運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-03-25 第91回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月二十五日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 逢沢 英雄君 理事 有馬 元治君    理事 唐沢俊二郎君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 新井 彬之君 理事 中路 雅弘君    理事 吉田 之久君       麻生 太郎君    上草 義輝君       大城 眞順君    三枝 三郎君       田名部匡省君    森  美秀君       伊賀 定盛君    石橋 政嗣君       木原  実君    市川 雄一君       鈴切 康雄君    山田 英介君       辻  第一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      小渕 恵三君  出席政府委員         総理府恩給局長 小熊 鐵雄君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         防衛施設庁労務         部長      伊藤 参午君         外務政務次官  松本 十郎君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房領         事移住部長   塚本 政雄君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省アジア局         外務参事官   三宅 和助君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君  委員外出席者         議     員 新井 彬之君         外務省北米局外         務参事官    栗山 尚一君         大蔵省主計局主         計官      畠山  蕃君         通商産業省生活         産業局文化用品         課長      水野  哲君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   三枝 三郎君     奥野 誠亮君   住  栄作君     根本龍太郎君   田名部匡省君     福家 俊一君   森  美秀君     松澤 雄藏君   上田 卓三君     八木  昇君   山田 英介君     岡本 富夫君   辻  第一君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     三枝 三郎君   根本龍太郎君     住  栄作君   福家 俊一君     田名部匡省君   松澤 雄藏君     森  美秀君   八木  昇君     上田 卓三君   岡本 富夫君     山田 英介君   安藤  巖君     辻  第一君 同月六日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     大原  亨君   山田 英介君     坂井 弘一君   辻  第一君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   大原  亨君     上田 卓三君   坂井 弘一君     山田 英介君   安藤  巖君     辻  第一君 同月七日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     麻生 太郎君   江崎 真澄君     上草 義輝君   伊賀 定盛君     八木  昇君   上田 卓三君     安井 吉典君   辻  第一君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   八木  昇君     伊賀 定盛君   安井 吉典君     上田 卓三君 同月八日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     江崎 真澄君   上草 義輝君     小山 長規君   松本 善明君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     麻生 太郎君   小山 長規君     上草 義輝君 同月十八日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     中川 一郎君 同日  辞任         補欠選任   中川 一郎君     上草 義輝君 同月十九日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     粟山  明君 同日  辞任         補欠選任   粟山  明君     麻生 太郎君 同月二十一日  辞任         補欠選任   三枝 三郎君     村上 茂利君 同日  辞任         補欠選任   村上 茂利君     三枝 三郎君     ————————————— 三月十三日  中小企業省設置法案新井彬之君外三名提出、  衆法第一六号) 同月十四日  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五七号) 同月十日  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願石川要三紹介)(第  一八五六号)  同(原健三郎紹介)(第一八五七号)  同(林百郎君紹介)(第一九七一号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願奥田敬  和君紹介)(第一八五八号)  同(小山長規紹介)(第一九一〇号)  行政改革推進等に関する請願(竹入義勝君紹  介)(第一九一一号)  同外一件(新井彬之君紹介)(第一九七〇号)  青少年健全育成のための社会環境浄化に関する  請願羽田孜紹介)(第一九六九号)  環太平洋合同軍事演習への自衛隊参加中止に関  する請願柴田睦夫紹介)(第一九七二号)  同(多田光雄君外一名紹介)(第一九七三号)  同(中路雅弘紹介)(第一九七四号)  同(藤田スミ君外一名紹介)(第一九七五号) 同月十一日  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願足立篤郎紹介)(第  二〇四〇号)  青少年健全育成のための社会環境浄化に関する  請願赤城宗徳紹介)(第二〇四一号)  同(清水勇紹介)(第二〇四二号)  同(葉梨信行紹介)(第二〇四三号)  同(中村正三郎紹介)(第二〇四四号)  同(丹羽雄哉紹介)(第二〇四五号)  遺族年金扶助料改善に関する請願東家嘉  幸君紹介)(第二〇四六号)  同(馬場昇紹介)(第二〇四七号)  行政改革推進等に関する請願外一件(飛鳥田  一雄君紹介)(第二〇四八号)  同(市川雄一紹介)(第二〇四九号) 同月十二日  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願谷垣專一君紹介)(第  二一八一号)  同(細田吉藏紹介)(第二一八二号)  青少年健全育成のための社会環境浄化に関する  請願塚原俊平紹介)(第二一八三号)  同(中村喜四郎紹介)(第二一八四号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願三原朝  雄君紹介)(第二一八五号)  行政改革推進等に関する請願小川新一郎君  紹介)(第二二八五号)  同(鈴切康雄紹介)(第二二八六号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二二八七号)  遺族年金扶助料改善に関する請願園田直  君紹介)(第二二八八号)  同外一件(野田毅紹介)(第二二八九号) 同月十四日  行政改革推進等に関する請願浅井美幸君紹  介)(第二三五〇号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二三七三号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願伊藤宗一郎紹介)  (第二三五一号)  同(小沢辰男紹介)(第二三五二号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願藤井勝  志君紹介)(第二三五三号)  同(野田毅紹介)(第二三七二号)  青少年健全育成のための社会環境浄化に関する  請願三木武夫紹介)(第二三五四号)  環太平洋合同軍事演習への自衛隊参加中止に関  する請願安藤巖紹介)(第二三七四号)  同(井上敦紹介)(第二三七五号)  同(岩佐恵美紹介)(第二三七六号)  同(梅田勝紹介)(第二三七七号)  同(浦井洋紹介)(第二三七八号)  同(金子満広紹介)(第二三七九号)  同(神崎敏雄紹介)(第二三八〇号)  同(木下元二紹介)(第二三八一号)  同(工藤晃紹介)(第二三八二号)  同(栗田翠紹介)(第二三八三号)  同(小林政子紹介)(第二三八四号)  同(榊利夫紹介)(第二三八五号)  同(柴田睦夫紹介)(第二三八六号)  同(庄司幸助紹介)(第二三八七号)  同(瀬崎博義紹介)(第二三八八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二三八九号)  同(田中美智子紹介)(第二三九〇号)  同(多田光雄紹介)(第二三九一号)  同(津川武一紹介)(第二三九二号)  同(辻第一君紹介)(第二三九三号)  同(寺前巖紹介)(第二三九四号)  同(中川利三郎紹介)(第二三九五号)  同(中路雅弘紹介)(第二三九六号)  同(中島武敏紹介)(第二三九七号)  同(中林佳子紹介)(第二三九八号)  同(野間友一紹介)(第二三九九号)  同(則武真一紹介)(第二四〇〇号)  同(林百郎君紹介)(第二四〇一号)  同(東中光雄紹介)(第二四〇二号)  同(不破哲三紹介)(第二四〇三号)  同(藤田スミ紹介)(第二四〇四号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二四〇五号)  同(正森成二君紹介)(第二四〇六号)  同(松本善明紹介)(第二四〇七号)  同(三浦久紹介)(第二四〇八号)  同(三谷秀治紹介)(第二四〇九号)  同(村上弘紹介)(第二四一〇号)  同(安田純治紹介)(第二四一一号)  同(山原健二郎紹介)(第二四一二号)  同(四ツ谷光子紹介)(第二四一三号)  同(渡辺貢紹介)(第二四一四号) 同月十九日  旧支那派遣軍の湘桂作戦開始より終戦までの戦  務地乙区分甲区分への改定に関する請願(三  原朝雄紹介)(第二五六一号)  青少年健全育成のための社会環境浄化に関する  請願岩垂寿喜男紹介)(第二五六二号)  同(森下元晴君紹介)(第二五六三号)  同(山崎拓紹介)(第二五六四号)  同(秋田大助紹介)(第二六一一号)  同(梶山静六紹介)(第二六一二号)  同(亀井善之紹介)(第二六一三号)  同(小坂善太郎紹介)(第二六一四号)  同(佐野嘉吉紹介)(第二六一五号)  同(市川雄一紹介)(第二六九六号)  同(上村千一郎紹介)(第二六九七号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願塩田晋  君紹介)(第二五六五号)  同(田島衞紹介)(第二五六六号)  同(安田貴六君紹介)(第二五六七号)  同外一件(麻生太郎紹介)(第二六一六号)  同(大村襄治紹介)(第二六一七号)  同(八田貞義紹介)(第二六一八号)  同(原健三郎紹介)(第二六一九号)  同(部谷孝之紹介)(第二六二〇号)  同(稲村利幸紹介)(第二六九四号)  同(辻英雄紹介)(第二六九五号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願古井喜實紹介)(第  二五六八号)  行政改革推進等に関する請願外一件(中川嘉  美君紹介)(第二六二一号)  同(伏木和雄紹介)(第二六二二号)  同(飯田忠雄紹介)(第二六九三号) 同月二十二日  旧満州航空株式会社従業員恩給法令外国特  殊機関職員として指定に関する請願足立篤郎  君紹介)(第二七四二号)  同(藤井勝志紹介)(第二七四三号)  同(相沢英之紹介)(第二七六六号)  恩給年限に該当する元上海工部局警察官の救済  に関する請願鯨岡兵輔紹介)(第二七四四号)  旧中華航空株式会社従業員恩給法令外国特  殊機関職員として指定に関する請願戸沢政方  君紹介)(第二七四五号)  同(近藤鉄雄紹介)(第二八三九号)  台湾残置私有財産補償に関する請願畑英次郎  君紹介)(第二七六五号)  同外十一件(秋田大助紹介)(第二八一〇号)  同外四件(保利耕輔君紹介)(第二八一一号)  同外三件(三原朝雄紹介)(第二八四二号)  旧勲章叙賜者名誉回復に関する請願小沢貞  孝君紹介)(第二七六七号)  同(小坂善太郎紹介)(第二七六八号)  同(小坂徳三郎紹介)(第二七六九号)  同(田中龍夫紹介)(第二七七〇号)  同(中曽根康弘紹介)(第二八四〇号)  同(佐藤孝行紹介)(第二八四一号)  青少年健全育成のための社会環境浄化に関する  請願稲垣実男紹介)(第二七七一号)  同(久野忠治紹介)(第二七七二号)  同(始関伊平紹介)(第二七七三号)  同(藤井勝志紹介)(第二七七四号)  同(細田吉藏紹介)(第二七七五号)  同(山村新治郎君紹介)(第二七七六号)  同(池田淳紹介)(第二八一二号)  同(江崎真澄紹介)(第二八一三号)  同(近藤豊紹介)(第二八一四号)  同(高橋高望紹介)(第二八一五号)  同(三浦隆紹介)(第二八一六号)  同(鹿野道彦紹介)(第二八四三号)  同(渡辺三郎紹介)(第二八四四号)  同(渡部正郎紹介)(第二八四五号)  高齢国家公務員昇給停止反対に関する請願  (石橋政嗣君紹介)(第二八三七号)  旧満州棉花協会等恩給法による外国特殊機関  として指定に関する請願近藤鉄雄紹介)(第  二八三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業省設置法案新井彬之君外三名提出、  衆法第一六号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  二五号)  農林水産省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四五号)  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一七号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  新井彬之君外三名提出中小企業省設置法案内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案及び農林水産省設置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  順次趣旨の説明を求めます。新井彬之君。     —————————————
  3. 新井彬之

    新井議員 ただいま議題となりました中小企業省設置法案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  わが国中小企業は、企業の数で見ると、全体の九九%以上を占めるとともに、生産額販売額においても約半分に及んでおり、わが国産業経済を支える大きな力となっています。また、それに携わる関係者の数は経営者及び従業員を含めて、三千万人に達し、わが国労働人口の過半数に及んでいます。  しかるに、こうした中小企業を担当する行政官庁としては、通商産業省の外局として、中小企業庁が置かれているのみであり、また中小企業政策のために投じられている予算国家予算全体の一%に満たない実情であります。  今日、わが国中小企業を取り巻く環境は、国際経済の変動、物価の高騰、景気の後退などにより一段と厳しさを増しており、より一層の施策拡充が望まれているのであります。  なお、従来より中小企業関係者の間では中小企業庁中小企業省に昇格させ、専任の大臣を置くことにより、中小企業施策の総合的な強化を図るべきであるという声が強く出されていたところであります。  これに対し、政府昭和四十九年度に、中小企業庁の中に小規模企業部を新設するなど若干の機構拡充を行いましたが、これだけでは決して十分とは言えません。  中小企業の利益を守るためには現行通商産業省とは別に独自の中小企業のための行政機構を設ける必要があります。  そこで、公明党国民会議はこのような観点から、中小企業行政総合的強化を図るため、中小企業省設置法案提案することといたしました。  本法案の主な内容について御説明申し上げます。  まず、現在の中小企業庁を廃止して、中小企業省を設置し、中小企業省の長は中小企業大臣とすることとし、中小企業省は、中小企業振興及びその従事者の経済的、社会的地位向上を図るため、中小企業育成及び発展に関する行政を総合的に推進することを主な任務としております。  次に、その権限及び所掌事務としては、中小企業振興のための基本政策等の決定及び推進中小企業関係法令の施行、中小企業に有益な技術及び経営方法等奨励及び指導特産品品質維持及び改善需要開拓等のための指導及び助成製品輸出奨励及び指導海外市場調査及び開拓金融あっせん中小企業事業分野保護並びに中小企業関係団体監督等を挙げております。  これらの事務を処理するため、内部部局として、大臣官房のほか、企画局指導局金融局及び小規模企業局を設置することとしております。  まず、企画局においては、中小企業振興基本政策の策定及び推進協同組合等に関する施策中小企業組織化対策中小企業退職金共済事業実施中小企業従事者福祉増進対策中小企業近代化の促進、下請中小企業振興貿易構造等の変化に伴う中小企業事業転換対策などの調整事務等を行うこととしております。  指導局においては、中小企業経営診断指導技術等奨励指導特産品品質維持改善需要開拓等のための指導助成中小企業製品輸出振興海外市場調査及び開拓等に関する事務を行うこととしております。  金融局においては、中小企業に対する資金あっせん中小企業の信用の補完業務政府系中小企業金融機関監督等を行うこととしております。  小規模企業局においては、小規模企業についての経営相談を初めとする現行の各種の小規模企業施策のほか、公明党国民会議の別途提案による小規模事業者生業安定資金融通特別措置法により、一定の小規模事業者に対し、無利子、無担保、無保証で利用できる画期的な融資制度を新設し、その関係事務を担当するようにしております。  さらに、各地域の実情に即した、きめの細かい施策実施及び国と都道府県等中小企業施策連絡調整のため、地方支分部局として全国に八つの中小企業局を配備することとし、このほか、中小企業省附属機関として、中小企業安定審議会中小企業分野等調整審議会及び中小企業近代化審議会を置くことといたしております。  以上が本法案の主な内容であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 木野晴夫

  5. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済情勢にかんがみ、恩給年額増額するとともに、戦没者等遺族傷病者及び老齢者処遇改善を図るほか、旧軍人等加算恩給減算制緩和等措置を講じ、恩給受給者に対する処遇の一層の充実を図ろうとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  この法律案による措置の第一点は、恩給年額増額であります。  これは、昭和五十四年度における公務員給与改善を基礎として、昭和五十五年四月から、恩給年額増額しようとするものであります。また、公務関係扶助料最低保障額傷病恩給基本年額等については、同年六月からさらに特別の増額を行い、公務扶助料については遺族加算を含み年額百十三万四千円を保障することといたしております。  その第二点は、普通恩給等最低保障額改善であります。  これは、長期在職老齢者普通恩給最低保障額昭和五十五年四月から六十七万千六百円に、さらに同年六月から七十万円に引き上げ、その他の普通恩給及び普通扶助料最低保障額についてもこれに準じて引き上げるほか、同年十二月からは普通恩給等最低保障額に係る実在職年区分について、新たに六年以上九年未満区分を設けることとするものであります。  その第三点は、寡婦加算増額であります。  これは、普通扶助料を受ける妻に係る寡婦加算の額を大幅に引き上げ、普通扶助料給付水準改善を図ろうとするものであります。  その第四点は、旧軍人等加算恩給減算制緩和であります。  これは、五十五歳以上六十歳未満の者に支給する加算恩給について、加算年に係る減算を行わないこととするものであります。  以上のほか、扶養加給増額、旧国際電気通信株式会社等社員期間通算条件緩和等所要改善を行うこととしております。  なお、以上の措置については、公務員給与改善に伴う恩給年額及び扶養加給増額等昭和五十五年四月から、その他の改善措置は同年六月から、ただし、普通扶助料を受ける妻に係る寡婦加算増額は同年八月から、旧国際電気通信株式会社等社員期間通算条件緩和は同年十月から、旧軍人等加算恩給減算制緩和及び最低保障の六年区分の新設は同年十二月から、それぞれ実施することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  6. 木野晴夫

  7. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ただいま議題となりました農林水産省設置法の一部を改正する法律案提案理由と改正の内容を御説明申し上げます。  第一は、生糸検査所を整理し、その業務農林規格検査所に吸収することであります。  生糸検査所は、明治二十九年に設立され、以来、生糸検査を行う中核的な機関として、戦前におきましてはわが国経済発展の礎となった生糸輸出円滑化に寄与するとともに、戦後におきましては輸出のみならず国内流通の面でも生糸の公正な取引の確保及び品質向上に大きな役割を果たし、わが国蚕糸絹業の健全な発展に多大の貢献をしてきたところであります。  しかしながら、近年、生糸需給構造は大きく変化し、生糸輸出昭和四十九年を境になくなる一方、国内生糸需要も伸び悩み、また、国産の繭及び生糸生産減少傾向にあるため、生糸検査所業務量は減少してきているのが実情であります。  農林水産省におきましては、これまで定員の縮減等その合理化に努めてきたところでありますが、現下の重要課題である行政改革の一環として、生糸検査所を整理し、その業務農林規格検査所に吸収することとしたものであります。  第二は、農林規格検査所所掌事務を整備することであります。  農林規格検査所は、日本農林規格による格づけの表示を付された農林物資検査を行うこと等を通じ、農林物資に関する消費者保護対策等実施に大きな役割りを果たしておりますが、その所掌事務について、生糸検査関係業務を加えるとともに、近年における消費者食品企業等からの要望を踏まえ、飲食料品等に関する依頼検査の対象を輸入されたものに限定しないこととしたものであります。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  8. 木野晴夫

    木野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  各案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  9. 木野晴夫

    木野委員長 次に、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。麻生太郎君。
  10. 麻生太郎

    麻生委員 大臣の時間がきわめて限られておりますので、御出席の間に一点だけにしぼって質問をさせていただきます。  まず、今回、きわめて短期間とはいえ、アメリカとの間に往復をされ、きわめて限られた時間とはいえ、アメリカとのいろいろな問題について交渉をされたという御努力、御苦労に対して、まず敬意と感謝を申し上げるわけですけれども、今回の訪米の目的というのは、御出発前の記者会見等で、日米の間断なき対話と大平総理大臣の訪米への地ならしということがその主な目的で、交渉でも問題解決のための訪米でもない、意見の交換を通じて双方の意見の違い方を理解し合うのが目的ということが述べられておりますけれども、今回の訪米においてどのような相違点があったのか、まずその点を伺いたいと思います。
  11. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御質問のような大体の考え方で意見交換を中心にして行ってまいりまして、短時間ではございましたけれども、幸い多数の要路の人たちと会談する機会を得たわけでございますが、基本的には、日米の考え方に非常に大きな食い違いがあるとは感じなかったわけでございまして、アメリカ側も、日米関係が基本的に円満に推移しているということを評価するという発言がいろいろございました。     〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕  大きな問題としては、経済問題では、特に日本の自動車の急激なアメリカ市場への進出がございまして、それなども影響いたしまして、今年はかなり大きな日米貿易の間のアンバランスがまた出るのではないか。一昨年は百十六億ドルの日本の対米輸出超過、昨年は八十四億ドルくらいに縮まったわけでございますが、アスキュー通商代表の発言の中で、アメリカの議会の貿易小委員会調査では、今年は場合によると百六十億ドルくらいの対日輸入超過というかっこうになるかもしれない。こういうことと関連して、一方大統領の方針としても日本の自動車の輸入制限は行わない方針であるので、一層日本の市場開放、もっとアメリカの製品を買ってもらいたい、それからいろいろな意味での通商の障害になるようなことを少なくしてほしいというような要望がございました。さらにできれば、これは企業が決めることでございますけれども、日本の自動車工業が対米進出、資本投資をしてもらいたいというようなことの話がございました。  それから安保防衛問題につきましては、ブラウン国防長官から最近の極東の情勢、中東の情勢等を踏まえて、日本側のより一層の協力を得たい、できれば日本の防衛努力についてステディー・アンド・シグニフィカント、着実かつ顕著な強化が図られることが望ましいと思うというような発言がございました。私の方からは、国会の審議模様等いろいろ伝えまして、それから従来から日本の選んでおりますコースといいますか、平和憲法、専守防衛あるいは非核原則というようなもの、この大きな枠組みを崩すことは日本としてはできない、その枠内で着実な努力は日本政府もいたすつもりでございますという話をしてまいったわけでございます。  そのほか、国際情勢一般については双方の情勢認識について意見交換をいたしましたが、これについてはそれほど大きな違いはないと感じたわけでございます。
  12. 麻生太郎

    麻生委員 いま外務大臣から、違いのある点の中で、基本的には大きな違いはないけれども、幾つかの点で違いがある点を二点出されておりました。一つが自動車の資本投資の問題と、もう一点が防衛問題でありますけれども、この防衛問題と自動車問題について、関連がありますのでちょっと伺っておきたいと思います。  自動車の特にトヨタ、日産に対しての工場進出という問題が出ておりますが、いま聞いている話では、両社ともに進出の意欲はなしと聞いております。それを、目下外務省と通産省とでトヨタ、日産に対して工場進出をするように説得中と伺っておりますけれども、仮にこの会社が現地で生産を開始したときに、三年後状況が変わっておって、工場進出の結果もし両社が赤字になった場合、その赤字の補償を政府がなさるおつもりですか。
  13. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 先ほど大臣からも御答弁ございましたように、アメリカ側から日本の自動車企業のアメリカ進出について強い要請がございましたけれども、日本側としては、企業が進出するかどうかというのは企業自体の問題である、ただし必要に応じてアメリカ側の意向は日本の企業に伝えるということでございまして、外務省が現在のところ企業それ自身にアメリカ進出を強く要請しているという状況ではございません。
  14. 麻生太郎

    麻生委員 ありがとうございました。これは外務省に直接関係ないのかもしれませんけれども、そういったような外国からの要望に対して、一企業の自主性が全然尊重されずに一方的に話が進められるというのは、これは結果的には民間企業に対する介入とも言えますし、また妙な形での赤字の補てんなんというのも全くおかしな話になりますので、この点が混同されないようにぜひ希望いたします。  もう一点伺います。  防衛費の負担の問題について外務大臣からのお話がありまして、いまステディー・アンド・シグニフィカントという言葉が使われておりましたけれども、防衛の質的な改善と着実な努力を米国との間に一応努力をするという形で表現されておられるということになります。  私はぜひ伺いたいと思うのですが、防衛をする目的は何かといえば、これは日本の国を防衛するのが目的なのでありまして、日本が外国からの侵略とかそういったものに対抗するために防衛をする。にもかかわらず昨今のお話というのは、どうもそれが違っておるような感じが受け取られます。なぜなら、アメリカが言ってくるからとか、だから一%にしなくちゃいけないとか、いかにも防衛目的がアメリカのために防衛をやっておるような感じがするのであって、これは本末転倒もはなはだしい。そういった意味では、この点ははっきりした見解、まあはっきりした見解というより正論というもの、外務省の方できちんとした形でしていただかないと問題なのであって、この点についての北米局長としてのというより、これは外務省としての御見解をきちんとしておいていただきたいという点であります。この点について確認をお願い申し上げます。
  15. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまお尋ねの件について、アメリカ側も防衛力の増強、これは日本自体が決めることであるということをまず言っております。大臣が今回訪米された際に先方に対する説明の中でも、自衛力の増強については日本は日本自体で決める問題であって、それには制約がある、憲法の問題、非核三原則あるいは専守防衛。ですから、この点についてはアメリカ側にはっきり言っておりますし、私たちとしても、自衛力の増強については日本側が自主的に決めるという立場を先方にも伝え、この点については先方も十分理解しております。
  16. 麻生太郎

    麻生委員 なぜいまそのようなことを申し上げたかといいますと、これは大臣がおられませんので、後でぜひ北米局長でもどなたでも結構ですから伝えておいていただきたいと思うのは、皮肉を言うようですけれども、長い間一つの職業におりますと、その習慣がつくのであります。外務省に長くいれば外務省のにおいがしてくるし、私どものように経営者を長くすれば経営者の感じが強くなってくる。  そういったようなことで、先ほどお話がひょっとありましたけれども、向こう側の質問に対して、アメリカ側の言い分に対して外務大臣のお答えというものは、国会内における討論のいきさつとかいうものを説明され、大体日本側の希望としてはとか、日本側の状態はこうだというようなことを言っておられるようですけれども、過日、バンス国務長官の発言で、インセンシティブという言葉が使われておる。これは多分日本語に訳すと無神経という言葉になるんだと思いますけれども、これは言った方も言った方でありますけれども、しかし、記者会見でこのことを外務大臣は発表しておられるように伺っておる。  このインセンシティブという言葉を外国から一国に向かって言われるということは、これはばかと言われているのとほぼ同義語であります。それを、外交の最高責任者をしておられる外務大臣が、安易に記者会見でこんなことを言われたんですよと言われるのは、評論家の方ならともかくも、一国の外交責任者としてははなはだ見識を問うような話を聞きますので、私はいま二点伺いましたけれども、これはきちんとした日本側の説明、態度なりというものを表明していただくように、これは外務省の指導とか、言い方が極端かもしれませんけれども、外務省の方々としてはきちんとしたお話なり何なりを上の方にしておいていただかないと、今後とも何となく評論家的な話で終わってしまうのでははなはだ心もとないということで、これは希望を申し上げておきます。  論点を移します。  八〇年代から二十一世紀にかけてということで、いままでお話を伺っておっても、日本の外交というものがますます重要性を増してくるのであって、これは外務省におられる方、いよいよがんばっていただかなければいかぬことになりつつあるわけでありますが、日米関係だけに限定してみても、総体的に力を失いつつあるということに関して焦りのあるアメリカと、おのれの実力というか国力、また置かれている立場に関する正しい認識が欠如をしておる感じのする日本との調整というものが大きな問題になると思うのですけれども、政府は今後外交方面に力を入れていかざるを得ないということははっきりしておると思います。  伺いますけれども、それでは国家予算の中に占めておる外務省の予算というものは、戦前と比較いたしましてどのような比率になっておりますか、その点を伺いたいと思います。
  17. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  これはなかなか計算のとり方がむずかしゅうございまして、簡単な比較はあるいは無理かと思います。たとえば、戦後になりますと経済協力費が外務省予算の相当部分を占める、戦前はそういうものはなかったということで、そういう意味で比較がどこまでできるかわかりませんけれども、一応さかのぼって計算したところによりますと、明治二十三年における外務省予算国家予算に占める比率がちょうど一%、大正十年に丁六六%、昭和十二年に一・五四%というふうになっておるのに対して、戦後、外交再開の昭和二十七年は〇・四六%でございましたが、逐次若干の増加がございまして、昭和五十四年になりますと〇・六三%でございます。ただし、先ほど申しました経済協力費がその中のかなりな部分を占めますので、仮に経済協力費をその中から引きますと、五十四年度については〇・二二%という数字になっております。
  18. 麻生太郎

    麻生委員 それでは、同じような質問をさせていただきます。  この同じ期間でなくても結構ですが、戦前と戦後を比較して、日本として認めておる独立国の数、国連加盟国でも結構ですが、独立国の数を教えていただきたいと思います。明治二十三年までさかのぼらなくても結構です。
  19. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 現在、自治領をどのぐらい数えるかということは若干ありますけれども、大体百六十と考えておるわけです。戦前は御承知のように非常に少なかったわけで、正確な数をいまちょっと持ち合わせございませんけれども、独立国の数ということでとりますと、アジア等はほとんど植民地でございましたから、ヨーロッパあるいは中南米ということでございますから相当少ないことは明らかでございます。
  20. 麻生太郎

    麻生委員 その間における外務省の抱えておられる人員の数の増減について伺いたいと思います。
  21. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 先ほどちょっと独立国の数字を持ち合わせないと申し上げましたけれども、一九五一年の数字がございました。これはちょうど日本が独立を回復するころでございますが、そのときが八十八カ国、そして一九八〇年一月現在が百六十カ国と、大体倍でございます。  外務省の定員の数でございますけれども、昭和十五年の数字が残っておりますが、本省、在外を加えまして二千八百十二名でございます。それが昭和二十三年、このときは外交が全くございませんでしたので本省定員だけでございますが、千五百六十三人に減っておりました。その後、外交再開とともに在外の要員が少しずつふえてまいりまして、昭和五十四年では三千四百人というところまで、本省、在外大体半々でございますけれども、伸びてきているという数字でございます。
  22. 麻生太郎

    麻生委員 いま数字を伺っておったのですけれども、国数の方は約倍、もっと前の方は当然少ないと思いますけれども。国の数というものが昭和三十三年で多分七十七カ国と記憶していましたが、一九五一年で八十八カ国から一九八〇年で百六十カ国ということで、この面から見ても約倍ぐらいになっております。  しかし、人間の方は倍どころか、戦前に比べて、もっと国数が少なかった時代に比べて、比率から言ったら三四対二八ということになるので、これは三〇%いくかいかないかしか伸びておらないということにいまの数字からなるわけですけれども、外務省として、いまのような数字を伺うと外交に関して力を注いでおりますという証明には全然ならぬのじゃないか。少なくとも人間に関しても予算に関してもどんどん減っておって、いま伺えば大正十年では一・六六%あったけれども、当時は経済協力関係の予算がなかったので、それを差し引くといまは逆に〇・二二に減っておるということで、外務省としてはというか政府としては外交に関して大いに努力をしておるという証明にはならぬのではないかと思うのですが、その点の御見解はいかがですか。
  23. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 二点申し上げたいと思いますが、第一には、国家予算に対する比率はなかなか数字がとりにくいと申し上げましたけれども、外務省関係の予算と全予算との比率でございまして、国家予算の中において社会福祉とかそういう種類の経費が非常にふくらんできたということがありますと、結局比率でとりますと外務省の方の予算のパーセントが低いという面もかなりあるかと思いますので、この数字だけで外交面が軽視されたと即断は必ずしもできないのではないかという点が一つございます。  それから、外交体制の強化の必要性は、いまの御指摘もあるとおり、まことに、私ども戦後外交を再開してから今日まで最大の関心事であり、努力を払ってきたところでございます。国家予算に対する非常な緊縮の姿勢とかあるいは定員抑制というような政府の方針もございましたので、外務省が毎年計画を立てて要求をしたものが、必ずしも最終的な予算に完全には実現しないということを繰り返しておりますけれども、たとえば本年度、いま御審議願っている五十五年度などは、多くの省庁において実質減となっておるのに対して、外務省は実質増八十名ということが確保されたのも、それなりに政府全体としての努力の姿勢が反映しているものとは思います。  しかしながら、より長期的に、かつ外交の重要性の拡大あるいは外交活動の種類の拡大ということで、私ども日々仕事をしております立場から申しますと、現状は遺憾ながらやはりまだかなり不十分だということは痛感しているところでございまして、これは結局、質と量と両方の面から改善を図らなければならない問題でございます。  そのうちの量につきましては、かねて私どもは最低五千人の定員が欲しいという案を立てまして、これをできれば昭和六十年の時点において実現したい、ということは、現在の三千四百名というところから年間かなりな数の実質増を得なければ実現できないわけでございます。そうすることによって、せめて主要国の中の一番低いところの数までは達成したいというのが、一つの私どもの長期的な計画でございます。  それから、それに劣らず重要なのはやはり質の改善でございまして、この点は及ばずながらいろいろな努力を近年続けているつもりでございます。採用試験制度についてもいろいろな見直しを行いまして、より優秀な人材がこぞって試験を受けに来るということがまずその出発点でありますし、その後、研修制度をいろいろな面で、日本における研修、在外における研修あるいはある程度勤務を終わった後の中間における研修という制度の充実が一つでございます。  それから、最近私どもが非常に重要なこととして努力しておりますのは登用淘汰の制度でございます。すなわち、上級試験合格者ならざる者に対していろいろな形で登用を行う。若手については、登用抜てきを行った者については上級試験合格者に準じた身分上の扱いをして、将来上級試験合格者と同じような活動をしてもらう。それから、ある程度の年齢以上に達した者につきましては、新たに登用ということを言わないで、直ちに公館長、総領事さらには大使に抜てきしていくということで、最近までに相当な数の公館長が上級試験合格者以外からも出ている。また、上級試験合格者についても、厳密な考査を行いまして、いわゆるぬるま湯的な体質の除去には努力しているつもりでございます。  それらをあわせて、さらには各省庁からの優秀な出向者、現在三百名弱、在外公館に各省庁の職員がおりますが、そういう方等の知識経験を大いに生かしていただくとか、あるいは中途において優秀な人を採用するというようなこと、それらをあれこれ併用いたしまして、質の改善また省員の士気の高揚ということにも努力する。私どもとしては、質と量と両面にわたる努力をできるだけ払いまして、われわれに与えられている責任の達成に努力しているというのが実情でございます。
  24. 麻生太郎

    麻生委員 努力をしておられるということなので、それはそれなりに結構だと思いますが、戦前は先進工業国との外交というものを非常に重要視しておられましたし、ドイツ、イタリーなどの枢軸側とか、また対米、対英外交というものに非常に主力を置かれておったのはよくわかっております。しかし、昨今では、日本の経済力の成長に伴って、中近東とかアフリカとか東南アジアとか、戦前では低開発国と言われておったところにその重心が移ってきて、資源外交上大変なことになってきていると理解しております。  一つ伺いたいのは、私もシエラレオネという国に半年ぐらい住んでおったことがあります。ここには日本の在外公館はございません。ちょっと行くと電気もないようなところに半年ばかり住んでおったことがあるのですが、アメリカとか先進諸国ではない国に赴任した場合、これに対して、内地の言葉で言えば辺地手当みたいなもの、外務省というのは何かむずかしい言葉があったと記憶しますけれども、そういった手当というもののあれはどのようになっておりますか。
  25. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 現在、在外公館のうちの三分の二近くが、程度の差こそあれ開発途上国あるいは瘴癘の地ということで、普通のローテーションになりますと、三回に二回はそのような地域に在勤することになるわけでございます。したがいまして、一般にこういう不健康地と申しますか、そういうところに在勤する者に対する措置は、やはり私どもの外交体制の整備の中の非常に重要な課題でございます。これらの者に対しては、在勤中、本人及び家族がそういう非常に困難な環境において十分活動できるようなさまざまの措置を講じなければならないのは当然でございます。  二、三主なものを申し上げますと、第一点がただいま御指摘になりました点でございますが、在勤基本手当という在外において受け取る基本的な手当の中に、最高二五%の範囲内で不健康地に応じた加算を行っております。これは、主に不健康地におきましては、現地で物が得られないために外から物資を手に入れなければならない等々、あるいは健康上の理由で一時その地を離れる必要があるとか、通常の積算には出てこないようないろいろな経費がかかるという点に着目した加算でございます。  そのほかに子女教育手当の面におきましても、国によりますと、そういうところでは非常に教育費がかさむという事情がございますので、現在では子女教育手当一人一万八千円という制度でございますが、先般これにある程度改正を加えまして、さらに一万八千円を超えない範囲、つまり合計三万六千円の範囲内におきまして子女教育手当を加算して実情に合わせるという制度を、これは五十四年度から導入しております。  なお、そのほかに宿舎の問題がこの不健康地においては非常に大きな問題でございますので、館員宿舎の借り上げとか国有の館員宿舎の建設というようなことで、館員が着いてから自分で家を探すことがなかなかむずかしい地域については着任早々住宅に入れるという制度をつくるとか、あるいは家具を新たにかえますと現地で手に入らないようなところについては家具を貸与するという制度をつくりますとか、それからこれは非常に喜ばれている制度でございますが、健康管理休暇制度というのをつくりまして、特にマラリアの薬を飲み続けますと肝臓に害があるような任地におきましては、一定期間後に、そのマラリアの薬を飲まないでいいような地域に家族ともども出かけるための休暇制度というものを採用する、まあ、あれやこれやをつくりまして、この不健康地在勤者のための措置を講じているところでございます。
  26. 麻生太郎

    麻生委員 これからいま言ったような手当てをなさっていく、またそれは十分なのかどうかというのはよくわかりませんが、こういったものをなされていないと、辺地へ行った者は、おれは割りを食った、ほかの者はあんないいところへ行っておれはこんなところに回されたということは、結果的には労働意欲の減退につながって、外務省のいわゆる現地派遣の人としてやる気がなくなってみたりするというのは、大きな意味で損失にもなりますので、その点についてきちんとした配慮がなされないと、今後大きな意味でのマイナスになりますので、ぜひ御配慮をいただきたいと思います。  もう一点、最後に人員の充実の点で伺います。  たとえばタンザニアとかソマリア、ウガンダとかいういわゆるスワヒリ語の通じるようなところ、それからフィリピンならタガログとか、いわゆるフランス語とか英語とかそういったものとは別に、現地語が主に通用している地域というのはかなりあるわけですけれども、その地域において、外務省の役人ではないけれども現地に滞在してきわめて長いというような人で、その現地語に堪能になった方もかなりいらっしゃるはずであります。たとえば海外青年協力隊等で現地にかなり長くいるという人の方が、何年間かきわめて限られた年月その地に赴任してきた外務省の人たちよりは、その現地には間違いなく詳しい、そういったような方たちというものを外務省の本省で採用なすって、それをその地、特定地域に赴任させる、先ほどいろいろな質的向上をされると言っておられましたけれども、そういったことは可能ですか。
  27. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘の点はまことにもっともでございまして、現地の言葉、現地の事情に通じた者、そういう人材を確保するということはまことに必要でございます。多くの場合、現地職員という形で、青年協力隊を終わった方とか、その他現地に長くいて大使館でしばらくその経験を生かして働きたいという方を、そういう形で働きに来ていただいている例は非常にございます。現地職員というのはもちろん現地人その他そういう外国人であるたてまえではありますけれども、種々の事情でそういう者が得られない場合に、日本人を現地職員として採用して活動願っている点はございます。それらの者の中に時折勤務成績が優秀である、経験、能力が非常に豊富である、しかも今後とも外交の面でその国との関係において働きたいという方も出てくるわけでございまして、そういう者につきましては、これは人事院との協議等の手続はございますけれども、一定の手続を経まして、これを外務省の本省の職員として採用することはわずかながらいたしております。五十一年度以降五十四年度までに十名の方を、サンパウロからザンビア、インドネシア、パナマ、ガボン等の地域において採用した例がございます。  ただ、この数が余り十分じゃないのじゃないかという感じは確かにあるのでございますけれども、そういう方の中には、やはりいつまでも現地に不定期の期間とどまることは必ずしも希望されない、何年かのうちにはまた自分の仕事をやりたいとか、ほかへ行きたいとかいう方も出てまいりますので、そういう場合はむしろ現地職員として限られた期間働いていただくという方が実情に適することもありますので、その辺は併用してやるべきじゃないかというふうに思っております。
  28. 麻生太郎

    麻生委員 現地採用の職員と本省採用では、与えられている権限の範囲が限定というかかなり違っておりますので、結果的に、現地でいかに優秀であっても、いわゆる扱えないというような範囲がありますので、これは結果的には、本省採用の枠がふえないことには意味がないのであって、そういった意味で、いま十名ということでゼロよりはまことに結構でありますけれども、今後ともこういったような形で、日本のいわゆる官立大学を出たとして日本の中においてはきわめて優秀であろうとも、現地においてそれが優秀であるかどうかというのは全然別問題でありますので、そういった意味では、間違いなく現地において優秀であるという人間を見た上で外務省が採用するわけでありますから、これはきわめて効率のいいことになろうかと思います。ただし、一たん本省に採用になった場合は、スワヒリ語しかできないのにいきなりマレーシアなんかに送られてもこれは意味がありませんので、そういった意味ではその地域に限られて特別というような形のものが実質的に行われないと意味がない。  そういった意味で、少なくとも今後日本という国が国防の面もきわめてお寒いということになると、総合安全保障という面からは外交に頼らざるを得ない部面が多々出てこようかと思いますので、外務省の人員の数及び質の問題等については積極的な御配慮をいただきたいということを要望申し上げまして、質問を終わります。
  29. 塚原俊平

    塚原委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時二十五分休憩      ————◇—————     午前十一時四十二分開議
  30. 塚原俊平

    塚原委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岩垂寿喜男君。
  31. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣に、最初に私申し上げておきたいことがございます。  こういうことは余り言いたくないのですけれども一、きょうは外務省が出した法律審議するわけです。各省が出している法律の中で日切れだから優先にしてほしいということもあり、それぞれ各党の中で一致を見て、しかも訪米の前にということがあって、一定の日程の調整が行われて、そしてそれで開けるのかなと思ったら東京ラウンドだからだめだ。そうしてその上に本日は、もう大臣が訪米する以前から決まっている日程の中で、今度は審議が始まろうとすれば大臣はいらっしゃらない。参議院の予算だ、こういうわけであります。しかもその時間が、あらかじめ私たちが予想したよりも二転三転であります。一体、外務省はこの法律を本当に望んでいるのかどうか、あえて私は言わざるを得ないのであります。  こういうやり方、実は前国会にもございました。私は別に大臣がいないから質問をするとかしないとか言っているのじゃないのです。そうじゃなしに、やはり法律案を出した以上は、大臣以下国会の中でその協力を求めながらその成立を図っていくということでなければ、私ども審議のしようがないのですよ、率直なところ。しかも日切れということとあわせて、円安の状況が続いている在外公館に勤務している皆さんの仲間、外務職員の生活上の困難も大変なものがある。だから何とか緊急にというやりとりがあったわけであります。ですから、私は内閣委員会に対する外務省の態度というものをあえて問わざるを得ないけれども、こういうことを何回も繰り返さないように、何か、何となく私たちが意地悪で通せんぼしているようにとられても心外ですが、長い経過のいきさつがあるのです。その点は大臣から明らかな釈明をいただきたいと思います。
  32. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いま御指摘の点、大変申しわけないことと存じております。  私も金曜、土曜の審議を訪米のために二日間休ませていただきましたのですが、昨日から国会の審議に全力を挙げて出席いたしておるわけでございます。きょうは、予算委員会、本会議、こちらの内閣委員会等の間で質問要求におこたえいたしまして、極力御迷惑をかけないように努力いたしておりますのですが、全般的にいま御指摘がありました点につきまして、いろいろ当委員会に御迷惑をかけましたことは、厚く私からもおわび申し上げます。
  33. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣が一々国会に拘束されないで活動するということも大事だとは思います。しかしにもかかわらず、このいきさつはそういう事柄ではないわけでございます。これは、私ども御協力を申し上げてやっていこうというようなことになったらおたくの方の都合でだめだ、そういうやりとりを繰り返していることは本当に心外でございますので、先ほど理事会で委員長からもしっかり言われておりますけれども、その点も御理解を願いたいと思います。  最初に、法案に直接関係のある外務公務員給与に関連してお尋ねをいたします。  提案理由の説明の中に、為替相場の変動、物価上昇等を勘案して、在外職員の在勤基本手当の額を改定するとございます。在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の第五条には、「在勤手当は、在外職員が在外公館において勤務するのに必要な衣食住等の経費に充当するために支給されるものとし、その額は、在外職員がその体面を維持し、且つ、その職務と責任に応じて能率を充分発揮することができるように在外公館の所在地における物価、為替相場及び生活水準を勘案して定めなければならない。」と規定されています。  率直に伺いますが、今回の改正で今日のような世界的なインフレ、特にそれに関連しての円安傾向の定着という状況に対応し得るのかどうか。それからそれらの関連で、現在の在外給与制度を改善する必要がないか、この点について御答弁をいただきたいと思う。
  34. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 ただいま御審議願っております改正は、まさにいま御指摘のあったような事情を背景にして御審議願うわけでございまして、世界的な物価高あるいは現地における生計費指数の高騰、それから円安と申しますか為替相場の変動というような事情でダブルパンチみたいな状況が特に最近現出しておりますので、それによりまして、これは国別あるいは都市別で非常に事情が違いますので、一律にはなかなか捕捉しがたいわけではございますけれども、すべての土地のそういうような指数を詳細に集めましてそれらを検討した上で、現在の給与では非常に不足する分につきましてこれを改めるということでございますので、このような形の改正が実現いたしまして、四月からそれに基づいてこれを支給するということになりますと、現時点におきましては、御引用のありました法律の第五条にありますような趣旨に合った在外給与改善できると考えております。
  35. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 給与制度を改善する必要があるかどうかということです。
  36. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 失礼いたしました。給与制度改善につきましては、やや長期的な問題としていろいろ検討しております。たとえば定額制度と実費支給制度というものについては、たとえば住宅手当などにつきましてその是非は前から議論しておりますけれども、一定限度額までの実費支給制度を完全実費支給制度に変えるためには相当詳細な資料、各地における事情の変化をとらえなければなりませんので、なかなか実施上公正に実施するためにむずかしいので、現在は一定限度額で支給しているわけでございますが、それから、先ほども御議論がありました不健康地における勤務が非常につらいということで、かねてこの不健康地在勤者に対する手当をもう少し別な制度として取り入れてはどうか。現在は、在勤基本手当の二五%以内で加算をするという制度でございますけれども、これはややきめが粗いという感じがいたしますので、これについてはもう少し特殊勤務地手当というような発想を取り入れる余地がないかどうか。これも実は給与当局との間でもいろいろ議論を開始しているところでございますけれども、これはいずれもかなり法令上の制度の整備、それから各地におけるデータをそろえませんとなかなか取り上げられませんので、五十五年度においては、制度そのものの改定は御審議願わない、五十六年度以降については、いますでに委員会をつくりまして、そのことも含めて検討しているという状況でございます。
  37. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いわゆる瘴癘地の問題も含めて、いまの特地勤務手当というものは考えられているのですか。簡単に御答弁いただきたいと思います。
  38. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 不健康地については、先ほど申しました庫属地といっても同じことでございまして、瘴癘地に関する諸制度は遺憾ながらまだ完全ではないと思っておりますので、これについては新しい制度の導入を含めて検討しているというのが実情でございます。
  39. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 まあ、勤務環境の悪いところということを瘴癘地という言葉を使っているようでございますが、そういうことも含めてやはり考えてあげないと、不公平というか、不平等になりはせぬかという感じもございますので、その点もぜひ考慮願いたい。  それから、住宅手当制度というのは一体どうなっていますか。いまの制度は私伺っておりますからいいのですが、インフレその他の問題があるわけですね。だから、家賃が高騰しているということを新聞でも拝見をいたしましたので、それを改善する必要があると考えているかどうか、そのことだけにお答えください。
  40. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘のように、相当多くの任地におきまして住宅費の、異常な高騰と呼んでもよろしいかと思いますが、世界的なインフレ傾向ということ、あるいは住宅が非常に不足してきたということからくる家賃の値上げ等がありまして、現在入っている住宅が契約を更改するときに非常に高くなるというようなことがございます。したがいまして、今度御審議願っておりますこの改定、また予算におきまして、住宅手当の改善というのは非常に大きな事項になっております。具体的に申しますと、八十七の公館を対象にしまして平均二二%の増額ということでお願いしているのは、そのような事情でございます。
  41. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いや、お願いしているというのはあるのですが、手当制度というものを少し見直す必要があるのじゃないかということを私申し上げているのですから、それがあると思っているのかいないのか、その点を。その次の質問もありますから、関連で結構です。  この間、わが国の外交官と主要国の外交官の手当とか給与とかあるいは人員配置などの表をいただきました。正直なところ、必ずしも十分でないというふうに私は感ずるわけです。人員の配置の問題、給与や手当などの問題全体をとらえて、現行の諸制度というものを見直す時期に来ているのではないかという、そういう感じを持ったわけですし、関係者もそういう意見を恐らくお持ちだろうと思うので、その辺の御回答を簡単にひとつお願いをしたいと思います。
  42. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 住宅手当制度の改定につきましても、五十五年度については御審議願わないわけですけれども、外務省としては五十六年度については検討し直したいと思います。まだ全体の制度がやや大ざっぱでございますので、もう少しきめ細かい制度にできれば一層、特に不健康地在勤者にとっては不都合が減るということで、これは検討中ということで御答弁申し上げたいと思います。  諸外国外交官との比較も、これは各国制度が違いましてなかなかむずかしゅうございますけれども、私ども持っております資料によりましても、特に若年職員につきましては比較上かなり日本の在外勤務者の方が少ないというので、その辺は大分一時よりは改善したかと思いますけれども、なお改善の必要があるというふうに考えております。
  43. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういう制度というのは、たとえば来年度の法改正に関連をして準備をしていくというふうに考えてよろしゅうございますか。
  44. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 私どもはそうしたいと思いますが、財政当局との間で現時点ではまだ最終的な了解に達するまでには至っておらないという状況でございます。
  45. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この前の在勤法の審議のときに附帯決議がついておりまして、在外公館事務所、公邸の国有化のことやあるいは在外職員の宿舎の整備などについての附帯決議がございますが、その後現実にそれらの問題というのは具体化しつつあるのかどうか、その点を御答弁煩わしたいと思います。
  46. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 五十三年度にこの決議をいただきまして、その決議をもとに、各項目ごとにかなり努力を払ったと思っております。そのうち、いま特にお取り上げいただきました在外公館事務所、公邸の国有化、宿舎の整備はどうかという点につきましては、これは国有化した方がいいということは種々の理由から申すまでもないことでございますので、いろいろ改善を図ってまいりまして、昭和五十五年一月末の数字をちょっと御披露いたしますと、国有化された在外公館事務所は全公館のうちの約二六%、公邸は全体のうちの約五五%、宿舎は約一一%ということになっております。これは、国によりましてはなかなか国有化できない、売ってもらえないという事情等もありますし、あるいは非常に状況が変動するところでは、買って固定化してしまうよりはいいものに移った方がいいという状況もございますので、これを非常に大きく比率を高めることまではできるかどうか、適当かどうかわかりませんけれども、まだ改善の余地はあると思いますので、さらにこれを進めてまいりたいというふうに考えております。
  47. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 さっき国際的なインフレということを申し上げましたが、ホテル代だとか食費が非常に上がってきているというのはもうだれもが感じていることです。現在の旅費法に基づく旅費だけでは、出張をした人が多額な負担を強いられるというような実態もあるわけでございますが、これらは、旅費の支給に関する旅費法の改正というような問題は、時宜に適した問題だろうと思うのですが、その点はどうなんですか。
  48. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 旅費法の所管は大蔵省でございまして、大蔵省が国内、国外のいろいろな旅費については時に応じて改正を図っているわけでございますが、外務省は在外職員の外国出張旅費というものと関係が深いので、そういう意味におきましては、在外におけるホテル代等の非常な高騰の数字を集めまして大蔵省に提起して、過去におきましても何年置きかに改正を図っているわけでございます。  現在は、これも出張先によって非常に違いますけれども、全体として私どもが見ますところでは、かなりの者が不足を訴えている状況でございます。旅費法は、これも定額制度をとっておりますので、一定の金額を支給を受けてその範囲内で賄うというたてまえでございますので、実際上は、ホテル代が高い場合には、不本意ながらやや格を下げた、より安いホテルに泊まるというようなことで何とか、多少足を出しながらもその中で賄うということをやっておるわけでございますけれども、やはり国際会議への出張者等は、各国からの代表の泊まるようなホテルに泊まっていませんとなかなか仕事がしにくい、ホテルの格を下げて違うところに移ることは職務の遂行上も非常に支障を来すことが多いものでございますから、そういう意味では現状は改善を要すると思っております。大蔵当局におきましても問題があるのではないかという感触も持っておられるようですから、これからさらに数字を集めまして、私ども外務省といたしましては、外務公務員だけでなくて各省からの多くの公務出張者全体にかかわる問題でございますので、そういうデータをもとにいたしましてなるべく早い改善を図りたい。主管は大蔵省の旅費法ということであろうかと思います。
  49. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 外務大臣、これは朝日新聞の社説なんで大変言いにくいわけです。特定の新聞のことを申し上げるのは恐縮でございますが、こういうことが書いてあります。  「外相は、長いこと外から観察していて、外務省や在米大使館の機能に対し、ある種の批判をもっていたはずだ。国際化時代の日本の対外競争力を強めるため、外務省自体に任せていたのではいつになっても出来そうもないような人的、機構的な改革に思い切って着手するよう期待したい。単に大過なく一、二年外相をつとめあげた、というのでは「議席をもたぬ国際人外相」起用の意味がない。」こう述べられていることを恐らくお読みになっていると思います。就任なさってまだそれほど長いわけではないのですけれども、あなた自身が外におられたときのことも含めて、そういう問題点をここでぜひ率直に御指摘を願いたいと思います。
  50. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま岩垂委員からの御指摘の点、私も朝日新聞の社説を拝見したわけでございますけれども、就任から五カ月足らずでございますが、いろいろその間の経験を通じまして、外務省は非常に限られた人数の中で、外交事務のボリュームとしては近年ますます急速にふえておるというような中でとにかく努力をしておる、全般的に士気も高いという印象を受けておるわけでございます。  外から見てまいって、ある程度国際問題に関係してまいりました立場から欲を言えば、たとえばさらに専門家の養成に力を入れる。それから、必要に応じて外部からの人材の登用をもう少し積極的に考えていいのではないか。それから、いろいろな国際会議が開かれておりますが、従来、出席者は大体外務省及び各省の役人に限られておるのでございますけれども、最近では海洋とか宇宙とかいろいろな問題で専門的知識を必要とする国際会議が多いわけでございますので、そういう会議にたとえば学界から有能な人が継続的に出る。役人ですと、どうしても二、三年でポストが変わりまして、そういう専門的な国際会議での継続性とか学問的、専門的な知識の深さ、諸外国のそういう分野での専門家とのつながりという点がどうも不十分ではないか。これは予算上の問題もあるかもしれませんが、日本の学界にも国際問題と取り組んでいる学者は非常に多いわけでございまして、こういう人にできるだけそういう国際会議に継続的に出てもらう、そのことを通じて対外的なつながりの人間的な寄与といいますか、貢献ができるようなことが必要でございますし、またそういう顔と申しますか、国際的な舞台における顔がつながっていく。しかも深い専門的知識を持っているということは、いろいろな国際問題に対する企画立案に日本人が参加する機会がふえる。  現在でも、国連機関から日本人に来てほしいという例はいろいろあるけれども、一つは適当な人材の供給がなかなかできない。そのためには、ふだんから国際会議等で学界その他の専門家の訓練といいますか人材養成をあわせてやっていかなければならない。そういう点も含めまして、外務省自体非常な努力をやっておることは、私も中へ入りましてよく認めておるわけでございますが、さらに広く省外の人材を国際的な活動に活用することについて工夫の余地があるのじゃないかというような点も感じておるわけでございます。
  51. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣も政治を志されたこともあるわけで、それなりに国会のことも御存じだと思いますけれども、それはそれとして、せっかく大平内閣のユニークな存在と評価されているわけでございますから、ミイラ取りがミイラにならぬように、いま御指摘のことなども含めてぜひ御努力を願いたい、こういうふうにまず最初に申し上げておきたいと思います。  訪米問題についてお尋ねする前に二、三質問をしておきたいと思います。  玉木防衛施設庁長官が二十一日の定例記者会見で、アメリカが空母ミッドウェーの母港となっている横須賀にさらにもう一隻加えて空母の母港にしようとした場合に、ドックや岸壁など港湾施設については受け入れ可能としても、乗組員、家族のための住宅、厚生施設などを建設する余裕は横須賀海軍施設にはないという見解を明らかにされたそうでありますが、長官、事実ですか。
  52. 玉木清司

    ○玉木政府委員 お尋ねの三月二十一日の私の記者会見での発言でございますが、記者の方々から、横須賀を米空母の二隻目の母港にできるかというようなことに質問が及びまして、それに対しまして、現在横浜市にございます住宅を横須賀に移設したり、それから神奈川県下におきまして経費分担による住宅の建設等をしておる状況等から見まして、家族の住宅や厚生施設等をつくる余地は現在相当限られておりまして、これを実施していくことはしかく簡単なことではない、そういう実情を申し述べたところでございます。
  53. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう一隻の空母を受け入れるのは困難だとおっしゃっているのです。そういうお言葉遣いをなさっているのです。
  54. 玉木清司

    ○玉木政府委員 対話の中でございますので、どういう熟語を使ったかというはっきりした記憶はございませんが、住宅をこれ以上大量につくることは大変むずかしいことだという、実情を申し述べたところでございます。
  55. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この点について外務省にお伺いをいたしますが、一九七八年十二月のアメリカの予算局のレポート以来指摘されております西太平洋、あるいはいろいろなレポートの中で東北アジアという言い方をしているところもありますけれども、もう一つの空母を配備する計画、日本に対する母港化要請という形を含めて行われたことがあるかどうか、お答えをいただきたいと思います。     〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕
  56. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまお尋ねの第二空母の母港化について、現在のところ要請はございません。
  57. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 現在までないとしても、今後要請があればそれを受け入れる方針であるかどうか。
  58. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 仮定の問題でございますので、ここでどういう方針をとるかということを申し上げるのは必ずしも適当でございませんけれども、一般的に申し上げますれば、安保条約の目的達成と地元に対する影響を考えながら、その際の対応ぶりを決定していくということになるかと思います。
  59. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いろいろな種類のレポートがあるのですけれども、その中で第一候補は日本という感じですね、いろいろなレポートを読み合わせてみますと。第二にはグアムという点もありますけれども、ここでは二億五千万ドル近い設備が必要だ。もう一つ、柔軟配備、これは米本土から日本に着くのに片道で十三時間、往復で二十六時間だ。それからフィリピンのスビックはドックが小さいなどの難点がある、こういうようなことがいろいろなレポートを読み合わせてみて、一つ一つ挙げませんけれども挙げられているわけです。したがって、日本に母港化の要請が行われると私は予想せざるを得ないのですが、この点はどんな判断を持っていますか。
  60. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまの岩垂委員御指摘のいろいろな報道がございます。  たとえば三月十一日のサンケイでございますか、それについては、すでに横須賀がもう母港に決まったということでございますけれども、この点については私たちもアメリカの当局に照会いたしました。照会した国防総省の回答は、現在まだ予備的な検討を行っているにすぎないのだ、したがって、横須賀が母港化というそういう報道は誤りであるということを得ております。
  61. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま北米局長は地元の住民の感情というようなこともおっしゃいました。私はこれは非常に重要な要素だと思いますし、そういう点で、先ほど玉木防衛施設庁長官がおっしゃった言葉をまつまでもなく、横須賀は住宅や厚生施設の問題だけではなしに、風紀の問題も含めた市民感情、あるいはいま裁判になっていますけれども厚木基地の艦載機の墜落事故や騒音問題等々を考えますと、候補地として適当でないということは明白だろうと私は思うのです。率直に言って、万一横須賀というようなことが希望された場合には、適当でないというふうに判断をしていると理解してよろしゅうございますか。
  62. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、さらにさっき施設庁長官の方からも御答弁ございましたように、具体的に検討をする段階に来た場合には、地元住民への影響と申し上げましたけれども、それに加えて施設、区域内の施設の集約状況その他も考えながら対処するというのが現在のところで、いまこれを受けるかどうかということを申し述べるのは、まだその段階に来ておりません。
  63. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 外務省の勘という言い方は余りいい言葉じゃないのですが、横須賀でないとすると日本のどこかにということはあり得ると思いますか。
  64. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 外務省の勘は必ずしも正しいかどうかわかりませんし、現在のところ、アメリカがまさにいろいろなオプションを考えておりまして、先生御承知のとおりオーストラリアのパースのそばも候補に上っているような状況で、私たちとして、どこがいつどういう態様でなるかということをこの段階で申し上げるのは、そういう判断の根拠もございませんし、適当でないというふうに考えております。
  65. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この点は、新聞報道以来横須賀の市民だけではなしに、神奈川の県民も非常に大きな関心を寄せています。県議会あるいは市議会などでもすでに問題が取り上げられています。私は、こういう問題について住民の意思あるいは長い間経験をしてきた住民のそうした率直な気持ち、そのことをぜひ尊重されることをあえて求めたいと思いますが、外務大臣いかがでしょうか。
  66. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題はまだいろいろ仮定の問題でございますし、私どもから衆議院の予算委員会でも御答弁申し上げたことがございますが、日米安保条約の円滑な運営上の必要とそれから地元住民のこの受け入れに対する考え方等、いろいろな点を十分考慮してまいらなければならない、万一そういう申し入れがあった場合には、そういうことを考えてまいらなければならないことだろうと存じております。
  67. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それに関連をいたしまして、いまの母港で、ミッドウェーを初めとするアメリカの艦船が屎尿などを含めて汚水のたれ流しをずっとやっていまして、海域の環境汚染の問題がかなり問題になってまいりました。私も本委員会だけでなしに、公害対策特別委員会などでもその対策を求めてまいりましたわけですが、一向に進んでいません。これに対する防衛施設庁の対策、五十五年度予算などにおける取り組み、このことをお示しをいただきたいと思います。
  68. 森山武

    ○森山(武)政府委員 先生御指摘の横須賀海軍施設に停泊している大型艦船は、現在のところその排出された汚水を処理する陸上施設がございません。そのようなことで、現在汚水を海域に放流せざるを得ない状態になっております。また、横須賀海軍施設の中の司令部地区あるいは修理部地区の汚水を処理する浄化槽が老朽化しておりまして、これまた神奈川県、横須賀市から改善方の指摘を受けております。  このような事情を踏まえまして、また、アメリカ合衆国におきましても昭和五十六年度中に大型艦船には船の中に貯留槽を設置するというふうなことと相まちまして、陸上施設として、艦船の汚水とそれから現在老朽化している浄化槽の汚水を一緒に処理したいという考えで、昭和五十五年度予算調査設計費として九千三百万を計上している次第でございます。
  69. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 調査設計というのは、五十五年度内にとりあえず施設はできますか。設計だけで、それから仕事を始めるのはまた新しい予算を組まなければ、来年度予算でなければいけませんね。その点はどうですか。
  70. 森山武

    ○森山(武)政府委員 先生御指摘のとおり、五十六年以降において施設をつくる考えであるということでございます。
  71. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 指摘をしてからかなり長い年月が過ぎているわけでございまして、できるだけ早くやっていただかないと困ると私は思うのです。そういう問題を含めて、実は母港化問題というのは、一々言いませんけれども、いろいろなことが含まれているわけでありまして、、ぜひ速やかな対策をお願いをいたしたいと思います。  念のために伺いますけれども、今度訪米なさったときのトーキングペーパーを拝見すると、在日米軍のための費用は年十億ドルにも及ぶが、ミッドウェーの日本母港化でアメリカ側は年四億ドルの節約になっていると政府は計算しておられますけれども、この計算の基礎はどういうことなんですか。
  72. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 先生御指摘のトーキングペーパーがどれを指すか、私たちはっきりいたしませんけれども、たとえば、アメリカにブルッキングスという研究所がございます。それの中に一ついま御指摘のようなことがございまして、母港化によって五年間で約二十一億ドルが節約できるということを言っておりますので、あるいはそれとの関連かとも思いますけれども、結局、航空母艦を本土からそれぞれの地域に動かしていくよりも、前方に展開して乗組員の住宅その他施設等を設けておいた方が、燃料費あるいはその他の関連経費の節約にもなるということを言っているかというふうに私たちは了解しております。
  73. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私、新聞で拝見をしたのですから、どのトーキングペーパーかと言われるのはちょっと心外なんですけれども、これはよその資料ですか。
  74. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 トーキングペーパー自身について申し上げますと、これは私たち部内の討議に使う内容でございまして、いま申し上げたような具体的な数字がそこで云々されているということでございません。ただ、母港化に伴っての節約については、従来アメリカ側からそういうふうな資料もございますので、私たちは大体一年間で四億ドルぐらい節約になるんではないかというふうに考えておりますが、この十億ドルの方は、これは国防長官の国防白書の中にも出ておりまして、これは現在日本側で負担している施設関係の経費すべてを含めた額に大体当たるというふうに了解しております。
  75. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 さっき、仮定の条件だからお答えができないというふうな言葉と関連をいたしまして、安保があるからという言葉を敷衍して言いますと、受け入れざるを得ない、しかし、地元の感情を配慮してというふうに、どうも二段構えのお答えのように私は受けとめるわけです。日本政府は受け入れる方向が腹づもりの中にはあるんだなというふうに察せざるを得ません。  実は私ども、別に私は選挙区だからという意味じゃなしに、ミッドウェーの母港化に対して反対をしてきました。第二の母港化が予想されるという今日の状況に対して、私は強い抗議の意思を表明をせざるを得ません。実はミッドウェーの母港化のときに私ども聞いているのは、両三年という期限があったというふうに聞いています。その真偽のほどは外務省に聞かなければなりませんけれども、そういう問題も含めて、改めてミッドウェーの母港化、もう期限が来ているとすれば断らなければいかぬ。ましていわんや、新しい空母などを受け入れるということはけしからぬ、こういうふうに言わざるを得ないのですが、その点についての御回答を煩わしたいと思います。
  76. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 再三御答弁しておりますように、現在のところまだ要請もございませんので、それに対して受け入れるかどうかということを政府が表明している、あるいは決定しているわけでございません。その点、すでに受け入れるような心証を先生お持ちのようでございますけれども、現在のところ全く白紙でございます。
  77. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 やりとりをしていてもなんですけれども、お言葉を聞いていると私はそう思う、こういうふうに申し上げているのです。断るということはないということだろうと私は思うのです。その点……。
  78. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは先ほど申しましたように、日米安保条約の円滑な運営という点と地元の受け入れ体制、そういう点を双方勘案しなければならないことだろうということでございます。一面におきまして日本の安全、日本国民の安全ということ、外国からの武力攻撃というような場合を想定いたしまして、一方において最小限の自衛力、一方におきまして日米安保条約に基づく抑止力、こういうものに日本国民の将来の安全を依存するという選択を戦後やってきておるわけでございまして、そういう意味では、アメリカによりまして日本国民の安全を守ってもらうという面が安保条約にはあるわけでございます。  この条約におきましては、もし日本が武力攻撃を受けた場合にはアメリカは日本を守るということを約束しておりますが、日本はアメリカがもし何らかの形で攻撃を受けた場合にはそれを守る責任はないわけでございまして、そういう点から申しましても、日本国民の安全という基本的な立場から見ました場合に、やはり日米安保条約が円滑に動くという条件が重要だと考えられますので、そういう要請と、それからいまの地元の受け入れに対する態度と両者を勘案してまいらなければならないという趣旨で先ほど申し上げたわけであります。
  79. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 石橋先生がいらっしゃるけれども、横須賀がだめなら佐世保へ行くんじゃないかと思うのですけれども、恐らく新田原の共同使用というようなものもそんなことに関係があるのじゃないかと、実は私ども、これは推理なんでございますけれども、推理せざるを得ない。そういう問題について、国民感情というものを外務省の選択の中で十分に配慮されることを、日本政府の配慮を私は望んでおきたいと思います。  施設庁長官に、関連をして横須賀が出ましたのでお尋ねしておきたいのですが、海上自衛隊の比与宇弾薬庫というのがございます。これについて昭和四十七年十一月十六日の横浜防衛施設局長から横須賀市長にあてた「FAC−三〇九九横須賀海軍施設の一部共同使用について」という文書がございます。その中に「比与宇火薬庫の使用廃止については、これに先立って行なわれなければならない浦郷倉庫地区の整備を年度内に開始し、工事完了後速かに実施する。」というふうに述べられています。たしか三万八千十八平米かと思っていますが、しかし、その後もう八年近い歳月がたっているわけですが、移転が行われていません。横須賀の市当局が、昨年の三月ですが、横浜の防衛施設局に問い合わせをしたところ、施設局長は、新しい移転先を予算措置を含めて検討中だというふうに回答をされておられます。その後検討はどうなっていらっしゃるかということをお尋ねしておきたいと思います。
  80. 多田欣二

    多田政府委員 比与宇弾火薬庫の移転につきましては、浦郷の倉庫地区、米軍の施設でございますが、ここを共同使用して移転をするという当初の計画でございました。ところが、現地における調整の結果、いろいろ日米間の火薬取扱規則の差がございまして、結論的には比与宇弾火薬庫の移転先になり得ないということが判明をしまして現在に至っているわけでございます。その後、横須賀市の御希望もかねてございますし、私どもといたしましても、市の御要望にできるだけ沿いたいということでいろいろ移転先を探しております。現在も探しておるところでございます。  最近、御承知のように吾妻倉庫地区というのが日米共同使用ということで承認をされました。吾妻ということで検討いたしますと、保安基準その他の関係から言いまして、一応比与宇弾火薬庫の移転先になり得るのではないかということで、現在私どもで検討しているところでございまして、今後そういった線で市当局その他関係機関とも調整を進めていきたい、このように考えております。
  81. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 あそこは御存じのとおりに、港の後背地なんですね。そういう意味ではいろいろな貨物というか荷物というか、そういうものの置き場ということも大変不自由をしているわけです。ですから、いつまでかかるのかということをちょっと目標を言ってください。
  82. 多田欣二

    多田政府委員 この問題につきましては、一応市当局の御意向、あるいは跡地利用に関する市当局の御計画その他の関係もございましょうと思いますし、さらに吾妻倉庫地区に移すということでございますと、それに先立ちます施設の整備というような問題もございまして、現段階ではっきりいつごろということをちょっと申し上げかねる状況でございますが、鋭意市当局等とも御相談をしながら、できるだけ早い時期に実現するような方向で努力したい、このように考えております。
  83. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 努力目標は来年度内ぐらいのところでやれますか。そうでなければ十年たってしまいます。
  84. 多田欣二

    多田政府委員 現在、比与宇弾薬庫の移転ということで吾妻地区の方に予算等の準備は実は五十五年度予算でもございません。そういう意味で、五十五年度中に地元の御了解が得られたということになりますと、五十六年度以降予算を獲得をして施設整備をしていく、施設整備が完成した時点で移るということで、なお若干の時間が要るのではないかというふうに思います。
  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 市民の重大な関心事ですから、できるだけ早く処置をしてほしいものだと思います。  さっき申し上げたトーキングペーパーの中に「弾薬の備蓄は五十五年度金額べースで二五%増加となっており、機雷、魚雷についても弾薬庫の新設、実装調整場の整備を行い、即応体制の推進を図っている。」と書いてございますが、その具体的な計画というのは恐らくおありになってこういうふうにお示しになったのだろうと思いますが、その点どんなお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  86. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、このトーキングペーパーは担当官レベルがつくりました部内用の参考書でございまして、弾薬庫、いま言及されました点については、一般に防衛関係予算との関連で言及しておりますので、非常に詰めた、どのぐらいかかるかという金額まで積算をして考えたものではございません。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いずれにせよ、機雷、魚雷についても弾薬庫をつくる、どこにということは別として、どういう規模かということも別として、あるいは実装調整場の整備というふうなことで言っているんですから、恐らくそれなりの方向がなければこういうものは出てこないと思うのですが、どうですか。
  88. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 お尋ねの件は、現在五十五年度の予算において前年度と比較してこの程度の増加であるということでございまして、今後の問題についてどういうふうな新設でどういうふうに具体的にやっていくかということは、これは外務省ひとりで決められない、むしろ関係省庁、防衛施設庁ないし大蔵省の問題でございますので、このトーキングペーパーで述べているのは従来の実績を中心にして述べている点でございます。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 従来の実績と言っても、新設をして整備を行ってと書いてあるんでしょう。これからの問題でしょう、そうじゃないの。
  90. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 このトーキングペーパーについては、先生あるいは新聞報道その他を引用されているかと思いますけれども、内容については先ほど申し上げましたような性格で、外に出すのは差し控えさせていただきますが、もし誤解があるといけませんので申し上げたのでございますが、従来の実績、特に本年度の予算でどうなっているかということで、今後の方向についてまで弾薬について詳しく書いてあるものではございません。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 トーキングペーパーというものが新聞各紙に出ていますから、どういうものか私は見せていただきたいと思うのですが、それはそれとして、こういうふうに明らかに書いてあるものを過去のことだと言いくるめても私は無理だと思うのですよ。ほかの項目についても言えますよ。それはどうなんですか。
  92. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ほかの項目、どの点を御指摘か、実は私自身も渡米しておりまして、その新聞報道はまさに渡米中、三月二十二日の読売に出ているものしか私承知しておりませんけれども、日本側が、日本の防衛努力あるいは国防努力についての考え方、特にそれについて余り理解されてない向きに対する説明として考えたものでございまして、将来の展望について一々このトーキングペーパーにとどめているわけではございませんし、また、それに沿ってアメリカ側と交渉したということでもございません。トーキングペーパーという題は恐らく各新聞がつけた見出しでございまして、いわゆる対米交渉のもとになるトーキングペーパーというものではございません。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それをやりとりしていても時間がたちますからやめますけれども、やはり国民が受ける感情というのはそんなこととは違いますよ。その点を明確に申し上げておきたいと思います。  訪米報告、ちょっとおくれて恐縮ですが、せっかくの機会ですから、例の絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引に関する条約、つまりワシントン条約の批准についてお尋ねをいたしたいと思います。  私は、実は超党派の国会議員で組織する自然保護議員連盟の幹事長でございますが、その立場を含めて、この数年国会で、毎国会と言ってもいいと思うのですが、その早期批准を関係省庁にお願いをしてまいりました。昨年の十二月十九日には、世界野生生物基金日本委員会の古賀忠道副会長を初め日本野鳥の会、日本自然保護協会などの代表と私も一緒に外務大臣にお目にかかりまして、今国会での批准を申し入れました。外務大臣から今国会で提案をしたいという誠意ある御回答をいただいたわけですが、その意味で、外務省の担当者を初め環境庁も含めて各位の御努力に感謝をいたしますが、いつ国会に提案なさるおつもりか、お聞かせをいただきたいと思います。
  94. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 本条約につきましては、今国会で御批准をいただくことで、今週の金曜日の閣議で御決定をいただくわけでございまして、後は国会日程によってできるだけ早く御審議をいただくつもりでおります。
  95. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 二十八日になるわけですね。それは後で結構です。  実は私は、日本が批准をおくらせていることが国際的な非難の対象になっているわけですから、それにこたえるためにも留保品目をできるだけ少なくしぼる、できればないにこしたことはないのですが、そういう要請をいたしてまいりました。具体的にどんな提案になるのかという中身をちょっとお教えをいただきたい。
  96. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お説のとおりでございまして、留保品目をできるだけ少なくするように努力したわけでございます。全体の品目が六百種ぐらいになっておりますが、そのうち日本の留保は大体九品目ということでございまして、御承知のように爬虫類の関係、べっこう類、それから鯨がございますが、そういったものを中心にした九品目の留保でございます。
  97. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もうちょっと細かく……。
  98. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 これは学名を申し上げますとちょっと長くなるのでございますが、ナガスクジラ、ジャコウジカ、アオウミガメ、タイマイ、ヒメウミガメ、イリエワニ、インドオオトカゲ、サバクオオトカゲ、アカオオトカゲの各品目でございます。
  99. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これはこの後御質問いたしますけれども、養殖などのことを検討しながら、やはり留保に一定の期限をつけるべきではないかと私は思うのですけれども、その点はどんなふうにお考えになっていますか。
  100. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 本条約はもちろん個別留保可能な条約でございますが、これは資源状態との関連もございますし、それから関係業界その他の関心もございまして、期限に特定年度の、特定の長さの留保を付するということは困難な状況でございます。
  101. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 しかし批准をするわけですから、やはりそういう配慮はこれから努力をしないと、それこそさっき言った資源状態という問題が片方にあるわけですから、その点はぜひ御配慮願いたいと思うのです。
  102. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お話、後から出てくるということでございましたが、増養殖の問題がございまして、これらの品目について増養殖に大いに努力いたしました場合には、いわゆる理論的には留保というものは早期に撤回し得るという形になるかと思います。
  103. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は自然保護の立場から申し上げてきたわけですが、トカゲとかワニなどの皮革関係の業界にとってみれば生業に大きな影響を及ぼすということを知りました。そういう危惧にもかかわらず、私どももお願いをしてまいりましたが、その批准に反対しないというふうに決断されたことに私は業界の皆さんにも敬意を表さなければなりませんけれども、しかし、具体的には廃業とか転業とかというようなこともあり得ないわけではないわけでありまして、これらの業界に対して、養殖などの手だてについてあるいは技術指導予算措置等考えなければいかぬと思いますが、通産省、この点どんな対策をとっておみえになったか、お伺いをしたいと思います。
  104. 水野哲

    ○水野説明員 先生いま御指摘いただきましたように、爬虫類関係の業界あるいはタイマイの業界でございますけれども、ほとんどきわめて小零細企業でございます。そして両業界とも、ともに原料をほとんど海外に依存いたしております。そんなことで、いま外務省の局長の方から御説明がございましたように、私ども当面留保ということで対応さしていただきますけれども、より長期的には増養殖事業というものが非常に重要なことであろうと考えております。  増養殖に係るものにつきましては、ワシントン条約上いわゆる一類に該当する品目につきましても二類上の取り扱い、こういうことになりますので、私ども、業界の今後の安定的な発展、原材料の確保を目指して養殖事業を積極的にやっていきたい、そんな意味で来年度、五十五年度でございますが、とりあえず増養殖事業に係るフィージビリティーのための調査予算を計上して対応しよう、こういうふうに考えております。
  105. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それはトータルにして幾らくらいですか。
  106. 水野哲

    ○水野説明員 来年度は、いわば養殖事業と申しましても養殖試験事業のフィージビリティーを調査する調査予算でございまして、私ども一千四百万ほどの予算を計上いたしております。
  107. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 通産だけでなしにほかの省庁にまたがった問題もあるのでしょう。それはあなたのところがつかんでおられると思うから……。
  108. 水野哲

    ○水野説明員 ただいま御説明申し上げました爬虫類の関係及びタイマイの関係、これにつきましては、養殖事業でございますので農林省等の御協力も得なければいけませんし、あるいは外国でやる事業でございますので、在外公館を初めとする外務省等の御協力も得なければいかぬ、そういう意味でいろいろ各省等と関係する事柄でございますが、予算的には私どもで計上いたしております。いま申しました業界の分についてでございます。
  109. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この程度では——まあ調査費ですから、そういうことは調査をした上での話ですから、調査費自身の金額について物を言うつもりはございませんけれども、やはり長期にわたって対策を進めていく必要があると私は思うのです。そのための予算措置、あるいはさっき言った養殖技術指導などについて通産省の積極的な対応を、これは環境庁あるいは外務省にも要請をしなければなりませんが、求めたいと思いますが、その点はどんなふうにお考えですか。
  110. 水野哲

    ○水野説明員 いま御説明申し上げましたように、来年度は一千四百万ほどの予算でございまして、いわば今後試験事業を進めるための可能性あるいはどんな地域でやるか、わが国としては何カ所くらいのところでやっていくか、そういったいろいろ可能性を探っていく調査でございます。そんな意味で、実は非常に少額とおっしゃられましたけれども、東南アジアを中心とする産出国にチームを派遣してその辺の打ち合わせを十分にやっていきたい、こういう予算でございます。  私どもこの予算実施するに当たりましては、業界、これはいろいろな組合がございますが、その組合にこの予算を受け入れるべき委員会等をつくっていただきまして、そういう委員会に関連の学識者等も極力入っていただきまして、そういうところで今後の増養殖の基本的なあり方等を考えながらいろいろと進めてまいりたい、こう思っております。
  111. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実は最近聞くところによると、ワシントン条約が批准される、したがって品数が少なくなる、だから値段が上がるだろう、そこで批准前にということで相当な量の駆け込み輸入があるというふうに承っているのであります。通関実績などを含めてそのデータを示していただきたい。と申しますのは、政府はもちろんでありますけれども、業界自身も自主的な規制を強めてもらわぬことには、絶滅に瀕しつつある種なんですから、批准はしますがその前にどんどんとっていっていいということにはならぬと私は思うのです。そのこと自身も国際的な非難の対象にならざるを得ないと思うのですが、そういうものを自主規制をし、国民にもそういう理解を得るための配慮、その資料としても去年、おととしぐらいはぜひ比較をしていただきたいと思うのです。
  112. 水野哲

    ○水野説明員 手元にあります資料は五十四年の資料でございますが、これによりますと、大きく分けまして、ワニ関係の資料でございますが、これはワニの原皮及び革といいますかなめした革でございますが、それを含んだ輸入が前年比、五十三年に比べまして数量ベースで五八%の増加でございます。それからトカゲの関係でございますが、これも一五十三年に比較いたしまして五十四年が数量ベースでは一一%の増加でございます。金額では、最近金額がやや上がっておりますので四八%ほどの増加になっております。  その他もございまして、ワニ、トカゲ、カメそれにヘビ、こういう四種の代表的な爬虫類の通関統計で見ますと、五十三年に比べまして五十四年は数量ベースで四六%の増加ということになっております。
  113. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣、せっかくこの前お目にかかったときに批准ということで、私も外務委員会の皆さんにもお願いをしてまいりましたけれども、こういう状態なんです。もう五割近くふえているのです。だから、その批准を早くやってもらいませんと、ずるずるいきますと、これはますます駆け込み輸入みたいなことになってしまうので、その点も含めて御配慮を願いたいと思うのですが、御答弁をいただきたいと思います。
  114. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど政府委員からもお答えいたしましたように、ただいまこの次の金曜日の閣議に諮りまして、国会の方の御審議もお願いしてできるだけ早く成立を図りたいと考えております。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは、訪米問題に関連をして、少し時間が長くなりましたけれども、お尋ねをしたいと思います。  安保ただ乗り論なんという議論がございます。われわれは安保に反対してきました。それは見解の違いがございます。したがって、そのことについてまでは触れようとは思いません。ただ、日本が安保条約を平和条約と抱き合わせで押しつけられたときに、それはアメリカにとってみればアジアの中心である、焦点である日本に基地を存続させたい、そういうところから安保というものが、私どもの側から言えば押しつけられたと私は思うのです。その基地が、朝鮮戦争、前後はございますけれども、あるいはアメリカのベトナム侵略、その舞台として使われてきた。米軍の当局者の、たとえば沖繩がなかったら、あるいは日本の基地がなかったらアメリカはあのような大規模な作戦行動はとれなかっただろうという言葉に象徴されていますように、アメリカが非常に大きなメリットをそれなりに、私どもの見解はそれぞれあるけれども、得ているという実態を私は考えざるを得ないと思うのです。  それが今日、外務大臣がアメリカへ行くと、あるいは行かれる準備を含めて言うと、率直なところ、アメリカからいろんなことを頼まれるばっかりじゃないか。防衛の問題にしても、自動車の問題にしても、対ソ制裁の問題でも。アメリカが得てきた利益という言い方というのは、私の側から言えばなかなか言いにくいことですけれども、私はやっぱりあるだろうと思うのです。それを、何となくいまになって、日本がとにかく協力をしてくれない、けしからぬ、恩知らずだという議論というのは、スタンドポイントが違うのじゃないか。そういうことはやっぱり日本の側もきちんと言わなければいかぬのじゃないか。それがあなたなり大平さんの訪米の前提でなければならぬ。これは率直に国民の気持ちだと思うのです。その点について外務大臣は、日本の憲法とか非核三原則とかいう国是というものを守り通したというふうにおっしゃっておられるような新聞報道を伺っておりますが、そういう立場というものをどうお考えになっていらっしゃるか、私は非常に合理的に物を判断いただく大来さんだと思いますから、率直に御答弁いただきたいと思います。
  116. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御指摘の点で、前段のただ乗り論でございますが、今回参りましたときも、アメリカの議会の下院の外交委員会での会談でも、先方の議員の一人から質問がございまして、日本がGNPの一%以下の防衛費で、アメリカは五、六%の負担をしておる、そのような日本の防衛費節約が産業の競争力を強めて、それで製品がアメリカの市場に入ってくる、そういう形での関係があるのじゃないか、それはやっぱり一種のただ乗りではないかという質問がございまして、私は、そういう日本の産業の競争力と防衛負担の違いというのは両者直接関連すべきものではなくて、たとえば、日本の個人貯蓄の比率は現在でも可処分所得の二〇%を上回っておる、アメリカは五%というようなことで、国民の貯蓄のレベルが非常に違っておる、その違うレベルでの投資も違う、これがやはり日本の産業の競争力を強める基礎になっておるので、必ずしも防衛費負担と競争力というものをじかにリンクすることは納得できないという答えをアメリカの議会の議員の方にはいたしたわけでございます。ただ、こういう気持ちが、かなり広い範囲で議論が行われているということは事実だと存じます。  それから、最近になりまして特にただ乗り論がアメリカで強くなってまいりました背景といたしましては、一つには、安保のできましたころですと、日本とアメリカのGNPが非常に大きく隔たっておって、日本の経済は非常に貧しい、アメリカの経済は非常に豊かだというような状況がございましたのが、その後の高度成長で、現在ではアメリカのGNP二兆ドル余り、日本のGNPが一兆ドルというようなことで、一人当たりではかなり近い水準になってまいった、そういう経済力を日本は非常に大きく拡大してきたので、防衛についてある程度の負担をすべきではないかというようなことが一つございましょうとは思います。  第二には、アメリカの経済力が世界の経済の中で占める比重がやはりこの二十年ないし二十五年の間に三分の一から四分の一弱に低下した。したがって、以前はアメリカがいわばオールマイティー的な力を持っておったわけでございますが、これは必ずしもアメリカの力が落ちたというよりも、ヨーロッパと日本の経済が拡大したという面が大きいわけでございますが、総体的に世界の問題を考えていく場合に、やはり西欧及び日本の協力を得ないと、アメリカ一国だけでは十分効果のある方策がとれない。  第三には、この十年ぐらいの間にアメリカが防衛費の削減をやってまいった。それに対してソ連がステディーに防衛、軍事力の強化をやってまいりました。特に極東におけるソ連の軍事力強化が急速に進んでまいりまして、また、極東における海軍力というようなものも、以前は余りなかったわけでございますが、最近急速に強力なものになりつつある。  そういうようないろんな背景のもとで、安保ただ乗り論が最近に至りまして、ことにアフガニスタンに対するソ連の武力介入というような問題も加わりまして、強まってきたのではないか。  日本の基地の問題についての御指摘でございますが、これも確かに朝鮮戦争あるいはベトナムの場合に日本の基地が大きな働きをしたことは事実だろうと私も存じます。ただ、ベトナムの戦乱も一応おさまりまして、また、中国がアメリカにとっても仮想敵といいますか、そういう状態からむしろ友好国に変わったというようなことも含めまして、極東における日米安保の役割りが、日本がもし外敵から侵入された場合に日本を守るという意味の目的、比重が以前に比べて重くなってきておるというような考え方もあるように思いまして、こういういろんな問題が絡み合って、最近ただ乗り論あるいはそれに類する議論がアメリカでしばしば行われるようになっておるのではないかというふうに受け取ったわけでございます。
  117. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういうやりとりがあったということは別として、ブラウン長官との会談で、短期間に防衛費の大幅な増強はできないという理解を求めて、着実にふやすことを約束をした、そして一%に向けて日本側としても防衛予算増額努力を進めるということを明らかにしたと伝えられていますが、その点についての御答弁。そのとおりかどうか。外務大臣は着実にふやすことと言うのですが、着実というのは何をめどにしてというふうに私は尋ねておかなければいかぬ。それからもう一つは、ブラウン長官の言った顕著という点を外務大臣は、つまり日本側は拒否したものというふうに受け取ってようございますか。
  118. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ブラウン長官の発言は、英語ではステディー・アンド・シグニフィカント・インクリース、着実かつ顕著な増加ということでございましたが、私の方は、平和憲法、専守防衛、非核原則、この日本の防衛問題に対する基本的な枠組みを崩すわけにいかないのだ、その枠組みの中で可能な限りのステディーインクリースと申しますか、着実な増加ということの努力は日本政府としてもすべきものと思うということで返事をいたしたわけでございまして、これは具体的にどういう数字になるかというところまでは話はまいりませんで、内容に入りますと、これは防衛専門家同士の問題にもなってまいりますので、いまのような考え方のやりとりがあったわけでございます。
  119. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 外務大臣は顕著にということについては一応お断りをしたというふうに考えてようございますね。
  120. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私の発言は、そのつもりで発言したわけでございます。
  121. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 数字が出なかったという話も報道されていますけれども、一%というのは日本側も言わなかったわけですか。
  122. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 一%というのは、今回の会談では日米双方とも申さなかったわけでございます。
  123. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういうやりとりで、事実上は一%というふうなことも、まるで日本政府の態度でありアメリカの要求であるというふうな形で報道もされていますし、私ども理解せざるを得ないのですが、着実にふやしていく、どんな程度の年数をお考えなんですか。あるいは中期業務見積もりの前倒しなどという議論も実はあるわけですが、その辺のところをもう一度率直にお答えをいただきたいと思うのです。
  124. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 GNPの一%という数字は、昭和五十一年の国防会議及び閣議決定がございまして、一%を超えない防衛費を当面のめどとするという決定がございます。そういう決定があることはもちろん米国側も承知しておるわけでございますが、これを、内容につきましてどうするかということは、アメリカ側がステディー・アンド・シグニフィカントという表現を用いておりますことは、できればなるべく早くやりてもらいたいという希望の表明だろうと解釈されるわけでございますけれども、この点については私の方からはステディーということは努力するけれども、シグニフィカントということは、これは国民の納得、財政経済情勢、一般の日本の国内の政治情勢等にもよることで、急速に大幅な防衛の支出の増大を図ることは不可能だと思うということで答えたわけでございます。
  125. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その急速なという時間的な距離を私実はお伺いしたいのですが、先ほどトーキングペーパーのことに触れました。やはり私ども新聞に出たものを信頼していく以外にないわけです。しかも、これはワシントン発で出されている各紙の報道でございますから、私はそう架空なものじゃないというふうに思うのですが、その中で「GNP一%というワクは不動のものと受け取られているのが「当面のメド」として決定されたもので、永久不変のワクといったものではない。」言ってしまえば言わずもがなのことを、同時にまた、それは言わずもがなではなしに、まさにGNP一%という枠もやがて取り外すんですよと言わんばかりのやり方というものである、私はそう思うのです。  当面というのは、この場合、このトーキングペーパーにかかわらなくても——一%という枠を不動のものとはしない、当面のめどだというふうに言っているわけですから、外務大臣はその辺はどんな認識持っておられますか。
  126. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 五十一年の国防会議、閣議決定で当面と言っておるわけでございまして、実は先般、衆議院の外務委員会で土井たか子議員の御質問もありまして、当面と言えば、常識的には数年ということでしょうかという御答弁をいたしたわけでございます。
  127. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 すると、数年で一%というのは変えられる、変えるものだというふうに外務大臣は認識しておられますか。あなたの認識で結構です。
  128. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは政府全体の考え方で、外務大臣だけの判断によるわけにいかないわけでございまして、防衛当局、特に総理大臣の考えというものがこの点についてはきわめて重要だと思います。  ただ実際問題としては、現在、七カ年の社会経済計画、これの見直しによりましても、一応中期的な経済成長率を五・五%と見ておるわけで、実質五・五%、物価が大体五%ぐらいの上昇を見ておるようでございますから、名目では一〇%をやや超える程度の経済成長が一応続く、もちろん年によっての上下はあると思うわけでございますが。したがって、GNPの成長に見合う防衛費の増加でございましても、実質大体五・五%になるわけでございまして、五十一年の閣議決定の一%という数字の到達も、財政的に見ましてもなかなか大変だ、そういうふうに考えておりますので、その先どうなるか。  これは土井たか子議員の御質問に答えまして、やはりいろいろな世界情勢の動き、その他を勘案いたさなければならないので、未来永劫、天井ということは無理な点があるんじゃないか。ただ、・それこそ当分の間一%までには事実問題としてなかなかいかないんじゃないかというふうな考えを申し述べたわけでございまして、私自身としてはいまのように判断しておるわけでございます。
  129. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、日米のやりとりの中で一%というのは出なかった、日本の方も言わなかった、しかし知っているということだ、しかしそれは財政事情、財政事情のことは外務大臣一番御存じのはずなんですから、早速大蔵大臣も物を言っていますけれども、一%自身も正直なところ言うと数年かかる、かかってもなかなかむずかしい、こういう認識と理解してよろしゅうございますか。
  130. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私はそういう認識を持っておるわけでございます。
  131. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、一%約束というふうなことも含めていろいろ言われておることも正確でないというふうに受けとめるわけですが、ただ正直なところ、一%はちょっと困るけれども〇・九%ならいいんだみたいな、一種の世論誘導に実はこのやりとりが使われておる感じも私どもしないわけではないのです。なかなかうまいことやるものだなと正直思っていますけれどもね。それは私の感じ方ですからそれ以上のことは申しませんけれども、御帰国なさった後の総理大臣とのやりとりを含めて、直接的な防衛費、つまり自衛隊関係あるいは労務費問題ではなしに、施設、つまりリロケーションの問題について日本側が負担をしていくという方向を総理大臣がお出しになったということを伺っておりますが、どうも総理大臣が言う前に、あなたがこの枠がありそうだということをおっしゃっておる感じがするのですけれども、その点は地位協定との関係で一体どういうふうに理解したらいいんですか。その枠というもの、あなたの考え方というのをちょっと教えてください。
  132. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問は、在日米軍の駐留費の一部負担の問題かと存じます。これは地位協定がございまして、その地位協定の枠内では労務費の負担は限界にきておる。施設費の面でまだある程度日本側の負担をふやす余地が考えられそうだという点につきまして、実はブラウン長官との話し合いでも、アメリカ側としては、日本が在日米軍の経費の一部負担、これは地位協定に基づくものでございますが、その負担をしてもらっていることを高く評価しておりますという発言もありまして、地位協定の解釈の許す範囲でさらにある程度の増加が見られればアメリカ側としては非常にありがたいというような発言があったことは確かでございますし、その点を帰りましてから総理にも報告いたしたわけでございまして、それに関連してただいま岩垂委員の御指摘のような総理の話も出てまいったわけでございます。
  133. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 たまたま玉木さん残っておられますから伺いますけれども、地位協定の二十四条、一項、二項あるわけですが、施設の面でたとえば新しい住宅あるいは隊舎の建てかえが事実上行われておりますね。その他代替の範囲を超えてかなり大規模なものが去年あたりから行われているわけですけれども、限界はどんなことをお考えになっていらっしゃいますか。やはり私は限界があると思うのです。その点はどんなふうにお考えになっていらっしゃるか、御答弁をお願いいたします。
  134. 玉木清司

    ○玉木政府委員 いま外務大臣がおっしゃられましたように、条約上の規定の解釈の面におきましては、地位協定の二条及び二十四条二項によりまして、日米が合意した場合には提供できるということになっておりますが、私ども実施面を担当しております官庁としまして、お尋ねの限界という問題について申し上げますならば、やはりこの狭い国土の中でございますから、現実にこれを実施していくのにはさまざまな諸条件を満たしながら進めなければならないと思いますので、拡大をするといいましても、無際限にできるものとは私どもは受け取っておりません。しかし、具体的にどんな限界があるのかということになりますと、やはりこれは総合的に財政上の問題、それからまず第一には、当該施設の必要性につきます、緊急度につきます日米の合意、あるいは地元住民の受け入れの状態、そういうものをやはり総合的に勘案しました上で、その限界を一つ一つ判断をしていくということではなかろうか、こういうように考えております。
  135. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 せっかくですからお尋ねしますけれども、どうもアメリカに対してかっこよくするために、そういうところを出っ張らしていく、そして結果的に一項の在日米軍を維持することに伴うすべての経費は米国が負担をするというそこの部分をだんだん減らしていく、そのために画期的な施設費をふやしていくというような傾向が強まっているのですよ。  いまあなたは、たとえば去年、ことし、その費用、予算がありますね。これから、ことし、来年、これは一つ一つ当たらなければしようがないと言いながら、実際にはあなた方は施設について全部点検を終わっているわけですから、その点は相当な金額になるのか。つまり去年と比べてみてことしのふえ方、そして来年などというふうに考えたときにどういうふうになっていくのか。私は、日米が合意すれば勝手にできるんだという解釈自身も、正直なところこれでは全然通用しない、事実上二十四条というのは形骸化しているというふうに言わざるを得ないのですが、この点を含めて、玉木さん残っていただいて大変恐縮ですが、せっかくですから御答弁をいただきたい。
  136. 玉木清司

    ○玉木政府委員 ただいま申しました私のお答え以上のことを、どのようなことが限界になるのかという具体的なメルクマールを申し上げるのは、この問題の性質上できない問題じゃないかと思います。要するに、地位協定の定めております原則によりますと、双方がその置かれました条件下におきまして安保条約目的達成のための大きな枠の中で合意をしていくわけでございますから、無際限という運びになるとは思っておりません。
  137. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この地位協定の問題は、またやがて私も——きょうは時間がございませんからしっかり詰めるつもりはございませんけれども、しかし、どうも最近の傾向を見ますと、リロケーションの範囲はもちろん超えておりますし、代替という例の大平外務大臣当時の答えの問題も超えておりますし、それから思いやりという形で、事実上は何が何だかわからないような形で実は費用負担が行われているという事実を私は指摘せざるを得ないのです。こういう傾向というのは、日米の間で合意に達した地位協定自身の精神から考えても、私は少しどころか、大いに問題があるというふうに言わざるを得ません。  それで、これから詰めていく作業としてはどんな形を外務大臣はお考えなんですか。
  138. 玉木清司

    ○玉木政府委員 昭和五十二年からこの経費分担の問題が始まってきておりますが、これを通じて申せますのは、思いやりという言葉で表現されておりますように、この問題に対します政府の考え方は、その姿勢というものにおきまして、要求があってそれを渋々満たすということではなしに、安保条約の目的から見まして、日本側としましてもできるだけのことをしようということで運んできておる状況でございますから、今後におきましても、やはり当面の具体的な問題につきましては、その緊急性等を最も念を入れて討議をして実施していくという運びになろうかと思います。
  139. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは後ほどまた別な機会を得てやりたいと思います。  外務大臣、日米協議の中で、世界情勢の認識について基本的な一致点を見出したというふうに報道されておりますし、先ほどもそういう意見を述べられました。その中で、特にアメリカの中長期の対ソ政策に対して基本的に同調といいましょうか、同意をされたと言われておりますが、この辺はどういうふうにお考えかということが一つと、もしそうであるとすると、たとえば新聞報道によりますと、「イラン、アフガニスタン事件に対処する米国の中東政策への協力、ならびに世界的な東西軍事バランスの維持の両面から日本の自衛力の大幅増強に強い期待を表明した。」という言葉を含めて、いわゆる全方位外交と言われるものから見てかなり問題があるのじゃないかと言わざるを得ないのですが、外務大臣のお考えを伺いたい。
  140. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最近の国際情勢につきまして、特にアフガニスタンの問題を契機といたしまして、確かに東西の緊張が高まった面がございますけれども、同時に、私がバンス長官やブレジンスキー補佐官等から直接話し合いまして得たところでは、アメリカはSALTIIを続ける意思だ、時期ははっきり言えないけれども議会の批准も求めるつもりだということでございまして、米ソ両国間の基本的な対立といいますか、SALTにあらわされるような問題につきましては話し合いを続けていくということでございまして、やはり米ソ両国が核戦争の危険を防止することに本気にやってもらわなければ、これはそれこそ人類の将来が破滅するような結果になるおそれがあるわけでございまして、この点はアメリカ側も真剣に将来も続けていく。ただデタントの解釈が、従来ソ連の場合は、どうも欧州の戦線といいますか欧州におけるデタント、その他の地域については革命の援助とかいろいろな情勢に応じての関与があり得るという解釈がどうもソ連側にあるのではないか。しかし、それは世界の平和と均衡を撹乱する非常に危険な要素になり得るわけでございまして、ソ連のアフガニスタンからの早期撤兵、さらには他の地域に軍事力を背景にして進出してくるということに対してできるだけの抑止が必要であり、さらに今年の初めの国連の緊急総会でもあらわされましたように、アフガニスタンからソ連軍の即時撤兵を求める案に対しまして百四カ国が賛成をいたした、これは多数の第三世界の国々も含めてそういう世界の世論というものが示されたわけでございまして、こういう点についてソ連の反省を求めていくというようなことにつきまして、大きな筋で見解が一致したと考えておるわけでございます。  全方位外交につきましては、これは全方位と申しましても、世界のあらゆる国と同じように仲よくするということには現実問題としてなかなかならない。非常に親密な関係がある、一応友好的である、いろいろなニュアンスもあると思うのでございます。これは私の考えとしては、日本はとにかく資源小国といいますか、食糧もエネルギーも原料も大部分海外、世界じゅうからの供給に仰いでおりますし、また、防衛についても平和憲法のもとで最小限の自衛力ということで世界の中で生きていくというチョイス、選択を第二次大戦後にいたしたわけでございまして、そういう立場からいえば、世界じゅうどこにもシリアスエネミー、深刻な敵をつくらないという、そういう意味での全方位外交というものが将来とも必要だと考えておるわけでございます。
  141. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ちょっとまだ質問が残っておるのですが、外務大臣また参議院へ呼ばれているそうでありまして、頭の方とけつの方をとられちゃいますとやりにくくてしょうがないのですが、まだいろいろあるので時間が来るまで御勘弁をいただきたいと思うのです。  自動車問題、トヨタ、日産の工場進出を強く迫った。この場合、いわゆるバイアメリカンといいましょうか、現地生産された自動車というのは対米輸出の上積みというふうに理解していいのですか。
  142. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは工場ができてみないとわからないわけでございまして、競争力の問題もございますし、アメリカの自動車大メーカーも、いま大型車から中、小型車への大規模な転換を始めかかっておるわけでございまして、現地工場の生産が上積みになるのかどうかということは、仮に工場ができた場合のことでございまして、現状から判断はいたしかねると思います。フォルクスワーゲンが数年前からアメリカに工場進出をやってまいりまして、現状では、ドイツからのフォルクスワーゲンの完成車の対米輸出は非常に減少いたしまして、現地生産の分が伸びておるという状況でございます。
  143. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 アスキュー通商代表との話などで、工場進出というのは一〇〇%アメリカでつくれということなんですか。それともいわゆる国産化率という問題についてこちら側の条件をつけるというふうなことを含めて考えていらっしゃるのですか。
  144. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この国産化率については一部の議員立法の案等があるようでございますが、必ずしもアメリカの国内のまだ統一した見解にはなっておらないようでございます。それから、日本に対して逆にアメリカの自動車あるいは少なくともアメリカの自動車部品の購入をふやすべきだ、そういう要求は一方でございます。いまの国産化率というのはまだ明確な形をとっておらないというふうに了解しております。
  145. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 対米進出は業界ともこれから御交渉なさるわけですが、いわゆるリスクといいましょうか危険負担をまさか政府が補償するというようなことは絶対にあり得ないでしょうね。
  146. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは担当の通産省が主として考えられる問題だと思いますが、私の対米関係の解釈からいたしましても、もしそのリスクを政府が負担するようになりますと、今度はアメリカでこれは不公正競争だという批判を招くおそれがありますので、なかなかそういうことは困難じゃなかろうかと思っております。
  147. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間が来るので急ぎますが、外務大臣にもあるいは条約局長にも、あるいは担当の条約局のところにもお話をしてきたことがありまして、私自身も質問主意書を二回にわたって出した問題点についてお尋ねをしておきたいと思います。  平和条約発効後に日米合同委員会調査、確認された日南興業株式会社という会社が米国に対して有していた損害賠償請求権と日本国との平和条約第十九条(a)項との関連の問題でございます。  これはアメリカ政府昭和三十五年の七月七日付の書簡で「日南の請求権は平和条約の請求権放棄条項に該当し、従って、平和条約によって請求権を放棄させられた日南はその償還請求を日本政府になさる外ありません」実はこういうふうに述べているわけでございます。  そういう資料も実はお届けをしているのですけれども、関連をする資料をお届けをしておきたいので、条約局長ちょっと見てください。あと質問がずっと続きますから、あらかじめお届けをしてある資料なんですけれども、まあごらんになってください。  それに対して日本政府は、この日南からの償還請求、これは裁判がございまして、裁判に対して出した準備書面なんでございますが、「日南の請求権は私法的取引契約から生じた損害賠償請求権と解されるから、平和条約第十九条(a)の適用を受けないことは明らかである。」と断言しています。しかし、日本政府のそういう態度を知ったアメリカが、いまもう一つの資料でお届けしましたが、五十年四月十五日付の書簡で、「日南の請求権は平和条約十九条によって明確に放棄され、本件については合衆国当局のすべての未払債務は責任を免除されていた」「請求権放棄から生じる未払債務に対する問題は完全に日本政府の責務であります。」という答弁も寄せられております。  そこで私は、実は質問主意書を出したのです。ところが、質問主意書に対する総理大臣名義の答弁書によりますと、「日本国との平和条約第十九条(a)項の規定に基づき我が国が放棄したものは、国家自身の請求権を除けば、いわゆる外交保護権であり、」云々と書いてある。同時にその文章の中で、「日南興業株式会社の請求権と日本国との平和条約第十九条(a)項との関係に関する政府の立場は二についての一において述べたとおりであり、日本国との平和条約第十九条(a)項によって右日南興業株式会社の米国に対する請求権自体が消滅させられたものではないと考えている」こういうふうに言っております。これは、日南興業株式会社の請求権自体は平和条約第十九条(a)項で放棄していないということなのか、その点をお答えいただきたいと思います。
  148. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  先生も先ほど申されましたとおり、この件に関しては長年の問題でございまして、先生からもあるいは御本人の方からもいろいろと御陳情を受け、さらに質問主意書を再度いただいたわけでございます。まことにお気の毒なケースなのでございますが、国際法上の問題として申しますると、サンフランシスコ平和条約第十九条に基づきましてわが国が放棄をいたしましたいわゆる戦争請求権の一環をなすものでございまして、すでに解決済みの問題であると言わざるを得ない次第でございます。  ただいま先生からアメリカ側の書簡二ついただいたわけでございますが、一つは私いまここで初めて——一九六〇年の日付のものでございます。七五年の日付のものは私も拝見したものでございますが、いずれにいたしましても、先生の御質問の最後におっしゃいました、十九条において放棄した請求権を日本国側においていかように処理するかは日本国側の責任であるとここに書いてございますが、それは法律論的に正しい考え方であろうと私は思うわけでございます。  そこで、この十九条に基づきまして放棄した請求権は国内法でどう取り扱われているかということでございますれば、この件につきましては、先生も御承知のようにすでに裁判が確定していることは別にいたしましても、平和条約によるこのような請求権の放棄の処理については、日本国に補償の法的義務はないのであるというのが政府の一貫した立場でもございますし、また、この点に関しましては最高裁の判例も同様に考えているのではないか。したがいまして、まことにお気の毒なケースではございますが、私どももいろいろな角度から検討してみたのでございますが、この日南興業のクレームについて御満足のいくような法的な解決はどうもちょっと困難ではないかと思っているわけでございます。
  149. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 事実関係を伺っているのです。アメリカは、放棄をしたから日本国政府にその判断をいただく以外にないと言っている。日本の方は、アメリカに対して日南興業株式会社自身は請求権を放棄していないということを認めていますね。この点の事実関係はそれでいいですか。
  150. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  その点に関しましては、これも従来しばしば一つの政府の見解として申し上げているわけでございますが、平和条約等におきまして、たとえば十九条でございますが、日本が戦争請求権を国民にかわって放棄するということが取り決められております場合に、これはわが国の外交保護権というものを放棄しているものでございます。これを日南興業について申しますれば、日南興業のクレーム自体の放棄——これが果たして存在したものであるかどうかということは一つの問題でございましょうけれども、これが存在したものとした場合に、この請求権そのものが十九条によって消滅したのではなくて、日南興業はアメリカ政府に対してはそれを提起する権利は残っているものであろう。ただ、アメリカ側に提起いたしました場合に、アメリカ側がそれに対して満足する解決を与えない場合に、日本国として取り上げて満足いくような解決をアメリカ側に迫るという外交保護権というものは放棄されているということでございます。
  151. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それじゃ条約局長は、日南興業株式会社はアメリカで裁判をやれということですか。いままでのいきさつは、アメリカで裁判をやっても門前払いなんです。いままでの経過をあなたは御存じだと思うから細かくは言いませんけれども、まさにキャッチボールなんですよ。そして生時の金額にして約八億円という犠牲が現実にあるわけです。外交保護権という問題があるにしても、日米の間でその辺の話し合いをしなければ、日米合同委員会の合意事項ですよ。しかも日米合同委員会の両方が認めて問題が出発しているわけですよ。合同委員会のやりとりというのは、つまり両方国を代表するオフィシャルな立場でしょう。それも宙に浮いてしまうというのじゃ、裁判のことはこっちへおいでおいでもいささかおかしいのじゃないか。これは私、はっきり申し上げておきたいと思うのですが、その点はどうですか。
  152. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 アメリカで門前払いということも事実でございますが、先ほど申し上げましたように、日本国政府として日南興業のクレームを取り上げてアメリカ側と交渉する権利を放棄していますので、いかんともならないものであると思うわけでございます。  それから、合同委員会において話し合いが行われた経緯があるではないかということでございますが、これも先生御承知のように、合同委員会と申しますのは日米安保条約によってでき上がったものでございまして、同委員会の権限といたしましては、それ以前に、つまり講和条約、安全保障条約の発効以前に存在した戦争請求権の問題は合同委員会の権限外であるということで、その後合同委員会ではいかんともなしがたい状況になっていると承知しておりまして、この点もまことにお気の毒なことではあると思うのでございますが、そういう考え方をとらざるを得ないものではないかというふうに存じております。
  153. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 裁判、裁判とおっしゃいますけれども、実は十九条の解釈について裁判は結論を出していないのですよ。「「日本国との平和条約」を締結することにより、同条約一九条(a)項によって原告がアメリカ合衆国に対して有していた補給廠の本件契約不履行に基づく損害賠償請求権を放棄したと主張し、被告は第一次的にはこれを争うが、この点に対する判断はしばらく措き、」ということにして、以下実態論で契約の実態について一つの判断を下しておるわけです。だから裁判所で下された事件ですからとおっしゃるけれども、裁判所自身は請求権の所在の問題についての結論は出してないわけですから、その辺は、外務省としての対応はもう少し親切であっていいし、国民に対してもっと誠意を持つべきであろう、私はこんなふうに思いますが、いかがですか。
  154. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 先ほど私がちょっと言及いたしました日本における最高裁の判例というものでございますが、その判決の論点と申しますのは、原告日南興業がこうむった損害は敗戦という事実に基づいて生じた一種の戦争損害であって、他の種種の戦争損害と同様、多かれ少なかれ国民のひとしく耐え忍ばなければならないやむを得ない犠牲であって、こういう場合の補償については憲法二十九条三項の全く予想しないところであり、また、いずれにいたしましても平和条約の当該条項で国が約束と申しますか、そこで決めているのは外交保護権を行使しないことにとどまるというような判決の論旨であると承知いたしております。
  155. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 憲法の予想しないといっても、現実には税金は納めさせられているし、滞納処分までも行われているわけです。税金だけ取られているのです。結局、実は控訴したいということで、第一審から控訴したいと思ったけれども、差し押さえを食らってしまって、人件費も十分に払えないという状態のもとで、高等裁判所で控訴をする訴訟費用、印紙代も払えない。したがって、その免除を要請したけれども、高等裁判所からも却下ということなんです。こういう損害の補償という問題は、これは戦争損害だというふうには言えない。なぜなら、ここにもう一つ資料がありますからごらんいただきたいと思うのですが、その契約内容も、そういう状況のもとだったから、アメリカの強大な権力によって押しつけられたからというようなことを判決の中で言っているけれども、ちっとも平時と違わないのです。そういうものを一方的に戦争損害でございますからといって始末をしてしまうことはどうしても理屈が通らない。  たくさん申したいことはございます。たとえば営業権付与に関する問題でも実はいろいろ言いたいことはございます。しかし、少なくとも売り上げたというか、その金は払わないで、その利益に税金をかけて取っておいて、それは憲法の予想せざる事態だということでは、どう考えたって通用しない。しかもアメリカと日本がキャッチボールをして、結局泣き寝入り、そしてそれは平和条約だからと、こうなるわけです。  御存じのとおりに、吉田茂氏はサンフランシスコのオペラハウスで、わが国を代表してこの公平寛大なる平和条約を欣然受諾いたしますということさえ言っているわけです。そういう立場から考えて、もう少し日本政府が何らかの措置を考えてあげるということが必要ではないだろうかと私は思うのですが、条約局長その辺についての——条約局長の前に大臣。  私、実は細かく全部説明する時間がなかったものですから、その点についての御説明が省かれていますけれども、安次嶺さんとおっしゃる方ですが、とにかく一遍会ってください、きょうでなくてもいいし、しかるべき機会に。そして実情をしっかりと聞いてください。そして何らかの措置をとってあげないことには、何としても気の毒な話ではないかというふうに私は思うのです。後ほど細かく経過などについても大臣のお耳に入れなければなりませんけれども、何らかのアメリカに対する意思表示というようなものがなければならないのではないか。私は、できれば再審への道というふうにも考えました。しかし、それも時効だというふうなことも含めてなかなかままならない。時効ではないのですが、再審理由というものを探し求めることについても非常にむずかしい問題があるわけです。ですから、再審のルートに乗せる何らかの措置というものがあれば、それも一つの材料でございますけれども、それはそれとして、一遍外務大臣自身が条約局長を含めて御本人とお目にかかって、その実情を聞いていただいて、何とかひとつ措置をしていくということについての御答弁を煩わしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  156. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も、いまの御指摘の問題につきまして余り詳しい内容を従来存じておりませんでしたので、よく事務当局からも事情を聴取いたしました上で措置したいと考える次第でございます。
  157. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 本人と近いうちに、お忙しい日程ですからいつでもというわけにもいきませんでしょうけれども、時間は十分余裕をとっていただいて話を聞いていただく、その上でさまざまな手だてについて御相談をいただくというように理解してよろしゅうございますか。
  158. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまのような御趣旨を含めて了解いたします。
  159. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 条約局長、その辺はよろしゅうございますか。
  160. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お会いしてお話を承ることはやぶさかでございません。
  161. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう代議士会の放送をしていますし、時間が参りましたからこの辺でやめたいと思いますが、外務大臣はいつごろ中東訪問を予定されておられるのですか。そして大平総理大臣の訪問というのはあり得るのですか、その辺のことについて御答弁をいただきたい。
  162. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 まだ具体的な日程は決まらないわけでございますが、パリのIEAの会議とかOECDの閣僚理事会とかいうようなものもございますし、そういうものとの関連でできれば考えたいということで、内々検討中の段階でございます。  総理につきましては、総理もかねてからそういう機会を得たいと言っておられますが、国会及び選挙等の関係もございまして、非常に近い将来に実現するということはあるいは困難かと考えておりますが、総理はできるだけ近い機会にということは言っておられます。
  163. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 以上で終わります。
  164. 木野晴夫

    木野委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十七分休憩      ————◇—————     午後四時五十二分開議
  165. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大来外務大臣、あなた訪米されまして、大変にお疲れのところ矢継ぎ早に、時の人というわけではないけれども、実際そういう意味においては御苦労だと思います。  わが党は、防衛力増強という問題については考え方を異にいたしております。防衛力を増強することによって国民生活が圧迫をされる。あるいはまた安全保障というものは何も軍事力だけではない。外交、経済、教育あるいは文化、そしてそれに加えて軍事力という、そういう総合的な観点に立ったときに、私は安全保障という問題についてはやはり考え方を異にするわけであります。しかし、そういう立場でお話を申し上げますと、なかなか質問がかみ合わないという問題もございますので、大来外務大臣が今回アメリカに行かれました内容を中心にして、大臣にいろいろと御見解をお聞きしてまいりたい、こう思う次第であります。  そこでまず初めに、あなたがブラウン長官にお会いになった。ブラウン長官が、日本の憲法上の制約があることも、自衛力の程度は日本が決めることも十分承知をしていると、あなたと話をされる前にその話をされて、そしてその上に立って今度は、目に見える形での増強の期待を述べたというふうに伝えられておりますけれども、目に見える形での増強というのは具体的に何を意味しているんでしょうか。
  167. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最初に、ただいま参議院の予算委員会に出席を求められまして、当委員会をお待たせをいたしまして申しわけございません。  ただいまの鈴切委員の御質問でございますが、ブラウン長官の発言の中にございました、これは日本訳の仕方でもございますが、ステディー・アンド・シグニフィカント・インクリースと英語では先方は言っておったわけでございまして、着実な目に見えるという訳もできますし、着実なかつ顕著なという訳もできるかと思いますが、先方としては、ある程度そういう目に見えるといいますか顕著なといいますか、そういう意味での増加が望ましいという意味であったと存じます。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その目に見える形の増強の期待ということで、そのとき新聞報道はそうなされておりました。ところが、あなたがお帰りになりましてから、ここにその目に見える形というものの輪郭が明らかになってきたわけでありますが、それは防衛庁の中期業務計画の見積もりの達成という問題、これについてはアメリカは大変に関心を持っている、そしてこれを早くやってもらいたい、こういう考え方を明らかにしたというふうに言われているわけであります。それともう一つは、駐留費の増額という問題もやはりかなり大きな問題としてあなたがお話しになった内容の問題点ではあろうかと思いますけれども、いま私が申し上げましたように、この防衛庁の中期業務計画の見積もりの達成について早くやってもらいたい、これはアメリカの国防報告の中にも、日本の国の五十五年度から五十九年度にわたるところの中期業務計画の内容というものがそれなりに書いてある、そう考えたときに、これを早くやってくれ、こういうことについて言われたというふうに考えていいでしょうか。
  169. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 中期業務見積もりと申しますのは、防衛庁限りの一つの見積もりでございまして、日本政府全体としての承認といいますか、統一意思にはなっておらないものでございます。ただ、米側がこれを研究していることは事実でございまして、そういう意味で、中期業務見積もりにあるような考え方をできるだけ早く実現してほしいという希望の表明があったことは事実でございます。  もう一つは、御指摘の駐日米軍の経費分担ということで、これは従来日本政府も分担をしてまいっておるわけでございますが、この分担の増加があれば、アメリカとしても、自分の立場としても、議会あるいはジャーナリズム等から絶えずこの問題についての質問がある、つまりヨーロッパや日本がある程度そういう防衛の負担について協力をしてくれているかどうか、アメリカも非常にインフレその他で苦しい情勢で、予算も全体として削減する、その中で防衛費だけは伸ばすということで苦労しておるので、そういう情勢からしても、在日米軍の経費の負担増ということを日本側が図ってもらえれば非常にありがたい、そういう発言がございました。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり防衛庁の中期業務計画の話が出て、それについて早くやってくれということの期待は述べられた。しかし、それは防衛庁だけの実は考え方であって、政府がそれに対して決めたわけではないことは、これは私もよく知っているわけでございますけれども、しかし、昭和四十三年から昭和五十二年まで、防衛関係費の対GNPの比率というのは大体〇・八%だった。ところが、昭和五十三年、五十四年、五十五年は引き続いて〇・九%となっております。これは御存じですね。〇・九%ではアメリカの期待している目に見える形ということにはならないのかどうか。アメリカは、目に見える形、いわゆる顕著な姿をどのように考えているか。この点について、実際にGNP一%ということを明らかにして言われたかどうかの問題と、中期業務計画の見積もりを早くやってくれということに対して一%との関連はどのようにお考えであったか、あるいはどのようにあなたは感触を受けたか、この点について。
  171. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今回の会談では、GNpの一%あるいは〇・九%という問題は正面からは取り上げられなかったわけでございます。むしろ日本の防衛という問題で、日本自身がもう少し増強する余地があるように思われる、日本の専守防衛という立場も憲法の立場も十分理解しておるということは、先ほど御指摘のとおりでございますが、専守防衛の立場の中でももう少しやれると思うし、それをわれわれとしては期待したい。それは、一%にいつ到達するとか、そういう形の議論ではございませんでした。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 正面から一%だというようなことについては言われなかったということですね。しかし、あなたも御存じのとおり、防衛庁だけの考え方、それは昭和五十五年から五十九年の間に約二兆七千億から八千億の業務計画の見積もりをつくっているわけですから、その最終年度であります五十九年には少なくとも一%を達成する、それが含まれての業務計画になっていること、これは外務大臣は御承知で行かれたのか、あるいは向こうもそういうことを期待しているがゆえに一%ということはあえて言う必要はなかった、業務計画の中身をひとつできるだけ早くやってくださいよと言われたというふうにお考えになっているか、その点についてはいかがでしょうか。
  173. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 防衛庁の中期業務見積もりによりますと、昭和五十九年度でほぼGNPの一%という見積もりになっておることは私も承知いたしております。この点は米側も承知しておるのだろうと考えます。しかし、先ほど申しましたように、GNPに対する一%ということは正面の議論としては出なかったわけでございます。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣も、その中期業務計画を達成するということが少なくともGNPの一%を目標にしていることはよく御存じであった、また、向こうもそれを承知であったということを答弁されたわけであります。短期間に大幅に自衛力の増強はできないということを大来外務大臣は言われたわけでありますけれども、日本は今後とも着実に増強していく、その着実に増強していくということは、日本としては、いままでやってきたけれども、その上に立ってさらに増強をしていくのだということになりましょうか、あるいはどのような形でいつまでをめどとしておやりになるつもりなんでしょうか。
  175. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、外務大臣の一存ではまいらないことでございまして、防衛庁長官、ことに総理その他内閣としての考え方の問題になるかと思うのでございまして、どこまでということについて、現在の段階では政府もはっきりした意思がまだできておらないというのが実情かと存じます。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたが着実に増強していくというふうに言われたこと、〇・九%を続けていくということ——わが国はGNPがかなり大きくどんどんとふえていきますから、実は〇・九%も大変なことなんです。ですから、着実に〇・九%でいくのか、あるいはさらに〇・九%に上積みしていこうとされているのか。あなたのお考えの、着実に増強というその言葉の意味は、どういうふうに思って言われたのでしょうか。
  177. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御承知のように、昭和五十一年の国防会議決定、同時に閣議決定でございますが、防衛費についてGNPの一%を超えない範囲を当面のめどとするという決定がございます。それは、閣議決定でございますから、一応昭和五十一年の段階におきます政府の見解であったわけでございまして、その意味では、GNPの一%を超えない範囲というのは、政府としての意思決定が過去において行われているということであろうかと思います。ただ、現実の防衛支出というのは、そのときどきの財政情勢とか、国民のコンセンサスとか、あるいは国際情勢とか、いろいろな問題に基づきまして、年々予算編成のときに考えられるものだと存じますので、そういう情勢から言いますと、いつまでにどうということはいまの段階で言えることでもございませんし、一%を上回らないという閣議決定にも、いつまでということはうたわれておらない。ただ当面と言われておるわけでございます。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、大来外務大臣は、その〇・九%、これもGNPに非常に大きなウエートを占めるので、これからも〇・九%でいってもいいのじゃないかという気持ちなんですか、あるいはもう少しは色をつけなければならぬのかなというお考えなんでしょうか。外務大臣自体はどうお考えになっているのでしょうか。
  179. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは、先ほど申しましたように、外務大臣だけで考えるというわけにもいかない。防衛の問題は、外務省としては日米安保という対外的な関係で関与いたしておりますが、これはやはり基本的には防衛庁あるいは総理、内閣全体という問題になりますので申し上げかねるわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、一%を上回らないというところまではこれまでの閣議決定があるということで御了解いただければと思うわけでございます。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実はGNP一%論議は、私はずっとやってきた経緯がございます。当初はGNP一%以内ということでした。坂田防衛庁長官のときにGNP一%をめどということを言い始めました。私は、めどとは何事かということで、坂田防衛庁長官のそのめどというのは、たとえば一・一%だってそれはめどでして、いままで政府が言われた一%以内とはずいぶん異にするということで論議をして、それでは一%以内ということでその当時は坂田防衛庁長官も引き下がった経緯がございます。  ところが、先ほどおっしゃったとおりに、昭和五十一年十一月五日に国防会議並びに閣議決定をされました「当面の防衛力整備について」は、「防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」こういうことで、ずいぶん後退した。「当面」ということと、もう一つは「めど」という努力目標が入ったということで、私どもにしてみれば大変に大きく変質した、実はそういうふうに思っておったわけですが、いまこれがいわゆる閣議決定として実際にはあるわけであります。  ところが、大来外務大臣が十九日の衆議院の外務委員会で防衛費の問題について、防衛費予算の国民総生産、GNPの比率については固定的、機械的な上限を設けることは適当ではないというふうに述べられたわけでありますけれども、政府の公式見解なる当面、百分の一、すなわちGNPの一%をめどに行うということと矛盾はしないのか。あなたの意図する発言というのは、どういうことを意図されているのでしょうか。
  181. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの点につきましては、外務委員会で土井たか子議員から非常に重ねての御質問がございまして、防衛費についての上限を設けることにしてはどうかということについてのお尋ねがいろいろ繰り返しございまして、私は、いまの五十一年の閣議決定もございまして、一%を超えないということで当面ということを言っておる、その固定的な目標を未来永劫にわたって設定することは実際的ではないだろう、未来永劫ということを申したわけでございまして、これはいろいろな情勢の変化ということを将来にわたって非常に長期に予想することはできませんので、未来永劫にわたって一%を上限ということで設定することは適当でないように思う、土井先生の質問に答えてそういう形で答弁いたしたわけでございます。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国防会議、閣議決定の当面、一%以内をめどとしてという内容は、未来永劫なんて言葉は何も出ていないわけです。あるいは機械的に上限を設けることはよくないとか、そんなことは何にも書いてないわけです。ですから、そういうことを言われるということは全く閣議決定を——果たして大来外務大臣は閣議決定の重みというものについてよく御存じであるかどうかということ、その点について私は非常に疑いたくなってしまうのです。やはりその閣議決定された、いわゆる一%以内ということを当面めどにしてというその線は、これは閣議決定されている以上はその線で言うべきが必要なことであって、これを恒久的にあるいは機械的に上限を設けないことなんだということは、あなたは大変に慎重でありながらちょっと慎重を欠くところがあるのではないでしょうか。その点についてはいかがでしょうか。
  183. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そのときの議事録をごらん願えれば明らかかと思いますが、当面ということは一体何年ぐらいなのかというような御質問もございました。それに対して、これは常識から言えば数年ということになるのかもしれぬということをお答えしたわけでございますが、さらに将来にわたってどうなんだ、固定的な上限を設けるべきではないかという御質問がございまして、それに対して未来永劫、固定的な上限ということは、先ほど申し上げましたように、適当でないかもしれない、そういうような経過で答弁いたしたわけでございますので、五十一年の閣議決定の重要性は十分存じておるつもりでございます。
  184. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 「当面」という言葉ですけれども、あなたは数年とおっしゃった。しかし、当時私が論議をした三原防衛庁長官は、数年といってもなんでしょうから、四、五年と、そう申し上げた方が適切である、こうおっしゃったわけです。昭和五十二年にそうおっしゃいました。四、五年となりますとまさしく来年は「当面」のいわゆる限度に来ている。それと同時に、防衛庁が中期業務計画の見積もりをやった。ということは、もうすでにGNP〇・九%に対して幾らかでも上積みをしたいというのが防衛庁の考え方。と同時に、大来外務大臣も、ブラウン国防長官が中期業務計画というものを十分に承知をした上において、早くやってください、こういうことに対して、あなたは着実に増強してまいります、こうおっしゃったということ、これはだれが聞いても〇・九%で事済まされる問題ではないというふうに思われるのですけれども、その点どうでしょうか。
  185. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど来申しましたように、五十一年の閣議決定は一%を上回らないということになっております。防衛庁の内部の案でございます中期業務見積もりは、五年で大体一%という見当になっておるわけでございまして、私はブラウン長官に対して、英語のステディー・アンド・シグニフィカントということに対して、シグニフィカントは無理だ、しかし、ステディーにはやらなければならぬだろうというふうに申したわけでございます。  現実の日本を取り巻く情勢を考えてみますと、一方におきまして極東におけるソ連の軍事力の強化というのが急速に進んでまいっております。ことに海軍力の増強は相当目覚ましいものがあるわけでございますし、同時に、北方領土の四つの島のうちの三つの島にソ連が軍事基地をつくっておるということも御承知のとおりでございます。  そこにアフガニスタンにおけるソ連の軍事介入、国境の外にある独立国に軍事力で介入したという事実が発生いたしたわけでございまして、これに対して世界の世論も、国連の緊急総会の決議にも示されましたように、多数の中立国、第三勢力といいますか、こういうものを含んだ百四票というのがソ連軍の即時撤退を求めたわけでございます。また、中東方面ではイスラム国の外相会議が行われまして、これもソ連軍の即時撤退の決議を出すというような状況がございまして、こういう情勢が一方において動いておるわけでございます。  同時に、私どもとしては、いかなる状態においても日本が安全である、日本国民が危険にさらされないという状態を常に考えていかなければならない。しかし、その場合基本的に専守防衛でございますから、自分たちの安全を守る、他の安全を脅かす、あるいはアメリカの全体の世界的な戦略の中に巻き込まれるということは、日本人として絶対にあってはならないことでございまして、こういう国際情勢の中において、そういう意味での本当に日本人の生命、財産、安全を維持するというためには何をしなければならないかということで、そのときどきの情勢に具体的に見合って考えていくべきものだと考えておるわけでございまして、そういう意味では、一定不変の限界というものを、未来永劫というわけにはいかぬだろうというような趣旨を申し上げた。情勢が緩和すれば一%よりもはるかに低くてもよろしいわけでございます。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大来外務大臣は参議院の方にということです。もう一問だけ聞きます。  状況が変われば何も一%でなくてもいいんだというお話ですけれども、それでは、いまのソ連の潜在的な脅威というものに対して、これはかなり装備を強化していかなければいかぬ、増強していかなければならない、そういうふうに受け取られるのですが、そういうふうに受け取っていいでしょうか。
  187. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 専守防衛という立場で、ある程度防衛力の強化が必要だろう、潜在的脅威であって顕在的脅威ではないけれども、潜在的脅威の度合いが強まっているというのが防衛庁長官の答弁でございまして、そういう立場から見れば、日本の国土を守り、国民の生命を守るという意味で、ある程度の防衛努力の強化が必要だろうというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もう一問。実は私は昭和五十二年に、当時防衛庁の原経理局長と質問のやりとりをやったことがございます。いまは防衛局長になっておりますけれども、当時は原経理局長だったと思いますが、そのときに、昭和五十二年から五十五年に至るGNPの伸び率というものを六%と見た場合に、果たしていまの状況でいられるかどうか、一%を超すんではないかという論議の中において原経理局長は、昭和五十五年はGNPは二百二十七兆円であります、一%は二兆二千七百億円で、二兆二十四億円から見ますとまだまだすき間がございます、それはF15並びにP3Cの購入費八百八十億円を入れてもすき間があります、だから決して一%を超えることはございません。それから、それでは昭和六十年にはどうなんだ、こう聞いたところ、昭和六十年まで見通すということはなかなかむずかしいけれども、しかし、昭和六十年においては防衛庁の試算でいきますとこれが三百四兆円だ、GNPが三百四兆円だからその一%というのは三兆四百五十億円になりますね、そういうことから考えまして、そのときですらF15、P3Cの購入費千九百七十億円を加えても、昭和六十年には一%を超えなくても、すき間があります、こういう答弁を実はしておるのです。昭和六十年まで一%はもう必要ないのです、その間に必ずすき間があるのです、こういうことなんですね。  先ほどあなたもお話のありました新経済七カ年計画でいきますと、これが名目四百二十四兆九千億、そして実質が三百四兆円なんですね。ちょうど三百四兆円、これはその当時防衛庁の経理局長が言ったとおりなんです。となりますと、そんなに簡単に一%までにいくということはあり得ない、一%まで増強する、すると言ったって、一%まであり得ないというふうに私は思うのですよ。昭和六十年度に、あなたは一%になると思いますか。
  189. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御承知のように、いま政府全体としても財政再建に取り組んでおる時期でございますし、昭和五十五年度の予算は名目で防衛関係は六・五%の伸びでございますし、もしもこの新経済七カ年計画の見直しで実質五・五%という経済成長率、平均でございますと、そのほかに物価騰貴分が上乗せになるわけでございまして、この一%という数字まで到達するのもなかなか容易なことではないというのが私の感じでございます。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大臣、どうぞ。  大事なところで大臣が行かれてしまったので……。確かに一%いくということは、これは並み大抵ではないわけです。そんなに簡単に一%いくはずが実はないわけであります。そういうことから、それでは大蔵省にお聞きいたします。  大蔵大臣が、一%を先取りして防衛予算を決定する手法はとるべきではない、一%にすることは困難であろうという考え方を述べられたわけでありますけれども、財政当局はその考え方に変わりはございませんか。
  191. 畠山蕃

    ○畠山説明員 財政当局といたしましては、現下の厳しい財政事情を考慮いたしますと、大蔵大臣が答弁したとおりと考えております。
  192. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、財政当局は防衛予算だけが財政の聖域であるというようなお考え方はとらない、いままでもとっていないけれどもこれからもとらない、こうおっしゃっておられるのでしょうか。
  193. 畠山蕃

    ○畠山説明員 お説のとおりでございます。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たしか私どもの相沢議員が大蔵大臣に質問をしたときに、大蔵大臣が財政当局として一%の増強に対して非常に強い難色を示されて、大蔵大臣はその理由として、GNP一%を達成する場合防衛予算の伸び率がどれくらい必要か、具体的な数値を示された。それによりますと、昭和五十六年度に一%にする場合には二一二・八%増、これは対前年比ですね、それで二兆七千六百億円を要する、五十七年度までに達成する場合には一七・四%、五十八年度までには一五・四%、五十九年度までには一四・四%、六十年度までには一三・八%という防衛予算の伸び率が毎年必要である、こういうことを答弁されたのですが、そのとおり間違いございませんか。
  195. 畠山蕃

    ○畠山説明員 大蔵大臣が答弁されたのは、私ども一でいろいろな前提を置きまして、たとえばGNPの成長率も財政収支試算の成長率に合わせる、あるいは一般会計の伸び率もそれに従うというような前提を置きつつ試算したものについて申し述べたものでございまして、その限りにおきましては、いまお述べになりましたとおりの数字でございます。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁の中期業務見積もりは、防衛庁限りで作成した、言うならば向こう五年間の整備計画で、実は予算との関係はないわけでありますけれども、大体試算をしてみますと、二兆七千億から二兆八千億と言われております。これに対して財政当局、すなわち大蔵省としては、全く関心がないと言えばこれはうそだと思いますけれども、どういうふうな考え方でおられるか。少なくともこれは国防会議とかあるいは閣議決定の手順を経るにしても、財政当局は財政再建と防衛予算というものはどうあるべきだというふうにお考えになっているか、その点についてお伺いします。
  197. 畠山蕃

    ○畠山説明員 防衛庁の中期業務見積もりは、先ほど来お話がございますように、防衛庁限りで作成したものでございますので、私どもといたしましては必ずしもこれに拘束をされないという立場でございまして、年々におきます防衛庁の予算要求の中身を十分吟味させていただきまして、財政事情及びその他社会保障等の他の経費とのバランスを考慮して適切な規模が決定されるというふうに考えておる次第でございます。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昭和五十五年度は、実際にはその中期業務計画の初年度になるわけですね。それは五十五年から五十九年ですから初年度というわけでありますけれども、二兆七千億円とか二兆八千億円という大型プロジェクトを考えておる防衛庁と、昭和五十五年度予算の査定に当たった大蔵省との間で、取り扱いはどういうふうになっているのか。その大型プロジェクトの将来計画を認めた上での予算査定であるのか、あるいは政府の今年度の予算編成方針に基づいて財政をにらんだ上での単年度としての査定であったのか、その点についてはいかがでしょうか。
  199. 畠山蕃

    ○畠山説明員 五十五年度の財政事情を勘案した単年度限りの予算査定であったと理解しております。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それだけお聞きすれば大蔵省は結構です。  それでは、次に少し進んでまいりたいと思っております。国連の非常任理事国に日本が立候補する意思を明らかにしながらも前回は選挙の前におりた経緯がございますね。どういう理由でおりられたのか。また今回立候補する意思のようであるけれども、それに対してどのような見通しなのでしょうか。
  201. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 本年の秋の御指摘の安保理事会の非常任理事国の選挙に対して政府としてどのような態度で臨むかということについては、まだ方、針を決定しておりません。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 では、立候補するというお気持ちはないのでしょうか。
  203. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 気持ちがないと言うと間違いかと思います。わが国としてはやはり国連活動にできるだけ積極的に参加したいという気持ちの中で、重要な機関である安保理事会の非常任理事国になるということは一つの国連活動に対する積極的な貢献の意味がありますから、なるべく将来にわたってもそういう機会を持ちたいという一般的な気持ちはもちろん持っておるわけでございます。  ただ、御承知のとおり、この非常任理事国の選挙につきましては、地域グループによる推薦とか、統一候補の決定とかいろいろルールがございます。そういうルールの中で、この秋あるいは来年以降、いつどのような形で立候補するのが日本として適当かというようなことについては、これは相当慎重に動向を見きわめなければなりませんので、そういう意味で、この秋についていまだ正式な決定は見ていないという趣旨でございます。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる非常任理事国としてのそれに、国連に対しての大きな発言力を持ちたいという意味においてそういう意思はあるけれども、決定はされてないのだ、こういうことであります。前に立候補はされたのですが、急に取りやめられたようなことになったのですけれども、そのいきさつはどうなのでしょうか。
  205. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 一昨年は選挙を戦って、残念ながら当選しなかったわけでございます。昨年は立候補を初めからいたしませんでした。
  206. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 穀物の問題についてちょっとお聞きしますが、今回、穀物の対ソ輸出禁止をしたアメリカの余剰穀物一千七百万トンについて、政府は二十五万トンを政府間買い付けとされたというふうに言われておりますけれども、それはカンボジア難民に対する無償援助に充てるのか。それとも無償援助というものは別枠に考えられておるのでしょうか。
  207. 梁井新一

    ○梁井政府委員 お答え申し上げます。  無償援助による米の輸出につきましては、私どもまだ政策を決めておりません。したがいまして、昭和五十四年度におきましても、約二万トンの米をカンボジア内のカンボジア難民に出したいと思っておりますが、現在実施中でございます。昭和五十五年度につきましては、予算の成立を待ちまして検討したいと考えております。
  208. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、二十五万トンの政府買い付けというものの性質はどういうことでしょう。
  209. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 お答えいたします。  今回、大来大臣がアメリカに行かれまして二十数万トンということで申し上げられたわけですが、これはまだ予算も成立しておりませんので、わが方としては決定ということではなくて、検討中ということでアメリカに言ってあるわけでございます。その内容といたしましては、KR援助とか輸入の前倒しとか、あるいは備蓄の積み増しということが内容になるはずでございます。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それから政府の買い付けと民間ベースで当初百万トンを、一千七百万トンの対ソ輸出禁止に伴って日本の方として協力をするというような考え方があったわけでありますけれども、民間の百万トンの中の二十五万トンを政府が買い付けをするということになれば、あと七十五万トンということになりますけれども、民間の方との話し合いはどうなっておりましょうか。
  211. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 お答えを申し上げます。  民間の方ではいろいろな提案もなされましたし、また御説明ございましたように、農林大臣が輸入業者を呼びまして、どのようなことが可能かというようなことを聞かれたことがございます。しかし、その際商社側の回答は、いろいろ買い付けの約束もしておるし、これ以上の商業ベースでの買い付けばなかなかむずかしいという反応があったように私どもは承知いたしております。今回の二十数万トンというものと今後あり得べきそういう商業上のものとはどういう関係に立つかということでございますが、とりあえず政府としては二十数万トンの購入ということを検討中ということでございますが、このことは、必ずしも今後商業ベースにおいて穀物の買い付け増が行われるということを排除するものではございませんけれども、一応これとは切り離して考えておる次第でございます。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカがソ連に対する穀物輸出を禁止したということは、一つは穀物を戦略物資という形で取り上げたというふうに言われているわけですね。ところが、実際にはソ連は、アメリカが輸出をしなくなったということで第三国からもうすでに実質的に輸入の契約をしているということで、アメリカの対ソ穀物輸出禁止はさほど影響しないというふうに言われているわけでありますけれども、外務省あるいはその関係の方はその実態をどのように掌握されていましょうか。
  213. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 お答えします。  アメリカの発表に当たりまして、アメリカは確かにナショナルセキュリティー、それからフォーリンポリシー、要するに国家安全保障及び外交上の目的によってアメリカの穀物の輸出を制限するというふうに言っておりますが、通常行われております八百万トンの輸出というものは認められておるわけでございまして、それ以上の、いま先生がおっしゃいました千七百万トンをとめたというのが現実の姿になっております。これに対しまして、先生御指摘のとおりに、ソ連の方ではかなりの数量を第三国市場で買い付け手当てしておるようでございまして、たとえばこの暦年において、ソ連の中において実際上食糧の危機が起こるかと言えば、若干足りない面があるとか、あるいは特に飼料面において若干足りないことが起こり得ても、きわめて重大な支障は起こすことはあるまいと一般に見られております。ただ、このアメリカの今回の措置は、そういったきわめて短期的なすぐの効果はさておきまして、アメリカの強い姿勢を示すという政治的な効果をねらったものだとも思われますし、また、この穀物の輸出の抑制が長期にわたります場合には、ソ連内におきましても相当の影響といいますか、打撃があるものというふうに考えられます。
  214. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一つお聞きしますけれども、たしか原子力ミサイル巡洋艦から沖繩の勝連村のホワイトビーチで異常放射能漏れがあった、かなり高い数値であるというふうに言われているわけでありますが、それについて、科学技術庁の方から外務省の方は何かお話を聞いておられましょうか。そして外務省としてはアメリカにどのような処置をおとりになられるのでしょうか。
  215. 栗山尚一

    ○栗山説明員 お答え申し上げます。  科学技術庁の方から連絡を受けまして、在京米大使館を通じまして米側に照会中でございますが、私どもの承知しておりますところでは、科学技術庁の方からの連絡によれば、現地でのモニタリングの結果、いわゆる技術的な正常値の範囲内ではあるけれども、晴天時の値よりは若干高い、こういう数値であるというふうに承知しておりますが、いずれにしましても米側に目下照会中でございます。
  216. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 正常値より少し高ければ異常値じゃないの。異常になるんじゃないですか。正常よりも高ければ異常じゃないですか。許容する正常値よりも高ければ異常値じゃないですか。
  217. 栗山尚一

    ○栗山説明員 私どもの承知しておりますところでは、いわゆる正常値と申しますのは九ないし十九CPSというふうな値であるというふうに承知しておりますが、今回の調査によりまして出ました数値は九ないし十四という数値である。したがいまして、正常値の範囲内ではあるということでございます。
  218. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、外務大臣が来られるまでちょっと別な問題を取り上げておきましょう。  極東の区域については、政府は従来から、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の区域であって、韓国及び台湾地域もこれに含まれているという統一見解を、昭和三十五年二月二十六日に岸総理大臣が答弁をされておりますが、その統一見解はいまも変わりはございませんか。
  219. 栗山尚一

    ○栗山説明員 変わりございません。
  220. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は、ベトナム戦争が行われていた間のベトナムというのは、直接極東の平和と安全に重要な深いつながりがあるという意味で、当時のベトナムは極東の周辺という概念を持っておられましたけれども、今回、RDF構想によってカーター大統領の一般教書でも強調されると同時に、さらに最近ブラウン米国防長官やパロー米海兵隊司令官が、有事の際沖繩の海兵隊をインド洋や中東へ投入することを明らかにしましたけれども、インド洋及び中東は極東の周辺区域であるのかどうか、その点についてお伺いをいたします。
  221. 栗山尚一

    ○栗山説明員 御質問のいわゆる緊急展開部隊と申しますかRDFとの関連で申し上げますと、RDFについては特定の任務、中東であるとか特定の地域への任務をあらかじめ特定の部隊に付与しているという性質のものではございませんけれども、わが国に駐留しております米軍との関係で申し上げますと、一方におきましては、御承知のように累次政府答弁で申し上げておりますが、わが国に駐留しておる米軍の行動範囲というものは必ずしも極東の範囲には限定されないということでございますが、他方におきまして、わが国に駐留しております米軍が中東あるいはインド洋に直接戦闘作戦行動のために出撃するというようなことは現在予想されておりませんので、その関連で申し上げますと、中東あるいはペルシャ湾というようなものが極東の周辺というようなものに相当するというふうには考えておりません。
  222. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私が聞いたことをよく答えていただかなければならぬわけでありますけれども、いま私が申し上げたのは、有事の際沖繩の海兵隊をインド洋や中東へ投入するというふうに言われたというわけですね。だから、インド洋や中東へ投入するということ、インド洋及び中東は極東の周辺区域であるかどうかはどうなんでしょうかと聞いているのですよ。
  223. 栗山尚一

    ○栗山説明員 極東の周辺という概念は、安保条約の上で法律的な概念として存在するものではございませんのですが、安保条約との関連で申し上げますと、米軍の行動範囲というものは極東に——米軍の行動というものはそもそも極東に対する脅威に対処してとられる、その場合に米軍の行動範囲というものは必ずしも極東の範囲内には限定されない。しかしながら、他方、地理的にどこが極東の周辺であるかということは、あらかじめ条約上特定されるような性質のものではないということでございます。
  224. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたずいぶん、前と外務省の答弁が変わっておりますよ。私が聞いているのは、インド洋と中東は極東の周辺地域に入りますかと聞いているのですから、それだけ答えてください。
  225. 栗山尚一

    ○栗山説明員 特定のインド洋でありますとかどこでありますとかということを、あらかじめ条約上極東の周辺というようなことで特定できるという性質のものではないということを御答弁申し上げました次第でございます。
  226. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたそうおっしゃいますけれども、私もこれはずっと論議をしてきておる内容があるのです。その中に、「インド洋はどうだということになりますと、これは極東の平和と安全に直接無関係の地域というわけにはまいらない、こういうことになってきておるであろうと考えるわけでございます。」すなわち、インド洋というのは極東の周辺だ、こういうふうな見解をとっておられるのですが、これはおたくの方のあれですよ。
  227. 栗山尚一

    ○栗山説明員 冒頭にも申し上げたかと思いますが、米軍の行動範囲との関連で申し上げれば、現実の問題としてはペルシャ湾というようなものが極東の周辺というふうな地域になるというふうには考えておりません。
  228. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ペルシャ湾は極東の周辺ではないけれども、インド洋はどう、だと聞いているのですよ。
  229. 栗山尚一

    ○栗山説明員 インド洋につきましても同様であろうと存じます。
  230. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 インド洋はそれでは極東の周辺ではない、こうはっきりしていいわけですね。
  231. 栗山尚一

    ○栗山説明員 先ほども申し上げましたように、あらかじめ条約の解釈といたしまして、特定の地域が極東の周辺であるとかないとかというふうには特定できないということでございます。一般論として申し上げます。
  232. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一般論ではなしに、私は具体的な論議を進めているわけですけれども、それじゃ中近東並びにインドはどうでしょう。極東の周辺でしょうか。
  233. 栗山尚一

    ○栗山説明員 たびたび申し上げて恐縮でございますけれども、一般論として申し上げますと、特定の地域が極東の周辺であるとかないとかということは、これは条約の概念としましてそもそも存在しないことでございますので、特定いたしかねるということでございます。
  234. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはちょっとおかしいですね。「ベトナムは極東の周辺というふうに観念されたわけでございまして、アメリカ軍が日本の施設、区域を使いまして行動し得る範囲ということについて極東という観念が出てくるわけでございまして、インドあるいは中近東と無制限に広がるような性質のものでは当然ない」わけですとはりきり具体的に言っているじゃないですか。具体的に言っているのですよ。いっこういう内容をお変えになったのですか。はっきりインドと中近東は極東の周辺ではないと言っているのですよ。インド洋は必ずしもそういうわけにはいかないということは極東の周辺にあるということじゃないですか。どういうことなんですか。
  235. 栗山尚一

    ○栗山説明員 従来からたびたび政府が御答弁申し上げていることでございますけれども、極東の周辺という観念で申し上げますと、極東に対して武力攻撃が行われ、あるいは、この極東の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲は、その攻撃または脅威の性質いかんにかかるのであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない、こういうことで極東の周辺という概念が出てまいっておるわけでございますけれども、いずれにしましても、累次御答弁申し上げておりますとおりに、周辺であるかどうかということは特定の事態に着目して判断されなければならない、他方、それが無制限に広がることはないということは政府が累次申し上げているとおりであります。
  236. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなた、いまペルシャ湾は極東の周辺じゃないと言いましたね。マラッカ海峡とかベンガル湾とかアラビア海とかそういうところはどうなんですか。
  237. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ただいま御答弁申し上げましたとおりに、極東に対します脅威と判断されるような事態が発生した場合に、それに対応する米軍の行動範囲との関連で周辺という概念が出てきますので、ただいまこの時点におきまして、どこが極東の周辺であるとか周辺でないとかというふうな特定の仕方はできないというふうに存じ上げます。
  238. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 じゃ、前は周辺ということは定義づけておったけれども、いまはもう周辺というものはそのときどきに判断すべき問題である、だから、周辺という問題については、全くそのときどきによって、あるいは場合によってはペルシャ湾でも極東の周辺だということも考えられぬわけではない、こういうふうに判断していいのですか。
  239. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ペルシャ湾につきましては、政府としてはこれは現実問題として極東の周辺に入るようなことはないというふうに御答弁申し上げております。
  240. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ペルシャ湾の固有名詞が出てどうしてほかのものが出ないのですか。たとえばインドとか中近東はどうかと言えば、前は中近東とインドは周辺区域じゃありませんとはっきり言っているのですよ。おたくの大河原政府委員が言っているのです。あなたの先輩でしょう。あなたの先輩がそのように言われているのです。そしてインド洋だけはそういうわけにはいかない。それじゃインド洋のどの部分が言うならば極東の周辺あるいは日本の平和、国際の平和につながる部分なのか、こういうことになるのじゃないですか。だから、あなたのおっしゃっていることは、その都度その都度極東の周辺は変わっていくわけですよね。ラオスはどうだ、こう聞けば、おたくはまた言うでしょう。ラオスはどうです。その当時のちゃんと話がありますよ。
  241. 栗山尚一

    ○栗山説明員 たびたび同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、ある一定の地域が極東の周辺であるかどうかということは、特定の極東に対します脅威が起こった事態におきまして、これに対応するための米軍の行動の範囲という関連で出てまいります問題でございますので、現時点におきましてはそのような問題は生じてございませんので、ラオスがどうであるとかということは申し上げられないと思います。
  242. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは、外務省ではもう極東の周辺ということは現在の物の考え方では対応できない、対応できなくなってしまったから、その都度その都度判断をする、こういうふうに答弁が変わってきたのですね。私と当時大河原政府委員とのやりとりの中においては、インドと中近東はもう極東の周辺ではございませんとはっきり言っている。そしてラオスはと聞いたら、ラオスといってもとてもその中に入るわけはございません。インド洋はと言ったら、インド洋は取り外すわけにはいかないと、はっきりしているじゃないですか。外務省はずいぶんこのところ答弁を後退されて、そしていつ何どきでもアメリカ軍の極東周辺に出やすいようなそういう場をおつくりになっているようですけれども、これはちょっとぼくは問題だと思いますよ。はっきりと政府として言われたことに対して責任を持ってください。それをいつの間にか変えられるということはどういうことなんですか。
  243. 栗山尚一

    ○栗山説明員 先生御指摘の当時の大河原局長の答弁、私は手元に持ってございませんので正確に記憶しておりませんけれども、極東及びそのいわゆる周辺地域というものに対します政府の考え方は、新安保条約締結以来変わっておりませんので、私がただいま申し上げましたことは従来からの政府の申し上げておることのとおりでございます。
  244. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ちょっとこれを見てください。
  245. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ただいま昭和四十八年の国会におきます大河原局長の答弁を拝見させていただきましたが、この答弁を見ましても、やはり先ほど私が申し上げましたとおりに、特定の地域をどうこうというふうにはできない。ラオスにつきましても、「一がいにラオスは周辺地域である云々ということを申し上げるのはあるいはいかがかと存じます。」というふうに答弁申し上げておりますが、インド洋につきましても「極東の平和と安全に直接無関係の地域というわけにはまいらない、こういうことになってきておるであろうと考えるわけでございます。」というふうに答弁申し上げております。これは別に極東の周辺にインド洋が入る、他方においてラオスが入らないということを一般論として申し上げておるということではないように私は読ましていただきました。  中近東につきましても、インドあるいは中近東と無制限に広がるような性質のものではない。私も先ほども申し上げておりますが、中近東というものが極東の周辺というものに入るというふうには考えておりませんということを申し上げた次第でございます。
  246. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いや、大河原さんのその答弁はそのままあなたの考え方であるというように、それでいいのですか。見解はそのとおりですか。
  247. 栗山尚一

    ○栗山説明員 この点につきましては、従来から政府が一貫して申し上げておることでございまして、私もそのとおりに考えております。
  248. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃインドと中近東、これは周辺ではないとはっきり言っていますね。インド洋というのはそういうわけにはいかないだろうというあれです。インド洋はそういうわけにはいかない。いわゆる周辺から外すというわけにはいかないだろう、こういう論理になっていますよ。その点はそれでいいのですね。
  249. 栗山尚一

    ○栗山説明員 大河原局長が、インド洋につきまして外すわけにはまいらないと申しますか、私いまそこで読ましていただきましたところでは、極東の安全と無関係の地域というわけにはまいらないだろうというふうに答弁申し上げておるというふうに記憶いたしておりますけれども、いずれにいたしましても、その答弁におきましても、インド洋というものが極東の周辺であるというふうなことで特定して御答弁申し上げたものだというふうには私読み取りませんでした。
  250. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆるインド洋の中でシーレーンと言われる石油輸送ルートは、日本の安全に寄与し並びに極東及び国際の平和と安全に関係がある、こういうふうに理解されていますか。いわゆるシーレーンの問題。
  251. 栗山尚一

    ○栗山説明員 シーレーンはもちろんわが国の安全と申しますか、広い意味でのわが国の安全というものにとって重要な関係があると思いますけれども、ただいまの御質問が安保条約との関連の御質問でございますと、常時シーレーンがわが国の安全に密接に関係があるかどうかということは必ずしも一般論として申し上げるわけにいかないと思います。
  252. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 シーレーンについてわが国の安全と平和に影響がないなんてことを一般的に言うわけにはいかないということはどういうことなのですか。シーレーンはわが国の海上輸送の一つの大きなルートになっておるわけでしょう。それが日本の平和に全然関係がないということなのでしょうか。それともあなたのおっしゃるように、必ずしもそうではない場合もあり得るということはどういうことなのでしょう。
  253. 栗山尚一

    ○栗山説明員 私が申し上げましたのは、ちょっと言葉が足りなかったのかもわかりませんが、安保条約における米軍による施設、区域の使用との関連の御質問でございましたら、インド洋のシーレーンがわが国の安保条約の運用との関連でどういう意味合いを持つかということは一般論としては申し上げかねるということを申し上げましたので、わが国の繁栄、安全というものにとってペルシャ湾から日本に至るシーレーンというものが重要である、これは論をまたないところであるというふうに存じます。
  254. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海上自衛隊はシーレーンに対しての防衛区域を千海里というふうに規定されておりますけれども、シーレーンのルートの千海里というのは、日本の国のどこからはかった距離でしょうか。
  255. 栗山尚一

    ○栗山説明員 わが国の特定のどこの地点から千海里というものをはかったかということにつきましては、私ちょっといま記憶にございません。
  256. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは大変に重要な問題でして、たとえば沖繩から千海里というのと東京から千海里という仮説をとるのと、あるいはまた小笠原、硫黄島、それぞれ日本の領土も、東京から小笠原までは千キロ離れておりますから、そういうことから考えますと、千海里の防衛といいますか、海上輸送を確保するためのルートといいますか、これははかり方によって非常に違うわけですね。たとえば沖繩から千海里なんていいますと、マラッカ海峡まで行くのではないですか。
  257. 栗山尚一

    ○栗山説明員 大変不勉強で申しわけございませんけれども、具体的な地理的な距離については知識がございませんので、ちょっと御答弁申し上げかねます。
  258. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は、二月九日の予算委員会において、米軍が三海峡機雷封鎖を行う場合は、事前協議の対象であるというふうに答弁されていることについて御質問申し上げたい。  まず、米軍による海峡封鎖を事前協議とする条約上の根拠ですね、それを明らかにしてもらいたい。日米安保条約第六条の実施に関する交換公文は事前協議の対象として、一つは配置の重要な変更、装備の重要な変更及び戦闘作戦行動の三つを挙げているわけでありますけれども、ところで、この海峡封鎖を事前協議の対象であるとするならば、それはいま挙げた三つのうちのどれに相当するのでしょうか。
  259. 栗山尚一

    ○栗山説明員 全く理論的に申し上げますと、米軍が行うということでございますれば、戦闘作戦行動のためのわが国の施設、区域の使用ということになろうかと存じますが、念のため申し上げますと、三海峡の封鎖につきましては、これはあくまでもわが国の防衛ということとの関連でございまして、わが国自身の防衛と申しますか、自衛権を発動するという事態のもとにおいてのみ三海峡封鎖ということが考えられるかと思いますので、そういう意味では、私が申し上げましたことは全く理論的な問題として御答弁申し上げた次第でございます。
  260. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、いわゆる事前協議の条約上の根拠である配置の重要な変更、装備の重要な変更あるいは戦闘作戦行動のうちのどれに該当するのですか、三海峡封鎖という問題は。
  261. 栗山尚一

    ○栗山説明員 先生御承知のとおりに、事前協議に関します交換公文は安保条約の第五条、すなわちわが国自身の防衛の問題以外の安保条約六条の実施との関連でございますので、六条のもとでの事前協議というものは、これはわが国自身の防衛の場合とは関係がない事態に際しましての日米間の取り決めでございます。
  262. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 事前協議というのは、要するに日米安保条約の第五条の戦闘作戦行動ですか、戦闘作戦行動の中において一これは除くということですね。安保の第五条は除く、こうなっております。それから交換公文の中においては、御存じのとおり事前協議の対象として配置の重要な変更と装備の重要な変更並びに戦闘作戦行動の三つを挙げているわけですね。政府は、二月九日の予算委員会において、米軍の宗谷、津軽、対馬の機雷封鎖を行う場合は事前協議の対象であるというふうに答弁されているわけでしょう。だから、この中のどれであなたたちは事前協議の対象だとおっしゃるのですかと聞いているのです。
  263. 栗山尚一

    ○栗山説明員 冒頭申し上げましたとおりに、全く理論的な問題として考えますと、六条の実施に関する交換公文に該当する場合と申しますと、戦闘作戦行動の場合だろうと思います。
  264. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦闘作戦行動でしょう。それに基づいていわゆる事前協議だということなんですよ。なぜ、それを早く言わないのですか。私は例を挙げて三つのうちのどれかというふうに聞いているのに、あなたは一向にそういうことも言わないじゃないですか。戦闘作戦行動によって、言うならば事前協議だということになるわけなんです。  そこで、武力攻撃があった場合は安保五条で対処されるわけでありますが、これは問題ありませんけれども、アメリカが海峡封鎖をするという事態は具体的にはどのような事態を意味しているのでしょうか。海峡封鎖をする事態というのは具体的にどのような事態を指して言っているのですか。そのときにあなたは事前協議にかかわるとおっしゃるのでしょうか、具体的に。
  265. 栗山尚一

    ○栗山説明員 わが国が他国から攻撃されました場合以外の場合におきまして、米国がどのような事態で海峡封鎖というようなことを必要とすると考えるかという点につきましては、そのような仮定の問題というのはなかなか論じられないというふうに考えます。
  266. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 論じられないものを事前協議の対象にするなんというのはずいぶんおかしな話であって、やはりそういうものを想定して事前協議の対象にするとあなた方は言っておられるわけだから、その想定しているものはどういうものかと私は聞いているわけであって、それを論ずることはできないというのはずいぶんおかしな話だ。  それじゃ、たとえば施設、区域外の公海におったアメリカの空母あるいは艦艇が命令に基づいて機雷を投下する場合は事前協議の対象になるのですか。
  267. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ただいまの先生の御質問の御趣旨は、洋上におりますアメリカの軍艦がどこか洋上に機雷を敷設する、それが事前協議の対象になるかという御質問でございますか。
  268. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 施設、区域外におるアメリカの空母、いわゆる公海上におるアメリカの空母あるいは艦艇が命令に基づいて機雷を投下する場合は事前協議の対象になりますかと聞いているのです。
  269. 栗山尚一

    ○栗山説明員 戦闘作戦行動のための施設、区域の使用というのは事前協議の対象になるという意味におきまして、戦闘作戦行動のためのわが国における施設、区域の使用と申しますのは、従来から繰り返し政府が御答弁申し上げておりますとおりに、わが国の施設、区域から、直接戦闘行動のために施設、区域を使って発進する、そういう場合に交換公文に基づきまして事前協議の対象になるということでございまして、いま先生御質問の洋上にあります、施設、区域外にあります航空母艦が、航空母艦でもほかの艦艇でもよろしいかと思いますけれども、そのような船がどこか洋上に機雷を敷設するというようなことは、いまの御質問の態様では事前協議の対象にはならないのではないかというふうに考えます。
  270. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 主権国家である日本の国のいわゆる領海に、あるいは領海の近辺の公海にそのような機雷を敷設をするということは、日本の国にアメリカが何の相談もなくしてできるということでしょうか。
  271. 栗山尚一

    ○栗山説明員 事前協議につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、安保条約の運用に関します日米間の協議といたしましては、これは事前協議に関する交換公文以外にも随時協議をいたすことになっておりますので、いま先生御指摘のような重要な問題の場合には当然日米間で話し合いが行われるというふうに考えられます。
  272. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この交換公文に掲げられている事前協議にかかわる三つの事項、すなわち配置の重要な変更とか装備の重要な変更及び戦闘作戦行動の三つというのは、これは例示になっているのですか、それとも列挙になっているのでしょうか。そのどちらでしょうか。     〔委員長退席、逢沢委員長代理着席〕
  273. 栗山尚一

    ○栗山説明員 これは例示ではございません。
  274. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは列挙である。だから、交換公文に掲げられた三つの事項以外に事前協議の対象はない、こういうふうにとっていいでしょうか。
  275. 栗山尚一

    ○栗山説明員 そのとおりでございます。
  276. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は、米軍がわが国の海峡を機雷封鎖するのは事前協議の対象であるということを言明しているわけでありますけれども、このこと・についてはアメリカ政府との間に明確な了解があるのか、どういう形式で、いつ、だれと、どこでこういうふうなことの了解がなされたのか、その点についてはいかがでしょうか。
  277. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ただいま御質問の趣旨は、わが国の施設、区域を使いまして、米軍がそこから海峡でございますか、そういう水域に機雷を敷設するというような場合には、当然安保条約第五条の事態でないという前提のもとでの御質問だと思いますが、その場合でございますれば、当然条約第六条の実施に関する交換公文の対象になるということを申し上げたいというふうに考えます。
  278. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は戦闘作戦行動とかあるいは重要な装備の変更あるいは配置の変更等、三つありますね。ところが、あなたの方ではすでに三海峡の封鎖については事前協議の対象である、こうはっきり言われたわけですね。言われたとするならば、その問題についてすでにアメリカの政府との間において明快な了解がなければならないわけです。こういう問題については、事前協議の対象にしますよということを言わなければ、一方的な、言うならば日本の考え方になるわけですから。だから私は、そういう問題をいつ、どこで、だれが、どういう形でその話し合いをされたかということを申し上げているわけです。それについて御答弁願いたい。
  279. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ただいま御質問のようなケースにつきまして、アメリカ側と協議をして、これが事前協議の対象であるとかないとかという性質のものではないと存じます。先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますが、五条の事態じゃない事態のもとにおきまして、わが国の施設、区域から直接米軍機なり何なり発進いたしまして機雷を敷設するというような行為でありますれば、これは当然六条の実施に関する交換公文に言うところの戦闘作戦行動に該当するということでございますので、この点につきまして別にアメリカ側とあらかじめ協議をしておくというような性質のものではなかろうと存じます。
  280. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ、アメリカと事前協議をすることについての合意がなされていないということは、これは日本の方の考え方であって、アメリカは、必ずしも三海峡等の封鎖については事前協議をやるとかやらないとかということについては何にも言ってない、こういうことですね。
  281. 栗山尚一

    ○栗山説明員 アメリカ側もこれは当然そういうことであろう、そういうことであるというふうに考えておると思います。
  282. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカもそういうことであるというふうに思っておりますとか、そういうことでありますということ、これをあなたが言っても、アメリカとの相談をしなければそういう決定にはならぬでしょう。あなたが、アメリカはそうでありますとか、アメリカはそういうふうに思っておるでしょうとか言ったって、これは日米安保協議会等において、こういう問題については、三海峡封鎖の問題は重要な問題であるから、戦闘作戦行動の中における言うならば事前協議ですよということを明確にそのところで話し合われなければ、それは両国の合意にならぬのじゃないでしょうか。
  283. 栗山尚一

    ○栗山説明員 特定の作戦行動というものが、六条の実施に関する交換公文に言う戦闘作戦行動に該当するか否かということをあらかじめ一つ一つ特定して詰めておくというわけには、事柄の性質上いかない問題だろうとは思いますけれども、ただいま先生のおっしゃいましたようなことで、わが国の基地を使って直接三海峡に機雷を敷設するというような行動でございますれば、これはだれが見ましても交換公文に言うところの戦闘作戦行動ということになろうかと存じます。
  284. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 米軍が在日基地から発進して第三国の海峡あるいは港湾に機雷を敷設する場合は、これは戦闘作戦行動であって事前協議の対象になるのか、単なる協議あるいは日本政府に対する通告でよいというふうに考えられているか、その点はいかがでしょうか。
  285. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ただいまの御質問の趣旨が、わが国の施設一区域から直接発進しましてそのような行動をやるということでございますれば、これは当然事前協議の対象になります。
  286. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第三国がアメリカとの関係でわが国の海峡もしくは港湾の封鎖を行う場合一これはわが国に対する敵対行為というふうにみなすのかどうか。わが国の領海内に機雷を敷設する場合と領海外の公海に機雷を敷設する場合とでは法的にはどういうふうに違うのですか。
  287. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ただいまの先生の御質問、私、必ずしも十分理解いたしましたか、ちょっと自信がございませんが、第三国が……
  288. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第三国がアメリカとの関係でわが国の海峡もしくは港湾の封鎖を行う場合、これはわが国に対する敵対行為とみなされるのか、わが国の領海内に機雷を敷設する場合と領海外の公海に機雷を敷設する場合については法的にはどういう相違があるのか、こういうことです。
  289. 栗山尚一

    ○栗山説明員 第三国がわが国の領海内に機雷を敷設するということは、これは当然わが国の同意なくしてということで、非常に理論的な仮定上の問題だと思いますけれども、これは通常でありますれば当然わが国の領土、領空、領海というものに対する侵犯ということになろうかと存じます。
  290. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 宗谷、津軽、対馬の各海峡における領海は三海里でありますけれども、これらのいずれの海峡においても、いわゆる公海の部分があるわけですね。こういう海峡を封鎖するということは国際法上果たして認められるかどうかという問題があるわけですが、その点についてはどうでしょう。
  291. 栗山尚一

    ○栗山説明員 通常の事態におきましては、そのような行為は認められないだろうと存じます。
  292. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえば海峡がすっぽり海峡国の領海に入る場合、海峡国による封鎖は国際法上認められるかどうか、あるいは領海における無害通航権との関係があるわけでありますけれども、この点についてはどういうふうにお考えになっていましょうか。
  293. 栗山尚一

    ○栗山説明員 ただいまの御質問は、平時の事態における行為というふうに理解いたしますが、いずれの場合にもそのような行為は現在の国際法のもとにおいては認められないだろうと存じます。
  294. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 有事の場合はどうなんですか。
  295. 栗山尚一

    ○栗山説明員 有事の場合に第三国が機雷を敷設するということでございますか。
  296. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 有事の場合、その海峡がすっぽり海峡国の領海に入る場合、海峡国による封鎖は国際法上認められるのか、あるいは領海における無害通航との関係もあるので、このことをどういうふうに考えておるのか、こういうことです。
  297. 栗山尚一

    ○栗山説明員 わが国自身が、有事に際しまして第三国の艦船、船舶の通航を阻止するために、わが国の領海でありますところの海峡を封鎖するということは、これは自衛権の行使の一環という場合には当然認められるだろうと存じます。
  298. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日ソ関係についてちょっとお聞きいたしますけれども、ソ連軍のアフガン侵攻を契機として日ソ関係は急激に冷却の方向にあるというふうに言われておりますけれども、日本政府はアメリカ政府の要請を受けて具体的にどのような措置をおとりになったのでしょうか。
  299. 武藤利昭

    武藤政府委員 ソ連に対する措置につきましては、現在なお検討中でございまして、結論を見るには至っておりません。
  300. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえばシベリア開発に対しては、これはぜひ続けたいとかいうことはわかるわけでありますが、経済援助の停止とかあるいは穀物の振りかえ輸入とか、オリンピックの問題、こういうのはやはりソ連に対する何らかの制裁と見られるのではないでしょうか。
  301. 武藤利昭

    武藤政府委員 ソ連との関係につきましてはいろいろの局面があるわけでございまして、まずシベリア開発等のいわゆるソ連との経済協力の問題につきましては、従来から引き続き行っているものについては引き続き継続しているわけでございます。新規のものにつきましては、ただいま申し上げましたとおり、どのような取り扱いをするかについてはなお検討中ということで、結論を見るに至っていないわけでございます。  それから、穀物につきましては、アメリカがソ連に対しまして、先ほどから御指摘のございましたとおり穀物の禁輸措置輸出制限をやっているわけでございますが、もしわが国が穀物輸出国であるとすれば、アメリカがその禁輸をした分を日本からの輸出で穴埋めをするかしないかという問題が生じ得るかと思いますが、わが国の場合はソ連に対する穀物の輸出国ではございませんので、その問題はわが国の場合には当てはまらないかと思います。  それから、オリンピックの関係につきましては、これはもう先般の官房長官の発言で明確に政府の姿勢が出ているわけでございまして、これもJOCに対しまして慎重に事態を見るようにということを申し上げているわけでございまして、日本政府として格段の措置を決定したということではないわけでございます。
  302. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は大臣が来ていろいろ答弁をしていただく内容もあるわけなんですが、そういうことで、大臣が私の質問の間に来られないということもありますので、暫時休憩してもらいたいと思います。
  303. 逢沢英雄

    ○逢沢委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後六時三十六分休憩      ————◇—————     午後六時五十九分開議
  304. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  305. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 大臣がおられなかったので、大臣にお聞きする問題については残しておきました。  今回の訪米の中で、懸案になっている日米経済摩擦の中の日本車の対米輸出の急増問題に対して、アメリカは輸入規制には反対だが、この問題には政治的な側面を含んでいるという意味のことをバンス長官との会談で話し合われたというわけでありますけれども、これに対して大臣は、政治的な側面ということに対してどういうふうに理解され、あるいはまたそれに対して、向こうの方でもしも言われたということがあれば、この際明らかにしてください。
  306. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいままた参議院に参りまして、大変失礼しました。  お尋ねの自動車の問題でございますが、これはバンス国務長官のときとそれからアスキュー通商代表のところと両方で話が出たわけでございますが、アメリカ政府としては、日本車輸入制限は行わない、これはカーター大統領の意向であるということをアスキュー通商代表が申しておりました。また、日本側に輸出の自主規制を求めるということも行わないつもりだ、これは一つには、いまのアメリカの自動車問題は、アメリカの自動車産業が大型車から小型車に切りかえるタイミングを誤った、おくれたことが一つの大きな原因であるので、この点はアメリカ自動車産業自体の責任でもあるということでございまして、輸入制限や自主規制ということよりも、むしろ日本の自動車企業の米国投資を求めるんだ、それからさらにもう一つは、アメリカが日本から昨年二百万台の自動車を輸入しておるのに、日本はアメリカから二万台しか買っていない’もっと日本の輸入の手続、規則その他の自由化を図って、アメリカからの対日輸出がふえる、そういう形で対処していきたいという考え方が、バンス長官及びアスキュー通商代表からそれぞれ話がございました。先ほどのお尋ねの政治的な意味があるという点は一つにはユナイテッド・オ一トモービル・ワーカーズといいますか、UAWのフレーザー委員長がこの前日本に参ったわけでございますが、自動車関係で二十万に上る失業者が出ておるということの意味が一つと思いますし、それから、アスキュー代表が言っておりましたことは、自動車の輸入急増を含めて、日本の対米輸出がことしは非常に大きくなる、これも先ほどたしか申したかと思いますが、その結果、日米貿易アンバランスが場合によると百六十億ドルぐらいになる、そういうふうに対日貿易のアンバランスが大きくなるとやはり政治問題化する危険がある、そういう意味で申しておったわけでございます。
  307. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、あなたは帰ってこられて記者会見をされたわけでありますけれども、そのときに、自動車の輸出問題について米側の工場進出の要求にこたえられない場合は、電電公社の資材調達あるいは米国車の輸入増など、日本市場開放への圧力が一層強まるだろうという判断を外務大臣は示されたというふうに報道されておりますけれども、それは、いわゆるアメリカ側の政治問題だという、その中においてバンス国務長官が直接言われたのか、あるいはアスキュー通商交渉代表がそれを言われたのか、あるいは大臣はそういう話の中からみずから感触を得てそういう発言になったのか、その点についてはどうなんでしょうか。
  308. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの点は、大体アスキュー通商代表が申したこと、大体そう申してよろしいと思います。
  309. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 次に、アフガニ久タン問題でバンス一国務長官やブレジンスキー補佐官が説明したのは、アフガニスタン中立化構想の内容というものを克明に説明されたというわけですね。その中に、中国は当初反対しておったけれどもよく説明したら最終的には同意したというふうに言っておりますが、日本の大臣がどういう内容の説明を受けられたのか、それに対してどういうふうに対処されるおりもりなんで、しょうか。
  310. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御承知のように、いわゆる中立化構想は、ローマで開かれましたECの外相会議でイギリスのキャリントン外相が提案したということでございまして、その後ECの内部でもいろいろ検討が行われている、まだまとまった案ができたとは聞いておりませんが、ただ、そういう考え方をもとにして個別的にイギリス側がモスコーとコンタクトする、あるいはフランス側からも打診が行われるということがあったように聞いております。いまのところソ連の反響が余りはっきりしない、全くリジェクトといいますか、拒絶するというわけでもないが賛成ということも言わないという状態のようでございます。  中国は従来、その中立化構想というのは、ソ連がアフガニスタンに軍事介入をしたのは他の国々が介入したからそれに対してアフガニスタンの政府の要請に基づいて介入したんだという説明をしておるわけでございますが、中立化構想ということはソ連にアフガニスタン介入の理由を与える結果になる、つまりけんか両成敗といいますか、どっちもやっているんだというような印象を与えることで、そういう点から見て好ましくない、今回のアフガン介入は一方的にソ連がやったものなんだという立場が従来中国の見方でございまして、そういう意味で批判的な態度を表明してきておったわけでございます。  今回ちょうどワシントンに行っておりました中国の外務副部長、次官でございますが、章文晋外務次官、これはバンス長官にもブレジンスキー補佐官にも会ったようでございますが、その際この中立問題の話が出て、アメリカ政府としては、むしろこの中立化問題全体がセトルしてからソ連の軍隊が撤去するということではなくて、まず第一にソ連の撤去を求めるという形でいくべきだ、そういうことによりまして、もしソ連が撤退をするということを受ければそれでよし、受けなければ、防衛的な目的でソ連がアフガニスタンに軍事介入をしたという口実がなくなるわけで、ソ連の意図は膨張的、侵略的であるということを世界、特に第三世界に示す結果になるので、そういう形での中立化構想を進めるべきだと思うということを米側は申しておったわけでございまして、そういう考え方ならばある程度うなずけるということを、いまの章文晋氏が反応を示したといいますか、依然として反対の態度は変えなかったけれども、やや理解したようであるという言い方でございました。
  311. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その説明を受けられまして大来外務大臣は、日本としてはどういうふうに理解を示されるのでしょうか。その点についてはどうでしょうか。
  312. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本としては、アフガニスタンからのソ連の撤兵というのは、世界の緊張緩和という意味から申しましても、あらゆる方法でその実現を促進すべきだと考えるわけでございまして、こういう構想もその一つのアプローチである、現実問題としてはいまソ連のアフガンの軍隊が引き揚げそうな徴候はございませんので、実現をするかどうかこれはわからないわけでございますけれども、一つのアプローチ、試みであると考えます。  同時に、こういう考え方がより効果的になるのは、アフガニスタンに近い第三世界と申しますか、あるいは非同盟諸国あるいはイスラム諸国、こういうところがある程度リーダーシップをとった中立化と申しますか、あるいは国連自体がこの問題に相当な参画をしてやるような方法ができれば望ましいんじゃないか、西側先進国だけがやるアプローチよりも、いまのようなもっと広い世界の世論の上に立ったアプローチが望ましいのではないか、それが私どもの考え方でございます。
  313. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その望ましい非同盟諸国が、アフガンの中立化の問題についてはどういうふうな反応を示していましょうか。非同盟諸国は、これについて賛成の方向でしょうか、あるいは余り賛成でないというふうなことでしょうか。外務省としてはどういうふうに掌握しておられましょうか。
  314. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 一口で申しますと、非同盟諸国の本構想に関します反応は必ずしもはっきりしておらないということでございます。なぜはっきりしていないかと言いますと、それは、やはり構想自体がヨーロッパから出てきたということ、かつ肉づけされないアイデアだけであるということ、三番目に、特にそれらの諸国に対して具体的な相談がなかったというこの三点に基づくことかと察しております。
  315. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 近く年中行事である日ソ漁業交渉が控えております。五月の出漁期をあれしまして、もうその時期を控えておるわけでありますが、この見通しはどうなっておりましょうか。日ソの漁業交渉の会談はいつから始まりましょうか。また、政府はソ連政府に対して会談の申し入れを当然していると思いますけれども、それに対して会談の日時は決まったのか。また、会談の見通しというのはどういう状態でしょうか。
  316. 武藤利昭

    武藤政府委員 日ソの漁業関係のうち、いわゆる日ソ、ソ日漁業協定につきましては今国会の冒頭に御承認をいただきまして、今年度の分が実施されているわけでございます。  ただいまのお尋ねは、特にサケ・マス漁業についてと存じますけれども、サケ・マス漁業交渉につきましては、かねてわが方よりソ連政府に対しまして交渉の開始方を申し入れております。ソ連側からなかなか回答が参りませんので、いま鋭意ソ連側の回答を督促しているところでございます。
  317. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もうそろそろ日ソ漁業交渉が始まらなければならない。それに対しての日本側に対する向こうの返事というものが当然そろそろ来なくちゃならない時期ですけれども、向こうからまだ来ないというのは、日本に対して、日本のとっているアフガンの問題あるいは対ソ政策に対して何か不満があるから、そういうことでなかなか返事が来ない、こういうことでしょうか。
  318. 武藤利昭

    武藤政府委員 ソ連側は回答がおくれている理由といたしまして、たとえば漁業大臣が病気で出勤してこないだとか、それから次官が多用で外国に出張しているとか、いろいろなことを言っておりまして、真相はわからないわけでございます。交渉を始めなければならない時期が近づいていることは確かでございますが、昨年の例をとりましても、交渉が始まりましたのは四月三日でございまして、まだそれまでには間があるわけでございますが、わが方といたしましては、いずれにせよできるだけ早く交渉を始めたいということでいま鋭意督促を重ねている現状でございます。
  319. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 漁業割り当て量については、例年になく大変に厳しいものになるのではないだろうかと言われておりますけれども、交渉が妥結しないような最悪の事態というものは考えられましょうか。あるいは日本の国としては当然努力するわけですけれども、これからどういう手を打っていこうとされているのでしょうか。
  320. 武藤利昭

    武藤政府委員 御承知のとおり、サケ・マスの漁獲に対します日本への割り当てが年々低下していることは御承知のとおりでございまして、特にことしはいわゆる不漁年にも当たるということで、見通しにつきましては必ずしも楽観はいたしておらないわけでございます。ただ、日ソ漁業は日ソ関係の中でも重要な地位を占めているわけでございますし、また、わが国にとっての北洋漁業の重要性ということもあるわけでございますので、その維持、安定、継続を図るために政府といたしましては全力を傾けたい、かように考えております。
  321. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 インドネシア政府が経済水域二百海里を宣言いたしましたけれども、日本政府としてはこれはすでに予期をしておった問題であるのか、あるいはマグロ漁業に多大な影響を与えるだろうというふうに言われておりますけれども、政府はどのようにこれに対処されるおつもりなんでしょうか。
  322. 木内昭胤

    ○木内政府委員 インドネシア政府が二百海里を宣言するということは昨年からもすでに話題になっておりまして、インドネシア外務大臣にも私どもの関心のほどは伝えてございます。今般も、去る三月二十一日に経済水域二百海里を宣言したわけでございますが、現実にどのような規制をするか。インドネシアの国内法の整備はこれからでございますので、その時間をはかりまして、インドネシア側と鋭意交渉するつもりでございます。この交渉につきましてはすでにわが方インドネシア大使館に訓令済みでございます。
  323. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中南米諸国の問題についてちょっとお伺いいたしますけれども、中南米諸国の最近における一般的な国情というのは、政変が非常に多発しているわけでありますけれども、この原因はどういうところにあるのか。あるいは中南米諸国の一般的な対日感情はどうなのか、わが国企業の進出について懸念はないかどうかという問題についてはどうなんでしょうか。
  324. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま中南米局長がおりませんので、私から概要を申し上げますが、現在パナマのロヨ大統領が来ておりまして、一昨日大統領側から中南米の状況について話がございまして、中米の二、三の国でかなり不安定な状況がある、それからコロンビアで、やはり国内でいま大使館一つ占領して、大使を何人か人質にしておるというような問題がございますが、この方は近いうちに解決するだろうと思う、その他のラテンアメリカ各国は比較的情勢が安定しておるという話でございました。そのほか、私ども外務省の得ておる情報でも、他の国々は比較的安定しておるように存じます。  日本の協力につきましては、ブラジル、アルゼンチンその他各国とも日本側の協力を強く要望しておる状態でございまして、ただ、ブラジルとかコロンビア等につきましては、特に石油の値上がりに伴いまして外貨のポジションが相当悪化しておるという状況だと聞いております。
  325. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 近ごろやはり中南米諸国においては民族意識が強まって、外国企業の資本を排除するという考え方がかなり強くなってきております。なかんずくブラジルでは経済ナショナリズムが高まっており、外国企業の進出にブレーキをかけているということであるけれども、実情はどうでしょうか。外国資本等の国有化の動向をどういうふうに見るのか、将来も外国資本の活動がスムーズに行われる見通しがあるのでしょうか。
  326. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもの聞いておる範囲におきましては一部の国、特に中米におきましてやや左翼化と申しますか、そういう動きがあるわけでございますが、一方におきまして、ブラジルは軍事政権のこれを最後にして民間支配に移そうという意向の表明が行われておりますし、アルゼンチンはいまの政権のもとで政治的な安定化の方向に向かって、従来対外投資に対して非常に閉鎖的でございましたが、開放政策、外国からの投資に開放するという方向にいっておりますし、一部の国にはかなり激しい民族主義、社会改革というような動きがございますけれども、全体としては海外からの投資を受け入れる方向に大体あると見ております。
  327. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ブラジルでは最近外国人の永住許可の幅が狭められたために進出企業の職員というのが心ならずも帰国せざるを得ないということでありますけれども、政府はこういう事実に対してどういう対策を講ずるつもりなんでしょうか。なかなか永住ビザを出さないということなんですね。一回だけの書きかえ、二年間はやるけれども、それ以後はなかなか出さない、こういうことなんですが、これはブラジルと日本の企業の合弁とかいう問題もございますし、ビザを出さないということになると問題が大変にむずかしくなるということもあるのですが、その点についての掌握はどうでしょうか。
  328. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 一般的に開発途上国ではいろいろな事業の自国民化という趨勢がございまして、ブラジルでも、たとえば外国人の土地の所有に対する制限を強化するとか、あるいは機械の生産について国内生産の比率を高める要求をするとか、いろいろそういう意味でのナショナリズムといいますか、動きはあると存じます。ただ、可能な限り同時に外国の技術も吸収してというたてまえは継続しておると思いますけれども、一般的な自国民化という動きは強まっておるように見ております。
  329. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最近非常に顕著になっている問題でありますけれども、不可侵権を与えられております在外公館の占拠あるいは外交官の人質といった事件が相次いで起きているわけであります。こういう国際法上の不法行為を未然に防止するためにおいて有効的な方策というものは何かあるのか。また、日本の国においてもかなりの在外公館の方方をそういう政情不安定な場所にも送り込んでいるわけでありますけれども、それに対して何らか有効的な防衛策といいますかこれが行われているか。あるいはまた在外公館に勤めているときはいいわけでありますけれども、家に帰ってきたときに大変に身の危険を感ずるという問題についてはどのようにお考えになっていましょうか。
  330. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 御指摘のとおり、一部のエリアにおける公館につきましては、そのような危険度の増したところが非常に多くなっておりますので、外務省といたしましては在外公館の施設的な意味における、つまりビザセクションに防弾ガラスをつけるとか門扉を厳重にするとか、そういう施設面での充実及び人的構成においては警備官を派遣するなり、あるいは現地の警察官と十分に協力をするなり、そういった意味においての施設及び人的の充実を十分図りまして、在外公館をそういうようなアタックから保護する手段を十全に尽くしている状況でございます。
  331. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後に外務大臣にお伺いしたいわけでありますけれども、五月一日に大平・カーター首脳会談が行われるわけでありますが、今回大来外務大臣は意見の調整というふうになってはおりますけれども、実際には五月一日に行われる大平・カーター首脳会談の露払いという意味もあっての訪米だと思うわけでありますが、大平・カーター首脳会談でこれから話し合われる内容というものについては外務大臣も大体において向こうの方との下準備をされてきていると思いますけれども、どういう内容になりましょうか。また、そのこと自体が六月行われますベネチアサミットに連動するかどうかという問題もありましょうけれども、その内容についてはどうなんでしょうか。
  332. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 まだこの点については詰めておらないわけでございますし、また、総理の訪米につきましてもまだ最後的に日時等が詰まっておらない点がございます。また、総理としては国会の御了承を得るということもございますし、外務省を通じて内々この日程調整をしておりますが、アメリカ一国でございませんで、メキシコ、カナダ等の都合もございますので、近いうちに大体煮詰まるだろうと思っておりますが、まだ最終的な状態ではございません。  内容につきましては、私も参りましてアメリカ政府との意見交換をいろいろやってまいりまして、どういうことが内容になるか、これもまだこれから詰める段階でございますが、大体の見当としては、やはり世界情勢、特にアフガンをめぐる情勢とかあるいは日米間の経済問題、防衛問題、それからサミットで取り上げるべき議題、そういうようなことが出てくるのではないかと一応考えておるわけでございますが、まだこれは総理にも十分御相談したわけでもございませんし、これからだんだん煮詰めていく段階でございます。
  333. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛の問題については、今回は外務大臣とアメリカとの間においてはかなり突っ込んでいろいろお話しになったわけですから、そういう意味において、いわゆる防衛力の増強の問題あるいは日米の経済摩擦の問題等もやはり主要な課題になるのじゃないかと私は思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  334. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは一つには、日米間には間断なき対話が必要だとも言われておりまして、総理が行かれて何か具体的に問題の解決をするということになるかどうか、これはもう少し先行った情勢を見ないと、いまの防衛問題、自動車問題等につきましても、どの程度その際に具体的結論が出るかはまだ現状では明らかでないと考えております。
  335. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間になりましたので、これで終了いたします。
  336. 木野晴夫

    木野委員長 次に、中路雅弘君。
  337. 中路雅弘

    中路委員 最初に、法案に関連しまして一問だけお聞きしておきたいのですが、五十三年三月の内閣委員会における同法案に七項目の共同提案の附帯決議がついておりますが、その中で二点ばかりお聞きしたいのです。  一つは、「勤務環境整備の必要がある地域に勤務する在外職員の勤務条件等について、引き続き格別な配慮をする」ということと、もう一つは子女の教育の問題ですが、「全日制高等学校の新設を含めた日本人学校の拡充、子女教育手当の充実、帰国子女教育制度の改善、教育施設の整備等総合的に海外子女教育対策を推進する」という関連の附帯決議がついております。この附帯決議の内容についてどのように対処してこられたのか、またいま現状はどうなっておるのか、簡潔でいいのですが、一言お答えを願いたいと思います。
  338. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  五十三年三月の当内閣委員会の各党共同提案、この決議案に非常に力づけられまして、私どもはその後各方面にわたって改善改革の努力を払ってまいりました。そのうち、私からまず不健康地勤務者の問題、いわゆる勤務環境の整備の必要な地域に在勤する者に対するさまざまな配慮という点について簡単に申し上げますと、これは主として中近東、それからアフリカ地域を中心として最も勤務環境の厳しい地域に在勤する職員の勤務条件の改善ということをとらえたわけでございます。幾つか例を申し上げますと、館員の宿舎がなかなか現地では手に入らない。赴任した館員がみずから探すというためには非常に時間がかかるとか不経済であるとかということがございますので、官舎を官費で借り上げるとかあるいは一部国有の館員宿舎を建てるというような措置を逐次講じてまいりました。また小さなことでございますけれども、当事者にとっては大きな問題でありますが、借りた家の家具の整備ということもあわせていたしました。  それからもう一つ、非常に重要なこととして最近力を入れてまいりましたのが健康管理休暇制度というものでございまして、初めは少ない公館から始めましたけれども、逐次館の数をふやしまして、現在三十数館に及んでおりまして、ここに勤務します館員は、一定の条件のもとで家族ともども健康地に出まして、そこで健康のチェックをしたりあるいは常用しておりますマラリア予防薬をしばらく飲むのをやめるということによって健康の状態を回復するというような制度でございます。これを非常に充実してまいりました。  そのほか、どうしても運動不足になりがちでございますので、プール、テニスコート等の設置という厚生面の整備、それからあとは先ほどもちょっとお話が出ました防犯あるいは警備という身の安全を守る部分、さらにこれは後ほど御答弁いたしますけれども、海外子女教育全体の問題がございます。こういう勤務環境の悪いところにおける子女教育は特にむずかしい問題がございますので、通常の子女教育手当に加算した手当を払うというような制度も近年導入いたしました。それらはまだ必ずしも完全ではございませんので、毎年逐次、少しずつさらに改善を図っているというのが現状でございます。  海外子女教育につきましては、領事移住部長から答弁いたします。
  339. 塚本政雄

    ○塚本政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のありました附帯決議の一項、海外子女教育の推進の点でございますけれども、外務省といたしましては海外子女教育の推進を最重点施策の一つといたしまして、幸いにして諸先生方並びに財務当局の御協力がございまして予算も逐年増加いたしまして、昨年度四十六億に対してことしは五十三億。したがいまして、全日制日本人学校六十二校、加うるに補習授業校、これは土曜学校と称しておりますけれども七十校、さらにことしにおきましては四校の日本人学校の増設、それからさらに教員九十五名の増員を加えまして、合計七百四十四名の教員が現在在外で活躍しております。なお、施設面につきましても、逐次借料の増額とかその他でもって充実を期している次第でございます。  以上のとおり、人的並びに施設面における充実方を今後とも一層促進してまいりたい、かように考えているわけでございます。  最後に帰国子女教育の充実でございますけれども、これも附帯決議にうたわれていることでございますが、この点につきましては、主として文部省当局が国内における施設の充実に努力しているわけでございまして、外務省といたしましては、当然のことながら、在外で子弟が教育を受けたものが国内においてうまく結びつくように文部省御当局とも十分協議して、この件について誤りのないようにその充実を期している次第でございます。  以上であります。
  340. 中路雅弘

    中路委員 施設庁長官がまだ参議院の方からお見えになってないので、ちょっと順序を変えまして、きょうは防衛分担の問題について少し御質問しようと思ったのですが、最初に、午前中も質問がありましたから、簡潔にお尋ねします。  先ほど本会議での外務大臣の御答弁でちょっと漏れたことがありますので、改めてお聞きしますけれども、先ほど本会議でお聞きした中で、アメリカの国防報告が提唱している西太平洋への米空母一隻の増派に関連をして、報道によりますと横須賀が最適であるということが検討されている問題について、こうした意向打診がすでに来ているのかということ、また要請があった場合にどのように対処をされようとしているのか、こうした問題について母港化の撤回の問題とあわせて御質問したのですが、前半の問題については御答弁がなかったので、改めてこの委員会でお聞きをしたいと思います。
  341. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題につきまして総理から多分一部答弁があったかと思いますが、いま御指摘のような抜けておった点があったかと存じますので、お答え申し上げます。  この横須賀の二隻目の母港化ということは一部の新聞にも出たわけでございますが、外務省、政府としてはまだ何ら正式の連絡を受けていないわけでございまして、念のために米国側に照会をいたしましたが、まだそういう具体的なところまではいってないということでございます。したがって、これは仮定の問題になるわけでございます。たしか衆議院の予算委員会で一度答弁申し上げたわけでございますが、母港化の問題は、万一要請があった場合、その場合に考えなければならないわけでございますが、一方において日米安保の円滑な運営ということと、地域住民の考え、こういうものと両方をにらみながら検討していかなければならないことかと思います。繰り返しますけれども、いままでのところはまだ具体的な要請は来ておりませんです。
  342. 中路雅弘

    中路委員 先ほどお話しの予算委員会の外務大臣の御答弁で、要請があれば、いまお話しの安保条約上の必要性ともう一つは地元住民の意向を十分考慮して対応するという趣旨の御答弁をされているわけです。また、北米局長も施設、区域の円滑な利用については地元民の深い理解が必要であるというふうに認識していると御答弁になっています。後でお見えになりますが、玉木防衛施設庁長官は、結論を言いますと、横須賀は新母港には不適だという意見も記者会見で述べておられるわけですけれども、横須賀とともに、それ以外の候補地についても第二の空母の母港については受けるべきでないと私たちは思いますし、地元もまたそういう反対の意向は表明しているわけですが、これについて、要請があった場合の対処についてもう一度外務大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  343. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは、先ほどお答え申しましたように、まだそういう要請を受けておりませんので仮定の問題になるわけでございますが、一面において、日米安保条約に基づきまして、もし日本が外敵の侵入を受けた、武力攻撃を受けた場合にはアメリカ軍が日本を援助する、防衛するというのが日米安保の約束になっておるわけでございまして、そういう意味では、先ほど申しましたように、日米安保がそういう一たん危急の場合に動くような関係は平時から常に心がけていかなければならない点があるように思います。したがいまして、衆議院の予算委員会で答弁申し上げましたように、そういう日米安保から見た必要性と地元住民の意向と両方をにらみ合わせて対処していくことになるのではないかと考えるわけでございます。
  344. 中路雅弘

    中路委員 はっきりと第二空母の母港化については受け入れないという御答弁でなくて、むしろこれはアメリカについて前向きの答弁をするような御意向のようにも承りますけれども、私たちはこうした母港化——いまの母港化の撤回についても先ほど本会議で強く要請したわけですけれども、特に第二空母の母港化については強く反対をこの席でも主張しておきたいと思うのです。  これと関連して、アメリカの第七艦隊の前の司令官、ホーリー中将が一月末に記者会見で、空母一隻の増強とあわせて、さらにいまのミッドウェーはF4ファントム戦闘機が主力ですが、新鋭戦闘機FMが積載できる大型空母と交代させることを検討しているということも話しているわけですが、この問題について、ミッドウェーは、アメリカの方じゃないのですが、政府の皆さんのこの母港化のときの御答弁で、両三年というお話もあったわけですけれども、すでに七年になろうとしています。特にミッドウェーのさらに大型空母との交代の問題を検討しているという発言もあるわけですけれども、こうした点についての意向だとかあるいは打診が外務省の方にあるのかどうか、これもあわせてお聞きしておきたい。
  345. 栗山尚一

    ○栗山説明員 私からお答え申し上げます。  ミッドウェーの交代につきましては、ただいま御指摘のような第七艦隊の司令官の発言というものは承知しておりますが、具体的にいつどういうふうに交代するのかというような考え方につきましては、これまでのところアメリカから何も話がございません。また、具体的な計画がアメリカ側の内部におきましても決まっておるというふうには承知しておりません。  ミッドウェーの母港化計画と申しますか、家族の居住計画につきましては、御指摘のような家族計画あるいは母港化計画そのものが三年で終了するというようなことではございませんで、ミッドウェーが三年ぐらいたったならば本国にオーバーホールのために帰るかもしらぬ、こういう趣旨で当時御答弁申し上げたというふうに記憶しておりますが、現在のところ、母港化計画あるいは家族の居住計画そのものが終了するということではございませんで、この計画は今後とも当面続くというふうに承知しております。
  346. 中路雅弘

    中路委員 ミッドウェーとともに現在横須賀を母港にしている艦船名ですね、第七艦隊の旗艦のオクラホマシティーはブルーリッジにかわりましたけれども、そのほかの横須賀をいま母港にしている艦船名について、巡洋艦、駆逐艦を含めて何隻、艦名をひとつ教えていただきたいと思います。
  347. 栗山尚一

    ○栗山説明員 現在横須賀をいわゆる母港としております第七艦隊の艦船につきましては、いま先生から名前を挙げられました旗艦のブルーリッジ、それから空母のミッドウェー、ミサイル巡洋艦のワーゲン、ミサイル駆逐艦のパーソンズ、フリゲート艦のノックス、ロックウッド、フランシス・ハモンド、カーク、それから補助艦のホワイト・プレインズ、合計九隻であるというふうに承知しております。
  348. 中路雅弘

    中路委員 現在、ミッドウェーを含めて九隻、空母を含めて母港になっているわけですけれども、さらに一隻、空母の第二母港ということになりますと、空母が二隻ということにもなるわけですが、事前協議の対象になる配置の重要な変更というものと関連して、この事前協議の対象になる配置の重要な変更は、海軍では一機動部隊程度というお話もかつてありまして、この一機動部隊については、一九六三年の三月の海原防衛局長当時の答弁で、一機動部隊というのは通常空母一ないし二隻、駆逐艦六ないし十隻という一つの見解が出されていますけれども、ここでもし第二空母の母港化ということが問題になってきますと、全体のいまの母港にしている艦船の規模からいいまして、この事前協議の配置の重要な変更の対象になるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  349. 栗山尚一

    ○栗山説明員 お答え申し上げます。  ただいま私が申し上げました九隻の第七艦隊の艦船につきましては、これは家族を横須賀の施設、区域に居住させるということでそういう計画に加わっておる艦船が九隻であるということでございます。  それから他方、御質問の事前協議の問題につきましては、これは御承知のように、わが国の施設、区域への重要な配置の変更に関してはこれを事前協議の主題とするというふうに交換公文に定められておりますが、ここに申します配置というのは、一般的に申し上げますと、わが国の施設、区域を本拠として駐留する、このようなものを交換公文で言うところの配置における重要な変更、こういうことでございますので、ただいま御質問の横須賀の母港化計画との関連でございますと、このような問題は事前協議の対象にはならないと考えております。
  350. 中路雅弘

    中路委員 この問題はまた改めて私は論議したいと思うのですが、母港化というのは根拠地ですね。それを本拠にして展開されるわけですから、単に家族対策という問題ではなくて、明らかに中東まで含めた根拠地として横須賀を母港にしていくわけですから、これはかっても言われてきました配置の重要な変更で、明らかに事前協議の対象になると私は考えるわけですけれども、限られた時間ですから、きょうの御答弁をもとにしてこの問題は改めて論議をしたいと思います。  ミッドウェーと関連して、午前中にも若干御質問がありましたし、かつて私も取り上げたことがあるのですが、山崎アメリカ局長のときだったのですが、一九七六年九月に、ミッドウェーだけではありませんで、当時横須賀を基地にしている艦船のほとんどが汚水浄化装置を持っていないで、屎尿などの汚水を湾内にたれ流している問題で、地元の県知事あるいは横須賀商工会議所等からも緊急要望が出されていました。  当時、山崎アメリカ局長は、米軍に直ちに申し入れるということを約束されていたわけですけれども、特に海洋汚染防止法や港則法等から言いましても、艦船の廃棄物排出は原則的に禁止をしているわけです。港内や港の外部境界線から一万メートル以内は禁止されているわけです。したがって、日本の自衛艦も、乗組員百名以上の自衛艦については四十九年六月以降全部汚物の貯蔵タンクを装備しているわけですが、アメリカのミッドウェーを初めとした艦船はこうした装備を持っていない。当時、必要になると薄めて湾内に投棄していることを認められたわけですが、アメリカは一九八〇年度までに艦船の海上衛生設備を装備するよう義務づけているので、それまでに汚水貯蔵のシステム装置を完了するという返答がありました。しかし、ミッドウェーは依然としてまだそうした改善の気配もないわけですし、当時、横須賀の商工会議所等は、外国にいる軍艦を優先的に改善してもらいたい、できたらミッドウェーなどは七八年度予算改善してほしいという要望も出されていたわけですが、外務省はその後この改善についてどのように対処されたのか、お聞きをしたいと思います。
  351. 栗山尚一

    ○栗山説明員 御答弁申し上げます。  いま先生御指摘のような事態を踏まえまして、わが方といたしましても、米軍がしかるべき措置をとることが必要であるという認識のもとに先方に申し入れを行いました。私どもの承知しておりますところでは、米側としては五十六年中にミッドウェーに汚水の貯留槽を設置することになっておるというふうに承知しております。
  352. 中路雅弘

    中路委員 母港化以来約七年たつわけですが、ミッドウェーの横須賀港への入港回数、滞在日数の合計は幾らになりますか。
  353. 栗山尚一

    ○栗山説明員 通算いたしまして五十三回でございます。
  354. 中路雅弘

    中路委員 日数は幾らですか。
  355. 栗山尚一

    ○栗山説明員 五十四年一年だけでございますと百十日と把握しております。
  356. 中路雅弘

    中路委員 私が調べましたら四十八年から五十五年三月七日現在まで、回数はほぼ変わりませんが、七年余りの間に五十五回の入港で千三日、約千日滞在しているわけです。乗組員が四千四百人いるわけで、母港で滞在している間は半舷上陸しますが、屎尿の話で申しわけないですが、どれくらい屎尿がたれ流されているかということを神奈川県当局の試算で計算しますと、一人当たり一日の排せつ量を平均一・四リットルと推定しますと、約千日ですから、半舷上陸で、三百万リットルたれ流しているということになるわけです。わかりやすくビールびんで計算しますと、七年間で四百八十八万本です。ミッドウェーだけで横須賀の港の中へそれだけたれ流しているわけです。ほかの艦船も同じなんですね。だから横須賀の周辺の海域は大変な汚染であると環境庁でも言っているという状態なんです。日本の国内法にも違反して七年間もこうしたたれ流しをやっている。申し入れているだけでまだ改善の処置ができない。私はこれだけでもミッドウェーの母港の撤回は要求すべきだと思うのです。  もう一度外務大臣にお伺いしたいのですが、こういった現状について、ミッドウェーが改善するまでいつまでも待っているということなんですか。一番早くミッドウェーを改善しろという要求が地元から出ているのですよ。もう少し強い姿勢で交渉できないでしょうか。
  357. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 来年度から実現するように聞いておりますので、大変暇がかかったことは遺憾でございますが、できるだけ督促するようにいたしたいと思います。
  358. 中路雅弘

    中路委員 施設庁が五十五年度の予算で陸上の汚水処理施設を九千万余りで今度つくるという計画が出ていますけれども、この汚水処理施設の目的、機能をちょっと簡潔にお話をいただきたいと思います。
  359. 森山武

    ○森山(武)政府委員 ただいまのミッドウェーの海中への汚水流出ということに関連いたしまして、アメリカ合衆国軍隊がミッドウェー等大型船舶に汚水の貯留タンクをつけるという計画がいま先生御指摘のようにございます。それに対応いたしまして、横須賀地区の中で従来からあります司令部地区と修理部地区におきます汚水の処理浄化槽がこれまた老朽化しておりますので、この二つを合わせました汚水処理施設をつくろうということを考えまして、それの調査設計費として五十五年度予算に九千三百万計上している次第でございます。
  360. 中路雅弘

    中路委員 予定だと、いまの住宅のある泊湾の近くだということも聞いているのですけれども、基地をはさんで艦船の寄港するところと反対側になりますね。その間を恐らくパイプか何かで誘導されるのでしょうけれども、そういった調査もこれからですから、実際にこの施設が使える、あるいは具体的にできるのは五十七年以降になるのですか。実際にはいつごろなんですか。
  361. 森山武

    ○森山(武)政府委員 ただいま御説明したように、現在の陸上施設の浄化槽と艦船用の汚水処理施設をドッキングしてつくろうという計画でございますが、これは物理的に離して建設もできるわけでございます。それで、五十五年度予算調査設計をいたしました後は、艦船の方の施設の設備ぐあいを見まして、できたら艦船用の方でも先に五十七年度に実施したい、このように考えております。まだ将来のことでそこまではっきり決めたことではございませんが、五十七年度に実施することも可能ではなかろうか、このように思っております。
  362. 中路雅弘

    中路委員 いまのお話でも、この種施設も五十七年以降になりますし、また外務大臣のお話でもミッドウェーも一九八一年度ということで、依然として現実はたれ流しの状態のままですから、私は、改めてこの問題について、緊急にアメリカとも改善についての強い交渉をしていただきたい、このことを重ねて要望しておきたいと思います。  玉木さんが来られたので、終わりに、先ほどちょっと御質問の中で取り上げたのですが、確認をしておきたいのです。  新聞報道ですと、二十一日の定例会見で、施設庁長官が横須賀の母港問題に触れて、横須賀の場合に、乗組員、家族のための住宅、厚生施設などを建設する余裕は横須賀海軍施設にもないので、こういう点から見ればもう一隻空母を受け入れるのは困難だと述べたという新聞報道がありますけれども、これはそのとおりですか。
  363. 玉木清司

    ○玉木政府委員 三月二十一日の記者会見の席上で、横須賀の米空母のわが国における二つ目の母港化についてどう考えるかというような御質問がございまして、もちろん仮定の問題であるということが前提でございますが、現在横浜にございます住宅を横須賀に移設しておる、あるいは神奈川県内におきまして経費分担によって住宅を建設しておるというような状況から見まして、横須賀地区に住宅や厚生施設をつくる余地は現状では相当限られておって、実施はしかく簡単なことではないという実情について申し述べたところでございます。
  364. 中路雅弘

    中路委員 予算委員会の分科会でも私は取り上げましたけれども、施設が狭くてごみ施設すらできないと施設庁は言っているのでしょう。そういう中で、この第二母港の問題は、全く困難どころか、初めから横須賀に受け入れるべき条件がないわけですね。その点では、施設庁長官も、記者会見でそういったお話をされたということはほぼ認めておられるわけですから、施設庁自身がそういう意見なんですから、外務省もこの問題についてははっきりと断るということはいろいろな角度から見て当然なんで、このことももう一度あわせて外務大臣に強く要求をしておきたいと思います。いかがですか。
  365. 玉木清司

    ○玉木政府委員 この問題は、防衛施設庁としまして日ごろから感じております神奈川県、特に横須賀、横浜地区におきます施設の現状について、それをベースにしまして考えた私の感じを申し上げたところでございまして、それゆえに二つ目の空母の母港化がいいとか悪いとかということを判断する立場にないことは当然でございますので、その辺は御了承賜りたいと思います。
  366. 中路雅弘

    中路委員 外務大臣、いかがですか。
  367. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの施設庁長官の意見も一つの判断材料だと思いますが、いずれにしてもこれはまだ要請のない、仮定の問題でございますから、先ほど来お答えいたしておりますいろいろな状況を総合的に判断して、そういう要請があった場合には結論を出すということになるかと思います。
  368. 中路雅弘

    中路委員 まだ仮定の問題としてお話をされていますので、また改めてこの問題を取り上げたいと思いますが、限られた時間ですから、もう一つの問題についてお尋ねしたいと思うのです。  大来外務大臣が訪米されてお帰りになった後、特に対日軍事要求ですね、軍事費の増額についてアメリカから強い要請があり、その問題で、新聞の報道によりますと、大平総理が大来外務大臣に対して、わが国の防衛力増強に関連して在日米軍の駐留費、維持経費負担について検討の指示をして、積極的に取り組む姿勢を明らかにしたという記事とあわせて、この指示に基づいて、在日米軍の駐留経費の日本負担増額問題で、二十四日に防衛庁長官と外務大臣の間で会談をされたという記事が各紙に出ていますけれども、この外務大臣と防衛庁長官の、大平総理の指示に基づいた駐留費負担増額の問題についての話し合いの結論というのはどういうことですか。
  369. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私から総理には、せんだってのワシントンにおける米側とのいろいろな話し合いの内容概要を報告いたしたわけでございます。その中には、ブラウン長官の、在日駐留米軍の費用の負担を日本側でさらに考慮していただくとありがたいというような発言もございましたので、その点につきましては、現行の地位協定でございますと、労務費の負担については法律の解釈の中での限界に達しておりますので、施設費についてはケース・バイ・ケースで、ある程度のことは考え得るかもしれないという意向も従前防衛庁の方でございまして、そういうような点を含めまして防衛庁、防衛施設庁の方で在日米軍の経費の負担について具体的に検討をするようにという総理からの指示もございましたし、そういうことで私も防衛庁長官とお話し合いをいたしたわけでございます。
  370. 中路雅弘

    中路委員 在日米軍の駐留経費については、これまでも相当の額を日本側が負担してきているわけです。たとえば五十五年度の予算を見ましても、民有地の借料、補償費、さらに問題なのは米軍基地の移設費、労務対策費の一部分を持つようになったわけですが、五十五年度の予算でこうした借料、リロケーション、労務費等米軍の施設整備は、合計しますと幾らになりますか。
  371. 森山武

    ○森山(武)政府委員 借料、リロケーション経費、周辺対策費、労務対策費、それから提供施設の整備その他防衛施設庁予算は、合計いたしまして千五百五十八億二千五百万を計上しております。
  372. 中路雅弘

    中路委員 合計しますと、いまお話しのように千五百五十八億二千五百万に達しているわけですが、これは五十五年度の防衛施設庁予算の二千五百三十億の半分以上にすでになっているわけですね。五十三年度に新たに追加負担を日本側が開始をして、基地労働者の労務費の一部を負担する、あるいは五十四年度は在日米軍の基地施設整備費、新しい隊舎とか、こうした点も負担を始めたわけですけれども、こうした米軍の隊舎、住宅などの施設整備費、あるいは五十三年から負担しました基地労働者の労務費の一部、これは現行の地位協定が発効した昭和三十五年以降それまではアメリカ側が負担してきた経費だと思うのですが、そのとおりですか。
  373. 玉木清司

    ○玉木政府委員 これまでの長い歴史全体を通じますとそれらをすべてアメリカ側が負担してきたわけではございませんで、時代によりましてアメリカ側の要求により日本政府で負担をして提供したという事例もございます。
  374. 中路雅弘

    中路委員 その事例をちょっとお話し願いたいのですが、しかし、いまお話しした大半は、五十三年、五十四年まではアメリカ側が負担してきたのは事実じゃないですか。
  375. 玉木清司

    ○玉木政府委員 施設提供の歴史は相当長うございますので、古い時代には大変少ない数ではありますけれども提供を求められてやむを得ず提供してきたという例がございます。
  376. 中路雅弘

    中路委員 しかし、大半の経費をアメリカ側が負担してきたというのは、この地位協定二十四条一項の日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、日本国に負担をかけないで合衆国が負担をするという経費、これに当たるからアメリカがいままで負担をしてきたということではないですか。
  377. 玉木清司

    ○玉木政府委員 地位協定のその条文は当初から同じ表現で同じ枠組みで推移しておりますので、長い間にありました時代、時代の変移というものは、その時点におきます緊急度、関連諸条件を考慮して決せられてきたものと私ども考えております。
  378. 中路雅弘

    中路委員 それではもう少し具体的に聞きますが、この地位協定の二十四条一項に規定している在日米軍を維持するに伴う経費、つまり協定上米側が負担を決めている経費、その主なものを具体的に示していただきたいと思うのです。この第一項に言われているいわゆる在日米軍を維持するに伴う経費、アメリカが負担する経費の主なものを具体的に例示していただくとどういうものがありますか。
  379. 玉木清司

    ○玉木政府委員 疑いなくアメリカ側が負担すべき二十四条一項の経費であろうという代表的なものとして申し上げますならば、駐留米軍の軍人軍属の人件費あるいは家族の住宅維持費、それから施設の運営維持費、その他アメリカ側がみずからの予算で三条権能に基づきまして建設をするような小規模の建設費、こういうようなものは疑いなくアメリカ側が負担をすべきものという事例がと思います。
  380. 中路雅弘

    中路委員 たとえば、いま負担をされていくことになった米軍人の住宅の新築、兵舎の新築、改築あるいはKC135空中給油機の消音装置、ごみ処理、あるいは先ほどお話しの汚水処理施設の新設、こうしたものは現行の地位協定第二十四条一項に規定する在日米軍を維持するに伴う経費、いわゆる米側が負担すべき経費ではないのですか。
  381. 玉木清司

    ○玉木政府委員 昨年十二月二十八日に施設経費の日本側の経費分担につきまして合意を見たわけでございますが、いま事例として並べられました幾つかの問題につきましては、合同委員会におきまして日米間の合意によって日本側が負担をするというふうに取り決められたところでございます。
  382. 中路雅弘

    中路委員 かつて国会で、これは四十五年八月の内閣委員会で当時の山上施設庁長官が答弁されていますけれども、「米軍が入りました後においていろいろな備品をつくる、設備をつくる、家を建てる、これは自分でやるのがいまたてまえになっておるということでございます。」「提供された区域に兵舎を米側が自分で建てる場合、これはドル資産と申しておりますが、かような場合には米軍自身がその費用の負担をいたしておる、こういうことになっております。」という明確な答弁をされているわけですが、これは地位協定の二十四条一項で言う在日米軍を維持するに伴う経費だからこそ、当時の長官がこうしたものは米側が負担しているんだということを答弁されているわけですね。その点では、地位協定で分担を一項、二項で決めていても、日米で合意をすれば日本側がどんどん負担していってもいいんだ、それでは地位協定自身が事実上空文化してしまうじゃないですか、先ほどおっしゃったような合意の形で。いままで国会でもこれは米側が負担しているんだということを答弁されている問題も崩していくということになるのじゃないですか。
  383. 玉木清司

    ○玉木政府委員 御指摘の四十五年八月の山上防衛施設庁長官の答弁の問題は、中路委員御承知のとおり、四十八年三月の衆議院予算委員会におきましてずいぶんとたくさんの角度から御論議になったところでございますが、その際にも政府側から説明いたしましたように、私ども速記録を中心にこれを分析してみますと、山上答弁の立場はその当時の運用上の実態を述べておるもの、こういうふうに理解しておりまして、当然のことでございますが、地位協定そのものは両国の分担につきまして原則的な定めがしてございまして、その原則的な定めの枠の中で、案件が生起するたびに当該案件をどちら側が負担すべきかということを合同委員会におきまして審議、合意するわけでございますので、これによって地位協定が空文化していくというふうな考え方は当たらないのではないかと私は思っております。
  384. 中路雅弘

    中路委員 国会のいままでの明確な答弁もどんどん崩して拡大解釈していっているのがいまのやり方なんですね。たとえば、これも不当なんですけれども、七〇年のいわゆる施設の移転、集中が問題になったときに当時の大平外務大臣は、原則として代替の範囲を超える新築を含まないように地位協定を運用するという政府見解をはっきり出されているわけです。代替の範囲内の負担というのを認めるというこの点でも、地位協定の拡大解釈をして米側の要求を受け入れたわけですけれども、現在はこの代替の範囲どころじゃない、どんどん新築、改築を認めていく。  いままで政府が拡大解釈してこの負担を踏み込んだ、それもまた覆してやっていく、だから、私は地位協定を空文化するものだということで言っているわけですが、もう一度、一項、二項というのがあるわけですから、一項で言う維持することに伴う経費というのは、いまの隊舎だとか兵舎だとか新築ですね、これは維持する経費じゃないのですか。
  385. 玉木清司

    ○玉木政府委員 隊舎とかあるいは宿舎等新築する場合に、これが当然維持費に入るかということになりますと、これは論議の余地が残っておると思います。持っている住宅を運営し維持していくというための経費は、これは疑いなく維持費に入ると思います。
  386. 中路雅弘

    中路委員 それでは別の角度からもう一度聞きますが、労務費について先ほど外務大臣が答弁されましたけれども、労務費についてはこれ以上の負担増額は日米安全保障条約に基づく地位協定の解釈、拡大解釈しても困難だという意味のことをお話しになっていますけれども、労務費については今後さらにいわば拡大解釈していく、さらに日本側が持っていく分をふやしていく、こういったお考えは施設庁の方はあるのですか。
  387. 玉木清司

    ○玉木政府委員 これも一昨年、昭和五十三年十月二十八日——先ほどこれを五十二年と言い違えたようでありますが、訂正させていただきます。五十三年の十二月の合意をいたします際に、政府側といたしましては関係各省協議いたしまして、米軍の維持に伴う費用というものの中身につきまして、具体的に細かく入って分析をしたわけでございますが、そのときのわれわれの考えましたところでは、現在の地位協定の枠組みの中ではこれ以上、現在負担しております格差給、語学手当等の国家公務員給与を上回ります部分を超えて、さらに現在米軍が負担しております賃金の内部まで負担の枠を拡大することは、地位協定の規定上できないことであるというふうに結論をしたわけでございます。したがいまして、今日におきましても、労務費につきましてはこれ以上の負担は協定の解釈上は無理であろうと考えております。
  388. 中路雅弘

    中路委員 これも、たとえば七七年八月の衆議院の外務委員会で当時の鳩山外務大臣が、「地位協定では維持的な経費は米側の負担と、このように定められております。駐留軍の労務者の給与維持的な経費であるというふうに私どもは考えております。」ということを明確に言っておられるわけですね。労務費は維持費的な経費だ。すでに格差給等は一部負担をされているわけですが、これは格差給は明らかに給与なわけですね。そこまで踏み込んでいるわけですが、今後拡大できないということは、いまおっしゃったように、地位協定上もうできないということなのか、政治的な配慮からしばらく労務費まで手をつけられないということなのか、もう一度ここは明確にしておきたいのですが、労務費については、給与については地位協定の上から言ってさらに負担をするということは、皆さんの解釈でも現在の地位協定ではできないということですか、それを明確にしておいていただきたい。
  389. 玉木清司

    ○玉木政府委員 労務費をこれ以上負担することはできないと申しましたのは、地位協定の現在の考え方から言ってこれ以上負担はできないということでございます。
  390. 中路雅弘

    中路委員 時間がそうありませんのでもとへ戻りますけれども、もう一つ、施設整備ですね。さっきの新築隊舎、こうした点についても、いまお話ししましたように、かつての政府の国会における答弁、あるいはこれを拡大解釈したリロケーションの伴う住宅についての大平さんの答弁、こういった解釈をすでに現在はねじ曲げてしまって、さらに踏み込んでいるわけですが、こうした新築の隊舎、兵舎、こうした経費については、先ほど外務大臣が防衛庁長官と話し合われたそうですが、この部分はさらに負担を場合によっては日本側がしていくというお考えはあるのですか。
  391. 玉木清司

    ○玉木政府委員 先ほど外務大臣から御答弁がございましたのを承っておりまして、両大臣におきまして今後に対します政策的な指針を御相談になっておると思います。これが示されますならば、私どももその線に沿って実務者として考えていかなければならぬところでございますが、その際におきましても、いかなるものをこれからこの経費負担によってやっていくかということになってまいりますと、現在の地位協定の立て方は、二条と二十四条の二項におきまして新規提供等の場合、これを提供するというように規定がございますので、必ずしも代替の範囲に限られるわけではないと思いますし、何を提供するかという判断の根拠は、当該施設の緊急度、財政枠あるいは周辺住民のこれに対する考え方、基地の安定的使用の見通しがあるか、実現性があるかというようなところまで含みまして多角的な角度から考えながら一々決定していかなくてはなるまい、こう考えております。
  392. 中路雅弘

    中路委員 条約上、地位協定の上で日本側に支払い義務がなくても、いまおっしゃったように日本側が決めれば問題はないのだという解釈でどんどんこの負担を拡大していく、制限なく負担していく、これは全く屈辱的なやり方だと思うのです。特に現在、政府自身が招いた財政危機の中で国民生活が物価高やこういった公共料金の引き上げ、福祉の切り捨て等で非常にいま困難な状態の中で、一方でアメリカ側の財政を思いやるという、思いやり予算という言葉まで使って、本来米側が負担すべきものまで負担に応じていくということは許せないのではないかと思うわけです。いまのお話ですと、今後さらに駐留経費の負担について検討していこうというお考えがあるだろうと思うのですけれども、私はこうした拡大解釈で、先ほど空文化と言いましたけれども、文字どおり地位協定自身を事実上空文化していくこうした無制限な日本側の負担増はやめるべきだと思うわけですが、最後にこの点について外務大臣のお考えをもう一度お聞きしておきたいと思います。
  393. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど来申しましたことでございますが、日本国民の安全を守るという立場から申しまして、日米安保によります抑止力というのは日本国民の日々の安全につながっておる問題でもございまして、そういう見地からある程度負担できるものは負担するということは日本国民としても考えていかなければならないことではないかと存じます。  一つには、この安保条約が成立しましたころに比べまして日米の経済力のギャップが非常に接近してまいってきているということもございますし、地位協定の解釈上、可能なものについては日本側が負担するということになるかと思いますが、それは何も枠がなしに無制限にということではございませんで、地位協定の条文がございまして、先ほど来申しましたように、この協定に基づけば労務費は負担をふやす余地がない、こういう意味でのかんぬきもかかっておるわけでございまして、御心配のように無制限にということにはならないかと存じます。
  394. 中路雅弘

    中路委員 最後に私は、この法案と関連はないのですが、一言大臣にお話をしておきたいのです。  きょうは内閣委員会の定例日ですが、あすは定例目じゃないのです。定例日じゃなくても委員会を開いて、この法案審議を終わろうということで各党の皆さんが合意をしているのですね。それは、先ほど附帯決議と関連して現状を若干聞きましたけれども、こうした在外公館にお勤めの職員の皆さんの現状も考えて早く成立をさせたいというお考えだったからだと思うのですね。  そういう経過があるにかかわらず、きょうは最初の岩垂さんの質問のときから外務大臣がおられない。そして他の質問者のときも、他の委員会のこともありますけれども、外務大臣がとぎれとぎれになる。外務大臣自身にとってみれば、先ほど昼食をやっと食べたというようなことで、大変だろうと思います。しかし、委員会の運営がこういうことになると、質疑される皆さんも本当に大変だと思うのですね。時間もうんと狂ってきているわけです。こうした点では、外務大臣は大変ですけれども、外務大臣への質疑のセットをされる関係の皆さんに私は特にお話ししておきたいのです。  委員会の質疑について、定例日の別にさらに日程を設定して法案審議するということの合意をしている中で、こうしたきょうのような運営は今後は絶対やらないということを、官房長ですか、どなたか、委員会の席でもひとつ答えておいていただきたい。
  395. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は重々申しわけない次第でございまして、一つには先週の金曜土曜、二日間を訪米のために不在にいたしましたので、いろいろな委員会審議と重複したりいたしまして当委員会に大変御迷惑をかけたことを重ねておわび申し上げます。  ことに、ただいまお話しのように、在外勤務の者のことも含めて考慮をしていただきまして、この点も大変感謝いたしておるわけでございまして、私どもとしても各委員会の間を縫いましてできるだけ御迷惑にならないようにやってまいりたいと考えておりますので、明日もそういうことで御迷惑をかけて恐縮でございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  396. 中路雅弘

    中路委員 終わります。
  397. 木野晴夫

    木野委員長 次に、吉田之久君。
  398. 吉田之久

    ○吉田委員 初めに、在外公館に勤務される職員の人たちのいろいろな実情について一、二お伺いを申し上げたいと思うのです。  先ほど鈴切委員からも、この政情不安の中で大変危害を加えられたり被害をこうむったり、職員の人たちないしはその家族の人たちの生命、財産にいろいろと脅威を及ぼされている現状にかんがみまして、いろいろその防御対策を講じておられることは承りましたけれども、ここ最近の例でどのような被害があったか、その辺のところを一、二御報告いただきたいと思います。
  399. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御質問の趣旨は、在外公館員がいろいろ治安の悪い状態あるいは戦乱の状態等においてどのようなひどい目に遭った例があるかということかと思いますが、ちょっと整理したものを持っておりませんので、二、三思いつくままに申し上げさせていただきます。  戦乱の例としては、最近におけるものの一つは、やはりサイゴンの脱出のときでございました。あのときは状態が非常に急変いたしましたために、最後まで残っておりました館員が脱出するときに米軍の艦船を利用したり、あるいは一部の者はそのまま残りまして北ベトナム軍が入場するのを受けて、むしろそこにとどまった上で、ずっとおりまして日本と当時の北越との関係を見ながら、相当たってからある段階で引き揚げた。後には今度は北越の方、統一された後のハノイに大使館ができまして、現在ホー・チミン市は、大使館の建物等はありますけれども、昔の現地職員がこれを管理しているという状態になったわけでございます。  カンボジアにつきましても、プノンペンの陥落のときには、当時栗野大使以下の館員がおりまして、いつ引き揚げるべきかと9結局、なるべく踏みとどまって情勢を把握し本国へ報告するという責任と、館員及び家族の安全という双方の矛盾する要請がございますので、その辺をどうするかということで、間際になって無事タイの方へ退避したという例がございます。  中南米につきましては、ゲリラとか人質事件というようなものがいろいろ多発しておりまして、そういう意味では、先ほども答弁がありましたけれども、警備対策、在外公館、館員宿舎あるいは通勤途中の交通手段等における警備対策に非常に力を入れているわけでございます。これもかつてサンパウロの大口総領事が誘拐された事件があったわけでございますけれども、それらの教訓を得ましていろいろ対策を講じました。その後も脅迫電話とかいろいろあって、いまでもかなり不安ではございますけれども、特にこの面では予算措置を講じまして、その中でいろいろな対策を講じましたので、現在のところは何とか館務に精励しているという状態でございます。  あと、思い出せばレバノンにおきましてもかなり危険な状態があったということもあると思います。
  400. 吉田之久

    ○吉田委員 そうしたいろいろな苦労をされておる、あるいはまさに身辺、生命の危機を体験しておられる事例を伺いながら思うことでございますけれども、特に最近イランの米大使館の人質事件というようなちょっとわれわれの想像できない事件も出てきておるわけでございます。また、コロンビアでも大使館の占拠事件が生じておるような話が先ほどございました。こういう政情不安あるいは内乱、動乱、こういうものが起こってきたときに在外公館に勤務する人たちの義務規定、遵守規定と申しますか、その辺のところがどうなっておるのか、あるいは昨今の事情にかんがみてその辺の若干の修正が考慮されているのかどうか、あるいはいよいよ具体的なときにその判断はだれがするのか、あるいはどういう指示に基づいて勤務場所を移動したり宿舎を変更したり撤退したりするのか、その辺をもう少し御説明いただきたい。
  401. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 戦乱時対策と私どもは呼んでおりますが、基本的には平時から情報の収集を図りあるいは食糧の備蓄をする、館員並びに在留邦人との間の連絡網を密にするとか、備えあれば憂いなしといいますか、そういう形で平素から非常時に備えた対策をいろいろ講じているということが中心でございます。ただ、それにもかかわらず事態が予想以上に急変する、全く予期しない突然のクーデターというようなこともございますので、そこのところは最終的にはやはり臨機応変の措置が必要になります。制度といたしましては、これはやはり外務大臣名による訓令によって退避する者は退避するということでございますけれども、それがなかなか間に合わないような場合には、ある程度現地の公館長の責任による処置ということも実際上は必要になることもあろうかと思っております。  なお、これに関連いたしまして、戦乱地におきますと、生活必需品の非常な高騰、入手困難その他平時には予想されないような特別な出費がかかるということもございますので、在外給与法第九条の二では特に規定を設けまして、これらの者については在勤基本手当の百分の十五を必要に応じて加算できるという制度も最近つくっていただいたわけでございまして、先ほどちょっと申しましたレバノンの大使館の実例、あるいはイラン、ニカラグア等におきましてこのような事態が発生しましたときに、このような加算を行ってその面からも対策を講じた次第でございます。
  402. 吉田之久

    ○吉田委員 たとえばレバノンとか、カンボジアとかサイゴンの場合、大臣の指示が出るまで待っておったのか、それともその前に判断してみずから措置をしたのか、どちらの場合でございますか。
  403. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 在外公館というものの長は基本的に外務大臣の指揮下にあるわけでございますから、任地を離れるということについては、現地の事情は随時報告いたすわけですけれども、最終的な指示は外務大臣から下すということでございまして、サイゴンの例については外務大臣の指示があったというふうに記憶しております。
  404. 吉田之久

    ○吉田委員 この際大臣に申し上げておきたいのでございますけれども、やはり日本人として、特に国を代表して任務を果たしている人たちでございますから、かなり強い責任感に基づいて行動しておられると思うのです。しかし、国際的な情勢は必ずしも安定いたしておりません。むしろ危機的な条件が高まってきておるように私ども判断いたしますので、その点外務大臣として今後の措置、判断、その辺に十分やはり現状の緊迫している諸条件というものを加味されて、あくまでも人命が尊重されるべき立場から的確なる措置を一層講じていただきたいということをこの際お願いいたしておきたいと思います。  同時に、私どもが推測いたしますのに、外国で勤務している人たちの子女の教育、子女という言葉も余り最近適切でないと思うのでございますけれども、子供たちの教育にやはりかなり支障を来してくるのではないか。それは相当現地でも努力をし、また日曜学校などをつくり、いろいろ親も努力しておられるでありましょうけれども、今日の日本の進学の一般的な傾向といたしまして、幼児教育を含めてかなり周到な準備を積み重ねていかないと、なかなかに希望する学校には進めないというのが偽らざる現実でございます。だとするならば、非常に重要な小学校時代あるいは中学校時代に外地で異質な教育を受けている子供たちが、適当なときに帰ってきて進学しようとする場合にかなりのハンディを担っているのではないかと思うわけなんですけれども、この辺のところで在外公館に勤務する人たちの方から苦情のようなものはありませんでしょうか。
  405. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 前段の部分につきまして、在外勤務の人たちの安全ということは私どもとしてもできるだけ注意してまいりたいと思います。事実先ほども政府委員からの答弁もございましたが、いろいろ緊急な場合がございますし、また在外公館はやはり在留邦人の生命、財産に対しても安全を図る責任がございますので、どうしてもその辺の始末といいますかを考えてからでないと、自分の進退というのはなかなかむずかしいという点もございますので、外務省としましても、何か起こりましたときに現地との通信をできるだけ密接にいたしまして、早過ぎず遅過ぎずという判断が非常にむずかしいのですけれども、そういう努力をいたしてまいりたいと思います。  子供の教育問題については政府委員から答弁いたします。
  406. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 現地から苦情があるかということでございますけれども、これは在外公館の子女も在留邦人の一部でございますので、子女教育ということになりますと、特に在外公館職員だけがどうということよりも、在外子女全体の問題ということであろうかと思いますが、一番苦情といいますか、非常に苦しさの訴えがあるとすれば、やはり現地にしかるべき学校がない、日本人学校がありましても、上級、高等学校等になるとないとか、あるいは日本人学校がなくて補習校だけしかないとか、あるいは首府には日本人学校がございますけれども、その人たちの勤務は首府から離れた都会であるというような場合にはなかなかそうもいかない等々で、やはり入るべき学校がない。それからあっても授業料が非常に高いとか、それから今度は、そう言ってはいかがかと思いますけれども、場所によりましては非常に水準が低い、せっかく入ったけれども、これでは非常に将来がおぼつかないというようなことで、こういう場合にはやむを得ず先に子供だけ帰すとか、夫人と同伴して帰すというようなことになって、家族が分散することによってまた不必要な経費がかかるそういうようなさまざまな困難の訴えは確かにございます。  日本でもこの問題については子女教育財団ができるようになりまして、外務省、文部省がこれと一体となってさまざまの配慮を加えましたので、近年は十年前、二十年前と比べるとその点はずいぶんよくなったと思いますけれども、他面、海外に行く子女の数はまた激増しておりますので、せっかくできた日本人学校も、すぐに収容力がいっぱいになるとか、校舎が足りなくなってまた増築するというような問題が悪循環的に起こっているということでございまして、これは私どもの外務省といたしましては、領事移住部の非常に重大な仕事の一つになっておりまして、なお今後の制度面あるいは予算面の改善を図るべき重要事項と心得ておるところでございます。
  407. 吉田之久

    ○吉田委員 子供たちの進学、これはおっしゃるとおり在外公館だけには限りませんけれども、特に問題を在外公館に限って外務省サイドでお考えいただいている実情を問いたいわけでございますけれども、やはり人事の異動、交流とその子供たちの進学等々、よほどいろいろ配慮してやらなければならない面があるじゃないかと思うのですが、その面は十分に配慮されておりますか。
  408. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 限られた外務省の同僚を本省、在外にいろいろ配置し、配置がえするに当たりましては、基本的にはその人間の持っている能力、特色を生かすということ、それからやはり人事の公正さということで途上国、先進国等々への配置を、ローテーションを正確にやるというようなこと、また、将来のことを考えまして最も適当な時期に在外に出しまして、三年、四年あるいは二カ所回れば四年、五年と在勤してから、またちょうど本省のしかるべきポストが必要なときにその者が帰れるようにあらかじめ計画して出すという、人事の計画性、先を読んだ人事というようなことが非常に大事でございます。そうなりますと、なかなかその個人の家庭の事情というところまでは考慮がいきにくいのが実情でございます。  もちろん、できる範囲内においてはこれは考慮いたしますし、場合によっては子供の受験とか入学とかいうことの場合に若干その家族の赴任がおくれるとか、あるいは帰朝が少し先になるとかいうような点は割合に認めているわけでございますが、私が見るところでは、外務省の者は、もちろん家庭のことも大いに気になり、心配はしておりますけれども、基本的にはやはり自分の一生の仕事だということで、その教育がどうだから行きたくないとか、あそこはいやだというようなことを言う者はほとんどないというふうに考えております。
  409. 吉田之久

    ○吉田委員 ほとんどないだけに一層よく配慮をなさらなければならない、やはり優秀な子女の将来の養成ということも配慮されなければならないと私は思います。  問題は、全く変わりますけれども、パーレビ前国王がエジプトに入られました。このことについて外務大臣として、今後のアメリカ、イランの関係などをどうごらんになるか、あるいはこのことについて何らかのコメントをなさいましたかどうか、お伺いをいたします。
  410. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私もきょうの夕刊までまだ見る時間がございませんので、その後どういう進展があったか存じませんのですが、たまたま昨日パナマのロヨ大統領と会談いたしました際に、大統領がパーレビ前国王のパナマ出国の事情を話しておったわけでございます。  それは、イランからパーレビ前国王の引き渡し要請がありましても、引き渡すかどうかという決定権限はパナマでは大統領しかない。私は引き渡す意思がなかったので、前国王に対して、そういうことがあってもあなたは絶対に引き渡さないということを言っておった。それは一つには、パナマ国には死刑がない。ところが前国王を引き渡せば、場合によると死刑にされるかもしれない。そういうことはパナマの政策に反する。それから政治犯といいますか、政治的な避難者に対しては保護を与えるというパナマの国の方針がある。そういうことで、仮にイラン側から要請があってもパナマにとどまってよろしい、私が保証するということを言ったんだけれども、どうしても御本人がエジプトに行きたいということで、これはとめる法律もないし権限もないので、結局御本人がエジプトに参ることになった。  その理由がよくわからないけれども、親戚の方がエジプトにおる、それからシャーが相当な財産をエジプトに持っておる、それからサダト大統領からいつでも来たいときには来るようにという招待を受けておった、そういういろんな理由があるんだろうということでございました。
  411. 吉田之久

    ○吉田委員 次に、防衛費の問題について少しお伺いいたしたいと思います。  先ほどから各委員からいろいろ触れられておりますけれども、防衛庁が現在計画いたしております五カ年計画、すなわち中期業務見積もりでございますね。これは大臣おっしゃるとおり、あくまでも防衛庁サイドの考え方ではありますけれども、このたびのアメリカとの交渉、要請等をながめましても、外務大臣としてこの中期業務見積もりというものを追認されると申しますか、承認されると申しますか、やはりそういう考え方を認めてかからざるを得ない現実のように思うわけでございますけれども、その点はいかがでございますか。
  412. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは外務省が追認するとか承認するとかいう性格のものではございませんで、総理大臣以下内閣として検討すべき問題だろうと考えます。
  413. 吉田之久

    ○吉田委員 ところで、特に業務見積もりの二兆七、八千億円というものは、装備の質的向上を図るためという計画のもとに進められていると私たちは解釈いたしております。そうなってまいりますと、いま特にGNPの一%問題でいろいろ論議が起こっているわけでございますけれども、わが国の場合、諸外国と比べましてやはり異なったいろんな要素がある。  その一つは、諸外国の場合には多くの場合徴兵制度でございますから、人件費というものが非常に少ないはずであります。わが国の場合は、あくまでも志願の人たちによって構成されているわけでございます。したがって、同じ防衛費を論ずる場合でも一人件費の占める要素というものはわが国の場合には非常に大きい。だとするならば、同じGNPのパーセンテージで比較するだけではなしに、そういう要素も十分考慮して装備の水準がどの辺にあるかということを測定しないと、現実の防衛論議にならないと思うのでございます。この辺について外務大臣はいかがお考えでございますか。
  414. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの点は防衛の内容に入りますので、本来は防衛庁からお答えいただくのがいいかと思いますけれども、本日こちらには参っておらないようでございますし、私から多少聞きかじりになるわけでございますけれども申し上げますと、やはり日本の防衛支出の約半分が人件費だということ、それからいろいろな経常費的な燃料その他のものが四分の一ですか、正面装備と称しております装備関係は全体の四分の一程度ということで、非常に低い。この点について五十五年度の予算等におきましては、ある程度人件費分が減少しまして初めて五〇%を割ったと私ども聞いておりますけれども、御指摘のように肝心の部分の割合が比較的少ないということは言えるようでございます。
  415. 吉田之久

    ○吉田委員 諸外国から見て、GNP対比のいわゆる財政的な支出もきわめて低い。これは日本は日本のいろいろな事情があるわけでございますけれども、同時に中身から言っても、装備そのものは諸外国と比べて極端に低い。全体のパーセンテージの比較でございますけれども、絶対値ではありませんが、かなり低い。そういう中で、経済大国である日本がそれでいいのか、アメリカあたりから、あるいは諸外国からいろいろな要請が出てくることは、私は当然のことだろうと思うのです。  そこで、外務大臣は、特にアメリカのブラウン国防長官とのいろいろな交渉等の中でも、日本の財政事情あるいは国民のコンセンサスを得ながら、財政事情を検討しながらということをお答えになっております点は、それなりに私は正しいと思いますけれども、本当に防衛というものを考える場合に、単に財政事情からだけ問題を論じていいのであろうか、計画を立てていいのであろうかという点に基本的な疑問を私は感ずるわけでございます。  要は、いま日本がどういう情勢にあるか、そしてその中で、日本の国家の安全を保障するためには何をなさなければならないか、それの必要な経費は幾らであるかということが先決問題でありまして、GNPの〇・九%でいいだろうとか、あるいは一%が適当だろうとか、あるいはそれ以上が必要だろうとか、ただ数字からはじき出すというのは、私は本当の防衛を考えている理論にはならないと思うのです。  そういう点から考えまして、特に防衛庁長官でおられない外務大臣のサイドから、どういう感覚をお持ちであるかということをきょうはお聞きしたいわけでございますけれども、いま日本は外国から脅威を受けている状況にあると外務大臣として御判断なさっておりますか、いかがですか。
  416. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本は近年脅威を受けているかどうかということについては、いろいろ議論もございまして、日本には潜在的な脅威があるということを従来、防衛庁長官、総理大臣も答えておられるわけでございまして、また、近年その潜在的脅威が強くなっておる、特にソ連の極東軍事力の急速な増強、あるいは極東に配備する海軍力の増強、あるいは日本の北方領土というところに軍事基地がつくられるというようなことを含めまして、そういう意味での潜在的脅威が増しているということは一応言えるかと存ずるわけでございます。  また、その防衛の費用を単なるGNPのパーセンテージだけで論ずるのは誤っているだろう、これも私は同感でございまして、本当に日本の安全を維持し、国民の生命、財産の安全を維持する、単なる希望だけではなくて、万一の場合にも備えがある程度あるという意味での努力というものはやはり必要だろうと思うわけでございます。  その場合、日本は、一方において最低限の自衛力を保持していくと同時に、他方、日米安保によりまして、米国の抑止力というものに依存しておる、この両方の努力を国民の安全を図るためにやっていかなければならないという事情に置かれておると思うわけでございます。
  417. 吉田之久

    ○吉田委員 私はその点で、先ほどからGNPの何%で物を判断することは、現実にはわかりますけれども、理論的にはあいまいな点が非常に多いと思うのですが、それはそれなりとして考えるならば、五十一年の閣議決定における一%を当面のめどとするということを、それなりに国民がほぼコンセンサスを与えたとするならば、その五十一年の状況と今日の状況とは、やはりかなり変わってきていると私は思います。防衛庁長官にも、私どもはその都度その意向をいろいろただしているわけでございますけれども、特に外務大臣もお話がありましたとおり、ソ連の極東の装備配置というものがかなり濃度を増してきている現状にありまして、中距離移動式ミサイルが四十台ある、それで日本は完全にその射程圏内にある、八〇年代の中ごろには三百発のミサイルを持つであろう、あるいは中距離爆撃機のバックファイアというものがさらに配置され、充実されておる、こういうことをジョーンズ米統合参謀本部議長も一月の末に指摘しておられるわけでございますね。  ですから、脅威というものが、その国の、わが国に対する攻撃の意図と能力であるとするならば、能力の点では最近飛躍的に増大してきていると思うのです。それから、意図の点でも、潜在的であるか、いつ顕在化するのかは別として、決して意図なしとしない。現に北方領土は、先ほどもお話がありましたとおり、完全に占領されているわけでございます。しかも、基地はいよいよ増強されている現状にございます。また、アフガンの地において、あのような不当な侵略が現に行われている。こういう背景から見ますと、十分に攻撃する意図を持ち合わせておる、かつ、きわめて強大な能力を持つ外国がすぐ隣に存在する。どこから考えましても、脅威というものがかなり増加していると思うのです。  したがって、そういうことから考えますと、今日の時点において、五十一年の閣議決定の一つの方針というものがそのまま依然として正しいと言い得るのかどうか、この辺のお考えはいかがでございますか。
  418. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 わが国といたしましては、戦後平和憲法のもとで、防衛力は専守防衛と申しますか、みずからを守るための力としてしか使わない、これは憲法に規定されておるところでもございますし、そういう一つの世界の中の生き方を選択してまいったわけでございまして、そういう選択のもとでこれからの世界にも生きていくという点から考えますと、日本の防衛ということは、あくまでも自国を守るということでございまして、たとえばいろいろ議論がございますような、アメリカなりヨーロッパを含めた西側全体の戦略の中に巻き込まれるというようなことは日本としてあるべきでない。  また、私どもブラウン長官とも話をいたしました際にも、アメリカ側も日本のそういう基本的な立場については承知しておる、ただ、日本自身を守るという面でまだもう少しやることがあるのではないかと自分たちは考えるので、そういう意味で、最近の極東情勢を含む、中東を含む国際情勢のもとで、日本の防衛について着実かつ顕著な増強ができないかというのがわれわれの希望である。それに対して私は、基本的には日本のたてまえから申しまして着実にはやらなければならぬと思うけれども、顕著な、あるいは比較的短い期間に大幅にふやすことはできないと思うということは申したわけでございまして、これはやはり安保自身の働きを円滑にするという意味から言っても、日本自身の努力、自分である程度自分のことを守るという努力と安保が有効に発動するということとは関連しておるようにも思いますので、先ほど来申しました限界の中で、日本人として、日本政府としてやれることはやらなければならないかと考えるわけでございます。  実は先般、あれは「現代」でございましたか、北海道の問題について栗栖論文が出まして、私も拝見いたしたわけでございます。今回、ワシントンでブレジンスキー補佐官と会談いたしました際に、日本でこういう論文が出ていて、これが国民の間に相当な心配といいますか、特に北海道においてかなり心配を引き起こしておるような点もあるのだということを申しましたら、その内容をごく簡単に申しましたところが、ブレジンスキー補佐官は、その論文には一つ重大な誤りがあるのではないか、ということは、もしそういうような北海道に外国の軍隊が上がってくるような状態が起これば、当然その過程においてアメリカが反撃をしておるということ、これは当然日米安保で決まっておることだし、アメリカもこれを約束していることであって、そういうことがないという前提が基本的に間違っていると自分は思うというコメントをいたしておったわけでございます。そういう点は、やはり日米安保が抑止力として、ブレジンスキー補佐官は、なおそういう意味での日米安保が日本に対する外からの侵入を抑止する力に働いているし、将来も働くはずだということを申しておったわけでございます。  これからの日本国民の安全を守る。いろいろ不安定な条件もあると考えますれば、一面において従来の大きな平和憲法の枠組みを崩さないで、自衛力をステディーに、着実にふやす。しかし、顕著にというところまでなかなかいかない。同時に、日米安保条約の働きが円滑にいくような配慮もしていく。この二本の柱によりまして、将来の日本国民の安全を守っていくということを、真剣に考えていかなければいけないのではないかというふうに感じておるわけでございます。
  419. 吉田之久

    ○吉田委員 栗栖論文に対してアメリカの専門家がどのように判断されるか、それはそれで自由でございますけれども、アメリカ自身にしてもその辺のところはきちんと決まってはいないし、日本の国民でもいろいろ受け取り方が違うし、現に私どもが自衛隊へ行って、この間旭川へも行ってきましたけれども、自衛隊のかなりの幹部が、本当にわれわれはどこまで守ればいいのでしょうと、これがなかなかきちんと決まっていない。にもかかわらず、われわれは平和憲法の中でともかくわれわれの国を守らなければならない、こういう非常にむずかしい課題を担ってこの自衛力の問題を考えていると思うのですね。  ただ、はっきりしなければならないのは、そして一応定着していることは、奇襲に対してはわれわれは独自で対処しなければならない。日米安保というものはあくまで大きな抑止力として期待する。同時に、全面戦争になればとても日本では戦えない。これは日米安保を軸としてアメリカの力によって守ってもらう以外に方法はないだろう。その辺のところで、先ほども大臣がおっしゃいましたけれども、われわれはアメリカの世界戦略の巻き添えの中に入っていくための防衛ではない。あくまでもわれわれの自主的な防衛なのだ。  専守防衛あるいは専守防御と呼んでおりますけれども、そういうことになりますと、現状の中で、大臣初め防衛庁長官あるいは総理大臣、すべての方々がこの日本のいまの防衛をみずからどう判断するかということが問題でありまして、アメリカからどうしろと言われたから着実にはいたしますとかいうことは、私はやはりちょっとおかしいと思うのです。われわれは他国から指示されて国を守るわけではなし、またつき合いで日本の国を守っているわけでなし、あくまでもわれわれ自身の判断において、所与の条件の中でどうすべきかということでなければならないと思うのです。したがって私は、GNPの一%にこだわるのがおかしいわけでありまして、必要でなければもっと下げればいいし、必要であれば必要なだけ、一%をはるかに超えることもときにはあり得る、こういう判断をすることが本当に正しいと思うのでございますけれども、大臣はいかがでございますか。
  420. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題につきましては、先ほど来申し上げました戦後の日本国民の選択という大きな筋があると思いますし、あくまでも国際関係の平和を維持しながら日本国民の安全を守るというのが最も望ましい道であろうと考えるわけでございます。その防衛の支出というのは、確かにただいま御指摘のように、日本の安全ということを基礎に置いて考えるべきもので、パーセンテージがひとり歩きする性質のものではないというふうに考えますが、同時に、昭和五十一年の国防会議あるいは閣議決定によって、当分の間一%を上回らないことをめどにして防衛の支出を考えていくというような決定もございます。そのような点はやはり無視するというわけにはいかないのではないかというふうにも考えるわけでございます。
  421. 吉田之久

    ○吉田委員 大臣のお考え方も私なりによくわかりました。お疲れのようでもございますし、大分深夜に及んでおりますので、私の質問はこれで終わらしていただきます。ありがとうございました。
  422. 木野晴夫

    木野委員長 次回は、明二十六日水曜日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時十六分散会      ————◇—————