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1980-03-27 第91回国会 衆議院 地方行政委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月二十七日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 塩谷 一夫君    理事 石川 要三君 理事 大石 千八君    理事 中村 弘海君 理事 松野 幸泰君    理事 小川 省吾君 理事 神沢  浄君    理事 小濱 新次君 理事 三谷 秀治君    理事 部谷 孝之君       池田  淳君    小澤  潔君       亀井 静香君    亀井 善之君       岸田 文武君    北口  博君       工藤  巖君    椎名 素夫君       丹羽 雄哉君    服部 安司君       加藤 万吉君    細谷 治嘉君       小川新一郎君    長谷雄幸久君       吉井 光照君    安藤  巖君       河村  勝君    横手 文雄君       田島  衞君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   後藤田正晴君  出席政府委員         警察庁長官   山本 鎮彦君         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         警察庁刑事局長 中平 和水君  委員外出席者         警察庁刑事局調         査統計官    浅野信二郎君         参  考  人         (日本弁護士連         合会司法制度調         査会副委員長) 高橋  勲君         地方行政委員会         調査室長    岡田 純夫君     ————————————— 委員の異動 三月二十七日  辞任         補欠選任   斎藤  実君     長谷雄幸久君   河村  勝君     横手 文雄君 同日  辞任         補欠選任   長谷雄幸久君     斎藤  実君   横手 文雄君     河村  勝君     ————————————— 三月二十六日  退職地方公務員共済年金恩給等改善に関す  る請願河村勝紹介)(第二九三一号)  同(柴田弘紹介)(第二九三二号)  同(加藤万吉紹介)(第三〇五一号)  同(柴田弘紹介)(第三〇五二号)  指定自動車教習所公共性強化等に関する請願  (小濱新次紹介)(第三〇〇二号)  地方税法等の一部を改正する法律案の修正に関  する請願外一件(小川省吾紹介)(第三〇四九  号)  同(三谷秀治紹介)(第三〇五〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  犯罪被害者等給付金支給法案内閣提出第一八  号)      ————◇—————
  2. 松野幸泰

    松野委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。内閣提出に係る犯罪被害者等給付金支給法案を  議題といたします。  ただいま参考人として日本弁護士連合会司法制度調査会委員長高橋勲君が出席しております。  高橋参考人意見の陳述は、質疑応答形式でお述べいただきたいと存じます。  それでは、質疑の申し出がありますので、これを許します。小川省吾君。
  3. 小川省吾

    小川(省)委員 きのう、おとといの論議を聞いておりまして、ほとんど問題点は露呈をされてきたようであります。私は本日は、日本弁護士連合会から参考人を呼んでおりますので、まずお尋ねをして、時間が余りましたならばその後、警察庁にお伺いをいたしたいと思います。  日弁連高橋さん、本日は本当に御苦労さまでございます。  私は日弁連犯罪被害者に対する給付制度の創設に関する警察庁大綱に対して出された意見書を、昨年十二月十五日付のものでありますが、拝見をさせていただきました。日弁連では、犯罪被害者に対する実質的な救済措置について深い関心を持ち続けてまいられたようでありますが、昭和五十一年十二月には刑事被害補償法案を発表されたようですね。この日弁連補償法案と今回の警察庁案との相違する点の大綱についての要点をお述べいただきたいというふうに思っておりますが、日弁連としてこの種の問題に対する態度もあわせてお述べをいただきたいというふうに思っております。
  4. 高橋勲

    高橋参考人 ただいま御紹介いただきました日本弁護士連合会司法制度調査会の副委員長を務めております高橋勲であります。  小川先生からの御質問、総括的な意見最初に申し述べておきたいと思います。  いまの御質問の中で、日弁連のこの問題についての態度といったものについても御質問がありましたので、若干、私ども日弁連がこの問題について取り組んできた経過などについてごく簡単に触れながら、態度を明らかにしたいと思うのであります。  日弁連がこの問題について会として対外的に意見を表明したのは、昭和三十五年でありますからもう二十年前にさかのぼるわけであります。三十五年の十一月に第三回の人権擁護大会日弁連は行いました。その中で、犯罪被害者の国による救済を求めたのであります。こうした被害補償立法は、これは切実な課題である、至急に適切な措置を講ずるべきであるという決議を行いました。この当時は、まだ世論も熟していなかったと同時に、世界的に見てもまだ制度化されたものはなかったわけであります。したがいまして、この日弁連人権擁護大会決議は、まさに先見性のある、手前みそになりますけれども、貴重な提言だというふうに自負をしているわけであります。したがって、この段階からすでにこういった国会の中で論議をしていただきたかったというように思います。  これを契機としまして日弁連は、調査活動を続けてまいりましたし、また一方、四十年代になって、こうした犯罪被害遺族皆さんが熱心ないわば市民運動を展開してきたこともまた御承知のことと思うわけであります。そういった経過の中で、一連の企業爆破事件、こういったものも起こった、いよいよ被害者救済が焦眉の課題であるということがクローズアップされてきたという、そういった社会的な背景もあろうと思いますが、五十年の十一月に私ども日弁連は、刑事被害補償法要綱を発表し、さらに、いま御指摘の五十一年の十月には刑事被害補償法案を発表しその実現を訴えてきた、こういう経過がございます。  さらに、昨年の八月でしたか、警察庁がこの問題についての大綱を発表されました。犯罪被害者に対する給付制度の構想というものでありましたけれども、これについても先ほど御指摘になりましたように、昨年の十二月十五日に私どもの率直な意見を述べさせていただいた、こういう経過があります。  結論的に言いますと、この問題については本当に多くの皆さん期待をしておることでありますので、ぜひ今国会において成立をしていただきたい、かように考える次第であります。それを前提といたしまして、質問お答えする形で相違する点についての若干のポイントだけを申し上げて、あとまた御質問お答えしていきたいと思います。  相違する点は、率直に言いましてかなりございますが、まず最初に申し上げたいのは、この制度理念といいましょうか根拠といいましょうか、この点をはっきりしておく必要があろうというように思うのであります。そうしないと、この理由づけといいましょうか理念といいましょうかこれをはっきりしておかないと、制度内容にも微妙な影響あるいは大きな違いとなってあらわれるというように私は思います。  今度発表をされておりますこの法案を見ますと、その理念といいましょうか、それが必ずしも明確になっていないのではないかというように感ずるのです。第一条の「趣旨」などを見ましても、あるいは、この法案の名前が犯罪被害者等給付金支給法というように書かれておる、こういった点からも、私どもが訴え続けてきた制度とは理念根拠がかなり違っているというように思います。  時間がありませんので、簡単に私どもがどのようにこの制度をとらえていくべきかという総括的な意見を申し上げておきますと、この犯罪被害者補償問題については、学会等でもいろいろな論議があることは御承知のとおりであります。この制度根拠として幾つかの説がございますが、第一番目に言われているのは、国の保護義務違反根拠とするという説もあります。これは、国には犯罪を防ぐ責任があるんだ、国民犯罪より守る義務がある。国がこの義務を行うのに失敗して犯罪が起きたときには、その犯罪被害者に対して国が被害補償をする責任があるんだ、こういった考え方であります。ただ、この考え方については若干の問題点がありまして、この立場は徹し過ぎますと、現在法制度でも国家賠償制度があるわけです。それでは国家賠償を請求すればいいではないかという議論になってしまったり、あるいは、犯罪のすべてが国の責任にあるんだと言い切れないケースもたくさんあるわけであります。  それから二番目は、言葉はあれですけれども、国の被害者援護義務に基づくというそういった説もあるようであります。犯罪被害被害者の上にふりかかった不幸としてひとり被害者自身だけに引き受けさせてはならないんだという考え方、したがって国は犯罪被害について、被害者がこれに耐え得ることができるようなものにして守らなければならないということ、そういった考え方もまだ必ずしも受け入れられた説ではないというふうに思う。これは生活保護法適用でいいではないかというそういう議論になりかねない。  それから三番目は、被害分散責任による保険論とでもいいましょうか、現在の日本のように高度に多様化した社会では、一定の量の犯罪が起こることはどうしても避けられないんだという考え方前提として、そういった場合に社会的に必然的に起こる犯罪、これは社会がその犯罪被害が一部の者だけに不平等に分けられることを防がなければならない、同時に、その社会に必然的に起こる犯罪被害に耐えていける唯一の方法として分散させる必要がある、こういうことであります。これは言ってみれば保険料的な考え方。  四番目は、社会保障制度論といいましょうか、犯罪者に対する不法行為理由とする民事賠償制度が十分に機能されていないということ、これは後で詳細申し上げる必要があると思いますが、必ずしも民事賠償制度が十分に機能を果たしていない、そういったことを前提として、被害者の方が大変困るわけでありまして、その被害者困窮救済としての国に対する期待社会保障制度によって行われなければならない、そういった考え方であります。  そのほかたくさんの考え方がありますけれども、私どもは次のように考えています。一つは、実態面をどうとらえるかということ、二つ目は、憲法理念に即してどうとらえるかということ、この二つの面から追求していく必要があろうと思うのです。  そういう点では、この実態論については、すでに国家公安委員会から出されたこの法案添付資料の中に出ているわけであります。この資料を見ますと、五十一年の統計によりますと、故意犯だけに限ったようでありますが、被害者が千五百二十七人いるというのです。これは資料の四ページにあります。このうち、損害賠償を受領している人が何人いるかということでありますが、受領していない人が千二百四十四人、構成比でいうと九二・二%が受領していないということですね。これはまさに、不法行為制度民法に盛り込まれているわけだけれども、これが十分機能していないという端的な証拠ではないかというように思うわけであります。こういう実態であるということ。  それからもう一つは、やはり憲法理念、私ども法律家でありますので、その立場からも考えて大体次のように言えるのではないか。近代福祉国家理念についてもまた議論のあるところですけれども福祉国家においては、国民は健康で文化的な生活を営む権利を有するんだという考え方であります。憲法二十五条などはそれを明言しているわけでありまして、この権利というのは国民全体の合意の上に立っているんだ、国民相互連帯共助の精神に基づくものだという考え方に立たなければならないだろう、そして、近代福祉国家はこうした権利国民にあまねく保障する責任がある、私どもそういう文字を使いながら訴え続けてきました。  たとえば教育の国庫負担労働災害補償国家医療保障、こういったものもあるわけですけれども、これはいずれも生活困窮前提としていないわけであります。つまり、すべての社会構成員が確認した上で法的、社会的バランスの上に立って、国民一人一人がこれに対応する権利を持っているんだ、こういう考え方に立たなければならないだろう。したがって、国民が互いに健康で文化的な生活を営むことができるということはもとよりですけれども、互いに他人の生存の権利を侵してはならない、これはもちろんであります。不幸にして被害を受けた場合には、互いにこれを救済するための連帯共助を行うことを含んでいるという考え方であります。  そして国は先ほど申し上げましたように、民法不法行為責任では解決できないという国民相互間の関係を今度は、国民と国との法的関係にまで高めて国の責任として受けとめなければならないという、ちょっとめんどくさいことを申し上げましたけれども、言ってみればそういった高い理念に立ってこの問題は考えなければならないだろう。そうすれば被害補償制度は、被害者あるいは遺族、家族の権利として認めていかなければならないのではないか。率直に申し上げましたけれども、私ども日弁連はこうした基本的な理念に立って物事を考え、そして法案等を提示してきたのであります。  各論的な点については、後で申し上げますけれども、項目的にだけ言っておきますと、給付要件が非常に狭いということを一つ言わざるを得ない。それから給付内容についても、これは国家予算の枠はおありだろうと思いますけれども、それから見ても、先ほど申し上げました犯罪被害者実態に照らしてみた場合に、給付内容が非常に低いのではないかと言わざるを得ないのです。それから、これは十分御議論いただきたい三点目でありますが、裁定機関の問題であります。それから最後の点は遡及の問題、つまり適用の期日、ここら辺が私どもの提案しております法案の今回の公安委員会で出された法案とのかなりの相違点であろう。  各論的には、御質問お答えしたいと思います。
  5. 小川省吾

    小川(省)委員 本法律案は、故意犯による加害行為限定をいたしておるわけであります。私たちは過失犯によるものも当然含めるべきだという主張をいたしておるわけでありますが、過失犯も当然、給付対象たる原因行為に包含をすべきであるという御主張の主要な論拠についてお伺いをいたしたいと思います。
  6. 高橋勲

    高橋参考人 御指摘のように私ども日弁連は、過失犯についてもぜひ適用してほしいということを訴え続けているわけであります。  幾つかの理由がありますけれども、まず、どういったものが考えられるかということですが、犯罪白書等でも明らかになっておると思いますけれども、いわゆる過失犯の多くは、自動車事故それから労働災害が件数としては圧倒的に多いわけであります。ただ御承知のように、最近起こっている、大変社会問題にもなっている事案として、ガス爆発ケースなどをすぐ思い出すのです、ガス自殺ということも含めまして。そういった場合に、自殺の場合は故意犯ということでとらえられるかもしれませんけれども、そうでない一般的なガス爆発、これは被害が大変甚大なわけであります。  そういったことを念頭に置きまして考えますと、まず第一番目に、故意犯に限るという必然性がないのではないかというように考えるのであります。諸外国の例でもどちらかと言えば、故意犯限定しているのが確かに多いわけであります。しかし、故意犯に限らなければならないといろ必然性が、先ほど私が申し上げたような理念に即して考えた場合には、どうしてもないということが第一点であります。  それから二番目は、いまたとえばガス爆発の例を私は取り上げましたけれども、そういった場合の方がかえって被害者が不特定多数である、そして被害がむしろ甚大な場合が多いということを痛感するのであります。そういう点から考えますとやはりこれは含めていかなければならないし、こういった場合の方が被害者が非常に多いわけでありまして、それと比較していわゆる加害者と言われる者の資力は、一般的に言いますと余りにも乏しい、したがって泣き寝入りをせざるを得ない、そういった実態がある。そういう点では故意犯被害者被害の態様、実態においては全く変わらないのではないかというように思うのであります。  それからもう一つは、先ほど言いましたように、自動車事故労働災害過失犯の場合に圧倒的に多いわけですけれども、だからといって過失犯全体を外す必要はない。これは後で給付要件などにも絡んでくるわけですけれども、仮に法案の形としては、この自動車事故による損害については御承知のとおり、自賠責保険が強制、任意があるわけであります。そういったものとこの補償とダブらせなければいいわけです。労働災害も同じであります。現にこの法案では、ほかの制度で受給した場合は二重支給しないということになっておるわけであります。ですから、法案の形としてはいかようにもできるのではないか。自動車事故労働災害による場合を除くとか、そういった表現で構成要件から外す方法もあるし、支給のときに二重支給をさせないという形で落とすという両方の法案形式が考えられるであろうというようなことを考えまして、私どもは従来から意見書あるいは法案の中で過失犯も含めていくべきであろう、かように主張し続けてきたところであります。
  7. 小川省吾

    小川(省)委員 また、本制度がいわゆる無拠出の、金を出さない制度であるために、確かに給付金額が低くなっておりますが、自賠責の二千万円を勘案をすべきだと言っておられるわけでありますが、無拠出制度にしても実際にはどのくらいの金額給付金として支給をするのが妥当であるというふうにお考えでありますか、この点についてちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  8. 高橋勲

    高橋参考人 この点についても私も冒頭で申し上げましたけれども、いまの御質問に関連して二つの点からお答えをしておきたいと思いますが、一つは、給付対象となる被害程度についてであります。そして、それを前提として給付内容というように、二つに分けて考えなければならないというように思うのであります。  御承知のとおりこの法案においては、給付対象となる被害程度、これは死亡と重障害をとらえ、それに限定をしているわけであります。重障害というのは、災害補償関係法に定める第一級から第三級までの廃疾を指すわけであります。この点については、私ども日弁連はそのように限定をしないで、四級以下の廃疾を含む障害のみならず、さらに、一定期間以上の加療を要する程度のものまで救済対象にしていただきたいものだということを訴えてきました。具体的には三十日以上の加療、つまり一月以上の加療を要するものについてはやはり救済していただきたいものだというように考えておるのであります。  それから給付内容であります。これは大変むずかしいわけですが、給付の種類が遺族給付障害給付二つ限定されておるわけであります。しかしこれは療養補償休業補償、これについては、場合によっては打ち切り補償も含めていいと思いますけれども、ぜひ配慮をしていただきたい。  この法案がどの程度補償になるのかということについては、すでにこの委員会で御議論になったかと思いますけれども報道等によりますと、遺族給付最高額が約八百万円、障害給付最高額が九百四十万円ということだそうであります。この点については私は率直に言いますと、自賠責保険をぜひ参考にしていただきたい。これはやはり私、冒頭に長々と理念問題について申し上げたこととも関連するわけであります。これはやはり当事者間の損害賠償制度が十分に機能していないということを前提とし、それを国の責任においてカバーしていく、こういう理念に立たなければならないといったことから、やはり自賠責の場合は当事者間では加害者側に十分な資力がない、それを保険制度を使いながらカバーしていくということでありますが、確かにこの制度拠出制度じゃないわけであります。原因者負担の原則を貫いていくとなると、これは一方にある被害者実態を見るにつけて十分な補償にならないという、そこに矛盾があるわけですけれども、具体的には現在、自賠責保険死亡の場合は先生指摘になりました二千万円、一般的な障害については二百万、後遺症障害についても一級が二千万を最高とし、十四級は七十五万。十四級といいますと後遺症の中でも一番下であります。こういった大きな幅があると同時に、全体としてはかなりカバーをしているわけであります。そういったものを何とか検討していただいて盛り込んでいただけないだろうか、かように思います。  なお、諸外国例等についてもいろいろと御議論があるようですけれども、これはやはりそれぞれの国の制度立法理念が違うと同時に、国情が違い、経済の実態も違うわけでありますから、単純比較はしてはならないという考え方を持っておるのであります。  なお、この自賠責保険考え方の中には、いわゆる休業補償的な財産損害と、もう一つは精神的な苦痛に対する慰謝料、十分ではないにしろこれも含めた考え方に立っておるので、そのように私ども申し上げておる次第であります。
  9. 小川省吾

    小川(省)委員 また、給付裁定について都道府県公安委員会が行うのには反対だと主張されておるわけでありますが、なぜ都道府県公安委員会が行われることについては反対なのですか、この点について伺いたいと思います。
  10. 高橋勲

    高橋参考人 実は、この点がこの制度の中で私ども大変関心を持っていたところであります。結論的には、この法案公安委員会裁定手続を一切やるということですが、率直に申し上げますと、危惧の念を持っておるのであります。  理屈を申し上げるつもりは毛頭ないわけですけれども、総括的に一言だけまず申し上げておきますと、この制度はあくまで行政による救済であるという考え方に立っていただく必要がある、現にそういう立場に立っておるわけです。したがって、司法機関や、特に裁判所の関与するところのものではないということ、これは当然であります。ただ、早急に救済をしなければならない、これが前提であります。そういう点では、刑事裁判手続関係なく補償決定がなされることがあるであろうということですね。そして刑事判決以前に補償がなされた場合に、そのこと自体が被告人の有罪または刑の量刑に影響を来すことがあってはならない。つまり、これは被告人刑事裁判手続と事実上絡むところが当然あるわけですけれども、並列して考えていかなければならないということであります。ですから、この被害者救済ということを強調する余り、被害者人権保障がゆえに被告人人権の否定といいましょうか侵害といいましょうか、そういったことにならないということをぜひ前提にして考えていただきたいというように思うのであります。  そういう点では諸外国の例では、被害者捜査機関に協力することを前提として補償するというようなそういった制度を設けているところもありますけれども、私は反対であります。これは被害者に対して国が保護救済をする反面、当然被害者というのは捜査に協力する義務があるのじゃないか、どうも一見論理的な感じがするのですけれども、きわめて危険であります。なぜかと申しますと、捜査協力という概念が非常にあいまいでありまして、広く解釈される危険があるということであります。私ども現に刑事裁判捜査段階から長年やっておりますと、どうしても被害者の供述というのは真実から見て捜査側に引っ張られる、そういった印象もまた一方で持っておるのであります。  そうしたことを前提として御質問お答えをいたしますけれども、私ども日弁連は、これは国家公安委員会から切り離して独立の行政委員会をつくっていただきたいということを訴え続けておるわけであります。私ども法案は、まず、裁定機関として刑事被害補償中央審査会というものを法務大臣の所轄のもとに置くべきであろう。この中央審査会というのは刑事被害補償地方委員会、後で申し上げますが、この地方委員会が行った処分に対する審査請求をやる、そういった権限を付する。そしてこの中央審査会は委員九人で組織する。委員のうち、三人は常勤、六人は非常勤。大変細かいところまで提案をさしていただいております。そしてその委員は、弁護士及び刑事被害補償に関する学識経験を有する者、このうちから両議院の同意を得て法務大臣が任命するという形で、やはりこれは弁護士ないしは法律経験者を中心として構成をしなければならないだろうという考え方であります。そして各地方に、これは法務大臣の所轄のもとで結構だと思いますけれども刑事被害補償地方委員会を置くということであります。補償の申請に対して審査裁定を行う、支給をするというこうしたことや、あるいは生活実態調査等も行う。そしてこの刑事被害補償地方委員会、これは各地方裁判所の所在地に置くべきだろう。そして委員は、先ほど申し上げた中央と同じように、弁護士及び刑事被害補償に関する学識経験を有する者を法務大臣の任命でという形を訴えておるのであります。     〔松野委員長代理退席、委員長着席〕  これは法案と大きく違うところだと言わざるを得ないわけでありますが、先ほど私、申し上げましたようにこの制度というのは、被害者人権保障であるという前提にまず立たなければならないだろう。したがって、この審査は公正適正に行われる必要がある、また、いささかの疑いがあってもならないというように思うのであります。しかもこれは先ほど言いましたように、一般の被疑者、被告人に対する刑事手続と並行して、あるいはこの制度の方が先行して行われるということであります。そういう点では申し上げましたとおり、捜査や公判に影響を及ぼしてはならないということです。  ところが、この法案を見てまいりますと、警察法の四十七条の二項の改正も伴うわけであります。御承知のとおり公安委員会というのは、警察とはたてまえ上も制度としても違うわけであります。ただ、この四十七条などを見ますと、都道府県公安委員会を警視庁及び道府県警察本部は補佐するという形になっていくのであります。そこで、公訴提起は検察庁がもちろんやるわけですけれども、御承知のとおり犯罪捜査は警察がやるわけであります。そういう点で、捜査の過程で被害者と接触する機会は十分あるし、またそれをしなければ公訴提起もできないわけであります。これは当然のことであります。しかしその捜査の主体が一方では、公安委員会を補佐するという形であるけれども、この被害補償裁定に関与する、そういう点では、事実上捜査との関連が非常に密接になるという、そういった危惧を持つものであります。したがって、私は先ほど申し上げましたように、この裁定は独立した行政機関に全部任せる、そして事実認定という点での必要な資料は警察がその委員会の要求によって提出をしていく、そういった形での協力関係を持たせていくべきではないだろうかというように思うのです。  そういう点では、私ども刑事事件をやっていますと、先ほど言いましたように、被害者補償されてない、犯人憎しというこれは当然のことであります。これは否定するわけにいきません。ただそういったことから、一方にある被疑者、被告人人権影響を及ぼす危険はないだろうかということを大変心配しておるものです。恐らくそういった立場からでしょう、各政党の意見ども法案要綱等も拝見させていただきましたけれども、その多くは独立の行政機関を盛り込んでおられるし、また、この制度が世界的にいち早くできたのはニュージーランドとイギリス、これを契機としておりますけれども、そういったところでも、やはり独立の行政機関にしているというのがほとんどであるということもつけ加えておきたいと思います。
  11. 小川省吾

    小川(省)委員 本制度は、過去の幾多の被害者遺族等の声がこの制度をつくらせるバネになったことは否定できません。しかし、それらの方々にこの法の適用がなされないという遡及を欠いた法律案になっておるわけであります。給付内容、条件等については施行後改善することも可能でありますが、遡及の点だけは法が発足すれば何ともならないわけであります。私どもこの点については大変心を痛めておるわけでありますが、この点について、遡及をさせるための何らかの方策がありますかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  12. 高橋勲

    高橋参考人 お答えをいたしますが、実は遡及の問題、つまり適用期日の問題についても私ども重大な関心を持って見てまいりました。法案の発表、説明等によりますと、これは五十六年の一月一日以降に発生した犯罪、つまり被害の発生といいましょうか犯罪行為が行われた時点を区切りにして、それ以降の犯罪適用する、こういうことであります。  この点については先ほど私、申し上げましたように、四十年代の初めから本当に粘り強く、切実な気持ちからこの実現のために請願をやったりいろいろな形での市民運動をやってきた方々の心情を察すると、この制度の実現そのものについては大変喜んでおられると思うと同時に、この適用期日については先ほど言いましたように、この制度の発足自体が非常におくれている、世界的にもおくれているということは、この公安委員会が出された資料の最後のページに書かれておる。五十二年にはフランスでも実現をしているわけでございまして、ほとんどの先進諸国においてはこの制度ができている。大変おくれている。そして一方では、被害者の人たちがいまなお苦しんでいる。こういった状況をぜひ率直に見ていただきたい。  結論的には私どもは、適用期日については二十年ということを提起しておるのであります。その理論的な根拠については、まず第一点目は、いま申し上げましたことにダブりますけれども、要するに、不法行為による損害賠償制度が正しく運用されていない、そういう中で、悲惨な事態が現に積み重なっているということであります。  それから二番目は、これも冒頭に申し上げました、この制度というのは、単に苦しんでいる人がいるから恩恵的に救済するということだけではなく、近代福祉国家としてのもっと高い憲法上の理念に基づいて考えなければいけない。そうすると、過去の犯罪行為によって現に苦しんでいる人たち、その人たちを全部切り捨てていっていいという根拠にはならないということが二番目であります。  そして、法理論に若干絡んで申し上げますと、この二十年というふうに考えておりますのは御承知のとおり、民法の七百二十四条によりまして不法行為損害賠償請求権は、不法行為の時点から二十年で時効になるということであります。それから損害の発生、加害者を知ってから三年ということですけれども、この二十年というのは、二十年たってしまうと確かに事実認定がしにくい、そういうこともまた立法趣旨にあるわけであります。  そういう法律上の根拠もあるわけでありますので、私どもは二十年ということで訴えておりますけれども、そのほかに、いろいろな諸般の条件もあると思いますけれども、少なくとも適用を行為時点、五十六年一月以降の犯罪行為に限定するというのは納得できない。ただ、こうした補償制度の遡及について触れた先例といいましょうか法案は、必ずしもなくはないわけであります。諸外国の例でも遡及しているケースは何か若干あるようですけれども、現在の日本における法体系の中でも、たとえば御承知の公害健康被害補償法があるわけであります。これは、現に公害を原因として苦しんでいる被害者に対して負担しているわけですね。これはPPPの原則が間接的であるけれども適用されているというようなこと、いろいろありまして、これとは軌を一にしてそう単純には比較できないと思いますけれども、いまあの公害健康被害補償法の対象となっている被害者の人たちの被害原因行為は過去にあるのです。これは十年前から長い間続けられてきた有害物質による現在の被害だろうというとらえ方が補償法の制定の中に明確になっているわけであります。したがって、行為時点をとらえてはいないわけですね。そういう点では、実質的にはこの公害健康被害補償法などは、過去の原因行為による現在の被害に対しても補償しているではないかということも、理論的にも先例がないということに対しては一つの反論としてお考えいただけるのではないだろうかというふうに考えておるのです。  なお、この点については、私ども日弁連の執行部の方の意見等も聞いてまいったわけですけれども、そういう点では、この遡及効の問題がどうしても法案に盛り込めないというような事態がこれからの審議の中でもし起こった場合においても、これは将来的に何としてもそういった人を保護していかなければならないという立場に立ちまして、附帯決議というような形も含めて御検討いただきたいというように思うのです。すでに世論も私、調べてみましたけれども、たとえば新聞の社説等においても、この遡及の問題についてはやはり検討していく必要があるのではないかということが指摘をされているということを、あわせて申し上げておきたいというふうに思います。
  13. 小川省吾

    小川(省)委員 最後に、法律の専門家である弁護士として、本法律案について概括的にどのようにお考えなのか、そのお考えについて述べていただきたいと思います。
  14. 高橋勲

    高橋参考人 いまの点は私、冒頭に申し上げさせていただいたことにある意味では尽きると思うのです。  繰り返しになりますけれども要は、この問題について国が法案制定をおくらせる中で、多くの人たちが現に苦しんでいるという事態を正面から見据えていただきたい。そしてもう一つは、これも繰り返しになりますけれども、やはり近代福祉国家理念に即して、憲法の精神に照らしてこの制度をもう一度、何のためにやるのか、どういう理念根拠に基づいて制定するべきか、そういったいわば原点の議論がどうしても必要であろうというふうに思うのです。そしてこれは国の側から見れば、そういった悲惨な事態に追い込まれている被害者に対する義務であり、そして被害者から見れば国に対する請求権、つまり、国民同士の間ではその権利が行使できない、こういった現実の中にある人たちから見れば、それは国で責任を持ってほしいという立場から御議論をいただきたいと思うのです。そういう点ではすでに自賠責の中で、犯人が不明の場合でも、それは保険制度という前提があるにしても、国の責任でそこは補てんしているといった先例もあるわけであります。  以上のような考え方に立っておりますので、ぜひこの法案についても、冒頭に申し上げました、この法案犯罪被害者等給付金支給法、これがやはりこの法律の性格を如実に反映しているというように思わざるを得ない、そうではなくて、私ども刑事被害補償法という名前をつけた、これはやはりそういった理念の違いに基づくものであろうというように考えておりますので、この国会の中で成立を図っていただきたいと同時に、これからの御議論の中で、先ほど私、率直に申し上げさせていただきました幾つかの点についても、ぜひ充実の方向で検討していただければ大変、日弁連としてはこれまで二十年にわたる努力をしてきたかいがあったというように言えるかと思うのであります。  以上です。
  15. 小川省吾

    小川(省)委員 高橋さん、大変ありがとうございました。  時間がちょっぴり残ったようでありますから、少し警察庁にお伺いをいたしたいと思います。こんな短い法律案でございますから、きのうおとといの質問と重複する点がありますけれども、お許しをいただきたいと思うのでございます。  まず、給付金支給についての確認なんですが、在日外国人で日本国内に住所があれば、すべてこの法が適用されるのかどうかという問題ですが、日本国籍がなければだめなのかどうか、ちょっとお伺いをいたします。
  16. 中平和水

    ○中平政府委員 昨日も一応議論になった問題でございます。本邦に住所を有しない外国人についてもこれは適用すべきでないかという立場での御意見があったようでございますが、この制度は、社会連帯共助の精神に基づきまして、その社会の構成員が被害を受けた場合の精神的、経済的な打撃を、その者の属しておる社会全体が協力して緩和しようとするものであるところから、日本国内に住所、すなわち生活の本拠を有していない人たちは、この制度の設けられました趣旨である共同社会の相互の助け合いということからいたしましてやはり適切でない、こういうことで適用対象といたしていないということでございます。
  17. 小川省吾

    小川(省)委員 きのう在外公館の問題がかなり問題になったわけであります。私はやはり在外公館を含めるべきだという主張なんですが、外務公務員がすべて聖人君子ではないわけであります。そして、在外公館で発生をする事案が外国人による犯罪だけではない。そういう意味では在外公館の中で、ある国の大使が来るのをめぐっていろいろ接待をめぐる論議があった、参事官がこうしろと二等書記官に言った、二等書記官同士が争った、こういう場合、殿中松の廊下のような事件が起こらぬとも限らぬと私は思うのです。そういう意味で、在外公館の中で日本人同士で起こったトラブルによって被害を受けた事案というものについては当然、適用すべきだというふうに思っておるわけでありますが、在外公館はどうしてもこの中に含めていただけないのでしょうか。
  18. 中平和水

    ○中平政府委員 繰り返しになりますが、この制度というのは、犯罪によって侵害されました法秩序の回復という面で、国の犯罪対策という意味を持つものでございます。したがいまして、国内における犯罪行為を対象とし、あわせて、刑法第一条によりまして国内の犯罪行為と同様に取り扱われておる日本船舶または日本航空機内で行われました犯罪行為を対象とすることとしたものでありますが、それ以外の場所で行われたものは対象とはしていないわけでございます。これは外国制度におきましても、イギリスとか西ドイツ、アメリカなどでは、国あるいは州の外で行われたこうした被害対象としない国が大変多いわけでございます。在外公館におけるいろんな被害につきましては、日本の外交官が被害を受けるとか従業員が被害を受けるとかいま御指摘のあったような問題等につきましては、やはりこれは特別な勤務環境に居住の義務を課すというそうした責任の主体の側、つまり国の側で別途に救済制度というものを考えるべきものであって、この制度を動かしていくのはいかがなものか、こういうように考えておる次第でございます。
  19. 小川省吾

    小川(省)委員 私は五十六年一月一日以降に発生をした事案というのには、いま現在五十五年の三月で論議をしているわけでありますから、大変ひっかかるわけであります。五十五年四月一日以降というのならまだしもわかるんですが、恐らく大蔵の予算が認められなかった、こういうことで、財政事情が主要な原因であろうというふうに思っておるわけでありますけれども、仮に予算が将来認められる、こういうふうになった場合に遡及を検討する余地があるのか。ほかの問題については当然、運用の中で改善をされる余地はあると思いますが、遡及については問題であります。私はこの点について大変問題がありますので、将来予算が認められれば遡及をする可能性があるのかどうかという点ですね、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  20. 中平和水

    ○中平政府委員 遡及するかどうかにつきましては、一般的に新しい制度をつくる際には、遡及しないのが原則でありまして、また、遡及するといろいろな問題が起こってまいるわけでございます。  遡及する場合に出てくる問題の一つといたしましては、適用日前の被害者との間に絶えず不公平が起こるわけでございまして、遡及をどの時点までさかのぼっても、絶えずその前後における不公平さというものはどうしても出てまいるわけでございます。特にこの種の犯罪のようなものは、先ほど公害の例をちょっとお出しになってお話しになりましたが、こういう犯罪のようなものはずっと昔からあるものでございまして、どこまでさかのぼるか、さかのぼった時点時点でまたそれぞれいろいろと問題が出てまいるわけでありまして、その間の不公平さ、線の引き方が根本的、基本的に非常にむずかしい、こういうこと、それからまた、さかのぼればさかのぼるだけ、この制度の目指しております被害者に対する適正な法の適用という点につきましてもいろいろと問題が出てまいる、こういうことでございまして、単なる財政上の理由だけでなくてさかのぼることについては、ただいま申し上げましたような制度的な問題あるいは運用上の問題、そういうものがあわせてあることをひとつ御理解いただきたいと思います。
  21. 小川省吾

    小川(省)委員 五十六年一月一日係争中のものはこの中に包含をされるんですか、どうなんですか。
  22. 中平和水

    ○中平政府委員 五十六年の一月一日から施行になりまして、五十六年の一月一日以後に発生した事件につきまして一応適用になる、こういうことになると思います。
  23. 小川省吾

    小川(省)委員 公安委員会裁定をするわけなんですが、まあ公安委員さんというのは社会的地位も高いし、比較的任期も長い期間やっている、専門化もしていると思うのですが、しかし今回は全く新しい業務でありますから、私はそういう意味では、国家公安委員会に専門委員を置くからいいんでありますが、都道府県公安委員会でも、こういう点では一ないし二名をふやして専門委員的な業務の可能な人を選んだらどうかと思いますが、この点についていかがですか。
  24. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 ただいまお尋ねのように、不服審査請求の場合の国家公安委員会につきましては、専門家としての専門委員を置くことにいたしましたが、これは非常に不服をお持ちの場合のように事実関係が錯綜しているような場合に、請求者の利便に供するために公平を担保するために設けた制度でございます。都道府県公安委員会につきましては私は、この制度被害者責任とか気の毒さの程度の判断ということにつきまして主として公平な裁定期待しておるわけでございますので、先ほど都道府県公安委員会がそういう裁定に当たることについての危惧も日弁連の方から述べられたわけでございますが、私どもはむしろ、そうした裁定にふさわしい合議体ではないかと考えておるわけでございます。したがいまして、特に専門家の意見を聞くということを要せず十分な判定が期待できるのではないか。  かいつまんでその考え方の基礎を申し上げますと、元来が警察の管理機関ではございますが、警察の政治的中立性、民主的運営を担保するための民主的な合議体でございます。その構成も、知事が議会の同意を得て選任するという住民代表という性格を持っておりますし、それから同時に、警察の管理機関ではございますが、道路交通法とか風俗営業等取締法とか各般の行政法規に基づきます行政処分の聴聞をみずから行うという業務も処理しておるわけでございます。これは各省庁の場合でございますれば、大臣聴聞といいますのは、専決事項で下部の職員がやっている例もあるわけですが、公安委員会の場合は、みずから直接行政処分について被処分者の意見を徴するというようなことを通じて、社会生活上の事実関係に通暁し、その判断になれておられるわけでございますので、本制度の根幹をなす被害者責任の度合いとか給付金の額、そういうものについて適正な判断が期待できると考えております。
  25. 小川省吾

    小川(省)委員 時間がなくなりました。私は、この法案で進めるに当たってもぜひひとつ今後の運用改善の中で、対象外国人を加えるとかあるいは在外公館を含めるとか、あるいは給付額の引き上げあるいは補償条件の改善、あるいは過失犯も将来含めていく、あるいは療養給付休業補償を含めるとか給付範囲が一層拡大をされていくように、ぜひひとつ今後の運用の中で改善をしていただく、こういう点を強く要望、要請をいたしまして、時間でありますので質問を終わります。
  26. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 長谷雄幸久君。
  27. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 犯罪被害者等給付金支給法案についてお尋ねをいたします。  私たち公明党は昭和五十年三月、独自に犯罪被害補償法案要綱を発表しました。その後昭和五十一年五月、犯罪被害補償法案国会に提出しました。以来今日まで、毎国会にこの法案を提出いたしておりまして、その審議を進めてまいりました。その関係上、いわばわれわれは提案者の立場にございますので、その立場から一言申し上げたいと思います。  まず、この法律案が今国会ようやく政府から提案をされましたことにつきましてでありますけれども法案内容としましては、われわれ公明党案から見まして大変不満のあるところでございますが、諸般の厳しい情勢の中でとにかく法案として提案をされてこられた、これまでいわれなき犯罪による被害者に対しましては何の救済措置もなかった、いわばゼロの状態であった、それが今回、関係者の御努力によりまして不満足ながら法案としてようやく提案を見るに至った、この御努力に対しましては敬意を表したいと思います。  さて、この法律案につきましては幾つかの問題点がございますが、最大の問題点二つあると思います。一つ給付金の額の問題であり、もう一つは遡及効の問題でございます。  初めに給付金の額についてお伺いいたしますが、現実の給付金の額についてでございますが、法案の九条によりますと、給付基礎額、これが政令委任事項になっておりますが、この点について法務省の御答弁では、証人被害給付法それから警察官に援助した人に対する給付法等の関係からその上限は四百八十万から八百三十万円である、こういう御答弁があったのですが、これと同じですか。
  28. 浅野信二郎

    ○浅野説明員 お答えいたします。  上限は、遺族給付金にあっては約八百万円、障害給付金にありましては約九百五十万円というふうにしております。
  29. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 その額はいずれにしても、わが党案の二千万円から比べまして大変少な過ぎると思うのですね。  そこで、長官にお尋ねをしますが、この法案の九条によりますと、給付基礎額もそれからこれを基準にして乗じる倍数も政令に委任されております。したがって、現実の給付額はすべて行政に一任された形になっております。それだけに行政責任は大変大きいと思います。そこで、現実の給付額ができるだけニーズにこたえられるよう今後一層の御努力を期待したいと思うのですが、この点の前向きな取り組みについての御決意をお尋ねをいたします。
  30. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 給付額の実際の運用については、十分いまの御趣旨に沿って万全を期していきたいというふうに考えております。
  31. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 給付金支給額でございますが、平年度で総額を十三億と見込んでいると伺っておりますが、法務省の伊藤刑事局長の昭和五十三年八月十一日の法務委員会での私の質問に対する御答弁で、実態調査をした上でこういうことを言われました。昭和五十二年四月一日から五十三年三月までの故意による暴力犯罪による死亡者と証人等の被害についての給付に関する法律の施行令にいう一級ないし三級の重篤障害者について実態調査をしましたところ、死亡の方が千二百七十五名、うち、親族間の犯罪による死亡者は六百六十三名、それ以外が六百十二名、そして重篤障害者が七十二名で、そのうち、親族間の犯罪による者が九名、それ以外が六十三名、こういうことでございました。そして、その給付額を仮に死者一人五百万円だとしますと六百名で三十億円、重篤障害者の分を入れますと一、二億円上積みということで、合計三十一億ないし三十二億円だ、こうおっしゃっていました。警察庁からこの点に関する基礎資料は本日ちょうだいしまして、これから目を通そうとするところでございますが、いずれにしても警察庁の見込み額十三億とかなり違うように思います。この点は指摘をしておきたいと思うのですね。  そこで、この犯罪被害者給付金の財源問題でありますけれども昭和五十五年度一般会計予算案のうちの総理府主管の警察庁の中の分に犯罪被害給付金の項目がありまして、そこで一億八千八百六十二万二千円が計上されております。これは給付金だけで事務費その他の費用は含まないと理解しておりますが、本法案によるとその施行が五十六年一月一日からだ。そうしますと一月一日から、五十五年度は三月末日まででございますので三カ月間、この給付金がこの額に当たるのだと思うのですね。そうしますと、平年度十三億円だという警察庁の見込み額からしますと、その四分の一は三億二千五百万。そうしますと、この三億二千五百万円の必要給付金に対しまして計上された予算額は一億八千八百六十二万二千円しかない。この不足はもちろん、支給しないということではなくて翌年度に繰り越すということ、そのように理解していいかと思いますが、どうでしょうか。
  32. 浅野信二郎

    ○浅野説明員 お答えいたします。  先生おっしゃいましたように、三カ月分ということでございますと約十三億の四分の一ということになるわけでございますが、犯罪の発生から支給までに一定の期間、約四十日間というふうに考えておりますが、これを要することを考慮して、六十八件分の費用を計上しておるわけでございます。
  33. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 五十六年度予算についてはまるまる一年分あるわけでございますので、給付金だけで十三億円は必要だと思いますね。そうしますと、概算要求の段階でもちろん、この要求をしなくちゃならないと思うのですし、大蔵省もこれに対しては減額査定はできないだろうと思います。  そこで、長官にお尋ねをいたしますが、警察庁としましては、現実の給付額が先ほど私が指摘しました政令に委任されているところから、五十六年度以降におきまして政令による額を引き上げるには、予算措置が当然必要だと思うのですね。したがって、五十六年度以降の予算編成に際しまして、概算要求の段階からこの点は十分御留意をいただきたいと思いますが、この点の御決意を伺いたいと思います。
  34. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 五十六年度の予算編成その他については、最善の努力をいたしたいと思います。
  35. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 次の問題点、遡及効についてお尋ねをいたしますが、本法律案につきましては、犯罪被害についての給付には遡及効がない、これは法案の附則の一項に明記されております。その結果、すでに十年以上も前からこの制度の創設運動をしてこられた遺家族の方々が全く報われない、こういう不合理な事態になってまいります。もちろん無限の過去にさかのぼっての補償が財源的に不可能である以上、過去のどこかの時期で区切らざるを得ないということは私も理解できますが、その場合でもボーダーラインの被害者が出てくることは避けられないと思います。その意味で公明党案では、二十年が適切だ、こう考えて二十年の遡及効を主張しております。この法律案に遡及効を持たせることは法理論的に可能だと私は考えておりますが、いかがでしょうか。
  36. 中平和水

    ○中平政府委員 遡及の問題につきましては、私どももいろいろと考えたわけでございますが、結論から申し上げますと、他の諸制度との関係等もありまして、特にこの問題についてのみ遡及をするという理由を見出し得なかった、こういうことでございます。
  37. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 質問に明確に御答弁がなかったのは残念ですが、私がこの遡及効を認めよと主張する理由は、理論的には第一に、国民に対して不利益を科す場合、特にそれが刑罰である場合には、罪刑法定主義の原則から刑罰法規の遡及的適用は絶対に許されない。ところが、この法案をつくった政府の方々はどうもこれと同じ発想に立っているように私は思います。しかし、それはやはり間違いだと思います。といいますのは、法律の遡及的適用によって国民権利を付与し利益になる、こういう場合には原則として許される。そして、いかなる内容権利、利益を与えるかということは、まさに政策の実現の問題であり、政治そのものだと思うのですね。  憲法は福祉社会を志向しております。それが端的にあらわれているのは憲法二十五条の規定でございます。この趣旨は、国家権力から個人を解放し国民に自由を与えるにとどまらず、国家の積極的関与により社会的経済的弱者をなくし、すべての国民に人間に値する生活を保障することにあると考えます。そしてどう保障するか、その内容はほとんど法律にゆだねられているというのが現行憲法のたてまえだと思うのですね。本法律案の成立の暁に適用される給付も、被害者救済という社会的、経済的弱者に対する福祉の問題てあることは明らかだと思います。このように、憲法みずから福祉のあり方、そして憲法二十五条の具体化については法律の制定に期待している以上、この法律案におきましても遡及的効力を認めて、救済の範囲をわが党案と同様に広げることは、法理論的にも私は可能だと考えております。また、あるべき福祉社会におきまして福祉の基本は、国から恵み与えるというものではなくて国民権利だ、つまり恩恵福祉から権利福祉に切りかえなければならない、こういう時代の流れだろうと思います。  第二の理由は 犯罪者人権保障との関係でございます。これは憲法の規定からも当然でございますが、しかしその前提には、犯罪被害者に対する国による救済措置がなければならない。犯罪者人権の質的向上、そしてその更生保護を世論に訴えるには、犯罪による被害者の現状との間にある不均衡の是正が重要であるという点でございます。いわれなき犯罪により精神的、肉体的、そして経済的に苦痛を受け、矯正施設にいる犯罪者にも劣る状態にある悲惨な被害者が現実にいるという事実であります。これらの方々はこの法律案から見れば、法律施行以前のものでありますので、この法律案による救済対象に入らない。こうした方々が残されている限りは、犯罪者との不均衡はなお残るのではないか。こうした不公平の是正という見地から、この被害者に対する救済措置がぜひとも必要だと考えます。  さらに、遡及効を認めるべき実際上の理由については、もう申し上げるまでもないところでございますが、この法律案の提案のきっかけになった市瀬さんの場合、さらに連続企業爆破事件の遺家族の方々、このように制度の創設のために心血を注いで運動してこられた方々には何も報われるところがない。いまこの法律により救済が必要なのは、まさにこの人たちだと思うのですね。こういう被害者に対する救済があってこそ、犯罪者への応報感情をやわらげ、それがさらに死刑廃止への道にもつながるものだと私は理解いたしております。  以上、三点にわたって私は、この法律案に遡及効を与えるべきことを法理論及び実際上の理由に当たって申し述べました。十分理由のあることだと思いますが、政府の見解を求めたいと思います。
  38. 中平和水

    ○中平政府委員 この法案の推進に長年当たってこられました長谷雄先生の大変な、まことに従来の経緯を踏まえた、非常に声涙ともに下るといいますかそういう御質問の趣旨は、私ども大変はらわたにこたえる思いがするわけでございます。同時に、この法案の推進について、そしてまた、こうした被害に遭われて大変長年苦しんでおられる御遺族の気持ちも重々にわかるわけでございます。  ただいま三点にわたっていろいろと御議論をいただいたわけでございますが、一つには、そうした国民の利益になることであるから少なくともさかのぼっていいではないか、こういう御議論も、私も十分これは理解できるわけでございます。ただ、とはいいましても、他の公害にしろいろいろなものがあるわけでございますが、ストレートにさかのぼって適用しているという立法例は、いろいろと検討いたしましたが、他にないわけでございます。いろいろと考えましたが先例も見出し得なかった、そういうこと。そして、長年お苦しみになっている方々のそうした大変なお気持ちが結晶して、まさにこの法律が非常に厳しい財政の中で弧々の声を上げたことも、これまた紛れもない事実でございますから、私どもはこうした厳粛な事実を受けとめて、今後の適用について一層適正を期するとともに、こうした方々に温かい社会の目がこれを契機に一層注がれて、そういう意味での被害者対策というものが大きく推進してまいる、そういうことを心から念願をしておるものでございます。
  39. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 本件のような被害者救済につきましては、遡及効を含めた法案にしない場合には、法案を二本立てにする方法もあるのではないかと思うのです。つまり、将来効についてのみこの法律案のように救済措置を立法する、そのことのほかに、遡及効については別途法案を準備する、こういう二本立てでやらなければいけないんではないか、政府のやり方でやる限りにおいては。それで政府案では、この将来効についてのみ立法措置をし、遡及効についての法の措置については目をつぶってしまった、だからこそ、こういうぐあいに問題になっているのだと思うのですね。そこでこの遡及的措置について、若干の提言を含めて政府に要望しておきたいと思うのです。  この法律の施行前に起きた事件の被害補償につきましては、見舞い金を差し上げるのも一案だと思うのです。しかし、それだけではもちろん足りません。見舞い金というのはもともと一時金だし、大体の場合額が非常に少ない。そこで、給付制度を思い切ってつくるということ。この場合でも、国が基金等を設けて給付するようなものが一番よろしいんではないか。この方向での検討は何よりも必要だと思うのです。そのため、遡及効を持つ法案の提案がぜひとも私は必要だと思います。  そこで、長官にお伺いしますが、この法律案が成立した後、余り遅くない時期に、遡及効を持つ法律案の実現を目指しての準備を提案されてはいかがかと思いますが、どうでしょう。
  40. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 ただいま大変貴重な御意見として承ったわけでございますが、いまのところ、遡及効を持ったそういうような法律をつくるということは非常にむずかしい、こういう考えでおりますので、この点御了解を得たいと思うわけでございます。
  41. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 法律による措置がむずかしければ、それ以外の方法によらざるを得ないと思うのですけれども、それでは政府の呼びかけで、政府に関係のある団体等から資金を受けて、これを基金としてやるという方法を提案をしたいと思うのです。政府から援助を受けている、補助金を支給されている民間の団体は相当な数に上っていると思うのです。そのうちで、経営状態が比較的よく、余剰金も持っているという団体がかなりある。この際、こういうところから拠出をしてもらうというのも一つ方法だと思うのですが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  42. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 お答えいたします。  犯罪被害を過去に受けられた方の御遺族に対して、国の制度として遡及することができないことは私ども大変残念に思っておりますが、ただいま御指摘の基金による救済、この点につきましては、法案を提出いたしました行政機関として大変な関心を持って検討いたしておるところでございます。  これはたとえば他の制度を見ますと、漁船海難を受けられた方の遺児、これに対する育英会奨学資金制度が基金としてあるようでございます。また、交通遺児に対しても同様の基金による奨学資金の制度があるわけでございます。ただ、これはいずれも民間の方の発起によりまして、それらの有志の方々の寄付金によって基金を形成してやっておりますので、この犯罪被害を受けられた過去の遺児の方々に同様の制度を実施する場合には、いかにして基金を集めるか、これについて現下の社会情勢の中で大変困難な問題があるとは思いますけれども警察庁といたしましてもできる限りの努力は尽くしてまいりたいと思います。  ちなみに、その基金の見通しでございますが、昭和五十二年度の故意の犯罪被害による実態調査の結果を見ますと、未就学児童、乳幼児を含めまして、高校まで行っておられた遺児の方が百五十七人ございます。これを基礎にしまして推定いたしますと、年間約千人の遺児の方々に奨学金を支給しなければならないことになると思います。漁船海難遺児の給付基準、これは小学生三千円、中学生三千五百円、高校生一万円、いずれも月額でございますが、奨学資金を給貸与しておりますが、そのレベルで考えましても、犯罪被害を受けられた千人の遺児の方に給付する場合、年間約六千八百万円の財源が要るわけでございます。これは細かいことでございますが、金利年八分と見まして、年間六千八百万円を給貸与するためには八億六千万円のファンドが要るわけでございまして、この点についての努力が今後続けられなければならないと思いますが、私どもといたしましても十分の力を尽くしたいと思いますので、また御指導、御援助を賜りたいと思います。
  43. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 いま数字を挙げて御説明をいただいた六千八百万、それから八億六千万円の資金ですけれども、その資金的なめどを含めてこれを具体的に実現の段階に移すには、相当な御努力も必要だろうと思いますし、また、財団にするのであれば財団の設立、そして寄付行為というものを募ったりして資金を集めていかなければならないと思うので、その辺の御努力は大変だろうと思いますけれども、それをいつごろと見込んでおりましょうか。
  44. 山田英雄

    ○山田(英)政府委員 お答えします。  ただいまの段階でいつまでと期限を切ってお答えする自信もございませんが、法の施行は明年一月一日でございます。当然それに向けての努力をいたさなければならないと考えております。
  45. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 やや具体的に御答弁いただきましたが、いま問題にしております遡及手当てについて今後実現に当たっては、警察庁はもちろん主体的に御努力を願うわけでございますが、警察庁初め関係者のこの御努力をぜひともお願いをして、この法律案が施行されます来年一月一日から、できることならば同時期にこの遡及手当てが実現できることが、被害者遺族にとっては非常に望ましいことですね。それについて、何としてもこれをこぎつけていただきたいということで、長官、いかがでしょうか。
  46. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 御趣旨に沿うように全力を尽くしたいと思います。
  47. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 最後に、この法律案につきましては、これまで所管が法務省だということで、私ども法務委員会におきまして法務委員のメンバーとして、同僚議員とともにこの制度の実現を目指して訴えてまいりました。そして法務委員会では、何回となく質疑をしました。ところが今回、これに対応して提案された政府案は、法務省からではなくて警察庁の所管ということになっております。所管が警察になった理由は何かということ。  あわせて、もう一つお尋ねしたいのは、私は法務委員会で何回となく質問しましたが、昭和五十三年四月二十六日の私の質問に対して当時の瀬戸山法務大臣は、「できるだけ早く成案を得て御審議をいただきたい」そして、「できれば次の通常国会あたりには提案をして、仮に最初から十分理想的なものでなくとも、一歩前進の法案でも提案をいたしたい。」こういう御答弁がありました。そしてまた、同年八月十一日の法務委員会におきましても同様に、私の質問に対して法務大臣が、「何とか次の通常国会にはこの制度の創設をする法律案を提案いたしたい」、そして諸般の事情から、初めは芽を出す程度でもとにかく実現をしたい、こういう決意のほどを披瀝なされたんですね。そういうことであるにもかかわらず一この御決意どおりであるとしますと、この実現が昭和五十五年一月一日からの予定になっておるはずなんですね。こういうことで、提案がおくれた理由、この二点をお尋ねします。
  48. 中平和水

    ○中平政府委員 まず、法務省から私どもの方に所管が移ったいきさつでございますが、これは先生、法務委員として十分御案内だと存じますが、私の方からかいつまんで申し上げますと、当初、法務省の方で中心になり、警察庁はむしろわき役といいますか、協力するという立場で検討を進めてまいったわけでございますが、その過程でやはり一番問題になりましたのは、この裁定機関をどうするか、こういうことが大きな問題になったわけでございます。法務省では当初、法務省所管の地方支分部局としての地方委員会を新設するということを検討されたようでございますが、これは行政簡素化等のいろいろな理由からその案は現実的でない、こういうことになりました。そういうことになりますと、やはりこうした仕事というのは都道府県警察、地方行政になじみの深い警察が所管すること、既存の行政機関をうまく使っていこう、そういうことになりまして、そうして都道府県の機関をいろいろと見回しますと、先ほど官房長からも公安委員会の問題について述べられましたが、一番それにふさわしいものとしてこれはやはり公安委員会制度に乗っかるのが一番いい、こういうことになりましてこちらの方に移ってまいった、こういうことでございます。大体五十三年の暮れごろに私どもの方の所管になった次第でございます。  その後一応、一日も早く法案を提案したいということで鋭意作業を進めましたが、何分にもこれは全く新しい法律でございますし、それから、いろいろと国会でいま議論いただいているようにいろいろ議論のある問題でございますから、そういうことで今日まで一応延びてまいった、こういうようないきさつでございます。
  49. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 最後に、大臣がお見えになったので大臣に、また長官にもお尋ねをしたいのですが、本法案の提案につきまして警察庁の御努力は私ども高く評価をしたいと思います。しかし、内容はもう先ほどから申し上げましたように、きわめて不十分でございます。特に給付の額が余りにも少な過ぎるし、最も肝心な遡及効がないという点はもう致命傷にも近いほどの問題だと思うのですね。しかし、先ほどもちょっと御紹介しましたように、瀬戸山法務大臣の御答弁のように、最初は芽を出す程度でもとにかくやりたい、この御決意でとにかく今回この芽がやっと出たという程度がこの法律案だろうと思うのです。われわれは今回出てきたこの芽を大切にして、一日も早くこの芽が大樹になるよう育てていきたい。特にそのことを私たちは決意をいたしております。  しかし、それとあわせて、あるいはそれ以上に大事なのは、行政側のこれを育てていこうというその努力だと思うのですね。法案内容の不十分な点につきましては、いま私の質問に対しまして政府側から御答弁をいただきまして、かなり前向きな御答弁もございましたので、一応了解をいたします。さらにまた、この法案につきましては附帯決議がつくことになっておるようでございまして、附帯決議の案につきましては理事会で合意を見ていると伺っておりますが、政府もその附帯決議についてこの実現に向けて誠意を尽くす、こうも伺っておりますので、この点も私たちは評価をしてまいりたいと思います。  そこで最後に、この法律案につきまして今後、法律ができた後、この法律の改善、前向きの方向に向けてどのような努力をなさるか、その御決意を伺っておきたいと思います。
  50. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 いざ法律が実施になりますれば、いろいろと問題が起きてくると思います。そういう過程を通じて十分分析、検討を加え、本委員会でいろいろと先生方から御指摘があった点も含めて、さらによいものにしていきたい、こういう決意でございますので、よろしく御支援のほどをお願いいたします。
  51. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 公安委員長、ひとつお願いします。
  52. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今日までこの重要な法律案の審議に出席をできませなんだことを、まことに申しわけなく存じております。  この法案につきましては恐らくや、一つは遡及効の問題、もう一つ過失犯の問題、もう一つ給付額の問題、こういった点についていろいろ御意見があったことと思います。ただ、遡及効の点については、こういった新しい制度、やむを得ない面があるんだ、したがって、それ以外の方については何らかの処置で善処をしたい。過失犯については、こういった制度というのは、過失犯の場合には原因者負担といいますかそれがたてまえであるので、これまたやむを得ない処置なんだということも御理解願いたいし、給付額につきましては、何といいましても保険のような制度とは違っておりまするので、他の制度との絡み合わせもあるわけでございまするので、いずれにいたしましても一、いろいろな御意見は十分腹に置きながら、発足をさしていただきまして、その後の事態の状況を見て、改善すべき点があるならば、今後また皆様方の御審議を願って逐次改善をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  53. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 終わります。
  54. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  55. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 この際、本案に対し、安藤巖君から修正案が提出されております。  修正案の提出者から、趣旨の説明を聴取いたします。安藤巖君。     ————————————— 犯罪被害者等給付金支給法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  56. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、ただいま提案されております政府提出の犯罪被害者等給付金支給法案に対する修正案につきまして、その趣旨説明をさせていただきます。  すでに本委員会並びに連合審査において明らかになりましたとおり、政府案は、国が犯罪被害者を真に救済する立場から見れば、その目的、犯罪被害の範囲、補償額あるいは過去の被害者等の救済その他において、まことに不十分な内容となっているのであります。  本案が、犯罪被害者とその団体において長年にわたる粘り強い要求運動によってようやく政府において画期的な制度の創設に至ったことを考え合わせますと、その内容というものは、関係国民期待するところから見れば、まさに似て非なるものと言わざるを得ないのであります。私は、本制度が真に国民の切実な願いを反映したものとして確立することが国の責務であるとの考えに立って、政府案の弱点のうち、最低限の範囲において修正を加えようとするものであります。  次に、修正案の概要について御説明申し上げます。  まず第一は、本案の性格に関する修正でありますが、政府案がその名称のごとく給付金支給法案、すなわち見舞い金的性格となっていることに対して、法律の名称を犯罪被害補償法案とすること、並びに目的として、犯罪被害者に対して補償を行い、保護救済を図る旨の修正を加えることにより、補償制度としての性格を与えようとするものであります。  第二に、犯罪被害の範囲についてでありますが、政府案以外に過失による犯罪被害者等も含めようとするものであり、第三に、給付金にかえて補償金とし、その額の最高限度額を遺族補償金の場合で金二千万円にしようとするものであります。これは自動車損害賠償保障制度による補償額に準じたものであります。  最後に、政府案で認められておらない過去の被害者救済するための措置として、二十年間の遡及適用を認めようとするもので、この根拠民法七百二十四条の損害賠償請求権の時効に求めております。また、この場合の補償金の支給を交付公債にかえることができるものとするものであります。  以上で、日本共産党・革新共同の修正案の趣旨説明を終わります。  何とぞ慎重審議の上、御可決くださいますようお願い申し上げます。
  57. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 以上で修正案についての趣旨の説明は終わりました。  修正案については別に発言の申し出もありません。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見があればこれを聴取いたします。後藤田国務大臣。
  58. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 犯罪被害者等給付金支給法案に対する修正案については、政府としては賛成しがたいのでございます。     —————————————
  59. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 これより本案及びこれに対する修正案を一括して討論を行うのでありますが、別に討論の申し出もありません。  これより採決いたします。  まず、安藤巖君提出の修正案を採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  60. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 起立少数。よって、安藤巖君提出の修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  61. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  62. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、石川要三君、小川省吾君、小浜新次君、三谷秀治君、部谷孝之君及び田島衞君から、六党共同をもって附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、本動議の提出者から趣旨の説明を求めます。石川要三君。
  63. 石川要三

    ○石川委員 私は、この際、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議日本共産党・革新共同、民社党・国民連合及び新自由クラブの六党を代表し、犯罪被害者等給付金支給法案に対しまして、次の附帯決議を付したいと思います。  案文の朗読により趣旨説明にかえさせていただきます。    犯罪被害者等給付金支給法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項に留意すべきである。  一、犯罪被害者給付金給付水準については、被害者等の実情に即し、また他の諸制度との均衡、物価水準の変動等をも参酌し、所要の改善が図られるよう配慮すること。  二、給付金裁定に当たっては、被害者等の捜査協力の有無等刑事手続上における事由によって影響を受けることのないように配慮すること。  三、公安委員会裁定のための調査に当たっては、公正を保つよう配慮するとともに、国家公安委員会に置く専門委員の構成については、刑事学、社会学、犯罪捜査実務等の専門家を加えるなど公正な調査審議が行われるよう配慮すること。  四、被害者の帰責事由、申請手続等政令及び国家公安委員会規則で定めることとなっている事項については、被害者等の救済の趣旨が全うされるよう十分に留意すること。  五、本法施行前に犯罪被害を受けた者及びその遺族救済については、別途、被害者の扶養に係る児童・生徒に対する奨学金制度の実現などにつき検討すること。  六、被害対象等についての国会論議をふまえ、本法施行後の運用実態を分析・研究し、その検討に資すること。   右決議する。 以上であります。  何とぞ皆様方の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  64. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  65. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 起立総員。よって、石川要三君外五名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、後藤田国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。
  66. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 ただいま犯罪被害者等給付金支給法案について慎重御審議の結果、採決をいただきましてありがとうございます。  ただいまの附帯決議の御趣旨を十分に尊重いたしまして、法律を適正に運用してまいる所存でございます。(拍手)     —————————————
  67. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  69. 塩谷一夫

    ○塩谷委員長 次回は、来る四月一日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時九分散会      ————◇—————