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1980-04-22 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月二十二日(火曜日)     午前九時四十五分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    菊池福治郎君       久野 忠治君    近藤 元次君       佐藤 信二君    佐藤  隆君       菅波  茂君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    玉沢徳一郎君       西田  司君    福島 譲二君       保利 耕輔君    堀之内久男君       渡辺 省一君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    新村 源雄君       馬場  昇君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    本郷 公威君       瀬野栄次郎君    武田 一夫君       中川利三郎君    中林 佳子君       神田  厚君    近藤  豊君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  武藤 嘉文君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    塚田  実君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         大蔵省主税局税         制第一課長   内海  孚君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ――――――――――――― 四月二十二日  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づ  き、農林規格検査所等の設置に関し承認を求め  るの件(内閣提出承認第二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十八日  マツクイムシ防除事業拡充強化に関する陳情  書外二件  (第一四五号)  養豚経営安定強化に関する陳情書外一件  (第一四六号)  韓国漁船に対する漁業水域法適用に関する陳情  書(第一四七号)  農業改良普及事業等充実に関する陳情書  (第一四八号)  水田利用再編対策に関する陳情書外二件  (第一四九号)  生乳の消費拡大に関する陳情書  (第一五〇号)  砂糖の価格安定等に関する陳情書外一件  (第一五一号)  飼料米導入試験研究充実強化に関する陳情書  (第一五二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  飼料需給及び価格の安定に関する法律案(角  屋堅次郎君外八名提出衆法第三五号)  飼料作物生産振興特別措置法案角屋堅次郎君  外八名提出衆法第三六号)  農用地利用増進法案内閣提出第七七号)  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第七  八号)  農業委員会等に関する法律等の一部を改正する  法律案内閣提出第七九号)      ――――◇―――――
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  角屋堅次郎君外八名提出飼料需給及び価格の安定に関する法律案及び飼料作物生産振興特別措置法案の両案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。角屋堅次郎君。
  3. 角屋堅次郎

    角屋議員 ただいま議題となりました飼料需給及び価格の安定に関する法律案飼料作物生産振興特別措置法案につきまして、提案者を代表いたしまして、その提案理由並びに主な内容について御説明申し上げます。  御承知のように、わが国飼料需要は、畜産生産拡大に伴い年々増加し、昭和五十三年には濃厚飼料の場合二千四百七十万トンにも上っており、そのうち、約七〇%以上がアメリカを初めとする海外からの輸入によって賄われているのが現状であります。一方、国内産自給飼料生産は増大する飼料需要に即応する積極的な対策がほとんどないまま今日を迎えております。  特に濃厚飼料につきましては、国内での自給対策に力を入れず、いたずらに海外依存度を深め、今日世界の飼料貿易量の約二〇%近くをわが国が買いあさっており、世界的な穀物需給の逼迫の中で絶えず海外市況変動の影響を受けているのであります。  また、畜産経営にとって最も重要視されなければならない粗飼料生産も、優良草地の荒廃、草地造成牧草更新、草の品種改良のおくれから、その単位当たりの収量は先進諸外国に比較して著しく低いものであり、これが改善対策飼料用穀物等国内生産対策強化とともに、わが国畜産振興のため緊急の課題であります。同時に、輸入飼料等を含め、現行の流通機構改善を加え、えさ高畜産物価格安現状を打開すべきことは当然であります。  政府は口では食糧自給力向上をうたっておりますが、ただいま申し上げましたように、濃厚飼料の七〇%以上の海外依存、粗飼料のきわめて貧弱な生産体制の中で、いまこそ抜本的な畜産振興対策のため、国内畜産飼料自給向上を柱に輸入飼料流通管理価格安定対策を含めて思い切った対策を確立しなければなりません。それが四月八日衆議院本会議で満場一致議決された「食糧自給力強化に関する決議」の趣旨に沿うゆえんでもあります。  以上申し上げましたような国内産飼料現状、また、輸入飼料流通管理の状況から、飼料需要価格安定と国内産飼料作物振興のために飼料需給安定法を抜本的に改正するとともに、新たに飼料作物生産振興特別措置法をもって国内産飼料自給向上を図らなければならないところであります。  以下、この飼料需給及び価格の安定に関する法律案飼料作物生産振興特別措置法案の主な内容について一括して御説明申し上げます。  まず、飼料需給及び価格の安定に関する法律案でありますが、第一に、目的にもうたっておりますように、政府による飼料用穀物等買い入れ、保管、売り渡し飼料標準販売価格設定等について必要な事項を定めることにより、飼料需給及び価格の安定を従来以上に強化し、畜産の健全な発展を図ろうとするものであります。これがため、まず農林水産大臣飼料需給計画を定め、民主化された飼料審議会意見を聞き決定するようにしたことであります。この場合、飼料需給計画に定める事項は、需要数量国内生産数量輸入数量政府買い入れ売り渡し数量備蓄数量等、それぞれ見込み数量都道府県における飼料需要見通しをしんしゃくして定め、中央、地方を通ずる計画性を持たせたことであります。  そして、この計画の中には配合飼料混合飼料への原料売り渡しだけでなく、農協等単体をもって売り渡す方途も開いたわけであります。  第二に、買い入れ売り渡しでありますが、国内産飼料用穀類食管法基づき、麦類買い入れるほか、国内産トウモロコシ等について生産費及び所得補償方式によって買い入れることといたしております。また輸入飼料について麦類を除く、トウモロコシ等については飼料需給計画基づいて農林水産大臣が許可し政府に売り渡すものとしており、この場合、標準的な経費、適正な利潤を政令で定めることにいたしました。  また、売り渡しについては、飼料の原価にかかわらず、畜産業経営安定を旨として定める価格で売り渡すが、この場合、売り渡し政府管理飼料配合単体を問わず品目、数量価格等農林水産省令によって買い受け人別に公表しなければならないものとすると同時に、政令によって飼料販売業者養畜を行う者に売る場合には標準価格を定めることといたしました。しかし、この標準価格が守られない場合には農林水産大臣が勧告、これに従わないときは公表することといたしております。  第三に、養畜を行う者及び飼料用作物生産者を代表する者十人以内、飼料製造業者加工業者輸入業者販売業者を代表する者十人以内、学識経験者五人以内、以上二十五人以内をもって飼料審議会を構成し、農林水産大臣の諮問に応じて飼料需給及び価格の安定に関する重要事項、さらに、飼料作物生産振興特別措置法によりその権限に属された事項について審議し、建議することができるようにいたしたことであります。  以上が飼料需給及び価格の安定に関する法律案の概要であります。  次いで、飼料作物生産振興特別措置法案でありますが、第一に、この法案対象となります飼料作物は第二条の定義に示す飼料作物対象とし、十年間の時限立法によって生産振興を図ろうとするものであります。飼料作物生産振興計画は、まず農林水産大臣飼料審議会に諮って飼料作物生産振興基本方針を定め、これに即して毎年度、種類ごと作付面積生産数量等内容とする国の生産振興計画を定めることにしております。また、都道府県市町村段階では、それぞれ農業団体関係団体意見を聞いて都道府県並びに市町村生産振興計画を定めることにしております。  第二に、この計画基づき、飼料作物生産する者は、自給飼料販売飼料別農地位避面積を定めて市町村長申請、認定、検認を受けなければならないことにしております。この場合、販売目的として生産する場合には申請時に契約書を添えなければ認定されないようにしております。  第三に、このようにして飼料作物生産振興計画対象になったものについては、飼料用穀物については数量牧草等については面積に応じて生産奨励金を交付することにしておりますが、飼料用穀物については、飼料需給及び価格の安定に関する法律案政府買い入れ価格標準売り渡し価格を参酌して農林水産大臣が定めることになっております。また牧草等については、大麦の政府買い入れ価格等をしんしゃくするとともに、当該牧草等生産事情需給事情等を参酌して農林水産大臣が定めることにしております。  第四は、牧草更新農業用機械の共同または集団利用加工施設等について、市町村飼料生産振興計画基づき、経費の三分の二を下回らない補助を国がすることを義務づけているのであります。  なお、本法案と関連をいたしまして、当委員会でも農林水産大臣が前向きに検討すると約束をしております飼料米につきましては、栽培条件流通条件が整い次第本法に繰り入れ飼料米生産振興を図る所存であります。  以上が、飼料需給及び価格の安定に関する法律案飼料作物生産振興特別措置法案提案理由と主な内容であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
  4. 内海英男

    内海委員長 以上で趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  5. 内海英男

    内海委員長 次に、内閣提出農用地利用増進法案農地法の一部を改正する法律案及び農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武田一夫君。
  6. 武田一夫

    武田委員 先週から審議されております農地法関係三法の改正の問題につきまして、いろいろと論議が尽くされてきたわけでありますが、私も数点にわたりまして大臣並びに当局にお尋ねをいたします。  まず、今回の法改正に当たりましての提案理由を見まするに、農業生産中核となる生産性の高い農業経営をできるだけ多く育成する、そして、このような農業経営によって農地が効率的に利用されるよう農業構造改善推進することが緊要である、こういうふうにうたっておりまして、そのために、農地流動化地域農政推進など従来から講じてきた施策発展させ、各地域の実情に応じて農地流動化有効利用を促進する仕組みを整備するためにこの法案提出するのだという趣旨のことがあるわけであります。これは、いままで政府が進めてまいりました中核的農家育成をさらに実りあるものにするために、また農地の効率的な活用というものを通しまして、いわゆる日本農業の新しい将来というものを展望する一つの大きな作業だ、こういうふうに思うわけであります。その中で、「農地流動化地域農政推進等の従来から講じてきた施策発展させ、」とありますが、このいままで講じてきた施策、これは政府予想どおり果たして進んできたものかどうか、この一点まずお伺いしたいと思うわけであります。  私は、ずっといろいろ見てみますと、どうもこの施策が十分にいかなかったという焦りが一つにはあるのではなかろうか、こういうふうに思えてならないわけでありますが、その発展させるということは、さらに大きく効率的に有効的にその施策を実効あらしめていくというふうに私は解釈しているわけであります。この展開していくといういままでの施策の実施の、そしてその効果の度合いというものを、もしできるならば具体的に説明をしていただければありがたいと思うわけです。
  7. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 従来から経営規模拡大中核農家育成ということを農政主眼としてさまざまな努力をしてまいっておるわけでございます。農地制度関係につきましても、四十五年、五十年の法改正、それ以前にもさまざまな流動化施策は講じてまいったところでございますが、確かに、おっしゃられるように、農地流動化というのはそれほど顕著には進展を見せておりません。一中には制度だけできて実際には動かないというような農地信託制度のようなものもございます。  しかし、五十年の農振法の改正によって農用地利用増進事業というものを起こしましてからは、これは安心して貸し手が農地を貸しに出せる、また安心して借り手が借りられるというようなことのために、市町村等が仲介してその間を結びつけるということを主眼にした事業でございますが、これによって農地賃貸借はある程度の進展を見るようになったと考えております。具体的には、五十四年までに、五十四年単年だけでも一万七千ヘクタールの利用権設定が見られますし、それ以前のものを合わせまして累計二万四千ヘクタールの利用権設定というものが見られておるわけでございます。  そういった制度のほかに、これらを推進するためのもろもろ助成事業地域農政を中心とした施策を行っておるわけでございますが、これらを総合的により強化して進めることによって流動化はさらに前進させるごとができるのではないか。さらに、地域営農体系地域全体としての有効な土地利用ということも図り得るのではないか、こう考えて新法案提出して御審議をお願いしておるところでございます。
  8. 武田一夫

    武田委員 それではお尋ねしますが、この間、中核農家というのはどのような成長といいますか推移を示してきているか。  それからもう一つ、いま土地流動化が進んでいるということが、果たしてそれは事実かどうか。聞くところによりますと、この流動化の問題もかなり問題があると思いますので、まずその中核農家のその間の推移というものをひとつデータを通してお示し願いたいと思うのです。
  9. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 中核農家推移という御質問でございますが、多少現況を申し上げたいと思います。  中核農家は、御存じのように定義といたしまして、農林統計の方では、六十歳未満の男子で年間百五十日以上農業に従事している者がいる農家というふうに定義いたしております。こうした農家現況を申し上げますと、五十三年度におきまして全農家数の二一%、約百万戸弱でございます。正確には九十九万戸というふうになります。耕地面積の四三%、農業生産額の五六%を占めているというのが現況でございます。  経営の概況的な面を見ますと、作物では中小家畜、酪農、施設園芸等部門、比較的資本集約的なあるいは周年就業し得るタイプの部門におきましてシェアが高くて、これらの部門の粗生産額では大体七割以上これらの農家が担っている、こういうのが中核農家現況でございます。
  10. 武田一夫

    武田委員 この五十三年度百万戸、これは今後の見通しとして、昭和何年にどのくらい、あるいは昭和何年に幾らと、言うなれば、いま六十五年見通しを立てているわけですね。そうすると、そのときにはどのくらいまで持っていけばいわゆる理想的な中核農家としての機能が発揮できるものだ、こういうふうに考えているか、その点をひとつお尋ねします。
  11. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 現在、農政の見直しの中で各種の問題を検討しておりますが、これら中核農家が今後どの程度になし得るか、まさにただいま御審議いただいております利用増進事業等進展を待たなければならないわけでございますが、こうした問題に対しまして、これからの方法といたしましては、できるだけそうした条件設定をしていく、こうした農家がより多くの生産を占め得るようなことを考えております。具体的に何万戸に達すればいいというふうに目下数字は出しておりませんが、現在、各方面からの試算等の検討はいたしている、こういう段階でございます。
  12. 武田一夫

    武田委員 それでは、土地流動化の問題ですが、農地利用増進事業というのが一定の成果を上げたというのですが、これは果たして十分な実態を調査してこういうことを言っているのかどうか、私は大変疑問に思います。何か逐次実態を調査して吸い上げたという作業があって、こういうものが間違いないという確信を政府は持って、これを成果として二万四千ヘクタールと、こう言っているのですか。その点どうですか。
  13. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 事業成果は、一つはやはり具体的な面積であらわれると思います。先ほど申し上げましたように、各地の実績を集計しましたところ、五十四年までの累積で二万四千ヘクタールの流動化といいますか、利用権設定実績を見ているわけでございます。そのほか、私ども、この事業の実行に当たってどのような点が問題なのか、あるいはどのような点が有効であったかというようなこともさまざま聞いているわけでございますが、種々問題点もある、そういった問題点を解決すればさらに前進が図られるというようなことで、今回の法案提出しているところでございます。
  14. 武田一夫

    武田委員 聞くところによりますと、これは利用増進事業によって動いたというよりは、どちらかというと従来やみ小作であったものが浮上してきたのでないか、そういう土地増進事業に組み込まれたのだ、そういう指摘があるわけです。ですから、ある模範的な利用増進事業事例を見ても、八、九割がやみ小作の浮上であった、要するに、新規流動というのは一、二割しかなかったというケースもあるのだ、そういうことを指摘する方もあるわけです。こういうことを考えますと、果たしてこれがまるまるそうした形で一〇〇%新しい土地流動だとは言いがたい面があるのじゃないか。そういう点のことを本当に綿密に確かめた上でのこうしたデータではないのじゃないかという危惧の念が私はあるわけであります。しかも、利用権設定につきましても、書類上はやっても実際はしてないというケースもあるんだというふうなこともありますので、この点は私は深く追及しませんが、もしこれがそのとおりいっているとすれば、何もあわててこういうものを一つ法案にするよりは、もう少し推移を見て、倍々ゲームになっているのだということで、もう二、三年は模様を見てもよかったのではないか。何で急いでこの問題に手を触れるのかなという率直な疑問を農家皆さん方も持っていますし、私も持っている、こういうことで質問するわけですが、その点はどうですか。
  15. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 確かに地域によっては、おっしゃられるように従来やみで行われていたものが表に出た、あるいは助成事業として奨励金を出すというようなことがありますのでその奨励金欲しさに出てきたというものもございます。しかし、全般的に見て、これは私ども個別の町村の事例をある程度調べているわけでございますが、むしろ意外なくらい新規のものがよけいに出ておりまして、村によっては、やみが顕在化した部分は一割くらいで、八割も九割も新規利用権設定が見られるようなところもあるわけでございます。  なぜ、今回の法案提出を急いだのかということでございますが、この事業が貸し、手、借り手の双方にとって、安心して賃貸借を結ぶことができるということで、私どもが言うのは若干おかしいのでございますが、評判がよろしい。そして、これをもっと進めてくれ、しかしもっと進めるに当たっては、種々難点もある、これは一々申し上げると非常にたくさんの問題になりまして、むしろ今回の改正案内容それ自体を御説明することになりますが、それらを打開してくれれば、さらに喜ばれてもっと進展するのではないかという話がございまして、そういうことならこれはできるだけ早い時期にその実現を図った方がいいということで、今国会に提出することといたしたわけでございます。
  16. 武田一夫

    武田委員 大臣に質問します。  先週の審議を通じまして、また参考人のいろいろな御意見を伺いまして、この三法案が円滑かつ有効に動いて将来の日本農業に大きくプラスになるためにはこれだけでは不十分だということは大臣も認められまして、そのためにはやはり生産の問題、価格地価対策、福祉、雇用その他いろいろな問題、そういう総合的なものを通してやらなければこれは効果的なものにならない、こういうことを答弁されたわけであります。私も、皆さん方の御意見、そのとおりだと思います。  そこで、政府としましては、昨年の夏ごろからですか、農政審議会方々によるいわゆる六十五年見通しというものを検討していただいているわけです。まあいろいろな事情があったのですが、正直言いましてこれがなかなか出てきませんね。私は、こういう問題が出てくる以前に、やはりビジョンというものがわれわれ国民の前に提示された上でこうした事業が行われる、これはあたりまえのことだと思うわけであります。そうしたものが遅々として進まない中になぜにこの構造政策のみを急ぐのか、土地流動化ということだけにせっかちなのかという率直な疑問を持つ方々もおるわけでありまして、それじゃ、これが終わる段階にいわゆる流通対策もまた出てくるのか、あるいは輸入対策についての政府のはっきりした考えというものが出てくるのか、こういうようなことがいろいろと質問されるわけです。ですから、このことをどうしてこういうふうな大きな作業の中の一つとしていま急いで出してきたのか。次に、これが手がかけ終われば、いま申し上げましたそういうもろもろの問題についても同じように一つ一つ国民の前に確固たる指針を示して、それに乗って日本農業はこうなっていくのだということを明らかに示していける、そういう自信のあるものかどうか、その点をひとつお聞きしたいわけであります。
  17. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 御指摘のとおりでございまして、私ども、今後の農政の中でいまの農地流動化を図っていけば日本農業がそれだけで発展をしていくとは考えておりません。この間からお答えをいたしておりますように、やはり今後の農政方向といたしましては、構造政策生産政策価格政策、あるいはもっと言えば農村における社会政策、こういうものを総合的、有機的に関連させながら、そういうものの総合的な政策を強力に進めていくところに、初めて農業発展があり、また農家の幸せがあるのではなかろうかと考えておるわけでございます。  そこで、それではなぜこれをいま出してきたのかということでございますが、私ども農政審議会の中に構造部会というのがございまして、そこで御議論いただいておりましても、しかしそういう方向であるけれども構造政策の中で、言うならば農地の規模の拡大、特に土地利用農業においては規模の拡大をしなければいけないのじゃなかろうか、そういう面からいけば農地流動化を図らなければいけない、こういう御指摘をいただいており、その方向についてはもうすでに御理解をいただいておりますし、私どもの考え方と全く一致をいたしておるわけでございます。そういう方向構造部会でも御議論いただいておりますし、私どもとしては、今後総合的な政策を進めていく上においては、やはり法律でやらなければならない問題は国会で御承認願わなければならないわけでございます。そこで、一つの受けざらをいまつくっていくということは、今後そういう総合的な政策を強力に進めていく上においては決して必要でないということではなくて、必要ではなかろうか。いまのこの国会の御審議をいただく場でやはり御審議をいただいて、そして受け入れ体制をつくっていく、受けざらをつくっていくということが必要である、こう考えておりまして、決して唐突に出したとかあるいはそういうものとの関連を全く無視して出したということではなくて、そういう方向でいま大体煮詰まりつつあるわけでございまして、大体ことしの夏ごろには農政審議会の御答申をいただけるものと私どもは考えておるわけでございます。夏ということになればもうすぐでございます。そうなれば、やはりいまこの段階で受けざらをつくっていくことが必要ではなかろうか、こういうことで法律の御審議をお願いしておるということでございます。
  18. 武田一夫

    武田委員 いずれにしましても、ビジョンがはっきり出せない、作業がおくれたということは反省しなければならないと私は思うのです。やはりそういう大事な問題は、国民の前で多く議論をしながら、しっかりとした裏づけと安心を持たせるものでなければならない。これが出た後で六十五年見通しが出てくるということになりますと、何かそこに一つの割り切れないものがあることは事実でありまして、今後の問題の進め方としましては、やはり一つの改めなければならない点ではないか、私は率直にこう申し上げておきたいと思います。  ところで、今後の日本農業の構成ですが、専業、一種兼、二種兼とありますが、どういうふうになるのが望ましいか、いまの傾向としてはどうあるのか、そして今後はこういうふうな方向に行くのじゃなかろうか、そして望ましいのはこういうような構成ではないかというものについてお考えがありましたら、お聞かせを願いたいのです。
  19. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、いま中核農家をいわゆる農業の担い手として中心に考えていきたい、こうお答えをいたしておるわけでございます。やはり中核農家というもの、私どもの解釈といたしましては、六十歳以下のいわゆる働き盛りの男子が百五十日以上働いていただくということは、農業に相当の時間をかけていただくということでございまして、やはり他の職業を主としていただくよりは、農業を主として働き盛りの方がやっていただくのが望ましいということは当然でございます。そういう中核農家を中心としてこれからの農業の担い手になっていただきたい、こういう考え一方でおりますけれども、そうかといって、いま日本の農村社会の中におきましては、第二種兼業農家もそこに相当定住をしていらっしゃるわけでございますし、また、その地域社会の構成に当たりましては、兼業農家も専業農家もあるいは農業者以外の方々も混在して住まっておるという形になってきておるわけでございます。その中で、農村社会は専業農家だけでいいとか中核農家だけでいいのであってあとの人間は要らないということじゃ、いまの日本の農村の現状からすれば成り立たないわけでございます。そういう点からいけば、私ども農業の担い手の中心はそういうところへ置きたいと考えておりますけれども、兼業農家方々も、より農業をやっていこうというお気持ちの方にはやはり農業をやっていただきやすいような形にしていかなければならないのではなかろうか、こう考えて、たとえば今度の法律の中にも、農用地利用改善事業ということで、いろいろそういう方々も一緒になっていただいて共同的な農業をやっていこうということについては、大変結構なことで、そういう方向も私ども進めていこう、こうしておるわけでございまして、あくまで中核農家が中心であることは間違いございませんけれども、やはり兼業農家方々も含めてその地域農業全体の振興を図っていきたい、こういう方向を私ども目指しておるわけでございます。
  20. 武田一夫

    武田委員 そこで、いま二種兼業農家の話が出ましたが、政府農地の出し手として多く期待している階層である、こういうふうに思います。白書によってもそれば明らかでありますが、この二種兼業農家というものをどういうふうに考えるかということは、今後の農村社会における重要な課題の一つになってくるし、いままでは、どちらかといいますと二種兼業農家というのは日本農業にとっては非常な厄介者のような感じをしてきたときもありましたね。日本農業発展のためには一つのネックだと言われてきました。今回はそういう方々を相当評価しております。ここのところをもう少しわかりやすく説明してもらいたいと思うのです。この二種兼業農家というのはどういうものであるか、どういうふうに考えているかということですね。その点ひとつお願いしたいと思います。
  21. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 細かい分析の点になりますと、事務当局からお答えをさしていただくといたしまして、どう考えているかということでございますが、いま申し上げましたように、二種兼の中でも本当に農業をやろうという意欲に燃えていただいている方々には、農業に従事していただけるような方向に私どもも協力をしていかなければならないと私は思っております。  ただ問題は、二種兼農家もいろいろあるわけでございまして、たとえば、ほとんどの収入を農業以外に求めておられまして、そして農業収入というのはわずかであるという方もいらっしゃるわけでございます。あるいは中には、奥さんなりあるいはお年寄りにほんのわずかお仕事をしていただいておりまして、生活としてはほとんど農業をおやりになっていない方もあるわけでございます。しかしながら、一方においては、農業をやりたいけれども、自分の面積が非常に狭いために、やむを得ずよそへ行って働いておるという方もいらっしゃるわけでございます。それやこれやを考えてまいりますと、農業を本当にやりたいと思っておられる二種兼の方には、やはり農業をやっていただきやすいような形に政策を進めていくべきであろうし、農業はまあどちらでもいいけれども、せっかく自分で農地を持っておるからとか、あるいはやむを得ずせっかくあるものをほっておくわけにはいかないとかいうような方々からは、ぜひこの際農地をひとつお貸し願えないだろうか、こう考えておるわけでございまして、この法律に関係いたしましても、あるいは将来の農業のあり方といたしましても、二種兼農家というものに対してもいろいろの角度から考えていかなければならない。農業白書でも、そういう点で二種兼農家にもいろいろのものがあるという分類をしておる。その分類の結果を踏まえて、今後私どもはこの法律に当たりましても、二種兼農家というものを一律に、ただこれはもう必要ないという考え方は持っていないということだけは、御理解をいただいておきたいと思うわけでございます。
  22. 武田一夫

    武田委員 いま御説明をいただきまして、やはり二種兼の中にも二つの種類があると思いますね。いま言われましたように、土地は狭いが、一生懸命農業をこれからもやっていきたいと努力をしておる。現実に私たちの地方でもそういう地域が出ておるということも事実ですね。狭いけれども、それを最高度に利用しながらお互い連携をとりながらがんばっていこうというもの。それからもう一つは、いま言いましたように、農業をやめてもいいんだ、あるいはただ老後のために多少土地は確保しておくが、それ以外は出してもいいというクラスも多少あると思います。それから今度は、そういう方々の中で、しっかりした職業を持っておる方とそうでない職業の方がおりますね。東北などはどちらかというと、しっかりした職業のない二兼農家の方が圧倒的に多いわけです。日雇いとかが一番の典型ですが、ですから、そういう中身をよく整理しておかなくちゃいけないと思いますが、その中で一般的に言われるサラリーマン的農家、その中で公務員とか準公務員とか、一番生活の安定しているクラスがございますね。こういう方々は果たしていまどのくらいいて、どのくらいの農地を持っておるものか、その方々農地というものはその増進事業の間でどのくらい移動しておるものか、ちょっと教えてもらいたいと思います。
  23. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 利用増進に関することにつきましては構造改善局の方からお答え申し上げますが、いわゆる二種兼と言われます方々の都府県におきます状況を申し上げますと、農家戸数の七割、耕地面積の五割、農業生産額の三割というような割合を占めているという状況になっております。かつ、二種兼業農家と申しましても、ただいま先生の御指摘のように、中には中核農家に類する基幹的な労働力を持ちまして、専従者がおりまして、地域におきます生産組織のオペレーター等として活躍しておられる、いわば地域農業生産一つの担い手になっておられる方もおることは事実でございます。ただ、もう一面、そうした農家と対照的に申し上げますと、高齢農業者の世帯で第二種兼業に属している場合におきましては、年金等の収入あるいは農外収入等にほとんど依存して、いるというような方がありまして、これらの方は、状況から見まして今後もその農業経営自体が自給的な色彩を帯びていくのではないか。そうした意味で、農業白書におきましても、こうした層の方がこれからの農用地の出し手に期待されるというふうに私どもは分析しておるわけでございます。     〔委員長退席、片岡委員長代理着席〕 ただ、そういたしましても、従来高度成長の過程におきましては、兼業農家が農外依存度を高めながら、かつ場合によっては離農するというような形での問題がございました。これからの安定的な成長の過程におきましては、こうした方々が農村になお居住し、定住いたしまして、社会的安定層として今後もわが国の社会の重要な構成要素になるだろう、こういうふうに考え、また、そういう人たちの協力がなくては、一方専業農家あるいは中核的農家の規模拡大とかそういうことも果たし得ないのではないか。まさにその点は、御指摘のとおりこれからの農政上の重要な課題と考えますし、また、政策もそうした方向についての地域農政あるいは農村整備問題、そうした問題の取り組むべき重要な課題だと考えております。
  24. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 新しい利用権設定の中で、安定兼業農家層の出している農地面積はどうかということでございますが、全国的にそういう集計はいたしておりませんけれども、新しい利用権設定理由といいますか、動機を調査したものがございます。それによりますと、労働力が不足している、それから、たんぼや畑を荒らしづくりをするに忍びないからというのが一番多い理由として挙げられております。それから地域別に見ますと、東海地方でありますとか関東地方の安定兼業の機会の多い地域でよけい実績が上がっております。これらから見ますと、私どもといたしましては、利用権設定の場合の農地の提供は、ほとんどの部分が安定兼業農家から出ているのではないかと考えております。
  25. 武田一夫

    武田委員 一つ事業計画をやるときは一つの目標というものがあるわけですよ。ただ漫然とどこかでいっているだろうという形で受けとめていることは、これはいかぬと思うのですね。どの地域でどういう階層がどのくらいの土地を移動しているか、どの階層はどうしても土地を動かさないというようなものがきちっとなければならないと思うのです。そうでないと仕事はできませんよね。動かそうともしないところに行って運動したって、そんなものは効果があるはずもないのですから、いま動かすということを、これからいろいろ市町村や農協や農業委員会方々が待って動かすのじゃなくて、こちらから出向いていってやるというケースの方が多くなってくるでしょう。その方がまた望ましいわけですね。そのときに、やはり全国的に、ブロックあるいは地域別に当地ではつかんでいると思うのですが、肝心の大もとがそういうことをわからぬでは話にならぬと私は思うのですよ。  それで、五十年から五十四年の専業、一種兼業、二兼の土地の動きぐあいをずっと見てみますと、五十年で専業農家が持っていた土地が、戸数が約六十一万戸で百二十四万ヘクタール、一種兼業農家が百二十六万戸で百九十万ヘクタール、二兼農家が三百七万戸で百六十四万ヘクタール。それが五十四年、専業農家の戸数が六十二万、これは五十年から見ると確かに一万ふえているのですよ。だけれども、五十一年が六十六万で五十二年が六十四万、五十三年が六十二万ですから、現実には減っているわけです。そして、土地は百三十二万ヘクタールと八万ヘクタール五十年からふえています。ところが、一種兼業農家——私は、データを見ますと、一種兼業農家というのは一番安定的な収入があるような気がしてなりません。というのは、昨年の調査で五十三年度の農業所得を見ますと、一番収入がよかったのは一種兼、次が二種、それで専業、こういうふうになっています。五十一年は二兼がちょっとよかった、その次一兼、それで専業。この一種兼業農家が百二十六万戸で百九十万ヘクタール持っていた。これが八十八万戸に減っていまして、百六十万ヘクタール。三十万ヘクタール土地がここから動いているわけですね。専業は八万しかふえていないわけですね。とすると、二種の方に行っているわけですね。三十万減っていて専業が八万ふえている。そうすると、単純計算しても二十二万というのは二兼の方へ行っているわけですね。要するに、一種兼業農家は二兼へ二兼へと行っているわけですね。その証拠に、三百七万戸で百六十四万ヘクタールの土地を持っていた二種兼業農家が、三百二十八万戸と約二十万ふえて、そして土地も百九十四万、三十万ヘクタールが二兼の方に集っているわけですね。これはどういうふうに解釈したらいいのでしょうか。私が考えるには、二兼の方々農地が一兼の方に集まるとか専業の方に集まって、一兼が強くなって専業と一兼で一つの大きな力が発揮できるのじゃないかというふうに思っていましたが、そうでなさそうな一つの結果があるわけですね。この点をどういうふうに理解したらいいか。
  26. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 統計の実績、数値の上から見ますと、先生御指摘のように専業農家の数は減っております。面積は若干ふえているわけでございます。全体として一兼が減って二兼がふえている。これは農地が一兼から二兼の方へ移動しているというよりは、一兼農家がだんだん二兼農家化していく、しかも安定兼業農家層がふえていくという傾向を示しているものだと思います。ですから、農地の移動というよりはそういう農家構成の変化ということでこの事態は理解すべきではなかろうかと考えております。
  27. 武田一夫

    武田委員 そうしますと、先ほど大臣が言われた二種兼業の中でも農業をしていくという意欲に燃えている方々、ここへの土地流動も力を入れていく必要があると思います。そして、そのための施策ももっとはっきりしたものをこの際出してあげなければならぬじゃないかと思うのです。白書を見ますと、とにかく非常な評価をしている。農村社会におけるそういう評価をしている反面、土地流動化するんだ、こういうことだけであって、その中の二種の中でも二割ないし三割の存在をもっと価値あらしめるための具体的な施策をもっと強烈に進める必要があると思うのですが、そういうものはあるか、してきたか、この点どうですか。
  28. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたけれども、今度の法律の中でも、そういう農業をやろうという意欲に燃えておられる二種兼農家については、極力、農業をやっていただけるように農用地利用改善事業などで考えておるわけでございます。  また、先ほど申し上げましたように、それだけでなくて、いま農政審議会でも御議論いただいておりまして、今後日本農業をどう持っていくかについては、できるだけ日本国内生産できるものは生産するという体制をつくっていくための生産政策をつくっていかなければなりません。それで、そういう意欲を持っていただくためには、価格政策についてもできる限り再生産意欲を持てるような価格政策を考えていかなければならないと思います。あるいは、混住社会になってまいりましたその農村の地域社会がより充実をしていき、より生活水準が高まっていくためには、生活基盤の整備充実その他社会政策を相当強力に進めていかなければならないと思います。そういうことを総合的に進めていくということで、二種兼農家農業をやっていただけるようになるであろうし、また、そういう農家以外の二種兼農家もいらっしゃるわけでございまして、逆に先ほど来御議論をいただいておりますように、そのためには、やはり安定した収入を得ておられる二種兼農家などが場合によっては貸し手になっていただくことも、そういうような方向へ持っていくためにはまた必要なことではなかろうかとも考えておるわけでございます。
  29. 武田一夫

    武田委員 私は、この事業を進めるに当たって、二種兼の中への土地流動というのを無視してはならないということをここでもう一度重ねて強調しておいて、そのために、そういう方々農業を営めるような今後の温かい後押しをやってほしいという要望をしておきます。  それで、反面、貸し手農家として高齢で後継者のない農家はある程度これは可能であろうと私は思います。こういうものはどのくらい戸数と面積があると見ているわけですか。
  30. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  戸数は約五十五万戸と私どもは推定いたしております。恐縮でございますが、面積的には私の方ではまだとらえておりません。
  31. 武田一夫

    武田委員 もう一回確認します。貸し手農家として高齢で後継者のいない農家、五十五万戸、さようですか。
  32. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 私ども定義では、世帯のうち年間六十日以上農業に従事いたしまして六十歳以上の者のみが従事している、こういう農家を高齢者農業世帯というふうに定義しております。この世帯が五十四年一月現在では五十五万戸と申しましたのは、都府県では全農家戸数の一%を占めている、こういう状況でございます。
  33. 武田一夫

    武田委員 そうすると、これは新聞の書き間違いだと思うのですが、大臣は二百万戸とこう言っているわけです。百二十三万ヘクタールがこの制度を利用していただける、それが貸し手農家としての高齢で後継者のいない農家と新聞にあったものですから、これは新聞社の間違い、大臣が間違うはずはないのですからそう考えておきます。それで五十五万戸、面積はわからないと言うけれども、わからないのですか、これは。
  34. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 この前大臣がお答えした二百万戸というのと、いま官房長からお答えした五十五万戸というのは、実は若干定義といいますか、対象のとり方が違っております。二百万戸という場合は、世帯主が五十歳以上で後継ぎなしの農家、これ全体をつかまえておりますので、それは全農家の約四一%に当たる二百万戸ということになります。老齢だけではなくて農地流動化ということを考えていく場合、だんだん老齢化していく世帯もあるわけでございますから、私ども相当先のことも考えて五十歳以上というところでこれを押さえたわけでございます。その場合の戸数は二百万戸になります。それから、その経営耕地は百三十二万ヘクタール、全耕地の二八%ということになるわけでございます。これ全体が流動化対象というわけではございませんが、少なくとも流動化を考えていく場合、こういった人たちがその対象の総体としてつかまえられる、こういう意味で申し上げておるわけでございます。
  35. 武田一夫

    武田委員 老齢化社会がこれから非常に進んでまいります。現在進んでいますね。そうすると、これは今後の農業の中における農家構成の中の土地保有との関係で非常に考えなくてはならない問題だと思います。将来、今後十年見通しを考えたときに、これはどういうふうになるものかということを考えたことはありますか、そういうことが議論になったことはございませんか。
  36. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 高齢者世帯の問題は大変重要な問題でございまして、私ども、結論から申しますと、全体のわが国の高齢化の状態からどの程度推定できるかということでいま検討はいたしておりますが、具体的な数値は持ち合わせておりません。ただ、お話のございました高齢農業者の実態は、年金、恩給等の給付金に依存する分野がかなり多くなっておりまして、おおよそ農業所得に匹敵するような状況になっておりまして、こうした層がかなり農村にもふえてくるのではないか、かつまた都市からこうした形で戻るということも今後想定されます。したがいまして、御指摘のように、こうした層が地域社会においてどういうふうに安定的に居住されるか、これがこれからの農村におきます問題としては重要な課題であろう、このように考えております。
  37. 武田一夫

    武田委員 もう一つ土地を離したいけれども、不安定なそういう職業についている方々——農村の工業誘致というのは遅々として進まないのです。三全総であれほど強く掲げられていながら全く進みません。大臣は東北だけと言うけれども、これは全国的です。特に東北が進まない。こう考えますと、誘致する工業というよりは、この間地場産業の話も出ましたが、それとあわせて農産物を基本としたそういう一つの工業を、工場を本格的に研究しながら、それを位置づける一つ方向性というのを考えないといけないと思うのです。働いてとったものが、たとえば極端に言えば、野菜をとればそれがつけものとなって、農家方々によって生産から販売までやれるという一つ方向性、そこにいて土地を耕してそれでやれる、これが一番手っ取り早いわけです。あるいは畜産にしたって、わざわざ東京まで持ってくる必要がない。地元にそういうものをつくりましてそこでうまくやるという、そのために政府が相当バックアップしてあげるという方向性、これはいままで工場なんかが東北に進出してきたときに失敗した理由は何かと言うと、景気のいいときは東京の方々は一生懸命やってくれますが、うまくなくなりますと一夜にしてばっといなくなるのです。これは本社を持ってこなければだめなんです。工場や出張所ばかり持ってくるから、次の日行ってみたら空っぽになっていたというケースがあって、結局はそれが雇用の不安というものにつながっているわけです。ですから、この点も雇用の安定ということを考えた場合の重要性を今後この仕事を進める中で見直しをしながら、その位置づけを明確にして、国は真剣にそのためのバックアップをすべきだ、私はこう思うのですが、いかがですか。
  38. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この間も私答弁を申し上げましたように、工業導入促進あるいは工場再配置というようなものが必ずしもうまくいっていないという点は確かにあると思います。ただ、一つはそういうものが、東北を例にとってこの間申し上げましたけれども、やはり社会資本の充実がないところはなかなかうまくいかないわけでございまして、東北新幹線ができてまいりますと、東北新幹線の通る地域については私はある程度そういうものが促進するのではなかろうかと思っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、そういうようなこととあわせて、いま御指摘のありました農業あるいは畜産を含めた農業というものについてのそれぞれの地域社会における工業化というものを考えていくべきではないかという御指摘は、もうごもっともなお話でございまして、私どもも、いままで畜産、果樹その他についてはそれぞれできる限りその地域で処理をするという方向で工場の施設の充実などには補助などもさせていただいているわけでございまして、そういう方向は今後とも一つ政策の中に重要なものとして位置づけてやってまいりたいと私は思っておるわけでございます。
  39. 武田一夫

    武田委員 ぜひその点を一つの大きな施策の課題としてお考えいただけばありがたいと思います。  それからもう一つ農地の資産化というのはいろいろと論ぜられているわけですが、歯どめをかける必要が間違いなくあるわけです。どうも政府の地価抑制対策というのは思わしくないようでして、閣僚懇談会というのですか、あれなどもこの間はさっさと終ったようですが、なかなか意見が統一されないような傾向にある。私は、農水省として独自でいろいろとなすべきことはなしていかなければならないのではないか。ほかを気にしながらやったのでは、農家というのはいずれにしてもいつも犠牲になることは間違いないわけですから。いままで農地あるいは山地、そういういわゆる農業の資産の中で土地が壊廃されていったというケースは余りにも多過ぎます。いまだに続いています。これはやはり歯どめをかける必要がある、こう思いますが、そのためにどういうふうな方向で今後この地価の問題、農地の問題についての対策を進めていくかということです。それが一つ。  もう一つは、農地のそばに宅地とか工場とかできますと、その農地は間違いなくだめになるのです。どう考えても水の問題とかあるいは交通状況の問題とか、ああいうところでとれる農産物というのはつくっていても食べないのだそうですね、聞いてみると。米をつくっていても、本人は食べないでそれを供出に出すなんという話も言われるようなところもあるわけです。そこで、そういう農地を守るという意味から、そういうものも歯どめをかけなくてはいけないのではないか。たとえば農地から何キロ以内はそういうものを建ててはいかぬ、土地がもったいないと言うかもしれないけれども、そういう緩衝地帯というものがなければ、いずれにしたって接近しているところに農地があり宅地があり工場がありというのでは、肝心の平野がつぶされます。私のいる宮城県の仙北の古川等の大崎地方などはその典型でして、たんぼのまん中に道路が走ったものですから、道路のわきのたんぼというのはうちが一軒建ち二軒建ち、要するに宅地化していくのです。こういうことがこれからのべつ幕なし行われていったら、いま全部の農地というのは六百万ぐらいあるのですか、これがいろいろと開拓していっても四百万ぐらい可能だと聞いていますが、しかしながら、反面減っていくと考えたら、プラス・マイナスどのくらいの農地が増大できるかというと、これは心配な限りです。そういうときに流動化しろといっても限りがあります。そのものを減らさないと同時に、ふやすという二つの面も、やはり土地の規模拡大ということで農家にとっては大事な課題だと思います。この点でもし大臣のお考えがありましたら、お聞かせ願いたいと思うのです。
  40. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今後とも日本農業の健全な発展のためには、農用地の確保が必要でございますし、また、その確保した農用地をより有効に農業に利用していただくためには、地価が極力抑制されていくということは当然必要なことでございます。そういう点で、ただ農地だけというわけにはいかないと思いますので、私ども土地全体の地価を抑制する方向にまず努力をしていかなければならないのではなかろうか。いまお話ございましたけれども土地対策関係閣僚懇談会、確かにこの間は必ずしもうまくいっておりません。がしかし、将来ぜひとも地価の抑制のためには私どもできる限りの努力をしていかなければならないのではなかろうかと考えておりまして、いろいろの施策をこれからやってまいりたいと思っておりますが、特に農用地につきましては、従来から農振法あるいは都市計画法に基づく市街化区域、市街化調整区域のいわゆる地域区分、こういうことをやってきておるわけでございまして、それによって、いま御指摘のような農用地が分散をしないように、また、農業をやっていただける地域については工場なりその他のものが入ってこないように、こういうことをやっておるわけでございまして、今後ともこの規制の方向をより強化してまいりまして、それによって農地ができるだけ安定した価格推移をするように努力をしてまいりたいと思っておるわけでございます。     〔片岡委員長代理退席、委員長着席〕
  41. 武田一夫

    武田委員 次に、土地の基盤整備の問題です。  この間私は、この問題でいろいろと農家皆さん方意見を聞いてみましたが、専業農家でも集団的に非常に効率的な農業をやっている方の家に行ったら、貸してくれるといっても、二兼農家の持っておる荒らしたたんぼや構造基盤のないようなものはいただけないよと、ただでも要らないと言うんですね。要するに、われわれと同じようにきちっとしたものにして持ってくるならお受けいたしましょうと。こういうのは私はそのとおりだと思うのですが、そういう一生懸命やっている本格的な農家ほど土地を大事にして、基盤整備もしっかりしています。ですから、今後この流動化に当たっては、基盤整備の面で、二兼農家の持っておるそういう田、特に田ですが、こういうものをどのようにするかというのは、借り手の方だけの問題でなく、貸し手の方の問題と両方の問題で、相当これは問題を提起するんじゃないか。現実にそういうことを言ってくれる方はその地域のリーダーでございますから、私はそういう感じを皆持っているというふうに理解しています。  こういう点について、今後やはり基盤整備というものを十分に行った上での流動化というものを進めていかなくてはいけないと思うのですが、この点いかがでしょうか。
  42. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 基盤整備を図ることは、当然あらゆる農業施策の前提でございまして、必要、重要なことでございます。二種兼農家がなかなか自分のたんぼや畑を大事にしない、基盤整備を怠るというようなことが確かにございます。私ども、そういうことも踏まえまして、今回の利用改善事業におきましては、地域全体としての農地有効利用を図る、そしてその地域のいわば営農ルールをだんだんつくってまいりたいというようなことも考えておるわけでございます。そういう全体の合意によりまして地域の基盤整備も充実させていく、現在怠っているそういう二種兼農家にそれを無理無理やれと言ってもなかなか実現困難でございますから、流動化を進めることと並行して、本当にそういったことを担い得る者との合意によりまして基盤整備を進めていきたい、かように考えております。
  43. 武田一夫

    武田委員 その際、たんぼがたんぼとして利用されるのは正直言って困るわけでしょう、減反しているわけですからね。ですから、その点やはりいまの村のルールの中でいろいろ相談しながら決めるということになりますと、私は、交換分合とかいろいろと手間がかかると思います。ただ単発的にお互いに賃貸でなる人もいますね。しかしながら、それが余りにも飛び飛びであれば非常に効率的にも悪いわけですから、こうなると、やはり村のルールの中でそれをお互いに近いところに集めるとか、この地域は畑地にするとか、貸す方がそういうのがいやであれば自分の方のをしなくてはならないわけです、言うなれば。こういうようなことを考えますと、私は、これによって相当地域皆さん方の苦労というものはひとしおだと思うのです。ですから、やはりそういう苦労の中でやる事業であるだけに、基盤整備についても、ことしは金が不足なものだから予算は余りついていませんね。去年と同じぐらいでしょう。でなくて、やはりこういうときなんですから、そういう大変な不景気の中にあってもこういうところに力を入れていただくためにこのくらいの努力をしているんだというものがなければ、私は納得しないと思うのです。そういう点で、ことしはもう無理なんでしょうけれども、何らかの形でこういう予算的な措置を示してあげることは大事な一つ流動化の励ましになる、こう思いますので、その点ひとつ今後の課題として努力していただきたい、こう思います。  そこで、澤邊次官が、農政を進める上で中核農家の規模拡大を図り、生産性向上させることは農産物のコストダウンにつながると、こう言っているわけです。これは一般的に言っていると思いますが、これは、どのくらいの規模であればどのくらいのコストダウンができるかという試算はしているのですか。たとえば米一つとってもいいです。
  44. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 後ほどまた官房長から細かい数字はあると思いますが、米をとりましても、たしか五ヘクタール以上ぐらいになりますと一万二千円前後になっておったと思うのでございます。それから、一ヘクタールから二ヘクタールぐらいのところが、私もはっきりは覚えておりませんが、たしか一万四千円前後であっただろうと思うのでございます。それが五十アール以下、いわゆる小さくなってまいりますと、これがたしか一万七千円前後についておったのではなかろうかと思います。これは私のいまの記憶の数字でございます。
  45. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  十アール当たりの農業所得、これは稲作で申し上げますと、五十三年度の計算でございますが、所得の面から申しますと、〇・五ヘクタール未満、五十アール未満でございますが、の場合には十アール当たり四万五千円程度、これが徐々に上がりまして、平均的な層になりますと、一ヘクタールないし一・五ヘクタールで七万五千七百円、大体ここらが平均になりまして、さらに上層にまいりまして三ヘクタールを超しますと九万九千二百円、約十万円になりまして、五ヘクタール以上ですと十万六千円となります。したがって、この辺の三ヘクタール以上になりますと、五十アール未満の層の倍以上の水準になるというふうに所得面では反映しておるわけでございます。
  46. 武田一夫

    武田委員 わかりました。それじゃ次の質問に移ります。  この三法案による土地流動化では、当初、二月でしたか、一つの案が出されましたね。当初考えたときには、標準小作料制度の廃止ですか、それから小作地所有制限の緩和というのがありましたね。ところが今回はこれが見送られているわけです。これはなぜでしょうか。
  47. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 今回の法案を検討するに当たりましては、農地制度研究会にいろいろ御相談をいたしておるわけでございます。その過程におきましては、ただいま先生御指摘になった問題だけでなく、いろいろたくさんの検討課題があったわけでございますが、最終的に整理されて、今回提案しているような姿になったわけでございます。  御指摘の問題について、検討の課題にのせられながらなぜそれがこの最終の提案の中ではのっていないのかということでございますが、農地法は個別地片の農地についての権利移動、転用等を統制することでございまして、そのことによって農地の効率的利用を図っているということが内容といいますか主眼になっております。土地資源が乏しくて、農地の農用外の利用目的での取得圧力が現実にまだ強うございます。そういう状態のもとで、投機的な目的での農地取得、これを排除するためには、農地法が果たしている役割りはきわめて大きい。したがって、農地法の基本的な体系は維持する必要があるというふうに考えているわけでございます。農地制度研究会でもこの意見はかなり強く出されております。  そして、小作地の所有制限につきましては、一般的に一定期間以上所有かつ耕作した農家については、流動化を促進する観点から制限の特例を設けたらどうかとか、それからただいまの標準小作料制度については、いっそこれを全廃したらどうかという意見も一部にはあったのでございますが、ただいま申し上げましたような観点から、それから経営の安定を図るという観点から、特に標準小作料の問題につきましては、今回同時に統制小作料自身がなくなる、それから定額金納制度というものを廃止して新しく物納の方も認めるということになっておりますので、そういったことからすると、小作料の水準について何も目安がないというのはやはり混乱を生ずるおそれもあるのではないかということがありまして、種々ほかにもございましたが、検討された課題であっても整理されたものがあるわけでございます。標準小作料につきましては、いま申し上げましたような、なお今日においては小作料の目安を設けておくことは必要である、それに法的な根拠を設けておくことは必要であるということで存続することといたしたわけでございます。
  48. 武田一夫

    武田委員 その小作料の問題ですが、九月三十日ですか、統制小作料の撤廃となるわけです。いま農家皆さん方の心配は、やはりどこに行っても、そのときどうなんだ、この法が出て小作料がどういうようになるんだ。標準小作料というのはあるわけですね。ところが、実勢小作料というのですか、どこへ行ってもお互いに決め合った、標準小作料よりは一万円や一万五千円高いようなそういうのが普通なために、それがそのまま小作料として特に九月以降なるのじゃないかという心配がずいぶんありますね。それで、問題は、やはり物価の高騰もあるし、固定資産税が上がると、上がった分はそれも取らなくてはいけないとかと、貸す方にしても理由はあるわけですが、この小作料の問題について、やはり一つの統一したものが、村の中のルールでつくるのでしょうけれども、しかしながら、これは果たしてそれだけでいいものかどうか。たとえば、隣り合わせ同士の田の場合、あるいはいい田、悪い田とありますね、いまでも見ていますと、上中下とかというランクづけをしているようでありますけれども、この小作料の問題について、政府としても指導していかないといざこざが相当起こるのじゃないか、こういう気がしてなりません。話をして出てくるのは、この小作料の問題です。それからもう一つは、後で聞きます残存小作地の問題。この小作料の問題について、やはり政府としまして目安となるようなものをある程度提示しておいた方が無難じゃないか。それにあとは合わせるという地域の実情ですね、それが必要じゃないかなという感じがしますが、どうでしょうか。
  49. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 統制小作料の廃止、なくなることに伴いまして混乱が生ずるのではないか、またトラブルも起こるのではないかという懸念は全くなしとはいたしません。私ども、そこで、猶予期間が十年間あったわけでございますが、さらにこれからもその趣旨の普及に努める、よく御理解をいただくということをまず第一に考えたいと思っております。そのために必要な普及の事業のための予算も計上しているところでございます。  それから、実際に小作料が上がって困るのではないかということでございますが、これは相対の話し合い、契約によりまして、そこは従来の実績なりそれから標準小作料の水準なりを考えて両者の合意で決めればよろしいということになるわけでございます。ただ、いままで長いこと統制小作料でやってまいりましたが、その実質はどうかということになりますと、かなり実際的な解決も図られてきているという経過もあるわけでございます。それにいたしましても、混乱を防ぐために標準小作料的なものをきちんと設置し、それを指導したらいいではないかということでございますが、先ほど申し上げましたように、まさにそのような趣旨から今回、一時標準小作料の廃止というような考え方もあったのでございますが、その制度は法律上残すということにいたしたわけでございます。  それから、標準小作料の決め方、これにつきましては、先生もいま言われましたように、完全に野放しで地域だけの実態に任せるというのではこれは妥当でございません。やはりその基本になる考え方、基準というものは国がお示しする、そしてそれに基づいて地域実態を加味した標準小作料を決めていただくということにいたしておるわけでございます。今後とも、いま申し上げましたような小作料全体をめぐる環境の中にありまして、この標準小作料の徹底方にさらに努力してまいりたいと考えております。
  50. 武田一夫

    武田委員 不当に高い小作料を防止するために、減額勧告制度ですか、こういうのがあるということですが、もうほとんどそういうものが動いたためしがないのだ、こういうふうに聞いております。そこで、不当に高い慣行小作料といいますか、それが適用されては困るということでありまして、その勧告制度があるならばあるらしくやはりその効果のあるところを見せなければならない、こう思います。その点の問題をなおざりにしておきますと、非常に裁判問題まで行って——調べましたら、わが地域におきましてもこれについて百件ぐらいはあるんですね。ですから、全国的にもう相当な数があると思います。ですから、こういう点でやはりそういう紛争の種になりかねない土地と金、これはお互いの生活感情まで入ってきます。ですから、この点のきちっとしたものをやはり明らかにしておく方が私は賢明ではないかと思うのです。  それで、非常に心配しておるのがこの残存小作地の問題なんです。今度の法律が新しく改正されたら、いままで貸していて返されなかったのが全部返ってくるのか、こういうことなんですが、その点はどうなんですか。
  51. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 残存小作地につきましては、農業会議所の調べでは面積は十六万ヘクタール程度ということになっておるわけでございます。これは歴史がございまして、農地改革の際保有小作地として残された経緯、その後の耕作権保護法制、そういった等のことから、社会的にその権利性がきわめて強いものとして認識されるに至っております。  今回、法律改正によりましてこの小作地の取り扱いがどうなるのかということでございますが、私ども、特段にこの法律によりまして残存小作地を一挙に解消させるというようなことを考えているわけではございません。先ほど申し上げましたような小作料の問題については統制小作料をなくす、したがって、残存小作地はいずれも統制小作料が適用されているという点がございますから、この小作料水準の問題については改めて話し合いということになってまいるわけでございます。それから、この機会に中には残存小作地を正規に譲渡するというようなものも出てくるかもしれません。私ども、やはりできるだけ耕作者が自己所有とすることが望ましいということで、その指導には努めているところでございますし、それから、実際にそういったことができやすくするという観点もございまして、農地等取得資金、これは一般の場合は二百万円でございますが、こういう残存小作地を取得するような場合には七百万円まで融資を認める、そういう特例を設けることも措置いたしておるところでございます。
  52. 武田一夫

    武田委員 とにかく貸したら返されないという認識は相当強く持っています。これは間違いありません。ですから、土地を貸し借りするために関係者がいままでどれほど苦労したかというと、聞くところによれば、ある人は十数回通いながらお互いを結びつけたというような苦労の連続だと私は見ています。今後も、その苦労は恐らく永遠に消えないだろうと思うわけですが、そのときこういう話が出まして、幾ら説明しても理屈ではわかっても体ではわからない。それがはっきりしないことにはどうしたっておれは何ぼ新しい法案ができても出さない、三年もするとまたわれわれに不利なようになるのではないか。とにかく不信が渦巻いています。これは農村の、特に六十近い方々には相当根強いアレルギーがあるわけです。これを解消しなければ、恐らく流動化に当たる作業というものに相当難色を来すであろうことは想像にかたくありません。ですから、地域の皆さんがこの事業をスムーズに、しかも効果的にあらしめるためには、この問題に何らかの一つ方向、解決というものを示してやらなければならない、それは国の責任だと私は思うのですが、そういう点でひとつお考えをいただきたいと思います。  この問題を取り除いてやることは、私は今後の一つの大きな課題になってくるのではないかと思います。全国的にも、農事調停の申し立て件数云云というデータをもらいましたが、約三千ぐらいですか、紛争がありますね。そのほかに、東北だけでも四百件ぐらいあるわけです。それから、農業委員会による和解の仲介申し立て件数を見ましても、大体六千から七千ぐらいありますね。  こういうようなことを考えますと、いずれにしてもどこかの地でそうした問題で争い事が続いているわけであります。それに、今度のこういう新しい法案で進められる事業の中でまた大きなそういう問題があるとすれば、これはまことにゆゆしき一大事だと思いますので、そういう点の一つのきちっとしたけじめを示してもらいたいと思います。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  次に、賃貸、貸し借りの問題だけが相当表に出てきました。所有権の移譲ということは忘れたわけではないと思うのです。きちっと土地を売ること、これはやるわけでしょう、どうですか。
  53. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 現在行っております農振法に基づ利用増進事業においては、利用権設定ということを考えておりますけれども、新しい法案のもとにおいては、対象として所有権の移転をもとらまえることといたしております。一般的には所有権の移転は実現がなかなか困難でございますが、地域によっては、それから人によってはそれが可能なケースもときどきはございます。そういったものはそれなりに推進する必要があるということで、改めて事業対象として取り上げることといたしたわけでございます。
  54. 武田一夫

    武田委員 これはあきらめずに粘り強くやる必要があると思います。場所によっては適切な値段で売れる、または買える場所もあるわけです。また手放そうという人もおりますが、聞いてみますと、問題は税金なんですね。間違いなく税金がこわいのです。ですから、たとえば一町歩のたんぼを売る、一反二百五十万とすると二千五百万、こうなりますと一体どのくらい税金を取られるのですか。大蔵省、来ていると思うのですが……。
  55. 内海孚

    内海説明員 ただいま直ちに計算してみます。
  56. 武田一夫

    武田委員 計算してもらいますが、いずれにしましても、兼業ですから自分の勤めているところから給料をもらっている。最低二百万もらっているとしますね。そうすると、二千五百万プラス二百万で二千七百万となるでしょう。税金がかかってきますね、これがこわいと言うのです。これをどの程度国が真剣に、農家を守るという——それによって生活するしかないのですから、考えているかというのをしっかとしてもらわなければ手放さないと言っていますから、その方のために、どのくらいの税金がかかって、どのくらいまけてくれるか、ここで交渉したいと思うのです。
  57. 内海孚

    内海説明員 お答え申し上げます。  その場合の税金は、所得税は四百五十万円ぐらいになると思いますが、これは取得価格によっても違いますので、厳格にはいろいろもっと細かいデータがないと計算できません。
  58. 武田一夫

    武田委員 計算をきちっとして後で出してもらいますが、高い税金の中で自分の貴重な財産が、命の次に大事なわけですから、ぱっとなくなることにどうしようもない不満を持っています。これは間違いないわけですから、皆さん方地域を歩いてごらんになると恐らくこの問題が出てくると思います。  そこで、課税の問題についても、そうした政府方向に協力する方々に対する一つの恩典というものがあってしかるべきではないか。そこに所有権の移動まで兼ねた土地流動が可能なところもあるということを御理解願えればありがたいと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  59. 内海孚

    内海説明員 お答え申し上げます。  申すまでもなく税のよって立つところは公平ということなんでございまして、農地についてだけ特別というわけにもなかなか参らないと思います。ただ、実際問題として、土地の売却についてはある程度土地税制が影響してくることも考えまして、今度の昭和五十五年度の税制改正において土地税制を改正いたしました。これによりまして、従来二千万までは二〇%、二千万を超えると四分の三総合課税で、こざいましたが、今度は四千万までは二〇%の分離、四千万を超え八千万までは二分の一総合課税、八千万を超えますと四分の三総合課税ということで、軽減の措置が図られましたので、これによっておっしゃるような問題も解決しているのではないかと思います。
  60. 武田一夫

    武田委員 大臣もこの問題を研究して、所有権も移動するということを賃貸の中での移動とあわせてもっと表面に出てくるようにしておかないといけないと思う。これをやっていますと、全部貸し借りだけでやろうということにしか受け取れない。これは不幸だと思います。せっかくやってきまして、そういう機運のあるところにおいては進めてやることは必要なことだと思いますので、御検討をいただければありがたいと思います。  次に移ります。農用地利用増進法案の問題ですが、先ほど聞きましたけれども、率直に言って、なぜ現行の事業でだめなのかという問題はやはりはっきりしなければならないと思います。そこで、何か農地流動化と水田再編対策とのつながりを非常に強く感じます。  いま水田利用再編対策が進んでいますね。ことしも一生懸命やりまして、地元でも目標に行くように思います。ところが、私はまことに寒々としたのですが、その減反をさせるのに、減反に協力しないと予算が来ないぞと言って減反させている地域がいまだに宮城県であるのです、最近ですよ。せんだっても青森の方でやはりそういう話がありまして、投書がありましたね。市の職員が来まして、こういうふうに予算が厳しい世の中である、これから始まるのですね、何でも厳しいのです、だから、協力していただかないとあなたの市町村には予算が来ませんよ——来ませんよの、その後ろの方はぼやかすのだね。そして、今度の宮城県の場合も構造改善事業をやっているわけです。通年施行ですね。これがまた次もこの地域はあるわけです。皆さん方がこの次に土地基盤整備をやるとすれば、お金をもらうためにはことしも減反に協力していただかなければいけませんよ、と言ってさせた。これは問題だと思うのです。  となると、この土地流動化においても、村の中でいろいろやろうとしても、最先端で活動する職員やあるいはいろいろな関係者の皆さん方の中に、こういう論法で土地流動化を促進しようとする人間が出てこないという保証は一つもないわけです。ここのところに私は非常な問題を感じます。法案をずっと見てみましても、土地流動化についての民主的運営を強調しているところは一つもないのです、それは言葉では言っておりますが。  だから、減反の場合にも、ペナルティーを科するとかしないとかちょっとしたことでもめましたでしょう。ここのところをやはり、民主的な運営の中で、村のルールの中で、文言にすれば五字か六字の文字でありますが、そういうものをきちっと入れ込んだ中で、正常な行動の中で流動化が行われるようなそういう歯どめをしなくてはならないし、指導をしないと、四年もたって、減反の仕事の中でそういう話が出てくること自体、指導の不徹底というか、あるいは仕事が進まない余りの担当者の行き過ぎかどうかわかりませんが、ある事実を厳粛に受けとめて、この土地流動化についてもそういうことのないように配慮をしてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  61. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 減反の場合の現地の指導の問題について種々御指摘がありましたが、またそれについては答弁が必要であれば農蚕園芸局長の方からお答えいただけると思います。  ただ、私どもの方は、今回の法案の中では権利者の意向を無視して、農地流動化利用権設定にしろあるいは所有権の移転にしろ、これは進められないと考えております。その意味で、利用権設定等促進事業につきましては、その意に反して農地を提供させるということではなくて、利用権設定等に当たっては賃貸人それから賃借人等の関係権利者全員の同意を得なければならないということを明文をもって規定しております。これは法案の第五条第三項第三号に明らかにしているところでございます。そういうことでもございますし、再三お答えいたしておりますように、この基本にのっとって、市町村農業委員会農業協同組合それから当事者、そういった間の合意を前提にして全体を取り進めるようにしたい、そのための指導をさらに徹底してまいりたいと考えております。
  62. 武田一夫

    武田委員 言葉では、間違いなく民主的なルールの中でお互いの理解の中でやると言っても、これは事業を進める、上の立場に立つような方々の意識の中には大変な——また恐らく農協の方々農業委員会市町村もこれに協力するでしょう、これは後で聞くのですが、主体者の問題、これまたもめると思うのです。きちっと、いやになるぐらい言っておかないと、そういう先端の、いわゆる実際に仕事をなさる方々の中に仕事の進まない焦りといいますか、それがまた地域振興という一つ事業計画であればあるほど、それが予算が関係してくるということになるとなお一層、そういう焦りが減反の場合におけるような発言となって、強制的のような、本人は強制的じゃないと思うのでしょうが、受け取る方にとりましてはこれ以上の強制的な発言はないような、そういう行動があらわれてくるわけですから、そこのところはよく現場との連携をとりながらひとつ指導してもらいたい、こう思います。目の行き届かないところがたくさんあります。いまだに出てくるのですからね。これは問題だと思いますよ。  それから、二月の中旬の法改正の骨子を発表されましたときに、生産法人の要件緩和については私は何も触れてなかったような気がします。これがあらわれてきましたね。ですから、その事情はどういうことなのか、ちょっとお聞きしたいと思うのです。
  63. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 先ほど標準小作料の検討の経過について御説明したときに申し上げましたが、私ども長い検討の中で、いろいろな問題が新しく追加されたりあるいは取り除かれたりということで今日の法案の原案を提出するまでに至ったということがあるわけでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 その過程におきまして、後から確かに農業生産法人の要件緩和ということが出ておりますが、二月の段階でもって大綱として農地制度研究会にお示しいたしましたのは、その段階では、農地流動化それから有効利用を促進する仕組みの整備と、これに関連しての農地賃貸借に関する規制の緩和ということが主要な問題であったわけでございます。そして、その方向について取りまとめたということで、そのほかにも問題点は残されておったのでございます。たとえば、農業委員会に対する権限の委譲でありますとか、あるいは罰則の整備でありますとか、そういう問題と同様に、残された生産法人の要件の緩和の問題も最終段階では取り込まれて出されたということで、内部的にはそれらの検討も、大綱の中には示されておりませんでしたが進めておったところでございます。
  64. 武田一夫

    武田委員 次にお尋ねします。  従来の農用地利用増進事業は、市町村を実施主体としつつ実際上農業委員会とか農業協同組合というのが主体になっている例も見られますね。ですから、必ずしも全国的に統一されたものになってない、こういう指摘があるわけです。この点、今後のことを考えますと、やはりいろいろと問題が出てくるのじゃないかと思うのです。事業主体者はどうしても農家に対して非常にきめ細かい指導も必要でしょう、それから相談ができるような豊富な知識や指導力というのも必要でございましょう。また、借り手と貸し手との両方を積極的に掘り起こす、そして結びつけるという足腰の強いものが必要になってくるのは当然ですが、そうすると、果たしてどこにそういうものがあるかということを考えたときにちょっと心配なところが出てくるのですが、その心配はないと思いますか。足腰の強いオルガナイザーとしての役割りを持つ存在としての市町村あるいは農協、農業委員会、主体性というのをどこに置くかということで、どうでしょうか。
  65. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 この農用地利用増進事業、これは机上で単に案を考えたというのではなくて、むしろ町村、地域実態、それに応じて実際問題として処理するためにいろいろな知恵が生み出されてきた、それらのことが結果として法制度の上に実現したという経緯がございます。その実績といいますか推移を見ますと、再三先ほど来先生が御指摘になっておりますようなリーダー、特に市町村の吏員でありますとか農業委員会の委員、こういった方の本当に熱心な血のにじむような努力、その結果、かたくなであった土地の所有者の気持ちもほぐれて、だんだん提供を受けられるようになってきたということがございます。そういう先進的なところの経過を見ますと、単純に市町村が仲に入る、農業委員会農業協同組合が協力するということだけで確かにうまく運ばれるというふうには考えておりません。やはり本当にそういったものを真剣になって引っ張っていく人、リーダーがあってうまくいく話だというふうに思います。そういう人を市町村吏員の中から、あるいは農業団体農業委員会、そういったところの方々にお願いしなければならないわけでございますが、今回の法案が成立いたしますれば、そういう新しい使命を持って責任と自覚のもとに励んでくださるように、これはまたそれぞれの組織におきましても、そういうことを前提といたしまして目下体制整備あるいはその組織の強化あるいは関係者の育成ということに努力をしているところでございます。私どもも、一層そういったことは当然必要なことだということで、指導かつ援助してまいりたいというふうに考えております。
  66. 武田一夫

    武田委員 先日参考人意見を聞いていますと、町村会の代表さんは、もっとこっちに権力が来るように、要するに力があるようにしてほしい、これは首長さん方に会いますと、そう言いますわ。農業委員会皆さん方はわれわれの方にと。農協は農協で、八〇年代の今後の一つの課題としまして土地の問題に積極的に取り組んでいく、足腰の強いのはわが陣営だ、こういうふうに主張しております。それは主張はいいのです、お互いにやってもらえばいいのですから。  そこで、その間のコントロールをする調整というものをうまくやらぬと非常に苦労するんじゃないかと思うのですよ。ですから、その調整機関としてどこを考えるか。県なら県という一つのものがあって——たとえば言うなればお互いに功名争いみたいなものがないとも限らないわけですから。ですから、お互いにそういう事業主体の違う中で一つの大きな問題をやるわけですから、そういう一つのコントロールというか、調整というものをうまくやっていかないと非常にまずいことが起こるんじゃないかという心配が私はあるわけです。その点いかがですか。
  67. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 お話しのような懸念なしとはいたしません。市町村が中心になる、そのことは当然でございますが、農業委員会なり農業協同組合との協調がうまくいかなければ仕事は進められないと思います。そういった相互の連携を図る意味で、私どもはそれぞれの地域に協議会を設けて、お互いの意思疎通を図り、一緒になって仕事を進めるという体制をとらせることといたしております。同時に、そのことは市町村段階だけではなしに、都道府県の関係部局、それから国、関係者全員がこれを進める、そのための指導に努めるということにいたしておるところでございます。
  68. 武田一夫

    武田委員 その点の指導といいますか、今後の課題だと思いますので、ひとつスムーズに協力関係の中で効果的にこの事業が進むような手配を怠らないようにしていただきたいと思います。  ちょっとお尋ねしますが、いまはどうかわかりませんが、ここ四、五年ぐらい前、都心に農地を持っている農家の方が、そこに道路ができるとかいろいろな事情で代替地を求めました。それは自分の近くでないのですね。車で三十分や四十分、一時間というようなところにたんぼ、畑を買いました。それもかなりの規模で買っている人がいるわけです。最近でも農家の方が借金のためにどうしようもなくなって土地を売りたいといったときに、要するに、都市のいわゆる農業をしているのでしょうけれども余りしていると言えないような方に土地を売るという羽目になった、こういうようなケースがあるわけです。こういう土地は私はかなりあると見ています。私が知っているだけでも、三十分、四十分のところに車で行きまして、土地を、たんぼを耕しているというケースがずいぶんあります。中には自分が行かなくて頼んで耕させている、そういう農地がずいぶんあるわけです。こういうようなのをこのままほっぽらかしておきますと、その地域がまず違いますね。一つの村、市町村といっても、私はそんな広いところで協議会とかなんとかいうものを設けるのは不可能だと思いますから、たとえば一つの部落なら部落とかという、一つの区なら区という中で一つのルールづくり、話し合いが行われると思います。その方がまた効果的だと思うのですが、そういうところに入ってこないような人たちの存在というのがあるわけです。それで、またこれからもあり得ると思うんですが、こういうものをどういうふうに考えていったらいいのかという問題です。この点どうお考えですか。
  69. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 集落単位、また数集落、せいぜい市町村の中での合意づくりということが基礎になると思います。その間に若干の出入り作というようなことも包含されて、全体としての地域の合意が形成されていくというふうに考えるのが自然でございます。お話しのような代替地取得に限りませんが、規模拡大のために相当離れたところに農地を取得するというケースもときにはございます。ただ、それが私どもは一般的に今回の利用増進事業対象になるというふうには考えておりません。むしろ、そういった形で地域の営農に混乱あるいは弊害を生ずるというようなととがあっては、これは問題であると考えております。むしろそれは、農地取得の際に適格かどうかということの審査の中で、地域の営農全体との調和がどうかというようなことを考えながら、まさに地域全体の農地有効利用という中でそれをどう受けとめていくかということをみんなの中で相談しながら、これは処理していくべき性質のものと考えます。
  70. 武田一夫

    武田委員 それは当然ですね。ただ個々に買ったり売ったりすることはできるわけでしょう。そうなりますと、やっぱり何か特殊な事情があったような、たとえば借金のために土地を売らなくてはいけないというときに、周りの人はどうも希望する値では買ってくれない、たまたまほかで買ってあげようという人が出てくるというと、手放す人がいま出ているんですよ。特にサラ金に手をかけるような農家が残念ながら出てまいりまして、そういう方の中にそういうものによってどうしようもなくなる、そういうようなケースも考えたときに、そういう土地がかなりの距離のほかの人のところにいくのは本当は好ましくないわけですね。であるならば、それを救済するための、要するにその土地の人のところにいくか、あるいはその土地の人たちがそれを使用するような方向というものを考えていかないと、私は、今後何かいろんなケースでもってそういうものが出てきて、村における一つのルールづくりやそういう一つのコミュニケーションというものの中に一つの乱れが出てきて混乱が起こるんではないかという心配があるわけです。ここの点をやっぱり歯どめをかけるものを考えたらいかがかな、こういうふうに思うわけなんです。どうですか。
  71. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 制度的には農地の取得について農地法上の要件を満たしているかどうかということが基本になりますが、その要件を満たしている場合は、これはなかなか禁止とか規制はむずかしい話になってまいります。ただ、私ども先ほど来申し上げておりますように、地域の合意でもってその地域農地を有効に利用していくということになりますというと、よそから入ってくる者を防止する——そういう出さざるを得ないような農家があるのでしたら、むしろそれを地域の中で受け手が見出せるというようなことでお互い相談する、合意形成ということは非常に有効に働くと思います。そういうような、むしろよそに頼まなくとも済むような地域内での自力処理ということを考えて——考えてといいますか、そのためにも、現在私ども考えておりますところの利用改善事業は有効に機能するものというふうに考えております。
  72. 武田一夫

    武田委員 次に、土地の所有権と利用の問題につきましてお尋ねしますが、正常な行為でなく、−要するに、土地を明らかに資産的な方向に使おうとして持っている農家があることも事実なんですよ、それで動かさないという。そういう人ほど豊かです、正直言いまして。この農地をどうするかという問題は、やはり真剣に考えなければいけないと思いますね。本人が持っている土地だからこれは何だかんだ言えないとはいうものの、農地としての存在の価値が高いというところでそういうものがあるとすれば、私はこれは日本農業にとっては不幸な存在だと思うのです。  そこで、農家方々の中にも真剣な方は、この所有権を持っている人にはその土地を有効に利用する義務を課する必要があるのではないか、そうでない場合には、何かその利用権設定できるような方向を考えなければならないのじゃないか、そういうものを放置しておけば、やはりその一つの例が二つ、三つというふうにふえていくということになりかねないのではないか、そういうような意見も強いわけですが、この点どうお考えですか。
  73. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 その点につきましては、農地法上も特定利用権あるいは草地利用権設定というような手段は制度的に設けられておるのでございますが、これはやはり先生御指摘のように、所有権の問題になりますというと、なかなかこれを発動する、そして事実上取り上げるようなことをするかといいますと、きわめてむずかしい問題がございます。制度としてそういうものが伝家の宝刀としてあるということと、それからいま現に私どもが進めようとしておりますところのこういう利用増進事業なり利用改善事業、それをまたうまく組み合わせる。具体的には、市町村の職員なりあるいは農業委員会の委員なりその他の方々が、それこそ先ほど来お話のありましたように、そういう所有者に対して農地としての有効利用の観点から説得をするということで出していただくということを図っていくのが、一番実際的な接近であろうかと考えます。
  74. 武田一夫

    武田委員 ですから、そういうようなものがほかのものに転用は絶対できないんだと、もうはっきりしたものを出しておかないと、どこかに一つでもすきがありますと、人間ですからいい方向にとこう考えて、一つの例を申し上げますと、私の方のある地域では、夫婦でもって一生懸命耕すのですな、春になると。水をかけまして、まことにりっぱに耕してあるのですよ。ところが秋になってさっぱり芽が出てこないのですよ。二年たっても同じですよ。周りの人が何だろうかと思ったら、種まかないのですよ。そのままにしておけばいろいろ税金の問題等があるということで、一生懸命耕している。しかも百坪や二百坪の畑じゃないのですよ。四百坪も五百坪もある広いところがまことにみごとに耕してあるのですよ。夫婦仲よく機械でもって耕すのですよ、一生懸命。勤勉な農家だ、春になって芽が出ないし、秋になって収穫がない。こういうようなケースが現実にあるわけです。ですから、その地域はどんどん周りに家が建ってきまして、これはそれを明らかに期待しているわけです。こういうようなところが一つ甘いんじゃないかと思うのですよ。こういうところがぴしっと、絶対にこれは農地以外のものに使っちゃならないという、そういうぐらいのものをしておかないと、さっきも言ったように宅地の方に取られたり云々ということによって農地が壊廃していくという一つの大きな力になっていくということをやはり知ってもらいたいと思います。特にいま都会化の波というものは、東京や三大都市圏だけではございませんよ。五万都市でも七万都市でも、どんどんそういう都会化現象というものは、東京並みの中央から農村地帯の方に求めていくという傾向が強いわけです。こうなりましたら、平地がいずれなくなるのじゃないかと思うぐらいこういう攻勢というのがあるわけですから、そこの点やはり考えるということは必要じゃないか、こう思うのです。その点どうですか。
  75. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 お話のような問題は、一つには、農地法の転用についての規制を厳格に適用するということであろうかと思います。それからもう一つは、農業振興地域の整備に関する法律いわゆる農振法、これによるゾーニングをきちんとして囲い込みをやるということであろうかと思います。  お話のような場合ですと、転用期待でもって疑似耕作と申しますか、実際には耕作しないで農地のていを装っているというようなことでございますが、これが農地法の厳格な適用によりまして実際には転用できない、それからまた、ゾーニングでもって農振法の農用地区域に入っているというようなことでありますとこれまた転用ができないというようなことで、その辺からは事実上そういうことをやってもむだであるといいますか、困難であるということで、農用地への提供を考えていただけるというような、私が先ほど来申し上げておりますような慫慂するということと、そういう規制の面と両方の面から、農地としての提供をお願いするということになろうかと存じております。  ただ、ゾーニングの問題は、これは一般的に市街化がだんだん外側に及んでくる、それから住宅地、工場用地等の土地需要というものはきわめて大きいということを考えますと、その間にはやはり合理的な線引きというものが必要でございます。それから、私どもといたしましては、できるだけ優良農地を確保するという観点から、宅地等への提供は市街化区域内の農地を最優先に考えていただくということで対処しているところでございます。
  76. 武田一夫

    武田委員 もう一つお尋ねします。  要するに、土地を貸しまして、土地がなくてもこれは所有権があるから農家として認めるわけですね。それでみんな貸しますね。そうすると、土地を持たない農家というのがどんどん出てくるということですね。こういう人たちが、見てますとわりと活動的なんですね。生活的にも余裕がありますから、農協の役員になったり農業委員会の役員になったり、いろいろとほかの人から比べると行動力もあって活動も活発だと思うのですが、この集団の存在というのが、いわゆる純粋の農家というものとの関係の中でぎくしゃくするものが出てこないという保証はないと私は思うのです。そういう連中が農村というものをかき回すような事態が発生しないとは思わないのです。特に、これが政治的な大集団となって活動するというようなことになって、それが結局農業構造の中の一つのがんになりはしないかという心配があるのですが、そういう心配のないような歯どめといいますか、それらの人間の農村における行動というのは十分監視しなければいけないと私は思っています。そういう御心配はないでしなうか。
  77. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 これからの農村社会のあり方という問題に触れることになりますが、私これからは純粋な従来のような農家だけの農村というのは維持しがたくなってくると思います。やはり二種兼農家さらには非農家も混在するような居住空間となってくるという傾向、これは避けがたい。そして、中には、いま先生が御指摘になりましたように、本来農家ではありましたが、その所有地を提供する、そして今回の法律の中でも特例として、この利用増進事業基づいて農地を提供したならば、農協の正組合員としての資格を残すということにいたしておりますが、そういう人たちが村の中の秩序のあり方についてリーダーになるというようなこと、これはあり得ると思います。私どもは、純粋な農村でない、新しいそういったいろんなものを包摂した形での農村の秩序というものを考えていかなければならないと思います。その意味で、地域全体としての農地有効利用を考える、作付の体系、営農のルールをこしらえ上げていくということは、同時に、非農家まで含めた全体としての村のあり方、村づくりについて一つ方向を見出していくということであろうかと考えております。  そういう意味で、法律的にどうなければならないというようなことではなしに、いま申し上げましたようなことで地域全体の合意を形成していくということによって、この問題は解決を図るべきであるというように考えます。
  78. 武田一夫

    武田委員 その問題につきましては、要するに、その息子や孫などの後継者がまたそういうケースをたどるわけですね。そのとき、農家のことが十分に理解できないでそういう農村社会の中に入って、たとえばリーダーになるということは、私は大きな不幸だと思うのです。ですから、たとえばそういう一つの役職につくにしましても、農村の中における行動を通して、農家としての生活体験というものを十二分に味わった人間がそういうところにいるのが、コミュニケーションの問題についても生活感情としても非常に取り組みやすいと私は思うのです。全然知らない者がそういう資格があるというだけでいるというようなのは、これはあっちゃいかぬと言うわけじゃありませんが、そういう方々によって一つのポストが占められるということは、やはり何らかの形で規制しておかなければいけない。言うなれば、そういうのだけで、たとえば農協の理事が占められたり、農業委員会というものが占められないという保証は、正直言いますと何もないわけですね。あるいはまた、市町村においても、こういう仕事をやる担当者がそういう経験のない者によってやられるということは非常に不都合なことがあるのです。たとえば普及員という方がいますね。この方などが大学を出て、あるいは学校を出てそういう立場になって行くと、おまえのよりもおれの方がもっと教え方がうまいというので、かえって教えられてくるケースがたくさんあります。要するに、そういう一つの例を挙げましても、十二分に農村というものの構造の中で生活をして、そして、そういう体験的なものを十分踏まえた者が今後そういうところに入っていくということを考えておかないと、こういう非農家的な農家方々の存在が、農村の純粋な行動というか活動に支障を来すのじゃないかという心配があります。その点に対する歯どめができるように御配慮願いたいと思うのですが、どうでしょうか。
  79. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 私ども構造改善局の事業だけでなしに、普及の問題なりあるいは農協組織の問題というようなことで、農林省全体の問題にかかわることかと存じます。私、いま先生のおっしゃられたことはごもっともに存じますので、今後の私どもの行政の運営の中で、そういったことは十分生かしてまいりたいと考えます。
  80. 武田一夫

    武田委員 時間が五分前ですが、先日三分オーバーして非常な厳しい指摘がありましたので、五分残しまして、次回に残りはやりたいと思います。  以上で終わります。
  81. 内海英男

    内海委員長 柴田健治君。
  82. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 農地法、そして農用地利用増進法案農業委員会法案の一部改正に伴って、三法一括で御質問を申し上げたいと思うのです。  今度の三法の法の改正をねらった理由というものは、どうも私たちの立場から申し上げると、何がねらいなのかということがよくわからない。ただ規模拡大中核農家育成というのはいまに始まった言葉ではないわけで、過去いろいろな農業関係の法案提案されたときにはずっと言うて唱えてきた言葉である。今度の三法の真のねらいは何か、それを大臣、簡単にひとつお答えを願いたい。
  83. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これからの日本農業発展をさせていくためにいろいろの政策をとってまいらなければならぬわけでございますが、その一つに、構造政策の中においては、いま御指摘のとおり、規模の拡大を図っていかなければならないと考えておるわけでございまして、規模の拡大を図っていくには、いま御指摘もありましたが、従来からいろいろやってまいりました。その中で、特に農振法の改正によりまして農用地利用増進事業を進めてまいりましたが、これが案外効果をあらわしつつあるわけでございまして、ひとつこの機会にこれを法制化いたしまして、しかもその対象も広げて規模の拡大を図っていこう、こういうことで提案を申し上げておるわけでございます。
  84. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 その規模拡大ということを言われるのですが、規模拡大というものは、実際日本の場合は、これは参考人の御意見を聞いてみても、やはりコストを下げなければならないし、規模を拡大して生産力を高めなければならぬということを大体言われたのですが、日本のこれから先の見通しを考えた場合に、国際情勢を無視するわけにはいかない。日本農業を語る場合に、もう国際的な問題を抜きにして考えることはできない状態に立ち至っておるわけです。それはガットの問題もあるだろう、東京ラウンドの関係もあるだろう。穀物、食肉、酪農製品、その他農産物の国際的な枠組みの中に入ってきた。その中で日本農業をどうするかということを考えた場合に、もはや国内だけの問題では結論が出ないということになっておると私は思う。  その場合に、いまの国際的な諸情勢の中で、日本農業経営の規模拡大、要するに生産単位はどの程度が適正なのか、その目標が、たとえば今後五年間はこういう生産単位が適正だ、十年間はどうなんだというように、ある程度の目標というものを示さないと、農地の利用増進と言っても、利用というのは何も農林省の人がするわけではない、耕作農民が利用するわけですから、利用する農民が一つの希望というか、将来展望に立ってある程度期待の持てる農業だということにならないと、この法案は生きてこないと私は思うのですが、大臣、どうですか。
  85. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 なかなかむずかしい御質問でございまして、私ども、それじゃ五年後の経営規模は幾らが望ましいのか、また幾らにすべきであるかということを具体的な数字で決めるということは、非常にむずかしいと思います。今度のこの法律にいたしましても、私ども強制的にどういう規模に持っていこうというものは、正直持っていないわけでございまして、ただ言えることは、いま御指摘ございましたように、国際社会の中で日本も生きていかなければならない。そうなると、日本農業を考えてみますと、やはりできる限り生産性を高めてコスト減を図っていくことが、国民といいますか消費者のためにもなりますし、同時に、私は生産者のためにもなると思っておるわけでございます。またあわせて、一方においては、国際社会の中においては食糧の自給力を高めていかなければならないというのも、やはりこれからの一つの宿命であると思います。そういう観点からまいりまして、できるだけ規模を拡大をした方が生産性が高まっていくことだけは間違いございませんので、そういう意味で、私ども生産性を高めるために規模の拡大を図っていきたいということをお願いしているわけでございます。  それじゃ、一体どれくらいの規模に持っていかなければならないとか、これは大きいにこしたことはないわけでありますけれども、やはり農家の皆様方のお考え方があるわけで、私どもが強制的に、おまえはもうやめろとか言うわけにはいかないわけで、やはり農家同士の話し合いによってやっていただこうということでございますので、どれだけのものをという具体的な数字も持ち合わせておりませんが、まあ農家の皆さんがその辺のところを御理解いただいて、必ずしも農業をやっていかなくても農地をただ持っておればいいのだというお気持ちの方はせいぜいお出しをいただく、そして、農業をやろうというお気持ちの方は、せいぜいそれをお借りいただいて農業をやっていただく、こういうのが望ましいと考えておるわけでございます。
  86. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 そこが基本的にわれわれの考え方と食い違う。そこが食い違うから、この法案の論戦の中でも意見が違って出てくる。私たちの受けとめ方は、第一次の農地改革、第二次の農地改革、場合によったら今度の法案は第三次の農地改革になる。しかし、農地改革論の中で、耕作者の権利を守るというのでなしに、借地農業、要するに自立農業でない借地農業に転換する第三次の農地改革ではないかという気がするのですね。借地農業というのは、日本農業の将来の展望から見て成功するかどうか、私は不安があると思う。この法案の中身は、借地農業を今度は強力に進める法案だ。これが第三次の、かえって逆戻りの農地改革だという理論もそこに生まれてくるのではなかろうか、こういう気がするのです。それから、将来展望というものを、国際的な情勢その他を踏まえた方向づけを一切しないで、ただ法案改正だけ考えるとするならば、もう借地農業でやらざるを得ないんだというような、ただ一時逃れのやり方ではないかという気がするわけです。大臣、この点はどうですか。
  87. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども、まだ今後とも農地のシェアからいけば自作農の方が圧倒的に大きいわけでございまして、何も借地農業に切りかわっていくとは考えていないわけでございます。また、長期的な見通しを立てないでこういうものだけをやるのはけしからぬという御指摘もよくあるわけでございますが、私、御答弁申し上げておりますように、農政審議会の議論がことしの夏ごろまでには結論が出ると私どもも大体承知をいたしております。そういう中で、将来の長期的な見通しというものを含めた生産政策、あるいはそれに伴う価格政策、あるいは農村社会における社会政策、こういうものを総合的にやっていこうということでございまして、その一環の構造政策の中でこういう形で法案を用意さしていただいて、受けざらだけはひとつつくらしておいていただきたいということでございまして、私ども決してこれだけを考えておるわけでなくて、総合的な中で考えておるということで御理解をいただきたいわけでございます。
  88. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 口を開けば、規模拡大中核農家育成、そして構造政策、それから皆さん方が好んで使う安定供給論、需給均衡論、大体使われる言葉は決まってきたと思うのですね。それはいまに始まったことじゃない。もう長い間、昭和四十二年のあの米が余るようになってきてから盛んに、それから総合農政論の中で——総合農政論というのは、現実のいまの実態論から言うと、米は生産調整、畜産物生産調整、果樹も生産調整、こういう形に追い込まれてきた。その中で、今度は規模拡大で何をつくらせるのか、まず目標を示してもらいたい。
  89. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これも、私どもは何をつくるかということは、いま水田利用再編対策で、少なくとも麦なりあるいは大豆なり飼料作物なり、これは特定作物としてお願いしておることは御承知のとおりでございまして、そういうものをできるだけつくっていただきたいということをお願いしておるわけでございます。そこで、それじゃ今後も農地流動化が図られて経営規模拡大になったときに何をつくるか、これも同じことでございまして、何も経営規模拡大したら何か別なものをつくっていただきたいというお願いをするのではなくて、やはりその方向方向としてあるわけでございます。  それからもう一つは、先ほども御答弁申し上げましたけれども、私ども、将来の長期見通しというものを、昭和六十五年度を一応目標年次といたしまして、ぜひこの夏、農政審議会の答申を踏まえてつくらしていただきたいと思っておるわけでございまして、そういうところでも、大体いままでそういう水田利用再編対策でお願いしておるようなものを中心としてお願いすることになると思いますけれども、いずれにしても、そういうところで出てくるものが結果的にはつくっていただきたいというものになるわけであろう、こう思っておるわけでございます。
  90. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 余り抽象論では、これは演説会だとか大臣の遊説なら何を言ってもいいけれども、ここは法案を具体的に審議しておるのですから、もう少し中身のわかるように答弁願わないと、抽象論ばかり言ったんじゃ、われわれは法案審議する価値がないと思うのですね。その点を十分理解をして、委員会の権威というもの、国会の権威というものをもっと理解して答弁してもらわないと……。私は具体的にお尋ねをしておるのですよ。現在何と何とが余って生産調整しておるじゃありませんかと。これから規模拡大をして何をつくらせるのですかと言ったら、足らないものは大体わかっておるのじゃないですか。日本国内で足らないからよそからどんどん輸入しておるのがはっきりしておるのだから、いま足らないものは、たとえば飼料作物のうちでこれとこれとこれが足りません、これだけはぜひ規模拡大をして土地生産性を高めてもらいたいというように具体的に答弁を願った方が、それが立法府の責任じゃないでしょうか。その点、大臣どうですか、もっと具体的に説明してください。
  91. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私、具体的にも申し上げておると思うのでございますが、麦にいたしましても大豆にいたしましてもいま具体的に例を申し上げたわけでございまして、そういうものは幾らおつくりをいただいても、私どもは決して、それで自給率が今度は一〇〇%以上にいくとは考えていないわけでございまして、そういうものをせいぜいおつくりいただくことは結構なことでありますし、また、そういうものをつくっていただく上においても、生産性が高まることによってコストが下がっていくということは、やはり農家の手取りもふやしていくことにもなるわけでございますし、そういう面で、水田利用再編対策でお願いしておるものと経営規模拡大してお願いするものと決して相反するものではない、私はこういうことを申し上げておるわけでございます。
  92. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 具体的に、つくった限りは今度は政府が責任を持ちますと、規模拡大をせられて、たとえば大豆をつくっても麦をつくっても価格保証もいたします、政府が呼びかけた品物については全責任を持ちます、こういうものが出てこないと、農民にとっては、規模拡大をやろうと言ったって生産意欲も出てこないし、人の土地を借りて利用料を払ってもやろうという、そういう熱意がないんじゃないかと思う。何をつくってもいいというなら、米をつくってもいいのですか。規模拡大をして米をつくって余っても、それは責任を持ちますか。
  93. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、経営規模拡大というものと、直接何をつくっていただきたいという問題と、何かいま一緒にして御指摘をいただいているわけでございますけれども、私どもは、一方においては水田利用再編対策ということで、農業需要に見合った形での生産の再編成をお願いしておるわけでございまして、その中で考えていかなければならないのはやはり生産性を高めていくということであり、そうなってくると、そういう政策を進めていく上においても、経営規模拡大を図っていただいて生産性を高めていただくとありがたい、その受けざらをつくっていきたいということでございますので、その点は私は何も相反したことではない、こう考えておるわけでございます。
  94. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 どうもその点がかみ合わないのですな。ただやみくもに規模拡大をしなさい、人の土地を借り上げてしっかりやりなさい、土地を荒らしてはいけません、利用しなさい、そういうことだけでは、借りる方も貸す方もなかなか理解してくれないのではないでしょうか。こういうことなんですね。現実にことしは五十三万五千ヘクタールの生産調整、いずれはどんどん伸びてくる。それから、土地は荒らすものではない。農地というものは付加価値を高めるということが農地の使命なんですからね、宅地とは違って。だから、農地を荒らすということはよくないから、つくれない人は土地を貸してあげなさい、こういうことで利用増進、ただやみくもにそういうことではなしに、規模拡大をする農家にはこういう品物をつくったら国は責任を持ちますよというものをはっきりしないと、奨励金国民の税金を使うのでしょう。農地流動化について五十五年度からいろいろな助成の予算措置をしてあるわけですから、国民の税金を使う限りは責任を持たなければならぬと私は思うのです。ただ規模拡大中核農家育成だと言ったのでは、これは成功するとは思えないから、もう少し一貫性のあるそういう責任体制を明確にする必要がある。そうしないと成功しませんぞと私は申し上げておるのです。それから、皆さんの方がやらしてくれ、成功します、こう言われると思いますけれども、われわれは心配しておるわけです。成功しませんぞ、また不成功に終わりますよ、こういう気がするわけです。その心配の余りお尋ねを申し上げておるわけです。皆さんが自信を持って成功しますと言われるのなら、それ以上私らは何も言うことはない。それはあなたらは行政機関を握っているのだから。  逐次今度のこの法案の中身に入ってまいりたいと思いますが、農業委員会法の改正で、農業委員会問題点が四つになっておると思うのです。その四つの中で、われわれが一つ理解できない点は、農業委員の数を減すという点なんです。それで、皆さん方が考えて、この法案審議が始まって今日まで、それぞれの委員の皆さんがあらゆる角度からとらえていろいろと質疑をしておる。農業委員会のいままでの任務というものは、御承知のように、昭和二十六年に三つの委員会を一本にして、そしてちゃんと任務は決まっておる。その任務を十分全うができないような財政措置なり運営指導というものはだれの責任かということをまず聞かにゃいかぬ。その責任を十分反省しないで、ただやみくもにまた委員の数を減すのだ。それは聞くところによると外部の圧力だ。全国町村長会なり市長会なり自治省なりが圧力をかけて、もう農業委員会は要らないという廃止論。これじゃ困るので、折衷案でまとめた案がこれだということも聞く。これは事実かどうかわかりませんよ、この辺の風の便りですから。それで、もう抗し切れずに、妥協案として苦労に苦労を重ねて農林水産省があらゆる知恵をしぼってこしらえた案がここで、本当に農業委員会に一生懸命仕事をしてもらおうという考え方に立った改正の点ではないと私は思う。それから、農業委員会が設置されて、今日もう少し仕事をふやしておったなら、町村長会からも市長会からも自治省からも要らないという声は出なかったと思う。そういう声を出させた張本人は農林省じゃないでしょうか。どうですか、大臣
  95. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いままで農業委員会の果たしてきた役割りは私はそれなりに評価をいたしておるわけでございます。中には多少そういう御指摘農業委員もあったかと思うのでございますが、全体的に言えば相当役割りを果たしてきていただいたと思っておるわけでございまして、数の問題につきましては、確かに、この法律案がまとまるまでには、そういう御指摘のようないろいろの意見交換があったことは私も率直に認めざるを得ないわけでございます。しかし、最終的には、農業委員の三十以上のところはたしか七十五の農業委員会、三千幾つの中の七十五ということでございますので、今後農業委員会に権限を相当委譲をさせていただくわけでございまして、そうなってくると、より優秀な方々農業委員になっていただき、また、その農業委員にも研修をより進めていりていただくならば、その数が少なくなったからといってその役割りが十分果たせないはずはなかろう、こういう判断から、私は量よりも質という考え方で三十人以下と、上限を三十人にした、こういうことで御理解をいただきたいわけでございます。
  96. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 農業委員会委員の選挙が始まる、農民に農業委員会は何をするところだと聞く、あれは農地転用だけするところだ、あとは何もしないんだ、そういう声が今日まで強かった。だから、それは要するに財政措置。昭和二十六年に三つの委員会経費が百二十二億。その時分に農業委員会は全額国が持ちますということで、あれはもう大義名分で一本にした農業委員会ですね。全額国が持っておれば、昭和二十六年に国会議員の給与が五万四千円か五万五千円ですよ、いま八十四万だから十五倍。その当時、三つの委員会を一本にしたとき百二十億の国の予算措置。そうすると、十五倍だから何ぼ予算をつけたらいいのですか。いま何ぼ農業委員会につけておるのですか。
  97. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えいたします。  農業委員会段階で百四十億でございます。
  98. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 百四十億ですよ。余りふえていないのですね。予算をふやさずに仕事ができるはずがないでしょう。  それから、町村の持ち出しが多いものだから町村長が悲鳴を上げておる。この間参考人に聞いてみると三倍ぐらい持ち出しをやっている、もう身が持たぬ、こう言うのです。農地転用だけなら数も要らないし、役場の職員で結構だ、こういう意見も出る。そういう運用をさせたのは大臣の責任じゃないですか。ちょっと大臣に聞きたい。
  99. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 百四十億というのが決して十分な額でないということは私も承知をいたしておりまして、今後とも予算の充実には努力をしてまいりたいと思います。
  100. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 これから本当に農地の利用増進のためにその農業委員会の諸君に仕事をしてもらおうと思えば、まず財政措置をどうするかということがもう基本だと思う。それで委員の皆さんの資質を向上してもらわなければいかぬのだから、いろんな研修や学習や、いままでもやっておられるのはただ農地法の法の精神の研修だけであって、本当の農業経営、営農というものについての研修というものは正直言うて余りしていない。これからそういう研修をしてもらわなければならぬから相当の金が要るということははっきりしているわけですね。今度の農業委員会法を改正することによってこの財源措置をどうするかということが基本だ。それから委員会の活用。そして、転用だけなら簡単なんですけれども、これからの問題が地域農政の中でたくさん出てくると思う。たとえば水利権の問題一つ取り上げてみても、水利権の経費というものは、権利の中には二つの区分がある。特別負担金、通常負担金と二つの負担金がある。これらの調整も今度の農地の賃貸においていろんな問題が起きてくる。そしてまた、採草地の問題と入会権の調整が起きてくる。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕 これらの調整なり調停なりは農業委員会がやらなければならぬ。だから大変な仕事だと思うのですね。たとえば区有財産と個人との入り会いの問題もこれが大変な問題だと思うのですね。こういう仕事がたくさんふえてくると、たとえば換地処分の問題も起きてくるだろう。地目変換の問題も起きてくるだろう。それらの仕事をこれから農業委員会に本気でやってもらわなければいかぬ。その農業委員の数を減して協力員にやってもらう。この間の答弁を聞いておったら協力員だと言う。農業委員会は行政機関でしょう、大臣。行政機関の中で協力員というのは——農業協同組合なら、広報委員会だとか連絡委員だとか、いや推進委員会だとかいうものを自主的につくっていろいろ手足になって動かしておるわけですよ。農業委員会の下に協力委員会というものをつくるというこの発想自体が間違っていると私は思う。協力員になるのは人の財産をとやかくするのでありますから、財産の譲渡にしろあっせんにしろ、これは一つの職業とするならば、宅地建物取引業法で資格を持たなければ人の財産のあっせん、譲渡はできないはずだ。そういう権限までやらせるというなら、協力員にできるかできないか、どういう資格基準で任命するのか、費用弁償をどうするのか、そういう点を大臣……。局長じゃないのだよ。
  101. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 この間の御答弁で、非常に広域な市町村につきましては、確かにその実態を把握しながら農業委員の方々委員会として諸般の決定をされていくには不十分な場合があると考えられますので、協力員を設置して運営の万全を期したいということを御答弁申し上げたわけでございますが、もちろん先生がおっしゃいますように、協力員自身が行政機関としての権限を持つというわけではないわけでございます。私ども考えておりますのは、このような広域な市等におきましては、農業委員のみではなかなか地域の実情を把握できないということがございますので、そこで、地域の農民の声を十分に反映していただく、また、農業委員会が行われます施策、決定というものはその趣旨を徹底していただくというような役割りを果たしていただくというつもりで、協力員という方を置いていったらいかがかということを申し上げたわけでございます。このような協力員の方々実態の把握、それが農業委員会に上がってまいりまして、それを迅速的確に処理をしていただくということで農業委員会が活動していただくということで考えたわけでございます。
  102. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 局長の答弁は、人の私有財産権を余り軽く見てはいけないのですね。その財産の利用権というものを動かすのですから、所有権の移動もむずかしいけれども利用権の移動というものもむずかしいのだ。それを一片の協力員的なものにやってもらって、それから上へ上げていくんだと言う。そればもう無責任体制の基礎づくりをするようなものです。そんなことじゃ成功しないと私は思う。協力員制度なんてやめたらいいと思う。農業委員会の数を減さないで、農業委員会に活動しやすいようにもっと勉強してもらって、要するに財政措置をしてもらうということが基本である。だから、私は協力員制度については賛成しない。それから農業委員の数を減すことも反対だ、こういう気持ちで申し上げた。  それから、いまこれからの本当の農用地の利用、そして農地流動化という立場からとらえたいろいろな問題が起きる。その調整をうまくやらないと——局長、農村というものは長い歴史を持っているのですよ。長い歴史を持って人間関係の中ででき上がっている部面もある。それらをどうするかということは、やはり人間同士の調和というものを基調に置かなければならぬ。その点はやはり責任のある機関が十分のみ込んでやってもらわないと、末端の部落長程度の者にお願いするようなことではいけないという気がするわけで、調整の問題は非常に複雑になってくるだろう、そういう難問題が出てくるだろう、こう思います。そういう点で、農業委員会の四つの改正点については、数を減すところは私は反対だという気がいたします。  それからもう一つは、たとえば現状は田である。土地台帳も田である。しかし、今度は飼料作物その他で田ではない、畑で使う。借る方は畑で使いますよ。畑で使う場合と田で使う場合と貸す方と借る方との意見が食い違い、そのときに農業委員会はどういう判断をするのかという問題があるのです。いろいろむずかしい問題があると思うのですね。固定資産税に影響する。貸せる方は田として税金を払う、使う方は畑で貸してくれ、そういう問題のときに、それなら田を一時五カ年なら五カ年畑に切りかえましょう。そうすれば固定資産税は少し安くなる。日本の固定資産税の順位を見れば、御承知のように宅地が一番高い。その次は田、それから畑、その次は林地雑種地。固定資産税の高い安いは順番が決まっている。宅地の次に田が高いのだから、どんな悪い田でも田の方が高い。高いものを今度は低い方に使うのですから、畑に一時転用する、地目変換する、こういうことができるかできないのか、その御答弁を願いたい。
  103. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 御指摘の点につきましては、自治省において固定資産税の評価の問題として決めることになります。固定資産税の評価基準では、地目の認定は土地現況によるものとするということになっております。この場合、田とは、農耕地で用水を利用して耕作する土地ということになっております。また畑とは、農耕地で用水を利用しないで耕作する土地ということになっておるわけでございます。そういう規定でございますが、具体的には耕地の形態それから利用状態、その両面から総合的に考慮して田畑の認定を行うものということになっておるわけでございます。  水田利用再編対策に伴って、水稲から大豆、麦、果樹といったものへ転作が進められているわけでございますが、転作を行う耕地の形態は、転作作物の違い、田畑輪換の場合、それぞれの事情によって異なってきますので、転作の実態等を踏まえて、これは自治省とも協議してまいりたいと考えております。
  104. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大臣一つ一つ申せば時間がないから……。これから本当に農用地の利用増進で、所有者と利用者、所有権を持っている者と利用する利用権、そういうものからくるいろいろな問題があるわけですね。そういう仕事がこれからうんとふえるのに、農業委員の数を減して財源措置をしないというのは、どう考えても一時逃れのやり方だと私は思うのですが、大臣、それでもこの法案を通したら、見違えるような日本農業発展農地流動化が促進してりっぱなものになると思われるかどうか、見解を聞いておきたい。
  105. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 将来の問題でございますが、この農用地利用増進法並びに農業委員会法及び農地法の今度の改正によりまして、早速来年なり再来年なりですばらしい農地流動化が図られてというような夢は、私どもとても持ち得ないと思っております。やはりとの法律をつくっていただいても、これから相当長期間かかって農地流動化は図られていくのではなかろうかと思っておるわけでございまして、そういう点からは、先ほども御答弁申し上げましたけれども農政審議会の答申を踏まえまして、私どもことしの夏から秋にかけては相当精力的に作業を行って、将来に対する長期ビジョンを打ち立てていかなければならない。その中には、生産政策あるいは農地流動化を含めた構造政策あるいは価格政策あるいは農村の社会政策、そういうようなものを総合的に勘案しながら、一つの将来の方向を打ち出していかなければならぬと思っておるわけでございまして、いまこの三法を通していただいたらすぐにでもすばらしい流動化が図られて農業が展開していくというような、そんな安易な気持ちは持っておりません。
  106. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 今度の農業委員会法を見ると、強化する面と弱体化する面とがある。それでどちらがいいのかということを考えた場合に、私は、今度の農業委員会法は弱体化の方が強いと思う。数を減す、そして今度は県段階農業会議の委員を会長をもって充てる。どうも公式論的で、本当の運営を強化するという面が少ない。多少強化する面もあるけれども強化と弱体化という両方を考えた場合に弱体化の方が強い。これではりっぱな農業委員会法の改正とは言えない。こういうことで、これは修正すべき法案だと私は思っている。大臣もその点は十分のみ込んでおいてもらいたい、こう思います。  次に、利用増進法ですが、この利用増進法は、あくまでも耕作農民が自主的、民主的に積み上げていかないと成功しないと思う。     〔津島委員長代理退席、委員長着席〕 そこにいささかでも権力介入というものがあってはならない。どうもこの法案は権力介入のにおいが強い。これも一部修正をしなければならぬのではなかろうかという気がするわけです。この利用増進法というものは農振法から分離したのだから、これは時限立法にすべきだ、十年間の時限立法にしたらどうかという考えが私にはあるのですが、いかがですか。
  107. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 国会では修正をされる権限を持っておられるわけでございますから、いろいろと御指摘の点はあろうかと思いますが、どうもいまの点は、日本農業構造政策の上では相当長期的に見てやらなければいけない問題であると私ども思っておりまして、時限立法というような考え方は、少なくとも私どもは持っていないわけでございます。
  108. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 わざわざ分離しなくても現行の農振法の中でも利用増進はできている、利用増進の措置はとれている。現在五カ年で二万四千ヘクタールだが、本気でやればやれないことはないのに怠けておいてわざわざ分離する。権力介入を避けるために、貸す方も借りる方も十年という時限立法にして、よかったらまた延長すればいいのだから、一つの見切りをつけてテストとしてやってみる。私は時限立法にすべきだという考え方に立っておるわけであります。  もう一つは、農地の利用増進という立場から言うと、水稲の方は生産調整をやっているのですから、水稲以外のものでなければならぬ。だから、土壌というものは、いまのところは農地は水稲栽培における基準になっているわけですからね。日本はそうなってきたのです。瑞穂の国、五穀豊穣、豊年踊りを踊ってということで、穀物の中で米が主力です。その米をつくらせないというのですから、ほかのものをつくるしかない。いままで米づくり一本で、農林水産省の指導は機械化で、農薬で、金肥でと、こういうことになっておる。三本の柱で栽培を奨励してきた。これは御承知のとおりだと思う。その三本の柱でやってきて、いま土壌がどういう実態かというと、土壌が非常に荒廃しておる。これは大臣もよく御承知だろうと思う。その現状をどう改善していくかということが大きな問題だと思う。これから他の作物を植えるための本当の利用増進というものは、土壌改良をしなければならぬと思う。利用増進を進めるというのなら、この辺でもう一つの法律をつくるべきではないか。土壌改良法という法律をつくるべきではないかという気がするのです。米以外の作物は輪作がきかない。米でも水を使わなかったら輪作がきかない。一遍土壌に水を通すことによって連作がきくわけですよ。水を通さない作物というものは連作がきかない。そういうことを考えたら、思い切って土壌を改良しなければならぬということです。どうですか、大臣、土壌改良法をつくったら。
  109. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま、たしか補助事業で土壌改良をやっているはずでございまして、いま御指摘の土壌を改良しなければならぬということは、私どももよく承知いたしておるわけでございます。ただ、いま補助事業でやっておるのを法律をつくらなければできない問題ではないと思っておるわけでございまして、いまの補助事業でやっておることがまだ十分でないという点においては、予算を充実していかなければならぬことはよくわかるわけでございますけれども、法律をつくらなければそれができないというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  110. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 農用地の利用増進の立場から言えば、土壌というものを無視して避けて通るわけにはいかない問題だと思う。現行の制度の中で、土壌改良で何ができているのですか。昔、土壌改良法があって、廃止したのでしょう。その土壌改良法の時分には、酸性が強いということで石灰を入れなさいといってやった。戦後の一時、土壌改良をするために土壌改良法をつくった。ところが廃止してしまったんだ。あの時分の土壌改良法を廃止せずに、手直しをして残しておけばよかった。それはもうやめてしまって、現行制度土地改良法によってささやかにやったって、完全なものはできやしないじゃないですか。だから、農振法から分離した利用増進については、土地改良法から一部抜いて土壌改良法をつくったらどうかという気がする。これは研究課題だ。本当に農用地の利用を増進させるためにはこれは必要だとわれわれは思っておるわけです。研究してもらいたいと思う。  それで、今度のこの利用増進法で農地流動化を図るということで、あわせて農地法改正するわけですが、今度のこの流動化に対して農民なりわれわれも一番不安を持っておるのは、現行の奨励政策、たとえば転作奨励金、これらの奨励政策の金の使い方、あんたは流動化に協力しないからその地域はだめですよという奨励金の悪用、そこに権力介入というのが起きてこないか。こういうことは一切ないということを言われると思うのですが、どうも農林省は口と腹と違うところですから。現在もあっておるんです。農林省に二人全国区の候補者が出る。一人はこの人を書けよ、そうすれば構造改善、圃場整備その他の基盤整備事業の予算がふえますよ。片一方の人は気の毒なんだ、何もするものはない。常識では考えられぬことが起きておる。片一方本当に気の毒だ。同じ国の金を使って、片一方には補助で利益誘導というかちょろちょろ。それは農林省が言っているわけではないと私は思うのだ。だけれども、末端ではそういうものを悪用している。片一方の候補者は何もない。気の毒で不公平だと思う。そういうことが現実にある。そんなことは常識では考えられない。一切そういうことはあってはならない。やるなら公平にやればいい。ところが、農林省はそういう悪用はしませんと言うけれども、ちょろちょろ出す。あなたは流動化に協力しないから奨励金も補助金も何も予算もつけませんぞ、こうやられたら、そこに権力介入が入ってくるといけない。農民の反感を買うだけ、こういうことになるが、そういうことは一切ないと言明できますか。
  111. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 いろんな事業がございますが、公共事業とかそれから構造改善事業等におきましては、やはり地域全体としての合理的な土地利用、そのもとにおいて基盤整備なりあるいは構造改善事業を行うということが必要であると考えております。そういう観点から、有効な土地利用、その内容としては農地流動化を含むそういう土地利用、それを実現するような形で奨励していくということで、優先採択あるいは配分の順位というような点におきましてそれは奨励措置をとっております。先生言われるようなことで、およそ一切ニュートラルであるというようなことではございません。ただそれは、農地流動化を図らないところは一切仕事をしないとか、一切補助金は出さないというようなことではございませんで、行うところに対して奨励的な措置として優先採択等を行っているということでございます。
  112. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 ことしの予算、一町村二百五十万円で大体千五百町村という予算措置をした。あれの中身はどういう方法でやるのですか。流動化促進の奨励金、それは面積か、どういう計画でどういう方法でやられるのか説明願いたい。
  113. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 地域農政の特別対策事業といたしまして予算措置をいたしております。その中で各種の補助金があるわけでございますが、先生のおっしゃるのは、地域においてそういう農地有効利用を図るための相談、そのためのソフト事業といいますか、お互いが意見を出し合う、そういう場を設けるための事業、これに対しまして町村単位でもって定額で助成をいたしております。そのほか、実際に農地流動化を進める、先刻来申し上げております出し手と受け手を結びつける、そのために掘り起こし活動を行う、こういう推進のための事業費でありますとか、それが実際に流動化となって実現した場合、面積当たり、これは賃借期間によって差を設けておりますが、三ないし五年が一万円、五年を超えるものが二万円というようなことで十アール当たりの補助金を出しております。こういう全体としての土地利用なりあるいは流動化促進のための奨励金は、町村に対して交付いたしておるところでございます。
  114. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 そういう金の使い方というのはまことに思いつきだと私は思うのですね。貸す方も借る方も、損得論言うたのではおかしいけれども、貸せる方は料金が高い方がいい、借る方は安  い方がいいというのは、これはもう原則ですよ。その点を、こういう金を使うなら、国が今度の法案農業協同組合に任務を持たせるわけですから農業協同組合に、一方は農業委員会計画、立案、認定、そして実施は、計画までは農業委員会がやる、調整までやる。けれども実行行為は農業協同組合にやってもらう。農業協同組合でそれぞれの町村の年次計画を立たして、流動化はAの町村、たとえば一万ヘクタールある町村なら、二割なら二割、二千町歩はやりますよ、流動化促進やりますよ。それは五カ年なら五カ年でやりますよ、こういうことで計画を立てて、そして国が差額を出していく。たとえば一万五千円で借ったものは、貸す方には一万円で貸して、五千円は国が補てんする、そういう金の使い方をすれば、十万ヘクタールやったって五十億あればいいんですよ。それをやってこそ貸せる方も安心するし借る方も安心するし、そうしないと本当の流動化にはならない、こう思うわけです。そういう手がとれないのかとこう言う。こんな金を四十億も五十億も、ばらまき方針でただやれやれというようなやり方では私は税金のむだ遣いだ、国民に対しても申しわけない。こういう方法で流動化やりますよ、こういうもので二重方式、借る方から高く借ってやって、貸す方には安く貸す、その間は国が負担する、こうしないとだめだと私は思う。同じような金を使うんなら、この方法をとった方が賢明ではないか、こういう気がするのですね。大臣いかがですか、この点。
  115. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 一般的な話は私から申し上げまして、大臣からまた政策的な話についてそのお答えをいただくことにいたします。  先生の御指摘は、一つはきちんとした総体計画を立てて、その面積を実現するためには地代助成を行ってはどうかというふうに理解いたしましたが、この事業は、全体として頭から計画を決めてそれを義務づけるというようなことではなくて、実際にその農地を出してくれる人がどのくらいいるだろうか、面積はどのくらいになるだろうかということは、トライアルといいますか、実施をしていく段階におきましてだんだん沸き上がってきてそれがめどが立ってくるという性格のもので、その上がったものをむしろ農用地利用増進計画という形でもって実行段階に移していくというものだと考えております。そういうことで、なかなか計画にはなじみがたいのですが、実施している段階でおのずとまたそれなりの目標というものも出てくるかとは存じます。  それから、そういう思い切って促進するために何か助成を行う、その場合地代の助成がいいではないかというお話でございますが、率直に申し上げまして、借りる方は安い方がいい、貸す方は高い方がいいということでございますが、そこは経済問題でございまして、折り合いのつく、合意の成り立った点で地代というのは実現するというふうに考えております。いま一般的にかなり経営規模拡大してまいりまして、特に借りたいという農家では採算的にこの辺までは賃借料を払い得るというめどがあるわけでございます。その点、貸し手の要求とどの程度のギャップがあるかということでございますが、一般の地代の水準等からすれば、借りる側にもその程度の支払い能力はあるし、それから地代というのは年々のものでございます。地代を恒久的に国の補助なりどこかの財政負担に依存しなければならないというのでは、農業経営としては私は必ずしも安定しない、やはりそこは助成対象として取り上げることは必ずしも適当ではないのじゃないか、そういうことも考えまして、現在私どもは、先ほども申し上げましたが、流動化奨励金という形で、農地賃貸借が実現した場合は、まあこれは毎年ということではございませんが、貸し手に対して助成するということを行っておるわけでございます。五十五年度の予算額は二十八億二千万円、それから対象面積も約二万八千ヘクタールということで、かなりのものになっているところでございます。今後ともこういった措置を続けてまいりたいと考えております。
  116. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 時間の関係がございますから先に参りますが、利用増進については十分配慮しなければならぬ、それから実施方針、実施計画についてもう少しわれわれは手を加えたい、こう思っておるわけです。これも一部修正しなければならぬだろう、こう思っておるわけです。  次に、農地法なんですが、農地法は二つの問題でわれわれ理解できないのは、物納方式、物で支払うということ。物納じゃ金納じゃという言葉を使いたくないんで、物で支払うというのはどうかと思う。これはつくったもの、この間も意見が出ておりましたが、スイカをつくったらスイカで納めればいいじゃないか、ウリをつくったらウリで納めればいいじゃないか、そんなことは、言うのはいいけれども、もらう方は一遍にスイカ百個もらったってどうにもならぬ。私は、利用ですから利用料という統一したことにして、料金が一番適正だと思う。  それから、物で納めるというのは余り好ましい姿ではない。昔、通貨が余り発達していない物々交換のときには、それはまあそういうこともあった。けれども、これだけ通貨が改革されて、通貨オンリーの経済社会になってきて、制度的にもそうなっておる。土地を利用するだけ物を納めなければならぬという考え方は、これは心情的な問題だったと思う。心情論だけで法律をつくるというのはどうかなという気がするわけですね。何の理由か。それで果たして農地流動化が図れるのかという気がするので、この物で納める制度というものはよくない。  もう一つは、農地法の中で、権限委譲の問題で一段階方式はよくない。売り買いなら一発勝負で——売り買いなら、土地の転用なら一発で解決する。けれども、利用ということになれば、先ほど申し上げたようにいろいろな問題が起きてくる。賃貸、貸し借りの問題には古今東西を問わず紛争が起きる。これはもうつきまとうておる。それから、一段階方式では弊害が起きる。従前のように二段階方式、二審制度にすべきだという気がするわけです。先ほど局長が言われたけれども、利用料でも単年単年度、期限は三年だとか五年だとか十年だとか賃貸期限というものは決められても、料金というものは毎年だ、こう言われると、それならスライド方式を取り入れるか、そういうことをどう具体的に決めていくのか。私は金ならスライド方式ができると思っている。物の場合はそんなことできやしない。その点の調整をどうするのかという問題があるから、私は二段階方式だと思う。権限の委譲は末端へまでおろすことはいけない。それから利用料の問題、要するに耕作料、小作じゃない。耕作料金を物で納める制度はやめるべきだ。権限委譲は二段階制にすべきだ。農地法で二つ修正しなければならぬだろうと私たちは思っている。この点について、大臣の見解を聞きたいのです。
  117. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 先に私からお答え申し上げます。  二点ございます。一つは、現在の定額金納制の小作料——小作料という言葉を使いますとおしかりを受けますが、法律上そういう言葉になっておりますのでお許し願いたいと思いますが、その規定を廃止するということでございますが、これはかわって物納を認めるということになりますけれども、何も物納を強制しているわけではございません。金銭をもって定め、金銭をもって納めるということが妥当だと考えれば、それは当事者がそのように引き続いてお決めになればよろしいわけでございます。ただ、私ども実態からして、これは法律のたてまえからすると残念なことではございますが、実際の賃貸借契約、相当の場合物納が実行されております。農業会議所の調査によりましても、最近のものでは四〇%を超えるような実情にあるわけでございます。それから、新しく利用増進事業に参加したいという方でもやはり、これは古い心情だと言えばそういう点確かにございますが、自分のところで食べる米は自分のところのたんぼでつくった米にしたい。貸すとそういうことができなくなるのでは貸したくない。いろいろ不便ではあるけれども、それじゃ自分でつくるかというようなこともあって、むしろ無理してたんぼづくりをやらなければならないという事情もございます。現に私自身もそういうことを聞かされるわけでございまして、そうなりますと、経済合理性一本やりで金納の方がすっきりしていいんだということだけにもまいらないかと存じます。やはり実態が相当先行している、それから農地流動化の支障にもなるということなら、この際、どうしても定額金納でなければならないという点については、これは改めて、ほかの形で小作料を支払うことも可能にするような道を開きたい、このように考えたわけでございます。  それから農業委員会への権限委譲、先生のおっしゃっておられるのは二十条関係の問題であろうかと存じます。この問題につきましては、現在でも、農業委員会は知事に出す前の経由機関として、意見を付してこれを知事に提出するということになっております。その点で、実態的には私ども農業委員会へおろしても支障ないと考えておりますが、確かにこの問題については指導面でも十分慎重を期して過ちのないよう、トラブルを起こすことのないよう、注意していかなければならない問題だと考えております。
  118. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 自主的とか民主的とかいう言葉を使って、借り手と貸し手の話し合いで決めたらいいというようなやわらかいものならば、罰則規定を強化する必要はないと思うのです。それなら罰則規定は廃止しますか。
  119. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 先ほどの答弁の中で少しその点漏れておったところがありますので補充いたしますが、金銭だったら確かにスライド条項などは決めやすいということがございます。その点、物になりますと、一たんこれを金銭評価に置き直して、スライドが必要ならスライドをするということで、これは小作料の取り決めの中で、そういうことが必要ならそれもそのまま決めていくということになろうかと存じます。  私が申し上げましたのは、やわらかいというのは、別段いまの小作料についての規制を緩めるとかなんとかということよりは、定額金納でなければならないという形を、ほかの形をも認めるということでありまして、耕作権の安定あるいは従来の農地法のたてまえといいますか経緯等からいたしましても、私は現在の罰則をなくすということでは考えておらないわけでございます。
  120. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 農地は耕作者に有利でなければならぬ、そこに自作農優先の措置をとってきたわけですね。今度、先ほど一番最初私が申し上げたように、借地農業になる可能性がある。自作農にはならないし、中核農業ということにもならない、借地農業という方向でいくならいざ知らず、やはり耕作者の権限を守っていく、農地は耕作者のものである、こういう原則論から言えば、この賃貸方式は長く続けるものではないと思うのですね。これがもう長く続けば弊害が起きる可能性がある、私はそう思うのですね。  それから、いつまでこれを続けるかということは、この法案審議の中でお互いに考えてみなければならない問題だと思うのですが、この点について、長く続けるものと思われるか、原則に立ち返って、農地は耕作者のものとして賃貸方式は早く打ち切るべきか、長く続けるべきか、その見解を聞いておきたい、こう思うのです。
  121. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 私ども、今後とも農地法の自作農主義の基本はこれは変わらないと考えております。  今回借地を流動化一つの有力な形としてこれを進めるということにいたしております。これは何も今回初めてではなくて、従来からもこの政策は推し進めてきたところでございますが、これを短期のものとしていずれはなくす方向で考えるかどうかということでございますが、私どもは、自作農主義のたてまえのもとでも、やはり新しい情勢の変化というものを加味して、農地法自身の使命としてそういう借地の形も認めるということは何ら差し支えない、今後恒久的に続けていくべき性格のものと考えております。自作農主義が基本であることが変わらないというのは、私は、実態的にも、現在借地でもって、これはやみ等も含めまして、利用権設定されておるものは全農地の約七、八%程度でございますし、それから、借地で規模拡大を図っていきたいというものも、多くの場合全く借地だけで経営しているというようなことはなく、これはやはり自分の持ち地をベースにいたしましてその上に借地を継ぎ足していく、そして規模拡大を図るというのが実態でもございます。そういう意味で、観念の上でも、それから実態の上でも、私は、自作農主義をベースにして新しい時代の要請を取り入れて借地で農業を営むということを認めていくことは、これは今後とも恒久的に続けて差し支えないというように考えております。
  122. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 時間が来ましたから、大臣に最後に聞きますが、この利用増進法は、政令で定める部分が多いですね。政令を出すのが本当なんです、法案と一緒に政令を出すのが。われわれに参考資料として出す。それを出さないで早う通せ通せと言うのは、ちょっと虫がよ過ぎるという気がするのです。政令をあすならあすまでに出すのか、それをはっきり大臣、明確にしてもらわないと、われわれも決断を下すのにちょっと困る。
  123. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大変おしかりをいただいて恐縮でございます。  私ども実は用意はいたしておりますので、委員会から御要請があればいつでも出させていただきます。
  124. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 きょうじゅうにでも出してもらわないと、この利用増進は具体的に実行行為に入るわけですからね。農地法と違って、農業委員会法と違って、利用増進というものは具体的に。  それから、もうやる方法について項目にちゃんと書いてはあるわけですから、政省令、ちゃんと政令を出してもらわないと判断がつきにくい。政令も出さずに早う法案上げてくれと言うのは虫がよ過ぎるという気持ちで、もやもやとしておったが、いつでも出す、こう言われたのだから安心しますが、早急に、きょうじゅうに出してもらいたい、こう思います。
  125. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 きょうじゅうにお出しいたします。  それから、柴田先生、まことに申しわけありませんが、私、担当局長として当然答弁すべきところを落としておりましたので、私どもの主張になりますが、申し上げさせていただきたいと存じます。  それは、先ほど時限立法にすべきであるというお話でございましたが、私ども、現行法が時限になっていないのにこれを改めて時限にする法律的な理由はないというふうに考えますのと、それから、時限を仮に十年というようなことをいたしますと、むしろ借り手が非常に不安定な状態になる。事実上もこの農用地利用増進法がその点は実効の意味を失うというふうにも考えますので、時限ということでは考えておりません。
  126. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 終わります。
  127. 内海英男

    内海委員長 近藤豊君。
  128. 近藤豊

    近藤(豊)委員 まず、農業委員会に関する改正案について関連してお尋ねいたします。  この農業委員会が、今回の農地三法の改正の結果、農地利用権の集積がどんどん進みそして合理化が進んでいくために一つの大きな役割りを果たしてもらおうということであると思うのですけれども、具体的にこの農業委員会がどのような役割りをこの農地法改正との関連で果たすことが予定されているか、ひとつこの点についてまずお答えいただきたい。
  129. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業委員会は、従来から農地法の俗称番人ということで、その権利移動あるいは転用等に対して規制の実効上の立場で働いてこられたわけでございますが、単にそういう農地法の規制ということだけでなしに、むしろ積極的に農地を有効に利用するためにはどうあるべきかと、地域全体としての有効利用を考える。そのためには、出し手を発掘し、これを受け手に取り継ぐ、そういう実効上の問題、農地のあっせんというようなことにもお働き願ってきて、これがだんだんその役割りが大きくなってきているところでございます。そういう実態もございまして、農用地利用増進事業が誕生し、また今日大きく改正案でその飛躍的な拡充を見るということになってきたわけでございます。  そういうことになりますと、農業委員会の役割りについては、これをもう少し法律上もはっきり権能を明らかにする必要があるということで、市町村の立てる農用地利用増進計画につきましては、市町村自身がこれを作成するのでございますが、農業委員会の決定を経るということを条件にいたしております。  そのほか、農業委員会法自身も改正いたしまして、法律上この農用地利用増進法に基づ事業を必須の事業として委員会法の所要の規定の改正を行うということにいたしております。そのほか、関係の所要の整備を行うということで、権能的にも、それから実体組織の上でも、これは農業委員会法自身の改正を経済局の方でもってお考えでございますが、整備を行うということにいたしておるところでございます。
  130. 近藤豊

    近藤(豊)委員 農業委員会の実際の活動ぶりというのが、やはり地域によってずいぶん違っていると思うのです。私の郷里の方でも、中には農業委員の面々が非常に地域の指導的な役割りを果たされて、そして農地の集積に、利用権の集積等に、もうすでに大きな役割りを果たしておられるところもあります。しかし、打ち見るところ、大体はまず御老体が一種の名誉職として農業委員に選出をされる。場合によってはもう部落で話し合いで、次はおまえの方から出せとか次はあの人だと決まっているような状態もあるわけなんです。  ざっくばらんに申し上げますと、農業委員会は、確かに重要な機能をいままで果たすべきであったし、今後この農地三法の改正後の新しい事態に即応して、もっと大きな積極的な役割りを果たすことが本来期待されてしかるべきである。また、それを政府の方も望んでおられると思うのですが、現在のような農業委員の名誉職的な社会での受け取り方、あるいは出てきたものについて審議をして許可をするんだというような立場だけで、果たしていいものだろうか、農協の役員ももちろん中に入っておるわけなんですけれども、それだけでは不十分である。そうすると、どうしても地域社会でいわゆる篤農家として声望の厚い人、しかもその地域で尊敬を受けているような人がどんどん積極的に農業委員としてこの地域を指導していく、そういう立場が必要だと思うわけなんです。そこに新しい農業委員会の機能というものを位置づけることができないだろうか、この点についての御意見をお伺いしたい。
  131. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農業委員会の組織につきましては、従来からいろいろな面でこれを強化し、その使命の自覚を促すようにいたしてまいったわけでございますが、確かに、先生おっしゃいますように、地域によりましてはその活動が不活発という評価をせざるを得ないところもございまして、数ある農業委員会の中には、必ずしも私どもが満足し得る状態で活動が行われていないというところもあろうかと思います。  私どもといたしましては、今回この法改正を機に、単なる農地の権利移動その他の問題だけではなくて、非常に重要な使命を帯びるということになりますので、これを機会に、さらに一層農業委員の方々の使命の自覚を促しまして、本来の活動を十全にいたしてもらえるように指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  132. 近藤豊

    近藤(豊)委員 もしそういう重大な使命を期待をしているのだとすれば、やはり農業委員がかなり時間を割いてその仕事をしてもらうことが必要になってくるわけなんです。ところが、名誉職的な形でいま位置づけられておりますから、報酬などというものもほとんどスズメの涙と言っては悪いのですけれども、名目的なものである。この点で、もっと報酬を大幅にアップして、そして、農業委員というのは大変な仕事なんだ、これはどうしてもその地域のりっぱな人が出てやらなければいけないんだということで、初めてまた公選法の対象となっている公職であるということも意味が出てくる。しかも、いまのような三万円だとか二万円だとかいう、あるいはせいぜい四、五万円の報酬では、大体そんなものだと思いますけれども、なかなかそういう位置づけがむずかしいのではないかと思うのですが、その点いかがですか。
  133. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 確かに、農業委員会の委員の手当が常識的に考えて余り高くはないという御批判があろうかと思いますけれども、実は農業委員の手当総額で総計二十億を計上いたしておるわけでございます。何分にも人数が六万六千ということでございますので、なかなか一人当たりの単価が高くないという状態でございます。  ただ、もう一つ申し上げておきたいことは、市町村段階の行政委員会で国庫がその手当を出しておりますのは、農業委員会とそれから漁業関係の委員会だけでございまして、実は非常に異例な手当をしているという状況でございます。また、私どもといたしましても、この手当の水準を引き上げますために努力はいたしてまいりまして、たとえば国家公務員の給与の比率のアップに比べますとはるかに高い比率で、一応一〇%を超すような、年によっては二〇%を超すような状態で引き上げをやってまいったわけでございますが、その結果この数年で二倍くらいの手当になっております。しかしながら、単価そのものとしては、先生も御指摘のようにまだまだ低い状態でございますので、予算のことでございますから一挙に飛躍的なということはなかなかむずかしゅうございますが、私どもといたしましても、先ほども大臣からも御答弁がございましたように、農業委員会経費充実の中でひとつ今後とも努力してまいりたいというふうに考えております。
  134. 近藤豊

    近藤(豊)委員 二十億という予算が小さくない予算だということはよくわかります。そこで、この経費の分担は国が出している部分と市町村段階で出している部分と両方あると思うのですね。それに対してさらに農民自身が一部の経費を負担をする、拠出をするというようなことについては検討しておられませんか。
  135. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農業委員会経費の負担の仕方でございますが、基本的には、農用地の権利調整等にかかわりますいわば国の委任の事務というものにつきましては、全額国庫負担するという形になっておりまして、委員の手当及び職員の設置費につきましては国が全額これを見る形になっております。  ただ、このような農地関係を中心にしましたいわゆる六条一項の法的に義務づけられた事務以外の事務につきましては、これは交付税の交付金額で見ることになっておりまして、先般公述人の方が、国から交付税の交付金で来ている部分につきましては御存じなくて、町村でこれを完全に負担しておられるようにおっしゃっておられましたけれども、実はこれは一般交付金の中に入っておるものですから、町村長としてはそれがはっきりおわかりにならなかったという結果だと思います。これは標準財政需要を計算いたしまして一定の額を各市町村に配っておるわけでございまして、さような意味では、私どもはこの基本的な経費の負担の考え方につきましてはこれを変える必要はないというふうに考えております。しかしながら、これからはさらに利用増進事業等につきまして非常に重要な使命を負うわけでございまして、さような観点から考えますと、どうしてもその業務に着目した経費の増大というのは当然あるわけでございますから、そのような面に特に留意しながら、今後の農業委員会の助成措置というものはこれを改善するように努力してまいりたいというふうに考える次第でございます。  なお、都道府県段階あるいは全国の農業会議所の段階におきましては、各団体からの拠出金等の制度もございまして、これによりまして財政をもたせているということもあるわけでございますけれども、何分にも農業委員会それ自身につきましては、これはやはり行政機関でございますので、基本的には国なり県なりあるいは市町村といったようなところがこれを分担して持っているという考え方でいくべきだと思います。
  136. 近藤豊

    近藤(豊)委員 いままでの御説明でまだはっきりとした方向がもう一つよくわからないのですが、そうすると、こういうより強化された農業委員会の役割り、それからより重大な期待をかける農業委員会、その農業委員の面々に対して——定員が今度十名減ったわけですね。定員は減ったのですが、その一人一人の委員により大きな仕事を期待するということの裏打ちとしての、その待遇の改善については、これを具体的に進めていくということですか。
  137. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農業委員の手当につきましては、先ほども申し上げましたように、いままでも一生懸命その増額に当たってまいりましたけれども、今後ともさらにその改善につきまして努力をいたしたいということでございますし、また、実際に農地流動化を図りますために農業委員の方々が御活動を願う業務に着目した経費につきましては、当然不足にならないように、われわれとしては、今後とも予算の面におきましてその改善に努力をいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  138. 近藤豊

    近藤(豊)委員 いわゆる報酬そのもの、二十億、これを上げようということは財政当局としょっちゅう——恐らくこういう種類のお金はびた一文上げてはいかぬということだろうと思うのです。しかし、業務の方の仕事に直接かかわる面でより活動がしやすいように、実際にいつもただ働きだという考えにならないように見ていく、こういうことですね。
  139. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 前者の、農業委員の手当につきましても、実は毎年これをアップしてまいっておるわけでございまして、たとえば五十年には対前年比二三%アップ、五十一年が一五%アップ、五十二年は会長の方が二一%、委員の方が一〇%アップというようなぐあいに、また五十三年も会長一五、委員一〇、五十四年も会長一〇、委員七、五十五年は財政的な事情が非常に厳しかったのですが、そのようなもとにおきましても会長七・一、それから委員五・〇ということで、毎年アップをしてまいっております。このような努力は今後とも続けますということを申し上げておりますと同時に、また、業務に必要な経費につきましても、これが改善に努力したいということを申し上げておるわけでございます。
  140. 近藤豊

    近藤(豊)委員 しかし、要するにある意味において飛躍的にこれを増大するということはなかなか困難である。そうしますと、今後たとえば、恐らく引き続き公選法の対象として農業委員の選出が行われていくだろうと思うのですけれども政府としてはどういうような手段で、あるいはどういうような呼びかけをして、この農業委員により実質的な働きをする人が出てきてもらえるように図るおつもりですか。大体は順繰り、名誉職、御老体の暇つぶしの面がかなりあるので、それをどうやってもっと実質化するかということです。
  141. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 先ほど私が予算の継続性があって飛躍的に増大していくことはなかなかむずかしいと申し上げましたのは、委員の手当でございまして、たとえば農用地の利用増進のための所要の経費というものは、これは新しい事業でございますから、こういうものにつきましては、私の局の所管ではございませんが、農林省全体としてやはり相当これを充実していくということでやっていくべきだというふうに考えます。これが一つございます。  また、やはり農業委員の方々が、今回の法律を契機にいたしまして、その仕事が非常に重要であるということを自覚していただくということが非常に重要だと思います。さような意味で、研修事業充実だとか、あるいはさらに諸般の指導を加えていきますことによってその使命を自覚していただき、また、そこで選出されてこられる方々につきましても、より農業に、またこのような農地流動化のために非常に重要な使命を持っておられるという方々農家方々から選出していただくという方向で、指導を加えてまいりたいということを考えておる次第でございます。
  142. 近藤豊

    近藤(豊)委員 農業委員会については以上で終わります。  さて、今回のこの農地法の一部改正法律案提案理由説明の中に、今回の改正は、わが国農業の体質を強化し、総合的な食糧自給力向上国民生活の安定を図る、これが農政の基本目標であり、これを実現するためのものだというふうに書いてあります。そこで、つい最近発表されたいわゆる農業白書によりますと、昨年の一年間にその前の年度と比べて、一般の勤労者家庭の消費支出と農業をやっている人たちの消費支出とのギャップが開いてきておる。つまり、農業をしている人は都会の労働者の家庭よりも消費支出がふえているのだという数字が出ております。たしか一〇・数%から今度は一二・五%にギャップが開いているように思いますが、今後国民の支持を得ながら農政が進められ、かつわが国の食糧自給体制というものが強化されるためには、余りギャップが開いてまいりますと、非常に国民の他の層からの支持が得られなくなる。これはやはり、常に農業をしている人たちだけがよくなるようにわれわれは考えればいいのではなくて、国民全体の合意というものを確保していくことが必要なんですから、そういう面で、今回のこの農地三法の改正ということの一番の主眼は、耕作規模の拡大にあり、農産物のコストの低下にあると思うのです。まず第一にそういう了解を私はするのですけれども、その点間違いないかどうか、この点、ひとつ大臣から御確認をいただきたいと思います。
  143. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これからの日本農業の体質強化という面においては、いま御指摘のように、生産性を高め、結果的にはコストが安くなるということば当然あるわけでございます。ただ、コストを安くすることは必ずしもコストを安くしたものが全部消費者に還元するというふうには私どもは考えていないわけでございまして、やはり生産意欲を持っていただくためにも、いま御指摘のように、国民の理解を今後得ていくという中においては、農産物価格というものは非常に安定をしていかなければならない。安定をしていくためには、できるだけコストを安くつけて、そして生産者の手取りもふやし、消費者にもそれがある程度は還元されていくというところに、国民の合意のうちに日本農業がより発展をしていくのではなかろうかと考えておるわけでございまして、そういう意味においては、コストの引き下げというのは私どもは考えておるわけでございます。
  144. 近藤豊

    近藤(豊)委員 そうしますと、まず対象面積がふえていく。そこでつくるものが問題になります。御承知のように、いま日本の穀物の自給率というものが、常識では考えられないぐらい非常に下がっております。三〇%台の下の方に張りつきかけておる。しかも、それが上がる見込みが当面ない。そういうときですから、これからはどんどん飼料作物をつくるということがまず一応の線だろうと思うのですけれども、その場合に、何といっても財政支出が非常に左右されるのは米価との関係だと思うのです。生産者米価などを今後も引き続き社会の情勢に合わせて引き上げが要求され、政府はそれを考えていかなければいけないのでしょうが、余り生産者米価を高いところに位置づけていきますと、ほかの穀物への転換が非常に苦しい、あるいは転換をしても金がたくさん要るということになって、結果的に投資効率が悪くなるわけなんですが、この生産者米価については、今後耕作の対象面積はふえるのですから、より大規模な水田耕作、大規模な米の生産家のコストを中心に考えていく方に次第にシフトしていくんだということを一応予想しますけれども、この点についてはどういう見通しを持って、今後の生産者米価の算定に臨まれるおつもりですか。
  145. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ことしの生産者米価をどうするかもまだ実は全く白紙の状態にあるわけでございまして、米価審議会も私ども大体七月と予定をさせていただいているわけでございますので、そのころになればいろいろとまた検討をしなければならないと思っておるわけでございますが、ただ、先ほども私ちょっとお答えをいたしましたけれども、これは日本の五十三年度の実績でございますが、五十三年産で十アール当たりの生産費でございますと、たとえば〇・五ヘクタールから一ヘクタールまでの間のところが十四万八千十三円、六十キロ当たりでございますと一万七千二百十一円とついております。それから、これがたとえば二ヘクタールから三ヘクタールぐらいのところでございますと、十アール当たりの生産費が十三万三百八十四円、一俵当たり、六十キロ当たりが一万四千四十五円。これが五ヘクタール以上になりますと、十アール当たりの生産費が十二万三千八百五円、一俵当たりが一万二千百十八円と、やはり規模によって生産費が非常に変わってきておることは明らかでございますので、将来、稲作も含めてやはりこういう土地利用農業においては規模の拡大を図っていただくことが、結果的には生産費が非常に安くつくということだけは言えるのではなかろうか。その辺を踏まえながら、今後経営規模拡大をお願いし、また、将来米価を決める上に、いま御指摘のようにいま上げようとしたってなかなか上げられないということになれば、農家の手取りをふやすということになれば結果的には経営規模拡大をしていただいて、そこで米作も含めてやっていただくということが、農家の手取りがふえるということにもなっていいんではなかろうか、私はこう思っておるわけでございます。
  146. 近藤豊

    近藤(豊)委員 そこで、いまの大臣のお話はよくわかりますし、そのとおりだと思うのですが、米価の算定基準というのが一般国民に非常にわかりにくくて、私も一度もわかったことがないわけですけれども、米価の算定基準というものがまたしょっちゅう変わっている。もう少し国民全体がわかりやすいような算定基準で、しかも基準は余り変わらないんだ、いろんなそこに入ってくるファクターが、数字が変わるだけだというようなことができないものかと思うのですが、この米価の算定基準を国民にわかりやすくさせる努力のあり方いかんについて、あるいはそういうことはできないのか、これまでどおりでやるのか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  147. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 米価の算定につきましては、従来から、その時点におきます米の需給事情その他経済事情というようなものも参酌しながら計算することになっておりますので、このような米価をめぐる状況が変化するに応じまして、算定方式というようなものがある程度変わってくるということもやむを得ないものと思っておりますが、しかし、基本的には食管法に定められました再生産を維持するという考え方に立っておることは変わっておりません。
  148. 近藤豊

    近藤(豊)委員 これは簡単なことではないと思いますから、もちろんいま議論を詰めることはできないと思います。しかし、今後はだんだんいわば締まりん坊の時代になっていくと申しますか、非常に景気のいいことばかり言っていられない時代だと思います。そうしますと、国民各層は、それぞれ自分以外の層に対して政府が何をしておるかということを、ウの目タカの目で見詰めていく時代になりますので、米価などについても、素人の一般国民にわかりやすいような算定基準をつくり、かつ説明の仕方についても考えていただきたい。これは私の要望であります。この点についてもひとつ御見解を承りたいと思います。
  149. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 米価の決定につきましては、御案内のように、米価審議会の議を経て定めることになっておりますので、その米価審議会には各層の方々にも参加していただいておりますので、そのような機会を通じましてできるだけわかりやすい米価算定にしたいと考えております。
  150. 近藤豊

    近藤(豊)委員 先ほどの大臣の御答弁にありました、規模の拡大がコストを下げていくことになる。そうしますと、一つ大事な問題として、飼料米の問題があると思うのです。米は、食べる米だけではなくて、飼料米はずいぶん荒っぽいやりようでも強力に生えてくるものだと思いますが、飼料米について、まだもう一つ農林省の中では見解が一致してないやに聞き及びますけれども飼料米を取り上げてこれをどんどんつくることについてはいかがお考えなのか、何かそれにまだ解決されない、あるいは見解が統一し得ない障害があるのか、その辺についてひとつお答え下さい。
  151. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 飼料米につきましては、従来ある水田をそのまま利用できるというメリットがございますし、また、従来稲作の技術は相当進んできておりますし、また農家もなれておられますので、いわゆる水田利用再編対策の一環としてもぜひ飼料米をやるべきではないかという声が強いことは、私どもよく承知をいたしております。それがうまくいければ大変結構なことだと思うのでございます。  ただ、問題は、いままで私どもそういう点で技術的にも研究をいたしてきておりまして、農事試験場でも研究をいたしておりますし、北陸あるいは九州の試験場でも研究をいたしておりますし、また県によっても研究していただいておりますし、民間でも研究していただいておるわけでございます。しかし、いままでの試験結果では、たとえばトウモロコシでございますと、いま外国から入ってきておるものが大体トン三万円前後で入ってきておるわけでございまして、それに近い数字がなかなか出てこないというのが大体いまの結果でございます。こういうコストがまだ大変違うということが一つと、それからもう一つは、世界のどこの国でも、小麦などの場合は、主食用といいますか、食糧用とえさ用と、国によって振り分けてうまくやっておられるようでございますが、お米については、まだそういう国がどこにもないようでございます。そういう点から考えると、その識別の問題、いわゆる主食である米の流通とどう違えてそれが流通していけるのかどうか、こういう点もあるものでございますから、なお今後相当検討をやらなければいけない問題であろう。しかし、いろいろの御熱心な声もございますので、私どもといたしましては積極的に取り組んでいかなければならないと思っておりますし、私自身も、できる限りこれから機会を見ては現地を見せていただき、また非常に御勤熱心にやっておられる技術屋さんの御意見どもひとつ率直に承って、検討の材料にさせていただきたい、こう考えておるわけでございます。
  152. 近藤豊

    近藤(豊)委員 コストがメーズだとかあるいはマイロなんかよりもかなりまだ高いんだ。しかし、それは対象面積が非常に広くて、そしてたとえば種をまくにもべたまきでずっとまくんでしょうし、いささか飛躍をしているかもしれませんが、その場合にうんと広ければ、ヘリコプターを使ってまくこともできましょうし、それから刈り取る場合も、相当機械が楽に使えるのじゃないかと思うのです。そういうようなケースを考えても、なおかつ高いということですか。それは場合によっては事務局でも結構です。
  153. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 御承知のように、アメリカでトウモロコシなどを栽培されておる地方は大体四、五百ヘクタールと言われておるわけでございまして、たとえばどこか非常に平たんなところが、それこそ集団栽培で、私はその四、五百ヘクタールも必要ないと思うのでございますけれども、何か将来みんなが、その地域農家の方が本当に全部えさ米をつくろうというお気持ちになられて、いまおっしゃられるようにヘリコプターで散布できるような体制ができれば別だろうと思いますが、私どもでは、とてもそこまではなかなかいかないのじゃなかろうかという判断でおるわけでございます。また、そのヘリコプターでやるとなると、果たしてそれじゃトン三万円に近いようなものにつくのかどうかもわからないわけでございまして、もう少し検討してみなければならないので、そのヘリコプターでというようなところまでは、実はまだ検討は進んでいないということだけは事実でございます。それだけは申し上げておきます。
  154. 近藤豊

    近藤(豊)委員 いろいろな作物についての経済性との関連はあると思いますが、今後大規模な耕作をどんどん進めていくということだと思いますが、やはり何かつくり出すと、あちこちでつくり出すから過剰になってしまう。私の郷里などもミカンをやっておりますが、ミカンをつくれということでつくったら、過剰になって捨てなければならない。あるいは現在豚がふえ過ぎて値段が下がっちゃって、これはどうしてもペイをしない。こういうことを繰り返しておりますとどうしようもない。ましてや、規模が小さいうちはいいんですけれども、規模が大きくなってきて、なおかつそういう失敗をやらかしますと、取り返しがつかなくなると思うんです。  そういうことを勘案しますと、どうももっと一つ一つ作物についての計画生産と申しますか、需給をある程度予測を立てて、それによって適地適作の原則にのっとって、場合によっては地域分けをして作物を決める。その地域分けをするときに、地域で格差が出る場合には、それについても行政措置をとって平均化を図りながら計画生産をしていく方向が必要じゃないかと思うのです。その点についてはいかがでありましょうか。
  155. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、完全な計画経済を農業にも持ち込むことは考えていないわけでございます。そういう面において、完全な計画生産、一〇〇%フィットしたものというものはできないと思うのでございます。ただしかし、農家の皆さんがやはり希望を持ち、安心をして生産に従事をしていただくためには、非常に需給のバランスが崩れるというようなことは避けていかなければならないことは当然でございます。  そこで、いま農政審議会でも御議論いただいておりますが、作物ごとに六十五年度を目標年次とした長期需給見通しを検討いただいておるわけでございまして、それが夏には大体結論が出てくると私ども聞いておるわけでございます。そこで、そういうものが出てまいりましたところで、私ども長期需給見通しのしっかりしたものをつくらなければいけないと思っております。これは国全体の見通しでございます。  もう一つ、最近北海道研究会というのをつくっていただいた。これは北海道から御要望がございましてつくりました。これは、北海道という地域が、将来日本の食糧基地として、どの程度何をつくったらいいのかということを議論をしていただいておるわけでございます。私は、この考え方をより進めて、できれば農政局単位くらいに、それぞれのブロック単位の、そういう長期の国全体の需給見通しを受けて、その地域地域は大体どういうものをどの程度つくったらいいか、いま御指摘の適地適産の考え方に基づいてそういうものをつくっていただいたらどうだろうか。  一方においては、地域農政ということで推進をいたしておりまして、それぞれ集落ごとに、お互いに今後の農業をどう持っていくべきかということをいま議論をいただいておる、そういう点には、私ども助成をさしていただいておるわけでございます。そういう農家ごとの考え方と、そういう地域的なものとがある程度かみ合っていくならば、調整されていくならば、従来とは違って、それぞれのものがそれぞれ適したところで、全体的な量としてもそう大きく需給のバランスが崩れないような形でつくっていただけるようになるのではなかろうかという考え方を私どもは持っておるわけでございます。
  156. 近藤豊

    近藤(豊)委員 地域的に事情を踏まえながら適地適作でやっていくということは、私は非常に建設的なことだと思うのですけれども、やはりどうしてもある程度地域のばらつきが出てくるのですね。そこで、おれの地域はこれをやった方が得だ、いやこの作物の方が得だということが出てくる。それに対して、政府が財政資金で少し平衡化を図ってやることも恐らく必要になってくるのではないかと思うのですが、農林水産省として、ある程度の、全国での適地適作によるそういう設計図のようなものはまだ作業はしておられないのですか。
  157. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ですから、いま申し上げましたように、六十年のが狂ってしまったわけですから、今度は六十五年の目標を、極力狂わないようなものをつくろうということでいま作業を進めさせていただいておる、こういうことでございます。
  158. 近藤豊

    近藤(豊)委員 次に、やはり需要と供給の問題に大変関係があると思うのですけれども、米の輸出について、最近米国からクレームがついて輸出を減らされるということなんですが、これは、売っているからマーケットで競合する。しかし、これを本当に食べられない人に無償で援助するならば、それについては米国はそれほど反対する理由はなくなるわけです。なぜ、これをどうしても売らなければいけないのか。同時に、日本は援助では大変けちん坊な国だということで国際的にもひんしゅくを買っておる。これがたとえ安い価格で、しかも三十年間の長年の延べ払いで売ってやっても、売ることは売ることなんですから、買う方はそれほどありがたいと思わない、あるいはありがたいと思う度が少ないと思う。ですから、これは財政当局と協議が必要ですが、むしろ無償でやるのだということに政治の一つの姿勢として踏み切ること、それは将来の日本にとって保険の意味もある、それから同時に耕地を確保していく、ある意味においては水田を温存していくことにもなると思うのですけれども、その点どうしていつまでも売るということにこだわられるのか、ひとつ無償でやるということに踏み切られたらいかがなものでしょうか。
  159. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども、今度の日米の過剰米処理の話し合いにおきましても、無償援助については、アメリカも何も数量はこだわらない、一応年五万トン平均ということで協議はいたしましたけれども、相手国からどうしても無償援助でというようなものがあれば、増加することについてはアメリカも了承しておるわけでございます。日本側としてはいま、そういう声が出てくれば喜んでさせていただいておるわけでございますが、ただこちらからばらまきで、全部ただでやりますというわけには、それこそ財政上の問題がございましてなかなかいかないわけでございます。そうなれば、ただでなら国内でももっと何か使えるということになるのかもしれませんし、その辺、果たして国民的な合意が得られるのか。こちらから積極的に世界に呼びかけて、どんどん米をただで出していくというのは、なかなか国民的合意も得られないのじゃなかろうかという感じがいたします。しかし、いま申し上げましたように、お困りになっている国があって、どうしても無償援助をしてほしいということがあれば、これは今度の協議が整った年間五万トン平均というものにとらわれないで出していく、私どもはこういうつもりでいるわけでございます。
  160. 近藤豊

    近藤(豊)委員 そうしますと、五万トン以上にもし非常に要望が強く、かつその地域が困っていることが客観的にわかれば、無償の援助の米の量というのはどんどんふえ得る、たとえば古米、古古米、特に古々米などはもっともっとこれからやってもいいわけですけれども、そういうことですか。
  161. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまお答えをいたしましたように、一応日米間では五万トンという協議をいたしましたけれども、本当に食糧に困っておる国で餓死者も出るような状態で、これはぜひ無償でということになってきた場合、それについては私ども応ずる、喜んでお出しする。ただ、こちらから積極的にいくということは、国民の合意もなかなか得られないだろうし、特に財政的に問題があると思います。そういうことでございますので、向こうからおっしゃってこられた場合、これは国際的に見ても、たとえばいまのカンボジアの問題もそうでございますし、そういうような点についてはできるだけ私どもは協力をしていきたい、こう思っておるわけでございます。
  162. 近藤豊

    近藤(豊)委員 いまの問題は大変エンカレッジングなお話ですので、大いに今後そういう方向が進むように期待いたします。  さて、もう余り時間がありませんが、小作料の物納が今度の改正でできるようになる。これはいわゆる食管法そのものがなし崩しになる可能性も一部に出てくるのではないかと思うのですが、食管法との関係をどのように考えられて政府は今回物納に踏み切る決意をされたのか、そこを伺いたいと思います。
  163. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 今回の改正案の中に、物納によって米が動くということの規定があるわけでございますが、私どもといたしまして、この数量は飯米程度のものということで、余り大きな数量にはならないであろうという前提で考えております。  そういう前提のもとで考えますと、食糧管理法の現在の規定の中で、そのような譲り渡しに関する例外規定を設けることができることになっておりますので、そのような規定を設けていけば、食管法を崩していくというようなことがなしに流通の秩序が保てるものというふうに考えておるわけでございまして、そのような具体的な規定といたしましては、やはり売り先及び流通のパイプ、流通の流れを明確にしていくということを、食管法基づきまして規定をしていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  164. 近藤豊

    近藤(豊)委員 もう一つ農業生産法人の要件が今度緩和されるわけですけれども、この緩和によって、全く農業と関係のないところが利用権を取得して、そして農業に大資本で参入してくる、あるいは参入してくるふりをして実はほかの目的利用権の集積を行う、そういう可能性があると思うのですけれども、それはどうやって防遇をされるつもりですか。
  165. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 今回の法改正によって農業生産法人の要件が改正されました場合、この農業生産法人が農地を取得するときには、農地法基づいて農業委員会なりあるいは都道府県知事の許可を受けることが必要となっております。その許可に当たりましては、慎重な審査判断がなされて、それから農業生産法人の要件について詳しくこれをチェックするということになるわけでございます。つまり、要件として三つあるわけでございます。当該法人の事業農業及びその付帯事業に限られているか、それから構成員のすべてが農地の提供者もしくは当該法人の事業に常時従事する者であるか、三番目に、業務執行権を有する構成員の過半が常時従事者であり、かつ、当該法人の事業に必要な農作業に主として従事する者であるかを厳重に判断することとなっております。したがいまして、農外資本による農地買い占めに悪用されることはまずないと考えますし、また、私どももそういうことのないように指導してまいりたいと考えております。  それからまた、こういうふうにして農地を取得して農業生産法人が事業を行うということになりまして、途中でその要件を欠くようなことが生じた場合、あるいはチェックで見抜けなくてそういう事態が後でわかるというような場合もないとは言い切れません。そういう場合、その要件を欠く当該法人が所有権もしくは使用収益権を持っている農地等については、農業委員会が公示して一定期間内にこれら農地等を処分するということになっております。その処分が行われないときは国がこれを買収するという非常に強権的な規定もあるわけでございます。国としても、農業生産法人の要件緩和に伴って皆様方御心配のようなことが起こることのないように、厳正に審査、処理して過ちなきようにすることを都道府県なり農業委員会に指導してまいりたいと考えております。
  166. 近藤豊

    近藤(豊)委員 終わります。
  167. 内海英男

    内海委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十一分休憩      ————◇—————     午後四時二十六分開議
  168. 内海英男

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日野市朗君。
  169. 日野市朗

    ○日野委員 私の方から、まず、主として農用地利用増進法案に関して質疑をいたしたいと思います。  現在までの農振法による事業でありますが、一応この農地流動化というのはかなりの実績は上げたように見受けられます。五十年に十一ヘクタールから五十四年にはもう一万二千四百十八ヘクタールまでということで、総計しますと二万四千三百ほどの面積が一応流動化しているのでありますが、私この数字を見て、これは実績が上がったと評価すべきものなのか、遅々として進まないというふうに見るべきなのか、実はちょっとわからないのです。これは農林省どのように見ておられるのでしょう。     〔委員長退席、津島委員長代理着席〕
  170. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 四十五年の農地法改正、五十年の農業振興地域の整備に関する法律、これらによりまして、従来から農地流動化対策を講じてまいっているところでございます。いろいろな対策を講じましたが、それはそれなりに何がしかの効果を上げてはきましたもののいずれも不十分、特に農地信託制度のように、制度はあってもほとんどその実績が上がらないというようなものもあったわけでございます。そういったものの中にありまして、農用地利用増進事業は、それらよりはるかに大きな流動化実績を上げたという意味ではかなりの成果を上げ得たと思っておりますが、私ども、一般的にもっと広範な農地流動化、規模拡大を実現したいという観点からいたしますと、これはいまだなお決して十分とは言えない、さらに一層の拡充を図っていく必要があるというふうに考えております。従来のほかの対策に比べてはそれなりに相当の成績を上げ得たと思っておりますが、さらにこれを一歩前進させたい、このような評価をいたしております。
  171. 日野市朗

    ○日野委員 ある程度の農水省側の努力というのはわかるのですが、現実にどのような努力がいままで農地流動化のためにとられたのであるか、それを少し具体的に伺いたいのです。それはいろんな補助金とか助成等々もありますが、具体的に各第一線の現場でどのような努力をされたかということを主として伺いたい。
  172. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 この事業は、ほかの予算的なあるいは行政指導上の各種の事業と相まちまして成果を上げ得たことは申すまでもございません。特に五十年度から、地域農政特別対策事業というものを実施いたしておりますが、これによりまして、市町村農業委員会農協等の関係機関が一体となった推進体制が整備されるに至っております。こういう一体的な推進体制を基礎といたしまして、集落座談会等を通じて農家制度趣旨がだんだん浸透していった。そして、全般的に農地流動化の機運が醸成されてきたということが言えると思います。  それから、五十四年度には農用地高度利用促進事業というのが始められております。この事業によりまして、農業委員等農地流動化推進員、こういった方々の貸し手と借り手のいわゆる掘り起こし活動が積極的に展開されるようになりました。それと、その掘り起こしによって実際に賃貸借に踏み切ったケースがある場合は、貸し主に対して流動化奨励金、これは十アール当たり、賃貸借期間三ないし五年のものは一万円、六年以上のも一のは二万円という単価の奨励金を出すこととしたわけでございます。こういった行政体制の上であるいは予算の上でそれなりの手当てが行われましたことが、一つはあずかって力があったというふうに理解いたしております。
  173. 日野市朗

    ○日野委員 これだけいろいろの手当てをやって、そして五十一年から流動化の進行状況を見ますと、やはりそれぞれの手当てをしてくれば一応の成果は上がるというところは、私はそういう評価を加えてもいいのではないかというふうな感じが実はするのであります。  それで、私ここで、ちょっと疑問に思わざるを得ないのは、一応こうやってある程度農地流動化が進行してきた。そこで法律を新しく出してきたという点が、私どうも納得に苦しむ点なのであります。いままでの農振法の線を守って、それを改正するという作業で間に合ったはずではなかろうか。これを独立に農用地利用増進法というような法律を新しく出したという点が、何かそこに意味を持たせるのかどうか、ここらのところがどうもぴんとこないでいるわけです。その点ひとつお聞かせいただきたい。
  174. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまお話がございましたように、農振法の改正農用地利用増進事業をやってきた、その実績がせっかくいま上がりつつあるならば、それをより進めていけばいいではないか、新しい法律をつくる必要もないのではないかという御指摘かと思いますが、先生御承知のように、いまのところは農振地域の農用地だけを対象にして農地流動化を図ってきておるわけでございますが、われわれは、どうしてもそれだけでは十分でないのではなかろうか、どんな地域においても農地としてより集積化が図られていくことができるならば望ましいと考えまして、そうなると、たとえば市街化調整区域なども当然対象に入ってくるわけでございます。確かに農振法で市街化調整区域もその対象としては取り込み得ることは法律上はなっておりますけれども、御承知のように、市街化区域、市街化調整区域の問題というものは、一応都市計画法に基づいてできている地域だと私は思っているのでございます。確かに、取り込み得ることは取り込み得るわけでございますけれども、私どもは、一応やはりこれからそういう地域でも農業をやっていくところは農業をやってもらえるようにしていきたい。そうすると、都市計画法の地域ではあっても、できるだけそういうところをも農振地域から拡大をしていく、ということよりも、もっと進んで取り込んでいく法律を考えていきたい。こういうところに、今度の新しい法律を考えてきたという一つの、農振法の現在やっているものの拡大でやれなかったかどうかということについては、そういう考え方もあったということを、御理解いただければと思うわけでございます。
  175. 日野市朗

    ○日野委員 いま大臣も自認されましたように、いままでの農振法だって、市街化区域の農地についても取り込んでやっていくことは不可能ではないのだろうと思うのですが、一つの法律を新しくつくるということにはやはりそれなりの意味、かなり重い意味があろうかというふうにも思うのです。私は、そういう新しい法をつくるということはそんなに軽々しくやるべきことでもない。いままでの延長上でやれることであるならば、その延長上でできるだけ処理すべきだとも思います。それと同時に、新しい法律を一つつくり上げるということは、それによって何かいままでとは本質的に違った心構えであるとか、それから増進事業推進に当たってもいままでとは違ったシステムを何かつくっていくのか、そういう点をいろいろ考えざるを得ないのではなかろうかというふうに思っているのですが、そこいらはいかがなものでしょうか。
  176. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 新しい法律の形で今回の拡充を考えるに至りました一番主な動機は、いま大臣が御説明申し上げましたように、農振法ではどうしても地域が限定される。現在市街化調整区域の白地地域というのがかなり広範にございます。それから、農用地区域などと一体的に営農が考えられなければならないような、やや例外的ではございますが、市街化区域もございます。そういったところにおきましても、やはり利用権設定あるいは所有権の移転というものがそれなりに必要であるというような実態がある。そういった区域まで取り込むには、やはりいまの農振法の体系では不十分というよりできない部分があるということで、私どもはこの新法ということで考えたわけでございます。  同時に、いま先生が御指摘になりましたように、そのほか全体的な整備拡充、法体系として一貫したものを考えるということになっております。すなわち、地域全体としての効率的な農用地の利用を考えるということで、利用改善事業というものを新しくつけ加えることにしております。  それから、さらには受委託、これは、特別に従来は法制の対象としては農協の行うものが掲げられておりましたが、それだけではなしに、一般的な受委託、これを促進する事業、こういったものを取り込む、そういうことによって、地域の全体としての作付体系、農用地の有効利用、営農のルール確立といいますかそういう全体的なものを整備してまいりたい。従来から考えますと、そういう個別のものというよりは比較的地域全体のものというような観点に立って、この利用増進事業を組み立てていきたいというふうに考えている点が、新しい構想と言えば言えるわけでございます。
  177. 日野市朗

    ○日野委員 私も、経営規模拡大を積極的に進めていくという方向については、やはり一定の評価はせざるを得ないというふうには思うわけであります。ただ、従来と違って、今度は流動化についてもかなり多様な手法が用いられることになってまいるわけでありますし、新しい法律ができたということは、何といっても農林水産省の持っている気構えを示すことにもなるだろうというふうにも思うのです。それで、一面そういう規模拡大に向けての努力が進められることを祈りたいと同時に、もう一つの面で、私の脳裏には、農業を営んでいながらいろいろ複雑な思いを抱きながら農業をやっている農民の顔というのがどうしても離れないのですね。自分では農業をやっていて食えないからよその仕事を求めた。そして一応そっちで安定した収入もある。しかしながら、同時に農業に対する愛着を断ち切れないというような人たちもいるわけですね。どうもここの論議を聞いておりますと、専業だの、一兼だの、二兼だのということが農民グループを分ける際の仕分けの一つの方法として、ここの委員会なんかの論議の中では取り入れられているようですが、私は、この法律を見る限りでは、決してそれで区分けをしているものじゃないというふうに思うわけですね、一応下敷き的に政策的なそういうものは考えられていたにしても。そういうものではないだろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  178. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 御指摘のように、農家にはいろいろな農家がございます。兼業農家といっても、一兼、二兼、それから兼業が安定した農家もあれば、そうでない農家もある。そして、その農家の方もまた実にいろいろなことをお考えになっていらっしゃる。この法律では、そういった色分けをして、特別にある者だけを優遇するとか育てるという形にはなっておりません。ただ、私ども、実際に農地を提供してもいい、人に貸すようにしてもいいという考えを持っているのは、安定した二種兼業の農家であるというふうに理解いたしております。それから、また同時に、それを受けとめて、できるだけ規模拡大を図っていきたいというふうに考えていらっしゃるのは、いわゆる中核農家であるというふうに考えております。もちろん、それだけでなくて、一兼農家でも二兼農家でも、自分たちのやり方で規模拡大を図っていきたいという農家もあるわけでございます。そういった、とにかくまじめにもっと農業をやっていきたいという方を総じてこの対象とすることにいたしております。  ただ、観測といたしましては、やはりその相当部分のものは中核農家に借りられるような形になっていくだろう。そういう意味で、規模拡大中核農家という言葉が出ますが、それ以外の農家を決してなおざりにしているというわけではございません。  それから、地域全体として考えていく場合に、中核農家だけよければいいということでは、地域としては営農がうまく回っていかないというふうに思います。有効な土地利用を考える上でも、そういった兼業農家の中でも、みずからもまじめに農業をやりたいという農家、これをきちんと拾って——拾ってという言葉が適当かどうかわかりませんが、対象に入れて、一緒になってその地域農業発展さしていくということが必要であると考えております。
  179. 日野市朗

    ○日野委員 私、いまここでちょっと心配なのは、各地でいろいろな増進事業が進められる、そしていろいろな計画がつくられる。その中で、二種兼業農家の方に強い圧力がかかって、あなたは二種兼業農家なんだから農地の出し手になるべきだというような運営が進んでいく。ひょっとするとそんな雰囲気が醸成されてきはしないかということを非常に心配するのですが、本法の考えているのはそういうことではないというふうにきちんと伺ってよろしいでしょうね。ちょっと確認をさしていただきたいのです。
  180. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども、二種兼の方でも、農業を一生懸命やろうとしている方々を追い出すようなことが決してあってはいけないと思っております。ただ、二種兼の中でもいろいろございまして、御承知のように、ほかに安定した雇用先があって、出かせぎとかそういうのではなくて、農協の職員であるとかいろいろあるわけでございます。そういう非常に安定した収入がある方で、しかも、おうちの中に農業を一生懸命やろうという方もそうない。しかし、農地があるから片手間にというような方であるとか、あるいは後継者のいない方々であるとか、こういう方々にはひとつこの際貸し手になっていただけないだろうかということでございまして、本当に農業を一生懸命やっていこうという方々には、たとえば農用地利用改善事業という方向で一緒になってやっていただこうということもありますし、あるいは二種兼同士がこう——二種兼の中のどなたかが中心になられて、そしてより多くの二種兼の持っておられる農地をそこへ集積をしていくということも、私、一つの方法じゃなかろうかと思うわけでございまして、いまの区分されているその二種兼は、すべて何かそういうのがだんだんおろそかにされていくというような考え方は毛頭持っておりませんので、そういう点ははっきり申し上げさしていただいておきます。
  181. 日野市朗

    ○日野委員 二種兼業農家というのは、ある意味では優秀な農家だと私は思うのですよ。一生懸命農家もやったけれども、それだけではとうてい食えないので、よそにたつきの道を求めて、そっちの方で成功していったというケースですから。でありますから、これは下手になおざりに扱われると、もう二種兼の人たちにとっては非常に不愉快な思いをするだろうというふうに思いますので、私は、これからこの増進事業を進めるに当たっても、これはそういう二種兼業の人たちばかりではなくて、強制にわたらないようにするということが、何といってもこの事業を増進させる意味でも必要でありますし、それから、職業の選択というような観点から見ても、何よりも必要なことではなかろうかというふうに私は思っているのです。ところが、農村の部落というのは、これは一種の運命共同体みたいなところがございます。いまでも契約講をやって、きちんと年間におけるそれぞれの部落における貢献ということをみんなで話し合ってやるわけなんで、都会に住んでいる人たちのようにちょっと単純には割り切れない一種の精神的な風土があります。そのような風土の中でこのような増進事業が進められていく。そうすると、ややもすれば言いたいことも言えないような事態が進行するというようなことを私非常に憂えるわけです。減反、水田利用再編対策ですが、これはかなりの成功をした。しかし、その成功の陰には、何で減反を受け入れたかということのアンケート調査なんかやってみますと、やはり部落のつき合い、村でのつき合いということから離れられず、不承不承でもこれは減反を受け入れているという要因も指摘されているわけでございますね。こういうことがないように、まさに民主的な運営、一人一人の意向が最大限度に取り入れられるという担保ですね、これをどのように措置していかれるのか、ひとつ伺いたいのです。  これは権利者の全員の合意というようなことが法文上はうたわれる、表面上はそういう取り決めになっていたとしても、そのような取り決めというのは、部落の共同体の中では必ずしもうまく機能をしないのではないかという心配を私はやはり捨て切れないのです。そこいらの担保なんかどのようにお考えでしょう。また、このような事業を進める際には、地域のいろいろな実情をよく知っている農協あたりの参加というのは、これは不可避であろう。また、これを必ず入れていかなければどうも望ましい計画なんかもつくっていけないのじゃないかというふうに思うのですが、いかがなものでしょうか。
  182. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 一人一人の自由な意思を、強制でもってこれをねじ曲げるようなことをしてはならないというのは、これは当然の大原則でございます。それを担保する手段いかんと言われますと、先生も言われましたように、法律的には一人一人の権利者の同意を得なければいけないということで担保されるわけでございます。ただ、これが法律的な担保と実行上の担保とどういうことになるかといいますと、確かに、熱心さの余りかどうか知りませんが、ただ面積がよけい出ればいいというようなことで慫慂する、その慫慂がときに強い圧迫になるということもあり得ると思います。私、そこはやはり市町村が——市町村というのはやはり公的な機関でございますから、そこは節度を持って行動すると思いますし、それが中心となって農業委員会農業協同組合、こういったところの協力を得て、お互い相談しながら進めるというところで無理が避けられる、強制は行われないで済むようになるというふうに思うわけでございます。成功している先進的な地域の実例を見ますと、やはり市町村に人を得たといいますか、そういうことに本当に熱心になって、農家の立場になって真剣に相談に乗ってやる。そして、こういう時代になってこういう条件の中では公的な機関が保証するからそこはお出しになったらどうかということを、実に何遍も根気よく説得するということが行われているのを見聞きするわけでございます。  私は、そういう意味で、法的な同意がなければいかぬという話だけではなしに、市町村の責任と自覚、同時に従事する人間一人一人の熱心さというものに期待するところがきわめて大きいと思います。そういったことを実現できるように指導していくのが、それぞれの機関、国も含めまして市町村、それから農業委員会農業団体それぞれの責任だろうと思います。十分に今後ともそういった点を念頭に置いて努力してまいりたいと考えます。
  183. 日野市朗

    ○日野委員 まさにこれは、ちゃんとした見識を持った市町村の当局が動いていくということは非常に大事なことだと思うのですが、ややもすればその見識が曇るのですね。それはいろいろ曇り方もあると思いますが、いろいろな個人的な利害関係、それから有力者の特に選挙に関連しての問題などいろいろありますが、そういうのはある程度病理現象みたいなもので、全部それをなくせと言ったって無理な話であることは私もよくわかるのですが、その見識が曇る大きな原因に、できるだけ面積を出してきたところに国が何か有利な処置をとるというのが、見識を曇らせる一番大きな原因になるのじゃないかと思うのですよ。この間もこの委員会での論議なんかを聞いていますと、いろいろな予算の優先配分とかなんかの話もちょっと出ておりましたが、そんなことはよもや考えていないでしょうね。大臣、どうですか。
  184. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 出したいけれども不安である、出すと何かいいことがあるだろうか、そういう気持ちで迷っているというか、ボーダーラインにあるような人たちもかなりおるわけでございます。そういった人たちにお願いをする、慫慂をするということの意味もありまして、それから同時に、市町村としてそういう農地流動化農地有効利用を図る、地域全体としての調整を図るという事業を進めていただくために、奨励的な事業として地域農政特別対策事業の中でそれなりの奨励措置をとっているということ。それから、公共事業、非公共事業の中でも構造改善事業のようなものは、地域の全体性、計画的な農業振興ということを考えておりますので、そういう農用地の有効利用という観点から、利用増進事業などを行っているところを優先的に配慮するということはいたしております。ただ、これは奨励的な意味でございまして、何も利用増進事業を行わないところには予算は配分しない、あるいは配分の順位を絶対的に後々に回してしまうというようなことではなくて、それは特に熱心なところに対して優先的に配分するというような、奨励的なものとして考えているところでございます。
  185. 日野市朗

    ○日野委員 私、農水省のやり方を見ていまして、大体水田利用再編の際のペナルティーというようなああいう発想そのものが実は気に入らないですね。ペナルティーを科す、それとか、場合によってはいろいろな補助金なんかでの、あえて私は不利益取り扱いという言葉を使わせていただきますが、そういう発想そのものが、本当は農政の発想とはなじまないような感じがしてならないのです。そのような規模拡大のための面積をよけい出させるために、市町村にそういった圧力をかけていくというようなことは、絶対にしてはならないことだと思うのですよ。しないとは思いますが、そこは念を押して何としてもこれは聞いておきたいと思うのですよ。一時的に面積がよけいに出るなんといったって、農業生産性を上げるというのはそんなものじゃありませんと私は思います。たとえば、かなり計画的にやったと称している各国の農業生産が非常に落ち込んでいる例、残念ながら社会主義国なんかにかなり多いのですが、そういう例も私たちよく知っておりますし、特に、農業生産を上げるということは、農村の自主的な動きにゆだねる方がよけい生産性が上がっているというのが、世界的に見て傾向として指摘できるのじゃないかと私は思うのです。いかがでしょう。強制にわたるというような、計画性を余り押しつけ過ぎるということがないように私はお願いしたいので、ひとつお考えを、少しくどいようですが、ここで聞いておきたいのです。
  186. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 補助金なり奨励金というのは面積割りで画一的に出すというようなことをして、まさにえさでつるというようなやり方はとっておりません。実際に農用地の利用権設定が行われました場合は、その貸し主に対して、一アール当たり、三年ないし五年契約のものは一万円、五年を超えるものに対しては二万円の単価で助成をする。これは面積の多いものは当然単価が同じでございますから総額が大きくなる、こういう形での奨励金の出し方はいたしておりますが、画一的な面積の多いものに増額するというような補助の体系はとっておりません。  それから、全般的に強制にわたることのないよう十分注意しろという御意見は、この委員会でも各先生方から十分承ってもおりますし、重ねてのお話でございます。十分私ども心して努めてまいりたいと考えます。
  187. 日野市朗

    ○日野委員 農協の参加の点、どうでしょう。
  188. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農協の役割りでございますが、農協自身が八〇年代における農業の課題と農協の対策という論文といいますか文書を出しております。この中におきまして、地域農業の組織化を通ずる農業発展について、農協も積極的に取り組むんだということを非常に大胆なくらい明らかにしております。私ども、この新しい法律による農用地利用増進事業推進に当たっては、農協の主体的な取り組みに大いに期待いたしておるところでございます。特に、新法の中におきましては、利用権設定等促進事業については、農協自身が行っている農業経営の受託事業と直接関連するというようなこともございますし、それから、新たに追加いたしておりますところの農用地利用改善事業の実施、これを促進する事業や農作業の受委託を促進する事業、これは従来から農協が推進し指導してきているところの、地区内の農作物の作付の改善だとか、農作業の受委託のあっせんだとか、あるいはそのほか、営農指導活動一般との関連がきわめて密接でございます。そういうようなこともございまして、農用地利用増進事業の実施面においては、農協系統組織の意向が組み込まれていくというふうに私どもは考えております。それから、具体的にこの法体系の上でも、市町村が実施方針を定める場合には農協の意見を聞くこととするということを政省令の段階で規定することを予定いたしております。
  189. 日野市朗

    ○日野委員 今度は少し話題を変えますが、規模拡大を言う場合、私、どうしても日本農業の国際競争力のことがやはり頭から離れないわけですね。この法律が成立した。そして増進事業を積極的に進められることになると思います。一体、規模拡大というのはどこまでいったら満足すべき結果になるのか、私はどうもそこらのイメージがきちんとつかめないのです。いろいろな話を聞いてみると、そんなに大きな規模拡大ということは望めないのだというようなことを言う人もおりますけれども、しかし、先進国をずっと見てみると、いまヨーロッパあたりですと、西ドイツが一戸当たりの農地の保有面積というのは一番少ないわけですが、それでも現在の日本の十倍からあるわけでしょう。こういうところと比べてみるということになりますと、途方もない大事業のような感じもいたします。根本的には日本農業の国際競争力の弱さということから、規模の拡大はするにしても、それを裏打ちするようなきちんとした施策が講じられていないと、これは必ずどこかで壁にぶつかって破綻せざるを得ないと思うのです。特に、価格政策なんというものはどうしても必要なものだろうというふうに思うのですが、現在の財政状況から、価格政策ということになると全部据え置きというような形で進行しているわけですが、この辺の関係はどのように理解したらいいのでしょう。大体どの規模ぐらいまでというイメージをひとつ私に教えていただきたいと思うのです。
  190. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもも実は必ずしも明確な青写真を描いておるわけではございません。ただ、いまも御指摘ございましたように、日本の国土の状況からまいりますと、とてもアメリカとかあるいはカナダとかオーストラリアというような大農的な国のまねができないことは当然でございます。いま先進国の中で、ヨーロッパあたりでは西ドイツが小さい方ではないかということで、一九七五年、昭和五十年のあれを見ておりましても一、西ドイツはたしか十三・八ヘクタールでございました。そういう点からいけば、日本がいま大体一・一ヘクタールと言われておるわけでございますから、約十三倍でございますが、正直言ってなかなかそこまでも持っていけないと私は思います。  そういう点で、いま国際競争力のお話もございましたけれども、今後とも、日本農業が完全な国際競争力を持つというようなことは、私は常識的に考えて不可能であろうと思っております。ですから、日本の農産物が、あるいは畜産物も含めてある程度割り高であるということは、国民の皆様方の御理解が得られるようにわれわれがもっと努力をしなければいけないと正直思っておるわけでございます。  そこで、国民の理解が深められるようにこれから努力をしてまいりますけれども、しかし、同時に農民側も、それではそういうことをおまえたちがやってくれるんなら、おれたちは努力をしなくても幾ら高くついてもいいではないかとも言えないと私は思うのでございまして、そういう面で、完全に国際競争力のつくような農業にできないということは私ははっきり申し上げられるわけでございますけれども、そういう中にあっても、農家農家なりに努力をしていただくということは必要ではなかろうか。そういう努力をしていただくとなれば、特に土地利用型の農業は国際競争力が非常に低いと言われているわけでございまして、土地利用型の場合には、米の生産原価などをずっと調べてみましても、結局規模が大きくなればなるほど原価は安くついているわけでございますから、そういうことからいけば、少しでも規模を大きくしていただいて、そして生産性を高め、コストを安くしていくような努力だけはしていただく、そのための受けざらをつくろうというのが今度この法案を出させていただいた趣旨でございますので、そういうふうに御理解をいただければ大変ありがたいと思うわけでございます。
  191. 日野市朗

    ○日野委員 その辺の悩みは私も非常によくわかるのですが、確かに現実に一体どこまで拡大できるのか、そしてどこまで拡大すべきなのかということはなかなかっかみがたい、それをつかむのは至難のわざだと思うのですね。ただ、私は、こうやって規模を拡大していく、そして一方では価格面でも余り多くを期待できない、しかもコストの方はどんどん上がっていくということを考えますと、これはむしろ規模を拡大して大きな農家にある程度しぼっていって、それが一挙に壊滅したら日本はどうなるというような、実は未来図として最悪の場合を私は想定するわけですが、こういう可能性があり得ないことではないのだというふうに私は思わざるを得ないのです。現在、コスト局という点から見ますと、原油価格が非常に上がっていますし、生産資材の価格も上昇を続けている。それから、農業の就業人口の減少傾向が鈍化をして労働の生産性が低下してきている、それに生産物の価格は財政難から上昇の見込みがないということになりますと、経営の規模は大きくしたけれどもコストはさっぱり安くならない、むしろ経営状況が悪化していってしまうのではないか。私は、いわゆる利用権設定した土地の小作料もひょっとするとそのコストアップ要因の一つとして見なければならないのではないかというような感じがしているのですが、最悪の場合を幾つか想定をしてまいりますとそういう未来図が描けやしないかという私の心配、これについてはどのようにお考えか伺いたい。
  192. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農業をやっていただいている方の中にも非常に意欲に燃えてやっていただいている方があるわけでございまして、そういう方にできるだけ農地が集積されるような仕組みを考えていきたい。たとえば、私は就任間もなく、皆様方よりも先に実は豊岡村へ行ったわけでございますが、そのときに私非常に感激いたしましたのは、まだ三十そこそこの若い農業者が、自分の持っておる面積はたしかわずか〇・九ヘクタールと言っておったと思いますけれども、それがこの農用地利用増進事業で四・五ヘクタールまでいわゆる借地をふやして増加をした、そういうことで非常に意欲に燃えてやっておられる姿を見たわけでございます。先ほど私が申し上げましたように、米の生産原価をずっと見てまいりますと、耕地面積によって生産費が非常に違ってきておるわけでございます。そういう点からいけば、いま御心配いただきましたけれども農業を本当に思い切ってやろうという方々が、ある程度農地を集積化された上で一生懸命農業にいそしんでいただけるならば、そしてもちろんそれだけではいけませんので、きょうもいろいろお答えをいたしておりますけれども、それ以外に、生産政策として全体的な国の需給見通しを立てた上でやらなければならない問題であるとか、いま御指摘ございましたけれども、こういう構造政策だけではなくて、それに伴って再生産意欲を失わないような形の価格政策は確立をしていかなければならないと思いますし、あるいは生活環境整備などももっと努力をしていかなければならないと思っておるわけでございます。もちろんそういうものも、これから私ども総合的に対策を立てていかなければならないと思っておりますが、そういうことになったときには、将来農家の皆様方が夢をなくされるとか、それによって農業が壊滅的な方向に行くというようなことはあり得ない、こう思っておるわけでございます。
  193. 日野市朗

    ○日野委員 そういう努力をされるといういまの大臣の御意向は了とするわけでありますが、これはいろいろな過程を幾つか積み重ねていく、そして最悪の場合を想定しておくというようなことも必要なことだと思いますね。現にエネルギーの需給見通しなんというのは、あれは最悪の事態をずっとつなぎ合わせて見通しを立てているわけでありまして、食糧の問題である農業においても、最悪の場合というものは常に考えながら、それにどのように対処していくかということ、これは農水省側としてもひとつ真剣に考えていただきたいというふうに思うのです。そういうことも考えていただけるかどうか、ひとつお答えもいただきたいし、それから、私は、そういう日本農業の持っている生産性の弱さということを考えますと、やはり日本農業というのはある程度やわらかな構造を持たせておく必要があるのだろうと思うのですよ。大きな規模の経営体に全部任せておかないで、雑然と大きいところも小さいところも混在しているような農村の姿というものは、経済状態が変動して、そして大きい農業でやっていけなくなったとしても、小さいところがまた生き残っていくというような柔構造というか、やわらかいソフトな構造を残しておくということも、日本農政の中ではこれは考えておくべき一つの方法論だというふうに思いますが、いかがでございましょう。
  194. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 よく財界などで、あるいは財界だけではございません、労働界でもそうでございますが、あるいは一部の消費者の場合もそういうことをおっしゃいますけれども、何か日本の農産物や畜産物は高いのだから、そんなものはもうやめちゃって、外国から何でも買えばいいじゃないかというような御議論がよくあるわけでございますが、いまエネルギーの例をお取り上げになるまでもなく、食糧についてはもっと厳粛に考えていかなければならないと私は思っておりまして、今後の日本の将来を考えれば、少なくとも国民の食糧の大半をやはり自給できるという体制をとるような努力をしていかなければならないことは、私ども当然だと思っておるわけでございます。農家の皆様方にも、そういう形でひとつぜひ自信を持っていただいて、農業にいそしんでいただけるようにしなければならないと思っておりますが、しかし、先ほども申し上げましたけれども、そういうことを私ども思っておりますけれども、その場合に、国民がより理解を深めるように努力をしていく上においては、農家の方も努力をしていただかなければならない。それは、もちろん国際競争力に打ちかつことはできませんけれども、少しでも生産性を高めていただいて、国民により安定した価格で供給できるようにするという努力だけはしていただく必要があるのではなかろうか。それをやろうとすると、どうしても生産性を高めるためには規模の拡大をせざるを得ない、土地利用においてはどうしても分析の結果それは明らかでございますので、そういう方向で、ぜひやっていきたい、こういうことでございます。     〔津島委員長代理退席、委員長着席〕
  195. 日野市朗

    ○日野委員 現在の農産物の需給の状況を見てまいりますと、実は一部を除いては何といっても過剰基調でございますね。本当に少ないというのは、需給がタイトだというようなものは、作目からいったら非常に少ないわけなんで、いま農村で大はやりなのは自主調整でございましょう。何かをやればすぐに過剰だ、自主的に調整せよ、こう言われる。どうも生産性向上とここいらというのはしょっちゅうぶつかる問題なわけでございますね。ここいら、いろんな各地域によってそれぞれの努力によってカバーすることも、これは大事なことでしょう。北海道は北海道で考える、東北は東北で考える、九州は九州で考える、さらにその中で細分化しながら考えていくということも、それは大事なことだと私は思います。しかし、それよりも、そういった努力を積み重ねることは必要ですが、大きな経済的な変動があった場合、または経済的な大きな流れ、そういった自主的ないろんな努力というものはどれだけ抗し得るのだろうかというような問題を考えておかなければいけないのですが、現在のような過剰基調が改まらない、ごのようなときに規模拡大をする、そしてまた、自主的な調整を迫られる、こういうようなことの繰り返しであったのでは、農家はたまったものじゃないので、そこいらどのようになさるお考えでしょう。どのような指導が一応予定されているのでしょうか。
  196. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農政審議会の御議論をいただかなければならないわけでございますけれども、たとえば、いま確かに過剰ぎみというお話でございますが、私ども水田利用再編対策で転作をお願いをしております、麦にいたしましても、大豆にいたしましても、これはまだまだ相当不足状態であるわけでございまして、そういうものなどはこれからぜひできるだけ、やはり規模が拡大をしてまいりますれば、相当小麦などもつくっていただいて、しかもコストも安くなっていくと思うのでございます。そういうような方向にやはり日本農業はあってしかるべきではなかろうか、こう考えておるわけでございまして、最近小麦もここ二、三年、たしか五十二年が二%であったかと思うのでございますが、それが五十三年には四%になり、五十四年は八%という形で、非常に自給率が高まってきておる状況でございますし、最近、私ども全国あちらこちら回っておりましても、相当また去年よりことしは麦の作付が多くなっておりますので、もっと自給率は五十五年度は高まってくるのではなかろうかと私は思うのでございます。そういうようなものは今後ともできるだけやはり努力をして、より多くつくっていただかなければいけないと私は思うのでございまして、そういうものとこの規模拡大がうまくかみ合わさっていくならば、大変望ましい姿が生まれてくるのではないか、私はこう考えておるわけでございます。
  197. 日野市朗

    ○日野委員 いまのお話、表面的に聞いていますと、なるほど非常にうまくいきそうなバラ色の道が前に開けているような感じがするんですが、しかし、私たちもいま農政審でどんな話が進んでいるかということは聞いています。そうすると、はて待てよ、大臣はずいぶんバラ色の夢を振りまいてくれたけれども、現在農政審で進んでいる転作の奨励金の見直しのためにいろいろな作目ごとの洗い直しなんか見ていますと、必ずしも事はそのように簡単には進まぬのじゃないかというふうに私は思うのですね。どうなんですか、農政審の中でいま転作の一つ一つの作目について奨励金の見直しをやっておりましょう、いかがです。
  198. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  いま農政審で見直しをいたしておりますのは、農産物の長期見通しにつきましての見直しをいたしております。これは需要全体の日本型の食生活の確立ということを前提としました、今後の日本の食生活を、需要を推定いたしまして、それに応ずる農産物の供給体制ということで考えております。その際、水田からどの程度の、生産の再編成に伴います転作等を要するかということについて、第一次試算等でも出しまして、第一次試算におきましては一十年後におきまして約八十万ヘクタール程度の転作が必要になる。それは御承知のように、麦、大豆、飼料作物等が中心になるわけでございます。ただ、ただいま御指摘のございましたような奨励金の水準等については農政審では取り上げておりません。農政審の審議を経ました後、財政上の問題はまた行政当局として別途検討してまいりたい、このように考えております。
  199. 日野市朗

    ○日野委員 行政当局、つまり農水省で、転作についての奨励金の格下げとか、ある作目についての撤廃とかそういう作業、進んでおりませんか。
  200. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども、いわゆる五十六年度以降の水田利用再編対策について、具体的な金額をどうするとか、面積をどうするかということも、まだ全く決めていないわけでございますので、これは当然、これからのいろいろの需給状況などもまだ見なければなりませんし、また、転作奨励金というものをもし出す場合には、いままでと同じように、米の収益性との相対性を考えていかなければならないことは当然でございまして、具体的にはまだ作業には全く入っておりません。
  201. 日野市朗

    ○日野委員 いまの大臣の答弁を一応信用することにいたしますが、私たちが得ている情報の中には、農水省はかなり大蔵省からの圧力を受けながらいろいろな作業を、研究段階にもう入って、どの辺までいっているのか知りませんが、そういう作業にも入っているかのように私どもも承っているので、これから十分に監視してまいりたいと思います。そういうことについては、いま大臣からお話がありましたが、これからも情報をできるだけオープンにしていただくということをお願いしながら、別の話題に入りたいと思うのです。  価格政策ですが、価格政策をどうするかということは、規模を拡大するに当たって、規模を拡大しましたわ、コスト高で価格が上がらないわでは、これは本当にまとめてつぶれちゃうというような危険があるだろうと私は思うのですね。現在の価格制度、これは品目別にいろいろ組み立てられていて、全体を通じて統一したビジョンが不明確だということは指摘もされていると思いますが、まず、幾つかの重要なものについて、米麦、飼料穀物、大豆、加工原料乳、こういったものについてどういうような価格政策をお持ちなのか。この間から聞いていると、大臣はことしの米の米価審議会に対する諮問の案についてもまだ白紙だという答弁をしておられますけれども、大筋においてこれからどういうふうにそれらの、いわゆる戦略作目と称される部分ですね、これの価格をどういうふうに持っていきたいのか、持っていかなければならないと考えておられるのか、大づかみでも結構ですから、ひとつお聞かせをいただきたい。
  202. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 法律に書いてあることを申し上げるようで恐縮でございますけれども需給状況あるいはその他の経済事情を勘案しながら、農家の方の再生産意欲を阻害しないという形で価格を決めさせていただくという以外、どうも大変恐縮でございますけれども、いまのところ、法律に書いてあるそういう方向でやらせていただく、こういうことをお答えせざるを得ないかと思うわけでございます。
  203. 日野市朗

    ○日野委員 どうもその感覚が私どもにはぴんとこないのですがね。いまこれだけ大きな事業に取り組もうとしておられるのですよ。さっき未来図として描いた、このような未来図も描けるというその未来図は、私の頭の中にあるのは決してバラ色のものではありませんね。むしろ、経営規模を大きくしておいて、まとめてつぶすというような方向にすら行きかねないのではないかという心配を私は持たざる得ない。この間衆議院で、食糧の自給向上のための満場一致の決議もいたしました。自給を向上させるためには、農民の生産意欲を高めるような価格政策が必要だと大臣言われた。そうでしょう。何度も何度も言っておられますね、この法案審議でも。その認識は正しいと思うのですよ。これは日本の戦後農政一つの大きな節目であると思う。その節目からどのような事態が惹起してくるかということは、やはり一つ一つもっと丁寧にやっていかなくちゃ。どうでしょう、生産の量をどの程度賄うのか、価格をどのようにして農民の生産意欲を高めていくのか、そこいらについて、粗づかみでもいいから、何かないのですか。
  204. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまこの法律を御審議願っておりまして、これで構造政策上、規模の拡大を図り、生産性を高めるというのが一つであることは御理解いただけると思います。  それからもう一つは、生産政策の中で、なるべく過剰ぎみにならないような形に持っていくためには一体どうすればいいかと言えば、やはり不足ぎみなものにより多く生産意欲を持っていただけるように持っていくということが必要でございましょうし、また、それをつくっていただくには、適さない土地でやっていただくよりは、なるべく適す土地でやっていただくということが必要でございましょうから、生産計画といたしましては、やはり農政審議会でいま御議論いただいておりますものを踏まえて、将来六十五年度を目途として長期見通しを立てた場合には、それと関連をいたしまして、先ほども指摘がございましたが、北海道であるとか東北であるとかあるいは関東であるとかという形で、各農政局単位ぐらいのそれに見合った一つ生産見通しというか目標というか、そういうものが生まれてくるのが望ましいと思いますし、それと、それぞれの地域農家のお気持ちというものでいろいろ御議論をいただいたものとうまくかみ合わせていくということになってくれば、必ずしもいまの経営規模拡大が即生産過剰につながるということにはならないのではなかろうか、こう考えておるわけでございます。  いま一つは、価格政策においては、今後とも農家の再生産意欲をなくすような価格ではいけないということだけははっきり申し上げられると思うのでございますが、細かい点についてはやはり、先ほども申し上げまして大変恐縮でございますけれども、法律に基づきまして決められておる仕組みでやっていく、そして、それは具体的には、米麦については食管法基づきまして米価審議会にお願いをしていろいろ議論をするわけでございますし、あるいは先ほどお話しの、加工原料乳については畜産審議会で御議論願うということでございましょうし、それはそれなりに法律に基づいておるものでございますから、それを無視して私どもはやるわけにはまいりませんので、そういう点で御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  205. 日野市朗

    ○日野委員 先ほどから、とにかく国際競争力でいったら日本の農産物というのはもうかなわないのだという共通の前提がありますね。たとえば大豆をとってごらんなさい。何ぼ日本で逆立ちをしてがんばって、おまえのところは大豆が向くよ、大豆を一生懸命つくってみたってかないっこないのですよ、これは。そこで、再生産の意欲をかきたてるにはどうしたらいいのですか。いままで大臣は、何回も何回も価格政策は大事だとこの委員会の中でも言ってこられた。耳を傾けて聞けば、問う人に必ずそう答えていた。あれは外交辞令ですか、どうですか。
  206. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大豆を例に取り上げられましたけれども、これは交付金制度もございますし、それにいま転作奨励金が、先ほどは何か減るのではないかという御心配がおありのようでございますが、私どもは転作奨励金について必ずしもいまのものが減額されるとはまだ考えていないわけでございまして、これから十分その辺は検討を進め、そして財政当局ともよく話し合って理解をさせながら、必要な額だけは確保していかなければならないと思っておるわけでございまして、それが永久に続くというわけにはまいりませんけれども、まだまだ相当期間は続くのではなかろうか、そして、そういうものに経営規模拡大が絡んでくれば、だんだん生産性が高まってコストが安くなっていく事態もそう遠い将来ではないのではないか、こういうところに私はかみ合わせが出てくるのではないかと考えておるところでございます。
  207. 日野市朗

    ○日野委員 どうも、大豆の転作の奨励金がつくだろうというような、全く根なし草みたいな話だと私は思うのですよ。そういうもので価格をカバーしてしまったのでは、これは抜本的な解決にならないことは言うまでもないところですね。日本の財政当局、それほど甘くはございませんね、大蔵省は。そうしたら、そんなものでカバーしないで、きちんとした食糧の自給度を高めていくための価格政策というものは何かと言えば、これはきちんとした、やはりこれだけの大仕事をやるのだから、それにふさわしい価格政策が樹立されなければならないのはいまだと思いますよ。これを逃したらチャンスはないじゃないですか。私はきょうの議論を聞いて、大臣の答弁も聞いて、これから賛成するか反対するかを決めなくちゃいけない場面なんですが、非常にここで複雑な心境に陥らざるを得ないですな。  それからもう一つ日本農業をどうするかという場合、考えなくちゃいけないのは、輸入をどうするのかという問題ですね。東京ラウンドでいろいろな取り決めがなされて、この国会に条約の批准案件いまぞろっとまとまってかかっておりますが、このような国際的な農業環境の中で、どのように、農林大臣農業にとってみれば国難みたいなものですが、これに立ち向かっていかれるか、その覚悟のほどをひとつお聞かせください。
  208. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 その前に、大豆の問題でございますが、私は御理解いただけたと思って実は答弁しておりましたのですが、その転作奨励金をいつまでもやるということではございませんが、おおむね十年間ということで、五十三年から始まっておりますので、少なくとも六十二年までは私は続くと思っておるわけでございます。その間においては、転作奨励金はやはり米の収益性との相対性を考えながら、奨励金というのは考えていかなければならない。片っ方で、私ども今度のこの法律を通していただいて、農用地の規模の拡大、そしてある程度の農家に集積されていくということと並行いたしますと、この転作奨励金を出している間に規模の拡大が成れば、その将来においては相当安いコストでつくっていただけるようになり、そうすると、そのときに転作奨励金がなくなったときにおいては今度は相当安いコストででき上がっていく。もちろん、先ほど私が申し上げるように、外国と同じというわけにはまいらないことは当然でございますけれども、少なくともいまよりは相当安いものができてくるのではないか。そうすれば、それによって大豆をその値段で供給するということは、国民も理解をしていただけるのではなかろうか、こう思っておりますので、その辺のかみ合わせ、こう申し上げたわけでございます。  それから、輸入の問題でございますけれども輸入の問題については、確かに、東京ラウンドということで、ある程度は私ども譲歩せざるを得なかった点がございますけれども、しかし、今度の東京ラウンドでも相当私どもはいろいろのことを言われながらもがんばった点もあるということだけは、御理解をいただきたいわけでございます。  今後につきましては、こういうことがしょっちゅう起きるわけではございませんし、また、世界の先ほど来食糧の需給関係がタイトになっていくということから、国会でも食糧の自給度を高めろ、こういう御決議をいただいたわけでございますので、私どもは、そういう国際社会の今後の状況を踏まえた場合には、やはり極力国内でできるものは国内で賄う、生産をしていくという体制をより強化をしていかなければならないと思っておりまして、結果的には、そういうことで国内の自給力さえ高まっていけば輸入は減ってくる、それは輸入が減ってくるのはそのときは当然である、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  209. 日野市朗

    ○日野委員 どうもここのところばかり議論をしていたら、かなり時間がかかってしまいましたので、ちょっと別の問題になりますが、農地法の関係で、小作料の問題ですが、これは金納というのはやはり原則と考えざるを得ないだろうというふうに私は思うわけなんですが、食管との関係や何かこれはどうしても、この点についてはいままでの議論を聞いておりましたが、やはり物納にすると食管法との整合性という点ではかなりの問題があるだろうというふうにも思わざるを得ないのです。  それで、改正案、これをどう読むのかちょっと教えていただきたいと思いますが、物納をとった場合、不作のときの物納による賃料というのは、たとえば収量が極端に落ちたというような場合の対処はどういうふうにするというように読んだらいいのでしょう。
  210. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 御承知のように、ただいまの農地法の規定では、小作料の契約に当たっては、これは定額の金銭でもって定めなければいけない、また、それを授受するときは実際に金銭でなければいけないと、いわゆる定額金納制ということになっております。この規定をなくすということでございますので、物納にしなければいけないとか物納を強制する規定を設けるわけではございません。やはり実際問題として、今後とも小作料の一番大きな分野は金銭でもって契約が結ばれ支払われることになると思います。  ただ、小作料の実態を見ますと、かなりの部分が、特に新しい契約の面におきましては四〇%のものが物納で支払われている、まあ米でございますが、という実態があるわけでございます。  今回、ただいま申し上げましたように、定額金納についての規定をなくすと、物納が公にこれが認められるということになるわけでございます。そうした場合、その物納小作料の決め方はどうなるであろうか、それからまた、実際に不作等が起こった場合はどういうふうに取り扱われるであろうかということでございますが、私、物納を別に強制するわけではございませんけれども、一遍契約で物で払うということを決めますれば、それは借りている人は借り賃を米で払わなければいけないということになるわけでございます。ただ、不作などの場合は、実際に払いたくとも米がないということになりますと、これは貸している人の方の立場からすれば、自分のたんぼの米を食べたいというその条件はすでに失われているわけでございます。そういう場合には、何もほかから買ってきてどうしても米でなければというようなことではなくて、むしろ合意によりまして、そこは金銭をもってかえるというようなことが一般的な話になるのではないか。また、それについてトラブルが起これば、これは農業委員会がその間の調停をするというようなことになると思っております。
  211. 日野市朗

    ○日野委員 この間からこの点について、使用年限の問題について、年限が来て、もっと使いたい、それから出し手の方、貸し手の方は返してもらいたいというような場合だとか、有益費の償還の問題などについて、トラブルがあったら、自治体、農業委員会、そこらが乗り出して解決することに期待をしたいということをしょっちゅうもう繰り返し繰り返し言っておられますね。ぼくは、ちょっとそういった善意の上積みを二重にも三重にもやっていくということは甘過ぎると実は思うのですよ。きょうも午前中、農地に関するトラブルについての裁判所の処理件数なんという数字を挙げておられた方もおられますけれども、これはそんなに私は簡単に済むことではないと思うのですね。何か自治体とか農業委員会がそれを解決する機関として、準司法的な役割りでも期待されるのですか。
  212. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 賃貸借に関していろんな形のトラブルが起こることは一般的にもありますし、利用増進事業においてもあることでございましょう。そういったトラブルを避けるために、私ども、利用増進計画の中におきまして、そういったものをできるだけはっきりさせていく、トラブルが起こらないように事前の手当てをすることももちろんでございますが、起こった場合の解決方法、処理の仕方というものについてもこれを明らかにしていくということが必要であろうと考えております。  それから、起こった場合でございますが、これは現実にも農業委員会がその調停にいろいろ努力しておられるということで、かなり貢献している実績は上がっているわけでございます。いたずらに善意に期待するだけでなくて、実質、一般の場合でも、それから利用増進事業の場合でも、農業委員会がそういう調停なり和解に貢献しておられるということがあるわけでございます。  それから、有益費についてでございますが、これは黙っておれば当然民法なりあるいは土地改良法の規定に基づいての取り扱い、有益費についての償還請求ができるということになるわけでございますが、この有益費の考え方なり、あるいはトラブルが起こったときの調停の仕方について、やはり先ほど申し上げました利用増進計画の上でも明らかにしていく。そして、当事者間での協議が一番基礎ではございますが、その協議が整わなかった場合は、市町村あるいは農業委員会がその処理に当たるというようなことも増進計画の中ではっきり決めることはできるし、そういった方向でできるだけ処理するようにいたしたいと考えております。
  213. 日野市朗

    ○日野委員 あと一分三十秒あるから、最後の質問をいたします。  いまそう言われたけれども、たとえばこのケースの場合は現物で払えと言うのか金で払えと言うのか、これが裁判所などに出た場合は、裁判所は目を回しますよ。そんな甘い基準で契約が解釈できるはずはないと思いますので、これは私の意見として申し上げておきたいのです。  それから、小作料の点ですが、小作料の増額、減額の請求権だとか、標準額とか減額の勧告というものがいろいろありますが、これは全部小作契約が始まるに当たっての規定です。そして減額の勧告をした、しかしその勧告が受け入れられずに当事者が賃貸借契約を結んでしまったというような場合、それが現状と合わなくなった場合どうするのでしょう。
  214. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 小作料は、新しい言葉で言えば賃借料ですが、これは当然当事者間の合意、契約によって取り決められるわけでございます。個別に高いもの、自分の力があるからそのくらい支払ってもいいということで決められました場合、それがトラブルにならなければよろしいわけでございますが、ただ、一般的な小作料の水準に悪影響を及ぼすような場合には、標準小作料よりは著しく高くてそれがはなはだしく不都合であるというような場合は、これについての減額を勧告することができることとなっております。  それから、先ほどの私の説明が足りなかったのかもしれませんが、市町村なり農業委員会が調停なり話し合いを円満に取り進めるように働くのだということを申し上げました際に、私は、市町村なり農業委員会がこの場合は米で払わなくてはいけないというようなことを強制するとかなんとかということでなくて、やはり一番初めは、当事者間の取り決めがあるわけでございます。その取り決めを基礎にして新しい合意というものができればそれをベースにする。そして、両者間の言い分を聞いて、なおトラブルがそれで十分に解決しない場合は、その間の調停をするというような順序で、やはり当事者を基本に立てた解決が図られるというふうに考えており、その間の交渉ごとでございますから、こじれるようなことが全くないというようなことを申し上げているわけではございません。
  215. 日野市朗

    ○日野委員 時間が来ましたから、終わります。
  216. 内海英男

    内海委員長 中林佳子君。
  217. 中林佳子

    ○中林委員 私は、まず初めに、農業生産法人について質問させていただきます。  昭和五十三年現在で二千九百八十六の農業生産法人が組織されまして、そのうち構成員三戸以上の法人が千三百七十五法人で、全体の四六%を占めているわけです。この三戸以上の法人のうちで、農民の自主的な協業関係として成立しているのが一体どのくらいあるのか。そして農外資本が、直接的にしろ間接的にしろ出資し、実質的に支配しているのは一体どれだけあるのか、そういうことを農水省はつかんでいらっしゃるのかどうかということ。あわせて、業種別に見てみますと、畜産が最大で九百八十二法人で全体の三二・九%を占めているわけですけれども、この畜産部門における農外資本の支配、こういうものが一体どのくらいあるのか、つかんでいらっしゃればお答え願いたいと思います。
  218. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 私ども、約三千の農業生産法人は、その大部分、ほとんどが農業者みずから  の組織であるというふうに理解いたしております。たくさんのケースの中に、あるいは本来の農業生産法人の趣旨にそぐわない農外資本的なものが入っているものが皆無かと言われれば、全く皆無というふうに断言できるほどの根拠も持ち合わせておりませんけれども、まずそういうものはなかろう、あってもきわめてわずかであろうというふうに理解いたしております。
  219. 中林佳子

    ○中林委員 そういう実態はつかんではいらっしゃるわけですか。つかんでいらっしゃらなくて、きわめて少ないとか、ないに等しいようないまの御発言ですけれども、その点もう一度お伺いします。
  220. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 特に農外からの支配があるかどうかというような調査をしたことはございません。ただ、そういう事態があれば、それは個別ケースの問題として表に上がってくることがあり得るわけでございます。そういう事態が皆無とは申し上げなかったわけですが、しかし、きわめてまれであるというふうに受けとめておるわけでございます。
  221. 中林佳子

    ○中林委員 調査をしていない、つかんでいなくてまれだというふうに言明されるということ自体私はやはり問題だ、このように思うわけなんです。  今回農地法改正農業生産法人の役員要件を緩和したことについて、農水省の言い分としては、農業後継者の経営参加を保障するため、こういうふうにおっしゃっているわけで、私どももそのことは必要だ、このように考えているわけなんです。しかし、後継者に限定して要件を緩和するためには、今回の提案のように全面緩和ではなくて、限定的に緩和するだけでよいのではないか、こういうふうに思うわけなんです。一体なぜこのように全面緩和するのか、農外資本の生産法人支配の実態を調べていないで、悪影響がないというふうに言えるのかどうか、その点もあわせて御見解を聞きたいと思います。
  222. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農外資本が入り込んでいるかどうかの調査を組織的に統計的にとっているわけではございませんけれども農業生産法人がその要件を満たしているかどうかということについては、これは農地を取得する場合だとか、あるいは定時に農業委員会がその実態を調査しているわけでございます。問題があればそういった段階に浮かび上がってくる。また個別の事案、特殊な事態が出れば、それはそれなりにまた掌握できるという意味で、私は、一般的にふだんから農業外の資本がたくさん入り込んでいるというようなことは考えられないということを申し上げたわけでございます。  それから、今回の要件の緩和は、御指摘のように、純粋に後継者だけの場合でなく、農業に従事する者、そのほかの場合の者も考えておるわけでございます。原則的には一番多く考えられるケースは、やはり後継者の場合であろうというふうに考えるわけでございます。それから、農業後継者以外でも、やはり人に使われている、あるいは実際に農業を現在はやっていないけれども農業の未来に希望を感じて新しく農業に入ってきたい、そして若干の経験を積んでその意思がいよいよ強固になった、そういう若い人たちが、自分たち仲間でもって農業を営んでいきたい、その場合にやはり障害になってはということで、生産法人を新しくつくってやろうという場合に、こういう要件緩和は必要でないかというふうに考えたわけでございます。そういうまじめな人ならいいけれども、そうでない者が入ってくる場合、それをどうやってチェックするのかということは、確かに問題であろうかと思います。私ども、いま現に農業生産法人の要件につきましては、まず第一に当該法人の事業農業及びその付帯事業に限られているか、それから構成員のすべてが農地の提供者もしくは当該法人の事業に従事する者であるかどうか、それから三番目には、業務執行権を有する構成員の過半が常時従事者であるかどうかというようなことを厳重に審査、判断することといたしております。そのほか、要件を欠くことになった場合には、これは当該法人が所有権もしくは使用収益権を有する農地等について、農業委員会が公示して一定期間内にこれら農地等を処分しなければいけないということにしておりまして、それが行われないときは国がこれを買収するというふうな、十分にそこをチェックする制度もできているわけでございます。
  223. 中林佳子

    ○中林委員 もともと農業生産法人は昭和三十七年の農地法改正で盛り込まれたもので、四十五年改正で大幅に要件が緩和されてきたわけなんですね。このときに、緩和の代替措置として役員に関する要件が新設されたわけなんです。  昭和四十五年九月三十日付の農林事務次官通達で、この要件緩和に関連して、これらの農家以外の者によって実質的に農業生産法人が支配されることがないよう十分留意すべきことが指示されているわけなんですね。ここで言う農家以外の支配ということは、第一義的には農外資本による支配を意味しているのではないのですか。今回の要件緩和は、農地を出資あるいは提供しなくとも、常時農作業に従事している者が役員の過半数を占めればよい、こういうふうになったわけで、事務次官通達の言う農家以外の支配をますます容易にするものではないか、こういうふうに思われるわけですけれども、いかがですか。
  224. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 重ねて申し上げることになりますが、後継者以外の農業に従事したいという者を新しくこういう生産法人の要件緩和の対象に取り込んでいるということは、やはり全体の農業なり農業を取り巻く情勢から見て、そういうまじめな意図を持って入ってくる新しい人を迎え入れるという一つ政策的な要請があるからでございます。そのことが直ちに農外の資本の侵入を許すということにはならないと私は考えております。また、ならせてはいけないわけでございます。  そこで、農地取得のときには、先ほど申し上げましたような実質的な審査が働くし、それから農業生産法人が後に至りて要件を欠いていることが判明した場合あるいは要件を欠くような事態が出た場合は、直ちに農業委員会がその持っている所有権なりあるいは利用権について、これを処分させるということにいたしておるわけでございます。しかも、それが実行できない場合は国がこれを買い上げるというような強行規定までもあるわけでございますから、そういう意味で、これを厳格にチェックしていくならば、十分農外資本の侵入は防ぎ得るものというふうに考えております。(中林委員「通達の関係」と呼ぶ)通達の趣旨はまさに、そういうチェックが緩んで、しかもあの当時大幅に要件緩和を図ったときでございますし、高度経済成長時代で土地投機等もかなり広範に見られたというようなこともあったかと思いまして、まさにそういう農外資本の侵入を十分に監視しろという趣旨でございました。
  225. 中林佳子

    ○中林委員 農業生産法人の資本進出が最も進んでいるのは、ほとんどないというようなお話があったわけですけれども、実は北海道ではかなりあるわけなんですね。  北海道農業会議の調査によれば、農外資本の農地取得のメカニズムとして、仮登記によるものが六二%、それから農業生産法人の形態をとるものが二三%、農地法の転用許可をとるものが一五%と挙げられているわけです。また、北海道農協中央会の調査では、昭和四十五年当時まで農外資本による主として農業生産法人の形をとって進出したものが二十二法人なんです。うち十五が十勝に集中しております。  これらに共通している手口は、まず開拓行政が大きな曲がり角に直面していた昭和四十四年から四十六年に、開拓離農者をねらい撃ちにして、それから、道知事や市町村長あるいは議長、場合によっては金融機関を仲立ちにしまして、地域開発や観光牧場などのバラ色の夢を振りまきながら進出して、進出後は土地投機や畜産インテグレーションの展開などの本音をむき出しにして、法人構成農民の排除を行っている、こういうことになっているわけです。一体こういう実態を知っていらっしゃるわけですか。
  226. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 過去におきまして私、皆無でないということを申し上げたその悪い例が、確かに北海道に一部見られたと思います。実態につきましては、たとえば北海道の十勝地方清水町というようなところでは、町外在住の、農業従事者ではない農地等の提供者、これを構成員の一部として設立された農業生産法人があるということは承知いたしております。これら法人の業務執行役員の過半は地元農業者が占めておって、それぞれ要件は満たしておる、その後の農業経営を行ってきたということでありますが、その後これらの法人の中には、生産物の市況の悪化等によりまして経営が成り立たなくなって、地元農協の指導によって経営改善に努めてきた、しかしながらついに解散するに至って、後を農地保有合理化法人が引き取って当該法人の所有農地の全部を取得したというような事例もあることを承知いたしております。  今回、農業生産法人の要件緩和をいたしましても、当該法人の農業経営に関しては実質支配権を有する業務執行役員の過半は、法人の事業に必要な農作業に主として従事する者でなければならないということにしておるわけでございますので、目を逃れて入ってくる者がないように厳重に監視するということとあわせまして、農外資本による土地支配を防ぎ得るものというふうに考えております。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  227. 中林佳子

    ○中林委員 過去の問題じゃないんですね。いまおっしゃいましたように、十勝の清水町というところでかなり問題があるわけなんです。この町には、農業委員会の調べで四つの農外資本による法人があります。その一つは藤田観光の十勝ペケレベツ農場、大日本印刷の大日本畜産農場、阪南産業、これは大阪のですけれども、上旭肉牛牧場、それから佐賀県の資産家による日本酪農清水町協同農場、この四つなわけです。  このうち、藤田観光の十勝ペケレベツ農場は、農業委員会への通知によると、畑が五十八ヘクタール、草地が五十九ヘクタール、採草放牧地が六十・八ヘクタール、山林原野が百三十・七ヘクタール、宅地が三・四ヘクタール、合計三百十一・九ヘクタールを所有していることになっているわけなんです。  この法人はい四十六年七月十七日に設立されましたが、四十五年から土地を買いに入って、わずか一年余りで農地二百ヘクタール、山林原野を八百ヘクタール押さえて、このうち三百ヘクタール余りを法人所有の土地にしているわけです。進出のときには、当時ここの清水町の議会の副議長、現在議長になっていらっしゃいますが、その方が土地買収から登記まですべてを担当して、地域開発、つまりスキー場建設や観光牧場構想を宣伝して、さらに藤田観光所有の山林のうち一部を当時の植村経団連会長ら有名財界人七氏に贈って、その登記簿の写しを見せて歩いている。観光開発の幻想をかき立てながらこのようにして進出してきたわけです。乳牛を当初二千頭から三カ年計画で五千頭にするとの青写真も示しているわけです。地域の農民は、開拓行政の転換や酪農の振興策などが行われた時期であったので、この構想を信用いたしまして、関係地区十二戸中十戸が飛びついたわけなんですね。しかし、いざ法人が設立されると、スキー場建設は立ち消え、乳牛は五千頭どころか最高時で四百頭なんです。給料も約束の半分、それから住宅建設の約束もほごにされた。二年後には六戸が排除されるようにして離脱していったわけなんです。つまり、わずか百五十万円前後の出資金を返還してもらってやめていかざるを得ない状況になったわけなんですね。現在は乳牛をわずか五十頭、それも北海道庁の貸付牛ということなんですね、それを飼養しているにすぎない。ことしの秋にはゼロにするということも言われているんです。この実態大臣は一体どのようにお考えなんでしょうか。
  228. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 どうも個別の細かい話で、恐縮ですがよく承知いたしておりませんが、農業委員会がきちんとやってくれておると私は思っているわけでございまして、もしなんでしたら詳しいことはまた後から局長からよく答弁をさせていきたいと思いますし、そういういろいろの疑問点があるのであれば、私は実態をしっかりと把握をして善処していきたいと思っております。
  229. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 私どもの方へ書類で上がっているこの要件を見ますと、構成員だとか業務執行役員の要件、これは形式的には満たされていることになっております、御指摘の農場の件でございます。実態がどういうものであるかということについては、個別の問題についてはそれほど詳しくは承知いたしておりません。  以上でございます。
  230. 中林佳子

    ○中林委員 個別の問題で具体的にわからないとおっしゃったわけで、われわれが調査に行ってこういう実態をつかんだのですよ。先ほどから、農外資本の進出というのはごくまれで、しかも過去にあった例などを引きずり出されたわけなんですね。こういう状況で農民が実際には追い出されるはめになっている現実があるわけなんです。  さらに、この農場はいま五十ヘクタール前後の畑作を経営しております。この農場を中心に清水町の御影地区で畑地帯総合土地改良事業を行っているわけですが、同地区の、この御影地区のことですが、六〇%をこのペケレベツ農場が占めているわけなんですね。ですから、事業推進にブレーキをかけて、用水だとか灌漑事業に同意しないため、この地域の基盤整備が進んでおりません。また、膨大な遊休地を持っているのに、周辺の農民が貸してほしいと要望しても一切断っているわけなんです。この辺では平均十ヘクタールと北海道の酪農家としては小規模なんです。ですから、この地域の農民の草地規模拡大要求というのはきわめて強いわけなんです。この農場をまたいで、その周辺の農家の人は七、八キロメートル離れたところに借地を求めているわけなんです。さらに五十四年度には耕地防風林を伐採してしまい、風の強いこの地区の農業に打撃を与える、こういうことまでやっているのです。こうして藤田観光による法人支配は、地域農業振興にとっても大きな障害になっております。  こうまでして土地を所有し、遊休化させている原因は、藤田観光がもともと農業をやるつもりがなかったことにある、このように思わざるを得ないわけですね。同社の松山緑社長は昭和四十五年から北海道開発審議委員をしており、日高山脈を抜けて十勝平野に出る要所にある清水町が北海道横断自動車道のインターチェンジの予定地であることをつかんでいた、こういうふうに考えられるわけです。特にこの農場は——大臣が具体的なことでおわかりにならなければと思って地図を持ってきたのです。見えるかどうかわからないのですけれども、緑の線を引いているところが国道です。それで藤田観光の土地がここなんです。ですから、日高山脈を抜けて北海道中央部と東部を結ぶ国道二百七十四号線というのがこう来ているわけなんですね。それと十勝平野を根室本線沿いに走る国道三十八号線にはさまれる扇状の地帯の中央にちょうど位置している。しかも清水駅から五分から十分のところなんですね。非常に好条件のところにあるということなんです。ですから、列島改造ブームによる土地買い占めの直前に、十アール当たり五万円から七万円という超安値で、つまり耕作目的での移動の形をとって、農地や採草放牧地を取得するための隠れみのにこの農業生産法人が使われている、これが真相だ、こういうふうに判断をせざるを得ないわけなんです。法人設立の後、農地転用の障害になる酪農や用排水、灌漑等への投資を避けて、地元農家を構成員から排除して着々と転用の布石を打っているわけなんです。ですから、大臣、こういう状況をどうお考えになるのか。  また、昭和四十五年九月三十日の次官通達で言う農地の効率的利用だとか、あるいは農家以外の者による法人支配を排除して生産法人の指導育成に当たるという、この指導ということは一体何であったのかと思わざるを得ないわけなんですね。  ですから、私詳しくお話ししましたので、こういう実態が現にあること、しかも、先ほどから局長がそういう事例はないないとかなりおっしゃっていたんですけれども実際はあるということについて、大臣はどのようにお考えなのか、御見解を聞かせてください。
  231. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 私は、きわめて少ない、むしろそのほとんどは正規の形をとった農業生産法人であるということを申し上げましたが、皆無だとまでは申し上げておりません。たくさんの中にそういう事例があるということはあり得るとは思っております。  それから、現地には町村の、清水町の場合は清水町の農業委員会もあって、農地法基づく厳正な管理、運用をしているわけでございます。それから町もありますし、それから北海道庁もあるわけでございます。個別事案に直接国がというのは、やはり現地が現地の事情を一番よく知っているわけでございますので、道なり町の方に、そういうことについて国会でもかかる御質問があった、それについてしかるべく対処するようにということで、直接国がというよりは、道なり町の問題としてこれは扱っていくべき性格のものというふうに私は考えております。
  232. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま局長の答弁いたしましたとおりで、皆無でないということで、たまたまそういう例外的な、これはレアケースではないかと思うのでございます。私、全くいま聞いただけで中身はよくわからないのですが、それが果たして全部が農用地なのか、相当山林があるのかどうか、そういう点もよくわかりませんし、いずれにしても、いま答弁がありましたように、北海道庁あるいはその町あるいは農業委員会、そういうところできちんとしていただくべき問題でございまして、私どもとしては、法律に抵触をしておるというようなことになれば、これはきちんと指導しなければならないと思っております。
  233. 中林佳子

    ○中林委員 四十五年の農地法改正で役員の要件はついたけれども生産法人の要件緩和がなって、こういう事態が実際に法律に触れない形でできているという事態なんですね。ですから、今回はさらに要件を緩和するということでのおそれを私は言っているわけなんです。ですから、そういうのは法に触れてないし、そこの農業委員会だとか道などがちゃんと指導すればちゃんとなるというような話ではないのですね。  さらに言わせていただくわけですが、法人設立当時農地が五十ヘクタール、山林五十ヘクタールを所有して五十頭の乳牛を飼って、この清水町で第二位と言われていた酪農家は、私どもの調査に次のように言っているわけなんです。町当局と天下の藤田観光が集団のための牧場をつくり、地域開発をやると宣伝して、私が取りまとめ役にならなければ牧場はできないと言われたので、山林を四十五年に十アール当たり七千円で売り、四十六年には農地を、これも十アール当たりですが、四万五千円で売った。初代の社長は藤田観光の人間で土地を持っていなかったので、自分の未墾地を開墾の上提供して農民の資格を持たせてやった。しかし、五千頭の飼育どころか四百頭しか飼育せず、労働条件も余りにも約束と違うので、腹に据えかねて四十八年三月にやめた、こうおっしゃつているわけなんです。この人は今回の農地法改正の中身を聞いて、ますます藤田観光の支配が強まって、地元から参加した農家は追い出されるに違いない、こういう感想を述べているわけなんです。そういう感想を述べたのを裏づけるかのように、四戸残っている構成員のうち一戸はことし十月限りで退職させられる予定と言われております。しかも、藤田観光から派遣された現在のオーナーは、同社函館営業所で国定公園大沼周辺の土地買いあさりに腕をふるった人物なんです。しかも、五十三年度からは、この地域対象に北海道横断自動車道の調査予算もつき、部分的に測量も始まっているわけなんですね。  私は、この藤田観光が、今回の農地法改正を使ってますます支配力を強めて、高速道やレジャーランドなどへの転用を実施するとともに、下手をすると生産法人の隠れみのを使って、周辺の農地買い占めに走らないという保証はどこにもないと考えざるを得ないわけなんです。ですから、これでも法人役員要件の全面的緩和が悪影響を及ぼさない、こういうふうに断言できるのでしょうか。
  234. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 数多くの中の問題でございますから、そこはよほど厳正に的確に運用していくという注意はもちろん必要であろうかと考えております。先生の御意見は、十分承知といいますか、拝聴いたしました。私ども、今後の問題については、要件緩和に伴っておかしな事態が生じないよう、十分努めてまいりたいと考えております。
  235. 中林佳子

    ○中林委員 特殊な例だとおっしゃいますので、さらに次の例も挙げたいというふうに私は思うわけなんです。  これは藤田観光に同じように隣接した形で、大日本印刷が大日本畜産農場という農業生産法人を四十五年六月三十日に設立して、農業委員会への通知で二百ヘクタール、実際は五百四十ヘクタールの農地があるわけなんですが、この農地や採草放牧地、山林を持っていて、先ほど地図で示しましたが、藤田と同様に二本の国道の中央部を占め、特に二百七十四号線の沿線にあるわけなんです。資本金六千三百万円のうち、大日本印刷の北島織衛社長が五千百六十二万円、八二%を出資しております。実質的な個人経営の農場だと言っても過言ではないと思うのです。奇怪なことには、この農場は、大々的な肉牛牧場というふれ込みで、しかも国道沿線に目立つように大看板を立てているのに、畜舎もサイロもなくて、農地は荒れほうだいになっていることなんです。構成員の住宅が四むね建っているわけですけれども、現在住んでいるのは一人にすぎないわけなんです。しかも、この人は北洋相互銀行の元従業員で、大日本印刷の意を受けて土地買いあさりに奔走し、現在この農場長をしている人物なんです。役員は五人いるわけなんですが、北島社長を含めもともと不在村者が二人、また一人は離農した開拓農家で、現在は不在村者になっております。つまり、このこと自体が、先ほどおっしゃった役員要件を満たしていないものだというふうに思われるわけです。要するに、現在一人残っている元銀行従業員が転用までの土地管理者にすぎないというふうに思えるわけなんですよね。遊休地を貸さず、土地改良もせず、ここもまた防風林も伐採してしまうという、まさに地域農業に打撃を与えている点では、先ほどの藤田観光と同じことをやっているわけなんです。大臣、これでも生産法人と言えるのでしょうか。  重ねて聞くわけですけれども、先ほど特殊な例とおっしゃいましたが、同じようなことを大日本印刷でもやっている。こういうことがありながら、要件を緩和して、こういうことがはびこらないという保証があるのかどうか、後継者だけに限定して緩和をするというお考えにならないのかどうか、その点をお伺いします。
  236. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 恐縮でございますが、個別事案については、先ほど来申し上げておりますように、町なり道なりあるいは農業委員会の厳正な法の執行、運用ということで対処すべきだと考えております。今回の要件緩和に伴っておかしな事態にならないよう、私どもとしては十分努力してまいりたいと考えております。
  237. 中林佳子

    ○中林委員 今度の要件緩和が出ると、さらにこういう農外資本が進出するおそれがあるということで私は事例を挙げているわけなんです。ですから、個別な事例で、それは地域の者が解決すべき問題だということで済まされない、日本全体の農業にかかわる問題なんですね。ですから、今度の法改正農業発展につながるとおっしゃるけれども、実際にはその周辺の農業を阻害している問題が起きているわけなんですよ。その辺、ちゃんとまじめに考えていただかなければいけないと思うわけなんです。  さらに、私は、過去の問題だというようなこともおっしゃるので、今日的な問題をお話ししますが、五十三年四月一日に、上旭肉牛牧場という農業生産法人が設立され、このバックにあるのは大阪の食肉卸売業者である阪南産業で、この会社の十勝一帯の買い入れ担当者が法人の社長となっております。農業委員会への届け出は五十三・六ヘクタールの経営面積となっておりますが、実際は二百ヘクタール以上の経営になっております。さきの藤田観光やあるいは大日本印刷の事例とは違い、積極的に肉牛の飼育をし、黒字経営と言われております。したがって、土地投機が目的ではないもの、このように思えるわけですが、しかし問題があるわけなんです。現在、ダイエーだとか、西友ストアーだとか、スエヒロなどが北海道内で肉牛の契約生産を行っているが、もしも上旭肉牛牧場のケースが成功すれば、これらの大スーパーや商社が肉牛インテグレーションに乗り出さないという保証はないわけなんです。乳価据え置きだとかあるいは牛乳の生産調整で莫大な負債を抱えているこの北海道の酪農家は、酪農をやめるか、それとも規模拡大をするかの岐路に立たされている状況で、ある意味では昭和四十五年前後の開拓農民の状況と似ているわけなんですね。  このような状況のもとで、生産法人の要件を緩和し、大企業の農業進出と農地取得を容易にする必要がどこにあるのかということなんです。また、養鶏だとか養豚の分野におけるインテグレーションによる農民支配の状況を、肉牛の分野でも再現するおそれが実際にあると私は思います。ですから、農水省は、今度のこういう農地法改正での要件緩和を強行してインテグレーションを奨励しよう、こういう姿勢になっていらっしゃるのでしょうか。重ねて今度の全面的な要件緩和という、これの撤回を求めるわけですが、いかがですか。
  238. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 別段農外資本の導入を図って農業生産法人の要件を緩和するわけではございません。明らかにまじめな農業後継者と並んで農業に従事する者、あるいはこれから農業の世界に入っていきたいという若い人もたくさんいるのでございます。そういった人たちに道を開くということが目的でございます。  運用の面におきましては、確かにそういった者が、これは極端なことを申し上げて恐縮ですが、後継者の名義を悪用して外部資本が何とか入ってくるというようなことだって、あり得ない話ではございません。私ども、法律の運用に当たっては、常に抜け穴をくぐるような事例が、まれではあるにせよ、出ないとは言い切れませんが、それは運用の面でもって厳正に対処するということで、極力これをなくすということで、むしろもっとたくさんある、本当にまじめな、農業に意欲を持っている人たちに道を開いて、りっぱな農業経営にいそしめるようにして差し上げるということの方が、より主眼となるべきではないかというふうに考えているわけでございます。
  239. 中林佳子

    ○中林委員 問題をすりかえていただいたら困ると思うんです乱後継者を悪用してどうのこうのという論理は成り立たないと思うんですね。四十五年の要件緩和でさえも、こういう農外資本が入ってきて、実際に農業に悪影響を及ぼしている。北海道の例を言いましたけれども、北海道だけではないんですよ、私の聞いている話では。さらにそれが今度は全面的に緩和されて、土地を提供しなくても役員になれる、こういうことになりますと、どんな資本でも入っていく道がさらに開けてくるというおそれは必ずあると思うんですよ。  私は、私の地元である島根県の話をするわけですが、農用地開発公団が昭和四十九年から五十三年にかけて畜産基地を開発しました。これは金城畜産協同組合という農事組合法人が肉牛と養豚を生産するためのものなんです。昭和四十八年に成立されたこの金城畜産ですが、経営に行き詰まって、昭和五十三年に三億五千、若干端したがありますけれども、これだけの欠損金を出しております。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そのために融資先を次々とかえたりしていたようですが、ついに山口銀行から三億円の融資を受けています。開発公団がやった事業で国が六〇%の補助を出し、県も一五から二〇%の補助を出しているこの組合に、当然常識的に考えれば県内の指定金融機関が当たるのがあたりまえだ、こういうふうに思われるわけですが、なぜ山口銀行が三億円の融資をしたのか、その点について……。
  240. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 御指摘の農事組合法人金城畜産協同組合は、昭和四十八年に地元の農家を中心に設立されたものでございまして、昭和四十九年度から五十二年度まで実施されました畜産基地建設事業事業に参加をいたしまして、同地域内で肉用牛及び養豚の複合一貫経営を相当の規模で行ってきてまいっておるものでございます。この組合の経営につきましては、相当規模が大きいのでございますが、畜産経営に必要な飼養技術あるいは経営管理が不十分であるということから、多額の累積赤字が発生をし、その赤字補てんのために、五十三年八月に民間会社の保証による銀行融資を受けておるというふうに島根県庁から報告を聞いております。ただいまの、地元の銀行でなくて山口銀行からの融資を受けておるということについての事情はつまびらかではございませんが、この組合と益田農協とのつながりからそのようになったのではないかというふうに考えられます。
  241. 中林佳子

    ○中林委員 非常に歯切れが悪いといいますか、実態が明らかになってないといいますか、なぜ山口銀行などから三億円という多額な融資が出たのか、これは農水省とすれば、当然詳しく聞かなければならない中身だと私は思うわけなんです。これは、金城町の農業協同組合の理事会で話があったことなんですが、これは政治的なルートで大洋漁業が保証人になってこの融資が受けられた。つまり先ほどの民間の会社が保証人になったというのは大洋漁業の話だ、こういうふうに報告されているわけです。三億円と言えば全体から見れば非常に多額なお金なんですね。五十四年にはさらに欠損金がふくらんでいるというふうに私は聞いているわけで、現在五億円ぐらいの赤字になっているのではないかと言われているわけです。基本的には、畜産農政そのものが本当に成り立つようにしていくこと、これが求められているわけなんですが、この金城畜産で非常に懸念されていることは、大洋漁業が後ろ盾になって山口銀行から融資を受けたときの条件で、飼料は全部大洋漁業から入れる、豚肉は全部大洋漁業に売る、こういうことが取り決められているわけなんですね。ですから、このままでは返済の見込みも非常に立たないという状況の中で、大洋漁業がこの生産法人を押さえてしまうこともできる道が開かれる、このように思うわけなんです。ですから、ここも先ほどの北海道の例と同じように、広島市と浜田市を結ぶ中国横断路がすぐ近くを通るわけなんです。そういうことから考えてみましても、大洋漁業というような大企業が、こうした生産法人でせっかくやっている畜産基地を押さえることがないような措置をやらなければならないと思うわけですが、農林省としてはどのようにお考えでしょうか。
  242. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 島根県庁からの報告によりますと、その融資をするに際しまして、大洋漁業の債務保証がつけられておるということの報告がございます。その融資の際に、取引上の関係から、えさの供給及び肥育豚の販売について、益田農協を通じて大洋漁業を取引の相手方にするというふうに聞いておるわけでございます。したがいまして、益田農協自体がどういうふうに対応するかという問題があるのでございますが、いずれにいたしましても、この畜産基地建設事業育成を図ろうという大規模な畜産経営でございますので、島根県におきましては、これはその本来の趣旨に即して経営が成り立つようにということで、特別のプロジェクトチームを組みまして、この組合に対する指導に乗り出して、種々対策を検討しておるというふうに聞いておるわけでございます。農林水産省といたしましても、島根県庁と十分相談をいたしまして、畜産基地建設の本来の趣旨が生かされるように指導をしてまいりたいと考えております。  なお、この組合の開発された農地につきましては、まだこの組合の所有地にはなっておりませんで、一時使用地ということでございまして、農地保有合理化法人から売り渡しされる場合には、その農業生産法人としての要件が十分満たされているかどうか、これは当然審査されるべきものというふうに考えております。
  243. 中林佳子

    ○中林委員 非常に困難な状況の中に、大洋漁業が後ろ盾になって三億円も融資されている。こういう状況の中で、あるいは押さえようと思えば一定の手続をすればできるわけで、しかも、それが土地投機になるのか、あるいはインテグレーションになるのか、その辺の判断はまだ立たないところでけれども、そういうおそれは十分にあるわけですね。ですから、本来の畜産基地としての要件を十分満たしていくためにも、多分いままだ返済のめどは立っていない、こういうふうに思うわけで、国としても何らかの対策、たとえば返還期間を延ばすなどということを考えていただけますでしょうか。
  244. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 経営の再建計画につきまして、目下島根県庁におきまして種々検討がされておるように承知をいたしております。したがいまして、農林水産省といたしましても、島根県庁と十分相談をいたしまして、先ほどお答え申し上げましたように、この畜産基地建設事業の中での金城畜産経営が十分成り立つように指導をしてまいりたいと考えております。
  245. 中林佳子

    ○中林委員 大臣、先ほどからこういう農外資本の進出の方向というのがいろいろなところで出てきているわけなんですね。今度の農地法改正の問題で、役員などの要件緩和を全面的にしていく、こういうようになっているわけで、本当に農業経営者だとかあるいはそういうものを重視したいということならば、それだけの限定をつくるという方向にならないですか。その点、もう一度大臣に見解をお伺いします。
  246. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは初めから、法律の裏をくぐってやろうというようなことを考えて法律をつくらないものでございますから、きょう御指摘をいただいているいろいろの点はありますけれども、私どもは、それは全く例外的な場合だ、いわゆるレアケースであると思っておりますし、また、はっきりしてくれば法律に照らして措置すべき点は措置できるわけでございます。そういうことはできるだけないようにしていかなければならぬことは当然でございますので、今後とも各都道府県知事なりあるいは農業委員会を事前に指導して、そういうことがないようにしていかなければならないと思っておりますが、どうしても出てきたときは出てきたなりに、これはそれぞれの知事の立場でできるだけ善処してもらいたいと思っておるわけでございます。そういうことがあったからここで農業生産法人の条件緩和をもう一回考え直せということは、きょうは一、二の例は承りましたけれども、先ほど局長も答弁いたしましたが、それによって本当に農業をやろうという意欲を持っている人たちを阻害することになりますから、いまのお話だけでこの条件緩和をもう一回考え直すというわけにはいかないことは御理解いただきたいと思うわけでございます。
  247. 中林佳子

    ○中林委員 農水省が農外資本の土地買い占めの実態を十分調査もされないで、一、二の事例だということをおっしゃるわけですが、実際に四十五年の法改正でそういうところが出てきているわけで、しかも、そういうことがないように通達によって指導するということがありながら、要件を緩和したために実際はそういう事態が起こっているわけです。ですから、これは本当に重大な問題だと私は言わざるを得ないと思うのです。  そこで、角度を変えてお伺いするわけですが、全国農業会議所は農地を守る運動の一環として全国的な調査活動を実施して、中間報告を出しているわけです。この調査は昭和五十年十月に実施したもので、昭和四十四年四月一日から昭和五十年九月末の間の、一件二ヘクタール以上農外資本が取得した土地実態をまとめたものなんです。買収総面積が約二十七万九千ヘクタール、これは三十六道府県分です。それから農地面積は二万三千九百五十ヘクタール、これは北海道を除いております。それから、山林原野が十七万八千ヘクタール、圧倒的に山林原野が多い。こういうことも、山林原野が将来の農業開発地であるとすれば重大な問題であるわけです。また、農地面積中、転用が原則として許可されていない第一種農地や市街化調整区域の甲種農地合わせて約三千ヘクタールも含まれているわけです。この点、農水省は実態をつかんでいらっしゃるのでしょうか。
  248. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業会議所の調査の結果については承知いたしております。一つ一つの数字を申し上げませんが、ただいま先生の言われたような実態になっているというふうに承知いたしております。
  249. 中林佳子

    ○中林委員 買収土地の四七・九%、約半分が開発事業未着工で、さらにこの未着工中、開発予定地面積が二割にしかすぎないわけです。つまり、これら農外資本の土地取得の圧倒的部分が投機的目的である、こういうふうに言えるのではないでしょうか。しかも、農地の場合許可を要するので、仮登記という形で実質的な所有権移転をも進行させているのも特徴として挙げられるわけです。こうした農外資本の土地買い占めに対して、農業会議所の調査結果に基づいて、農水省はどういうふうな対策を講じられているのでしょうか。
  250. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 過去におきまして、特に四十年代の半ばから四十年代の後半、農外者による農地の取得の全般的な実態、これは正確にはつかめないにいたしましても、先ほどの農業会議所の調査もございますし、相当程度進行したというふうに受けとめております。  これらの土地農業的利用に供すべき土地である場合には、農業的利用に供されるように、必要な対策を講じてまいっているところでございます。すなわち、これらの土地が農振法の農用地区域内にある場合には、農業用地として確保するため、農振法の開発許可制の厳正な運用を図るということにいたしております。それから、農地保有合理化法人の機能を活用いたしまして、これは農地に向けるべく買い戻しをするというようなことも図っております。それから、これらの土地農業適地ではあるけれども農用地区域外にある場合には、農用地区域に含めるように、ゾーニングと言いますが、線引きの指導もしているところでございます。農地保有合理化法人の買い戻し実績は、四十六年度から五十三年度までで三千百九ヘクタールに及んでおります。
  251. 中林佳子

    ○中林委員 この買収時期を見ると、確かに田中元首相の列島改造論に便乗した買い占めである、こういうふうにも言えるわけですけれども、これは決して過去のものではないと思うのですね。第一に、耕作目的農地価格上昇も、狂乱物価時代に比べて低くはなっているとはいえ、依然として値上がり傾向を続けているわけですし、さらに・第二に、農地の場合、開発等に伴う転用が実現した場合、膨大な転用差益が発生するという点、第三に、特に最近のインフレの進行と地価の再上昇傾向の中で、土地などは資本にとって魅力のある投機対象である、こういうふうに思えるからなんです。大臣はこのような状況をどのように認識されているのでしょうか。
  252. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 確かに、高度経済成長時代と異なりまして、むやみ土地に対する、特に農地については規制が厳格であるということから、投機的な資本の進出というのは減ってまいったと思います。しかし、これがいつ再燃しないとも限らないということで、私どもは優良農地の確保のため、農地法の厳正な運用、それから農振法等の土地法といいますかゾーニング法の厳正な運用執行ということを心がけて、今後とも農外資本の大大的な進出を許すことのないよう、十分調整を図ってまいりたいと考えております。
  253. 中林佳子

    ○中林委員 農振法に基づいた農用地利用増進事業では、農地法三条の許可の適用除外は貸借権と使用収益権の利用権設定のみであったわけですね。今回の増進法案では所有権の移転をも農地法三条の適用除外としているわけですが、その根拠は一体何なのでしょうか。
  254. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 むしろ、農家土地についての権利のあり方は、所有権を持つ、そしてその所有権のある経営上一番安定している農地について農業経営を営む、耕作を行うことが望ましいわけでございます。そういう意味で、本来はやはり私ども、今後とも所有権の移転についてできるだけ努力してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただ、御存じのように地価が高い、それから資産保有的な傾向といいますか考え方が強い現実のこの世の中におきましては、なかなか手放す者がないという状況でございます。そういう状況の中では賃貸借設定主眼とせざるを得ないということで、従来の農用地利用増進事業におきましては、これは所有権の移転をあきらめたわけではございませんけれども、一番中心となる利用権設定の方を対象として取り上げておったわけでございます。今回は、全般的な農用地利用増進事業の拡充を図るという観点から、対象地域も広げますし、それから利用権のみならず所有権についても、地域的に見て、たとえば北海道などがその例でございますが、一部推進することによって、ある程度の実現を図ることができるというところもございます。それから個々の経営者によっては、資力もついて自分の採算の中で若干高い農地であっても買うことができるというところもございます。そういう形による所有権の移転、これはむしろ望ましい姿であって奨励してしかるべきであるということで、改めて農用地利用増進事業の中に取り込むこととしておるのでございます。
  255. 中林佳子

    ○中林委員 いまおっしゃったそれぞれの理由は余りにも便宜主義的なことだというふうに言わざるを得ないわけです。言うまでもなく、所有権の移転というのは一回限りの行為であるわけですね。一方、本法案が想定している賃貸借権は短期、大体三年くらいがめどですが、更新なしの賃貸借で、期間の三年が終了すると賃貸借は解除されて、もちろん所有権はそのままだと、こういうことなんですね。このように所有権と賃貸借という権利のレベルの違うものを、同じ仕組みで権利の設定だとか移転を進めるということには非常に問題がある、こういうふうに思うわけなんです。当然、農民的農地所有を守るとか、あるいは投機的な農地取得を排除するという点で、所有権移転については短期賃貸借の場合以上により厳重なコントロールが必要ではないか、こういうふうに思うわけなんですけれども、御見解はいかがでしょうか。
  256. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農地流動化はいろんな姿をとるものがあると思います。一番望ましい姿は、重ねて申し上げることになりますが、所有権の移転の姿でございます。それから利用権設定でございますが、利用権という場合、賃貸借が一番主たる形になるでございましょう。その利用権設定も、短期のもの、中期のもの、長期のもの、いろいろございます。私ども、期間については、特に何年でなければいけないということを申しているわけではございません。三ないし五年層のものが一番多うございますが、それより長いもの、中には十年を超えるというものもございます。そういったさまざまの形態、これをできるだけ広く拾い上げて活用していくということで、所有権も、それから短期、中期、長期の利用権設定計画の中に取り上げていくということは、これはむしろ従来以上に拡充した、進めていくためには必要な措置であろうというふうに私は考えております。  それから、所有権の移転が何かぐあい悪いかのようにお考え——これは私の誤解かもしれませんが、おとりでございますが、これは一般の場合と違いまして農業者同士の所有権の移転でございます。現在持っている人が絶対的に未来永却持つというのではなくて、農地農地として本当に有効に使う人に所有権を移していくということはむしろ望ましいことではないかと考えております。しかも、この事業は、市町村が中心になって農業委員会そのほか農業団体関係者等の相談といいますか、・全体的な地域合意のもとで行われることでありますから、本当にむしろできないのが残念なくらいで、もっともっと所有権の移転が実現できるようになればいいのだがなというふうに思っております。
  257. 中林佳子

    ○中林委員 所有権移転が非常に簡単に行われるというところに問題があるということなんですよ。農地管理上、所有権と賃貸借はいままでの歴史からいっても必ずしも同じようには扱ってなかったわけなんですね。現行の農地法では、昭和四十五年以前は所有権は知事だ、賃貸借権は農業委員会だ、こういうふうに区別していたいきさつもあって、そういう意味で、所有権というのは非常に重きを置き、現に財産でもあるわけですから同じレベルに置かれない問題だというふうに思うわけなんです。  そこで、聞くわけですが、増進法案による仕組み、つまり増進計画を定め、それを公告したときに増進計画に定める所有権が移転する、こういうもので本当に農民的農地所有が守られるのかどうか、投機的土地取得を排除し得るのかどうか、この点ですね。  それで、具体的に聞くわけですが、農地法では第三条一項で許可を義務づけて、第二項ではその許可をできない基準が定められているわけです。その基準ですが、第三条第二項第二号で、権利を取得しようとする者は、その取得後、耕作の事業に供すべき農地等のすべてについて耕作の事業を行うこと、こういうふうになっているわけです。これは増進法案の第五条第三項第二号の増進計画の要件の一つである利用権設定等を受ける者の設定後の要件、イですね、「耕作又は養畜事業に供すべき農用地のすべてについて耕作又は養畜事業を行うと認められること。」と同趣旨だと受けとめていいものでしょうか。
  258. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農地法第三条第二項に規定しております二号、四号、八号の要件と、今回の利用増進法五条三項二号に規定する三つの要件、これは趣旨において同じものでございます。
  259. 中林佳子

    ○中林委員 そうしますと、口の「耕作又は養畜事業に必要な農作業に常時従事すると認められること。」は、農地法第三条二項第四号と同じ趣旨だ、こういうふうに受けとめていいわけですね。
  260. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 そのとおりでございます。
  261. 中林佳子

    ○中林委員 さらに、ハの定め、これも農地法第三条二項第八号の、権利を取得しようとする者の農業経営の状況、その住所地からその農用地までの距離等から見て、これらの者がその土地を効率的に利用して耕作等の事業を行うことができる、これと、そのハの「前項第二号に規定する土地を効率的に利用して耕作又は養畜事業を行うことができると認められること。」と同趣旨だというふうに受けとめていいわけですね。
  262. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 趣旨において同じでございます。
  263. 中林佳子

    ○中林委員 それでは、さらに、増進法のイの要件の解釈についてお尋ねするわけですが、耕作の事業に供すべき農用地のすべてについて事業を行うと認められることとは、たとえば、権利の設定を受ける人が自分の農地の一部を他人に請負耕作ややみ小作に出している場合または自分の所有地の一部を耕作放棄している、こういう人は権利の移転をさせないということなのでしょうか。
  264. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 そういう趣旨でございます。
  265. 中林佳子

    ○中林委員 次に、このハの規定についてもですが、農地法昭和四十五年に改正されたときの次官通達で出ていることですが、資産保有の目的あるいは投資の対象等としてすでに非効率的な耕作をしていながら、新たに農地を取得し、または転用目的で売却した農地の代替地をその住所から遠隔の地に求め、このような取得を抑制するためと、こういうことになっているわけですが、ハの土地を効率的に利用して耕作事業を行うことができると認められることと同趣旨だと受けとめていいわけですね。
  266. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 全く同じ趣旨のものでございます。
  267. 中林佳子

    ○中林委員 そういたしますと、代替取得地、距離の離れている取得抑制という点でお尋ねするわけですが、農地移動実態調査で、自作地の有償所有権移転の場合の許可件数の中で市町村外居住者の件数は全体の約一割近くになっております。これを年別に見ますと、転用面積が増大した一年おくれで市町村外居住者の許可件数の割合が高まっております。昭和四十八年は一〇・五%、昭和四十九年は一〇・三%になっているわけですが、こうした市町村外居住者の農地取得については好ましいとお考えになっているのかどうか、その点について御見解を聞きます。
  268. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 自作地の所有権移転について市町村外の居住者の取得は、先生がおっしゃったのと同じことかと思いますが、件数で八%、一万五千九百十九件、面積で一五%ということになっております。このうち、大部分は隣接市町村ではございますが、当該市町村以外の地域から取得しているものもある程度あるわけでございます。  そういう取得が好ましいかということでございますが、これは一概には言えないと思います。ごく原則的には、同一市町村の中の方が一般的にはよろしゅうございますが、場合によってはむしろ隣接市町村あたり、他市町村の人間が取得して効率的な利用を行うということもあり得るわけでございます。
  269. 中林佳子

    ○中林委員 昭和四十九年度の農地移動実態調査で、この市町村外居住者の取得の実態について特別集計として分析しているわけです。たとえば、市町村外の住所別では、先ほどおっしゃいましたように隣接が約八割、その他の市町村が二割、つまり、隣接以外の離れた市町村からの農地取得がかなりあるということになっております。県別に見ますと、京都府の場合、市町村外居住者の件数が五百二十八件で、そのうち隣接ではなくてその他の市町村からが二百八十五件と、半分を超えているわけなんですね。市町村外どころか他の府県、大阪だとか兵庫だとか、こういうところから京都に農地を取得に入っているというふうに聞いているわけなんです。また事由別に見ますと、代替地取得が確実なるものが全体の二五・二%、四分の一を占めているわけなんですね。これは先ほどもいろいろ尋ねたわけですが、農地法三条の二項八号の効率的利用に違反しているのではないか、こういう疑問が残るわけですけれども、この辺についての御見解はどうなんでしょう。
  270. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 要件につきましては、機械的に隣接市町村であるから、あるいは若干離れた市町村であるからということで、そういったところの農業者が取得した場合好ましくないということは、一概には言えないということを申し上げました。やはり全体としての効率的な利用に役立っているか、周りの一般の営農と調和がとれたような土地利用が行われているかということになりますと、それはまさに個別のケースについて一つ一つ判断する性格のものであろうかと考えます。
  271. 中林佳子

    ○中林委員 次官通達で、代替地をその住所から遠隔の地に取得するようなことは抑制しなければならない、こういうことになっておるわけなんですね。代替地取得が確実なものというのが全体の四分の一を占めている、こういう状況ですから、農地法の効率的という意味が次官通達の言っている意味を含むというふうにおっしゃるわけですから、当然それに触れるような疑いがあるというふうにはお考えにならないのですか。重ねてお伺いします。
  272. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 遠隔地というもののその距離の程度がどうかということでございますが、交通手段あるいは道路事情等によって差はございますが、一般的に言って遠隔地は通作に不便である、それから何も遠隔地へ出かけなくてもいいのにわざわざ遠隔地まで来るということには特殊な事情があるのではないかということを考え合わせますと、一般的には遠隔地からの取得は疑わしい点があることは事実でございます。しかし、先ほども申し上げましたように、それはまさに個別のケースごとに、本当にぐあいが悪いのか、一般的に許容される範囲なのかということは個々に判断されるべきものと考えます。
  273. 中林佳子

    ○中林委員 農地法三条の場合、市町村外居住者の許可権者は都道府県知事となっているわけですが、今度の増進法案では、農業委員会の決定を経て市町村が定める、つまり農業委員会でチェックして市町村長が定めることになっているわけなんですが、自分の市町村の住民以外の農地取得について、先ほど言いました要件のイ、ロ、ハ、この三つの厳格な要件に合致しているかどうかという判定ができるのかどうか。これでは、せっかく要件を定めても盲判になる危険性があるのではないか。農水省としてはこの点をどのように対処されるのですか。
  274. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 もちろん、自村内の農業者のことであれば、農業委員会は普段からもある程度知っていますし、また詳しく調べることも可能でございます。隣接市町村あたりでもその点は相当程度可能でございましょうが、だんだん遠隔地になりますと、そこは調査が十分に行き届かないといった点もあるいは出てくるかもしれません。しかし、申請に当たりましては当然本人に面接する、書類を審査する。しかも、それだけでは十分でないならば、当該本人の所在する市町村当局なり農業委員会に照会もするというような、もろもろの調査の手段を使いまして、そういった点について遺漏のない調査が行われるよう農業委員会に、また市町村も当然でございますが、努めていただき、また私どももそのように指導してまいるという考えでおります。
  275. 中林佳子

    ○中林委員 もう少し具体的にお伺いするわけですが、イ、ロ、ハの要件を満たしているかどうかということを厳重にチェックするために、そこに住んでいないわけですから、隣接あるいはそのほかの市町村農業委員会に問い合わせを行うわけですね。その問い合わせを行ってそれを信用する、こういうことになるわけですか。
  276. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 確認についての責任は当該市町村農業委員会が持つわけでございます。信用できる場合もありましょうし、もう少し調査してもらいたいと思う場合もありましょうし、あるいは手間暇かかりますけれども、手を尽くして自分がじかに調べに行くという場合もあろうかと思います。一般的には、その地区の取得したいという人間の所在する市町村なり農業委員会に照会するのが一番基礎になろうかと考えております。
  277. 中林佳子

    ○中林委員 実際には調べに行くというようなことは不可能だと思うわけなんですね。たとえば、すぐ隣ならまだしも、かなり離れたところをチェックに行かなければならないということは、いまの農業委員会の事務局の体制などではとても不可能だ、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。結局、自分の市町村外の居住者の資格については、その人が居住している農業委員会なりの意見を無条件に信頼する以外に方法はない、これが現実的な対応だ、こういうふうに思うわけなんです。特に所有権移転の場合ですから、普通の賃貸借と違うわけですから厳重なチェックが必要ではないかと思うのです。それについて何らかの対応をお考えではないですか。
  278. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 私はチェックが不可能だとは思っておりません。遠隔地になればなるほど手間暇がかかるということはございますが、特にこういう際でもございますし、一般的に農地法の執行については厳正でなければなりませんけれども、さらに一層その厳正を期するようチェックを入念に行う必要があると考えております。また、そのように指導してまいりたいと考えております。
  279. 中林佳子

    ○中林委員 今回の増進法案の増進計画の中で定めるべき事項ですけれども、いまの農振法の増進事業計画には、利用権設定を受ける者が現に耕作等に供している農用地の所在、地番、地目、面積及び利用状況、こういうものがあったわけなんですが、今回の中には、文書作成が繁雑だということで省略されているわけなんですね。これでは、実際に行って見られないような先ほどの状況もある、その上にこういう文書作成もなされないということになりますと、要件に合致しているのかどうかという判定がますます困難になる、こういうふうに思うわけですね。ですから、この点では、農地法三条の許可申請手続に比べますと余りにも簡略化されている。これで本当に十分要件が満たされているという判断ができるのでしょうか。
  280. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 法律の規定の上では確かに今回落とした形になっておりますが、政令、省令全体を通じてごらんいただけばおわかりいただけると思いますが、内容的には全く従来と同じこと、これは当然記載されてしかるべき事項でございますから、盛り込むということで考えております。
  281. 中林佳子

    ○中林委員 それでは、文書作成が繁雑だということでこれを落とすということはないわけですね。もう一度確認だけさせてください。
  282. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 繁雑だから落とすということはございません。
  283. 中林佳子

    ○中林委員 それではさらにお伺いするわけですが、要件に合致していたといたしまして、増進計画を定め、公告もして権利が設定、移転された後に、明白にイ、ロ、ハの要件に合致しない人を誤って合致していると判断したことが明らかになった場合、あるいはまた、意識的に詐欺的に増進計画事項をごまかして記載した、そのため判断を誤ったという場合、これらの場合、権利の移転の取り消しが可能になるのかどうか。農地法上では判例等で許可の取り消しが可能になっているわけですが、これも非常に時間をかけているわけですが、この点についてお伺いします。
  284. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 基本的に農地法の考え方と同じでございまして、農用地利用増進計画の作成、それからその公告が、農用地利用増進法に定める要件または手続に違反しておったという場合、しかもその違反している瑕疵——法律用語できずでございますが、この瑕疵が重大かつ明白であると認められる場合には、その公告は無効の行為として市町村は取り消すことができることとなっております。その瑕疵が重大かつ明白であるとは言えない場合でも、まず利害関係者から不服申し立て、異議の申し立てがあったときは、原則としてその公告を取り消すことができるし、それから、その他のときは、その瑕疵の内容、程度及び原因並びに取り消すべき公益上の必要性等を総合的に勘案した上、取り消すべきかどうかを決定することになると考えております。
  285. 中林佳子

    ○中林委員 この法案にはそういう規定が全くないわけです。違反した場合の罰則規定も書かれていないわけで、そういったことを何らかの方法で明記されるわけですか。
  286. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 これは、市町村計画を決定する、それを公告するという行為が行政処分でございますので、それは行政処分というものの性格上、一般の解釈からそういうことができるということを私申し上げたわけでございます。
  287. 中林佳子

    ○中林委員 そうすると、農地法上の扱いと同じになる、こういうふうに解釈していいわけですね。
  288. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農地法上の扱いそのもの、農地法の規定の適用を直接受けるわけではありませんけれども趣旨において同じことを行政処分の取り扱いにおいて実現されるという意味でございます。
  289. 中林佳子

    ○中林委員 いろいろ伺ってきたわけですが、北海道の事例のように、資本が農地収奪を現に進めているとき、その手段となっている生産法人の要件を緩和する、しかも一方では、増進法において所有権移転まで農地法の規制から外していく、こういうことで、二重の意味で要件が緩和されていくわけです。ですから、そういう意味では、資本が農地に入ってくる、こういうことが起こり得る要件というのがさらに広がったということできわめて危険だ、こういうふうに指摘せざるを得ないわけです。  繰り返すわけですが、所有権というのは一回限りの行為で、一たん所有権が農外資本に移転してしまうと、それを取り戻すということは非常に困難になってくるわけです。貴重な限りある農地を耕作目的として農民の所有として守っていく上で、政府案の方向では容認できない、こういうふうに思わざるを得ないわけです。しかも、財界等から農地法廃止論が叫ばれている中で、三条の所有権移転を除外することが四条、五条の転用規制にも響かない保障はない、こういうふうに私思うわけなんです。ですから、ぜひこの所有権移転、これは賃貸借とは違うレベルのことをぜひ考えてもらわなければ困る、こういうふうに思うわけです。  そこで、所有権移転まで含まれてきますと、農業委員会が重要な役割りを果たすことになるわけです。特に実際に仕事をするのは事務局体制だ、こういうふうに思うわけです。一つは、法律でも決められております農地主事、これがいま〇・七人しか配置されてない、こういうことで、きわめて法律違反を犯しておりますが、この問題をどうなさるおつもりでしょうか。
  290. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農地主事でございますが、その設置の状況は、昭和五十四年の八月現在で農業委員会専任職員七千五百九十九名のうち二千百四十八名でございます。農業委員会の数が三千三百十七でございますので、確かに設置をいたしていない農業委員会があることは事実でございます。これはそれ相応の問題点があるわけでございまして、なかなか設置をしないという幾つかの理由があるわけでございますが、私どもは、今回の法改正を機会にぜひ強力な指導を行いまして、各農業委員会農地主事が設置されるように極力強力に指導をするつもりでございます。
  291. 中林佳子

    ○中林委員 最後ですけれども、この農業委員会の事務局体制の問題で、島根県で増進事業を一番よくやっている八雲村というところでは、二人の事務局担当がいるわけですが、これは村の仕事も兼務してやっているわけです。これに所有権移転までが加わっていくならば、いまでも手いっぱいのところをもうお手上げだ、所有権移転が加わると、財産の問題ですから実際に行ってはかってみたりしなければならないということもありまして、責任が持てない、こういうふうに言っているわけなんです。  そこで、大臣に、自治省を通じてこの農業委員会の事務局体制、これをどうしても強化する必要があるのではないか、こういうふうに思うわけで、最後に大臣の御答弁を求めます。
  292. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農業委員会の事務局体制を、今回の法改正もございますので、これを強化するという方向で私どもも強力に指導を進めてまいりたいと思うわけでございます。特に予算の裏打ちといたしましては、私どもは、農業委員会に置かれる委員につきましては、農地の権利関係の業務につきましては全額国庫負担をするという形にしておりますし、また、その他の業務につきましても、これは交付税の交付金の中に入れてその標準財政需要というものに応ずるだけの経費は見ているわけでございまして、今後このような事業がさらに推進されますためには、どうしても専任職員をできるだけ置いていくという方向農業委員会を指導していきたいと思います。
  293. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今後の農業委員会の役割りというのが大変重要なことは、もう御承知いただいているとおりでございます。それを踏まえて、私ども農業委員会に対するいろいろの予算の充実については、従来以上に努力をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  294. 中林佳子

    ○中林委員 終わります。
  295. 内海英男

    内海委員長 次回は、明二十一二日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時九分散会      ————◇—————