誘致というものが大事だという点で、こうしたところに対する通産省の今後の取り組みを聞きたいわけです。
  147. 川田洋輝

    ○川田説明員 私から、まずエネルギーの御質問についてお答えさせていただきたいと思います。  東北地方のエネルギーということで考える場合に、二つの側面があろうかと思います。一つは、国全体あるいは地域全体という見地から見た原子力、石炭、水力、地熱といったような従来のエネルギーについて東北地方が有力な立地適性を持っておられるとか、あるいは資源に恵まれておられるというような側面に着目して、これまでも種々事業を進めさしてきていただいておりますが、これを今後とも進めてまいりたいという点と、第二点は、御質問の中にもございましたローカルエネルギーという問題でございますが、ローカルエネルギーというのは、われわれの身近に存在しておりますエネルギーを地方の特性に応じて開発、導入を促進していこうということで、実は国といたしましては、昭和五十五年度、本年度から力を入れて意欲的に取り組んでまいりたいというふうに思っておるところでございます。東北地域はこの点でも、太陽、風力、地熱あるいは海洋とか天然ガスといったようなローカルエネルギー資源につきまして有望な地域が多うございます。すでに幾つかの県におかれてもその開発利用が進められているところでございますけれども、私どもとしては、これをできるだけ力強く進めていくということで、取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  148. 稲葉実

    ○稲葉説明員 先生指摘の、低開発地区の今後の開発の問題につきましては、関係する省庁も多数ございますので、それら省庁と相談しながら前向きに進めていきたいというふうに思うわけでございます。  もう一つ指摘のございました雇用の関係でございます。東北地区は従来低開発地域と言われていたわけでございますが、先ほども申し上げましたように、地域の発展ポテンシャルというのがかなり高まりを見せているということも事実でございますので、われわれといたしましては、今後雇用機会の確保というのがさらに非常に重要になるというふうに考えておりまして、そのためにいろいろな方策をとってまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、大きく分けて二つございまして、一つは、工業の地方分散なり新規工業の導入を進めていくことでございます。もう一つは、地域に根差した地場産業の育成強化を積極的に図っていくということだろうと思います。  まず、新規工業の導入につきましては、高速縦貫道など交通網が整備されておりますので、立地も順調に伸びてきておりますけれども、当省といたしましては、今後とも工業再配置対策であるとか、あるいは工業開発指導員の派遣といったようなことによりまして、一層の企業立地の促進を図ってまいりたいというふうに考えております。  また、地場産業の振興につきましては、昨年、産地中小企業対策臨時措置法が施行されましたので、そういった政策の活用、さらには、伝統的工芸品産業につきましても、伝統的工芸品産業の振興に関する法律というようなものによる各種助成、さらにその他の地場産業につきましても、その振興を図るために、今後の地場産業の振興対策の基礎となる各種の実態調査を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  149. 武田一夫

    ○武田委員 地場産業とか伝統的工芸云々という、これは要するに、つくっても流通の問題とかそれで生活できないような問題であったら困るわけです、趣味でやるわけじゃないのですから。こういう点のことも含めて——いまはもう工場誘致だって大体希望者がいないというのですよ。出ていけと言っても、地方自治体ではいま出ていけば財源がその地方自治体で減るのじゃ困ると言って離さないというところも出てきている時代ですが、そういうのをほっておいてはまずいと思います。あくまでも大きなところの言い分を聞いて、やるべきそういうこれからの発展の地域に力をかさないということのないような、もっと強烈な説得力のある指導を私はお願いしておきます。これはお願いだけしておきますから。  そこで、農林省、この三全総につきまして、この間四月の十七日、農林大臣が、農政審の答申がこの夏か秋ごろに出てまいります、こういう答弁がありましたときに、生産政策についてもやはりいろいろと述べていまして、地方農政局単位で、何をつくるか地方分担を定め、または地域ごとに適地適産で何をどのくらいつくるか計画をつくり、中央と地方で協議して計画を策定していく、こういうことを述べていることを御存じだと思います。それじゃ果たして地方でもってそうした策定をしているのかどうか、各県の実態はどうなんですか。
  150. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 先般大臣がお答えいたしましたように、現在全国の長期需給見通しを策定している段階でございます。今後、地域の問題につきましては、全体に地域の適地適産という観点からあるいは地域の特性を見てどのように考えていくかという検討は審議会でも進めておるわけでございまして、具体的な各県の状況は、それぞれの県におきます振興計画等、独自にそれぞれの都道府県が立てられておるのはございます。これらの点は、全体的に私どもから見ますと、全体をトータルで合わせますとかなり膨大なものになろうかと思いますが、そうした点での整合性という問題はございます。やはり地域のそうした御要望と全国需給見通しとのどういう調整がこれからは可能であるかどうか。一方では農業団体自体も地域農業の問題を取り上げております。こうした点については、なお時間をかけて検討を進めていかなくてはならないと思っております。
  151. 武田一夫

    ○武田委員 やっぱり各都道府県で——東北だけでもいいです。東北六県というのがありますね。いま宮城県であれば農業就業者が五十年で十八万四千人いるわけです。そして、それが今度たとえば何年後かには何万人減る。たとえば宮城県の場合、六十五年に予定では十万八千人というふうに農業就業者が減っていくのだそうです。農家戸数も合わせまして十一万七千三百戸から十万戸というふうに今度減っていく。水田面積も十二万七千三百から十一万四千五百八十ヘクタールというふうに減っていく。こういうものが宮城県は宮城県としてあるのだそうですね。ところが、山形県に聞きましたら、山形県は六十年まではある。それから福島県も六十年までは一応あるのだ。しかしながら、つくったのは五十二年ごろにつくったものだから、これは少し変えなくてはいけないということを言っている。岩手県に至っては九月にできるのだ。地方自治体の主体性というものを考えていくならば、やっぱり地方自治体としても各県が、そうした一つの農業振興についての六十五年見通しというものは当然あってしかるべきでないか。もしそういうのがないとすればどうなるのか。国の方が先行して出てきた、これはちょっとおかしいと思うのです。その証拠に、私は地方農政局に聞いてみたのですよ。あなた方地方農政局ではこうした地域分担とか適地適産ということについての計画というものをどのように立てていくのだ、立てていかせるつもりなのかと言ったら、何と答えたと思いますか。農政審の答えが出るまで待っていると言うのですよ。農政審の結論が出てから考えますと言うのですが、これはどういうことですか。これでいいのですか。
  152. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 各県におきます各振興計画はそれぞれの知事部局等が出しておることは承知しております。それらが御指摘のとおり年次等が相当違っておるということも事実あろうかと思います。また、そうした事情につきましては地方農政局も十分とらえておると思います。  ただ、もう一方、東北地方でございますと、東北地方全体の振興計画、国土庁が中心となっておる振興計画の中の農業部門としての計画策定というものもございますが、現在農政審で検討しております需給見通しは全国的なものでございます。私ども農政局には、そうしたものが地域的にどうした分担関係になり得るかということの問題を出していることは事実でございます。地方農政局がお答えしましたのは、そういう面でお答えしたのではないかと思いますが、なお、当然、地方農政局として、各県のそれぞれの振興の方策なり方向については十分心得て、かつそれらが調整がつくような機能は果たすべきものだと思っております。
  153. 武田一夫

    ○武田委員 いずれにしましても、農政審で一つの答申が出まして一つの見通しが出てきたときに、それじゃ各県が、岩手の場合だったらこれから九月までに出てくる、宮城県でもきちっとしたものをつくっている、そういうものと整合しまして農業の今後のあり方というものを検討していくのでしょうけれども、先ほどの三全総の考えの地方の定住圏構想の中における農村の立場というか、農業というものの重要性を考えたときに、そうした地域でもって立てた一つ計画というものが十分に取り入れてもらえるだけのそういう体制で、この農政審の一つ計画というのは進んでいるものかどうか。要するに、それができたからそれに合わせて各県はこうやりなさいとくるのではないかという私は感じがしてしようがない。こういうふうに一つ方向性が決まった、だから、あとはそれに合わせてまたやりなさい、こうなれば、またちょっと行き方がおかしいのじゃないかと私は思うのですが、そういうことはないでしょうね。
  154. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま私どもの方で作業をしております長期需給見通し自体は、全国的な作物なりの動向を示すものでございます。直ちにこれが地域の方向を決めるということでもございませんし、また、各都道府県なりまでこれが全部ブレークダウンできるかどうか、計画経済を前提とすればそういうことは可能でございますが、現実問題としてはそういうふうにはまいらないように存じます。それぞれ地域の特性等の考え方もございます。地域社会の自主的な御判断もあると思います。したがいまして、作物全体の全国的な方向づけ、それらを参考にして、各地域での対応というふうに考えられるべきことだと思いますし、また、それに応じた各般の事業の要求等は当然地域からございます。現に地域農政特別対策事業なりで、それぞれの市町村なりの総合推進方策なりを立てております。そうした方向づけに沿った事業は、地域の農業者なり地域住民の方々の英知を結集されて事業を組まれていくということに対しては、農政上これはできるだけ私どもとしてバックアップしていく考え方には変わりございません。
  155. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、次に移りますが、木材の問題につきまして白書が出ています。いわゆる木材価格の異常高騰というのが、非常に庶民のマイホーム建設あるいはまた林業経営に大きな影響を与えている、そういう問題自体を早急に解決しなければならないというそういう事態だと思いますが、この点につきまして、この木材価格高騰に歯どめをかける具体的な施策をお持ちであれば、まず最初にお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  156. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 お答えいたします。  昨年の五月以降木材価格高騰しておるわけでございますが、その要因といたしましては、外材産地価格高騰ということが一つございますし、また、当時でございますが円安傾向、海上運賃の高騰というようなことがございまして、価格高騰しておるということでございます。この木材価格及び需給の安定ということにつきまして、林野庁といたしましては、木材需給対策中央協議会というのがございますが、そこにおきます四半期ごとの主要木材の短期需給見通しの作成、公表、これに基づきます関係業界に対する指導、また木材価格の急騰に対処するために、財団法人でございます日本木材備蓄機構によります製材及び合板の備蓄、同機構によります木材の流通在庫価格に関する情報の収集及び情報の提供体制の抜本的な強化等の対策を講じているところでございまして、今後ともこれらの施策の適宜適切な運用に努めてまいりたいということでございます。  なお、五月十三日公表されました四月の日銀卸売物価指数によりますと、木材価格は全般的に横ばいないしはやや弱含みということになっておるわけでございまして、今後の木材価格の見通しといたしましては、住宅着工の伸び悩み等から木材需要の大幅な増加は期待できないということ、また外材の大宗を占めます南洋材、米材の産地価格も弱含みで推移しているということなどから、今後特段の事情の変化がない限り、当面木材価格及び需給の大幅な変動はないというふうに私ども見ておるわけでございます。
  157. 武田一夫

    ○武田委員 将来木材の輸入が逼迫するのではないかということも言われているわけですが、やはり木材自給率の向上が必要だと私も思いますし、これは力を入れていかなければいけないと思うのですが、将来のわが国の自給率というものにつきまして、どの程度を一つのめどとしているのか、そのための施策をどういうふうに展開していこうとしておるのか、この点簡単にひとつ……。
  158. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 重要な林産物の需給に関する長期見通しというのがございますが、これにつきまして目下改定作業を進めているところでございますが、中長期に見ましたわが国の木材需給動向につきましては、需要は経済基調の変化から大幅に増大するということは見込まれないと考えておりますが、戦後植栽されました人工林が徐々に伐期に達してくることを考えますと、木材生産量は漸増していくということが言えると思います。また、木材輸入は産地の事情の変化等によりまして外材供給量が減少に転ずることも考えられるわけでございまして、国産材の供給比率は趨勢としては現状よりは高まっていくというふうに考えているわけでございます。また、国産材の供給力を高めるために、今後とも造林、林道等の林業生産基盤の整備あるいは林業構造の改善のための施策の推進、国産材の生産、流通対策の強化など、各般の施策を積極的に展開していく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  159. 武田一夫

    ○武田委員 次に、造林事業の件ですが、どうも近年非常に停滞ぎみだ、特に拡大造林がちょっと心配だということですが、これはどういう状況ですか。これに対してそうした落ち込みをどういうふうにして今後回復するという、今後のそういう対策について聞かせていただきたい。
  160. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 最近におきます民有林の人工造林面積は、ただいま御指摘のとおり減少傾向にございまして、昭和四十八年度二十万ヘクタールであったものが昭和五十三年度には十四万五千ヘクタールということになっておりまして、このうち拡大造林につきましては、十七万ヘクタールであったものが十二万二千ヘクタールというふうになっておるのが現状でございます。  この原因といたしましては、造林先進地域ではもう拡大造林の対象地域がほとんどなくなりまして、事業の主体が保育、間伐に移っておるのが実態でございまして、また比較的造林が進んでいない地域につきましても、拡大造林の進展に伴いまして対象地が奥地化をいたしておりますし、また分散化をしておる等、立地条件が次第に悪化してきているというのが一つ言えると思います。また、その対象地の多くが旧薪炭林を中心といたしました低利用広葉樹林でございまして、賃金等もろもろの経費の増大する一方で、パルプ、チップ材を初めといたしました木材価格が相対的に低迷していた、そのために前生樹の伐採が進まなかったということが拡大造林の進まない大きな原因になっておるわけでございます。  このような情勢に対処いたしまして、造林の一層の推進を図るために、昭和五十四年度から五十五年度にかけまして、造林補助制度におきまして、植栽から保育に至る一貫した造林事業を市町村の指導のもとに集団的、計画的かつ組織的に行います森林総合整備事業を創設するとともに、農林漁業金融公庫造林資金におきまして、一定要件を満たすものについて、償還期限、据え置き期間の延長の特例措置、あるいは融資対象保育林齢の従来の原則十二年を原則二十年に引き上げるというような、助成の強化を図っておるところでございます。このようにして、今後の拡大造林の確保を一層進めてまいりたいというふうに考えております。
  161. 武田一夫

    ○武田委員 この件につきまして、造林、保育に投入し得る家族労働力の減少も一つの原因である、こういうふうにありますね。確かに人はずいぶん不足していますね。若手がどんどんいなくなっている。こういうものをカバーするために、何かもっと真剣に取り組まなければいけないのじゃないかと思うのですが、学校林というのがあったわけですね。これは現状はどうなっているのですか。まず文部省から学校林の実態というのを聞かせてもらえますか。
  162. 中村賢二郎

    ○中村説明員 学校林の実態に関しましては、昭和四十九年に行われました調査によりまして、学校林を保有しております学校あるいはその保育面積等について承知いたしているところでございます。全体の面積では約二万九千ヘクタール、五千三百校でございます。
  163. 武田一夫

    ○武田委員 私は、自然と労働ということを教育の一つの大事な中身として考えたらいいのじゃないかと思うのですね。最近ひ弱な子供が多い。これは、やはり自然を十分に遊び回れるというか、何か昔のそういうものが最近なくなってきた。ですから、子供たちの健康の面においても、また自然を愛するということから考えても、今後この学校林というものの充実を期すべきではないか、こういうふうに私は思っているのですが、まず、文部省としてはどうですか、今後こうしたものに一層力を入れながら、そうした教育的な観点と自然を守りそして国土を愛する気持ち、そしてまた、そこにおいて培った強力な体力というものがいろんな点で効果がある、こう私は思っておるのですが、今後さらに発展させながら充実させていこうという考えはありませんか。
  164. 中村賢二郎

    ○中村説明員 最近学習指導要領の改定を行いましたが、この学習指導要領の改定では、創造に対します喜びあるいはそれらの体得を通しまして、望ましい勤労観や職業観を育成するために、勤労にかかわる体験的な学習を重視するということを大きな柱として打ち出しております。具体的にどのような内容を取り上げるかは、地域や学校の実態に応じて適切な活動を選んで実施することとなりますが、この勤労体験学習のために、学校林を活用いたしましての教育は非常に有意義であるというふうに考えているわけでございます。
  165. 武田一夫

    ○武田委員 農水省としては、先ほど人手が足りない、それは人手に駆り出せというわけじゃないですが、実用という面と、そうした問題を解決する面においても、これはやはり相当文部省なんかと協力しながらいま考えていくべきときじゃないかと思うのです。  私は宮城県ですが、宮城県もそうした地域がございまして、いままでずっと振り返ってみますと、そうしたところの一つの教育環境というものの中に育った子供たちと、そうでないところにいる者との違いというのは、将来になって出てくるということを識者は明言しているわけですね。私もこれは大事な、教育というものを考えると同時に自然を守るという、いろんな面から今後の検討課題として、農林水産省、文部省の中でひとつ推進の方向で検討しながら煮詰めていったらどうか、こういうふうに思うのですが、いかがでございますか。
  166. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 ただいま文部省から御答弁ございましたが、実は私どもといたしましても、学校植林の重要性ということを十分認識をいたしておりまして、従来から全日本学校造林コンクールをやっておりますが、これらもさらに拡充をしていく必要があるというふうに考えておりますし、また、学校造林に特に功績の認められております協力団体あるいは個人の表彰をするとか、特に私どもお預かりいたしております国有林につきましては、学校部分林の設定の推進、地方公共団体にも公有林に対します学校部分林の設定の推進ということもお願いしておるわけでございますが、現地の教育委員会等とも十分打ち合わせをいたしまして、今後ともできるだけ多くの学校植林が進むように協力をしてまいりたいというふうに考えております。
  167. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、水産庁にお尋ねします。  日韓漁業交渉の問題でありますが、北海道沖の韓国漁船操業をめぐる日韓漁業紛争の解決を促進するために、近く対韓交渉を再開する予定だということでありますが、そのスケジュール、派遣される方々、どういう交渉の内容をもって臨まれるのか、この点まずお聞きしたいと思います。
  168. 今村宣夫

    今村政府委員 日韓交渉のスケジュールでございますが、現在、確として相手方に通報し相手方の了解を受けておるわけではございませんけれども、私の一応の段取りといたしましては、今月中に私の方の振興部長と向こうの、海洋部長に相当するのですが、それ以下の実務者との会談を行いたいと思っております。来月のしかるべき時期には私も訪韓をして、向こうの水産庁長と話し合う必要があると思っておりますが、まだ具体的な日取り等は決まっておるわけではございません。  交渉に当たっての、交渉の態度といいますか、要点でございますが、それは韓国にもいろいろ事情がありましょうけれども、日本としては、国内の漁業者が守っておる規制を韓国も日本の近海で操業するときには守って操業してもらうということは、これは国際的な一つの通念でありましょうから、そういうことを韓国に守ってもらうように十分話し合いをしたいというふうに考えておるわけでございます。
  169. 武田一夫

    ○武田委員 これまでの交渉の中で、何が原因でそうした常識的に守らなければならないその常識を向こう側がのまなかったのかということなのですが、その点はどういうところに原因があるわけですか。
  170. 今村宣夫

    今村政府委員 日韓の漁業関係は、御存じのように日韓漁業協定で行っておるわけで、二百海里を引いておるわけではございませんので、韓国としましては、日韓漁業協定に基づく規制以外は受ける必要がないのだという態度をとっておるわけでございます。したがいまして、北海道の十二海里の領海外は公海である、したがって、公海で操業することは韓国の当然の権利であるという立場をとっておるわけでございます。  私どもといたしましては、それはなるほど公海であるかもしれないけれども、公海だからといって韓国は自由に操業してもらっては困るのである、資源保護であるとかあるいは漁業調整上の問題から、私たちが北海道周辺においていろいろな規制を加えておるその規制につきましては、魚をとりに来る国の漁船であってもそれを守ってもらいたいということを言っておるわけでございまして、そこら辺が、立場の違いといいますか、なかなか話し合いがむずかしい観点といいますか、立場といいますか、そういうことでございます。
  171. 武田一夫

    ○武田委員 いま長官指摘されたように、これはやはり今回の交渉に当たってもその点の説得ある力強い主張はしなければならないと私は思うのです。ですから、北海道漁民が受け入れ、守っている操業規則を、韓国漁船にもその点守ってもらうように、これはやはり根本的に大事なんです。道民の切実な願いでもあります。ですから、そうしたことに一向に応じないということで、昨年でしたか、十一月に投石事件なんかもありまして残念なことですが、非常に心配されました。ですから、こうした主張を全力を挙げて韓国側に述べながら説得をするということの、その努力をひとつお願いしたいと思います。そして、こうした問題がある限り、操業する方々の不安というのはいつも解消できないわけですから、やはり国際漁業調整の場合、外国の従業漁船が沿岸国の操業秩序を尊重するというのは常識なんだという、その常識を強く守るように、韓国側への強い要請というものを、ひとつ代表の方に、また長官も行かれるというのですから、ぜひ熱意を込めて説得をして、そして期待にこたえるようにしていただきたいと思うのです。  政務次官、これはその交渉の成り行きによっては一つの大きな問題となりかねないと思うのです。今後また、昨年あったような不祥事件があるとなればこれはえらいことだと思います。そういう点で、やはり国としましても、農水省としましても、相当強い決意でもって臨まなければならないと思うのです。そういう点で、最後に、そうした交渉に当たりまして、政府が今回の交渉に当たって道民の不安を解消するためにかくがんばってくれるという一つの力強い決意を、道民の方々に披瀝していただきたい、こう思います。
  172. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 すでに日韓水産庁長官レベルの話し合いもやってまいっておりますし、また、御指摘ございましたように、ごく最近も四月九日から十二日まで、外務省の参事官を含めて日韓実務者間で双方の立場を十分に話をしてきておるわけでございます。こちらの考え方に対しまして向こうは向こうの言い分もあるようでございますが、しかし、長官も言っておりますように、少なくとも日本の周辺近海におきまして日本の漁船が守っていることを第三国が守れないというのはどうしてもわからぬ、こういうことでございますし、両方の立場は立場として、実務者間でお互いに十分立場の理解を得た、こういうふうに考えておりますので、これからはそういうお互いの立場、主張を踏まえて、ひとつ具体的に改善するような方向で交渉を進めさせたいと考えております。  ただ、日韓関係というのは非常に大事な関係でございますので、この日韓関係というものを大事にしながら、しかも、これは単に北海道周辺の問題だけではなしに、日本全体の韓国との漁業調整の問題もございますので、その点は慎重には慎重を期していかなければなりませんが、しかし、同時に、局面打開については粘り強く積極的に当たっていかなければならない、かように考えて、そういう方向で折衝に臨ませたいと思っております。
  173. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので、以上で終わります。
  174. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 中川利三郎君。
  175. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 けさの毎日新聞を拝見いたしましてびっくりしたのでありますが、「魚カラ取引、地方へ飛び火」、見出しだけですが、「きょう名古屋で強制立ち入り 農水省」「最大手の荷受け会社  道漁連と六回、三億円動く」というようなショッキングな記事ですね。ちょっと読ましていただきますと、「総額千七百億円にのぼる北海道漁連(兼平純吉会長)の魚カラ取引事件で、農林水産省は十四日午前、名古屋市中央卸売市場に係官を派遣し、カラ取引に関係したとみられる同市場トップの荷受け会社を卸売市場法四十八条違反の疑いで強制立ち入り検査する。同省は三月十二日に東京・築地の都中央卸売市場で四大荷受け会社の立ち入り検査をしており、今回は第二段。さらに名古屋に続いて福島、千葉県船橋市の中央卸売市場にも真相解明のために“行政のメス”を入れることを決めている。魚価をつり上げ、消費者を泣かせたカラ取引の黒い底流は中央から地方へと広がり、列島を縦断する様相を呈してきた。」こうあるわけですね。  そこでお聞きしたいのでありますが、私の聞いておる範囲では、この道漁連の空取引に関与した大手水産の中には、大洋漁業、日魯漁業、極洋、宝幸水産、大手荷受けの中には、東都水産、中央魚類、築地魚市場、大都、こういう大きな荷受け会社やら大手水産会社が関係したのだという話を聞いているのですが、事実ですか。
  176. 今村宣夫

    今村政府委員 私たち調査におきましては、道漁連の空取引に関係した会社が三十社ございますが、その中の会社名等につきましてはここで申し上げることを遠慮させていただきたいと思います。
  177. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 なぜそういうことなんですか。私は知っているのですよ。東都水産、日水系の中央魚類、マルは系の大都、築地魚市場、荷受け会社ではこれが四大会社としておたくの捜査の対象になっているのでしょう。同時に、先ほど言いましたように、道漁連の魚ころがし、空取引は、そういう意味からいっても、大手水産、日本を代表するような連中が絡んでおるという事実については、名前を挙げなくてもいいですが、あるでしょう。どうですか。
  178. 森実孝郎

    森実政府委員 中央卸売市場の荷受けにつきましては、七社について、道漁連の担当課長に頼まれて、世上言われております在庫の裏づけが明らかでない取引に応じたということはまず事実だろうと思います。そういう意味で、実は昨年の暮れ以来事情聴取をやりまして、御指摘の築地の四社については現在監査を実施中でございます。さらに、名古屋、福島、船橋の三社についても本日から監査に入っております。
  179. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 何でもないことをなぜ隠さなければいけないのですか、水産庁長官。そこに非常に問題があるように思うのです。どうですか、政務次官。
  180. 近藤鉄雄

    ○近藤(鉄)政府委員 隠しているわけではないと思います。ただ、内部でいろいろ検討中であるので、具体的に名前を申し上げなかった場合もあり得ると思います。
  181. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 どの新聞にも書かれておるわけでありますが、日本の水産流通経済に大きな影響のあるそういう連中が道漁連の空取引に絡んでいるということについての、長官としての御所見はどうですか。
  182. 今村宣夫

    今村政府委員 今回道漁連とああいう取引等が行われたことにつきましては、私としてはまことに遺憾なことだと存じております。
  183. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 きょうの新聞の解説を読みましたけれども、空取引というのは、「ありもしない魚の伝票だけが五、六社を通る間に一〇%前後の手数料が上乗せされ、これを再び道漁連が買い取っていた。カラ取引の行われた期間は四十七年以来約七年間、取引総額は千七百億円前後にのぼり、」こういうふうに書いてあるわけであります。そして、「カラ取引で作られた高魚価が結果的に実際の魚の高値つり上げにつながったのではないかとされている。」私も全く同感なんです。まさに経済撹乱行為です。その結果として国民、消費者が高値の魚をつかまされるような全体の影響の中で、こういうことに対してどういう取り締まりをおやりになるのですか。やっているのですか。簡単に一言で答えてください。
  184. 今村宣夫

    今村政府委員 私どもとしましては、道漁連のそういう取引実態について、水産庁水産庁として現在その真相について鋭意調査中でございますし、食品流通局としましては、先ほど局長が御説明しましたように、市場における検査を実施いたしておるわけでございます。事件の経緯等につきましては御説明を省略させていただきますが、このような取引が行われたことにつきましてはまことに遺憾なことでございまして、道漁連として今後そのようなことの絶対ないように、再建を通じ私どもとしては十分指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  185. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いまの長官の御発言では、市場法第四十八条によっていろいろやるのだ。やらないよりはやる方がいい。しかし、市場法第四十八条は、見ますと、報告、検査の義務づけですね。こういうことを取り締まる、再びやらせないという強権的なものはいまのところ市場法の中にはないですか。ここはどうなっているのですか。簡単に答えてください。
  186. 森実孝郎

    森実政府委員 ちょっと恐縮でございますが、事柄自体が余り簡単でないので若干説明させていただきます。  冷凍水産物市況商品でございまして、需給指標あるいは漁獲によってかなり変動しております。貯蔵性もございます。こういったものにつきましては他の商品同様かなり頻繁に仲間内取引が行われていることは事実でございます。冷凍水産物だけを例外に扱うというわけに本来いかない性格のものではないかと思っております。したがって、問題は、在庫の裏づけが必ずしも明白でない取引が中央卸売市場の卸をはさんで頻繁に行われる場合において、形式的に見て市場法に関連する法令違反があるかどうかということが一つと、もう一つは、それが本来の市場業務の運営に悪影響を与えるかどうかという二つの視点から検討しなければならないと思います。そのような意味で、ただいま長官も申し上げましたように、法令の規定に基づきまして監督権を持っております中央卸売市場の卸については私ども監査しておりまして、その監査結果を待って、必要な行政措置なり、あるいは場合によっては法律上の措置なりを講じたいと思っておるわけでございます。
  187. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、法第四十八条は報告、検査だけをやる、それ以上の何ものでもないわけだ。結果としてこういう問題が出るから、予測はできないわけですけれども、そういうことをしたならば職務そのものに影響を及ぼすような罰則規定がどうしても必要だと私は思うのです。そういう意味では市場法の改正も十分考えるべきじゃないかということですね。そうしないと、市場の外側でやっているというけれども、結局は市場法の盲点を突いたということも私は言えると思うのです。長官、そこら辺を見直すことはできますか。
  188. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘の点は二点にわたっていると思います。  一つは、監査の結果どうなるかということでございます。これは、先ほど申し上げましたように、市場法に基づく所要の指導なり改善措置なりあるいは行政上の措置もあるし、場合によっては罰則もあるわけでございます。  それから、もう一つの問題は、流通全体の中でどういうふうな規制を考えるかという問題でございます。これにつきましては、先ほども申し上げましたように、冷凍水産物自体が、商品の性格からいって市場外流通と市場流通が併存する形で行われている商品でございます。それぞれが競争的な関係にあることがそれなりに機能している面もあるわけでございまして、冷凍水産物流通全般を規制することは法的にはなかなか困難であろう。私ども、当面の問題として、一つの重要なパイプである市場行政の上で指導指針を出していくことが本筋ではないかと思っております。
  189. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 こういう重大な日本の流通経済そのものに影響を与える、しかも大きな荷受け会社がほとんど絡んでおることを、対策も取り締まりも何にもできないようなことでは、私も消費者の一人でありますが、国民感情として納得できないと思うのです。いま調査中だと言っていますけれども、だれが聞いても納得できるような強力な指導を私は強く期待したいと思うのです。  質問の本題に入るわけでありますが、実は昨年暮れからかずのこ騒ぎが起こったわけでありますね。これは商社による意図的な価格操作、これを投機行為だ、こう言われているわけでありますが、どういう意図的な投機行為であったか、簡単にどなたか御説明いただきたいと思うのですよ。これは担当はどこですか、通産省ですか、農林省ですか。
  190. 今村宣夫

    今村政府委員 かずのこにつきましては、昨年度は、カナダから大体七、八〇%入れておるわけでございますが、カナダが非常に不漁であった。したがって、これはかずのこの手当てをしなければいかぬというようなことで、日本の輸入商社が買いに殺到した。キャッシュバイと言われておるような言葉もございますが、要するに現ナマでカナダのかずのこを買いあさってきた。そうして、かずのこの全体での需給相当逼迫をするという想定のもとに、業者の一部におきましては思惑買いあるいは思惑売りといいますか、そういう行動をとったことは否めない事実であろうと思います。
  191. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、かずのこのような将来供給不足するのではないかということで思惑買い、投機買いしたことは否めない事実だということは、商社の投機行為だということをお認めになったことだと思いますね。同時に、このけしからぬ行為をしたのはどういう商社なのか、特に代表的な商社はどういう商社がありましたか。
  192. 今村宣夫

    今村政府委員 三菱商事等がその大きいことだと言われております。
  193. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 かずのこもさることながら、タコも同じ時期にかけましてかずのこに劣らず物すごい値上がりをして消費者離れを起こしておりますね。水産庁はこの実態をどうつかんでおるか、このことについてちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  194. 今村宣夫

    今村政府委員 タコの値段が非常に上がっておるではないかということでございますが、タコは五十三年で見ますと、国内の生産では、大体沿岸沖合いで四万五千トンぐらいとれているわけです。それから遠洋トロールで約二万トンでございまして、国内産が合計約六万五千トンぐらいございます。それから同時に、輸入がこれ以上ございますが、それで大体需給が一応保たれておるわけでございますが、問題はその遠洋トロールが最近は二万トンでなくて一万トンぐらいな生産に落ち込んでおるということがあります。これは御存じのように、モーリタニア沖が操業できなくなったということが非常に大きく響いておると思いますが、同時にまた、国内生産以上の輸入がございましたその輸入もまた、これは韓国だとかそのほかの国から入れておるわけですが、それらの国がモーリタニア沖でまた操業できなくなったということで、輸入も減少をしておるわけでございます。そういうことで価格が昨年の七月以降相当な上昇を示しておりますが、年を明けて最近におきましては大分低下傾向を示しておりますけれども、昨年の七月以降相当な高値を示しておる実情にございます。
  195. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私の手元に、おたくからいただいた東京中央卸売市場月別平均価格という一覧表があります。塩かずのこと煮タコ、冷凍タコの比較を書いたものがあるわけです。塩かずのこについて見ますならば、昭和五十四年一月、キロ当たり五千二百四十九円。一年間の価格推移を書いたものですが、これは圧倒的に輸入にかかわるものでありますけれども、タコの場合は、いま言ったように近海ものもあるわけでありますけれども、それでもかずのこの場合はいまお話ししました一月に五千二百四十九円です。ところが、十二月には九千五百五十三円になっていますね。つまりこれも相当な、一八二%値上がりなんですよ。ところが、煮タコで例をとって申しますと、一月には七百二十八円。ところが、十二月にはどうなっているかと言いますと、千六百四十一円ですから、九百十三円上がっているのですね。二二五%です。あなたはいま供給が減ったからとか言いますけれども、こんなに二二五%なんということはもう商売の常識で考えられない。しかも、去年一年のわずかの間にこういう状況が起こっているという問題でありますね。  ことしに入ってからの特徴を見ましても、塩かずのこの場合、五十五年一月、値段が七千九百八十三円なんですよ。前月は九千五百五十三円。それがあなたのおっしゃるように、ことしに入りますと二月には三千九百八十三円になっている。一月に七千九百八十三円、二月になったら三千九百八十三円、確かにがっと下がっているのですね。ところが、タコの場合はそうじゃないのですよ。煮タコの例で申しますと、ことしに入って一月に千四百七十八円。前月は千六百四十一円ですから、若干下がったが、二月には千四百五円ですよ。依然高値安定という、こういう特徴的なのがあるわけでありますね。これはただ単にあなたのおっしゃるような、そういうことで済まないではないかということですね。一般的な、どこそこが供給がどうなるというようなことと関係ないのではないか。東京築地の卸の動きを見ましても、五十四年の九月ごろから相対の卸価格が急上昇したのです。急テンポに、ひどいときでは、タコですよ、一日でキロ二百円も上がっているのですね。去年の九月下旬、わずか一カ月に仲卸の売り値が倍以上になっている。普通ならば正月前には若干上がるものでありますけれども、過ぎればまたもとの価格に定着するわけでありますね。しかし、いま申し上げましたとおり、そうじゃないのですね。全くこれは正常じゃない。こう思いませんか、あなた。ただ供給が若干減ったからなんというようなことで二百何十%も上がる。これは明らかに人為的な操作が加えられていると私は思うのですけれども長官、この点どうですか。
  196. 今村宣夫

    今村政府委員 数字を挙げて御指摘をいただきましたように、タコの価格は七月以降急上昇をしております。これは相当高い上昇でございまして、ただしかし、最近に至りましては、二月ぐらいは、煮タコは別でございますが、冷凍のタコなどは九百二十五円ぐらいまで下がっておるということで、恐らくこれは消費者の賢明な選択によるものかと思いますが、水産物の価格は若干先行する傾向がございまして、モーリタニアでタコがとれないということになると先行して価格が上がるということがございます。これは一つの傾向としてございますが、これが売り惜しみ、買い占めという形であるかどうかということが問題になるわけでございますけれども、私たちはいままでの調査では、在庫状況その他から見まして、これを売り惜しんで倉庫の中に置いてあるというふうには見られないわけでございます。しかし、そういうことのないようには、われわれは十分監視をいたしたいと思っておるわけでございます。
  197. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 別にぼくは売り惜しみ、買い占めだなんて言っているわけではないのですよ。これは大問題ですね。しかもあなたは、高値になって消費者がみんな困るようになった、手が出ないようになった、業者も手が出ない、こういう状態になったことの最大の理由として、漁獲量が少なくなったとか、外国の事情がこうだとか、いろいろなお話を先ほど答弁しましたね。ところが、輸入数量なんかを見ましても、タコの輸入ですよ、皆さんの資料を見ますと、昭和五十一年に九万四千トンばかり入っている。五十二年には六万三千トンとやはりぐっと減ったんだ。単価の推移を見ますならば、五十一年の九万四千トン台にはキロ三百八十一円。ところが、逆にぐっと減って三百四十四円に下がっているのですよ、あなた。これをどう説明しますか。同時に、輸入タコの単価は五十年からの推移を見ますと、五十三年まではずっとコンスタントに全部三百円台ですね。五十四年になったら、単価は六百二十五円にばんと上がっているのですね。一八九%上がっているのです。輸入の数量というのは、そのときによってばらつきがあるのは当然であります。しかし、いままでコンスタントに三百円台で来たものが、なぜこんなに上がらなければならないかということですね。しかも、ことしの一月−三月、昨年の一月−三月の同月比で見ますならば、ことしの一月−三月は千二十五円ですが、昨年の一月−三月は三百九十九円なんですよ、キロ当たり。二五七%の値上がりなんですよ。こんなことが、いまのあなたの言った、供給がこうだとか国際情勢でどうだとかいうようなことで関係ないでしょう。それで説明つかないでしょう、あなた。どう思いますか。
  198. 今村宣夫

    今村政府委員 五十三年は、国内生産が大体六万五千トンぐらいございまして、輸入量が七万八千トンぐらいあったわけでございます。こういう形で、五十三年はわりあい安定をいたしておったわけでございますが、五十四年は、輸入量がいまのところ六万二千トンでございまして、五十四年度の国内生産は、遠洋トロールの生産がまだはっきりわかっておりません。遠洋トロールのとりに行った先は、私がいま申し上げたようなモーリタニアでございまして、昨年は二万トンぐらいとれたわけですが、ことしは七月以降は操業できないということでございますから、恐らくこれが半減以上すると思っておらなければいけないのではないかと思います。そういうことを含んで需給のタイトが価格に反映されておるということは、私はそういう事実はあると思っています。  それだけでは説明できないで、さらに高値を見越して価格操作しておるかどうかという問題は、先生指摘のように別途にあるかと思いますが、先ほど申し上げましたように、私の方で現在まで見る限り、そういうことは見られないというふうに理解をいたしておるところでございます。
  199. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ほど来、五十年から五十四年までの推移を申し上げまして、ばらつきがあると言うのだ。価格はコンスタントに、逆にぎゅっと輸入が減った年でも下がっている、そういう年もあるわけですね。ですから、こういうべらぼうな、常識で考えられない高値が、依然としてまだそこにしがみついて、国際情勢がこうだということだけでは説明できないだろうということですね。  私は、その点で、かずのことタコの対比で、私のところにニシン卵の輸入状況とタコの輸入状況があるわけですから、これを参考までに申し上げますと、いま言ったように五十年−五十三年、タコの場合は輸入状況は、輸入量の増減があっても三百円台で大体コストが安定しておった。五十四年、一気に六百円になって倍以上になった。先ほど言ったような状況があるわけであります。かずのこの場合は、タコの動きと全く同じ動きになっておるのですね。つまり、同じように五十一年から五十四年の推移を見ますと、同じことなんですよ。輸入量は若干減っているのですね。ところが、これまでの昭和五十年から五十三年度の推移を見ますと、輸入単価というところを見ますと、五十三年はキロ当たり三千六百十二円、ところが五十四年、一気に六千九百五十七円になっている。一九二%。  だから、私は、問題にしたいと言うとおかしいのですが、問題になると思うのは、こういう異常な値上がり、同じ時期に——三菱の商社も輸入の中には当然入っていますね。しかもほぼ同じ倍率ですね。こんなことが人為的なものなしに起こり得る状態かどうか、その点でこれはやはり大変な問題じゃないかと私は思うのでありますけれども、重ねてお聞きしたいと思うわけであります。
  200. 今村宣夫

    今村政府委員 かずのこにつきましては、供給量が限定をされております。したがいまして、不漁であるということになりますと、ごく少量の操作によって価格が著しく変動することがあり得るわけでございます。そういう意味におきましては、タコにおきましても、値段が高いからといって国内生産がそう飛躍的にふえるものではございませんし、海外の供給力というものにつきまして、たとえばモーリタニアのような良好な漁場で操業ができないということになりますれば、その価格が非常に動くという要素を持っていることは確かでございます。  しかしながら、タコについて現在そういう意図的な価格操作を行っておる業者がおるがためにそういう価格高騰を必要以上に来しておるというふうには、私どもはまだ見ておらないわけでございますが、御指摘のような点もございますので、これらの点については十分監視をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  201. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 さっき言ったとおり、モーリタニアの供給で動く要素があることは私はわかるのです。しかし、商社が意図的でない、在庫を多分に抱えているという証拠がないではないか、こういうおっしゃり方は、そこのからくりについて私は聞きたいわけであります。  それで、私がまずここに押さえたいのは、かずのこもタコも同じ時期に同じ倍率の値上がり。それまでは全部コンスタントで来ましたが、輸入のばらつきもある。だから、輸入量だけで言うならば、あなたのいまのは説明つかないわけでありますから、その秘密は一体何なのかということ。しかし、そこへ入る前に、この異常な値上がりを皆さんが放任していると言うと言い過ぎになるかもしれませんが、このためにどれだけ国民や業者や仲卸の人々が苦しんでいらっしゃるのかという、そこに思いをいたしたかということです。たとえば、私、築地の仲卸の皆さんのお話をちょっと聞いたわけでありますが、昭和五十二年の三月から五十四年九月までの二年半というものは、全く価格が安定して仕事がやりよかったと言うのだ。アフリカタコは千二百円から九百円、マダコが二千百円から二千円くらい、こういう状態で一定しておったと言うのだ。ところが、この同じ年の五十四年九月ごろから、さっき言ったとおりわずか一カ月間で倍増するようなすごい勢いでいったわけであります。その結果、九月以降は、築地の仲卸の出し値をちょっと言いますと、アフリカタコがキロ二千二百円から二千円になった。この金額というのは一体どういうものかというと、マダコと同じような値段なんです。近海物のマダコと、余りおいしくもないと言えば言い過ぎかもしれませんが、同じ値段になるなんということは常識で考えられないでしょう。これは何といっても、在庫だとかなんとかということを別にいたしましても、人為的な操作があるということでしょう。  そこで、私が申し上げたいのは、いまタコの仲卸が二十三軒築地の中にあるわけです。もうすでに、一軒は、安定してタコ専門の仲卸をやっておったのが事実上の倒産です。このことは単なる事実上の倒産というだけではなくて、市場の機能を——これはほとんど相対ですから、そのものが破壊されたからこそこういう状態が起こっているわけです。しかも、あの常磐の那珂湊のタコの一大団地ですが、そこではいま、実質的に三日に一回しか操業できないと言われているのです。そして、国民は余り高値で手が届かない、こういう状態を皆さんはわかっているかということです。ちなみに言うならば、いま築地の市場で七割需要が減ったというのです。三割分しか商売できないと言っているのです。そういう深刻な事態になっていることについて、あなた実態はわかっていますか。
  202. 今村宣夫

    今村政府委員 築地の市場の関係は森実局長からお話を申し上げることが適当だと思いますが、加工業者がタコの原料が入手難で非常に経営がむずかしくなっているということは承知をいたしております。そのためにいろいろほかの加工を行いながらしのいでおるということの事実については承知をいたしております。
  203. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それで、いまのような問題についてせんだって、私の手元にある月刊「東卸」、東京の卸売市場の組合で出している機関誌でありますが、五十五年四月号で、「仲卸側輸入正常化を強く要望」といって、輸入者側との懇談、全水、全国水産物何とかというのでしょうね、全水卸組連と輸入協会と懇談会をやったのですね。ちょっとそこのところを読みますと、「全水卸組連と輸入協会の懇談会は、毎年恒例のもので十一日は、全水卸組連側から朝生東太郎理事長以下、北海道から九州までの各地区代表が出席、輸入協会側からは頴川常任理事(三井物産食品第二部長)はじめ理事会員会社から愼原(三菱商事水産部長)田代(丸紅水産物第二部長)水島(三井食品二部次長)河野(三菱水産部長代理)萩原(同協会事務局長)の各氏が出席して開かれた。」こういう記事が載っているのですね。そのときに、朝生さんという業者側の代表の方が輸入協会の方にこう言っているのですね。「輸入水産物の高値硬直による消費減退をおそれている。輸入競争の過熱を避けて国民的視点からの輸入をこころがけられ、買付コスト至上の価格維持、あるいは市場を飛びこした供給、などの混乱を避けることや、中央卸売市場が、流通の本流である」「また仲卸業者は消費者の代弁者である、需要と供給のバランスを考え価格形成を確立する必要があり、市場は現在その機能を果たしている……」、そういう切々とした訴えがあった、このことが記事になっているわけであります。  そこでお伺いしたいのは、こういう業者のお気持ちに対して、長官はどういうふうにお感じになりますか。
  204. 今村宣夫

    今村政府委員 私たちは、常日ごろ秩序ある輸入ということをいつも申しておるわけでございますが、日本人は非常にせっかちでございますから、どうも物が足りなくなるということになりますと外国へ殺到して値段をつり上げて輸入をしてくる、こういう傾向をもっております。そういうことにならないように、それぞれよく自粛をしてやってもらうことを期待をいたしておりますが、日本人の傾向としてそういうことがあることは確かでございます。したがいまして、私たちとしましては、過当なる海外における競争をすることによって価格の高いものを入れてきて、それで高ければ売れるというふうな輸入の仕方はできるだけ避けて、秩序ある輸入をしてもらうことを期待をいたしておるところでございます。
  205. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いよいよ本筋へ入るわけでありますが、先ほど買い占めその他云々というようなことの徴候はない、単なる供給の自然条件のなせるわざのような御答弁がありましたけれども、そこで、私は、産地価格というか、現地価格の問題についてお聞きしたいと思うわけであります。  先ほど来長官は、スペイン領のラスパルマスあるいはモーリタニアの話をしました。たしかそこは主な日本の買い付けの漁業基地ですね。特にカナリア諸島のラスパルマスは中心的な——実は私の娘の婿がそこの方へ行ったり来たりしている男でありますが、現地の事情についても私は相当よく聞いておるわけであります。それで、産地価格、現地価格をつくる仕組み、こういうものはどういうかっこうでつくられるのか、私は一番問題なところはそこにあると思うのですね。この点については、通産省来ておられるようでありますが、恐らく通産省から先にお答えいただいた方がいいのじゃないかと思うのです。
  206. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 タコの輸入の現地価格の形成でございますが、私たち必ずしも明確に把握しているわけではございませんが、商社筋からの話を聞いたところによりますと、主として商社は、現地における取引先の系列の漁船がありまして、そこと数量的には安定的な取引をする。ただし価格につきましては、ほかの各社の取引価格に右へならえをするという実態になっておるようでありまして、やはり生産が足りなくなりそうだということになりますと買い付け競争になる。そうすると、ある会社が相当高値を出す。そうしますと、それに従ってほかの会社もその高値で引き取らざるを得ない。そういうような実態になっておるというふうに聞いておるところでございます。
  207. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 相手側の問題よりも、これがもうかる、高く売れると見るならば、日本側の商社が値段を決めているわけです。特にタコ、かずのこ、これは外国人は食わないでしょう。悪魔の使いでしょう、タコの場合は八本足で。これはだめだということになっているでしょう。いま南米の方では少しは食うけれども、ほとんどそのシェアは日本ですよ。かずのこも同じでしょう。これは日本の商社が値をつけるのですよ。産地価格というものは、何のことはない日本の商社が勝手に決める、そういう商社同士の競争の中で決める、私はこういうふうに理解しているのですが、この点は間違いありませんね。
  208. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 御指摘のとおりでございまして、残念ながら、日本の商社は大変競争が旺盛でございまして、かずのこにいたしましても、いまのタコにいたしましても現地で大変激しい競争をして買い付けをやっている。そういうことが現在のような高騰を招いている原因の大きな部分を占めているというふうにも理解しているところでございます。
  209. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 したがって、いまの通産省の御説明でわかるように、供給量がどうだこうだなんとあなたはもっともらしいことを言いますけれども、輸入タコがこんなに上がったということは、もちろん供給量が関係ないとは言いませんよ、そういうところに仕組まれた商社の、つまり産地価格、現地価格というのは商社の管理価格そのものを指すものだということですよ。そういう点で、私の娘婿から現地のいろいろな話を聞いているわけでありますが、そこへ行きますと、三井、三菱その他の水産部門があって五百人ぐらい常駐しているというんだ。そしてマグロもエビもタコもそこを一大基地にして、そういう取引でしのぎを削っている、こういう問題があるわけであります。  そこで、産地価格の問題、つまり商社の管理価格の問題ということになるわけでありますが、この産地価格の変動を拝見いたしますならば、ラスパルマスで、五十四年四月から八月まではキロ三百八十円から三百五十円であったのです。五十四年九月下旬から十月になったらキロ千二百九十六円、一気に四倍に上がっているのです。つまりこれはいま二百四十円の円レートに五・四ドルですから、これで換算したあれです。このことは、去年の四月から八月まではキロ三百八十円から三百五十円であったものをその年の九月下旬から十月にかけて四倍になったことは、石油がこうだ何がこうだじゃなしに、四月から八月にかけて買い占めし、現地に入港して蔵に入れて、十月に一気に四倍にした、それがつり上げの実態だと私は思うのでありますが、この点については通産省はどうお考えですか。
  210. 古澤松之丞

    ○古澤説明員 私たちといたしましては、商社が管理価格として決めているというふうには理解しておりません。先ほど水産庁長官からもお話しございましたように、モーリタニア沖の漁獲が非常に少なくなるという情報も入りまして、商社としては国内にできるだけ有利にタコを入れたい、そういうことから商社同士の競争が厳しくなった、その結果、大変高値のタコにならざるを得なかったというふうに考えておりまして、管理価格として高い価格でつり上げたというのとはちょっと違うのじゃないかなというように理解しているところでございます。
  211. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 管理価格という言葉が悪ければ取り消しますけれども、いずれにしても業者のっけ値だ、日本側の商社のつけ値だ、こういうことが言えるわけであります。  そこで、ナンバースリーの荷形の標準的なタイプがどうだというタコの専門のあれがありますけれども、例を出せばいいわけでありますが時間がないからやめますけれども、問題は、商社が、たとえば普通に輸入する場合に輸入関税一〇%、それから商社が手数料を取る、こういうかっこうじゃなくて、現地でそういうかっこうで物すごい買い占めをしたり、商社同士の闘いの中で価格が出てくる、そういうものだということが明らかになったわけであります。現地の仕入れ価格とこの価格とは違うわけでありますから、商社自体は十分その段階で採算がとれているわけであります。しかも、それを輸出して、同じ商社が日本の国内の出し値を決めていく。そのときまたいろいろな操作ができる。詳しい資料を私は持っていますけれども、時間がないから省略しますけれども、つまり二重に操作しておる。自由自在に操作できる。そういうところの問題点が今日のタコの異常高値になっている。これで初めて納得できるわけです。この点について長官はどう思いますか。
  212. 今村宣夫

    今村政府委員 商社が海外において過当な競争をして買い付けることは、商社は商社としての判断としまして、これは需給が逼迫するぞ、したがって相当高い値段で買っても国内へ持っていって引き合う、こういう判断が働くのだろうと思います。したがいまして、産地での買い付けば非常な過当なる競争を起こし、価格をつり上げていくことは否定できないことであろうと思います。したがいまして、そういう高い価格で入れてきたそのものにつきましては、商社としては関税と手数料を上乗せをして売っていく、したがって当然のことながら国内の価格も上がっていく、こういうふうなことではないかと思っております。その間に思惑あるいは少数の業者の買い占めあるいは売り惜しみが働きやすい環境を生むことも事実であろうか、こう思います。
  213. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 現地で値段がどんどん下がっているのです。たとえば懇談会でもえらい人が、水島さんという三井食品の第二部次長が、「産地価格(No.3)は昨年十月の五千四百ドルのピークから現在三千八百ドルに下げ、さらに二百ドルの値下げ交渉をしているが、」こういうようなことを言っているのです。そういうふうに現地が下がっているのに、なぜ日本の国内で下がらないのか。簡単に言いますと、つまり在庫の問題がここに出てくるわけであります。去年の十二月末日の在庫が四千トンということを私は確かな筋から聞いているわけでありますが、つまり去年完売するつもりだったが、余り高過ぎて売れなかったのです。ちょうどかずのこと同じです。そして、残った分が四千トンなんです。一月になっても、かずのこはあたりまえの値段になっていったけれども、タコがなぜ下げられないのかということです。これは現地で下がっても、自分たちの手持ち在庫とプールして、何とか自分たちが損をしないようにということで、彼らの思惑外れによって結果として国民がまだ安いそういうものを手に入れることができない、こういうからくり、こういう仕組みになっているということです。その点をここで皆さんに御指摘すると同時に、厳重にすぐ措置をしていただきたい、私はそのことを申し上げて、簡単なお答えをいただいて、次の質問に移ります。
  214. 今村宣夫

    今村政府委員 私たち調査によれば、御指摘のように五十五年一月に入りまして、二月、三月、四月、五月とラスパルマスのFOB価格は下がっております。商社出し値の方を見ますると、FOB価格ほどは下がっておりませんが、年が明けてから一定の下がりを見せておるということでございまして、若干のギャップはあると思いますけれども、FOB価格が下がるということは商社出し値も下がっていくということでございますから、今後FOB価格動向を十分見ながら、商社出し値の動向も十分監視をしながら、もし必要があれば所要の指導を行っていきたいと思っております。
  215. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 きょうは主に問題指摘にとどめたわけです。これはまた改めて正式に論議したいと思うので、その点申し上げておきます。  最後に、市場の問題。先ほども前段で例の道漁連の空取引の問題を言いましたけれども、時間の関係で一括して全部質問しますから、まとめてお答えいただきたいのですが、大都、これはマルは、マル中というのは日水、東水は日魯という荷受け会社がありますね。七大商社の中で五大荷受け会社、そういう人たちが競りの前段に全部値段を決めてしまって、仲卸は建て値をつけることができないという状況があるわけであります。それで最近は、本来、価格あるいは需給の関係から見ますならば、当然競りの方が多くて相対が少なくなるのはあたりまえですが、これが逆転してしまっているということです。仲卸が全然値段をつけることができない。競りは三声でなどということは過去のものになってきたということです。それから買参人の規制もなくなる、保存のきくものほど入札から外されてしまう、こういう踏んだりけったりみたいな状況があるわけでありまして、こういう中で、先ほど言ったような、たとえばマダコとアフリカダコと同じ値段になってみたり、こういう考えられないことが起こっているわけであります。  そこで、私が一つお聞きしたいのは、買参人の規制が緩和されて商社のダミー、これも入札権を行使して、競りだといいながら幾らでも値段をつり上げることができるわけであります。これを商社に利用させないように何らかの規制手段をとってほしいということです。  それからもう一つの問題は、皆さんの検討会でも結論を出しているようなことを聞いておりますけれども、場外流通なり相対で魚が安くなったかというと、むしろそういう危険な大きい資本によって思い切りいいかげんなことを許す道を開いていくことになると思うのです。そういう点から言いますならば、私は全部相対をやめろというのではないのです。やはり経済の実態、需要の動向に見合ったかっこうで、流通の最も大事な基本的な競りを多くするように指導すべきではないか、この二つの点について最後にお聞きしたいと思うわけであります。
  216. 森実孝郎

    森実政府委員 まず第一に、相対売りの問題でございます。タコにつきましては、築地市場におきましてはほとんどが上場品目が冷凍品でございますので、相対売りが行われていることは事実でございます。ただ、冷凍品以外のものについては現に競り売りが行われております。先ほども申し上げましたように、冷凍水産物のように貯蔵性がある商品についてどういう取引ルートがいいかということは、私、率直に申し上げまして、市場流通市場外流通にはそれぞれ一長一短があると思います。市場流通においては決済の確実化とかあるいはいわゆる広域にわたった広範の人の売買への参加というメリットがあると思います。しかし、市場外流通には、たとえば大手の外食のチェーンだとかあるいは営業用の消費を前提に置きましたいわゆるチェーン化による大量処理による流通マージンの節減というふうなメリットもあるわけでございまして、私ども、この二つのルートは今後とも持続すべきであり、いわば法の形式をとってあるいは行政指導の形でどちらかに流通ルートを収斂していくということは、経済の実態からむずかしい問題ではないだろうか。競り取引の導入という問題はそういった二つのルートとの相対関係で考えなければならないわけでございまして、実は現行の卸売市場法が制定されます場合も、競り取引になじまない商品はむしろ市場外に追いやるべきであるという御議論もあったわけでございますが、卸売市場のワン・ストップ・ショッピングなり決済機能ということにも着目して、競り取引になじまないいわゆる規格性、貯蔵性のある商品についても市場に上場しているという事情があることは、十分御理解を賜る必要があると思っております。
  217. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  218. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次回は、明十五日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十一分散会