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1980-04-15 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十五日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 津川 武一君    理事 稲富 稜人君       小里 貞利君    菊池福治郎君       近藤 元次君    佐藤  隆君       菅波  茂君    高橋 辰夫君       玉沢徳一郎君    福島 譲二君       保利 耕輔君    堀之内久男君       山崎武三郎君    角屋堅次郎君       新村 源雄君    馬場  昇君       日野 市朗君    細谷 昭雄君       本郷 公威君    瀬野栄次郎君       武田 一夫君    中林 佳子君       神田  厚君    阿部 昭吾君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁次長   米澤 邦男君  委員外出席者         法務省民事局第         三課長     清水  湛君         外務省アジア局         北東アジア課長 股野 景親君         文部省体育局学         校給食課長   坂元 弘直君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 齊藤 乃夫君         海上保安庁警備         救難監     村田 光吉君         労働省労働基準         局労災管理課長 小田切博文君         自治省行政局行         政課長     中村 瑞夫君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 四月十五日  辞任         補欠選任   西田  司君     山崎武三郎君 同日  辞任         補欠選任   山崎武三郎君     西田  司君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農用地利用増進法案農地法の一部を改正する法律案及び農業委員会等に関する法律等の一部を改正する法律案の各案について、参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内海英男

    内海委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出席日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 内海英男

    内海委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 内海英男

    内海委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤元次君。
  6. 近藤元次

    近藤(元)委員 米の問題にかかわって質問をいたしたいのですが、その前に、古くて新しい問題というか、林道用地補償の問題を冒頭にやらせていただきたいと思います。  この問題は、もうかねてから、市町村道農道等用地補償補助対象になりながらも、いまもってまだ林道のみが補償対象にならないことで、林野庁の方でも大変御苦労され、またそれなりに大蔵当局との折衝に当たってこられたわけでありますが、本年調査費が三百万程度ついたと聞いているわけでございます。したがって、これについて今後一体どうなるのかということと、あわせて、なぜこれが補助対象にならないのか、一体どこに問題があるのかというのがわれわれにもわからないし、関係者にもなかなかわからないところでありますので、その辺のところを御答弁いただきたいと思います。
  7. 須藤徹男

    須藤政府委員 お答えいたします。  林道整備のための用地等補償につきましては、近年に至るまで、林道はもっぱら林業生産に使用することから、森林所有者用地等を提供し合いながら共同で開発利用するものである、その開設によります受益と、それから用地提供等によります損失が相償うという考え方もありまして、用地費については国庫補助対象としていなかったものでございます。  ところが、近年に至りまして、林道そのものが、林業以外の一般交通量の増加、あるいは地価の高騰、また他事業におきます用地等補償一般化等によりまして、林道用地等取得に伴います補償に対する要請が高まってきておるわけでございます。  そこで、林野庁といたしましては、昭和五十一年度から昭和五十三年度にわたりまして、学識経験者構成員といたします林道問題検討調査会を設けまして、検討事項の一環としてこの問題についても検討を進めた結果、今後林道整備に与える影響等を見きわめながら、公共性の高い路線については国庫補助を図る方向検討する必要があるという報告を受けたのでございます。そして、五十四年度には、この問題に限りまして林道用地問題検討会を設けまして、具体的な諸問題について検討いたしましたところ、宅地農地等森林外を通過する区間の林道用地等で直接的な損失となる土地等財産権にかかわる補償費につきまして、早急に国庫補助対象とすることが妥当である旨の中間報告を受けたのでございます。  そこで、昭和五十五年度に新たに予算化されました林道用地等補償調査におきまして、市町村が行っております具体的補償事例等調査を進めることにいたしておるのでございます。これらの調査結果等を踏まえまして、林道用地等取得に伴  います補償費国庫補助対象とすることについて、今後さらに一層その実現に向けて努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  8. 近藤元次

    近藤(元)委員 これは長官、その調査会とか学識経験者とかいう方々に相談するまでもなく、林地に入れば、なるほど前段長官から御答弁のあったような形にはなるわけですけれども、林道の大方が、宅地通り農地を通り、そして林道に接続をされている関係からいって、宅地農地にかかわりましては、これはもう補償対象になるのがごく当然の、今日の他事業関連でなかろうか、こう思うのです。したがって、努力をするとかしないとかいう時期はもうすでに過ぎ去ってしまい、林野、林道関係の団体の大会、会合があるたびに、長年にわたってこの問題は、大会決議もされ、スローガンにも掲げられてきた問題でございますし、一歩前進をした中で、まず関係者は、五十六年度予算にはきっとこれが具体化をするだろうということに期待をいたしておりますので、ぜひこの問題は五十六年度予算に反映をしていただくように強く御要望申し上げて、終わりたいと思います。  次には、農業の問題でございますが、まさに米の過剰の中で、もうああいうことを十年、いまもって需給バランスがとれないで、いろいろ新たな問題を提起をし、一方では農政不信を買いながら自給力の低下を来しておる今日の状況を踏まえて、国会においても、食糧自給力強化に関する決議に至ったわけでございます。八〇年代の幕あけと同時に、米ソの対立から、食糧が戦略の物資であるというさらに一層の認識を深めてきたところでもありますし、いまこそやはり確固たる食糧政策と、農民に対する説得力のある農政の展開をしていかなければならない時期だろうと思います。  農業というのは、言うまでもなく、桃栗三年柿八年といわれておるように、ネコの目の変わるような目まぐるしい農政であっては、とても農民がついていけないわけでありますし、また、不信を一層招くわけであります。私ども、選挙区の農家を回ってみても、まさに不信の念いっぱいで、そこの中で、大臣がいるとお話し申し上げたかったのですが、もう農政なんてだめなんだ、こういう言い方が出ている。何だと聞けば、田植えのときの農林大臣と稲を刈るときの農林大臣がかわるようなことでは、大臣の言うことまで信頼をすることができないなどというようなことが出てくるような今日の状況であります。武藤大臣、きわめていい大臣でございますし、若いし、行動力もあるし、アイデアマンであるし、そういう面では信頼をする農林大臣ができたわけでありますが、ぜひ大臣政務次官ともにひとつ長いこと腰を据えて、自分たちの出した政策が具体的に実効の上がるまで責任を果たすくらいの心構えで対処していただきたいという考え方にいま立っておるわけでもあります。しかし、大臣政務次官がとどまりたくても、これまた自分で決めるわけにいかないので、機会があったら総理にもひとつお話を申し上げたいと実は思っておるわけです。  ひとつ、米の需給問題から質問に入りたいと思うのですが、バランスをとるためには、一つ減反であり、一つ消費拡大という政策をとっておるわけですが、いまやまさに、昭和六十五年度時点では八十万ヘクタールに転作面積拡大していかなければならぬ、わが国水田面積の三分の一に拡大をするということになっておるわけであります。三分の一の転作面積は一体何を転作するのだろうかということがまだ明確になっていないわけであります。いまやられている転作も、果たしてこれが中長期にわたって定着をしていくのかどうかというところに大変な疑問を持ち、大豆やソバということでなしに、転作奨励金が植わっておるのではないかという感じさえする向きもなきにしもあらずというような地域もあると思う。農林水産省当局大変苦慮をしておるだろうし、また、一線で転作奨励する市町村なり県の段階でも大変御苦労をされておるわけでございます。  そこで、かねてからいろいろ論議もなされてまいりましたし、また実際に現場では、試験的というか実験的というか、わが国水田単作地帯におけるいまの農家経営実態からいっても、機械装備からいっても、えさ米というものが現に農家個個によって全国各地でやられておるわけであります。農林水産省奨励をしていないにもかかわらずあちこちでやられておるということは、私は見逃すわけにはいかないだろうと考えておるわけでありますし、またこれが、ほかの問題を除いては、作業上最も適しておるように実は考えておるわけであります。  農林水産省としては、この問題については一体どういう対処の仕方をしていく考えであるのか。これは価格の問題なり流通問題等農家自体で解決することのできない多くの問題があるにもかかわらず、なおえさ米というのがやられてきておる今日、農林水産省対処の仕方をまず基本的にお聞かせいただきたいと思います。
  9. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 近藤先生から御指摘ございましたように、これからの水田再編対策は相当な面積を必要とするわけでございますし、農家の方方、そして関係市町村先生方にいろいろ御苦労をおかけしたわけでございますし、考えてみますと、米が余っておりましても、千四百万トンの穀物アメリカ単独からでも日本輸入をしているわけでございます。そのうち四百万トンぐらいが食糧用の小麦とすれば、残りの一千万トンぐらいがえさ用穀物でございます。したがって、やはり水田再編対策一つの大きな方向としては、飼料国内生産というのが当然考えられなければなりませんし、その中で、しからばえさ米はどうだというお話が出るのは当然であると思うわけであります。  農林水産省といたしましても、この問題については真剣に取り組んでまいっておりますが、いろいろなメリットデメリットがございます。メリットといたしましては、えさ米を作付けることによって水田生産力維持、保全することができますし、また、長年蓄積されました水田稲作技術を活用できる。さらに湿田のような水はけの悪いところでも栽培が可能である。こういったようなメリットがございます反面、片方では、価格との関連で考えてまいりますと、やはり何といっても、主食用と比較いたしますと当然収益性が現段階で非常に低い、こういうことでございます。また、したがいまして、多収穫といいますか、非常に生産性の高い品種開発して生産コストを引き下げていく努力がこれまた相当強く要請される面がございますし、また、えさ米といいましても、主食用の米と区別がなかなかつかないということで、横流れ等のことが起こって流通体制を乱す、こういった問題もあるようであります。  したがいまして、いま農林水産省も、非常に慎重にこの問題についてはいろいろなメリットデメリット検討し、デメリットについては一つ一つ解決するために努力をしておるわけでございますが、そういう問題をある程度解決してまいる段階で、えさ米転作作物として認めてこれを推奨するということについてはまだ踏み切れないという現状でございます。  ただ、欧米諸国現状を見ましても、いわゆる人間が食べる穀物といわば飼料用穀物というものが必ずしも画然とされてなくて、高品質のものは当然人間が食べて、低品質のものはえさに回している、その中間的な領域がありまして、全体の作物が不作のときにはある程度人間が食べる分がふえてきて、逆によけいできたときは当然えさに回すものがふえてくる、こういうことで、中間的な領域があって、これがある程度需給調整を行っているというような面が現実にございますし、それも一つのこれからのあり方かなという点もございますので、実は、御案内のように、現在農政審議会でいろいろ日本農業長期ビジョンについて御検討をお願いしているわけでありますが、その中でも積極的に御検討いただいて、いま先生指摘のような点を十分踏まえながら前進をしてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  10. 近藤元次

    近藤(元)委員 幾つか問題が、いま政務次官から御答弁のあったとおり、あるわけでございますが、いま米は一キロ三百円、輸入飼料は変動がありますからわかりませんが、おおむね四十円ということでありますから、かなりの価格的な開きがあるわけでございます。しかしながら、一方では転作奨励金というような形で出されている。資料で五十三年度に比較をしてみると、合計大体二千六百億ぐらい使って二百万トンぐらい米をつくらなかったのではないだろうか。つくらなかったのだから、どの程度できるのかできないのかわからないのですが、平年作で言えば二百万トンぐらいの米を減らすのに二千六百億使っておるわけですから、ざっと計算して百三十円ということになろうかと思います。したがって、この格差を縮めていくには、これはやはり財政負担を見逃すわけにはいかないから、この問題を解決する、いわば主食用の米との価格差というものを縮めていくという問題が一つは前面に障害になるわけでありますが、これは海外飼料の値上がりがあれば縮まっていく。また、輸入する飼料税金をかけて高くすればいいのですけれども、これは自由化品目ですから税金をかけるわけにはいかぬし、またかけることができたとしても、これはまた高い畜産物になり、消費者には喜ばれないことになるわけでありますから、結果的にはやはり増収体制試験研究をしていく。日本試験研究は、どちらかと言えば品質優秀で良質米であり、うまい米をつくることに長年努力をしてきたわけですから、多収穫品種技術屋が頭の切りかえができるかどうかということ、これはしてもらわなければならない、こういうふうに思うのです。したがって、これは、専門家の人に一部聞いてみると、これの増収体制を整えるには技術屋段階で十年から十三年かかる、こう言われておる。したがって、日本国内試験研究をすればそういうことになろうかと思いますけれども、ひとつ、夏は日本試験研究をしたら、冬になったらオーストラリアかどこか暖かい地方で試験研究をすることによって、五年ぐらいの間に試験研究の完成が、やはり増収体制というものが品種の改良からその他でできるのではないだろうか。しかも、韓国等ではかなり近年目覚しい増収研究がなされて、その中にも日本の二、三の人たち韓国増収の中で研究をされてきておるという経験を生かせば、私はもっと、十年とは言わず五、六年で増収体制というのができていくのでないだろうかという気がするわけであります。その辺もひとつぜひ研究をしていただきたいと思います。  もう一つは、主食用の米に流れはしないかという心配があるだろうと思います。当然心配しなければならぬことだと思いますが、仮に主食用に回らなくても、外食産業なり工業製品に回ってくればまた同じことになるわけでありますから、この辺は、本格的に政府が取り組むとすれば、えさ米用食管なり、いまの食管制度に組み入れるという大胆な発想をしない限り、このえさ米というのはどうしても転作奨励には到達をしないだろうと思うのです。相手は、価格の問題は輸入飼料との関係があり、そしてこれから十年の中に畜産は倍にしようと言われておる。倍にすれば四百万トンの飼料が要るわけでありますから、いまの輸入しておる量をたとえば国内産に振りかえるということは、まず国際事情からいって不可能ですけれども、これから必要な部分については国内産で補うという観点に立って、あと残る問題は、やはり流通価格の問題でありますから、私はこの問題は、えさ米食管なり、いまの食管に組み入れても、財政上の負担は、増収技術開発さえできさえすれば、いまの負担よりは必ず軽くなるというふうに判断をいたして提言をいたしておるわけでありますけれども、これから残された問題が大変数多くある中で、いま政務次官からの御答弁をいただくにしては少し問題が多岐にわたり、ここで答弁を求めにくいところでありますが、一連の流れの中で、政府側からのこれに取り組む姿勢について、そういういま私が提起をした問題を踏まえて、基本的な考え方お尋ねをいたしたいと思うわけであります。
  11. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先ほどもお話をいたしましたように、水田再編対策を今後相当進めていかなければならない。その中で、片方では飼料を相当大幅にこれから輸入していかなければならない。いわゆる将来の日本自給率を上げるという問題につきましても、たとえば畜産物豚肉や牛肉や牛乳にしてみても、八割とか九割とか、そういう議論が出ておりますけれども、しかし、考えてみますと、そのえさがほとんど海外から依存しておるということになると、たとえば豚肉や鶏肉が自給率が九割を超えるといっても、よく考えてみますと、えさが全部海外依存であれば、これは何の自給率向上かというような議論だって当然出てくるわけであります。  そういう状況でございますから、やはり全体の自給率を上げる観点の中でも、穀物、特にえさ自給率については、できるだけ努力して上げていかなければならない。幸い日本には水田があって稲作技術が非常に進んでおりますから、この高度に進んだ稲作技術をもって、さらに多収穫な米をつくって、それをえさに供給する、そういうことによってえさ自給率を高めていく、これは当然の方向であると私ども考えておるわけであります。  ただ、この点につきまして、先生御自身からもいろいろ御指摘がございました多くの問題がございますから、これは一つ一つ解決をしていかなければならない、こういうことでございますので、若干時間はかかると思いますが、しかし、各方面からのいろいろなお話を承りながら、先ほど申し上げました農政審議会意見なんかも尊重しながら、何とかこの問題についてはひとつ前向きに取り組んでまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  12. 近藤元次

    近藤(元)委員 この問題はぜひ、研究をしていただくということでありますからその御答弁で結構でございますが、少なくとも民間ベースに立ちおくれないように、ひとつ積極的に取り組んでいただきたいと思います。  もう一つ転作よりも減反立場から、いま農振地域なり市街化区域なりの通称われわれが線引きと言っているのがあるわけでありますが、私はこの線引きをもう一度この機会見直してみたらどうだろうかというふうに考えておるわけであります。特に、都市近郊町村に行きますと、あるいは都市に合併したところの旧町村に行きますと、線引きをぜひ見直してほしいということが、町村長からも農家の側からも言われておるわけであります。そこで、それはなぜかと言えば、やはり土地価格の問題と、あわせて地域発展市町村はいろいろ総合開発計画とかいろいろな計画の中に、農地を含んで、もうすでに農振地域を含んでの将来構想の計画がなされておるわけであります。したがって、今日の状況を見れば、厳しい中にも徐々になし崩し的に解除はされている面があるわけでありますけれども、私はこの機会に、いずれにしても、なし崩し的であろうと何であろうと、農地宅地化をしていく、市街化をしていくのであれば、この機会に思い切って、少し中期的な展望に立ってこの線引き見直して、そして市街化区域になるところの水田については転作を強力な指導をする、でき得れば稲作はさせないぐらいの指導をした方がいい。そして純然たる、水田しか利用価値がないというか、水田として将来ともに必要なところの減反面積というものを減らしてやるというような考え方というものができないのだろうか。これは農林水産省からは積極的にその問題を、優良農地を出しますよということはできないのですが、現実の歩みとしてはそういうことになってしまうのに、それを少し前倒しにしてやらせてやった方が、いま言われておる、純然たる農家であり、将来ともにそこを農用地として活用しなければならない土地条件のところの減反面積というのが幾らかでも軽くなっていくという、そういう考え方に立てないだろうかということに対して、お尋ねをしたいと思います。
  13. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 市街化区域に対します線引き見直しを行いまして、市街化区域内の転作を強化するというふうにやるべきではないかというお尋ねでございますが、まず線引き関係でございますけれども、これにつきましては、線引き制度趣旨を踏まえまして建設省と農林水産省が協議の上決めていくということにいたしておるわけでございます。その際に、総合的な食糧自給力維持向上を図るために必要な優良農地はできるだけ保全するという立場と、もう一つは、都市発展動向等を考慮いたしまして、計画的な市街化要請に対応する、こういう考え方の調和を図りまして線引きが行われておるわけであります。  そこで、ただいま転作促進観点といいますものもこれに付加して線引き見直しを行ってはどうかというお尋ねでございますが、やはりこの線引きといいますものは、ただいま申し上げましたような線引き制度趣旨を踏まえてやるべきではなかろうか、こう思っておるわけです。問題は、そういうことで線引きをされたものにつきまして、その実態を踏まえてどう転作という世界の面で考えていくかということになろうかと思います。  そこで、現在考えておりますのは、市街化区域内の水田というものについては、これは将来宅地化されるべき性格のものであるということから考えまして、目標面積を配分するときなどはやはり傾斜配分というものをやっております。当初三十九万一千ヘクタール配分いたしたときも、配分要素の中で一割のウエートを持ちまして、この市街化区域については傾斜配分をやるということをやっておるわけでございます。それから、そういうことで目標面積を配分したほかに、やはり転作を円滑に進めますためには、この市街化区域の特性を生かしたような転作の形態、レクリエーション農園などあるいは都市緑化なり緑地保全の作物転作作物として認めるというようなこと等も講じまして、極力この市街化区域内の転作促進を進めておるわけでございますし、今後ともそういう考え方でさらに転作強化を考えていきたいというふうに思っております。
  14. 近藤元次

    近藤(元)委員 余り積極的でないような答弁でありますが、現実は、私がお話し申し上げたとおりの形で、なし崩しで徐々に市街化がなされていくだろうと思いますし、また一面、農林水産省立場からすれば、いまの局長答弁でもやむを得ない面もなきにしもあらずという感じがするのです。建設省なり国土庁からそういう御提案がありましたら、積極的に応じて、かつその中で農林水産省としてやることは、いまも割り当て面積の一〇%を別に転作としてかぶせておるようでありますが、私はさらに強化をした方がよかろう、こういうふうに考えて、でき得れば市街化のところにはもう稲作はさせないぐらいの強い姿勢で指導していってほしいと思います。  それから、生産調整、減反の方はそれぐらいにして、消費拡大について一点だけ。学校米飯給食の問題が柱になっておるわけでありますが、現状は五十六年までに週二回の米飯給食をということで指導しておるようでありますが、いまの実態はどのような形で、計画どおりいっておるかという点についてお尋ねしたいと思います。
  15. 坂元弘直

    ○坂元説明員 先生からいまお話がございましたとおりに、五十六年度までに週二回の米飯給食を実施するということで、昭和五十一年度から米飯給食を導入したわけですが、昭和五十一年五月現在の実施率と昨年五月現在の実施率の間の増高傾向を見てみますと、一応私ども、米飯給食の実施率はある程度順調に伸びてきておるというふうに考えております。しかしながら、私どもが計画いたしました米の消費量から見ますと、五十一年度、五十二年度は計画よりも若干上回って消費されておりますが、五十三年度は計画の約八割、それから五十四年度も、最終集計は出ておりませんけれども、いまのところ大体八割程度しか米の消費量から見れば消化していないというふうに考えております。
  16. 近藤元次

    近藤(元)委員 もちろん日本の国民の主食は米であることはもう文部省も異論はないところだと思います。ちょっと時間がなくてあとの問題に入りにくいのでございますが、学校給食は週二回というような指導でなくて、もっと積極的に指導する。当初学校給食が始まったときは米がなくてパンにお世話になってきた、お世話になってきたパンに、今度は米があるからはいさようならというのはなかなかやりにくいという、大変義理人情の厚い考え方から若干気がねをしておるのだろうと思うのですが、米が余ってもう十年、日本の国民の主食は米だということになると、週二回が五十六年にもまだ計画どおりいくかいかないかわからないという状況であってはいけないんだと私は思うのです。そういう意味では、それなりの対策を考えないでなし崩し的にやろうというのが、時間的な経過をもたらしておるような気がいたすわけでございます。この点は、ひとつぜひ積極的にやってほしいと同時に、学校が出す米につきましては割引をしておるわけですが、弁当持参の子供はこの恩恵に浴さないという一つの矛盾点があって、じゃそれをどういうふうな形にするかというと、大変めんどうな点であろうと思います。この問題は、弁当持参のところに対しても割引なり何かの優遇措置があわせてなされるように、農林水産省としてもひとつ検討をしていただきたいということを要望申し上げておきます。答弁いただくとまた長くなって次の問題に移れませんので、御要望申し上げて、次の機会お尋ねをいたしたいと思います。  この問題は特に内容的に通告はしておりませんでしたが、きのうの新聞にも出ておりましたように、米の輸出の問題について、もういまやまさに日米間で自動車と同じような議論がなされて決着がついたように報道されておるわけであります。もちろんわが国は米の輸出国ではございません。ただ古米の処理をしようというような観点から輸出やむなきに至っておるという状況でありますが、片や、これにまた期待をしておる東南アジアの幾つかの国があるわけでございますし、その辺の関連と、日米間の関係、しかも、昨年よりも日本に過剰米がふえるにもかかわらず輸出が減になったというあたりの問題について、農林水産省としてどう考えておるのか、その辺の合意に達したところの経過についてお尋ねをいたしたいと思います。
  17. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 過剰米の輸出につきましては、アメリカ側におきまして、この輸出がいわば国際ルールに反する補助金つきの輸出であるというような指摘が強くなされておりまして、従来からもその問題を協議してまいったわけでございますが、今回十日から十二日までの間、アメリカ側からハサウェー農務省次官、わが方からは澤邊農林次官が出席いたしまして、双方で話し合いを続けました。その結果、わが方から次のような輸出目標を説明いたしまして、これを米側が了解するという形で協議が決着をした次第でございます。  この数量は、一九八〇年から八三年まで総量で百六十万トン、うち一九八〇年度は四十二万トンということでございます。それからまた、このうち米の国際需給上双方が特に関心を持つ地域、具体的にはインドネシア、韓国等でございますが、これらの市場につきましては総量六十四万トン、うち一九八〇年度が二十二万トンということでございます。したがいまして、その他の地域につきましては、総量九十六万トン、うち一九八〇年度分が二十万トンということでございます。  これらの全体の数字につきまして、今後毎年両国間におきまして、各年の輸出目標その他、世界の米需給事情等について協議を行うことにいたしました。これは一九八一年から八三年までの分でございます。それからまた、災害その他によりまして国際需給に特に著しい変動が生じた場合には、両国間において協議を行うということにいたしました。  この結果、アメリカの精米業者が提訴をしておりました通商法三百一条につきましては、今回のわが国とアメリカ側との協議が済みましたことによりまして、これについては実質上意味がなくなるという形になるものとわが方は期待をしておりますし、またアメリカ側としても、これについてそのような努力をするというふうな表明があった次第でございます。  このように決まりました結果につきましては、わが方といたしましての主張は十分したわけでございますが、やはりこれは、FAOの余剰農産物処理原則というものが、従来の米の国際市場に悪影響を及ぼさないようにという規定がございますので、わが方といたしましても、そのような伝統的な輸出国に対する影響ということも配慮いたしまして話し合いをつけた次第でございますが、現在までのところ、これによりまして今後のわが国の余剰農産物の処理に特に支障が出るというふうには考えておらない次第でございます。
  18. 近藤元次

    近藤(元)委員 時間ですので終わります。(拍手)
  19. 内海英男

    内海委員長 馬場昇君。
  20. 馬場昇

    ○馬場委員 私は、干拓の行政につきまして具体的な事例を挙げながら質問をいたしたいと思います。  熊本県芦北郡津奈木町というところがございますが、これは、南は水俣市に接し、北は私の出生地の芦北町に接しており、西の方の海は、例のチッソの水銀たれ流しによります世界の公害の原点と言われます水俣病が多発しております八代海でございます。その芦北郡津奈木町というところで公有水面を埋め立てて干拓したわけでございますが、今日、その津奈木町の町議会の人が七名で、町長と町長の有力な後援者であります元町会議員を不動産侵奪とその共同正犯容疑で告訴しておるというような事件がございます。この告訴は、昨年暮れの五十四年十二月六日に熊本地検の八代支部に告訴状が提出されておるわけでございます。大きい問題が起こっているわけです。しかし、私は、この告訴の問題は検察の方でお取り調べになるわけですので、ここでは触れません。  私がここで触れたいのは、この問題は告訴事件が起こる前に幾たびとなく実は津奈木町の町議会で取り上げられておるわけです。しかし、全然解決しなくて、今日の状態に立ち至ったわけでございますが、その間、国とか県とがこれを解決するための指導、助言というものも全然行われていないのです。そういう中で今日の状態を迎えておるわけでございます。  そこで、私は、きょうここで問題にし、質問したいのは、こういう事件の発生する原因といいますか、その背景といいますか、具体的にはっきり言うならば、ずさんな公有水面埋め立ての計画、さらにその干拓工事の管理の不備とかについてであります。この干拓地は、でき上がりましたら、数年を経て農地転用の許可申請書が出されまして、農林省が宅地に転用の許可をしておるわけです。農用地としては全然使われない、でき上がったらすぐ宅地転用をする、こういう農用地の干拓行政の見通しのなさ、こういう問題について、私は、国とか県とか町の干拓行政の姿勢をたださなければならぬ、こう思うのです。これをただして真相を明らかにし、その責任の所在を明らかにして、その反省の上に立って、今後国とか県とか町とかが行政姿勢を確立しなければ、この地域だけではなしに、私は、農民とか住民の行政に対する不信というのはなくならない、こういう立場から具体的に質問をしていきたいと思うのです。  まず第一にお聞きしたいのは、この熊本県芦北郡津奈木町大字岩城地先の県営干拓工事でございますが、これはいつ着工されて、いつ完工しましたか。これをまず答えていただきたい。
  21. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 公有水面埋立法に基づく埋め立て申請につきましては、昭和三十四年八月二十一日付で地元津奈木町長が、埋め立て工期を昭和三十四年十月から四十一年三月までということで、農地の造成を目的に、面積四十四・三ヘクタールを埋め立てるため熊本県知事に申請をいたしております。そして、昭和三十六年七月十二日付で免許を取得いたしております。その後昭和四十三年三月十五日干拓事業の工事のおくれによる工期の変更、これは四十五年三月までということの変更でございます。及び四十四年三月十八日に確定測量の結果による埋め立て面積、これは実測四十四・八ヘクタールということになっております。その変更の協議を行い、四十四年十月六日に認可を得たところでございます。そして四十四年十月二十日、町は県知事に竣工認可申請を提出して、県土木部の竣工検査が行われ、昭和四十五年十月十九日竣工認可を得ております。
  22. 馬場昇

    ○馬場委員 複雑な問題ですので、前後がまた非常にかかわってきますので、一遍にばっと言われますとなかなか記録もとれませんし、明らかにしにくいわけでありますので、私の質問した部分についてだけお答えをいただきたいと思うのです。  私が質問しましたのは、この工事は県営の干拓工事と私は聞いておりますが、いまの答弁では、町営みたいな答弁もあっておるわけでございますが、そのどちらかということを含めて、何年に着工して、何年に完工したか、このことだけです。
  23. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 県営津奈木干拓の工事着工は昭和三十三年で、完成は昭和四十一年でございます。
  24. 馬場昇

    ○馬場委員 いま県営というぐあいに申されたわけでございますが、この干拓工事の目的は何でございますか。
  25. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 わが国は、言うまでもなく海に囲まれておりまして、平地が非常に少ないという事情にあるわけでございます。わが国にとって優良な農用地を造成していく、そのために水面を干陸して広大な土地を造成していくということは、農業の経営の安定、さらには食糧の供給の安定ということの上にぜひとも必要なことであるわけでございます。同時に、そういう広大な土地では大規模な農業経営の創設ということが可能でございます。そういう経営の創設によりまして、当該地域農業構造改善の促進に資してまいりたい、こういうことが干拓事業の目的でございます。  県営津奈木干拓事業も、当然いま申し上げましたような目的のもとに行われておるわけでございまして、八代海の内湾であるところの津奈木湾におきまして、芦北郡津奈木町地先に、これが干がたとなって広い面積が広がっておりますので、これを干拓いたしまして、いま申し上げましたような目的を達成するということを考えたわけでございます。
  26. 馬場昇

    ○馬場委員 当然のことだと思うわけでございまして、優良な農用地を造成する、農業経営者の経営の安定、拡大をやろうということで計画されたわけでございますが、この干拓にはどのくらいの戸数を入植させて、そして経営規模をどういうぐあいにやりたいと、そういうのはどうなっていますか。
  27. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 面積は当初四十四・三ヘクタールの造成を予定したわけでございます。水田が主でございまして、農家四十戸をこれに入れるということで、おおむね一戸当たり一ヘクタール程度の増反ということに考えておったわけでございます。
  28. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで、順序から申し上げますと、公有水面の埋め立て申請が行われるわけでございますが、さっき、町長が県に申請をした、こういうことでございますが、申請年月日、その申請の内容を——公有水面埋め立ての方ですよ、内容はどうなっているのか、その公有水面埋め立て申請の内容を明らかにしていただきたい。
  29. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 先ほど私が干拓の事業とそれから埋め立て申請の事業を一括したような答弁を申し上げて失礼いたしましたが、埋め立て申請自体は、津奈木町長から昭和三十四年八月二十一日付で申請されております。−そのときの内容ということでございますが、農地の造成を目的といたしまして、面積四十四・三ヘクタールを埋め立てるということで申請がなされております。
  30. 馬場昇

    ○馬場委員 この申請書には、こういう地域の水面を埋め立てるんだという図面は添付されておりますか。
  31. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 埋め立て申請の際は、必要書類として、埋め立てを予定している、干拓を予定しておる図面が当然添付されております。
  32. 馬場昇

    ○馬場委員 私は金曜日に、非常に一地域の問題でございますし、県営事業でございますので、農林省の方に資料がないかもしれないということを考えまして、私が持っております資料の地図を差し上げております。  その地図に従いまして質問申し上げますけれども、別紙(二)という地図を差し上げておるわけですけれども、公有水面埋め立ての、言うならば海岸線、波打ち際というのは、私が差し上げました地図のX、Y、Z、hというような線になっておるのか、あるいはb、c、d、Y、そこになっておるのか、あるいは町道の男島線というのがございますが、その西の方になっておるのか、公有水面埋め立て申請が行われましたときの海岸線、波打ち際の線について明らかにしていただきたい。
  33. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 事前に先生の方からちょうだいいたしました図面、これを拝見いたしたわけでございますが、同時に、私の方といたしましては熊本県に照会いたしまして、当時の埋め立て申請の際の図面、並びに実際の状況はどうであったかというようなことを問い合わせたわけでございます。  ところが、埋め立て申請に付されております図面は、先生からちょうだいいたしました五百分の一の縮尺のものとは異なり、二千分の一のものとなっております。したがいまして、直ちにこの五百分の一の縮図に当てはめて申し上げることができないのでございますが、ただ、先ほど申し上げましたような確定測量の結果による埋め立て面積は四十四・八ヘクタールに変わって若干ふえたわけでございます。  ところが、海岸線の方は全体として、その二千分の一の縮尺で見ますと、位置的には、海岸線は変更によりまして海側へ若干後退していることが認められております。そして竣工時点の干拓の埋め立ての境界は、現在海岸線になっているところということで、その竣工後の海岸線ははっきりいたしておりますが、竣工前、海岸線、波打ち際がどこであったかということについては、添付されておりますところの二千分の一の縮尺図面では、これは判然といたさないわけでございます。  そこで、そのほかの事情等について、熊本県に関係資料なり関係者の当時の記憶なり問い合わせているところでございますが、一件書類が手元にないというようなこともございまして、なお定かではない状況にあるわけでございます。
  34. 馬場昇

    ○馬場委員 公有水面埋め立ての申請、これが地図が二千分の一だから海岸線がわからない。海岸線がわからないで埋め立て申請の許可ができますか。海岸線がわからないという地図で、そういう地図を添付して公有水面埋め立ての申請ができるんですか。そしてまた、それを許可しているわけですけれども、当然現在ある地域は、これは地籍が何だ、その地先だとなりますと、海岸線ははっきりしているはずでしょう。——じゃ、それははっきりしていないのですか、それともあなたがはっきりしないのですか。
  35. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 本来の海岸線は、それは当然はっきりしているはずのものでございます。ただ、現時点で私どもが添付書類としての図面を取り寄せました限りでは、これが二千分の一の縮尺である、そしてこれを補強するようなさらに細かい工事関係の種々の書類なり図面というものは現在手元にない。これは先生先ほどおっしゃられましたように、刑事事件として熊本地検の八代支部の取り扱うところとなっておりまして、そちらの方に書類が提出されているということでございます。そういうこともございまして、熊本県から取り寄せたその添付書類では、図面では二千分の一の縮尺のものしかございませんので、この縮尺で見る限り、当時より、当初の計画に対しまして海岸線がさらに後退した形にはなっておりますけれども、具体的にどの線からどれだけ後退−後退というのは、海側にせり出した形でございます。埋め立ての方の次元で申しておりますので、具体的に当初どの線であったかということは、現在私どもがこの資料で見る限りは判然としないということを申し上げたわけでございます。したがいまして、さらに工事関係の細かい資料なりあるいは関係者の当時の記憶なりというものをたどれば、当初の埋め立てを始める前の実態というのは明らかにすることは可能であろうとは考えております。
  36. 馬場昇

    ○馬場委員 三日間しかなかったものですから、あなた方は余りはっきりしたことはわからないかもしれませんけれども、いま最後に答弁されましたように、私が指摘しました公有水面埋め立て申請書の中の添付図面、その海岸線というのがX、Y、Z、hであったのか、b、c、d、Yであったのか、あるいは町道男島線の以西であったのか、そのことはいまははっきりしないとおっしゃいましたが、最後のところで、これは調べればはっきりわかるんだというようなことをおっしゃったわけでございますが、これは調べてはっきりさせていただきたい。後日その資料を出していただきたい。これが第一点です。  第二点は、また私もよくわからないのですが、埋め立て申請時と干拓ができ上がった時点で、海岸線が後退しているというようなことをおっしゃったのですが、これはどういう意味ですか。
  37. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 詳しい正確な意味は私どもにもわかりませんけれども、提出された図面では、当初の干拓計画の海岸線に比べまして、でき上がったところの、つまり変更計画対象になりましたところの海岸線は海側にせり出している。これは添付された二千分の一の図面でも明らかに認められるところでございます。そして、後退したといいますか、陸の側から見れば前進した海岸線は、現在実際に海岸線となって竣工が確認されたものというふうに見受けられるわけでございます。  その変更前の海岸線として考えられておったものはどこかということは、二千分の一の図面で線は引かれておりますけれども、それが先生が私どもに事前に御連絡いただきましたこの図面のどこに当たるかということは、縮尺も違いますので、そこははっきりしないということを申し上げたわけでございます。  それから、事柄の関係としては、確かにはっきりさせられる性質のものだということを私は申し上げました。ただ、これは国が直接やった事業ではなくて、熊本県が県営事業として行った事業でございます。熊本県が、事実そこのところについて関係資料の整備なりあるいは関係者の証言なり、きちんとしたものが得られてはっきりさせられるかどうかは、これは私自身が直接責任を持ってお答えできる限りのものではございませんので、その点は熊本県に照会するというような形で事を進めるというようなことになろうかと存じます。
  38. 馬場昇

    ○馬場委員 後でもう少し詳しく質問するのですけれども、申請が出たときの海岸線と変更計画での海岸線が海の方にずれておるということはいま言われたわけですが、その辺が問題になるのですが、後で申し上げます。  しかし、いまこれは熊本県がやった——県営干拓事業ですからそうでしょう。この干拓事業の経費はどうなっていますか。
  39. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 総事業費と補助金だけで申し上げますと、総事業費は三億七百六十三万円でございます。このうち国庫の補助金は、二億七十五万円ということになっております。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  40. 馬場昇

    ○馬場委員 いまの説明でもわかりますように、総事業費が三億円をちょっと超している。国庫補助が二億円あるわけですね。三分の二程度の補助事業でございます。国も責任があると私は思うのです。そういう意味で、ひとつはっきり念を押しておきたいのですが、あなたは、さっきの私の質問で、私が指摘した海岸線はどちらですかと三つ言いましたら、これは二千分の一ではわからないとおっしゃっている。じゃ、調べればわかるんですねと言ったら、県が主体者であるから、県は当然わかるべきはずだとおっしゃったわけですね。ところが、二億円も、三分の二も補助している補助事業でございますから、当然あなたの方もわかるべき筋合いだろうと私は思うのです。そういう意味で、公有水面埋立地の海岸線が、私が言った三つのどの線かということを、県と協力してあなたの方で明らかにしていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
  41. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 干拓埋立地の造成ということ自体については、確かに国費で多額の助成をいたしておるわけでございます。その意味で、干拓地自身については、内容についての厳正な審査もいたすわけでございますが、率直に申し上げまして、その以前の海岸線との関係になりますと、これは陸地の問題ということになるわけでございます。当然関連することだから、そのことは承知しておらなければいけないと言われれば、その間の事情を明らかにする書類が十分整っておれば、それからまた私どもに対してその説明が十分に行われておれば、その点はある程度明らかにすることは可能かと存じますが、ただ、問題は、その問題をめぐって現地で争いが起きている、それが訴訟にまでなっているということでございます。むしろ、関係書類なりあるいは当事者の証言なりというようなことによって、訴訟の段階で一番正確にははっきりされる性格のものではないかというように考えるわけでございます。行政レベルでも、訴訟とは別個にそれ自身追跡して、できるだけ明らかにすべきであるという御指摘のようでございますので、なお私どもも、熊本県と一緒になりまして、その点についてはさらによく調査してみたいと考えます。
  42. 馬場昇

    ○馬場委員 あなた、訴訟が行われておると言うが、訴訟は行われていないのですよ。いま告訴が行われて、その間、証拠書類の押収なんという段階じゃないのですよ。告訴が行われたというだけの段階ですよ。書類なんか一つも持っていっておられませんよ。そしてまた、告訴が取り上げられるか取り上げられないか、その検討がいま行われておるかどうかの段階であって、書類なんか一つも持っていかれてないのです。だから、当然あなたは、公有水面埋め立ての申請が出てきた、海岸線ははっきりしている、たとえば干拓した、海岸線と違ったら違っている、合っていれば合っている——国が三分の二補助して二億円も出している事業でしょう、それくらいのことは明らかにする義務があるのじゃないですか。刑事問題と訴訟問題は全然関係ありません。行政の立場で、監督指導立場で明らかにせいと言っているのです。そういうのを明らかにしないというのは、二億円出しっ放し、後はどこが海岸線だったかわからぬ、そういうような監督行政を農林省はやっているのですか、どうですか。
  43. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いま私が申し上げました、もとの海岸線はどこであったかというのは——訴訟と言ったのは少し言い過ぎだったかと存じますが、刑事問題として告発されて、それの関係書類が熊本地検の八代支部に提出されておる、このように聞いたものですから、その事実関係を踏まえて申し上げたわけでございます。その段階で明らかになるのではないかということを申し上げたわけでございますが、確かにそれはまだ法廷が開かれているというわけではございませんので、今後の進展を見なければならない性格のものであると存じます。その点私、少し先走って言い過ぎましたので訂正さしていただきます。  それから、行政でもって、国費を出す以上、その点について、でき上がった海岸線については当然であるが、もとの海岸線についてもきちんと明らかにすべきではないかということでございますが、へ理屈を申し上げるわけではございませんけれども、国費がどのような事業にどれだけ使われたかという事業全体を明らかにする、そしてそれが適正であるかどうかをチェックすることは当然必要でございます。その意味で、これは補助事業ではございますが、国も監督しチェックしていくことは当然やってまいったわけでございます。ただ、もとの海岸線ということになりますと、でき上がった造成地の外の話になるわけでございます。その点につきましては、必ずしも国費と直接の関係はない点もございまして、変更の過程にいろいろな処理なり経緯があったかと存じますが、その点についてはなかなか国としてはつまびらかにし得ないところがあるわけでございますので、その事情はひとつ御了解いただきたいと思うわけでございます。
  44. 馬場昇

    ○馬場委員 公有水面埋め立てを申請した、できた造成地はもとの海岸線の外である。では残った分の土地はどうなるのか。こういうことは後で質問しますが、いまの答弁ははなはだおかしいのです。これはまだたくさん質問したいので、ここだけでやっておっては時間もございませんが、そこで、委員長にもお願いして、農林省にもお願いするわけですけれども、公有水面埋め立て申請書一式を、これは検察庁なんかへまだ行っているはずはないのです、これはあるはずですから、これを取り寄せて私の方に委員会を通じて出していただきたい。それからもう一つ、干拓工事計画というのがあるわけです。その工事計画にはちゃんと図面もついております。津奈木干拓現況平面図などというものも添付されて工事計画が行われているのです。この工事計画書というものがあるはずです。これもひとつ出していただきたい、そして話を進めていきたいと思うのです。いかがですか。
  45. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 短い時間の間における県との電話連絡を主にした私どもの事情の聴取であったわけでございます。聞いている限りでは、県当局は書類は地検の方に提出したということでございますが、さらに確認してみたいと思いますし、それから資料も一部限りであったかどうか、まあ古いものでございますからいろいろひっくり返すというようなことも必要かと存じます。さらに県にも照会いたしまして、できるだけ実態が明らかになるような必要書類はお出しできるように努力いたしたいと考えます。
  46. 馬場昇

    ○馬場委員 また後に戻ることがあるかもしれませんが、先に進みますけれども、潮どめ工事はいつごろ完成したのですか。
  47. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 工区ごとの、それから工事の工種ごとの完工の時期は、いま手元の資料ではございませんので、後ほど調べて答弁申し上げます。
  48. 馬場昇

    ○馬場委員 三十九年の三月に潮どめ工事は完了いたしております。  そこで、先ほども答弁なさったのですけれども、竣工の問題についてお尋ねするわけでございますが、竣工届がいつ出て、竣工の許可がおりたのはいつか、そしてそれが許可書として伝達されたのはいつか、竣工の申請、許可の日付についてもう一回お答えいただきたい。
  49. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 確定測量の結果による埋め立て面積、これが四十四・八ヘクタールということで、これに伴う変更協議を行ったのは四十四年の十月六日でございます。そしてそれに基づきまして、同年の十月二十日に町は県知事に竣工認可申請を提出いたしております。そして県土木部の竣工検査を受けまして、昭和四十五年十月十九日に竣工認可を得ております。
  50. 馬場昇

    ○馬場委員 いま言われました四十四年の変更申請というのはどういうことですか。
  51. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 当初埋め立てを予定しておりました面積は四十四・三ヘクタールであったわけでございます。これが実測の結果、先ほど来議論になっておりますところの海岸線の移動等も含めまして面積の造成は四十四・八ヘクタールになったということで、このことを内容とする変更協議でございます。
  52. 馬場昇

    ○馬場委員 私が承知しておるところでは、四十四年にすでに竣工届を県の耕地課に出しているようですけれども、ところが、面積が合わないということで却下になっているのです。それでまた提出をした、また却下になった、再々提出をした、こういうようなことが四十三年から四十四年とずっと行われておるのです。そういうようなことで一応竣工届を出した、その後で面積が合わないということでいろいろやりとりをしながら、いま局長答弁された四十四年の変更申請という形になっているのですよ。そこに非常に問題があるのです。そういうことでもって、実はそのいきさつをあらわした干拓てんまつ書というのがあるはずです。これは熊本県の芦北の県事務所の耕地課にあるはずです。このことについてそのとき地元ではどういううわさが立ったかといいますと、県が町に埋立地を無償で提供したとか、埋立地を〇〇氏にやったとか、非常にごまかしが行われたといううわさがここで出ているわけです。そういう地元の状況なんですよ。  それで、私はここで再度質問をしたいのですが、海岸線の問題で、私が先ほど言いました別紙(二)の地図で、竣工完成の許可がおりたのはこの男島町道の西だけですか、東の方も竣工完成の許可になっているのですか。
  53. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私、先ほど最終的な結果だけを一括して申し上げたわけでございますが、竣工の認可に至るまで再三事前の調整が行われたということは承知いたしております。  それから、認可になった対象はどうかということでございますが、私どもが県に問い合わせて聞いたところでは、一括竣工認可ということを聞いているだけでございまして、西側か、あるいは東側も含むものかどうかについては、聞き合わせた限りでは定かでございません。
  54. 馬場昇

    ○馬場委員 これは農林省が二億円もの補助金を出してやった干拓です。そして、私も金曜日から説明しておりますし、あなた方もこういう状態は、トラブルが起きているということは過去に聞いて知っておられると思うのです。そういう中で完工した干拓地はこの地図の上でどこですかと聞いているのです。おわかりにならないのですか。
  55. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 先生質問の意味を若干取り違えたところがございまして、竣工の認可の際に、もとの海岸線との関係を含めて全体として処理をしているかというふうに受け取ったわけでございますが、国の補助事業としての干拓事業につきましては、現在の海岸線、つまり外側の部分、これだけがきちんと竣工したという形で届けがなされておるわけでございます。
  56. 馬場昇

    ○馬場委員 現在の海岸線というのはどこですか。
  57. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 これは先ほど先生が言われました五百分の一の縮図で見ました場合、ちょっと口ではなかなか説明しがたいのでございますが……。
  58. 馬場昇

    ○馬場委員 アルファベットで書いてありましたから。
  59. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 はい。小文字でもってa、eそれからf、g、h、この町道に沿って引かれている線でございます。
  60. 馬場昇

    ○馬場委員 わかりました。それでここでもまたお願いしておきたいのですが、干拓のてんまつ書というのがあるはずです。それから、竣工届が最初出されて、その間に、先ほど局長も言われましたように、まず、竣工期間延長申請だとか、埋め立て変更許可申請だとか、埋め立て、それに対する許可とか、埋め立て期間の期限延長申請とか、たくさんの期間の延長だとか、埋め立ての地域延長だとか、こういうののあれが何回もやったりとったり行われております。これの一式書類とそれから干拓てんまつ書、そしていまお話しございました竣工許可の図面、そういうものもあるはずです。これも一括県と調査されまして提出をいただきたいと思います。いかがですか。
  61. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 県と相談いたしまして、できる限り提出するように努力いたします。
  62. 馬場昇

    ○馬場委員 実は局長、ここは四十一年に完工しているのですよ。それから四十四年くらいからその竣工届のやりとりをして、四十六年に竣工の許可になっているのですね。竣工した後、入植問題はどうなりましたか。
  63. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 着工から工事、さらにはその後の、先ほど来御指摘の竣工の申請、承認をめぐる各般の事案、この間に外的な条件もいろいろ変わってまいりまして、当初予定しておった入植、増反ということについては、町側の考え方も大きく変わりまして、といいますのは、やはり高度経済成長の影響を受けて町が著しい過疎化の状況になってきたということ、聞くところによりますと、計画段階では九千人くらいの人口であったものが、この変更せざるを得なくなるような判断をするに至った時点では、七千人くらいの人口にまで落ち込んだということもございまして、干拓地について町全体のために有効活用を図るということを考え、福祉のための公共用地、それから企業誘致のための工場用地として、これを他用途に用いたいという話が出てまいったわけでございます。したがいまして、はなはだ好ましいことではございませんが、当初の入植あるいは増反といったことについての検討は、実行に入ることなくその後の転用の事態に推移していったということがあるわけでございます。
  64. 馬場昇

    ○馬場委員 ちょっと先ほどの問題で確認しておきたいのですが、この事業主体ですね、たとえばいま聞いていますと——県営干拓事業でしょう。ところが、埋め立ての変更だとか、その他竣工届だとか、期間延長だとか、すべてみな町が県に申請とかなんとかしておる。工事主体は町だったのですか。
  65. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 埋め立てのといいますか、農地造成の干拓の事業主体は県が行う事業でございまして、国は県に対して補助を行っております。にもかかわらず、埋め立てに関する各種の手続はこれは町によって行われております。本来なら県が一貫してそれらの手続も自力でみずから行うというのが一番妥当なやり方であったろうというふうに考えます。
  66. 馬場昇

    ○馬場委員 そこに一つ問題を含んでいるのですよ。いまあなたの説明をずっと聞いておりますと、県営事業というのに、すべての申請とか変更とか町がやっている。これじゃやはり県の主体がなくなる。まして県営事業と認めておる農林省の実態から言うても、実際下部で行われることは違ったことが行われておる。そこに実は間違いを起こしている原因もあるんじゃないかと私は思うのです。だから、そういう点はやはりまずかったとおっしゃればそれでいいわけですが、入植を希望しておった四十戸ぐらいの人に、もうおまえたちはこれはだめだぞ、入植を希望しておった人たちに対するどういう手続をとって、おまえたちはもう入れない、ここは農地にしないんだとやられたのかということも聞いておきたいことの一つでございますが、そこで、先ほども質問する前におっしゃったのですけれども、農地転用の許可申請、これまた局長、町から県に出ているようですね。県営干拓事業をやっておるのに、農地転用の許可申請が町から県に出ているようでございますが、これもおかしいと思うのですけれども、農地転用の許可はどのような手続で行われたかを聞いておきたい。
  67. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 入植を希望しておった者、この場合は地元にそのもとの田畑を有している者が希望するということで、具体的には増反ということになるわけでございますが、その希望者がかなり出たわけでございます。それに対しては、個別にやはり町の事情を説明して了解をとって、増反を断念してもらったというようなことを承知いたしております。  それから、他目的転用の事情でございますが、これにつきましては、町が町議会の同意を得てその意向を表明して、県に対する要請として出されております。当初一部ということでございましたが、最終段階においては、全面的な転用をしたいということでの要請になったわけでございます。県は、長いことこれに対する検討を加え、ぎりぎりできるだけ農地としての利用はできないかということでの指導といいますか、折衝は行ったのでございますが、各種の事情からやむを得ず、最終的には町から県に干拓地の全面他目的転用の要請がありまして、四十九年六月、県から農林大臣あてに承認申請が出されたという経緯でございます。
  68. 馬場昇

    ○馬場委員 四十九年六月に県から農林大臣に転用許可申請がありまして、許可しました日付と許可した面積は干拓地全部ですか。
  69. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 四十九年六月の申請に対しまして、四十九年七月付で九州農政局長は知事にこれを承認いたしております。面積は四十四・八ヘクタールでございます。
  70. 馬場昇

    ○馬場委員 農政局に出たのが四十九年六月でしょう。許可が七月。農林省というところは一カ月もたたないうちにこんな四十四・八ヘクタールの転用許可をやるんですか、どうですか。
  71. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 当時の審査の状況を詳しくは存じませんが、先ほど来御議論いただいておりますように、県の段階でかなり長い調整があったわけでございます。最終的には、農地に利用したいという点では非常に遺憾な結果になりましたが、その過程を通じて、農政局もそれらの事情を十分承知して、県との相談もいたした上で、できるだけ早くということでそういう処理をいたしたものと考えます。
  72. 馬場昇

    ○馬場委員 局長、ずっと聞いていますと、公有水面埋め立てのときから、あるいは干拓計画のときから、そしてまたその変更の問題、そしてさらにここの転用の問題、物すごくずさんですよね。いかに何と言っても、四十九年の六月に農地転用の四十四・八ヘクタール申請があった。明くる月にはそれを農林大臣が許可している。一カ月で許可する。事前折衝があるということはわかりますよ。しかし、これでは何のために干拓をするのかわかりませんね。優良な農用地をつくる、干拓をするとおっしゃるけれども、これじゃ土地造成のブローカーみたいじゃないですか、二億も国費を補助しながら。  そこで、次に、その農地転用の許可がおりましたら、県は、ここから町ですね、町に実は売り渡しておりますね、この土地を。売り渡した土地の面積価格、条件についてお知らせいただきたい。
  73. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 先ほど申し上げましたように、他目的への転用申請が提出され、四十九年七月に公共用地及び工場用地としての承認がなされたわけでございます。これに基づいて処分が行われております。この処分に際しまして、町は県に対しまして、国庫補助金に相当する額二億七十五万円、これを昭和四十九年度に一括して支払うことにいたしておりますが、土地利用計画がおくれたため、実際には延滞利息を含めて合計二億九百九十一万円を昭和五十年度と五十一年度に分割して支払っております。これは国庫補助に対する分でございますが、そのほか県負担額、それから利息関係等を含めまして、総額として二億八千三百二十万円を県に対して支払っております。面積は四十四・八ヘクタール全体でございます。
  74. 馬場昇

    ○馬場委員 いまの話を聞きますと、県が県営干拓地を町に売ったわけでしょう。町に売った値段というのが二億八千三百二十万ですか。それは間違いと思います。国に返済されました金は二億九百九十一万円、これはわかると思うのですが、県が町に売り渡しました価額は幾らですか。
  75. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私は、先ほど国庫補助金の相当額も含めまして全体として町が県に支払った額、総額二億八千三百二十万円ということを申し上げたわけでございます。したがいまして、これが先生のおっしゃる価額ということに相当するのかと考えます。
  76. 馬場昇

    ○馬場委員 たとえば県は国庫補助二億幾ら、とにかく県と町の負担で一億ぐらい、三億ぐらいの工事をしておるわけでしょう。それに損をして二億八千万で町に売るわけですか。私は五億円近くで払い下げたということも聞いておるのですが、これは間違いですか。
  77. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 この事業につきましては、町負担の額も含めまして総事業費といいますか、全体の負担がなされておるわけでございます。私が先ほど申し上げました、国に返還なされた国庫補助金相当額、これは延滞利息等も含めますが二億九百九十一万でございます。それから、県負担の金額は合計で、これも延滞利息の分を含めまして七千三百二十九万円でございます。国の負担分と県負担分、金利を含めまして、先ほど申し上げましたように合計で二億八千三百二十万円、この額、つまり国なり県なりが負担した額に金利をつけた総額を町は県に支払ったということでございます。
  78. 馬場昇

    ○馬場委員 わかりました。  そこで、これには売買契約書というのはございますか、町と県の。
  79. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 これは売買契約書という形はとっておらないというふうに承知いたしております。
  80. 馬場昇

    ○馬場委員 次に、質問を変えますけれども、実は私の調査によりますと、公有水面埋め立て申請が行われたときの海岸線というのは、さっき言った地図で言いますと、X、Y、Z、hという線が海岸線です。そこから埋め立てが行われたわけでございます。そして途中で町道男島線というのをその西の方につくっております。その後は全部干拓というのは、町道男島線の西側で物事が行われておるのですね。埋め立ては昔の海岸線からずっと行われておる。海岸線から約二千立方メートルぐらい西の方にあって、その西の方に男島線をつくった。それからすべてこちらで行われておりまして、海岸線と町道の間に無籍地がこの干拓でできているのです。その無籍地をめぐっての争いが実はいま行われておるのです。  そこで、それについて質問申し上げたいと思うのですが、その無籍地と私が言いますところ、差し上げております地図によりますと、Bという地域、この地域が、Aという地域の所有者が堤防をつくるときと町道をつくるときに自分の土地を少し提供した、その代替地という形でまずBという土地が売られております。そのAという地主に売られておるのです。これが九百八十六平方メートル。これを、代替地ということはあったかもしれませんが、十九万七千二百円で売られております。それから、その南の方にありますCという土地、これがまた、七百九十四平方メートルあるわけですが、一平方メートル当たり六千円で実は売られて、これはまた代替地という形になっておりますので、その差額百万円というのが町に入っているのです。実はこのBという土地が売られたときには、昭和四十四年でございますので、この土地はまだ干拓したままの土地で町有地ではなかったはずですけれども、町に金が入っております。Cというのが売られたのは五十年四月でございますが、そのときは町が払い下げを受けたか受けないかというぎりぎりのところですが、実は百万円町に入っているわけです。  そういうところで、これは法務省の方にも聞きたいのですが、このBという地域が売られたとき、この地域の台帳面はだれの所有になっておったのですか、Cという地域が売られたときの台帳面の所有はだれになっておったのか、これが第一点。  第二点、これは自治省にお尋ねいたしますけれども、売られた場合に議会の議決を受けてはおりません。町長と買い主が覚書という形で売買をしておるようでございます。このことは地方自治法の九十六条六号、七号、こういうものに違反するのじゃないかと私は思うのですが、それはいかがですか、という点について、まず法務省と自治省にお尋ねします。
  81. 清水湛

    ○清水説明員 お答え申し上げます。  先生の方から事前にいろいろなお話を聞いたのでございますけれども、このいまお尋ねのB地あるいはC地について所有者がだれになっていたかということは、地番等も一わかりませんので、登記簿からはちょっとわからないという実情でございます。
  82. 中村瑞夫

    ○中村説明員 お尋ねの地方自治法九十六条との関係でございますが、九十六条の第一項六号、七号に書いてございます具体的な内容につきましては、政令によりまして一定の基準が定められておるわけでございまして、土地の売り払いに関しましては議会の議決を要しますのは一件が五千平方メートル以上のものでございまして、金額が七千万円以上ということになっております。いまお尋ねの中でございました土地の面積、金額等によりますと、この地方自治法の直接の議決事項ではないというふうに考えられます。
  83. 馬場昇

    ○馬場委員 法務省にお尋ねしますけれども、この地図お持ちと思いますが、Aという沢井氏所有のこの土地ですね。浜先の二〇二五の三、これは台帳上どうなっておりました。この当時です。
  84. 清水湛

    ○清水説明員 お答えいたします。  先生指摘の芦北郡津奈木町大字岩城字浜先、地番二千二十五番の三でございますが、この土地につきましては、所有者は沢井武一さんという方でございます。地目は雑種地で、これは昭和五十三年の十一月二日に地籍更正がされておりますけれども、現在の登記簿上の地目は雑種地で、面積は五千三百六十九平方メートルということになっております。
  85. 馬場昇

    ○馬場委員 いや、私が聞きましたのは、昭和四十四年当時の地積がどうなっているかということです。
  86. 清水湛

    ○清水説明員 お答えいたします。  昭和四十四年当時の地積は二千五百二十八平米ということでございます。
  87. 馬場昇

    ○馬場委員 時間がもう余りないのですけれども、実はここに確かにBという地域、Cという地域、これは埋立地域で無籍地になっている。それを町長が覚書で売っているのです。それから、いま言われました沢井氏所有は二千五百二十八平米ですが、その地図を見ますと、さっき言われました五十三年に、その地図でありますWというところを、錯誤登記だといって登記されまして、それが先ほど言われました五千幾らの平米になっているわけでございますね。ここが実は現在問題になっておるところでございます。  そこで、結論から申し上げますと、結局、旧海岸線というのはX、Y、Z、hであった、それをこの干拓で干拓をして埋め立てが行われておる。しかし、ちょうど男島線というのをつくった。その西側が干拓地となったものですから、この海岸線と男島線の間に無籍地が出た。その無籍地を町長が支援者に売った。そしてまたその支援者の人が、そこに言われますWというところの土地を、五十三年にここもおれの土地だといって登記をして取得した。こういうようなことになって現在争われておるわけでございます。  そこで、私は、こういう争いというのは、平和な町にそう長くあってはならない。そして円満に解決することが一番いいのです、こういう問題は。そこで、その原因としてここで言いたいのは、やはりずさんな計画とか工事の管理の不行き届きだとか、そしていろいろ農地転用の問題だとか、そういう見通しの甘さとか、そういう国とか県とか町の行政姿勢というのが、今日のようなこういうトラブルを行政指導のまずさが生んでいるのです。しかし、これは一日も早く、やはりそういう責任があるんですから、国とか県とか町でもってトラブルを解消してやらなければならぬ。そのために、はっきりしなければならぬのは、この昔の海岸線がわからないから問題が起きているわけです。そこで、実はこういうことを起こした責任というのが国とか県とか町に私はあると思う。そしてこの事業というのは二億円もの国の補助事業。ですから、私は、はっきり言って、国とか県とか町の責任でその海岸線というのを、公有水面埋め立てで出ました海岸線というのを明らかにしてやる、このことがトラブルを解消する基本だと思います。  そこで、私は、証拠の写真等も持っているのですけれども、ちょうど潮どめ工事が終わりましたときに、私が言った海岸線、そこに石がきがあるわけです。その石がきの上に立って写真を撮られた証人もおられるのです。ここが石がきだ、たくさんの人がここで自分たちは泳いでおったと言われる人もおられるのです。そういうところで、ここがいま埋め立てたから海岸線がわからないとおっしゃいましたけれども、もうここは掘り返してみる以外にないのですよ。だから、私は、国と県と町の責任で、はっきり公に、皆さんが見ておる前で、そしてやはりこの土地を掘ってみて、ここが海岸線だったということをはっきりして・それからトラブルを解決する。それを基盤にしてもらう以外に私は方法がないと思う。そういうことをぜひやっていただきたいと思うのですが、どうですか。
  88. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 この津奈木の干拓の事業、私ども、御指摘を受けまして、わずか三日ほどの間でございますが、県当局からいろいろ聴取いたしました。その経過を考えてみますと、先生指摘のように、そもそも農用地として造成したものがそっくり最終的にはほかの用途に転用されているというようなこと、それから海岸線をめぐる地元のトラブル、まあトラブル自身は地元の問題ではございますが、同時に、これに関連いたしまして、当初の海岸線の状況がどうであったかということがなかなかはっきりしないというようなこと、これらを考えますと、私どもやはり、県営事業で直接には県でございますが、監督する立場といたしましても、大変遺憾な状態であったというふうに考えざるを得ません。今後こういうことの起こらないように一般的にも努力いたしますが、現実この問題を起こしている現地の問題につきましては、県をよく指導いたしまして、いま先生の言われましたようなはっきりさせる手段、たとえば掘り返してみたらどうかというようなことも含めまして、十分検討させたいと思います。
  89. 馬場昇

    ○馬場委員 先ほどから政務次官おられますから、ぜひ干拓行政というものについてしっかりやっていただきたいということと、やはりこういうトラブルを起こした責任というのは私は農林省にもあると思うんです。そういうことを反省していただく、そして、いま言ったように、一日も早く解決するように最大の努力をしてもらうということをお願いしたい。  というのは、どうして無籍地を勝手に安く売られた、片っ方そういう状況があって、片っ方の人はいまもうこれを一坪三万円以上で買っているんですよ。住民がこの事実を許さないんです、はっきりしなければ。そういう意味で、干拓行政の姿勢を正していただくとともに、この問題の解決に農林省として全力を挙げていただきたいということに対して、政務次官の御答弁を伺っておきたい。
  90. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 ただいま馬場先生から、いろいろ貴重な点につきまして御指摘がございました。農林水産省といたしましても、指導の面においてもうちょっと慎重であるべきであったのじゃないかというような反省もしておりますし、ひとつ御指摘の線に即しまして事態の改善について努力してまいりたいと存じます。
  91. 馬場昇

    ○馬場委員 終わります。
  92. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後一時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  93. 内海英男

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。本郷公威君。
  94. 本郷公威

    ○本郷委員 きょうは畜産の問題、その中でも肉用牛の振興対策について政府の見解をお聞きをしたいと思います。  かつて農家には必ず牛が二、三頭は飼われておりまして、田畑の耕作等に使われていたわけですが、機械の導入によって牛舎から牛が消えまして、かわってその中には耕うん機やあるいは自家用車が入っておるという状況になっておるわけです。農村を歩いてみますと必ず牛のふんの一つや二つはあったわけですが、もういまは農村を歩きましてもそういう状況は余り見当たらないという現状に変わってきておるわけであります。  こういう移り変わりを数字的に見てみますと、昭和三十五年に肉用牛を飼育していた農家は二百三万一千戸あったのが、五十四年には三十八万一千戸と、二十年間に一八%台まで減少しているわけです。また頭数を見ましても、昭和三十五年の二百三十四万頭から毎年減少してきておりますが、その後若干持ち直して、五十四年には二百八万三千頭、八八%台にとどまっているようであります。  こういう状況でありますが、現在牛肉の需要というものは毎年増加をしておるわけでありまして、肉用牛の振興対策というのはわが国にとりましては緊急な課題ではないかと思うのですが、ひとつ肉用牛の振興対策の政府の方針をまずお聞きをしたいと思います。
  95. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 本郷先生から御指摘のございましたように、牛肉の需要につきましては、私ども今後とも増加してまいる、かように考えておりますので、これに対して生産の振興を図らなければならないと思います。  具体的には、肉用牛は土地資源等の有効利用を図る上で大変重要な作目であるという認識を持っておりますし、また、地域農業においても農業所得の確保を図る上でもきわめて重要である。さらに、牛肉の国際貿易を見てまいりますと、五十二年の数字でございますけれども、総生産量のわずか六%しか国際的に取引が行われていない。したがいまして、長期的にも国際需要の逼迫が予想されますから、余りそう輸入に多く依存するわけにいかない、こういうような認識がございます。したがいまして、極力国内生産の増大を図って、国内生産で不足する分については安定的に輸入できるような態勢を確保していく、こういう基本方針に基づきまして、国民への肉牛の安定的な供給を進めてまいりたいと考えております。  このための生産対策といたしましては、第一に、肉用牛経営の規模拡大を安定的に推進をしてまいりたい。第二に、飼料費の節減を図るための自給飼料依存度を向上してまいりたい。さらに第三に、肥育期間及び出荷時の体重、これを適正に行うようにして、飼養管理技術の向上に努めてまいりたい。第四には、乳用牛の肉利用の拡大を図ってまいりたい。こういうような点に重点を置きまして、地域の実情に応じた生産の合理化を推進してまいりたい、かように考えております。
  96. 本郷公威

    ○本郷委員 増産体制に早急に入らねばならないといういまの次官の見解はわかりました。  先ほどもちょっと触れましたように、農家の一、二頭飼いというのがだんだん減った結果、畜産そのものが低調になったということもあるのですが、農業そのものにもいろいろ影響が出ておることが指摘されるわけです。当然のことながら、田畑の肥料が金肥だけに頼る結果になって、土地がやせてきたということが農家の人々から言われております。一方では、農薬を使って農協から購入する配合肥料だけに頼る農業によりまして、土が死んできておるわけですね。農家が牛を飼ってその堆肥を田畑に使う、こういうことは、農業特に農地を生かすために必要ではないかということを考えた場合に、畜産振興の面だけではなくて、土を生かしていくという立場から考えても、農家の一、二頭飼いというのを肉用牛の生産計画の中に入れるべきではないかというように考えるのですが、この点、見解をお聞きしたいのです。
  97. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 肉用牛の生産振興につきましては、先ほど政務次官からお答えしたとおりでございますが、その生産振興の基本的な考え方の中に、一つは集団的な生産団地を形成して効率的な生産を進めるということと同時に、主として繁殖生産部門につきましては、効率的な生産を進めると同時に、その底辺を広げるということで、地域実態に応じた肉用牛の導入を進めていく。たとえば、老人福祉の面も考えて肉用牛の一、二頭飼いも進めていくというような対策を講じておるわけであります。ただ、生産を進めるにつきましてはコストの面も考え合わせていかなければならないわけでありまして、そういういま申し上げたような生産、家畜の導入による肉用牛の振興を考える場合も、地域全体として生産のレベルアップがされるように考えていく必要があると考えておる次第でございます。
  98. 本郷公威

    ○本郷委員 牧場経営による大規模な生産というものも重要でありますが、いま言ったように、あわせて農家の一、二頭飼いを進めていくという基本についてはわかったわけですが、特に牧場経営の場合には立地条件というものが非常に大きく左右するわけで、おのずからその範囲というものが限定をされることになるわけですが、五、六年前に農林省が指導してつくりました共同利用模範牧場というのがありますね。この牧場が全国に三十八カ所あるそうでありますが、そのうちの九割は県や市町村の経営をしておるいわゆる公営牧場で、四牧場程度が民営の牧場になっておると聞いておりますが、農林省が指導してつくりましたいわゆる模範牧場と銘打っておりますこの牧場の持っておる使命、それは一体何かということをまずお聞きをしたいと思います。
  99. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 ただいまお尋ねの共同利用模範牧場は、昭和四十年度から五十二年度にわたりまして農用地開発公団、昭和四十九年までは農地開発機械公団でございましたが、この公団が主体となりまして、経営規模の拡大並びに飼料の自給度の向上を図るために、牧場建設と家畜の導入を一体的に行うということで、牧場施設なり機械、家畜の整備、導入を進めまして創設をいたした牧場でございまして、御指摘のように現在全国に三十八カ所設置をいたしております。  この共同利用模範牧場の使命と申しますか、設置の目的は、造成されました草地の共同利用を基礎といたしまして、多頭飼育経営を進める、あるいは地方公共団体等による乳牛または肉用牛の集団的な育成事業を進める、そういう場合の模範的な経営を推進するということで、それによりまして畜産振興に寄与せしめようということにあったわけでございます。建設されました共同利用模範牧場の管理運営がそうした目的に沿って適正に円滑に行われる必要がございますので、そうした管理運営につきましての指導もいたしておるところでございます。
  100. 本郷公威

    ○本郷委員 その三十八カ所の経営状況というものは、いまどういう状況でしょうか。
  101. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 先ほど御指摘のように、共同利用模範牧場はその大部分が地方公共団体等の運営する公共育成牧場でございます。それから若干、いわゆる畜産経営自体を行うものといたしまして、農事組合法人なり有限会社によるものが四牧場ございます。  経営動向といたしましては、公共育成牧場につきましては、地元の畜産農家から育成牛を預かりまして、預託で放牧をする、その預託料の収入に依存して経営が行われておるというところから、預託料をできるだけ安くして地元の畜産振興に資するということで、必ずしも経営採算から見ますとりつばに収益を上げておる状況ではないと考えております。しかし、収支の上で赤字状況となっておるものは、私どもの承知いたしておるところではごくわずかであると考えております。一方、畜産経営自体をやっている牧場につきましては、それなりの効果を上げておる、ただ、非常にいろいろ苦心してやっておる点が見受けられるというふうに考えております。
  102. 本郷公威

    ○本郷委員 公営牧場の場合には、採算が成り立たなくても、いまあなたがおっしゃったように、地域畜産にある程度貢献をするという立場で、採算を度外視した経営というものが許されるわけですが、この四牧場については、民営でやっておるわけですから、そういうことではいけないわけであります。やはり採算というものが成り立たないと、企業でありますから破産をしてしまうわけであります。そういう点、民営の四牧場については経営自体大変ではないかというように考えるわけですが、この四牧場についてのそうした特別な、監査とはいかないまでも、そういう状況をときどき調べて指導しておるかどうか、その点をお聞きしたいのですが……。
  103. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、共同利用模範牧場は、あくまで模範牧場として管理運営がされるようにしなければならないというふうに考えておりまして、その運営が適正、円滑に行われるよう、農林水産省といたしましては、都道府県に対しまして、管理経営者から必要な報告を求め、それに基づいて適切な指導を行うように指示をいたしておるところでございます。また、そうしたことのほかに、各都道府県に畜産会が設置をされておりまして、この畜産会によります経営診断指導事業等も推進をいたしておりまして、今後ともこれらの牧場の管理運営がその設置の目的に従って適切に行われるように努めてまいりたいと考えております。
  104. 本郷公威

    ○本郷委員 そうすると、農林省が指導してつくりました共同利用模範牧場の三十八カ所につきましては、公営であろうが民営であろうが、農林省は責任を持って今後指導していくという立場をとっておるということを考えていいですか。
  105. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 そのとおりに考えております。基本的にはやはり、管理経営主体の自助努力というのが基本になりますけれども、設置の目的に照らして適切に運営されるように努めてまいりたいと考えております。
  106. 本郷公威

    ○本郷委員 いまお話しのように、国の助成を受けて出発したこの牧場の中に、その後の運営におきまして借入金の返済に頭を痛めているところが現実にあるわけです。施設設備費等につきましては長期の制度資金の融資がなされておりますが、運営資金の面については現在短期の制度資金しかないと聞いております。その短期の制度資金を幾つか借りて、それの返済が重なった場合に、一時的に多額の返済金を必要とするわけですが、運営資金にも長期あるいは低利の融資制度を導入してほしいという声が実際に出てきておるわけです。畜産という仕事は一年や二年で勝負がつく仕事ではないと思うのです。経営に入りましてある程度軌道に乗るまでには、最低十年ぐらいかかるのではないかというように思うわけですが、いま申し上げましたように、運営資金には短期しかない制度資金に長期の資金を導入してほしいという要望にひとっこたえることができないのかどうか、まずその辺をお聞きしたいわけです。
  107. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 共同利用模範牧場の建設並びにその運営につきまして、資金的な措置が種々講じられておるわけでございます。一番基本的な草地造成、それから施設、家畜の導入、これらにつきましては、財政資金を投入いたし、またそのうちの施設的なものについては国が二分の一補助をするということを行っておるわけでございます。それ以外に農業近代化資金の融資あるいは農地取得資金の融資等、国の制度金融の対象として資金的な裏づけを行うということで進めておるわけでございます。  ただいま御指摘の運転資金の関係でございますが、長期低利の運転資金の性格を持つものといたしましては、近代化資金で家畜の購入育成資金、あるいは特認資金といたしまして肥育牛の育成資金、そういったものを融資いたしております。ただ、それだけで十分であるかどうかという問題はございますが、国の融資措置といたしましては、基本的なものについて措置をするということでございまして、それ以外につきましては、県あるいは団体等の融資措置等も補完的に行われておるというふうに承知をいたしております。特定の模範牧場におきましての資金的な問題につきましては、それぞれの都道府県におきまして、一次的にはそこの責任においていろいろ対策を考えていただくというようなことで現在進めておるところでございます。
  108. 本郷公威

    ○本郷委員 私がお聞きしておることは、いま局長お話のように畜産事業に対しては相当手厚い保護がされておるということはよくわかるのです。ただ、運営資金の面につきましても、二年据え置きの三年払いという短期融資のみしかないようであります。設備あるいは牧場を始める前の家畜導入資金等については、三年据え置きの十二年払いという十五年間という長期資金が使われておるわけです。私がいま要求しておりますのは、運営資金につきましても、せめて十年ぐらい長期の融資をするべきではないか、そういう制度をつくるべきではないか、そういうことをいま要求しておるわけです。
  109. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 運転資金的なものの資金措置といたしましては、これはやはり経営の中で回転をするわけでございますので、基本的には経営の中で必要な資金的な手当てをしていく。ただ、その中でやや長期になります運転資金といたしまして、先ほどお答えいたしましたような、農業近代化資金の中に家畜の導入なり育成資金、さらには子牛の購入費、飼料代、生産資材等の直接的な現金支出経費を融資の対象にしておるということでございますが、これはあくまでも、畜産経営を新たに始めるとか、あるいは規模を拡大して追加投資をするというような場合に、初度的な運転資金として融資措置を講ずる、自後はその生産物の販売代金によって経営が継続していく、それについての融資措置としては、たとえば農協系統資金を利用するというようなことで、その自後の経営運転資金まで融資措置を講ずるということはなかなか困難ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  110. 本郷公威

    ○本郷委員 私が聞いておるのは、不当な融資をせよ、こう言っておるわけではないのです。五年ぐらいの短期融資では運転資金としてなかなか返済が困る。一時的に返済が重なって運営に苦しんでおる。だから、その運営面の制度資金についても、若干返済期限を延ばす長期的なものが置かれないかということを言っておるわけですが、それがどうしてもできないということですか。
  111. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 繰り返すお答えで恐縮でございますけれども、現在の融資措置といたしましては、基礎的な施設あるいは草地改良等の非常に長期でなければ回収できないようなものについては長期低利の融資を行う、それから、やや中期的な視点でなければ回収ができないような、先ほど申し上げました初度的な投資の運転資金については五年程度の融資をするということで、それとは別に、経常的な運転資金について制度資金として構成をするということはなかなかむずかしいということを申し上げたわけでございます。ただ、たとえば昭和四十八年、九年にございましたような畜産危機のようなときに、特に経営環境が悪化した場合には、特別の資金措置を講ずるというようなことをいたしておりますが、通常の場合にはそうした特別の措置を講ずることは困難であるというふうに考えておるわけでございます。
  112. 本郷公威

    ○本郷委員 ちょっと具体的な話に入ると思うのですが、大分県の久住町に、先ほどから出ております共同牧場の一つに西組牧場というのがあります。ここは入会権を持つ七十三名の組合員が社員となりまして、一人六十万円出資をして四千三百八十万円の出資金を持っていま運営に当たっておるわけですが、飼養頭数もいま五百二十七頭という数に上っております。胸用牛の繁殖あるいは肥育を中心にやっておりますが、夏は地元の人たちの飼っております一、二頭飼いの牛の放牧の受託をしたり、あるいは牧草、干し草の生産販売などが経営内容になっておるわけです。この牧場の建設には、先ほどからるる説明されておりますように、県並びに国から三億円に上る補助金が投入されておるわけです。その後、運営に当たりまして、長期、短期合わせて二億円に上るところの制度資金の融資を受けておるわけですが、先ほどから指摘しておりますように、この牧場におきましても、来年六千万円の借入金の返済をせねばならないという問題にぶち当たっておるわけであります。  そういう状況になっておるのは、私も聞いてみたのですが、短期資金を幾つか借っておるわけです。その借った短期資金の重なりが、ちょうど来年がピークになっておるというように見えるわけでありますが、それかといって、経営が別に悪いことはないのです。昨年の利益も約六百万円という収益を上げておるわけですから、経営が悪いから融資が、借入金が返せないと言っておるわけじゃないのです。ただ、いま言ったような短期資金の借入状況でありますから、一度にそういうような返済の時期に来ておる。そういう問題を解決するためには、やはり短期資金だけで運営がなされておるところに問題があるのじゃないかというように考えて、さっきから局長は同じような答弁を繰り返しておりますが、長期的な資金導入をさせることがこうした問題を解決することになるのじゃないか、こういうことを私は農林省にいま要求しておるわけです。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  いま一つの例を申し上げましたが、この牧場だけではないと思うのです。恐らく全国幾つかありますそれぞれの牧場におきましても、大なり小なりこうした問題で悩んでおるのじゃないかと思うのです。だから、冒頭に局長は、この共同利用模範牧場については地域のモデルとして農林省も非常に関心を持っておる、今後経営指導については十分指導を強化していくというような考え方を示されておるわけですが、こういう現実の牧場の問題についてどのように考えておるか、まず御意見をお聞きしたいと思います。
  113. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 具体的な大分県の西組牧場の点についてのお尋ねがございましたので、その点についてまずお答え申し上げたいと存じます。  この牧場は、昭和四十九年度から五十一年度に建設されたものでございまして、経営内容を県の報告を徴して見ましたところ、当初はやはり経営収支がなかなか償わないということもあったようでございますが、五十四年度の損益については約六百万円の剰余金が生じておる。ただ、いま御指摘がございましたように、収支は償っておるのでございますけれども、償還計画との関係で金繰りがうまくいかないというように承知をしておるわけでございますが、その原因は、五十四年の二月に大分県の県単独の経営資金の融資をしたのが、ちょうど五十六年度からその償還が始まる。そのために五十六年度の返済額が五十五年度以前と比べると約倍ぐらいになるということで、その償還をどのようにするかということで、県当局等と地元との間で話がされておるというふうに承知をいたしております。  償還計画を見ますと、五十六年度は六千万円でございますが、その前年の五十五年は約四千万、それから一年後の五十七年は三千六百万、さらにその後五十八年は三千五百万と、五十六年だけが非常に特異な償還必要額になっておるというふうに見えるわけでございます。  この西組牧場に対しましては、大分県はこれまで各種の指導措置を講じてまいっておるというふうに聞いておりますけれども、いま言ったような具体的な問題につきましては、県当局とも相談をいたしまして、どういうふうな対策を講ずるか、これはひとつ個別具体的な問題として、大分県に対しまして適切な指導もしてまいりたい。同時に、経営診断事業の実施等もいたしまして、経営面で改善すべき点があるならばその改善も行うというような対処をしてまいりたいと考えておるわけでございます。いまお話しのように、個別の問題といたしましては、他の牧場につきましても、それぞれ県当局におきまして、問題点がある場合には所要の対応をするように指示をしておりますし、また御相談にも応ずるというようなことで考えておるわけでございます。
  114. 本郷公威

    ○本郷委員 経営が悪化して、そして赤字を出しておるというならば別でありますが、先ほどから申し上げておりますように、経営は黒字だ、収益を上げておる。しかし、この借入金の返済が非常に困っておる、こういう状況であります。財産を持っておるのですから、それはもう自前でやれということになれば、五百何十頭かはいますその牛を売れば、その六千万円は来年償還できるわけですね。しかし、それでは、せっかく五百頭以上の大規模な牧場経営に入って、牛を売って払えというようなことでは、将来この牧場経営という問題に対して不安を与えるわけでありますから、いま局長がおっしゃったように、そういう問題は個々の問題でありますが、そういう実態をどのように解決をしていくかということについては、十分県を指導してもらいたいと思うわけであります。  特に私はこの際申し上げておきますが、あの九州の久住、飯田高原は、いま農林省の方で総合開発として数十億円という金を投入しまして草地の開発、牧場づくりをやっておるわけです。だから、地域人たちはこの西組牧場の行方というものは非常に関心を持っておるのですね。五年たってもうこれは行き詰まったかということになると大変であります。だから、農林省が地域農政ということを前面に出しまして、本当に地域農民たちが喜んでそういう牧場経営に参加できる、参加するという意欲を持たせる、やる気を起こさせるためには、何としても、私は、その地方におきましては先発牧場としての性格を持っておりますこの西組牧場を発展させることが行政の責任じゃないかと思いますので、ひとつ農林省におきましても、そういう方向指導をしていただきたいと思います。  次に、食糧自給率の問題につきまして幾つか質問をしたいと思っております。  食糧自給力の強化につきましては、去る八日の国会決議を見たほど、今日のわが国にとっては非常に重要な政治課題となっておるわけです。ところが、昨年十一月に農林省が示しました六十五年見通しというものがあるわけですが、それによりますと、主食用穀物自給率は、六十五年で六八%という数字が出ております。ところが、この六八%という数字は五十三年の自給率の六八%と全く同じですね。五十三年の自給率と六十五年の自給率というのは数字が同じであります。ということになりますと、自給率向上しますということを大臣も国会で再三答弁をしておるのですが、十年たっても自給率は上がっていないということの計数を示しながら、自給率を引き上げますというようなことは言われないのじゃないかという気がしてならないのですね。  それから、これも六十五年見通しの中に出ておりますが、小麦にしましても、四%から六十五年で一九%程度にしか高めていないわけですが、これでは国民の食生活に対応できる自給率向上ということは当たらないのじゃないかというように思うわけです。小麦にしましても、それではどんな小麦をつくるかということについても全然考え方というものが示されていないわけですが、そうした自給率向上を叫びながら、農林省の出す十年後の見通しというものとの関連、そこら辺をどのようにとらえておるか、まずお聞きをしたいと思います。
  115. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  最初にお断りいたしますが、ただいま御指摘のございました六十五年見通しは、昨年の十一月に第一次試算といたしまして、農政審議会におきまして御審議をいただく資料として提出したものでございまして、なお今後検討が加えられるだろうと思います。  ただ、第一次試算におきます状況について私どもから申し上げますと、主食用穀物自給率でございますが、五十二年度が六七%、五十三年度確かに御指摘のように六八%でございまして、第一次試算の六十五年の試算でも六八%になっております。六十五年の試算の姿といたしましては、これは米と小麦になるわけでございますが、米については一〇〇%自給するということにいたしております。小麦につきましては、日本めん用等を中心にいたしまして国内産の小麦でほぼ全量を充当するというふうに考えております。したがいまして、五十三年の小麦の自給率は六%でございますが、六十五年では一九%となるわけでございます。これを面積なりで表示いたしますと、五十四年の作付面積は約十五万ヘクタールでございますが、六十五年には三十五万ヘクタール、この数字自体がさらに上げられるかどうかという問題は、私ども、三十五万ヘクタールの設定につきましては、小麦の導入の可能な自然的条件並びにこれらの生産を担う人の労働力の条件等各般の面から、拡大し得る一つの限界といたしまして三十五万ヘクタール、このような形で、第一次試算では六八%という主食用穀物の水準にいたしたわけでございます。なおこの点については私どももさらに検討はいたします。いまの段階では、第一次試算においてそういう数字になっておるということだけを申し上げておきたいと思います。
  116. 本郷公威

    ○本郷委員 私の質問に的確な答弁がなされていないのです。私が質問をしておるのは、十年たっても自給率が変わらないというようなことで自給力を強化するというような答弁がどこから出てくるのかということを指摘をしておるわけですよ。  もう一つ例を申し上げますと、畜産物に関する問題で、これも六十五年見通しの中に出ておるわけですが、「牛肉については、六十五年の肉用牛出荷頭数を二百万頭程度と見込み、総需要量の七割程度が国内生産によって充足されると見込まれる。」このように示してあります。ところが、肉用牛の自給率は三十五年には九六%であったわけですが、これが毎年下がって、五十二年では七五%になっております。そして五十三年では七三%、こうなっておるわけですね。ところが、六十五年見通しでは七一%となっておるわけですね。これは自給率を上げるんじゃなくて下げておるわけじゃないですか。これは下がってきたというように——言い方は別にしまして、ここで言う限りにおいては、七五%から十年たって七一%というならば、これで自給率を上げますという政府の見解にはならぬのじゃないですか。その点について御意見をお聞きしたいのですが……。
  117. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 牛肉の自給率お尋ねでございますが、私どもが昨年の十一月に公表した第一次試算におきましては、確かにそのようなことになっております。ただ、畜産物の需要と生産の見通しといたしましては、肉類全体で見通しを立てておるわけでございますが、それにつきましては、需要量が六十五年におきましては五百九万トン、それに対する国内生産量は四百二十万トンでございまして、自給率は八三%と見込んでおります。五十二年が七七%、五十三年が八〇%でございますので、それらに比べますと数%の上昇を見込んでおるわけでございます。  しかしながら、牛因につきましては、いま御指摘のような自給率が若干低下をするというふうにならざるを得ないと見ておるのでございますが、それは、肉の専用種の資源の拡大あるいは乳用種の肉利用の推進等、できる限りの国内生産の意欲的な増強を見込んでおりまして、五十二年から六十五年までの年平均伸び率を四・一%、国内生産を毎年毎年伸ばすということを意欲的に考えておるわけでございますが、それに対して需要がさらにそれを上回るということで、同じ五十二年から六十五年の年平均伸び率は四・六%、生産の方が四・一に対して四・六%程度需要は伸びるということのために、自給率は若干低下せざるを得ない。需要の方は五十二年に対して約一・八倍の増大になるわけでございますが、生産は一・七倍でございますので、そうした結果にならざるを得ないというふうに見込んでおるわけでございます。もちろん、そうすることにつきましても、大変増大する需要に向けて牛肉の生産を増加をするということについて、意欲的な牛肉の国内生産振興に努めてまいらなければならない、その一・七倍の生産増をするということについても最大限の努力をしてまいらなければならぬと考えております。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 今後の対策といたしましては、国内資源を活用し、国内で生産可能なものについては極力国内で生産することを基本にして、総合的な施策を講じてまいりたいと考えておる次第でございます。
  118. 本郷公威

    ○本郷委員 この牛肉の需要と供給との関係から見ての自給率、いま説明があったのですけれども、局長のおっしゃるように、これは今後の問題として非常に大きな問題だと私も理解をしております。  もう一つ問題にしておきたいのは、えさの問題ですね。えさの問題を抜きにして牛肉の自給率向上ということは考えられないのじゃないかということを私は指摘をしたいわけです。農林省が試算をした「オリジナル・カロリーによる自給率」という資料を私はここに持っておるわけですが、この自給率でいきますと、五十二年度の実績が四八%で、六十五年見通しが四五%、これも十年後には自給率が非常に下がっておるわけです。総合自給率が七〇%というようなことが数字に出ておりますが、このえさの問題を考えたときには、いま、これはおたくが試算をした数字でありますが、六十五年度見通しでは四五%という数字にしかなっていないわけです。特に輸入飼料だけに頼っております豚肉、鶏卵は、自給率はゼロというような数字が出ております。牛肉も外国飼料に頼っておるわけですが、これは三五%という数字になっておるわけであります。  だから、いままで政府が言ってきました豚肉自給率は九〇%だ、鶏卵は九七%だ、牛肉は七三%だというこの数字は、えさのことを考えない数字ではないか。だから、極端に言えば、もし外国の輸入飼料がストップすれば、豚も鶏も牛も、これは何日かたてば、もちろん備蓄をしてあると思いますが、計算上からいけば死んでしまうというようなことになるわけですが、えさのことを考えない自給率というのは、やはりいまの日本の置かれております状況から見まして若干問題がある。やはり自給率向上と言うならば、飼料対策というものが非常に重要になってくるということを考えるわけですが、ひとつその点お聞かせを願いたい。
  119. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 畜産物の安定的な供給を確保するためには、低廉な飼料の確保を図りますとともに、飼料国内自給力向上させることが重要であるというふうに考えております。この場合に、中小家畜向けの飼料穀物につきましては、その飼料穀物の生産自体がきわめて低収益のものでございまして、広大な面積で経営をするということでなければ、なかなか低廉なえさの供給が困難であるというふうに考えられるわけでございまして、わが国のように土地の制約等がございます場合には、なかなかそうした低廉な供給が困難である。したがいまして、国内生産につきましては、その拡大を図るということは非常に困難である、輸入がある程度増大するのは避けられないことであるというふうに考えております。  ただ、草食性の動物である大家畜向けの飼料につきましては、国内で生産増強が可能でございますし、またきわめて重要であるというふうに考えておるところでございまして、粗飼料の給与率を高めるために、草地開発事業によります飼料基盤の外延的な拡大、さらには、水田転作を含む既耕地における飼料作物の作付の拡大並びに粗飼料流通の促進を図る、さらには稲わら、野草等の未利用、低利用資源の有効利用を図るというようなことを積極的に進めてまいっておりますけれども、今後さらに飼料自給率向上に努めてまいる考えでおります。  飼料自給率を考えます場合に、私どもは可消化養分総量、いわゆるTDNで種々計算をいたしておりますが、五十二年のTDNベースの自給率は四二%でございますが、六十五年の見通しといたしましては、五ポイントそれを引き上げまして、四七%程度に見込んでおるわけでございまして、そうすることについて、国内の草資源開発等の先ほど申し上げましたような対策を鋭意進めてまいるというふうに考えておるわけでございます。  中小家畜のえさにつきましては、これは大部分飼料穀物に依存する面がございますので、先ほどお答えいたしましたように、国内生産自体がその収益性から見てむずかしいということでございまして、ただいま輸入をいたしております千四百万トンの飼料穀物を仮に国内で生産するといたしますれば、反収を五百キロと考えた場合には約二百八十万ヘクタールの土地が必要であるということにもなりますので、なかなかむずかしいと考えております。ただ、安定的に供給が行われるために、備蓄対策なり価格安定対策等の措置を当然講じておるところでございます。
  120. 本郷公威

    ○本郷委員 飼料問題につきましては、まだ十分論議をしたいのですが、時間もありませんし、党より飼料二法の提案を準備しておりますので、その論議の中でまた飼料問題については深めていきたいと考えております。  最後に、過剰米問題で二、三お聞きをしたい。  去る十二日に、わが国の過剰米輸出に関して日米間で農産物協議が行われております。その合意した内容についてお聞かせ願いたいのですが、特に米国の主張に対して政府としてどういう態度で臨んだか、それから、米国の主張をのまなければならなかった理由、そういうような政治的な背景について、政府の見解をまずお聞きをしたいのです。
  121. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 去る十日から十二日までの間にわたりまして、日本の余剰農産物輸出について日米の協議をいたしました。その結果、日本側として次のような輸出目標を説明いたしまして、これを米国側が了承するという形で協議が調った次第でございます。  内容といたしましては、一九八〇年から八三年までの間に総量百六十万トン、このうち一九八〇年度分、今年度分としては四十二万トンでございます。それからまた、この数量のうちで米の国際需給上双方が特に関心を持っている地域、具体的にはインドネシア、韓国等でございますが、この地域については総量で六十四万トン、うち一九八〇年度分が二十二万トンでございます。したがいまして、その他のアジア、アフリカ地域等につきましては、総量で九十六万トン、うち一九八〇年度分が二十万トンという内容でございます。  このほか合意しました点といたしましては、毎年両国間において、来年度一九八一年度から八三年の各年の輸出目標その他世界の米の需給事情等について協議を行うことにいたしました。また、災害その他によって国際需給に著しい変動が生じた場合には、両国間において協議を行うことにした次第でございます。  この結果、アメリカの国内におきまして精米業者が、アメリカの通商法によります三百一条の提訴をしておりました件については、この協議が成立したことによって実質上それが意味がなくなるとわれわれは理解しておりますし、アメリカ側においてもそのようなことになるよう努力をするという意図の表明があった次第でございます。  このような数量につきましては、私どもとしては、この農産物の輸出、過剰の米の輸出というものは一時的なものであり、また援助的な性格の強いものであるということを主張いたしましたし、米の世界の需給状況を見ても、それほど大きな悪影響はもたらしておらないのではないかという主張をした次第でございますが、一方アメリカにおいては、従来の米の世界市場が一千万トン程度で非常に限られておる、その中で一挙に百万トン近くの米の輸出が行われるということは、いろいろな面で米の国際需給に悪影響をもたらしておるという強い主張がございまして、当初日本側が計画しておりました年間二十万トン、合計で八十万トンという数字以上のものは絶対に困るという強い主張がございました。その間、各国の米の需給状況等も含めまして国際的な状況も協議をいたしましたが、アメリカといたしましても日本側の主張も相当了解をいたしまして、先ほど申しましたように総額で百六十万トンまでであればやむを得ないというふうな話し合いがついたわけでございますが、この点は、わが国としても、FAOの余剰農産物処理原則に照らしまして、国際市場において悪影響を及ぼさないという配慮もしなければならないと考えて、この話し合いに応じた次第でございます。
  122. 本郷公威

    ○本郷委員 素朴な国民の声として、東南アジアやアフリカでは食糧難のために人民が本当に苦しんでおるわけですね、日本では米が余っておるのだから、その余った米を送ったらいいではないかという国民感情というのがあるわけです。発展途上国の援助要請があると思うのですが、これに対して今後どのようにこたえることができるのかどうか、そういう点についてもお聞かせを願いたい。  いま一つは、国内では米が余っておると言いながら輸入米が現実にあるようです。七九年度には一万五千トン輸入しておるようです。持ち越しが  一万三千トンですから合わせると二万八千トンという輸入米があるわけです。その使途は、工業用に一万一千トン、主食用に二千トンという数字が出ております。国内に余っておるのに外国から米を輸入して、一体だれが食べているのかという感じがするわけですが、そういった問題についても政府の見解があればお聞かせを願いたい。
  123. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 第一点の、東南アジア等の特に食糧不足に悩む国からどのような要請があるかという点については、今年度分についてはまだ具体的な要請はございません。しかし、先ほど申しました総量百六十万トンの中で、特にアジア、アフリカ地域とその他の分につきましては、総量も九十六万トンになっておりますので、私どもはこの枠の中でできるだけ対応してまいりたいと考えております。  ただ、将来とも援助用に米を生産するかどうかは、現在のように非常に価格差がございますので、これはなお考えなければならぬことであると思っておりますけれども、当面この枠の中で、できるだけこれらの食糧不足国に対応してまいりたいというふうに考えております。  それから、二番目の輸入の問題でございますが、これは実は特殊の例でございまして、沖繩におきましては、復帰後、米価水準が、従来非常に安かったということもありまして、年々本土の価格水準に近づけるような調整措置をとっておるわけでございますが、この調整措置をとっております期間は、やはりある程度安い米も輸入していく必要があるということで、モチ米等につきまして沖繩用のもの、ないしはあわ盛りの原料になるような米というものを、主として沖繩について輸入をしておるというふうな特殊事情でございます。
  124. 本郷公威

    ○本郷委員 終わります。
  125. 内海英男

  126. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日ソのサケ・マス漁業に関する政府間交渉が、四月二日からモスクワで開始されてから、十二日目という異例のスピードで四月十三日妥結を見たのであります。  この日ソのサケ、マス漁業政府間交渉については、去る四月三日午前の当委員会で、種々政府の見解をただすとともに、強力な交渉を要請したところであります。  そこで、ことしはアフガニスタン問題等をめぐる両国関係が冷え込む中での交渉であっただけに、見通し的にはいろいろ懸念する向きもあったわけであります。昨年は十八日間という交渉でございましたが、ことしは昨年よりも六日間も早く妥結したということになるわけで、この点については一応評価できるわけでございますけれども、割り当て量も昨年並みで一挙に解決したという背景には、いろいろ新聞等でも報道されているようなこともあったかと思いますが、直接交渉に当たった政府として、どのような交渉経過であったか、また、妥結の内容と、今次交渉に対する農林水産省当局の評価をあわせて、まず御報告をいただきたいと思います。
  127. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 日ソサケ・マス交渉につきましては、御指摘のとおり四月二日からモスクワで開催されたのでありますが、今年の規制措置量に関する提案をめぐり、日ソ双方の間で激しい応酬が行われたものでございます。  規制数につきましては、わが方は、資源が上昇傾向にあること、今後においても資源の増大が確実に見通されることなどから、第一に、総漁獲量四万五千トン、昨年は四万二千五百トンであったわけでありますが、四万五千トン。第二に、禁漁区域の一部縮小などを主張いたしました。これに対しましてソ連側は、本年はカラフトマスの不漁年であり、また資源は依然として不良状態である、こういうこととして、総漁獲量につきましてはこれを大幅に削減して三万五千トンとしたい。第二に、一部水域における操業期間を短縮してほしい。第三に、漁業協力費として一千万ルーブル、邦貨に換算いたしまして約三十八億円相当、昨年は三十二億五千万円であったわけでありますが、三十八億円相当を欲しい、こういうことを主張いたしまして、交渉は難航したわけであります。  このような状況の中で、交渉の局面を打開するために、四月十日に今村水産庁長官を訪ソさせ、鋭意交渉の促進に努めまして、その結果、数回にわたる今村長官・クドリャフツェフ次官のトップ会談をいたしまして、実は、現地時間の十三日午後、日本時間は十三日の夜になるわけでございますけれども、第一に、総漁獲量を初めとする規制措置はすべて前年と同様にする。具体的には、前年同様の四万二千五百トンとし、ただし、漁業協力費につきましては、向こう側の主張が若干下がったわけでございますが、三十七億五千万円とする、そういうことでようやく妥協を見たものでございます。
  128. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官、一応の報告を受けましたが、確認の意味で申し上げますけれども、今次交渉経過によって減船の心配はない、かように認識していいですか。
  129. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 ただいま御報告申しましたように、総漁獲量につきましては昨年どおりでございますし、規制区域についても昨年同様でございます。したがいまして、減船の必要はないと考えております。
  130. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今回の妥結で結果的に最も問題になるのは、対ソ漁業協力費が昨年よりも五億円ふえたわけでございます。したがって、漁民の負担が多くなるわけでございますけれども、一方では、漁民のいわゆる負担能力というものが昨年よりもぐっと落ちてきているという否めない事実がございます。すなわち、日本側が払う三十七億五千万円のうち、四五%は政府財政負担でありますが、残る五五%はサケ・マス業界が支払うものであることは言うまでもありません。実際にはサケ・マスのえさ工場などを現物でソ連側に支給することになっておると言われておりますが、いずれにしても、事実、サケは日本沿岸でも五十四年度は豊漁年で八万トン余りも水揚げがあったわけであります。国内の在庫が現在五万トンから六万トンに達しております。過剰状態は依然続いておりまして、そういった関係から値下がりがしている実情も御承知のとおりであります。一方、燃料油の高騰などでサケ・マス漁業のコストも上昇しておるわけであります。  このような諸問題を抱えて、日ソ交渉の今後の事後処理が例年になく問題であり、難航しそうな感じがしてなりません。また事実難航するわけであります。この点は政府はどういうふうに、今次妥結の結果、国内の問題として見ておられますか、政府の見解を求めます。
  131. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 今回の交渉で漁獲量が減らされるではないかということを大変心配をしたわけでございますけれども、漁獲量が三年続いて同じ水準に維持をされたということで、減船等の最悪の事態を回避できたのは非常に幸いであったというぐあいに考えております。  先生指摘のように、漁業を取り巻く情勢は最近非常に苦しいものがございまして、燃料の高騰であるとか、それからサケの需給関係が緩みつつあるということでございますし、また、国の財政事情も、先生御案内のように、いろいろ大変苦しい状態にございます。それで、一昨年につきましては総額十七億六千万円のうち約七億九千万円、昨年については総額三十二億五千万円のうち約十四億七千万円、政府が助成を行ったわけでございまして、本年の取り扱いにつきましては、諸般の事情をいろいろ考慮いたしまして、具体的にはこれから関係省庁などとの間で相談をしてまいりたいと考えております。
  132. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 質問に答えていないのでぴんとこないのだけれども、それでは、要するに、私がいま政府の見解をただした問題について、結果的には、サケ・マス業界が支払う五五%はいろいろな問題が重なってはおるけれども心配はない、このように政府は見ておるのですか。
  133. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 これから関係省庁と、どういうぐあいな負担でどういうぐあいに処理するかということを慎重に検討してまいりたいと考えております。
  134. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 サケ・マス業界がかなり厳しい状態に置かれることは政府も十分認識しておると思うけれども、ことしは漁業協力費を五億円多く支払うことになりますから、現在でも厳しいのに従来にも増してもっと厳しくなってくるということで、政府としても相当強力な支援をしなければサケ・マス業界も容易ではない、こういうような認識であることには間違いないか、その点も私の考えと同一であるか、確認の意味でもう一度お答えいただきたい。
  135. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 サケ・マス業界の苦しい状況については十分承知をいたしております。
  136. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官、いまお聞きになったようなことで、次長から答弁がありましたが、交渉は一応妥結した、昨年よりも六日間も早く妥結して、昨年並みの割り当て量ということで一応政府も評価しているとおっしゃっていますけれども、われわれはこれでは納得しない。大体昨年は四万五千トンという要求をしたわけです。それが四万二千五百トンに減らされて、ことしもその四万二千五百トンで昨年並みとなっていますけれども一、本当の意味で昨年並みといえば四万五千トンでやってほしかった、かようにわれわれは思うわけです。ところが一方、業界はそういう厳しい状態でありますけれども、政務次官もその点は十分認識されて、業界の意見をよく聞き、指導に当たってもらいたいと思いますが、どうですか、政務次官
  137. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先ほどお話をいたしましたように、私たち非常に厳しい状況の中で日ソ交渉を行ったわけでございますが、総漁獲量については昨年並み、ただ協力費が、向こう側は一千万ルーブルと言っておったわけでありますので、これは邦貨に換算いたしますと、ことしは円安の影響があって三十七億五千万円というふうになって五億円アップ、こうなってしまったわけであります。先生指摘の業界の事情については私たち十分理解をしておりますが、同時に、これは財政当局等との話し合いをいろいろし、関係各省との打ち合わせをしなければならない問題でございますので、実情を十分に踏まえてはおりますが、またいろいろ検討して先生の御趣旨はできるだけ体してまいりたい、かように考えております。
  138. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官から御答弁いただきましたように、日ソサケ・マス政府間交渉の結果に基づく国内における諸問題の処理については、ぜひひとつ積極的に推進をして、サケ・マス業界の保護のために十分対策を講じていただきたいと重ねてお願いしておきます。  次に、先般来当委員会でいろいろと政府の見解をただしてきた漁業問題について、若干留保した問題を数点お伺いしておきます。  まず一点は、北海道沖の韓国漁船問題でございます。これについては、過日当委員会でも政府の見解をただしてきたことでございますけれども、御承知のようにこの問題は、わが国が五十二年に資源保護のねらいでわが国のトロール船の操業を規制するために設けたオッタートロール線内に韓国漁船が入り込み、地元漁民の反発を招いているものであります。これは俗に言うと南北戦争みたいなことになっておりますけれども、円満な解決を願うために政府の見解をただして督励をするわけでございますが、わが国は一貫して、日本漁船と同じ操業をするよう韓国側に求めていると認識しております。その結果、韓国は昨年末、自主規制案を示したわけです。ところが、その自主規制案というものがわが国の要求とほど遠いために、ことし一月には水産庁のトップ会談も開かれたわけでございますけれども、結論が出ないままに終わり、とりあえず実務者レベルで解決策を話し合うということが決まったわけです。  そこで、北海道沖での韓国の大型トロール船の操業をめぐるトラブルの解決のため、日韓の漁業関係実務者協議が去る四月九日より三日間の日程で韓国のソウルで行われたわけですけれども、その協議の経過と交渉内容を御報告願いたい。
  139. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、四月九日から十一日まで日韓の実務者協議ということで、わが方からは水産庁から佐竹振興部長ほか、それから韓国の方も首脳者が出てまいりましていろいろ協議を行ったわけでございます。私どもはかなり突っ込んだ話をいろいろいたしまして、わが国からはわが国の北海道漁民の窮状、また沿岸国の周辺で操業をするわけでありますから、沿岸国の規制、ことにその規制を守るべき漁民は零細漁民であるので、その立場を十分考えて、十二月の自主規制ということではわが方の要求とはほど遠いのであるから、さらに一層努力するようにということでいろいろな話し合いをいたしました。それに対して韓国の方は、韓国の漁船もいま北海道の水域を追い出されたらすぐに行くべき場所がないというようなことで、窮状の訴えがいろいろありました。しかし、この問題の解決のためには、もう少し具体的に詳しく双方でさらに検討をしようではないかということで会議を終了いたしました。それで、交渉が非常に長引いてまいりまして、いつまでも問題を未解決にはほうっておけないということで、改めてきわめて近い機会に再度実務者による話し合いをしたいということを決定して帰ってまいったわけでございます。
  140. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昨日十四日に帰国しました水産庁の佐竹振興部長が、今回の日韓漁業実務者協議に出席した結果について記者会見を行っておるようでありますが、それによると、日韓双方ともそれぞれの主張とその背景説明をしただけで、協議は平行線のまま終わった。二つには、しかし、二百海里漁業専管水域はお互いに適用しないことを確認し合った。三つには、五月の連休明けに再度協議を開くことになったと、概要以上三点についての記者会見発表になっておるようでありますが、この点については間違いございませんか。
  141. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 お答え申し上げます。  記者会見の結果は私も確認をいたしてはおりませんが、第一点の平行線をたどったという点では、双方の間で何ら合意を見ることができなかったわけでありますから、残念ながらまだ平行線をたどったということは事実でございます。  それからなお、二百海里を適用しないということを双方が確認し合ったという先生の御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、そのような発言を佐竹部長がされたことはないというぐあいに理解をいたしております。実務者会談でございますから、そういうような大きな政策の変更あるいは政策の決定に関するようなことを双方で確認し合うというようなことはなかったというぐあいに理解をいたしております。  第三点、なるべく早く会う、さらにフォローアップの会議をやるという合意があったことは事実でございます。
  142. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 交渉に当たった佐竹振興部長から次長が記者会見の模様を余り聞いてないようなことでありますけれども、これほど重要なる問題を当局の次長として報告を受けてない、またどういう記者会見をしたかということも承知していないということは、少し怠慢ではないか、少し問題を軽視しているのじゃないか、私はこういうふうに受けとめざるを得ません。こういう重要な問題については、これは西日本の漁民と北海道の漁民との関係で相当真剣な、南北戦争みたいなことがあっているわけですから、もっと真剣な姿勢で取り組んでもらわなければいかぬ、かように思います。  この点については政務次官は全然報告を受けておりませんか。どうですか。
  143. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 ただいま次長が御報告したとおりでございまして、今回は実務者レベルで日韓双方の立場、主張について積極的に説明をし、相互の立場については双方とも十分理解をした、こういうふうに私報告を受けております。しかし、さらに突っ込んで具体的にどういうふうにこの問題解決の手順をとるか、措置を講ずるかということについては、問題が問題だけに結論に達しなかった、こういうことでございますので、連休明けに再度会おう、こういう話でございますから、その技術的な実務的な問題についての話の詰めでございまして、いま次長が答弁いたしましたように大きな問題についての言及はなかった、こういうふうに考えております。
  144. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 佐竹振興部長の記者会見によると、二百海里漁業専管水域はお互いに適用しないことを確認し合った、こういうふうに述べておられますが、政務次官は、この二百海里問題について、韓国側が二百海里設定の意図が近い将来あると見ておられるのか、当分ないと見ておられるのか、その点の感触はどう受けとめておられますか。
  145. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 これは韓国の考えでございますから、私はつまびらかにはいたしませんが、しかし、この二百海里の水域を漁業専管水域に決めることについてのいろいろな困難な問題については韓国側も十分に理解をしている、こういうように考えております。
  146. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次長にお伺いしておきますが、連休明けに恐らく再開されるということは間違いないと思うけれども、この解決の見通しはどうなんですか。水産庁としてはどういうふうに見ていますか。ことしじゅう、来年もかかっても容易でないと見ているのか、ことし後半の早い機会に解決の見通しが開けるのか、それとも一部ずつでも解決の兆しがあるのか、その点どうなんですか。
  147. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 日韓の北海道沖の漁業問題はかなり長い問題でございまして、それだけに解決がなかなか簡単にいかないということでございますけれども、また同時に、先生指摘のように、この問題、いつまでも放置ができるというものではございません。実務者会議をさらに連休明けにでも開いて、さらに交渉を詰めてできるだけ進展を図りたいというのが私どもの考え方でございますし、韓国もこの間の実務者会議では、解決について具体的に譲歩するかどうかという意味ではございませんけれども、この問題の深刻な情勢についてはかなりの認識を持っているというような感触を得ておりますので、精力的な会議を続けて、できるだけ早く解決を図る方向に進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  148. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次長に重ねてお伺いしておきますが、日韓双方ともそれぞれの主張とその背景説明をしただけで協議は平行線に終わった、こういうことですけれども、それでは日本側としてどういう主張をし背景説明をしたか、この機会にこれも明らかにしてください。
  149. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 非公式会談でございまして、中身につきましてはこの段階で、どういう主張を相互にし合ってどういう結果があったということを具体的に触れることは控えさせていただきたいと思いますが、わが方の立場は一貫して、国内の漁民の守っている規制措置を韓国の漁船も守っていただきたいということでございます。
  150. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この程度のことが答弁できないでは、あなたが勉強不足で想定問答もできておらぬからそういうことを言うんだろうと思うが、こういったことが明らかにできないようなことで、どうしてあなた国民の代表として交渉に当たることができますか。  政務次官、どうですか、この点についてはあなたはどういうふうに承知していますか。
  151. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 ただいま次長もお答えいたしましたように、当方の立場は、北海道周辺の海域で、これはいわゆる二百海里云々の問題はさておいても、少なくとも国内船が自主規制をしている、漁業規制をしている海域でございますから、その国に他国船が来て、国内船が自主規制しているのを、あえてその規制を外して入ってきて漁業を行うということについては、これはもう避けてもらいたい、こういうことを一貫して言っているわけでございます。ただ、その点に対して韓国側も、たとえば北の方から漁業を締め出されてきたとか、いろんな内部の事情があって、向こう側の事情があって、それの説明等、やはりいろいろ向こうとしても当方に説明したいことがあった、こういうことで、結構相当の時間を費やした、こういうふうに私は理解をしているわけであります。
  152. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 具体的にいろいろ私承知している点を申し上げるゆとりもございませんけれども、これは深刻な西日本、また北洋漁民との関係の問題でありますが、同じ日本の動物性たん白質を確保する漁民にとっては真剣な問題でありますので、ひとつ粘り強く、急げと言ってもなかなかこれは困難な問題があることも承知しておりますけれども、私に言わせれば、ゆっくり急げといいますか、ひとつ慎重に、早く、そして国益に合致する方向努力を続けていただきたい、かように思います。  他にたくさん質問する問題がございますので、漁業関係については以上で一応質問を終わらせていただきます。  過剰米輸出問題について質問いたします。  本件については、四月三日午前の当委員会で、本員が政府の見解を求めるとともに、強力な交渉を政府要請したところでございますが、去る四月の十日、十一日の二日間、さらに一日延長して十二日に日米の合意を得た、すなわち過剰米輸出についての日米間の摩擦を解決するための外務省での日米農産物協議が行われたわけであります。日本から澤邊事務次官とハザウェー米農務次官との協議だったわけでございますが、これについて先ほど質問に答えて答弁もあったのでありますが、改めてこの三日間の協議の経過、合意内容及びそれに対する農林水産省当局の率直な評価を、まとめてひとつ本員にも御報告をお願いしたい、こう思います。
  153. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 先般の本委員会におきまして御指摘を受けました余剰農産物につきます輸出の問題につきましては、ただいま御指摘がございましたように、去る十日から十二日までの間、日米両方の代表による協議を行いましたが、その結果、わが方から次のような輸出目標を説明いたしまして、米側がこれを了解し、協議が調った次第でございます。  その内容といたしましては、一九八〇年から八三年までの総量百六十万トン、うち一九八〇年度分四十二万トンでございます。それから、以上のうち、特に米の国際需給の上で双方が関心を持つ地域といたしまして、具体的にはインドネシア、韓国等でございますが、この地域に対する輸出は、総量が六十四万トン、うち一九八〇年度分が二十二万トンということでございます。したがいまして、その他のアジア、アフリカ地域等につきましては、総量九十六万トン、うち一九八〇年度分が二十万トンという内容でございます。  このほか協議が調いました点は、毎年両国間におきまして一九八一年から八三年の各年の輸出目標その他世界の米需給事情等につきまして協議を行うことといたしました。また、災害その他によりまして国際需給に著しい変動が生じた場合には、両国間において協議を行うということにした次第でございます。  これによりまして、アメリカの国内におきまして精米業者がアメリカの通商法に基づきまして三百一条の提訴というのを行っておりましたが、この提訴につきましては、今回の協議の結果、実質上これが意味がなくなるというふうに理解をいたしておりますし、アメリカ側におきましてもそのような努力をするという意図の表明があった次第でございます。  このような結果になるまでの間、三日間にわたりまして日米両国の立場を説明し合った次第でございますが、わが方といたしましては、先般本委員会でも御説明いたしましたようなわが国立場、特にこの過剰米の輸出が一時的なものであり、また援助的な性格の強いものであって、これが国際市場に大きな影響を与えるということはないのではないかという点を主張した次第でございますが、アメリカ側といたしましては、米の国際市場というものが一千万トン程度で限られておるものである、その中で急激に百万トン近いようなものが輸出をされるということになることは明らかに国際市場に大きな影響を持っておるという主張でございまして、特に日本の米の価格国内価格に比べまして非常に安い価格で輸出をしておるということについての指摘がございまして、アメリカ側としては、当初のわが国計画、すなわち五カ年間で百万トン、今年度以降八十万トンという数量にとどめるべきであるという強い主張があったわけでございますが、世界の米の需給事情等を具体的に話し合いました結果、先ほど申しましたように、百六十万トンということで話し合いがついた次第でございますので、われわれといたしましても、世界の米の需給事情に悪影響を与えない形で処理をしなければならないというFAOの余剰農産物処理原則に照らして考えますと、この程度の数量でやむを得ないものというふうに考えておる次第でございますが、この数量の範囲内でできるだけ世界の米の不足国等に対して輸出を行っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  154. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいまの報告で、米精米業者協会が米通商代表部に求めていた日本への制裁措置については、発動されるおそれは事実上なくなったということで、この点は了解しますが、もう一点は、米側が前々から主張しておりましたダンピング問題については、これまた消滅した、こういうふうに理解していいですか。
  155. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 今回の協議が調いましたので、特にダンピング問題についてガットに提訴するというようなことはないものというふうに考えております。
  156. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 過剰米輸出問題に関する日米協議の結果、ただいま御報告いただきましたが、今後四年間で百六十万トンの輸出が認められたわけでありますが、しかし、今後四年間でわが国は五百三十万トン、輸出分を含めましての過剰米を処理しなければならず、過剰米処理計画の再検討が必要となってくる、かように私は認識いたしております。  そこで、過剰米処理がかなり厳しい事態に立たされることになったと思うが、その点の見解はどうですか。
  157. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 過剰米処理の計画につきましては、当初この計画を作成いたしました段階におきましては、総量が四百八十万トン、このうち工業用が百五十万トン、輸出用が百万トン、えさ用が二百三十万トンという計画を立てておったわけでございますが、その後、全体の過剰米の数量が百七十万トンほど増加いたしまして、総量といたしまして六百五十万トンが見込まれる段階になったわけでございます。この六百五十万トンの処理につきましては、工業用については当初どおり約百五十万トン見込んでございますけれども、今年度九十万トンの輸出をいたしましたものとただいま申しました百六十万トンの輸出枠とを含めまして、輸出用が二百五十万トンということに相なりますので、残りの二百五十万トンはえさ用に向けたいというふうに考えておるわけでございますが、このえさ用の二百五十万トンは、当初の二百三十万トンの計画から比べましてはなはだしく増加したということでもございませんので、当初計画と考え合わせましても、今後の過剰米の処理について大きな支障はないものというふうに考えておる次第でございます。
  158. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 過剰米の処理計画についていま御報告がございましたが、私は次のように認識しているのです。ちょっとあなたの説明、さっさとやるものだから書きとめる余裕がなかったけれども、私がゆっくり申し上げますので、そのとおりであるかどうか、ひとつ確認の意味でお答えをいただきたいと思う。  五十四年度の農林予算編成のときにまとまった内容等を見ますと、五十四年からおおむね五年間で四百八十万トン処理することになっておった、こういうふうに認識しておるわけです。ところが、米の消費拡大のため五十四年産新米の配給をふやしたために、五十三年産米が百万トン余り、さらに五十四米穀年度の米需給が、千百七十万トンに対して千百十五万トンで、五十五万トンの狂いが出たわけです。そして、ベトナム貸付予定だった十五万トンが中止となったことで、合計百七十万トンの狂いが出た、こういうふうに私は認識しております。したがって、過剰米処理は四百八十万トンから六百五十万トンにはね上がることになる、こういうふうに認識しておるわけです。五十四年度は輸出が九十二万トン、加工用が二十三万トン程度を処理したので、飼料用はゼロであったわけですが、約五百三十万トンを今後四年間で処理しなければならなくなったわけですが、輸出が今回百六十万トンに抑えられたために、まあ日米協議の結果、もう少し強く交渉しろ、弱腰じゃいかぬ、こう言って、私四月三日の当委員会で政府を大分叱咤激励したわけですが、結局百六十万トンで押し切られたわけです。そうした結果、加工、飼料用で三百七十万トンを処理しなければならなくなった、こういうことになるんじゃないかと思うのですけれども、長官答弁と私の言っていることが多少相前後しておりますから、私の認識が間違っておれば訂正いただくと同時に、いずれにしても、私は処理にかなり厳しい結果となってきたと思うのです。政府は、食糧については、もう厳しくても国民に心配を与えぬために、心配ない、大丈夫だ、見通しは明るいとかすぐ言われますけれども、実際はそうでないと思っているのですが、その点の数字の結果と、また見通しはどうであるか、あわせて改めてお伺いをいたしたい。
  159. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 数字につきましてはただいま先生からお話があったとおりでございます。私が申しましたのは、全体の六百五十万トンについて輸出用とえさ用がそれぞれ二百五十万トンずつになったというふうに申し上げた次第でございますが、今年度以降の五百三十万トンについて見ますと、ただいま先生がおっしゃったとおりでございます。ただ、この工業用、飼料用につきましては、当初の計画から比べましてはなはだしく大きくなるものではございませんので、当初考えました時点と比べてみましても、この処理がはなはだしく困難を伴うというふうには考えておらない、できるだけ円滑な処理が行われるように努力をしたいということを申し上げた次第でございます。
  160. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、過剰米処理で最も財政負担のかかるのは飼料用ですね。ところが、その処理実績は五十四年度はゼロだったわけです。それだけに今後の処理計画はかなり厳しくなる、かように思うわけです。ちなみに、食糧庁は第一次処理のときも飼料用は三百八十万トンをやっており、やろうと思えばできる、こういう強気の姿勢だったわけですね。いずれにしても過剰米処理の財政負担はますますかさむということになるのだが、この点はどういうふうに検討しておられますか、あわせてお伺いしたい。
  161. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、結果的にはえさ用の処理が多くなるわけでございますが、このえさ用の処理につきましては、第一次の処理量に比べますとまだ少ない量でございますので、処理の能力自体等については問題がないと思いますが、財政負担等につきましては、これに応じた財政負担はやむを得ないものと考えておる次第でございます。
  162. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 過剰米輸出の日米協議とは別にもう一、二点お伺いしておきますが、対日貿易監視委員委員長のジョーンズ米下院議員を初めとする米議員団五人が来日した折、同じく澤邊次官と会い、さきの過剰米輸出問題とともに、牛肉、オレンジなどの政治的関心品目についても話し合いがなされたわけであります。その席上、米議員団が、今後十年間で牛肉の輸入量はどの程度の増加が期待できるかとただしたのに対して、澤邊事務次官は、少なくとも現在総輸入量で十三万トン程度に比べ一・五倍以上になるだろうとの見通しを表明されたと伝え聞いておりますけれども、この問題について事実関係はどうであるか、この点、ちょっとお伺いしたいと思う。
  163. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えを申し上げます。  四月四日の午前に米国の下院歳入委員会ジョーンズ及びフレンツェル両議員、さらに下院の外務委員会のボンカー、アイルランド、フィッシァンの三議員が農林水産省を訪問いたしまして、澤邊次官以下と約一時間にわたりまして会見をいたしたことは事実でございます。  その席で、澤邊次官から、日米の農産物貿易の諸問題はMTNの終結をもちまして現段階では締めくくられておるはずだということを申しますと同時に、わが国国内生産の過剰状況、特に米の転作問題等にも触れまして、貿易関係を含めましたわが国農政の基本的な考え方というものを冒頭に説明をいたしました。  米側の各議員から、牛肉問題、オレンジ問題、製材の問題、それから魚の問題等につきまして個別に話が出ましたが、その席上、牛肉の問題につきましても、需給見通しにつきまして質問が向こうからございまして、その際に、現在は約十三万トンの輸入をしている、将来の問題については全く仮定の問題であり、また、現在農政審議会で将来の需給見通しを検討しているところだという説明をいたしまして、さらに、その場合に輸入の量が将来ふえるかどうかという質問がございましたので、澤邊次官から、国内の生産状況及びそれに基づく輸入状況を考えてみると、やはり牛肉の輸入はある程度までふえるということは申したわけでございます。
  164. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、局長、この牛肉の輸入問題について一・五倍以上になるだろうと言われたというけれども、重大発言なんだけれども、この発言についてはどのような根拠で発言されたのですか、国民の前にひとつ御答弁いただきたい。
  165. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 このとき私もおりましたが、その席上で澤邊次官がおっしゃっておられましたのは、これはあくまでも現在の段階で、牛肉の需給関係は長期見通しとの関係もあるので、農政審議会において今後検討していただかなければならぬ問題だけれども、きわめて暫定的な試算ということで考えてみたならば、輸入状況はさような状況で伸びるかもしれないということを申されたということでございます。
  166. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ちょっと勇み足の調子のいい発言をしているようだから、戒めるためにも私は申し上げておくわけですけれども、ちょっと心配発言であり、問題発言であると思っておるのです。言うまでもなく、わが国畜産業界への影響というものを十分考えて発言してもらわなければ、これはゆゆしい問題であると注意を申し上げておく。  なお、これに関していまも局長は若干補足的な答弁がございましたが、この協議の席上で、日本のミカン過剰問題はジュースなど加工用に回すことで解決できるのじゃないかという問題やら、丸太ばかりでなく製材品をもっと輸入してもらいたいとか、タラの輸入割り当て量をふやしてもらいたいという、もろもろの要請があったやに聞いています。こういった貿易拡大について提案あるいは注文が相次いでなされた、こういうふうにわれわれは仄聞いたしておりますけれども、これらについてはどのような応答をしたのか、これもあわせてお答えをいただきたい。
  167. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 特にアイルランド議員からオレンジの問題に関しまして、オレンジのジュースを日本のミカンジュースとブレンドして、それで消費を伸ばせばより消費が伸びるではないかという御質問があったことは事実でございます。それに対しまして私どもの方から、現在のミカンの過剰の状態、その場合さらにミカンのジュースに特に過剰処理のために回しているという実情を説明いたしまして、現在のMTNの交渉以上のことはできないということをわれわれははっきりと申した次第でございます。  それからまた、オレンジにつきましては、新規の参入者の割り当てをさらに増加させる必要があったのではないかということも質問がございましたけれども、これはわれわれもMTNの交渉のとおり実施をいたしたわけで、米側と合意の上で二五%の新規参入を認めるということにしたので、これ以上のことはできないということをはっきり申しました。  それからボンカー議員から、製材の輸入をふやしてほしいという質問がございましたが、すでに製材は自由化されているということを申しましたところ、先方が、カナダと米材、アメリカの製材との間で差があるのではないかという御質問がございましたので、それに対しましては、もっぱらこれはアメリカの製材のカナダの製材に対する競争力の問題であって、自由化している以上、これはアメリカ側がもっと競争力がつくような状態でなければ意味がないのだということで話をいたしました。  それからまた、同議員から、魚の関税の引き下げと、それから、アメリカの二百海里の水域内における日本漁船に対するライセンスを与える際に、日本側がアメリカに与えるクォータと関連を持って交渉するということを言ってまいりました。これにつきましては、魚の関税の引き下げは、すでにMTNで実施をするということを約束したとおりであるので、これ以上の引き下げは考えられないということをはっきり申しました。また、クォータの問題につきましては、クォータは設定しているにもかかわらずアメリカからの輸入がないのは、むしろアメリカのスケソウその他の魚の価格等の交易条件が主たる問題であるから、これは水産庁と米側の話し合いが当時ございましたので、むしろそこで話し合いをしてほしいということを申しました。  それから最後に、ジョーンズ議員から日本の過剰米の輸出につきまして話が出ましたので、これに対しましては、当時はまだハサウェー次官が来ておりませんでしたので、澤邊次官からハサウェー次官との間で会合を持ちたいということを話をいたしまして、これは先ほど食糧庁長官から御答弁があったとおりの結果になったわけであります。
  168. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、農業者に関する労災保険特別加入制度の問題についてお伺いをいたします。  本制度は、労働者災害補償保険法の中で、昭和四十年十一月より農業者も特別加入できるようになったわけであります。特別加入できる農業者の範囲というものは、農業事業主等、すなわち雇用労働者を使用する農業者及び家族従事者、さらに指定農業機械作業従事者、すなわち一般農業者で、指定した農業機械を使用し、特定の作業に従事する者となっており、また、指定農業機械作業従事者の適用対象機種は、当初から適用対象とされている機種として、動力耕うん機、農業用トラクター、動力溝掘機、自走式防除用機械、自走式刈取機、自走式収穫用機械、自走式運搬用機械、そして、四十九年四月から適用対象とされている機種に、自走式田植機、動力脱穀機、動力カッター、動力草刈機、動力摘採機、動力揚水機、さらにことしの四月から適用対象として機種の拡大を図って、まことに結構なことでありますが、その中に動力剪定機、動力剪枝機、チェーンソー、単軌条式運搬機、コンベヤー等が拡大されたわけであります。  ちなみに保険料としては、農業事業主等みなし賃金総額の千分の五となっておりまして、従来は千分の四であったわけでございます。さらに、指定農業機械作業従事者はみなし賃金総額の千分の六となった。従来千分の五ということで、かなり機種の拡大を図って結構なことでありますけれども、実はこの件について、せんだっての予算委員会でわが党の貝沼議員が二瓶局長質問をいたしておりまして、その最後の段でいろいろと政府の見解が述べられております。  すなわち、農林大臣の諮問機関である農業機械化審議会から昭和四十五年十二月十四日に当時の農林大臣に対して答申がなされ、その中で、農業災害の問題については単なる現行の労災法によるだけではむずかしい。そこで、「農業機械作業に従事する農業者の災害補償については、農協による共済制度も発足しており、これらの諸制度の活用をはかるとともに、農作業中の災害補償について新制度を創設することについても検討する必要があろう。」というような指摘がされておるわけです。このことについてどのような取り組みをしているかということに対して二瓶局長は、検討を鋭意進めてはいるが、検討すればするほど非常にむずかしい問題があると言って、大きく四点にわたり述べられて、困難であると消極的発言をされておりますが、何が非常にむずかしいのか、率直にお答えいただきたい。
  169. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 農業者を対象にいたします独自の労働災害補償制度、これをつくるということにつきましては、非常な困難がございます。  その困難な点を申し上げますと、一つは、農業者の就農の実態が複雑で、かつ区々でございます。したがいまして、そういう際に一律に全員を強制加入させる、こういう制度で考えるということは非常にむずかしいわけでございます。さればといって、今度は任意加入制度というかっこうで対処するということにいたしますと、小人数の保険では、料金と補償内容との比較でもって、現行の労災保険より魅力ある制度が期待しがたいということでございます。これがまず第一点でございます。  それから、第二点といたしましては、すべての農作業を対象とする制度をつくり上げるということにつきましては、農業者の家計と経営とが判然と区別しがたいという面がございますので、果たして農作業中の事故であるかどうかという、そういう認定技術上の問題がきわめて多いということ。  それから、第三点といたしましては、現在労災保険制度があるわけでございますが、そのほか農協共済なり民間の保険等もございます。そういう他の保険制度等との関係をどう調整するか、その辺の困難性というようなことがございます。  いろいろ検討いたしましたが、以上申し上げましたような基本的な難点がございますので、現段階におきましては、新制度の創設は困難である、かように考えるわけでございます。
  170. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 言うまでもなく、農業者災害補償制度としては、労働災害補償保険、農協共済等がございますが、その中に農協養老生命共済、農協傷害共済、農協長期定期生命共済、農作業中傷害共済、農協特定動産傷害共済などがございますが、先ほど申しましたように、答申でも言っているように農業者災害補償制度を新しく制度化するという方向が望ましいと思いますが、その点はどうですか。
  171. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま申し上げましたように、農業者独自の労災制度といいますものができれば、これにこしたことはないわけでございますが、ただ、そういうものが穏当に仕組めるかどうかということがまず問題でございまして、そういう面について検討をいたしたわけですが、検討を進めれば進めるほど、ただいま申し上げましたような難点がございます。そういう基本的な難点がございますので、現段階におきましては新制度の創設はきわめて困難である、かように考えておるわけでございます。
  172. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 労働省の小田切労災管理課長が来ておられると思うが、いまの質問に対して、労働省は前向きの姿勢で農林水産省検討をすることについては差し支えないという態度をとっているのかどうか、その点はどういうふうに検討しておられるか、お答えいただきたい。
  173. 小田切博文

    ○小田切説明員 農業者の労災への加入の問題、それとの関連の問題でございますが、私どもの労働者災害補償保険は、御承知のように本来雇用労働者を対象にするものでございます。したがいまして、災害が起こるケースにつきましても、使用者の指揮監督下にある災害であるというような特殊性もございますし、また、その災害の予防につきましては、労働基準法であるとか労働安全衛生法であるとかいうような法律によりまして使用者に一定の防止規制が課されております。それらの条件下における雇用労働者につきましての災害につきまして補償を行うというのが私どもの労災保険の制度でございますが、本来の労災保険制度趣旨がゆがめられない範囲内で、雇用労働者でない方々につきましても特別加入制度を設けておるわけでございます。  いま御指摘の、農業者一般を対象にする新しい災害補償制度というような問題についてでございますが、私ども、いま現に、労災保険制度の中で一定の農業従事者につきまして特別加入の制度を設けておるというようなことを前提にいたしまして、農業者全体を対象とする別途の新しい制度が設けられることについてとやかく申すというようなつもりはございません。基本的に雇用労働者ではございません農業者につきまして、別種の新しい制度ができるということでありますれば、私どもの既存の経験等を踏まえまして、いろいろできる援助等がございますれば、してまいりたいというふうに考えております。
  174. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官にお伺いしますが、ただいま私が提案した問題でございますけれども、機械化農業の陰で、農業機械による悲惨な事故が年々ふえ続けておることは御承知のとおりです。ここ五年間でも二千人もの死亡者を数えております。この数は、ある県の専業農家の方が全部亡くなった勘定になると言われております。事故件数も五十三年だけで千三百件を上回っております。ショッキングなデータも出ておりまして、社会的にも農作業事故は大事件であると思うのであります。しかるに、これに対する労災加入者も八%足らずという状態で、著しい行政のおくれが感じられまして、これほど日の当たらない問題はない、かように私は認識いたしております。  そこで、先ほども申しましたように、答申にも出ておりますように、農業災害補償制度を新しく制度化するというような方向で真剣に取り組むべきだ、私はかように思うのですが、こういった問題を含めてもっと積極的な対策が必要であると思いますけれども、政務次官としてこの問題に対しての御所見を承りたい。
  175. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生指摘のとおり、今後ますます農作業の機械化が進んでまいりますと、大型化をしてまいりますし、またいろいろなむずかしい機械が出てまいりまして、それに伴って作業中に事故を起こす農家の方々もふえてまいるおそれなしとしないわけでございます。そういうことでございますので、御指摘のとおり、農作業に伴うところの災害につきましてのしかるべき措置を講じよという御指摘はまことに当を得たものと思いますが、ただいまも二瓶農蚕園芸局長から答弁をいたしましたように、現在、農作業の機械ごとに、この災害についての保険に入れる状況になってございますので、これをいわゆる一般的な労災保険のような形に拡大する前に、まず具体的にそういう傷害が起こる原因は機械化に伴っての傷害でございますから、それについての災害保険制度にできるだけ大ぜいの農家の方々が加入していただいて、さしあたってこれで対応していただく、そういうことを農林水産省としては御指導を申し上げて、農業全般についての災害保険というものにつきましては、これはなかなか技術的にむずかしい問題もございますので、今後の検討課題とさせていただきたい、かように思う次第であります。
  176. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官答弁のように、ぜひひとつ検討課題として前向きに真剣に取り組んでいただきたいということを要求しておきます。  次に、四月三日当委員会で私は、全養連の養蚕に対する矢野発言問題を取り上げて指摘しました。自民党の佐藤隆委員からも同じ御質疑がございました。お互いに質問を留保しておりますが、これはいずれまた近く機会を見て政府の見解をただすわけですけれども、きょうは中間報告の意味で、政務次官政府の考えを求めておきたいと思います。  すなわち、現在通産省の生活産業局と農林水産省農蚕園芸局との間でいろいろと話し合いが進められていると思いますけれども、われわれが言わんとするところは、蚕糸絹業一体として新しい措置をすべきである、こうしなければ、単に矢野事務次官の辞職だけでなく、実際に罪の償いはできない、これは恐らく与野党一致の意見である、かように私は思うのですが、この点についてどういうように話し合いをされつつあるか、その点もひとつ中間報告をしていただきたい。来る四月二十五日には全養連全国大会等もあって、この問題を厳しく全国的な立場で業界としての意見を述べることになっておりますが、ぜひ政務次官から、現在までの経過、現在の事の進捗状況を御説明いただきたい。
  177. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 いわゆる蚕糸絹業一体で現在まで非常に厳しい問題について対処していかなければならない、こういうことでございますが、さしあたって大事なことは需給調整の問題でございますし、もう一つは、それに関連いたしまして、輸入調整といいますか輸入規制の問題である、かように考えております。  現在、実は通産省の生活産業局と当省の農蚕園芸局との間に具体的な話し合いを進めておりますのは、まず輸入規制に関連いたしまして、二国間協定で話を詰めてまいるわけでございますので、その二国間協定で対応策についての予備的な話し合いを事務的に詰めている、こういうことでございます。同時に、何といっても絹の総需要を増進してまいりませんと、需給バランスがとれない、こういうことでございます。まさに通産省の繊維製品課その他を中心として、絹需要、絹織物需要が全体としての厳しい状況でございますけれども、どうしたら拡大できるか、これにつきましても鋭意検討を進めてもらっている状況でございます。
  178. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 われわれは貿管令すなわち貿易管理令だけではとても承知できません。やはり絹織物の輸入規制に対する立法化ということをどうしても考えなければなりません。これは困難な問題であろうと思うけれども、そうでなければ、全国のいわゆる養蚕農家は納得できるものではありません。こういった点についてもあわせて検討を進めておられると思うが、その点どうですか。
  179. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 いわゆる絹織物の輸入規制の問題でございますが、これは言ってみれば通産省の所管でございますので、私どもとしては、ここで通産省のかわりという形で答弁をすることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、絹織物全体の輸入の規制が行われませんと、先ほど申しましたように、絹、生糸を通じての需給調整が実現できませんから、やはりいろいろな形で現在もやっておるわけでございますけれども、貿管令、二国間協定等、現在あるいろいろな規制措置をこれまで一生懸命やってまいりましたが、さらに現行の体制の中でやれることはないか、こういうことにつきましても、通産省と話し合いを進めながらいろいろ具体的措置について煮詰めている、こういう状況でございます。
  180. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この問題については、四月二十五日全養連が主催する全国大会もありますが、継続してわれわれは質問を留保し、政府の見解をただし、また通産省の姿勢をただしていく決意であります。  きょうの中間報告では、われわれが期待するような結果に進んでおらぬような気がしてなりませんが、いずれにしろ、全国の養蚕農家を守るためにも、またわが国の伝統産業を守るためにも、農林水産大臣政務次官も一丸となって、この問題に対しては農業軽視、またある農民は言っているじゃないですか、通産省農林経済局なんてことを言われている、そういう失礼なことを言わせるようなことのないように、強腰で今後通産省とも当たり、これらの問題を推進しながら、ぜひひとつこういった規制のための立法化に踏み切るべく着着と準備をしていってもらいたい。通産省の関係であっても、農林省が強く言って、そしてともにこういった問題にこたえていただくような方向で前向きの姿勢で進めてもらいたいということを強く申し上げる次第です。この問題については質問を留保し、いずれまた機会を見て次々に政府の見解をただしていく考えでありますことを申し上げておきます。  最後に、通告しておきました発がん性トウモロコシ粉の問題について質問いたします。  タイから伝書バトのえさ用輸入されたトウモロコシが、違法にも自家製パンの材料として市販され、そのトウモロコシの粉から発がん性物質アフラトキシンB1が検出されたという、いわばショッキングな問題があるわけです。食品衛生行政上も考えられない問題でございまして、先月来東京都内で発生し、いま八都府県にわたっているというふうにも聞いております。問題のトウモロコシを輸入した東京都飼料商工協同組合、すなわち都内の飼料業者八社で組織しておりますが、この組合へハトのえさ以外に使用しないという趣旨の念書を出し、関税の優遇措置まで受けていたようでありますが、農林水産省当局はこの事件をどのように掌握し、いかなる手を打っておられるか、時間もわずかでございますので、簡潔にお答えをいただきたい。
  181. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 今回の事件は、去る三月二十五日に東京都が食品衛生法に基づく検査を行ったところ、パン用トウモロコシ粉の三検体から発がん性物質であるアフラトキシンB1が一一・一ppbないし三三・六ppb検出をされたことから問題となったものでございます。また、当該トウモロコシは、いまお話しのようにハトの粒えさ用として輸入されたものが転用されて製造されたということが判明をいたしております。  今回の事件は、いま申し上げましたように、発がん性物質たるアフラトキシン耳が検出されたトウモロコシが食用として用いられたのでございまして、すでに食品衛生当局から関係業者に営業停止、さらには当該物件につきまして販売禁止なり回収命令の措置が講ぜられたというふうに承知をいたしております。農林水産省といたしましては、本来粒えさ用として輸入されましたトウモロコシが流通の過程で食用に転用して使用されたことは、予想せざる事態でございまして、今後このような事態が生じないよう指導に努めたいと考えております。
  182. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 このハト用えさを横流しした某商店は、ハトのえさが食品となることを知っていたのか、また横流しを受けたサンフラワーミールはえさ用トウモロコシと知っていながら食品として扱ったのか、これについては、某商店側が、えさが食品に利用されることを知っていながら、少しぐらいならいいだろうということで、独断で製粉会社に売りつけたというようなことを自供しているようにも聞いているが、この点どうか。もう時間もありませんので、ひとつ簡単に、イエスかノーかだけで結構ですからお答えください。
  183. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 農林水産省といたしまして、供給元と見られます販売店の責任者から事情を聴取いたしましたところ、ただいまのようなことにつきまして報告がございました。
  184. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 厚生省来ておられると思うが、ちょっとお伺いしますけれども、東京を初めとする関係府県が八都府県にわたるというように聞いておりますが、これは間違いないかどうか。そしてこれらに対して販売禁止や製品回収などはどういうふうにしておられるのか、その点お答えをいただきたい。
  185. 齊藤乃夫

    ○齊藤説明員 御説明いたします。  ただいま先生おっしゃいましたように、製品の販売先は神奈川県、東京都、大阪府、長野県、茨城県、横浜市、名古屋市、新潟市の八都府県市に及んでいるという報告を受けております。  それから、当該違反品の処分等につきましては、関係都県市におきましてすでに違反品の販売禁止、回収命令等の措置がとられているところでございます。
  186. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この横流しについては、恐らくすでにあちこちに及んでいるんじゃないかと思いますけれども、厚生省としては一斉調査をする等、今後もこれが他の府県にまたがらないためにも十分手を打ってもらいたいと思うが、その点はどうですか。
  187. 齊藤乃夫

    ○齊藤説明員 先ほどお答えいたしましたように、現在までは先ほど御説明いたしました八都府県市でございますが、これ以上広がる可能性はないという報告を受けておるところでございますが、事件の全容の解明につきましてはいまだ調査中でございますので、今後とも関係機関と協力をしながら所要の措置を講じてまいりたい、かように存じております。
  188. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に、農林水産省及び関係当局に伺いますが、本員は、昭和四十六年にこのような同じ問題で大変問題がございまして国会で追及し、社会的にショッキングな問題を与えた経験がございます。また、発がん性物質のアフラトキシン耳の対策について強力な手を打ったことがございますが、今回のタイに限らず、輸入トウモロコシ等すべてについて港での荷揚げの段階で大変問題になっております。チェックをする必要があると思うので、特に総点検の考えがあるか、また検疫体制の強化を図らねばならぬと思いますが、この点、当局の見解をひとつお伺いしたい。
  189. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 従来からいわゆるカビ毒による発がん性物質の検出が、飼料穀物、特に熱帯、亜熱帯産の物についてそれが検定、検査の結果出ておるという状況でございまして、私どもといたしましては、えさ用に使う場合につきましてはその安全性を確認いたしておるわけでございます。昭和五十年の飼料安全法の改正におきまして、そうした見地から、特定飼料につきましては、輸入の際に家畜並びに畜産物の安全性の見地から特に留意を要するものについては、指定検定機関による検定を行うということをやっておるわけでございます。タイ産のトウモロコシにつきましては、えさとして使う場合に、配合割合を考えれば家畜並びに畜産物の安全性にとっては問題がないということでただいままで推移をしてきておるところでございますが、今後の問題といたしまして、飼料の安全性の観点から、肥飼料検査所による検査体制の強化等につきましてさらに検討をしてまいりたいと考えております。
  190. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 発がん性トウモロコシ粉の問題については、国民の健康を守る上から大変重要な問題であります。ひとつ、農林水産省並びに厚生省相提携して、国民の健康維持をするためにも、十分な検疫体制の強化と、今後八都府県の以外に流れないように、また現物の回収、検査等を厳にしていただいて、十分な対策を講じられるよう特に強く要求いたしまして、時間が参りましたので、私の本日の質問を終わります。  御協力ありがとうございました。
  191. 内海英男

    内海委員長 中林佳子君。
  192. 中林佳子

    ○中林委員 日本海ではいよいよ五月一日からイカ漁が解禁を迎えるわけです。当然竹島問題がクローズアップされてくるわけです。日本の主権にとっても、また漁業にとっても非常に大切なこの竹島、私はまず竹島問題についてお尋ねしたいと思います。  一九五五年七月二十五日、参議院の内閣委員会で当時の鳩山一郎首相がこうおっしゃっているわけです。「率直に言えば、竹島は日本の領土です。日本の領土を占領せられたのでありまするから、これは侵略と見るのが妥当で、自衛権の発動はできるわけであります。」竹島はその後兵舎等の建築物がふえたりあるいは韓国兵がふえたということ以外の事態は変わっていない、このように聞いているわけです。  そこで、政府にお伺いするわけですが、こうした一連の見解に、いまの政府のお考えも変わりがございませんかどうか、その点についてお伺いします。
  193. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 竹島が日本の領土であるという政府見解については何ら変更はございません。
  194. 中林佳子

    ○中林委員 領土だということはお認めになっているわけですが、当時の鳩山一郎首相がおっしゃっているいわば侵略されているという見解、これについての御見解はどうなんですか。
  195. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 先生指摘がございましたように、現実韓国人たちが竹島にいることも事実でございますし、この問題につきましては、日韓政府間交渉の中で常に当方の主張を向こうに申し述べているわけでございますが、向こう側の入れるところではなく、依然としていまのような現状が続いておりますことは残念に思うわけでありますが、やはり日韓関係はあくまでも話し合いで……(中林委員「侵略されているかどうか、その見解だけで結構です」と呼ぶ)私どもとしては不当に占拠されておる、かように考えております。
  196. 中林佳子

    ○中林委員 不当に占拠されているということは、侵略されているととっていいわけですね。
  197. 股野景親

    股野説明員 ただいま先生から御質問のございました、現在の竹島が韓国側によって不法占拠されているという事態について、これは侵略と言うのかどうか、こういう御質問でございますが、この点われわれとしては、現状は不法占拠ということが一番現実に合った状況であろうかと思っております。侵略に当たるかどうかという問題でございますが、これは何をもって侵略と言うかという点はなかなかむずかしい問題もございますので、この侵略に当たるかどうかということは一概にここで論ずるということもむずかしいかと存じますので、不法占拠に当たるというのが現状に一番合ったものだと考えております。
  198. 中林佳子

    ○中林委員 一国の総理が侵略だと言うことができるということをはっきり国会の答弁で言っているわけですよ。それをいま言えるかどうかわからないというようなことで覆していいものかどうか、大変疑問に思うわけですが、これで論議したって事が始まりませんので、実際は武力でもって侵略されている、これが現実だと私は思うわけなんです。  同じくこの参議院の内閣委員会で当時の鳩山首相が、竹島は戦争の方法によらず外交談判によって解決する、こういうことをおっしゃっているわけなんですね。その後十年たって日韓条約が結ばれて、その中での紛争の解決に関する交換公文の中で、「両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかった場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決を図るものとする。」こういうことが書かれてありまして、これに対する質問に当時の佐藤総理が、「日韓間の諸問題一括解決ということで臨んだが、」これは日韓条約を結ぶときにそう臨んだとおっしゃっているわけです。「そういう意味から竹島問題も最終的な解決が期待されていたと思う。その期待に反したことは残念だという意味の説明をした。しかし最終的な解決はできなかったが、この竹島問題が平和的な方法で解決する方向がきまった。それで了承されたい。」こういう御答弁をなさっているわけなんですね。  昭和三十年のときも、その後昭和四十年のときも、平和的に外交談判するとか、あるいは話し合いで解決するとか、こういう政府答弁があるわけですが、政府はその後外交談判あるいは平和的な話し合いを公式の場でやったことがあるのかどうか。もしやっていらっしゃれば具体的に御回答願いたいと思います。
  199. 股野景親

    股野説明員 ただいま先生から御指摘のございました韓国側とのこの問題に関する話し合いの状況でございますが、これは政府が一貫してこの問題の解決について強く韓国側に申し入れるという態度をとってまいっておりまして、歴代の内閣のもとでかかる努力が重ねられてまいってきておるわけでございますが、ごく最近の例を申し上げますと、日韓閣僚会議昭和五十三年九月に開かれました際にこの問題を日本側から提起いたしまして、両国間で善隣友好関係というものを確立するという見地からこの竹島問題の解決を早く図るべきである、こういうことを正式に取り上げた経緯がございます。
  200. 中林佳子

    ○中林委員 一昨年九月の日韓閣僚会議で取り上げたとおっしゃったわけですね。ですから、そういう平和的に解決するとか外交談判をするとおっしゃったけれども、公式的にはこの一回しかないと私は思うわけですね。なぜその一回しかできなかったのかどうか、その点についてお伺いします。
  201. 股野景親

    股野説明員 ただいま申し上げましたのは、これは一昨年の閣僚会議の場でそういうことがあったということを申し上げたわけでございますが、これは外交チャネルで外交上の接触が日韓間では多々ございます。その中には、日本におきまして外務大臣が在京の韓国大使に申し入れるという形もございますし、また現地の代表が先方に申し入れるということもございまして、そういう意味では、これもいずれも公式の場でございますので、閣僚会議の場以外でも多々そのような努力を重ねてまいってきております。
  202. 中林佳子

    ○中林委員 外交チャネルで、いろいろな場で公式にあったとおっしゃるわけですが、国民に対して公表できるものがあるわけですか。
  203. 股野景親

    股野説明員 外交チャネルでそういう問題を取り上げました場合に、その個々の具体的なやりとりを細かく発表するということはいたしておりませんが、しかしさような努力をごく最近に至るまで繰り返しておるということは、はっきり申し上げられる次第でございます。
  204. 中林佳子

    ○中林委員 努力をしたとかそういうことは、この竹島問題で、昭和五十三年の周辺十二海里から日本の漁船がはみ出されてから、何度も政府から聞いているわけですが、公式的にこういう合意を得たとか、こういう交渉をしたとか、そういう文書は、日韓閣僚会議を除いては全くないのですね。国民に、こういう話の段取りになって韓国側はこう言っているとか、そういうことが公式に明らかに出ない。その原因は政府の外交姿勢そのものにある、こういうふうに私は思うわけなんです。  これは昭和四十九年二月二日の「時事解説」の「朝鮮政策の転換どこまで?」という記事の中に載っているわけなんですが、昭和四十四年にまとめた政府の外交政策の対韓国の部分にこういうくだりがあるわけです。「韓国立場には常に理解に努めるとの態度で臨み、問題によっては先方主張に若干理に合わない点があってもこれをきき入れるという姿勢を打ち出す。」こういうのがちゃんと政府の外交政策として明らかになっているんですね。これがあるから公式に明らかにできない部分があるのではないか。こういう外交の政策がいまも歴然として生きているのかどうかということと、これが原因になっているのではないか、この点についてお答えください。政務次官、どうですか。
  205. 股野景親

    股野説明員 ただいま先生の御指摘のありました書き方につきましては、私それが出た当時の事情をつまびらかにいたしておりませんが、日韓両国が隣国であるという事情がございますだけに、これは先生よく御承知でいらっしゃいますように、両国の間で往来も大変多うございますし、両国間の関係においては他国と違った非常に近い関係がある、これは物理的に隣り合っているということからもあるわけでございます。そういう状況下において、両国間関係にはどうしても、たとえば竹島問題等問題も起こってまいります。そういう問題を解決するに当たりましては、やはり両国の友好という見地を十分念頭に置いて対処する必要があるということは考えております。しかし、同時にそれは十分道理にかなった解決の仕方でなければならないと存じますので、その意味で善隣友好という精神は、日韓間で非常に大事だと思い、われわれもその見地からの外交努力はいたしております。しかし、同時に、その解決は道理にかなったものであるべきである、かように考えて努力いたしておる次第でございます。
  206. 中林佳子

    ○中林委員 言葉ではそうおっしゃるのですよ。ただ、ここにあらわれました昭和四十四年のときの政府韓国に対する外交政策、これにはちゃんと「若干理に合わない点があってもこれをきき入れるという姿勢を打ち出す。」というように明らかになっているのですよ。これは政府の文書だと聞いているのですが、これはあったわけでしょう。その点について伺います。
  207. 股野景親

    股野説明員 私としては、道理にかなった解決をすべきだという政府考え方をもって臨んでおりますときに、いまのような御指摘の文書が政府から出たということはどうも考えにくいのでございますが、先生のいま御指摘のあったような文書があったかどうかについて私は承知いたしておりません。
  208. 中林佳子

    ○中林委員 政務次官、これは確かにあったんですよ。わが党の寺前議員がこの問題を追及したときに、政府は、当時はあったということをちゃんと認めていらっしゃるのですよ。それがいまのような答弁になっていることに対して、どのようにお考えですか。
  209. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 私は農林水産政務次官でございますので、外交問題なり、また、外務省がどういうふうな内部の規約といいますか、方針を持っているかについては、つまびらかにしないわけでございます。
  210. 中林佳子

    ○中林委員 それは答弁逃れというものですよ。政府の機関として聞いているわけなんですね。これは農林省だから知らない顔しておけばいいというものじゃないです。この思想が現在の竹島問題を支配しているから私は言っているわけなんですよ。それを、私は知りません、存じませんと、だれかさんみたいなことをおっしゃったんでは、国会の答弁にならないのですよ。これはちゃんと調べて、ちゃんとあったかどうかということは後で回答していただけますか。
  211. 股野景親

    股野説明員 後ほど先生からそのものをちょうだいいたしまして、調査させていただきたいと存じます。  ただ、いま御指摘のありました、その道理云々の点につきましては、私どもはあくまで道理にかなった解決ということで臨んでおるということを重ねて申し上げたいと存じております。
  212. 中林佳子

    ○中林委員 それが国民をだましていると私は申したいわけなんです。ちゃんと文書にあり、厳然とこの対韓国外交の姿勢が貫かれている、これが今日のゆゆしき事態を生み出しているわけなんですね。  それでは、さらに進めていきたいと思うわけですが、一昨年の九月、先ほどおっしゃいましたソウルにおいて開かれました第十回の日韓閣僚会議での韓国側との合意の一つとして、政府は、竹島周辺水域における漁船の安全操業問題について、漁業関係者の生活に直接関係するものであり、両国は、紛争防止精神に立って対処することを確認した、これが合意事項だ、こういうことを記者会見で明らかにされているわけなんです。その後、この合意に基づいて公式の場でこの安全操業の問題を協議されたことがあるのでしょうか。
  213. 股野景親

    股野説明員 ただいま先生指摘のように、五十三年九月の日韓閣僚会談で、外相同士の話し合いにおいてこの問題を取り上げ、ただいま御指摘のありましたような漁業紛争防止の精神でこの周辺の操業問題に対処する、こういうことを確認したわけでございます。まさにその精神に基づきまして、その後、日韓両国当局間で鋭意この問題の解決について努力を重ねてまいっております。これはその後も、昨年の二月でございますが、韓国の外務部長官日本に参りましたときにも、東京におきまして、当時の園田外務大臣から、重ねてこの問題の早期解決について申し入れを行われたという経緯がございますほかに、事務当局レベルにおいても、東京あるいはソウル両方におきまして懸命の努力を重ねるということで今日までやってまいっておる次第でございます。
  214. 中林佳子

    ○中林委員 昨年二月に東京で、園田外相が韓国側に対して申し入れた、こういうふうにおっしゃるわけですが、その回答はどうだったのですか。
  215. 股野景親

    股野説明員 このときも、韓国側もこの問題の重要性ということについては十分承知しておりまして、解決ということについて引き続き努力を重ねていくということでございまして、その後その両大臣間の話し合いを踏まえまして、さらに折衝を重ねた、こういう経緯がございます。
  216. 中林佳子

    ○中林委員 私は、それは政府側韓国側に立った答弁だ、こういうふうに思わざるを得ないんですね。なぜならば、一昨年の九月に、日韓閣僚会議の後、共同コミュニケという形で出されたり、あるいは日本側と韓国側で共同記者会見をなさったりしまして、合意があった、先ほど述べたようなことでの合意があったということが出ているわけなんです。しかし、韓国側は、これは合意があったと出た新聞は九月四日なんですが、九月八日の新聞に、竹島問題での合意はない、こういうことをちゃんと記事に出しているのです。向こうの新聞は皆そうなっているのですね。じゃ、一体どこがうそをついているわけですか。
  217. 股野景親

    股野説明員 この問題、両国にとって非常に解決を要する問題であるということで、両国間で段段の話し合いを重ねてまいったことば先ほど来申し上げているとおりでありますが、その取り上げ方につきまして、日本側は日本側の立場を十二分に申し述べる、先方はまた先方の歴史的な立場等を踏まえた発言があるということで、残念ながらこの問題についての解決にまだ十分なるめどを得てないというのは事実でございます。  先ほど先生の御指摘のありました閣僚会議の後の、双方が記者会見を行いました席で、わが方の園田外務大臣から漁業紛争防止の精神で対処する、こういうことを述べたことは事実でございます。また、韓国側がその後において韓国国内でどういう報道をされたかということについては私つまびらかにいたしておりませんが、韓国側としても、日本側の立場というものは十分重みを持って受けとめて、しかるがゆえにそれ以後も、累次にわたる話し合いの中で、何とか実態的に問題の解決を図るということに対する韓国側の対応が見られておるのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  218. 中林佳子

    ○中林委員 公式に明らかになっていない。たとえば日本側には日本側の感触を伝える、韓国韓国で、合意してないと言っている。公式な文書は何一つないわけですよ。それを感触として、実際的にはその解決を図るように、こうおっしゃっても、漁民や日本人は信じられない。これまででもそのようなことを何回も繰り返しておっしゃっているわけなんです。ですから、私は、先ほど申しました、たとえ少々筋が通らないことがあっても聞き入れよう、そういう外交姿勢が貫かれているところに公式に明らかにできない最大の原因がある、こう思わざるを得ないわけです。  その結果、一体どういうことが起きているかというと、結局竹島周辺で漁業をやる島根県や鳥取県の漁民に大きな被害が出てきているわけです。昭和五十三年五月からまる二年間、漁期にして、イカ漁だけに限ってみましても五十三年の春と秋、五十四年の春と秋、四回あるわけです。この四回全く操業できてないのです。被害も相当額に上るのです。これは五十三年しか試算してないわけですが、その五十三年の春漁の、しかも全部じゃなく五月の、韓国によって竹島から十二海里外へ出された時点で損失をはかったのです、そのときに、島根県だけで二億三千二十万円の被害額に上っているわけです。これは単に漁獲量が減ったというだけではなくて、精神的にも大きな打撃を受けているわけです。それにもかかわらず、これまで国がとってきた対応は本当に冷たいのです。水産庁の五十三年度における特別融資、これしかないのですね。これでは余りにも冷たい仕打ちだ、こう思わざるを得ないわけです。  竹島には島根県の隠岐島漁連で第一種漁業権も設定されているのです。こういうこともありまして、竹島周辺は水産資源の宝庫として全国にも知られているのです。そういう宝庫がありながら、行きたくても行けないという実情があって、この漁民の受けた精神的な打撃や、あるいは実際にとれなかったそういう被害に対する責任は一体だれがとるのでしょうか。日本の外交上の問題で、言いかえれば政府の責任で漁民は犠牲になった、私はそう思うわけです。しかもそれは、先ほどから言っているように筋が通らないことでも受け入れよう、こういう外交政策が貫かれているところから来ているのです。ですから、政府は当然外交上の失政の責任をとるべきだと私は思うわけですが、その点についてどうでしょうか。
  219. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 お答え申し上げます。  五十二年度の漁期におきましては安全操業が確保されなかったということでかなり操業に不便を来しまして、先生指摘のように、五十三年度におきまして低利融資を行ったわけでございますが、その後、五十三年の秋それから五十四年の春秋の漁期には、水温の関係で竹島周辺水域にはイカの漁場の形成が見られなかったということがございまして、実際に被害が出なかったという事情がございます。  しかしながら、先生指摘のように、漁民にとって竹島周辺の漁場は、イカが参りますときにはなくてはならない漁場でございますから、その安全操業の確保につきましては、これからも努力を続けて、確保がされるようにいたしたいというぐあいに考えております。ことしの漁期がどうなるかまだよくわかりませんが、いずれにしろ、安全操業の確保は非常に大事なことであるというぐあいに考えております。  それから、本問題につきましては、水産庁は安全操業をどうしても確保しなければいけないという立場から考えておりまして、操業ができなくなって被害が生ずるという事態はどうしても避けたいというぐあいに考えておりますけれども、万一そういう事態が発生するようなことがあります場合には、前例に照らしまして適切な対処をしたいというぐあいに考えております。
  220. 中林佳子

    ○中林委員 非常に漁民の立場を考えないいまの答弁だ、私はこういうふうに思わざるを得ないのです。五十三年のときには竹島周辺で漁場が形成されてそれだけの被害があったけれども、その秋と五十四年の春秋は漁場が形成されなかったから被害はない、こういうふうにおっしゃるわけですが、私、県にも聞いてみました。県はちゃんと調べてないし、漁民も、竹島周辺十二海里の中に入れないのに、それは大群のイカはいないにしても少しは多分いるだろう、いたかどうかということは、入れないのだからデータとして全くとれない。漁場の形成といえば水温の関係だとかいろいろな方法で知るということは私も知っております。ですけれども、全くイカがいなかったとかそういうことは断言できないと思いますし、あそこはイカ漁だけではなくてカニかご漁もやっているのですね。カニというのは底にいるわけで、回遊魚と違いますから動かないのですよ。これもそこではやってないのです。五十三年の被害額が、カニかご漁だけで、島根県の場合七千三百万円あるのですよ。ですから、現実に被害は及んでおります。ですから、精神的な打撃ももちろんですけれども、実質的に、ただ漁場が形成されなかったから、ないから政府はやらないんだ、こういうような考え方は当てはまらないと私は思います。  補償の問題、ぜひ何とか検討していただけないでしょうか。
  221. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 先ほども申し上げましたように、安全操業の確保と、被害を発生させないようにすることが大事であると私どもは考えておりまして、そのように努力をしたいと思います。  イカは、先生もおっしゃいましたように移動性の魚種でございまして、日本の沿岸から次第に北上いたしまして日本海の北の方に参りまして、漁船はそのイカを追いかけながら操業をするという形でございまして、五十三年度の秋、五十四年度には操業しながらイカを追いかけていく漁場が竹島周辺には形成されなかったということでございますけれども、いずれにしろ漁場が形成されるかされないかということは、先生の御指摘のように、本問題としてはいささか別の角度の問題でございまして、どうしても操業の確保が大事である、そういうことの確保に向かって全力を尽くしたいというぐあいに考えております。
  222. 中林佳子

    ○中林委員 いまのような外交姿勢のままでは操業の確保というのはかなりむずかしい。先ほども外務省の方から実質をとるというようなお話がありましたけれども、水産庁として実質がとれるような方向が果たしてあるのかどうか、その見通し、これは漁民にとっては大切な問題ですから、はっきりとお答えいただきたいと思います。
  223. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 竹島問題は領有権にかかわる問題でございますので、その交渉はどうしても外交ルートが中心になるということでございますが、外務省にもいろいろ御努力を願いまして、なかなかむずかしい問題ではございますけれども、安全操業の確保についてはぜひ実現をいたしたいというぐあいに考えております。
  224. 中林佳子

    ○中林委員 それを何度繰り返していただいても漁民は納得いたしません。なぜならば、五十三年の時点で起こったときに、私も何度か水産庁や外務省に足を運びました。そのときに、いま営々努力しております、好転の兆しが見えたようでございます、これは新聞に書かれるとまずいのでございますとか、いろいろなことをおっしゃいまして、何とか公にしないで腹芸だけで安全操業ができるような方向をとりたい、こうおっしゃってまる二年たったのですよ。その間、公式の場では日韓閣僚会議以外には、明らかにできるものは何一つとしてない。しかも、日韓閣僚会議で合意したと言っているのは日本側だけで、韓国側は、合意したことはない、こういうことを明らかにしているのですよ。五月一日といったら、もう目前に迫っているのですよ。それを安全操業の確保を待ってやります、こういうような見通しも何もないことをここで幾ら答弁していただいても、漁民は納得するものではありませんし、私も島根県民の一人として絶対に納得できる回答ではないのですよ。その辺、本当に見通しがあるならある、こういうルートでできて、この辺までいま来ている、もう一押しだから待ってくれということでもありますと、私はそういう見方もあろうと思うわけですけれども、その点いかがですか。
  225. 股野景親

    股野説明員 ただいま先生のおっしゃっておられますように、この漁期が再び近づいております。その問題の重要性は、私ども外務省といたしましても十分に認識いたしております。  先ほど来御指摘のありました日韓間の話し合いの状況でございますが、これは外交上の交渉であるという性質もございまして、一々のやりとりを公にするということは控えさせていただいておるわけでございますが、私どもとしては、いままで懸命の努力を重ねてまいりましたことに基づいて、実態面で何とか安全操業ということが実現できる、こういうことにただいま全力を挙げているところでございます。時期も迫っておるということも十分認識いたしまして、いまここでいよいよ実現に向かって最後の努力をするという状況でございます。  この問題については、竹島領有権の問題も確かに関連があるわけでございますが、双方の立場というものの上でなかなか明確な解決を一たとえば文書でとる、こういうようなことがこれまでにできていないことは先生指摘のあったとおりでございますが、外務省としましては、何とか実態的に漁民の方々の操業ということが実現できる状態をつくり出すということに、いま外交上の折衝を通じて懸命の努力をいたしておるところでございますので、御理解を願いたいと存じます。
  226. 中林佳子

    ○中林委員 実質をとるということで、結局は公にできない形でやろう、こういう腹づもりは、初めから韓国に対して屈辱的な外交姿勢だと言わざるを得ないのです。韓国に対して堂々と安全操業できるような状況を生み出すということになりますと、実質も公式もはっきりとした出し方というのは当然できる。日本の固有の領土だ、こういうことをはっきりとお認めになっておきながら、日本韓国との間で、日本の方が不法に占拠されておりながら、侵略されておりながら、韓国の顔色を仰ぎながら、何とか済みませんけれども魚とらせてください、こういうことで安心して漁民は行けますか。もしそのとき何らかのトラブルが起きたとき、一体どこが責任を持つのですか。そういう問題だって事実上発生してくると思うのです。それを、実質をとる、こういうようなことでは、私は事の解決は進まない、このように思うわけなんです。  そこで、時間もありませんのであれですけれども、ことし五月は漁場が形成されそうだというのは漁民の方がおっしゃっているのです、いまの傾向から言えば。そうしますと、五十三年のときは漁場があった、五十四年のときは漁場が形成されなかったということで補償問題などがなおざりにされていたわけなんです。じゃ、ことし実際に漁場が形成されて、出漁できない、こういう事態になったときに、水産庁は補償の問題を考えてくださいますか。
  227. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 ことし漁場がどこに形成をされるかというのは、まだ水温の状況そのほかでなかなかわからない面がございます。イカは、しかしながら、日本海を非常に広く回遊をするものでございまして、一カ所に停滞をしているというものではございませんので、本来補償にはなじみにくい魚種ではないかと思います。
  228. 中林佳子

    ○中林委員 それは本当に逃げの答弁なんです。いいですか。竹島というのはいままでも本当によい漁場だった、なくてはならない島だ、こういうことをお認めなんです。その周辺で漁場が形成されて、漁ができなかった。そこでとれなかったら、ほかのところへ行ってその分をとれるじゃないかというお話なんです。こんなばかな話はないのです。竹島の周辺でとれないということは、もっと北上しなければとれないのです。ほかでとればということになるのです。いまのように燃費が一上がりまして、もっと遠くへ行かなければならないということは、漁民にとって大損失なんです。その点を十分お考えいただきまして、何らかの補償検討を加えていただく、こう約束していただけませんか。
  229. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 私ども、申し上げましたように、決して逃げ口上ということでございませんで、先ほども申しましたように、安全操業が確保される、操業ができるということが一番大事であるというぐあいに考えております。しかしながら、もしそういう事態が実現できなかったときにはどうするかということでございますけれども、そのときには、その実態を十分検討をさせて、また過去の先例も検討しなければいかぬと思いますけれども、十分検討をしてまいりたい、こう考えております。
  230. 中林佳子

    ○中林委員 ぜひ補償も含め検討を加えていただきたい、このように思うわけです。  日本政府の屈辱的な外交を反映して漁業への大きな被害が出ていることはもう明確だと思います。先ほどの質問者も言っておりましたけれども、竹島周辺だけではなくて、韓国のトロール漁船による日本沿岸、沖合いでの不法な操業が各地で頻発しているのです。北海道沖、対馬周辺、福井、京都沖、山陰沖等、こういうようなところで頻発しているわけですが、今回四月九日、十日、十一日、韓国日本の間の漁業協議が行われましたけれども、ここではどのような進展があったのでしょうか。
  231. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 二百海里を各国が制定をしてまいりましてから、韓国の船も、米国水域あるいはソ連水域から撤退をする、その結果としてわが国周辺水域への進出が目立ってきて、わが国の沿岸漁民とトラブルを起こすという状態になってまいったわけでございまして、韓国側には、これまでいろいろなレベルを通じまして、日本の沿岸で操業する場合には、日本の沿岸漁民が守っておる規則と同じ規則を守ってもらいたい、資源保存と漁業秩序の維持については十分協力をしてもらいたいということを申し入れてきたわけでございます。  先生指摘のように、今月の九日から十一日、日韓実務者会談ということで、双方の実務者が会談をいたしましてこの問題を取り上げました。特に山陰のシイラづけの問題、京都、福井の操業の問題、道沖の問題もちろんといたしまして、そういう日本海における操業の問題を取り上げました。韓国側も解決のためにはできるだけ努力をしたいということでございましたので、その実情を見守りながら、必要に応じて韓国に対してさらに強力に交渉を重ねてまいりたい、そう考えております。
  232. 中林佳子

    ○中林委員 日本の意向を言った、それだけにとどまっているわけですね。何ら進展した具体な問題はないわけなんです。こういうふうな何も解決していない政府間協議に、漁民はいら立っているわけなんですね。日本海の西日本水域の場合は、トロール禁止区域であり、底びき網についても夏場の休漁期間が設けられている漁業規制区域になっているわけです。ここに二百トン前後、これは日本の漁船の十倍もするような韓国のオッタートロール漁船が何隻も居座って、長期にわたって一切の漁業規制を無視した不法な操業を行い、日本側に漁具被害を与え、漁獲量の減少をもたらしているわけです。そして資源の枯渇が憂慮されるという事態も起こしているわけであります。ですから、ここに日本海西部漁連、これは石川、京都、福井、兵庫、鳥取、島根の漁連の会長会議での決議に基づいた陳情書が来ているように、非常にいま漁民はこの日本海の無謀操業に対しての規制を求めているわけなんです。たとえば山陰沖では六月、七月、八月、九月が漁期のシイラ漁があるわけですが、この漁法はモウソウダケでシイラづけという仕掛けをつくって、これは一個一万九千九百円かかるわけですが、これを秩序正しく一列に四十個から五十個仕掛けていく伝統的な漁法であるわけですね。これが島根県から長崎沖の間で五十三年の被害額が三千七百万円だった。それが五十四年には約倍の七千万円になっているのです。島根県漁連でも聞いてきたわけですが、島根の場合も、額ではなくて個数で出ていますが、シイラづけが百五十二個被害を受けた。翌年の五十四年には三百三十四個でこれも倍以上になっているわけですね。しかも、大変被害が多くなったということで、民間の間で、日本とそれから韓国の漁業者の間での話し合いをしたら、韓国は夜間に操業するからシイラづけの位置がわからないから明かりをつけてくれ、こう言われたので、自分たちはそれを承知して明かりをつけた。そうすると、被害が少なくなるどころか倍増した。これは明かりを目がけて来ている。もう漁業道徳も何にもあったものではない、こういうことをおっしゃるわけなんですね。  こういう、いわば漁業道徳を無視した韓国漁船の無謀操業について、水産庁はどういうふうにお考えなんですか。
  233. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 シイラづけの問題は先生詳しく御指摘になりましたけれども、シイラづけの被害の防止の問題につきましては、これまで累次日韓漁業協定に基づく共同委員会の場で、わが方から何度もその被害の防止について韓国政府に強く申し入れをいたしておりまして、韓国政府もこれを遺憾といたしておりまして、被害の防止については一層の指導を強化したいということでございます。なかなかその被害が減少をしないという先生の御指摘でございますけれども、この問題は韓国政府に対しさらに一層の指導の強化を強く申し入れたいと考えております。
  234. 中林佳子

    ○中林委員 先ほどの質問者の御答弁にも、時間をかけてよくわかっていただくようにするというようなお話があったのですが、それではもう間に合わないのですよ。こういう被害が出てからもう何年もたっているわけですね。それが被害が少なくなるどころか倍増しているという実態が出ているわけですから、もうこの際、最低日本の漁業規制を守らせるとか、あるいは漁具の被害の弁済を行わせる、こういうことをまずやらせる。それができなければ、漁業水域に関する暫定措置法の第五条二号の発動、こういう方法もあり得るわけなんですね。こういうことも検討されるお考えは水産庁にはないでしょうか。
  235. 米澤邦男

    ○米澤政府委員 被害の弁済の問題につきましては、日韓漁業協定に基づきまして民間で協定がございまして、被害がありましたときにはこれをその委員会にかけて弁済をするという制度になっております。ただ、夜間操業であって、日本漁船がシイラのそばに常にいるというわけではございませんので、加害者の特定が困難であるという事情にございまして、今日までシイラづけにつきましてはその弁済、損害賠償ということになった事例がないという事情にございます。ただ、ほかの漁具の場合には、この民間協定によっていままで順調に賠償問題、これは日本が被害を与えた場合もあるわけでございますけれども、処理をされてまいりまして、およそ被害の発生後六カ月以内ぐらいのテンポで被害の賠償が行われていることでございます。韓国は隣国でございます。それからもう一つ日本側も韓国の周辺水域で操業いたしておりまして、相互に複雑な漁業関係を持っておりますので、日韓の漁業関係は、そういう全体を考えながら、双方意を尽くして新しい事態に対応できるような関係をつくりたいというぐあいに考えております。
  236. 中林佳子

    ○中林委員 どう言いますか、いままでの延長線上にしかないわけですね、対応の仕方が。これは国の弱腰な姿勢から、外交政策そのものから来ていると私は思わざるを得ないわけなんですよ。だから、こういう被害には水産庁が、水産庁というよりも政府がかわって漁民に対して弁償していく。後々手をこまねいて——韓国とは鋭意努力していくというお話ですから、その話の中で、政府が漁民に払った補償、これは後で韓国に請求すればいいことですから、そういうことを盛り込んだ方途で、ぜひこうした韓国漁船の被害から漁民の経営を守っていただきたい、こう思うわけです。  きょうは海上保安庁にも来ていただいておりますのでお伺いするわけですが、五月一日からいよいよイカ漁が始まる。竹島周辺どうなるかまだわからないんですが、実情に応じてぜひ巡視船の配置を適切にやっていただきたい、安全操業が確保できるようにしていただきたい。これがどういうようになるかということと、それから、先ほどから言っているシイラ漁について、これも夜間切られていくわけなんですね。倍増しているということもございます。もちろん、周辺に対する巡視船、その配備もいまの配置では数が少ないのではないか、こういうふうに思うわけなんです。数をふやしていただきたいということとあわせて、浜田にはまだ性能がちょっと低い巡視船しか配備されておりませんので、ぜひ性能のよい巡視船が配備できるように検討していただきたい。この点についてお伺いします。
  237. 村田光吉

    ○村田説明員 お答えいたします。  竹島の問題は、先ほど来お話しのように、根本的には外交経路を通じて解決されるべき問題であるという基本的認識に立っておりますが、現在は、日本海の日本の出漁船を保護するために、竹島を含む隠岐島北方海域に巡視船を常時一隻配置いたしております。これがいよいよ五月一日から解禁になりまして漁船が一斉出漁するということになりますと、われわれの方も、県水産当局あるいは現地の漁業組合等とも連絡を密にいたしまして、その漁業実態に応じておいおい巡視船をふやす、二隻、三隻、四隻とふやしてまいりまして不測の事態に対応いたしたい、このように考えております。  シイラづけの問題でございますが、これは先ほど来お話しのように、鳥取、島根につきましては、先生御承知のようにその大部分が公海上に設置されております。したがいまして、巡視船といたしましても、その付近に出漁しておる韓国漁船を発見した場合、これをマークいたしまして指導、警告あるいは注意喚起ということをやりまして、そのために各巡視船に韓国語で録音いたしましたテープも持たしております。そういうことで警戒を続けてまいりたいと思います。  このようにしまして、竹島警戒あるいはシイラづけの警戒というふうなことが重なった場合に、巡視船が手薄ではないかというお話でございますが、鳥取、島根を含む山陰地区の日本海は、私どもの管轄としましては第八管区海上保安本部というのに管轄さしておるわけでございます。この第八管区といたしましては、新海洋秩序の対応体制ということで、昨年来、たとえば舞鶴あるいは境港に従来配置していなかったような千トン型の大型巡視船も配属いたしました。それから美保航空基地に中型のヘリコプターも二機配属しておりますので、第八管区全体の巡視船、航空機でもって効率的に運用して対応してまいりたい。なお、もちろん八管区だけの勢力で対応できない場合には、隣接管区あるいはその他の管区から応援派遣も含めまして対応してまいるというのは、これは当然な考え方でございます。  以上でございます。
  238. 中林佳子

    ○中林委員 時間が来ましたので、最後に一問だけさしていただきます。  過剰米問題ですが、四月十日から十二日の日米交渉で、日本は五十四年の輸出実績の半分以下、五十五年は四十二万トンに抑えられたわけですね。しかも五十五年から四年間で百六十万トン、こういうことが決められたわけです。農水省は四月三日のわが党の中川議員の質問に対して、近藤政務次官あるいは食糧庁長官がお答えになっているわけですが、日本の過剰米輸出がFAOの余剰農産物処理原則にのっとって行われており、また一方では、アメリカ自身輸出を伸ばし国際相場も上昇ぎみであることを認めたわけですね。それなのになぜアメリカに譲歩したのか、これが一点です。  それからさらに、四年間四十万トンずつ、先のことまで約束してしまっているわけですね。発展途上国から強い要望があっても、あるいはタイなどで不作になっても、十分余剰米をさばける情勢が起きた、そういう状況があっても、この四十万トンという枠があれば身動きできない状況というのがつくられるのではないか。それはアメリカの圧力に屈した自主性のないきわめて遺憾な内容だ、こういうふうに思うわけなんです。  新聞報道によっても、今年度は五十四年度の九十二万トンを上回る百三十万トンの輸出要請が来ていると言われているわけなんですね。去年並みから考えてみても五十万トン減っているわけなんです。そうしますと、これが飼料用に処理されると思うわけなんですけれども、トン当たり四万から六万の損失だということになりますと、大体二百から三百億の損害になるわけですが、当然これはアメリカが見てくれるわけではないのですね。そうすると、アメリカ追随で三百億円の損失をしたというふうに受けとめられても仕方がないと思うわけなんです。アメリカの圧力の動機は、市場を荒らされるというようなきれいごとでは決してない。日本が輸出しなければ二五%はアップしたはずだと、虫のいいことを言っているわけなんです。もっともっともうけようという魂胆がありますし、さらに注意をしなければならない大変危険な中身も含んでいるのです。  四月十二日の朝日の夕刊を見ますと、「「日本よ、アメリカの圧力に屈するな」という声が高い。アフリカにおける米国の援助はイデオロギー色が強く、食糧援助はケニアだけに大幅に認めている。ケニアは軍事基地提供とモスクワ五輪ボイコットという踏み絵のおかげで、千五百万ドルの援助を得た。」というふうに、いわばアメリカが自分の政治的支配下に置くためにこれを使っているということも明らかにされているのです。東南アジアやアフリカの飢餓状態あるいは食糧不足を救うということと、それから日本農家を守るということ、これが一体になるわけなんですね。ですから、人道上から考えても、外交上から考えても、この日本の自主性を貫いて、向こう四年間四十万トンという枠がはめられましたが、これをはずしていく、そして情勢を見ながら日本の自主的な判断でもっとふやしていくという方向は考えられないのか。  以上の二点についてお答えください。
  239. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 先般のアメリカとの余剰米の輸出についての交渉につきましては、私どもとしては日本立場を十分説明をしたつもりでございます。しかし、このような余剰農産物の処理につきましては、FAOの余剰農産物処理原則におきまして、国際市場に悪影響を及ぼさないというふうに定められておりますが、これは解釈なり判断の仕方でございますので、われわれは影響が少ないものというふうに主張をしておりますが、アメリカ側から見れば、米の国際市場というものは一千万トン程度であって非常に限られておる、その中で一挙に百万トン近い数量が輸出されるということになれば、これは非常な撹乱要素になるのだ、特に将来についてこれがどの程度大きくなっていくかというようなことについては非常に問題が大きいというようなアメリカ側の見解がございまして、この点につきましては、両者で話し合いをしました結果、先ほども御説明いたしましたように百六十万トンという線に落ちついたわけでございますので、これは国際的な貿易の安定ということも考えますればやむを得ない数字であろうというふうに思っておる次第でございます。  それからまた、これによりまして、アフリカ、アジア等におけるいわゆる食糧不足国に対する輸出というものは、この枠内でこたえていけるというふうに考えておるわけでございますが、もちろんこの食糧不安全帯をわが国の過剰米によってすべて賄うということはもともと無理であろうと思いますが、この枠内でできるだけ要望にこたえられることができるものと考えております。それからまた、この枠は総体で百六十万トン、年平均で四十万トンというふうに定めましたので、この枠を基準といたしまして、この枠を守っていく必要があるものと考えておりますので、特にこれを今後変えるということは考えておらない次第でございます。
  240. 中林佳子

    ○中林委員 終わります。
  241. 内海英男

    内海委員長 次回は、明十六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十分散会