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1980-03-26 第91回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月二十六日(水曜日)     午後五時十分開議  出席委員    委員長 増岡 博之君    理事 稲村 利幸君 理事 高鳥  修君    理事 綿貫 民輔君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 正森 成二君    理事 竹本 孫一君       麻生 太郎君    大村 襄治君       熊川 次男君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    玉生 孝久君       中村正三郎君    林  義郎君       藤井 勝志君    坊  秀男君       村上 茂利君    毛利 松平君       山崎武三郎君    山中 貞則君       伊藤  茂君    川口 大助君       島田 琢郎君    山田 芳治君       柴田  弘君    古川 雅司君       宮地 正介君    渡辺  貢君       玉置 一弥君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  小泉純一郎君         大蔵大臣官房長 松下 康雄君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省関税局長 米山 武政君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省証券局長 吉本  宏君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         国税庁次長   伊豫田敏雄君         国税庁税部長 矢島錦一郎君         国税庁徴収部長 田中 哲男君  委員外出席者         総理府人事局参         事官      片山虎之介君         行政管理庁行政         管理局管理官  百崎  英君         環境庁自然保護         局企画調整課長 高峯 一世君         法務省民事局参         事官      濱崎 恭生君         農林水産省構造         改善局農政部農         政課長     若林 正俊君         林野庁指導部研         究普及課長   松田  堯君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 佐藤ギン子君         自治省税務局府         県税課長    金子  清君         国民金融公庫総         裁       佐竹  浩君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      前川 春雄君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 三月二十二日  医業の税制改善に関する請願近藤豊紹介)  (第二七四六号)  不公正税制是正等に関する請願西村章三君  紹介)(第二八一七号)  同(林保夫紹介)(第二八一八号)  同(部谷孝之紹介)(第二八一九号)  同(三浦隆紹介)(第二八二〇号)  同(宮田早苗紹介)(第二八二一号)  同(横手文雄紹介)(第二八二二号)  同(米沢隆紹介)(第二八二三号)  同(和田一仁紹介)(第二八二四号)  同(和田耕作紹介)(第二八二五号)  同(渡辺武三紹介)(第二八二六号)  同(渡辺朗紹介)(第二八二七号)  一般消費税新設反対に関する請願伊藤茂君  紹介)(第二八四六号)  同(高橋高望紹介)(第二八四七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  まず、金融に関する件について、本日、参考人として日本銀行総裁前川春雄君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、金融に関する件について、来る二十八日午前九時、参考人として全国銀行協会連合会会長関正彦君、長期信用銀行代表株式会社日本興業銀行取締役頭取池浦喜三郎君、社団法人信託協会会長田代毅君、社団法人全国地方銀行協会会長吉國二郎君、社団法人全国相互銀行協会会長長谷川寛雄君、社団法人全国信用金庫協会会長小原鐵五郎君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 増岡博之

    増岡委員長 国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。白川勝彦君。
  6. 白川勝彦

    白川委員 現在、国民政治に期待しているものの大きな一つ行政改革があります。民間企業昭和四十八年の石油ショック以来、それこそ血のにじむような努力をして企業合理化を図ってきたのでありますが、行政機構はそのような努力をしてきたか。     〔委員長退席稲村(利)委員長代理着席〕 たとえば、各企業がやったような人員整理などを行政官庁でやったことがあるか、こういうような点が国民行政改革を期待している一つ理由であると思うのでございます。  こういう実質的な理由に加えて、特に昨年の衆議院選挙の前後に一斉に発覚し、新聞で大々的に報道されました公務員綱紀紊乱、こういうようなこと、これは前に述べた実質的な行政改革必要性という問題に加えて、かなり感情的なまでにこの行政改革という問題意識国民の間に持たせたと思うのであります。昨年の総選挙において、わが党が世上言われたような躍進ができなかった原因の大きな一つに、私はいま申し上げた不正経理などの公務員綱紀紊乱があると思うのであります。単に野党が言うように、一般消費税を打ち出したからどうのこうのということだけでは私はないと思うのであります。そういうことで、行政改革推進をしなければならないわけでございますが、行政改革推進することは政府一大方針である、こう総理自身も申されておるわけでございますから、それ以上追及はしたくないのでありますが、その中でも、実際に行政改革を遂行するのは行政管理庁予算の面を通じて大蔵省、二つの省庁があると思うのであります。  そこで、大臣が来たらまたお伺いしたいと思うのでございますが、政務次官もおいででございますので、行政改革と、いま口をあければ皆さん大変言っておるわけでございますが、具体的にはどういうことをやることが行政改革なのか。すなわち、行政改革中身を直蔵明快にひとつ政務次官の方から御答弁いただきたいと思うのです。
  7. 西垣昭

    西垣政府委員 これは、本来大臣お答えするような大きな問題だと思いますが、大臣まだお見えになっておりませんので、私からお答えいたします。  いま御指摘がございましたように、行政改革国民世論でございまして、また財政再建が緊急の課題となっております今日、行政の各般にわたりまして徹底した簡素化効率化推進することは現内閣の最重要課題でございます。これがまた国民の期待するところであると私ども考えております。  このために、すでに昭和五十五年度を初年度といたしまして、特殊法人統廃合による十八法人の減、特殊法人役員の大幅な縮減地方支分部局付属機関等整理合理化を初めといたしまして、国家公務員定員削減各種行政事務整理簡素化補助金等整理合理化などの方針を決定しておりまして、逐次計画的にこれを実施に移していくということで対処していきたいというように考えております。
  8. 白川勝彦

    白川委員 行政管理庁にお伺いをしたいと思うのでございますが、ただいまの御答弁にもあるように言葉はいろいろと結構なんでございますが、われわれが目標を持って何かに取り組む場合に、やはり計数化をしないと結局は言葉の羅列あるいは数合わせで終わってしまうということになるのではないかと思うのです。そこで、いま行政管理庁あたり行政改革を断行し、どういう行政改革をやってどの程度行政経費が浮くのか、そういうかなり目見える形でまず課題を設定する必要があると思うのでございます。いろいろあろうかと思うのでございますが、まず行政管理庁目玉商品だというような形でいま掲げておりますような問題を二、三代表的な例でいいのでございますが、お答えいただきたいと思います。
  9. 百崎英

    ○百崎説明員 行政改革の基本的な考え方、それからその主な内容につきましては、ただいま大蔵省の方から御答弁がございましたが、一体それでは今回の行政改革でどのぐらいの行政経費節減ができるかという御質問でございますけれども、まず五十五年度予算あるいは事業費に対する行政経費節減効果を試算いたしますと、一つ補助金等整理合理化によりまして千六百六十七億円、それから定員削減が五十五年度に七千四百五十七人削減を予定しておりますけれども、これに伴うものが二百九十億円、これが主なものでございますけれども、そのほかに特殊法人統廃合あるいは役員縮減等々によりまして、昭和五十五年度におきましては全体として二千二百七十億円ぐらいの行政経費節約が期待できるのじゃなかろうかと見込んでおります。  それからまた、今回のいわゆる昭和五十五年度行政改革は大体三年から五年ぐらいの間に実施に移す、こういうことになっておりますので、計画を実施し終わる最終年度における節減効果を試算いたしますと、これはちょっとお断りいたさなければなりませんが、五十六年度以降の補助金等整理合理化による経費節約の見込みがちょっと推測非常に困難でございますので、その補助金関係は一切除きまして、ただ、そのかわりに国鉄の再建合理化等による経費節減を含めますと、全体として大体五千百億円ぐらいの節減になるのではなかろうかと私ども期待しております。  それからなお、きょう参議院予算委員会行管庁長官が今後五年間に約一兆円ぐらいの経費節減ができるのじゃないかという趣旨答弁をしているようにきょうの夕刊に報道されておりますが、いまのところ事務的にはそういった積算を私どもいたしておりませんけれども、ただいま申し上げましたように、補助金等合理化を除いて大体五千億円、これに補助金等合理化額を加えてまいりますと大体そのぐらいになるんじゃなかろうか、こういう趣旨答弁されたものと考えております。
  10. 白川勝彦

    白川委員 ただいまの御答弁をもう一回整理させていただきたいのでございますが、行政組織全体をスリムなものにする、引き締まったものにする、そういうことによって五千億円ぐらいの経費節減が行われるのじゃないか、こういうことですか。
  11. 百崎英

    ○百崎説明員 おっしゃるとおりでございます。
  12. 白川勝彦

    白川委員 こういう点はぜひやっていただきたいと思いますし、言葉合わせ、ごろ合わせあるいは数合わせというようなことでは、行政改革というのは国民の現在の厳しい目をただ一時的にはぐらかすだけのものになると思うのでございます。そういう面でぜひ鋭意努力していただきたいと思うわけでございます。  いま一つ、何でもかんでも人員削減は結構だというようなことは、私はやはり行政改革というものに対する国民の現在の期待に反していると思うのでございます。要は、役所は働いていないのではないか、むだ遣いをしているのではないかという素朴な感情、そういうことに税金を取られるのはたまらぬや、これが行政改革についての具体的な国民感情であると思うわけでございます。そういう中で、一方財政再建をやらなければならぬわけでございます。そういう意味では、財政再建という立場にプラスになるようなものであれば鋭意がんばって、企業で言うならば収益を上げるというような面については大いに人員を投入して、財政再建を側面から援助する、こういう必要性があると思うわけでございます。  そこでお聞きしたいのでございますが、現在税収確保ということが大変重要な問題になっております。実地調査率がきわめて少ない、そういう中で執行の上でいろいろな不公正が出ているのではないか、こういうようなこともいろいろ問題にされているわけでございます。また、税務行政納税者増加あるいは取引複雑化などに伴い質、量ともに厳しさを増していると思うのでございます。一方、税務職員はここ二十年間ずっとほぼ五万人ちょっとという規模にとどまっているわけでございます。このようなことで税務行政に問題は生じていないんだろうか。税務実務の現場で最近特にぶち当たっている問題についてお答えいただきたいのと、その原因は一体那辺にあるのか、これらをひとつ国税庁の方からお答えをいただきたいと思います。
  13. 伊豫田敏雄

    伊豫田政委員 お答えいたします。  ただいま委員の御質問にございましたように、最近の税務環境というのは非常に厳しくなっております。課税対象増加、大規模化、あるいは取引複雑化広域化国際化、こういういろいろな問題を問題として含んでおりまして、逐年税務環境は厳しくなっております。  具体的に申し上げますと、十年前に比べまして申告所得者数におきまして一・四倍、法人数におきまして一・七倍、こういうふうに調査すべき対象が著しくふえておりますし、こういう状態にかかわらず、国税職員数は横ばいという、まさにおっしゃるとおりの実情でございます。われわれは歳入確保し、同時に課税の公平を実現するために努力をしておるわけでございますが、申告納税制度を担保するものはやはり調査ではないか。そういう意味で最近における実地調査割合が非常に低い状態になっているのが私は当面する税務行政上の最大のポイントではないか、われわれとして最大に困っている問題ではないか、このように考えております。  その実情を申し上げますと、申告所得税におきましては四・三%が実調率でございまして、いわば二十五年に一回回ってくる調査というふうな形になっております。法人税では全法人計算をいたしますと九・五%でございまして、これは十年に一度の調査ができるというふうな、もちろん、われわれといたしましてはある程度重点的にやっておりますものですから、小規模法人と大規模法人の間にそれぞれ実調率等に格差はございますが、全体としてそのような状態になっているということを御理解願えればと、このように考えております。この実調率の問題は現在の申告納税制度の根幹に関する問題と考えておりまして、われわれとしてもこれを非常に重大に受けとめている次第でございます。  なお、事務合理化配置適正化、あるいはいろいろな内部事務効率化等いろいろ努力をいたしまして、これに対する方策をいろいろと講じているわけでございますが、その主たる原因は何かと一言で言われますと、われわれといたしましてはこれに対応する最も好ましい道は必要最小限増員をお願いするということではないかと考えております。  ただ、この点につきましては、ただいまの財政状況その他いろいろございますし、われわれといたしましては国民並びに関係方面の御理解を得て、そういう増員問題についてさらに深い深い全体の御支援を賜りたい、このように考えている次第でございます。
  14. 白川勝彦

    白川委員 お答え趣旨はよくわかるわけでございますし、単純に数字を追ってみれば人員が足らないのではないかということはだれもがわかるわけでございますが、しかし、現在、行政改革定員削減ということが政治の基本的な方針となっておりますときに、それだけでは説得力がないし、また国民理解を得ることができないのではないかと思うわけです。やはり税務職員増員税収伸び相当明確かつ相当額牽連関係がないと、現下の情勢で税務職員増員ということを私どもが応援するわけにもいかないし、また皆様方国民を説得しても説得力がないのではないかと思うのであります。  そこで、こういう資料があるかどうかわかりませんがお伺いしたいのは、いままでのいろいろなデータなどから見て、平均的能力を持った税務職員を一名増員させた場合にどの程度税収伸びが期待されるのか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  15. 伊豫田敏雄

    伊豫田政委員 国税職員を一人増員すると一体どの程度税収増が期待できるだろうかという御質問でございますが、なかなか計算はむずかしい問題でございます。一定の前提、いわば増差所得とわれわれは申しておりますけれども調査によってさらに申告以上に把握した所得、これと現在の人員と一それから内部事務外部事務割合、そういうものをすべて勘案いたしまして、限界的に一人加えられる職員が、これはすべて調査に従事するといういろいろの仮定のもとでございますが、一応の計算をいたしますと、一人につきまして一年間五千万円というのが一つのめどとしてわれわれがはじかせていただいた数字でございます。
  16. 白川勝彦

    白川委員 行政管理庁にお伺いいたします。  現在、平均的な税務職員の給与というのは年収四百万円前後、そうではないかと思うのでございますが、それでいまの御答弁は五千万ぐらい税収が上がるということになると、これは財政再建という立場から見れば、定員削減ということではなくて、むしろ増員ということを多分普通の会社ならするだろうし、財政難に見舞われている国家としても考えるべきじゃないだろうか。国税職員についてはそういう配慮はされているということはお聞きするのでございますが、本年度で実質九名の削減ということでございます。こういうことにした理由と、いま申し上げたような立場から、一般公務員とは別に財政再建という立場から今後もう少し定員というものについて考え直すつもりはないのか、お伺いしたいと思います。
  17. 百崎英

    ○百崎説明員 先生指摘のように、国税庁関係職員方々税収確保ということのほかに、税の執行面での租税負担の公平の確保という非常に重要な使命を担っておられますし、また、御指摘のように、職員を一人ふやせば相当額税収増加が期待できる、そういう点も私ども理解いたしておりまして、従来からもそういった点も勘案しながら国税庁に対しましては政府部門の中でも重点部門一つということで定員配置を行ってきているつもりでございます。  ただ、五十五年度におきましては、先ほどお話しのように増員四百二十九人に対して片っ方で四百三十八人の削減がかかりますので、形の上では差し引き九人の減となっているわけでございますが、これは基本的には財政再建という点のほかに、特に五十五年度におきましては、先ほど先生も御指摘のように、公務部門に対する姿勢問題を含めた国民からの非常に厳しい御批判、それからまた行政効率化簡素化減量化、こういったことに対する国民皆様方の非常に強い御要請、そういった事情を勘案いたしまして、五十五年度におきましては公務員の総数を全体として縮減するという非常に厳しい方針をとりましたので、その点はまたそれなりに何とか御理解いただきたいと存じております。  ただ、国税庁の場合には、一応一般定員につきましては九人の減になっておりますけれども、五十五年度から、私どもといたしましては、各省庁間の人の異動を伴う配置転換ということを導入する予定にしておりまして、国税庁につきましても一般増員のほかに二十七人の各省からの受け入れの枠を設けるということで、実勢といたしましては昨年の定員を上回るように措置いたしております。なお今後とも先生指摘のような国税庁関係職員方々特殊性、そういった点を十分念頭に置きながら定員管理に当たってまいりたい、かように考えております。
  18. 白川勝彦

    白川委員 大臣がお見えになったので、先ほど事務当局からもお答えいただいたのでございますが、ひとつわかりやすい形でお答えをいただきたいと思うのでございます。  行政改革というのは、とにかく公務員に対する反感とも言えるような、これが相当にひそんでいることは、これは事実であろうと思うのでございます。ただ、具体的にはどういう数字であるからどうこうということはわからないまま、とにかくむだがあるのではないかという批判だと思うのでございますが、やはりそれはそれとして大切なことであると思うのでございますが、いま一つは、やはり財政難の中で財政再建ということに相当寄与していただけるのじゃないか、あるいは行政改革をやれば相当税金なんてふやさなくていいのではないかという、これも感情に近いのじゃないかと思いますが、そういう感情があることは事実なんでございます。  そういう面で、行政改革の一方のやはり推進役と申します大蔵大臣として、現下行政改革中身というのはどういうものでなければならないのか、どのように御認識をしているのか、ひとつわかりやすく御答弁をいただきたいと思うのでございます。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 きょうも行政改革を中心とする参議院予算委員会集中審議がございましたが、行政改革というものは、国民皆さん方がこれは必要だというおおむねの合意に立っておる。ところが、とる人によりまして、いまおっしゃいますように、非常に違う。中には、公務員は多過ぎるから生首切ってしまえ、そして減すのが財政再建につながるのだ、こう思っていらっしゃる人もある。あるいは、われわれの地方においてはこういうサービス機関が仮にもしなくなったとしたら、行政サービスが減退していく、だから、これらは整理すべきものでない、他に余ったものがあるはずだから、そういうものを持ってきてむしろ増員をすべきだ、こういう意味にその行政改革をとっていらっしゃる人もある。人それぞれによって行政改革というものに対する認識が非常に違うではないかというような御議論があっておりました。  そこで、政府といたしまして今日考えておりますのは、まずこの行政改革というものが、これからだんだん財政再建歳入を必要とする場合、それにかわって、これさえあればいわゆる国民に新たな負担を仰がなくても済むという大それたものでは私はないと思うのであります。したがいまして、やはり簡素にして効率的な政府をつくるという基本的な考え方に立ってこれを進めていかなければならぬ。その簡素にして効率的な政府とは何ぞや、それならばどこからこれを詰めていくかということになりますと、花火を打ち上げるだけでは、実行が伴わなかったら、これはだめであります。  私も、思い出しますと、昭和三十九年に臨調の答申というものがありました。ちょうど私も、若いときでございましたが、内閣官房長官をしておりまして、これはいいことだと思いました。それが、しかし作文だけになって、そのまま残って、いま読み返してみると、今日的問題がたくさんその中には指摘されておる。  したがって、やはり花火を打ち上げるだけではいけないなというので、五十五年度行革というのは、されば簡素にして効率的なガバメントというものをどこから進めていくかというので、世論が熟したところから手をつけよう。それが第一に、いわゆる特殊法人の十八減ということが第一弾であったと思うのであります。  そこで、第二番目はどうかということになりますと、これは今月末に結論を出すことになっておりますところの、いわゆるブロックの機関整理統合ということが第二弾になるのではないか。  それから第三弾というものが何かと言えば、これは地方支分部局、なかんずく府県単位のものに対して、その結論を六月末あたりに焦点を合わしてやっていこう。  しかし、もちろんこれで終わるものでなく、これから、当然、最終的には行政機構全体の中でいわゆる本体にまで手を加えるということもあるのであろうと思うのですが、その環境の熟するまでに、じみながら、できるものからやっていこうという考え方でございまして、いきなり、これは国会の決議等もありまして、血刀もって生首取るなんというような考えは全くなくて、むしろ仕事減らし、器減らしというところからこれを進めて、そして定員削減というものは、おのずからそういう仕事減らし、器減らしの中でこれが行われていくであろうということであります。  特に、今度は当省所管の問題になりますと、これは補助金の整理でございます。これはどういう、ふうにカウントするかというのもずいぶん苦労しましたが、要するに三千八百に一応カウントいたしまして、それを目でやるのか、目細までやるのか、ずいぶんいろんな議論もいたしましたが、したがってこれの四分の一というものをこの四年間かかって整理統廃合していこうというようなところで、四党の予算修正の際の御意見もございましたので、サマーレビューをもってそれなりに取り組めというような形になっておるのが今日の現状の実態ではなかろうかというふうに理解をいたしております。
  20. 白川勝彦

    白川委員 あと一点だけ、時間がないので簡単にお答えをいただきたいと思うのでございますが、先ほど大臣がお留守のときに、行管庁の方に聞きましたら、簡素にして効率的な行政組織をやることによって五千億円くらい経費節減ができるのではないかという見通しが述べられたわけでございますが、一方、いまお聞きした問題なんでございますが、職員をふやすことによって税収伸びるという国税職員の場合、財政再建という立場から、正面からこの問題はとらえて財政再建に資するんだというこの方針があって一向に差し支えないのじゃないだろうか。徴税の強化というような誤解を招くおそれもございますが、それはそれとして、やはり率直に現在の税務実務の手薄さということを訴えて、大蔵省大臣としても、財政再建の当の責任者でございますので、これは前向きに検討するという形で今後配慮していく必要があるのではないかと思うわけでございますが、大臣の御答弁をお願いいたします。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 これは一番痛しかゆしのところでございまして、いまの御指摘のような、一人ふえれば五千万とか六千万と、下世話な言葉ではございますが、よく言われる実態もございます。しかし、一方、器減らし、仕事減らしという中で削減計画を着実に実行していこうというジレンマの中にあるわけであります。したがいまして、研修とかそういうものの拡充強化によりましてこれだけ多岐多様にわたった税務行政をこの十年間をほぼ同じような数でもって消化していただいておるという事実に対しては、その徴税業務に携わる方々に対して大変な敬意を表しますと同時に、実態の問題といたしましては、私は今後もやはり行管または総理府等と相談していかなければいかぬ問題であるという認識はございます。
  22. 白川勝彦

    白川委員 終わります。
  23. 稲村利幸

    稲村(利)委員長代理 島田琢郎君。
  24. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、まず信託法にかかわります問題で御質問をしてまいりたいと思っておりますが、最初にちょっと大蔵大臣に、ナショナル・トラスト運動というのをお聞きになったことがありますか。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 残念ながら聞いておりません。
  26. 島田琢郎

    ○島田委員 実は、これはイギリスにあります市民運動の一つなんでありますが、非常に長い伝統と運動の歴史がありまして、環境保護運動の名称であります。十九世紀の終わりごろにイギリスに起こりまして、最初三人の市民が集まってこうした環境保護運動を始めたわけであります。それがナショナル・トラスト運動となっていま世界的にも非常に注目を受けているわけでありますが、残念ながら大臣お聞き及びでなかったとすれば、ぜひひとつ御認識をいただきたい。  実は日本にもこの運動があるのであります。それはまだ歴史が浅くてここ数年のことでしかありませんけれども、日本の環境が非常に破壊されつつある、とりわけ環境保護運動というのはなかなか大事な運動でありながら、実はまだまだ国民的な運動というところまで発展し得ないという状況にある。こういうことでありますだけに、この運動というのは非常に貴重な運動だというふうに私は考えております。  日本に起こっておりますナショナル・トラスト運動というのは、日本の大事な国立公園の一つであります知床に亘平米運動として起こりました。「しれとこで夢を買いませんか」というキャッチフレーズで百平米運動というのが起こったのでありますが、これも御存じございませんか。
  27. 竹下登

    竹下国務大臣 私も聞いたことがございます。といいますのは、私の田舎でも、これは国立公園ではございませんけれども、「私の森」構想というのがありまして、いわゆるみんなで森林を守ろうというような運動からちょっと似たような運動があったので記憶いたしております。
  28. 島田琢郎

    ○島田委員 どうもメンタルテストみたいなお話をして、大蔵大臣でございますから、環境庁長官に尋ねるようなことを聞いて、わからないと率直におっしゃるのは、これはやむを得ないことでございますが、実はこの運動が相当大きく輪を広げつつございます。  昨年の十一月四日に朝日新聞が「天声人語」欄でこれを取り上げておりまして、新聞の記事が全国的に反響を起こしまして、その後加速的にこの運動が広がってまいりまして、また引き続いて同じ朝日が暮れの十二月二十八日になってこの運動に対する全国的な動きを報道し、「天声人語」でこの問題が取り上げられて今日に至っているわけであります。  そこで、現況をちょっとお話ししておきますと、ずいぶん大きな運動に発展しつつある、こう言ったって、じゃ、どれぐらいになっているのかということになるわけでありますが、その前にちょっと、パンフレットが一つございますから、大臣これをごらんください。きょう現在でありますけれども、この「しれとこで夢を買いませんか」という運動は自然保護運動から起こっておりますから、一口百平方メートルで分譲をし、そこに建物を建てたり、あるいは極端に言えば別荘を建てたりできるという仕組みのものではもちろんございません。あくまでも環境保護の立場からの運動であります。  経緯をちょっと申し上げますと、実はいま皆さんに参加を願っております土地というのは、かつて食糧増産の名のもとに戦後開拓者がここに入りまして、鋭意開拓し、食糧の増産に励んだところであります。しかし、歴史の推移とともに開拓者の人たちも、非常に山奥でありますし、国立公園の中にあるへんぴな場所でございますから、いわゆる近代的な動きについていけず、残念ながらほとんど大半、いやもう全部ここから離農せざるを得なくなった。その離農跡地が実はそのままに放置され、年々荒廃を続けているというところに、この町の人たちは非常に心配をいたしました。とりわけ前町長でありました藤谷豊さんという方は、この実態に対して深い憂慮をいたしまして、このままでほっておいたら大事な国民の財産である国立公園の一部に荒れ地ができたり、あるいは乱開発が行われたり、また、せっかくの緑もどんどん枯渇をしていくというような状態では、これはいかぬ、こういうふうに考えて、先ほど冒頭でお話ししましたイギリスの市民運動に着目をいたしまして発想したのがこの百平米運動であり、「しれとこで夢を買いませんか」というこのパンフレットになってあらわれたのであります。  現在は、読売新聞等のキャンペーン等も非常に助けになって、きょう現在では全国から七千三百三十八人の方々にこの運動に御参加をいただいております。一口百平方メートルであります。百平米で実は皆さん方に御協力をいただいております金額は八千円でありますが、現在七千六百三十万円という大変なお金がここに寄せられて、大事なわれわれの国立公園、知床をともに守りましょうという運動に発展をいたしました。  しかし、まだまだ目的が達成されているわけではありませんで、第一次目標のまず八〇%にしかなっておりません。第一次目標が達成しましたら、ぜひ第二次目標を立てて、積極的にひとつ町が中心になって大事なこの資源を、自然を守っていこう。こういう運動はこれから先も長く続いていくわけでございますが、せっかくここにこれだけのたくさんの皆さん方が、しかも八千万に達しようとするような大きな浄財をお寄せになっていただいたということをむだにしてはいかぬ、こういうことの二つのねらいを持って、実はこれを何とか財産としてしっかり保有すると同時に、新たに、離農跡地がまだ残っておりますものも皆さんの御協力をいただいてこれを買い入れて、ここに木を植え、あるいは手入れをして緑をひとつしっかりつくり上げていこう、こういうふうにも考えているわけであります。  ところで、そこで考えられましたのは、これを単なる町の財産というだけにしておくわけにはまいらない。言ってみれば、全国と言いましても、北海道が一番多いわけですけれども、ちなみに他の府県の御協力をいただいております参加者の皆さんの数を申し上げますと、大どころでは、東京都内では千三百十二人の方が参加されている。次いで神奈川、大阪、兵庫、千葉、埼玉、そして九州の皆さん、中には沖繩の方も参加をされていますが、外国からの参加もあって、イギリスの方が一人、ベルギーから二人の方も、ぜひこの百平米運動に私も参加させてください、こういうことで参加がなされております。  そしてまた、最近では、傾向として学校の子供たちが、小学校や中学校や高校の人たち、こういう人たちがグループで参加をする。また、大学ではサークルをつくりまして、これに積極的に参加をして自然保護をやろうではないか、こういうふうに、実は力強く協力がなされているわけであります。年齢的にも、お年寄りの方々から、いま申し上げました小学校の子供、また中には大学の卒業記念にとか、また結婚記念にとか、就職の記念にとかいったような名目ででも、また私の誕生の記念のためにもと、いろいろな目的や趣旨をもってこの運動に御参加がいただけるという状況に実は相なっています。これは単に市民だけではなくて、中には、大企業と思われるような人も、社内で寄り寄りグループをつくって、こんないいことであるならば、われわれは毎日毎日コンクリートの中で生活しているんだから、大事な緑に直接触れることはできなくても、参加をしているということによって、われわれも緑と毎日接触ができるというそういう夢を持とうではないかという考えで、こういう方々も御参加いただいている実態にあるわけであります。  そこで、これほどの大事な、しかも多くの皆さん方の浄財を含めた御意思というもの、これをむだにしてはいけない、こういう立場から、何とかこれに対して今後の仕事も、たとえば開拓跡地のなお残っている部分の買い上げであるとか、あるいは植林とか、それから緑をつくる仕事だとか、こういうことをやっていくための費用はもちろんこの中から使わしていただくわけでありますけれども、だからといってこれを無益にするわけにはまいりません。したがって、この際何らかの形で、皆さんのものでありますと同時に、これは永久にだれも個人的には手をつけることができないようにということの方法をとりたい、こう考えた中から出てまいりましたのが公益信託という問題であります。  ところが、いろいろ調べてみますと、信託法に基づきます公益信託というのには一つの制約があるということが言われておりまして、事実いろいろ調べてみますと、どうも法律的な解釈と実態とが実は必ずしも整合していないという面があるということがわかりました。したがって、この際、信託法に対します一つの法解釈と、それから実態をスムーズに進めていくために必要な省庁におきます手だてというものを講じていただかないと、せっかくいままで申し上げてまいりましたこうした大事な市民運動、そして緑と自然の環境を守っていくということの目的が達せられなくなるというおそれも十分ありますので、この際、ひとつぜひこの公益信託がスムーズに実現できるような御配慮が欲しいというのが現地の声であり、市民運動を進めてまいりましたリーダーの諸君の言い分なんであります。したがって、いろいろと関係省庁とも接触をし、この法解釈や運用をめぐって議論を私自身させてもらってまいりましたが、この際、大蔵委員会において大臣からひとつ最終的に御判断を仰ぎ、必要な手だてと措置をとっていただかなければならないということで、きょう実はこの問題を取り上げた、こういうことでございます。  ところで、信託法によりますと、実はその第一条に、読み上げるまでもございませんが、定義がございまして、「本法二於テ信託ト称スルハ財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的二従ヒ財産ノ管理又ハ処分ヲ為サシムルヲ謂フ」と、こうあるわけであります。この法律はずいぶん古いと見えまして、かたかなになっておりますが、この信託法の第一条の定義をめぐります問題でも、各省といいますか、所管省庁におきます意見というのは必ずしも一致していないのではないかという印象を私は持っているのであります。つまり、いま私が申し上げますのは、お金の問題ではなくて、いままで参加していただきましたこの大変な面積と、参加の皆さん方の御意思を信託することによって、今後ともこれを維持し、発展させていきたいというのがねらいでありまして、つまり、町がいまこれを皆さん方の御協力で取得をしているわけでありますが、これがそのまま財産として信託できる道が欲しいというのがねらいであります。  そういう面で、この第一条の定義は財産権という問題に触れておりますが、ここで財産を信託することができるというふうに私は考えているのですが、この定義をめぐります大蔵当局の御見解をまず承りたいと思うのです。
  29. 米里恕

    ○米里政府委員 お示しになりましたような信託法第一条の定義によりまして、公益信託の場合も、この中で言っております「財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ他人ヲシテ一定ノ目的二従ヒ財帯ノ管理又ハ処分ヲ為サシムルヲ謂フ」という中に該当するというふうに私は考えております。
  30. 島田琢郎

    ○島田委員 重ねて聞きますが、そうすると、私がいまお尋ねをしたようなことで、銀行局長は財産として公益信託できると考えているということに理解してよろしゅうございますね。
  31. 米里恕

    ○米里政府委員 信託法第一条に言っております「信託」という概念の中に入るというふうに考えております。
  32. 島田琢郎

    ○島田委員 そこで、公益信託、つまり法第六十六条以降の問題でありますが、第六十六条もこの第一条の定義に従って公益信託ができる、財産をそのまま不動産として公益信託できる、こういうふうに理解してよろしゅうございますな。
  33. 米里恕

    ○米里政府委員 第六十六条の公益信託の中にもおっしゃった点は入るというふうに考えます。
  34. 島田琢郎

    ○島田委員 そうすると、たとえばある信託銀行にいまのこの財産は信託できますね。
  35. 米里恕

    ○米里政府委員 信託銀行が引き受けることができます信託財産につきましては、信託業法の方になりますが、その第四条に書いてありますのは「金銭、有価証券、金銭債権、動産、上地及其ノ定著物、地上権及土地ノ賃借権」こういうことになっておりますので、土地の信託は信託業法に言う信託財産の中に入ると思います。
  36. 島田琢郎

    ○島田委員 わかりました。大蔵省から明快な御答弁をいただきましたので、これを信託銀行としてもスムーズに受け入れることができる、こういうふうになると私はいま受けとめたわけであります。  しかし、たまたま信託銀行はそう言っていないのですね。大蔵省からの指導がございまして、不動産については引き受けてはならないとは言っていないと思うのでありますが、不動産は取り扱いの対象にはされないようになっているのでありますと、これは銀行の名前を申し上げることは避けますけれども、そういう返事が具体的に返ってきているのです。これは、どうなんですか。
  37. 米里恕

    ○米里政府委員 行政当局といたしまして、そういった指導は行っておりません。
  38. 島田琢郎

    ○島田委員 わかりました。銀行局長が明快にそのようにおっしゃったのであれば、私どもは安心して今後この公益信託権の問題について取り組むことができます。  もしもそういうふうに拒否をされる銀行があるとすれば、それは銀行局長として、大蔵省として、その点については行政指導をしてくれますね。
  39. 米里恕

    ○米里政府委員 信託銀行が対象とする信託財産の中に土地が入るということは申し上げたとおりでございます。具体的なケースにつきまして、信託契約を個別に結ぶかどうかということにつきましては、その信託銀行の維持管理能力、責任をどこまで持てるかといった個別の判断になろうかと思います。
  40. 島田琢郎

    ○島田委員 そういう個別の判断は銀行としてはあるでしょうね。それは私は認めたいと思うのです。それはあくまでも話し合いでやっていかなければなりませんが、そこでちょっと気になりますのは、そうした不動産の信託を受けて管理する、あるいはいろいろ財産に対しての監督をしていくことが業務上として問題があって引き受けられないということになる場合があるといういまのお話であります。しかし、財産の管理監督という問題について、そこもきちっと、いま局長がおっしゃっているような考え方であるとすれば、できないという理由ども私は明確にしておかなければならぬと思うのです。そんなにむずかしい話ではない。言ってみれば、私のきょうのお話は、直接管理をしてくれとか、木を植えてくれとか、物を買ってくれとか言っているのではなくて、信託法に基づくいわゆる公益信託権を設定してほしい、それによって、皆さんからお預かりしたこの土地は、まさにこのように信託されておるのでありますという天下に対する一つの宣言でありますから、私はそんなにむずかしく考える必要はないと思っているのですが、引受銀行によっては、そういう点についていろいろ話が出されてくるわけであります。その辺については、どういう状態で業務的にあるいは監督するなどの問題があってできないのかという点についても、今後拒否をされるような事態が生まれたら困りますから、銀行局としてもひとつ調査をされて、そういう中から、これならできるではないかという方向も見つけてもらうようなことに真剣に取り組んでほしいという希望も私にはありますが、いかがですか。
  41. 米里恕

    ○米里政府委員 信託財産の維持管理につきましては、御承知のように、善管注意義務がございますので、その辺と、それから当該金融機関の能力の問題、またどの程度の維持管理の労力、コストがかかるのか、その辺を具体的につまびらかにいたしておりませんので、個別にはお答えいたしかねますが、どういう事情であるかよく調査してみたいと思いますが、これは本来私契約でございますので、その信託銀行が信託財産として受け入れるかどうかという判断に最終的にはかかってまいると考えております。
  42. 島田琢郎

    ○島田委員 せっかく銀行局長からきわめて前向きの見解が示されておりますのに、最後のそこのところにいったらちょっとひっかかってしまったのですが、目的を達しなかったら私としては困ってしまうのです。何々銀行、たとえば島田信託銀行といったようなところで、いまのような話で、最終的に銀行のサイドからの思惑で、それはとても引き受けられませんということになると困るのでありますが、公益信託という問題は金銭以外のところでは余りたくさん起こっていないでしょうし、事例としてはどうなんでしょうか。物権を信託するなんということは、さっきの証券とかいうものは別として、不動産にかかわるものについての事例は全くゼロなんですか。
  43. 米里恕

    ○米里政府委員 一般的な信託として、信託財産に不動産を対象としておるという例はもちろんございます。  公益信託につきましては、御承知のようにここ数年のことでございまして、五十二年ごろからにわかに件数がふえてまいったということで、現在まで公益信託の信託銀行による引き受けが三十件余りなされておるかと思います。大部分は金銭でございますが、有価証券なども含まれておると思います。不動産の例というのは、まだ寡聞にして存じておりませんが、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げでおりますように、不動産が法律的あるいはその他で対象とならないという性格のものではございませんので、個別の信託銀行の能力、責任というものを果たし得るかどうかというようなことにかかってまいると思います。この件につきましては、具体的に承知いたしませんので、いまどういう状態であるか調べてみたいと思います。
  44. 島田琢郎

    ○島田委員 そこで、先ほど申し上げましたように、大変な金額といいますか、協力金が寄せられておりますし、不動産の取得でありますから、税金という問題がやはり心配になります。一筆八千円だから、八千円なんという単位では問題にならぬと思いますけれども、集まったお金の中から、なおこれから相当面積の離農跡地の取得をしていかなければなりません。そうなってまいりますと、不動産取得税あるいは売った者に対しては所得税といったような問題が起こってまいります。少なくともこの運動の範囲においては、税金に対する問題として、大蔵省はどういうふうに御判断願えるでしょうか。
  45. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いまのような御趣旨での農地の公益信託に対して課税をどうするかという問題だと思いますが、これはいま銀行局長からお答えを申し上げておりましたように、公益信託の制度自身がまだ必ずしも熟しておると申せませんので、いろいろの要望なり考え方というのを私ども耳にしておるのは事実でございますけれども、まだいずれとも答えを出すということでなくて、検討を続けておるという状態でございます。
  46. 島田琢郎

    ○島田委員 重ねて聞きますが、一般論ではなくて、このようなケースに対してはいかがですか。
  47. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 お答えいたします。  いま先生の御質問に対して正確なお答えができるかどうかわかりませんが、いま、先ほど来の御質問を伺っておりますと、いろいろな個人とか法人が、たとえば八千円ずつ集めて斜里町に一つの基金をつくる、それによって土地の取得とか、あるいは植林事業とか、いろいろなことを行うというようなことを前提として一応お答えを申し上げたいと思いますが、先ほど主税局長からも御答弁申し上げましたように、従来土地という問題は全然ございませんで、初めてのケースでございますので、今後検討していくべき問題がいろいろあると思います。  いま先生のお話を承っておりますと、国立公園の百平方メートル運動というのが、形の上では、一般の個人または法人が土地を取得しまして、土地を公益信託に付するということのように考えられるのですが、あるいは間違いがあればまた訂正をさしていただきますが、その実態が、単に個人または法人が金銭を町に寄付するものであるというふうにもし判断して差し支えないとすれば、信託に伴っての所得税に関する課税の問題は生じない場合もあるのではないだろうかというふうに思います。仮に土地を信託することが資産の譲渡に当たるということがあったとしても、またその場合、土地を購入した後信託するまでの期間の値上がり益を生じないという問題もあろうかと思います。事実上、そういう意味では所得税の課税が行われないという場合もあり得ると思いますが、事実関係をもうちょっとよく調べてみませんとわかりませんので、関係省庁ともよく御相談しながら研究さしていただきたいというふうに思います。
  48. 島田琢郎

    ○島田委員 こういうケースの場合は課税いたしませんと答えてほしかったのでありますけれども、検討さしてくれというお話ですから、その辺に期待をして、私はこの点は終わりにいたします。  ところで、もう一つただしておきたいんですが、信託法に基づきますと、六十八条の「公益信託の引受」には「公益信託ノ引受二付テハ受託者ハ主務官庁ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス」とあります。この場合、主務官庁ということになりますと、自然保護、環境保全という立場から言えば、私の理解では総理府、つまり環境庁、こういうことになるのではないかと思うんですが、この点は、いま銀行局長が一連お答えになった点で十分対応できますか。
  49. 米里恕

    ○米里政府委員 ちょっと御質問の御趣旨がよくわからないので恐縮でございますが、公益信託の引き受けをなすということになりますと、おっしゃるように主務官庁の許可を受けるということになると思いますし、主務官庁には主務官庁でそれなりの基準があると思いますので、ちょっとそこの、主務官庁の許可を受けられるかどうかということは、私つまびらかにいたさない状況でございます。
  50. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、環境庁対応できますかということですが、主務官庁が環境庁になるかどうかという点についての判断が一つあると思うのです。この辺は、銀行局長はどこだとお考えになりますか。
  51. 米里恕

    ○米里政府委員 申しわけございません。余り自信のある御答弁はできませんが、おっしゃるように環境庁ではないかと思います。
  52. 島田琢郎

    ○島田委員 総理府ですね。  環境庁、いまのお話聞いていて、十分対応してほしいと思うんですけれども、大丈夫ですね。
  53. 高峯一世

    ○高峯説明員 御質問の知床の百平米運動、こういった運動は、自然保護思想の普及という観点から非常に結構な話でございまして、環境庁といたしましても、こういった趣旨の運動が非常に発展することを願っておるわけでございます。  ただ、先生指摘ございましたように、地元では、関係者の間でいろいろそういった技術的な問題についての合意が成立していないというふうに聞いておりますので、私どもとしても、取り組み方につきましてまだ決まっておらなかったわけでございます。しかしながら、関係者の間なりで技術的な問題が整理されまして、いまの信託の問題につきましても、主務官庁が環境庁ということでありますれば、その関係者の合意というものに沿いまして、これが円滑に発展するような手続をとるように措置をいたしたいと考えております。
  54. 島田琢郎

    ○島田委員 本来は、私は、ちっぽけな町の乏しい財源で、財政のやりくりやあるいは限られた人員の中でこうした環境を守っていくという運動をやらしておいて、環境庁知らぬ顔しているという手はないと思うんですよ。これは国立公園内なんですからね。ですから、本当はもっとそういう運動に対して、環境庁としても力を入れてやるぞ、いろんなネックがあるならそれも取り除いて、とにかくこうした運動をやはり守り立てていく、そういう積極的な力強い構えの答えが欲しかったのですけれども、弱々しいお答えで、本当に私もちょっと残念に思うんです。まあこれはまた公害環境特別委員会ででも土屋大臣お答えをいただくということで、私は次に譲っていきたい、こう思っております。  そこで、次の問題に移ってまいりますので、呼び立てをいたしております法務省あるいは環境庁、どうぞお引き取り願って結構であります。  さて、次の問題でありますが、実はこれは地方税法にかかわる問題でございますけれども大蔵省、関係ないというような顔でお聞きにならぬで、ぜひこの実態を御承知を願いたい、こう思って問題の提起をいたしたいと思うのであります。  実は軽油引取税の課税免除という制度がございまして、われわれ農民は大変これで助かっておるわけであります。これは農業ばかりじゃなくて、林業も、そして漁業の場合も該当いたすわけでありますが、ただ、この中で林業用の減免というのが少し片手落ちではないか、こういうことでございます。なるほど林業の場合は、製材機、集材機、積込機あるいは可搬式チップ製造機、この四種類に限っては実は減免の対象になっております。しかし、御承知のように、これは丸太が切り出されてきたものをいろいろ処理する機械でありますが、何といったって木を切らないことにはだめなんでありますが、大事な木を切るところで使うチェーンソー——チェーンソーというのは大臣おわかりですね。最近盛んに問題になっているチェーンソーでありますから大臣もよく御承知だと思うのでありますが、このチェーンソーに使う石油は実は免税の対象になっていない。大した量でないということも一つあるかもしれませんけれども、しかし、法の公平化あるいは税の公平化という点から言えば、これも対象にしてほしいという、特に現場の声が強くあるのも無視できないと思います。  そこで、実態を明らかにしておかなくては、チェーンソーといったら小さな機械だから、ブルドーザーや集材機みたいに一遍に何リットルも使うようなでかい機械じゃございませんから、全部集めたって微々たるものだ、こういうことになるわけでございますが、林野庁、国有林で使われておりますチェーンソーはきょうはいいですが、民間でいま使われております、保有されているチェーンソーの台数というのは把握しておりますか。
  55. 松田堯

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  チェーンソーの保有台数につきましては、都道府県に照会をいたしまして毎年度調査しておりますが、民有林関係では昭和五十四年三月末現在約二十六万台保有しているというふうに把握しております。
  56. 島田琢郎

    ○島田委員 この二十六万台に使われる石油の量をつかまえておりますか。
  57. 松田堯

    ○松田説明員 先生御承知のように、チェーンソーの民有林におきます使用実態は、使用形態あるいは使用の頻度等についていろいろ複雑でございます。正確な数字ではございませんが、概算といたしまして約六万キロリットル程度の使用量ではないかというふうに推定しております。
  58. 島田琢郎

    ○島田委員 そうしますと、それはどういう計算で出された数字かわかりませんが、六万キロリットルというと、たとえばこの減免の対象になっております製材機と比較してどれぐらいの差になるのですか。
  59. 松田堯

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  申しわけありません。比較した数字は本日持ち合わしておりません。
  60. 島田琢郎

    ○島田委員 これはぜひひとつ把握してほしいと思います。六万キロリットルという推定の消費量が御説明されておりますから、そこを根拠に進めてまいりたいと思うのであります。  私が、たくさんの場所ではございませんけれども、長野県と秋田県のところをちょっと調べてみました。意外と多いのですよ。秋田県ではチェーンソーに使われております油の量は百五十九キロリットル、これは立米でもって計算をいたしますと、一立米どれぐらい油が要るのかというと二百四十三リットルですね。それからちなみにトラクター、いまの集材機で話をしますと、集材機が大体約四倍ぐらい使われる。それからトラクターが非常にたくさん使われますが、これは大体十倍ぐらい必要としますね。そうしますと、チェーンソーのような小さなものでも結構台数が、先ほどお話にありましたように二十六万台、これが全部山でかせいでいるということではなくて、中には農家が一年に余り使わないのに持っているという台数などもきっと含まれている台数だと思うのです。ですから、実際山で一年の半分以上チェーンソーを持って仕事をしているというふうに限定していきますと、あるいはもっと減っていくかもしれません。また、長野でも大変多く使われておりまして、これもまたやや秋田に近いぐらいの量が実は使われているわけでございます。  そういたしますと、これは農業、漁業、林業でも山の木を切るところ以外のところで減免措置がなされているのに、われわれのところはなぜ減免措置がなされないのかという疑問というのは、これまた当然起こってくる。また、チェーンソー所有者は、親方が持っているというよりは自分の仕事の道具、大工さんで言えば大工道具と同じように、自分の仕事のために自分で買って持っているという人が大半であります。ですから、そういう意味ではやはり非常に燃料に気を使うのですね。なるべく余りたくさん使わないようにしよう。そうしないと、もうけの部分が減っていくわけですから、そういう意味では、これに対して非常に厳しく注文がついてくるというのもまた当然であります。  また、全体的に見てみても、チェーンソーの問題というのは、いま白ろう病とかいろいろな問題があって、特に民間においては白ろう病の潜在的な患者が非常に多い。国有林の場合は制度も一つ進みましたから、相当白ろう病対策というものは進んでまいりましたから、認定患者も正確に把握ができる。しかし、民間にあっては、残念ながら、いま申し上げましたように、自前の機械で、とにかくほとんどが日雇いの人たちですから、それを担いで山に行ってチェーンソーで生計を立てていると言っても言い過ぎではないぐらい、そこに依存率が高いわけですから、こういう人たちにとってはチェーンソーをまず大事にするということと同時に、チェーンソーにかかる燃料についても非常に気を使って、むだ遣いをしないようにしているということが容易にうかがい知れるわけであります。     〔稲村(利)委員長代理退席、委員長着席〕 それであっても、なお、いまお示しになったように、六万キロリットルという大変な量が消費されているという事実があるとすれば、私は税の公平のたてまえから言うて、これも対象にすべきだと主張しても間違いではないと思うのです。所管の自治省いかがですか。
  61. 金子清

    ○金子説明員 お尋ねのチェーンソーにつきましては、一般的には軽油ではなくて揮発油を動力源の燃料としているというふうに伺っております。  軽油引取税の課税免除をするに当たりましては、まず第一に、道路の使用に直接関連を有しないと認められるものであるかどうかということ、第二に、生産費中に占める軽油の消費額の比率が比較的高率であるかどうかということ、第三に、他の石油製品と代替が困難であるかどうかということ、第四に、免税手続が簡単で脱税防止が容易であるかどうかというような問題を考慮して判断をいたしておるところでございます。  したがいまして、チェーンソーが仮にその動力源の燃料といたしまして軽油を使用するということとなるような場合におきましては、いま申しましたような基準をもとにいたしまして検討をいたしてまいりたいと考えております。
  62. 島田琢郎

    ○島田委員 確かにガソリンのチェーンソーが多いわけでありますが、しかし、実際にはガソリンだけを使って動かすというたぐいのものではない。機械によっていろいろ違いがありますけれども、ガソリンに対して潤滑油を二十対一あるいは二十対二混合する、こういうたぐいのものでありますから、純然たるガソリンを使って動かすという機械ではありません。それは御承知いただきたいと思います。これは林野庁、そうですね。
  63. 松田堯

    ○松田説明員 お答えいたします。  オイルとの混合油を使っております。
  64. 島田琢郎

    ○島田委員 あとの四つの条件と言いますけれども、それは農家の免税の場合だって最初いろいろ問題があると言って渋っておりましたけれども、実際やってみればスムーズにいきまして、非常に有効にこの制度が生きている、こういうことでありますし、チェーンソーを持たない者が免税軽油を申請したり現実にそれを受けたりするというようなことは幾らでも担保できる話であって、あとの四つの条件というのは私は問題ないと思うのです。もちろん、私は、農家が持っておって庭木をちょっと切るのに二日か三日しか使わないようなチェーンソーまで対象にせいと申し上げるつもりはございません。まさにここに明記されているように、一年の半分以上伐木の業に従事をするものに限定されて結構だと思うのです。ですから、そういうむちゃくちゃを申し上げているつもりはございません。二十六万台全部に適用しなさいなんということを申し上げるつもりは私もさらさらない。私はそれほど非常識なことを言っているのではないのであります。  ただ、振動障害を乗り越えながら、現実には潜在した振動障害、白ろう病にかかっている人たちも実はおるけれども、いまチェーンソーを手放して入院してたって生計が成り立たないから、もうそれを承知で、二時間規制とかいろいろある、それにも耐えながらこのチェーンソーにすがって一生懸命山の木を切りに行って、この道一筋に生きている人たち、本当は、私は、そういう人たちも国有林で基準とされている二時間、きちんと規制をするということが行われなければならないという立場でいままでこの問題は取り扱ってまいりました。しかし、なかなか顕在してこないという問題がございます。そういう人たちもなおこうした減免の措置を受けられない。本当に自分の力でもってやっているという人たちに対して、せめてこの席で、こういう制度についてはひとつ温かく措置してあげようという前向きの答えが実は欲しいと思うのです。  所管は違いますけれども大臣、私の言っていることに無理がありましょうかな。
  65. 竹下登

    竹下国務大臣 私も実は長い間森林組合長をやっておりました。私のところは島田委員選挙区とは違いますので、一年の半分山へ入っているという人は少ないと思います。したがって、私が青年運動をやっている時代から、いわゆる造林推准班というものがありまして、それが森林組合に所属しておって、それからチェーンソーを使うようになりましたら森林組合で一括してその燃料を買っておりまして、そのときそういう話は聞かなかったのであります。いいことか悪いことか知りませんけれども、恐らく集材機に使うと言って買ってそれでチェーンソーの中へ使わしておったかもしれません、あるいはまた半農の人が多いものですから、耕運機等のものとして購入しチェーンソーで使っておったか、その点は私もわかりませんが、余りその当時そういう問題が出なかったのです。おととしまでやっておりましたが……。いまやはり長野とか北海道とか、もっと林業労務者が専従して、年の半分以上も山仕事に行っているという地帯であれば、なるほどそれは一つの問題としてあり得るという感じがいたしました。私のところは小規模ですから、その問題が起こらなかったというのは、あるいは農家であるので便宜上ちゃんとやれたのか、あるいは森林組合の方で一括して支給しておったのか、その辺わかりませんけれども、問題の所在点は私にも理解できるような感じがいたしますので、不勉強でございますが、自治大臣と相談してみたいという、心境でございます。
  66. 島田琢郎

    ○島田委員 森林組合など、そういう組織のあるところはそういうやりくりがつくわけですね。会社でもやりくりがつけられないことはないということも含めていまそういうお話をされたと思うのであります。しかし、それは本来集材機とか積込機とかというものを対象にしてやられているものでありますから、正確なことを言えば、チェーンソーに使うのは間違いだ、こういうことになるわけでありますから、そういう邪道なやり方でなくて真っすぐやったらいいんじゃないか、私は実はそういうふうに感ずるのであります。しかし、大臣からきわめて前向きに検討してみたい、こういうことでありますから、この点はぜひひとつそういう意味でお取り組みをいただくようにお願いをし、そういう状態を解消していただくような手だてというものをぜひ具体的に講じてほしい、このように私からお願いを申し上げておきたいと思います。林野庁はお帰りになって結構であります。自治省もよろしゅうございます。  最後の問題でありますが、実は、私この間の所得税並びに租税特別措置法の中で取り上げたかったのでありますが、限定された時間内でございましたので、主としてグリーンカードに全力を集めてしまったものですから、やり切れなくて残っておった問題についてこの際ひとつ大蔵省の見解を承っておきたいと思うのでありますが、農業生産法人の問題でございます。  まず農林省にちょっとお尋ねいたしますが、この農業生産法人はいろいろ経緯がございますし、歴史も少し古くなりましたから、長々御説明いただくと時間がなくなってしまうので、この生産法人の実態を中心にして簡単に説明を願いたいと思います。
  67. 若林正俊

    ○若林説明員 御説明申し上げます。  農業生産法人制度は、御案内のように、三十七年、農業基本法の制定に伴いまして農地法の改正が行われ、ここで創設された制度でございます。五十四年一月一日現在で三千五十七の法人数を数えております。三十年代末から四十年代前半にかけて大変活発に設立を見たわけでございますが、最近やや停滞ぎみでございます。  これを法人の組織形態別に見てみますと、有限会社の形をとっておりますのが六六%、農事組合法人の形をとっておりますのが三三%、この両方で大半を占めておりまして、合名会社、合資会社形態はきわめて少数でございます。  これら生産法人の組織状況を地域別に御紹介いたしますと、これはやはり五十四年一月時点でございますが、北海道が圧倒的に多うございまして、全体の四七%を占めております。続いて中国、四国地方が二一%、東北地方が一〇%、九州地方が九%、こういう姿になっておりまして、その行っております業種は畜産、米麦作、果樹の三つの種目が主たるものでございます。
  68. 島田琢郎

    ○島田委員 いま実態を中心にして説明を願ったのでありますが、そもそも生産法人というのは農林省としては農政の一つの柱として非常に盛んにこれを指導され、推進をされるという時期があったわけであります。やや最近停滞ぎみでありますというのは、農林省の熱意を反映しているものではないかというふうに私は思うのでありますが、そのほかにもう一つは、いろいろ税法上の問題ということもあるのではないか。なるほど生産法人のいまの構成を見ますと、農基法に基づく農事組合法人というのは三三%だ、あと有限会社法に基づきますものの方が多くて、これが約七割近い、こういうことでありますから、その限りにおいて言えば、税法上の考え方を中心にして法人をつくっているという場合の方があるいは多いのかもしれない、これは私もよくわからないのでありますけれども。  ただ、真っ当なお話をいたしますれば、やはり農林省は従来もただいまも、たとえば農機具一つの貸与にしても、あるいは補助金の問題にいたしましても、個人ではなくてあくまでも共同化ということをたてまえにしながらやってきた。米の減反政策にしても地域がまとまってやるようなそういう共同方式に対しては特別上積みをするなど、こういうことをやってきたわけですから、その限りにおいて言えば、生産法人というのは非常に大事な、やはり農政の柱としてこれに力を入れるべきだというのは私は言うまでもないことだと思うのです。  また、毎年予算になってくると農林省と大蔵省予算の分捕り合いが始まるわけでありますけれども、やはり個人ではなかなか大蔵省の壁は厚くて、それはやるということにならない。共同でやりますからと、こうなると大蔵省もわりあいと理解をしてそこに予算をつけたり、補助金を出したりというようなことが容易になる、こういうことであります。  そういう意味で言えば、私は、この農業生産法人というものについては、あるいは共同、協業、集団化の生産組織といったものについては今後もやはり政策的にも力を入れていくということがお考えとして当然出てくるのだろうと思うのです。その点は、大臣、いかがですか。
  69. 高橋元

    高橋(元)政府委員 農業経営の共同化、これはいまも仰せのありますように重要な政策目標であろうというふうに私ども考えておりますが、そのために農業生産法人関係の税制上の措置ということで従来から幾つかの措置を講じております。  農基法の精神にのっとりまして、まず第一に、農業生産法人に農地を現物出資した場合には譲渡所得税の納付期限を延長いたします。つまり、農業生産法人の構成員でないことになったときから二月を経過する日まで延ばしておくということが第一であります。  第二に、農業生産法人が農地等を現物出資により取得した場合には、通常でございますれば千分の五十の所有権移転登記の登録免許税率でございますが、千分の九に軽減いたすという措置を講じております。  それから第三に、贈与税や相続税の納税猶予を受けておられる農地を農業生産法人に現物出資した場合、その現物出資した農地に対応する贈与税、相続税を納付すればほかの農地に対応する分の納税猶予の打ち切りはしない、こういうことでありまして、税制面においても、先ほども申し上げました農業基本法の精神にのっとって整合性を保ちつつ種々の措置を講じておるというのが現状でございます。
  70. 島田琢郎

    ○島田委員 私の質問したことと全く違ったことをお答えになっているわけであります。大蔵省として農業の共同化、生産法人化という問題に対しては今後も積極的にお考えになるつもりですかと聞いたのでありまして、これから質問しようと思っていることをあなたはもう全部読んでしまわれたわけでありまして……。
  71. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ただいまお答え申し上げたのは、農業経営の共同化ということが重要な政策目標であるという認識の上で、従前から税制改正の際に種々の措置を講じてまいったという御説明をいたしたわけでございます。そういう政策的な税制上の措置の必要性については、そのときそのときの社会経済情勢に応じて随時検討してまいるということは申すまでもありませんが、ただいまのところ、そういう目標のためにどういう措置を講ずべきかという具体的な考え方は持っておりません。
  72. 島田琢郎

    ○島田委員 そこで、従来からも問題になっております点を二、三具体的にお尋ねをしてまいりたい、こう思うのであります。  いま個人経営に対しましては、経営者の若返りという問題から、生前贈与という問題が特別な税制の措置を受けて、生前贈与の特例ということで実は納税の猶予制度というものができているわけであります。また、相続税の納税の猶予制度と、こういうふうに制度上はできているのでありますが、生産法人、つまり法人に参加をしている場合にこれが適用外である、ここのところに——それは法人というものと個人経営というものは正確に言えば違うという、文字に書いたり議論をしたりすればなかなかそれはかみ合わない問題でありますけれども、実態論的に言えば、個人の経営が集まって、同じ人が同じくわを持って同じ畑を耕すということについては変わりはないのですね。ところが、法人に参加をしている者についてはこの特例が受けられない。ところが、残念ながら農業も次第に老齢化をしてまいりました。六十五歳以上の人たちも相当出ているわけであります。そうすると、経営の若返り、協業自体も若返りをということは時代の要請としてもまた避けて通れないということになるわけであります。私が推定いたしております農村の高齢化の現象というのは、最近においてはさらに高まってまいりまして、もう六十五歳を超えるような人たちはこの法人の中でさえも一割を超すというありさまです。六十五歳になりましたら、個人経営の場合は経営を移譲いたしまして年金をもらってということになるわけでありますが、法人の場合は特例措置がありませんから、一緒にやっている法人のいわゆる構成員であり、社員であります息子にそれを譲りたいと思っても、税金はまともに取られるということになってしまう。ここのところが問題ではないか、私はこういうふうに思うのであります。  それからもう一つ、いままでは個人経常の農家でありますが、それは生前贈与の特例を受けて、実は息子が中心になって経営をやっております。ところが、たまたま仲間が集まって共同経営をやろうとした、そうして手続的にも法人化を進めてきた、途端にそれが切れてしまう、もとに戻ってしまう、これは私としてはどうも納得ができないと思うのですけれども、いかがですか。
  73. 高橋元

    高橋(元)政府委員 農地に係る贈与税、相続税の納税猶予、こういう特例が租税特別措置法の中に設けられております趣旨は、農業後継者の育成に資するということでございまして、農地法が所有と経営の不可分ということを基本的な精神といたしておりますので、その精神にのっとりまして、受贈者または相続人が農業後継者として贈与、相続によって取得した農地でみずから農業を営む、こういうことを条件として特例を講じておるわけでございます。  先ほどもお答え申し上げましたように、農業者が農業生産法人にみずからの、たとえば贈与税の納税猶予中の土地を一部出資をいたすという場合には、通常二割出資をいたしますと納税猶予が全部取り消しになるわけでございますけれども、それをしないで、出資した土地の範囲についてだけ贈与税を払っていただくという道を開いておりますのも、この大きな考え方の中の一環でございます。  しかしながら、これはあくまで後継者が相続または贈与によってみずから土地を持っておられる、その土地を御自分で耕しておられる、まあ経営しておられると言ったらよろしいかもしれませんが、その限りでの納税猶予でございますから、逆の順序になりますけれども、取得された農地を農業生産法人に現物出資をする、それから貸し付けをするということになりますと、受贈者や相続人は農業後継者として農地で農業を営むことをやめてしまうということになります。つまり、所有権が新しく農業生産法人に移っていくわけでございますから、したがって、その土地を処分してしまったということになりまして、これは相続税や贈与税、またはその納税猶予というテクニックの中にははまらない問題だと思うのでございます。確かに、御提案の御趣旨は、ある意味では後継者対策として有益であろうとは思うのでございますが、私どもは、相続税、贈与税についての特例措置という枠の範囲で考えますと、問題が非常に多いというふうに思います。  それから、その相続、贈与を受けられた方が農業生産法人の営む事業に常時従業者として従事しておられるとしましても、農業生産法人とその農業に従事しておられる方は全く別の人格でございますから、したがって、農業生産法人が営む農業をもって受贈者や相続人がみずから営んでいる事業であると考えることは、これまたできないのではないかと思います。そういう方はいわば地主でございますから、地主たる地位にある者についてまで特例を及ぼすということは、相続税なり贈与税なり、そういった法律が基本的な立脚点としております税の公平ということからして非常に大きな問題を含んでおるというふうに思います。
  74. 島田琢郎

    ○島田委員 そういう答えしか返ってこないだろうなあとは思っているのでありますけれども、もう少し実態を考えて、ぜひ法人にもこうした生前贈与の特例が受けられる道を開くべきではないか。これには高度な政治判断というのが一つ必要なんでしょうし、法律論的に言えば、いまおっしゃるように何ぼ同じ人間が自分の土地を法人に出資をして、そして自分で耕しているとはいっても、それはもう個人の経営とは違って会社の経営なんだから、もっと極端に言えば、給料をもらってかせいでいる社員なんだから、それにまでやるわけにはいかぬということになるわけでありましょうが、それは私は百も承知なんですけれども、いま農業法人のこういう協業化という問題は、農林省としても、先ほどあなたがお答えになっているように、大蔵省としても、農業を育てていくという立場で言えば特別な考え方を持たなければならない今日の農業の実態ではないか、こういうことを私は理解してもらいたいし、その理解の上に立ってこれを法人の範囲にも広げるというふうな道を、ひとつ知恵を働かしてぜひ広げてもらいたいという希望が実は私には強くあるわけです。  それで、その場合、使用収益権の設定という場合でもだめなんですか。
  75. 高橋元

    高橋(元)政府委員 繰り返しになりますようで恐縮に存じますが、所有をしてみずから耕作、経常をしておられるという場合に限るわけでございますから、使用収益権の設定の場合も、お話ではございますが、納税猶予を認める範囲の中には当たらないというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  76. 島田琢郎

    ○島田委員 もう少しお話をしたいと思っていたのでありますが、きょうはもう時間がなくなってまいりましたので、これはまた別の機会に譲らせていただくことにしたいと思います。  しかし、押し問答みたいな話になってしまいますが、私は重ねて申し上げたいのは、農業のいまの実態を考えますと、とてもじゃないが個人で太刀打ちできるような状態というのは、北海道の一部を除けば全国にはないわけですから、少しでも協業化を図り、そして合法的な納税をわれわれ農民としても進めていくとすれば、やはり法人化に踏み切らざるを得ない。しかし、そうなったら途端に特例が全部切れてしまう。同じ百姓をやって、同じ土地で同じ時間働いているのにこういう状態であるのは何とも納得できない、こういう気持ちだけ私は農民を代表してここに明らかにしておきたいと思うのです。  ついでに、実は来年から開始されます農業者の年金の支給に当たりましても、そこに格差が生ずるようなことがあってはいかぬと私は思っておるわけでありますし、とりわけこの農地の譲渡に伴います問題の中では税法上の問題がいろいろとネックになっていて、全体的にはこれがなかなか進んでいってないという実態も実はあるわけですから、とてもじゃないがお話には乗れませんというのではなくて、その点についてひとつ十分御検討願いたいという私の希望も拒否なさるお考えでございますか。
  77. 高橋元

    高橋(元)政府委員 お話しになります御趣旨は、私どもも、農業の経営の問題、農業政策の基本の問題としてはそれなりに理解をいたすわけでございますが、先ほど大変無愛想なことを申し上げましたのは、相続税なり贈与税なりの範囲の中では解決のできない問題であるということを御理解いただければありがたいという気持ちを申し上げたわけでございます。
  78. 島田琢郎

    ○島田委員 もう時間がなくなりましたが、最後に、私どもは毎年議員立法で水田利用再編奨励補助金の取り扱いを当大蔵委員会で決めるわけでございますが、この中で法人にかかわります問題は、ことしも決めましたように圧縮記帳は二年間とするという措置になるわけであります。しかし、これもまた実は二年間で買いかえをする、あるいは土地を求める、機械を買うといっても、実際には二年間という限定されている時間の中で機械一つの買いかえにしてもむだがあるというふうに思って実態とそぐわないという気持ちが強くあります。しかし、おまえら決めておるのにいまごろ何を言っている、こうなりますが、私はこれを決めるときの大蔵当局のお考えというのも聞いておるわけでありますけれども、議員立法でわれわれが出す場合に、農業の場合は少なくとも五年くらい期間を置かなくてはうまくいくまい、こういう議論もあったのでありますけれども、財政当局、大蔵省のお考えの中で、ほかとのつり合いなどもあって、源泉の措置なんかでも二年ないし三年といったようなことだから、法人だけ特別扱いにするわけにいかぬ、そういう経過を経て私どもはやむなくことしもまたこの問題の処理に当たったわけでありますが、事務当局のお考えが、私の言っているような、あるいは農家の要求しているような立場理解が示されれば来年は議員立法でこれは五年にするということは可能でありますが、これもだめですか。
  79. 高橋元

    高橋(元)政府委員 お話の中にもございましたように、受け入れました補助金を特別勘定で経理をしておるという事例をいろいろ、バランスというお話でございますが、バランスを見てみますと、たとえば水田利用再編奨励補助金の場合、それから保険差益の場合、収用等の場合、特定資産の買いかえの場合、転廃業助成金の場合、いずれも交付の日またはその事業年度から二年間ということでバランスがとれておると思うわけでございます。この水田利用再編奨励補助金の一農業者当たりの補助金は、全国的に見ますと十万円平均でございます。したがいまして、法人が、本来ならば事業の収益と営業補償でございますから、事業所得になる、こういう課税対象とすべきものを圧縮記帳という処理をいたすわけでございますが、圧縮記帳をいたしてまいります場合にも、いま申し上げましたような幾つかの圧縮期間の例とのバランスを考えて議員立法で二年間というふうにお決めになっておられると思いますが、その期間を五年に延長するということは非常に問題があるのではないかというふうにこの場では申し上げざるを得ないと思いますし、御理解をいただければ幸いであります。
  80. 島田琢郎

    ○島田委員 持ち時間がこれで終わりましたが、大蔵大臣、私のいろいろな細かい話まで含めて長いおつき合いをいただきましたが、知床の、いまも盛んにそれを持って見ていらっしゃるようでありますが、あなたにもぜひ積極的にこの運動に御参加をいただいて、税制上の問題なども含めて御検討いただけるように私は重ねて最後にお願いを申し上げておきたいと思います。
  81. 竹下登

    竹下国務大臣 これを私が非常に興味を持ってながめておりましたのは、実は私がいま企画しております「私の森」構想、マイ・フォレスト、こう言うのですけれども、それは百八十ヘクタールじゃございません。大体一町歩を三つに分けますから、千坪でございますね。千坪の地上権を都市の人に設定してもらって、そうして森林組合が造林をして、これは「木の成長には、永い年月が必要です。あなたの夢を、お子さんやお孫さんに」、ここは一緒でございます。ただ、違いますのは「植えた木は、将来にわたって伐採はしません。」私の方は、伐期が来たら伐採をする。そして、四分六でその金を出した人と造林者が分け合う。しかし、それは計画伐採しますから緑自身はずっと続く。都市の中堅サラリーマンなんかからも申し入れが非常に多い。あなたも十万円で千坪の地主になれます、こういうようなことをやっておりますので、その限りにおいてこの構想は大変興味がありましたので、また個人的にも相談させていただきたいと思います。
  82. 島田琢郎

    ○島田委員 じゃ、終わります。
  83. 増岡博之

    増岡委員長 柴田弘君。
  84. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 委員長にお願いしておきますが、私、柴田「ヒロシ」でございます、「ヒロム」でございませんのでひとつ……。先日も「ヒロム」とおっしゃいましたので、ひとつこれからよろしくお願いをいたします。
  85. 増岡博之

    増岡委員長 どうも失礼いたしました。
  86. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 「ヒロム」と「ヒロシ」では、清き一票に影響いたします、よろしく。  それでは質問に入らさせていただきますが、今晩は日銀総裁に夜分お越しをいただきまして非常に恐縮に存じている次第でございます。お聞きすれば、かぜを召されておかげんが悪いということで非常に申しわけなく思っております。よろしくひとつお願いいたします。  それで、まずせっかくお越しをいただきましたので、総裁にお尋ねをしていくわけでございますが、今回、御承知のように公定歩合が一・七五%引き上げになりました。この引き上げは、昭和四十八年の十二月の二%に次ぐ大幅なものであります。二月十九日第四次の引き上げがあってから一カ月しかたっていない今日の現状におきまして、この短期間に二度にわたって公定歩合が引き上げられた前例はないと私も記憶をいたしております。そういった意味で、私は今回の引き上げの措置というのはきわめて異例の引き上げであった、こういうふうに判断をいたしておりまして、果たしてこの引き上げがそれ相応の必然性というものがあったかどうかということを、正直に申しまして疑問に感じておる次第であります。  そこで、四点にわたりましてまず総裁の御見解を伺っていきたいわけでありますが、まず第一は、昭和四十八年のいわゆる第一次石油パニックのときと今回を比較してまいりますと、国内の需給関係は今回の方が緩和をしておるわけであります。物価の上昇の程度も、かなり高いとはいいますものの、前回ほどではございません。それにもかかわらず、今回の公定歩合の引き上げ幅は前回を上回っております。また、前回は金融引き締めの結果、国内景気は極端に落ち込んでおりまして、企業収益は悪化をし、失業者も倍増いたし、企業倒産も激増いたしております。本来この公定歩合の引き上げというものは、その趣旨は物価の安定を図るためだということで国内の総需要を抑制するというところにあるのは当然でございますが、現在の物価上昇の主たる原因となっておりますのが、原油あるいは非鉄金属など海外での一次産品価格の上昇にありまして、前回の石油危機のときのような極端な物不足による国内物価の上昇が生じていないのじゃないかと私は個人的に判断をいたしております。そういった点での今回の引き上げの必然性というものをひとつお聞かせをいただきたい。  それから第二点は、今回の公定歩合を大幅に引き上げた趣旨が一体どこにあるか。仮に金利の引き上げによって内外の金利差を縮小させ、これによって資本の流入を促進し、円相場の低下を抑制するということにあるならば、アメリカと日本との公定歩合の格差というものがいま四%あります。これはもう御案内のとおりであります。アメリカが一三%で、今度日本が九%であります。四%の差がある。でありますから、あと四%引き上げていかなければこの格差の解消、是正というものにはならないのではないか。四%引き上げるということはきわめて非常識なことである、私はそういうふうに思います。でありますから、円相場対策としての意味というものは、今回の公定歩合の引き上げの中に一体どの程度効果があるか。国内需要と海外要因、どちらにどの程度ウエートを置いておみえになるのか、この辺の御見解もお聞かせをいただきたい、こういうふうに思います。  それから第三点目は、公定歩合の引き上げ、実際に需給が逼迫したり国内物価が三割も上がるという事態が起こらないように前もって引き上げておくという考え方もあります。今度日銀のお考えもそのような予防的な意味もあったかと思うわけでありますが、しかし、未然に物価の上昇を防ぐいわば予防的な引き締めであるというのであるならば、すでに需給がタイトになって物価上昇も激しかった前回の四十八年の引き上げ幅以上に引き上げなければならないという点について、私はいかがかと思います。この点についての御見解もお聞かせいただきたいと思います。  それから最後、第四点でありますが、以上るる述べてまいりましたが、結局今回の公定歩合の引き上げというものが大幅な引き上げになったというその根本は、前回と比べまして国債の発行額というものが著しく膨張してしまった、そのしわ寄せが金融政策の面にあらわれてきたのではないか、私はこういうふうに判断をいたしておるわけでありますが、この辺についてもひとつ明確な御見解をお示しいただければというふうに思います。  以上の四点について、今回公定歩合をこれだけ引き上げなければならなかった必然性というものについて、わかりやすく、簡潔で結構でございますから、お答えをいただければと思います。
  87. 前川春雄

    前川参考人 今回、公定歩合を二月に引き上げまして、一カ月たったところでさらにまた大幅に引き上げた、なぜそういうことをしなければいけなかったのか、その必然性は何かというのが第一の御質問であったというふうに思います。  今回の物価上昇が海外要因から始まっておることは御高承のとおりでございますが、その海外要因による物価上昇が国内要因によってさらに加速されるあるいは増幅されるということが一番警戒すべきことであると思います。前回の第一次の石油ショックの後のいわゆる狂乱物価、あのときの状態を考えますると、あの当時は国内の需給がかなり詰まっておりました。そこへ海外の石油を初めとする一次産品価格が一斉に上昇したわけでございまするが、それが国内の金融状況が緩和しておった、あるいはマネーサプライがかなり潤沢であったということもございまして、そういう海外要因がさらに国内の要因によって増幅され、加速されてああいうふうな狂乱物価になったものというふうにわれわれは理解しておるわけでございます。そういうことから、今回、私ども昨年の初めから金融の引き締め政策に転換しておるわけでございまするが、その趣旨は、早目早目に手を打ちながら海外要因が国内の要因によってさらに加速され、あるいは増幅されることを防いでいかなければいけないということを主眼にいたしまして金融政策を遂行してまいったわけでございます。二月に引き上げましたときに、本年初めからさらに原油価格の引き上げがございまして、そういうふうな高値の原油の入着が続いておりました。それが一月の卸売物価に反映いたしまして、御高承のとおり一月が二・一%の上昇でございました。二月はさらに二・六%、一カ月だけで二・六%の上昇になったわけでございまするが、二月に公定歩合を上げましたときには、すでに二月の卸売物価が二・五、六%の上昇になるということは予見されておりました。しかし、その後、公定歩合を上げました後の状況を見ますると、物価の見地から考えますると、はなはだ憂慮すべき状態にあったというふうに思われます。  国内の需給が非常に締まってきているということもございますが、目先、電力料金その他の公共料金の引き上げ、あるいは鉄鋼が引き上げられる、そういうようなことから、物価のある種の先高感のようなものが一部に台頭してまいりました。企業は価格志向をどうも強めているような感じでございます。一部には在庫手当てが始まるというような動きもございました。そういう状況のもとにおきましてインフレマインドが定着するということは、もちろん最もわれわれは警戒しなければならないことでございます。物価先高感というものも定着しないように、早くこれを打ち破っていかなければいけないということから三月に大幅な引き上げをしたわけでございます。これはそういう大幅な引き上げをすることによって、九%という水準にいたしましたが、御高承のとおり、これは前回の狂乱物価のときの最高の公定歩合の水準でございまして、そこまで持っていくことによって金利の面でもある種の天井感というものを出していくことが必要であろうというふうに判断したものでございます。  この大幅な引き上げをしたことの趣旨で、内外金利差を縮めるということから言えば、まだ足りないではないかという御意見がございました。内外金利差の幅を比べまして、ただそれを詰めるということだけが問題ではございません。先ほども申しましたように、海外要因で始まっておりまする国内の物価上昇、コストの上昇、これがさらに加速されないようにというのが一番の趣旨でございまして、われわれが考えております対象はあくまで物価の上昇でございます。物価の上昇に対しまして、大幅な金利の引き上げ、公定歩合の引き上げをすることによって物価抑制効果をそこに強く出していくということが必要であろうと判断したわけでございます。現に内外金利差はある程度ございまするけれども、現在それによって資本が海外に流出しているという点につきましては、若干の流出はございまするけれども、それほど大きな目立った流出があるわけではございません。そういう点でも、内外金利差という点だけが問題であるということではございません。  三番目の御質問でございました早目早目に予防的な措置をとるということを日本銀行はやっているけれども、さりとて前回以上に何も上げないでもいいじゃ、ないかという御質問がございました。  前回は最後の段階で、四十八年の十二月に九%にいたしたわけでございまするけれども、そのときには一挙に二%の引き上げをやったわけでございます。今回は九%にいたしましたけれども、最終段階では一・七五%ということでございまして、前回以上に大幅に引き上げたわけではないわけでございます。しかし、一・七五も二%もほぼ同じようなものでございまして、大幅に上げておくことがこの際国内のインフレマインドの定着を防ぎ、物価先高感というものを破っていくことに最も有効であり適切であるというふうに判断をしたわけでございます。  大幅に引き上げなければならなかった原因は、国債の大量増発の状態がその背景にあるのではないかという点の御指摘がございました。確かに、国債の大量増発ということが全体のマネーサプライに及ぼす影響というものは無視できません。しかし、私ども金融政策を実施いたしてまいりまする場合に目安として見ておりますのは、あくまで物価でございまして、国債価格の低落ということに対する歯どめをつくるために金利政策を運用している、あるいは金融政策を運用しているということはございません。あくまで海外要因による物価を国内で極力抑制する、そういうことによって物価鎮静の環境をつくり出していくということが一番大事であるというふうに考えておりますので、そういう趣旨で今回の措置をとったわけでございます。
  88. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 インフレマインドの抑制、物価抑制ということでありますが、それでさらにお尋ねをしてまいりたいのでございますが、御案内のように、政府も公定歩合の引き上げと同調いたしまして、今般七項目にわたる第三次総合物価対策を打ち出しました。こういった財政、金融両面にわたる引き締めの強化、この影響というものが、果たしてわが国の経済というものにどういった影響をもたらすであろうか。これは企業経営の面におきましても、あるいは国民生活の面におきましても、きわめて大きな関心を持たせるものではないか、このように思います。  そこで、果たして今回のこの公定歩合の引き上げというものが物価抑制ということに本当に役立つかどうか、役立つとすれば、総裁といたしましては、今年度の卸売物価あるいは消費者物価について、あるいは経済成長率等、このような指標について、どういった確固たる見通しを持ってみえるかどうか。ある有力な民間の調査機関によりましても、五十五年度の物価の上昇というのは、卸売物価では一九・八%、消費者物価は七月から九月までのピークで前年比九・四%、年度平均では八・六%になる、このように見通しておるわけであります。これは政府見通しと大きな違いがあるわけでありますが、この物価の指標、見通し、そして先ほど申しました経済成長率、果たして政府見通しの四・八%というものがここで維持されるかどうか、今回の公定歩合に関連して、総裁の御見解をお伺いをしておきたいと思います。
  89. 前川春雄

    前川参考人 こういうふうな金融政策が物価抑制に効果があるのかどうかという点でございまするが、今回政府におかれましても総合的な物価対策というものをお出しになったわけでございまして、こういうふうな物価に対する対策は、金融政策だけではなくて、財政政策、さらに個別の物資に対する対策、こういうものが総合的に発揮されませんと、その効果が出ないことはもちろんでございまして、そういう意味で、政府におかれましてもきわめてかたい強い御決意のもとに、財政政策面でも抑制的な施策をお講じになりまして、総需要の適切な管理を図っていくということが明確に打ち出されておるわけでございます。  私ども金融政策の強化もやはり同じ目的でございまして、総需要を適切に管理していくということが物価の上昇を抑制するのに最も大切なことであるというふうに考えてこの金融引き締めを実施したわけでございます。必ずや政府の施策と合わせまして物価抑制に効果があるというふうに私どもは確信しておるわけでございます。  ただ、来年度政府見通し、物価の見通しに果たしておさまるかどうか、いまのような状況のもとではなかなかむずかしいのではないかという御質問であろうと思います。  この点につきましては、今後の海外要因でございますとか、あるいは国内における物資の需給関係、あるいはもう一つの大きな要素といたしましては為替相場がどうなるかということが大きく影響するわけでございます。そういうことから考えまして、来年度の物価がどういうふうな推移をたどるかということをいま数字的に推定することは非常に困難であろうというふうに私どもは思っております。  最も必要なことは、いまのような物価上昇傾向に対しましてできるだけの措置を講じまして、物価安定への手がかりを早くつかむことであろうというふうに思っております。そのためには、今回の総合物価対策、金融政策、財政政策、合わせましてその効果が必ずや近いうちに出てくるものであるというふうに確信しておるわけでございます。数字的に果たしてあの見通しのとおりなるかどうかということにつきましては、いろいろの要素がございますので、いまはまだそれを判定するには少し早い時期ではないかというふうに考えております。
  90. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 いま総裁も御説明がありましたように、今回のこの引き上上げによりまして内外金利差が促しております円安というものに歯どめがかかる、そして金利の天井感というものが定着する、こういうことでありますが、今後の物価の見通しということに関連をいたしまして、もうこれ以上の公定歩合の引き上げというものはないと国民は、私どももそうですが、判断をしていいのかどうか、この点ひとつ明快にお答えをいただきたいと思いますし、それからもう一つ、私が一番心配しておりますのは、先ほど申しましたように、物価の動向というものと同時に、今後の景気の動向というものも私は非常に心配をいたしております。つまり、高金利政策から来るところの景気のオーバーキルの問題であります。これは言うまでもなく金利の引き上げというのは、中小企業を含めました、特に零細企業にとってそうでありますが、いわゆる企業経営にとって大きな金利負担、そして日銀等の金融機関に対する窓口規制等によりまして、企業のいわゆる資金の調達難、こういう問題が出てくる、私はこういうように考えます。しかも、今日の物価値上げという問題は、私はコストインフレ、いわゆるコストプッシュ・インフレ、こういうふうに考えておりまして、大企業は、電気料金の値上げあるいはガス料金の値上げ等々は、生産性の向上ということによりまして相当なコスト上昇分というものを製品価格に転嫁をできる可能性がある。しかし、それができない中小零細企業というものは、今後とも大きな経営危機に見舞われるのではないか。それが倒産という形になってくる、こういうふうに実は判断をいたしております。大企業と中小零細企業との間のいわゆる跛行性というものが今後の大きな問題になってくると思います。こういった問題について、今回このような大幅な公定歩合の引き上げに踏み切られたわけでありますが、私は、今後とも物価の動向をにらみながら金利引き下げということについても機動的に対応していかれなければいけない、こういうふうに考えております。その辺のめどというものが総裁の方にありましたら、この点についてもひとつお聞かせをいただきたい、このように思います。
  91. 前川春雄

    前川参考人 公定歩合の今度の引き上げを実行いたしました考え方につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、ここで打ちどめ感というものを出したいということが一つども考え方にございます。金利がさらに上がるのではないかというような感じが残りますと、いろいろ経済の各方面、市場にも悪い影響がございまするので、そういう意味から打ちどめ感というものが出ることが望ましいというふうに考えてやったわけでございます。  こういうふうな引き締め政策が物価対策上とられたけれども、それが景気との関連はどうかということでございますが、もちろん、こういうふうな引き締め政策、あるいは経済的に申し上げますれば、物価上昇傾向というものが経済全体の活動をスローダウンするということはある程度不可避であろうというふうに思います。総需要の管理ということを申しましたけれども、そういう点から考えましても全体の景気がほんの少しスローダウンするということは避けて通れない事態であるというふうに思います。  ただ、景気のスローダウンということからいろいろの方面に影響が出るわけでございまするけれども、いま中小企業に特に強く影響が出るのではないかというお話がございました。私ども必ずしもそういうふうに思っておりません。中小企業金融は最近では金融機関取引分野としては大企業金融と並ぶ大きな分野になっておりまして、経営上も銀行としては無視できない分野でございます。昔よく言われましたような限界的な分野ということではなくなっておるわけでございます。私どもまた短期経済観測ということで毎三カ月ごとにアンケートをとって調べておりますけれども今度の金融引き締め以来中小企業金融が大企業金融に比べて特に引き締まっているというふうにはアンケートの上からは読み取れないわけでございます。また中小企業自身も、過去数年間非常な不景気の時代に粒々辛苦されて減量経営に努められたというふうに思いますが、その結果、自己資金の充実というのは大企業に劣らず行われておるというふうに思います。そういう意味から、中小企業に特に今度の引き締めが大企業以上に強く影響するというふうには必ずしも思っておりません。しかし、これは私ども常に金融全般の見地から考えていかなければいけないところでございまして、中小企業につきましても常に私どもの方で特に問題があるような場合には考えてまいらなければならない、常に注意を怠ってはいけない分野であろうというふうに考えております。  それから、政策的な配慮として機動的な政策運営をとるべきではないかというお話がございました。当然そういうことであろうというふうに考えております。われわれ早目早目に金融政策の運営を図ってまいったわけでございまするが、その趣旨は、そのときの状況に応じて一番適切な施策か講じていくということでございまして、われわれの政策対応も常に機動的であるようにしてまいりたいというふうに考えております。
  92. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それで、総裁申しわけないのですが、いま機動的な対応をするということで、まず大平総理も、物価上昇の一つのめどは六月ごろにつく、こういう御判断のようであります。そこで物価に一つのめどがついた時点において、今回引き上げられた九%の公定歩合、これは景気のオーバーキルという問題に機動的な対処をするという意味において引き下げられる可能性というものは、日銀としてお持ちになっているのかどうか。この辺ひとつ、持っているなら持っている、考えていないなら考えていないで結構でありますから、大平総理もそういうふうに物価抑制について一つのめどを六月というふうに置いておられるので、ひとつ明確に御答弁いただければと、こういうふうに思います。
  93. 前川春雄

    前川参考人 物価の先行きにつきまして、私どもも、目先、高値原油の入着が終わり、電力、ガス等公共料金の引き上げも一巡した後、もし海外要因に大きな変化がない——さらに海外市況が高騰するというようなことがあれば別でございますけれども、そういうことがないということを前提にいたしますれば、その後には物価上昇の程度も漸次鈍化していくであろう、そういう時期に物価安定への手がかりをつかみ、安定への展望を開いていきたいというふうに考えておるわけでございます。もちろん、それにはいろいろ前提がございまするので、必ずそういうふうになるというふうにも申し上げられませんけれども、そういうことの展望をぜひ持ちたいというふうに考えておるわけでございます。そういう事態になったときには公定歩合を下げるのかということでございまするけれども、公定歩合は金融政策の一つの手段でございまして、そのほかに量的な規制であるとか預金準備率とかいろいろな方法がございます。私どもはそういう施策を十分に発揮いたしましてそれぞれの事態に対応してまいりたいというふうに考えておりまするので、この点は全くそのときの情勢次第ということ以上にはお答えできません。しかし、そういうふうな事態に対応して私どもが、金融政策が持っておるいろいろの手段を駆使してまいりたいということは考えております。
  94. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 ありがとうございました。そうすれば、そのときの物価の情勢にもよりますが、そういった一定の条件をつけてという意味では機動的な対処をしていくということで引き下げもあり得る、こういうふうに私は理解をし、判断をしたわけでありますが、そういうことでよろしゅうございますでしょうか。
  95. 前川春雄

    前川参考人 引き下げもあり得る、引き上げもあり得るということを申し上げるのは非常にまた誤解を招きまするので、私のここで申し上げられることは、全くそのときどきの情勢次第だ、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  96. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 どうも総裁ありがとうございました。これで結構であります。  では、あと残り時間が少なくなってしまって、大蔵大臣に対しては、今度財政特例法案の審議のときに改めてしっかりとお尋ねしたいと思います。  それで、せっかく国民金融公庫の総裁もお越しをいただいております。本当にありがとうございます。いま日銀総裁からも御答弁がありましたが、中小企業金融については余りそう心配がないじゃないかというようなことでございますが、私どもがいろいろ御相談を受ける中で、銀行からも融資を受けられない、そういった中小企業というよりもむしろ零細企業の方たちの融資に対する御相談が多いわけであります。それで今回五十五年度のいろいろな貸付条件の改善というものを見せていただいておるわけでありますが、五十四年度に比べまして改善がなされたわけであります。それで私ここで一つお伺いをしておきますが、小企業の経営改善貸し付けは限度額が二百五十万から三百万、貸付期間も二年六カ月から三年に延長されます。据え置き期間も三カ月から六カ月というふうに延長されてやや改善がなされたわけであります。こういった問題を含めましていわゆる金融引き締めに伴いますところの中小企業に対する国民金融公庫の融資の姿勢としては今後どのように対応されるかということ。  それからいま一つお伺いしておきますが、これは大臣にお伺いした方がいいかと思うのですが、今度公定歩合の引き上げによって財投の方の利率も基準金利といいますか、これが上がるんじゃないか。私が承知しているのは〇・六%というふうに承知をいたしております。これは当然公庫の方のいわゆる一般貸し付け等々の金利が上がってくるわけでありますね。これは恐らく四月から措置されることになると思いますが、先回は二段階で上げられたということでありますが、今回の場合は相当配慮していただきまして三段階くらいにしていったらどうか、こんなように実は私は考えておるのであります。大臣予算委員会等々でこれは配慮していくというようなことでございますが、どういうような配慮をされるのか。恐らく四月から、あと五日間でありますが、閣議決定も近日中になされると私は理解をいたしておりますが、そういったことについてひとつ具体的なお考えがあれば明確にしていただきたい、このように思います。  以上の二点、お願いいたします。
  97. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 ただいま、経済金融情勢がまことに厳しい状況になってまいっておるが、中小企業方々も非常に御苦労なさって、それに対して国民金融公庫としてはどのような融資態度をもって臨むのか、このようなお尋ねであろうかと存じます。  この点につきましては、先生指摘のとおり、今日の情勢が大変厳しいことは私どもも肝に銘じておるわけでございまして、そういった情勢を反映いたしまして、中小企業、特にまた私どものお客様方は小零細企業方々が九割ほどでございます。その方々からのお申し込みというものは昨年の秋ごろから大変活発になっておりまして、昨今でもかなり堅調を続けておるわけでございます。それに対しまして、私どもといたしましてはできる限りのお手伝い、お力添えを申し上げたい、かように存じまして、極力積極的な融資方針をもって臨んでおるわけでございます。  現に昨年の第三・四半期、ちょうど年末金融のころでございますが、このときにも融資枠といたしまして前年度に対して約二八%ほどの枠をふやして対処したわけでございますが、大体その枠いっぱいぐらいに消化が進んだというような状況でございまして、昨今の状況に応じましてできる限り資金の御需要に応じてまいる。幸いにして、今日御審議中の昭和五十五年度予算におきましても、財政当局の非常に御理解のある予算枠等も計上していただいておりますものですから、これ々もってすればお客様方に御不自由をおかけするということはまずあるまい、かように考えておるわけでございます。
  98. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のように、中小公庫等の基準金利は民間の長期プライムレートと同水準で設定するということが原則になっておりますので、御案内のように、この長期プライムレートンいうのは最優良企業に対する最優遇金利でございますから、それが中小公庫等に適用されれば中小企業全体に影響をもたらすということでありますだけに、それなりの優遇措置であるというふうに理解をしていただきたいと思います。  ただ、全くいじらないというわけではもちろんございませんので、先ほど御指摘のありましたいわゆる金利の改定に当たっての、何と申しますか特別の何らかの調整措置というようなものはいま鋭意検討しておるところでございます。
  99. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  100. 増岡博之

    増岡委員長 正森成二君。
  101. 正森成二

    ○正森委員 それでは、まず最初に大蔵大臣に伺いたいと思います。  本日の夕刊を見ますと、大臣ももちろんごらんいただいたと思いますが、本日朝の週休二日制関係閣僚懇談会で国家公務員の週休二日制、いわゆる四週五休制で、正確には四週一回・交代半休制と呼ぶことになっておるようでございますが、子れをお決めになり、これを受けて政府は直ちに一般職給与法改正案などの法案作成に入るとともに、与党の了承を取りつけて、早ければ四月上旬に閣議決定して国会に法案を提出する方針だというように報道されております。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  そこで、大蔵大臣に、このような方針政府が進まれるのかどうか、また、こういうようになりましたのは、どういうような世間の方向に基づいてこういうような決断が行われたのかどうか、まず大臣としての所見を承りたいと思います。
  102. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のように、本朝、国家公務員の週休二日制、四週一回・交代半休制——この方がわかりがいいということになりまして、これに関する閣僚懇談会がございまして、いま御指摘のような方向を決定いたしたわけでございます。特に、民間企業における週休二日制の普及状況あるいは年間休日数、週所定勤務時間等々を勘案いたしまして、いままでに二回試行をやったわけでございますので、そういうことで、大蔵省としては特段の支障なくこれが実施できたというようなことから、格別の異議なく、これに、私、大蔵大臣としても賛成をいたしたわけでございます。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕  問題は、行政サービスの急激な変化を避けるとともに、いま一つ、私の方が特に主張しておりますのは、予算定員の増高を招かないよう配慮するということを私としては強く主張をいたしました。いろいろ御議論はございましたけれども、そのような方向で決定したわけでございます。これは、人事院からこの試行当時からいろいろ言われたものに基づいたものでございます。
  103. 正森成二

    ○正森委員 いま大臣から御答弁がございましたように、いわゆるこの週休二日制については、五十一年と一昨年に試行を通じて人事院が定員をふやさずに実施できると判断をし、昨年八月でございましたか、勧告も行われたものであります。  それで、大蔵大臣に伺いたいと思うのですが、伝え聞くところによりますと、現場を相当抱えておる厚生だとか行管、それから報道によると、大蔵の各閣僚も、当初は消極の態度をとっていた向きもあったけれども、天下の大勢とか時代の流れというような御見解で、現在の労働時間短縮の流れといいますか、そういうのに同調されて、もし予算の拡大を伴わず人員の増大を伴わないものであるならば国民の支持も得られるのではないかというように踏み切られたものと承知しておりますが、大体そう理解してよろしゅうございますか。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 私どもも、当初各方面との懇談をいたしますと、政府は近ごろは休みを多くしたり休むことばかり考えているのじゃないかというような批判もあった時代がございます。しかし、いまやある種の定着したという考え方に基づきまして、特に週休二日制を行うことによって予算増員が伴わないということならば、国民理解が得られるだろうという判断に立ったわけであります。
  105. 正森成二

    ○正森委員 ところが、伝え聞くところによりますと、政府では昨年十一月の末でありますか、各省官房長会議を開いて、そしていろいろ御討議になったようでございますが、大蔵省の関係では、税関等で、三月二十四日ですから一昨日のことでございますが、従来は出勤簿整理時間ということで九時十分までに出勤すればよいということになっていたものを、これは慣行として二十数年続いてきておったものを、朝八時半から出てくるようにというような通達をお出しになった、あるいはまた、すでに昭和三十年代初頭から引き続き実施されてきておった夏の休暇二日間、これを実施しないというようなことに相なったやに聞いておりますが、こういう考え方は、四週五休制の考え方と素人目に考えると矛盾するように思われるのですが、どういうわけでこういうものが出てきて、しかも三月二十四日に通知をして四月一日から行うというようなあわただしいことになったのか、その間の経緯を説明してください。
  106. 松下康雄

    ○松下政府委員 昨年の十一月二十六日でございますが、各省官房長等の申し合わせ事項というものをつくったのでございます。それは、十一月九日の閣議におきましての総理からの御指示に基づきまして、その後、内閣が中心になってまとめたものでございますけれども、これは官庁綱紀の粛正を具体的に図ろうとするものでございます。  その幾つかの項目の中に、一つは、「朝の出勤時刻及び昼休みの時間を厳守する等、職員の勤務時間管理を厳正に行う。」という項目がございます。いま一つは、「休暇制度については、法令等の定めるところに従い、厳正に運用する。特に、法令等に根拠を有しない夏季休暇等の慣行がある場合には直ちに廃止する。」という項目が入ってございます。  これらが入れられました趣旨は、官庁の勤務の実態と申しますものは、それぞれの職場の勤務の特性でございますとか、あるいは古くからのいろいろな経緯等によりまして、正直申しまして、必ずしも法令で規定をされているとおり完全そのままに遵守をいたしておると言えない面があちこちにあることは否定できないところであったわけでございます。これらにはそれぞれの事情はございますでしょうけれども、現在の国民一般からの厳しい官庁綱紀の維持に対する御批判に顧みますときに、これらの問題につきましては、従来の慣行でありますとか、いきさつでありますとか、そういったものにこだわらないで、姿勢を正すべきところは正すということで、官庁の執務体制を厳正に維持することによりまして国民の信頼の回復をいたしたいという考えでございます。  ただ、一方でそういうふうに執務の姿勢を厳しく維持するということのうらはらというわけでもございませんけれども、一方では、時代全体が、きちんと公の制度として、たとえばいまの週休二日の方向に動くような、そういう勤務条件の緩和というようなものは、これはいたすべきものはきちんと制度をつくって勤務条件の向上を行っていくということでございますので、一方でそういう週休制についての前進を図ってまいるような時期には、ことさらにこの他方での規定どおりのきちんとした勤務をいたすという努力が必要であろうと思うのでございます。  大蔵省におきましても、いまの出勤時間につきましては、本省のように特に問題の少ないところはすでに勤務時間の厳正化の措置をとってございますけれども、各現場の方はそれぞれの事情がいろいろございますので、準備をいたします関係でややおくれておりましたけれども、このほど考え方がまとまりまして、新年度を期して一斉に実施をしてまいろう、そのために職員にまず周知を図る必要があるということで、最近職員の方にこの内容の説明をいたしたのでございます。
  107. 正森成二

    ○正森委員 昨年の十月から十一月にかけまして、鉄建公団であるとかあるいは大蔵省も巻き込んで、官庁間の料亭接待は好ましくないというようなことで、事務次官を含めて異例の処分を行うというようなことになりましたから、いま官房冨から答弁のありましたように、綱紀を正していこうという姿勢があるということはごもっともなことでありますし、私はそれなりに評価をしたいと思っております。  ただ、国民批判が集まりましたのは、鉄建公団にしろその他の官庁にしろ、これだけ財政難が言われているときに、あるいは骨まで削れというようなことをある省庁では率先して言うておるのに、その省庁が、率先してとまでは言わないけれども、他省庁から接待されているというようなことは好ましくないという国民批判があったからであります。しかし、そのことは同時に官房長がいみじくも言われたように、法令に規定がなければそれはすべて悪いというように言い切るべきものであるかどうかというのは、また考えてみなければならないことであります。  たとえば、いまの勤務時間の問題にいたしましても、二十数年の長い歴史を持っているにはやはりそれだけの理由があるわけですね。給与法の十四条以下に規定がありますけれども、四十時間を下らず四十八時間を超えない範囲内で、各官庁で多少臨機の措置をとって決めることができるようになっておるのはそれだけの理由があるというように私は考えるものであります。法令上の根拠が全くないというわけではない。たとえば、ここに総理府がお見えになっていると思いますが、今度のいわゆる週休二日制を実施するようになったのは、もちろん勧告があったからですが、それはどういう考え方に基づいてそういうぐあいになっているのですか。
  108. 片山虎之介

    ○片山説明員 お答え申し上げます。  これは人事院が勧告で週休二日制導入を言ったわけでありますが、これは国公法の二十八条に基づきます民間準拠、情勢適応の原則に基づくものでございまして、その限りでは国家公務員の勤務条件の改善向上を図ろうという趣旨からであると理解しております。
  109. 正森成二

    ○正森委員 いま担当官庁である総理府から答弁がありましたように、大臣も聞いていただきたいのですが、国家公務員法自体に、二十八条「情勢適応の原則」というのがあります。「この法律に基いて定められる給与、勤務時間その他勤務条件に関する基礎事項は、国会により社会一般の情勢に適応するように、随時これを変更することができる。その変更に関しては、人事院においてこれを勧告することを怠ってはならない。」こう書いてあるわけであります。これはいわゆる情勢適応の原則、こう言われているものですね。それに基づいて人事院は、怠ってはならない勧告を昨年の八月に行った。それに基づいて週休二日制、四週五休制がとられる、こういうことになっているわけであります。  それはまさに総理府が言いましたように、労働条件あるいは勤務条件を向上させるということは国家公務員法自体も認めていることであり、それに基づいて人事院が勧告をしているのですね。まさにそのときに、これまで二十数年間労使双方でトラブルなく守られてきておった勤務時間を一片の通知で一方的に変えるということは、憲法の精神からいっても、労働基準法の精神からいっても、当該公務員に適用される国家公務員法の精神からいっても、これは異例のことであると言わなければならないと思うのです。  また、夏季休暇の二日間というのは、これは私は関西の人間ですけれども、大阪の人間というのは非常に世知辛いのですが、それでも八月の十三、十四、十五、あるいは十四、十五、十六というようなお中元にはどこの商店だって閉まっているんですね。夏に二日なり三日なり休みをとるということは、これはいまや日本の社会の常識になりつつある。あの厳正な裁判所でさえ、御存じないかもしれませんが、七月の二十日ごろから八月の十日までの前期二十日間、八月の十一日から三十一日まで後期二十日間というように、各部が交代で休みをとっているというのは公然たる事実であります。  そういうときに、昭和三十二年以来いままで実施されてきた夏季休暇の三日間というものをこの大きな流れに反して取り上げなければならないという理由は一体何だろうかというように考えますと、その理由は必ずしも大きくないのではないか。また、よしんばそういう方向で何らかの形で実施されなければならない場合があるとしても、現場の公務員の十分な納得を得て、その意向に伴って、たとえば子供のある人は一ここに死活の問題であるという訴えが載っておりますけれども、神戸のある人は、朝早く起きて八時きっかりに保育所に到着をして、八時からでないと保母さんが来ないので、保母さんの来るのをじりじりした気持ちで待つ。そして、来るや否や子供を預けて、それからバスに飛び乗って一目散、職場へ行って、やっと一定の、いま出勤簿整理時間というので許されている時間内に間に合う。これが変えられたら大変なことだというのが出ているのですね。  ですから、国家公務員は決して働かないと言っているのじゃないので、一生懸命働きますけれども、いままで二十数年慣行で認められ、そして家庭のリズムになっているものを変えるについては、やはり現場の意向を十分尊重してほしい。私は、これは鉄建公団などのことが摘発された、問題になったものとは次元が異なる問題であって、国民に十分に説明をすれば理解を得る問題の一つの種類ではなかろうかというように考えるわけであります。  したがって、こういう点について御見解を承りたいと思いますとともに、国家公務員法の二十八条の規定もございますし、あるいは国公法の附則の三条では、当分の間、国家公務員に適用する法律を制定するまでの間ということになっておりますが、三十数年たって、まだつくられていないのですね。その場合には、国家公務員の諸君は労働基準法の規定をできる限り尊重するような方向でやっていかなければならない、こうなっておりますし、そして労基法の一条二項には、労働条件の向上に努めなければならない、こうなっているわけですから、そういう点を考えられて、適切な措置をされることを大蔵大臣並びに担当でもある関税局長あるいはその他の局長、あるいは官房長も当事者かもしれませんが、要望しておきたいというように思うわけです。もし御答弁していただけるようなら、お答えを願いたいと思います。
  110. 松下康雄

    ○松下政府委員 国家公務員の制度のみにとどまりませんけれども、いろいろな制度的な慣行等につきましては、やはり時代に応じて常にこれは見直していくべきものではないかと思っております。  御指摘のございました出勤簿の取り扱い等につきましても、これが交通事情の非常に悪かった時期とか、そういうときに、実際上大ぜいの職員が一時にやってまいりまして所定の時間までに判を押すことができないようなそういう実態のもとにあるいは最初は発足したものであるかもしれません。ただ、それがだんだんと形式化いたしまして、いっか、そういう出勤簿の整理をするような時間の切れるときに出勤をしてくればいいんだ、勤務時間というものは何となく変わったんだというような誤解を一般職員が持つということになりますと、これは制度が形骸化したわけでございまして、それはやはり見直しの対象にせざるを得ないのではないだろうか。ことに、最近のように、公務員の執務姿勢あるいは公務員の綱紀というものに対する批判の高まっているときこそ、そういう見直しをすべき時期ではなかろうか、そういう考え方から、先ほど申し上げました官房長等の会議の申し合わせも、全省庁を通じる統一的な、制度全体としての方針として打ち出されたものでございまして、私どももそれに従って実効を上げてまいらなければならないと思っているわけでございます。  ただ、全体の制度そのものは、ただいま御指摘がありましたような、人事院においても世の情勢の移り変わりを見ながら公務員の処遇というものはいかにあるべきかという観点から、そのときそのとき意見を申されるということでございますので、私どもは、他面ではそういうものを尊重しながら、その時代に合わせた公務員の処遇の充実というものを考えていくべきものだと思っております。
  111. 正森成二

    ○正森委員 十一月に官房長等がお寄りになって公に決めたことを公の席でどうこうということはなかなかむずかしいと思いますから、公式の答弁としてはそれで承っておきますけれども、しかし、いまも、人事院の勧告があって政府が四週五休制の法案をいよいよ提出しよう、こうなっておるのですね。それを言うときには、いま世間の批判も高まっているから、きっかけとしていろいろ正すべきは正したい、こう言われるのですけれども、法案がいよいよ通って実施されるときに一諸に考えるというのならこれはまだわかるのだけれども、法案は決めただけで、自民党が賛成するのやらどうやら、国会に提出して通るものやらどうやらわからぬ、しかし、取り上げる権利の方だけは四月一日から取り上げる、こういうのを、松下さんは神戸出身だからよく御存じでしょうけれども、関西の言葉では、やらずぶったくりと言うのですね。だから、そういうことでは公務員が納得をしてよく働くということにはならないであろう。だから、公務員国民から信頼されつつ世間の批判も仰がないようにしっかりと働くためには、緩急よろしきを得るということがやはり必要である。そして、どんな制度にも例外のない制度はないというように、たとえば、子供を持っておられる方とか病弱な方であるとか、あるいは税関などは非常に遠距離通勤が多い、それは特に職員の方に多いというような事情等で、二十分、二十五分先に出てくるためには、遠隔地で汽車が余りないから間に合うようにと思うと一時間先に出てこなければならないというような人もあるのですね。ですから、そういう点については緩急よろしきを得た扱いをされるように私からも希望しておきたいというように考えておる次第であります。もし、答弁の必要があれば後で答弁をしていただきたいと思います。  そこで、次に申し上げたいと思いますが、税関では新入職員を東京に呼び集めて、たとえばことしの場合には約百三十五名が九カ月間研修をする。それには教育官として十三名同行するというようなことを行ったようでありますが、これに伴って予算はどれぐらい必要となったのか、答弁してください。
  112. 米山武政

    ○米山政府委員 いまの委員の御質問は基礎科の研修制度についてだろうと思いますが、税関研修所は本所、支所を通じまして年間三十五のコースを持っておりまして、そのコースごとにその予算をはじいておりません。しかし、いまの基礎科の経費相当部分を占めることは事実でございます。その予算額は謝金等が一億七千五百万円、人件費はこれは大蔵省全体の中に包含されておりますので、ちょっと正確には出ませんが、大体四十一人くらいおりますので、四百万としますと四、四、十六で一億六千万円になりますので、約三億五、六千万円程度かと思います。
  113. 正森成二

    ○正森委員 いま御答弁いただきましたが、その中には研修生が九カ月間実務を離れて、つまり現場の仕事を離れて、まあ言うたらかん詰めになって研修する、そのための人件費、これが入っておらないと思うわけであります。そうしますと、その費用は大体一億四千万円近いものであろうというように暗算されますから、こういう研修に要する費用は予想外に大きいと言わなければならないと思うのです。私は、税関というのはある意味では国家の根幹にかかわる非常に御苦労な仕事ですから、研修をなさって質の高い税関行政を行いになるということには毛頭反対しようとは思っておりません。けれども、これは警察だとか税務大学校などのように必ずしも法令上の根拠がないのですね。そういう中で、これが非常に長期にわたって行われておる。しかも、この制度は私が事情をいろいろ伺い、調べたところでは、昭和三十九年までは各実務地で初めに人事院共通の四、五日間の研修とそれから三週間程度の研修が行われて第一線に配置され、それでやってきた。ところが、昭和四十年に初めて三カ月間の研修が中央で行われ、それが漸次四カ月になり六カ月になり、昭和四十五年からは九カ月になったというように承知しているわけであります。そうしますと、実際上の仕事から離れてかくも長期に研修させる必要があるであろうかということが、第一にいまのこの財政節約の折から問題になりますし、もう一つ疑問があるのは、同じように研修をされるのなら問題はないというものですが、女性に限っては一切この九カ月間の研修に参加さしておらない。そして仕事は同じように、同程度同種の仕事をやらしておるということであります。国家公務員法の二十七条でも、性別によって差別をしてはならない、こういうことになっているにもかかわらず、なぜこういう制度について女性を排除しているのか、その点を伺いたいと思います。
  114. 米山武政

    ○米山政府委員 税関職員の現在の九カ月の研修、これは税関の実務は非常に広範な実務でございますし、それから法令関係も関税法だけでなくて他法令関係のチェックも要るわけでございます。それから基礎的な英会話の勉強も要るわけでございまして、私どもはこの九カ月はむしろまだ短いくらいに感じているわけでございます。この点につきましては、国税の税務大学校の一年間に比べて、その内容について九カ月というのはさらに充実していく必要がある、こういうふうに考えております。  それから女子の問題でございますが、女子につきましては、いまの場合寮に入れてやっているわけでございますが、女子をなかなか寮へ入れるわけにもいきませんし、なかなか家元を離れてくるというわけにもまいりません。しかし、男女に差別があってはならないという気持ちから、女子の研修にも力を入れまして、だんだん現在は女子の研修期間も長くしておりまして、九カ月というわけにはまいりませんが、女子の研修にも力を入れているわけでございます。
  115. 正森成二

    ○正森委員 いま関税局長から答弁になったんですけれども、それは厳密に言って男女の平等という観点からほど遠い答弁である、こう思うのですね。宿舎の点もありますしと言うておりますけれども、宿舎に女性を合わせるんじゃなしに男女平等に宿舎を合わせなければならないんですね。ですから、発想が逆であると言わなければならないのです。  たとえば、私自身は弁護士でございますから司法修習制度というのを受けてまいりましたけれども、司法修習制度というのは三年間修習があるのですよ。それを全部女性も平等に受けるのですよ。そして前期の四カ月と後期の四カ月というのは、大部分全員寮に入るのですよ。それだって女性はりっぱに寮に入ってやっているんです。ですから、税務の女性が寮に入って何カ月間かやることにたえられないというようなことはないはずだし、たえられるような寮生活にすることが男女平等を考える上ですべきことであって、女性がたえられないような寮生活をもしやっておるとすれば、それを前提にして、だから女性は研修に参加させないというのは本末転倒もはなはだしい、こう言わなければならないんではないですか。やっぱり大蔵省というのは、金勘定はうまいけれども、女性について平等に扱うというのは下手くそであるというように言わなければならないと思うのですね。私はこういう問題について、関税局長や官房長、ましてや女性に理解が深いであろうと思われる大蔵大臣がぜひ厳正に大所高所から判断されて、やっぱり正すべき点は正していただきたいというようにお願いしておきたいと思います。  時間がございませんので、もう一点だけ。  名古屋に伴淑子さんという行政職(二)の方がおられます。この方は昭和四十年の四月に学校を通じて税関から事務員に採りたいという話があったので、高卒と同時に入関した。しかし、公務員試験は受けなかった。そうしたら辞令は行(二)職の用務員として採用する、こうなっておった。話が違うなと思ったけれどもそのままにしておったら、幾ら働いても、会計や給与や庶務の仕事ばかりしているのに依然として行政職(二)で五等級の十八号ですかというようなところで、行政職。にかえてもらえない。そして十四年勤続して、特別昇給はもちろん、四等級への昇格からも除外されておる。ところが、一方では切りかえられている人がたくさんいる、こういうぐあいに言われているんですね。なぜこういう問題について行政職の(二)から(一)に実情に応じて切りかえるということをしないのですか。これもやっぱり女性について偏見があるからだというように言われても仕方がないと思うのですね。  私はこの問題について、婦人少年課長来ていますか。——いま私が二つほど問題点を指摘しましたが、婦人について労働省はどういうぐあいに考えているのか、一言でいいから答弁していただいて、関税局長の答弁を伺って終わりたいと思います。
  116. 佐藤ギン子

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  労働省婦人少年局といたしましては、最近は特に女性が男子と同じような能力を持ち、また意欲を持っている方たちがふえてまいりまして職場も広がってまいりました。私どもといたしましては、女性が女子であるということのみを理由として男子と異なる扱いをされるということはいろいろ問題があるというふうに考えておりまして、広くそういう問題がなくなるように民間の企業にお願いしているところでございます。
  117. 米山武政

    ○米山政府委員 いま問題になっている女性は、女性なるがゆえに行(二)を行(一)に切りかえないということではございません。行政(一)の職員に採用されるには、御承知のように初級職の公務員試験を通るのが原則でございます。いま委員指摘のように、その試験を通っておりません。  それから、ほとんど事務の仕事をしていると申されておりますが、現在では大体庁舎の清掃、雑務、それに加えて給与計算等もやっているということでございます。仕事の内容、それから採用の経緯ということでございまして、女性なるがゆえに切りかえを怠っているというわけではございません。
  118. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣お答えいただきます。考え方の根本について大所高所から。
  119. 竹下登

    竹下国務大臣 考え方はよくわかりますが、私は実務がわかりませんので、関税局長が言うことを聞いてなるほどな、こういうふうに思います。
  120. 増岡博之

    増岡委員長 竹本孫一君。
  121. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣、御承知のように、議会政治というものは税金から起こっておる。代表なければ租税なしという大きなイギリスの政治スローガンがありましたけれども、そういう意味におきましてわれわれの大蔵委員会の任務は大変重大である。特に税の公平化といいますか、公正な租税制度の確立と一たん決めた税を納めるということについてあるいは取るということについてきわめて厳正でなければならぬ、これがわれわれに課せられたまた大きな使命でもある、かように考えておるわけであります。そういう立場からきょうは二、三意見を申し述べてみたいと思うのですけれども、その一つは脱税に関する時効の問題ですね、あるいは税に関する時効の問題、三年とか五年とかいうことになっておるわけでございますが、やはりこれは日本の最近の情勢は多国籍企業が非常に活発に動いてきておる。そして、すべてが非常に複雑になり、科学的になり、技術的には精密度が高くなっておる。したがって、脱税が行われた場合に、それを発見するというのにも大変な時間的な経過を必要とする。したがいまして、五年とかあるいは短い三年とかいうことになりますと、大体気がついたときにはもうどうにもならないように終わってしまっておる。こういう情勢が非常に多い。航空機の特別委員会等においても、いろいろ証人喚問等がありましたときにもそういうことをよく感じたわけでございますけれども、とにかくいまの時効は短過ぎる、もう少し長くすべきではないか。何年にするのがよろしいかということになると大変問題が多くむずかしいと思いますけれども、たとえば英米は無期限だ、西ドイツが十年だというのでございますけれども、少なくとも十年くらいにはしなければ、気がついたときには全部話が終わっているというようなことでは全くナンセンスではないか。したがって、速やかにこの点は、脱税あるいは税を免れておる者はどこまでも時効にかからしめないで追及ができるという体制をとることがまず租税の公正化という見地から言って一番大事なことではないかと思います。いまの問題は少し短過ぎはしないか、もう少し政治的にも経済的にも長くする必要がありはしないか、この二つの点について主税局長さんもいらっしゃいますし、大臣もいらっしゃいますから、お二人からまず感想を聞いておきたいと思います。
  122. 高橋元

    高橋(元)政府委員 お話しのように、アメリカの脱税の場合の時効は無制限でございますが、実例を見ますと、大体十年ということのようでございます。イギリスも無制限という法律の規定になっておりますけれども、一九七〇年法で一九三六年まで三十五年ばかりさかのぼるということのようでございます。日本の場合は、これは申し上げるまでもないのでございますけれども、過少申告の場合には三年、それから脱税、無申告の場合には五年、こうなっておりまして、外国の立法例に比べて除斥期間が短いのではないかということはしばしば御指摘をいただいております。  私ども、最近のように、国税庁が管理しております納税者方々の数と国税職員の数等から見まして、実地調査のインターバルが非常に長くなってきておるということも一つございます。そういうこともございますし、外国の制度との比較から見まして除斥期間が短い、これを延長するということについて検討いたしておる、これはいまお示しのとおり、私どもも勉強はいたしておるわけですが、一つ挙証責任の問題、これはイギリスは女王と申しますか税務当局から要求があれば、いつでも無期限に帳簿なり証拠書類を出すべきだというふうになっております。それから挙証責任はいわば納税者側にあるという税務構成をとっております。それから書類、帳簿の記帳義務なり保存期間、これは日本の場合には五年というのがほとんどでございますから、五年を十年なり何なり課税の除斥期間を延長するためには、帳簿の保存期間につきましてもまた改めて見直しをしなければならないということもございまして、そういう社会的なバックグラウンドというものをよく見まして、単純にドイツが十年だから日本も十年であるべきだということができるかどうか、いずれにいたしましても、十分外国の制度を見ていま勉強を進めておるところでございます。
  123. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣
  124. 竹下登

    竹下国務大臣 正式な名前は忘れましたが、航空機何とかという委員会政府にありまして、いまそこでそれらの問題を含めて検討されておるというふうに承っております。
  125. 竹本孫一

    ○竹本委員 私はこれは検討の段階ではないと思うのですね。たとえばテレビ等でいろいろA氏、B氏、固有名詞は別として問題が出た場合に、これを見ている人はそれはしかし時効にかかって追及できません、こういう答弁を聞いた国民感情から言うと、全く納得できないと思うのですね。しかも、それはこの法律ができた当時には三年もしくは五年でよかった。しかし、いまはそういう時代でなくなって、客観情勢が変わっておる。したがって、それに対応でき、どこまでも不正は許さないということで追及ができるような法の仕組みを考えなければならぬので、テレビを見て国民がどんな感情を持っておるかということも考えながら、もう少し真剣に取り組んでもらいたい。検討するというのも、また政府の検討は暇が要るのが特色ですから、いつまでも検討するような課題ではない。時間もありませんから、要望にとどめておきますが、もう少し前向きに、これは税の不公正というものが一番国民感情を刺激しますから、そういう意味においても不公平税制ということは特に野党がもう毎回口を酸っぱくして言っておるんですけれども、テレビで見たときのあの時効にかかってどうにもならぬといった答弁、これを見たときの国民の不愉快な感情をもう少し素直に真剣にくみ取っていただきたい、要望をいたしておきます。  もう一つ、これと関連をして、私は日本の政治、政界のマイナス四S、その第一はスキャンダルだ、スキャンダル体質だ、こう言っておりますが、そのスキャンダル等も考え、あるいは最近また大学の入学について裏口で何千万円とか出したというような話を新聞で見る。そういうことで、これは大学の問題、特に私立大学の問題は一応別ですけれども国家公務輿等の問題についてもそういう問題があるわけですが、そういう不愉快きわまる話、あるいは道義的に許すべからざる話、そういうものに対して国民が怒りを持つのは当然であるし、持つような国民でなければ困るわけですから、そういう国民感情を尊重して、税制的に、あるいは立法政策の上において何らか考えるべきであるかという点は、実は私もいま考えてみておるのですけれども、なかなかいい結論は出ません。たとえば汚職によって、会計検査院等もいろいろ調査検討しておられるけれども予算のうちの仮に一%だけ全く許しがたい方向に金が流れておる、そういうことは許し得ないから自分は税務署から賦課された所得税の一%だけは払わない、それは自分の良心が許さないといって、国民のまじめな人が、しかもまじめな立場からそういうことを主張してきた場合に、一体政府は、あるいは税務署は、国税庁は、どうこれに取り組もうとしたらいいんだろうかということを考えてみると、大変これは複雑な問題だと思うのです。特に、われわれは立法政策の立場からこの問題を取りしげるわけですけれども、そうでなくて、より現実に徴税の第一線において戦っておる、努力しておられる税務職員立場から考えると、たとえば三月十五日になれば、申告をするような場合に、みんな素直に喜んで、国家のためだ、やむを得ない、憲法上の義務だ、やむを得ないといって納得して納めておる人ばかりではなくて、逆に税務署の職員をどなり散らかしてみたり、あるいは大きな声でふんまんをぶつけたりする国民相当おるだろうと思うのです。  そこで、国税庁の方もきょうお見えでしょう。ひとつ伺いたいのですけれども、一体、徴税の第一線の厳しい困難な仕事を担当せられておる職員の現実の立場において、今日の税の矛盾、特に税制そのものが不公平だという問題と、そのほかに、いま言ったように時効にかかっておるとか、あるいは少し知能犯的な仕組みによってどうにもならなくなっておるということで、それを新聞で見、テレビで聞いて憤慨をしておる国民のぶつけられた怒りを、第一線の人はどんなに苦労して苦しい思いで受けとめておられるかということについて、私は全く同情にたえない。私はよく言うのですけれども政治家には、政治家でなければない、悩まなければならない、あるいは悩まざるを得ない悩みがある。それをポリティカルペインと言うのだ。ところが、税務署の職員は、税務署の職員であるし、憲法上の問題もあるし、税法の問題もあって、これは取り立てなければならぬと思うけれども、しかし、ふんまんをぶつけておる庶民の立場にも十二分の同情をしなければならない、そういう立場に置かれることもたびたびあるだろうと思うが、そのタックスコレクターとしての悩みは何であるか、また、それに対してはどういうふうに取り組もうとしておられるのか、その辺を伺いたい。
  126. 伊豫田敏雄

    伊豫田政委員 大変にむずかしい御質問でございまして、私も現在国税庁に籍を置いておる者の一人といたしまして、税務職員が、たとえば制度上のいろいろな問題あるいは執行上のいろいろの問題、その中にはやはり矛盾というものを見出したときにどのように考えるかということは、痛いほどわかるわけでございますが、われわれの立場は、やはり税制を適正に執行する、そこに課税の公平を求めるというのがわれわれの立場でございまして、したがって、別途自己の信条なりあるいは批判なりというものは、また一国民として別の立場で民主主義的な必要な手続を踏んで御主張いただくということで、われわれ税務に携わる者は、やはり税制の適正な執行ということのみを心がけてまいりたい、このように考えております。
  127. 竹本孫一

    ○竹本委員 要するに、大蔵大臣に要望かたがた質問ですけれども、第一線の税務職員が自信を持ち、信念を持って、国家のパブリックサーバントとして職務を勇敢に積極的に果たすことができるような基礎的な環境をつくるということは、大臣あるいは政治家の任務であろうと思うのですね。それをまるで、取っていいのか取らなくていいのか非常に悩まざるを得ないというようなところへ追い込んで、しかも、いつまでもその問題を解決しないということは、政治の責任である、政治の怠慢であるというふうに思いますが、ひとつもう少しその点をくみ取っていただけるかどうかということです。
  128. 竹下登

    竹下国務大臣 まず最初に一つお断りいたしますが、航空機何とかと言いましたが、航空機疑惑問題等防止対策に関する協議会の提言でございましたので、速記録ともどもにこれは直させていただきます。  したがいまして、いまの特に現場の税務職員のお方に対する物の考え方でございますが、伊豫田次長からお答えがございましたが、私どもやはり政治家として、そのような職に当たるお方が一つの誇りとそしてまさに公正感をもって当たられるように、われわれ自身の体質もやはり反省しなければならぬと思うのであります。これは私自身もいろいろな大臣といいますか、いろいろいままでやりましたけれども、特に大蔵大臣になりましてから、そのことを痛感いたしております。  一つは、やはり処遇の問題等に配慮をしなければならぬということでございますが、それ以前に、まずわれわれの人生観、あるいはそういう衝にあっての責任感、使命感というものを政治家自身も持たなければならぬというふうに常々感じております。
  129. 竹本孫一

    ○竹本委員 要するに、私は、一人の市民としても義憤を感ぜざるを得ない問題が少し多過ぎる、それから税務署の職員もある意味においては非常に良心的であればあるだけ悩まなければならぬということは全くお気の毒だ、申しわけがない、そういう意味においてこの問題を取り上げていることを御理解いただきたい。  次に、もう一つ、こういう機会でございますから大臣に注文を申し上げておきたいのだが、それは最近町を歩いてみて痛切に感じるのですけれども、官庁と銀行の建物がりっぱ過ぎるということなんですね。私はそれをなぜ敏感に感ずるかと申しますと、かつて私はドイツのものをいろいろ調べたときに、ある保険会社の言った言葉にこういう言葉があるのですね。ベルリンはわれわれの金によって建てられておる、「ベルリンイストゲボウト ミット ウンゼレス ゲルツ」 ベルリンはわれわれの金で建てられておるのだ、こう言ったことがある。そのときには余り敏感に感じなかったのですけれども、今度言葉を置きかえて、たとえば東京のメーンストリートを歩いてみる、東京駅から国会までやってくれば一番よくわかるが、大きな建物といえば大体銀行だ。しかも天を摩するようなもので、最近建つ建物はみんな全く豪華けんらんたるもので、それは近代建築の粋を集めたといえば形容詞はそれで結構だけれども、しかし、そういう必要が果たしてどれだけあるか、あるいは少なくとも必要な範囲を逸脱してはいないかという問題について反省をしたことがあるのか。あるいは役所でも、最近できるものはだんだんりっぱになって、警視庁なんかいま目の前にありますけれども、見てごらんなさい、まことにりっぱなものだ。あれじゃみんな警視庁に入りたくなるかもしれぬ。それほどりっぱなものをつくっておるの、たけれども、しかし、これはいまのベルリンの問題でやはり私は同じようにドイツに行ったときに聞いた話でございますが、日本とドイツはやり方が逆だ、こういうことを聞いたことがある。それはどういう意味かと聞いてみますと、ちょうど日本が戦後まず真っ先に国鉄の駅をりっぱに建て直そう——りっぱというと言葉が悪いかもしらぬが、建て直した、それで、また銀行がりっぱなものが建つ。それをドイツ人が見てどういう感じを持ったかというと、これはドイツの行き方と逆である、駅がりっぱになるのも結構だ、銀行がりっぱに建つのも結構だろう、しかし、最も大事なことは、ドイツ国民経済を再建するためには工場をりっぱにすることだ、工場がりっぱになって、しかも工場の中に据えつけられておる機械が近代的な合理的な設備でなければ国際経済競争に耐えることはできない、したがって、まず一番先にドイツは工場の機械を新しくする、そして工場を建て直す、そして生産がどんどん上がってから入り口の駅を建て直す、さらに生産体制ができてから金融機関の建物がりっぱになる、日本はその逆を行っておるのじゃないか、こう言われたことがある。事実そうじゃないですか。その辺のりっぱな建物を見てごらんなさい、みんなそうだ。そして、最近は大分近代化、合理化が進んだのだけども、この間までは、駅はりっぱ、銀行はりっぱだけれども、ことに中小企業の工場へ入ってみれば、古色蒼然たるものである。機械は古い、設備は能率が悪い、経営者の頭はもっと古いということになるかもしれませんが、とにかくそういうふうで、大事なものほどだんだん古くなって能率が悪い。そして、そうでない、生産に直接関係を持たないと言っては語弊があるかもしらぬが、そうでない間接的なものの方がりっぱになっておる。そういう意味で、これはドイツ人が合理的な判断で言っておるように、日本の戦後のあり方は逆ではないかという点について、一体、政府政治家は反省したことがあるかということですね。  これは最後には申し上げるつもりだけれども、順序はどうでもいいですけれども、後から赤字公債の問題とも関連するわけですけれども、大体日本は少し敗戦国にしてはぼくは行き過ぎておると思うのですよ。それは、私はまた事実を覚えておりますが、日本にテレビ局が三つできたときに、ロンドンタイムズが社説を書いた。しかも、一日ではなくてたしか三日間連続ですよ。そして、日本は敗戦国のくせに何だ、テレビ塔を三本建てる、そんなむだなことを平気でやる、その日本をわれわれが援助するとか協力するとかいう必要があるか。これはイギリスですからね。イギリスは戦争に勝つことは勝ったけれども、惨敗ではなくて惨勝である、みじめな勝ち方である、そのみじめな惨勝をしたイギリスが戦勝国なるがゆえに日本に協力するなんということはむしろ逆だ、戦敗国の日本は少しも戦敗国らしく振る舞っていない、いまごろテレビ塔を三本も建てるとは何事だと言っていたが、いまテレビ局は十二になっちゃった。そういうふうにして、先憂後楽という言葉もありますが、とにかく日本の政治というものは急所を外れておる。生産設備を一番りっぱにしなければならぬというのに、そうでない部門からりっぱにする。そして、敗戦国であるから厳しさがなければならぬ、再建のためには苦節十年しなければならぬというのに、テレビであろうが、あるいはその他のレジャーシステムであろうが、ぼくはレジャーが悪いとは言いませんけれども、そういうものに力が行き過ぎておる。そして本当の意味でいま財政を再建するということになれば、重大な決意をしなければならぬが、その問題には、後で触れますように、ほとんど配慮が足りない。そういう意味で、私は二つのことを伺いたい。  まず第一は、先憂後楽の立場から役所の建物等についても、あるいは生産を直接担当しておるものではない銀行の建物等についてももう少し謙虚というか、謙遜というか、倹約であってしかるべきではないかと思うが、一体どうか。  それからもう一つは、これは大蔵省ですから伺うが、官庁の建物等についても一体節度があるか、あるいは節度を要求する基準がすでに定まっておるか。それから銀行についても、これは銀行局長さんがいらっしゃいますから伺うが、銀行は幾ら高い土地を買っても、幾らりっぱな建物を建ててもそれでよろしいのか、あるいは節度をいま現に要請しておられるのか、要請しておるとすれば、どういう節度を要求しておられるか、伺いたい。
  130. 竹下登

    竹下国務大臣 後で銀行局長からお話がございますが、私もお話を聞いたことがございますのは、とにかく銀行は一つの信用とかいうようなものが、見せかけという言葉はおかしいのでありますが、そうしたものも信用というものに大きく作用するというようなことから、けんらん豪華なる建物を建てる風潮がびまんした。したがって、政治家は銀行の前へ行って、銀行だけはこんなにりっぱであります、中小企業のお方はこんなにりっぱでありませんと言って演説をすれば当選するというような話を聞いたこともございます。今日は大変銀行局が指導をいたしまして、いま指導基準をつくって抑えておるようでございますが、それは銀行局長からお答えをすることといたします。  それから官庁用の建物でございますが、私も竹本先生と同じような話を聞いたことは、ドイツは工場から建てた、日本はどこからやったかというと学校からやったというのです。それは六三三四制という一つの新しい占領政策下の試みがなされて、教育熱心な日本人は、とにかく補助金も起債もないときに一生懸命で町有林や村有林の木を切り出してやった。そのこともそれなりに、やはりドイツと日本が今日もろもろの意味で優等生だと言われる一つの根源にある。したがって、やはり一番最後に村役場は建てた、こういう評価をしておったのであります。したがって、今日、それは私の官房長官時代の迎賓館とか、ああいう建物は別といたしまして、他の官庁営繕というのは、それなりの基準として、質素にして近代的かつ合理的なものをそれぞれ建てておるという感じは、私は最近抱いております。
  131. 禿河徹映

    禿河政府委員 官庁の建物につきましての全般的なことにつきましては、ただいま大臣から御答弁いたしたとおりでございますが、私ども先生の御指摘のとおり、官庁の建物がいわゆるぜいたくな、あるいは不必要なほどりっぱなものにならないようにということには気をつけて予算の面では考えてきておるつもりでございます。  具体的にどういうふうにしておるかと申しますと、官庁の建物の予算をつくります場合に、その予算単価というものを決めてまいります。それはそれぞれの建物の規模とかあるいは構造、それから使用目的というものに応じまして、たとえば地上三階までのものは単価が大体このくらい、それから何階以上はこのくらい、それから内部あるいは外部の仕上げの外容につきましては小口のタイル張りでやることとか、屋根はアスファルトの防水クリンカータイル仕上げだとかいうふうなことをいろいろ決めておりまして、それによって実は単価をはじいておりまして、その単価は決して高いものになっておるとは実は考えていない、そういう状態でございます。
  132. 米里恕

    ○米里政府委員 銀行の建物につきましての先生の御見解でございますが、基本的には私どもも全く同じ考え方でございます。  私どもが言っておりますのは、銀行の建物がいたずらに華美に流れるというのは三つの点で非常に問題がある。まず一つは、本来、公共的、社会的な金融機関というものが、そういった建物の外観などで相互に競争し合うということは非常に望ましくない。むしろ競争すべきは、サービスを一層質的に向上させるということであるはずで、そういったような面から見てはなはだ好ましくないというのが第一点でございます。それから第二点は、銀行の経営上から見ましても、膨大な建物を抱え込むということは自己資本の固定化ということにつながりますので、いわゆる健全経営という観点から見ても好ましくないというような考え方をとっております。  そこで、現在どういう指導をしておるかということでございますが、一つは「銀行業務の合理化等について」という通達がございます。この通達はわりあい銀行のビヘービアに対する基本的な通達の一つでございますが、ちょっとそこのくだりを読ましていただきますと、「営業用不動産の取得に当たっては、業務の能率向上に主眼を置くこととし、必要以上の規模にわたり、または華美に流れることのないよう留意し、特に銀行相互間においていたずらに店舗の外観を競うようなことは、国民経済全般の見地から厳に自粛すること。」これが基本的な通達でございます。  で、具体的には個別の店舗の毎年度内示を決めております店舗通達でございますが、店舗通達で毎年毎年、最近では、新設に当たってはできるがけ簡素化を図る、既存の建物を利用できるものは利用しなさい、あるいは店舗用地の規模必要最小限に抑えることに留意しなさいというような通達を出しておりますとともに、個別の店舗設置の認可につきましては、できるだけそういった観点からも私どもとしてはチェックするということにいたしております。  なお、指導基準でございますが、これは私どもが使っておりますのは営業用不動産比率というものであります。これは分母が期末の自己資本、分子が期末の営業用不動産ということでパーセンテージが出るわけでございますが、これを目標率を四〇%、それから基準率を五〇%以内という規定を置きまして、順次この比率が下がってまいるようにという数字上の指導をしておるわけでございます。最近では、五十四年の上期が、全国銀行でございますが、三六・一〇となっておりまして、過去に比べて少しずつ下がっております。五十一年下が三七・七〇、下だけ申しますと、五十二年下が三六・九二、五十三年下が三六・二四、それが五十四年上で三六・一〇と、わずかでございますが少しずつ下がってまいるというような状態でございます。  そういう努力を重ねておりますが、確かに、先生おっしゃるような点は多々あると思いますので、今後とも十分注意してまいりたい、かように考えております。
  133. 竹本孫一

    ○竹本委員 きょうは実はインフレ問題を論議するつもりでしたが、横道に入ってしまってそのままになりましたが、時間がもう終わりに近づきましたので、いまの問題を締めくくって終わりにせざるを得ないのですが、一つは、信用機関でございますから、銀行なんかはりっぱな、ある程度厳かな建物も必要だろうと思います。ウサギ小屋では困ると思いますが、問題は要するに程度の問題で、度が過ぎてはいないかということを私は言っている。高くてりっぱなものならば国民が信頼するというならば、KDDの建物は一番信頼するかもしらぬけれども、あそこの中でスキャンダルを起こしているようではだれも信頼はしない。したがいまして、もう少し外の輪奐の美を競うということは節度をもってやってもらいたいと思うのであります。  それから役所についても、これは中央官庁というよりも市役所の、自治省の問題になりますけれども、大体自治省の問題あるいは自治体の問題等でも、自治体というのは地域社会の中の自治体なんですから、その地域社会から飛び離れたあり方なんというのは間違っていると思うのですね。市役所も、最近建つ市役所はみんなりっぱ過ぎるほどりっぱである。そして退職金も中小企業の三倍ならいいけれども、五倍も六倍も取る。そして仕事の能率が最も悪い。こういうようなことですから、やはりこの辺で、財政再建ということはそういう意味でわれわれの精神構造の再建から始まらなければならぬと思います。これは自治体の問題に関連するわけでしたけれども、いずれにしても、私、きょうは時間がないので、本論に入らないままでこの問題にも締めくくりは半分できないのです。  私は、これまた改めて大蔵大臣にも御意見を伺いたいと思いますが、いまのままで日本の財政の再建は絶対できないと思っているのですよ。できると思っているのは内容を余り知らないからであって、たとえば今度出た、十九日ですか、総合物価対策というのを私も読んでみました。まあつづり方教室の作文としては満点ですね、これは。考えることみんな書いてある。しかしながら、これをどれだけ掘り下げてどこまでやれるかということについて考え始めると、真剣に考えれば考えるほどむずかしい。大臣もずいぶん悩みは持っておられると思いますけれども、総需要管理、便乗値上げの防止等から始まっていろいろと書いてありますけれども、まあよくアメリカ式に言えばファンダメンタルズですね。経済の根本の構造改革にまでメスを入れなければ、いまのインフレも、いまの財政再建もできない。しかし、同時に、日本国民の、政治家を含めて、あるいは政治家を真っ先に精神革命をやらなければ今日の財政の危機を突破できないと思うのです。  私がいま言っているような、建物が少しよ過ぎるではないかと言うことは簡単ですけれども、そういうことをきっかけにしてでも、本当の意味の精神革命と、本当の意味の経済構造改革にメスをふるうきっかけをつかまなければ財政の再建はできません。五兆八千五百億増税が必要だとか、五十九年度になれば赤字公債はやめると言っても、やめていきたいと念願を書いただけであって、そういう構えには全然なっていない。その構えに本格的にするためには、そうした入り口からまず正していかなければならぬではないか、こう思うわけであります。  私は、きょうはただ具体的に一、二の例を言ったのですけれども、東京駅の前に行かれたときは、ひとつどんな建物があるか、どれだけりっぱにあるか、中身はどうかということも一遍考えてもらいたい。そして、日本の財政再建のためにはどこまでわれわれが真剣に取り組まなければならぬかを一遍反省をしたいものである、かように思います。大蔵大臣のこれに関するお考えを承って終わりにいたします。
  134. 竹下登

    竹下国務大臣 私も精神構造の改革というものは必要であると思っております。何しろ五兆円の富が産油国に移転する。その五兆円の移転した富はどこかでだれかが負担しなければいかぬ。それは、カーターさんの先般のインフレ対策についての言葉の中である程度強烈な印象を与えたのは、国も社会も国民もみずからの負担の度を超しておったという指摘でございます。そういう心構えで当たらなければならぬと思います。  それから次に、具体的な問題といたしまして、私はいまのままで財政再建ができるとは考えておりません。それこそ、これから国民各界各層の意見を徴しつつその理解と協力の中に強力なる政策を行わなければならぬというふうに考えております。
  135. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。
  136. 増岡博之

    増岡委員長 次回は、来る二十八日金曜日午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時五十七分散会