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1980-04-18 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十八日(金曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 稲富 稜人君       菊池福治郎君    久野 忠治君       佐藤  隆君    菅波  茂君       田名部匡省君    玉沢徳一郎君       西田  司君    福島 譲二君       保利 耕輔君    堀之内久男君       渡辺 省一君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    新村 源雄君       馬場  昇君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    本郷 公威君       瀬野栄次郎君    武田 一夫君       中川利三郎君    神田  厚君       近藤  豊君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    塚田  実君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君  委員外出席者         農林漁業金融公         庫総裁     中野 和仁君         参  考  人         (全国農業会議         所専務理事)  池田  斉君         参  考  人         (東京農工大学         農学部教授)  梶井  功君         参  考  人         (全国町村会理         事政務調査会経         済農林部会委         員)      齋藤 政憲君         参  考  人         (全日本農民組         合連合会書記         長)      谷本たかし君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会常務         理事)     山口  巖君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   瀬野栄次郎君     玉城 栄一君 同日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     瀬野栄次郎君     ――――――――――――― 四月十八日  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第八六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農用地利用増進法案内閣提出第七七号)  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第七  八号)  農業委員会等に関する法律等の一部を改正する  法律案内閣提出第七九号)      ――――◇―――――
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  農用地利用増進法案農地法の一部を改正する法律案及び農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  本日は、各案審査のため、参考人として全国農業会議所専務理事池田斉君、東京農工大学農学部教授梶井功君、全国町村会理事政務調査会経済農林部会委員齋藤政憲君、全日本農民組合連合会書記長谷本たかし君、全国農業協同組合中央会常務理事山口厳君、以上五名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきましてありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、参考人方々お願いいたしますが、御意見はお一人十分程度に要約してお述べをいただき、次に、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず池田参考人お願いいたします。
  3. 池田斉

    池田参考人 ただいま当委員会におきまして農地関連三法が真剣に御審議にあずかっておるわけでございますが、私は、本日、短い時間ではございますが、意見開陳をする機会をいただきまして、厚く御礼を申し上げたいと存じます。  意見を申し上げる前に、ひとつお礼を申し上げ、今後ますます農政推進のために国会の各先生方の御努力、御協力お願いしたいわけでございます。  ちょうど八〇年の農政展開幕あけに当たりまして、政府におきましても農政見直し作業農政審議会等を通じて本格的に行われておりますが、これと関連を持ちながら、今回二十三年ぶりで食糧自給力の向上の問題につきまして、衆議院の本会議で満場一致議決されたということは、われわれ農政推進立場にある者として、まことに感謝にたえないわけでございます。厚くお礼を申し上げ、今後とも御協力お願いいたしたいと存じます。  私は、戦前、戦中、戦後を通しまして四十数年間農政団体に所属をして仕事をしてまいったものでございます。なお、昭和二十六年に農業委員会法が制定されまして約三十年間、この中央組織のある程度責任のある地位で今日まで農政推進のために仕事をしてまいったものでございます。今回の農地関連法案につきましての国会提出は、私は、われわれ系統組織が長年にわたって要望してまいった問題が具体的に法案という姿で取り上げられたわけでございまして、これまた、政府努力なりあるいは関係方面の真剣な御審議に非常に注目すると同時に、感謝を申し上げたいと思うわけでございます。  ただ、今回の三法案は、何と申しましても、袋小路に追い込まれておるわが国農政を、八〇年の展望の中でどう切り開くかという問題の最も重要な一つの問題として、いわゆる日本農業体質改善するその一翼としては、土地に基盤を置く農業は、何と申しましても、規模拡大を通して体質改善をし、そのコストを下げなければ、やはり国民の要望にこたえることができないのではないか。非常にむずかしい問題ではありますけれども、これを何とか努力すべきである。言うなれば、構造政策の本格的な展開なしにはわが国農政の将来の展望は持ち得ない、こういう考え方に立ちまして、これに対しましては、われわれ農業委員会系統は、皆様も御案内のように、毎年定期の全国大会を開きまして、そこでこの決議をし、その農政推進構造政策推進の中におきまして、農業委員会は従来土地と人という問題を担当しながら仕事をしてまいりましたけれども、この構造政策推進の中における農業委員会役割りをはっきりさせて、そしてこれもあわせて改正してもらいたい、こういうことを要望してまいったことは御案内のとおりでございます。  そういう意味で、今回の三法案は、私どもが非常に重大な関心を持って長年要望してまいった問題でございまして、その間政府とも十分な交渉をしながらこの三法案を提出するところまでこぎつけ得たというような内容になっておるわけでございまして、十分ではないという点もありますけれども、私どもは、この法案提出過程において政府に注文をつけながらやってまいったということで、三法総体として合意をしておる、こういう前提に立って、われわれはこの問題を評価しておるわけでございます。  そういう意味では、柴田先生からはひやかされるかもしれませんが、五十年の農振法の法案におきましては、実は、それだけの詰めが行われないで政府見切り発車をしたというようなことで、農地行政二元化から守るためにわれわれは国会に対しましてこれの修正を強く要望いたし、池田参考人として出て久しぶりで政府に反対する態度をとったということで、おほめの言葉をいただいたことがございますが、今回は、文字どおりこれは一緒になってこの問題を推進し、それを具体的には合意をした、こういう形でございますので、どうかひとついろいろ問題はあるとは思いますけれども、私は、三法が原案どおり速やかに、皆さん方の御審議の中におきまして衆議院を通過することを念願をいたすものでございます。  私は、この法案がここで上程され御審議をされておる中におきまして、皆様方にはきわめて目ざわりであったと思いますが、あの傍聴席で毎日傍聴をいたしておったような次第でございます。非常に真剣に討議が行われておりまして、本当に感銘をいたしております。しかし、この三法案が、政府から提出されているいろいろな説明の中にもありますように、私はわが国のこの行き詰まりの農政を打開する一つの重要な課題として、やはり構造政策を本格的にどういう形で展開をするか、そして施設型農業につきましては御案内のとおり国際水準に達しておりますけれども土地利用型農業が、いわゆる地価問題等を含めまして資産的保有、こういう中におきまして、これが近代的な姿でなかなか規模拡大ができない、こういう問題、やはりこれをどう打開するかという問題には、非常に困難でありますけれども、ここに焦点を据えた政策の大きな転換がなければ、わが国農業は健全的な姿で将来の展望を求め得ないというのが私の考え方でございまして、非常にむずかしい問題ではあるけれども、今日二種兼業が七割になり専業が一割であるという中におきまして、二種兼業だけでも過半の農耕地を持っておる、こういう姿をこのままの形で推移するということは、わが国農業健全性が将来発揮できないという、ネックになるというような感じがいたしてならないわけでございます。少なくとも、いま中核農家が百万おるわけでございますが、この中で、いわゆる土地利用型の農業中核農家わが国農業生産力に占めているシェアはきわめて低いわけでございます。しかし、その中には相当有能な意欲のある農家は、御案内のように、いわゆる請負等を含めまして規模拡大をやっておる農家もあるわけでございます。これは農地法制仕組みの手直しあるいはこれを推進する組織の強化、こういうものを含めまして、本当に自主的な意欲をどうやってくみ取るかというような問題も含めながら、この問題を具体的にもっと大きなスケールの中で展開をするということにおきまして、これがほぐれないということは私はあり得ないと思うわけでございます。そういう意味で、今回の三法はまさにそこをねらった問題であると思うわけでございます。  時間が間もなくなくなるわけでございますけれども、私はそういう視点から、今回の三法案につきましては具体的な中身につきましては申し上げません。質問の中におきまして私の考え方を率直に申し上げたいというふうに考えておるわけでございます。  最後に、この三法が幸いに通りますならば、いわゆる私が所属している農業委員会系統組織はきわめて重大な責任を担当しなければならないということになるわけでございます。身の引き締まる思いがいたします。われわれはいままで受け身の体制でありましたが、行動する農業委員会というふうにいかに脱皮するかということが基本的に大事な課題になるわけでございます。これに対応いたしましては、皆様の御期待にこたえるべく全力を上げてこの体制整備に向かってまいらなければならないと私は強い覚悟をいたしておるような次第でございます。しかし、それにいたしましても、今日、財政の面あるいは組織の面、いろいろな面におきまして必ずしも十分ではないわけでございまして、農業委員会系統が十分なこれに対する力の発揮ができるようなそういう方向での御支援を、今後ともお願いを申し上げたいと思うわけでございます。  なお、最後一言つけ加えておきたいのは、われわれ系統の問題ではありませんが、私は全国農地保有合理化協会の副会長をいたしております。県にいわゆる公社がございますが、これが過去十年間におきまして四十五年の農地法改正との絡みにおきましてできたことは御案内のとおりで、この公社が約七万ヘクタールの農地につきまして、いわゆる所有の問題あるいは賃借りを含めましてそれだけの成果を挙げておるわけでございます。どうかこの合理化法人につきましても、今度の三法施行の中におきましてやはり具体的な役割りを担当させて、運用の面でひとつ十分活用していただきたいということを一言お願いを申し上げておきたいと思うわけでございます。  時間が参りましたので、以上で私の意見開陳を終わります。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手
  4. 内海英男

    内海委員長 ありがとうございました。  次に、梶井参考人お願いいたします。
  5. 梶井功

    梶井参考人 農工大梶井でございます。  私、基本的に言いまして、今回提案されております農地関係法案に賛成するものであります。と言いますのは、農地はいま賃貸借中心にしまして動く条件があり、事実動き始めておりますものの、農地流動農業構造の顕著な改善をもたらすほどにまでなるのを、いまの農地法制が妨げている、この妨げている部分を取り除く必要がある、こういうふうに認識するからであります。  賃貸借中心にしまして農地動き農業構造動きつつあるという事実そのものにつきましては、構造改善局の方から用意していただきまして、諸先生の手元にまで届いております、私もきのういただきました一部を改正する法律案関係参考資料にも、この資料のたとえば二ページの表でありますとか、あるいは六ページの表あるいは二十ページの表というふうなところにはっきり出ておりますので、くどくど申し上げる必要はないかと存じます。  こういうふうないまの農地賃貸借中心にしましての動きというものを規定している条件としまして、私は三つほど条件があると思います。一つは、兼業の深化でございます。もう一つは、農業生産力階層差が大きくなったことでございます。もう一つは、やはり何と申しましても高地価という問題がございます。これらの要因、これは説明しておりますと時間がありませんので指摘だけにとどめておきますけれども、ここで強調しておきたいと思いますのは、いま申し上げましたこの三つ条件とも、私は今後ともこれは不可逆的な、もとに戻るような動きではない、そういう条件だというふうに思います。つまり農地動きというものを従来の動きに返させるような動きではない、今後とも規定していく条件であるというふうに思っております。  そういう条件ができている点から言いますと、もっと賃貸借は活発になっていいと思われるのですけれども、いま池田参考人もおっしゃいましたように、それほどまだ顕著になっているというふうに言えるわけではありません。構造的な動きというものがそれほど顕著というわけではありません。貸してもいいと思っていらっしゃる方がかなりいらっしゃるわけですけれども、端的に言ってなかなか貸しに出さないという実情がございます。それは農業自営で所得を確保しなければいかぬというふうなことではないと思います。農村実情を見ておりますと、どうも貸付地にしますと農地法耕作権保護規定、これによりまして、所有地資産価値が減る、これを警戒する、その点をいやがる、この点が非常に強いというふうに判断されます。この点も参考資料の二十三ページの表などに端的に表現されているというふうに言っていいのではなかろうかと思います。  現在の農地法のもとでの賃借権設定でございますと、十九条、二十条というふうなことがございますから、必要時に返還してもらえないということがございます。だから、必要時には返還してもらえるような信用ある人を選んで貸す、そうしなければいかぬのだというふうなことが二十三ページの表の中に歴然と出てきているわけですが、こういう心配、いわゆる耕作権の発生に対する心配というものを取り除いてやる必要があるわけです。いま農地を流動化させようということを考えるといたしますと、高地価のもとでは賃貸借というものを活発にするしか道はないと思います。そのためには、貸す人からこの心配を取り除いてやる必要があるわけです。  他方で、資本の投機的な農地取得を排除しまして、農地を保全していく、優良農地を確保していくというためには、いま農振法でやっているゾーニングを厳しくするということとともに、農地法による一筆一筆の移動統制、この管理手法というものはまだ必要だというふうに判断されます。特に、私、先ほど三つの不可逆的な条件があるということを申し上げましたが、この条件地域によって違います。成熟度が違います。したがって、現在、画一的に農地法を一遍に変えてしまってやるというぐあいにはいかない、このところがむずかしいところだと思うわけです。農地法枠組みというものを基本的に残しながら、しかも農家間の賃貸借については耕作権を発生させないようなやり方が求められる、そういうことになっているのだと思うわけです。  農用地利用増進事業はこういう必要性から生まれたわけですけれども、この農用地増進事業による利用権設定という方式がかなり有効だったということ、これもやはり参考資料の二十四ページの表によく出ているのじゃなかろうかと私は思います。たとえば、五十三年の賃借権設定面積九千四百四十六ヘクタール、この中には年金絡みもございますから、実質的に動きましたのは七千六百ヘクタールぐらいというふうに私は思っているのですけれども、すでに利用権設定面積というのはそれにかなり近づいておる。特に農用地利用増進事業実施区域が二百五十万ヘクタールであり、全農地のまだ半分足らずという状況の中で、正規の賃借権設定面積にかなり近い面積がすでに利用権設定として動き始めているという事実は、こういう方式が相当待ち望まれていたということを端的に示していると思うのであります。  ところで、この利用増進事業をやっているところは、私ども農村調査などで行って拝見いたしますと、農用地区域事業区域が限定されているというところから来る問題ということで、現地は大変困っている、そういう問題が多々あるわけでございます。利用権設定してもいいと思っていらっしゃる方の耕地が全部農用地区域にあるわけじゃありません。農振白地にもまたがっている。その点を一々区別しなければならないわけですから、大変なわけです。地図で一々当たらなければいけませんし、白地のところをぜひ何とかしてもらいたいというときには別途手法を講じなければいけない。たとえば農協の経営受託事業というふうなものとドッキングしてやるとかいう形で、いろいろ事務的な繁雑さといいますか、係の担当の方々は大変苦労しておやりになっていらっしゃる、そういう現実があるわけです。そういう点から言いますと、そういう事務的な繁雑さというものをそのままにしておいて係の方を奔命させるということをやっていたのでは、こういう事業による賃貸借活発化というのはなかなか期待しがたいのだというふうに私は思うわけです。利用増進法案、今回そういう形で事業区域農用地区域に限られないという形に広げたという趣旨はそこにあるのだろうと思いますし、大変大きな前進になるというふうに評価しているわけです。  もう一つ利用増進事業を進めている過程で、私ども現地に伺いまして問題になりましたのは、やはり賃料の問題というところで現地は困っていたわけでございます。賃料の方で言いますと、これは農地法の方の規定に縛られております。しかし、これも参考資料の四十二ページのところに表が出ておりますけれども、慣行的には農地法規定しておりますような小作料の授受の仕方とずいぶん違ったやり方現実にかなり支配的に行われているわけです。利用増進事業拡大しようといたしますと、どうしても、こういう慣行的なやり方現実に行われているということを踏まえてやらないと、なかなかうまく進まないと思うわけです。そういう点から農地法改正案が出てきたのだと私は思うのであります。  現在貸している人と借りている人の関係、これは昔の地主、小作関係というものとは明らかに違っていると思うのです。これも参考資料の中にございますけれども、現在借りて農地を積極的に拡大しているという方は、明らかに上層農家でございますし、村の中の立場という点で言いますと、かつての小作人が占めていた地位と、現在賃借経営地を広げている方の立場というものは、明らかに違っていると思うわけです。現在飯米を確保するために現物小作料を仮にもらっていらっしゃるということがありましても、これを封建的だという形で受けとめる方は、私はまず村にはいないと言っていいのではなかろうかと思います。  以上で、大体、基本的に賛成する理由というものを申し上げたわけですけれども最後に一点だけつけ加えて申し上げておきたいのですが、農地法制整備だけで農業構造がすっかりよくなるというわけではもちろんないと思います。むしろ、現在の問題で言いますと、営農意欲と能力を持っている人たち営農の将来に希望をつなげるような諸施策、たとえば農業生産政策でありますとか、それは当然貿易政策に絡みますし、価格政策に絡みますが、そういった点についてやはり従来の仕組みというものをかなり大きく変えていくことが必要だと思うわけです。その意味で、過般、こちらの委員会の方で自給力確保という点について決議をされたということは、私は大変意味があると思うわけです。そういう線に沿ってこれからの政府施策というものが、こういう農地法制整備とともに、農業構造改善日本農業の発展にぜひ役立つように、この委員会でも大いに努力していただきたいと思うわけです。  以上です。(拍手
  6. 内海英男

    内海委員長 ありがとうございました。  次に、齋藤参考人お願いいたします。
  7. 齋藤政憲

    齋藤参考人 全国町村会という機関を代表したということでなくて、一人の町村長として申し上げたいと思います。  農用地利用増進法案についてでございますが、まず、昭和五十年に農振法の中で農用地利用増進事業がスタートを切りまして、全国の約半数の市町村がこれに取り組み、比較的順調に働いております。それはなぜかというと、市町村事業責任主体となり、関係団体協力を得るという仕組み農用地の出し手と受け手の双方に安心感を与えておるからだと思います。  次に、農水省はいま新しい地域農政を図っておられますが、その枠組みの中で市町村は、一つとして、農振法の例の整備計画策定によるところの農業的土地利用計画策定主体となっておる。二つ目には、水田利用再編のための地域農業生産対策推進主体である。三つ目には、農業生産関連づけた農村生活環境整備責任主体である。以上の点から、最近の市町村長は、好むと好まざるとにかかわらず、農政基本を請け負って推進をしなければならない立場にあるということでございます。  三つ目でございますが、わが国農業の現状から見まして、農業生産の再編成と農業構造政策推進は不可分のものであるし、農水省が本法案によって農用地利用増進事業内容を拡充して、やる気のある農家やその集団の規模拡大を図られるということは、基本的に正しいと賛成でございます。  四つ目ですが、問題は、どうすれば円滑に滑り出せるのか。これには機構をすっきりさせることが第一だと考えます。現在の利用増進事業で、市町村責任のもとで関係団体協力を得る体制としたことが成功しておる。新法におきましてもその発想を基本に据えるべきであると考えます。関係する機関を多くして手続を重ねる必要はない。市町村を信頼して、村中のことなら市町村に任せる、そのような方向で各般の手続を簡素化することが重要であると考えます。  五番目としては、具体的に言えば、第三条の実施方針において、知事の承認を求めることはやむを得ないと考えますが、それに関連して事務が複雑化しないように配慮を願いたい。  六つ目としては、また利用増進計画の作成に際しましては、農業委員会農業団体との連絡、協議等の規定がありますが、これは実態上の問題でございまして、法律の本文に書くのはいかがなものかというように考えます。  七つ目は、最後でございますが、法律の問題ではないのでございますが、関連してお願いしておきたいのでございます。この法律によって事業が本格実施される段階では、市町村には相当の事務経費が必要と考えられます。所要の手当てをしていただくようお願いを申し上げたい。  農地法の一部改正でございますが、小作料の定額金納制を廃止することには異議がございません。最近の農業生産の実態、現実に行われておる農地の貸し借りの実態からすれば、廃止しても混乱は生じないだろうし、地主制度の復活につながるものではないと考えます。  二つ目でございますが、農業生産法人についての要件の緩和についても特に問題はございません。  三つ目でございますが、許可権限の委譲について、市町村におろしていくことは農政の取り組みを地方主体にすることでございまして、符合する、よろしいと思います。しかし、市町村段階での運用については、地方行政との総合性の確保という観点から工夫しなければならないことがございます。この件については、農業委員会制度に関連して後で申し上げたいと思います。  農業委員会法の一部改正案についてでございます。  一つは、今回の改正案内容について反対すべき個所はない。しかし、率直に申し上げて、従来町村会が主張しております公選制の廃止、少数精鋭の人材による諮問機関化への改編については触れておりません。われわれの期待には遠く及ばない微温的な改正案となってございます。  二つ目は、財政の制約を受ける現状で地域農政の効果を望むならば、ある程度は市町村に任せるのだという、つまり市町村中心となって農業委員会農業団体の協力が得られるような制度に変えていくことが肝要だと考えます。  三つ目でございますが、農業委員会は、市町村の行政委員会で、本来別種のものとして取り扱うべきではない。にもかかわらず、今回の利用増進法案においても、第八条の訓示規定、附則の2の権限規定というようなものをことさら設けることは理解されない、こういうことでございます。  四つ目として、選挙による委員の定数の上限を引き下げることは、少数精鋭の人材による委員の取り組み、行政経費の節減による超過負担の解消にいささかでも寄与する意味で半歩前進であると考えます。しかし、市町村における農政の総合的な推進体制整備という面から、農業委員会のあり方には多くの問題点も多いので、これについては可及的速やか、というよりも、近く抜本的な見直しをやってもらいたいと思います。  五つには、私は、農業委員は、地域における農地問題処理のほか、農業農政のあり方等についても農民の立場に立って意見を述べ、率先実行に当たってくれるものと信じております。今回の法制定で構造政策推進に果たすべき役割りが明記されることを機会に、農民から選ばれた真の代表としての自覚と見識のある行動をおとりくださるようお願い申し上げます。  以上申し上げて、意見を終わります。(拍手
  8. 内海英男

    内海委員長 ありがとうございました。  次に、谷本参考人お願いいたします。
  9. 谷本たかし

    ○谷本参考人 全日本農民組合連合会の書記長をしております谷本であります。  私どもは、五十年の農振法の改正については賛成の態度を表明いたしました。それは、農民的な土地利用をつくる足がかりになっていくであろうことが判断されたからであります。しかしながら、今回の農地三法については賛成の表明をいたしかねます。  以下、若干の反対の理由を述べさせていただきたいと存じます。  今回の農地三法の登場は、八〇年代の農政基本とされる日本農業の再編成と不可分のものであるのは申し上げるまでもありません。日本農業の再編成とは何か、農畜産物の輸入を増大させて、米を余らせて、三割減反を行っていく。そして、その場合の転作を集団転作で進めながら、規模拡大を行っていくという発想に立っております。しかしながら、転作と構造政策をセットとしての再編成はいまのところうまくいっておりません。転作の約七割が集団転作だとされておりますが、その多くがみなし集団転作でしかないという事実を見てみれば明らかであります。  では、なぜ農地が流動化しないのか、この点が問題にされなければならないと思います。日本の経済が高度成長から低成長に入りましてから、農地流動を可能とする環境条件が一層厳しくなるという側面が生じてまいりました。たとえば農地地価問題がそれであります。高度経済成長時代に政府の経済政策と大資本の土地投機などによって、土地の値段は不当に引き上げられてまいりました。低成長時代に入ってから、土地の値段は下がるどころか、最近またぞろ値上がり出すという状況になっております。  さらにまた、もう一つの問題は、福祉の問題が問題であります。最近の第二種兼業農家のかなりの多くの部分が年金農家だと言われております。年金だけで老後を暮らすことができるような条件が確保されるなら別でありますが、政府の福祉政策は低福祉政策に転じつつあるというのが最近の実情ではありますまいか。  さらにはまた、もう一つの問題として、資本の雇用政策の変化が挙げられなければなりません。低成長に入りましてからの資本の雇用政策は、常用雇用を減らして臨時雇用をふやすという雇用政策へ転換してまいりました。そうした雇用政策の転換の中で割りを食うのは賃労働兼業農家だとしなければなりません。  こうした問題とともに、もう一つの問題として見ていかなければならないのは、農産物の価格政策の問題であります。現在、土地の流動化は一定程度進んでおるのでありますが、それは米作と葉たばこのごく一部に限定されているというのが特徴であります。ということは、農畜産物の価格が曲がりなりにも保証されているという部門において土地の流動化が一定程度進んでいるということを意味しているのであります。低成長時代に入りましてから、農産物価格政策は、従来以上に低価格政策として強められるようになってまいりました。最近、特に昨年来、農地の借り手が減るという状況が生まれておるのでありますが、そういう状況が生まれてきている背景には、以上のような状況変化があると言わなければならぬと思います。  では、そういう中での農地三法の登場はどういう意味を持つのでありましょう。法案自体を見てまいりますと、農民の自主性を基本にして流動化を促進するという立場に立っております。しかしながら、こうした農地三法が現実にどのように機能していくかを考えた場合には、その精神とは全く逆な事態があらわれてくるおそれなしとしません。それはなぜか。幾つかの事情があるのでありますが、私がここで挙げておきたいのは二つの事情であります。  一つは、すでに農林省内でも転作奨励金の見直しの検討が開始されたと言われております。転作奨励金の見直しの中心的なものになってくるのは、ばら転の単価を抑えて集団転作に重点を置く、こういう状況変化であることが想定されております。  さらに、もう一つの問題として挙げなければならぬのは、一定の土地流動化を条件とする構造改善事業など補助事業にそうした条件つきの状況が生まれつつあるという点であります。お願い事項だと政府が説明してまいりました米の減反は、ペナルティーつき減反という状況のもとで末端では強制も同然という形の中で実施されました。今度は農地流動化を含めて村のため、部落のためという名において、強制も同然に農業の再編成が行われるのではないかということが予測されます。  私どもは、農地の効率的利用と土地流動化の必要性をいささかも否定はいたしません。現に期間、季節借地について見てみるならば、たとえば畜産農家が水田農家の裏作利用をするといった例や、あるいはサトウキビの耕作農家と葉たばこ耕作農家が交換借地を行っているとか、さらにはまた酪農家と葉たばこ耕作農家の間に交換借地が行われているといった例等がそれでありましょう。こうした状況の中ではそれが事実上の規模拡大に連なり、農業生産のコスト引き下げに連なり、つくられた農産物は公害含みの農産物ではなくて、いい作物がつくられているのであります。そして、こうした事実の中でほぼ共通的なのは、これまで政府が一貫して追求してまいりました生産の単一化とは違って、通年的な土地利用、そして輪作体系の確立、経営の複合化という形の中で、日本の気象と土地条件、自然の循環法にかなった営農としてそれが展開されているということであります。  こうした理にかなった農民的土地利用は、農産物の価格保証のあるものに限られており、それが現行法のもとで行われているということなのであります。そうであってみるなら、いま必要なのは、こうした農地の流動化について政府は黙認してきたのでありますから、これを追認すればよいのであって、農地制度を改正するのではなく、農政を充実させるというところにその課題が求められなければなりません。自主的、農民的土地利用を伸ばす条件整備する、それを先決させる、その上で農民的な土地利用をどう変えていくのかを行政が考えていく、そういう段取りにされなければならないと思います。農地法を罪悪視した制度改正というのは主客転倒の論理だと言わなければならぬと思います。  時間も迫ってきておりますので、最後に、若干の個別的問題として、四点ほど指摘をさせていただきたいと存じます。  指摘を申し上げたい個別的問題の第一は、企業の農地支配の防止策が弱められてきているのではないかということであります。農地を守るには、農地農業的に利用できる農政の確立のほかに、企業の進出の防止策が強化されなければなりません。農地三法にはその視点がないどころか、市街化区域の農地転用について見るならば、農業委員会の一段階制の許認可事項にしております。私ども思い出しますのは、昭和三十八年の大資本の土地買い占め事件であります。あの当時に大資本の不当な土地買い占めを取り締まる上で最後に機能したのは、県庁の段階であったということであります。さらにまた、法人要件の緩和の問題にいたしましても、資本の進出についてすきを与えかねぬ、そういう側面があるのではないかということを指摘せざるを得ません。  次に、第二の問題といたしましては、農業委員会法の改正についてであります。今度の農業委員会の改正を見てまいりますと、市町村農業委員会の権限を強めるというところに一つの特徴があります。そうであってみるならば、同時に、農業委員会の構成と運営の民主化が一層保障されるようにしなければなりません。しかしながら、出てまいっておりますのは、公選定数の抑制であるとか、県農業委員市町村農業委員会の会長さんに限るとか、あるいは常任会議制がとられるといった、いわば逆行的な形のものが生まれているということであります。  またさらに、農業委員会法の改正の問題といたしましては、市町村内の農地流動化は、市町村段階で一段階でやっていけるというような形になっておるのでありますが、農家がここで不服があるならば後は裁判所に行くしかないというような状態になっておるのでありまして、したがって、その点についても何らかのチェック機関的なものの設置が必要なのではないのかということであります。  個別的問題の第三は、小作料の問題であります。  その一つは、残存小作地に適用されておりました統制小作料はことしの九月で廃止されることになっております。残存小作地は農地改革の当時当然農民に帰属すべきものであったと思います。そうであってみるならば、この統制小作料は引き続き延長されてしかるべきなのではないかというのが第一点であります。  それから第二点は、通常の小作関係小作料についてであります。最近の小作料の水準は大変高い水準になってきております。したがいまして、かなり大きな経営規模農家でないと小作地を借地することができないというような状態になっております。このことは農産物価格水準の問題ともかかわりがあるのでありますが、どの程度の農家規模のものを育成していくかという問題との関連で、小作料の抑制についてさらに十分な検討が必要ではないかと思います。  個別問題の最後の第四点は、強権的な土地流動化についての防止策を御検討いただきたいということであります。たとえば、利用増進事業計画をつくらないと補助金を出さないというような状況が生まれるとするなら、それはやめていただかなければなりませんし、あるいはまた、補助事業等々の政策のあり方についても再検討をしていく必要があるのではないかということであります。  時間が参りましたので、以上で私の意見開陳を終わります。ありがとうございました。(拍手
  10. 内海英男

    内海委員長 ありがとうございました。  次に、山口参考人お願いいたします。
  11. 山口巖

    山口参考人 全国農協中央会の山口でございます。  日ごろ先生方には農業、農協問題につきまして一方ならぬ御尽力をいただきまして、この機会に厚く感謝を申し上げます。また、本日は、農業にとってきわめて重要な農地利用増進法を初めとするいわゆる農地三法につきまして、系統農協としての意見を述べる機会を与えられましたことにつきまして、感謝を申し上げる次第でございます。  さて、最初、三法に共通する基本的な問題につきまして意見を申し上げたいと思います。  御案内のとおり、今回の三法の内容を貫いております基本的な考え方は、昭和二十七年に制定されました農地法基本姿勢でございます、農地は耕作者みずからが所有することを最も適当であるとするいわゆる自作農主義から、農地所有と利用の関係を分離いたしまして、利用権を中核的な農家に集積しようとするいわゆる借地農主義への脱皮を図ろうとしている点が、非常に特徴的なことだと考えられるわけでございます。このことは、昭和四十五年改正によって新たに付加導入されました土地農業上の効率的な利用を図るという考え方をさらに現実的に推し進めるという考え方でございまして、これによりまして農業生産力並びに農業経営の発展向上を企図したものであると考えるわけでございます。この点につきましては、農業の現状、特に農村内部におきます農家の経営規模の現状、耕地利用度の問題農家の労働力構成の現状等を顧みました場合に、その必要性は十分理解できるわけであり、また、現実農村では、今回の制度改正にかかわりなく、地域実情に即した農地の貸し借りが行われ、実質的な利用権の流動化が進められておりまして、制度より実態が先行しているということは先生方も十分御案内のとおりでございます。  したがいまして、今回の三法につきましては、原則的に私どもとしては賛成をいたすものでございますが、今後の農地問題を考えた場合におきまして、問題がないわけではございません。それは、農地価格をこのままにしておいていいかという問題でございます。農地価格の現状は、御案内のとおり、収益還元によります生産手段としての価格水準をはるかに超えておりまして、いまや中田で反当たり三百四、五十万円もするというような高い価格が現状でございます。これはいわゆる資産的な価格に農地価格が張りついていや伴うことでございまして、このために所有権の異動が行われないというのが実態でございます。  今回の改正は、こういうような農地価格が高くて農地の流動化が進まないという現状をそのまま是認いたしまして、農地の資産的な価値を損わない範囲内におきまして、すなわち三年ないし五年という短期の賃貸借契約によりまして利用権の集積を図ろう、そういう考え方が特徴的な考え方でございます。このことは、当然、今度は借り方にいたしてみますと、耕作権の不安定を招来することにつながる問題でございまして、その意味におきましては、当面この方法以外に効果的な方法がないのだということはわかるわけでございますが、一面、余りにも安直な手段ではないかという感じがいたすわけでございます。  私どもの率直な意見を申し上げさせていただくならば、やはり農地価格問題を正面から取り上げていただきたい、農地を正常な生産手段としての価格に安定させていただきたいということを申し上げたいわけでございまして、それによりまして、やはり耕作する者が農地所有する、所有権の移動によって耕作する者が農地所有するという状態をつくり出すことが、農地政策としてはオーソドックスな行き方ではないかと考えるわけでございます。また、そのことは、いまや国際化に対応しなければなりません日本農業にとってもきわめて重要な問題でございます。農地価格が西ドイツの四倍、アメリカの四十倍という状態では、とうてい土地を使う農産物については国際競争力を持ち得ません。その点からも、農地価格を抜本的に改正する必要があろうかと考えるわけでございます。  以上が総括的な意見でございますが、次に、私ども農協の事業活動面におきましてきわめて重大な密接なかかわり合いがございます農用地利用増進法関係について御意見を申し上げます。  系統農協では、昨年十月第十五回農協大会におきまして、「一九八〇年代日本農業課題と農協の対策」を決めまして、これからの農協の活動方針といたしておるわけでございます。この中で、私どもは、水田利用再編を契機とした米から他作目への転換という農業生産の再編成の必要を強調しておるわけでございます。また、これと同時に、農業専従者のいない農家が全農家の過半数になり、個別ではとうてい農業経営が完結できない農家がふえるなど、農村の集落内での労働力の減少が顕在化している反面、農業の機械化の進展による生産性の向上も進んでおります。こういう点から、農業構造の変化に伴う再編が必要であると考えておるわけでございます。私どもは、この農業の再編という課題を、農協ごとに地域の実態に合った地域農業振興計画を作成し、これを実践することによりまして達成しようと考えているわけでございます。また、これとあわせて農産物の需給調整機能の強化を図ろうといたしておるわけでございます。このためには集団生産組織、農作業受委託、農地利用権の集積等、地域での農地の集団的利用を促していくよう取り組むことが必要であると考えるわけでございます。  このような観点から考えますと、私は、このたびの農用地利用増進法の趣旨が地域農業振興計画の策定運動と理念的にも合致するものでございまして、特に集落の持つ農業調整機能に着目している点も共通しているため、時宜を得たものであるというふうに賛成をいたすものでございます。  特に、今回の農用地利用増進法案内容といたしまして、農協による受託農業経営事業が組み入れられておりまして、手続上の簡素化が図られ、また新たに農用地利用改善事業が仕組まれまして、これまで農協が行ってきた農作業の共同化、集団化の事業に制度的な裏づけがなされたことは大いに評価をいたしておるものでございます。  周知のように、農業の協業化組織、集団的生産組織はすでに三万を超えているわけでもございまして、私どもは、今後これらの生産組織と農協の関係をさらに一層綿密なものにいたしまして、真に農業の発展に資するようにしなければならないと考えております。したがって、この事業事業方針、計画の策定に当たっては、農協による地域農業生産組織化の実態が十分反映されるように運営をしていただきたいと御要望いたすわけでございます。また、農用地利用改善事業において農用地利用規程を作成する団体、これはいわゆる地縁的、属地的な団体でございますが、これに対します農協の指導、調整機能を明確にしていただきたいと考えるわけでございます。  最後に、この法案関連いたしまして一、二の問題をつけ加えさせていただきたいと思います。  その一つは、私どもは、農業生産のこれからの方向を見ても、七割からなる二種兼業農家を切り捨てるということはとうていできません。むしろ、二種兼業農家の持つ農業への潜在的な生産力を引き出しまして、二種兼業農家の積極的参加によりまして集落全体としての生産力の向上を図るべきだと考えておるわけでございます。したがって、この制度によりまして中核農家への農地の集積が短絡的に進められる、二種兼業農家を疎外した運用が図られるという心配がないわけではございませんので、そういうことのないように、十分運営の面におきまして配慮をしていただきたいと思うわけでございます。  また、もう一つは、これまでの農協の営農活動は営農団地を中心として属人的な主産地形成を行ってきたわけでございますが、これからの営農活動は集落を中心といたしました生産構造の再編成を志向するものでございまして、集落の個々の活動の積み上げが地域の生産と流通の基礎になると考えられるわけでございます。この点から申し上げますと、逆に集落相互の生産と流通の調整を図ることが必要となりますし、地域ごとの重点作目の生産目標を明示することも必要でございます。また、これと同時に、価格対策、流通対策など総合的な政策のフォローということが必要でございますので、この点につきまして政策的に十分補完をしていただくようにお願いをいたしまして、簡単でございますが、私の意見といたします。  失礼いたしました。(拍手
  12. 内海英男

    内海委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 内海英男

    内海委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菊池福治郎君。
  14. 菊池福治郎

    ○菊池委員 参考人の皆さんには、大変御多用のところを御出席いただきまして、貴重な御意見を御開陳をいただきまして、厚くお礼を申し上げたいと思います。  参考人の皆さんも含めてわれわれの共通の課題である農業の問題あるいは食糧の問題というものは、いまわれわれだけの関心事ではなくて、日本の政治の重要な大きな課題になっております。先ほどお話にもありましたように、衆議院において食糧自給力強化に関する決議というものを先般採択したわけでございますが、このことは、与野党を含めて、食糧問題、国民の食糧を長期にわたって安定的にいかに確保するかあるいは日本農業をどのようにして前進させるかということに対する与野党の一致した一つの認識があらわれたものであろうと思います。そうした重大な農業の問題でありますけれども、御承知のとおり、今日の農業問題あるいはこれからの農業の将来というものに対しては、必ずしもたんたんたるものではなくて、非常に困難な問題が予想されておる、難関が横たわっておるわけでございます。この農業体質改善する、あるいは構造を改革する、構造政策を強力に進めるということはわれわれの緊急の課題でございますが、何と申しましても、いまの小規模農家経営というものでは、皆さんも一様にお認めになったようになかなかこれはむずかしいわけで、何とかして、農地を集積する、やる気のある農家に対して農業を十分にやってもらうために農地利用権を集積する、あるいは農地拡大する、規模拡大して生産性を高めていくということが今日の課題でございます。こういったことを考えますと、今回の三法というものは、こういう問題のために非常に大きな役割りを果たすであろうというふうに考えるわけでございます。  そこで、谷本さんを除いた参考人方々は、この三法に対して全面的にあるいはいろいろ問題はあるけれども一応御賛成の立場をとっておられるわけでございますが、御賛成の方々に対して、一つは、これからの、そうではあるが制度の運用の問題について特に問題はないか、あるいは条件整備は今後どういうふうにすべきものであるか、あるいは行政上の問題、財政上の問題、あるいは法改正について、もっと、もう一歩進めてこういうふうな点をさらに改正をすべきでないか、あるいは法律をつくるべきでないかというようなことについての御意見がございますれば、簡単に、御賛成の参考人方々に伺わせていただきたいと思います。
  15. 池田斉

    池田参考人 制度ができましても、この成果がどう上がるかという問題が基本的に大事でございますので、今度の本法の中にもございますように、言うならばこれは一つ中心の制度がスタートをする、これを支えるいろいろな政策のバックがこれに伴わなければ十全な効果が出ない、こういう問題につながりますので、法律もそれを志向しておりますので、そういう点につきましては、ひとつ政府の方におきましても十分これを支援する各般の体制を、助成なりあるいは金融なり税制の面でひとつ解決をしてもらいたいということが一点と、それからいま一つは、やはり構造政策で何とかこの難局を切り開くという場合には、やる気のある農家化して、これらを含めましてもっと総合的な、いま農政審議会でも議論をされておりますが、価格政策なり流通政策なりあるいは農村の環境をどうするか、こういうような総合政策もあわせて行ってもらう。こういう中におきましてわれわれはこの制度が効果を発揮することを期待したいと思うわけでございます。
  16. 梶井功

    梶井参考人 農地政策ばかりじゃなくて、たとえば価格政策でありますとかあるいは生産政策あるいは貿易政策、そういった側面について総合的に施策を講じてもらわなければいかぬ、これはいま池田参考人が申し上げたとおりで、私は繰り返しません。  制度の問題だけについて一点だけ私つけ加えておきたいと思うのですけれども、今度の利用増進法案、これでやります利用権設定、恐らく賃借権設定期間が予定されているわけじゃないと思うのです。そうしました場合には、特に土地改良投資といいますか、土地にくっつくような投資の回収というものが非常に困難になってまいります。そうなりますと、これからの農業生産のあり方を考えてみますと、いろいろ、たとえば田畑輪換の問題でありますとか土地改良投資を要する側面というのが非常に多くなるわけですけれども賃借人が安心して投資できないというふうな事態、賃貸借の期間の短さからくる問題というのが出てくるわけです。そういったものに対してどういうふうな形の回収の保証というものをやっていくか。この点については十分な指導と配慮が必要であろうと思います。現実にそういった側面で、たとえば、賃借人がやった暗渠の投資が回収されないうちに契約を終ったときにどうするかというふうな、現実的な取り決めというふうなものもぼつぼつ行われるようになっております。そういったいい慣行というものが育っていくように大いに努力する必要があるのではなかろうか。そのためには、私は、特に農業委員会の指導あるいは農業委員会の事務局の活動というものが非常に大事になると思いますので、十分な活動ができるように保証していただきたいというふうに思うわけです。
  17. 齋藤政憲

    齋藤参考人 先ほども申し上げたのでございますけれども市町村の持つ農政の総合的な役割り推進体制ということが非常に重要だ、こういうことを申し上げておるのでございますが、そういう中で、これは池田参考人と若干意見の相違があるかもしれませんけれども農業委員会市町村との行政的な立場ですね、これは協力関係になることはそのとおりでございますけれども、その点法的に区分けをしてしまう形になれば、一体市町村長というものはどういうことになるのかという点が少々問題だ。こういうことで、とりあえず今回はやむを得ないとしても、近き将来そういう方向で抜本的な見直しをやっていただきたい。推進上若干その点問題があるのではないか。もちろん、農用地利用増進の中には、計画の認定あるいは承認あるいは農業委員会の決定というふうな字句がございますから、そういう形で意思の疎通は図れるとは思うのでありますけれども、何かその辺がちょっと心配だ、こういうことでございます。
  18. 山口巖

    山口参考人 今回の法律で農用地利用改善事業というのがございまして、それで、いわゆる属地集団と申しますか、そういう団体を当該地区内について権利者の三分の一が構成員となってつくるということになっておるわけですが、この団体と、私ども農協はいわゆる人を中心とする属人の集団でございますが、この事業面の競合とかあるいは混乱ということが発生いたしますと、これは非常に大きな問題になるわけでございまして、むしろこの法のねらいが逆に相殺されて混乱するということになりますので、この間の調整ということが法律には恐らく書けないわけでございますが、運用の面におきまして、こういったたとえば栽培の協定をやるとか、こういう具体的な問題につきまして、農協の生産組織、これはほとんど野菜なら野菜、果樹なら果樹というふうに作目別に広地域組織されておるわけでございますが、この組織との十分な調整を図るようなことを運用の面で絶対配慮していただかないと、私は団体問題が起きるのではないかということを非常に心配いたしておるわけでございまして、この点につきまして特に運用の面で、今後お願いを申し上げたい、かように考えております。
  19. 菊池福治郎

    ○菊池委員 谷本さんにお伺いをいたします。  谷本さんの反対の意見と申しますか、その立場上谷本さんのような御意見もあり得るということは私どもわかるわけです。  理解がある程度できるわけでありますけれども、ただ、いまの農業の実態を見まして、やはり規模拡大する、生産性を上げていく、農地の流動化を図るということはどうしても必要なのではないか。谷本さんは農民的な土地利用というふうな表現をされたと思いますけれども、今日のこの三法によらずして、それぞれではもっと効果的な、間違いのない、安心のある、そして規模拡大できる、そういったような土地の集積、流動化に対する御意見があるわけでございますが、その点をもう少し詳しくお聞かせをいただきたいと思います。
  20. 谷本たかし

    ○谷本参考人 先ほども申し上げましたように、やはり農地流動化が可能になるような環境的な条件をどう整備すべきかということが大きな前提だろうと思います。そういう点では、先ほども申し上げましたが、地価をどう抑制するのか。この地価抑制については経済政策を総合的に考えていかなければならぬ問題があるでありましょうし、さらにはまた、資本の土地投機などを厳しく規制するような措置を考えていく必要があるのではないかというふうに思います。またさらに、先ほども申し上げましたが、第二種兼業農家のかなりの多くが年金農家だということでありますが、そうした年金農家土地の流動化を可能とするのには、やはり年金制度をもっときちんと整備すべきである、そうしないと土地の流動化というのはなかなか整備していくことができないのではないかということであります。さらにはまた、雇用の問題についても先ほど申し上げたとおりであります。それにもう一つの問題といたしましては、農産物の価格条件、ここのところを整備しないと、やはり借地農でも規模拡大をしたいという農家がなかなか出てこない。最近はむしろそれが減る傾向が生まれておるのでありますから、その点の配慮が必要ではないかというふうに思います。
  21. 菊池福治郎

    ○菊池委員 池田さんにお伺いいたしますが、今度はこういう法の制定、改正によりまして、農業委員会役割りというか位置づけというものが大変重要になってくるわけでございます。ところが、農業委員の数を四十人から三十人に上限を減らすというふうなことになっておりますが、そういった農業委員会の大きな役割り、また使命に照らして、こういったような問題をどのように、これで矛盾なくスムーズに農業委員会役割りを果たすことができるかどうかといったような問題、それから先ほど池田さんから、なかなか私どもとしてもにわかに賛成できないような御意見と思いますが、公選制の廃止云々、市町村がもっと中心になってやるべきではないかというふうな御意見もあったわけでございます。そうした点について、農業委員会役割り等についてひとつ御意見を聞かせていただきたいと思います。
  22. 池田斉

    池田参考人 二点の御質問でございますが、行政の簡素化という問題に、農業委員会が今回の三法の中におきまして重要な役割りを持つということと矛盾をする問題が一つあるのではないか、これは四十人を三十人にする、こういうような問題でございます。この委員会のいろいろな議論の中におきましても、かなりこの問題が出されておりましたが、私どもは、やはり量の問題も大事でございますが、十分反省しなければならないのは、農業委員のこれからの質の問題をどうするかということが一つ基本であろうと思います。ただ、非常に大きな市等で、それをどう運用するかという場合に、特に今度の前向きに行動する農業委員会という場合には、やはり集落にそれを相談相手として農家の掘り起こしに協力をする、言うなれば協力員というようなものがどうしても私は必要な感じがいたします。そういう意味では、ここで四十人を三十人に落とされたという問題につきましては、支障なく運営の面で解決ができるのではないか。特に委員の質の問題をこれからどうするか。特に来年は統一の農業委員の改選でございますので、そういう問題に十分対応したPRをしてまいりたいというふうに考えております。  それからもう一つは、先ほど町村会の参考人が、将来の問題として公選制を廃止するという問題を提案されておりますが、私どもは、やはり農業委員会制度の根幹は公選制に基づいておる、この基本が根幹であると思います。地域農業者の代表をどう選ぶかという問題は、やはり公選制の姿の中で選ばれるというのが最も民主的な代表を選ぶ姿である。これが農地の問題、農地の流動化に十分農家との対応の中でこの問題を推進する。この根幹は、いろいろ町村会当局にはございますが、やはりこれは守っていかなければならぬ基本的な根幹であるというふうに考えております。
  23. 菊池福治郎

    ○菊池委員 齋藤参考人にお伺いいたしますが、齋藤さんは、市町村中心になって、農地の流動化、地域農業の確立といいますか、そういった問題に取り組むべきであるというふうな御意見、そういう御意見から農業委員会等の問題につきましても御発言があったわけでございますが、私どもは、場合によっては、市町村が余りそういう問題に関与してくる、タッチをしてくるということは、農民の個々の利害に絡む問題でございますから、行政が権利関係というかそういったものに介入してくるということは、必ずしもそれは効果を上げることにもならないし、かえってうまくない結果を生み出すような場合もあるのではないか。むしろ農業委員会農業委員というのは、農民の代表あるいは村というか集落の代表でございますから、そういう意味で、農業委員会委員役割りというのが重要になってくるわけですが、そういった方々にまとめ役をさせるというふうなことの方が本筋ではないか。余り市町村というか行政がタッチするということになることは芳しくないのではないかというような考え方もあると思うのですが、その点、さらにひとつ町長さんの方の御意見を伺わせていただきたいと思います。
  24. 齋藤政憲

    齋藤参考人 農民の権利関係に直接市町村長が当たらないで、防波堤的な役割りでやった方がいいのではないかというふうな内容にもとれたわけでございますけれども、しかし実際問題として、いまの農政、特に生産調整とかそういった問題は、ほとんど市町村長責任を持ってやらなければならない段階にあるわけでございます。したがって、そういう過程においては農業委員会とか農協その他の団体の協力を得るということが前提ですけれども、最終的にはわれわれが責任を持たざるを得ない、こういうようなことでございまして、しかも、いろいろ資料等を見ますと、全国農業委員会の数、何千という中で八〇%を超える数が無競争になっておる。これは公選反対ということではございませんけれども、そういう状態では、先ほどお話があったように、量よりも質の問題だというふうなことが非常に大事なことでございまして、そういう面からも、実は私の町では、農業委員会長、それから県の会議員に出ている者、市町村長が必ずしも意見が一致しなかったわけです。これは困ったものだ、こういうことで、実は学識経験の委員をこれは議会の承認を経て出すわけでございますけれども、そういう段階で、私のところの助役を農業委員会の学経の委員として出したわけですが、互選の結果、委員会の会長になりまして、何も会長をさせるために私は出したのではなかったのですけれども、互選の結果そうなりまして、やはり行政と農業委員会が密接、不可分でなければならない、こういう認識のもとにそうなったのではないかというように理解はしておるのでございますけれども、これはもちろん市町村によっては違うだろうと思います。しかし、どうしても責任基本市町村にあるんだ、こういうような形にして、農政の総合化ということを考えれば考えるほど、そういうことを責任を回避して逃げるということはひきょうだという考え方を実は持つわけでございます。そのような理解に立つわけでございまして、今回は決して十分ではないのではございますけれども、後日そういう方向で法の改正をお願いを申し上げたいと思う次第でございます。
  25. 菊池福治郎

    ○菊池委員 山口参考人にお伺いしますが、いまもお話がありましたように、私も市町村役割りを否定する、そういった立場ではもちろんないわけです。市町村役割りも十分あるわけでございます。それで、市町村役割りが相当そこに出てまいりますとか、農協の位置づけというか、先ほどの御意見にもありましたけれども、農協が進めておる地域農業の振興計画の策定また実践というこれからの問題との絡み合いなども、先ほど話が出ましたけれども、その問題と、やはり貸し手、地主は農協の組合員であって組合員でないような形にも形の上ではなるわけですが、そういったのがどんどん進んでいった場合、農協の組織とか農協のあり方というものが変化をしてくるのではないのかというふうな問題もあると思うわけですが、いま町長さんからお話があったように、地主と耕作者の調整で市町村が相当の役割りを果たすということになった場合に、農協の立場というか農協の役割りというか、そういったものに少し変化が来るのではないか。農地の流動化を進める機関に農協は入らない方がいいのではないかというような意見もあるようですが、そういった点などについて、農協のこれからの位置づけというか、そういった問題についてひとつ御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  26. 山口巖

    山口参考人 先生の御質問の第一点の、いわゆる農地の流動化が進みまして、いわば第二種兼業農家等が農地を専業農家に渡して農地が全然なくなる、そういった場合に、今回の法案によりますと、組合員として残すという特例といいますか、ことが記載されておりますが、私どもとしてはそういった農地を渡した人が永遠にもう農業に戻らないということではないと思うのですね。それは、いわゆる退職してもう一回農業をやるといった場合には、帰ってきてやはり農業をやるわけでございますから、そういう理解の上に立ちますと、やはり組合員として加えていくことがいいのではないかと考えております。  それから、そういう人たちがふえて農協自体の組織構成というものがおかしくなりはしないかという問題でございますが、私はそれほど急激に進むとは思わないわけでございます。所有している農地の一部を短期の賃貸借で貸していくという傾向が大部分ではないかと考えまして、相当大きな急激な変化が農協の組織構成の中にもたらされるということは、現時点においては心配を余りいたしていないというのが実態でございます。  それから、流動化事業に農協がタッチしない方がいいではないかという一部の意見があるということでございますが、私どもとして当面取り組んでおりますのは、何と申しましても水田利用再編対策を農家に損失を来さないようにどう効果的に進めていくかという課題だろうと思います。そういう意味におきまして、それを軸といたしまして地域農業振興計画をつくっておるわけでございます。そういう点になりますと、地域地域におきまして、今度は水田から畑作物へ転換をするわけでございますので、相当な地積の集積、いわば麦作集団というような形におきまする耕地の集約化という問題が当然必要になってくるわけでございまして、この問題にタッチしないでわれわれが当面している水田利用再編対策等の解決はとうてい不可能でございますので、私ども農協としては積極的にタッチをしていきたい。  特に農協は、従来どちらかというと農地問題は農業委員会任せで、できた生産物の集荷、販売あるいは生産資材の供給という問題で、上物の扱いばかりやっておりましたが、それではとても現在の農業の実態というものは、この困却を脱却できないのだという視点から、むしろ生産の場までおりてまいりまして、農地の問題にも積極的に突っ込んでいくという姿勢で今後の農協の事業運営を図ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  27. 菊池福治郎

    ○菊池委員 終わります。
  28. 内海英男

    内海委員長 柴田健治君。
  29. 柴田健治

    柴田(健)委員 参考人の皆さん、御苦労さんでございます。  基本的にどういう発想で農業問題を論戦するのが正しいかということで、私たちは常に、基本的には食糧政策というものを半ば民族的な立場でとらえて、国の安全保障というものはどうあるべきか、やはり食糧政策基本でなければならぬ、こういう立場でとらえて論戦をしておるところでございます。そういうことを十分御理解いただいてお答えを願いたい、こう思うわけでございます。  私たちは、国の安全保障と、これからの農業政策は雇用問題は避けて通れない、そういう立場、そしてもう一つは、国民の生活と健康を十分考えた食糧政策でなければならぬ、こういう三つ基本に置いて、この農地三法について論戦を深めておるところでございます。きょう五人の参考人と、農地問題ではベテラン中のベテランと言われる農林漁業金融公庫総裁の中野先生にもおいでいただいておりますから、六名の方にこれから順次お尋ねを申し上げたい、こう思います。  まず、中野先生にお尋ねしたいのですが、あなたは農地問題については権威で、いま金融関係に携わっておられますけれども昭和五十年に法の改正で農地の流動化を進めた。ところが現在は、五カ年で二万四千ヘクタール。われわれはもっと進むのではなかろうか、こう思っておったのですが、熱意が足りなかったのかどこに欠陥があったのか、五年間で二万四千ということを踏まえて、今度の三法の改正によってどれだけ農地が流動化するのか、そして五年先、十年先に、最終的にどれだけの農地が流動するのが適正なのか、その点をひとつ御見解を聞きたいと思うのでございます。  次に、池田参考人にお聞きいたします。  池田参考人は、規模拡大、コスト論、そして農業委員会の任務、土地と人、そして構造政策を強力に進めるという立場で御意見開陳がございました。現状分析の上に立って言われたわけであります。われわれは、やはり人というものを避けて通るわけにはいかない。農業の一番の基本は人である。その人は人間である。人間は血も通っておる、心も持っておる、そういう立場から言うと、そこに希望と展望意欲というものを持たせなければならぬ、こう思うのであります。現在の農業政策に希望と展望意欲というものがあるかないか、まずその点の見解を聞きたい。  そして、農民の老後の保障というものがいま十分でない。これらをどういう形で入れていくのか。先般、この国会でも過疎問題の立法措置をしました。千百十九の過疎地域の町村が、昭和二十五年から三十五年、三十五年以降五十年まで、この十五カ年の人の動き、流れを考えたときに、当然農業を守ってもらわなければならぬ立場の人の動きが非常に多い。そういう中で後継者の問題を論ずるようになった。しかし、本法を通すことによって、人が生産意欲を持って農業に従事してくれるかどうか、これがこの三法によって見違えるような農村農業になるのか、その点の見解をもう少し具体的に聞いておきたい、こう思うのでございます。  次に、梶井参考人にお尋ねするのですが、この構造政策、構造改革論を言われる。昔のような地主、小作はない、全くそのとおりだと思います。しかし、私たちの気持ちから言うと、地主、小作という言葉は学者は使ってもらいたくない。役所も使ってもらいたくない。なぜ小作という言葉を平気で使うのかという気持ちを持ちながらお尋ねをするのですが、やはり三つ条件を言われました。しかし、今日、農地の流動化がどういう形でなされておるのかという実態論、そして、一方では米の減反政策を進めて、今年度五十三万五千ヘクタールが、将来八十万という目標があるようであります。それを対象に物を考えておられるのかどうか、それ以外の土地が動くことを考えておられるのかどうか、この点でお尋ねをしたい、こう思うのであります。  次に、齋藤参考人にお尋ねしたいのです。  町村長立場からいろいろ御意見が出ました。昭和二十六年に、農業調整委員会農業改良委員会農地委員会という三本が一本になりました。それで農業委員会というものが発足したわけです。当時の自民党政府は――いまでも自民党政府でありますが、この三本を一本にしたときに、農業委員会の任務は三つ責任を引き継いでいくのですよ、こういうことで、財政措置は国が全額持つというので出発した制度であります。  先ほど超過負担の問題が出ました。きのうの委員会の中で答弁された経済局長は、百五十億、そして二十億、こういう膨大な金を現在市町村農業委員会に国から流している、こう言われました。ところが、その金で果たして市町村の持ち出しがなくて済んでおるのかどうか。持ち出しがあるとするならば、何%持ち出しをしておるのか、その点の金額をお示し願いたい。と同時に、また、いまの交付税制度の中で産業経済費の基準財政需要額の率を、なぜ町村長が挙げて改定運動を起こさないのか、われわれは農林の立場から申し上げると、町村長の力というものは非常に弱い、こういう気がするわけですが、この点の見解を聞いておきたい、こう思うのであります。  時間の関係で急ぎますが、次に、谷本参考人に聞きます。  谷本参考人は小農打ち切り、奨励金、補助金をいずれ押さえ込みの方向でこの三法が使われるだろうという見通し、そして減反政策に絡めてくるであろう、そして農業委員会の一段階制はどうも納得できない、二段階制にすべきだ、権限を末端におろし過ぎるのはいけない。私もそう思います。土地の売買なら、それは結審でありますからそのときに結論が出ます。けれども賃貸借というものは昔もいまも紛争の起きる問題であります。その紛争の起きる問題を予測するならば、二段階方式、二審方式というものはとるべきだ、こういう判断を私はとっておるわけです。  それからもう一つは、谷本参考人は言われなかったのですが、今度の法の改正で定額金納というものを外して物納方式、この問題に一言も触れなかったのですが、この問題について、物納の方針がいいのか悪いのか、これを明確にお答え願いたい。  そして、谷本参考人は、権力介入が起きてくるのではないか、要するに一々補助金の出し方においてもペナルティー方式をとるのではないかという心配があるということを言われましたが、私もいささかそういう不安を持っておるわけです。  それから、転作契励金、またこの物納、金納というのは、小作料という言葉は私は昔を思い出してどうも納得できない。いまの日本の法治国家で民法上どこに金納だとか物納だという言葉があるのか。全部賃貸料か使用料かです。どう考えてもこの昔の言葉を使わなければならぬ役所の発想というものは、農林省は何を考え、政府・自民党は何を考えておるのか、こう言わざるを得ない。やはり賃貸なら賃貸料、使用料なら使用料、利用料なら利用料でいいじゃないか。それを納めるのは、奉納というのは神様のところへ奉納。看板が上がっておるのをよく見る。納というのは税金を税納。賃貸に納めるという言葉を使うのは納得できないのです。谷本参考人に、あなたは非常に進歩的な人だからひとつ見解を聞いておきたい。  次に、山口参考人に聞きます。  山口参考人は、地価の問題を言われました。私は非常に気にかかるところだと思うのですが、いま地価は手放しであります、全くそのとおりであります。政府・自民党の土地政策はなってない。そういう立場から、農民だけがどろをかぶらなければならぬという――農民はどろと一緒に生きてきたのですからどろをかぶるのはやむを得ないですけれども、余りにもひど過ぎる。私は、山口参考人に聞きたいのは、適正な土地価格というものを決めてもらいたい。そうすれば、適正とは何ぞや。市町村の固定資産台帳に載っておる価格を基準に置いて決めるのか、一般の売り買いになっておるいまの土地価格を基礎に置いていくのか、収益を上げる収益性によって土地価格を決めるのか、どういう方法で適正な土地価格を決めたらいいのか、お考えがあればお示しを願いたい、こう思うのであります。  先ほど菊池委員からの御質問がございましたが、今度の法律改正で農協の役割り、任務というものが位置づけをされる。同時に、いままでの農協法の精神、組織論から言うて、組合員になる資格というのは決められておる。今度は資格がなくなっても組合員として残してもいいという特例。そうすると、他の組合員からどういう意見が出てくるのか。利用増進法という法律によって特例が認められたのですよ。あなたは資格がなくても正式な組合員ですよ。もう農業というものをやめてしまう。資格だけは組織論の組合員として残る。そうすると、もう土地は、所有権はあっても利用権はない。農協に金を貸してください。あああなたは正式組合員ですから、金は貸しましょう。何に使うのですか。営農資金なんてありゃしない。営農しないのだから営農資金なんて借りられやしない。そういう資格がない組合員をどんどんつくって、農協の幹部としてうまくやれるのかどうか、心配があるのかないのか、不安があるのかないのか、その点をお聞かせ願いたい、こう思うのであります。  私は、農協の山口さんに聞きたいのですが、いままで農協が主体になってやらなければならぬ事業ではなかったか。それをやらなかった。何が原因であったのか。ただ今度の法律を改正すれば農協はどんどんやれるのか。私は、小作料と言うのはもう何としてもやめてもらいたいという気持ちから賃貸料――賃貸料は二重方式をとるべきだ。農地の本当の流動化をするならば、借り手と貸し手に格差をつける。それは政府が補償する。それは農協が世話をやる。認定は農業委員会がやる。そういう立場からいって、たとえば十アール一万五千円で農民から借り上げる。借り手の方には一万円で貸せる。差額五千円は国が持つ。五千円は補償する。十万町歩動いたって五十億ですよ。今年度の農地の流動化奨励金で、一町村当たり二百五十万円、千五百町村予算を組んでおる。そんな金があるなら、賃貸料の二重方式をとったらどうかという気がするわけです。そうすれば、農協も本気でやれるでしょう、農業委員会責任を持ってやれるだろう、こういう気持ちを持っている。そういう私の考え方に、それはだめですよ、こういう考えなら、もうそれはノーならノーでよろしい。将来参考になる意見なら、大いに農協の組織の中へ持ち込んでそういう運動を起こしますよ、こういう御意見があれば御意見を述べてもらいたい。  以上、六名の方に一括お尋ね申し上げたので、とにかくそれぞれ短時間で結構ですが、お答えを願いたい。  以上です。
  30. 中野和仁

    ○中野説明員 私に対するお尋ねは、農地利用増進事業の評価、それから今後の見通し等でございましたが、本来農地の流動化というのはなかなか進みにくい問題でございます。昭和四十五年に農地法を改正いたしまして、農地を効率的な経営の方に持っていこうという条件整備しました後、いまおっしゃいました農用地増進事業が五十年の法律でできまして、その後の経過を見てまいりますと、最初申し上げましたように進みにくいわけでございますけれども、五十一年、五十二年、五十三年からかなりふえてまいりました。五十四年の十二月までの統計を見ますと一万七千ヘクタールということになっております。正規の農地法に基づきます賃貸借は約九千ヘクタールぐらいでございまして、この事業の方が多くなっておるということを見ますと、相当な効果があったのではないかと思います。ただ、全体の面積が二万四千ヘクタールということになりますと、まず流動化という面からすればわずかだというふうには思うわけでございます。  それでは、これから一体どういうふうに見通すかということでございますが、そこへ今回の三法が出たわけでございまして、私、法律のことを考えてみますと、今回は個々の相対の取引ではなくて地域地域を単位としましてこの事業を進めていこうというところに非常に意義があるかというふうに思っております。  そこで、今後一体どういうふうになっていくかということでございますが、それにはやはり流動化の条件がどういうふうになっていくかということを考えてまいらなければならないと思うわけでございます。その場合に、かなり先ほどからも御論議がありましたように、地価の問題、農家が資産的な土地保有傾向を持っているという問題等々ございますけれども、一方では農業白書を見ましても、五十歳以上で後継ぎのない農家が二百万戸ある。あるいはリタイアする農家が年々十万戸で、新規には一万戸ぐらいしか参入してこないということを見ましても、また兼業農家がちょうど農地法の改正ができました十年前と比べてみましても、当時第二種兼業農家は五割くらいだったのです。いまはもう七割近くなっております。こういう兼業農家は農外所得で家計費を賄って余りあるというところまで来ておりますし、どちらかと言いますと、労力も不足しておるというような状況がございますので、こういう状況がここ五年、十年進んでまいるというふうに思います。したがいまして、今回の三法の運用よろしきを得れば相当程度進むのではないかというふうに私は見ておるわけでございます。ただ、どのくらいかと言われますと、ちょっとなかなかいろいろな条件がございますので、数字的には申し上げかねますけれども、相当程度進むというふうに見ておるわけでございます。
  31. 池田斉

    池田参考人 いろいろな前提条件は私も賛成でございますが、そういう条件の中での御指摘、御質問に答えたいと存じます。  いまの政策でこの三法がスタートを切る。それは今後やる気のある農家が希望と情熱を持って立ち向かう方向に行くか、こういう一つの御質問がございましたが、実際、農家の中におきましては、何とか農用地拡大をして、農業で本当に飯が食えるというところまでひとつやりたいという、そういう意欲を持った農家がかなり多数おるということは事実でございます。したがいまして、これをどういう形で貸し手を求めながら、その条件に適合さしていくか、これが今度の三法のねらいになるわけでございますが、それにいたしましても、いま農政審でいろいろ行われておりますが、やはり政府が将来の日本農業のビジョンをどう確立をして示すか、この問題がやはり一つの大きな背景になるわけで、それは総合的な政策がやはりそれと対応していく、こういう環境の中で初めて、先ほど申しましたけれども、この事業がメリットを出しながら前進をする。特に、農業委員会はこの問題に今回重要な役割りを持つわけでございますので、組織を挙げてこの問題に取り組まなければならないという覚悟を実はいたしております。  最近の数字で、いまお話もございましたが、二万四千ヘクタールが過去農用地増進事業ができてからの実績でありますけれども、特に最近の五十四年は八百町村につきまして農業委員中心としてその推進ということの仕事を始めまして、われわれも全力を挙げてこの問題に対応いたしたわけでございますが、五十四年だけで一万ヘクタール、全体の二万四千ヘクタールの中の一万ヘクタールは進んでおります。これは八百町村で行ったわけでございますが、五十五年は千五百町村いま始めております。これもいま全力を挙げてこの問題を推進しておりますので、この掘り起こし運動が農家合意の中でうまく成立をするというような問題が、今度の三法が出るという背景の中ではさらに前進するし、またしなければならないというような問題で、いわゆる土地利用型農業が少なくとも中長期にはやや展望を持つような方向動き出す、こういうような問題に実は全力を挙げるという前提の中では、ひとつ期待にこたえなければならぬというふうに私は考えております。そういう姿をとりながら、政府のビジョンとの対応におきまして、わが国土地利用型農業につきましても、非常にむずかしい問題ではありますけれども、その前進を図らなければならぬし、これがうまくいかないということになりますと、私は将来の日本農業展望を持てない、こういう考え方に立っておりますので、この際ひとつ全力を挙げてやらなければならぬ。これには各般の背景の条件整備がぜひ必要である、こういうふうに考えますので、先生方の一段の御協力を願いたいと存じます。
  32. 梶井功

    梶井参考人 地主、小作という言葉をいまは使うべきではないというお話でございます。私も現在の賃貸借につきましてはまさにそのとおりだと思うのです。それで、いまの賃貸借の性格は戦前の地主、小作の関係とは全然違う、そこのところをまず認識していまの賃貸借の問題を扱うべきであるというふうに思っております。その点は先生の御指摘のとおりでありまして、私も、最近のといいますか、特に四十年以降くらいの賃貸借につきましては、地主、小作というふうな表現では極力使わないようにしております。しかし便利な言葉がないものですから、なかなか苦しい言い回しをしたことがございますが、いま先生が問題にしたと同じような意味で、地主、小作とずいぶん違う、そこのところをはっきりさせておく必要があるという点については、私は同じ考えでございます。  それから、いまの賃貸借の実態をどういうふうに理解して、どういうふうに展望を持つかという点の御質問ですが、実態を踏まえてそれを話せということになりますと、委員長の方からは答弁は簡潔にという御注意もございまして、簡潔にこれを申し述べるのは大変むずかしいのですけれども、私、現在の賃貸借の実態という点で特に注目といいますか問題にしておりますのは、お持ちでしたらこの参考資料の十ページをちょっと見ていただきたいと思うのですが、ここに「借入耕地面積の推移」というのがございます。階層別に都府県の借入地かどういうふうに動いているかというのが出ておりますけれども、明らかに一町五反を境にしまして、それから以下の方々の借入地面積は減っていって、それ以上の方の借入地面積がふえていっているという形に動いているわけですね。そして逆に、ここには貸付地面積の方の階層別の動きは出ておりませんけれども、私どもがセンサスなどで貸付地動きと借入地の動き関連させてみますと、貸付地の方はむしろ、下層の方々の貸し付けに出す面積はふえていって、上層の方々貸付地は減るという逆の形になってまいります。つまり経営規模の点で言いますと、経営規模が小さい方々が貸し付けに出し、そしてそれが経営規模の大きい方々に移っていっているという傾向、これが非常にはっきりと出てきておるわけです。ここのところでもう一度言いますが、戦前のいわゆる小作関係というものは、ある意味で言いますと小作をするというのは零細貧農の象徴、まさに戦前はそうだったわけです。しかし、現在借入地でもって経営をしているのはそういう性格ではない。むしろ経営的な発展というものを示す一つの指標たり得るというふうに評価していいのではなかろうか、こう思っておるわけです。  その場合に、貸し付けに出しているような方々の性格は一体どういうものであるかというのを見ますと、最近の農家経済調査なんかの推定数字もございますけれども、大体そのうちの七〇%ぐらいは、安定的な賃労働といいますか、かなり所得の安定している職員でありますとかあるいはサラリーマンの方々が出していらっしゃるという数字になっております。私ども、実態調査のあれから見ましても、大体そういう方々が出しているのが大変多くて、それともう一つ並んで土地の提供者になっておりますのは、老人の方々でもってもう働く能力というものがなくなってきていて、しかも後継ぎの方々も外に出ていらっしゃるというふうな方々が預けるという形になっている。恐らくこの傾向というものはこれからもっと強くなるのではなかろうかというふうに理解しております。  なお、ついでにつけ加えておきますけれども、いま私、経営規模の小さいサラリーマン農家といいますか、農業外でかなり安定的な所得を得ていらっしゃる方々が貸し付けに出しているということを申し上げましたが、といって、これからの貸付地は恐らく第二種兼業農家方々のところから出てくる、あるいはその第二種兼業農家方々はもっぱら土地の提供者という側に回るのだというふうに理解すべきではなかろうと思うのですね。先ほど山口参考人の方からも問題の御指摘がございましたが、現在の段階でもって一番農業の発展というところで問題にしなければいけないのは、営農意欲を持ちまた能力を持っている人に土地利用権を集めていくということが非常に大事だと私は思うのです。その場合に、営農意欲を持っておりまた能力も持っておるという方は、必ずしも現在の専業農家ばかりにいるとは限らない。現在でも、第二種兼業農家というふうに統計上のカテゴリーになっております中でも、二〇%はそういう意欲を持ち能力を持っている人が現実農業をやっていらっしゃる。こういう方々営農の場というものも拡充してやり、本当に農業で働く態勢というものをつくり上げていく。それはいろいろ協業組織でありますとかなんとかいう形でバックアップしていくことが必要だと思いますが、そういう態勢をとることが非常に大事なのではなかろうか、私はこう思っております。
  33. 齋藤政憲

    齋藤参考人 二つの問題の御質問のようでございました。市町村の持ち出しというふうなお話でございましたが、数字的には私まだはっきり確認をしておらぬのでございますが、予算査定の段階で理解をしておる点の記憶でございますけれども、大体三分の二ぐらいは負担をしておる、このように理解をしてございます。ただ、これはそれぞれの市町村によって違うのだろうと思うのでありますけれども、私の方の場合は、農業委員会の事務局の職員が六人ございまして、比較的多い方になっておると思います。それらに対する人件費の関係、さらに農業委員に対する手当の問題等があるわけでございまして、そういうものをかなり多く支出せざるを得ない。しかも、農業委員会の職員であるからして町村役場職員との身分が違うというようなことでなくて、全く公務員法に基づくところの一つの資格というふうなことでやっておる、こういうことでございます。さらに、町村独自でたとえば農家台帳の作成をするとか、そういった仕事をやっておるわけでございますし、さらには、上部団体の農業会議に対する負担金等の関係もある。こういうことでございまして、大ざっぱに申し上げて、大体国からいただいた金のほかに二倍以上の経費の支出になっておるというように理解してございます。  それから二つ目の、そういった関係で交付税の問題あるいは基準財政需要額との関係でお話があったわけでございますが、これも私、もう少し精査して勉強してくればよかったのですが、多少あるいはあるかもしれませんけれども、まずないと見て差し支えないのではないだろうか。そういうわけで、町村会の組織あるいは先生の御援助、お力を得て、今後大いにがんばりたいと考えてございます。  以上でございます。
  34. 谷本たかし

    ○谷本参考人 農地三法の改正が小農の押さえ込みによる米減反の推進手段になるのではないかという御指摘や、また賃貸借に紛争が伴いがちであるから、したがって一段階制の許認可は納得できないというのは、私も全く同感であります。  それから、先生から二番目に御指摘のありました物納地代をどう思うかという点についてであります。物納を認めたことがそのまま即座に封建時代に戻るというぐあいになると私は思いません。しかしながら、近代的賃貸借関係のもとでの賃借料の支払いが物納、つまり納入と言うのはおか  しいではないかというのは御指摘のとおりであります。それで、貸借関係のもとで作物を自由に売れないような状態を及ぼす可能性のある物納というのは、あるべき姿として不自然なのは言うまでもありません。したがいまして、小作料というのは金納を基本とすべきというのは当然のことであると思います。
  35. 山口巖

    山口参考人 先生の御質問、三点ございまして、まず第一点の、適正な土地価格というものの算定について、その方式についてどう考えるかという問題でございますが一私どもは収益還元による農地価格というものを考えております。と申しますのは、高度成長の前までは、おおむね農地価格というのは収益還元価格と見合っておったわけでございますが、高度成長の段階におきましてこれが乖離をしてまいりました。この理由は、先生方案内のとおり、やはり他産業からの工場敷地の需要であるとか、あるいは宅地需要であるとか、こういうものが急激に増しまして、いわゆる宅地価格の値上がり、こういうものの余波を受けまして、これに引きずられて農地価格が上がってきた。特に大幅に上がりました昭和四十八、九年におきましては、産業界の資金の過剰流動性が起きた状態でございまして、投機の対象として農地価格も引きずられて上がった、大幅に上がった、こういうような現状でございまして、それが現在も続いておるということでございます。やはりこの問題は異常でございますので、農地の価格につきましては、何らかの形で国がやはり介入して、統制という言葉は非常に穏当でないかもしれませんけれども、規制をしていくということが、農業生産の発展の基礎であるというふうに私どもは考えております。  第二点の、農地がなくなっても組合員にする特例を法律でつくって、そういうような組合員を抱えて心配はないかということでございますが、先ほども回答いたしましたように、私どもは急激にそういう現象が起きるという当面の心配は余りいたしていないわけでございます。しかし、考えますと、農協の事業というのは営農活動以外にやはり組合員の生活を守る活動というものが非常に大きなウエートを占めておるわけでございます。そういう点から申しますと、短期的に三年ないし六年という契約で農地を仮に全部貸したという人、これは契約期限が切れれば再び自分で耕作するというような状態も想定されるわけでございまして、その間生活活動の面におきまして農協を利用できないという問題が起きますと、これは非常に不公平なことになる、それの救済措置としてあの条項が設けられているのだというふうな理解で、私どもは賛成をいたしておるということでございます。  第三点の、先生の一種の御発案でございますが、土地の出し手と借り手、出し手の方から農協が預かって、価格差補てん等を政府にやってもらって、それからいわば適正な賃貸料で貸し出したらどうか、そういうお話でございますが、私どもも、そういうようないわば補助金なり制度なりというものができれば、農協として非常にありがたい話だと思っております。農協としても現在、御案内のとおり、流動化につきましてはあっせん業務を自主的にやっておるわけで、組合員相互の話し合いの中へ入りまして一応取りまとめをやっておる。特にやみの賃貸借、小作と言うと怒られますが、いわゆるやみ小作と称するもの、こういうことが非常にあるわけでございますが、実態的には農協が中へ入って賃貸料を決めるということをやっておりますし、そういう点から言いまして、先生の御発案につきましては、そういう制度ができればありがたいなというふうに考えております。  以上でございます。
  36. 柴田健治

    柴田(健)委員 最後に、池田さんと山口さんにお尋ねしたいのですが、いま時代の流れとして週休二日制の問題を国会の中でも大きく論議しておる。現状の農村で、小規模農家というものは、第二種兼業として出かせぎというか他に職を求めて農業外所得を得ている。いまどちらかというと日曜農業の方が多い。今度は二日制になると、所得は余りないから、健康管理でレクリェーションがわりに農作業をやった方がいいかな、こういうことになると、小規模でも農地を人に貸すということが、週休二日制から来る農地の流動化というものにネックになってくるのじゃなかろうかと思うのです。週休二日制はもう時の流れでありますから、金融部門を持っておる農協は週休二日制反対。なぜかというと、兼業農家が多くなって、土曜、日曜に農協の金融部門を使ってもらわなければならぬから土曜は休むわけにいかない。農村がそういう実態であるにもかかわらず、そういう現状認識があって、実態論は週休二日制反対だ、農協は反対だ、農協の中でも金融部門があるから反対だ。週休二日制と今度の農地の流動化というものは、われわれから見るともう流動化はちょっとできないのじゃないかという心配もあるわけですね。この点に不安はない、週休二日制があすから実現されても、この法案が通れば流動化は一切心配はないとお考えになっておるのか、この点、池田参考人山口参考人から簡潔にお答え願いたい。
  37. 池田斉

    池田参考人 大きな流れとしての週休二日制がわが国でも逐次適用されてくることは望ましいし、農業者の世界でもそういう問題がいわゆる休養という姿の中で行われるのが最も望ましいと思うのですが、現実は、お話のように日曜百姓がある。そうすると、流動化の問題にこういうことは阻害要因になるのではないか。今度の三法がねらっておる問題は、日曜百姓は排除するということでは絶対ないと私は思うのであります。ただ健康上の問題で、おれはもう少しレジャーを楽しみながら百姓もある程度やる、そういう中にも、私も知っておりますが、日曜日ぐらい日曜百姓でやっておる、そして心身ともにくたびれる、半分ぐらいは出そうという人がかなりおると私は思うのであります。したがいまして、その辺をうまく掘り起こしながら調和をとるような仕組みが集落の中なり地域の中ででき上がれば、私はこの問題が大きな阻害になるというふうには考えません。
  38. 山口巖

    山口参考人 いまの問題でございますが、農地賃借による流動化が進むというのは、経済原則としては、日曜百姓といいますか、非常に零細規模兼業農家生産力と専業的な農家生産力生産力格差というものは一定の大きさがないと、私ども農地の流動化は図られないと思うのです。日曜百姓をやった方が非常に有利であるという条件ならば、何も流動化していわゆる賃借料をもらっていく必要はないわけでございます。したがって、経営規模拡大して生産性が非常に上がる、コストが安くなってもうけが多くなるという問題との兼ね合いだろうと思うのです。そのバランスはどのくらいかというような問題は、非常に大きな現実問題としては、農産物の価格との兼ね合いその他いろいろあるわけでございますが、東北地域等を見ますと、五十アール以下の農家と経営面積が三ヘクタールないし三・五ヘクタール程度の農家との間には相当な生産力格差が出てまいっております。そういう点におきましては、やはり流動化というものは、上層農家がそれだけの賃貸料を払えるという余力が出てくるわけでございまして、またそれをもらった方が有利であるという出し手の方の利益にもつながるわけでございます。そういう点で、先生のおっしゃる二日制の問題と余り直接的な結びつきというものはないのではないか。むしろ生産力格差がどこまで開くかという問題がメルクマールになるのではないか。  それから、私ども農協として、農協の従業員の立場から言いますと、週休二日制は当然、各産業と同一水準で実施されるものなら実施をしていかなければならない、そういう基本的な考え方に立っておりますが、にわかに農協だけでこれを先行ずるというような状況でないことは申すまでもないことでございます。  以上でございます。
  39. 柴田健治

    柴田(健)委員 もう二分ありますから、池田さんにちょっとお尋ねするのですが、農業委員会というものは行政機関ですから、その行政区域内にあることについてはあれですね。ところが、経営と農地の流動化ということになれば、結局広域にわたる場合があり得るかもしれない。隣接町村にまたがる場合があるかもしれない。その場合に、今度の三法の改正でどういう取り組みができるのか、ひとつ見解を聞いておきたいと思う。
  40. 池田斉

    池田参考人 行政単位ごとに農業委員会がありますから、原則はその行政単位の中の問題でありますが、隣にまたがるという場合はもちろん想定されます。そういう場合にはやはり隣同士の農業委員会で十分協議をして、そこが処理としてはそれぞれやるわけですが、そういう問題がうまく当事者にマッチするという方向でやるべきではないかというふうに考えております。
  41. 柴田健治

    柴田(健)委員 以上、終わりました。
  42. 内海英男

    内海委員長 日野市朗君。
  43. 日野市朗

    ○日野委員 今度は私から若干お伺いをいたしたいと思います。  まず、中野説明員、それから梶井参考人山口参考人に、同じ質問になりますが、お伺いをしたいと思うのです。  この農地関係の三法が今度提案されて、農業経営規模拡大を図るという方向に、かなりこれは従来の方向から大きく角度を変えて、加速をしながら進んでいくものであろう、それがねらいであろう、そういうふうに考えられるわけでありますが、私ここで、先を見通した場合非常な危惧の念を持つのであります。というのは、従来からずっと沿革的に、農業の経営規模拡大していくということは、これはずっと長い間の努力が積み重ねられてきたところだと思うのであります。ただ、この農業経営の規模拡大して、一体どこまで拡大をすることがいいのかという問題ですね。これは実は外国の農産物と日本の農産物ということの対比を考えてみますと、これは実は際限のない作業ではあるまいか、こういうふうに私としては考えざるを得ないのであります。これは現在の日本農家の一月当たりの耕地面積なんというものは実にりょうりょうたるものでありまして、これをどんどん拡大をしていっても、外国の生産力に追いついていく、外国の生産コストに追いついていくということは、これはまず不可能なことではなかろうかというふうに私いま考えざるを得ないのでありますが、ただ、現在の政府の農産物価格政策、それからコストの低下を目指していく政策、これを見ておりますと、できるだけ低コストで日本の農産物の生産をさせたい、そしてそれを農家の経営の安定に結びつけていきたいという傾向が見られるわけでありますが、果たしてそれが実現可能なのかどうかということを考えますと、この経営規模をいまある程度拡大することを考えてみても、ある程度拡大に成功しても、さらに次の段階が待っているのではなかろうか、こういうことを考えざるを得ないと思うのであります。ここらについての見通しを、三先生にひとつそれぞれの立場からお答えをいただきたいと思うのです。
  44. 中野和仁

    ○中野説明員 私、いまちょっと昭和四十五年と五十三年の自立経営農家農業白書による資料で見てみますと、戸数はそうふえておりませんけれども、四十五年自立経営農家の生産シェアが二五%、それがいま三九%ということになっておりますし、その他耕地面積もふえておりますし、資本装備もふえてきております。それからもう一つは、すでに稲作を除きましては、酪農あるいは養豚、養鶏にしましても、非常に規模が大きくなりまして、いわば特化をしてきております。そういうような状態になっておりますので、今後の問題は、私は稲作を中心とした規模拡大が一番大事ではないかというふうに思っております。  ただ、その場合に、ではどこまで拡大ができるのかという問題でございますが、やはり私は、もちろん大きな組織での協業ということもございますけれども中心は家族経営だと思います。家族経営で技術が進みそれから機械化が進みということでの限界までは規模拡大がいくのではないかというふうに思っております。その場合に、たとえば酪農で例をとってみますと、根室の方に新酪農村ができておりますけれども、あれはもうあそこまでいきますと、家族労働力を中心にした経営としては、搾乳牛五十頭、草地を六、七十町歩ということが限界ではないかというふうに見ておりますので、できるだけこういう農家を多くつくっていくというところまで進めていくべきではないかというふうに思います。  ただ、その場合も外国と比べてみましてどうかということになりますと、やはり基本的に、全体としましてはわが国の経営が非常に零細でございまして、そこまで全部持っていくということも容易でありませんし、また全体の経営面積がアメリカあるいはカナダというようなところまではいくというふうにも思っておりませんので、当然生産性の格差はあろうかというふうに思っておるわけでございますが、そうかと言いまして、コストを下げていくということは、やはりいま消費者側から見ましても日本の農産物に対する割り高感を持っておりますので、できるだけコストを下げていくことは必要ではないかというふうに考えております。
  45. 梶井功

    梶井参考人 大変むずかしい問題なんですけれども、私こういうふうに考えておるわけです。経営単位としてどういう単位が想定されるか。いま中野先生がおっしゃいましたように、私も基本的には家族経営だと思うのですね。しかし、家族経営ですけれども、その家族経営は恐らくは夫婦単位です。夫婦単位ですけれども、奥さんの労働力が一人前というような形ではなかなか計算できない。恐らくは労働力単位として言いますと、一・五であるとか一・六であるとかいうふうな単位でもって経営が営まれる。それが基本的な経営単位になろうかと思うのですね。その場合に問題になりますのは、そういう労働力単位でもって、普通の勤労者がたとえば年間二百三十日なら二百三十日、それだけの就業日数でもって働いているということであれば、その労働力単位がそれだけの労働日数を働けるようなそれだけの操業の場、営農の場というものが確保されなければいけないのであろうというふうに思います。その点で言いますと、それは当然どういうふうな固定資本装備でやるかということとも関連いたします。あるいは営農内容、たとえば酪農でいくのか、あるいは養鶏でいくのかというふうに経営組織によっても違います。ですから、いまの酪農のように、夫婦単位ということでもってやれる限界というのは、いまの技術レベルというものを前提にいたしますと、私は恐らく搾乳牛五十頭――搾乳牛五十頭も相当厳しいかと思うのですけれども、その辺が限界であろうというふうに思います。一般の耕種農業の場合でも、単作物でもってそういうふうな就業日数をかせぐあるいは実現するというのは、これは作物の栽培期間が限られておるわけですから当然不可能になってまいります。幾つかの作物を組み合わせた形でもって年間どういうふうな形で就業量を確保していくか、ここのところが当然前提になる問題であろうと思うのですね。  しかし、その場合に、特に規模拡大という点で関連して申し上げておきたいと思いますのは、いま私、複数の作物を組み合わせてということを申し上げましたが、その場合に、よく複合経営という言葉が使われるのですけれども、複合経営という言葉を取り上げましたときには、経営規模が小さいから複合でいくんだ、作物を組み合わせるんだという考え方がよくあります。しかし、経営規模が小さい場合の複合経営というのは、相当労働集約的な形でいかないとなかなか経営が成り立たないという問題が出てきまして、現実に小規模複合経営という形でいっておりますと、相当な労働過重、オーバーワークというふうな形になっている場合がしばしばございます。まだ年齢が若い段階ではそういったのにたえられましょうけれども、なかなかそういったものでもって経営的な安定性というものを確保するのは非常にむずかしい。そうなりますと、当然、これはそれぞれの作物についてある程度の労働生産性を確保できるという程度の規模をそれぞれが持たなければいけない。そういうことになりますと、複合生産でありましても経営規模というものはある程度大きくならなければいけないという形になろうかと思うのですね。そうなりますと、日本的な、特に都府県を前提にしまして、その程度が一体どの程度で可能であろうか。たとえば将来ともまだ減反というようなことがありましても、米というのは中心になる。一方で米を中心に置き、それにさらに何をプラスして年間の就業力を持っていくかというふうに考えていきますと、当然これは、私は少なくとも四、五ヘクタールというふうな規模というものは想定されなければいかぬのじゃなかろうか。しかしそれ以上に、それを前提にしまして、いま言いました労働力単位が勤労者並みの就業日数がかせげる、可能になるということであるとすれば、それでもって生活が成り立つような形に、逆に言いますと、私は価格政策が充実されなければいけないというふうに思います。ですから、経営規模というふうなものが一体どの程度の規模の大きさでもって営農として成り立つようになっていくのかということは、そういった意味での労働力単位、技術構成、そうしてまたそれを前提にしての価格政策というふうなものとの絡み合いでもって規模の大きさが決まってくるというふうに申し上げたいと思います。
  46. 山口巖

    山口参考人 農業規模拡大でどの辺が適正であるかという問題でございますが、やはりこの農業経営の規模の問題というのは、農村におきまする労働力の燃焼の手段でございまして、どの程度まで農村で労働力を燃焼できるかという問題と非常に兼ね合いがあるのだろうと思います。だから、アジアモンスーン地帯のいわゆる小農経営というものが必要であるという説もございます。事実、日本のいままでの経済を支えてきたというのは、やはり日本の小農経営というものが相当数の余剰労働力というものを吸収して、しかもこれは社会的不安を起こさなかったという社会的な非常な役割り現実にあると私は考えておるわけでございます。     〔委員長退席、山崎(平一委員長代理着席〕 そういう総合的な観点から農業経営規模の問題を考えませんと、いわゆる農業経営の効率化と申しますか、規模拡大すればするほど所得が上がる、それを追求するということは、現実問題としては他の事情によりまして阻害されてできなくなるということ、他の制約要素が出てくるということを考えていかなければならぬと思うわけでございまして、それほど大きな規模拡大ということは当面期待はできないのじゃないかというふうに私は考えております。  以上でございます。
  47. 日野市朗

    ○日野委員 いまちょっと山口参考人、他の制約要因とおっしゃいましたが、それを具体的にお示しいただけますか。
  48. 山口巖

    山口参考人 具体的に申し上げますと、最近におきましては、経済が低成長に移行いたしまして、逆に他産業から農村へ労働力が還流をしているという現象が出てまいっておるわけで、これは高度成長のときとは労働力の構成の面で変化が徐々にあらわれてきておるということを私ども意識をいたしておるわけでございます。今後、日本経済が高度成長時代のような飛躍的な発展が期待できないということになりますと、還流いたしました労働力をどうやって燃焼させるか、しかもそれを個別経営の中でどうやって燃焼させるかという問題が発生してまいりますし、特定の農家群に対しまして耕地を集積する、これがイコール規模拡大という問題につながるわけでございますが、そういった条件が果たしてどの程度まで続くかという問題に対して、私は非常に制約要因として働いてくるのではないかというふうに認識をいたしておるわけでございます。
  49. 日野市朗

    ○日野委員 梶井先生にお伺いしたいと思うのですが、先生はかなり労働集約型というようなことを考えられて、とにかく労働力の配分ということを考えて規模を考えておられることはよくわかるのでございますが、ただ、どうでしょう、これはそのように労働力を配分するということと同時に、労働力の評価の問題も出てまいりますし、労働力をどの程度に評価をして都市の労働者と同じような生活水準を維持させるのかというような問題も出てこようかと思うのですが、これは私、十分の資料を手元に持って数字的にはじいているわけではございませんけれども農地そのものはかなり高価なものであるということから、賃貸借賃料、それもかなり高目に推移するのではないかというような感じも私は実はするわけであります。そうしますと、規模をある程度拡大したからといって、コストが引き下がってくるかというと、そういう保証は必ずしもないのではなかろうかというような感じがするのです。そうすると、経営規模拡大する、コストは下がらない、さらに経営の規模拡大していかなければならない、こういうような悪循環をしていくようなおそれはないものでしょうか。いかがでございましょう。
  50. 梶井功

    梶井参考人 コストの中で規模拡大といった場合に地代負担がどういうふうになるかという問題でございますけれども、いま先生から、地価が非常に高い、それがはね返って高い地代へという御指摘がございましたけれども、現在の非常に大きな特徴というのは、地価と借地料というものが切断されていることであろうと思います。それで、その借地料のいわば負担能力という点で申し上げますと、昭和三十五年段階、あるいは農地法改正が行われました四十五年段階、そして現在というふうに、労賃を控除した後の純収益がどれくらい残るかというふうな点を経営規模階層別に算出してみますと、三十五年ごろのあれですと、平均値を中心にしまして最下層でもって大体マイナス二〇%ぐらい、最上層でもプラス二〇%程度というくらいしか開いておりませんでした。しかし、現在はその開きは物すごく大きくなっております。前に一度計算したことがあるのでちょっと御紹介しておきたいと思うのですけれども、たとえば三十五年の数字で申し上げます。これは水田経営でございますが、水稲作でもって、農林省で計算をしております土地純収益の計算方式をとっております。粗収入から費用計を引きまして、その費用計からさらに資本利子を引きまして、そして残ったものというふうにお考えください。そういうあれでもって平均が幾らになったかと言いますと、昭和三十五年は一万三千三百円ぐらいです。それに対して、一番経営規模の小さい層、一番低いところでどうかといいますと、三十五年ですと、三十アールから五十アールの規模が、この一万三千三百円だと八三・五%というレベルでした。一番高いところはどこかといいますと、これが三ヘクタール以上層でもって一一九%というのが出る。つまり、階層的に言いますとそのくらいの開きしがなかったということです。しかし、四十五年に一体どういうことになったかと言いますと、四十五年は平均値が大体二万円ぐらいになります。その二万円ぐらいのレベルでもって、一番低いところは三十アール未満ですから、三十アール未満は普通の平均値に対して三七・五%、一番高いところが二ヘクタールから三ヘクタールですけれども、そこは一四五・九%というふうに開いております。うんと開いてくるわけですね。それから五十二年度は一体どういうことになっておるかと申しますと、五十二年は平均値が三万九千円というレベルでございますけれども、一番低いところは純収益は出てまいりません。つまりその純収益が出てこないということは、この計算は、自家労賃を臨時雇いの賃金で評価しておりますけれども、臨時雇いの賃金すらも一番下の最下層のところでは賄い切れない、確保できない状況であったということでマイナスになっております。しかし、一番高いところの三ヘクタール以上層は、この平均値に対して一七七%というような形になります。負担力はずいぶん開いてきているわけですね。そして、先ほど私が申しましたように、こういうふうな形で土地の純収益が平均値に比べて非常に高いようなところでもって借り受け者の方に回っておる。しかも、いまの平均値の三万円に対して、上層の方ではそれよりはるかに高い純収益を上げている。その純収益のレベルに現在のところ借地料はいっていないと私は思います。いまの純収益の計算で言えば、臨時雇いの賃金を前提にして言えば、借地料をかなり払ってもなおかつ相当の余裕は残る形になっておるということです。こういう形になるということは、規模が大きくなりまして、いわばレーバーセービングの効果と、それから固定資本投資なんかのオーバーヘッドコスト分が非常に小さくなるという効果が相乗的に働きまして、上層農の、何といいますか、経営規模の大きな農家のいわば地代負担力が高まっている。高まっている中でもって、そのぎりぎりのところまで地代を払っているかというと、なかなかそうはいっていない、借地料のところはそこへいっていないという形になっています。ですから、現状のこれで言いますと、これだけ固定資本投資を前提にしてかなりの生産をやらなければいけないという形になりますと、私はこうならざるを得ないだろうというふうに思うのですね。その点で言えば、やはり規模拡大がコスト低下というところに機能していく、私はこれは明らかであろうというふうに思います。
  51. 日野市朗

    ○日野委員 次に、私は農地賃貸借関係についてちょっと伺っておきたいのです。これは池田参考人に伺いたいと思います。それから山口参考人も御意見をお聞かせいただきたいのです。  賃借権というのは、ちょっとむずかしい話になつちゃって恐縮ですが、かなりこれは物権化した債権でございますね。そうすると、これが純粋な債権であれば、かなり任意に当事者間での契約によってその内容を決めるということはできるわけですが、期限を初め内容を決めることもできてこようかと思いますが、賃借権というのは物権化した権利だということになりますと、法規制の上からもかなりきちんとした取り決めができるような形をとっておきませんと、いろいろなトラブルが頻発をするのではなかろうかというような感じが実はするわけであります。特に使用年限であるとか、その使用によって土地の価値が上昇した分の清算行為をどうしていくのか。これは特に有益費の償還なんかについては問題になることであろうかと思うのですが、これについて、それを解決する基準というのは、できれば法自体の中で解決をつけておくのが望ましいことではないかというふうに私は思うのです。こういう問題の解決について、農業委員会側としては十分にこれに対応するだけの準備が果たしてあるのかどうかということと、それから、現状はやみ小作や何かでいろいろ問題が起きているところがあると思うのですが、そういうものの解決についてどのような手段、方法が用いられているのかという点、山口参考人にひとつ教えていただければと思います。
  52. 池田斉

    池田参考人 賃借権の物権化という概念を頭に置きながらやらないと、なかなか今度の三法にあるような形ではいろいろ問題が起こるのではないか、こういう御指摘でございます。なるほど、残存小作地がまだ残っておりますが、これはかなり物権化しておる。したがって、この問題をどうするかというこの解消運動はしておりますが、そういうものがたくさんあるところにおいてはこれはなかなか簡単には動かない。解消が先行しなければならぬ。しかし、一般的には、今度の三法はすでに利用増進事業でその先例が開かれてスタートを切って、三年なり五年なり六年なりという短期のものがスムーズに現在動いて、三年目のものはぼつぼつその時期が来るというようなものもあるわけでございまして、その辺は、私はそう物権化的な問題が支障になるというふうには考えておりません。ただ、三年、五年という短期の中でいわゆる土地条件の投資をするというような問題があらかじめうまく話し合いの中で行われておらないと、これを期限が来たら返してもらう場合にその有益費をどうするかという問題は、やっぱり問題意識としては一つ考えておかなければならない問題ではないか。この点については、いろいろ検討もかつて行われましたけれども、その基準、ルールをどうつくるかというような問題がまだ明らかにされておりません。しかし、これは、本法施行後、やはりそういう問題については十分検討をして、ある程度そういう問題に対応する農業委員会等がそれに基準を持ちながら話し合いの中で解決をするというようなことがぜひほしいものだというふうに考えております。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 山口巖

    山口参考人 賃貸契約に際しまして先生の御心配のようなトラブルが起こることを私ども心配をいたしております。特に、土地改良等に投資いたしました経費の契約期間が過ぎた後における負担の問題等につきまして、あらかじめ契約に当たりまして文書の中で取り決めを行っておく必要があろうかと思うわけでございます。それらの問題につきましては、農協としては、やはり改善事業の実施に当たりまして十分指導の面で配慮してまいりたい、かように考えております。
  54. 日野市朗

    ○日野委員 齋藤参考人に伺いたいと思うのですが、現実に増進事業を消化をしていくということになりますと、私たち心配するのは、さっきからこれは問題が出ておりますが、事実上の強制にわたるような市町村なり農業委員会からの働きかけというようなものが非常に心配をされるわけであります。特に、このごろの農水省政策を見てみますと、国はお願いをする立場だと言いながら、自主的にそれをやりなさいということで、自主的な努力ということで、農水省責任をかぶらずに地域市町村などに責任をおっかぶせて手を汚さないでいる傾向が非常に強いのですね。今度の三法案審議ででも、この増進事業のこれをどういうふうに消化するかという問題の論議の中でちょっと出ているのでありますが、たとえば構造改善事業なんかの優先採択をやるとか、予算の優先配分というようなことが、政府の方からも答弁としても出ているようでありますが、これが実際上の強制にわたらないとするためには、市町村のよほどの見識がないと、これは実際上は強制という形をとらざるを得ないのじゃないかと思うのです。  私の個人的な考え方を申しますと、やっぱり二種兼業農家あたりが持っている潜在的な生産力といいますか、これは非常に現在の農村にとって大事なものだと思うのです。また、日本の食糧生産力ということについても非常に重大なものだと思うのです。食糧事情がいいうちはいいですけれども、食糧事情が世界的に悪化してくるというような状況の中では、こういったところの持っている潜在的な力というもの、これを切り捨てていったら非常に危険だというふうな考え方を私は持つわけでありますが、そこいらの見識のほどを、ちょっと漠とした質問で申しわけありませんが、どのような覚悟で進められるおつもりなのか、これをどんどんどんどん半ば強制的に進めて構造改善の優先採択を陳情したりそういうことになるおそれはないか、ひとつ伺いたいと思うのです。
  55. 齋藤政憲

    齋藤参考人 二つの点ですが、強制ではないかというふうなこと、これは強制ではない。むしろ、たとえば最近の一次構造改善事業、二次構造改善事業、あれはやや農林省が一つのメニューを与えてこれをやりなさいという指導だったのですけれども、三次構あるいは新農構にしてもそうですが、地域農政という、農政のきわめて基本に立った地域住民、部落あるいは市町村意見考え方も十分尊重するというたてまえで、地域農政を確立しよう、またそのことは正しいのだという理解に立っておるし、農林省もそういうように思想的な転換をしておると私は見ておるわけでございまして、決して農用地利用増進事業というものは強制とかそういうものではなくて、自主的にやらなければならない大事業だというふうに理解しておるのでございまして、御指摘のような心配はない、このように考えております。  それから、二種兼業農家の潜在生産力という問題全く同感でございます。きょうも参考人のどなたかかの発言にもあったように、これは営農集団なりあるいは地域なり部落の農業生産の集団の中にこれを組み込むような形で、しかもそれを増進事業に参加させる形でいくような指導体制が非常に大事な問題ではないだろうか、首切りとかそういうことには決してつながらないというふうに私は理解をしてございます。
  56. 日野市朗

    ○日野委員 もっと聞きたいことがありますが、残念ながら時間が参りましたので、終わります。
  57. 内海英男

    内海委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ――――◇―――――     午後三時三分開議
  58. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  59. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農地三法の審議に当たりまして、各参考人には貴重な時間を割いて意見陳述をいただき、心から感謝申し上げます。  早速でございますが、各参考人に質問申し上げます。  全国農業会議所専務理事池田斉参考人にお伺いします。  農業委員会の制度改善について、構造政策の中における農業委員会の果たす役割り市町村行政の中における位置づけを行う場合、農業委員会市町村長との関係をどう調整していくかが問題でございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 このことから、農業委員会の構成、委員の選出方法、所掌事務等をこれらの関連でどう考えるかなど、地方行政制度との調整が問題と考えるわけでございますが、この点について、忌憚のない御意見をまずお伺いしたいのであります。
  60. 池田斉

    池田参考人 農業委員会市町村長関係は、農業委員会市町村の付属の行政機関である、しかし独自の一つ役割りと任務を持って法律で定められておる。こういう関係を、市町村行政と農業委員会仕事がうまく連携、調和をとる、こういう努力は必要でございますけれども、やはり独自の任務を持っておりますので、それはそれなりにきちっとして仕事をしなければならないと思います。したがいまして、きょう午前中にもいろいろ意見がございましたが、農業委員というものは、選挙制を主体とした今日の制度は農業委員会制度の根幹であり、ぜひこれを軸としてやっていかなければならぬし、特に、従来農地行政の受け身の姿が行動的な農業委員会に変わって、利用増進に一つ重要な役割りを演ずる、こういうような問題でございますので、あくまでも、農民の代表がこれに具体的に参画しながら、掘り起こしその他の農民との接触を図る、これが基本であると私は思います。したがいまして、市町村長とのいろいろな権限の関係もございますが、農業委員会は、市町村の理解の上に、構造政策等につきましての自主的な推進任務というものを担当するということが最もふさわしい姿ではないかと考えておるわけでございます。
  61. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農業委員会制度の改善については、農地三法に対し、全国農業会議所を初めとする農業委員会関係者からの多くの要望があったことは私も十分承知しております。その中で、業務執行体制整備を図ることが今後の農地行政上重要なことになりますが、農業委員会には法第二十条で農地主事を必ず置くことになっております。ところが、全国農地主事は、全国市町村三千三百余のうち二千百四十八人と言われますが、このほとんどは役場職員が兼務しているものです。これでは力が入らないと私はかねがねから思っております。そこで、今後の農業委員会の任務がますます重要になるとき、委員の若返りということは言うまでもございませんが、当面専任の農地主事を置き、その上で近い将来事務局長を設けることが順序と考えるが、この点についても忌憚のない意見を伺いたいのであります。  また、これに関連し、財政措置はどう考えておられるか、あわせて御意見を承りたい。
  62. 池田斉

    池田参考人 今回の新しい任務との関係におきまして、農業委員会の事務執行体制の強化ということを強くお願いしながら今日に参っております。そういう視点から、今後も十分ひとついろいろ御配慮を願いたいわけでございますが、いま先生の言われるように、農地主事が七割程度の数である。具体的に農業委員会に置かれているのは、あるいは農業委員会の数から言うと、半数ちょっと超えたくらい、こういう事態はまことに遺憾でございますので、われわれも指導いたしますけれども、これは法律では必置になっておりますので、特に行政当局がまずこれを全体として十分配置を完成して、その上で事務局体制を完備するという先生の御意見は全く賛成でございます。  それから、午前中もございましたが、農業委員会の予算の問題につきましては、政府もかなりの努力はされておりますけれども、きょうもお話がございましたように、その倍以上のものが市町村の財政から賄われている、こういうような問題で、超過負担の問題がとかくいろいろ議論されるわけでございます。今後さらに国の予算措置の充実をぜひお願いいたしたいと考えます。  以上です。
  63. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 池田参考人農地主事は七割ということですが、実際に二千百四十八人のうちで専任が何名、兼務が何名、市町村にいないところは幾らというのがもしお手元にあれば、お答えください。なければ、また後で資料をいただけば結構ですが、どうでしょうか。
  64. 池田斉

    池田参考人 いま概略的なことを申し上げまして、専任、兼任その他の問題につきましてはいま手元に数字をもっておりません。
  65. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それでは、その件についてはいずれまた別途資料をいただけば幸いです。  さらに池田参考人に伺いますが、現在農業委員全国で六万六千二百十三人でございまして、約十四万部落ございます。今回農業委員会の選挙による委員の定数の上限を四十人から三十人に引き下げる改正になっておりますが、たとえば一、二の例を申し上げますと、九州の都城市のように一市七町村合併のところや、いわき市のように二十五カ市町村が合併したところなど、全国には広域合併市町村がかなりあることも事実でございます。こういう広域合併の市町村では三十名では少ないという意見があることも事実であります。逆に、小さい市町村では三十名でも多い、二十名内外でいい、もっと少なくていい、こういうような意見があることも事実でございます。この点どう全国農業会議所としてはお考えになるか。その点、いままで政府にいろいろ希望を要請された立場でもあるので、御返答がなかなかむずかしいかもしれませんが、ひとつ御答弁いただける範囲で結構ですから御意見を承っておくと、本法審議に当たって今後いろいろと参考になると思うので、よろしくお願いしたいと思います。  実はこの件に関して、去る四月九日と四月十六日の二回にわたり三時間余にわたって私、本法に対する質問を行ったわけでございますけれども政府農業委員会協力員を置くと答弁されましたが、全国農業会議所でもこの点はどういうようにお考えであろうか。サブ的な協力員は将来二部落に一人くらい置くということであるのかどうか。また、こういったサブ的な協力員を置けば当然費用弁償ということが必要になってまいりますけれども、こういったことについては予算措置等はどういうようにお考えであるか、と同時に政府に要望しておられるか、この機会にこの点もあわせて、お考えがあれば明らかにしていただけば大いに参考になるわけでございます。
  66. 池田斉

    池田参考人 先生もおっしゃるように、現在の農業委員の数では二集落あるいは三集落に一人ぐらい、こういう数字でございます。新しい今後の任務を担当することを考えますと、私はやはり集落段階にこの任務を受け付けながら一緒になってやる協力員的なものが将来は総体として必要であると思いますが、いま四十名を三十名に下げた、こういう問題につきましていろいろ議論があることは承知をいたしております。きょうは率直に申し上げますが、先ほど町村会の代表からも言われましたように、ひとつ半減くらいしたらどうかという意向が強いことは御案内のとおりでございます。そういうことで、実はきわめて裏の話ではございますが、責任者が集まりまして、この辺の問題はひとつ妥協しようということで取り決め、これを政府が今度は取り上げておる、こういう経過でございますので、私はその点は率直に申し上げました。  ただ、そういう大きな市町村におきましては、これは政府も答弁をしておるようでございますが、この協力員制度というものをぜひひとつ取り上げて、そしてそこからスタートを具体的に切るということをぜひお願いをいたしたい。そうでないと、こういう大きな市町村におきましては、量より質ということが基本でございますけれども、それにしても手足がなければとうていこの仕事が動かないというような問題もございますので、これはそういう該当市町村からまずスタートを切るということを、少なくとも予算措置を含めながら今後はぜひ実現していただきたいというふうに考えるわけでございます。
  67. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、池田参考人にお伺いしますが、今回の改正で、部会制を廃止して、これにかえて常任会議員制を敷くことになっておりますが、従来の部会制と常任会議員制との間には性格に大きな変化を生じている、私はかように認識するわけでございます。すなわち、従来から比べて性格変更である、こういうふうに思うのでございますけれども、本法審議に当りまして、これについても池田参考人のお考えをひとつお聞きしておきたい、かように思います。
  68. 池田斉

    池田参考人 確かに、先生のおっしゃったように、部会制を廃止して常任会議員制というのは組織の大きな変更につながります。また、ある意味では、今度の法案の改正の中での県の農業会議のあり方につきましては、むしろ非常に大きなメリットがこの常任会議制をとるというところに出るのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。そして、この常任会議員制をとることにおきまして、具体的にはきわめて機動的な姿の中で、新しい利用増進事業推進系統全体でやる場合に非常に有効な働き方かできますし、いま一つは、常任会議員の中に農協その他の団体の代表が入るということになりますので、特に農地関係の今度の利用増進その他に関する問題がその場において総合的に審議をされるということもあわせてプラスでないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、常任会議員制はぜひともとっていただきたいし、これが一つの大きなメリットであるというふうに考えております。
  69. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、池田参考人にお伺いしますが、今後の農業委員会の重要な任務から考えまして、本法が施行された場合に、従来よりも相当行動もせねばならないし、また、夜の座談会等にも出向いたり、あるいは権利移譲の問題等がございますので、何かと従来よりもさらに活動が求められると思うのです。  そこで、私はもちろん農業委員会委員のいわゆる質の向上といいますか、レベルアップということが重要な問題になる。そうしないと、本当に今後この仕事を背負っていくことがなかなか容易ではない。また、本法が施行されているならば、またそれだけの仕事をひとつしてもらわなければ、国民の期待にまた農民の期待にこたえてもらわなければならぬ一かように思うわけです。そういった意味で、来年度は改選時期になりますけれども、現在選挙は約二〇%余りでほとんどが推薦制になっていますが、これに対しては、本法が施行された場合、来年の改選との関係で、今後会議所としてはどういうように対処していくか、ひとつこの辺の決意をこの機会にあわせてお伺いしておきたいと思います。
  70. 池田斉

    池田参考人 本日の私の意見開陳におきましても、農業委員会のこれからの任務、使命がきわめて重大になり大きな期待がかけられる、これにどうこたえるか、十分従来の姿を反省をしてこれに対応しなければならぬことを申し上げたわけでございますが、幸い、来年は委員全体の改選期でございます。これからの新しい任務を担当する農業委員会の使命を十分ひとつPRをし、訴えまして、本当に文字どおりこういう問題に挺身できる農業委員が選出されてくるということを期待をしながらそれに全力を挙げてまいり、ひとつ所期の目的が達せられるように全力を挙げて努力をいたしたいというふうに考えるわけでございます。  ただ、ここで一つお願いいたしたいのは、先ほど申し上げましたが、ひとつそれらに対応するだけの十分な活力を出させるための財政的な援助等につきましては、今後とも格段の御協力お願いいたしたいというふうに考えます。
  71. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 池田参考人から言われましたように、なるほど農業会議は今後重要な役割りで、相当な決意で全国農業会議所でも臨むという決意はわかりましたが、すなわち、農業会議という会議委員会的法人であることから、きわめて財政基盤が弱体で制度的な解決が従来から望まれてきたわけであります。本法の強い期待にこたえられる活動をするためには、いまもおっしゃったように、私も何よりも財政基盤の確立が必要であると思います。そこで本員も、参考人意見陳述をもとに、大いに政府にも予算要求をいたして、この事業が十分推進できるように努力したいと思いますが、その点について具体的な意見等あれば、この席で思い切ってさらに陳述していただければ幸いであります。
  72. 池田斉

    池田参考人 系統の問題を申し上げますと、一番下の農業委員会市町村に大きくおぶさっておる。しかし、おぶさっておりながら財政面ではまだ十分ではない。特に農業委員の手当等につきましても、国が出しておるものはきわめて少額でございます。これから本当に働いてもらうというためには、そういう面からのてこ入れも必要でありますし、事務局の執行体制を強化するという面でもさらに充実する予算をどうするか、これはやはり基本的に国に十分見てもらうということが大事な問題でありますので、お願いを申し上げたい。  もう一つ、県の組織におきまして、余り議論をされておりませんが、県の農業会議もやはり系統の軸として、常任会議員制度を活用しながら、これから新しい任務を町村と協力して推進するという重要な役割りを負荷されておるわけでございまして、これまた財政に非常に困難をしておるというのが実情でございます。これも国と県におきまして十分な御配慮をぜひともお願いいたしたいというふうに私からもお願いを申し上げておきたいと思います。
  73. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林漁業金融公庫の中野和仁総裁にお伺いします。  時間が迫ってまいりましたので簡潔に申しますが、今回の本法提案によりますと物納ということがございます。現在、四〇・六%の物納が黙認の形で行われております。これも四月九日、十九日の二日間、三時間余にわたって私は政府の見解をただしてきたのですが、中野総裁はその方のベテランでございますので、この際御意見を承っておきたいという意味でお尋ねするのですが、法施行によって現状追認ということにもなるわけでございますけれども、物納について、中野総裁は現状を踏まえながら率直にどういう意見であるか、簡潔で結構でございますからお答えいただきたい。
  74. 中野和仁

    ○中野説明員 物納の件につきましてお答え申し上げます。  戦後の農地改革の際に金納ということにしたわけでございます。当時は地主制を打破して農村の民主化を図るということで金納制がよろしいということであったわけでございますが、それから三十数年たちまして、現状を見てみますと、午前中議論もありましたけれども、小作農の地位――小作農という言葉もおかしいじゃないかという議論もありましたように、もはや地主、小作の関係というよりも、いまの土地の売買、賃貸借農家同士の間ということが多いわけでございます。もう一つは、兼業農家が非常にふえてまいりまして、土地は人に貸すけれども、せめて自分の土地でとれた米が欲しい、飯米を確保したいという気持ちがあるようでございます。それが、いま瀬野先生のおっしゃいましたように現状四割程度はもう物納になっておるということでございます。したがいまして、現段階におきましては、物納であろうと金納であろうと、どちらでも両者の話し合いがつくところでよろしいのではないかというふうに私は考えております。
  75. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 中野総裁にさらにお伺いしますが、本法施行に当たっては、借り手が三年、五年の期間では不安である。貸す方は、どちらかと言えば農業をやろうという意思がない方が強いわけでございます。そこで、稲転をするとなると、暗渠排水など土地改良が必要になります。この土地改良について、貸し手がやるのか借り手がやるべきか。また、国の何らかの助成がないとこれがなかなか進まない、あるいはこのことが大きな一つの支障になる、かように思うわけです。また、借り手がやったときの有益費の償還はどうあるべきか、こういった問題がございます。この点について、時間があと三分ぐらいしかございませんので、その間に簡潔で結構ですから御意見をいただけると幸いでございます。
  76. 中野和仁

    ○中野説明員 土地改良事業をどちらがやるかという問題でございますが、どうも実態は、賃貸借の期間が三年、五年というのが多い場合には土地所有者の方が多いように私は伺っておるわけでございます。たまたまいま私がやっております仕事との関連を申し上げて恐縮でございますが、先般、北陸地方で、九ヘクタールでございましたか、農用地利用増進事業に乗せまして、一軒の農家が三十軒ぐらいのところから土地を借りまして、土地改良は自分でやるのだ、こういう話が私の方へ参りまして、私の方から資金を貸し出したわけでございますが、その際、有益費の点について見てみますと、都合で地主の方に土地を返す場合には、残った公庫からの借金は地主の方に持ってもらうという契約をしておったようでございます。それは一つの例でございますが、借り手の方が土地改良費を負担しました場合には、民法、土地改良法によりまして有益費の償還の規定がございます。したがいまして、事前に契約でそれを決めておけばよろしいのじゃないかと思います。たまたまそれがもめました場合には、今度の事業との関連で申し上げますれば、市町村あるいは農業委員会でその辺の裁定といいましょうか話し合いをつけるということにしていただければよろしいのではないかと思います。
  77. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 貴重な意見陳述、ありがとうございました。
  78. 内海英男

    内海委員長 武田一夫君。
  79. 武田一夫

    ○武田委員 本日は大変御苦労さまでございます。日本の今後の農業の構造、日本農業の発展に非常に大事な改正の内容でございますので、今後の法案審議の中で皆さん方の御意見を参考にさせていただきたいと思います。  午前中いろいろとお聞きいたしましたけれども、まず最初に、梶井、谷本、齋藤、三人の参考人方々と中野総裁にお尋ねいたします。  今回の法改正によりまして、果たして日本農業の構造改善というものが明るい見通しを持って進められるものかどうか、そのきっかけとして土地の流動化というものが果たして予定どおり進むものかどうか、そういう一つの見通し。それから、もしこれが思うようにいかないであろうという心配があるとするならば、何かそこで条件的にもっと完備しなければならない、そういうものがございましたら、先ほど意見の中でお述べになった方がおりますけれども、反復する方も御承知の上で、もう一度御説明いただきたいと思います。
  80. 梶井功

    梶井参考人 私、午前中申し上げましたように、現在、条件としましては、農地賃貸借で動く条件はあると思うのです。事実動いております。動いておるのですけれども、より一層活発にするためには、いまの農地法制整備、いま提案されておりますような問題点の解決が必要だというふうに思っております。現実にそれが障害になっておりまして、貸借関係がなかなか結ばれないという現実も村の中で方々で見るわけです。しかし、それだけで日本農業構造が望ましい形に改善されるかと言いますと、これだけではなかなかむずかしいだろう。農地制度の整備一つ条件でございまして、それにあわせて利用権を集積して、営農する方々営農の将来に希望を持てる、そういう条件を同時に整備することが必要である。その条件としましては、いま、たとえば米も生産調整に入っております、牛乳も入っております、ミカンもそうでございます。では、そういう集積をした土地の上で一体どういう農業生産を営むのか、農業生産の構成は一体どういう方向に持っていくのか、その点についての国のはっきりした見通しあるいはその方向づけというものが必要でございますし、そういうことを前提にするためには、これは当然、現在の農産物の貿易政策といいますか、国内の自給率をいかに高めていくかという問題とのかかわりがございますので、貿易政策というものについて、国内農業を優先していくという政策をはっきりとる必要があるであろう。同時に、それは農産物の価格政策にも関連してくるということになろうかと思います。その辺についての、いわば総合的な政策の手直しといいますか、そういうものが裏打ちにされませんと、この構造政策は実を結ばないのではないかというふうに考えている次第です。
  81. 齋藤政憲

    齋藤参考人 現在よりはこの法律等が決定することによってプラスの面は確実に出てまいる、こういうことは言えるのでございます。先ほどの意見開陳にも申し上げにおりますけれども、ただ、どういうことが今後心配かというような御意見等もあるようでございますが、先ほどの開陳にさらに追加して申し上げるのであれば、借り手に土地を渡す、賃貸契約を結ぶわけでございますけれども、安心して貸せるということの一面を考えた場合に、たとえば工場等があってそこで就職ができるというようなこと等もあれば結構でございますが、特別の技術を取得するためのあるいは職業訓練のような手当て制度というものは考えられないかというようなことが一つですね。それから、現在農地管理公社農地の造成等をやって、かかった金に対する利子が大体三・五%だと思っておりますけれども、取得する場合にもそうですけれども、こういう利子分が加算されるという問題があるわけで、その点が高くなる、こういうことでその点の解消ができないか。つまり、国の方なり県の方で考えられないかというふうなことでございます。さらには、賃貸はいいとしても、正規に土地を取得する場合は決められておりまして、一千万円以上はだめだ、こういうことになっておるわけでございまして、そういう一千万円の限界、限度をつぶして上限をもっと上げるという方向でやれないものかどうか。こういうこと等が解決されればさらに今後伸びていくのではないだろうかというような点でございます。
  82. 谷本たかし

    ○谷本参考人 今度の農地三法が成立することによって農地の流動化が進むかどうかという点でありますが、私は、一定程度は進むし、進まされる、そういう二つの側面が生じてくるのではないかと思います。進むといいますのは、貸し手に安心感を与える、そういう意味で若干進む可能性はあり得ると思います。それから進まさせられるというのは、いわば減反政策との絡みで半ば強制も同然な形で進まさせられるというような意味であります。米の減反につきましては、転作条件整備がないもとで農民は大変な犠牲を強いられてまいりました。しかしながら、そういう状況の中で一〇〇%以上の達成率が得られてきているというのは、一つには減反がペナルティーつきであったという問題がございますが、それともう一つ、受け入れた農民の側といたしましては、互助組織などをつくりながら対応したという点があったろうと思います。しかしながら、そうした互助組織による対応というのも、割り当て面積がふえる中でことしあたりからすでに限界的状態があらわになってまいりました。このために市町村段階でささやかれておることは、やはり集団転作、文字どおりの集団転作にしなければしようがないのではないかと言われていることであります。こうして見てみますと、将来的には三割の減反が見込まれるというような状況の中で、これとの絡みの中で農地の流動化が一定程度余儀なくされるという状況が生ずるであろうということであります。その点につきましては、午前中にも触れたもう一つの問題があったわけでありますが、たとえば、転作奨励金がバラ転の方は少なくして集団転作の方に傾斜させていくというような形に改められたり、あるいはまた、農地利用増進事業をやると補助金を出す、やらなければ出しません、こういうふうな形のものが強まってまいりますと、かなり強制的な形での土地流動化が一定程度進むであろうというぐあいに見られるということであります。しかしながら、そうしたものについては当然農民の抵抗を不可避といたします。したがって、そこには当然として限界が生まれるであろうというぐあいに言わなければならぬと思います。  次に、流動化を進めるためにはどのような条件整備をすべきかという御指摘でございますが、これは午前中にも申し上げましたように、地価抑制、それから社会保障の充実、それから賃金と雇用問題、そして価格保証の問題といったような点の解決が得られることが必要であります。  なお、この際若干付言をさしていただきたいと思うのでありますが、価格問題についてであります。現在農地の流動化が一定程度進んでいるのは、価格保証のある米と一部たばこのみと言ってよい状況でございますが、またそれとともに考えてみなければならないと思いますのは、賃借料が非常に高い、高過ぎるという状況であります。賃借料が高過ぎる状態になっておりますのは、転作奨励金とのかかわりであります。四万円の最低ベースの転作奨励金というのが不当な小作料を現出させているというぐあいに言っても言い過ぎではないかと思います。そうして見てみるならば、農地所有に対して奨励金を与えるという奨励金の交付の仕方はやめて、これを耕作者の方に回す。言いかえるならば価格保証に充てていく、そういうふうな問題解決をしていくならば、農地の流動化は一定程度さらに促進し得るであろうというぐあいに考えます。
  83. 中野和仁

    ○中野説明員 従来の流動化の政策、たとえば農地保有合理化事業にいたしましても、あるいは五十年からの農用地利用増進事業にいたしましても、また、いま申し上げました農用地利用増進事業は当時バイパスと言われてまいったわけでございますが、今度の三法は、聞くところによります、と、それをハイウエーにまで昇格させたと言いましょうか、そういうことである、こういうことでございますので、今度のこのやり方中心にいたしまして、それに伴って基盤整備を初めとする生産対策あるいは金融また補助政策等集中的に持っていきますれば、私はこの事業は相当程度進むというふうに思うわけであります。ただ、何といいましても、売り手、買い手あるいは貸し手、借り手の土地問題のことでありますので、一年、二年で急速に進むというふうには思えないわけでございます。やはり客観的な条件が成熟するということも必要でございましょうし、気長にこれを見守ってやる必要があろうかというふうに思っております。
  84. 武田一夫

    ○武田委員 その次、ちょっとお尋ねしますが、この土地の流動化が進まない理由としまして、一つは、一つ意見としまして土地の改良事業のあり方が大きな問題ではないか、これに一つの工夫をすべきではないか。それからもう一つ、残存小作地というものをどういうふうな形で処理するかということをはっきりしないと、これは相当苦労するのではないか。特にこの残存小作地の問題については、やはり相当納得させるための努力が必要ではないかという現場の声が非常に強い。ところが、政府は、これは余り心配ない、こう言っているのですが、そういうものを解決せずして果たして思うように進むのかどうか。  それからもう一つは、その手続といいますか、そういう面での煩わしさというものが非常にあるのではないか、こういう点をいかがお考えでしょうか。これはできれば各参考人に御意見を伺いた  い、こう思います。
  85. 池田斉

    池田参考人 流動化をうまく進めるための阻害条件として土地改良のあり方に問題があるのではないか、これは私ちょっと質問の趣旨がよくわかりませんが、土地改良を一体どちらがやるかというような問題との関連で、先ほどもちょっと御意見ございましたが、これを負担する場合の取り決めや有益費の問題、こういうことがうまくいくということであれば、その辺の問題は解決をするのではないか。残存小作地につきましてはいま十六万ヘクタールほどあり、農地改革当時のものが六万か七万ぐらいである、こういう数字があるようでございますが、事実これはだんだんと話し合いの中で解決をしておりますが、ただ最後に残る、事実上物権化したような残存小作地についてどうするかというような問題は、これは何らかの形で解決をしないと、ただ指導の姿の中での問題だけでは解決しない。しかし、それは量的には非常に限られてきますが、そういう問題を解決するには、あるいは法的な手段が要るかどうか、その辺は検討する時期がやがて来るのではないか。当分の間はこれは話し合いの中で逐次解決をしていく。いまこのために七百万円の融資の枠もふえておりますし、現にそういう形で指導しておりますので、直ちにこれが流動化に支障があるというふうには直結的には私は考えておりませんが、やがて問題になるであろうというふうに考えます。
  86. 梶井功

    梶井参考人 土地改良事業の問題ですけれども、現在の賃貸借が行われております実態を見ますと、この利用増進事業なんかでやりましたような、たとえば利用権設定のように大変短期のものもございます。一年、二年、三年というような短期のものもございます。しかし、その中でもって、十年というふうな大変長期の定期賃貸借を現在の段階でも取り結ぶという方もございまして、賃貸借の性格というのは、かなり動き始めたという条件の中ではかなりいろいろな動き方をしております。いろいろな動き方をしておりますから、画一的に、たとえば土地改良事業についてはかくかくすべしというふうなことはなかなか決めかねるのではなかろうか。いま池田参考人の方からもお話がございましたように、かなり長期にわたっての安定的な賃貸借設定できるというふうな場合には、恐らく賃貸借人が土地改良事業に参加する、土地改良法の規定どおりにおやりになるということの方がベターでございましょうし、短期の場合には、これはできれば土地所有者がそれに参加していく。あるいは土地所有者が事業負担をやらないで賃借人がやりますというふうな場合には、その場合の有益費の措置を一体どうするかという点を、この利用増進事業を仕組んでいく取り決めの中でもって決めていけばよろしい。それは利用増進事業を前にやりましたときにもうすでにその方式があるわけですから、そういう形での処理の仕方というものを規定しておけばよろしいのではなかろうかというふうに思います。  なお、有益費の問題に関連して私ちょっと一つつけ加えておきますと、有益費という形でもって取り上げるべき投資行為あるいはその投資の内容というもの、これは営農形態によってさまざまでございますし、これは画一的にこういう範囲のものをぜひやるべきであるというようなことは、いまの段階でもってにわかには私なかなか決めかねるであろうというふうに思います。もう少し賃貸借というふうなものがいろいろなタイプで自由に行われるという状況の中でもって、そういうふうな有益費として取り扱うべき範囲なりあるいはその具体的な処理の仕方なりという点を、逐次検討していくということが必要なのではなかろうかというふうに思います。たとえば賃貸借の契約それ自体の中に、たとえば有益費にかかわる部面というものを取り込んだ契約もございますし、それもないところもあるというところでもって、実態的にいいますと、各地域でもっていまのところはかなりさまざまでございますから、にわかには画一的にはできない、もう少し実態の進行を見るべきであるというふうに思います。  それから、残存小作地の問題でございますけれども、残存小作地の問題については、農地改革の過程でもって在村地主の保有地というものが認められた結果として、たまたまくじ運の悪い人が残存小作地を持たざるを得なかったのだという意味で言いますと、この権利というものは何らかの形でもって保護しなければいかぬというふうに思っているわけなんです。ある意味で言いますと、残存小作地は性格的に言えば私は半自作地だというふうにもかねがね考えて、そういうことを書いたこともあるのですけれども、そういう性格のものでございますから、耕作者といいますか、現在残存小作地を耕作している方の権利が守られるような方向でもって処理されていく必要があるだろうと、こう思います。しかし、これも実態的に申しますと、両者の合意のもとでもって、これはたとえば四分六で分けるとかいうふうな形でもってずっと解消が進んできております。恐らく今後もまたこの解消というものはいろいろな形で進められていくであろう。それに伴って、たとえばいま耕作している方がそれを買い取るときの資金の手当てなり何なりというふうなものについて用意してやるという措置を講ずれば、それほど大きな混乱なしにいけるのではなかろうかというふうに思います。
  87. 武田一夫

    ○武田委員 その点で、ちょっと谷本さんから残存小作地について御意見だけ聞かしてください。余り延ばすと申しわけないものですから……。
  88. 谷本たかし

    ○谷本参考人 残存小作地は、農地改革で当然農民のものに帰属すべき筋のものでございました。したがいまして、統制小作料は継続すべきであるということを私は午前中に申し上げましたが、また別途の処理としては、永小作権を設定するとか、あるいはまた、長期低利融資で本人のものにそれが帰属できるような措置を講じてしかるべきではないか、このように思います。土地改良を行う場合に、残存小作地の問題についていろいろ問題が生じてくるというような点については、相当額の離作料の支払いを可能とする、そうした措置が講じられてしかるべきではないのか、このように思います。
  89. 武田一夫

    ○武田委員 どうもありがとうございました。
  90. 内海英男

  91. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 参考人の皆さん御苦労さんでございます。  いま統制小作料の問題でお話がありましたけれども、谷本さんと梶井先生にお聞きしたいのです。  秋田県の事例をちょっと申し上げさせていただきますと、統制小作地が五十五年一月調べで六千二百三十八ヘクタールあるのですよ。同時に、その小作人が三万六十人いるのですね。全農家戸数が十二万戸ですから、四分の一がこの状況の中にいる、こういうことでありまして、九月にこれが撤廃されるということは死活問題にかかわる大問題だ、こういうことになっているわけであります。  そこで、先ほど来の論議の中で谷本先生からは、統制小作料はいままでの歴史的経過から見まして延長すべきであるという御趣旨の御発言がございましたし、梶井先生からは、慣例に従ってこれを十分重視せよという御指摘もあったわけであります。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 私は、先ほどの御発言にありましたように、本来自作地になるべき土地であったわけで、そういう意味では半自作地だ、こういうことでありますから、戦後三十年、いつまでも統制小作地、残存小作地のしっぽをずっとこれからも持ち続けていくよりも、この機会に国の責任でこういう残存小作地をなくしていく、民主的に解消するか、解決するか、何かそういう抜本的な手だてを尽くすことの方がより根本的な解決になっていくのじゃないかと思うのです。なぜかと申しますと、残存小作地をずるずる延ばしましても農民同士の貸し借り関係は育っていかないというふうに思うのですね。そういう点からいたしますと、基本的にはそういうかっこうで、しかし小作人のままでいたいという農民の申し入れ、あるいは自作地にしたいという農民の申し入れ、そういうものも民主的に尊重して、いまある時価とあるべき価格の差は農業で買える水準で国が手当てする、こういうことをこの機会にやるというようなことはより必要であるような感じもするわけでありますが、この点について、お二人の先生から御見解をいただければありがたいと思います。
  92. 谷本たかし

    ○谷本参考人 残存小作地の問題をこの際国の責任で処理をしていくということについては賛成でございます。根本解決を期していく上では、先ほども申し上げましたように、もう永小作権を設定してしまうというぐあいにきちんと整理してしまうというような行き方もございましょうが、いま先生からお話のあったような、時価との差、これについて国が手当てを行って、そして本人のものに帰属させるようにしていくという措置については大賛成でございます。
  93. 梶井功

    梶井参考人 残存小作地をいますぐに処理するかどうかというふうな点につきましては、四十五年の農地法改正の段階で、たとえば十年というふうな期間を設定した、その時点で十年延ばしている間に豊富な資金を手当てして買い取るなりなんなりというふうな措置をとるということの方が望ましかったと思いますし、私、かつてそういうことを何かに書いたこともあるのですけれども、現在の段階でそれをやるというのは一体どうなんだろうかという気がいたします。  と言いますのは、地主さんの方も、あるいは現在貸しておる方も借りていらっしゃる方も、両者がお互いに売買という形で解消しようというお気持ちを持っていらっしゃるところはかなりスムーズにもうすでに解消されてきておるということになっております。現在残っているものをいま先生おっしゃったような方式でやるということになりますと、これまで相対といいますか、両者の話し合いの中で解決してきた方々との間にやや不均衡が生ずるという気がするわけです。ですから、そういう特別の措置をとるということも大変結構な考え方だと思うのですけれども、そういう不均衡という問題を考えますと、やはりもう少し、たとえば現在そういう残存小作地を買い取るというふうな場合の資金枠というものが現状でいいのかどうか、アッパーリミットの問題ですね、あるいは金利の水準なり償還期間の問題なりというふうな点について、なお検討すべき余地が多少あろうかと私は思うのです。三分五厘あるいは二十五年というような自創資金の枠内でやるというようなことでよろしいのかどうか、その辺について特段の措置をもう少し考えてみる必要があろうかと思うのですけれども、二重価格というふうな形で処理をするというのは、これまで相対で解消してきた方々との間に不均衡を生ずるという意味でやや賛成しかねるというふうに思います。
  94. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 同じく梶井先生山口先生にお聞きしたいと思うのですが、農地価格の問題につきまして、先ほど来山口さんのお話ありましたように、賃貸借の背景は農地が高くなって農業をやるための値段でなくなっているという問題があるわけでありますが、こういう形の中で賃貸借をやりましても、貸し主としましたならば転用を目的とした資産価値として物を考えるわけですね。つまり、いま売らないのは採算に合わないから売らないということで、こういう状況でありますから、借り手にしますとそれだけに営農の耕作不安が残るわけであります。したがって、農地価格が高いということは今後の営農発展の大きい桎梏になっていると思うのです。そういう点で、先ほど山口さんが、その問題を通り抜けてその外側の方で何だかんだやっても基本的な解決にならないという御指摘がありました。私は、この点について梶井先生にお聞きしたいことは、こういう問題は学問的立場からどういう対策、方向をとったらいいか、この点をどう考えたらいいかということをお聞きしたいことと、先ほど山口さんのせっかくのお話の中でも、残念ながら当面方法がないんだ、こういう御指摘があったわけでありますね。農協中央会ですから、こういう農地価格の問題について政策提言といいますか、そういうものは当然検討してあるべきだと思うのですけれども、当面方法はないということではちょっと私は理解に苦しむところなわけでありまして、この点について、差し支えない限りお話いただければありがたいと思います。
  95. 梶井功

    梶井参考人 地価の問題は大変むずかしい問題で、短時間に考えておりますことを正確にお伝えできるかどうかわかりませんけれども、現在の農地価格の高騰という問題は、農業内部の諸条件規定されているというよりは、はるかに都市での土地価格の問題あるいは資本の投機的な土地取得によって形成されている土地価格、これが農地の方にはね返ってきているという側面が大変大きいわけでございます。たとえば代替地取得というふうな形で農地にはね返ってくるというその側面が大変強い。ですから、高地価の問題に対処するということになりますと、これは現在の都市での土地価格の問題あるいは土地投機に伴って発生するような異常な地価、こういったものに対して一体どういうふうに対処するかという問題にならざるを得ない。  そこで、その問題に関連して申し上げますと、私が一つだけ特に強調しておきたいと思いますのは、都市政策の方で都市の地価について一定の方向づけを与える、歯どめを与えるということでありませんと、農業政策の分野でやれる範囲は非常に限定されるのじゃなかろうかというふうに思います。都市政策の中で特に重要だと私が思いますのは、たとえば東京都の条件なんかまさにそうでございますけれども、非常に多額の社会資本役資をやっております都心に人が住まない、そして人はどんどん郊外の方にあふれ出していくという形になっているわけですね。こういうふうな都市政策の構造、ここのところからまず変えていくことが一つ大事な問題ではなかろうか。それは当然都市への人口集中をどういうふうに抑制していくかという問題と絡みますし、その人口集中の抑制という問題は資本蓄積のあり方というふうな問題とも絡んでまいりますので、これは非常に大変な大問題であろうというふうに思います。地価の問題というのはまさにそこに問題があるのだというふうに理解すべきである。農政の領域という点で申し上げますと、そういう条件の中で、一体どういう形で優良農地を確保し、その中で営農体制を守っていけるか、ここのところに、実を言うと受け身で対応せざるを得ないというところに現在の農政のつらさといいますか問題点があるのだというふうに私は理解しております。  もう一言つけ加えますと、その点で言いますと、私は、農政の領域の問題で言えば、ゾーニングの強化という問題と、四条、五条の運用をやっていくという中でしか地価の問題への対処の仕方はないのじゃなかろうか、そういう現状だからこそ賃貸借を通じての営農体制の確立が求められるのだというふうに理解しております。
  96. 山口巖

    山口参考人 先ほど申し上げましたように、農地価格がいわゆる収益還元の価格から資産的な価格に上昇いたしてまいりましたのは、高度成長のさなかにおきましていろいろ他産業からの敷地の要求であるとか、あるいは宅地の要求であるとか、こういう点が非常に価格をつり上げてまいった。いわゆる農業以外の他動的な要素によりまして価格が上昇いたしておるというのが現状だろうと私は思います。  この問題につきまして非常に残念に思いますのは、やはり農地法をつくりますときに価格問題につきまして一定の歯どめ措置を講ずべきであったと思うわけです。その点が欠けておりましていまのような段階まで進んでまいったわけでございます。しかし、このままに放置しておってよいかという問題につきましては、このままではいけないのじゃないかというふうに私は考えておるわけでございまして、やはり他の宅地の問題を考えましても、すでに宅地価格が非常に高騰いたしまして、社会的な問題にまで発展をいたしておるわけでございます。だから、農地、宅地を問わず、いわゆる日本としての土地制度というものをどうするかという基本的な視点に立ちまして、この問題は抜本検討をすべきであるということを冒頭陳述いたしたわけでございまして、当面のいまの対策にそれが相当大きな問題でございますので、当面対策にそのことは時間的に間に合わないという点から、今日御審議になっております三法につきまして賛成であるという発言をいたしたわけでございます。
  97. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あわせて山口さんにもう一回お聞きしますが、第二種兼業農家はほとんど農地を資産的な所有をしておる、こういう見方が一般的でありますけれども、私は必ずしもそれは当たらないと思うのですね。たとえば秋田県の実例で申しますならば、確かにそういう部分もあるわけでありますけれども、ほとんどの人が農業以外の安定収入があるわけじゃありませんし、そういう意味では必ずしも資産的価値から持っているのじゃないのですね。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 それで、ほとんど地元の就業機会がないから出かせぎへ行かざるを得ない。母ちゃんが手間取りしながらやっとたんぼを見ておる。こういう状況も普通でありまして、そういうところから見ますと、農地そのものは生活維持にとっては欠くことのできないそういう必要性を持っていると思うのですね。そういう状況をただ一般化して、小さいものはみんな資産価の値上げをねらっているんだなんという評価そのものが問題だと私は思うのですけれども、そういう点で、下層から上層への一方的な土地集積をねらっていく、こういうあり方について非常に問題があるように思うのです。  先ほど梶井先生の御指摘にもありましたが、同じ二種兼業でも、やはり全体の力で日本農業を発展させていく、どうすればいいかということを農民同士が話し合いながら、そういうやり方の方が非常に望ましいし、必ずしも画一的なものじゃないので、そこら辺私はそう考えるのですけれども山口さんはどう思うか、御所見を承れればありがたいと思うのです。
  98. 山口巖

    山口参考人 農地の価格が資産的な価格であるということは、平均的には私はそういう現状が言えると思うのです。ただし、やはり農業地域と都市近郊地域で大きな偏差があることは先生の御指摘のとおりでございまして、農業生産をやる以上は、農地価格というものはやはり収益還元の価格であるべきである、こういう考え方でございます。  それからさらに、今回の農用地利用改善事業等を推進するに当たりましては、当然第二種兼業農家も参加した形におきまして、集落ぐるみの事業を仕組んでいかなければならぬ。いわゆる農地を吐き出す側というような対象ではなくて、第二種兼業農家が、生産手段それから労働力、こういうものも生産集団に提供いたしまして、みずから参加して全体としての生産力を上げていくという考えでないと、今回の事業はもくろみ倒れに終わるという感じが強くいたしております。
  99. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 利用増進事業についてお伺いするのですが、同じく山口さんと谷本さんにお願いしたいのです。  秋田県の羽後町の農業委員会では、何とかひとつ農地を手放すなと言うのです。それで流動化させないのだ、いまの農家戸数がこれ以上減ったら困るのだ、そういうことで、一たん貸せばもう貸し手の家には後継者は絶対育ちっこないのだ、技術も全然問題にならなくなるのだということですね。そういう点で、何と自分たちの農地を守るか、何とその中で、農民の話し合いの中で農業を発展させていくかということで、守る会をつくって、学習会や研究会を開いたりしているのです。農地を守る基本というのは、やはり農外のそういう土地支配や投機的土地所有をやめさせて、あくまでも農民的土地所有を守る、このことが前提でなければならないし、その力は農民自身が団結して農地をみずから管理する、そういう方向でなければならぬというふうに私は考えておるのです。いまの羽後町あたりの実態、農業委員さんが率先してこういう運動を進めているということについて私は前向きに評価したいと思うのですけれども、この点についての御見解をいただきたいと思うのです。
  100. 山口巖

    山口参考人 この問題につきましては、私ども農地の流動化が目的ではなくて、農地の効率的利用が目的であるというふうに考えておるわけでございまして、必ずしも利用権あるいは所有権というものを移すということが目的ではございませんので、やはり現在所有しておる農家が効率的利用を図っていくという形が最も望ましい、こういうふうに考えております。
  101. 谷本たかし

    ○谷本参考人 問題は、どういう営農形態のものをつくっていくのかということだろうと思います。欧米型模倣でやろうとするならば、生産の単一化というようなことで労働生産の短縮というところに集中した営農形態をつくっていこうということになろうと思います。そうではなしに、やはり私どもは、日本の気候、それから土地条件、そして自然循環にかなったようなそういう立場での土地の効率的利用ということでの営農形態を考えていくべきではないのかというふうに思います。そういう点で見てみますと、たとえば水田、酪農で、農業だけで結構小規模でも食っているというような状態もありますし、あるいはまた、都市農業などでも通年的に土地を活用することで小規模でも農業だけで食っていける状態といったようなものがあるわけであります。問題は、そういうふうな営農が成り立ち得るような農政条件整備するというようなことが大事なのではないか、こんなふうに思います。
  102. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 梶井さんに一つお伺いしたいのですけれども、利用改善事業でありますが、方向としては作付協定をつくって集団でやるという方向でありますね。その団体がつくられたときに、民主的な運営を保障しないと、逆に水田再編の、つまり転作の押しつけ機関に変貌させられる、こういう危険性というものがなきにしもあらず、こう思うわけであります。そういう点で農協が積極的にこの事業に関与することになっておりますが、端的に言えば、民主的運営の保障の問題でどういうふうに考えればそういう問題がうまくいくのかということですね。そこら辺について御高見をいただきたいと思うのです。
  103. 梶井功

    梶井参考人 私、一つ例を申し上げて具体的なあれを考えてみたいと思うのですが、京都府のある町でもって、京都府の農業構造改善事業第一号というのをやった町村がございます。そこで構造改善事業を取り上げましたときに、最初はこれは貧農首切りになるから反対であるということで返上決議をいたしました。しかし、その返上決議をやった後で部落の区長さんが皆さんの声をいろいろ聞きますと、農林省の言うとおりにやるのだったら困るけれども、基盤整備をきちっとそれだけやってくれるなら大変ぐあいがいいのだ、あるいは大型の機械を入れてもらうのは困るけれども、こういうのをやってもらった方がいいのだ、いろいろやってもらいたいことはいっぱいあるのですね。そうしますと、事業内容についていろいろ詰めてやればむしろみんなやりたいのだということがわかりまして、それで第一号をやったという話を聞いております。その場合に、一体なぜ返上してしまって区長さんがみんなの声を聞いてまた取り上げるようになったか、その話を聞いてみますと、その区長さんは実を言いますと専業農家ではございませんで学校の先生をやっていた方なのだそうですが、組合でもってしょっちゅう民主的な会合をやる、その民主的な会合をやる会合の方式を部落の常会の中に持ち込んで、みんなの話を何でもかんでも、何か事があれば会合を開く、会合を開く中でもって皆さんの意見を聞くという中でやって、初めてこういうやり方でやってもらいたいのだという農家方々の本当の声を引き出すことができたという話を聞きました。民主的な運営を保障するというその保障の仕方というのはそれに尽きると思うのですね。ですから、部落の中で生活していらっしゃる兼業農家の方も部落の寄り合いに参加し、その中で土地利用方式を一体どういうふうにやったらみんながよくなるのか、その話を徹底的にやる。簡単に結論を出すということでなくて、それこそ勤めていらっしゃる勤め先では、恐らく労働組合の会合なりなんなりでもっていろいろ民主的な討議をうんとやっているはずなんです。その討議の方式を村の中に持ち込んでみんなの意見を統一して一緒にやっていく、これが必要なのではなかろうかと思います。  なお、私、指名されましたついでに、先ほどの二兼農家の問題に関連して申し上げますと、そういう中で、本当に営農意欲を持っている、うちとしては第二種兼業というふうに統計上のレッテルを張られるかもしれぬけれども、その中の本人は営農を大いにやりたいのだという方には農業で働く場を保障してやる、そういうことをその話し合いの中でやっていくべきではなかろうか、こういうふうに私は思います。
  104. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農業会議所の池田さんにお聞きしたいと思いますが、端的に言って、公選の定数というか定員削減、つまり従来より農民の利益代表の数を減らすということは、機能を強めるということではなくてやはり弱めることだと私は思うのです。いま市町村が公然と公選制廃止ということを唱えているわけでありますから、それに見合う第一歩の布石というかそういう懸念も私同時に持つわけであります。現在でさえも私たちは事務局を含めて農業委員会の機能を強化、発展させなければいけないと思っておるのですが、秋田県の事例で申しますならば、自分の町に小作地がどれだけあるかという把握が、三分の一の町村はそれを調査することができないまま空白になってきているのです。こういう状況と同時に、昭和町というところの農業委員会では、まさに不動産屋そこのけでいま当事者が刑事事件で引っ張られているわけでありますが、こういう状況などもあるわけでありますから、よりチェックできるような体制のためにも、また民主主義的な発展、前進のためにも、やはり後退でなく前進という面でこの定数削減という問題は重要な意味を持っていると私は思うのですが、この点について池田さんの御見解をお聞かせいただければありがたいと思います。
  105. 池田斉

    池田参考人 先ほどもほかの先生の御質問に答えたのですが、四十人を三十人に上限を下げたという問題につきまして、これはもっと強い形で削減すべきだという町村会を代表した意見があったことも事実でございます。その責任ある者同士が、この際ひとつ公選制を堅持して上限を三十人に減らすという問題を合意し、その上で政府がこの提案をした、こういう経過が裏の話としてあることを申し上げました。私どもは、今後新しい任務を担当する場合に、少なくともそういう広域の市町村においては協力員制度をつくり上げてこの問題に十全に対応する、それからまた、来年は統一的に選挙が行われる年でございますが、やはりいま不動産屋というようなお話があって非常に赤面するわけでございますが、もっとこういう使命に徹した委員が出てくることをしっかりPRいたしまして、今後質的な改善を図るということで対応いたしたいというふうに考えております。
  106. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最後に、山口さんにもう一回お聞きしたいと思うのです。  土地を出しても組合員の資格は残るということになっておりますが、しかし農協が金を貸しておるいろいろな状況がありますね。この方はもう農地がなくなったわけですから、つまり農協はあの人については何ぼの収量があるから何ぼの枠でと貸す金額を決めていますね。そういう資格が全くなくなっていくことだけは事実だと思うのです。ですから、いままでどおりに貸すということになると、農協の定款に違反するような不良貸し付けにならざるを得ないのですね。せっかく土地を貸して、貸したら早速もう次の日から返還を求められるという状況が必ず出てくるわけであります。この点について、そういう善意が生かされないということが農協の定款というか経理のあれから出てこないかどうかが非常に心配なわけでありますが、この点はどう考えたらいいのですか。
  107. 山口巖

    山口参考人 今回の問題につきましては、この法案内容におけるニュアンスと申しますか考え方内容は、契約がいわば短期に三年ないし六年程度の賃貸契約で土地の提供を行う。それは自分の土地を全部吐き出してしまった場合には農地はなくなるわけですが、そういった場合には、農協の定款に基づくいわゆる経営規模、反別を持っておりませんから、そういう点におきましては組合員の正常な資格を失うのだけれども、これは短期の契約なので、もう一回返ってくる、自分の土地を取得してまた農業をやることが十分考えられるという情勢の中で、いわゆる救済措置として、農協の利用をその面だけで、反別がなくなったという面だけで切ってしまうというのは、いかにも土地を提供した農民にとって気の毒じゃないか、そういう点から、いわゆる特例を設けたものであるというふうに理解いたしておるわけでございまして、これが永久に農地を他に提供してしまうという場合のケースと本質的に違っておるというふうに私は理解をいたしておるわけでございまして、これが永久に利用権なり所有権なりを喪失した場合におきましては、当然組合員たる資格を失うというふうに理解すべきではないかと私は考えております。
  108. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  109. 内海英男

  110. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、持ち時間が二十七分でございますので簡単にお尋ねいたします。  せっかく参考人においで願っておりますので、公平に各参考人一問ずつ、まとめてお尋ねいたしますから、最後に御答弁願いたいと思います。  なおまた、総合的な問題としてどの参考人にも伺いたいと思いますことは、今回のこの立法措置というものがわが国農業において最終的なものであるかどうか、私たちは、農地というものは農地法規定いたしておりますようにその耕作者みずからが所有する、これが最も適当である。それで、耕作者が農地を取得することを促進しなければいけないというこの基本路線というものは今後もあらなければならない。ただし、今回の場合は、あるいは地価の高騰であるとかあるいはその他いろいろな社会状況上やむなき措置としてこの立法措置がやられたのではないか、かように考えますが、この点を皆さんたちはどうお考えになっているか、まずこれは総合的にお尋ねしたいと思うのでございます。  次に、池田参考人にお尋ねいたしたいことは、今回の立法措置ができますると、農業委員会のこれが実施に当たる使命というものは非常に大きいのであります。先刻池田参考人も、その使命が大きい、これがために今日の組織上、財政上もまだ不十分である、こういうような御意見もあったようでございます。それで、私は、本当にその重要な使命を果たすためにはどういうような組織の充実を図られ、財政的な面に対してはどのくらいの国の助成というものが必要であるか。さらに、農業委員会が重大な使命を持っているときに、今回農業委員の数を減らすということをやられている、組織の充実をしなければできないときに果たしてこれが沿うておるかどうか、こういう点をひとつ具体的に承りたい、これが池田参考人に対するお尋ねであります。  次に、梶井参考人にお尋ねしたいと思いますことは、今日この制度はやむを得ないのだ、こういうようにおっしゃっておりました。私は、この農地法の趣旨はさっき言ったような状態でありますが、今回こういう措置をとらなければいけないようになったことは、農地の価格が非常に高騰したということにあると思うのであります。これは、農地解放をやったときに農地に対する地価の抑制策をやらなかった、ここにも大きな問題がある。かてて加えて、一方には列島改造論によって非常に土地が高騰した、こういうようなことがここにおいて顧みられるのでありますから、ここでひとつ梶井参考人に特にお伺いしたいと思うことは、こういうような状態、高騰した農地に対する抑制策、将来土地が上がらないようにするにはどういう方法をやったらいいか、こういう点がありましたらひとつ参考までにお聞かせ願いたい、こういうことをお願いしたい、かように考えるわけでございます。  次に、齋藤参考人にお尋ねいたしたいことは、これが実施に当たりますと、各町村におきましては、町村の指導でありあるいは農業委員会がこれを運営、両方で協力体制にあらなければいけないことは当然でございます。それで、これは町村と農協とが一体となってこれが推進をやらなければいけないということは当然でございます。かりそめにもこれに対して両方の意見が対立することがあっては完全な実施はできないと思いますが、こういう場合、指導的な立場にある町村といたしまして、あるいは農業委員会とのこの仕事の分野、あるいは将来いろいろな賃貸借の上において問題が生じた場合等の解決、こういう問題に当たらなければいけない非常に大きな任務がありますので、この農業委員会と町村とのそういうようなことを受け持つべき分野等に対して、どういうような具体的施策をとって完全に遂行することができるか、この点を特にひとつ町村長としての考え方を承りたい、かように考えるわけでございます。  さらに、谷本参考人に対しましては、谷本参考人はこれには反対だとこうおっしゃいましたが、その反対される具体的な理由、どの点においてこの法案に賛成できないのかという反対される具体的な点をひとつはっきり御指摘を願いまして、われわれの参考に供していただきたい、かように考えるわけでございます。  さらに、山口参考人にお伺いいたしますことは、いろいろ御意見を承りましたが、ただ最後に、今回小作料を物納にしております。小作料の物納というものは、日本古来の小作というものは、そこにできた品物をそれに納めるというのがかっての上納でありました。ところが、今日は農業形態が非常に多様化しておる。特にこの物納制度の及ぼす影響は、今日食管制度において日本農業というものが守られておる、物納することによって食管制度にどういう影響を来すか。政府はこれに対しましては、自主流通米の制度があるからこれによってやるから決してそういう不都合は来さな  い、こう言われております。  しかしながら、私たちは、自主流通米制度そのものが食管制度を壊すだけの一つの前提的な行為であるのだ、こういうことからよく思っておりません。その自主流通米制度にまた輪をかけるような今回の物納制度というものが、将来食管法にどういう影響を及ぼすかということにわれわれは大きな憂慮をするわけでございますが、これらに対して農協としてはどういうような考えをしていらっしゃるか、これを承りたいと思うのでございます。  最後に、中野説明員にお尋ねいたしたいことは現在これを小作、要するに賃貸借が起こります。起こる問題は、借りている人が土地を取得するということが当然起こってくる、また取得する方向に持っていかなくちゃいけないと思うのでございます。そうしますと、農林漁業金融公庫法に基づく農地取得資金というものを借りなければいけないということになるのでございますが、こういうことが生じた場合は、手続等も非常に簡素化して早く貸すような方法を講じていただけるかどうかということが一つ。  さらに、この取得資金によりますと、利率は三分五厘でございます。貸し付け期間は二十五年になります。本来から言いますと、こういうような長期低利の金を借りるといたしますと、毎年納める小作料ぐらいで、その年限の間には自分のものに取得するというような方法で取得することが一番理想的であると思うのでございます。ところが、これらに対しましては個人の最高額が一千万円でございます。一千万円というのは、現在の地価状態から言いますと金額が安過ぎます。三反買えるか買えないかということになってくる。そういうことが生じた場合は、この一千万円はオーバーすることも必要でございますから、これらの点に対してはこの改正でもやられて、そして取得する資金に相当する額にこれをふやすということが必要ではないかということ。  さらに金利も、もしも三分五厘といたしますと、一千万円借りて年間三十五万円払わなければいけない。一千万円を二十五年に割りますと、毎年四十万円払わなければいけない。初年度は七十五万円払わなければいけないことになってくる。そうすると、三反の土地を取得いたしました、これに対して米がどれだけ上がるかというと、年額五十一万円ぐらいしか上がらないとなってくる。そうすると、これを返済するに際しては収穫より以上の金を納めなくちゃいけないということになるのでございますから、この二十五カ年間というものをもっと長期にする必要があるのではないか。できるなら、利率も三分五厘をもっと下げる必要があるのではないか。こういうように、この取得資金に対しては特別の措置をとることが必要ではないか、かように考えますが、これらに対して中野説明員の御意見を承りたい。  そういうことでひとつ処していただきたいということを申し述べまして、これは皆さんにまとめてお尋ねをするわけでございますので、よろしくお考えをひとつ率直にお聞かせ願いまして、われわれの参考に供していただきたい、かように考えるわけでございます。
  111. 池田斉

    池田参考人 時間が詰まっておるようでございますから、簡単に申し上げます。  最終的に農地政策がどうなるかという問題は、これは地価問題その他がありますから、今日こういう三法を出すわけですが、やはり自作農主義の根幹は今後守っていくべきであり、今回の三法が出ましてもそれは守られておるという前提に立って私は賛成をしております。  それから、農業委員会の問題は、先生方の御心配を受けながら、本当に感謝申し上げますが、どのぐらい財政の規模があればいいか、こういう問題です。先ほどは国が百五十億、その他に事業費で二十億という、さらにその倍ぐらいを町村が負担をしている、かれこれ五百億というのがいまの規模ではないかと思います。しかし、それでも委員の手当は、実際は市町村では一万円ぐらい出しているようでございますが、国は一回二千五百円から会長が三千三百円、この十六回分。言うなれば半分足らず、三分の一くらいものになっている。こういうような問題でありますとか、事務局も、国は一・一ですか一・二ですか、これは全額補助ですが、三名につきましてあと二人については平衡交付税で計算の基礎に入れている、こういうことになっておるわけですが、現在事務局の平均が三・四人であるということになりますれば、ここも事実上平衡交付税を除きましても超過負担になっておるのですが、一体この程度の人間でいいかどうかという問題もあると思います。私は、もう一名くらいは国が負担をしてめんどうを見てもらえれば新しい事業推進にもいくというようなことで、これは切りがありませんが、ひとつどうか今後さらにさらに財政を拡充していただきたいということをお願いいたしたいと思います。
  112. 梶井功

    梶井参考人 御質問の順序を変えて私お答えしたいと思うのですが、地価の問題につきましては、先ほど中川先生からの御質問にも私の考えを申し述べたのですけれども、いま先生の御質問を聞いておりまして思い出したのですけれども昭和二十七年の農地法が初めて国会審議されました段階で、社会党右派の石井先生から、この農地法は大変精密に仕上がった法律であるけれども地価が暴騰したらオシャカになるぞ、その点に対する対策いかんという大変鋭い御質問がありましたのを、最近議事録で拝見いたしまして敬服していたのですけれども、まさにそういう事態になってしまったわけでございます。  その地価の問題につきましては、農業内部での地価高騰要因というよりは、先ほど申し上げましたように都市での地価高騰要因、その方にはるかに問題がある。そして、その都市での地価高騰要因というのは、まさに日本の資本主義の蓄積構造それ自体から来る問題なのであって、なかなか容易には解決しがたい。少なくとも農業分野でもって農地の方に関連をしましてこれを遮断するという点で言いますと、これも国会で二回ばかり提案されまして流れたわけですけれども農地理事業団というふうな構想がございました。ああいう形で、単なる事業団じゃなくて先買い権も持たせるような形でのああいう事業団という形で売買に介入していくということをやれば、かなり地価抑制には効果的な作用を果たしたのではなかろうかというふうに私は思います。しかし、残念ながらこれは二回国会に出されましたけれども通っておりませんので、また改めてこういう問題はなかなか取り上げられないだろうと思います。  そういう条件の中で問題を考えますと、先ほどもちょっと言いましたけれども、やはり農振法によるゾーニング、これをきちんと強化していく。ゾーニングした中で、虫食いの転用というものを許さない。許さないように四条、五条というふうなものを厳しく運用していく、こういう方向でなければやむを得ないだろうと思っているわけです。ということを前提にして考えますと、先ほど言いました二十七年当時の石井先生の御意見じゃございませんけれども地価の安定、農業内収益価額で律せられるような地価で安定しているということを前提にして組み立てられた農地法、ある意味で言いますとその重要な前提条件が崩れているわけなんですね。崩れている中でもって、農地法が守ろうとした根幹というものを一体どういうふうに維持していくか、ここのところが現在の問題点ではなかろうか。  そこで、私は、農地法の一番大事なポイントといいますのは、「もって耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」ここのところにポイントがあるのだというふうに思います。それで、先ほど石井先生のお話も申しましたように、地価が安定しているという条件の中では、まさにみずから耕作者が所有するという体制こそが、耕作者の地位を安定し農業生産力を増進させるのに非常に有効な形であった。しかし、現在地価がこういうような形になった状況の中では、別途の形で耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を期する体制を築き上げることが必要なんではなかろうか、こういうふうに思っている次第です。
  113. 齋藤政憲

    齋藤参考人 梶井先生のおっしゃるようなことなわけでございまして、耕作者が土地所有するということはそのとおりだと思うのですけれども、それができないために農地の賃貸をやろうとする趣旨から出て今回の法律改正案になったのだろうと思うわけでございます。ただ、その場合、私はまだ述べていなかったのですけれども地価の問題で、これは全く私の私案になるかもわかりませんけれども、都市には都市計画法があるわけでございますけれども農村に、農振地域、振興地域関係の法律もあるわけでございますけれども農村の宅地を主体にしたあるいは公共施設等も含めたそういうものの農住計画地域振興法というような形のものができないだろうか、都市計画の法律を排除をするというような形でできないものだろうか。これは今後検討に値するべき内容のものではないだろうか、こういうことを考えてございます。  それから、農業委員会市町村との関係、農協との関係の話でございますけれども、これも午前中申し上げてございますが、例の実施方針については知事の承認を得る、こういうことが前提になっておりますし、さらに、非常にきめ細かい計画というものは農業委員会の決定を待つ、こういうことになっておるわけでございまして、その過程を通じて関係団体が協調し協力をし合うという方向が非常に大事な問題であろう、そういう考え方で今後進めてまいるべきであるというふうに考える次第でございます。
  114. 谷本たかし

    ○谷本参考人 反対の理由を端的に申し上げますと、農地の効率的利用と流動化を可能とする環境条件整備をすることが先だというぐあいに私どもは考えておるのであります。その整備をろくすっぽしないというような状態の中で、差し迫った三割減反と転作を行う、そのもとで規模拡大によって麦作や大豆作農業をやっていこう、これが今度の農地法の改正と結びついてきているものだと思います。そのために、他方では転作奨励金の見直しとか、あるいはまた補助事業農地流動化問題と結合するような、そういう動きが生まれてきておるのでありますから、したがって、それはとりもなおさず減反のそれと同じようなかっこうで、半ば強制的な形で部落の中で、村の中で土地の利用関係を調整させていく、こういうふうな形になるであろう、だから私どもは反対である、こう申し上げているのであります。したがいまして、どうしても本法を通すというのであるならば、強権的流動化にならぬような防止措置を考えていただきたいし、また、農業委員会の構成等々についてもまだ検討をする必要があるであろうし、企業の進出防止策についてもいろいろ検討されるべき点等々があるのではないのか、こんなぐあいに問題点を指摘申し上げてきているところであります。
  115. 山口巖

    山口参考人 今回の改正は、先生御指摘のとおり、農地制度において最終的なものではなく、当面やむを得ない立法措置である、こういうふうに考えております。  なお、小作料の物納の問題については、これは小作料の定額金納制を廃止いたしましても全面的に物納になるというふうには理解をいたしておりませんで、恐らく現行食管法がございますので、そういう制度のもとでは飯米の限度に物納の面はとどまるのではないか。と申しますのは、それ以上のものはいわゆる超過米の扱いを受けまして、政府の直接買い上げる価格よりも安い米価に落ちつくということが考えられるからでございまして、恐らくそれは金納で残りはもらうということになるのではないかというふうに理解をいたしておるわけでございます。また、貸しました土地が果たして米作に使われるかどうか。この点も、スイカを物納でしろといったら大変なことになるわけでございまして、そういう点は恐らく金納になるというふうに考えるわけでございます。  ただ、私どもといたしまして、定額金納制ができました背景といたしましては、やはり耕作者の生産意欲を支持すると申しますか、そういう耕作意欲を強めるために、当時の地主の物納のものを時価に評価をいたしまして、それでそれをストップをかけまして金納制にした。それで、実質的には小作料の引き下げ、いわゆるインフレの状態でございましたから、定額金納制というものは引き下げという機能を果たしてきた、こういうふうに理解をいたしておるわけでございまして、そういう点から申しますと、やはり小作料が余り高いのは好ましくございませんので、物納制という言葉それからそれの持っている雰囲気につきましては私も釈然としないものを感じております。  以上でございます。
  116. 中野和仁

    ○中野説明員 今回の改正と農地制度との関連ということでございますが、これにつきましては、当初農地法所有と経営と労働、三位一体ということで日本農業方向を示したわけでございます。その後の情勢を見ますと、必ずしもそうはいかないということから、農地法の目的まで直しまして、効率的な利用を図るというもう一つの目的を入れたわけでございます。今回の改正は、その方向一つの手段として具体化したものだと思っております。したがいまして、今後は、自作地を中心にしながら今度のような手法を加えた借地も加えたような方向で進むものではないかと思います。ただ、その場合に、耕作者が土地を持つということがもちろん望ましいことは基本でございますから、当然耕作者が取得し得るのであれば取得して自作農になった方がよろしいと私も考えております。  そこで、具体的な二番目の公庫資金との関連のお尋ねでございますが、まず、手続が非常にややこしいではないかというお話でございます。これにつきましては、この制度は御承知のように都道府県知事の認定というのが加わっておりますので、なかなか私たち一度でばっぱっと貸すわけにもまいりませんが、公庫全体として手続が複雑ではないかという御批判が非常にあるものですから、去年一年かけましてわれわれ勉強しまして、大体申込手続、申込書の三分の一は簡素化したつもりでございます。今後とも努力をいたしたいと思います。  それから、貸し付けの限度一千万の問題でございますが、これは当初四十万から始まりましてだんだん上がってまいりまして、いまそういうふうになっておりますが、農地価格の情勢等を見まして今後とも限度の引き上げは努力すべきではないかと考えております。現に農用地公団の関連する事業等については個人にも四千万まで貸すというようなこともやっておりますので、今後とも努力をいたしたいと思っております。  それから、三番目の貸付条件の問題でございますが、これは御指摘ありましたように、金利がいま三分五厘、二十五年償還。私、いま計算してみますと、百万円借りますと、元利均等償遷で六万一千円ずつ返すということになるわけです。先生おっしゃいましたように、地代だけではちょっと賄いかねるという水準でございますが、現在の公庫資金の金利の中ではこれが一番有利で、農業では一番長いということになっておりますので、これを破って、いま先ほどおっしゃいましたように二分とかあるいはもっと長くするというのはなかなかこれは容易ではないと思いますが、この点は主務省ともよく相談させていただきたいと思います。  以上でございます。
  117. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間が来ましたので……。  ありがとうございました。
  118. 内海英男

    内海委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る二十二日火曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十五分散会