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1980-02-20 第91回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月二十日(水曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 内海 英男君    理事 片岡 清一君 理事 津島 雄二君    理事 羽田  孜君 理事 山崎平八郎君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 和田 一郎君 理事 津川 武一君       小里 貞利君    菊池福治郎君       久野 忠治君    近藤 元次君       佐藤 信二君    佐藤  隆君       菅波  茂君    田名部匡省君       玉沢徳一郎君    西田  司君       福島 譲二君    保利 耕輔君       堀之内久男君    渡辺 省一君       小川 国彦君    角屋堅次郎君       新村 源雄君    細谷 昭雄君       本郷 公威君    権藤 恒夫君       瀬野栄次郎君    武田 一夫君       中川利三郎君    神田  厚君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  武藤 嘉文君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房技術審議官  松山 良三君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局経済部調         査課長     小松原茂郎君         農林水産省経済         局農業協同組合         課長      三井 嗣郎君         水産庁漁政部長 渡邉 文雄君         運輸省港湾局倉         庫課長     後出  豊君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四六号)  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 内海英男

    内海委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの理事会の申し合わせによりまして、私が代表して、昨日、当委員会における農林大臣農政に関する所信表明に対する質問が終日行われまして、午後六時半に第一日目は終了したわけでございますが、われわれ帰りましてから、昨日、十九日の各新聞の夕刊、あるいはまたけさの朝刊を見ますと、きのうの大臣所信に対する質問について当委員会において明確にされました答弁内容と、それから、昨日の午前に農林大臣記者会見を行われた席上において、きのう当委員会で論議いたしました、アメリカソ連に対する穀物千七百万トンの契約分に対して、これをソ連アフガニスタン侵攻に対する制裁措置として契約の千七百万トンの輸出を凍結した、禁止した、そういう措置国会においてもしばしば論議されておるわけです。きのうの委員会においては、わが国の将来の農業発展方向について、あるいは昭和六十五年までの長期見通し、あるいは今後日本食糧自給率向上させるため、従来のアメリカを中心とした海外からの食糧依存政策というものを根本的に反省の上に立って改めて、そうして、障害のない条件の中で国内農業の生産の拡大発展を図ることがこれからの正しい方向であるということを大臣が言明されたわけでございますが、この大臣の言明と、昨日午前の農林大臣記者会見内容というのは非常に背反しておるわけです。われわれとしては、これは委員会に対する背信行為としての発言ではないかというふうに考えなければなりませんので、この点を明らかにしてもらいたいと思います。  そこで、こちらからきのうの記者会見の要旨について、新聞記事をかりて申し上げますから、これに対して明快にしてもらいたいと思います。   農林水産省アメリカ対ソ禁輸穀物のう  ち、百万トン程度わが国で引き取る方針を決めた。これは、十九日、閣議後の記者会見武藤農相が明らかにしたもの。百万トンのうち、七十万トンについては、三井三菱丸紅の三商社協力要請している。   アメリカはアフガニスタン問題をめぐる対ソ報復措置として一千七百万トンのソ連向け穀物輸出の禁止に踏み切ったが、アメリカ農民などに与える影響を考慮して、わが国輸入拡大という形でアメリカ協力するよう求めていた。農水省では、備蓄困難性などから難色を示していたが、自動車輸出問題など日米経済摩擦が再燃する兆しをみせていることなどから、米国産穀物輸入拡大方針を打ち出した。   具体的には、政府小麦飼料穀物各十万トンを前倒し輸入備蓄に回すほか、パキスタンなど発展途上国への援助用に十万トンの計三十万トンを輸入する。また、民間ベースで行われている飼料穀物についても、七十万トン程度輸入拡大を図る方針で、このほど三井三菱丸紅商社協力要請、三商社も検討することを約束している。   一方、農林水産省協力要請に対し、三菱三井丸紅の三商社は、1経済的リスクが大きい2備蓄能力に限界がある——などを理由難色を示しているのが実情である。   商社筋によると、商社飼料穀物輸入する場合は、すでに最終的な需要先まで決めているのが普通。それなのに売る先も決まらないまま、備蓄だけを増やすことは、国内穀物相場にも影響し、結局、商社自身相場変動リスクをモロにかぶることになる。また、金利や保管料がかかるうえ、トウモロコシなどは虫害などで保管中に変質しやすく、品質維持のための費用もバカにならないという。さらに、備蓄場所判問題だと指摘する声が強い。今のところ、備蓄場所については、アメリカ国内かは未定だが、「そのいずれにも備蓄余力はない」(商社幹部)  という。   ただ、農水省商社側のこうした事情を十分に知っており、商社が被るリスクを回避するため、政府が何らかの支援措置をとる用意があることを商社側に伝えている。結局、商社による備蓄積み増しが実現するかどうかは、政府の支  援措置内容次第ということになりそうである。他の新聞大臣記者会見によっての記事でございますから大体同一でございます。  特にその中で日本農業新聞、これは全国農民がほとんど購読しておるわけですが、これは一面のトップには百万トンの輸入問題が出て、その次には昨日の農林水産委員会における柴田委員馬場委員あるいは瀬野委員等質問の趣旨が述べられておる。全国農民はこれを見て、何だおかしいじゃないか、農林委員会質問の中では、いかにもまじめそうな調子で、国内食糧自給向上のために一生懸命にやりますと言いながら、一方においては、アメリカソ連に対する禁輸物資千七百万トンの肩がわりをやるということを、大平総理大臣の命令に従って農林大臣唯々諾々とやるということになれば、一体どういうわけだという印象を、強くきょうは与えておるわけです。ですから、この点については、今後農林大臣が外部における発言行動国会内における発言行動が違っておるということになれば、われわれは今後いままで信頼しておった農林大臣を信用することはできないということになるのです。そうなれば、今後提出される農林省関係法律案審議にしても重要案件審議にしても、大臣政府委員を信用して質問対応ができないということにもなるわけでありますから、この点に対して、この際、委員会を通じて明確にしておいてもらいたいと思います。
  4. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 どうもいまお話を聞いておりまして、私のきのうの新聞記者会見における話の報道が必ずしも私は的確でない、いまお読みいただいたものも的確でない、いま御説明をいたしますけれども、的確でないと思いますが、いずれにしても、そういう誤解を委員先生方にお与えをしたことに対しては、まことに遺憾に存じます。  そこで、実情をちょっとお話しをいたしますと、私は決してきのうの私の答弁と必ずしも一致していないということではないと思っておるわけでございます。それは、きのう瀬野委員の御質問お答えをした中で、たとえば飼料穀物などは現実にはほとんどアメリカからいま輸入しておるのが実情である。そこで日本としては、たとえばそういう飼料穀物を当面買う、今後ともある程度アメリカから買っていかなければならないときに、そういう友好関係を保つ上において、将来アメリカから売ってやらないと言われたときは困るわけだから、受け入れられる用意がないか検討しております。こういうことはきのうの答弁の中で私は申し上げておるわけでございます。  そこで、決してきのう私の方から発表したわけではございませんし、もう前からこの問題については農林水産省の中で検討いたしておるわけでございます。商社の連中と会いましたのも、実は社会党の大会がございましたときに予算委員会がございませんでしたので、その機会に会ったので、もう二月八日の話でございます。決してきのう新しく出てきた問題ではないわけでございます。  そこで、私その経緯を申し上げますと、ある新聞記者から記者会見の席上で、一体その後アメリカ穀物輸入についてはどんなような状況になっておりますか、こういうことでございましたので、私の方から、従来からこれは政府部内で検討いたしたことでございますけれども、もし、いまアメリカソ連に対して輸出停止をした中から日本が買ってやるとすれば、一体どのくらい買えるかということでやりまして、大体五十五年度の予算の中で前倒し的に、前倒しと言ってもこれはどうせ五十五年度に入ってからでございますけれども、なるべく五十五年度の早いうちに小麦として買える分がどのくらいあるだろうか、倉庫その他のこともございますから、それは大体食糧庁経済局とで話し合いまして、まあ十万トンくらいではなかろうか。それから、御承知のとおりKR援助で五十五年度に増加分がございます。これがたしか七十五億円であったかと思います。それの分をたとえば小麦に振り向けるとすればどのくらいであろうか、これは十万トンくらいであろう。それから、いま配合飼料供給安定機構において来年度においてトウモロコシをある程度どうせ買わなければなりませんけれども、それでどのくらいまあなるべく早いうちに買えるだろうか、これも十万トンくらいだろう。これだけは実は私ども役所内部でも議論をいたしまして、いざとなればそのくらいのことは何とか対応しなければいけないのじゃないか、こういうことは役所の中で議論をし、大体もしそういうことになればそういう方向で行こうじゃないか、こういうことを言っておるわけでございます。民間においても相当量、それこそ二千万トン以上一年に買うわけでございますから、何とか少し買い増しをできないだろうか、こういうことを二月八日に私が三社を呼んで話をしたということでございまして、その後どうなっておるかということでありまして、それからそのときの話はどうだったかということですから、まあ政府が買っても三十万トンくらいだから、もう少しやって、やはり百万トン近くこちらが買うというような形になるとすれば、七十万トンくらいあとやれば百万トンになるのだけれどもどうだろうか、こういう話をしまして、それに対して向こうが、いやなかなかむずかしい、またアメリカにおいてもいまその数量を買うというよりは将来の何年か後における、たとえば来年以降の日本の買い入れについて安定して買ってくれるということの方がアメリカとしては望んでおるのじゃないかというような話もありまして、とにかく検討してください、こういうことで宿題を与えておるということで、きのうもその辺のいきさつをお話ししただけでございまして、決して百万トン買うというようなことも私ども決めておるわけではございません。ただ話題として、どのくらいがいいかと言えば、それは百万トンになれば一番いいが、こういうところから出てきた数字でございます。そんなような状況でいまのところ回答を待っておるのだ、こういうことを言ったのが、たまたまそういうふうに書かれてしまったということでございまして、私の申し上げたのはテープにもございますからあれでございますけれども、そういうことで話をしたのが、書き方としてどうもそういう書き方で書かれてしまったということで、私もそういうことについてはもう少し慎重な表現で対処してもらうようによく注意をしておけばよかったのでございますが、私の方はそういう従来の経緯をただ新聞記者質問に対して答えた、こういうことでございます。しかも、それは緊急措置でございまして、きのうから自給率向上と申し上げているのは今後の問題でございまして、私は何も今後そういう形でどんどん買い上げていくというつもりはないわけでございまして、そういう点でひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 緊急の問題だけを指摘したわけですが、とにかくきのうも委員会において同僚の委員からも指摘されましたごとく、たとえば、予算委員会において農林省食糧庁検査担当職員大幅削減をやるという問題にしても、それから昨日の記者会見発言にしても、どうも一国の農林水産大臣としての慎重性に欠ける点があるのじゃないですか。人柄がいいから気軽に何を発言しても構わぬというものではないと思うのです。きのうの答弁にしても、午前中こういう発言をされておりながら、当委員会においては、それを伏線にしてはっきりした答弁説明もしていないでしょう。だから、小麦輸入問題にしても、飼料用の穀類の増産体制にしても、きのうはそういう余地はないということをあなたは言っておるのですよ。そうじゃなくて、実はこういう話があってこれに対応しているからということを正直に言うべきじゃないですか。これはきょう予定どおりわが党の新村委員初め各委員の皆さんからも、当然この問題についても具体的な指摘があると思いますし、当然きょう予算委員会においても、わが党の野坂委員大臣質問する予定になっておるし、来週は予算分科会が一斉に開かれるわけですから、これを避けて通るわけにいかないと思うのです。だから、本家である当委員会においては一番正直なことを言うという癖をつけておいてもらわぬと、どこへ行って発言しているのが本当の発言かわからぬですからね。率直に申しますが、ぜひ慎重に、日本農林水産行政最高責任者としての責任感を持って十分行動してもらいたいと思うのです。
  6. 内海英男

  7. 新村源雄

    新村(源)委員 農林大臣所信表明の中で、途中からですが、「申すまでもなく、農林水産業は、国民生活安全保障にとって最も基礎的な食糧安定供給という重要な使命を担う」、こういうことを言いながら、前段では、「農林水産物需給動向など内外の経済情勢社会環境変化する中にあって、農林水産業にとっても、長期的視点に立って、これらの情勢変化対応する新しい発展を図るべききわめて重大な時期であると思います。」こういうように述べておるわけです。  そこで、こういうように非常に重大な時期に重大な局面に立たされた農業というのは、一年や二年の短期的にそういう情勢が生まれてきたものではない。長い歴史的な経過の中でこういうように農業というのは追い詰められてきた。このよって来る原因、何と何がどういうようになっているのだということが明らかにならない限り、後段に申し上げましたような農政を展開していくことはできない、こう思うわけでございまして、この点について農林大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  8. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、やはり従来の農政のよって来るところについては、十分反省の上に立って明るい見通しを立てていきたい、こう考えておるわけでございます。
  9. 新村源雄

    新村(源)委員 それはきのうからの委員会でもいろいろ具体的に指摘をされたわけでございますが、外国とのいわゆる輸入関係、しかも工業製品外国輸出して、その見返りとして国内農業情勢を全く無視した形で無制限に輸入されてきた、こういう指摘があったわけですが、農林大臣はこのことを明確にお認めになりますか。
  10. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私きのうもお答えをいたしましたけれども、私どもといたしましては、そういう工業製品輸出との絡みにおいて、こちらが、何か向こうから農産物の輸入をある程度強制的にやらざるを得ないように仕向けられておる、それを受けておるというようなことはない、私はこう考えておるわけでございます。
  11. 新村源雄

    新村(源)委員 日本農業がこういうようになだれ現象的に後退後退を続けてきたのは、ちょうど日本高度成長経済が、爛熟期というか、そういうものに向けていくのと同じような形で農業というのはそういう形になってきた。しかも、昭和三十六年に農業基本法が制定をされた。この農業基本法の中では、これからの農業の新しい方向を目指しながら、農業の社会的、経済的な地位を確立をしながら、しかも国際化への対応の点にまで触れて、日本農業発展的に、農民生活を保障していこう、こういうことを規定をしているわけです。ところが、こういう基本法の精神とは全く逆な方向に流れてきている。こういう点については、農林大臣どのようにお考えになりますか。
  12. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、これもきのうもお答えしたと思いますけれども、たまたま昭和四十年代に日本経済高度経済成長に入ってまいりまして、急激に就労の場所がふえてまいりました。そういう形での農業からの、農業人口から他の産業への人口の移動がそこで相当ふえたということ、それから、そのころから日本人食生活も非常に多様化してまいりまして、米食からその他の穀物消費への変化と申しますか、そういう食生活変化が非常に強い傾向で推移をしてきた、こういうのが結果的には農業基本法考え方相当乖離するものが生まれてきた原因ではなかったか、私はこう思っておるわけでございます。
  13. 新村源雄

    新村(源)委員 日本農業がこういう状態に追い込まれた一つ理由として、食生活変化ということが挙げられるわけです。しかし、食生活変化というのは消費者がそういう方向にみずから求めていくものではなくて、いわゆる流通戦略というものによって食生活方向というのは変えられていくものなんです。たとえばコカコーラ、本当に日本人が予測もしていなかったああいうような飲料が、これは消費者がそういうものを求めたのではなくて、流通戦略に乗って爆発的に消費拡大をした、こういうことなんです。  したがって、今日こういうような情勢に追い込まれてきた理由の中に食生活変化というようなことはあり得ない。そういう方向に向けられてきた。先ほど申し上げましたように、いわゆるアメリカ農畜産物国内に持ち込むために、流通戦略によって食生活が変えられてきた。特に、これはもう農林大臣もお聞きになっていると思いますけれども、一時、米を食う子供は頭がよくない、パンを食う子供は頭がよくなる、こういうことが大っぴらに、いわゆる流通戦略の線に乗って宣伝をされた。そして学校給食等が主にパン食、こういうものを主体にして進められた、こういうこと等を見ても、農林大臣のいまおっしゃるような国民食生活変化によって日本農業がこういうように変わってきたということは欺瞞である、こういうように考えるのですが、この点についてはどうですか。
  14. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先生と多少考え方が違うかもしれませんが、私は決して欺瞞だとは思っていない。どうも自分では正しい。食生活変化というのは、やはりそれ相応に時代の変化に応じてあったというふうに私は受けとめておるわけでございます。  ただ、確かに先生おっしゃるように、近代社会の中におきまして情報というものが非常に発達をしてまいりまして、そういう点においていろいろと、流通部門においても情報リードいかんによっては非常な変化が起きるということも私は否定はいたしませんけれども食生活変化というものが、そういう流通業者というか、そういうものの相当の力によって何かこう曲げられて、国民が全く望んでいない方向食生活を持ってきたというふうには、どうも私は考えられないわけでございます。
  15. 新村源雄

    新村(源)委員 しかし、農林大臣はそういうようにお考えになっているかもしれませんけれども、事実として日本農業がこういうような形に追い込まれてきた。そして、いま言ったようないわゆる流通戦略、こういうものに沿って日本食生活というのは非常に多様に変化をしてきた、こういうことは事実として認めないわけにいかないのじゃないですか。
  16. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 たとえば、いまPCFでいろいろカロリー関係議論されておりますけれども先生承知のとおり、年々日本人摂取カロリーがふえてまいりまして、それは栄養学上からいっても決して後退ではなくて、やはりそれだけ日本人食生活向上し、カロリーが高まってきたということにおいては評価されておるのではなかろうかと私は思っておるわけでございまして、これもやはり食生活がいろいろの変化をしてきたところでそういう形が生まれてきたわけでございますから、私はそれなりに評価すべきものであると考えておるわけでございます。
  17. 新村源雄

    新村(源)委員 それじゃ、このことで論議をしておっても時間の問題がありますので、一応農林大臣とそういう見解の相違があるということをひとつ認めまして、しかし、私が先ほど申し上げましたように、やはり何といっても外国の、いわゆる海外農畜産物輸入によって日本農業はこういうように変化をし、そして困難な方向に向いてきた、こういう事実だけはこれから新しい農業を展開していく上にどうしても認めなければならぬと思うのですが、この点についてお認めになりますか。
  18. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 お話がもう少し具体的な例を取り上げていただけると、私お答えがしやすいのでございますが、どうも先ほどからの議論に戻るかもしれませんけれども食生活が多様化してきたことは、必ずしも、何かことさら一部のだれかがそういう方向に持っていこうとしてやられた結果出てきたものではないわけでありまして、やはり国際情勢の中でそれぞれの国の文化が向上していく、そしてそれに伴って国民生活向上していく、またそれぞれの国民所得も高まっていくという中で起きてきておるのではなかろうかという感じが私はするわけでございます。  たとえば、きのうも議論の出ておりましたFAOの二〇〇〇年の長期見通しの中でも、五〇%食糧増産をしなければならないと言われておること、あるいは一九八五年のFAO見通しの中においても、開発途上国において将来はだんだん所得が増大するに伴って、やはり畜産関係を主として、そういう食生活変化により畜産物などについても足りないものが出てくるのではなかろうかとか、いろいろ言われておるわけでございまして、それぞれの国民生活向上所得向上、それに伴って食生活変化していくというのは、もう自然の一つの流れではなかろうか。特定の一部の流通部門によってそれが曲げられてつくられていくというふうには、私はどうも理解ができないものでございまして、先生にはまことに申しわけないのでございますけれども、少し見解が違うということは、幾ら言われてもこの点は御理解をいただきたいと私は思うのでございます。
  19. 新村源雄

    新村(源)委員 それじゃ、日本の主食として一番影響を受けたものは米と小麦、麦類ですね。この麦類の生産が一体どうなってきているかといいますと、昭和三十五年当時、小麦、大麦、裸麦、三麦を合わせて百八十万ヘクタールの麦の作付があった。ところが昭和五十一年度においては十六万ヘクタールしかなかった。これは明らかに海外小麦、そういうものに圧迫されて国内小麦というものがつくれなくなってきた。ですから、食生活変化ばかりではなくて、そういう外国農産物との対比の中で国内の農産物が後退に次ぐ後退を続けていったという現実はどう受けとめられますか。
  20. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私の承知いたしておりますのは、小麦というのは大体米の裏作で全国的には行われておったと思うのでございます。その田畑の利用率が低下してきたことは事実だと思うのでございます。それは、先ほど申し上げましたように、私は食生活変化だけを申し上げておったわけではございませんので、食生活変化と、いま一つ日本経済が非常な高度経済成長時代に入ってきて、雇用の増加が非常にそこに出てきた。そしてそれが結果的には、米の裏作として小麦をつくっておられた農家の相当部分が、結局小麦をおつくりにならなくなった、こういうところに私は相当原因があるんだ、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。
  21. 新村源雄

    新村(源)委員 そういう論理で今後も進めていくということになれば、きのうからいろいろ農林大臣発言されているように、自給力というのは、そういうことだけで農業というものを位置づけしていくということになれば、とめどない農業後退というのを招くのじゃないですか。そういう点についてはどうなんですか。
  22. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 でございますので、私どもはそういう点については反省をいたしておるわけでございます。  いま申し上げておりますのは、非常に日本経済も変わってまいりまして、これからは低成長時代でございますし、当然農業における雇用の増大ということが考えられるわけでございまして、いままでとは変わった形で、私どもはたとえば麦と大豆というような形でつくっていただけるならば、麦とどうしてもの場合、米もやむを得ないかとも思いますけれども、できるならば麦と大豆というような形でやっていただけると大変ありがたいということで田畑の利用をお願いをいたしておるわけでございまして、今後においては、従来の高度経済成長時代とは違いますので、私どもとしてはそういう方向でお願いがしやすいという形で対処していけるのではないかと思っております。  また、従来においても、正直もう少し農業者の方々に御理解をいただくような形でやっていけばよかったのかもしれませんけれども、その辺のところの指導というものは十分でなかったのかもしれませんが、私どもは、今後はやはりできる限り農業をやっていただける方々については、ぜひひとつ農業にいそしんでいただけるような形に持っていきたい、こう考えておるわけでございます。
  23. 新村源雄

    新村(源)委員 いまの農林大臣お話でございますと、経済の高いときには、これは農業からそこを出ていって、そしていわゆる農業外の産業に就労することはやむを得ないんだ。低くなれば農村に帰ってきて農業をやれ、こういう論理につながりませんか。そうすると、農村はいつでも経済の波によって、農業というのは同じように農業内部でそういう矛盾を繰り返していく、こういう論理につながらないですか。
  24. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまもお答えをいたしましたように、私は、そういう点においてややもすれば指導が欠けておったのではなかろうかという反省をいたしておるわけでございます。それは高度経済成長のときでございます。高度経済成長のときに、安易にそういう職場を、農業を離れていかれたということに対して、もう少し何か考え方があったのではないかという点は、私は反省をいたしておるわけでございます。
  25. 新村源雄

    新村(源)委員 そうなりますと、先ほど申し上げましたように、そういう反省というものは、私が第一問で申し上げたように、この高度経済成長のために日本農業というのはこういう衰退を招いたんだ、こういうことを自戒をして差し支えないわけですね。
  26. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 確かに、日本農業において麦などを含めて相当抵下をしたということにおいては、私は、高度経済成長時代において、もう少し農業に対する指導と申しますか、そういう点が十分であれば、こういうような形にならなかったのではなかろうかという点を反省をいたしておるわけでございます。
  27. 新村源雄

    新村(源)委員 そうなりますと、そういう反省の上に立って、そして日本農業というものを再建をするのだ、こういうように理解して差し支えないわけですね。  そこで、これはきのうも馬場委員のほうから、それじゃ一体自給率というものをどこまで上げるのだ、社会党の方向としては少なくとも穀物において六〇%まで上げるのだ、こういうように社会党の方針を述べておられて、農林大臣、これについては非常にむずかしいというような意味のことを言っておられたのですが、私が先ほど申し上げましたように、いまこれから転作等によって生産の方向を指向していこうとするのに、大豆、麦あるいは飼料作物、こう言っておられるのですが、昭和三十五年において大豆が三十一万ヘクタール、なたねが二十万ヘクタール、三麦が先ほど申し上げましたように百八十万ヘクタール。ところが、昭和五十一年になりますと、大豆が八万ヘクタール、なたねが四千ヘクタール、小麦、大麦、裸麦が十六万ヘクタール、こういうように、いま求めようとしているものはかってはかなりの量があった。しかし、高度成長経済、そして海外農産物の輸入によってこういうものが失われてきた。これを復権することによって、私は穀物の六〇%以上の自給率というものは可能だ、こういうように考えるのですが、この点についてはどうですか。
  28. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 将来において自給率を高めていくというのは、当然私ども考えていかなければならぬ問題でございます。ただ、きのうもいろいろと御議論の中で私お答えをいたしておりますように、小麦とか大豆とかこういうものについては、今後極力自給率を高めていかなければならないし、いけると私ども判断をいたしておるわけでございますが、飼料穀物につきましては、きのうもお答えをいたしましたように、どうしてもコスト的に全く合わない状態でございまして、これはどうしてもアメリカの、たとえばトウモロコシの産地では、一農家の経営面積がそれこそ四百五十ヘクタール以上もあるというようなところでつくっておるものと、幾らこちらで努力をいたしましても、相当そこにはコスト的には差があるわけでございまして、日本のこれからの畜産物の、特に養鶏、養豚は御承知のとおり、いま非常に濃厚飼料でトウモロコシをたくさんお使いいただいておるわけでございます。そういうようなことを考えますと、それじゃ今後の畜産業において相当日本国内飼料穀物を使ってやろう、幾ら高くてもいいということにはなかなかならないのじゃないかという感じがいたしまして、私どもといたしましては、飼料穀物に関する限りは、どうも将来ともに相当量輸入に依存しなければならないのではなかろうか。だから、全体そういう飼料穀物も入れた自給率はそれでどうしても下がらざるを得ないのではないかという判断であります。しかし、主食用の自給率については、この間の農林水産省の試算は一応横ばいという形でございますけれども、私としては主食用の食糧自給率については何とかもう少し高められるようにすべきではないかということで、農政審議会でいろいろ御議論をいただいておる、こういうことでございます。
  29. 新村源雄

    新村(源)委員 私も、いま飼料穀物等で輸入されている量は総体でいいますと二千六百万トンも輸入されている、これを飼料作物あるいは主食等を含めて相当高い点まで持っていくということについては、非常に困難だ。しかし、大臣のおっしゃるように、飼料穀物というのは、これは国内では採算がとれないのだ、こういうような見解ではこれからの農業復権というのは私はできないと思うのです。それは可能な限り飼料穀物においても自給をするのだ、そういう努力をする、こういう見解に立ってもらわないと、主食は何とか自給するけれども飼料穀物はもうできないんだ、こういう前提に立っての農業復権というのは私は賛成できない。  そういう点について、本当にもうさじを投げるのか、あるいは全力を挙げて可能な限り国内自給に持っていこうとする努力を払うのか、いずれか見解を示していただきたい。
  30. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 全くさじを投げているというわけではございませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、大変むずかしい問題ではなかろうか、私はこういう判断をいたしておるわけでございます。  たとえば、いまいろいろと議論されておりますけれども、飼料米とか飼料稲とか言われておりますが、これなどが本当に、いま実験をしておるようなものよりもずっと収穫量が、物すごく反収がふえてまいりまして何かうまくいくというような技術開発でもでき得るならばまた話は別になってくるかと思います。そういう意味において、私どもいま飼料稲の開発については、農事試験場においてもやらしていただいておりますし、また十一県にも農業試験場でやっていただいております。あるいは個人でもいろいろと研究をしていただいているわけでございまして、もしこれが本当にうまくいくならば、それは大変結構なことでございまして、そういうときにはこれはもう穀物自給率相当上がってくるということだけははっきりしておるわけでございますけれども、技術屋から聞いておりましても、現段階においては非常にむずかしいという報告ばかりでございますので、先ほどから申し上げているようなお答えになっておるわけでございます。
  31. 新村源雄

    新村(源)委員 非常に困難であるということは私もわかっています。しかし、可能な限り努力をする、こういうように理解をしておいていいわけですね。
  32. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま申し上げましたように、たとえば飼料稲なら飼料稲というものか代替でそういう形になり得るというようなことは大変結構なことでございますから、とにかく私どもとしては努力をするということは当然だと考えております。
  33. 新村源雄

    新村(源)委員 それでは、次に進ませていただきますが、農業再建をするということには何といっても価格問題を避けて通ることはできない。いま不景気になってきたから農民は仕方なく農業に帰っていくんだ、こういうことではなくて、農民が本当に安心をして、そして営農意欲を燃やして力いっぱい農業に取り組めるようにする。これは、何といっても他産業並みの労賃が保障される、そういう価格政策が裏打ちとしてなければそうならないわけでございますが、今日のこの農畜産物の価格の立て方に、米とその他のものとの価格算定の方式が違うわけですね。こういう格差のある状態をつくっておいては、いまの国民食生活にマッチしたところの総合的な農業政策というのはできないと思うのですが、この点について、農畜産物の価格算定に当たっての考え方を一本化していく、いわゆる生所方式に切りかえていく、こういうことについてどうお考えになっていますか。
  34. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先生の御指摘は、現在米価算定のときにやらせていただいております生産費所得補償方式を畜産物その他についても採用しろ、こういう御指摘かと思うのでございますが、率直に言って、私は大変むずかしいというお答えをせざるを得ないわけでございます。  ただ、しかしながら、農家の方が本当に生産意欲に燃えてつくっていただけるような形に価格かあるということは望ましい姿でございまして、私は、そういう意味において、やはりある程度経営規模の拡大を図ってコストの低下を図り、そしてそれによって、そのコストが低下した分を生産者のある程度手取りに還元し、また一部は消費者にも還元するという形が望ましいのではないかと考えておるわけでございます。将来、何でもいいから生産費所得補償方式をやれということになってやってしまいますと、これはもう、今度は逆に生産量の非常な過剰ということも出てくる可能性もあると思いますし、それではいまの時代においては、できる限りコストを安くするような方向にいろいろの政策を進めてまいりまして、そのコストの安くなった分について生産者も手取りをふやしていただくという形で生産意欲を燃やしていただかなければいけない、こういう基本的な考え方を私ども持っておるわけでございます。
  35. 新村源雄

    新村(源)委員 どうも大臣のおっしゃることはちょっと理解できないわけですが、いまいわゆる米と他の農畜産物との価格の算定の方法が違うというところに米の過剰という問題が一面あったと私は思う。ですから、そういう利益の高いものと低いもの、これはだれだって利益の高いものを追求することは当然なんです。だから、私は、大臣のおっしゃることとは逆だと思うのです。もちろんこれは生産者としても、できるだけ消費者に喜んでもらえるような価格にするという努力をしなければならぬことは当然です。しかし、それと同時に、消費者の皆さんも、農民の生産費や生活、こういうものを度外視した価格というものについてはやはり理解をしていただかなければならぬ、こういう両面があると思うのですね。そこに消費者とのコンセンサスという問題が出てくるわけですけれども、そういうコンセンサスを得ながら、農民のあるいは農業というものの実態を正しく反映する価格政策というのはぜひ実現していかなければならぬ。大臣のおっしゃるように、同じにしたならば過剰なものができる、これは逆の論理ではないか、こう思うのですが……。
  36. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先生からいま御指摘ございましたように、お米が非常に過剰になったという御指摘があったわけでございます。やはり私どもは、もちろん農家の方がいま申し上げましたように意欲をなくすような形に価格がなってはいけないと思うのでございますけれども、そうかといって、米と同じような生産費並びに所得補償方式をとるというのも、余りにも飛躍し過ぎるのではないか、こう考えておるわけでございまして、いま行われておりますいろいろの価格政策の中で、より問題があるところは私ども改善をしていくということについては検討させていただきますけれども、どうも生産費所得補償方式に持っていくということについては、余りにも飛躍的ではないかというふうに判断をいたしておるわけでございます。
  37. 新村源雄

    新村(源)委員 これは、私は架空の算定方式を使えと言っているわけではないのですね。現在すでにとられているもの、それに並べるようにしていけ、こういうことがなぜ飛躍するのですか。
  38. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私が申し上げておりますのは、いまの価格政策の中で、改善すべき点がもしあればそれを改善していくという、検討する中において、農家の方の生産意欲をぜひ維持していただきたい、こういう考え方でいきたいということでございまして、生産費所得補償方式をとるまでにはどうも問題があるということは、いまいみじくも先生から御指摘いただきましたように、米がある程度過剰になってきたのは、一つは、確かに米が価格的には一番恵まれておるわけでございまして、そういう点に問題があったのではなかろうか。そうなってくると、たとえば何か一つ畜産物について生産費所得補償方式をとった、それがまた非常な過剰になってくるということになりましたら、これはまた大変なことになるわけでございまして、その辺がなかなかむずかしいのではないか。生産者の意欲をなくさないようなことと同時に、やはりある程度の需要に見合った生産がなされるということが望ましいわけでございまして、私は、現在の価格政策の中で、そういう考え方で現在の価格政策をよりよいものに持っていくということで、十分できるのではないかと判断をいたしておるわけでございます。
  39. 新村源雄

    新村(源)委員 どうも大臣のおっしゃることがちょっと理解できないのですが、日本の総体の農業生産の中から見れば、過剰などということはとても考えられるべき問題じゃないのです。しかし、それは国民消費方向に正しく誘導されていないところに一部の過剰という問題が出てくる。誘導できないというのは、そういう価格政策にアンバランスがあるから誘導できないのであって、これがみんな同じ条件が整ったとすれば、誘導というのは国民食生活方向に合わして誘導していくことがよりやりやすくなる、こういうように思うのですけれども、それがやりにくくなるというのはどういう論理なんですか。
  40. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、やはり需要に見合ったような形に生産がなされていくという形において、生産費所得補償方式をとることは必ずしもどうもそういう形に行かない場合が起きる可能性が非常に強い、まあこういう判断をいたしておるわけでございます。
  41. 新村源雄

    新村(源)委員 どうもこの点については全く納得ができないわけですが、また機会を改めて質問いたします。  次に、いまの日本農業問題の中で避けて通ることのできない問題は出かせぎ問題ですね。西欧の先進国というのは、農業労働者の多くは、ユーゴとかスペイン、ポルトガルあるいはアフリカ、こういう異民族が農業労働者として多く入っている。さらには、こういう人たちがその国の道路とかあるいはトンネルとか、そういう建設工事にも携わっている。ところが、日本は、この高度経済成長の基礎になってきた道路あるいは地下鉄、あるいは新幹線やトンネル、港湾、こういうような建設工事に、本当に土にまみれてやってきたという労働者は、ほとんど離農者であるとか、あるいは出かせぎであるとか、あるいは通勤であるとかという、そういう農民の手によってやってきておるわけです。そして、今日もなお、農家からの他産業就業人口というのは五百七十四万人も出てきている。こういう情勢の中で、過日、これは十六日ですけれども全国出稼組合連合会の栗林三郎先生から、三項目にわたって、これはもうすでに農林省に行っておるわけですが、要請書が出ております。これについてどういうように対処をされていこうとしていますか。
  42. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 先生指摘のように、日本経済成長は農家の労働力がこれに大きくあずかって力があったということは事実であろうと思います。農政の立場から言いますと、出かせぎのない安定的な農家経済を確立するということが一番基本であろうかと考えております。そのために、一般的な構造対策、生産対策あるいは価格対策、それぞれ必要でございますが、特に条件の悪い出かせぎに頼らざるを得ない地域に対しては、それなりに即応した対策をとってまいることが必要であろうかと考えております。  先生いま御指摘になりました全国出稼組合連合会からは、そういう意味で三点の要求を承っております。私ども直接出かせぎ対策の全般的な窓口となって担当しております構造改善局といたしましては、地場産業の振興、あるいは地場における公共事業の推進、計画的な農村への工業導入、こういったことを通じて、各種の対策を講じ就労機会の確保を図っているところでございます。五十四年度から実施しておりますところの新しい農村地域定住促進対策事業におきましては、地場での処理、加工といったようなことまで含めた複合的な営農の育成、それから工業の導入、こういったことによる二次産業、三次産業における雇用機会の創出というようなことも一つの重点にして事業を仕組んでいるわけでございます。それだけでなしに、住みよい生活環境をつくるということで、地域住民相互の交流を推進することといたしまして、そのための施設に対する助成も行うということもやっておるわけでございます。それから、こういった事業の計画や実施に当たりましては、地元の立場、事情というものを十分くまなくちゃいけません。そういう意味で、前から、たとえば先ほどもお話に出ました全国出稼組合連合会、そういったところの御意見等も十分承って反映させるように努力してまいっているところでございます。今後とも、そういったことを含めまして指導に、また私どもの事業の充実に努力してまいりたいと考えております。
  43. 新村源雄

    新村(源)委員 時間がございませんので、一点だけにしぼって農林大臣質問いたします。  先ほど飼料米、えさ米の耕作について試験研究機関等で進めている、こういうことですが、この要請書の中で、えさ米の開発等により食糧自給率向上させる、こう言っておるのです。私の聞くところによりますと、これは試験場ばかりでなくて個人的にもこういう開発のために努力をされている。したがって、そういう試験田等については最小限、いわゆる転作作目として認める、このくらいは対策として実現をする、この点について農林大臣に伺いたいと思います。
  44. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど私、申し上げておりますように、まだ相当技術屋の報告では非常にむずかしいということを言ってきておるわけでございまして、まあこの五十五年度におきまして五十六年度以降の水田利用再編対策についてのいろいろの仕組みについてもまた検討しなければならぬときに来ておりますが、私は正直言って、まだいまの段階で転作作物の対象に入れるということは大変むずかしい状況ではなかろうか、こう判断をいたしております。
  45. 新村源雄

    新村(源)委員 大臣、私は北海道の十勝なんですが、大正金時とかあるいはメークインとか、こういう民間で開発されて非常に優秀な作物が出てきておるわけです。そういうものを後で試験場なり農林省なりが追認するということになっているのです。ですから、こういう新しい方向に、しかも、いま米の減反で揺れ動いておる農民一つの希望を与えるという意味で、思い切ってこういうものはそういう試験研究機関に、ある程度の制約は設けてもいいけれども転作作目に入れる、このくらいの前進した姿勢を持たないで、一体農業を復興させるなどということができますか。
  46. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだ時間がございますので、私もぜひ一度、申しわけないのでございますけれども、その実際に飼料米をやっていただいておるところをまだ私自身見せていただいておりませんので、国の方の農事試験場は今度行くことになっておりますけれども、あわせてそういう民間の方も一遍ぜひ私は機会を見つけて、自分でいろいろと見て、そしてお聞きをして、ひとつ検討してまいりたいと思います。
  47. 新村源雄

    新村(源)委員 検討をするということは、転作作目に入れるかどうかということをその時点で判断をする、こういうように理解をしていいですか。
  48. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 技術当局から聞いておるのは、非常にむずかしいということを私は聞いておるものでございますから、現時点では、先ほど申し上げましたように、非常に困難であるということをお答えしておるわけでございます。しかし、私自身が現実に見てこれはいいことだということになるかどうかは、そのときの判断でございますので、現時点でどちらとも申し上げられません。とにかくぜひ近いうちに見せていただいて、自分の目で見、自分の耳で聞いて判断材料にしたい、こう考えておるわけでございます。
  49. 新村源雄

    新村(源)委員 それでは、大臣は、できるだけ近い機会に現地を見る、そしてそのときに判断をして転作作目に入れるかどうかを決定する、こういうことでよろしいですね。
  50. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 判断をするというところまでは結構でございますが、余り期待をされて、何かいかにも五十六年度以降の水田利用再編対策の中において飼料稲がどうも対象になりそうだ、こういう判断を持っていただきますと、先ほどおしかりいただいたようにまたおしかりをいただくことになりかねませんので、とにかくよく検討する上においてもやはり自分で見なければいけない、こう思っておりますので、そういうことでぜひ見せていただくようにいたしますから、そのときの段階でまたいろいろと御議論をいただきたいと思うわけでございます。
  51. 新村源雄

    新村(源)委員 それでは、大臣が行かれるときに、私がまた関係議員と同行しまして、そこでひとつ一緒に検討してもらいたい、こういうことで約束しておきます。  次に、酪農問題でお伺いしたいわけですが、酪農問題はいまさら申し上げるまでもございません。現地において生産調整、せっかく生産した牛乳に食紅を入れて食用にしない、こういうことが強行されておるわけです。そして現在では、バターが三万五千トン、脱粉が九万五千トン、これだけが滞貨をしておるということで、乳製品市況は非常に低迷をしておるわけです。しかし一面、輸入の方を見てまいりますと、先ほどの問題とも関連をするわけですが、これがまたいろいろな品目がございますけれども昭和四十九年に生乳換算で百五十四万八千トン輸入しておったものが、昭和五十年が百四十四万トンで若干下がって、五十一年が百八十六万二千トン、五十二年が二百二十九万九千トン、五十三年が二百五十八万一千トン、こういうように、国内の生産が高まるのと同じようにどんどん輸入が高まってきている。それが今日こういうように乳製品が非常にだぶついている。そのために、第三次酪農近代化計画の線に沿って農民が一生懸命増産方向を向いておるのにもかかわらず、生産調整をしなければならぬ、こういう矛盾が起きておるわけです。  そこで、私は項目を申し上げますので、この点についてひとつ御回答いただきたいわけです。  一つは、国内の生産者が自主的に生産調整まで行っているにもかかわらず、輸入乳製品をなぜ野放しにしておるのかということであります。  それから、第二点は、乳製品の需給計画の中に、これは中央酪農会議等がやっておりますけれども、こういうもののほかにいわゆる輸入計画というのは別にあるわけですね。ですから、二本立てになっている。国内の需給と外国から入ってくるのと二本立てになっている。こういうことでは、先ほど言ったような矛盾が起きてくるので、これは総合需給計画をつくって国内の生産を優先をする、こういうようにすべきではないか。  それから、第三点目は、乳業メーカーは、今度の不足払い特別措置法の中で基準価格で原料乳を購入しなければならないという義務づけをしておるにかかわらず、現在の乳製品市況は安定指標価格から大きく下回っているわけです。したがって、こういうような状態でありますから、畜安法の第六条、第三十九条によって直ちに事業団の買い上げを行うべきだ。  さらに、第四点目では、現在擬装乳製品として特にココア調製品と調製食用油脂が依然として高い水準で輸入されておるわけです。これが国産の乳製品、バター、こういうものの消費と価格に非常に大きな影響を与えておるわけです。したがってこれの規制措置をとるべきではないか。  次に、輸入乳糖それからカゼイン。これはすでに畜産局長が五十四年の十二月二十一日に通達を出しておりますけれども、これが脱脂粉乳の代替として使われておるという事実があるわけです。これを直ちに中止をすべきではないか。そしてまた、このためには生産者団体に輸入の実態をチェックさせる機能等を与えるべきではないか。  第六点に、輸入学給用脱脂粉乳を国産のものに切りかえるべきではないか。  第七点に、すでに買い上げをされた乳製品をただこのまま放置をしておいたのでは、国内の乳製品市況は依然として冷え込んだままになっておりますから、海外援助等の措置をとってこれを国内の市場から放出すべきではないか。  以上、酪農問題について七点にわたって御質問を申し上げましたが、時間もございませんので、簡略にお答えをいただきたい。
  52. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 七点のお尋ねでございます。簡潔にお答え申し上げたいと存じます。  まず、第一点の、乳製品の輸入が野放しではないかという点でございますが、御承知のとおり、乳製品につきましては、国内酪農の保護育成を図る見地から、大部分の乳製品を非自由化品目といたしております。同時に、そのうち主要な乳製品でございますバター、脱脂粉乳等につきましては、畜産振興事業団の一元輸入品目といたしております。現在、国内乳製品の需給が大幅に緩和しておる状況でございますので、バター、脱粉等の主要乳製品についての事業団の輸入は停止をいたしております。今後も、乳製品の需給が逼迫して輸入を必要とするような事態にならない限り、事業団輸入は原則として行わないという方針でございます。  なお、現在輸入されておる乳製品は、一つは、飼料用脱粉あるいは学校給食用等の特殊用途に向けられるもので、輸入割り当てにかかるもの、あるいはナチュラルチーズ等国産のみでは需要に十分対応できないもの、あるいは国産が全くないものでございまして、量的に見ますと、ナチュラルチーズ、飼料用の脱脂粉乳合わせて四分の三を占めておる状況でございます。  次に、二番目の、牛乳乳製品の需給計画の中に輸入物も入れて総合的な需給計画を立てるべきではないかという点でございますが、いま申し上げましたように、いま入っております乳製品は国内乳製品の需要分野と異なる余り競合しない分野でございます。したがって、これを一本の総合需給計画に立てる意味合いが必ずしもないのではないか。また、輸入される乳製品については、その主なるもの、その相当の部分が自由化品目でございますので、あらかじめ計画を立てて入れるという性格のものではないということで、困難であろうというふうに考えております。  第三点の、基準乳価の義務づけがあるもとで乳製品の生産が行われ、それが過剰になって、事業団が買い上げすべきではないかという点でございますが、御承知のとおり、事業団の買い上げは昨年及び一昨年二カ年連続して脱脂粉乳、バター、相当量の在庫がございます関係で、これ以上の買い上げをすることはいろいろの困難な点がございます。  それから、第四点の、乳製品のまがいの調製食用油脂あるいはココア調製品の輸入の規制という点でございますが、これは自由化品目になっております。しかし、国内の乳製品の需給に及ぼす影響もございますので、ココア調製品については業界の自主規制措置を求め、それが実行に移されております。調製食用油脂につきましても、その関係の業界に対しまして、国産品をできるだけ使うような要請をいたしておるところでございまして、合わせてみますと、五十四年の輸入総量は前年並み程度になっておるところでございます。  第五点の、乳糖、カゼインの問題でございますが、これらの物資につきましては国産品がないということで、工業用あるいは特定の用途向けに輸入されておるものでございます。それが国内で脱脂粉乳の需要の分野と競合するという点で過般御指摘があったわけでございますが、調査したところによりますと、その分量はかなり少ないというふうに見られます。しかし、そういうものがつくられることは需給にも影響しかねないということで、関係業界に対しまして、そういうものをつくるのではなしに国産品を使うようにという要請をいたしておるところでございます。  六番目の、学校給食用あるいはえさ用の脱脂粉乳の国産品への置きかえでございますが、それぞれこれらの脱脂粉乳につきましては安い価格で供給をするという要請がございます。そういうことから、国産品と置きかえますとコストが高くなるということで、なかなか困難でございますが、昨今の需給事情にかんがみまして、私どもといたしましては、関係業界あるいは学校給食会に対して、国産品を使うように要請をいたしまして、えさ用脱粉については一万トン、学校給食につきましても数百トン、これを国産品に置きかえるという返事をもらっておるところでございます。  最後に、海外援助の関係でございますが、これにつきましても相当大幅な財政負担あるいは援助を受ける国の希望というものも考えて対処する必要があるわけでございますが、現状においては非常に困難な状態でございます。
  53. 新村源雄

    新村(源)委員 まだいろいろ御質問申し上げたいことがございましたが、また答弁で不満なところも大分あるわけですが、時間が参りましたので、次の機会をとらえてまた御質問したいと思います。
  54. 内海英男

    内海委員長 この際、午後零時五十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  55. 内海英男

    内海委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川国彦君。
  56. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、現在の国民生活の中で非常な関心事になっております最近の魚の値段、それから流通の問題を中心にいたしまして、農林水産大臣に主として質問をさせていただきたいと思います。  最初に農林水産大臣の魚に対する関心をちょっとお聞きしてみたいと思うのですが、農林水産大臣は魚はお好きでございましょうか、嗜好としてどういうようなことですか、ちょっと……。
  57. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私はこのとおり、わりあいに体は均斉がとれていると思っているのでございます。均斉がとれているのはやはりPCFでございますか、非常にバランスのとれた食生活をやっておるのではないかと思っておりまして、その中においても、大体標準の日本国民生活ではたん白質は魚が五〇%占めているわけでございますが、大体動物性たん白質の五〇%を魚でとっておる、その程度ではないかと思っております。
  58. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大変模範的な答弁をなすっていらっしゃるようなんですけれども大臣のお住まいの岐阜県は多分魚のとれない海なし県というふうに承りましたけれども、そういうところでなかなか魚の嗜好をきわめるというのはちょっとむずかしいかと思いますが、いまの模範答弁から言いますと、たん白質の五〇%を魚からとっておられるということなんで、それなりに魚に対する御関心もおありのようでございますから承りますが、高級魚と言われる、たとえばマグロとかおすし屋さんとか料理に使われるもの、もう一つは大衆魚のサンマとかイワシとかアジとかサバ、そういう食卓に非常に低廉な価格で供給されるもの、そういう高級魚、大衆魚を分けまして、大臣は嗜好としてはそういうものをどういうふうに好まれておりますか。
  59. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、余り高い魚、マグロなどは実は好きではございませんで、やはりイワシとかサバとか、こういう大衆魚を大変愛好いたしております。
  60. 小川国彦

    ○小川(国)委員 どうも大臣お話を伺いますと、大衆魚を好まれると、これも非常に模範的な答弁をなすっていらっしゃるのですが、現実の魚の流通機構を見てみますと、その大衆魚がなかなか卸売市場で取り扱われなくなって、高級魚の方が中心になってきている。現実に五十三年度の数字で見ますと、国内の魚のとれ高が大体二兆五千億、それに対して輸入が一兆円近く、こういうことで、五十四年度あたりの統計が出てまいりますと、恐らく輸入魚の大半が高級な魚が輸入されているというふうに見られるのですが、それがどんどんふえてまいりまして、そして国内魚、いわゆる大衆魚、大臣の好まれるイワシとかサンマとか、そういうものが減ってきている、こういうような傾向が顕著に見られるわけです。そして大体数量的に見れば約一千万トンの魚を日本国民は食べているわけですが、その一千万トンのうちの百万トンが輸入魚、こういうふうに言われているのです。金額の取扱高で見ると、輸入が一兆円に対して国内は二兆五千億。それが五十四年から五十五年にかけてはさらに輸入魚がふえてきて、先日の数字では輸入魚が一兆円、こういうふうに言われているのですが、こういう傾向に対して、国内の漁業というものをもっとどういうふうにしたら支えていけるのか、それから輸入がこういうふうにしてふえてきている現象、そういうものを大臣としてはどういうふうに把握されておられるか。
  61. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 やはりこれからそういう大衆魚がふえていかないことには、私は日本の水産業の発展にもつながらないと思っておりまして、それについては、できるだけ食生活の中でよりそういうものを国民の皆さんが取り上げていただけるように、たん白質としては変わらないわけでございますから、そういう方向に啓蒙し、また、料理の仕方などについても啓蒙していくということで、きめ細かく、また息の長い形でこれから努力をしていかなければならないのではないかと思っております。  それから、いまの輸入がふえているものでございますけれども、これはやはり十分国内でとれないものが結果的に輸入で賄っておる、こういう形ではなかろうかと私はいま判断をいたしております。
  62. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いま大臣の言われた国内でとれないもの、それから高級魚と言われるもの、そういうものが輸入額で一兆円に達するという状況になっておるわけです。ところが、輸入の魚をめぐって商社なり大手水産会社の介入というものが最近非常に目立ってきておりまして、これが魚の高値操作といいますか、大手商社が市場で圧倒的な買い占めを行って、そして在庫を抱え込んで市場で高値操作をして、国民は高い魚しか食べられない、こういう状況を露呈しているわけです。その最も顕著な例が最近倒産しました北商の倒産の例でありまして、これは負債総額四百億ないし五百億と言われておりますし、それから北商と三菱商事が結託して買い占めたかずのこは、日本国内の年間需要量六千トンの半分の約三千トンをこの両社で買い占めた、こういう状況があるわけですが、この北商の倒産の事例を大臣はどういうふうに見ておられるか、その点をひとつ簡潔に。
  63. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 たとえば高級魚にいたしましても、市場を通じてそこで価格形成もなされ、みんなの見ている前で物が流れていくという点においては、私は変なことが起きることはほとんどないと言っていいのではなかろうかと思います。ただ、そういう市場を通じないで投機的な形で行われたということが、結果的にいま御指摘の北商やその他の問題が起きてきたのではなかろうかと私は思っておりまして、やはりそういうことは決して好ましいことではないと思っております。
  64. 小川国彦

    ○小川(国)委員 市場を通じないで行われたということも一つ大臣指摘するように問題点だと思います。  ただ、もう一つ考えなければならないのは、こうした魚の流通に対して、しかもかずのこが五十三年の五月ごろには特大のキロ当たりで六千三百円、それが五十三年の暮れ、十二月には七千五百円、昨年五十四年の四月には九千七百円、それから五十四年九月には一万八百円、それから五十四年十一月の大阪市場での卸値はキロ当たり一万三千八百円から二万円、それで小売価格にしますとキロ二万円から二万五千円、こういうばか値を呼んで、そうして結局、消費者がそういうばかな相場のかずのこは要らない、こういう消費者の不買運動が起こって、結局、悪徳的な商法を行ってきた北商、三菱が倒産する、こういう事態になったと思うのですね。ですから、このかずのこ倒産の例に見られるのは、これは消費者の不買運動が功を奏したのであって、農林水産省や水産庁が、こうした水産物の異常な取引に対して、行政としてこれをチェックする機能を果たせなかったのじゃないか。だから、その意味で、この倒産は国民に大きな教訓を与えたけれども、それは消費者の勝利であって、農林水産省の行政指導としてはまさに敗北に終わったのではないか、こういうふうに考えられるのですが、その点農林水産省としてどういうふうに責任なり行政責任というものをお感じになっているか。
  65. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ただいま大臣お答えいたしましたように、六三%程度のものは市場を経由して流通をいたしておるわけでございますが、ただいま御指摘のありましたような特定の品目につきましては、市場が介入をしないで取引が行われておるという実態でございまして、そういうかずのこなどにつきましては、全体的な生産量なり輸入量なりに限度があるということで、価格をつり上げていくというふうな動きがあらわれておるわけでございまして、この点は非常に私たちも残念に思っておりますが、昨年十一月から十二月にかけまして、かずのこにつきましての価格の動きあるいは取引の動きというのは非常に注意を要するというふうに考えまして、私たちも、大手商社及びそれに関連します者を三回にわたりまして呼び集めまして、消費者の需要の動向を無視したような価格での販売というのはだめであるということにつきまして、強く指導をいたしたわけでございます。  十二月に入りまして大臣が築地の市場を視察をされました際にも、かずのこについての取引状況には問題があるという御指摘、御指示がございまして、十二月に入りましてもさらに強くこれらの指示をいたしたわけでございますが、そういうことにもかかわらず御指摘のようなことが行われたということにつきましては、われわれの指導について十分ならざるものがあったということは十分反省いたしますが、一つには、やはりそういう動きを抑えるということについての一つの行政指導の限界というものを感じさせられる次第でございます。
  66. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この十二月に大臣、築地を視察されたということでありますけれども、その視察をされてかずのこの高値にお気づきになって、御注意なさったわけですか。
  67. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私も余りにもその高いのにびっくりいたしまして、その場でいろいろと説明も受けたわけでございますけれども、どうもその説明を受けても私も理解ができないものでございますから、ひとつこれは商社を呼んでせいぜい厳しく指導してほしい、こういう指示をいたしたわけでございます。
  68. 小川国彦

    ○小川(国)委員 しかし、その結果は、この行政指導としては現実の引き下げの役割りを果たせなかったということですね。その点については、今後、このかずのこの反省を契機として、どういうふうな対応策をお考えになっていらっしゃいますか。
  69. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど水産庁長官からも答弁をいたしましたように、非常に行政の限界を今度は感じたわけでございます。今後については、このかずのこの北商問題だけでなくて、道漁連の魚ころがしの問題もございますので、私どもといたしましては、一体、水産物の流通というものは現実のままで一切改善ができないのかどうか、その水産物の流通あるいは取引、そういうものについて、やはりもう少し近代的と言いますか、合理的と申しますか、何かもう少しわれわれにわかりやすいような形での流通ができないものだろうか。こういう点について私も非常に疑問を持ちまして、いま省内で水産庁と食品流通局との間で、これは非公式なものでございますけれども、研究会を持ってもらって一遍その辺を検討してもらいたい、こういうことを私は指示をいたしたわけでございます。
  70. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは水産物の寡占化に反省を与える一つの大きな材料になった。したがって、今後、大臣が主要な水産物、それから国民生活に欠かせない物資としてのこうしたものについて、行政権限を発揮できるならば、それを最大限に発揮しても、こうしたものを安定的なものに抑える、こういうお考えはお持ちでございますか。
  71. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、行政指導というものについては立法措置とは違ってある限界はあると思いますけれども、でき得る限り、私ども、やはり国民食生活にとって魚というのは欠かせないものでございますし、少なくとも投機的な行為によって非常に割り高なものを国民が食べざるを得ないというようなことは、何としても避けていかなければならないことは当然でございまして、そういう考え方に基づいて、できる限りの行政指導がどうできるのか、これをいま検討を進めておるわけでございます。
  72. 小川国彦

    ○小川(国)委員 行政指導だけではなくて、法的な措置についてもとり得るものかあればおとりになる。この点はいかがですか。
  73. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま輸入につきましてはIQもございますけれども国内の魚の流通というものはいま自由主義経済の原則でやっておるわけでございまして、これを全く法律でまた規制をするというようなことは、なかなか現実にはむずかしい問題ではなかろうか。私ども、行政指導でどこまでやれるのか、また、いまの制度そのものが何か改善していくところがあるのか、こういうことをひとつ検討しよう、こういうことでやっておるわけでございます。
  74. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣、ちょっと一つお忘れになっている法律があるのではないかと思うのです。大臣は、衆議院の物価問題に関する特別委員会をおつくりになったときは、当時商工関係の議員として、実力者としてこの委員会の設立に当たり、それからまた、その委員会の中で生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置法案、こういうものができておるのですが、こういう法案も検討されて、こういう場合に対処していく、この法案の条項の適用ができるならば、そういうお考えもお持ちになれるかどうか、その点をまた伺いたいと思います。
  75. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 売り惜しみ買いだめ防止法案につきましては、あのオイルショックの直後に私も相当中心になりましてつくった法律でございますけれども、あの法律の趣旨は、緊急避難的と申しますか、本当にこれはもうどうしても大変だというときに、あのオイルショックのときに物すごく物の値段が上がった、しかも、それが国民大衆がより使っておるもの、こういうものについてやったわけでございまして、たとえばいまここで話題になっておりますかずのこというものなどは少しその対象にはなじまないのではなかろうか。もしこれがかずのこではなくて、国民の皆さんが食べておられる魚の相当部分がそういう形で売り惜しみあるいは買いだめが行われたというときには、私は法律の発動をしなければならない、こう考えております。
  76. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それでは、私はさらに進んで、そうしたかずのこよりもっと国民に身近な魚として親しまれているものの事例として、マグロの問題を取り上げて御質問したいと思うのです。  マグロにつきましては、これはもう非常に高いものから安いものまでございまして、国民生活の中では、高級料亭と言われているところから、あるいはまた一般の食堂から、それからまた国民の庶民の台所から、お刺身としてマグロというのは欠かせない存在になっておる。それから、おすし屋さんへ行って聞きますと、おすし屋さんがつくる一人前のおすしの中でマグロだけは欠かすことかできない。おすし屋さんというのは、種としてほかの材料が二、三欠けることがあっても、マグロがないときには商売にならない、こういうふうに言われるほど、マグロというのは日本国民生活の中に非常に入ってきているわけなんですが、このマグロが、かずのこと同じように大商社、大手水産企業によって買い占めされているという現状があるわけです。この状況について私が調べた中でも、まず、大手の商社と水産会社七社ぐらいを挙げますと、もう一〇〇%近い寡占な企業、少ない企業によって市場支配がなされている、こういう状況があるのですが、農林水産省として、このマグロの大手商社の占有状況、大手水産企業による買い占め状況について把握されている状況を御報告願いたいと思います。一番から七番ぐらいまでの企業で何%ずつ占有されている、いわゆる買い占められているか、この状況について、パーセントだけで結構ですから、御報告を願いたい。
  77. 今村宣夫

    ○今村政府委員 マグロの扱いのシェアでございますが、東洋冷蔵が三九・九%でございます。それから、極洋が一八・二%、八洲が一四・三%、日水が八・一%、東水産が七・一%、カネトモが四・五%、マルミが一・六%、丸幸が一・四%、大体そういう状況でございます。  ちょっと説明を落としましたが、いまのは遠洋マグロの扱い量でございまして、近海の分はこれの比率ではございません。遠洋の分でございます。
  78. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その意味は、マグロの総流通量が約七十万トンと見まして、そして、そのうちなまものの近海の五万トンを除く遠洋物六十五万トン、その内訳が、いま申されたような三菱の三九・九、極洋の一八・二、八洲の一四・三、日水の八・一、東の七・一、マルミの一・六、カネトモの四・五、丸幸の一・四、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  79. 今村宣夫

    ○今村政府委員 全体のマグロの量のうち、先生からいまお話がありました近海マグロ大体五万トンを除きました分の遠洋マグロのシェアでございます。
  80. 小川国彦

    ○小川(国)委員 公正取引委員会が見えていると思いますが、公正取引委員会としては、このマグロの問題については調査にすでに取り組まれていると思いますが、この水産庁のいま述べられた事実、これが公正取引委員会として独禁法に該当するのかどうか、それから公正取引委員会がこれを取り上げられた動機、それから独禁法との関係、その辺の見解について御所見を簡潔にひとつ述べていただきたいと思います。
  81. 小松原茂郎

    ○小松原説明員 水産物の流通につきましては、商社等の取扱量を含めまして、その流通構造が変化してきている、そういう認識をわれわれは持っております。  公正取引委員会といたしましては、現在流通問題に積極的に取り組んでおりまして、数々の流通実態調査をいたしておりますが、その中の一環といたしまして、冷凍水産物の流通実態調査を取り上げて取り組んでいるわけでございます。  具体的に申しますと、その中でどの品目を選ぶかということで当初議論をいたしまして、具体的には、輸入量も大きく、かつまた先ほどお話のありました高級魚と言われますマグロ、それからエビ、それに半製品であります冷凍すり身、その三品を取り上げまして調査を実施いたしているわけでございます。  現在調査はまだ終了いたしておりませんが、大方終了している、そういう段階でございまして、シェアの点につきましては、そのシェアだけをもちまして独占禁止法上云々というわけにはまいらないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  82. 小川国彦

    ○小川(国)委員 価格問題については調査をなすっておりますか。
  83. 小松原茂郎

    ○小松原説明員 価格問題につきましては、卸売物価、それから消費者物価等について調査をいたしております。既存の政府機関の資料を収集いたしております。
  84. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いま公正取引委員会が、これに  ついての結論はまだこれからということでございますが、こうしたマグロの市場占拠の状況、それからもう一つは、マグロの最近三年間の値動きというものを見ますと、昨年からことしにかけましてマグロの値段というものは非常に高騰してきているわけです。マグロも、調べてみますと、キハダとかメバチとかインドマグロとか、非常に種類も形態も多様でございまして、私ども、この調査をした中で、水産庁も統計をとっておりますメバチの冷凍、これについての平均相場を追ってまいったのですが、五十一年でキロ八百十四円、それから五十二年でキロ九百二十五円、五十三年でキロ七百九十二円、これが五十四年には約千円、五十五年二月も千円から千百五十円、こういう形で、昨年からことしにかけて、まさにかずのこと軌を同じくしてこういう買い占めが行われ、高値操作が行われつつあるという状況でございますが、こういう買い占めの状況について、農林水産大臣として、先ほども取り上げられましたように、買い占め売り惜しみに対する特別措置法、こうした法を適用されてもこれに対する調査ないし対応をなさる、こういうお考えをお持ちになっているかどうか、この点をひとつ承りたいと思います。
  85. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先生指摘のとおり、最近におきますマグロの価格は非常に堅調に推移をいたしております。お話にもございましたように、マグロにもいろいろございまして、たとえばクロマグロと言われておるようなものにつきましては、かん詰め用のキハダに比べて平均的に言っても四、五倍くらい高いというようなことがございまして、いろいろと部位によりましてもまた違うというような、価格的にはなかなかむずかしい問題があるわけですが、総体として見ますと、非常に堅調に推移しているということは御指摘のとおりであろうと思います。  これを需給関係でながめてみますと、五十四年に入りましてマグロ類の水揚げは、大体一——十一月で見まして十七万五千トンくらいでございまして、前年の九五%くらいに相なっております。その中で特に価格の高いホンマグロの水揚げは三万二千トンくらいでございまして、大体前年の八四%くらいに落ち込んでおるわけでございます。それから同時に、輸入でございますが、主要輸入国であります韓国が不漁でありまして、五十四年は大体十一万八千トンくらいな水準であろうと思われます。したがいまして、在庫は昨年よりも大分減っておるということでございまして、需給関係から見ますとやはり価格が上がる要素は全般にわたってあるわけでございます。  私たちは、いまマグロにつきまして買い占めが行われて価格が上がっておるというふうには見てないのですけれども、しかし、この価格の動向は十分注視をしていく必要があると思っておる次第でございます。
  86. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま水産庁長官からの実態の説明のように、果たしてそれが売り惜しみ、買いだめであるのかどうかという点については、私、なかなかまだわからないのではないかと思うのでございます。そういう意味において、直ちに法律を適用するかどうかという点については、いまのところ私としては、いまちょっと聞いた限りにおいてはそれは少しむずかしいのではないかと思います。
  87. 小川国彦

    ○小川(国)委員 まだこれからその点についてさらに突っ込んで伺いたいと思いますが、水産庁が三菱商事の在庫量を三九・九%、こういうふうに発表された、この数字の根拠はどこからそういうふうに出されておりますか。
  88. 今村宣夫

    ○今村政府委員 これは、一船買いをやっております隻数が、大体いま私たちが押さえておるのでは七百七十四隻一船買いをやっておるのがおります。したがいまして、その一船買いの隻数を調べまして、それから推定をいたしたわけでございます。
  89. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ちょっと一船買いの隻数とそれをもう一遍明確に。七百七十というのは船の数ですか、それとも金額ですか。
  90. 今村宣夫

    ○今村政府委員 一船買いの隻数でございます。
  91. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そのほかのデータを根拠としては積算されてないのですか。
  92. 今村宣夫

    ○今村政府委員 それはいたしておりません。
  93. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そのほか極洋とか八洲とかその他の会社について出されたのも、この一船買いの積算を根拠にして出されているわけですか。
  94. 今村宣夫

    ○今村政府委員 さようでございます。
  95. 小川国彦

    ○小川(国)委員 このデータの出し方では、私はきわめて実態調査が不十分なんじゃないかというふうに思うのですね。  実は私、昨日、三菱商事の食料本部長においでを願って、三菱商事の水産部としてマグロをどのくらい買いつけしているか、占有状況について報告を求めたわけです。これは商社の良識に基づいて答えを願いたいということで私に報告しました数字では二八%という数字で、占有率は二八%、こういう報告をしているわけです。ですから、皆さんの報告と一〇%違いがあるわけです。三菱商事がうそをついているのか水産庁の統計に誤りがあるのか、この点はいかがですか。
  96. 今村宣夫

    ○今村政府委員 私の方の推定も先生指摘のように十分ではございません。それから、三菱の言っておる数字は、恐らく全体のマグロの流通量の中における扱い量というふうなことからそういう数字を言っておるのではないかと思います。  いずれにしても、私たちがいま申し上げましたのは、一船買いの数字から推定をいたした数字でございますから、さらに各方面からいろいろこれを詰めていく努力はいたしたいと思っております。
  97. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いま水産庁長官答弁に見られるように、現実に商社の買い付け状況、占有状況、これの把握がきわめてずさんではないかと私は思うのです。一船買いだけをもとにしてこのデータを出している。しかも、私のところに参りました三菱商事の食料本部長は、この数字に誤りがあったら自分の職責をかけるとまで言っていったのです。いろいろな水産関係の諸資料を出すと、水産庁が言われるように、約四割を三菱が支配しているということは一般的に市場関係者の言からも出てきているわけです。それは水産庁の言うような数字に近いのですが、三菱商事はあくまで二八%以下です、こういう言い方で言ってきているわけですね。これに対して水産庁がそうした買い占めが行われているではないかということを指摘していくのには、これをきちっと押さえた数字でないと、三菱商事が言うように一割も低い価格で公表していくということが押し切られてくるわけですね。それに対して、水産庁のこうした数字の把握というのは根拠がしっかりしていて、しかもあなたの方はこれだけ買い占めているではないですかということを言える状況になければならないと思うのですね。その点についてはいかがですか。
  98. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のとおりでございますから、私どもとしても、今後さらに、たとえば商社とよく話を詰めていくとか、あるいは市場関係者からよく聴取をしてみるとか、いろいろな手段、方法によりまして、その辺のことを十分調査し、勉強をしていきたいと思っております。
  99. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これから調査をするでは、一体水産庁は何をやっているのか。かずのこ、これは非常に特殊な魚種に属するものであったから、国民の台所から見ても痛くもかゆくもないので国民は総スカンをすることができた。しかし、マグロのように国民に親しまれて、しょっちゅう台所に登場してくるこういう国民の嗜好の中心になっているようなものについては、商社あるいは大手による買い占めの状況というものをもっときちっと把握してなければならないのじゃないか。  そういう面で一番大きな問題は、冷蔵庫によって貯蔵されている在庫の量、農林水産省ではこの水産物の在庫量というものを一体どういうふうに把握しておられるのでしょうか。
  100. 今村宣夫

    ○今村政府委員 冷凍水産物の在庫状況でございますが、これは統計情報部におきまして、マグロでありますとかイカでありますとか、そういう主要魚種を対象にしまして、全国の六十四産地と十の消費都市を調査地域としまして毎月調査をいたしておるわけでございます。その調査に当たりましては、調査地域ごとに、主な機械の五馬力以上の冷蔵能力を有します冷凍冷蔵工場のうちから、累積総冷蔵能力というのを出しまして、それが約八割に達するまでの工場を選定をしておるわけでございます。そういう形で調査をしております統計情報部の在庫調査でございますが、先ほど申し上げましたように、全国の主要産地とそれから十大都市の消費地をつかまえておるということと、それから冷蔵能力の大体八割を占めます冷蔵庫が対象になっておるということから見て、調査結果としてはまずまずのところではないかというふうに考えておるわけでございます。
  101. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いま水産庁長官はまずまずの調査であると言われるのですが、これは農林水産大臣にも聞いておいていただきたいのですが、現在、マグロの在庫調査については、水産庁の統計と運輸省の統計と二つあるわけです。ところが、マグロの在庫の量については大変な食い違いがあるわけです。五十四年の四月から見ますと、水産庁統計では一千三十六トンというのに、運輸省の統計では三千三百一トン。それから五月は、水産庁統計は一千五十一トンであるのに、運輸省の統計は三千五百十七トン、こういうふうにしてまいりまして、十月段階で、水産庁統計では九百三十一トンであるのに、運輸省統計では三千八百七十七トン、三倍も運輸省の方が常時多いわけです。  大体、私ども調べてみると、ほぼ同規模のものを対象として調査をしているにもかかわらず、国の統計としてマグロの在庫量調査自体が水産庁と運輸省の統計では食い違っておる。こういうことでは、大手企業の買い占めが行われているという在庫の実態についても、政府の機関においてこの統計の数字が大幅に食い違っている、こういうことでは、在庫の調査も徹底してできないのではないか。いま水産庁長官十二分にと言いましたが、この食い違いは一体どういうことでしょうか。
  102. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ただいま先生の御指摘のございました在庫の数字はちょっといま調べておりますが、まあ在庫調査につきまして、私の方は調査はいま申し上げたようなことでございますが、これは運輸省の方からあるいは御説明なさるのが適当であろうかと思いますが対象地域は運輸省の方は五消費都市、東京、大阪、神戸、福岡、釧路と、それから調査対象は営業冷蔵庫を全数調査をされています。それから調査品目につきましては、私の方は十五品目でございますが、運輸省の方は十一品目をなさっておられるということでございまして、調査内容におきまして相違がございます。数字につきましてはただいまチェックをいたしております。
  103. 後出豊

    後出説明員 運輸省で行っておりますところの在庫調査につきまして御説明申し上げます。  ただいま水産庁長官からお答えのありましたとおりでございまして、私どもの統計と農林水産省の統計が食い違う点につきまして、私どもなりに推測いたしたわけでございますが、まず一つには、水産庁長官からのお話のございましたとおり、私どもは営業冷蔵倉庫のみを対象としていること。それに対して農林水産省の統計は、自家用倉庫をも含めたものであること。さらには、これは非常に推測でございますが、私ども営業冷蔵倉庫の統計は、冷蔵倉庫業者において、一部業界の統計把握におきまして、業界の慣行として重さそのものでトン数を出すということでなく、一部におきましては、一部の品目につきまして体積からトン数を一定の換算方式によりまして出すというようなことも行われているようでございまして、その辺も差異に結びついているのではなかろうかと推測いたしているところでございます。
  104. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この水産統計は、国の機関でありながら水産庁と運輸省と全然数字が違っているわけですよ。たとえば、先ほど来お話しのあった五十四年四月からの生鮮品、冷凍品、塩蔵品、その他の加工品、これについての水産庁と運輸省の調査を対比してみますと、生鮮品について、たとえば五十四年四月は、水産庁は五万五千トンであるのに運輸省は十二万八千トン、塩蔵品について言えば、水産庁は四十六万九千トンであるのに片方は百六万一千トンというふうに、生鮮品、冷凍品、塩蔵品についても水産庁より運輸省の在庫調査の方が倍近い数字を示している、こういう状況なんです。しかも、いまの御説明によれば、調査の対象は水産庁の方が運輸省よりも幅広くやっているわけですよね。幅広く調査をしている水産庁の統計、マグロにおいては運輸省の統計の三分の一、一般の生鮮品や冷凍品では二分の一、こういうことでは、一体マグロの買い占めが行われ、しかも価格操作が行われておるというのに、国の統計がこんなふうに違っていたのでは、商社がどこの冷蔵庫にどれだけ隠しているのかという実態把握は不十分じゃないか。  こういうことで、かずのこのようにマグロがそれ以上のことがいま行われつつあるのに、その実態把握が農林水産省として適切にできてない。こういうことでは、国民は安心して台所を政府に任せることができないじゃないか、こう考えざるを得ないですね。この点いかがですか、大臣。——いや、水産庁長官じゃなく大臣に聞いているのですよ。
  105. 今村宣夫

    ○今村政府委員 数字でございますが、いまチェックの途中でございますのではっきり申し上げられませんが、なお後でよく数字等についてお教えいただいてあれしたいと思いますが、マグロにつきましては、私の方の在庫調査の方の数量が多いようでございます。したがいまして、そこら辺の数字は先生の御指摘の数字をお教えいただきまして、また運輸省の方の数字とも打ち合わせをいたしたいと思いますが、数字の点はちょっとチェックをさせていただきたいと思っております。
  106. 小川国彦

    ○小川(国)委員 もう一つ言いますと、スルメイカの在庫調査も違いますよ。五十四年四月、水産庁は五千八百二十五トン、運輸省は六千二百八十五トン。それから十月ごろ見ますと、水産庁は一万五千五百二十五トン、運輸省は一万八千百三トン。これいかんせん、私の数字を聞くにしても皆さんの方の数字を言うにしても、国の統計が農林省と運輸省で違っていて、こういう数字をもとにして商社なり大手の水産会社を行政指導していこうと言っても、こんな数字がでたらめでは何を根拠にしてこういう価格操作に対する行政指導が行なえるのかということになってしまうと思うのですね。この食い違いははっきりしているわけですよ、行政当局いま答弁できないのですから。
  107. 渡邉文雄

    ○渡邉説明員 お答え申し上げます。  数字のことでございますので、一つだけ申し上げたいと思いますが、ただいま先生指摘の五十四年の四月のスルメイカの例で申し上げますと、私どもの方の調査では二万四千トンになっております。運輸省の調査では、先生いま御指摘のように六千二百八十五トンということでございまして、農林省の方がかなり多い数字になっております。
  108. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いま答弁くださったけれども、今度は水産庁が四倍になってしまったのですね。どっちにしてもこういう数字では困るということなんですよ。
  109. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私もいま数字をちょっとそこで聞いていたのでございますけれども、私の聞いているのでは、どうも水産庁の調査の対象と運輸省の調査の対象が必ずしも一致していないのではなかろうか、そういうところから数字の違いが出ておるのではないかと私は判断しておるわけでございます。全く同じ倉庫を対象にして調査をし、それによって数字が違うということになればこれはもう大変、政府の同じ統計が違っているのではないかということになるわけでございますけれども、どうも私はここでいま話を聞いておりますと、多少その辺に違いがあるのではないかという判断をいたしておるわけでございます。
  110. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私もこれは厳密にかなり調査をしてきているのですよ。それで、おっしゃるように、対象は運輸省より水産庁の方が広い、こういうように判断しているのですが、ただ、それにしても数字が非常に違い過ぎるということです、両者の数字が。だから、少なくとも政府部内において、水産庁の統計はどういうふうにやっているのか、運輸省の統計はとうやっているのか——対象はほぼ一致しているのです。そこで三分の一、三倍というようなこんな開きが出てきては困るというのです。これは私が水産庁に確かめた数字であり運輸省に確かめた数字なんです。主要な都市も同じなんです。対象は水産庁の方がやや広いということですから、水産庁の方がふえていなければならないのですね。イカについてはいまおっしゃるように今度は四倍ぐらいになってきましたけれども、そうじゃなくて、マグロについて見れば大体三対一の関係で数字が出てきているわけですね。  いずれにしても数字が食い違っていることは事実なので、これは農林水産大臣として、本来なら予算委員会でもあれば運輸大臣も出てもらった席で見解の統一を願うところですけれども、ここは農林水産委員会ですから、この水産統計について、在庫調査はきちっとしたものが、政府として統一したものができる、こういう方向農林水産大臣として、これは政府として当然のことですからこれは実行をする、これを統一するように調査の対象を一致させると同時に、一致した政府の統計が出る、こういうことを約束してもらいたいと思うのです。
  111. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は農林水産大臣でございますので、自分の所管である水産庁の統計が正しいと信じております。信じておりますが、いま御指摘の点については、私、先ほど申し上げましたように、どうも調査の対象なり調査の仕方なり、いろいろとその辺の違いがあって数字が違ってきていると私はいま判断をいたしております。しかし、誤解を生むようなことではいけませんので、私は、もう一度その辺についてはきちんとさせます。そして、そういう統計資料の場合には当然下に注があるわけでございまして、注書きのところで、これはどういう調査であってどういうふうにしたかということがあれば、いま御指摘の数字が違っておっても理解ができるのではないかと思いますけれども、そういう点についても今後きちんとひとつ指導していきたいと思います。
  112. 小川国彦

    ○小川(国)委員 だから、いずれにしても、大臣が言うように、いま水産庁の方で私の出した数字について反論ができるのならいいですよ。このいま出した数字について、三対一の関係について水産庁が説明できるのならいいですが、説明できない状況では、やはりこれはきちんと改善を約束してもらいたいということなんです。
  113. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 もしお許しをいただければ、私どもの事務当局の持っておる数字をひとつ申し上げまして、また後ほど先生のものとどういうことで食い違ったかをチェックをさせていただきたいと思いますが、私どもの事務当局の持っておるのは、実は先生の御指摘のものとは違って、運輸省よりは相当多い数字が出ておるわけでございます。それを少し申し上げさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
  114. 渡邉文雄

    ○渡邉説明員 先ほど御指摘のございましたマグロにつきまして私どもの数字を申し上げます。  一つの例でございますが、先ほど先生おっしゃいました五十四年の五月の例をとってみますと、私どもの冷凍マグロというくくりでの在庫量は二万一千トンになっております。運輸省からいただいております数字は、同じ五月で、これは冷凍キハダとメバチと分けてございまして、キハダにつきましては七百二十七トン、メバチにつきましては二千七百九十トンということになっております。  これは一つの例でございますが、それで、先ほども長官から申しましたように、運輸省の場合の調査は五つの都市の調査でございますし、私どもの方は六十四の産地と十の大都市の冷蔵庫につきましての調査でございます。
  115. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これで見ましても、今度は逆に、対象がほぼ同じであって水産庁の方が多くなる、こういう数字になってくるわけです。ですから、いずれにしましても、水産庁統計と運輸省統計の数字というものが食い違いをしているということは事実であって、その点では、この点は少なくとも対象を統一させる、しかも数字を一致させる、こういうことの中で在庫調査というものをきちんと確認してもらいたい、このことをもう一遍重ねて大臣に要求したいと思います。
  116. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先生承知いただいておりますように、政府統計いろいろございますけれども、たとえば、総理府の統計の場合、私ども農林水産省統計の場合、この辺の食い違いがある場合もあるわけでございます。それはやはり先ほど申し上げましたように、下のただし書きと申しますか説明のところに、この調査はこういう調査方法に基づいてこういう調査対象をもとにしてやりました、こう書いてあるわけでございますが、その点がもし私どもの資料に十分説明が書いてなかったとするならば、その点は非常に不親切な統計かと私は思いますので、そういう点についてはきちんとすることは当然でございます。私は、同じ調査方法で同じ調査対象に基づいて数字が違うということは少し考えられないことでございますので、今後も少し気をつけてはまいりますけれども、私はその辺は、政府の統計が同じ調査方法で同じ調査対象であるのに数字が違ってくるということは少し考えられないのでございます。
  117. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この点は時間を要しますので、いずれにしましても、それじゃ委員会終了後直ちにこの水産庁統計を出していただきたい。それと運輸省の統計を出していただきたい。  それから、内訳がないのは不親切だと大臣は言うのですが、私も両方内訳は知っております。そして両方対象がほぼ同じであるという状況の中で、新しい調査を対象にしてしぼってやっておりますから、私はそういう食い違いはないと思いますが、私の調査に間違いないと思いますが、皆さんの方の統計の数字を委員会終了後直ちに提出してもらいたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  118. 今村宣夫

    ○今村政府委員 結構でございます。
  119. 小川国彦

    ○小川(国)委員 運輸省については……。
  120. 後出豊

    後出説明員 提出いたします。
  121. 小川国彦

    ○小川(国)委員 最終的に私は統計の食い違いの問題を示しましたけれども、こういう事態をもって、商社なり大手水産会社の在庫調査というものを非常に明確に把握し得ていない状況である、両方とも違う調査をしている。  それから、時間があればもっと突きとめたいわけですが、じゃマグロについてどういう商社がどれだけの数量をどういう倉庫に在庫しているか、そういう実態調査の把握はできていないと思いますが、やってありますか。できていますか。
  122. 今村宣夫

    ○今村政府委員 各倉庫について実地にチェックをするということはやっておりません。これは農林省としましても、営業倉庫に立ち入って検査をすることができるかどうかということにつきましては問題でございますので、農林省が補助をいたしまして建設したようなそういう倉庫でございますれば、これは当然に立ち入って実地に検査といいますか調査かできますが、純粋な営業倉庫につきまして立ち入って調査をするようなことはいたしておりません。
  123. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣に伺いますが、そういうような状況の中で、さっき出された三菱の四〇%のマグロの買い占め状況というものについても、一船当たりのやつを推定しているに過ぎない。それから倉庫は一、二選んでやっているだけである。しかも、現実にマグロは昨年末からことしにかけて高騰している、これは値段が示しているわけですから。そういう状況の中で、私どもは当然買い占めとか売り惜しみに関する法律を適用して、こういう問題の調査農林水産省としてきちんと取り組んで、この高値に対する解明を農林水産省としてもきちっと示して、そしてこの状況に対する高値操作というものをやめさせて、もっと国民が魚を安心して食べられるという、そういう状況に行政的に進めていく、そういうお考え農林水産大臣としていかがですか。
  124. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 売り惜しみ買いだめ防止法というのは、先ほど私もお答えをいたしましたように、国民生活に対して非常に密接な関係を持っているものが特定業者によって買い占めをされて、そして値段が高騰した場合に適用する法律だと私は解釈をいたしておるわけでございまして、確かにいま数字の点はいろいろ御疑問の点を御指摘いただきましたけれども、現時点においてそういう形でのいわゆる買い占めによって高い価格にさせられているかどうかという点については、私は必ずしもそうとはまだ判断しかねるわけでございまして、ここで法律を適用するか適用しないかということについては、いまのところ私は適用する考え方がない、こう申し上げさせていただくわけでございます。
  125. 小川国彦

    ○小川(国)委員 時間が終了いたしますから、大臣にもう一点だけ。その法の適用いかんにかかわらず、高値になっていることはお認めになりますね。それに対して農林水産省としてこれに取り組むお考えがあるのかないのか。それから、こういう事態に対する批判がどんどん高まってきている中で、農林水産省は知らぬふりをしていくのかどうか、その辺だけはっきり考えを聞かしてもらいたい。
  126. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもといたしましては、やはり国民食生活を預かっている立場として、できる限り適正な価格で供給されるようにしていかなければならぬことは当然でございまして、そういう点には今後、行政的に指導もする場合もありましょうし、十分チェックをしていきたいと考えております。
  127. 小川国彦

    ○小川(国)委員 終わります。
  128. 内海英男

    内海委員長 和田一郎君。
  129. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 ただいま小川委員の方からもいろいろと水産関係で御質問がございましたが、私もその問題で政府質問をさせていただきます。  まず、かずのこの問題が大変世間を騒がせまして、そして、反省やら何やら業界ではしているようでありますが、このかずのこ問題についてちょっと私御質問してみたいと思います。  その前に、これは日本経済新聞記事をちょっと引用させていただいて、買い付け騒ぎの実態を生々しく伝えているものですから、ちょっと皆さん方に聞いていただきたいと思います。  「カナダ太平洋岸の港湾都市バンクーバー。二月末から三月にかけて」「この季節がカナダのニシン漁の最盛期。」  「「強盗するなら銀行よりも波止場に行け」。昨年のシーズン、こんなジョークがかわされた。沖で操業する漁船と加工工場の間を、ニシンを積んでタッカー・ボートが往復する。そんな中で、船腹に「CASH」と大書したタレ幕をつけた船が、漁船に向かって「よそより二百ドル高く買うよ」などとスピーカーでがなりたてる。漁船が寄ってきてニシンを渡し、札束を受け取っては漁に戻る。」  「三月初めトン当たり千数百ドルだったこの“キャッシュ・バイ”の相場が、日を追って暴騰月末には四千ドル台に乗せた。最高値は五千二百ドルだったともいわれる。」  「例年、漁期入り前に漁師の組合と加工業者の協会が交渉して、その年のニシンの買い取り価格「ユニオンプライス」を決める。これをもとに日本のバイヤーは加工業者から腹出ししたカズノコを買う——これか従来の商慣習だ。ちなみに昨年のユニオンプライスはトン千二百ドル。その四倍近い値段で日本人がニシンごと海上で買い上げてしまう。」  「昨年のカナダ産抱卵ニシンの漁獲高は前年の四割減の四万三千トン弱。不漁が狂態に輪をかけた。」  これは一つの報告でございますけれども、このような買い付け騒ぎもあったわけですね。そして、この買い付け騒ぎのその結末がこのようなかずのこ倒産という大変な事態になったわけでございますけれども、ある資料の中にこういうのがあるのですよ。原卵の価格、これはCIFと言いましていわゆる原価ですね、日本商社が買い取る原価。それはキログラム当たり昭和五十年では一キロ千八百十八円だった。それが昭和五十四年、昨年六千六百二十四円と、まあ物すごい値上げです。順を追って言いますと、五十年が千八百十八円、五十一年が二千四百七十三円、五十二年が二千八百四十八円、五十三年が三千六百十二円、五十四年が六千六百二十四円と、五十三年から五十四年の間に約二倍もぽんとはね上がっている。そしてどんどこどんどこ買っていく。かずのこといえば日本人しか食べないと言われておりますから、カナダあたりの業者はほとんど日本向けに買うでしょうけれども、去年の最盛期にはどんどん買った。そして、去年の暮れからことしにかけて、このようなかずのこ倒産劇が起こった。果たして来年のお正月用に買うかどうかという問題があると思うのです。そうしたら、途端にそういう買う声がなくなってしまったら、逆に今度はカナダの方の業者が一体どういうふうな憂き目に遭うかということもございます。こういう実態、これは篤と皆さん方の方が御承知でございますので、まず大臣からこの実態に対しての御所感をお伺いしたいと思うのです。
  130. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 昨年のかずのこ騒ぎに至る経過、いま先生の御指摘の経過については大変遺憾なことであると存じておりまして、今後はそういうことのないように極力私ども行政的に指導してまいりたいと思っております。
  131. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 確かにそういうことがないようにということでございますが、ではどうすればいいかという問題があると思うのです。ただいま小川委員から、かずのこ以外のマグロについてもいろいろと数量についての話がございましたけれども、そちらの方の数が合わないということで話が進まなかったようでございますが、具体的にどうやるかという問題ですね。  それで、これはその海産物自体に大きな変革が起こった。特に冷凍マグロだとか冷凍エビ、冷凍イカ、冷凍サケ・マス等、国内の非常に需要の根強い比較的高いもの、このほとんどが輸入である。しかも、二百海里の設定ということから逆にこういう問題が起きてまいりまして、そして商社がそこに介在するようになった。何も私は決して商社がいかぬと言うわけじゃございませんけれども、もうこの辺でひとつ何かのルールを設けるべきじゃないだろうかと思うのです。  それで、かずのこに話を戻しまして、では一体、昨年の昭和五十四年度、いわゆる大手商社、水産会社がどれだけのかずのこの在庫を持っておったか。水産庁では数字をおつかみだと思うのですけれども、昨年の輸入量は何トンでしょうか。
  132. 今村宣夫

    ○今村政府委員 かずのこの輸入量でございますが、昭和五十三年が九千九百八十八トン、五十四年は、これはまだ締めた数字ではございませんが、一応の数字といたしまして八千二百十七トンでございます。
  133. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 これはほとんど輸入に頼っておると聞いておりますが、五十四年は八千二百十七トン、そのうち大企業の商社が抱えておったトン数、これは私の資料では、間違っておったら訂正してもらいたいと思うのですが、大洋漁業が千五百トン、三菱商事が千三百トン、丸紅が千五十トン、住友商事が二百トン、三井物産が八十トン、日水が四十トン、合計四千百七十トンとなっておりますけれども、これは間違いございませんか。
  134. 今村宣夫

    ○今村政府委員 大体先生のいまおっしゃったような数字だと思っております。
  135. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 わかっておれば言ってください。
  136. 今村宣夫

    ○今村政府委員 大体先生のおっしゃったような数字でございます。
  137. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そうしますと、この八千二百十七トンという総輸入量の中で、大手の企業が抱えておるのが四千百七十トン、約半分を抱えておるということですね。そういう狂乱買いでこういう大企業が抱えてしまうと、そこで完全な価格操作が行われる、このようにわれわれは思うわけですけれども、その実態についてはどうでしょうか。
  138. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御説のように、かずのこの供給量には限度がございまして、かずのこの輸入量の七〇%はカナダから入れておるということでございます。したがいまして、資金力に物を言わせて海外から買い集めるということになりますと、供給が一定でございますから、そういう特定のものにかずのこが集中するということは十分考え得る品目であるというふうに思っております。
  139. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そうしますと、やはり大手商社で二分の一も抱えてしまうと完全に価格操作が行われる、このような水産庁の見解でよろしいですね。
  140. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先ほども申し上げましたように、供給に限度がございますから、資金力のあるものが過半を買い占めるということになりますれば、先生のおっしゃったような事態が結果的に招来されるということに相なろうかと思います。
  141. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そうなってまいりますと、この買い付けが問題ですね。船腹にキャッシュと書いて、スピーカーでどんどんどんどん値をつり上げる。それも一カ月ぐらいの間に相当上がったそうです。二月から三月しかとれないということでございますけれども、その間にそういうことでやる、これを何とかしなければならぬと思うのですけれども農林大臣、どうでしょうか。
  142. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先生の先ほどのお話に関連いたしまして、ちょっと御説明といいますか補足させていただきますと、今年のかずのこの買い付けは、確かに、お話しのようにキャッシュバイというようなことがございまして、それは五十三年度までは商社が現地の工場から買う場合が一般的であったわけでございますけれども、五十四年は、大洋漁業が加工業者の最大の大手のB・C・パッカーと独占契約を締結したということがございまして、他の商社が買いおくれたということがありましたものですから、先ほどお話のございましたように、直接個々の業者から極端な買い付けをいたしまして、場合によってはキャッシュバイというようなことで買いあさった、そういう実情にございます。また、お話のございましたように、去年は買い付けたけれども、ことしはさっぱり買いに行かないということで、カナダの方も、日本という国はどんな国だろうかというふうに疑問に思っているような実情もございまして、こういうことでは、私たちといたしましては非常に遺憾なことであると思っております。したがいまして、これは日本人の特性でございますからなかなか直りにくいのでございますけれども、何でもそうでございますが、やはり私たちは安定的な輸入ということを特に心がけなければいけない。秩序ある輸入ということは国内的にもまた国際的にも必要なことでございますから、そういう点につきましては前々から輸入関係業者には口を酸っぱくして言っておるわけでございますけれども、どうも一つの限界を感ぜざるを得ないわけでございます。今後におきましても、そういう秩序ある輸入ということにつきましては、農産物の輸入協会等のメンバーがおるわけでございますから、そういう協会のメンバー等あるいは協会等とも接触し、また必要に応じ大手についての所要の指導を行う等によりまして、できる限り秩序ある輸入ということに努めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  143. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 確かに、水産庁長官がおっしゃったように、大洋漁業が抜け駆けというのですか、そういうやり方をやったので一斉にそこへ突撃したというような話か伝わっております。それはそれで済むかもわかりませんけれども、倒産した側のいわゆる関連、これがまた大変な問題です。これは後で触れますけれども、道漁連も関係しておりますし、またその道漁連から関係した人が倒産をした。そこでまた自殺未遂の事件が起きておりますし、そういう不幸がこれからどんどん出てくるということで、これはやはり行政が適切に手を打っていかなければならないのじゃないかと私は思うのです。そこで、価格調整でもって市場の現状を左右するというやり方、これを何としてもある程度は阻止しなければならぬ。結局ばかをみるのは国民であり、全部国民にツケが回ってくるということは大変なことですからね。  そういう面でちょっと公正取引委員会質問をさせていただきますけれども、水産物流通に大手商社が加わって、そしてフリーザー級の冷蔵庫の増設、さらに強大な資金力を背景にして価格操作を行っていく、これは公正取引委員会としてはどういうふうな考えを持っていらっしゃいますか。
  144. 小松原茂郎

    ○小松原説明員 独占禁止法上では、個々の企業が行います買い占めとか売り惜しみ、そういった投機的行為につきましては、確かに健全な商行為とは言えないと思いますけれども、これを直接規制する明文の規定がございませんので、直ちに独占禁止法上の問題とはなりにくいのではないかというふうに考えております。先ほど小川議員の御質問お答えいたしましたけれども、私どもといたしましては、水産物の流通につきましては、いま、マグロ、エビ、すり身と調査をやっておりまして、そういった調査を通じまして独占禁止法に違反するような事実がわかりますれば、厳正に対処してまいりたい、そういうふうに考えております。
  145. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 株の売買なんかは、どこかが買い占めを始めたら、これはすぐわかりますよ。そしてすぐ手を打てる。輸入物に対してもそういうことはできないのかどうかということなんですけれども公正取引委員会関係の「不公正な取引方法」、これは法律というのですかね、その中で五番目のところに「不当に高い対価をもつて、物資、資金その他の経済上の利益の供給を受けること。」これは一つの不公正な取引方法ということになっているのですが、ここには関連しないのですか。こういう大手商社が半分ぐらい占めてしまって、そこで完全な価格操作をする、それでとにかく不当に高くなっていく、去年よりも倍ぐらいはね上がっていく、そういう実態から考えて、これは当たりませんか。
  146. 小松原茂郎

    ○小松原説明員 そこで不当高価介入と掲げておりますのは、公正な競争が制限されるという観点からとらえておるわけでございまして、たとえば原材料を高価に買い入れますと、そこの原材料を購入してそれを製品として売るという他の事業者がその事業の存続ができなくなるわけでございます。そういった競争阻害という観点からとらえて、それを不公正な取引というふうにとらえているわけでございます。単純な投機目的のためにそういった買い占めをするという行為につきましては、なかなかそれをとらえる手段が独占禁止法上では困難ではないかというふうに考えております。
  147. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 それではもう公正取引委員会はどうしようもない。ということになれば、後はもう農林大臣の腕次第ということになってまいりますけれども大臣、どうでしょうか。
  148. 今村宣夫

    ○今村政府委員 後ほど大臣お答えいただきますが、かずのこは先ほど申し上げましたようにそういう特定の社に非常に集中する要素を持っておりますが、ほかの魚をずっと見渡してみますと、IQの物でございますれば、これは相当輸入量もございますし、また、それにつきまして輸入可能性というものがある物につきましては、これはそれほど買い占めてどうこうということができるような状態にはございません。かずのこが一番やりやすい——やりやすいと言うと語弊かありますが、私たちよく注意をしなければいけませんのは、先ほどもお話が出ましたマグロなどについては、価格動向なり需給動向は十分注視をしていかなければいけないと思いますが、全体的な、魚の大部分につきましては、なかなかそういう状況が現出するような、また現出し得るような状況にはないと思いますが、特定の品目につきましてはそういうことが起こり得る可能性なしとしませんので、そういう品目にしぼりまして、特にその価格動向及び需給の動向につきましては、私たちは十分注意を払っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  149. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 かずのこのようなものについては大変むずかしいとは思うのでございますけれども、従来商社を呼んで厳しく言っておるわけでございますが、今後ともより強めてやっていくようにひとつ努力をしたいと思います。
  150. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そこで、例の倉庫の問題になってくるわけでございますが、先ほども小川委員からもフリーザー級の倉庫についての数の質問がございまして、私は、この倉庫の方は大体運輸省が担当していらっしゃるということで運輸省を呼んだわけでございますけれども、この冷蔵庫が水産物の価格操作に使われているという、そういうふうな疑いをわれわれは持ちますけれども、倉庫を監督する運輸省として、この実情に対してどのように考えていらっしゃるか、まずそれを伺っておきたいと思います。
  151. 後出豊

    後出説明員 運輸省は、冷蔵倉庫を含めまして営業倉庫の監督というものを倉庫業法に基づきまして行っているわけでございます。  ところで、倉庫業法は、倉庫業者が寄託主、荷主でございますが、それから寄託を受けた貨物を滅失とかあるいは損傷することなく確実に保管することというようなことを確保することを主な目的とした法律でございます。また一方、倉庫業者といたしましては、荷主から貨物の寄託を受ける場合に、その荷主側の寄託行為の経済的と申しますか、あるいは営業的な動機というものにつきましては知り得ない、あるいは関与し得ないというような立場に置かれている事情にあるわけでございます。したがいまして、倉庫の監督、倉庫業法の運用という観点から、その倉庫における貨物がどのようなことで使われているかということにつきまして直接云々するということについては問題があろうかと存じます。ただ、仮に、結果的にせよ、冷蔵倉庫がそのようなことに使われてしまっているというようなことがございますれば、これは私どもとして営業倉庫の本来のあり方に反するものと考えますので、その辺は水産物の所管官庁とよく協力するという形で、倉庫業法の運用の可能な範囲内ということで対処いたしたい、かように考えております。
  152. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 この倉庫の問題ですけれども、これは結局は、魚の安定供給という、安い魚を供給しようということが旗印でできたのですね。しかも、農林省が多額の補助金を出しているという、そういう形での冷凍倉庫なんですね。ところが、現実にその倉庫の中に、現在七百万トンおさめられる倉庫があるそうでございますけれども、七百万トンというと国民の一年間の食用の魚の量だと聞いておりますが、ちょっとわかりませんけれども、それほどの強大な倉庫があるのですから、それを安定供給のために使われているのならまことにありがたいのだけれども、逆な立場になっている。そこで、運輸省としてはこの程度のことは公表できるかどうか。倉庫の中にある品目と数量、それから所有者は一体だれなんだということはある程度は公表して、それが即、値段の操作につながるという場合は、直ちに関係当局からそこで指導してもらうという、そういう形がとれるかどうか。どうですか。
  153. 後出豊

    後出説明員 倉庫の在庫状況につきましては「倉庫統計月報」その他の形で公表いたしておるわけでございますが、それも先ほど申し上げましたような倉庫業法の目的達成という観点からやっているわけでございます。しかし、いろいろな観点からそのような資料を基礎としてお使いいただくということもまたあろうかと存じます。その辺につきましては、先ほどと同様、やはり水産物の所管官庁の施策協力するという形で御相談申し上げながら対処いたしたいと存じます。ただ一点、その倉庫の中身の所有者を公表するということにつきましては、いろいろと倉庫事業としての営業の秘密というようなことも絡むかと思いますので、その辺やや問題点があろうかと存じますが、一般的には先ほど申し上げたような形で対処したいというふうに考えております。
  154. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そうしますと、あなたのおっしゃった、運用の中で対処できるというお言葉がありましたけれども、では、水産庁に対してまたは公正取引委員会等に対して、大きく公表する意味でなくて、所有者は大体このぐらいだというぐらいなことは言える、こういうことまでおっしゃっているわけですか。
  155. 後出豊

    後出説明員 一般的にこの場で場合を想定してお答えするのは大変むずかしいとは存じますが、その場合場合によりまして、その所管官庁の施策協力するという形で、倉庫業法の運用の可能の範囲内で対処いたしたいというふうに考えております。
  156. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 大臣、いまの話で、その都度その都度運用の中で言えるということですから、では、どこの商社がどのぐらい買っているということは大体わかるということですね。運輸省の方からそちらの方に連絡できるというような答弁ですから、それに対して適切な手を打てるかどうかという問題なんですけれども、それはどうでしょうか。
  157. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ただいま運輸省の御答弁にございましたように、氏名を公表するとかなんとかということになるとなかなかむずかしいかと思いますが、私たちとしましては、運輸省と十分協議をいたしまして、どの程度のものをどういうふうに出していただくか、またそれが行政指導をしていく上において、私たちの参考といいますか、ベースにできるだけなるような形の御協力をお願いをするように今後運輸省と十分協議をしていきたいというふうに考えております。
  158. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 ちょっと大臣の御答弁をいただきたいのですが、運輸大臣とも御協力、御協議していただくと思うのですけれども、その点についてどうでしょう。いまの水産庁長官が答えたその点について、大臣としてもひとつ答えてもらいたいと思うのです。
  159. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま水産庁長官答弁申し上げましたような方向で対処してまいりたいと思います。
  160. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 これはもう国民が注目している事件ですから、私はおざなりに過ごしてはまずいと思います。  そういうことで、今度は三菱商事と北商の関係で、やはり北商の倒産でもって大変なことになっております。また、その北商に道漁連が関係しておりますので、三菱と北商の関係について、水産庁でつかんでいらっしゃることだけでも結構ですから、ひとつずっと説明をしてもらいたい。時間がございませんので、手短かにお願いをいたします。
  161. 今村宣夫

    ○今村政府委員 北商の全体的な債務というのは、まだ確定はいたしておりませんが、三百億を超えるというふうに聞き及んでおります。したがいまして、三菱におきましても、北商につきまして債権の確保その他、清算過程に入りました北商といろいろ交渉といいますか、折衝をしておられるわけでございまして、いまお話のございましたように、道漁連におきましても、北商に対して債権を有しておるわけでございまして、この点につきましては、北海道漁連といたしましても現在北商といろいろ折衝、交渉をしておるところでございます。
  162. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 北商の債務が二百七十三億、その中で道漁連が五十八億もあるというふうにちょっと私の手元にあるのですけれども、それで間違いないですか。
  163. 今村宣夫

    ○今村政府委員 数字は動くかもしれませんが、現段階において北海道漁連が北商に対して有します債権が大体百十億でございます。ただ、担保物件を持っておりまするし、あるいはまだ契約はしたけれども現物は引き渡していないというものもございますから、担保の評価いかんにもよりますのですが、比較的かたく担保を見込んで、北連の損失といいますか、回収し得ない債権は約六十億程度承知をいたしております。
  164. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 今度北海道漁連にちょっと関係をしてみたいと思いますが、この北商の債務も北海道が絡んでいる。それから、空取引というのですか、架空の荷を次々と転がした、そして手数料二十六億円が道漁連に入ったとかいろいろございますけれども、七年間もこういうことをやっておった、こういうことですね。そして、結局は残された損害が二十年間の利益に匹敵するということも言われておりますけれども、これは一体どういうことなのでしょうか。水産庁としてここまで監督されてなかったのかどうか、その点についてちょっとお聞きしたい。
  165. 今村宣夫

    ○今村政府委員 北海道漁連の空売りによりまして北海道漁連が現在こうむっております損失が大体百三十億ぐらいございます。これにつきましては、約七年間にわたってそういうことが行われておったということでございまして、その間これがわからなかったということはまことに残念なことでございまして、北海道漁連の執行体制あるいは人事管理あるいは業務の遂行その他に重大な欠陥があったのであるというふうに私は考えておるわけでございます。  その空売りの仕組みは非常に巧妙に仕組まれておったということは確かでございますが、東京の営業本部におりました参事でありますとか常務でありますとかいう者は、日常業務に携わっておったわけでございますから、そういう点において執行体制及び業務遂行体制にはなはだ欠陥があったと考えざるを得ないわけでございます。  私たちは昨年の十一月に北海道漁連を検査をいたしたわけでございますが、その際にそういう空売りの状況を発見し得れば非常によかったわけでございますが、書類検査をいたしまして、書類としてはきちんと整理をされておるということでございますので、これを発見するに至らなかったわけでございます。しかし、検査の時点で、北海道漁連の員外利用は急激にふえておる、それから不良債権も相当ある、それから在庫においてもこれを相当数量抱えておるということは、検査の際に指摘をいたしたわけでございまして、さらに、東京営業本部につきまして検査を実施する前にそういう事件が発覚したということでございます。  検査のやり方そのものにつきましても、書類で金銭出納等は照合をいたすわけでございますが、一つ一つの在庫につきましてこれをチェックするということをいたしておりませんので、その発見ができなかったということでございまして、検査のやり方、それから水産庁としましての検査体制の整備ということにつきましては、十分改善を加えていくべき必要性は痛感をいたしておるところでございます。
  166. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 これは中央競馬会の例の問題があったときにも、農林水産省としては幹部がずいぶん反省されたわけでございますけれども、今度の問題も、多額の欠損金ですから、この点についての大臣の責任とそれからお考えですね、ちょっとおっしゃっていただきたい。
  167. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま水産庁長官から御報告を申し上げましたように、十一月にも検査をしたわけでございますが、そのときにも実は書類と金の出し入れだけはチェックをいたしたわけでございますけれども、実は物まで確認をしていなかったためにこういうことが発見できなかったと思うのでございます。これは正直、検査官が八人しかおりません。それで検査対象は、私どもの水産庁は直接検査をする組合が百十九あるわけでございまして、なかなかその辺まで手が回らないということもございますけれども、しかし、結果的にこういうことが起きたことは大変遺憾に存じております。  これからは、その辺の検査のあり方についても、金、書面、それに物、これを加えた形で、こういう事件が二度と起きないような方向になるように十分検討し、また、北海道漁連の再建につきましても、組合でございますから組合員の意思というものを尊重していかなければなりませんが、組合員の皆さんがひとつぜひ再建しようということで御努力をいただく場合においては、私ども農林中金など金融機関ともよく協力をし、また、私どもの水産庁の中に今度この再建のためにはどうしたらいいかというプロジェクトチームをつくっておりますので、そういうチームを中心として、ひとつ再建にできる限り協力をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  168. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そこで、これは最初新聞に載っかったのは去年の十二月十九日にこの空売りの問題が出たのですね。ですから、この関係者には十月ないし十一月には相当耳に入っておったということも聞いておりますので、十一月に水産庁が行かれたときにそれを把握していれば、また何か手が打てたかもわかりません。しかし、いずれにしても、ただいまの大臣の御答弁で私も了といたしますから、末端の漁業者の被害というのは大変なものでございますので、よろしくお願いしたいと思います。  それで、先ほども水産庁長官お話の中にちょっとありましたけれども、員外利用のことなんです。漁業協同組合の員外利用について、これは法律では一応二分の一ということになっていますけれども、これでいいのかどうかという問題なんですが、大臣、この点についてはどうでしょう。
  169. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農協の場合は二割でございまして、水協法の場合は二分の一ということになっておるわけでございます。これは水産関係の特殊事情もあると思いますけれども、しかし、何も二分の一認めているから、北海道漁連のように四八%でいいというものではないわけでございまして、それは一つのマキシマムであって、そういうものはなるべく少ないにこしたことはないわけでございまして、今回もその辺は十一月のときにも指摘をしておった点でございます。それは法律では認められておっても、それが本当に組合員のためになる場合にはやむを得ないことかと思いますけれども、どうも今回のような形での、特に東京の営業本部は九十何%まで員外利用ということでございまして、私はそういう形が決して望ましい形ではないと思っておるわけでございまして、なるべくならばせいぜい少ない方がいい、こういう判断でおるわけでございます。
  170. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 では、大臣としてはこの二分の一というのを変えるおつもりですか。
  171. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これはやはり、いま申し上げますように、いろいろ水産物というのは組合の人たちだけのものだけではなかなかいかない場合が流通上あるわけでございまして、そういう点で、二分の一というのは一つの限度としてそれはそれなりにいいのではないか、ただ、実際の運営として、二分の一というのを法律で認められているからそこまでやっていいというものではなくて、必要に応じてやるのでありまして、必要でない場合に何もそういう空売りや空買いなどをするために二分の一ということを認めているわけではないと私は思いますので、その辺をよく判断をされて組合が運営をされれば、大変私は結構ではないか、こう思っておるわけで、法律を改正するという気持ちはございません。
  172. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そういうふうに大きな幅があるから、逆にそういう気持ちになってしまうのじゃないか、こう思うわけなんです。ですから、法律改正する意思はない、それも大臣の気持ちだと思いますけれども、では、どうして二分の一になったかという経緯をちょっとどなたか簡単に説明してください。
  173. 今村宣夫

    ○今村政府委員 水産の場合に農協の場合よりも員外利用の幅が広いということは、これは漁船の活動範囲は御承知のとおり非常に広うございまして、たとえばA県の漁港に相当遠隔地から魚をとってきた者がそこに水揚げをするということがあるわけでございます。それから、たとえば油を例にとって申しますと、その港に寄港をいたしますというと、それは組合員外のものでありましても油を供給しなければいけないということになるわけでございまして、そういう遠隔地にわたる水揚げあるいはまた資材の提供という観点から、恐らく相当幅広く五〇%以内ということになっておるのだろうと考えております。
  174. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 漁船だからあちこち動くからということだと思いますけれども、森林組合もやっぱり二分の一になっているのです。材木というのはあっちへ行ったりこっちへ行ったりするわけじゃないです、そこに立っていますから。だから、そういう議論にはならないのじゃないかと思うので、いずれにしても、五割ということは現在法律になっておりますので、こういう点についての監視、これを水産庁としても、大臣がおっしゃいましたとおり厳しくしていってもらって、今後このような事件が起きないように、そして末端の漁業者に迷惑がかからないように、ひとつがっちりと指導してもらいたいと私は思います。  次に、時間がございませんので、けさの委員会の冒頭で芳賀先生の方から話が出ましたいわゆる米国の対ソ禁輸分の穀物の件でございますが、大臣の御答弁もございましたけれども、きのうの委員会でわが党の瀬野委員からこの問題がずいぶんと話があったと思います。そこで、瀬野委員には先ほど私も打ち合わせいたしましたけれども、ずいぶんこの点について細かく、それから長時間とって大臣質問しておりますけれども大臣の御答弁は、要約すれば検討しているという御答弁だった。大体皆さん方もそういうふうに受け取っております。ところが、きょうの新聞を拝見いたしますと、十九日の閣議後の記者会見というのですから、十九日はきのうですから、そうすると、きのうの委員会の始まる前の記者会見でこれはおっしゃっている。しかも、ここに出ておりますとおり、「具体的数字を武藤農相があげたのは初めて。」というふうに書いてあるのですが、具体的数字をこのようにあなたがおっしゃった。ここまでおっしゃるなら、どうしてきのうの委員会に、しかも瀬野委員質問のときに御答弁されなかったかどうか、これは非常に残念であるというのが瀬野先生のいまの話なのですが、どうですか。
  175. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 けさ芳賀先生にもお答えをいたしましたように、私は何もそれが決まったとは一度も表現をしていないわけでございまして、検討をしておる段階の中での話でございまして、まだ百万トンというようなものが決まったわけでは全くないわけでございます。きのうも記者会見でも申し上げておりますけれども、私ども政府といたしましては、大体小麦を五十五年度のなるべく早い機会のいわゆる前倒しで幾ら買っても十万トン程度であろう、またKR援助でいけばこれが十万トンであろう、また配合飼料供給安定機構では十万トンぐらい大体五十五年度の予算でもう予定をいたしておりますので、そういうものを五十五年度のなるべく早いうちに買えばそれで十万トンふえる、こういうことで三十万トンというのが私ども政府部内の考え方でございまして、あとの分については商社にいろいろ検討願っておるということで申し上げておるわけで、その数字は全くまだ決まっているわけじゃございませんので、どうかその辺はけさほど申し上げたとおりでございますので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  176. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 決まってないけれどもこれをおっしゃるのですから、やはり胸算用はあるわけだと思うのです。全然何もないところに数字をおっしゃるわけがないと思うのです。どうして委員会でおっしゃらないで記者会見でおっしゃったかという点をちょっとおっしゃってもらいたいと思います。
  177. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもでやれる範囲はいま申し上げた三十万トンでございます。商社は、これは民間でございますから、民間の取引で従来とも契約をし、そして輸入をいたしておるわけでございまして、それに対して、たまたま商社と私との間で話をしておるときに、一体どれくらいか、こういう話題が出たときに、そうだな、トータルで百万トンまでいくといいがなというような話をいたしておりますけれども、これは二月八日の話でございまして、きのうとかいう話でもございませんし、二月八日にそういう話をしておった。商社の方は、しかし、それに対して、非常にむずかしい、いま私どもはとにかく相当先まで成約をしておるのでむずかしい、こういう話であったわけでございます。ですから、私は何もそれは期待もいたしていないわけでございます。ただ、どういう話でそのときの数字はどうかというときに数字がたまたま出ただけであって、私はその数字には全くこだわっていない、こういうことでございますので、この正規の委員会で申し上げるような段階の数字ではまだないわけでございますので私は申し上げなかった、こういうことで御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  178. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そうすると、まだこれから百万トン以上になるということも残されているということになりますか。
  179. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは、商社が今度私のところへ来るときに、あのときのいろいろ検討してくれということに対してはどういう答えであるかということは、私は全く予測ができません。ただ、そのときの商社の話は、いま申し上げますように、相当厳しい、いまの成約を相当先までしておるのでなかなかこれ以上の買い増しということは非常にむずかしい、こういう答えがそのときあったわけでございます。いずれにしても検討しましょうということでお帰りになったわけでございますが、私と商社との間でたまたまそういう七十万トンというような話をしたときに、とてもむずかしいということであったわけでございますから、それ以上になるなんということは私は全く考えられないわけでございますし、相当それより減るのではないかという感じを持っておるわけでございます。
  180. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 大来外相も近々訪米されるというその直前の数字ですから、これは外務省だとかまたは総理筋の方からのある程度のアプローチがあったことはあるのでしょうか。そっちはどうなんですか。総理大臣の方からもこういう話があったのかどうかです。
  181. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 そういうことについては、一切私の方に正式に幾ら幾らというようなことはございません。
  182. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 正式にないということは、ある程度打診的なことはあったのでしょうか、正式にないということをおっしゃっているということは。
  183. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これはきょう予算委員会でも実はお答えをしたのでございますが、私は予算委員会で、先ほど申し上げますように三十万トンが限度であるということをずっと答弁をしてきたわけでございます。たまたま、閣議の始まる前に私ども雑談をする時間がございますけれども、大来さんから、いや商社は何かある程度買い増しをしてもいいような意向を持っておるようだからという話がありましたので、どうもこちらが一向にそういうことに対して積極的でないために、商社がある気持ちがあってもどうもこっちから言われてないということではないかというふうに私は受け取れたものでございますから、それで商社を呼んで聞いたということでございまして、そうしたら、必ずしも外務大臣のおっしゃるような方向ではなくて、非常に消極的な空気であった、しかし、検討だけはしましょう、こういうことでお帰りをいただいておるわけでございます。
  184. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 いずれにしましても、日本農業自給率を上げる、農家も本当に心配している問題ですから、慎重に扱っていただきたいと思います。  最後に、時間がありませんので、とにかくいま野菜が猛烈に上がっておりまして、いわゆるばか高値ということでございますが、政府の対策を簡単にひとつお願いします。
  185. 森実孝郎

    森実政府委員 先週の閣議後に発表いたしました考え方は、四月以降の春野菜の供給がきわめて潤沢であり、価格の低落も予想されることから、できるだけそれを先取りして三月の端境期に当てたいという考え方でまとめたものでございまして、主要産地に出荷の督励を行うほか、四月出荷が予定される春野菜についての若取り出荷、それから施設野菜につきましては、育成期間を短縮して出荷を督励する問題、さらに大消費地への遠距離輸送を考える問題こういった問題について補助を行っていきたいということが一つ。それから、それほど大量には期待できませんが、ある程度アメリカのレタスとかあるいは台湾のキャベツ等について輸入考えてまいりたい、督励をしてまいりたい、こういうことが骨子でございます。
  186. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そこで心配になってくるのは、商社の方に頼んで相当輸入の促進をしておると聞いております。そして、今度は外国物がばさっと入ってきて日本国内産を圧迫するという心配も出てきた。それからもう一つは、去年の暮れあたりに茨城県、栃木県の白菜の畑へ、二十トンぐらいのでっかい車ごと来ましてたっぷり積んで帰るという、まるごと買っていくというのがございますね。そこで相当に品物が操作されるということと、値段が操作されるということがございます。これは自由の商売ですからそういうこともあろうと思いますけれども、その点についてはどうなのですか。
  187. 森実孝郎

    森実政府委員 まず輸入の問題についてお答え申し上げます。  まず、率直に申し上げますと、生鮮野菜は国際商品といえるものが非常にわずかでございまして、大幅に輸入が期待できるような状況ではございません。私ども十二月、一月以降ずっと状況を調べてまいったわけでございますが、当時の段階で輸入が期待できると思っておりましたのは、台湾のキャベツが三千トン程度、それからアメリカのレタスが数百トン程度と見ておりましたし、その後の状況、また最近における見通しもあわせますと、大体そんなものではないだろうかと思っております。そのうちすでにレタスは約四百トンばかり、キャベツは二千トンばかり入っておりますから、三月期において入ってくる量はそう大量には期待できないのが現実でございます。  それから、畑買いの問題について御指摘があったわけでございます。実は野菜の流通は、個人出荷、系統出荷、商人系出荷と三つになっております。かなり系統の利用率は上がってきておりましたが、白菜とか大根のように、包装資材の要らない共選のない品目につきましては、なお商人系の出荷の比率が事実としてかなり高いということがございます。その態様といたしましては、収穫後買い取る場合、畑買いをする場合等、多岐に分かれております。ただ、御案内のように、すべて非常に貯蔵性のない商品でございますから、結局市場への出荷が、商人によって行われるか、農協によって行われるか、個人で行われるかという態様の違いだと思いますし、また、事実これらについて買い取り価格を調べたところでは、大体その直近時点の市場価格をベースとして仕切っておりますので、特に価格について問題があるというふうには思っておりません。
  188. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 そこで、時間がありませんから、これは大臣に最終的にお聞きいたしますけれども、確かにいま足らないのは葉物ですね。しかしちょっと前に北海道のタマネギは猛烈に騰貴した。それから去年ですかおととしですか、一回か二回か忘れましたけれども、群馬県嬬恋では、ブルドーザーの車輪の下に、あそこはキャベツですか、白菜かな、つぶしてしまった。ところがこうやって足らない。いろいろ天候のあれもありますけれども、もう少しうまくいかないものですかね。たとえば転作作物、大麦、特にビール麦を奨励されてどんどんつくったら、ビール会社が買ってくれない。どうしようもないということがありますし、最近は小麦ということでつくり始めていますけれども日本小麦というのはパンに向かないということです。うどんしかつくれない。それもあと二、三年たったら恐らく天井を飛び越してしまうだろう。そこまでやはり農林省としては小麦に転作を進めていく、そうだと思います、農家の方もそれを期待していると思いますけれども、またそこで余ってしまってどうしようもないということになってくるのではないだろうか。どうもうまくいかないということをわれわれ考えるのですけれども大臣どうでしょうか。もう少しすかっとうまくいかないものですか。
  189. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 野菜の価格安定につきましては、いま御指摘のように非常にむずかしいとは思いますけれども、私ども従来集団産地の育成だとか、あるいは野菜価格安定制度の対象を拡大するとか、いろいろなことをやってきたわけでございます。しかし、何にしても出荷の方が、農協その他の団体でやっている分が必ずしも多くないわけでございまして、その辺が非常に頭を痛めておるところでございますけれども、今回の五十五年度予算におきましては、御承知のとおり、重要野菜需給調整特別事業というようなものも考えて、出荷団体とよく協力をして、生産の時期から計画的に、また出荷も計画的にやっていただきたい、こういうことをお願いしようとしているわけでございます。  そこで、いろいろとこのごろ先生のような御指摘がございますので、この事業を実施するに当たりましては、作付のときから計画的にやらしていただいて、うまく需給調整をやれるように考えていかなければならない、こういうふうにいま実は腹づもりをいたしておりまして、予算が通りましたら、そういう形でこの事業については強力に進めていきたいと思っております。
  190. 和田一郎

    ○和田(一郎)委員 これで終わりますけれども、確かに作付の計画は重要だと思いますので、今後の大臣の御奮闘をお願いいたしまして、質問を終わります。
  191. 内海英男

  192. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、いわゆる全共連問題についてお聞きしたいと思います。  去年の三月、全共連内部での怪文書、そういうものに端を発しまして、その後いろいろマスコミなんかも参加したかっこうで、全共連問題というのが全国民的な注目を受けたわけでありまして、その結果として先ごろ会長さん以下総辞職をした。そしてあさって新しい執行体制ができるということでありまして、私はそれに非常に大きい期待を持っておるわけであります。  しかし、問題は、この一連の事件といいますか問題、これからどれだけ多くの教訓を学びとって、今後の共済なり農協の発展のために尽くすか、そういうことが一番かなめであると思うのであります。総退陣に当たっての共済連の前会長さんの記者会見によりますと、たとえば一月二十六日の日本農業新聞でありますが、「文書問題では、何ら不正はなかった。しかし、農林水産省の検査書が漏れたことは、管理体制がずさんだったことで責任を感じている」、こういうことで総辞職になったということになっているのですね。いろいろ新聞がありますけれども、同じことが書いてある。  そこで、私が大臣にお聞きしたいということは、農林水産省の検査書が漏れた、このことが最大問題で、あとは何も問題なかったのか。そういうことであるならば、この一連の経過から学び取るべき教訓というものは何も出てこないことになると思うのですね。私はそういうことではおかしいなと思うのでありますが、ひとつこの問題に対する、いま私の申し上げた点に対する大臣の御所見をまずお伺いしたいと思うのです。
  193. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 外部に漏れたということで前会長が責任をとるんだとおっしゃったことは、会長自身の見解であろうと思います。私は、それだけで責任を感じられたとは思わないわけでございまして、今度おやめになったのは、それ以上にこういう事態を招いたことに対しておやめになったのではないかと推測をいたします。何にいたしましても、これは自発的におやめになったことでございますので、私がこうであるときめつけるようなことを申し上げるのはいささかどうかと思いますので、お許しをいただきたいと思います。
  194. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それならば、いやしくも農林水産大臣は全共連の指導監督機関でありますが、この一連の問題に対してどういう問題があったのか、お聞かせいただきたいと思います。簡単で結構です。
  195. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  いわゆる全共連に関する問題につきましては(中川(利)委員「この問題についての評価を言ってください」と呼ぶ)特に問題になりますのは、全共連か昭和四十年代におきまして取得いたしました不動産この中にはかなり稼働化の低いものがございまして、必ずしも運用か適切とは言いがたいような財産運用が行われていたというふうに見受けられる点がございます。これにつきましては、農林水産省といたしましても、検査を行いましてその事実を指摘いたしますと同時に、また、その是正方に努めまして、全共連からの回答も得ているという状態でございますが、この不動産の問題というものはこの問題の非常に重要な核心であるというふうに思っております。
  196. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 運用不動産の不稼働が大変多かった、この問題が大きい重要なウエートを占めるという話でありますが、その扱いについて非常に残念な点、問題があったということですね。  それで、なぜそうなったのか、そういう点をこの際洗い直して新しい発足に備えるべきだと私は思うのですけれども、この点についてはどう考えますか。
  197. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 ただいま申し上げましたように、昭和四十年代に取得いたしました不動産の大半が稼働化が非常に低いという状態が問題であるというふうに考えているわけでございますが、この全共連が取得いたしました不動産の中には、当時の社会情勢と申しますか、あるいは経済情勢と申しますか、そういうものを反映いたしまして、全国的に地域開発への意欲が高まっていた時期でございまして、全共連としましても、財産運用の一環としまして不動産を取得したというふうに考えられるわけでございます。しかしながら、その後、先生も御案内のように、経済情勢、社会情勢がすっかり変わってまいりまして、その結果稼働化が困難になったという事態であろうと思います。現時点に立って見ますると、必ずしも当を得た財産の運用ではなかったかというような問題が生じているというふうに考えるわけでございますが、いずれにいたしましても、農林水産省といたしましては、検査をいたしまして、その問題点につきまして現時点に立ってどのような適切な措置をとるかということにつきましては、厳しく指導いたしているという状況でございます。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  198. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 当を得た財産運用ではなかったということは農林省の方でもお認めになるわけですね。  そこで、私ちょっとお伺いしたいことは、あの時代は高度経済成長である、列島改造ブームであった。その後いろいろな問題で、石油ショックその他で冷え込んでせっかくのあれが不稼働になったんだ、こういうことでありますが、必ずしも全共連にだけ高度経済が押し寄せ、あるいは冷え込みが押し寄せたわけではなくて、これはどこでもそうなんですね。  それで、私は、たとえば蓼科高原の例を一つ挙げてみましても、そういう経済情勢発展だとかなんとかいうことは、何か保養所をつくる、休養施設をつくる、全国の組合員のための施設をつくるということであれば、決して投機をするのではないんですから、そうであれば経済情勢が変動するということは、崇高な目的である共済連の事業から見ればこれは理由にならないと思うのですけれども、その点はいかがですか。
  199. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 蓼科高原の土地の取得に関する御質問でございますが、確かに、この蓼科高原の土地の取得の目的は、当時財産運用の一環といたしまして、保養施設を建設しようという目的で、この土地を全共連が物色いたしまして、理事、監事の現地調査も経まして昭和四十五年に取得したわけでございます。当時の運用計画を調べてみますと、当然この不動産の取得の結果一定の利回りも得られるという状態で計画が策定されておりまして、それはそれなりの当時の計画だったというふうに考えられるわけでございますが、何分にもその後、そこに建てられますところの建物の資材の高騰その他によりまして、建設費も非常にかかるという状態になりましたし、また一方におきまして、そこを利用する人たちの数あるいはその落とす金といったものにつきましても、当時の想定されたような状態では実現できないということで、収入の面からも問題が生じまして、その結果運用利回りが確保できないといったような状態が生じました結果、現在まで稼働化が進まないという状態になったというふうに考える次第でございます。
  200. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 一定の利回りが得られるという状況がその当時はあったというわけですね、あなたは。しかも、共済連の休養保養施設ですから、物価の変動、社会情勢の変動、これはつまり採算ペース、全く採算ないということは言いませんけれども、これはもう物差しにするわけにはいかないことは当然だと思うのですね。  しからば、同じように土地を取得した、おたくからもらった資料にございます中伊豆だとかあるいは別府、こういうところにも大きい土地を取得しておるわけでありますけれども、これは曲がりなりにもリハビリだとかこういう稼働をしておるわけであります。同じような状況のそういう時代背景を迎えながら、なぜ一方では稼働し、なぜ一方ではこういう洞爺湖、岩洞湖、蓼科、妙高、天拝山というものが不稼働になっておるのか、この説明はつかないと思いますが、この理由はどういうことでありましょうか。
  201. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 ただいま先生の御指摘になりました中伊豆それから別府につきましては、ここにリハビリテーションの施設をつくりまして、その結果この運用につきましては、現在までもちゃんと運用されているわけでございます。ただ、この取得の申請の時期等を見てみますと、この中伊豆あるいは別府の土地取得の時期というのはわりあい早い時期でございまして、そこに施設もわりあい早期にできたということから、これがうまく運用の妙を得まして施設を利用することができるという状態になったわけでございますけれども、その後に全共連が取得いたした、ただいま先生がお挙げになりました五カ所の地域につきましては、すでに経済情勢変化しているという時期に取得いたし、その後にただいまのような稼働化が非常にむずかしかったという状態であろうと考えるわけでございます。
  202. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 稼働化ができなくなったのは、そうすると、そういう経済情勢だということになるわけで、施設そのものはそこに十分建てられるということだと思うのですが、そうですか。
  203. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 先ほど私も、必ずしも当を得たものではなかったのではないかということを申し上げたわけでございますが、さような経済情勢変化は非常に大きな理由であると思いますけれども、個々の物件について当たってみますると、そこにその物件固有の問題もございまして、さような点から、私どもとしてはその是正方について指摘もいたしているという状態でございます。
  204. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは、具体的に蓼科高原についてお聞きします。  これは最大の問題になった事案でありますが、約四十五万坪、七億五千万、四十五年十月取得と書いていますね。これらを含めた一連の問題が大きくクローズアップされた後に、全共連の部内で、全共連文書問題調査委員会というものが設置されましたね。そして、その調査結果報告というものが全共連の会員、つまり単協に全部配付されました。私、いま手元にそれを持っているんです。いろいろたくさんの書類を配付して、この経過だとかいきさつを書いたもの、調査結果を出されているわけでありますが、その資料のナンバー六、蓼科高原土地調査の概要というものをちょっと私拝見したのですね。そうすると、これがどういう土地でどういう問題があったのかということを、全共連の内部に公式に設置された調査委員会調査結果報告書が単協に配られているので、ちょっとそれを抜き書きして、私ちょっと読み上げさせていただきます。まず、そこは海抜千五百七十メートルから二千七十メートルの範囲内にあるというのですね。開発されない理由はそういう高所にあることが第一の条件だというのですね。それから、国定公園法による開発規制、都市計画法、森林法等による開発規制のすべてを満たしたとしてもなお次のような問題があるということで、いろいろなことを挙げてあるんですね。どういうことかと言いますと、たとえば唯一の平たん部が千七百メートルから千八百メートルのところに少しあるということが書いてあるのですね。その千七百メートルから上は見上げるような断崖絶壁というか、急斜面だ。千七百メートルから下は何十メートルもの深い谷がのぞく。傾斜も二十度から三十度だ。それでも強いて建設するとするならば谷底になるということか書いてある。そして、開発規制の重要な一つとして、見えないように道路から二十メートル離さなければなりませんが、そうすると、目隠しのために植生をしてもそこはとうてい根づかないところだ、こう書いてあるんですね。それから、そこから千八百五十メートルのシシ岩というところに行くためには、けもの道をたどって行くには行けるが、若者かかなり頑健な体力の持ち主でなければ非常に苦しい、こう書いてある。人間の生活というものは千六百メートルまで耐えることかできるが、それ以上になると、頑健な人でも体調を崩すというわけですね。調査委員会の結果こう書いてある。そうかと思えば、飲料水確保不可能と書いてある。飲料水を確保することはできない。雨水排水対策等について、付近の開発業者と協議調うことは、不可能、こう調査委員会報告は報告しているわけですね。  ナンバー二を拝見いたしますと、文書問題に関する理事会調査結果というものですが、これにも非常に遠慮しがちにこう書いてあるんですね。「将来の開発見通しについては、地形・環境等からみて、別荘用地としての開発には制約が多く、また保養施設としても上下水道等多くの規制から見て開発が困難な土地である。近隣業者としては、法規制・立地条件等を勘案すれば、観光開発のための土地としては手におえるものではなく、最近の時価も取得価額よりもかなり低いものであり、現在の時点では評価額の認定は困難であるとの意見もあった。」こう書いてある。こう書いてあることに間違いありませんか。
  205. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 調査報告の中にそのような文言があることは事実でございますし、私もそれを読んでおります。ただ、一言申し上げておきたいのでございますが、当時の全共連の執行部内におきましてはいろいろな意見が対立しておりまして、その中の片方の方々がそのような御意見を出しておられるということは事実だろうとまた思います。
  206. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 少なくともこの一連の調査報告結果は、片方とかなんとかじゃなしに、理事会決定に基づいて公式に配付された全共連を代表する調査結果として——これは、あなたとういう権限に基づいてそういうことをおっしゃるのですか。取り消しなさい。
  207. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 はっきり申し上げますが、その部分につきましては理事会決定を経ておりません。
  208. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 すると、これはどういう調査ですか。
  209. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 ただいま先生がおっしゃいました調査の部分につきましては、これは途中経過をあらわしている文書でございまして、最終的に理事会が決定した文書はまた別にございます。
  210. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、この事実関係は違うのかどうかということが最大の問題になるわけであります。それで私は、ある人にお願いして、現地に登っていただいたわけです。そうしたら、およそ同じような見解がございました。  この文書はどういう文書なのか。この文書の性質を改めてお話しいただきたいと思います。
  211. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 まず、事実の問題でございますけれども、確かに、この蓼科高原の取得しました土地の地域が高い場所にあるということは事実でございます。私も現場に行っておりませんのではっきりしたことをここで申し上げられませんけれども、写真で私も確認をいたしております。全体の三〇%程度は建設可能地であると聞いておりますし、またその背後地は、もちろん先生のおっしゃいますように、かなり高い部分もございますが、それは、景観保持といったような観点からはやはり所有地の一部として効果を持っているということが言えると思います。  それからまた、飲料水についてのお尋ねもございましたけれども、飲料水については県地域開発公団と契約して供給される状態になっておりまして、そのような点も最終の理事会の決定の際には明確にされておる次第でございます。
  212. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 非常に重要な問題の分かれ道でありますが、共済連から単協にこういう文書が、一連の理事会調査結果報告というものが回っているんですね。この文書の正体は一体何なのか。にせものなのか。いいかげんなものなのか。私は、それは非常に重大な問題だと思う。
  213. 三井嗣郎

    三井説明員 お答え申し上げます。  この資料につきましては、先生もごらんになられましたとおり、全共連が作成いたしました文書調査委員会の報告との関連をもちまして資料としてございます。ただし、その内容といたしまして、蓼科高原土地調査につきましては、現地に赴きました理事調査結果ということでございますけれども、その後いろいろ全共連全体といたしましても、いろいろな角度から諸般の情報、資料を入手している面もございまして、いわば蓼科高原の細部と申しますか、そういうことにつきまして具体的なこのことに対する別の形の表明をしているということではございませんが、要するに、蓼科高原につきまして諸般の、今後いわば開発可能性等を検討していくとかというような、これからの努力目標ということもございますし、蓼科高原のこの資料をもっていわば全共連の公式見解としたという性格のものではなく、いわば関連の参考資料として調査検討いたしました経緯を付したものであると私ども承知いたしているところでございます。
  214. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 調査検討した経緯の中の一つとしてこういうものがあった。すると、この事実関係は、また違う見解もあるということでありますか。
  215. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 さようでございます。
  216. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 はなはだ奇怪な話をお聞きしたわけでありますが、それではその経過で結構であります。私はこの文書しか見ておらないわけでありますが、そういう答弁では、私はこれは後々また問題になっていくだろうと思うのです。これが事実であるとするならば、これは現地を見ればすぐわかることでありますが、何か農林水産省は初めから保養施設をつくることができないとわかっておってそれを承認したことにもつながりましょうし、あるいは運用不動産じゃなくて最初から不稼働を予定しておった、そんな感じもするわけであります、これは非常に邪推でありますが。  そこで、これには当該土地を取得するに至った事情といって、有力な某県会議員の談話がここに書いてあるわけです。それを見ますと、これは調査委員会経過報告ですが、県はロープウエー建設のため湯川財産区から五十万坪の土地の寄付を受けた。そしてロープウエー建設に着手したが、建設資金の調達に苦しんでおった。たまたま四十五年ごろ全共連会長になった方がこの地域開発公団の理事長の職にあったので、県が困っている状況を助けるために全共連が取得することになった。価格についてはロープウエーの建設資金相当額云々で評価も何もしなかった、そういう大分乱暴な書き方をしているからあるいはそうかもわかりませんけれども、いずれにいたしましても、問題は、農林省がこれらの土地取得を承認しているということは、そういう全体の状況調査した上で、十分把握した上で承認したものだと私は思うわけであります。二億円以上の物件に対しては経済局長の承認が要るという通達がありますから、この点についてはどういうことになっておるのですか。
  217. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 確かにこの蓼科高原の土地につきましては、農林省が承認をいたしております。ただ、この承認の手続でございますけれども、この性格を申し上げますと、不動産の取得につきましては、行政指導上の措置といたしましてこのような承認をかけているわけでございます。その目的は、適正な運用利回りが確保されるかどうか、あるいは不動産の立地条件、施設の構造等の面で運用の形態、方法に著しい制約が加わらないかとか、あるいは適正な価額評価を受けたものであるかどうかといったような点につきまして、この承認の際に審査をいたすわけでございます。  ただ、この審査は書面審査でございまして、この書面審査に従いまして、適正と認められた状態になりますと、取得の承認をするという形になります。これはもちろん行政指導上の承認でございますので、別段それが法律的な要件を何らか構成するといったものではございません。むしろ、性格として申し上げますと、本来農林水産省が持っているこの種の問題につきましての権限は検査にあるわけでありまして、検査をする前に、できるだけ事前に問題がないようにしておくという意味で、書面の審査による承認行為というものをやっておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この審査につきまして、現時点になってみますと必ずしも意を尽くしていない面もあるというふうに考えるわけでございますが、そこは最終的に検査の面できちんとやりまして、そこで指摘も行い、その是正を行っておるという状態でございます。
  218. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、運用利回りだとか土地そのものの立地条件だとか、そういうものが承認の基準になるわけでありますね。それにかなうということを書面の上で皆さんがお認めになったということと思うのです。  それならちょっとお伺いしますが、蓼科高原が承認されたのは一体いつで、取得されたのはいつですか。
  219. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 蓼科高原につきまして、承認をいたしました年月日は昭和四十五年十月十二日、それから取得の年月日は昭和四十五年十月一日でございます。
  220. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうしますと、承認が十月十二日で取得したのが十月一日だということになれば、先に取得して後であなた方は承認するのですか。承認というのはそういうものなんですか。
  221. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 このような日にちについての若干のずれはございますけれども、事前に内容を審査いたしまして、事実上の承認と申しますか、これは大丈夫であるということは相手方に伝えてございまして、その結果、向こう側が取得し、かつ承認行為はその後に形式を整えたという状態でございます。
  222. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、若干の時間をとることはある。この場合は十一日ですか。  そうすると、別府の取得月日と承認月日を教えてください。
  223. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 別府につきましては、承認の年月日が昭和四十四年三月十一日、取得の年月日は四十二年の九月十三日でございます。
  224. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、二年もおくれてあなた方は取得を承認する。本来承認するかどうか、その点がはっきりしてから土地を取得しなければならないはずですよ。若干どころじゃないじゃないですか。二年間もおくれて承認するなんということがあり得るものですか。
  225. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 別府につきましてはこのような事態がございましたので、厳重に全共連をしかっておいたという状態でございます。
  226. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 全共連をしかれば解決することじゃないでしょう。あなた方は監督指導機関、しかもこれに対して承認を与える権限を持っている機関。そういう書面も何も出したか出さないか知りませんけれども、取得後二年後に承認を与えている。これは癒着じゃないですか。そのほか中伊豆もそうですね。そういう問題をこの際出すものは出して、かばうのじゃなくて、新体制がいい共済をつくるために今後にどう生かしていくのかということがいま一番大事なことだと思っているから、私は聞いているのでありますよ。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 しかっただけで、しかったといったらおたくの反省は何もないじゃないですか。  それならお聞きしますけれども、岩洞湖、取得は皆さんの資料によりますと四十九年三月二十九日となっていますが、承認はどうなっていますか。
  227. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 取得の年月日は昭和四十九年三月二十九日でございますが、これは未承認のままでございまして、その後検査でこれを発見いたしまして、検査書の中にきちっとこれにつきましての指摘を行い、問題であるということを全共連側に申しております。
  228. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、承認を受けて、そして土地を取得するたてまえですね。それが皆さんの資料によりましても、四十九年の三月二十九日に大変な大きさの土地を取得しておって、いまもって承認していないということは普通は考えられないことですよ。  そこで、たとえば宮城県でも先ごろ系統外のおかしい方に金をやって、七十億ばかりの焦げつきを起こしたという事件がございましたね。これはやがて刑事事件になっているのですね。そういう性質のものだと私は思うのですけれども、今日いまだ未承認、こういうことは、先ほど私、癒着という言葉は言い過ぎかもわかりませんが申し上げましたが、大臣に対してこういう実態についてどういう言いわけができるのかということをお聞きしたいと思います。
  229. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 そういうようないろいろ未承認のものであるというのは大変遺憾に存じております。せっかく全共連も執行部ができ上がるわけでございますので、ひとつこの機会に思い切ってその辺についてはそれぞれはっきりさせていくということが必要かと思っておりますので、そのように私は指導してまいりたいと思います。
  230. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ほど文書の問題でいろいろな言い回しがありましたけれども、その問題は後ほど改めてやることにいたしまして、そういう状況が一方でありながら、それについては農林省ももちろん監督指導の責任が問われるわけでありますけれども、一方にそういう問題がずっとあって、そこに働く農協の労働者、共済の皆さん方がどういう実態で苦しみながらがんばっているのか、今日置かれた農民状況がどうなのかということ、こういう点については、両者の間のどろ仕合いみたいな戦いを私よそながら拝見させていただきましたけれども、本当にどうしていい共済にしていくかという反省なりそういう政策的な内容の検討というものが両者から残念ながら聞かれなかったのです。  それで、私はこの機会に、たとえばそういう共済を含めた農協労働者というのはどういう状況になっているのかという点について若干お聞きしたいと思うのです。  たとえば、昭和五十年二月二十日に農林省は通達を出しています。「農協における職員の労務管理の適正化について」というものを農林経済局長名で出しているわけでありますが、これによれば、大変なおくれがあるんだ、これをしっかりしなさいというそういう趣旨の通達であることは間違いございませんけれども、最近に至って私がちょっと調べただけでも、宮城県では昭和五十四年十一月二十七日に、農協の労働者の皆さんが労働基準局交渉をやっているのです。その時の局側の回答は、十五の農協を七月から十一月に立入検査した、女子の深夜業務などの悪質な三件を含め違反五十九件、これ以上続けば書類送検も考えている、来年は重点的に指導に入る、これまでは県中央会を通じて指導しそれに期待していたが、もう期待できないので直接局で対策を立てたい、こういう回答をしておりますね。鹿児島の事例では、十一月三十日やはり労働基準局と交渉をいたしております。そのときどういうお答えかというと、五十四年度重点は自動車教習所とかつおぶし工場と農協だ、四月から十月に五十三農協を検査に入る、こういうことです。長崎県でも調べましたが、おしなべて同じような状況なんですね。  そこで、きょうは労働省においでいただいておると思いますが、これらの問題を含めまして、農協、共済を含めた労働問題というか、皆さんの実態は一体どういう状況なのか、簡単で結構ですから一言お答えいただきたいと思います。
  231. 岡部晃三

    ○岡部説明員 お答えいたします。  農協で働く労働者の労働条件でございますが、労働時間、休日などの労働時間の管理の問題、割り増し賃金の適正な支払いの問題、あるいは就業規則の作成等の問題につきまして問題が見られるところでございます。このため労働省におきましては、従来から行政的に監督指導を実施いたしておりまして、基準法等関係法令に違反する事実が認められた場合には、速やかに是正させるように措置を講じてきているところでございます。その結果、漸次改善の方向に向かっていると考えておりますが、しかしながら、労働条件の確保につきましてはなお不十分な面が見られるところでございまして、今後におきましても監督指導を実施いたしまして、農協で働く労働者の労働条件の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
  232. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私が入手しました「農協に対する監督指導結果」という昭和五十年の労働省発行のものでありますが、これを見ますと、監督実施事業場、労働省がやった農協の事業場が八百六十三件ある。違反事業場数八百八件、それを内容的に見ますと、労働時間を遅くまでやらせる、しかも残業料を払わない、こういう問題は四百六十六件で、違反率は五四%です。つまりあたりまえになっているのですね。割り増し賃金の方の違反は四百九十八件で五七・七%、つまり非常におくれた体質をまだ残しているということですね。あるいは女子、年少者の労働時間の超過も同じように五百十八件で六〇%、時間超過の関係で法令に違反してやられている部分がこれだけある、こういう指摘がございますが、これは間違いありませんか、労働省。
  233. 岡部晃三

    ○岡部説明員 五十年の一月から十二月までの監督結果につきましては、先生の御指摘の数字のとおりでございます。
  234. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そういう状況の中で、いかに皆さん方があれこれ思い煩い苦しんでいらっしゃるかということですね。私のところにいろいろな事例が来ておるわけでありますが、たとえば深夜労働で、つまり農村は昼には人がいないわけです。ですからほとんど夜なんですね。いま推進運動ということで、貯金だ、共済だ、購買だと言って全部駆り出されて、アンケート調査もありますけれども、もう大変なものなんですね。帰るのは深夜十時、十一時はあたりまえになっているわけでありますね。そういうことで健康を害するのはもちろんでありますが、家庭が犠牲になったり御家族が全部巻き込まれたり、あるいは未婚の女性も、そういう運動には入らないとお互いにノルマのようなかっこうになっておりますのでぐあいが悪い、こういうことなんですね。そして中には、新婚の奥さんがだんなさんに、ほとんど夜そういう状況なものですから、浮気されたという報告まで入っているわけでありますね。また、その推進をしておる皆さん方のお話を承ったそのアンケート調査なんかを見ますと、行くところ行くところ本当に農家が苦しいということがわかったというのですね。それで、もうしゃべれないというのだな。それでも推進のハッパをかけられて本当に苦しいのだということをしみじみと述懐しておったり、本来の農協の仕事よりも推進の方ばかりやられるものですから、その悩みですね。あるいはそういう状況の中で青年団だとかいろいろな人からきらわれてみたり、中にはアトム研修といって何か軍隊式の天突き運動をやらして、合宿でとにかくやれやれなんだね。まさにそういう状況まで来ているということですね。  特に、気違いじみた推進訓練の中にはこういう問題もあるというので、集中力訓練というやつが一つあるのですね。講師から与えられた訪問用語、つまり訪問する、ごめんくださいといった場合の言葉つきですね。そういう場合、周囲が邪魔する、雑言をいろいろ言ってくる中を、間違わないで訪問用語をまくし立てる訓練だ。別名敵陣突破訓練と呼ばれており、農家に推進に行ったとき、相手が現金収入が少ないとか農業経営が苦しくて大変だとか言っても、それに惑わされずに、相手の言い分は耳に入れず、推進、推進と、突き進む訓練です。こういう状況までいっているのですね。これは大変ですわな。  ところが、受け取る農家の側はいまどういう状況になっておるかと言いますと、推進に来られれば大変なわけですから、それで、三人寄れば文珠の知恵じゃなくて、三人寄れば推進を何として撃退したらよかんべ、こういうことで話し合うとか、来ないうちに早いところ床とって寝てしまう、そういうことももう笑いごとでなしに行われているほどに大変な状況になっているということですね。そういう金の中で、零細な金あるいは購買、共済、いろいろな金の中でいまの農協がつくられているわけでありますね。  一方では、先ほど来申し上げたような一つの事例で見ましても、そういう承認の問題を見ましても、何か農林省も一株入っているような感じもする。何かおかしいじゃないかと思うのですね。  こういうあり方の中で農協なり共済なりというものが、だんだん保険会社や銀行並みになっていって、肝心の農民とずっと距離を開いてきている。そういう状況の中で、いろいろな上部機構の中に問題が起こされる可能性が出てくるわけでありますね。農家に金を回すといったところで、もう農業がこれだけつぶれていますと、資金需要というものがそんなに多くは出てこないわけであります。それをどう助けていくかじゃなくて、農家や農民が非常に苦しみながら逆の方向に行っているところに今日のこういう問題の発生の原因があると思うのですけれども、そこら辺について農林大臣はどのような御見解をお持ちなのか、ひとつお聞きしたいと思うのです。
  235. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまお聞きいたしておりますような、各地の農協の職員に対して過重な労働を強いておるようなことについても、やはり事実をはっきりさせまして、そういうことについては直すべきところは直していかなければならないと思いますし、全共連そのものの今後の運営につきましても、いま御指摘のとおりで、やはりこれは農民が本当に貴重なお金を預けて共済をやっているわけでございまして、その農民のみんなから信用されないような全共連になるということは、これは大変残念なことでございます。この間うちのいろいろのことの反省の上に立って、今後は新しい執行部体制のもとに、本当に農民のためを思って、農民の共済のために自分たちはあるのである、こういう考え方に徹してもらって、ひとつしっかりした運営をやってもらえるように強力な指導をしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  236. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、実は秋田県農協政治連盟、つまり農協の支持を受けて選挙に当選しているのです。農協は私にとって非常になくてはならない、それほど大事なものでありますから、本来言いにくいことはふたをするのじゃなくて、ある問題はやはり徹底的に洗い直して、秋田県の名誉のためにも、農民の名誉のためにも、ぜひとも明らかにするものは明らかにして、いい共済、いい農協をつくっていきたいという趣旨で申し上げているわけでありますが、推進に当たっていらっしゃる農協に働く労働者の御意見なんかをいろいろ伺いますと、ほとんどおしなべて言うことは、推進に当たって、ただそれ推進だ、それ推進だじゃなしに、労働組合ときちっと事前協議をしてほしい。あるいは農家の実態に見合った推進を計画してほしい。とにかく物を売ればいいだけじゃなくて、農家の要求なり農家の実態に見合った推進をやってくれ、そのためには農協労働者あるいは農家の代表も中へ入って推進計画を立てるようにしてくれないか、こういうことを言っているわけですね。  それから、全共連の皆さん方からの話を聞きますと、何とか天下りを二度と勘弁してくれないかと言っているのですね。つまり、いままでは二人ばかり農林省の天下りがおりましたわけだな。今回の新しい執行体制にはそういうのは見えておらないようでありまして大変結構だと思いますが、今後ということもありますので、この点なんかもひとつお聞きしておきたいと思うのであります。
  237. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもといたしましては、行政改革の一環としても、できる限り関係団体への天下りは慎むようにという一つ方針を持っておりますし、そういう点については慎重に対処してまいりたいと思います。  ただ、逆に今度は全共連内部において、向こう側でひとつぜひ人をという場合もこれはあり得るかもしれませんので、一概には言えないと思いますけれども、私どもの方から押しつけて天下りをするというようなことはないようにしていきたいと考えております。
  238. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ほど私、天下りの前に、農協労働者の要求をいろいろお話ししましたが、こういう問題について全共連なり共済を御指導していただけるのかどうか。いま言うた農協に働く労働者の要求が無理なのかどうか、その点についてのお答えをもう一回お願いをしたいと思います。
  239. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 各単位農協が農民の皆様方に共済制度の中へ入っていただいて、それぞれの将来の保障のためにということで推進をしておられると思うのでございます。そのこと自体は決して間違ってないことでございますが、ただ、いまの農協の職員を夜遅くまで無理に働かせるとか、労働法上からいっても非常に問題がある点については是正をしていかなければならないと私は考えており、その点についても指導をしてまいりたいと思います。
  240. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は、残業が全くだめだとか、そういうことじゃないのです。やはり推進は推進としてあると思うのです。ただ、そういう非常におくれた体制がまだ大部分であります。たとえば残業料を払っていかないというようなことも、これはやはり問題だと思いますが、そういうことを含めていま大臣の御答弁であったと思うのです。  そこで、時間も五分前という通知が参りましたから、最後でありますが、先ほど申しましたとおり、いまの一年余にわたる共済を揺るがしたあの大きい問題何ら不正はなかった、しかし検査が漏れた。私はもちろん不正があったとかなかったとかということは余り関心がないのでありますけれども、しかし、たくさんの問題、教訓があったに違いないと私は思うのです。そこから十分な教訓を生み出して今後に生かすということですね。そのために、先ほど大臣からお話がありましたような、農民か安心して共済に加入し、それに喜びを感ずるような機構、農家や農協や労働者のそういう声を反映さした機構づくり、新しい発足に当たってのあなたの方からいい対案なんかも出したりするような、そういうかっこうの指導の具体的なものを詰めていただきたいと思うのです。  それから、農協共済についても、私非常に評価する点もあるわけです。たとえば地震保険ですね、ああいうものは農協共済であればこそ先駆的にあれをやったということで、銀座の真ん中に住んでいる人も加入を申し込んできたという話も聞いておるわけですが、これは一般生保会社ではとうてい及びもつかないすばらしいものだと私は思うのです。そういう点で、農家の要求なり実態に見合うような共済の部門が研究すればまだまだあると思うのです。そういう方にももっともっと力を入れていくとか、あるいは農村に対する公共事業を共済が起こしていく。たとえば、いま生活環境整備だとか転作条件整備だとか、そういう問題で共済そのものがどんどんイニシアをとって貸し出しして一そういう地域地域を振興させていくということは、当然法律上もできるわけでありますから、また、やろうと思えばできるわけでありますから、農民と離れた、あるいは農協労働者と離れたかっこうで、だんだん距離が遠くなって銀行並みになることが目的じゃなくて、農業あっての共済だし、農民あっての共済だし、そういう方向での指導というものを、この機会にぜひひとつ皆さんの方も研究していただいて、農協と御一緒にそういうものが実ってやるようにしていただきたいと思うわけであります。  同時に、人材の配置の問題も、なぜああいうことが起こったかといいますと、やはり農協のそういう偉い全共連あたりの会長さんだとか役員さんというのはそれぞれの単協の会長さんなんですね。会長さんは必ずしもいまの経済情勢だとかあるいはいろいろな経済の技術的なテクニック、そういうものに精通しているとは限らないわけであります。そういう点で、会長だからできるとかということじゃなくて、むしろ、最高のところを押さえて、あとのところは専門家に任せていく、そういう問題なんかもこの際私は提起をしたいと思うわけでありまして、この点については、きのうの朝日新聞なんかも書いておりますね。「農協連の役員制度見直しを」「日常業務と政策決定権を別に」したらいいんじゃないか、こういう提言なんかもやはり生かすような、また生かせるような、そういう体質こそいま一番求められているのじゃないかと思うのでありますが、これらについて御所見をいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。大臣、お願いします。
  241. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私も朝日新聞の、執行面と政策面とを分けていくべきではないかというのを「論壇」で読ましていただきまして、一つの意見であると受けとめておるわけでございます。  今後の全共連のあり方につきましては、先ほど申し上げましたけれども農民が安心して、自分たちがたとえば火事になった地震が起きたというような場合にも必ずもらえるんだということにおいて、農民は安心して共済に入るわけでございます。そういう意味において、共済連としては、やはり資産の運用という面に当たりましては、十分その辺の農民の気持ちにこたえ得るような形で運用していかなければならぬことは当然でございまして、少なくとも、先ほどお話のありましたような稼働ができないようなものを持っておったり、あるいは処分するときには大変損するようなものを持つということはいかがかと私も思っておりまして、これからひとつ健全な運用がなされるように、より強力な指導をしてまいり、役員の構成のあり方などについても、ひとつこれは研究をさせていただきたいと思っております。
  242. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  243. 内海英男

    内海委員長 阿部昭吾君。
  244. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣所信をよく拝聴いたしました。また去年の前の大臣所信演説、あるいは農業基本法をやったころの周東農林大臣所信演説、歴代の演説というものを私ずいぶん見比べて読んでみたのであります。  ところが、今度の武藤大臣のこの所信演説によって日本農業、農山漁村がどのように変わるであろうかということについて、ああこのように変わるなということを感じたのは、これは決していやみで言うんじゃありませんよ、減反を強化する、これは明瞭だな。あとのところは、確かにこの厳しい条件下で小まめないろいろな努力を農林省、全然やってないとは私言いませんよ、言いませんが、全体から言うと減反が強化になる、それだけが非常に目について、ほかのところは武藤農政ここなんだということはちっとも感じないのです。私も長年農村のことをいろいろやってきました。友人の農協組合長たちがこの間集まった。その皆さんが全部いろいろな年代のときの農林大臣所信演説というものを持っておりました。持ってもらって議論したのです。武藤農政は何か、減反を強化するというだけが目について、この武藤農相の演説によって日本農業と農山漁村がこのように三年後、五年後、十年後大きく変わるという見通しがあるな、だから、いまは減反だ何だかんだでしんぼう厳しくとも耐えなければならぬ、こういうものはなかなか見出すことができない、こう言うのですよ。大変お気にさわると存じます。しかし、阿部、おまえはそう言うけれども武藤農政はここはちゃんと違うんだ、いまはしんぼうを減反その他で求めるけれども、三年後、五年後、十年後、日本農業と農山漁村をこのようにするんだ、それはちゃんとここにおれははっきり言っておるじゃないかというところがもしあるならば、時間がありませんので、二、三点明快にひとつお聞かせを願いたい。
  245. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 基本的な考え方といたしまして、農業というものは非常に長期的な観点からいかなければならないわけでございまして、大臣がかわるたびに、農業に対するあり方、それに対して農政のあり方がその都度変わっておったのでは、これは大変なことになると私は思うのでございます。ですから、農業政策というものはそんなに大きな変化がしょっちゅうあってはいけない、こう考えておるわけでございます。  それから、私の所信表明の中で夢がないではないか、あるいは私の個性が余りにも出ていないのではないか、こういう御指摘かと思うのでございますけれども、これはきのうどなたかに私お答えをしたかと思いますが、たまたまいま一九八〇年代の今後の長期ビジョンというものを打ち出すということで、農政審議会にいろいろと審議を願っておる最中でございまして、私がここでその長期ビジョンを大きく、私のたとえ私見といたしましても、大臣という立場で所信表明の中でそれを申し上げるということは、かえって農政審議会の審議を妨げるということにもなりかねないわけでございまして、そういう意味で、あえて所信表明の中では申し上げなかったわけでございます。  そこで、私のあくまで私見ということでお許しをいただきまして、農政審議会の方々によく申し上げておりますことは、私は五つの柱と言っておるわけでございますけれども一つは、所信表明の中にもあったかと思いますけれども、特に土地利用型農業においては相当コストが高くなっておりますので、それについてはやはり経営規模の拡大を図っていきたい。それから、やはり需要に見合った形で生産がなされるようにすべきでありますので、全国的になるべく細かいところまで地域分担をして、適地適産の考え方を強めていきたい。それから三つ目には、後継者養成というようなこともありますし、また、農民が定住をしていただいて一生懸命農業にいそしんでいただくための生活環境の整備。それから四番目には、これはもう皆様方、先生方専門でございますが、たとえばいままで米の技術は相当進んできたけれども、麦の技術については私は決して非常に進歩したとは考えていないわけでございまして、小麦などについてもっと早く収穫のできるような品種を改良していくとか、あるいは大豆その他の収穫に当たりましては農機具その他にまだ問題があると聞いておりますので、そういう機械の改良であるとか、こういうものにもつと力を入れていくべきである。それから五つ目には、やはり生産者の手取りが案外、農産物全体を見ますと低くて、かえって消費者価格が高くなっているという点がございますので、流通、加工、こういう面についてひとつ思い切ったメスを入れていきたい。こういう五つの夢を私は持っておるわけでございます。  ただ、それを所信表明で申し上げるのはどうもいま時期が悪いということでございまして申し上げられなかったということでございます。せっかくの御指摘でございますので、私の考え方だけを率直に説明させていただいたわけでございます。
  246. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、いま大臣言われました五つの問題というのは、前の渡辺大臣所信演説の中にも大体入っています。したがって、今度の大臣演説、いまの考え方というのは、地方の現場で農業をいろいろなことをやっているリーダーや何かの皆さんというのはちっともぴんとこないのですよ。前と大体同じ延長でずるずるといくんだなと。いま現場で求めているのは、たとえば私は山形県の庄内という農村地帯、穀倉地帯ですが、長年ずっと複合経営というものを私は提唱してきました。農基法農政が始まった当時、私の二市三郡の区域でしたが、豚は五万頭しかいなかった。私はこの豚を十数年間に二十五万頭ほどにいたしました。きょうはこの皆さんが、大変なんで畜産経営危機突破大会というものをやっております。畜産がその状態。果樹をやっている皆さんもみんな大変です。したがって、米もだめ、豚もだめ、牛もだめ、果樹もうまくいかぬ。一生懸命努力しておるのです。  そこで、問題は、いませつないから減反に協力せいというなら協力しましょうというのです。しんぼうしろ、しかし、そのかわり、こういう年次的な目標を持って、三年後、五年後、十年後日本農業と農村社会をこういうふうにするんだというものが欲しいのですよ。たとえば畜安法の運用にしても、五百円ちょぼちょぼで枝肉価格が低落したにもかかわらず、農林省はちっとも対応しませんでした。したがって、求めているのは、いまこういう問題で——私だって、米が余っておっていいとは言いませんよ。しかし、いましんぼうしてくれ、将来はこのようにするんだということが、私はやはり政治の責任としては明快でなければいかぬものじゃないかと思うのです。したがって、私は、今度のあれで言えば、一千万トンの大豆、麦を輸入している、この麦を、それはいろんなことを条件整備やらなければ簡単にいかぬと思うのですが、五カ年なり七カ年なり十カ年の間に、一千万トンの麦、大豆のたとえば四百万トンなり五百万トンは国内でとる、そのためにこういうことをちゃんとやるんだということが出てくれば、いま武藤大臣のもとで、前の三十九万一千ヘクタールから十何万のあの減反が一気に強化されても、それなりにみんなしんぼうするのですよ。いまのは、どこまでいったらどうなるのか、ちっともめどがないということです。いまどんな五つの柱を並べても、その柱というのは、いままでの、渡辺大臣のときも大体似たような演説をした、安倍晋太郎農林大臣のときも、攻めの農政と言っていい演説を一遍やったのですよ。攻められたのは、ずるずると農村の方が攻められただけで、よそに向かって日本農業、農村をどうするかということはちっとも出てこないというところに、現在の農業、農村社会のいら立ちがあるのです。挫折感があるのです。  そこで、総論をやっておったんじゃ時間がありませんから申し上げたいのでありますが、労働省の方がいらっしゃるのですが、たとえば日本は山地が非常に多いのです。林業というものを農村の経営の枠組みの中に組み込まなければいけない。しかし、いま残念ながら山というのは五十年先にならなければ銭にならないのです。そういう山のために膨大な投資をやる力は、いまの農山村にはございません。みんな現金を求めてよそへ出ていってしまうのです。  そこで、たとえば、これは私の意見ですけれども、植えつけをやって育林をやるのに金がかかるのは大体二十年間です。この二十年の間に、五十年先に収穫をするときにどの程度の収穫になるかという予定は大体見通しが立ちますね。一ヘクタールの杉林なら杉林でどの程度の収穫が予想されるかというめどは立ちます。したがって、その際に、金のかかる二十年くらいの間に、将来収穫される予想の半分くらいのものを、うんと低利の金で、皆伐をやったときに、収穫をやったときに精算払いで償還するような資金制度をひとつつくるべきじゃないか。そのことは、たとえば水資源問題とか空気の問題とか、あるいは治山治水、災害復旧費なども相当節約できるようになるでありましょう、山をがっちり押さえていくことは。そういう意味で、山に対してそういう取り組みをしてほしい。  それから同時に、私も長年山の問題をお世話してきましたけれども、いま山で働いておる皆さんの場合に大変な問題は、労災の掛金料率がべらぼうに高いのです。出かせぎに参りましてこの辺の地下鉄の現場で働いておる皆さんの料率よりも、山で働いている労働者の労災料率の方がはるかに高いのです、千分の八十何ぼになっていますから。これに雇用保険の掛金あるいは社会保険ということになると、山元で山なんかやっていけるような業者やなんかほとんど出れないのです。したがって、少なくとも林野庁、農林大臣の方で労働省と談判して、いまの林業に関する労災の掛金率のべらぼうな高さというものをぜひひとつ改めていただきたい、これが一つ。  それからもう一つ、時間がないので先に申し上げて後で答弁をずっと並べていただきますけれども、私の郷里でサケのふ化放流、私は大変長年いろいろなかかわりを持ってやってきました。私の山形県は全国で三番目くらいふ化放流をしておるはずであります。ところが、ことしはなかなか川に魚が上ってまいりません。海でみんなとってしまうのです。だから、ふ化槽は残念ながらいまがらあきになっています。私がずっと調べてみると、ふ化放流を非常に熱心にやったにかかわらず、なかなか余りとっておらないのが山形県と富山県なんですよ。したがって、ふ化槽はこれは水産庁の方で相当援助もしてつくらしたわけでしょう、ふ化放流事業で。ふ化槽ががらあきになって、沖合いでだけどっさりとるということを繰り返しておったら、四年周期でありますから、四年後は大変な不漁が来るわけであります。あるいはいろいろな国際間の漁業交渉その他にも影響するでありましょう。したがって、少なくともふ化槽が満杯にならぬような、全部沖合いでとるという状況に対して、やはり一定の指導というものがちゃんとなければならぬのではないかという問題であります。  まず以上だけ御答弁いただいて、続けます。
  247. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 造林等の初期の段階での必要な経費につきましては、御承知のとおり、農林漁業金融公庫から長期、低利の融資を行っております。  御提案の点につきましては、林業収入の一部を伐期まで待たずに林家が得られるということを考えたらどうかという御提案だと思います。保安林につきましては、御承知のとおり伐調資金というのがございます。なお、普通林につきましてはこの伐調資金は適用されないようになっておるわけでございますが、現在モデル事業としまして特定分収契約促進特別事業というのを五十一年度から始めております。これは主として市町村有林を対象にやっておるわけでございますが、やはりこれはこの実施経過などを見まして、今後一般の民有林にも広げていってはどうかという検討をしたいと思っております。現在民有林でも、たとえば森林組合とか個別の会社がやっておるケースがございますが、今後私どもとしましても一般の民有林にも及ぼすような方向で検討していきたいというふうに考えております。
  248. 今村宣夫

    ○今村政府委員 サケ・マスのふ化放流事業につきましては、私たちもこの拡充強化については一生懸命やっておるつもりでございますが、先生指摘のように、沖の方でとってしまうから川上に上がってこないじゃないかというお話でございまして、これにつきましては、私の方といたしましては、五十四年度の場合におきましても、漁業権の切りかえ段階でいろいろと関係県におきまして協議をいたしまして、それぞれの県におきまして操業期間でございますとか区域の制限等をやったわけでございますが、先生の御指摘のように、山形のサケがとられるということもございますので、来年度早々には関係県に集まってもらいまして、さらに定置等の禁止期間なり、それから操業期間等につきましてよく打ち合わせをいたしまして、しかるべき措置をとりたいというふうに考えております。
  249. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 林業従事者の労災保険の問題でございますが、いま聞きますと、ちょっと労働省の方も専門の方じゃないようでございます。私からお答えをさせていただきますが、いろいろこれは仕組みは先生承知のとおりで、全体の中でやはり災害が余り多いと、それは自動的に料率は上がってしまうわけでございます。そういう点において、私は、やはりわれわれの立場でなるべく災害を少なくするような形の林業の職場のあり方というものを考えていかなければならないのではなかろうか、そうすれば結果的に料率は下がってくる、こういうことになるわけでございますので、私どもの方でそういう方向でひとつこの問題は検討させていただきたいと思います。
  250. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間がありませんので。いまの問題は、大臣、これ違うのは千分の八十というベースがあるのですよ。その上に災害がなければ少し下がる、災害があれば少し上がっていくという料率になっているのです。千分の八十がベースなんという労災保険の料率はちょっと例がないのです。この辺で地下鉄の工事や何かやっておるような仕事の料率の方がずっと安いのです。これではとてもじゃないけれども、今日の困難な山林をやっていこうなんという仕事が、森林組合やどこでも大変な状況になっているんです。したがって、これはぜひ労働省と協議をして改善をしてもらいたい。  それから、さっきの冒頭の問題に戻りますけれども農林大臣は、規模拡大をやろう、こうおつしゃっております。だって、米が余るのでしょう。豚肉も牛乳もいろんなものも、なかなかちょっと需給の関係は容易じゃないのでしょう。牛乳の問題も相当やっておるようですけれども、そうすると、規模拡大をやってこれ以上もっと増産をするとどういうことになるのですか。問題があるわけでしょう。規模拡大を言う以上幾らどこまでもつくってもいいというわけには、なかなか日本の農産品というのはそんなに貿易市場に乗るというわけにはいかぬだろうと思うのです。この耕地比率の少ない日本において、日本でつくった農産品が国際市場へどんどん乗っていくという状況にはなかなかなれない。そういう狭い国土にこれだけの濃密な人間が住んでいる日本で、しかも耕す面積が非常に少ないという状況から言えば、国際貿易市場に日本の農産品が乗るというわけにはなかなかいかぬだろうと思う。そうすると、どうしても市場は日本国内に限られてくる、ほとんどのものは。そういう意味で、規模拡大をやってどんどん増産をするという以上、規模を縮小しなければならぬ人が出てくるわけでしょう。  たとえば、農地はほとんど限定されておる。きのうお話しの二百万ヘクタールか二百八十万ヘクタールか知りませんけれども、農地開発をどうするかという問題は別の角度からの問題としてあるでしょうけれども、とにかく限られた農耕地を基準にしてやっていく。あるいはハウスや何かやっていくにしても、やはり市場との関係で限界があるわけでしょう。その限界がいまの豚肉の暴落となり牛乳の自主規制ということになり、輸入との関係もありますけれども、そうすると、規模拡大という以上、どこかでもって規模を縮小されなければならない農家群が出てくるのじゃありませんか。この皆さんの対策がちゃんとならない限り、農業、農村の構造政策は私は進まぬだろうと思うのです。したがって、農政審議会のあれを待ってとおっしゃるけれども、たとえば、私、農政審議会のこの中間報告を見ますと、規模拡大をいっぱい言っているのですよ。構造政策言っているのですが、私は残念ながら、農業、農村社会、農村、漁村の問題は、農業、漁業、林業の枠内だけでは定まらぬだろうと思うのです。いま農村で最もいい暮らしをしておるのは安定兼業層ですよ。兼業の方がしっかりしておる皆さんの方が、農村社会で一番いい生活の仕方をしておるのです。そうすると、農業とか漁業とか林業以外の取り巻く回りの状況、社会、経済状況も変えていかなければ、農村、漁村の直面しておる根本問題というのは解決つかぬと思うのです。  したがって、いま今後の長期ビジョンをつくるという場合に、私は率直に言って、その角度からの問題もひとつとらえなければ、農村、漁村の直面しておる問題は解決できない。構造政策はやはりそこにメスを入れなければ、枠の中だけじゃ、規模拡大をやるならば需給の関係もこの状態では規模を縮小しなければならぬ人が出てくるじゃありませんか。この観点をちゃんと踏まえていただきたい。したがって、私はいまの農政審議会にやっておるから大臣として物を言えませんという話は、私は間違いだと思いますよ。大臣、いつまで大臣やっておるのか知りませんが、私は、農林大臣が三年も四年もずっとやるような自民党の従来のやり方なら別だけれども、毎年毎年大臣かわっておって、農政審議会が答えを出してくるまでおれは物を言わぬなんというようなことを言っておったら、これはどうにもならぬだろうと思うのです。  したがって、その意味で、私は冒頭申し上げました大臣所信表明五本の柱というのは、去年の渡辺大臣もほとんど言っていますわ。その前の安倍晋太郎農相も大体似たようなことをずいぶん言っておるのです。今度出てきた武藤農政は何かというと、減反を広げましたという以外のことは——それは努力していないとは言いませんよ、ちょぼちょぼのいろいろな小まめなところは。大枠の問題としては、武藤農政、ここで農業、農山村の未来にちゃんと道をつけるのですというものは何一つ出ておらぬと言って私は決して過言でないと思う。そういうふうに現場の農協指導者や何かこれを読んでいますね。いやみで言うのじゃありませんよ。さっきの五つの問題じゃだめなんです。たとえば、米過剰をどうするか、麦、大豆への転換をやるというのは、米だけに食管制があって、麦、大豆は国際相場ちょぼちょぼにしておいて、麦、大豆をちゃんとやりなさいと言ったって、やる人いないでしょう。そのあたりにきちっとした政策的な手だてを講じない限り、このように変わるということにならぬとぼくは思いますよ。
  251. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 二点ばかり先生と私とちょっと考え方が必ずしもうまくいってない点があるのではないかという感じでいまお聞きしておったのですが、第一点は、私は先ほど適地適産という言葉と経営規模の拡大と二つあわせて申し上げたわけでございまして、これは特に土地利用型においてやはり将来コストを安くしていくという点、それは農家の手取りを多くしていくためにもそうあるべきである、こう考えておるわけでございまして、そういう点において、土地利用型はもう少し規模を大きくしないといけないのではなかろうか。  そこで、従来農振法の改正によりまして、五十一年以降、農用地利用増進事業をやってまいりましたが、幸いと申しますか、わりあいに、ここへ参りまして相当その効果があらわれてきておるわけでございます。たしか昨年十二月現在で二万四千ヘクタールくらい出てきておるわけでございます。そういうふうな観点から、やはり必ずしも農業を引き続いてやっていかなくても貸しておいてもよろしい、こういう方が相当ふえてきておる。そういう事態を踏まえまして、私どもは、できる限り今後そういう貸していただける方々からより多くの農地を提供をしていただいて、本当に農業中心でやっていこうという中核農家などを中心としてひとつやっていただこう、こういう考え方一つあるわけでございます。  ただ、それを言ってまいりますと、それじゃそういう貸した方はどうなるのか、こういう御指摘があろうかと思いますが、いま先生指摘をいただきましたように、最近の農家の収入状況を見ておりますと、第二種兼業農家が一番いい収入を上げておる、こういうのが現実でございまして、そういう点からいけば、そういう農家の方にまたある程度小作料として収益があるということにおいて、農外収入とそういう収入と合わせれば結果的にその農家の収入がふえるわけでございますから、そういう形でひとつ対処していけないだろうかというふうに考えておるわけでございます。あわせて、農村地帯においても地場産業もあるでございましょうし、あるいは工業の導入というのも制度としてはあるわけでございますから、そういうものに対してもより一層進めていかなければならないし、あるいはいわゆる第三次産業と申しますかサービス業なども、今後地方にも相当ふえてまいるのじゃないか、私は、そこにある程度の雇用の場は出てくるのではないかということも考えあわせながらやっていきたい、こういうことを考えておるわけでございます。
  252. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間がありませんのであれですが、私は、ちょっと大臣考えているようなぐあいに世の中は進まないと思うのです。基本的に言えば、きのうもお話に出ましたように、今度の減反政策ぐらい農村を大きく挫折をさせているものはない。しかし、いましんぼうしろというなら、さっき言ったとおり、一千万トンの輸入の麦、大豆の方には実際上はちっとも手がついていないのです。しかし、これを五カ年なり七カ年でちゃんとこのようにするということが、たとえば、大臣は米の検査制度などを大きく縮小するみたいなお話もされていますけれども、私は、逆にそうではなくて、麦、大豆も食管の中に抱えていく、そのかわり、米だけじゃなくて麦、大豆に大きく転換できるところは転換してくれということになっていかなければいかぬものだろうと思う。だから、いま地方て受け取っておる——きのうもある農協の組合長が私のところに来てこう言いました。農協は本来、生産活動ここに力を入れなければいけない、組合員の生産と所得をいかにして向上させるかというところに力を入れなければいけない。そのために、豚をやらすあるいは果樹をやらす、いろんなものをやらす。ところが、どっちを向いてもうまくいかぬわけですよ。だから、総会なんかのときには、しょっちゅう組合のリーダーというのは攻撃を受ける。だから、しようがないからスーパーに手を出したり、いわば商いをする方にどんどん転換していった方が、うちの農協の組合長は大変すぐれた指導力だというふうに組合員に言われるというのですね。しかし、本来農協というのは組合員の生産活動、生産と所得を追求する分野に力を入れなければいかぬのだ。そういうことが今度の武藤農政によって何か出てくるのかと思ったら残念ながらいままでと全く同じで、広がったのは減反だけ、こういう受け取りをしておるのです。だから、私は、農政審議会ことしの夏なんということを言わずに、やはりそれをリードしていけるような武藤農政の骨組みというものをもっと大胆に打ち立てていただきたいというふうに思います。
  253. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 もう一つ私つけ足さなければならないのは、この間から申し上げておりますように、阿部先生から減反ということで厳しくおしかりをいただき、またほかの先生からもおしかりをいただいておりますが、私は、水田利用再編対策というのは、ただ単に米の減反政策だけではなくて、あわせていま御指摘ございましたけれども、いろいろいま小麦、大豆、飼料作物、そういう形に転換をしていただきたいとお願いしておるわけでございまして、その転換した作物を定着をしていただきたい。一番理想的に言えば、麦と大豆と一年に両方つくっていただけるような形になれば、農家の収入もふえますし、土地の利用率も高まりますし、それから日本全体の自給率も高まるわけでございまして、そういうような方向にこの水田利用再編対策を持っていきたいというのが私の考え方でございまして、その辺もぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  254. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 終わります。
  255. 内海英男

    内海委員長 神田厚君。
  256. 神田厚

    ○神田委員 大臣所信表明についでの御質問を申し上げますが、昨日私の方の稲富稜人議員からも全般的な問題について御質問がありました。私はごく限られた食糧問題等を中心に御質問申し上げます。  昭和三十五年度において九〇%を示しておりましたわが国食糧総合自給率が年々減少しまして、昭和五十二年度はついに七三%まで低下をしてしまった。特に、食糧需給を考える場合に問題となっております穀物自給率につきましては、三十五年度の八〇%から三四%まで激減しておりまして、先進諸国の中で最も低いものになってしまっているわけであります。ちなみに、英国では六四%、西ドイツ八〇%、フランスでは一五二%、アメリカは一七四%ということでございますけれども、三四%まで穀物自給率が減ってしまったということは、これは大変憂慮しなければならない問題でございます。国際的な食糧需給の見通しはいろいろ出ておりますけれども、非常に楽観を許さない。FAOの予測では、一九八五年の穀物需給が、生産が十六億二千七百万トン、消費か十六億一千九百万トン、こういう状況でありますから、これから先の天候等の問題を見ますと、なかなか楽観を許さない状況になっております。  そこで、新聞等にも大きく出ておりましたし、また大臣の方からの意見もいろいろあったようでありますけれども、米国のソ連に対する穀物が戦略物資として使われてきている状況の中で、今回大臣が、きょうの委員会等でもかなり質問が出たようでありますけれども、米国の穀物のうち官民合わせて百万トンを引き取るというような話になっているようでありますけれども、具体的にアメリカからはそういう話があったのかなかったのか。昨日はなかったという話でございましたが、まずその辺はいかがでございますか。
  257. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これはルートは外務省でございますけれども、外務大臣から聞いておりますところでは、そういう正式な要請はいま現在においては全く来ていない、こういうことでございます。
  258. 神田厚

    ○神田委員 正式な要請は来ていないけれども、これは考え方としては、対ソの経済措置としてそれに協力をするのか、それともそうではなくて、純粋に穀物の取り決めという形で協力をしていくのか、その辺はどうでございますか。
  259. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 日本といたしましては、従来から相当量アメリカから輸入いたしておるわけでございます。また、日本アメリカとは友好関係にあるわけでございます。そこで、せっかく、アメリカが対ソ制裁措置をやったがために大変苦しんでおるという状態からいって、もしこちらが少しでもそれに対して協力できる点があれば協力するということは、決していけないことではないのではないか。ただ、日本側としては、しかし米の過剰を抱えておったりいろいろの状況がございますから、そういう点を踏まえて考えていかなければなりませんけれども、もしそういう点で許される範囲内において協力するということは、これは一向に差し支えないことではないか、こういう考え方をもって私ども政府部内でいろいろ検討いたしまして、もう何遍も申し上げておりますが、小麦、それからトウモロコシ合わせてでございますけれども、大体三十万トンぐらいは政府の手で協力できるのではなかろうかということだけは省内で意見は調整ができておるわけでございます。
  260. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、新聞等で報道されているのは、対ソの経済制裁措置としてそういうふうな考え方が出てきたのではないか、こう言われているのですけれども、いまの大臣答弁を聞いていますと、この問題はソ連経済制裁措置とは関係がないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  261. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、直接対ソ経済措置をやるためにアメリカから買うというような考え方には立っておりません。あくまでも先ほど申し上げたような考え方に立って考えておるわけでございます。
  262. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、日本国の政府が対ソの経済措置をいろいろ考えてこれを発動しようという時期が来る場合、この穀物の問題というのはそれとは切り離した形で考えているわけですね。
  263. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 対ソ経済措置の一環としては私は考えておりませんので、きょうちょっと御答弁申し上げておりましたように、昭和五十五年度の予算の中で小麦についてももう相当買う予定をいたしておりますし、また、トウモロコシにつきましては、配合飼料供給安定基金で十万トンぐらいの追加を五十五年度の予算で計画をいたしておりますので、そういうものを極力五十五年度に入ってなるべく早い時期に引き取るということは不可能ではないという考え方に立ち、それは、友好関係にあるアメリカとの関係を思い、またアメリカからは小麦を現時点においては相当買っておるわけでございまして、そういうようなことを考えて、何とかその程度ならば協力できるのではないか、こういう考え方を持っておるということでございます。
  264. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、いろいろ心配をされております、このことによりまして、大臣がこういう発言をしたことが新聞等で大きく取り上げられている、そのことがサケ・マスの漁業交渉等に影響を及ぼすだろうという観測もあるわけでござ  いますけれども、その辺につきましては、それじゃどういうふうにお考えでございますか。
  265. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 けさほど芳賀先生にもお答えをいたしましたが、私はそういうようなつもりできのう新聞記者にも話したわけではございませんので、どうもかえって反響が多かったことについては私自身表現のあり方について非常に反省をしているということをけさほども申し上げたわけでございまして、決して私の頭の中にサケ・マス交渉もないわけではございません、私としてはもう少し慎重に発言をすべきであった、幾ら新聞記者の問いに対してでももう少し慎重に発言すべきであったという点については、反省をいたしておるわけでございます。
  266. 神田厚

    ○神田委員 この穀物の問題は非常にむずかしい問題でございますね。アメリカは前々から、長期契約を結んで日本とのそういう希望を持っているようでありますけれども、私は、この穀物の長期契約というのはもろ刃の剣のようなところがありますから慎重に対処をしていかなければならない問題だと思いますが、この長期契約等の問題については、大臣はどんなふうにお考えでありますか。
  267. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは、いま私ども国内自給率を高めていこうというときでございますので、そういう問題に対しては、商社あたりからはいろいろ話が出てきておりますけれども、私どもとしては慎重に検討していかなければならぬと思っております。
  268. 神田厚

    ○神田委員 この問題は終わりまして、次に、関連しますけれども、現在特に不足が著しい小麦、大豆、飼料、これらの具体的な振興策、これを明確にしていかなければならないわけでありまして、昭和六十五年目標の農産物の長期需給見通し、この作成の中でこれをどういうように生かしていくのか、その辺ちょっとお聞かせください。
  269. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、この間から申し上げておりますが、農政審にいま試案として出しておりますのは、たとえば小麦について申し上げれば、六十五年度は一九%という自給率考えておるわけでございます。これは農林水産省が従来のいろいろの統計数字に基づきまして出しました数字に、ある程度の趨勢値と申しますか、そういうものを加算したものと承知をいたしておるわけでございます。しかし、その後にアメリカソ連に対する穀物輸出停止というものも出てきたわけでございますし、また、水田利用再編対策の中で、私ども小麦なり大豆なりは奨励金まで出してひとつやっていただきたい、こういうことをお願いをしております以上は、やはりそういう政策目標を含めた、政策目標を織り込んだ形での長期見通しというものを考えるべきではないかという考え方に立っておりまして、いま事務当局に対して、そういう従来の客観的な数字に基づくものも、それはやはり一つの目安として見るのもいいけれども、こういう政策目標を掲げていまやっている以上は、それがうまくいったときには、先ほど阿部先生お話にもございましたけれども、たとえば転作がうまくいって小麦や大豆かこれからもしどんどん増産されていった場合には一体どのくらいになるだろうかということは、当然もう少し違った数字が出てくるのではないか。そういうものをひとつ出して、その両方、政策目標を織り込んだ形での希望的な数値になりますけれども、希望的な数値とそういう客観的な数値と両方見て農政審議会の中でも議論してもらうべきではないかということを言い、そういう資料の作成にいま事務当局を督励をしておるということでございます。
  270. 神田厚

    ○神田委員 具体的な振興策がなかなか明示されない、それはやはりいろいろ財政その他の裏づけが必要だからそうなんでございましょうけれども、その不足のものに対してのもっと真剣な取り組みを早くしなければ、先ほど話しましたように、とにかく穀物自給率が三四%ということは食糧安全保障からもまずいということは、ずっと指摘をされ続けているわけでありますから、これはひとつもう少し本腰を入れて、農政審議会の話を聞くのもいいですけれども農林省としての大方針をやはり大臣の方から出してもらわなければだめだと私は思うのですね。そういう意味では、もう少しこの問題については本腰を入れて早く取り組んでほしいという希望を申し上げておきたいと思います。  次に、栄養水準あるいはそういうものから見ますと、大体二千五百カロリーといま言われておりまして、まあ満足している。そして、ほとんど肉類や牛乳、乳類、こういうものが全部過剰になってきている。こういう中で、さらにこの六十五年見通しの中でそれを拡大していく方向をとろうとしているわけでありますけれども、それは現実にそういうふうな余地が、需要増があるのかどうか、需要増があるという根拠は一体どこに持っているのか、その辺をお聞かせをいただきたいと思います。
  271. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 昨年十一月に公表いたしました長期見通しの試算におきます六十五年の畜産物の需要について申し上げますと、牛乳、乳製品につきましては一人当たり年間純食料で七十四キロ、総需要量で九百六十万トンということになっております。これは五十二年の基準年次に対して六十五年までの年率は、総需要量におきましては二・八%でございます。最近の実績からいたしますと、四十七年から五十二年までの伸び率は三・二%でございますので、それよりか低目になっておるわけでございます。また肉類につきましては、一人当たり年間純食料六十五年で二十七・九キログラム、総需要量で五百九万トンというふうに見込んでおりまして、総需要量の同じく年率で申しますと三・五%の伸び率となっております。これを四十七年から五十二年までの伸び率七・二%に対して約半分程度の伸び率というふうに見込んでおるわけでございます。  ただいま御指摘のように、現状におきまして豚肉、鶏肉等の過剰あるいは牛乳につきましての過剰問題がございますけれども、長期的に見ました場合には、いままでのような高い伸び率は期待できないものの、やはり食生活内容変化、多様化を背景といたしまして、なお安定的に伸びていくということを見込みまして、ただいまのような試算をいたしておるわけでございます。  それからもう一つは、地域別、所得階層別の格差を見た場合に、かなりその格差が縮まる傾向がございます。高い地域あるいは高い所得階層の消費の水準にだんだん近づくというようなことも考え合わせますと、いま試算しておる程度の伸び率は長期的に見て考え得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  272. 神田厚

    ○神田委員 この論議の中で一つ落ちているのは、それでは輸入乳製品等の問題はどの程度考えているのか。六十年見通しもこの乳製品の問題は非常に見通しを誤っていたわけでありまして、さらに擬似乳製品等の輸入問題が大きくクローズアップされたことは記憶に新しいわけでありますが、この辺のところは、乳製品等を中心とした輸入の問題については、どんなふうな見通しをお持ちになっておりますか。
  273. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 六十年見通しと現実の動きと対比いたしますと、牛乳、乳製品につきましては、六十年見通しの水準とかなりそれに近づいておりまして、テンポとしては六十年見通し考えた以上の伸び率になっております。その際、輸入につきまして、六十年見通しと比べるとかなり多い数量になっておりますが、今後の見通しといたしましては、現在の実績、輸入数量を若干上回る程度というふうな見方をいたしております。伸びるものは、大体チーズがかなり伸びるというふうに考えられますが、これをできるだけ国産品にかえていくということを長期的に見込んでおるわけでございます。
  274. 神田厚

    ○神田委員 大臣予算委員会においでになるということで、四十五分ぐらいまでにしてくれという話でございますので、時間がなくなってまいりましたから、ちょっと突っ込んだ論議ができませんで恐縮でございます。  次に、転作問題でございますか、将来的に八十万ヘクタールの転作が必要だ、こういうことを言われておりますね。それで、具体的に来年度からの方針というのはまだ出ていないわけでありまして、ことし示されただけでありますが、この来年度の問題についてはどんなふうになっておりますか。
  275. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これからどうするかということをいろいろ検討しなければならぬわけでございますが、御承知いただいておりますように、五十三年からおおむね十カ年という形でこの水田利用再編対策は出発をいたしたわけでございまして、第一期がこの五十五年度までの三年間でございます。五十六年度以降どうするかということにつきましては、特に転作作物などにつきましては、私ども、やはり米のいまの需給均衡化あるいは農業生産の再編成、いま御指摘のように適地適産の考え方、いろいろと考え合わせながら検討していかなければならないと考えておりますが、現時点ではまだどういう方向ということも一切検討いたしていないわけでございます。
  276. 神田厚

    ○神田委員 これはやはり考え方を早く出してもらわないと、対応する方もいろいろありますから、それは十カ年というおおむねのものを持っておりますけれども、来年度についてはどうだという問題を少し早く出してもらって、またこの委員会等で論議を少しさせてもらった方がいいと思っているのですが、その辺はどうでございますか。
  277. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 当然、その時期になれば委員会でまた御議論をいただかなければならぬと私どもは思っております。
  278. 神田厚

    ○神田委員 ことしよりも多くなるというふうな判断は持たなくてよろしゅうございますか。
  279. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、米の需給均衡化というのがやはり一つ考え方にありますので、いまのところ何とも申し上げられませんけれども、それじゃ多くなる可能性があるのかないのか、どちらのウエートが高いかと言えば、やはり多くなるという可能性の方が高いのではなかろうかと私は推測をいたしておるわけでございます。
  280. 神田厚

    ○神田委員 時間がありませんので、後に論議を留保しておきます。  もう一つ、今度の国会で農用地利用増進法案、農地法の一部を改正する法案が出てまいっておりますが、こういう法案をつくっても、それではこういうふうにして土地を集めたものに一体何をつくらせるのかという対策が落ちているのです。これは、せっかく土地を集めても、何をつくらせるかという指導がなければ結局何にもならないことになってしまうわけでありますが、その辺は具体的にどういうことをお考えになっておりますか。
  281. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、やはり需要に見合った形での生産がなされなければならないわけでございます。そこで、私ども、いま農政審議会に御議論をいただいておりまして、国全体としての一つの目標もつくってまいりますけれども、あわせて、それぞれの地域地域の特性に応じた形でやっていただかなければならないわけでございます。最近、私どもは、地域農政と申しますか、地域においていろいろと、自分たちは何をつくろうかという相談もしていただけるような仕組みを予算的にも考えておるわけでございまして、そういうような方向で私ども一つ方向、それに応じて地域の方向というもの、そしてそこにはいろいろ指導員なんかも入っていただいて、何とかそれぞれの地域の特性に応じて需要に合ったものをつくっていただく、こういう形に持っていきたいと思っておるわけでございます。具体的にはまだ数字は、いまの話で農政審議会のめどをこの五月か六月、大体五月いっぱいにはと思っておるわけでございますけれども、その辺のところでまたいろいろと各地域で御検討を願わなければならないと考えておるわけでございます。
  282. 神田厚

    ○神田委員 どうも余りはっきりしませんですね。法律が先にできてしまって、何をさせるかというのが後になってしまうと、これはやってもやらなくても同じことになってしまうわけです。  最後に、一つ要望しておきますが、先ほど、来年度の転作について大臣は、多くなる可能性の方が大きいという話をしたようであります。私は、少なくとも転作の条件整備、これがきちんとできない以上は、ことし以上の転作の面積の拡大はすべきではない、こういうふうなことを考えております。ひとつ御留意をいただきたい。  これで質問を終わります。      ————◇—————
  283. 内海英男

    内海委員長 次に、農業者年金基金法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。武藤農林水産大臣。     ————————————— 農業者年金基金法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  284. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。  農業者年金制度は、農業者の経営移譲及び老齢について必要な年金の給付を行うことにより、農業経営の近代化及び農地保有の合理化に寄与するとともに、国民年金の給付とあわせて農業者の老後の生活の安定と福祉の向上に資することを目的とするものであります。  その実施状況を見ますと、現在加入者数は約百十万人となり、年金受給者数も十二万六千人に達しておりまして、早期の経営移譲が行われることにより、農業経営の若返り、農地保有の合理化に役立っております。また、離農給付金も、発足以来約二万三千人に給付され、農地の流動化と農業経営の規模拡大に寄与しております。  農業者年金制度の内容につきましては、昭和四十九年以来逐次改善充実を図ってきたところであり、昭和五十四年におきましても、国民年金に準じて年金給付の額の物価スライドの特例措置を講ずるとともに、加入時期を逸し加入できなくなっている後継者の加入の救済措置を講じたところでありますが、さらに本制度の一層の改善充実を図るため、今回、改正を行うこととした次第であります。  本法律案内容は、次のとおりであります。  第一は、年金給付の額の改定措置であります。  国民年金等において、昭和五十五年度に財政再計算が実施され、給付の改善等の制度の充実が図られることとされておりますが、農業者年金においても、国民年金等の年金額が改定されることにかんがみ、国民年金の老齢年金の額が改定される月分以後、特別に年金給付の額の引き上げを行うこととしております。  この場合、引き上げの率は、昭和五十四年度の消費者物価の上昇に見合うものとしております。  第二は、離農給付金制度の改正措置であります。  現行の離農給付金制度は、農業者年金に加入できなかった者が離農した場合に一時金を支給するもので、今年五月までの措置として十年間実施してきたものであります。  今後は、農業者年金に加入できない安定兼業農家等の保有する農地等の専業的な農家への移譲を誘導するため、経営移譲の要件を手直しした上、さらに十年間実施することとしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  285. 内海英男

    内海委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  286. 内海英男

    内海委員長 この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業振興に関する件について、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  287. 内海英男

    内海委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出席日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 内海英男

    内海委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十一分散会