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1980-04-17 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十七日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 津川 武一君 理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    小澤  潔君       菊池福治郎君    久野 忠治君       近藤 元次君    佐藤 信二君       佐藤  隆君    菅波  茂君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       玉沢徳一郎君    西田  司君       福島 譲二君    保利 耕輔君       堀之内久男君    渡辺 省一君       小川 国彦君    角屋堅次郎君       新村 源雄君    馬場  昇君       細谷 昭雄君    本郷 公威君       権藤 恒夫君    瀬野栄次郎君       武田 一夫君    中川利三郎君       中林 佳子君    神田  厚君       近藤  豊君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  武藤 嘉文君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    塚田  実君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         食糧庁長官   松本 作衞君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   内海  孚君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     小澤  潔君   神田  厚君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   小澤  潔君     近藤 元次君   永末 英一君     神田  厚君     ————————————— 四月十六日  農業改良普及制度拡充強化に関する請願(近  藤元次君紹介)(第四一五六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農用地利用増進法案内閣提出第七七号)  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第七  八号)  農業委員会等に関する法律等の一部を改正する  法律案内閣提出第七九号)  蚕糸業の振興に関する件      ————◇—————
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  農用地利用増進法案農地法の一部を改正する法律案及び農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部昭吾君。
  3. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 今度の三法の一番のねらいは、農用地利用増進ということではないかと思います。その提案説明によりますと、大臣は、「わが国農業は、国民の必要とする食糧を安定的に供給するとともに、国土と自然を保全し、活力ある地域社会の形成に資するという重要な役割りを果たしております。」こう言われておりますが、しかし実際は、その次の方が実際なのではないか。「しかしながら、今日のわが国農業は、農産物需給の不均衡、経営規模拡大停滞等の厳しい諸問題に直面しております。」わが国農業国民の必要とする食糧安定的供給という任務を果たしておるかということになれば、穀物の六〇%以上を海外に依存せざるを得ない状況、そういう意味では、この「果たしております」などというふうには言えぬのだと思うのであります。したがって、むしろ「しかしながら」の、その以降の方にいまの現状というのが端的にあらわれておると思うのであります。  今度のこの農用地利用増進法、この制度によって果たして現状日本農業の直面しておる問題を根本的に解決をして、いま農村の中にある挫折あるいはいら立ち、こういうものを基本的に解決することができるであろうかというふうに思いますと、どうもこれは、いま現状において起こっておるいろいろな現象に対して、ある意味で言えば小手だめで追認をする、対応するという程度のことにしかならぬのではないかと私には思われてならぬのであります。もっと根本的な日本農業農村社会をどうするかということは、もっと本格的な角度から政策を転換しないといけないのではないかというのが私の考えなのであります。  そういう意味で、今度の農用地利用増進法というもので、大臣は、日本農業というものに本当に大きな希望や大きな展望を開くことができるというふうにお考えになっていらっしゃるのか。いま、現状いろいろある。ある状況を、ある意味で言えば、後を追いながら追認する。農林省は現状を、一定のそれを認めて、それにある対応の仕方をするということだという御理解なのか、あるいはこのことによって、日本農業を根本的に大きく希望ある道を切り開くことになっていくというふうに確信を持っておられるのかどうか、お伺いしたいのであります。
  4. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま御指摘の点でございますけれども、私はきのうも答弁をしたのでございますが、この三法を成立をさしていただいたら日本農業の将来が輝かしい展望が開けるかという点において、私は必ずしもそうとは思いません。いまの日本農業の置かれておる環境からいたしますと、やはり生産政策あるいは構造政策価格政策、あるいはもっと大きく言えば、農村社会社会政策をどう持っていくかというようなことを総合的にやっていかなければ、日本農業もよくならないし、農村社会におられる農家方々もなかなか明るい希望をお持ちいただくわけにはいかないだろうと思っております。  しかしながら、その構造政策を進めていく上においてやはり問題になっているのが、農地流動化がなかなかいかない。そのために、特に土地利用型農業においては相当問題点がいろいろ指摘をされておる。そうすると、そういう点について、特に、私ども中核農家とこのごろは言っているわけでございますが、中核農家なり、あるいは自立農家なり、あるいは兼業農家でも非常に農業努力をしよう、こういう気持ちを持っておられても、なかなか、このごろのような地価の問題などもあると思うのですけれども農地流動化が進まない中でいら立ちを持っておられる方に、ひとつ農地ができるだけ流動化しやすいようなそういう仕組みをつくってあげて、そして構造政策上、やはりより規模拡大の中で農業にいそしんでいきたい、こういう方々に受け入れやすいような体制をつくっていくということは私はやはり必要ではなかろうか、こう考えておるわけでございますから、日本農業の将来の問題というものは、いま農政審議会でも議論していただいておりますけれども、ことしじゅうに一つの長期的なビジョンを打ち出すということが必要であり、それにいろいろ肉づけをこれからしていかなければいけない。その肉づけをしていく上においても、肉づけはしたけれども、その肉づけによってその政策を実行していこうという場合に、受け入れ側体制がなかなかそれについていかないのじゃいけないのではなかろうか。その受け入れ側体制をまずいまここでつくらしていただきたい、こういうのが私どものこの三法を提案した理由でございます。
  5. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 大臣、実は私の郷里明治維新の新政府成立直後にわっぱ騒動という農民一揆がありました。今度の農地法改正での、小作料というものは金納でなければならぬということをいろいろな契約の中でやってはいけない、こういうことはある意味では物納ということであります。そうすると、私のところの百年余り前に起こった農民一揆というのは、明治の新政府発足をいたしますと、新政府は、石代勝手たるべきことという通達を出すのであります。石というのは、当時の年貢は石建てで、物納でなければならぬというのが石であります。代は、代金で金納をやってもよろしい、いずれをとるかは農民の判断にゆだねるというのが、石代勝手たるべきことという通達でありました。いま時代は違うと思います。その当時、明治政府発足の当時は米の値段がどんどん高騰していく時代でありました。したがって、当時、私の方の酒田県という県があったのでありますが、その県は昔の旧藩時代人たちが県の実権を握っておった。したがって、物納金納も御自由という新政府通達農民には知らせなかった。そこで、依然として物納だけを強行したのであります。そこで農民の側は大変な損をこうむった。したがって、明治政府が、その石代勝手たるべきこと、物納金納もいずれでもよろしいという通達を政治の方針として明らかにしたものを伏せておって、農民に損を与えたのはけしからぬといって農民一揆が起こったのであります。最終的には、ある部分農民に還元するということであの一揆は終結をしたのでありますけれども、確かに私の郷里などでも米作に対して非常に長い努力をしてきた地域であります。委員長のところもそうでありますが、私のところのササニシキの方が実はずっとできがいいのじゃないかと私は思っているのでありますけれども、そういう地域で、確かに請負耕作であるとか、私もこの十数年間農業共同化ということに相当力を入れてきました。したがって、おのおの生産法人に提供しておる土地以外に、請負耕作のような、あるいは委託耕作のようなことを相当やっております。その場合には、個々の皆さんというのは請負委託であっても、生産された米の供出その他は、委託者である農民の側がみずからの名前でちゃんと政府にいま売り渡しておるのであります。それを生産する作業その他だけは他の人、たとえば生産法人等がやっておる。今度の改正によって、委託者が受けるべきものは保有米程度自家消費米程度ということになってくる。このことは、ある意味で言うと現在非常にロスも多いわけですね。農機具などみんなワンセット持たなければならぬというあり方から、請負耕作とか委託耕作とかということによって、現場では相当なメリットは起こっておるのです。おるのですが、委託する方の側から言えば、自家消費米程度のものということになってくると、そこのところは逆に委託とか請負耕作というものはどうもなかなかそうすんなりとは進まなくなっていくという形で、表にはなかなか出てこないで、裏の方でいろいろなことにもぐっていく。そこを縛ろうとしても、縛られればしようがないから、ロスがあってもおのおの農機具もそろえ、何もやり、やっていくしかないという状態に逆戻りするのじゃないかということを、今度のこの改正案の趣旨を見て私は思うのでありますが、その辺は、いや、そうはならぬということになるのでしょうか。
  6. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 今回定額金納制を廃止するということの意味は、小作料物納でもよろしいということになるわけでございますが、その場合、一般に考えられるのは、水田の場合は米をもって小作料として支払うということであろうかと思います。現実にはこれがすでにやみとか請負耕作という形で、その対価として現物、米が支払われているということは相当程度行われているところでございます。これを今回は法制上も差し支えないこととするような扱いをすることにいたしておるわけでございます。  その場合、米の数量について自家飯米程度ということを言っておりますのは、実際問題として貸し手側が必要としているといいますか、強く要請をいたしておりますところのものは、せめて自分のところで食べる分ぐらいについては自分のたんぼでとれたものをということがありまして、その点を考えないと、ただ貸せ貸せといってもなかなかの障害になるのではないか、そういう実態から、自家飯米程度ということが主流になるであろうと見ているわけでありまして、制度的には、自家飯米程度に限るとか、それを超えるものは小作料として受け取ってはいけないというようなことを決めることにいたしておりません。したがいまして、その点は確かに、自家飯米を超える分が現実請負耕作等においても支払われているなら、今後とも支払いとして実際に出てくることは十分考えられるわけでございます。特別に量的な限定はいたしておらないわけでございます。
  7. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そういたしますと、私の郷里の、私がいろいろかかわっております農業生産運動農地組合法人運動この状況からいいますと、そこで受託しておるものがたくさんあります。そうしますと、大体十俵程度、六百キロ程度とる。その場合に、生産物の四〇%ないし四五%程度委託者に出すというような形態が一般的に非常に多いのであります。農業法人の側で、それで間に合うかどうかいろいろな議論が起こっておりますけれども、まあまあそれでやっておる。そうしますと、委託者は、食管法その他との関係で、実際は委託をやってしまいましたから、農民なのかどうかあまりはっきりしなくなりますね。土地所有者ではある。そうしますと、仮にその方が三ヘクタールぐらいの農地委託いたしましたということになりますと、百三十俵から百四十俵ぐらいの米を受け取りますね。そうしますと、この人は実際上はこの農地法改正以降は農民なのかどうか。この委託をした人は、わずかの家族で百三十俵や百四十俵の米を自家消費米としては消費し得ないわけであります。当然どこかに売らなければならないわけであります。この関係はどうなるでしょうか。
  8. 松本作衞

    松本(作)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、地主自家飯米以上に小作米を取得した場合には、それを販売しなければならなくなるわけでございますが、この点につきましては、現在の食管法におきまして具体的な規定をつけ加える必要がございますので、食管法に基づきます規定をつけ加えまして、このような地主が販売する米について、販売する先及び販売するルートを明確にするというふうな規定を定める必要があるというふうに考えております。
  9. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そうしますと、松本長官、現段階では別の何かのことをやらなければ、いまの農地法改正をやられれば食管法上の扱い方としてはいまのままではいけない。何らかの新しいやり方を、制度改正するのか何かやらなければいかぬ、こういうことでしょうか。
  10. 松本作衞

    松本(作)政府委員 食管法規定におきまして、農林大臣が定める場合にはその譲渡についての売り先等を定めることができることになっておりますので、その規定に基づきまして具体的な中身を農林大臣が定めるという手続が必要になってまいるわけでございます。
  11. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 大臣、またもとへ戻りますけれども、今度の農用地利用増進法によって、たとえば向こう五年間なら五年間に、この程度状況がこのように変わってこのようになるという御計画はお持ちでしょうか。
  12. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、私どもこの提案をさしていただいておりますのは、いろいろ農業の将来の体質強化のためにも、生産性の高い農家を担い手として考えていきたい、そういうためにはこういう制度が必要であろうという形を持っておるわけでございまして、決して、この制度をつくったから、強制的というか半強制的と申しますか、一つの形に農業を強力に持っていこうというようなところまでは私ども考えていないわけでございます。いま地域農政をできるだけ推進しようということで特別事業考えてやっておりますけれども、将来の考え方としては、国全体としての、一方には長期ビジョンをつくっていかなければなりません。それで、その長期ビジョンの中で需給見通しも出てくるわけでございますけれども、それを統制的に押しつけるというようなことは考えていないわけでございまして、私どもの国の問題、あるいはきのうもちょっと申し上げましたが、いま北海道研究会というので、北海道食糧基地としての将来は一体どうあるべきかという姿をいまつくろうと思って、北海道研究会でやっていただいております。私は、今後長期ビジョンを出しましたときは、農政局単位ぐらいでその地域ビジョンをつくっていくべきではないか、その地域農政を今度は地域社会でやっていただく、こういう形で持ってくるというのがうまくいけば大変いいわけでございますが、そういうことが必要なのであって、こういう法律をつくったから、これによって強制的に農家をこういう方向へ持っていこうというようなことまでは私ども考えておりませんので、どれだけどのくらいのどういう形に五年後にはなるかというようなものは、正直持っていないわけでございます。
  13. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私がこのことを申し上げますのは、昭和三十年代の農協法改正によって農業共同化ということを農協法の上でも、また他の関連の法律の中でも、これを制度化をいたしました。しかし、その以降農業共同化ということに対して農政が的確にいろいろな手だてを総合的に講じたかといいますと、私はどうもそうではなかったと思うのです。この農業共同化ということは、われわれから言わせますれば、個別経営の中にあるいろいろな限界や矛盾というものを乗り越えていく一つの、いろいろなものを持っておるということでやった。ところが、実際問題は、共同化運動というものは農政のサイドから言うと必ずしも余り熱心にいろいろな手だてをしてくれたというふうに思わないのですね。土地改良事業との関係においても、税制の関係でも、いろいろな面でも、必ずしもこの農業共同化運動に対して、いまからもう二十年近くなるわけでございますが、あの制度を始めてから以降必ずしも、熱心に政府がこのことをサポートし、育成しということをやったというふうには思えないのです。今度のことも、どうも私はその場、場当たり的な感じがしてならぬのですね。特に金納物納というこの関係も、いま大臣が答弁されるような方向にいくのじゃなくて、どうも逆に、実際にある請負耕作とか委託とかということが、実際には行われておる、これが逆にどんどん広がるという形態よりかは、もっと下に皆もぐっていくということになりかねない要素も多分に出てくるのではないか。  たとえば中核農家を育成するとおっしゃいます。中核農家というのはどういうものなんですか。中核農家なんというものは定まっていないと思うのですよ。だから、中核農家中心にして日本農業を再編成するというのであれば、中核農家とはかようなものですというものがなければいかぬと思う。この中核農家中心にして日本農業の再編成をやるとすれば、一中核農家以外の、もっと、いまのこの零細小農経営日本農地制度なり何なり全般にいろいろな意味で影響を及ぼしてくると思うのですね。中核農家を育成しようと言うならば、もっと零細農家農業というこの枠の中から排除するとか整理をしていくとかいろいろなことにならなければ、日本のいまの農地面積も枠がちゃんとあるわけで、ここ十年、二十年の間に日本農地面積を三倍、四倍にしようといったような熱意もそういう政策も、どうもいまのところ考えておられないようだし、中核農家というものをそろえるというのであれば、いま日本農業の最大の問題は、零細小農経営であるというところに、コストの問題も何の問題も、いろいろな意味で問題がある。その中で中核農家をそろえていこうというのであれば、当然に一定整理をやろうということにならざるを得ないわけでしょう。そこのところはあいまいになっていますね。  したがって、この中核農家というのは一体どういうことなのか。農基法農政のころは、私の郷里では二町五反ぐらい、二・五ヘクタールぐらいの米作中心とする農家中核農家だろうなどと言われた。みんなそういうことが農政当局、各級機関の中でそういう議論が行われた。いま二・五ヘクタールの農家なんというのはどうにもならぬ農家なんです。米作農家だけでいこう、これを中心にいこうというなら、やはり五ヘクタールぐらいでも、私のような地域でも容易じゃないのですよ。そうすると、いま、今度のあれは中核農家中心にしてやっていくいろいろな意味の一環のこととしてこういうことを考えるとおっしゃるのであれば、一体その中核農家というのはどういうものなのか。中核農家中心にしていこうという以上、いろいろな整理をやらなければいかぬ。それは一体どういう組み立てをしていかれようとなさっておるのか、お聞かせいただきたい。
  14. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども、いま中核農家というのは、六十歳以下の男子が百五十日以上農業に従事していただける農家中核農家、こう言っているわけでございます。  そこで、そういう定義で中核農家実態を見ておりますと、大体農家の二割ちょっと、二一%だと思うのでございますが、農業の粗生産ですと、もう五〇%以上その農家で占められているわけでございます。これをまた分析をいたしまして、どちらかというと施設利用型の農業土地利用型農業に区分をしてまいりますと、施設利用型の農業においては、たしか八、九割、この中核農家シェアを占めている部分が多いわけでございます。ところが、土地利用型になってくると、なかなかそこまでいっていないわけでございまして、これはもう先生いま御指摘のとおりで、非常に小規模農家土地利用型の場合は多い。特に稲作においてはもう二種兼その他の方が非常に多いということが、今度の農業白書でもはっきりしておるわけでございまして、将来の農業の姿を考えた場合に、そういう形で中核農家が二一%でありながら粗生産では五〇%以上を占めておる、しかも施設利用型においては相当、もう物によっては九〇%ぐらい中核農家シェアを占めておられる、こういう姿からいきますと、土地利用型においても何かもう少し工夫ができないのであろうかというところに今度の問題は提起をさしていただいているわけでございます。  もちろん、これがうまくいくかどうかというのはこれからの私ども努力次第ではなかろうか、より御理解をいただくような形にいかないと逆の方向へいくということもあり得るのかもしれませんが、私どもは、そういう実態を踏まえた上において、やはりこういう制度をつくらしていただいて、できるだけこの制度を御活用願うように、よく啓蒙というか、御理解をいただくような指導というか、やはりそういうことをこれから努力をしていかなければならないとは思っておるわけでございます。
  15. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 どうもはっきりしませんね。  そこで、その問題は後にいたしまして、この農業生産法人要件緩和という問題、実は私、農業生産法人という問題にここ十七、八年間全力を挙げてきました。なかなかやっぱり大変なものなんです。その中で、今度の要件緩和農用地利用増進の問題も農地法改正も、いま農村はみんな大変なんですよ、金の面では。いま農村がどういう状況になっておるかというと、十一月の三十日にほとんどの組合員は残高ゼロというのが圧倒的に多いのです。あとはみんな農協の信用で、前借りでつないでおるというのが圧倒的大多数ですね。これが現状なんです。今度の要件緩和ということは、農業分野に−都会の金を持っている人たくさんいますね。金を動かせる人がたくさんいますよ、農村の周辺の中小都市にしても。この皆さん農業分野に入り込んでくる。このことを、私は長年農業法人化というものをやってきただけに大変に恐れておるのです。この心配はないでしょうか。
  16. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業生産法人につきましては、従来からも要件緩和を図ってまいったところでございますが、今回さらに、農地を所有していない農業後継者等が、農業生産法人制度を活用して規模の大きな農業経営を営み得るようにするという、そういう目的のもとに、業務執行役員の要件を緩和することとしておるわけでございます。  このことによって、農業外から土地取得の意図を持って外部資本なり何なり入ってくる危険はないかということでございますが、農業生産法人農地を取得するときには、当然、農地法に基づきまして、当該法人の住所が当該市町村にあるときは農業委員会、それから他市町村にあるときは都道府県知事にその許可を受けることを必要といたしておるわけでございます。その許可に当たって慎重な審査、判断がなされて、その際、農業生産法人の要件については三つ大きな要件があるわけでございますが、その当該法人の事業が農業及びその付帯事業に限られているか、さらに、構成員のすべてが農地の提供者もしくは当該法人の事業に常時従事する者であるか、それから、業務執行権を有する構成員の過半が常時従事者であって、かつ当該法人の事業に必要な農作業に主として従事する者であるか、この点を確認することとなっております。したがいまして、農外資本によりまして入ってこようと思いましても、この要件を満たすことはできないわけでございますので、土地買い占め等に悪用されることはないと思っております。
  17. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私は、わざわざ要件を緩和したからといって共同化運動がどんどん進むとかなんとかということにはつながらぬと思います。たとえば、農村のそういう経営構造なり何なりを変えていくのには、私は率直に言って農業の経営環境というものをどういうふうに政治が変えていくかということの方が先だろうと思います。いま、みんな、農村に踏みとどまろうとする方々は、大変な決意を、特に若い方は決意を求められておるのです。私の郷里だけじゃなくて、ほとんどの農山村では、私は昭和の一けたですからあれなんですが、私らが結婚適齢期のときは、農村のいわば二ヘクタール、三ヘクタールの米作農家は、私のところで言うと当時の一流女学校の卒業生をより取り好みで嫁さん探しができたのです。いま私の郷里じゃ、三ヘクタールの農家の後継者が嫁さん探すのになかなか大変なんですよ。ところが、サラリーマンの方は全然農村とそういう環境も違いますね。したがって、その基本的なものは、私は日本農業というものを——きのうずっと大臣の御意見を聞いておりますと、非常に穀物などは値段が高い、だから、とこうおっしゃるわけです。限られた面積にこれだけの稠密な人口を抱える日本、そしてこの日本というのは食糧、農産品というものは高くつくということを覚悟しなければならぬ環境の中にあるのだと私は思うのです。したがって、経済合理主義の枠の中で、日本農業日本食糧、農産品、こういうものはなかなか成り立たぬ環境基盤の上に私は成り立っておると思うのです。だからといって、農業はどこまでもみんな政治のサポートだけというわけにもいかぬでしょう。だけれども、大前提として日本農業の立っておる環境というのは、アメリカとかよその国と比べてどうにもならぬ厳しい環境下にある。この中で、いまの要件緩和などをずるずるとやっていって、そのことによってそれじゃ協業化や共同化が進むかといえば、そうはならない。そうじゃなくて、いろんな意味農業の質を変えていくという意味生産法人なり何なりを育成するというならば、要件緩和などという角度でない変え方があると思う。私は今度の三法の中で一番神経がびりびりしておるのは、農村はいまみんな大変なんですから、ここで要件緩和をやってうっかりわれわれが目をそらしておると、金がなければやっぱりどこかへ行ってみんな当面のことをやらざるを得ないのですよ。農協は限度いっぱいでもうどうにもなりません。やっぱり金のあるところにいろんなことになっていきます。そうすると、要件緩和でずるずるずるといっている間に、農業のジャンルの中にやっぱり都会資本がどんどんいろんな意味で影響力を行使してくるということにどうも発展していくということを恐れておるのです。  だから、いまの局長の御説明ですけれども要件緩和をしたからといって、農業法人は決して伸びやしない。協業化や共同化が発展するなどということにならない。問題は、共同化というものをどう発展させるかは、要件緩和などということと異なるいろんな政策的なものがもっと必要だと私は思っておるのです。局長、どうでしょうか。
  18. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 共同化を進めていくためには、確かにいろんな方策がありましょうし、何も要件緩和だけではなくほかの政策考えるべきだという御指摘は、それなりにごもっともだと思いますが、ただ、要件緩和することがまるっきりそういうことに効果がないのかということになりますと、私どもは、やはり今日、後継者等で、農地は実際には持っていない、しかし自分農業をやりたい、借りてでもやりたい、それから、ほかの同じような仲間と一緒にやりたいというような人がある程度いるということも実態として承知いたしているわけでございます。あるいは、後継者でなくても、ほかの農業を営むところに勤務いたしておりまして、みずからが経営者となって農業を営みたいというような意欲を持っている若い人も、これまたある程度おることは事実でございます。そういった人たちに、少なくともいまの制度の上で道が開かれる、乗り得るというようなことを用意することは、数がどの程度出てくるかという問題がございますが、新しい展望を開くものとしてそれなりに政策としての意味は持っておるものと考えておるところでございます。
  19. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 それから、今度の改正によって、農業委員会というものは、相当大変なことになるのじゃないかと思うのです。いままでは農業委員会というのは、許可を受けに来る、認可を受けに来る、これを審議して許可をするとかしないとかということをやっておるのが主なる仕事でしたが、最近現場で農業委員会のそれを見ますと、減反問題などになってくると農業委員会がまず前面に立たざるを得ない。今度の利用増進とかということになってくると、農業委員会が役所の中の委員会のところで座っておったのでは仕事になりませんね。いろいろな意味で、最近は許可や何か座っておってできるかというと、そうもならずに、委員皆さんや事務局がしょっちゅう村の現場へ出ていっていろいろな関係を調査したりしなければならぬという意味で、なかなか机の上ではどうにもならぬ問題が非常に多くなってきている。  今度の利用増進というのは、ある意味で言えば、農村の現場における生産関係、経営関係の中に農業委員会がどうしたって出かけていって、その中でどろまみれになりながらやらなければ、本気でやるならですよ、かっこうだけつけておけばいいのですというのなら別だけれども農業委員会で相当大変なことをいろいろやらなければならぬことになっていくのだろうと思うのです。いま農業委員会にそういう体制があるかというと、私はないと思うのです。そういう点は、政策、政治運営、行政運営のいわば整合性というか総合的な観点から言うと、これは道を開いておくだけでそんなに余りやらないようにするのだというのなら別だけれども、こういう道をつくって本当にやろうというのなら、相当現場の方は大変なことになるのだろうと思うのです。  今度の改正は、そういう意味では余り整っておらぬという感じを持つのですが、大臣、この点はどうでしょう。
  20. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、権限を農業委員会に付与させていただきまして、そして思い切って農地流動化役割りを担っていただくというか、できるだけ貸し手、借り手の間に入ってやっていただきたいと期待しておりますが、それが、確かに法律制度をつくっただけで大変効果が上がるとは私ども思っておりません。やはりいま御指摘のように、今後農業委員会のあり方としては、特に連絡員もあるわけでございますので、そういう方々にいまのお話で現場へ入っていっていただいて、農民方々にも正しい知識を持っていただき、その中でこの制度がより活用されて、日本農業体質強化に役立つような方向に御努力願えるように、私ども努力をしていかなければならないと思っております。
  21. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 御努力はわかるのです。農業委員会にいま、そういう減反の問題から貸し借りの関係から、農用地利用増進のことというのは現場でしょっちゅういろいろな関係が起こるのです。起こらなければまたこの事業は進まないのです。だから、それは農民の側で適当にやっておけという話で、農業委員会の方は出てきたのだけをいままでの許可とか認可とか与えるというような構えで待っておればいいのですというのならばいいけれども、私はそれではなかなか事は進まぬだろうと思うのです。だとすると、そういう御努力を願わなければならぬというふうに思われるのはいいのですけれども、その体制が市町村末端の農業委員会までぴしっと整っておるというふうにおっしゃっていらっしゃるか、それならば農業委員会体制ども、もっと生産、経営の指導まで組み立てのできるぐらいの仕掛けをつくってやらなければ仕事ができぬだろうと思うのです。いまそこまで現場の方に、ただ御努力を願うと言っても、その体制は私はないと思うのです。御努力は願っていいのです。だけれども、いま現場にその体制ありとは私は思わないのです。大臣は現場にその体制ありとお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  22. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 細かい点は経済局長からお答えするといたしまして、いま現実体制がそういう体制であるとは必ずしも私は思いません。そこで、昨日においてもいろいろ経済局長から答弁いたしておりますように、農業委員会農協もあるいは地方自治体も、いろいろ皆さんが入っていただいて協議会なども設けてこれからいろいろ相談しながらやっていこうということでありますし、当然、そういう協議会を設けていけば、今度は現場へ出ていっていただく人、職員を初めそういう方々には、やはり責任を持っていただいてどんどん活動していただかなければならないということは当然だろうと思うのでございます。そういう方向に私どもはしむけていきたいということであるわけでございますので、もしなんでしたら細かい点は局長から答弁させます。
  23. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 確かに、ただいま大臣からも御答弁申し上げましたように、現時点をとりまして、農業委員会体制が、新しい非常に重要な任務を遂行するに当たって万全の体制かどうかということをお尋ねでございますれば、やはりそれは完全に整ったとは言い切れないということを申さざるを得ないと思います。しかし、私どもとしましては、これからまさにその体制を整えていかなければいけないのだという気持ちを持っておりますと同時に、すでにこのような農業委員会体制を徐々に整えつつあるわけでございまして、たとえば農地流動化推進員というような形で農地流動化の事業の中に大きく入り込んでいただく、そういう方々農業委員会のいわば連絡協力機関というような形でもって各町村に置いて、この流動化の推進に当たっていただくというようなこともやっておりますし、また、農業委員会の地区協力員というような方にお願いして、現場現場の実情を農業委員会に吸い上げていただくというようなこともやっておりますし、また、農家総合コンサルタント事業というような事業も実は経済局の方で組んでおりまして、大きな都市におきましてはたとえば指導相談員というようなものを設けまして、この中には農業委員の方も入り、あるいは地区協力委員の方も入っていただいて、そこでどうやったら農地流動化が具体的に進むかというような事業もやっているわけでございます。これらのことを拡充しながら、先生御指摘のように、今後の農業委員会役割りにふさわしいような体制を整えていくということが必要だろうと思っております。
  24. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そうはおっしゃりながら、たとえば連絡員をつくるとかということをおっしゃるのでありますが、いまの農村では、この間私の地域では基盤整備事業などをやっておる、換地の計画をいま春の作業が始まる前にどうしてもまとめなければいかぬ、しかし村の中の主要なメンバーは、農協の役員も含め土地改良区の現場のいろんなことをやってもらわなければならぬ連中も全部出かせぎに出てきたりしておって、換地委員会をなかなかやれぬというのがいまの農村現状ですね。その中で連絡員か何かをいろいろやってなんということでは、事は進まぬだろうと思うのです。そうすると、やはり農業委員会それ自体の体制ですね。いま聞くところによると農業委員会の公選の委員の数は減らそう——大臣もわれわれもみな政治家で選挙を闘ってきている。選挙で選ばれた人間というのは、選んでくださった皆さんに対して責任感がありますよね。公選の委員の数を減らそうとか、農業委員会には今度たくさんのいろいろなむずかしい仕事がおっかぶさっていくわけですね。公選委員の数は減らす。事務局体制ども、私どもが見ると、小さな町村段階なんかに参りますと、みんな兼務でいろいろなことをやらざるを得ない。それが一々現場へ入っていって、いま村の指導的な役割り皆さんも全部兼業をやったり出かせぎやったりしなければやっていけぬというこの状況の中で、農業委員会それ自体の体制をどうするかということも並行して考えなければ——ただこれは絵にかいたもちにしておこうというぐらいで、やる気のある者だけちょっとやってきなさいという程度なら私はいいと思う。しかし、少なくとも国が法律をつくって事をやろうというからには、そんなちゃちなことでは許されぬだろうと思うのですね。そういう意味で、全然総合的な組み立てがなされていないというふうに私には思われてならぬのです。この点は大臣、どう思われますか。
  25. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 きのう私がお答えをいたした中に、農業委員会法の第三条の第二項でございますが、その地域が大変面積が広いとかあるいは農地面積が非常に多いとかというところにおいては、市町村においても二つ以上の農業委員会を設けることができることに一応法律上はなっておるわけでございます。ただ、どうも行政指導上はそういうことはなるべく少ない方がいいように指導はされているようでございますけれども、この際、せっかくそういう法律もあるわけでございますから、地域によってどうしても十分農業委員会の使命を果たしていただけない場合は、そういうことがあっていいのではなかろうか。そういう議論をしますと、きのうも、それだったら何も四十人を三十人に減らす必要はないのではないかという御指摘もございました。ただ、中には二十名そこそこで相当やっておられるところもあるわけでございます。そうなってくると、四十名を三十名に上限を減らしても問題のないところも相当あるわけでございますから、きのうも申し上げましたが、量よりも質というか、ひとつよりりっぱな経験と知識をお持ちの方々に今後農業委員になっていただいて、質的な充実のもとに農業委員会の運営がいままでより以上になされることがいいのではなかろうか。しかし、そういうことをやってもなおかつ、どうしても地域が広いとか農地面積が非常に多いとかということでお困りのところは、ひとつ将来の問題としては三条の二項を考えていかざるを得ないのではないか、こういうことを思っておるわけでございます。
  26. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 大臣農業委員会のメンバー、委員というものは、ある意味で言えば村代表なんですよ。そして、その村という生産構造のいろいろな現場までのことを、人間的にも信頼され、完全に掌握されている者でなければ、本当の意味で円滑な仕事というのはできない。したがって、いまの委員の数を減らそう一これは実際は村代表として出ていって地域の中にあるいろいろな問題を丁寧にやっていくということは、頭の中で、何とか理屈の上でやっていこうというのはできるでしょう、しかし、実際はそこに心が通っていなければ本当のことはできないというのが、この村の中のことなんです。たとえば、減反問題なんというのは大変な政策で、この場合によその人が来てもまとまらぬのですわ。しかし、そこの村の中に根を生やしている人が、こういう大変むちゃな政策と私は思っていますけれども、この政策の中でも、大変な苦労をしていろいろなことを片をつけておるのは、この村の中に根をおろしているという中で初めてやり遂げられておると私は見ておるのですね。そういう意味で、量より質ですなどということでは片のつかぬものが農村現状の中の実態なんです。そうは言っても、さっき言ったとおりに、いま村の中だけで農業だけで生活のできない方々が圧倒的に多い。だからこそ、非常にいろいろな関係が複雑化し、入り組んできておるわけですね。そういう中で今度新たにこういう事業を本当にやろうというのなら、もっとその衝に当たる体制どもきちっとしたものを確立するというのでなければ事は進まぬだろうと私は思うのです。  時間の関係で、後であわせて御答弁を願いたいと思いますが、いまの農業農村の直面しておる問題は、私の認識では、いまから十五年前までならば、私の郷里で言えば、三ヘクタールのたんぼをやっておる農家は、世の中がどんなに変わろうと、みずからの経済なりみずからの立場なりみずからのいろいろなことに不安など持たなかったのです。しかしこの十数年間、大臣の言葉で言えば、農業は一生懸命やってきたんだが、ほかの方がもっとどんどん追い抜いていったから、それとの関係農業はいま大変なんだということをきのう言われておりましたが、しかし、政治の側から言えば、それだけじゃ解決されない。その中で日本食糧の、この提案説明では、食糧の安定供給のために役割りを果たしてまいりましたと言っておりますけれども、その役割りは果たしていないわけですね。とにかく穀物の六十何%も輸入に依存して、食糧の安定供給を果たしてまいりましたなんということにならない。この状況から考えると、私は農村の中の問題は農業の枠の中だけで解決はつかぬと思っております。その意味では、出かせぎもしないで、兼業もしないで食えるような農政をと私は主張したことがあります。しかし、いまは残念ながら農業だけで、たとえば大臣は施設農業や何かうまくいっているとおっしゃいますけれども、これをもっとどんどんでかくしていったらどうなります、みんなパンクするのですよ。需要と供給との関係で、施設農業をこれ以上でかくしていったら。いま畜産が困難な状況に来ておるでしょう。私は何度も、米ばかりやっておったらいかぬから、今後は複合経営で畜産もやろうと言って大いに豚などを勧めた。だから、私の地域で言えば、二市三郡で農地法が実施された当時に五万頭足らずしか豚はいなかった、畜産を入れなければいかぬといって豚は二十五万頭になった。私はこの豚を大いに勧めた養豚農家に対して、いま何をもって皆さんに自信を持ってもらえるような道があるのかと頭を痛めておるのであります。  したがって、大臣は、施設農業などはうまくいっておるとおっしゃいますけれども、これなんかだって、これ以上広げたらもう限界でしょう。そうすると、もう一遍振り返ってみて、日本の需給全体から言えば、穀物を中心にした関係にもう一遍政治は力を入れなければいかぬ時期に来ておると思うのです。そういう角度から言うと、今度の三法のねらい方は、じりじりと農業全体を本当にボリュームをつけていくという政策ではなくて、農業撤退作戦の一つにつながるというおそれが多分にあると私には思われる節もあるのです。  たとえば、先ほど中核農家という議論がございましたけれども中核農家というのは、六十歳にならない農業専従者が百五十日ぐらい農業に専念できるような状況がということをさっき言われましたけれども、そういう農家をどんどんそろえていったら、いまの農業の限られておる枠組みの中から言えば、どこか淘汰をし整理をしなければならない部分が出てこなければ、いま日本の四百七十万農家全部を中核農業にするなんというわけにはいかないでしょう。そのことにはもっと農政としては、全体的な組み立てと——守り立てられていく部分はいいと思うのです。整理され淘汰をされていく部分に対して納得のできるように政治は責任を果たさなければ、いまの日本農業農村の根底にある問題の解決はできないというふうに私は思っているのです。だから、中核農家中核農家とおっしゃるのですが、中核農家なんてそう簡単にできませんよ。  それから、同時に、もう一つ言いたいことは、農地農民関係から言うと、生産手段として農民農地考えるということよりも、特に都市近郊などの農地がどんどん開発をされて、宅地化をされて、非常に高い値段で売られますね。遠隔の地にどんどん代替地を求めていきます。したがって農地価格は、農地以外に利用の方法がない農地でありながら、地価はどんどん値上がっていっておるのです。こういう状況に対して、政治は有効な羊だてをいままで講じてきたかと言えば、全然講じてきておりませんね。だから、私はそういう意味でいまのあれを見ると、この全般的な流れに対して、私の言葉で言えば農村社会は崩壊しつつあるが、この状況に今度の法律改正、今度のこの提案はいかなる役割りを果たそうとするのか。現状は確かにぼつぼつ請負耕作もあるし、私自身の指導してきた農業生産法人でも、委託とかいろいろなことがある。そのことを、まあまあいろいろあるんだから追認していこうということだろうと私は思うのですよ。思うのですが、こういうことよりも、いまの農業農村の全体がじりじりと追い込められていく姿に対して、政治はもっと大胆な責任ある将来展望というものを、それはことしの秋だかいつかに出すのですとおっしゃるんですが、秋に出るのならば、いまごろ出す法律もそれとの関連でどういうふうな位置と役割りにあるのかということをはっきりさせなければいかぬ。  農業委員会の問題もしかりだと思うのです。こういういろいろむずかしい仕事をどんどんそっちへ分担させていこうとしておりながら、そっちの方はぎゅっと圧縮していこうというようなことでは逆なんじゃないか。いま農村はそんな状況にはない。さっき言ったとおり、重要な仕事を農村でみんな相談してやろうと思っても、人が集まらぬのです、みんなよそのことをやらなければいかぬから。そうでなければ暮らしが成り立たぬから。この状況に対して、やはり私は逆じゃないかという気がしてならぬのです。  もう一つ最後に、農協はこの関係にどういう役割りを果たさせようとしておるのかということです。  以上だけお尋ねしておきます。
  27. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大変大きな問題でございますが、私は、先ほど申し上げたように、いまの農業を指導しておる私ども農政が一〇〇%りっぱであるとは思っておりません。確かに私ども反省をしなければならぬ点が多々あると思います。  そこで、先ほども申し上げておりますけれども生産政策価格政策構造政策あるいは社会政策、こういうものを総合的に見直しをしながら、私どもやはり農家の皆様方により一層明るい希望を持っていただける方向努力をしていかなければいけない。そういう中で、いま養豚の話がたまたま出ましたけれども、確かにそういうことはあると思うのでございます。そこで、今度長期の需給見通しを立てる場合には、国全体の長期需給見通しと、それから地域地域農政局単位くらいの、一つの東北なら東北地方という、あるいは東北も日本海側と太平洋側と違うだろうと思うのでございますが、そういう地域地域で、どのくらいのものをそこでつくっていただくべきだろうか。この間も北海道では、北海道で一体何をどれくらいこれからつくったらいいのかということを一遍北海道研究会でやりたい、こうおっしゃっておられるのですが、国全体の中で北海道の占めるシェアはどうなのか、こういうようなことをこれからやっていかなければならないだろう。そして、地域農政ということで今度は末端の地域においてもそれと関連した考え方を持っていかなければならないだろう。適地適産というか、そういう考え方は、ある程度計画的な一つの見通しのもとにやはりいかなければいけないだろうと私ども考えております。そういうものをひとつ、いまもお話のあったとおりで、この夏から秋にかけてつくり上げていきたいと思っているわけでございますけれども、そういう中で、先ほど申し上げたように、この法律一つ構造政策の中での受け入れ体制づくりをやっていきたいと思っておるわけでございます。  それとの関連で、いまいろいろとお話がございました農協の問題とか、あるいは中核農家ばかりは育たないのではないか、そのとおりだろうと思います。農協もやはり大きな役割りを果たしていただかなければならぬわけでございまして、当然、こういう農地流動化を図っていく場合においては、農協も一緒になっていただいて、いろいろの協議会なんかにも参加をしていただいてやっていただきたいと思っております。  それから、農業生産法人、やはりなかなか中核農家にはなれないけれども、共同でやればある程度規模をやれるのだというようなことは、せいぜい私ども今後とも奨励をしていかなければならぬわけでございますので、先ほどお話のあったように政策面でもっと考えろということでございます。これはひとつ勉強をさせていただきたいと思います。  それから、地価の問題、これはきのうからお答えをいたしておりますけれども、やはりこういうことがよりスムーズにいくためには地価を抑制をしていかなければならぬことは当然でございますので、国土全体の地価抑制ということに対しては、国土庁を中心としての問題がいろいろございまして、私どもの方では、農振法あるいは市街化区域、調整区域の問題もありますし、そういう地域の区分によってある程度規制はできておると思いますけれども、今後とも努力をしていかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  28. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 これで終わります。
  29. 内海英男

    内海委員長 津川武一君。
  30. 津川武一

    ○津川委員 私たちは、日本農業を国の経済の大事な基礎として発展させていきたい、こう念願しております。ここで農業を発展させるに大事なのは、農用地が非常に宝でございます。もう一つには、そこで農業をする人たちが誇りを持って勇んで農業をやれるように、農業する人たちの意識高揚、そこの育成ということにあると思います。この中で土地を欲しい、もっと耕作地を欲しいというのが農民の圧倒的な要求でございます。一方に、正直なところ、兼業が安定して荒らしづくりしている土地もございます。また、農政が行き詰まったために土地を放棄したところもございます。こういうところを借りて農業をやる面積をふやしていきたい、こういう形のものが幾つもあるということを私たちは十分承知しておって、そのために必要な施策が講ぜられなければならないと思っているわけであります。  ここに一つの例がございます。青森県の倉石という村でございます。かつてここは馬産地、それからその次は畜産地、どっちもうまくいかない。そこで、この畜産のために開墾した草地が荒れております。一方、農民は出かせぎに行っている。そこで何とかして出かせぎしなくてもいい農業をやれないかと言って、村も農業委員会農協も部落の人たちも、代表協議して、利用増進事業を起こした。そこで、まずは土地を出してもいいという人、借りたいという人、そういう者の隣でまずやり合ってみる。それで貸し借りをつくる。それでも土地が余ったときには部落の中で公募し、ここでやったわけです。いま、そこの段階なんです。村では、それでもなお村有地もかなりありますので、これを開墾してそれで使う人がなければこれを村全体に拡大しよう、こう言ってやっておる。私は非常にいいことだと思っています。  この役場の人たちと少し相談してみました。そうしたら、いま問題は、この利用事業を増進していく法改正をすることではなくして、こういうやっておる農業を間違いなく育てていく農政の確立だと言う。五十二年にやった増進事業、それを改めてまた農地三法を改正して新しい法律をつくる必要がどこにあるのだろう。すでにやられておるものをよく検討してほしい。そこでの前進面は何であるのか、そこで困っているのは何であるのかということを確かめて、そこいらの是正、援助、指導、これが当面の第一の仕事じゃないかというわけでございます。この間、中川委員が少しこの点でも食い下がっておりますが、本当に今度の新しい立法に踏み切った根拠、その根拠は、皆さんが納得するように五十年の利用増進事業というものの徹底的な検討の上に立っていなければならぬと思うのです。この五十年の方の検討がどうであったのか、そこからどういう教訓を引き出して今度の新立法になったのか、この点をまず明らかにしていただきます。
  31. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 先生御自身が指摘されましたように、五十年の農振法改正によって農地流動化の効果は徐々に上がってまいってきていると思います。青森県の実例をもってお話しくださいましたが、全国各地にそういうような利用増進事業を相当程度活発に行って、成果を上げてきている町村も見られるわけでございます。私ども、そういった町村の実態をよく調べまして、それなりに検討をした結果を踏まえて、今回の改正をお願いするということにいたしておるわけでございます。  たとえば、先生のお話の中でも出ましたが、現在農振法に基づく農用地区域だけに対象地域を限定いたしておりますけれども、それ以外の地域でも当然利用増進事業の需要、要請はあるはずなので、そういったところも含めてほしいとか、さらには、むしろ農用地区域と接する農用地区域でないような地域があるとき、現実に農用地区域でやろうと思うところも一緒にやらなければうまく成就しないというような話もあることも聞きました。それから、現在農用地あるいは採草放牧地といったように地目についても特定のものに限定いたしておりますけれども、まだ開発されていない開発用地も対象にしたっていいじゃないかとか、あるいは農業用の施設をつくる場合の施設用地も対象にしたっていいじゃないかというような話もいろいろ聞かされるわけでございます。それから、現実に予算なり行政上の指導等をもって、農業委員会等の活動も得まして掘り起こし事業、出し手と受け手を発掘してそれを結びつけるところの掘り起こし事業、あるいは実際にそういう利用権の設定を行った場合の貸し手に対する助成事業、奨励金を出すというようなことをやっております。こういったことについても、もっと組織的にも強化して、それから農業委員会体制もきちんと整えて、法令上の責任も明らかにする、そういったことによって一段と活動が推進されることになるのじゃないかというような話も出てまいっております。  それから、さらに、私ども今回の事業は、農用地利用改善事業というようなものも、新しく従来の利用権の設定、利用増進事業に加えて行うことといたしております。これは、一つは、やはり地域全体としての土地の有効利用、さらには作付、営農についての合理的な推進というようなことを考えます場合、どうしても地域の中でみんなが相談して一つの取り決めをつくっていく、そしてそういった取り決めとの関連において、条件が整うならば利用権の設定等流動化の促進を図るということをあわせやったらいいのではないかというようなことが、いろいろ出てまいったわけでございます。そういうことをもろもろ考えまして、そのほかにも幾つかの事由はございますが、いま比較的各種の流動化施策の中ではどうにかうまくいっておりますこの事業をさらに発展させるためには、この段階において法制的な体制をきちんと独立法というような形で整備して、それに伴う農地法なりあるいは農業委員会法も、制度の整備を図って進める方がいいのじゃないかということで、今回提案しているような法改正をお願いしているところでございます。
  32. 津川武一

    ○津川委員 杉山局長の説明よくわかりました。  そこで、実際に農振地域以外のところに利用増進事業を拡大しなければやれないという事例、混牧林などやらなければ増進事業が進んでいかないという事例があるかという問題なんです。あったらここで教えていただきたいと思います。どうやらいまの五十年に設定したものを本当にやることなくして、農林省が先に頭で考えて進んだのじゃないかという疑問がかなり多い。したがって、今度私たち皆さん提案されるものを扱う場合、反対もかなり陳情があるのです。賛成もかなり陳情があるのですが、今度の法律ほど、そういう反対の意向での陳情、賛成の意向での陳情が少ない法律もないのです。そこで、局長に、そういう農振地域以外をやらなければ進まなかったという事例、混牧林のところをやらなければ進まなかったという事例があったら、後で文書でもいいし報告してほしいと思うのです。その点は私は徹底的に必要だと思う。  そこで、五十年の法改正の後どうなったかという検討、いまお答えないようですが、どこに問題があったか、だんだん質問の中でまたこれを繰り返していきます。  そこで、利用増進事業の認可の市町村ですが、皆さんの資料でいきますと、認可済みの市町村が千七百二十五、それから実施区域農用地面積が二百六十五万四千五百六十三ヘクタール、利用増進の利用権の設定面積がたったの二万四千四百三十九ヘクタール、一%にも足りないわけであります。ここのところに問題があるわけ。しかも農振法では、条件のある区域を設定してその事業をやるようにという次官通達も出しております。現にあなたたちが農業白書で言うように、荒れ地もある、兼業農家の中での不安定な兼業農家土地を出した方がいい、欲しい中核農家が幾らもある、こういう条件があるということを農振法でもやっているし、通達でも出している。白書の中でもそう言っておりながら、実施区域は二百六十五万ヘクタール、利用権設定面積二万四千四百三十九ヘクタール。条件があるのにどうして進まないのです。この状態をどう考えているのか。皆さんが五十年に法をつくって何をやってきたのか、ここのところをまず明らかにしていただきます。
  33. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 全体の面積に比べて利用権の設定率が面積で見て一%に満たない、これはほとんど進んでないじゃないかというような御指摘でございますが、私どもは、全体と比較するよりは、個々の地域別に見て実情がどうなっているかということを分析する方が妥当ではないかというふうに思っております。所有権の移転はもちろんでございますが、利用権の設定それ自身きわめてむずかしい問題を含んでおりますし、全国的に大々的に数百万ヘクタールの全部の面積がその対象になるということにもなかなかならないと思うわけでございます。むしろ今日まで二万四千ヘクタール程度の利用権設定の実績を上げましたということは、ほかのもろもろの流動化対策なり、農村あるいは農家をめぐる全体の環境の中では、相当程度成果を上げたといいますか、実績を築き得たものというふうに思っているわけでございます。確かに全体としてみれば一%に満たないというような面積かもしれませんが、個別にこれを町村別に見てまいりますと、利用増進事業を積極的に進めているところでは、その町村の農地面積の中に占める割合が一五%以上にも及ぶというようなものもかなりあります。全国で見ましても、一五%以上のものが十カ町村あるという状況でございます。そのほか、一〇%ないし一五%、五%ないし一〇%、三%ないし五%というところがかなり多いのでございますが、こういった、その地域として見れば相当大きな面積のものが町村の中で利用増進のために提供されているという事実があるわけでございます。
  34. 津川武一

    ○津川委員 私、日本の農林省という役所はいい役所だと思っていました。調べることは能力もあるし、FAOでも日本の農林省の統計というのは一つの権威を持っている。ところが、この事業に関する限りお調べにもなってないんだな。なぜ一%しかいけないのか、何%おやりになるのかわからぬけれども、一%ではどうするのかという問題なんです。進んだ事例は報告いただいたけれども、進まない事例について、なぜ進まないかという検討がされてなくて事を進めているということが非常に大きな問題です。これは最後にまたまとめてお伺いしますが、この点、はっきりした態度をとらないと、法に対してもどうしていいか私もわからないわけであります。  もう一つの問題は、その進んだという利用増進事業、いわゆるやみ小作、これは利用増進事業が何ぼで、やみ小作で貸されている土地がどのくらいあるのか、ここいらを認識されていなければ、問題は正しく解決されない。利用増進事業とやみ小作というのは切っても切れない話でありますが、この状態をどんなふうに把握しているか。把握してないとすればこれはぜひ把握しなければならないが、どうされるのか、答えていただきます。
  35. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 やみ小作は、名前がまさにやみ小作と言われるように、実態的に明らかにならないところがあるわけでございまして、私ども、いろいろな調査等も承知いたしておりますけれども、本当の実情はどうかということについては、必ずしも定かに掌握できておりません。民間の学者の推計等もございますし、この前中川先生にお答えいたしましたが、この前申し上げたようなところが一つの推定として考えられるところでございます。  それから、今回の利用増進事業、これはやってみても、やみ小作あるいは請負耕作というものが、いままで隠れておったものが表に出てくるだけではないかという御指摘でございますが、そういうものも確かにあると私は思います。ただ、そういうものが表に出てくるということ自体でも、安定した農業経営という点からそれなりに十分意味はあると思っておりますし、そういうやみのものが表に出てくるというだけでなしに、実態的に兼業化の進行のためあるいは老齢化等のため労働力が不足してきている。そうかといって農地を手放すわけにはいかない、資産保有的に何とか活用したいものだと思っている農家があることは事実でございますし、一般的に、意欲を持って新しく経営規模拡大して励んでいきたいというような若い人たちのおることも、津川先生御自身が指摘されましたようにある程度あるわけでございます。そういう人たちの間の結びつきということによりまして、新しい本当の利用権設定がかなり出てきているということもございます。やみのものが表に出てくるということにも意味はありますし、それ以外に新しいものも出てくる。さらには、そういったやみのもの、新しいものも含めて全体としての利用権設定の実績が表に出て、それがほかの、まだこの制度について十分御存じない方々理解されれば、これがはずみとなってさらにこの事業は前進できるのじゃないかというように考えております。
  36. 津川武一

    ○津川委員 そこで、やみのものを浮上させてこの事業に乗せる、こういうことはやみだとやはりおもしろくない、どこかにひっかかる。国の法律で容認された事業としてやることがぜひ必要だと思いますが、ここに「農業の基本問題に関する調査研究報告書4 農用地の利用増進」という、七八年の三月に財団法人農政調査委員会が出しておる本がございます。ここで農用地開発公団理事長の大和田啓氣さんが何と言っているかというと、増進事業による利用権設定の面積の大部分は、昭和五十年の法制定以前のやみ小作を取り出したにすぎない。したがって、この事業が新たに賃貸借関係を促進したとは言えない、こう言っております。したがって、やみのものを浮上させて利用増進事業に乗せたのと、やみのなかったところに新しい利用増進事業を設定したところ、これはどのくらいございましょうか。
  37. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 利用増進事業の実績については、評価はいろいろあるかと存じます。それから、やみのものを浮上させたものと新規のものと数字的に見てどうかということでございますが、そういう調査といいますか、数字についての把握はできておりません。ただ、私ども、個別事例で承知しているところでは、たとえば、この前当委員会においても現地視察をいただきましたが、静岡県の豊岡村、あるいは愛知県の安城市、こういったところは明らかに就業機会が増加した、新しい安定兼業の機会ができたというようなことが動機になってではございますが、その相当部分がむしろ新規の利用権設定というふうに考えられるわけで、決して、そんなものはほとんどないとかきわめて少ないというような実態ではないと存じております。
  38. 津川武一

    ○津川委員 現在行われておるところで、やみの状態を浮上させたもの、それだけじゃなく新しい事業も加わると思いますが、そうでなく、やみが全然ないところで新しく利用増進事業を起こしたこと、民主的にいくならば、私は後でも問題にするけれども、こういう事業をやることは必要だと思うのです。そこで、これを調べて報告できますか。というのは、この本の中で、たとえば青森県の鰺ケ沢でどのくらいやみ小作があるのか、倉石でどのくらいあるのか、新潟県の弥彦村でどのくらいあるのか、サンプルとしても幾つか出ておるのです。安城にしても豊岡にしても出ているのです。やろうと思えばできる。日本のすばらしい能力を持っておる皆さんがこれをやらないで、事業を進めて新しい法案ということになってくるから、やかましく言わなければなりません。大臣が来ればもう一回この点を聞くけれども、ここのところを調べてわれわれに報告できますか。
  39. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 事柄自身がなかなか調べにくい問題であるということから、統計的に責任を持ったような計数として取りまとめることはなかなかできにくいということがございます。ただ、先生はその資料で御指摘になっておられますが、個別の、ある特定の地域についての実態の話なら、それは農林省の中でも全く調査がないわけではございません。どの程度お出しできるかわかりませんが、私の方でも検討してみたいと思います。
  40. 津川武一

    ○津川委員 倉石の場合、それから鰺ケ沢の場合、今度は利用増進事業に乗せてみたが、そこで決まったことが支配的な形で進んでいる、決まった条項でやっている、そういうところもあるけれども、特約というのですか裏契約というのですか、これがかなり多いのです。つまり、利用増進をやめてもやはり耕地をふやしたい、利用増進事業で思うようにいかないところを裏契約してまでも耕地を拡大したいという農民の要求が非常に大きい。私たちもこの要求を正しく評価して、それにこたえなければならないと思うのです。だが、この特別契約、裏契約は、問題をこんがらがしてしまうのだな。せっかく三年という期限をつけてやっているのに、お互いの間にもう一つ契約書が交換されて、いつでも要求したときは取る。鰺ケ沢の場合も、二ヘクタールばかり返さなければならなくなっている。こういう裏契約、特別契約、特契と言うのですか、こういう状態があることはもちろん御存じだと思う。利用増進事業の中でやみ小作を浮上させたが、そこでもう一つ裏契約があって浮上してない。こういう実態を直して、それでもだめだからといって法を改正するならいい。ここのところはどうでございますか。
  41. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 非常にむずかしい権利関係の調整の話でありますから、町村なり農業委員会がそのあっせん、調停に努力するということによっても、お互い完全な満足が得られない、場合によってはそういう表向きの調整されたものとは別個の私人間の特約がなされる、これはあり得る話だと思います。ただ、そういういわば原則的なものに対する例外、個別の扱いについて、これを一つ一つ法制の面で手当てするということは事実上困難な仕事でございますので、むしろ、市町村なり農業委員会がそういう実態をよく把握し、同時に関係者の理解を深めるように、運用上の問題としてこれを解決していただきたい。また、そのために研修等も行って指導の職員の資質も高める、さらには、市町村に対しそういうことについての調査等をお願いするというようなことで、側面的にそういった事態の改善に努力していくことが有効なのではないかというように私ども考えます。
  42. 津川武一

    ○津川委員 せっかく利用増進事業が行われておるのに、裏契約のためにお互いの相対契約がどうなっているか公表できない。それで村の中がもやもやして、非民主的で、何か利用増進事業が伏魔殿みたいなものになっているのだな。そこで、問題を民主的に解決しなければならない。  私は、かつて京都の網野町の浅茂川というところを見に行きました。これは五十年のときも問題にしましたが、湿田で余り使われていない十ヘクタールばかりの土地で、洪水が来るたびにやられる。十ヘクタールばかりを四十四戸で持っている。そこで、もう少し土地を欲しいという農民が十七戸おって、園芸組合をつくった。四十四戸に地主組合をつくってもらって、ここでお互いに全部あけすけに話をして、いまここで、チューリップ、スイカ、大根などをつくるという形をとっている。こういうことによって私はやみ小作がなくなると思うのです。そこで、答弁でわかったのですが、やみ小作を把握して、浮上させなければならないと思いますが、この方針が一つ。それから、やみ小作は好ましくないと思う。そこでやはりどうしても好ましくない形で浮上させて、正規のものにする。そして、裏契約、特約があるところは徹底的に調べてみて、その病根を探して公開して、民主的にやるのでなければこれは進んでいかないと思うが、この三点について、御意見がありましたら伺わせていただきます。
  43. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 先ほども触れた点でございますが、やみ小作は好ましくないということは確かに観念論としては言えるのでございますが、この問題をどう処理するかということを考えます場合、やみ小作の評価ということがやはりあろうかと思います。やみ小作でありますと、耕作者は農地法による耕作者としての保護は一切受けられないという点がございますし、耕作者の地位はきわめて不安定になります。それから、そのことが正常な賃貸借を進めていく上でやはり阻害要因になるというふうに思われるわけでございます。そこで、私どもは、こういったものを正規の賃貸借の姿に乗せていくということは一番必要なことの一つであろうと考えております。  それから、そういう実態をよく押さえて民主的な形でもって賃貸借関係を設定していくべきである、これは御指摘ごもっともでございます。その意味では、町村や農業委員会が入ることによって、従来お互いの間だったらどろどろした合理的でない関係がどうも先に立ったけれども、そういう公的機関の努力によって、信頼していろいろなことも打ち明けられる、さらには、何か裁定といいますか決めたことに十分従い得るというようなことで、明るい近代的な賃貸借関係が設定されているという事例もかなり聞いております。せっかく公的機関が介入するのでありますから、先生のお話のように、裏契約といいますか、特約などのないような形で、それ自身、市町村なり農業委員会の指導が、そういったものものみ込めるようなある程度弾力的な幅の広い実態に即したような調停案といいますか、この場合、利用増進計画の内容になるわけでございますが、そういうものでなければいけないという点もあろうかと思います。両方の点から歩み寄ってといいますか、検討いたしまして、そういった合理的、民主的な新しい賃貸借関係を結ばせるように指導してまいりたいと考えます。
  44. 津川武一

    ○津川委員 そこで、大臣、いま聞いていてわかるとおり、五十年に法改正して、やってみて、どこに問題があるのか必ずしも調べてないようだ。やみの小作地がどのくらいあるのか、これも必ずしもつかんでいない。それから、新しい利用増進事業でやみのものがどのくらい浮上しているか、この浮上したものの中でやみのものと新しく利用を広めたものがどのくらいあるのか、全然やみのものでないものがどのくらい乗ったのか、裏契約がどのくらいあるのか、よく調べてないのですね。裏契約、やみ小作契約が出てくるのは、農用地を拡大したいという要求が非常に強い大きな証拠だと思うのです。したがって、この動きをじゃまするようなことがあってはいかぬけれども、このままではいろいろな障害が出てくる。そこいらで、私がここまで話したこと、日本のすぐれた農林省の機能をもって一応調べるべきだ。現状を握らなければ前進も後退もできない、そこだと思うのです。こういう現状把握のために何らかしなければならぬ。八〇年がちょうど農業センサスの機会なんだな。七〇年、七五年、ことし。こういう点で、今度のセンサスはこの農用地利用増進実態を把握するためにひとつやってみるべきだと思うのですが、大臣、いかがですか。
  45. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまいろいろ御意見がございましたが、農振法の改正農用地利用増進事業をやったときもそれが出てきたわけでございますから、今回この法律をやらせていただければ、もっと出てくる可能性があるのではないかと私は思うわけでございます。特に、御承知いただいておりますように、農振地域の農用地に限っておりましたのを、今度は対象を非常に拡大するわけでございますから、もしそういうものがあれば、それが表に出てくる可能性が非常に多いのじゃないかと私は思っておるわけでございます。そういう面においては、農業体質改善のため、また、いまお話しのように、農民の意欲からいっても、農地流動化が図られることは望ましいことでありますので、この法律はそういう面でぜひ通していただきたいと私は思うわけでございます。それに絡んで実態調査は、私どもはできるだけ努力をして、可能な限りしっかりつかんでいきたいと思っております。
  46. 津川武一

    ○津川委員 農地流動化があるというだけでは、私はこの提案に必ずしも賛成できないのです。  そこで、今度はもう少し、だれのものがだれに動くかという実態に入ってみたいと思うのです。設定面積二万四千四百三十九ヘクタール、借り手は六万七百九十八人、一人当たり四十アール、これでもいいですよ。日本農業は、アメリカの耕地の価格と日本農地の価格と比べたときに、比較なんかできない。したがって、そこで比較して日本農業を論じておるところに大きな問題があって、日本自分の姿というものをあからさまに見て、そこから出発していかなければならないんだけれども、農用地や地価の問題でずいぶんとはね上がった議論が出てくるので、これは改めて別の機会に問題にするとして、四十アール、これでも悪くない。  そこで、一体どこまで農地拡大するかは、いまの二倍にできるのかどうかなどという議論もありますが、そこで、この動きがどこに行っているかという問題なんですが、皆さんの資料でいきますと、これは皆さんの資料の二十六ページですが、〇・五ヘクタールから一ヘクタールの中で、貸し付け出した方が七千三百九十八戸、借りた方が六千七百九十九一尺 一ヘクタールから一・五ヘクタールでは、出した方が三千五百三十四、借りた方が六千十九なんです。先ほど指摘した本によりますと、それまでもなく、いまの表でいっても、下層が上層のものを借りる、上層の人が下層から借りる。下層の人から上層の人が借りたのは六四%、上層の人から下層の人が借りたのは二〇%。これは決して無視することができないのです。したがって、どこでだれに耕地を拡大していくかということです。この点で選別はしてはいけないし、とにかく不耕作地を出してない、荒らしづくりしてなくて、農地をもう少し広めたいという誠意のあるまじめな農民ならば、その点は差別しないでやるべきだと思うのでございますが、この点はいかがでございます。
  47. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 いま先生が御指摘なさいましたように、規模別に見ました場合、大勢としては中核的な農家に提供が行われる、中核農家の借り入れが多いということはございますが、そういう規模——規模といいますのは、労働力なりあるいは経営面積両方含めてのことでございますが、それに届かない、いわゆる零細農家と言われるような規模農家の間でも、貸すことはもちろん、借りることも相当程度行われているという事実がございます。  そこで、差別ということを言われましたが、この制度は別段面積要件でもって、ある者は借りることができる、ある面積以下の者は借りることができないというような、そういう制限、要件は課しておりません。ただ、大事な要件として三つ課しているところがございますが、これは利用権の設定等を受けることのできる者は、利用権の設定等を受けた後においては、第一に、耕作または養畜の事業に供すべき農用地、これは開発用地も含めますが、そのすべてについて耕作または養畜の事業を行うと認められること、それから二番目に、耕作または養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められること、それから三番目に、利用権の設定等を受ける土地を効率的に利用して耕作または養畜の事業を行うことができると認められること、この三つの要件が課されており、これを満たしさえすれば、農地法第三条第二項第五号の下限面積の要件がございますが、その要件は満たさなくてもよい、その要件は課されないということになっておるわけでございます。
  48. 津川武一

    ○津川委員 そこで、今度の法律の第三条二項イ「利用権の設定等を受ける者の備えるべき要件」、これはいまみたいなことをやるわけだと思いますが、そうでしょうかしら。  そこで、倉石村の例なんです。村の農家であれば、経営規模関係なく、荒らしづくりしてなければ、そしてその場合、後継者がなくとも三年やらしてみる、三年やってみてよければまたやる、こういうことなんです。ここのところがかなり明確になっていかないと、かなり私たちは危険を感ずるわけであります。  第三条の三項、「実施方針は、農用地の農業上の効率的かつ総合的な利用の促進」、これも当然いま局長が言ったことだと思うのですが、こういうことで、やはり受ける者の規模、専業であるか兼業であるかの規模によらないで、その人たち実態に即して決めるべきだと思うわけなんです。  ここに四月五日の日本農業新聞がありますが、農林大臣の談話みたいなかっこうで、新聞記事だから責任ないかもわからぬけれども、選別をやって中核農家に集中するんだ。農業白書も何か中核農家に集めるんだ。農林大臣のここでの答弁でも、繰り返し繰り返し中核農家に集めるんだと言っているのです。そうなってくると、まじめな何よりもだれよりも先に耕地を拡大してあげなければならぬそういう農民が切り捨てられると思いますが、法の条文と関連して、局長の答弁と関連して、この点、大臣が繰り返し言っているので、大臣の答弁を求めます。
  49. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども中核農家に全部してしまわなければいかぬと考えているわけではございません。ただ、方向といたしましては、将来の農業生産に当たっては、その中核農家をせいぜい中心というか、それこそ中核になっていただいて、そして地域農業生産はより生産性の高い方向に行くのが望ましいということでございまして、もちろん、私どもの定義でございます中核農家にどうしても当てはまらない農家もあるわけでございまして、そういう方々も一緒になっていただいて、そして地域全体の農業生産を高めていく、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  50. 津川武一

    ○津川委員 すると、大臣中核農家でなくとも、農業意欲があって荒らしづくりしてない人で耕地を拡大したい人というのは、もちろん事業にのせるということをここではっきりおっしゃっていいわけですね。
  51. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 そのとおりでございます。  それから、たとえば今度の法律の中にある農用地利用改善事業なんかは、特にそういう中核農家になかなかなり得ない方々が、地域の組織をつくっていただいて、そこで全体的な農業生産をやっていただこうということも考えているわけでございますから、私ども中核農家だけに全部してしまうという考え方は決して持っておりません。
  52. 津川武一

    ○津川委員 そこで、次の問題。先ほど局長は、静岡県の豊岡村、それから愛知県の安城市、この例を挙げましたが、これは皆さんがモデルとして、模範として、日本農民に示している事例でしょうかしら。
  53. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 実際に農地を貸してもいい、出してもいいという方がかなりおられる地域、そうではなくても、面積拡大したい、規模拡大をしたいというふうに思っておられる方ばかりが多い地域地域実態によって利用増進事業のあり方はかなり変わってくると私は思います。その点、静岡県の豊岡村にいたしましても愛知県の安城市にいたしましても、ほかに雇用の場が幾らもあって、安定兼業が相当程度保証されているというような地域でございます。したがって、これを一律にほかの地域にもあてはめて、これがモデルである、みんなこうならなければいかぬ、そんなふうには考えておりません。ただ、市長なりあるいは村長さんがきわめて熱心に土地利用について計画性を持って構想を立てられた。そして地域の中で本当にやる意欲のある農業者を育てていこうということで、この利用増進事業を初め、全体の農業政策のあり方について積極的に取り組んでおられる、そのことが効果を上げてきたという音心底ではモデルであるということが言えると思います。
  54. 津川武一

    ○津川委員 そこで、私たちこの間委員長を先頭に豊岡村を視察した委員長報告書がここにありますが、こう書いてあります。  「第一点は、農用地の有効利用等を積極的に進めるため、村の段階に「農用地管理センター」を、また集落の段階に「農用地利用組合」をそれぞれ設置」していって、「自立経営農家の育成が一元的に実施されている」。  「第二点は、専業農家等を中心に組織する「自立経営農業振興会」(現在二百六戸)を設立し、これら農家に対し、重点的な行政指導、援助、研修等が」行われておる。行ってみて、二百六戸以外にはやってないという感じを受けたわけです。この点は排他的に二百六戸にやっている。そして、この二百六戸の振興会に入った人には利子、補給なんかするが、これに入っていない人には村で利子補給してない差別、こういうところを見たわけです。  報告の第三点、「村の土地利用について、農業地域、工業地域、住宅地域に用途区分し、工場導入も公害等のない優良企業のみを工業地域に計画的」に選択する。これは入れる企業を選別しております。そして村長が農業委員長を兼ねて、工場が雇うときに、その労働者は農業をやらないことを条件に、つまり兼業農家であったなら耕地をどこかに耕作に出して来い、そういう点で村長も兼業農家と自立経営農家とを——彼は中核農家と言わないで自立経営農家と言っておりますが、きわめて選別しておる。だから、村の中にかなりの反対が噴き出している。民主主義の大きな根幹がここで崩されているという状態が出ております。  もう一つの安城ですが、これは全国農業会議所の「農地流動化促進のてびき」の中に載せられております。ここでは全農家戸数六千四十四一尺専業農家三百七五一尺第一種兼業農家千八十五戸、第二種兼業農家四千五百八十四戸、そして農協の中に営農部会、きゅうり部会、いちご部会等の部会組織をつくっており、農協の営農部会の部員だけに借り方を限定している。これも驚きました。借り手が限定されているために他の農家から不満の声もある。これに対して市と農業委員会は、単なるやみ小作の解消ではない——これはいいことです。だが、だれでも借りられると中核的農家の育成にならないからと、徹底的に中核農家だけを対象にして他のものは排除しておるわけです。  この二つに対して、指摘したことについてはやはり問題があると私は思います。見方を強制するわけではありませんが、よく考えて正しい方向に指導していく必要があるのではないかと思います。  村長さんは豊岡で前は楽々当選していたのが、こういう形になったら選挙でかなり苦戦しています。つまり反対の議論がかなり出ておる。ここでは農協の組合長たちが村長のやり方に賛成してない、こういう状態があります。こういう選別をおやりになるのかということで、また先ほどの農林大臣の新聞の談話が気になるし、選別する利用増進事業、そういうところに予算を傾倒していくということも気になるわけです。ここらはどう反省されて、どうなさいますか。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  55. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 豊岡村にいたしましても、それから安城市にいたしましても、村なり市におきまして新しいかなり思い切った行政を展開することに対して、村民なり市民の間からどういう意見があるかということになれば、私は大部分がむしろこれを非常に支持しているというふうに聞いております。たくさんの人の中にはいろいろな意見もあるかと思いますが、全体としてはかなりうまく運営されているというように承知いたしておるわけでございます。  それから、豊岡村の場合、私いま報告書も見ておるのでございますが、三ページ目の「借り手農家を専業農家等で組織する「自立経営農業振興会」の会員のみに限定していること。」これが一つ問題として取り上げられたのかと存じます。同じように安城市の場合は、「借り手農家については、農協の営農部会の部会員に限定し農用地利用増進事業の推進計画を作成している。」このことをお取り上げになったのかと存じます。  この点について意見はどうかということでございますが、私先ほども申し上げましたように、豊岡村とか安城市というところは、兼業機会がきわめて潤沢なといいますか、恵まれているところでございます。そして、むしろ農業をやってくれる人がいない、担い手がなかなか村にあるいは市に残ってくれないということで、そのことが大きな問題になっているところでございます。そこで、本当に農業を意欲を持ってやってもらえるのかということで、そういった人たちに集まりをつくってもらう。それが豊岡村の場合は振興会というようなことになっているのだと思いますが、そういうむしろやってくれる人たちの集まり、それに対していろいろ村としても、安城市の場合は市としても、助成を考えていこうという奨励策をとっているところでございます。しかも、その振興会の会員になるあるいは部会の部員になるということについては特段の資格制限をしているわけではございません。これは本当にまじめに農業をやっていく意欲、能力のある人たちならば、実際にだれでも参加できるということになっておるわけでございます。何といいますか、大体ある期間のうちには、本当に参加し得る者がそれに乗って、そうでない人たちは兼業の方へ振り分けられるというような過程もございまして、現在の会員なりあるいは部員というものが残っているというのが実態ではなかろうかと存じます。そういう意味で、私どもこれは差別政策だというふうには思っておりません。
  56. 津川武一

    ○津川委員 わかりました。農林省がそんな気持ちだからかなり強圧的なものが出てくると思うんですね。村長は、振興会に入ってなければ貸してつくらせないと言っているんですよ。農業会議所の調査はその者だけに限定すると書いてあるんですよ。こういう限定差別はいいのですか。
  57. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 加入資格を限定して特定の者でなければ入れさせないというのでしたらそうですが、本当に農業をやる人を入れるというなら、私はそれは差別だというふうには思ってないわけでございます。
  58. 津川武一

    ○津川委員 本当に農業をやる人に借り手になってもらっているというのは、あの部会員以外に安城であるのか、そして振興会以外に豊岡であるのか、それを私に明示しないと、私は納得できません。村長はきわめてはっきりと振興会だけに貸すと言っている。農業会議所は安城市についてまさか間違った報告をしているんじゃないでしょう。限定すると書いてある。いま局長が言われるような状態が調べてみてあれば、私はまた法案に対する態度も変わってくるけれども、これは採決する前に速やかに調べて私に報告してください。できますか。
  59. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 町村なりあるいは市がどういう行政の姿勢をとるかということは、本来町村なり市の自主性といいますか判断によって行われるところでございます。私は、振興会あるいは部会に対する加入の制限がなされているか、なされていないか、そういう意味で特別の差別待遇をしているというふうには聞いてない、そのことを申し上げたのでございます。
  60. 津川武一

    ○津川委員 それは法案の内容が問題があれば問題であると同時に、もう一つ政府の指導方針にも問題があるのですよ。法は人が運営するものなんです。したがって、これは調べてよこしてくれないと私もこれから困るんです。それは調べてくれますね。
  61. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 御議論はいろいろ承りました。それに関連して必要な限りの調査は、豊岡村と安城についてはなお重ねて進めたいと存じます。
  62. 津川武一

    ○津川委員 次は、二種兼業農家のことをもう少し扱ってみたいと思うのです。  問題は、白書も、平均的に見て六六%は安定兼業。現在雇用がかなりめんどうな状態の中で、これだけ安定兼業と見るところにも私は問題があると思いますが、残りの三四%は、白書でも言っていますが、かなり厳しいですね。兼業農家の賃金です。第二種兼業農家、恒常的な月給取りになって銀行や役場、農協に勤めている人は、製造業における給与を一〇〇として一〇一、ところが臨時的に雇用されておる人の賃金が五九・九、こういうふうに白書で私たちに政府が報告してくれております。  そこで、兼業農家を全体的にどう見るのか、一律に見ていっては私は事が損じるかと思うのです。もっと地域的に分析してみて、具体的な評価をしなければならぬ。全国平均の記述も必要です。これは私は否定しませんが、これだけで事が済まされるかというわけなんです。不安定兼業の中で、臨時雇い、出かせぎ。たとえば青森県の鰺ケ沢、さっきの町。この町の中にも周りの弘前市、五所川原市にも雇用をふやすような企業は見られません。そこで、この町の状態を見ますと、二種兼業農家が千百八戸、一種兼業が五百十五戸、専業農家が六十五戸。この二種兼業農家の千百八戸のうちで、安定したところに勤めているとか、そういうところは百三十四戸で、残りの九百七十四戸が臨時雇い、日雇い、出かせぎ。こういう評価も私は白書の中でしていただかなければならないし、こういう人たちに対する配慮が、中核農家を育成していくと同時に、農政の基本でなければならないと考えます。この人たちの出かせぎの状況は、平均九カ月、自分のうちを離れて夫婦別れ別れ、親子別居、ふるさとのうちにおるのは三カ月、出かせぎに来て一畳半の飯場に寝ることが九カ月。こういう状態の人たちをやっぱり白書の中でも触れていかなければならないのじゃないかと思うわけです。  そこで、この人たちに青森県の出稼対策室が出かせぎ労働者就労動向調査をやって、五十四年七月に調査結果を発表しております。この人たち希望は何か。地元の賃金が安くて困る、出かせぎに行くと同じような賃金であってくれればなあというのが二二%、家業だけでは生活が苦しい、農業だけでは生活できない、出かせぎしなくてもいい農業をというのが二〇%、田や畑などをふやしたいという人が三%、こういう形なんです。ここのところに私は具体的な指導をしていただかなければならないと思います。  この、農業をしなくてもいい、農業、家業だけで食べられない、地元の賃金が高ければ出かせぎしなくてもいい、ここいらと、農地がもっとあったならばという出かせぎ者のこの願い、要求、これを不安定兼業として、この人たち農地の出し手だとこう一律に決めてしまわないで、先ほど繰り返しましたことを、今度は積極的な形でこの人たちにどんな形でこたえていくのか、方針がありましたらひとつ説明していただきます。
  63. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど来お答えをいたしておりますように、中核農家中心ではありますけれども農業をやろうという意欲に燃えておられる兼業の方も含めて、やはりその地域農業の組織化を図りながら地域農業生産の向上を図っていく、こういう方向で私どもは指導してまいりたいと思っておるわけでございます。  それとあわせて、いま所得の面から御指摘があったわけでございますけれども、私どもどうも国全体の統計しかないものですから、恐縮でございますが、私の持っておる統計数字では、二種兼の農外所得がたしか三百八十七万であったと思います。そして、専業農家農業所得が三百二十万足らずであったと思うのです。内容まで私もまだ分析をよくしておりませんけれども、それが出かせぎなのか、あるいはいまお話のあったように安定したどこか近くへ勤めておって収入が得られておるのか、いろいろあるだろうと思うのです。  そこで、出かせぎというのは私は余り感心したことじゃないと思うのです。出かせぎというのを見ておると、これまた数字でございまして恐縮ですけれども、かつて四十万近くあった出かせぎが、いまたしか十四万ぐらいまで下がってきているわけでありまして、そういう点で出かせぎも相当少なくなってきておるのではなかろうか。今後、日本の経済の将来を見越すと、私は出かせぎがもっと減るのじゃないかと思うのであります。そのかわり、所得を減らさないようにするためには、たとえば東北とか九州というところの出かせぎの多かったところでは、その地域農業以外にも所得を求められるもの、何か就労の機会が与えられるものがなければいけない、こういうことになってくるのではなかろうか。東北も新幹線ができるわけでございますし、やはりそういう東北とか九州というのはこれからは伸びていく地域ではないだろうか。しかし、自然に任せておいてもいけないわけでございます。やっぱりああいう新幹線なりいろいろの地域の開発に役立つものが出てまいりますと、工場の進出なんかもしやすいということだけは言えるのではないか。従来、工業導入促進法であるとか工場再配置法とかいろいろあって、それが必ずしもうまくいってなかったというのは、そういう点にもあったのではなかろうかと私は思っておるわけでございまして、そういう地域の開発のためのいろいろの道路あるいは鉄道、こういったような整備と関連をして、今後は工業導入促進法あるいは工場再配置法に基づく工業の進出というものは相当あるのではなかろうか。もちろん公害は困りますから、公害のない工場の進出ということは相当あり得るのではなかろうか。またあわせて、やはり人口はそれだけ今度は減らないということになってくれば、地場産業の振興あるいは第三次産業、こういったようなものも私は必要になってくるだろうと思いますので、そういうものがより盛んになることによってその地域地域の就労の機会もよりふえてくるのではなかろうか、そういうものが農業の方の収入とそういうものの収入と合わさって所得の上昇につながってくるのではなかろうか、こう思っているわけでございます。
  64. 津川武一

    ○津川委員 安定した兼業農家の収入はそうなんです。ところが、不安定の一あなた全国的なものを知らぬと言うが、これはあなたたちのものですよ。第一種兼業農家で不安定な臨時雇いの労働者のあれは工業労働者に比べて五三・六%です。二種兼業農家で五九・九%です。鰺ケ沢でこういう不安定なあれをやる人たちというのは二千戸の中で九六%なんです。だから、ここのところに具体的な配慮がやはり必要だというわけですが、ここで鰺ケ沢の人たち今度はどういうふうにしたかと言うと、出かせぎに行った人たちが四戸集まって自分たちの土地を集めて、借りて大根組合をつくってやってみた。初めに大根植えたら、土地を浅く耕すものだから曲がったり短くなる。七十八馬力で深耕したらすごくなった。そしてお金が足りなくなったために村に行ったんだ。どこからかお金を借りてくれと言う、工場をつくるのに機械を買ったお金が返せなくなって。そうしたら利用増進事業があるから乗れと言う。書類を書かなければならない。書けない。めんどうくさいから役場で書いてくれと言ったら書いてくれたんだ。そして今度役場がいろいろな皆さんの助成事業を全部とるようにしてくれた。そうしたら、いまこの地域で一次加工場が建つ、二次加工場が建つ、そしてかつて三十ヘクタールの大根畑が二百ヘクタール。いまは非常に有名ないい銘柄の主産地になってきた。ここで十二月で組合をつくって四戸が管理して、二十九戸の人たちから土地を借りてきて。そうしたら、貸した人たちも大根いいなというので、出かせぎやってて畑貸していたのをやめて、今度独立して自分で大根やっているのです。そして今度、加工をやるものだから地域人たち延べ三千人の人を雇うわけです。荒れ地が直った、出かせぎがなくなった、畑がきちんとしている、主産地ができた、雇用がふえた。これが、不安定な雇用者、臨時雇いの地域にやれば民主的にやれる。したがって、こういうところにやはり特別な目を向けて指導していく必要があると思いますが、いい方だけじゃなくどん底にある人たちのところに目を向けていく、大臣に聞けば当然やると言うでしょうが、いかがでございます。
  65. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま大根のお話がございましたが、私ども従来からも野菜の集団産地の育成ということは助成をしておるわけでございまして、そういうことは大変結構なことでございますから、これからともそういう点は私どもせいぜい進めていきたいと思っております。
  66. 津川武一

    ○津川委員 次は、農地の集団的管理の問題でございます。  五十年の農振法改正の際、私は京都の網野町などの例を挙げて、自主的で民主的な組織をつくる、農民の話し合いで事業を進めることを主張してまいりました。やはり畑は、田は、農地は、自分の固有の民権に基づく財産であると同時に共有の財産であるので、どう使うかということはみんなで集団的に論議してやるべき、そういう形で事業も進めるべきだと思うわけです。  そこで、私その改正のときに質問いたしました。それに対して当時の局長大山さんが、事業の主体、策定の主体は市町村がなるというふうに考えるわけでございます。「しかも、それは、利用増進計画においての全員の同意という中においては、いわば農民の、先ほど申し上げました貸し方、借り方の集団的合意という問題を全員同意というかっこうにおいて実現する、こういうことにいたした次第でございます。」「規定等におきましては、先ほど申し上げましたような、貸し方と借り方との全員合意といいますか、全員の同意というような枠組みと、逆に言うならば自主的な事業実施組織というものの整備ということを背景として」事業を進めてみたい、こういうふうに明確に答えております。これはどういう形で昭和五十年以降の農用地利用増進事業で実現されて行われているでしょうか。
  67. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 御指摘の点につきましては、それぞれその地域におきまして関係者の集まり、協議会をつくって、そこで合意、相談を取り決めて進めておるところでございます。
  68. 津川武一

    ○津川委員 これに対して何か評価とか、進めるとかで通達なんか出していませんか。
  69. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 通達は出しております。
  70. 津川武一

    ○津川委員 そこで、ここに通達があります。利用増進規程の原案作成の段階で、「農用地区域内にある農用地につき所有権又は使用収益権を有する者及び農用地利用増進事業の実施により利用権の設定を受けることを希望する者の意見又はこれらの者をもって構成される組織の意見を十分聴く」「農業委員会農業協同組合、土地改良区その他の関係農業団体と十分協議」する。  「利用権の設定を受けることを希望する者からの農用地利用増進事業の実施による利用権の設定をしたい旨又は利用権の設定を受けたい旨の申出」がある。この場合に構成される組織、その協力を得てやる、こういう通達が出ておりますが、これはこれからも生きていく、生かしていく、当然だと思うのですが、いかがでございます。
  71. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 そのとおりでございます。
  72. 津川武一

    ○津川委員 そこで、先ほどのこの本ですが、集団的な利用調整を行っておる事例は、大和田さんによれば、きわめて少ない。そこで、通達が指導したような事例は実際どのくらい出ておりましょうか。わかっていたらお知らせ願いたい。
  73. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 そういう個々の件数について調査して統計をとったということはございませんので、一般的に行われているというふうには承知しておりますけれども、具体的な数字は存じません。
  74. 津川武一

    ○津川委員 これも大事なことなんで、後にこの委員会が終わってからでもいいですから、この法案が終わってからでもいいですから、調べて報告願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  75. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 承知いたしました。
  76. 津川武一

    ○津川委員 その次、第十条の利用改善事業を行う団体、これは第五条四項で決めておる計画の作成を申し出ることができるとなっております。この通達で言う組織とこの団体とはどういう関係にあるか。先ほど、皆さんがつくった通達で、組織、これで協議しろ。これと今度提案されている団体との関係はどうなるのでございましょうか。
  77. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 従来の通達によるその協議の場、その組織は、現在の利用増進事業を行う地域においてのみ構成される性格のものでございます。今回新しく利用改善事業について団体を組織するということにいたしておりますのは、これは直接には利用増進事業と結びつけないでも、その土地の有効利用等についての地元の集落における合意を取り決めようというところならどこでも構成できるものでございます。そういう意味におきましては、今度の方が地域的にはるかに広がっているということが言えますのと、実際問題といたしましては、農用地利用増進事業を行う地域においてこの新しい利用改善の組織がつくられますならば、従来の通達によって組織されておりましたところの組織と、それは相覆うような関係になってくると思います。実際の組織の構成については、今後運用の段階で具体的に検討していく必要があると考えます。
  78. 津川武一

    ○津川委員 この団体、地域皆さんの意見を聞いてやっていくと、私たちが言う非常に自主的な民主的な組織に役立つ大事な項目だと私は思うのです。ところが若干心配なんですよ。それは十条でこの区域、団体を決めて、そして、次の事項を定めるものとするの中で、一つには「農用地利用改善事業の実施区域」、二つ目には「作付地の集団化その他農作物の栽培の改善に関する事項」、三つ目には「農作業の共同化その他農作業の効率化に関する事項」、四つ目に「利用権の設定等の促進その他農用地の利用関係の改善」。ちょっと心配なんだな。ほかの方に使われやしないか。むちゃなときの——むちゃと言わないけれども、非民主的な減反の育成に使われないか。農民が承知しないのに、三分の二のところでそういう点が心配されないか。私たちはこれを民主的に育てたい。したがって、必ずこの団体を通達にある組織のように意見を聞く、参加させる、こういう形になれば、私も法に対する考え方が大分変わってくるのです。ここはどうでございます。
  79. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 済みません、いまの御質問の一番最後のところの意味がちょっと聞き取れなかったのですが、ただ、この組織のあり方につきましては、いま先生がお読みになりました第十条の「農用地利用規程においては、次に掲げる事項を定めるものとする。」ということで、一から五号まで羅列いたしておるわけでございます。これらについては当然合理的な正しい相談がなされる、その指導は市町村なり農業委員会なり、農業団体もあずかるということでございますが、転作の問題に関連いたしましてこれがどう働くかというふうに聞こえたのですが、転作の問題も、その地域においてやはり土地利用のあり方と密接に関連する重要な問題でございます。やはりその問題についても当然対象として論議されると思います。むしろ、こういう組織、こういう規程の中でみんなの意見を集めた正しい論議がなされるならば、転作のあり方についても円滑に合理的な取り進めが可能になるのではないかというふうに考えております。
  80. 津川武一

    ○津川委員 そこで、本来その利用増進のために設けるのであれば、民主的に運営していく、非常に結構なんです。したがって、通達にあるような組織と同じ仕事に参加させるというなら私は了承しますが、いかがでございます。
  81. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 そのとおりでございます。
  82. 津川武一

    ○津川委員 そこで、こういう点で集団的にやっていく事項になっていく農用地の集団的な管理、そのための農民の話し合いを前提とした全員の同意という考え方がぜひぜひ必要ですが、実際問題として、計画の内容は、これも皆さん通達の中にあるわけですが、利用権設定のときに、個々の各筆の明細書、それから同時に各利用権共通事項、これの設定をやっておりますが、この各筆ごとのやつだけでは、共通事項がなければ私は無効だと思うのです。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 各筆だけだと、悪いやつがおって、借りていてそこを荒らすことはないけれども、水がたまるようにしたり、ほかの周りに影響するような作物をつくったりして、全体的なことはいけない。そこで、共通事項というのは、必ず集団的な農民の全体の意識、自分の私権を守って、個々のところを耕作する権利を守っていくと同時に、地域農業のために、公的な利用のために必要だと思うのですが、必ずこの共通事項というのは守らせなければならないし、規程を守っていかなければなりませんので、そういうふうになさると思いますが、この点はいかがでございます、念のために。
  83. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 その点は、現在もそういう規程を設けているところでございますし、今後ともその方向で進めることにいたしております。
  84. 津川武一

    ○津川委員 これ福井県の鯖江市というところなんですが、農地を借りたのです、農用地を。そして客土した。そしたら別のやつが入ってきて、借り賃をもう五升高くするからと言って、客土したのを別な人の借り手に取られちゃったのです。これはやはり集団的な論議がないところ、ルールが敷かれていないところ、集団的なその地域での共同管理という形式がないものだから、ぜひこういうことも考えていただきたい。これは答弁は求めないで進んでいきます。  そこで、農地法でございます。定額金納制農地改革を通じて、高率、高額な小作料を抑え、耕作農民の利益を守ることを目指してきたものであります。しかし現実には、インフレが進行する、農用地が足りないために、やみ小作の場合かなり物納が広がっております。提案理由では主として自家飯米のためとしておりますが、この範囲におさめていただきたい。おさめられるか、おさめるためにどんな指導をしていくのか、この点をまず伺います。
  85. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 物納ということにつきましては、現在の農地法ではこれを禁じておりますけれども実態としてはかなり広範に行われている。特に契約の新しいものほどその割合が高いという実態にあるわけでございます。  それから、一方今回、農用地増進事業のように農地流動化を図るということになりますと、いろいろ障害の要素がございますが、その一つに、自分の食べる米くらいは自分の持っているたんぼからとれた米でしたいという希望がかなりある。この利用増進事業等によりまして、正規の賃貸借にのせるということになりますと、これはなかなかその点が、いまのままですと、やみを表向き認めるというわけにはまいりませんので、どうも金でもらうくらいなら自分で細々とつくっている方がいいというようなことで、なかなか貸し手の踏ん切りがつかないというようなこともございます。  そこで、やはり流動化の障害になるなら、この点は現実かなり物納が広がっているというような実態もあることでもございますし、改めて定額金納制規定はこの際廃止してはどうかということで、新しい法案をお出ししているところでございます。ただ、その場合、どの程度まで物納小作料が実行されるであろうかということになりますと、いま私が申し上げましたような、流動化に踏み切るか踏み切るまいかというような心理というか状況にある方からすれば、それは当然自家飯米程度ということをお考えでございましょう。それから、いま現実に行われている物納も、多くの場合はそうであろうというふうに承知いたしております。そうでない相当の数量にわたるものも中にはあるかと存じますが、一般的には飯米程度というふうに承知いたしております。そこで、私どもとしては、その飯米ということを中心に置いた法改正ということでお出ししているのでございますが、制度的には別段その限度数量でということを規定しているわけではございません。
  86. 津川武一

    ○津川委員 それで、私たちも、いま局長が言われた程度物納はやはり農民の気持ちにも家族の気持ちにも合うのじゃないかな、そこいらでとどめることができるかどうか、かなり疑念を持つわけです。  これも全国農業会議所の水田小作料実態に関する調査報告からですが、農地改革前のは金納面積割合で言うと九四・七%、昭和四十六年以降のは五四・一%金納。逆に言うと物納がそれだけ広がっているわけね。そうすると物納広がっていると見ていく。法改正したときにかなり物納は広がるのじゃないかな、こう思うわけでございます。そのときに定額金納制廃止に伴って高額の小作料が普遍化するのじゃないかな。農地の流動をつくりたい、利用したいという人が借りられなくなるのじゃないか。この間、中川委員が六万八千円の小作料の話をしましたけれども、秋田で十二俵とれるところで十俵の小作料があるのです。これには私もびっくりしました。こうなっていくのじゃないかなという、これは極端な例でございますがそういう動きがある。これに流されるのじゃないかなという心配がありますが、物納小作料についてここいらについてもひとつ伺わせていただきます。
  87. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 いま中川先生の出された例の十俵というのは、私どもちょっと信じられないようなそれは特殊な例だと思います。そういうことを基礎にしての議論というのはなかなかしにくいわけでございますが、今回、定額金納制を廃止して物納を認める、また、それと同時に、別途統制小作料実態的にもうこの九月に全くなくなるということがございまして、小作料の事情は、確かに制度的な環境というのは変わってくるわけでございます。それが現実小作料水準にどう影響するかということでございますが、理屈から言えば、金で納めるものが物にかわったからといって、それは対価である以上何ら特別いままでより高くなるという理由はない。経済合理性からすれば、当然いままでの金納の場合と同じ条件であるはずだと思うわけでございます、評価の問題ということはございますけれども。ただ、先ほど申し上げましたように、統制小作料実態的に全くなくなるというような状況で、これからの小作料、中には混乱が生じないとは言い切れないと思いますので、その点は現在の制度でも標準小作料制度があるわけでございます。これはほとんどの農業委員会において各地で決められております。これを一つの目安として、物納の場合でもこれに基づいて標準小作料に基づく指導を行うというふうに考えており、小作料が、制度が切りかわったからといって、その実質的な水準が上がるということのないように指導してまいりたいと考えております。
  88. 津川武一

    ○津川委員 最後に、こうして行われておる農用地利用増進事業、やっている一つの悩みですね。  鰺ケ沢に行ってみました。そうしたら、一つの心配は、岩木山麓なので高冷大根、そこでかなり遅くなって、全国の大根の出てしまった後にそこの二百町歩から大根が出ていくわけ。そこで、流通がわりあいによろしいのです。契約栽培してくれている業者が一次加工の塩押ししていくとよく売れていくわけなんだが、三十ヘクタールから二百ヘクタールにしたが、大根がよくなったかっこうで周りの水田利用再編対策で大根をやられたら、一遍に価格が落ちてしまう、せっかく銘柄ができたものを水田の大根ではという点で。そこで、適地適作としてある程度までの指導、生産調整にならないようなかっこうの営農指導が欲しい、これが一つです。二つ目には、一次加工で塩押しして水を抜いていくとかして、借金して工場を建てて二次加工してみた。そしてたくあんにしたら、今度はこれは契約してくれないで委託販売なんです。それで赤字を出している。ここで流通販売に対する政府の配慮。三つ目には、そういうかっこうで、農協から融資したお金の金利がいま一〇%を超す。これの金利の幾らかでも何か利子補給、安いもの、長期低利のものがないかという、こういう三つの切なるお願いを私もされたわけです。  倉石の場合、あのニンニクとそしてナガイモが非常によくて、三年前ナガイモはキロ五百円から六百円。それもいいというのでみんなつくっちゃったら、ことしは百九十円。この倉石農業を支えたものはナガイモという特産物。これが今度採算とれないかっこうの百九十円に落ちちゃったら、とうとう耕地を一〇%生産を中止したということになる。ここいらに販売の流通の価格保証の政策を決めていただきたい。この倉石の産業課長は、だからいま法の改正ではなくしてそういう意味農政、ここが利用増進事業を進めるか進めないかのかなめだと言うわけであります。  この二つの町村に対する政府の指導なり援助なりを聞かしていただきます。
  89. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 直接私の所管ではございませんが、担当局長がおりませんので、いま先生のおっしゃられた、全国的な需給調整とも関連する話でございましょうが、地域的な需給調整をどうするかというような問題、それから現実にいまダメージを受けたものに対して何かこれを助成する方策はないかということ。現地の実情もよくわかりませんので、十分調査した上で対処いたしたいと考えます。担当局長によく伝えておきます。
  90. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  91. 内海英男

  92. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 このたび政府提案されました農地関連三法は、戦後わが国が三十年間やってまいりましてどうしても打開できなかった農地問題、この大きな隘路を打開するという意味におきまして非常に大きな意義があると評価いたしたいと存じます。しかしながら、この運用を図っていくという点におきまして、よほど慎重な配慮を加えてまいりませんと、せっかく制度はつくったけれども農民の反発あるいは計画の不備によって失敗する、こういうことも十分考えてやっていかなければならないと考えるわけでございます。  そこで、まずこの計画をこの法律によって進めていく場合におきまして、現状農村はどういうふうになっておるか、この現状認識、事実認識というものをまずしっかりと確認をしておきたいと思うわけでございます。やる気のある専業農家に対しましてできるだけ経営規模拡大する、こういう趣旨で、市町村が間に入りまして、主として二種兼業農家から土地を借りるようにあっせんをしていくという趣旨に相なるわけでございますが、そこで、先般農林省から出されました「農業の動向に関する年次報告」というものを見てまいりますと、二種兼業農家現状について書いてあるわけでございます。若干それを読み上げますと、「二種兼業農家の多くは、農業専従者も少なく、耕地の利用率や生産性も低く、農業経営の規模の縮小あるいは農業経営の外部依存を強めている。」この結果、「以上のように二種兼業農家の多くは、労働力構成がぜい弱化しているが、現実に耕地面積の二分の一近くを保有し、農業生産の三分の一を担っており、また、世帯としての所得は高く、農村に定住して社会的安定層を形成し、地域社会の維持発展に寄与している。こうした現実を踏まえつつ、地域農業生産力の維持向上と健全な地域社会の形成を図るうえで、二種兼業農家の保有する土地、労働力等の有効利用と二種兼業農家農村定住を図っていくことが重要である。」つまり、この白書の分析によりますと、二種兼業農家の定義としましては、世帯としての所得は高く、農村に定住して社会的安定層を形成しておる。したがいまして、彼らの持っておる農地、これを貸し手としまして大きく期待しておる、こういう状況であると思うのであります。  ところが、先般私どもこの委員会で静岡県の豊岡村を見てまいりましたが、豊岡村におきましては、一つの村に四つの大きな工場が存在いたしておりまして、非常に所得が安定しておる。失業する心配もない。将来の心配がありませんから、結局この現状分析のような結果が出てくると思うのであります。しかしながら、農山村の大半におきましては、特に東北、北海道、九州、この分析のような二種兼業農家ばかりではないと思うわけでございます。たとえば、出かせぎ者が相当多く出ておる地域におきましては、出かせぎ者の、つまり農家の所得は低い。さらにまた、農村に定住しておらないで不定住である。しかも、社会的安定層を形成しておるのではなくして、むしろ社会的不安定層を形成しておる、こういうふうに見なければならないと思うのであります。二種兼業農家のみが所得が高いという認識ではなくして、農山村、過疎地域におきましては、二種兼農家の中にはやむを得ず出かせぎに行かなければならない、こういう不安定層の農家もある、こういう点もやはり白書の中ではっきりと指摘をしなければならない。この法律を実行していくためには二種兼業農家の所得が高いということが前提となっておるわけでございますけれども、不安定層を形成しておるところの出かせぎ農家実態というものももう少し分析しなければならないのではないか。  そこで、この白書をつくられた経過につきまして御質問申し上げますが、二種兼業農家における出かせぎ層の実態というものをどのように分析しておられるのか、どのように位置づけておるのであるか、その点についてまず質問をさせていただきたいと存じます。
  93. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 二種兼業農家の絶対数は年々増加をしてまいっております。その比重は、最近におきましては、総農家の七割を占めております。しかも、内容的には、恒常的勤務のものが六七%、それから自営の兼業は一八%ということで、安定兼業農家の数もそれからシェアもきわめて高くなってまいっておるわけでございます。ただ、玉沢先生おっしゃられますように、これは全国一律ではございません。地域によってかなり大きな差があるわけでございます。  そこで、二種兼業農家でも、なかなか安定しない、不安定な、なかんずく出かせぎに頼らざるを得ないような地域、特に東北地方なんかそういうところでございますが、その状況はどうかということでございます。農林水産省の調査結果では、出かせぎ農業者は数としては年々減少しておりまして、昭和四十七年が三十四万二千人おったのでございますが、五十三年は十四万八千人、半分以下に減っております。そして、ほとんどのものが東北の中でも北東北に集中しております。それから、年齢的に見て、だんだん高齢化していく傾向が見受けられます。出かせぎをした農家の世帯員の数は、いま申し上げましたように、十四万八千人でございますが、出身地域別に見ますと、東北地方が六九%、北陸地方が一一%、九州地方が六%、それから、東北地方のうちでも、青森、秋田、岩手が全国の五四%を占めているというような状況になっております。それから、出かせぎ先の産業種類は、建設業が一番多くて六九%、製造業が二一%。それから、年齢構成は、若い者が少なくて、三十四歳以下は二四%、三十五歳から四十九歳が四二%、五十歳以上が三四%、こういうような状況になっております。
  94. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 私が質問しましたのは一この二種兼業農家の中における出かせぎ農家のパーセンテージをつかまえておるかということなんです。
  95. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 二種兼農家実態は、これは五十四年の数でございますが、恒常的勤務の農家が二百二十一万六千戸、それに対して出かせぎ農家の数が五万六千戸、それから日雇い、臨時雇い、出かせぎではございませんが、それに準ずるような立場のものが四十二万九千戸、自営のものが六十万二正月二種兼農家の総数は三百三十万三千戸でございます。それに対して出かせぎは五万六千戸でございますから、一・七%かそこらの比率になるわけでございます。
  96. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 私は岩手県の現状をちょっと調べてみましたが、これは昭和五十二年でありますから若干古いかもしれませんけれども兼業農家が十万ありまして、そのうちの出かせぎ農家は約一万である。農民が出かせぎをしておる実態は二万人であります。ですから、兼業農家のうちの一〇%は出かせぎに行っておるという現実があるわけでございます。それからもう一つ、いま局長が、出かせぎ農家は五万であるけれども、日雇い農家戸数が四十二万、こうおっしゃられたわけでありますが、日雇いも含めまして、これは非常に不安定な職種についておると言わざるを得ないと思うのであります。  そこで、たとえば二種兼業農家農地の貸し手になる場合、一定の期間、たとえば三年なり五年なり契約をいたした場合におきまして、不安定な職業についておる場合に、会社がつぶれたり、あるいはいろいろな事故があって、その職業をやめざるを得ないという状況になった場合、さてそこで再び自分農地に帰って農業をやりたいという希望にたとえなったとしましても、契約しておるわけですから、なかなかできないわけでございます。そういう実態をよく考えました場合に、やはり一律に、二種兼業農家は所得が高くて、農村に定着しておるという認識ではなくして、まず農村におきまして、他産業、農外収入を安定して得るということも一本の大きな柱として同時に進行をしていかなければ、この制度というものはなかなかうまくいかないという点を私はまず指摘いたしたいと思うのであります。ですから、この制度を成功させるためには、やはり同時に農村におきまして所得をふやす政策を進めていかなければならない。これがやはり北東北を中心とした出かせぎ地帯における農村の最も要望とするところでございます。こうした点につきまして、ひとつ農林大臣の御見解をお伺いいたしたいと存じます。
  97. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま兼業農家農地の貸し手として期待いたしておるということは事実でございます。そこで、兼業農家の中にもいろいろあるということ。いま、出かせぎあるいは日雇いと、安定して収入を得ておるものと区分してあるわけでございますが、安定した就労機会を持っておられる兼業農家もあるわけでございますから、そういう兼業農家からできるだけ出していただくのが本当は望ましいのではないかと思います。しかし、そうは言っても、出かせぎに行っておられた方々も、もし何かいい機会があれば、出かせぎに行かないで、しかも地元で農業以外で働きたい、こういうお気持ちをお持ちになる方もあると思いますので、そういう点に対してどうするか、こういう御指摘かと思うのでございます。  そこで、いままでも工業導入促進対策あるいは工場再配置法に基づく工場再配置の促進、いろいろやってきておるわけでございます。私は、率直に言って、東北あたりは、そういう制度はできておるものの、それではそれが十分に活用されて、工場が円滑に配置転換されていったかという点については疑問があると思います。それはどうしてかと言えば、工場というものは、そこで単独で生きていくわけではないわけでございまして、やはり原料なりあるいは製品の運搬その他を考えれば、鉄道あるいは道路といったようなそういう社会資本の充実がないとなかなかうまくいかないわけでございまして、そういう点が東北あたりは必ずしも円滑にいかなかったのではなかろうか、だからそういうところは結果的に出かせぎが多かったのではないか、こういう感じでございますので、これからは、そういう大きな国の社会的資本の充実という点をより一層進めながら、それと呼応して従来の工業導入促進あるいは工場再配置といったようなものを、今後そういう社会資本が充実をしていくところへ重点を置いた形でそういうものの配分を考えていく、こういう指導をしていかなければならぬじゃないかと思っております。この五十五年度で、六十年度を目標といたしました新しい工業導入促進のための基本方針を策定するための調査をすることになっておりますので、幸い東北については新幹線もできるわけでございますし、そういう点を踏まえて、十分そういう点に意を注いでひとつ調査をしていきたいと考えておるわけでございます。
  98. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 大臣、東北あたりはというような適当な言葉を使わないで、東北地方はとはっきり言ってくださいよ。あたりはと言われますと、よけいな地域に感じられますので、一言御注意を申し上げさしていただきたいと存じます。  そこで、農村に工業を導入するためには当然社会資本の充実が必要なんであります。そこで、私は、新制度をやっていく場合におきまして、非常に適地の場合と非常にむずかしい地域もある、この点を御認識をいただきたいというのがまず第一点なんです。したがいまして、なかなか導入がむずかしいという地域につきましては慎重な配慮をもって行っていただきたいというのが、私の主張の第一点でございます。  そこで、そういうむずかしい地域に対しましては、従来から農林省でも十分考えてきた。そこで、十年前に農村地域工業導入促進法ができたわけでございます。そしてこれは、第一次五カ年計画、第二次五カ年計画ということで今日に来たわけでありますが、第三次基本方針を農林省では本年中につくると言われておるわけでございます。これは国家全体の開発問題と関係をしてくるわけでございますので、三全総との関連もあると思います。また、社会資本の充実ということになってまいりますと、東北地方におきましては、東北縦貫道路あるいは東北新幹線等も建設が進んでおるわけでございます。また、各地域におきましても、東北地方ばかりではなくして、それぞれ高速道路その他社会資本の充実が進んでおるわけでございます。そういうもの等十分踏まえまして、これは農林省ばかりではなく、通産省とか各省との連絡も必要であると思うわけでございますが、基本方針を策定するに当たってどういう姿勢で臨もうとしておるのか、その点につきまして御質問をさせていただきたいと存じます。
  99. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 大臣からも申し上げましたように、五十五年度に六十年度を目標年次とする第三次農村地域工業導入方針を策定するということにいたしております。この策定に当たりましては、事前に調査検討事業を行いまして、本制度の成果と問題点を十分洗い直すということにいたしております。そういたしまして、いま先生御自身がおっしゃられましたように、第三次全国総合開発計画あるいは田園都市構想、こういったものとの関連を図りながら、安定した地元就労機会をつくり出していく、そして農家所得の向上、農業と工業の均衡ある発展を図るという基本原則に立って方針を策定したいというふうに考えております。まだ全体的な検討の結果は出ておらないわけでございますが、項目としては各種事項が挙げられております。  たとえば、農業従事者から工業への就業の目標をどのように考えるかとか、農工導入に農村地域における定住条件の整備という役割りを担わせる必要はないかとか、工業導入の目標を具体的数値によって示す必要はないかとか、一市町村一農工地区というのがいまの原則になっておりますが、この考え方を考え直す必要はないかとか、それから、これは先生の御質問の中にも出たことと関連いたしますが、農村農工業導入の重点地域——やりやすいところとなかなか入っていかないやりにくい地域もあるということで、重点地域を設けることとしてはどうかとか、実施計画未達成市町村における実施計画の見直しが必要ではないかとか、それから、農村地域工業導入センターの機能を十分に発揮させるための有効な手段を検討する必要があるのではないか。これらの項目について十分検討した上、具体的な方針を決定してまいりたいと考えております。
  100. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 次に入りますが、従来農林省が進めてまいりました農地保有合理化促進事業、非常に成果を上げてきておると私は評価しております。そこで、今回の新法におきまして、利用権設定等促進事業におきましては、権利の受け手として農地保有合理化法人が加えられておるわけでありますが、農地保有合理化法人に農地を貸した場合、小作料が一括しまして十年で前払いということで支払われておる。前払いでありますから、まとまった金を入手するという点におきましてはきわめてメリットがありますけれども、十年間という期間は非常に長いわけでございまして、きわめて経済的な変動があるわけでございます。そういう場合に、小作料の追加払いというようなものが必要になってくるのではないかという点が指摘されなければならないと思います。こういう点につきましてどういう御見解を持っておるか、御質問をいたします。
  101. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 御存じのように、農地保有合理化促進事業は、農地保有合理化法人が農用地それから農用地開発用地を買い入れたりあるいは借り入れて、これを規模拡大希望する農業者等に売り渡しまたは貸し付けるということにしております。その場合、これがスムーズに行われるようにということで、小作料の一括前払い資金を貸すことにいたしまして、その借り入れた場合の利子それから農用地等の売買、貸借に要する業務費こういったものについて国が助成を行っているところでございます。  いま申し上げましたように、小作料について一括十年分を前払いするというのは、これは大変効果のある助成でございますが、ただ、最近、金利の水準の移動がきわめて激しゅうございます。また、一括払いでこれから先十年の小作料を見込んで払った場合、小作料が上がったときは実質的にはかえって十分な小作料を払ってもらわなかったことになる。一括前払いを受けたがために、年々もらうよりも不利なことになりかねないというようなことも出てまいります。  そこで、従来は契約期間中は小作料据え置きということを条件にしてまいったわけでございますが、いま申し上げましたような最近の事情のもとでは、その据え置き条件がネックになるということもございますので、円滑に進めるという考え方のもとに、前払い小作料についても状況の変化に応じて追加払いを行うことを取り入れてはどうかということで、その方式について目下指導をしているところでございます。現在、大部分農地保有合理化法人において、今後は追加払い方式を採用するように検討を始めたところでございます。
  102. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 一つずつ質問してまいりたいと存じますが、農用地利用改善事業の内容でありますところの、作付地の集団化その他農作物の栽培改善や農作業の効率化の措置などを推進するというのがその内容になっておるわけでありますが、そうした場合におきましては農業改良普及事業の果たす役割りがきわめて重要になってくると存じます。これに今後農林省としましてはどういうふうに取り組んでいくか、その姿勢につきまして御質問をさせていただきます。
  103. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 農業改良普及組織では、現地の実態を踏まえまして栽培の集団化等に努めてきております。現行の農振法によります農用地利用増進事業につきましても、市町村なり農協等と協力しまして、農用地の効率的な利用の促進に資するよう普及活動に努めてきたところでございます。新法に基づきます農用地利用改善事業の推進に当たりましても、五十五年度からは特に集落におきます自主的な活動の組織化を図ります地域農業組織化総合指導事業、これは十一億七千三百万円ほどの予算でございますが、こういう新規のものも認められております。こういうもの等を活用いたしまして、ただいま先生からお話がありましたような、作付地の集団化なりあるいは農作業の効率化というようなこと等に関しまして、普及活動を一層積極的に展開してまいりたい、かように考えております。
  104. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 さらにまた、この新法案におきましては、従来農協等で進めてまいりました農作業の受委託を促進する事業を取り込んでおるわけでございますが、農協団体におきましても、この新法を実施するにおきましてはその役割りを明記すべきである、こういう要請があるように伺っておるわけでありますが、今後その点に関しまして農協役割りをどのように配慮するという考えでおられるのか、御質問いたします。
  105. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農用地利用増進事業は、市町村が農業委員会とか農協、そういった組織の協力を得まして、地域全体としての農用地の流動化を有効利用を促進するということにいたしております。農協自身がすでに八〇年代における農業の課題と農協の対策という基本方針の中でも明らかにしておりますように、こういう地域農業に対して組織化を図っていく、そういう形を通ずる農業の発展について積極的に取り組むということを明らかにしております。今回の私ども提案しております事業、これとの関連は、両方相まってきわめて密接なものになっていくかと存じます。  その場合、先生がいまお示しになりましたように、従来から作業委託の問題については農協はかなり積極的に指導し関与しているところでございます。その問題もございますし、さらに、農用地利用改善事業一般につきましても、これは農協の行っておりますところの農作業の改善、受委託のあっせん、あるいは農作物の作付の改善、こういった指導全般とも絡んでくる問題でございます。そういうこともございまして、農用地利用増進事業の実施面において農協系統組織の意向が反映されるように、市町村段階、都道府県段階で、それぞれ行政機関、農協等で構成する事業推進上の協議の場を設けるということにいたしておりますし、それから、市町村が実施方針を定める場合、市町村が農用地利用規程の認定を行う、そういう場合には、省令等によって農協の意見を聞くということを定めるなど、農協との連携を緊密にしてまいりたいというふうに考えております。
  106. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 この三法がねらいとしております成果をおさめるためには、今後農業委員会役割りがきわめて重要になってくると考えられるわけであります。ところが、農業委員会におきましては従来からも非常に業務が加えられてまいっております。たとえば、農業者年金の基金の加入事務であるとか、あるいは給付事務であるとか、いろいろな業務が重なってきておるわけでございます。ところが、この新法が実施されるに及びましてこの農業委員会が果たす役割りはきわめて多いはずでありますけれども、これを支える事務局体制が強化されなければ、これらの仕事がなかなか遂行できない。そうして、農林省からもたとえば農業委員会等補助金百五十億円が出ておるわけでありますけれども、事務局員に対する補助金というのは一・一六人平均であるというふうに伺っておるわけでございます。あと、たとえば、事務局の全国平均は三、四名と聞いておりますが、大きな都市になってまいりますと、十二名、十五名、二十名、こういうことになってくるわけです。そうなってまいりますと、それはすべて市町村の交付税交付金の枠の中でやっていかれる。ところが、市町村においては、なかなか農業委員会制度というものを理解しないで、ともすればのけものにされるような市町村もあるやに聞いておるわけでございます。  そうした点を考えますと、農業委員会等の補助金におきまして、事務局体制というものを十分強化するように配慮していくことが、新法実施に当たりましての成果を上げるもとになってくるのではないか、こう考えるわけでございまして、その点につきまして農林省の御見解をお伺いいたしたいと存じます。
  107. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農用地利用増進法案及び農地法改正案によりまして、構造政策の推進、このような重要な役割り農業委員会に課せられたわけでございまして、先生がおっしゃられるように、その執行体制の整備を図るということはきわめて重要であるというふうに考える次第でございます。このようなことから今回の法案も御提案を申し上げておるわけでございますが、われわれといたしましては、農業委員会の事務執行体制につきまして、特にその職員の資質の向上であるとか、あるいは委員方々が自覚を持って任務に当たっていただけますように、今後強力に指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  その際に、この農業委員会がその財政の体制というものをしっかりしておかなければいかぬということは先生御指摘のとおりでございます。現在の法律のもとにおきましては、国の国庫負担という観点から見ますと、農業委員会に要する経費はこれを全額国庫負担にするという形にはなっておりません。と申しますのは、農地法関係の事務等の法令事務に係る委員の手当及び職員措置費というものが義務的な負担になっておりまして、それも一定の基準のもとにこれは負担の対象ということになっているわけでございます。これらの経費を合わせますと、この負担をいたしている部分につきまして約百五十億を若干切れる程度ということになっておるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、今後このような非常に重要な事務というものが農業委員会に課せられるわけでございまして、この国庫負担そのものの部分の手直しということはなかなかむずかしいわけでございますが、この農業委員会の経費負担のほかにいろいろな補助をやっておるわけでございます。たとえば農用地の高度利用促進事業であるとか、あるいは農業就業改善事業であるとか、あるいは年金のことをお話しになりましたけれども、お尋ねの年金につきましても業務委託費を組んでおるわけであります。あるいは地域農業後継者対策特別事業といったようなことで、当該事業に着目しつつ農業委員会関係の経費を組むというようなことを考えていままではやってきております。この経費の額が現在約二十億計上されております。このような形で、年々改善に努めてきてもおりますけれども、今後とも、できるだけこのような執行体制の充実ということを目的にいたしまして、今後も国庫負担あるいは助成の努力を続けてまいりたいというふうに考える次第でございます。  なお、事務局の問題でございますが、事務局自身を法定することにつきましては、他の委員会は場合によりましては法律で事務局を設けていることがございますけれども、その人数であるとか業務量であるとか、そういうことから横並びがございまして、農業委員会の場合にはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えております。
  108. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 とにかく、事務局体制並びに財政をできるだけ強化されることを要望いたします。  次に、今回の法律改正によりまして、農業委員会委員の定数の上限が四十人から三十人に引き下げられたわけでございます。いろいろ論議はあるかと思うのでありますけれども、重要な決定をしていく場合におきましては、たくさんの委員がいるよりは、むしろ人数が少なくて、コンパクトに機能的に行動することによるメリットもあると思うわけでございます。ただ、問題は、農業委員会の選挙の実態を見ますと、各集落、村落から代表が出ておるわけでございまして、言うならば、この事業を進めていく場合においては集落、村落の協力がきわめて重要であると思うのです。そして、農業委員会役割りというのは、それぞれの集落の相談役というような面がいま強くなってきておるのではないかと思うのです。たとえば自分農地をどういうふうに相続させるか、あるいは税法の問題、あるいはどういうふうに利用したらいいか、こういう点がこれから相当大きくなってくると思うのであります。そういう指導をする場合におきまして、委員の定数の上限を切ったということは、しからばそれにかわる効果のあるものをよく考えなければいかぬ。たとえば、村落との協力を密にし連絡を強化するための協力員、こういうものを強化していかなければいかぬ。それからまた、いま農地流動化推進員という制度があるわけであります。これは原則として農業委員を任命するということに相なっておるわけでありますけれども、別に農業委員でなくても、それぞれの村落で重要な役割りをしている人物でその成果を上げる者であるならば、これはどんどん拡大、増員していっていいのじゃないか、こういうふうに考えます。ですから、最終決定の農業委員会委員の定数の上限は少なくてもいいのですけれども、その決定をより有効にしていくための足腰を強くしていくという配慮が今後必要なのではないかと思いますが、これに対してどのような見解を持っておられるか、御質問をいたします。
  109. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、農業委員会委員の定数の上限を四十から三十に引き下げるという御提案を申し上げましたのは、まさにその委員会の段階の委員の意思決定が、できるだけ効率的にまた円滑に行われるようにという配慮から、このような改正をお願いいたしたわけでございまして、さような意味では、先生がお考えのとおりわれわれは考えたわけでございます。  ただ、先生がもう一点で御指摘なさっておられるように、特に集落との関係、これが農業委員会委員方々に十分に反映してきて、そこで連絡協調体制というものができ、地域地域の声が吸い上がってくるということでなければいけないということは、確かにそのとおりであると思います。そのような観点から、特にこのような問題が起こる広域な市といったような場合にはその必要性が大きいわけでございまして、たとえば町村でありますれば、小さなところでは農業委員会委員みずからがこのような地域地域の声をくみ上げるということができると思いますけれども、特に問題は、大きな市あるいは大きな町といったところであると思います。このような地域につきましては、農業委員会との結びつきが弱くなるということではいけないわけでございまして、さような意味で、従来までも地区協力員の整備ということをやってまいりましたが、今後ともこの地区協力員というものをこのようなところに配置することによりまして、施策の遂行に支障のないようにいたしてまいりたいというふうに考えます。  なお、農地流動化推進員につきましては、構造改善局の方から御答弁があると思います。
  110. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 推進員の活動によりまして利用増進事業が逐次定着を見つつあることは、大変頼もしいというか、われわれとしてはうれしいところでございます。この活動を一層促進するために、五十四年度の農地流動化推進員は一市町村当たり九人でございましたが、五十五年度は十三人に拡充したところでございます。
  111. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 原点に返りまして、やはりこの農地三法というものには、わが国農業が直面いたしております農地問題を前向きに解決していくのだ、こういう意欲を持って取り組むことがまず第一であると私は考えます。したがいまして、この新法、農用地利用増進法におきまして、やはり国が都道府県、市町村、農業委員会農協、普及組織等、こういうものの協力、分担ということを十分に認識する、そして専業農家、またやる気のある農業青年が規模拡大をしながら農村というものを形成していく、こういう意欲につながっていくように指導していかなければならないし、ともに共存して発展していかなければならぬと思うわけでございます。そういう点につきまして大臣の心構えだけお伺いをして、終わりたいと存じます。
  112. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 もう御指摘のとおりでございまして、今後農地流動化を図っていくには、法律ができたからそれで流動化が進むわけではございませんで、やはり地域農業委員会農協あるいは市町村、みんなが一緒になっていろいろと御協議いただき、そしてまた、地域農政という形で地域農民の皆様方も一緒になっていただいて、一体どういうふうに持っていったらいいかということをお話し合いになっていただかなければ、これは進まないわけでございます。そういう点においては御指摘のとおりでございまして、私ども、この法律ができましたら、そういう方向で一生懸命努力をしてまいりたいと思っております。
  113. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 終わります。
  114. 内海英男

    内海委員長 この際、午後三時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時十八分休憩      ————◇—————     午後三時三十八分開議
  115. 内海英男

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。  この際、蚕糸業の振興に関する件について決議をいたしたいと存じます。  本件に関しては、理事会におきまして協議しておりましたが、その協議が調い、ここに案文がまとまりました。  委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明にかえたいと存じます。     蚕糸業の振興に関する件(案)   世界的な生糸、絹製品の著しい供給過剰基調の下で、苦境に直面している我が国の伝統的民族産業である蚕糸業及び絹業は、一体となった発展を期する必要がある。   よって政府は、生糸の一元輸入措置を含む生糸、絹製品の輸入秩序化に万遺漏なきを期し左記の事項に十分留意して、養蚕、製糸経営の近代化、効率的な繭生産の増強と絹製品の需要の拡大等の施策を総合的に講ずるべきである。      記  一 生糸の一元輸入措置を、国内及び世界の生糸、絹製品需給が安定し、本措置を止めても国内蚕糸業に悪影響を与えることが全くないと認められるまで継続実施する等現行の繭糸価格安定法に基づく、日本蚕糸事業団の繭糸需給及び価格安定機能を堅持すること。  二 絹糸、絹織物の輸入に関して、事前許可制、事前確認制、通関時確認制等あらゆる実効ある輸入調整措置を講じ、繭糸価格の安定に万全を期すること。  三 蚕糸業の発展を図るため、長期的観点に立って、生産性向上対策等強力な蚕糸業振興対策を講ずること。  四 最近における末端絹需要の減退傾向にかんがみ需要増進対策の充実強化に努めること。   右決議する。 以上でございます。  ただいま読み上げました案文を本委員会の決議といたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 内海英男

    内海委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は委員会の決議とすることに決しました。  この際、本決議に対し、政府の所信を求めます。武藤農林水産大臣
  117. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ただいまの御決議につきましては、わが国蚕糸業を取り巻く最近の諸情勢を踏まえ、十分検討いたしてまいる所存であります。
  118. 内海英男

    内海委員長 ただいまの決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 内海英男

    内海委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らうことにいたします。      ————◇—————
  120. 内海英男

    内海委員長 農用地利用増進法案農地法の一部を改正する法律案及び農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村源雄君。
  121. 新村源雄

    ○新村(源)委員 農地三法の本論に入ります前に、若干この歴史的な経過について農林大臣の所感をお伺いしたいわけでございます。  と申しますのは、第二次大戦の終了前までは、歴史的に見まして、日本農村地主対小作、こういう関係で、農村の中にこういう階層分化あるいはこれに基づく闘争というものが歴史的に繰り返されてきたわけでございます。日本も近代国家を目指しながら、農業は国の大本である、こういう位置づけをしながらも、これらの問題はほとんど解決の糸口がつかめなかった、こう言って過言でないわけでございます。ところが、第二次大戦に敗戦という事態を迎えまして、連合軍の農民解放指令によって、いままで長い間目指していたこの問題が一挙に解決されることになってきたわけでございます。  そこで、私は、この連合軍の農民解放指令について、国会図書館においてこの文献を改めて入手をいたしまして内容を見たわけですが、ちょっと内容を読んでみたいと思います。「農地改革に関する件」「民主主義的傾向の復活と強化に対する経済的障害を除去し、人間の尊厳に対する尊重を確立し、且数世紀に亘り封建的圧迫により日本農民を奴隷化して来た経済的束縛を打破するため、日本土地耕作民をして労働の成果を享受する上に一層均等な機会を得させるべき処置を講ずることを日本帝国政府に指令する。」こういう前段になりまして、具体的に農民に対する農地の小作制度の廃止、あるいは農業金融と負債の問題、さらには商工業と農業等に対するところの政府の財政措置、こういう一連の問題を、連合軍の指令によって日本農地改革が初めて手をつけられる、こういう歴史的経過について農林大臣はどのようにお考えになっているか、所信をお伺いしたい。
  122. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農地改革は、戦後、第一次的には国内で日本独自の発想であったわけでございまして、いま御指摘の問題は、第二次の農地改革のことではないかと私は思っているわけでございます。もちろん、国内だけではなかなか十分にできなかったものが、占領軍の占領政策という形において強力に行われて、その当時を想像するならば、日本の国内政策よりもより強力な効果があったということは、私は当然のことかと思っております。
  123. 新村源雄

    ○新村(源)委員 いま大臣は、連合軍の勧告というのは第二義な意味を持つ、こうおっしゃったのですが、そのとおりですか。
  124. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 第二義ではなく第二次、こう申し上げたわけでございまして、この第一次的というのは、国内政策的にすでに戦後行われておりまして、それで不十分であって、第二次としてこのGHQの指令によって相当強力な形で行われた、こう判断をしているわけでございます。
  125. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私の入手した指令は一九四五年十二月九日、こうなっておるわけですが、それ以前に日本で第一次農地改革というのが行われたのですか。
  126. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 日本農地改革につきましては、長い経過があるわけでございます。大正時代から昭和の戦前、それから戦中、各種の立法措置等を通じて準備といいますか、その都度改正が行われ、改善措置がとられてまいったわけでございますが、戦後、敗戦に伴って、抜本的な農地改革ということで、日本政府の手による第一次農地改革が実施に移されたのでございます。ただ、この農地改革の内容では不十分だということで、二十年の十二月に至って、占領軍からより抜本的な農地改革を実施するようにということでの農民解放指令が出されたという経緯がございます。
  127. 新村源雄

    ○新村(源)委員 一九四五年というのは昭和二十年に当たるわけですね。そうしますと、一九四五年の八月十五日以降十二月九日までに、そういう農地解放の措置がとられた、こういうことですか。その詳細をちょっと教えてください。
  128. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 戦前から戦時中にかけて、いま申し上げましたように各種のレールが敷かれてまいったわけでございます。戦後、社会が大きく変革するということで、政府の手によりまして農地改革の案が作成されて、これが二十年の十一月二十二日に、第一次農地改革要綱閣議決定ということで、日の目を見たといいますか表に出たわけでございます。その後、占領軍からの各種の指示といいますか意見の表明があり、十二月九日に、連合軍司令部が農地改革に関する覚書というのを出しております。この内容は農民解放指令でございます。これを受けまして、その十二月十八日に農地調整法の一部改正を行って、これが成立をいたしております。そのほか、二十一年の七月二十六日に第二次農地改革要綱を閣議で決定し、以下煩瑣になりますので省略いたしますが、これに基づく一連の措置が二十一年、二十二年というふうにとられております。そして実際の買収は、それまで地主の持っておりましたところの農地の買収、これを小作人に売り渡すことにするわけでございますが、これは昭和二十二年三月から行われておりまして、二十五年七月まで買収が続いたわけでございます。
  129. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私は、この文章の中で特に強烈な印象を受けましたのは、「且数世紀に互り封建的圧迫により日本農民を奴隷化して来た経済的束縛を打破するため、」こういう本質論を覆すだけの、こういう極端な言葉が出てくるだけの力のあるものではなかったんだということになりますね。
  130. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 第一次農地改革も、当時の行政の面から見れば国内的にはきわめて大胆な改革を内容とするものでございましたが、しかし、戦後の民主化ということ、新しく世の中が大きく変わったという前提からすれば、これは占領軍の目から見たらきわめて不徹底であったという指摘を受けたものだと存じております。
  131. 新村源雄

    ○新村(源)委員 それじゃ時間の関係上、以上でこの問題を終わります。  今回提案されておるこの三法の趣旨は、今後の農政の基本は、わが国農業の体質を強化し、総合的な食糧自給率の向上と国民生活の安定を図ることにあると考えられるが、このためには、農業生産の担い手となる生産性の高い中核農家を育成するとともに、需給の動向に即して地域実態に応じた農業生産の再編成を図る必要がある、このためにこの三法を提案した、こういうことになっておるわけです。  ところが、いままでのこの農林水産委員会の各段階を通じて、農林大臣に、しばしば、今後の農政の基本というものについて私も迫りましたし、あるいはまた各委員からも迫ったわけですけれども、一番大切な具体的な問題になってくると、農林大臣は、いま農政審議会に諮問中なので、それはことしの中ごろに答申を得て具体的なものを進めていきたい、こういうように言っておられるわけです。としますと、大臣のいままでの言葉から言うと、本当の目標はまだ見えてないんだ、見えてないんだからそれが決まってから方向を定めていこう、こういうように言っていたわけです。そういう時点で、農業の憲法ともいうべき農地法を初めこれに関連をする法案の提案をされるということは時期尚早ではないのか、こういうように感ずるのですが、この点についてはどうですか。
  132. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 確かに、いま農政審議会で御議論をいただいているわけでございますけれども方向としては、今日の日本農業を取り巻く環境からいって、農地流動化を図っていかなければならないという点においてはある程度コンセンサスが得られておるわけでございまして、そういう面で、私はこの法案を出したことが時期尚早であるとは考えておりません。  また、農政審議会におきましても、昨年に農政審議会の構造・農村整備部会に置かれた構造専門委員会におきましても検討願っておりまして、昨年八月三十日の中間取りまとめの方向に即しまして具体的検討を行っていただき、本年二月十九日の構造専門委員会において、この今回提案いたしております法案の大綱をお示しいたしまして、了解を得ておるわけでございまして、方向としては、農政審議会でいま議論いただいておる方向と私どもがいまここで御議論いただくときに提案理由にいたしております方向は一致いたしておるわけでございまして、私の申し上げておるのは、大きな将来のビジョン、一体どのくらいの自給率にするか、あるいはその他のいろいろ具体的な点については、農政審議会議論を経た上で、この夏か秋はっきりした将来のものを打ち出していきたい、こう考えておるわけでございます。
  133. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私の考えでは、先ほども申し上げましたように、この農地問題というのは農業の基本をなすものであって、一度そういう方向を定めると、それを修正していくことがなかなか困難な問題であることは大臣よくおわかりだと思うのです。したがって、こういう農地に関して、いわゆる権利に関する問題を含むこういう提案をなさるということは、方向がはっきりしてその後に慎重に出されるべき問題である、事前に出されるべき問題ではないのじゃないか、こう考えるのですが、その点についてはどうですか。
  134. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま申し上げましたように、構造部会においても、またこれは農政審議会全体の空気でもそうでございますけれども農地流動化を図っていき、そして、私ども中核農家と言っておりますが、あるいは自立農家とか専業農家とかいろいろお立場によっておっしゃる方がございますが、いずれにしても、できる限り農地をあるグループに集積をして農業規模拡大を図り、それによって生産性を高め、農業の体質を強化していくという方向は、もう私ども農政審議会方々議論しておりましても、それは方向としては出ておるわけでございまして、私どもは、今後のビジョンづくりには、少なくともその方向だけは変えていかないつもりでございます。その点ははっきりしておるわけでございまして、そういう点で、法律をいま提案しているということは時期尚早ではないと私は思っておりますし、また、今度の三法を提案をいたしましたのも、中心はこの間から御議論いただいておりますように農用地利用増進法案でございまして、これは、現在すでに農振法の改正によりまして農用地利用増進事業をやってきており、その成果を踏まえながら法律案を今度提案をした、こういうことでございまして、ここで全く突如として出てきたものではないということだけは御理解がいただけるのではなかろうかと思うわけでございます。
  135. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この法律のねらいとしているのは、農地流動化を促進をして生産性の高い中核農家を育成していこう、こう言っておるわけですね。ところが、私は北海道ですけれども北海道では、水稲にしても酪農にしても畑作にしても、中核農家といいますか、専業農家といいますか、そういうものがすでにでき上がってきておるわけです。それらの農家が現在もうすでに行き詰まっている。もうどうしていったらいいのか方向が見定まらないという重大な問題を現実に抱えておりながら、そういう問題の解決すらもできないで、いまこの中核農家をつくる、一体そういう矛盾というのはお考えになりませんか。
  136. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは、私どもはいま統制をして計画経済のもとにやっておるわけではございません。そういう意味において、方向を打ち出してこういう方向でということは私ども申し上げておるわけでございますが、完全な計画のもとにやっておるわけではございませんので、いま御指摘でございましたけれども、私は、日本中核農家あるいは北海道中核農家が全部だめになっておるとは決して思っていないわけでございます。やはりその努力をされておる方にとって結構いい方向に行っているのではないかと私は思っておるわけでございます。それは中にはいろいろのことがある、これはどんなことでもあるわけでございます。なかなか一〇〇%いかない場合もあるだろうと思いますけれども、いろいろの統計上の数字を見ておりますと、大半は、中核農家の場合は農業生産額にいたしましても相当ふえてきておりますし、やはりそういう方向というものは今後とも進めていかなければならない方向だと考えておるわけでございます。
  137. 新村源雄

    ○新村(源)委員 しかし、そういう認識に立っていまの農業現状を見ておられるとすれば、これは重大な問題だと思うのです。大臣御案内のように、北海道の減反面積は実に四四%に上っておるわけです。そしていろいろみんな現地では工夫をして、集団転作とかいろいろなことをやっておりますけれども、しかし、なかなか全地域においてはそううまいぐあいにいかないわけですね。仮に五ヘクタールの水田農家、これが四四%、約二ヘクタール以上、これだけを、三ヘクタールを水稲をつくって二ヘクタールをいわゆる畑作に転換をする、こういうことが水利その他の条件から可能だと思いますか。
  138. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 北海道の転作の関係でございますが、ただいま先生御指摘のとおり、北海道につきましては、五十五年度の転作率は四三・六%と大体四四%という線になっておるわけでございます。それで、これは道全体の平均の転作率でございます。したがいまして、道におかれましては、さらに、支庁別ないしは市町村別に、その土地条件その他も考えましてさらに転作をおろしていく、さらにまた市町村におきまして、農業者の経営事情その他を考えましてさらに農家ごとに配分をするということでやっておられるわけでございます。したがいまして、ただいまもお話ありましたけれども、市町村なり農家の段階におきまして、相当その実態に合った角度での転作の配分が行われておると思っております。なお、計画転作等もお願いをいたしておりますが、こういう面におきましても、非常に北海道は高い計画転作率にもなっておりまして、相当そういう排水の条件その他等も考え実態に合った配分が行われておるというふうに考えております。
  139. 新村源雄

    ○新村(源)委員 こういう状態が、これは農林大臣のお話を聞きますと、困っている人もいるけれども、そんなに困っていない人もいる、努力によってりっぱにやっている人もいる、こういうようなことを言っておられるわけですが、四四%というのはことしから始まるわけでしょう。そういうことで、本当に農家の胸の痛みというものを農林大臣はいささかも感じておられない、こういうように受けとらざるを得ないのですが、当たりまえなんだ、やむを得ないんだと、こういうような表現に受け取れたのですが、大臣、そういうお考えでございますか。
  140. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 どうもちょっと表現が大き過ぎるような感じがするのですけれども、私どもは、やはりいろいろの実態を踏まえて見ますと、そういうある程度規模拡大を図って努力をしていただいている方々は、粗利益においては相当ふえてきているわけでございまして、そういう点から私は申し上げておるわけでございまして、やはり努力をしていただく方には報いていかなければならないと当然思っておるわけでございます。何も私ども冷たく言っているわけでないので、やはりわれわれもできるだけ農民のことを考えていろいろの政策を進めていっておるつもりでございまして、そういう点を踏まえて私どもはいま申し上げたわけでございます。
  141. 新村源雄

    ○新村(源)委員 米作農家も本当に大変な事態を迎えておる。さらにまた、去る三月二十九日に決まった酪農ですね。これも去年事実上一〇%近い調整を、生産者団体を中心にして、酪農民の協力を得ながらやったわけです。ことし前年度と同じような限度数量を押しつけられるということになると、いままでの生産体制から見れば、さらにまた五%ないし七%増ぐらいの、いわゆる一五%ないし一七%ぐらいの生産抑制、いわゆる調整というものをやっていかなければならない。ところが、私は会館で毎日牛乳を飲んでおるわけですが、会館にある牛乳はほとんど加工乳ですね。しかも、昭和五十四年度の加工乳の出回りは、全国で約七十八万トン出回っておるわけです。そういうように、一方において非常に食品としての価値の高い牛乳を生産調整をする、一方においていまだに八十万トン近いそれだけの加工乳が出回っている、こういうものに対して、一体、行政上どう措置をして正常な流通を図る措置をとってこられたかどうか、その点についてどういうようにされようとしていますか。
  142. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 酪農の問題でございますが、御承知のとおり、牛乳の生産数量の伸びはここ数年著しいものがございまして、昭和五十一・年から五十三年までの各年について見ますと、生乳の生産量は対前年比で七%ないし八%の増加でございました。それに対して飲用牛乳の消費の伸びは五ないし六%の伸びということで、したがいまして、その差は乳製品の生産に振り向けられるということであったわけでございます。そうした事態のもとに、生乳生産につきましても、需要の動向に合わせて生産を進めていく、同時に消費の拡大も図るということで、生産者団体におかれましては真剣な取り組みをされておるところでございます。  ただいまお話しの加工乳につきましては、そうした乳製品から製造されるものであるわけでございますが、しかし、私どもは、やはり何といいましても、飲用牛乳がしぼったままの生乳で供給されることが望ましいというふうに考えておるわけでありまして、極力生乳で賄うことが基本であるという認識に立っております。このために、普通牛乳につきましては、いま申し上げましたような消費拡大事業を推進いたしますとともに、主要な消費地域へ原料乳の安定的な供給を確保するための措置を講じてまいっております。加工乳の生産数量、ただいま七十八万二千トンというお話ございましたが、これは五十三年度の数量でございまして、かつては、昭和四十四年ないし五年におきましては百三十万トン程度ございまして、それに比べれば六〇%程度に減少をいたしております。加工乳は、時期的あるいは地域的に生乳の需給の均衡が失われることがどうしても避けがたい状況のある場合には、加工乳の供給もやむを得ないというふうに考えておるわけでございまして、いずれにいたしましても、普通牛乳につきましては生乳供給を基本とし、時期的あるいは地域的に生乳の供給不足がある場合には加工乳もやむを得ない。しかし、できるだけ広域的な生乳の輸送等を円滑に行いまして、その加工乳の数量も減らす、あるいは加工乳自体に生乳の含まれる割合をふやすということについて努力をしておるところでございます。
  143. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私の言いたいのは、いま、米の生産調整をする、あるいは牛乳の生産調整をする、こういう農業としては非常に危機的な情勢が高まってきておるわけです。そういうときに、いまのこの農地三法を提案される前に、これらの問題はこうしていくんだということが明確にならなければ、本気でいまの三法というものを審議しようという気持ちにならぬわけですね。こういう問題についてどうしていくんだ。いま畜産局長はなるべく加工乳を生乳にしていきたい、こういうふうにおっしゃったのですが、具体的にどういうようにお取り組みになっておりますか。
  144. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 加工乳をできるだけ普通牛乳に置きかえていくということ、あるいは生乳の混入割合を高めるということにつきましては、昭和五十年の六月に関係業界とも打ち合わせをいたしまして、市乳化促進問題研究会なるものを持ちまして、その報告におきまして、生乳の混入率を七割以上という表示の実施をする、あるいは生産者及び乳業者をもって構成する生乳の広域需給調整のための協議会を開催するというような中間的な結論を得まして、そういう方向に沿って関係者の指導に一つは努めておるわけでございます。また、昨年十二月に、最近の生乳の需給事情にかんがみまして、生乳使用度の向上につきまして関係方面に畜産局長通達をもちまして要請をしたところでございます。さらに、生産地から消費地への飲用原料乳の安定的な供給を図るために、牛乳輸送施設のリースの事業を行っておるところでございます。さらに、昭和五十四年度、五十五年度、各年度におきまして、特定地域生乳供給特別対策事業なるものを実施いたしておりまして、いわゆる加工乳から生乳へ切りかえることを促進しておるところでございます。
  145. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この機会に聞いておきたいわけですが、政府北海道の根釧地区の大規模農村というものを積極的に建設する、あるいはまた秋田県の八郎潟の埋め立てによっていわゆる大型の水田農業というものをやっておるわけです。根釧の大型酪農村にしても、あるいは八郎潟の干拓による大型の水田専業農家の建設にしても、それはそれなりに意味は持っておると私は思います。それはそれなりに持っておるけれども、それじゃ一体既存の酪農家なりあるいは既存の米作農家なり、こういうものとの整合性といいますか、調和といいますか、そういうものをどの時点で図って、いわゆる均衡ある農村社会の発展といいますか、そういうものを期していこうという考え方でやってこられたのですか。
  146. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 酪農の振興を図るために、いま御指摘のような非常に生産立地に恵まれた地域につきまして、酪農の大規模生産基地の建設を進めるということをいたしておるわけでございます。そういうことによりまして、既存の酪農地帯との調整の問題が生ずるではないかという御指摘でございますが、生産者団体を中心といたしまして、ただいま御承知のように計画的な生産を進めるということをいたしておるわけでございますが、その計画的な生産の推進に当たりまして、これは中心となりますのは各都道府県の指定生乳生産者団体でございますけれども、その指定生乳生産者団体におきまして、そういう新興の地域と既存の地域との調整を図るという措置で既存の地域と新興地域の利害の調整を図る。もう少し具体的に申し上げますれば、生産数量の伸びをどういう地域におきまして受け持ってもらうかというようなことについての調整を行っておるところでございまして、全体として牛乳生産は、需要の動向からいたしましてかつてほどの伸びでないにしろまだ伸びていくものでございますので、その伸ばし方のテンポを調整するということでやっておるわけでございます。
  147. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私は、牛乳の生産の問題を言っているのではなくて、たとえばいま五十頭、五十ヘクタール、こういう大規模な酪農村をつくっていくわけです。そうしたらそれはそれでいいんだけれども、それじゃその地域にあるところの二十頭程度あるいは二十五、六頭程度、そして二十ヘクタールぐらい、こういう既存の酪農家とのそういう調整をどういう時期にここでとっていくのか。大きいものはうんと大きくてもいい、小さいものはもうほうっておいて、いわゆる選別農業といいますか、弱いものはどんどん消えていって、自助努力でそこまで来い、こういう考え方があるのですか。
  148. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 個々の酪農経営の規模につきましでどういうふうに考えておるかという御質問の趣旨かと存じますが、酪農経営の合理化を図る見地から規模拡大をこれまで図ってきたところでございます。  しかし、全体として見ました場合に、その規模拡大のテンポというものは、これからの需要の動向を考えますと、それほど大幅にするわけにはまいらないというふうに考えておりまして、規模が大きければ大きいほどいいというふうには直ちに申せないと存じます。酪農全体として、やはり総体としての経営の安定を図る必要が当然あるわけでございまして、そういう見地から、先ほど申し上げましたように、具体的な措置としては、生乳生産の伸びをどういうふうに調整するかということで、各種の措置を講ずるように指導をいたしておるところでございます。
  149. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私の言いたいのは、流動化を促進して中核農家をつくる、こう言っておっても、こういう基本的に解決していかなければならない多くの問題がある。そういう多くの問題を解決のめどもなくこの法案をいま出してくるということについては、ちょっと農林省の考え方の方向が間違っているんじゃないか。これらの問題をこれこれきちっと整理をして、そしてその上に立って、中核農家というものをこういうように育成をしていく、こういうのが私は手順じゃないかと思うのですよ。  畜産局長と先ほど農林大臣に答弁いただいたことと若干違うわけですけれども、これは時間の関係で後に譲ることにしまして、大臣、いままで飼料の問題、いわゆるえさ米の問題にしましても、あるいは酪農の問題、特に輸入脱粉、輸入乳製品の問題にしましても、いずれも外国の農畜産物との価格が余りにも違い過ぎるのだ、だからできないのだ、こういうことをずっと言ってこられたわけですね。  ところが、内閣総理大臣官房広報室で、食糧の、国民がどういうように受けとめているかというアンケートで、これは五十三年の八月にやっているのですけれども、できるだけ国内で自給すべきだ、こういう意見が六七%なんです。安ければ輸入してもいい、こういうのが二〇%、わからないというのが一三%。したがって、積極的に国民食糧というものを外国から輸入してもいいのだというのは二〇%よりない。あとの方々は、高くても国内で自給すべきだ、こう言っているのですね。こういう国民世論の動向から見れば、いま農林大臣考えておられること、あるいはまた、いまの政府が進めようとしておること、こういうことにはずいぶん逆な方向で行っているのではないかと思うのですが、この点どう理解されておりますか。
  150. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども農林水産省といたしましては、もし国民の皆様方が、本当に幾ら高くてもいいから全部国内で賄えるようにしろ、こういうふうにおっしゃっていただければ、こんなありがたいことはないわけでございます。  私は、米もあるいは生乳も、いまお話がございましたけれども、全部外国から入るものを抑えてでも、国内でできたものは幾ら高くてもいいと国民がおっしゃるならば、それをどんどんこれからつくっていただいて、そして国内で消費をしていただきたいと思うのでございます。  しかしそれは、いまの世論調査でも、幾ら高くてもいいということではないのじゃなかろうかと私は思うのです。そういう点が、先ほど飼料穀物のお話もございましたけれども、私がこの間から申し上げておるのも、飼料穀物も国内で生産できるようになれば結構なんだ、ただ、いま外国から入っておるのはトン三万円でございまして、国内で幾ら逆立ちをしたってとてもそれには及ばないわけでございまして、これはやはり畜産農家の皆様方ともよくお話をしながら——結局、国内でそういう飼料穀物をつくることになれば、十何万かかるのか、とにかくいまより五倍以上かかることだけは間違いないだろうと私は思うのです。そうすると、五倍以上かかったその飼料穀物を使っていけば、当然、豚にしたって、あるいは鶏にしたって、相当高いコストになるわけでございます。それではそれを価格に転嫁していって、国民の皆様方がそれで結構だとおっしゃっていただけるのならば、私は喜んでそういう政策をとらせていただきますけれども、なかなかそこまで国民のコンセンサスが果たして得られているのかどうかという点が、私ども実際まだ自信がないわけでございまして、できるだけ国内でできるものはつくっていきたい。しかし、つくるについては、国民のそういう気持ちもあるから、やはりできるだけ安くつくるようには努力をしていただきたい。そういう意味においてやはり規模拡大を図らなければいけない、だから法律をひとつお願いをしたい、こう言っているわけでございますので、その点はひとつよろしくお願いしたいわけでございます。
  151. 新村源雄

    ○新村(源)委員 主として外国から安い食糧を輸入しろ、日本農政というのは過保護である、こういうことが財界からしばしば提言されていることはよく知っています。しかし、このアンケートは国民一般からとったアンケートです。ですから、そういう要求をされている階層というのは違うんじゃないですか。  そしてまた、大臣のおっしゃるように、そういうものをストレートに消費者にかぶせるのか、あるいは各種制度を設けて、米価の二重価格制、こういうものによって、国民生活を守りながら、一方また生産農民も、自給率を高めあるいは経営の合理化を図って安定的に供給できる体制を見出していくのか、こういうところはやはり大きな農政の分かれ道だと思うのです。  私は、各国の農業予算を若干参考資料で見たわけですけれども、一九七六年、このときの農業人口一人当たりの予算は、日本は三十八万円、アメリカは七十二万円、フランスは百一万円、こういうように、過保護論とは全く違った——アメリカにしたってフランスにしたって、これは世界的な農業生産を持っている農業国でしょう。こういう国は、こういうように積極的に経済的にバックアップをしながら、もういずれも輸出国。そういうところでも農業生産を確保している。こういう状態から見れば、私は、たとえば大臣がしばしばおっしゃっていますように、高いからどうにもならぬのだ、だからこういうことになるんだ、こういう観念論ではなくて、そういう積極的な考え方を農政の基本に置くとすれば、日本農業はもっと生き生きとしたものに変わっていくだろう、こう思うのですが、どうなんですか。
  152. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 その生き生きとしたというか、それは、いまおっしゃるように、たとえば米についてはいま生産費及び所得補償方式をとって承るわけでございますが、全部の農畜産物が生産費所得補償方式をとり、しかも、それが今度は、それの消費者に対して売り渡す場合には相当思い切った価格で売り渡していくというようなことになれば、これは大変農業の方は生き生きとしてやっていただけると思いますし、消費者も文句を言わないだろうと思うのでございます。しかし、それを全部の農畜産物に当てはめたら、これはもう大変な国の財政負担になるわけでございまして、現在の日本として果たしてそれは国民が許してくれるかどうか。やはりこれは税金で負担しなければならぬわけでございますから、それも私は大変むずかしい話ではなかろうかと思うのでございます。  そうなってくると、結果的には、ある程度コストが高くなれば消費者にその価格は転嫁していかなければならないわけでございます。もちろん政策でできるだけそれは抑えてはまいりますけれども、しかし、ある程度はやはり消費者に転嫁をしていかなければならないわけでございまして、そういう点がコンセンサスが果たして得られるのだろうか。いま何か財界からとおっしゃいましたが、私は、いろいろの消費者団体の人たちの声も、しょっちゅう来られましてお話を聞くわけでございますけれども、どの消費者団体の人も、日本の農産物、畜産物はまだ高いとおっしゃっているわけで、そうじゃございません、みんな農民努力をしてやっているのです、外国と比べて規模が小さいのだからやむを得ないのですと、私どもは一生懸命消費者団体の代表の方には申し上げておるわけでございまして、私ども、決して財界の方にお話を聞いて言っているわけではございませんので、どうかその点は誤解のないようにお願い申し上げたいと思います。
  153. 新村源雄

    ○新村(源)委員 ただいままで申し上げてまいりましたように、いま提案されております農地三法、私は先ほどから申し上げておりますように、大きなひずみの問題を積極果敢に解決の方向に向けていく。先ほど申し上げましたように、牛乳の問題にしても飼料のえさ米の問題にしても、そういうものをやるのだという大臣のお言葉がいただけなければ、この農地三法については私は賛成することができない立場を持っております。そういう点について大臣……。
  154. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 どうもえらい端的な御質問でございまして大変恐縮しておりますが、私も、三法に賛成してもらえるならば、ここでいまの価格政策をはっきり言った方がいいのかという感じもするのでございますが、私も実行のできないことは正直申し上げられませんので、ここで申し上げられることは、三法の御提案をいたしておりますのは、構造政策の一環として一つの手段をやっていきたいということで御提案をいたしておるわけでございまして、いろいろ考えてみますれば、生産政策価格政策構造政策あるいは社会政策、けさほど申し上げておるとおりで、こういうものを総合的に強力にやっていかなければ私は農民理解は得られない、こういう気持ちでございますので、今後そういう点は強力に進めていきたい、その構造政策の一環でもございますのでぜひ御理解をい、ただきたい、こういうことでお答えせざるを得ないかと思うわけでございます。
  155. 新村源雄

    ○新村(源)委員 次に、農地価格の問題について質問したいのです。  これはいままでの委員皆さんもそれぞれ御質問なさっていることですが、農林省の今回の説明資料の中で、農地目的の水田価格でも十アール当たり百二十万二千円です。この前静岡県の豊岡に行ってまいりましたときも、うんと安くて坪五千円、百五十万ということになるわけですが、さらにまた転用目的、これは市街化区域でも調整区域でもないいわゆる農業振興区域にある土地でも、振興目的に目されているものは八百四万円にもなる、こう言っているのです。これは価格だけを見ても、農業生産のために土地を取得をして農業経営の規模拡大を図っていこうということにはとうてい考えられない価格になってきているわけです。こういう点について、土地政策といいますか、そういうものについてどういうようにお考えになっておりますか。
  156. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農地価格の状況は、いま先生が具体的にお示しいただいたような状況になっておるわけでございます。確かに、農地価格もそれ自体独立してあるものではなくて、宅地等の一般価格の影響を受けざるを得ません。近年宅地需要が旺盛なため、宅地価格、さらには転用農地の価格も高騰いたしておりますし、本来耕作目的で売買される農地の価格もこれに伴って上昇しているという傾向にあるわけでございます。地価の対策は農林水産省だけで取り組める話ではございませんで、このため政府全体といたしましても、特に国土庁を中心に、国土利用計画法の適正な運用、投機的な土地取引の抑制、最近の地価上昇の原因となっております住宅地の供給の拡大を図るといったことを全体として総合的に進めることで、地価の安定を図るように努力しているところでございます。  農林水産省といたしましても、特に農地との関連では、制度としての農振法なりあるいは農地法があって、これが農地価格の抑制にそれなりに機能し得るわけであります。今後とも、農振法、都市計画法等による土地利用区分、いわゆる線引きをしっかり行いまして、合理的な土地利用の促進に努めていくことが必要であると考えております。それからまた、農地法の厳正な運用によりまして、投機的な取引を抑制して、農業の用に供されるべき土地を確保する、それからまた農地価格の安定を図ることに努めてまいりたいと考えております。
  157. 新村源雄

    ○新村(源)委員 農地価格を適正な、いわゆる農業生産の用に供するものにしていくためには、いま構造改善局長もおっしゃったように、あらゆる制度を強力に運用して農地価格の暴騰を抑えると同時に、何といっても耕作農民土地を持つということは、砂を変じて黄金になすというくらい非常に農業にとっては重大な問題なんです。そういうことから考えますと、農業者が農地を購入できるような資金体制、いわゆる金融体制、こういうものを考えていかなければならぬと思うのですが、農地等取得資金あるいは未墾地取得資金あるいは農業年金基金、こういうもの等から出てくる資金、いまの制度では、とてもこの金を借りて農地を買って、そこから生産されるいわゆる所得によって返済していくことは不可能だ、私の計算ではできない、こういうように出ているのですが、こういうものについて改善をしていく考え方はないのですか。
  158. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 確かに農地価格は一般的に非常に高くなってまいっておりますけれども、そういう中でも所有権の移転流動化が実現しているところは一部あるわけでございます。それは地域によって差がありますが、所有権の移転が可能なところは、本当にみずから耕す者がみずから農地が持てるようにすることで、それなりの対策は私どもはできるだけ講じてまいりたい。特に、いま先生が申されました資金関係でございますが、農地等取得資金につきましては、この資金が農業構造の改善に積極的に寄与し得るという観点から、従来からその充実改善に努力してまいったところでございます。たとえば農地等取得資金の貸付限度額について見ますと、個人の分でございますが、農業委員会のあっせんだとか農地保有合理化促進事業に係る取得分については一千万円ということになっております。それから、農用地開発事業に係る取得につきましては、これは規模が大きいということもありまして三千万円という比較的大きな額になっております。さらに、その中でも一層規模の大きい農用地開発公団事業に係る取得分については四千万円ということになっておるわけでございます。従来四百万円から六百万、六百万から八百万、一千万というふうに逐次上げてまいった経過があるわけでございまして、今後ともこういう限度額の水準については一層改善に努めてまいりたいと考えております。  なお、今回農用地利用増進法でいろいろまたお願いをしているわけでございますが、これに基づいて、この計画に従っての農地等の取得が行われる場合には、現在通常一千万の額でございますが、この限度額の引き上げについても検討してまいりたいと考えております。
  159. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この資金、要するに問題点は、いま局長おっしゃったように資金枠の問題はあります。必要とする資金を借り入れられるかどうか。その次には、やはり金利と償還年限ですね。金利と償還年限が、取得をしたことによってそこから上がるいわゆる農業所得の中から払っていける、こういう金利なり償還年限なりが設定されなければ、実際には有効に動いていかないわけですね。したがって、いま農地等取得資金については三・五%、未墾地も三・五%、さらに農業者年金の場合は、これは農業生産法人あるいは公共団体あるいは合理化法人、こういうものに対しては三分、そのほかは三分五厘、こういうことになっておるわけですね。この金利というものを思い切って、先ほどの農業投資、こういうものも含めて二%、あるいは償還年限というのを五十年、こういうような思い切った措置を今回の制度に合わせてやっていく考え方はないのですか。
  160. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 金利のレートなりあるいは償還期間、こういった融資の条件は、これはほかのものとのバランスなり総合的な観点から検討する必要があると思います。その点、農林漁業金融公庫資金の中でもこの農地等取得資金は最も低利、長期のものとなっておりまして、先生おっしゃられましたように、年利が三・五%、償還期間二十五年、それから据え置き期間がそのうちでも三年設けられているということで、日本の金利体系の中ではきわめて低利、長期のものとなっているわけでございます。ここへ来るまでに長い改善の経過があるわけでございまして、正直申し上げまして、私どもこれ以上条件緩和ということは、それは努力することは必要でございますが、きわめて困難であるというふうに考えております。
  161. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そういう固定的な考え方が、やはり私はいまの農地の所有権の移転、こういうものを一層困難にしていくと思うのですよ。ですから、こういう新しい方向を目指すということであれば、金融体系もこれに沿ったものにします、こういうように当然出てこなければならぬと思うのですが、局長の話ですと、国全体のいろいろな産業の金利体系、こういうものといわゆる整合性のあるものにしなければならぬ、こういうふうに言っておられるわけですが、もういまほかの産業と農業というものを比較することができますか。
  162. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 私が申し上げました総合的にいろんなことを検討していかなければならないという意味は、むしろ農林漁業金融公庫資金の中が主としてでございまして、そのほか農業関係で近代化資金とか農林関係の資金制度はございます。これらの中で、各種の施設資金でありますとか、基盤整備に係る資金でありますとか、もろもろの融資が行われるわけでございます。それらとのバランス、やはり同じ農業の中でのという意味で申し上げたわけでございまして、むしろ農業に関する制度金融は、他産業等に比べれば、その点は農業の特色を反映してそれなりに低利あるいは長期というような実態に現在でもなっているところでございます。
  163. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この金融問題につきましては、また後ほど問題点等を指摘をしながら要求をしてまいりたいと思います。  次は、農地法の第一条に、「この法律は、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進し、及びその権利を保護し、並びに土地農業上の効率的な利用を図るためその利用関係を調整し、もって耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」こういうふうに言っているわけですね。ところが、今度のこの農地利用増進法によりますと、この耕作者の権利に属するところの第十九条と二十条が適用除外されるということになるわけです。ということになれば、この第一条でうたっておるところの「その権利を保護し、並びに土地農業上の効率的な利用を図るためその利用関係を調整し、もって耕作者の地位の安定と」という、耕作者の権利、地位の安定、こういうものが著しく阻害される、こういうことになるわけですが、そういうことから言えば、この農地法第一条はまさしく半身不随になる、こういうように私は考えるのですが、この点についてはどうですか。
  164. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 現在安定的に借りている耕作者がその借りている農地について第十九条、二十条のこういう保護されている耕作権を奪われるということでありますれば、確かにこれは耕作権が不安定になるということでもございますし、農地法の基本精神といかがかということになってまいるわけでございますが、私ども考えておりますのは、今回提案しておりますような特別な条件のもとで、つまり公的機関が介入して安心して貸せる、安心して借りられるというような仕組みの中で、しかも地域全体としての農業の振興に貢献するというような考え方のもとに行われる農地の賃貸借でありますならば、それについては、むしろ借りること、借りられることの方が主眼となるべきでございまして、その場合は十九条、二十条の適用除外にしても差し支えないというふうに考えたわけでございます。それから、農地法本法自身の十九条、二十条をなくすというわけではございませんし、私どもとしては、やはり農地法自身の耕作権の保護という基本の姿勢は貫かれているというふうに考えるわけでございます。
  165. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そうすれば、局長さん、こういうように理解をしていいのですね。農地合理化促進事業、そういう行う地域においては十九条、二十条は適用除外にする、しかしそれ以外はこの第一条の精神が生かされて十九条、二十条というのはそのままきちっと生きている、こういう理解でいいのですか。
  166. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 地域といいますか、農用地利用増進計画に基づいて行われるところの、つまり公的機関の介入によって行われるところのこの事業の権利設定、この分については、農地法の十九条、二十条の適用を除外するということでございまして、そういう特定の場合における特例だということでございます。一般的な十九条、二十条の規定というものはもちろん依然として存するわけでございます。
  167. 新村源雄

    ○新村(源)委員 そうすれば、たとえばいまその区域に入っていた、そして自分がこの土地を何らかの形で処分をしたい、こういうときに、期限が来たときにその集団から抜けて、そしてこの土地をほかに処分をしたい、こうなったときには、直ちに十九条、二十条が発動されるということでいいのですか。
  168. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 十九条、二十条だけでなくて、ほかの三条、四条、五条それぞれ関係するところの問題でございますが、この特例、農地法の適用除外を受けられますのは、単に地域にあるということだけでなくて、農用地利用増進計画にのっとって公的機関の介入のもとに行われるところの利用権の設定についてでございます。したがいまして、この地域にあってその設定も受けた、しかし、事情があってその後これを一般的な売買なりあるいは転用でもって売りたいというようなことが生じました場合は、それは一般の農地法の規制の対象になる、農地法の規制の規定に従って厳格に審査されて、要件に該当しない場合はそれが抑制されることになるわけでございます。
  169. 新村源雄

    ○新村(源)委員 それでは次に、この法人は、農業協同組合等が行う農地改良事業、こういうことが行えることになってきたわけですよね。そこで、農地改良をやった場合の事業費の負担というものはだれが負担をしますか。
  170. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 利用権の期間が三年−五年で設定されるような場合、それから十年以上もの長い期間で設定されるような場合、状況によって違うと思います。土地改良事業は、一般的には効用が長期に及ぶ事業でございます。したがって、短期利用権が設定される農用地については、これは所有者が事業参加者となってその費用を負担していくことが一般的には適切だと思われます。ただしかし、所有者の営農意欲が乏しくて利用権者の利用が実質上長期化するというようなことが明らかな場合や、それから、効用が長期に及ばない比較的小規模な短期の土地改良事業等の場合におきましては、これは利用者が事業に参加して投資を行っていくということも考えられます。  この後者の場合、借り手農家の投資についての有益費の求償権というものは制度的に認められております。所有者が投資する場合はそれほど問題はないにいたしましても、借りている人が投資をした場合、そして、それが期限が来て返さなければいけなくなったときに、投資をした経費についてどうするかというのが、こういう事業を進めていく場合大きな問題になるわけでございます。その有益費の負担のあり方については、現在、制度的にも求償権が認められているところでございます。  これらのあり方につきましても、農用地利用増進計画なりあるいは市町村等の指導の中ではっきりさせてまいりまして、トラブルの起こらないように安定した農業経営が行われるように進めてまいりたいと考えております。
  171. 新村源雄

    ○新村(源)委員 いま、土地改良法によって行われておる事業を国営事業で行う場合には、国庫負担率が大体八〇%、それから北海道の場合ですと、道営総合農地開発事業で行う場合には七〇%ですね。ところが、団体営で行う場合には六〇%ということになっておるわけですね。この際、私は、この土地改良事業というのは原則として国が行うべきものだという考え方に立って、いまそれぞれ局長説明のあったようなそういう煩わしさは一切なくしてしまう、こういう考え方に立てないかどうか。  それともう一点は、土地改良法によるところの換地、いわゆる交換分合で、その場合に農地を売買したときに譲渡所得の基礎控除が三千万円になっているわけです。ところが、そうではなくて、普通に農地を譲渡した場合には、譲渡所得の控除額というのは五百万になっている。これはなぜ、同じように農地を売っていく場合に、一つ土地改良法によって農地を譲渡した場合と、それから農業委員会等があっせんした場合とは、こういう格差があるのか、この点について大蔵省からも来てもらっておりますので、前段はひとつ局長の方からお願いします。
  172. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 現在の土地改良事業は、国営、県営、団体営それぞれ補助率を異にいたしております。それは、土地改良事業はきわめて公共的な性格が強いわけではございますが、でき上がった施設自身はそれなりに個人財産でもあるという点もございまして、まるきり公的負担というわけにもまいらないわけでございます。  それから、そういう事業の性質によって差がついているのはなぜかと言えば、それは、その公共性の度合いに差異があるということ、それから受益の程度と、もう一つ農家負担能力、やはり国営になるほど事業規模も大きい、負担も大きい、県営はそれに次ぐというような実態もございます。そこで、それらの事情を勘案して国庫負担割合が定められているわけでございます。  現在の国庫負担率につきましては、従来から長い間改善に改善を重ねてきました歴史的な経過があって、ようやくこの水準にまで届いたわけでございますが、たとえば灌漑排水事業につきましては、国営の場合は六〇%、県営の場合は五〇%、団体営の場合は四五%ということになっております。そのほかに、振興山村でありますとか豪雪地域等でありますとか、それから先生も御指摘になりました北海道、それらにつきましては、地域の特殊性を考慮して、さらにこれを上回る補助率も行われているところでございます。これらについて困難であると言えばおしかりを受けるかもしれませんが、私ども経常的に長い間補助条件、農家負担等の実情を考えながら改善に努力してまいったわけでございます。今後ともその努力は続けてまいりたいと思いますが、毎年の予算折衝等を通じてその問題も出てくるわけでございますが、やはり正直なかなか困難な事情があるわけでございます。  税制については大蔵省の方からお答えしていただきます。
  173. 内海孚

    内海説明員 土地の譲渡所得税に関しましての特別控除の額についてのお尋ねでございます。  まず、三千万という特別控除額は、収用といいますきわめて強い私権に対する制限を背景といたしまして、そういった強制買い取りですから特別に三千万控除というものがあるわけでございます。  これに対しまして、五百万というお示しの、農地保有の合理化のための特定の要件のもとでの譲渡につきましては、いわば任意の売買でございます。そういった任意の売買につきましても、お示しのような農地保有の合理化の重要性ということにかんがみまして、特別な配慮をして五百万という控除を置いているわけでございまして、これは税制上の配慮としてぎりぎりいっぱいのものであるということを御理解いただきたいと思います。
  174. 新村源雄

    ○新村(源)委員 終わります。
  175. 内海英男

    内海委員長 小川国彦君。
  176. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、この三法に関連いたしまして、農林省の基本的な考え方につき、最初に農林大臣にお伺いをしたいと思うわけであります。  今度の農地利用増進法案、農地法農業委員会法の一部改正、この三法の審議には、農林省当局はもちろん、国会においても相当の審議時間を費やしてこの法案の審議に当たるわけですが、これだけの精力を費やして取り組む三法、特にその中心である農用地利用増進法の制定と、それから農地法農業委員会法の改正、これによって日本農業をどう変革できるのか、そういう目標、そのプロセス、構想、そういうもの、この三法の制定なり改正なりの中で、農林大臣としてはこの法の成果というものをどういうふうに期待しておられるか、その辺をまずお伺いしておきたい。
  177. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどからお答えをいたしておるのでございますが、私どもといたしましては、将来にわたって、日本農業を一生懸命やろうとしていただいている農家方々に対して、明るい希望の持てる農業を目指していかなければならないことは当然でございます。  そういう考え方に立って、いま農政審議会にいろいろと御検討願っておるわけでございますが、私といたしましては、農政審議会の答申を踏まえて最終的には決めていかなければならないと思っおりますけれども、大体の方向といたしましては、一つは、いま十年先を目指しての長期の需給見通しをぜひ立てなければいけないと思っております。そして、その長期の需給見通しは、国全体の長期の需給見通しとあわせて、いま北海道研究会というところで北海道の問題をやっていただいておりますけれども農政局単位ぐらいのいわゆる各地方のブロックの、国全体のものをブロックのどこでどういうものをどれくらいつくるかというような需給見通しがもし立てられれば大変いいのじゃなかろうか。あるいは、いま地域農政推進特別事業というものをお願いいたしておりますが、それぞれの地域自分たちは何をつくるべきかということを議論していただいているわけでございまして、そういう地方の議論、こういうものを三位一体となった形でやっていこうというのが一つ方向でございます。  それからいま一つは、ちょうどこの御提案申し上げておりますものに関連をいたしてまいりますけれども構造政策としては、生産性の高い中核農家中心とした形で農業の展開をしていきたいという構造政策考えております。  三つ目には、先ほどお話があって、私ちょっとなかなかむずかしいと申し上げましたのは価格政策でございます。確かに、一方においては生産者に再生産意欲を持っていただくような価格政策をとっていかなければならない。しかし、生産費所得補償方式までは正直なかなかとれない。そこで、これからいろいろ苦労していかなければならぬと思いますけれども、需給状況を見ながら、できる限り生産者の意欲を阻害しないような形で価格政策考えていかなければならない。  それからいま一つは、農村社会においてできる限り生活水準の向上を図っていけるようないわゆる生活基盤整備、こういうものにももっと力を入れていかなければならないのじゃなかろうか。  いま一つは、技術開発にもっと力を入れて、いろいろと転作をお願いいたしておりますし、そういう点では品種改良その他の技術開発も力を入れていかなければならない。  同時に最後は、もう一つの問題は、生産者に幾ら努力していただいても、流通段階で結果的にコストが高くなってしまって消費者に高いものがいったのではいけませんので、やはりそういう流通、加工面においてより効率的な合理的な政策を進めていかなければならないだろう。  私としてはそんなようなビジョンを描いておりますけれども、そういうようなこともいま農政審議会にお話をいたしながらいろいろと議論をしていただいているわけでございまして、いずれにしても、農政審議会から出てまいりましたそういう答申を踏まえて、まあまあいま申し上げたような基本的な考え方に立って、将来は農業の体質を強化し、そしてそれによって食糧の自給力を高め、そして国民生活の安定に寄与していきたい、これが私の農政に対する基本的な考え方でございます。
  178. 小川国彦

    ○小川(国)委員 戦後三十年自民党が担当してきている政府農政というものを見てまいりますと、大多数の農民は、自己の所有している土地を最大限に利用して農業で生きていきたい、そういう希望を持っておりますし、特に農地法の面では、自作農主義に基づいて複合的な経営の中で農業生産を上げ、農業収入をふやしていきたい、こういうことで進んできたと思うのです。ずっと三十年の経過を見、今日の農業を見ると、先ほど来論議の中で出ておりますように、農業収入よりも農外収入の方が上回ってしまって、農業専業でやっている者が二種兼業よりもはるかに収入では劣ってしまう。これは、言うならば政府農政というものが農業専業では立ち行かないという事態に追い込んできたのではないか、私はそういうふうに感ずるわけです。特に、米の生産地帯にしてみれば、自分農地を一〇〇%生かせるならば、そこで米の生産だけでも一定の所得を上げられるのに、減反政策という形の中で減収せざるを得ない。こういう状況に追い込んだのは、やはりまた自民党の農政であり、政府農政がそういう形に追い込んできている。そういう点の反省なしに、ただ糊塗的な対策だけでこの法案を提出してくるという、その法案提出以前の前提の問題歴史、経過の問題こういう問題についてもっと厳しい反省がなければならないのじゃないか。  そういう意味で、いま農林大臣は、これからの十年の長期見通し、それから構造政策価格政策、流通政策、当然多様な農業政策面を取り上げられたわけでありますけれども、それらの問題以前に、いま日本農政が抱えている一番大きな問題は、いかにして、外国からの農産物の大量化しつつある輸入をどう食いとめていくのか。それができるならば、もちろん米の需給調整なんてやらなくても当然いいわけでありまして、たとえば小麦一つを見ましても、輸入を見ますと、昭和五十三年度の主要農産物の輸入状況を見ると、米が四万五千トン、麦類が七百七十三万一千トン、大豆が四百二十六万トン、その他五十九万五千トンを入れると千二百六十三万一千トンの食用穀物の輸入があります。それからまた、えさ用の麦類が二百七十四万五千トン、トウモロコシが八百二万三千トン、マイロが四百六十六万六千トン、大豆油かすが三十万八千トン、その他ふすまが十五万九千トン、これでもう千五百九十万トン、ざっと三千万トン近いものがいろいろな形で、食糧、えさ含めて輸入をされている。さらに、乳製品の輸入に至っては二百五十万トン。牛肉が十三万六千トン、豚肉が十一万七千トン。これだけの食用の穀物から、えさ用の穀物から、乳製品から、牛肉、豚肉の畜産製品まで輸入されている。濃厚飼料の輸入は、またこれは千四百三万トンございます。  こういうふうに見てまいりますと、こうした穀物なりえさなりあるいは畜産製品なりの輸入が、この三十年間ずっと上昇のカーブの一途をたどってきている。これが削減されるという方向が全くない。そういう状況の中で、これから十年間の長期需給見通しを立てると農林大臣はおっしゃるのですが、この農産物の輸入を削減していく方向が明確に出されない限り、いかに国内の農産物を需給見通しを伸ばしていこうと言っても、輸入が減らない限りこれは価格で当然頭打ちになってくるわけでありまして、そういう点では、農用地利用によって大型農家をつくってそうして生産性を上げようということですが、一体何をつくるかでもすぐ頭打ちになってくるわけですし、そこには価格政策ももちろんない。そうなってきますと、私どもは、これだけこの三法に審議時間をかけようというなら、その前提として、日本農政方向というものを根本から変革していくというような考え方、そういうものがこれから十年の農政ビジョンの中にまずなければならない。食糧の輸入をやめて国内自給をふやしていく、そういう一つの基本的な計画があって、その中にこういう三法が提出されてくるというなら私どもはわかるのですが、そういう前段が欠けていて、糊塗的なこういう法改正なり法制定の手段だけで、当面する農業の危機的な状況が乗り切れるのか、これからの将来の国内食糧自給の見通しが立っていくのか、その点を非常に疑問に思うわけなんですが、その点について農林大臣として、十年後の食糧自給がこれからできるなんということではなくて、いま時点においてこういう状況をどう把握して、そういう問題に農林省としてはどう取り組んでいるのか、その辺の見解をひとつ承りたい。
  179. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま、三十年の畜産物の輸入がどんどん増加してきたというお話でございますが、私の知る限りでは三十年ということではないのでありまして、また、結果的に自給力が非常に弱まってきたのも、だから三十年前からではないわけでございます。やはり昭和三十年代の後半から四十年代の後半にかけましての約十年間の、いわゆる高度経済成長に日本農業が確かについていけなかった面があったと、私はそう反省をしているわけで、そういうときに輸入が相当ふえてきたのではないかと思うわけでございます。ですから、結果的に国内の生産ができておれば何も輸入をする必要はないわけでございまして、よくどうもおっしゃる方は、何か強制的に日本が買わされているというお話でございますが、私は決してそんな強制的に買わされているとは考えていないのでございまして、日本の国内で賄えないものを輸入しておると感じておるわけでございます。  ですから、たとえば豚肉にいたしましても乳製品にいたしましても、去年の秋ごろからは、あるいは乳製品はもっと前からやはり国内で余ってきたときには抑えているわけでございまして、そういう点は、私は、決して輸入政策というものが何も国内で余っておる上にどんどん輸入を重ねておるということはない、これだけはぜひひとつ御理解をいただきたいわけでございます。  いずれにいたしましても、いま御指摘ございましたけれども、私は、先ほども申し上げておりますように、この三法というものは、今後の私どもの長期的なビジョンを実行していく上において受けざらとしてぜひ構造政策の中で必要である、こう考えておるわけでございます。それは、日本農業規模というものは幾ら努力をしても、外国と同じような大きな規模になることができないことは明らかであります。そういう面において、国民皆さんにも、日本の国内でできるものはある程度割り高である、割り高であることは御理解を願いたいということで、これからとも私ども啓蒙に努力をしていかなければならぬと思っております。  しかしながら、割り高であるけれども、先ほども申し上げましたが、それじゃ幾ら高くてもいいかというわけにはなかなか、国民理解が得られるわけではないわけでございまして、やはりある程度少しでも安くなるような努力だけはひとつ生産者もしていただかなければならないだろう。それを考えますと、やはりある程度規模拡大ということを考えていかないといけないのでありまして、そういう面で、規模拡大を図るにはどうしてもこの三法をお願いをしなければならぬ、こういうことで出しておるということで御理解をいただきたいわけでございます。
  180. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣お聞き違いになったみたいなんですが、戦後三十年日本農政を担当してきたのは自民党の内閣で、そういう中で、最近の趨勢としては、穀物にしてもあるいはまたえさにしても畜産製品にしても、輸入の減ったという事例はないと私は思うのです。年々ふえてきている。ですから、農産物輸入で現実に減ったものがあったとしたら私はそれを農林省の方に提示してもらいたいと思うのです、農産物輸入でこういうものを減らすことに成功してきていると。
  181. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私の申し上げておるのは、ですから、決していまのは食い違ってなかったようでございますが、私は、いわゆる高度経済成長によって日本農業がそれについていけなかったことは事実だ、そういう点でやはり生産力が低下してきた、生産力が低下してきたから結果的には国内の食糧を賄うために輸入がふえてきたんだ、こういう判断をしておるわけでございます。  そこで、いま減ってきたと言っているのは、先ほど申し上げましたように、一時的には乳製品あるいは現在の豚肉、これは正直いまは一時的には減っておるわけでございます。
  182. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は一時的にということを聞いているのじゃなくて、やはり問題は、農林省が農産物輸入制限を当然行われている品目が大多数あるわけです。そういうものについては、当然国内自給とのにらみ合いの中から、十年計画の中で農産物輸入はこういうふうに抑えていくんだという方向がない国内自給は、幾ら農林省が何回立て直しても、それはやはり絵にかいたもちになってしまうんじゃないか。農産物輸入をどう抑えていくのかという、そういう方向をこれからの農政の見通しの中で立てられないものかどうかですね。その辺を私はしっかり承っておきたいと思う。
  183. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは先ほど私が最初に申し上げました中にあるわけでございまして、今後とも極力国民の御理解の願えるような方向農家の方にも御努力を願い、そしてそれによって生産性を高めることによって、より生産量も増加をしていこうということでございまして、結果的にはそうなれば輸入は抑えられていく、こういうことになるわけでございまして、輸入を奨励するような考え方は毛頭ございませんし、できる限り国内で国民理解のもとに生産できるものはできるだけ国内で生産をして賄っていきたい、こういう考え方であるわけでございます。従来以上に輸入については抑制的な考え方でいきたいと思っておるわけでございます。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  184. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それは大臣、逆だと思うのですよ。たとえば、きょうの質疑の中でもございましたように、養豚がいいからというので関東から東北一帯にかけて養豚が盛んになった。一時的には養豚も伸びを示したけれども、牛肉の輸入の中で、それが結局豚肉の頭打ちになり、現在ではもう養豚をやっている農家の見通しというものは全く暗い状況に置かれている。北海道の酪農を初め、また全国的にも酪農がございますが、御承知のようにやはり乳製品のラッシュのようなこの輸入状況の中で、それを生乳に換算をしていけば、これは大変な国内の乳量の消費にもつながるし、あるいは価格アップにもつながっていく。そういう面では、私は、大臣が国内のものをただつくらせたから輸入が減っていくというのではなくて、輸入を抑える中でどういうふうに国内の生産を上げていくかということだと思う。輸入が減っていけば当然国内の需要は伸びていくし、もちろんそこに価格のアンバランスがあることは事実でありますけれども、そこの調整はこれからの長期見通しの中で立てていく。その辺の、輸入を抑え国内の自給を高めるという、その両者の兼ね合いの中での五カ年計画なり十カ年計画なり、そういう長期計画というものを農林省が持たなければ、いかに国内的な長期の需給見通しをやろうが、構造政策をやろうが、価格政策をやろうが、流通政策をやろうが、海外農産物の輸入が増強の一途の中では国内の自給は私はあり得ない、こういうふうに思うので、その点、これから農林省が、いままでないということは大変残念ですけれども、これからでももしそういうものをつくっていくとするならば、その海外農産物の輸入規制というものをどういう方向で持っていくのか、それに対する農林省のしっかりした見解なり見通しなり方針なりを立ててほしい、私はこういうふうに思うわけなんです。
  185. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、国内で賄えるもの、国内で生産できるもの、ただしそれは先ほど来申し上げておりますように幾ら高くついてもいいというわけにはまいらないと思いますけれども、ある程度割り高でも国民理解してもらえる範囲においての割り高のものをつくっていただければ、それによって輸入量が落ちていくということは私はそれは当然だ、こう思っているわけでございます。今後ともできる限り、制度の許す範囲で輸入というものは抑制ぎみにいくべきだ、こう考えておるわけでございます。ただ、いま豚というお話もございましたけれども、あるいは乳製品が何かラッシュだとおっしゃいましたが、それは確かに去年の夏ごろまではそういうことがあったのかもしれませんけれども、去年の秋以降は相当いま抑えておるわけでございまして、それでもなおかつ入ってくるというものは、たとえば豚肉に例をとるならば、日本の豚肉ではどうしても品質的に合わないものがいま入っている程度でありまして、決していま豚肉がどんどん入ってきているわけではないわけでございますので、そういう点は、私は将来ともに、日本の国内でできるだけいいものが、割り高であってもいまよりはできるだけ安くなるというような方向に行くならば、そういうものを国内で皆さんに消費をしていただこうという方向努力をしてまいりますし、外国から入ってくるものは結果的に当然それで抑えられる、こう思っておるわけでありまして、何か農林省が輸入について全く考え方がないのじゃないかということではなくて、私どもはできるだけ抑えていきたい。しかしながら、賄い切れないものは、これはやむを得ないわけでございますので、その辺はどっちが先かということでございますけれども、私は、国内で賄えるものはできるだけ国内で生産をしていただきたい、こういう考え方であるわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  186. 小川国彦

    ○小川(国)委員 最近「悪魔の選択」という本が出てきているんですが、食糧が戦略物資になってきている。特にソ連とアメリカの間では、片方は核兵器の制限と農産物の輸入とを大きな政治的な駆け引きの材料にした。現実にもうあり得るような状況があるわけです。いま五百万トンから七百万トンに来ている日本の小麦の輸入も、日米関係が円滑にいっているときはいいですが、一朝有事の際には輸入がとまるということも当然あり得る。じゃあそれにかわる米の生産が直ちに五百万トン、七百万トンできるか。私はやはりできないと思う。そういう点から、国内の食糧というものを戦略的なものという中でもとらえていくならば、小麦の五百万トン、七百万トンを減らして、これを米の自給度を——当然国内自給できるわけですから、減反をなくして、米の自給でもってそれが賄えるようなふうに国内の食糧消費の方向を変えていく、そういう努力も必要であろうと思うし、それから、たとえばいまえさ用の大麦なども十分国内で転換作物としてつくれるものまで商社の輸入割り当ての中で依然として継続してやっている。えさ用の大麦などは当然廃止して、国内の農民が引き合う価格でつくらせるべきじゃないか。ですから、いまの農産物輸入には全部商社割りというものが農林省なり通産省の中にあって、商社の競争の中でその輸入割り当てを減らすどころかふえる方向に行っている。まさに通産省ペースの中での農政になってしまっているんじゃないか。通産行政にも経験の深い農林大臣ですから、そういう通産省ペースに引き回される日本農政ではなくて、もっと、食糧の国際的な戦略物資になりつつある状況とか、国内的な、何によって国内の食糧が自給し得るのかという、そういう方向を見据えた対策にいまから取り組んでもらわなければならないんじゃないか、私はこういうように思いますが、もう一度大臣の見解をお伺いします。
  187. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私も、具体的に五十五年度の大麦その他の商社割り当てをこれからしなければならぬわけでございまして、国内で賄える限りはできるだけ国内で賄いたいと思うのでございます。  ただ、問題は、特にえさの場合には、畜産農家がそういう国内産の飼料原料をお使いいただけるかどうかということ、これがすぐ価格にもはね返ってまいります。その辺のところをやはりよく見きわめていかないと、なかなか簡単に、ただ割り当てをカットしろというだけでいかないのじゃなかろうかと私は思っておるわけでありまして、その辺のところが、ある程度国内の畜産物が高くなってもよろしい、そして飼料としての飼料原料が高くなってもよろしいということになってくれば、もっと国内で大麦もつくっていただきたい、こういうことがお願いできるわけでございます。  それから、小麦につきましては、これはやはり日本国民の食生活が正直、私ども、いま一生懸命米の消費拡大をお願いしておりましても、長年の戦後の米の不足時代の影響かと思うのでございますけれども、米の消費は依然として落ちてきておるわけでございまして、強制的に、小麦を食べないで、パン、うどん、そばをやめちゃって、全部御飯を食べろということができれば、これはもう私ども大変ありがたいことなんで、いまの六百五十万トンすぐ消化できるわけでございますが、なかなかそう食生活を一度にまた全部を米飯に変えていくわけにはいかないのじゃなかろうか。私どもは、できるだけ国民により多くお米を食べていただきたいということを努力していかなければならないし、外国から入ってくる小麦よりは国内で小麦をつくるように努力をしていかなければならぬことは当然でございまして、そういう点で、いま減反というものも、決して私どもは、ただお米の減反ということだけではなくて、いま御指摘のように外国から買っておる小麦などをぜひひとつつくっていただきたい、こういうことで水田利用再編対策もお願いしているわけでございますので、どうか御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  188. 小川国彦

    ○小川(国)委員 えさ用の大麦なども、ただえさ用の大麦だけで考えればそういうことでありますけれども、現に米をえさ用に払い下げている。トン当たり三万円でしたか。しかも、加工料にまた三万円かけている。そういうような実態から見ますと、私どもは、そういう経費を考えたならば、国内の大麦をつくらしても十分国の税金の使い方としては——そういう米の余ったものをえさ用に回すよりは、最初からえさ用の大麦をつくらせれば、国内の予算の経費の使い方としてもはるかに効率的ではないか。これは農林大臣にぜひ御検討願いたいと思いますが……。
  189. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまの御指摘は、過剰米処理の計算で、結局過剰米をトン三十万近くまでしているものを三万円でやっちゃえば二十七万円損ではないか、それだけの金を大麦にかければもっと大麦をつくってもらえるのじゃないか、こういうお話かと思うのでございますが、いつもそういう形であれば、そういう御議論も私はよく理解できるわけでございます。ただ、私どもはいま米の需給均衡という形でやっているわけでございまして、いつもいつもそういうことでいいのかなという感じは持っているわけで、これも皆財政負担でございますので、財政負担がそれこそいま過剰米を処理するのに一兆円以上金が要るだろう、こういうことでございまして、これだけのことも国民からは相当批判を受けているわけでございますので、いつもいつも一兆円ぐらい金をかけていけるという考え方でいけば、それはいまの御指摘の点私はよく理解できるわけでございます。しかし、そういうことがいつもやれるのかどうかという点においては、なかなか国民の合意が得られないのではないか。過剰米処理の問題も、結果的に過剰米が生まれてきたのでありまして、決して私ども、初めから過剰米ができるのが当然だと思っていたわけではないのでございまして、結果的に出てきた過剰米を処理するためにやむを得ない処置をとっておるということでございますので、それを例にとって、今後ともどうせできた米をえさにするつもりなら大麦をどんどんつくらせればいいじゃないかということは、恒久的な政策としては私はなかなかとりにくいものではなかろうかと思うわけでございます。
  190. 小川国彦

    ○小川(国)委員 逆に長い目で見ますと、五年ごとに農林省は米の処理のために一兆円ずつ使っているのですよ。だから、それを通して見るならば——また大臣は、来年か五年後も大臣をやっていていただけると大変幸いなんですが、トータルで見ると、やっぱりじゃあえさ用大麦をつくらした方がよかったんじゃないか。私はそれについては別途の計算もありますが、ここではその問題は省略いたしますけれども、これは農林省の局長さん方も大ぜいいらっしゃるので、そういう私の示唆した方向については十分御検討を願いたい、こういうふうに思います。  それからもう一つ、いま大臣の方で十年長期の需給見通しというものを立てておられるということなんですが、そういう中で個別の農家の目標は一体どういうところに置かれているのか。地域ごとの農家の所有面積、それはどの辺が妥当か、どういうふうに農林省はその点お考えになっておりますか。
  191. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これも農政審議会の御議論の中でいろいろ私どもやっておるわけでございますが、いま直ちにここでこういう目標だということを申し上げられるまでの数字は持ち合わせておりません。
  192. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、昭和五十一年に国会に当選してきてから、五十二年のたしか時の福田総理に対して、日本農家の将来のあるべき姿というものは、それぞれの農家地域ごとの農家群に対して、所有面積はどういうもので、栽培品目はどういうもので、年次の農家の所得目標はどういうふうになっていくのか、そういうような地域別の農家群の目標というものは政府はつくれないのかということでただしましたら、そのとき福田総理は、それはあるということを答弁でおっしゃっておったのですが、現段階でもないのでございましょうか。
  193. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  福田総理大臣時代の点については、私ども、いま資料で調べてみますけれども、かつて地域別にそれぞれの経営類型等を試算いたしたことはございます。  現在農政審で検討いただいておりますのは、こうした形の地域別、類型別の農家目標を考えるかということで、一つのシミュレーションなりの算定をいたしておることは事実でございます。そうした考え方が一方にございますのと、他方、もう一つ考え方といたしまして、現在進めております地域農政というような立場、あるいは御提案いたしております利用増進のような考え方で、そうしたものについて国が基準的な考え方でこれを全国的、地域的に当てはめるか、むしろ地域の創意なり工夫、あるいは地域社会におきます英知を結集した形の発生的な考え方をできるだけ尊重していく、行政の介入よりもそうした形をとるべきではないかという考え方がございます。目下、農政審では、その両者の考え方についていろいろ議論をしておるという段階でございますので、そうした状況を御報告申し上げておきます。
  194. 小川国彦

    ○小川(国)委員 農林省には優秀な、抜群の官僚群の皆さんがそろっていらっしゃるので、あえて農政審議会に一々答申をもらわなくても、その辺のところはもっとりっぱな答案が農林省自体でおできになるのじゃないかというふうに思っておりますが、いまの官房長の答弁では、地域農民ごとにひとつ考えてくれというようなことなんですけれども、やはり国の農政ビジョンというものを考えたら、農林省自体が地域ごとに農民のあるべき将来像をきちんと示せる、そういうようなものにぜひ取り組んでいただきたいと思います。  次に、農地法の具体的な論議の中に入ります。  定額金納制の廃止の問題ですが、この廃止後に法定小作料ももちろん廃止になる。そうすると、今後標準小作料あり、実勢小作料あり、それから物納小作料あり、こういうことになりますと、一体小作料の設定というものはどこをとって適正な小作料と見ていくのか、この辺はどういうふうに推定されておりますか。
  195. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 現在猶予措置としてとられておりますところの統制小作料はこの九月になくなります。それから、現在私ども提案しております法案では、定額金納制規定を廃止するということにいたしております。そうなりますと、小作料物納でもよろしいということであります。実態的には、現在行われておりますのは、相対で自由にそれが形成されるということでございます。そうなりますと、めどというか、安定した耕作、経営を行うために、小作料についての何か標準が要るのではないかということで、実は十年前、農地法改正の際に現在ある標準小作料制度が設けられたわけでございます。これは農業委員会ごとにその地域の実情に応じて一定のルールのもとに設けられますが、ほとんどの農業委員会がこれを設定いたしておるところでございます。  今後これがどういうふうになっていくかということでございますが、物納が出てくる、それから統制小作料がなくなる。そうなりますと、経済の実態としてそれほど混乱が起こるかと言われますと、多分起こらないだろうとは言えますが、起こることが全くないとも言えない。そういう混乱を防止するためには、特に統制小作料の廃止に伴う問題につきましては、趣旨を徹底させると同時に、そのために要する予算措置、普及等の経費についても、あるいは紛争が起こった場合の紛争解決の措置についても、予算的に手当てをするというようなことを行っているわけでございます。  ただ、一般的に小作料の水準、あり方について、これをどう調整していくかということになりますと、実は今回の農地法の一部を改正する法律案の検討に当たっては、標準小作料制度もなくして全くの自由にしてはどうかという話があったのでございますが、私どもは、そこまで野放しにするのは適当でない、むしろ標準小作料の仕組みは残しておいて、これを一つのめどとして活用してもらうということを考えているわけでございます。物納小作料になりましても、私どもは、物自体についての評価ということも含めまして、物納の場合の標準小作料の決め方といいますか考え方、設定の仕方等について指導してまいるつもりでございます。そういったことによりまして、確かに小作料制度は今回の改正案では大きく変わることになっておりますけれども、従来と同様あるいはそれ以上に安定化のために努力してまいりたいというふうに考えております。
  196. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に、いまおっしゃるように定額金納制を廃止して物納制になっていった場合、食管法では、譲渡については農林大臣が売り先を定めるというように先ほど食糧庁長官は答弁をしておったのですが、そういう形で取り扱いをされるわけでしょうけれども、どうも私どもの感じでは、これは食管法の枠をはみ出たものになるのじゃないか、食管法に穴をあけるおそれはないか、こういうふうに感ずるわけであります。しかも、物納制に伴う考え方というものの中には、先ほど来議論がありましたように、日本農民運動の長い歴史の中で、地主の屋敷に俵が山と積まれている、そういう物納小作料のイメージというものはまだ日本農民の中には強く残っている。そういう点もありますし、また、物納小作料として納められる米が大変な量になってくるのじゃないかと思われるのですが、これについてそのトン数は一体どのぐらいになるというふうに食糧庁では推定をされているか、その点をちょっと伺いたいと思うのです。
  197. 松本作衞

    松本(作)政府委員 小作米として流れたものがさらに地主の手から大きく流通するのではないかという点につきましては、私ども、それがどの程度の数量になるかということを具体的に試算いたしたものがございませんけれども、従来現物で小作料を納めておるという実例がございますが、それらの実例等を積み重ねてみましたところでは、それほど大きなものになるとは考えられない、いわゆる飯米の数量の範囲内にとどまるものというふうに想定をしておるわけでございます。
  198. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうしますと、昔の地主制度の復活、物納小作料のイメージを一掃するためにも、実態がそういうことであれば、いわゆる物納制は認める、しかしそれは飯米程度に限るという明確な条件を付したらどうか、こういうふうに思いますが、その点についてはいかがですか。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 実はそういう限定についても内部的に検討いたしましたが、飯米程度に限るとした場合に、それは一体実行上どうやってチェックするのか。特に自分のところで一部わずかながらつくっておって、その追加分として飯米に充当する場合であるとか、複数の農家に貸し出しをしておりまして、そこから小作料を受ける場合、その計算をどうするかとか、いろいろな問題がありますし、それから、ほかの農産物の場合は飯米に相当する部分についてはどう考えるかという、役人の立法技術上の問題を申し上げて大変恐縮でございますが、そういう種々の問題があることと、それから、実質的には現在の食糧管理の体制からいたしますと、いろいろ価格条件その他からしても、それから実際に貸し手が飯米程度のものにとどめたいというような、別にアンケート調査をしたわけではございませんが、種々の聞き取り等からすればおおむねその範囲にとどまるというふうに考えられますものですから、特にそういう飯米の程度に限るということを法律上明文で規定するということにはしておらないわけでございます。
  200. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それから、食糧庁長官に伺いますが、これは政府米に入りますか、それとも自主流通米に入りますか、どういう種類の米の取り扱いになるのでございましょうか。
  201. 松本作衞

    松本(作)政府委員 地主が取得をいたしました、譲渡を受けました小作米について、余ったものを流通するという場合には、私ども考えておりますのは、現在、限度数量以上のものを出荷いたします際には、超過米として自主流通ルートに乗って販売をするということにいたしておりますので、それと同じような取り扱いをしたらどうかと考えておるわけでございます。
  202. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に、私は、農業生産法人の業務執行役員の要件緩和の問題について伺いたいと思いますが、農業生産法人は三十七年に創設されて、四十五年に大幅改正を経てまいりましたが、その設置数、経営面積等、全く伸びがないわけでございます。関係資料の十三ページに出てまいりますけれども、農事組合法人を見ましても、四十六年千三百八、五十四年で千十五と、大体千台からそれを下回っている組織状況でありますし、それから特に新設の状況などを見ますと、四十六年三百六十八から、五十四年は二百四十四ということで、百台から二百台、三百台にとどまっている状況なんです。なぜ農業生産法人がこういうふうに伸びない状況にあるか、その点はどういうふうに理解されておりますか。
  203. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業生産法人ができますときは、種々それを要請する声が、背景があったわけでございます。一つは税制上の問題等もあったわけでございますが、そのときは、主として個人経営、家族経営の法人化というようなことが背景にあったと思うのでございます。  それから、実際にこれを進めてまいります場合、正直申し上げまして、日本農民の感情といいますか考え方というのは、全部が全部そうとは言いませんが、なかなか合理的な協業経営というものにはなじみにくいというようなこともありまして、これは確かにそれほどはかばかしい伸びは見せなかったわけでございます。構成要件等につきましても緩和措置を講じてまいったわけでございますが、努力の割りには確かにそれほど伸びなかったという実態があるわけでございます。  ただ、現在も要件の中で、特に常勤役員の構成要件でもって、過半数が労働力とともに農地を提供しなければならないということになっておりますが、この点は緩和を図ることによって、若い人たちの、農地を持たないけれども農業経営をやりたい、しかも仲間でやりたいという人たちにとっては、ある程度その道を開くことになるのではないかと考えております。そういうことで今回要件緩和についてお願いをしているところでございます。
  204. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そういう方向努力は認められるわけなんですが、私ども実は畜産をやっている、たとえば養豚をやっている農家あるいは酪農をやっている農家、これを法人組織にしようというようなことでずいぶん農業法人づくりに協力をしてまいったわけなんですが、その中で一番最後に隘路になりますのは、税法上農業生産法人に対する恩典とか税の優遇措置というものが非常に乏しい。したがって、最後に参りますと、農家人たちは、むしろこれを会社組織にしていった方がいろいろ税法上の恩典がある。たとえば会社のいろいろな経費の認め方と農業生産法人の経費の見方には非常に差異がある。あるいはまた、医療優遇税制のような、あるいは教育優遇税制のようなものが農業にはない、そういう税制上のメリットが農業生産法人にしてしまうと非常に乏しいということから、養豚業なんかを何々畜産会社というふうに、会社、企業の形に変えていってしまう例が多いわけなんです。そういう税制面の冷遇されている状況を改善するというような面についてはいかがでございましょうか。
  205. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業生産法人に対する税制上の優遇措置でございますが、これは幾つかございまして、たとえば農業生産法人の譲渡所得の特例、これは五百万円の特別控除があるとか、そのほか登録免許税、不動産取得税、あるいは譲渡所得については納期限の延長といったようなさらに特例もあるわけでございます。それがしかし程度がどうかということになりますと、ほかの優遇措置、医師に対する優遇措置なり、あるいは株式会社一般の場合と比べてどうかということになりますと、確かに十分に手当てされていると言いがたい点はあるかと思いますが、それなりにこの農業生産法人の育成を図るという観点から、従来からこういう特例措置が講じられてまいっているところでございます。法人化する、特に株式会社みたいな営利企業化するということについては、これはやはり現在もなおこのことについてはためらわれるわけでございまして、税法上扱いが簡便であるから、あるいは有利な取り扱いを受けられるからということで株式会社的なものにするということについては、私ども考えておらないところでございます。なお税制の問題につきましては、今後さらに検討してまいりたいと考えております。
  206. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に、農業生産法人要件緩和の中に、従来は業務執行役員の要件としては農地保有が条件とされていたわけですが、今度は農作業に主として従事している当該法人の常時従事者が業務執行役員の過半を占めていれば足りる、土地を持たなくても、大体年間百五十日農業に従事していれば、その人たちが過半数を占めていればいい、こういうことですが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  207. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 そのとおりでございます。
  208. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その場合、設立した農業生産法人農地取得許可は、これからは市町村農業委員会の許可事項になるわけでございますか。
  209. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 これは農業生産法人が、その住所が当該市町村にあるときは農業委員会、それからほかの市町村にあるときは都道府県知事の許可を受けるということになります。
  210. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それで、当該市村町にある場合、当該市町村で農地取得許可を受けた、ところが、たとえば農作業に従事している当該法人の常時従事者が現実にたとえば百五十日間農業に従事しているかどうか、そういうことの確認はどういうところでおやりになりますか。
  211. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業生産法人が、その後適正な運営、適正な農地取得に基づいた正当な経営を行っているかどうかということになりますと、そのチェックを行うのに、農業委員会は管内の農業生産法人がその、要件を満たしているかどうかについて随時調査をするということをまず考えておるわけでございます。それから、都道府県が農業委員会の協力を得て、毎年八月一日現在で法人の代表者等から聞き取り調査を行うということをやっております。それから、農業生産法人がその要件を欠くこととなった場合、いま申し上げましたような調査なりあるいは聞き取りということで要件を欠くというふうに判断される場合には、当該法人が所有権もしくは使用収益権を有する農地等につきまして農業委員会が公示する。そして、一定期間内にこれらの農地を処分しないときは国がこれを買収するということにされております。国といたしましても、農業生産法人の今回の要件緩和をすることに伴いまして、このことが農外者による農地取得に悪用されるというようなことがあってはなりませんので、事務処理に当たっては、いま申し上げましたようなチェックを厳正に行うよう、都道府県、それから農業委員会を指導してまいりたいと考えております。
  212. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私はこの辺に多分に懸念を感ずるわけです。従来は農地所有ということが前提でありましたから、その資格要件はかなり厳しく点検できたと思うのでありますが、今度は農作業に従事している人が過半数でいいということになりますと、仮に民間企業なり商社なり、そういうところが、ダミーとしてこの農業生産法人を持とうというふうに考えて、そういう悪質なダミー的なものにこの農業生産法人づくりというものが悪用された場合、その場合に、土地を持っていないわけですからまずその点の確認はできない。それから、この百五十日果たして従事しているかどうかというのは、現行の農業委員会体制の中ではとてもチェックし切れるものではない。市町村農業委員会は、なるほど農業法人土地を取得するときにはその取得するための取得要件というものを数項目にわたって厳密にチェックをするわけで、取得する段階においてのチェックは私は徹底的に行われるだろうと思うのです。しかし、その法人が一たび動き出し、歩き出したときに、実態農業生産法人のあるべき姿ではない、そういう状況の中で、しかもこの農業生産法人土地取得は無制限かと思いますね。そういうことになりますと、農業生産法人というものが、本来の生産農民の集団ではなくて、そういう商社なり民間企業が介入してきたダミー的なものになってきた。そういうものを日常的な業務としてチェックするのには、いまの市町村農業委員会の一名か二名しかいない農業委員会の書記で、果たしてそういうチェックは可能なのかどうか、その点に非常に懸念を感ずるわけなんです。そういう点の配慮というものがなされなければならないのではないか。そういう点を法的に農業委員会によってチェックの機能を持たせるというようなことをどこかに明文化していくか、そういう配慮があってしかるべきではないかと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  213. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 御指摘の点はごもっともでございまして、私が先ほど答弁いたしました趣旨も、そういうことを考えて十分都道府県、市町村を指導しながら、それから農業委員会を指導しながら、そういう厳正な審査、チェックを行うようにしてまいりたいということでございます。それをはっきりさせたらいいではないかということでございますが、どういう形ではっきりさせるかはこれから検討さしていただきますが、通達そのほかのことについて内部で相談をしてまいりたいと考えます。
  214. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは通達等で果たしてチェックが可能であるかどうか。第一段階、通達でおやりになって、最終的には農地法の取り消し措置等の適用ができるというふうに御判断なすっているかどうか。
  215. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 私はチェックの仕方について具体的にはっきりさせるということを申し上げたわけでございますが、農地法に基づく具体的な措置といたしまして、第十五条の二、「農業生産法人農業生産法人でなくなった場合等における買収」という条文がございまして、この規定によりまして、先ほど申し上げましたように、農業生産法人がその要件を欠くこととなった場合には、当該法人が所有権もしくは使用収益権を有する農地等について農業委員会が公示し、そして一定期間内にこれらの農地を処分しないときは国がこれを買収することとしております。これを厳正に行ってまいるということになろうかと存じます。
  216. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に、農用地利用増進事業の中身についてでございますが、減反政策との関連はどうなるのでございましょうか。特に生産調整において貸し手と借り手どちらがその生産調整をかぶるのか、この点を承りたいと思います。
  217. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 利用増進計画は、直接には生産調整とかかわりを持たしたものではございません。ただ、利用増進計画に基づいて利用権の設定が行われた場合、その農地に関する生産調整はどちらがどういう形でかぶるかということでございますが、これはあるいは農蚕園芸局の方からお答えがあるかもしれませんが、生産者がこれを受けるということになると私ども理解いたしております。
  218. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 農家に対します転作目標の配分につきましては、これは市町村が個々の農家の経営事情等を勘案して農家ごとに行っておるわけでございます。農家がその目標配分を受けて、どこの水田で転作するかは、個々の農家が選択することになるわけでございます。したがいまして、自己所有田で転作してもいいわけでございますし、また他人から借り受けました水田で転作しても差し支えないわけでございます。そこは農家の選択に任されておるということでございます。したがいまして、水田に着目してみますれば、農用地利用増進事業を通じて貸借が行われた水田につきましては、一般の貸借が行われた水田と同様でございまして、その借り受けた農家において転作が行われることになりますし、転作奨励補助金も転作をした借り受け農家に交付される、こういう取り扱いになっております。
  219. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、今度米の減反政策の行われている状況の中では、この農用地利用増進法というものは当然転作のための利用増進法の方向をとらざるを得ないというふうに思うのですが、その場合、転作作物は何をつくるか、転作作物の中で小作料を払ってなおかつ採算のとれる作物というものはどういうものがお考えになれますか。
  220. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 転作作物は何をつくるかということになりますと、これは構造改善局だけでなしに、農林省全体の、それから特に農蚕園芸局の所管するところでございますが、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、農用地利用増進事業それ自身は直接に転作と関係を持たしているものではございません。転作はこの利用増進に係る地域にも、地域といいますかそれによって利用権が設定される農地にも、それ以外の一般の農地にも、これは同じようにかかってくる性質のものであると思います。それから、転作をしなければ利用権の設定が行われないというようなものでもございません。ただ、利用権の設定が行われる地域、その農地につきましても転作はあり得るわけでございます。  転作物に何をつくるかというそれ自体は、これは所管局長がおりますので、そちらから答弁してもらうことにいたします。
  221. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 農用地利用増進法等によりまして規模拡大を図るという際に、一体何をつくるか、特に転作というような場合に何をつくるかという問題があるわけでございますが、これにつきましては、何をつくるかというのはやはり基本的に農家の選択であろうというふうに思っております。  ただ、どういうものが多く期待されるかという問題につきましては、やはり現在需要の動向に即応した農業の再編成というものを進めようということでございますので、地域の実情によりますけれども、やはり麦なり大豆なり飼料作物なり、そういう土地利用型の作物の関係が相当多かろうと思いますし、また、野菜等の園芸作物等、これは合理的な輪作体系というものの促進を中心にして作付がされるであろうというふうに考えます。そういう面の指導もしてまいりたい、かように思っております。
  222. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いま農蚕園芸局長は、麦なり大豆なり野菜なりというふうに、農家の自主的な選択というふうな形に任されてしまっているのですが、結局農用地を利用して何をつくっていくかというようなこともきちっとした方向として示されないと、どうも中身のない増進法になってしまって、単なる手続法に終わってしまうんじゃないか、そういうおそれを持つわけなんですが、この中身の充実ということについては、もう少し積極的な方針なりお考えはないのですか。
  223. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 中身の充実ということでございますが、農用地利用増進事業に参加するような農家、しかも、それが減反の割り当てを受ける、これはそのほかの方でも受けるわけでございますが、そういう際に一体何をつくっていき、またどういう形でやっていくかという話でございますけれども、しかし、これはただいまも申し上げましたように、地域によって農家の対応がいろいろあろうと思います。他の農家の転作を引き受けて、ただいま申し上げましたような麦なり大豆なりそういう畑作の経営規模を広げていこうという農家があるケースもございましょうし、また逆に、自分に配分された目標に応じた転作を行うことが労働力なり技術なり資本装備の面から非常にむずかしい、したがって、その水田を他の農家に貸して、そして借り受け農家に転作を肩がわりしてもらうというようなケースもあろうかと思うわけでございます。したがいまして、その辺のことはやはり地域により農家により相当違うと思いますし、その場合における作物を何にするかという問題につきましても、農家のいろいろな選択があろうと思うわけでございます。転作という問題につきましては、これは当然転作の奨励金等こういうものも今後とも交付をしていく、こういうことで考えておるわけでございますし、転作条件の整備なりあるいは営農指導なり、そういう面も強化していきたい、こう思っております。
  224. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それから、この増進法の実施主体が市町村となっておりますけれども現実には市町村の農政課とか農産課とかそういうところが担当していくと思いますが、これはとてもそういうところだけでは担い切れるものではない。市町村の農政課、農産課にはやはり本来的な業務があって、そこに加うるに、この事業が新たに付加されてくる。当然そこには農協なり農業委員会なりあるいはまた農民の自主的な参加があって、そして運営の主体をつくっていかなければならないというふうに思うのですが、その運営主体のあるべき姿、そこに農協農民の自主的な参加、そういうものを保証していくという方針は明確にできるのでありますか。
  225. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 この事業は、市町村が中心になって、農業委員会、それから農業協同組合、それから地域農業者のそれぞれの協力を得て行うということを予定いたしております。それぞれ法律的にあるいは政省令の段階において、農業生産法人なり農業協同組合の果たす機能というものはそれぞれ明らかにしてまいる考え方を持っております。  それから、そういったものの連携を保つために、関係者が集まって地域の問題について相談をする協議の場というものを、これは農用地利用増進事業ということもさることながら、御存じのように利用改善事業というものも予定いたしております。それら地域地域全体としての農地の有効利用というような問題を含めて寄り寄り相談をするということで、そういう相談のための協議会を設けるようにしてまいりたい。そして、そのことは指導通達の上で明らかにしてまいりたいと考えております。
  226. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この促進事業の中で一番懸念されます点は、二種兼業農家が切り捨てられるんではないかというおそれが一番抱かれているわけです。特に二種兼業の実態を見ますと、たとえば千葉県の農民の場合には、農家の平均所有面積は一・一ヘクタール。そうすると水田の場合などを見ますと、粗収入で大体百万。先日も、私毎日電車で通勤しているのですが、帰りの電車の中で、農閑期に出かせぎで町工場へ働いている農家の人が一杯飲んだ拍子に給料袋を出して、出かせぎの収入を見てくれと言うので見ましたら、十二万円の月給袋だったわけです。これなどで見ると、十二カ月見ても二百四十四万、農業の粗収入が百万、総収入で見て三百四十四万。隣の茨城あたりの農家になりますと、若干同じ規模農業収入が、粗収入で大体百二十万、農外収入の平均が二百九十万、そうすると総収入で四百十万というふうに、首都圏の農民であって、大体水田を耕作しながら農閑期に工場に勤める。しかも、いま水田地帯の場合には春二十日、秋二十日ぐらいで、ほとんど機械化農業ですから、年間通して十カ月以上はほとんど農外の仕事に携っている。こういう人たちが、それじゃ、この法のねらいとしているように農地を手放すかといったら、私は絶対に手放さないと思うのです。これは農業の基礎収入があって初めて成り立つわけで、出かせぎ者としては常に不完全な労働者の状態である。農業がやはり本来的な姿だというふうには思っているのです。しかし、現実には食えないから出かせぎに行く。こういう方々が今度の利用増進法案の中でどうも疎外されていくような感がしてならないわけなんです。その辺に対する政府考え方というものは、二種兼業というものをこの法案の中ではどういうふうに位置づけられるのか、その辺の考え方を承りたいと思います。
  227. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 二種兼業農家扱いにつきましては、これはこの利用増進法案だけではなくて、農林水産省全体の、地域農政をどういうふうに仕組んでいくかというかかわりの中でとらえられるべき問題であろうかと存じます。二種兼農家といえども、これはむしろ安定した農村社会の構成員でございますし、それから、二種兼農家なりといえども、それなりの生産シェアも占めているということもございまして、それを無理に二種兼農家はいけないんだ、専業的な、あるいは中核農家でなければ農業を営む資格はないというような、そういう扱いをするということは考えておらないわけでございます。特に最近におきましては、二種兼農家も含めまして、それから農外者も含めまして、地域全体としてのいわゆる村づくりといいますか、その地域の生活環境を含めまして村を生活空間の場としてとらえて構成していくということが出てまいっております。そういうかかわりの中において、二種兼農家の位置づけもはっきりさせてこれを取り扱っていくべきだと思いますし、この法案の中におきましても、もちろん農地流動化を促進する、そして貸していい人たちを見つけ出して、その人たちに勧めて、この趣旨を理解していただいて、農地の提供をお願いするということはございますが、これは強制するものではございません。あくまで本人の意思に基づいて、先になって期間さえ終われば返してもらえる、そういう保証があるのなら安心して貸せるという気持ちになっていただいて、農地を出していただく。しかし、それがどうしても心配でたまらない、それから自分としては先々になれば使う予定があるから出すわけにはいかないというなら、それは何も強制するものではございません、やむを得ないということになるわけでございます。できるだけ御理解を得ながら進めたいと思っておりますし、二種兼農家の中には、むしろ自分が使えない、耕作できない、しかし遊ばせておくのはもったいないから何か活用したいという方もあるわけですから、そこらは強制しない形でもある程度の提供はしていただけるものというふうに考えております。
  228. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それはあくまで農民の自主的な気持ちを中心にお考えになり、また方針を立てていっていただきたいと思います。  時間もあと五分になりましたので、最後に、農業委員会についての改正点についてお伺いをしたいと思うのです。  今度のこの三法の中で農業委員会の果たすべき、担うべき役割りというのは、非常に比重を占めてきていると思うわけであります。ただ、しかし、この担うべき任務なり責任と現状体制を対比してみますと寒心にたえないものが私どもあるわけです。  そういう点で、農業委員会の職員の数は全体として何名くらいおって、一委員会当たり、市の場合、町の場合、村の場合、平均何名くらいの職員がおるか。兼任のケースはそのうち何割くらいを占めているか。それから、農業委員会関係予算の総額はどのくらいになっているか。その中で現状の職員予算と事業推進のための予算というものを今後どう見ていくか。そういう三法実施に伴っての農業委員会体制をどういうふうに把握しておられるかという点を最後に伺いたいと思います。
  229. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  今回の農用地利用増進法案及び農地法改正法案によりまして、先生御指摘のように、農業委員会が大変重要な役割りを背負うわけでございます。現在の農業委員会の職員でございますが、総数は一万一千百七十六名でございます。そのうち専任職員数が七千五百九十九名、兼任職員数が三・千五百七十七名、一委員会当たりの職員数が三・四名でございます。  それから、農業委員会に対しまして国が義務的に負担をいたしております予算額が約百五十億でございます。現在の負担の仕方は法律で定められておりまして、その原則は、農地法関係の事務等の法令業務に係る委員の手当及び職員の設置費、この経費はすべて国庫負担になっておりまして、そのほかの経費につきましては、交付税の交付金で見ることになっております。ただし、これらの義務的な経費の負担のほかに、たとえば農用地高度利用促進事業とか農業就業改善事業とか農業者年金基金の業務の委託費とか、こういった個別の事業につきましては、それぞれの所管において業務ごとに補助を出しておりまして、これらの関係経費は総額で約二十億という状態でございます。  私どもは、このような国の経費の負担の関係が決まっておりますので、これを動かすということは非常にむずかしいと思いますけれども、しかしながら、このような関係経費、特にこれからは農用地の利用増進等その業務に着目した経費というものは伸ばしていくべきであるというふうに考えますので、これは私の局の所管ではございませんけれども、全体といたしまして、われわれとしては今後ともできるだけ経費の充実に努めていく所存でございます。
  230. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大変長時間にわたりましていろいろ質疑をさせていただきましたが、この法に対する党の態度等はまたこれからの問題と思いますが、この示された法だけではなくていろいろ政令、省令にゆだねられる点、通達にゆだねられる点もあるようでございますが、どうか日本農政の歯どめの役割りを担えるような、そういう内容の充実をさらにお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  231. 内海英男

    内海委員長 次回は、明十八日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十七分散会