運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-04-16 第91回国会 衆議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十六日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 増岡 博之君    理事 稲村 利幸君 理事 高鳥  修君    理事 綿貫 民輔君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 坂口  力君    理事 正森 成二君 理事 竹本 孫一君       麻生 太郎君    大村 襄治君       熊川 次男君    白川 勝彦君       玉生 孝久君    中村正三郎君       林  義郎君    藤井 勝志君       坊  秀男君    村上 茂利君       山崎武三郎君    山本 幸雄君       沢田  広君    島田 琢郎君       塚田 庄平君    山田 芳治君       柴田  弘君    古川 雅司君       宮地 正介君    多田 光雄君       渡辺  貢君    玉置 一弥君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  小泉純一郎君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局次         長       迫田 泰章君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省銀行局保         険部長     松尾 直良君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁次長   伊豫田敏雄君         国税庁税部長 矢島錦一郎君         国税庁徴収部長 田中 哲男君  委員外出席者         議     員 山田 耻目君         経済企画庁物価         局審議官    赤羽 隆夫君         農林水産省構造         改善局農政部農         政課長     若林 正俊君         中小企業庁長官         官房調査課長  土居 征夫君         運輸省航空局監         理部監督課長  早川  章君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 四月十五日  辞任         補欠選任   山田 芳治君     河野  正君 同日  辞任         補欠選任   河野  正君     山田 芳治君     ————————————— 四月十日  金融機関週休二日制実施のための銀行法等の  一部を改正する法律案山田耻目君外八名提  出、衆法第四〇号) 同月九日  金融機関等週休二日制実施に関する請願(斉  藤正男紹介)(第三六七〇号)  一般消費税新設反対に関する請願池田克也  君紹介)(第三六七一号) 同月十日  一般消費税新設反対に関する請願新村勝雄  君紹介)(第三九〇八号)  金融機関等週休二日制実施に関する請願(北  側義一紹介)(第三九〇九号)  同(松本忠助紹介)(第三九一〇号)  同(山田英介紹介)(第三九一一号)  同(和田一郎紹介)(第三九一二号)  一般消費税導入反対及び不公平税制改善に  関する請願長田武士紹介)(第三九一三  号)  同(薮仲義彦紹介)(第三九一四号)  重度重複身体障害者使用自動車に対する地方道  路税免除等に関する請願岡田利春紹介)(  第三九六二号) 同月十五日  金融機関等週休二日制実施に関する請願外一  件(山口鶴男紹介)(第三九八五号)  同(神沢浄紹介)(第四〇四九号)  一般消費税新設反対に関する請願瀬野栄次  郎君紹介)(第四〇四五号)  同(寺前巖紹介)(第四〇四六号)  同(梅田勝者紹介)(第四〇四七号)  医業税制改善等に関する請願浦井洋君紹  介)(第四〇四八号)  不公正税制是正等に関する請願薮仲義彦君  紹介)(第四〇五〇号)  医業税制改善に関する請願山口シヅエ君紹  介)(第四〇五一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融機関週休二日制実施のための銀行法等の  一部を改正する法律案山田耻目君外八名提  出、衆法第四〇号)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加  盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出第四三号)  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより会議を開きます。  この際、山田耻目君外八名提出金融機関週休二日制実施のための銀行法等の一部を改正する法律案議題とし、提出者より提案理由説明を求めます。山田耻目君
  3. 山田耻目

    山田(耻)議員 私は、私以下八名の社会党の大蔵委員を代表いたしまして、ただいま議題となりました金融機関週休二日制実施のための銀行法等の一部を改正する法律案提案理由説明を申し上げます。  私は、提案者を代表して、金融機関週休二日制実施のための銀行法等の一部を改正する法律案提案理由とその概要を御説明申し上げます。  わが国労働時間が欧米諸国に比べて著しく長いという実態については、改めて申し上げるまでもありません。従来から、労働者は、労働時間短縮の実現を強く望んできたところでありますが、政府あるいは産業界においても、国際的な指摘を契機として、労働時間短縮週休二日制の実施について、前進的な姿勢をとるに至っております。  しかしながら、現在行われつつある週休二日制については、その実施を各企業の努力に任せているため、実施の態様は産業企業ごとにまちまちであるという現象が生じているのであります。  欧米諸国においては、すでにほとんどの国で完全週休二日制が実施されておりますが、わが国の事情と異なるのは、労働時間・休日についての較差があってはならないという理念、いわば「社会的な公平の原則」が生かされているということであります。したがいまして、わが国おいても、労働時間の短縮週休二日制の実施を推進していく場合には、この「社会的な公平」に留意しなければなりません。  そこで、週休二日制については、労働基準法改正が基本になることは申し上げるまでもありませんが、それに至る社会的条件を整えることが現段階での重要な課題であります。政府指導等と相まって、民間企業でこれを推進する場合、企業活動の実情から見て、銀行との関係は大きな比重を持っており、銀行週休二日制をとれば、民間企業特に週休二日制の実施が立ちおくれている中小企業どもこれらにならっていけるわけでありまして、幅広い週休二日制の普及が期待されるのであります。  週休二日制実施条件が熟している現段階で、これをさらに推進することが社会的に要請されており、そのためにも、土曜日の休日を認めていない銀行法の第十八条などを改正し、制度として確立する必要があります。  これが法律案提案理由であります。  以下、この法律案概要を申し上げます。  まず、初めに、金融機関週休二日制を実施するため、銀行法第十八条に規定されている銀行の休日の中に土曜日を新たに加えることといたしております。  次に、この改正に伴い、手形法及び小切手法に規定されている休日の定義を改めるとともに、国税通則法国税収納金整理資金に関する法律及び地方税法について、それぞれ所要の改正を行うことといたしております。  また、この法律は公布の日から起算して六カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ御審議の上、御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  4. 増岡博之

    増岡委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  5. 増岡博之

    増岡委員長 次に、国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  6. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣おられますから、まずきのうきょうの経済情勢の中で、政府の方においても現在の経済情勢の中で相当なさらに一歩進めた節約であるとか、あるいは新規の財源であるとかということは言われているようでありますが、その内容はどういう視角に基づいて言われているのか、そのことが一つ。  それから、国債の問題はこの前同僚議員がたくさん質問されましたけれども、この国債の問題が論議されました直後、きょうの報道では全銀連あたりがこういう国債のあり方ではたまったものじゃない、言うならば大蔵省挑戦状を突きつけているというのが現状であります。そういう状況に対して、大臣はどういうふうに認識をされているのか、この際承っておきたいと思います。
  7. 竹下登

    竹下国務大臣 まず第一点でございますが、今日の経済情勢は、たびたび申し上げておりますが、物価景気両にらみとはいえ、当面、物価というものに全精力を注がなければならぬ。そしてまたいわゆる四−六の間に何とか乱気流を切り抜けなければならぬ。そうして最終的には消費者物価見込みである六・四を何としても実現したい、こういう考え方で昨日閣議で御了解をいただきましたことは、先ほど公共事業執行等につきまして総合物価対策の一環として上期六〇%程度、そして災害あるいは積寒地の問題につきましてもその範囲内で消化を行う、こういうことに基づいてさらに昨日私が発言をして了解を得ましたのは、せっかく御協力をいただきまして成立した五十五年度予算の編成が、初めに一兆円の公債減額ありきというような姿勢から、すでに成立させていただきました租税特別措置整理等財政再建の第一歩を踏み出したという認識の上に立ちまして国民皆さん方からも理解をいただきましただけに、予算執行に当たっては適切にこれを行っていかなければならぬ。なかんずく、この金利引き上げ等によって避けがたい追加財政需要、そうしたものに対処しなければならないということ。そうして先般の六〇%程度にとどめるという抑制的な事業執行につきましても、具体的に契約目標率の設定について各省から御協力をいただいておるさなかでありますが、そのことをさらにお願いいたしますと同時に、今度はこの金利引き上げ円安傾向等による関連経費の増加、そして予算審議過程におきますところの四党合意に基づく年金引き上げ、これらによる追加財政需要が巨額なものになるということをまず予想いたしまして、そうしてこの財源不足が明らかになりましてもさらに公債を発行するというような余裕も環境もないということからいたしまして、各種経費節減を初めとする既定経費見直し等によって歳出の削減を図る必要があるということをお願いいたした次第であります。その結果といたしましては、歳出予算の一部について執行を留保する等の具体的措置を講ずる必要がございますだけに、そのことを各省庁と協議を始めたい、きょうから窓口を開いて協議を受け付けてもらいたい、こういう趣旨の発言をいたしまして御同意をいただいたところであります。  したがいまして、具体的に申しますと、四党合意の中で三百億の節減サマーレビュー等を通じて図るべし、こういうようなことが言われておりますが、それはもとよりのことでございますが、さらに各方面の節約執行の留保ということも考えざるを得ないといたしますならば、されば次はいつごろそのめどをつけるか、こういうことになろうかと思うのであります。昭和五十年にたまたま同じような措置を行っておりますが、これはめどのついたのが七月でございました。これを少しでも早めたいというテンポで各省との協議に入っていきたい、こう考えておるところでございます。したがって、具体的な数字ということになりますと、現段階ではまだ不確定要素が多いと言わなければならないと思います。  第二番目の国債消化の問題でございますが、きょうも総理の方からも国債消化状況についてということで、理財局長が御説明に参ることになっておりますが、確かに、関会長発言に対するコメントは差し控えるといたしましても、国債消化問題というのがいまわが方としての当面の大きな課題となっておることは私どもも十分に認識しておるところであります。  最近、若干この状況が戻ってきたということもありますけれども、これとて本質的に回復したという状態ではないと思います。要は、国債発行額が多過ぎるということでございますので、基本的にはそのことに尽きるわけでございますものの、まず四月債の発行の問題がやっとネゴに入るシ団合意に達したという段階でございますので、今後の見通しにつきましてはまさにそのときどきのニーズに対応して適時適切な商品なりあるいは発行条件なりというもので対応していかなければならぬというふうにいま考えておるところであります。まさに当面の一番大きなわが省にとっての課題であろうという認識でこれに対応していく決意でございます。
  8. 沢田広

    沢田委員 最初の方の問題で若干再質問させていただきますが、竹下大蔵大臣は現閣僚の中の優等生だ、こういうふうに言われているくらいであります。だから、積極的に日本経済を、これから景気を引っ張っていく機関車役割りを果たすのだろうと思うのでありますが、現在、きょうストライキをやっております賃金の値上げ、あるいはその他の年金の問題とかあるいは自然増、こういうようなものでいろいろと言われている数字があります。それに関連して公共事業六〇%をもりと後に延ばす、あるいは執行をもっと四〇%ぐらいに減らす。何とかこの物価を抑えるということは、どういう点をこれから考えていくならばインフレ的な傾向を抑えられるのか。そのことがたとえば後期に引き延ばせばデフレというかっこうになるかもわかりません。不況ということになるかもわかりませんし、先月の倒産件数は千四百件ぐらいにふえてきているわけでありますから、民間企業としてはきわめて厳しい状況にあります。と言ってこのままの状態でいけば、いま言ったような財源不足あるいはインフレ、こういう危険性があります。そこで、ぜひその辺は、確たる予定の数字は言えないにしても、そういう見通しがあるという状況の中で政府はいろいろと試算をされるわけでありますから、その試算をされていく中のどれが今日の——七月というのは国会が終わってからこれを何か出そうという気構えのようでありますが、現実にはもう必要経費の増というものは見込まれるわけですね。ですから、必要経費の増が、確実にこれだけふえるということだけは最低限度はもうわかっている。それ以上どれだけ上乗せするかというのが若干不確定である。とすると、その上乗せされる分をじゃどういうふうにどこで減らすのかということもこれも現実問題として対応しなければならない。何とか減らしてくださいと言ったってそうはいかない状況にある。何かこれははっきりした方向づけをしなければならないんではないか、こういうふうに思われますが、若干突っ込んだ質問になりましたけれども、あえてその点一言触れて御回答いただきたい、こういうふうに思います。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 まずはっきりした数字としてだんだんわかってきましたことが、卸売物価を五十四年度の実績で一二・一というものを見込んでおりましたのが、これがおおむね一二・九に終わるのではないかと思うのであります。それから消費者物価の方は四・七の実績見込みをしておりましたが、四・七台ではおさまるだろうというふうには思っておるところであります。したがって、この卸売物価というものが消費者物価に対してじわじわと影響をもたらしてくるわけでございますので、特に五十四年度の四月−六月を見ますと、卸売物価で三・六で消費者物価で三・二とか非常に低いわけでございますので、これが対前年同月比という比較になりましたらかなり高い数字が出てくるであろうという感じはいたしております。  そこで、基本的には、春闘というものがいろいろな形でいま妥結を見つつあるわけでございますけれども、これに対しての公労協等がまだ妥結いたしておらない実態でございますので、これに対していささかでも干渉めいた発言になることは差し控えるべきであろうとは思いますものの、労使のかなり成熟した話し合いの中でそれなりの結論が出つつある状態ではなかろうかというふうに期待もいたしておるわけであります。これが国民全体の物価に対する認識からする心理的影響を大きく与えるものの一つではなかろうか。言ってみれば消費態度でございますとか、あるいはまたお互いがそのときに対応して産油国へ移転した富をできるだけ公平に負担し合おうというような精神が私はある意味においては働いておるんじゃないかというような評価をいたしておるところであります。  そこで、いま御指摘になりましたが、されば何が最終的なものになるかと申しますと、まさに現段階でははっきりしたことを申す状態にはございませんが、節約額の推移を御参考のために申し上げてみますと、五十年度が五百四十億円でこれが過去最高でございます。その後五十一年から五十四年に至ります間は百四十七、百九十五、百十四、百二十二、一応百から二百の間でございます。したがって五十年度というものが過去最高ということで一つ参考とする資料ともなろうと思うのでございますけれども、この場合は、何を切ったというよりも、主として既定経費庁費、旅費等々のいわば節減ということが多く働いたわけでございますので、それが今度の対応に当たりましては、三年間据え置きをしてずいぶん節約を継続したというところにどれだけ各省理解協力を求めていくかということがこれはなかなか大変な難事だな、こういう認識は持っておりますが、しかし、それぞれの対応をしながらこれに対する理解は得ていかなければならぬと思っております。  具体的な数字で一番確実なのは、四党合意の中であらわれました年金引き上げに伴う約二百五十億というもの、これは非常に確実でございます。それから金利上げに伴うもの、これは今後の発行条件とかその都度の金利状態によってどう変化していくかはわかりませんので、四けたの大台、仮に一千億という見方もありますし、二千億という見方もありますし、ここのところが非常につかみにくいところでございます。それも支払い時期によって違いますのは円安に伴うところの経費在外公館の給与でございますとか、あるいはまた援助のものでございますとか、それも時期によってまだ定かに確定できないというようなことで、いまどれだけのものをおよそ節減対象としますという段階にはいま残念ながらないということを言わざるを得ないということでございます。  ただ、いま七月とおっしゃいましたが、確かに五十年はちょうど四月の十五日、きのうと同じときにおおむね似たような発言をしておりまして、理解を得て七月にその数字がある程度出ておりますが、今度はそれよりもいま少し早目には作業を進めていかなければならぬ、非常に抽象的に過ぎてはっきりしたお答えにならないことは非常に申しわけないと思いますけれども現状においては非常につかみがたいものであるということは事実であります。
  10. 沢田広

    沢田委員 全度のストライキは、とにかく金額としては百円玉の闘いであった。言うなら政府は、私鉄を含めて経営者のけつをたたいてがんばれ、ストに持ち込ませよう、こういうふうな意図のもとに政府が動いていたと言われております。今日、国民に大変迷惑も及ぼしているわけでありますが、もし仮にそういうような意図が、党利党略という言葉がありますけれども大蔵大臣自身がやったとは私も言いませんけれども政府全体のムードとしてそういうふうにストに追い込ましていくという方向が、運賃の値上げの時期の引き延ばしにいたしましてもあるいは今回の百円の闘いにいたしましても、どうもそういう印象を私はぬぐい切れないのでございまして、その点はそうだと返事を求めることは無理だと私は思いますが、きわめて多くの人にそういう認識を与えているということだけは否定できないと思います。このことはきわめて遺憾なことでございますから、もし回答されるなら回答していただきますけれども、そういうようなことで、今日、ストに入らなくとも解決できる条件にあった。時間もあった。それを無理に延ばしてきて、ぎりぎりにして百円玉の争いでついにここまで追い込んだという責任は政府としては免れないのではないか。私も労働運動を長くやってまいりましたが、こんなに時間が長くて百円玉の妥結ができなかったということは意識的なものである、こういうふうに判断せざるを得ないのでありますが、もし回答があれば御回答いただきたいと思います。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 私が御回答申し上げる立場にあるか否かは別といたしまして、私ども会議の模様を聞いておりますところでは、いわゆる私鉄の交渉に対して政府が介入したとかあるいはサゼスチョンをしたとかということはないというふうに聞いております。あくまでも労使熟度の高い話し合いの中でこれが妥結したものではないかというふうに理解をいたしておるところであります。公労協関係もいままさにぎりぎりの段階のように承っておりますので、これの論評は私からする立場にはないと思いますが、双方の良識において速やかに妥結することを期待しておるというお答えでもって今日は責めをふさがしていただきたいと思います。
  12. 沢田広

    沢田委員 実はきのう見たのですが、「東京相互銀行シークレット」、これは「週刊新潮」に大分長く載ったのですが、この中には実名で大蔵省幹部その他も載っておられます。これは御承知でしょうが、毎日新聞の記者がとにかく東京相互銀行入社をして、その入社をされた経過について述べておられる。この中で幾つかの問題が私感じられるので、これはお読みになっていればわかりますが、まずごらんになったかどうか。これは予告をしていませんから、読んだかどうかの事実関係だけ、あるいは大蔵省幹部の中で、局長クラスではお読みになったかどうか。大臣は忙しくてまだ読めなかっただろう、私あえてそういうふうに申し上げますが、ほかの局長はどうだったか、その関係をちょっとお聞かせください。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 どうも読んだ者がいないようでございます。
  14. 沢田広

    沢田委員 この中にサラ金融資状況一覧表というのがあります。これはたくさんのことを言っておるのでありますが、この実態についてはどういうふうに把握をされているのか。いま答えられなければ後でお答えいただいても結構ですが、武富士とか、それからプロミスとか、マルイトとか、日本消費者金融とか、こういうところのサラ金へ、これは何も東京相銀だけの問題ではありませんけれども、とにかく顕著に出ている表が出ております。これについては、銀行関係として、金融関係としてどういうふうに判断されているのかということが一つ。  それから、このごろ近代化資金を使わずに、リース制による貸し付けというものが手形の割引を含めていろいろ行われております。わかりやすく言うと、企業サラ金であります。これは企業サラ金でありまして、個人対象ではないものでありますが、その実態把握をされているのかどうか、その点、これはこの本とは関係ありませんが、関連してお答えをいただきたいと思います。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 いま銀行局長がこちらに向かっておるようでございますので……。
  16. 沢田広

    沢田委員 はい、わかりました。では、そのことは後でもう一回、来たときからやります。  実は、運輸省をお呼びいたしておりますが、日航のリベート問題が、「日航、巨額のリベート」こういう見出しで、年間数百億ということで出されておりました。  二つ問題があると思うのでありますが、現在、政府大蔵大臣の名前で株を持っているのが、四三・九%というのが去年の実績であります。五十五年度から五十六年度へこれから飛行機が五機なり十機なり入ってまいりますと、大蔵省の手持ち株というものは、割合においてはだんだん下がっていく傾向にどうもあるようであります。そういうことで、この航空会社をこれから政府としてはどういうふうに考えていくのかということをまず一つお聞きしたい。  それから、リベートというものが代理店へどんどん支払われていっている。このリベート、この内容では特別販売促進費ですか、こういうような名称を使っておるわけでありますが、このリベートというものが果たして妥当なものなのかどうかという点をお伺いしておきたいと思います。
  17. 早川章

    ○早川説明員 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御質問のまず第一点でございますが、日本航空の政府持ち株比率は、現在、転換社債が徐々に株式に転換されていく状況から、最新時点では約四〇%強にまで下がってきていると思います。そこで、今後、もちろん日本航空といたしましては、財務体質という面からも単なる借入金のみでなく、増資あるいは転換社債の発行等を行っていかなければならないと考えておりますが、その際、政府持ち株の比率がどうあるべきかということについては現在私どもでも検討いたしておりますし、また大蔵省の方からもいろいろな御質問が出てきている段階でございます。私どもとしては、当初は約五〇%、過半数を政府に持っていただきたいと考えておったわけでございますが、現時点では、商法上の株主総会の特別決議との関連で三分の一までは下がっても実質的な支配を維持できるのではないかと一応考えております。しかしながら、今後そういう形のものが維持できるかどうか、そういうパーセンテージが維持できるかどうかについては、これから大量の機材を購入していかなければならない実態から非常に問題がございますので、たとえば仮に財政の現状から直ちに政府出資を増額することはむずかしいような場合には、現在、御承知のとおり日本航空株式会社法によりまして、政府持ち株には、民間に八%まで配当している段階では配当しなくていいという規定がございまして、配当を行っておりませんけれども、今後日本航空の方から政府に配当を行っていくというようなことも一つの検討課題として考えてまいりまして、その半面、増資の際には政府にある程度の御負担をいただくというようなことも考えられる線ではないかということもございまして、現在内部でいろいろ検討しておりますが、結論を得るにはもうしばらく時間を要するかと考えております。  それから、第二点のリベートという問題でございますが、非常に大きな形のリベートというものが流れていて、何やらいろいろな問題の温床になっているというふうな新聞細事になっておりますけれども実態を申し上げますと、大体昭和五十年ごろ、オイルショックの後あたりから非常にお客さんが減ってまいる、一方で機材の方の大型化が進んで供給がふえる、したがってお客さんの取り合いが国際線では非常に多くなってまいりまして、一方でIATAという国際航空会社の一つの協会がございますけれども、そこである一定率、たとえば最近時点では九%という代理店に払う手数料の率を協定しているわけでございます。     〔委員長退席、稲村(利)委員長代理着席〕 ところが、最近はIATAに入ってないキャリアも非常にふえてまいりましたし、アメリカのごときに至りましては、代理店を企業間で協定することはよくないのでどんどん代理店などにきちっと、たとえば日本航空でもアメリカでは一五%ぐらいの代理店手数料をお払いするというような形になっていて、代理店に対する支払いがどんどんふえていっているわけでございます。ただ、IATAとの関係で九%以上の手数料を払えないものを、これは昔からあった形で、たとえば代理店がツアーを組むときにそのパンフレットをつくるわけでございますが、そのパンフレット代の一部を航空会社が負担するというような形の、ツアーサポートと申しておりますが、これも非常に限定された形があったところが、それがだんだんとふくらんでいって、一種のリベートというような形になっていっている。そういう実態があることは遺憾ながら、御指摘、この新聞に書いてあるとおりだと思います。  ただ、日本航空の支出が簿外で行われているというようなことは決してございませんで、特別販売促進費という形でございますけれども、そういうものは経理上きちっと経理されているというふうに申し上げられると思います。相手方の領収書なり相手方の指定口座への払い込みの払い込み通知書と申しますか、そういう形できちっと整理されておりまして、そのことが会計検査院の御検査とか国税庁調査、そういうものできちっとチェックされている。したがって、いわゆるリベートと言いますと、一部の担当の方へ現金が流れていくというような形のものを想像しがちでございますが、そういう形ではなくて、むしろ直接代理店にある形で、販売促進費という名目でございますけれども、大きな形のものが流れていっている。この浄化というものが現在いろいろと議論されておりまして、IATA自身も、このツアーサポートというものがリベートになってはいけないという形の協定を結びまして、この四月からそういう協定で事業者側もやろうという形になってきておりまして、私どももそれを支援していきたい、こういう状況でございます。
  18. 沢田広

    沢田委員 キックバックの問題は二つ性格があると思うのですが、大蔵大臣が最大の株主なんであります。これから将来の展望が、まず株主として、大蔵大臣としての御意見もあるでしょう。運輸省運輸省として、これがどういう形態になるべきかという、これは運輸委員会でやってもらうことになるのでありますが、いずれにしても、そういう一つ見通しがある。しかし、第一の株主である大蔵大臣がこの問題を無視して通るわけにはいかない。  いま言われた中で一つ問題があるのは、前の会計検査院がいいと言ったからといって、今日の状況においていいということにはならない。その認識はひとつ改めてもらわなくてはならぬだろうと思います。今度の問題のことで監査をやったわけじゃないのですから、それは前の状態においてやっているわけで、今度どんどん料金を上げてこの促進費がふくらんできたからこういうことになってきたという状況をひとつ念頭に置いていただきたい。  もう一つは、これは大蔵大臣なりその他の担当からお伺いしたいのですが、一般の民間の商取引には現実に必ずリベートがついて回っておりますね。このリベートは、税法上、普通企業から企業に行って、片方は損金に計上し、片方は受け取りに計上する。この場合は問題は起きない。ところが、企業がリベートを支払って個人がそれを受け取るというような場合が起きる。企業に行けば、これは完全に使途不明金という形になる。相手は所得になりますから、個人の所得に影響しますから迷惑はかけたくない、こういうことになりますので、使途不明金になる。これはもう日常茶飯事として、リベートが今日の企業間あるいは企業と個人の間で横行している事実はどういうふうに御判断になっておられるのか、その点ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  19. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 いまもお話がございましたように、企業が営業に関連をいたしまして外部に支払う金、これは原則は損金だと思います。損金の中で交際費のような特殊の性格を持っていますものは、限度を超えますと損金否認という制度はございますが、交際費というような範疇にはなりませんで、売り上げの値引き及び割り戻しというものは交際費の範疇に当たらないということは税法上明らかでございます。そういうものの中で、得意先である事業者が受け入れてしまって収益に立てれば、一方の損金は片方の益金に立つわけでございますから課税の漏れはないわけでございますが、いまの御質問のケースは、個人または法人が簿外で受け入れてしまって行き先がわからないということだと思います。  この点につきましては、たびたびこの委員会でも御質問もございましたし、使途不明金の課税の問題ということになろうかと思います。アメリカのように、違法なキックバックは使途が判明しても課税するという税制もございますし、日本がその一つのグループの中に入っておりますように、使途不明金について課税するという税制もあるわけでございます。使途不明金について、現在、損金を否認して賞与と認定しあるいは配当と認定するというようなことをやっておりますけれども、もっと制度的にそこを明らかにすべきではないかという御指摘につきましては、たとえばそういうものの記帳義務、帳簿の保存義務、そういうこととの関連を考えながら、現在、税制上これを重課することが可能であるか、また相当であるかという検討を行っているところでございます。
  20. 沢田広

    沢田委員 私がいま言おうとしていることは、一つは、リベートの透明度を高くしたいということなんであります。透明度を高くするためにどういう方法があるかということが今後の課題だと思うのですね。透明度を高くするということについては、一応異存ないでしょうな。
  21. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 税制がその基本としております青色申告の制度では、手数料にしましても、おっしゃるような売り上げの割り戻しにしましても、支払い先、支払い金額、支払いの年月日、その事由というものをすべて帳簿に書くことを要求いたしております。そういう記帳が正当に行われて初めて正しい申告が行われるわけでございますから、いまお示しのございますように、透明度を税法としては求めておるということは当然のことだと思います。
  22. 沢田広

    沢田委員 そこで、透明度を高くするためにどうしたらいいかということでこのリベート問題を取り上げたわけでありますが、これはこれで後でひとつ御調査をいただきたい。これは実はもっとやっていたいのですけれども、時間の関係でそうはいかないですから。  このキックバックの問題と上乗せ手数料、これは言うならば乗客に還元してもらうべきものであって、九%が一五%、二〇%というふうに旅行業者がもうけていくような仕組みにしているということになれば、IATA、国際航空運送協会のあり方というものに問題が生じるわけで、それだけサバを読んで乗客から金を取り過ぎているということになるわけですから、これを還元してもらうという方向で指導してもらいたいと思います。  それから、いま銀行局長が来られましたが、時間があと五分ということになっちゃってきわめて残念なんですが、これはひとつ後で読んでもらいたい。この「東京相互銀行シークレット」という本が出た。佐々木さんはどういう意図でこれを出されたのか、その意図はわかりません。しかし、書くまでには相当な圧力もあった、こういうようなことも記載されております。しかも大蔵省関係のそれぞれのお名前も記載されているわけです。そのことはそのこととして、大蔵省は事実上何らかの対応をしていくべきものがあるだろうし、また名誉が傷つけられるならば、その名誉を挽回する道もあるはずでありますから、それは所要の措置を講じていただくということになりますが、サラ金に相銀等が金をうんと出している、こういうことについては銀行局としてはどういうふうに把握をしておられるのかということがあります。  これでいきますと、武富士というサラ金業者に対する融資額は十四億七千万、金利は一〇%、合計すると二十九億程度出ている。それからプロミスにも九億、マルイトにも八億ぐらい出ている。そして武富士あたりでは、二〇%なり三〇%なりの金利で今度はさやをかせぐ。しかも不動産担保なし、貸出額の一二〇%のローン債権。こういうように普通一般の商取引の関係を逸脱しているような貸し付けが行われておるわけですね。この全体については後でごらんになっていただくことにして、時間の関係であとはやめますけれども、それ以外にも大変なことがたくさん書いてあるのですよ。ゴルフ場の問題であるとか、大蔵省から派遣されている役員の問題であるとか、いろいろ出ているわけです。そうかと思うと、総会屋その他に相当不良債権を貸し付けている、こういうこともそれぞれ事実として言われているわけです。  これはそれぞれ対応していただくとして、いまのサラ金の融資だけは、いま国会でとにかくサラ金を粛正したいということでやっているときに、こういうことを金融機関が堂々とやっているということになると、きわめて重要なことである、何らかの措置を講じなければいかぬのじゃないかという気がいたしますので、この点はお答えをいただきたいと思います。
  23. 米里恕

    ○米里政府委員 御指摘のように、サラ金業者に対して金融機関がいろいろな意味で適当でない融資をしているという場合も若干見受けられましたので、五十三年三月以降、自主的に見直すような行政指導を開始しまして、五十三年三月八日に「金融機関の貸金業者に対する融資について」ということで大蔵省としての考え方を述べまして、社会的信頼を損なうことがないように十分慎重に配慮されたいという措置を講じたわけであります。また個別に、一つは、量的な面でサラ金業者に対する融資について問題があると思われる金融機関に対しての個別指導というのをやっています。もう一つは、御承知の検査の際に、サラ金業者に対して問題のある融資があるかどうかということをチェックしておるというような形で行政指導を進めております。特に、御指摘のございましたような担保の問題、つまり貸金業者に対する融資に当たっての債権保全面のチェックというものも、検査の際に十分留意事項としてチェックしていくというようなことで進めておりますが、今後ともさらに一層充実した指導をしてまいりたいと考えております。
  24. 沢田広

    沢田委員 最後に、時間になりましたから、充実というのは、もっと徹底してそういうことをさせないようにするという意味だと解釈しますが、これ以上どんどん金貸せという意味で充実するという意味ではないんだろう、こういうふうに解しますから、これは私の質問が終わった後でお答えいただきたいと思います。  それから生命保険の問題で、この前二十年から三十年までやっていただきましたが、これは私が言うだけで、あと時間がありませんから……。  たとえば明治十四年あたりの契約をされているものがある。これはどういうものなんだろうかということが一つ気になります。七十万五千円という契約、年度末の現在契約なんであります。明治十四年で千四百三十九件の件数がある。これは果たして何なんだろうか、こういうことが一つ疑問になります。  それから生命保険のスライドの問題について、いま言ったように三十年から二十九年までは若干配慮していただきましたが、言うならば三十年から四十年代についてのスライドについて、しかも昭和四十年代のインフレ、高度成長、こういうものの経過もあったわけでありますから、料金の引き下げはされたようでありますけれども、いわゆるスライドについてはこれからどう考えているのか、時間の関係で詰められませんけれども、以上二点と三点をお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  25. 米里恕

    ○米里政府委員 最初に、充実した指導ということでございますが、今後ともに貸金業者に対する融資についての健全性の問題が一つと、それからさらに量的な問題が一つと、その辺を社会的な批判に該当するような行為がないように十分指導してまいりたい、こういう趣旨でございます。
  26. 松尾直良

    ○松尾政府委員 御指摘の明治十四年に契約された残高が七十万五千円あるというお話でございますが、まことに申しわけございませんが、私もちょっとただいま実態を承知しておりませんので、勉強をいたしてお答えをいたしたいと思います。  それから、古い契約のスライドと申しますか契約者に対する特別配当の還元の問題、御指摘のとおり、二十年代の契約につきましては相当な還元をいたしてきたわけでございますが、その後のものについてどう取り扱うか、これは配当政策の一環ということでいろいろ検討をいたしていきたいと思っております、
  27. 沢田広

    沢田委員 じゃ善処を要望して、質問を終わります。
  28. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員長代理 島田琢郎君。
  29. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、三月二十六日の当委員会における一般質問の中で触れました問題と、なお時間の関係で積み残しになりました点三点ほど引き続き質問をいたしたい、こう思います。  当日、私がいろいろ大蔵省税制土の問題に対してその対策を迫ったのに対して、余り色よい返事がいずれも返ってきておりませんでした。私が申し上げるまでもなく、いまの日本の農業、これは全般的に論ずる必要がないほど大蔵大臣もよく御認識になっておられますし、また、当委員会における農業問題にかかわります私の質問に対してもかなり問題意識を持ってお答えになっているという点で、私はそれなりの評価をいたしているところでありますが、今日の農業をめぐります問題は、特に国内農業の総体的な自給力の低下を受けまして、国会としても非常に心配をいたしました中で、先般、本会議において日本農業の再建にかかわります特別決議がなされたのも御承知のとおりであります。  言うまでもありませんが、農業を進めていく過程で大事な柱が三つありますが、その一つは価格対策でありますし、次は農業金融政策であります。そしてさらにもう一本の柱が農業税制の問題である。この三本の柱がそれぞれ有機的に、そしてまた整合性を持って進められていくところに初めて農業経営の健全性というものが保障されるわけでありますから、この問題を国会においてもしっかり認識をし、議論を進めるということはきわめて大事なことだ。これは特に私も長い間持論として持ってまいりました意見の一つであります。そういう中から、特に当委員会では、税制にかかわります問題の改善について、私から大蔵省に対しましてその決断をぜひしてほしい、こういうことを言い続けてまいったのであります。  問題の第一点は、そういう中におきます農地保有合理化にかかわります事業の中における譲渡所得税の優遇措置というのが現行の措置では弱過ぎる、こういう点が一つあります。これは農林当局も大蔵省に対して意見として連年予算の際には強調されておりますし、また、農業団体もこの改善方を強く要請してまいっているところであります。  とりわけ、今日の日本農業をめぐります大きな問題点になっておりますのは、農地のいわゆる経営面積の零細な状態というものをどう解消していくのかという点は非常に急がれる緊急な課題である。それあるがゆえに、今国会に農地法にかかわります問題を含め、新たに農地利用増進促進法という新法をつくりまして提案をされておりますし、たまたま本日、農林水産委員会ではこの法案の審議に入っているところであります。私は、こうした日本農業の持っております特異的なとも言えるような体質の改善のために農水に提案されておりますこの法案の目的と性格というものの重要さについては十分認識をいたしているところでありますが、いままでも画期的と言われました戦後の農地法の改革に始まって今日に至るまで、その間においても農業の経営拡大、零細性からの脱皮という問題に対して幾つかの法案の提出がなされ、それが国会においても成立を見てきたところでありますけれども、運用という面になってまいりますと、必ずしもこの法律のそれぞれの持っております目的が完遂されているというふうにはなっておりません。なっていないからこそ改めてまた農地法の改正、そしてまた新法として農地利用増進法というものが国会に提案されてきた、こういうことになるわけであります。  こうした事業を推進していく上において、現在、御承知でもありましょうが、土地改良法によります交換分合事業などというものは、現行譲渡所得の税の関係におきましては特別な優遇措置が講ぜられているのでありますが、農地保有合理化等の事業にかかわって改良いたしました場合の現地におきます実態というのが、言うまでもない農地の価格の非常な暴騰、そういうものがございまして、なかなか思うようにこうした各種の事業が進んでいかないという実態にあることもまた事実であります。したがいまして、この際思い切ったやはり優遇措置、つまり譲渡所得税の控除額の引き上げというものが必要だ、こういうふうに私は考えているのでありますが、この点に対して大蔵当局の取り組む姿勢といいますか、そういうものをぜひひとつ私は前向きにしてほしい、そういう立場から意見を求めるものでありますが、いかがでありますか。
  30. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 譲渡所得は所得の中の非常に重要な部分でございますから、これに関連する課税の、何と申しますか、普遍性というものをいかにして維持していくかということも、所得税全体の問題としては重要だと思うわけであります。いま租税特別措置法で三千万円控除、二千万円控除、千五百万円控除、三通りのものが認められておるわけでございますが、これらはいずれもいわば強制的に土地を売らされる、収用に当たる場合、または権利制限が非常に強くて、占都保存の場合がそうでございます。飛行場周辺がそうでございます。権利制限が強いために、持っておっても仕方がないから売ろうという買い取り請求が所有者の方からできる場合、または権利制限と申しますか、買い取りの協議というようなことがあります公有地拡大に当たる場合、そういういわば一種の権利制限に基づく譲渡について、その不随意性と申しますか、そういうことに伴って一時に生ずる譲渡所得から特別の控除を認めるという制度であります。いまお話のございました農地保有合理化等のための買い入れについて五百万円控除を認めておりますのは、先ほど来お話のありますような農業政策というものを強く考えまして、収用権とか権利制限に伴う強制的な譲渡という側面はございません、任意譲渡でございますけれども、農地の特殊性から五百万円の控除を認めておるということで、これは性格が違うというふうに私ども認識をしてきたわけでございます。  農業政策の重要性ということは私どももちろんそのとおりに思いますけれども、たとえば、お話のございましたように、土地改良、そういった場合交換分合、こういったものに対しては三千万円控除が原則認められるので、それとバランスをとるということにはなかなかいかないのではないかというふうに考えます。  冒頭申し上げましたように、譲渡所得に対する課税の普遍性ということは、課税の公平の上からもかなり重要なことであります。五十三年に、私どもは、全国の課税統計から見ますと約九兆円の土地が移動しておりますが、その中で、たとえば買いかえの特例がある、あるいはいま申し上げた各種の特別控除の適用があるということで、課税対象となりましたものはその三分の一程度であります。これはいわば一種の絶対免税でございますから、こういうものを余り大きく広げていくということになりますと、税制の基本になります公平ということに抵触をいたすということもございます。  とは申しましても、農業の重要性ということから、いろいろ毎年のように農林省と御相談をしてきておるわけでございますが、それを特別控除という手段一本で考えて、強制的な譲渡の場合と同様のバランスをとるべきかどうかということにつきましては、御質問のお言葉をかりて申し上げさしていただけば、なかなか前向きに踏み切れない面があるということについて、ぜひ御理解をちょうだいしたいというふうに思うわけであります。
  31. 島田琢郎

    ○島田委員 おっしゃるように、土地改良法に基づく土地改良事業と、農地を全く手放していく場合における税金の取り扱いというものが一律一様にいかないんだという点について、私は十分それは理解はできるのでありますが、しかし、最近のこの農地の価格の状態を調べてみましても、大変な地価の値上がりであります。これは農地ばかりではなくて、日本列島全体の地価というものがいま非常に暴騰状態にあって、これがそのまま農地にも大きな影響をもたらしているということはあるわけでありますけれども、たとえば三十五年当時の、つまり農業基本法が制定をされました当時の農地価格の比較から言いますと、中どころのたんぼでありますけれども、いまや大体十八倍くらいの値上がりに実はなっています。畑に例をとってみますと、実に二十五倍、こういったような状態にあるわけであります。これは十アール当たりの金額にいたしましても、全国平均で三十五年当時二十万円足らずであったものが、先ほど申し上げました中どころのたんぼの値段で三百四十二万円にも達している。これは十アール当たりであります。それから畑では、当時十三万円弱であったものが三百二十万を超すという状態に実はこれはなっているのであります。これは五十三年度の統計でそうであります。最近のように、またぞろ土地の値上がりというような問題が深刻になってまいっております段階では、さらにこれが上がっていくであろう、こういうふうにも考えるわけであります。こういう面から言いますと、新しく農地を取得していくなんということはなかなか困難でありますし、また、土地の所有者、農地の所有者も、値段が上がっていくというような状態の中では、なかなか手放すということに決断が持てない。これは、前回の私の一般質問の中でも、大蔵当局がお調べになった意識調査、建設省で調べましたアンケート、それぞれのセクションによって手前みそなところがあるという数字が出ておりまして、大蔵省は、税金などとはかかわりなく農地といいますか土地というものは流動化するものではないという判断をしているようでありますが、建設省サイドでは、税金がやはり問題で、なかなか土地が流動化しない。これは農地と言いかえてもいいのではないか、私はこういうふうに思うの  です。  私は、離農を促進するという立場から申し上げているのではありません。残念ながら、この農業基本法が制定されて以来日本の農業は縮小の一途をたどってまいりまして、農家人口も激減をいたしました。その間における農地の流動化は大変目覚ましいものがあったのでありますが、それを受けて、いま局長お答えになっているような譲渡所得の特別控除制度というものも出てはおるわけでありますけれども、それはそれなりに一応の効果はあったというふうに、私はこれを否定するものではありませんけれども、しかし、やはり現行のこういう状態に見合ったような税の改正というのが、私は当然必要であるというふうに考えているのであります。  ところが、いまのようなお話で、性格上違うからというふうなお考えでもって御否定をなさるわけでありますけれども、私は、行政の推進上、あるいはまた政策の整合性という上からも、先ほど冒頭で強調申し上げたように、三本の柱がしっかりとしてないと、日本の農業はますます後退の一途をたどっていかざるを得なくなるであろうということを申し上げたのはそういう点でありますから、認識をぜひ改めていただきたい、私はこう思っております。  そこで、まず農林省にお尋ねをいたしておきますが、先ほど申し上げました、本日から審議に入っております農地三法と言われております中における農地の利用増進法の目的と、この法律が動き出してからの見通しというものの中で、こういう税制上の問題というものはネックにならぬのかどうか、十分認識の中に置いてこの法律をつくられたと私は推測をいたしているのでありますが、農林省の側からのお考えをぜひこの際聞かせてもらいたいと思うのです。
  32. 若林正俊

    ○若林説明員 ただいま先生からお話がございましたように、政府は、農用地利用増進法案、農地法改正法案、農業委員会等に関する法律改正法案、いわゆる農地関係三法案を提案いたしておりまして、ただいま衆議院で審議をお願いをしているところでございます。  これらの法案を提出いたしました背景は、申すまでもございませんが、わが国農業の体質を強化し、総合的な食糧自給力の向上と国民生活の安定を図るということが農政の基本であるという認識のもとに、農業生産の担い手となる生産性の高い中核農家を保護育成していく。その場合に、やはり地域地域で非常に事情が異なってまいっておりますので、それら地域の実態に応じて、地域農業の組織化と、同時に、農業生産の再編成を強力に推進していく、こういう農政課題にこたえようとするものであります。農地の流動化を促進し、さらに地域農政を推進する、こういう観点から、従来からいろいろと施策を講じてまいったわけでございますが、これらの施策をさらに発展をさせまして、農政の基本方向に即しました各地域の実情に応じた農地の流動化と有効利用を進めていく、こういう目的の特別法の制定を考えているわけでございます。  これら農地関係の法案を進めていく場合の基本的なねらいは、いま申し上げたようなところでございますが、所有権の移転は非常に大事な政策目標でありますし、究極的な農業のあり方を規定しているわけでございますが、地価の上昇等、あるいは土地所有者の資産的保有意欲の強さなどから、どうも所有権だけではなかなかうまくいかない、こういう現実も考慮いたしまして、五十年の農振法以来、利用権の流動化といいますか、利用権による規模拡大もあわせ考えつつ規模拡大を進めてまいっているわけでございます。  今回の提案に当たりましては、このような考えをさらに発展させますと同時に、農業は耕作をする人がその農地の所有権を取得して安定した経営をしていくということが大事でありますし、地域によってはなお所有権移転に期待する地域もあるということから、従来の利用権による利用増進事業に所有権を加えまして、所有権と利用権と、その地域の実態に応じて中核農家への土地利用の集積を進めてまいりたい、こういう趣旨でございます。  このような観点から、実は、今回の法案と関連いたしますれば、所有権の移転も利用増進事業の中に取り込んでいるということがございますので、お話のございますような税制上の取り扱いということも大変重要な課題でございます。これら税制上の取り扱いにつきましては、五十六年度税制改正の問題といたしまして、今後十分大蔵省とも協議してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  33. 島田琢郎

    ○島田委員 主税局長、あるいは大蔵大臣、いまお聞きのように、今国会で成立するかどうかわかりませんが、とにかく、農用地利用増進法という法律が、一つの目的と、大変大事な日本農業のこれからの進むべき道に対して相当思い切った考え方を取り入れて提案がなされているということがおわかりになったと思うのです。  後段でお話にありましたように、従来の農振法の改正等につきましては、賃借権といいますか、利用権の賃貸借というような関係であったものに対して、今度は所有権の移転が伴うという新たな法律であります。これはわれわれは、農地法の三度にわたる改正に当たっても、次第に農地法も空洞化をしつつあるという点に立って、非常に問題を持ってきた法案でありますが、それを今度あわせて、農地法の大事な根幹であります農地は農業者が所有すべきものだというところから、さらにもう一歩も二歩も後退をするという点を含めている点では、非常に問題の法案だというふうに私は思うのでありますが、しかし、一方、いま農林省の若林農政課長からお話がございましたように、非常に重要な問題を持っているという点について考えますならば、やはりこの税制上の問題というものも抜きにして考えるわけにはまいらない。特に、最後に、五十六年度で税制改正に当たって大蔵省にもひとつ十分協議をしてもらうよう申し入れたい、こういう考え方が示されました。十分御協議をいただけるものと考えますが、大蔵大臣、いかがですか。
  34. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 農業の振興と申しますか、食糧自給率の向上と申しますか、いずれにしても、国として追求すべき非常に大きな政策目標であるということは、私どもも仰せのように考えておるわけでございます。  もちろん、先ほどもお答えいたしたことでございますが、毎年のように農地に関する税制について農林省から御相談があり、税制改正の中に織り込んできたわけでございまして、ことしも、一例を申し上げますと、先ほどのお尋ねの農地保有合理化のための特別控除の対象に、たとえば排水路とか畜舎とか防風林でございますとか、そういった施設も、土地または土地の上に存する権利ではないけれども含めるというような拡充をしてきておるわけでございまして、農地保有合理化のための特別控除の拡充についてはそれなりに努力してきたつもりでございますが、現時点で、五十六年度どういう具体的な御措置、どういう具体的なお考えについてお話があるか、これは将来の問題でございますけれども、もう一度繰り返させていただいて、くどいようで恐縮ですが、私どもが考えておりますのは、そういう農業政策上の重要な目標と、それを達成するための手段として、たとえば仰せのありますような特別控除制度を拡充するという手段の相当性ということについて配意せざるを得ないということをお断り申し上げておきたいと思うわけであります。  農地であれば、それを農外に売ろうと農内に売ろうと、いずれも免税の範囲をできるだけ広くすべし、それは一つの御要求としてはわかりますけれども税制全体としてのバランス化ということも非常に重要でございますし、そういう点も含めて、私どもとしては、税制全体として総合的に考えてまいりたいというふうに考えます。
  35. 島田琢郎

    ○島田委員 いま私が一番目の質問にかかわります点で言えば五百万でありますが、これはいつから五百万ということになったのでしょうか。
  36. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 昭和五十年改正でございます。その前は二百五十万円でございました。
  37. 島田琢郎

    ○島田委員 もう六年もたっているのであります。その間の農地の価格の値上がりというのは、先ほど私からお話を申し上げましたとおりであります。やはり改正すべきであるというふうに私は思います。そうでなければ、なかなかこれはうまくいきません。  私は実態として申し上げているのであります。私も長い間実は現地にあって農地のあっせん等に苦労をしてまいりました。農業委員の一人として、二十年間この農地の問題に取り組んでまいりましたが、いつも問題になるのはこの税の問題であります。先ほど冒頭で局長から、そうは言ったって全体に税金のかかっている割合なんというのは大したことないよ、こういうお話でありますが、それは、私のところの北海道のような地価の安いところでは全体的に譲渡所得の額の占める割合が低いということは事実でしょう。しかし、問題になっているのは、第三種兼業がふえていく、しかもそれが財産的保有として定着化しつつあるという今日の状況を破っていくために思い切った税制改正を必要とするのはこの近辺、つまり内地府県における最も地価の高い地域におけるところが問題なんであります。そういうところについて考えるならば、やはり天井を高くしておくということは必要だ、こういう観点に立って思い切って五百万円を三千万円まで引き上げろ、こういうふうに私は今回主張しておきたいと思う。  いろいろお話しされておりますけれども、これは農林省が今回出された法律の中で若林課長が言っておりますが、この中で私ちょっと遺憾に思いますのは、少なくとも法律が出されてくる段階税制上の問題というのは非常に大事な柱だという御認識があるならば、本当は大蔵省と事前に相当の協議をなされてしかるべきなんでありますが、いまの局長のお話を聞きますと、来年そういうことのお話があるそうでございます、だから、そのときにはどういうお話が出てまいりますかなどというふうなことでは、実は行政上整合性を欠くものとして、しかも権威ある国会に法律を出されるという場合においては、おおよそその点のめどは一〇〇%とは言えないまでも六〇%や七〇%の目安を持って提案してくるのでなければ、私たちはこれを国会で責任を持って審議をするということにならないということに思えるのであります。  さて、次の問題点でありますが、農業委員会のあっせんによります農地の交換なんという作業が実は行われておりますが、この交換分合に当たっても制度上に私は改正すべき問題があるように思います。しかし、きょうはその制度上の問題をここでお話しするのではなくて、実は現行のこの制度は二者間、相手方一人という場合における交換分合の場合の譲渡所得、固定資産の交換でありますが、この場合、譲渡所得の特例というものが実はあるわけであります。これは所得税法五十八条の特例にかかわる問題でありますけれども、これも私は少なくともいまの倍にすべきだという考え方を持っている。そして、これは農林省のサイドにおきます責任になるのでありますけれども、農地は複数農家間の交換ということが現地では非常に多いのです。それは、幾つかに土地が分かれておりまして、俗に言う通い作などというようなものも含めまして相当農地が分散している、それを交換分合によってできるだけその農家の近間に土地を寄せていくという作業は実は必要だ、これは言うまでもないことであります。それをやる場合に、単に二者間だけにおける交換分合では済まないという問題がいっぱいあります。複数、数軒にわたる、あるいはもっと大きく言えば十数軒にもわたるような範囲の中での交換分合というものが必要になってくるのであります。そうやって次第に土地を集めてくるという作業が必要であります。その場合は、実はこの特例措置がなかなかとれない、こういうことでありますから、知恵をめぐらしていろいろなことで税金のかからないような方法を考えなければならぬといったようなことさえも起こりかねない。これは私は税制上非常に問題があるというふうに思うので、これをまともに変えていく必要があるのではないか。私は、こういう点を含めて大蔵省の考え方あるいは農林省の考え方、同者から意見を聞きたいと思うのであります。     〔稲村(利)委員長代理退席、高鳥委員長     代理着席〕
  38. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 現在事業用資産の買いかえということが租税特別措置法で認められておりまして、いま仰せのケースは、農振地域の整備法によります農振地域整備計画において農用地区域として定められている区域の中の土地または土地の上に生えておる果樹、そういうものを売りまして、いわば譲渡しまして、かわりに農振法の規定に基づく勧告に係る協議、調停、あっせん、もしくはこのあっせんに準ずる農業委員会のあっせんによって農用地区域内の土地等を取得した場合には、事業用資産の買いかえとして課税しないという制度がございます。いまお尋ねのありましたケースは、農業の振興に資するという観点からの計画的なまたは公的なあっせんに基づきます場合であろうと思いまして、大体いまの租税特別措置法の三十七条の規定による取得資産承継があるケースに該当すると思います。所得税法上、売買は譲渡益があれば課税されるわけですが、交換について特例を設けておりますのは、対等の資産を買いかえまして交換前の用途に供するという非常に限定した条件で、しかも差金が二割以内という場合に限って交換ということにしておりまして、いま仰せのように、複数の当事者間で交換が行われる場合というそこまで交換を広げますと、恐らく譲渡所得というものはなくなってしまうというふうに考えます。  お言葉を返すようで恐縮でございますが、先ほど、三分の一ぐらいしか課税していないから大したことないよという意味で私は申し上げたのではなく、譲渡所得課税をやはり充実してまいることが所得税全体についての公平を保ち、税制についての国民の方々の信頼をつなぐゆえんであるというふうに考えますから、したがいまして、譲渡所得についての特例というものは一波万波を呼ぶという点で私は非常に問題であるという意味で申し上げたわけでございます。  いまお尋ねのありますケースにつきましては、現在の税制でも事業用資産の買いかえの特例の適用があるという意味で、政策的に対応しておるというふうに思いますし、そういう政策の対象にならない一般の買いかえまでいまの事業用買いかえを認めるということにはならないのではないかというのがただいまの考えであります。
  39. 若林正俊

    ○若林説明員 御質問、御意見ございましたように、農地を集団的に利用していくということのために複数当事者間でその権利を調整し交換をしていくということが大事であることは十分承知をいたしております。そのようなある一定の地域の広がりの中で権利を寄せていく手法としましては、土地改良法に交換分合の規定がございまして、土地改良法の規定に基づく交換分合につきましては、先ほど大蔵省の方からお話がございましたような特定の措置があるわけでございます。  ただいまの、農業委員会のあっせんによります複数当事者間の交換は、このような公的な一定の面的広がりの中で事業を推進するということのほか、複数当事者間の相対の話し合いを進めていくという、いわば土地改良法に比べますと小規模で行われるものでございます。そういう意味で、農業委員会のあっせんによる複数の当事者間の交換につきましては、ただいま主税局長からお話がございましたような事業用資産の買いかえの特例の道も開かれておりますし、この制度を十分活用していくということで対処できるのではないかと考えておるわけでございます。
  40. 島田琢郎

    ○島田委員 これは農林省に答えろという方が無理なんであって、本音は大蔵大臣を前にしてなかなか言えないでしょうが、私は現行の五百万、これも倍ぐらいに上げてほしいし、また、いまのような複数の場合でも、実態をもっとお調べ願いたい。実態必ずしもおっしゃっておるようなことではないのです。ですから、その実態に沿って——いや実態把握をまずしていただく、そういう実態把握の中から、私の言っているようなことが事実として起こっているとすれば、これはやれとは言いませんが、検討するというぐらいのことはお答えいただきたいものだと思うのですが、いかがですか。
  41. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 農業政策が現実にどう展開されておるかということについては農林省が常時実情を把握しておられると思うのです。先ほどお答えいたしましたように、五十六年度以降の問題として農林省からお話がございますとすれば、その段階実態について農林省の御認識、私どもの考え方というものをお示ししてお話し合いを続けていくということであろうかと思います。
  42. 島田琢郎

    ○島田委員 最後に、長い間先祖から受け継いでまいりました大事な農地を残念ながら手放し、それだけではない、一家挙げて離農せざるを得ない、こういう状態に立ち至った場合における譲渡所得の特別控除、これも現行五百万であります。ただ、この場合、一家が海外に移住した、こうなりますと、これは三倍の千五百万までが実は特別控除されるというふうになっております。離農後の態様というものは、国内にいるか海外にいるかという差は確かにあります。しかし、本当に長い間続けてまいりました大事な農業をやめて離農せざるを得なくなったという、そのいわゆる農家の持っております気持ちというものは差がないと私は思うのです。海外と国内ということで差がつけられるということは、農家の気持ちを知らないきわめて不親切な行政のやり方ではないか、税制度のあり方ではないか、こういうふうに私は思うのです。したがって、バランス上の問題ということで、バランスということを局長は盛んにおっしゃっていますが、そういう意味で、離農の時点における離農農家の気持ちを十分そんたくするという立場に立って、特別控除上同様の扱いをするべきではないかというふうに私は考えるのですが、これはいかがですか。
  43. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 いまのお話は租税特別措置法の三十八条と同じように離農の場合の特別控除を拡充せよということであろうと存じます。ただ、この三十八条によりまして、離農の場合千五百万円控除が認められますのは、移住の場合、任意に海外に出た場合をすべて含むというわけではないわけであります。御案内のとおり、呼び寄せ移住とか国際結婚のための移住というものは外しておりまして、国の行政機関が作成した計画に基づいて移住する場合、しかもその移住について行政機関の認定を受けたものについて移住の際の譲渡所得から千五百万円控除をするということを認めておるわけでございます。この場合、海外移住者、それから離農なさる方、いずれも同じであると思いますが、居住用資産をお売りになる場合には三千万円特別控除いたしますとか、それから農地を売ってアパートなどの減価償却資産を取得すれば事業用資産の買いかえが認められますとか、そういう点で一般のというか、その他の規定の適用があるわけでございます。したがいまして、海外移住のための特別控除は、主として土地以外の一般財産の譲渡という場合に働いてくる規定かというふうに私ども思っておりますが、現実になかなか適用の事例もないわけであります。離農なさる方が、国の行政機関の計画に基づいて、その認定を受けてということではない、恐らくは任意にお売りになるわけでございましょうから、先ほど来くどく申し上げておりますように、一千五百万円の特別控除というものを移住に準じて認めることは非常に問題があるというふうに考えておる次第であります。
  44. 島田琢郎

    ○島田委員 前回に引き続き、まことにつれない返事ばかりしか大蔵省から返ってきておりません。大蔵大臣は、日本の農業の将来を非常に心配している、こういうふうに私には何度かにわたっておっしゃっているわけでありますが、細かな問題になってまいりますと、総論においておまえの言うとおりだが、各論になってくるとなかなかそうはいかないというふうになってしまうわけであります。  最後に、大臣に、いまやりとりをお聞きいただいておるわけでございますが、三本の柱、とりわけ農業税制におきます問題は非常に重要だという立場からいま論争いたしたのであります。まさに論争であります。全く検討の余地もない、こういうふうな感じにさえ受け取れる御答弁でありますけれども、私は納得しがたいのです。もう一回洗い直しをするというぐらいのお気持ちは持ってもらいたい。せめて検討してもらうというぐらいの気持ちもおありにならぬのかどうか。大臣は、私も農業の問題については深い造詣を持っているとおっしゃっているというふうに私は聞いておりますが、いままでのやりとりについて所見をひとつお聞かせ願いたいし、私の申し上げている点が明確に御理解いただけないとすれば、また別な機会にもう一遍この問題を取り上げていきたいと考えているのでありますが、いかがでございますか。
  45. 竹下登

    竹下国務大臣 私、いま論争を聞いておりまして感じましたのは、私は昭和三十一年に農地委員に立候補いたして当選いたしました。当時はまだ早稲田大学の学生でありました。そのときに、戦後の三大改革、憲法改正あるいは自作農特別措置法、そして教育制度の改革でございますが、その中で私なりに一番情熱を持ったのは自作農特別措置法でありました。幸いにして、ほかの選挙と違って、あれだけは十八歳が選挙権で二十歳から被選挙権がございましたので、したがって立候補いたしまして当選したわけでございますが、その後の推移を見ますと、とにかくすべて所有権よりもいわゆる利用権、耕作権が優先するというような物の考え方がずっと貫かれていって、それから規模の拡大とか合理化とかいうようなものに、そのニーズの変化に伴って、いままたそこに一つの大きな農地の利用問題についての、場合によっては自作農創設特別措置法、すなわち耕作権者がすべての絶対権者であるという形が変わってきたような感じもしながら、実は客観的に見ておるわけでございます。しかし、税は税として税の公平の原則ということに立って対応しなければならないという税務当局の物の考え方ももとより理解できないものではない。ただ、議論を聞いておりますと、いわゆる安全保障、セキュリティーの大きな分野を持つ農業というものに対する物の考え方、これはいま農林省で、農地三法でございますか等の精神は私も理解できますし、そして農林省の方もそれなりの見解の上に立って、また税務当局との協議も、五十六年度において協議に持ち込みたいという御希望なりを持っておられるように私は聞きました。そしてまた主税局長の答えも、もとより農林省が日本農業全体のあり方についての一つ課題としてそれが持ち込まれた際にそれを検討するにやぶさかではないという趣旨の答弁をしておりますので、その辺が、結局、政治というものがそれぞれの立場にありながら、それぞれの主張を展開しつつ、総合的にどこに調和を求めていくかということではなかろうかというふうな印象で聞いておりまして、つれないとも感じなかったし、農林省の優秀な若いお方が遠慮しながら物を言っていらっしゃるとも別に思いませんでしたので、そういう論争がまたそういうことに対するある種の推進の役割りを果たしていけば、これが国会というものじゃないかな、こういう認識をいたしました。
  46. 島田琢郎

    ○島田委員 終わります。
  47. 高鳥修

    ○高鳥委員長代理 午後一時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  48. 増岡博之

    増岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。宮地正介君。
  49. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、最初にわが国経済の中におきましても特にこの八〇年代重要なオイルダラーの還流問題について少し大臣の所見を伺っていきたいと思います。  明日から主要先進国首脳会議の、いわゆるサミットの第一回準備会議を皮切りにいたしまして、今月から特にIMFあるいはOECDあるいはIEA、そしてベネチアのサミットの首脳会議、一連の重要な国際会議が予定されているわけでございますが、この国際会議において今回は特にオイルダラーの還元問題あるいは還流問題というのが非常に重要なテーマとして新たに加えられる、そうした様相であろうと思います。  まずこのオイルダラーの問題について、大蔵大臣はこの四月の二十四日にはIMFの合同開発委員会、十カ国蔵相会議、そして二十五、二十六とIMFの暫定委員会、西ドイツのハンブルクに行かれまして、こうした重要なテーマを中心とした論議にわが国の代表として加わるわけでございますが、この点についての大臣としての所見をまず伺っておきたいと思います。
  50. 竹下登

    竹下国務大臣 これは御指摘のとおり大変な関心事であると思っております。したがいまして、私どもといたしましても、IMFにおいて今日までいろいろ議論された問題等の報告も受けながら、あるいは正式な会議あるいはロビーでのロビー外交とでも申しましょうか、そういうものも含めて非常な関心を持って対応していかなければならぬ課題である、基本的にまずそのように認識をいたしております。
  51. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、昨日大蔵省が五十四年度の通関統計を発表されております。それによりますと、約百三十四億二千六百万ドルの五十四年度は輸入超過である。そういう中で、特にこれは石油、原油の輸入に伴いまして、五十四年度と五十五年度、資料をいただいておるわけでございますが、輸入量、輸入金額などにつきまして説明と報告を国際金融局長からいただきたい。——関税局長かな。
  52. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 関税局長がちょっとおりませんので、私から。  五十四年度でございますが、輸入量が二億七千四百万キロリッター、輸入額は三百九十八億ドルでございます。  それからもう一つは、五十五年度数量が同じであったとして、最新時点の平均単価でやったらばどうなるかというお問い合わせがあったように聞いておりますが、この方の数字を申しますと、輸入量は同じく二億七千四百万キロリッター、輸入額は五百四十七億ドルになります。
  53. 宮地正介

    ○宮地委員 これは関税局からいただいた資料によりましても、ただいま国金局長の報告がありましたように、五十四年度と五十五年度、いわゆる原油の輸入について輸入量が一応同じというふうに仮定して約百五十億ドルの外貨が出る勘定になるわけでございまして、これはわが国の今後の国際金融の上においても、あるいは国際収支あるいは国内の経済に与える影響も非常に大きいわけでございます。こうしたいわゆるオイルダラーの還流策につきましては、特に国際会議認識を持っているという程度大臣から答弁をいただいたわけでございますが、すでに御存じのように、これは日銀あたりでも、たとえばサウジなどこうした中東のオイルマネーについて円安防止ということ、あるいはオイルマネーの還流ということ、こうしたものを考えて国債の大量売却というものもすでに考えておる、こういうことで、すでに大蔵省の財務官の派遣といった問題まで突っ込んでいまこの問題の対応も検討されているということも聞いておるわけでございますが、具体的なこうしたオイルマネー還流に対するわが国対応策、これについてどういうふうに進めておられるのか、伺っておきたいと思います。
  54. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的なお話を一つ最初に申し上げておきたいと思いますのは、確かに、日本経済新聞にそのような記事も報道せられておりました。IMFの総会なりあるいは十カ国蔵相会議なりというところでは、先進国あるいは開発途上国、OPEC、それから後発開発途上国、その中でどうするか、こういうような議論になるかと思うのであります。  いまの御指摘の点になりますと、まさに先進国、なかんずくわが国の問題になりますと、このような問題につきましては、わが国ということになりますと、また相手が特定国ということになりますと、なかんずく相手さんのある問題については、私どもとしてもどのような具体的なということは公にすることが非常にできにくい問題でございます。  その記事を見ましても、佐上財務官を派遣して、こう書いてありますが、現実問題としましては、ベネチア・サミットの準備にこの佐上財務官が行っておりますので、当然近くにおるわけでございますから、いまの段階で、私の言葉で申し上げますならば、わが国の事情でございますとか表敬を兼ねた訪問というようなことも、相手方さんとの日程等もつけばそういうことも期待をしておることは事実でございますけれども、いまのところ、まだ、具体的な問題で佐上財務官を派遣したというような段階ではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  55. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣はそういうふうにおっしゃっておりますけれども、この国債売却問題について、すでに日銀は売却先の国名や額、そうした取引上の秘密事項なのでその内容的な面は言えないとしても、「オイルマネーを継続的かつ長期的に導入する方向で産油国への国債売却を進めている」、こうした発言が十五日記者団に明らかになっているわけですね。そうすると、そうした内容を大蔵大臣は御存じでない、こう理解してよろしいのですか。
  56. 竹下登

    竹下国務大臣 リサイクリングに関する国際協力の一環として、一般論として、国債を海外中央銀行へ売却するということは、これは考えられないわけではもちろんございません。ただ、率直に申しまして、相手さんのある問題でもございますし、この記事そのものに対してコメントをすることは差し控えさせていただきたいという、素直な私のお答えでございます。
  57. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、このオイルダラーの還流策というのは、わが国にとっても非常に重要な政治的、また経済課題であろうと思うのですね。これについてはやはり相当突っ込んだ対応策というものを大蔵省当局としても十分検討しておくべきではないか、こう私は思うのです。  たとえば、すでに御存じのように、ヨーロッパのEC各国においては、この国際通貨問題については特にEMS制度というのがもう発足していまして、私たちはこの問題について非常に関心を持っているわけですね。そういう中で、すでにEC諸国内の域内貿易の中心は、もうECUという基軸通貨を中心としてEC諸国では行っているわけです。これについても、特にイギリス、フランスあるいは西ドイツといった各先進国が三十億ドル程度の金を裏づけとしたそうした形のECUの運用というものを行っているわけですね。そうした中において、私たちも、果たして金復位を考えての行動なのかどうかについては大変な関心を持っているわけです。  しかし、そうした現在の国際経済の中で、ドルあるいは円、スイスフラン、マルクといったものが非常に乱高下が激しい、こういう中で、やはり一つの貿易の中で国際通貨の安定というものを考えて、EC諸国においてはそうした新たな通貨制度を導入し、また彼らの彼らなりの努力の中でそうした基軸通貨というものをいまつくり上げつつあるわけですね。  そういう中で、また新たにこうした中東産油国にドルが集中的に集まっていく、こうした問題が、金のないわが国において、また非常に油に弱いという円、こうしたものを考えていった場合に、このオイルダラーの還流策というものにもっと真剣に、具体的にその対応というものを考えていかないと、後手に回れば大変なことになるんじゃないか、そういうことをわれわれとしては大変危惧するわけです。  そういう中でちょうどこの重要な国際会議が行われるわけでございますから、ただ認識だけ持って臨むということであってはちょっと後手になるのではないか。こうした場でいま公にできないという点は十分理解できますけれども大蔵省内においては相当突っ込んだ検討、対策もやっておるんだ、こういうことは言い切れますか。この点について伺っておきたいと思います。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 お答えの限界としては、委員のおっしゃることは私どもに大変理解のできる問題である、そして、大蔵省内、なかんずく国金当局で当然のこととして深い関心を持っておるであろうということは言えると思います。
  59. 宮地正介

    ○宮地委員 国際金融局長、オイルダラーの還流策については、事務レベルとしてはこの点は現在検討されておりますか。
  60. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 基本的には、大臣が先ほどお答えになりましたオイルダラーの還流の国際的協力というような観点の一環といたしまして、後発の油の出ない国々のめんどうをどうするかというようなこと、それから、国際収支が、経常収支が大幅赤字になっております自分のところの国の問題、この二つの問題につきましていろいろ検討しております。  たとえば、三月二日のアメリカ、ドイツ、スイスを取り込みました円の安定策にも、四項目が後の方に載っておりますが、あの中で、円建ての外債を出すというようなもの、あるいは自由円預金というようなもの、幾つかの道具をすでに取りそろえたようなこともやっておるわけでございます。
  61. 宮地正介

    ○宮地委員 IMFの国際会議に参りまして、大臣、IMFの現在の機能をたとえばオイルダラーの還流対策に対してさらに強化する、こうした問題についての発言をする用意はありますか。
  62. 竹下登

    竹下国務大臣 そうした問題についての委員会の事務当局で今日まで検討し続けてこられた報告が当然あろうと思うのであります。それに対して非常に関心を持って私も臨みたい。  いまのIMFの場で議論いたしますのは、先ほども国金局長も申しましたように、とにかく非産油開発途上国への還流はどうするかとかいうようなものも含めた全体の問題になりますので、私どもとしての意見も当然述べなきゃならぬ問題だと思っております。
  63. 宮地正介

    ○宮地委員 特にオイルマネーの還流策については、わが国は人ごとではない、非常に重要な経済課題でございますので、それ相当の対応と研究と、また日本国を代表して大蔵大臣が行くわけですから、どうかその点については過ちのない対応をしていただきたい、強く要望しておきたいと思いますし、帰ってこられましたら、次の機会にまた質問させていただきたい、こういうふうに考えておきたいと思います。  次に、今回の公定歩合の引き上げと預貯金金利の問題について、銀行局長初め大臣から少し所見を聞いておきたいと思いますが、今回一連の、五十四年四月から本年三月十九日の第五次公定歩合の引き上げが行われてまいりました。この公定歩合、特に第五次については一・七五%上がりまして、現在では九%、こういう状況になっているわけでございますが、その公定歩合の引き上げに伴いまして、いわゆる企業への貸出金利、特に短期プライムレートにつきましては、そのままスライドして公定歩合の率と同じ貸出金利が引き上げられてきておりまして、今回の一・七五の公定歩合の引き上げについては、同じく短期プライムレートも一・七五、貸出金利は九・二五、こういう形で第一次、第二次、第三次、第四次、第五次、各公定歩合の引き上げのその引き上げ率が即いわゆる短期プライムレートにおいてはそのまま貸出金利としてレートが引き上げられているわけでございます。しかし、特に国民の最大の関心事であり、また期待でございます預貯金金利への連動となりますと、国民の皆さんが一番お使いになり利用度が一番高いと言われている定期預金の一年ものあるいは二年もの、こういうものの預金金利の引き上げ幅を見てまいりますと、今回の一・七五に対しては〇・七五と非常に圧縮された金利の引き上げになっている様相が十分にわれわれとして受けとめられるわけでございます。この点についての大蔵省としての御見解をまず伺っておきたいと思います。
  64. 米里恕

    ○米里政府委員 御質問の公定歩合あるいは短期プライムレートと預貯金金利の関係でございますが、まず御指摘がございましたように、短期プライムレートの方は結果的に公定歩合と常に連動するという形でまいっております。これはそういう取り決めがあるわけではございませんで、個別の金融機関が個々に判断するわけでございますけれども、公定歩合政策、上げの場合でございますとこれは引き締め政策ということになるわけでございますが、御承知のように、公定歩合というのは中央銀行が貸し出す最も低い金利でございますから、したがって市中で優良企業に貸し出します短期プライムレートというのは必ず公定歩合の上になるという性質のものになろうかと思います。また公定歩合政策で、公定歩合を上げることによって効果を発揮するのはいわばこの点が非常に大きいわけでございまして、短期プライムレートが上がることによって資金需要をチェックしていく、こういうものであろうかと思います。  一方、預貯金金利の方でございますが、これはそういった金融政策、公定歩合の上げ下げと必ずしも性格的に完全に同じものではないと私どもは考えております。預貯金金利の方は、短期も長期も含めまして、むしろ金利全体の水準がどうだろうか、資金需給の実勢がどうだろうかという全体のバランスから決まるべきものであって、どちらかというと、公定歩合の弾力的な操作に比べてはやや安定的な性格を持っておる、こういう性費のものであろうかと思います。  したがいまして、過去におきましても公定歩合あるいは短期プライムレートと預貯金金利の動きというのは、タイミングあるいは幅ともに区々でございます、そういったような観点から今回も預貯金金利が決められたものと思います。思いますと申し上げますのは、御承知のように、預貯金金利は金利調整審議会の答申を経て日本銀行政策委員会で決定されるところでございますが、いずれにいたしましても、今回の一年定期で言うと七・七五%という金利は、水準といたしまして過去最高のものであり、四十八年の十二月に公定歩合が九%に、ちょうど今回と同じ水準に上げられたときの預貯金金利のその後の一番高い水準というものと相並んでおりますので、私どもも政策委員会の決定されるところではございますが、今回の上げは適当なものであるというふうに考えております。
  65. 宮地正介

    ○宮地委員 確かに、数字の並びぐあいを見ますと、最後のけつだけ前回と合わせている感じがするのです。たとえば今回の第五次公定歩合の引き上げが五回合わせますと五・五%、それに対しての定期の一年もの、二年ものについてはこの第五次の値上がりを全部加えましても三・三五。前回ちょうどオイルショックのときに、あの狂乱物価、インフレ抑制というときにも、お話しのように公定歩合九%までいきました。あのときの四十八年四月、五月、七月、八月、十二月という一年間でちょうど当時は四・七五上げました。それに対しての定期一年もの、二年ものの金利が当時は二・五上がりました。この差はやはり二・二五。いわゆる公定歩合の引き上げと預貯金の定期一年もの、二年ものの金利の引き上げというものは、最後のおしりだけはちゃんと合っておる。そしていわゆる差についても合わせてある。しかしいわゆる上げる期間、公定歩合の引き上げから実際に定期の預貯金に連動する期間、この問題になってくると、今回は前回に比べますとその辺が非常に差があるわけです。言うなれば、私が言いたいことは、今回のこの預貯金の金利について、言われるような、たとえば国債の評価損が各銀行の経営を相当圧迫しておるということは、さきの大蔵委員会でも審議したわけでございます。そうした評価損というものを十分考慮して、何らかの銀行当局に対するデメリットといいますか、マイナス面、これを何とか大蔵省として借りを返してあげるチャンスをつくりたいというものがなきにしもあらずと勘ぐられるような面が十分にあるわけでございます。そうしたようなことが結果的に預貯金の大衆預金、この金利のいわゆる圧縮によって逆に利ざやを拡大して、そうした国債の評価損の穴埋め的な操作にもしも大蔵省が踏み込んだとしたらこれは大問題であります。そうしたようないわゆる憶測といいますか考え方も成り立たないわけではないような今回のそうした預貯金金利への圧縮が見られることはまことに私は残念でございまして。そうしたことは当然ないとは思いますけれども、こうした問題についてそうした考えがあったんじゃないか、こういう批判が国民の中にもあるわけでございますが、この点については大蔵省当局としてはどういう所見を持っておるか、伺っておきたいと思います。
  66. 米里恕

    ○米里政府委員 御指摘のような金融機関の収益との関係を考えて預貯金金利を決めるというようなことはございません。むしろ一つの大きな考え方の基準になりますのは、長期金利をどう考えるかということが預貯金金利を考える際にかなり大きな考慮の要因になっております。長期金利につきましては、御承知のように、一つは資金需給の実勢ということで決まってまいる、そういうようなことを考えてみますと、わが国においては預貯金金利というものが非常に金利体系全体の中心になっておりまして、これが景気あるいはそういった資金需給の実勢というものにいろいろな面で大きなかかわり合いを持っているというような位置づけでございますので、そういったようなことを考えて金利全体の実勢及び政策的な判断——政策的な判断と申しますのは、主として現在の場合には長期金利をどのくらいにするのが適当であろうか、需給の実勢はどの辺であろうか、したがってそれが景気にどういう影響を及ぼすだろうかということも見ながら、全体の金利体系の中での預貯金金利をあるべき姿に定めていく、こういう考え方かと思います。
  67. 宮地正介

    ○宮地委員 公定歩合の引き上げあるいは引き下げ、こうした問題においての預貯金の金利の上げ幅あるいは引き下げという問題は、そうした大衆預金者の非常に大きな関心とまた国民経済の中における重要な事項であろうと私は思います。しかし、いま私が申し上げたような批判も国民の間には全くなきにしもあらずでございます。これは現実に受けとめていくそうした謙虚な姿勢というものも行政当局として私はあってほしいと思います。そういう面でこの預貯金金利の引き上げ問題については十分な配慮が行われているとは思いますが、そうした批判というものも現実にあるんだという認識もお持ちの上で今後の対応をしていただきたい。この点について大臣に一言見解を承っておきたいと思います。
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる国民の善意の貯蓄と申しましょうか、そういうものに対して公定歩合とかあるいは物価上昇率というようなものが一般論として関心の深いところであるということは私もよくわかります。ただ、長期金利というものを考えた場合におけるなかんずく定期預貯金の金利の果たす役割りというのは金融メカニズム全体の中でおのずから決まっていくものでございますだけに、それそのものが直ちに連動するものではないということはすでに御理解をいただいておるところ下ありますが、善意の預金者がそのような環境に対して非常に敏感な反応と関心を持っておるということは、これは通貨当局者としても認識していなければならない課題であるという点においては、御指摘のとおりだと思います。
  69. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは限られた時間で少し盛りたくさんに予定をしておるわけでございますので、次に少し物価との絡みでお話を伺っておきたいと思います。  五十四年度の政府消費者物価見通し四・七に対しまして、この三月末で東京総合の三月速報によりますと大体前月比〇・五二%上がるということで一三四・四、五十三年度一二四・七、五十四年度一三〇・三、こうしたものを比較して見てまいりますと、大体四・五ぐらいにおさまるのかなという感じがしておるわけでございますが、しかし、現在の、五十五年度への物価が果たしてどの程度げたが履かれて四月から食い込まれてくるのかということについては、大体三・三ぐらいげたが履かされるのではないか、こういう私なりの計算ができるわけでございますが、果たしてげたを脱ぐことができるのか、あるいは固定的にこのまま来年の三月までいわゆる五十五年度にこのげたがくっついたままやってくるのか。これは今後、日本の特に五十五年度の経済運営の中の消費者物価六・四という目標値に対して大変シビアな数字になってくるのではないか、こういう感じがするわけでございます。この点について、経済企画庁で現段階では全国的なベースの消費者物価を押さえることは不可能と思いますが、東京総合を基準とした程度で結構でございますが、結論だけ、私のいま申し上げたような数字がそういう方向にいくと考えられるか伺っておきたいと思います。
  70. 赤羽隆夫

    ○赤羽説明員 お答え申し上げます。  五十四年度の消費者物価の上昇率でございますが、東京の速報は先生おっしゃいました四・五であります。三月の全国の数字は来週の金曜日に発表の予定でございますが、東京並みの対前月上昇率ということで計算をいたしますと四・七%程度、こういう政府見通しにおおむね沿った数字になると考えております。  それからげたの計算でございますけれども、機械的に計算をいたしますと、先生のおっしゃったとおり三・二%ということになりますが、そもそもげたというのは台上がりをする。これでげたの意味があるわけでございますが、五十四年度から五十五年度にかけての三・二%というのは野菜の異常高、こういうものを含んだものでございます。げたはそもそも傾向的に上がるもの、したがって台上がりになる、こういう観点から言いますと、この異常高の是正によって値段が現に下がりつつある野菜を除いて計算をすべきではないか。そういたしますと、季節商品を除く総合で見ますとおおむね二%程度がげたになる、こういうふうに理解してございます。
  71. 宮地正介

    ○宮地委員 いずれにしても、そうしたげたが踏み込んで今後の公共料金の値上げあるいは相次ぐ物価の高騰の状況を見ておりますと、政府の六・四というのは非常に厳しい。民間の専門の経済調査機関によりましても九%を下らないだろう。下手をすると二けたにいくだろう。こうした消費者物価の大変な高騰が十分に予想されるわけでございます。  さらに総理府統計局がこの四月四日にことし一月の家計調査報告を発表いたしまして、その中で実質的な収入がマイナスになるという結果を発表しております。こういう点を見てまいりますと、恐らく五十五年度の所得の目減りをこのまま置いておきますと、非常に厳しい影響が家計に出てくるのではないか。こういう感じが数字の上でも、また最近のインフレ、物価高の中からも十分に感じられるわけでございます。私もこの大蔵委員会で何度か申し上げておりますけれども、財政の厳しいということは十分私も承知しておるわけでございますが、こうした昭和四十九年の狂乱物価にも類似した大変な経済環境の中で国民生活の家計が圧迫され、所得が実質的に目減りをしてきている。こういう状況下において、私は五十二年度、五十三年度に実施したあのときの物価調整減税というものはやはり十分に検討していくべきではないか、財政が大変厳しいことは十分に理解はできるわけでございますが、何らかの政策的配慮を年度内に行っていくべきではないか、こういう感じを持っている一人でございます。この点について再度大蔵大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  72. 竹下登

    竹下国務大臣 意見を交えての御質問ごございますが、確かにそのことは理解しての上の御提起でございますものの、財政再建が緊急の課題でございます。そして歳出、歳入両面からいたしまして幅広い角度から財政再建の手だてを検討する、こういう現状にありますときに、今日のわが国の所得税の負担水準とかあるいは課税最低限等々、状況を考えてみますときに、やはりいま所得減税というものに手をつけるだけの財政的な余裕はない。この点については、私は、せっかくの御提言でございますけれども、そういう余地は今日ないというお答えをせざるを得ないというふうに思います。
  73. 宮地正介

    ○宮地委員 この問題は、またいずれ今後の大蔵委員会においても十分にお互いの意見を交えて論議を進めさせていただきたいと思います。  最後に、国税庁の次長が来ておりますので、伺っておきたいと思いますが、最近特に申告所得税の還付申告、これが非常にふえてきております。特に還付金の状況を見ておりますと、四十八年以降五十三年までの実績を見ておりましても、申告所得税、特に五十二年、五十三年は戻し税の実施された時期でもございまして、四十八年が約五十九万三千件、四十九年七十六万三千、五十年六十六万一千、五十一年六十二万、五十二年は戻し税含めて五百二十三万八千、除きましても七十万三千、五十三年は五百三十六万九千、戻し税の分を除いても七十九万二千件。還付に対する申告所得税が非常に件数においても金額においてもふえ続けてきている状況でございます。  そういう中で私は二点ばかり伺っておきたいのですが、最近、たとえば医療費控除あるいは雑損控除あるいは住宅取得控除といったような面のPRも行き届いて国民がそうした確定申告を通じて還付金を求める、こうしたことは私は非常に喜ばしいことだと思います。  しかし、残念ながらそういう中に不正還付の申告事例、こういうものもたびたびマスコミをにぎわしているわけでございますが、五十四年度分の所得税の確定申告期における、不正還付の申告事例、まずこれについての御報告を求めますと同時に、こうしたいわゆる新たな申告所得税の仕事の増加、こういうものに比べまして、国税職員の皆さん方の、今度はこれを実際に担当するところの所得税部門、この人員の面になりますと、五十年九千四百六十三名に対して五十四年九千七百名ということで二・五%程度の伸びに終わっている。質的、量的に非常に仕事が拡大をしておりながら、実際面はそうした面で相当ハードな仕事になっているのではないか。そういう中で、制度面の対策あるいはこうした不正申告に対するいわゆる制度面の防止対策、こうした面についても十分配慮はされていると思いますし、コンピューターなど導入して近代事務にもいろいろ対応されているのは十分私たちも承知しているわけでございますが、何せこうした質的な仕事、量的な仕事の拡大、こういうものが、果たして事務の遂行上、一つのハード事務、あるいはそれが不正申告などに見られるようないわゆる仕事の面においての言うなれば摘発あるいはそのチェックに限界がある、こうした面が見られないかどうか。そういう点で、どうも人員と仕事という面において少しギャップが多過ぎるのではないか、こういう感じもするわけでございますが、この点についての対応をどういうふうに行っているか、国税庁から伺っておきたいと思います。
  74. 田中哲男

    ○田中(哲)政府委員 それではまず不正事件の御報告だけさせていただきたいと思います。  昭和五十四年の確定申告期に発見されました不正還付申告は次の二つの件でございます。  まず第一は、株式を保有しないにもかかわらず配当を受領したものとして、その配当所得に係る源泉所得税をすでに納付済みであるというような形をしまして還付金を詐取しようとしたものでございます。これが一件ございまして、約三十四万円でございますが、これは税務署員が発見して未遂に終わっております。  もう一つの件は、給与所得の源泉徴収票を偽造いたしまして、これはもちろん偽名でございますけれども、幾つかの事業所に勤めて中途退職をした形にしております。そうしますと還付所得がかなり発生いたしますので、そういう何件かのものを合わせまして、それぞれ別の名前で還付申告をして還付金を詐取しようとしたものでございます。これは同一人が四十四件で、合計いたしますと約一千三百万円ほどの不正還付を受給しようとしたものでございまして、これはやはり発見されて未遂に終わっております。
  75. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 続いて後段の御質問についてお答えさせていただきます。  ただいま御質問にございましたように、ここ五十年から五十三年を見ますと、その間において還付申告は約二倍半にふえておりますが、御指摘のとおり、それを取り扱います所得税の徴収並びに管理部門を合わせまして担当の人員はその間ほとんどふえておりません。こういう実情でございます。  われわれといたしましては、還付させていただくべきものは還付しなければならない、還付がふえることは非常に好ましいことと考えておりますが、そのために非常に苦しい努力をしておりまして、ADPの採用あるいは署内における応援体制あるいは超勤その他によりましてそれを何とか現在までこなしている状態でございます。ただ、問題は、御指摘のように単に還付の問題だけに限りませんで、国税職員全体につきまして国税の事務が最近十年間きわめて厳しい環境になっておることは御承知のとおりでございまして、実調率等につきましても、所得税につきましては約二十五年に一遍営庶業所得者の調査が一巡するというふうな非常に激しい状況になっております。そういう点をいろいろ考えてみますと、われわれといたしましては合理化にもやはり限界がある、努力にも限界がある、何とか少なくとも最低必要量だけの増員はお願いしたいと考えて、各関係方面に対する御理解を願っておるところでございます。なお、その努力を今後とも続けてまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
  76. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に大蔵大臣に所見を伺っておきたいと思います。  いまも次長おっしゃいましたように、限界に来ておる。特にいまの不正申告を担当しております、不正防止のためにいろいろ担当しておるのは管理、徴収部門なんですね。これは五十年に比べますと実際に人員が減っておるのですね。七千五百五十四でこれを一〇〇としますと、五十四年は七千三百九十一で九六・五%、こういう実態でございます。この徴収事務、またこうした不正に対する防止、これは非常に重要な問題であろうと思います。そういう実際の不正防止を担当する部門が九六・五という逆現象になっておる。次長も、いろいろ工夫はしておるけれども限界に来ておる。こうした事態を打開していくためにはやはり大臣の勇断あるいは今後のリーダーシップが十分に要求されるわけでございますが、この点について大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  77. 竹下登

    竹下国務大臣 私も国税職員のそういう立場、そして必要性と、それから定員削減計画を進める立場に立つ財政当局の大臣として非常に矛盾を感じながらも、何とか研修会等による資質の向上を図るとか、いろいろな工夫が今日までなされてきておるようでございますが、貴重な意見としてこれからも勉強させていただきたい、大変苦しい立場にある私でございます。
  78. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、中小企業庁の皆さんには時間の関係で質問の機会ができませんことをお許しいただきたいと思います。  、どうもありがとうございました。
  79. 増岡博之

    増岡委員長 渡辺貢君。
  80. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 税務行政の問題を中心に質問をいたしたいと思います。  先日大蔵省から資料をいただいたわけでありますが、「昭和五十四年度の租税及び印紙収入、収入額調」というのがございます。この調査によりますと、昨年度に比べて、たとえば二月末の収入累計総額では前年度の同期を所得税、法人税ともほぼ二〇%余り上回っておる、こういうふうな収入の現状であります。言うまでもなく財政の主な根幹をなすのが租税収入でありまして、こういう点では、私は納税者の皆さんの努力に敬意を表したいというふうに考えておりますが、これは二月末でございますけれども、こうした税収の伸びというのは三月等についてもほぼ同様な傾向でしょうか。その点についてまずお尋ねいたしたいと思います。
  81. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 三月の税収は四月の末または五月の初めでないとちょっと集計ができませんのでわからないのですが、二月末税収以後日銀の窓口の数字などを見ておりますと、その傾向は余り変わっていないようにも思います。ただし、確定申告がどうであったか、これは譲渡所得がかなり大きく入ってきますので、それから五月の法人税がどうなるかということによってことしの税収全体は決まってまいると思います。いまのところちょっとお答えするだけのはっきりした数字を持ち合わせておりません。
  82. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 ただ、全体としては前年度より高いということは間違いないことでございますか。
  83. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 補正後で二十三兆三千九百六十億円の見積額を計上しておるわけでございますが、補正後予算額を下回ることはないというふうに考えております。
  84. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 こうした税収の推移でございますけれども、私、納税者の皆さんの御努力、中にはんのわずか悪質な方がいらっしゃるようでございますけれども、全体としては大変努力をしていらっしゃるというふうに考えるわけです。同時にもう一つは、この税務行政を具体的に執行される税務職員の苦労と申しましょうか努力も大変なものがあるというふうに考えております。  そうした点で、この十年間余りの推移を見ますと、先ほども同僚議員からも質問がございましたが、約十年間の間に申告所得税の該当者あるいは法人数についても一・五倍から二倍ぐらいふえているというふうに統計では出ているようでございますし、逆に税務職員は昭和三十年に比べて昭和五十四年度では五万八百二十六人から五万二千七百九十八人、わずか千九百七十二名の増である、こういう定数の現状でございますけれども、この点については指摘のとおりでございましょうか。
  85. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 ただいまおっしゃった定数のとおりだと考えております。
  86. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 国税職員の定数が現実には二十年間余りほとんど横ばいの中で納税者は増大をする、しかも今日の経済情勢のさまざまな変化の中で個人、法人とも経済活動が大変広域化している、あるいは複雑化をしているという現状であります。そういう点では税務職員の皆さんの仕事の量だけの増加ではなくて、その中身と申しますか質の面でもいろいろ苦労が多いというふうに考えます。先日私のところにも「国税庁三十年史」という厚い本をいただきましたが、この中でも機構の合理化あるいは事務の簡素化、効率化などに努力をしている、こういうふうなことが書かれてわります。  しかし、いずれにいたしましても、具体的に執行するのは人であります。税務署の職員でございます。そういう点で肉体的にも精神的にも相当な御苦労があろうかと思うのですが、これは私が得た資料でございますけれども、最近三年間の現職の国税職員が亡くなられている状況一つの統計資料として出されております。これは十局の統計資料でございますけれども昭和五十二年度、五十三年度、五十四年度ということで、これは現職の方ですが、二百六十七名亡くなっております。この中で 番年齢的にも多いのが四十歳代と五十歳代の前半、最も働き盛りの方が亡くなっている。二百六十七名のうち、四十歳代と五十歳代の前半の方を合わせると二百九名ということでございますけれども、これは職員の方にとってみれば大変ショックだと思いますし、先ほども大臣が、一面では行政機構の改革をしなければいけない、二面では過重な仕事を税務職員の皆さんに課さたければ現在の税務行政が正常に執行できないというお話がございましたけれども、こういう実態についてどのようにお考えでしょうか。
  87. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 突然の御質問なので、その計数の確たるところは把握しておりませんが、おっしゃる全体の流れとしては承知しております。  先ほど申しましたように、合理化、簡素化その他によりまして、何とか税務の執行をがんばっていくという状況でございまして、そのことと、かだいま言われました現職において亡くなられた方の数との間に関係があるかないかということは、私、ちょっとこの場で確認するだけの材料を全く持ち合わせておりませんけれども、もしそのようなことがあれば大変に残念、不本意なことであると考えている次第でございます。
  88. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 亡くなられる病名の中では、特に心不全とかあるいは肝臓障害などが多いというふうに聞いているわけであります。そういう点で、今後とも税務行政全体を執行されていく場合に、そうした職員の皆さんの現実的な健康の問題等についてもぜひひとつ十分な御配慮をいただきたい、このように考えるわけです。  さて、こうした中でたくさんの納税者と接し、非常に複雑な仕事をやられるわけでありますが、当然、税務署の職員の皆さんは公平な税務行政を執行されるというふうに私どもは確信をいたしております。納税者との関係で公平な、また正確な行政を執行していく上で、とりわけその職場における自由濶達な雰囲気あるいは税務行政についての責任感、また当局の側としては、職場における公平さが保たれていかなければ、本当に活力のある税務行政を進めることができないというふうに考えるわけです。今日まで本院におきましてもそうした立場からの附帯決議がされております。また、たびたび本大蔵委員会においてもこうした立場からの指摘発言がされているわけでありますが、特に職場における公平の原則を確立をしていく、働きやすい職場をつくっていく、こういう点では、いわゆるいま国税の場合に労働組合が第一組合あるいは第二組合というふうに分かれているわけでありますれども、当然、どの組合に所属している組合員であろうとも、そうした公平の原則の立場というのは行政当局者としては崩してはならないというふうに考えるわけなんです。かつて現長官である磯邊次長さんも、昭和五十年の三月四日の本委員会でそうした趣旨の発言をしていらっしゃるわけでありますが、改めてその点についての御見解を承りたいと思います。
  89. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 御指摘のとおり、職場環境の整備、これは物的な意味も人的な意味も含めまして、しっかりした税務行政を行っていくためにぜひとも必要なものと考えております。そういう意味で、職場における公平さというものの実現にはもとより心をいたしておりまして、ただいま言われておりますような職員団体加入の有無あるいはその所属職員団体のいかんによっていろいろな差別を行うというふうなことは全く考えてもいませんし、そういう事実もないものと、このように心得ております。
  90. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 いまの伊豫田さんの御答弁でございます。私もそのように考えておりますし、また、現実の行政の執行の中ではそうした事態が起こらないことを私も望んでおります。しかし、残念ながら、幾つかの点できわめて不当な状態が起きているということを指摘をしなければならないと思うのです。具体的な幾つかの点について申し上げたいと思うのです。  これはきわめて最近、関信局の新潟で起きた問題であります。しかも、その直接な行為の当事者というのは現職の税務署の署長さんであります。一応お名前はここでは控えておきたいというふうに思うのですが、この署長さんのやった幾つかの行為がございますけれども、その点について御見解を承りたいと思うのです。  一つは、署長として直接の部下、職員に対して署長という権限、その地位を利用したと言っても過言ではないと思うのですが、公務中にたびたび署長室に呼び出しをかけて、そして仮にA君といたします、そのA君の所属している全国税労働組合の脱退を勤務時間中に強要する、こういうような事態がございました。二つ目は、全国税に入っていると人事の面でも差別を受けて損をするとか、あるいは関信国税に入れば特別昇給や配転希望を実現する、そういう点ではきわめて有利であるというふうな利益誘導ともとられるような趣旨の話をしておりますし、しかも勤務時間中に、その署長さんが四時ごろですか、A君を宿屋に呼び出してそこで話をし、しかも酒食を出させる、こういうような事態が起きているわけであります。こうした点について、国税当局の方でこの事実関係について御存じかどうか、まず承りたいと思います。
  91. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 ただいまのところ、そのような事実があったという報告を受けておりません。
  92. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 受けてないということでありますけれども、仮に——仮にというのはちょっとある意味では不適当かもわかりません。私の方はきわめて具体的な事実として聞いておりますし、そのA君の弁護士に対する供述録取等についても拝見をいたしているわけなんですが、こうした事態については、そういう事態が起きているということを仮定した場合に、一般論としてもどのような御見解をお持ちでございましょうか。
  93. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 ただいま申し上げましたように、そのような事実があったという報告を受けておりません。したがいまして、ただいまおっしゃいましたような、たとえば公務中の呼び出しとか、あるいは利益誘導とか、食を供したとかいうことにつきましても、一般論としてお答えいたしますのは、むしろ現実の問題に絡むおそれがございますし、またそういう場合に、われわれの方といたしましても事実をよく承知していない段階でそれに関連した一般論を申し上げるのは非常に誤解されやすい問題がございますので、この席でのそういう、われわれの方からすれば、仮にという話でございますが、これについての御答弁は差し控えさせていただきたい、このように思う次第でございます。
  94. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 ちょっと核心に迫るとすぐそういうふうな御答弁でございますけれども、これはいままで本委員会でもございましたけれども、たとえばミスターK・ハマダの問題でも、一般論としてもなかなかお答えがありませんでしたが、今日ではきわめて具体的な事実となっているわけです。これは明らかに不当労働行為であるというふうに私は考えておりますし、同時に、当該の署長がみずからの職権をもって、しかも時間中にこうした強要を行っているということでありますので、単なる不当労働行為ではなくて、公務員法にも違反をする性格を持っている、こういうふうに考えるわけです。そうした点で、私は、早急にこの問題について、これは単に一人の署長、一人の職員という問題だけではなくて、冒頭にも触れましたように、納税者との関係においても公平な税務行政を執行していく、その前提として職場における職員一人一人の力が本当に発揮できるような公平な人事管理やあるいは職場の民主的な慣行というのは当然の前提であるというふうに考えるわけです。そういう意味で、これはきわめて重大な問題であるというふうに指摘をしなければなりません。  こうした点で改めてもう一回お伺いをいたしたいと思いますけれども、こうした問題等について基本的にどのようにお考えであるか、あるいはそういう事態が、私が公式な席で指摘をしたわけでありますから、聞いていませんというだけではなくて、国税の最高の責任者として、こうした事態に対して、公式の席上で私は問題にしたわけでありますから、この点についてどのように対処をされるか、お答えいただきたいと思います。
  95. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 ただいま委員の御質問に関連いたしまして、実は二つ問題がございます。  一つは、そのような事実はわれわれはあったと信じておりませんし、また信じたくもございません。  それから二つ目は、署長が申しました中で、ある組合に入っていることをもって人事上その他の差別をしている、その方が有利であるというふうなことを署長自身が言ったように言われますが、われわれといたしましては、そのようなことのないよう常時配意するとともに、また麾下の職員につきましてそれぞれの指導を行っているところでございますので、その発言の事実そのものについて、内容そのものについて、またこれもわれわれとして非常に困る。二点ございます。  全体といたしまして、われわれといたしましては、ただいまの御指摘、こういう席でのはっきりした事実の御指摘もございますので、事実関係調査さしていただきます。  ただ、あらかじめ申し上げますが、やはりこういう問題は双方の主張に意見の相違や事実についての食い違いがいろいろあるおそれがございますので、ただいまの席で先生のおっしゃいましたことがそのまま事実というよりも、これから調査さしていただくべき問題である、このようにお考えいただければと考えております。われわれとしては調査させていただきます。
  96. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 それでは調査をしていただきたいと思うのですが、これは委員会の席上ではなくとも、また後ほどその結果について次長さんなりにお尋ねをいたしたいというふうに思います。特定の氏名を挙げませんでしたのは、そういう点も私の方で十分考慮をいたしました。  なお、ある意味では被害者でありますけれども、こうしたいわゆる内部からの告発といいましょうか、問題があったということで、当然その職員に対する不当な扱いというか、そういうことがないように、ひとつ十分な御配慮をいただきたいというふうに考えるわけであります。  そういう点で、この問題については改めて客観的な事実を正確に把握して、そして公平な立場からの人事管理を進めていくということを特に希望いたしたいと思います。  次に、これはやはり全国税の組合員に対する、客観的に見て差別ではないかというふうに私も考えられますのでお尋ねをしたいと思うのですが、たとえば税大三十一期生、これは五等級でありますけれども、ほぼ勤続八年から十年、この中で、全国税の組合員の場合に五等級昇格が三九%、一般の職員の場合には八二%という数字が出されております。また、税大二十二期の場合、これは三等級への昇格でありますけれども、勤続十八年からほぼ二十年、全国税の組合に属している場合にはゼロ、一人も昇格がない。一般の方の場合には約二〇%ぐらいの三等級への昇格である。さらに、戦後の昭和三十一年卒業の税講の高等科八期の卒業でありますが、もう二十五年間ぐらい勤務をされております。東京局の場合には三十八名いらっしゃいますけれども、そのうち統括官クラスに昇格をしていない方が四名です。四名のうち二名は病弱あるいは高年齢ということでありますが、あとの三名は全国税の組合員であるということで、こうした客観的な統計を見ても、何らかの人事管理の上での差別があるのではないかというふうに考えられますけれども、もしそういう問題があればやはり改善を図らなければならないというふうに考えているわけですが、この点についての御見解を承りたいと思います。
  97. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、そういう差別につきましては、それをいたす考えもなく事実もないもの、このように心得ております。  ただいま委員の挙げられました各種の数字につきましては、個別の局に関することでもございますので、私、手元にそれに相応する数字を持っておりませんけれども、ある部分を取り上げますと極端にそういう傾向が出る場合もそれはあるかもしれませんが、全体としてながめました場合に、そういう御主張があることは承知しておりますし、決して先生の方でも根拠のない数字をお挙げになっているものとは思いません。ただ、それをもって直ちに当方が差別をしているのではないかと言われるのは、私の方としては差別をしておりませんものですからいささか困りますので、やはり統計にはいろいろ各方面からの読み方があるのではないか、このような気がしております。
  98. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 ないというお答えでありますが、統計というのはある意味では客観的な事実を反映しているわけです。統計の読み方もいろいろあろうかと思うのですけれども、改めて公平な立場からこうした結果について注目をしていただきたいというふうに私は思うわけであります。いろいろな要素や前提をつけないで、こうした事実に対してどういうふうに改善策を図っていくのか、あるいは公平な人事管理を進めていくのか、こういう努力が今日必要であるというふうに考えますので、その点を改めて要望いたしたいと思います。  最後に、女子職員の採用の問題でございますが、昭和五十四年度採用されました国税職員千百七十一名のうち二百五十名、二一・三%が女子の職員であります。しかし、この女子職員の場合には、当初からいわゆる税務専門職への登用の道が開かれていないというのが現実です。しかし、昭和五十五年度はかなり大胆な改善をされたと思うわけでありますけれども、大卒の方については国税専門官への直接的な登用の道を開くということで昭和五十五年度からの実施というお話を聞いております。五十五年度大卒の国税専門官の採用があったのかどうか、あるいは、もう一点はいわゆる初級職と言われております国家公務員のクラスでありますが、今後女子職員にもそういう道を開く、採用の当初から門戸を開くという点でのお考えがあるかどうか、この点についてお承りをいたしたいと思います。  そして最後に、大蔵大臣から、現在までの幾つかの点にわたる具体的な問題点を含めた質疑も行ったわけでありますけれども、冒頭触れましたように、大変厳しい財政事情の中で非常に苦労をし努力をしていらっしゃる国税職員の第一線でのそうした労力に報いなければならないというふうに私は考えるわけでありますが、そういう立場からの大臣の御所見を最後にお承りいたしたいと思います。
  99. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 採用の問題についてお答えいたします。  国税専門官については、五十五年度、すなわち本年度に行います試験から女子を採用することにいたしておりますので、それが現実に専門官として動き始めますのは来年の四月一日ということでございます。それまで国税専門官について女子の採用はございません。  それから、ただいままで約二〇%、おっしゃったとおりの数字の女子を採用いたしておりますが、これをどのように遇してまいるかという問題はいろいろ問題があることは十分承知しております。ただ、やはり婦人職員につきましては、転勤が著しく困難な問題とか、あるいは調査、検査、滞納処分等の外務事務について、これに耐え得る人たちが果たしてどれだけいるか、あるいは定着の度合い等の問題がございますので、ただいまの段階では初級税務職につきましては女子を採用しておりません。男子のみでございます。行政職として女子を採用し、それなりの遇し方をいたしておるわけでございます。今後とも検討の課題だとは考えております。
  100. 竹下登

    竹下国務大臣 国税職員の皆さん方がずいぶん苦労していらっしゃるという指摘については、私も同感でございます。これに対しては、われわれできる限りの報いるための努力をしなければならぬというふうに考えております。
  101. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 時間でありますので、終わりたいと思います。  なお、迫田さんにはまたの機会にさせていただきます。
  102. 増岡博之

    増岡委員長 竹本孫一君。
  103. 竹本孫一

    ○竹本委員 最近、雑誌に「クレージーアメリカ」という見出しがついた部分があった。確かに、最近のアメリカのソ連やイランに対する反応というのは少し過剰反応である、バランスを失してはいないかというような感じを持っております。もちろんソ連のアフガニスタン侵略といい、あるいはイランの大使館に対するいろいろなやり方といい、国際法上も許しがたい問題であることは間違いありませんけれども、これに対するアメリカの反応というのはいささか過剰反応のような感じを持っておる。私がいま問題にしたいのは、その点もありますけれども、その過剰反応を示しつつあるアメリカに対して、日本が少し引きずられているような形を非常に印象づけるということであります。いまアメリカの強硬派でしょう、ブレジンスキーさんの「ひよわな花・日本」という書物がある。この書物は、実は私ども民社党の数名の者が数年前に、ちょうど本ができる前にブレジンスキーさんの家へ訪問していろいろ懇談したことがありますが、後で送ってきていただいたのですけれども、その本の中に書いてあるのは、日本の外交は路線がはっきりしない、アンビギュイティーだということを言っておる。それだけならばまだいいのですけれども、その後に、常に日本はアメリカの後をくっついてくるであろうということが書いてある。何だか人をばかにしたような感じを持ったのですけれども、最近の日本の動きを見ていると、その言葉を——ビハインドという言葉が書いてあったが、その言葉を思い出す。  私はそういう意味で最近のアメリカのあり方も、あるいは日本政府のあり方もちょっと遺憾に思う点があるのですけれども、そのことは、きょうは時間もありませんから、ただ前置きにいたしておきまして、問題は防衛費の問題であります。防衛費が〇・九%でいいか悪いか、いろいろ議論がありますし、私どもも防衛の問題については、大臣も御承知のように、最も真剣に取り組んでおる方でございますけれども、しかし、前提条件としては、一つは大きな総合的な平和計画というものがなければならぬ。その中で、防衛の問題は位置づけるべきである。また防衛についてはシビリアンコントロールというものが先行しなければならぬ、そういう二つの前提において問題を考えておるわけであります。  そこで、私がいま問題にしたいのは防衛の問題あるいは防衛の予算を論ずる場合に、アメリカに引きずられた形で防衛費をふやすとか、防衛を論ずるとかいう形は避けていきたい。それからまた、最近では財界が非常に勇敢に防衛費をふやせ、武器輸出をやれというような御意見もある。これも余り愉快な印象を与えない。そういう意味で私は防衛は大切だと思いますが、大切であるだけに日本国民の自主的、自発的意思に基づいてみずからの判断と責任において決めるべきである。その防衛の内容、方向あるいは予算の金額といったようなものは自主的に誇りと責任を持って決めるべきである。引きずられてやるという形や、財界から催促されてやるというような形は最も厳粛に避けるべきである、こう思いますが、大臣のお考えを承っておきたい。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 きわめて簡単に申しますと、二つの点があろうと思うのであります。一つは、やはり昭和三十二年の五月の国防会議及び閣議決定の「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。」ということを踏まえていなければならないということと、次には昭和五十一年十月二十九日の閣議決定の「質的な充実向上に配意しつつこれらを維持することを基本とし、その具体的実施に際しては、そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、次の諸点に留意して行うものとする。」そうして、同じく十一月五日の「当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」準拠するのはこれであろうと私は思うのであります。  いま御指摘は、それは百も承知の上で、いわばあくまでもわが国の防衛であるから日本自身の問題として決めるべきであろう、こういう御指摘でございますが、総理からも御答弁申し上げておりますように、まさにその点は日本独自が決めるべき問題であるというふうに私ども理解をいたしております。
  105. 竹本孫一

    ○竹本委員 次に、きょうはちょっと増税の問題についてお伺いをし、また意見を申し上げたいと思う。私は後で申し上げますが、一般消費税が取り上げられましたときに、これでいって三兆円の増収を得よう、大きな見通しとしておおむね三兆円の収入を得ようということを言われたと思うのですね。私は、その点がいま問題になるのですけれども、あの一般消費税国民理解を得られなかったということで終わったのです。この前も指摘しましたけれども、それだけでは言葉が足りない。得られなかったから遺憾であるとか遺憾でないとかいう言葉がないのもおかしい。特に、得られなかったらこうするのだ、財政再建についてはこういう行き方をするのだという第二の、セカンダリーの改善計画というか増収計画がなければならぬと思うのですね。  大口融資規制について三井銀行がクリアができなかった点について大臣も対処されたわけでございますが、そのどきには細かいことは忘れましたけれども、まずそれができなくて陳謝をする、次にはいまから少なくとも二年以内にこれをクリアをするという改善計画を改めて出す、それだけのことを責任を持ってやり得なかったことについて責任を明らかにする意味でボーナスを返上するというようなことが中心であったと思います。支店を五つほど返上するという問題もありましたが、そういうことで一つの問題を責任を持って提案する、あるいは責任を持って提案されたという場合には、それに対処する方法としてはいま言ったような責任を明確にするとともに、次善の改善計画というものを出すべきであると思うのですね。  増収を三兆円というものをねらいとして一般消費税を言われたわけでございますが、それができなかった場合に政府が言ったのは、理解を得られなかったというぼくの言う物理学的表現で終わっておって、遺憾であるとも言わなければ次善にはこういう形で考えるとも言わない。より根本的に言えば三兆円の増収というものが日本の財政の決め手になるのだ、それは絶対に必要だということについての解明がほとんどなされていないと思うのです。しかし、私はいまざっと考えてみると、やはり日本の財政を本当に再建するためには、そして五十九年までに赤字公債の発行はやめてしまう、そして六十九年までには何とか払っていくのだ、こういう財政計画が本当に実行可能なためには、好むと好まざるとにかかわらずそれこそ三兆円ぐらいの増収はいまにして考えておかなければ、どうしてもそろばんが合わないと私は思うのです。そろばんが合うというお考えがあるならば、改めて承って結構ですが、私が見るところほかに方法はない。どういう増税をやるかということについては、きょうは時間もありませんし、いま参議院選の前でございますから論議するのが適当であるかどうかいろいろ考えられますから、そこは遠慮いたしますが、いずれにしても三兆円くらいの増収は絶対に必要であると思うわけです。  そこでお伺いをするのですけれども一般消費税の問題は問題点を指摘するにとどめておきますが、問題はたとえば五十六年度の予算編成、いろいろ何とかレビューというのはよくはやりますからよくわかりませんが、サマーレビューから今度はウィンターレビュー、スプリングレビューとかいろいろ言っておられるようだけれども、何のレビューでも結構ですけれども、来年度の予算編成をいまから考えておかなければならぬわけですけれども、まず大臣一つお伺いしたいことは、来年度は公債の減額を——ことしは一兆円やられた。これは英断であったというか財政再建の手がかりをつかむという意味においては非常に大きな努力であったと評価をしております。もちろん、私どもは、民社党としては一兆三千億円ということを言ったのですから十分だとは言いかねますけれども、とにかく大変な努力であったことは評価しなければならない。  そこで、大臣、五十九年度までにいま七兆四千億か出していく赤字公債をゼロにしていくためには、この間も同僚の皆さんが論議しておられましたけれども、少なくとも本当は毎年二兆円ずつぐらい減らしていかないとゼロになっていかないと思うのですね。そういう意味でお伺いするのですけれども、来年度もことしにならってやはり公債の減額というものについて先手を打ってというか、とにかくイニシアをとってひとつ減額のまず額を決めるという考え方はどうか。その減額の場合には一兆円と二兆円と二つありますけれども、毎年一兆円ずつ減らしていったのではどうしても五十九年度にゼロにするというふうにはならないというふうに思うのですから、来年はやはり二兆円の減額を、社会党さんはことしでも二兆円ということを言われたと思いますが、二兆円の減額ぐらいは思い切ってやらないと財政再建の糸口がつかめないと思うのですけれども、その点はどういうお考えであるか。  時間がありませんからまとめて言いますが、それからもう一つ、その減額をやるということを一兆円とするか二兆円とするかによって一兆円ほど額が違いますけれども、われわれ大変細かいデータも計算するひまもありませんから、大ざっぱな議論になりますが、国債費の増額、それから地方交付税の当然にふえていく額、それから二兆円とよく言われる当然増経費、そういうものを三つ合わせて四兆円以下におさめるということは、非常に困難だろうと思うのですね。主計局いらっしゃいますから後で承ってもいいが、四兆円に仮に押さえ込むとしても、大変むずかしい。次に、いま申しました赤字国債発行を一兆円ないし二兆円減額をするということになると、またそれだけの収入を裏づけなければならぬ。したがいまして、国債費、地方交付税、当然増を四兆円としますと、仮に二兆円ということになれば、もうすでに六兆円になります。先ほど申しました防衛費の問題もこれにプラスアルファとして考えなければならぬのではないかと思いますが、これは後で御答弁を承ってからにいたしまして、一応六兆円と仮に押さえる。そこで問題は、ことしの二十六兆四千百十億ですか、という税収というものがどのくらいふえていくかということを考えますと、従来の税収の伸びと従来言われておる弾性値というものを計算して、これは大蔵省試算にも出ておったと思いますが、大体三兆一千九百億ですか、その辺の増収しか考えられない。六兆マイナス三兆円ということになりますと、三兆円の増税が必要になってくる。それがいわゆる一般消費税のときに大蔵当局が、全部で言ったか一部で言ったか知りませんが、言われた三兆円とある意味において数字が見合っておる、そういうふうに私は思うわけです。  そこで、大臣にまとめてお伺いしますが、赤字国債の増発は、来年度の予算編成については、これから何々レビューをやられるとしても、大きな方針としてまず二兆円減らすのか一兆円減らすのかを決めてもらう必要がありはしないか。どういうお考えであるか。それから、いま私が指摘しましたような数字で大ざっぱに六兆円マイナス三兆円ということになれば、三兆円の増税は、中身は後で論議するとしまして、金額的には必要であると思うけれども、その点についてはどういう御判断に立っておられるか。大臣から大きな判断を聞きたいし、主計局もお見えですから、主計局はいまの私の言う概算に対して、でたらめな数字を言っているかある程度真実に近いか、その辺についての御指摘をいただきたい。
  106. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、流れとして、竹本委員のお話しになった点については、私といたしましても理解のできるところでございます。したがいまして、いろいろな言い方があるのでございましょうが、私は、いわゆる一般消費税(仮称)というものは、選挙の結果国民の側からヘジテートされたというふうな表現を使ったということもございますが、それを財政再建の手だてとして今後考えろと言われたのは、やはり国会決議そのものであろうと思うのであります。その国会決議というのは、大変専門的に苦心してつくっていただいておりますので、最終的には歳入、歳出両面にわたって国民各界各層の意見を広く聞いてこれに取り組めという、鞭撻ともどれる決議になっておるわけであります。したがって、五十五年度におきましては、委員御承知のとおり、いわゆる出るを制するという角度と、そして御協力いただきました租税特別措置の整理合理化、給与所得控除の見直し、退職給与引当金の見直し、そういうことによりましていわば予算を組むことができたわけであります。しかしながら、五十六年度以降の課題といたしましては、これは本当にわれわれとしても、今日経済が順調に回復しておりますものの、しかし、税収の伸びを今後も引き続き大きく期待するということはとうてい困難であると考えてみますならば、まさに財源事情は非常に厳しくなるという御指摘のとおりであると思うわけであります。したがいまして、あらゆる角度から検討を重ねていかなければならないわけでありますが、いずれにいたしましても、税制調査会にすでに小委員会等をつくりまして、この検討に対応する最初の諸準備は整ったということではなかろうかと思うのであります。  しこうして、公債減額の問題であります。これは、むしろ私どもがかくありたいということをおっしゃっていただいたような感じがいたしております。今年の場合、私は、初めに一兆円の減額ありきというような形で予算フレームというものがつくられて、それが、結局フレーム全体が閣議了解されたのじゃなくして、一兆円減額するということだけが閣議了解となったということが、むしろ私は結果としてよかったのではなかろうかと思っております。私どもも、十三兆円台にするためには、いま竹本委員指摘の一兆三千億ということも途中におきましては考えました。しかし、結果としては一兆円の減額ということになったわけでございますけれども、従来も貫いてきましたように、いまにわかに断定するわけにはまいりませんけれども、年度途中においてもし五十四年度のような状態が仮に出たとすれば、そうした方針を貫いていかなければならないことでございますし、また、当然のこととして、私どもは、経済の情勢を見ながら、いま幾らをどうするということを言うような段階ではございませんものの、予算編成に当たって、いつの時点でこの理解を得るかという点においては、やはり初めに何々の減額ありきという姿勢対応していかなければならないではなかろうか、このように私どもも考えておるわけでございます。  非常に漠然としたことを申しましたが、以上で私のお答えを終わらしていただきまして、主税局長からお答えをいたします。
  107. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 いまお話のございました数字でございますが、いろいろ前提の置き方によって変わってくると思いますけれども、大体来年度の成長率を一割からこの前の財政収支試算のように一一%ぐらいの名目成長率で考えまして、弾性値一・二ということでございますと三兆二千億前後という数字になろうかと思います。したがって、先ほどお示しのありました数字は、大きなオーダーとしてはそういうことに私ども認識いたします。
  108. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 歳出の面にお触れになりました計数につきましての私どもの感触でございますが、申し上げるまでもなくまだ五十五年度が始まったばかりでございまして、具体的に五十六年度の歳出の増要因というものが計数的にどの程度かということは、なかなか明確な形ではお答えすることが困難であることは御理解いただけるかと存じますが、きわめて大ざっぱに、まず御指摘がございました国債費でございます。これも、もちろん来年度、五十六年度の公債の発行額によっても違ってまいりますし、それから国債の金利がどうなるかといったようなことでも変わってはまいりますけれども、ごく大ざっぱに私どもが達観をいたしますと、現在のような国債発行条件が五十六年度にも続くと仮定をいたしますと、大体一兆四、五千億円程度国債費の増加になるのではないかというような感触を持っております。  それから、第二点の交付税でございますが、これも申し上げるまでもなく国税三税の税収がどのくらいになるかということにかかってまいるわけでございまして、そういう意味でこれはなかなか金額を申し上げにくい点ではございますが、これも仮に先ほど主税局長からお話がございましたような税収の見方をし、それからまた、交付税の弾性値は従来大体一・三というような感じになっておりますので、そういう感触を踏まえて達観をいたしますと、これも八千億程度の交付税の増ということになるのではなかろうかという感じがいたしております。そういたしますと、先ほどの国債費の一兆四、五千億円程度の増と交付税の八千億円程度の増と足しますと、二兆二、三千億円の増ということに相なるわけでございます。これを先ほど主税局長の方から御説明ございました税収の増が三兆二千億円程度ということにいたしますと、三兆二千億円の増から国債費と交付税の増を差し引きますと、一兆円あるいは一兆円弱のものが残るということにその計算ではなるわけでございます。ただし、竹本委員指摘のように、これは公債の発行がこの計算の中には入っておりませんから、もしも国債発行額を五十五年度よりも一兆円減額をすると仮にいたしますと、先ほど申しました税収の増から国債費、交付税の増を差し引いた残りの一兆円がらみのものが公債の発行減ということになりまして、それで食われてしまうということになるわけでございます。そういたしますと、国債費、交付税を除きますいわゆる一般歳出の増に回し得る財源は全然ない、こういうような計算になろうかと存じます。また、仮に公債の発行額を二兆円減らすということにいたしますと、一般歳出の方は増加するどころか、一般歳出の方ではむしろ逆に一兆円の減を立てないとそろばんが合わない、こういうような計算になるわけでございます。ただ、くどいようでございますが、ただいま申しましたいろいろの数字は、ごく大ざっぱな感触という程度のものというふうに御理解をいただきたいと存じます。
  109. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの御答弁は、当然増と言われる、われわれはよくおおむね二兆円というように押さえておりますけれども、その辺の分析が果たして十分であるかというような感じを受けます。  しかし、もう時間がありませんから、これは一応別にして、もし当然増というものを切り捨てるのだということになればまた話が変わるわけですから、どういうお考えか詰めなければならぬと思いますが、それは一応別にしまして、いわゆる自然増収というものを毎年大きく期待することもできない。それから行政機構の改革あるいは不公平税制改正、こういう問題も、演説としてはなかなかはででございますけれども、実際にどれだけの金額を予算編成の上で期待し得るかということになると、余り大きなものは期待できない。そういう意味で、私はやはり財政の再建、しかもその再建の手がかりを本当につかむのだということになれば、いま私の申しました二兆円もしくは三兆円の増収も考え、また国債発行については二兆円くらいは減らすのだということをまず大前提にして、すべてのサマーレビュー、スプリングレビューは大前提を持たない——どうも政府はことさらに押さえておられる、隠しておられるという点もわかりますけれども、大前提も持たぬでコンセンサスを得たいとか、いや理解を得たいとかよく言われるけれども、どっちを向いて理解をすればいいのかという大きな方向というものが示されないと本当は議論にならぬ。いま示せと言うことも意地の悪い質問になりそうですから申しませんけれども国債は二兆円なら二兆円減額するというようなそれこそ大前提に立って、したがって、どうしてもこれだけの増税は考えて御協力を願わなければならぬという政府のイニシアチブを発揮してもらわないと、国民のコンセンサスをまともに得るということは困難ではないか。初めに一兆円ありきならいいけれども、初めにヘジテーションありきというようなことにならないように。初めに政府がためらいを持っちゃうと、後、話がいたずらに複雑になる。その辺はひとつ信念を持って、勇気を持ってやってもらいたいと思う。     〔委員長退席、稲村(利)委員長代理着席〕  そこで、これは要望になると思うのですけれども、二つほど申し上げたい。私の同僚からも御質問申し上げましたけれども、たとえば二つのうちの第一は、今度国会に出されておる日本国有鉄道経営再建促進特別措置法という法律がある。この法律は、私は国鉄のあり方はだらしがなくて余り賛成でないが、しかし本法の第二条によれば「昭和六十年度までにその経営の健全性を確保するための基盤を確立し、引き続き、速やかにその事業の収支の均衡の回復を図ることに置くものとする。」経営の健全性の確保、その基盤を確立する、したがってまた収支の均衡を速やかに図る。そのための経営改善計画は第四条に、経営の改善に関する基本方針、第二号には事業量やら職員数まできちんと決めよう、その他収入の問題あるいは経営の近代化、合理化の問題、第七号目には収支の改善目標といったようなものをちゃんと掲げて、これに基づく経営改善計画の実施状況については報告書もつくれ、この報告書に検討も加えるということが書いてある。ドイツもそうですけれども、私どもが財政改善の特別措置法をつくったらどうかということを言うのは、簡単に言えば、鉄道のような赤字でまいったところでも、六十年なら六十年をめどにして経営の健全化の基盤をつくる、そして速やかに収支の均衡を図る。ほとんど言葉そのとおり、日本の財政の再建を考える場合にこういう法律が必要ではないか。いま仮に大蔵当局が二兆円の国債減額ということを言われるとすると、われわれも含めて、いやもう少し予算は出せとか、この予算をつけろとかいうようなことになりまして食われてしまって、二兆円と思ったらまた一兆円になったというようなことにならぬとも限らない。そういうことを縛る意味で、経営改善計画というものを法律でひとつ縛ってみたらどうか。国鉄の場合もそうでありますけれども、収支の均衡を図るということはなまやさしい問題ではないので、そのくらいの基本的な考え方が必要ではないかということが一つであります。     〔稲村(利)委員長代理退席、委員長着席〕  それから第二番目は、これは要望でございますが、この間も申し上げましたけれども、収支の改善を図るということになると、いま申しました増税の問題も含めて、戦後高度成長期になれてきた昭和元禄的なわれわれの生活のスタイルというものを思い切って切りかえなければならぬと思うのです。そしてまたいまはインフレの危機もありますので、インフレを抑えるということのためにも思い切った手を打たなければならぬと思うのです。ある経済学者は、日本のいまの生活のレベルを三五%落としたらどうかと私に言われたことがある。三五%の根拠はまだつまびらかにしておりませんけれども国債依存率三三%ですから、大体国債に依存しない範囲のという意味で、財政についても生活のスタイルについてもそういうことが考えられるかもしれません。  最近発表されました東大の先生の内田忠夫さんの経済成長率に対する財政再建も含めた考え方は、今度の経済成長は二・七%まで落とせということを言っているのですね。要するに、経済成長にしてもわれわれの生活の中身にしても、残念ながらこの際はインフレを克服するために落とさなければならぬ、そうしなければ現状を打破することはできないのだ。これは厳しい現実なのです。私はやはり政府のイニシアチブ、指導性によって、いまは日本経済の現実、日本の財政の現実はこうなっているのだということをもう少し国民にわかるように、大蔵省もいろいろ努力をされておるけれども、明確に示される必要があるのではないか。この間もちょっと申し上げましたけれども、イギリスのハウ大蔵大臣は、この間の財政演説ではインツー・リアリズム、要するに現実を見るということに突進をしようと呼びかけておる。そして彼がいろいろの増税を考え、財政予算の削減をやったことを彼みずからが耐乏生活プログラム、オーステリティープログラムだ、経済現実主義の上に立った耐乏生活プログラムに従ってこれをやるんだ、こういうふうに言っておる。私は、政府がこの際は、厳しい訴えになりますけれども国民に向かってそうしたプログラムをつくり、訴える必要がありはしないか。国鉄にならったような再建の特別措置法が要りはしないか。また、イギリスその他どこでも大体そうですが、カーターもそうですが、とにかく財政の現実、経済のリアリズムにわれわれは勇気を持って直面、対決していく必要がありはしないか。要望を兼ねて大臣のお考えも承って終わりにいたします。
  110. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的な考え方は私どもにも十分理解できるところであります。国鉄の再建に関する法律案が今国会に提案されておるわけでありますが、私は、提案されるに至った経過等を踏まえました場合に、それが提案されるという環境がある程度整ったところに提案という事実行為ができたのではないかと思うのであります。したがって、ドイツで行われました財政再建法というようなものも、まずその場合にその環境がいかにして整うか、それがよく言われる国民とのコンセンサスを得るのがまず先ではないか、こういうことになろうかと思うのであります。そのコンセンサスを得るための努力というのは、さらに現実を知らしむる政府の努力がなかったらとうていコンセンサスなどは得られるものではない。したがって、現実を知らすとともに、政府自体はこれだけのことはいたしました、そういうことを示していくために、国会の論議等を通じましたり、あるいはもろもろの手法を通じて現実を知らしむるという立場はこれからも貫いていかなければならぬ。そのことがコンセンサスにつながり、そしてそのことが環境が熟していくという一つのプロセスになるではなかろうか、そういうふうに委員の鞭撻も含めて理解をいたしておるところであります。
  111. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。      ————◇—————
  112. 増岡博之

    増岡委員長 次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、政府より提案理由説明を求めます。竹下大蔵大臣
  113. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、国際通貨基金に関する部分について御説明申し上げます。  最近の世界経済情勢下において、国際通貨基金が世界経済の発展に応じた融資能力の拡充を図ることが必要と考えられ、このため先般その資金規模を現行の約三百九十億特別引出権から約五百八十六億特別引出権へと五〇%増額することが合意されました。これに伴い、各加盟国の出資額を原則として一律五〇%増額することとされ、わが国としても、世界経済の発展に貢献する見地から、出資額を現行の十六億五千九百万特別引出権から二十四億八千八百五十万特別引出権へと五〇%増額したいと考えております。  次に、国際復興開発銀行及び国際開発協会に関する部分について御説明申し上げます。  国際復興開発銀行は、通称世界銀行の名で知られておりますが、わが国は任命理事国として、より積極的にその運営に関与するため、わが国発言権を増加させることとし、四億協定ドルの追加出資を行いたいと考えております。  また、国際開発協会は、世界銀行の姉妹機関として、貧困開発途上国に対し、緩和された条件の融資を行っておりますが、今般、本年七月以降三カ年間の融資約束に充てる資金を賄うための総額百二十億ドルの資金補充が合意されました。わが国は、これに参加するため三千九百四十二億千六百二十二万円の追加出資を行いたいと考えております。  このため、本法律案により、以上の三機関に対する出資額の増額に必要な規定を設けることとし、この法律の成立後、各機関に対しわが国の割り当て額を引き受ける旨の正式通告を行いたいと考えております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  114. 増岡博之

    増岡委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  次回は、来る十八日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時六分散会