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1980-03-26 第91回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月二十六日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 逢沢 英雄君 理事 唐沢俊二郎君    理事 塚原 俊平君 理事 岩垂寿喜男君    理事 上原 康助君 理事 新井 彬之君    理事 中路 雅弘君 理事 吉田 之久君       上草 義輝君    大城 眞順君       亀井 静香君    狩野 明男君       近藤 元次君    三枝 三郎君       玉沢徳一郎君    船田  元君       森  美秀君    山下 徳夫君       伊賀 定盛君    石橋 政嗣君       上田 卓三君    木原  実君       市川 雄一君    鈴切 康雄君       山田 英介君    瀬長亀次郎君       辻  第一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         内閣総理大臣官         房広報室長兼内         閣官房内閣広報         室長      小野佐千夫君         総理府人事局長 亀谷 禮次君         行政管理庁長官         官房審議官   中  庄二君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         防衛施設庁労務         部長      伊藤 参午君         外務政務次官  松本 十郎君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房領         事移住部長   塚本 政雄君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         海上保安庁次長 沼越 達也君  委員外出席者         防衛施設庁総務         部施設調査官  岩見 秀男君         科学技術庁原子         力安全局放射能         監理室長    穗波  穰君         外務大臣官房総         務課長     中平  立君         外務大臣官房人         事課長     藤井 宏昭君         大蔵省主計局主         計官      畠山  蕃君         文部省体育局ス         ポーツ課長   戸村 敏雄君         農林水産大臣官         房企画室長   鴻巣 健治君         食糧庁業務部長 秋川喜司雄君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ————————————— 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     船田  元君   河本 敏夫君     山下 徳夫君   住  栄作君     近藤 元次君   田澤 吉郎君     狩野 明男君   田名部匡省君     亀井 静香君   田中 六助君     玉沢徳一郎君 同日  辞任         補欠選任   狩野 明男君     田澤 吉郎君   亀井 静香君     田名部匡省君   近藤 元次君     住  栄作君   玉沢徳一郎君     田中 六助君   船田  元君     麻生 太郎君   山下 徳夫君     河本 敏夫君     ————————————— 三月二十五日  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一三号)  行政管理庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五七号)  行政管理庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五六号)  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一七号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案及び行政管理庁設置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  順次趣旨説明を求めます。小渕総理府総務長官。     —————————————  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ただいま議題となりました国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  去る二月二十七日、人事院から、国家公務員法第二十三条の規定に基づき、国会及び内閣に対して国家公務員災害補償法の一部を改正すべき旨の意見申し出がありました。この法律案は、この人事院からの申し出に基づき、国家公務員災害補償法改正し、一般職国家公務員の処遇の改善を図ろうとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  今回の改正は、すでに今国会提出されております労働者災害補償保険法改正法案にあります給付改善に対応するものでありまして、  その第一は、遺族補償年金の額の改善であります。遺族補償年金給付水準は、すでにILOの条約及び勧告に示された水準を達成しているところでありますが、遺族人数区分に応ずる支給率につきましては、災害補償損害賠償的側面から見てなおその改善を図る必要がありますので、遺族が一人の場合を中心にその改善を図り、全体として支給率を平均六・一%引き上げようとするものであります。  第二は、身体障害に対する評価改善であります。これは、頭部外傷脊髄損傷等により神経系統機能または精神に著しい障害を残し、またはけい肺等により胸腹部臓器機能に著しい障害を残している場合の障害評価について、現在は、常に介護を要する程度の重度の障害を第一級とし、それに次いで重い障害として、終身労務に服することができない程度障害を第三級として評価しているところでありますが、随時介護を要する程度障害を新たに第二級として評価することとし、身体障害評価改善を行おうとするものであります。  第三は、障害補償年金差額一時金の支給に関する制度創設であります。これは、障害補償年金受給権者がその支給開始後早期に死亡した場合、その間の年金受給額が軽度の障害者に対して支給される障害補償一時金の額にも達しない場合もあり得ること及び障害補償年金前払い一時金の支給に関する制度創設との均衡上の必要等を考慮して、すでに支給された障害補償年金等合計額労働基準法上の障害補償に相当する額に満たないときは、その差額障害補償年金差額一時金として遺族支給しようとするものであります。  第四は、障害補償年金前払い一時金の支給に関する制度創設であります。これは、障害補償年金受給権者社会復帰の促進に資するため、その申し出により、労働基準法上の障害補償に相当する額を限度として人事院規則で定める額を障害補償年金前払い丁時金として支給しようとするものであります。  第五は、小口資金貸し付けを受けるための措置であります。これは、年金たる補償受給権者が一時的に必要とする資金の需要に応ずるため、年金たる補償を担保として国民金融公庫または沖繩振興開発金融公庫から小口資金貸し付けが受けられるようにするものであります。  以上のほか、現在実施されている遺族補償年金に係る一時金に関する規定を整備するとともに、年金たる補償支給事務簡素化を図るための措置を講ずることとしております。  なお、以上の改正は、労働者災害補償保険法改正法の施行時期に合わせて、第一の遺族補償年金の額の改善、第二の身体障害評価改善については昭和五十五年十一月一日から実施し、第三の障害補償年金差額一時金の支給に関する制度、第四の障害補償年金前払い一時金の支給に関する制度創設、第五の小口資金貸し付けを受けるための措置については昭和五十六年十一月一日から実施することとしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 木野晴夫

  5. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま議題となりました行政管理庁設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  昨今の内外の厳しい諸情勢の中にありまして、行政簡素効率化及び行政公正確保についての国民的要請が、非常な高まりを見せております。  国の行政機関業務実施状況監察し必要な勧告を行うことをその任務一つとしております行政管理庁としましては、国の業務と密接なかかわりを持ついわゆる特殊法人につきましてもその業務を調査する必要があります。しかし、現在、監察調査対象となっている特殊法人は、公社、公庫、公団及び事業団に限られており、その他の特殊法人は、調査対象法人となっておりません。  したがいまして、行政の一層の合理化能率化を図るため、監察調査対象法人の範囲をすべての特殊法人にまで拡大する等所要の改正を行うものであります。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  6. 木野晴夫

    木野委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  7. 木野晴夫

    木野委員長 次に、在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  8. 上原康助

    上原委員 最初に、法案関係でちょっとお尋ねをしたいと思います。  今回提案をされております在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案ですが、この法律によって新たに設置をされる日本大使館その他の在外公館にかかわる人員はどのようになっているのか、そういう面をちょっと御説明をいただきたいと思います。
  9. 中平立

    中平説明員 お答えいたします。  この法案によって新たに設置いたしたいと思っておりますブラジルにおきますクリチバ総領事館は、定員四名でございます。あと兼館といたしまして三つの大使館を設立いたしますが、これについては定員はございません。
  10. 上原康助

    上原委員 定員がないというのは、それはどういう意味ですか。
  11. 中平立

    中平説明員 兼館でございますので、親公館大使及び館員が随時出張するわけでございます。
  12. 上原康助

    上原委員 しかし、ちょっといまの御答弁おかしいですね。大使館設置でしょう。兼館であっても大使館設置となると、出張でいいわけですか。
  13. 中平立

    中平説明員 実館として置くわけではございませんので、親公館大使及びその館員が出張する体制に従来からなっておるわけでございます。
  14. 上原康助

    上原委員 それはどこから兼館へ出張するのですか。
  15. 中平立

    中平説明員 これは、セントビンセントにつきましては親公館トリニダード・トバゴ大使館でございます。セントルシアにつきましても親公館トリニダード・トバゴでございます。それからキリバス大使館につきましてはフィジー大使館でございます。
  16. 上原康助

    上原委員 いろいろ国情によって、あるいは地域によってそういう兼務なり、また、なかなか独立した大使館が置けないという事情もあるかと思うのですが、しかし、少なくとも大使館設置をするという法律案なんですね。そういうことで、総領事館、領事館というならともかくとして、もう少し検討の余地がないのかどうか、その点を指摘をしておきたいと思います。  それで、これまでもしばしばこの在外公館の問題については本委員会で取り上げられてきたわけですが、特に、国際的といいますか、紛争が不幸にして起きている地域在外公館のセキュリティー問題あるいはその国、地域駐在をしている邦人安全確保問題等は、これまでもたびたび議論もされてきたことですが、目下アフガニスタンあるいはイランパキスタン等在外公館職員安全性、加えて邦人安全性についてはどうなっているのか、そこらのところを少し御説明をいただきたいと思います。
  17. 塚本政雄

    塚本政府委員 お答え申し上げます。  わが方の大使館公館員を含めまして在留邦人保護及び安全確保は、わが方の大使館総領事館在外公館を挙げて重要任務一つであることは申すまでもないことでございまして、わけてイラン、アフガンあるいはパキスタンのごとき情勢不安の地におきましては、在外公館といたしましてはっとに在留邦人の実態の把握を十分にきわめておりまして、これの連絡網を整備したり、あるいは緊急の場合における避難経路を策定する等、その安全確保に十全なる準備をしているわけでございます。  特に、イランにつきましては御案内のとおりの情勢変化を踏まえまして、旧臘十二月二十七日に一応在留邦人引き揚げ勧奨を行いました。引き続き事態進展に伴いまして一月十六日、さらに強い勧奨を行いました結果、昨秋ピーク時には三千数百名の在留邦人がおりましたイランにおきましては、主として婦女子及び不要不急者帰国に伴いまして、現段階では八百七十一名、同様な意味合いにおきましてアフガニスタンにつきましては、二月の二十八日に引き揚げ勧告を行いました結果、これはイランとは事態が違いまして、十九名程度在留邦人しかおりません。  パキスタンにつきましては格別なる措置はとっておりませんけれども、現在までのところ三百七十一名の在留邦人がおりまして、これら三公館地域とも事態進展にもかかわらず、幸いにして在留邦人側に対する不慮の事故等も報告に接しておりません。したがいまして、全員無事であるということを御報告申し上げます。
  18. 上原康助

    上原委員 在外公館職員はもとよりですが、そういう情勢不安といいますか紛争地域駐在をしている邦人安全確保の問題については、なお特段の御配慮を払うべきかと思います。  そこで加えて、現在アフガニスタン大使館といいますか在外公館機能は停止をしているわけですね。どうなっているわけですか。そのあたりはたしか大使も帰還をしたのじゃないかと思うのです。そういう意味で後ほど少しお尋ねしたいと思うのですが、アフガニスタン情勢関係もあるのですが、今後どのように在外公館機能回復あるいはいろんな情勢把握政府としてはやっていかれようとするのか、そこら辺についてちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  19. 藤井宏昭

    藤井説明員 アフガニスタン大使館につきまして現状を御報告申し上げます。  前田大使は先般帰国いたしまして現在東京におります。残っておりますのが現在館員一等書記官をヘッドにいたしました五名、それから夫人が四名、計館員及び夫人九名が残留しております。  今後の見通しにつきましては、アフガニスタン情勢等を十分把握した上でどういうふうに館の構成等を考えていくかということを十分注意しておるところでございます。なお、館員状況につきましては、現在物資等は一応不足なく、ぜいたくはできませんけれども入手できるという状況でございますし、安全につきましても十分注意はしておりますけれども、当面のところ、それほどの危険はないということでございます。
  20. 上原康助

    上原委員 まだ一等書記官以下五名の方々がおられる、同時に家族も若干残っていらっしゃる、計九人ですか。その他の邦人はもう向こうにはいないわけですね。
  21. 塚本政雄

    塚本政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げました十九名の在留邦人中、館員婦女子を含めましてたしか九名、残りの十名は現地人と結婚した商社員あるいは留学生で、もうそこに根づいたといいますか、そういうような方であります。
  22. 上原康助

    上原委員 次に、これとの関係もあるのですが、たびたび附帯決議等でも強調されてきた、指摘されてきたのですが、海外子女教育問題、私も一昨年でしたか一昨々年でしたか、ちょっと海外日本人学校の視察もやった経験があるのです。御父兄方々は非常に教育問題で悩んでいらっしゃる。同時に、中学、高校あるいは大学という高等課程になると、なかなか現地での教育環境というものが十分に期待できない。期待できないというよりも、日本本国に帰ってそういった課程を受けた方がいいという本人もしくは親御さんの希望が強いというようなこともあって、その受け入れ体制については文部省外務省がより緊密な連携を保って推進をすべきだという強い要望を受けて、われわれもそれにこたえていかなければいかぬということで若干の努力も続けてきたつもりなんですが、そこいらの改善策については今日どうなっているのか。現状とこれから外務省としてどのように御努力をしていかれようとするのか、その点についても少し御見解を承っておきたいと思います。
  23. 塚本政雄

    塚本政府委員 お答えいたします。  子女教育に対する施策、これはまた別の意味における、在外邦人の広い意味における保護といいますか援護といいますか、それの非常に重要なわが方在外公館施策一つでございます。したがいまして、予算要求重点事項一つといたしまして、幸いにして五十四年度四十六億、五十五年度においては五十三億の予算の御配慮を得ているわけでございまして、これによりまして全日制の日本人学校を全世界的に、主としてこれは開発途上国に多いわけでございますが、これが六十二校、それからこれを補充する意味合いにおいて、土曜学校と申しておりますけれども、国語とか算数を重点的に教授しております補習授業校が七十校、教員は本年九十五名の増員を認められまして合計七百四十四名という多数の教員在外に派遣されております。来年度におきましては、台中の学校を含めまして五校の全日制学校の増設が認められた、こういうような画期的な施策が行われている次第でございます。ただいま御指摘高学年につきましては、全日制につきまして中学校はほとんど併置されてございます。それから補習校につきましては、同じく小中学部が併設されておりますほかに、特にその一部、ワシントン、ニューヨーク、ロンドン等におきましては高学年高校授業も行っております。これは補習校でございます。  しかしながら、全日制の高校の併設は確かにニーズはあるわけでございますけれども、いまだ全体的な意見に至っておりませんし、私どもが承知している限りにおいては、父兄の方はむしろ中等部まで現地で修めまして、高学年は、高校日本でという形が多いものでございますから、これらを踏まえまして、先ほど御指摘のとおり帰国子女受け入れ帰国子女教育機会その他を十分に与えられるよう、これは主として文部当局の国内の施策ではございますけれども、外務省といたしましても、先ほど申し上げました在外子弟教育帰国後のフォローアップでございますから、十分その辺の連携を踏まえまして、文部省当局と一緒に御協力しつつ、この辺への充実を図ってまいりたい、かように考えているわけでございます。
  24. 上原康助

    上原委員 逐次改善の方向に向かいつつあるようでございますが、さらにその点については御努力をいただきたいと思いますし、同時に、われわれもこの在外公館設置あるいは在外公館勤務する外務省職員給与、あるいはその他の住宅を含めての条件改善には今日までできるだけ協力をしてきたつもりです。また、海外勤務をなさる大使館職員がそれなりの努力もしておられるし、いろいろ相手国との親善友好その他邦人の便宜を図るという面でも相当御苦労もあるということもわかるわけですが、同時に指摘をしておきたいことは、外交官の持つ特権というか、あるいはその地位ということに甘んじてはいけないと思うのですね。えりを正すべきところは正して、十分これからもそういうことをやっていただきたい。このことも含めてつけ加えておきたいと思います。  そこで、きょうは盛りだくさんのお尋ねがありますので次に移りますが、最初に、米原子力潜水艦のわが国への寄港問題についてお尋ねをさせていただきたいと思うのです。  最近といいますか、この一年でもよろしいし、あるいは一九七八年以降でもいいし、七五年以降でもいいですが、どのくらいの原潜あるいは原子力関係米艦が入ったのか、まずその記録からお答えください。
  25. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 ただいまお尋ねの件につきまして、実は私ちょっと本土への入港の回数の資料をここに、手元に持ってまいりませんので、後刻調べた上お答えいたしますけれども、沖繩に限りまして申し上げますと、昭和五十一年九月二日、それから五十二年四月、五十四年十月、本年になりまして、五十五年の三月が原子力潜水艦でございます。それから原子力水上艦巡洋艦でございますけれども、これが本年の三月十六日及び三月二十一日の二回でございます。
  26. 上原康助

    上原委員 本土への記録はないのですか。本土へは最近、今年になって——今年はまだ三月ですが、去年どのくらい入ったかわからぬですか。
  27. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 五十四年について申し上げますと、横須賀に入ってきました、これは潜水艦でございますけれども、横須賀が六回でございます。さらに水上艦艇の方は五十四年が横須賀に二回でございます。
  28. 上原康助

    上原委員 いまのは五十四年ですか、五十二年ですか。時間がありますから、私が調べたものでは五十三年は沖繩県ホワイトビーチはゼロですね。横須賀が六回。佐世保はゼロ。いまの数字は五十四年ですか、五十四年はどうなっているのですか。五十五年はどうなっているの。
  29. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 ただいま申し上げました横須賀数字はいずれも五十四年でございます。さらに五十三年につきましては、横須賀について水上艦艇が二回でございます。
  30. 上原康助

    上原委員 五十三年は沖繩はなかったわけですね。
  31. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 五十三年につきましては沖繩はゼロでございます。
  32. 上原康助

    上原委員 五十四年はたしか一回ですね。
  33. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 五十四年はホワイトビーチが一回でございます。
  34. 上原康助

    上原委員 そこで、五十三年はゼロ、五十四年はピンタド、これがたしか十月二日に入港しておりますよね。こういうふうに、過去の記録を見てもおわかりのように原潜もしくは原子力艦、軍艦というか原子力巡洋艦、そういうのが入港していなかった。しかし、今年に入ってからなぜ急に頻繁に来たかということです。御承知のように五十五年の三月九日にアスプロ、アスパラじゃなくてアスプロが入港している。これは原潜ですね。五十五年の三月十六日にはこの原潜アスプロと問題のロングビーチが入港している。さらに三月二十一日にまたロングビーチuターンをして再入港している。このロングビーチ本土にはいつ、どのくらい寄港しているのですか。
  35. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 ロングビーチの本邦入港はいずれも横須賀でございますけれども、合計いたしまして三回でございます。
  36. 上原康助

    上原委員 いつごろですか。
  37. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 四十八年、五十年にかけてでございます。
  38. 上原康助

    上原委員 四十八年、五十年、これは恐らく昭和でしょうね。そうしますと足かけ六、七年前。その間本土にも全然入っていなかった。今度立て続けに沖繩の勝連村のホワイトビーチに入港した理由は何かあるのですか。どういうふうに外務省はこれらを見ているのですか。
  39. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 今回のロングビーチの入港は、いずれも乗組員の休養並びに補給維持でございます。  それから、先ほどロングビーチについては先生御指摘のとおり四十八年と五十年でございますけれども、同じ原子力推進機関の巡洋艦でございますベーンブリッジについては五十三年及び五十四年について四回、本土に入港しております。
  40. 上原康助

    上原委員 乗組員の休養もしくは補給ということになると、休養というのは休むということですよね。どのくらい最初は滞在したのですか、ホワイトビーチに。
  41. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 三月十六日に入港いたしまして、十七日に出港、第一回。第二回が二十一日に入港して、その日にこのときは出港しております。
  42. 上原康助

    上原委員 二回目はその日に出港しているのですか。
  43. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 失礼いたしました。二十一日に入港して二十二日の出港でございます。
  44. 上原康助

    上原委員 だからたったの一日でしょう。一日が休養になりますかね。まあ一日も休養と言えば、日曜日は一日しかないと言われたらそれは返事になりませんがね。  問題は、どうしてこう立て続けに入ってきたかということと、このロングビーチの性能あるいは巡洋艦としての装備をしている兵器その他はどういうふうに理解をしておられるのですか。
  45. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 巡洋艦でございますので、主として対潜機能その他水上艦艇として持っているミサイルあるいはその他の武器というふうに理解しております。
  46. 上原康助

    上原委員 これは一説には核装備をしている、そういう見方もありますし、また、当然原子力巡洋艦ということになりますと少なくとも核、非核の装備を持っているということは、これは常識ですね。
  47. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 核装備可能であるのと実際に装備しているというのは別でございますけれども、装備可能というふうに見られることは一般的でございます。
  48. 上原康助

    上原委員 そうであればよけい問題だということ。  そこで、いま佐世保にはほとんど原潜その他の原子力関係の艦艇は入っていない。横須賀は御承知のようにミッドウェー、第七艦隊の母港になって、時折入っている。いまわが国で原子力関係の艦船が入れるのは、もう指摘をするまでもなく沖繩県ホワイトビーチそれから横須賀、佐世保ですね。  今回のこのロングビーチ、いま若干バックグラウンドを指摘をしたわけですが、明らかに異常と見られる放射能の検出がなされたということが問題になっているわけですね。この件については北米局長にもせんだってお会いをして強く抗議もし、またしかるべき善後策を講ぜよということも申し入れたのですが、科学技術庁も来ていると思うのでお尋ねするのですが、現在のこの放射能の検出をする体制といいますか、陣容その他含めてどうなっているのか、これが一つ。  同時に、今回の場合に皆さんは、二十一日の再入港そして二十二日の再出港に当たって異常値と見られる放射能の検出がなされたということを二転、三転してようやく明らかにしたわけなのですが、今回のこの異常値と見られる放射能の検出についてはどのように見ているのか、これが二点目。  そして外務省を通してアメリカ側に照会を求めたということなのですが、なぜアメリカ側に照会を求めたのか。照会を求めた結果は、米側からどういう反応があったのか。この三点について明確に答えてください。
  49. 穗波穰

    穗波説明員 お答えいたします。  まず原子力船の入港に伴う監視体制でございますが、私ども科学技術庁及び関係省庁並びに地方公共団体等としましては、原子力軍艦の寄港に関します放射能調査は、昭和四十三年に定めました「原子力軍艦放射能調査指針大綱」に基づき、関係行政機関、地方公共団体との緊密な連絡のもとに空中及び海中の放射能レベルの常時監視をやっております。そのほかに、また海水あるいは海底土を定期的にサンプルいたしまして分析を行い、入港時には海上保安庁のモニタリングボートによる計測を行うなど、十分な監視体制をしいております。最近の沖繩の軍艦のたびたびの入港に際しましても、沖繩県、海上保安庁と協力いたしまして、調査班を大綱に基づき編成いたしまして監視体制をとっておるところでございます。そして原子力軍艦寄港地周辺の住民の安全を確保することを大前提として万全の対策を講じておる次第でございます。  次に御質問の、十七日及び二十一日に測定されました放射能のレベルについてお答えいたします。  この三月、二度にわたりまして米原子力巡洋艦ロングビーチが入りました際に、われわれがとっている放射能監視体制のうちの一つのモニタリングポストに、海水中の放射能を常時測定しているポストがございます。このポストの測定値が増加したのは事実でございます。ただ、私どもとしましては、測定値が増加しました後、付近の海水あるいは海底土を採取しましてさらに精密な核種分析を行いましたが、通常軽水型発電炉等で一次冷却水が出たという場合に検出されるべきコバルト60、マンガン54等の核種が検出されませんでした。したがいまして、私どもとしましては、二度にわたり入港した際にモニタリングポストの値に少し増加を認めておりますので、ロングビーチそのものに何か原因があるという考えは持っておりますけれども、一応この核種分析の結果からは異常値が検出されなかったということをもちまして、一次冷却水が放出されたとは断定しかねている次第でございます。  そういうことに基づきまして、念のためにこれらの事実を外務省を通じまして米軍に照会しているところでございます。また、現地におきましてさらに大容量の海水あるいは海底土を取りまして、目下千葉にございます日本分析センターで分析中でございます。これらの結果及び米側からの返答を待ちまして、さらに専門家の意見も徴しまして私どもとしては対処してまいりたいと思っている次第でございます。  なお人員の件でございますが、今回の沖繩の放射能監視体制を例にとりますと、沖繩県側から二名ないし三名、私ども科学技術庁が東京から派遣しました調査班が五名、その他海上保安庁のモニタリングボートに乗っていただきまして測定していただく方々あるいは乗組員の方々が約四名ぐらいと伺っております。  以上でございます。
  50. 上原康助

    上原委員 いまの御答弁もこれまでの域は出ておりませんが、海底土は採取してあるわけですね。それと港湾内の海産生物の採取はどうなっているのですか。同時に、核種分析の結果は異常値は認められない、しかし念のため海水の分析を日本分析センターに目下させている、あるいはまたアメリカに照会中である。米側の反応は一体どうなんですか。
  51. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 外務省より在京米大使館に対して二十二日にただいま科学技術庁から御説明のありました点について照会中でございまして、ただいま現在、まだアメリカ側から回答は来ておりません。
  52. 上原康助

    上原委員 どういう照会をしたのですか。どういう申し入れを外務省はなさったのですか。
  53. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 先ほども科学技術庁から御説明ございましたように、今回のロングビーチホワイトビーチ寄港の際に、平常値に比べて三ないし四カウントの高い数値の放射能が一時的に測定されているけれども、その点についてアメリカ側としてもなぜそういうことになったのか調査してほしいということでございます。
  54. 上原康助

    上原委員 さっきの海産生物の採取はどうなっているかということと、それから海水だけの採取なのか、海底土もやっているのか、あるいはモニタリングポイントというか採取をしている個所は何カ所あるのか、そういう面ももう少し具体的に言ってください。
  55. 穗波穰

    穗波説明員 お答えいたします。  ただいま私が海水及び海底土を日本分析センターにおいて分析中であると申し上げましたのは、これは軍艦寄港時の通常調査でございます。必ず軍艦が出港しました際に、その停泊地付近の五ポイントの海水、海底土を取りまして分析することになっております。  なお御質問のその他海産生物等のサンプリングあるいは分析でございますが、これは入出港時あるいは寄港時というときには通常行いませんで、年に四回定期的に海水、海底土に加えまして海産生物を採取いたしまして分析を行っております。その海産生物としましては、魚類、ナマコ、貝類、海草類、こういったものを採取して分析しております。沖繩ホワイトビーチ関係しましては東海区の水産研究所が試料を採取しまして、同一試料を分割いたしまして、東海区の水産研究所及び先ほど申し上げました日本分析センターにおいてそれぞれ測定しております。海底土につきましては、これは定期的な四半期ごとの分析でございますが、海上保安庁が試料を採取、乾燥、粉砕したものを同じように二分割いたしまして、海上保安庁で分析を行い、また日本分析センターでも測定をしております。海水につきましては同様でございまして、海上保安庁が採取しました試料を二分割いたしまして、海上保安庁及び日本分析センターにおいて測定をしております。  以上でございます。
  56. 上原康助

    上原委員 さっきあなたがおっしゃっておった「原子力軍艦放射能調査指針大綱」私の手元にあるのは五十二年七月二十日に科学技術庁原子力安全局から出た大綱ですが、これにもありますよ。非寄港時の調査、通常調査、定期調査、いろいろ書いてある。そして寄港時の調査もやるようになっている。しかし、これを見ますと、「異常値が観測された場合は、直ちに報告する。」ということになっているのですね。「報告と発表」というところにある。だから、今回の場合も、何らかの異常値が認められたからこそあなた方は現地から直ちに本庁にも報告をし、外務省にも報告をなさったのじゃないですか。同時に、幾らからが異常なのかということも大変疑問なんです。  これはミスプリントかもしれませんが、この大綱の五ページによりますと、第一段階は平常値の三から五十倍。三十から五十倍ということなのか。三から五十というと、今回の場合は四ないし五CPS、異常値といいますか、平常よりも高い数値が出たことは間違いないのですね。異常な範囲に入っているが、異常と言うといろいろややこしいから皆さん隠しているのじゃないか、そういう疑いがいま持たれているわけです。あなた方は前歴もあるのですよ。そういうものを捏造したということで国会で大問題になった。  さらに、時間の都合もありますから私の方から少し申し上げますが、昭和四十三年でしたか、例の佐世保に入ったソードフィッシュ号のときには今回よりもはるかに高い異常値が検出をされて大きな問題になったのですが、あのときにアメリカは何と言ったか。ソードフィッシュ号から排出をされた放射能であるということを言いましたか、言わなかったでしょう。この調査報告を見ても、一切そういう原因はわからなかったと不明にしたままなんだ。  そういう面から考えても、今回のロングビーチの二回の寄港に伴って、しかも十七日の第一回目にこれは検出されている。そのときは何とも発表していない。二十二日になって大騒ぎをしている。そういう経過から見て、明らかに何らかの異常があったというふうにしか判断できない、四囲の状況からして。その点に対して、外務省も科学技術庁も明確に、信頼性のある、納得のできる発表をしてもらえるのかどうか。ここがいま問題になっていることを皆さんは念頭に置いてこの問題に対処していただかないと、現地ではこれはただごとではないですよ。その点どうなんですか、明確にしてください。
  57. 穗波穰

    穗波説明員 お答えいたします。  ロングビーチが二度にわたりまして入りました際、通常の測定している値が増加したのは事実でございます。十七日の時点におきましては、出港の朝七時ごろに値が上昇いたしました。しかしながら、直ちにその値がおさまったと申しますか、普通の値に下がってしまったということは事実でございます。それから直ちに海水を採取いたしまして、これは出港時調査としての海水調査でございますが、分析した結果からは異常な値が出なかった、こういう事実があるわけでございます。  なお、平常値と申しましても、モニタリングポストによりましてカウント数が違うのでございますけれども、このモニタリングポストにおきまして私どもが平常値と言っておますのは、過去の気象条件等の変動も見込みまして、九から十八カウント・パー・セックという値をとっております。今回の、たとえば十七日に最高値を示しました十三カウント・パー・セックという値はこの中に入っているとわれわれは認識していた次第でございます。ただ、それでよしとしていたわけではございません。  この値を隠していたかどうかという点でございますが、私どもは、原子力軍艦が入りました際、入港前調査、入港時調査、入港中の調査、出港後の調査というふうに、放射能測定値につきましては現地及び東京におきまして毎日、新聞に対して発表している次第でございます。ロングビーチの三月十七日出港時のデータにつきましても、ちょっと上がりました値を含めまして公表している次第でございまして、決してデータを隠していたとかそういう事実はございません。
  58. 上原康助

    上原委員 いまの御答弁でも、九から十八というのは異常値の範囲にある、しかも今回もその範囲にあった。これはまさにそのとおりなんです。疑問があったからそういう措置をとったわけでしょう。  そこで、外務大臣、なぜこういう結果になっているかということに少し注目をすべきだと思うのです。いまはもう野放しなんですよ。二十四時間前に通報があったかどうかも疑問ですね。これも守られているかどうか疑問です。ちゃんと取り決めでもそうなっているはずなのだが、どうも遵守されていないと私は見ている。これはラロック証言を持ち出すまでもなく、常識的に考えても明らかに核装備されている。海のどこかで核装備されているものを外して日本の港に入る、そんなばかげたことをだれがやりますか。そういう子供じみた論議をするから、防衛論議も本当におかしくなるのだよ。明らかに核装備もされている、放射能も排出している、こういう危険な怪物をわがまま勝手に入港させているところに問題があるのです。世界各国、こんな自由に出入りできるところはないですよ、自国以外は。したがって、せんだっても申し入れたのですが、われわれはこの種の軍艦の寄港に対しては断じて容認できない。少なくとも政府の立場では、いまのような疑問に答えるまでは、ロングビーチないし原潜ホワイトビーチに入るあるいは日本横須賀ないし佐世保に入ることに対しては、見合わせてもらいたいという外交ルートを通してのアメリカ側への要請をやってしかるべきなんです。どうお考えですか。これをおやりにならないと困りますよ。
  59. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この通知は、今回も二十四時間前に外務省の方は受けております。それから検査の結果は、科学技術庁の方の説明にもありますように、異常値には達しておらないということでございますので、この件につきましては特別に問題はないと思います。全般的な日米安保体制、これは日本国民の安全を守るという意味が重要でございまして、そういう意味での従来からの協力もあるわけでございまして、今回はいま申しましたように特別の問題はないと考えております。
  60. 上原康助

    上原委員 あなた、そんな御答弁じゃ納得しません。後でまたいろいろ問題が出てきますがね。国民の安全を守ると言うが、沖繩県民は国民じゃないのですか。大を生かすには小を殺すというような発言はもってのほかですよ。それだけじゃないんだ。現に不安にさらされているのです。何が安全ですか。  では、科学技術庁、はっきり言い切れますか。今回の放射能の十ないし十五CPSというのは、人体なりそういったものに全然影響ない、安全であると言い切れますか。あなたがそのくらいの放射能が検出されたところでスイミングをしようが、そこの魚をどんどん食おうが何をしようがいい。裸になってそこで生活できる、そう断言できますか。そういう疑問が持たれているわけでしょう。だから、それは安全じゃないのだよ。国民の安全とはひとしく平等のものであるべきなのですよ。あなた、そんないいかげんな答弁じゃだめだ。
  61. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私が安全と申しましたのは、もし日本にどこかの国から軍事攻撃があった場合に日米共同して日本の安全、国民の安全を守るという意味の安全で申しましたので、いま御質問の趣旨で申し上げたわけではございません。従来、横須賀及び佐世保にも入っておるわけでございまして、その点、特に沖繩だけの問題として申し上げたつもりでもございません。
  62. 穗波穰

    穗波説明員 お答えいたします。  私どもは、先ほどいわゆる平常値が気象条件等の変動によりまして九から十八カウント・パー・セックの間にあると申し上げました。たとえば雨が降った場合に、空気中のラドン、トロン系統の核種を雨で洗い落としまして、その結果海水中の放射能が高まるわけでございます。そういった意味からいきましても、今回の十三カウント・パー・セックあるいは十四カウント・パー・セックという値は異常値とは私どもは認めておりません。  ただ、私どもがある種のアクションをとりましたのは、十七日に一遍検出され、二十一日にまた検出された、これは同じ軍艦が入港した際である、こういった値の増加というものを無視してこれからやっていくのはよくないのではないかという観点から、外務省の方に米軍に照会していただくようにアクションをとった次第でございます。
  63. 上原康助

    上原委員 あなた、気象条件とか、そんなむずかしい科学者みたいなことをぼくは聞いているのじゃないのだよ。気象条件で変わったのじゃないわけでしょう。常識的に考えても、明らかにロングビーチの入港と因果関係があるわけでしょう。そうであるならば、それは安全でないわけですよ。それに対して外務省はアメリカ側に注意の喚起もしない、いままでのようにいいと言うわけですか。アメリカ側も何らかのアクションをとるべきでしょう。これだけ国会でも問題になっていることに対して明確に返答すべきなのですよ、外務省も、アメリカ側も。それさえもやらない外務省、さっきの外務省設置法もだめだ。冗談じゃない。一体どういうふうにこの疑問に答えるのかを答えなさい。
  64. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 お答えいたします。  先ほど申しましたように、科学技術庁の方から、今回こういう事態が起きた、しかし、出てきたカウントは許容される範囲内ではある、ただ念のためにアメリカ側の見解も調べてほしいということで、私たちとしては早速アメリカ側に調査を依頼した次第でございます。現在アメリカ側の調査を待っているというところで、調査の結果を待たないで、今回出てきました放射能の三ないし四カウントの高さがロングビーチそれ自身と関係しているかどうかということを即断するのは、現在のところ早いと思いますし、その点については、昨日参議院の予算委員会政府側もそういう趣旨を答弁しているということを私は承知しております。
  65. 上原康助

    上原委員 時間の都合もありますから、これはこれ以上聞いてもいまの御答弁しか返ってこないと思うのだ。私がさっき引用したように、四十三年のソードフィッシュ号のあれだけの異常値を検出されても、そういう原因はなかったというふうに言い切ってしまったのだ。それでうやむやになった。そういう前例もあるし、決してアメリカ側ははっきりと因果関係があるというようなことを簡単に皆さんに言わないよ。そうであるならば、日本政府独自でそういう判断なり材料を求めるということが国民の疑惑に答えることなんですよ。それもやらないと言うなら、外務省とはそういうものかというふうにしか見られません。  それでは、少なくともいつごろまでにこれを回答しなさいと言うのですか。アメリカ側は独自でどういう調査をやろうとしているのですか。実際やっているのですか。海水調査をやっているのか。これを明らかにするためのどういう調査をしているのですか。やっていないわけでしょう。異常でもないのに何をやるかとアメリカ側は言ったという話もありますよ。
  66. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 現在アメリカ側は調査中でございまして、やらないということは言っておりませんし、私たちとしては早期にその結果が出てくるということを期待して、また、私の感じとしてはそう遠くない時期にアメリカ側から回答があるというふうに信じております。
  67. 上原康助

    上原委員 その回答を見てまたこの件については続けたいと思うのですが、少なくとも、いま私が指摘をしたようなことについてはもう少し毅然たる態度で対処をしてもらいたいと思うのです。  海上保安庁が来ていると思うのですが、定期調査、その他の中城湾の皆さんの立場での調査、通常、定期、あるいはそういった非常の場合の体制はどうなっているのですか。せっかく来ていただいたので、今後の心構えも含めて簡単に答えていただきたい。
  68. 沼越達也

    ○沼越政府委員 先ほどお話が出ましたように、海上保安庁は「原子力軍艦放射能調査指針大綱」によりまして、定期調査、それから寄港前調査、寄港時調査、寄港後調査というものをやっております。大体平常における調査は、十日に一遍湾内を所定のポジションを回りまして測定を行っております。  今回に即して申し上げた方がよろしいかと思いますので申し上げますと、まず第一回目の状況は三月十五日八時三十分外務省から入港情報を受けました。それで、同日十時十三分から十三時四十一分までの間入港前調査として所定のコースを回りました。それから三月十六日、七時二十六分から十三時三分までの間入港時調査としてロングビーチ号の航跡を追尾いたしました。そして同艦の停泊海域周辺及び所定コースによる港内調査を実施しました。それから三月十七日の七時四十分から十時四十二分までの間、出港時調査としてロングビーチ号の航跡追尾調査及び所定コースによる港内調査を実施しました。そして三月十八日八時五十七分から十時三十八分までの間、出港後調査としてロングビーチ号停泊場所の海底土を採取いたしました。なお、これに備えるわが方の体制といたしましては、中城保安署に「かつれん」という放射能調査艇を置いておりまして、乗組員四名で当たっております。  以上でございます。
  69. 上原康助

    上原委員 さっきも申し上げましたように、これは一応次の機会まで留保せざるを得ませんが、少なくとも早急に米側の回答を明らかにするように御努力をいただきたいと思います。  次に移りますが、昨日来外相の訪米との関連でいろいろお尋ねがあったわけですが、私も、ちょっと重複するところもあるかと思うのですが、できるだけ角度を変えてお尋ねさせていただきたいと思うのです。  まず、最近の国際情勢に対する外相の御見解を最初に聞いてみたいのですが、どうもアフガン問題、あるいは北方領土の一部を除く諸島に対してソ連軍の基地化あるいは増強があったというようなこと、またソ連の総合戦力の増大といいますか増強というようなことも、実態もそうでしょうが、ある面では必要以上に誇大広告されている節もあろうかと思うのですね。そういう面で、特に昨年、一昨年の夏以降といいますか、防衛力の増強ということが大合唱になってきているわけですが、こういう激動といいますか大変緊張が激化をしている状況の中で、日本の外交のかじ取りの方向というものはどうあらねばならないかという一つの針路なり指針があっていいと私は思うのですね。  アメリカはその都度、大統領もニクソン・ドクトリンから始まっていろいろドクトリンを出しているわけですが、最近になってカーター・ドクトリンというものが出てきた。これもいろいろ分析をしてみなければいけない面があると思うのですが、いま私が申し上げたような国際情勢、特に一時的にあったデタントの環境じゃなくして、再び軍拡競争に突入をした八〇年代の初頭に当たって、日本の外交方針というもの、平和憲法を踏まえてやっていくというならば、おのずとその方向性というものは、いろいろイデオロギーとか政治的な立場の違いはあるにしても、国民的に許容される面、理解される面あるいは納得される、説得性のあるものがあってしかるべきだと思うのですね。しかし、残念ながらこれまでの歴代の自民党政府の外交姿勢にはそういうものがなかったと言わざるを得ません。  そういう面で、あなたは大平内閣の一番の目玉だと言われて、同時に生臭くない、議員集団でない方から、民間人として起用されたという面もあって、ユニークな存在だという評価もあるわけですが、そういう点を含めて考えるならば、いま私が申し上げたようなことに対して、何か目新しい外交姿勢というものがあっていいのじゃないかという感じがしたのですが、どうも今回の訪米の結果を見てもそういうことではなさそうなんですが、一体、どういうお考えで対処をしていかれようとするのか。せんだっての本会議での外交方針もないことはないのですが、改めて御所見を承ってみたいと思うのです。
  70. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 やはり一つの国の外交というのは、一つには継続性ということが重要な点だと存じますので、外務大臣がかわったからといって急に政策が大きく変わるというような性質のものではないと考えておりますけれども、私自身の考え方としましては、これは外交方針の中にも申したわけでございますけれども、内には、対内的といいますか日本の国民に対する外交の責任といたしましては生活と安全を守る、外といいますか対外的には、平和と建設の役割りを果たすというのが日本のとるべき外交のコースだろうと考えております。  つまり国際的な紛争につきましても、できるだけそれが平和的な手段によって解決されるように日本の影響力を行使するといいますか、そういう意味での役割り、あるいは開発途上国を含めて貧しい国々の経済発展に援助協力するという意味での建設的な役割り、つまり平和と建設というのが日本の外交の性格であり、使命でなければならないと思っております。  さらにつけ加えますれば、従来、どちらかといえば敗戦の状態から経済が次第に復興してまいったわけでございますが、外交の面でも受動的な場合が多かったわけでございます。しかし、アメリカの半分に近い経済力、GNPを持つようになりました今日、やはりいまのような平和と建設という面におきまして日本の外交が積極的な役割りを果たす、単なる受動的ではないという考え方でまいるべきだと思っております。
  71. 上原康助

    上原委員 ちょっと抽象論であれですが、ある程度わかるような気もします。  そこで、具体的にお尋ねをさせていただきたいと思います。  この八〇年代に入って米ソ間のデタント関係というものが大きく後退をした、どちらも全面戦争には持っていきたくない、デタントは維持していくんだということは、カーターさんもブレジネフさんも言っておられるので、それは結構なことなんですが、なぜこういう時代に相なったのか。その国際環境というもの、アメリカの背景、ソ連の背景というのをどう見ておられるのか。かつてケネディ大統領がアポロ計画で、アメリカは世界の憲兵にのし上がってきた、だからケネディ以降ジョンソンへとベトナム戦争に突入して、とうとうニクソン・ドクトリンを発表せざるを得ない、また同じ過ちを八〇年代初頭においてカーターさんはやるかもしらぬという懸念を私なりには持っている。なぜあれだけアメリカが軍備増強ということに出たのか、世界戦略を転換したのか、あるいはソ連の本当の軍事力の実態を日本はどういうふうに評価をして、どう認識をしておられるのか。ここいらのことに対してはぼかされたままに一方的加担をいま着々と強化をしているのが現実じゃないですか。私はそういうふうに見ているのだが、これに対してはどのように認識をして、どういうふうに米ソの東西関係評価をして、そういう中でわが国はどうすべきかというものの柱がないのじゃないですか。そこを私は大臣のお考えを聞きたいわけです。
  72. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの世界情勢の認識でございますが、七〇年代は大体においてデタントの方向に向かっておりまして、御承知のようにSALTIIの調印も行われ、批准がまだ行われなかったわけでございますが、ただ昨年の初めごろからソ連の軍事力のステディーな増強に対して、西側といいますかNATO側が立ちおくれてきたという評価がいろいろな形で出てまいりまして、そういうことのやさきと申しますか、昨年の暮れにソ連のアフガニスタン武力介入ということが行われる。  そういう背景のもとに、西側におきましては、ソ連あるいはワルシャワ条約諸国の軍事力の増強に対してかなりの程度立ちおくれた。アメリカ自身も軍事費の削減をやってまいりましたし、そういう認識から、ソ連ないしワルシャワ条約諸国の増強に対して対応する力をある程度持たなければいけないという考え方が最近米国あるいは西欧諸国において強まり、アメリカは年に実質四、五%の防衛支出の増大を行う、NATO諸国は実質三%程度の防衛支出の増大を行うというような決定に到達したと思うのでございます。  しかし、これは先ほど上原委員もおっしゃいましたように、米ソ両方とも基本的なデタントの線は崩さないということをそれぞれ大統領あるいは書記長が言っておるわけでございまして、もしもこの基本的なデタントの線を崩せばそれこそ人類の破滅という問題がございますから、この超大国の指導者それぞれ、その点についての責任は十分自覚しておると思うわけでございます。  それからもう一つは、ヨーロッパにおけるデタントは、しばしばアフガン事件後もソ連側からの発言もございますし、西ヨーロッパの指導者の発言もございますが、ヨーロッパにおけるデタントを崩すことは避けたいということでございます。  ただ、デタントの解釈が、ソ連の場合には主として欧州戦線の問題を頭に置いておるようでございまして、第三世界といいますか、その他の地域については必ずしも現状維持ではない、革命勢力の支援その他に場合によっては武力の行使ということも行われるというような含みがあったのではないかと見られるわけでございますが、西側としてはヨーロッパだけじゃない、世界全体としてのデタントが重要だという解釈のずれが、一つにはアフガニスタンのようなケースに出てまいったかと思うのでございます。  そういう意味では、米ソ間の緊張が次第にSALTII等を通じて緩和に向かっておったのがある程度逆戻りをした、しかし、冷戦に戻ったとはわれわれは見ていないわけでございます。第二の冷戦だという議論もございますけれども、私どもはそう見ておらない。特に第三世界におけるいまのようなソ連の武力による直接の軍事介入、いままではそういう例がなかったわけでございまして、初めてアフガニスタンについてございました。従来ソ連の他の国に対する武力介入としては、ハンガリーあるいはチェコスロバキアのケースがございますが、これはその当時世界的にも非常に大きな問題になりましたけれども、言ってみれば内輪の問題だというようなソ連側の主張がございまして、そのときはそれなりに一応おさまったわけでございますけれども、今回は第三世界、非同盟という国に対する直接の武力介入があったということで、そういう情勢で、ある程度の緊張の高まりが見られるわけでございます。  しかし日本としては、最初に申しました基本的な平和と建設という外交の大きな役割り、平和憲法という基本からいたしまして、そういう世界的な軍事紛争に巻き込まれるということはやるべきでない。ただ、ある意味では、備えあれば憂いなしと申しますか、日本に対する外からの武力攻撃が絶対にないのだということは、こういう最近の情勢から見まして必ずしも言い切れない点もあるということで、日本としては自分自身を守る力というものについてはある程度考慮すべきではないか。自分自身を守るということは、日本は従来最低限の自衛力と日米安保条約による抑止力、こういうものに依存してまいりましたし、もう一つは、アジアの諸国その他世界の国々との友好関係、経済協力、援助というようなものも含めて、他の国々との平和な関係を保つ、大体この三つの柱の上に日本国民の安全といいますかセキュリティーといいますか、これを維持していくということが日本の政策でございますし、これは現状においてもその基本は変わらないし、変えるべきではないというのが私の認識でございます。
  73. 上原康助

    上原委員 できるだけひとつ簡潔に御答弁いただきたいと思います。  あなたの思想性はある程度わかったのですが、平和と建設、確かに結構なことで、第二次冷戦でないのだということ、そういう見方もあるでしょうが、では日本はそのために何を努力しているかということを私はむしろ聞きたかったわけです。軍備拡大あるいは戦争というものはあなたが言うような平和と建設ではないのです、破壊と貧困なんですよ。われわれは、だからだめだと言っている、そういうあなたがいまおっしゃったような見解もありますが。そういう国際環境の中で日本の外交姿勢として、あなたは米ソ両大国のデタントの基本姿勢はまだ残されているのだ、では日本としてはそのためにどういう努力をしていくかということなんですね。  いま北方領土問題との関連で、一部に非常に政治的に、いまにもソ連が攻めてくるんじゃないかという危機感をあおって、有事立法問題あるいはその他の海や空の防衛力の強化ということをやっているわけですね。(発言する者あり)あなたはそんな邪魔するんなら、勉強して質問しなさい。そういう状況の中で、ソ連に対して、そのような国際環境、国際軍拡競争というものを緩和をしていくあるいは中止をさせていく努力をどういうふうに日本はやっているのですか、やってないわけでしょう、現に。せんだって、本会議で北方領土返還についての決議をいたしましたね。その処理はどうなさいましたか。
  74. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最近こういうやや緊張状態が出てまいりました直接の原因は、やはりソ連のアフガニスタンへの軍事介入であったように思います。北海道の問題についても、ソ連のアフガニスタンへの武力介入が一つの大きなショックになったという点があるように存じておるわけでございまして、もしソ連が本当に平和を愛好する国民であり、アフガニスタンというのが純粋に防衛的なものであるならば、できるだけ速やかにアフガニスタンから撤兵する。それは日本だけでございませんで、国連の緊急総会での決議におきまして百四の国がその決議に賛成したわけでございますし、イスラム外相会議におきましても三十数カ国のイスラム国がソ連のアフガニスタンからの即時撤兵を要求したわけでございまして、そういう行動をソ連がとることが、こういうある程度緊張が出てまいりました状態を平和な環境に戻すということの一番の基本になると思いますので、日本はあらゆる機会にアフガニスタンからのソ連の撤兵を要求する。これはアフガニスタン軍事介入直後に、昨年の十二月二十九日に日本政府はそういう日本政府の立場を明らかにして、駐日ソ連大使にもそういう覚書を手交いたし、日本政府の意向を伝えたわけでございますし、国連総会その他の機会にも意向を伝えております。  せんだって、衆議院及び参議院におきまして、北方四島問題及びアフガニスタンの問題につきましての決議がございまして、こういう決議をやはりソ連側に伝えておるわけでございます。
  75. 上原康助

    上原委員 そうしますと、私も何もソ連のアフガン侵攻とか北方領土に軍備を配置をしていることに賛成しているわけじゃないのですよ。それはけしからぬことで、撤退すべきである、わが国固有の領土にそういうことをやることは。それはわかる。しかし、それを必要以上に強調して危機感をあおってやろうという政治的ねらい、意図がけしからぬと言うのです。そういうことでは国際緊張の緩和にならぬ、平和外交にならぬですよ。  そこで、外務大臣、いろいろあるでしょうが、今後のアフガニスタンに対して、日本としては、さっきの冒頭の質問とも関係するのですが、どういうふうにしていかれようとするのか。あるいはいま人質問題で揺れているイランに対しては日本政府としてはどういうふうな外交姿勢でやっていかれようとするのか。どうもアメリカの言いなりにとまでは言わないけれども、余りにもアメリカの決めることに対して追随をしているということが、われわれから見ると日本のとるべき外交姿勢でないと言っているわけです。そういうことに対してどう思うのか。  たとえば昨日西独のアペル国防相とあなた会見なさっていらっしゃる。あるいはまた日本記者クラブでもこの国防相は会見をしておる。いまのあなたの御答弁からすると、アフガニスタンとか石油産出国、中東にソ連の軍事介入的行動があるからというので、それは目には目、歯には歯という武力で対抗していくべきだというふうにもあなたの御答弁はとれるのだ。私はそれではいかないと言うのです。もちろん、それはまる裸ではいかないという理論もわからぬわけではないですが、ペルシャ湾岸へのソ連侵入に対して武力対抗は賢明でないということを西独の国防相がはっきり言っているわけでしょう。そういうことに対して日本はどう思うのですか。  アフガン問題、イラン問題に対して、わが国外交はその紛争解決のためにどうされるのか。今日までどういう努力をしてきたのか。これからどういうことをなさろうとするのか。そういうこともやっての上でのいろんな防衛論議とか、皆さんが言う備えあれば憂えなし、そんな明治かたぎみたいなこと言ったってわれわれには余りぴんときませんが、ここいらはどうお考えなんですか。
  76. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アペル国防相に私も面会いたしましたし、その前に防衛庁長官も会っておられる。その新聞報道によりますと、ソ連と冷静に話し合い、筋の通った話し合いをするためには、やはり対抗する力を持っていなければ話し合いができないのだということをアペル国防相は発言をしておられるようでございます。中東の情勢につきましての対応の仕方については、ヨーロッパ諸国にもいろいろな考え方があることは承知いたしておりまして、私どもとしても、ヨーロッパ各国の動きについて絶えず頻繁に先方の政府とも連絡をとっておるわけでございまして、そういう意味では、アメリカだけの一国の意思ということではなくて、やはり西側諸国の相互の話し合いというものが重要なウエートを持っておる時代になってきておる。これは一つには、世界全体としてアメリカ一国だけで引っ張っていくことがむずかしいと申しますか、西側あるいは日本協力を得て事を運ばなければならない場合がふえてきておるわけでございます。  御質問のアペル国防相の発言の点につきましては、この地域に直接の武力行動ということのほかに、この地域の国々自体の抵抗力といいますか、そういうものができることが非常に必要だという見方があるわけでございまして、ただ、他方におきまして、一方における直接の武力行使というものがアフガニスタンにおいて行われた状況でもございますし、特に西側、特にアメリカのそういうあの地域における軍事的なプレゼンスといいますか、こういうものが抑止力という意味を持つ、実際に武力衝突が発生しては非常に大変なことでございますが、抑止力の働きを持つということはやはり評価すべきであろうと私どもは考えておるわけでございます。
  77. 上原康助

    上原委員 ちょっと議論がかみ合わないのですが、じゃもっと具体的にお尋ねしてみましょう。抑止力ということになるとまたいろいろ議論が発展しますのでね。  そこで、あなたは、アメリカのごきげん伺いをしていないのだ、日本の独自の外交を展開していかれるのだというお気持ちかもしれません。われわれの目からそう見られない、イラン問題にしてもアフガン問題にしても。今回の訪米のこのトーキングペーパーをいろいろ見てみますと、まず防衛問題ですね。防衛問題、あるいは車の問題、日産、トヨタの車輸出の問題。そのほかイラン、アフガン問題も当然出たのでしょうね。モスクワ・オリンピックについてはどうだったのですか。モスクワ・オリンピックについては、あなたは、日本の立場で参加すべきだと思うのですが、参加すべきでないと思うのですか。カーター大統領はあれだけ旗を振っておられる。けさのニュースからすると、あの強硬論者のサッチャー首相が中止をしてもらいたいと言っても、イギリスのオリンピック委員会は参加を決定をしている。日本はいまだに首相以下むにゃむにゃしているわけでしょう。どういうお話をし、どういうふうにあなたはお考えなんですか。これをどういうふうにやっていかれようとしているのか。そういう独自性、カラーというものが全然わが国は出ないじゃないですか。アメリカがそうしなさいと言ったらいつまでもそういうふうになって、時がたつのを待っておってはこれもいかぬじゃないですか。それが国民の目からどういう外交を展開しているかわからないのだ。どうなさるのですか。具体的に聞きましょう。
  78. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 オリンピックの問題につきましては、御承知のように二月一日に政府の意向表明がございまして、その後別に変更はないわけでございます。オリンピックというのはそもそも平和な雰囲気のもとで行われるべきものだ、そういう本来のあるべき姿という点から考えて、現在の国際情勢は国連の決議等にも見られるような緊張がある、ただし、オリンピックに参加するかどうかの決定はJOC、日本オリンピック委員会にあるのだ、そういう二月一日の政府意向の発表がございまして、その後の立場の変更はない。私も、今回ワシントンでバンス国務長官と話をいたしましたときにも、日本の立場はこういうことであるということを先方にも伝えたわけでございます。さらに最後的には、五月二十四日というのがエントリーの最終期限でございますし、まだそれまでに相当日時がございます。世界情勢に好ましい変化が起こる可能性も絶無とは言えない。そういう状態で、政府としては二月一日のラインを維持していくということでございます。
  79. 上原康助

    上原委員 二月一日に好ましくないという決定をしておって、あとはJOCにげたを預ける。アメリカがそういう決定をしたから、日本もそういうふうに同調したわけでしょう。独自の判断というのは出ていないんじゃないですか。今回それは何か強い要請があったんですか、アメリカに同調してもらいたいというような。フランスはもうとっくにやっておりますよ。イギリスもやっている。こういうところに日本外交の偏りというか、一方路線というのが出ているわけです。いまのことについてのお答えはありますか。
  80. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 二月一日のオリンピックに関する政府の意向表明は、日本政府自体の意思でやったことでございます。  これは各国いろいろな立場がございます。イギリスの場合にはサッチャー首相が全面協力すると言っておりますが、しかし、各国とも政府とオリンピック委員会とは別のものでございまして、政府の意思決定がそのまま民間ベースのオリンピック委員会の決定になるかならないか、それはそれぞれの国の事情によることかと存じます。  いろいろな問題について、日本は決して米国の政策に盲目的に従っておるというようなことではございませんで、いろいろ日本自身の立場についても話し合いをしておる、意見を述べておるわけでございますが、基本的に日本、米国あるいはヨーロッパ諸国というのは、議会制度、デモクラシー、言論の自由というような自由な社会の価値を認めておるわけで、こういう制度協力して維持していきたいという考え方に共通する点があるわけでございます。そういう立場から協力行動をとるということもあるわけでございます。
  81. 上原康助

    上原委員 それは常識論じゃないですか。何も私も、議会制民主主義とか言論の自由をどうのこうの言っているんじゃないですよ。それは常識の範囲の常識論だ。  そこで、防衛庁も来ていただきましたので、いまさっき議論をしたことも含めて、防衛庁は、現在の米ソ間の総合戦力といいますかバランス、戦力バランスをどういうふうに評価しておられるのですか。
  82. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 先ほどのことも含めてという御質問でございますので、米ソのいわゆる軍拡競争というものの現実についてまず御説明したいと思います。  過去約二十年間の傾向をたどってみますと、これは一九八一年の実質価格に直してでございますけれども、一九六〇年ごろには、米国の国防予算というのは約千四百億ドルでございます。それから、ソ連は千億ドル強でございます。それが一九八〇年ごろ、これはソ連はほとんど二百億ドルに達しております。米国はほぼ百三十億ドルないし四十億ドルぐらいということで、米国が一九六二、三年以来デタントをしております間にソ連の軍備増強が着々と進みまして、米国はほとんどこれは減少でございます。デタントでございますから減少でございます。その間ソ連が着々と防衛費を増加いたしまして、二倍になっております。またその間、最近におきましては、アフガニスタンに見られますとおりに、現実の武力行使が行われているということでございます。その結果、米国及び自由世界といたしましては、デタントを行ったにもかかわらずこれだけのソ連の軍備増強があった、これでは自由世界の安全保障に重大なる影響があるということで、やっと最近二、三年から防衛力増強をまた始めたという傾向でございます。  ですから、これを米ソの軍拡競争という表現を用いることは不正確あるいは間違いであると思います。これはむしろ、ソ連のたゆみない軍拡努力、それに対しまして自由世界が、このままでは防衛のために何らかの措置をとらざるを得ないという形における防衛努力。にもかかわらず、アメリカは現在GNPの、今度増加いたしましてもせいぜい五・二%ぐらいでございます。ソ連は現在GNPの一一ないし一三%を使っております。これを比べてみましても、これは米ソの軍拡競争という表現は間違いでございまして、ソ連の軍拡競争に対する自由世界の対応措置と——この自由世界全体が脅威を受けている。日本の場合は潜在的脅威でございますけれども、これは日本も含めまして自由世界共通の問題でございます。
  83. 上原康助

    上原委員 それは間違いかどうか、国民やみんなが決めるのであって、あなたが間違いであるときめつけることはない。明らかに軍拡競争じゃないですか。そんな独善的な言い方はよしてくださいよ。  そうしますと、あなた方はいま、相対的には総合戦力においては、米国、NATOはソ連、ワルシャワ関係よりも優位にはない、バランスとしてはとれていないという認識なんですね。
  84. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 まず訂正を申し上げますと、先ほど千億ドルと百億ドルとをかわるがわる使ったのでございますけれども、千億ドルの方が正確でございます。  米ソあるいは東西の軍事力と申しますのは、過去の蓄積とそれから今後の増強ぶりとの合計でございます。西側には過去の非常な蓄積がございまして、それで、いまだに合計におきましては西側の方が若干優位にあるというふうに考えております。  しかし、東西の軍事体制を考えます場合に、いろいろ問題がございますけれども、特に大きな問題は、西側の場合は、東側から先制奇襲攻撃があるということを前提として兵力を考えなければいけない、そういう問題がございます。それからまた、年々の軍備投資の量が、先ほど御説明のとおり、はるかにソ連側の方が大きいものでございますから、ここである程度措置をとっていきませんといつかは追いつかれる可能性があるということで、追いつかれないための措置でございます。
  85. 上原康助

    上原委員 追いつかれないための措置なら、それは競争じゃないですか。それで大体わかったのですが、ちょっとあなたの御説明も矛盾しますよ。  なぜそうなったかということに対する認識の問題だと思うのです。私がさっき申し上げたように、アメリカはベトナム戦争でこりたんですよ。だから、国民的ショック、あるいは海外基地の保全というか保有というか、そういうものに対しては余りにも国民の犠牲が大き過ぎる、税金がかかり過ぎるということで一応反省をして、インドシナ半島から撤退をして、新たな戦略を七〇年代後半は立てようとした。だが、それがにわかに今日、いまあなたがおっしゃったようなことを前面に出して、再び軍備拡大に直進をしている。これが果たして自由主義社会に対して将来的にプラスになるかどうかということももっと真剣に考えなければいけないんじゃないですか。いまのようにいきますと、ソ連がそれだけの軍備拡大をしているから西側もそうせざるを得ないというふうにどんどん進んでいったら一体どうなるのか。こういうことに対しての歯どめ的な、よき友人としてアドバイスをするのが日本の立場じゃないかというのが私のさっきから言っていることなんですよね。それをやらぬと、ソ連とのバランスの中において、それだけの差が出たからアメリカ一国だけではできないから、NATOも日本もANZUSも、こうなってきているわけでしょう。またそれが皆さん、一部の防衛首脳の望んでいることだと私は思う。  それじゃ、日本自体も大きな国際戦略に組み込まれていって、専守防衛とか平和憲法とか言うけれども、抜き差しならない事態が来ませんかというのが、私たちの懸念であり、そういう方向ではいかないというのが社会党が一貫して言ってきている主張なんですよ。そのためにさっきのようにどれだけ国民は一方においては犠牲になっているか。あなたさっきから手を挙げようとして何をお答えしたいのです。
  86. 原徹

    ○原政府委員 先生のお立場は承知しておりますけれども、私どもといたしましてはやはり国防、国の安全保障をとらえるのに、若干長いトレンドでとらえなければいけないと思っているわけで、ここ数年、いまのソ連の軍事力というものについて非常に関心が集まりましたのは、先ほど参事官から申しましたように、非常に長い過去二十年にわたる軍事努力というものがソ連によって行われた。それがただ行われただけではございませんで、七五年にいわゆるデタントの真っ最中にアンゴラに進出する、これはキューバの兵隊でございますけれども、ソ連の軍事力というものは関係があるわけでございます。それから、いまのエチオピアそれからアジアでいえば、やはりベトナムがカンボジアに入るのも一連の関連があるわけで、そういう連続した事件との絡みにおいてアフガニスタンというのが最後に出てきた。しかもアフガニスタンというのは自分で兵力を行使した、こういうことであります。でありますから、一方においてデタントと言いながら、一方において軍事的進出をするのが困るというのがアメリカの立場でございます。私は、八〇年代というのは、ほっておけはやはりそういう——しかも私も、デタントというのは死んではいないと思います。したがいまして、決定的なアメリカとの対決というものは避けながら、弱いところには進出が行われるのではないかと懸念しております。  そういう立場にならないようにしなければならないというのが、やはり防衛の立場でございまして、そういう意味で、ニクソン・ドクトリン以後、アメリカのベトナム以後のいろいろな反戦的な気分というのが確かにございましたわけですが、やはりそういうことでほっておきますと、第三世界その他に軍事的進出が行われるということになっては困るということから、いろいろな防衛努力というのが始まったわけでございまして、それなりの防衛努力はしなければいけないというのが私どもの立場でございます。
  87. 上原康助

    上原委員 そこがわれわれとしては納得しがたいというか、むしろ説得性がないと思う。といいますのは、要するにさっき言いましたように、東西の軍事バランスあるいはソ連の軍備増強、そういうことに対する対抗措置として、それはアメリカがやるというならアメリカの独自の判断でやるのは結構ですよ。それに日本が加担をした形でどんどんいまやってきているところに、いま問題があるということなんですね。しかもそれを最近になってはテンポを速めようとしている。  具体的にお尋ねしますが、そうしますと、いまの中東に対してのそういう軍事措置があるので、それを阻止する、あるいは排除していくために新たな軍備拡大をしていかなければいけないということなんですが、これもしばしば予算委員会などでも問題になっているように、中東諸国における軍事紛争というものはわが国と直接的に関係があるのですか、ないのですか。
  88. 原徹

    ○原政府委員 軍事的に中東に紛争があったからわが国が直ちに軍事紛争になる、そういう因果関係はございません。しかし、中東で軍事紛争がもし起これば、それは当然石油がどうなるかという問題において、日本は経済的に重大な影響を受けることは間違いございません。
  89. 上原康助

    上原委員 私だってそのくらいわかるよ、あなた。エネルギー問題一番大事であるというのはわかる。じゃ軍事的に見て、軍事紛争が起きた場合に、油の問題が大事であるから、経済的なダメージを受けるからということで、そういうこともダメージを受けるかもしらない。受けた場合の措置も考えていまの防衛力整備計画というのは進めているというふうに理解するわけですか、そのことはどうなっている。仮に軍事紛争が起きたという場合の措置はどういうふうにやろうとしているわけ。
  90. 原徹

    ○原政府委員 まず第一に、軍事紛争が起こらないように、先ほど外務大臣から申されましたように、いわゆるアメリカのプレゼンスというのが抑止に効くであろうと思っておりますけれども、自衛隊そのものについてはもちろんそれだけの能力を持っておりません。したがいまして、日本の安全を考えれば、やはり石油というものはいま九十日ぐらいな備蓄がございます。それは大変結構なことだと思っておりますが、でき得ればもっと備蓄をした方がよろしいのではないか、私はそういうふうに思っております。
  91. 上原康助

    上原委員 備蓄も結構でしょうが、要するに国際紛争になった場合は、仮に有事が発生をして中東地域が戦争に巻き込まれたという場合は、いま皆さんが机上で言っておられるように、その輸送ルートの安全確保とかそういうのはきわめて困難なんですよ、これはいかなる軍事力をもってしても。まさに戦争状態になったときは、それはいかに海上輸送ルートを確保するといってみたって、封鎖をするとかなんとかいってみたって、そう簡単にいかないという専門家の見方も指摘もあるわけでしょう、現に防衛庁におった高官にしても。それがあたかもできるかのような印象を与えながらどんどん拡大をしていくところに問題があるのじゃないか。その議論はまた後ほどいたしますが、どう考えても、アメリカが軍事力の増強が必要になったから日本も急いでやりましょうというふうに聞こえてしようがないのだ、最近の動きというのは。私はそれじゃ議論をかみ合わすわけにはいかない。  もう時間もだんだん来ますので、きのう来いろいろ議論があったようですが、今回の訪米において外務大臣、アメリカにあなたはいわゆる着実な増加というものを約束してきたのですか。着実な増加については努力したいということですが、アメリカにコミットメントを与えたわけですか。まずこの点、もう一遍確認をしておきましょう。
  92. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今回私訪米いたしましたのは、いろいろな取り決めとか約束のためではございませんで、双方の意見交換でございますから約束ではございません。
  93. 上原康助

    上原委員 約束ではない。そうしますと、アメリカ側は、さっきから議論しましたように、いまの国際情勢あるいはソ連のそういった軍事力の強化等に対抗措置として、どうしても自国の軍事力も高めていかなければいかない、あるいはNATO、また日本に対しても着実で顕著な防衛力の増強というものを要求してきたということですが、具体的には何を求めたのですか。ブラウン国防長官やらあるいはバンス国務長官、またカーター大統領は日本に何をしてもらいたいと求めたのですか。  一説には在日米軍基地の維持費をもっとふやしてもらいたい、あるいはそうではなくて正面装備、後方抗たん、そういうものをもっとやってもらいたい。また、津軽なり対馬なり宗谷の海峡の関連もあるわけですが、爆雷とか機雷をもっと早急に備蓄というか生産をしてもらいたい、こういう断片的というか具体的なあれが報道されていますね。あなたがおっしゃる着実に増強していく努力をする、アメリカが着実で顕著なものを求めた、この中身は何を求めたのですか。これはぜひ向こうで話し合ったようにはっきりしてくださいよ。
  94. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 具体的な中身は、やはり防衛当局同士の話し合いの問題でございまして、私の場合は一般的な問題であったわけでございます。ただ基本的には、私の方からも日本の防衛問題に対する基本的な立場を申したわけでございますけれども、アメリカ側も日本の平和憲法とか専守防衛とかそういう基本的な立場は理解している、したがって、日本に期待するのは日本自身を守る力をもう少し強くしてもらえないか、基本的にそういうことでございます。そういう意味では対潜、対空の防衛力を強くしてもらうことが期待される、そういうことであったわけでございます。
  95. 上原康助

    上原委員 在日駐留米軍基地維持費の問題は具体的には出なかったのですか。
  96. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題も出まして、私どもの方からは地位協定の枠というものがあるので、この地位協定の解釈から言えば労務費の負担は限度に達している、施設費についてはさらに防衛当局と相談して検討してみたいという話でございました。
  97. 上原康助

    上原委員 外務大臣、あなたは、具体的には、もちろんそれは専門的なこともありますから防衛当局——ぼくはそれをやりなさいと言っているわけではないのですよ、そういうやり方は。われわれとしては、やはりオーバーコミットというか、これ以上のコミットをアメリカに与えるべきでないということと、アメリカの補完的防衛力の強化なんて全くナンセンスだ。自国を守るためと言ったって、簡単に言うとアメリカの国際戦略を補強するためにもつと日本協力してくれということでしょう。それはいかぬ。そういうことにはわれわれとしてはどうしても合点がいかぬ。  それで、そうはおっしゃっても、私は一般的なことを話し合ってきたと言っても、これは外務大臣がアメリカに行って防衛力の強化に努力する、あるいは基地の維持費、そういうものについても検討していくということは全部すでに日本国民には知れているんだよ。こういうふうに外交方針として先行していって、それを防衛庁にあるいは実務の方に後追いをさせていく、まさにこれは言葉は悪いけれどもペテンか詐欺師的な行為だと言わざるを得ない。  それで、具体的に言うと防衛庁はこの中期業務見積もりというものに基づいてやると思うのですが、これはあくまで防衛庁の内部資料というふうに今日まで国会では言ってきましたよね。もちろん国防会議でもこれは議論されていない、閣議でももちろん決定されていない。しかし、私たちは当初からこれはポスト四次防だ、第五次防的性格を持つ防衛力整備計画だということを言ってきたのだが、まさにいまこれはそういうふうなレールに乗せられている。この議論はすでになされてきたんで余りたくさん触れませんが、大蔵省もおいでですが、防衛庁が今年度、五十五年度から九年にかけて策定をした中期業務見積もりというものを、仮にこの計画どおり達成をするという場合にはどのくらいの予算がかかるのですか、見積もりとしては。それは大蔵省答えてください。
  98. 畠山蕃

    ○畠山説明員 お答えいたします。  五十三年度価格によりまして、しかも正面装備だけを取り出した場合で、私が聞いておりますのは二兆七、八千億かかるというふうに聞いております。
  99. 上原康助

    上原委員 いまのは正面装備だけですね。それに付帯するものが、いろいろあるとすると、もっと予想されるのはどういうものがありますか。
  100. 畠山蕃

    ○畠山説明員 正面装備のほかには後方支援施設あるいは施設庁の、先ほどの基地経費といったようなものがございます。
  101. 上原康助

    上原委員 それを加えた数字は試算したことはないですか。
  102. 畠山蕃

    ○畠山説明員 先ほど来お話がございますように、この計画といいますのは、防衛庁限りで内部資料として作成したものでございまして、防衛庁の方ではその部分を含めての試算はされていないというふうに聞いておりまして、私どもも当然そこは試算をいたしておりません。
  103. 上原康助

    上原委員 防衛庁、どうですか、大体の推定でもわかるのでしょう、施設庁長官もおられるのだから。
  104. 原徹

    ○原政府委員 先ほど主計官が申されましたように、正面装備で、五十三年度と申しましたが、五十四年度価格で二兆七千ないし二兆八千億かかるだろうと思っております。まあ積算をいたしましたのはそこまででございますが、人件費とか基地経費等、あるいは研究開発とかいろいろございますから、そういうことでいくとすれば、〇・九の——GNPがあの当時はたしか実質で五・七五%ふえるという政府の計画がございましたので、そういう伸び率がもちろんどのくらいになるかが非常に大きな要素で、その伸び率を抜きにしたGNP比率論議というのは余り意味がないわけでございますが、五・七五%程度の伸び率があるといたしても、〇・九の水準ではこれはできない、おおむね一%程度に徐々に近づくのではないか。そういう、いろいろシェア等のチェックをいたしまして、大体そういう感覚を持っているわけでございます。全部積み上げてはいないわけで、そこが四次防とか三次防とか違うわけでございますが、大体そういう感覚を持っておるということでございます。
  105. 上原康助

    上原委員 わからぬ。私は余り頭がよくないのですよ。むずかしいことを言わないで、大体二兆七、八千億に加えて、あなたがいま言ったような額を入れると幾らになるのですかと言っている。そんなごちゃごちゃ言わぬで、額で言いなさいよ。
  106. 原徹

    ○原政府委員 全体についてはそういうことで、積み上げた積算をいたしておりませんので、ちょっと数字を申し上げるわけにまいらないわけでございます。
  107. 上原康助

    上原委員 そういうやり方が非常にずるいのですよね、失礼ですが。明らかにこの二兆七、八千億は正面装備だけなんですよね。そうしますと大蔵省、仮にいまのこの業務計画どおりいくとしても、それは非常にむずかしい。そのほかにプラスアルファがかなりつくわけで、優に三兆円超えますね。しかもこれは恩給も何も入っていないのです。そうすると、日本の対GNP一%云々というのは、まさにこれは、非常に視点のぼけた議論であると私は思う。いまはそういうことだ。この計画を遂行していくにも優に三兆円超える。後でこれは計算すればわれわれの方でも出せることでね。そういうことが一つあるということ。実態としてある。しかも国債依存率は三〇%以上。で、国力、国情に応じてしか防衛の基本計画は推進できない。歯どめがある。これは持ち出さぬでもわかるでしょう。インフレぎみ。  こういう状況で、外務大臣、さっきあなたは一般論しか約束してこなかったと言うのだが、アメリカに対しては着実な防衛力強化をやるという努力を約束してきて、やっていく。その中身が最近だんだん明らかになっていることは、この中期見積もりをもっと短期間にやっていくんだ。できないことを約束してきたと言ってもこれは過言じゃないですね、全く。大平さんがどういう手品師的なことをやるかわかりませんがね。  大蔵省、いまの御答弁とも関連をするのですが、せんだって大蔵大臣の答弁もすでにあったので改めて指摘をするまでもないと思うのだが、一%に持っていくことさえとうていいまの財政事情ではむずかしい。具体的にお尋ねしますが、果たして、外務省も防衛庁も大蔵省も、この中期業務見積もりというものをもっと短期間で達成していくということが可能なのかどうか、財政問題からしても、いまの私が指摘したような問題等を含めて。どうお考えなんですか。そこをはっきりさせてください。  外務大臣は、アメリカに約束したことに対しては、じゃ具体的にどうこたえていこうとするのか。けさの日本経済新聞にも載っておりますように、大蔵省が試算をしたというものでも、三年計画でも一兆二千億円の純増だ。他の歳出の伸び、いわゆる一般の予算の伸び率ということでしょうね、これを九%ぐらいに抑え込まなければいかぬ。そうなると防衛費は一五、六%からあるいはもっとテンポを速めるとすると二十数%の増加ということになるんだが、果たしてこういうべらぼうなことが国民的な理解を得られるのかどうか。そこまでなぜやらなければいけないか。日本を取り巻く諸情勢を、残念ながら私たちはそう見ないのですね、皆さんはそうおっしゃるかもしらぬが。この点明確にしてください。
  108. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ブラウン国防長官は着実かつ顕著な、英語でステディー・アンド・シグニフィカントという表現を使ったわけでございますが、私はステディーにはやらなければならぬと思うけれどもシグニフィカントにはなかないきません、財政事情、国民のコンセンサス、いろいろな事情を含めて、そういう意見を申したわけでございまして、その約束をしてまいったわけではございません。
  109. 上原康助

    上原委員 そうしますと、この中期業務見積もりというものをもっと短縮をしてやるとか、そういう考えでこれを説明したとか、そういう議論をなさったということでないわけですね。
  110. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先方はそのシグニフィカントという、顕著にという意味の中でそういう気持ちを示しておったと思いますが、私の方はステディーと申したわけでございます。
  111. 上原康助

    上原委員 あなた、ステディーとかシグニフィカントということで、そんなごまかさぬで、私の聞いていることに答えてくださいよ。中期業務見積もりの短期間達成ということは、あなた御自身はそういうお話もしなかったし、また、いま議論をしてもわかるように、財政事情からしても不可能だ、なかなか困難だということはわかりますね、そういう約束はしてありませんねと私は聞いているのですよ。それにお答えして、同時に防衛庁はこれはどうお考えですか、防衛局長。まず外務大臣からお答えください。いまさっきの事情からしてもこれはなかなか大変なんだよ、こんなものを計画どおりやるにしても。  大蔵省、けさの皆さんが試算をしたというような数字も出ておりますが、さっきお尋ねしましたように、計画どおりやるのさえ大変な財政インパクトがある。しかもそれを期間を切り上げて前倒しでやるというのはなおさら困難だと私は思うのです。それについてはどういうふうに御見解を持っておられるのか、御三名とも御答弁をください。
  112. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど申しましたように、そういう約束をしてまいったわけではございませんで、内容につきましては防衛庁の方からお聞き取り願いたいと思います。
  113. 原徹

    ○原政府委員 私どもは昨年以来、できるだけ可及的速やかに大綱の決めている水準に持っていきたいというのは、外務大臣がアメリカに行く前からずっとそう言っておるわけでございまして、それをするために中期業務見積もりをつくったわけでございますが、中期業務見積もりと申しますのは防衛庁限りのものでございますし、それは毎年見直すという前提でつくられております。中期業務見積もりに基づいて予算を要求いたしましても必ずしも全部ついているわけでございませんから、当然毎年見直し作業というのは必要でございます。その見直しは四月以降、来年度の予算編成にかけてやっていきたい、そういうふうに考えておりますが、気持ちとしてはやはりできるだけ早く達成したい、そういうふうに考えております。
  114. 上原康助

    上原委員 ちょっといまのこと再確認しますが、もちろんこれは防衛庁限りの資料だと言ったが、しかし実際には、一つの新たな防衛力の整備の基本方針になっている。それは別として、見直しをするという場合は、もっと中期業務見積もりを短期間で達成をしていくという前提での見直しですか、あるいはこの五十五年度から五十九年までを想定をしたその都度の見直しなのか、そこは明確にしておいてください。
  115. 原徹

    ○原政府委員 中期業務見積もりはそういうことで防衛庁限りのものでございますが、防衛庁としてはその努力目標として決めているわけでございます。また同時に、これは三年ごとに新しい見積もりをつくるという考え方になっております。その間はいわゆる全体の変更はいたさないで見直しをする、そういうことなんでございますので、そういう線でどういうふうになるか、それはこれから来年度の予算の編成にかけて慎重に検討してみたい、そういうふうに考えておりますが、いまの段階では、気持ちとしては私どもはできるだけ早くやりたい、そういうふうに考えております。
  116. 上原康助

    上原委員 財政当局として、このいまの見積書による計画の整備というものがもっと短期間なりそういうものでやるということは、財政事情としてもとてもじゃないが不可能だと私は思うのだ。改めて、それについてはどういうお考えですか。
  117. 畠山蕃

    ○畠山説明員 現下の厳しい財政事情のもとにおきましては、中期業務見積もりを早期に、つまり繰り上げて完成するということはきわめて困難であるというふうに考えております。過去五年間におきまして防衛関係費は約一兆円ふえたわけでございますので、これをさらに上回るような形にしますことは、財政事情からしますときわめて困難であるというふうに考えております。  なお、先ほどお話にございましたけさほどの新聞に出ておりました試算と申しますのは、これはあくまでも財政収支試算を前提といたしまして、GNP等について一定の仮定を置いた上での試算でございますので、御了承いただきたいと思います。
  118. 上原康助

    上原委員 お聞きのとおりで、外務大臣は、失礼だがどうも勇み足みたいなことになっているのだ。事前に私が予算の分科会でもちょっと言いましたが、総理あるいは外務大臣、防衛庁長官、さらに大蔵大臣もこの問題ではある程度話し合っていかれないと、一方がアメリカ側とコミットをしてきて、それがまたうまくいかなかったといって日米間がぎすぎすする。いまのアメリカの要求は割引して聞かなければいけませんよ。それはおわかりでしょう。大統領選挙があるし、車の問題で何とかしたい。ソ連のああいう軍事力のあれがある。だから、まるまるのみ込んでは大きな過ちを犯すのですよ。私はそのことを指摘しておきたいわけですよ。  外務大臣、したがって、このことについては、大蔵省、財政当局の言い分は先ほどのようなことで、外務大臣はもう約束してきたから何とかステディーにやりたい。ステディーじゃなくて、むしろあなたはラピドリー、急速にやりたい。それではいかないわけでしょう。ちぐはぐでしょう。政府の統一見解はないんじゃないですか、統一した考え方が。一方、防衛庁はできるだけ早目にやりたい。これではまさに——一体外務省、防衛庁どうなっているんだ。皆さんのことだからどうせ後で口裏を合わすことには間違いないと思うのだが、外務大臣、そういうことが国民に与えている印象は大きいですよ。そういう調整はして、私が申し上げたようなこと等も踏まえて、これから対処していくのか。もう一度見解を聞いておきたいと思います。
  119. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 前にも申し上げましたように、米側からそういう希望が表明されましたけれども、私の方からはそういう急速な大幅な増加ということはできないんだ、やれることはステディーというか、着実にやっていくことだ。事実、政府の七カ年経済計画ですか、その改定見積もりによりましても、実質経済成長率五・五というような数字になっておりますから、仮に実質的な経済の伸びに見合っただけでもステディー、ある程度着実な増加とも言えるわけでございまして、アメリカの希望をこちらがそのまま了承といいますか、約束したとか、そういうことは全然ございませんので、その点の誤解はぜひ解いていただきたいと存じます。
  120. 上原康助

    上原委員 時間ですからこれで終えますが、どうも誤解じゃなくて、それは明らかになることなんですね、大平首相が行かれる場合に。  そこで最後に、最近の日米防衛協力委員会の作業状況はどうなっているのか。そういうことと関連して、今日までの日米防衛協力委員会で検討した事項等について資料として——中間報告をすることになっているんだ。しかしやらない。資料を提出していただきたい。最近どういう状況になって、どういう検討をしているのか。
  121. 原徹

    ○原政府委員 日米防衛協力委員会は、例のガイドラインを決めまして、その以後作業をいたしておりません。
  122. 上原康助

    上原委員 その後作業をしていることはわかるんですよ。その内容はどうなっているのか。どのくらい会合を持って、どういう検討をして、現在はどのような状況まで来ているか。
  123. 原徹

    ○原政府委員 日米防衛協力委員会で決められましたガイドラインに基づきまして、これは国防会議に御報告し、そうしてその後防衛庁長官の責任において、ガイドラインに決められたいろいろのことをいま研究中ということでございます。いろいろのことがガイドラインに書かれておりますが、いわゆる作戦計画の研究等の作業を現在やっておりますが、地勢であるとか、海洋状況とか、気候であるとか、そういうふうなことから始める作業でございますので、まだ非常に初期的な段階でございまして、ファーストステップと申しますか、第一段階にも実はまだ到達いたしておりません。
  124. 上原康助

    上原委員 その検討内容を、出せるものを出してください。作戦部会、情報部会、後方支援部会でどういう検討をなされているのか。いつごろまでに完成を、皆さんとしてはやるのか。中間報告は、これはやろうということになっていましたね。国会でもそういう答弁をしている。その中間報告はいつごろできるのか。めどとしてはどのくらいに置いているのか。
  125. 原徹

    ○原政府委員 いまの初期的な段階につきましてはことしの夏ぐらいまでにはできるかと思いますが、この中身は最高機密に属するようなものでございますから、外にお出しをするというわけにはまいらないであろうと考えております。
  126. 上原康助

    上原委員 その点を、いいですね、資料として出していただきたいということを強く求めておきたいと思います。  実は、施設庁長官も、労務部長も来ていただいたのですが、ちょっと時間が超過してしまいましたので、きょうは御勘弁をいただきたいと思います。  終わります。
  127. 木野晴夫

    木野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  128. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田卓三君。
  129. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大来外務大臣は、去る三月の十九日から二十三日までアメリカを訪問されたわけであります。その際、ブラウン国防長官あるいはバンス国務長官、ブレジンスキー大統領補佐官、アスキュー通商代表らと会談を重ねられたわけであります。  周知のように、国際情勢はアフガン問題をめぐって揺れ動いておるわけでございまして、日本が輸入石油の八割を依存する中東へのアメリカの軍事的対応策が重なって、日本の外交政策は非常にむずかしい局面にあるわけでございます。いまや無資源国であり、加工貿易国の日本にとって、平和を維持し、そして平和の中でエネルギーや資源を無事に確保することが至上の外交課題となっておると思うわけでございます。平和に貢献する、その外交こそがわが国を守ると言っても過言ではなかろう、そういう時代がいよいよ到来した、このように考えるわけでございますが、日本の外交姿勢の基本にかかわる問題につきまして、まず大来外務大臣から意見を聞きたいと思います。
  130. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 午前中、上原委員の御質問にも答えまして、基本的な考え方の概要を申し述べたわけでございますが、日本の経済というのは平和な世界の環境の中で初めて現在のような状況を維持できるわけでございまして、そういう意味では、日本の力の及ぶ限りにおいて紛争の平和的な解決に努力するということをやっていかなければならないと考えておるわけでございます。
  131. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 大来外務大臣は、日本は軍事大国にはなれない、こういうようなことも言っておられるわけでございますが、今回の訪米では軍事費の増加を約束してきておられるわけでありまして、これは国民の利益に反するものではないか、このように考えるわけであります。カーター政権によるところの武力を頼みとする中東外交は日本にとって最も危険なものではないか。特に七三年十月の第四次の中東戦争とそれに伴うところの産油国の石油禁輸措置が、アメリカによるイスラエルへの軍事援助強化への対抗措置であったことを思えば、カーターの砲艦外交はその再現につながらないという保証は絶対にない。そういう意味で、そういう状況にあるにもかかわらず、日本政府はカーターの力の外交政策に追随しておるのではないか、このように考えるわけでありますが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  132. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 基本的には、きょうの午前にもいろいろ御議論が出ておりましたけれども、この十年ぐらいの間においてソ連側の一貫した軍事力増強の継続というのが行われまして、それにある程度おくれを取り戻すという形で西側の防衛力の強化努力というのが行われております。ことにアフガニスタンが緊張の象徴的なものになったわけでございますから、やはり日本の外交努力としてはいろいろな形でソ連軍のアフガニスタンからの撤退を求める。これは、西側世界でも中立化構想等もございますし、回教諸国の外相会議でも即時撤兵を求めておりますし、いわゆる第三世界を含む世界の多数の国にそういう強い要求があるわけでございまして、そういう面で努力することが日本の平和外交といいますか、その果たすべき役割りであろうと考えるわけでございます。
  133. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 外務大臣はそういうことをおっしゃいますが、ソ連の軍事力の脅威ということをことさら強調することによって西側の防衛力を強化する。わが国においては、そういう国防の強化といいますか、軍事予算の増強、増大というところにわれわれは大きな関心を持っておるわけであります。特にアフガン事件以後、アメリカはペルシャ湾に空母ミッドウェーやあるいはキティーホークなど最高時二十五隻もの大艦隊を送り込んで、周辺国に対する軍事的な威嚇といいますかそういうものを行っておる、このように思うわけでありますが、こういう時期に日本の財界から徴兵制の復活やあるいは武器の輸出を支持する発言が飛び出しておることも、先刻御承知のことだろうと思うわけでございまして、先ほど申し上げたような形で、やはりことさらそういう状況に便乗して世論を操作するというような状況があるのではないか、このように思っておるわけでございます。  外相の訪米に当たってブラウン国防長官は、アメリカが防衛努力を真剣に行っている、こういうことでありまして、日本やあるいはEC諸国にもそういう意味では大きな役割りといいますか、役立っているんだということの例としてペルシャ湾におけるところの空母の増強を挙げておられるわけでありまして、こういうような見解に対してわが国は基本的に支持表明をしたのかどうか、その点について国民は大きな関心を持っておりますので、アメリカのそういうペルシャ湾岸を初めとするところの中東に対するそういう軍事力の増強というものに対して、日本が全面的に賛意を示しておるのか、その点について再度お聞かせいただきたい、このように思います。
  134. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ペルシャ湾岸の問題につきましては、日本政府の立場といたしまして、先ほど申しましたようにあらゆる方法を通じてソ連のアフガニスタンからの撤退を促すということでございまして、ソ連の軍事力にある程度対抗する力を持っておるのはアメリカでございますが、湾岸地帯という、ある意味では日本、ヨーロッパを含めて西側の経済の息の根をとめることも可能な地域でございまして、この地域に米国が、さらにソ連側の一層の湾岸地帯への圧力が起こるということがもしあっては重大な影響が出てまいりますし、抑止力としてあの方面に力を強化するということについては基本的には賛成しておるわけでございます。
  135. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 アメリカのアフガン問題を契機とするところのペルシャ湾を中心としたところの中東政策に基本的に賛成を表明したのですか、アメリカへ行って。その点どうですか。
  136. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そのことについて特に意思を表明したということではございません。
  137. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 アメリカへ行かれて、そのときにブラウン国防長官は、日本の防衛力についてあるいは防衛予算について、着実かつ顕著な云々、こういう形で要求してきたように聞いておるわけでございますが、外相はそのときに顕著な伸びは期待できない、このように回答しておるようでございます。これが事実かどうか。     〔委員長退席、唐沢委員長代理着席〕  それと同時に、これまでアメリカ側はマンスフィールド大使あるいはロング太平洋軍司令官を通じて、年間平均の軍事費の伸び率がNATO諸国を上回っている日本現状に一定の賛意を表明してきておったようでございますが、そうすると、いわゆるブラウン長官の言うところの顕著な伸びとは、現在よりも急激で速いテンポの伸びではないか、このように想定されるわけでございます。GNPの一%を達成しようとすれば、たとえば五年間にそれを果たそうとすれば年率で一四%ぐらいの伸び率がなければならない、このように計算されるわけでございまして、現在のわが国の防衛予算の伸び率というものは年平均大体八%ぐらいではないかと思うわけであります。そうすると、倍とはいかないにしても、大体それに近い伸び率を達成しないと、近いうちにGNPの一%まで防衛予算を引き上げることはできない、こういうことになるわけであります。いわゆるブラウン長官の言うところの顕著というのは、そういう意味ではこれに該当するのではなかろうか。それを外務大臣が期待できないとおっしゃったのであれば、いわゆるGNPの一%の達成は当面無理だというように解釈されるわけでありますが、その点について外務大臣のお考え方を聞きたい、このように思います。
  138. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 五十五年度の予算におきまして、防衛費の伸びは財政の上で六・五%ということになっておるわけでございますが、御指摘のように、現在が大体GNPの〇・九%程度の防衛支出でございまして、これは昭和五十一年の国防会議及び閣議決定の一%という、一つのめどでございますが、一%を一応のめどとする考え方にいたしましても、きょうの午前中にも御議論がございましたが、なかなか大変なことだということは事実だと思います。ただ、経済の成長もございますから、毎年ある程度の増加は実質的に可能なわけでございまして、そういう意味での着実な増加ということは、もしも政府の全体としての方針が決まる、あるいは国民のコンセンサスとして、やはりある程度自分で自分を守る力を強くするべきだという国民的コンセンサスがあれば不可能ではない、しかし、顕著なとなりますとなかなか日本の事情はそういうことにはまいりませんという意味でございます。
  139. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 GNPの一%ということになりますと本当にまさしく顕著な伸びということにならざるを得ないわけでありまして、外務大臣もいまそのことについて否定されておるようでございますが、防衛予算が増大するということによってわが国の平和が脅かされる、経済の発展が阻害される。確かにそういう軍事産業といいますか、そういう意味での刺激剤にたるのかもわかりませんが、日本の平和な経済の発展には決して役に立たないし、また世界の平和のためにも、決してそのことは役立たないと私は考えざるを得ないというように思うわけであります。先ほど言いましたように、世界平和のために日本がどう貢献するかということは、何も日本の防衛予算をふやしたら世界平和が維持できるんだというような単純なものでないということは明らかだろうし、特に予算的な面においても、国民経済を守るという立場から見ても、特に大蔵当局なども一%については相当反対意見があるというようにも聞いておるわけでございまして、そういう点について十分ひとつ外務大臣として留意をしていただきたい、このように思います。  次に、ブラウン長官との会談では在日米軍の駐留費はどのような形で取り上げられたのかという問題でございまして、その後施設費については長期の負担計画を作成すると言われておるわけでございますが、これにつきまして、首相の訪米の際に示すつもりであるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  140. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの問題、内容的な問題については防衛庁あるいは防衛施設庁の問題だと存じますが、ブラウン長官との会談の中で、従来から日本が駐日米軍の経費の一部を負担しておることを高く評価しておる、将来もそういう方向で考慮してもらいたいという希望の表明がございまして、私の方からは日米地位協定というものがございまして、この枠の中でできるだけの努力をしていくべきだろうと思うということを申したわけでございます。この点で具体的にどこまでということは、まだ最後的ではございませんけれども、総理が五月初めにもし行かれる場合に何か決めて持っていくかということになりますと、多分それには間に合わないといいますか、また、そういう具体的な数字を総理が行かれる機会に話し合ってこられるということにはならないだろうと考えております。もう少し時間的な経過、たとえば来年度の予算編成というようなこともいろいろ今年の暮れまでに行われるわけでございますし、そういう経過の中で具体的な検討が行われることではないかと考えておるわけでございます。
  141. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ブレジンスキー補佐官との会談で、アメリカ側からいわゆるアフガンの中立化構想なるものが、特にアメリカの独自の構想というのですか、そういう立場からお話があったのではないかというように思うわけでございますが、それについて具体的に内容をお聞きであれば、ひとつお示しいただきたいし、EC諸国の言っているところのアフガンの中立化構想と違うのか、違うのならばどういう点が違うのか、そういう点について知り得る範囲においてお答えいただきたい、このように思います。
  142. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 まだアメリカ政府もこの問題は検討中の段階のようでございますので、私どもの聞いた範囲におきましては、EC諸国が、これもまだ検討中でございますけれども、考えているいわゆる中立化構想というものもアメリカ側もいろいろ検討しておるようでございます。そういう考え方に関して中国が反対意見を表明しておるわけでございますけれども、ブレジンスキー補佐官との話し合いで一つの重要な点は、中国のその中立化構想に対する批判は、そういう構想が出ることによってむしろソ連の立場が有利になるのではないかというような点を中国側は批判しておるようでございますが、アメリカとしてはそうでなくて、まず第一に、第一ステップとしてソ連軍の撤退を求めるということを中心にした構想を検討している。これにソ連が応すればもちろん結構なことでありますし、応じない場合にはソ連は防御的ではなく、攻撃的、膨張的な目的を持っておるということを世界に示し得るような、そういう何か案を検討しておるんだということでございまして、それ以上の内容はまだ私どもにもよくわからないわけでございます。
  143. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 次に、アフガン問題に端を発しましてアメリカのソ連に対する経済措置といいますか、制裁措置がなされておるわけで、特に穀物の輸出のストップというようなことのようでございまして、特にバンス国務長官との話し合いの中でも、日米の協力関係の大枠が話し合われたようでございますし、そういう中で、この対ソ制裁措置の一環として行われたところの穀物の禁輸によるところの余剰分を日本が二十五万トン輸入する、こういうことに決まったようでございます。この二十五万トンをカンボジアの難民に振り向けられる、こういうことのようでございますが、これは日本とアメリカのそういう経済協力というように単純にとらまえられる問題ではなしに、あるいはカンボジア難民に対する日本のそういう援助というような形でなしに、ソ連に対するアメリカの経済制裁に対して日本がやはり加担した、私はこう考えられても仕方がないのではないか、こういうように思うわけであります。特にソ連は従来から、対ソ制裁に対してはわが国に対して漁業問題のはね返りがあるというようなことを警告してきておるようでございまして、そういう意味では、やはりわが国の漁業だけではなしに、日ソの関係に大きな影響を及ぼすことになりかねない、こういうように思うわけであります。  そういう点で、この点について一体どう思っておるのか。あるいはまた、御存じのようにわが国の場合は六百五十万トンにも及ぶ古々米といいますか古米があるわけでありまして、いまだに未処理分が五百万トン以上もあるというようなこともあるわけでございます。これらの処理がまず先決ではないのか、私はこういうふうに思っておるわけでございまして、ソ連に対する経済制裁ということになれば、逆に日本が制裁を受けて、日本が大きな損失を受けかねないわけでありますので、その点についてはっきりした考え方を明らかにしていただきたい、このように思います。
  144. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御承知のように、この問題の発端は、ソ連によるアフガンへの軍事介入にあるわけでございまして、世界の多数の国がソ連に対して即時撤兵を求めている。ただ求めている声だけでは余り効き目もないというか、そういうこともあるので、こういう行為がある程度コストがかかるものだということを知らせる必要がある。そういう点が、アメリカの対ソ穀物輸出、八百万トンまでは従来から協定で同意した数字であるけれども、それを超えるものについては供給をストップするということをアメリカが行ったわけでございますが、そういうアフガン問題ということのにらみで出てきたことでございます。  日本は最大の穀物買い付け国でございますし、アメリカとの友好関係は外交上もきわめて重要でございますし、国内にもいろいろ見方がございましたけれども、二十五万トンということであれば余り大きな数字でないわけでございますけれども、この程度の穀物の買い付け、その一部は途上国に対する食糧援助、一部は日本の国内の備蓄の積み増し、一部は前倒し輸入というような意味で買い付けるということになったわけでございます。もともと、日本は食糧の安全保障という点から言っても、食糧の備蓄には十分注意を払わなければならない。石油と食糧の備蓄は日本自身の安全にとっても重要なことでございますし、そのこと自体はまた日本の国益とも合致すると考えるわけでございます。
  145. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 アメリカのソ連に対する経済制裁、これはアメリカ政府がやっていることでございますが、わが国がアメリカのソ連に対する経済制裁を全面的に支持するとか、あるいはわが国自身独自でそういうソ連に対する経済制裁をするということになっているのですか。その点どうですか。
  146. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本では経済制裁という言葉は使っておらないわけでございますけれども、いまのアフガン問題というのは西側の世界のみならず、第三世界を含めまして全体的に脅威として感じられておるわけでございまして、日本としては特に自由世界を守るという共通の立場をアメリカあるいは西欧諸国とも分かち合っておるわけでございまして、各国の対応の仕方はそれぞれの置かれた事情がございますので、決して同じではないわけですけれども、いまのようなソ連側の軍事介入のコストについては、日本の立場で可能なことは措置をとる、しかし、それはアメリカと同じことをやるというわけではないわけでございます。
  147. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ようわからぬわけですが、経済制裁ということでないけれども、それに近いことをしているということなんですか。要するに、二十五万トンの穀物の輸入というのはカンボジア難民に対する救済ということであるなら、何もアメリカの穀物でなくたって日本にはいわゆる古米があるわけですから、あるいはそれ以外のものであってもいいわけであります。そうすると、やはりカンボジアに対する、そういう難民に対する援助がアメリカの穀物であるというのは結果であって、要するに、アメリカから穀物を二十五万トン輸入するということについても、それは日米の経済協力というよりも、端的な言葉で言うならば、アメリカがソ連に対する経済制裁の一環としてなされた穀物の禁輸、その余剰分を日本が助太刀することによって、結果的にソ連に対して、経済制裁ということもないかわからぬけれども、そういう意味を含んでいるんですかどうなんですか。
  148. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 もちろんそういう意味を含んでおります。
  149. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ということは逆に、アメリカと同等ではない、同じではないとはいうものの、何らかの形で日本が独自でソ連に対する経済制裁なるものを今後もしていくのか、あるいはそれに対してソ連側から逆に日本に対するしっぺ返しというんですか、そういう逆な意味での漁業問題を初めとする経済制裁が当然起こってくるという問題についてはちゃんとした姿勢で臨むのでしょうね。その点どうですか。
  150. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、今国会の初めに総理が施政方針演説の中で明らかにしておるわけでございまして、各国との協力のもとに、たとえばココムの場を通じて協議して高度技術商品の対ソ輸出についての抑制を行うというような手段もとることになっておるわけでございます。ただ、日本の置かれた立場はアメリカの立場と違う点もございます。地理的にも違うわけでございますし、ソ連との従来の経済交流の実態等にも相違する点がございますので、こういう点につきましては、ヨーロッパ諸国の対応の仕方等も十分に連絡をとりながらそれぞれの立場で、全般的には自由世界あるいは第三世界を含めまして、ソ連の軍事的な他国への介入については同意できないということについての意思表示の一つとしてそういう手段を考えるということになっておるわけでございます。
  151. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 自由諸国という言葉が出たわけですけれども、ヨーロッパの各国、EC諸国の中にも大分ニュアンスの差はあるとはいうものの、ヨーロッパ諸国の対応の仕方とわが国の対応の仕方は大分違う。そういう意味では、相当と言うよりも本当に対米追随というか、本当にアメリカの言いなりになっている。いや若干違うんだ、薄めたような形で発言もし、実際の行動もとっておられるようですが、やはり世界の各国から見た場合に日本はアメリカに非常に追随的である、こういう印象は免れないだろう、こういうように思うわけであります。  逆に対ソ連との経済交流を考えた場合に、今後に起こるところのマイナス面というものを果たしてアメリカにおいてカバーしてくれるのかどうかということになってきたら、日本とアメリカとの貿易においてもいろいろ対立点、問題点があることを考えた場合に、本当にばかを見るのはわが国ではないかというような気がしないでもないわけであります。そういう面で、そういう火遊びに近いというか、アメリカがこうしたから日本もソ連に対してこうするのだというような態度というものは厳に戒めるべきではなかろうか、こういうように私は考えておるわけでございます。  特に対アメリカとの関係でソ連の軍事力が云々されるわけでございますが、特にわが国においては、ソ連の極東におけるところの軍事力の脅威というような形で、ことさらにそういう有事立法であるとかあるいは防衛力の強化とかいうような形が、あるいはときには徴兵制の復活なども取りざたされておるわけでありますから、そういう危険な道へ日本を再び追い込むようなことは厳に戒めなければならないだろう、こういうように思っておるわけでございまして、日本政府の、特に外務省の賢明なる今後の行動というものを特に望みたい、このように思うわけであります。  そこで、この三月十八日中東歴訪から帰りましたところの園田特使は、パレスチナ問題は中東和平の核心ではない、こういうふうに言っておられるようでございますが、これまでの政府のPLOに対する姿勢を後退させておるのではないか、このように考えざるを得ないし、さらに、このパレスチナ人が重視されるのはこわもてだからだ、このような暴言さえ吐いておるわけでございまして、これは全く差別的であり侮べつ的な言辞ではないか、こういうように思っておるわけでございます。中東和平を願い、アラブ諸国との友好を目指す者の発言ではない、こう断ぜざるを得ない。PLOからは抗議が来ておるようでございますし、即刻このような暴言を撤回し謝罪すべきではないか、このように私は思っておるわけでございますが、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  152. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私もそのお話を直接聞いたわけでございませんので、まだ御本人からも御意向を伺っておらないのでありますけれども、基本的には、パレスチナ問題は中東の問題の重要な課題である、ただ、それがただ一つではなくて、ほかにもいろいろ複雑な問題があるという趣旨で発言されたのだろうと思います。日本政府の対中東の考え方というのは、従来園田外相の時代から明らかにされておるわけでございまして、この態度というのは、ヨーロッパ諸国に比べても、より前向きな態度を日本としては表明しておるわけでございます。今度の園田特使の中東訪問の際もそういう日本の考え方を説明して、先方から共鳴を得たということでもございますので、ただいまの点については基本的にそう違った点がないと考えております。
  153. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 中東和平の核心ではないという意味ですね、それだけでないということは明らかでありますけれども、中東の和平の重要なといいますか、あるいは核心という言葉が適当ではないかというふうに私は思うのですが、そういうものと、それからパレスチナ人が重視されるのは彼らのこわもてという表現があるわけです。これは十分聞いてないというお話のようでございますが、もしかそういう二つのことを考えるならば、本当に日本のPLOに対する基本姿勢の変化と言わざるを得ないと思うのですが、その点について特にそういう日本政府のPLOに対する対応が変わったのかどうなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  154. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 基本的姿勢は全然変わっておりません。
  155. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いま私が申し上げた園田特使の発言についてはどうなさるのですか。これは抗議も来ておるのでしょう。まだ聞いておりませんということで済みますか。
  156. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 ただいまの委員指摘のような抗議文等は私どもの方に参っておりませんし、園田さん御自身の方にも参っておらないと伺っております。  なお、この発言の趣旨は先ほど大臣から御説明いたしたとおりでございますが、後の方でおっしゃいましたこわもて云々というのでございますけれども、私どももその後いろいろお話を承ったりしまして、これは無視すべからざる実力を備えた集団としての、それに対する中近東のアラブの方々皆さんの抱いていらっしゃる感じ方なのだ、それを平易にわかりやすく言ったのだといったような御趣旨だと承っております。
  157. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いずれにしても、PLOの方々は相当怒り心頭にきていますよ。正式な抗議がないとか、特使のところにもなかったというようなことですけれども、決してそんなものではない。アラファト議長に会えなかったからといったって、八つ当たり的なそういう発言というのは問題だと私は思うのです。ですから、そういう意味でやはりPLO側と十分に対応して釈明する、陳謝すべきはするという態度があってしかるべきだと思いますし、それは何もPLOに対するだけでなしに、アジア、アフリカあるいはアラブ諸国に対しても、日本は欧米に対する態度と非常に違った、非常に侮べつ的なといいますか、差別的な立場が顕著に見られるわけでありますから、そういう姿勢というものを厳に戒めなければならないだろう、このように私は思っておりますので、そういう点で外務大臣、いま私が申し上げたそういうことに特に留意する、日本は先進国だという立場で、何か援助してやるのだとかどうだとかいうような高飛車な姿勢があるわけでございますが、誤解があれば十分誤解を解いていく、あるいはこちらに過ちがあれば過ちを正していくという姿勢がなければならぬと思いますが、その点どうですか。
  158. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も中東に何回か参りましたが、一般に日本に対する相当な期待感、信頼感も一面あるわけでございます。特に技術力というようなものと、それから過去においてのあの地域と余り縁がなかったこと自体が評価されておるというような点もございまして、じみちな努力を積み重ねてさらに友好関係を進めていくということが日本のとるべき立場だと存じます。ただ、中東問題というのは非常に歴史的にも古く、非常に複雑な関係が入り組んでおりますので、私どもとしても今後の問題に取り組む場合に十分注意深く考えてまいりたいと思っております。
  159. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 次に移ります。  オリンピック問題でございますが、先般の予算の分科会でも、外務大臣、文部省の方にも私質問申し上げたわけでございますが、わが国はモスクワ・オリンピックについては参加も不参加も決めていない、まだ言及していない、また五月二十四日のエントリー締め切り日まで事態を見守っている、こういう基本姿勢はいまも変わっておりませんか、どうですか。
  160. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 二月一日の政府の見解表明から変わっておりません。
  161. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 アメリカを中心にしまして、モスクワ・オリンピックをボイコットする、そのために代替五輪の準備が進められておるようでございまして、三月十七、十八日ジュネーブで準備会が行われたわけでございます。当初二十カ国近くの参加がもくろまれておったようでございますが、実際、正式に参加したのはアメリカあるいはイギリスなど七カ国でありまして、オブザーバー参加はカナダなど五カ国であった、このように報道されておるわけで、西ドイツやフランスやイタリアあるいはまたわが国も不参加であったわけであります。三月二十三日の毎日新聞では、駐日アメリカ大使館を通じての招請を大来外相が断った、また訪米の際、代替オリンピックについては今後も競技に参加しないと述べた、このように伝えられておるわけでございまして、このことについて政府の方針は大来外務大臣の発言どおり変わっていない、このように理解していいですか。
  162. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまお話しのとおり変わっておりません。
  163. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 しかしながら、日本のマスコミには日本政府の立場は不参加である、こういうような記事がはんらんしておりまして、国民の中には、何かもう日本政府がモスクワ・オリンピックに参加しないということを決めたんだというように思っている方がたくさんおられるのが現状ではないか、こういうように私は思っておるわけです。いや、参加も不参加も決めてないと言えば、本当ですかと言う人の方が多いわけでありまして、そういう意味では、マスコミの報道というものは非常に遺憾だと私は思うし、またマスコミから言うならば、いや、日本政府の態度がおかしいんだ、やはりあんなことを言っておるが実際は不参加に近いんだと言われるかもわかりません。  いずれにしても、そういう報道がなされているということ、あるいはアメリカ国務省も三月十八日、モスクワ・オリンピックをボイコットするとのアメリカ政府の決定を支持している国のリストを発表しておるわけでございまして、その二十八カ国の中に日本が含まれていることもまた事実だ、こういうように思いますが、こういう点について一体どこへ抗議するのかということになるかもわかりませんが、少なくとも抗議するなり、あるいは真実というものを明らかに国民に説明する必要があるのじゃないか。国会答弁ではそういう御答弁をいただいているわけですけれども、国民全体がそのことについて十分理解されてないと思うのですが、その点どうですか。
  164. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 モスクワ・オリンピックの参加については五月二十四日が最終のエントリーの期限になっておりまして、まだその間には若干の時日もございます。二月一日の政府の見解のように、そもそもオリンピックというものは平和な雰囲気の中で行われるべきものなんだということでいっておりまして、ところが、アフガニスタンの事件も起こる、それに対する国連緊急総会の大多数の国の非難決議が行われるというような状態にあるということは残念だ、しかし、そもそも参加、不参加はJOC、日本オリンピック委員会が決めることである、そういう趣旨のものでございまして、この点につきましては現在も、いまの二月一日の見解から変わっておらないわけでございます。  それで、世界情勢についての判断、これは各国もいろいろ似たような情勢、特にヨーロッパ諸国にもございます。一番好ましい状態は、最後のエントリーの期間までにソ連のアフガン撤退ということが何らかの形で明らかになることであるわけでございまして、いずれにしても、現在は世界情勢を見ながら、それからJOCは、これは民間の機関でございますから、各国のNOCと連絡をとりながら情勢をウォッチしていくということでしばらくまいるのではないかと考えております。
  165. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 先日の朝日新聞の世論調査で、モスクワ・オリンピックについて参加論は五五%、それから不参加論が二二%との総括結果が出ておるわけであります。また、NHKでも調査されておりまして、ほぼ同じような数字が出ておるようでございます。特に重要なのは、総理府の広報室が世論調査をしておるようでございまして、その結果出た数字というものは、これは三回されておるわけでありまして、第一回目は一月二十八日から二十九日、参加が五一%、不参加が二〇%、そして保留が二七%、こういう数字が出ておるようでございます。第二回目が二月の六日から七日、この場合、参加するが三六%、それから不参加が三八%、そして保留が二六%。第三回目が二月の二十七日から二十八日で、参加が五一%、不参加が二七%、保留が二二%。総括いたしますと、全体的に参加論が半分を超えている、こう言ってもいいのではないか。当然、政府の一機関が調査をされたわけでございますから、その結果というものを、国民の意思というものを尊重することが正しいのではないか、こういうように思います。  その調査結果について御存じであるとは思いますが、御存じか、また、そのことについてやはり国民の世論の動向について尊重すべきであるし、またこういうような調査結果については広く公表すべきではないか、このように思いますが、どうでしょうか。
  166. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 調査結果については私も聞いておりますが、なお担当の政府委員から答弁させたいと思います。
  167. 小野佐千夫

    ○小野(佐)政府委員 お答えいたします。  総理府では、アフガニスタン問題も起こりましたし、ことしの七月のモスクワ・オリンピックへの参加について、参加、不参加の声がいろいろと起きてまいりましたので、その動向の一部を把握するために、簡便な電話によりまして、行政上の対応の一つの素材といたしまして、先ほど先生おっしゃいましたように、前後三回調査を実施いたしました。  調査の結果につきましては、第一回目が一月二十八日、二十九日の調査でござますが、参加が五一%、不参加が二二%……(上田(卓)委員「中身はいいです、ぼくがいま言うたから」と呼ぶ)はい。そういう、先生先ほどおっしゃった結果でございます。
  168. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 その調査した結果はわかっておるわけだから、それに基づいて——国民の世論は大体五〇%以上が参加すべきだということになっているんですね。これは一民間機関がやったのではなしに、総理府がやっているわけです。だから、そういう意味で、そういう結果に対して政府は尊重すべきではないか。あるいはいま出ておる結果については、NHKとか朝日新聞などに報道されているわけですけれども、いまの総理府の調査結果が出ておるものについては公表されていないわけですから、広くそういうものは機会あるごとに国民に知らすべきではないか、こういうことを言っておるわけです。
  169. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この参加、不参加の問題は、基本的にはJOCが決定すべきものでございます。政府としても、国際情勢、国内情勢等を慎重に見守りながら将来の対応を考えていきたいと存じます。
  170. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 このモスクワ・オリンピックについては、四年に一回ということで、もしかアメリカを初めとする西側諸国が、ソ連のアフガンに対する軍事行動ということを理由にしてボイコットするということになりますと、四年後のアメリカでのオリンピックが果たして正常な形で開催されるかということになり、これからのオリンピックは開催不可能ということになりかねないわけでありまして、何としても今回のモスクワ・オリンピックについては成功させるべきではないか、こういうように思っておりますし、当然、スポーツに政治が介入すべきでないということがわが党の基本的な見解でもあるわけでございます。そういう意味で、いま外務大臣からお話がありましたように、JOCが決めるということで、そのとおりJOCが決めることに対して、どのような結論に達しても政府が圧力をかけるというようなことは断じてあってはならない、私はこのように思いますし、欧州の十六カ国の国々が集まって、やはりスポーツに政治は介入すべきではないという結論が出たようでございますし、また、そのうちの八カ国のNOCがモスクワ・オリンピックに参加するという態度を決めたというようなことも新聞報道で出ておるようでございます。そういう意味で、一日も早くJOCがそういう態度を明らかにして、わが国も全面的に協力をすることが世界平和にとっても大事なことではないか、私はこのように思っておるわけです。  特にアフガン問題でソ連に対する経済制裁をやったからといって、あるいはモスクワ・オリンピックをボイコットしたからといって——私はよくわかりませんよ、ソ連政府の出方ですから。しかし、それだけでソ連が経済的にまいったとか、あるいはオリンピックについてはもう開催を断念するというような、そういうなまやさしい国ではないように私は思うわけでございまして、そういうことをやったらアフガン問題が解決するんだ、そういう現状認識というものについて、いや、どうなるかは別にして、一回やるだけやるんだという意見もそれはあるかもわかりませんが、やはりそれは有効な手だてではないというように申し上げておきたい、私はこのように思います。  最後に、それに関連して申し上げますが、スポーツを行うということは国民の基本的権利であろう、こういうように思うわけでございます。社会教育の中に位置づけられておるわけでございまして、憲法上も完全に保障されたものであろう、このように思います。  特に、スポーツ競技の頂点でありますところのオリンピック参加を選手にボイコットさせるということが万が一にもあれば、私は、憲法違反であると言われても仕方がなかろう、こういうように思うわけでございます。東京オリンピックに備えて昭和三十六年にスポーツ振興法も制定されておるわけでございまして、その条文を見てもそのことははっきりとうたわれておるのではなかろうか、こういうように思います。  社会教育法、あるいは先ほど申しましたスポーツ振興法を引用するまでもなく、あらゆる機会、あらゆる場所で国民が体育、スポーツを行うことは権利であり、体育、スポーツの振興と条件整備は国の責務であるということはもう当然のことでなければならない、このように思っております。特にスポーツ振興法は第一条の目的の中で、政府がスポーツを政治的目的のために利用してはならないと厳しく規定しておるわけでございます。  文部省の方にお聞きいたしますが、この第一条の解釈はそれで間違いないですね。そして文部省としては、そういうスポーツに政治が介入するということは好ましいと思っているのか、好ましくないと思っているのか、その点について、モスクワ・オリンピックについてもひとつ文部省の考え方を明らかにしていただきたい、このように思います。
  171. 戸村敏雄

    ○戸村説明員 お答え申し上げます。  スポーツ振興法の一条にございますように、いま先生のお話のありましたとおりでございまして、いわゆるスポーツというのは、強制して政治の手段としてスポーツを実施させるというようなことがあってはならない、こういうような規定をしてあるところでございます。
  172. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 モスクワ・オリンピックについても一緒ですね。あれはスポーツじゃないのですか。
  173. 戸村敏雄

    ○戸村説明員 オリンピックと政治の問題ということでございますけれども、いわゆるオリンピックへの参加というのはJOCが基本的に決めることであるというふうに承知しておりますから……。
  174. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 質問を終わります。
  175. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長代理 新井彬之君。
  176. 新井彬之

    ○新井委員 一九八〇年代は非常に外交が大事な時代だと私は認識をいたしております。平和の問題にいたしましても、あるいは経済の問題にいたしましても、エネルギーの問題にいたしましても、世界各国との兼ね合いをどのようにするか。非常に多様化されているわけでございますから、その中で大来外務大臣がいま非常に御苦労をされておられるということは、私も十分承知いたしているわけでございます。その中で、やはり今後の日本の内政問題におきましても、世界各国との関連におきまして、外務省がどうしても主体になって、これからのエネルギーあるいはまた平和、いろいろな問題の矢面に立たなければならないような時代がいま参っておるのではないか、このように考えるわけでございます。  そこで、きょうは非常に時間が短いわけでございますから、簡単に大来外務大臣の外交の基本姿勢についてお伺いをしたいわけでございますが、余り大ざっぱなことを聞いてもあれでございますから、一つの例を挙げますと、中近東とかアフリカ地域、いまも出ておりましたけれども、わが国の外交の基本方針、特にアフガン問題とかイラン問題とか、非常に微妙な大事な問題を抱えているわけでございますが、そういう中で、八〇年代の主要課題である資源エネルギーの問題との関連について今後どのようにやられていくのか、その基本をお伺いしておきたいと思います。
  177. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 けさも多少そういう点についての考え方を上原委員の御質問に答えて申したわけでございますが、簡単に言えば、平和と建設を主力に日本の力を使うという外交であるべきだと思います。それから日本人の置かれた立場から考えまして、特に第三世界といいますか、開発途上国の立場というものを十分に踏まえた外交でなければならないということも考えておるわけでございます。また、日本の経済力も非常に大きなものになってまいりましたので、そういう力をいまの平和と建設に用いる、そのことがやはり日本自身の国際的な立場を高めることにもなりますし、また同時にそれが日本の安全と経済的な一層の進歩にもつながる、大筋でございますけれども、そういう考え方をしているわけでございます。
  178. 新井彬之

    ○新井委員 もう一つ突っ込んで、PLOは国際法社会でどういう位置にあると考えておるか。
  179. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 御存じのとおり、PLOは政府ではございませんし、国家ではございませんし、かつ国際機関でもない。その意味で、国際法上の位置づけということになりましても、ちょっとどの範疇にも入らないものでございます。したがって、法的な概念というよりはむしろ政治的な力、影響力等が主として現在問題にされておるのであろうと私どもは理解いたしております。
  180. 新井彬之

    ○新井委員 そうすると、PLOは少なくとも国家に準ずるものという認識でございますか。
  181. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 一口で言って、そういうものであるとも言いかねると思います。多少国家に似たような面もないではないということでございますが、しかし、国家というよりはむしろ一種の政府みたいなものであると言った方がより近いかと思います。ただし、政府あるいは国家に準ずる、法的な意味で準ずるということは言えないのではないかと思っております。
  182. 新井彬之

    ○新井委員 そうすると、パレスチナは民族自決の原則にのっとって独立すべきものと考えますか。
  183. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 日本政府のパレスチナ問題に関する基本的な態度は、御存じの国連安保理決議二四二に加えまして、パレスチナ人の国連憲章に認められた正当な権利というものを尊重し、また実施されなければならない、大ざっぱに言うと、こういう立場でございます。かつ権利の内容としては自決権を含む。もしパレスチナ人が独立国家をつくろうと思うのであればそれも含まれるというふうな態度をいままで明らかにいたしております。
  184. 新井彬之

    ○新井委員 さっきもお話が出ましたが、園田特使が中東歴訪の際、一応PLO首脳と正式の会談をするというようになっておったのが、アメリカが難色を示したということで会談の予定が取り消しになったというぐあいに私は聞いておるわけでございますが、こういう自主性のないやり方といいますか、そういうことでもいけませんし、やはりアラブの諸国を重視するということであれば、中東政策を非常に大事であるというならば、PLOに対する考え方、それがやはり明確でなければならない、こういうぐあいに私は考えるわけでございます。政府も、PLOの国際法上の地位を明確にして今後対処しなければ、中途半端に終わるんではないか、こういうように思うわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  185. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 政府としましては、PLOはパレスチナ人を代表するものと感じておるわけでございます。決してPLOを軽視しておるとかあるいは全く無視しておるということはございません。  現に、昨年の秋からアラブ首長国連邦のアブダビにおきまして、わが方の村田大使と先方のPLOの幹部との間で対話が持たれております。たとえば先方でも外務大臣に相当する政治局長のカドウミ氏も一番最近の対話に加わっております。そういったようなわけで、われわれとしてはPLOとの対話、お互いにいろいろな意見の交換、共通関心事項についてのいろいろなディスカッションということに重点を置いておるわけでございます。なお、アブダビだけではなくて、たとえばシリアのダマスカスでございますとか、あるいはベイルート、ときには国連総会の舞台でありますニューヨークでも接触を持っております。  この間におきまして法的にどうであるかという御質問でございますが、法的には先ほど私が冒頭に御答弁申し上げたとおりでございまして、この点余り突き詰めてまいりますといろいろな意味で動きがとれなくなる面もあるやに存ぜられますので、もっぱら政治的には無視すべからざるものであるといった点から話を進めておるわけでございます。
  186. 新井彬之

    ○新井委員 園田特使がどう言ったとかこう言ったということは別にいたしまして、アラファト議長またはカドウミ政治局長が近く来日する。そのときに、日本パレスチナ友好議員連盟の招待状では公式なものとは認めていない。政府としての正式な招待でなければいけないというような問題があるようでございますが、政府として正式に招待するようなことはお考えになっておりますか。
  187. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 政府として正式に招待をするということは考えておりません。このことにつきましては、先ほど御答弁申し上げましたPLO幹部との対話においても先方にそれは伝えてございます。  ただし、これも先生御案内かと存じますけれども、すでに総理及び外務大臣よりたびたび御答弁申し上げておりますように、もしパレスチナ友好議員連盟の招待をあちらが受けられまして東京にお見えになりましたときは、日本の要人との会見その他すべての点で政府としてはこれを支援する。これは一九七四年のカドウミ政治局長の来日の際の先例に従う、こういった点を御答弁申し上げておるとおりでございます。
  188. 新井彬之

    ○新井委員 時間がないので、そういうところのこれからの中東政策というものを考えますときに、やはり現地に行かれているいろいろな方々の話を聞くのと政府の考え方に非常に隔たりがあるように思うわけですね。したがいまして、そういうところの実態といいますか現実というものを一遍またよく調査なさって、現実的問題として進めていただきたい、こういうぐあいに思うわけでございます。  話は変わりますけれども、旅費についてお伺いしておきますが、外務省方々が外国なんかにずっと行かれている場合に、きょうは本当は大蔵省を呼んでおけばよかったのでございますが、大蔵省見えてませんのでえらい申しわけないと思うのですが、航空運賃が上がったりあるいは宿泊費が上がったり食費が上がったり、国によって非常に物価高騰という問題があるわけでございます。そういう中で日本の旅費規程とかそういうものは決められているわけでございますけれども、自分で自腹を切らなければいけない。転勤を一つするにしましても、一カ月間くらいはやはり前に行って引き継ぎとかそういうものをしなければならない。そういうときの宿泊施設であるとかそういうものは、予算が合わないために非常に苦労なさっておる、こういうような現状を私はいろいろ聞かせていただいているわけでございますが、そういう現状についてはどのような認識をお持ちでございますか。
  189. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 仰せのとおり、この旅費法は国内旅費、外国旅費を通じまして大蔵省所管の法律でございまして、その別表等でいろいろ御指摘の宿泊料とか日当とかこういうものが規定されておりますので、最終的には大蔵省の所管当局が旅費法の改正というような形で取り上げられる種類のものでございますけれども、外国旅費の部分に関しましては外務省関係各省庁、それぞれ予算をいただいておりますので、その中でも大口の外務省として最大の関心を持っている部分でございます。  御指摘のとおり、航空運賃が上がりますと、結局年間に外国旅費として配付を受けたものの中での出張できる人間の数がそれだけ減る、航空運賃は実費支給でございますから、旅費の総額がふえない限り出張回数が減るという形で影響を受けるわけでございます。その面からも予算をふやす必要がそこに生ずるわけでございますが、当事者にとって一層大きな問題は日当、宿泊料の問題でございます。  旅費法では指定都市とか甲地、乙地というような区別をいたしましてそれぞれの金額をそれぞれの等級に応じまして規定していることは御承知のとおりと思いますけれども、ホテル代とか食事代が近年と申しますか、ごく最近も非常に上がっておりますのでなかなか追いつかない。この部分の改正は去る昭和五十年に行われて以来でございますので、その後円高というようなことで一時的には物価高が相殺された時期もございますけれども、最近また円安傾向ということになってその辺の困難がふえていることは最近非常に痛切に感じる点でございまして、私どもが試算としてとりました主要都市における通常宿泊するにふさわしいホテルのホテル代と、その当事者が支給を受ける額との間にやはりギャップが生じているというのが実情でございます。  これに対しましては、結局出張者がいろいろ才覚をこらして、多少安いホテルに移るとかあるいは割引をしてくれるホテルを探すとか、それぞれ工夫をこらして、支給を受けた旅費の中で何とか賄うという努力をしているわけでございますけれども、これは限度がございますし、またホテルの格を落とすことは別な面で出張者の活動にマイナスになるということもございますから、これはやはり適時その辺の改善を図らなければならないわけでございます。  なお、いま御指摘がありましたように、転勤時の規則というもの、特に種々の理由、戦乱であるとかあるいは交通状況が非常に悪いというようなときに相当な荷物を空路で運ばなければならないというような問題が最近ときどきございます。最近で申しますと、アフガニスタンから日本に帰る館員について、陸路を使えないというような事情がございました。そういうようなことになると、現在の旅費法には海路と陸路の支給規定されておりますが、空路というものは規定されてない、これも一つ今後の問題点でございます。  そういうような意味で、私どもは現地の実情を詳細に調べまして、外務省といたしましては最も早い機会にその辺のところの改善を図りたいと思っておりますし、その過程で大蔵当局と十分協議したいと考えております。
  190. 新井彬之

    ○新井委員 これは簡単なことでございますが、一番基礎的な大事な部分でございます。そういうわけで、そういうことを抜かしての外交というのはなかなかうまくいかないと思いますので、やはりそういう基礎的な部分、当然国がしなければいけないような部分につきましては、ひとつ官房長もよく大蔵省等にも申し上げまして万全の体制だけはとっていただきたい、このようにお願いをいたしておきます。  それから、外交官というのはいま非常に危険な職業であるということが言われているわけでございます。イランのアメリカ大使館の人質事件は別といたしましても、各所で、国情の不安定な国におきましては外交官が人質にねらわれるということがたくさんあるわけですね。これはちょっとケースが違うかわかりませんが、昭和五十二年十二月二十五日、ラオスの首都ビエンチャンで日本大使館の杉江清一臨時代理大使と妻の妙子さんが惨殺体となって見つかった、こういうことがあるわけでございます。時間がありませんからぼくがしゃべります。これの真相というのはまだ解明されていないと思うわけですが、事件発生当初から、現地大使館外務省は政治的背景のない単なる強盗もしくは個人的恨みによる犯行と、個人的偶発事件説を主張しておったわけですが、最終的には殉職認定がされたということを伺っておるわけでございます。事件直後、問題の国家間レベルへの波及を恐れて、私的な事故として処理しようとした外務省の姿勢に遺族の人々から不信を抱かれている様子を伝えている新聞があるわけでございますが、伝えられているような処置がもしあるとするならば、これは非常に問題である。  確かに、外交というものは相手の国との関係でございますから、なるたけそういうことに対してトラブルを起こさないというのは当然だと思いますが、やはり正しいことは正しい、どれがどうなったかということは明確に相手国にも言ってやらなければいけない、こういう考え方でございますが、その点一点、ちょっと伺っておきます。
  191. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 当時臨時代理大使を務めておりました杉江一等書記官とその夫人とが現地において惨殺されたという事件はまことに遺憾な事件で、当時以来私ども大変なショックを受けているわけでございます。  当初、事件の真相が判然としなかったということは御指摘のとおり事実でございます。当時のラオスの国情がいろいろ流動的であったということもございまして、なかなかその背景が判明しないということがございました。当時の現地大使館及び東京においてこれを扱った外務省の者は、御遺族の気持ちを裏切ったり故意に波及を恐れて一生懸命にこれに当たらなかったということは絶対にないと私は信じております。ただ、事件の真相が判明するまでにはどうしても時間がかかってしまったということも事実でございますので、身分上の措置としましては、当初一般公務災害にとりあえず認定いたしまして、そのような措置をとった上で、さらにラオス側からの何回かにわたる説明あるいはラオスで得られたその他の情報、さらに同書記官の、職務上生命の危険を冒して犯人と接触せざるを得なかったというような背景が明らかになりましたので、一年四カ月という、御遺族から見れば時間がかかり過ぎたという御意見があることは重々承知しておりますけれども、慎重に関係当局とも話し合いまして、特別公務災害の認定を行った次第でございます。     〔唐沢委員長代理退席、逢沢委員長代理着     席〕  事件そのものについては、遺憾ながらまだ必ずしも判明しない部分があると思いますけれども、現在のところで私どもが理解しておりますところでは、杉江書記官は、当時の非常に混乱した国内情勢の中で大使館の主要館員、また事件当時は臨時代理大使といたしまして大使館の館務処理の責任者の立場にありました。こうして、職務を一生懸命に遂行している過程において、不幸にして犯行に遭ったという経緯であったと了解しております。
  192. 新井彬之

    ○新井委員 この件につきましてもまだいろいろ聞きたいのですが、時間がございませんから申し上げます。とにかく、ラオス側との話し合いの中で、ようやく二年くらいたってから十万キップですか、邦貨にして大体五万円ぐらいのお見舞い金みたいなものが来ているわけでございますが、少なくとも日本を代表して行っている大使でございますから、そういう問題については、よしんば事故があっても、どういうことでそうなったかということぐらいがわからないというのはおかしな話でございまして、外交官のそういう警備とかあるいはまた命を守るというようなこと、そういう問題の一つ一つを調べて重視をしていただきたい、このように思うわけでございます。  それからもう一つ、情報収集能力について民間サイドとの比較をよく耳にするわけでございますが、在外公館と商社ではソースも収集方法も異なりますし、地域事情によって異なるとは思うわけでございますが、特に経済情報なんというのは商社が非常に早いわけですね。その上に、なおかつほかの方の情報も早い、こういうぐあいに言われているわけでございますが、これは外務省としてどのように考え、どこをどう直さなければいけないというぐあいにお考えになっているか、お伺いしておきたいと思います。
  193. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 情報収集活動が外交活動のためにきわめて重要なことはいま御指摘のとおりで、繰り返しませんが、外務省といたしましても、情報収集活動の整備充実、そのための要員の確保、特に地域別、問題別の専門家の養成ということをこの何年来最重点事項一つとしていろいろな面で整備を図ってまいりました。予算面、定員面、制度面といろいろな面で努力を払ってきたつもりでございます。  外務省の情報あるいは現地からの報告というのは公電ベースと申しますか、かなりの正確性が必要とされることがございまして、新聞報道とか商社情報というものとの比較という点は、これまた議論すると長いことになりますが、外務省の場合は、早くなくてはなりませんと同時に余り不正確な情報を公電で送るということには制約がございますという事情はあろうかと思いますが、しかし、それにもかかわらず現在の体制が十分でないということもわれわれ自覚しておりまして、そういう意味努力を怠っていないつもりでございます。  いま御指摘のような経済情報とかあるいは経済協力関係する情報等となりますと、これはそういう面に特に経験のある、事項別と先ほど申しましたけれども、そういう面についての経験の豊富な人間をやはり育成していくということから基本的には始めなければなりませんので、そういう努力は多々払っているつもりでございますが、それと同時に、外務省プロパーの職員以外にも頼る面があるかと思いまして、現在約三百名近くおられますところの在外公館の各省庁出向者の中には経済官庁出向者の方が相当おられます。こういう方々の活躍にまつところもこれ大でございますし、また、そのほかに政府関係機関とか報道界とかあるいは銀行関係方々を中途採用の形で在外公館に配属いたしまして、そういう方にも専門知識を利用して、出向期間中の場合もあればそのまま引き続き外務省にいていただく場合もあると思いますが、そういう形での体制の強化もあわせて図っている次第でございます。
  194. 新井彬之

    ○新井委員 この在外公館勤務は、大体四年間外地勤務をすれば内地では四年ということになっておりますね。その四年のうち大体二年間が一カ所であと二年間は別のところに行く、こういうようなことでございます。商社員は一カ所で大体五年間ぐらいいるわけでございますから、その地域の実情に詳しいということにまでならないうちによそへ行ってしまうというようなことが一つ考えられます。  四十九年だったと思いますが、南米に行きましたときに商社の方々とお会いしたわけでございます。そのときに、向こうは向こう流の商売のやり方があるようでございまして、日本では見積もりから何から、一銭の違いもなくきちっと見積もりを出して入札をする。ところが向こうはそうじゃなくて、幾らぐらいでやると言ったらやりましょうということでやる。ところが足らないと、幾ら足りませんからと言うと幾らでも後でお金をくれるんだ。これはアミーゴ商法と言うそうでございますけれども、とにかくアミーゴ、アミーゴということでやる。そういうような実態が、幾ら本国へこういうわけだからと打電しても本国ではわからない。初めから、もうかるのかもうからないのか、それはもうよくやれということで、えらく商社の人も困っているようなことを聞いたことがございますけれども、やはりその地域、その地域によってどこがポイントであるのか。本当に人づき合いというのは二年間ぐらいして初めて顔見知りになって、それからいよいよ働けるというようなことになるようでありますけれども、そのころにはもう次に転勤ということになりますね。これはやはり考えなければいけない問題ではないかと思います。  それからもう一つ、たとえて言いますと日本語とかアラビア語というのは非常にむずかしいようでございまして、イギリス大使館なんというのは非常に日本語がぺらぺらしゃべれるといいますか、そういう方々が来ているそうですが、非常に優遇をされているようですね。語学に対しては何年かに一回ぐらいは試験勉強がありまして、そうしてそういうむずかしい言葉ができる人に対しては優遇をする。そして世界各国に対してその言葉の非常に堪能な人が行っているというわけでございます。だから各省から派遣をされて、確かにそういう総領事館とか大使館に行っておりますけれども、英語くらいは別でございますが、言葉が本当にしゃべれるまでにはなかなか時間がかかる、そういうようなところもあろうかと思いますので、語学教育というものをもっと重視する、そしてまた優遇してあげるということが非常に大事ではないか、こういうぐあいに考えるわけでございます。     〔逢沢委員長代理退席、委員長着席〕  それから、やはり外務省、非常に人員が足らない。いま行政改革のときでございますからこんなことを言ってなにかと思いますが、やはり必要な人は必要です。それで、それだけの国益になるような形で人というものは当然配置しなければいけない。私は初めに言いましたように、これから外務省が一番の矢面に立たなければいけない問題というのは多々出てくるだろう、こういう意味で申し上げるわけでございますが、一つ在外公館の人員は、たとえて言えばザイールではアメリカが七十人から百人、これに対して日本大使館は八、九人、ベルギーやフランスにしても日本の数倍の人数があるわけです。それにアフリカ諸国にはそれぞれ宗主国というのがあって、宗主国の人間が政府機関に入り、大使館の情報網の役割りを果たしていると言われているわけでございます。この面でも日本はハンディキャップを持っている。また定員四人の在外公館も少なくなくて、しかもそれらの地域は、伝染病などの多い熱帯の不健康地帯などに多いわけであります。そういうわけで、アフリカなどの開発途上国では人員面の検討も含めて在外公館の洗い直しというものをしなければいけないんじゃないか、こういうぐあいに考えるわけでございます。そういうことで、こういう面についてもひとつ今後考えていただきたい。  それからもう一つ外交官もこれからはスペシャリストでなければならないということでございます。今後は特に経済協力を中心にきめ細かな専門分野に強いスタッフの養成というのが必要になってくると思われるわけでございますが、そういうことについてもひとつ今後鋭意努力をしていただきたい、こういうぐあいに思います。  それから外務大臣が一つの将来構想として打ち出した情報システムの設置というのがありますが、これについての具体的な問題、これをお聞きしたいと思います。  以上、やっていただきたいというようなことといまの情報システムと絡めて決意なりあるいはまた答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思  います。
  195. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま非常に具体的な点につきまして、大変私どもの仕事の上にも有益な御示唆をいただきました。可能なものからできるだけやってまいりたい。ことに情報のシステムにつきましては、私も調査問題を長いこと手がけてまいりましたので、こういう時代でもありますし、一方において在外公館から電報等で参ります情報、それから一般に公開された資料の中に相当な情報があるという点もございますし、できるだけこういう国際情勢についての情報をシステマチックに分析する方法を外務省としても考えるべきじゃないか。ずいぶんいろいろな方法、電信などの機械化その他コンピューターの利用あるいは旅券について相当新しいシステムを使ったりいたしておりますけれども、なお一層、いま御指摘のありましたいろいろな点につきまして努力をしてまいりたいと思います。
  196. 新井彬之

    ○新井委員 じゃ終わります。
  197. 木野晴夫

    木野委員長 次に、伊賀定盛君。
  198. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 最初に、外務大臣にお尋ねいたします。私は外交問題なんて素人ですから、素朴な質問をいたしますので、ひとつわかるように御答弁をいただきたいと思います。  大来外務大臣は、きのうもありましたけれども、国会議員でもありませんし派閥の代表でもなさそうでありますし、しかも専門だということで、かなりいまの大平内閣の中では期待されておると思います。また、最近の日本は国際情勢の中でだんだんと役割りといいますか、地位というものが高められてきております。  そこで、外務大臣はいつまで任期があるかわかりませんけれども、大臣に在任中に、外交といいますといろいろ幅が広いですけれども、何をおやりになろうとしておられるか、姿勢といいますか方針といいますか、それをひとつ承っておきたいと思います。
  199. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外交問題につきましては、一つには、世界じゅうで日々に起こってまいります現象、これはいろいろな形でわが国の立場に関連してまいりますので、これに対して適時適確に対応していかなければならない。言ってみれば、日々の情勢に対応していくという面と、ある程度将来にわたってのビジョンなり構想を持って、そういうビジョンなり構想に基づいた外交施策を主体的に進めていく、両者は関連しておると思いますけれども、大きく言ってその二つの面があるように感じております。  一面において一国の外交には継続性が必要でございますから、外務大臣がかわったから政策がまたしょっちゅう変わるということでも困るわけでございましょうし、また、一国の外交はやはり政府全体あるいは国民世論、そういうものも背景にしておるわけでございまして、そういうことから浮き上がった形で、余り個人的な意見なり立場で行動することも不適当だというふうに思っております。しかし、基本的には日本の国民の福祉と安全、これについてますます外交の役割りがふえておるわけでございまして、昔のように砲艦外交というようなことは現代の世界では行われるべきでない。一部に行われる場合があっても、これは世界の世論から大きな反発を受けることでございまして、日本の外交を、言ってみればガンとバターとございますが、バター外交とでもいいますか、日本の持っております経済的な力、あるいは戦後比較的公平に物を考える立場に日本はあると思いますので、道理といいますかリーズンといいますか、そういうものを背景にした外交であるべきかと思っております。  私の任期が何カ月で終わるのか、何年あるのか全然予測が立たないことでございますので、その間に何をすべきかということはなかなかどうも私自身も考えにくいわけでございますけれども、いま申しましたような一般的な考え方の方向について多少とも外交の方向づけにお役に立てば、それから先ほどちょっと出てまいりましたような外交機能の強化と申しますか、これは人員の増強も含め、近代的な情報のシステムも含めて、そういう面でさらに将来外務省の外交機能が前進できるような多少とも基礎工事にお役に立てば、概要そういうことを考えておるわけでございます。
  200. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 どうも大臣、確かにいまも新井さんから金が足らぬとか人が足らぬとかいう話がありましたが、金が足らぬから、人が足らぬからいままでどおりでいいということでは困るわけでありまして、私はもっと極端な言い方をしますと、大臣は命をかけてでも——なるほどいまお話しのとおり、永続性がなければいけません。いけませんが、延長線上にある今日の外交といえども、従来の継続された外交方針にもし誤っておる部分があるならば、大臣は命をかけてでも、あるいは職を賭してでも従来の外交方針を変えさせる。もしそのことができなければ、場合によると、大臣は職を賭すわけですから、大臣をおやめになってもいいのではないですか。私はいま日本の外交にそれくらい強力な一定の方針というものが望まれておると思うのです。何も大来外務大臣、職に恋々として、総理のきげんをとって大臣を一年のところが一年半になるとか、あるいは大平総理が内閣改造するときにもう一期やりたいとかいうような恋々とした気持ちは少なくとも大来外務大臣にはないと思うのです。ですから、いま私が承りました範囲ではきわめて不満でありますから、命をかけてでもひとつこれはやるのだ、こういうものをお示しいただきたいと思います。
  201. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も日本の外交を扱って感じておりますことの一つは、日本の外交が戦後三十五年を経まして一つの重要な時期に差しかかっておるという感じ、印象を持っております。  非常に簡単に申しますと、いままでの日本の外交の大きな問題は、日米とか日中とか日韓とか日ソとか、大体において「日」が必ずつく外交問題であったように思うのでございます。これは偶然のことかと思いますが、私、十一月に就任して以来、大体「日」がつかない外交問題が非常に重大な意味を持つようになってまいりまして、たとえばイラン問題とかアフガニスタン問題とか、しかもこういう問題に対して日本の外交が対応していかなければならない、あるいは場合によるとそういう問題の解決に対して日本の外交がある程度積極的な役割りを果たさなければならない。見方によっては日本の外交が、直接日本自身が関係するいわば二国間の問題、これはもちろん将来とも当然非常に大事でございますが、それ以外に、日本が好むと好まざるとにかかわらず世界の重要な問題について日本も政策形成に参加していったり、いろいろな世界的な物の動きに対して日本意見を明らかにしていかなければならない、そういうグローバルな外交といいますか、バイラテラルな外交からグローバルな外交、そういう表現がいいかどうかわかりませんが、そういうことで、場合によると世界の問題についての日本の貢献、それがまた日本自身の立場にも戻りてくるというような発想も必要ではないかと考えております。  私もこういう仕事に呼び出されたわけでございまして、いまの日本の置かれた段階から考えましても、自分の可能な限り全力投球でやってまいりたいと日々考えておるわけでございますが、もし重大な問題について自分がとどまることが適当でないということがあれば、そういう場合にはもちろん潔く行動するつもりでございますけれども、現段階におきましては、いま申しましたようなことで、できるだけの努力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  202. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 どうも私が期待するような御答弁をいただけないのですが、いずれにしましても、犬やネコじゃないわけでありますから、一つの行動には必ず一定の目的というものがなかったらいかぬと思うのです。そういう意味で、私はいま外務大臣に、あなたは命を賭してでも日本の外交をどう持っていこうとするのかということをお尋ねしたわけです。  そこで、具体的にお尋ねしますが、先般アメリカに行かれました。わずかの期間であったようでありますが、大来外務大臣は何日かアメリカに行かれたわけですから、そこには当然目的があったと私は思います。そしてその目的を実現する手段、中身があったと思います。一体、この間訪米されました目的は何で、だれとどういう内容をお話しになったのか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  203. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今回の訪米の目的は、現在の複雑な世界情勢、いろいろ問題もございます日米関係等につきまして、米側の要路の人たちとできるだけ率直な意見交換をしてまいる。特定の問題について交渉をいたして結論を出すという目的では今回はなかったわけでございます。  会いました人は、バンス国務長官、これは三時間半ぐらい会談いたしましたが、そのほかブラウン国防長官、アスキュー通商代表、ミラー財務長官、クラツニック商務長官、オーエンというサミット会議関係大使、ブレジンスキー大統領補佐官、マクナマラ世界銀行総裁、その他いろいろな方々にも会いましたし、個人的には、学界、ウィルソンセンターあるいはジョンズホプキンズ大学の国際問題研究所その他も訪ねまして、たった二日でこざいましたので十分な時間はございませんでしたけれども、できるだけ各方面の方々にも会ってまいったわけでございます。  それから、最初のお話で、はっきりした目標があって、それに従って行動すべきではないかという点はごもっともだと思うのでございますけれども、一面、特に日本のような立場にある外交、たとえば最小限度の自衛力と、食糧、エネルギー、原料、資源の大部分を海外からの供給に仰いでおる、こういう日本のような立場の国の外交というのは、一つにはやはり柔軟性というものが必要だと思うわけでございます。日本がこうやろうとしても、世界の情勢からいってそうはできないという場合もあるわけでございまして、何をやるべきかということと何が可能であるかということの間を、双方考えながら現在の時点における判断をしていかなければならない。基本的な方向としては、最初に申し上げたような平和的、建設的な外交ということで世界の繁栄に尽くす、そのことがまた日本国民の安全と福祉につながるという筋で参るべきだと思っておりますけれども、原則、プリンシプルというものが世界の現実に対応した柔軟性を持っていくことも同時に必要だというふうに考えておるわけでございます。
  204. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 わかりました。確かに相手のあることですからね。それでは、全部と申し上げるわけじゃありませんが、アメリカ側から何を外務大臣はお聞きになってお帰りになったのでしょうか。要点だけで結構です。
  205. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日米関係におきましては安保防衛問題、日米間の経済問題、国際情勢につきましてはアフガン、イラン問題、さらに東アジアの情勢、もう一つは、六月にベニスでサミットの会議が予定されておりますが、サミットで取り上げるべき問題の予備的な意見交換、そういったことが主たる話題であったわけでございます。
  206. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 ここでいま一々、安保の問題経済の問題、サミットの一種の準備等々を伺うわけにいきませんが、その中で経済の問題で何と何をお話しになりましたか。
  207. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 一つは自動車の問題、それから電電公社の問題も含みます日本の市場の開放、これは向こう側からの問題でございます。それから日本の過剰米の輸出問題、アメリカの農産物の一部の買い付けの問題、経済の問題としては以上のようなことが主なトピックだったと思います。
  208. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 これも多岐にわたっておりますので一々というわけにまいりませんが、きのうも私、本会議で食糧安保というのをお話しさせていただきましたので、外務大臣はお聞き願ったと思いますが、米の問題について外務大臣はアメリカとどういうふうなお話をなさってこられたのでしょうか。
  209. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本の食糧庁、農林水産省といたしましても、六百五十万トンの過剰米のストックがございまして、これの処分の一つの方法として開発途上国に提供する。これは物によっては無償供与の場合もございますし、あるいは延べ払いの場合もあるわけでございます。具体的には、たとえばインドネシア、韓国等からはそういう形での米の供給を求める、延べ払いでの供給を日本からしてほしいという要請も参っておるわけでございますが、一方、日本の国内の米の買い上げ価格は国際価格に比べて相当高いわけでございまして、日本が他国に米を供給する場合には国際価格で出すことになりますので、形の上では一種の補助金をつけて輸出をするようなことになるわけでございます。  これに対して、アメリカの米生産業者、これはルイジアナ、テキサス等に多いようでございますが、こういうところから、日本がそういう形で余剰米を外に供給することになると、本来なら自分たちがコマーシャルに、商業的に売れるはずの米が売れなくなってしまう、これは政府の補助金による不当な競争であるというようなことで、これは私も行ってみまして予想以上に強い抗議が出ておるようでございます。  一つには、従来は大体そういう形で年間に二十万トンとかいう数字を出しておったわけでございますし、昨年の初めもそのくらいのものだろうと日本側では言っておったのでございますけれども、昨年の実績は九十一万トンの米の輸出が実際上行われたということで、にわかにアメリカの米生産者あるいは輸出をやっておる人たちが、米の世界貿易というのは全体としてそんなに大きなものでない、そこに突然日本がそういう大きな量の輸出をするようになったのでは、これは先ほどの話のように商業的な形での輸出のマーケットを荒らすことになる、できるだけそういうものを減らしてもらいたいということで、これは日米間でできるだけ早く、できれば四月の半ば以前に、ハイレベルの、それぞれ農業担当の者でそういう話し合いをしていただくということで、私は別に専門の方でもございませんから、大体いま申し上げましたようなことで、この問題については帰ってまいったわけでございます。その結果を農林水産大臣にもお伝えいたしてあるわけでございます。
  210. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 これは外務大臣の所管でなくなるかもしれませんが、御承知のとおり日本の農業というのは米作農業なのでして、米が日本の農民の生活の基本をなしておるわけです。米の生産がアメリカ農業の中心ではないはずであります。ですから、なるほどアメリカの輸出する米と日本の米が競合するということでいろいろお話が出ておるようですけれども、基本的に違うのですね。アメリカ農民の米生産が占める地位と、日本の農民の米の生産が占める地位と違うわけであります。  そこで、これは食糧庁の方になるかもしれませんが、競合と言いますけれども、世界の食糧事情、特に米を中心にして考えましても、世界的に米が足らぬはずであります。そうしますと、東南アジアで米の輸出余力を持っておるのはベトナムとタイしかないはずなのでありまして、あとは全部米が足らぬはずであります。極端な話をしますが、いま日本は一億一千万の国民で年間所要量が一千万トン。御承知のとおり隣の中国は十億の民です。中国は何も好きこのんでアワやヒエを粉にして食べているわけではないわけでありまして、これは本当は米作国民、米食国民です。日本人並みに食べるとすれば、十億人ですから、一億トン要るはずです。そうすると、日本はいま六百五十万トンの米が余っておると言いますけれども、中国に持っていきましたら十五日分ないですね。御承知のとおり、いま中国は一生懸命に灌漑用のダムをつくったり何かしております。私も中国には何回か行っておりますから、中国の農民が米をとるためにどんなに苦労しておるかということは目の当たりに見てきております。インドのごときは、これは中学校の教科書にちゃんと書いてあるのですが、一日に千人ずつ食糧がなくて餓死しておる。いまの中学校の社会科の教科書に書いてある。  ですから、アメリカの輸出する米と日本の米が一体どこでどういうふうに競合しておって、日本にけしからぬ、遠慮してくれとおっしゃるのか、そこら辺を明らかにしていただきたいと思います。
  211. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカも、日本がたとえばカンボジアの難民にただで米を供給するというようなことは歓迎いたします。これは商業的な取引ではなくて純粋の援助でございます。従来もバングラデシュとかその他食糧の不足あるいは干ばつ等で非常な不作の場合に日本の食糧援助も行われておるわけでございます。直接行われる場合もありますし、また、国際機関を通じて行われる場合もあるわけでございます。こういう形は問題ないのでございますけれども、商業的な米のマーケットと競争する形で日本の米が外へ出されるということになると、もちろんお話しのように米作はアメリカの経済、アメリカの農業の中でそんなに大きな比重を占めているわけではございませんけれども、ルイジアナ、テキサスで直接米の生産と輸出を商売にしておる人たちから見れば、自分たちの商売が政府の補助金つきの日本米の輸出によって不当に脅かされておる、不公正な競争にさらされておるという理屈になるわけでございます。いまのようなことで、日本が贈与の形で食糧の乏しい国に米を出すということであれば特にそれほど問題にはならない。ただ、売ろうとするといまのような問題が出てくるということではないかと存じます。
  212. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 ただいま申し上げましたアメリカの輸出米とどこの国で競合しておるのか。競合しないところがあるはずなんですけれども、これは外務省でわからなかったら、食糧庁でも結構です。外務省でも結構ですよ。
  213. 秋川喜司雄

    ○秋川説明員 お答えいたします。  アメリカは現在世界一の米の輸出国でございまして、昨年あたりの実績で見ましても約二百四十万トンぐらいを出しておるわけでございます。また、その輸出先につきましてもかなりまとまった数字で出ておりますものだけでも三十カ国近いわけでございまして、ほとんど世界じゅうの国にばらまいて輸出をしておるという状況でございます。したがいまして、日本から米を輸出いたします場合に、大抵の地域で何らかの形でアメリカ米とぶつかってくるという可能性がきわめて強いわけでございます。特にアジア地域を中心に考えますと、先ほど先生のおっしゃられましたタイあるいはビルマが輸出国としてございますけれども、自余の国はおおむね輸入国でございますので、たとえばインドネシアでございますとか韓国、その他バングラデシュでございますとか、日本が昨年は主としてそれら三国を中心に出したわけでございますけれども、いずれも競合する形になってくるわけでございます。
  214. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 インドでは、いま申し上げましたように、中学校の教科書にいまでも一日に千人ずつ死んでいっていると出ている。そうするとどういうことになるのでしょうか。インドで競合しますか、中国ではどうでしょうか。
  215. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 インドでは毎日千人餓死している。これは年によってもいろいろな違いがございますけれども、この数年来インドの食糧生産も相当上昇してまいりまして、食糧事情はかなり改善をしておるように思いますが、ここ三、四年は国内生産で、ある程度ストックができつつあるという状況と聞いております。  中国は人口も多いわけでございまして、穀物五百万ないし千万トンの輸入が必要だということも聞いておりますが、この辺はやはり農林水産省の方からお答え願った方がいいかと思います。
  216. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そうすると、日本文部省の中学校の教科書はうそを書いてある。きょうは文部省おられませんからなんですけれども、ぜひひとつ外務大臣、同じ大臣のことですから、中学校の教科書にうそを書かないように、これは閣僚会議等でもよくお話をしていただきたいと思います。どっちが本当か。外務大臣がおっしゃることが本当か、それとも中学校の教科書に書いてあることが本当なのか、これをひとつお願いをしておきたいと思います。  それから、いまの外務大臣の御答弁、農林水産省の方から答えろということでありますが、中国は米が足らぬはずでありますが、昨年実績で九十一万トンの、これは貿易ベースと援助を合わしての数字だと思うのですが、外務省として中国とそういう米の話をされたことはおありでしょうか。
  217. 木内昭胤

    ○木内政府委員 外務省としまして、米の問題につきまして特定して中国とやり合ったことはございません。私どもが主としてやっておりますことは、むしろ炭鉱の開発あるいは鉄道の建設といったインフラ部門に対する経済協力についての交渉をやっております。
  218. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 食糧庁にお尋ねします。  外務省は米の問題について努力したことがない。ほかの方は努力したかもしらぬけれども、中国とは少なくとも話をしたことがない。ところが、いま日本の財政赤字だということで三Kと言われております。赤字の大きな責任が、三Kの中の一つが米ですから、そうすると、食糧庁としては余剰米の処理について外務省とは何にもお話しにならなかった、食糧庁だけでセールスして回っておるのですか。
  219. 秋川喜司雄

    ○秋川説明員 米の輸出につきましては、当然のことでございますが、外務省とは十分御相談をし連絡をとりながら進めておるわけでございます。  いま中国のお話が出てまいりましたが、中国の社会経済体制、政治の体制も違うわけでございまして、単に米だけで申し上げますと、中国は毎年米を輸出をいたしております。少ない年で大体四、五十万トン、少し多ければ百万トンを超すケースがございますけれども、中国の食糧事情はいろいろ言われておりますけれども、少なくとも米に関します限り輸出国でございます。そういう事情がありまして、私どもの方といたしましては、米の輸出をいたします場合には、むしろ相手側からの要請を受けまして、外務省その他各省庁といろいろ御相談しながら検討いたしまして、国別に数量その他も決めてまいるというやり方をいたしておるわけでございます。
  220. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 おっしゃり方はよくわかりますが、輸出にもいろいろございまして、本当にたらふく食べて輸出する場合と、あるいは出血輸出というのがありまして、一国の経済の中では本当は足らぬけれども、貿易の収支を合わせるためには涙をのんで輸出するという場合もあるわけでありますから、いまの御答弁を私はまるのみで信用するわけにはまいりません。仮にそうであったとしても、いま外務大臣から御答弁のありました、日本は高いから補助金を出す、だからそれはダンピングだ、それがけしからぬというアメリカの指摘、表面的に見ますとそうでありますが、なぜ日本の米が高いのかということを一遍考えてみたいと思いますが、なぜ日本の米が高いのでしょうか。その原因についてひとつお話を承りたいと思います。
  221. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは私の所管でございませんけれども、また農林省からもお話があると思いますが、私も経済の専門家として、そういう問題を以前からいろいろ考えたこともございます。一つは、やはり一戸当たりの耕地面積が小さくて、他の大きな耕作をやっているようなところに比べて生産性が十分に上げられない。賃金は世界的な水準になってまいる。先進国の他の国と匹敵するような賃金になりまして、これは農家の所得もそれに見合わなければならない。生産性が低くて賃金は他の先進国並みとすれば、どうしても生産物の価格が高くなる。経済的に言えば、そういう点に一番基本的な原因があるかと考えております。
  222. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 だんだんと話が横にいってしまうのですけれども、外務大臣、そうすると、アメリカは日本より先進国だというわけですね。アメリカの賃金の方が日本より高いのじゃないですか。それでアメリカの米が安いんですね。もっともアメリカの場合は耕作面積が非常に多いです。ですから、日本の米よりも安いということになることはわかっています。  そこでだんだん時間が迫ってまいりますので、私の方から申し上げます。  なぜ日本の米が高いかということですが、これは農林省から伺わぬでも私の方からこれも申し上げます。規模の拡大だということでいま日本の農林水産省が一生懸命になっています。規模の拡大なんかできっこないんです。農林省がどんなに声を大にしましても、規模の拡大はできません。今日、日本の米の生産にしましてもあるいはその他の日本の食糧の生産の主体は兼業農家でありまして、兼業農家が日本農業の主体であります。したがって、今度農林省は農地法の改正をしたりいろいろと措置しておりますけれども、規模の拡大はできません。何とならば、兼業農家は放しませんから、どんなに農地法を改正しようとも。したがって、私から言わせますと、規模の拡大というようなできもしないことを農林省は高らかに掲げて、そして日本の米を安くする、あるいは総合農政とかいろいろおっしゃっています。規模の拡大はできない。できないことを高く掲げている。  実は日本の米が高い原因はほかにあります。それは何かといいますと、基盤整備に非常に金がかかるということであります。しかも手間のかかることばかりやっています。いままでは一反規模の基盤整備をやらしておいて、今度は農機具が大きくなったからといって二反規模、圃場整備をやらしております。いずれそのうちに三反規模の基盤整備をやるんでしょう。そして同じところに何回も投資をして、そのたびに農民の借金がふえてくる。これは米代にはね返ってきます。  もう一つ重大な問題があります。農業融資です。農業融資にいたしましても、日本はなるほど法律では二十年以内ということになっていますが、二十年なんというような農業融資はありません。実際は十五年ないし十年以上です。なるほど植林、山林、これの融資は二十五年以内ということになっております。これは永年作物です。単年作物も十五年以上のものはございません。まず、償還期限がむちゃくちゃに長いということです。そして利子です。利子も、日本の場合には五%以下というのは、三・五%というのがあります。そして無利子というのがあります。なるほど後継者の資金は三百万ほどが無利子であります。しかし、それ以外は全部五%ないし七%以上です。  ちなみに、アメリカの米が安いといいますけれども、アメリカの場合には、農業金融は償還期限からいいましても二十年以下の利子はありません。そして北欧、スイスだとかデンマーク、ノルウェー等々にいきますと無利子です。償還期限は百年です。孫が返せばいいんですね。ですから、一つは基盤整備、日本の言葉で言いますとこれは企業農家の育成だそうであります。日本では企業農家はできるはずがありません。それほどアメリカであるいは北欧諸国で農業というものを保護しておっても、それぞれその国の中では他産業に比較いたしますと農業の生活水準が落ち込んでいきます。  それを日本ではおやりにならずにおって、日本の米が高い、だから輸出する場合には補助金を出さなければならぬ、そうするとダンピングではないかといって非難を受けておるわけであります。ですから、日本の農林省、外務省は本気で日本の農業なり農民なりというものを考えておられるのかどうか。  もっと言わせてもらいますと、いまなるほど六百五十万トンの米が余っております。日本の農業をつぶすために農林省も外務省も大蔵省もかかって、食管赤字だといって、三Kの一つ、今日の財政赤字の大きな原因が米にあるように言われておりますけれども、むしろそれは農業をたたきつぶすためにわざわざ五年も六年も六百五十万トンの米をぶら下げて回っておったのと違うかという感じさえも私はするわけであります。ですから、私がいま申し上げます米が高い、安くするためにはどうするかということは、本気でやろうと思えば、アメリカでさえもできるんです、欧州諸国でさえもできるんですから、日本でもできるはずだと思うのです。ひとつ御見解を承りたいと思います。
  223. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 お答えいたします。  いま先生の御質問でございますが、確かに、農業の規模拡大はいろいろむずかしい問題を抱えております。ただ、中核農家、つまり農業の担い手となる農家は全体の農家の大体二割くらいでございますが、農業の生産金額が大体十兆円ございますが、十兆円の大体六割近くをたしか占めるようになりました。その中でも、御承知のとおり資本装備型といいますか、養豚とか養鶏とか酪農とか、そういうものについてはかなりの規模拡大がここ二十年ぐらいの間に進みまして、酪農については先生も御承知のとおり、アメリカとかイギリス並みにはまいりませんが、ヨーロッパの西ドイツとかフランス並みの飼養頭数ぐらいまでいきました。  問題は、土地利用型、特に稲作についてはなかなか規模拡大が進まないということは御指摘のとおりでございます。そこで、私たちいまいろいろ考えておりますのは、所有権の移転というのが一番望ましいことではありますが、所有権の移転による規模拡大、つまり売買による規模拡大は、地価が高い、農地の資産的保有傾向が強いというのでなかなかできませんので、できれば土地利用権、つまり賃貸借とかあるいは請負とか経営受委託でもいいですが、そういうもので土地利用権の集積という形で中核農家の育成を考えていきたいということで、いま農地法制の整備を国会で御審議をお願いしたいと考えておるところでございます。  それから基盤整備あるいは融資条件、いろいろ御指摘のところがございますが、その点についてはいま非常にむずかしい問題がございますので、規模拡大、そのために必要な基盤整備あるいは融資条件というようなものについても、現在、八〇年代の農政なり農業生産のあり方について農政審議会でいろいろ御審議をいただき、私どももいろいろな意見を申し上げております。その中で、これからの基本的な方向を考えていきたいと思います。  なお、最後に食管、三Kの問題についてお話がございましたが、私ども従来、米はやはり農業生産の中心でもございますし、農家の所得の維持あるいは確保という観点から、米価についてもいろいろなことを考えてやってまいりました。そういう意味では農家所得もかなり維持できたのですが、反面、米の生産構造と需要構造の間に非常な違いがありまして、ここ二十年間に御承知のとおり食生活が非常に変わってまいりました。畜産物、果実あるいは肉を食べるに従いまして米の消費が非常に減ってまいりました。そういう需要の急激な変化になかなか生産構造が弾力的に対応できなかったところに、実は今日の米の過剰の問題の基本があるのだろうと考えております。  そのあたりを、つまり需要の動向に対応した農業生産の再編成を図っていかないといけないと考えておりまして、米が過剰なるがゆえに何かやろうというのではなしに、やはりそういう農業生産の再編成、必要なものを国内で極力つくっていくということで農業、農村を守りながらやっていくことが基本であろうと考えております。
  224. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 ですから転作という方向に持っていっておるわけですが、時間がありましたらこの転作の実績等も承りたいと思いますけれども、もう時間がございませんから結構です。いま農林省がおやりになっておる転作も、これは失敗いたします。どうするかということをひとつ真剣に考えていただきたいと思います。  もう一遍もとに返りますが、きのうも私、外務大臣に申し上げましたけれども、一国の安全保障というのは食糧、燃料、そしてまあ私はきのう兵器という言葉を使いました。私ども社会党は自衛隊に反対しておりますから兵器ということは認めたくないけれども、国際的に見ると食糧、燃料、兵器が一国の安全保障だと言われておるわけでありますが、外務大臣、これをお認めになりますか。
  225. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 広義の安全保障という議論が大分出ておりまして、食糧、エネルギー、まあそのほかの必要な資源も幾つかあるかと思いますが、それと直接の防衛力と、こういうものを総合した力、それからやや長期的に考えれば科学技術の面での能力というものも広義の自衛力、安全保障につながっていくということは言えるかと存じます。
  226. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 外務大臣に私は講義をするつもりはありませんけれども、もうこれは常識です。イギリスが第二次世界大戦前に多くの属国、植民地を持っておりました。イギリス本国は工業生産に専念して食糧はすべて属国と植民地に期待した。第二次大戦がおっ始まりました。食糧を船で運びます、日本と同じ地理的条件ですから。そして優秀なドイツの潜水艦にばかばかやられて、戦争では勝ったけれども食糧でイギリスは手を上げてしまったという苦い経験から、いまイギリスが食糧自給率を確保するためにどんなに努力をしているかはもう御案内のとおりであります。  なるほど自衛隊の増強論、きのうも本会議でこれも私お話ししましたから御承知のとおりでありますが、どんなにりっぱな飛行機をつくろうが、りっぱな航空母艦を持とうが、りっぱな火器を持とうが、一体だれがそれを運転するかということでありまして、ロボットが運転するわけじゃないのです。人間が運転するのです、兵器を動かすのです。  そうすると、きのうもちょっと申し上げましたけれども、これも農林省の試算によりまして、日本の食糧の自給率、金額ベースで五十二年度で七一%、カロリーベースでいいますと四八%だそうであります。オリジナルカロリーで計算しますと、私の計算によりますと四四・八八六、農林省に言わせますと四五%の自給率だそうであります。有事とかなんとかということがあるかないか知りませんけれども、仮に有事の事態が発生したときに、どんなにGNP一%以上の自衛隊に増強したとしても、四五%の食糧自給率で一体何日間続くかということであります。そういう意味で私は、食糧の自給率を高めるために、農林省だけに任さずに、外務省あたりも外務大臣も、外務大臣は閣内でも大きな発言力をお持ちだと思います。先ほど申し上げますように、食糧は三つの総合安全保障の一つのかなめでありますから、私はこの際、日本農業というものを、農政というものを基本的に、根本的に八〇年代に向かって考え直さなければ、大きな悲劇をもたらすことになると思いますが、いかがでしょうか。
  227. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私、昨日のお話も承っておりましたし、ただいまも伺いまして、食糧は結局人間の生存の基本でございますから、そういう意味できわめて重要だと存じております。ただ、食糧自給ということになりますと、何を自給するのか、つまり生存に不可欠な、緊要な食糧の自給度を高める、まあ米は一〇〇%を超えているわけでございますが、そういう意味で、私ども日本人の食生活からいえば小麦、大豆などをもう少し自給度を上げてもいいのじゃないか。恐らくコストは大分高くなると思いますが、安全という意味からいってそういう考慮も必要だろうと思います。  ただ、緊急どうしても生存に必要な以外の農産物については、やはりある程度消費者に豊富に安いものを供給するという考慮が必要になるかと思うのでございます。  それからもう一つは、やはり有事の場合に備えて食糧自給度を高くということがございますが、先ほどのイギリスの例、私も以前に東畑精一先生からそのお話を承ったことがあるのでございますが、第一次大戦中にドイツの潜水艦で大分沈められていたのだけれども一方国内に休閑地がたくさんあって、食糧増産に努めたために食糧自給度が、戦争の始まったときは三分の一だったのが、終わったときには三分の二に上がって、どうやら食い物を満たすことができたということを伺ったことがございます。  日本の場合やはり家畜のえさから小麦、大豆等を含めまして年間二千万トンの食糧が海外から入っておるわけでございまして、そのランニングストックがある。さらに一朝有事の場合には家畜のえさを直接人間の食い物にかえる余地もある。ですから、平時から余りぎりぎりな自給政策をやっておることが本当に安全なのかどうか、つまり一朝有事のときの弾力性が乏しくなるわけでございまして、平時にかなりの量の農産物を輸入していることも有事のときの食糧を確保するために役立つ面もあるかと思うのでございまして、大事なことは、平時から非常に高いコストでぎりぎりのあらゆる農産物の自給度を高めるということではなくて、有事のときに人間の生存に不可欠な農産物の増産を急速に国内でやり得る可能性といいますか条件を平時から維持していくということが基本的には大切であろうと考えておるわけでございます。
  228. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そのお説は私は納得できないのです。平時にある程度輸入しておった方が有事に自給率を高めるということは、私にはいただけません、多分それは外務大臣には通ずるかもしれませんけれども。  そこで、もう時間がなくなりましたからもう一度もとに返ります。  この間外務大臣行かれて、日本の米とアメリカの米がかち合うから日本はちょっと遠慮しろとアメリカから言われましたら、外務大臣はびっくりしてしまって、帰ってきて農林大臣にその由を伝えた。一体日本の農林省と日本外務省は、日本の国家、民族、農民のためにあるのか、あるいはアメリカに隷属しておるのではないか、こういう感じさえするわけであります。  そこで、私は冒頭に申し上げました、いままでの日本の外交方針に間違った部分があるとするならば、外務大臣は命をかけてでも一定の方針に基づいておやりをいただきたいと申し上げたのは実はここなんであります。もう切迫いたしました。あと二、三分しかございませんが、実はきょうはそのほか環太平洋構想や、ようやく女性大使が生まれまして、ちょうどことしは国際婦人年でもあったり、そこら辺の選考の基準等も伺いたいと思っておりました。そしていまもお話がありましたけれども、外務省の中でキャリア組と非キャリア組といいますか、ノンキャリア組が今日の中でどうなっておるのかというようなこともお伺いしたいと思っておりました。  そして対外協力、これもお話しのとおり余り評判がよくありません。ひもつきや利子つきでよくありません。この対外協力が今後どうあるべきかというようなこと、それからいまのベトナムの難民問題、これも評判がよくありません。井戸掘りだか医療団だかが、ほかの国はみんなおるのに日本だけが引き揚げて国際的に笑いものになったというような新聞記事も拝見をいたしました。そしてこのベトナム難民をそれぞれ世界各国が受け入れております。アメリカが一万五千人ですか、イギリスが八千人、日本は五百人だそうであります。もっとも日本は単一民族で、アメリカは各国から寄り集まりだからベトナム人が行っても住みやすい雰囲気があるそうであります。日本は単一民族ですから住みにくいということもあるそうであります。  この間も私は姫路の難民収容所に行ってきました。ベトナムの人とも会ってきました。しかし、ここにも日本法律の欠陥があるようです。アメリカあたりでありますと二年ですぐ国籍がとれるそうです。ところが、日本は十年たたぬと国籍がとれぬそうです。いつまでも外国人。これではやはり生活も不安があるし、したがって、将来日本にはおりたくないということでどんどんアメリカ方面に向かって行かれるそうであります。そういうこと等々の問題につきましてもお伺いするつもりでありました。しかし、もう時間がございませんので、以上をもちまして私の質問を終わらしていただきます。  いま種々申し上げましたけれども、もう一度これらの問題について外務大臣と、そしてきょう食糧庁お見えでございますから食糧庁の方からも、約一時間御質問申し上げましたことについて、全般的な答弁になっても結構でありまするし、あるいは御意見でも結構でありますから、お聞かせをいただきまして、私の質問はこれをもって終わらせていただきます。
  229. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 本日いろいろ御意見を承りまして、昨日も伺ったわけでございまして、私どもも、外交の面からいまの国内の農業の問題はさらに十分注意して考えてまいりたいと存じます。  また、いろいろ御質問の積み残しの点につきましては、また何か機会がございましたらそれぞれお答えいたしたいと思いますし、最後に申されました難民の問題についても、確かに政府としてもさらに十分検討してみなければならないことだと私も感じております。
  230. 鴻巣健治

    ○鴻巣説明員 食糧の安定確保を図ること、これは私どもの日本の安全保障につながりますきわめて重要な課題でございます。そういう意味では、私どもいまもやっておりますが、国内で生産可能なものは極力国内で賄うということを基本として考えておりまして、このために生産性の高い中核農家というものをできるだけ育成をして、需要に応じた農業生産の再編成を進めながら、総合的な自給力の向上を図ってまいりたいと考えております。  なお、土地の制約等でなかなか国内でむずかしい、海外からの輸入に依存せざるを得ないものにつきましても、国内農業の発展なり、あるいはこれとの調和ということを考えながら、安定的な輸入ということも図っていかなければならないというように考えております。
  231. 木野晴夫

    木野委員長 次に、瀬長亀次郎君。
  232. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、最初に、安保防衛問題について大来外務大臣の御意見を承りたいと思います。  外務大臣は、二十一日、ワシントンでの記者会見で、今回の会談でブラウン国防長官から出された要求は、一月に東京でブラウン長官と会った際出された内容と——というのは、たしかこれはブラウン長官が韓国、いわゆる南朝鮮から帰りのあれじゃないかと思いますが——違ったものではないと述べられたようだが、今回の会談では、アメリカ側の要求がいわゆる防衛庁の中期業務見積もりにあるということであるのか、そのときにブラウン長官がそういう中期業務見積もりについて発言されたと理解していいかどうか、この点についてお伺いします。
  233. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ブラウン長官はことしの一月に中国の訪問の帰りに日本に寄りまして、そのときに私もお会いしたわけでございますが、当時におきましても、日本が防衛努力をできればもう少し強化することについて希望を表明したわけでございます。内容的なことは防衛庁の方でお話があったと思いますけれども、中期業務見積もりは御承知のように防衛庁限りの案でございまして、政府全体ないし国防会議の決定を経たものではございませんが、今回のブラウン長官との会見では、先方からこの問題、中期業務見積もりに触れたことは事実でございます。
  234. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 一月のときには別に特に中期業務見積もりなどについての発言はなかったわけですか。
  235. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外務省でお会いしたときには、特にその問題は出なかったわけでございます。
  236. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは御承知のように、中期業務見積もりというのは内閣で決まったものじゃないだけに、非常に弾力性のある問題提起なんですね。それでこの中期業務見積もりという問題について、防衛庁だれか来ておりますか。概略簡単にどういうものであるか述べてください。
  237. 原徹

    ○原政府委員 五十一年に「防衛計画の大綱」というものが決まったわけでございますが、それで五十二年、五十三年、五十四年度と、別にこういうものを持たないで毎年度単年度で予算を要求して、それでやっておったわけでございますが、更新をすることにつきまして、たとえば護衛艦であれば二十五年の耐用年数だというふうに考えれば、それはいつごろ更新の時期になるというようなことはわかりますが、しかし、防衛庁全体としてそういうことで、それぞれの幕僚監部、全庁的な意思統一をしておかないと実務がうまくいかない、こういう見地に立ちまして、そして五十五年から五十九年までの大体正面装備についてどういうことをやるかということを防衛庁として決めておこう。  ただし、これは「防衛計画の大綱」の際、今後は五カ年計画というものをやらない、そういう前提、したがって、これは防衛庁がそういうことを頭に置きながら、それに基づいて毎年度の予算要求をする、そして毎年度の予算要求をいたします結果、中期業務見積もりに基づいて要求をいたしましても、これは確かに防衛庁限りのものでございますから、政府レベルの決定というのは予算で決まる、そういう前提でございます。そういう前提でございますから、予算要求をいたしましても、中期業務見積もりのとおりに予算が決まるとは必ずしも限りませんから、これは毎年見直しをする。それからまた一種のローリングという見地も入れまして、三年たったら別な新しいものをつくる、そういうことでございまして、結局これは防衛庁の予算を要求する一つの基礎資料、そういう性格のものでございます。
  238. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 内容で、簡単に触れますが、主力戦闘機F15、これは見積もりでは最初は百機ということであったが、国防報告で百二十三機ということになった後で、何かその機数を直されたように覚えていますが、そうですか。
  239. 原徹

    ○原政府委員 アメリカの国防報告に百二十三機という数字が載っておったわけでございまして、そういう説明は私どもいたしておらないので、それは間違いでございます。向こうも間違いであるということを確認いたしております。中期業務見積もりでは、国防会議で決まりました百機ということで決まっておるわけでございます。  ただ、国防会議で百機と決まりましたときの経緯がございます。と申しますのは、いわゆる104という戦闘機の代替ということでF15を買う、そういう計算で百機ということになったわけでございますが、実はだんだん時間がたちますと、いま持っておりますF4ファントムがございますが、それも減耗するわけでございます。当時防衛庁といたしましては、今後十年ぐらいのことを考えれば、F4の一部の代替分もやはりF15でやらなければならないだろうと考えておりましたから、そのことはあるわけでございます。中期業務見積もりでいろいろ折衝の際、F4は減耗するにしても、まだF4のそういう減耗の実績がないものですから、減耗をどのくらいするかわからないという見地がございました。そこでF4の代替というのはやめたわけでございますが、だんだんF4の減耗がわかれば、その代替というものを何にするかということは決めなければならない、そういう状態にいまあるわけでございまして、いま現在は国防会議でお決めになった百機ということでございます。
  240. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 アメリカが百二十三機で二十三機多いですね。そういうことを要請されたらそれに応ずるということですか、簡潔に答えてください。
  241. 原徹

    ○原政府委員 別にそういう御要請もございません。アメリカの方は、防衛庁に参りましたときも同じ表現で、ステディー・アンド・シグニフィカントということは言われております。そういうことで防衛努力をしてほしいということでございますが、中身について特別にどうということはございません。
  242. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務大臣が、ブラウン長官が特にいまの見積もりについての指摘があったと確認されたわけですが、着実にして顕著な防衛力の要請があったことは間違いないのですが、この見積もりについて、本当に着実で顕著な形で防衛力の強化に当たるというふうにお考えなのか、見積もりについて結論を出した後で今度総理大臣が訪米するという段取りになっておるのか、ここら辺を明らかにしてもらいたいと思います。
  243. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今回は訪米の目的が、率直にいろいろな問題についての意見交換を行うということで、取り決めをするためあるいは交渉をするために参ったわけでございませんので、特にどうするという結論はなかったわけでございます。  総理の訪米がもし確定いたしまして行かれる場合どうだろうかという点は、防衛問題についてはそれなりにいろいろな作業を防衛庁でもおやりになることでもございましょうし、総理が行かれるときに、具体的な内容について何か取り決めをするということには恐らくならないのではないか。午前中にもちょっと申し上げましたが、これからずっと年末まで、今度は五十六年度の予算編成等の作業もございまして、そういう中で政府全体としてどういう考え方をするかということがだんだん固められていくのではないかと思いますので、今度総理が行かれるときに、何かこの問題で具体的な取り決めになるということは恐らくないのだろうと考えております。
  244. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 一国の総理がワシントンを訪問するのですから、具体的な取り決めがないということはちょっと普通考えられないのではないですか、どうです。
  245. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今度総理が行かれる場合も、特別の交渉に行かれるわけではないと思います。近ごろは非常に世界が狭くなりまして、各国の指導者の頻繁な接触が行われておるわけでございますが、私の記憶する限りでは、西独のシュミット首相は、過去一年間に三回ワシントンに行っておるようでございますけれども、また六月にはサミットで七カ国の首脳がイタリアのベニスで会うというような機会もございます。これは常時意見交換の一つの重要な機会であろうかと存ずるわけでございまして、一国の総理が行かれますけれども、必ずその場合に交渉事があって、その交渉の結論に達しなければならないということでもないように存ずるわけでございます。
  246. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの御意見は外務大臣の意見として聞いておきますが、逆にそうなると、行かれる前にいろいろ取り決めが行われるのだといったような予想が立つわけであります。  論を進めてお聞きしたいのは、いまアメリカに安保ただ乗り論というのが御承知のとおりある。これは日本は安全保障をアメリカに依存し、自国の経済力にふさわしい軍事努力をしていない、こういったような安保ただ乗り論に対する外務大臣の所見はどんな所見ですか。
  247. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も、そういうただ乗り論が従来からあることはよく存じておるわけでございますが、今回参りましたときも、下院の外交委員会委員長以下幹部の方にお会いしたときにも、同様な質問が一議員の方からございました。  私の答えとしましては、確かに日本はGNPの〇・九%が防衛費、アメリカは五ないし六%が防衛費、ヨーロッパのNATO諸国は大体三ないし四%というような防衛費の負担率でございますが、これは日本の戦後選んだ道、平和国家として生きる道からきておることで、質問の中で、そういう浮いた防衛費を産業の近代化につぎ込んで、そして競争力のある商品をつくってアメリカの市場に売り込んでくる、これはただ乗りじゃないかという議論であったわけでございますけれども、競争力の方はむしろ日本の経済の貯蓄率が高い。個人の貯蓄でも、可処分所得の二二%くらいのところを最近ずっと維持しておるわけでございます。これに対してアメリカの個人貯蓄は五%くらいということで、それだけ産業の近代化、能率化に投資する資金源が、貯蓄が低いということから大きく違いも出てきておるのであって、防衛費が少ないから日本の競争力が強くなるのだということは必ずしも当たらないと思うというような返事をいたしてまいったわけでございます。  そういう意味でのただ乗り論と、ただいま瀬長委員が御質問になりました経済力と見合わない、それだからただ乗りだという議論もございます。ただ両方共通しておることかと思うのでございまして、私の見解としては、いま申し述べたようなことでございます。
  248. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 安保条約日本の安全、極東の安全とかと言っているんだが、そのために駐留軍がとどまっているんじゃない、駐留米軍の多くは直接日本の安全と結びついてない、一九七〇年の一月、米上院サイミントン委員会でジョンソン国務次官が述べている。駐留軍は日本の安全と直接結びついていないんだ。さらにいまの安保ただ乗り論からすると、アメリカの安保ただ乗り論は、米国やNATO諸国の軍事費、対GNP比で五%なのに日本は一%にも満たない。これはナン上院議員の発言で代表されるように、日本の軍事費と軍事分担をアメリカ並みに、NATO並みに近づけようといった発言があちこちに見られる。それで非常にその要求というものが日本国民にとっては熾烈なんですね。  それでお伺いしたいのは、アメリカの国務次官などが、日本に駐留する米軍は、はっきり直接日本の安全と結びついていないんだという発言をして平気なんですね。事実、私は次のことをまず解明を求めますが、きのうですか、参議院で共産党の立木議員の質問に対して、いわゆる中東ペルシャ湾地域、これはアメリカの死活の問題としてアメリカはとらえている。日本政府も、いまのアメリカ政府のカーター戦略、そのように評価しているのか、日本の死活の問題であるのかということを、これははっきりそうであればそうだと、なければそうでないと簡潔に答えてください。
  249. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 当時のジョンソン国務次官が言われたことは、私もいま記憶いたしておりませんで、どういう背景のもとにそういうことを言われたかわかりませんが、日米安保条約というのは、日本が他の国から武力攻撃を受けたときにはアメリカ軍が来て戦う、日本を守るという約束になっておると思いますので、在日米軍基地が日本の安全に役立っていないということは考えられないと思います。  中東の問題につきましては、日本のエネルギー、一次エネルギーの七十数%は石油でございまして、その石油の八〇%は中東から来ておる。そういう意味で、あの地域で大きな動乱が生じて日本に対する石油の供給がとまるということになれば、経済的には非常に重大な影響があるということは事実だろうと思います。
  250. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 カーター戦略については肯定的な評価をしておるということになるわけですね。それで中近東ペルシャ湾に対して駐留軍が出動する場合、移動のときはいい、直接作戦行動の場合に分けて、外務省は見解発表しているようですが、ひとつお聞きしますが、沖繩の海兵隊、C5Aギャラクシー、大型輸送機、これは空中給油すればノンストップで、いわゆるペルシャ湾、戦闘地域に投入できるということを司令官が言っているわけだな。そうなりますと、ノンストップで発進した、移動じゃなしに直接戦闘行動なんです。こういう場合には政府としては歯どめの仕掛けはありますか。
  251. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 従来、再三政府として答弁いたしておりますいわゆる事前協議の対象になる戦闘作戦行動というのは、日本の施設、区域を出発して直接に戦闘作戦に従事する行動でございます。先生が言われました移動と言われるのが、私たちの言っておる安保条約上の戦闘作戦行動に当たらないという点については、再三申し上げているわけでございます。  じゃ何が戦闘作戦行動に該当するかということは、その部隊の出発のときの任務、態様によって決定していくというのが従来からの政府の一貫した答弁でございます。
  252. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの司令官が言ったノンストップでペルシャ湾、中近東に行けるというような事実は認めますか、給油すれば行けるとはっきり言っているのだな。
  253. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 お答えいたします。  沖繩の司令官の発言がどういうコンテクストで言われたのかつまびらかにいたしませんけれども、C5の性能からして、給油をすれば、からで確かに行けるということは事実でございますが、そのこと自身が先ほど申し上げましたように、発進のときの任務、態様ということによって戦闘作戦行動かどうかというふうに決定されるというのが政府の考え方でございます。
  254. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いままでかつて事前協議の対象になったことは一遍もないのですね、米軍の軍事行動によって。  これは後に回しまして、今度はアメリカ駐留軍の費用の分担の問題、これはたしか一昨年から始まったと思いますが、これは現在の安保、地位協定に基づいて労務費について思いやりの分担をされておるのですね。これもぎりぎりいっぱいなのか。それから、将来は基地に働く労務者の賃金も全額負担していいのじゃないかと思っておられるのか。さらにもう一つは、施設費として何か日本政府がアメリカの駐留軍のためにやれるようなものはないかどうか。そういったものを外務大臣は考えておられるのですか。ちょっと説明してください。
  255. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 駐日米軍の経費の分担につきましては、労務費としては現在の地位協定でも解釈の限界まで来ているというふうに承知しております。  施設関係についてはある程度日本側の分担をふやす余地があるようにこれも伺っておるわけでございますが、今回のブラウン長官との会見では、日本側が在日米軍の経費の一部を負担してもらうということを、従来からしてもらっているわけだが、これはアメリカ側としても高く評価しておりますという発言がございました。
  256. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 その発言あるいは要請、要求にこたえて積極的に駐留軍の経費を日本政府は負担するという御意見だと承っていいんですか。
  257. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは直接には防衛庁の問題、それから予算の問題、大蔵省の問題、日本政府全体の問題でございますから私一存で申し上げるわけにはいきませんけれども、地位協定を変える意思はないんだということは私からはっきりブラウン長官にも申したわけでございまして、地位協定に規定される枠内でということで話し合ったわけでございます。
  258. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後に、この項での結論的なことを申し上げると、いま中近東ペルシャ湾、特にイランの問題、アフガン問題が出て以来、カーター戦略はほとんどそういう方向に、全世界でグローバルに展開しておる。砲艦外交、そういったような展開の中で、いま緊急投入部隊という構想もあり、着々として進められており、しかもその主力の海兵隊は沖繩にいる。現実にいざという場合は日本を基地にしているアメリカの部隊がやってくる。この部隊が日本の国民の血税でもって賄われ、そして戦争へ投入される、この危険性がいま迫っておると私は思うのです。  だから、政治的に言うならば、経済面からもそうでありますが、この駐留米軍の費用の肩がわりということは、米軍の戦力を直接間接、維持し強大なものにしていくことにつながっていくという論理が成り立つと思うのです。アメリカの要求が、どうだこうだと言うから従ったという問題よりも、積極的にカーター戦略に対して組み入れられ協力していくという政府体制がこの思いやり予算あるいは分担、この中にはっきりあらわれておると私は思うのです。そういう意味で、大来外務大臣は、中期業務見積もりについて、着実に顕著に防衛力を強化するようにというブラウン長官の要求を前向きに検討するというお考えであるのかどうか、もう一遍確かめたいと思います。簡潔でいいですから、よろしくお願いします。
  259. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ブラウン長官の着実に顕著にという希望に対しまして、私は着実にということで答えたわけでございまして、顕著は私の方からは申さなかったわけでございます。これは日本国内のコンセンサス、財政上の問題その他いろいろな制約があるわけでございまして、アメリカの要望を希望としては承るけれども、われわれとしては着実程度ということで申したわけでございます。  カーター戦略についてのお話もございましたけれども、日本の立場としては、仮に着実に防衛能力をふやすにいたしましても、あくまで専守防衛という立場からでございまして、日本自身の守り、安全度を高めるという見地からやるべきことでございまして、中東とか世界的な戦略の中に日本が入り込んで、そういうことに巻き込まれるということは日本としては避けなければならない。ただ、いろいろな世界情勢を考えまして、日本自身についてある程度防衛力を強化することは、これは日本人自身が考えなければならない問題でもあると私どもは存じておるわけでございます。
  260. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に、原子力潜水艦の問題についてお伺いしたいと思いますが、これは私もちょうどあのときおりまして、二十二日、ロングビーチ、あれの出港をこの目で確かめました。そのときにはからずも三〇%から四〇%、いわゆる数値の高いCPSが出たということが科学技術庁の調査によって発表された。いま沖繩の新聞、ラジオ、ほとんど毎日書かれて、ショッキングな事件ですから、これは六八年に那覇軍港でコバルト60が検出されたというときと同じようなショックを与えられております。  それで、簡潔でいいですから、お伺いしたいのは、科学技術庁ですか、これは四十三年からことしまで六十六回にわたって来ておりますが、このロングビーチだけがこういった三〇から四〇%の数値が上がっておりますが、これはどういう判定になるか。ロングビーチから出ておる放射能関係であるのか、あるいはそうではないのか、あるいは疑わしいのか、灰色であるのか。そこら辺をはっきりさせてください。
  261. 穗波穰

    穗波説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、ロングビーチが三月に二回入りました。十六日から十七日にかけて、それから二十一日から二十二日にかけてでございますが、この際、われわれが行っております放射能監視体制のうちのモニタリングポストのうちの一つに、先生御指摘のとおり三〇%から四〇%高い値が出ております。これは十七日にも出ております。二十一日にも出ました。いまのところその値は継続して出ておるわけではございませんで、十七日には約一時間でモニタリングポストの値は平常に戻っております。二十一日の場合は午後約三時間ほどその値が続きましたけれども、後は平常値に戻っております。  なお、その後直ちに海水あるいは海底土を採取いたしまして沖繩県の衛生研究所で核種分析調査というのをやりましたが、特に異常な核種は見つかりませんでした。  なおわれわれはロングビーチが出港しました後、これは定常的にやっておりますが、海水及び海底土を大量に採取いたしまして、なお精密な測定をすべく日本分析センターで前処理を行ない測定中でございます。このような事情がございましたので、米軍側に目下外務省を通じまして、ロングビーチ側に何かあったのではないかということで調査中でございます。  私どもとしましては、これら米側からの回答、あるいはいま前処理、分析測定中の資料、測定データが出てまいりました時点で専門家の意見をも聴取することも考えております。  以上でございます。
  262. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは質問じゃないのですが、沖繩の新聞があなた方の発表をどうとらえているか。「疑惑深まる放射能測定、ホワイトビーチ発表のらりくらり、数値の増加原因わからない」これです。疑わしいところもある。疑わしくもない。のらりくらりしておる。いま原潜に対する恐怖がどんなに深いかわかると思います。  そこで、先を急ぎますが、外務大臣にお聞きしたいと思いますが、これは一九六八年、三木外務大臣時代、ジョンソン駐日大使との日米覚書の問題であります。その前に、昭和三十九年八月二十四日付の口上書、これもまた前提としてあります。いまこの日米覚書と口上書、これはまだ有劾であるかどうか、外務大臣の口から御意見を承りたいと思います。
  263. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 ただいま先生お尋ねの二つの点、一つ昭和三十九年、原子力潜水艦日本に寄港するに先立ちまして、日本側がアメリカ側と話をして、その際に取り交わした覚書が第一点。第二点、四十三年というのは例のソードフィッシュの事件が起きました後で、これも日本側とアメリカ側が話し合った結果に基づいた覚書でございます。これは現在も有効でございます。
  264. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 ことしの予算委員会で共産党の不破議員が、いまの原子炉について質問した中で、結論として現在のような原子炉の災害補償の問題、安全対策の問題その他、これでは実に寒心にたえない、まさに民族の問題として大きい問題であるということの発言に対して、大平総理大臣は、いまの発言は実に示唆に富んだ発言であり、慎重に検討したいということを言っております。私がいま取り上げておるのは、陸の原子炉ではなくて動く原子炉、この問題についてしぼってお聞きしたいわけであります。  いまの日米覚書の前文にあるように、さらにまたあの口上書、あれはアメリカの原子力艦船が入港する場合にはそのエンジンはとめる、あるいは第一次冷却水は放出しない、基本はそれであると思いますが、この安全性について立入検査ができるのか、安全審査をどうやってやるのか、原潜がやってきた、たとえば沖繩ホワイトビーチでもいい、横須賀でもいいし、佐世保でもいい、原子力艦船が入ってくる、そしてこの口上書と覚書に基づいて原子炉は動いていない、あるいは第一次冷却水は放出していない、この点検、安全審査、これは体制としてできる体制にあるのかどうか、はっきり答えてください。
  265. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 原子力軍艦もアメリカの軍艦でございますので、一般国際法上外国政府の官憲がその中に立ち入って検査をするということはできません。しかし、原子力艦艇の本邦立ち寄りについては、その口上書その他に述べてございますように、また現在実施しておりますように、アメリカ側もモニタリングそれ自身をいたしますし、日本側としても、先ほど科学技術庁の方から御説明ございましたようなモニタリングの体制をとって、その安全性については万全の体制をとっているのが実態でございます。
  266. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 万全の体制がとれるようなものじゃないでしょう。たとえば原子力潜水艦なら潜水艦が入ってくる。これが入ってくると、果たして原子炉が動いているのかいないのか、どうわかるのですか。
  267. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 この点については四十三年の覚書の三項に述べられてございますけれども、さらにその前のメモアールにも言及されてございますけれども、第一に、寄港中における一次冷却水の放出は例外の場合である、しかしこのソードフィッシュの事件が起きて後、今後日本の港において通常一次冷却水が放出されることはないということを述べておりますし、それから原子力軍艦によるすべての放射性廃棄物の取り扱いについては従来に引き続いて今後とも厳重な管理を行っていくということが約束されております。
  268. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が言っているのは、アメリカがこう言っているというのじゃない、こう言っているからこうだというのじゃなしに、その原子力艦船の原子炉が、入港してとまっているのかあるいは第一次冷却水を放出していないのかどうか、日本がとまっているのをどういうふうに審査し、わかるのか、あなた方、動いているぞ、おかしいじゃないかと日本政府として言えるかどうか、この問題なんです。
  269. 淺尾新一郎

    淺尾(新)政府委員 先ほど申し上げましたように、一次冷却水を放出しないということ自身はエンジンが動いていないということでございまして、かつアメリカ側は再三にわたって日本側に約束したことは厳重に守るのだということを日本側に約束しております。
  270. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 だから、アメリカが約束したので安全だという結論ですね。ところがそうはいかないんだな。ソードフィッシュ号、あのときはアメリカは認めてないのですよ。これはちょうど沖繩で八インチりゅう弾砲、これが落下した。これで被害を与えている、死人は出ておりませんが。これを第三海兵隊のものだと認めた。ところがあのとき演習していなかったから第三海兵隊のものと認めがたい、これなんですよ。これが大体アメリカの言い分なんです。こういったアメリカは安全だからということで、日本がああそうですかということで、いまの動く原子炉が、実に現在では横須賀、佐世保、ホワイトビーチ沖繩に入っている。  これ幾ら尋ねてもそれ以上のは出ないと思いますが、私いま動く原子炉と申し上げましたが、実はアメリカの水爆の父と言われたテラー博士が一九六〇年聴聞会記録の付録に、この種の移動する原子炉は、すなわち原子力艦船は、本質的に危険なものと考えるべきであり、これを指摘し、人口の多い港には入港させるべきではないとはっきり述べているわけです。  時間が参りましたので、私先を急ぎますが、こういった原子炉は危険だからこそアメリカでも人口稠密なニューヨークには原潜は入港させないと、これはワシントンポストに書いてあるのを何か外務省は誤報だとか言っているようでありますが、ちっとも誤報じゃないのですね。このワシントンポストは、これなんですが、理由もはっきり述べている。人口稠密なところであるという問題とテロリストの攻撃があるおそれがある、いろいろ理由も書いてあります。ニューヨーク市長は認めているが、海軍がニューヨークに入港することを許さなかったという現実があります。さらに、スリーマイル事件以後、この動かない原子炉に対するいろいろな面における安全対策の問題が徹底してなされている。  そこでお聞きしますが、特に神奈川県の横須賀、長崎の佐世保、沖繩にあるホワイトビーチ、これで防災対策がいまできておるかどうか、お伺いします。
  271. 穗波穰

    穗波説明員 先生御指摘の防災対策の面でございますが、災害対策基本法に基づく地域防災計画が全国四十七都道府県にできておるわけでございます。
  272. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私の聞いているのは、放射能に対する危険がある場合に、原潜がもし事故を起こした場合の対策がなければならぬでしょう、どんどん入ってくるのだから。去年あたりまではそうでなかったが、私ホワイトビーチへ行って驚いたことにはあらゆる種類の艦船が——いまスピリット80でどんどん韓国と共同して演習が行われている。原潜の寄港といい、原子力巡洋艦といい、いろいろな艦種がホワイトビーチでふくそうしているわけです。こういった中で、万一衝突したりいろいろなあれで事故が起こった場合に、その対策が全然ないということは一体どういうことなんですか。
  273. 穗波穰

    穗波説明員 お答えいたします。  原子力軍艦の寄港に伴います安全性につきましては、先生先ほど御指摘のように、米国政府の声明等で原子炉施設そのものの安全性あるいは運転員の資格等、一種の約束をいたしまして、安全性そのものを高めるということを米国政府は言明している次第でございます。わが国といたしましては、寄港時には放射能監視体制を、モニタリングポストあるいはモニタリングボートによる追跡調査等によりまして、入港時あるいは出港時におきましては一次冷却水が放出されていないか、そういう監視体制をとっているところでございます。この監視体制に基づきまして、万一放射能の漏洩等が生じました場合は必ずわれわれに検知できるというふうに感じている次第でございます。さらに、万一の場合には米国側から通報を受けることになっておりまして、所要の部署には直ちにその情報を連絡することになっております。加えまして、この移動する炉、陸上炉にない炉の特質でございますが、万一の場合には軍艦を安全な場所に移動させることが可能でございまして、寄港地周辺の一般住民に重大な影響を及ぼすようなことが防止できるとわれわれは考えております。
  274. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはいわゆる移動する原子炉ということを頭に入れておいてもらいたいと思うのです。このいまのロングビーチの持っている原子炉は何型ですか。
  275. 穗波穰

    穗波説明員 お答えいたします。  原子炉そのものの細かい形状ははっきりわかりませんが、ジェーンの海軍年鑑によればウエスチングハウス型のPWRを積んでいるということでございます。
  276. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 スリーマイル型の加圧式の原子炉だということですね。
  277. 穗波穰

    穗波説明員 お答えいたします。  私ども非常に不勉強でございまして申しわけございませんが、軍艦に載せております炉は、このウエスチングハウス型と申しますと、スリーマイルアイランドの原子力発電所の炉はバブコック・アンド・ウイルコックス社製でございまして、多少違っております。
  278. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま日本の原発で使っている型も、さらにロングビーチで使っている型も全部同じで、スリーマイルの加圧水型なんです。非常に危険だということは、これでもわかるわけなんですよ。これは動いている。そういった危険がある場合に、事故が起こらないということはあり得ないから、もし事故が起こったらというので、いろんな検査をやるのでしょう。事故が起こった場合に、放射能対策として何ら神奈川県にもあるいは長崎県にも沖繩県にもないというふうな発言は、これは全く大変な発言です。  時間が参りましたので、大来外務大臣に、現在の動く原子炉に対する安全対策はゼロに近い、現段階では、こういった危険な原子力潜水艦初め原子力艦船の日本への入港は拒否すべきである、これが日本国民として最善の安全対策である、民族の将来を考えても、国民の安全を考えても、万一事故が起こった場合には何ら対策のとれないような体制であるということはいまお聞きのとおりであります。だから、申し上げたとおり、その体制が整備されるまででもいいから、原子力潜水艦を初めアメリカの原子力艦船の日本寄港を拒否すべきである、私はそう考える。これは国民の願望だと思うのです。こういったような危険なところに置かれて何ら対策をとれない。だから、とれるまでは拒否するということこそ国民の安全にこたえる道ではないかと考えますが、外務大臣いかがですか。
  279. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまのことは、瀬長先生の御意見としては承りますけれども、政府の立場からすれば、日米安保条約の円滑な運営といいますか、これは日本が仮に武力攻撃を受けたときに、日米が共同して日本の領土を守る、国民の生命、財産を守るという約束事でございますし、その関係とのにらみ合いの問題でもあるかと思います。  極力双方で、ただいま科学技術庁の方の御答弁にもありましたけれども、万一の場合の安全度を強めるという形で対処をしていくべきことかと存ずるわけでございます。
  280. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 日米安保条約が大事であるのか、日本国民の命が大事であるのか、これはだれでもわかることなんです。いま科学技術庁が言うのは、はっきり言えば安全対策ありませんということなんです。神奈川の横須賀でも、さらに長崎の佐世保でも、沖繩ホワイトビーチでも、ありませんとはっきり言っている。だから、それが体制ができるまで、日本国民の安全を守るために、体を守るために、人間の尊厳を守るために、やはりとめる、拒否するというのが正しい道だということは、論理の必然なんですよ。私はそれを言っている。安保条約が先、日本国民の命が後だなどということは考えられぬでしょう。時間が参りますので、この点をはっきり言っておきます。  これも関連するものですが、普天間基地の汚水流出事件。この前、三月六日に行きました。第一海兵航空団の普天間基地から汚水が流れ込んできて飲料水、特に那覇市民の飲む飲料水に関連する、それでいま宜野湾市長ですが、激しい言葉でいまの汚水が流れ込まぬようにやってほしいということを言っているわけなんです。私は、飲料水に汚水が、びろうな話ですが、人体から出るものも全部まざっている、これを目の前で見ました。こういったことが安保条約のもとで現実に起こっておるわけです。  防衛施設庁、いらっしゃいますか。写真がこれにつけてありますから……。
  281. 岩見秀男

    ○岩見説明員 いま先生のおっしゃいました上水道に汚水が入るという事実については、残念ながら私ども承知しておりません。  去る三月六日から十一日にかけまして、普天間の米軍の下水道汚水処理管から水が流出いたしまして、一これが下流の伊佐の住宅地区を汚染したということは、承知いたしております。
  282. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これ、外務大臣に写真を見せていいですか。——時間も参りましたので、もう質問をやめますが、いまの件も含めて、向こうの人々の生活と環境を守るためにひとつ処理してほしいことを要望して、私の質問を終わります。
  283. 木野晴夫

    木野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  284. 木野晴夫

    木野委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  285. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  286. 木野晴夫

    木野委員長 ただいま可決いたしました本案に対し、唐沢俊二郎君、上原康助君、新井彬之君、中路雅弘君及び吉田之久君から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。上原康助君。
  287. 上原康助

    上原委員 ただいま議題となりました自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議日本共産党・革新共同及び民社党・国民連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、速やかに検討の上、善処するよう要望する。  一 激動する国際情勢に適確に対応し得るよう、外交体制の一層の拡充、強化を図ること。  一 在外職員が、その体面を維持し、職務と責任に応じて能率を充分発揮し得るよう、在勤手当、外国旅費等の額及び制度改善に一層意を用いること。  一 生活及び勤務の環境が厳しい地域勤務する在外職員が、安んじて職務に専念し得るよう、環境の整備、処遇の改善等必要な措置を講ずること。  一 在外公館の事務所及び公邸の国有化を推進するとともに、在外職員宿舎の整備に努めること。  一 海外子女教育の一層の充実を期するため、在外日本人学校の拡充、子女教育手当の充実、帰国子女教育制度及び施設の改善整備等の対策を総合的に推進すること。   右決議する。  本附帯決議案の趣旨につきましては、昨日来の当委員会における質疑を通じまして明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛同をお願い申し上げます。  以上です。(拍手)
  288. 木野晴夫

    木野委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言の申し出もありませんので、これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  289. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、唐沢俊二郎外四名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大来外務大臣。
  290. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を御可決いただきまして、まことにありがとうございました。  また、本法案の御審議の進め方について種々好意ある御配慮をいただき、御審議の過程においては、外交活動の基盤強化につき深い御理解と貴重な御提案を賜ったことに対し、厚く御礼を申し上げます。  法律案と同時に可決されました附帯決議の内容につきましては、御趣旨を踏まえ、適切に対処してまいる所存でございます。  まことにありがとうございました。(拍手)
  291. 木野晴夫

    木野委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  292. 木野晴夫

    木野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  293. 木野晴夫

    木野委員長 次回は、来る四月一日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十八分散会      ————◇—————