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1980-04-09 第91回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月九日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 増岡 博之君    理事 愛知 和男君 理事 稲村 利幸君    理事 高鳥  修君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 坂口  力君 理事 正森 成二君    理事 竹本 孫一君       麻生 太郎君    瓦   力君       北口  博君    熊川 次男君       近藤 元次君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    玉生 孝久君       中村正三郎君    林  義郎君       藤井 勝志君    保利 耕輔君       坊  秀男君    村上 茂利君       毛利 松平君    山口シヅエ君       山崎武三郎君    山本 幸雄君       伊藤  茂君    川口 大助君       沢田  広君    島田 琢郎君       塚田 庄平君    堀  昌雄君       山田 芳治君    柴田  弘君       古川 雅司君    宮地 正介君       渡辺  貢君    玉置 一弥君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         大蔵政務次官  小泉純一郎君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵大臣官房審         議官      宮本 保孝君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省証券局長 吉本  宏君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      澄田  智君         大蔵委員会調査         室長      栗林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     保利 耕輔君   熊川 次男君     北口  博君   白川 勝彦君     近藤 元次君   山中 貞則君     瓦   力君 同日  辞任         補欠選任   瓦   力君     山中 貞則君   北口  博君     熊川 次男君   近藤 元次君     白川 勝彦君   保利 耕輔君     大村 襄治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十五年度公債発行特例に関する法  律案内閣提出第四号)      ————◇—————
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、ただいま議題となっております本案について、本日参考人として日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 増岡博之

    増岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本孫一君。
  5. 竹本孫一

    竹本委員 特例法案の審議に際しまして、私はまずいまの日本財政というものに対して非常に深刻な危機感を持っておるということを一つ強調いたしておきたいと思います。大蔵当局竹下大蔵大臣を初めとして非常に御苦心の多いことだと思いますけれども、私は日本経済というものに対しましては一般に言われておるよりも強気に見ておるのです。したがいまして、ことしの経済成長率等につきましても町で心配しておるよりはより強気に考えておる。しかし、財政に関しては、政府がお考えになっておるよりも二重三重に深刻に考えておるわけです。そういう意味で、きょうは若干時間もありますので、大蔵大臣を初め主計局あるいは理財局あるいは主税局皆さんに、本当に日本財政再建はできるのかという観点に立って若干の質問をしてみたいと思うわけでございます。  もう何年であったか忘れましたけれども、かつて大内兵衛教授中央公論だったと思いますが、公債百億という論文を書かれて、このままでいったら日本は恐るべきインフレになるという心配を投げかけられたことがあります。ところが、よく考えてみると、物価の上昇がありますけれども、今度は公債百兆円なんですね。言うまでもありませんけれども中央年度末に七十一兆円を超す、地方も二十八兆九千億円になる。合わせるとちょうど百兆円になるんですね。公債百億でも大騒ぎした日本だけれども、いまや公債百兆円だということになれば、大変重要な深刻な問題をわれわれは抱えておるのだ。そういう意味で、先般来公債大量発行の問題あるいは発行条件の問題、それらに関連をいたしまして原価法でいくか、低価法でいくかといったような問題が本委員会において非常に真剣に論議をされたと思うのであります。特に最近におきましては、代表的な六・一国債が七十円台に転落をするというようなこともありまして、これは明らかに公債管理政策に対する市場のレジスタンスである、市場の反乱である、こういうふうに私どもは受けとめておるわけでございます。あらゆる面から見て、量的にも質的にも、あるいは市場の動きから見ても、国債発行あるいは国債に依存する日本財政というものが危機的な局面を迎えておる。これはまことに重大、深刻な情勢であるというふうに私は受けとめまして、後で、一体これからの国債発行はスムーズにいくのか、仮に発行はスムーズにまいりましても、返さなければならぬ国債でございますから、償還がうまくいくのかということについていろいろと論議をいたしたい、こう思うわけでございます。  まず最初に、私は、いま申しましたように、かつてない、そして経済以上にいま重大な問題は財政危機であるという感覚で物を考えておるわけでございますが、大蔵大臣の所感をお伺いいたしたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 私も竹本先生と同じ感じを持っておりますのは、日本経済というのは、日本人能力等からいたしまして、どこに比べても劣るものでないということを期待もし、そして確信もいたしております。それで、先般来つくづくと感じますことは、十時になりますと予算委員会がありましたり大蔵委員会がありましたり、それでここへ参ります。そうすると、外国お客さんとお会いするのは八時から十時までの間であります。八時から十時までの間は、日本経済はなぜこんなにすばらしいのかという質問を受けるわけです。十時に来ますと、政府はだめじゃないか、こういう批判を受けるわけです。二つの顔というのが大蔵大臣だな、こういう感じがしておりますが、まさに世界が刮目してどういう形で日本経済はこうなったんだという質問を受けるのがこの十時までの二時間のような感じすらするぐらいでございますので、私は日本人英知とか努力とかいうものは世界に冠たるものであるという自負をいたしておる一人であります。  さて、財政、こういうことになりますと、今度は外国お客さんが質問するのは、それだけの借金がどうしてできたのだということ、どうして返すのだ。したがって、日本人英知努力というものに対する驚異と同時に、財政というものに対しては、外国から見た皆さん方も、むしろその健全性というものにいささか疑問を持っておる、私はこういう感じがいたしますだけに、別に外国の方の表現をかりなくても、財政再建あるいは財政健全化財政の果たし得る対応力をつけるというようなことは大変大事なことだという感じをしみじみと抱いておる昨今でございます。
  7. 竹本孫一

    竹本委員 大臣の基本的な認識についてまとめてお伺いをいたしまして、大変ありがたい。ぜひその感覚考え方でひとつ取り組んでいただきたいと思うのですが、いま議題になっております特例公債考えてみると、財政法第四条というのは、借金財政を賄ってはならぬぞということが第一に書いてある。建設公債と言われる四条公債にいたしましても、それはただし書きで認めておるにすぎない。だから、単に認めるというのではなくて、位置づけが、借金でやってはならぬぞ、ただし、必要な場合建設国債に関しては議会の議決を得ればやり得る、こう書いてあるので、二割引きというか三割引きか別として、建設国債でさえも財政法は非常に慎重な歯どめをかけておると思うのですね。いわんや特例公債になりますと、これは全然認めることができないというたてまえに立っておる。そういう意味から毎年特例公債については特別立法をしておるということだと思うのですね。ところが、その特例公債を認めるための独立の立法が一回か二回行われるのならばぼくは理解できると思うのです、特例ですから。しかし、考えてみると、四十年のものは別にしましても、五十年度からの赤字特例公債というものは毎年でしょう。毎年特例法を認める、特例公債を認めるための特別立法をやるということは、何だか非常に私は矛盾感じるのですね。特例公債であるから二年か三年で終わりというのならば理解できる。しかし、何年でも続けて、五十年以来は毎年年中行事として、特別にことしは特例公債を出すのだというような措置を講ずること自体が非常な矛盾ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 私自身もそういう認識に立っております。したがって、たしか五十二年でございましたか議論をいたしましたときに、特例公債というものはまさに特例であるから軽々にやるべきでない、こういう事態になればむしろ何年度までというような法律書き方考えるべきじゃないか、そういう議論がありまして、そのとき議論になりましたことを覚えておりますのは、それも一つ考え方である、しかし、あくまでも特例という意識を提案看たる政府がいつでも持ち続けておるがゆえにこそ、やはり年々出すのがその姿勢のあらわれではないか、こういう議論をされたことを記憶いたしております。  私も、たまたま大蔵大臣を拝命して、なるほど特例であるからこそ一年ごとに叱咤鞭撻を受けながらそれに対応する厳しい姿勢を反省しつつ提案しておるというものではないかという感じでありますがゆえに、私はやはり五十九年度までなどと言わないで年々出すのが一つ考え方だなというような認識をいま持ちながら、それなりに、私の寿命はたとえ幾ばくかの寿命でありましょうとも、終始財政当局特例であるという意識を持ち続けるということが私は必要なことではないかというふうに認識をいたしております。
  9. 竹本孫一

    竹本委員 特例であるという意識をより深刻に意識づけるために毎年出しておるのだと言われる説明も一応は理解できます。実は私も、毎年やるのはまず第一にめんどうだ、省エネルギー時代だからなおさらこれは三年なり五年なりの特例期間を設けるということを考えたらどうかということを考えました。しかし、私の重点は、むしろ三年なら三年で打ち切るぞというところの方へ重点を置いて、省エネルギーだけでなくて、打ち切るのだというそのタイムリミットをちゃんとつくるという意味において特例というものを考えたらどうかということで三年なら三年の一種の時限を切ってやるということを考えました。しかし、いまおっしゃったように特例意識を強めておくという必要もあると考えましたので、そのことは申しませんでしたけれども質問のときは一応やったことはあります。  そこで二つのことをお伺いしたいのですが、一つは、特例公債については借りかえはやらないということになっておりますね。これは厳守できるのかどうか、そのことをまず一つ伺っておきたいと思います。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 これについては、非常に環境が苦しくてもそれだけは私は守らなければならない一線ではなかろうかというふうに考えております。
  11. 竹本孫一

    竹本委員 そうしますと、まず主計局の方へ伺っておくが、実質的に借りかえになるような特例公債を出すことは将来とも絶対ないと約束ができるか。五十九年度ゼロにするのだ、六十年からは償還が始まる、したがって、もう一遍、赤字公債は出さないというような説明は非常に整然としておりますが、しかし、六十年以後になりました場合に実質的な借りかえをやるということは絶対にやらないとお約束ができるかどうか、その辺をひとつ伺っておきたい。
  12. 吉野良彦

    吉野政府委員 私どもが少なくとも五十九年度には特例公債から脱却をいたしたいという基本目標考えておりますゆえんも、六十年度からこの特例公債現金償還が本格的に始まる、それに備えてそれまでの間に特例公債から脱却をしたい、そういう意味で五十九年度までに脱却をしたいということを申し上げているわけでございます。そういう観点からいたしましても、五十九年度までに特例公債脱却をするという趣旨を無にするようなことを六十年度以降において行うようなことはあってはならない、かように考えております。
  13. 竹本孫一

    竹本委員 大蔵大臣、私ども民社党は従来特例公債賛成をしてきたのです。理由は、社会党さんあたりで強く指摘しておられるように国債は一遍出すと大変なことになるのだという点も十分にわかりますけれども、雇用の安定、景気の回復ということを重点に置いて、この際は例外例外ということで、緊急避難として特例公債もやむを得ないということで従来数年間渋々賛成をしてまいりました。しかし、今年度から態度を変えるつもりなんです。どうして変えるかということも、当然のことでおわかりだと思いますけれども、後でも申しますけれども、このままいった場合に一体どこで赤字国債から脱却できるきちっとした歯どめがかかるかということについて、最初に申しましたように、非常に心配しておる。このままでいったならば、一体どこへ行くかということについて、非常な危機感を覚えておる。そういう意味で、微力なわれわれでございますけれども、少なくとも、その財政危機に対して身をもって意思表示をするという意味において、これからは特例国債には賛成できない。一つの歯どめを願ってのむしろ建設的な努力として、ことしからは賛成はできないというふうに党でも議論をまとめておるわけであります。  それで、いまも次長さんから御答弁がありましたが、たとえば、それではこういうことが考えられるか。五十九年度で大体脱却だということになりますと、その近くの特例法がまた何回か出るわけでしょうが、その場合に、最後に歯どめをかけていく、これは野党の皆さんとも与党の皆さんとも御相談をしたいのだけれども、六十年以後は赤字国債を出すことはならぬということをこの特例法のどこかへ差し込んで、一条文章を成文化して入れるというような考え方について、どういうふうにお思いになりますか。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 私も法律専門家でございませんので、どういう書き方があるか、これはにわかに判断をできかねますが、基本的な姿勢は、竹本先生おっしゃるのは、それを一つの歯どめとするという鞭撻であり、そして、政府姿勢に対する裏打ちをするというような物の考え方であろうと思うのであります。したがって、私は、あくまでも財政当局のあり方としては、まさに五十九年でもって打ちどめにするという姿勢を貫かなければならぬ。が、法律の中でどのように書けるかということは私はわかりませんけれども、その竹本委員の御指摘の背景というものは私にも理解できるような気がいたします、賛成するとか反対するとかいう問題は別といたしまして。
  15. 竹本孫一

    竹本委員 これはまだ法律技術の問題もいま御指摘のようにありますし、とにかく五十九年度脱却をやるのだ、しかも、これをしなければ、それこそ本当に財政インフレになるか何になるか、とにかく財政破綻がいよいよ具体的に爆発をするわけですから、それへの歯どめを考えるという意味において、ただいやがらせという意味ではなくて、建設的な立場から、ひとつ以後はもう赤字国債借りかえも許さない。実質的な借りかえというのは、ぼくは方法があると思うのです。しかし、その実質的な借りかえも許さない、五十九年度でもう赤字とはさよならだ、明確にそこに線を引くのだ、そのためには、われわれが言っているような、行政機構の改革も補助金の再検討もあらゆる努力をしなければならぬということを、それ以外にはどうにもならないというところへ追い込んでいくといいますか、歯どめをかけるという意味において、そういう立法の問題もこれから真剣に考えていくつもりでございますから、お含みおきを願いたいと思います。  そこで、第二段の問題は、去年が十三兆四千七百億ですか、ことしは十四兆二千七百億というようなことになっておるわけですが、その国債発行がスムーズにいくかという問題を少し聞いてみたいと思います。  去年よりも実質的には八千億円ぐらい国債発行がふえるのかもしれませんが、去年でさえもあれだけの値下がりをして、そしてあれだけの抵抗があって、大変大蔵当局としては御苦心が重大だったと思うのですけれども、去年以上に情勢が悪くなっていて去年以上に国債発行をするということになれば、条件が八・八八八になったとかいうような、利回りの面で若干の考慮もありますけれども、私は非常に心配をせざるを得ない。特に困るのは、いま自民党さんは資本主義自由経済の上に立っておられますし、そして、民間からも金利自由化その他の自由化への要請も強くなっておりますし、そういう情勢の中で、昔のような強気の公債発行ということは実質的にも困難になっておる。  そこで、一つずつ伺っていきたいと思うのですけれども、これからの国債消化について、最初理財局長さんから、どういう考えでこれからの対応を考えておられるのか、総論的に、簡単にお伺いしておきましょう。
  16. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 仰せのとおり、五十五年度国債消化環境もかなり厳しいものがあると思っておるわけでございます。  ただ、一つども期待をいたしておりますのは、国内の金融情勢というのが、もろもろ金利が過去最高金利水準になっておる、国債も、いまおっしゃったように、これは過去の最高を突破したような条件設定がきのう行われたわけでございます。これで金利天井感というものが出てくれるということになりますれば、ちょうど五十四年度年度間を通じまして金利が急激に上昇を続けた時期でございますから、そういう意味で、常に金利先高感というものが存在し、そのために債券市況というものが一貫して悪化を続けてきたわけでございますが、そういうもろもろ金利先高感に伴う悪環境というものが、ここで一つの転換期といいますか、そういうものを迎えるチャンスがあるのではないか、こういうことを一つ期待をいたしておるわけでございます。  それから、やや技術的な話になりますが、できるだけ市場ニーズというものに応じた発行に心がけたい。一つは、発行条件の問題でございますが、これもかたくなにいろいろな金利体系というものにこだわらないで、できるだけ機動的、弾力的な対処に心がけたいというのが一点でございます。それから、もう一つ発行量の問題。これも、毎月毎月発行を続けるわけでございますが、そのときどきの金融情勢等十分勘案いたしまして、適切な量の発行を心がけたい。  もう一点は、一応五十五年度発行十四兆二千七百億円につきましては、それぞれ十年利付債幾ら中期債、二年、三年、四年幾らというふうに発行計画は区分して決めておるわけでございますが、機動的、弾力的な発行という意味からも、そのときどきの情勢に応じてこの枠に必ずしもこだわらない、一応の大筋は枠が決まっておるわけですが、市場ニーズに合ったような発行をやっていきたい、こういうふうなことを考えておる次第でございます。
  17. 竹本孫一

    竹本委員 私は、いま金利天井感の問題、あるいはアメリカの二〇%の問題希望的に言えば、いろいろ問題が出てくるし、期待ができる面もあると思います。しかし、いま経済政策を論ずる場合において、金融を論ずる場合も同様でございますが、一番大事なことは、一つは、経済問題がすべて政治化した。大蔵大臣はよくわかっていただけると思うのですが、いまは経済のための経済論というのはないのですね。すべての経済問題、金融問題もみんな政治化する。しかも、政治化した問題はグローバルになっている、国際的なものになっているということです。  でありますから、従来の常識でいまの弾力的な金融政策を動かせば何とかなるだろうという期待も一方で持てますけれども、同時に、金融問題、経済問題はすべて政治化しておるし、政治化した問題は国際化しておるんだ。イランの動き等一つ考えてみてもわかりますが、そういう情勢の中で、従来の事務的といいますか、あるいは常識的な希望期待というものはほとんど——そうなるかもしれませんよ。しかし、われわれがいま心配しておるのは、そうならないで財政危機が爆発しはしないかということについて心配をしておるわけですから、そういう希望的観測や従来の枠の中でなくて、現実を直視して国際的な、政治的な条件も含めながら問題を組まなければいけないのではないかという点が一点。  それからもう一つは、国債にしましても、経済成長という問題も関連をして同じようなものだと思いますが、一番大事なことは、量と質の問題がよく言われます。そして、質がいいものなら、たとえば建設国債でいいものなら出したらいいじゃないかというような議論がありました。私は、下村治さんの経済論というのはまあそんな理論だったと思うのですね、投資投資を呼ぶとかなんとかいうようなことで。あの人の考えの一番大きな欠陥は、全体の量がこなせるものかどうかということについての総合的な判断が欠けているということをあの当時から私は言っている。要するに、日本経済で賄い得る、成長にいたしましても国債にいたしましても、賄い得る限界があるわけですね。升の大きさといいますか、中に入れるその器の大きさというものが、もちろん植物とは違いますから、経済弾力性がありますけれども、それにしても、一定の量というものが限界をちゃんとつくっておる。政治的に、経済的にある程度広げることはできますけれども、全体の消化能力を超えた国債発行、全体の升を超えた経済成長というものは必ずインフレになる以外には手がない。  そういう意味で、一つは、全体の経済問題が政治問題化し国際問題化しておるんだという認識。それからもう一つは、日本経済がとにかくただ伸びればいいんだ、高度成長高度成長ということで、成長成長を生むというような妙な論理でやってきました。あのころアメリカ人が私の先輩のある国際金融マンに、日本経済は、このまま一体どこまで行くつもりだろうか、こんなに速く走っていっていいだろうかと言って、ランニング・ツー・ファースト、余りに速く走り過ぎはしないかということをアドバイスしたという話を私は聞いたこともあります。いずれにしましても、成長するにしてもあるいは国債消化をするにしても、限界がある。その限界を広げていく、伸ばしていくことは不可能ではないけれどもステップ・バイ・ステップ以上にはいかないんだ。それを高度成長高度成長でどんどん走り過ぎた、ある意味から言えば、とがめを受けておるのがいまの状況だと思うのですね。  そういう意味で、あらゆる経済問題が政治化し国際化しておる。のみならずもう一つは、日本の政治、いろいろ弾力的に運用ができるとしても、限界を超えているという点についての反省が少しなさ過ぎはしないか。この二つの点についての御感想をお聞かせいただきたい。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 私も同感の点が非常に多いのでありますが、たとえばの話でございますけれども、私が第三次佐藤内閣の内閣官房長官をしておりましたときに、ドルがいわゆる兌換停止措置を行った。そのとき三百六十円という固定観念が一挙につぶれて、そうして、そのころの議論というものを見ますと、フロートした限りにおいてはまさにフロートさすべきものである。変なことをいたしますとダーティーフロートだとかいろんな批判を受けた。今度、それからまさに七、八年たって大蔵大臣になってみますと、たとえば国際金融そのものを見ましても、当時だったら当然ダーティーフロートだと言われるようなものが、国際社会の中でまあ言ってみれば公然ととでも申しましょうか、果敢な介入でありますとか、あるいはスワップ取り決めにいたしましても、その政治的恣意というものがそういうフローティングな経済社会の中へ完全に入っておるという感じをしみじみといたしておるのが、昨今でございます。  いまも竹本先生のお話を聞きながら、実は、イラン問題が起きてきのうの為替相場はどうなるんだろうか、私は全く判断がつかなかったわけであります。なるほど最初の寄りつきは二百六十三円幾らでありましたが、最終的に終わり値は二百六十円台、それも私自身もイラン問題というのがどういう状態で出てくるかということがいまだつかめないまま、いまとってみますと、きょうはまた寄りつきが二百五十八円になって、円はどちらかといえばきのうに比べたら強くなってきておる。これも完全に経済の中へ政治がグローバルな意味において介入しておる状態ということを私はしみじみと感じておるわけです。  したがって、今度日本経済そのものを見ますと、いま升の大きさとかあるいはキャパシティーとでも申しましょうか、それの度を超えたところに問題が出てくる。これはまさしく理論的な説明にはなりませんけれども、四〇%近い国債発行というものを五十四年度には一応予定した、しかし、それが結果として、まあ減額したと言えばかっこうがいいのでありますが、あるいは売れなくなったとでも申しましょうか、ちょうどそれが昭和二十年の四二%というものがいままで最高であるとしたら、やはりキャパシティーをオーバーしたら金を貸す人がいなくなる、逆に言えば国債が売れなぐなるというところに、いわゆる節度とか許容量という問題があると思うのです。それがまさに限界に来たという印象が、財政再建というものを好むと好まざるとにかかわらず、そういう環境が生じてそれに対応していかなければならぬようになったという、まさにキャパシティーの限界というようなものも、お説と認識は私は違っていないというふうに思うのであります。  もう一つ、下村理論のお話がございましたが、基本的に当時と違いますのは、いわゆる六〇年代というものは、政治的には日米安保の改定で岸内閣が終えんをして、池田内閣ができて、それで三ドルの原油が七〇年、私が官房長官になったときには一ドル七十セントになっておった。原油というものが売り手市場ではなく、完全に買い手市場にあった。したがって、成長成長を生んできた要因がそこにある。それが今度は買い手市場ではなく、完全に売り手市場に変わってきた、七〇年代というものになったがゆえに、キャパシティーがなおのこと総合的にわれわれを締めつける結果になっておるのじゃないか、そういうような感想でございますが、お述べをいたしたわけであります。
  19. 竹本孫一

    竹本委員 大臣が明確に言われましたように、キャパシティーの限界ということを私は言っているわけですね。これは後で第三段目に申し上げようと思いましたが、どんどん時間がなくなりそうですけれども、キャパシティーの限界を超えたという認識が本物であるならば、財政、行政の改革の問題についても取り組み方がより真剣、より深刻でなければならぬと私は思いますので、キャパシティーの限界に来ておるという基本認識をまず前提としてしかと踏まえていただきたいと要望しておきます。  第二の問題は、先ほど申しました、これだけの、去年よりも八千億かふえるような国債消化がどうしてできるだろうかという問題について、先ほど一般的には弾力的にとかいろいろお話を承りましたが、時間もありませんから項目を一緒に言いますので、具体的に結論だけお答えいただきたい。  たとえば、資金運用部でどれだけの消化をより多く期待できるかという問題が一つ。それから、公募入札制度を広げるとか広げないとかいろいろ議論がありますが、これを広げるとしてどれだけ広げることができるかという問題。それから、中期国債国債を多様化するということによって消化をよりスムーズに持っていこうという御努力もありますが、中期国債消化を拡大し得る範囲がどのぐらいあるものかという問題。もう一つ、窓口販売の問題が銀行法の改正にも絡んでいろいろ問題になっておるわけですが、仮に銀行でこれを売るということになればどれだけプラスアルファを期待できるものであるかという問題。要するに、去年よりも八千億なり一兆円近くのものをよけいに出そう——実際はまた削られるかもしれません、また削ってほしいと思いますが、いずれにしてもいま十四兆二千七百億円の国債発行考えておられる。その考えは可能である、こういうふうにして可能であるという可能な根拠をより具体的に、項目別に、以上のことを聞きたい。  と申しますのは、この間から国債の暴落といいますか値下がりの問題もありまして、いろいろ問題になっておるが、一つは、銀行の方もいまおっしゃるキャパシティーというか消化能力を超えている、預金量よりもふえている場合が多いですね。そういう問題も含めて、以上の四つのポイントについて、こういうわけでこの程度より多く消化能力期待できるから発行はスムーズにまいるであろうというふうに説明をしてもらいたいのです。
  20. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 先ほど申し上げましたように、十四兆二千七百億円につきましては一応発行計画というものができておるわけでございます。この発行計画につきましては、この予算案を作成いたしました時期に市中の御意見も伺いまして、一応こういうことでそれではやってみようかという感じの答えはいただいておるわけでございます。もっとも、はっきりした引き受けのお約束というのは、五十五年度全体の計画につきましては、これからこの特例公債法の成立後に全体の発行枠につきまして改めて引き受けシ団の頭取、社長方にお集まりいただいて取り決めていただくことになっておるわけでございますが、事前に一応の感触としてはお引き受けをいただいておるということでございまして、現在、私どもとしては当初の計画に従って消化を進めていきたいと考えておるわけです。ただ、先ほど申しましたように、実勢というのは常に動いておるものでございますので、必ずしも当初の計画にこだわらないで、必要があれば相互の枠の融通等は弾力的に考えていきたい、こういうことを申し上げたわけでございます。  引き受け主体といいますか、たとえば運用部あるいは中期債の公募入札市場、それからもちろん一番大きな面を受け持ちますシ団の引き受け、いずれの部面におきましてもそれぞれ相当厳しい事情があるということは事実でございます。資金運用部も、原資の状況というのは高度成長期のような大きな伸びというのはなかなか見込めない状況になっておる。それから中期債の公募入札市場につきましても、最近のように期間の短い金利の方が期間の長いものよりもより以上に高い、つまり金利の逆転現象を生じておるというような状況下におきましては、発行もなかなか円滑にはいかない。現に、五十四年度は当初計画で二兆七千億の公募入札を見込んだわけでございますが、結果は一兆をちょっと超えるという程度で終わってしまったわけでございます。しかしながら、この面におきましても、できるだけこの公募入札を定着、育成したいということで、一応の計画としては二兆円を見込んでおるわけでございます。運用部の方も原資事情は非常に厳しいわけですけれども、五十四年度と同額の二兆五千億を見込む、こういうようなことで計画を立てておるわけでございまして、いまの段階ではこの計画に沿った消化に努めたいということに尽きるのではないかと思うわけでございます。
  21. 竹本孫一

    竹本委員 たとえば、私がいま言っているのは、二兆五千億か二兆六千億かは別として、資金運用部の金をことしはこれだけ使う。しかしながら、資金運用部においては財投の関係もあり——財投なんかは、大体においていわゆる高度成長時代の、遺物と言っては悪いかもしらぬが、流れをくんでおる。それでどんどんふやして、ことしも八%、十八兆千八百億円ということになっておるようだが、これは去年の実績から見ても四分の一ではなくて、ことしは三分の一ぐらい消化ができないだろう。そうすると、その面の金が浮いてくる。特に大蔵省としてあるいは政府として、高度成長の延長線上にある財投計画については、いま申しました全体としての経済のキャパシティーの限界にかんがみてひとつ再検討するのだ。だから、その面からも資金運用部の金が浮いてくる。したがって、資金運用部にも大きく期待ができるではないか。たとえばの話ですけれども、こういうような説明を私は伺いたいのです。  市中公募の問題にしても窓口販売の問題にしても、経済が厳しい情勢であることも動いておることも、いま数字を具体的に挙げろと言うことが無理だということもみんなわかりますよ。みんなわかりますが、それにもかかわらず、ここに委員会の同僚の皆さんがいらっしゃるが、われわれが聞いて、なるほど、それならば去年と違って国債消化はできるであろうという経済分析といいますか、そういうものの上に立った御説明をいただかないと、弾力的にやりますとか、機動的にやりますとかいうような言葉だけでは安心ができない。本当はその一つ一つの項目についてきょうはやろうかと思ったのですけれども、時間の方がなくなりましたから、これはまた機会を見て改めて論じますが、私が求めておるのはそういうものだ。すなわち、われわれが聞いて、経済分析の上からいって、それならば可能であろうというような理解のできる説明をやはり用意しておかれる必要があるのではないかと思うのです。これは希望にとどめておきますけれども、いまの御説明だけでは、わからぬと言えば言い過ぎになりますが、わかったと言ってもなお言い過ぎですし、ほとんどわからない。そういう意味でひとつ掘り下げた分析の上に立った御説明をいただいて、なるほど消化ができるだろうというふうに理解をしたいということであります。  もう一つ国債消化が可能であるかということ以上に大事な問題は、償還が可能であるかという問題ですね。きのう山田委員がこの紙切れを出されましたことに私は非常に敬意を払っておるのですけれども、私どもから言えば、こういう計画なり試案なり試算なりで結構ですが、早く六十九年度までぐらいの中期展望に立った表を出していただきたいと思うのです。それがなければ意味をなさぬですよ。たとえば収支試算の問題でも、あれは毎年やっておるでしょう。毎年出しておる収支試算などというものはほとんど意味をなさぬと私は思うのです。そこへ乗り込んで、その場へ入ってからそのときの展望をやるのですからね。われわれは中期展望が欲しいのであって、毎年毎年変わる展望などというのは展望にならない。決算書でもないけれども、試算表としてはほとんど意味を持たない。すなわちガイドラインにならないのですね、ガイドするものが出てこないのですから。そういう意味からいっても、われわれが国策を論議する場合の基本的なデータとして、あるいはガイドラインになる資料としてこういう展望が欲しい。本当言えば、これこそ政党政派を離れて、日本財政危機をいかに克服すべきかということについて各党衆知を集めて、この場でいいのかどこでいいのかは別として、この問題に真剣に取り組んでほしいと思うのです。これは山田さんの非常な御努力で、特に六十六年以降については一つの展望を持たれたと思いますが、その展望をさらに今度掘り下げなければならぬ。どういうふうに掘り下げが必要であるかという問題について、たとえば五十九年度赤字国債脱却しますということになっていますね。それがいかにして可能であるかという、その可能性の根拠を分析してわれわれが理解しなければ意味をなさぬと思うのです。どうしてそれが可能であるか。  たとえば、いまイランの問題を大臣も言われました。このイランの問題は、それこそ油の問題だけれども、すぐれて政治的な問題になっておるので、値段の問題にしても量の問題にしても、三十三ドルか三十五ドルか、そういうような問題もいろいろありますが、それ以上に、一体、中東の政治情勢がどう展開するか、そういう問題等含めて、日本の大事なエネルギーの確保ということがどれだけ可能であるかということも考えると、いま新経済社会七カ年というものがありますね、あれなんか全然問題にならぬと私は思うのです。  この間、正示君にも言いましたけれども、とにかく七カ年計画というから、国民は七カ年計画と思うのだけれども、一体計画になっておるか、また、計画を立て得るような基礎条件がいま国際情勢の中にあるかということですね。私はそういう点については非常な疑問を持っておりまして、新経済社会七カ年計画というものは、いまはこの揺れ動く国際情勢の中で、これは与党だけではない、野党といえどもなかなか計画が立たない。立たない計画を今度ベースにして、たとえば増収の問題にいたしましても、経済は五・七なら五・七でこう伸びるであろう、それが租税の収入にこう反映するであろう、弾性値は一・二である、こういうようなことで計算をしておるだけであって、具体的な根拠というものの掘り下げはほとんど行われていないと思うのです。  そういう意味で、まず第一に、私は、先ほど来借りかえの問題を論議いたしましたのもその点ですけれども、五十九年度赤字公債は出さないようにするんだ、そして六十年からちゃんちゃんと払っていくんだというその大事な前提として、七カ年計画はある程度スムーズに実行されるであろうという前提があると思うのです。そして、それらを含めて今度は、増税は高橋さんの計算によれば五兆八千五百億円必要であると言うが、必要であるというのはよくわかるけれども、それが可能であるという話は余り聞いていないのだが、とにかく可能であるのかどうかという問題が前提にある。  それからもう一つは、五十九年度にゼロにするためには、何年から繰り入れるかは別として、定率繰り入れのほかに予算繰り入れというものをやらなければならぬでしょう。その予算繰り入れは、どこから見てもおおむね二十八兆円ですよ。二十八兆円の繰り入れを、どこから始めて何年、どういうふうにやるかわからぬが、とにかく、それはお任せするにしても、トータルで二十八兆円ぐらいの繰り入れが必要であると言うけれども、いまでさえ予算の収支のバランスに困り切っているのに、これからの数年間に毎年、年によっては五兆円あるいは六兆円、少なくとも一兆円、そういうものをどんどん、定率の問題のほかに繰り入れるだけの財政の余裕が一体どこにあるかということの説明は全然聞いていない。  そこでお伺いをしたいのは、まず第一は、経済情勢の七カ年計画というものは、すべての収支試算——収支試算というものは余り私は評価しませんが、少なくともそれしかないのでそれでお伺いするが、収支試算の前提になり基礎になっておるのではないか、その基礎が先ほど大臣も言われたように、きわめて動揺、不安定なものではないかという点についてどうか。それから第二番目は、増税の五兆八千五百億円というものはいかにして可能であるか。第三は、繰り入れをやらなければいかぬ。予算繰り入れがおおむね二十八兆円くらい必要と思うけれども、それは必要であるということはわかるが、可能であるという話は聞いていないが、可能であるか、この三点について特に明確な御答弁をいただきたい。
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 これは恐らく私の答えだけでは済まないと思うのでありますが、五十一年に財政収支試算を出せ——私、ちょうどそのとき建設大臣をしておりまして、ずいぶん苦労して財政収支試算というものが出されて、そうして、それはそれなりの予算を審議していただくための一つの手がかり、新しいものであっただけにそのときそれなりの役割りは果たしたと思います。そうしてそれが五年も続いてまいりますと、今度はそれの持つ矛盾というものがかえって強調される結果になって、したがって、中期の、ある意味においては後年度負担等を試算した財政計画というものに取り組むべきである、こういう主張から、試作品までできるかできぬかは別として、政府もそれに取り組む、こういうことになったわけであります。  そうして、その過程において、一昨年でありましたか、現実的に委員会の試案として出たのは十二月であったと思うのでありますが、オーソライズされたのは去年の二月でございましたか、経済社会七カ年計画、あれがつくられるときには、私どもも党におりまして大変な魅力を感じたものであったと思うのであります。なかんずく、たまたま予算編成期と一緒になりましたので、非常に忙しいさなかではございましたが、二百四十兆というようなものに対しては、それの配分を各事業別にどうするかというようなことには、みんなが非常に関心を持ったことであると思うのです。  しかしながら、その後の情勢は、まさに新経済社会七カ年計画というのはもう改定すべきではないか、こういう議論が起こるようになります。それで政府としては、にわかに改定しないで、年々フォローアップ作業をやりましょうということから、成長率と鉱工業生産指数と卸売物価という点に若干フォローアップが行われて、他は、原計画の二百四十兆でありますとか、あるいは社会保障移転の対国民所得十四カ二分の一とか、租税負担の二十六カ二分の一を残したままで、フォローアップにとどまった。  しかし、これは私自身の責任ではございません、いまおっしゃいました正示さんの方の担当でございますので、私からとやかく批判するわけにはまいりませんが、いま経済企画庁の方でも、年年フォローアップをやっていくという考え方と、いま一歩、この経済社会七カ年計画の単なるフォローアップでなくして、もう一度見直しをすべきではないか、こういう意見もあっておるさなかでございます。したがって、非常に流動する経済社会の中で、そういう再々行われておる本院の議論などを通じて、政治あるいは行政がそれに対応していかなければならぬというふうに基本的には考えておるところであります。  それから次の、いわゆる増税問題とでも申しましょうか、そういうことになりますと、私は、本委員会の代表選手がお集まりになって、結果として議院運営委員会へ持ち込んで、そうして財政再建決議というものがなされた、あの財政再建決議というのは、言葉の選び方からすべてにおいて非常に味のある決議だと思うのであります。その決議の趣旨を大別して言えば、広く国民各界各層の意見を聞いて、歳入、歳出両面にわたって検討を加えるべしということになっておるわけです、一般消費税(仮称)等は別といたしまして。したがって、それがまさにこういう議論を通じながら、私は国民に対して新たなる負担を求めていくという環境というものが熟していく、その土台に国会決議というものが結論からいって存在するということになりはしないかというふうな期待をいたしておるところであります。したがって、いわゆるラウンドテーブル方式の議論などがますます当委員会などでは熟度が高まっていく問題ではないかというふうに私は考えております。  それから、今度は償還に対する予算繰り入れの問題でありますが、当面は五十九年にまず脱却するということが先決であって、その後の問題につきましては、まさにあるとき、ある年次に一挙に大量なものという形でなくして、平準化した形の中で可能性を模索していかなければならぬ問題ではないか、こういうふうに考えております。
  23. 竹本孫一

    竹本委員 それぞれ局長から伺いたい。
  24. 吉野良彦

    吉野政府委員 私の方からは償還財源の問題につきましてお答えを申し上げたいと存じますが、ただいま大臣から御答弁がございましたとおり、特例公債依存から脱却することが当面の目標ではございますが、脱却した後といえども償還財源をどのようにして確保していくかということがきわめて重要かつ深刻な問題であることは御指摘のとおりかと存じます。したがいまして、大臣からも御答弁申し上げましたが、私どもはやはり基本的には特例公債から脱却をすることはまず先決問題ではございますけれども、その後、具体的に償還財源を一体どこに求めるのか、それからまたその時点におきます予算全体の中で償還財源がどの程度の地位を占めるのか、たとえば国債費というような形で予算の中でどの程度の圧迫要因になるのかというようなことの検証がなかなかむずかしいわけでございます。何分にも、先ほど先生御指摘になりました二十八兆円程度の予算繰り入れが必要ではないのかという御指摘も、先般予算委員会等に御提出申し上げました国債整理基金での資金繰りにつきましてのある大胆な仮定を置きました上での仮定の試算ではございますけれども、これは六十九年度までに累計としてその程度の予算繰り入れが必要であるという試算になっているわけでございます。何分にもこれは六十九年度というかなり先までの経済なり、あるいはそのときどきにおきます予算の姿を想定をして、その上で、その中で国債費がどの程度の地位を占めるのかというようなことに作業の手順としてはなるわけでございます。繰り返しになりますが、六十九年度までの経済なりあるいはそのときの予算につきましての的確な見通しを政府として責任を持って申し上げられるような材料も持ち合わせないということでございます。  そこで、抽象的ではございますが、大臣が御答弁申し上げましたように、特例公債依存から脱却した後におきまして、負担の平準化を考慮しながら、どのような予算繰り入れの仕方をしていったらいいか、それを特例公債から脱却した後に直ちに実施に移せるようになお検討を続けたいというのが従来からの政府考え方であるわけでございます。
  25. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 先ほど大臣から大筋お話しになりましたとおりだと思いますけれども、最近の財政の中での税金の位置と申しますか、非常に特徴的だと思いまして申し上げておきたいと思いますのは、一般会計の歳出の財源という形で見ますと、税収はわずか六二%しかないわけであります。公債発行して、建設公債原則の中で公債漸減ということをやってまいりました四十年代の前半あたりでは、それはまだ八割近くあったわけであります。六〇%の税収がどのように伸びましても、国債を一兆円減らすだけでもう三%いってしまうわけでございますから、仮に六〇%の税金が一二、三%伸びたとしても全体で七%の新規の財政を賄うしか足りないわけで、したがいまして、仰せのように何らか現在の税制の外で、また現在の税制を拡充をして国民に負担をいただかなければならぬということは、おっしゃるとおりだと思います。従来税制調査会で御議論をお願いしてまいりましたのは、一つは現行の税制の中の、何と申しますか、タックスペースの侵食というものをどうやって埋めていくのかということでありましたし、また新しい税制ということで御提案もあったわけですが、これはいろいろな政治情勢でこれがそのまま進むというふうに思いませんけれども、これから長期の制度論としての税制のあり方というものをやはり税制調査会でも御議論いただく時期が参ると思いますし、またこういう政治の場でのいろいろな御意見というものもよく承って、国民に御理解を得ることが何よりも先でございますから、一番国民に納得していただけるようなものを考えながら常時努力してまいりたいと思いますので、何とぞ御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
  26. 竹本孫一

    竹本委員 時間が参りましたので終わりますが、大臣希望を申し上げますと、いろいろお考え、御苦労願っている点もよくわかりますけれども、先ほど申しましたように、経済、特に財政日本の現実、キャパシティーを超えているということが一つ、それを本当にどういうふうにして再建するかということを経済の現実の基盤の上に立って大いにひとつ具体的に掘り下げていただきたい。ただ線を引っ張ってこうなればこの辺だというような一つの目印は出ますけれども、御答弁を伺っておりましても、恐らく皆さんそうではないかと思うのですけれども、やはり私はいま一々具体的な数字を求めるわけではないのですけれども、理論分析の上においてこれならばいけるだろうという期待が持てるような掘り下げは不幸にして聞くことができなかった。しかし、これは一遍に、いまお話しのように六十九年までそういう分析ができるわけでもありませんから、だんだんに詰めていくというお互いの努力をしながら、何としても財政を破綻させないように、これはお互いに真剣に努力をやらなければならぬかと思っておりますので、そのことを申し上げて終わりにいたします。失礼いたしました。
  27. 増岡博之

    増岡委員長 佐藤観樹君。
  28. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 きわめて限られた時間ですので、重要な問題だけにしぼってお伺いしていきたいと思います。  四月五日の読売新聞に「国債スワップ作戦」第一勧銀と三菱銀行が苦肉の決算対策ということが報道されているわけであります。これは話をはしょって言いますれば、決算期を前にして三月下旬に第一勧銀が一千億分の国債を時価で市場に売って、それを直ちに三菱銀行が購入をする、三菱銀行も直ちにそれに見合うだけの一千億円分の国債を同じ時価で第一勧銀に売るということで、ここで評価損を出して低価法から原価法へ変えるということが報じられたわけでありますけれども、この点について銀行局長は事実の確認をなさっているかどうか、その点はいかがでございますか。
  29. 米里恕

    ○米里政府委員 ただいまお話のありました事態につきましては、それぞれの銀行の個別の有価証券売買の問題でございますので、詳細には把握しておりませんし、またお答えもできないと思いますが、一種の債券の入れかえ取引が行われたんだというふうに事態を把握しております。
  30. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 確かに、私ども考えてみまして、利益が出そうなときに売買損に立て、そして黒字を圧縮する、そして片や安い品物を買って、つまり評価損の入ってない安い商品を買って持っているということ自体は必ずしも違法とか法律に触れるという問題ではないのではないだろうかとも思うのであります。  ただ、これがお互いに仕組まれて、しかも売買損を予定をしてやる行為ということになると、果たして行政上これはいいやり方だろうか。もし、こういうことが許されるならば、他の低価法から原価法に変える金融機関もむしろ同じようなことをやった方がよかったのではないかといま思っているのじゃないかと思うのであります。ただ、そこまで相手方と仕組んで評価損を売却損に立て、しかもそれがお互いに相手銀行とやるということについては若干良心の痛みもあってやらなかった金融機関もあったのではないだろうかということを考えますと、一体、これは行政側としてこのような決算の組み方自体というものはいいとお認めになる行為なのかどうなのか。いいということになれば、他の金融機関も、まだ低価法のままでやっているところもあるわけでありますから、おのずとこれから原価法に変わる可能性もあるわけで、こういったことがどんどん行われてくるのではないだろうか。これは果たして行政上銀行の正しいあり方なのかどうなのかということについてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  31. 米里恕

    ○米里政府委員 債券の入れかえ取引と申し上げたわけでございますが、債券の入れかえ取引自体は一般的にもかなり行われておるところでございます。なぜ入れかえ取引をするかということになりますと、通常の場合にはその金融機関のポートフォリオのあり方の問題であるとか、あるいはまた資金繰りの都合であるとか、収益構造の問題であるとか、そういったようなことが主たる理由であろうかと思いますが、そういった形で市場を通じて入れかえ取引をやっておるということはかなり一般的に行われておる。これは有価証券の保有形態について銀行がどういう経営判断をするかという問題に絡んでまいりまして、すぐれて経営判断の問題の一種であるというふうに私ども考えております。  当該三菱銀行、第一勧銀の場合でございますが、これもいずれも市場を通じて市場価格でやっておるわけでございまして、相手がたまたま大口の出合いがあったのでクロスしたみたいな形になったのであろうかと思いますけれども、これが評価制度と関係があるかないか、もし評価制の移行期ということで関係があるとしても、それはまかいろいろなやり方があるわけで、このやり方自体をとらえて通常の入れかえ取引に比べて特にどこがおかしいということはなかなか実態的には言いにくい問題であろうかと思います。先生御指摘の、どうもどこかおかしいのじゃないかということはわからないわけではございませんけれども、それ自体はあくまでも債券の入れかえ取引の一環でございますし、そういった考え方からいって間間あり得ることである。しかも市場価格でやっておるということから考えますと、これ自体が非常におかしいというようなことは言えないのではないかというふうに私ども考えております。
  32. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは市場価格でやらなければ全然意味がないわけですよ、売却損を立てることができないわけでありますから。それから、私も言っておりますように、債券の保有形態を変えていく、これはいろいろなポジションが残余期間を短いものに変えていくということもありますし、経営内容によるから、そのこと自体は否定しないわけでありますけれども、きょうは余り時間がありませんので、それ以上突っ込みませんけれども、結論的には、一向に構わぬではないか、他の金融機関も低価法から原価法に変える際がありまして、その際に利益が出ているようなことがあったら、利益を圧縮する際には、こういう方法が行政としては一向に構いませんから、どうぞやってください、こういうことになりますね。
  33. 米里恕

    ○米里政府委員 これが低価法から原価法に切りかえるために必然的に起こった問題であるかどうかというところがなかなかむずかしい問題であろうかと思います。一般的に入れかえ取引をやること自体は経営判断の問題でやむを得ないのではないかというふうに考えております。
  34. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そのときに金融機関が利益が出てなくてわざわざ売却損を出すということはあり得ないわけですね。ですから、いま問題になっているのは、決算を前にして他の部門で利益が出ているのを圧縮をするために、あるいは表面的には見づらくするために、いわば評価損を売却損に変えているわけでありますから、私も何も全部が悪い悪いと言っているわけではないのであります。ただ、問題は、そういうことになってきますと、もしこれを原価法のままでやるというならば、恐らくそれだけの評価損は——従来から原価法であるならばこれはあえてこのような措置をとることもなかったわけで、やはり変わり目に起こっているからまたこれから起こるだろうということを私は懸念をし、これは一体行政として、必ずしも私自身も債券の入れかえ取引というものそのものを否定しているわけではないけれども、これからだんだん低価法から原価法に恐らく変わってくるのでありましょうから、そのときにこのやり方というのは行政として何ら問題ないのだろうかということについての疑問を呈しておるわけであります。きょうは時間がないものですから、まことに申しわけございませんが、これはこの面にとどめてちょっと問題提起だけをしておきます。  次に、国債発行条件の問題でありますけれども、これについてもずいぶんいろいろと議論がなされてまいりました。いま竹本委員からもお話ございましたように、いまの大蔵省のやっているというのは、実は皆さん方資本主義の前提に立ち、——資本主義の前提というのはいわば市場メカニズム、金融で言えば金利体系というものを基本に置きながら経済を運営をしていくというやり方だと思うのであります。ところが、後からいろいろとお伺いをしますけれども、実は政府自身がこの資本主義金利メカニズムというのを壊していってしまっている。しかし、たてまえだけは壊さないということをやっているから大変いびつな問題になってきていると私は思うのであります。  そこで、まずお伺いをしたいのは、国債発行条件をよくした場合に、具体的にいま関係する経済関係では一体どこに問題が起こってきますか。どこに影響してきますか。
  35. 吉野良彦

    吉野政府委員 あるいは御質問の趣旨を取り違えているかもしれませんけれども国債発行条件がいわば改善をされると申しますか、金利引き上げられますならば、少なくともまず端的に財政的には国債費の増加という形で財政負担の増加になるということはございます。
  36. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 銀行局長、銀行局の関係では影響ありませんか。
  37. 米里恕

    ○米里政府委員 もちろんいろいろな面があろうかと思います。引き受ける側の金融機関あるいは証券会社がどういう影響を受けるかという問題、それからそれぞれの競合商品との関係がどうなるかという問題であろうかと思いますが、これまたなかなか一律に相互に比較するというわけにもまいりませんし、それぞれの市場の実勢を見ながら相互に消化環境が決まってくるというようなことであろうかと思いますし、その実勢によって、引き受ける側も実勢に即した利回りのものとして引き受けるかどうかという問題であろうかと思います。
  38. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 金融債との関係はどういうふうになりますか。
  39. 米里恕

    ○米里政府委員 御承知のように、国債金融債は過去の推移を見ましてもいろいろでございまして、金融債が、普通私どもが言っておりますのは五年の利付金融債でございますが、それが国債より上であった場合もありますし、現在逆転して国債の方が高くなっておるというようなことで、それぞれの市場の実勢が必ずしも同一でございませんので、もちろん競合商品として全然関係がないわけではございません、かなりの関係があると思いますけれども、それぞれの市場の実勢がどうなっているかという問題であろうかと思います。
  40. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 しかし、今日まで国債のクーポンレートというのは金融債のクーポンレートよりも必ず原則的に下でなければならぬということで、若干一時逆転したこともまれにほんの短い期間ありましたけれども、原則的には発行者としては国債のクーポンレートというのは金融債のクーポンレートよりも必ず、片や国なんだから金融機関よりもわしの方が信用が高いんだということで絶えず下だったのではないですか。
  41. 米里恕

    ○米里政府委員 過去におきましては、大体いまおっしゃったような基本的な考え方から、発行主体が国なんだから金融発行金融機関よりは信用度が高いから金融債が上であるという状態であったわけですが、これも市場の実勢によっていろいろ変わりまして、最近、特に五十四年に入りましてからはむしろ国債の方が金融債を上回っておるという状態になってきておるわけでございます。
  42. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 問題は、金融債のクーポンレートと長期のプライムレートの差ですね。これが長い間〇・九%というふうに一定しているわけですね。ですから、国債のクーポンレートを上げると、市場では確かにそうだけれども発行の面で見ますと、金融債のクーポンレートをしたがって上げていかなければいかぬ。その上に〇・九%、長期のプライムレートがあるものですから、長期のプライムレートもそれに伴って上がっていくということになれば、長期のプライムレートが上がれば産業界全体に金利負担、資本負担がふえてくるということで、問題はこの〇・九%という長期プライムレートと金融債のクーポンレート、この差が固定をしているということも、実は国債発行条件をさらに弾力化できない一つの要因になっているのではないですか。この〇・九%というのは一体どういう根拠があり、しかも、これは私の知るところ昭和四十六年から、この〇・九というのはパー発行になって以来なっているはずでありますから、十年たっているのでありますから、長信銀のそれなりの経営努力やそういったものを経てくれば、クーポンレートよりもいつまでもプライムレートが〇・九上でなければならぬという、この〇・九という差を固定をしていくということも、いまや考え直していかなければならぬのではないだろうか、こう思うのでございますが、いかがでございますか。
  43. 米里恕

    ○米里政府委員 先生御存じのとおり、この〇・九というのはおっしゃるように四十六年からでございます。非常に長期的に見ますと、三十年代一・四、それが四十年代に入りましてから一・一、一・〇、〇・九と、長期的にはかなり落ちてきておるわけでございます。御指摘のように、金融借のコストにその他のコストを加えましたものが一応コスト面から考える長期プライムレートの一つの基準になる、こういう関係にございますので、そういった意味では今後さらにこれを努力してコストダウンをしていくべきだということはおっしゃるとおりだと思います。ただ、御承知のように、この十年間あるいは十年近く据え置きになっておりますのは、長期信用銀行をめぐる収益環境、まあ金融機関全体もそうでございますが、非常に苦しいシビアな状態になっておりまして、そういった中で、むしろ努力をしながらコストアップを防いできておるというような状況でございますので、現実の問題としてはなかなかむずかしいという問題もあろうかと思いますが、中期的には、先生おっしゃるようにできるだけ経営合理化を図っていかなければならないということがあろうかと思います。  それからもう一つ、御承知のように長期プライムレートは必ずしもイコール実勢金利ではございません。ある意味での最優遇レートということで一つの象徴的な存在でございますので、実勢レートは資金の需給実勢に従いましてあるいは長プラよりもかなり高い金利で貸し出しているものが多いという場合もございますし、あるいはまた場合によっては短期をまぜて長プラよりも低い実勢で貸すというような場合、これらはいずれも資金需給の実勢に従いまして金融機関と企業との相互の関係で決まってくるものでございまして、一応最優遇金利として一つの象徴的な意味でできるだけのコストダウンを図りながら現在のところは金融債の〇・九上になっておるという状況でございますので、これは今後ともに努力してまいるということは必要であろうかと思います。
  44. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう一度、では重ねてお伺いしますが、いま発行者としては、金融債の発行条件国債発行条件の比較は、金融債の方が短いので必ずしも簡単ではありませんけれども、必ず国債の方が下でなければならぬという前提に立っていない、このことは確認してよろしいですか。
  45. 米里恕

    ○米里政府委員 再三申し上げておりますように、昨年から国債の方が上回っておるという状態にございますので、金融債は必ず上でなければならぬということはないと思います。
  46. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次に、大変評判の悪い割引国債のあり方について少しただしておきたいと思うのであります。  これは昭和五十年、大量発行するときから、私たちが、ひとつ十年では長過ぎるから、なるべく個人が持ちやすい中期のものを出しなさい、あるいは割引国債にしてなるべく種類の多様化を図るべきだということの主張のもとにできたわけでございますけれども、しかし、実際のところ、いまの割引国債というのは全く人気が悪くて、実のところ証券会社が事実上かなりの部分を持っているということで、当初予定をしたような個人消化を進めるという趣旨に合った割引国債になってないわけですね。その原因というのは一年ものの割引金融債と五年ものの割引国債との税引き後の差というのがほとんどないに等しいということであります。確かに表面利率では五年ものの割引国債が七・八六に対して一年ものの金融債が七・六三と、この差が〇・二三%ありますけれども、一六%の分離課税をしてみますと、実は五年の償還差益に対して二八%かかりますので、その意味では金額としてはかなり大きな部分が税引き後は取られていってしまうということでありますので、同じ一六%でも一年ものの償還差益と五年ものの償還差益ということになりますので、金額で見ますと、五年ということが大変響いてくるわけですね。そうなってきますと、税引き後の利回りをして見ますと、たとえば割引国債の場合に六・三三九に対して一年ものの金融債が六・三三七、その差が〇・〇〇二と、実は発行のときに比べましてこれが何と百分の一ぐらいになってしまうのですね。〇・二三に対しまして〇・〇〇二でありますから百分の一ぐらいにその差というのは減ってしまうわけですね。これでは五年ものの割引国債というのが人気がないというのは、私は当然だと思うのであります。この点について、一六%の分離課税というのを変えるということは私はむずかしいことだと思いますので、一体、当局としてはこの点についてどういうふうに考えていらっしゃるのか、その点はいかがでございますか。
  47. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 割引国債は最近非常に消化がむずかしくなっているということは御指摘のとおりでございますが、これは一つには現在の金融情勢が基本的な要因になっておると考えるわけでございます。最近、御案内のように短期の金利が急騰いたしておりまして、長短金利が逆転しておるというような状況にあるわけでございます。したがって、余裕資金を持っております個人も法人もそうでございますが、どうしてもその資金をできるだけ短期で運用するということになってくるわけでございまして、しかもまた、長い期間の運用を志すものはある程度長期にとどまるわけでございますが、真ん中の中期というのは非常に環境が厳しいということになるわけでございます。いまおっしゃいましたように、金利差が短いものと長いものとの間にはさまっておるわけですから、いずれに対しましてもほとんど金利差がないという状況にあるわけでございます。ただ、これのメリットは、とにかく一六%の源泉で税金を払いますと五年間はそのままずっと持っておられるというところにあるわけでございます。仮に現在時点での利回りがそう有利でないということであっても、現在の金利水準は総じてかなり高いわけでございますから、五年間にわたってその金利が保証されておる。一年の割引債でございますと、五年間それを回転している間、いまの高金利が保証されるということはないわけでございます。したがって、その辺は投資家の判断だろうと思いますが、総合してみますと、必ずこれが不利だということも言えないわけでございまして、証券会社におきましても、そういう意味でなお販売努力をしていただいておるわけでございます。総額が年間で額面三千億ということでございます。金額が限られておるわけでもございますし、今後とも販売の努力をしていただいて、何とか消化を果たしたいと考えておるわけでございます。
  48. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これも、五年ものの割引国債というのは五年ものの金融債よりもレートが低くなければならぬという前提に立って、したがって発行条件の改定というのはできない、私はここにいわばたてまえが先に立っているいまの問題があるのではないかと思うのです。理財局長のお話を聞いてみますと、先ほど竹本委員の答弁にもそうなんでありますけれども、いまは金利の先高感があるからこういう状況なんだというお話になっているわけですね。では、これが今度金利が下に向くぞという情勢になったら、一対いまの国債のさまざまな市場実勢というのは好転をするのかということになると、私はしないと思うのです。なぜしないかというと、今度は金利が先行き低くなるぞという条件を見れば、それに合わせてさらにまた発行条件を下げていくというのが従来の大蔵省のやり方ですから、先高感という環境だけで、環境が悪いからいまの国債消化というのがままならぬのだということにならぬのではないかという前提で私は見ているわけです。したがって、今度の五年ものの割引国儀のことについても、五年ものの金融債との比較の問題、確かに十年債との比較、長短の問題がありますと同時に、投資家にとりまして同じ期間との比較というのもかなりウエートが大きいわけですね。そういうことになりますと、五年ものの金融債よりも低くなければならぬという前提も、ある程度個人消化を進めるという当初の目的から言うならば、その枠組み自体も外して物を考えなければいけないのではないかと思うのでございますが、この点はいかがでございますか。
  49. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 五年割引国債の利回りが五年の利付金融債よりも常に下でなければならないというふうには私ども考えておらないわけでございます。それぞれの市場の実勢というものを十分勘案しなければいけない問題でございますので、今後の条件設定に当たりましてはそういう考え方で臨んでいくつもりでございます。割引国債の場合は、これは個人消化商品でございます。したがいまして、直接に競合するものといたしましてはむしろ定期預金金利でございますとかあるいは一年の割引金融債、こういうものはもろに競合する商品だろうと思いますが、利付金融債の方は必ずしも直接に競合するという——もちろん間接的には競合関係にあるわけでございますが、というようなこともございますし、今後とも私どもといたしましては、むしろ国債の十年ものあるいは中期国債その他との関連という観点はかなり考えていかなければいかぬと思いますけれども、そういうふうな考え方で対処をしていきたいと思うわけでございます。
  50. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いま局長から話があったように、本来割引国債というのは、私たちの発想としては、とにかく個人消化をふやしていこうという発想で出たわけですね。ところが、日本証券業協会が発表している店頭売買高を見てみますと、毎年店頭売買高が非常にふえているわけです。五十二年の残高が三千九百二億円に対して店頭売買が二千百二十二億円ということでございますから、このころはまだ回転率が一・一五程度であったわけでありますが、五十三年度、残高が六千八百六億に対して店頭売買高が一兆三千二百三十五億、回転率が二・四七、五十五年二月の段階でありますけれども、残高が九千百五十六億に対して店頭売買高が一兆六千七百十九億、回転率が二・〇九ということになっているわけです。つまり個人保有をしてもらおうというふうに発行したこの割引国債というのが、実は流通市場では大変回転をしているということは、これは個人ではなかなか持てない割引国債になってしまっているということの一つのあかしだと私は思うのです。本来個人に持ってもらおうと思った割引国債が、回転率がこんなに高くなって店頭売買高がふえているというのは、当局としては一体どういう理由だと思っていらっしゃるのですか。
  51. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 お答えいたします。  ただいま委員指摘のとおり、かなり割引国債の売買高がふえております。最近の例によりますと、五十五年の一−三月でございますが、一般売買、現先売買合わせまして七千五百億ばかりの売買がすでに行われております。これはなぜかということでございますが、売買の実態を見ますと、個人の換金売りを中心といたしまして、事業法人、外国投資家あるいは証券会社が売却をしております。また買い方を見ますと、買い方の主力は事業法人でございます。要するに個人が売ってそれを法人が拾う、こういう実態が割引国債の売買の実態だ、こういうことでございます。  先ほど理財局長からもお答えがございましたように、私どもとしては、何とか割引国債条件を個人の消化に合うような形で引き上げてほしいということでいろいろ関係者間で協議をしておるわけでございますが、何と申しましても現在の金融情勢の中で短期金利が非常に高い。コールが一二%、現先が一三%、こういうような実態の中で五年の割引国債というのが性格的に非常に消化がしにくくなっているということがございます。私どもとしては、何とか早く金融情勢が好転して個人消化がより容易に行われるように、円滑に行われるようにということを期待しておるというのが現状でございます。
  52. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう一つ問題なのは、いま局長からお話があったように、個人がそれじゃこんなものは持っていてもしようがないから売ろうという場合に、一体どんな値段で売るのかという問題なんですね。これは取引所でも証券業協会でもこの割引国債の相場というのは発表してないわけですね。ですから、大口の投資家ならば、法人ならば、ある程度複数の相場をはじいて、いろいろと情報をとって売買をする証券会社というものを選択するということもできますけれども、個人はちょっとそこまでできませんですね。そういうことになりますと、一般投資家は一回買ったものをもう一回証券会社に引き取ってもらうという場合には他に比較するものがないわけですから、極端な言葉で言えば、証券会社の恣意的な値段でもう一回引き取ってもらっていると言っても過言ではないと思うのです。  これだけ割引国債の売買が頻繁になった場合には、何らかの形で割引国債の相場を一般の投資家にも発表する、そういういわば情報の提供、サービスをする必要があるのではないか。本来、私たちは五年これを持ってもらおうということで考えたことでありますけれども、これだけ売買が多量に行われるということになると、やはり売るときの値段というものも、一般投資家がわかる値段を何らかの形で出していく必要があると思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  53. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 ただいまの割引国債の相場の問題でございますが、御指摘のとおり、私どもとしては何らかの気配相場を公表することについて検討をしたい、このように考えておるわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、現在の割引国債の売買の実態がかなりノーマルでない面がございます。売り方が個人で買い方が事業法人というようなことで、一般の株の売買のように個人間の売買あるいは非常に多角的な売買というような形でない要素がございますので、その辺の実態がもう少し正常化した段階でその気配相場の問題についても考えてみたらどうか、このように考えております。
  54. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次に、中期国債の入札の問題でありますが、いま中期国債のみ入札制度をやっておるわけですね。なぜ中期国債だけやるのですか。
  55. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 国債消化方法についての考え方でございますが、私どもといたしましては、これだけ大量の国債を円滑に消化をしていくためには、現在のわが国の金融構造等を考えました場合に、やはりシ団引き受け方式というのが非常に適しておると考えておるわけでございます。したがいまして、消化の基本はあくまでもこのシ団引き受け方式、そのほかの公募入札等につきましてはこれを補完するという意味考えてきておるわけであります。国債の大宗は十年の利付国債でございますので、この十年利付国債はシ団に引き受けをお願いをしておる、こういうことでございます。したがいまして、同じ銘柄のものを一方で引き受け、一方で公募ということになりますと、二重価格というふうな問題も起こりますので、十年利付債はシ団引き受け一本にしぼっていく、公募の方は中期債を充てる、こういう考え方中期債を公募入札に付しておるわけでございます。
  56. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 理財局長が言われるように、いまのように押しつけをし、そして評価損を出しても一向に構わぬ、こういうことでは——それはいまのシステムというのは皆さん方にとってみれば大変都合がいいということは私もわかるのです。しかし、そんなことをやっていては、まさに先ほど竹本委員からも指摘があったように、この状態というのはこれから大変長く続くだろうという前提で私たちも考えていますから、後で質問しますけれども、大変なことになってくるだろうと思うのであります。  昨年度、入札計画が二兆七千億円ということになっておりましたけれども、結果は一兆四百億円。これは発行コストを非常に重視し、金利体系というものに非常に執着して、安値の応札についてはどんどん認めないという足切りをやっているために、こういう計画した入札の総額の半分も実施できないということになっているのじゃないでしょうか。このことを改めない限り、ことし二兆円の入札計画といっても、また同じように一兆円ぐらいの入札しかできないのではないか。いま私がとっているいろいろな情報からいっても、果たしていまのやり方が公募入札、いわゆる入札という制度と言えるのかどうなのか、私は非常に問題賄があると思うのであります。建設業界の中でもいろいろと談合があるというのがほぼ常識になっているようでありますけれども、それよりもさらにいまの国債に対する入札制度、やり方というのは、これは入札という言葉に値をしないと私は思うのであります。  一体いまのまま続けて、ことしの二兆円の入札計画は達成できると思っていらっしゃるのか、まあことしも半分の一兆円ぐらいでいいやというふうに思っていらっしゃるのですか。その点はいかがですか。
  57. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 五十四年度中期債消化がはなはだ不成績に終わったというのは御指摘のとおりでございますが、基本的には、先ほど来申し上げておりますように、金融情勢中期債にとって特に厳しかった、長短の金利が逆属していくというふうな過程を経たわけでございます。したがって、中期債にとっての環境というのは長期債以上に厳しい状況であったということが言えるわけでございます。  それから、よく足切りとか何か言われますけれども、これは一つには、まだ入札参加者が入札になれていないということがかなりな要因になっておるんじゃないかと思うわけであります。  通常、入札いたしますと、普通ならある一定の金利水準のところに相当集中して入札が行われるというようなことになるわけでございますけれども、現実には、高値のもの、安値のもの、非常にばらついて、相当な幅で入ってくるわけであります。したがいまして、どうしてもこぶになって集中的に入っておるところ、そこをとるということにならざるを得ないわけでございまして、それから点々と飛び離れてあるようなものは落としていかざるを得ない、こういうようなことの結果でございまして、決して意図的にちょん切るというふうなことであったわけではないわけであります。幸い中期債の入札も回を重ねておりますので、これからは入札者の方も、入札相場感といいますか、そういうものがだんだん集約されてくるということだろうと思います。これからもできるだけそういう意味市場の実態というものを反映した入札ということに心がけまして、この二兆円、五十四年度の実績から見るとやや欲張った計画ではございますけれども、何とかこれを達成したいと考えておるわけでございます。
  58. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 理財局長という立場からいいますとそう言わざるを得ないのかもしれませんけれども、実際には市場の実勢とかなり乖離があるということはもうだれも否定することができない事実でありますし、五十四年の五月からやった入札以降を見ましても、応募額が発行予定額よりふえたというのは二回だけであって、それ以外は非常に実勢との乖離があるということなので、私はいまの局長の答弁は満足しませんが、時間がありませんので……。  大臣、先ほど私が言っているように、日本経済資本主義を原則としているわけで、資本主義というのは、金融面で言えば自由な金利体系で、金利が高ければある程度そこに寄りつきが多い、そして、金利が高くなれば逆に借りる方はちょっと見合わせる、こういう金利構造というものを有効に利用しながらやっていくというのがいわゆる経済のメカニズムの原則だ、このことは恐らく大臣自体も否定なさらないだろうと思うのであります。  私たちも、そういった市場の実勢というものを十分勘案をして経済運営をしていくということがやはり最大のいいやり方だと思います。  ただ、それが行き過ぎの場合にはやはりチェックをする必要は当然あると思うのであります。そういった面から考えますと、いまの国債発行というのは、いみじくも理財局長が言ったように、いまのシ団引き受けのように、評価損というのを全部銀行、それから証券会社に事実上割り当てているのです。いまこれがだんだん個人にも行きつつあるわけでありますが、そういった評価損の分散を全部していって、国は何とか国債費を少なくしていこうというやり方は、必ずひずみが出てくるだろうと私は思うのであります。  そこで、一度、いま理財局長が言われるように、まだ応札者、入札参加者が十分なれていないというなら、もっと大量に公募入札制度を広めたらどうか、それならば十年ものの利付国債も全部入札制度にしてやっていったらどうだろうか、そして、結果が見るように、たとえば昨年二兆七千億の入札計画をしたけれども一兆四百億しかできないという実態ならば、これはやはり国も国債発行というものは大変な状況だということをもっと深刻に考えるでありましょうし、また金利発行条件を一%変えることによって何百億ふえていくんだということをもっと大蔵省も深刻にとらえてくると思うのであります。いまのように、評価損が出たものは全部銀行でそれは評価に上げなくていいというような、そこに押しつけをしている限り、まだまだ大蔵省の中には大変な安易感があるのだと思うのです。  ひとつどうでしょう、十年の利付国債というのも全部これから入札制度にして、本当にそこで大量の国債が出ることによるところのまさに自由な金利市場というものをつくっていって、それが発行条件もむずかしいぞということに、本当に金利体系というものが自由市場の中で生きていくということが、政府も大蔵省ももっと深刻にこの国債発行ということがむずかしいんだということが体でわかる、主計局長も主計局もさらに深刻に物を考えなきゃいかぬということになっていくんじゃないか。私たちから見れば、実はまだまだ甘えが大蔵省の中にも、国債発行の中にあるんじゃないか。いろいろいま理財局長も答弁なさるけれども、一面では確かにそういう点もあるけれども、まだまだ私は——私はと言うよりも、私たちはと言った方がいいと思うのでありますが、大蔵省は国債発行について甘えがあると思うのであります。  どうでしょう、ひとつ十年ものの利付国債もこれは中期国債のように全部入札制にして、一体どのくらいこれが消化できるものかどうか考えてみる、そして、できないということになれば、国民的にさらに大きなコンセンサスを得るような努力をしなきゃいかぬし、こたえるためには高い金利を払わなきゃいかぬというならば、これはやはり発行者である国なり、国の予算で持つというのが正しい経済運営のやり方だと私は思うのであります。その点について、大臣、いかがでございますか。
  59. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 国債発行についてまだ甘えがあるというおしかりでございますが、私ども発行に当たっております者にとりましては、毎月毎月の発行というのはきわめてシビアでございまして、特に、最近シ団との話し合い等におきましては、それは引き受ける側も大変でございますし、私どもの方も大変な苦労をして、いろいろ協議を重ね、発行条件等を決めて発行いたしておるわけでございます。  十年債も公募入札に付したらどうかという御提案でございますけれども、先ほども申しましたように、わが国の金融構造というのはきわめて間接金融構造になっておるというような状況でございますし、特に、長期の資金を潤沢に持っておるような、そういう投資家が育っていないということもあるわけでございます。したがいまして、十年という長期にわたる見通しといいますか、そういうものを持って入札に応ずるというふうな体制もきわめてまだ不十分でございますし、いろいろな意味で、長期債を入札に付するという環境はまだ成熟していないというふうに考えるわけでございます。  特に、国債のようにきわめて発行量が大きい、平均毎月一兆円を超えるような発行をしていかなければいけないという場合に、こういう日本金融構造のもとで、一体円滑に財政資金の調達ができるだろうかという点もきわめて不安でございまして、私どもといたしましては、いまこの十年債を公募入札で調達するということにはなかなか踏み切れないというのが現状でございます。
  60. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それは理財局長の立場から言ってみたって、それの方が都合がいいのですよ。これは参考人質問のときに同僚委員がいみじくも言いましたように、発行者が要するにその業務の監督者なんですね。だから、これはたとえば郵政省に発行させてごらんなさい。そうしたら、いまのように銀行が果たして引き受けますでしょうか、いまのような条件で。  確かに、いろいろな意味でシンジケート団が大変厳しい情勢になっていることも私も知っておりますけれども、しかし、そうはいっても、最後まで自由市場でやはり金利一つの大きな要素である発行条件というものを、皆さん方の前で、じゃシンジケート団が全部突っ張れるかということになりますと、どこかで、江戸のかたきを長崎で、何らかの形で監督者である皆さん方にまた足をすくわれるのではないかというおそれがあるから、まあしようがない、これは評価損で、これは国のためにやっているんだという名目にしながらやっているだけの話であって、じゃこれを郵政省が発行して、証券界も銀行界もいまのような条件で一体そのままのむだろうかということになりますと、実は本当に皆さん方いみじくも言っているように、皆さん方が監督者だから、証券局長と銀行局長なんかいるから、したがって、そこでしようがない、まあいやいや、ある程度のことは言うけれども、最後はのまざるを得ないというのがいまの国債発行の状況ですよ。ですから、もし郵政省がこれを発行したら絶対こんな条件でのまないと私は思いますよ。だから、その意味ではまだまだ大蔵省は甘えがあるのです。ですから、私はいまの金融構造から言ったら、それは渡辺さんにしてみればまさに都合はいいですね、両局長が控えているわけだから、言うことを聞かなければその他のほかの点でいろいろ圧力が加えられるわけですから。そういった意味で、まだまだ大変な甘えがある。  私たちが大蔵委員会で何度も何度も財政特例法を審議しながら、実はいま野党の間で大変いらいらがあります。それは、審議はするけれども、予算が通ってしまっているわけでありますから、何らかの手当ては財政的にしなければいかぬだろうということも私たちはわからぬわけではないわけであります。しかし、毎年毎年こんなことをやっていって一体ツケはどうなるんだろうというのはだれだって思うわけでありますね。そこで、私たちは、実は竹本委員も先ほど言われましたけれども政府の方針として五十九年までに赤字国債をゼロにしようと言うんだから、それならば、財政再建法というようないわば特例発行の各年度ごとの制限をつけて、そういうのを皆さん方にのんでもらおうではないかということも考えて法制作業をしようと思ってかかったわけであります。ところが、実はこれは法制上なかなかむずかしいということがわかったのです。財政法のまさに特例として単年度ごとにこの財政特例法を出しているわけでありますから、来年も再来年もということでなおかつ縛りをかけるということは、財政法そのものの基本的な点を否定をすることになってしまうので、その意味では、政治的には可能であっても、法律的には、それは財政法そのものまで直してかからぬといかぬという法制上の問題があるものですから、そういった意味での、たとえば来年は幾らにしなさい、再来年は幾らにしなさいという、法律自体を直すことがむずかしいということがわかったわけであります。しかし、現実には、これは発行されていくわけでありますし、これから先々特例債を減らしたって建設国債はまだふえていくのでありましょうから、そういった面からいいますと、われわれの立場からいって、将来に責任を持つという立場から言うと、そうは言っていられないわけであります。  そこで、最後に大臣にお伺いしますが、大臣も先ほどの答弁の中で、せめて五十九年度赤字国債をゼロにしたいということを言われておるわけでありますが、悪いことに、このごろ大蔵大臣というのは、私の知る限り、この四、五年は全く一年に一人ずつでありますので、まあ来年のことを言っても竹下大蔵大臣としても責任は持てないかもしれないけれども、しかし、政治はそうは言えないわけでありますから、五十九年度赤字国債をゼロにするという政府の方針について、われわれに対してただ答弁するというだけではなくて、どれだけの担保力を持って裏打ちをして、一体このことの決意を持っていらっしゃるのか、その点をお伺いをしたいと思います。
  61. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的にはたびたびその決意を表明しておるところでございますが、私は、その意味においては、専門家でおつくりいただいた先般の財政再建に関する国会決議というものが非常に床のあるものではないか、したがって、ラウンドテーブル方式か何かのお互いのディスカッションというようなものの中で担保される意見が出てくるのじゃないか、そういうことをいま期待しておるのです。もう政府の方でかくかくしかじかの増税をしたいと思いますとか言うような環境ではない。みんなを引きずり込むという意味じゃございません、責任を分散するわけじゃございませんが、みんなでディスカッションの中でそういう方途を模索して、それでもって国民に理解を得ていくという方法をとらなければならぬのではなかろうかというふうに思っております。いま歌手一年、大臣一年の使い捨てという言葉がございますが、しかし、私もまだ国会議員では引き続きおりたいと思っておりますし、同僚の一人としてそういう環境をつくらなければ国民に理解をしてもらうことはむずかしいのじゃないかという感じを持っておることは、率直に申し上げたいところであります。
  62. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 その辺の答弁までは今日までもされてきたわけでありますけれども、私たちは、本当にいま先に対して責任を持つということからいいまして、また財政の状況からいって、赤字国債をゼロにしても、建設国債は、経済成長もございますから若干ずつはふえていくだろうということは、ある程度頭に描いているわけですね。建設国債も同時にその分だけ全部減っていくだろうかということになりますと、どうもそうはいかないのではないだろうかと大ざっぱに言って見ているわけであります。そうなってきますと、ことし特例債を発行すれば七兆四千八百億、これを五十九年にゼロにしようということは、三年間でゼロにしなければいかぬわけですね、五十六年、五十七年、五十八年。五十九年のときにはゼロでありますから。そうなってきますと、ざっと言って毎年二兆日ペースで減らしていかないと特例債はゼロにならないわけですね。  それで、私は、竹下大蔵大臣が就任早々当大蔵委員会で、こういった問題は下から積み上げたのではとても特例債を減らしていくということはできないだろう、これはもう予算編成の前に初めから枠を組んじゃって、これは国会で答弁していますが、政治生命をかけて減らしますということでやっていただいたのが、あの一兆円。五十五年度の場合には頭から切ったわけですね。とにかくもうそれだけしか歳入がないのですからということで、あとは歳出の方をいわばそれに合わせてやってきたわけです。ですから、私は、基本的にもう財政の力というのは、公共事業といってもそれほどふやせる状況じゃないから、財政自体が景気を下支えするというような、あるいは浮揚させるというような大げさな力というのは、赤字国債がせめてゼロになるくらいまではもう無理なのではないかというふうに思っているわけでありますけれども、そういうことから言いますと、私たちの野党としてのいらいらを一体このまま——ますます多くなっていく国債の総額の中で、せめて最初に減らしていかなければ、赤字国債特例債をゼロにするためには、まあ来年の予算編成の話を言っては鬼も笑うかもしれませんけれども、やはり来年度、五十六年度は二兆円を目標にして減らしますという答弁でもあれば、私は、皆さんが深刻に考えている財政再建の問題、償還心配の問題、その他インフレの懸念の問題、これらの問題はかなり解消されていくのではないか、こう思うのであります。少なくとも今日まで政府が五十九年ゼロと言ってきたこの線に沿って、来年度特例債を二兆円減らしますという答弁ができないかどうか。それだけの政治的な決意を当然して当たるべき問題ではないか、こう思うのでございますが、いかがでございますか。
  63. 竹下登

    竹下国務大臣 私、就任早々でありましたが、初めに一兆円の減額ありきという方式は、いまにしてあれはもう少しよけい言えばよかったなというような反省もしながら、手法そのものは間違いではなかったような気がしております。したがって、五十六年度にもいつの日だれかが初めに幾らかありきというようなことをどういうふうにして定着さしていくかという問題は大事な問題であると思って、注意深く私も用意して構えてみようと思っております。
  64. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 その答弁ではきわめて不満でありますけれども、ひとつ各委員からお話があったように、こう毎年毎年やっていって、皆さん方は一年ごとにどんどんかわっていってしまうけれども、一体最後のしりはどこが持つんだというのは私たちも大変心配をしておりますし、何らかの形で歯どめをしなければいかぬということを深刻に私たちは考えているわけであります。したがって、いまの大臣の答弁ではきわめて不満でありますが、まだきょう一日当特例法の質疑がございますので、その間にさらに考えていただいて、この問題について御答弁をお願いをしたいと思います。  御苦労さんでございました。
  65. 増岡博之

    増岡委員長 午後零時四十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     午後零時四十三分開議
  66. 増岡博之

    増岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は財政特例法に関する質疑をいたしますが、最初に、国金局長が御都合があるようでありますから、その関係だけをちょっと簡単にさせていただいてから本題に入るようにさせていただこうと思います。  またここのところに来て、少し円が下がっておるようでありますが、私は最近の日本銀行の介入の経過をずっと見ておりまして、現在のフロートという制度の中における介入というものが一体どういうものだろうかということを感じておるわけであります。私はかねてから金利自由化論者でありますから、現在の世界経済なり、日本も少しは弾力化してきたわけでありますが、そういうところでは、そのフロートが余りに急激に動くときにはこれはやむを得ないかと私は思うのでありますが・どこかの線を維持しようなどという意図的介入ということは、本来のフロートの趣旨にも反するわけでありますし、できるだけ成り行きに任せた方が、結果的には外貨準備も減らないし、どんどん介入をして外貨準備が減ってくれば、そのことはまた実は円安に影響をもたらす要素だ、こう考えるのでありまして、そういう点で私のいまの気持ちを申し上げますと、大体アメリカのプライムレート二〇%などという問題が、さらに二五、三〇になるなどというふうには考えられませんので、おおむね私はここらがアメリカ金利の天井ではないか、こう見ているわけであります。ですから、結局この二〇%というような高い金利というものが物価の収縮あるいは景気の低速化というようなものとかみ合ってきさえすれば、必ずプライムレートは下がるのがアメリカのような金利が完全に自由化している国で当然起こるべき事態でありましょうし、そういう事態になれば円は反転をするであろう、こう私は思うのであります。円が反転すれば、この反転は、これまでのようなことはないでありましょうけれども、先高見越しで外資が流入してくるというふうな可能性も出てくるのではないかと思うのです。本日は日本銀行で支店長会議をやっておられるということで、総裁その他が無理だというふうに聞きましたから、もうきょうはそれを次回に繰り延べておるわけでありますが、これが国内の金利やその他にもちょっと関係がありますので、最初にちょっと伺っておきたいのでありますが、大臣、原則的に、この介入をするのは日本銀行でありますから、日本銀行政府がこうしろああしろということを言う筋合いではないかもしれませんけれども、しかし、現実にはやはり大蔵省としても十分配慮していただかなければならない問題だと思いますので、まずこれに関しての大臣の見解を承りたいと思いますが、もし必要があれば、先に国金局長からお答えをいただいておいても結構です。
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょうどいま午前の終わり値が二百五十七円八十銭、ちょっと強くなってきております。私自身の考え方を申し上げてみたいと思いますが、私は実は最初三百六十円がスミソニアンレートで三百八円になったときの官房長官をしておって、本当に戸惑いました。それからその後フロートして、当時世界的に言われておったのは、いま堀先生のおっしゃるようなまさに自然体であるべきものであって、介入などというのはダーティーフロートだ、こういうふうに言われておりました。久しぶりに今度財政当局へ来てみたら、その当時はダーティーフロートだと言われたものが何だか世界じゅうあたりまえのような感じになってきておるという印象を非常に強くいたしました。  そこで原則的に言ってみても、これは法律をいろいろよく読んでみますと、いわゆる介入自身は日銀がやっておるものの、これは大蔵大臣がその権限を委任したという形で、やはり権限は大蔵省にあるんですね。したがって、しょっちゅう国金局はやっておるわけですが、いろいろ協議しておるというふうに私は理解をしておりますが、最近の情勢を見ますと、これも非常に微妙な影響を与えてはなりませんが、先般来ドイツの大蔵大臣、スイスの中央銀行の総裁等々と話し合いをしましたら、何だか少しく自然体みたいな感じに返っておるような気がしてきたのです。したがって、実際問題としていわゆるアメリカの高金利からドル高になってきまして、ドイツマルク等は結局この一カ月ばかり一〇%下がっておりますから、日本の金にすれば二十五円ぐらい下がったということになるわけです。スイスフランが八%ぐらいでございますか、日本はきょうの段階でまだ三・何%になるわけです。結局自然体という原則にまた返りつつあるんじゃないかというふうな、まことに無責任な印象でございますけれども、最近そういう感じがしております。それで国金局長ともそういう種の意見の交換はしょっちゅうしておるのでございますが、したがって、介入を手控えたとかということになると、またいろいろな問題が波及するでございましょうが、傾向として私は自然体に返ってきつつあるような印象がいたします。いろいろな見方がございますが、アメリカ金利天井感が完全に出て低下するではないかというようなことから、全般的にドル安というような傾向がきょうから出始めたという感じがいたします。先のことはどうもわかりませんけれども
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 大体経済というのは上っていけば頂上があり下がってくれば底があるわけでありまして、私がいま申し上げておるのも、いまの為替の状態というのはフロートとは言いますけれども、余りに急激な変化があることは貿易上その他に支障を来すでありましょうから、なだらかにするための介入ということはそれなりに意味があると思うのですが、どうも最近の状態は、何か二百五十円に一つの線を引いてそこを守ろうなどとするやり方というのは、私から見ると、フロートの全体から見て大変望ましくない介入であったという感じがするわけであります。だから、私が申しているのは、何も介入してはいかぬということを言うのではないのでありますけれども、外準が大幅に減るようなほどの介入をすることは、それは介入が余り効果がないだけではなくて、外貨準備が減ることもやはり通貨にとってはマイナス要因にたる、こういうこともあるので、まず一つそのことを申し上げたのであります。  そこで、米国の金利の問題もさることながら、さっき証券局長がお話になったのでありますけれども、コールが一二%で現先一三%というお話であります。これは恐らく現先が一三%であればCDもこれに近いのではないか、こう思うのでありますが、銀行局長いかがでしょうか。
  70. 米里恕

    ○米里政府委員 ちょっと手元に二月までしか数字がございませんで、二月から後三月になってから猛烈に上がったというふうに記憶しておりまして、大体現先は手形、コールの間に来ておりますので、二二%台になっていると思います。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの現先とかコールは国内金融の問題でありますけれども、CDはオープンになっているわけでありますから、CDが適当な価格に上がっておれば、その点では日本の短期金利その他に比べて商品としては価値がある、こう思っているわけであります。ちょっと新聞で見ますと、これは外国通信の報道だと断って、西ドイツはサウジから債務証書形式で六十億マルク、九%で借り入れを行ったといわれる。本年じゅうに百億マルクまでふやすようである。こういうような報道もあるわけでありますね。やはりいまの一つの問題点というのは、産油国に何としても私どもの国から多量の資金が流れるわけでありますから、そこからのこういう借り入れをすることもやはり通貨の問題を含め非常に重要な問題だ、こう考えておるのであります。こういうような問題についてたしか佐上さんがどこか中東の方へ行かれるとか新聞で見たような気もするのでありますけれども、国金局としては何らかそういう対策、この前、一連の対策が出ましたけれども、そういう具体的な問題を考慮しておるのかどうか、お伺いをいたします。
  72. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 西独のあの問題でございますが、あれはいろいろな情報が出ておりますけれども政府は必ずしも具体的に中身を発表しておりません。われわれが聞いておりますところは、大体先生がいまおっしゃったような六十億マルクぐらいのことを聞いております。  それから二番目の、われわれの方の問題でございますが、これは日本の問題と、それから日本がかなりいろいろ金融面でも力が強いわけでございますので、非産油途上国の問題、こういうような両方の問題をあわせましてオイルダラーのリサイクリングというようなテーマになりますが、そういうような問題につきましては国際会議の場でも幾つか会合がありますし、それから自分の国の問題も当然のことでございますが、そういうものをあわせまして勉強はしております。  それで具体的な問題になりますが、第一回のオイルショックの後でヘルシュタットの問題が起こりまして、日本の為銀がユーロから金が引っ張りづらいという問題がございまして、予算委員会であの当時問題になりましたが、向こうから引っ張ってきて外為特会から為銀に分けてやったということがございます。いろいろな問題を検討いたしておりますが、大変申しわけないのでございますが、現にやってもう終わっているものもあるわけでございますけれども、ちょっと事柄の性質上言いづらい。先方の問題もございます。  それから佐上さんの件は、今度イタリアでサミットの準備会議がございます。その機会に、あの辺を通るわけでございますので、一般的に先方がどんなことを考えておるのか、そういうようなことを聞こうということでございまして、具体的な話で行くというわけではございません。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 以上で、それでは国金局長、結構でございます。  次に、経済企画庁、入ってもらっていますね。——皆さんにきょうは少し計数の問題を含めてお話をしたいと思いまして、ちょっと資料をお配りいたしました。一番最初は「GNPの推移」ということで四十九年度から五十五年度まででございます。これをごらんになりますと、まず四十九年度は当初見通し二・五%というのが、その年の十二月ごろに出します実績見込みでマイナス一・七、実績はマイナス〇・二。これが日本経済で初めて実績がマイナスになった年でありますけれども、それ以後はおおむね実はプラスでございまして、五十年は実績三・四、五十一年は五・七、五十二年五・八、五十三年五・七、五十四年が一応六・〇、これは実績見込みであります。こういうふうなことで大体五・五%から六%近くのところを日本経済は実質成長を続けているわけであります。これだけ実は実質成長を続けていながら、一体どうして今日のような赤字財政になったのだろうかというところがマクロ的に見ると非常に問題のある点ではないかという気が私はいたします。  そこで、この五十五年度の問題についてちょっと伺いたいのでありますけれども、五十四年度当初見通しで六・三%でありましたものを実績見込みで六%に修正をいたしました。聞くところによると、公共事業を国及びその他合わせて一兆円を繰り越したので、それが〇・三%分に該当するので六%にしたというふうに聞いておりますが、その点はそれでいいのでしょうか。企画庁の方でお答えください。
  74. 井川博

    ○井川政府委員 経済でございますから、各種の要因が絡み合います。しかしながら、先生の申されました公共事業一兆円、ただし、この中には土地代がございますので、その分を差し引く、そして中央、地方で約八千億という感じになるわけでございますが、GNPベースで繰り延べるという計算をいたしました。その計算のために、その計数だけを挙げますと、五十四年についてはマイナス〇・三の影響を及ぼすというふうなことになっておりまして、まさに先生のおっしゃるようなかっこうになるわけでございます。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、この繰り延べたのは建設関係、公共事業でありますから、これは当然五十五年度に積み増しをされているわけですから、このいまの公共事業の八千億円の繰越分を本年度に使わないと仮にしたならば、ことしの実質成長は四・五%ということになる。この四・八は、いまの〇・三を上へ乗せて四・八ということかどうかをちょっと伺いたいのであります。
  76. 井川博

    ○井川政府委員 これもあくまで計算上の数字でございますけれども、実は五十四年の公共事業を繰り延べます場合に、最後の方で繰り延べますので、五十四年への影響は〇・三ということになりますけれども、これが五十五年になりますと、年度の当初からその数字が入ってくる、大きい数値になります。数字といたしましては、〇・六一%というふうな非常に大きい効果がある。したがいまして、われわれといたしましては、そういう繰り延べによって経済がなだらかな成長をしていくということで、大変いい形になるということにいたしたわけでございます。したがいまして、いま先生は〇・三とおっしゃいましたが、形の上では〇・六、七%というかっこうになるわけでございます。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、これはもし繰り越しがなかったとしたら、この〇・六一を四・八から引くことになりますか。
  78. 井川博

    ○井川政府委員 一応、そういうことになるわけでございます。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この繰り越しがなければ四・一九ということでありますね。  私は、実は五十四年度経済見通しについて、昨年の一月、社会党の方へ現在の次官でございます宮崎調整局長に来ていただきまして、宮崎さんに、ことしは六・三%は確実にやれますよという話をいたしました。当時民間機関はおおむね五%、四%程度の見通しで、宮崎さんは、いや、そう言っていただいたのは初めてだと言って、大変喜んでいただいたのですが、私は、昨年度の五十四年度というのは、諸般の情勢から六・三は確実にいける、こういう気持ちでございました。いまの時点でこう見ておりまして、どうもこれは、実績は六・三%程度になるんじゃないかと見ているのですけれども、調整局長、いかがでしょうか。
  80. 井川博

    ○井川政府委員 ただいま先生が四・一九%と申されましたが、実は、四・八でございますので、そこから〇・六%ないし〇・七%引きますと、四・一、二ということになるわけでございます。  それから、現在の国民経済の趨勢は、実は所得統計は十−十二月の段階までしか出ておりません。したがいまして、一−三月の計数がわかりますのは五月末ということで、もう少し後になるわけでございますが、現在の情勢からいいますと、六%を少々超えるのかもしれぬ。と申しますのは、残り一・二ないし一%前期がありますれば、これは六%をちょっと超えるという水準でございまして、いまの段階は大体そのペースを走っている。先生おっしゃるように、六・三までいくかどうかとなりますと、私も自信がございませんが、まあ六%を少々超えるぐらいのペースをいっているのではないか、こういう感じがいたします。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 私がいまちょっと細かいことに触れておりますのは、やはりこの五十五年度経済が一体どうなるだろうかということが一つの問題だろうと思います。  これから大蔵省の方にちょっとお伺いをいたすのでありますけれども、実は、ことし、いまの八千億を繰り延べたということになっていますが、しかし、合わせて公共事業は上期六〇に大体したいというふうなことになっておるようでありますね。上期六〇にするということは、五十五年度の予算での配分で六〇ということだろうと私は理解をするので、繰り越した分も全部上へ乗せて、そうしてそれを五十五年度として六〇という話ではない、こう思うのでありますが、その経緯はどらか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  82. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 契約率を上期何%と申しますのは、まず、その母体は予算現額というものな使います。その予算現額は、当年度、五十五年度に計上しました公共事業関係費等と前年度から繰り越したものを合わせて予算現額といたしております。  ということになりますと、前年度から約八千億を未契約で繰り越しております。本年度が十二兆九千億余りでございますので、先ほどの未契約繰り越し等を合わせますと十四兆数千億というものの六〇%、御質問にストレートにお答えいたしますならば、そういう意味では、前年度からの繰越額も含めて六〇%、こういう計算をいたしております。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 さっきもお話がございましたが、コールをいま日本銀行は大変締めて、外貨との関係でコールを締めるということは、裏返せば現先にも波及をしてくるということですし、それから、それがCDに波及をして、外貨の取り入れに有利なようにというような形で実はやっているわけでありますね。  同時に、公定歩合は九%まで上げて、金融面からは、実は現状で果たしてそれが必要かどうかと思われる程度の高金利になっておるというのが現状だと思うのでありますけれども、私は、いまのお話のように、五十五年度の予算の上にさらに八千億乗せるということで六〇%というのは、当初予算ベースで見ればこれは六二、三%ですか、六〇とはいいながら、もう少し計数は高くなるのではないかと思うのですが。
  84. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 若干計数的に御説明申し上げますと、前年度から三兆百七十一億繰り越しがございます。と申しますのは、先ほど八千億と申しましたけれども、繰り越しの中には、契約済みで支払い未済の繰り越しもございます。それから、未契約で繰り越したもの、それを合わせますと三兆百億程度でございまして、そのうち約八千億が契約未済繰り越しになってまいります。  上期の契約額を六〇%といたしますと、その実額は八兆六千二百億程度になります。このうちに、前年度から既契約で繰り越したものにつきましては、当然これは上期に出てまいります。そういたしますと、新規の分という契約は、六〇%、八兆六千二百億からこの繰り越してまいりました三兆円を差し引きました五兆六千億というものは、新しく契約が上半期にできる権限でございまして、これは予算現額の中で未契約のものに占めます割合というものは三九%になってまいります。  ちょっと失礼申し上げましたが、冒頭に三兆繰り越したと申しまして、この中に未契約があると申しましたが、これは間違いでございまして、全部契約済み繰り越し、それで、未契約のものは新規として計上する、こういうことでございます。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお答えで、片方で金融が一生懸命引き締めをやっておるのに、どうも財政の方の引き締めが不十分ではないか、こう思ったのですが、いまのお話で、新しく契約する分が三九%ということならば、ひとつそれなりの努力をしていただいておるということで、結構でございます。  そこで主計局長にちょっとお伺いをしたいのでありますけれども、あなたは理財局長として、昨年の三月十四日の当委員会で非常に大事な答弁をしておられるわけであります。その一つは、同僚の伊藤委員に対する答弁でありますけれども、「今回の利上げも、先ほど来申し上げましたように、長期資金需給のバランスが崩れた、あるいはまた先行き大量国債発行という圧迫要因というようなものがございますので、こういう市場で円滑に消化されるかどうかということ、あるいは、それが過度の財政負担を招くか招かないかという観点から見ましても、市場実勢尊重の国債発行というものは、」ここからが肝心なんですが、「今後おのずから国債発行の歯どめとして作用してまいるということになろうと思います。そういう意味におきましても極力、一日も早く大量国債発行から脱却したいというのが私ども考えでございます。」これが一つです。  同じ日に、同僚の池端委員質問に答えて、「特に私どもが今後国債管理政策として考えておりますのは、ただいま委員が御指摘のように、やはり何としても大量国債発行を抑えていく、発行額を圧縮するということが、これは国債管理当局者のみでなく、政府として、財政当局として国債発行額の圧縮を図るということがまず第一の要諦でございます。」ちょっと飛びまして、「それと同時に、今後の問題といたしましては償還という問題、先ほど申し上げましたけれども、二年、三年、四年という国債が公募入札で発行されることになりますけれども、これが満期が参りました場合に、その償還期が参りました場合におけるこれの借りかえ公募というものと新規債の発行あるいはその利払いとか、そういういろいろむずかしい要因が出てまいります。」こういうふうに昨年の三月十四日に大蔵委員会で答弁をしておられるわけであります。  そこで、主計局長になられて、確かに今度は八八八ですかという大変わかりやすい金利国債になったという点は、最近の長期国債発行のレートとしては大変評価すべきことだと思うのでありますけれども、しかし、さっきからの答弁を聞いておりましても、理財局長が、中期債の公募問題については、公募に応ずる側がどうもなれてないというようなお話があったり、私どもが関係者に聞いてみると、足切りとか胴切りとかいろいろありますという実態も聞くわけですね。それは確かに主計側からすれば金利が低い方が望ましいと思うのですけれども、私は、いまのような金利の高いときには、長期国債で八・八なんというものをたくさんに出すよりも、できるだけ短期のものを出して、いつまでもこんな高金利が続くわけではないわけでありますから、それに対応するためには、財政上の見地から見ても、要するにいまここでお触れになった二年、三年、四年という中期国債をより弾力的に発行して、この方は場合によったらオーバーバーになるくらいに出した方がいいんじゃないか。そうしていまの八八八などというのを少し——十年先までそれを払うというのは、金利が下がってきたときにはこれはどうにもならないのですから、やっぱり払わなければならないわけですから、財政運営の立場からしても、さっき佐藤委員が触れた十年国債の公募の問題は、いまのところ、私は第二段だと思っているのです。第一段、中期国債が本当の公募になってこない限り、そんな十年ものをさわったってどうにもならない、こう思うので、どうもこのお話といまの理財局長がお答えになった内容とは——これは主計、理財の関係でどうなるかわかりませんけれども、どうもちょっと私、すっきりしないのですね。特にきょう主計局長にもおいでいただいているのは、こういう過去の経緯を踏まえて、要するに主計の側とすれば、多少金利負担がふえても円滑な消化をすることの方に比重をかけるべきではないのかと、こういうふうに私は考えるのでありますけれども、その点はいかがでしょうか。
  86. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 最近におきます数次の公定歩合の引き上げ、それに伴います国債金利の改定につきましては、主計局の立場といたしまして、理財局の方には、私どもは、より国債が円滑に金融市場に受け入れられることということが経済全体の姿として望ましいので、その面から破綻が来ることはかえって経済にマイナス、ひいては財政にマイナスになるので、金利はお任せいたします、理財局あるいは銀行局、証券局において最も適切な金利ということを設定していただく、財政負担の問題よりもそちらの方が大事であるということを常々申し上げて、理財局の方でもそれで対処いたしていただいておるものと信じております。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、さっきの佐藤委員質問に対する御答弁、聞いていられたでしょうから、いまの中期国債の公募の条件。私も関係者からいろいろ詳しく聞いていますけれども、時間がありませんから、ここで一々申し上げませんけれども、これは政治的判断だと思うのですよ。ですから、ひとつ大臣におかれても——西ドイツでは一〇%の国債発行されて、これはいま西ドイツではオーバーバーだと言っているわけですね。何も私、オーバーバーになることを期待するわけではありませんけれども、そういうような条件というものが非常に市中の中での消化に役立つし、同時に、いまの国債発行のあり方も一遍これは——私どもがちょうだいしている範囲では、中期債幾ら、何が幾らというふうには資料をいただいていないものでよくわからないのですけれども、少なくとも高金利のときにはできるだけ短いものを多少金利が高くても公募で出して、二年もすればもう下がるに決まっているわけですから、そういう対応が私は長い目の財政の効率から見て非常に大事なことだと思うのですが、大臣、いかがでございましょうか。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 中期債は——まあいままで決まったのは十年ものの八・八八八だけでございまして、これからの対象になるという商品でございます。いろんなことを考えなければならぬなと思っておりますのは、非常に微妙な問題で、国金局長も御理解をいただいたのですが、将来、事によったらいわゆる国債市場へ別の角度でオイルダラーが入ってくる可能性とてないわけではない。そういうようなことを考えますと、これは諸般の事情、ここのところ、しっかり勉強して、巧みな対応をしなければいかぬときだというふうに私ども認識はしております。先般もドイツの大蔵大臣がお見えになりました際もそのようなお話もしたわけでございますが、ドイツにおいての反省でもありませんが、少し高過ぎたというふうな感じは持っておられたようでございます。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、高過ぎるのを出せと言っているのじゃないのですね。いま申し上げているのは要するに二点で、こういう金利の高いときには短いサイトの国債を出しましょうということですね。そういう短いサイトの国債を出すときには十分な金利をつけましょうということなんです。それは金利というのは、上がれば必ずどこかでまた下がるし、下がってしばらくするとまた上がる。これは経済の循環がある限り避けられないのでありますけれども、その循環をにらみながら、要するに借金の仕方を少し金利の面を含めて考える。ただ、出すときは金利をけちけちしないで払ってほしいということを私は言っているわけなんですね。そのかわり、サイトを短くすることによって高い金利のものは早く償還をして、今度はその時期に合った安い金利のものをまた出していくという取り扱いを、裏返せば国がもっとポートフォリオについて関心を持つべきではないのかということを申し上げたいわけなんです。それについての大臣の答弁をいただきたいと思うのです。
  90. 竹下登

    竹下国務大臣 八・八八八になる前は八・〇九〇でございますか、それで五年ものの割引国債七・八六〇、三年が七・九七六でございますか、そういうようなことで、いま先般の公定歩合の引き上げ等々からいたしまして、利付金融債、割引金融債、そして国債と、そこまでが決まっておるわけでございまして、この後の問題につきましては、私も御意見は非常によくわかるような気がしております。そういうことで、市場になじむようなことをも兼ね備えて考えなければならない課題であると思っております。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっといまの御答弁、回りくどいけれども、まあまあ理解をされたことといたします。  そこで、皆さんにお配りをした資料を見ていただきながら、これまでの国税収入というのは一体どんなふうに動いてきたんだろうか、こういう点をちょっと見ていただきたいと思うのであります。  五十年度から五十五年度までの「国税収入の推移」を主たる税目で書いていただきました。そうしますと、実は税収はときによって大変伸びておるときもあるわけであります。五十二年から五十三年には四兆七千八百六十九億も実は税収が伸びている。ところが、それにもかかわらず赤字国債がそのときには四兆三千四百四十億出されておる、こういうことであります。ことしも非常に問題があると私は思うのですが、四兆五千億、ここではちょっと計数で見ると違うのですが、政府のフレームの方で見ると四兆五千億余りの自然増収があると言われておったにもかかわらず、七兆四千八百五十億赤字国債を出すということになっているわけでありますね。どうもこういうふうなのを見まして、私は日本財政というのはどこかに一つのフレームを考えながら処理をするということにこれからはどうしてもしなければならないんじゃないだろうかというふうな気がするわけでございます。  それを今度は「一般会計予算の増加内訳」というのを寄与率で資料にしていただいたのをちょっとごらんをいただきたいのでありますけれども、これはどういうことかと言いますと、四十九年と五十年の予算の各項目の増加分を項目別に出していただいて、それを一〇〇として増加分の中の割合は一体どうなっているかというものを実は寄与率というかっこうで出していただいた資料であります。  これを見ますと、昭和五十年度に対しては社会保障関係費は二四・七%、その次も二九・二%、その次も二一%と、五十二年まではずっと伸びておおむね二〇%台であったのが、五十三年、五十四年、五十五年となりますと二〇%台を割って、五十五年は一四・七%という、社会保障関係費は大変な低い伸び率になってきておる。これは全体がそうでありますけれども……。問題は、やはりここで異常なのが国債費で、これが三〇・九%ということで、これまでの国債費の寄与率というのは四十九年−五十年は四・二で少ないのですけれども、おおむね二〇%程度以下だったわけですね、二〇、一六、一五、一九という。ここへ来て、いきなり国債費の増加分が三〇にふえた。予算全体の額を小さくしたから国債費の寄与率が高くなったと言えば、あるいは計数上はそうかもしれません。ことしは地方財政関係費がウエートが非常に高くなって、これが三五という寄与率で、その他のものはいずれも大変低い、こういうわけであります。この中で、実は公共事業というのが五十三年、五十四年と大変大きく伸ばされているわけであります。それまでは六千百八十二億、七千五百四十四億という増加分であったのに、ここへ来て五十三年に一兆一千七百五億、一兆九百十七億というふうに大変伸びております。今度は千八十六億しか伸びていないのでありますけれども、さっきからのお話のように、ともかく繰り越しをするほどになってきておる。  ですから、いまの新経済社会発展計画ですか七カ年計画の中で、二百四十兆円という公共事業が計上されておるわけですけれども、まず私ども財政再建というものを考えるためには、公共事業というものをかなり大胆に圧縮をすることなくしては財政再建はなかなか簡単に行えないのではないだろうか、こういう感じがしてならないのでございます。ことしは千八十六億という伸びでありますから、まあモデレートなように思われるのでありますが、それにもかかわらず、さっきのような多額な繰り越しということが行われているわけでありますから、実際にはさっきのを上へ乗せますと、五十三年、五十四年当初は減ったのでちょっと問題がありますけれども、どうも公共事業関係というものが五十三年にうんと伸ばしてからなかなか圧縮できない、こういうことになっているんじゃないだろうか。  いまの景気の問題は、さっき申し上げたように、私は五十五年度の問題を後で申し上げるつもりで五十四年度までしか話をしておりませんけれども、そんなにことしてこを入れなければならないほどの経済情勢にはならないという判断をしておるのでありますけれども、今後の問題として、公共事業をどう見ていくかという問題をひとつ主計局長の方からお答えをいただきたいと思います。
  92. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 公共事業予算をどう扱うということについては、二つ観点があろうと存じます。  一つは、やはり景気全般との絡みでございます。先ほど堀先生から資料で御指摘いただきました企画庁の各年度の実質成長率の表がございましたけれども、この中においていわゆる政府支出が一体どれだけの寄与度があるかということを各年度にわたって分析いたしてみますと、やはり四十九年、五十年、オイルショック後のあの不況期においては、公共事業が相当大きな実質経済の寄与をしておるということがございますので、その景気との関連をどうするかという問題があろうと思います。  ただ、この場合、景気との関連のみに公共事業予算を着目してまいりますと、やはりある年は急激にふえ、ある年は横ばいあるいはマイナスというようなことになりますと、公共事業関連の産業界に与える影響というものは非常に大きなものになります。そういう意味におきましては、公共事業というものはなだらかな形での推移が一番望ましいわけでございます。景気情勢を除けばそれが一番望ましいと思っております。  それと、もう一つは、わが国の社会資本ストックレベルというものを将来どういうふうに持っていくかという観点も必要でございます。各種公共事業につきまして長期計画ができております。一方、二百四十兆の公共投資の七カ年計画の中におきます試算におきましても、住宅水準あるいは道路水準、下水道普及率というものをある一定のレベルまでの達成を目的としておりますので、この社会資本のレベルをどうするかという二つ観点がございまして、私個人の感じといたしましては、公共事業費というものは相当国の財政に歳出の増加要因となってこれを圧迫する形になっておりますけれども、いまのわが国の社会資本のストックを考えると、一概にこれを極端に今後減少していくことには問題があるのではないかというふうに感じております。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 いま極端に減少するのはむずかしいということなんですが、私は、横ばいにしていくぐらいのことは当分やらないことには、なかなか財政再建というのはできないんじゃないだろうかという感じがいたすわけであります。  そこで、いまの最後に、実は昨年の十一月に大蔵省の方で発表された五十五年度予算のフレームというのがございます。その真ん中に、実は五十五年度の予算案を入れさせていただいたわけであります。私がこの前にも委員会でちょっと申し上げたのでありますけれども、これができたころにはすでにもう大体二兆円程度の自然増収があるという話が出ておりました時代でもありますので、そうするとこの五十四年度公債金収入十五兆二千七百億というのはかなり減額されるだろうというふうにわかっていたのではないだろうか、これが減額されるということは、裏返せばこのフレームの中の国債費が少し下がるのではないだろうか、こういうふうな気持ちでこれを見ていたのでありますけれども、その点の問題が実は定かでありませんので、主計局長の方でこれを発表されたときにおける公債金収入についての判断はどうであったのかを伺いたいと思います。
  94. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 昨年十一月にこのフレームを発表させていただきました段階におきまして、十一月の末でございましたけれども、補正の方針が確定いたしておりませんでした。結果的に補正で十五兆二千七百億から一兆二千二百億五十四年度債の減額をいたしたわけでございますけれども、十一月末、その辺がはっきりいたしておりませんので、一応十五兆二千七百億全額発行ということでこのフレームをつくらせていただきまして、このフレームを私どもが各方面に御説明を申し上げる際、特に新聞の記者会見等で正式にこれを公表いたしました節には、もし国債の減額が行われれば、一兆円につき何百億程度これが減るであろうという予測はあらかじめ申させていただいたわけでございます。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 資料をいただくと、結局この五十四年度は、三月末だろうと思いますが、十三兆四千七百二十億円ということになっておるようですが、理財局長、これでよろしいでしょうか。
  96. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 三月末までの発行額は十三兆四千七百二十億円でございます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 私がいただいておる資料と合っております。  そこで、私は、大臣、いま一番大事なことは、国債発行量もさることながら、やはり特例債の問題、さっきから私どもの佐藤委員も申しておりますし、これまで皆さんがお触れになっていることだと思うのでありますが、この特例債を五十九年にはなくするというのは、これは非常に大事な一つの枠組みだと思っているわけであります。しかし、これについては、いまのままの形で一兆円ずつ減らしていくとすれば、約八年ほどかかりますね。ことし七兆四千八百五十億出ているわけですから、もし一兆減らしたら次が六兆四千八百億、五兆四千八百億ということになると、実は六十二年ぐらいでないと解消できないということになってしまう。ですから、これを単純に割りますと、大体毎年一兆八千億ぐらい特例債を減らしていかなければ、計算上これは五十九年にゼロにならないのです。  そうすると、私はここで問題を提起したいのは、大臣もこの前財政再建元年のイブだとおっしゃいましたからね。あのイブはいいですが、五十六年はまさに財政再建元年にしなければいかぬと思うのですね。財政再建元年にするためには、もう理屈なしに、いま出されたこの財政フレーム問題、ここで二兆円頭から落としていくということにしない限り、私はこれはもう皆さんがどうおっしゃっても理解ができない。私ども、大蔵省も良心的にこの特例債というものには重大な関心があるから毎年法律にして出しておられるということだと思いますが、毎年法律にして出していて、一体国会はそれに対してどういう機能を果たしているんだろうかという点に私はいま大変大きな疑問を感じておるわけであります。要するに、予算は予算で通れば予算の範囲内で特例債が出せるんだ、こういうことになっているけれども、私はそういう意味では予算委員会でこの国債減額問題についてどれほど真剣な論議がされたかを必ずしもつまびらかにしておりませんけれども、まさにこの法案の審議をするわれわれとすれば、これはわれわれが国民に責任を負わなければならないきわめて重大な問題だと思っているのです。だから、いみじくもさっき大蔵大臣が国会における財政再建の決議をいただいた、適切だったとおっしゃったわけですが、政府はいま大臣が交代しますと方針も変わるかもしれませんけれども、やはり国権の最高機関である国会としては、一定の歯どめが具体的にかからない限り、実は審議をする意味はない、こういう気持ちなのであります。  そこでちょっと今度は経済企画庁の計画局長に伺いたいのでありますけれども、私が過年度の計数を見ながら皆さんにお配りをしたのは、多少上がり下がりはあるかもしれませんけれども、二年間の経済見通しというのを作業することはできないのだろうか。これは調整局長なのか計画局長なのかわかりませんが、要するにいまのところは単年度しかやっていない。もちろん単年度も大変むずかしい。私もよく承知していますよ。単年度も大変むずかしいけれども、一定の予測を立てながら、二年ぐらいの見通しをまず経済企画庁で一応各省と相談して立てる。それをもとに財政当局は、細かいものは要りませんから、この十一月に出された程度の財政フレームでいいから、二年にわたる財政フレームというものを一遍考えてみたらどうだろうか。これはたまたまこの前、年末にNHKの討論会に出ましたときに、いろいろと議論の中で、山中貞則さんが、どうも単年度でこういろいろ言われると大変やりにくいんだということを彼も言っておりました。まさに、いまそういう税だとか財政とかの関係の問題というのは単年度だけの問題では、そういう場所でも大変答えにくい問題だと私も理解するわけでありますが、ここらでひとつ、五カ年で最終時点に仮想の数字を立てておいて、そしてそれを線を引っ張って出すなどというあんな子供だましのようなことはやめて、これからひとつ、見通しですから、狂ったからどうというわけにはいかないので、こういう見通しで、これから五十六年度に入るわけですが、五十六年度の見通しというものを出すときに、あわせて五十七年度はこうなる可能性が高いという見通しを出すというような作業が経済企画庁ではできないかどうか、ちょっとお答えをいただきたいと思うのであります。
  98. 井川博

    ○井川政府委員 先生お話しの意味合いは大変よく私もわかるわけでございます。ただ、見通しのつくり方については、先生十分御承知の上お話しをいただいておりますが、御案内のように、われわれが政府見通しをつくります場合には、単なる一年でございますけれども、大変いろいろな議論のある中で慎重に検討して出しているわけでございまして、本心を申し上げますと、つくる方も受け取る方もわが国の場合少し数字に神経質になり過ぎている。たとえば外国のようにぽんぽんと変えていくというふうな姿勢でございますればそうでもないのでございますが、わが国の場合は、一年先も真剣に考える。しかも、その一年は一年どころか三カ月か半年たてば四囲の環境その他もがらっと変わってくる。したがって、年度が終わりに近づきますと、われわれの立てた経済見通しとか物価見通しが目標にいくのかいかないのかなんて大変神経を費やす、こういう状況でございます。現に今年度の物価につきましても、当初四・九という目標を立てましたが、消費者物価について四・七に下方修正していいんじゃないかということでやったわけでございますが、どうも見通しで四・七六ぐらいになりそうだというと、切り上げると四・八じゃないか、少し違うじゃないかというふうな議論が出るくらいでございます。したがいまして、いまのようにきわめて慎重に、しかも段階的接近法というやり方をやっております現状からいたしますと、さらに一年前ということになると、もうわれわれ事務方としてはふるえがくる。要するに、自信のある数字を政府の見通しとして出すというふうなことはちょっと現段階では考えられない。これが民間の場合のように、きわめて気軽に感触的に状況が変わればいつでもぽんぽん変えるというような状況でございますれば別でございますが、少なくともいま現在政府がやっておりますようなやり方といたしますと、二年というのは大変むずかしいんじゃないか、そういう感じがいたしてございます。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 私もこれはずいぶん昔からやっておりますが、大体経済見通しなんというのは——本来経済企画庁というのは商工委員会所属の役所ですから。ところが、一向に商工委員会じゃこういうことはやらないんで、もっぱら私は大蔵委員会で長年やってきたのですから。あなたの御苦衷はよくわかります。  私は、この前、去年の一月に宮崎さんに来てもらったときに、どうも少し完全主義に過ぎるんじゃないか、少し考えたらどうか。このごろは台風が来ますときに、昔は台風の進路というのは線だったのですよ、ところが、このごろは台風の進路は常に幅があるわけですね。要するに、一定の幅のここからこの間へ来る、これは大変望ましい案だと思うので、宮崎さんに去年の一月に来られたときその話をしたのです。課長が一緒に来ておられまして、課長はこれは大変おもしろいですねと言われたけれども、宮崎さんは、いやわれわれのところじゃいまちょっとそこまでできませんと言うのですが、私は、当年度はいまやっているのだから、これ、財政収支その他のベースだからいいですが、二年度先はこれでいいと思うのですよ。上下の差があっていい。要するに、それは先のことを予測するのに線を引いたこと自体が科学的でないのですよ。本来一年先のことを予測するのなら幅があるのが科学的なのであって、線で出しているというのはきわめて非科学的なんです。それは日本の、国会を含めて非常に完全主義を要求しているものだから、ちょっと計数が違うとけしからぬ、こうなるので、皆さん方もディフェンスの立場上いろいろとやりにくくなっている。これは経済問題には合わないのですよ。経済というのは常に動いていくもので、何というか科学の必然で、要するに一を足したら二になって二を足したら三になるというような、そういうものじゃないのですから、あらゆるファクターで物が動くわけだから、そういう意味では、まだ一年目は仕方がない、二年目は一定の幅があってもこういう予測というものがもう必要な段階に来ていると私は思うのですよ。ですから、私がまず経済見通しについて申し上げておるのは、一定の経済見通しがないと財政フレームを二年にわたってやるというのはなかなかむずかしくなる。フレームであっただけでもむずかしいので、だから、二年目の方はいまの幅のあるもののフレームを出してもらっていい。これはことしもフレーム二つを出しているのですからね。私は財政フレームというのは二つあって、その選択、あるいは真ん中に来ていいし、どうあってもいいのですが、こういう場合とこういう場合がある。だから、これをひとつぜひ考えていただくことによって、単年度でなくて二年ごとにローリングをしていくということになると、少なくとも国債発行に対する歯どめ問題と、その際に、じゃ財源をどうするかという問題が不可避的に論議をしなければならぬところに出てくるのじゃないだろうか。単年度でやっていたらなかなかむずかしいですよ、これからの問題として考えると。だから、まずいま当委員会で一番大事なことは、来年、ともかく何としても、それも特例債を二兆円減らすという問題ですね。四条債については、これは何といっても物が残ってくるし、いま局長が言われたように、日本はまだ社会資本必ずしも充実しているわけじゃありませんから一定の量は仕方がないと思うのだけれども、何としても特例債を減らすということは私は財政上の最大緊急課題だ、こう思っているのです。どうでしょうか、ひとつ企画庁、いま私が言う程度の幅を持ってでも作業できませんか。
  100. 井川博

    ○井川政府委員 正直申しまして、見通しの場合に幅の議論というのは議論としてはすでにここ一、二年いろいろな議論が出ておるわけでございます。ただ、慎重な見方をしますと、いろいろな条件によると、その幅からさらに出るという場合がある。政府が見通しを立てる場合に、そういう見通しが立てられるかというふうな議論もございまして、結局は過去のやり方を踏襲している。そのかわり、これは先生も御承知のように、去年とことしでございますが、われわれの経済見通しの中で「しかし、我が国経済は民間活動がその主体をなす市場経済であること、また、ことに国際環境の変化には予見し難い要素が多いことにかんがみ、これらの数字はある程度の幅をもって考えられるべきである。」四・八なら四・八と出してあるけれどもひとつ一定の幅で考えてくださいよということをわざわざ加えているのは、やはりいま先生が言われたような思想がここにも一つ出てきていると思います。  先ほど申し上げましたように、大変お気持ちはわかるわけでございますけれども、しかし、他面この見通し自体が一方において翌年の予算の基盤になり、それから国内の経済主体の一応の準拠になるというふうなことでございまして、少なくともその翌年分については、先生言われたように、いままでのようにやれ、そういたしますと、その次の年については、むしろ見通しというよりきわめて感触的な問題になるのじゃないだろうか。いまされております議論等を通じて財政上の必要からそういうものが要るぞということになれば、われわれとしてもそういう方向の作業が可能かどうか、検討はやぶさかではないと思いますけれども、しかし、先ほども申しましたように、現在のやり方から言いますと、二年先のいろいろな予見というのは大変むずかしいのじゃなかろうかなという感じがいたしてございます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの仕組みで二年延長しろというのは、もちろん私も無理だと思うのですが、実はこの資料を皆さんにお配りしたのは、ごらんいただくと、実績は五十一年五・七、五十二年五・八、五十三年五・七、五十四年六・〇、もちろんこの中には、主計局長が言われたように公共事業、政府の財貨サービスの購入で支えたときもありますけれども、私は大体日本経済というのは五%程度でいくのが最も安定した条件ではないだろうか、この過去の例を見てもそうでありますけれども。ですから、五%を軸にして、まあ上がったとしても六%までだろうし、下がったとしても四・五くらいまでの範囲じゃないだろうか。この計数から見ると、いまの五十年の三・四というのはまさに四十九年のマイナスからスタートしているわけですから、裏返せばげたがないわけですね。大体五%の成長ということになれば、幾らかのげたが先に乗っかるわけですから、それを含めて見ていくと、私はそんなにむずかしい問題ではないのではなかろうか。私は党の方針として五%というのを五十五年度の見通しで発表している。政府四・八%、国民経済研究協会は同じ五%だったけれども、最近下方修正して四・八%、こうなっているのですが、私は依然として五%でいけるとまだ思っている。それはどこに問題があるかというと、円の反転の時期だと思っているのです。円の反転の時期がうんとおくれてくれば、これは大変むずかしい問題になるだろうけれども、円の反転に伴って金利も下がってくるであろうし、諸条件が整ってくるから、円の反転の時期が私はさっき申し上げたようにわりに早い時期にまた来るのではないだろうか。昨年も実は逆の面での反転だったわけでして、私はわりに早期に今度は円が円安の方向にシフトするということを見越して六・三%という見通しを立てておったわけでありますが、ことしは逆な面での反転がプラスになる、こういうふうな判断をしておるわけであります。  だから、これから財政当局の方に伺いますが、予算は単年度主義でありますけれども、しかしこれらの予算の対応の仕方は何も単年度でなければならぬとは考えていないのでありまして、その点でひとつ財政当局の方に、いまの経済企画庁との論議を踏まえた上で一定の予算フレームを、今度五十六年度予算を発表されるときに向こう五十七年度までできないか。それはもう皆さんこれからサマーレビューですかスプリングレビューか知らないけれども、来年度予算の作業にかかるというふうに聞いておりますね。来年度予算の作業にかかるときに五十六年度のものが何もなくて対応はむずかしいんじゃないか。ですから、いまのスプリングレビューかサマーレビューか知らないけれども、これを真剣にやろうとすればフレームが先になければまずいんじゃないか、フレームなしで作業したって、それはいまの財政再建につながらない、こう思うものですから、ひとつ財政当局としては、何もそれが確実に実行されるとか実行されなければならないとかというような完全主義を私はこの委員会で要求するつもりはありませんけれども、枠組みだけを決めることがこの際は一番重要だというふうに思いますので、まず主計局からお答えをいただきたいと思います。
  102. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 いろいろ御意見拝聴させていただきましたが、フレームのつくり方というのは二通りあるのだろうと思います。  一つは、予算の編成を直前に控えて、こういうふうな状況であると、非常により現実に近い数字でフレームをお示し申し上げる。それは昨年の十一月の末に発表させていただいたフレームは、まさに税収につきましては主税当局においてこれくらいの税収はほぼ確保できる、その根拠といたしましては、もちろん企画庁と景気見通し、経済見通し等の打ち合わせの上の数字であったろうと思います。と同時に、歳出面におきましても当然増経費をこれくらいもう見込まなくてはならないという現実的な数字が、昨年一般歳出におきまして約一兆七千億、だから国債費、地方交付税においても歳出増がある。そういうものに基づきましてつくるフレームと、将来の財政を見通して一体どういうかっこうに財政はなっていくのだろうかというフレームのつくり方と、二通りあると思います。  前者のフレームにつきましては、そういう事柄の性質上、経済見通しあるいは当然増経費がどういうふうになるかということがある程度めどがつきませんとできませんので、前者のフレームにつきましては、これは二年間分をそのときにつくるというのは非常にむずかしい問題だろうと思います。  しかし、後者の問題といたしまして、将来の財政の傾向がどうなるのであろうかというフレームは、ある一定の前提を置けば可能であろうと存じます。たとえば、現段階におきまして私どもも来年度の予算の事前点検を始めたわけでございますが、来年の経済成長が名目で一〇%、租税弾性値が従来の平均値の丁二であるとすれば、税収はこれくらいになる、そうして税外収入はほぼとんとんであろう、そしてまた公債金というものを、いま堀先生が御指摘のように特例公債を二兆円減らすとすると、歳出財源というものがどれくらい確保できるか、その中から税収が弾性値一・二で伸びるといたしますと、おのずから地方交付税に回る金額がこれくらいになる、それから本年度国債の十四兆二千億の発行金利負担増がどれくらいになるというのが出てまいりまして、差し引き残り、文教、社会保障、一般公共事業等を含めて歳出に回せる金はどれくらいかというのが出てまいります。  同じような手法で五十七年をその延長線に伸ばすことは可能でございます。いま私どもがまさにその点検作業を始めておるわけでございまして、いまの堀先生がおっしゃるように、二兆円来年特例公債を減額するということにいたしまして、名目成長率一〇%、租税弾性値一・二ということにいたしまして国債費と地方交付税を控除いたしますと、一般歳出は本年度の歳出よりも八千ないし九千億減額しなくてはならないというようなフレームになろうと思います。こういうフレームのつくり方も一つあるわけでございます。  それともう一つ予算委員会でもしばしば御指摘を受けたわけでございますが、そういうことと、それからもう一つは、それはもう全く歳出にはこれだけしか回す財源がないというフレームのいまのつくり方でございますけれども、歳出にはおのずから当然必要な経費がございます。将来に向かってどれくらいの歳出の増加傾向があるか、いわゆる後年度負担の推計を行うことは可能でございます。可能と申しましても、これは各省庁関係いたしますし、たとえばお米の水田再編利用のいわゆる転作奨励金というものの傾向が将来どうなるのであろうかというようなむずかしい推計の問題もございますが、年金の額でございますとか生活保護費でございますとか、そういうものはいろいろ人口の老齢化に向かってどういう傾向になるというのはわかりますので、そういう意味で、五十六年、五十七年、五十八年程度ぐらいまでのところは、後年度のそういう財政負担がどうなるか、いわゆる後年度負担推計をもとといたしました財政計画的なものは、これは策定が可能なはずでございます。  一方、税収は先ほど申し上げましたように一定の弾性値、一定の前提の成長率ということではじくわけでございます。そうしますと、そこで歳入と歳出とのギャップが当然出てまいります。西ドイツが財政計画をつくりました当初の財政計画というものはそういうものでございまして、そのギャップを要調整額というふうな表示をいたしたわけでございます。それは歳出を削るか歳入の増を図るか、そこはそれから先の政策手段、国民の選択であるという提示の仕方でございます。私どもがいま財政計画の策定作業を部内で進めておりますけれども、私どもはそういう形で、いま申し上げましたそこに要調整額というものが残るけれども、これについて、これを増税で埋めるかあるいはどこの歳出を削るかということを財政当局あるいは国会の御承認なしにこれを決めるということはとうてい不可能なことでございます。ですから、こういう形のものを御提示することによって将来の財政の傾向、どこにどう対応すべきであるかという御認識をいただきたいということでいま財政計画というものを進めておるわけでございまして、堀先生の御指摘の二年にわたる見通しのつくり方というのは、そういう意味で歳出面も含めた後年度負担推計を入れた財政計画的なものの策定が一つの方法、それからもう一つは、歳出はもう捨象いたしまして歳入財源がこうなって年々どれくらいの歳出増財源がそれで賄い得るかというやり方、その二つがあろうかと存じます。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 財政当局でもそれなりのそういう作業を進めておられるようでありますが、私はこの前大蔵大臣に歴史の検証にたえる大蔵大臣になってほしい、こう申し上げたのですけれども、スタートが一兆円、これはゼロからスタートしているわけだからやむを得ないのですが、来年度特例債二兆円減額をフレームとして対応するということは、財政再建のスタートを切った大蔵大臣として、まさに歴史的な検証にたえるものになる、こう私は思うのです。私は、いまここで来年度二兆円削りますという話をしなさいというお尋ねをしておるのではないのです。しかし、そういうことが可能になるような手だてをせずに、何もしないでいきなり十一月か十二月に二兆円なんという話が出たのでは、これはなかなかむずかしいのですよ。だから、私は、いま主計局長からお答えいただいたように、その後の方で結構ですが、歳出には一切触れないというのではなくて、一応歳出にも触れながら、どこを削るかは別ですが、もしこういう条件になれば歳出はこれだけ削らなければできませんならできませんという形のものを早くこの委員会に提示されて、そうして私がこの前申したように、要するに参議院選挙の前ではなかなか皆忙しくてだめですから、参議院選挙が終わったらひとつ財政委員会と税制小委員会をセットにして、そういう資料があれば、そこで議論が前へ進むと私は思うのです。まさに、私がこの間も申し上げたように、これからは政府の時代ではなくて議会の時代だと思っているわけです。いま主計局長がお話しになったが、余り先までは要らないのですよ。要するに二年ぐらいあればいいのですね。参考になりますから、先のものもあってもいいのですけれども、当面二年くらいはきちんとするという腹構えで対応しない限り、ずるずる流されてしまって、そのうちには何も五十九年なんということを決めることはないじゃないか、六十二年でもいいじゃないかというふうな話になりかねないのですね。いまの特例債は十年で償還して借りかえしない、これは与党を含めて皆のコンセンサスだと私は思っております。そうなったときに、先に大変大きな負担が返ってくるわけです。いまから十年たてば七兆四千億からのものを歳出から落とさなければならないわけですから、そんなものを増税するなんといったら大変なことになると思う。そういう意味では、本当に真剣にこれを考えなければいけないと思うのです。いま私が提案をさせていただいている問題、これは私は単発的に言っているのではない。この前からのここの審議の経過で、総括的にどうしてもこういう対応をしなければ財政再建はむずかしいのではないかと思うので、その点を含めて、ひとつ大臣からお考えを承りたいと思います。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 私も同感であります。お互いが集まるのは結局参議院選挙が終わってからということになろうかと思うのですけれども、国民の理解と協力を得るその場所はどこかと言えば、私はやはり国会だと思うのです。なかんずくそれをラウンドテーブル方式みたいにやっていけば、それこそ実りある議論ができてくるのではないかということを心から期待しております。  それから、予算のフレームA、Bをつくったとき、実は最初、閣議ですらすらいくかなと私もいささか心配しておりました。しかし、とにかく初めに一兆円の減額ありきという姿でやって、あれはちょうど大臣がかわったばかりだったものですから、余り気がつかなかったのかどうか、それは別といたしまして、わりにすらすらといって、その点は私も非常にうれしかったのです。それがまた現実の姿となって、きょうフレームA、Bの真ん中の部分をお示しになっておりますね。そういう姿になったことでございますから、いまも主計局長を初め折々部内で話しておるのは、やはりそういう初めに何々ありきという姿で臨まないと、とても財政再建の実効を上げることはできないという基本的な考え方は一致しておると思います。
  105. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 ただいま私がフレームのつくり方は二つあると申しました。たとえば後年度負担推計をある程度入れた、いわゆる各歳出項目についてこれはこれくらいの経費増になるであろうというものを入れたフレームと申しますものは、実はいま各省と一生懸命詰めておる段階でございまして、これにはいろいろ問題がございます。財政計画をつくる際の常といたしまして、そこで一応推計したものは各省とも既得権化して硬直化してしまう問題とかいろいろございます。それから、推計をやる段階でこれを余り抑え込む形で私どもがあえて接しようとしますと、とうてい協力が得られないということで、現在その作業は進めておりますけれども、私どもも大車輪でやっておりますし、予算委員会におきましても御質問がございまして、大蔵省部内の作業としては本年末をめどに何とかそこを目鼻をつけてみたいというような御答弁もさせていただいておりまして、鋭意やっておりますけれども、いま堀先生のおっしゃいますように、参議院選挙後直ちに大蔵委員会であれ小委員会であれ大蔵省の試案的なものを御提示するということは、現段階ではちょっと時間的に私どもまだ自信が持てませんので、何か別途かわるもので御議論いただければと存じております。  それともう一つ、私どもがこういうものを出します際にいつも心配いたしますのは、これはいわゆる増税キャンペーンではないかという反論が必ず返ってまいります。私どもは決してそういうことではなくて、財政の実態を御認識いただくためにつくるものでございますので、その暁におきましてはそういうふうな受け取り方をしていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
  106. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、一年こっきりの話というものは継続性がないと思うのですね。私が言っておるのは、そう長年のことは不可能なことですから、せめて二年程度というものでそういう財政の中の継続性を確保しながら問題の処理をすることが望ましいということです。  それから、いま主計局長が何か増税キャンペーンと言われましたけれども、この大蔵委員会に問題が提出されるということは、私どもの要求に基づいて政府が提出することですし、それをどう判断するかはわれわれの委員会における判断でありますから、その点は別に御心配は要らないと思います。  最後にちょっと、これは理財局長に申し上げておきたいと思うのですが、さっきの公募債の入札問題、関係者が、今度の公募債は大変市場性も見てもらって望ましい姿でしたと言えるようにしてもらいたいと思うのです。というのは、御承知のようにいま市場では七十円台で国債が買えるのに、今度は九十九円五十銭かで売るわけですね。(「詐欺だ」と呼ぶ者あり)いや、詐欺はちょっとひどいけれども背任みたいなものだな。実際はこれは大変な問題だと思うのですね。だから、片方でそういう事態もあるのですから、私が提起した問題を御理解いただいて、せめて公募債はスムーズに入札が行われるように、それについては余り非常識な価格に落ちることがいいと私も言っているわけじゃありませんから、それはそのときの金融情勢を見ながらやっていただくことだろうと思います。少なくとも、いまの公募債はどうも私ども考えている入札制度からほど遠いような気がしますので、これだけは特に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  107. 増岡博之

    増岡委員長 坂口力君。
  108. 坂口力

    ○坂口委員 国債の問題につきまして各同僚議員からあらゆる角度からお話がございまして、ただ一つ国債の話にかくもいろいろの議論があるものだと思いながら聞かしていただいていたわけでございます。ただ、この大蔵委員会内における議論だけではなくて、国債の問題は一般国民の間におきましてもいろいろ議論を呼んでいるわけでございます。私ども選挙区に帰りましたときにも国債の問題がいろいろ話題に出まして、実は困ることもあるわけでございます。  この国債発行されました直後に、ある人から、私は第二次世界大戦中にあるいは直後において非常に国債に対する亡霊に悩まされた、また今回国債が出て、国債を買わないかというようなお話もたくさんあるのだけれども、坂口さん今度は大丈夫でしょうなというような話をいただいたことがあるわけでございます。私も国債がこういう形になってくるとはつゆ知らず、そのときにはやあもう今度はそういうことはないですよとよけいなことを言ったものですから、その人に先日会いましたら、亡霊はまだ生きておりますなあという話になりまして、いささか返答に困ったわけでございます。それは大蔵大臣に聞いてほしい、こう言いたいわけでございますけれども、地方に参りますと与党も野党もございませんで、ときには大蔵大臣にかわって弁明をしなければならないときもあるわけでございまして、はなはだ返答に困ったことがございました。  きょうの新聞を見せていただいておりますと、渡辺理財局長が日経新聞において国債についていろいろと御意見を述べておみえになるわけでございます。この新聞に出ておりますことが即そのまま理財局長の御意見なのか、あるいは短かなやりとりでございますから意を尽くしてない面もあると思いますので、若干、一、二お聞きをしたいと思うわけでございます。  この中で理財局長は、国債市況は今後落ちついていくかという質問に対しまして「条件改定よりむしろ経済金融全般についての先行き不透明感が払拭されることが基本だと思う。内外経済情勢の不透明感がなくなれば国債消化はあまり心配いらない。」こう述べておみえになるわけでございます。一見ごもっともな御意見と思うわけでございますが、ならば、この内外経済情勢の不透明感というのがなくなるのであろうか、こう考えましたときに、昨日からもイラン問題が非常に大きな問題になっておりますように、まさしく不透明の時代でございまして、内外経済情勢、政治情勢の非常に不透明な時代が今後も続くのではないだろうか、このことをどのようにお考えになっているのかということをお聞きし、そして大臣からもあわせて御意見があれば御意見をいただきたいと思うわけであります。
  109. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 私の発言はある意味では期待を込めて言ったわけでございます。ただ、現にアメリカ金利情勢等を見ましても、特に長期の債券金利等はやや頭打ちの傾向が出始めておるわけでございます。また国内の国際収支の状況を見ましても、この四−六を過ぎればあるいは好転に向かうのではないかという感じもないわけではないのでございまして、物価の問題につきましても、油の需給関係等も五十四年度に比べますとやや緩んでおる、五十四年度のような大幅な値上げが五十五年度引き続いてずっと行われるということも余り現実的ではないのではないかというような感じもするわけでございまして、おっしゃるように国際政治環境というのは必ずしも透明ではございません。ただ、しかし、経済の面について考えますと、こういう高金利がずっと何年も続くということはまず考えられないわけでございまして、もしそんなことになれば、本当に経済は壊滅してしまうというようなことでございます。したがいまして、私どもといたしましては、何とかできるだけ早い機会にこの転換期を迎えたい。五十四年度は終始一貫して金利上昇を続けたわけでございまして、したがって、またその中において一般の市場の受けとめ方は先行き金利高、こういうことで終始してきたわけでございます。国債につきましても、過去最高金利水準を設定したわけでございますので、この辺で金利天井感というものが芽生えてもらいたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  110. 坂口力

    ○坂口委員 大臣にお答えをいただきます前にもう一言だけ申し上げてお答えをいただきたいと思うわけであります。  私がいまお聞きをいたしましたのは、確かにそうした内外経済情勢の推移によりまして大きな影響を受けることは事実でございますし、私もそれに言葉をはさむものではございません。しかし、そのことも重要でございますが、国債市況というものは条件そのものによりましても大変大きな影響を受けることはこれまた事実でございまして、すべてとは申しませんけれども渡辺局長もすべてとおっしゃっているのではないと思いますが、現在の国債環境が非常に複雑であるのは、その大きな原因が内外経済情勢の推移にあると言われるのであるならば、一言物を言わせていただきたい、こういう気持ちで申し述べたわけでございます。  さらに、昨日から米国とイランとの問題が非常にむずかしい状態になっておりまして、これから石油だけではなくてすべての経済面に大きな影響を与える可能性もあるわけでございます。円の動き等につきましては、けさほどからも議論のされたところでありますが、そうした状況も踏まえて大臣がどのようにお考えになっているかということもひとつあわせてお答えいただきたいと思います。
  111. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、不透明な感じというものは私も同感でございます。短期的に見てみますと、先週と申しましょうか、までのいわゆるドル高という傾向、それに比してドイツマルク、スイスフラン等の値下がりとでも申しましょうか、そして円も防衛策をやり、総合物価対策をやりましたが、これがアメリカインフレ対策とちょうどカウンターパンチのようになって対ドルについては円安傾向をとった。ところが、この辺で金利天井感が出るのではなかろうかというような見込みをしておりました昨日の朝の、今度はイランとのまさに国交断絶の話でございますから、そうすると、このことはどういうことで影響してくるかと申しますならば、いわゆる友好国等に対する国連へ提案をいたしました経済制裁決議、ソ連の拒否権によって葬られましたものの、そういうものがどうも情報で見ると、法律を伴ってアメリカにおいては制裁が行われていくということになりますと、わが国はそれらに対してどう対応していくべきものかという短期的に見ても大変複雑な問題が多くなってきております。  そこで、たとえば為替相場一つとってみても、そういう影響が一体どういうかっこうで出るかの予測すら昨日できなかった。いきなり二百六十三円というのが続いてみたり、どどっと下がってみたり、非常に予測しにくい状態にあることは事実でありますが、いわゆるデタントという傾向ではなく、政治的に見ても緊張状態とでも申しましょうか、そういう状態の中ではますます不透明さが加わってくる。したがって、私どもも部内でいろいろ協議しておりますが、国際的な交流なり会議にはできるだけ出席することによってそれらの中長期の見通しも立てていかなければならぬ、そういう感じがいたしておりまして、本当に訪れる外国人の方も多いのでございますが、国際金融局を初めとして積極的に各種会議に出て情報の正確なる収集ということに努力をしておるというのが実態でございます。したがって、先ほど来理財局長がお答え申し上げました言葉の中で、私も似たようなことだなと思ったのは、期待と願望を込めながらそういう中長期の見通しというものに対応して今日まできておるな、こういうのが実感でございます。
  112. 坂口力

    ○坂口委員 きょうの報道の中に、もう一つ国債金利国債発行世話人会におきまして正式に決まったという記事が出ているわけでございます。このことにつきましても、同僚議員からいろいろ議論の出たところでございますが、八・八八八と大変未来に開いた調子のいい数字でございまして、この数字のごとくすべてが末広がりでいけるかどうか疑問のところでございますけれども、八・八八八%というのが過去の最高であることは事実でございます。このように国債条件が整えられたことを私も多とする一人でございますけれども、しかし、中にはまだ実勢を十分に反映していない、こういうふうに指摘をされる方もかなりあることも事実でございます。十四兆二千七百億円の国債消化するためにはこれからも発行条件についてはさらに検討を加えていただかなければならないでしょうし、またそれぞれの国債の種類の多様化をしてもらわなければならないだろうと思うわけです。先ほども議論がございましたけれども、長期国債もいずれは公募入札制——それがどんな形であるかは別にいたしまして、そういったことも検討しなければならないときがくるのではないか、こう思うわけであります。長期債は十年ものはそういう形には原則としてしないのだというきょう昼までの御議論でございましたけれども、いろいろなものをつくるとそこに格差が生まれるということでございましょうが、しかし、同じ十年ものでも六・一国債もあれば今回のように八・八八八というものも生まれてくるわけでございます。そのときどきによって条件は異なってくるわけでございますから、その差はいずれにいたしましても出てくるわけでございます。ですから、余りいままでのことにこだわり過ぎて目的を見失うことのないようにしていただく必要があるのではないかというふうに私は思います。  中期債の話も先ほど出ましたし、またわが党の同僚議員からもお聞きをしたところでございますが、五十四年度の補正後の中期債発行予定額は二兆四千二百億円であったはずでございます。これは補正後発行予定額全体で十四兆五百億円でございますから、中期債の割合は一七・二%に、割ってみますとなります。この五十五年度発行予定額を見ますと、これは言うまでもなく全体は十四兆二千七百億でございますが、その中でいろいろの中期債を含めますと二兆二千百億円、これは一五・五%になります。議論のありますように、この五十四年度の中期国債は一七・二%に補正後なっておりますが、しかし、その半分もなかなか消化できにくいという現状もあるわけでございまして、かなり下回っていることだけは事実でございます。しかし、その五十四年度の目標よりも、五十五年度の予定額というものが全体から占める。パーセントとしてはさらに下回っている、これは現在の高金利時代においていかがなものであろうか、先ほども指摘のあったところでございますが、私もそう思う一人でございます。五十四年度の補正後における予定額も、それだけ立てたけれども、しかしそれも十分に発行できなかったのだから、この五十五年度はさらに目標を下げてもやむを得ないのだ、この五十五年度の目標そのものが達成できればそれは五十四年度よりも多くなるのだ、こういう議論も成り立つであろうと思いますが、しかし、目標そのものを初めから下げるということは、やはり中期国債に対する取り組み方というものが問われる可能性も私はあると思うわけです。その辺についての御議論がございましたら、ひとつお聞きをしたいと思います。
  113. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 五十五年度中期債につきましては、公募入札で二兆円を予定いたしておるわけでございます。この二兆円という数字を計画するに際しましては、私どもとしては、実際のところやや欲張った計画であるという感じがいたしておるわけでございます。と申しますのは、五十四年度の実績が一兆そこそこということで終わったわけでございまして、中期債の今後の消化環境というものを考えました場合、五十四年度から見て、急速に改善するということは見込まれないわけでございます。先ほど申しましたように、金利天井感というものが出てきて長短金利の逆転というような状況が少しでも緩和されてくれば、五十四年度よりはややよくなるということは言えるかと思いますが、しかし、五十四年度の実績一兆円強に対して二兆円というのは、かなり欲張った計画であるということが言えるかと思うわけでございます。ただ、おっしゃいますように、私どもといたしましても、この中期債というのは実は五十三年度から始めたわけでございまして、画一的なシ団引き受け方式というもの以外に、実際の市場に公募入札という形でその反応を見ていくという意味からも、これは非常に大切なものであるという考え方でございまして、何とかこの中期債の公募入札制度というものをできるだけ定着させ育成していきたいという政策的な意図もございまして、やや欲張った計画を設定したわけでございます。  今後の運営といたしましては、先ほど最後に堀先生からお話もございましたけれども、できるだけ中期債の公募入札につきましては、市場の実勢等を勘案した消化可能な発行条件というものに導いていって、何とかこの二兆円の目標は達成したい。もし仮に、さらに消化できるというふうな状況であるならば、これは十年債の方を減らして中期債をふやすということも十分考えられるわけでございまして、現在は、当面の目標といたしましてやや欲張った数字ではございますが、二兆円を設定してその消化努力をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  114. 坂口力

    ○坂口委員 皆さんの決意のほどはよくわかりましたが、これから中期国債のいろいろにつきまして検討をしていただかなければならないだろうと思います。ことしの一月にも中期国債ファンドが誕生いたしております。私もこのことをよく知らなかったわけでございますが、この中期国債ファンドは零細資金を吸収できるというメリットもございますし、また固定金利ではなくて変動金利でいけるという特徴もございますし、一年ものの定期預金や郵便貯金と大体同程度の金利もつくという特徴もございます。一カ月据え置けば手数料なしで自由に解約できるという特徴もあるわけでございまして、いままでにない非常に新しい試みではないかというふうに思っているわけでございます。しかし、漏れ聞くところによりますと、金融界からかなり反対もあって枠の制限というのがかなりあるようでございますし、あるいはまた、広告を余りしてもらってそこへ集中すると困るので広告はやらないという、行政指導だけでいくというふうな条件までついているという、まあいわく因縁と言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、しろもののようでございます。こうした新しいものがせっかく出ましても、なかなか広告も出せない、みんなに知らしめる方法もなかなか少ないということで、非常に眠っている感じもしないではないわけでございます。金融界もこうしたことに非常に敏感なのは私もよくわかりますが、しかし、こういった形で国債の多様化を受け入れていくことができれば、金融界は十年国債等で多くの損失を出さずに済むという一面もあるわけでございますし、これはいい面悪い面相半ばするのではないかと思うわけでございます。したがいまして、その辺のところも含めて、こういったものをつくればやはりもっとみんなに知らしめるというのが、出す以上は常道ではないかというふうに思います。  昭和五十四年度の貯蓄動向を調べてみますと、ことしの三月二十六日に総理府の統計局から出たものでございますが、全世帯平均で貯蓄額五百万円、勤労者世帯では約四百万円ということでございました。貯蓄の種類別に見ました場合に、定期性預金というのが百八十六万円でかなり伸びている。その次に生命保険で八十四万円、有価証券で六十五万円ということでございます。対前年の伸び率で児ますと、生命保険が一番よく伸びておりまして一四・四%増、定期性預金が九・七%増、有価証券が五・〇%増というふうになっているわけでありまして、定期性預金等もかなり伸びているという現状でありますので、先ほど申しました中期国債ファンドといった商品がもっと国民に知らされれば、こういったところに一般庶民もより多く参画できるのではないか。そのことが金融業界の他の分野との競合ということに影響をすることは当然でございましょうし、影響の出ることは私も認めるものでございますが、しかし、それはまた一方において、金融機関の負担というものを軽くするというメリットも一面においてはあるわけでございますので、この辺のところは出す以上はやはりもう少し堂々とやっていただきたい。要望でございますけれども、何か御意見がございましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  115. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 中期債ファンドは、ことしの一月の初めに野村証券委託会社に対しまして八百億円の枠で認可をいたしました。現在残高が大体三百億ぐらいになっているのではないかと思います。  このファンドの趣旨でございますけれども、いま先生御指摘のとおり、中期債の受けざら、できるだけ味つけをしまして売りやすくしようというのが一つのねらいでございます。もう一つは、こういう時期でございますので、できるだけ国民のニーズに合った貯蓄の手段を提供したらどうかという考え方によりまして、この中期債ファンドというものをつくったわけでございます。内容は、三十日一応クローズになっておりまして、一カ月過ぎればいつでも解約できる。当初、利回りとして予定されたのが六%弱でございますが、現在の金利状況によりますと大体七%台の利回りになるのじゃないかというふうに考えております。  これをもうちょっと宣伝しろという御趣旨でございますが、私どもとしては、発足当初、若干金融機関等との摩擦が生じてはいかぬ、こういうようなことも配慮いたしまして、余りはでに宣伝することはどうかということを申しましたが、実は四月に入りましてからあとの三社に対しましても内認可をいたしまして、四月の半ばくらいからこの三社においても設定を始める、募集を始める、こういう予定になっております。したがいまして、おのずから皆さん方にも知れるようになるのではないか。これによって、こういうファンドが一つでも国債消化の手段ということで役立つならば私どもとしては非常に幸いである、このように考えております。
  116. 坂口力

    ○坂口委員 大臣、いまも議論しましたように、いろいろお考えいただいておることは事実ですし、そして個人消化もできるだけできるように考えていただいておることも認めるわけであります。パーセントもだんだん上がってきておることでございますしいたしますが、もう少しいい案は積極的におやりをいただきたい、ひとつ御要望を申し上げておきたいと思います。  それから、公社債市場の健全な育成発展ということにつきましても何回かここで議論のなされたところでございます。債券市場の暴落によりまして機能麻痺に至っています市場環境改善というものを大蔵省が必死にやろうとしておみえになりますお気持ちは十分わかります。しかしながら、ややもいたしますと市場実勢と大幅に乖離をした二重価格をつくる可能性もまたそこにはあるわけでございます。一例を挙げますと、この国債整理基金によります国債の買い入れというものが流通市場において行われております。たとえば、二月二十九日におきましては六・一国債がそうでありますし、三月五日におきましては八・〇国債と申しますか、八%国債が買い入れを行われております。これなんかを見ましても、最高落札価格が六・一国債におきまして八十二円二十銭で、最終利回りが九・九七九%でございます。しかし、当時の証券会社の店頭市場におきます流通利回りは一〇・五%前後であると私は踏んでおります。また八%の方につきましても、最終利回りは八・八九九%でございましたが、店頭市場におきます流通利回りは九・三%ぐらいであったというふうに思います。これらを比較いたしましてもかなり相違がございまして、できる限り金利を上げないで負担を少なくしようという努力は私も当然認めます。しかし、そのことが、いろいろ議論のありましたように、逆に国債に対する安易な気持ちに結びついてはならないわけでございます。金利自由化が叫ばれておりますが、その背景にはやはり金利が上がることに対するその負担にたえることによって、そして事の重大性をお互いにより考えて、そしてできる限り国債発行を減額していく方向へのたゆまない努力をお互いにしようということがあるはずであります。したがいまして、この介入のし過ぎということもまたここに大きな問題が生ずるわけでございます。この辺についての意見をひとつ言っていただいて次に進みたいと思います。
  117. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 私ども当局の買い出動によりまして市況そのものを変えていくとか、あるいは特定の価格に市況を維持するとか、そういうようなことは毛頭考えておりませんし、また、すべきでもないというふうに思うわけでございます。  いまお挙げになりました国債整理基金による買い入れのオペレーションの場合には公開入札でやっておるわけでございまして、入札に参加する方も、できるだけ参加する以上は自分の入札を取ってもらいたいという気持ちがあるわけでございますので、余りに高い値段で入れますと、入札の際に大体の応募金額を示してございますので、大体一千億程度というふうなことで示しておりますから、そういう意味でやや安全を見て入札に応じてくるということはあると思います。したがって、平均はそのときの実際の市況よりはやや価格が低く出る、逆に高く出る、こういうことになるのかもしれませんが、いずれにしてもそういうふうな意図を持ってやっておるわけではございません。  よく上場の相場と店頭とは乖離するということが言われておりますけれども、私どもが買い入れますものは店頭であるか上場であるかということの区別は余りないわけでございまして、銘柄を指定いたしまして証券会社から証券会社の持っておる玉を買い上げる、こういうようなことをいたしておるわけでございます。非常に市況が激しく動きますときは、どうしても上場市場と店頭市場というのは市場が違うものでございますので、いろいろな乖離が生ずるということは起こりがちでございますけれども、そういうものはいずれ時がたてば両者は相接近していく、こういう性格のものであろうと思うわけであります。
  118. 坂口力

    ○坂口委員 公募入札だから、そうした人為的な手は加わっていないというお話でございましょう。しかし、関係者の皆さん方にお聞きをいたしますと、それでもなおかつ当局の肩たたきというのがあるという話を聞くわけであります。私は肩たたきというのは定年退職のときにだけあるのかと思いましたら、国債にもあるのだそうでありまして、どうもこの肩たたきがひど過ぎるという話でございます。したがいまして、額面におきましては公募入札制をとっておりましても、その辺のところも加味をしての発言でございますので、ひとつその点十分に今後運営上考えていただきたいと思います。  それから、日銀副総裁、大変お忙しいときおいでいただきましてどうもありがとうございます。  時間が詰まってきておりますので、次に移させていただきますが、国債相場のどろ沼化ということは多少表現が行き過ぎでございますけれども、その原因をたどってまいりますと、やはり大きいのは、何と申しましても産油国の原油値上げを背景といたしましたインフレがその一つの大きな要素であることは疑いもない事実であろうかと思います。これを抑えますために各国とも引き締めを強化いたしまして、アメリカを初めといたしまして高金利に向かっていることはもう言わずもがなでございます。物価抑制は生活やあるいはまた景気のためだけではなくて、国債消化そのもののためにも非常に重要なわけでございますが、漏れ開くところによりますと、前川日銀総裁は先日BIS中央銀行総裁会議に御出席になりまして、いろいろとそこで各国との議論を重ねられたということをお伺いをしております。その会議での議論は、最も有効なインフレ対策というのは財政支出の抑制であるという意見が非常に強かったというふうにお聞きをいたしておりますが、副総裁はその辺のところをどのようにお聞きいただいているかどうか、ひとつお聞きをしたいと思います。
  119. 澄田智

    澄田参考人 ただいま御指摘の国際決済銀行における月例の会議、各国の中央銀行総裁が集まる会議でございますが、ちょうど各国の金利政策の問題がいわゆる金利のエスカレーションと言われるような背景において行われたわけであります。その折に、金融財政の関係、御指摘のような石油価格の高騰とか輸入価格の上昇という背景の中で各国それぞれに悩みを持っているわけでありまして、当然にそういうことについての意見の交換が行われる場面でございますが、そこにおきましては、それぞれ金融当局者でございますので、物価に対する対策としてとられる金融的措置にのみ依存するということについては、各国ともそれはおのずから限度がある。もちろん、金融の性格からいって弾力的、機動的な措置がとれるわけであります。それはそれなりに非常に有効な手段でございます。しかし、同時に、こういう段階においては財政面においても厳しい措置をとることが必要ではないか、各国それぞれ状態は区々ではありましょうが、そういう認識において、金融政策財政政策とともにそれぞれその機能を発揮するように両立してやっていく必要があるのではないか、そういう意見が強かったというふうに伺っているわけであります。これは、それまでの措置が、程度は違いますけれども各国とも金融面に非常に依存をしておった、金利引き上げを中心とする引き締め政策が強くとられてきたという背景において、財政面においても相応の措置が必要ではないか、こういう意見交換が行われたというふうに聞いておる次第でございます。
  120. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございます。こういう議論の場でございますし、副総裁、オブラートに包んで言っていただいた感もなきにしもあらずですがね。  第五次公定歩合の引き上げが実施されましたのが第四次から一カ月足らずということで議論を呼んだわけでございます。第四次のときに、これで頂上ではないかという議論もあったわけでございますが、その後アメリカ金利問題もこれありでございますが、非常に大きくジャンプをして第五次公定歩合の改正というものに結びついたわけでございます。その意味するところは、当然物価の問題あるいはまた円安傾向にございます現在の国際情勢への対応、そうしたものであろうことは言うまでもないと思います。日銀として、そうした表面的な意味だけでなくて、今後に対する細かな御配慮があったのであろうかと思いますが、その辺のところをお聞かせいただいて、次に進みたいと思います。
  121. 澄田智

    澄田参考人 二月におきます第四次の公定歩合引き上げからちょうど一月という短い期間に第五次の公定歩合引き上げが行われたわけでございます。この間におきます内外の情勢の変化はただいま御指摘のようなことでありまして、アメリカ金利上昇を背景とするドルの各国通貨に対する非常な堅調、それは当然に円安を伴っておったわけでございます。さらに、本年に入ってからの重ねての石油価格引き上げによる高値原油が入ってくる、あるいは国際情勢を反映しての非鉄その他の国際的な商品市況の上昇、そういう背景におきまして、二月に引き続いてではありますが、過去第一次の石油危機の狂乱物価と言われたときにとられました公定歩合の最高水準であります九%まで引き上げを行うと同時に、預金準備率の引き上げも行いまして、これによって、その後に考えられますいろいろな物価面の動き、ことに四月以降の電力、ガス料金の値上げ等々、さらに物価面で厳重な警戒を要する将来の動きがあるわけでございますが、そういうものにも備え、政府のとられます総合対策とも呼応いたしまして大幅な引き上げを行ったという次第であります。この措置は、それまでの情勢に基づくのは当然でございますが、四月以降における卸売物価並びにそれの消費者物価への波及というようなものも考えまして、あの時点においてそういった措置をとった次第でございます。
  122. 坂口力

    ○坂口委員 大臣金融政策としては、物価政策に対する取り組みには一定の限界があるだろうと思うわけです。さらにいろいろ細かな配慮というものもあるだろうと思います。しかし、金融政策にいささか偏り過ぎているきらいはないか。副総裁はそこまではおっしゃいません。当然お立場上おっしゃらないと思いますが、私ども見ておりまして、もう少し財政上の配慮が必要ではないだろうか。きょうは、堀先生の御議論でこの六〇%の中身等については出ましたが、パーセントは全体としてたとえよしといたしましても、その六〇%の中身ですね、これの取捨選択、何もかもおしなべて大体六〇%に抑えるのか、そうではなくて、その中で必要なものはこれとこれで、これこれのものについては一〇〇%するけれども、このものは四〇%で抑えるのか、そういう内容による取捨選択というものがかなりむずかしいと思いますし、そのことが国民の生活にも非常に大きな影響も与えるし、また物価にも非常に大きな影響を与えると思うわけです。その辺の配慮がどのようにされているのかということをひとつお聞きをしたいと思います。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  123. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに物価対策について、言ってみれば、金融政策にウエートがかかり過ぎて財政が果たす役割りが少ないではないかという御批判は私どもたびたびいただいたわけであります。したがって、今回の総合物価対策といたしましては、財政の果たす役割りといたしましては「五十五年度予算成立後の執行についても、別途、早急に目標を定めて、当面、抑制的な事業施行を図るものとする。」こういうことを受けて、昨日でございましたか、いわゆる閣議決定をいたして、御指摘のような六〇%程度にとどめる、こういうことにいたしたわけであります。したがいまして、この間来よく伺っております意見の中には、一つの例で申し上げますならば、用地費率の高いものをできるだけやめろ、こういう意見も確かに適切な意見として伺っております。これから各省ごとにそれぞれの計画をお立てになるわけでありますが、主計局の方もその方針に基づいての協議に参加をするという立場にはあるでございましょうが、実態としてはそれぞれの省で選別されるであろうというふうに思いますが、御趣旨の点は私どもとしましても十分御意見として所管官庁にはお伝えすべきことである、こういうふうに理解をいたしておるところでございます。
  124. 坂口力

    ○坂口委員 最後に、外貨準備高の問題でございますが、三月末に百八十五億ドルでございますか、かなり外貨準備高は低下をしてきたわけでございます。五十三年当時に比べますと非常に隔世の感があるわけでございまして、ふえ続けるのをどうして減らそうかと考えたときもあったわけでございますから、そのことを考えますと非常な違い方だというふうに思いますが、今後も皆さん方の非常な努力にもかかわらず物価の上昇も続いておりますし、またいろいろの国際情勢が絡んでまいりまして、円安もまた続いているというふうに理解をしていいのではないかと思います。けさほど大臣から、ちょうど円安から今度はちょっと趣を変える方向にいま来つつある時点だというふうなお話もございましたけれども情勢の推移を具なければなりませんが、なおかつ今後もしばらくの間続くのではないかと思います。そうした場合に、日銀におかれましてはやはり買い支えというものをやらざるを得ない状況というのはまだ続く可能性もあると思います。これは政府の方とも絡む話でございますが、幸か不幸か米国とイランとの断絶の問題も発生をいたしまして非常な乱気流の中に置かれているわけでございます。  したがいまして、外貨準備高は今後どうなっていくのであろうか、ぼつぼつ心配をしなければならぬのじゃないかという声もあるわけでございます。適正準備高というようなものはないのであろうと思いますが、もし仮にありとすれば、一体どの辺までは安心をしておれるものであろうか、そんな気も私はしてならないわけでございますが、これにつきまして副総裁からの御意見をいただいて、後、大臣なり、また政府委員の方々の答弁をいただきたいと思います。
  125. 澄田智

    澄田参考人 昨年来為替市場での積極的な介入を行ってまいりました。その結果といたしまして外貨準備高が減少をしてきているという状態でございますが、外貨準備としてどのくらいの水準が適正であるかという点については、これはいろいろな条件、いろいろな考慮あるいはいろいろな見地から考えられる問題ではございますが、それだけになかなかその水準を定めるということはむずかしいわけでございます。これは内外経済情勢いかんによると申し上げるほかはないわけでございまして、また、一義的にどういう水準であるべきであるということを決められるものでなく、そしてまた、あらかじめそういうものを設定しておくことが必ずしも適当でない問題ではないかというふうに考えます。  そういう前提で、現在の百八十億ドル台というような外貨準備がどうかということになりますと、これは為替政策を遂行しその適切な運営を図っていく上で、この水準自体としては十分な水準である、こういうふうに申し上げることができると思います。  さらに、今後介入する場合どうかというようなお話でございますが、御承知のように、アメリカの連邦準備銀行との間に結んでおりますスワップ協定、あるいはスイスの中央銀行との間にも最近そういう取り決めをいたしましたが、そういったスワップというような準備もあるわけでございます。まだこの準備は発動いたしておりませんが、そういうものもあるわけでございますし、さらには、今後のいろいろな条件にもよるわけでありますが、できるだけ積極的に外国から資金の導入を図る、そういうようなことも重ねることによりまして、さらに必要に応じて方法はいろいろ考えられる、こういうことであると思うわけであります。そういう意味で、私どもとしては現在の状態というのは全く心配をいたしておらない次第でございます。
  126. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいまの澄田副総裁のお答えに尽きるわけでございますが、参考までに外国為替資金特別会計法の第二条で「この会計は、大蔵大臣が、法令の定めるところに従い、管理する。」それから第五条で「外国為替資金は、外国為替等の売買に運用する」、第六条で「大蔵大臣は、前条の規定による外国為替資金の運営に関する事務を、日本銀行に取り扱わせる」、これが結局根拠法になっておるわけでございますね。  そこで、外貨準備の問題でございますが、私も、昭和三十九年十一月に佐藤内閣が成立いたしまして、内閣官房副長官になって初めての首相の演説の原稿の推敲を命ぜられたことがありました。そのときに外貨準備高を何とか三十億ドル持ちたい、こういうことを書いたらどうだ、こういう話がありまして、そのときにいわゆる外準というものの適正とはという議論をずいぶんいたしまして、確かに古くて新しく、いつまでもある議論なんです。極端な議論をする人は、いわゆる信用というものがすべてに先立つものであるから、日本の場合、これだけの信用があるから、その信用というものがすべてに先立つものであるだけに、外準などというものは別になくてもいいという議論もあるわけでございます。  したがって、私どもも、いま百八十五億ドルになったからといって、これだけの信用のある日本の国でございますから、事実上心配するような状況にはないというふうに基本的には思っております。  そしてまた、どれだけのものが適正かというのは非常に議論の多いところで、それは貿易の二カ月分とか、いろいろな議論がありました。そういうものは私は必ずしも定められる性格のものではないと思っております。さらに副総裁からも最後にお触れになりましたオイルダラーのリサイクリングの問題等が、これは私もお許しいただければ当然今月末のIMFの暫定委員会へ行かしていただけたら行こう思っておりますが、そういう議論は、議題というわけではございませんけれども、当然出てくる議論であろう。そしてその問題につきましては、国金局の方でいろいろな問題の整理やら勉強をしております。ただ、その問題につきましてだけは、相手のあることなものですから詳しいことを申し上げるわけにはまいりませんけれども、いろいろな形でそれらを勉強しておるという事実だけを申し上げたいと思います。
  127. 坂口力

    ○坂口委員 ひとつ御勉強いただいて誤りなきようお願いいたします。  時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  128. 愛知和男

    ○愛知委員長代理 正森成二君。
  129. 正森成二

    ○正森委員 澄田副総裁どうも御苦労さまでございます。  四月二日に私は本法案について質問さしていただきましたが、澄田副総裁にお聞きしていたちょうど途中で終わりましたので、その続きから始めさしていただきます。  副総裁は多分御記憶がおありと思いますが、私がそのときに問題提起をいたしましたのは国債償還についてでございましたけれども、いままでの資料を拝見さしていただきますと、国債償還の場合には、手持ち国債が資金運用部にある場合、日本銀行にある場合、市中の金融機関にある場合、その他、これは個人が多いわけですが、そういうのを四つに分けて考えてみますと、個人の部分はほぼ一〇〇%現金償還されておる、そして市中金融機関の場合にも九〇%以上借りかえ償還になっている、しかし額は非常にわずかでほとんど無視し得る額である、大部分は日本銀行に買いオペなどで集まっておりまして、日本銀行に九割くらい集まっているうちの九七、八%までが借りかえ償還になっているという事実を指摘したわけであります。そして全体として現金償還の割合は一一・七%ではないかというように指摘しましたら、たしか渡辺理財局長から、大体六十分の七だから一一・七%であるという御答弁がありました。  そこで私がさらに、そうすると、日本銀行の場合には財政法の規定にもかかわらず、これはもろに結局日本銀行引き受けの発行になっておるのではないかという指摘をしたつもりであります。そこのところから日銀副総裁の御答弁をもう一度お願いいたします。
  130. 澄田智

    澄田参考人 ただいま御指摘のような御質問がございまして、借りかえによる償還という形が、通貨の供給面で、効果としては借りかえという形ですと新規の通貨が出るという形にはなりませんし、そういう意味で中立的な性格を持っている、したがいまして、これは新規の国債日本銀行引き受けというものとは通貨供給面において全く違った性格を持っていることを申し上げたというふうに記憶をいたしております。
  131. 正森成二

    ○正森委員 そこできょう私としては議論をできるなら発展させたいと思うのですが、もしそういうようにこれまでの国債償還について、もちろんこれは建設公債償還ですが、実際上約九〇%近くのものが借りかえということでいっている、それが通貨について中立的である、もし借りかえでなしに現金償還を目指すとすれば新たな通貨の増発になるか、それとも税で取ってくるかということになるから、借りかえの方がそれらの点については中立的であるという議論がもし正しいとすれば、それは特例公債償還の場合についても当てはまることではなかろうか。特例公債のときにも、いよいよ償還しなければならないときに、全額現金償還借りかえが全くない、現在の特例法についてはそのように定められているわけですが、そうなると、いまの澄田副総裁の御答弁から類推すれば、その場合には通貨の問題や税の問題に対して中立的でなしに、やはり通貨の相当な増発になるかあるいは増税になるより仕方がないという結論にならざるを得ないと思うのですが、そういうぐあいに承ってよろしいか。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  132. 澄田智

    澄田参考人 私は、前回におきましては、もっぱら建設国債の場合だけでございますが、マネーサプライという見地から、その見地だけにしぼってそこまでの御答弁を申し上げた次第でございます。それでは特例国債についてもその点は同じではないかということは、前回はそこまでまいらなくて時間がなくなったわけでございますが、その点だけをとらえますと、特例公債においてもその効果は同じことだと思います。そして現在厳重に借りかえを行わない償還現金償還を行うというたてまえが貫かれて法定されておるわけでありますが、その場合におきましては通貨の増発になることも考えられるわけでございますが、同時に、仮にそれを日本銀行が保有しているという場合におきましては、一応その現金は日本銀行に入ってしまうわけでありまして、そこでむしろそれだけとらえますと、税金によって政府引き揚げられました資金が償還という形で日本銀行に入ってしまうわけでありまして、通貨がそれだけ引き揚げられる、収縮と申しますか引き揚げ超過、そういう形になると思われます。なお、その点は、性格は建設国債であろうと特例公債であろうと同じわけでありますが、特例公債借りかえを行わないというたてまえは、そういった通貨供給という見地でなくて、財政の節度という意味合いにおいて特例公債は必ず現金で償還する。そうなりますと、その限りにおいては国債の残高が減るわけでありまして、償還期が来たときには積極的に国債残高を減らしていく、そういうたてまえを貫いて節度を堅持する、こういうたてまえからああいう制度がとられているものと了解をいたしております。
  133. 正森成二

    ○正森委員 いまの副総裁の言葉は財政の節度という一つの面と、それからもう一つは、国債が大部分、九〇%も日銀に集中して残存している場合には、現金償還の場合には逆に通貨が日銀に集まるわけですから、収縮という状況も起こってくるという御答弁でありました。しかし、その場合には、経済成長に必要な範囲内で通貨をとめておるのに、一遍に大量のものが日銀へばっと入ってくる、そしてそれを吐き出さないで置いておくというようなことが経済としてできるであろうかという問題は私は依然として残ると思うのですね。そこで、その問題を心配されて、これからは大蔵省、特に大蔵大臣にお伺いをしたいと思います。これは、たしか二月四日に予算委員会の総括で同僚議員が質問されましたから大蔵大臣は御記憶にあるところだと思います。私も関心を持っておりましたが、昨年の十二月十九日に財政制度審議会の報告がございます。その報告の四十三ページを見ますと、私が先ほど指摘したような点が出ておりまして、「特例公債の借換え」の(ロ)の部分にこう書いてあるのです。  (ロ) このような取扱いに対し、現在までの公債発行消化状況、今後の償還見通し、償還時の通貨供給への影響等を勘案するほか、国債管理政策の観点から、特別債についても長期債、中期債の選択の弾力化が望ましいことを考慮すると、現行の現金償還原則を見直し、借換えを行うこととすべきではないかとする意見がある。また、特例公債について現行の十年の期間内を限って借換えを認めてはどうかとする意見もある。   他方、主として財政節度を示す観点から現行の現金償還原則はこれを維持すべきであるとする意見がある。  (ハ) この点についてはこれまでの経緯を含めて、財政節度を保つという精神は十分に尊重していかなければならないが、償還時における大量の通貨供給の増加が、その時点における経済に及ぼす影響等の問題も無視することはできず、今後なお慎重に検討していく必要があると考えられる。 こういうような報告になっております。これはどちらかといえば、問題点の指摘にとどまらないで、強制借りかえもあり得るという方向に若干力点を置いた報告ではなかろうかというふうに読めば読めるわけであります。この問題について御答弁になっておりますが、先ほどの日銀副総裁の指摘も含めて、大蔵大臣ないし大蔵当局の御意見が承れればありがたいと思います。
  134. 吉野良彦

    吉野政府委員 ただいまの借りかえの問題でございますが、先ほど澄田副総裁からの御答弁にもございましたように、それからまた、ただいま正森委員がお示しになりました昨年暮れの財政制度審議会の報告にもございますように、この問題につきましては、大まかに申しまして二つの角度からの御議論があるように理解をいたしております。  一つは、これは当然のことながら財政健全性財政の節度を示すという観点から、特例公債発行それ自体をできるだけ早くやめるというにとどまらず、既発の特例公債につきましても、その残高を一刻も早く少なくする、そういう角度から、やはり償還期限が来れば全額現金償還をすべきである、こういう角度からの御意見でございます。それからもう一つの角度は、これは主として金融的な側面からの御議論と理解をいたしておりますが、これも先ほど副総裁から御答弁がございましたが、償還されます現金、その部分についてだけ着目をいたしますと、確かにいわゆるマネーサプライの増加になるわけでございますから、その点にやはり金融的側面からは注意を要する問題である。特にそれが一時的にまた大量に現金償還が行われるということになります場合には、恐らくあわせて何らかの意味での金融調節的な作用が伴わなければ、経済運営自体にとっても大きな影響があるのではないかというふうに私も理解をするわけでございます。この財政制度審議会の御報告はありのままに、いま申しました金融的側面からの問題を私どもにも御注意をいただいたものというふうに理解をいたしております。  ただ、私どもといたしましては、現在のところ財政節度の維持あるいは財政健全性の回復ということをやはり優先的に考えていくべきものであるというふうに考えております。
  135. 正森成二

    ○正森委員 いまの次長の御意見はよくわかりました。ただ、念のために一言指摘しておきたいのですが、二月四日の大内委員質問に対して御答弁になったのは田中主計局長であります。田中主計局長の答弁を速記録で見てみますと、   財政制度審議会から先ほど御引用になりました特例公債借りかえに関する中間報告をいただいておりますが、ここに記載されておりますことは、十年の期間の借りかえ、十年たってさらにそれを借りかえるということの検討でございませんで、特例公債がただいま十年で発行されておりますが、国債管理政策上二年、三年の短期債というものの発行も必要であろう、そうすれば、財政節度を示す意味におきまして十年という期間を限って、その中で二年債、三年債という形でころがしていくことを、その範囲で借りかえていくことを検討してはどうかという御趣旨でございますので、その財政制度審議会の趣旨だけここで御報告申し上げたいと思います。 こう答弁されておるのですね。  私は、この田中主計局長の答弁を読んだのですが、財政制度審議会の報告は果たして田中主計局長の答弁したとおりであろうかという疑問を持つわけです。  それは、先ほども引用しましたが、この四十三ページの(ロ)項は三つのことが書いてあるのですね。  まず第一には、現行の現金償還原則を見直し、借りかえを行うこととすべきではないかとする意見があるというのが一つの意見です。また、特例公債について現行の十年の期間内を限って借りかえを認めてはどうかとする意見もある、これが第二です。第三が、他方、主として財政節度を示す観点から、現行の現金償還原則はこれを維持すべきであるとする意見があるというように三つに読むべきではないか。そうすると、田中主計局長が二月四日の予算委員会で、これは二年、三年という期限を限って十年内で転がしていくということだけを言うておるんだというように、一面的に解釈できるであろうか。これはもちろん二、三年を限って借りかえて転がしていくということも含まれておりますけれども、それよりももっと大きく十年債のものについても、やはり通貨の供給の一時的な増大という金融上の問題点にも着目して、その点についてはもう少し柔軟に考えてみるということも問題提起をしたのではないかというように読める文章だと私は思うのですが、それについては主計局長の言ったことを次長にお答えしろというのも無理かもしれませんけれども、次長でも大臣でもよろしゅうございますが、お答えを願いたいと思います。
  136. 吉野良彦

    吉野政府委員 御指摘のとおり、この財政制度審議会の報告は現金償還原則につきまして三つのことを言っていると私も理解をいたします。  ただ、三つと申しましても、大きく分けますと、これはやはり二つである。大きな一つは、現在のおよそ特例公債はすべて現金償還をするというこの原則を根っこから見直しをしてはどうかというのが第一の御意見と存じます。  先ほど委員が御指摘になりました十年内の期間を限って云々という後段のくだりでございますが、これは私どもの理解では、実は特例公債につきまして借りかえをしないということは、五十年度特例公債発行いたしましたときからの政府の方針になっているわけでございますが、当時は、御承知のように特例公債もいわゆる十年もの、償還期限十年の公債として発行されていたわけでございます。極端に申しますれば、二年ものあるいは三年もの、償還期限が二年とか三年とかきわめて短い特例公債発行は恐らく想定をされていなかったのではないか。もしそうであるとするならば、仮に特例公債を二年ものあるいは三年ものというもので出していくといたしますと、片方で現金償還原則を完全に守っていくということになりますれば、特例公債を出しました二年後あるいは三年後に直ちに現金で全額を償還しなければならないという事態に直面をするわけでございます。  そこで、財政制度審議会の御報告の趣旨は、特例公債について現金償還原則を確立をした当時想定をされていた償還期限十年ものの公債、これを念頭に置いての現金償還原則であろうから、たとえば二年もの、三年ものの特例公債を出しました場合には、その二年もの、三年ものを三回あるいは四回だけ借りかえをして、十年以内には全部現金償還をするということでもいいのではないかというような御趣旨のものと私どもはこの後段を理解をしているわけでございます。  繰り返しになりますが、しかし、私どもといたしましては、現に御審議をいただいております五十五年度特例公債法におきましても借りかえをしないということを堅持をいたしているわけでございます。もちろん財政制度審議会からの御注意もございますから、私ども今後の問題といたしましては十分金融的な側面からの問題につきましても勉強をいたしまして研究をしていくべき課題であるとは考えております。
  137. 正森成二

    ○正森委員 私もこういう問題を指摘しましたのは、特例公債について借りかえがいいとかすべきであるという見地から言うているのではございませんで、財政制度審議会の問題提起、並びに澄田副総裁も言われた償還の場合にはマネーサプライの点でやはり注意すべき問題が起こってくるという御指摘も踏まえて、私から一応指摘させていただいたわけであります。特にそういう財政制度審議会の考え方に立ちますと、先ほど同僚委員からも言われた、金利の非常に高いときにはわりと弾力的に高い金利で二、三年借りて、それをさらに低利で借りかえることがもし可能ならという議論にも発展するわけですが、その根元がだめだということになれば、これはいずれにせよできないことであるということにもなってくるわけで、私はいずれは将来の政策選択の問題として大蔵省の中でも真剣な議論が必要とされる問題点であろうということを申しておきたいと思います。  次に移らしていただきますが、そうしますと、仮に特例公債については原則として本年度御提出になった法案でも借りかえはしない、こう言っておられるし、将来堅持すると、仮にこうなりますと、それでは現金償還をする場合に、その財源をどこに求めるかという問題が必然的に起こってくるんですね。それでなければ首尾一貫しないわけであります。したがって、借りかえはしないで現金償還を依然として堅持するのだという限り、大蔵大臣の言われるいつまでも財政元年のイブにとどまっていてはならないので、元年が二年になり三年になり踏み出していかなければならぬ。その対応策というのはやはり何らかの形での税負担を求めるということにならざるを得ないのじゃないかというように理論的に思うわけであります。そのことはこの財政制度審議会も理解しておられると見えて、こういう指摘があるのです。  お手元にお持ちならば三十一ページを開いていただいたらいいと思うのですが、ここではわが国経済の現在の貯蓄超過傾向について述べております。そこのところで、こう言っているんですね。  現在の我が国の財政収支の現状をも勘案すれば、中期的には現在高い水準にある任意貯蓄を強制貯蓄に振り替えること、換言すれば増税等によつて投資・貯蓄のギャップを縮小させる方策も検討されるべきであるとするのが大方の意見であつた。 こういうように指摘されているんです。これは明らかに現在貯蓄傾向がわが国の場合は諸外国に比べて高いわけですが、それが投資、貯蓄のバランスを失っておるというかっこうで、そのギャップを財政赤字で埋めていくというのではなしに、任意貯蓄を強制貯蓄にかえていく、つまり増税で吸い上げて、それをしかるべき投資あるいは福祉に回していくという考えが、この財政制度審議会の大方の意見であったと言うているものにほかならないのではないかというように私は思うわけであります。現在わが国で可処分所得の中に占める貯蓄率というのは大体どのくらいになっておりましょうか。
  138. 吉野良彦

    吉野政府委員 これは一九七六年度の数字でございますが、個人所得に対しまして、その個人が貯蓄をしております金額、その割合でございますが、わが国の場合は一六・七%、これがいわゆる任意貯蓄率ということになってございます。
  139. 正森成二

    ○正森委員 私の方にさらに新しい五十二年と五十三年の資料があります。これは日銀の国際比較統計から私どもが見たものでありますが、それを見ますと、五十二年の場合がさらにふえて二一・二%、五十三年はやや落ちて二〇・一%でありますが、いずれにせよ二〇%前後という数字のようであります。これに対して五十二年で外国と比べてみますと、アメリカが五・三%、イギリスが一〇・一%、西ドイツが一二・一%、フランスが一三・二%ですから、いずれにせよ諸外国のほぼ倍、アメリカに比べますなら四倍近い貯蓄性向を持っておるというように言えるのではないかと思います。  日銀副総裁、私がいま申しました数字お手元にお持ちでないかもわかりませんが、大きな誤りはございませんか。
  140. 澄田智

    澄田参考人 私がいま手元に持っております数字は一九七七年でございますから五十二年でございますが、日本が二一・二%という数字でございます。諸外国の数字も同じだと思います。
  141. 正森成二

    ○正森委員 澄田副総裁に私の指摘しました数字を確認していただきましたが、結局、そういう点に着目してこの任意貯蓄を強制貯蓄に変えたらどうだというのが財政審議会の大方の意見のようであります。そして、それを受けて、私がここに持っておりますのは全国税税研中央推進委員会の資料でありますが、それを見ますと、こう書いてあるのですね。「税負担の考え方——どこからどうとるのか」という見出しの部分で「先づ新たな財源として着目されているものに「国民の高い貯蓄率の活用」があげられます。それは「租税と任意貯蓄を含めた割合は各国ともあまり差はない、任意貯蓄の一部を強制貯蓄(税金)に移すことは妥当であり、また納得も得られる」」これは日本経済調査協議会の報告だ、こういうことになっておるのです。そしてまた、大蔵省の福田審議官も、これは主税局担当だと思いますが、「財政再建と税制」という講演、これは五十四年七月二十二日東京国税局でなさったようでありますが、その中で「「貯蓄が合理的な範囲内で租税あるいは社会保障に振りかわりそれが住宅、医療、年金等の国からの種々の公的サービスにあてられるという姿の方が望ましいのではないでしょうか」と述べ、それを支持する立場にたっています。」云々と書いてあるのです。  それで、主税局に伺いますが、福田審議官がこういう講演をされたことがあるのかどうか、またそれは大蔵省の公式な考えであるのかどうかをお答えを願います。
  142. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 五十四年八月二十二日でございます。東京国税局で財政経済セミナーというのを内部の幹部職員にやりまして、そのときの講師になって行ったときの話のようでございます。
  143. 正森成二

    ○正森委員 七月は八月の誤りですね。——それでは、八月二十二日に講師になってお話しになった内容であるということをお認めになりました。後段の部分は仰せになりませんでしたが、恐らく主税局長の真意は、講師になって行ったのであるから、福田審議官個人ではなしに、大蔵省主税局担当の福田審議官である、こういうことですね。
  144. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 ちょっと答弁を落としまして失礼いたしました。  実は当時、八月ごろに大蔵省の出先の財務局、国税局、税関、こういうところを対象といたしまして、ただいま申し上げましたようなそれぞれの出先の局の幹部の人に財政再建の必要性ということをずっと広く話をしたわけでございます。その行事の一環として東京国税局でそういう機会があったわけでございますが、このときには、一応テキストのようなものを二通りつくりまして、そのテキストに基づいて、それぞれ、たくさんの人が行ったわけでございますから、思想の統一をテキストで図りましたけれども、その内容の一言一句までこういうことで話すという打ち合わせをしておりません。いまお話がございましたくだりは、これは一つ考え方だと思います。財政制度審議会でもそういう御意見が出ましたし、私どもが部外の方といろいろ御相談したときもそういう御意見を伺ったことがあります。そういう伺った考えをお伝えしたということでありまして、むしろその力点は、くどくなって恐縮でございますが、個人部門の貯蓄超過というものを公債を媒介として公共部門に持ってくるのでは、将来非常に経済の運営上問題が多いから、そこは合理的な範囲内で租税負担率を上げていくということも考え方ではなかろうかということを申し上げたのでありまして、そういう考え方が公式の大蔵省の見解かとおっしゃると、そういうことではないというふうにお答え申し上げます。
  145. 正森成二

    ○正森委員 いま高橋主税局長の御意見を承ったのですが、ここからは大蔵大臣に伺います。  いま私がわずかな時間で指摘しましたように、国債公債がこれだけ大量になりますと、それの償還というのは大問題である。そして、現在のところ建設公債については九〇%前後は強制借りかえになっておる。その場合には通貨の供給、租税等に対して中立的でございますけれども、日銀副総裁がいみじくもお認めになりましたように、それを全額現金償還するということになれば、通貨の増大の問題について財政当局金融当局としてはやはり相当注意しなければならない、こういう前提があるわけであります。それについては財政制度審議会の御意見があります。そこで、それを避けようとすれば、どうしてもそれにかわる手段、政策がなければならない。それについても財政制度審議会は、わが国国民の二〇%前後という非常に高い貯蓄率に注目をして、この任意貯蓄を強制貯蓄に振りかえていくということをしなければならぬというのが大方の意見であった。つまり、税金をもっと取れ、貯金しているところを見ると、まだ余裕があるではないかという意見ですね。それに対して現職の主税局担当の福田審議官がやはりセミナーの講師としてそれに符合する意見を言っておられるということになれば、これはこの法案の中でも特例公債については借りかえをしないという立場を一応堅持しておるということになれば、結局、結論はそちらの方へ行かざるを得ないというのが論理的必然であり、それはこの文書で証明されるところであるというように思うのです。そういうように大蔵大臣も恐らく思っておられるのかどうかというのが第一点。  第二点に、それが合理的な範囲内ならやむを得ないとして、果たしてその租税はだれが負担するかが問題であります。大臣は有名なワン・オブ・ゼムという言葉をお使いになりましたけれども、それを一般消費税(仮称)というものはもう消えたといたしましても、広い意味での一般消費税あるいは間接税で負担させるのか。それとも私どもを含めて野党が申しておりますような不公平税制の徹底的な是正によって主として財源を求めるのかということが結局この特例公債の問題を考え、そして解決していくためににどうしても突き当たらなければならない問題にならざるを得ないというのが私が四月二日からきょうにかけて質問をしてまいりました結局行き着くところになるわけであります。  時間もございませんのでこれで終わらしていただきますが、その問題についての大臣の率直な御意見と、それから城山三郎が「男子の本懐」という本などを書いておりますが、それに匹敵するような決意を込めてのお考えをお伺いをして質問を終わらしていただきます。
  146. 竹下登

    竹下国務大臣 きょう実はアジア開発銀行の会に出席するために注射しまして少しぼおっとしておりますので、答えがあるいは正確にならぬかもしれません。普通ならば非常に正確にお答えしますが……。  これは五十年当時、五十年の補正予算のときでございますか、御議論をいろいろいただいて、そして五十一年、借りかえをしないということを、これはやはり財政の節度に対する一つ姿勢、決意をあらわした姿であるというふうに御理解をいただきたいと思うのであります。そして五十四年の財政審からの答申でございますが、私はそれはりっぱな先生方のりっぱな答申であるというふうには十分受けとめております。そしてまた、それに敷衍しての正森さんのマネーサプライに対する指摘等もまたそのとおりであると思うのであります。したがって、十分検討すべき課題であるということの認識は私もいたしております。  ただ、いわゆる租税等々の問題につきましては、これは私は再三申し上げますようでございますが、本院において決議された財政再建決議というのは、さすが専門家がお集まりになっておつくりになっておりますから非常によくできておると思います。あれはまさに歳入、歳出全般にわたって広く各界各層の意見を聞いて財政再建に励め、こういう鞭撻でございます、(仮称)の部分は別としまして。したがって、それがどこで国民の合意を得ていくかということになると、やはり手っ取り早いというか、本筋から言って国会の場じゃないか。したがって、休会中といえどもあるいはラウンドテーブル方式等々においてお互いのディスカスの中で国民の合意を得られるいろいろな方途が模索されていくのじゃないか。大体、男子の本懐というような事態は、反体制ということをあえて申し上げるわけじゃございませんけれども、大体政党も体制内政党だけでございまして、したがってまたリーダーシップというのは、おれについてこい、こういうのがリーダーシップの一つであったと思うのです。いまはこれだけ慣熟した議会制民主主議というものがありますと、むしろ新しいリーダーシップのあり方というものは、各方面の意見の調和をどこに求めるかということではないかとみずからに絶えず私はそのことを言い聞かしておるのであります。したがって、財政再建に当たっていかなる手法で臨むかということは、それは偉い先生方の答申も必要、大いに研究しなければならぬことであると同時に、やはり国会の問答の中で、それが国民の理解と協力を得られる方途を私は一生懸命模索していくということが財政再建に臨む近代的男子の本懐ではなかろうか、このように思います。
  147. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  148. 増岡博之

    増岡委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  149. 増岡博之

    増岡委員長 本案に対し、自由民主党・自由国民会議を代表して、稲村利幸君外三名より修正案が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。稲村利幸君。
  150. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員 ただいま議題となりました昭知五十五年度公債発行特例に関する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この法律の施行期日は、原案では昭和五十五年四月一日と定められておりますが、申し上げるまでもなく、すでにその期日を経過いたしておりますので、本修正案は施行期日を公布の日に改めることとしようとするものであります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  151. 増岡博之

    増岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  152. 増岡博之

    増岡委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。愛知和男君。
  153. 愛知和男

    ○愛知委員 私は、自由民主党・自由国民会議を代表し、昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案及び同法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。  政府におきましては、昭和五十五年度予算について、公債発行額を前年度当初予算より一兆円減額して財政再建の第一歩を踏み出すとともに、厳しい財源事情のもとでわが国経済を取り巻く内外情勢に適切に対処して経済の着実な発展に配慮することを基本に編成し、先般国会の議決を経て成立を見たところであります。  この昭和五十五年度予算は、まず歳出面において各省庁の経常事務費を初めとする一般行政経費を極力抑制するとともに、政策的経費についても根底から見直しを行っており、財源の重点的、効率的配分に努めたものであります。また、政府においては、昨年暮れに行った財政再建に関する決議の趣旨を踏まえ、昭和五十五年度予算において踏み出した財政再建に資するべく、簡素にして効率的な政府を目指して行政改革に努力していることは評価に値するところであります。  他方、歳入面におきましても、租税特別措置の整理等をさらに推進するとともに、給与所得控除の見直しと退職給与引当金の累積限度額の適正化を図っており、これもまた財政再建決議の趣旨にかなったものであると考えます。  しかしながら、このような歳出、歳入両面にわたる見直しにもかかわらず、昭和五十五年度予算においては、引き続き特例公債発行によらざるを得ないことは厳然たる事実であり、昭和五十五年度予算を執行していくためには、特例公債発行は必要やむを得ないものと考えるものであります。もちろん特例公債発行はあくまでも特例的な措置であり、特例公債に依存する財政からできるだけ速やかに脱却することは、立法府、行政府のみならず、国民的課題であることは申すまでもありません。財政再建決議の趣旨を尊重して政府がこれまで払ってきた財政健全化への努力は多とするものでありますが、さらに今後ともこれまで以上の努力を尽くされるよう強く要請いたしますとともに、われわれもそのための努力に労をいとうものでないということを申し上げたいと思います。  本法律案におきましては、まず特例公債発行が、昭和五十五年度の租税収入の動向等にかんがみ、適正な行政水準を維持し、もって国民生活と経済の安定に資するために行われるものである旨が明らかにされております。また、特例公債発行額は予算で定める旨の規定、その他所要の規定が設けられておりますが、これらの規定は従来からの特例公債法と同様の内容になっており、いずれも特例的な措置に対応した適切な規定であると考えます。  また、本法律案の施行期日である四月一日はすでに経過しておりますので、これを公布の日から施行することに改めようとする修正案は、当然の措置と考えるものであります。  以上、私は、昭和五十五年度における特例公債発行が必要欠くべからざるものであると考えますとともに、わが国財政ができるだけ速やかに特例公債に依存する財政から脱却するために国民一丸となって努力する必要性を強調し、本法律案及び同法律案に対する修正案の賛成討論を終わります。(拍手)
  154. 増岡博之

    増岡委員長 島田琢郎君。
  155. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま採決に付されようとしている昭和五十五年度発行される特例公債法律案に反対の立場から討論をいたします。  この法律案が提案されて以来、わが党は本会議においても、総理や関係閣僚に対し、国民本位の財政再建の緊急性を強調しつつ問題点を指摘し、かつ、わが党の日本経済の改造計画に基づく具体的な財政再建案を提示し、政府の決断を迫ってきました。さらに、本委員会における質疑を通しては、巨額の国債発行のもたらす危険性を厳しく追及をしてまいりましたが、政府財政再建元年のイブなどと言葉をもてあそび、国民が納得できるような具体的な方向を明示することなく終始してきた態度は断じて容認できません。  この際、数点を挙げて反対の理由を明確にしたいと思います。  その第一は、いま国民は、財政再建の名のもとに生活破壊が進むのではないかという危惧の念が依然消えておりません。そればかりか、卸売物価指数はまさに暴騰の様相を深め、電気、ガス、運賃、たばこなどメジロ押しの公共料金の値上げはラッシュ状態であります。これに財政インフレが加わればと考えるとき、まさに鳥はだ立つ思いがするのは当然でありましょう。この国民の不安に政府は的確に答えておりません。  第二は、サラ金財政に陥った現状の事態認識の乏しさと甘さであります。財政収支試算は常に機械的で数字合わせにすぎず、明確な責任ある財政再建計画をつくるべきであるとの主張に対しても、技術的に困難とか作業量が膨大であるなどと理屈を並べてい積極的にやろうとする姿勢がありません。また、財政危機は単なる財政収支上の問題だけではないのですから、経済政策の構造的な大胆な発想の転換が必要であることも指摘してきましたが、貧困な増税と福祉切り捨ての発想から依然脱却していないのはきわめて遺憾であります。  第三の点は、大臣も述べていますが、国債管理政策の基本は、国債大量発行によって市場の需給バランスが崩れてしまうことを懸念するものでありますが、国債消化の現状は必ずしもスムーズにはいっていないという点であります。国債の値崩れ、売れない国債が代名詞となっている国債のそのような状況は今日もなお変わっていないばかりか、さらに深刻になっています。とりわけ六・一国債の流通価格は大変な額面割れとなっています。政府の信用が失墜していることを示すものとも言えましょう。  たとえば昭和五十四年度国債発行額は、十五兆二千七百億の当初計画より一兆八千億ほど減額になると大蔵省は発表していますが、税の自然増収や経常費の不用額などで埋め合わせることによるもので、その結果として、一兆円減額をうたい文句に、五十五年度発行が予定されている国債は、削減どころか、このままでは史上最高発行額となりましょう。  それは、大手都市銀行が決算方法を変えて国債暴落の帳じり合わせをしたり、大蔵省が市場メカニズムへの人為的介入によって市場にだぶつく巨額な国債管理に場当たり的なその場しのぎの対策に終始している限り、来年度史上最高国債市場に投げ出されることになるからであります。  また、銀行や証券会社の引き受け能力がすでに限界に達していることや、都銀の場合など、国債引き受け割り当て額が預金の伸びを上回って国債が資金繰りを圧迫し、その結果、新国債を買うために、すでに持っている国債を売却しなければならなくなり、国債市況は悪化する。この悪循環を断ち切らなければならないのも国債を取り巻く中における問題点として浮き彫りされているにもかかわらず、大蔵大臣認識はずれているばかりか、事態を楽観視しているのは、財政再建への熱意を疑わざるを得ません。この際、昭和五十九年度赤字国債ゼロを目指すためには、勇断をもって来年度国債は最低二兆円減額が絶対要件であることを強調しておきたいと思います。  さらに第四の問題点は、さきの所得税法及び租税特別措置法の改正に当たって国民の強く求めた不公平税制の是正や、わが党が具体的に提案している増税の手法を拒否し続けている限り、国債の増発増加が避けられないでありましょう。  とりわけ、不公平税制の是正はおおむね完了したと言明する姿勢は国民の不満と不信を深めるだけであり、国民の要求を拒否したものとして容認できないのであります。  最後に、財政再建は、政府のひとりよがりで達成できるものではありません。財政民主主義は単なるスローガンに終わらせてはならないのであります。国民本位の財政再建と確立のためには、国民の参加が必要であり、断絶を埋める努力が必要であります。国民の信頼を得る手だてを具体的に講じていかなくてはなりません。そうした意味で、本委員会における政府の熱意と誠意に欠ける姿勢をきわめて遺憾とし、厳しく指摘をして、反対討論を終わるものであります。(拍手)
  156. 増岡博之

    増岡委員長 柴田弘君。
  157. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案に対して、反対の態度を表明し、討論を行うものであります。  われわれが本法案に反対する理由の第一は、政府が、大平総理の所信表明演説でも明らかなように、財政再建を当面する緊急の課題としながら、その具体策についてはきわめて消極的であるということであります。政府財政再建策が不十分であることは、われわれが本会議を初め、予算委員会、当大蔵委員会などで強く指摘してきたものであります。特に、財政再建には不可欠な施策である政府の不公平税制の是正、行政改革、補助金の整理合理化策は、そのいずれを見ても国民の納得を得られるものではありません。  また、われわれは日本社会党、民社党・国民連合と共同で、五十五年度予算の修正を要求いたしました。中でも、財政再建観点からは、不公平税制の是正として、法人税の引き上げ、有価証券取引税の強化、金融機関の貸倒引当金の縮小、所得税の給与所得控除の頭打ち復活などを実施し、六千五百億円の税収増加を図ること、行財政改革の推進として、行財政の効率化を図るため、行政経費の節減を図ることとともに、補助金の整理合理化を徹底し、三千二百億円の歳出減を図ることを主張いたしました。また、われわれは、不公平税制の是正、行財政改革の推進で五十五年度国債発行額を政府発行予定額十四兆二千七百億円から三千八百八十五億円減額し、十三兆八千八百十五億円とすることをあわせて要求したものであります。しかし、政府は、われわれの財政再建に対する必要最小限の要求にさえ応ぜず、安易に大量の赤字国債発行しようとすることはとうてい納得できないものであります。  反対理由の第二は、いわゆる御用金調達方式と言われる政府国債管理政策が破綻している状況にあるにもかかわらず、具体的な対応策が講じられておらず、わが国経済及び国民生活に悪影響を及ぼしているということであります。  国債管理政策の破綻の原因は、究極的には、五十五年度国債発行予定額十四兆二千七百億円を見ても明らかなように、毎年度十兆円を超える国債発行と、ウナギ登りに上昇する膨大な国債の累積残高にあります。したがって、政府財政再建策を一般消費税の導入に頼り、赤字国債発行の前提である不公平税制の是正や行財政改革の推進による歳出の合理化を積極的に推進しなかった責任はきわめて重大と言わなければなりません。  同時に、看過し得ないのは、巨額の国債発行を余儀なくされながら、国債の市中消化が確立されていないということであります。たとえば、大蔵省は昨年五月に、「当面の国債管理政策について」と国債の市中消化を推進するための七項目にわたる対策を発表しておりますが、そのうち実施したものは、不完全実施を含めても四項目だけです。特に、市中消化の目玉商品としていた中期国債の増額発行に至っては、増額どころか、逆に年度当初の発行予定額二兆七千億円から一兆二千億円と半分以下に減額しているのであります。  また国債の市中消化難は、本質的には政府国債発行条件市場の実勢とかけ離れているところにありますが、これに対する政府の対応策がいわゆる日本型の国債管理政策の域を一歩も出ず、国債発行に関する諸問題をより複雑化し、問題解決を後回しに、国民の損失を拡大しております。  たとえば、大蔵省は、国債相場の暴落が招いた国債の評価損に対し、従来の金融機関の経営の健全性確保等から行っていた統一経理基準を、国債の評価方法に限っては低価法と原価法の選択を認めたのであります。この措置は、仮に金融機関が原価法を選択したとしても、それは金融機関の決算対策としての評価損を消すだけであって、国債相場の回復がない限り国債保有による損失を消すものではないことは明らかであります。しかも、金融機関が低価法を維持したり、国債を売却すれば、損金の発生となり、国の税収減になることも明らかであります。また、国債の評価損の問題は、日本銀行についても、他の金融機関と同じく日本銀行の国庫への納付金の減少をもたらすものであります。  さらに、大蔵省は、国債整理基金を使っていわゆる店頭市場での国債購入を行っておりますが、これは、国債整理基金は同特別会計法でその使途の主目的を償還財源としていることや、証券取引法から見ても疑問があるものであります。同時に、国債整理基金による店頭での買い入れにもかかわらず、国債相場の値下がり傾向はとまっていないことから、市況対策としても効力を発揮しておりません。  以上述べたように、政府国債管理政策はもはや破綻していると言わざるを得ないのであります。しかも、政府国債管理政策の失敗は、長短金利のゆがみなど金融政策の偏向性への影響にとどまらず、ひいては財政インフレ誘因にさえなりかねないものであります。  このように、政府は破綻とも言える国債管理政策に対し、抜本的対策を講じないままで五十五年度も多額の国債発行を予定していることは容認できないのであります。  反対理由の第三は、政府財政計画の策定及び国会への提出について明言を避けていることであります。  財政計画の必要性はわれわれがかねてより強く指摘してきたものであります。特に今日の国債弊行に関連する諸問題から見ても、わが国の財政再建はまさに緊急の課題であります。また財政再建は与野党はもとより広く国民合意のもとで推進すべきものであります。この意味から、政府財政再建論議の対象となる財政計画を速やかに国会に提出する必要があります。しかし、政府の態度は従来に比べて提出の努力目標のめどを五十五年度末と若干の前進が見られますが、いまだに確約するに至っておりません。財政計画の策定については政府努力を多とする点は認めますが、私は財政計画を策定し国会に提出することが真の財政再建を一歩進めるものと考えます。  重ねて政府財政計画の提出を要求いたしますとともに、ただいま提案のありました修正案にも反対を表明し、討論を終わります。(拍手)
  158. 増岡博之

    増岡委員長 正森成二君。
  159. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題昭和五十五年度公債発行特例法案並びに修正案に対し、反対の討論を行います。  その理由の第一は、国債大量発行を進め、財政危機を一層深めるからであります。  政府は五十五年度予算を財政再建元年と称し、国民に対する所得税実質増税や大規模な公共料金の引き上げ、福祉予算の切り捨てなどの犠牲を強いる一方、法人税率引き上げの見送りや軍事費、大型プロジェクト予算などの確保で財界の要望に応じております。予算の歳入、歳出にわたる見直しは財政危機の実態から見てきわめて不十分であり、しかも反国民的なものです。今回の国債大量発行は、その結果であるばかりか、政府の大企業優先の経済政策の継続を保障するものにほかなりません。  第二に、国債の元利金支払いのための国債費を大膨張させ、将来にわたって新たな国民犠牲を強めるものとなるからであります。  五十五年度予算でも、国債費は五兆三千百四億円で実に予算の一二・五%を占めていますが、特例国債の本格的償還が始まる六十年度以降は十兆円をはるかに上回る額となることは自明であり、政府においてすら五十五年度以降十五年の国債費総額は二百二十八兆円との試算を示したほどであります。この巨額の借金返済のための財源確保策として、政府がまたまた一般消費税など国民への増税計画や福祉、文教予算の切り捨てを画策することは必至であると言わなければなりません。本案は国債費の膨張を招いて財政圧迫を強め、政府の国民犠牲を合理化する口実をつくるものにほかならないものであります。  第三に、金融市場を圧迫し金融行政をゆがめるばかりか、インフレ要因を拡大することになるからであります。  すでに国債発行残高は五十六兆円に及び、今年度末には七十一兆円、国民総生産の二八・七%にも上ると見込まれております。このように巨額の国債を低利で発行消化させてきた条件はすでに崩れてきております。現に昨年夏以来六・一国債市場で大暴落し、新規発行ができなくなる事態となったこと、世界的な高金利への移行とも相まって国債金利も大幅な引き上げを余儀なくされております。  さらに、国債引き受けの主体となるシンジケート団、特に金融機関においては国債の売却損、評価損による経営圧迫が表面化し、経理方式の低価法から原価法への切りかえなど、小手先の操作では対応し切れない問題を引き起こし、ひいては中小金融機関の経営深刻化の事態さえ招くに至っております。しかも、最近の景気の動向のもとで民間の資金需要も上向きつつあり、クラウディングアウト拡大の危険性は一段と強まっております。  政府は、日銀や資金運用部資金、国債整理基金などをも動員して混乱する市場に対処しようとしていますが、日銀の買いオペや政府信用の拡大は、現下のインフレ基調の経済情勢に一段と危険な拍車を加えるものとなることは明白であります。かかる法案は断じて認めがたいものであります。  いまや事態は、国債の種類の多様化や発行形態の変更ではとうてい対処できない事態となっていることは明らかであります。戦時をもしのぐ大量の国債発行を厳しく抑えることをおいてほかにこの事態の根本解決はあり得ません。そのために、税制、財政の根本からの見直しを進め、国民本位の経済再建財政健全化を図ることがいまこそ緊急に必要であります。  財政危機を招いたばかりか、その危機の深刻な事態に真剣に対処せず、当面の糊塗策によって国民を欺瞞する政府の無責任な態度に対し、この際、厳しい反省を求めて、私の反対討論を終わります。(拍手)
  160. 増岡博之

  161. 竹本孫一

    竹本委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております特例法並びにその修正案に反対の討論を行いたいと思います。  第一は、公債発行は常に厳しい態度で臨まなければならぬということであります。年度末には中央で七十一兆三千億円の公債発行残高になる。さらに地方を入れますとちょうど百兆円になります。中央、地方を合わせるならばやがて二百兆円の公債残高を持つこともきわめて近い将来の問題であります。公債発行すればやがて公債インフレへの道をばく進することになるのではないか。常にこの問題は厳しく戒められておるわけでございますが、残念ながら日本財政の運営はそうした危険の上の道をまっしぐらに進んでおるようでございます。その点で国債発行はいまここで一つ新しい決断を迫られておる。われわれ民社党も従来は国債発行についてはきわめて理解のある態度で臨んできたと思いますけれども、もうこれ以上の国債発行日本財政をいよいよ破綻せしめる、そういう危機感に立ちまして、この点でわれわれの考えを反対に変えたわけであります。  第二番目は、償還計画の問題でございます。国債発行するときには当然償還計画を立てなければなりません。民間の会社が銀行から金を借りる場合でも償還計画がなければもちろん相手にされません。法律においても償還計画を立てろということは法律上厳しく命ぜられておるわけでございますけれども、従来わが国の財政の過程においては償還をする意思があるということを言っておるだけで、償還計画と呼ぶべきものはありません。特に、今日のように膨大な国債発行する、その発行自体がむずかしい、あるいは値下がりをする大変な矛盾に直面をいたしておりますけれども、私は六十年以後の国債償還という問題については、まことに重大な疑問と悩みを持っておるわけであります。政府のいろいろの御説明を承りましても、これが償還計画に値するものであるということは遺憾ながら認めることができません。償還計画を持たないままの国債の増発にはどうしても賛同することはできないのであります。  第三は、いまも各党の委員からいろいろ御指摘がございましたけれども、やはりこの際は日本財政計画というものを中期展望の上に立ってぜひとも確立をしなければならぬということでございます。中期的な展望と計画を持たないままにずるずるべったりに国債を増発していくということは許されるべきものではありません。私はこの点について、すでに皆さん指摘されておりますように、不公平税制の改正の問題あるいはわが党が特に強く言っております行財政の思い切った改革、それらを中心にいたしました財政再建の計画をいま立てなければ、日本財政が破綻してからあわてて計画を考えてみても何にもならぬと思うのであります。特に、この国会には、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案、名前はずいぶん長い法律でございますけれども、が出されております。国鉄の赤字についてこの国会におきましてもずいぶん論議されておりますけれども、その国鉄についても、政府は、ようやくでございますけれども、経営改善計画を中心とした経営の改善のための特別措置を法律でまとめていこうということになりました。国の赤字財政考えるならば、国鉄以上にその再建計画というものが必要である。政府は、先ほど来の御答弁でも従来の御答弁でもそうでありますけれども、新しい民主的な行き方として、政府が特定の案、独自の案を示さないままに何とかその辺でうまくお互いが知恵を出し合って正しい結論が出てほしい、それを模索しておるんだということをよく言われますけれども、自分が案と見識を持たないままに模索して結論が出るべきものとは思えません。もちろん、出された結論あるいは案を野党は野党の立場で十分論議をさしていただかなければなりません。しかし、いずれにいたしましても、この財政再建ということは、与野党を超えた、日本インフレ経済をどう阻止していくかという重大な局面に臨んでおりますから、この際、政府も思い切って一つの具体的な財政再建の案を出してもらいたいし、さらに大蔵省の事務当局が、ことしは一兆円減らそう、来年は一兆三千億円減らそうということだけでも財政再建はむずかしい。やはり法的な拘束力を持った、みずからをみずから縛っていくような財政再建の基礎法をつくらなければなかなか再建というものはむずかしいのではないかと思います。  私は、この際思い出しますが、今度イギリスの、保守党でございますが、ハウ大蔵大臣が、先般、思い切った予算の切り詰め、ドライバーもスモーカーもドリンカーもこの際は増税を負担してもらわなければ困るという思い切った財政再建案を出しました。そして、彼はその案をみずからオーステリティープログラム、耐乏生活プログラム、こういうふうに呼んでおります。  私は、日本も、先ほども議論の中にありましたけれども、ある程度高度成長の延長線上で自分の能力以上に伸び過ぎた、あるいは昭和元禄という言葉もありますが、行き過ぎた面もある。これらも含めて、根本的に日本経済日本財政あるいはわれわれの生活のスタイルまで変えていくだけの思い切った対策がなければ、この際財政再建はできないと思います。非常に私が印象を受けましたのは、そのオーステリティー、耐乏生活という言葉でございます。これは、保守党のいまの大蔵大臣がみずからの財政計画あるいは増税案、予算削減案を耐乏生活プログラムと呼んでおりますけれども、そのオーステリティーという言葉は、労働党のかつての大蔵大臣が叫んだ言葉であります。そして彼は、労働党の立場でありながらも、ミスター・オーステリティー、耐乏生活屋さんと国民から呼ばれました。  私は、日本財政再建考える場合には、そういう意味におきまして、野党には野党の筋があり、論理がありますけれども、それらをも超えて日本財政再建に真剣に取り組まなければならぬし、われわれはまたその用意を持っておるということを申し上げまして、政府は速やかに財政再建の計画並びに財政再建の基礎法をつくるということについて取り組まれることを要望し、それがない限り、無原則な公債の増発には断じて賛同することができないことを申し上げたいと思います。もちろん、今度の修正案は本法とつながるものでございますから、賛同することはできません。  以上で、反対討論を終わります。(拍手)
  162. 増岡博之

    増岡委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  163. 増岡博之

    増岡委員長 これより採決に入ります。  まず、稲村利幸君外三名提出修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  164. 増岡博之

    増岡委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  165. 増岡博之

    増岡委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。     —————————————
  166. 増岡博之

    増岡委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表して、高鳥修君外三名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されています。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。高鳥修君。
  167. 高鳥修

    ○高鳥委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。  わが国の財政は、昭和五十年度以降特例公債に依存することを余儀なくされ、公債発行額は連年大幅に増加してきており、公債残高も昭和五十四年度末には六十兆円近くになるものと見込まれております。  昭和五十五年度予算におきましては、前年度当初予算より一兆円の国債減額を行いましたものの、公債発行予定額は十四兆二千七百億円の多額に上り、公債依存度も三三・五%と、先進諸国に比較し、際立って高い水準となっております。さらに、このような国債大量発行に加え、最近における金融情勢の変化もあって、国債消化環境は一段と厳しさを増しております。  国債大量発行を続けることの弊害は、改めて申し上げるまでもありません。財政健全性を回復することは、財政がその本来の機能を果たし、国民生活の安定と着実な経済発展を図るために緊要な課題となっております。  本附帯決議案は、このような見地から、国債大量発行に伴う財政金融政策上の適切な諸施策の推進について、なお一層努力せられるよう、政府に強く要請するものでありまして、案文の朗読によって内容の説明にかえさせていただきます。     昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について十分配慮すべきである。  一 健全財政を回復するため、財政収支の改善に全力をつくすとともに、極力国債発行額の圧縮に留意し、できる限り早期に特例公債依存の財政から脱却するよう努めること。  二 国債は将来の国民の負担となるので、償還財源の確保に努め、償還に支障のないようにすること。また、財政支出に当たっては不要不急経費を削減するとともに、補助金行政を洗い直すなど、抜本的な行財政改革を進めること。  三 財源対策としては、負担の公平化に一層努力し、中長期にわたる基本的展望に基づいて見直しを行うこと。  四 国債発行が地方債の発行並びに民間資金需要を圧迫することのないよう十分留意すること。  五 国債の個人消化を一瞬促進するとともに、国債発行形態の多様化・発行条件の弾力化、公社債市場の整備拡充等国債管理政策の確立に努めること。  六 財政再建に資するため、早急に財政計画の策定を図ること。 以上であります。  何とぞ、御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  168. 増岡博之

    増岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  169. 増岡博之

    増岡委員長 起立多数。よって、本動議のごとく附帯決議を付するに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められていますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  170. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。ありがとうございました。     —————————————
  171. 増岡博之

    増岡委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  172. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     〔報告書は附録に掲載〕
  173. 増岡博之

    増岡委員長 次回は、来る十一日金曜日午前十時三十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十九分散会