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1980-04-16 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十六日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 津川 武一君    理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    菊池福治郎君       近藤 元次君    佐藤 信二君       佐藤  隆君    菅波  茂君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       玉沢徳一郎君    中島  衛君       福島 譲二君    保利 耕輔君       堀之内久男君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    新村 源雄君       馬場  昇君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    本郷 公威君       瀬野栄次郎君    武田 一夫君       中川利三郎君    神田  厚君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  武藤 嘉文君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    塚田  実君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         食糧庁長官   松本 作衞君  委員外出席者         自治省行政局行         政課長     中村 瑞夫君         自治省行政局振         興課長     木村  仁君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 四月十六日  辞任         補欠選任   西田  司君     中島  衛君 同日  辞任         補欠選任   中島  衛君     西田  司君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農用地利用増進法案内閣提出第七七号)  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第七  八号)  農業委員会等に関する法律等の一部を改正する  法律案内閣提出第七九号)      ————◇—————
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  農用地利用増進法案農地法の一部を改正する法律案及び農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神田厚君。
  3. 神田厚

    神田委員 私は、農用地利用増進法案農地法の一部を改正する法律案農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案、いわゆる農地法案について御質問を申し上げます。  まず最初に御質問申し上げたいのでありますが、農地流動化必要性農政課題だ、こういうことで、昭和三十六年に農業基本法が制定されて以来、農地法については昭和三十七年と四十五年の二回にわたりまして改正が実施され、また、昭和五十年には農振法の改正によりまして現行農用地利用増進事業が開始されるなど、この間二十年にわたりまして各種流動化施策が講ぜられてきたわけであります。しかしながら、今日に至るも具体的な効果が上がっていないというふうにわれわれは考えておりますが、この原因は一体どういうところにあるのか。過去二十年間にわたりまして農地流動化施策の実施の問題につきまして、御答弁をいただきたいと思うのであります。
  4. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 先生御指摘のように、昭和三十六年の基本法以来、各般の面を通じまして農地流動化を図るための制度改正なりあるいは行政施策推進してまいっております。  制度改正等の主要なものを申し上げますと、農業生産法人制度、それから農地信託制度農地移動適正化あっせん事業農業者年金基金事業農地保有合理化促進事業農協農業経営受託事業農用地利用増進事業、こういった七つ制度が主要なものとして挙げられるかと存じます。  全体として農地流動化は思うほどにはなかなか進展しないという事態がございます。個々の事業それ自身はそれなりに成果といいますか効果も上げ得ておりますが、中には農地信託制度のようにほとんどその効果を発揮し得ないというようなものもあるわけでございます。  それぞれ事業性格が異なりますので、なぜ進展しないかという理由は、それぞれまた異なるわけでございますが、いま申し上げました農地信託制度について申し上げますならば、これは考え方は非常に合理的ではありますが、信託事業は、形式的ではありましても所有権農協に一たん移転させなければいけないというような問題がございます。それから事務手続等が煩わしいというようなこともあったのかと存じますが、今日では農地信託制度に多くを期待することができないような状況になっているわけでございます。そのほか各種事業がございますが、この中で農地保有合理化促進事業、これはその事業としてはそれなり実績を上げてまいっておりますが、所有権移転を主たる対象にいたしておりますので、それほどはかばかしい進展は見ないというような状況になっておるわけでございます。  こういう中で農業者年金基金事業、これは全体としての経営の若返りあるいは規模拡大に相当程度貢献しておりますし、長い期間かかって徐々にその効果を今後とも発揮していくものと思うわけでございます。  それから、最近におきますところの農用地利用増進事業、これはほかの行政上の施策とも相まちまして、やはり所有権移転よりは賃貸借の成立あるいはその移転ということを主たる内容にいたしておりますので、この点につきましては、特に最近におきまして一応の実績が上がるようになってまいっております。それらを踏まえまして、私どもは、今回新しい形での、いわゆる農地三法という形での制度改正をお願いするということにいたしておるところでございます。
  5. 神田厚

    神田委員 いま御説明がありました農協による農地信託制度、この問題などは農基法の十八条の中にまずきちんと明記をされて、それの問題についてやるように言われている。けれども、それらが全然うまく発動しないということは、一体どういうことなんでありましょうか。
  6. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農地信託制度は、昭和三十七年の農地法改正によって創設された制度でございますが、五十三年末までの信託引き受け実績は、貸付運用信託が四百五十ヘクタール、売り渡し運用信託が四千四百ヘクタール、売り渡し貸付運用信託が一千四百ヘクタール、しかも最近ではその実績は停滞しているという状況で、全体としてもそれほど大きくないし、最近はさらに停滞しているということがあるわけでございます。  このように実績が伸びませんのは、先ほども一言申し上げたわけでございますが、やはり信託というのは、形式的ではありましても所有権農協に一たん移転しなければいけないという形をとることとなっております。それから、その事務手続が種々煩わしいというようなこともありまして、どうもわれわれといたしましても、その点は期待に反したといいますか、若干見込みが甘かったといいますか、今日農地信託制度農地流動化がうまくさらに進むというふうにはなかなか考えにくいというように判断いたしております。
  7. 神田厚

    神田委員 説明ありました農地流動化七つ制度があったわけでありますが、それがうまく進まない。そういう中で、今度新しく農地法制整備ということでこの法案を出してきたわけですが、過去のこういう七つ制度がうまく運用されない、効果を上げない、こういう問題については、どういうふうに反省をして、さらにそれらの原因等についてきちんと分析をした上で、今度新しく出されてきたのだと思うのでありますが、その辺のところはどういうふうに考えておられますか。
  8. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 先ほど来申し上げましたような数多くの制度的な措置なり行政上の施策によりまして、若干ずつではありますが、農地流動化効果は上がりつつあるわけでございます。特に、五十年の農業振興地域整備に関する法律改正によって創設いたしましたところの農用地利用増進事業、これによりますところの利用権の設定は、貸し手借り手、双方の信頼をだんだんかち得つつありまして、着実な伸びを示しておるところであります。今回の農地法制整備は、わが国農業が直面している厳しい事態に対処して、わが国農業体質を強化し、総合的な食糧自給力の向上と国民生活の安定という従来からの農政の基本的な課題にこたえようとしているものでございます。そのため、現行農用地利用増進事業を発展させて、地域実情に応じて、市町村農業委員会農協などの協力のもとに、地域全体として農地流動化有効利用を促進するという仕組みを整備することを主眼としております。そのための農用地利用増進法案というものを提出いたしておるわけでありますし、また、これとあわせまして、農地権利移動円滑化農業後継者育成等を図る観点から、農地法につきましてもその一部改正を行おうということにいたしております。  これまでの流動化施策実績から、農地流動化推進に当たりましては種々問題点があるわけでございますが、私どもまず市町村農業委員会農協等、こういった関係機関協力体制をしっかりつくり上げること、これが大事だと考えております。それから、集落段階を含めて、これら関係者が、貸し手借り手が一体どれくらいあるだろう、そういった人たちの眠っている意欲を掘り起こす、そういう活動を熱心に行うということなど、一体となって取り組む推進体制整備することがこれまた重要であると考えております。本法の施行に当たりましても、この点に特に配慮いたしまして、実効が上がるようにしてまいりたいと考えております。
  9. 神田厚

    神田委員 私が聞いているのは、過去のこういう幾つかの制度が十分に生かされないで、今度また新しく出してきた。過去のそういう制度の失敗といいますか、効果が上がらなかったところをもう少しきちんと反省をして、整理をして出してこなければならないのだ。こういうような話をしているわけでありますが、どうもちょっと説明とはかみ合わないのでありますけれども……。  今回の農地法制整備というのは、ただ単に経営規模拡大——いままでは経営規模拡大ということが中心になってやられてきたわけでありますけれども、そうではなくて、米を中心とする農産物需給の不均衡ということが一つ大きく根幹にあるわけでありまして、そういうことから言いますれば、現在のわが国農業実情に対処して、農業生産の再編成という問題を、農地法の新しく出してきたものとどういうふうに絡めて運営をしようとしているのか、この点を明らかにしていただかないと困るわけであります、ただ単に経営規模拡大するという問題だけではない性格を持っているわけでありますから。その辺のところはどういうふうに理解をして、現在のわが国農業に対しましてはどういうふうに対処しようとしておるのか、この辺はいかがでございますか。
  10. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま日本農業の中で、一つ考え方としては、農業生産の再編成を図っていかなければならないという問題、米の過剰を抱えておりますし、一方においてはいろいろ自給力の問題がございますから、どうしてもそういうことを考えていかなければならないわけでございまして、今回の農地三法の改正に当たりましても、私どもは当然そういう考え方を入れているわけであります。  それはどういうことかと言えば、結果においてそれぞれの需要に見合った形で食糧生産をしていくためには、農業の再編成をしなければいけない。農業生産の再編成をする場合には、一つは、やはり生産性の高い中核農家中心として考えていかなければならない。生産性の高い中核農家をより育成をしていくためには、経営規模拡大を図っていかなければならない。そのためには、現在経営規模拡大はどうしてもなかなかうまくいかないので、この法改正をお願いしたい、こういうことでございます。  それで、そういう中核農家中心とした農業生産の再編成を図っていく上においては、やはりいま申し上げましたように、需要に見合った形でそれぞれつくらなければならないわけでございまして、そういう点においては、地域実情に応じながら適地適産というような考え方もこれから含めて、私ども農業政策、特に農業生産政策を考えていかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  11. 神田厚

    神田委員 いま答弁の中で適地適産を進めていく、これが一番大事なことでありますね。つまり、経営規模だけ大きくして農地を集めても、それで一体何をつくらせるのか、そういう指導がなければ、この政策は失敗するだろうと思うわけであります。  それで、ただいまの大臣の御答弁関連をしまして、今回提出された農用地利用増進法案におきましては、地域実情に即して農地流動化を図る、こういうことを言っておるわけであります。これは農業生産再編ということと非常に密接に関連があるわけでありますから、国においても、農産物長期需給見通しというのを早く示して、適地適産の原則によりまして地域分担農林省の方から明示をしていかなければならない形になってくる。それが果たされなければ、農用地のこの問題は、ただ単に農地を集めて中核農家経営規模を大きくしても、何をつくらせるかという明確な指導がなければこの政策はうまくいかないんだろう、こういうふうに思うわけであります。  農産物長期需給見通しを示し、さらに地域分担を明示すべきだというふうに考えておりますけれども、その辺のところはどういうふうにお考えでございますか。
  12. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 御承知のように、いま農政審議会で八〇年代の長期見通し、特に六十五年を一つの目標として需給見通しを検討いただいておるわけでございます。六月ごろになるのではないかと思いますけれども農政審議会の結論を踏まえまして、私ども長期見通しをしっかりつくり上げていかなければならないと考えておるわけでございます。  それとあわせて、最近北海道研究会というのを実はつくっていただいたわけでございます。これは、将来ともに日本食糧基地としての北海道位置づけをどうするかということで、特に北海道の方から御要望がございまして北海道研究会というのをつくったのでございます。今度のこの長期ビジョン農政審議会の議論を踏まえて私どもつくり出しましたときには、それは国全体のものでございますから、この北海道研究会一つの例にとって、たとえば農政局単位ぐらいに、地域地域の、どういうものをどこでどうつくったらいいのかというような青写真も考えてみたい。  そして同時に、いまの話で、地域地域実情に即してということでございまして、地域農政推進対策をやっているわけでございますから、今度はその底辺と申しますか、その地域においてはそれぞれの農家あるいはその地域というもので最近いろいろと議論していただいているわけでございますので、そういう国全体のもの、あるいは各ブロック的なもの、それから今度は地域地域のもの、あるいはその農家、こういう形で、上と下と言うとおかしいのでございますけれども、中央と地方と申しますか、ずっと大きなものと小さなもの、両方から接近をしていってそこに調整したものをつくり上げる、こんなような形で適地適産という考え方を生かしていきたい、私はこう思っておるわけでございます。
  13. 神田厚

    神田委員 いまの大臣答弁、私は賛成であります。つまり、地方農業経済圏というのを細かにつくり上げまして、たとえば東北農業経済圏関東農業経済圏、そういう形で、そこの自給問題等も含めましてそこで適地適産をやってきちんと指導する。もちろん、そういう中では流通の問題も非常にまた変わった形で解決をされていくわけでありますから、いまのような形で地域分担を明らかにして、一回日本農業のそういう経済圏の再編成というものを進めていただきたいというふうに考えているわけであります。  今度はもう少し具体的な内容に入ってまいりますと、今度のこの農地流動化の問題は稲作転換と切り離して考えることはできないというふうに私ども考えているわけでありますけれども転作が困難な第二種兼業農家などの場合の土地を集積したいというわけでありますけれども、ここで問題になりますのは、現在、転作奨励金、これは反当五万円から七万円支給をされているわけであります。そうしますと、その支給先農地所有者にあるのか、あるいはその農地を貸した人にあるのか、これは非常に明らかになっていないわけであります。そういうことになりますと、適当につくっておけば五万円から七万円の転作奨励金がもらえる。それを貸してしまうと、貸した分の、たとえば二万円くらいのものしかもらえない、こういうことになりますと、本当に農地流動化が進むのかどうか。この辺のところは、農林省としましては、転作奨励金がどちらに権利があるというふうに考えておられるのか、その辺はどうなんでございますか。
  14. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 転作奨励補助金は、先生承知のとおり、転作等を実施した農業者に対して交付をするということにいたしております。  具体的に申し上げますと、当該年度の八月一日現在におきまして転作田について使用収益権を有する者、これに対して交付するということにいたしております。したがいまして、どういう者が交付対象になっているかということは明確にいたしておるつもりでございます。  そこで、さらに中を分けて申し上げますと、自己所有田をみずから転作した場合には、適正な肥培管理を行うということを前提といたしまして、その水田所有者に対して交付をする。それから、賃借人小作地転作した場合におきましては、同じく適正な肥培管理前提といたしまして、賃借人に対して転作奨励金交付する、こういう扱いになっております。  そういう扱いになっておるわけでございますが、この転作奨励金交付することによりまして、流動化は必ず進むと言えるかどうかというようなお尋ねでございますが、転作奨励補助金水田保有農家水田賃貸意欲を減退させるという場合もないとは言えないと私も思います。しかし、一方では、労働力なり技術なり資本装備などの面で転作作物栽培が困難なために、むしろ賃貸なり作業委託によりまして、自分に配分されました転作面積中核農家に実施してもらうということを選択するというような場合も多いと思われるわけでございます。  それから、先生御案内のとおり、水田利用再編対策におきましては、計画転作という制度も採用いたしております。転作団地化というものを図っておるわけでございますが、これを契機といたしまして集団栽培が進むという場合も期待されますので、水田利用再編対策というものは、土地利用の集積なり農地流動化を促す効果もこれまたある、かように考えておるわけでございます。
  15. 神田厚

    神田委員 私ども率直な感想から言えば、やはりこの転作奨励金の取り扱い方で非常にうまくできるかどうかという問題があるわけでありますが、その辺のところはまだちょっと問題が残っているようであります。  それからもう一つは、従来から指摘されておりますけれども地価対策の問題、それから兼業農家対策が欠如している。一つは、兼業農家対策の問題につきましては、安定的な就業の場をどういうふうにして確保してやるのか、こういう問題もあるわけでありますが、地価対策とこの兼業農家対策についてどういうふうに考えているか。
  16. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 地価対策関係は、この間も御答弁をいたしておりますが、農業面だけでなかなか考えられない点があるわけでございまして、一般的な地価対策としてまずどう考えていくかということでございまして、私どもいまも地価対策閣僚協議会というのを設けましてやっておるわけでございますが、やはり国土庁が中心になっていただかなければならない。国土利用計画法がございますので、この適正な運用、あるいは土地の投機的な取引を抑制するというような問題、あるいは住宅地をいかにして、特に三大都市圏などでいかに供給するかということ、こういうことがいまの地価問題をやはり鎮静化する方向ではなかろうかということで努力をいたしておるわけでございます。それと並行いたしまして、私ども農林水産省といたしましても、現在ある都市計画法あるいは農振法、こういう形の中で、農用地として利用されるものについては地価が極力抑えられるような方向努力をいたしておるわけでございます。今後ともそういう方向努力をしてまいりたいと思っております。  それから兼業関係、特に二種兼業の問題がやはり一番大きな問題になるのではないかと思いますが、これから御審議願うわけでございますけれども、この間の農業白書の中でも、二種兼業のあり方としては、このごろ地域農村社会におきましても混住化の傾向がございますので、やはりその地域の安定した一つの層として二種兼業位置づけていきたい。ただ問題は、健全な地域社会の発展のためにお力添えをいただいておりますので、そういう意味においては位置づけをしていきたいと思いますけれども農業生産面という点からまいりますと、正直申し上げまして、農外収入が五十三年度の実績を見ておりましても、二種兼業の方の農外収入が三百八十何万円ある、四百万近くある。ところが、農業を専門にやっていただいている方の農業の所得というのが三百二十万足らずであるという点から考えましても、農業というものを見た場合には、二種兼の方は農業以外で相当の収益を安定して上げておられる。こういう姿を見たときには、もしでき得るならば、一方において農業体質を強化していくためには、どうしても生産性の高い中核農家農業の担い手として育てていかなければならない。そうすれば、そこへ農地を提供をしていただける、貸していただけるというようなことも一つどもは考えられないだろうかということで、後継者のいない農家とか、あるいは二種兼で特にもうすでに安定した収入を上げておられるおうちにおいては、できる限り貸し手になっていただけないだろうか、こう位置づけていきたいと考えておるわけでございます。
  17. 神田厚

    神田委員 説明はわかりますが、この法案を出すに当たって、兼業農家就業の場の確保という面については何か特別に考えておられますか。
  18. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま申し上げましたように、すでに六割近いいわゆる二種兼の方々はもう安定した収入を得ておられるわけでございます。これは全国平均でございますから、農家によっては事情は違いますけれども、少なくとも全国平均の統計を見ておりますと、その安定した収入が四百万近くあるわけでございます。ですから、現時点でももう安定したどこか就労機会を持っておられると思うのでございますけれども、しかし、今後、より貸していただけることが多くなる、そういうものを促進するためには、一方において就労機会をより拡大をしていかなければならないことは当然でございまして、従来からやっておる工業導入促進法というものがございますが、これをより強力に進めていきたいというのが一つでございます。もう一つは、地場産業をやはり育てていくということもやっておるわけでございまして、これも強力に育てていきたい。あるいは、これから日本の第三次産業というものが育っていく中で、それは必ずしも都会だけではないのではなかろうか、地方地域社会においても第三次産業はある程度育っていくのではないだろうか、そういう点においてやはり就労機会を確保するとか、いろいろ従来やってまいりましたものにそういう新しい時代の変化に応じて出てきているものも加えて、就労機会の確保に努力をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  19. 神田厚

    神田委員 それでは、ちょっと視点を変えまして、この制度地域農政推進するということが一つの大前提になっておりますから、そういう意味では、地域関係者が非常に責任を持ってこれを推進をしていくような形になるわけであります。そういうところから、国はどういうふうな形でこれを指導していくのか。ある新聞の論調では、国は地域に余りいろいろ押しつけて国の責任を放棄しているのではないか、こういうような意見もあるわけでありますけれども、これらについてはどういうふうに考えておられますか。
  20. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 国が指導性を発揮して地方をリードしていくというのが一般的なスタイルであろうかと思いますが、最近は、おっしゃられるように地域行政農政の場におきましても地域農政推進というようなことが強く叫ばれておるわけでございます。今回の農用地利用増進法案とそれから農地法改正案におきましては、これは従来から整備充実を図ってまいりましたところの農地流動化、それから地域農政推進に関する施策、これを現下の農政の要請に照らしまして発展させたという内容を持っております。それから、各地域実情に応じて農地流動化農用地有効利用を促進するということを目的にしているわけでございます。これは各地域実情に応じてということになりますと、やはりその地域地域での個々の事例から上がってくるところの意見の集約ということがきわめて重要な問題になってまいります。そこで、この法案の実施に当たりましては、地域関係農業者の合意に基づいて行うということにしておるわけでございますが、無理に押しつけるというようなことを避けて、できるだけスムーズに円滑に事柄が進むということも期待しておるわけでございます。ただ、この場合、自然発生的なものだけにまっているのかと申しますと、それはやはり国の指導なり援助というものも必要でございますし、それから、それを受けての都道府県、市町村の役割りというものもあるわけでございます。そういうことで、中央、国の方からと、それから現場、農村集落の立場からと、両者の考え方が一緒になって全体として行政効果が上げられていく、決して国の責任を放棄するというような性質のものではないということを申し上げておきたいと思います。
  21. 神田厚

    神田委員 それでは、少し根幹の問題に触れますけれども、今回の農用地利用増進事業、これに基づきまして利用権の設定等の促進事業におきましては、農地法の根幹規定である第三条、第六条、第十九条の規定を適用除外しております。このことは農地法を形骸化させるのではないか、こういうことを言われておりますけれども、御見解はいかがでございますか。
  22. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農地法の問題は、自作農主義が貫かれるかどうかということと、それから優良な農用地の確保が図り得るかどうかというところに焦点があろうかと存じます。「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、」これは農地法の第一条、目的にも掲げられているところでございまして、私ども今回の農地法案三法案を出してはおりますが、その基本的な理念は変わっていないというふうに考えております。  現在わが国農業の現実を見れば、まだ自作地が大部分を占めておりまして、規模拡大を志向する農業経営におきましても、一般的には相当程度の自作地を基本に持っております。これに借地を加えて規模拡大を進めていくということでございまして、自作農主義を否定するとか、これが間違っているというようなことは毛頭考えておらないわけでございます。むしろ地価の上昇、農地の資産的保有意欲が強いというようなことを見ますと、所有が伴えば一番よろしいのでございますが、むしろ借地形態による農地規模拡大それから流動化の促進ということが実際的ではないかということで、今回の法案を提案しておるわけでございます。  それからいま一つは、借地を活発にする、そのことによって流動化を促進するということになりますと、農外からの資本が入ってくることにならないか、そして乱開発等の危険が生ずるのではないかということがございますが、農地法による転用の規制というもの、農地はあくまで農業の用に供されるものでなければならないという観点からの規制は、これは厳として存置するわけでございます。その意味におきましては、私ども、今回農地法全般の改正ということでなしに、御提案申し上げているような形でむしろ農地法の基本を尊重しながら今回の提案に至った、そういう事情があるわけでございます。
  23. 神田厚

    神田委員 農地法利用権の設定事業とはどういうふうな関係にあるのか。それから、さっき話しましたように農用地利用増進事業に基づく利用権の設定等の促進事業は、農地法の第三条、第六条、第十九条の規定を適用除外していることについて、農地法を形骸化させることはないのかどうか。
  24. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 ただいまの答弁でも申し上げたつもりでございますが、直接農地法の規制の緩和との関連でございますが、自作農主義を否定しているわけではない。また、現実に自作地を持ちながら一部借地を加えて規模拡大を図っていくということ、そういう場合、しかもこういう公的機関が介入した形で賃貸借の形での農地流動化が行われるというなら、これはやはり農地法の基本に決して反するものではない、農地法を形骸化、空洞化するというようなものではないということで、私どもはその規制の緩和を妥当だと認めて、そういう内容法案を提出しているところでございます。
  25. 神田厚

    神田委員 それでは、利用権の設定等の促進事業、この実施主体を市町村に置いておりますけれども、この市町村に置いた理由は何でございますか。
  26. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 利用権の設定等促進事業につきましては、これは市町村のといいますか、地域実情に応じて事業を進めることになります。そうなりますというと、市町村農業委員会農業協同組合等の協力のもとに実施するということが一番妥当ではないかというふうに考えられます。  もう少し具体的に理由を申し上げてみますと、利用権の設定等を受ける者の農業経営の安定を図るためには、この事業の継続的実施ということが当然必要でございます。その点、地方公共団体、行政として当然継続性を持って信頼を持ってその展開を図り得るという意味で、市町村がやはり適当であるというふうに考えられますし、それからまた、利用権の設定ということになりますと、当事者間で意向の調整、いろいろ気持ちにずれがある、そういったものを調整しなければならない。ときには紛争が出てくる、その処理が必要である。それから、その調整だけが独立してあるのではなくて、各種市町村行政、助成事業等との連携を保っていくことが必要になります。そういう行政的な処理を要する事務も多いということを考えますと、それから、いま申し上げました紛争処理等に当たっては、やはり市町村が一番地域では信頼されていて適任であるというようなことを考えますと、農業委員会とか農業協同組合との連携を図りながら市町村が実施していくというのが一番いいのではないかというふうに考えられるわけでございます。この事業の実施につきましては、農業振興地域整備計画、それからそのほかの計画との総合調整という問題も出てまいります。そういった計画という観点からいたしましても、市町村がこの事業の実施主体となることが適当であろうと考えております。
  27. 神田厚

    神田委員 それでは、関連しまして、農業委員会農業協同組合、これらについてはどういう役割りを分担させるか、どういうことを期待しておりますか。
  28. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業委員会につきましては、市町村農用地についての利用権の設定等に係る農用地利用増進計画を定める場合には、農業委員会の決定を経るものとしております。これは法文上明文をもって規定いたしております。現在の農振法の中でも規定いたしておりますが、新法におきましてもその点は明らかにしておるところでございます。  それから、農業委員会等に関する法律があるわけでございますが、その中で農業委員会の業務の規定がございます。その業務といたしまして、今回のこの新法に基づくところの業務、これを新しい法令に基づく業務だということで、はっきりうたうことにいたしております。これは附則におきまして、農業委員会等に関する法律の一部を改正するという形をとることにいたしております。  それから、農業委員会農用地の利用関係の改善その他の事務を行うに当たりましては、利用権設定等促進事業推進に資するように行うものとすることといたしまして、全般的な農業委員会の従来から行っておりますところの事務、これがこの農用地利用権設定等促進事業推進に傾斜して努力が向けられていくのだということで、そういう新しい役割りをはっきりさせるということにいたしておりまして、農用地流動化に前向きに取り組むことを期待いたしております。  それから、農業協同組合についてでございますが、農業協同組合は、その全国機関が八〇年代における農業課題農協対策というものをさきに発表いたしております。その中におきましても、地域農業の組織化を通ずる農業の発展に関して積極的に取り組む、農地の効率的な利用に関しても積極的に取り組むということを明らかにしております。  それからまた、直接今回の農用地利用増進法案におきましても、利用権設定等促進事業では、受け手として、農業経営の受託事業を行う農協が加えられております。そういう直接的な関連もございまして、農協が現地で推進指導している地区内の農作物の作付の改善でありますとか、農作業の受委託のあっせんだとか、そういう営農指導活動等との関連が今回の法案との関連で一層密になってまいるわけでございます。新しい農用地利用増進事業推進に当たっては、それらのことから農協の主体的な取り組みが期待されているところでございます。
  29. 神田厚

    神田委員 さらに、この事業地域実情に応じた実施体制をとる、こういうふうに言われておりますけれども、国におきましては、それでは実施体制に対する具体的な指導というのは行う考えであるのかどうか、その辺はどうでございますか。
  30. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 ただいま申し上げましたように、この事業市町村中心になりまして、農業委員会農業協同組合等の協力のもとに事業推進体制整備して、地域関係農業者等の意向に即しながら、地域全体として農用地有効利用流動化を促進するということにいたしております。とりわけ利用権設定等促進事業につきましては、利用権の設定等に係る賃貸人、賃借人関係権利者全員の同意を得て行うということになっております。その点では強権的に実施するというものではございません。  したがいまして、この事業の実施に当たりましては、関係機関農業団体のほか、地域農業者の代表等をもって、その意思疎通を図るための協議会等、そういう場を設けることが必要ではないかというふうに考えております。  こういうような措置もとりまして、十分関係権利者の理解と合意のもとに進める、そのことについて国は十分な指導を図ってまいりたいと考えております。
  31. 神田厚

    神田委員 この事業が非常に新しい事業で、さらに地域関係者に対しましていろいろ説得したり説明をしたり啓蒙したりしなければならない。そういう意味から言えば、この事業推進する者は、ある意味では相当指導力があったりあるいはある程度の高い知識を持ったりしている者が担当していかなければならないような状況になってくるはずだというふうに考えるわけでありますけれども、こういう担当者の育成あるいは研修、こういうものにつきましては、国の方としては何かお考えをお持ちでありますか。
  32. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 従来から国なり都道府県なりあるいは市町村において各種の研修が行われております。それらの研修、既存のものの中にも、今回の新しい法案の趣旨なり運用の方針なりについて十分理解してもらうということで、あらゆる機会を通じてその徹底を図ってまいりたいと考えておりますが、特にこの事業との関連という点におきましては、昭和五十二年度から実施しておりますところの地域農政特別対策事業を通じて、県及び関係団体によるところの市町村職員等の研修、それから、本事業の直接の推進役となる農地流動化推進員の研修、こういったものが予算上も措置されております。これの今後一層の強化を図ることにいたしたいと考えます。  それから、昭和五十五年度から新たに集落リーダーの育成等を図るための地域農業組織化総合指導事業というものが行われることになっております。  こういう各般の措置を通じまして、現場で責任を持ってこの事業推進してくださる方々の育成、研修ということに努めてまいりたいと考えております。
  33. 神田厚

    神田委員 それから、先ほどちょっと関連して答弁があったのでありますが、この事業の実施に当たって、地域関係権利者の理解と合意をもとに進めていくということでありますけれども、大体こういう事業が補助事業なんかと一緒にされるという形になりますと、市町村などによりましては、大変無理をしてその地域をまとめてこれを遂行しようというようなこともしがちな面もあるわけでありますが、こういうことに対するチェック機構といいますか、こういうことに対するチェックはどういうふうにしてなさるおつもりでありますか。
  34. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 この事業を進めるために、各種の助成措置あるいは既存の事業についての優先採択といったような配慮、これが働くということはあるわけでございますが、そのことだけをねらって、補助事業欲しさに無理をして事業を進めるというようなことがあっては、これは種々弊害も生ずるわけでございます。先ほどから申し上げておりますように、何といっても地元の集落の農業者の合意といいますか、自発的な意思というものを前提にすることが必要でございます。その点、先ほど来御答弁申し上げましたように、現地の協議会も設けるということで、あるいは市町村農業委員会農協等関係機関と一緒に相談しながら進めるということで、合意づくり、合意を基礎として推進することとしておりますので、その点は指導上も十分配慮を払うように趣旨徹底を図り、補助事業欲しさのためにこの事業を無理に進めるということのないようにしてまいりたいと考えております。
  35. 神田厚

    神田委員 それから、今回の利用権設定等促進事業というのは、現行農用地利用増進事業に比べまして、所有権移転の問題、実施区域の拡大の問題、それから権利の受け手の拡大の問題など、大変大幅に機能強化が図られているわけでありますが、政府におきましては、この事業の本格実施によってどの程度の農地流動化効果を期待しているのか、またこれと関連しまして、どの程度の中核農家の出現を想定しているのか、この点はいかがでございますか。
  36. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 中核農家の数自身は、この事業だけではなくて、農政全体のあり方との関連、環境事情の変化等に伴って将来推移していくものと思われます。  ただ、この事業に直接関連して農地流動化施策がどの程度進むだろうかということになりますと、先ほど来申し上げておりますように、事業が何か目標、計画を定めて、これを強制的に義務づけて、どうしても実現を図っていくという性格のものではございませんので、あくまで合意を前提としているということから、数字自身について、将来の目標、見込みはこうであるということはなかなか申し上げにくいのでございます。ただ、現実兼業化によって労力が不足している、老齢化によってみずからは十分には耕作できない、そうかといって農地は資産として保有していたいという農家はかなりあるわけでございます。  それから、最近の実績を見ますと、利用権の設定、これは現在の利用増進事業によりましても大幅にふえてきている。五十四年一年だけでも一万七千ヘクタール、累積では二万四千ヘクタールという状況になっております。私どもこのぺース、これは今回事業内容を実質的に拡充強化することによりまして、そのペースを相当上回るような形で今後流動化の実現が図られていくというふうに見込んでおるところでございます。
  37. 神田厚

    神田委員 しかし、これはある程度の、どのぐらいの農地流動化があって、どの程度の中核的な農家をつくり出すのだというものがなければ、この法案を出してきた意味もこれまたないわけでありますから、大きい計画の中で大体どれぐらいの流動化が進められて、中核農家の規模ではどのぐらいこれが増加する、どれぐらいの農家の出現を予想するということぐらいは、大体試算としては持っているのでしょう。
  38. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 中核農家全体の動向がどう推移するか、今後の見通しいかんということになりますと、これはこの事業というよりは、農林省全体として、今後の需給見通し等との関連もございまして、どの程度のものになるか、あるいはしていかなければならないかということについて、現在作業を進め、農政審議会にも検討をお願いしているところでございます。そういうことと関連いたしまして、私どものこの利用増進事業効果がどの程度そういったことの中に考え方として織り込まれるかということも検討されなければならないと思っております。したがいまして、数字につきましては、若干先の話になりますが、中核農家自体についてはこれは明らかにされることと思います。  それから、農地流動化関連からいたしまして、どういうところが対象となって、最大限といいますか、どういうところまで考え方としてこれを及ぼすべきかということになりますと、一つ対象として考えられるもの、その中からどれだけ出るかということが、見込みとしてはなかなか現実には立てにくいのですが、世帯主が男で、これが五十歳以上で、しかも跡継ぎがない農家がどのくらいありますかというと、これは世帯主が女で跡継ぎなし農家、老人女子専業農家も合わせて二百万戸、全農家の四一%ございます。その経営耕地面積は百三十二万ヘクタール、全耕地の二八%あるということになっております。こういうところが対象として考えられる分野ではないかと思われます。
  39. 神田厚

    神田委員 それでは次に、この利用権の設定事業での最大の問題といいますか、最大の欠点とも言われておりますけれども、これは利用権の設定期間が三年から五年というふうにきわめて短期である。こういう短期間に果たして耕作者の経営の安定が十分に図られるのかどうかということが大変懸念をされているわけであります。特に、今後この農地流動化稲作転換と切り離して考えることができないということになりますと、当然土地基盤整備という問題がそこに入ってくるわけでありまして、そういう意味から言いますと、三年ないし五年の短い期間で土地に対する投資が期待されるということは非常に困難でありまして、借地人が投資した有益費をそれでは本事業におきましてはどういう形で償還をされるのか、これらに政府としてはどういう指導をしようとしているのか、この問題、私は非常に大事だと思うのですが、この辺はどういうふうに考えていますか。
  40. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農地流動化を促進するためには、貸し手が安心して出せるようにしなければならない。そうなりますと、借り手の方がなかなか安定した経営が保証されがたいというこの点は、確かに問題点としてあるわけでございます。現実に今日成立しておりますところの利用権の設定三ないし五年層が大部分でございます。中にはそれより長いものもございまして、私ども、今後この事業推進していくに当たりましては、実態としてはやはり三−五年層が中心になるとは思いますが、できるだけ長い方向に持っていくように誘導してまいりたいというふうに考えております。ただ、三ないし五年であっても、それが三年−五年ということでもってぷっつり切れて、後は縁なしということになるわけではなくて、一般的には、むしろそういうことによってきちんと返してもらえるという保証があるために引き続いて更新するということが期待される。また、市町村等はそういった指導をするということになります。そういうことからいたしますと、これは今後の展開でございますが、むしろ相当長期間、更新という形をとってではありますが、借地経営が続けられるようになるのではないかというふうに思うわけでございます。  それから、そういう借地に対しては、借りた人は、自分の土地ではない、いつ取り返されるか、期限が来たらきちんと取り返されてしまうということだと、積極的な投資は行われがたいのではないかということでございますが、小規模の土地基盤整備等につきましては、現行農用地利用増進事業に対する関係農家の理解も深まっておりますし、その要望が高まっておりますので、かなりこの点スムーズに、現在その基盤整備関係の資本投資が行われるというようにもなってまいっております。  それから、仮にそういうことで種々借り手が投資した場合、その有益費の償還についてはどういうことになるのかということでございますが、これは借地経営にとっては確かに重要な問題でございます。その処理につきましては、今回の法案で特別にということではなくて、民法それから土地改良法に一般的な処理に関する規定がございます。本来は当事者の協議によって処理されるべき問題ではございます。しかし、これは当事者間の問題だということで放置するのは不十分でございますので、貸し手借り手の双方が安心して利用権の設定が行われるようにするために、この問題が公正確実に処理されることが必要でございますので、農用地利用増進計画におきましては、利用権の条件といたしまして有益費に関する事項を定めまして、その償還額について当事者間で協議が調わないときは市町村または農業委員会がその処理に当たることにしてはどうかということで、そういう規程を定めるような指導をすることにいたしております。
  41. 神田厚

    神田委員 これはやはり、現在土地を集めても、それでそこに米を全部つくれるわけではありませんから、土地基盤整備というのはどうしても必要になってくる。そうしますと、それに対しましての有益費の問題も当然出てくるわけでありますから、これらを市町村に対してあるいはそういうことでの指導をするということでありますが、大きい政府としての大体の考え方、方法、こういうものはやはり確立をしておかなければまずいのではないかと思うのですが、当事者に任せるということで非常に個々ばらばらになってしまってもあれですから、大きなルールづくりということは、どうなんです、考えておられますか。
  42. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 ただいまの答弁の最後の段階で触れたつもりでございますが、農用地利用増進計画におきまして、これは市町村が定めるわけでございますが、その中では利用権の条件ということで有益費に関しても規程を設けるということを考えておるわけでございます。その規程の具体的内容は、いろいろありますけれども、たとえば償還額につきましては当事者間が本位ではございますけれども、当事者間で協議が調わなかった場合には、市町村または農業委員会がその処理に当たる、トラブルを解決する。あらかじめきちんとした規程が設けられて、それでもって当事者間で話し合いが進めば一番よろしいのでございますが、それでもトラブルが起こる、そういうようなときには、市町村なり農業委員会が乗り出すということを考えておるわけでございます。当然そういう規程を設けるよう私どもとしては指導を図ってまいります。
  43. 神田厚

    神田委員 余りはっきりした答弁でなくて、結局市町村に任せる、当事者に任せるというようなことでありますが、私は、これは国としてこれだけ大きな事業推進していくという中で、当然これらの考えられる問題につきましては、やはり大枠のルールづくりというようなことは国の方の指導としてきちんとしていかなければならない問題だというふうに考えておりますから、その辺はひとつ検討していただきたいと思っております。  また、今回この法制の中で新設されることになりました農用地利用改善事業を行う団体、この団体につきましてちょっと御質問申し上げますが、この団体は農用地の効率的かつ総合的な利用、これを図る、作付地の集団化、農作業の効率化、農用地の利用関係の改善等、これを行うというように言われております。これらの団体に政府は、具体的にこの団体設立に何を期待しているのか、この団体の性格とそれからまた規模、全国的にいまどのぐらいの数の団体をつくろうとしているのか。さらに、この団体は、どうもわれわれが考えますと、稲作転換の問題と全く関係がないというような形ではないというふうに考えております。協議会というような言葉がございましたけれども、具体的に、どういう団体に、どういうことを設立に期待をして、しかもそれらの団体というのは、どういう性格で、どの程度の規模を持つのか、この点につきまして御答弁いただきたいと思います。
  44. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農用地利用改善事業を行う団体は、集落等一定区域内の農用地に関し権利を有する者の組織する団体でございます。そして、多くは集落等を単位とする農事実行組合等の任意団体になると考えております。合意づくりが一番スムーズに行われるのは集落単位であろうかと思いますが、一集落だけの規模というふうに限定するつもりはございません。数集落一緒になってということは、できればそれはそれで結構なものだというふうに考えております。  それから、地域によっては共同利用施設の設置あるいは農作業の共同化、そういった事業を行う農事組合法人も実施団体になり得るというふうに考えております。  それから、この事業は、これらの団体が農用地利用規程の定めるところに従いまして、作付地の集団化等農作物の栽培の改善や共同作業、それから農作業受委託、そのほか農作業の効率化を図るわけでございます。それと同時に、これらの措置を実施するために必要となる利用権の設定等、農用地の利用関係の改善を一体的に進めるということを考えておるわけでございます。  それから、この事業水田利用再編対策との関連があるのではないかということでございますが、直接水田利用再編対策をこれでもって行うというようなことを意図しているわけではございませんが、転作田団地化でありますとか、麦や大豆等の作付規模の拡大を進めるための土地利用、そのまた土地利用を進めるためには調整が必要である、その調整の円滑化というようなことを考えますと、さらにはまた、転作に関する農作業の受委託促進といったようなことを考えますと、これらの点から、水田利用再編対策転作の全体としての円滑な実施にも役立つものというふうに考えております。  それから、数はどのくらい見込んでおるかということでございますが、現在、現行農用地利用増進事業、これを実際に行っている市町村の数はちょうど千を少し超えたぐらいのところでございます。市町村の数でそのくらいでございますが、市町村自身がこれからさらにふえていく。規程を設けている市町村の数は約千七百あるわけでございます。そういった市町村の数に対応して、その中の集落の数が一カ市町村に幾つか設けられてということで、若干時間はかかりますが、かなりの数が形成されるだろうというふうに期待いたしております。
  45. 神田厚

    神田委員 次に、農用地利用増進事業推進に当たりまして、第十三条において援助等が記され、さらに第十四条において本事業と他の施策との関係を規定しているわけでありますが、具体的にどのような施策を講ずるつもりなのか。  さらに、この事業関連する税制については、昭和五十六年の税制改正においてこれを措置をする、こういうことを言っておりますけれども、いかなる優遇措置を検討しているのか。  この二点につきまして承りたい。
  46. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 新法案の第十三条では援助の規定がございます。援助の主要なものにつきましては、現在地域農政特別対策事業というものがございますが、これを拡充いたしまして、市町村段階、集落段階における地域農業振興のための総合的な推進方策の策定、これを進める。さらには、地域農業者による土地利用についての合意づくりを進めるということを措置いたしておるところでございます。  それから、農用地の利用の増進を図るために、農地の出し手と受け手を掘り起こす、そしてそれらを円滑に結びつけるための活動を行う。さらには、実際にそれが貸借が実現するというような場合には、貸し手農家への流動化奨励金を交付するというようなことにいたしているわけでございます。  いま申し上げましたような予算措置は従来からございますが、特に五十五年度におきましてその拡充を図っておるところでございます。  それから、農業基盤整備事業や新農業構造改善事業等の補助事業でございますが、これにつきましても一、農地流動化に積極的に取り組んでいる地区において優先採択あるいは予算の優先配分の措置、これらを講じてまいりたいと考えております。  それから、融資につきましては、農用地利用増進事業のこれまた円滑な実施を図るために必要な農林漁業金融公庫資金、農業近代化資金、さらには農業改良資金、これらの活用を図って所要資金の円滑な融通に努めることにいたしております。  そのほか、地域農業の組織化総合指導事業といったような事業も一起こしておりまして、作付地の集団化、農作業の効率化等に関して技術指導中心とする普及活動を活発に進めることにいたしております。  それから、税制の問題でございますが、どのような内容を考えているかということになりますと、各種の税制の問題に関連するところがございます。相続税でありますとか、利用権設定等促進事業に基づいて農地等を譲渡した場合の譲渡所得の問題でありますとか、登録免許税でありますとか不動産取得税、これらについての問題があるわけでございます。できるだけこの事業を円滑に進めるため税制上の優遇措置も考えてまいりたいと思っておりますが、この点は、御承知のとおり、財政の運営方針とも関連するきわめて基本的な重要な問題でございますので、なかなかむずかしいと思いますが、今後税務当局とも協議をしてまいりたいと考えております。
  47. 神田厚

    神田委員 次に、これは一番大きな論点になっておりますが、戦後の農地改革以来続けられてきました定額金納制の規定を削除する、こういうことになっておりますね。この理由はどういう理由なのか。  さらに、この定額金納制を外す具体的なメリットは果たしてあるのかどうか、また、外すことによって今後の農地流動化というのは一層促進されるというような見通しを持っているのかどうか、この点はいかがでありますか。
  48. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農家のお気持ちというのは若干特別なものがございまして、自分のところで食べる米は自分の持っているたんぼからとれた米にしたい、仮に、たとえ人に貸すようになっても、そこからの米は手に入れて自分で食べたいというようなお気持ちがかなり強いと思われます。したがって、せっかく貸してもいいというような気分になられても、自分のところのたんぼからの米が手に入らないのでは困るというような向きもございまして、いまの定額金納制というような規制でございますと、その気持ちを満足させることができない、ひいては農地流動化の阻害要因にもなるということが現実に生じております。私どもも、かなりそういう話も聞いて、要望もあったものでございますから、今回の改正を意図したわけでございます。  こういうことによって、一面、現在やみ小作等で問題のあります物納小作料につきましても正常な農地賃貸借へ移行することもできますし、農地流動化が促進されるというふうに考えておるところでございます。
  49. 神田厚

    神田委員 ですから、この定額金納制を外すということについての具体的なメリットは一体あるのかどうか、それはどんなふうに判断していますか。それからもう一つは、これによって農地流動化というのは促進をされるというふうな判断を持っておるのかどうか。この二つ。
  50. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 貸してもいいけれども、その地代は、金ではなくて自分が持っている農地からの米で欲しいという希望をかなり多くの方が持っておられる。そこで、この物納を認めるということにすれば、そういった方々が積極的に貸してくださるという意味では、その点のメリットはかなりあるというふうに考えております。  それからまた、やみ小作というようなことで現在違法の感覚、気持ち悪さを持ちながら貸している人たちもある程度あるわけでございます。こういった人たちにきちんとした正規の賃貸借を行わせるということによってその違法感をぬぐうことができる。それからまた、違法の貸し付けによって借り受けしている耕作者にしてみれば、根っこのないきわめて不安定な貸借でございますけれども、物納を認めることによってそれが正規の賃貸借になっていくということならば、これはまた一つの安定した賃借関係ができるということで、その点ではそれなりのメリットがあるというふうに考えております。
  51. 神田厚

    神田委員 どうもすっきりしない答弁で、本当にこれでメリットがあるかどうかというのは、われわれとしましてはメリットがあるというふうに判断はできないわけでありますが、地価が現在のように恒常的に上昇を続けている状況の中で物納を認めるということは、小作料のなし崩し的な引き上げにつながっていくのではないか、こういうことを懸念せざるを得ないわけであります。  さらには、この物納等につきましては、農業委員会の標準小作料や減額勧告制度との結びつきが非常に困難になってくる、こういうふうに考えられますが、その心配はないのでありましょうか。
  52. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業者の経済的、社会的地位が向上して雇用機会も増大しているという今日では、小作料を当事者の自由な契約にゆだねたからといって、これが戦前のような不当に高いものになるというふうには考えられないと思っております。しかし、当事者が契約小作料を定めるに当たって、その水準の目安、それをどうするかということになりますと、現在の制度でも地域実情に即して農業委員会が標準小作料を定めることができるということになっております。そして、この標準小作料はほとんど全国的にどの地域でも定められておって、これを基礎に小作料の設定が行われておりまして、不当に高い小作料につきましては農業委員会が減額の勧告をするという制度もあるわけでございます。  この標準小作料の問題につきましては、実は改正法案を検討するに当たりまして、標準小作料自身の規定もなくしてはどうかという意見もかなりあったのでございますが、御質問の趣旨のような、全く小作料に関する目安というものをなくしてしまうことは、小作料の水準を不安定化するおそれもあるということで、私どもはこの規定は残すということにしたわけでございます。この制度も活用して小作料の水準が適当な幅の中で定められるようにしてまいりたいというふうに考えております。  それから、物納になりましても、やはりこれは定額金納制の場合と同じように、物自身の評価等に関する基準も、つまり換算をさせました上でこの標準小作料の減額勧告制度運用をするようにしてまいりたいと考えております。
  53. 神田厚

    神田委員 物納になった場合なかなかむずかしいと思うのですよ。どんなふうな方法でやられるのか、どんなことを考えておられるのか、時間も余りありませんので詳しくお聞きできませんけれども、この辺のところは私は非常に問題があるというように考えております。  さらに、物納等によりまして米穀の授受それからその後の流通を認めるということは、食管法による流通規制に抵触をしないのかどうか。これは今度の改正のときにもよく言われている問題であります。さらに、政府は、小作料による米穀の流通等については、現在、余り米を対象に実施されているわけでありますが、第二自主流通米と同様の取り扱いをしたいというふうにさきに答弁をしておりますけれども、第二自主流通米と同じような取り扱いをするということについての法的な根拠はどこにあるのか、これを明示されたい。
  54. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 現在の食糧管理法におきましては、米の譲渡につきまして一定の場合に限定されておりますので、今回の農地法改正によりまして、新たに小作米の流通を認める、または地主がその一部を流通に回すということになりますれば、新たな食糧管理法上の規定が必要になるわけでございます。こういうふうな規定ができると私どもが考えております根拠につきましては、現在、食糧管理法の第九条におきまして、主要食糧の譲渡その他の処分につきまして政府は政令による命令を出すことができるということになっておりまして、これに基づきまして、食管法施行令の第八条におきまして譲渡に関する制限をする規定がございまして、それを受けまして、食管法の施行規則第三十九条におきまして、農林大臣の指定する場合においては政府以外に譲り渡すことができるという規定がございまして、その農林大臣の指定というものが農林省告示で具体的に示されておるわけでございますので、私どもといたしましては、こういうふうな法律的な根拠に基づきまして、この小作米の流通についての規定ができるものというふうに考えておるわけでございます。  その場合の具体的な流し方といたしましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、現在の自主流通ルートと同じ形で、販売先を限定いたしまして、また流通のルートを限定いたしまして、食管法に問題を残さないような流通を明確にさせていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  55. 神田厚

    神田委員 これは大変議論のあるところでありますが、いずれにしましても、私どもこの食管法の根幹を守っていかなければならない、そういう観点から言いますと、こういうふうに施行規則やあるいは大臣告示等によりまして、かなりそういうものを崩されているような状況になっておりますね。ですから、それらにつきましては、今後の問題として取り上げていきたいというように思っております。  これは一つの方法としまして、飯米に限って物納を認め、そしてそのほかは金納だ、そういうことにすれば、飯米に限っての物納ということになれば、これは食管法をそんなに大きく崩すことにはならないのではないか。ですから、私なんかの個人的な考えとしましては、そういうことが法律的にきちんと書けるかどうかというのは技術的に問題があるというふうに聞いておりますけれども、飯米に限って物納を認めるというような形での考え方はできないのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  56. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 今回、定額金納制についてはその規定を全く廃止するということで考えておるわけでございます。  飯米部分だけについて物納を認めるような規定は設けられないのかというお尋ねでございますが、これをそのように限定することについては、先生自身がすでに質問の中でお触れになりましたように、きわめて法律技術的に、また実際の運用上もむずかしい問題がございます。何がむずかしいかと言いますと、自家飯米用ということになりますと、本当に自家飯米用であるかどうかのチェックをしなければなりませんが、そのチェックがむずかしいということ。それから、複数の賃貸借契約に基づく場合に、契約ごとに物納分を借り手からもらうわけでございますが、どのように配分していくのかというような問題もございます。それから、自家飯米用だけでなくて、麦だとか豆だとか野菜、こういったものも自家消費用は米と同じように物納を認めていいのじゃないかとなりますと、これについてどう規定するのかというようなこともありまして、その点は法制上きわめてむずかしいということになっております。  それからまた、実際問題としては、私ども自家飯米を超える大量のものが小作料として貸し主に納められるというふうには見ておらないわけでございます。現在の米をめぐる種々の環境からいたしますと、そういうことをやって当事者にとって決していいことはないというような実態でもございますので、その点は、現在のような定額金納制の規定をそっくり落とすということが一番実際的な解決ではなかろうかというふうに私ども考えております。
  57. 神田厚

    神田委員 私は、この食管法の問題等を考えていきますと、飯米程度のものにつきましてはこれを物納にして、あとは金納制にするという形のものが一番いいのではないかというふうに考えておるわけで、法律でどうしても規定ができなければ省令でこれをするとか、いろいろ方法はあると思うのですね。ですから、その辺につきましては、今後ひとつ検討していただきたいと思っているわけであります。  さらに、今回の改正とは直接関係しませんけれども、本年の九月三十日に統制小作料が完全撤廃されることになるわけでございます。このことによって当事者間の紛争があるいは惹起するのではないか、そういう心配もあるわけでありますけれども、これに対する政府の指導方針というのはお持ちでありますか。
  58. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 お尋ねのように、統制小作料は本年の九月をもって完全に消滅いたします。ただ、四十五年改正以来今日まで、すでに十年間を経過いたしておるわけでございまして、この間の猶予措置によりまして、統制小作料の撤廃までの趣旨といいますか、その考え方については各方面十分御理解いただけたものと私どもは思っておりますし、その調整のための、対応のための考えも整理していただけたものというふうに思っております。  現実に期限切れに伴って貸し主、借り主がどう動くだろうかということについては、現在承知しておりますところでは、そのようなことから全国的に大きな混乱が起こることはまずないというふうに考えております。ただ、個別に全くないかと言われれば、それはどういうことがあるかわからぬということがありますので、私どもといたしましては、貸借当事者における紛争を防止するために、さらに期限切れの趣旨の理解の徹底に努めるということを図るとともに、紛争を防止するための措置について都道府県それから農業委員会指導してまいりたいと考えております。そのため、昭和五十五年度予算におきまして小作料統制廃止の趣旨普及、紛争防止のためこれらに要する経費、それから和解の仲介等紛争処理のための経費、これを予算計上もいたしているところでございます。
  59. 神田厚

    神田委員 これはちょっと大臣にお聞きしたいのですけれども、現在、生産者米価の算定に当たりましては、地代に統制小作料を使用しているわけでありますね。今度、統制小作料が完全に撤廃された場合、何を基準として地代算定をするのか、この検討方式についてはどんなふうにお考えになりますか。
  60. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだ米価を検討する時期には至ってないわけでございまして、今後どうそれにかわるべきものを算定基準にするかということは、正直、いまのところ決めていないわけでございます。
  61. 神田厚

    神田委員 これは九月に撤廃されるということは決まっているわけでありますから、それにかわる算定というのはもうすでに準備をされておかなければならないわけでありますね。ですから、これらにつきましては、米価がいつごろことしは決定するのか、その時期等もありますけれども、やはり私は早く適正な算定方式を確立をしなければならないというように考えているわけでありますが、どうですか、再度ひとつ御答弁いただけますか。
  62. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 どうもいいお答えができないのでございますが、現在本当に白紙でございますので、いまのところ、どういう基準で決めるかをまだ決めていないと言わざるを得ないわけでございます。
  63. 神田厚

    神田委員 重ねて、統制小作料の撤廃に伴う新しい地代の算定につきましては、算定方式を適正にひとつ確立をしていただきたい、こういう要望をしておきたいと思っております。  最後になりますが、農業委員会関係等の問題につきまして御質問を申し上げます。  今回の改正におきまして、第三条、第四条、第五条、第二十条、許可権限につきまして、都道府県知事の権限の一部を農業委員会に委譲する、こういうようなことが言われておるわけであります。  特に第二十条の賃貸借の解約等の許可権限は、賃借人への耕作権の保護ということを図るために大変重要な規定であるわけでありますが、これが農業委員会で審議をされるということになりまして、そういう意味では農業委員会の持つ責任も大変重いのでありますけれども、これらにつきまして、一部では、都道府県知事がチェックをしていたから二重チェックになっていて大変よかったんだというふうな意見もあります。これを今度農業委員会一つの形で決めるような形になったわけでありますが、それらにつきましては、やはり何か特別な指導なり、あるいはこれらの問題について政府としてはどういうふうな考え方を持っておるか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  64. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 今回の農地法改正案によりまして、農地等についての権利移動の許可権限、それから市街化区域内農地の転用届け出の受理、それから農地賃貸借の解約等の許可権限、これらを農業委員会に知事から委譲することにいたしております。  農地等の権利移動の許可につきましては、昭和四十五年の農地法改正によりまして、すでに許可件数の大半が農業委員会の許可となっております。それから、知事許可事案は少ないのでございますが、これにつきましても、意見を付して知事へ進達するという事務を現在すでに農業委員会が行っているところでございます。それからまた、農地賃貸借の解約等の許可につきましても、意見を付して知事への進達事務を行っております。  これらのことからいたしますと、権利の取得者または賃貸借の当事者双方が在村者である場合等の許可申請につきましては、適正な判断を農業委員会は十分なし得るものというふうに考えております。  また、市街化区域内農地の転用届け出の受理につきましては、従来から知事への経由機関としての事務を行っているところでございます。また、その事務の内容は、届出書の記載及びその添付書類が完備しているかどうかということを審査するものでございますので、その運用上特段の不安はないものと考えております。  今回の農業委員会への許可権限等の委譲に際しましては、これは農業委員会自身がその責任について自覚する、そしてその機能を充実させていくことが何よりも必要であると考えております。農業委員会のそういう能力を高める、自覚と誇りを持たせるということにつきましては、組織を所管する経済局とも十分相談をいたしまして、今後適正な執行についての指導の徹底を図ってまいりたいと考えます。
  65. 神田厚

    神田委員 最後に、この農業委員会の問題では、農業委員会の方からの要望もいろいろございまして、一番問題なのは事務局体制です。農業委員会は非常にいろいろな責任を持たされますから、そういう意味では、事務局体制の整備といいますか、こういうものをきちんとしたい、これらにつきまして法的な位置づけをしていただきたいという要望もあるわけであります。  これらの問題を、今度この農業委員会というものを大変大事な役割りにしているわけでありますから、この農業委員会位置づけあるいは内容の改善の問題につきまして、農林省としてはどういうふうなお考えを持っておられますか。
  66. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回の農用地利用増進法及び農地法改正法案によりまして、構造政策推進に当たりまして農業委員会が果たすべき役割りが一層重要になったことは確かなことでございまして、さような意味で、事務執行体制をさらに強化整備することが非常に重要であるということはお説のとおりでございます。  ただ、団体側からの御要望のございました事務局を法定するということにつきましては、通常事務局の設置を法律で義務づけている行政委員会はそれなりの業務量を持っておりますし、また職員数等も相当多いわけでございまして、農業委員会の場合におきましては、これらの行政委員会と横並びで見ていきました場合に、必ずしも法定して設置するだけの必要性はないと考えております。しかし、その内容を充実していくことは当然のことでございまして、私どもといたしましては、今後、今回の法改正の趣旨にのっとりまして、さらに一層その執行体制の整備充実に努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  67. 神田厚

    神田委員 終わります。
  68. 内海英男

  69. 堀之内久男

    ○堀之内委員 今回の農地三法についてちょっとお尋ねをいたすわけでありますが、今回の農地三法は、今後の農業規模拡大あるいは構造政策の改革という立場からは、私どもは、これは大変重要であり、この三法が時宜に適して提出されたものとして心から歓迎いたしているものであります。  先日、日経の四月一日の社説にも、農地関係法案の成立について大変要望された社説が載っております。農地改革の成果を維持するために農地法が制定されましたのが昭和二十七年ですか、それ以後三十七年、四十五年とこういう形で改正もなされてまいりましたが、しかし、政府の期待するような方向では農地流動化も進まなかったと考えております。それは、今日まで農村においては、終戦後の農地改革に対する根深い農家の不安があったとわれわれは解釈しておるわけでありますが、今回そうした農地流動化推進するために、昭和五十年農振法の一環の中で農地利用増進を進めてまいられましたが、さらにそれを一歩進めて今回独立法として提案されましたことは、農村のそうした実態を踏まえてとてもいい時宜の方法だ、こういうふうに私は高く評価をいたしておるわけであります。また、この日経の社説においてもその点を高く評価され、農家の不安をなくすることによって農地流動化が急速に進められる、あるいは規模拡大も行われるかと考えるわけでありますが、そうした観点に立って、この農地利用増進を進めるに当たって、今後農業委員会にどのような役割りを期待され、また、法律上どのような位置づけをされようとされておるか、お尋ねをしておきたいと思います。
  70. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業委員会及び都道府県農業会議は、それぞれ農民の代表機関として農地等の権利移動の許可等の法令に基づく事務及び農地移動のあっせん等の業務の執行機関、または諮問機関として、これらの事務を適正かつ円滑に処理してまいったところでございます。  今回の農用地利用増進法案では、農業委員会については、市町村農用地利用増進計画を定める場合には農業委員会の決定を経なければならないということにいたしております。それとともに、農業委員会等に関する法律上の条文において、法令業務としてこの業務を明記いたすことにしております。これは農用地利用増進法案の附則においてその措置をとることにいたしております。  そのほか、農地事情の改善等の事務を行うに当たっては、これは従来から規定されておる農業委員会の事務の一つでございますが、それを行うに当たっては、利用権設定等促進事業推進に資するように行うものとするということで、今回の法案とのかかわりをつけている、明らかにするということにいたしております。  それから、都道府県農業会議については、都道府県知事が市町村の定めた農用地利用増進事業に関する方針を承認するときは都道府県農業会議の意見を聞かなければならないということにいたしております。  それぞれ法制上その役割りを明らかにしておるわけでございます。そして農地流動化にそれぞれの機関が前向きに取り組むことを期待しているものでございます。  これらのことに伴って、農業委員会及び都道府県農業会議が、その果たすべき役割りに十分こたえて、新法の適正、円滑な実施に資するよう、農業委員会及び都道府県農業会議に対しては、その職務に対する責任と自覚を高めていくことが重要であると考えておりまして、その機能を生かして積極的に活動するよう、経済局とも十分協調いたしまして指導してまいりたいと考えております。
  71. 堀之内久男

    ○堀之内委員 今回、農業委員会を積極的に活用し、また農業委員会の果たすべき役割りをはっきりと定義づけられておることは、私ども高く評価をいたしておるわけでありますが、ややもすると、いままで農業委員会というのはあってもなくてもいいのではないかというような考えがあったと思うのです。これは特に一部の町村長なり一部の市長さん方にもあったと思いますが、しかし、今度法的にはっきりと、今後の農地利用増進を進める場合には農業委員会を積極的に活用する、これは私は今回の法案の意義は大きいと思うのです。私もちょうど十年農業委員会長も一いたしたし、市町村長も十二年やっておったわけでありますが、われわれは今後の農業を進める場合の行政の範囲から考えても、農業委員会を活用することが、その地域農業の振興に、あるいは今後の規模拡大経営の安定という場合において、私は非常に大きいと思うのです。  今回、農用地利用増進法においては、利用権の設定に当たっては、いま局長から御説明ありましたように、はっきりと委員会の決定を経るというように明記されましたので、私は農業委員会不要論は恐らく今後はそう出てこないのではないかと理解をするわけであります。  そこで、せっかく今回農地法改正権利移動の許可等を知事から農業委員会に移した、この点も私は高く評価するのですが、この際もう一歩進んで四条、五条の許可権について、これはやはり無制限ということは申しませんが、たとえば二ヘクタール以上は農林大臣というようにやる、それ以外は知事ということになっておりますが、さらに一歩進めて、一定の制限というかルールを決めまして、市町村農業委員会に権限を委譲する、こういうことにすると、さらに委員会の使命あるいは存在価値というものが十分理解をされると私は考えますが、この点についての見解をまずお尋ねをいたします。  さらに、このことは行政事務の簡素化ということからいって、恐らくそのような枠を一たんはめていけば、八割から九割は市町村農業委員会の仕事は市町村段階で済んでしまうわけです。将来の農業農用地に大きな支障を与えるようなことは、やはり日本の全体、県全体の農業から見て好ましくありませんので、ある程度の枠をはめることは当然でありますが、しかし、今日行政の簡素化が叫ばれておるときに、何でもかんでも四条、五条は全部知事の許可だ、全部書類を送らなければならない、ここにまだ役所の機構の繁雑さがあるわけです。地方の都市とかよく言われる今日であるならば、その辺までは権限委譲した方が、今後の行政事務の簡素化上大事だと私は思いますが、この点についてお尋ねをいたします。
  72. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業委員会に対する権限の委譲は、農業委員会性格なり能力、それからまた事柄の性格といったものに即応して、具体的に判断されなければいけないと思います。私ども、現在の農業委員会がその能力を高め、同時に責任を自覚する、そのための指導もまた行うということの前提のもとに、今日行政の簡素化という観点も込めまして、かなり大幅な権限の委譲を行うこととしているところでございます。これをさらに広めて、農家の住宅等一定の範囲で転用をする場合などもあるわけでございますが、そういう許可についても、転用の問題についても委譲することはできないのかというお話でございますが、やはり転用の問題になりますというと、優良農地の確保等、スプロール防止を図るということはきわめて重要な政策的な課題であり、厳正なチェックが必要であると考えております。  それから、複雑な利害関係が、農業者同士の間とは異なりまして絡んでくることがあり得るではないかとか、さらに、ほかの農振法でありますとか、都市計画法との運用の調整を必要とするというようなことから、これらの転用の問題につきましては、農業委員会に、許可する権限を、現在の知事権限を委譲するということは適当でないと考えております。
  73. 堀之内久男

    ○堀之内委員 どうせ局長はそういうような答弁をするだろうと思っておったのですが、あなたは本当に末端の実情を知らないからそんなことを言うのだ。県あたりが調査に来るのは、二十五、六歳のこのごろ県の職員になったような連中が、どこでしょうかぐらいで調査に来るだけなんだ。だから、われわれは、そういうものが、わずかいまの農家の住宅をつくるというのに、五百平米か一千平米ぐらいの転用をするのに、一々書類を県に送って、県からそれを若い二十五、六歳の職員がここに見に来て、これは適当でございますなんて、このやろうとわれわれは言っておったのだ。もうわれわれが見たものは——農業委員というのはそれぐらいは尊重してもらわなければ。実際やっておるのはそんなものですよ。それは県庁あたりの二十四、五歳の若い連中ですよ。われわれのところへ来たら、われわれの方からおこられて、見ずにそこそこと帰っていく。われわれも、農業委員会長というのはそんなにばかがなっておるわけじゃないので、自分たちの農地を守っていく農家の代表ですから、そんなむちゃくちゃにスプロール化するようなことはしないのです。せっかく三条を認めていただいたから、この際、四条、五条もある程度そういうような方向を検討するのが、これからの農業委員会というものの存在がさらに評価される。それは、農業委員会に持たせると悪いことをするとか、いつでもかでも転用を認めて変なことをするとかいう意見もありますが、現在でもやるのはやるのです。やるのはやるのだから、これは私は、その農業委員会委員の姿勢、委員会の姿勢だと思うのです。あるいは会長がそうしたリーダーシップをとっていけばそういうことはあり得ない。せっかくここまで農業委員会を活用しようというように相当前進されたことは、私は高く評価をしますので、一応こういうことを御提案を申し上げたわけであります。しかし、将来の課題としてこれは御検討をいただきたい、こういうように要望を申し上げておきまして、一番最後に大臣のこうしたことについての御見解を承りたいと思っておりますが、時間がたった四十分しかありませんから、次に移らせていただきます。  今回、せっかくこうして農用地の利用増進法案あるいは農地法改正をいただきまして、農業委員会に誇りと今後の仕事、役割りを与えられたのですが、その役割りを与えられた中において、今回委員を四十名から三十名に減する。このことは、せっかく農業委員会を活用するということとは矛盾しないものかどうか、この点ちょっとお尋ねをいたします。
  74. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  先生御指摘のとおり、農用地利用増進法案農地法改正法案によりまして、国の非常に重要な政策でございます構造政策推進に当たりまして、農業委員会が重要な役割りを担うということになりますので、私ども農業委員会につきましては、その運営の効率化を図るという必要があると考えた次第でございます。また、かねてより全国市長会あるいは全国町村会の方から、その組織の簡素、合理化につきまして御要望があったということも念頭に置きまして、今回、選挙による委員の定数の上限を、ただいま先生おっしゃられるように引き下げるということにしたものでございます。  私ども考えますに、農業委員会の的確な運営を期してまいるためには、確かに先生がおっしゃいますように、農業委員会委員の数ということも非常に重要でございますが、やはりその委員の人を得るということに非常に重要な点があると考えておりまして、構造政策推進に当たりまして、高い識見と豊かな経験を持つ方が真に農民の代表者である農業委員にふさわしいということで選んでいただけるということが、非常に重要であるというふうに考えているわけでございます。そのような意味で、今回の農業委員会の役割りの重要性と今回の定数の変更とは、必ずしも相矛盾するものではないのじゃないかというふうに考えている次第でございます。  ただ、先生の御指摘は、恐らく構造政策推進に当たって農業委員会とその地域との結びつきというものをもっと強化しなければならぬということに力点を置いて、長年の御経験からおっしゃっておられるというふうに思うわけでございますが、この点につきましては、末端の地区における連絡協力体制、たとえば地区協力員といったような方々もお選びいたしているわけでございまして、さような方々との連絡協力体制というものを確立するようにいたしまして、今後の施策の遂行に支障のないよう配慮してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  75. 堀之内久男

    ○堀之内委員 今回、選挙による委員の定数の上限を四十人から三十人と簡単に割り切ったような形で下げておられますが、こうして四十人を三十人にした理由でございます。この理由をお聞かせいただきたい。
  76. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回、農業委員会の選挙による委員の定数の上限を四十人から三十人に引き下げた次第でございますが、これは今回、農業委員会の業務といたしまして、構造政策推進の業務という非常に重要な任務を与えられまして、それを遂行するに当たりましては、やはり農業委員会のいわば総会と申しますか、そういうところの機能というものを活用し、農業委員会全体として総合的な機能を発揮するということが重要であると考えたわけでございます。  この総合的な機能というものを発揮するためには、やはり効率的あるいは機動的な運用というものを果たさなければいかぬというふうに考えられますので、さような意味で、定数の上限を十人程度引き下げて、その効率的な運営を図ることが妥当ではないかと考えたわけでございます。  また一方、このような改正を行うに当たりまして、農業委員会の業務の中心一つでございます農用地権利調整等に係る業務につきましては、選挙による委員の数が二十一人以上の場合には二十人程度の委員による農地部会というもので処理をするということになっておりますので、それぞれこれらの組織によりまして機動的な運用が図れるということになっておりますから、この種の機能には支障はないというふうに考えるわけでございます。  なお、先ほども申しましたように、やはり数ということもございますが、十分な経験と高い識見を持った人を得るということが重要であるというふうに考えて、さような点もあわせ考えて、このような改正を御提案申し上げた次第でございます。
  77. 堀之内久男

    ○堀之内委員 一律にいままで四十人というのもおかしいんですよ。大体どんな町村も四十人なんだということは考えられないことだけれども、これを合理的にやるならば、農地面積、これで委員の員数を割るとか、農地がなければ農業委員会は置かなくてもいいとなっているわけですから、農地があるところに農業委員が必要なんだとすれば、やはり合法的にいくとするならば、農地の面積によっての大体の委員の数、あるいはそれがむずかしいとすれば、町村ならば二十人以下とか、あるいは市の場合は四十人以下とかいうことならばわかる。ただ一律に四十人を三十人というような形では、われわれが末端で実際やっておったところで、恐らく町村で二十人以上というのはないはずですよ。選挙委員で二十人以上というのはないはずですよ。ところが、市においてはどうしてもやらなければならないところが出てきておる。というのは、昭和何年からですか、戦後相当な合併が推進されてまいりました。約一万近い市町村が現在三千に減ったでしょう。それくらい急速な町村合併も行われてきておるわけです。そうした場合に、四十人を三十人というようなことで一応法案が提出されましたが、こういう法案を出されるときに、農林省だけでやられたとは思いません、恐らく自治省とも合議をされたと思うのですが、今回のこの三十人に引き下げるに当たって、自治省の場合、この委員の削減によって将来あなた方が進める市町村の合併に大きな支障を来さないかどうか、この辺の見解をお願いしたいと思います。
  78. 木村仁

    ○木村説明員 現在、市町村の合併の特例に関する法律というものがございますが、その法律は、合併の経過措置として、農業委員会の選挙による委員の最大の数の二倍まで経過的に在任を認めていこうという趣旨で立法されております。したがいまして、このたび定数が最高三十人に削減されたことによりまして、その倍数六十人を限度とするということで所要の改正をお願いしたわけでございますが、合併との関係では、現在の合併特例法が最高定数の二倍を確保しようという立法趣旨でございまして、この際その立法趣旨を変える必要はございませんし、定数自体が三十人に減少になっておりますと、その二倍ということで合併に特別の支障があるものとは考えられない、こういうことで御賛成をいたしております。
  79. 堀之内久男

    ○堀之内委員 もう一回お尋ねいたします。  経過措置というのは将来ともずっとですか。
  80. 木村仁

    ○木村説明員 言葉が十分でなかったかと思いますが、市町村の合併の特例に関する法律が定めている合併に伴う経過措置でございまして、これは新設合併の場合には一年間、吸収合併の場合には吸収する市町村農業委員会委員の残任期間、こういう経過措置で将来ずっと一この法律は十年の限時法でございますので、昭和六十年まではこの制度は続くということでございます。
  81. 堀之内久男

    ○堀之内委員 私の聞いておるのはそんなことじゃないよ。一年とか三年でなくなるのだろう。その後、農業委員の選挙の年が来たならば、今度はその市町村は三十名になるのじゃないか。それ、もう一回答えてください。
  82. 木村仁

    ○木村説明員 そのとおりございますが、合併の特例と申しますのは、個々の市町村現行制度を基準としてその経過措置を定めることによって、合併をしようとする市町村の合併がやりやすいようにしようという制度でございますから、問題は、農業委員会の定数自体が四十人と三十人、こういうどちらを制度として設けるかということでございまして、そういう制度が設けられましたならば、合併の特例としては、その倍数を確保すれば十分であると私どもは考えております。
  83. 堀之内久男

    ○堀之内委員 はっきり言いなさいよ。たとえば市町村の合併がありましたら、その町村の農業委員会はそのまま存続できるわけだよ、もとの市と合併しても。合併当時は三つも四つも農業委員会があるわけだ。それで委員の任期の満期が来たら、その次は自治体が仮に三十名と決めておれば三十名以内でやっていくのだろう。それがやはり倍の六十名までは認められると言うのですか。もう一回お尋ねします。
  84. 木村仁

    ○木村説明員 市町村の合併の特例に関する法律の特例は、一年ないしは吸収する市町村委員の残任期間でございますが、もし合併したことに伴い二以上の農業委員会をお設けになる場合には、それは恒久的な措置でございます。
  85. 堀之内久男

    ○堀之内委員 それならば、私は具体的に聞いていきますが、たとえばいわき市あるいは長野県の長野市、これなんかは相当大きな市町村合併がなされておる。この前、私は農業委員会事務局長に電話で聞いてみた。君のところは三十名になったらどうなるのか、それで差し支えないのかと聞いたら、それは大変なことになると言う。一つの町村に一名しか農業委員がいなくなるのですよ。あなた方はよく合併しろと言うけれども、合併というのは市町村長の首を切ったり市町村会議員の数を減らすのが合併じゃない。より高度な行政の向上を図り、サービスの低下を来たさないようにして地域の一層の発展を図ろうというのが合併なんだ。そんなことやったら——農地のことは農業委員の連中でなければなかなかできない。大きな市の市長は、そんな農地のことのほかに他のトラブルまでいろいろとくちばしを入れる時間的余裕はない。だから、農業委員会の皆さん方にめんどうを見てもらえと言うのだ。何とかして行政経費を減らす、とにかく首切りをやればいい、人数を減らせばいいというような考え方を持っておるのが自治省なんです。私は、今回の農用地利用増進法案、積極的に独立法として農業委員会にやらせよう、あるいは農地法も一部改正してさらに農業委員会に仕事をやらせよう、そういうときに、こうした人数の削減ということは今後の農業の強力な推進に当たってこれは大変禍根を残す、こういうように思いましたし、また、自治省としては、今後の町村合併に当たっては大きな支障になると私は思うのですよ。そういうふうに思わないですか。どうですか。
  86. 木村仁

    ○木村説明員 もし非常に大きな合併等が行われまして、その地域地域で必要がございますれば、農業委員会に関する法律の中にそういう制度がございますので、そういうものを活用するなりしていけばよろしいと考えております。制度がそういうふうに決まりましたならば、合併の特例に関する法律については御改正いただいたような趣旨で十分だと考えております。
  87. 堀之内久男

    ○堀之内委員 だから私は課長じゃだめだと言ったんだよ。君は何を答弁したかわけがわからぬじゃないの。それなら何を活用していくの。合併した後は何を活用していくの。どの法律に特例が書いてあるのか。
  88. 木村仁

    ○木村説明員 特例と申しますのは、農業委員会等に関する法律の第三条第二項の、二以上の委員会を設置することができるという規定でございまして、こういうものを活用する余地もある、こういう意味でございます。
  89. 堀之内久男

    ○堀之内委員 何のために市町村合併をするのですか。無理して農業委員会を二つも一つくるのであれば、合併の趣旨にも反するし、また、あなた方がよく言う行政経費の節約にもならない。一つの市に二つの農業委員会を、これは都道府県知事の許可を受けてやるということになるわけだが、そういう特例をやらなければできないということならば、それはあなた、自治省の立場からも、将来四十名が三十名でなくてもこれをこのままにしてほしいというのが合議だろうと思う。皆さんは将来の合併というものも考えながら——私は自分では合併の尊重なんです。皆さん方がよく奨励した合併で合併してみて、結果的には自治省サイドのことだけはよく勉強されておるが、いや農林水産省の問題、通産省の問題——私は三年前地方行政委員会におったときには、農林省に来てもらうあるいは通産省に来てもらって、いろいろと合併町村の法の不備のことを御指摘申し上げた。今回またこういうような形をされれば、あなたは支障はないと言うけれども、私のところの例をとって大変失礼ですが、私の都城市は一万町歩の農地なんです。そして、一市七町が合併したのが現在の都城市なんです。そして、五町郡部が残っておる。これを入れると農地が二万町歩になる。そして、現在都城市で二十七名の農業委員ですが、旧町村に二ないし三名しか置けない、ずっと全体に置けば。それでも二十七名。農用地利用増進法等を相当活用しようとするには、やはり農業委員の方々がおらなければいけません。さっき松浦局長は、何とか地域協力員を設けてやるのだ、こういう話がありましたが、それも結構でしょう。しかし、実際に農業進展に努力してくれるのは地域から選ばれた農業委員なんです。そういうことを考えるときに、いま少し自治省というものも、人の所管事項じゃない、あなた方が今後合併を進めるに当たって一番支障を来す。今度私のところが、あと五町が合併するかもしれない。というのは、もう農協は全部行政区域を越えて合併して日本一の農協農業共済組合も全部合併している。いま森林組合が年内に行政区域を越えて全部合併します。あと残るのは町村が残るだけなんです。私は、これが自然と起こってくると思う。  そうした場合に、今度合併するところは三名しか残っておらぬから、どこかを一人ずつ削ってでも、五町で一万町歩ある農地のところにたった一人しか農業委員が割り当てられないということでは、せっかくのこの法律がうまく活用されない、そういうように私は考えております。したがって、自治省の方からそうした将来の大合併を進める一あなた方は、政令都市をどんどん、大きな合併を進めておるのだから、政令都市には区ごとに農業委員会を置くことができるとなっていますけれども、四十万、三十万都市で農業委員会を二つも置くぐらいだったら四十名にしてしまった方がいい。だから、さっき中ごろに申し上げましたように、町村の場合は二十名、市の場合は四十名としておけば何の支障もない。このことで長野市あるいはいわき市の農業委員会長方の御意見をお聞きになったのかどうか、この点再度お尋ねしておきます。
  90. 中村瑞夫

    ○中村説明員 堀之内先生のおっしゃること、一一よくわかるわけでございますけれども、ただ、私どもといたしましては、行政委員会としての農業委員会制度がどのようにあるべきかということで基本的に考えておるわけでございまして、そしていまお尋ねの合併の関連につきましては、これは現在私どもが考えておりますのは、合併に際しましての特例ということで法律を制定し、それの運用に当たっておるわけでございます。いまの御意見は、単にそういう合併時の特例ではなくて、恒久的に合併の問題を考えて現在の四十人を維持すべきではないかというふうに承るわけでございますが、これは、農業委員会等に関する法律の問題になってまいりまして、私どもがここで申し上げるのはいかがかと思われますが、自治省としての気持ちを申し上げますと、確かにそういう問題はございますけれども、ただ、あそこの農業委員会等に関する法律七条一項に決めております選挙による委員の定数というものを、将来行われるかもわからないあるいは行われ得べき合併と直接結びつけましてそこの定数を考えるということも、なかなか理論的にむずかしい面があるのではなかろうか。現在のところ、かつてのように全国的に町村合併を促進しておるという事情もございませんので、現実にその合併と結びつけまして基本的な定数を定めるということにつきましては、なかなか困難な面があるのではなかろうかと考えておるわけでございまして、そういった意味で、農林水産省の方の御意見も承りまして、私どもとして格別の異論なくこれに同意をいたしたということでございます。
  91. 堀之内久男

    ○堀之内委員 それで格別異論なく同意したということがいかぬわけなんです。あなた方がいわき市というのをつくらしたのでしょう。長野市も四十名おって、三十名に来年の六月に改選しなければいかぬわけでしょう。相当混乱が起こりますよ。だから私はそれを言っている。あなた方はいままで合併したところの町村のアフターケアをなぜしないのか。いや、それは困る、いままで合併を進めてきておるから、農林水産省の考え方としてはいいかもしれぬけれども、われわれこうして合併を進めたものとしてはちょっと困るねというぐらいのことは助言があってもよかったのじゃないか、こういうように考えておるわけでありまして、これは時間がなくなりましたからもうやめますが、この点、再度今後の大きな課題として保留をいたしておきます。  次に、都道府県農業会議は今度部会制を廃止されましたが、都道府県の場合に常任会議を置くのであれば、私は市町村の場合もこの部会制を廃止して同じような制度でやっていくことが、全体で総会で運営していくということが合理的であり、また経費も要らない、こういうように理解するわけですが、この点の都道府県会議の部会を廃止したいきさつ、あるいは市町村を廃止しない根拠、この点についてお尋ねします。
  92. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 都道府県の農業会議につきまして、今回農地部会を廃止いたしまして常任会議員という制度を設定したいと考えておるわけでございますが、この考え方は、現在都道府県の農業会議員の数、これは一会議当たり平均八十六・四人という非常に多くの数になっております。したがいまして、会議体として円滑に機能するように部会制も置かれておるわけでございますけれども、この制度では農地部会が農地法の分野の業務のみを担当するということにされているといったようなことがございまして、今後構造政策の総合的な展開といったことを考えてまいりますと、その推進にふさわしい都道府県農業会議の運営を図るという上では問題ではないか、やはり総合的に一元的に処理するような多面的な分野を担当できる常任会議制度といったようなことをとることが適当ではないかと考えた次第でございます。  それでは、なぜ同様に農業委員会については農地部会制というものを依然として存置させたかというお尋ねだろうと考えるわけでございますが、都道府県の農業会議は、先生も十分御案内のように、諮問機関的な性格を持っている法人でございまして、農業委員会の方はまさに農地法上の許可等を行う実質的な行政機関でございます。このために、委員数の多い農業委員会におきましては、農地部会を必置の機関ということにいたしまして、その所掌業務の遂行の円滑化を図っているということでございます。このような実態にかんがみまして、今回の法改正におきましては、農地部会制度につきましては手を触れないということにいたした次第でございます。  なお、そのようなことで私ども案を立てて考えておったわけでございますが、実は、先生から、非常に長い間の貴重な御経験によりまして、農業委員会の部会制についてもやはり見直しをした方がいいのじゃないかという御意見もございましたので、実は私ども急遽アンケート調査をいたしまして、全国の農地部会を設置いたしております委員会につきましてアンケートによる回答をもらったわけでございます。  それによりますと、やはり農地部会を存置すべしという意見が八〇・二%でございまして、その内訳は、回答率が八九・五%というきわめて高い回答率でございましたが、現状どおりで差し支えないという意見が七〇・一%、構成員の人数等の増減のような必要な調整をして農地部会を存置してはどうかという意見が一〇・一%、それから、構成員の人選難等の理由によって農地部会を廃止してその所掌事務を総会でやる方がよいと答えた者が一二・一%、それから、その他の部会と同様に農地部会を任意設置とした方がよろしいという意見が五・三%、特に意見なしというのが二・四%でございました。  かような全国の大勢にかんがみまして、やはり農地部会制度というのは、今後も農業委員会については維持した方がいいのではないかということで考えておるわけでございます。  なお、しかしながら、今後もやはり農地部会制度運用という点につきましては、いろいろと御指摘の点も受けまして考えていくべきであるというように考えておりまして、その機能が十分に発揮できますように、今後とも指導に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
  93. 堀之内久男

    ○堀之内委員 時間があと二分しかありませんのでよけいなことは申し上げられませんが、今回の農地法改正で、小作料について定額金納制を廃止して物納ということが認められるようですが、実際農村ではやはり最近農家同士ではやっていることは事実なんです。事実でありますが、しかし、やはり小作料の物納というのは、戦前の地主制のような感じがいたすわけでありまして、現在では昔のような地主、小作関係というものが復活するとかということにはならないと思うわけでありますが、心理的な反発というか、心理的にそういう感じを持つわけであります。現在それぞれ適当にやっておるからということで、こういうように物納というものははっきりした方がいいだろうというように考えての処置だろうとは思いますが、実態に即するわけですから悪いとは申しませんが、この辺に対して大臣はどのように見解を持っておられましたか。  さらに、現在まで農業委員会法の改正等についてそれぞれ意見のやりとりをいたしましたが、今後農業委員会はさらに強化すべきである、こういうように私は考えておるわけです。農業委員会法が制定されたのが昭和二十七年ですか、その後ほとんど改正らしい改正はされていない。三十年に都道府県農業会議を設置するというのと、それから、三十九年に何かもう一つ出してこれは成立しなかったということが、公選制をやめて推薦制ということで一回出されたそうですが、今後とも農業委員会の果たすべき役割りというのはきわめて大きいと私は思うのです。とすれば、やはり農林水産省の方でこれを大きくバックアップするような、法的に強化していくということがきわめて大事だと思う。今後のこうした農地の利用増進におきましても、農地改革の本当に今度は相当な前進だと思うわけでありますが、そういう意味でも、将来の課題として農業委員会の改革、会法の改正、強化を図るということについて、大臣はどんなようなお考えを持っておられますか。この二点についてお聞きをいたしまして、質問を終わります。
  94. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まず、物納を認めるということについての御指摘でございますけれども、いまお話しのように、法律では認められなくても実際は相当物納が行われていることは事実でございまして、私ども、これはやはりそういう点を踏まえて考えると、これから農地をせいぜい貸していただくということをお願いをするわけでありまして、そうすると、貸し手の方から言えば、自分の貸したたんぼからできる米をやはりほしい、こういう気持ちをより持たれると思いますので、いま現実にも相当行われてきておりますし、それを追認するような形ではございますけれども、ひとつ法的にもそういうものを認めたらどうか。特に、いま御指摘がありましたが、昔の地主、小作人という関係は、地主が相当強い姿勢で小作人に対して小作米を提供さしておった、今度の場合は、いわゆる農家同士横の関係というか仲間同士でお互いに貸し借りをするわけですから、昔のような縦の関係が起きてくるはずはないわけでありまして、それでお互いに話がつかなければ貸し借りが成立しないわけなんでございますから、そういう面では、全く過去のものというふうには、昔の戦前のいわゆる地主、小作という関係は全く起きてこないと私は確信をしておるわけであります。そういう点は私は御心配をする必要はないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、農業委員会関係ですけれども、先ほど議論をいろいろ聞いておりまして、私は、農業委員会は、いま御指摘のとおりで、今回こういう農地法の三条の権限も都道府県知事から委譲して、そして思い切ってひとつ農業委員会中心になってこの貸し借りのいろいろ農用地の利用増進を促進をしていただこう、こう考えているわけでございまして、そういう点では、従来以上に農業委員会の役割りというものは私どもは重要視していかなければならぬと考えておるわけでございます。そういう点からいけば、農業委員会というものがよりしっかりしたものにひとつなっていただきたい、こういう気持ちを持っておるわけで、そうすると、それじゃ人間を減らすというのはどうか、こういうことが先ほど来議論がなされているわけでございますけれども、私は、そういう構造政策をより効率的に運用していくという面においては、必ずしも量だけではないので、やはり質の問題ではなかろうか、今後こういう点においては、農民の方にもよく御理解をいただいて、もちろんいままでもりっぱな方がなっていただいておると思いますけれども、やはりよりりっぱな方になっていただくということによって、量を質で補えるのではなかろうかというふうに考えて、数の問題は、上限を四十から三十に引き下げるという点においてはいろいろあるかと思います。ただ、やはり従来三条の二項の、先ほどの話のように、非常に地域が広いとかあるいは農地面積が非常に大きい地域でありますと、二つ以上の農業委員会をその市町村内に設けることができるとなっておるわけです。なっておるけれども、現実にはなかなかそれを実は抑えておるという点は、いろいろのことがあったからそういうことだろうと思うのでございますが、先ほどのような、合併がこれからでもなされていく場合において、あるいは最近に合併がなされてそして今度委員の改選が行われるというような場合は、私はやはりその三条の二項を活用したらいいのじゃなかろうかというふうに思っておるわけで、三条の二項を活用するより全体的に四十人の枠をそのまま残しておけというのは、市町村によっては必ずしも四十じゃない、まあそれは上限だからいいようなものの、そういうものは上限があると、それをいま四十あるところを三十になかなか抑えられないと思うものですから、そういう面で、四十を三十に下げることによってどうしてものところは、逆に三条の二項を活用するというのがやはり望ましい姿ではないかと私は思っておるわけでございます。それでよろしゅうございますか。
  95. 堀之内久男

    ○堀之内委員 終わるつもりでありましたが、どうも最後の大臣の見解と私は大分また違ったようなことでありますから、もう一回だけ私の意見を申し上げておきたいと思いますが、この特例の三条の二項を生かすというのは私はもうほとんどあり得ないと思うのです。これはあり得ない。実際問題としてありません。政令都市なら別として、三十万や四十万の市で、同じ町村に二つ農業委員会をつくる。それも三十万や四十万でも本当に市街化した町ならいいと思うのです。いわゆる農村都市という、農地中心になるようなところ、たとえば、私は自分のところばかり言いますが、九州農政局で一番大きい市は都城市だ。一万町歩以上持っておる市というのは都城市だけだ。だから、農村合併でやったところと、私は今度いわきをまだ詳しく調べておりませんけれども、やはりそういうところはそれで何とかいけるということで合併をしてきておるわけですから、これは四十人としておけば、何も一町村で二十名というところはまずないのです。大体十五、六名なんですよ。みんな経費の節約をしようということはよく知っておるわけです。だから、そういう意味で、そういうさきに合併されたいわき市とかあるいは長野市とかいうところもあるものだから、ただこれを言っただけで、私は、委員の人数だけではなくて、できれば一歩進めて、先ほどもお尋ねしましたように四条、五条あたりまで、ある程度行政簡素化、その方の行政簡素化の方がよっぽどいいのです。自治省がとにかく委員会は要らぬなどというような指導をするというから、町村長あたりもそういうような形になっておるわけですから、だから、十分活用させないから農業委員会の不要論が出てくるわけです。農業委員会を非常に活用していけば、まだまだ農業委員会というのは必要だ。余り選挙選挙と言うけれども、全国で選挙されるのは二割ぐらいしかないのです。みんな部落の推薦でなってきて仲よくやっておるわけです。  だから、そういう意味でも、今後のこうした農地流動化を促進したり、規模拡大を図っていったりするためにも、農業委員会の果たす役割りは大きいので、将来の課題として御検討願いたい、こういうことを要望するわけでありまして、一応要望だけを申し上げて、私の質問を終わります。
  96. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ちょっと私忘れたのは、先ほどの農地法関係で、いわゆる三条だけではなくて四条、五条もひとつ農業委員会に任せたらどうかということがございました。これは私は、今回の三法を出しましてやはりひとつ考えていかなければならないのは、あくまでこれは農地流動化を図るということでありまして、四条、五条というのは農業以外に供するために転用を認めるということでありますので、そういうものまでここでやりますと、これは大変誤解を招くおそれがあるのではなかろうか。やはり今度の農地法改正においては、農業以外に農地が供されるようなことは極力抑えていきたい、こういう姿勢を私どもはとっておるわけでございまして、農業委員会の役割りというものはもちろん私どもよく承知をいたしておりますけれども、この際はやはりひとつ三条だけにとどめさせていただきたいと思っております。しかし、将来、こういう形で農業委員会の役割りを私ども重要視していく中においては、四条、五条についても農業委員会に権限を委譲すべきかどうかという点は、ひとつ十分検討さしていただきたいと思っております。
  97. 堀之内久男

    ○堀之内委員 終わります。
  98. 内海英男

    内海委員長 この際、午後一時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  99. 内海英男

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。本郷公威君。
  100. 本郷公威

    ○本郷委員 今国会に政府より提出されております農用地利用増進法案農地法の一部を改正する法律案農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案、この三つの法案に対しまして政府の見解をお聞きしたいと思います。  まず、この三法案の提案理由につきましてはすでにそれぞれの立場から説明をいただいておるわけですが、この三法案に共通する改正のねらいを社会的、経済的な側面からまとめて説明願いたいと思います。
  101. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども農政の基本というのは、どうしてもわが国農業体質を強化いたしまして、そして総合的な食糧自給力を高めていく、それによって国民生活の安定を図る、これがやはりこれからの農政の基本であると考えておるわけでございます。  そこで、それではそういうことをするにはどうしたらいいかということになるわけでございますが、やはりそのためにはどうしても、いままで農地流動化が停滞をしておる、こういうことを言われておるわけでございまして、それを促進をしていかなければいけない、そして農地流動化を図って、できる限り中核農家、私ども農業生産の担い手だと考えておりますが、この中核農家にできるだけそういう農地が集積されるようなことを考えていかなければならない、そして、それによってその中核農家にしっかりなっていただいたときに、今度は地域の実態に応じながら、やはり需要に見合った形で農業生産が行われるという形で農業生産の再編成を考えていかなければならない、こう考えておるわけでございます。それを踏まえて、そうすると農地流動化を図るにはどうしたらいいのかということで、今度の三法を御提案を申し上げた、こういうことでございます。
  102. 本郷公威

    ○本郷委員 今度新しく提案をされております農用地利用増進法案は、これに基づくところの農地の貸借あるいは所有権移転などが農地法の適用除外となっておるために、この法案農地法のバイパス法案と呼んでおるわけですが、すでに昭和五十年の農振法の改正の中で農用地利用増進事業が実施をされているわけです。とするならば、このバイパス路線を法制化することによってこの事業拡大強化をねらっておると思うのです。しかしながら、この農地法がすでに昭和四十五年の改正で、その目的の中に「土地農業上の効率的な利用を図るため」という文言を加えて、借地による農地流動化もその目的に加えておるわけであります。農地法の本来のねらいは、私が申し上げるまでもなく、「目的」の中に「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認め」という言葉にありますように、自作農主義にあったわけですが、その性格は変わってきておるというように考えるわけです。  いま大臣説明をしましたように、農地流動化を促進するため今度の法律を提案してあると言っていますが、農地法それ自体の改正は最小限にとどめてその抜け道を拡大するという方向をとったように考えられるわけですが、農地法をそのようにせずにこうした新法を出してきた理由は何ですか。
  103. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農地法というのはやはり規制法だと私どもは考えているわけでございます。今後とも農業以外の目的に農地が使われることのないように、極力その規制は続けていきたいと考えておるわけでございますが、いま御指摘のように、一方農振法の改正によりまして農用地利用増進事業をやってまいりました。必ずしも十分な成果が上がったとは思いませんけれども、しかし、三年ないし五年ぐらいの期間で貸し借りがだんだん行われるようになってきたわけでございます。  そこで、私どもはその実績を踏まえて、ひとつ思い切った農地流動化を促進するという意味においては、このやってまいりました制度を法制化し、そしてその対象を、従来は農振法のいわゆる農振地域農用地区域だけに限定しておりましたのを、できるだけ拡い範囲に広げまして、それこそ山すそあたりまでもできればひとつ貸し借りが行われるならば非常にいいのではないかということを考えて、今度御提案申し上げたわけでございまして、もちろん、これによってそれじゃどれだけ効果が上がってくるのかということは、先ほど来この委員会でも議論されておりまして、また、私どもそれによってこれだけ農地流動化が促進されるあるいは集積化されるという数字まではまだなかなか申し上げる自信はございませんけれども、しかし、少なくとも、いまの農振法の改正で行っておる農用地利用増進事業よりは相当効果が出るのではなかろうか、こう考えておるわけでございます。そういう点でこの法律を新しく考えたので、農地法を規制法でいろいろやっていくというのはやはり問題があるのではなかろうかと思いまして、いわゆるバイパスで考えたということでございます。
  104. 本郷公威

    ○本郷委員 いま大臣からそういうお話がありましたが、農地法本体に触れなかったのは、やはり政治的な配慮があったのではないか。あるいは農地法に触れると、ずいぶん抵抗があって、皆さんたちが考えておるようなことが今度の国会ではどうも通りそうにない、こういう考え方が左右したのではないかと思うのですが、どうですか。
  105. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどから申し上げますように、農地法というのはやはりいままでお互いにいろいろの規制をしていくのだという考え方ででき上がっておりますし、特に農業者の方々の気持ちを考えますと、今後とも農地法の基本的な考え方は変えていきたくない、こう思っておるわけでございます。農地法の基本的な考え方を変えないとすると、いまバイパスで考えておるようなことはなかなかなじまないのではないかということで、農用地利用増進法案を出したということでございまして、いま大変うがった見方をして御指摘がございましたけれども、必ずしもそういうふうには、私ども頭が単純でございますので、そこまでうがった見方をしていただいて出したというふうには、お考えになるのはいろいろお立場でございますけれども、私どもは単純でございますので、そこまでどうも考えつかなかったわけでございます。
  106. 本郷公威

    ○本郷委員 もう少し農地法をめぐる問題を追及してみたいと思うのですが、利用権設定等促進事業による農地流動化に対しましては、一つには、農地法権利移動の許可制、これは第三条関係です。二つには、小作地の所有制限、第六条関係。三つ目には、賃貸借の法定更新の規定、第十九条、二十条関係になるわけですが、こういう農地法のいわゆる規制が適用除外されているわけです。とすると、現行農地法の中で残っているものは一体何かということになるわけですが、農地の移動統制あるいは権利関係の調整について見ますと、第四条関係の「農地の転用の制限」、第五条関係の「農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限」、これくらいが残っておるだけで、農地法は全く空洞化されておるのではないかというように感ずるわけです。農地法の形骸化は新しい法律によりましてますます進行することが考えられるわけです。  そこで、骨抜きにされた農地法の存在意義は一体どこにあるかというのが、いろいろな新聞やその他で評論をされているわけですが、農地法の今日的な意義について、いま大臣もちょっと触れられましたが、ひとつ政府の見解をお聞かせ願いたいわけです。
  107. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 大臣からもお答え申し上げましたように、農地法は、耕作者の地位の安定を図り、農業生産力の増進を図ることを目的として、個別地片の農地についての権利移動、転用等を統制することにいたしております。そのことによってまた農地利用の効率化を図るということが今日もなお残っているといいますか、使命としているところの存在意義でございます。  土地資源が乏しくて、農地農業外の利用目的の取得圧力といいますか、外部からの攻勢が強いわが国にありましては、投機、投資目的での農地取得を排除することは依然必要でございます。その点、農地法が今日果たしている機能、役割りはきわめて大きいものがございまして、この役割りを重視して、農地法の体系は今回も維持することにいたしておるわけでございます。  それから、今回の農用地利用増進事業のような特定のケースにつきまして、つまり公的機関が介在して賃貸借をあっせんする。そのほかございますが、これらの特定のケースにつきましては、農地法の規制を緩和するということにいたしておりますけれども、これは農地法を形骸化するとか空洞化するというようなことではなくて、むしろ、農地法の本来の精神を私どもはさらに発展させたものだ、新しい機能を付与したものだというふうに理解いたしておるわけでございます。農地法をむしろこれによって充実させるというくらいの考えでございまして、しかも、農地法本体の規制は、こういう特定のケース以外には原則的に依然として大きな分野において残っておるということで、実際的にも働く分野はきわめて大きいのでございます。
  108. 本郷公威

    ○本郷委員 農地法の目的にあります自作農主義というものが、制定当時に比べますとずいぶん後退をしてきておるわけです。あなた方に言わせれば、それは社会の情勢の変化だというようにお答えになるかもわかりませんが、とにかく自作農主義というのが今度の新法ができましても生かされているのかどうか。生きておるとすれば、どういう点で自作農主義というものは堅持されていくのか、その辺についてもう少しお聞きしたいのです。
  109. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 今度の三法案におきましても、自作農主義を基本原則としていることは変わりありません。それは、そもそも規定の上でそのことを否定する、廃止するというようなことはいたしておりませんので、特定の場合に規制を緩和するという形で調整を図っているところでございます。それから、実態的にも、借地で農業経営を行うという場合にありましても、一般的に全くの借地だけで農業経営を行うということは通常考えられませんで、やはり相当の自作地を持って、それに付加する形で借地をする、そして経営規模拡大していくというのが一般的な姿であろうと考えております。そういう意味で、自作農主義を何ら否定しておるものではございませんし、むしろ、今日的な自作農主義を基礎にした農用地有効利用ということの機能もあわせ果たす今回の新しい提案であるというふうに私どもは考えておるところでございます。
  110. 本郷公威

    ○本郷委員 今回の法制化のねらいでもあります土地流動化の問題は、二種兼農家をどうするかという問題につながっておると思うのです。今日、農業就業人口は半減したにもかかわらず、農家戸数は二割ぐらいしか減っていないわけです。こうした中で兼業農家が年々増加の道をたどっておるわけで、今度発表されました農業白書を見ましても、北海道を除く実態は、専業農家は一一・七%、第一種兼業が一七・四%、第二種兼業が七〇・九%と、兼業農家が約九〇%を占めておるわけです。このように兼業農家が年々増加してきた原因、こうした現象を政府としてはどのようにとらえておるか、御意見を聞きたいわけです。
  111. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 兼業農家の数は、いま先生言われましたように、最近におきまして著しく増加してまいっております。このように兼業農家が増加しましたのは、この間におきますわが国経済の成長等によって、農業外での就業機会、これが増大し、農家の中でも他産業に従事する者がふえてきた、そのことによる兼業化進行ということであろうと思います。これは必ずしも好ましいというばかりの話ではなくて、むしろ農家所得の面では、こういうことを通じて他産業従事者を上回る水準が達成されているような状況になっております。兼業農家は、農村に定住して社会的安定層として健全な地域社会の発展に寄与していると存じます。中でも二種兼農家等は、その大半が安定した仕事に従事しておりまして、農外所得や年金等によって生計を維持しながら、農地の一部を貸し出す、あるいは地域農業の振興にさまざまな形で協力するということが期待されるものでございます。このため、農村地域におきまして安定した就業機会をさらにつくり出していく、それとともに、専業的農家だけでなく、兼業農家、非農家を含めて地域の連帯感を醸成しまして、生活環境の整備等を図るための対策を進めてまいる必要があるというふうに考えております。
  112. 本郷公威

    ○本郷委員 いま局長は、他産業に従事する者がふえてきたという現象を指摘したわけでありますが、これは他産業に従事する者がふえてきたというよりも、余儀なくされたというように考えるのが正当ではないかと私は思うわけであります。数年前の高度経済成長政策の中で、農村から安い労働力、安い土地、安い水が奪われたといって大問題になったわけですが、そうした政策の中で農民は農村から追い出されてきた、こういうようなとらえ方を農民はしておるわけであります。こうした農業の荒廃を来したことが今日の農政の大問題になっておるわけですが、農畜産物の価格保障がない今日の農業経営の中では生活ができないから、農業外の所得を求めて出かせぎに行っておるのじゃないですか。農業だけで生活ができれば、わざわざ家族と離れて出かせぎに行くとか、あるいはなれない仕事に従事するとか、そういうことはしなくてもいいわけですが、農業で食えないから出かせぎに出る、あるいは他産業に賃かせぎをする、こういうような状況がいま生まれてきておるのじゃないですか。政府のいろいろな資料を見ますと、農村が機械化されて余剰労働力ができた、だから他にそういう仕事を求めておるというようなことがときどき書いてあるのですね。しかし、機械化されて労働力が余ったから働きに出ておるというような実態ではいま農村はないと思うのですが、その点についていかがですか。
  113. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 個々の農家なり地域実情によって、兼業に従事する場合、その動機なり事情はどうであったかということになると、確かにいろいろのことが言えると思いますが、基本的には、日本の高度経済成長が他産業従事の機会、そして所得獲得の機会を与えたということが一番動機になっていると思います。  それから、農業の世界では食えないから他産業に行くのではないかという御指摘に対しては、その点は一面確かにそういうことがございます。ただ、これは日本農地状況と、それから農家経営の戸数なり労働力状況を考えますと、諸外国等に比べるまでもなく、零細ということは脱却しなければいけない、経営規模拡大を図っていく必要があるということからいたしますと、これは何も追い出すとかなんとかということではなくて、むしろそういう機会をとらえて優秀な労働力として本当に農業にとどまる者を確保して、兼業機会のある方にはそれなりに他産業に従事していただくということでその間の調整を図ることは、一つの行き方として当然あってしかるべきものであると考えております。
  114. 本郷公威

    ○本郷委員 従来、政府は第二種兼業農家を、日本農業の発展を妨げるがんだというような見方をしておったのではないかと私は思うのですね。あるいは別な言葉で言いますと惰農扱いをしておった。本当に農業に専念しないで出かせぎに行く、裏作もつくらなくて出かせぎで賃金を求めておるというふうに、惰農呼ばわりをしておったのがいままでの第二種兼農家に対する見方ではなかったかと思うのです。ところが、今度はそれらの二種兼農家貸し手として位置づけまして、一定の役割りを与えようとしておるわけです。  私は、いままでそういう見方をしてきた第二種兼農家が果たしてそれにこたえるだろうかという疑問を持っておる一人であります。第二種兼農家貸し手中心となる、そして今後の農村社会農業の前進のために大きな役割りを果たさせるというのが政府の考え方とするならば、この二種兼農家を今後の農村社会の中においてどのように位置づけていくか。その辺の基本的な考え方を示してもらいたい。
  115. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 二種兼農家を惰農扱いして、これを追い出すようなことをしたのではないかというような御指摘でございますが、農業といえども産業である以上できるだけ合理的な経営が望ましい、規模拡大のもとに近代的な装備をした生産性の高い農業を育てるということが、どうしても農業政策中心になりまして、その点に重点が置かれたということは事実でございますが、二種兼農家は二種兼農家として、その地域における全体の農業の維持ということにそれなりの役割りを果たしておりますし、特に社会的な安定層としてのその機能は重視しなければならないと考えます。また、最近におきまして、混住社会というような形で、都市との連携を保ちながら、同時に、農村社会自身が生活の場として一つの新しい性格を持つようになってまいっております。  そういうことを考えました場合、先生御自身のいまの御質問の中にもありましたように、地域におきまして農地を提供することによって、全体の農地利用、土地有効利用ということに参画して、地域農業の発展に寄与するという意味におきまして、農業の面から見ましても新しい一つの機能を期待するわけでございます。そういった二種兼農家の安定的な生計なり農業とのかかわりのあり方につきましては、農林水産省におきますあらゆる施策を通じて、それなりに調和を図っていかなければならないと考えております。
  116. 本郷公威

    ○本郷委員 私は、きのうも一般質問の中で、食糧自給力を向上する問題について触れたわけでありますが、食糧自給率が年々低下しておる。特に穀類の自給率は、米を一〇〇%と見ましても、三四%まで低下している現状ですが、こうした食糧自給率低下の原因について、政府はいままで、第二種兼業農家が非常に増加してきたことが一つの理由である、二種兼農家がふえてきたことが日本食糧自給力を弱めてきておるというように分析をしておるわけであります。私は、それは本末転倒ではないかと思うのですが、その点についていかがですか。
  117. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 食糧自給率が弱まってきたのは、いま御指摘のように、確かに二種兼の方々が、裏作の麦などが今日まで収益性がわりあい低かったものでございますから、そういう点で、たとえば昭和四十年ごろと比べますと、小麦の生産量はいま大変落ちてきているわけでございまして、それは当時はきっといまの二種兼の方々がおつくりをいただいておったと思いますので、そういう点では、これはやはり食糧自給率に影響してきていることは事実であろうと思います。  しかし、いま御指摘の三四%に下がってきたというのは、その大きな原因は、いま御指摘もございましたが、飼料穀物にやはりあるのではなかろうかと私は思っております。飼料穀物はほとんど外国に依存をいたしておるわけでございまして、この点がやはり今日の自給率を非常に低下させた原因ではなかろうか。これは日本の耕地ではとてもアメリカのように——アメリカでは四百ヘクタールないし五百ヘクタールのところでトウモロコシなどは栽培しているわけでございまして、幾ら逆立ちをしてもそのような耕地面積を日本で確保することは不可能でございますし、そういう狭い、たとえば北海道でも、相当広い農地をお持ちの方でもこれはもう十五ヘクタールないし二十ヘクタールぐらいだろうと思うのでございます。そういうところではとてもそれだけの安いものはできるわけがないわけでございまして、そういう面で、やむを得ず飼料穀物は外国に依存しておる、これが結果的に日本食糧自給率が非常に低くなってきた一番大きな原因ではなかろうかと私は思っておるわけでございます。
  118. 本郷公威

    ○本郷委員 いま大臣もおっしゃったように、すべてではないが一部そうした面があるというように言っておられるわけでありますが、私は、食糧自給率低下の要因というのは、兼業農家には余り責任はない。やはりいままで政府が米一本の米作主導による農政を進めたということは事実であります。そういう政策を続けてきた。それから、今日問題になっております国際分業論に基づく外国からの食糧の輸入政策、あるいは農畜産物の価格政策が今日まで十分でなかった、こういうもろもろの問題が、いま言われております農業の荒廃をもたらして、農政そのものに大変な問題を起こしているわけであります。  としますと、この第二種兼業農家は自然にできたのじゃなくて、やはりそこまで追いやってきたのだというように私はとらえなくてはならないと思うのです。大臣、やはりこの責任というものは今日までの農政にあったのではないのですか。そこらの反省がなくして、ただ、いま第二種兼農家をひとつ貸し手としてやってもらおうと声を大にしても、なかなかそういう受けとめ方は農民はしないと思うのですが、いかがですか。
  119. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 十分であるかどうか、これはいろいろ見方があると思いますが、農畜産物に関しましては大体その八割が価格政策対象になっておるわけでございまして、全く放置しておいて、そのために農業がやれなくて他の産業に職を求めて、そしてそちらからの収入が主になってきた、こういう形で二種兼業になったとは必ずしも私は思わないわけでございまして、相当価格政策も今日まで考えてきたと私は思っております。  ただ、高度経済成長によりまして、相当賃金の急上昇がございました。その賃金の急上昇と比べれば、農畜産物の価格政策がそれに比例して必ずしも上がっていったかどうかという点は、確かにあるだろうと思います。そうなると、人間でございますから、やはり非常に高くなってきた賃金の方にどうしても就労機会を求めていかれた、そして、自分のところのたんぼはできるだけ残された家族の方々で耕作をされた、こういうのが二種兼業が今日このように多くなってきた実態であろうと私は思っておるわけでございまして、それは高度経済成長がよかったのか悪かったのか、こういう議論はあろうかと思いますけれども、少なくとも、価格政策がそちらへ追いやったということではなくて、やはり高度経済成長で非常に急激に賃金が上昇していった。それからもう一つ、やはりお互いに、二種兼業農家を含めて生活水準の向上があった、こういうことが現在の二種兼ということになってきたのではなかろうか、こう私は判断をいたしておるわけでございます。
  120. 本郷公威

    ○本郷委員 今度出されております増進法案は、昭和五十年の農振法の改正によって導入されました農用地利用増進事業、これを法制化をしてひとつ強化をしようということになっておるわけですが、この農振法の中でつくられたこの増進事業が十分その効果を発揮できなかった。とするならば、この農振法では不十分である、進まなかった何か要因がいろいろあったと思うのですが、そういう要因があればお聞かせを願いたいのです。いわゆる新法をつくる必要性ですね。そういうものについてひとつ端的にお答えをしてもらいたいと思います。
  121. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農用地利用増進事業が十分な成果を上げたかどうかということを判断する場合、基準をどこに置くかということに一つ問題があろうかと思います。一〇〇%、もっともっと理想的なことを考える立場からしますと、これは確かに十分成果を上げていないという評価がございましょうが、ただ、従来のもろもろの流動化施策に比べますというと、私どもかなりこの利用増進事業というのは実績を上げたというふうに思っております。その実績を上げた理由は、これは先生のおっしゃったことをある意味で裏返しで検討する材料になるかと思うのでございますが、やはり基本において、所有権の移動ということよりは賃貸借の実現ということで考えていくべきでないかということに焦点を置いたことが、一つ効果の上がった大きな根拠であろうかと思います。  実績は、五十四年におきまして単年度で一万七千ヘクタールの利用権の設定を見ておりますし、累積二万四千ヘクタールというような面積に及んでいるわけでございます。それから、特に五十四年、最近になりましてその実績が大きく伸びておりますのは、やはり地域農政特別対策事業の実施といったような各般の行政措置も手伝いまして、推進体制が各市町村整備されたということがあろうかと存じます。それから、集落座談会等各種の掘り起こし活動、啓蒙活動を通じまして、農家制度の趣旨が浸透してきたということがあろうかと思います。  それからもう一つは、農用地高度利用促進事業という予算上の措置によりまして、農業委員等の農地流動化推進員による掘り起こし活動が活発になったこと、さらに、そういう各種指導、誘導の結果、賃貸借に踏み切った貸し主に対しましては、流動化奨励金、賃借期間、貸し手の方から言えば賃貸し期間が三年ないし五年のものに対しては十アール当たり一万円、六年以上のものに対しては二万円を交付するようにした。それらのことがあずかって力があったと思います。したがいまして、なお不十分だったのかと言われれば、こういった施策をもっともっと効果あるように充実させて全体の発展に結びつけていくということが一つあろうかと思います。  それと同時に、制度面におきまして、今回提案しておりますところの利用増進事業内容は従来のものに比べて各般の面で拡充を図っておるわけでございます。たとえば対象地域を、農振法の農用地区域だけでなく、市街化区域を除いた全体の地域に広げているというようなこと、それから地目につきましても、農用地というようなことだけでなく、さらには混牧林地、農業施設用地、開発用地といったものまでも対象にしているということ、それから、できるところについては所有権ども取り込んでこれも流動化対象にするということにしていること、あるいはまた、農業協同組合、農地保有合理化法人、あるいは農業者年金基金、こういったものにも受け手としてその資格を認めるようにするというようなことを考えておるわけでございます。これらのことが、さらにこの利用増進事業を発展させるために必要な措置、裏返して言えば、なおいまの制度では十分でなかった点であろうということに考えられるわけでございます。
  122. 本郷公威

    ○本郷委員 最近よく言われるのですが、二種兼農家は本来生産手段である農地を資産として保有しておる、けしからぬ、こういう非難が二種兼農家人たちに言われておるわけですが、二種兼農家農地を資産として保有せねばならないその理由が私はあると思うのですね。二種兼農家人たちが働いておる場所は、いわゆる大企業とかというところではなくて、本当に中小零細企業、あるいは建設の下働きとか、賃金にしてもそう高い賃金をもらっておるわけじゃないのです。     〔委員長退席、片岡委員長代理着席〕 やはり賃金労働だけでは生活ができないから、野菜をつくったり飯米をつくったりするというかっこうの兼業農家として生活しておると思うのです。それから、将来どうなるかわからない。年をとったら田舎に帰らねばならない。田舎に帰ったときに生活するためには、やはり食べるだけの農地だけは欲しい。いわゆる今日の社会保障制度というものが不十分なために、この土地保有、これは資産というよりも生活のためのそういう考え方というものがあると思うのです。そういう側面を余り考えずに、農地というのは生産手段ではないか、それを財産として保有して、そのために日本食糧自給率は年々下がっていく、こういう非難をする傾向にあるわけですね。まあ政府もときどきそういう言い方をしますが、私はそういう考え方というものは改めなくてはならぬと思うのですが、ひとつそういう点に対する見解をお聞きしたいのです。
  123. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 いまの前段のお尋ねの点は、なかなかお答えがむずかしくて、これは若干私見になりますが、私は、二種兼農家農地を資産的な動機で保有していることそれ自体は、さまざまな事情、先生がおっしゃられましたような、将来の生活の安定の基本とするということも含めまして、さまざまな事情があって、それを一概に非難することはできないと思います。  ただ、農業生産という観点から見た場合、優良な農用地がせっかく農業生産のために上手に利用されない、うまく使われないということは、これは残念なことでございます。その資産的保有の面にも、実態に配慮しながら、そうして農用地としての有効利用を考えるということのためには、まさに私ども、今回提案しているように、貸借という形によって本当に農業生産を担うことができる人によって活用してもらうということは必要なことではないか、今後まさにそういう形で打開を図っていく、これは必要なことではないかというふうに考えるわけでございます。
  124. 本郷公威

    ○本郷委員 資産的な保有という面と関係があるわけですが、非常に地価が上昇しておる、農地の価格が上がっていわゆる所有権移転というのは非常に困難になっておるわけですが、そのような農地の価格が上昇した原因あるいはそういう問題に対して、どのように政府としては対処しようとしているか、お聞かせ願いたいのです。
  125. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今日、農地地価も上がってきたわけでございますけれども、やはり農地といえどもほかの一般の土地の価格と無縁ではないわけでございまして、一般の地価の上昇というものが農地地価の上昇にもつながっておると私は思うのでございます。  それでは、それはなぜ上がってきたかということでございますが、これはやはり、日本のこの狭い国土の中で経済が非常に急激に発展をしてきたわけでございまして、その点では、その土地というものの、一方においては絶対量が非常に少ない、それに対して需要が非常に旺盛であったというところが一つの大きな原因であろうかと思いますし、最近の地価の上昇は、やはり住宅地に対する、特に三大都市圏における住宅地確保という面に対する要請、要望が非常に強くなって地価が上がってきているのではなかろうかと思っているわけでございます。  こういうことを踏まえて、地価を抑制していくことが、結果的に農地地価も上がっていかないことになるわけでございますから、これは国土庁が中心でございますが、国土庁が中心になりまして、いま私ども地価対策閣僚協議会というのを設けまして、できる限り国土利用法の運用なりあるいは住宅地の供給をいろいろな角度から推進するなりいたしまして、地価の抑制を図っていかなければならないと考えております。農林水産省といたしましても、そういうこと以外にも、たとえば農振法あるいは都市計画法、そういうものによって地域の区分がなされておるわけでございまして、こういうことにおいて、より農地の価格が抑制をされていくように努力をしていきたいと考えておるわけでございます。
  126. 本郷公威

    ○本郷委員 この地価の問題は需要と供給との関係によるわけですが、やはり今日の地価の上昇の最大の原因は、高度経済成長による企業の土地の買い占めですね。それともう一つは、政府の土地政策の貧困にあったと思うわけです。  農地は、ここ十数年間に五十万ヘクタール以上がつぶれておると言われております。五十万ヘクタールといいますと、明治以来開墾した土地がそのままもうなくなったというようになるわけでありますから、本当に大変なことであったと思うわけです。ところが、国土庁の調査で見ますと、四十八年、四十九年の地価高騰の際に企業が買い占めた土地は八十八万ヘクタール。ところがこのうち未利用地が三十万ヘクタールにも上っておると言われております。現在全国では、企業が購入して遊ばせている土地が約九万五千ヘクタールもある、こういう資料が政府の方から出されております。農地の価格も、昭和五十三年の水田価格、これは全国平均ですが、十アール当たり三百四十二万円に達しておる。稲作で上げられる十アール当たりの所得が五十二年産で九万一千円と約三十八倍に相当する。とにかく土地を買えば三十八年間支払わなくてはならないといういまの状況であります。  だから、今度は貸し手借り手を見つけ出して、貸し借りによるところの規模の拡大を図るという政策になっておるわけですが、やはり農民が本当に安定した生活、農村に定着をしたいというならば、借りた土地ではなくて、自分の土地として所有したいと考えるのはもう当然だと思うのです。しかし、地価が非常に高くなっておる現在、それは非常に狭められておると思うのですが、農地を取得したいという意思のある、そういう農民の希望を達成させるために、それなり対策を政府としてはせねばならないと思うのです。そういう点、何か考えておりますか。
  127. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 買い占め遊休農地の実態、国土庁の調査等もございますが、これによりますと、最近、売買等によって取得された未利用地の面積は約三十万ヘクタール、そのうち現況地目を見ますと、山林が全体の約七一%、宅地二%、原野等が約二六%ということになっております。この調査の中には農用地は含まれておらず、仮登記の形のような農地はほかの姿で若干存在するものと推定されるわけでございます。これらの土地が農振法の農用地区域内にある場合には、農業用地として確保するため、農振法の開発許可制の厳格な運用を図る、あるいは農地保有合理化法人の機能を活用するというようなことで、農用地としての有効な活用のための現在の制度の中での措置をとってまいりたいというふうに考えております。  それから、基本的に、やはり農家農地を所有したがっている、これらを支えていくための政策的な措置はあるのかということでございますが、現実に土地が大きく値上がりしていくという中で、農地の取得はきわめて困難ではあります。困難ではありますが、一部の地域、特に北海道みたいなところでは、所有権移転もある程度は実現を見ております。これらを助長する意味で従来から、たとえば農地保有合理化法人の制度でありますとか、あるいは農地取得資金融資の面で低利、長期の融資を図るとか、もろもろの措置も講じてまいっておるところでございますし、今回の農用地利用増進事業におきましては、この点は、改めて所有権移転をも何ら否定するものではない、困難ではあるにしても、利用改善事業の中でこれを取り込んでいくというようなことで事業対象としているところでございます。
  128. 本郷公威

    ○本郷委員 いままで幾つかの流動化推進する問題点について指摘をしたわけですが、農業生産力を高め、食糧自給率を強化するには、農地流動化の法制化を図っただけでは不十分であると私は思うのです。何といいましても、流動化をされ集積をされた農地に何をつくるか、何をつくったら今後の農業を、農民の生活を安定させるか、こういう生産対策が示されなくてはならないと思うのです。また、先ほどもちょっと指摘しましたが、農畜産物の価格政策をどのように運用整備するか。それから、今日の日本農業を揺さぶり続けておりますところの農産物の輸入政策。私は、農地流動化を図って大規模経営をするということだけを打ち出したのではどうも納得できない。この三つの政策を農民が納得する、国民が納得する、そういう政策が出されたときに、大規模経営にひとつ取り組んでみようかという意欲というものがわいてくると思うのですが、この三つの点について、政府の具体的な対策を示していただきたい。非常に問題が大きいわけですから、余り長々とやられても困りますので、ひとつまとめてお答え願いたい。
  129. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私から基本的な考え方をお答えさせていただきたいと思います。  いま御指摘のように、この構造政策だけでは無理でございまして、生産政策並びに価格政策ともどもに、国内政策としてやっていかなければならぬことは当然でございます。また、あわせて、外国との関係においては輸入をどうするかという問題も当然考えていかなければならないと思います。  そこで、それではそれをどういうふうに考えているかということでございますが、生産政策につきましては、いまの農政審議会で議論を願っておるところでございますけれども昭和六十五年を一つの目標年次にいたしまして、長期的な需給の見通しを私どもは立てたいと思っておるわけでございます。ちょっと時期はおくれておりますが、六、七月ごろには農政審議会の方から結論が出ると思いますので、それに基づいて私ども需給長期見通しを立てたいと考えております。  しかし、それは全体的な一つ方向というか、国全体の問題でございます。それにあわせて、いま私ども北海道から特に御要望がございまして、日本食糧基地としての今後の北海道農業はどうあるべきか、こういう観点から、北海道会でございましたか、北海道研究会といいましたか、特に北海道庁からも非常に御要望がございましたので、私どもの方からも参画いたしまして、また学識経験者にも入っていただいたりしまして、いま検討していただいているわけでございます。この間も北海道の知事とも話をいたしましたけれども、そういうところで検討した結果と、それから国全体の将来の需給の見通しとの関連において、それではその長期見通しの中で北海道はどれくらいそれを分担するのかということもあわせて考えていきたい、こういうお話でございました。私は大変いいことだと申し上げたわけでございます。それと同じような考え方を、各地方農政局単位ぐらいにやってみたいと私は考えておるわけでございます。地方農政局単位に国全体のものが出た場合に、どこの地域でどういうものをどれぐらいつくるかというようなことを考えていきたい。それからいま、地域農政推進対策事業と申しましたか、ちょっと項目は少し違っておるかもしれませんが、いわゆる地域農政推進していこうということをいまやっておるわけでございますが、その中では、地域地域で何をつくるかということを農民自身がお考えいただこうということをいま進めておるわけでございます。こういういわゆる地方と私ども中央というものを両方から接近させまして、大体全体的には適地適産の考え方でどういう需要に見合ったものをつくらなければいけないか、それをどこでどれだけつくるかというような考え方をやってみたら非常にいいのではなかろうかと思っておるわけでございます。これが生産政策でございます。  それから、価格政策は、先ほど申し上げましたけれども、いま大体農産物関係八割は価格政策をやっているわけでございまして、これをより充実した方向に持っていかなければならないだろう。ただ、私どもがはっきり申し上げられることは、米と同じように生産費所得補償方式をとれということ、これはなかなか困難でございますけれども、できる限り生産者の再生産意欲をなくしていただかないような形に価格政策を持っていかなければならないだろうと思っております。もちろん、それには需要供給のバランスというものも考えていかなければならぬことは当然でございますけれども、できる限り再生産意欲をなくさないような形で持っていきたい。  そして、輸入政策については、今日の世界的な食糧需給のタイトな方向に行くという情勢から考えれば、今後はできる限り国内で生産できるものは生産をしていくという考え方で、極力輸入は抑えていくという考え方でいかなければならないだろう。しかし、先ほども申し上げましたように、飼料穀物のように現在の時点ではなかなか日本ではどうしても採算が合わないというものはつくっていただけないだろうと思いますので、そういうものについては安定した輸入がなされるような考え方でいかなければならないだろう。しかし、それ以外日本でできるものは極力日本の国内で賄っていく、こういう考え方で今後輸入政策はやっていきたい、こう考えておるわけでございます。
  130. 本郷公威

    ○本郷委員 地域農政ということで、地域でそういう計画をつくらせるということは非常にいいことですが、いままでも言ってきてそれができなかったわけですから、ひとつ腰を据えてそれをやってもらいたいと思います。  ともかく、農地流動化によって農業経営の規模の拡大を図るということを言っておりますが、一方では六十五年までに八十万ヘクタールの転作政策というものを出しておるのです。この減反政策と今度の規模の拡大という問題をどのようにとらえていくかということが、今後の政策を進める上に大きなかかわりを持っていくのではないかと私は思うのです。一方では減反をせよということで、農民は非常に不安を持っておるわけです。その不安を持っておる農民に、規模を拡大をしなさい、こういうことを言っても、すんなり受け入れることができるかどうかという問題ですね。農民が果たして飛びつくかどうかと私は思うのです。いまから三十数年前、いわゆる戦争中は、学校の校庭を掘って芋を植えたわけですね。食糧増産をやったわけです。食糧がないからやったわけです。いま食糧が余っておる、米もつくらなくてもいいというときに、農地の規模を拡大をせよ、こういうかけ声はなかなか農民の中に入らないのじゃないかと思います。減反政策によって農民は、勤労意欲といいますか、農村でひとつ農業をやろうという気持ちがなくなっておるわけですね、いま。荒らしづくりという言葉がありますが、荒らしづくりをしたら農民として恥ずかしい、農地を荒らしておったら近所の人からけしからぬという非難が出るような姿じゃないのです。農村で農地が荒れておっても、ああ減反だからこれはやむを得ぬだろう、そういう感覚にいま農村はなっておるのですよ。だから、この減反政策、八十万ヘクタールという農地の三分の一を減反をするという政策を出しながら、この流動化を図り、規模の拡大という農林省のかけ声が、どこまで農民の心の中に入るかと私は思うのですけれども、どうですか。
  131. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 八十万ヘクタールというお話は、まだ私どもが言っているわけではございませんので、いま農政審議会で議論を踏まえるときに、いろいろ私ども試算をしたときに出しただけで、そう決めるとはまだ決めているわけではございません。しかし、いずれにしても、これからとも水田利用再編対策は相当進めていかなければならぬだろうということは私ども考えておりますけれども、幾らにするかは、実は先ほど申し上げましたように、まだ今後の検討課題になっておるわけでございます。  そこで、そういう形で進めていく上において、いまお話しのように減反ということでございますが、確かに米の生産からは減反でございますけれども、私どもはぜひ転作をお願いをしたい、そして先ほど申し上げましたが、昭和四十年ごろから見れば小麦にしても大豆にしても生産が非常に落ちてきておるわけでございまして、もう一度そういうものについて生産をより多くしていただきたい、こういうことをお願いをしたいということで、いま水田利用再編対策はやっておるわけでございます。  そういう意味で、いまの規模の拡大を図るということとこれとは矛盾しているわけではないと私どもは考えておるわけでございまして、今後、農地流動化を図る、そして中核農家に集積をできるだけ努力をしていっていただく中で、そこでつくるものは、いま申し上げましたような私どもがお願いしておるものをつくっていただければ大変ありがたいのではなかろうか。しかし、土地によってはどうしてもそのようにできないところもございます。そういう点においては、先ほど申し上げましたような長期的な観点に立って、適地適産の考え方で、何をつくっていただくかは地域の方でいろいろと御相談を願う、そして、全体の数字は私どもの方でお示しをする、こういう形でやっていきたいと思っておるわけでございます。
  132. 本郷公威

    ○本郷委員 大臣、やはりわれわれ国会議員に説明するときには、大臣のそういう考え方を、今度はどのように実行に移すかという案をまた行政当局がつくっていくので、ある程度理解ができる面もあるのですよ。しかし、いま大臣のおっしゃったようなことを農民に話して、わかりましたと言うでしょうか。大臣の言うことを聞いて、わかった、ひとつ農地流動化に取り組もう、こういう気持ちになるかというと、私はならないと思うのですね。また政府が何か言っておるがうかつに飛びついてはならぬぞという気持ちがやはり心の中にはあると思うのですね。それほどいまの農村社会というのは農政に対して不信を持っておるわけです。  先ほどちょっと出ましたように、今日の農村では混住化が進んで、いわゆる村落共同体としての意識というものが希薄化してきておるのですね。だから、政府が進めております地域農政、なるほどこれは言葉の響きはいいわけです。村づくり、これもいいわけです。しかし、そうした混住化社会、あるいは村落共同体としての意識が薄くなっておるいまの村に対して、どのような村づくりを始めていくかということが非常に大事になってくるんですね。村とは一体何か。皆さんたちが今度いろいろな団体をつくって、そこに計画を立ててやらせようとする、そういう考えておる村とは一体何か。言いかえますと、村に対する概念ですか、そういうものについてちょっとお聞かせを順いたいのです。
  133. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 先生おっしゃられましたように、最近におきましては、農村の性格が昔と大きく変わってまいっております。二種兼農家も多数存在するようになりましたし、都市からの移住者も出てくるというようなことで、混住化が進んでおります。  そこで、先ほどの御質問とちょっと関連するのでございますが、そういう地域において減反のため荒らしづくりが行われているではないか、今回の新しい施策がそういう農民に受け入れられるだろうかというお話でございましたが、確かに生産意欲を失っている農民もございましょう。そういった人たちに乗っかってほしいということば、これはお願いしてもなかなか問題は解決しないと思います。ただ、現実の問題として、今日なお十分な生産意欲を持って、少しでも農地があれば自分は規模を拡大してまいりたい。借地でもいいから、とにかくそういう機会を与えてほしいということで、まじめに農業に励もうとしている人もかなりおることも事実でございます。農用地利用増進事業は、むしろそういった人たちの現地的な要請を踏まえて、机の上からというよりは、村的な立場から出てきた発足の由来があった事業でございます。  それから、村づくり、そういうような今回の政策、新しい措置との関連でどう考えていくのかということでございますが、これはやはり専従農家だけではない、兼業農家あるいは非農家まで含めて、地域住民の連帯感を醸成していくということが基本として一番重要なことだろうと思います。     〔片岡委員長代理退席、委員長着席〕 そういう連帯感の醸成を通じて、村落における農業構造の改善、地域農業の組織化、農業生産の再編成、農村の環境整備、こういった諸問題を地域関係農業者がみずからの問題として考え、その工夫を生かして、全体としての関連施策推進されるように運んでいくということが重要であると考えております。  五十二年度から私どもが展開しておりますところの地域農政特別対策事業、これはそういう趣旨にのっとった事業でございます。これをさらに拡充いたしまして、生産、それから生活の両面から有機的なつながりを持つ集落機能に着目した集落住民の話し合い活動、これを強化していくということを主眼にいたしております。予算的にもそういったソフトな事業に対しても手当てをするというようなことをいたしておるわけでございまして、そういう観点で全体の村づくりを今後も進めてまいりたい。それから、今回の三法案も、それらとのかかわりのもとに有効に働くように、地域住民の発意を促し、かつ、政府としてもそれに対する指導努力を払ってまいりたいと考えております。
  134. 本郷公威

    ○本郷委員 局長、なかなかスマートです、皆さん方のいまの農村に対する見方としては、スマートな御意見です。  私は、うらはらの関係の問題をちょっと出してみたいと思うのですけれども、やはりいままでの農民支配というのは、徳川時代の生かさず殺さずというこの考え方日本のいまの政治の中に残っておることを指摘したいのです。今度は農民の側から見ますと、農村では、隣の家に蔵が建てば腹が立つ、こういう一つの農民間の生活感情というものがあるわけで、なかなかむずかしいわけです。だから、村づくりというのは、本当に地域共同体として村人が力を合わせて一つの目標に向かっていくということは、言うはやすいのですけれども、なかなかむずかしい点があるわけです。  私が今度心配をするのは、農用地利用改善事業を進めるに当たって、村づくりじゃなくて、村ぐるみの行政指導、違った言葉で言いますと締めつけがなされるのじゃないかということを心配するのです。村のためという名のもとに農業再編が強権的に進められる危険性がある。皆さんたちが各県の代表を集めて話す、今度は県に町村長を集めて話す、今度は村の役場の人たちが出かけていって部落でいろいろ話をする、今度こういうものができました、これをやらなければどうだこうだ、そういう強権的な締めつけ政策が出てくるのじゃないか、そういう心配をするのです。一方では、地域農政、村づくりという美名のもとに政策を浸透させていく、その裏がそういう形になって出てくれば、大変なことになる。これは地域農政と言うよりも、だんだん昔のような強権的な農政に変わってくるのじゃないかという心配を私はしているのですが、その点はどうですか。
  135. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 行政の進め方として、上から何か基準をつくって、目標を定めて、それを強制していくというか画一的に実行させていくというような行き方もございましょうが、現在われわれが考えております行政の行き方、あり方というのは、最近の地域行政地域農政という言葉にも示されておりますように、現地、特に集落段階での個々の関係者、特に農業者の意向というものを十分にくみ上げていこうという性格のものでございます。その意味で、今回の事業は特段の強制をする、義務化するということを考えているものではございません。  それからまた、実際の進め方に当たっても、これは行政展開の事業でございますから、市町村中心にはなりますが、農業委員会だとか農業協同組合、さらにはそれぞれの集落の農民の方々、そういった方々との協調のもとに、まさに自発的な意思を反映させた事業として組み立てていくということを中心に置いております。確かに、現実の村づくりは、中に一部の人が全体と意思を異にするというような場合結構むずかしい問題が出てくる、トラブルも出てくる。それから、進める立場のリーダーはそれなりにどろどろしたむずかしい問題にぶち当たって苦労するということはあろうかと思います。そういう意味では、おまえの考え方はスマート過ぎるじゃないかという御批判を受けましたが、そういうむずかしい現実も知らないわけではございません。そこはお互いが苦しむ話ではございますが、本来的に自由な、集落段階から生まれてくる発想を生かして、今回の事業を十分効果あるものに組み立てていきたいと考えております。
  136. 本郷公威

    ○本郷委員 私はいまここに通達のコピーを持っておるのです。「五四構改A第三九六号 昭和五十四年三月二十二日」その下に「昭和五十五年二月八日改正」としてあります。構造改善局長の名前で各県に出しておる通達、「農地利用の集積の促進について」という表題がついておるわけです。これを見ますと、「農地流動化に資するよう事業の積極的な推進を図ることとした」という前文がつきまして、公共事業並びに非公共事業推進に当たりまして指導してあるのです。その中で、ちょっと私、気になる点を申し上げますが、公共事業につきましては「新規採択は、当該事業の受益地を含む市町村において農用地利用増進規程が定められているものを優先して行うものとする。」優先して行う。それからいま一つは、「当該事業の受益地を含む市町村において農用地利用増進規程が定められていない場合には、速やかに農用地利用増進規程を定めるなど必要な施策推進する旨の念書を事業申請時に関係都道府県知事から徴するものとする。」念書をとれ。いま行っておりますこの農業構造改善事業、中身については申し上げません、たくさんあるわけですが、この農業構造改善事業を進めるに当たって、こうした農用地利用増進規程を必ずつくらなければ今後いろいろな面において政府の補助をしないということが、はっきり通達の中に出ておるのです。  予算面につきましても、「新規地区については、農地流動化を積極的に行う地区について事業の促進が図られるよう、予算の一定部分を優先配分する。」この政府の事業協力をしなければ予算の配分についても手心を加えるぞ、こういう考え方をはっきりこの通達は示しておるわけです。さきに減反政策推進に当たりましていわゆるペナルティーという問題が出てきたわけでありますが、この通達に流れておる考え方は、今度の流動化政策を進めるに当たって、協力をしなければ今後一切の補助をしない、こういうおどしともとられる内容になっておるのですね。現に農林水産省予算の六二%、二兆二千億円が補助金としていろいろな形で全国にばらまかれておるわけです。  今度の政策を進めるに当たって、村ぐるみ締めつけるのではないか、そういう危険性を私が感じたのは、まだこの法律が成立もしない前から、すでに二度にわたってこういう通達を出して各県を締めつけておる、そこに問題がありはしないかと私は思うのです。この通達は、いま私が言ったような方向でやっておるのじゃないですか。
  137. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 現行農用地利用増進事業、まさにこの増進を図りますために、私ども、予算の配分なりあるいは新規採択の際には、傾斜をつけるというか奨励措置としてそのような措置をとっていることは事実でございますし、その具体的な措置は、先生がいま読まれました通達によって行っているわけでございます。  ただ、御理解いただきたいのは、たとえば「農用地利用増進規程が定められているものを優先して行うものとする。」ということにいたしております。これは、できるだけそういう増進規程を定めてもらいたいという趣旨で入れておりますけれども、今日全国で三千ほどの市町村のうち約千七百の市町村においてすでに農用地利用増進規程が定められております。それから事実上その増進事業を実行しているところが約千市町村に及んでおります。それから、事務的な能力もないとか現地の実情に合わないというような場合にはなかなか規程が定められないという場合も確かにあるわけでございます。そういうところに対しては、どうしても規程を定めなければいけないとまでは言っておりませんで、むしろその間の調整を図る意味で、将来それに向かって必要な施策推進する旨の念書、努力しますということでも結構ですということにいたしております。ですから、およそ規程をつくらなければ補助対象にしない、新規の採択は行わないというような、そういう激しい差別を意図したものではございませんで、増進事業の全体への普及を図るために、運動としてそういう推進のためのこういう補足的な措置をとっているところでございます。  それから、事業自体は、何度も申し上げておりますように、強制してどうしても本人の意向に逆らってそれを義務化するというようなところは全く持っておりませんし、いま申し上げましたようなことで、予算上の事実上の調整も可能でございますし、私ども、これが締めつけになるというふうにまでは思っておらないところでございます。
  138. 本郷公威

    ○本郷委員 では時間が来ましたので、終わります。
  139. 内海英男

    内海委員長 細谷昭雄君。
  140. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 農用地利用増進法以下三法を私は一体のものとしてとらえ、この立法が与えるでありましょう今後の日本農業と農村、農民への大きな影響という点から、まず最初に基本的な問題の諸点についてお伺いをしたい、こう思います。  第一に、まずお聞きしたいと思いますが、三法が提案された究極のねらいというものを一言で言うと何でしょうか。
  141. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどから申し上げておるとおりでございますが、いま日本農政の基本として考えていかなければならないのは、農業体質を強化して、そしてそれによって日本食糧の供給力を高めていく、そしてそれによって国民生活の安定に寄与する、これがこれからの農政の基本的な方向であると考えておるわけでございまして、そのためにはどうしたらいいのかということになれば、どうしても農業生産性を高めていくという意味において、中核農家を育てていかなければならないのではなかろうか。中核農家をより強力に進めていく上においては、特に土地利用農業においては農地の集積化を図っていく、その農地の集積化を図っていくためには、それでは農地流動化を促進する何か手だてを考えなければならない、そこで今度のこの三法を提出をさせていただいた、こういうことでございます。
  142. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 いま大臣が御答弁になりましたような、要するに、日本農業の健全な発展という目的というものは、いま出しております農地流動化中心としたこの三法によって達成されるというふうにお考えですか。
  143. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは一つの構造政策としてそういう考え方を持っているわけでございますが、構造政策だけで十分日本農業が振興し、日本食糧自給率が高まっていくとも考えておりません。それにあわせて、当然価格政策生産政策、有機的な関係のもとにそういうものが総合的に実行されるときに初めて私はそういうものが達成される、こう考えているわけでございます。
  144. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 昭和三十六年に政府はいわゆる農業基本法というものを制定をし、いわゆる農基法というものが発足をしたわけでございます。農基法農政のねらいは何であり、そしてまた、今回出されました三法との関連は何と考えられておりますか。
  145. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農業基本法は、考え方としては、農業者側の、他の職業についておられる方々との所得の均衡を図る、そして、そのためにはやはり農業の選択的拡大をやって、米麦だけにとらわれずにいろいろなものをおつくりいただいてその所得の確保を図る、こういうのがやはり農業基本法の基本的な考え方ではないかと私は思うわけでございます。  それとの関連でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、農家の皆様方の御努力によって日本食糧自給力を高めていくということと結びつけて考えていけるわけでございまして、その手段としては、先ほど申し上げましたように、構造政策において、まず一つ農地流動化を図る、そして、それに呼応して基盤整備を充実をしていく、あるいは基盤整備だけではなくて、生活環境整備もあわせてやっていくというようなことは、もちろん構造政策の中で考えていかなければならないと思いますけれども、それに加えて生産政策あるいは価格政策、こういうものをやっていくときにできるわけで、その一つの三法と農業基本法との考え方ということにおいては、農業基本法の精神を生かしながら、これからの日本農業体質を改善していく中の一つ政策である構造政策、そしてその構造政策の中のまた一つの手段である、こういうふうに御理解をいただければ幸いかと思うわけでございます。
  146. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、昭和三十六年の農基法農政というのは、いま大臣のねらいということからしますとみごとに失敗しておるというふうに言わざるを得ないと思います。農基法農政のそもそもの出発というのは、いわゆる日本における高度経済成長下における農業と他産業との格差が拡大をしたということを是正する、ここに重点を置きながら、農業の近代化または自立経営農家育成という点に焦点を当てた農政であったと思います。しかし、どうですか、昭和三十六年から現在まで、物のみごとにこのねらいというのは、むしろ拡大こそすれ縮まっておらないというのは政府自身が一番よく御承知だと思うのです。いわゆる不耕作地が増加したというのも、土地価格の上昇によって黙ってほっておいた方が値上がりするという問題、ないしは農地移動が停滞したということも、とりもなおさずこの農業基本法農政が失敗したということから来る現象であります。さらに、集落の意識が解体をする、個々ばらばらになるという問題も、過疎という問題も、すべては農林水産省が逆立ちしてもどうにもならなかったという自民党政治のいままでのやり方、これの矛盾というものがここに集積されておる、農業という第一次産業の上にのしかかっておるというふうに言わざるを得ないと思います。ですから、私は、その基本法農政の失敗した原因というのは、まことに広範な日本の政治のあり方にかかわってくるというふうに思わざるを得ないわけでありますけれども大臣は、この昭和三十六年の先ほどのねらいというもの、そして現実という点からしまして、少なくともそのねらいが失敗であったのかどうか、その原因をどう考えておるのか、これを明らかにしていただきたいと思うわけです。
  147. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げたような方向農業基本法が定められまして、私は、それはそれなりに、現在の農業の実態を見ておりますとやはり相当選択的拡大も行われ、所得も増大をしてきたと思っております。ただ、確かに、失敗だとは思いませんけれども、高度経済成長で日本の経済が昭和三十年代の後半から四十年代の後半にかけて急激に成長いたしたわけでございまして、それと比べれば、それによって賃金の急上昇がもたらされまして、その賃金の急上昇に農産物価格その他のものが必ずしも比例してそれに応じるだけのところまではいかなかったということは、私は認めざるを得ないだろうと思います。そういう面において現状を踏まえますと、他の産業から所得を得ておられる方々と、農業によって所得を得ておられる方々の比較をいたしますれば、必ずしも十分でないということは、私ども反省をいたしておりまして、そういう反省の上に立って、先ほど来申し上げておりますように、今後、より農業基本法の精神も生かしながら日本農業体質を強化していくためには、生産政策、構造政策、価格政策を総合的にやっていかなければならない、その一環としてこの三法もひとつお願いを申し上げたい、こういう考え方に立って、この委員会で御審議を願っておるということでございます。
  148. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 つまり、農業基本法農政で、政府は日本の零細農業というものを規模拡大をして、自立経営農家育成しなければならないのだ、その基本に基づいていままでもずっとやってきた。やってきたがなかなかできない。なぜ規模拡大ができないのかという原因は、三法に示されておりますように、土地所有の問題がこの阻害原因になっておるのだというふうにお考えのようでございます。しかしながら、この土地所有の問題は、農地法の制定以来、いわゆる自作農主義というものがいままで日本農業土地を守り、農業を守ってきたという思想の根源になっておるということであるわけでございます。しかし、この三法を提案される理由の一つに、この土地所有の問題が一つのネックになっておるのだ、したがってこのネックを解消しなければ、拡大したいという皆さん方お考えの中核的農業の担い手に土地を貸すことないしは流動化させることはできないのだとおっしゃっておるわけでございますね。そうすると、自作農主義というのは日本農業の発展を阻害しておると大臣はお考えなのですか。
  149. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 決して自作農主義が阻害しておるとは考えていないわけでございます。ただ、現実の農家の実態を見てまいりますと、御承知いただいておりますように、農地法ができました昭和二十年代あるいは三十年代と比べますと、専業農家というのが急激に減ってまいりまして、兼業農家が非常にふえてきておることは事実でございます。そして、その兼業農家の中でも特に第二種兼業農家を見てみますと、農業による所得というものが、大体平均するとたしか五十万円台だったと思います。そして農外所得が、五十三年度でございますが、三百八十万ぐらいであっただろう。そして専業農家の所得はどうかといえば三百二十万円足らずでございます。こういう実態から見れば、自作農でどんどんおやりをいただいている専業農家の方が所得が非常に低くて、農家でありながら農業以外の所得に依存しておられる第二種兼業農家の方がずっと所得が高いというところに、これは先ほどの高度経済成長の結果だとは私ども思うのでございますけれども、やはりそういうことはいかがなものであろうか。そうすれば、農業を一生懸命やっていただこうという方々にもっと高い所得を得ていただけるようにしなければいけないのではなかろうか。そういうことで、農外所得で相当安定した所得を得ておられる方々から、農地を貸していただける方法があれば大変ありがたいのではないかということで、お願いをいたしておるわけでございます。
  150. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 農民の現在の要求は何なのか。いま大臣は、いわゆる第二種兼業農家の平均的な所得が農業内では五十万にしかすぎない、したがって農外収入に精を出している。先ほど本郷委員の質疑の中で局長がおっしゃっておりましたけれども、いま意欲的にまじめに何とか農業を考えてやりたい、こういう中核的な農家の皆さん方が四苦八苦しておるので、これのお手伝いをしたいという言い方もしておるわけであります。しかしながら、私が接しておる農民の大衆は、皆さんが考えているような、農外収入で安穏としてこれから暮らしていくというふうな希望を持っておるのでは決してないと思うわけであります。少なくとも農民大衆の要求というのは、自分のたんぼを精いっぱい最大限に利用、活用して、農業でもって生きていきたい、これはいわゆる自作農的な要求と言えると思うわけであります。すべての農民は、小さい農家であっても、平均的な日本における一町歩農家と言われる小さな農家であっても、皆さんは、いま言ったように、自作農的な要求を願望として持っておるわけであります。この自作農的要求にこたえるような条件づくりこそ政治が考えてやらなければならない、農林水産省が果たさなければならない役割りではないかと思うわけでありますが、それを皆さんは、農村の中に、片方は中核的な経営農家、これはまじめだ、あとの人方はどうも本当にそう農業への意欲はないようだ、したがって、意欲のない人は意欲のある人へたんぼを貸したりするのは当然じゃないかというような言い方、これは私は、農民大衆の要求を大変履き違えたとらえ方だというように思うわけでございますけれども、この点はどうでしょうか。
  151. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農家の方が、いまは二種兼業でいらっしゃっても、本当に農業をやっていこうという気持ちでより努力をされるということにおいては、私はその気持ちは高く評価すべきだと思うのでございます。  ただ、問題は、やはり農業といえども国民の理解が必要だと私は思うわけでございまして、この間うちのいろいろの新聞の社説などを見ましても書いておりますけれども、やはり日本農業の環境というものが、残念ながら、世界の国々と比べますと、いわゆる経営規模と申しますか耕地面積が非常に低いわけでございます。  御承知のとおり、一九七五年の統計でございますか、日本は一農家当たりの耕地面積はわずか一・一ヘクタールである。アメリカのような大きいところは別といたしましても、西ドイツにいたしましても十三・八ヘクタール、アメリカは百五十七・六という、これはまあ別でございますが、ヨーロッパでもどこの国でも、先進国は十ヘクタール以上でございます。  そういうことを見てまいりますと、日本の置かれておる農業の中で、土地利用農業というものが国際的に見て生産が非常に割り高についておるということは、そういうところに原因があるのではなかろうか。でございますから、第二種兼業農家の方でも、これから自作農でやっていきたい、あるいは人の農地を借りてでもやっていきたい、こういう方は、せいぜいそういうところに参加していくことは、私は決して——いま現実に中核農家だけを育成するのではなくて、そういう方もまた中核農家になっていただくことは大いに結構だろうと思っているわけであります。ただ、一町歩以下のあるいは五十アールか三十アールのところで、それでもおれはやりたいのだから、それは幾らコストが高くなっても政府はめんどうを見るべきだという考え方にはなかなかいかないわけでございますので、その辺だけは御理解をいただかなければならない問題ではなかろうかと思うわけでございます。
  152. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 わが党としても、決して四十アール、五十アールで農業経営が成り立つというふうには思っておらないわけであります。少なくとも一町歩以上のいままでの平均的な農家を私たちも対象にしておるわけでありますけれども、問題は、農地流動化農地法の改廃、こういったもので、いわゆる自作農主義の否定という問題によって日本農業の構造改善が達成されるというふうに考えられておるようでならないわけであります。私は、今回の農用地利用増進法案の根底を流れておる思想というものは、いわゆる農業経営主義というものにかなり大きなウエートを置く、むしろ経営一辺倒でないのか、こういうふうにも考えられるわけであります。日本農業の特色というものをどうお考えになっておるのか。いま大臣は、諸外国の例を引きながら、日本農業の零細化という点では、コスト高になって、割り高になってとてもめんどう見切れないのだという言い方をされておるわけであります。しかし、それはいまのやり方の延長線上で考えられると当然そうかもしれませんが、農村というものは、そこに百姓がおります、そして、大きい農家もあり、中くらいもあり、小さな農家もあり、そして、その土地に何代も住み込んで、土地と一体となった人々の暮らしがあるわけであります。こういうふうな長い農業の歴史、その持っておる自然の人間の相関、こういったものを置き忘れて、資本の論理によって農業経営意識ということが中心になる、こういう農業改善というのは、決して成功しない、私はこう思うわけであります。私は、先ほど大臣が挙げられたように、アメリカは別としましても、諸外国の例を挙げて、日本農業が他の国とコスト競争しようという意図によってこの法案が出されたとすれば、大変問題が多いと思いますけれども、その点いかがですか。
  153. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたのは、例を申し上げたのでございますが、それじゃ西ドイツと同じようにならなければいけないと申し上げているわけではございません。ただ、他国と比較をいたしますと余りにも違いがございますから、そういう点で、日本農家といえどもやはり経営規模拡大努力することはやってしかるべきことではなかろうか。いろいろな制度でむずかしくなっているものを、また実際そういう意欲のある方、私自身もあちらこちらこのごろ回らしていただいておりますけれども、もっと農業の規模を拡大してやりたいということをおっしゃる方がたくさんいらっしゃるわけでございまして、そういう気持ちを持った方に少しでもお役に立つような制度をつくっていく必要があるのではなかろうか、こういうことを考えておるわけでございまして、単純に経済合理性だけで割り切っていこうという考え方は持っておりませんので、その点は誤解のないようにお願い申し上げたいと思います。
  154. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 政府は、この農基法農政の過去のいろいろなひずみ、誤り、こういったものを率直に反省をし、そこから出直すということがまず第一に必要なのではないかというふうに思って、私はいままで申し上げておるわけであります。日本農業の特質を忘れ去っておるのではないか。端的に申し上げますと、日本農業の特質というのは、狭い面積を集約的に、本当になめるように耕しながら、そこから多くの収益を上げていくというやり方、しかも、耕種農業と畜産というものを一体化した複合的な経営によって村落を形成し、お互い、大きいものと小さいものが助け合ってやってきたという、そこに特質があるわけであります。ところが、皆さんの物の考え方というのは、小さなものと大きいものと助け合うということよりも、まじめなものに多くの土地を与え、コストを下げていけばいいのだ、そういう思想。私は、日本農業のその特質というものに立脚したやり方でなければ成功しないということをさっきから言っているわけであります。農基法のそもそもの出発というのは、そういう意味で誤ったというふうに私は言っておるわけでありますが、何といいましても、この三法の出発というのは、農基法のいろいろな反省点に立って、しかも、その欠陥というものを克服する一つの方法としてやるんだということを先ほどから大臣は強調されておりますので、そのためには、まず第一に、この原因というものを正確に分析をし、深刻な反省をした上出直すべきじゃないかというふうに私は言っておるわけなんです。どうもその点で、私が言っていることが皆さん方には十分理解されておらないのではないかというように思えてならないわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  155. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 日本農業と申しますか農家と申しますか、置かれておる立場から考えて、なかなか他国と同じようなわけにはいかないという点は私どもはよく理解をしておるつもりでございます。先ほどから申し上げておりますように、それはそれで理解をするけれども、しかし、やはり特に努力をしていきたい農家の皆さんのお気持ちが、経営規模拡大し、より広いところで耕作したいとおっしゃっておることも事実でございまして、これもやはり農家の声だと私は思うのでございます。そういう意欲に燃えた農家の方が経営規模拡大ができるように、私ども仕組みを考えてあげて、これは強制するわけではございませんけれども、そういう制度の中でそういうことが可能であるというようなことを私どもやはりお手伝いすべきではなかろうか、こう考えておるわけでございますし、また一方、どうしても経営規模拡大ができないという農家もいらっしゃると私は思うのです。そういった方でやはり農業をやっていきたいということで複合経営をお考えになってやっておられる方もあるわけでございまして、そういうものも私どもは決して否定しているわけではございませんので、ただ単純に、先ほど申し上げますように、経済合理性をとっていかなければならないということも考えておりませんし、また、単純にただ経営規模拡大というものはいわゆる耕作面積の拡大というだけではないということは、十分私ども考えておるつもりでございます。
  156. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 どうもかみ合わないのですよ。その点はまた、日本農業をどう考えておるか、後で御質問したいと思います。  農用地の利用増進について基本的に重要なことは何なのか。これはむしろ、日本の農畜産物に壊滅的な打撃を与え続けておりますアメリカの農畜産物の輸入、こういったものに日本食糧政策を依存しておるという現在の農政、この農政に阻害しておる原因があるのではないか、私はこういうふうに思わざるを得ないわけであります。したがって、農用地の利用増進は、こういう今回出された増進法とか農地法改正とかいう行政的な手段というのは二次的、三次的なものでありまして、むしろ、農用地の利用増進についての基本的な重要問題は、いわゆる政治の問題ではないかと思っているわけであります。皆さん方の政府の食糧政策を根本的に考え直すということなしに、どんなに二次的、三次的な手段を用いましても、皆さん方が考えておりますような方向に、日本農業の健全な発展は期し得ないのじゃないかと私は思うのですけれども、その点どうですか。
  157. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまの御指摘は、結局輸入に依存しておる面があるのじゃないか、アメリカの農業日本農業がやられているのじゃないか、どうもこういう御指摘かと思うのでございますが、私は必ずしもそう考えていないわけでございます。  特に、この間から申し上げておりますように、いまの世界的な情勢は、食糧を外交の武器に使うとか、あるいは将来の人口の増加から見れば、世界的に見て食糧需給は非常にタイトになっていくとかいうことは、これはもう当然容易に予測されるところでございまして、そういう点から考えれば、日本食糧自給力を高めていくことは私は当然だと思うわけであります。そういう面からいって、より農業体質を改善していかなければならないという考え方でいるわけでございまして、輸入政策についても、できる限り今後国内でつくっていただけるものはつくっていただきたい。しかし、それは決して先ほど申し上げましたように経済合理性だけで言っているわけではございませんけれども、できるだけつくってもらいたいが、それは幾ら高くてもいいというものではないということは言えると思うのでございます。  そういう点で、土地利用農業においては、相当割り高になっておりますので、多少はそれを努力していただいて、少しでも安くつくように農家の方に努力していただくということをお願いしたい。しかし、いまのままではなかなかむずかしい。どうしても土地利用型であれば経営規模拡大ということが必要であるので、こういう法律をお願いしておるということでございまして、アメリカの農業日本農業がやられてしまっている、向こうから輸入せざるを得ないから日本食糧をより多く高めるわけにいかない、そのために、何か割り高だから割り高だからと言っているつもりは私は毛頭ないわけでございまして、私どもは、日本の国内でできるだけつくっていただけるものはつくっていただいて、それで自給力を高めていかなければいかぬという考え方を持っているわけでございます。  ただ、一つだけ言えることは、飼料穀物について言うならば、日本の畜産農家の方々ともっと話し合いをしなければならぬと私どもは思うのでございます。いま畜産農家の方が、特にこれは中小家畜でございますけれども、中小家畜の場合には、ほとんど外国から入ってきたトウモロコシなりマイロを原料としたものを飼料にしておられるわけでございまして、その点は私どもよくお話し合いをしなければいけないとは思いますけれども、現実にどうもそういう姿であると、これだけはもう国内ではなかなか賄い切れないのじゃないかということで、残念ながら飼料穀物は現在のように外国に依存しておるという姿は、ここ当分の間続けざるを得ないのじゃなかろうか。これは畜産農家の方と今後よくお話し合いをしながら考えていかなければならぬ点ではございますけれども、私どもはそういうふうに思っております。それ以外は、私は国内でできるものはできるだけつくっていくということに努力してまいりたいと思うわけでございます。
  158. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 大臣は、外国の農畜産物、特にアメリカの農畜産物が日本農業にそれほど大きな影響を与えておらないのだと白々しく言えるはずはないわけなんです。せんだって国会では、二十二年ぶりという大変な意義を持っておると思いますが、食糧自給に関する決議を採択いたしました。あれは議会、立法府の、皆さんに対する政治の要諦だと思うのです。それをどう踏まえておるのか、いまの答弁でば全くそらぞらしいという感じしかないわけであります。日本食糧自給をどうするかということが、むしろこれからの日本農政のビジョンを描く上で中心になる課題ではありませんか。大臣は、日本農業のビジョンをどのように描かれておるのか、それをお聞かせ願いたいと思うのです。どのようにしてあの食糧自給の決議を実現されるおつもりであるのですか、まずそのビジョンを示していただきたいと思うわけです。
  159. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 おっしゃることが私はどうもよくわからないのですが、私はこの間の国会決議を尊重して申し上げておるつもりでございます。ですから、国内で賄えるものは極力これから国内で生産をしていただきたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。  ただし、飼料穀物についてだけ言うならば、これはやはり現在の畜産農家の方々とよくお話し合いをしないと、日本の国内でそういう飼料穀物をつくるということになれば相当高いものを使わざるを得ないわけでございまして、そういう点はよくお話し合いをしなければいけないと申し上げておるわけで、私は、この間の国会決議はこれから十分尊重して対処していかなければならぬと考えておるわけでございます。
  160. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 問題は、現在の日本農業を、皆さんの場合は規模拡大をして中核農家をつくり、そして農用地利用増進法によって集落単位にいわば計画を立てる、市町村がそれをまとめて最大限に耕地の利用をする、集積をしていく、それによって生産拡大をしコストを下げていくのだという考え方でしょう。それによって果たして日本農業生産が順調に伸びていくのか。その前に立ちはだかるのは、外国農畜産物の輸入という問題をどう処理するかということなしにはどうも不可能だ、私はこう言っているのですよ。それをどうしますか。
  161. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 何か、お聞きしていると外国から強制的に輸入をさせられているようなお話に聞こえるのですが、私どもはそう考えていないわけでございまして、いま申し上げるように、日本の国内で生産できるものは極力つくっていきたいと申し上げているわけであります。ただ、飼料穀物のように余りにも価格の違うものについては、畜産農家に御理解をいただかないとこれはできないわけなので、そういうものはある程度輸入に依存せざるを得ないのではないかと申し上げているわけでございまして、私ども、何も外国から強制されて買わされているというようなことは全く考えておりません。
  162. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 冗談じゃないですよ。この前私は、飼料が輸入されるのだったら、減反しておるたんぼに飼料米をどんどん植えて、それで自給したらいいのじゃないか、こう言えば、あなた方の返事はどうですか。ああでもないこうでもないと全く前進しない。ミカンはどうですか、牛乳はどうですか、果樹から乳製品、肉、すべて外国の農畜産物によって、わが国の農畜産物があのような混沌とした状況から立ち上がれないでおるじゃありませんか。それをどうにかして、日本の農畜産物を自給したい。足りないから買っているのだという認識は、考え方としてこれは全くうそをついているのではないか、こうしか私には思えないのです。それは政府の政策でしょうが。  この前、私が通産省の係の方にこの委員会でえさ米についての答弁をお願いした際に、何といいましても日本は原料を買ってきてそれを加工する、そしてそれによって資源の少ない日本の貿易という形で外国に売ってやらなければどうしようもない、食糧輸入もできないのだという言い方をしておったわけであります。決して日本が足りないから輸入する、そういうことではないのでしょう。その点、大臣、もっとはっきりこの問題については答えていただきたいと思うのですよ。
  163. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 どうも相当考え方に違いがあるようですが、私は決して一それじゃ小麦を例にとれば、いま外国から輸入をしなくて国内でできる小麦で全部国内の消費が賄えるかといえば、決してそうではないわけでございまして、あるいは大豆でもそうでございます。やはり外国からいま買わざるを得ないわけでございまして、それをわれわれは、極力これからは転作などでそういうものもよりつくっていただきたい、国内での自給力を高めていきたい、こう申し上げておるわけでございまして、決して向こうから強制的に私ども買わされているとは思っていないわけでございます。  ただ、飼料穀物について、いま飼料米のお話がありましたが、これも私ども、飼料米を日本の国内でもしうまく飼料の原料として使えるようにみんなのコンセンサスが得られれば、それは結構だと思うのです。ただ、現実には幾ら飼料米といえども、いま一般の主食の米はトン二十八、九万でございますか、二十八、九万までしないにしても相当高いのではなかろうか。そうすると、いま外国から入ってきておるトウモロコシなどはトン三万円でございます。トン三万円はともかくとしても、どの程度までそれじゃ畜産農家の方がしんぼうしていただけるのか。その辺のところが、やはり畜産物価格の問題もあると思いますけれども、もう少し話をその辺でし合わないと、なかなか飼料米を栽培するというわけにいかないのじゃなかろうか、こう考えているわけでございまして、どうも何か余りにも大げさにおっしゃっておられるように私には思えて仕方がないわけでございます。
  164. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 たとえば大豆の自給力が落ちた、これは一体なぜだと思っておるのですか。大臣にこの前も言っているでしょう。国内産の大豆がとてもコストが高くて、外国から来る大豆に太刀打ちできなかった、それでだんだんに大豆の生産が落ちておる、つくっても間に合わない、そこへどんどん入ってくる、そういう形で自給率がどんどん落ちてきたんでしょう。外国の農畜産物の輸入が日本の農畜産物を駆逐してきたというのは、もう歴史的な事実じゃありませんか。それを全然歯どめをかけることができない。もう全野党が皆さん方に農畜産物の輸入を制限しろと言っても、いままでやったためしがありません。そのことをまことに白々しく、それは足りないから買っているんだ。足りなくしておるのでしょうが、政治の上で。そのことを全くたなに上げて、そしていままた、さらに農地拡大という形だけで問題を処理しようという政府のやり方に対しては、私は容認できない、こう思っておるわけです。  その点、本当に大臣は、貿易という問題、外国の農畜産物の輸入という問題について、いま言ったようなお考えを何と言っても変えるおつもりはございませんか。
  165. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、農畜産物を含めて、先ほどから申し上げておりますように、現時点よりも国内での生産を高めていきたいということを申し上げておるわけでございまして、その辺においては私は何も意見が違っていないと思うのでございます。ただ、過去において、何か御指摘いただいておるのは、こちらが強制的に買わされているようなお話でございますので、決してそういうことはない、こう私は申し上げておるわけでございます。
  166. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 いまの議論はまた後に譲りますけれども、とにかくこれは強制的に買わされているという部面が非常に多いわけですよ。大臣がどんなに否定しましても現実はそうでしょうが。  そこで、先に進みたいと思いますけれども、今回の農用地利用増進法案によりましても、これは私は、際限のない規模拡大競争に農民を追い込むことになるのではないかというふうに心配しておるわけであります。日本農業はどんなに逆立ちをしましても、アメリカの農業やその他の国際競争力に追いつくなんということはもうできっこないわけです。ですから、中核農家の例をとりましても、皆さん方はどういうビジョンを描くかわかりませんけれども農基法当時は自立経営農家でありました。この自立経営農家をどの程度の規模と想定されておったのか。それで現在、今回出してきました中核的農業の担い手は大体どの程度の耕地を所有する農民と考えておられるのか、その点を明らかにしてほしいと思うのです。
  167. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 中核農家はむしろ農業意欲を持って働く労働力が確保されているかどうか、その労働力需要は成年男子、六十歳未満十六歳以上の男子が百五十日以上就労しているかというようなことで決めておりまして、その中核農家が現実にどのような規模を持っておるかということについては特段の規定はいたしておりません。かなり規模の大きなものもあればそうでないものも混在しているというような実態でございます。
  168. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、農基法当時のいわゆる自立経営農家の想定というのは大体三ヘクタールではなかったかというように記憶しております。そして現在、中核的担い手農家というのは大体五町歩、五ヘクタールから、大きいのになると三十ヘクタール程度というふうにも想定されるとこの前の農林省説明ではお聞きしました。私は、いまの三法によって、先ほどからいろいろ論戦をしておりますけれども、皆さんの考えておる目的、ねらいというのが達成できないとすれば、この次はもっともっと規模拡大をしなければならない、こういうふうになるのは必然的なことだと思うわけです。私は、日本農業のビジョンというのをそのように描くのは誤りじゃないか、こうさつきから言っているわけなんですよ。規模拡大によって日本農業を発展させるなんという考え方は根本的に改めなければならない時期が来るのじゃないか。むしろ日本農業のビジョンというものは、日本型の集約農業、そして畜産と結合した複合経営、これによって集落の本当に自発的な、大きいものも小さいものも助け合って国内食糧自給を目指す、しかも計画生産型の農政に転換しなければならない、私はこういうように考えているわけです。ですから、私は、皆さん方が現時点で考えておるいわゆる中核農家、これがもしできない場合には、さらにもっとそれが拡大をしなければならないという羽目に陥るのではないか、こういうように言っておるわけなんですよ。その点どうですか。
  169. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 中核農家というのは、先ほども申し上げましたようにその農家の労働条件、これによって定義しているわけでございます。それで、特別に規模がどのくらいでなければいけないとか、どのくらいの規模のものを育てるのだというようなそういう一義的な数字を持って示すような目標を描いているわけではございません。ただ、中核農家と言われているそういう労働力を確保している農家の実態がどのくらいかと言えば、これは都府県平均で、五十三年度でございますが、約一・八ヘクタールということになっております。それからまた、水田単作地帯としてこれを見ますと、これは地域によってずいぶん差があるわけでございますが、東北地方の場合は約二・四ヘクタールという状況にあります。  そこで、今回の農地関係三法で農地流動化を図っているわけでございますが、これは何も無限定にただ規模拡大をすればいいということをねらっている、そしてそういう農家をこしらえるだけのことを目的にしているわけではございません。むしろ、全体の客観的な条件といいますか、情勢をにらみ合わせまして、現実に農地を提供してもいい、ただ、将来それが返ってこないような不安があっては困るというようなそういう農家もありますし、これは兼業で安定している農家もあるでしょうし、老齢化によって労働力を失った農家もあるでしょうし、いろいろあると思いますが、現実にそういう農家がございます。それから、若い新しい希望を持った農業に従事する人間で、機会さえあれば自分の経営する農地規模拡大を図りたいという方もいらっしゃるのも事実でございます。そういった人たちの間で、現実いままで進めてまいりました農用地利用増進事業におきましても、ある程度の流動化賃貸借の成立しているのが見られるわけでございます。そのこと自身はきわめて歓迎すべきことではないか。そういう条件の整っているところでは、これは何も強制ということではございません。お互いの発意を促しまして、そして安心をして、貸し手は出す借り手はそれを受けるということで、賃貸関係を成立さしていこうというのが今回の一番基本的なねらいとしているところでございます。
  170. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 基本的な問題の最後に、私はいままで申し上げましたとおり、皆さん方の考えておる日本農業のビジョンというものは、日本農業というものをますます生産を単一化していく。つまり複合経営から生産の単一化の方向へ、それから集約的な農業からますます大型機械化農業へ変えていくのではないか、それは日本農業の特質を失うものではないかということを言いたいわけなんです。この点についての議論はまた後に譲るとしまして、具体的な問題に移っていきたいと思います。  先ほど来本郷委員からもお話がありましたので、ダブる点につきましては省略をしてから進めていきたいと思いますが、第一に、今回のいわゆる流動化の目玉と言われております中核的経営農家借り手の問題なわけです。借りたいという人もおるけれどもなかなか貸し手がない。貸し手のない理由は、一たん貸してしまうとなかなか取り戻すことができないのではないかということで、三年という契約期間を設けた、こういうことなんですけれども、三年というのは、借り手からしますと、三年で返させられまして計画が立ちますか、私は計画が立たないと思うのですよ。その点どうですか。
  171. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 借り手の立場からしますと、確かに期間は長い方がよろしゅうございます。現実、利用増進事業でもって成立している期間いろいろございますが、中には、市町村指導なり関係当事者の理解が深く進んでおりまして、十年以上の期間を結んでいるところもございます。しかし、集中的に一番多いのはやはり三年から五年階層で、この辺が七〇%以上にシェアはなっております。今後ともやはり一般の農家の方々の動向は、利用増進事業を進めていきます場合、その辺に一番多くが集中するだろうというふうに考えられます。借り手の側からすると、三年−五年では短いということでございますが、しかし、考え方によっては、三年−五年というのは、ある一つの安定した農業経営を営むための最小限度の期間は満たされているようにも考えることができます。それから、三年−五年でそれきりということではなくて、むしろ、間に市町村が立って契約といいますか、貸借関係を成立させれば、安心して貸せた、不安はないということになれば、引き続いてその更新も期待できるわけでございます。ぼつぼつ最初の利用増進事業に取りかかったところがその更新期が来ておりますけれども、安心して貸せてよかった、引き続いて貸してもよいというような意見が、これは統計的にとっているわけではございませんが、実行している地域ではかなり聞かれるようでございます。私ども、またそういう更新というような点についての指導も含め、できるだけ永続化することを願いながら、そして貸し手は、やはりその更新した期間が満了さえすれば本当に必要なときは返してもらえるという安心感を持ちながら、比較的長期の貸借関係が成立するように持ってまいりたい。それから、短い、十分ではないけれどもある程度の三ないし五年以上くらいの期間が設定できれば、その中で計画的な営農を図っていくようにし、それから、営農の安定を図るために、貸し手借り手の間の問題について、これまた市町村なり農業委員会なり農業協同組合等が一緒になって問題を考えるというような形で、借り手農業経営の安定化を図ってまいるようにしてまいりたいと考えております。
  172. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 反面、いわば貸し手の方から言いますと、三年という期間というのは大変にこれは微妙な問題なわけです。いま借り手の方は、局長もお話がありましたが、やはり三年では何といっても短い。これではもう圃場整備もできないし大型機械も入れることはできない、現実には。少なくとも十年というある程度の期間を見通さないと、農業の計画経営というのはできないわけなんですよ。ですから、反面、貸し手の方からしますと、きわめて巧妙に、実際は戻すことのできない、戻すことはできないけれども三年という安心の片道切符なんですよ、これは。片道切符を渡して農地を放させようという魂胆が露骨にあらわれておるんじゃないかというように思われるわけですが、この点どうですか。
  173. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 貸し手の所有地に対する権利は、三年なり五年なりという期間が満了すれば、確実に保証されて返ってまいります。更新すればまた引き続いて三年−五年返ってこない期間がありますが、その期間が満了すれば返ってくるということで、常にこの契約といいますか、賃貸借が成立した時点においては、期間満了の段階において回収し得るという安心感は保証されているものでございます。
  174. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 それでは、そういういわば仕組みというのは、先ほども議論がありましたけれども、集落でやるわけなんですよ。集落でやるわけなんですが、問題は、その集落の構成に大変ないろいろな問題があろうかと私は思うのです。  第一にお聞きしますが、それでは、地方の特に出かせぎの農民、または二種兼業農家、さらには老人や婦人で耕作しておるいわゆる弱小農家、こういった人方、いわゆる発言権が非常に農村集落では小さい人方、この人方が、あなたは貸しなさいという計画に入った場合、これに対するもう三年たったら返してくれと言っても、実際問題としてはこれはできっこないと私は思うのです。集落の中で、がんじがらめの人間のしがらみの中で決められてしまう。ですから、私は、これはていのいい小中農民を犠牲にした巧妙な強権的な土地放しじゃないのかというふうに考えているわけなんですよ。その点の歯どめありますか。
  175. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 利用増進事業におきましては、確かに、利用増進計画を立てる、その利用増進計画を公告することによりまして、賃貸借の成立なりあるいは所有権移転効果を実現するわけでございます。ただ、その計画というのはだれがどういうぐあいにして立てるかということになりますと、市町村がその計画を宙に描いてそれを下におろすというものではございません。やはり実態としてそういう貸し手がある、それから借り手があるというそれを踏まえまして、もっともそれにつきましては、本当に貸したい気持ちを持っているけれども表に出ていない人たちもありますから、意向調査だとかあるいはこの制度についての説明をして、趣旨の理解を求め、そして掘り起こすということが必要でありますけれども、そういう根のあるものをくみ出してきて、これを計画にのせるという形のものでございます。その意味では、年に一遍頭から決めるとかなんとかではなくて、そういう要請が出てくれば、常にそれを組み込んで新しく計画を拡大していくという性格のものでございます。  そのことは同時に、個々の農業者が強制されるものではない。いまお話しのように、労働力が十分にない、老齢化したとか御主人がないというようなことで、劣悪な労働条件というか労働力条件のもとで耕作をしている方に対しては、何もどうしても貸しに出せというようなことを強制するのではなくて、むしろ今回の事業の柱の一つとして、作業の委託などについてもその促進を図るというようなこともしております。部分的な作業の委託なども図って、そういう労働力の問題のあるところについては、それなりの解決の方策もお手伝いするというようなことも同時に考えているわけでございます。  そういうことも必要ない、たとえ細々でも自分は自分としてやっていきたいのだという方に対して、何も市町村なり、あるいは部落強制というような形で、あの人間の方が生産性が高くて効率的な生産ができるのだから、何が何でも貸してやらなければいかぬ、そういうことを強制するものではございませんし、それからまた、率直に言いましても、われわれの従来からの経験からして、そういう形で進めてもこの問題はうまく進まないのじゃないかというふうに思っております。むしろ、先生のおっしゃられたようないろいろな農業経営形態というものがあるわけでございます。地域によってかなり違います。農地の出し手の多い地域、受け手ばかりおって出し手がない地域もございます。それから、農業経営のあり方として、複合的に、小規模ではあるけれどもそれなりに安定した経営を営んでいるところもあります。やはりそれらの地域なり経営の、実態というものに即した、それらを見定めた上での流動化の促進ということでなければうまくいかないというふうに考えております。
  176. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 次に、いろいろ生産対策だとか価格対策については、先ほど議論がありましたので省略いたしますけれども、私は、先ほどの大臣答弁では全くイメージがわいてこないのです。拡大したところに、集積したところに何を植えたらいいのかという回答も何もありませんでした。これはもうえさ稲でも植えろというのであれば話は別ですよ。何を植えたらいいのかという回答が一つもなかった。その点で、この生産対策については、何らまだ示されていない、こう考えます。価格政策に対しても同じなんです。もう米と同じような価格政策はできないのだということだけは答弁されましたけれども、これについても、何を植えるのか、その価格をどうするのか、これなくして、集積して一体何になりますか。その問題が一つ。  さらに、圃場整備についてはどうなりますか。貸し手がやるのですか、借り手がやるのですか。それから、水利権はどちらの方へ移るのですか。もう一つは、農業年金の現状で、それでそういうふうに手放す人が一体おるのでしょうか。
  177. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 価格政策あるいは生産対策一般の話は、一構造改善局長の守備範囲といいますか、所管を超える問題でありますが、それは、この事業はともかくといたしまして、本来的にある農林水産省の政策、使命でございます。その充実を図っていくということで、先ほど来大臣からも御答弁申し上げたところでございまして、私どももそういった政策の充実と相まって、この構造対策は何とかうまく進めていくことができるだろうというふうに考えておるわけでございます。  それから、基盤整備事業はだれが主体となってやるのかということでございますが、今日の農地実情からいたしますと、これはやはり農地所有者がその主体になる。したがって、水利権についても所有者がその権利を持つということになると考えております。
  178. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 次に、統制小作料の撤廃がこの九月三十日ですかに行われるということに、すでに昭和四十五年の法律改正でなっておるわけですけれども、この統制小作料の撤廃というものが実勢小作料に影響を与えて、そして、今回は物納制をとるわけでありますので、やみ小作料というのが堂々と、いわば標準小作料を素通りしまして、飯米という名前のやみ米がはんらんをしていくことになりはしないか、この点の心配を持っておるわけでありますけれども、これともう一つは、食管法との関連でどういうふうになるとお考えですか。
  179. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 問題、三点示されたわけでございますが、食管法との関連の問題は、後ほど食糧庁の方から答弁してもらうことにいたします。  統制小作料の問題と、それから実勢小作料との関係、物納との関係でございますが、統制小作料は四十五年の法改正によりまして廃止されることになりましたが、十年間の猶予期間を経て、この九月に完全になくなることになっております。この十年間におきましてそれなりの趣旨の徹底は図られたつもりですし、それから、完全廃止に伴うさらに一層の趣旨徹底、混乱防止のための事業、こういったものも考えておりまして、統制小作料は新しい地代の世界へ移っていくということになろうかと存じます。  その場合、小作料のいまのあり方からいたしますと、標準小作料というものが一つの目安としてあって、それを上回る、多くの場合上回っております、実態が実勢小作料としてあるわけでございます。これは地域差がありまして、一概に言うのは、実ははなはだ問題が多いのでございますが、ごく一般的に言えば、東海地方は、標準小作料水準ないし標準小作料よりもむしろ安いくらいの水準で小作料の実勢が推移いたしております。東北地方とか北陸地方は逆に、標準小作料を四割も上回るような水準で推移しているというようなことで、地域差がかなりございます。そういう意味では、標準小作料自身にも差がありますが、標準小作料と実勢小作料との間の差がまだかなり大きいということもありまして、標準小作料の定め方等についてもいろいろ検討していかなければならないと考えております。  それから、その問題と物納との関連でございますが、物納を認めたからといって、物が金に成りかわって支払われるという形になった場合に、経済的な価値として、金の場合の小作料水準より高くなるかどうかということでございますが、これは正直なところ、本当にどうなるかは、一つは、米による物納小作料というのは、多くの場合一俵単位でもって定められておる、十アール当たり何俵というようなことで定められておる実例がかなり多いわけでございます。そうすると、端数が切り上げになるのか切り下げになるのかというような問題もございますし、それから、米自身の評価をどういう形で評価するのかというようなこともありまして、一概に高くなるとは言い切れない。そこはやはり標準小作料を目安にして適正な小作料に決められるべきだし、またそういうふうにもつていくように指導いたしたいと考えております。その場合、物納になった場合の標準小作料の算定の仕方について、米の価格のとり方等を含めまして、それなりのきちんとした指導をしていかなければならない、かように考えております。
  180. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 食糧庁長官がちょっと帰りましたので、私から答弁さしていただきます。  いまの物納の米が何かやみに流れるのではないかという御指摘かと思うのでございますけれども、私どもは、そんなに多くなかろうという判断をしているのでございます。まず、貸し方の方が、入ってきたお米を自分のたんぼからとれることにおいて自分のうちの消費に向けられるのが大半であろう。そこで、余剰が出てくるのは非常に少ないと思っておりますが、これはやってみなければわからぬことでございますけれども、余剰が出てまいりました場合には、いわゆるいまの超過米と同じような形で自主流通のルートに乗せて出していただく、こういうことを考えておるわけでございます。
  181. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 食管法との関連と、それから生産者米価の地代算定、これは今後いかなる基準で地代算定をするのか、この点をひとつお答え願いたい、こういうように思います。  時間がありませんので答弁は簡単で結構ですが、農業委員会問題について三つまとめてお伺いしたいと思います。  一つは、定員削減は便宜主義ではないか。いわゆる公選というたてまえをとっておりますので、これを軽視することにならないかという問題。  二番目は、都道府県農業会議の構成員を市町村農業委員会の会長にするという改正をしておりますけれども、これは委員制度の根幹を骨抜きにするのではないかと考えるわけであります。なぜかと言うと、厳正、中立、公正、こういったものが委員会の原則でございますけれども、現実に市町村長が会長になっておるところが非常に多い現状からしますと、やはり市町村長の手中にこの三法が握られてしまうことになるのではないかという点で私は反対でございます。  それからもう一つは、許認可という権限がいままでの県知事から市町村農業委員会に大幅に委譲されることになりますので、その点の財政上の援助いわゆる助成、もう一つは資質を向上させるための研修計画が付随しておるのかどうか、この三点でございます。
  182. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  農業委員会法の関連の三つの御指摘の点でございますが、今回農業委員会委員の定数の引き下げを行ったわけでございますが、この点は、今回農業委員会が構造政策一つの中核となって今後の展開に当たっていくためには、やはり農業委員会の運営の効率化を図る観点から、このような上限の定数につきまして改定を行った方がよろしいのではないかという考え方に立ったわけでございます。もちろんその場合には各地域の住民の方々との結びつきも考えてまいらなければならないわけでございますが、その点につきましては、地域協力員等の方々の御協力によりまして、このような御懸念もないようにいたしてまいりたいと考えておるわけでございます。特に、民主性の後退ではないかというお話がございましたけれども、今回の法改正に当たりましては、各方面からのいろいろな御意見がございまして、その中には、たとえば公選制の廃止であるとか、諮問機関化とか、そういう御意見もございましたけれども、われわれは、やはり民主的な委員会の堅持を考えまして、その骨格はいじらない前提でもってこれをお諮りいたしているわけでございます。  それから第二に、農業委員会の会長に今回会議員になっていただくということでございますが、目的は、このような構造政策推進に当たりまして、都道府県の農業会議農業委員会などで十分な意思疎通がなされることを期待いたしましたこと、それから、農業委員会相互間の連絡を密にいたしたいということから、このような改正を御提案申し上げておるわけでございますが、御指摘の、農業委員市町村長がなっているケースが多いために、農業委員会の独立性が失われるのではないかという問題でございますけれども、われわれといたしましては、先ほども申し上げましたように、独立した行政権限を持つ行政委員会としての農業委員会というものは堅持してまいるということで今回の法制を考えてまいっているわけでございまして、ただ市町村長が農業委員会委員あるいは会長になっておられる点につきましては、ケース・バイ・ケースで、当該市町村長の方が非常に農業について御熱心な方あるいは学識経験をお持ちの方々がおられますので、それを一概にその方がなってはいけないというわけにはまいらないと思うわけでございます。  それから最後に、財政面及び資質向上の面でございます。従来からも財政面あるいは農業委員会委員の資質の向上、あるいは職員の資質向上という点では、われわれも意を用いてきたつもりでございますけれども、数ある農業委員会のうちには必ずしも適任者ばかりではないという御意見も私ども聞いております。また、職員の資質もさらに向上しなければいけないということも聞いておりますので、今後財政面におきましても、百五十億の負担もいたしておりますし、いろいろな形で財政援助をやっているつもりではございますけれども、さらにこれの充実に努めますとともに、このような非常に重要な任務を課された農業委員会でございますから、今後ともさらに職員及び委員の方々の自覚をまちまして、その資質の向上には努めてまいりたいと考えている次第でございます。
  183. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 小作料の問題につきまして、米価にどういう影響があるかという点につきましては、現時点で米価についてまだ白紙の状態でございますので、いまここでどうこうという考え方は持っておりません。
  184. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 食管法との関係は……。
  185. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 先ほど大臣がお答えしたと思いますが、食管法との関係につきましては、食管法の所要の規定を加えまして、食管法の制度が乱されないような秩序ある流通にこの小作米を乗せていきたいと考えておる次第でございます。
  186. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 終わります。
  187. 内海英男

  188. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農地法の一部を改正する法律案農用地利用増進法案農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案、いわゆる農地三法について農林大臣に質問いたします。  この農地三法については、本法審議の初日である四月九日に、総論的な問題と各論について政府の見解をただしたところであります。申すまでもなく、農地法制上きわめて重要な提案でありますので、四月九日に引き続き、留保した問題について本日さらに政府の見解を求めるものであります。  農地法の一部を改正する法律案についてまず最初に伺いますが、四月九日当委員会で一時間半にわたって総論と本法について政府の見解をただしてきたところでございますが、その中で、食管に関しての質疑について、さらに農林水産大臣の見解をお伺いしておきます。  その際、私は、食管に関連し、定額金納制の廃止に関しては、物納等による米穀の授受及びその後の流通等が食管法に基づく流通規制に抵触しないかどうかという問題、今回の改正とは直接に関係しないけれども、本年の九月三十日で完全に撤廃される統制小作料については、その撤廃が耕作者の経営安定に大きな支障を及ぼさないかどうか、さらに、急激な小作料の上昇が当事者の紛争を惹起するおそれはないかどうか、また、現在の生産者米価の地代算定に統制小作料が使用されているが、その撤廃に伴い今後はいかなる基準で地代算定をするのか、これについては政府は再三その用意は白紙であるということで検討しておられないということを承っております。こういった諸問題について、食管に関連していろいろと去る四月九日伺ってきたわけでございます。その際、政府から食管は堅持するという答弁があったわけですけれども、私はどう考えても、本法施行によって食管はいよいよ形骸化すると考えざるを得ないのであります。その後いろいろ検討してまいりましたが、すなわち定額金納制の廃止によって物価の上昇とともに小作料に派生的に影響をもたらしてくることはもう必至でありますし、したがって小作料は漸次上がることは必至であります。現在は黙認した形になっておりますが、あえてこれを外すと統制はますますきかなくなる、こういうように思うわけです。いままでは定額金納制があるから食管を何とか堅持してきたとも言えます。このことについて農林水産大臣はどのような見解をお持ちであるか、さらに念を押すために伺いたいのであります。絶対に食管は形骸化しない、堅持できる、心配はない、こういうふうにおっしゃるのか、その点確認の意味で改めてお伺いしておきたいのであります。
  189. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 物納という形で米が出てくる場合、先ほども申し上げておりますが、その大半は農地を貸した方が自分のたんぼからとれるお米だということで自家米にお使いになる分がほとんどであろう、しかし中には流通に回される分もあるから、それが食管法との関係においてどうか、こういうことでございます。  これは、いま自主流通ルートに超過米が流れておるわけでございますが、こういう超過米と同じような考え方で、もし出てきたものはできるだけ超過米と同じ自主流通のルートで流していきたい、こう考えておるわけでございまして、決していまの仕組みと何か変わったものが出てくるということは私どもは考えておりません。そういう意味において、食管法が形骸化するとか食管法が将来実質的には全くないものになってしまうのではなかろうかというような御心配はない、私はこうはっきり申し上げるわけでございます。
  190. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 再度念を押しますが、農林水産大臣は、当局としては絶対に食管は堅持できる、心配はない、こういうように理解しますが、そのとおりでいいですね。
  191. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 食管法の根幹は今後とも堅持をしてまいります。
  192. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農用地利用増進法案についてお伺いをいたします。  農用地利用増進法案は、各地域実情に応じて農地流動化農用地の効率的利用等を促進することを目的としておりまして、その内容は、昭和五十年の農振法改正により制度化された農用地利用増進事業の機能を大幅に拡充整備した、すなわち利用権設定等促進事業の実施とあわせ、新規の事業として集落等の段階において実施される農用地利用改善事業の実施を促進する事業及び農作業の受委託の実施を促進する事業等をつけ加えた法体系になっていることは御案内のとおりであります。  そこで、利用権設定等促進事業農地法との関係についてまずお伺いしてまいりますが、農地法は一筆ごとの農地対象とする農地行政全般にわたる統制法であるのに対し、農用地利用増進事業地域農用地を面としてとらえた農地流動化の実施法であります。農地法の適用除外を伴うこの事業の実施が農地法の形骸化をもたらすものではないと政府は説明しておられますが、今回の提案にかかわる利用権設定等促進事業は、大部分の市町村で広範に実施されることが期待されるとともに、またそうでなくてはなりませんし、実施対象区域が農用地区域以外にも拡大され、さらに従来の利用権の設定に加え、所有権移転等も事業対象にする等、大幅な強化策が講じられていることも御案内のとおりであります。従来よりも農地法の適用除外となる分野が拡大されること等について大変懸念をするわけでございますが、今後この事業により借地等による農地流動化を積極的に推進することは、農地法のいわゆる自作農主義という目的規定と背反していく、こういうことになるのではないか、こういう大方の心配に対してお答えいただきたいのであります。  すなわち、農地法第一条には、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当とする、こういうふうにあるわけです。そういった意味で、本法提案に当たってこの辺明確にひとつお答えを、まず農林水産大臣から願います。
  193. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 御指摘のとおりで、農地法には、その耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めている、こういうことでございまして、この考え方、私どもは今後も決して排除する気持ちはないわけでございます。  現実の日本農業を見てみましても、今後とも自作地がほとんどであろうと思っておるわけでございます。ただなかなか、先ほど来議論もされておりますように、地価の上昇などもございまして、農地というものも資産として保有しようという気持ちが非常に強くなっておりまして、そのために、実際においてはほとんど農業を片手間にしかおやりにならないという農家もあるわけでございますし、あるいは、将来の後継者がいなくて困っておられる農家もあるわけでございます。そういう方々の土地をできるだけ貸していただけないだろうかということで考えておるわけでございます。まあこれは数量的に言えば、自作地と比べてそう多いものではないわけでございますので、私どもはこの基本的な農地法考え方そのものを否定するものではない、またこの考え方は、今後とも私どもは十分尊重していかなければならないと考えておるわけでございます。
  194. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、農林水産大臣、せんだってもちょっと申し上げたのですが、俗に言うバイパスが今度はいよいよハイウエーになるわけですね。もちろん農地法の精神は残す、こう言いながら、事実上本流は今回の農用地利用増進法にかわるわけでございますから、それでは農地法はどういう意味を持つか、また将来農地法をどういうふうに政府はとらえていくのか、また、この農地法は将来いずれかの時期に改正をするという考えがあるのか、それともこのままずっと精神だけ残して置いておくつもりであるのか、その点もお聞かせ願いたい。
  195. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今度私どもがこの法律をお願いいたしておりますのは、あくまでも、農地流動化農業の用に供するためにということで限定をして考えておるわけでございまして、農地法の基本的な考え方は、やはり農地農業以外の用に供することに対して、できるだけ厳しく規制をしていこうという考え方が流れておると思うのでございます。そういう点は今後ともしっかり堅持をしていきたいと考えておるわけで、決して農地法を形骸化しようという考え方もございません。また、将来農地法改正するかどうかということでございますけれども、これは今後の農業の実態がどう変わっていくかというときにおいて考えるべきことでございまして、いまこの段階で、今後また農地法改正していくというようなことは考えておりません。
  196. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これ以上の答弁は出ないと思うので一応聞きおくとしまして、いずれ本法の最終的段階でまたいろいろ大臣の見解を詰めることにいたしたいと思います。  そこで、利用権設定等促進事業について若干お伺いしておきますが、政府は新事業が全国どの程度の市町村で実施されることを予定し、これに基づいて所有権移転等を含めどの程度農地流動化効果をもたらすのか、いわゆる実施効果はどういうふうに考えて本法提案になっておられるか、その点お答えください。
  197. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 今回提案しておりますところの利用権設定等促進事業におきましては、従来の利用増進事業に比べまして多くの面でその拡充を図っております。  たとえば、対象となる事業の実施区域を従来の農用地区域に限定しない、市街化区域を除いた全般的な地域に及ぼすということもございますし、それから対象となる土地は、農用地のほかに混牧林地、農業用施設用地、さらには農用地等開発用地、このようなものを加えるというふうにいたしております。それから、事業対象となる権利も、賃借権及び使用貸借による権利のほかに所有権及び農業経営の受託により取得される使用収益権も加えております。それから受け手として、農業経営の受託事業を行う農業協同組合、農地保有合理化法人等も加えております。こういったことから、従来より相当広範に対象が広がる、実績も、実績といいますか成立するであろう賃貸借の件数もふえてくる、面積もふえてくるというふうに見ております。  町村の数でどうかということになりますと、全国で約三千の市町村がございますが、そのうちすでに千七百の市町村でもってこの現在の利用増進事業での規程を設けておるわけでございます。実際に利用増進事業を行っているところは約千市町村でございます。これが今後三千という全体の枠の中で相当広範に普及していくであろうというふうに考えられます。農用地がある程度ある市町村では、ほとんどの市町村が若干の期間はかかるにいたしましてもこの実行にかかってくれるのではないか、そういうことを私どもは期待をいたしております。  それから、対象となる農家なり面積はどうかということでございますが、これは計画的に目標を定めて、それを義務的に強制して実行してもらうというような性格のものではございません。あくまで実際に貸してもいいという、農地を提供してくれる農家があるかどうか、それをまた実際に借りてうまく農業経営上利用していく意欲のある農家があるかどうか、そういう実態がベースになるわけでございます。そういう実態のあるところでは、指導あるいはいわゆる掘り起こしというようなことによりまして合意が形成されていくと思われるわけでございます。そういう合意は、今日までの実績から見ますと、先ほど来申し上げておりますように、これから、対象を広げ拡充を図ったということにより、従来のぺースを相当上回るぺースで年々進展を見せていくのではないか、年々増加の方向が期待されるのではないかというふうに考えております。
  198. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 数字の提示がなくて漠然とした効果を期待しているような答弁でございますが、それはそれとして、本法によれば実施区域から市街化区域を外しておりますけれども、この外した理由はどういうわけですか。
  199. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 都市計画法の市街化区域内では原則として農用地利用増進事業は行わないこととしております。これは「すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」というのが市街化区域の性格といいますか定義でございます。これからいたしますと、大々的にといいますか、一般的に市街化区域内で農用地利用増進事業を行うのは適当でないというふうに判断されるわけでございます。ただ、しかしながら、市街化区域内の農用地でありましても、農業上の利用の面から見まして市街化区域外の農用地と一体的な利用が行われているときは、これは現実の市街化区域が道一本、細いどぶ川一本で区画されているというようなところもあるわけでございます。そうすると、その外側にある市街化区域以外の農用地と実質一体的にいまいろいろな作業なり経営なりが行われている、関連していろいろな農業投資も行われるというようなこともあるわけでございますので、そういった状態にあるところにつきましては、全体としての農用地有効利用を図るため、農用地利用増進事業を行い得るということにいたしております。
  200. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産大臣にただいまの問題でお伺いしますが、市街化区域内は、場所によっては、いま局長も一答弁しておりましたように、野菜など大量に生産して近郊都市に供給しておるわけですね。私は、ほっておいてよいものではない、こういうように思うわけです。恐らく本法提案に当たって、いろいろ部内でも論議を呼んで検討された結果、このように市街化区域を外したということになったのだと思いますが、農林省としては、一度嫁にやった者はもう出戻りさせないというようなことなのか、その辺が私はちょっと問題じゃないかと思うわけですね。これに対して余り物を言わないような本法提案になっておりますけれども、市街化区域でも相当遊んでいる農地が多くあるわけでございます。むしろこういったところに対しても、私は十分手を入れて積極的にやることが望ましい、かようにも思うのですが、本法提案に当たってこの点も大変疑問を持つところでありますので、明快なる政府の見解を農林水産大臣から明らかにしていただきたい。
  201. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども確かに省内で議論をいたしましたときには、市街化区域内の農地も含めて考えられないだろうかということも議論したことは事実でございますが、いま局長答弁をいたしましたように、従来の経緯からいたしますとなかなかこれはむずかしい問題でございますし、現実にそれでは市街化区域内の農地をもし対象にした場合に、現時点では市街化区域の中の土地基盤整備どもやれないことになっておるわけでございます。また、従来から農振法の農用地対象にして利用増進事業をやってきたわけでございまして、どうもなかなか市街化区域の中へまで入り込んでいくということは、私はいろいろな従来のいきさつからいって大変むずかしいという判断から、一応しみ込んでくるところは別といたしまして、原則的には市街化区域の農地対象にしないということに同意をいたしたわけでございます。
  202. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産大臣から、原則的には市街化区域には入らないということですが、一応、原則的にはという言葉がありますから、この点についても問題になるところでありますので、最終段階でいろいろ取り扱いについては検討してもらいたいと思っております。  さらに、利用権設定等促進事業の実施体制等についてお伺いしてまいりますが、法案作成段階においては、農業協同組合組織からも、本事業に積極的に参加できる位置づけをされたいという要望が出ていたことは事実であります。そこで、この農業協同組合組織からそういった位置づけについていろいろ要望があったと思うが、その点はどういうふうに本法提案に当たっては農業団体に対しては納得をさせるように努力されたのか、その点まずお聞きしたい。
  203. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 今回提案しておりますところの農用地利用増進法案は、これは市町村農業委員会農協等協力のもとに地域全体として農用地流動化を、それから有効利用を促進するということをねらいとしているものでございます。農協系統組織といたしましても、八〇年代における農業課題農協対策というパンフレットを早い時期に出しておるわけでございますが、それにおきましても、このような地域農業の組織化を通ずる農業の発展については積極的に取り組むということを明らかにしております。今回の利用増進法案による新しい農用地利用増進事業推進に当たっては、農協の主体的な取り組みが当然期待され、積極的に参加を促すよう私どもとしても指導してまいりたいと考えております。  特に、今回の農用地利用増進法案におきましては、その内容は、現行農用地利用増進事業を大きく拡充していくということにしておりますが、そのほか、一定の地域内の関係権利者が協力して、作付地の集団化、農作業の効率化、農用地利用関係の改善等を促進する、いわゆる農用地利用改善事業の実施の促進を図ることにいたしております。それから、さらには、農作業の受委託を促進する事業が新しく加えられておるという事情がございます。これらの事業につきましては、農協等が行っている農業経営の受託事業等とも直接関連を生じてまいります。したがいまして、農協推進指導している地区内の農作物の作付の改善だとか、農作業の受委託のあっせんだとかさらには営農指導活動、こういったところとの関連が深うございますので、そういう観点から、連携をとって、農協の活動を期待して参加してもらうというふうに考えておるところでございます。  それから、さらには、具体的な政省令等の段階では、市町村農協関連をはっきりさせる意味で、市町村が実施方針を定める場合に農協の意見を聞くこととするというようなことを定めることを予定しておりますし、さらには市町村段階、都道府県段階で、行政機関、農協等で構成する事業推進上の協議の場をそれぞれ設けることを考えておりまして、農協との連絡協調を密にしてまいりたいと思うところでございます。
  204. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農協も積極的に参加してやりたいという意向があったことは、もう昨年あたりから本法の話が出た際にたびたび伺ってきたわけです。一応局長からいま答弁をいただきましたが、私、思うのに、農協は一番足腰が強いわけですね。夜の会合やいろいろな会合に積極的に出ることができる。また若い人も多い。そして行動力がある。こういったことで、いま若干触れられましたけれども、恐らく農協その他の農業関係団体のかかわり合い等についても政省令において明確にしていくということであろうと思いますが、この組み合わせをうまくやらなければならぬと思うけれども、その点は政省令で十分考え、また、組み合わせ等については、農協のそういった機動力というか特徴を大いに生かすということで十分参酌していくと理解していいのか、その点、簡潔でいいからお答えください。
  205. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 お尋ねの御趣旨のとおりでございます。
  206. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点は了解しました。  さらに、農用地利用増進計画等の作成に当たっては、市町村等が強権的に実施することなく、権利関係者全員の意向が十分反映される民主的な運営が要請されているわけです。計画の具体的作成手続等に対しては、政府はどういう指導方針で臨まれるのか、お答えをしていただきたい。
  207. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 いま先生がおっしゃられましたように、この事業は何といっても、農地利用権といいあるいはときにより所有権といい、その移動、流動化対象とするきわめて大事な、むずかしい問題を取り扱うものでございます。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 したがいまして、この計画につきましては権利者全員の同意を絶対的な前提条件にしておるわけでございます。たとえ零細規模農家でありましても、その意に反して農地を提供させるということはあってはならないところでございます。  そこで、本事業の実施に当たりましては、関係機関、これは農業団体というようなしっかりした組織を持った団体だけでなしに、地域農業者の代表者等も含めまして相談する場、協議会といったようなものを設けまして、その意向を十分尊重して進めていく、そして関係権利者の理解と合意の形成を図っていくということで進めるように指導してまいりたいと考えております。
  208. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農用地利用増進計画を定めるに当たっては、団体から意見が出たときは、上の方で強権でやらずに、下の話を民主的によく聞いてやる、そして本法の趣旨を明確に伝えると同時に、皆が納得するようにして推進するのが私は望ましいと思うのです。この辺も将来トラブルの原因になりはしないかと思って心配するがゆえに、当委員会で政府の見解をただすわけです。ちなみに申し上げますと、市町村中心になって農用地の管理をするとなると、市町村農業委員会等考え方いかんによって権威的に土地を動かすということになっては困るのです。いい意味のボスならいいけれども、これを悪用して世間からまた批判を受けるような扱いをされると問題がまた起きてくる。こういったことを懸念するがゆえに申し上げるわけです。政府は、事業をやってほしいし援助措置もできるだけするということでありますから、市町村にしても農業委員会にしても大いにハッスルをしてもらわなければいかぬ。また、ハッスルする余りに強制はできないと思いますから、その点は十分指導してもらわなければならぬ、かように思うわけです。必要な事業でありますから、無理やりにやるのではなくて納得する方法でやるということが最も重要なことであると思うのですが、その点については、本法提案に当たってはどういうように検討されて提案に及ばれたか、明らかにしていただきたい。
  209. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 過去のもろもろの実績等を見まして、私どもいま先生の言われましたような考え方のもとにこの運営を図っていくことが一番望ましいということで、この法律を提案いたしております。ただ、もちろん強権的に強制するわけではございませんが、この新しい制度の趣旨が十分に浸透しないというようなこともあり得ますし、知らないがためにその決心もできないというような向きもかなりあるとすると、その趣旨を徹底して理解していただいた上で合意を形成するという手順になるわけでございます。その意味では、ただほうっておいて制度に乗っかってくる者を待つということではなしに、従来から行っておりますいわゆる掘り起こし活動によりまして、潜在的な出し手がどういう状況にあるか、それからこういう人は理解が進めば新しく出し手になってくれるかということをよく把握いたしまして、それらを利用権設定の場に乗せるように努力していくことは当然必要であると考えております。強制するのではなくて、合意を得るための十分な理解を進める上での努力、趣旨の普及徹底を図ることは必要だと考えております。
  210. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 何しろ農地三法でございまして、相当膨大なものでございますので、限られた時間に全部消化することはできませんけれども、はしょって重要な問題を質問してまいります。次に申し上げることも本法について特に重要であると私は認識をして、農林水産大臣初め当局にお伺いをしてまいります。  今後は、水田利用再編対策等に関連して、田畑輪換等の土地基盤整備事業の実施と相まった農地流動化が期待されるため、耕作者の農業経営の安定と土地への投資等の関係は従来以上に重要視されてくることは言うまでもありません。今後、利用権設定等促進事業推進に当たっては、耕作者の農業経営の安定に対しどのような配慮がなされるのかということで、以下数点私はお伺いをしたいのであります。  農地の貸借の期間が三年とかあるいは五年とか六年とかというようなことでは、安心して耕作ができるかどうかということが、せんだっての四月九日の当委員会でも若干触れておきましたが、どう考えてもこの問題が大きな問題になってまいります。いままでは農地を貸した場合、返すときは都道府県知事の許可が必要だったわけです。したがって、都道府県知事は農地法第二十条により、特別の場合以外はめったやたらには許可しなかったわけです。よって、農地を借りた方は安心して耕作ができたというメリットがあったわけです。今回の農用地利用増進法案は、期限が来たら返す、いつでも返せと言えば返すことになっております。耕作権が不安定になるわけであります。政府は去る四月九日の私の質問に対し、一つ、そうは言ってもできるだけ新しい契約で借りかえることができる、二つには、もしその農用地を返すことになれば、全体的な契約でやっているので、他の農地を借りるようにめんどうを見る、概要こういつた答弁があったわけでございますが、一番問題になるのは、農地の貸し借りが目的であると同時に稲作転換が絡んでくるわけです。すなわち、借りた土地は稲転によって他の作物に転作をせねばならぬことは当然です。そうすると、土地改良が必要になってくるわけです。この認識は私が指摘したと同じ認識でございますか。政府の見解をお伺いします。
  211. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 利用増進事業におきますところの新しい利用権の設定、その場合の貸借の期間は多くの場合三年ないし五年でございます。まあ三年−五年は、借り手の側からすればもっと長い方がいいという希望はもちろんありますけれども、一年一年やみで借りている、あるいは請負耕作の形、これもやみの一種でございますが、それで耕作を行っているということに比べれば、市町村も介在しているということもありますし、かなり安定した借り方になる。従来よりはよほど一般的には改善された姿になるということが考えられます。それから、先生も言われましたように、貸し手も安心して貸せるということなら、引き続いて更新してもいいではないかというようなことも考えてもらえるだろうと私ども思っておりますし、現にそういう機運もだんだんに生じつつあるわけでございます。そういうことによって、かなり安定した借り手経営が保証されるように持っていきたい。それから、どうしてもその借りておったところが期間が満了して返さなければならなくなったという場合は、市町村が、全体としての地域農地の貸し借り関係を見て、調整、あっせんしているわけでございますから、その機能によって、また場所はかわっても経営上必要な面積を借りることができる、確保してもらえるということがあれば、それで相当程度安定効果は果たし得ると考えております。  そこで、そういう事業を進めてまいります際、その土地について農業投資の必要が生じた、これを一体どうするかということでございますが、転作との関連で申し上げますと、この事業は直接流動化されるところだけを特別に転作をするとか、あるいは転作を強化してまいるというふうに結びつけて考えているわけではございません。それはほかの農地一般と同じように、転作についてはそれなりの姿でこれを受けとめていくということになろうかと思います。ですから、場合によっては転作との関連で、それからそうでない場合は一般の姿で農業投資が必要となることは、それはあるわけでございます。  それらの農業投資についてどう考えるかということでございますが、土地改良法上のはっきりした用排水なりあるいは圃場整備事業ということになりますと、これは現在所有している者がその事業の実施主体になるということで進められるということであろうかと存じます。ただ、短期の小規模なものについては、三ないし五年の賃借期間でありましても、借り手がこれを負担して行うということは、これはあり得ると思います。
  212. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政府側に要望しておきますけれども、後で農民がこの会議録を見たときに、順序立ててきちっと理解するために、私は区切って質問しておりますから、何もかも先走ってずらずらっとしゃべっておくと質問がごっちゃになってきますので、そのために要点の通告がしてあるわけですから、整理して私の質問をよく聞いて答えていただきたいと思うのです。重要な農地三法でございますので、将来にわたってこんな改正がたびたびあるわけでございませんから、われわれも真剣に取り組むために、後でまた会議録を見ながら、本法の扱いをどうするか、修正すべき点はどこを修正するか、附帯決議はどういう意味の附帯決議をつけるか、またどういう歯どめをかけるかということで、きちっとわれわれも相当検討した上で、党を代表して私は質問しておるわけでありますから、その点はよく理解してもらわないと、のべつ幕なししゃべられたのでは、聞いている傍聴人も、また後々、農民、各種団体もこの会議録を見て、瀬野委員の質問に対してはどういうようなことを言っているのか、党の考えはどうかということで相当注目しているわけですから、ひとつその点お含みいただきたいと思う。私もまたそういう意味で、皆さん方に農民の肩がわりとしてなるべくよくわかりやすく質問しておこうという考えでおるわけですから、御協力をお願いしたいと思っております。  土地改良は、ただいま話がありましたように、三年とか五年の不安定な賃借期間ではできないわけです。ゆえに、だれに土地改良をさせるかが問題になります。すなわち、土地所有者か、または借りた者かということになるわけです。水田水田として貸すのでは意味がないわけです、米はいま過剰ぎみでありますから。その点はもう皆さんも百も承知だろうと思う。  そこで、われわれがかねがね言っているように、麦作あるいは私が提案しておりますところのいわゆる畦畔大豆転作とか、要するに特定作物である大豆、飼料作物あるいはまた飼料稲作、こういつたことの転作をしなければならないわけです。よって土地改良はきちっとやっておく必要がある、かように思うのです。  そこで、この土地改良の必要ということは皆さんも認めておると思うから、だれにやらせるのか、いわゆるどういうように考えておるか、簡潔でいいから答えていただきたい。
  213. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農業投資についてどう考えるかというお尋ねでございましたので、やや先走って、どういう形でその農業投資が行われるかということを申し上げましたが、一般的には私はやはり農地所有者が行うというのが一番妥当であるし、また実際にもそういう形で出てまいるものと考えております。
  214. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 所有者はどちらかと言うと農業をやる気がないから貸すわけですね。全部が全部と言いませんよ。だから、私は、どちらかと言えばというただし書きを言っているわけです。所有者がやるべきだ、こういうふうに局長はおっしゃる。ゆえに土地改良はどうでもよいと思っておるわけではないけれども、貸す方はそう期待をしているということではない、いままでの一般から見まして、そう思います。一方、借りる方は耕作が三年ないし五年とかいうことでは不安であります。いわゆる不安定でもあります。ゆえに借りる方は土地改良は余り積極的にやろうとはしない、私はこういうふうに思うのですけれども、その点は政府はどういうふうに思っていますか。
  215. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 確かに、おっしゃられるようにいろいろ事情がありますけれども貸し手はみずから耕作をしないということで農地を提供しているわけでございます。したがって、一般的には改良投資にはそれほど熱心ではございません。また、借り手の方は、期間が短ければ短いほどまとまった農業投資を行うことはちゅうちょいたします。これは当然であろうと思います。
  216. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、この問題は本法の提案で大変重大なかかわり合いがあって、これらがはっきりしないと農用地流動化がなかなか進まない、絵にかいたもちになる。またぞろ、四月九日に私が冒頭申し上げましたように、結局この問題は現状追認に終わるような法案になりかねないということで、せっかく法律案を提案され、審議し、今後もしこれが採決されて法律を施行する場合によりよい効果が上がるためにもと思って、私たちもいろいろ政府の考え方を聞いているわけですよ。  そこで、私はいま若干の指摘をしましたが、そういうわけですから、政府は転作に絡めて手厚い何らかの助成措置などを考えてやらぬと、農地流動化はうまく進まないと思うのだが、その点についてはどういうふうに大臣はお考えでありますか。
  217. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまの問題は確かに大変問題点であろうと思うのでございます。耕作をする借り手の方は、積極的に耕作をやりたいのですから基盤整備をどんどんやっていただいた方がいいし、貸し手の方は余り農業は、熱心でないとは言いませんけれども、どちらかというと農業をやらないでほかの収入を上げよう、こういうことになるわけでございます。それと転作との関連でということでございまして、いまのお話は、何かそれを別に助成しろというようなお話かとも思うのでございますが、研究はいたしますけれども、現時点で私ども転作転作でそれぞれ助成策を講じておるわけでございますし、いまの基盤整備その他の問題に関連しては、先ほど来局長が申し上げておるように、話し合いでいくという、いわゆる地方地域農政の振興という観点から私ども考えて、何とかうまくやっていただいたらどうだろうか。地域農政の振興には助成策を考えておるわけでございまして、そういう中で、いろいろな話し合いの中で考えていっていただいたらどうだろうか、こういうふうに思っているわけでございます。なお一層何か必要なことがあるのかどうかは、ひとつ検討させていただきたいと思うわけでございます。
  218. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農地三法は重要な法案でありますが、大臣もちょっとそこら辺は歯切れが悪くて、勉強が十分できてないような感じがしてなりませんが、私は新たな提案として指摘しておきますので、この辺は十分農林水産省部内でも検討して裏打ちをしないと実際にうまくいかない、かように思うわけです。  そこで、土地改良をする場合、ただいま局長から答弁がございましたように、原則的には所有者がやるべきだと思いますけれども所有者がやろうといっても金がなくてできない、さればとて稲転をしなければならぬという場合には、借りた方がどうしても暗渠排水とか土地改良等をしなければ結局転作できないということになりますと、所有者との話し合いで、やはり借りた方が経費を出してやることになる。ところが、三年か五年後にはまた返せ、こういうことになりまして、いわゆる減価償却しないうちに返すということになりますと、これはやはり力が入りません。これは農地法の精神で、やはり自分の土地であれば一番愛着がありますけれども、借りたものはどうしても愛着がないというので、農地法の第一条に目的が書いてあるとおりでございまして、その点はわれわれも十分わかるわけですが、そこで、仮に借りた方が土地改良をやった場合に、必要経費を有益費の償還としてどういうふうなルールで償還してもらうのか。政府はその点は全然考えずに、土地改良は当然所有者にやってもらうのだ、こういうことで本法を出されたのですか。その点もあわせて見解を求めます。
  219. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 多くの場合、土地改良事業は相当多額の資本投資を必要とするわけでございます。したがいまして、ごく小規模の事業、あるいは土地改良事業が維持管理事業だけというようなときは、借り手の側でもそう負担に思わないで投資をするということがありましょうが、一般にはなかなかそういうふうには行われがたい。先ほど来申し上げておりますように、所有者土地改良事業を実施する、これがまた土地改良法のあり方からしても一番円滑に事業の実施ができるということでございますが、ただ、所有者の営農継続意欲がほとんどなくて、そして利用権者の利用が実質上相当長期にわたって保証されるというような場合、あるいは利用権者の側に土地改良意欲が強くて、かつ所有者との間で話し合い、了解がつくような場合は、借り手の方が投資するということもあろうと思われます。そういう意味で、市町村農業委員会等が間に入って、この賃借権の設定を進める際、そういう事業を行うことについての取り決めといいますか約束もある程度指導できれば、それが一番いいことになると思います。  そういう指導が行われて借り手の投資が行われたといたしました場合、スムーズにいけばそれで問題ないということでよろしいのでございますが、場合によってはトラブルにもなりかねない。それから、投下した経費について、これを有益費として請求するということも考えられるわけでございます。有益費でもって最後の処理をするというのもあるいは当事者間の合意の一つの形であろうかと思います。  ただ、この有益費の問題は、当事者間の協議だけに任すということになると、ときにトラブルも生じかねないということで、双方が安心して利用権の設定を行うためには、この問題が公正かつ確実に処理されるということが必要でございます。  そこで、この新しい事業のもとにおいては有益費の償還について何か考えて検討したのかということでございますが、私どもといたしましては、農用地利用増進計画の内容におきまして、利用権の条件として、市町村がその計画を定めるときには有益費に関する事項を規定する、そして、その償還額について当事者間で争いになって協議が調わないときは市町村または農業委員会がその処理に当たるということを定めるように指導する方向で考えております。そのような基準というか考え方をきちんと示して、有益費の問題は適切に処理できるようにしてまいりたいと考えております。
  220. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 借地関係が、暗渠ならば暗渠の成果を十分にくみ尽くせるほどの期間が続くならば、あるいは続くことが保証されているとすれば、借地している人が必要資金をまるまる負担しても当然であろうと私は思うわけですが、自分が投資効果を十分に享受し切らないうちに返さなければならないような土地に投資することは、みすみす損をすることになるから、恐らく借りた方はしないと思うのです。また、せっかく七年はつくれるつもりで投資したのが三年で返さなければならないということになる場合も十分考えられると思うのです。そうなったときは、投資した者に損をさせない措置を考えておく必要があります。大臣もここのところはよくおわかりだと思うが、さらに検討してもらわぬと、これらが一番問題になってくるわけでございます。法律的には有益費をどう処理するか。利用増進法案の提案によって短期賃貸借がし得るようになるとすれば、その対策を急がなければ、法律だけ出しても、実際に中身が伴わない、また市町村においても農業委員会にしても大変苦労が伴うということになりかねない、こう思うので、私はあえてつけ加えて申し上げたわけです。  そこで、いま申し上げたようなことから紛争等が起きた場合、だれが調停に当たるかという問題です。すなわち、投資したものを農地を返すときに補償されぬと困るわけでございまして、本法提案に当たってこういったことも十分検討されておられると思いますが、必ずしも紛争がないとは言えません。ないことを期待しますけれども、起きた場合にはどうするか。たとえば、農地を三年借りて返すときに、いろいろ問題があった場合に、トラブルがあった場合にどういうふうに対処する考えであるか、その点、簡潔に政府の考えを明らかにしてください。
  221. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 投資の負担の問題についてトラブルが生ずることは十分あり得ることでございます。そのほかについてもトラブルの問題は、たとえば借料だとか期間の問題だとかについてはっきり決めておりながらもなおかつあり得るわけでございます。こういう問題については、当然、計画をつくる市町村、それから問題によっては農業委員会等、こういった公的機関がその調停に当たるということで考えております。
  222. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま、本法の中で特に重要な問題を指摘し、農用地流動化を図るためにこういった問題が解決されなければ流動化はなかなかできないということを中心に申し上げたわけでございます。四月九日の初日の質問の際も、総論として一時間余にわたって私は申し上げましたが、どう考えてもこれが大変大きな問題になってまいりますので、ここで詰めたってこれ以上の答えがなかなか出てきませんが、本法審議最後の段階までにいろいろまた各党相寄り相談をしながら、どういうふうに扱うかということで十分検討してまいります。この問題については、こういったことが十分確立されないと農地流動化は進まないということを、私は政府に厳しく申し上げておくわけであります。  次にお伺いするのは、残存小作地の問題が大変問題であります。これはわが党の武田委員からもまたいろいろ質問がございますので、私詳しくは申しませんが、残存小作地は戦後四十八万ヘクタールとも言われておりましたが、現在では一説には二十万ヘクタールとも言われますけれども、大体十五、六万ヘクタールであろうということが言われておりますが、その点間違いございませんか。政府はどのように推定しておられますか、お答えください。
  223. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 昭和四十五年の農地法改正以前の統制小作料の適用のある小作地の面積は、全国農業会議所の調査によりますと、全国二千五百十二農業委員会の回答結果では十六万五千ヘクタールということになっております。
  224. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 端的に伺いますが、この残存小作地が今度の農用地流動化に対して大変ネックになってくる、また、この残存小作地の問題が例となって、今後農民の土地に対する考えがなかなか進まないということが言えるわけでございまして、私は、この残存小作地については、本法提案に当たって、一度新しい契約に切りかえて決着をすべきだ、こういうふうに思っています。そうしなければ、今後の農地流動化は、大変これが阻害要因になる、かように思うのですが、農林水産大臣、どうお考えですか。
  225. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 ちょっと実態の問題を含んでおりますので私からお答えさしていただきます。  最近の農地賃貸借の状況を見ますと、先ほど来申し上げておるところでございますが、労働力不足等でかなり自分の持っている農地を貸してもいいという農家が出てきております。特に、農用地利用増進事業推進等によって、貸し手借り手が安心して賃貸借できるというような条件も一般的にも出てきていると思うわけでございます。  それから、農地改革残存小作地につきましては、農地法の耕作権保護のもとでその権利が強く保護されてきたという経緯がございます。そういうことから、貸せば返してもらえないという意識を農家が持つようになったということも事実ではございますが、すでにこの残存小作地も相当程度減少してきております。先ほど十六万五千ヘクタールということを申し上げたわけでございますが、そのうち、農地改革残存小作地は、回答のあったその農業委員会の分で拾いますと、六万七千ヘクタールというようなことになっております。  それから、最近の農地流動化の条件整備のもとで、残存小作地を解消しなければ農地流動化が進まないといったほどの事態はないというふうに私ども思っておるわけでございます。ただ、しかし、残存小作地を解消するということはそれ自体は当然必要なことでございます。  それからなお、統制小作料の経過措置がこの十月で撤廃されるわけでございますが、そのことと関連いたしまして、統制小作地の借り主が当該小作地を取得しようとする場合には、農地等取得資金につきまして貸付限度額の引き上げを講じて、そして借り手がこの農地を取得しやすいようにするというような措置をとっているところでございます。これは一般の場合は二百万円ということでございますが、いま申し上げました条件の場合は七百万円までの特例を認めるということに措置いたしているところでございます。
  226. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林水産大臣、ただいま局長答弁をお聞きになっておったと思うが、局長は残存小作地については本法の流動化には余り支障がないと言われますけれども、とんでもない話でございまして、農林水産大臣もしっかり勉強しておられると思うからあえて聞きますが、戦前からの土地を見直す、そして今回本法提案に当たって残存小作地をきちっとしなければいかぬ、そういった意味で、一遍新しい契約に切りかえる、そして決着をつけるというような腹構えでいかなければ、これは相当全国的に、土地はあと十六万五千ヘクタールと言うけれども、これが今後の流動化に大変な支障となり各地で問題になる、私はかように思えてしようがありません。また、現地を回ってもそう思うのであります。その点、大臣はどのようにお考えでありますか、明快に御答弁いただきたい。
  227. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 実は私も残存小作地を持っておる一人でございましてあれでございますが、地方はいろいろありますのでわかりませんが、私の地方でいま農用地利用増進事業もやっておりますけれども、これはどうも先生の御意見と違うのですが、私は必ずしもそれが弊害になっておるとは実は思っていないのでございます。だから、私はいままでは弊害になると思っていなかったものでございますから、この問題については余り意にとめていなかったのでございますけれども、せっかくの御指摘でございますので、一遍検討はさせていただきます。
  228. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣のようにゆとりがあれば意にとめないかもしれないけれども、全国ではそういうことではないわけであります。きょうは傍聴人もたくさんおられますが、そんなのんきなことを言っておったのではなかなか流動化は進みません。言うことと腹の中は違うような答弁で、私もどうも納得できないのですけれども、あと若干問題がございますので、十分検討して、慎重に対処してもらわなければならぬ、かように思います。  そこで、所有権移転の対価の算定基準等の問題でございますけれども、借り賃についていかなる算定基準が用いられるかということを若干承っておきたいと思います。  物納等の場合、算定基準や支払い方法等について政府はどういう指導方針で臨まれるのか、政府は何ら用意がないようにどうも感ずるのですけれども、その点さらにひとつ明快にお答えをいただきたいと思う。
  229. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 借り賃につきましては、農業委員会がその区域内の農地に定めておりますところの小作料の標準額、いわゆる標準小作料を基準といたしまして、当該農地生産条件等を勘案して定められることとなるものと考えております。物納の場合は借り賃の基準額を適正な価格で換算して得られる一定量のものを基準といたしまして小作料を定め、そして持参払い等により支払うことになるというふうに考えております。
  230. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 要するに、土地の場合は近傍類似の価格で決めるということですか。
  231. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 所有権移転の対価につきましては、農業上の利用を目的とする近傍類似の土地の売買価格から比較いたしまして、適正な地価を基準として、当該土地生産力等を勘案して定められるということになるものと考えております。
  232. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この点もいろいろ問題もあるし異論もあるわけですけれども、これも最終段階で検討させていただくということで、何か工夫がないものかと思っているわけですが、一応承っておきます。  さらに、農用地利用改善事業についてお伺いしておきますが、政府はいかなる指導方針でこれに臨まれるのか、その点、簡潔にお答えください。
  233. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農用地利用改善事業は、集落等一定区域内の農用地に関して権利を有する者が組織する団体が、農用地利用規程の定めるところに従いまして、作付地の集団化と農作物の栽培の改善や共同農作業の受委託等、農作業の効率化を図る、それからこれらの措置を実施するために必要となる利用権の設定等、農用地の利用関係の改善を一体的に進めるということを図るものでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕  最近、農村社会が混住化等によりまして、農村の共同意識にも、地域による差はありますものの影響はかなり見られるわけでございます。こういった事態に対応して、地域農業者の自主的な意向に基づく話し合いということをもとに、地域農業振興についての総合推進方策の策定等を推進する地域農政特別対策事業、これはすでに五十二年から実施してまいっている政府の事業でございますが、これに基づいて地域農業振興施策も各県で行われております。これらを通じて、連帯意識の醸成、地域ぐるみによる農業振興への取り組みを喚起してまいりたいというふうに考えております。  それから、五十三年から実施している新農業構造改善事業におきましても、その実施地区では作付栽培協定が次第に定着しつつあります。これもさらに集落ぐるみの営農改善の取り組みを自主的に推進しているという好ましい事例も見受けられるわけでございます。  こういう状況を踏まえまして、さらに五十五年から拡充される地域農政特別対策事業、これによりまして自主的な農業者の話し合いだとか、土地利用についての合意づくりの促進を図ってまいりたいというふうに考えております。同時に、これらを公的な機関の立場から指導する市町村農協農業委員会、各般の組織についても指導を強化して、体制づくりに努めてまいりたいと考えております。
  234. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それで、いま答弁が若干ありましたけれども、団体の組織とか運営等に対して市町村農業委員会農業協同組合その他の農業関係団体はどういうようなかかわり合いを持つかというようなことと、この団体の構成員が農用地利用規程に基づき各種事業を実施するに当たっては、国の施策として何らかメリットを与えないのかどうか。その点、簡潔にひとつ要点をお答えください。
  235. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 地域の合意づくりにつきましては、市町村中心になって計画をつくる、それからまた事業推進に当たるわけでございますが、その場合、当然農業委員会あるいは農業協同組合の意見も聞くし、協力を得ながら進めていくということになるわけでございます。農業委員会におきましても、さらにはこれはやや性格を異にするわけではございますが、農業協同組合におきましても、最近の地域農政といいますか、そういう土地有効利用を含めた合意形成には積極的に意欲も示し、またそのための体制の整備等も図ってまいってきているところでございます。こういう公的機関がそれぞれ相協力して地域の合意がそれなりに形成されていくというふうに考えております。
  236. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、本事業推進に対しての助成措置でございますけれども、どのような助成措置、優遇措置を講ずるかということと、本事業に関して税制の取り扱いが、本法提案によると五十六年にやるというようになっておりますが、どんな改正をするのか。改正をして、本事業に乗っていったときは譲渡所得税の減免を講ずるなど、税制改正、こういったことまでやるのか。その点、簡潔にお答えください。
  237. 杉山克己

    杉山(克)政府委員 農用地利用増進事業に対する助成措置、これにつきましては、五十二年度から地域農政特別対策事業を実施しておりますが、その中で、予算なり行政指導ということで、市町村農業委員会農協等関係機関が一体となった推進体制整備を図ることにいたしております。あるいは集落を単位とした農業者の自主的な意向に基づく話し合い活動、こういうものの促進を図るというようなことをいたしております。  さらには、最近におきまして、いわゆる掘り起こし活動、推進員によりますところの農用地利用権等の出し手と受け手の掘り起こしを促進する、これらの事業についての経費について予算措置を講じているということはあるわけであります。  それから、農用地有効利用等、地域の総合的な農業生産力の増進を図るため、集落等の集団活動に対しましても助成措置を新たに講ずることといたしております。そのほか、これらの事業関連して、都道府県農業会議、全国農業会議所等に対しましては、別途その農用地利用増進事業の普及啓蒙活動に対する助成措置も講ずることにしておるわけでございます。  以上が直接的ないわばソフト事業中心にした調整措置でございますが、そのほか、こういう地域農政特別対策事業のほかに、農業基盤整備事業だとか、新農業構造改善事業等の補助事業につきましても、流動化に積極的に取り組んでいる地域につきましては、優先採択、優先配分ということで、その優遇といいますか、奨励措置を考えておるところでございます。  それから税制の問題でございますが、税目についてはいろいろ検討した問題がございます。一つ一つの税目について具体的なまだ検討が終わってはおりませんが、この法律の、現在案でございますけれども、成立を待ちまして、私ども財政当局、税務当局と協議をしてまいりたいと考えております。事は財政の基本にもかかわる問題でございまして、大変むずかしゅうございますが、やはりこの農用地利用増進事業はきわめて大事な事業でございますので、この推進に資するように税制上でもできるだけの措置が図られるように努力してまいりたいと考えております。
  238. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案についてお伺いします。  端的にお伺いしますが、農業委員会制度改善については、今回一歩、二歩も前進である、かように考えております。ある意味では農地三法でなくて農業委員会三法とも言うべき法律ではないか、こういうように受けとめ、農業委員会に対しては相当今後身を引き締めて、また機構その他を整備して、本腰を据えてやってもらわなければならぬ、かように思っておるわけであります。  明日、農業会議所の池田専務を初め中央会等各団体の代表を参考人として呼んで、その席でいろいろ私も質問をし見解を求めるわけでございますが、時間の関係で端的にお伺いしてまいりますけれども、今回の農業委員会制度改善について、構造政策の中における農業委員会の果たす役割りとその位置づけということ、従来必ずしも明確でなかったのですけれども、本法提案に当たってどういうように位置づけをしておられるか。その点、簡潔にお答えをいただきたい。
  239. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回の農業委員会制度改善に関連いたしまして、特に構造政策の中における農業委員会位置づけはかなり前進をし明確にいたしたつもりでございまして、特に、農地法制整備に伴いまして、農用地利用増進法案におきましては、その第五条、第八条におきまして、農業委員会農地流動化に果たす政策的な重要な役割り、これが位置づけられたというふうに考えておりますし、また、農地法改正法案におきましても、農地等の権利関係の調整につきましての権限及び責任が強化されるというような、非常に重要な役割りが新たに農業委員会に付されたというふうに考えているわけでございます。かような重要な役割りにかんがみまして、今後、農業委員会の業務の執行につきまして、特にその職務に対する自覚と責任を高めまして、その業務が適正に行われるようにしてまいらなければならぬと考える次第でございます。
  240. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう端的に申し上げますが、今回の提案によると、農業委員会の定員を四十名から三十名ないし十名ということになりますが、きょうも朝から質疑がるるありましたように、確かに市町村の広域にわたる合併のところなんかは大変無理をするわけです。これをこういうふうに定めたということは今後いろいろ問題があるわけで、この点も、本法の最後の審議に当たっては、どういう扱いをするかということで修正を含めて十分検討しなければならぬと思う。市の場合は従来どおり、町村の場合はどうだとか、分けるかどうか、十分に考えなければいかぬ。ということは、私はもう端的に申し上げますが、今回の本法提案によれば農業委員会は機構縮小である、こういう声があることも事実でございます。もちろん中身をしっかりしてもらわなければいかぬ、内容を充実してもらいたいということも当然でありますが、一概にそうばかりも言えない。広域にわたるところの市町村では大変な問題も起きてくるわけでございまして、これは機構縮小じゃないか、またある意味では行政改革ではないか。いわばマイナスの方向に向かっている、こういうように批判があるわけですけれども、この点については、当局はどういうように説明されるのですか。
  241. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 確かに、今回農業委員会の選挙による委員の定数の上限を四十人から三十人に引き下げた御提案を申し上げている次第でありますけれども、これは、今回農業委員会の業務といたしまして大変重要な構造政策推進という業務を遂行するわけでございます。その際に、やはり農業委員会としては、いわば総会、全員が集まっていただいておやりになる、そのような会議体において総合的な機能を発揮していただくということが必要であるというふうに考えておりまして、この場合に効率的なまた機動的な運用をしていただくということのためには、定数の上限を十人程度引き下げて、そこで効果的な運用をしていただくことが適当だというふうに考えたわけでございます。また、このようなことをいたしましても、農用地権利調整等に係る業務につきましては、きちんと農地部会という制度がございますので、これによりまして、この機能が発揮できないというようなことはないと考えておるわけでございます。  この点につきましては、実は午前中にも大臣から御答弁いただきましたように、農業委員会の適確な運営ということのためには、確かに農業委員会委員の数ということがございますけれども、それ以上に重要なことは、やはり識見が非常に豊かな、また経験も豊かな方が農業委員に選ばれてこられまして、農業委員会委員の質と申しますか、その人そのものが充実されていくということが必要ではないかという観点に立っているわけでございまして、さような面で、このような改正というものが決して農業委員会の後退につながるというふうには考えておらないわけでございます。  さらに、先生御指摘の、特に広域の町村についてはどうするかということでございますけれども、この点につきましては、広域な市町村におきましては、特に地域地域との連絡を密にいたしますために、地区の連絡をやっていただくような委員の方を具体的にまた御選定していただけるようなところも十分あるわけでございまして、このような地区の連絡員といったような方々を活用することによりまして、その意向というものを十分にくみ取ることができるというふうに考えている次第でございます。
  242. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点は、集落段階との組織的な結びつきのことだと思いますが、現在農業委員は全国で六万七千人くらいおられます。全国十四万部落がございますので、いまの計算でいきますと二部落に一人というようになりますか、いずれにしても農業委員会協力員というものをつくってサブ的に設置するということになるのか、また一部落にそういったことで一人ぐらいは置くというふうに考えるか、そのためには予算が必要になってきますけれども、その点も十分考えて、いま私が言ったような理解で進めるということで理解していいのですか、簡潔にお答えください。
  243. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 ただいまのような各地区地区との連携というものは、今後は非常に強化してまいらなければなりませんし、現実にもまたそういう制度がすでにございまして、その方々をコンサルタント事業というような形で、予算もつけておるわけでございます。かような予算の拡充につきましては今後とも十分に検討してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  244. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、市町村行政の中における農業委員会位置づけということについていま伺ってきましたが、私はさらにお伺いしますけれども、本法においてはいまから申し上げることが一番重要なかなめになるのではないか、私はかように考えております。そういう認識のもとにお尋ねするのですけれども農業委員会市町村長との関係をどう調整していくかという問題であります。二元行政になってはこれはいけないわけです。そこで、農業委員会の構成、委員の選出方法等はいろいろ論議をしてきたのですが、所掌事務、どのくらいの権限を持たせるか、こういったことについて、これらの関連市町村との、いわゆる地方行政制度との調整をどうするか、この辺が一番今後問題になる、この辺を明確にせなければならぬ、こう思いますけれども、この点についてもひとつ明確に見解を承っておきます。
  245. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 農業委員会は、農民の代表機関といたしまして、農地等の権利関係につきまして自主的な調整を行うということによりまして、農民の声を直接かつ的確に反映するという制度でございます。そしてまた、今回構造政策の実施に当たりましても重要な役割りを担うわけでございます。一方、市町村の部局につきましても、これは農業振興ということのための施策も展開をしていくわけでございまして、これはどちらがどうということではなくて、両者がお互いに農業者の利益を図っていくということで、両々相まって制度の運営に当たっていくということが必要であると思います。  端的に申し上げまして、今回の農用地利用増進法の中をごらんになっていただきましても、第五条の規定で、「第三条第六項の承認を受けた市町村は、農林水産省令で定めるところにより、農業委員会の決定を経て、農用地利用増進計画を定めなければならない。」ということを規定しているわけでございまして、まさに市町村の権限とそれから農業委員会の権限とをうまくここでかみ合わせているわけでございまして、さような点に御注目をいただきたいというふうに考える次第でございます。
  246. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この点も、法案の最終段階でいろいろ各党相談の上で検討してまいりたいと思います。  一応承っておくことにしまして、さらにお伺いしますが、農業委員会制度の改善については、全国農業会議所を初めとする農業委員会関係者から数多くの要望があったことを承知しております。本日は時間があれば、これも一々本法の提案に乗れなかった分について今後どうするかということで私は政府の見解をただしておきたい。そして、せっかく農業委員会が今後足腰を強く腹を据えてやるならば、十分そういった財政的裏づけとかいろいろなこともせなければならぬ、かように思っておったのですが、時間の制約の関係で、その中で若干お尋ねしておきますけれども農業委員会が要望した中で今回法改正に至らなかった中で、業務執行体制の整備を図る問題がございます。すなわち、農業委員会が公選制による農業者の代表として農業委員中心に業務を積極的にかつ機動的に担い得るよう、事務局の設置と執行体制の整備というようなことでいろいろ要望があったわけでありますが、御承知のように、ざっくばらんに申しますと、事務局長をつくるのはよいけれども、要するに職員を置いてくれということで、ここは経費がかかってくるわけですね。各農業委員会には法二十条で必ず農地主事を置くことになっているわけですね。これを飛び越えて事務局長を置けという問題、これはちょっとどうかなという懸念がするわけでございます。農地主事は大変な権限を持っているわけです。たとえば農林水産大臣にまでいろいろと意見を言い、文句を言うこともできる。また、知事にも意見を言うことが当然できるという大変な権限を持っております。そこで、順序として、この農地主事をまず置いて、そして事務局長を置く、こういうふうなことが順序である。ところがほとんど置いてない。全国でもどのくらい置いているか私はその数を知りませんけれども、恐らく役場職員が兼務でやっている実情で、実際に力が入らないという実態であるということを認識しておりますが、全国でこの農地主事は何名おるか、そして私がいま言ったようなことに対してどう考えておるか、お答えください。
  247. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 確かに、農業委員会の系統の組織から事務局の設置につきまして御要望があったことは事実でございます。また、私ども自身といたしましても、今後の構造政策に積極的に取り組む際に、農業委員会における事務執行体制の整備ということが必要であるということは当然のことであると考えておるわけでございます。ただ、事務局の設置ということになりますと、法律でこれを定めるという場合にはやはりそれなりの理由がなくてはならないわけでございまして、いままでいろいろな行政委員会というものが市町村段階にあるわけでございますが、それはそれなりの業務量を持っておりますし、また職員の数もかなり多いというところが、このような事務局の法定設置ということをやっておるわけでございまして、これらの横並びから見ましても、現在の段階では、農業委員会というものは必ずしも法定で事務局を設置するという体制までには至っていないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  また、お尋ねの農地主事でございますが、農地主事は現在全国で二千百四十八人おります。ただ、農業委員会の数が三千三百でございますし、また一委員会に二人以上置いている委員会もあるというふうに聞いておりますので、かなりの数の委員会がいまだ農地主事を置いていないということははなはだ遺憾であるというふうに考えまして、今後ともこれはぜひ置いていただきたいというふうに考えておるわけでございますが、ただ、これを事務局長にするということにつきましては、本来農地主事の任務ということから考えましても、必ずしも適当ではないというふうに考えるわけでございます。
  248. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま答弁ございましたが、二千百四十八名の農地主事がおるとおっしゃるけれども、役場職員がほとんど兼務している、そういう実情じゃないか。そうすると力が入らない。専門にやっている人というのはそんなにいるわけがありません。そこで、私はまず、事務局長を置くことも当然やらなければならぬけれども、その前にこの農地主事というものを置くのが順序である、このことを申し上げたいわけであります。そして、農地主事を置いたならば、その農地主事を将来は局長に据える、こういうふうにして、今後大いに農地主事を置いて活用していくということが大事ではないか。そのためには予算的裏づけが必要である。それは十分政府はまた見てやらなければならぬと思うのですが、その点の認識はどうですか。
  249. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 確かに先生おっしゃいますように、農地主事が全国にまだ満足な状態で置かれていないということは問題でございまして、この点については、今回の制度改正機会にぜひ置いていただくように強力に指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  250. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この点については農業会議所からも相当強い要請が去年からなされたわけですけれども、本法提案に当たって政府当局もついに法改正にならなかった。いわば農林省もこの点はとにかく勘弁してくれ、こういうふうなことで、まさに今後にゆだねられたいきさつがあるわけです。こういった問題、いっぱいやりたいわけですけれども、時間があと三分になってまいりましたので、残念ですけれども留保し、また後日改めて質問することにいたしたいと思いますが、農林水産大臣、こういった点は問題でございますので、十分検討して、予算措置をしながら補完的にやりつつ、早い機会農地主事をつくり、そして整備をし、そしてその次に局長をつくっていく、こういうふうなことで重大な分かれ目になっていますので、今後対策を講じてもらうようにぜひともお願いしたいわけでございます。その点を特に農林水産大臣に申し上げておきます。  なお、最後的に申し上げますけれども、今回、農業会議においては部会制を廃止して、これにかえて常任会議員制を置かれました。私はこれに対してもいろいろお伺いしたいのですけれども、端的に申しますと、従来の部会制と常任会議員制との間には性格に大きな変化が生ずることもございます。私は十分な検討をして出されたと思うけれども、これは大きな性格変更であるという認識に立っておりますけれども、その点はどうかということと、もう一点は、最後にお伺いしておきますが、今回の農業委員会の業務組織整備に即応し、農業委員会等についての今後の運営には相当な財政的裏づけがなくてはなりませんが、財政的裏づけについて整備充実を図ってもらいたい。特に、国としてはこの点どう考えているか。すなわち、農業会議委員会的法人であることからきわめて財政基盤が弱いことは従来から指摘してきたことでありますので、制度的な解決が望まれるわけでございます。  その点をあわせお伺いしまして、私の質問を一応終わり、留保すべき問題は次回にまた譲るということで、いまの二点について答弁を求めます。
  251. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 都道府県農業会議におきまして、部会制にかえまして常任会議員制を設けたわけでございますが、これは、現在一会議当たりの会員の数が平均八六・四人という非常に大ぜいの方がおられることになっておりますので、そこで、この円滑な機能というものを確保するために何らかの部会制的なものが必要であるわけでございます。ところが、従来ございますのは農地に関する部会でございまして、これは農地法関連することのみを担当いたすわけでございますが、今後の構造政策の総合的な展開ということを考えますると、やはりこの問題につきまして総合的なかつ一元的な処理をする機関というものが必要であるということから、常任会議員制というものを設けたいというふうに考えたわけでございます。  それから、第二点の財政の問題でございますが、確かに農業委員会及び都道府県農業会議につきましては、従来からその財政の充実ということが言われてまいっておりまして、現実に法定で義務的に負担している部分は、農地関連する特に重要な事務についての委員の手当あるいは職員の手当というもの、これが財政で義務的に組まれておるわけでございまして、その経費は全額で百五十億に上っておるわけでございます。このほかにも、先ほど構造改善局長から御答弁申し上げましたように、やはりその事業事業に着目いたしまして、各局で関連の経費として二十億ぐらいが組まれておるわけでございますが、しかしながら、やはり今後ともこのような新しい農業委員会の使命ということから考えまして、その財政的な基盤を充実するということはもとよりのことであるというふうに考えるわけでございますが、一方におきまして、やはり農業委員会なり都道府県農業会議が本当にこれは必要な機関だ、この新しく課せられた事業を的確に遂行することによってやはりこういう機関が必要であるということが認識されるならば、その財政的な基盤というものもおのずから強くなっていくというふうに私は考える次第でございます。
  252. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 残余の問題は次回に譲りまして、時間が参りましたので、本日はこれにて質問を終わります。
  253. 内海英男

    内海委員長 次回は、明十七日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会