○沖本委員 時間が限られておりますので、十分意を尽くせないかもわかりませんが、私は
法務委員会に
犯罪被害補償法を提案している提案者でございます。先ほど
横山先生のいろいろな御質問、お話の中にも出ておりましたが、
法務委員会でこの問題をずっと
議論してきた、そういう
立場からこの
法案に対する御質問をするわけでございます。
まず最初に、
警察庁からちょうだいしている「
犯罪被害者に対する
給付制度の創設について」の御説明の中にも、
通り魔殺人、
爆弾事件などの暴力
犯罪によって死亡し又は重大な
障害を受けた場合、
被害者やその
遺族は、大きな
精神的・経済的打撃を被るが、
加害者が無
資力であるなどのため、民法上の不法行為による損害賠償の
制度では、
救済されない場合が通例である。
特に、近年、自動車事故など他の
原因により
人身被害を受けた場合の
救済方策が充実してきていること及び刑事政策思想の変化に伴って
犯罪者の処遇の改善が行われてきていることから、暴力
犯罪の
被害者又はその
遺族の
立場は、不利なものとなってきており、
社会全体としても、このような状態をそのまま放置しておくことはできなくなってきている。
このようなことから、諸
外国においても、イギリスをはじめ、
アメリカ合衆国、カナダ、ドイツ連邦共和国、フランスなど主要国の多くで、暴力
犯罪の
被害について国が一定の
給付を行う
制度が実施されている。
我が国においても、昭和四十九年の三菱重工ビル爆破
事件以来この種の
制度の必要性が国会、マスコミ等で大きく論議されてきた。
このような情勢を踏まえ、
気の毒な
立場にある暴力
犯罪の
被害者又はその
遺族の
精神的・経済的安定を図るため、国が一定の
給付を行う
制度を昭和五十五年度から創設しようとするものである。
ということですが、この
法律をおつくりになる場合に、諸
外国の例を一応御参考になさったでしょうかどうなんでしょうか、その御参考になさった例の中からどういう点を主としておとりになってこの
法律をおつくりになったか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。——それでは、いまの分はいまの分で、お調べになっていただきながら話を次に進めていきますが、諸
外国の例でいきますと、
補償の仕方の形の上で、イギリスの方は損害賠償型であり、ニュージーランドは労働
災害補償のような型を使っておる、それからもう
一つは国の方から上げるという恩恵型、こういう三つの種類に分類されるわけですけれ
ども、この
法案からいくと
国家の方の恩恵型というふうに
国民は理解していいわけなんでしょうか。そしてその場合、損害賠償型を採用しなかった
理由、あるいは、労災
補償のような形に持っていくにはどういう点に難点があったのかという点ですね。
というのは、現在の自賠責の問題にしましても、上限は二千万に決まっておりますが、実際に二千万もらった人はいないわけですね、ほとんど最高で千七百万ぐらい。これも一時金であるというふうに御説明があるとおり、一回きりなんです。交通事故の
災害の場合でも一回きりで千七百万ぐらいが最高度だということは、実際に
被害で
補償を受けた人のグループの中でそういうお話があるわけで、二千万全部もらっている人はいないわけです。相当苦労して交渉を重ねてその程度になってきている。
法律の面では二千万になっているわけです。一回きりですから、現在の経済事情の中で果たして二千万円という金額が、一家の柱を事故によってあるいは殺害によって亡くして
生活が困窮に追い込まれておる
人たちを救うに足るだけの額であるかどうかということになると、その他の
社会保障
制度をうんと充実させない限りは、その
人たちの
生活保障ということにはならない。そのために一時資金であるとか、母子家庭を保護するとか、いろいろなものがだんだん積み重ねられてきておるということですね。
そういうふうな現在の
気の毒な
人たちの
立場をしんしゃくしながら、いまいろいろな
社会保障が進められておるわけです。そういう全体の事態というものを
考えていきながら、現在誕生しようとしているこの
法律を当てはめて
考えてみるときに、いまおとりになっている
制度そのものが果たしてそれに合致するものかどうかというふうに
考えなければならないと思うのです。だから、いわゆる
補償の形というのは、諸
外国を例にしたのかあるいは独自の
考えでお進めになったのか、その辺どうなんでしょう。