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1980-04-23 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月二十三日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    菊池福治郎君       近藤 元次君    佐藤 信二君       佐藤  隆君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    玉沢徳一郎君       福島 譲二君    保利 耕輔君       堀之内久男君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    新村 源雄君       馬場  昇君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    本郷 公威君       瀬野栄次郎君    武田 一夫君       中川利三郎君    中林 佳子君       神田  厚君  出席国務大臣         農林水産大臣  武藤 嘉文君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邉 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    塚田  実君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         食糧庁長官   松本 作衛君         林野庁長官   須藤 徹男君  委員外出席者         農林水産省構造         改善局農政部長 関谷 俊作君         農林水産省構造         改善局農政部農         政課長     若林 正俊君         食糧庁管理部長 石川  弘君         水産庁漁政部長 渡邊 文雄君         自治省財政局交         付税課長    能勢 邦之君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 四月二十三日  辞任         補欠選任   神田  厚君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   永末 英一君     神田  厚君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農用地利用増進法案内閣提出第七七号)  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第七  八号)  農業委員会等に関する法律等の一部を改正する  法律案内閣提出第七九号)      ————◇—————
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  農用地利用増進法案農地法の一部を改正する法律案及び農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  3. 馬場昇

    馬場委員 私は、まず農用地三法の審議の基盤になる幾つかの問題について質問をしておきたいと思うのです。  まず第一点は、去る四月八日に衆議院の本会議食糧問題に対して自給率向上決議が行われたわけでございますが、聞くところによりますと、農業問題の本会議決議というのは二十二年ぶりだということでございまして、この決議はまさに歴史的な決議であろう、こういうぐあいに私は思うわけでございます。そしてまた、もう御承知のとおりですけれども、内容も非常にりっぱなものだと私は理解しておるわけでございます。本委員会でも私もかつて議論したことがありますが、八〇年代から二十一世紀にかけて、食糧事情というのは楽観を許さない、言うならば、食糧は不足するのだ、食糧危機が来るのだ、そういう情勢にあるということを、国民意思として本会議でも確認した決議になっておるわけです。  さらに、食糧は、委員長提案理由等でも御説明になりましたように、戦略物資として外交手段に使われておる、今日そういう状況だ。たとえば、アメリカ対ソ輸出の禁止の問題、さらに、最近イランに対して外交手段に使われようとしておる、こういうことでございまして、食糧戦略物資だという物の考え方というのも本会議で実は認めたところでございます。  そういう状況の中で、自己批判として、日本反省として、日本最大食糧輸入国だ、こういうことも言われたわけでございます。そして、食糧問題というのは民族の生存にかかわる重要な命題で、食糧自給率向上して安定的に供給することは、まさに国政上の基本的な緊急課題である、こういうことが本会議で議決されました。農林大臣はこれに対しまして所信を表明したわけです。採択された決議趣旨を十分体し、食糧自給力強化最大限努力をするということを所信表明なさったわけでございますが、私は、このことにつきまして、政府はこの決議具体化に現在どのように取り組んでおるか、そのことについてまずお尋ねします。
  4. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 去る四月八日の衆議院会議において決議いただきました「食糧自給力強化に関する決議」は、農産物需給の不均衡、世界の食糧需給不安定性、二百海里時代本格的到来など、農業漁業が直面をしております内外の厳しい情勢に対処し、国民食糧安定確保を図るために万全の施策を講じ、もって食糧自給力強化に努めるべきである、こういう趣旨と受けとめております。  言うまでもなく、国民食糧を安定的に確保してまいりますことは国政基本であります。このため、実は従来より、農業については生産性の高い近代的農業経営中核に、国民食生活多様化に対応し、また地域の実態に即しつつ、農業者理解協力を得て農業生産の再編成を推進してまいりましたし、また、漁業につきましては、二百海里時代に即して、周辺水域内漁業振興を図るとともに、漁業外交による遠洋漁場確保に努めてまいっております。したがいまして、今後におきましても、今回の決議趣旨を体しまして、関係各省とも十分に協調しつつ、政府一体となって食糧自給力強化最大限努力をしてまいりたい、かように考えております。
  5. 馬場昇

    馬場委員 政務次官、私の質問は、この決議が四月八日に行われたわけですから、二十二年ぶりにこういう歴史的な決議が行われた後、それに対応して具体的に農林省は何をやっているのか。いままでと同じことをやっているのだったら、この決議はやらなくても同じこと。いま次官が読まれたのを聞いていますと、何か味もそっけもない、無味乾燥のお経を読まれたような感じ。私は、これをやった後、具体的にどういう手を打ったか、どういう体制をつくったか、こういうことを聞いているわけです。だから、私はいまの次官答弁を聞いておりますと、これはまた、決議のしっ放し、国民意思国会意思というのを全然ばかにして、無視して何もやらぬ、そういう感じがしてならないのです。  と申し上げますのは、実はこれと同じような趣旨も、いま審議しております農用地三法にかかわりまして、五十年にこの委員会でも、農業振興地域の整備に関する法律の一部を改正する法律案附帯決議の中にちゃんと、政府は、食糧自給度向上基本とする農業生産長期見通しを早急に樹立せよ、こういう決議も行われておるのです。  私は、このことを抽象的に議論しようと思わない。だから、具体的に聞きますけれども、先ほども言ったから繰り返しませんが、この食糧の問題は、たとえば政府で言うならば農林水産の問題だけではないわけです。そして、国会政府に向かって決議されたわけですから、国の安全保障の問題だとも言われているわけですし、外交の問題でもある、貿易の問題でもあるわけです。産業構造の問題でもあるし、国土全体の問題あるいは水資源、その他総合的な問題です。だから、農林水産省だけで取り組んでいたら現在のような自給率になってしまった。だから、政府は、この問題には国会決議があったのだから、挙げて取り組むべきだと思う。そういう意味で、私は、政府の中に関係する閣僚を全部集めて、食糧自給率向上を図るための関係閣僚会議というものをこの決議を受けてつくって、全力を挙げて、全政府を挙げて具体化に取り組むべきではないか、こう思うのです。これについて具体的に言いますけれども、関係閣僚会議でもつくって、そして政府を挙げてこの決議を守る、食糧自給率向上を図る対策をとるかとらないか、どうですか。
  6. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 実は従来とも、政府といたしましても、国民の必要とする食糧はできるだけ国内で自給できるようにすべきだという考えは一貫して持っておったわけでございますが、なぜ食糧自給率が最近低下をして先生御指摘のような心配があるかと言えば、最大理由は、何といっても国民食生活多様化に即応いたしまして畜産物の消費が伸びてくる、この畜産生産しなければならない、そのためには飼料穀物が要る、その飼料穀物自給体制国内でなかなかとれない、そういうことでございますので、やはり何といっても海外から飼料穀物その他農産物輸入する最大理由は、結局は生産性といいますか、国内生産するよりも海外から輸入した方が安い、こういうことが最大の原因であると考えるわけであります。そういう意味で、国内自給力を高めるためには、国内的にもある程度の合理化をし、効率のいい生産をして適正な価格で農産物生産ができなければいかぬ、こういうことでございますので、これに対して、まさにいま御審議いただいております農地三法もそういう方向を意図したものであります。したがいまして、先ほど申しましたように、従来ともやってまいりました努力政府といたしましてさらに積極的に強力に推進していく、こういうことでございまして、これは関係各省、特に財政当局等の十分な理解協力を得なければならない、こういうことだとは思います。しかし、当面何といっても農林水産省中心になって、従来にも増していろいろな政策を執行していかなければならない、こういうことでございます。また、国政全体のレベルでは、総理大臣諮問機関といたしまして農政審議会がございまして、ここで各界の意見を聞きながら農政ビジョンづくりに努めているわけであります。そういうことでございますので、農林水産省中心になって、各省協力を得、理解を得ながら、この趣旨に即して政策の実行に当たってまいりたい、こういうふうに考えております。
  7. 馬場昇

    馬場委員 あなたが言ったのは従来と少しも変わらぬじゃないですか。できるだけ自給率向上に一生懸命にがんばってきました、そう口で言いながら、だんだん自給率は減っているでしょう。従来やってきたのは自給率を減らすことをやってきたじゃないですか。そういうことだから国会決議が行われたのでしょう。国会決議が行われたら、従来以上に新しいことをやって、これにこたえなければいかぬじゃないですか。だから、私が提案しているのは、たとえば公害環境行政などで私も主張しましたけれども、水俣病などのときには水俣病対策関係閣僚協議会などをつくって全力を挙げてこれの対策を立てたじゃないですか。いま環境アセスメントが問題になっています。関係閣僚会議をつくって全力を挙げて政府を挙げてやっているじゃないですか。それ以上の大きい食糧自給率向上の問題でしょう。この間決議が行われたのでしょう。当然関係閣僚会議でもつくって、真剣に政府を挙げて取り組むべきではないですか。そういう考え方を持たないですか、どうですか。
  8. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 馬場先生のお気持ちは十分にわかるつもりでございますが、先ほど申しましたように、この問題は農林水産省全力を挙げて取り組むべき問題でございますし、従来やってまいりましたことをさらに総合的にまた適確に措置してまいりたい、こういうことでございますので、当然各省理解を得、協力も得なければなりませんが、いまのところは関係閣僚会議をつくってという考え方までには至っていないということでございます。
  9. 馬場昇

    馬場委員 従来のあなた方の農政基本を、言うならば百八十度といいますか、八〇年代に向かって基本的に変えなければならぬ、そのために、この決議を受けて本当に農政強化することにあなた方は取り組まなければならぬ、私はそう思うのです。あなたと議論してもしようがないから、大臣が来てから話しますけれども、これを受けて皆さん方が一生懸命努力するという具体的な方策が出なければ、日本の船はどこへ行くのだ、食糧の船はどこへ行くのだ、船の行く先がわからぬで、この農用地三法の船の中のベッドの大きさが小さいとか大きいとか、そんな議論をしたって何になりますか。この方向をあなた方が出さなければ、私は農地三法を議論したくない、そういうことを申し上げて、これは大臣が来てからさらに質問したいと思います。  いまの政務次官の話を聞いていますと、あなた方自民党が三十数年政権を握っている、こういう中で、われわれから言うといろいろ問題が非常に多かった。たとえば、憲法をだんだん空洞化していくとか、民主主義をだんだん後退させるとか、大企業中心国民を軽視しておるような政治だとか、今日見られるような政官界の腐敗、数々の問題があります。しかしその中で、自民党の戦後の政治農林水産業を軽視して、農林水産業を今日のように荒廃させた、これが自民党の戦後の政治最大の罪悪の一つではなかろうか、こういうぐあいに私は思っている。このことについての反省というものを、この八〇年代の初頭に農用地三法をあなた方が今度の国会提案したことにあたって、いままでの農政反省をぜひ聞いておいて、どういう反省の上にこの法律を出したのか。反省のないところにこの法律を出したら悪法になりますよ。そういう点について実は聞きたいのです。また次官ですと抽象論で、お経を読んでいるのを聞いても時間のむだですから、具体的に聞きますから具体的に答えてください。  まず、諸外国に比べて食糧自給率が非常に低くなっている、これについての反省はどうか。たとえば、昭和三十年代、四十年代、五十年代とずっと見てみますと、わが国でも昭和三十年代には八〇%くらいの自給率があったが、今日は四〇%を割っている。減っているのは先進諸国日本だけです。アメリカ昭和三十年代には一二七%だったが、今日は一七三%くらいになっている。物すごくふえている。フランスだって三十年代には一二七%だったのが、今日では一五〇%を超した。西ドイツだって三十年代で七四%のものが、今日では約八〇%になっている。イギリスだって五一%が六四%くらいになっている。どこの先進諸国も、戦略物資というか、安定的供給というか、食糧自給率をふやしている。その中で日本だけが落ちている。この自民党農政反省はどうしているのか、これが第一です。  第二は、他産業との格差、他産業農業との格差はやはりあるのです。この格差をつくり過ぎたというような問題に対する反省、こういうことについてどう思いますか。
  10. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 馬場先生は、戦後の日本農政自民党農政とおっしゃいますけれども、私はそれが失敗であったという認識は持たないわけであります。戦後私たちが最初考えましたことは、何といっても主食である米について自給したい、そして米だけは国民は腹いっぱい食べたい、こういうことが戦後農政最大の眼目であったわけでありますから、稲作生産全力を投入してまいりましたし、いわいろな技術の問題もまた基盤整備問題も稲作中心にやってまいったわけであります。その結果、現在生産調整をしなければならないほど米の生産が進んだわけでございますから、これは失敗という認識は当たらないのでありまして、一つの大きな成功である、かように考えるわけであります。しかし、そういう一つ稲作についての成功を前提にして、それを踏まえて、先ほど申しましたように、食生活多様化してまいりまして、むしろ主食としての米よりは畜産物に対する嗜好が急激にふえてまいった。この畜産物を今度は進める過程で、当然その基礎になります飼料穀物につきましては、御案内のような日本の地勢でございますから、なかなか一挙に生産できない。特に反当たりの収益性というものは米と比較いたしまして低いわけでございますので、これに対して何らかの措置を講じなければなかなか生産振興はできない。こういうことが結果的に、米については一〇〇%以上、そして野菜や果物につきましても自給率は相当いいところへ行っているわけでありますが、問題は飼料穀物自給率が極度に低い。これはいま申しましたようなことの裏返しだと思うわけであります。したがいまして、現在水田再編対策の中で米以外の穀物に対しての生産奨励を相当思い切ってやってきているわけでございますから、先ほど申しましたように、決して自給率の現状をいいとしてない、それを上げるためのいろいろな努力をしてまいったわけでありますが、これを抜本的にさらに進めていこうということを先ほどお話しした次第であります。  他産業との所得格差につきましては、これはあえて言いますと、戦後高度成長工業中心にして行われて、農業の場合には、先ほど言いましたように生産性を高めるよりも必要な量を確保していこうということでございますから、量的な拡大はあったけれども、生産性については進んでまいりましたが、しかし工業におくれをとった、こういうことであります。ただ、といいましても、日本農業所得伸び率は平均して六・一%でございます。これは諸外国に比較いたしまして決して低い数字だとは私は思いません。ただ、工業がそれ以上に伸びてしまったことが一つの問題を起こしている、こういうふうに理解しております。  したがいまして、いままでは米を中心として、しかも量的な拡大中心にしておった農政を、今度は非常に多様化していく、多角化していく。しかも同時に、その生産性を高めて内容を充実していく。農業従事者所得を上げていく。こういうことに農政のウエートを漸次置きかえながら、しかし同時に、再三御指摘ございますように、食糧自給率低下をしているということはやはり好ましくないから、何とかこれを上げてまいりたい。そういうことで自給力の増強にまず当面全力を傾けているというのが実情でございます。
  11. 馬場昇

    馬場委員 委員長は本会議で物すごい歴史的な食糧自給率向上決議提案されました。私どももろ手を挙げて賛成したのですけれども、いまの話を聞いていますと、自給率低下したということについては全然反省もないわけですよ。何のために委員長はあそこに農林水産委員会意思として提案されたのですか。委員長はあのときにきちんとこういうことを言っているでしょう。海外からの農畜産物輸入が増加の一途をたどり、これが国内農業生産に影響を与え、食糧自給率は年々低下し、食糧供給体制の先行きを不安定にしておる。これは、あなた方の農政反省というものを委員長が本会議提案されて、国民がそのとおりだと認めたからじゃないですか。こんなに国会全体が反省をしておるじゃないですか。農林省は何で反省しないのですか。そういうような国会決議に対して無感応な無政策な、政策を持たない、こういうようなあなた方と農用地三法を審議したってしょうがないですよ。本当に、こういう反省がありますから、こういう法律でもつくって、こういう方向国会決議にも従うし、日本農業を持っていきますというなら話はわかる。国会決議も全然無視しているし、いままでの農政に対する反省もない。そういうところにこういう法律をつくったら、また悪くなるだけですよ。  私は、委員長に、この国会決議に対する政府の無感覚、これについて処置を求めたい。
  12. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 馬場先生反省がないとおっしゃいますが、そういうことではございませんので、いま申しましたように、米の生産がともかくここまで来たことについては一つの成果であった、しかし、それを越えてさらに次の問題について取り組もうということを申し上げておるわけでありますから、問題が全くなくて反省もしていないというようなことではないわけでございます。問題は問題として深刻に考えながら、再三申しておりますように、政府挙げてこの問題に取り組もう、特に農林水産省は挙げてこれに取り組もう、こういうことをお話し申し上げたわけであります。
  13. 馬場昇

    馬場委員 あなたのは反省じゃないですよ、弁解ですよ、宣伝ですよ。だから、これについては私は了解できません。後で大臣が来たら質問しますけれども、それで了解できなければ、国会決議に対する政府の対応について、委員長は代表して提案なさったわけですから、これはぜひ理事会協議をしていただいて、明らかにしていただきたい。それを明らかにしなければ、私はこの三法の審議に入りたくない。国会決議に対する政府の態度というものをぜひ、いまのような答弁では納得できませんから、理事会で取り扱い方を協議していただきたいと思うのです。
  14. 内海英男

    内海委員長 本会議におきまして、大臣が、私の決議案提案に対して当時所信を述べられております。それが政府の正しい見解だと思いますので、大臣が見えたら、そういった意味馬場委員の方から再度質問をして、大臣から答弁を求めてもらいたいと思います。
  15. 馬場昇

    馬場委員 大臣が来てからやって、それで納得できなければ、先ほど言いました取り扱いを理事会にお願いしたいと思うのです。  次に、これはもう政務次官議論をしたってしょうがないから、局長といまから議論したいと思うのです。  農業構造のこれからの展望について、いま構造に限って言っているわけですけれども、それから展望というかその適正規模、こういうものについてちょっと聞いておきたいと思うのです。  たとえば農家数は、三十五年には六百万戸以上あったのが、五十三年には四百七十八万八千戸、約百二十六万戸ぐらい減っております。それで、専業農家は三四%から一二%、約三分の一になっておりますね。第一種兼業も三三%から一八%、約二分の一になっております。第二種兼業だけが三二%から六八%、約二倍になっておる。就業人口は一千四百万から七百万程度、約半数になっております。そして新規学卒者農業に従事する者は、三十五年六万八千、今日はたったの九千、約七分の一に減っている。こういう惨たんたる状況にあります。  そこで、お聞きしたいのは、農林省は、農家数適正規模というのは大体どのくらいだと考えておられるのか。専業一種兼業、二種兼業の比率というのはどのくらいが日本では適当と考えておられるのか。農業就業人口というのは、日本の中で大体どのくらいが適正規模と考えておられるのか。新規学卒者はどのくらい入ってくるのが一番理想的と思っておられるのか。その数をまず明らかにしていただきたいと思います。
  16. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  ただいまお話のありました点につきまして、結論的に申しますと、農政審議会で現在検討しておりまして、まだ公表の段階に至っておりませんので、具体的なものを御紹介するわけにはまいりませんが、審議状況について中間的な方向について御報告申し上げたいと思います。  御存じのように、昨年十一月に第一次試算といたしまして農産物長期見通しを立てまして、これにつきまして、ただいま御議論のございました自給力の問題をめぐりましてさらに検討を深めておりますのとあわせて、食糧安全保障という観点でのまた別の角度での検討も中で進めております。こうした状況を踏まえまして、将来の農家戸数なり、農業就業人口、あるいは農用地面積なり、あるいは中核農家の姿というものも検討しておりますが、具体的な数字がまだ出ません。その検討過程におきまして、農家戸数なり農業就業人口というものは、五十年代に入りまして減少も続けておりますが、従来の減少率よりはかなり鈍化した形になる、恐らく今後もこうした比較的鈍化した傾向で減少率はたどるのではないか。ただ、こうした農家戸数なり就業人口の姿を見ましても、大きな問題は、老齢化のテンポが比較的高く進むであろう。現在でも老齢化世帯の比率は、農村におきましては都市に比べまして約倍の比率を占めております。こうした老齢化の問題が、質的な問題として大きな問題があるだろう。中核農家の経営規模なり、その所得水準あるいは姿といったものについての試算はいたしておりますが、これ自体の一つの目標といいますか、計画的な目標として設定すべきかどうかについては、先般も御議論がございましたが、ここについての確定的な見解はまだ出ておりません。  と申しますのは、一つは、今般の農用地利用増進等にもあらわれておりますような、地域におきます一つの選択と申しますか、地域内におきますそれぞれの実情に合いました経営形態があらわれてくる。こういう問題についての地域的な形での姿の方が重要ではないかという観点もございます。と申しますのは、さらに具体的に申しますと、中核農家なり専業農家の姿だけではなく、地域としまして、これらの農家とあわせて、先ほど申しました高齢化の世帯等の農家、あるいは兼専業の農家といいますか、これらの農家が共存するような姿をどう描くべきかというような問題も現在出ております。こうした問題について現在検討を進めておる。したがいまして、具体的な数字等につきましては、まだ検討中で申し上げられませんが、検討過程での方向につきまして御紹介申し上げました。
  17. 馬場昇

    馬場委員 農政審議会で何を検討しているかということを私は質問していないのです。農林省の、たとえば適正規模はどの辺ですかということを聞いているのですよ。私たちはこう思っている、しかし農政審議会にいまそれの審議をお願いしているから、結論が出た場合に、それを見て変えるかどうかわからぬ。だから、農林省適正規模という展望というのをあなた方は持っているのかということを聞いているのです。私が聞いたのは、農家の数はどのくらいが適当と思っておるのか。専業一種兼業、二種兼業の比率はどのくらいがいいと思っているのか。就業人口は大体どのくらいが適正と思っているのか。さらにもう一つつけ加えますと、耕地面積をいまから言うわけですが、耕地面積も、三十五年には六百万ヘクタール、それがいま五百万ヘクタールに減っている。五十七万ヘクタール減っている。二戸当たりの耕作面積はほんのわずかふえております。そういう意味で、耕地面積は、日本で人口増もあるでしょう、だからいまの人口ならば大体このくらい、人口増に従ってこういうぐあいに耕地面積がふえるとか、あるいはこう利用するとそうふえなくても済むとか、耕地面積は大体このくらいがいいんじゃないか、そういう問題。それからもう一つは、耕地の利用率が非常に落ちている。昭和三十五年には利用率は一三三・九%だった。ところが五十三年には一〇二%。三一%も耕地の利用率が減っているのです。利用率をこんなに減らしておいて、拡大したって全然話にならないじゃないですか。それからまた、拡大すると言っておりますけれども、耕地の転用面積もずっとふえている。昭和三十五年には十五万ヘクタールくらいの転用面積でしたが、五十三年には三十二万ヘクタール、約二倍に転用面積もふえておる。こういう状況ですから、本当に惨たんたる状況です。  はっきり言いますけれども、適正規模はどの辺か。農政審議会議論しておるというなら、それに対してあなた方諮問か何か出しているだろう。出していなくても、農林省適正規模をこう考えているという数字を、いま言ったことについて全部出してください。いまあれば、そこで言ってください。
  18. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 申し上げます。  現在農政審議会審議しておりますというのは、役所といたしましても農政審議会と一体となって作業を進めておる段階と御理解いただきたいと思います。したがいまして、現段階におきましてお示しするような段階に至っていない。審議会で作業をいたしまして、私どもとしてそうした姿を確定してお示しいたしたい、このように考えております。  たとえば農用地面積について申し上げますと、第一次試算の現状の姿で参りまして、転用等が従来よりも相当スローダウンするということを前提にいたしまして、現状規模程度の耕地は、利用率の向上とともに必要でございますが、同時に、食糧安全保障的な観点から、どの程度になるかということは、目下そうしたものについての作業をしている段階でございますので、これらの作業の終わりました段階においてまた御紹介いたしたい、このように考えております。
  19. 馬場昇

    馬場委員 あなた方、適正規模を持たないということはおかしいじゃないですか。いま農政審議会にかけておる。かけておるなら、かけておる腹案があるはずでしょう。あるべき姿を持たずにおいて、何の法律をつくりますか。それが出るまでこの法律審議をやめましょう。だれが考えてみても、農林省適正規模をこのくらいと考えておりますよということがあるはずです。そんなことを持たないなら、農林省は解散しなさいよ。それを出さぬならば法律審議なんてできませんよ。委員長、資料を出すように命令してください。
  20. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 先ほども私どもの考えを申し上げたのですが、適正規模論というのは、従来から長年の問題としてございまして、基本時代にもございました。あるいは戦前においてもそのような適正規模論がございました。現在起きております農業なり農村の現状からいたしますと、具体的なそうした適正規模論よりも、より地域の実態に合わせて、それぞれの農家の対応、あるいは地域としてそれぞれ規模の拡大等が図れるような条件設定をしていくことの方が重要だという考えに立っております。適正規模という考え方につきましては、先ほど申しましたような需給見通し等等を詰めまして、現在検討しておるというのが現状でございますので、重ねてお答え申し上げます。
  21. 馬場昇

    馬場委員 お話にならないのです。たとえば、農家戸数は四百万いまある、これは百万に減ったっていいのだ、あるいはこれが何千万にふえたっていいのだ。こういう適正規模を持ちもしないで農政はやれないはずです。私がいま言ったことについては全然ピントが外れている。地域の特性とかそういうのはわかるのですよ。しかし、日本全体としての計画、適正規模を持たずにどうします。持たないなら持たない、適正規模というのは考えていないなら考えていない。それでもいいですよ。とにかくきちっと言いなさい。ないはずはないのですから、委員長、出すように命令してください。
  22. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 適正規模論というお考え方をとる方がおられることは私どもも承知しておりますが、必ずしもそういうお考えにとらわれない方もいらっしゃるわけでありまして、北海道とか都府県のそれぞれの地域におきまして、状況が非常に違う、かつ作目も多様化しております。かつそれらの作目ごとの複合化の傾向もあります。あるいは地域間の複合という問題も出ております。私どもそのような適正規模を示さなければすべて進まないという判断にも必ずしも立っておらないわけでございます。したがいまして、毎度同じ答弁になりますが、現時点において適正規模ということでお示しするものはございません。
  23. 馬場昇

    馬場委員 先ほどあなたは、農政審議会に諮ってその結果で適正規模を出すと言ったじゃないですか。適正規模をとらないといまあなた言ったでしょう。私が言うのは、北海道の適正規模はこのくらいだというふうに地域別でも結構ですよ。出すのですか、出さないのですか。あるのですか、ないのですか。つくるのですか、つくらないのですか。はっきり言いなさい。
  24. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 結論だけ申し上げますと、現時点においてはございません。適正規模論という問題をどう取り上げるかについては、農政審議会におきましても各方面の意見を聞いて検討はいたしますけれども、先ほど御答弁申し上げましたが、その際適正規模について結論を必ず得るようにするというところまで私ども確信を持っておりませんし、また、私どもは現時点においてそのようにとらわれる必要はないのではないかという考え方を持っております。
  25. 馬場昇

    馬場委員 そのような状態ならば、この法案を審議してもむだだと私は思うのです。羅針盤を持たずに船を出すようなものですよ。そのことを言って、このことについては保留しておきたいと思います。  次に、具体的な問題に入りますけれども、その前にもう一点聞いておきたいのは、特に、高度経済成長時代に大企業とかその他大金持ちに買い占められました農用地及び農用適地が、いま放置されておる、遊んでおる。大分あると思うのです。この買い占められた農用地や農用適地で現在放置されておる面積は全国的にどのくらいあるのかということと、もう一つは、そういう土地があれば、これを個人なりあるいは農地保有合理化法人なり農協等で買い入れて農地にすべきじゃないか、もとに戻すべきじゃないかと思うのですが、これについてはいかがですか。
  26. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 四十年代の半ばから四十年代の末までの間の農外者による農地の取得の全般的な実態につきましては、農業会議所の調査がございます。その数字で申し上げますと、四十四年から五十年にかけて取得された土地は約二十八万ヘクタール、そのうち農地は二万ヘクタールになっております。これらの土地の取り扱いにつきましては、農業的利用に供すべき土地である場合には農業的利用に供されるように必要な対策を講じております。すなわち、これらの土地が農振法の農用地区域内にある場合には、農業用地として確保するため、農振法の開発許可制の厳正な運用を図るというようなことを初め、格段の措置をとっているところでございます。そして、それらの措置の一環といたしまして、農地保有合理化法人の買い戻しも行っているわけでございます。買い戻しの実績は、四十六年から五十三年度までの数字でございますが、三千百九ヘクタールということになっております。農地保有合理化法人による買い戻しについては、その土地を農用地区域に編入する必要があるということ、それから買い戻し価格の水準が問題になるということで極力努めておるわけでございますが、実績はいま申し上げたとおりでございます。  それから、農振法等による用途規制を厳正にし、転用期待につきましては極力排除するということで私どもは臨んでまいっておるところでございます。
  27. 馬場昇

    馬場委員 農地三法が出ておるわけですけれども、これは耕地面積を拡大し利用を増進するわけでございます。こういう農外者が買い占めて遊んでいる土地は当然農用地に利用する、これこそ利用の増進です。このことは五十年にこの委員会附帯決議がしてあるのですよ。ところが、いまのお話を聞いておりますと、なかなか進展していない、十分ではない、私はこういうぐあいに思います。  大臣が来られましたので、先ほどから残しておりましたのを質問いたしたいと思います。  また繰り返すことになって非常に時間がないのですけれども、四月八日に国会自給率向上決議が行われました。歴史的な決議だと思うのです。そういう意味で、これを具体化するために関係閣僚会議をつくる。先ほど例を申し上げたのですけれども、私は公害の委員もしておりますが、たとえば水俣病のときには水俣病対策関係閣僚会議をつくる、あるいはいま環境アセスメントでも閣僚会議をつくっておる。二十二年ぶりの歴史的国会決議が行われた。食糧戦略物資だ。そういう中で、自給率を高めようということが国民意思で決まったわけだ。農林水産省のことで次官に聞きましたけれども、これを具体化することについて不十分、決議のしっ放し、国民意思を無視しておることが感じられる答弁でした。大臣、先ほど言いましたように、安全保障の問題も国会で決まったわけですから、外交の問題であり、貿易の問題であり、産業構造の問題、国土の問題、水資源の問題、いろいろありますから、食糧自給率政府全体としてどうして上げていくか、この決議をどう具体化するかということで関係閣僚会議をつくって挙げて取り組んでいただきたい。それが二十二年ぶりの歴史的な決議を生かす農林省の道じゃないか、農林大臣がそうやっていただきたいと思うのですが、どうですか。
  28. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 この間の決議は、いま御指摘のとおりで非常に歴史的なものであると思っております。最近の国際情勢の中における食糧事情からああいう決議がなされたわけでございまして、私ども農林水産省を激励していただけたものというふうに私どもは受けとめておりまして、この決議を踏まえて、これから本当に真剣に食糧自給力向上には努力していかなければならないと思っております。  そこで、いま関係閣僚会議というお話でございますが、私といたしましては、いずれにいたしましても、食糧自給力を高めていく、そしてそのために農業振興していくのが農林水産省に与えられた職務でございますので、まず第一義的には、われわれの農林水産省においてあの決議をいかに実効あらしめるべきかということに対して全力をふるっていくべきではないかと思っております。その間においては、当然外国との関係もございましょうし、あるいは環境問題もございましょうし、そういう点においてはそれぞれの省庁と十分連絡をとりながらやっていかなければならないと思います。それをまずやって、しかしそれでもなお、これはもう決議の実現のために私どもの力だけではなかなか及ばないというときには、関係閣僚会議というものを開くことも一つの方法かと思うのでございますが、私どもとしては、せっかくあのような御決議をいただきましたので、まずわれわれの力でできる限りその決議方向に沿って努力をしてみたい、こう考えておるわけでございますので、将来ともにそれをほっておくということでは決してございませんので、必要となれば関係閣僚会議も開くこともあり得ると思うのでございますけれども、まず第一義的にはわれわれの手でやらせていただきたい、こう考えておるわけでございます。
  29. 馬場昇

    馬場委員 食糧安定的供給というのは第一義的には農林水産省の仕事ですね。しかし、国の安全保障という問題、そしていま戦略物資として外交の手段に供されようとしておるわけですから、そういうような問題は、やはり全政府を挙げて、安全保障の問題だったら全閣僚の関係でしょう、外交、貿易の問題、産業構造の問題があるわけですから。いままでこの自給率がだんだん低下してきたということは、全政府を挙げて取り組むということ——逆に低下させようとする省もやはりあるわけです。ところが、安全保障という形で農林省自給力向上に応援してくれる省もあるわけですから、そういう意味でぜひ早くそれをつくっていただきたい。そのためには、まず第一義的にがんばるとおっしゃいますが、農林省だけでは先が見えていると思うのです。しかし、まずがんばると言われればしてもらって結構ですが、農林省の中にその決議を実行するためのプロジェクトチームでもつくっていただけますか。これはどうですか。
  30. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 各局でそれぞれやっておりますけれども、私も決議を踏まえていまやっていこうという姿勢でございますので、必要とあればプロジェクトチームをつくることにはやぶさかではございません。
  31. 馬場昇

    馬場委員 もう一点、先ほど私は、この法律審議するには、食糧自給率向上の歴史的な国会決議、これをこんなぐあいにして具体化していくんですよという一つの基盤、もう一つの基盤は戦後の自民党農政反省という基盤、幾つかの基盤をつくった上で、その上にこの法律を乗せなければ何にもならぬ、どこへ船が行くかわからぬのに船の中のベッドの大きさだけ議論したってしようがないじゃないかということを言ったのですけれども、そこで、もう多くは言いませんけれども、戦後の農政反省の中で、やはり食糧自給率がだんだん低下してきたということはまずかった、他の産業との格差が開いているのはまずい、こういう御反省はありますかどうかということを次官に聞いたのですけれども、弁解ばかりでなかなかはっきりした反省がなかったのですけれども、大臣いかがですか。
  32. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 この間私お答えをしたと思いますけれども、あの農業基本法が昭和三十六年に制定をされまして、それ以来農業のあり方として、やはり米麦だけではなくて、国民食生活の変化に応じたいろいろのものをつくっていかなければいけない、そしていろいろなものをつくること、選択的拡大によって所得をふやし、他産業との所得格差をなくしていくということで農業基本法が生まれたわけでございますが、そういう方向農林水産省努力をしてきたと私は思うのでございます。  ただ、昭和三十年代の後半から四十年代の後半にかけましての約十年間、たまたま日本の経済が大変な高度成長をいたしたわけでございまして、農業の方がサボっておったとかいうことでは決してないと思うのでございますけれども、たまたま農業振興以上に他の経済の高度成長があった。それで、どちらかと言えば農業がある程度取り残されていったというか、そのスピードについていけなかったことは事実これは認めざるを得ないと私は思います。  しかし、これは数字をちょっと申し上げて恐縮でございますけれども、これは政務次官からも答弁があったかと思いますが、わが国の農業の労働生産性も四十年から五十三年の間は年率六・一%ということで、先進国と比べておくれてはいないわけでございますし、また、農業所得も大体九・六%平均伸びておるわけでございます。ただしかし、問題は、いま申し上げましたように、農業基本法の考え方である他の産業との所得格差をなくすという点においては、逆にどうも一向にその差は縮まらなかったということはこれは事実認めざるを得ない。しかし、これは農業政策が悪かったというよりは、高度経済成長のスピードの方がどうも走り過ぎてしまったということではないかと私は思っておるわけでございます。
  33. 馬場昇

    馬場委員 御反省がないようでございますね。あの高度経済成長がスピードが速くて農業はスピードが遅かった、それはもう軽視の証拠じゃないですか。何で同じスピードを出せないか。なぜ工業のスピードが上がるならば農業も同じスピードを出してやらなかったか。食糧自給率外国は皆上がっている、日本だけ下がっている、これはやはりマイナスだ。いろいろな反省も必要と思うのですけれども、これについてはペンディングにしておきまして、時間が非常に経過しましたので、次に進みたいと思うのです。  次に、いよいよ法律に入ってまいりますけれども、これはほかの委員からも質問があったようでございますが、私は、この三法、何のための土地の流動化ですか、何のための規模拡大ですか、規模拡大のねらいは何ですかということがやっぱりわからないのです。そして、私が感じますところによりますと、現行の農用地利用増進事業というのはあるわけですけれども、これを農用地利用増進法という新法をつくるわけですけれども、この中身というのは私は実質的に全農地の自由化と同然だとまでは言いませんが、同じような結果を将来必ず生むというような気がしてなりません。さらに、農地法の改正ですが、これは定額金納制を廃止するわけですけれども、これは農地法の空洞化だ、農地法の根幹にかかわる問題だと思うのです。農業委員会の改正が出ておりますけれども、これは本当に民主的な運営というものの後退だ、私はかように考えます。  そこで、農地を流動化させられる法律ですが、これは五カ年間で二万四千ヘクタールしか動いていないということはもう多くの委員の御質問で明らかでございますが、なぜ農地が流動化しなかったのかということなんです。私は、やはり一つは非常に地価が高い、こういうことが一つの原因だと思う。これは西ドイツの四倍になっているし、アメリカの四十倍ぐらいになっている。それから、地価が高いから買いたい人が余り買えないという状況と、今度は売りたい人あるいは出したい人が、自分が兼業している兼業労働の雇用が非常に不安定だ、そして非常に低福祉であるということ、こういうことで売りたいにも売れない、あるいは買いたい人も買えない、こういうような農地の移動のバックの条件というのがいろいろあると思うのです。そこで、私は、そういう背後の条件をよくしなければ、この法律をつくったって農地の流動化はできないのじゃないか、こういうぐあいに思います。  それから、もう一つお聞きしたいのは、ここで流動化をしようとおっしゃる。五年間で大体二万四千ヘクタールであったのですが、この法律をつくってどのくらいの面積を移動させようと考えておられるのですか、そのことを、これもまた他の委員からお聞きになりましたけれども、再度聞いておきたいと思うのです。このこともまた聞かれました、私も心配ですけれども、どのくらいの規模にして、どこの国と競争したいのか、あるいはどのくらいの規模にしてどの産業と同じぐらいな生産性を上げる、所得を上げるということの比較をしておるのかということ。それからもう一つは、これも質問があったのですが、拡大したところに何をつくるのか、こういう問題について御見解を聞いておきたいのです。
  34. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま、民主化ではないのではないか、民主化に逆行するのではないかというのがまず最初の御質問であったかと思いますが、これはあくまでも当事者同士全部の合意が得られなければやらないということに法律で明記されているわけでございまして、私は、そういう点では、どうも民主的でないという御指摘は私どもとしては受け入れがたいと思っておるわけでございます。あくまでも私どもは民主的なルールに基づいて、それぞれ権利の関係者の合意が前提であると考えておるわけでございまして、民主的にやらしていただいておると私ども信じておるわけであります。  それから、その次の問題は、規模の拡大というのは一体果たしてできるのか、土地政策が、非常に地価が上がっておるために問題ではないかという点は確かにあると思います。でございますので、われわれは、地価が上がったために農家の方が農業をやろうという意欲をなくされたというか、農業をやろうという意欲が薄くて、他の安定した収入を得ておられる農家でさえなかなかお手放しにならないというのは、一つはやはり農地の地価が上がってきて資産化されてきたというところにあると思うわけでございます。そういうことでもございますので、私どもはせいぜい貸借をひとつ促進をしていきたい。  そこで、例の農振法の改正によりまして農用地利用増進事業というのをお願いをいたしまして、これはたしか社会党もそのときは御賛成をいただいたと私ども承知をいたしておりますけれども、いずれにしてもそういうことをやらせていただいたわけでございます。そして、それによって、これは農振地域農用地を対象にしたわけでございますけれども、従来よりは一つ農地の流動化が促進をされてきた、確かに面積的にはまだ多くございませんけれども、促進をされてきたということを見れば、この地域拡大を思い切って、市街化区域はともかくといたしまして、他の地域はすべて対象にし得るという形でこれから積極的に、また権限の委譲もやりやすく手続的にいろいろやっていただいて、農業委員会中心としてやっていただくならば、私どもは相当促進されるのではなかろうかと思っておるわけでございます。  そこで、それでは一体どれくらいの面積を予定しておるのか、こういう御指摘でございますが、これはこの間もお答えをいたしましたように、まだ私ども、必ずしも将来の何年先にはどれくらいという具体的な目標数字は持ち合わせておりません。それではどこと比較をするかということでございますけれども、この経営規模の適正規模について、先ほど来私が入ってきたときにちょうど議論があったようでございますが、いま御指摘いただきましたように、日本の場合には一農家当たりの耕地面積が、たしか一九七五年の調査であったと思いますが、一・一ヘクタール、そしてアメリカ、もうこれは別でございますが、西ドイツが十三・八ヘクタール、フランスがたしか二十五・四ヘクタールだったと思います。そういうような形でございまして、どこの先進国と比べても日本の場合は大変経営規模が小さいわけでございます。どこを目標にするというわけではございませんけれども、少なくとも日本のいまの一・一ヘクタールというのは、いまはたしか北海道は十二・何ヘクタールになっていると思うのでございますけれども、北海道並みに内地が全部いくというわけにいかないと思いますけれども、いずれにしても、規模の拡大をできるだけ努力していくということは、結果的に生産性向上につながるわけでございますので、多々ますます弁ずというふうに私どもは考えておるわけでございます。しかし、先ほど申し上げたように、民主的なルールでいくわけでございますから、強制するわけにもまいりませんので、幾らになるかということまでわれわれはやはり具体的に数字を決めるというわけにはいかないわけでございまして、この点は、先ほどのお話で私どもは民主的にやるということにおいてなかなか規模を決めるというわけにいかないということを、ひとつ御理解をいただければ大変ありがたいと思います。  それから、その次は、一体何をそこにつくっていくのか、こういう点についてはどうか、こういうことでございますけれども、これについてはきのうも柴田先生にもお答えをいたしましたけれども、いま水田利用再編対策ということで、せっかくお米をおつくりをいただいても余ってくるという状態の中で、何とかひとつ転作をお願いをしたい。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 それで転作の定着をお願いしたいということで、麦であるとか大豆であるとか飼料作物であるとか、こういうものを重点にしていま転作をお願いをいたしているわけでございまして、こういうものはこれから幾らつくっていただいても、いま現実に大豆はたしかまだ五%くらいの自給率しかございませんし——たしか五%、四%でありますか、とにかく五%を切っておりますし、あるいは小麦についてもやっと八%まで来た。かつてはそれこそ二%くらいまで落ちていたわけでございまして、やっと八%まで来たということで、こういうものはこれから幾らつくっていただいても、決してこれで過剰になるということはあり得ないわけでございますので、そういうものをせいぜいつくっていただきたいということを私どもお願いをし、そしてこれもきのう申し上げましたけれども、それぞれ価格政策が行われておりますし、それに転作奨励金がある程度上積みされておりますし、そういう形でいまつくっていっていただきながら、片方で受けざらとして耕地面積を拡大をしていっていただく。そうすると、何年か先に耕地面積が拡大されたときには、転作奨励金が少しくらい下がってもまだ採算が合うようになるかもしれないわけでございますし、その辺のところは、それまでは私ども水田利用再編対策をやるときは転作奨励金は今後とも考えていくつもりでございますので、そういうものと合わせてちょうど受けざらをつくっていただく。そうすると、将来においては非常に規模が拡大をしてくれば、ひょっとして水田利用再編対策がなくなって転作奨励金がなくなった場合でも、今度は生産性の高い形でつくっていただければ、農家の手取りもふえてくるのではないか、こういうことを私どもは考えておるわけでございます。
  35. 馬場昇

    馬場委員 よくわからないのです。そこで、もう時間も余りないのですが、たとえばいま何をつくるかということでもって、麦をつくる、大豆をつくる、飼料作物をつくる、こうおっしゃいました。それはいま大臣もよく御存じのとおりで、いま自給率は、小麦は九七%輸入ですね、トウモロコシは一〇二%の輸入、コウリャンが九九%の輸入、大豆が一〇二%の輸入、こういう状況ですから、これは言うはやすいのです。それは当然言えると思う。ところが、今日のアメリカとの関係その他の国との関係における日本食糧事情日本は核のかさの中におりますが、アメリカ食糧のかさの中に日本がある。そして貿易の関係上買わされる。この外圧というのは、大臣が言うようにはね返してもらわなければいかぬけれども、なかなか困難な問題があろう。そうすると、そういうのは余りつくれない。じゃこの規模拡大はどうなるか。結局また米をつくる。米は余っている。そういう中で規模を拡大していくというとやはり米中心になってしまう。そうすると、小さい過疎の農家の人たちの土地を減反してしまうということになるかもしれませんし、そういうしわ寄せがあって二種兼業農家を切り捨てるとかいうことになると思うし、今度はまた集まったところでも、広くしますとコストが下がるわけでしょう。コストが下がると生産者の米価を下げることができる。いま日本の農民は米価並みの農産物価格を要求しているわけです。ところが米価をずっと下げる。そうすると、日本の低価格政策というものがここから出てくるのじゃないか。だから、この法律は、将来必ず日本農産物の低価格政策のスタートだ、私はこういうような感じがいたします。  次に、時間がありませんから、もう一々のやりとりはできません、まとめて申し上げますので、後で一括御見解を聞いておきたいのです。  まず、私は、農地の高度利用、利用増進のあり方、方向について皆さんと見解を少し異にしております。やはり規模を拡大するということは生産を単一化してしまう。そして、大型機械化の農業ということになりますと、そこに農薬を使う、肥料を使い過ぎる、こうやって薬づけの農業になってしまう。そして規模を拡大することは、さっきも言いましたように小農を切り捨ててしまう。規模を拡大する。たくさんの従業員を使う。昔の、違った意味の小作制度みたいなものをつくってしまうんじゃないか。そして皆さん方答弁を聞いていますと、どうもわからないのは、二種兼業の人たちを将来どうするのかという将来展望というのが出ていない、こういうことでございます。だから、この高度利用増進というものに、こういう危険がありますから、皆さんの言う規模拡大という方向をとらなくて、土地の利用を高度化していく。いま一〇二%でしょう、これは一五〇%にしますと五〇%の農地がふえることになるわけでありますから、二〇〇%にしますと——よその国は皆そうでしょう、一五〇%、一六〇%利用しているんですから、土地を高度利用する。そして日本の気候とか風土に合ったような農業をつくり上げていく。それで外国ともまた競争もしていく。たとえば農地の通年の利用を考えるとか、あるいは裏作と表作の輪作を非常によくやるとか、あるいは農業と酪農を結合するとか、また借地をするのにも、季節的に借地をするのか、交換して借地をするのか、こういうことで、日本農業というものを気候、風土、土地の高度利用という中でつくり上げていく。そのことを先にしなければいけないんじゃないか、こういうぐあいに私は思います。皆さん方がいま計画しているこの法律というのは、資本の論理に基づいた規模拡大政策、私はこれは必ず失敗すると思うのです。だから、先ほどから言っておりますように、日本の国土とかあるいは日本人に合った日本農業政策というのをまず最初に樹立すべきじゃないかということを考えます。  次に、この法律は強権政治につながる、ペナルティー農政に必ずなります。農民を抑圧するという方向に行くと私は思うのです。この間からも議論になっておりますように、村のためとか部落のためとか、泣き寝入りをさせられて、補助金でもって必ず抑えられる。そして本当にペナルティーの農政が出てくると思うのです。だから、そういう強権政治にならないという保障というものを、この法律じゃ足らないんです、もう少し、強権政治になりませんよ、ペナルティー農政はしませんよということをやはり法律の上に明らかにしておかなければいけない。これは非常に心配でございます。そして、あくまでも農業というのは自主的に民主的にやる、そこからしか生産は出てこないのです。上からどんなに言ったって生産は上がらない、こういうぐあいに私は思うのです。だから、最終的に、手放した農家というのはまた生活不安に陥り、集めた農家というのは新たに借金ができて、不安定な価格の問題で悩むということになると思うのです。そういう点が問題だと思うのです。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  もう一つは、減反政策とこの利用増進というのは矛盾している政策だと私は思うのです。だから、悪く勘ぐれば、もう八十万ヘクタール減反するというのだったら農用地の三分の一減反するわけですね。ところがそうなってきたら、いままでは不良地で減反に応じてきた農民も、もう三分の一自分の優良農地を減反しなければならない。これには応じないと思うのです。そういうことはあなた方も知っておられると思う。ではどうするか、そういう中から、一人の人にたくさん集積をしておいて、おまえのところを減反しなさい。たくさんの農民がおると減反しにくい、集積して、そこで減反をやる。減反政策の地ならしの法律のような気がしてならないわけでございます。  それからもう一つは、食管制度の問題で、これを物納にするということは食管制度を根幹から覆すことになりますので、こういうことはしちゃいかぬと私は思うのです。そういう点につきまして、強権政治にはせぬとおっしゃいますけれども、具体的に言いますと、この間本郷委員が取り上げました構造改善局長の「農地利用の集積の促進について」、こういう文書を出すときに、必ずペナルティーつきというように現場では受け取られるようなことも書いてあるわけでございます。こういう通達は出してはならないし、出している通達は撤回しなければならぬ、こういうぐあいに思うわけです。  そこで、私の質問の時間があと二、三分しかありませんので、個々の答弁はできないと思うのですけれども、大臣のこの法案に対する心構えというもの、改善局長はこれは撤回するかどうか、この二つについて答弁願いたい。
  36. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いろいろ御指摘がございましたが、順序を追ってお答えをさせていただきます。  価格政策について、何か低価格政策へ持っていこうとしているのではないかという御指摘がまずございましたが、私は決してそうは思っておりませんので、生産性が高くなってまいりますれば、その高くなった分を全部消費者に還元すれば、これはそういう御心配があろうかと思いますが、やはり私は生産性が高くなった分を生産者も消費者も両方で分け合うという考え方が大切ではなかろうかと思うのでございます。それで生産者も手取りが多くなって生産意欲が持てる、逆に消費者の方もある程度いまよりも安くなるということになってくれば、消費者も理解をする。国民理解のもとに農業がそういう形で発展をしていくということになれば、農業者もこんな幸せなことはないと私は思っておるわけでございまして、そういう面で生産性を高めていく必要があるのではないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。  それから輸入規制の問題でございますけれども、何か小麦やトウモロコシを強制的に私どもは買わされているんじゃないかという御指摘がよくあるのでございますが、たとえばこの間、私、過剰米処理の問題のときにアメリカとやり合った中で、おまえの方そんなに言うのなら、おれの方はもうトウモロコシを買わないよ、過剰米をえさに持っていけばその分だけはトウモロコシが要らなくなるよということをはっきり言っているわけでございまして、私どもは決して向こうから押しつけられて買っているとは思っていない。日本国内食糧、たとえばパンなりうどんなり、そういうものの原料として小麦が足りないものでございますから、やむを得ずその分を買っている、こういうように私どもは考えておるわけでございます。  飼料穀物も、幾ら高くてもいいということなら別でございますけれども、いま畜産農家のことを考え、また消費者も、いまそれじゃ何十倍の畜産物の価格でいいというわけにはなかなかいかないと思います。そういうことで、日本では安い飼料穀物ができないからやむを得ず買っておるのでございまして、日本国内で安い飼料穀物が今後出てくるようになれば、決してそんなものは買う必要はない、こう私どもは考えておるわけでございます。  それから、単一化していくと薬づけになるのではないかということでございますが、薬づけになるということは、もう公害防止ということで、先生も公害の方をおやりになっていて御承知のように、最近公害規制が非常に厳しくなってそういう農薬は勝手に使えないことになってきているわけでございまして、私どもは今後少なくとも害のあるような農薬が使い得るとは思っておりません。それよりも、たとえば二種兼業あたりで農業をそうやろうという気持ちのない方でも、それこそ三日か四日しか使わないのに機械を買ってしまわれるというような現実もあるわけでございまして、そういうものは逆に、ある程度規模が拡大されていけばそういう弊害はなくなるのではないかと私は思っておるわけでございます。  それから、土地の高度利用をしろというのは、これはおっしゃるとおりでございまして、そういう方向に私どもも努力をしていかなければならぬと思っております。そのためには、麦の品種改良とか技術改良とか、いろいろのことを私どもは一方において努力をしていかなければならないと思っております。  それから最後は、これは先ほどと同じことでございます。どうも強権的だとか強制的だとかというお言葉がございますけれども、これは法律にきちんと書いてありますように、関係権利者の全員の同意がなければいけない。それじゃそれを何か強制的に同意させるようにするのじゃなかろうかということでございますが、これは全くの杞憂である、私どもはそんなことは決してするつもりはございません。  それから、食管との関係の物納の問題でございますけれども、これもこの間から議論されておりまして、私どもは食管法の根幹は今後とも決して変える気持ちはないわけでございます。しかし、現実にいま、いわゆるやみ小作というのでございますか、物納が私どもの調査でも四十何%になっておるわけでございまして、やはり貸す方の人も自分の貸した土地のものを自分の飯米にしたいという気持ちがあるから、そういうことが結果的に行われているのだろうと思いますので、現実の姿がそこまでいっておるものならば、廃止しても金納でもいいわけでございまして、どちらでも選択してやっていただけるような形にしていく必要があるのではなかろうか、こういうことでございまして、何か撤回をしろということでございますが、私どもはいま申し上げたような理由によりまして、ぜひこれはお願いをしたいと思っておるわけでございますので、撤回をする気持ちはございません。
  37. 馬場昇

    馬場委員 私が撤回をしろと言ったのは、この法律を撤回せいと言ったのではないのですよ。構造改善局長の通達を撤回しろと言ったのですよ。たとえば減反のときでも、農林大臣はその席で、絶対に強制はいたしません、ペナルティーはないのですと言っておって、現実は、全く地元の農民は泣きの涙で強制させられた形でやっているのですよ。もうそれは議論しませんが、構造改善局長、これでペナルティー、強制に当たる部分があるのですか。こういう通達は今後出さない、出している部分は撤回すると言われますか。
  38. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 局長名の通達でございますので、私から御答弁申し上げます。  公共事業にいたしましても、構造改善事業にいたしましても、その地域全体としての農業振興を図るということで事業を実施するわけでございます。そういう意味から言いますと、農地の効率的利用、集団化、営農ルールの確立といったことが当然必要となってまいります。私どもそういう観点から、流動化は十分これに貢献し得る対策であるというふうに考えておりまして、流動化の促進に役立つような実際の事業を進めている市町村を優先的に取り扱うということで、奨励的にこれを考えているわけでございます。  ただ、そういう奨励的な措置がペナルティーと同じことになるじゃないかというお尋ねでございますが、実際にいま農用地利用増進の計画なり規程なりを設けておりますところは、三千余市町村のうちすでに千七百市町村に及んでおります。まだできてないところはこれからの予定を明らかにしてもらいたいというようなことでお勧めしているというようなことでありまして、それが実質的にペナルティーとして強く働くというようなところまでは私ども考えておりません。全体としての農地を有効に使うように、そういうお考えを持ちながら公共事業あるいは構造改善事業をとっていただきたい、こういうことでございます。
  39. 馬場昇

    馬場委員 留保した部分もありますけれども、終わります。
  40. 内海英男

    内海委員長 芳賀貢君。
  41. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最初に農林大臣にお尋ねいたします。  今回の法律審議は、農地法農業委員会法並びに新しく出ました農用地利用増進法の三法案一括審議という形で、今日まで参考人招致を含めますと七日間にわたって開会されておるわけであります。  そこで、三法といってもそれぞれ独立の法律案でありますからして、独立性を持っていることは言うまでもないわけです。だから、これを、政府の希望もあって、ぜひ三案関連のもとに審議をお願いしたいということと、それから、元来、社会党としては、これは農地制度にかかわる重要な法案であるので、委員会付託の前に本会議において上程をして、政府当局から趣旨説明を受けて、そして重点的な質問を行う、終わってから当委員会に付託すべきであるということで進めたわけでございますが、議運の関係等もありまして、本会議上程の機会を失うままに当委員会において審議を行っておるわけです。  そういう経緯がありますが、農林大臣としては、この三法案に対してどれを一番重点にして委員会にその審議を求めておるか、その点を聞かしてもらいたいと思います。
  42. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いまの、趣旨説明がなくておりたという点につきましては、やはり趣旨説明をするくらいの重要なものであると私は受けとめております。ただ、いま御指摘いただきましたいろいろの関係で、この委員会趣旨説明なく付託されたわけでございまして、その点は、重要性においては、私どもは、趣旨説明をする程度の重要性というものは当然この法律案は持っておる、こう考えております。  それでは、どれを重要と考えているかということにつきましては、先生も御承知のとおりで、やはり農用地利用増進法案がこれは主体になっておると私は考えております。それに関連をいたしまして、農用地利用増進をする上において農業委員会に権限を付与するとか、あるいはそのより増進を深めていくためには、現在の小作料におきましてどうも物納というものが相当大きなウエートを現実には占めてきておりますし、今後農用地の流動化を図る上においては、その出していただけそうなある程度他に安定した所得を得ておられる二種兼の方とか、あるいは後継者のいない二種兼の方とか、そういう方々から、より流動化を促すといいますか、より流動化がうまくくるというようなことを考えますと、やはり物納を認めさせていただくことがいいのではなかろうか、こういうようなことで、農地法の改正ということを考えさせていただいたわけでございまして、言ってみれば、農用地利用増進法案中心になりまして、二法がそれとの関連において御審議をお願いをしておる、こう私は解釈をいたしておるわけでございます。
  43. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、三法案それぞれ重要な意義を持ってはおるが、この際は農用地利用増進法案を重点にして、この法案がたとえば成立した場合においては農地法並びに農業委員会法に当然これはかかわりは持ってくるわけですから相関関係はあるので、その部分について若干の改正という形で手直しを行う、そういうように理解していいですか。
  44. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 そのとおりでございまして、農用地利用増進事業を……
  45. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうかそうでないかを言っていただけばいい。
  46. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 ちょっと説明をさせてください。  農用地利用増進事業を強力に進めていく上においていろいろ必要なことについて、他の二法についてその関連において必要なところを改正をさせていただきたいということでございまして、いわゆる農地法基本的な性格を変えるとかそういうようなことは毛頭考えていないわけでございます。
  47. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それじゃ、特別の関連のない部分について、この際単独ではできないことを便乗的にやるというそういう考えはないですか。
  48. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 大臣が申し上げましたように、農用地利用増進法が中心になって、その関連のもとに三法案一体として御審議をお願いしているわけでございます。ただ、農用地利用増進法と直接関係のある規定が大部分でございますが、かねてから、たとえば行政の簡素化、業務の円滑な執行ということのために、農業委員への許認可等の権限の委譲というような問題、あるいは法務当局からも求められております罰則の整備、ほかの法律等とのバランスを保つというような、便乗ということではございませんで、それ自身本来的に必要とされておって、この際あわせ改正することが必要だという点については、やはり改正案の中で審議をお願いしているところでございます。
  49. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではもう一つ、杉山局長でいいですが、政府が法案作成の過程において、社会党としてではありませんが、老婆心ながら、三法案といってもそれぞれ重要な意義を持っているものだから、必ずしも同一判断の基準ですんなりいく場合もあるだろうがいかぬ場合もあるだろう。そういう場合に何が一番大事かをよく考えて、利用増進法が一番大事であれば、他の二法といっても、農業委員会法は修正内容から見て天下を覆すようなものではないわけですから、少なくともどんな事態になっても利用増進法だけはひとり歩きするような形で国会に出す方がいいのではないかということは言ってあるわけですが、今度の提出は、内容を見ると、私としては利用増進法だけがそのままあるいは修正で通ればひとり歩きはできると評価しておるわけですが、その点はどうですか。
  50. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 三法案一括して御審議をお願いしております趣旨は、確かに利用増進法は単独でも運用できないことはございませんが、全体として三者一体となって初めて総合的な効果を発揮するという実質があるからでございます。直接関連する規定もございます。たとえば農地法の改正の中で、現在の定額金納小作料のことなど関連する規定もございます。そういう意味では、ある一つの法案だけを成立させるということではなく、私どもはぜひとも三者一体としてこれを扱っていただきたい、こういうふうに考えております。
  51. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうであれば、どうして利用増進法の中において、たとえば農地法の一部改正であるとか、農業委員会法の目的の位置づけであるとか、農業協同組合法の一部改正とか、増進法案の中で他の関連ある法律については改正を意図しておるわけですから、そういうことは増進法だけでも、関係法律に対してはこの分だけが改正になれば独自で法律の志向する動きはできる、そういう配慮じゃないのですか。そうでなければ、農地法の部分については農地法そのままの改正に取り組むのは当然ですから、要はひとり歩きできるか、できぬか言ってもらえばいいのです、それによって質問するわけですから。
  52. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 ひとり歩きできるかという言葉の内容の問題があると存じます。法律技術的に、確かに現在の利用増進法案、これが成立いたしますれば、これ一本だけで事業の執行は不可能ではございません。ただ、これを本当に有効に実施していくためには、直接関連する部分のみならず、一般的にこの際農業委員会の組織を強化する、自覚と責任を持ってもらうようにその責任の程度なり業務の内容を明らかにするということを含めまして、これが運営が全きを得ると考えております。  それから、先ほど申し上げましたように、農地法もそれ自体と直接関連というよりはやや広い性格を持つ小作料についての所要の改正を行うこと、これらを含めまして全体がやはり一本として扱われて初めて、政府といいますか私どもが予定しておったような効果が上げられると考えております。
  53. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、事情の変化があるわけですから、列車に仕立てれば、三本一緒に連結して発車する用意をしておったけれども、北海道が猛吹雪になった、全部運休にしてしまうとえらいことになるので、優等列車一本だけ、増進法なら増進法という吹雪にも抵抗の強いものを先に発車させる。あとのは天候が回復してからでも、いずれ目的地へ着けばそれでもいいが、どうしても見込みがないとすれば私は断念するよりしようがないと思うのです。そこらは大臣の考えはどうですか。
  54. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもは、いま局長からも答弁いたしましたし、私からも先ほどから申し上げておりますように、メーンは確かに農用地利用増進法案で、これはぜひひとつ御可決を願いたい、こう願っておるわけでございます。そして、参議院も含めてぜひ成立させていただきたい、それが今後の日本農業の体質改善に役立つのだ、こういう気持ちを持っておるわけでございます。それとの関連の二法でございまして、先ほどの局長答弁にもございますように、確かに必ずしも直接の関連でない部分もあるかと思いますが、考え方としてはそれはそう大きな問題ではなくて、やはり農用地利用を増進をするという関連の部分が主体であると考えておりますので、私ども提案いたしましたものとして、いまここでどれを選択していくか、もちろん農用地利用増進法はぜひお願いしたいのでございますが、それでは他の二法はおまえ必要ではないのか、こういうふうにきめつけられますと、私は三法あわせてお願いしておるわけでございますので、私としては三法ともぜひお願いしたい、こう申し上げざるを得ないわけで、たとえばいろいろ与野党間で修正などのお話の中で、そういう点については国会でおやりになることでございますので、私どもがとやかく言うことではございませんけれども、私どもとしては、与野党よくお話し合いをいただいて、修正していただいてでも構わないから——出した者としては修正ということは余り好ましくはございませんけれども、気持ちとしては、場合によってはそういう修正があってでもぜひ三法とも通していただきたい、こういう考え方でいるわけでございます。
  55. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だから、国鉄で言えば、あなたが鉄道監督局長局長というのは現場で発車を指示する権限はないのです。委員会であれば内海農林水産委員長が現場の駅長ですから、この駅長が善良な判断で、安全性も考慮して発車の合図をする、しなければ出発できないことになっておることを念頭に置いてもらいたいと思います。  そこで、農地法の関係ですが、増進法重点であれば、私は農地法の第二十一条、二十二条削除というのは全然関係がないと思っていますが、その点はどうですか。
  56. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 直接的には法律的には関係ございません。ただ、事業の執行という点におきましては重大な影響を持つという意味で関連がございます。
  57. 芳賀貢

    ○芳賀委員 二十一条、二条は、農地についての賃貸借の契約条項をうたってあるわけですから、増進法で言えば利用権の設定ということになるわけです。利用権の設定という問題は、今度新しい名前をつけた増進法にはもちろん載っておるが、これはいま始まった問題ではないわけです。五年前の農振法の改正の中の利用増進事業規定というものは、この中には所有権の移転は入っていないわけです。五年前にすでに利用権設定というのは、名前は農振法の中でありますが、ちゃんと法律として五年間運用されて、最近特に相当の成果を上げておるわけです。だから、この部分については何も農地法の大事な定額金納制を外してしまわなければこれからの増進法の利用権設定の事業というものはうまく進まぬということは、私は全然ないと思うわけです。そうじゃないですか。
  58. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 今回の独立した法案でもって利用増進事業を進めたいということをお願いしております趣旨は、過去五年間、農振法の体系の中でこの事業をやってまいったわけでございますが、いま一歩こういった点に改善が加えられればさらに前進が図られるということで、これは市町村なり県当局あるいは農業者等の御意見も承りまして、必要な改善措置をとるということにいたしたわけでございます。その際、利用増進事業をやりたいけれども、農地を出したいけれども、自分のところでとれた米が食べられない、お金で小作料を払ってもらってもそれはどうもというような御意見がかなりあったわけでございます。そういう意味では、今日定額金納制にこだわることなく物納の形も認められるように改正することが、利用増進事業の一層の進展に役立つものというふうに考えたという意味で関連があったわけでございます。
  59. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは大臣も承知してもらいたいですけれども、現在の農地法というのは、いろんな変遷の中でだんだん農地法そのものが当初の大目的から横へそれつつあるわけなんです。たとえば、昭和四十五年の大改正のときも、農地法とか農振法というのは、いままで一国会で通ったことはないのですよ。五とか十とかというちょうどの時期に必ず通っておりますね。だから、四十五年の場合には、四十四年に出してだめになって四十五年に通ったとか、農振法の場合には四十九年に出してこれはもうだめと言われて、そして今度は五十年に大幅修正をしてようやく通った。だから、四とか九のつく年に出せばその年は必ずだめなんですよ。そういうジンクスがあるのです。今度は五五で出してきたけれども、そううまくはいかぬと思うのですね。それだけ重要な法案の場合は国会においても十分慎重審議をして、一国会で上がらぬ場合はまた次の国会とか、次の国会政府が十分な配慮を加えて出し直すとか、そういうことでやってきておるわけです。ですから、十年前の農地法改正というのは本当に大幅改正でして、これはわれわれから言えば、農地法農地制度の後退ということにいまだにそう思っておるわけです。  そこで、仮に二十一条、二十二条を削除しても、残った小作関係についての条文の中から、それでは金納制にかわって物納制というものが、二十一条、二条を取っ払ってしまった場合にそこから根拠が出てくるかということについては、これは全然出てこないのですよ。それは局長もわかっておると思うのですね。これがじゃまになるから、外せば直ちに金納もできるし、物納もできるという根拠は、いまの農地法の中にもないのですよ。それをわからない、これだけ外せば物納になるというような甘い考えの農林省局長とか部長とか、そこへ座っている担当課長あたりでは、少なくともそんなばかな考えを持っているのは一人もいないと思うのですけれども、そうじゃないですか。
  60. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 先ほど申し上げましたように、自分のたんぼでとれた米を食べたいという観点から、小作料を取る場合は物でと、そういう実態があるということを申し上げているわけでございます。そういう意味で、私ども今回……
  61. 芳賀貢

    ○芳賀委員 こっちの質問に率直に答えなかったら、審議は進まぬじゃないですか。二十一条、二十二条を外した場合に、じゃ、あとの残った小作関係の条文の中から物納制というのは生まれてくるかどうかということを聞いている。
  62. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いえ、私が申し上げましたような実情があるのと、いま一つは、そういうことが先行して今日実際の小作料の支払いがどうなっておるかということを見ますと、特に最近の契約のものについては物納の支払いの形のものがかなり多くなっている。四十六年以降のものについて見ますと、約四割が物納という形で小作料が支払われている実態にあるわけでございます。
  63. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは重大な答弁ですよ。物納が四割あるということになると、その分はもう完全な農地法違反ということになるのじゃないですか。違いますか。そうか、そうでないかだけ、局長答えればいいですから。あとのことはお互いにわかっておってやっているわけだからね。
  64. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 法律的な性格は、まさしく先生御指摘のように農地法違反でございます。
  65. 芳賀貢

    ○芳賀委員 じゃ、農地法違反のその根拠はどうなっておるのですか。特にこの二十一条、二十二条で定額金納制というものが明定されておる。したがって、農地法の中では、必ず当事者による文書契約を締結して、その文書契約を地元の農業委員会に提出して、そして農業委員会が賃貸借契約台帳というものにこれは記載し、保存するということになっておるわけですね。ただ、違反ということになれば、農地法に基づいて正規に当事者が賃貸借の契約を行って農業委員会に提出したその賃貸借の中で、それに反して物納制が行われておったということになれば、これはもう明らかな違反ですけれども、私の知る限りでは、正規の文書契約を行った賃貸借の中において、それに違反した事件というのは余りないというふうに記憶していますけれども、そんなにあるのですか。
  66. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 その点につきましては、先生のおっしゃるとおりでございます。
  67. 芳賀貢

    ○芳賀委員 おっしゃるとおりと言ったって、どういうのですか。
  68. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 契約内容でもってはっきり表向き物納を認めたという形式のものは、まあ皆無かどうかはわかりませんが、少ないと存じます。
  69. 芳賀貢

    ○芳賀委員 じゃ、あるといえばそれを見逃がしてきたわけですか。
  70. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 まあ、見逃がしてきたといいますか、それがわからなかったということも含めて是正の措置をとってこなかったということは実態としてございます。
  71. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは関谷部長でも若林課長でもいいですけれども、私は、農地法に基づく契約の中で、そうした物納による法律違反というのはほとんどないと思っているのですけれども、あれば、どのくらいあったが、実は見逃がしたなら見逃がしたという件数を明らかにしてもらいたいと思うのですよ。これは局長はそこまで目が届かぬですからね。
  72. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 実はそういう実態については、部長におきましても課長におきましても、私と同じ程度の認識でございますので、ひとつ御勘弁いただきたいと存じます。
  73. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは恐らく正規の法律に基づいた農用地の賃貸借とか、そのほかに永小作権というのが別にありますが、それによるものではなくて、それによらざる通称やみ小作であるとか請負耕作であるとか、その法律に準拠しない形の耕作というものが、これはたまたま物納によって行われておるということは、もう十年も十五年も前からそういう問題はあったわけですよ。だから、農地制度の秩序を乱すようなやみ小作とか請負耕作というのがだんだん全国的に広がるということは大変な問題である。そういうことから、五年前に農振法の改正の中において新しい制度を設けて、できるだけそうしたやみ小作とか請負耕作というようなものについては、いずれかの制度に乗せて秩序を正してやるということでやってきておるわけだから、それをとらえて、四割それがあるから、だから農地法の定額金納制をやめなければならぬということにはつながらぬと思うのですよ。このけじめだけはちゃんとつけておいてもらわぬと、大臣答弁を聞いても、必ず四割は物納でやっていますと、それはこの間、委員会で阿部昭吾君が山形県の事例を挙げて言われたとおりですよ。近藤次官だって山形県ですから、ある程度農業のことを知っている方だと私は思っているのですけれども、そういうことであるから、ただみだりに二十一条、二十二条を外せばいいというものではないのですね。  そうなると、標準小作料制度というのは残っておるでしょう。たまたまことしの九月で統制小作料の残存期間というのは消滅するということに、これは四十五年のときの改正の措置でそうなっておるわけですからね。そうなると、小作制度の基準ということになれば、当然現在の法律にある標準小作料制度というものを適正に効果的に運営するというのが一番大事な点になるわけですよ。それを強化、運営するということを全くこれも忘れて、忘れてというのは法案提出の過程においては標準小作料の規定も全部取っ払う、これは不発に終わったわけですけれども、段階的には、統制小作料というもの、これはもう十年前激烈な議論をしたわけだから、当然この時点においては標準小作料制度というものが、法律によって都道府県の各市町村においても、当該農業委員会において農林省の指導のもとに実態に合致した標準小作料というものを設定して、そしてそれを公告して、これを基準にして地域の賃貸借における小作料の設定をしろということになっておるが、この点については農林省としても余り熱意を持って促進していないと思うのですよ。件数は全国的におおよそやっていますけれども、農業委員会系統においてもどれだけ真剣にこれを徹底しているかということになると、私は相当疑念を持っておるわけです。やるべきことをやらぬで金納制を廃止して、そして金納、物納の選択ができる。そうなれば、当然これは所有者優位の契約ということに、ならぬと言ったってなると思うのですね。そういうふうになっていけば、現在の農地法においても農地法の大原則である目的と違うような現象を法律改正によって誘発するということになると思うのです。だから、利用増進法に直接の関係がないということであれば、この改正というものは相当慎重を期さなければならぬと思うわけです。しかも、これは単に農地法だけでできる問題ではないですからね。  仮に物納制もできるということになった場合、物納といえばいやでも米の物納ということになると思うのです。それは物納であれば、畑をつくった場合にはそこでとれた豆でもイモでも金額に換算して持ってこいとか、それから蔬菜園芸をやる場合においては、その貸し付けた面積から生産された蔬菜を一遍に持ってきても食えないから、一年じゅう新しいものができたたびに季節的にこれを分類して納めるということも、できないことはないでしょう。一々所有者優位の契約ということになれば、もう根本的にいまの農地法というのは覆ると思うのです。農地法の目的では、これは目的を読んでみてもわかるように、目的の中に「耕作者」という字句が三カ所出ているでしょう。国土の一部である農地というものは耕作者みずからが耕作して所有すべきものであるという原則に立って、だから耕作者の農地の所有を促進するためという目的があるわけでしょう。その次が、十年前いわゆる流動化の変な条文が無理やり入っちゃったのですけれども、その分が今度の利用増進法につながっているところなんですよ、絶対悪いとは言いませんが。それじゃその後の結びというのはどうなっているかというと、農業生産力の増進と、それから耕作者である農民の所得向上のためにこの農地法はあるということになっているわけですからね。農地法を初めから終わりまで何回見ても、耕作しない農地の所有者のためにこの法律があるという規定は全然ないですからね。つくらない土地であれば、それが私有財産であっても、大事な日本の国土ですから、国土の中における農地農用地というものはどのような社会的な使命を持っているかということになれば、これは農業生産のための生産手段として初めて農用地という名前がつくわけですから、それをだんだん耕作者の地位を後退させて、そして権限を奪って、所有者優位の法律に変えるということは、これはもう国民が見てもおかしいじゃないか、そういうことをしない方がいいということになると思うのですよ。  今度の改正というのは、全国的に見ると農業の経営区分というのは、とにかく第二種兼業七割ですからね。県によっては八五%第二種兼業というところも出てきているわけです。そういう状態の中で、専業農家中心とした農地の所有権移転を通じての流動化というのは現実の問題としてはなかなか進まないわけです。だから、その所有者の地位を向上させて土地所有者のきげんをとりながら、それを貸し手として農地を提供さして、耕作を拡大しようとする耕作者に対して利用権設定の中で経営の規模をできるだけ拡大できるものはさせるというのが目的でしょう。だから、地主が、地主と言ったって零細ですからね。専業農家の場合には、多いのは十ヘクタールとかあるいは五ヘクタールとか、内地県においてもまあ二ヘクタールから三ヘクタールという、そういう専業階層もおるわけで、今度対象にする農地所有形態というのは、恐らく第二種兼業七割の中の半分はサラリーマン所有者ですから、サラリーマンというのはこれは公務員も含めてですよ。皆さんのように国家公務員もあるいは地方公務員も、あるいは民間の雇用の安定した人、賃金の高い安いは別として、とにかく臨時雇いじゃないのだから、雇用の安定した条件の中で先祖伝来の五反歩とか一町歩の農地を大事に保有していきたい、そういうことで自分がいろいろな手段で耕作をしたのだけれども、今度はこの法律ができれば安心して手放すことができるでしょう。持っておる農地は面積がどれほど多くても、今度はそれを貸し出せば小作地の制限なしにちゃんと確保していけるという安心を与えるわけですから。それから、契約年限というのは長い方がいいが、たとえば一年であっても三年であっても五年であってもそれはよろしい。小作料については物納希望であればそのとおりにします。だから、所有者の方から見れば至れり尽くせりですよ。  ぼくが頭に来るのは、零細な先祖伝来の土地を大事にするのはこれはいいことですよ。しかし、それをいいことにして全部貸し出して、少なくとも飯米程度は自分の土地からとれたものを持ってこい、そういう制度は問題があるんじゃないですか。それほど自分の農地から飯米をとりたいのであれば、五反歩の場合は四反歩だけ貸し出して、一反歩だけ保有して、母ちゃんでもじいちゃんでも一反歩くらいの水田を守ることができないということはないと思うのですよ。そうすれば十俵の米がとれるじゃないですか。十俵は六百キロでしょう。たとえば年間百キロずつ食べるとしても、これは六人分の一年間の米が十アール、一反歩の生産を自分でやれば確保できるわけですからね。それもやらないで、全部貸すからそのかわり食うだけはおまえ持ってこい、こういうことになるわけですから、それほどきげんをとって制度改正をする必要があるかどうか。元来農地法から言えば、つくる意思が全然ないのであれば、何とか手放さないで保有したいので、済まないけれどもぜひこれを適正な小作料でつくってください、あとの条件はつけませんくらいのことをしておかないとこれはえらいことになると思うのですよ。精神規定みたいなことを私は言いましたけれども、だから物納でなければならぬということは理由として全然通らないのですから、そこをよく念頭に置いてもらいたいと思います。  次は、仮に物納でいくことになれば、この農地法とか構造改善局だけの所管でおさまらぬと思うのですね。農地ですからだれも構わぬでおけば米一粒もとれないわけです。幸いにして耕作する者がおるから、そこで生産活動をしてくれて米なり何なりを農地から生産するわけですから、その生産された米というのは、現在の諸制度の上に立った場合にはどういうふうな流れがあるかというのは決まっているわけです。食管の関係で言えば、生産された米は、まず自家保有等を優先的に確保して、その残りは食管法第三条の規定からいけば政府に全量売り渡せということになっておるが、過剰時代理由にして自主流通米制度等は出ておるが、とにかくとれた米の流れというものは食管制度の領域に入るわけだから、当然これは食糧庁の扱いということになるわけですよ。賃貸借契約までは農地法ですけれども、とれたものを契約に基づいて支払ったりそれを受領するということになれば、現物の場合には米は当然食糧庁所管ということになるわけです。そういうような配慮というのは、これは構造改善局だから関知しないとか、食糧庁だから他の局のやっていることはそんなものは構わない、しかし国会法律になれば何とかかっこうをつけますよということでは済まないと思うのですよ。その辺は食糧庁長官としてはどう考えておられるのですか。万が一通った場合ですよ。
  74. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 今回の法律改正によりまして物納制が認められました場合の食糧管理制度の対応といたしましては、現在の食糧管理法におきまして政令によりまして譲渡等の措置を講ずることができることになっておりますので、そのような法律根拠に基づきまして、具体的にいわゆる耕作者から土地所有者に物納の米を流通する場合、及び、その数量はほぼ所有者の自家飯米程度のものに限られるというふうに考えておりますけれども、それが流通する場合も考えられますので、そのようないわゆる土地所有者が物納を受けました米について販売する場合の流通の規制というようなものを食管法の規定に基づいて定める必要があるというふうに考えております。  このような規定をいたしまして流通の流れを明確にしておきますれば、一つは、この数量がどれほどのものになるかという点が問題でございますが、私どもといたしましては、これはそう大きなものにならないのではないかということ、それからまた、実際の流れといたしまして、これを放置いたしますとかえってやみ流通に流れるというような心配もございますから、むしろ食管法の規定の中で明確にしておく必要があると考えておりまして、そのような措置を講ずれば、食管法がこれによって大きく崩れるというようなことは防げるものというふうに考えております。
  75. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの長官の答弁からいうと、食管制度の中においては何らの制度上、法律上の手当てをしないままではこれはできないということでしょう。どうですか。
  76. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 そのとおりでございます。手当てをする必要があると考えております。
  77. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは手当ての必要があれば、今回、たとえば増進法の中では、先ほど言ったとおり、農地法とか農業委員会法とか農協法の改正をやっているわけだから、たとえば農地法において手当てをする必要があるとすれば、いま長官の言われたような立法上の配慮というものは、いわゆる二十一条、二十二条の削除とともに、何らかの根拠規定というものがかわって出てこなければこれは動きようがないと思うのですよ。  そこで、食糧庁としては、これは同じ農林省の中だから相談してうまくやれ、これができる場合には大いに応援して流れはちゃんとするということになっているのでしょう。
  78. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 この物納の米の流れの取り扱いにつきましては、従来から構造改善局と話し合いをいたしておりまして、ただいま申し上げましたような規定の措置をすれば、食管法としてもこれを扱うことができるというふうに考えた次第でございます。
  79. 芳賀貢

    ○芳賀委員 長官、そういう抽象的なことでなくて、ここは立法府ですから、しかも三つの法律案審議しておるわけだから、手当てをするとか手直しをするということであれば、それじゃ食管法の、いまの法律のどこをどうしなければできないというようなことを言わぬと、何とか手当てしてくるというのでは、借金の手当てをするようなことになってしまうのですからね。
  80. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 具体的にその手当ての考え方を申し上げますと、現在食管法の第九条におきまして譲渡その他の処分に関して必要な政令を設けることができることになっておりまして、政令の施行令八条におきまして、主要食糧を所有する者について、譲渡に関し、相手方、時期等を制限することができることになっております。それに基づきまして、施行規則第三十九条におきまして、農林大臣が指定する場合を除き何人も政府以外の者に譲り渡してはならないということになっておりますので、逆に申しますと、農林大臣が指定する場合におきましては、政府以外に譲り渡すことができるという規定がございますので、その施行規則に基づきまして、現在、食管法の施行に関する件という告示の九におきまして、同様の流通、政府以外の流通のものについて規定をいたしておりますので、これに準じまして、食管法施行に関する件九に、先ほど申しましたいわゆる耕作者から土地所有者に譲り渡す米の流通及び土地の所有者が自家飯米以上のものを販売する場合に流通すべき流通の規定というようなものを設けていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  81. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いまの話だと、食管法上は食管法第九条と、それにつながって政令の第八条、さらにその規則の三十九条、これは大臣も——大臣、そんなものを見なくてもいいですよ。この食管法第九条というのはどういうものだということを、歴史的な経過を検討したことがありますか。第九条というのは大変なしろものですよ。
  82. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 法律の文章は読んでおりますけれども、その経緯については私は研究したことはございません。
  83. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは、戦後、食管法第九条に準拠してほとんど農林大臣の定めるというので、行政府大臣権限というのが強調されておるわけです。その大臣の定めるというのは、法律や規定による制限規定の中の除外規定なんですよ。こういうふうに制限するとか、やってはならぬが、ただし農林大臣の定めるとかあるいは命令によるものはその限りでない。ここを悪用するというのは大変なことになるのですよ。第九条問題で憲法違反の訴訟が起きたり、国会でもこれは論議したことがあるのですが、それは食管法が生まれたのが昭和十七年ですからね。だから、ある意味においては、これは戦時立法的な性格を強く持っておるわけです。いまどき大臣の命令とか、大臣の定めるなんという法律は全然ないですよ。天皇制時代の、いわゆる官僚ではなくてあのときは官吏と言われた時代ですから、その一番偉い人が農林大臣様ということになっているわけだから、それをいまごろ、これはもう金庫の中に入れて全然持ち出し不要となっておるのを、封印を破って持ち出して、物納制の道を開くためにこれを使うというのは問題があるのではないですか。これは使いようによってはもろ刃のやいばですから、いい方にも使えるし、悪い方も、武藤農林水産大臣の命令でどうでもできるわけですから、これは慎重に考え直す必要があると思うのですよ。  そこで、あと流れの問題ですけれども、生産された米というのは、借り受け人の耕作者が生産したものだから、自家保有米とか種もみというのは当然優先確保して再生産に備えてもらわなければならぬが、あとの物は、これは贈与することもできないですからね。前の渡辺農林大臣が盆暮れぐらいの贈与を何とか食糧庁長官の方でやれるように考えろと言われて、それで数カ月は石川管理部長を中心に某所へ立てこもって、これはやったはずですけれども、身内とか親戚にただやる分でさえもいまの制度から言えば簡単にできないわけですからね。では、どういうふうにこれを流すかというなら、まず、物納の契約をした場合、耕作者が所有者のうちまで持っていかねばならぬでしょう、取りに来る場合もあるが。しかもそれは、食管法第九条の譲渡条項の中で扱うということになると、当然その過程において農産物検査法に基づいた国営の検査を当然経なければならぬということになるのですよ。それは飯米程度は認めるということであれば、飯米を超した分は小作料として支払いしないわけですが、契約する場合そう飯米の範囲内というわけにいかぬと思うのですよ。だから、その貸し出した面積によって米が支払われるということになれば、自家用で食べた以外の場合には、これは何とか処分しなければならぬと思うのですよ。そうなれば、またそれを販売して金にかえなければならぬというふうに土地所有者はなると思うのですよ。では、勝手にどこでも売れるかというと、これは売れないでしょう。生産者の場合には、生産した米を政府に売り渡す場合であっても、自主流通米に出す場合であっても、必ず登録をしなければならぬ。農協登録とか業者登録をして、そして委託しなければならぬということになっていますから、そういう手間を省くということは絶対できないと思うのですよ。そういう点は、検査法というのは食糧庁の所管ですから、どういうような流れできちっとやるかという点はどうですか。
  84. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 農産物検査法におきまして、販売をする米穀につきましては、これは検査をすることが義務づけられておりますので、その規定に基づいてやる必要があるわけでございますが、お話のように、必ずしも販売用に向かうものか、それとも土地所有者の自家飯米部分に充当するものか、明確でないものにつきましてどのような扱いをするかという問題があるわけでございますが、私どもといたしましては、やはり品質の適正なものが流通、移動されるということを保証いたしますために、農産物検査法に基づきます任意検査を受けるという形が望ましいのではないかというふうに考えております。
  85. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうすると、まず農産物検査法に基づく検査は必ず受けなければならぬ。受けなければならぬが、検査法は販売も譲渡も同じだと思うのですよ。金で払うものを物にかえて、代物で支払うわけですからね。また、物を金にかえるという場合も、これはやはり検査法は販売とか委託、それで譲渡というのは書いてないようですけれども、いわゆる譲渡というのは販売の範疇に入ると思うのですよ。そういう場合には必ず三条の事前検査を受けなければならぬということが義務づけられておるわけですから、長官の言われたのはその三条検査でなくて任意検査だと思うのですよ。任意というのは、検査を受ける者が申し出て検査を受けるということになっておるので、これは義務的なものではないのですけれども、仮に三条検査を避けるということであっても、そうやれということじゃないけれども、いまで言えば農地法の二十一条、二十二条ですけれども、そういう関係で、賃貸借契約を締結する場合も物納なんていうのは最近例がないわけだから、どういう様式を農林省として省令あるいは通達で指導するかはわかりませんが、賃貸借契約の必要事項の中に、必ずこれは検査を受けなければならぬとか、あるいは物納といっても、戦後の経過から言うと、いわゆる第一次農地改革と言われたのは農地調整法という法律によってほとんど大まかな点はやったわけですから、その時代から定額金納制になってきたのを、間もなく国会において修正をして、これはいま政府が考えておる物納ではありませんが、代物弁済方式という、いわゆる物納の道が開かれたわけです。契約上は定額金納になっておるが、耕作者が小作料を納める納期までに米を金にかえて支払うことが至難である、困難な事情があるというような場合、あくまでも当時者である小作者の意思に基づいて土地所有者である地主に対して申し出をして、この場合ぜひ物納で納めたいのでそうさせてくれ、これは最後は合意によるわけですが、そういう形で代物弁済ということでやった経過が二年ぐらいあるわけですけれども、それはだんだんその範囲が広がってしまってもとのような物納制に戻るということで、その後に農地法ができたりなんかしまして現在の定額金納制ということになっておるわけですから、いま考えておる物納というのは、そういう厳粛な立場に立って、耕作者の意思に基づいて特別の場合には物納も認めるというような道を制度の中に用意するという考えなら、これはまた話は別ですけれども、全然耕作の意思もないし耕作もしない所有者のきげんをとるために物納の道を開くということは、どんな弁解とか理由をつけても、われわれとしては絶対に容認できないわけですが、その思想的な根拠は、杉山局長、どう考えておるのですか。
  86. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 先ほど御議論出ましたが、やみ小作として実際に納められているもの、いわば非合法のものを法律的な根拠のある正当な取り扱いをするということが必要であると考えます。それが根拠というふうに考えられます。
  87. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いま言ったような重要な問題がたくさんありますから、そういうものは、こうなった場合はこうするということが完全に用意されておらぬと、食管の方は全然手をつけてないわけだから、そういう不備な状態であれば、われわれはやった方がいいとは言ってないですが、せっかく去年から食管法の手直しをやりますというようなことを言って、今回も予定法案にはなっておったけれども、ついに見送りますと、見送りじゃなくて断念する方がいいですけど、まだあきらめないというのであれば、この種の問題もやはり政府としての検討の素材にして、万一農地法の中で物納問題を取り上げるというようなことであれば、食管制度の中でこれはどうすべきかということは、やはり政府が意図しておるその食管制度全体の見直しの中で、これはいままでもやるべきであったと思いますが、まだ石川君がどこで何やったということは全然聞いてないので、そこまでは触れませんが、当然これらも相当の時間をかけて検討すべき点だと思いますが、大臣どうお考えですか。
  88. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 食管法の改正につきましては、前大臣のときにも、先ほど御指摘のありましたように、お中元とかお歳暮に贈れるようにしろとか、あるいは米穀通帳を実質的にはほとんど使っていないのにそういうものがいつまでもあるのはおかしいのじゃないか、こういういろいろ議論がありまして、私にもぜひ引き続いて検討してもらいたいということが引き継ぎ事項の中にもございました。そこで、役所内部でいろいろと検討を続けてきておりまして、なおいまも検討を続けておるわけでございますけれども、これは先生御承知のとおりで、そこだけをうまく直してというわけになかなかいかないわけでございまして、食管法全体の仕組みに絡んでくるものでございますので、なお検討に時間を要しておるわけでございます。まだ、いま御指摘のようにあきらめたわけではございませんけれども、なかなかこの国会では物理的に無理ではなかろうかと思っておるわけでございます。  物納という問題は、先ほど来お話がございますように、法律に抵触するような形のもの——まあ形式的には法律に抵触していないと思うのでございますけれども、実質的には法律に抵触しているようなことがあるということをそのまま放置していくということは決していいことではないと思いますので、食管法の見直しの中におきましては、その問題も含めて検討させていただきたいと思います。
  89. 芳賀貢

    ○芳賀委員 見直しの中で検討するということであれば、今回はこれは見送るということになるのですね。
  90. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先生からはそのやり方は決していいやり方でないと、こう指摘をいただきましたが、先ほど来長官が答弁申し上げておりますように、私どもとしては、一応九条の譲渡から施行規則までそういう形であるのを活用さしていただきたいと思っておるわけでございまして、私の申し上げたのは、私どもの方はそういうことでやらしていただきたいとお願いをしておるわけでございます。それはそれとしてぜひお認めをいただきたいのでございますけれども、先生からいろいろ御指摘がございましたので、先生の御意見も私は尊重さしていただいて、食管法の見直しをするときにはその意見もひとつ参考として検討させていただきたい、こういう意味でございます。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 いまここで、それじゃいまのものをあきらめて今度食管法の改正のときにやればいいということについては、私どもはそれはそのときそのときでやらせていただきますけれども、とりあえず、いま法的に見て違法ではない、ただ考え方として堂々ともう少し何か考えるべきではないかという御指摘の点は、意見として十分尊重さしていただかなければならない。そこで、食管法の改正のときはひとつその意見も十分尊重さしていただいて、検討の課題に加えさしていただくということでございまして、それをやるからいまそれじゃあきらめるということではないので、その辺だけはひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、農地法の他の改正点についてですが、大きく分ければ、権利関係の、許可の権限とかあるいは行政上の届け出の相手をどこにするかというような点が相当改正点の中に出てきておるわけです。大まかに言えば、いままで、地元の市町村農業委員会において行う権限、それから都道府県知事が行う権限、農林大臣みずからが行う権限、この三通りになっておるわけですね。それぞれこれは根拠があって、この事案については当然こうすべきであるということでやってきたわけですが、今度の場合には一様に一段階ずつおろしているのですよ。農林大臣が行ってきた国が売り渡した農用地等に対しての処理の権限については今度は都道府県知事に任せるとか、当然都道府県知事がやるべきことも町村の農業委員会に任す。いずれも権利関係につながる問題ですから、国の場合には国の財産にも関する問題ですから、農地法というものは、安易に法律を改正して下へ任せればいいという単に行政上の簡素化なんといって行管あたりが言うような筋合いのものじゃないのですよ。これも四十五年の改正で相当下へおりているわけですから、われわれが十分検討してこれはやむを得ぬと思うのは、たとえば三条二項の改正の中で、世帯内の使用収益権の移譲の規定というのは今度はこれで出てきているのですね。これは絶対だめとも言えない根拠があるのですよ。五年前の農業者年金法の改正のとき、経営移譲年金がなかなか進まないということもあって、所有権の移転だけでは絶対進まぬ、それは親父さんが息子の名前に所有権を移転しなければこの権利を生ませないわけだから、それでいろいろ知恵をしぼった結果ですけれども、世帯内における経営権の移譲という形をこういう形で法制化したわけです。だから、年金をもらう場合だけ世帯内の権利移動ができて、本物の農地法の中でだめだというわけにはいかないのですよ、順序が逆になっているわけですけれども。こういう点は、今後の世代交代とか後継者という問題を考えた場合においては別に実害はないのじゃないかというふうに考えるわけですが、あとは当然そうやってもいいというのは余りないのですよ。  たとえば、三条の農地取得の届け出等については、もうすでに個人の場合は当事者間の合意によって所有権の移転は地元の農業委員会に届ければいいということになっているが、生産法人の場合は知事でなければならぬということになっているのですよ。それは地元で法人が農地取得をすることは差し支えないが、それにもぐり込んで、いわゆる擬装法人であるとかそういう法人に名をかりて実体的には企業なんかが入り込んできて、地元において農地を取得して、それを地元の農業委員会だけに届け出をすればいいということになると、これは相当弊害が伴うということで法人の分だけが知事ということになっているが、今度は、いずれにしても地元で行われるわけだから個人、法人同様ということですが、いままでの経過を見ても、これは農業委員会がまじめにやればそういう危険は除去できるわけです。この間、参考人に農業会議所の池田専務も来てえらく張り切ってぜひと言うが、きょう来ているかどうかわからぬが、農業会議とか農業委員会というのは農地法の番人なんですよ。それが安易に、法律だけ通ればいいという気持ちでぜひ物納制もやってくださいというのはちょっとおかしいと思うけれども、これは思い詰めたあげくと思えば善意に解釈できまずから、要は、農業委員会がちゃんと間違いなく法の精神を体得してそういう不正とか問題はもう出さぬようにするということであればいいのじゃないかと思って、この点は今後の農業委員会の体質改善を前提にして、この程度のものはいいじゃないか。  あとは、われわれとしては、特に二十条の契約の解除、解約とか、その更新の拒絶というような問題は、これは地元では扱えないのですよ。いままで、知事に出すのだから、おまえさん、これは知事まで持っていけばそんな無理なことはできませんよといって地元で整理できたのですが、今度は地元ということになれば、いろいろなボスや何かが介在して、今度はおまえの農業委員会でできるんじゃないか、このくらいのことを出したらちゃんとやれということもあり得るわけですから、そういう危険が伴うわけだから、二十条だけは絶対まかりならぬ。  それから四条、五条の市街化区域における転用の届け出にしても、前もって都市計画法に基づいてこの地域を都市計画で事業実施するという調整のついたところは転用の届けっ放しということになっておるが、これも農業委員会経由で知事に提出する。ただしへ届ければいいということになっているのです。とにかくその市街化区域の中でやるわけだから、制度的にも、市街化区域の農地は無理やり宅地化しているとか市街化しているというわけじゃないが、その地域農地については目的に沿った転用は届け出でいいということになっておるわけだ。現在はそうなっておるわけです。これも今度は地元農業委員会に出せばいいというような改正ですから、これはだめとは農業委員会で言えないと思うのです。これはあらかじめ五十日前に提出しろということになっておるのですけれども、その間において知事に提出ということになれば、知事の責任において当然農業委員会とか地元町村の協力を得て実態を調査することにはなるわけですが、このケースがえらくふえまして、年間十六万件を超えておるわけだから、府県はいやなんですよ。十六万、一県でじゃないが。何とか理屈をつけて地元でやってくれということになっておるんだが、これは非常に危険を伴う点もあると私は思うので、十分な考慮が必要だと思いますが、そういう今度の改正点について。  もう一つは、農業生産法人の執行者、つまり組合法人の場合は理事、それから会社法人の場合には取締役ということになっておるが、いままでの規定を緩和して常時従事者の中から過半数の理事を選出すればいいということになっておるが、これもいろいろ心配される点もあるわけです。しかし、厳密に法律を運用することになれば、規定に基づいて常時かえがたい従事者としてやっておるわけだから、そこへ入り込んで会計をやるとか事務をやるなんという者は常時従事者にならぬわけだから、その点で改正しても確信が持てるというのであれば、ここではっきりしておいてもらいたいと思います。  以上、二十一条、二条以外の改正点に対して、行き過ぎはしないようにするというなら、それも言ってもらわなければならぬ。
  92. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 今回、権限委譲の問題について幾つか御質問があったわけでございますが、要約して私の理解したところでは、二十条の委譲については反対である、これについてどうか、それから四、五条の届け出については、これは大丈夫か、それから生産法人の改正の役員要件の緩和、これについても間違いないように運用できるかという御趣旨であろうかと存じます。  二十条の問題については、私どもといたしましては、従来から解約等の許可につきましては農業委員会が意見を付して都道府県知事への進達事務を行ってきております。そういうことから、賃貸借の当事者双方が在村者である場合等の許可申請につきましては、いまでも適正な判断をなし得るというふうに考えたわけでございます。そして、行政事務の簡素化という点も確かにございまして、このような場合の解約等の許可権限を農業委員会に委譲してはどうかということで、今回の改正の内容に取り入れたわけでございます。しかしながら、農地賃貸借の解約等の許可は、賃貸借の終了について当事者双方の利益の調整を図る、そういう内容を持っておりますので、慎重な判断を要するということは御指摘のとおりだと思います。なお、引き続き都道府県知事の認可権限とすべきであるという御意見のあることも承知いたしております。この点については、私ども慎重に検討する必要があろうかと考えております。  それから、四条、五条の問題、生産法人の役員要件の緩和の問題については、先生御自身も質問の中で触れられましたように、これは要するに、農地法の番人である農業委員会が、今後責任を自覚して体制を整備してきちんとその業務を遂行してくれるかどうかということにかかっていると思います。農業委員会独力だけではなかなかむずかしい問題でございますので、私ども行政を通じてこれを援助し、さらに強化して、間違いない運用を進めてまいるようにしたいと考えております。そういう意味におきまして、私どもこれの間違いなきを期するための責任を持っておるわけでございます。今後そういうことを念頭に置いて十分努力してまいりたいと考えます。
  93. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、農業委員会等法律案の改正点に対して、これは主要な改正点三点ですが、これは松浦局長でいいですけれども、あなたは正直松浦と言われているのだから、絶対曲げた答弁をしないようにやってもらいたいと思います。  第一点は、今回の改正が通れば、市町村の農業委員会の会長は、当然のこととして農業委員会を代表する会長の責任において都道府県の農業会議会議員になるという規定の改正で、これはいいのです。いままでそうやるのがあたりまえであったのをやってこなかったのだから、そこまではいいですけれども、ただし書きの中で、ただし農業委員会長が自分でないほかの者がいいと考えた場合には、理由を付して農業委員会に諮って、自分の委員会に諮って同意を得た場合においては、会長以外のつまり他の者を都道府県の会議員にすることができる、この辺が変じゃないですか。それでは県の農業会議に会長の代理が出ることができないかというと、そうじゃないでしょう。農業委員会法の中にも、市町村農業委員会の場合には、会長に事故のあるときとか支障のあるとき、そういう場合を予想して会長代理者というものをあらかじめ決めてあるわけです。決めてあるから、会長が病気になったとか事故が生じたという場合にはあらかじめ定めた代理者が会長をしているのですね、委員会の運営とか総務を執行できるわけですから。何も支障ないのですよ。支障がないにもかかわらず、代理者を出さないで、さらにそれ以外の者をわざわざ出さなければならないという理由は全然ないわけです。私が考えるのに、まだ全国で、西日本が多いわけですが、市町村長がわざわざ地元の農業委員会会長になっている例があるのです、北海道なんかはほとんどなくなりましたが。農業委員の選任というのは公選法に基づいた選挙で出ているわけだから、そのほかは法律に定める総合事業を行う農業協同組合の代表とか、農業共済組合の代表とか、その他五人以内で地元の市町村議会の推薦する者。だから、市町村長は公選法からいっても農業委員に立候補することができないのですよ。その精神を無視して今度は議会推薦という形でですね。議会推薦というのは、町村長が五人の候補を選定して議会に出して承認を得て、形式は議会推薦ということになるわけです。町村長が委員会に出たい場合は、自分で自分を推薦して議会推薦という形でしてもらう以外に方法がないのですよ。こういうのがえらそうに、おれが委員長にならなければ予算もとれぬしうまくやってやらぬなんということで居座っている例がかなりあるわけでして、そういう例もあるから、ただし書きで、町村長が、おれは地元の長としては十分やるけれども県の農業会議ぐらいはほかの者が行けというような場合にはこれを活用できるのではないかと思うのですが、これは絶対に直すべきだと思うのですよ。これは正直松浦としておかしいのじゃないかと思うのですが、これが第一点。  第二点は、現行法において都道府県農業会議の会長、副会長を選任する場合には、その総会においてその会議員全体の中から会議員全体が選ぶということになっておるので、これはまことに民主的な当然な方法をとっているわけです。今度はそれを改めて、常任会議員の中から総会において会長、副会長を選ばなければならないということになったのでは、これは問題がある。わざわざこういうことを、いままでやっておったのなら別ですけれども、いままでちゃんとやってきたのを今度はやり方を変えて、しかも半分は一号議員から出た常任会議員、半分は知事が推薦したり法律に定めたそういう人たちが半数出てきて、米審にたとえれば御用委員というような人たちが半数いて、その中から以外選んではならぬということになれば、これはやはり問題があると思うのですよ。やはり従来どおり全員の会議員——これは当然りっぱな人が出てきているわけだから、だれだって県の会長、副会長になる資格を持っている者が町村の会長になっているわけですから、この点は問題がある。  もう一つは、いままでの必ず置かなければならぬところの農地部会、そのあと二つ程度の部会を設けることができるということになっておるが、農地部会の場合には部会員の構成というのは一号議員が多いのですね。ところが今度の改正は、部会制をなくして常任会議ということになって、常任会議の定数の半数は一号議員から選ぶ、あとは二号、三号、四号、五号、六号までの会議員の中から選出をする。それで必ず一号と他の常任会議員の数が等しくなければならぬというふうになっているが、これも問題なんですよ。やはり今後常任会議制にしても、一番大事なのは農地制度にかかわる現在の農地部会が中心ですから、これは一号議員中心の部会であった、今度は全部かためて常任会議にして、半数は公選の根拠のないそういう会議員とするということになると、農地制度関係の運用から見てもこれは強力な運営ができないと思うのですよ。だから、この点は、必ず等しくなければならないという問題じゃないと思うのです。  この三点ですが、一体どう考えているのですか。自分の考えでそうなったのか、外圧によってそうなったのか。もしいろいろ事情があれば、はっきり言ってもらいたいと思います。
  94. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 まず第一点の、都道府県の農業会議会議員といたしまして、農業委員会を代表する会議員は農業委員会の会長を充てるということにしたいということは、私どもの基本的な考え方でございましたし、また現在もそうでございます。正直松浦ということで実際の話をしろということでございますが、このような考え方に基づきまして私ども法案の原案を作成いたしたわけでございますが、各方面との折衝の過程におきまして、私どもも例外の設置が必要であるというふうに考えたわけでございます。その理由は、農業委員会の会長本人の意思によりまして自由に他の者を指名するということを認める趣旨ではございません。さような気持ちはございませんが、きわめて例外的な場合といたしまして、農業委員会の会長が会議員となることが必ずしも適当でないという場合におきまして、会長以外の方が会議員となられることが、かえって都道府県の農業会議の適切な運営に資するというような事情があるということにやはり備えざるを得ないというふうに考えたからでございまして、かような場合の特殊な特例の規定を置く必要があると考えたからでございます。したがいまして、私の方といたしましては、このような例外規定を全く置かないということは適当ではないというふうに考えるわけでございますが、しかしながら、このような例外を置くにいたしましても、農業委員会を代表する農業会議会議員につきましては、極力農業委員会の会長を充てるということで強力に指導いたしたいというふうに考えておりますし、また仮に、やむを得ない事情がございまして、農業委員会の会長以外の方を会長が御指名なさるといったようなことがございましても、その場合には、農業に関し高い識見あるいは豊かな経験を持たれる方が、農業委員会の総意が的確に反映できる者として農業会議にお出になるという場合に限りたいというふうに考えている次第でございます。これが第一点でございます。  それから、第二点でございますけれども、御指摘のとおり、会長及び副会長につきまして広く人材を求めるという観点から、全会議員のうちから会長及び副会長が選出されることが望ましいという御指摘の点でございますが、その御意見につきましては、さような観点に立ちますとその御趣旨は十分に理解できる次第でございます。一理も二理もある御意見であるというふうに思います。ただ、政府が現在のような考え方を出しました次第を申し上げますと、これは、会長及び副会長を常任会議員のうちから選ぶということにいたしたわけでございますが、その趣旨は、常任会議が実際上ある意味では理事会的な側面を持つと思うわけでございます。したがいまして、常任会議員のうちから会長及び副会長を選ぶということが業務の円滑化に資するという観点から、このような改正案を考えた次第でございます。しかしながら、要は、常任会議のような会務の意思決定を行うこのような機関につきましては、やはり会長及び副会長が参画しているという状態をつくるということが必要である、さような観点で今後の処置を考えてはいかがかというふうに考えておる次第でございます。  それから、第三点でございますけれども、公選制により選出された農業委員が主体である農業委員会を代表する会議につきまして、その代表性を高める必要があるという御指摘でございます。特に、常任会議員の会議が、先生も御指摘のように農地部会の所掌というものも引き継いでいるということでございまして、この農地部会は、現行法のもとにおきましては確かに一号会議員が主力を占めるという形でつくられておるわけでございまして、さような観点に立ちますときは、先生のお考えというものは十分に私どもわかる次第でございます。政府の原案がどうしてその点を違った形でつくったかということにつきまして申し上げれば、常任会議員の構成につきましては、一方では、農業委員会を代表する会議員の重要性というものにかんがみまして、さような発言権というものを当然確保しなければならぬということではございましたが、また他方で、農業協同組合系統組織等の代表者の会議員もひとしく構成員とするということにいたしまして、その総意を農業会議に反映させることが必要であると考えまして、さような配慮から、むしろ現在の農政部会に等しいような構成の仕方をした方がよろしいのじゃないかというふうに考えたからでございます。したがいまして、このような観点に立ちますれば、基本的に申しまして、二号以下の会議員の数が一号会議員を超えてしまうというようなことがあっては本来の趣旨に沿わない形になりますので、その点は私どもはどうしても確保しなければならぬというふうに考えるわけでございますが、要は、やはり農業委員会を代表する常任会議員の代表性というものを確保するということは重視しなければならないというふうに考えますし、その他の常任会議につきましては、真に農業会議の業務を適正に運用するにふさわしい方に限りまして常任会議員の会議を構成することが適当ではないかというふうに考えます。
  95. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、農用地利用増進法ですが、これはこことここを削ればいいというような内容のものでないですから、私として十分に検討した結果に基づいて、特に重要な問題点を六点指摘して、これに対して政府の責任ある答弁を求めたいと思います。  それは、いまから五年前に、農振法改正において、今度のこの増進法の基礎をなすものが一応できておるわけです。しかも、その際には、社会党が中心になって五点にわたる修正を行って、当時の政府案は農業委員会と市町村が二元行政をやるような方向を目指しておったので、それは問題があるということで、やはり農地法とか農業委員会制度との密接な連携あるいは有機的な運営ができるようにする等、それから農地法の番人である農業委員会を余り無視することも望ましくないということで、そこに重点を置いて、まあその中には開発規制の問題も当然入っていますが、五点の修正をして衆議院を通して、当時安倍農林大臣でありましたが、修正案の関係で私も一緒に行きまして、参議院の農林委員会においてその修正部分の趣旨説明をやった経過もあるわけです。だから、そういう関係もあるので、これを全部だめとか粉砕なんというばかなことはこの法案審議で言う必要もないが、しかし、問題になる点があるわけです。  その前に、一つは、この利用増進法によって、零細な、耕作する意思のない、二種兼主体の所有者の農地を活用する意味において、利用権とか所有権の移転という形でその地域における耕作地の権利上の集積をして、そして、非常に過小な経営をやっているけれども、農地が賃借であってもその経営に加わることができればぜひやりたいという熱意のある農家もいるわけですから、相互の農業上の立場というものを考慮してやっていかなければ、法律ができましたと頭から押しつけても、これは絶対に強権的にできる仕掛けのものではないですからね。ただ、いま政府が過剰対策という形で米の減反、転作をどんどん進めてきておるわけですね。だから、政府の水田利用再編成の政策の志向するところとこの利用増進政策とは、必ずしもその目的において合致しないところがあると思うのですよ。この地域というのは、二種兼のほとんど多いところのもうつくりたくない人と、つくって意欲的にやりたいという人の相互の条件が整わないところへ——やめたいと言ったってやめるわけにいかぬですからね。北海道、東北なんかは、貸し借りの関係から言うと、貸し手が少なくて借り手が多いというような場合もある。東海等においては、先日の静岡県の豊岡村の視察から見ても、借り手一に対して貸し手五倍というような状態ですから、地域的に見ると、この制度が有効に働く要素を持った地域もあるし、これができても適合しない地域もここで当然出るわけですよ。だから、全国一律にやれるかというとこれはできないわけですから、そこにやはり地域の自主的な選択性という問題が当然出てくると思うが、これを余り強硬に進めて、水田の場合は今度の制度を通じてそこは優先的に米をつくらせるようにする、そうじゃなければ飯米の確保ができないということで、こういう地域は減反の転作の手抜きをして、北海道、東北等の農業専業地帯に対して今後ますます厳しい減反政策を押しつけるということになるのではないかという危惧は、これは全国的にみんな持っておるわけですね。その面においては、この二つの政策というのは二律背反する点が確かにあるわけですよ。だから、減反政策を今後進める場合においては、今度の増進地域というものはどういう位置づけをするかということをはっきりしておかなければならぬと思うのです。しかも、昨年十一月に五十五年度の転作の方針が決まったときも、その前の鈴木善幸さんの場合も公務員に対する呼びかけがあるのです。あなたもやったのですよ。公務員諸君が零細であっても水田を耕作している場合には、公務員は率先して減反政策協力してもらいたい、もう切々たる呼びかけを、あなたがそう言ったかわからぬけれども、資料にはちゃんと書いてあるわけだから、表現は切々たるものなんですよ。これらの諸君は全部二種兼業農家の中に分類されておるわけですからね。そういう人が、この機会に農地を提供します、耕作者の判断で自由に何でもつくってくれと言うならいいのだけれども、必ず水田をつくって、そこからうちの食糧米を出してくれなければ困るなんということを、その公務員諸君とかあるいは安定的な民間のサラリーマン諸君が言うようなことであれば、これは専業地帯の減反が進んでいくということになるのです。このけじめを一体農林大臣としては、大方針としてどういう調整をするかという点が一つ。  それから次に、内容に入りますが、この目的がわからないのですよ。一体だれのためにこれをやるかということが何回読んでみても全然わからないでしょう。この精神というもの、農地制度の一環であるということになれば、これは当然農地法の目的を援用しなければならぬと思うのですよ。その場合には、先ほど言いましたとおり、農地法の現在の法律の目的にも耕作者のためにというのは三カ所も出ておるわけですからね。少なくとも農地の利用権の設定とか所有権の移転の設定をしてそれを促進させるということが目的であれば、これはだれのためにやるかということにならなければいかぬですよ。まさか所有者のためとは考えていないでしょうが、耕作者のためにやるのであれば、その点をやはり法律の目的に明確にする必要がある。  もう一つ、きょうで六日質疑が続いておりますが、同僚の皆さんの質問を聞いても、第二種兼業地帯において、特定の農家が規模拡大をしてそして自立的な農業を経営するということになれば、場合によっては、ごく零細な農業経営というものを、第二種兼業なら主業である俸給生活者とか他産業従事者が農業というものを補完的にして、そこから自家用米とかあるいは所得を補完して生計を維持する、そういうことで農地を握っておるわけですから、その規模拡大のために零細な二種兼農地というものを集積するということになれば、これは二種兼農家の切り捨てにつながるのではないか、そういう疑念を持った質問が共通しているわけです。だから、こういうような点はやはり法律にわざわざ規模拡大なんと書くのはおかしいのですよ。貸し手が出て放置しておけないから、だれかがそれを借りて耕作したいという場合は、特定の者でなくて不特定な者であっても、その地域の中で貸し手と借り手がなければ増進事業は成立しないのだから、わざわざ法律に規模拡大なんということを書かぬでも、これが進めば、つくらない者が出ればだれかがよけいつくらなければならぬということで、結果的にはその耕作を熱心にやっている人のところに耕作農地がだんだん集まって、自然的にこれは規模拡大の形になるということになるので、この点はちょっと危険があるのですよ。逆に考える場合が出てくるですからね。こういう点は立法技術から見ても慎重にやってもらいたいと思うのです。  第二点は、この法律は全く無味乾燥なんですよ。法律自体が手続法みたいなものだから味わいがあるということにはならぬかもしれぬけれども、このくらい味もそっけもない法律はないですよ。こんなものなら、農地法の中に改正で幅を広げればいいのであって、わざわざこれを取り出して農用地利用増進法なんという改名をつけてやる以上は、もうちょっと農民と血の通った、地域全体の中からこれが有機的に動けるような味つけをしてもらわなければならぬ。そういう意味で、私は、この法案にはないが、やはり特に目的と並んで、この法律というものは十分な地域農業社会の上に立って実態を踏まえて、この日本の狭小な国土の中で、農用地が足らぬ、これを農地法の精神に基づいて高度に農地として農用地として活用しなければならぬというのは、単に農業従事者だけでなくて、その地域全体の人たちがこれを考えて協力してもらわなければならぬわけですから、そういう点についてはやはり法律上特段の配慮が必要でなかったかということを指摘しておきます。  それから次に、第三条第一項に実施方針のいわゆる基本方針がうたってありますが、これは国会法律だけ決めて、さあできたと言って動けるものじゃないですね。目的に沿った法律が成立した場合は、その目的や趣旨が那辺にあるかということを、十分その地域においても、市町村にしても、農業委員会にしても、あるいは関係の農協とか農業団体にしても、あるいは農民組織においても、この趣旨が是であるとするならば、十分にその事前の普及徹底というものをやって、間違いのない理解の上に立って、自発性の上に立って、それではこの方針というものを、増進計画とか増進規程というものをみんなでつくってやろうじゃないかということになると思うのですよ。前段の趣旨の普及徹底ということをおろそかにすることはできないじゃないかという点が欠けていますから、これを指摘しておきます。  それからもう一つは、方針を策定する場合には、これは市町村の場合であっても都道府県知事の承認を求めなければならぬということになっているのですね。承認が必要である。知事が承認する場合には事前に当該都道府県の農業会議の意見を聞かなければならぬ、これは当然だと思うのですよ。それじゃ農業会議だけの意見を聞けばいいかというと、そうでないと思うのです。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 もう一つ、農民の自主的な経済組織あるいは生産活動をやっている農業協同組合というものがある。協同組合においても、全部の農協がやっているわけじゃありませんが、この農地制度の問題とか、あるいは共同化の問題とか、受託経営の問題とか、信託事業とか、それぞれこの制度に沿って農協が拘束を受けないでやっておるわけですから、そういう場合には、やはり農業会議は当然ですが、農協としても、この間の全中常務の山口巌参考人の意見を聞いても、相当意欲的な意見を述べていますから、やはりその場合には、都道府県の農業協同組合、全部の連合会というと大変ですから、中心をなす農協中央会などにはあわせて意見を聞く必要があるのではないか。意見を聞いたり、協力できるということにすれば、やはり市町村でも一生懸命でやると思うわけです。地方だってやりやすいようにするというのが大事ですから。  その次は、これは実は五年前にも問題にしたわけです。地域において利用増進計画を立てる、利用規程をつくるという場合、やはり地域の集団の上に立って全員同意で決めなければならぬ。全員同意で決めた場合においては、利用権の設定であってもあるいはそれに伴う所有権の移動の場合であっても、全員がそうしましょうという、あるいは当事者個々の間においてまず話がついて、地域全体でそうしましょうということに、まず全員同意で決めなければならぬ。決めたものは、農業委員会の正規の決定が必要である。一件一件農業委員会に届けるというのではなくて、その地域の全員同意の形で利用権等の設定ができた場合には、農業委員会がそれを審査して決定する。法律上の決定が行われた場合は、それを基礎にして市町村が公告をする。公告をもって利用権あるいは所有権の設定、移転等についてはそれで法律上決まり。だから、それは一人一人が登記所へ行かなくとも、町村の責任で登記諸般は行いますということになっておるわけですからして、その中心になるのは「団体」と書いてあるのですよ。政令で定める基準に合致したあるいは定款、規程を持った団体ですから。何が何だかわからぬでしょう。これは五年前の宿題だったのです、団体とは何ぞやということをはっきりしたらいいんじゃないかと言って。今度は法文の中には農業協同組合法第七十二条に基づく農事組合法人というのが後段に出てくるわけです。これは組合法人でありますけれども、やはり地域においてそういう法人が形成されれば、抽象的な団体よりも、これはきちっと昭和四十五年の法律でできたものですから、そういうものはちゃんと例示的に名前を載せて、農事組合法人とかその他政令あるいは省令で定めるこれこれの団体ということであれば、できてない名前を並べるわけにいかぬですから、そういうことはちゃんとやらぬと、一体どういう集団でどういう名前をつけてやるかということにもなるわけですからして、やはり地域共同社会における生産活動ということになれば、いろいろ批判があっても農業協同組合組織というものを度外視してはできないと思うのですね。そういう点と、今度は新たに農地保有合理化法人もこの制度の中に登場するわけでありますし、あるいは農業協同組合の経営受託事業等についてもこの制度の一環をなすということになるので、この辺は、そうなんだという答弁はあると思いますが、その前にその法律の策定に当たってちゃんと勉強して、そのぐらいのことはやってもらって当然じゃないかという点であります。  以上、重要な点だけを述べたわけですが、問題を言えば、この地域合理化計画に加盟した、参加した土地所有者の場合、いままでは自分で耕作しておるからして、農業協同組合にとってはこれは大事な正組合員。農協法というのは定義で農民とは何ぞやということが書いてあるわけだから、土地を持っておっても、経営もしない、耕作もしないという者は農民でなくなるわけですよ。農民でない者は土地だけ所有しても農協の正組合員にはなれないわけです。何ぼがんばってもなれぬわけだ。ただし準組合員の資格で十分利用してくださいということになっておるが、この農地法の一部改正の場合には、これに該当する正組合員については農民資格を失ってもなお従来どおり正組合員についての扱いをする。農事組合法人の組合員の場合にもそのようにするということになっておるので、この辺も厳密に言えば整理する必要があるのですよ。土地だけ持って飯米を持ってこいなんていばっている正組合員ばかりどんどんできてしまうと、農業というものは従来の使命を忘れて——七割は二種兼業です。都会では九割が二種兼業ですから、本百姓というものがいない状態の中でこういう特例を設ければ、本当の農民である組合員というものが疎外されるというような心配が出るわけですから、これは絶対いかぬというわけではないが、こういう点についても、法律が通ればいいんだというわけにはいかぬと思います。  幾多ありますけれども、問題点として私から指摘いたしますが、これに対しての大臣の総括的な考えと、各関係局長から率直な見解を聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  96. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま六点ばかり御指摘をいただいたと思うのでございますが、いわゆる全く耕作者でなくなった場合を考えれば、耕作者ということをもう少しはっきりしておくべきではないかという問題、あるいは農業の経営規模の拡大だけではないのではないか、農業全体の経営の改善を図るということをもっと考えるべきではないかとか、あるいは農業者農業団体が自主的に努力をする、それに対して助成をするということをやはり一つの夢としてはっきりうたうべきではないかとか、あるいはこういうものについてはもっと普及徹底を図るというようなことをやるべきであるとか、あるいは知事が実施方針を承認をする場合にはそれぞれの都道府県の農協の中央会の意見を農業会議の意見と同時に聞くべきであるとか、農用地利用改善事業を行う団体については、もう少し、はっきりしていないではないか、これをはっきりすべきではないかとか、いろいろ御意見をいただいたわけでございます。  私どもとしては、それぞれにできるだけそういう趣旨を織り込んで法律をつくったつもりではございますけれども、せっかくの御意見でございますので、ひとつ十分慎重に私も検討させていただきまして、もしこの委員会において与野党間でそういう点なども含めて修正の御意見が出てまいりましたときには、十分対処するように検討しておきたいと思います。
  97. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私ども事務当局としては、現在の法案が一番いいという気持ちでお出ししているわけでございますが、いろいろ御意見承りましてごもっともな点も数々ございますので、それから大臣検討すると申し上げておりますので、私ども事務当局としても慎重に検討してまいりたいと考えます。  それから、一点、農地保有合理化促進事業、これについてどう考えるかという御質問がございました。内容的なことを一々御説明申し上げませんが、保有合理化促進事業はそれなりにきわめて有効な役割りを果たしていると考えております。これを一層今回の利用増進事業との関連のもとに積極的に活用するように指導、援助してまいりたいと考えております。
  98. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回の農用地利用増進法案におきまして、農用地利用増進計画の定めるところによりまして利用権を設定したことにより、法定脱退の事由に該当するという組合員が出てくるわけでございますが、これを一定の条件のもとに、それに合致する者については農協法上の正組合員たる資格は失わせないということに特例の規定を設けております。  これは、この事由に該当するものが、一つは、農用地の利用増進事業の円滑な推進に寄与するために農用地につき利用権の設定を行ったという条件がございますし、それからまた、地域農用地の効率的かつ総合的な利用を促進し、農業生産力の増進を図ることを目的とする団体の構成員として、利用権を設定した農用地を含む地区の農業の運営に関連して全体的に参画するという条件を重ねて規定したわけでございます。したがいまして、このような地位に立つ方は、農協の事業運営あるいは施設利用等につきましては、依然として発言権を引き続き保持させてもよろしいというふうに考えまして、かような趣旨の改正をお願いいたしたわけでございます。  要は、単に脱落していくということだけではなくて、やはりその団体の構成員といったようなことで、なおかつ発言権を保有するような状態に置かれているという第二の条件も課した上で、このような改正をお願いした次第でございます。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農事組合は……。
  100. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 ただいま農業協同組合につきましての正会員の資格について御答弁を申し上げましたが、同じような考え方で農事組合法人につきましても改正点をお願いした次第でございます。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農事組合を法律の一番トップに載せることについてはどう思っているか。あなたは経済局長で、農協の担当じゃないか。——大臣はさっき言ったからいいですよ。
  102. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 だから、さっきの中に含まれているというふうに御承知いただければ……。いまちょっと局長が中座いたしましたので、よろしくお願いいたします。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 終わります。
  104. 内海英男

    内海委員長 和田一郎君。
  105. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 私は法案の質疑に入る前に、大臣にちょっとお尋ねをいたします。  実はきょうの読売新聞の朝刊でございますが、こういう記事が出ております。「ひどい!輸入品転がし」と題しまして、大蔵省の調査が出ております。その中を簡単にちょっと御説明いたしますと、今月「二十二日、大蔵省が実施した特別調査で明らかとなった。」それは何かと言いますと、「東京、横浜、神戸、大阪、名古屋の五税関、延べ百三倉庫で二月いっぱい実施され、昨年十一月の帳簿などにさかのぼって調べた」結果、物すごい品転がしがあったということでございまして、「対象物資は、サケ・マス、マグロ、エビ、イカの魚介類と、ウシ、ヒツジ、ブタ、鶏肉の肉類のほか、ラワンなど南洋材、ツガなど米材、エゾマツなどの北洋材の生活密着品計十一品目。この結果、まず転売の実態では、エビ、イカが最高十二回、牛肉が同十五回、ブタ肉同七回、トリ、ヒツジ肉同六回、米材が同九回も所有権が変わっていることが明らかとなった。いずれも、倉庫に入ってから搬出されるまでの間の所有権の移転であり、物資そのものは、全く動いておらず、転がしそのものといえる。」こういうことになっておりまして、値段の方は、「着港渡し価格がキロ・グラム当たり四百五十七円で輸入され、一次から六次まで所有権が転々とした牛肉のケースでは、輸入価格は千百九十円まで、二・五倍にもはね上がっている。材木も同様で、立方メートル当たり三万八千六百五十八円で輸入された南洋材が三次までの転がしで四万六千四百十円に上がった」、米材も三万七千円から四万六千円に上がった、これがわかったということでございますが、これはゆゆしき問題でございまして、以前にこの委員会で、かずのこであるとかまたはマグロ等の質疑がなされましたときにも、農林省としてはそういうことは徹底的に調べる、とにかく国民生活の安定を図るという大臣の御答弁もあったわけでございます。しかも、公共料金が上がる、たばこが上がった、とにかく狂乱物価と言われている時代にこういうことがなぜ行われるようになっているか、これでいいのかどうかという問題でございますが、これは大蔵省の調査でございまして、一番調査しやすい機関がやったと思いますけれども、この点について農林水産大臣としてのお考えをまずお聞きしたいと思います。
  106. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私は実はまだその読売の記事をしっかりとは読んでおりませんけれども、大蔵省が生活関連物資につきまして、特に保税倉庫を中心として調査を進めておるということは聞いております。その結果について実はまだ聞いていないわけでございますが、そこで、その新聞記事だけで私もとやかくここで申し上げるというわけにはまいりませんけれども、もしその記事のとおりであったとするならば、一遍聞いてみますが、あったとするならば、大変遺憾なことでございます。私は、ここでも御指摘をいただきまして以来、できるだけ早く特に流通関係にメスを入れるべきだということをお答えをいたしておりますので、そういうことがあってはならないと思っておるわけでございますけれども、特にその中には、牛肉などは政府が割り当てに関与しているものもあるわけでございますし、中には全く自由なものもありますので、その辺がもしあったとした場合にも、私ども対処の仕方が二通りになろうかと思いますが、政府が関与して割り当てなどをしたものについては、そういうことをやっておったところについては割り当てを今後は取り消しをするとかいうようなことを考えていかなければならないだろうと思います。また、自由化されておる品目については、これは直接はなかなかむずかしいのでございますが、やはり行政指導という形を通じて、できるだけそういうことのないように業界を指導していくということをやらなければならないだろうと思っております。  いずれにいたしましても、もし事実であればそういうことをやらしていただきたいと思いますが、いまここでは私もまだ詳しい説明を聞いておりませんので、できるだけ早く大蔵省からそういう説明、報告を受けまして、それによって、いま申し上げたような方向で、事実である場合にははっきりした態度で処置をしていきたいと考えております。
  107. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 それじゃ、局長もおいでになっているようでございますので、まず水産庁長官からお伺いいたします。  水産庁としてもこういうことはわからなかったのですか。とにかくマグロだとか、それから去年の暮れの例のかずのこ、こういうことで本当に世論の的になっておったのですよ。しかも、こういうことになっているということ、この点についてやはり責任を感じてもらわなければ困る。食生活の一番根本的なものでございますので、水産庁としてのいままでの取り組みと今後のお考えを教えてもらいたいと思います。
  108. 渡邉文雄

    ○渡邉説明員 ただいまも大臣から御答弁ございましたように、私ども保税倉庫についての調査というのを実はやっておらなかったわけでございまして、一般的に全国の主要な産地の冷蔵庫の在庫量の調査というのはやっておりますが、量的な調査が主でございまして、その中で名義がどのように変わっていくかというような意味での調査は実はいままでやっておらなかったわけでございます。  今回保税倉庫の中における荷動きにつきましての調査を大蔵省がやった結果を聞きまして、先ほど御答弁がございましたように、そういった事実があれば、私どもの方も、関係者につきまして、国民生活にとっても大変重大な物資でございますので、先生御指摘のように、できるだけの行政指導をしてまいりたい、かように考えております。
  109. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 材木の方はどなたか見えておりますか。——とにかく大工さんが、建設会社が、高くて弱ったというのがいまの状況です。こういうところを、倉庫の中でどんどん転がってしまって、しかも日本の国はほとんど外材ばかりでいまつくっているような状態です、各家庭が。そういう点も考えまして、林野庁としては今後の対策を考えてもらいたい。御答弁を。
  110. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 ただいま大臣からお答えいたしましたように、大蔵省の調査結果については私ども承知いたしておりませんが、通常、木材の場合は保税倉庫におきまして、重量物ですからあちこち持ち歩くというわけにまいりませんので、取引の実態といたしましては、商社から卸、製材、少なくとも三回は動くわけでございまして、三回ないし四回動くということは通常の形態でございます。  実は、この二月の十八、九日に、林野庁におきまして、木材需給対策中央協議会のメンバーでございます関係木材業界から事情を聴取いたしておりますが、当時の事情といたしましては、木材についての買い占めあるいは売り惜しみというような事実があるような話は聞いていなかったわけでございますが、先ほど大臣からお答えがございましたように、大蔵省にこの事実をよく聞きまして、もし価格操作のためにそういう実態があるとすれば、大変遺憾なことでございますから、関係業界に対しまして十分指導していきたいというふうに考えておるところでございます。
  111. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 畜産関係、畜産局長にお尋ねしますが、牛肉が十五回が一番ひどいというのですね。しかも、ここに書いてありますが、二百三十三日も倉庫の中に眠っておったのもある。これは肉じゃないのですけれどもね、魚介類でございますが、二百三十三日も入っていたというのですよ、ずっとそこに。そういうことが多いと書いてあるわけです。確かにまだ大蔵省の報告を聞いてない、どうのこうのということかもわからぬけれども、まさか大蔵省の発表がうそを発表するわけではございませんし、こういう実態を見て、しかも牛肉十五回も転がされたという、これはとてもじゃないが国民生活がひどいものになってしまいますよ。しかも、この狂乱物価に。そういう点についてひとつ局長の御答弁をお願いいたします。
  112. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 輸入牛肉の保税倉庫におきます転売の実態につきましては、大蔵省の方からその内容の説明を求めまして、その実態に即しまして所要の措置を検討していきたいと考えております。  牛肉につきましては、特に大臣からもお答え申し上げましたとおり、輸入割り当て、事業団による輸入等、自由な輸入制度にしておらないわけでございますので、それが国内に入りまして価格つり上げのために転売が行われるということでありますれば問題であるというふうに考えております。  先ほどの御質問の中で、牛肉が輸入価格と比べて二・何倍になっておるという御指摘でございましたが、この資料、本日の新聞の記事だけで見ましたところ判断されますことは、一つは、輸入業者は、これが事業団の輸入でありますれば事業団指定の商社でございます。第一次買受人というのが、これが事業団に当たるものというふうに考えられますので、この間の差額は関税二五%と輸入諸掛かり八%ないし一〇%、それを足しますと第一次買受人の価格は、これはそう問題になる価格ではないと考えております。  それから、第一次買受人から第二次買受人、これは事業団による輸入の場合には指名業者になっておりまして、たとえば市場関係でありますれば全国市場協会、あるいは小売団体の場合には全国の食肉事業協同組合連合会といったような指名団体に競争入札で販売をするわけでございますが、これは国内の牛肉の価格安定制度との関連におきまして、国内で流通過程で国産牛肉との価格差で超過利潤が発生しないように、事業団が差益を徴収しておるわけでございますので、この差額というのはそういった差額ではなかろうか、価格の開きではなかろうかと考えております。  その後の取引につきましては、小売団体の場合でございますれば、全国の小売業団体、それから都道府県の小売業の団体、それから単位組合、そして小売商ということで流通していくわけでございまして、その間に大きなロット、たとえば事業団から売り渡す場合には十トン程度のロットになりますけれども、それを分荷し、さらに品ぞろえをするというようなことが、この倉庫のあり姿のままで分荷、品ぞろえというものが行われていくわけでございますので、ある程度それぞれの段階の取引が行われておるということが推察できるわけでございますが、いずれにしても大蔵省の調査をよく精査をいたしたいと思っております。  それから、十五回の回数がある、これは通常ではないというふうに思います。それにつきましても十分精査をいたしたいと思っておりますが、価格つり上げ等のためにこうした実態があるとすれば、それは問題であるというふうに考えております。
  113. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 政務次官でもいいし、それから官房長でもいいのですが、いま各局長から御答弁ございましたけれども、いずれにしても、まだ大蔵省の方から来ていないということで、今後検討されると思いますが、いよいよ連休に入ってしまいまして、しばらく委員会が開かれないということになりますし、どういう経路でもって調べて、そしてこういう問題をはっきりとされるかどうか。当委員会に発表と言っても、なかなか委員会が開かれませんから、しかしこれは刻々と、国民が食べるものですから、そういうことなので、どのような手でこれをまず国民に安心させるかどうか、そしてそれをわれわれに報告してもらいたいと思うのですがね。今後はこれは一般質問で取り上げなければならぬと思っておりますので、その辺の具体的な日程だとかまたはその手段、方法、ちょっとお答え願いたいと思うのです。
  114. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 ただいま各局長の方から、担当によります実情についての現在の段階での御報告をいたしたと思います。先ほど大臣答弁にもございましたように、早急に私ども調べまして、対策としてとるべきものがあれば早急な対策も考えまして、早い機会にこの委員会の方にも御報告申し上げたいと思っております。
  115. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 ですから、いよいよ連休に入るわけですよ。連休というとしばらくかかるものですから、どういうような形で——それは連休後でいいのかどうかということですよ。これはもう即刻やってもらわなければならぬと思っているのですがね。そんなにのんびりしていていいのですか。
  116. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 まことに恐縮でございますが、各局ともきょうの新聞で知ったようなところもございますので、この委員会の後集まりまして、早急な対策のスケジュール等もつくりますので、いまここでいつというふうに言うのは、大変恐縮でございますが、控えさせていただきまして、なるべく早い機会に御報告なり御連絡を申し上げたいと思っております。
  117. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 それでは、その相談の結果を私または各委員にお知らせ願いたいと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  118. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 結果が出次第、御連絡申し上げるようにいたしたいと思います。
  119. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 それでは、法案の審議に入らしていただきますが、時間が幾らもございませんので、重要なところだけまずお聞きしたいと思います。  まず、今回のこの三法律につきましてはいろいろと質疑がなされましたので、相当重複の点があると思いますけれども、まず、私は、農地は耕作者自身が保有するのだというその原則、その点と、それから今回のこの法の改正を考えまして、もう少し考え方があったのじゃないんだろうかという気もいたします。まあしかしながら、問題は地価の問題、この問題だと思うのですね。一体、農業収益でもって合うところの地価がどれだけあるかないかという問題です。ですから、やはり耕作者自身が持つという原則から考えれば、所有権の移転ということがやはり一番大きな問題になってくると思うのですが、農水省ではもはやそれをあきらめたような形で、今度は耕作権の移転という形になっておりますけれども、この点についてどうでしょうか。時間がありませんので、ひとつ簡単に要点だけお願いします。
  120. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 現行の農振法のもとにおきます農用地利用増進事業におきましては、その対象は利用権の設定ということで限定いたしております。今回提案しております新しい利用増進法案の内容におきましては、所有権の移転も利用増進事業の内容として取り上げることにいたしております。そういう意味では、確かに所有権の移転は困難ではございますが、特定の地域、特に北海道のようなところ、それから資力がついてある程度の土地を買い得るような経営の農家もありますので、そういったところではできるだけ促進することが必要と考えて取り込むことにしたわけでございます。その意味であきらめてはおりません。
  121. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 労働と経営と土地の保有、この三位一体が自作農主義の精神でございますけれども、農水省としては農業経営でもって、大体説明できる土地といいますか、その点の調査をされたかどうか、全国的に大体それがどのくらい農地としてあるかどうかということをまずお答え願いたいと思います。
  122. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農業収益に見合った地価の水準というのは、それぞれの地域生産力なり、そのほかたとえば割り戻しでもって資本還元する場合どういう利率をとるかということによって大きく異なってまいります。そこでそのような地価水準にある農地面積はどのくらいかというような把握は困難でございます。  ただ、私ども五十四年における農地価格が、米作の純収益、これははっきりしておるわけでございます。それを一定の利率で資本還元した地価水準を下回るような市町村の割合はどのくらいあるかというのを見ましたところ、これは農業会議所の調査を基礎にしておるわけでございますが、都市計画未線引きの旧市町村の単位でございますが、その農用地区域内で見ますと、利率五%で還元した場合全体の約四割程度、それから利率三・五%で還元した場合同じく六割程度、これが農業収益に見合う地価水準以下にあるというふうに一応推定することができると思っております。
  123. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 私は国会図書館からの資料を持っているのですけれども、これには約三分の二ぐらいはまだ農業収益的な価額の割合として見られているという結果が出ているのですけれども、こういう点から考えて、もう少し別な面から持っていけばもう少し高度利用ができるのじゃないかと思うのです。というのは、いままで昭和五十年ですか、農用地の利用増進ということをやりましたね。各地で地域を設定して各市町村が一生懸命やっているのですが、それがどっちかといいますと余り成果が上がってないわけです。そういう点から考えても、もう少しこういうことを調べて地価の上がるのを抑えて、本当に自立農という精神のもとに日本農業の基盤をまずつくっていく、こういう考え方からでないと、安易に、土地が余ってきたからだれかに貸そう、こういうことよりも、その辺はどうでしょうかね。先ほどの輸入物資云々もありますけれども、国内でつくって余っちゃってどうしようかというとき、どんどんどんどん外圧で入ってくる。それが何回も何回も転がされた。これは考えてみればナンセンスですよ。それは日本農業基盤が脆弱な結果なんですね。やはりこういうところも考えていかなければならぬと私は思うのです。ですから、この調査では三分の二はまだまだ農業収益でできるところはあるというふうなデータが出ているわけです。そちらのデータとは違うかもわかりませんけれども、その点についてどうでしょうか。
  124. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私の申し上げた数字も利率を五%で還元した場合は四割程度が採算以下であるということでございます。すると、六割程度はその範囲内でやれるということでございますから、学者の先生がおっしゃった資料もそう大差ない、おおむね似たところを見ていると思います。  それから、当然そういったところを重点に農業経営を育成していくというようなことは必要でございますが、ただ、そういう収益性はあっても労働力の問題、絶対数におきましても、あるいは老齢化というような事情におきましても、その経営自身ができなくなっているというところもあるわけでございます。そういった方に農地を提供してもらい、これを活用するということは当然あることでございまして、それらも含めまして、私ども今回の流動化促進の事業を起こして——起こしてといいますか、さらに拡充することとしているわけでございます。
  125. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 それでは、いわゆる地価を、上がっていくのを抑えるという抑制策、これについてはどうですかね。
  126. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 地価抑制のことについてはちょっと申し落としたので失礼いたしました。  地価の問題は、農地価格だけでなく、全体的な宅地価格も含めてこの抑制を考える必要があると存じます。その点では、国土庁を中心政府全体でもって地価抑制対策に目下懸命に努力しているところでございます。ただ、農林水産省の立場といたしましても、農地の価格については、これは農振法もございますし、あるいは農地法というものもございまして、いたずらに外部資金が入ってきて投機的あるいは投資的に働くということは抑制し得る立場にあるわけでございます。こういう線引きなりあるいは農地法の厳格な運用ということによりまして、地価、農地価格の高騰を防止するということは今後とも十分努力してまいりたいと考えております。
  127. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 その具体策の問題なんですけれども、地価が上がっていくのは宅地開発に引きずられるということは、いままでの例でございました。この点については農水省としても責任回避はできないと思うのです。具体策、それはどうでしょうかね。たとえば農地評価のいろいろな区分がございます。国税庁がやっておるのもあれば、いろいろございますけれども、その線引きの問題、そして所有者自身が、あそこはこのぐらいだからおれのところもこうだろうということで上げていくというのが多いわけですよ。ですから、ここはここであくまでこうなんだという、あくまでも農業基本なんだからということで全部がわかっていなければならぬと思うのですよ。ところが、国税庁の評価なんかは、向こうもそうだからこっちもそうだろうと思ったら、そうじゃなかったということで、はっきりしてないからわからないわけですよ。その点どうなんでしょうか。
  128. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 御指摘の国税庁の評価の問題は実はよく存じませんが、私ども、一般宅地の評価がそのまま農地価格にストレートに反映する、そのことが農地価格上昇につながるということは確かに防止しなければいけない。その意味で、市街化区域あるいは市街化調整区域、それから農振区域、その中でのまた農用地区域、そういった線引きをはっきりいたしまして、用途に応じた土地の利用のあり方というものをきちんと整えてまいりたいというふうに考えております。そういうことによっていたずらな地価の高騰の波及というものを防ぐことは、今後とも努力する必要があると考えております。
  129. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 ですから、たとえば市街化区域の中にも甲地と乙地とあるわけですよ。また第一種、第二種といいますか、あるわけですよ。線がぴしっとしてない。やっているのでしょうけれども、消費者はわからぬと言うのです。これをもう少しはっきりさせれば、地価がむやみに上がっていくというのはおさまるのじゃないか。これは一つの例ですけれども、その点ではっきりさせたらどうかと思うのですけれども、それはどうでしょうか。
  130. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 線引きの問題、それから転用区分の問題かと存じます。私どもそういった点、先ほども答弁でも申し上げました中には、そういうことをはっきりさせていくということを当然含めて申し上げたつもりでございます。
  131. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 それでは、時間が余りございませんので次へいきますが、小作という言葉、小作農、非常に暗いイメージをわれわれは持つのですけれども、もう少し近代的な言い方があるかどうか、その点どうでしょう。
  132. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 御指摘はごもっともでございます。ただ、小作という言葉は、農地法においては賃貸借だけではなくて質権、地上権等の物権の設定にかかる使用収益関係を含む広い概念でもって用いられております。そういう特殊な意味を持っているということと、それから民法そのほかの法律におきましても使用されてきて、長い間それはそれなりに定着しているということがございます。したがいまして、この用語につきましてそれなら法令を改正してはどうかということでございますが、用語だけを先行的に改正するということは、いま申した内容からするとなかなか適当でない。これにかわる用語もまだ社会的、経済的に慣用化されるに至っていないということで、その点は御指摘のような問題のあることは承知しておりますが、やむを得ずいまなお残って使われているわけでございます。  ただ、近代的な賃貸借関係、小作という前時代的な言葉を避けることができるような使い方ができる面においては、当然そういう言葉は避けていきたいというふうに考えておりますし、私どもが提案しておりますこの三法におきましては、従来の法律の関係を引き継いだ部分、定額金納小作料の部分を除きましては、そういう小作料という言葉は使わないようにしているところでございます。
  133. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 今回の改正で物納の道を開くわけでございますけれども、物納そのものは現実はかなり行われている、そういうふうに聞いておりますが、その水準なり広がり、どの程度把握しているか、実態について調査したかどうか、おっしゃっていただきたいと思います。
  134. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 事例の調査はしたことがございます。これは法律のたてまえから言えば望ましいことではございませんが、実質物納がやみ小作の形でもって主として行われておる実態がございます。数字を申し上げますと、全体として新しいものほど物納の占める割合が多い。小作料契約の中で——賃貸借契約と言い直すべきですか、契約の中で約四割程度が新しいものにおきましては物納の形をとっております。
  135. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 全体的なのはわかりましたけれども、この四割というのも古い数字なんですよ。そちらの資料なんですけれども、昭和四十六年以降ばんとこの十年間ぐらい、一遍にしたかどうかわかりませんけれども、それは四〇%、これは間違いないですか、一番新しいものですか。
  136. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いま申し上げたのをもう少し正確に申し上げますと、調査自身は五十二年に行っているものでございます。そして、対象といたしましては四十六年以降設定されたものでございます。
  137. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そうしますと、地域地域で違うでしょうけれども、どの程度のものが物納として土地の所有者の方にいっているかということですね。たとえば十アール当たりお米がとれた。お米は、不作の場合もあれば豊作の場合もあるし、また、非常にいいところもあれば平均的なところもある。大体何俵ぐらい所有者の方にいっているか、そういうことです。
  138. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 支払い形態別の十アール当たりの水田小作料、同じく五十二年の調査でありますと、物納の場合は金納の場合よりも概して高うございます。  それから、規模別に見ますと、規模が大きくなるほど収益性がいいということを反映いたしまして一般的に高くなっておるという傾向がございます。平均の数字で申し上げますと、物納のみの場合は三万九千四百二十二円、これは物納を金額換算しての数字でございます。それから、金納のみの場合はこれより大分安くなっておりまして、これは残存小作地の関係が大きく響いておるかと思いますが、一万六千五百十六円でございます。
  139. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 物納三万九千円幾ら、お米に換算しますとどのくらいになりますか。
  140. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 米の品質だとか、それから、政府に売り渡すのか自主流通かということで若干差はありますが、おおむね二俵半程度でございます。
  141. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 二俵半ということになりますと、反どのぐらいとれた計算になりますか。
  142. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 日本全国の平均収量は十俵を若干下回る程度かと思いますが、いまの物納のみの場合の水準はそれに対する二割強というような見当だろうかと考えられます。
  143. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 二割強または二割五分くらいの見当のものが現在行われておる。小作料の物納についてはいろいろ意見がございまして、このまま野放しにすると、過去のような地主と小作人というような形になっていくのじゃないか、こういうおそれもあるし、また、どこかに借財ができてしまった、その借財のかわりにその土地を渡した。それはとてもとても農家ができるものじゃないから、逆にそれにやらせたときにいろいろなことが出てくるのじゃないかと思うわけです。ですから、何らかの歯どめの措置が必要だと思うのですが、その点については、いろいろな耕作者の経営の安定に支障があるような場合もあると思いますけれども、これについては局長はどういうお考えでしょうか。
  144. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私ども、いまある定額金納制の規定、これをそっくりなくす、したがって、およそ一般的に金納であろうが物納であろうが差し支えないという形の改正を考えておるわけでございます。  いまの先生の御指摘は、およそ一般的に物納をよろしいというのではなくて、何か要件を備えた場合、要件の決め方はいろいろあると思いますが、そういう場合に限って定額金納制でなくてもいいとすることはできないかという御趣旨かと存じます。そういうお考え方いろいろあることは私も承知いたしております。先生のいまの御質問が、この法案についての修正を考えているかということでございますれば、修正の取り扱いにつきましては、それは委員会でお決めになる話でもございますし、また、私ごときでなく大臣がしかと御答弁申し上げなければいけない性質の問題であるかと存じますが、事務的にはそういう御意見も慎重に検討してまいる必要があろうかというふうに考えております。
  145. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 政務次官お座りですから、ちょっといま事務的には検討に値するとおっしゃいましたけれども、その場合、現実の問題としてあなたとしてはどういうふうにお考えですか。
  146. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先ほどの御質問にちょっと返りますけれども、農地の価格が高い、なぜ高いかという御質問の中に、結局、売買を通じてしか利用権の収集ができないとなると当然値段が上がってしまいますから、したがって、そういうことではなしに、貸借という関係でもっと農地の集積が容易になるということで、逆に農地価格の高騰も抑制できる、こういうふうに考えますし、そういう意味では、貸借をもっと円滑化するということが必要ですし、今度の農地三法改正の御審議をいただいておりますのもそういう趣旨からである、かように考えておるわけでございます。  そう考えてまいりますと、あえてこの際金納と並んで物納もお認めいただきたいというのも、できるだけそういう貸借をスムーズにしようということでございますから、そのためには、金納と比較していま局長申しましたような物納の値段が金額に評価して高い、これは私は余り望ましいことではないというふうに考えますので、その辺は十分相互のバランスをとりながら慎重に図っていかなければならない、かように考えます。
  147. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 ちょっと私の質問からずれたような感じなんですけれども、先ほどの局長の御答弁で、これは残存小作地の問題もあるけれども、金納の場合は反当たり一万六千五百十六円、物納の場合は三万九千四百二十二円、相当差があるわけですね。今回こういう方法を開いてしまったならば、今度は金納がまた上がるのじゃないか、そういう心配もあるわけですよね。といって、物納の道を開かなければ全然流動化していかない、そういうこともある。しかし、それがもう際限もなしに、物納の割合が昔のようにたとえば六割が地主で四割が小作というような形にもしなったとすれば、これは大変なことになると思うのですが、そういう心配も相当あるわけです。昔から五十年も六十年も農地解放をやっていらっしゃった方々の中にあるわけですよ。そういう点で、やはり歯どめが必要じゃないか。歯どめについてはどうかと言ったら、事務当局としては検討いたしますという御答弁なんですが、これは政治的な問題ですから私はあなたに質問しておる。大臣は了解のもとに向こうに行ってもらっていますから、あなたに御答弁をいただくわけなんですけれども、どうですか、それは。
  148. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 御懸念の趣旨は私も十分わかりますが、ただ、それは物納にしてみても、やはり貸し手と借り手の両方あっての話でございますから、片一方で、農村地帯のいわゆる工業化が進んでまいって、そして農外収入の機会がふえ、農外雇用の機会がふえてまいりますと、農地の貸し手の側もふえてくるということでございますから、それのバランスで、御懸念はわかりますが、必ずしも一概に金納の水準が上がるということでもないように私は考えておりますが、これについては十分な規制の措置を講じていかなければならないことではないかというふうに考えております。
  149. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 それはたとえば修正されればそういう方針でやっていく以外にないと思うのですけれども、現在その話し合いは進められておりますけれども、いずれにしましても、歯どめをかけてある程度は防げるということは農水省としても理解できる、こういう御答弁をいただけるかどうかという問題なんですけれどもね。
  150. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 そういうことでございます。
  151. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 あと一つ聞きたいのですが、農地利用増進でそして高度利用ですか、そこへ一体何をつくらせるかという問題なんですけれども、水田再編の政策と絡み合わせまして、この点はどうなんですか、具体的な問題として。
  152. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 これは先生、何をつくらせるかという問題は、まさに全体の需給バランスの問題もございますし、また、地域地域の特性に応じてそれぞれの特産を今後つくっていただこう、こういうことで農林水産省も御協力といいますか御指導をお願いしておるわけでございますから、一概に何をということはなかなか決めにくいので、問題は、何をつくっていただくにしても、現在のような零細規模ではなしに、ある程度まとまった形で合理的、近代的な経営をお願いする、こういうことでございますから、何をということでいまここでお答えはなかなかむずかしいのじゃないかというふうに思います。
  153. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 もう少し私はしっかりしてもらいたいと思うのだけれども、結局、貸す、借りるという立場になると、現在の減反の政策ですから、借りて、借りた土地がまた減反をされる場合もあるわけですね。そうしたらまたそれを転作しなければならない、こういうことがあるのですから、これからですだとか、まだ考えていませんじゃ困るのであって、その場合にはこうしますという姿勢を示さないと、借りる方だって借りられないじゃないですか。結局二種兼だって現在ほとんどがお米しかつくってない状況でしょう。今度は後継者の方々も張り切る場合もあるかもわからない。そういうときに、さて何をつくるか、農林省では何もないんだ、こんなことじゃしようがないでしょう。どうです。
  154. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 まさにいわゆる農地利用改善計画、これも御審議いただいておるわけでありますけれども、そういう中で全体としてその地域農地をどういうふうに合理的に活用していくか、こういうことを決めて、そして農地の集積による利益を図れるだけ図る、こういうわけでありますから、あえて言えば、転作の場合には御案内のように麦なり大豆なり飼料作物、こういうことでございますから、一つはそういうものをお願いするということでありますし、当然水田をお願いする場合もあるわけでありますが、その辺はやはり具体的な地区地区の特性に応じてお話をしていく筋合いのものではないか、かように考えております。
  155. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 あと私たちの同僚が、公明党の割り当ての時間いっぱい質問いたします。しかし、非常に御答弁としては不満なんです。今後の機会にまた改めて質問させていただきます。
  156. 内海英男

    内海委員長 武田一夫君。
  157. 武田一夫

    ○武田委員 昨日に続きまして、持ち時間で二、三質問いたします。  きょうは農業委員会の問題を中心質問いたしますが、その前に一つ税金の問題で、昨日も多少触れましたが、土地の流動化と税金のかかわり合いにつきまして、人に貸した場合いわゆる税金上の特例措置が打ち切られる。そうすれば、高い地価のところの農地の方々は、特にことのほか税金で苦労なさる。これは十分御承知だと思う。こういう方々がこの利用増進の事業に乗っていけるような方向というのは、やはり税金を考えなくてはいけない。これは農林省としても考えていると思うのですが、この際ひとつ大蔵省との交渉によってこうした特例措置の継続といいますか、こういうものの適用をして、土地が安心して貸せるような条件をつくってもらいたい。この問題が一つ。  それから、生産法人の問題につきましても、これもやはり税金の猶予措置ですか、これがないということで、特にそういうものに活用しようという地域は非常に不安であると同時に、いままでやってきていてもそれが崩れるような傾向にあるということを聞いていますので、この二つの問題の税金対策、これは相当今後の流動政策における成否をかける問題だと思う。この問題を、今後農林省としましては積極的に大蔵省との交渉の中で、期待にこたえるようなそういう姿勢を貫いてほしいと思うのですが、この点についてまずお答え願います。
  158. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 現行の相続税の納税猶予制度は、現に農業経営を行っている農地について、相続税評価額と農業を営む場合の担税力、これは農業投資価格を評価するということで算定いたしておりますが、その担税力との関連等を考慮して設けられたものでございます。現に農業を営まない貸付地には、先生もおっしゃられたように納税猶予は適用されないということになっております。したがって、みずから農業経営を営まない貸付地を納税猶予の対象とすることは、制度の趣旨から言うときわめてむずかしい問題がありますし、それから貸し付けの相手方、貸し付けの期間それからその保証、本当に長い間きちんと貸し付けが行われるかというような問題等もどうとらえるかというような、これまた技術的ではありますが困難な問題もございます。ただ、担い手農家への農地の利用権の集積を図るためには、貸付地について相続税の納税猶予制度の対象に加えてはどうかということは、いま申し上げましたような困難な問題がありますけれども、重要な検討課題であると考えております。五十六年度以降の税制の問題といたしまして、私どもも税務当局と慎重に協議をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、農業生産法人の問題は、農業生産法人の性格をどう理解するかという本質論もございますし、これまたむずかしい問題がございますが、いま申し上げました相続税の猶予の問題と同様、今後の検討課題として検討してまいりたいと存じております。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  159. 武田一夫

    ○武田委員 大臣、いまの問題につきましては、大臣からもひとつ、お答えは必要はございませんが、当局との話し合いの中で強烈に進めていかないと、より有効的に効果的に実りあるものにするための一番の課題となってくるのはこの税金の問題だと、洗ってみてしみじみと私は感じます。ですから、ひとつその点も、いま局長からお答えがありましたけれども、早急に検討しながら期待にこたえるような方向性を見出してもらいたい、こう思います。  それで、農業委員会の問題につきまして質問します。  農業委員会体制、いわゆる系統組織としての農業会議の整備とか、あるいは農業委員会の業務を整備するための事務局の体制とか、会長の権限の明確化とか、協力員の設置などというようないろいろな問題が、いままで何回か要請運動というのがありましたね。しかしながら、どういうわけか反対があったと聞いておるのですね。そのためにわれわれの要求が実りあるものにならなかったという不満があるわけですが、何かこれが反対されてきて今日まで来たという理由があるわけでしょうか。反対したのはどこであるか、その件ちょっと説明してもらいたいのです。
  160. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 先生も御案内のように、農業委員会は市町村段階に設置されております行政委員会でございますが、市町村と農業委員会との関連につきまして長い間の論争があったことは事実でございます。特に市長会、町村会というような団体におかれましては、農業委員会基本的な性格の変更ということを望んでおられる向きがございまして、特に農業委員会の公選制の廃止であるとかあるいは農業委員会諮問機関化するといったような御要望がございまして、さような御要望は今回の法律の改正の時点においても論議された点でございます。しかしながら、われわれとしては、この基本的な性格は、また枠組みは変えないということで、今回の法律の改正をお願いしておる次第でございます。
  161. 武田一夫

    ○武田委員 こういう法改正の問題が出てきたわけですから、その過程の中で、担当機関は、そうしたものが効果的に実効あらしめるための農業委員会体制といいますか充実というものはあわせて検討しながら、体制も大丈夫だ、だからこういうことはできるという想定のもとにこれが出てきたと思うのです。それは間違いなくどこの市町村においても、どの場所においても、そういう体制というものは十分なものかどうか、その点はどうでしょう。
  162. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回の農業委員会等に関する法律の改正につきましては、今般農業委員会が利用増進事業を中心とした構造改善事業の中で非常に大きな責任と地位とを占めるということから、それに関連いたしまして、農業委員会の制度につきましても御提案申し上げているような改正をお願いをいたしておるわけでございますが、私どもは、この御審議を通じましてもおわかりのように、必ずしもこの改正ということだけですべてが尽きるというわけではないと思います。また、現在の農業委員会の中には、数ある農業委員会でございますから、その体制が必ずしもすべて満足のいく状態であるということは言えない状態にある委員会もあるということは、私ども承知をいたしております。要は、この改正を機にいたしまして、財政面を含めまして業務執行の体制の整備を図り、また特にその中でも、その中核となります農業委員の方々の自覚を促しますと同時に、また職員の方々が資質を向上していただきまして、今後このような重要な任務を帯びた農業委員会の業務の執行に遺憾のないようにしていただきたいということでございます。
  163. 武田一夫

    ○武田委員 言われることは、農業の基盤である農地行政体制が非常に弱い、こういう指摘はどこへ行っても聞かれます。それで、農業委員会がその業務を担っているわけですけれども、そういう現場の方々が一番要望している一つの中には、やはり事務局体制というものをもっと強化しなければならないのじゃないか。特に今度いろいろとやるべきことが出てきます。その中で、事務局に一人しかいない、この方が何でもやるなんてとても不可能である、この体制はもうあちこちで聞かれますし、現実にあるわけです。ですから、財政的な問題も含めまして、この事務局体制というのは一つの大きな窓口としまして私は重要な問題だと思いますので、この点はどうでしょうか。
  164. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 確かに今回の農用地利用増進法あるいは農地法の一部改正を通じまして、農業委員会に課せられた使命は非常に大きいわけでございます。現在たとえば職員の設置数三・四人という平均でございますけれども、先般参考人としてお呼びになりました方の御陳述にもありましたように、六人というような非常に大きな人数を擁している委員会もございます。しかしながら、先生御指摘のような、まだまだ事務局体制の弱い委員会もございますので、私どもといたしましては、今後財政面、さらに諸般の指導を加えてまいりますことによって、この事務局の体制というものを整備強化していかなければならぬというふうに考えておる次第でございます。特に私ども考えておりますのは、事務局の体制そのものと、またその中において働かれる人々の使命の自覚といったようなことも非常に重要であると考えておりまして、さような精神面も含めまして、私どもとしては指導を強化してまいりたいと思う次第でございます。
  165. 武田一夫

    ○武田委員 許可権限の委譲等につきましてお尋ねしますけれども、政府案では、耕作目的での農地等の権利移動の許可及び農地等の賃貸借の解約等の許可については、原則として都道府県知事から農業委員会に委譲する、こういうふうになっている。これはどういう理由によるものか。いま局長から話がありましたように、地域によっては、非常に基盤の弱い、不安な状態のところが多いというのが事実でありまして、こういうところにこうした大幅な権限の委譲というのはどういうものかという不安があることもまた間違いがない。こいうことを考えますと、この今回の措置はどういうところにねらいがあるものかということがまず一つですね。  それから、農業委員会の所掌事務ですが、これがまたあいまいですね、正直言いますと。たとえば、こういうふうな書き方であります。次に掲げる事務を行うことができる。できるということは、できてもできなくてもいいというふうにとるのだ、もう委員会の事務局の担当者もはっきり言うわけです。ですから、今後私たちの、というのは委員会の事務局の方々の話ですが、しなければならないこととしてやらせてもらいたい、こういう「できる」などというような表現でなく、しなければならないというふうな義務規定のようなものが必要になってくるのではないか、こう思うわけですが、今後そういう農業委員会にしてもらいたい、しなければならないという仕事の内容というのはどういうものか、具体的にひとつお答え願いたいと思います。
  166. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 後段の方は経済局長から御答弁申し上げます。  前段のその御趣旨は、三条それから二十条の許可権限を農業委員会におろした趣旨いかんということかと存じますが、私ども三条、二十条以外にも、今回相当程度大幅に国の権限を都道府県知事に、同時に都道府県知事の権限を農業委員会に委譲している部分がございます。これは一般的に言いまして、それぞれ事柄の性質、それから現在までに運用してきた実績等を踏まえまして、農業委員会においても十分それを処理し得る実態にあるということ、さらに行政簡素化という観点からいって、権限はできるだけ、現場といいますか、直接問題を取り扱っている部面におろす方が妥当であるという一般的な動向、要請等もありまして、権限を委譲することとしたわけでございます。  ただ、その場合、特に二十条の関係の問題でございますが、これは私人間の権利の調整の問題を含むものでございます。いままで都道府県知事の場合は安心できたが、農業委員会ではその点は不安はないだろうかという御議論のあることは承知いたしております。私ども、農業委員会も自分の意見を付して都道府県知事に進達するということをやっておりますので、その点は大丈夫とは思いますが、いろいろ御懸念の向きもあり、この点については事務的にも検討をしていることろでございます。
  167. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農業委員会の所掌事務でございますが、これは法の第六条第一項に規定する事務と第二項に規定する事務と分けておることは先生御案内のとおりでございます。  第一項の方の事務は、これはいわゆる法令事務ということでございまして、法令によりその所掌に属させた事務でございます。これは特に農地等の権利取得の許可その他の農用地の調整につきましての事務でございまして、これは法的に必ず農業委員会が実施をしなければならぬという義務規定がある事務でございます。  御指摘の事項は、恐らくこの二項に係る事務であろうというふうに考えるわけでございますが、この二項の事務は、農業委員会がその権限として処理するという事務ではない、いわゆる事実行為を規定した事務でございまして、任意事務と呼ばれている分でございます。この事務は非常に広範な事務が規定してございまして、農用地等についての権利取得のあっせん、交換分合のあっせんというような事項を初めといたしまして、農業、農民に関する振興計画の樹立、農業生産の増進、農業経営の合理化、農民生活の改善といったきわめて広範な事務を網羅しておるわけでございますが、これらの事務につきましてはまさに任意事務でございますけれども、やる気があるかどうかというところが一番のポイントだろうというふうに考えます。先生御指摘のように、今後事務体制を整備してまいりますれば、こういう事務に関しましても意欲的に取り組んでもらえるものというふうに考えるわけでございます。  特にその中でも、今回の農用地利用増進法に関連いたしまして今後非常に重要な所掌になる分野につきましては、今回の農用地利用増進法の第五条の規定として、農業委員会の決定を経て、農用地利用増進計画を市町村が定めるということで、これは法的にきちんと決められた六条一項の事務ということにいたしておりますし、また、「農業委員会は、農地事情の改善に関する事項その他の農業委員会等に関する法律第六条第二項に掲げる事項に関する事務を行うに当たっては、利用権設定等促進事業の推進に資することとなるようにしなければならない。」という規定を設けまして、この農用地利用増進事業と六条二項の事務との関連を明確にすることによりまして、その推進に当たらせるようにしておるわけでございます。
  168. 武田一夫

    ○武田委員 局長の言われるとおりなんです。任意事項だから一生懸命やるところと一生懸命やらないところと明らかですが、そういうことではいかぬと思います。ですから、やはり一生懸命やっているところにはそれなりの効果も出ているわけですが、してないところをそのままにしておくということは、これは今後の問題として相当体質を変えて、これは最小限しなければならないというものは彼らは知っていると思うのですが、言うなれば、さっきの体制と同じように、事務的な問題として非常に繁雑または大変な負担があるということも兼ね合わせて、結局は任意ということに甘んじているということだと思う、私は善意に解釈しまして。そうでないようにひとつ取り計らってもらいたいと思います。  ところで、先日参考人がおいでになったときの御意見の中で、町村会の代表の方が、どうも権限を余りそっちの方に持ち出しては困るというようなニュアンスの発言がありました。現実に歩いてみましても、もっと町村長の方に権限を持たしてくれという声もあることは事実であります。それで、もう一つは、農協さんも今度は、いままで余り商行為に走って流通とかそういう商売の方に行き過ぎたという反省なんでしょうが、八〇年代の課題として土地の流動化の問題なんかにも取り組んでいくということを八〇年代の計画の中で言っている。農業委員会も今度は一生懸命がんばらなくちゃいけない、こう言っているわけですが、この三つの関係がどうもうまくいくかなというふうに、参考人の御意見などを聞いてまた歩いてみて感ずるわけです。この点やはり、新しい組織ができまして新しい体制でいくときには、推進母体がどこで、どこがそれをリードしていくかというのは、事業の成否に相当関係があると思う。また、三者の協調というのが相当重要な課題になってくると私は思うのですが、特に農協さんの場合は、足腰が非常に強いということで非常な優位性を感じているような趣もあるわけですが、農業委員会としてあるいは市町村として、その三者の調整はどういうふうになすべきが最もふさわしい行き方だというふうにお考えか、これはきのう一応構造改善局長から答えがあったのですが、きょうは経済局長の方の立場からひとつお答え願いたいと思うのです。
  169. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 構造改善局長の御答弁と同じことになると思うわけでございますが、特に今回の農用地の流動化の促進という事業は非常に大きな事業でございまして、これは農業委員会あるいは農協あるいは市町村といったようなおのおのの自治体あるいは団体がばらばらの状態で行っていくということでその意思がお互いに疎通しないという状態でありましては、このような大きな事業はとうてい推進できないというふうに考える次第でございます。私どもとしましては、三者がその地域地域の実情に応じながらお互いに努力をしていく、そしてまたその連携を十分に保っていくということが非常に重要であるというふうに考えるわけでございますが、しかし、特に、人と土地というところにその業務の力点を置いております農業委員会が、その中で占める地位というものは非常に大きなものであると思いまして、いわばその三つをつなぐ輪の中心として農業委員会が活動してもらうことを私どもとしては期待をしている次第でございます。
  170. 武田一夫

    ○武田委員 大臣はどう思いますか、この三者の関係ですね。この事業を効果あらしめるためにはどういうふうにやるのが理想的か、特に地域の調整、調和ということを考えますと、強烈なオルガナイザーというのですか、そういうふうな立場の方々が育つ条件整備というのが非常に大事になってくると思うのですが、その点と相まって大臣のお考えをひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  171. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 市町村がこの事業を推進するに当たりましては、農業委員会だけでなくて、いま御指摘のとおり農業協同組合組織も非常に力の強い組織でございますので、そういう意見を十分踏まえて実行していかなければ効果は上がらないのではないか、こう考えております。
  172. 武田一夫

    ○武田委員 農業委員の中に、議会の方から推薦されてくる学識経験者云々というのがいますね。あれはどういうことなんですか、学識経験者云々ということの内容ですが。
  173. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農業委員の方々の中には、いわゆる公選で出ておいでになる選挙による委員の方々のほかに、各団体の代表者、さらにそのほかに農業及び農民に関しまして知識経験を豊富にお持ちの学識経験者の方々が一定の人数以内入っておいでになることを認めている次第でございますが、これは、農業委員会の運営というものを広く一般の方々の御意見も伺いながら誤りがないようにしていくということのために、こういう学識経験をお持ちの委員も入れているというのが法の趣旨であると存じます。
  174. 武田一夫

    ○武田委員 具体的に言いますと、どういうような方々が比較的多く推薦されているかということです。
  175. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 いろいろな方の御推薦によってこの学識経験の方々が選ばれているということは伺っておりますが、その中で特に多い方々は議会の方々が多いということも聞いております。
  176. 武田一夫

    ○武田委員 そういう方々の動きというのはどういうふうにとらえていますか。
  177. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 特に学識経験者の委員の方方につきまして、その方々が学識経験者であるがゆえに何か問題を持っているというふうには聞いておりません。その農業委員会農業委員会の実情にあろうと思いますけれども、学識経験者として十分にその機能を発揮しておられる方もおるというふうに聞いております。
  178. 武田一夫

    ○武田委員 やはり学識経験者という中身をもう少し整理して、これからこういう方々のお力添えというのは相当広範にわたって発揮してもらわなければならないのが、今回の法改正の一つの大きな意義でもあると私は見ています。いままでのような形の学識経験者であるならば、農家の方々の不満とか不平というのが大きくなってきて、ほかの農協さんかあるいはまた市町村のいろいろなサイドからの文句が来るということは、これは皆さん方も御承知と私は思います。先ほど、体質改善しなければいけない、それから行動する農業委員会でなければならない、こういうようなことも言われています。ですから、指導力がなくてはいけない、経験が豊かでなくてはいけない、いろいろなものが要求されますね。そういう点で、特に老齢化しているような傾向もある地域にはある。名誉職的な立場で何かのときにだけちょっと動くというような方がございます。それは全然自分たちの仕事と関係ないことで動くことを目的とする人も出ている。これをいままでほってきたというのは問題だと思うのですが、今後はこういう問題について特に指導、監督が必要ではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  179. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 実は先生お考えのようなことを私どももまさに考えていたわけでございまして、実は今回の制度改正を機会に、学識経験委員の数は五人以内ということになっておりますので、何も五人いっぱい、定員いっぱいを選任しなくてもよろしいわけでございますから、特にその地域におきまして学識経験者としてふさわしい方に限って選ぶようにという指導通達を出そうと思っておったところでございます。
  180. 武田一夫

    ○武田委員 もう一つ農業の若返りということを言われていますね。やはり後継者をどんどん育てて、農業も若返っていかなければいけない。ところが、ああいうところというのはなかなか若返りができないという残念ながらそういう体質があるようでございますね。これを当局としてはいかがすべきと考えているか。若い力、新しい力がないとだめなんですな。水もいつも同じところにいれば濁っちゃうと同じように、常に流れていなくてはいけないし、そこに新しい流れが必要だと私は思いますが、その点についてはどういうふうにお考えか。
  181. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農業委員会の主力になられる方々は公選による委員でございますので、その地域地域の農民の方々、つまり選挙権をお持ちの方がお選びになることでございますから、私どもがとやかくそのお選びになる方につきましての資格その他を御議論するということは必ずしも適切ではないというふうに考えるわけでございます。お年寄りの方でございましても、やはりそれなりに長い経験をお持ちの方もございまして、そのためにまた農業委員会の運営が適切にいくというようなこともあろうかと思います。もちろん、先生御指摘のように、若い力が出てくるということが、また新しい農業の発展の原動力になるというケースもあろうかと思います。それはやはり当該地域での農民の方々がその代表をお選びになる過程において、そういう力というものがいろいろな形で発揮され、出てくるようにしていくべきであるというふうに考える次第でございます。
  182. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、これは全体的なこととして大臣にお願いがあるわけですが、きのう私が申し上げましたが、土地の流動化に当たりまして、強制的な力の加わるようなやり方でなくて、民主的な運営の中できちっとやってもらいたいということであります。これはもう一度、水田利用再編対策の問題につきましても、各市町村段階等すべての面にそうしたことがないように、ひとつ農民の意思をよく理解した上での活動としてやるように、また今後そういうことは相ならぬということをやはりもっときちっとしてほしいと思います。またぞろ出てきたとか、私も話しましたが、最近の話を私は聞いておりますが、これは出てくるからありがたいのでありまして、出てこないところでそういうことが行われていったときにこれからまたこういうものがあわせて行われますと、そういうのが二重、三重となって、農家にとっては大変な負担になってくる、困る問題だと思いますので、その点、大臣の方としましては、各段階にそのことをもう一度きちっと指示、指導をするようにお願いしたいのですが、どうでしょうか。
  183. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 これは法律に明示いたしておりますように、それぞれの関係権利者の全員の同意がなければならないと書いてあるわけでございます。そう書いてあっても、まだどうも民主的に運営されないのじゃないかという御指摘をよくいただくわけでございますが、私どもは書いてあるとおりを実は考えておるわけでございまして、決してそういう気持ちでない方に強制的に合意をさせるというようなことがあってはならないと思っておるわけでございます。  また、同時に、私どもは、この法律は何もわれわれが勝手につくるのではなくて、やはり将来の農業の体質改善、体質強化のためには必要であり、そしてそれはひいては農民のためにもなる、こういう考え方に立っておるわけでございますので、その点は農民の皆様方にも御理解いただくように、私どもはPRにはもっと努めていかなければならないと思っております。
  184. 武田一夫

    ○武田委員 大臣初め当局が理解しているその理解が、そのまま体で受け取っているようでいないという事実をよく銘記して、さらに重ねてそのことに指導対策というものをしてほしいということでございますから、よろしくひとつお願い申し上げます。  以上で、私、質問を終えまして、次の瀬野議員の方に譲りたいと思います。
  185. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 瀬野栄次郎君。
  186. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農地法の一部を改正する法律案農用地利用増進法案農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案、このいわゆる農地三法について、私は去る四月九日及び四月十六日の二回にわたって数時間政府の見解をただし、さらに四月十八日には五人の参考人に対する質問を通じ、審議を進めてきたところであります。本日は、いままでの当委員会審議を通して、この農地三法について最終的に疑問点をお伺いし、総括的に明らかにして、本法に対する修正を含めて、農林水産大臣の御見解をさらに求めるものであります。  四月九日の当委員会において、私は、本法が施行された場合、将来農地の流動化を図るとなると一つの大きな問題は、生産対策と価格対策を整合性を持って進めることが大事で、特に生産対策について言えば、流動化により集積された農地に何をつくるかが大きな課題であると指摘したことに対し、農林水産大臣は、「私どもこの三法をお願いをするに当たりましても、当然それはやはり将来の長期的な立場に立って、一体どういうものをつくったらいいのかということ、規模を大きくするだけで、一体何をつくったらいいのか、お米だけでいいのかということにもなり得るわけでございまして、その辺はこの長期需給見通しと関連をさせながら、今後この法律を成立さしていただけるならば、私どもこの政策も進めていかなければならないと考えております。」中略「水田利用再編対策でもお願いをしておりますけれども、今後麦なり大豆なりといったものは、日本自給率が低いのだから極力これを高めていただきたい、こういうお願いをいたしておるわけでございます。」中略「いずれにいたしましても、そういうことのためにも、農地の集積化ということだけでなくて構造政策からいっても、基盤整備の問題であるとかいうようなものもあわせてやっていかなければならないことは当然でございますし、また、そういういろいろなものをつくっていただく上においては、やはり価格政策についてもいろいろ考えていかなければならぬことは当然でございまして、そういうものと相まってやっていくことで、農民に心配をかけないような将来の一つのビジョンを打ち出したいと私どもは考えておるわけでございます。」と答弁をされたのでございます。  そこで、私はせめて、農民に心配をかけぬよう将来のビジョンを打ち出したいと言われるのであるならば、いつまでにどういう構想を示されるのか。たとえば六十五年見通しがことしの八月ごろ、夏には出てくる、こういうことをしばしば答弁をしておられます。したがって、六十五年見通しが出ました夏以降本年の十二月までに、農民に対してはっきりしたいわゆるビジョンというものを示す、構想は大体こういう構想だというお考えが恐らくあると思う。私は、まずその辺を、本法審議に当たって大変重要な問題でありますし、今後の流動化に大きな影響を持つ一つの大きなファクターでございますから、明快にさらに農林水産大臣の御見解を承りたいのであります。
  187. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 これからの日本農業の体質を強化していくということは、一つには、いま御指摘のように生産計画、価格政策構造政策、こういうものが有機的、総合的にうまくかみ合わなければならないと私は思うのであります。そこで、農業の体質を強化していくという面からいけば、どうしても生産性を高めていかなければならない。生産性を高めていかなければならないときには、どうしても規模の拡大を図らなければいかぬというので、こういういまお願いしている問題があるわけであります。  それから、その裏づけとしては、この間申し上げましたように基盤整備があるわけでございます。そして、生産計画でございますが、生産計画はそれでは一体どういう——いま御指摘のように、私ども、農政審議会においては大体七、八月ごろには御答申が願えるものと思っているわけでございまして、それを踏まえて、十二月と言わず、ことしのできるだけ早い機会に将来のビジョンを打ち出したいと思っております。  そこで、それではどういう考え方でいくかということでございますけれども、私は、やはり一つ考え方といたしましては、極力自給度を高めていかなければならない。自給度を高めていくということからいけば、国内でいま足りないものをより多くつくっていただくということではなかろうか。それはたとえば水田利用再編対策でお願いしておる麦とか大豆とかいう転作作物が中心であろうと思います。そういうものに対して価格政策も考えていかなければならないわけでございますが、価格政策は従来も相当やってきておりますけれども、今後とも、いわゆる作物の需要供給の関係、需給事情が一つの大きなファクターになってまいります。いま一つは、農家の皆さんが再生産、なお一層生産をしようという意欲をなくさないということも一つのファクターだと思います。いろいろなファクター、大きく言えばその二つだと思いますけれども、その他もまた多少ありますが、とにかくそういうファクターを中心とした価格政策を考えていく。  それともう一つは、その生産をしていくものが全国どこでも同じものというわけにはいかないだろうと思いますので、長期見通しを立てて、六十五年度を目標としての一つ生産目標が出てまいります。このものはどのくらいの自給率でこのくらいの数量つくっていただいたらいいだろうかというものが出てまいりますが、そういうものと並行いたしまして、いま北海道研究会というもので、北海道が将来日本食糧基地としていかなるものをどのくらいつくったらいいのか、こういう研究をしていただいておるわけでございますけれども、この考え方を、私といたしましては、全体の長期需給見通しが出てまいりました場合に、それを踏まえて各農政局単位くらいにそういう構想に基づいていろいろと検討してもらいたい。それで、そういうものと、地域農政をいま推進をいたしておりまして、各地域地域で農民がどういうものをつくったらいいかということを研究していこうというお気持ちをみんな持っていただきつつございます。そういうものとうまくかみ合わせていくということになれば、農家の方に対して一つの将来の目標というものがつくっていただけることになるのではないか、私はこう考えておるわけでございます。
  188. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一応のお考えといいますか、構想をお聞きしましたが、本件については、恐らく細かい点についてはまだいまからのことだと思いますので、粗々お伺いしましたけれども、そういったことが今後の農地流動化に大きな阻害となる、またそれをやらなければ流動化は進まないという大きな要因になっておりますので、十分対策をとっていただくと同時に、検討を進めてもらいたい。また従来からしばしばそういう答弁をいただいておりますので、この席ではっきりと大臣のお考えをお聞きしながら、期待して政府の将来のビジョンを見守っていきたい、私はかように思います。  次にお伺いしますけれども、残存小作地の問題でございます。  去る四月九日から二回にわたる質問の中で政府答弁を伺いますと、この残存小作地については約十五ないし十六万ヘクタールある。この農地三法が施行になった場合、現場の農業委員皆さん方は、今後この残存小作地が流動化を図る上でかなり支障を来す。なぜかなれば、この残存小作地は大変問題がある小作地が残っているわけです。問題がないのはいままでほとんど片づいてきまして、大きなこじれた問題を抱えたのが残っていると言って過言でない、かように思います。また、この残存小作地は、戦前からのものと、もう一つは戦後、いわゆる四十五年度までのものと大ざっぱに分けて二種類ございます。こういった二通りあることもよく承知しておられると思いますが、せんだって申し上げましたように、この残存小作地を農地三法を提案した機会に、また早い機会に一度新しい契約に切りかえるとか何らかの形の決着をつける、または将来新しい立法化によってこれに対処するとか、何かの方策を講じていかなければ、これまた今後農地の流動化に大きな阻害要因となるということを指摘しておるわけでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 政府の方は、たびたびの私の質問に対しても、心配はない、支障は来さないと思うというようなことでございますが、そんな甘い考えではならぬ、そんなものではないということをさらに指摘をし、最終段階の本法審議に当たって、農林大臣はどう受けとめておられるか、これに対して将来何とか立法措置を講じて対処するとか、何とか早い機会に新たな決着をつけるための何かの方策を真剣に考える、こういうような用意があるのか、その点を明確にお答えをいただきたい。
  189. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 残存小作地につきましては、その小作農の保護と経営の安定を図ることを旨としながら、農業委員会のあっせんなどによりまして、地域の慣行とその実情に応じて、当事者間の円満な話し合いによりその解消を図るよう指導してまいりたいという私どもの行政当局の考え方を今後とも強力に進めてまいって、御指摘のような点を御心配のないように持っていきたいと思っておるわけでございます。
  190. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま申しましたように、残存小作地は本法施行になった場合の大きな支障になり、また、こういったことが今後農民が土地を貸す場合にも一つの引き合いに出されまして、流動化の妨げになることは必至でありますので、先般来たびたび指摘しておりますように、この問題については真剣な対応策を講じられるようにしていただきたいと思います。また明日の審議に当たって、こういった問題については、ただいまの農林水産大臣答弁を踏まえてわが党でもいろいろ検討した上で、どう対処するかさらに検討を進めたい、かように思っております。  時間の関係もありまして、総括的に重要な点を若干ずつお伺いしていくつもりでありますので、答弁は簡潔に要点をお答えいただきたいと思います。  農地三法の中で農地法関係と農用地利用増進法関係の二法に関連してお伺いするのですが、まず定額金納制の廃止の問題でございます。  政府案は、定額金納制を廃止して無条件に物納を認めることになっておりますが、定額金納制の持つ意味を尊重する立場から、定額金納制についての現行規定はそのまま残し、条件つきで物納等を認めるとするというように二十一条ないし二十二条を修正すべきである、私はこういう考えを持って今日まで検討してまいりました。したがって、二十一条第一項にただし書きを加えて、ただし、耕作者の農業経営の安定に支障を生じない範囲内において、省令で定めるところにより、農業委員会の承認を受けた場合は、この限りでない、二十二条第一項にただし書きを加えて、ただし、前条第一項ただし書に規定する場合は、この限りでないというように修正をすべきではないか。  というのは、先般来質問しておりますように、定額金納制があって初めて、これが一つの歯どめになって、現在四〇・六%と言われる物納が黙認の形で事実あるわけでございます。定額金納制を外すと、野放しになって種々の問題が起こることが懸念されるのでありますので、このように修正をすべきだというようなことを考えておりますけれども、明日最終段階で、各党とも協議した上で、こういった問題をいろいろ審議したい、かように思っております。いまにわかに政府がこのような修正を認めるということは、本法を提案している立場から言えないことだと思いますけれども、これらについては、十分政府もその際は検討していただきたいと思うが、その辺の考え、感触というものを農林水産大臣からお答えをいただきたいと思います。
  191. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもは、実際問題としては、お貸し願える二種兼が、自分のたんぼでできるものを飯米としてやはり欲しい、こういう気持ちがあるのではなかろうか、その程度だという感じを持っておりまして、そういう点においては御心配ないという気持ちでおったわけでございますけれども、いろいろとこの委員会の御審議を通じまして、食管法との関連においても大変御懸念をいただいておるわけでございます。  いま具体的な御提案がございましたけれども、これはいま先生の御指摘のとおりで、私どもといたしましては、いまこの三法を一番ベストのものであると思って御提案をいたしておるわけでございますので、いまこの席で私が結構でございますということは、正直お答えするわけにはまいりませんけれども、これは委員会審議をお願いをいたしておりますので、委員会が最終段階で与野党を通じていろいろと御意見を調整になりまして、その結果出てくる点については、私ども政府としてもそれを尊重しなければならないというのは当然かと思っておるわけでございまして、そういう意味で、いまの御意見も、それに対処するために私の方としても十分検討をいたしておきたいと思います。
  192. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 四月十八日の参考人に対する質問の中で、これまた私が四月九日ないしは四月十六日の二回にわたる質問の中でいろいろ指摘したとおり、今回の流動化に当たっては、農地の価格というものが大変流動化に支障を来す、これに何らかの手を打たなければいかぬということで、全中の山口巌参考人からもるる意見の陳述がございました。たくさんあったのですけれども、特に、本法施行に当たっては流動化問題が大きな問題になりますので、これまた私は指摘をしておくわけでございますが、山口参考人の意見によりますと、端的に申しますと、農地価格をこのままでよいかというのは大変疑問がある。現在中田で一アール当たり三十四ないし三十五万円もしている。現在農地は米国の四十倍になっておる。こういう中で果たして流動化が進むであろうか。資産的な価格に張りついておるのが現状である。したがって、流動化は現在も進まないと同時に、今後もなかなかこれは疑問がある。現状を是認して三または五年の短期で利用権の集積を図ろうという今回の提案であるけれども、借り方は耕作権が不安定である。また、この方法しかないというのが現状であって本法を提案になっておるけれども、余りにも安直だと思う。農地を正常な価格に安定させる、こういったことが当面重要な問題である。先ほど言いましたように、日本農地は米国の四十倍にも当たる、こういったことであるので、農林水産大臣もよく認識しておられると思いますが、これに対して何らかの対策を講じていかなければ、また手を打たなければ、法律だけこれが通っても、実際実態は伴わない一時しのぎの気休めみたいなことにもなる、かようなことにもなりかねないということを危惧するので、私たちも本法の審議に当たってはこういったことをくどくど、さらに私は三たびお伺いをするわけですけれども、はっきりしたお答えをいただかなければ、私はやはり本法の成立についてはいろいろとまた問題が起きてくる、かように思うわけでございますので、今後どういうふうに進むのかということで、前回よりも前向きの答弁を私はお聞きしたい、かように思うわけです。
  193. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 農地の価格だけでひとり歩きをしているわけではございませんので、やはり一般の宅地その他の土地の価格とのある程度相関関係があって農地の価格も上がってきたと私は思うのでございます。だから、私どもの手だけで、農林水産省でもっていろいろ手だてをやっていくということは、正直大変むずかしい問題ではなかろうか。まず第一義的に、国全体の土地の価格をいかにこれから抑えていくかということが一番大切な問題ではないかと思っているわけでございます。  そういう点で、政府の中にも、まあ遅まきながらという御批判はございますが、土地対策関係閣僚懇談会を設けまして、何とかこれから地価の抑制を図っていこうとしておるわけでございますが、やはり一番大きく上がりつつありますのは、三大都市圏の宅地の供給がどうも十分でないというところに原因があるだろう、こういう判断を私どもはいたしておるわけでございまして、まず第一義的には、三大都市圏においてできるだけ宅地の供給を促進するためにいかなる方法をとるべきか、こういうことで頭を痛めておるわけでございます。  ただ問題は、今度も農住組合法案というのを提案をいたしまして、そして、いままで農地である部分については、その半分を宅地として供給していただきたい、そういうことを、農住組合をつくっていわゆる市街化区域内の農民の皆様方にやっていただいたらどうだろうか、こういう法律案もこの国会にいま提案をいたしておるわけでございます。これも一つ考え方であろうと思います。ただ、これを突き詰めてまいりますと、将来の問題といたしましては、それでは一体その三大都市圏の農地の宅地並み課税はどうするのかという問題も正直これは出てくるわけでございまして、一体そういう問題をどっちへ持っていったらそれでは宅地の供給の促進に役立つのかという問題、一方においては、しかし、そういう三大都市圏においても農業を一生懸命やっていただいている方を守っていくためにはそれではどういうふうにしたらいいかという、相反する問題が出てくると私は思うのでございます。その辺をわれわれは、非常につらいところでございますが、地価を抑制するという点からいけば、農地の宅地並み課税をやってしまった方がいいということになるのだろうと思うのでございますけれども、しかし、一方においては、そういう市街化区域においても長い間今後とも営農していこうという方々を守っていかなければならぬという立場もあるわけでございまして、その辺を苦慮いたしておりますが、そういうような問題もこれから出てくるのではなかろうかと思います。  いずれにいたしましても、そういうことで、まず三大都市圏の住宅地の供給を円滑にするということにいまわれわれ土地対策関係閣僚懇談会は重点を置いて検討を続けておるわけでございます。そういうことで、もしうまくいけば、国全体の地価というものは相当安定をしていくのではなかろうか。しかし、それでも必ずしも十分でないかもしれません。しかし、まあまあ私ども、そういうことをやっていけば相当将来——あるいはもっと将来問題としては、人口は各地方に分散する、三大都市圏への人口の集中をもっと排除していくというようなことも政策として必要なことになってくるのではなかろうかと思います。  そういうことも踏まえて、私どもの方の関係でやれるというものであれば、たとえば都市計画法あるいは農振法といったようなところでの、いわゆる土地の区分というものを今後ともきちんといたしまして、極力地価の抑制につながるような方向でこの制度を運用さしていただく、あるいは農地法におきまして、農業以外に農地がどんどん転用されることのないような形で農用地確保していくということにおいて、農地法の適正な運用を図る、こういうようなことをあわせてやっていくということが、今後の農地の地価抑制につながっていくであろう、こう考えておるわけでございます。
  194. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案で、さらに総括的に農林水産大臣の見解を伺っていきます。  一つは、農業委員会の制度改善については、構造政策の中における農業委員会の果たす役割りと、市町村行政の中における位置づけを行う場合、農業委員会と市町村長との関係をどう調整していくかが問題であります。  去る四月十八日の参考人の意見陳述の中にも、また私の質問にもいろいろと問題があったわけでございますが、今後、農業委員会の構成、委員の選出方法、所掌事務等をこれらの関連でどう考えるか等地方行政制度との調整が非常に問題になってくると思うのです。まだ、私は何となくすっきりしないので、簡潔明瞭に農林水産大臣から、改めてこういった農業委員会の位置づけというようなものについて、また市町村との調整というようなことについて、端的にひとつお答えをいただきたいと思う。
  195. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農業委員会は農民の代表機関といたしまして、農地等の権利関係につきまして、自主的な調整等を行うことによりまして、農民の声を直接かつ的確に農政に反映させ、これによりまして農業施策、構造政策を進めていくという役割りを果たしておりますし、また、今後もその重要な一翼を担っていくものでございます。したがいまして、今回の改正におきましても、私どもはこの農業委員会の骨組みというものは変えなかった次第でございます。  他方、市町村部局が農業振興のための諸施策の展開に努めていくということも当然のことであり、また、構造施策の中におきまして、市町村の役割りというものも重要でございますので、両者相協力して農業者の利益を図っていくということが重要であると考えておりまして、この点につきましては、現行制度が地方行政制度と矛盾を来すというものとは考えておりませんし、また、実際上も多くの市町村がこのような協力体制を整えておりますので、この体制をさらに進めていくということが今後の方針でございます。
  196. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 松浦経済局長に重ねてお伺いします。  農業委員会制度の改善については、業務執行体制の整備を図ることが今後の農地行政上重要なことになりますが、私は、農業委員会には法第二十条で農地主事を必ず置くことになっておるということから、全国で調べてみますと、農地主事は三千二百五十五市町村のうち二千百四十八人と言われますが、このほとんどは役場職員が兼務している、こういうように言われております。これでは力が入らぬわけですけれども、農地主事は二千百四十八人のうち専任または役場職員の兼任はどのくらいおるか、そのことをまずお答えください。
  197. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農地主事の設置の状況については先生のおっしゃられたとおりでございます。  なお、これが専兼別でどうなっているかという数字は、私ども資料を持ち合わせておりませんが、農地主事という特に身分保証のある職員という性格上、専務が多いものというふうに聞いております。
  198. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間がないので詳しく追及しませんが、大臣、こういうような状態だから、本法を提案されても実際に実態があいまいもことしているわけですね。この辺に私は疑問を持つわけです。  そこで、今後農業委員会の任務がますます重要になることは先般来たびたび指摘をしてきたところでございますけれども、委員の若返りはもちろんでございますが、当面専任の農地主事を置き、その上で近い将来事務局長を設ける、これが順序である、こういったことを私、先般来指摘したわけです。このためにも私は財政措置というものを十分考えていかねばならぬ、かように思っておるわけです。  そこで、こういった事務局の設置ということについては、今回本法にはこれがついに載ることができなかったのですけれども、一連の法改正、また現状を見ましたときに、事務局設置に大きな比重がかかっておることは言うまでもございません。そこで、農業委員会協力員を置く。約六千七百人の農業委員に対して、十四万部落ございますが、あえて私はお聞きしたいのは、先般私の質問に対して二部落に一名ぐらい置くべきだということが池田参考人からも強い要請が出ておりますし、また、私の質問についてもこのような要求をしたわけですけれども、現在、集落段階の手足となって動くこういった協力員がいないと、サブ的な立場になりますけれども、実際に仕事が進んでいかない、私はかように思うわけです。この協力員は二部落に一名ぐらい置くつもりであるのか、その辺についてどういうふうなお考えであるか、本法提案に当たってさらに私は具体的な問題をお聞きしておきたい。
  199. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 まず、農地主事でございますが、私どもは、確かに農地主事が必置の機関であるにもかかわらず、多くの市町村においてこれが置かれていないという実情はまことに遺憾であると考えておりまして、今回の法律の改正を機会に強力にその設置方について指導いたしたいと考えております。特にその場合、農地主事が農業委員会における業務の遂行の中核となって働いていただくということが今後とも必要であろうと考えております。  なお、事務局の設置そのものでございますが、これを法律で設置するかどうかという、いわゆる義務づけてこの事務局を設置するかという点につきましては、行政委員会の制度の横並びを考えまして、その業務量あるいは職員の設置数等から見て、これを法定するまでには至らないというふうに私ども判断をいたしたわけでございますが、先生御指摘のように、事務局体制を整備するということは非常に肝要なことであるというふうに考えますので、今後の財政措置その他も考え合わせまして、今後強力な事務局体制が整備されるように図ってまいりたいというふうに考えております。  最後に、御指摘の協力員でございますが、現在のところいわゆる農家総合コンサルタント事業という形で地区協力員を設置いたしておりまして、その予算額は約三億七千万円、一千六百の委員会において設置する予算を持っておりまして、約四万人が置けるということになっておりますが、この点は、市町村において特に農民と農業委員会との間の関係が密になるように、この方面の事業についても強力に推進していきたいというふうに考えております。
  200. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 事務局の設置については法改正に至らず実現ができなかったのですけれども、大きな比重があるということはいまも申し上げたとおりです。市町村段階では金もかかることなので積極的でないというような意見がいろいろ聞かれるわけでございます。ちなみに法律明記をとっておるのは、確かに議会事務局とか選挙管理委員会とか二けた以上の人員を持っておるものについては事務局設置がございますけれども、当農業委員会のように三・四人の規模では法律にそぐわないと言っておられます。  そういったことで、きょうは自治省の財政局の能勢交付税課長来ておられると思いますが、自治省は、この農地三法施行に当たっては、いま申し上げたような大変重要な役割りが農業委員会に課せられております。そういった意味から、事務局設置についてはどういうふうに考えておられるか、自治省の考えを述べていただきたい。
  201. 能勢邦之

    ○能勢説明員 農業委員会に限らず地方団体の組織や人員すべてについてでございますが、自治省といたしましては、各省庁に対しまして、地方団体の新しい組織なり機構の新設なり拡張なりあるいは人員の拡充なりというようなことについては厳に抑制をしていただきたい。昨今の国と地方の財政環境なり地方財政の置かれた立場なり、そういった状況から見て、いま申しましたようなことを要請してまいっているところでございます。  それで、今回の農地法の改正に伴います農業委員会への事務委譲、承知いたしておるわけでございますが、農林水産省の方からお話を承りますと、それによっても直ちに人員増をもたらすようなことはないという話も聞いております。せっかくの御意見でございますので、直ちにいま御提案のようなことをやれるかどうかというのはいろいろ問題があろうかと思いますが、御意見として拝聴させていただき、今後の制度運営に適切を期してまいりたいと思っております。
  202. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 自治省は、市町村が独自にやる固有業務については、地方財政計画の中で地方団体の定数是正、交付税における職員の算入定数を増加してほしいわけですが、そういう方法があるわけですけれども、これについてはどういうように今後お考えであるか、お答えいただきたい。
  203. 能勢邦之

    ○能勢説明員 地方財政計画では所要の規模是正を図ってございますが、それを具体化してまいります地方交付税の段階で、議論になっております農業委員会につきましては、地方交付税の農業行政費の単位費用の積算の基礎に実は入れておるわけでございますが、市町村の農業委員会につきましては、標準団体三名ということで、今年度の交付税制度の改正におきましても特に増員についての措置はいたしておりません。
  204. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産省でも、法人等に必要な職員設置については国の補助があるわけで、現在一・一六人分の職員設置費を国が助成しているわけであります。このことはもう十分承知のはずですが、業務の実態に応じて必要あるから改善すると考えるわけでございますから、大蔵、自治、農林三省で共同で調査を進めておられると思いますけれども、今後こういったことを精力的に進めると同時に、本法施行に当たっては農業委員会がいかに重要な役割りかということはもうよくわかっておるわけですから、財政的な裏づけといった問題が解決しない限り、私は流動化は進まないし本法は空文化する、かように思うわけです。そういった意味で、早急によく三省協議をしながら、いま申し上げたような助成等を考えて対処してもらいたいと思うが、この点どうですか、お答えいただきたい。
  205. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 国が一・二八人分の職員の設置を全額補助しているわけでございますが、これは農地の調整関係の事務ということで法定されておりまして、その事務については全額負担をいたしておるわけでございます。この事務の内容が今後いかになっていくかということは当然三省の調査によって決めるべきことでございますので、今後とも調査をいたしまして、その調査の結果に応じ、これを決めていきたいというふうに考えております。
  206. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産大臣にお伺いいたしますけれども、農業委員会の問題で、七条一項の農業委員会の選挙による委員の定数改正のことが提案されておりますけれども、政府案は、農業委員会の選挙による委員の定数を四十人以内から三十人以内に引き下げることになっておりますが、農林水産大臣の定める基準に該当する市については、七条一項を修正して現行どおり四十人以内でもよいものとする、こういうように改めるべきでないか、かような考えを持っております。  なお、四十七条の二につきましても、都道府県農業会議の常任会議の構成について、政府案は、都道府県農業会議の常任会議の構成を、一号会議員、すなわちこれは農業委員の代表であります、と二号ないし六号会議員、すなわちこれは農業委員会以外の農業団体の代表、とが同数でなければならないとしておりますけれども、これも、二号ないし六号会議員の数が一号会議員の数を超えないものとするという規定に改めることが私は妥当ではないか、かように思って、数日来検討してまいりました。これも明日最終段階でいろいろ各党検討しながら進めてまいる考えでございますが、こういった修正案が出た場合には、ぜひ当局としても、農林水産大臣としても受け入れてもらいたいと思うが、これに対する、本法、審議に当たっていろいろ論議をしてまいりました経過を踏まえて、大臣はどのような考えであられるか、当委員会で発言できる範囲で考えを承っておきたい、かように思います。
  207. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま二つの提案があったわけでございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、いまの改正案を出しましたのは、それなりに十分でき得るという判断でお出しをしておるわけでございますけれども、いろいろ御心配をされる向きもございまして、いま御提案になりましたような御意見もあることはよく承知をいたしております。与野党間でいろいろとこれから修正のお話があるやに承っておりますけれども、そういう中でそういう問題があることであろうと私どもも受けとめまして、いまの御意見を、われわれはわれわれなりの方でひとつ十分検討をさしていただきたいと思います。
  208. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に一点お伺いして質問を終わりますが、去る四月九日、十六日及び十八日と、農地三法に対していろいろ質疑をした中で、私は農業会議所に対する参考意見等も承ったわけですが、全国農業会議所、県農業会議または農業委員会等は、いわゆる委員会的法人であることから、数日来論議をしてまいりましたように、今後重要な役割りとなってまいります。そういった意味で、きわめて財政基盤が弱体でありますので、制度的な解決が望まれている反面、財政が乏しいということで、私は、今後本法施行に当たっては大変無理がある、かように思うわけです。そういった意味で、農林水産大臣は、全国農業会議所または県農業会議あるいは農業委員会に対して、本法の強い期待にこたえるためにも、また活動するためにも、何よりも財政基盤の確立ということについては十分意を尽くしていられると思いますが、この点については今後さらに強力な国のバックアップがないと推進が困難である、そういったことがなければ本法もまた空文にすぎない、かように思うわけです。その点、農林水産大臣の見解を承りたいと思います。
  209. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 従来から農業委員会関係予算というものは国からは約百五十億の助成をいたしておるわけでございますけれども、今回のこの法律改正に絡みまして、相当農業委員会には大きな仕事をしていただくわけでございます。この農用地の利用増進というものが円滑に進む上においても、農業委員会には相当お願いをしなければならぬ点があるわけでありまして、そういう農業委員会なりあるいは農業会議なり、今後の活動を円滑に進めていただくためには、財政基盤の充実ということも当然でございます。私ども、国の立場において、できる限り助成については今後一層強力に進めてまいりたい、こう考えております。
  210. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上、総括的な質問を若干はしょってお伺いしましたが、本法の取り扱いについて、十分ただいまの農林水産大臣答弁を踏まえ、検討した上で対処したいと思います。
  211. 内海英男

  212. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農業委員会法でお伺いしますが、農業委員会の選挙による委員の定数の上限を減らしているわけでありますが、これは法設立の責任者である大臣に聞きたいのですが、農業委員会の下からのそういう要請だとか要求だとか、そういうものをくみ上げてこのように改正につながったのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  213. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 この点につきましては、必ずしも団体そのものの御意見ということではなかったわけでございまして、私どもが農業委員会の活動をいかに迅速、円滑化するかという立場から判断いたしまして、御提案を申し上げたものでございます。
  214. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農業委員会法を改正するのに、下からの農業会議なんかの御意見を必ずしもくみ上げなかった、こういうことですね。そして法改正だ、こういうわけでありますが、私が聞くところによりますと、農業委員会が要求したことはそんなことではないのだ、しかるにわれわれの要求したことは何も聞かないで、要求しないことはどんどんこういうふうに改正しているというわけですね。現に秋田県の農業会議では、五十三年十一月に「農業委員会等制度改正に関する意見」というものを出しているのですね。これなんか見ますならば、もう法改正だとかこういうことではなくて、「公選法にもとづく委員中心に構成された行政委員会という基本的性格を存続し」云々ということで、「必須業務の拡充、行政区域の広域化との関連から選挙委員定数の維持確保を図ることは勿論のこと、」こういうふうに書いているのです。なぜあなた方は要求にあるこういうことをくみ上げないで、定員を削減するようなことをやるのか。  それから、先ほどの論議もありましたけれども、農業委員会の組織、財政強化、こういう問題もみんなひとしく出しているのです。たとえば秋田県の農業会議では、そういう果たす役割りについて、どうかこの件について「委員および職員に要する経費はもとより事業費、事務費についても国の義務負担とし、」こういうことまで要求している。そういう点は何もやらないで、なぜそういう反対のことをやればよくなるということになるのですか。
  215. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 私が申し上げましたのは、先ほど先生の御質問が、農業委員会の選挙による委員の定数の上限を引き下げたことについてお尋ねがございましたので、さようにお答えをいたしたわけでございますが、法改正全般につきましては十分に団体側の御意見もくんだつもりでございまして、昭和五十四年十二月に全国農業委員会会議において要望された事項及び昭和五十五年二月に都道府県農業会議で要望された事項、これらを踏まえまして今回の改正をいたしたつもりでございます。  特にその中でも、農地法制の整備に伴いまして農業委員会の果たすべき役割りを強化してほしいという御要望がその中の第一に挙がっていた御要望でございまして、さような点につきましては、私ども、今回、農用地利用増進法あるいは農地法の一部改正法案等につきまして、その内容をごらんになっていただければ、その中におきまして農業委員会の役割りはきわめて強化されているところでございます。その他御要望の主なものにつきましては、たとえば農業委員会の会長を都道府県会議会議員にするということにつきましても御要望を得た次第でございますし、また、事務局の設置その他につきましても、法的にはこれを設置するというところまではまいりませんでしたが、その内容としまして事務局体制強化したいということも申し上げている次第でございますし、また、先ほど大臣からも御答弁ございましたように、法の改正ではございませんが、今後財政的な裏づけというものを拡充してまいりたいということも申し上げている次第でございます。
  216. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私が前段聞いたのは定数の問題だけでありますが、後の方はあなたは得々と、申し上げて悪いわけではありませんが、その点で私なぜそういうことを聞くかと言いますと、またなぜ農業委員会がそういう要求を出さないかというと、いま全国の市町村段階では公選制の廃止という問題がいろいろ取りざたされているわけであります。ですから、私は今回の定数削減がそれに道を開く第一歩になるような、布石になるような感じがしてならないのです。こういう危険性はないのかどうか、お聞きしたいと思います。
  217. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回の法改正におきまして、確かに市町村の各団体からいろいろな御要望があったことも事実でございますし、また、昨年市長会あるいは町村会におきまして、農業委員会の公選制の廃止あるいは諮問機関化といったような御決議がなされていることも私ども十分承知しております。しかしながら、今回の改正におきましては、これらの行政組織としての農業委員会の骨格はこれを維持するということで考えて、今回の改正をお願いしたわけでございまして、決してこの定員の上限の引き下げというものがそれにつながっていくものではないと考えております。
  218. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 市町村がそういう廃止その他の意見を持っておるということはそのとおりであります。しかし、問題は、やはり農業委員会の声をどう聞いて守っていくかということが前提ですね。あなたのお答えでは、この制度を維持していくのだ、こういうことでありましたが、そこで私がお聞きしたいことは、この農業委員会法というのは農林水産省だけではできない。いろいろ関係省庁としての自治省もありますね。普通は複数省庁にまたがる法改正の場合は覚書を交わすものでありますけれども、自治省とは覚書を交わしていますね。それはどのような内容の覚書なのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  219. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 自治省との関係におきましては、今後の農業委員会の役割りの重要性にかんがみまして、これが運用の充実に努めていくということについて双方の了解を書いてございます。
  220. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私がある筋から得た知識によりますと、その覚書の中には、将来公選法を改正する、農業委員会の公選をやめるのだという趣旨の文言が盛り込まれているというふうに聞いておりますけれども、この点はどうか。その点をまずはっきりしていただきたいということと、もう一回重ねてそれに追加してお聞きしたいことは、もしそういう事実がなければ、あくまでもこの公選制を守っていく、つまり行政委員会としては選挙をやるのは漁業調整委員会と二つしかないのですから、そういう決意が本当におありになってのお答えなのかどうか、この点を確認したいと思います。
  221. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 私どもといたしましては、当然今後ともこの行政委員会の制度というものは守っていくつもりでございまして、この骨格を変えないということについても気持ちはそのとおりでございます。自治省との間にいろいろな経過、やりとりはございましたが、その場におきまして、当然制度全般につきまして今後とも時代の趨勢に応じていろいろな意見を交換していくことは必要であろうというふうに思いますが、しかしながら、公選制を廃止するといったようなことを約束した覚えはございません。
  222. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 次に、統制小作料の問題でお聞きしたいと思いますが、言うまでもなく、昭和四十五年農地法改正になりまして撤廃された統制小作料というものは、四十五年の九月三十日以前に設定された小作地そのものは経過的には十年間、つまりことしの九月三十日に期限切れになる、こういう状況であります。  そこで、私聞きたいことは、現在農林水産省として、統制小作料が適用されている面積は大体どのようにつかんでいらっしゃるのか、ちょっと簡単にお答えいただきたいと思います。
  223. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 昭和四十五年の農地法改正前の統制小作料の適用のある小作地、これは全国農業会議所の調査によりますと、全国二千五百十二農業委員会の回答結果で十六万五千ヘクタール、そのうち農地改革前の残存小作地は、回答のあった千五百六十一農業委員会の分で六万七千ヘクタールということになっております。
  224. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 これらの統制小作料の適用されている小作地の実際の小作料水準は幾らくらいで、果たしてその統制小作料が守られているかどうか、この点についてもひとつ簡単にお答えいただければありがたいと思います。
  225. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 統制小作料が守られている割合は、いま申し上げました調査によりますと、農地改革前に設定された小作地では、その半分以上の農地で統制小作料が守られている委員会が六四%を占めております。八割以上が守られている農業委員会が四〇%となっております。また、農地改革から昭和四十五年の間に設定された小作地では、半分以上というところが六一%、それから、八割以上が守られている農業委員会が三五%ということになっております。  それから、小作料水準でございますが、これは全国で標準小作料と比べた水準という調べ方になっておりますが、千七百七十五農業委員会について調べましたところ、標準小作料より上のものが一五・八%、標準小作料とほぼ同じというのが四三・五%、標準小作料より下というのが四〇・七%、こういう割合になっております。
  226. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いま統制小作料水準と、小作料そのものが統制の中で守られているかということを聞いたわけでありますが、お答えの範囲内で考えると、依然として統制小作料は相当適用されていると理解していいわけですね。同時に、小作料水準につきましては、あなたの統計もそうでありますが、農業会議所だけありましてりっぱな統計が出ておりまして、おたくはそれを参考にしております。ここに持ってきておりますが、時間の関係で省略しますけれども、十アール当たりを見ますと、農地改革前と後では小作料の水準がかなり違っているわけですね。つまり農地改革前の小作地はかなり低い状況で統制小作料が適用されているということが見られるわけでありますが、農林省はこれらについて、いまいろいろな資料は農業会議所の資料だということでありますが、実態としてはどういうふうにつかんでおりますか。
  227. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いま申し上げましたような数字農業会議所の調査を基礎にいたしておるわけでございます。こういう現地の実態につきましては、やはり現地に所在してその実情、推移を承知している農業委員会の掌握している数字が私どもとしては一番信頼できるものと考えております。
  228. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり農林水産省としては、農業会議所がやっているからそれをいつも参考にすればいい、人のふんどしで相撲をとるというかっこうに聞こえるわけであります。それはそれとして結構でありますけれども、お聞きしたいことは、水田小作料だと農地改革前のは十アール当たり九千八百十四円ぐらいなものなんですね。ところが、今度ことしの九月三十日で期限が切れますと、統制小作料はいま一級でも六千八百二十六円ですが、これが標準小作料に一気になってまいりますと、五十二年改定のそれを見ましても、加重平均値で二万四千六百二十一円になるわけであります。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕 そうすると、一回に四倍ぐらいぼんとはね上がるわけですね。そういうことになりますと、小作地で耕作をしている農民にとってみましたら大変大きい問題だと思うのですね。秋田県の場合で申しますならば、統制小作料を適用中の小作地は六千二百三十八ヘクタールあるのですね。そこで耕作している農民、つまり小作人の数が、ごく最近の調査で三万六十人いるということです。秋田県の農家全体が十万ちょっとですから、これがどんなに大きい数かはおわかりいただけると思うのです。そうしますと、今度一回に四倍もぼんと上げられたら大変なことになるわけであります。これは秋田県の実態だけでないわけでありますが、この点についてどういうふうに指導なさるつもりかお聞かせいただければありがたいと思います。
  229. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 先生おっしゃられましたように、確かに、戦前から引き続いて残存小作地となっている農地の小作料は、統制小作料あるいはむしろそれを下回るものさえあるということできわめて低い水準にあるわけでございます。それに対しまして標準小作料は、地域によってかなり差はありますが、いま先生も御指摘なさいましたような統制小作料に比べればかなり高い数値になっております。  そこで、今回、九月をもって統制小作料の制度が十年間の猶予措置も切れまして完全になくなるわけでございます。猶予期間におきまして、統制小作料を廃止することの趣旨もかなり徹底いたしまして、私ども特別な混乱が起こるということはないように承知いたしておりますが、金銭に絡む問題でございます。中には急激な引き上げというようなことでトラブルが起こることも全くあり得ない話ではない。そこで、私どもさらに従来以上に趣旨理解の徹底を図るための努力をすると同時に、紛争を防止するための措置を都道府県それから農業委員会を指導して十分手当てしてまいりたいと考えておるわけでございます。そして、そのための予算措置も講じているところでございます。  従来、統制小作料の経過期間におきまして、それなりに改善措置といいますか調整の措置がとられてきていることとは思いますが、今回廃止されることに伴って小作料の決め方をどうするか、これは当事者間で決める問題でございます。この際改めてどういう水準になるかということは、標準小作料が一つの目安として考えられるかと存じますが、それが直ちにそのまま適用されなければいけないという性格のものではない、まさに目安でございます。その地域の実態、従来の経過、御本人同士のそろばんというようなことがかみ合わさって当事者間で決められる、そういった取り決めの際に混乱が起これば、先ほど申し上げましたように、農業委員会がその間の話し合いに入るというようなことで対策を講じてまいりたいと考えているところでございます。
  230. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 何かあいまいなお話であります。趣旨の徹底を図ると言うがどういう趣旨の徹底を図るのかということですね。  そこでお聞きしたいのは、それが撤廃になりますと、そうでなくとも四倍にどんとはね上がる。とりわけ残存小作地の場合は、戦前から原野だとか沼を小作農民が開田したり土地改良したりいろいろがんばってきた経緯があるわけですね。したがって、趣旨の徹底を図ると一言でおっしゃいましても、そういう経過あるいはその中での投下資本を無視して農民の相対だなんて言ったって、これは納得できないものだと思うのですね。したがって、たとえば県庁の担当の役人のお話では、そういうかっこうでは結局は標準小作料を押しつけざるを得なくなる、だから、政府が何らかのかっこうで通達だとか指導基準だとかを出していただかなければそうならざるを得ないのだということを言っているのです。特に残存小作地の場合なんかそれでいいのかどうか。この点ははっきり、農民の方々が聞いて納得できるようにお答えいただきたいと思うのです。
  231. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 趣旨の徹底ということは小作料水準の問題だけでなしに、統制小作料が廃止されることの実質内容はどういうものであるかということを改めて理解を求めることが一つあるわけでございます。それは、小作料統制が廃止されましても、当該小作地に係る賃貸借の解除、解約等の規制が廃止されることを意味するものではございません。その点が今日におきましても一部に誤解がある。この誤解がかなり混乱のもとにもなりかねないということで、その点について十分趣旨理解を求めるということを一つ考えているわけでございます。  そこで、先ほど申し上げましたように、小作料の水準については、九月の廃止以後は貸し主、借り主双方の協議で定めることになっておるわけでございます。農地法上に小作料の増額請求の規定もございます。それから当事者間でその小作料の増額について協議が調わない場合につきましては、貸し主の小作料の引き上げ請求について借り主との間で協議が調わない場合において小作料の支払い時期が来たときは、借り主は自己が相当と認める額の小作料を支払っておくというようなことにもいたしておりますし、そういう取り扱いの進め方というようなことについては、詳細一つ一つ申し上げると長い答弁になりますが、それなりに規定しているところがございます。それらの趣旨の徹底をさらに都道府県、市町村、農業委員会等を通じて図ってまいるし、具体的なトラブルが仮に発生しました場合はその処理に努力するようにということで、必要があれば通達を出すというようなことも含めて、私どもも十分その指導方の徹底を図りたいというふうに考えておるところでございます。
  232. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 必要があれば通達を出すということよりも、やはりはっきりした指導方針なり基準なり、そういう通達を出していただかなければ、先ほどお話ししましたように、県庁の役人はどうにもならない、お手上げだと言っているのですよ。もう一回これを確認します。
  233. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 わかりました。はっきりした通達を出すことにいたします。
  234. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ほど局長もお認めになったように、紛争の起こるおそれが当然出てくるわけでありますね。全国農業会議所の先ほどの調査でも、統制小作料の撤廃で紛争等の問題が生ずる可能性があると言っているのは三千三百二十農業委員会の中で四二・七%、千二十四農業委員会がそう言っているのですよ。約半数のところで紛争が起こるだろうと言っているのですね。また、紛争が起こる理由としては、標準小作料が高過ぎるということ、これは既得権の侵害ではないかということですね。そこで、そういうのが四六・六%あるのですね。また、私は重視すべきは、先ほど局長は解除や解約を意味するものではないと言いましたけれども、実際この撤廃を契機にいたしまして農地の引き上げ、つまり取り上げといいますか、そういうことが本当に起こるのだ、こういう意見が一八%も出ているのですね。この点も踏まえて、私は相当なきめの細かい行き届いた指導をしなければ、大変なことになると思いますが、この点は、やはりこの法律の最高責任者である大臣からきちっとした答弁をいただきたいと思います。
  235. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 混乱の起きないように私どもは責任を持って十分指導してまいりたいと思っております。
  236. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 残存小作地問題で先ほど同僚委員質問しておったわけでありますが、約九万ヘクタールから十一万ヘクタール、これは政府もお認めになっている数字ですね。これは現在の借入地面積の相当部分を私は占めていると思うのですけれども、これは、本来小作人に解放されるべきものがいろいろな事情の中でそれができなかったという部分であることは御案内のとおりでありますが、その当時、農地改革終了時点ではそういう農地が五十一万ヘクタール残存小作地としてあったわけでありますが、現在約五分の一ですね、約十一万だとか十万ぐらいといえば。その内容は、小作人に所有権が移転したり、あるいは賃貸借で解約されたり、いろいろなものがあると思うのですね。これらについて政府が実態をどのようにつかんでいらっしゃるのか、この点をお聞きしたいと思います。
  237. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いま先生数字を申されましたように、農地改革終了時、地主の保有限度等の関係で残存された小作地は全国で約五十万ヘクタールでございました。その後現在までの間にこの小作地がどの程度解消されたかということを直接調査したものはございません。ただ、土地改良事業の実施だとか、昭和三十年代の小作地解消運動などというものがかなり成果を上げたというか、その関係で解消が進んだというふうに受けとめております。そして、先ほども申し上げましたが、全国農業会議所調査によりますと、五十四年現在では残存小作地は、これはいま先生がおっしゃられたのとちょっと数字は違うのですが、いずれにしても大幅に減っているということで、六万七千ヘクタールとなっております。この間四十万ヘクタール以上のものが解消されているという実情にあるわけでございます。
  238. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そういうふうに残存小作地がどんどん減っていった背景にはいろいろな要因があるわけでありますが、それらの解約の状況を五十三年度の農地移動実態調査で調べてみますと、数字から言いますと、農地改革前に設定されたものが全体の中で、耕作目的の場合四七・九%あるのですね。件数にして一万三千四百九件あるわけですね。ところが、壊廃目的で解約した場合は全体の六五%、三千八百八十四件ありますね。合わせると一年間に残存小作地の解約件数が一万七千二百九十三件あるわけです。ここで問題なのは、昭和二十五年七月以前に設定した、つまり残存小作地の場合の方が、離作補償のある解約が多いという問題でありますけれども、だんだん離作補償がなくなっていくという問題につながっていくわけでありますが、この残存小作地のそういう場合の離作補償、そういうものの水準について、当局の方ではどういうふうに把握していらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。
  239. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農地改革以前から権利設定のあった小作地、ここで申している残存小作地、その離作料の支払いは、農地法の賃貸借の解約等の規制があることとも関連いたしまして、地域的にかなりな差はありますし、それから解約事由などでまたこれは差がありますが、大体全国的な慣行としてかなり多くのところで支払われているという実態がございます。この残存小作地の解約のうち、離作料支払いのあったものは、農地移動実態調査、これは五十二年のものでございますが、これによりますと、耕作目的の解約の分で三一%、転用目的の解約の分で七〇%ということになっております。これらの数字につきましては、先生の申されたのと調査時点あるいは調査の方法等の差かもしれませんが、若干の差はあるようでございますが、いずれにしても同じ傾向にある。そういう離作料が農地価格に対してどのくらいの水準であるかということを見てみますと、これはまた全国農業会議所の五十四年調査でございますが、これによりますと、耕作目的の場合は地価の四割から六割の水準の支払いがあるものが四八%を占めております。それから、それより低く四割以下のものが四七%を占めております。半分近くが四割から六割の間、それからほぼ同じような割合のものが四割以下というようなところにあるわけでございます。  それから、転用目的の場合は、これは若干その水準が高くなるといいますか、高いところに移りまして、地価の四ないし六割の水準にあるものの支払いのものが五三%を占めております。それから同じく四割以下のものが四二%ということでございます。  それから、離作料は、耕作権保護の法規制もかかわって、本来離作の際の耕作者に対する立毛補償だとか、中途解約の場合の損害補償的なもの、さらには、いろいろ投資もしておるというようなこともありますと、有益費の償還といったようなこともありますので、それらの扱いでもって処理さるべき性格の投下資本の未回収分、これが一緒になった形で、地域慣行によって支払われているものだというふうに私どもは実質を理解いたしているところでございます。
  240. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまりいまの御答弁は、離作料があるということは、いま自作農相互の賃貸借とは歴史的にも性格的にも全く違うわけでありますね。ですから、慣例としてそういうものが容認されてきたということになると思うのですね。  ただ、問題なのは、今回の法改正で見ますならば、質的に異なった貸借関係が併存しているという状況がありますね。残存小作地のように半ば自作地化したものもありますし、いま増進事業が想定している短期的な三年で更新なしのこういう賃貸借まであるわけですね。     〔津島委員長代理退席、委員長着席〕 これは当然解約などで同じ基準で考えられない、こういうことになるわけでありますね。それが離作料に結びつくという状況だと思うのですけれども、私が言いたいことは、先般来政府がこの法案の問題で言うていることは、一たん貸したら農家は返してもらえないのだ、返してもらうには高い離作料を払わなければならないのだ、このために、荒らしづくりをしても耕作放棄しても貸し手がないのだ。こういうことが一般的になっているということは、やはり残存小作地のこうした慣行が大きく影響していると思うわけですね。この点について、私はこの前参考人質問のときにも申し上げましたけれども、先ほどの同僚議員も申しておったようでありますが、ここに何かしっぽを引きずりながらやっていったってなかなか問題が発展していかないと私は思うのですけれども、この点について重ねてお聞きしたいと思います。
  241. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 残存小作地は、確かにその経緯、それから耕作権保護法制ということから、社会的にその権利性が強いものだということで認識されるに至っております。そのことが、貸したらなかなか返してもらえない、同時に、返してもらうようなときは離作料を高いものを払わなければいけないというような認識につながって、なかなか貸し手がないというような影響を及ぼしていることは事実だと私思います。ただしかし、昭和四十五年の農地法の改正によりまして、十年以上の期間の賃貸借は、更新拒絶の通知について許可は不要とするというような改正をいたしたわけでございますし、それから、昭和五十年の農振法改正の際創設されました、今日の新法のもとになっております現行農用地利用増進事業の利用権につきましては、農地法の賃貸借の法定更新の規定の適用を除外して、期間が満了すれば自動的に賃貸借が終了するということにいたしておるわけでございます。それから、利用権の設定に市町村等の公的機関が関与するということがあって、最近におきましては、だんだん安心して貸せるという考え方も一面広まってまいっております。これらの新しい賃貸借は、確かに残存小作地の問題がわきにございますけれども、残存小作地とは違うものだということについてだんだん認識されるようになっているというふうに考えます。  しかも、これはこの法案の当初来御説明申し上げているところでございますが、一方においては、自分の自家労働力では耕作できない、そして別途安定した兼業収入を得ているという農家もあって、自分の持っている農地を手放したくはないけれども何とか活用したいという農家の出ていることも事実でございます。そういうことから、残存小作地がそのままストレートに農地の流動化を大きく阻害するというほどまでには私ども考えておりません。  それから、残存小作地について、その小作農の保護とその経営の安定を図るということを旨としながら、その実情に応じ、といいますのは、地域の慣行といったようなことやそれから経緯があると思います。そういった実情に応じ、農業委員会があっせんする等によって、当事者間の円満な話し合いによってその解消を図るように指導してまいっているところでございます。先ほど申し上げましたように、五十万ヘクタール以上もありました残存小作地が、今日では農地改革以前のものが六万ヘクタール台に、それから残存小作地の中では、その戦後のものまで含めましても十六万ヘクタール台にということで、かなり減ってまいっておるわけでございます。そういう意味では、今後ともその解消方を指導するとともに、そのための実態的な措置もとってまいりたいというふうに考えているわけでございまして、昭和五十五年度から、つまり本年度から、残存小作地の小作農が当該小作地を取得する場合には、農地取得資金について、一般の場合には個人二百万円という融資の限度が設けられておりますが、これを七百万円に引き上げるというようなことにいたしております。そういう優遇措置等を講じておりまして、今後統制小作料が撤廃されますことを契機に、また合理的な円満な解消が進行するものというふうに期待いたしております。
  242. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 秋田県の農民は、小作人は、標準小作料を課するとするならば、その値上がり分の見返りとして永小作権を与えてくれ、でなければ、離作料の支払いを保証するような法的措置を講じてくれ、こういう要求を出しているわけであります。この点についてどうお考えになるかということと、先ほどあなたは、たとえば金融措置として特別の枠として、普通は二百万円なのに七百万円を大幅に振る舞うのだ、こういう意味の御発言をなさいましたけれども、私が聞いてみますと、これは期間が三年間で終わりなんですね。三年間に限定している。やはり少なくとも五年程度必要でないのかということですね。三年間ではなかなか買い切りできないと私は思うのです。そういう点で、これは五年くらいにする必要があるんじゃないかと思いますが、この二つについてお答えいただければありがたいと思います。
  243. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いまの融資の問題でございますが、これは統制小作料の制度が撤廃される、そのことに伴う特例措置でございます。そういう意味で、まさにその時期の臨時のものでございますので、適用期間を三年ということに切っているわけでございます。五年が必要かどうかということは、この三年の間どういう事態が展開されるか、推移するかということによって、また改めて判断することもあろうかと思いますが、現在は三年ということで対応することにいたしておるわけでございます。
  244. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 前半の答弁を……。
  245. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 失礼いたしました。前半の御質問に対する答弁が漏れておりました。  永小作権化するか、あるいは離作料について特別な法的な根拠を与えることにしてはどうかということでございますが、すでに先ほど来御答弁申し上げておりますように、今日的な一般的な新しい契約関係に移行する、それについては慣行なりあるいは経緯なりがあるということを踏まえまして、農業委員会がその話し合いを進め調停を図るということによって、実態的な解消を図ることを中心にいたしておるわけでございます。そしてそのために、いま申し上げましたような実行もしやすくするという観点から、融資についての特例を設けておるわけでございます。私どもは、永小作権とか、さらには離作料についての特段の法的根拠を設けるということについてまでは考えておらないところでございます。
  246. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 後段の取得資金の問題でありますが、三年間でやってみるけれども、改めてその時点でまた判断するということは、場合によっては延長も大いに考えられるということですね。
  247. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 まだこれから運用する話でございますので、いまそういうことを考えるというのは、せっかく三年と決めた時点においては申しかねるのでございますが、確かに、進行した時点においてどうなっているかという状態のもとにおいて検討する問題だと考えております。
  248. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今度は農地法の問題でお聞きしたいのですが、きょうは食糧庁長官、お見えになっていますね。松本さんにお聞きするわけであります。  あなたのお住まいは、大変恐縮ですが、東京中野ですね。しかし、あなたの住民登録を拝見いたしますと、自宅は茨城県筑波郡谷和原村大字筒戸というところでありますね。お宅の御近所というと大変にいいところで、たとえば常磐高速道路がすぐ近くを通ったり、国道二百九十四号線と交差する筒戸インターチェンジが二キロもないところにあったり、資産価値的にも大変いいところにあなた、相当の自作地、小作地をお持ちだと私は思いますけれどもね。面積なんかほじくって聞きませんが、そういうところに自作地、小作地、相当部分持っていらっしゃいますか。
  249. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 私個人のお尋ねでございますが、先祖伝来の土地を相続いたしておりまして、その中には小作地もまた自作地もございます。
  250. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そこでお聞きしたいのは、小作地もあるし自作地もあるということでありますね。で、小作料の問題ですが、あなたの場合は金納でやっておりますかね、それとも物納で取っているかということと、また、標準小作料は、私調査したところではあの近辺は二万円程度ですね。長官の場合はそれより安いのか高いのか、この辺も参考までに、大変恐縮でございますが聞かせていただければありがたいと思います。
  251. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 小作料につきましては金納で支払っていただいておりまして、私の記憶はたしか統制小作料で支払いを受けておるというふうに承知をしております。
  252. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ありがとうございました。  それで、五十四年の新しく出た農業白書を見ますと、農地流動化について二種兼業農家や高齢農業者世帯は、農地の有力な出し手となることが期待される、こう書いてありますね。長官はまた、白書で言うところの職員勤務等の安定的な兼業に従事し、平均的には農外所得により家計費を充足している、そういう第二種兼業農家に該当すると思いますが、いかがですか。
  253. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 私自身先祖からの土地を所有しておりますために、結果として第二種兼業のような形になっておりますが、私個人といたしましては、できるだけこの土地を担い手になるような農家に貸し付けたいというふうに考えておったわけでございますが、従来、私の所有しております土地は基盤整備が非常におくれておりますので、最近基盤整備を着手することにいたしましたので、基盤整備終了次第これを担い手の農家に貸し付けるというようにしたいと思っております。
  254. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 わかりました。  それから、もう一つお聞きしたいわけでありますが、わが党は、農地法に厳しく定めのある農地の農外所有権の移転ですね、厳格にそういうことをしてはいけないというふうに主張しているわけですが、今度の利用増進法では、所有権を含めて公告で権利移動が行われるわけでありますね。これについて、参考までにあなたはこれに賛成ですか反対ですか。
  255. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 地域の事情によると思いますけれども、所有権が移転するということも十分に規模拡大の道として考えられますので、これを含めることは必要であるというふうに考えております。
  256. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 では長官、どうもありがとうございました。お帰りになって結構です。  そこで、引き続き農地法についてお聞きしたいのであります。  きのう生産法人の要件緩和の問題についてわが党の中林議員がいろいろ質問をしたわけでありますが、その際、局長は、農外でも若い人がどんどん入って跡継ぎすることが、そのための門口を開いたんだ、こういうおっしゃり方で、何か後継者の問題というよりも、もう農業をやったことのない人がどんどん入ってくることは結構じゃないか、なぜそれを、何だかんだ言う共産党がおかしいじゃないか、こういうような言い分で大分反論なさっておったのですね。そうするならば、当然あなたは、そういうこれから農業を希望する、農民でない、農業担当者でない希望者が何人くらい、若い人がおるのか、この点の実態把握はどうつかんでいますか。
  257. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 この種の実態というのは全国的に調査をして統計をとるという性格のものではなくて、現実にそういう事例がどういうところであるかというような話であろうかと思います。現に、ある程度経営規模の大きな農家におきましては、自家労働力のみならず雇用労働力に相当程度依存している向きがございます。そういう雇っております雇用労働力、これはいろいろな形がありますけれども、農地を持たないその地域内の若い人なり、あるいはある程度遠隔のところもございましょうし、それから親戚、知人等が来るという場合もあって、さまざまでございます。それから、先般私ども豊岡村の実態調査にお供をしたわけでございますが、その際も、若い人のいろいろな意見がございました。むしろその地域から出て他の業種、具体的には病院勤務をしておったというような方もあったわけでございますが、そういった人たちが都会の生活にいろいろ人生的に反省といいますか、考えるところがありましてか、くにに帰って、本当に自然を相手にした農業をやりたいということで、奥さんともどもその村に戻ってこられた。そうして個人経営できわめてまじめに優良な農業経営を行っている。そしてその借地は全体面積のむしろ八割にも及ぶというようなことで経営を行っている。そういう実例もあるわけでございます。豊岡村の場合は、たまたま全体の農用地利用増進事業も進んでおりますし、ぐあいのいいような形で提供者もおるというようなことで、そのまま農業にそれほど農地を持ってない場合でも参加できることになったわけでございますが、一般にそういう好条件に恵まれるとは限りません。しかし、若い方でそういう意欲を持っている方というのは、農業に従事する方、あるいは数はそれほど多くないにしても他産業に従事する方でも、ないとは言えません。それなりに個別のそういう話も聞かされるわけでございます。そういった人たちの農業参加というのは、後継者と同様にやはり貴重な農業の担い手としてむしろ育てていく必要があるのじゃないかというふうに私どもは考えております。
  258. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 若い人で新しく農業をやりたいという、これはないとは言えない。確かにそのとおりですね。私たちは、生産法人の要件緩和について後継者に限るということを何回も繰り返し主張しているのです、この席でも。確かにおっしゃるとおりの部分はあるということは否定しませんが、それは現行法でもできるのですよ。つまり、昭和四十五年改正当時でも、いままでは三十アール、下限を持っている人が農地取得者の対象でしたね。持っていない人は対象にならない。つまり下限でも三十アールのたんぼを持っていなければならなかった。四十五年改正でどうなっているかというと、取得後五十アール持ってもいいということですね。取得後だから、ゼロから出発して、取得すれば、五十アールになれば、それで初めからゼロであっても、その規定があるから農業進出の道はちゃんと開けているわけですね。そういうものがありながら、なぜあなたは、提案理由説明の中にも、「後継者等」と言って後継者のことを主たる柱にしながら、生産法人要件の緩和、提案理由説明にそれを説明していらっしゃりながら、そこにうんと固執していくのか、私、何回考えてもわからないのです。  そこで、お聞きしたいことは、若い人が、働く意欲のある人が、結構だけれども、それが無制限に限定なくなるとするならば、農民以外の農地所有というものが全く歯どめがなくなると思うのですね。そのことが問題ではないかということです。つまり、私は、農外から資本が入ってくるという危険性がはっきり歯どめされて何ら心配ないなら別ですけれども、こういう状況の中で、たとえば農業委員会のチェックだってなかなかそこまで行き届かないわけでありますから、そういう中でこういうことをしたならば、大変なことになっていかないですか。
  259. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私はやはり、農業生産法人の役員要件を緩和した一番基本は後継者を対象に念頭に置いていたということは事実でございますし、そのように御説明も申し上げました。ただ、それだけに限るべきであるというお話でございましたので、それ以外にもそれに準ずるようなものとしていま申し上げました事例のような若い人も対象に含めることにしているんだということで、改めて御説明させていただいているわけでございます。  それから、そういうことをやれば、農外からの資本進出が懸念されるではないかということでございますが、農業生産法人が農地を取得するときには、農地法に基づいて農業委員会なり都道府県知事の許可を受けるということは当然必要なわけでございます。その許可が信用できないんだということになりますと、話がなかなかかみ合わないところがあるわけでございますが、農業委員会がこの際、その組織も機能も充実強化するということでもございますし、それからまた、一段と自覚と責任を持ってこの処理に当たるということで考えておりまして、その許可に当たっては十分厳格な審査、判断がなされるというふうに私どもは考えております。  それから、その要件については、当該法人の事業が農業及びその付帯事業に限られているか、それから構成員のすべてが農地の提供者もしくは当該法人の事業に常時従事する者であるか、それから業務執行権を有する構成員の過半が常時従事者であって、かつ当該法人の事業に必要な農作業に主として従事する者であるか、こういったような三つの大きな要件について判断するということになっております。そういうことで、農外資本による土地買い占めに悪用されるようなことは防止できると考えております。  また、それだけでなく、農業生産法人がその後あるいは不幸にして見逃がされておったというようなことで要件を欠くようなことが生じた場合あるいは判明した場合、これは当該法人が所有権もしくは使用収益権を持っておりますところの農地等については、農業委員会がこれを公示しまして、一定期間内にこれら農地等を処分するということになっております。これは、処分が行われないときは国がこれを買収するという強行規定まであるわけでございます。国としても、農業生産法人の要件緩和に伴い、このことが農外者による農地取得に悪用されないよう、事務処理に当たっては、今後も厳しい審査が行われるよう、処理が万全が期せられるよう、都道府県知事、農業委員会等に対して指導してまいりたいと考えております。
  260. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私が言いたいのは、現行でもちゃんとできるということ。なぜわざわざ——農外資本のそうした進出をきのうあれだけ指摘されたのに、そういう事実が目の前にありながら、ますます要件を緩和していくということ。その理由としてあなたは若い人を挙げているわけですね。こういうことは私は非常に納得できないと思うのですね。先ほども言いましたように、農民以外の農地取得、特に資本の危機があるわけですから、若い人が入れば、あなたは個別的だ、特殊だと言うかもわかりませんが、全く同時にそれと並行してどんどん資本が入ってきてもう歯どめなしになるわけです。農業委員会がその間規制すると言いましても、農業委員会を信用できないなら別だというような言い方ですが、その言い方もおかしいと思うのです。私たちは農業委員会強化発展、充実させなければならないということを一貫して主張しているわけです。ただ、現状の中では、ほとんど市役所の役人と兼ねているとか、そういう状況になっているわけでありますね。現に私のところの昭和町でも、この前参考人質問のときに申しましたが、とんでもないことをしでかしていま警察に引っ張られているのもいるのですよ。それから、きのうもあれほど北海道の事例を挙げながら——全部農業委員会の法的手続はとっているのです。それでいてそういう問題が起こっているというところに今日の問題があるわけですね。ですから、そういう状況の中でどうだこうだと言っても、なぜそれにこだわって、後継者に限定するという問題をあなた方は拒否なさるのかということ、この点は重ねて、腑に落ちないけれども、時間の関係もありますから指摘にとどめておきます。  それで、きのう中林さんが三つの事例を挙げました。北海道の藤田観光、大日本印刷あるいは阪南産業、この問題について、前回四十五年の法改正のとき、法人の要件の大幅緩和、こういう問題のとき、わが党はこれはもうすでに農外資本の進出の危険が十分あるから、こういうことを指摘して反対しているのですよ。四十五年ですよ。そのときの政府の皆さんの言い分は何であったかと聞けば、役員の要件を新たに加えたから、これで農業生産法人の経営権を農家が担えることになるのだ、だから大丈夫だと盛んに強調しているのです。進出はないのだと強弁しているのですよ。しかし、実態はどうかといいますと、きのうの中林さんの質問の中に明らかにされたように、北海道の中でもああいう問題がほんの一部分であってもあれだけあるわけですね。これでもなおかつ、四十五年のときの歯どめ分を今回取っ払って農外資本の進出を防げると言うのは、あなたは資本というものを非常に甘く見ているか、あるいは軽視するものだと言うほかはないと思うのです。だから、私は、こういう当局の姿勢というのは全くけしからぬと思うのですが、大臣はこの点についてどう思いますか。
  261. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 きのうも申し上げましたように、私どもとしては非常なレアケースだと思っているわけでございまして、そういうものにウエートを置いて、せっかくの、いまいろいろ議論がありましたように、農地を借りてどんどん農業をやりたいという人の意欲を阻害することはいかがなものであろうか、こう考えておるわけでございます。
  262. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 意欲を阻害するのはどうかと言ったって、現行法でちゃんと入る道をつくっているのですよ。なぜわざわざ今回の法改正で「後継者等」という「等」を入れて若い人云々ということをやるのかということですね。現行法で、先ほど言ったように十分やれるのですよ。その点に非常に疑問を感ずるということはなくならないのですよ、大臣にはっきり言っておきますが。  そこで、きのうわが党の中林議員の質問の中にも藤田観光、阪南産業の実例を出されたわけですが、いつ北海道の会社が設立されたかということを見ますならば、藤田観光が設立されたのは昭和四十六年七月ですよ。阪南産業が五十三年四月。つまり法改正の後なんだ。それを追っかけるように、法改正した、これで参加できるのだ。そういう法改正をしたら、しめたとばかりそこへ乗り込んできたというのが実態じゃないですか、これの設立のあれと比べて見れば。あなたはチェックするのだとかなんとか言っていますが、これは全く信用できないと私は思うのです。  そこで、きのう具体的事例がいろいろあれこれ出たわけでありますから、あの後これらの会社に対するどのような規制というか抑制というか、考えているのか。先ほど言ったように国の買収権を発動するのかどうか。同時に、このような農外資本がダミーを使うなりなんかして農地を支配しているこの実態を皆さんがつかんでいるかどうか、この点を聞きたいと思うのですが、もしもつかんでいないならば、なかなかやりにくい、調べにくい、こういうことであるなら、なおさらこの改正部分を後継者に限るということにしないと大変なことになる。四十五年の法改正のときも指摘したのですが、重ねて指摘して、今後再びこういう状況が起こったら、あなたは責任をとりますか。重ねてこの点についてお聞きしたいと思います。
  263. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 事案が重ねて起こったら責任をとるかということでございますが、たくさんのケースの中で、不幸にしてまれな事例で好ましくない事態が生ずるということは、絶対ないとは私言い切れないと思います。およそ制度というものがあれば、それを最大限に利用というよりはむしろ悪用する者も出かねないということは、何もこの問題に限らずあり得る話だと思っております。  それから、資本の力とか資本の運動というのを軽視してはいけないという御忠告はごもっともで、私どもはその点十分注意しなければいけないと思っております。  その意味で、一件でもそういうことが出たらおまえは責任をとるかということでございますが、役人の責任のとり方というのは、仕事をそういう事態が生じないように最大限誠意を尽くして努力するということであろうかと私は思います。
  264. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 四十五年法改正で、さっき言ったとおり、こうなりますよということを指摘したのです。そのとおりになっているでしょう。今度もっと要件緩和の枠を広げた。これほど忠告してもなおかつ、もっともっと彼らにとってはやりやすいということが出ますね。若い人がどれだけ出るか、資本がどれだけ入るかこれから見ものだと思いますけれども、そういう点であなたは、不幸にしてまれな事例だ、あるいは個別事情だ、こういう言い方できのうもおっしゃっておりましたけれども、その本筋を流れる一つの法則的なものは同じです。何県のどこそこといえばそれは個別事例でしょう。その流れる一つの法則的な縦の考え方なり土地取得の意欲なりは、やはり法則的なものとしてやられているということです。この点について、最後に大臣からはっきりした言質をいただきたいと思うのです。
  265. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 北海道の場合は、きのうもお答えをいたしましたように、その事実関係をもう少し私どもも調査をしてみたいと思っております。そして、正直、そういう農業に使われるべきものが使われていない、こういうことがはっきりしてくれば、公示をしてそれは処分をすることができるわけでございますから、そういう手続はとることは私どもはやぶさかではございません。ただ、事実関係をひとつはっきりしなければ、どうもそれは信用しろということかもしれませんけれども、私どもは私どもなりに事実関係をはっきりしてからやらしていただきたいと思っております。
  266. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 大臣、ひとつ事実関係を明らかにして、しかるべき措置をとってください。  次に、増進法問題についての所有権移転の問題でお聞きするわけでありますが、杉山局長さん、あなたは無意識か意識的か知りませんが、きのうの中林さんとのやりとりを聞いていますと、何か非常に曲解していらっしゃるのです。つまり、中林さんは、所有権一般を否定して絶対それを機械的に動かすべからざるものだと主張しているのではないのです。あなたは具体的に聞いたことに対して、所有権一般の問題にすりかえて、何か物のわからないやつだという言い方でくどくどおっしゃっているのです。言うまでもなく、いまの仕組みの中で、実は基本的には農民が所有権をみずから自分の手に持つ、耕作権を持つ、これが一番安定したやり方だということを私たちは一貫して主張してきた。戦前から共産党はそういう歴史を持っているのです。同時に、それがだめになった最大理由は、農地価格が非常に高騰して農民が手が出ない、あるいは農業経営の展望がなくて、農地を残念ながら資産的に所有しなければならない現状です。そういう中で、転用含みのまま売り渡さない、こういう状況があるわけです。そういう責任を回避して、事実上賃貸しで動かないのを何とか動かさなければいけない、そこをおろそかにしてきた政府のやり方に対して、一貫して追及したのは共産党じゃないですか。あなた方は笑うけれども、戦前の共産党の歴史はりっぱにそのことを農地解放運動でも証明しているではありませんか。ですから、私が言いたいのは、所有権一般を否定するのではなしに、ちゃんとそのことを踏まえているのだということをあなたに再確認しておわかりいただきたいと思います。どうですか。
  267. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 中林先生並びに中川先生の御質問趣旨が、いま中川先生が言われたような意味であることは承知しております。その点はっきり確認いたします。
  268. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 一言の答弁では非常に不明確ですね。  そこで聞きたいことは、農民間の所有権移転は結構だ、とにかく規模拡大だから所有権移転でも何でもどんどんやってしまえとあなたはおっしゃるわけだ。しかし、問題は、農民間の移転として農地を動かしたはずなのに、実際はダミーの形で農地が買い占めの手口として使われていることです。確かに農民間の移転として農地を動かしたはずなんです。しかし実態は、そこに問題があるということです。そこで、大事なことは、その認定がいま問題になって、その点で中林さんがお聞きしているわけです。あなたは個別的事例だとかいろいろおっしゃったわけでありますけれども、農民が所有権を移転して取得して本当にやっていくのかどうかというところが肝心かなめのところだと思うのです。そういう点で、一つの基準としてきのう中林先生が提起したのは、市町村外の居住者の農地取得の問題を出しました。これは好ましいものじゃないのだ、もっと厳重なチェックをしてくれ、こういうことでありましたが、基本的にあなたもそれを認めたけれども、今日の農地価格の高騰の原因として、宅地などに転用して、その土地資金で農民がまた農地を別の地域に取得する、買いあさる、これがいわゆる代替地取得に当たるわけでありますが、同時に、宅地価格を農地価格に反映させる大きな原因になっているということです。いま村へ参りましても、村の人たち、村の農家は、だれも農地は買えないと言っているのです。買いに行く人は幾ら農民だといっても、こういう農地取得は抑制の対象にしなければならないのではないか。農民だから何でもいいということではなくて、農地行政を預かっている人にはこれはイロハで、全く常識化しているわけでありますけれども、局長さんは古くから局長をやっていないからこの点知らないのかどうか、この点の認識を私はまずはっきりしていただきたいのです。いかがですか。
  269. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 宅地価格の高騰が農地に影響を及ぼして農地価格の高騰を招くという経済的な波及効果のあることは、よく承知いたしております。  それから、宅地価格の高騰は、基本的には宅地需要が強いということにありますが、個別的な現象といたしまして、確かに、代替地による農地取得、これが付近の農業経営との間にバランスを欠くような状態で進出してくる。その結果、本来それほど農地価格自身は高騰しないで済むようなところであったかもしれないところが上昇するような現象が生じているという事例も承知いたしております。したがいまして、こういった事態を防止するには、いわゆる線引き、都市計画は都市計画、それから農振計画は農振計画ということでそれぞれの利用区分を明確にし、その線を明らかにすることによって、さらには農地法の転用規制等を厳格に運用することによって、投資的あるいは投機的な土地価格の上昇の防止を図るべきであるという、原則論でお答えすることになりますが、そういうように考えております。
  270. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農民同士の所有だからどんどんやって結構だということにならないということは、これで明らかになったと思うのですけれども、そういう本質に迫る行政指導なり、法則的な中で仕組まれるそこのところをチェックしないと、今後何をやったところで同じようなことが起こると思うわけでありますが、時間の関係がありますから、次の問題に移りたいと思います。  農地法の第三条の権利移転の許可は、許可がなければ無効だということです。つまり原則的には禁止です。許可があったときは例外的に認めるということです。つまり、行政権限としては最もきつい権限だということは先ほど来の論議でも明らかになったわけですが、少なくとも所有権は一回限りの行為であるということです。これを三年で終わりだ、秋田の言葉ではわっぱかだと言うのですが、三年でわっぱかだという賃貸借は、その期間が短かろうと長かろうと同列に扱うことはできないはずだと思うのです。それだけにわが党が問題にしているのは、所有権移転については、本当にその農地が有効にまじめな働く農民の手によって取得される。これがこの増進事業の中で、新法の中で、三条の許可なしにどんどん移転できる危険性をずっとわれわれは指摘してきた。これがこの農地三法の中での一貫したわれわれの主張の流れなわけですね。そういう点で、私が先ほど言ったように、同列に扱うということはどういっても、法の体系からいってもこれは矛盾するもののように思うのですが、この点重ねてお聞きしたいと思うのです。
  271. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農地等の権利移動の許可につきましては、昭和四十五年の農地法改正によりまして、すでに許可件数の大半が農業委員会の許可の対象となっております。そして、農業生産法人を含む知事許可事案につきましても、意見を付して知事への進達もこれを農業委員会が行っているところでございます。したがって、私ども今日においては、農業委員会の審査が十分行われるという前提のもとに不安はないというふうに考えております。先ほど来申し上げておりますように、農業委員会への許可権限の委譲に際しては、農業委員会がその職務に対する自覚と責任を高めていく、そのことによって適正な執行に当たるというふうに考えておるわけでございまして、そのためにも十分な指導の徹底を図ってまいりたいと考えております。
  272. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私、時間の関係で、質問したくないのですが、所有権と賃貸借権というものをなぜ区分しないか。つまり、私は、農地管理という基本問題を農地流動化という政策の中に従属させる、そういう発想以外にこれは出てこない答え八と思うのですね。そんな姿勢だから農地を守ることができないのではないかと思うのですが、この点について農林大臣はどうお考えですか。
  273. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもは優良農地確保に役立っておると考えておるわけでございまして、私の答弁もいまの局長答弁も一緒でございます。
  274. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 まあ、警告しておきます。  同時に、増進法案について、また経営の受委託の関係でちょっとお聞きしたいと思うのですが、農用地利用改善事業を行おうとしている団体、その組織はよほど民主的に組織され、かつ運営されなければ、逆に減反押しつけの政府の御用機関になりかねない、こういう心配を私は率直に言って持っているのです。この点、農水省として、政令の内容は指導上十分配慮すべきだし、またしていると思うのですけれども、この点ちょっとお聞きしたいと思います。簡単でいいですよ。
  275. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農用地利用改善事業は、集落等の一定地区内の農用地の関係権利者が申し合わせをいたしまして作付地の集団化、そのほか農作物の栽培の改善、農作業の効率化、農用地の利用関係の改善、こういったことを図ることとしているものでございます。この場合、農用地利用改善事業を行う団体が作付地の集団化、農作業の効率化等を推進する上で必要となる利用権の設定等の促進、そういった農用地の利用関係の改善に関する措置を推進する場合は、その団体は、その自主的な権利調整の結果に即して市町村に利用増進計画の申し出を行うことができるようにしております。市町村はその申し出の内容を勘案して農用地利用増進計画を定めるということになっておるわけでございます。これは頭から市町村が机の上で利用増進計画を決めるというのでなしに、そういう実態があってそれが上がってくれば、それを計画に組み込んでいくということを意味しているわけでございます。これに加えて、農用地利用改善事業の実施地域内の権利移動については当該団体の意見を聞くようにするということは、当該団体が農地行政機関的なものではないというふうに考えておりますので、その点は、農業委員会が本来の機能を果たすものであるというふうに考えておりまして、特に意見を聞くということは考えておらないところでございます。
  276. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ほど言ったような民主的な組織として運営されるということを前提に、その団体の役割りについて、特に利用権の設定について、単にあなたのいまのお答えでは、申し出をすることができるということは、申し出をした場合、その意見を尊重して増進計画を定めるというのですね。私は、それだけではなくて、その地域の該当する増進計画については当然意見を聞くようにすべきだ、こう思うわけであります。でないと、そういうふうにやらなければ、団体の知らないところで相対による利用権が設定されたりしたのでは、利用改善事業の中身である作付の集団化だとか共同化作業などが支障を来すおそれが出てきやしないか、この点で簡単にひとつ。どうでしょう。
  277. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 利用増進事業にいたしましても、利用改善事業にいたしましても、これは市町村が中心となって農業委員会農業協同組合等の意見も聞きながら、そのために組織として協議会を設けて相談をするということもいたしております。そういう形で地域全体の農地の有効利用あるいは営農のルール化というようなことを図っていくわけでございまして、たくさんある団体についてたくさんあるかどうかは、その地域の実情によって差が出るとは思いますが、一つ一つ聞いていくということではなしに、やはり全体の組織を代表する者、そういう立場の人たちとの意見交換というようなことによってそれらをくみ上げていくという形をとることが適当であろうと考えております。
  278. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 次に、今回の増進法の中で、利用権の受委託の問題があります。経営の委託を受けることにより取得される使用及び収益を目的とする権利、こういうものを新たに加えております。大体経営の委託を受けることによって取得される権利というのは一体何なのか、私は雲をつかむように何にもわからないですよ。そういう権利が一体世の中にあるものだろうかという感じがするわけですね。この点はちょっと簡単に解明していただきたいと思うのです。
  279. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 四十五年の農地法の改正によって経営受託の事業が認められておるわけでございます。その経営受託事業の内容は、受託期間は原則として賃貸借の存続期間と均衡のとれた期間とするとか、委託農地における経営の主宰権は受託者が有するとか、それから委託農地における収穫物は受託者に帰属して受託者が処分することになるとか、それから、受託経営における損益は最終的には委託者に帰属するものとし、その計算に当たって労働報酬の評価は賃借権の借り賃における評価と均衡のとれたものとするということとか、受託者は委託者の承諾を得て受託農地について受託経営に必要な改良工事を行い得ること、こういったようなことを内容とするものでございます。  これらのものが、いま申し上げておりますような受託に伴う利用権ということになるわけでございます。
  280. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そのどういうこと、どういうことという、どれがどうで帰属するかということはわかるのですが、権利の正体がわからないということを私は言っているのです。つまり、土地に対してはこの人方は何にも権利を設定しておらない、委託だけですから。結果的には土地に対する権利が発生しているようなものだ、つまり無名契約のことだと思うのですけれども、まさにあいまいですね。こういうものが権利として堂々とまかり通っているということについて、私はちょっと言わせていただけば、農地法の第三条第二項第三号には、「耕作又は養畜の事業の委託を受けることにより第二号に掲げる権利が取得されることとなる場合」とありますね。この場合は権利移動の許可はしないとなっている。そうなっていますね。  同時に、ここにいらっしゃると思うのですが、農地法の解説という解説書を見ますと、農林水産省の現在の農政課長の若林さんがりっぱな論文を書いているのですよ。その執筆者の一人になっておる。ちょっと要点だけ私メモしてきたから読みますと、このような農業経営を行う受託者の耕作者としての権利は、賃貸借と異なり、農地法上の保護を全く受けないことになるばかりでなく、耕作者が、その事業上の成果を公正に享受して、健全な借地関係により安定した農業経営を営み得るようにしようとする農地法基本理念から見て、これを一般に認めることは適当でないので、農協が受託者となる場合以外は一切これを認めない旨の規定をしている、こう言っているのです。つまり、農地法基本理念から見て問題なので原則的に禁止しているものを、本法でその設定を促進するというのは問題だと思う。禁止して片方で促進するというのは、一体何ですか、これは。
  281. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 先ほどの、権利の内容がはっきりしないということを言われましたので、やや具体的に、契約といいますか、受託事業の内容の形でかみ砕いて申し上げたわけでございますが、これは確かに、先生御指摘のように、契約の形式としては無名契約でございますが、ただ、使用収益権はあるわけでございます。それから、今回、経営受託を農地法では認めていないにかかわらず、新法でこれを認めるのは問題ではないかという御指摘でございますが、私ども、今回の利用権の設定も基本的には賃借権設定の方法により進めるべきものだというふうに考えております。ただ、地域や農家の実情によって、直ちに正規の賃借権を設定するということまで踏み切れない場合がありますので、いわばつなぎの形といいますか、性格のものになりますけれども、やはり労働力不足等によって十分に利用できない兼業農家の農地があるということは事実でございますので、そういうつなぎ的な形ででも受託契約のための利用を図る、大型機械を有する農業協同組合が現在行っているところの農業経営の受託事業を推進するということを考えているわけでございます。こういうことによって、農地の効率的かつ総合的な利用が図り得る、そして、それがその後の正規の賃借権の設定にもつながっていくというふうに考えて、この推進を図ることとしたわけでございます。
  282. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最後に一言、大臣から。片一方では禁止して片一方では促進するなんて、何だかしゃっきりしないね。大体いろいろな論議の中で見ても、何かすっきりストンと胸に落ちるものがないですな。こういう点で、あなたは、自信を持って大変な成果を上げるようなそういう流動化ができるとお考えですか。一言でお答えいただきたいと思います。
  283. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもは、これでぜひとも流動化が図れるような仕組みを考えたと、流動化を強制するわけではございませんが、少なくとも農業者の方で、兼業農家でそういう農協などに委託をしている場合のことをいま話があったわけでございますが、いずれにしても、この法律によって農業者が、受委託と申しますか、あるいは貸し借りというものが円滑に進む、とにかく仕組みだけはこれで考えた、あとはそれを農業者がどうやっていただくかということであろうと思うわけでございます。
  284. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  285. 内海英男

  286. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、農地三法の審議に入るに先立ちまして、まず、わが国の農地制度がいかなる経緯をたどって今日の状態に来たかということを一応顧みる必要がある、かように思います。  今日のわが国における自作農制度は、終戦後GHQの指令によって行われた、かように言われております。これは事実でございます。しかし、事ここに至るまでになったのには、わが国における農民の土地問題に対する長い間の苦闘の歴史があったことを忘れてはならないのであります。長い間耕作者は、農業に希望を持つために自分の耕作する土地は自分のものにしたいという悲願を込めて、営々と耕作を続けてまいっておりました。その理由は、わが国の長い歴史の中に、多くの耕作農民は、土地を持たざるがゆえに余りにも惨めな生活をいたしておったのであります。  あの古代より、戦国の乱世の時代、さらには徳川の封建制度の時代と、常に農民は、食糧生産という大きな義務を負わされながら、あるときは豪族のために、あるときは武将のために、さらには大名、武士のために、搾取をほしいままにされ、いわゆる苛斂誅求に甘んぜられて、わが身を犠牲にしながら苦しみ続けておったのであります。そうして、ようやく明治の維新の光明が見えたかと思うと、今度は資本主義経済の進展に伴いまして、地主という存在によって、また土地を持たざる者として多くの苦しみ、悲しみをいやというほど味わわされたのであります。この間に、大正末期におけるデモクラシー思想の発展とともに、農民は立ち上がり、多くの働く農民に土地を保障せよ、耕作せざる者土地持つべからず、それから、毎年毎年苦しめられる小作料は金納にせよと叫び続けてきたのであります。このような経過をたどって、その事実の上に立って農地改革というものが計画されたことは、これは何人も否定することのできないところであると思います。  これまでに来る農民の苦闘、その先頭に立って闘ってきた人たちは、あるいはあるときは官憲の弾圧のために、あるときは警察の留置場にぶち込まれ、またあるときば地主の手先である暴漢に襲われて傷つき、はなはだしいものは牢獄につながれた人もあるのであります。  かような歴史をたどって、ついに終戦後農地改革を断行せざるを得ないようになったのであります。すなわち、時の政府は、昭和二十年十二月六日農地調整法改正法案を第八十九議会に提出いたしました。そのときの松村農林大臣は、衆議院会議において、その提案理由としてこういうことを述べております。困難な食糧問題を解決するためには、単に食糧の供出、配給等の操作では不十分であり、農村、農家の根本問題である土地制度の改革が必要であることを力説し、「最モ穏健最モ着實ナル方法」をもってこれを改革し、農業の基礎を定めなければ、「食糧ノ増産ハ勿論、思想ノ上カラモ、文化ノ上カラモ、極メテ安定セザル状態二置カレル虞ガ」あると、かように警告をいたしております。そうして松村農林大臣は、みずからも保守政党に属しておったのでございますが、その保守政党内からも非難を浴びながら農地改革を提案した。その農林大臣の意図というものは、これによって急迫する食糧問題を解決するとともに、過酷な小作制度に不満な小作農が急進思想の温床となることを防ごうとしたものと想像されるのであります。そうして、これに対する質問に対しましても、農林大臣は、「世界ノ動キ、日本ノ急憂轄スル動キヲ見マス時二一日モ此ノ儘ニシテ置ケナイト云ウヨウナ焦慮ノ念二馳ラレザルヲ得ナイ」のでありますという、こういう答弁をいたしております。しかし、これに対しまして国会内においては、この農地解放というものに対して万全たる賛成は得られなかった。中には、これに対してどうするか、反対すればGHQの動きもあるだろう、こういうことで、ついには、反対するわけにもいかないから、あるいはこれを審議未了に葬ろうじゃないかという国会内の空気がありました。これを察知したGHQは、十二月九日「農地改革についての覚書」というものを発したのであります。すなわち、その中にははっきり「民主化促進上経済的障害を排除し、人権の尊重を全からしめ且数世紀に亘る封建的圧制の下日本農民を奴隷化して来た経済的桎梏を打破するため日本帝国政府はその耕作農民に対しその労働の成果を享受させる為現状より以上の均等の機会を保証すべきことを指令せらる」、こういうことを言っております。「本指令の目的は全人口の過半が耕作に従事している国土の農業構造を永きに亘って病的ならしめて来た諸多の根源を蔓除するに在る、その病根の主なるものを掲げれば次の如し」、こういろいろと列挙しております。そして、これに対する政府の態度といたしましては、すなわち「不在地主より耕作者に対する土地所有権の移転」「耕作せざる所有者より農地を適正価格を以て買取る制度」「小作者収入に相応せる年賦償還による小作人の農地買取制」さらに「小作人が自作農化したる場合再び小作人に転落せざるを保証するための制度」、こういうことをはっきりGHQは申しております。こういうことによって、最後には、「なほ日本帝国政府は上記項目以外において農民の国民経済への寄与に相応したる農民の国民所得分け前の享受を保証するため必要と認められる計画を提出すべし」、こういうことを明記いたしておるのであります。こういうような経過をたどって今日のこの農地解放というものが断行されたということは御承知のとおりでございます。  私は、こういうことを考えますときに、農地改革を断行されて初めて農民は、本当に数千年来のその希望を遂げて、その悲願が達せられたのであります。ところが、今回この農地法の制定が、これによって従来とってきた自作農主義の一角が崩壊するのではないか、かように思いますと、本当に長い間、農民に土地を与えよ、かように言って闘ってきたわれわれといたしましては、実に感慨深いものがあります。  先日も、私の友人であって、かつて本院の議員でありました石田宥全君がわざわざ私を会館に訪ねてきて、私にこう言い残していっております。かつてともに闘った同志は、多くの人々が故人になっている、あるいは第一線を退いている。いま現役として残っているのはおまえ一人だ。おまえは全部の同志の気持ちを考えて一人で奮闘してくれろ、こう言い残して帰っております。私は、この三法の審議をするに当たりまして、いままでの過去を追想し、またいろいろな思い出を考えますときに、本当に感慨無量なるものがあります。もちろん時勢は変わっております。いまになって昔のような小作農制度が出てこようとは思いません。しかしながら、そういうような苦闘の中から今日のこの自作農主義が生まれて、これが一歩でも後退するのではないか、こう思いますと、本当に忍びがたいものがあります。しかしながら、私は、これが時勢であるならば、この問題に対処することもまた必要ではないか、かように考えております。  それで、私は、こういうような複雑な気持ちを持ちながら、以下具体的な問題についてお尋ねをしたいと思うのでございます。  まず第一に、私がお尋ねいたしたいことは、今度の三法の改正というものが、農地法の第一条に示してありますように、すなわち農地法の第一条は、これは私が言わなくても御承知でありますように、農地はその耕作者みずからが所有することが最も適当である、かようにしたためております。私は、今回の農地法の改正あるいはその他の法律の改正というものが、従来の現状であるこの自作農主義を堅持しようとするのであるか、あるいは今日借地農主義に転じようとするのであるか、その基本的な考えはどこにあるか、この問題でまず政府の意見を聞いて、さらに具体的な問題に対してお尋ねをいたしたい、かように考えております。
  287. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 長い日本農地解放のための運動については、私といたしましても本当に心から敬意を表する次第でございます。なかなかあの封建時代から農地の解放というのはむずかしかった。それがGHQの力によってやっとできたわけでございまして、そこから生まれました農地法の第一条のその理念、あくまでも農地というものは耕作者みずからのものであるべきである、こういう考え方は、今後とも私どもは堅持をしていかなければならないと思っております。  ただ、いま先生も御指摘ございましたように、時代は相当変わってきておるわけでございまして、私どももうあのような封建時代に戻るようなことは絶対にあり得ないと信じておるわけでございます。そして現実には、農家と申しますか農民と申しますか、その実態の中には、正直、農民解放のためにやられたころのお気持ちとは相当違ったお気持ちで、すでに他に安定した収入があり、しかし地価が上昇したこともありまして、農地に対しても資産として保有をしたいという気持ち、それは農業をやりたいということよりは土地として持っておりたい、こういう気持ちを持っておられる方もあると私どもは承知をいたしております。そういう方々からひとつ日本農業の体質強化のために農地を貸していただけないだろうかというのが、今回の考え方でございまして、あくまで基本としては、この長い農地解放運動から生まれました農地自作農主義というものは、私どもは基本的に堅持をしていかなければならぬと考えておるわけでございます。
  288. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうすると、政府考え方は、従来の自作農主義は今後基本的には堅持しなければいけない。しかしながら、いまも大臣言われたように、社会事情は違っているのだ、土地を所有しておる人々の考え方も違っておる。こういうような問題に対処するために、まず、自作農主義を捨てないで、できるならば、この農地法第一条が示しておるように、耕作する者が土地を所有することが最も好ましい、この方向に将来持っていく一つの段階として、今日この法律の改正をやらざるを得ない、こういうような考えであるかどうか、その点をひとつ承りたいと思うのであります。
  289. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 今回の農用地利用増進法案にありましては、所有権の移転も含めておるわけでございますけれども、所有権移転というものは、いま申し上げましたように、土地の資産的な価値が高まってきたこともございまして、農業を必ずしも今後やろうというお気持ちでない方でも、あるいは後継者のない農家におかれましても、これを手放すことに正直ちゅうちょされておられるのではなかろうかということで貸し借りをということでございますが、しかし、中にもし所有権を移転していただける方があれば、それはそれなりにお願いをしようということでありまして、あくまでそういうことで自作になってくる、所有権が移転になればそれはそれなりに結構である。そして、先ほど申し上げますように、農業以外への農地の移転ということは極力私ども抑えていかなければならぬと思っておりますけれども、農業者間で農地の移転が行われるということ、所有権の移転が行われるということは、私どもはいまの自作農主義からいっても大変結構なことであろうと思って、それも今度の法律には含めておるわけでございます。
  290. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま大臣から御答弁のありましたように、現在土地を所有しておる人は一つの財産として土地を所有する。たとえば農地であっても財産としてこれを所有するから外したくない、こういうような気持ちのあることは私も認めます。しかし、事そこに至ったということは、やはり土地の価格が相当高騰しているということだ。私は、農地解放のときに農地に対する価格対策を打たなかった、抑制対策を打たなかったことに大きな問題があるのではないか、かように考えます。それで、また一方には、列島改造論等によってすべての土地が高騰した、こういうことでだんだん農地が高騰したことに私は原因があると思う。この問題をどうするかということが、自作農主義を貫く意味において一番大きな問題であるのであります。  それで、この高騰する地価に対してどういう対策をやっていこうとしておられるのか、野放しに今日のまま、農地というものがだんだん高くなっていくことを放任しておくのか、これに対しては地価対策をどういうような考えでやっていこうとしておられるのか、この点をあわせてこの機会に承っておきたいと思うのであります。
  291. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私ども、いま日本農業の環境を振り返ってみまして、もし農地が安い土地であったならば、日本農業の現状は相当変わっておると私は思うのでございます。外国農業と比べて日本農業の一番のウイークポイントは、私は地価が高いことであると思います。そういう点において、いま御指摘のように、あの農地解放のときにもし農用地について地価抑制の対策がとられておったならば、今日の日本農業はこんな状態ではなかっただろうと私は思うのでございます。  そういう点において、今後どうしていくかということでございますが、大変むずかしいのは、いま民主政治でございまして、私自身も、もし戦後土地政策というものがしつかり行われておったならばもう少しうまくいっているのじゃないかと思うのでございますけれども、残念ながら現実は現実でございまして、地価も全く自由に放任されておるわけでございます。わずかに地価全体においては、国土利用計画法あるいは都市計画法その他の法律があって一応抑える形にはなっておりますけれども、それだけでもなかなか抑え切れないわけでございます。この間も私ども土地対策関係閣僚懇談会というものを持ちましたけれども、正直、新聞紙上で御承知のとおりなかなかいい知恵が浮かばないのでございます。ただ、いまございます国土利用計画法に基づきまして、思い切って都道府県知事が地域を指定して抑えることもできないことはないわけでございます。ところが、これも伝家の宝刀というか、憲法上からいっても非常に問題があるということで、実際法律はあるものの行使はできないでいるわけでございます。  しかし、いつまでもそんなことを言っておってもいけませんので、私どもは、どういう形にしたら発動ができるのかということも含めて、実は検討を始めておるわけでございまして、そういうような形でできる限り地価の抑制を図っていく。あわせて、私どもの関係の法律では、いま御指摘の農地法においても規制ができるわけでございますから、農地の転用などについても、地価が上がるという形にいくような、いわゆる農業外に土地が転用されていくようなことを極力抑えていく。また、都市計画法の市街化調整区域あるいは農振法による地域区分、こういうものによって、極力地価の抑制を図っていくというより正直いまのところ十分な手だてがないわけでございます。しかし、将来は、やはり国土の中で、この狭い国土でございますから、人口の分散とか、長期的にはそういうことも当然考えていかなければならないと思っておるわけでございます。
  292. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、大臣はほかに用があるそうでございますから、私の質問することについて、よかったら後で大臣にお伝え願って、政府としての方針を聞きたいと思います。もちろん、局長はだめだというのじゃございませんけれども、基本的な政治の問題でございますので、そういう点から私はお尋ねするわけでございます。  私は、いま農地の地価対策の問題について質問したわけでございますが、実際にやりたいと思っておるけれども、方法がないと言っております。これは政府としてはいろいろ考え中であるだろうと思いますけれども、将来こういう状態で地価がだんだん高騰するというならば、もう政府としても伝家の宝刀を抜かざるを得ない。法的措置によって地価の高騰抑制対策をやるのだという方針を政府が出しただけでも、私は地価というものに非常に影響すると思うのです。いまのように野放しにしておるからだんだん地価が高くなってくる。それだから、所有者は高くなるだろうという夢を見ておる。そこでなかなか手放さない。こういうような状態が現状であると私は思う。ことに、一般の地価じゃなくて農地においても将来高くなるだろう。それだから手放したくない。こういう点から、この際、いま大臣が言われたように、地価高騰に対する抑制対策をやろうということでいろいろ苦労はしているだろうけれども、これに対して政府は近き将来において法的な措置をやって、地価高騰に対する抑制策をやろうと思っているのだというようなことを打ち出すだけでも、私は地価の抑制対策にはなると思うのですが、これに対しては事務的な関係からいってどうお考えになるのですか。
  293. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 全体的な地価対策は、大臣からもお答えいたしましたように、国土庁を中心に、いま政府全体として取り組んでいるところでございます。  先生のいまおっしゃる御趣旨は、地価凍結についての政府の方針、具体的には、そういう手段を持っているのは国土庁の国土利用法に基づく地価凍結ということであろうかと存じますが、いろいろ検討といいますか、一部意見はあったようでございますが、なおそういったものの発動を見るに至っていないというように承知いたしております。これを今後どうするかということは、まさに先生のおっしゃられるように政策基本の問題でございます。大臣が参りましてから重ねて御答弁することにさせていただきまして、私どもとしましては、さしあたり農林省として一番有効と思われる方法、すなわち都市計画法、農振法、こういったものによる線引きを適正に、それぞれの土地利用が厳正に行われるように行う、また、農地の転用について厳正にこれを運用していくということで、いたずらに投機的な資金あるいは投資資金が外部から入るのを防いで、投機的な値上がりを生じないようにすることに努めてまいりたいと考えております。
  294. 稲富稜人

    ○稲富委員 地価問題というのは、やはり事務的な問題で大局を決めるというのは困難だと思うのですよ。本来から言うならば、政府は抑制対策という伝家の宝刀を抜いて、そしてこれを抑えるというような決意を持つべきだと思う。決意を示すことによって思惑というものは外れてくる。これはいまのうちに売っておいた方がいいぞ、もっと高くならないぞ、こうなってくると手放す。上がるだろう上がるだろうと夢を見ておるから、なかなか動かさないということになってくる。これはひいては地価全体の問題でもありますが、農地に対しても当然そういう問題があると私は思う。そういうように地価対策のために非常に困っているということは事実。さらに、先刻大臣も言ったように、将来の農地対策としては、やはり自作農主義をとっていくんだ、こういうことで、自作農主義はとるけれども、現時点においては土地を持っておる、あるいは二種兼業その他の人は、土地は高くなるだろうと財産として考えて売らないんだ。その間ひとつ貸そう、こういうような問題から今回の法の制定の問題が出てきておると思います。  それで、今度は事務的な問題でいいのですが、自作農主義をとる、しかし一応自作農に移行する現在の時点においてこの借地の対策をとるんだ、こういうことであると、貸した人と、借りた人、すなわち耕作者、この間の両方の契約というものは当然なされるだろうと思うのでございますが、余りにも所有者が有利になるような契約はやらせないようにしなければ、ますます土地を放しませんよ。両者の契約においては、土地を持っておっても余り引き合わないじゃないか、こういうようなことを考えて両者の契約を成り立たせることが、私は早く土地を手放す理由にもなると思う。それで、この両方間の契約の内容等に対しましてはどういうような指導をしていこうと思っていらっしゃるか、この点のことを承りたいと思うのでございます。
  295. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 所有権の移転が困難な事情はいまさら申し上げるまでもないと存じます。そういうことで、利用権の設定という形で農地の流動化を図ることとしておるわけでございますが、その場合、耕作権の安定を図ることは当然必要でございますが、そのために耕作者の地位を強化するということで貸し主の権利を抑制するというようなことになりますと、これまた逆にせっかく意図している農地の提供が行われないということで、そこは貸し主も安心して貸せるようにということで、五十年の改正のときからのことでございますが、今回の利用増進事業というものが行われるようになったわけでございます。いわば耕作権をそれほど強力ではないが安定化することを念頭に置きながら、同時に貸し主の安心感も得るという、いわば両者の要請、希望というものを折り合った形で公的機関が間に入ってこういう事業を、私、これがきわめて実際的な方法であるかと考えておるわけでございますが、打ち出すに至ったわけでございます。  それから、その場合の契約の内容ということでございますが、利用増進事業におきましては、個別の契約というよりは、利用増進計画の内容におきまして、これは市町村が作成するものでございますが、その作成した計画を公示するということによって、実質個別の相対契約が成立したと同じ効果を生ずるということになっております。  その計画の内容といたしましては、賃貸借でありますれば当然その賃貸借になる対象の一筆ごとの農地、それから賃借料、それから賃借の期間、そのほか賃借の基本に関する事項をその計画の内容に盛り込むということになっておるわけでございます。当然、公的機関が介在する話でございますから、後でトラブルの生じないよう、それから双方の立場がいずれにも著しく不利になることのないよう、適正にその指導を図ってまいるということにいたしております。
  296. 稲富稜人

    ○稲富委員 それは、あなたの話は実にりっぱな話なんですけれども、やはり土地所有者が土地を手放して耕作者に譲りてくれること、借り人が早く所有すること、これが自作農主義をとるならば一番望ましいことじゃないのですか。借地農主義でいくとするならばいつまでもほっておいていいのだろうけれども、自作農主義でいくという基本的な考え方を持っておるならば、貸した人が早く手放すようにすることが好ましいことなんです。そうすれば、どういう内容の契約をするかということは、農業委員会等が中に入って決めましょうが、それを決めるための指導というものは農林省がやらなければいけない。その指導をやる場合に、耕作者が有利になるような契約を結ぶような指導をすることが、その目的を達成するためには最も好ましいことになるのではないか、私はこういうことをお尋ねしておるわけなんです。
  297. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 まさに賃貸借の条件、内容について、耕作者が安心して借りられるようにということになりますと、その一番基本になるのは賃貸借期間の問題であろうかと思います。私どもといたしましては、なるべくこの賃貸借期間が長くなるように、現在でも一番長いものは十年を超すものもございますから、三年ないし五年層が大部分とはいうものの、できるだけ長くこの利用増進計画の中で賃借期間を定めるように指導してまいりたいと考えております。  それから、確かに自作農が基本でございますから、借りている土地を買い取るということができれば一番望ましいことになると思います。若干時間のかかるむずかしい話ではございますが、借りた側が規模が拡大する、農業生産性も上がって採算もよくなるということならば、資力もついていずれ買い取るということも期待できるわけでございます。そういう事例が、少ないにしても幾分かは見られるという事態もありまして、私どもは、今回利用増進事業の対象に所有権の移転というものも含めて、これを促進するということにいたしておるわけでございます。
  298. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは特に私は申し上げたいと思いますが、農地というものは耕作することが必要である。耕作しない者が土地を持っているということは非常に不十分であって、耕作する者が土地を持つということがはっきり書いてある。しかも、農地というものは耕作すべきものである、こういう基本概念を農業関係者に持たせることが必要であると思う。しかるに、これを阻害しておるのは何かと言うと、今日の農政のあり方なんです。減反政策をやる、作物をつくるな、つくらないものに奨励金をやるぞ、こういうぶざまなことを政府はやっているじゃないですか。これは政治じゃないですよ。農地、耕地というものは耕作するためにあるのです。耕作をするな、耕作せざる者には減反奨励金を出すなんて政治じゃありませんよ。これは農民の魂をもぎ取らんとする政府の行為なんです。そういうようなことを政府が考えてやるから、耕作しない者が、おれは耕作しないから持っておこうということになってくるのです。この基本概念から農林省みずからが考え方を変えなくちゃいけないと私は思うのです。一般的には農地というものは耕作するものである。自分が耕作されないというならば、耕作する者に当然貸すべきである。そして、その農地というものは農産物生産すべきものである、こういうような積極的な指導を農林省はやることが必要であると思う。しかるにもかかわらず、逆に耕作せざる者に奨励金をやるなんて、こういうようなことをやっておるから、農民の魂というものは抜けていくのですよ。どうですか、この点に対してどういうお考えなんですか。
  299. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農地は耕作さるべきものであるという考え方は、きわめて疑いようのない鉄則でございます。そのとおりだと思います。それから、耕作しない者に奨励金を出しているのはけしからぬではないかという御指摘、かつて生産調整が行われておりました初期は、休耕に対しても奨励金が支払われたということで、まさに不耕作そのものに対しても奨励金が支払われたことがございます。こういったことは、確かに、農業というもののあり方、農民の精神というものからして適当でないという反省のもとに、今日では休耕奨励金は出さないということで、ほかの作物へ転換する場合の転作奨励金という形で奨励金は出されているわけでございます。お話の趣旨はまことにごもっともであるというふうに私どもも理解いたしております。
  300. 稲富稜人

    ○稲富委員 こればかり議論しても仕方がないから……。  それで、貸した人が借りた人に売る場合は優先的に売りつけるということは当然そうなっております。その場合、貸した人と借りておる耕作人との間に価格の問題で折り合いがつかなかった場合は、これはだれがあっせんして、どういうことになるのですか。
  301. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 現在、農地法におきましても、自作農創設の目的達成のために、小作地を譲渡しようとする場合は、原則としてその小作農以外の者の所有権取得を認めておりません。当該小作をしております農家の優先取得の機会を保証しているわけでございますが、その売買価格については、経済問題であるということで、当事者の自由な交渉に任されております。特に公的な機関がこれについて調停を図るというようなことはございません。
  302. 稲富稜人

    ○稲富委員 次の問題は、農林大臣に聞きたい問題ですけれども、農林大臣から後でまた補足して説明してもらえばいいですが、いま申しましたように、耕作しておる者が土地を買う、こうなった場合に、その土地を買う資金を持たない。こうなりますと、現行においては農林漁業金融公庫法に基づく農地取得資金を運用する、こういうことになると思いますが、これは大体金利が高過ぎるのですよね。利率が三分五厘、償還期限が二十五年、あるいは貸し付けの金額は一人が二百万円ですか。しかし、これは農地保有合理化促進事業及び農業委員会のあっせん等による場合は一千万円ということになっております。これは非常に金額も安く、最高限度が少ない。これは現在何とか高くしなければいけないと思うし、それから金利ももっと下げなくちゃいけない。あるいはまた、貸付期限等も延ばしていく。低利長期の融資にしなければいけないと私は思う。これをこの現行法の状態でこれができないとすれば、この機会に、かつてあったような自作農創設資金であるとか、そういうような別個の法律をひとつつくって、これに対して利子補給するとか何かの方法をとることが必要である、かように私は考えますが、これは大臣から答弁してもらうのが本当ですけれども、事務的にはどうお考えになるか、これを承りたいと思います。
  303. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農地等取得資金につきましては、従来から貸付条件の改善等に努力してまいってきているところでございます。  小作料の統制が廃止される農地改革残存小作地、その小作人による農地の取得につきましては、本年度の貸付限度額について、先生もおっしゃられましたように、一般の場合は二百万円ということになっておりますが、これを七百万円まで引き上げるということにいたしております。  それから、農用地利用増進法に基づく農用地利用増進計画による農地等の取得につきましては、別途農地取得資金の優遇措置を考えるべきではないかということで検討しているところでございます。  それから、金利そのほかの問題が示されたわけでございますが、この農地等取得資金は農林漁業金融公庫が融資しております公的資金の中でも最も低利長期のものとなっております。年の金利が三・五%、償還期間が二十五年、そのうち据え置き期間は三年ということになっております。金利の問題は、率直に申し上げまして、全体のバランスなりあるいは財政負担といったような問題から、なかなかむずかしい問題だというふうに考えております。ただ、限度額の問題につきましては、従来からも引き上げてまいりましたし、今後とも実情に応じてさらに努力をしてまいりたい、かように考えております。
  304. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは耕作する者が土地を取得する場合は、日ごろ納めている賃貸料といいますかその程度で長期にわたって自分の物になるというような、そういうことが好ましいと思うのですよ。この資金になりますと、私はこの間も参考人のときに質問したのでございますが、たとえば一千万円借りたとする、そうすると、金利と元金償還すると、毎年やはり七十万円ぐらい払わなければいけない。そうすると、今日、たとえば三反借りたとする。その賃料というのは三十万円ぐらいでしょう。取得するためには、自分が収穫したほかに、また年間四十万円ぐらいの金を補足しなければ買えないということになってくる。こういうことになってはいけないと私は思う。本当に耕作をする者に土地を取得させるならば、やはり苦労のないようにして取得させることが必要である。これは思い切った低利の方法、特別な特例を考えて自作農主義を貫く、こういうことにいくことが最も必要である、こう私は考えております。その点は、これは重大な問題でございますから、大臣から後かたお考えを伺いたい。  さらに、私は次にお尋ねしたいと思いますことは、この農地法の第三条二項の六の中に「その土地の所有者がその土地をその世帯員に貸し付けようとする場合、」さらに七に「その土地の小作農がその土地をその世帯員に貸し付けようとする場合、」この二つが第三条二項の六と七に挿入されております。何がためにこれを挿入したのであるか、いままでなかったものが挿入されておるが、その理由を承りたい。
  305. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 一般に民法では世帯員間においても不動産等の貸借は可能であるということになっております。農業者年金制度におきます経営移譲年金の場合でも、農業における後継者の育成、確保農業経営の若返りによる経営の発展を図るということで、老齢経営者の後継者への経営移譲を推進しているところでございます。いずれも後継者に独立の経営者としての人格を認めているということになるわけでございますが、この場合、相続制度及び所有権の一括移転に対する不安から、農地の全部または一部について使用収益権の設定方法による経営移譲が相当広範に行われております。  先生の御意見のように、家族内で貸借とか使用収益権の設定というようなことはおかしいのではないかという御議論もありますが、いま申し上げましたように、やはり独立の経営主体として別個に扱う、家族一体ではないという、ちょっと言い方は適当でなかったかもしれませんが、経営の主体としては別であるという考え方が広まっているわけでございます。そういう中で、農地法が創設農地及び小作地についてはこれをほかに貸すことを禁止しているということのため、経営移譲の障害となっているわけでございます。一般私人間と異なって、世帯員の間でもその貸借を認めても、その禁止の趣旨に反するわけではないというふうに私ども考えたわけでございます。そこで、経営移譲の阻害要因を取り去るということでその貸借を認めるということにしたものでございます。  なお、一般に世帯員は住居及び生計を一にする親族の間柄ということになっておりますので、御指摘のように、その間に利害対立関係が生ずると解されるような賃貸借は、これは長続きしないということで適当でございませんので、一般的には使用貸借により行われることが好ましい、そのように指導をしているところでございます。
  306. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題は非常に重大な問題でございまして、日本農業というものは家族経営なんですよ。私は、ここに日本農業経営のよさがあると思っております。このことは、農業基本法でも第十五条に、「国は、家族農業経営を近代化してその健全な発展を図るとともに、できるだけ多くの家族農業経営が自立経営になるように」、こう書いております。また第十六条にも、「自立経営たる又はこれに」といって、これは分散相続の問題を書いておりますが、やはり農業というものは「家族農業経営」ということを農業基本法にも書いておるんですよ。それをわざわざ家族内において、同じ世帯主が一方の人と貸し借りをする、こういうような考え方をやるから親子の断絶ができるんですよ。家庭の不和がそこから生じてくる。これは日本農業として農業が成り立つために考えなくちゃいけない問題です。  いま農業者年金の問題の話がありました。農業者年金があるからこれをやったとおっしゃるならば、農業者年金を家族制度を守るという立場からそれに変更することは当然であって、その枝葉の問題に適用するために日本農業基本である家族制度を壊すようなことはやるべきじゃない、私はかように考える。この点から、今日、家族制度を壊すようなこういう考え方というものは改めるべきである、挿入すべきでない、私はこう思います。  さらに、今日の民法の上においても日本農業は家族制で成り立っている。おやじが息子を養っている、あるいは息子が給料をもらっておるわけではないのですよ。一つになって一つの家族ができて共同経営をしているのですよ。その共同経営する世帯員の中で、世帯員同士が貸し借りをする、こういうことは、日本の伝統あるいい家族制度を壊すことになる、こういうことを絶対にやるべきじゃない、かように私たちは考えております。もしもそれで、日本の民法がそういうことにいくならば、日本農業というものは家族制度中心であるということから、農業に対しては特例をつくってでも家族制度を守るということをこれはやっていかなければいけない、私はこういう基本的な考えを持っております。私の考えが古いかどうかわからぬが、この私の考えが間違っておるならば、遠慮なく私に対してお教えを願いたい。これに対しての政府の見解を承りたいと思います。
  307. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 ちょっと参議院の決算委員会に呼ばれておりましたので、いまの御質問の中身についても必ずしもまだ的確につかんでおりませんが、要は、何かいまちょっと聞きますと、私どもは賃貸借ではなくて使用貸借という形で親子の間では指導してきておるということについては、どうもそれもいけない、だから、同じ家族の中においては親子が円満にいくためには、いわゆる貸借、貸し借りということじゃなくて、一緒になってやっていくんだ、こういうことをやれ、こういうことではなかろうかと思うのでございます。そのお考え方は私ども十分理解ができるわけでございますし、決して反論するつもりはございません。  ただ、問題は、これは先生御承知のとおり、いまの憲法というものは、かつての日本はどちらかというと親子関係、縦の関係を尊重してきたわけでございますけれども、いまの憲法というのは、基本的に横の関係を尊重いたしておるものでございますから、そういう点に憲法との問題においてなかなかむずかしい問題が起きてまいりますと、やはり私どもは、不本意であっても、そういうある程度の賃貸借関係あるいは使用貸借関係というものを認めざるを得ないということでございまして、好んでそういうことをやって指導しておるということではなくて、農家の中でいろいろの方があると思いますけれども、農家によって親子で一緒にやっていこうということでやっていただけることを、何も私どもはいけないと申し上げておるわけではないわけでございますので、そういう点は決して先生のお気持ちと違ったことはない。ただしかし、憲法上のいろいろな問題があって、そういういろいろの事態が発生する場合もあるわけでございますので、そういうときにはやはりいろいろの貸借関係というものを認めざるを得ない。認めるときには、できれば、賃貸借よりは、親子でございますから使用貸借の方がまだ望ましいのではないか、こういうことで指導しておる、こういうことでございます。
  308. 稲富稜人

    ○稲富委員 大臣、私申しましたのは、それで農地法第三条二項の第六と第七に、今回の法の改正でわざわざ、いままでわざわざ書かぬでよかったやつを、「その土地の所有者がその土地をその世帯員に貸し付けようとする場合、」あるいは「その土地の小作農がその土地をその世帯員に貸し付けようとする場合、」わざわざこういう条項をここに挿入をしたことに、私は、なぜこの際こういうものを挿入しなければいけないか、こういうことを挿入することが親子の断絶を来し、あるいは家族の不和を来すことになるのじゃないか、わざわざこういうことを書き加えなければいけないのはどこにあるかということを言っておる。こういうことが、御承知のとおり分散相続の中にも影響しております。御承知のように農業基本法の第十五条でございますか第十六条でございますか、この分散相続の問題で農村には大きな悲劇が起こっておりますよ。  この間、私たちこういうことがございました。きょうだいが四人おる。長男と次男は大学を出まして東京、大阪に行っております。家の方には三男と四男がおる。三男はよそに出ている。四男が家でおやじと一緒に百姓をやっておる。ところが、その三男がたまたま弟のところに来て、分散相続でおれの分を分けろ、こう言う。それをやると、四男はもう農業ができないことになる。四男はこれを拒み続けた。ところが、三男がとうとう激高してたびたび来る。たびたび来てもこれができなかったところが、酔っぱらって来て、ついに勝手口から出刃包丁を持ってやってきた。それで、これに対して弟がこれを防いだ。それを横から見たおやじが、こういう三男息子が常々来るならば、四男はまじめに農業をやっていながら、農業をやっていけぬだろう、将来困るだろう、こう思ったから、おやじが横から来てその三男の首を締めて締め殺したのです。ついこの間なんですよ。いまでは、その人を殺したおやじと四男は取り調べ中で引っ張られております。その長男は東京にいて、あるテレビ会社のディレクターになっておる。その長男がこの間私どものところへ来た。この家庭の悲劇です。泣いてその長男は訴えた。分散相続の悲劇がここにありますと。私たちはもう大学を出て就職しておるから財産をもらおうと思いません。しかしながら、つい三男が分散相談を請求して荒くなったがために、とうとう殺されました。こういう家庭悲劇というものが生まれております。これは実に家族制度というものを守り得ない分散相続とかこういう民法上の欠陥が非常にあると私は思うのですよ。  また、あるところにはこういうことがあります。三人きょうだいがあった。長男が家で農業を経営しておる。二番目、三番目の弟には、苦労しながら大学を卒業させた。大学を卒業するときには、大学を卒業したらサラリーマンになって、せめて土地は分けないでいいだろうと思って、長男はこれに大学を苦労して卒業させた。その次男、三男はもうすでにサラリーマンになっておる。それが、いよいよおやじがもう死に目、年とってきたというと、郷里に帰ってきて、分散相続としておれの割り前をくれろ、こう言う。そうなりますと、嫁に行っておる妹まで帰ってきて、私にもくれろと言う。長男は何と言うたか。おれはこの田んなか、自分がつくりたいと思うたから、苦労しながらおまえたちを大学にやったんじゃないか、貸借関係はないんだ、ただでおまえたちを大学へやったんじゃないか、何のためにおれは苦労しながらおまえたちを大学にやったか、こう言って長男は泣き崩れて、もう百姓はやりたくないと言う。おやじが私のところへ駆け込んできました、どうしたらいいでしょうと。こういうような悲劇が非常に起こっているのですよ。  これはやはり私は、農業というものが家族制度で成っているんだというこの基本的な考え方から、民法においても農業に対する特例というものを認めていかなければ、こういう悲劇が農村に起こると思う。そういう点から、私は、この問題に対しては、特にわざわざこういう問題をこういうところに法の改正に乗じてうたってくるようなことをなぜ起こすかということを聞いておるわけなんです。こういう問題も削除すべきじゃないか、こう私は考えるわけですが、御意見を承りたいと思う。
  309. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 確かに、御指摘のような点は私も理解ができますけれども、これは私どもが進めていくということでは毛頭ないことは先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。ただ、まあいろいろの関係でそういうこともあり得る、それは決して好ましいことではないけれどもそういう事実関係があり得るかもしれないので、そういう点においては、やはりそういうものは認めるような方向にいかざるを得ないのではなかろうか。せっかくそれは、先生のお気持ちにしたって、そういうことは決して好ましいことではない、それはやめたらいいというお気持ちかもしれませんけれども、やはり親子の間においてもそういう移譲をしていこうという場合に、それを法的に認めてほしいということを言う方もあるわけでございます。もちろんそれを奨励しているわけではございませんけれども、世の中がこういう世の中になってまいりましたので、やはりそれはそれなりに私ども現実の事実としては認めざるを得ないということで、そういう受けざらをこれは用意をしたということでありまして、決してこれを奨励していきたいというような気持ちは毛頭持っておりませんので、そういうことで御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  310. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで、私の言っておるのは、いままでもやっていかれたのだから、わざわざ寝た子を起こすような条文をここに入れて刺激をして、さらにそういうような家族が、これがためにそういういさかいを起こさせるようなことをせぬでもいいじゃないか、こういうことなんですよ。寝た子を起こすようなことをわざわざせぬでもいいじゃないか。なぜこれをしなくてはいけないか。聞くと、それは農業者年金の問題があるからこうしたとおっしゃる。それなら農業者年金の方を、家族制度を中心とした農業者年金の方に切りかえればいいんだ、これは。そういうことに農業者年金の方を変えるべきであって、枝葉の問題を生かすために基本的なもとを壊すということはやるべきじゃない、こういうふうに私は考える。そういう点から私はこの点を削除されないかということをお尋ねしておるわけなんです。
  311. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 今回の改正は二点あるわけでございます。三条二項の六号の場合と七号の場合。七号の場合は若干六号の場合とはその性格が違うと思います。これは、おやじさんがどこかよその地主さんから小作地を借りている、ところが地主の方はおやじなら貸すけれどもその息子には貸さない、おやじさんの方は息子にその借りている農地で引き続いて営農をやってもらいたいと思っても、地主からおやじなら貸すけれども息子なら貸さないと言われると返さざるを得ないというような実態があるわけでございます。むしろ、親から子へ借りている権利がそのまま承継できるようにという意味で、この七号の方は家族経営的な観点がむしろ入って、親と子が一体的にそこを引き継いでやっていくということでこの改正をすることとしたわけでございます。  それから、六号の方は、確かに直接の動機は農業者年金からの問題でございますが、一般的にその点は、先生の家族制度を大事にしなければいけないというお気持ちはわかりますが、今日ではむしろ親がなかなか経営権を譲ってくれない、実際に権利のある者として子供を処遇してくれないということのために、先生の場合と逆に、それでトラブルが起こるということもあるわけでございます。しかも、若返りのためにそういう経営移譲をすれば農業者年金がもらえるということなら、それはやはり移譲を認めていいじゃないかというようなことで、かなり多数の要望も出ているということもございまして、何も家族制度を破壊するとかなんとかということではございませんけれども、やはりそういう世の中の移り変わりなり要請にこたえて、こういう改正が必要でないかということを考えたわけでございます。
  312. 稲富稜人

    ○稲富委員 この問題は、私の意見とは平行しているのでどうも納得がいきませんけれども、時間がとられますので、この問題は平行線のまま保留いたしておきます。  次にお尋ねいたしたいと思いますことは、農地法第二十一条の現行の中における金納制を廃して物納にするという問題でございます。  まず、この根本の問題を考える場合、あなたの方では、一体物納にするとするならば、目方で決められるのか、量で決められるつもりか、どちらなんですか。
  313. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 一般の取引の場合も現在米は重量取引が原則でございます。物納で小作料を決めます場合、これは重量で決めるということになろうと思います。
  314. 稲富稜人

    ○稲富委員 重量で決めるということになりますと、米の乾燥度というのが非常に影響しますよ。あるいは水分含有量が一五%と一六%というものがある。一五%になった場合、軽くなりますからたくさんこれは俵に詰めなくちゃいけないことになってくる。こういう矛盾はどうなさいますか。
  315. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 現在農産物検査法というものがございまして、市場に流通する、つまり売買される米については検査を受けることが義務化されております。これに基づいて一定の規格、ある重量の場合それの水分がどのくらいかというようなことで規格、品質が定められております。小作料として物納で米が重量単位で決められるという場合には、当然あわせて品質、規格の問題もきちんとさせなければいけないと私は思っております。そのためには、これは当事者間で譲り渡される場合でございますから強制検査を義務づけられてはおりませんけれども、検査を受けさせて、そして一定の規格、水分等につきましてもその内容の一部に含まれるわけでございますが、一定の規格にかなったものを小作料として納めるということで対処すべきだと考えております。
  316. 稲富稜人

    ○稲富委員 それではさらにお尋ねしますが、昔の小作料というものは、今度は小作料じゃございませんから、あるいは借地料か何かになるかわかりませんが、従来、小作料というものは、その土地にできたものを——昔はいわゆる上納と言ったのです。その土地にできたものを地主に支払いするというのが古来よりのわが国の慣行なんです。ところが、今日は農業が非常に多様化してきております。水田再編成等によって米だけはつくらぬようになってきている。野菜をつくる。こういうような場合、従来の小作料の慣行から言えば、その土地につくったものを納めるというのが慣行なんですが、そうすると、野菜をつくれば野菜を持っていくということになるが、どうなるんです。ビニールハウスでつくったらビニールハウスのものを持っていくということになる。どうなるんです。物納ということになると、そういう問題は一体どうなるのですか。
  317. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 小作料も経済取引の一つの形態でございます。それで、当事者間の合意によって決められるべき性質のものでございまして、金納がいいか、物納がいいか、物納の場合は何にするか、労役にするかというようないろいろなケースが考えられます。私ども、今回定額金納制というものを廃止いたしました場合、何も物納でなければいけないとか物納はこういう形でなければいけないというようなそういう固定化した考え方でおるわけではございません。したがいまして、当事者の話し合いでもってそこは決められればよろしいというふうに思っているわけでございます。一般的には物納というのは米ということで考えております。しかし、例外的に当事者間でほかの農産物で決めるということもあり得ると思います。それは一概に禁止するというようなことにはまいりませんけれども、標準小作料の考え方、適正な安定した小作料水準を指導していくという考え方に立つと、どうもほかの農産物については小作料の形態としては余り適当ではないのじゃないかというふうに考えます。
  318. 稲富稜人

    ○稲富委員 昔から小作料というのが非常にやかましかったのはなぜかと言うと、その土地につくったものを持っていくというのが従来の慣行なんです。そうすると、小作人は小作料のために非常に苦しんだのです。恐らく農林大臣の家は地主さんだっただろうと思う。大体酒屋さんというのは地主さんなんだ。小作料として持ってきたもので酒をつくるのです。それがため品質にやかましいのです。われわれ小さいときから見ております。小作人が小作料として納めるべきものを車に積んで地主の家に持っていく。地主はその米を見まして、これは品質が悪い、持って帰れと言うのです。せっかく小作人がその土地にできたものを持っていくのですが、この品質は悪いから持って帰れ。さびしい顔をしながら、いや、だんな様、これはおたくの土地にできたものでございます。こんな米しかつくらぬようなら土地は返せとこう言うのですよ。いい米ができるのにこんな質の悪い米をつくるやつ、もうおまえに小作させるわけにいかないから、別な者に小作させるから持っていけ、こう言う。こういうことで小作人は泣いたものなんです。そういうことからだんだん小作料は上がってきました。かつては七俵取れるところは二俵ぐらいの小作料だったのが、だんだん値上げして、後には七俵取るところは五俵の小作料を払わなければいけない。これがかつての大正末期における農民の奮起した事情なんです。これほど小作料を払うために農民は苦しんだ。それで、大正末期の農民運動でも、やはり耕作する者が土地を持たなくちゃいけないということと、やはり小作料というものは金納にしなければいけないのだということを叫び続けて、農地改革と同時に金納制度が採用されたわけなんです。こういうように、やっぱり小作料を品物で払うということになりますといろんなまた問題が起こってまいります。  そうしますると、いまおっしゃったように、その両方の契約をするということになると、貸した人間と借りた人間と両方で決めればいい、何をつくるかということまで約束しなければいけない。三カ年間か五カ年間契約する前に、五カ年間米をつくれ、野菜をつくれ。米をつくると約束しておっても、あなたの方で生産調整で米はつくっちゃいかぬと言ったらどうなる。こういう複雑な問題が生じてくるのです。こういうことをあえてやろうという。また、そういうような作物の選定までやらせようとするのであるか、あるいは米の品質の問題までも約束するのであるか、こういう問題に対してはどういうような具体的な策を持っていらっしゃるのかを承りたい。
  319. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 物納を認めるような今回の改正案でございます。物納が実際に行われます場合には、先ほど申し上げましたように、米という形で、しかも標準小作料との関係から言えば、その評価もして納められるということになるわけでございます。これがいろいろ問題を生ずるではないかということが言われるわけでございますが、これは大変私どもの立場から申し上げにくいことでございますが、現実に物納小作料というのはかなり広範に進行している、新しい契約のものほどその割合が高い。四十六年以降の農地の賃貸借契約を見ますと、小作料、新しい考え方で言えば賃借り料は、物納部分が四〇%以上を占めるというような事態になっているわけでございます。そこで、私ども、特段むずかしい問題が生ずるということはまずまずなかろうという判断のもとに、定額金納制を廃止するということに踏み切ったわけでございます。
  320. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから大臣にちょっと……。先刻、大臣のいらっしゃらないうちに私こういう質問をしまして、大臣から答弁してもらうことをお願いしておったのですが、今日耕作をしている人が土地を取得したいと思う場合、そのときに価格が決まらない場合には、だれか決めるでしょう。そして、それを取得する場合には金が要る。その金を借りる場合です。これは、現在では、御承知のとおり農林漁業金融公庫法に基づく農地取得資金を借りなければいけない。これは非常に金利が高いのです。三分五厘なんです。現在の金融としては三分五厘は最低だ、こう局長はさっきおっしゃいました。一般の金融から言えば三分五厘は安いかしらぬけれども、農業伸び率から言うと、一般の産業と違いますから、伸び率というのは一般の産業より非常に鈍化するのです。一般農業でのこれに対する三分五厘は高過ぎるのです。本来から言うならば、従来賃貸借金を払っている、その程度のものを払いながら、ついには自分のものになったんだ、こういう事態が好ましい。最高の場合は一千万円まで借りられる。一千万円借りたとすると、金利を三十五万円、それから元金の支払いを二十五カ年間、四十万円ぐらい払わなければいかぬ。年間七十五万円ぐらい払わなければいけない。三反取得したとしても、収入というのは三十万円くらいだ。それ以外の金をまた足して払わなければいけないということになると、農民というものは非常に負担が大きくなります。そういうようなことにならないためには、かつてあったような自作農創設資金とか、そういうような制度をつくって、気安く、しかも金利も安く、長期の金融方法を考えてやるということが必要だ。これは大臣から御答弁願いたいと思っておったのですけれども、大臣いらっしゃらなかったものですから、局長からさっき答弁を受けたのでございますが、こういう制度をひとつやっていってもらいたい、こういうことを特に考えますので、大臣としての御所見を承りたいと思います。
  321. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 新しい制度を創設をするか、現在の制度を充実するか、これはどちらでもいいと思うのでございますが、要は、いまよりはもっと充実をしろ、こういう御指摘かと思うのでございます。特に金利問題と償還期限の問題が一番大きな問題ではなかろうかと思うのでございますが、確かに御指摘のようなこと、農業の実態を見ますれば、また農地がいま大変高くなっておりますので、そういう点から見ると、償還をしていこうとすると相当高いものにつくわけでございますから、もっと金利が安くなり、償還期限も長くなれば、これは大変結構なことだと思うのでございます。ただ今日までのこの制度が、現在も三分五厘で二十五年間という制度があるということは、相当財政当局あたりと議論をしながらそういう制度をつくってきたといういきさつもあるわけでございますし、もちろんそれは財政当局が云々ではなくて、やはり差額は利子補給をしておるわけでございまして、これは税金から出ておるわけでございます。そういう国民的な合意のうちに、もう少し何かいい、より改善された条件になってくるということが一番望ましいわけでございまして、私もここで、いたしますと言う自信は正直言ってまだございませんけれども、気持ちとしてはよくわかりますので、ひとつ十分この点は検討を私自身にさせていただきたい、こう思っております。
  322. 稲富稜人

    ○稲富委員 それではまたもとに戻りまして、金納、物納の問題に入りたいと思いますが、先刻局長の御答弁を承っておりますと、どうも物納が絶対的じゃないんだ、両者間に話し合いができればこれは金納でも差し支えないんだ、あるいは品物でも何を納めるんだということも当事者間で話し合いができるのだ、こういうような非常に幅の広い御答弁でございました。であるならば、私ここで申し上げますことは、従来の二十一条の金納のこの個条を全部削って物納にするんだ、こういうようなことをやられることは余りに行き過ぎではないか。やはり二十一条のこの条文は残しておいて、基本的には金納である、ただしいろいろな事情があった場合は、あるいは当事者間で話がつけばこれを物納にしてもいいとか、あるいは農業委員会がどう認めれば物納にしてもいいとか、こういうような、これは主客転倒したことになっているんじゃないかと思う。さっき局長の御答弁と今回の法文の改正を見ますと、主客転倒しておるのですよ。どうですか、この点は。現行の二十一条を残しておきながら、そういう物納の場合もあり得るという、こういうような考え方を持って処することが最も必要である、私はこう思うのですが、これは大臣どうお考えでございますか。
  323. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもは、先ほど局長答弁いたしましたように、物納、いわゆるこの二十一条のところを外しても、それはそのまま物納に行くのではなくて、金納でも物納でも結構なんでございます、こういう考え方であったわけでございます。どうもこの点については、いま先生のお話を聞いておりましても、何か非常に誤解があったようでございますので、他の委員先生方からもいろいろとこの点については非常に御意見がございますので、私どもといたしましては、そういうことで決して物納本位にするつもりはなかったのでございます。だから、そういう点において考え方がそう大きく違っていなければ、表現の問題については与野党間でよくお話し合いをいただきまして、何かいいものが出てくれば、私どももそれは受けざるを得ないのではなかろうか。私どもその点については十分そういう受け入れやすいような体制になるようにひとつ検討をさせていただきたいと思います。
  324. 稲富稜人

    ○稲富委員 特に私がこの問題を主張いたしますのは、これが物納だということになりますと、食管法に及ぼす影響がどうかという非常に不安があるのですよ。今日食管法というものは農業としては非常に重大な問題として取り扱われております。政府は口を開けば食管の根幹は守るんだとおっしゃるけれども、これはわれわれは、根幹というものがはっきりしておらぬですよ、だんだん根幹というのはやせ衰えていくんじゃないかという感じがいたします。この間からもこの物納の問題につきましても、根幹は放さないんだ、現在自主流通米制度があるから、それに準じていくんだ、こうおっしゃる。自主流通米制度そのものが食管法をなし崩しするんじゃないかという不安がある。それにまた輪をかけるようなことをわざわざやらぬでもいいじゃないか、こういうことなんですから、この点に対しては特に慎重にお考え願って、ひとつ誤解のないような、農業者がこれによって失望を持たないような、こういうことを特にひとつ留意していただきたいということをこの際申し上げておきたい。ことに食管法にはこれは影響しない、こういうことだと思います。食管はどこまでも守っていく、こういう気持ちだと思いますが、この点、ひとつ大臣、ついでにこの問題もはっきりしておいていただきたい。
  325. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもの考え方は、土地をお貸しを願った方が、やはり自分の農地からとれたお米を自家飯米として欲しい、こういう気持ちが多多あるというふうに承っておりますし、また一方においては、そういうことを踏まえて、これはやみ小作料でございますけれども、現実にはどうも物納が行われているパーセンテージが相当多いようでございます。そういうことを踏まえますと、この際、そういう自家飯米として欲しい方々によりそういうお米が渡る、あるいはその他の作物が渡るということが農地の流動化にもつながるのではないか、こう思って考えたわけでございまして、決してそこでより多くの米が出てきて、それによって食管に風穴をあけるということを毛頭考えておるわけではございません。確かに、食管の根幹は自主流通米の制度導入によってある程度細くなったと私は思いますけれども、それはそれとしてまだいまなお根幹を守っておるわけでございますので、細くなったかもしれませんが、この根幹を細くするのではなくて、よりしっかり守っていきたいと考えておるわけでございます。
  326. 稲富稜人

    ○稲富委員 根幹の問題を触れておると、こればかりで時間がなくなりますから、これはまたの機会に譲ることにいたしまして、次の問題に移ります。  いよいよこの三法が通る、こういうことになりますと、執行に当たりましては農業委員会の使命が非常に大きいことは当然でございます。この問題については、農業委員会の組織その他についてはしばしばここで論議されております。私も承っております。農業委員会の組織を充実するということも必要であると思いますが、選挙などに対しても考える必要がありはしないか。今日地方の市町村の農業委員会農業委員の選挙の状態を見ておりますと、選挙が非常にはでになりまして、昔はポスターでも紙に書いたのを張っていたけれども、近ごろはカラー写真になってしまいました。そして、農業委員になるためには相当の選挙費用が要る、こういうような状態なんです。こうなりますと、農業委員に本当の農民は出ないで、土地あっせん業者とかそういう者が農業委員会に出てくるという例もある。そうすると、農業委員会農業委員会の本質を離れるということになってくる。これは重大な問題なんです。それで、この際農業委員会は、この使命を持たされた以上は、農業委員会内容を拡充し、組織を強化する。そして、本当に農民の意思に沿うたような農業委員会、農村の建設に当たるような農業委員会、こういうことに対しては、政府は特段の強力なる指導を持ちながらこれに当たらなければいけない、こういうように考えます。もちろん、これがためには財政的にも十分なことをやって、健全なる農業委員会を成立させる、健全なる農業委員会の姿にすることが最も私は必要である、かように思いますが、これに対して政府はどういうような覚悟であるか、この点を承りたいと思うのでございます。
  327. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いろいろ今後権限を都道府県知事から委譲していくわけでございますので、農業委員会の役割りは非常に重要なものになってくると思います。そういう面において、農業委員会が本当にしっかりしたものになっていただくために、たとえば農業委員の選挙に当たりましても、真の農民の代表として公正な立場で御活躍をいただけるような方がなっていただかなければならないことは当然でございまして、私どもはそういう方向で極力行政的にも指導してまいりたいと思いますし、またそのためには、農業委員の手当、その他財政的な基盤をしっかりつくり上げていかなければならぬことも当然でございますので、従来以上に助成措置については思い切って増額の方向努力をさせていただきたいと思っておるわけでございます。
  328. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がありませんから、最後になりますが、これが運営に当たって最も必要なことは、農業委員会と市町村との関係です。よほど密接な関係でいかなければこれが実行はできません。この間参考人がここにおいでになりまして、いろいろ聞いておりますと、市町村の代表の方の考えと、農業委員会の代表の考えとの間にはいささか違うような点もありました。これは重大な問題であります。そこで、今後政府が、市町村並びに農業委員会に対してはかりそめにも感情の対立があったり何かしないように、これが運営に対しては一体となって運営をし、実績を上げるためには十分な手を尽くす必要があると思うのでございます。これは政府の責任においてなすべきである、かように私は考えます。この点に対してどういうような考え方政府としてはお持ちであるか承りたいと思うのでございます。
  329. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま御指摘の点は、そのとおりでございまして、市町村がこの事業を運営するに当たって、農業委員会の意見というか、農業委員会に御協力いただいてやっていかなければならぬわけでございまして、その協力体制であるべき農業委員会の方が、やらなければならない市町村と相反するようなことになっておったのでは全くこの事業は進まないわけでございます。これは当然のことでありまして、一体となってやっていただかなければなりませんし、また、他の農業団体である農協あたりにもひとつ協議会あたりには入っていただきまして、そして、本当に農業団体と市町村とが一体となって進めていただきたい、こういうふうに考えております。
  330. 稲富稜人

    ○稲富委員 まだ聞きたいことがありますけれども、農林大臣は所用があるそうでございますから、私の質問はこれで打ち切ることにいたします。
  331. 内海英男

    内海委員長 次回は、明二十四日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十六分散会