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1980-03-21 第91回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月二十一日(金曜日)     午後五時三十三分開議  出席委員    委員長 増岡 博之君    理事 愛知 和男君 理事 稲村 利幸君    理事 高鳥  修君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 坂口  力君 理事 正森 成二君    理事 竹本 孫一君       大村 襄治君    亀井 善之君       鴨田利太郎君    工藤  巖君       熊川 次男君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    玉生 孝久君       中村正三郎君    林  義郎君       藤井 勝志君    坊  秀男君       毛利 松平君    山口シヅエ君       山中 貞則君    山本 幸雄君       伊藤  茂君    沢田  広君       島田 琢郎君    塚田 庄平君       堀  昌雄君    山田 芳治君       柴田  弘君    古川 雅司君       宮地 正介君    多田 光雄君       渡辺  貢君    玉置 一弥君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         郵 政 大 臣 大西 正男君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁物価         局審議官    坂井 清志君         大蔵政務次官  小泉純一郎君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵大臣官房審         議官      梅澤 節男君         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         国税庁長官   磯邊 律男君         国税庁次長   伊豫田敏雄君         中小企業庁計画         部長      中澤 忠義君         郵政省貯金局長 河野  弘君         郵政省人事局長 林  乙也君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第一局長  岩井  毅君         会計検査院事務         総局第二局長  藤井健太郎君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月二十一日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     亀井 善之君   村上 茂利君     工藤  巖君   山崎武三郎君     鴨田利太郎君   山田 芳治君     河野  正君 同日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     麻生 太郎君   鴨田利太郎君     山崎武三郎君   工藤  巖君     村上 茂利君   河野  正君     山田 芳治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二号)      ————◇—————
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。
  3. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょう、私、大変短い時間でありますが、簡単に六点ばかりお伺いをしておきたいと思います。限られた時間でありますので、答弁の方もひとつ簡単にお願いをしたいと思います。  まず第一点は、今度の所得税法改正で一千万超の給与所得控除の率を一〇%から五%にするという改正がなされているわけであります。このこと自体、私たちが長年言ってきたことでありますので、正直言ってやっと踏み切ったかということで、結論については反対をするわけではありませんけれども、実はこの問題は四十九年に青天井にしたときに大変な論争をやったことを、当時第七委員室でございましたけれども、私は覚えているわけでございまして、その意味では今度の給与所得控除の率の引き下げ、一千万超の方々の率の引き下げの問題の理論づけというのを少しはっきりしておく必要があるのではないだろうかと思うわけであります。今度この一〇%を五%に下げた理由というのは何なのか。そして、四十九年の改正のときに一〇%を、当時は六百万超でありますが、一律というのはちとひどいではないか、確かに六一百万の人も二千万の人も一緒の頭打ちというのは一おかしい、それは私たちもわかるけれども、一億−給与所得があっても、これも一〇%の青天井なんだというのはちと行き過ぎではないかということを昭和四十九年の改正のときに言った経緯からするならば、今度の改正意味というのはどういうことであって、しかも、なぜ今日までこれができなかったのかという点については主税局長いかがでございますか。
  4. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いまもお話がございましたように、昭和四十九年来の制度でございますが、この給与所得控除につきましては、いまもお話のありましたとおり頭打ちを復活すべしという御意見がかねてからございました。そこで、税制調査会でもいろいろ議論をしていただいたわけでございますが、給与所得控除を設けております意味というのが大まかに申して二つあると思うのでございます。一つは、一給与に件う経費概算控除であるという性格でございます。もう一つは、給与所得と他の所得との負担調整ということでございます。  前の方のことから申し上げますと、勤務に伴う費用というものは収入増加に伴って逓増する。逓増する割合がいかほどであるかという問題ではないかというのが理論的な考え方であると思います。かつてのように六百六十万くらいでございましたか、その場合七十六万で頭打ちになる、(佐藤(観)委員「六百十六万」と呼ぶ)——六百十六万。失礼いたしました。七十六万で頭打ちになるという制度で六百十六万以上の勤務に伴う収入に対して何ら費用がないということもいかがなものかというふうに思われます。そこで、逓増していく割合が六百万以上の給与収入に対して一律一〇%でいいかどうかという問題でございますけれども、実は私ども家計調査などでいろいろ推計をいたしたものがございまして、一分位から五分位まで五分位階層に分けて、たとえば背広でございますとか、くつでございますとか、かばんでございますとか、本でございますとか、外国立法例で認めておるようにかなり広く勤務に伴う費用と思われるものをずっと拾ってみますと、大体収入階層の上下を通じておおむね収入の一〇%ぐらいでございます。そういう意味ではずん胴であるいはいいのかということもあるのでございますけれども、やはり一千万を超えてなおそれが逓増していくということについては非常に問題があるというので、今回このように財政が非常にむずかしい時期でもございますので、一千万以上につきまして現行の一〇を五に下げさせていただくという改正案を出したということでございます。
  5. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 主税局長、四十八年以前の頭打ちがあったときには、当時の主税局長でございました高木さん、大変詳しい方でございましたけれども、この方は「総所得が大きくなったからといって必要経費がふえるはずがないからという理由で、六百十六万円まで漸次給与所得控除の額がふえてまいりますが、それをこえた場合には、もう給与所得控除はふえないというかっこうをとっておりますのは、一種の必要経費考え方から出てきているものでございます。」というふうに答弁しているわけです。それが四十九年になってまさに大逆転、恐らく主税局税法の理論づけの中でこれだけの逆転はなかったんじゃないだろうかと私は思うのであります。これを私はいま思い浮かべておるわけでありますけれども、あの高木さんにして、四十八年までは、ある程度所得が大きくなったからといってもう経費頭打ちになるんだということで頭打ちの七十六万というのを理論づけていたわけですね。ところが、四十九年の改正のときには、その点を追及されますと、「その点は全く矛盾をいたすわけでございます。」と、あの税の専門家で三年間主税局長をやられた高木さんが、実はいままでの答弁大変強弁でございました、こういうことを言ったということで委員会大変紛糾というと言葉はよくないけれども、大変もめまして、当時の福田大蔵大臣が最後にまとめて今度からそうするんだという、いわばこれは大変経緯のあることでございます。  私たちは確かにそのときの率が、百五十万までが四〇、三百万までが三〇、二〇、そして一〇という刻みになっているものですから、その当時は六百万超ももう一つ刻みを入れたらどうだということを言っていたわけですね。ところが、いま局長が言われますように、当時はその刻みのこともありましたし、四十九年というのは大変景気がよくて二兆円減税なんかをやったときでありましたから、その主張は通らずに、私たちはこのときに金持ち減税ではないかということを大変論議をした覚えがあるいわくつきのこの給与所得控除青天井の問題であるわけであります。  したがって、今度のことについても、やっと一千万超について五%が入ったということについては、それはそれなり青天井にもう少し天井を低くしたという意味においては私たちも評価しますけれども、その理論をもう少し突き詰めていきますと、それでは二千万も三千万も五%でいいんだろうかという疑問が当然起こってくるわけです。私はここで五%の一つ階段をつくったことについては評価をいたしますけれども、もう少しそのことを突き詰めていくならば、たとえばせめて二千万なり三千万超のところに二%の階段をもう一つつくっていいのではないだろうかと考えざるを得ないのであります。  それともう一つ先ほどお答えがなかったと思いますけれども、私たちは初めから、四十九年の改正のときに一律六百万超は一〇%というのは少し大き過ぎるということを言っていたわけであります。そして、その後この青天井問題というのはわが党もこの大蔵委員会で絶えず言ってきたわけでありますけれども、今日までこれが放置された理由というのはどういうのか、主税局長はその点はどういうふうに考えていらっしゃいますか、二点お伺いしたいと思います。
  6. 高橋元

    高橋(元)政府委員 この問題を現在の形で改正をいたしました四十九年の当時の審議の中身でございますけれども、理論的な粗筋は私がいま申し上げたようなことであります。ただ、その場合のもう少し細かな御説明をさせていただきますと、頭打ちは、事業所得者経費が一定の収入に対応するところで頭打ちになるという考え方はないのに対して、給与所得の場合には概算控除と説明されていながら、収入増加に応じて経費増加する事実を反映した仕組みになっていないのは理論的に不徹底であるという批判があるということを税調も率直に認めまして、「ここ数年来定率控除適用所得階層の上限を逐次引上げてきたのは、このような批判に応えることを念頭においたものではあるが、財源面での制約の下において、中小所得層負担軽減の度合とのバランスなど諸般の考慮から、その頭打ちとなる収入金額引上げにとどめざるを得なかった」ということが経緯であったわけです。  そこで、外国の例で申しましても、ドイツでは所得税トップレートを五三で当時切っておりました。アメリカでは一般の所得税最高税率は七〇でございますけれども勤労所得は、御案内のとおり、五〇で打ちどめにしております。そういうふうに勤労性所得資産性所得負担に差異を設けているという国、立法例も少なくないことを考えますと、やはり勤労性所得と他の資産性所得負担バランスの問題ということにつきましては、総合課税の原則に戻るのはもちろんのことではありますけれども経常財産税を導入するがよいかどうかというような問題もあって、そういう問題を検討していくのが本格的な筋道ではあるけれども給与所得控除仕組みを活用して両所得の実質的な負担調整を図ることが一つ解決方法である、こういう考え方をとりまして、四十九年にいわゆる青天井ということになったわけでございます。  今回まで放置しておいたという御指摘でございますけれども、私どもは毎年この問題を検討はしてまいったわけでございますが、やはり勤務に伴う費用収入増加に応じて何がしかふえていくということについて五十二年の中期答申でも御検討をいただいてそういう答えをいただいておりますものですから、今回の税制改正全体のスタンスと申しますか、そういうことの一環として本年また一千万以上五%に控除引き下げることに踏み切ったというのが経過でございます。
  7. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は余り後ろ向きな議論性格上したくないのでありますけれども、五%にしましても、ある意味ではそれは確かに一〇%と五%の差はございますけれども、では一千万超を今度は一律五%でいいのだろうかという矛盾というのは相変わらず存在するわけですね。給与所得控除頭打ちというのはやはり理論的にはちょっと無理だろうし、昭和四十八年まで頭打ちが七十六万でとまっていたというのは、これもやはり少し理論的にもむずかしいと私は思うのであります。そのことは認めるわけでありますけれども、今度こういう五%が入ったときに、ずっとこの議論経緯、私もいま局長が言われたことはよくわかっておるつもりでありますけれども、その経緯をずっと振り返ってみると、では一千万超を一律また今度五%というのはある程度同じ矛盾を含んでいるんじゃないだろうかということを考えますと、もう一度さらに、一千万超の上の人は大した人数ではないけれども、税額につきましては、あるいは収入額につきましてはかなり大きいものですから、制度論としてもう一度今度は、そこまでいったら一千万超を五%一律でいいんだろうか。感覚的には二千万か三千万のところに二%なり三%のもう一つ山、山というのか階段というのか、これをつけないと、さらにちょっと理論的にも従来の経緯からいってむずかしいんではないだろうかという気がするんで、ひとつこれも今後いろいろ収入階層経費等も見ながら検討してもらいたいと思うのですが、いかがでございますか。
  8. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いまの御指摘の問題は、まさに日本所得税税率構造自体の問題だと思うわけであります。これも御案内のことでございますけれども、今度御提案申し上げておる改正案でいきますと、給与収入金額が千六百七十一万円を超えますと日本所得税ドイツより高くなるわけでございます。それから、四千八十万を超えますとアメリカよりも高くなる。五千百六十五万でイギリスを抜くわけであります。かなり累進のきつい税負担でございますし、それからもう一つは、最高税率が七五、住民税を合わせまして九三というような形になっておりまして、そういうものと、先ほども申し上げた経常的財産税の問題というのをうまく調和して考えることができないのか、そういう広い見地も必要だと思いますが、御提案はこれからまた税制調査会にも御報告をいたしたいというふうに考えます。
  9. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次に、グリーンカード関係の問題をお伺いしておきたいと思います。  一つは、私たちにも正直言って責任があると思うのでございますけれども、当大蔵委員会でも利子配当所得総合課税化ということはずいぶん何度も論じてきたわけであります。そのときに、この前主税局長からもお話があったように、一律分離課税で七五%の最高税率をとって還付をするか、ないしは納税者番号をするか、徹底してやろうと思ったらどちらか二者択一しかないんだというお話があったわけでありまして、話はその意味では簡単だったと思うのであります。私がいま思うのは、各委員からも質問がありましたけれども、実は準備するのに三年かかるんだったら、死んだ子の年を余り私は数えたくないけれども、実はこの総合課税といいますか、分離課税期限が来るときに、実は三年前から準備をしてここにつなげる必要というのは主税局はどうして考えなかったんだろうか。実は私がみずから反省をしておりますのは、この電子計算機を入れるのに、準備をするのに三年ということは、ちょっと私も不勉強で、その意味ではみずからも反省をしているわけでありますけれども、これだけ財源難だと言われているときになぜ準備ができなかったんだろうか、これはどういうふうに考えていたんだろうか、みずからの反省を込めてまずお伺いしたいと思います。
  10. 高橋元

    高橋(元)政府委員 この問題は五十三年の秋から税調で、いまお話もありましたたとえば納税者番号制度とか、それから高額源泉徴収還付制度とか、いろいろな制度を含めて総合課税に有効に達し得る道を御審議いただいてきたわけでございます。別途また今回御提案申し上げてこれを実現してまいるのに、五十五年の一月から勘定しますと四年間の時間がかかる、これは大変じゃないかという御指摘でございますが、六千万枚またそれ以上に達すると思われますグリーンカードを交付するのに相当な時間がかかるわけでございます。したがって、私どもは五十八年の一月一日から任意に交付を始めさせていただきたいということを今度の経過措置の中に書いて御審議をいただいておるわけですが、五十八年と申しますと五十七年度でございますから、五十七年度にはもうそういうシステムが動くように機械の整備も必要でございますし、金融機関側準備も必要でございますし、また、預金者なり証券購入者にそれが徹底していく必要もあるわけでございまして、そういうことをいろいろ考えまして、私どもとしては一年のうち全部が動き出して——たとえばもう一年早く五十八年と申しますと、五十七年の一月から、つまり五十六年度からそういうことが動かなければならないわけでございますから、そこまで詰めることは国税庁ないし金融機関側としてもとても無理である、かえって混乱が起こってしまって、不正確なグリーンカードをお渡ししてそれをもとにこの制度が動き出しますとまたかえってぐあいが悪いというようなことも考えて、いま御提案しておるような施行期日にしたわけでございます。  それまでの間に、いま御提案している中でもいろいろまだ詰まっていない問題があるが、そこへ持っていく勉強をしておいたらどうだったのかなという御指摘だと思います。私どもそれなりにずっと勉強してきたわけでございますが、一つ制度をどういう形で構成をいたすかという結論が出ませんと、また具体的な細目は詰まらないということもございますものですから、これから鋭意精力的に貯蓄者、それから貯蓄取り扱いをなさる金融機関、それから私どもの方の徴税当局、全部で意見を持ち寄ってできるだけいい形のもので具体化をしてまいりたいというのが現状でございます。
  11. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと私の質問の趣旨と違うのですよ。いま局長が言われたことは、各委員答弁から私も聞いて知っているので、それはいいのですが、私がいま言ったように、死んだ子の年を数えたくないですけれども、これだけ財政難財政難と言っているときに、所得税法において利子配当所得総合課税化ということは、いわば大変歴史的なことなんですね。それがいま五十九年の一月一日から始まるわけです。そうしたら、これは三年かかる理由は私はわかっているのですが、このことはきのうきょう論じられたわけではないので、五十五年の一月一日と言わぬまでも、せめて五十六年の一月一日から始められるような、なぜ三年前に、つまり五十二年なり五十一年なり、そのくらいのときからこの問題ができなかったのだろうか。これは私みずから、先ほど申しましたように、その点を追及してこなかったことは反省しておるわけでありますけれども、結局分離課税期限が過ぎてしまってから、これからまたそれを延長して三年後に総合課税化しますということで、三年間のラグがあるわけですね。すでに五十二年という大量国債発行後でございますから、主税局はそれだけの準備があって直ちに五十五年なり五十六年の一月一日からやれるような体制をつくってもよかったのではないか、これだけ準備期間が要るものだったら。私は責任だけを追及しようとは思いませんけれども、それはなぜできなかったのだろうかということをお伺いしているのです。
  12. 高橋元

    高橋(元)政府委員 もっと事前に準備を始めて、もっと速やかに切りかえをすべきだという御意見、ごもっともだと思います。  実は五十二年の税制改正利子配当所得源泉徴収税率を二〇に上げ、源泉分離選択課税税率を三〇から三五に上げました。そのときに税制調査会としては、利子配当またはその基礎になります預金ないし株式投資安定性ということも考慮する必要があるから、五十二年から五十五年末までは動かさないことにする、そういうことを答申をいただいたわけでございます。五十五年十二月三十一日が経過して五十六年の一月から直ちにそういういま御提案しておるような制度に切りかわるといたしますと、その前に所得税法改正が必要であるというわけであります。そこで、いま御提案しておるように、できるだけ急いで五十九年から完全実施ということにさせていただきたいということになったわけでございます。
  13. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうも税調の方に責任がすりかわった感なきにしもあらずでありますが、次に、グリーンカードを導入する場合の割引債取り扱いの問題であります。  二百二十四条には一応書いてありますけれども、実際面ということになると、ちょっとイメージが浮かばないわけですね。それで、恐らくこれは五十九年の一月一日の実施のときまでに細目について改めて法案なりを提出されるおつもりだと思いますが、そこでお伺いをしていきたいのは、割引債の特徴として転々所有者がかわるわけですね。その際に、償還差益中途売却者については一体どういう取り扱いを考えていらっしゃるのか。  端的に言って、最終的な償還差益を受ける、告知書提出する人のみに課税がいくのか、それとも途中で転々とした人も全部総合課税の対象にするのか、これは制度上大変重要な問題と思いますし、中途売却者の場合に、それを取り扱う証券会社の方で逐一売買書を発行しないことには、これを全部捕捉することは幾らグリーンカードが入っても事実上できないと思うのですね。その場合に、必ずしも売った方と買った方とが一つ証券会社に行くかどうかわからないということになると、これは大変な事務量になってくる。この場合に、利付債と比較をして、割引債の場合には中途売却者の扱いを一体どういうふうにしようと考えていらっしゃるのか、その点についてはいかがでございますか。
  14. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ここはいま大変むずかしい問題として取り組んでおるわけでございます。割引債はまさに転々流通するという意味指名債権である利付債券とは全く違っております。そういう意味で、満期に償還差益を受け取る人から告知書を出してもらう、その告知に当たってグリーンカードを提示してもらうということだけを今度の法律に規定をして御審議をお願いしておるわけですが、これは現在は雑所得という形で把握されております。途中で売られる場合には譲渡所得という取り扱いをしているかと思いますが、そういうことと、現実に実質的にはそこから生じてくる果実は利子に非常に類似した性質を持っておると思いますが、支払い調書なり源泉徴収という諸点についても、今後実務的、技術的な観点から検討が要るのだろうと思います。市場の関係者なり発行者なり、そういう方々と実務的、技術的に詰めをこれからやっていきたいと思っております。  仰せのように、これからもう一度、五十九年までの間に所得税法改正という形で御審議をお願いしなければならぬと思っておりますが、市場で流通性が非常に高いわけでございますから、中途売買の都度報告をとるということも事務がなかなか大変で、課税の完全な把握もむずかしいかと思っておりますし、便宜にしてなるべく把握が高いという方法をいま鋭意工夫をしているところでございます。
  15. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 利付債の場合にはある程度理論価格でやり得ると思うのでありますが、割引債の場合にはその理論価格でやっているところもあるが、実際には直売買の方が多いということになってきますと、それでは中途売却しないで最終的な償還差金を受ける人だけということになりますと、これは制度上ちょっとまた不公平ということになってくるのではないだろうか。利子の場合には所得税法の十四条にありますけれども割引債の場合にはないというようなこともありますので、これは実は大変むずかしい問題だと私は思っているので、そこでお伺いをしたわけでありますけれども、別の機会にさらに詰めていきたいと思うのであります。  それからもう一つは、中途売却の場合がよくわからないのでこの質問もまだお答えを受けにくいかと思いますけれども、いま法人が受ける償還差益については所有期間案分というのがされているわけですね。個人の場合に、もしそこで最終的な所有者だけということになりますと、個人が償還日が来る直前まで持っていて、今度は法人に売っちゃうということになりますと、法人は期間計算でありますから、ほとんど持っている日にちがないということになりますと、実際にはここの償還差益はほとんど上がってこないという可能性もあるわけですね。この点についてはどう考えておりますか。
  16. 高橋元

    高橋(元)政府委員 中途売買で、ことに法人を相手方にして満期日の直前に売りました場合には課税がほとんど実を失ってしまうという点は、そのとおりでございます。それを端的に救います方法としては、売買の都度、幾らでだれに売ったということを教えていただくしかないわけでございますけれども、そうしますと、転々流通するというこの債券の基本的な性格を損なってしまう、そこのつり合いをどうとるかというようなことが、先ほど来申し上げております関係の方面といまこれからいろいろ御意見伺いながら詰めてまいりたいと申しておる一番のポイントでございます。
  17. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一点は、もし中途売却者の問題を何らかの形でトレースすることができるようになりますと、今度は、それをある意味ではもっと延長すればキャピタルゲイン課税——もちろんその場合にはキャピタルロスも引くわけでありますけれども、キャピタルゲイン課税についても理論的にはできるということになりますね。しかし、その枚数たるや大変膨大な量になりますものですから、実務上できるかどうかという問題が起こってくると思う。この点についてはどう考えていらっしゃいますか。
  18. 高橋元

    高橋(元)政府委員 各種の有価証券の譲渡益の中で、たとえば割引債券だけをそういう形にしてしまうということは、非常に問題があると思うのでございます。課税というものは、たびたび申し上げておりますように、中立的でなければならないわけでございますから、そうなりますと、すべての有価証券の譲渡益についてどう考えていくかということになると思います。今回のグリーンカードによりまして、元本直接ではなくて、利子配当という果実の支払い確定の際に告知をし、それからグリーンカードで確認をしていただくということになっておりますから、それはその限りで利子配当所得課税総合課税化ということに役立ってくるわけでございますが、たびたび申し上げておりますように、有価証券の譲渡益課税の段階的な強化と申しますか、充実と申しますか、そういうことについて非常に広い範囲から私どもは別途取り組んでおりまして、そういうことの一環としていまの御提案も含めて考えさせていただきたいというふうに考えます。
  19. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 技術的問題も含んでおりますので、これ以上いまの時点でお伺いをしてもなかなかはっきりとした絵は見えてきませんので、この問題はこれだけにいたします。  それから、退職給与引当金の問題でありますけれども、これも当時−当時というのはおととしの十二月十四日でございますが、財源がないと言うから、退職給与引当金を少し圧縮したらどうだということを私は金子大蔵大臣に聞いたのでありますが、そのときに高橋さんは、アメリカではこれは一〇〇%認められるんだ、ですから、税調でもとてもそういう御意見がございませんので、積極的なお答えができないという状況でございますということで、圧縮についてはきわめて消極的であったわけでありますけれども、大体このごろ、社会党が言うことの二、三年後を大蔵省が追っていると言っても過言ではないわけですね。  そこで、私は、過ちを改むるにはばかることなかれでありますから——過ちと言えるかどうかわかりませんが、そのことは別に追及しませんが、この際もう一つ。  私は、従来から言っているのでありますが、こういう考えはないのか。というのは、一律五〇%を四〇%に圧縮するというのではなくて、確かにいま利用度というのは、資本金が五十億以上のところの大体九三%くらいまでが退職給与引当金を使っているわけでありますし、資本金一億円未満ということになりますと、わずか七%くらいということで、これは大体大企業に実際の運用度が偏っている制度でございます。その意味では、一律に下げるということは、大企業に重くかかるということではありますけれども制度論として、七万人、八万人いるような企業で一挙に四割やめるということを想定をしてやる制度というのは、私は、退職給与引当金という制度そのものは否定をしないし、この制度は非常に重要だと思うけれども、やはりもう少し実額に近づけるという制度になってもいいんじゃないだろうか。五〇%を四〇%に圧縮をしていくということならば、ある程度従業員の規模別に、おたくの企業ではこれだけですよということで、財政がこれだけの状況になってくれば、五〇%を四〇%に圧縮することに踏み切った以上、ひとつ圧縮をするということも理論的に可能ではないか。その点についてはいかがお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
  20. 高橋元

    高橋(元)政府委員 これが当期の収入の中から、勤務に伴う費用に関連した将来の退職金の支払い債務と申しますか、そういう形で引き当てられてしかるべしということについては、いまもお話ございましたように、基本的に引当金であるという性質はそれでよろしいということでございますから、そうなりますと、引当金への繰入率を絶えず実態に合わせて見直していくという、私どもの見直しの仕方についての御指摘であろうかと思います。  確かに、おっしゃいますように、大企業の利用率は非常に高いわけでございますけれども、一方で中小企業と言われております百数十万の企業の中には、従業員が十人以下で退職金制度はないというのが大半というか、ほとんどであろうかと思います。この制度と、外部拠出であります中小企業退職金共済事業団の退職共済というものとの利用の状況など考えてみますと、大体労働協約がありまして退職金の支給が決まっております企業は、こちらの退職給与引当金を利用しておられるか、外部拠出である中退共を利用しておられるか、いずれかであろうというふうに私は思います。  そういう意味で、特に大企業がたくさん利用していると言うけれども、いわゆる大企業の利益隠しという御批判は、必ずしも事実に当たっていない面も持っているのじゃないかというふうに思うわけでございますけれども、同じ大企業と申しましても、たとえば業種業態で、一例を挙げますと、デパートのように非常に回転の速い企業と、非常に永続して、勤続期間の長い企業、若い人の多い企業とさまざまで、現実に退職率が異なってまいって、したがって退職金の二分の一または四割といたしました引当金の残高の回転率というのが違ってくると思うわけでございます。  昭和四十三年でございましたか、企業会計審議会の「意見第二」というのがございましたが、あの中でも、税法は一律二分の一としておることが、二分の一に近い企業はともかく概括してそれでいいんではないかという御意見でございますけれども、あの中にも、企業の実態に応じて割引率というのを考えてみたらどうだろうというような御批判もあったわけでございます。私どもがいまやろうとしておりますのは、大体勤続年数が十二年ということで割引をいたしますと四割になりますので、四割と申し上げているわけですが、今後いろいろ統計なり実態の調査なりいたしまして、退職率なり退職給与引当金への繰入率というものについても、これからも情勢の推移に応じて見直しをしていかなければならぬものというふうに思います。
  21. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 したがって、私は、ひとつ貸倒引当金の例ではありませんけれども、回転率の速いところは、実際に毎年毎年出す額が多いわけでありますから、やはりそういうものを勘案しながら−私、何もぎりぎりやれと言っているわけではないので、やはりその数字と実際の毎年払う額というのは、おのずと大体ある程度の額はわかってきましょうし、それと従業員の規模等いろいろ勘案をしながら、もう少し実額に近づけるということで十分足りるのではないか。それは、ある意味では日本社会の一種の特徴かもしれませんけれども、それだけ社会的に大きな影響を持つ企業は、銀行局がつぶすわけはないわけですね、佐世保重工の問題のように。ですから、そういう背景を考えれば、やはりこの際そういう観点も含めて、なお検討を願いたいと思うのであります。  さて、大臣も見えましたので、二点だけお伺いをいたしますが、一つは、来年度、何%かは別といたしまして、法人税率の引き上げというのは、私はこの一、二年の経緯からいいましても、これは避けられない問題だろうと思っております。  そこで、その際に特に考えなければいかぬのは、一体中小法人というのはどうなるんだろうかということが、私たちが法人税率の引き上げということを言う際にも、絶えず頭にある問題であります。まあ、来年の問題を言えば鬼が笑うかもしれませんし、そのときに大蔵大臣が竹下さんかどうかわかりませんけれども、やはりこれは重要な問題ですので、お考えがあればお伺いをしておきたいのでありますが、その前に主税局長、いま普通法人の基本税率が四〇%、配当軽課が三〇%、それに対して中小法人の軽減税率が留保分については二八%という、一二%の差がついているわけですね。これはこの一二%の差についてもずいぶん歴史的な経緯があって、いわばむしろだんだん広がってきていま一二%というふうになっているわけでありますが、これはいわば個人でやっている事業所得の方とそれから中小の法人税率との見合いということが大きな要素を占めておりますから、その意味では、そのカーブのクロスポイントが一つの問題になってくると思いますし、それが軽減税率年収七百万というクロスポイントになってくることを私も知っているのでありますけれども主税局長の頭で考えて、一体この一二%の差というのは、法人税率を引き上げたときには、いまの現状の財政事情を考え、あるいは理論的に考えた場合にはどうなっていくものだろうと考えていらっしゃるのか、まずその点いかがでございますか。
  22. 高橋元

    高橋(元)政府委員 擬制説ということに決してこだわるつもりはないわけでございますが、中小企業の株式の所有者つまり株主の所得と大法人の株主の所得というものと比べて、大法人の株主の方が所得が高いということも必ずしも言えないのだろうと思います。そういう意味で申しますと、大企業の、大法人の留保にかかる税率、留保金の税率四〇、中小法人の留保にかかる税率二八、これの格差というのは沿革からきておる面が非常に大きいのであろうと思います。たしか昭和三十年に五%の格差が設けられてからいま一二%の格差に至っておるわけでございます。  こういう沿革から生じておる中小法人の軽減税率でございますから、中小法人の税負担をどうするかという一般問題と、財政の状況がどうであって、どの程度を法人の負担でお願いしなければならないのかという考慮と、その二つによって現実に法人税の負担の水準の引き上げということが必要になりとせば、その際の検討問題ということになろうと思います。
  23. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、大臣、数字でなかなか言えないことなのですが、やはり仕事柄こうやって歩いてみてこのごろつくづく感ずるのは、大企業と中小企業の力関係の格差というのが非常に広がりつつあるのじゃないだろうかということを思うのであります。たとえば、いまいい業界と言われている自動車業界でも、私の懇意の人にも自動車の第一次下請の方がいらっしゃるわけであります。第一次下請といいましても、たとえば五%の円高になったから輸出が減るので、そのうちの半分の二・五はおたくの方で持ってくださいというのがいやおうなく来るわけですね。ですから、そうでなくても、実際に、プレスなり溶接をやってもこの七、八年全く工賃は上がってないというようなものがある上に、上の親会社の方からそういうふうに言われますと、利は薄いけれども、仕事量から言いまして受けざるを得ないということで、力関係からいって、いいと言われる自動車業界でも、そういうことを私は実際に見聞をしておるわけですね。  こういうことを思いますと、いまの経済環境というのは、大と中小との格差がむしろ広がりつつあるのではないかという感が私はしておるのでありますけれども、そういったことを考えてみますと、今度、来年度法人税率を上げるという場合にも、この中小法人の課税の軽減率というのは、それなり日本経済を支えている中小法人をなお支えていくという観点からいくならば、やはりかなり頭の中で大きなウエートをもって考えていかなければならぬ問題ではないだろうかという気がしてならないのであります。  ちなみに、国税庁から資料をつくってもらったのでありますけれども、たとえば資本金一億円以下で年収五百万円以下の法人数というのが四十九年が五十五万、五十年が五十一万、五十三年が四十九万ということで、たとえば一千万円以下をとりましてもむしろ減っていっているということはどういうふうに分析をしますか。これはなかなかまたむずかしいところでありますし、三年くらいでは景気の波もありますから、単純に言えないけれども、その意味では、私は、法人税の引き上げのときにもつと中小に力をつけてもらう必要があるという観点からも、中小企業に対する軽減税率、この問題は十分大きなウエートを置きながら考えていかなければならぬのではないかという気がするのでございますけれども、いかがでございますか。
  24. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず原則的に申し上げまして、法人税率を引き上げるかどうかという問題が一つございます。税制調査会中期答申で、まだ諸外国に比して若干の負担増加を求める余地がある、こういう答申をいただいておるわけでございますし、五十六年度において財源事情は相当厳しくなるものと考えられますので、引き続き歳出、歳入両面において検討を加えることはもとよりでありますが、当然その際法人税率の引き上げの問題が検討課題となるということは、私もそのとおりだと思っております。  そこで、先輩に聞かされた言葉の中に、税とはよって来る歴史的根源とその経過を知らなければならぬということを教わったことがありますが、そういう意味から見まして、中小法人の軽減税率は、昭和四十五年に法人税率そのものが三五%が三六・七五%になり、そして四十九年でございますか、それに三六・七五%が四〇%、その際も中小法人の軽減税率についてはそのまま据え置かれたということは、やはり歴史的経過の中に留意する必要があると思います。  ただ、適用所得限度につきましては、四十九年あるいは五十年、それぞれ大幅に引き上げられてきておりますので、いま中小法人の八割程度をカバーしているという状態にありますので、これらのことも十分配慮された水準ではないかという理解の仕方もできるではなかろうかと思うのであります。しかし、私どもといたしまして避けて通れない問題でございますので、その際、当然貴重な意見として承りつつ検討すべき課題であるというふうに考えております。
  25. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いまの段階で大臣にそれ以上答弁を求めても私も無理だと思いますので、もう一点お伺いをしておきたいのは、おとといに七点に及びますインフレ対策が発表されたわけでありますが、肝心の大蔵大臣担当の財政金融の運営ということになると、きわめて抽象的なことしか書いてないのですね。どうも金融の方は公定歩合を上げてあるいは預金準備率を引き上げてというようなこと、それから財政のことについては、五十五年度の契約率を後ろ倒しにするということで、後ろ倒しの率をどのくらいにするのか、前期を大体いま言われているのは六〇%ぐらいではないかと言われているのでありますけれども、それしかないわけですね。それで私も調べてみたのでありますけれども、いまのいろいろな法律のシステムから言いますと、私もなかなかこれはないこともわからぬわけではないのでありますけれども、私たちもインフレというものに対して大変な懸念をしております。その際に、これはなかなか法律上もむずかしいかと思いますけれども、実はいま公共事業約六千八百億留保してあるわけですね。ただし、この分だけは国債は発行されているということで、これは恐らく五十五年度にこのまま留保した分は引き継ぐのでありましょうから、それを含めて後ろ倒しに契約をするということでありますから、実際には五十四年度に執行される公共事業、五十五年度に執行される公共事業、これはそれなりに圧縮をしてくると思うのでありますが、片面で私たちの頭にあるのは、国債をもう少し、幾らかでもいま減らせないだろうかということです。いまちょうどある意味ではこの六千八百億円に相当する公共事業はやらなくても何とか五十四年度は景気はもった。そして、もし建設国債をそれだけ分減らせば、その分だけ国債の発行額も減っていくではないか、ただし、これは実は発行してしまってあるわけでありますけれども、出納整理期間までまだ若干時間がありますし、約六千億余まだ発行していない分がありますので、それとすりかえるということも、できるかできないかは法律的にはむずかしいかもしれませんが、あろうかと思うのであります。  いずれにしろ、ただ契約率しか財政を圧縮する手段がないというのでは、これだけ大変インフレが心配をされ、まさに一触即発、電気とガスのスパークで爆発するのではないかと言われているときに、もう少し財政の面でこれを圧縮する手段はないのだろうかということを私はない知恵をしぼって考えているのですが、なかなか実はそうない。ある意味では、それは確かに、五十五年度に六千八百億を留保している分を引き継ぐという面では、五十四年度の執行という面から言えば事実上圧縮していることに変わりはないと言えばそうでありますけれども、やはりいろいろな影響を与えるという、つまり政府の姿勢から言いますと、この分を削減をするということがもしできるならば、これはかなり心理的には違うのではないかという気がするわけであります。法律上いろいろむずかしいことは私もわかっておりますけれども、公共事業も削減をする、なおかつ国債の発行額もその分だけ圧縮できるといえば一挙両得になるのではないかと思うのでありますが、実際法律的になかなかむずかしいので、これも含めて何かもう少し、契約率を後ろに延ばすというだけの手段でなくて、知恵をしぼれないものだろうか、その点についていかがでございますか。
  26. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、委員指摘のように、なかんずく財政面で今度の物価対策で苦心がいろいろなされておるところでございますけれども、文字に書いたそのものを読み上げますならば、まさに「公共事業等の執行については、引続き、物価動向に細心の配慮を払うものとし、五十五年度予算成立後の執行についても、別途、早急に目標を定めて、当面、抑制的な事業施行を図るものとする。」それにとどまっておるわけであります。したがって、これに対して少しドラスチックに数字を挙げたらどうだという議論も確かにいたしました。が、やはり財政当局として、一体本当に幾らのものが繰り越しされるであろうか、各省ともヒヤリングをいまやっておる最中でございますけれども、それによって予算現額というものが把握されて初めてその後執行率を発表すべきものであろうという議論一つございます。それから一方は、いままで予算審議中には、予算が通りました翌日発表させていただいておるというある種の先例みたいなものもございます。しかし、それらの先例は、私はある意味においては理解をいただいて破ることもできるではないかという感じもしないわけではございませんので、いまそれらを含めて検討しておる最中でございます。  ただ、そのときに、いま御指摘になりましたが、五十四年度の保留分、保留といいましたって、実質もう今日の段階になれば、あれは繰り延べでございますと言ってもおしかりを受けるような日にちではございませんけれども、その分をいきなり不用額に立てて、建設国債ではございますが、それの減額に充てろという議論もございます。しかし、やはりこれは出納閉鎮期ということが問題でございますので、結論から申しますと、不用額をいまの段階で正確に集計することは困難でありますが、不用額につきましては、五月下旬を目途に集計することと従来ともなっておりますので、これにより不用額を生じた場合、御指摘のように、これに見合った出納整理期間中の国債発行額の減額をしてまいりたいというふうには考えておるところでございます。
  27. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 終わります。
  28. 増岡博之

    増岡委員長 堀昌雄君。
  29. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、所得税法の問題に少し限って大蔵大臣、郵政大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  まず、きょうこの質問をするに当たって、私はかつて当委員会総合課税の問題についてあるいは架空名義預金の問題について税の公正を守るためにずいぶんと論議をしてまいりましたけれども、それらが今回の法律改正の中でようやく近代的な所得税制というものに一歩を踏み出すことができるようになったということは、私は過去の経緯を振り返ってみまして、全く感慨無量のものがあると申し上げても言い過ぎではないと思います。まさに日本所得税は、今回のこの所得税法改正によって新しい総合累進課税というものに大きく前進をすることができた、私はこう考えておるわけでありまして、この法案そのものが持っております内容については、私は高く評価をいたしたいと思います。  そこで、実はきょうは最初に、ここまで所得税がなってまいりました時点で、一体、税というものの基本はいかにあるべきかという問題について、もう一回原点に返って少しお尋ねをしてみたい、こう考えるわけでございます。  私どもがいま日本の税制としてやっておりますものは、戦争に敗れて、アメリカの占領下において実は新たな税の制度日本に持ち込まれてきたのでありまして、その限りでは、戦前と戦後では税の基本的なあり方あるいは税に対する国民の対応の仕方というのは当然変わってしかるべきでありますけれども、いろいろとこれから申し上げますが、実はそういうふうな意識の変化ということがまだ十分にこの制度に伴っていないという感じがいたします。それは国民の側にもありますけれども、政府の側にも多くの問題がある、私はこういうふうに感じておるわけであります。  そこで、私どもの税制のもととなっておりますアメリカの税制を調べてみますと、実は今度アメリカの税制に一歩近づいてまいったわけでありますけれども、私は現在の世界の税法を調べてみる中で、やはり一番民主的な税制はアメリカの税制だという感じがいたすのであります。  アメリカの税制については、私は二つの基本的な問題があると思います。   一つは、全体にわたって総合課税主義が徹底をしておる。ですから、そのことは所得の問題についてきわめて公正な課税が行われておるということだと思います。  二つ目は、申告納税制度という問題だと思うのであります。この申告納税制度日本語に訳されておるのでありますけれども、実はアメリカではこれはセルフアセスメントということになっているのであります。この間から大蔵大臣がいろいろと当委員会審議の中で、日本語の語源について御研究になっておりますので、私もきょうは少し日本語の語源も研究をして、アメリカの税の仕組み日本の税の仕組みは形式はきわめて共通しておるけれども、どうも第一それを表現する言葉の中からアメリカ日本では相当違いがあるということを一つ感じておりますので、まずその問題からちょっと申し上げたいと思うのであります。  アセスメントというのを辞書で引いてみますと、課税のために査定する、評価する、課税する、割り当てるというのが税に関係する主たる言葉の意味のようであります。そこで、セルフアセスメントということは、自分で課税のために査定する、自分で自分の財産を評価する、自分で課税をする、割り当てると、こういう考え方だと思います。ところが、これが日本語では申告納税制度と、こういう言葉になっております。この「申告」というのを辞書で調べますと、官庁などに申し出ること、こうなっておりますね。かつて軍隊では、申告というのは上官に対して部下が名前を呼び立てて、それが申告というような制度があったことは年齢の高い方は御承知だと思いますが、これは何も軍隊だけではなくて、かつては恐らく税務署長に対しても税務職員は申告などということをやっていたのであろうと思います。この言葉の持っておる意味は、やはり下から上へ物を申す、申し上げるといのがどうも申告という言葉の基本的な内容なようであります。  そこで、この申告納税制度、これは税額を納税者からの申告に基づいて決定する制度というふうに辞書にはあるのでありますけれども、この日本の税の問題で私がいまどうしてもこういうことに触れておりますのは、税は上から、お上からいやおうなしに召し上げられるものだという感覚がどうもまだ日本の場合にはぬぐい去られていないのではないだろうか。これをちょっといまの言葉に関連して申し上げますと、たとえば、税の場合には徴収するとか収納するとかという言葉がしばしば税の関係のところには出ます。この「徴」という字は、新漢和辞典で調べたのです、これは竹下大蔵大臣流でありますけれども。官用で召す、呼び出す、呼び出し、お召し、求める、取り立てるというような内容のようであります。  そもそもこの「徴」というのは「微」というのの変形のようでありまして、要するに、かすかに地面から芽が出てくる、こういうことで目について上に取り立てられるということがどうも内容のようであります。  今度は収納の「収」というのは、おさめる、召し上げる、取り立てる、捕らえる、召し捕る。これは罪人をむち打って厳しく問いただす、転じて罪人を捕らえる意となり、さらに物を取り入れる意となる、こうなるのですね。ですから、「収」というのもやはり取り立てる方なんですね。「納」はおさめる、取る、徴収する、献ずる、差し上げる。ですから、いま税で使っておる言葉は、言葉の語源からしてどうもいずれも召し上げるというか、取り立てるという言葉が全部使われておる。  じゃアメリカはどうだろうか、こう考えてみますと、アメリカは一七七三年にボストンのティーパーティー事件というのをもとにして実はアメリカの独立というものの口火が切られたことはもう御承知のとおりであります。本国イギリス議会が印紙条令を一七六五年に定めて、植民地のアメリカからは議員を出すことを認めていないのに、税金だけは勝手に決めてアメリカ住民に押しつけるということに対する激しい不満がもととなって実はアメリカは独立戦争に入ったということでありますから、アメリカの歴史は、まさにそういう意味では、税に関連をして、イギリスが上から押しつけてくる税金をそのままは認められませんよという、これがアメリカの建国のスタートでありますね。  そこで、これまでも委員の皆さんの中でよくタックスペイヤーという言葉が盛んに使われておりますけれども、このタックスペイヤーというのは、税金を払う人という意味でございますね。日本の場合には税金を納める、こうなっているわけです。さっき私が申しました「納」というのは、納めるという言葉は下から上に納める、こういう性格を言葉自身が持っておる。そこでタックスペイヤーという言葉を日本語に当てはめて適当な字があるかというと、どうもないものだからやむを得ずいまのような言葉が使われているのだと思うのでありますけれども、タックスペイヤー、払うということはやはりアメリカの民主主義をベースにしてできておりますから、対等の立場でみずから自分の税金を決めて、要するに横向けに払う、対等の形で払う。払うということは、言うなれば払う人の自主性、主体性に基づいて金が支払われるわけでありますから、その関係というのは対等である、こうなるんじゃないか。  ですから、私はきょう最初の段階でいろいろ申し上げておりますのは、イギリスの場合でもそうでありますけれども、このパーラメントの歴史というのはやはり税に関係があるということでありまして、税というものと議会というものと民主主義というものはきわめて密接な関係のある問題である、こういうふうに私はいま認識をいたしているのであります。  そこで、そういうふうな問題の後で、たとえばバージニア宣言、実はこれが一番早く出た一つの税に関する問題提起でありますけれども、「ヴァジニアの権利章典」これは一七七六年、たしかジェファーソンが中心になって書いたと思うのでありますが、その六番目に「議会において人民の代表として奉仕すべき人々の選挙は自由でなければならない。社会に対し、恒久的な共通の利害をもち、また愛着を有することを示すに足る、じゅうぶんなる証拠を有するすべての人は、選挙権を有する。かれら自身の同意、またはかくして選出されたかれらの代表の同意なしには、公共の用途のために、課税し、またはその財産を剥奪することはできない。」これは、私は今日私たちが民主主義という問題を考え、税というものを考える場合の形をなした最も最初の宣言だ、こんなふうに考えているのであります。  これを受けてフランスの「人および市民の権利宣言」というのが一七八九年に行われております。そうしてその十四条で「すべての市民は、自身でまたはその代表者により公の租税の必要性を確認し、これを自由に承諾し、その使途を追及し、かつその数額・基礎・徴収および存続期間を規定する権利を有する。」こういうふうにこのフランスの人権宣言と言われるものが述べているのは、実はまさにこの「ヴァジニアの権利章典」を受けたものだ、私はこう考えるわけであります。さらにその十三条では「武力を維持するため、および行政の諸費用のため、共同の租税は、不可欠である。それはすべての市民のあいだでその能力に応じて平等に配分されなければならない。」公正の論理がここに述べられております。この「武力を維持するため」というのは、これはちょっと問題があるので、もう一遍十二条を読んでみますと、「人および市民の権利の保障は、一の武力を必要とする。したがってこの武力は、すべての者の利益のため設けられるもので、それが委託される人々の特定の利益のため設けられるものではない。」要するに「人および市民の権利の保障」を言っておるので、この武力という表現は、ある意味では警察力のようなものと理解をすべきだろうと思うのであります。  こういうふうに西欧では、民主主義の問題とそれから議会の問題と税の問題がきちっと不可分になっておる。それでは日本ではそうなっておるかというと、その一番顕著な例が昨年の一般消費税の問題だったと私は思うのであります。要するに、国民が納得をして納税をするというのがいまの民主主義税制の基本でありますから、納得もしないものを政府が一方的に決めて上から押しつける、これに対して国民があのような態度を示したのは、日本の民主主義が少なくとも税の問題についてはそれなりかなりはっきりした意向を示した、私はこう考えるわけであります。  以上の問題について、竹下大蔵大臣の御感想をひとつ伺いたいと思います。
  30. 竹下登

    ○竹下国務大臣 アメリカの民主主義というものがまさに個人というものの基本的人権の上にすべて立っておるという意味におきまして、いま言葉を挙げて御意見の御開陳がありましたが、確かにタックスペイヤーがセルフアセスメントをして、そしてタックスをペイするという仕組みになっておると私も思います。したがって、私も質問通告をいただきましてから、これに対して適切に対応するものがどこにあるだろうかと思って調べてみますと、一つ後段でおっしゃいました税の法定主義というものだけは大体似たような言葉で評価できる。それで、あとは、徴収とか収納とかいう言葉は必ずしもタックスペイヤーとかセルフアセスメントという言葉を正確にあらわしておる言葉であるとは思いません。それは日本の長い歴史の中においていろいろ探してみましても、タックスペイヤーとかセルフアセスメントにちょうど見合うような言葉を探すこともなかなか困難であったであろう、そうしてシャウプ勧告以来の税制の中で一番国民になじむ言葉は、比較評価してみると、まるっきり逆の上から下へとか、いわゆる横から横へというようなもののない言葉しか結論から言うと当時生み出すことができなかったのではないかというような感じがいたしまして、私なりにきょうの御意見を伺わせていただいたわけでございます。  したがって、一般消費税という問題になりますと、しつこいようですが、いわゆる一般消費税(仮称)ということにつきましては、結局、閣議決定して五十五年度に導入するという気持ちで準備をしたものが、何だかその仕組み議論に入る前に国民にヘジテートされたような感じが私はいたしておるわけであります。したがって、本院において財政再建決議案というものを御決議なすった文言につきましては、それこそ各党の税関係のベテランの方々が、いわゆる決議文そのものにも大変な言葉の配慮をしていただいておるということを私なりにつくづくと感じておるわけでございます。そういう配慮をしていただいた言葉を用いた決議がこのような場所で問答が繰り返されていくということが、将来国民の皆さん方に、あのいわゆる一般消費税(仮称)そのものとは別に、消費一般に係るものを否定するのは財政体系上もおかしいというような意見がだんだん出てきた場合、私は、それは税というものの持つ、まず国民の理解を得ることであるという趣旨に沿うような大きなきっかけになるのがむしろあの決議案そのものではないだろうかというような感じがいたしてながめておるわけであります。したがいまして、エブリタックスペイヤーとでも申しましょうか、アセス ワンセルフ アンド ペイ タックスというような精神は、私はそれなりにあってもいいような気がいたしております。
  31. 堀昌雄

    ○堀委員 英語で適切にお答えをいただいたようなんですけれども、実はここで、私は委員長一つ提案があるわけであります。  いま大蔵大臣がお答えになった中で、私も財政再建はきわめて重要だと考えているのであります。特に、ことし政府が国債を一兆円減額したなどということは、この前も委員会でちょっと申し上げましたけれども、きわめて不十分だと思っておるわけでありますが、いま申し上げた「ヴァジニアの権利章典」とかフランスの人権宣言のように、国民を代表する者が同意をしなければ税というものは国民に納得して受け入れられないと私は思うのですね。それには、まずここにおいでになる与野党の同僚委員の皆さんが、税という問題についてのコンセンサスを得るということが一番大事なことになるんじゃないだろうか。ただしかし、御承知のようにわれわれも政党に属しておりますし、立場がいろいろありますから、そういう意味ではコンセンサスがなかなか得にくいのが現状だと思うのです。  そこで私がいま委員長に申し上げたいのは、幸いにして大蔵委員会には財政小委員会、税制小委員会という小委員会がございます。これまで私どもはここで政府を相手に、いまも政府を相手にやっていますけれども、常に政府を相手に議論しているのですが、この際ひとつ大蔵委員会で、いま政治的に一番重要な課題は財政再建だということについては万人が異論のないところだと思いますので、この財政小委員会、税制小委員会を、幸い別館の方にはラウンドテーブルの議席がありますから、政府を除いて与野党みんながあのラウンドテーブルに座って、秘密会で——これがオープンになるとみんなまたたてまえになってしまいますからね。たてまえで議論しても国民のために何にもプラスになりませんから、これはひとつ秘密会で、議員がみんなで、財政再建は一体いかにあるべきかという財政の問題、その再建をするためにはそれではどういう税収がどういう形で要るのか、どこをどうするかという問題を、財政と税を一緒にしながらそこで十分ディスカッションをする。それは直ちに結論が出るようなものだとは私は思いませんけれども、そのディスカッションの過程を通じて一定のコンセンサスがもしできるとするならば、いま私が読み上げたこれらの古典的な原典の指し示しておることを今日われわれがこの国会の中でやれるようになるのではないだろうか。特に、いまこの大蔵委員会で私どもがお願いをしておる金融機関の週休二日制の問題も、政府の問題としてではなくて、議員立法として皆さんと御相談してやりたいと言っておるのは、まさに八〇年代というのは政府優位の時期から議会優位の政治が確立をされる時期にすでに来ているんじゃないか、特に国民の権利義務に非常に重要な関係のある税の問題は、そういう意味大蔵委員会の中でフリーに十分論議がされて、そうして、きっちりとはいかなくても一定のある幅のコンセンサスがもし得られるとするならば、それはわれわれが国民の代表として果たす一つの使命ではなかろうか、私はこう考えるのでありますが、大蔵委員長の方でぜひこの問題は与野党の理事の皆さんを含めて御検討いただいて、そういう機会をおつくりいただきたいということを要望いたしたいと思います。ちょっと何らかのお答えをいただきたいと思います。
  32. 増岡博之

    増岡委員長 小委員長とよく協議いたします。
  33. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、以上きょうの私の所得税の問題についての基本認識というものを申し上げた上で、これから少し具体的な問題に移らしていただきます。  きょうは大蔵大臣と郵政大臣にお越しをいただいておりますが、実は今度行われる総合課税の問題、グリーンカードの問題というのは、一般の民間の金融機関に対する貯蓄の問題とあわせて郵便局に対する国民の貯蓄の問題という二つの分野に広がっておるわけでありまして、これはどうしても公正な処理がされなければならない第一点と私は考えるわけであります。  そこで、総理府が税金の問題について、ちょっと資料は古いのですが、四十八年八月に全国の二十歳以上のサラリーマン、営業者、自由業者三千人に世論調査をやったものがございますので、それをちょっと見てみますと、税に関心があるというのが六〇%ある。その中で商工、サービス業者は七九%が税に関心がある、こういうふうに出ております。関心の内訳は、自分の負担する税金に関心があるというのが六二%、税金の使途に関心があるというのが三二%、こうなっているわけであります。そうして、税の負担感、税金が重い、サラリーマンの四六%がそういうふうに答えておるし、この一番最後が問題なんですが、税の不公平、これが六七%、こういうふうになっているという報告があります。  そこで、私はさっきも申し上げましたけれども、民主的であるということも非常に重要なんでありますが、公正、公平であるということがまた税として欠くべからざるものであって、この総理府の調査でも、税の不公平、これに六七%が触れておるわけであります。これまでも当委員会の中でクロヨンとかトーゴーサンとかというような問題がしばしば論議になりまして、税の公正の問題というものが議論をされてきたわけでありますが、先に国税庁長官にお伺いをしたいのですけれども、税金を国民から集める立場にある国税庁としては、こういうようなクロヨンとかトーゴーサンというふうに国民が考えているという問題についてはどう理解をしておられるかをちょっと国税庁長官に承りたいと思います。
  34. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先ほどから堀先生のいろいろな御高説を承っておったわけでありますが、その前に納税者の意識と申しますか、これは市民生活意識研究会という心理学者の先生方の研究された結果が出ておりまして、それによりますと、大ざっぱに申して納税者の意識というのを、これは必ずしも名前は適切ではありませんけれども、L型とA型とM型の三つに分けております。  L型と申しますのはいわゆるラテン系の国々の納税意識というものが代表され、A型というのがアメリカの納税者の納税意識が代表である。その中間がM型である。こういうことであります。L型、A型それぞれの特色というのはすでに先生十分御承知のような型でありますが、しからば日本人の場合はどれに属するかといいますと、これはその先生方の研究の結果によりますと、いわゆる中間に属するM型である、そういうような結果が出てきておるわけであります。私はこういった納税者の意識というものが、現在の自主申告納税制度、それから民主的な税制の中における税務行政等に対しまして必ずしも満足すべき納税意識ではありませんけれども、しかし、終戦画後のあの混乱しました税務行政、それから納税者意識、そういったことを考えますと、現在におきましては国民の納税意識というものは非常に私はよくなってきておる、それだけに税務の執行に当たる私たち責任の重大さを痛感しておるわけでありますが、そういった意味で今後とも国民が本当に安心して、それから本当にこれはわれわれの市民生活を維持するための共通の経費であるという意識を持って納税していただけるように努めていかなければならないということを痛感しておるわけであります。  そういった場合に、じゃ一体何が大切かと申しますと、やはりこれは最大の問題は税が公平であるということだろうと思います。これは税制のみならず税務の執行についても適正公平に行われるということが一番大切なことであると私は考えておりますが、そのときに非常に残念なことには、やはりクロヨンあるいはトーゴーサンというふうな言葉が納税者の間にささやかれる、あるいはそれが公然と言われておるということでございます。私は率直に申しまして、現在の税務の執行というものが、垂直的に見ても水平的に見ましても全く公平に執行されておると言って胸を張って御答弁するだけの自信はございません。やはりわれわれの税務職員の目には届かない、それからまた非常に残念なことでありますけれども、それほど納税者意識が近代的な正しい民主的な納税者意識になってない方も中にはおられると思います。そういった方々が、やはり善良な納税者からごらんになりますと、一人だけ不当に税の負担を免れておる、そういったような方がおられると思います。こういったことが、やはり税の執行あるいは納税の結果というものに不公平があるんじゃないかということが言われまして、それが一種のごろ合わせとしてトーゴーサンあるいはクロヨンといったような言葉になっておるんだと思います。現実にはトーゴーサンあるいはクロヨンといったような極端な姿にはなってないということは私は申し上げる自信はございますけれども、しかし、さればといって、全く適正公、平に税務の執行が行われておるかと聞かれますと、胸を張ってそのとおりでございますと言う自信もまたございません。ですから、極端な姿じゃないけれども、やはりそこには今後われわれが気をつけなければならない不公平な執行があるのではないかということを絶えず反省しておるということでございます。
  35. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、同僚の山田芳治議員がすでにいまの法人あるいは個人業者の税務調査についてここで論議をされておりますから、やはりいまの問題は人間だけふやせばいいということではないと思うのです。  そこで、いまそういうふうにお答えになったんですが、私は大蔵省の資料でこれを裏づけるものがあるからちょっと御紹介をしておきたいと思うのです。これは予算委員会に配付をされた資料なのでありますが、昭和五十三年度に給与所得者は所得者数が三千七百六十九万人ありまして、そのうちの二千七百九十八万人、パーセンテージでは七四・二%の人が納税をしているのであります。非納税者数は九百七十一万人で二五・八%、約四分の一が課税最低限の下にあるために納税をしていない。四分の三は納税している。じゃ農業所得者、これは専業農家と第一種兼業農家だけの統計のようでありますが、所得者数が百五十七万人、納税者数二十七万人、納税比率は一七・二%、非納税者数百三十万人、八二・八%の人が納税をしていないのであります。農業以外の事業所得者所得者数六百五十九万人、納税者数二百二十万人、この納税者数の比率は三三・四%、三分の一が納税して非納税者数四百三十九万人、六六・六%、三分の二は実は納税をしていないのであります。ですから、この具体的な計数はまさにトーゴーサン、クロヨンというものを計数的に裏づけているのではないかという感じが私はいたすのであります。  ですから、私は、この税の公平の問題というのをいま取り上げておりますのは、今度のグリーンカードの問題もそのための垂直的な税の公平問題というものを取り上げるという意味で重要な問題であるし、同時に金融機関と郵便局との間における税の公平という問題も水平的に問題があるわけでありますが、やはり一指いま国民が関心があるのは、どうやらこの給与所得者と農業所得者と農業以外の事業所得者との問題というのは非常に関心のあるところではないだろうか。ですから、やはり今度は一つできたのでありますが、何とかシステムとしてそういうことがやりにくいシステムというものを大蔵省は検討をする必要があるのではないだろうか。これは個々の徴税手段によってやろうなどと言ってもできることではないのでありますから、私はここで税の公平という問題を論議するときにちょっとひとつこの問題に触れておきたいと思うのであります。今後この方向で検討を進められるかどうかについては、先ほど申し上げましたように、私どももひとつ議員の中でみんなで検討したい、——政府だけに検討してくださいと言うのでは実は民主的税制になりませんから、政府は政府でそれなりにこの問題についての検討を進められるということが当然必要だろうと思いますので、ちょっと大蔵大臣、お答えをいただきたいと思います。
  36. 竹下登

    ○竹下国務大臣 当然のこととして検討すべき課題であると思います。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、今度はグリーンカードの具体的な問題についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  まず最初に、国税庁長官にお伺いをしたいのでありますけれども、私は先ほど税というものは自主的にひとつ主体性を持ってやってもらいたい、国民がセルフアセスメントでやってもらいたいということを申しました。アメリカの例を調べておりますと、アメリカにはかつて税金をごまかした人たちがお金を送って、自分は二十年前に実はこれこれの税金をごまかした、それ以来今日まで大変に気にかかっていた、ようやく払えるようになったからこの金を送るからということで送ったりするようなシステムがあるようであります。この問題に関連して実は五十五年二月二十日の朝日新聞に「脱税の不安に配慮」「うっかり組柔軟に」「国税庁検討 公認とはいかぬが」という記事が出ておりました。これを読んでおりますと、どうやら「関係者の間では、名古屋国税局がかつて優良な納税者をふやすためにひそかに試みた「名古屋方式」の是非論が展開されている。」というのが記事に出ているのであります。  そこで、ひとつ名古屋方式というのは一体どういうものであったのか。ここに書かれておるように、今度はグリーンカードによって一ある意味ではうっかりしていたのか、多少は税金をちょっと安くしょうと思ったのかわかりませんが、架空名義預金、かつて私は当委員会で長年やった架空名義預金のようなところにそのままになっているものがかなりあるんじゃないだろうか。そうすると、この際、今度は公正に全部なるわけですから、その過程を通じてひとつ何らかの配慮があってしかるべきではないだろうか、こういうふうに実は考えるのでありますけれども、この点についてひとつ国税庁長官の見解を承りたいと思います。
  38. 磯邊律男

    磯邊政府委員 まず第一の御質問のいわゆる名古屋方式の問題であります。  これは名古屋国税局管内におきまして、昭和四十七年の暮れころから五十一年の春ころまでにかけまして、預金の純化あるいは的確な顧客管理等を目的としてほとんどの金融機関が参加していまして架名預金をなくす運動というものが行われたわけでございます。こういった金融機関の運動に呼応いたしまして国税局でもそれに対してのしかるべき措置をとったわけでありますけれども、この運動の中で、従来の架名預金をこれを正当な預金として表面に出すことに伴いまして、当該預金者といいますか納税者が自主的に従来の課税関係の是正を申し出たような場合に対しましては、特に大口であり、あるいはまた悪質な場合を除きまして、原則として、それによって脱税を摘発していくというふうなことはやらずに、個々の納税者の実情を尊重して適切に修正申告の指導を行ったという実績があるわけであります。  また、御指摘のように、ただいま今度のいわゆるグリーンカードが採用された場合に同じような問題が出てくる可能性があるわけでございますが、もちろん、これに対しましては、国税当局といたしましては利子配当総合課税というものが適切に行われますように、やはりそこには無理のない実情に即した税務執行上の配慮といいますか処理をしていく必要があろうかと思います。  この架名預金の問題であるとか、あるいは少額貯蓄課税制度の乱用といいますか、そういった問題は、税務調査の執行に当たりまして従来から非常にわれわれとしては頭の痛い問題であったわけでありますが、かたがた利子配当所得総合課税制度へ移行ということに伴いましてこのシステムがとられるということになりますと、そういった税務上の弊害もこれによってなくなってくるというプラスもございます。したがいまして、税務の執行当局としてはいかにしてこの制度が円滑に執行されるように持っていくかということに現在頭を悩ましておるわけでありますけれども、いま先生の御指摘のありましたように、かつての名古屋方式というものを十分参考にしながら無理のない形でこの新しい制度の移行に持っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 いま国税庁長官答弁ありましたが、大臣、それでよろしゅうございましょうね。ちょっと御確認をいただきます。
  40. 竹下登

    ○竹下国務大臣 結構だと思います。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 さらに、いまの限度オーバーの問題でありますけれども、これは主税局でいいですね。  それでは、次にちょっと銀行局長にお尋ねをしますが、私はもう古いのを読んでいただくと、ずいぶんいまの架空名義預金という問題を論議をしてきたわけですが、やはり今度のような制度にならない限りなかなかこれが解消できなかったと思うのですね。この前新聞を読んでおりましたら、何か今度のこのグリーンカードの問題について大蔵省と銀行間に裏取引があった、私はそんなことはないと思うのでありますけれども、そういう記事が出ていて、その一つの中に無記名定期は残すというようなことが言われているというようなことが新聞に出ていたのです。私は大蔵省がいま申し上げているような税の公正という問題からそんなことができることはないと思うのですが、ちょっとこれだけは確認をしておきたいので、無記名定期預金取り扱いは今度のこの税法改正に伴ってどういうふうにされるのかをちょっとお答えをいただきたいと思います。
  42. 米里恕

    ○米里政府委員 無記名定期預金、いわゆる特別定期預金と言われているものでございますが、これはもう先生よく御承知のとおり、いままで利子所得課税上の取り扱いとしては分離課税方式ということになっておったわけでございます。今度利子配当総合課税の中にもちろん組み込まれるということになりますので、したがって分離課税方式を前提としておりました従来の無記名定期預金あるいは特別定期預金というものは当然なくなるということになります。新聞のその書いておった意味というのは私はよくわかりませんけれども、あえてどういう話からそういうことに発展したのかなということを考えてみますと、金融界で一部こういう意見のものがございますが、これはいわゆる無記名定期預金ではございませんで、総合課税を前提として金融機関あるいは税務当局というものは正しく住所、氏名を把握しておるわけですけれども、税の問題とは別に、将来、たとえばCD、いわゆる譲渡式の定期預金の方でございますが、そういったようなものの有価証券化が進んだ場合に、無記名ということがあり得るかもしれない、これは無記名有価証券というのがあるので、そういう検討をしなければならないから、いまの段階で税とは別に、税はすべて総合課税であるけれども、無記名定期預金というのが今後存在しないというのは、そっちの意味では言い過ぎかもしれないという、一部にそういう説がございます。これは、いまCDがすぐに無記名式になるかどうかということは別問題でございますが、そういう議論をなす者がございます。恐らくその話が何か伝わっていったのじゃないかと思われます。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいまの答弁で、無記名定期預金と言われるものがなくなるということを確認できましたから、それで結構でございます。  そこで、今度は主税局長伺いたいのでありますけれども、現在郵便貯金は、故意または重大な過失によっての限度超過分のみ課税する、こういうことになっておりますね。ところが、いまの民間金融機関でやっておりますところの少額貯蓄の問題については、もし限度額を超過をしていたら根っこから課税をするというシステムになっていますね。これは、やはり私がさっきから申し上げておりますように、金融機関間におけるところの不公正の取り扱いというふうに感じるのでありまして、この際、やはり論理的には超過分だけについて課税をするというのが合理的だ、私はこう考えるのでありますが、主税局長はこの点についてはどう考えていますか。
  44. 高橋元

    高橋(元)政府委員 現在の郵便貯金法では総額制限三百万円でございますから、三百万円を超える預金の受け入れというものはあり得ない。したがって、それは減額措置の対象になって、払い戻しをするか、相手が応じない場合には国債を買って保管をしておく、こういう体制になっております。そういうことを前提といたしまして、郵便貯金は、三百万円の限度を超えた場合には、はみ出た分を現在の所得税法施行令の十八条で故意または重大な過失がある場合について課税するという制度にたしか四十八年に改めたわけでございます。  いまの御指摘の件は、郵便貯金と銀行預金との商品の差ということが一番大きく原因しているかと思います。銀行預金は幾ら受け入れても構わないわけでございますが、税務署長に対しまして三百万円までの限度で非課税貯蓄申告書を出しまして、その限りで非課税にしてもらう、こういうことでございますから、基本的には商品の差だと思います。  ただ、仰せのありますように、イコールフッティングでないじゃないかとおっしゃればそういうことでございますけれども、郵便貯金について、限度オーバー分について課税貯蓄というものを認めるという趣旨は、今回の改正によって毛頭ございませんので、今回改正をいたしましても、郵便貯金が三百万円を超えてさらに課税預金を受け入れていいということではございません。ただ、たまたまグリーンカードを出して確認を受けない、そういう場合には課税郵便貯金になるということでございますが、総額制限の規定はそのまま残るわけでございます。  そこで、故意または重大な過失によって超えた部分に限らず、郵便貯金について課税ということが起こってきたわけでございますけれども、民間の貯金について根っこから、つまり課税貯蓄申告書、今度で申しますとグリーンカードに書かれます限度額をオーバーして受け入れた場合に、根っこからいってしまうのは大変問題だという御指摘でございますけれども、この問題は、一つは、非常にごもっともな問題だと思いますが、税務当局に限度オーバーが判明してももともとだというので乱用されても非常に困るわけでございます、三百万円という限度の中で課税貯蓄をやっていくわけでございますから。  それで、事柄は基本的に郵便貯金の総額制限ということにあるわけでございますが、今後総合課税の移行時までに、この問題について、商品の差ということも含めて検討をしてまいりたいというふうに思っております。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 私が伺っておるのは、郵便貯金の場合には相手方が一つでありますから、後で郵政大臣にお伺いをいたしますけれども、やがてコンピューター等が導入されれば名寄せがきちっと行われて限度額が守られるだろうと思います。  ところが、実は少額貯蓄制度を、初め私どもは一金融機関に限っていたのですよ、それでなければだめだということで、私どもは一金融機関でやれということで、しばらくの間、一金融機関でやっていたのです。それが行われているのならいまの郵便局と同じような処理になるわけですけれども、それを政府の方が、これは議員立法じゃないのですよ、政府がともかく民間金融機関の声に押されて、税の把握が困難になるような金融機関に分散することを認めたというのは、さっき佐藤委員指摘をしましたけれども、大蔵行政というものの一貫性のなさを象徴的にあらわしておると私は思うのです。  しかし、それだからといって、マル優の限度をあっちやこっちにやっていれば、多少それは私は超えることはあり得ると思うのです。特に、果実が上に乗っかってきますと、気がつかないうちに超えていた、超えたら根っこから全部税金を取るという話は、私はさっきの民主的税制という、主体は国民なんだ、皆さんは国民の同意を得て税金を取るのだという立場から考えれば、超えた分だけは課税をしますということであるべきだと私は思います。  大蔵大臣、これはきわめて重要な税の基本原理に関するから、私は前段でこの問題を時間をかけてやったのでありますから、いまの点についての大蔵大臣としての御見解をひとつ承りたいと思います。
  46. 竹下登

    ○竹下国務大臣 基本的には私も考え方はよくわかります。  ただ、堀委員大蔵委員会の一貫性の中に今日まで存在しておられるし、私はたまたま出戻りみたいにしておりますので、その点の一貫性は若干ギャップがあろうかと思います。  ただ、いわゆる郵貯の問題、そして一般金融機関の問題等の御議論でございますが、確かに、ばれてももともとというような思想から乱用されるようなことになってはもちろんいけませんので、今後、御提案の方向で総合課税移行時までに、これは主税局長もお答え申し上げておりましたが、結論はどうしても得なければならない課題であるというふうに考えております。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、今度はひとつ郵政大臣にお伺いをしたいと思うのであります。  いままですでに主税局長からも少し答弁がございましたけれども、実は、現在の郵便貯金法は第十条で「貯金総額の制限」「貯金総額は、一の預金者ごとに、住宅積立郵便貯金及び次項に規定する郵便貯金に係るものを除き三百万円、住宅積立郵便貯金につき五十万円を超えてはならない。」まず第一点にこの第十条でこういうふうに規定をいたしまして、第十一条で「貯金総額が前条に規定する制限額を超えたときは、郵政省は、その旨を預金者に通知する。」「前項の規定による通知があつたときは、預金者は、貯金総額を制限額以内に減額しなければならない。」「第一項の規定により通知を発した日から一箇月以内に預金者が前項の規定による減額をしないときは、郵政省は、制限額以内に減額するのに必要な限度において、その貯金の一部で国債証券を購入保管する。」第十六条「通帳の冊数の制限」「預金者は、次の各号の一に該当する場合を除いては、二冊以上の通帳をもつて預入をしてはならない。」第十七条「前条の規定に違反して預金者が二冊以上の通帳を以て預入をしたときは、その通帳のうち最初に交付したものに記入した貯金を除いては、利子を附けない。」こういうふうにきわめて公正な法律になっているのでございます。  ただしかし、現実には、これまで当委員会議論されておりますように、いまは、もし名寄せをするとすれば人間の手でしかできないということでありますから、大変な量に上る貯金の原簿の中で人間の手によって名寄せをすることが不可能なことは私もよくわかるのであります。その結果、限度を超過したものを郵政省としても報告を出されておることも承知をしておりますが、これは私は物理的にやむを得ない限界だ、こういまは考えているのであります。  しかし、今度、承るところによりますと、オンライン計画が進められておるようでありまして、大体五十八年にはこれが完了するというふうに聞いておりますが、このオンライン計画が完成した暁には、今度は名寄せを完全にやろうと思えば、これは人間の手ではなくコンピューターでさっとやるのですから、これは可能なことではないのか。まず限度を守るためにはこの名寄せが最も重要な問題だ、こう考えるのでありますが、ひとつ郵政大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  48. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えいたします。  いま先生御指摘のとおりだと思うのでありますが、目下オンライン計画を推進中でございましていま御指摘もございましたように、五十八年度中の完成を目途としておるところでございます。この機械化に伴いまして、いまも御指摘ございましたが、現在は手作業によって行っております郵便貯金の預入限度額管理のための名寄せの事務を、これまた御指摘のように、コンピューターによる処理とすることによりまして、効率的に、またより正確に行うこととしておるわけでございます。  オンラインシステムの完成の時点におきまして、少額貯蓄等利用者カードの番号をこのコンピューターによる名寄せシステムに組み込むことにつきましては、ソフト、ハード両面があるわけでございますが、その両面の技術開発、それから費用対効果などの問題を含めまして検討を進めていきたい、このように存じております。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、カード制度実施によりまして、カード番号の記載がない場合には課税となるというのが今度の所得税法九条の二で出ておりまして、また預金者の住所、氏名を税務署へ通知することになるぞというようなことを預金者に広く周知をして、預け入れの際にカードを持参するよう積極的に勧奨をすべきだ、これはカード制度実施をされたときでありますけれども、そういうふうに考えるのであります。やはり何といっても国民がこういうことを承知をしていなければ、さっきの民主的税制ということになりにくいのでありまして、その点では郵政省はどういうふうに対応されるかをお答えいただきたいと思います。
  50. 大西正男

    ○大西国務大臣 これも先生いま御指摘の、ごもっともな御意見でございまして、所得税法改正案によりますと、少額貯蓄等利用者カードの番号の記載を受けていない貯金通帳あるいは貯金証書等につきましては、その利子が非課税とならないものであります。また、このような通帳または証書によりまして利子の支払いをした場合には、政令で定めるところによりまして税務署長に通知することとなっておるわけでございます。したがいまして、少額貯蓄等利用者カード制度実施の際には、このようなカード制度の趣旨、内容などにつきまして郵便貯金の預金者に周知をし、この制度の公正かつ適切な運用に資するよう努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、最後に、カード制度を導入しますときに、経過措置として、郵便貯金と民間金融機関取り扱いに差があるわけであります。御承知のように、昭和五十八年十二月三十一日までに定額貯金に預けますと、これは実は十年間こう行くわけでありまして、そのために民間金融機関と郵便貯金の間に差があるということで、民間金融機関預金が郵便貯金に流れ込むという心配がされておるようであります。これを防ぐためには、カード制度実施前においても本人確認を厳重に行っておいてもらえれば、あとは、いま申し上げたようにオンラインが完成をすればそれで全部一連の名寄せができて、限度額がきちっとなりますから、もし余分のものが流入をしておればその分は課税になる、こういうふうなことになるのだろうと思いますので、この点についてひとつ郵政省側の考えをお答えいただきたいと思うのです。
  52. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えいたします。  先生のおっしゃいますこと、一々ごもっともでございまして、郵便貯金の預入に際しまして、面識のない場合など預金者の住所、氏名が真実であることを確認できない場合、そういう場合には証明資料の提示を求めるなどいたしまして本人確認を行うことといたしております。簡易で確実な少額貯蓄の手段として、その経済生活の安定と福祉の増進のためにあまねく国民大衆の利用に供されております制度といたしまして、本来非課税である郵便貯金が利子所得課税を免れるために悪用されてはならないものだと思っております。これは申すまでもないことでございますが。したがいまして、郵便貯金の預入に際しまして必要とされる本人確認につきましては、少額貯蓄等利用者カード制度実施のいかんにかかわらず、厳正に行うように努めてまいる所存でございます。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 いま郵政大臣がお答えいただきましたので——これまでややもすると、今度のグリーンカード問題について、郵便貯金が聖域ではないかというふうな不安が一般にあったと思うのでありますが、いまのお答えを確実に実行していただくならば、税の公正が民間金融機関と郵便貯金の間に守られる、こう私は考えるわけであります。  そこで、これまで大蔵大臣あるいは郵政大臣がお答えになったことについて、もう一つ担保を明らかにしておきたいと思うのでありますが、会計検査院がこれらの郵政省貯金局その他、あるいは大蔵省の所管の問題について会計検査を行われるときには、いま私がここで述べ、おのおのの大臣が答えられたようなことが確実に実行されておるかどうか、そのことによって、いま政治上の最も重要な課題である財政再建のための税収というものが確実に、公正に確保されるということになると思うので、会計検査院の方でひとつ御答弁を、大蔵省担当、郵政省担当の方からいただきたいと思います。
  54. 岩井毅

    ○岩井会計検査院説明員 本制度実施されました暁には、会計検査院といたしましても、制度の運用が適切に行われますよう、国税当局の検査に際しましては重大な関心を持って対処いたす所存であります。
  55. 藤井健太郎

    藤井会計検査院説明員 お答えいたします。  私は郵政省関係の検査を担当しておりますが、ただいま先生御指摘の郵便貯金の総額制限規定の励行につきましては、これまでも貯蓄奨励手当の支給に関連いたしまして検査を実施してきたわけでございますが、今後とも引き続きまして、先生の御指摘を念頭に置きまして、慎重に、手当の支給にかかわらしめて検査を行いまして、会計経理の厳正な執行に資するよう努力したいと思っております。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  57. 増岡博之

    増岡委員長 山田耻目君。
  58. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうもお忙しいところ、夜分、総理お疲れと思いますが、御苦労でございます。  きょうは税の審査が終局に近づいておりますが、一年に一度お見えになる総理ですから、きょうはひとつあなたとの懸案事項の処理をしておきたいと思います。ひとつ忌憚のない御意見を聞かしていただきたいと思います。きょうは郵政大臣もまだ御迷惑をかけておりますが、よろしくお願いいたします。  昨年の四月の下旬、東京で日米欧委員会東京総会が開かれまして、その席においでになりました総理は次のように述べられております。「公正で品格ある日本的福祉社会建設につとめる。余暇についてもより充実させることが望ましく、とりあえず週休二日制を一般化したい。」このようにお述べになっております。もちろん、欧米各国の日本人働き過ぎの批判が非常に強まっているときですから、その動きをかわすためのお気持ちもあったかと思いますけれども、六月二日の朝日新聞は社説でこれを取り上げまして、総理の基本姿勢の中に週休二日導入というものは認知されたものだ、このように書かれておりますが、私もそう思いました。今日でもこれはあなたの基本姿勢として変わらない位置を占めておるかどうか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  59. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 週休二日制が年々普及いたしておりますこと、御指摘のとおりでございます。欧米各国におきましては、すでに一般化いたしておることも、私、承知いたしておるわけでございます。これをわが国におきましてもスムーズに受け入れることができる条件をつくってまいるということは、私、一つの大きな政治の課題だと心得ておりまして、そういう考え方にはなお変わりはございません。
  60. 山田耻目

    山田(耻)委員 総理の基本姿勢として、週休二日制は認知をされたという話を伺いまして、この問題を取り扱ってまいりました私としては、ありがたいと感謝をいたしております。  ところが、現実はなかなか、総理、うまく進んでおりませんで、ちょうど昭和五十年四月二十三日、この部屋でございましたね、あなたとこうしてお約束をしたのですが、当時は銀行の労使関係では、金融機関週休二日をやろう、銀行法十八条の改正も頼まなければならぬ、こういうふうなことで合意ができております。その事情をあなたにも私は御説明いたしましたところ、あなたは、労使閥の共同の道標に対して、これを尊重したい、一両年中に銀行法の十八条を改正をして期待に沿うように措置したい、こういうことをここでお述べになったのです。  先ほど堀先生がここで日本語の解釈規定をなさっておられましたが、日本語の一両年というのは、おおむね一、二年の間に措置をしたい、こういうことだ、そうでしょうね、と言って、私はここであなたのお言葉を確認をして委員会を終わったわけです。その四月二十三日の大蔵委員会をここでやったのは、ちょうどあなたが日米欧委員会で述べられたように、日本人働き過ぎということで、国際市場は出発点を同じにしなくちゃいかぬ、条件を同じにしなくちゃいかぬ、こういう非難をかわすためにそんなことを述べられた気持ちもわからないことはございませんが、五十年の四月二十三日のこの委員会で、今日大変財政再建で問題になっておりますが、第一回の特例公債を発行することを決議する委員会だったのです。だから、あなたは何とかして特例公債発行に反対、抵抗しておる私たちをなだめて、それをやるために一両年中に実施をしたいということをおっしゃったのではないだろうと思うのですが、いかがですか。
  61. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 政府・与党といたしましては、国会にお願いして実現しなければならぬ政策がございまして、野党の皆さんのごきげんを損ねてはできないことでございます。したがいまして、いつも野党の皆さんのお考えを伺いながら、なるべくそれに逆らわないように、皆さんの意見を聞く、これは当然のわれわれのエチケットだと思っております。しかしながら、与党と野党とはもとよりでございますが、政府は国会に対して責任を持っておるわけでございますので、国会に対するやりとりは真剣でなければならぬと思うのでございます。政治生命をかけてやっておることでございますから、したがって、そのときに一時野党をだまして済むというようなものではないと思うのです。誠心誠意やっていないと、どこでわれわれはつまづくかわからないわけでございますので、この国会のやりとりにつきましては、非常に神経質なまでに注意してやっているつもりでございます。したがって、あの場合の私が申し上げたことにつきましても、後々責任を負えるように私は申し上げておるつもりでございますけれども、そのときその場限りの言い逃れ、あるいはそのときに上程しておりました案件の通過のためにその場限りの言い逃れをやったというようなものとお受け取りいただかないようにお願いしたいと思います。
  62. 山田耻目

    山田(耻)委員 総理は当時大蔵大臣でございまして、苦しさの余りそういう答えをお出しになったのだとは私も思っていません。お互いに命をかけてこういう仕事をしておるわけですから、誠心誠意述べられたものだと私は理解するのです。しかし、それにしても一両年が五年間たってもほったらかされておるということは、どう理解したらいいんでしょう。一、二年と私は日本語は解釈をしたいと言ったのですが、五年という解釈は、大平総理大臣がつくられていく一両年でしょうかね、五年というのは。
  63. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 でございますので、私は、そういう願望を述べたわけでございまして、一両年のうちに必ずやるというお約束は申し上げていないわけでございます。しかし、私自身いま反省してみますと、この週休二日制の問題は、実はいろいろやって、その後政府も検討をし、各党も検討してまいったわけでございますけれども、このコンセンサスを固めてまいる上におきまして、こんなに時間がかかるということは、当時、率直に申しまして私も予想しなかったことでございますから、一両年ぐらいの間にはひとつ何とか国会に御審議をいただくようなことにいたしたいものという念願を申し上げたことは隠れもない事実でございます。  しかし、くれぐれもそれは、ここで約束をしたとなると大変なことになりますので、その点は、私もそういう強い願望を持っておるということを申し上げたとお受け取りをいただきたいと思います。
  64. 山田耻目

    山田(耻)委員 あのときの議事録をお読みになっていただければよくわかると思うのですけれども、銀行労使の共通の道標を尊重し、一両年中に決着をつけたい、こういう約束をされているわけですね。この問題については、それは五十年の四月二十三日のお約束です。それで、村山先生が大蔵大臣になられて、村山先生は五十三年の十月十七日に、あの総理がお読みになった言葉は私が書いたんだ、いわゆる理事会で相談をして私が起草したのだ、だから私はうそを言わない、それは努力をいたします、こういうのが村山大臣の、お会いしたときの国民の代表に対するお答えでした。去年の四月十九日に、金子先生が大蔵大臣のとき、その点をやはり確かめたら、国民の代表に向かってあれは大平総理が大蔵大臣のときにお約束なさったので、いまだ実行されていないのはまことに遺憾である、こういうふうに金子大蔵大臣はお話しになっていたようです。  だけれども、そういうさかのぼって過去の経緯を一々確認していくというのは、やはり国民の多くの方が週休二日を求められている、特に、本委員会の担当である金融機関の週休二日については、特に総理とそのようなやりとりをした一人の政治家として、私は責任を感じておるのです。だから、大蔵委員会審議のときに、政府がお出しになった法律は全部通したい、特に、大蔵委員会は歳入委員会でございますから、日切れ法案をたくさん抱えておる、だから、それを通してほしいという政府並びに与党自民党の皆さんたちの気持ちはよくわかります。しかし、一人の人間としてそういうことを大蔵大臣当時の大平さんと約束をして、その方はいまを時めく内閣総理大臣である。よもや二枚舌を使われるということはないだろう、こういう気持ちを持っておりますから、しかし、それは気持ちだけでいいですけれども、ここの審議がややもすると吹っ飛びそうになるのです。  そこで、私は国会議員として法律審議する責任もございます。その立場をも考えて、いろいろと大蔵の理事会でも本委員会でも相談をいたしました。今月の十四日、事態を非常に重要視されました与党は初めて、今日まで自民党の中で、まず党内のコンセンサスを得るという努力が不十分であった、だから、実務者会談を持ちたいという御提起がございました。十四日にそれをもちまして第一回をやりました。その実務者には自民党の政務調査会の筆頭副会長である、前の大蔵委員長の加藤六月さんが中心になって、その実務者会談を進めております。自民党、社会党、公明党、共産党、民社党の五つの政党から複数以上の実務者を出しまして相談いたしてまいりました。きょう、米里銀行局長もお見えになっておりますが、この九十一通常国会に十八条の改正を含めた銀行法の御提示はむずかしいやに聞きました。そのために、国民の中軸を占めておる勤労者の団体である労働四団体、この方々意見も非常に激しくなってまいりましたので、この国会に銀行法の改正が出ないということでは困る。十八条の改正もできないということで、私たち社会党は、特別立法として金融機関の週休二日の法律案を用意をいたしました。それで銀行法が出されなければ、この特別立法をひとつ本委員会で通過をさせていただきたい、そういう要望をいたしましたのがきっかけになりまして、いまの実務者会談というのは持たれることになったのです。  十四日の第一回の会談で、野党の四党はそろって、この特別立法をこの国会で衆参が通過できるということを見越して、委員長発議で提案をなさるのか、それとも銀行法全面改正をこの国会に提案なさるのか、二つの問題を提起をして御検討いただきました。十九日に与党自民党の方から、銀行法の改正については担当の大蔵省としてはむずかしいと思う、と。そうなりますと、特別立法をしたいという十八条改正金融機関週休二日のこの特別立法を認めるのですか。それらを踏まえて、自由民主党の中に週休二日の小委員会を設置する、十九日、公報にはそのことが掲載をされておりました。その報告も受けました。そして、きょう第一回の小委員会が持たれたこともお伺いしました。この小委員会は、申し上げました金融機関の週休二日の実施についての決断をなさる小委員会と私は理解をいたしております。  自由民主党の総裁は、総理、あなたなんです。一体、この小委員会の動向をどのように御指導なさるのか。申し上げた内容の仕事をするのですから、あなたの五十年四月二十三日のこの委員会答弁と無関係ではないのです。大事な関係を持っている問題ですから、あなたのお考えをお伺いしたいと思います。
  65. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 金融機関の週休二日制の問題を御提起いただいて、山田さんを初め野党のいわゆる実務を御担当いただいておる方々が長い間推進しておられますこと、これは私もよく承知いたしております。それは、そういう御提言が力になりましてだんだんと金融制度調査会におきましてもこの問題を受けとめるところの法制を考えてしかるべきというようなことになってまいりましたし、いま仰せのように、自由民主党の内部におきましても、小委員会をつくって検討しようというようになってまいったことは、大きな原動力としてあなたを初め野党の実務担当の方々のお力である、そういう意味で私はこれを評価いたしております。  しかし、この問題が意外に時間がかかっておるということは、この問題の深さと幅が大変広い問題であるということによるものでございまして、政府が怠けておるとかいう性質のものとはお受け取りいただかないようにお願いしたいと思うのでございます。  この問題は、金融制度調査会の御検討にもありますように、週休二日制を円滑に実施していくというためにはいろいろな手だてが、それなりの条件をつくってまいらなければならぬわけでございます。したがって、前々から問題になっておりましたように、銀行法の改正と一体としてこれは取り扱うべきものでなかろうかというような認識が初めからわれわれの頭にありましたわけでございます。したがって、そうすることによって初めていわゆる十八条問題という問題も円滑な解決ができる、実施が保証されるということになるものと心得てきたわけでございまして、私は、その点につきましては野党の皆さんの御理解が得られないはずはないじゃないかというように思っておったのでございます。  そこで、私もその後、大蔵省から引きまして党に移ったり、また現職についたりいたした関係を持ちましたけれども、しかし、この問題を忘れておったわけでは決してないのでございまして、事あるごとに大蔵省に進行のぐあいを聴取したり督励をしたりしてまいったわけでございますが、大蔵省といたしましても、これを銀行法の改正案として全部一遍まとめてしまって、そしてそれを今国会に出すようにひとつ考えてみようということで、一時各方面の御意向もいろいろお聞きに回った経緯もあるように承知をいたしておりますが、全体としてまとめ上げていくには、物理的にどうも無理なようだという報告を私は受けておるわけでございます。つまり、銀行法の改正を全一体としてやりたいということ、そしてそれを早くやるについて、この国会でそれを仕上げるということについてはどうも物理的に非常にむずかしいというように実は聞いておるわけでございますが、いま伺いますと、全体の改正案と切り離して十八条問題というものを野党四党で分離して立法するお考えをお持ちであるというようなことを聞きましたわけでございますが、お急ぎになりたい、促進したいという気持ちは重々私もわかりますけれども、しかし、そういうことをやりますと、その週休二日制の実施そのものがどうも円滑に機能しないのではないかという心配もございますので、こいねがわくは銀行法改正を全一体としてひとつ御審議をいただき、御心配もいただきまして、これを何とか物にするようにひとつお考えをいただけないものかと思うのでございます。これだけ分離してやるということにつきましては、にわかに私は賛成いたしかねるわけでございます。  しかしながら、これは、いまおまえの考えはどうだということでございますので、いま申し上げておるわけでございますけれども、せっかく各党の間で担当者をお決めいただいておるわけでございまするし、自民党にも小委員会をおつくりいただいておるようでございますから、各党の間にも話し合いの場を持たれておるようでございますから、政府の方からこういうことをいちずにがんばるつもりはございませんけれども、しかし、各党の間にお話し合いが実ってまいりますことは、それは私は尊重しなければならぬと思いますけれども、政府の考えはどうだと聞かれれば、何とかこれは全一体として、銀行法改正は一体としてひとつお取り上げをいただくように、政府も一生懸命に各党の御審議には御協力申し上げますから、これはひとつそういう姿で、これは大事な政策でございますから、この発足は祝福の中でやりたいと思いますから、どうぞひとつ御了解を願いたいと思います。
  66. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうも非常に慎重なお考えで問題を進めるように申されておるんですが、今日ではすでにコンセンサス、世論形成もかなり進んでまいりまして、金融機関も新聞の折り込み、漫画等によってかなり国民にも訴えておられるし、今日の経済では、このまま行けばまた輸出ドライブがかかって、働き過ぎの日本に対してまた諸外国から厳しい非難が出そうでございます。慎重なのも結構です、結構ですけれども、もう総理決断の時期ですよ。だから、実務者会談でもそのことをるる協議いたしまして、与党が小委員会をおつくりになったその背景は、との九十一国会中に衆参を成立させるということも、明らかにされておりませんけれども、内心お持ちになって自由民主党に小委員会ができたものだと私は思うのです。あなたは自由民主党の総裁として、その小委員会を、もちろんあなたがまいた種ですから、一体これがどういう結末を告げていくだろうかということについては、私は無責任ではいけませんよというふうに先ほどから申し上げているのです。だから、この自民党の小委員会がどういう結論を出すのか、五党の実務者会談がどういう決着を求めるのか、それらは、これからの数多くの法案審議の中で不愉快なきしみを出さないように、あなたは総理大臣として十分配慮しながら問題の前進に力を加えていただきたいことを私はお願いしたいのです。  去年の六月一日に、本委員会は決議をいたしました。その決議の内容も当然御存じだと思います。ただ、その決議の中で非常に気にいたしましたのは、郵便局の預貯金業務、農協の預貯金業務、これは銀行法十八条と直接関連はございません。そういうことで、郵便局の預貯金業務の扱いと農協の扱いについては、総理並びに大蔵大臣の方ではどのような指導をなさったのだろうか。かなり古い話でございますから、誠心誠意おやりになったとおっしゃっているのですから、どのようなコンセンサスを得る手だてをお講じになったのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  67. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま総理からるるお答えがございましたが、確かに五十年四月の答弁以来、当時の大平大蔵大臣、現総理から大蔵省に対しましては、金融機関の週休二日制につきできるだけ早くやれるようにとの指示があって、大蔵省としてもこれを受けてまさに継続的努力をしておるということになるわけであります。したがって、総理のお答えにもありましたし、また金融制度調査会の答申、そして本院の決議におきましても、銀行法改正の一環として同法第十八条の改正につき適切な措置をとって遅滞なく対応できるようにすること、こういうことになっておりますので、まずは本法たるこの銀行法の問題について国会で御審議をしていただけるような環境をも期待しながら、鋭意その作業に取りかかっておるところであります。  しかし、現実問題といたしましては、それぞれ各方面と相談をしながら検討をしておるところでありますが、いまここで提出することはかなり困難になっていると思わざるを得ない状況であるということを言わなければならない状態であります。  その中におきまして、御指摘いただいております手形法、小切手法等の関連諸法規の整備あるいは中小企業、消費者等金融機関利用者の理解を得ること及び郵便局、農協等預貯金業務を行う他の機関の週休二日制もあわせて実現されることが必要であるという趣旨に基づきまして、双方事務当局において、これらの問題をも含めて銀行法改正の一環として協議は進んでおるというふうに私は理解をいたしております。
  68. 山田耻目

    山田(耻)委員 協議は進んであるとおっしゃっておるわけですが、きょうは郵政大臣もおいでいただきました。特に一般金融機関が申しますのは、一般金融機関が週休二日をやっているときに、郵便局の窓口があいていたのでは何もならない、営業をやられておったのでは預貯金が必ず偏在をする、だから一般金融機関と同じように郵便局も窓口を閉鎖してほしい、こういう要望が強く出ておりますが、それが郵便局の業務としてはどのような形で大蔵大臣は御相談なさったのでしょうか。あなたより先に郵政大臣に、大蔵大臣の方から御相談を受けたその内容についてどういう見解をお持ちなのか、お話し願いたいと思います。
  69. 大西正男

    ○大西国務大臣 郵政省といたしましては、週休二日制そのものにつきまして、たとえば要員の問題とか財政の問題とか、それから国民の皆さんに対するサービスの問題とかいったようないろいろの事情を考えますと、現況におきましてはかなり困難な事情が伏在をしていることは、率直に申し上げまして事実でございます。しかし、週休二日制ということ自体は社会の趨勢でもございますから、従来の経緯を踏まえながらその実現には前向きに努力をいたしたい、こう考えておるところでございます。  ところで、いま御指摘の銀行との関係でございますけれども、御承知のように、郵便局は預貯金事務だけを扱っておるわけではございませんで、保険の事業とか、いわゆる郵便事業とかも皆一緒にやっておるわけでございます。ですから、預貯金の関係だけを休む、つまり閉庁方式でいくというふうなことは、そういった面から申しましてもいろいろ困難があると思います。でございますから、この点は十分慎重に検討してまいらなければならぬ問題だと心得ております。
  70. 山田耻目

    山田(耻)委員 おっしゃっておることは私も理解できます。郵政職員は国家公務員ですから、公務員の週休二日制が決まらない前に閉店をなさるということは、私はむずかしかろうと思うのです。そこで、私は、あなたの前の白波郵政大臣、その前の服部郵政大臣、この方々ともいろいろ話をしてまいりました。特に白波郵政大臣とは、本会議の席が隣でございましたから、いろいろ話をしたことがございますが、いまあなたがおっしゃっているようなことを申されておりました。  そこで、郵政省の人全部を週休二日制にするということではない。だから、郵便局の窓口を担当しておる人、この人も他の郵便や保険業務をやっている人と同じように、土曜日窓口を閉めても、休ますというわけにはいかない。一般金融機関が求めておるのは、郵便局の預貯金の窓口を開いておいてもらったのでは困る、だから、窓口を閉めてその窓口の従業員は、おっしゃっているように、人間増もできないし、予算も困るということならば、他の郵便業務のお手伝いとか保険のお手伝いとかいう方向で、窓口だけ閉めて人は休まさない、こういう扱いをしたらどうですかねと言ったら、それはいい考えだな、これが白波郵政大臣のお話でございました。じゃ、それをひとつ中心に検討してみようという話でございましたが、あなたには引き継ぎがございませんでしたか。
  71. 大西正男

    ○大西国務大臣 遺憾ながら前大臣から——前大臣がそういうふうなことをおっしゃったかどうか、私は承知をいたしておりません。
  72. 山田耻目

    山田(耻)委員 そういう話は聞いていないとおっしゃるのですが、いま私が申し上げたその話に対する気持ちはいかがですか。
  73. 大西正男

    ○大西国務大臣 先生の御意見は貴重な御意見としていま拝聴いたしておったわけでございます。ただ、郵便貯金の方に従事しておられる方が他の郵便業務あるいは保険業務、これはそう簡単に、きょうは休んでいるからちょっとお手伝いしょうというふうな、そういった簡単なものでもないわけでございますので、先生の御意見を参考にしながらいろいろと検討してみたい、こう思います。
  74. 山田耻目

    山田(耻)委員 郵政省、郵便局の職場には、私ときどき方々へ顔を出しますが、ずいぶんアルバイトの臨時職員をお使いになっておりますね。この人にかわる仕事というのは、郵政職員でございますから、預貯金業務を担当しておっても、アルバイトよりか常識的に私は業務にたけていると思うのです。だから、そういうふうなことを考えますと、むしろ予算的には節約になるんじゃないですかね。だから、私が申し上げたことを検討なさるということでございますから、そういう点を十分検討して、少なくとも、今月中と言いたいところでございますが、四月の中旬までには、郵政大臣、大変申しわけございませんが、郵政省の気持ちというのを確定させて御返事をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  75. 大西正男

    ○大西国務大臣 郵政省におきまして、いろいろ時期的に繁忙な時期にアルバイトなどを使用しておることは御指摘のとおりでございます。これは一定の時期があるわけでございまして、そういう繁忙な時期に一定のごく単純なお仕事をお願いをしておるというようなことでございますし、そしてこれに対する給与も、それなりにそれ相当の程度のものでございます。ですから、そういうことを考えますと、先ほど申し上げましたように、先生の御意見は貴重な御意見として参考にさせていただきたいと思いますけれども、いま直ちに期限を切って四月までに返事をしろということでも、これはちょっとお引き受けしかねますので、十分誠意をもって検討を慎重にさせていただきたいと思います。
  76. 山田耻目

    山田(耻)委員 郵政大臣も私が総理大臣といろいろやりとりをしていましたことをお聞きでございましょうから、くどくどしく申しませんが、非常に古い案件なんです。それで、ややもすると歳入委員会であるこの大蔵委員会審議が中断される可能性もあるのです、危険性もあるのです。だから、私はできるだけ急いで、政府を代表なさる皆様方には期限を切ってお願いしないとなかなか御検討なさらないような気もいたしますから、昭和五十年の四月二十三日に一両年という期限を切ったのですが、五年たちました。そういう一つの過去の経験もございますので、私は今月いっぱいと言いたいが四月の中旬ごろをめどにとお願いしておるのですが、そこらあたりを努力目標にひとつ慎重に御努力いただきたいということのお願いではいかがですか。これはお願いですよ。
  77. 大西正男

    ○大西国務大臣 実はこれは、私、非常に専門的な事務的な内容も含んでおりますから、そういうことから申しますと、私がここでお約束するというのはどうも行き過ぎではないかと思うのでございますが、最大の努力をして、なるべく早目に結論が出るように努力はいたしたいと思います。
  78. 山田耻目

    山田(耻)委員 総理、大変、五十分にわたっていろいろお話もし、意見も伺ったのですが、何もないようですね。何も結論はない。見通しもない。こういうふうな状態というのは、お互いに約束をしてこの委員会審議を進めてきた私にとっては非常に不愉快なんですよ。この状態でこのままずるずると放置されていくのなら、私は私なりの考えも定めねばなりません。だから、この問題は、申し上げたように、政治決断の時期に来ているのです。コンセンサスとかいろいろございましたけれども、すでにその段階は私は終わったと思うのです。しかも、昨年の審議では、コンセンサスの一つの条件として、国家公務員の四週五休の導入が行われたときには国民のコンセンサスは成熟したものと思うと、あたかも公務員の週休二日制と金融機関の週休二日制をセットでという考え方が少なくとも政府の方から述べられていたのですね。その公務員の四週五休はこの国会に提案なさるのでしょう。この前、予算委員会を伺っていましたら、どうもそういうふうな空気に受け取って大出君は質問を中止したのです。私はこの国会で衆参両方を通過成立させるということを強く期待をして実務者会談に臨んでいるのです。与党自民党の方々も、よしそうするということはいただいていませんけれども、そのことを含んで小委員会を設置をなさったのです。だから、私は総理なり大蔵大臣なり郵政大臣なり、それぞれ主管の責任者であるあなた方は、私は政治決断をなさる時期は最も近い日に迫っておるということを申し上げたいのです。  総理、どうですか。決断をなさるお気持ちですか。それともまだまだ何年も時間をかけて慎重にという気持ちがお強いのですか。どちらですか。
  79. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、金融機関の週休二日制に関する件における決議というものは、これは全会一致になっております。そうして、これは口頭ではございませんでしたが、私どもにも、事務引き継ぎに、過去の会議録、すなわち五十年以後の会議録が全部きちんと整理されて引き継ぎ書の中にこれはございました。それを私どもも全部読み上げさしていただいたわけであります。そうして、大蔵省が、これは話が長くなりますので省略いたしますが、現総理の指示を受けた後にいろいろ報告をいたしましたり、全銀協等々と協議いたしました事項も、それぞれこれも中に載っておりました。したがいまして、私どもは、その上に前回の予算修正の際、引き続き当該委員会で協議するということが合意されておることも承知いたしております。それを踏まえて、結局実務者会議が行われるようになり、そしてさらにそれを踏まえて倉成正先生を小委員長として、まさにあいうえお順に書いてありますが、愛知和男先生から山中貞則先生まで三十九名の衆議院、そして参議院が九名という大委員会ができておりますので、まさに専門家の方ばかりでございますので、これらの検討というものは当然のこととして政府としてはお手伝いをしなければならないことでございますし、そして精力的に問題が詰められるということは十分承知いたしておりますので、その検討される小委員会に対してはいかなる協力も惜しんではならないというふうに考えております。
  80. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 この問題をここまで持ってこられた山田さん初め皆さんに、私、敬意を表します。  こういう、何もないじゃないかと言われるから、そうじゃなくて、大蔵委員会の論議を通じ、それが契機になりまして国民的なコンセンサスが相当の熟成を見つつあるわけでございますので、私はそのことは率直に認めなければならぬと思っております。  第二に、しかし、もうもはや決断すべきときじゃないかということでございます。私といたしましては、先ほど申しましたように、実務者会議も開かれてホットな議論が始まっておるところでございますし、自民党にもこの小委員会ができて真剣な検討をやっておられるということでございますから、私の決断はその成り行きを尊重した上でやらしていただきたいと思います。
  81. 山田耻目

    山田(耻)委員 時間がありませんから終わりますが、総理、私は非常に不満なんですよ。やはりこういう問題で、私たちはもっと前向きで国民のことを考え、国際経済のことも考え、一生懸命努力しておる気持ちが、大、平総理大臣には通じないのだろうかと大変不愉快に思っているのです。  いずれにいたしましても、小委員会もできまして、きょうは細かい議論はなかったようですが、鋭意検討してくださっておるようです。ひとつ自民党総裁としてのあなたは、なかなか内部でむずかしい点もあろうかと思うのですけれども、やはり五十年四月二十三日のことを思い出していただいて、私は効果のある自民党にできた小委員会の指導をお願いをしたいと思うし、そうして最終的にはあなたの決断だと思うのです。  だから、冒頭、大平総理大臣の政治の基本の姿勢間違いございませんかと私がお伺いしておいたのは、そういう理由からなんで、確かに時期は来ていますから、政治決断をなさるように心からこれはお願いしまして、私の質問を終わります。
  82. 増岡博之

    増岡委員長 坂口力君。
  83. 坂口力

    ○坂口委員 深夜に及びます委員会に大臣、総理御出席をいただきましてありがとうございます。私の方の地方の言葉に、夜道に日暮れなしという言葉がございまして、もうこれ以上日が暮れる心配はないわけでございますが、私の時間ちょうど半時間でございますので、簡潔明瞭にひとつお答えをいただきたい、間投詞抜きでひとつお答えをいただきたいと思うわけでございます。  いま社会党の山田理事からも発言がございましたが、私からも週休二日制の問題につきましては早期決断をしていただきますように、まず最初にお願いをしておきたいと思います。  最初に物価問題から入らしていただきたいと思いますが、この物価の動向は新年度の税収にも大きく影響をすることでございますので、現在どういうふうなお考えを持っておみえになるかどうか、この辺についてまずお聞きをしておきたいと思うわけでございますが、今回の物価の上昇、新聞等でも連日報道されておりますけれども、目に余るものがございます。今回の物価の上昇というものをどのように特徴づけておみえになるか。前回のたとえば第一次石油ショック以後に起こりましたあの狂乱物価と比較をしてでも結構でございますが、今回の特徴をどのようにお考えになっているか、まずお聞きをしておきたいと思います。
  84. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 今回の物価情勢でございますが、この緊張を招いた原因は、主として海外の資源高と為替市場における円安の傾向がもたらしたものと思うのでございます。けれども、第一次石油危機の場合と比較いたしまして、あの当時は卸売物価も消費者物価も、生産財も消費財も資本財も、すべてが一斉に上がったわけでございますけれども、今日の場合におきましては、これまで消費者物価は比較的落ちついた動きを示しておりまして、卸売物価が予想以上に上げ足を速めてきたということでございまするし、生産財の上げ足が速いという傾向、消費財、資本財には及び方が比較的小ないという特徴を持っておると思います。それから賃金でございますが、あの当時三二・九%というような賃金の相場が出たことがございますが、今日は常識的な水準を目指して労使とも自重した行動をとっておられる。金融面では、M2の状況を見てみますと、あの当時二六、七%という傾向を示しておりましたけれども、現在は一%内外というきわめて落ちついた状況にあるわけでございます。したがいまして、今日の場合はまた消費者が非常に落ちついておられる、自重してくれておるということはありがたいことだと思うのでございます。  そういった意味で、第一次石油危機の場合とは比較にならないほど情勢は落ちついておると思うのでございまして、海外の資源の高値が記録されておりますけれども、これが国内に波及していくことをできるだけ低水準に抑えてまいらなければならない。これを利用しての便乗値上げというものに対して監視の目を怠らないようにやってまいるということをいたしますならば、私はこの状況は乗り切ることができるのではないか。この春、われわれが緊張してこれに対応してまいりますならば、六月ごろは愁眉を開くことができるような状況を招来できるのではないかと考えております。
  85. 坂口力

    ○坂口委員 確かに、四十八年当時、各国の経済状態は非常に同時的な拡大基調にあったことも事実でございますし、また国内におきましても稼働率は九割を超えておりましたし、失業率も非常に少のうございました。また、過剰流動性が非常に高かったということもございますし、したがって、M2は対前年同月比で二〇%以上である、こういう状態があったことも事実でございまして、そうしたことは現在とはかなり大きな環境の違いであろうということは私も思うわけでございます。しかし、いま総理は外国要因というものを非常に強調しておっしゃったわけであります。外国からの製品の、石油を初めとする非常な物価高、それから為替レートの問題等々外国との絡みのお話を強調しておっしゃったわけでございますが、しかし、今回第五次公定歩合の引き上げ、あるいは預金準備率の引き上げ、あるいはまた総需要抑制政策等々、物価政策、金融を中心として発表になっているわけでございまして、かなり違った要因をお挙げになりながら、しかし、前回と同じような金融政策中心の物価政策というものをおとりになっている。  で、この辺のところに私少し疑問を感じる一人でありまして、金融政策にいささか偏り過ぎてはいないかという気がしてならないわけであります。われわれの人間の体にたとえて恐縮ですけれども、血圧の高くなったのに心臓の力を弱めて血圧を下げる治療をなすっているように思えてならない。むしろ末梢血管抵抗を弱めて血圧を下げるのが本当の治療方法であります。それを総理の方は、心臓の力を弱めてそして血圧を下げようとする、この物価上昇を下げようとする、そういうふうに思えてならないわけであります。金融政策が誤りであると私は言っているわけではございませんけれども、余りにもここに偏り過ぎてはいないか。特に第四次から五次の公定歩合の引き上げが非常に早かっただけに、これはまあ結果を見なければわかりませんけれども、その感なきにしもあらずでございます。それに対してどのようにお考えになりますか。
  86. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 第一次の石油危機の場合は、先ほど申し上げましたような一斉の値上げ基調が続いたわけでございます。したがって、財政、金融、あらゆる政策手段を総動員いたしまして対処せざるを得なかったわけでございます。今度の場合は、坂口さんがいみじくも御指摘になりましたように、日本の場合はこの前の場合とは非常に事情が違うと思うのでございます。  いまの場合は、どういうことをわれわれとして心がけなければならぬかと申しますと、海外から資源が高いものが入ってきた、これに対しまして、われわれは生産性を上げて、技術の革新を精力的に続けていって、これがわが国の経済に及ぼす犠牲をできるだけ軽減していくということが本筋の経済政策でなければならぬと考えるわけでございまして、金融政策というような政策手段をいまここで導入をすることは、本筋からいくと若干ディレールしておると言われても仕方がないと思うのです。あなたの御指摘のとおりだと思うのです。  しかし、わが国の場合、一つの問題は為替市場がいま不安定な状況でございまして、円を安定させなければいかぬという要請もございまするし、国際通貨の問で余り金利水準が落差があり過ぎるというようなことでは大変困ることになりますので、最小限度やはり国際経済の中での円滑な金融の運営というようなものも考えなければなりませんので、力点をそこに置いているわけじゃございませんけれども、為替市場で円対策をやる上におきましては、最小必要限度金融政策手段をここで援用する必要があったということが一つでございます。  もう一つは、まあ消費者物価はこれまで落ちついてまいりましたけれども、しかし、いま急速に卸売物価が消費者物価に波及しつつある、で、インフレ心理というものも動きつつあるというようなときでございまするので、金融政策といたしましても、そういった面から引き締め基調をとらしていただくということにいたしまして、インフレ気構えというようなものを芽のうちに摘むという必要から、こういう政策をとるべきでないかということもあわせて考えてやったわけでございまして、力点は仰せのとおり生産性の向上、技術の革新ということを通じてこの資源高の圧力に抵抗していくということが本筋でなければならぬことはわれわれもまく承知いたしております。
  87. 坂口力

    ○坂口委員 時間がないものですから、余り細かくお聞きしている暇がないのですが、金融政策、特に公定歩合等の問題は、これは日銀のお仕事の範囲でございますので、総理にお聞きするのは筋違いかと思うわけでございますが、金融政策全体として考えました場合に、いま総理のお考えを聞いておりますと、これは私の意見にもかなり同調していただいているわけでございまして、相なるべくならば、この状況の好転を見れば、早期に金融政策をまた転換をしたいというふうなお気持ちのようにお聞き受けをしたわけでありますけれども、簡単で結構でございますので、お答えいただきたいと思います。
  88. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 そのとおりでございます。     〔委員長退席、稲村(利)委員長代理着席〕
  89. 坂口力

    ○坂口委員 そこで、そうは言いますものの、そう総理がお考えになっておりますように、この六月ごろには愁眉を開くと言われるようなそういう状態にはなかなかむずかしいのではないかと私は予測している一人であります。  そういった意味で、いずれにいたしましても、現在の物価を早急に解決しなければならないことは事実でございますので、物価の問題の関係閣僚会議等は開いておみえになるわけでございますけれども、この際、総理が本部長になられて、物価対策本部でも設けてより積極的にきめ細かにおやりになるお考えがないかどうかをひとつ承っておきたいと思います。  それから、あわせて、ことしのこの公定歩合の引き上げ、そしてまた景気の動向等から見まして、新年度における税収にこれが大きな狂いを生ぜしめないかどうか、その辺についてどのような予測をしておみえになりますか、これは非常にむずかしい話でございますから、なかなかお答えにくいかと思いますが、コメントがございましたら、ひとつしていただきたいと思います。
  90. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 物価対策本部を置いて、総動員で、総力を挙げてやるべきじゃないかという御指摘でございまして、ごもっともに存じます。いまわれわれとしては物価対策閣僚会議というものを持っておりまして、常時これを開きまして意思統一を図りながら全力を挙げておるわけでございまして、それで足らないというような場合は、また新たなアプローチを考えさせていただきたいと思います。  第二の問題は大蔵大臣の方からお答えします。
  91. 竹下登

    ○竹下国務大臣 御案内のように、五十五年度税制は政府経済見通し等による経済諸指標を基礎としてつくってきたものでございます。とにかく、いまも坂口委員指摘になりましたが、言ってみれば、経常収支の問題と卸売物価の問題、これが大きく食い違っておりますものの、他の諸指標は特に鉱工業生産等は大変堅調に推移しております。したがって、底がたい景気であるということも一応言えるわけでございます。そこで、ことしになってから二・七五%公定歩合の引き上げがあったわけでございますけれども、安定成長軌道から全く外れてしまうとは今日の段階でもとより考えられませんので、税収見積もりにつきまして現段階でこれを変更する特段の判断材料というものは見当たらないということであろうと思います。
  92. 坂口力

    ○坂口委員 一つ、小さな問題でございますけれども、特にこういうふうに金利が急速に上がってまいりますと、企業の中でも、中小零細企業にとりましては非常に苦しい金融環境になると思うわけでございます。  そこで、こういうふうに全体が引き上げられておりますときに政府系の金融機関すべて据え置いてほしいというようなことは、これはなかなか無理な話でございまして、できないことは私も重々わかっておりますけれども、特に小規模向けの、たとえば小規模企業経営改善資金等の利子等につきましては、据え置きと言いたいところでございますけれども、引き上げ幅を極力圧縮するというような方向の検討ぐらいはなされてしかるべきではないか、こういうふうに思いますが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  93. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、中小企業に対する政府系の金融機関の基準金利につきましては、従来からも極力低位に定めるように努力しておりまして、いわゆる最優遇金利でございます長期プライムレートと同水準あるいはそれ以下の金利で従来定めております。特に零細企業向けでございます先生御指摘の小企業等経営改善資金につきましては、現状では年七%というふうにかなり低い水準でございますが、現在検討中でございますけれども、今後とも零細企業の経営の実態を十分勘案いたしまして定めていきたいというふうに考えております。
  94. 坂口力

    ○坂口委員 大臣、何かございますか。——中小企業庁の方の御答弁、いささかあいまいもことしたところがございまして、明快ではなかったようでありますが、ひとつこの点は十分配慮をしてお取り組みをいただきたいということをお願いしておきます。  それから、これは私の方の同僚議員古川議員が大蔵大臣にお聞きをいたしておりますが、先日この委員会におきまして税制調査会の会長から中期答申につきましてはひとつ改正の必要性があるということを示唆した御発言もございました。ぜひひとつこの辺の御見解を何っておきたいと思うわけであります。  それは、前回の中期答申の中核になっておりますのは一般消費税でございましたけれども、この一般消費税の問題は受け入れられないということに大体なったわけでございますし、その中核の柱を失うことになったわけであります。したがいまして、ここに新しい中期答申なるものがつくられてしかるべきだというように思うわけでございまして、この辺に対するお考えを、この際もう一度重ねてでございますが、伺っておきたいと思います。これは大臣の答弁はきのうございましたので、できれば総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。大臣にも御発言いただいても結構でございます。
  95. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政再建の問題につきましては、本院の決議をいただいております。これは非常に工夫された決議でございますので、われわれもこれをてことしてその手法について今後とも協議に入りたいと思います。  昨年十二月の税制調査会昭和五十五年度の税制改正に関する答申におきましても、「従来の検討の方向及びその後の経緯を踏まえつつ、財政再建の進め方及びその中における税制のあり方についてさらに検討を続けることとする。」このようにされておりますので、広範かつ掘り下げた検討を行うに当たりまして、どのような形でいまおっしゃったような中期的な問題等の御審議税制調査会にお願いしていくかということにつきましては、大蔵大臣から本委員会での審議の状況を税制調査会会長に正確に伝えて、その上で検討してもらおう、こういう基本的姿勢であります。
  96. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 大蔵省から財政試算を出しまして御審議をいただいておるわけでございますが、これは増税の額を示したものでもございませんし、また歳出を約束したものでもございませんで、こういう仮定に立って計算をしてみると、歳入、歳出はこういうふくらみを持ち、こういうバランスになるが、その中から財政再建のあり方、税制の今後の進め方についての検討を探っていただこうという趣旨で出たものと私は思うのでございます。したがって、今後、本院の決議にもございますように、歳入、歳出両面から広く検討を進め、また国会初め各方面の意見を十分拝聴しながら具体的な財政計画というものは立てていかなければいかぬものと思うのでございます。税制改革というものはそういう手順を踏みながらやっていかなければいかぬと思うのでありまして、そういう含みでやりたいと思っておるのがいまの私の心境でございまして、具体的な数字にわたることはまだ申し上げる自信はないのでございます。
  97. 坂口力

    ○坂口委員 それじゃ次の問題に移らせていただきたいと思います。  現在、自民党の中でも政治資金規正法等が検討されていることが新聞等でも報じられているわけでございます。各企業の中には、それと関連をいたしまして使途不明金というのがかなりたくさん出ているわけでございます。最近三年間の使途不明支出金の状況というのを国税庁の方からお聞きをいたしますと、資本金一億円以上一万七千社のうちの約二五%、四千二百社を昭和五十三年度調査しておみえになりまして、その中で約三分の一の千百社くらいは使途不明金がある。その総額は三百三十七億円、平均いたしまして一社当たり三千万ぐらいだ、こういうお話を伺ったわけであります。これはまだ氷山の一角であろうかと思いますし、この使途不明金というのは、非常にいろいろの意味で不純なものを生み出す元祖になる可能性もあるわけであります。     〔稲村(利)委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、このことを今後どのように解決をしていくかということは非常に重要な問題であるというふうに考えているわけでございまして、ぜひこの際にお考えを聞いておきたいと思います。
  98. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは坂口委員も御勉強なすって、資料を提供しておりますアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス等々の例もいろいろございます。そこで、制度上、技術上検討を要する問題ではございますが、これらを一つ一つ解決する道を探求いたしてまいりまして、御提案を実現できるかどうか、この際、本腰を入れてこの問題については検討に当たってみたい、このように考えております。
  99. 坂口力

    ○坂口委員 もう時間がないものですから、はしょりまして申しわけありませんが、もう一点、グリーンカード関係のことをひとつお聞きをしておきたいと思います。  この郵貯とマル優制度の間の問題、いままでもこの委員会で何度か議論になってきたところでございます。その中で一つだけお聞きをしておきたいと思いますが、この郵便貯金の名寄せというものが本当にできるのであろうかということでございます。これも、国税庁等からの資料をちょうだいいたしましても、なかなかそれができていないということがそこで述べられているわけでございまして、これは今後に大きな問題を残すのではないかと思います。  そこで、この郵貯を利用した脱税を防ぐ対策というものも、これはこの際に明確にしておく必要があるのではないかと思います。今回の改正案の第三条に「郵便貯金の利子所得の非課税に関する経過措置」というのがございますが、この三条二項に「昭和五十八年十二月三十一日以前に預入された郵便貯金法第十条第一項(貯金総額の制限)の郵便貯金については、改正前の所得税法第九条第  一項第一号(非課税所得)の規定は、なおその効力を有する。」こうなっているわけでありますね。これは第三条二項でございます。このままでございますと、どういたしましても名寄せが困難であり、そして、脱税の行われる可能性もかなりありということでございまして、ぜひこの辺のところをひとつ、これは今回の法律案もきょう通過するわけでありますから、今後の問題でございますけれども、少しここを修正を今後加えるべきではないか、こういうふうに考えるわけでございまして、ちょっとこれをひとつごらんをいただきたいと思います。  その改正案の第三条二項のところ「昭和五十八一年十二月三十一日以前に預入された郵便貯金法弟十条第一項の郵便貯金については、」という、その次のところに、昭和五十九年十二月三十一日までにその郵便貯金の受け入れの取り扱いをした郵便局にその者の少額貯蓄等利用者カードを提示して、氏名または名称及び少額貯蓄等利用者カードの交付番号を告知し、その郵便貯金に係る通帳または貯金証書に当該交付番号の記載を受けた場合に限り、という言葉を挿入してもらえば、その辺のところが解決できるのではないか、こういう意見でございます。これは急にいま申し上げたことでございますので、今後ひとつ御検討をいただきたいということを申し述べたいと思うわけでございます。これに対する何らかの御回答があればいただきたいと思います。  それからもう一つは、これも同僚議員から出たことでございますけれども、プライバシー保護に対する法律の制定について、この際、積極的に取り組みをいただきたい、こういうふうに思っているわけでございますので、これにつきましての御意見とあわせて、ひとつお答えをいただいて終わりにしたいと思います。
  100. 竹下登

    ○竹下国務大臣 最初の問題でございますが、制度上とか手続上の相違等が確かにございます。これにつきましては、今後、大蔵省、国税庁、郵政省において万金の措置を講ずるようにこれは協議していくという基本的な精神であります。そうして、具体的な御指摘につきましては、確かに、いわばもともとであるというようなことで乱用されるということでは困りますので、これに対する具体的方策についての解決のめどをつけた上、今後御提案の趣旨を踏まえながら、総合課税移行時までにこれは結論を得たいというふうに考えておるところであります。  そして、今度は、グリーンカード導入とプライバシー保護の関係でございますが、これはもとよりこれが国民総背番号制度につながるというような性格のものではございませんが、なおOECDの勧告等によりまして、いわゆるプライバシー保護の法律をつくれと、こういう傾向がいま見えておることは事実であります。先進国でもそれぞれつくられております。この問題につきましては、先般総理のところで行官長官、総務長官、私、お呼びになりまして、とりあえず総理府、行管で検討するということになっておりますが、いわゆる情報公開法とうらはらの一つ法律でございますので、これはまじめにこれから検討を開始するという段階にあることを御報告することをもってお答えにかえさせていただきます。
  101. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  102. 増岡博之

    増岡委員長 多田光雄君。
  103. 多田光雄

    ○多田委員 総理、御年配ですから、古くからの信なければ立たずという諭しが伝えられておることは御存じだと思います。KDD汚職の問題だとか、あるいは最近起きましたK・ハマダにかかわる問題、こういう問題が政治に対する国民の不信を買っておることは、これは表面にあらわれた世論調査の数字を超えて深刻なものだというふうに私は思っております。特に一昨日、私この問題を当委員会で取り上げましたが、きょうは総理がいらっしゃるということで、重ねてこの問題について総理にお伺いするわけですが、それは大平内閣にとって綱紀粛正というのはいわば最大の課題の一つであると考えておりますし、同時に、きょうは税制の問題を審議しているわけですが、公平を最大の根幹とする税務行政が本当にそうなっているかどうかというものが問われる中心問題の一つだというふうに私は考えております。これに対してあいまいな態度をとった場合、どんなに口でうまいことを言っても、私は国民は政治を信頼しない、こういうことになるというふうに思うのです。  それで、一昨日の本委員会審議で、K・ハマダ氏が小佐野賢治から立てかえてもらった百二十万ドル、当時のレートで約三億六千万円ですが、もしそれが贈与されたものであれば、その贈与税額が二億四千八百万円に上るということ、これは国税庁答弁でした。それから、小佐野がK・ハマダ氏への求償権を放棄したかどうかについては、ここにありますが、ロッキード公判の冒頭陳述の補充書では一切触れておりません。また、国税庁も調査してないということから、時効が成立しているかどうかが不明であるということ、これが私どもに明らかになった点であります。  新聞などが報道しておりますように、K・ハマダ氏が衆議院議員の浜田幸一氏であるならば、ラスベガスでバカラなどという日本でいうオイチョカブ、こういう賭博行為にふけって、それで負けた金を小佐野賢治に立てかえてもらう。その金には御存じのとおりロッキード事件の汚れた金が含まれているわけですが、こういうことになりますというと、政治の権威を国民から失墜することはもう明々白々であります。政治家は、賭博ですって莫大な金を贈与されても二億四千八百万に上る贈与税は取られない。他方、庶民は十万、二十万の税金でも厳しく取り立てられるということであっては、政府の財政再建について国民の信頼を得ることができないことは子供でもわかることです。  総理は、自民党の総裁として、浜田幸一氏に事実の真否を確かめられたか。もしそれが事実であるならば、国会議員として、また政治家として、国民の納得できるような進退をするように指導されるといいますか、協力されるといいますかあるいは援助するというか、そういうことが私は党内の同志的な態度ではないか。ましてあなたは一国の総理であり、また与党の総裁であります。また、少なくとも総理としてそれが困難であるならば、国税庁の長官に指示して、第一に、K・ハマダ氏がわが国の課税権の及ぶ日本人であるのかどうか。第二番目には、浜田幸一氏であると特定できるのかどうか。三番目には、求償権がどうなっているのか。こういうことについて調査させて、国民の前で疑惑を解明するのが総理の大きな任務だと私は思います。この点について総理の御所見を伺いたいと思います。
  104. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 浜田幸一君には、K・ハマダということが出てまいりましたので、直接御本人に真偽を尋ねました。本人はこれを否定されました。したがって、本人が否定される以上、それ以上の措置をとるわけにはまいらなかったのでございます。それが第一点でございます。  第二点といたしまして、このK・ハマダという問題が出てまいりましたのは、ロッキード事件の公判を通じて出てまいったことでございまして、これがどのように、これからどういう成り行きを経過してまいるのか、その間でこの問題がどのように解明されるのか、これは公判を通じて明らかにされていくことと思うのでございます。  それから、税務当局の問題でございますが、税務当局も、一般論といたしまして、いろんな事件に関心を持っておることと思うのでございまして、どういう問題は、どういう時点になればどういう対応をするかというようなことにつきましては、税務当局自体が判断をいたしておることと思います。
  105. 多田光雄

    ○多田委員 まことに私は奇怪な気持ちがするのです。総理は、参議院の予算委員会で、もしそれが真実であるならば許しがたい事件だ、こういう、いわば、許しがたいという、最上級の言葉で批判をされたのです。その問題を本人が否定しているからということによって、それ以上追及なさらないということは一体どういうことなんでしょうか。  そこで私は聞きますが、本人が否定さえしていれば、どんなことでも一体許されるのだろうか。国税庁は、本人が否定しさえすれば、本人の言い分をすべて認めて税金は取らないというのでしょうか。もしそうであるなら、K・ハマダ氏だけでなく、日本の納税者すべてに対しても平等にそうした方針で臨むべきであると思います。私は、国税庁長官に、一体そうなさるのか、伺いたいと思います。時間がありませんから、お説教でなく簡潔に述べてください。
  106. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 もし伝えられるようなことが事実であれば、それは許しがたいことであることはもう申すまでもないことでございまして、私は、聞いたか聞かないかということをあなたがお尋ねになりましたから、聞いた、そういう答えが返ってきた、ということを正直に答弁したことでございます。
  107. 多田光雄

    ○多田委員 浜田幸一氏は記者会見で、ここに各紙がありますが、五十ドル、百ドルの賭博をやったことまで否定しません、こう前置きをして、ロッキード事件に関するようなことは絶対にありません、そんな大それたことはありません、そう言われるならば争わせてもらわなくてはならない、こう言っていることがどの新聞にも報道されているのです。  もしそうであるならば、三月六日の読売新聞の夕刊、三月七日の朝日、毎日新聞など全国各紙の朝刊の一面トップに、浜田幸一氏と断定して報道されていることに対し、各社に対して、政治家として、名誉の棄損として、記事の取り消し及び謝罪を要求するのが当然であると私は思います。本人ができなければ、その政党がやっておかしいことではありません。  ところが、これらの措置は全くとってないことがはっきりした。きょう同僚議員である正森議員が読売や朝日、毎日、NHKのしかるべき人に確かめたところ、抗議もなければ謝罪要求さえ来てないという。それでも総理、あなたは、本人が否定しているから何もしないということをこれからもおっしゃっていくのでしょうか。
  108. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 本人にお尋ねいたしましたところ、そういう自分としては伝えられているような事実を否定されたわけでございます。そのことを正直にいま御答弁申し上げたまででございます。しかし、伝えられるようなことが事実とすれば、それは政治家といたしまして許しがたいことであることは申すまでもないことで、先ほど申しましたとおりでございます。  こういう状況のもとにおいて、党として何をなすべきであるかということが私にとりまして問題であることは、あなたの御指摘を待つまでもございません。  この問題につきましては、御当人の浜田君自体がどのように対処されますか、私はそれをいま見ておるところでございます。政党は同志の集まりでございます。検察当局ではないのでございまして、まず御本人がどのように対処されるかを見、また彼自身も一政治家としていろいろお考えいただいておることと思いまするし、友人諸君もいろいろ心配されておることは事実なのでございまして、そういうような状況を十分見ながら、党としてなすべきときになすべきことはしなければならぬと考えておりまするけれども、いまの場合、党といたしましては、本人に伺ったところこういう返事がございましたということをお答えする以外に、私はまだ御答弁申し上げる材料を持っていないわけです。
  109. 多田光雄

    ○多田委員 答弁をする材料がないということは、それを徹底的に究明するという行為もなさっていないし、その意欲もないということのあらわれだと私は思うのです。それ以外に解釈のしようがありません。  そこで、私、先ほど国税庁長官に伺ったのですが、先ほどのように、本人が否定さえするならば、二億以上に達する脱税と思われる措置を放任するのか。それから国税庁として、いままで、この問題が出てからもうかなりの日時がたちますが、それ以前から、また検察庁が裁判所へ出した補充書が出てから、この問題でミスターK・ハマダに接触する機会を持ったのか。あるいは検察庁その他から資料をとって調べようとなさったのか。それを答弁していただきたい。
  110. 磯邊律男

    磯邊政府委員 結論から申しまして、いま御質問がございましたようなことに対して、何らアクションを起こしておりません。といいますのは、いろいろな情報、資料というのを収集いたしまして、それによって課税に適正に反映させたいというのは、われわれ執行の任にある者にとっては当然なことでありますが、ただ、実際に税務調査をいたします場合には、やはりタイミングというものがございます。それからまた、われわれが、何ら資料も持たずにただ納税者のところに行っても、的確な調査ができるわけでもないのでありまして、現在のところ、新聞紙上等でいろいろ言われております事案につきましては、しばらく裁判の推移等を見まして、こういったことを機会に調査すれば的確な調査ができるだろうという機会をとらえて調査することが最も効率的であろうかとわれわれは考えております。そういった意味におきまして、現在は、いま御質問がありましたようなアクションは何らとっていないということを申し上げておるわけでございます。
  111. 多田光雄

    ○多田委員 この間も言いましたけれども、税務行政は、強い者には弱く、弱い者には強いのです。これが庶民の声です——答弁はよろしいです。総理、私は、あなたが一体日本の総理、総裁なのかという疑問をもう一度感ずるのです。あなたは、こういう問題は政治の大道から外れたささいなことと思っているのでしょうか。それとも、口で許されぬことだと言いながら、ずるずるとさしておいて、そのうち適当なチャンスを見てやる。こういうふうに、問題を徹底的にえぐろうとなさらないずるずる内閣だと私は思います。その点で、私は次のことをお伺いしたいと思うのです。  自民党内でも、三月の十八日、憲政記念館の会合で、福田元首相、三木元首相、それから中曽根康弘氏のいわゆる実力者が、国会での浜田幸一氏の証人喚問を支持することを確認したと新聞に伝えられております。新聞報道です。「浜田喚問応じよ」これは読売であります。当然、自民党総裁としても、あなたがよく言われる決断をすべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  112. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 民主政治というものは、やるべきときにやるべき手続をもってやらなければならぬと思うのでございます。浜田君の問題についての自由民主党の態度はまだ決めていないわけでございます。あなたはもう、はや結論は出ていると断定、予断されて、それを前提に自由民主党を誹謗されておりますけれども、それは少し早過ぎるのではないでしょうか。手順を踏んで、やるべきときにやって、その仕上げを見てから御批判をいただかなければならぬと思うのでございます。民主政治というものはそういうものだろうと私は思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  113. 多田光雄

    ○多田委員 民主政治というものは自民党にとって都合のいい政治ではありません。国民にとって都合のいい政治でなければならぬと思うのです。たとえば、いま総理は私に向かって独断的だと言いましたが、すでに小佐野賢治に対する議院証言法違反事件冒頭陳述補充訂正書でもって検察側から出されている問題です。これでアクションも起こさないとするならば、一体どういうことになるのでしょうか。私は大平内閣の底が見えたと、はっきりこの場で言いたいくらいです。  委員長、時間がありませんので、関連で……。これで終わります。
  114. 増岡博之

    増岡委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。渡辺貢君。
  115. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 多田委員からも質問がありましたけれども、政治を担当する最小限の前提が政治倫理の確立であるというふうに私は考えております。そういう点できわめて重大な問題だったということを改めて指摘したいと思います。  そこで、時間がありませんので、簡単にお聞きをいたしたいと思うのですけれども、三月十九日に物価問題関係閣僚会議が行われて、七項目の決定がされております。同時に、その前提として、電気、ガスの値上げの査定がやられているわけでありますけれども、これは国民生活にとってきわめて大きな影響を与える、単に国民生活に大きな影響を与えるだけでなくて、昭和五十五年度の政府の財政見通しそのものの基盤を揺るがすというふうに考えられるわけであります。同時に、ことしに入って二回の公定歩合の引き上げが行われて、九%という高金利です。これがどれだけ中小企業や国民生活に重大な影響を及ぼすかもわかりません。こうした点で異常な物価の上昇や高金利、しかもそれが政府主導によってやられるという事態であります。ある新聞によると、こういうふうなことが書かれております。政治力の弱体化がインフレ退治の切れ味を鈍らせている、こういうふうなことが言われているわけでありますけれども、私は、五十五年度の予算がまだ成立をしていない現在でありますが、たとえば年度途中においても、日本共産党が三月十七日に提起をいたしましたような緊急の物価対策、とりわけその第五項目の中で金融財政政策について触れているわけですが、二点について質問をし、御答弁をいただきたいと思います。  一つは、大企業本位の大型プロジェクトです。単に公共事業を総需要抑制の管理体系の中で見るというだけではなくて、国民生活密着型は精力的に進めながら、大企業本位の大型プロジェクトに対しては、大胆な見直しをしていく。  同時に、第二番目には、これもすでに正森委員等から指摘がされておりますように、F15制空戦闘機など疑惑の新しい軍事装備、こういうものについてもメスを入れて、大胆な軍事予算の削除を行う、つまり年度途中においても国債の減額を行うべきである、こういうふうに考えるわけであります。これは当然物価の抑制、あるいは日銀総裁も言っておりますように、安定した金融体制をつくっていく上でも大きなプラスの効果があるというふうに考えております。  二番目は、これだけの物価の上昇などでありますが、物価問題関係閣僚の中で、これはとりわけ大平総理大臣の発議で入れたと言われている生産性の向上は物価抑制の最大の決め手の一つである、生産性向上のために各界の努力を期待したい、こういうふうな前文が入っているわけですが、すでに大企業などでも減量経営、九〇%を超える生産設備の嫁働などでかなり高い労働強化、労働密度がやられて、失業者も百万を超えております。四十代、五十代の働き手が死亡するというような事態も起きているわけでありますけれども、そういう点から、十分な担税能力のある大企業に対する法人税の引き上げ、同時に国民の中に活力を注ぎ込んで、国民のコンセンサスを受けながら財政再建を進めていく、そういう立場からも国民に対する、物価調整減税とも言われております減税措置をとるべきではないかというふうに考えるわけです。  この二点についての質問をし、お答えをいただきたいと思います。
  116. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 ことしの予算をわれわれが編成いたしますときに考えました原油の値段、為替の相場、そういった点はわれわれの予想より若干上目に来ておることは事実でございます。けれども、われわれの判断では、われわれの努力いかんによりまして、われわれが立てました経済の見通し、そしてそれをベースにいたしましたことしの予算案は実行できるものである、またそれを円滑に実行しなければならぬという考えに変わりはないわけでございまして、この段階におきまして、いまあなたが言われたような、予算案並びに政府の物価政策の基本について改定を考えるということはいま政府は念頭にございません。決めました既定の方針を着実に実行していくことによってこの困難な時期を乗り切りたいと考えておりますので、格段の御協力をお願いいたします。
  117. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そういう御答弁でございますけれども、しかし、事態はきわめて深刻で、昨年はサマーレビューというふうにも言われておりますが、ある新聞によると、ことしはスプリングレビューだ、ただ発想の大胆な転換が必要だということを最後に強調して、私の質問を終わりたいと思います。
  118. 増岡博之

    増岡委員長 玉置一弥君。
  119. 玉置一弥

    ○玉置委員 いつも一番最後の質問で大変恐縮をいたしますけれども、特に最近の話題、どうしても物価対策ということで、先ほども各党からいろいろな質問が出てまいりましたけれども、一昨日、十九日に物価閣僚会議によります「当面の物価対策について」というもので、一応政府としての各省連絡の確認ということが終えられたというお話を聞いております。そして個々に、財政面あるいは金融面、そういう面でいつもに比べてかなり早い物価対策がとられている、そういうふうに感じておりますけれども、しかし、実際のところ、野菜、その他の素材産業あるいは生産財産業、そして耐久消費財産業、それぞれ分けて段階的に値上がり傾向が違うわけでございますけれども、今後いろいろな対策をとられた結果、果たしていつごろどうなっていくんだろうという大変な心配があるわけでございます。特に、今回閣僚会議でいろいろな方面にわたる対策ということを考えておられますけれども、総合的に見て、特に五十五年度の景気が、現在の閣僚会議で確認をいただきました内容によって今後どのように変わっていくのか、その辺についてお伺いをいたしておきます。
  120. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 ことしの経済でございますけれども、御案内のように、着実に拡大基調にいまあると考えております。すなわち、民間の最終消費需要は手がたいものがございまするし、また民間の設備投資、これは必ずしも大型なものではございませんけれども、民間の設備投資も底がたいものがございます。輸出も去年の暮れからことしの春にかけまして好調を記録いたしておりまして、いまのところ経済の拡大基調は順調に維持されておる、雇用も若干ながら改善を見ておるわけでございます。  問題は、あなたが御指摘のように、まさに物価にあるわけでございまして、物価につきまして、卸売物価がその上げ足を相当速めてまいっている。これがどのように消費者物価に響いてくるかということが懸念されることと、円為替が今後安定するかどうかという点が心配になっておるわけでございます。そこで、先般来、御承知のような、財政、金融両面にわたる政策に加えて、個別的な物価対策を軸にいたしました総合政策を打ち出し、日銀もまた第五次の公定歩合の改定をいたすということにいたしまして、この緊張した時期に対処することにいたしたわけでございます。先ほどお話し申し上げましたように、私は、この春が一番ピークと申しますか、物価につきまして正念場であろうと思うのでございまして、国民と一体になりましてこの時期を乗り越えますならば、やがて愁眉を開く段階を迎え得るのではないか、そういう感じがいたしておるわけでございます。われわれといたしましては、これまで西独と並んで世界経済の危機に懸命な対処をして世界の評価も受けておるわが国でございますので、いよいよ決心を新たにいたしまして、第二の石油危機も乗り越えなければならぬし、乗り越えるだけの力量を民族は持っておるのではないか、こう思うのでございまして、そういう意味で、ことしの経済につきましては、楽観はいたしておりませんけれども悲観もしていない、いま立てました計画を変えようとかいうつもりはないわけでございまして、その着実な運営を図って所期の成果を上げなければならぬといま心組んでおるところでございます。
  121. 玉置一弥

    ○玉置委員 非常に楽観的と思えるような発言があったのでございますけれども、たとえば、卸売物価を見ましても西ドイツの二倍近い状態に上がっている、そして、消費者物価については西ドイツにほぼ近い状態である、そういうように思われます。ただしかし、いまの経済構造から考えて、卸売物価がいつまでも消費者物価に響いてこないということがまず考えられない。そして、現在、三月に入ってもなおかなり大幅な卸売物価の上昇を見ているわけでございますけれども、われわれとして本当に知りたいのは、いつごろがピークになるだろうという心理的な安心感といいますか、そういうものをまず得たいということだと思います。そして、現在とられました対策、そういうものによって、このままいけば、経済の自然原則とかそういうものでいけばどこまでいって落ちつくのか、それよりもどういうレベルで抑えていくのかという政策面、その辺の回答をいただきたいと思います。
  122. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 ピークは、先ほど申し上げましたように、三月、四月、五月、このあたりが私は正念場ではないかと考えております。  それから、どこで抑えるかということでございますが、これはことしの経済の見通しを立てて発表いたしました政府の見通しを変えるつもりはないということでございまして、あの目標の達成を期するということでございます。
  123. 玉置一弥

    ○玉置委員 経済企画庁の方は……。  先ほど総理の方から、ことしの見通しについて変える気はないということは、一応物価上昇率六・四%ということでございますね。経済企画庁にお聞きをいたしたいのですが、六・四%という物価上昇率を出されましたときの数値、基礎データ、それといまと状況的な変化というのはどの程度あって、もし同じ推移でいけば、当初の計算どおりいきますとどの程度の誤差が出てくるのか、わかりましたらお答え願いたいのです。具体的な数字がなければおおよそということで結構でございます。
  124. 坂井清志

    ○坂井政府委員 消費者物価の見通し六・四%でございますが、ご案内のようにこの五十四年度、前年度が私どもの実績を織り込みました見通しで四・七%、それが六・四%ということになりますと、多少上がるわけでございますが、その根拠といたしまして、私どもは、昨年来の原油を初めとする海外産品の上昇、それから最近の円安傾向、さらにいま決まりつつございます公共料金の影響、こういうものを全般的に勘案をいたしまして六・四%という見通しを立てたわけでございまして、もちろんそのほかにも経済の主要な指標をいろいろと織り込みましてこの目標を定めたわけでございます。  その後の動きにつきましては、これも御案内のように、最近短期的に野菜が急騰したりいたしておりますけれども、これはまた春野菜が本格的に出回ってまいればおのずから落ちついてまいることでございましょうし、公共料金の方につきましても、私どもその厳正な査定という立場は十分貫いておるつもりでございますし、今後この卸売り物価の波及がかなり出てまいるとは思いますが、引き続いて主要な物資の需給動向、価格動向を十分監視してまいりまして便乗値上げ等を防ぐということに努力をいたしますれば、これはもちろん政府だけではなしに民間各界の協力を得てやるわけでございますが、六・四%という目標、これは私どもの努力によって達成可能であり、それに対して十分努力をしてまいりたい、このように考えております。
  125. 玉置一弥

    ○玉置委員 六・四%と出されましたのはたしか一月ぐらいであったと思いますけれども、そのときに一応下期の予想が同時に出ておりまして、五十四年度下期六・五%ということだったと思うのです。これは普通考えれば、下期より平均で〇・一%下がることになるわけで、そうなりますと、現在の物価より若干下がるような何かがないととてもじゃないけれども抑え切れないのではないか、そういう気持ちがするわけなんです。その辺についていかがでしょうか。
  126. 坂井清志

    ○坂井政府委員 いま先生おっしゃいました六・五というような、これは下期の数字としておっしゃったかと思いますが、私ども特にそういう想定はいたしておりません。  なお、この六・四%という目標は当初十二月の予算編成のときに一応立てまして、その後一月に入りまして正式に閣議で御了承をいただいたわけでございます。  一番新しい消費者物価の動きで申しますと、一月の全国が前年同月比で六・六%の上昇、続きますこの二月の東京都区部の速報が七・六%の上昇ということで、最近時点かなりレベルが上がっておりますが、特にこの一、二カ月は野菜の影響が非常に大きゅうございまして、野菜だけをとりますと二月はちょうど前年同月の倍になっております。これが四月に入りますころにはある程度落ちついてくるのではないか。ただ、別途の卸売物価からの波及、さらに公共料金の影響等もございますので、先ほど来総理も答弁されておりますように、四月から五月、六月にかけてが前年同月比で見まして本当の高い時期に当たるのではないか、このように考えておりますが、しかし、それにいたしましても、現在時点よりもさらにレベルが大幅にアップするというふうには見ておりません。そのあたり、私ども及ばずながらまた引き続き努力をしてまいりたい、こう思っております。
  127. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまのところは、一月、二月の当初と予想された内容はそう変わってこないと思います。しかし、今回のインフレ、値上がり要因としては、やはり原油の値上がり、そして円安という海外の要因であるということが言われておりますけれども、ただ、このまま黙っていきますと、原油の値上がりがまだまだ出てくる、そういうふうに言われております。その辺でまずひとつお考えいただきたいのは、原油の値上がりというものをただ相手が言うままに認めていく、まあそれなりにいろいろな折衝がございますけれども、そういう通常ベースの折衝を除いて、いろいろな対策を打たなければ、要するに資源のない弱みがありまして、どうしてもそういう態勢が出てくるのではないかというふうに思うわけでございます。そういう面から見て、五十五年度あるいは五十六年度、長期的に見ても、どういう対策をこれから原油に対してとっていかれるのか、その辺の姿勢あるいは具体的な案がもしございましたら、お伺いいたしたいと思います。
  128. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 資源に乏しいわが国でございますので、その大切な資源の確保に自信があるかということでございますが、第一次石油危機が始まりまして今日に至るまで数年経過いたしましたけれども、玉置さんも御案内のとおり、わが国の所要原油は今日まで計画どおり入荷いたしております。それから備蓄も若干ふやしております。それから石油製品の在庫も若干ふえております。したがって、そういった点につきましては、官民の努力によりまして今日までその供給を確保することに事欠かなかったということをお認めいただきたいと思うのでございます。われわれは、ことしもそういうようにありたいと思いまして、供給の多元化に努めますとともに、消費の節減も一層馬力をかけてやらねばいかぬといまやっておるところでございまするし、代替資源の確保につきましてもいろいろな手だてを講じておりますし、また講じようといたしておりますことは御案内のとおりでございます。  ただ、値段の点が、あなたの御指摘のようにこれは私どもの手の届かぬところにあるわけでございまして、こちらの期待どおりに値づけができないことは大変残念でございますが、こちらが節減して需給の緊張が緩和の方向に向かいますならば、そうむやみな値上げもできるものではなかろうということでございまして、この価格に対しましての一番の手だては、どういたしましても節約をもってこたえるということ、しかもそれは一国だけではなくて、消費国全体が一緒になって努力する、国際協力が非常に力強い力を持っておるわけでございまするので、そういうことを強めるように、サミットを初めといたしましてあらゆるシステムを利用いたしまして努力をしてまいりたいと考えております。
  129. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間があと三分しかございませんので、要点だけ全部言いまして、簡単にお答えをお願いいたしたいと思います。  いまのお値段の話でございますけれども、原油の需要量は確かに非常に低調な伸びといいますか、そういう中で特に今年度といいますか、一九八〇年につきましては、原油が比較的ゆとりがある。八五年に向かいまして、除々に供給量が低下をしていく。この一番大きな原因は、一つは、ソ連の生産量がダウンするということだと思います。ソ連がいま輸出国でありながら、これから将来に向かって今度輸入国に変わってくる、これがこれからの石油の値段を最も大きく左右する原因ではないか、そういうふうに言われているのは御存じだと思うのです。しかし、現在、このままいきますと、やはりOPEC同士の話し合い、そしてわれわれとしてはサミットという形で話し合いが行われておりまして、ぜひその両者を結びつけていくような何かを考えなければいけない。そういう実際のグループとしての話し合いをそれぞれやっていかなければ、個々に話していてもなかなか話がつかない、そういう気がするわけでございます。  そこで、まずお願いいたしたいのは、次回、イタリアかどこかでたしか行われると思いますけれども、サミットのときにOPECを呼んで、そしてOPECの皆さんと一緒にサミット、先進国の方々が話し合いができるような、そういう場を提案できないかどうか。それによってお互いがやらざるを得ないといいますか、やるべき内容、そういう分担ができる、そういうふうに考えるのでございます。長期的に安定を図るという意味から、やはり産油国と輸入国と、それぞれが本当に腹を割った話し合い、それぞれの立場ということじゃなくて、要するに、これから絶えず使っていく国、そして輸出する国と、それぞれの分担というものを明確にしていかなければいけないのではないか、そういうふうに思うのでございます。それが一つ。  それから、先ほどお話が出ておりますように、ことしの消費者物価七・六%、二月現在で非常に上がっておりますし、その後もさらに上がってきております。  ところが、今回の租税特別措置法あるいは所得税法に見られますように、給与所得者に対する所得税の軽減というものが行われてない。そして昭和五十年から全く現状のままである、五十二年に若干手直しがございましたけれども。その辺につきまして、われわれとしては物価調整減税というものをぜひやっていただきたいというお願いを申し上げたわけでございます。この委員会でも再三申し上げましたけれども、しかし、いまだに非常に冷たい返事しか来ないということでございます。  そこで、一つ申し上げたいのは、たとえば消費者物価が六・四%を超えた場合にどうするのか、六・四ということはある程度自信があるというふうな感じで先ほどお答えをいただきましたけれども、六・四%を超えたときに責任をとっていただけるのかどうか、あるいは責任をとるかわりに物価調整減税をやるというお約束をいただけるのかどうか、この二点についてお伺いをいたしたいと思います。
  130. 大平正芳

    ○大平内閣総理大臣 産油国と消費国との対話、協調というものがとれないものかということでございますが、第一次石油危機から今日を比較してみますと、産油国と消費国の間の対話は大変進んできたように思うわけで、双方の理解もよほど進んできたと思います。あのころは、第一次石油危機のころは、ほとんど手だてがなかったわけでございますけれども、いまは個々の消費国と個々の生産国との間の対話、DDオイルとかGGオイルとかいうものの姿で行われておりまして、わが国もそういう国々との接触をいま持っておるわけでございます。しかし、玉置さんが言われるように、サミットとOPECというようなことにまではまだいっておりません。これは集団的なコンセンサスを得なければなりませんので、なかなかむずかしいと思いますけれども、あなたがおっしゃるように、産消対話の促進ということにつきましては、日本も及ばずながら努力をいたしたいと考えております。  それから第二は、所得減税お話でございます。私はたびたび本院で御説明申し上げておりまするように、石油が値上がりを見ましたのでございますが、去年のちょうど倍になっておりまして、大体同じ分量の石油をことしも去年と同様に買うとすれば、二百五十億ドルぐらいの外貨を産油国に払わなければいかぬわけでございます。それだけの所得が移転するわけでございます。それだけ日本が貧乏になるわけでございますので、これを何らかの形で公平に国民に分担していただかないと日本バランスがとれないわけでございまして、これを計算すると、一人が七万円ぐらいになるわけでございます。一世帯が二十数万円にもなる所得の移転が無残にも行われておるわけなんでございます。そういうときでございますから、これをどのような姿で公、平に分担していただくかということになりますと、これは物価の形でか、あるいは料金の形でか、いろいろな形でこれを分担していただくより手はないわけでございまして、そういう非常にしんどい時期でございますので、減税をして差し上げるということは、政治で非常にやりたいことでございますし、魅力のある政策でございますけれども、いましばらく、こういう時期は御遠慮いただかなければならぬのじゃないかということが一つと、それから、財政の面から申しましても、ちょうど再建にかかったばかりでございまして、第一年度1こんなことじゃまだ第一年度と蓄えないじゃないかというおしかりをこうむっておりますけれども、五十五年度を第一年度として、ともかくも財政再建の第一年度を印し、刻したわけでございます。したがって、そういう、こんな大きな国債を背負っての財政体質の改善を図らなければならぬという時期は、何とか減税は御勘弁をいただきたい。そして、冬来りなば春遠からじと申しますか、この再建の時期を乗り越えてまいりますと、また減税を皆さんと一緒に御相談できる時期が来るのではなかろうか、そのときまではひとつごしんぼうを願いたいと思います。
  131. 玉置一弥

    ○玉置委員 まだいろいろ聞きたいことがあるんですけれども、大分過ぎてしまいましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  132. 増岡博之

    増岡委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。
  133. 増岡博之

    増岡委員長 これより両案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。椎名素夫君。
  134. 椎名素夫

    ○椎名委員 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、ただいま議題となっております所得税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、賛成の意を表明するものであります。  両法案は、利子所得、配当所得等について、総合課税へ移行するため所要の措置を講ずるほか、高額な給与収入に適用される給与所得控除控除率を引き下げ、企業関係租税特別措置等の大幅な整理合理化を行うとともに、土地税制についてその基本的枠組みを推持しつつ住宅地の供給促進の見地から改善を図ることを主な内容とするものであります。  まず、利子配当所得等の総合課税への移行であります。利子配当所得等につきましては、税負担の公平を図る見地から総合課税に移行するのが望ましいことは言うまでもないことであり、適切な措置と考えます。しかし、その実施に当たっては、本人確認と名寄せを的確に行うことが不可欠の課題であります。今回提案されましたグリーンカード制度はこのような要請にこたえたものであり、現段階においては有効かつ現実的な方策であろうと考えられます。なお、この制度実施されるまでに三年程度の準備期間を設けておりますが、この間において預金者等が不安を感ずることのないよう十分に準備を整え、この制度が円滑に運営されるよう切望するものであります。  次に、給与所得控除控除率の引き下げであります。現行の給与所得控除は、給与所得者の勤務に伴う必要経費概算控除と言われております。この場合、収入増加するにつれて何がしかの経費増加するとしても、それは収入に比例して増加するというよりは、むしろ逓減的に増加するものと考えられております。したがいまして、今回高額な給与収入に適用される控除率を現行の一〇%から五%に引き下げたことは妥当な措置と言えましょう。  さらに、企業関係租税特別措置については、政策目的の意義の薄れたものや政策効果の期待できなくなったもの等については、速やかに改廃を行う必要があります。今回の整理合理化は、適用期限にかかわりなく見直しが行われ、存続する項目についても大幅な一律縮減がなされ、この結果、昭和五十一年度以降三十二項目の廃止、五十一項目の縮減により約八五%の整備が行われたのであります。私は、政府がこの問題に真剣に取り組んだ態度に敬意を表するものであります。  最後に、土地、住宅税制については、現行制度の大枠を維持しつつ、宅地の供給の円滑化と土地の有効利用を推進するほか、地価の安定に資するため、総合的な土地政策の一環として、税制面からの適切な措置が講ぜられております。長期譲渡所得及び短期譲渡所得課税の特例制度における適用期限の定めの廃止、長期譲渡所得課税の特例制度の手直し、特別の買いかえ制度の創設、特定の中古住宅に対する住宅取得控除の適用等がそれであります。これらの措置を含む総合的な土地住宅対策によって、国民の強い持ち家志向にこたえ得るものと信ずるものであります。  以上申し述べた理由により、私は両法律案に賛成の態度を表明するものであります。  なお、財政再建は緊急の課題であり、昭和五十五年度はその第一歩を踏み出すべき年であります。両法案は、この厳しい制約条件の中で作成されたものであり、その間の政府の苦心は多とするものでありますが、引き続き、国民生活の基盤をなす経済の健全な運営と行財政改革等による歳出規模の抑制についての政府の万全の努力を期待するとともに、適正な負担に関する国民の十分な理解を得るための対話を積み上げ、あわせて今後の財政再建の進め方及びその中での税制のあり方について幅広い見地からの検討を怠らぬよう、この際、特に政府に要望し、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  135. 増岡博之

    増岡委員長 伊藤茂君。
  136. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私は、日本社会党を代表し、所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の両法案について、反対の立場から討論を行います。  この両法案の内容と本委員会の質疑の経過を見ますと、わが党が不公平税制の焦点として年来指摘をしてきた企業関係租税特別措置の整理、改廃や利子配当所得総合課税など、一定の改革が進行している側面については、国民世論を背景とする本委員会の論議の結果としてこれを評価したいと思います。  しかし、当面する国民経済の状況と税制民主化を要求する強い国民世論から見ますと、政府がいま実行すべき本格的な税制改革への決意はこの中にはほとんで見ることができないのであります。  昨年秋の総選挙で、国民は一般消費税の導入を強行しようとする政府の構想を明確に否定しました。そして徹底的な不公平是正、税財政の民主化を要求したのであります。しかるに、政府は、四兆円以上もの自然増収に安易に依存し、本格的な改革を先延ばしにした五十五年度税制を決定したのであります。この法案に示されるこのような姿勢は、私たち日本社会党も多くの国民も納得できない点でありまして、これが反対の第一の理由であります。  第二は、法人税の増税を見送ったことであります。勤労者に対しては、給与所得減税が三年間も見送られた結果として、厳しい負担を強いられている中で、また、当然の要求としての物価調整減税すら拒否しながら、大蔵省は、法人税の若干の引き上げを提起したにもかかわらず、財界の圧力に押されてこれを断念しました。このような姿勢で国民の信頼が得られるはずはないのであります。  反対理由の第三は、今後一層の大衆増税の計画をはらんでいることであります。一般消費税の構想は総選挙によって否定されているにもかかわらず、政府は、間接税の低いことなどを理由に、消費一般に着目する視点の必要性を指摘しております。形はどうあれ、国民の強く反対した一般消費税の再現を私たちは絶対に認めることはできないのであります。  第四に、租税特別措置の改廃に関連して、企業税制に関する不公平是正をいわゆる政策税制の狭い枠内だけでとらえ、企業税制における改革はほとんど終了したように評価をしていることであります。高度成長の支えとしてつくられてきたこの企業優遇税制の廃止は今日きわめて当然のことでありますが、同様の性格を持った各種引当金、準備制度を初め、大企業優遇の諸制度は厳しく見直されなければなりません。  今回退職給与引当金の一部改正提出されましたが、さらに各種引当金、準備金、受取配当益金不算入、支払い配当軽課や広告費課税などを含め幅広く改革が行われるべきであるのに、きわめてなまぬるい態度となっております。  第五は、土地税制であります。今日、三大都市圏、特に東京圏における地価の高騰、住宅事情は異常な状態に陥ろうとしておりますが、大蔵省は、昨年に引き続いて政策効果の測定もできない譲渡税緩和を再び提案をしております。このような無責任な状態では取り返しのつかない事態に陥るでありましょう。強力な総合土地対策を欠いたこのような態度は無責任と言わなければなりません。  最後に、所得税法の一部改正についてでありますが、利子配当所得総合課税具体化は、私たちの年来の主張が現実となったものとして評価いたしますが、五十九年一月まで長期の準備期間を置くこと、その間に税率は据え置きのままとすることは問題であり、あるいはプライバシー侵害の心配なども指摘をされるところでありまして、政府は、提案に当たってより徹底した努力を払うべきであったと考えるものであります。  以上、私は両法案に反対する理由を申し上げましたが、税財政の困難な情勢に当たって、国民本位の財政再建と徹底的な不公平是正、民主化の立場から私たち日本社会党は一層の努力を展開するものであることを表明し、討論を終わります。(拍手)
  137. 増岡博之

    増岡委員長 古川雅司君。
  138. 古川雅司

    ○古川委員 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題となっております所得税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案について、反対の態度を明らかにし、討論を行うものであります。  われわれが反対する理由の第一は、議題となっております両法案の改正内容はもとより、政府の税制改正に対する姿勢が当面する主要な政治課題である財政再建、国民生活の向上に対して十分とは言えないからであります。  特に、政府は五十五年度を財政再建元年と定め、大平総理大臣も所信表明演説で、財政再建については今後数年間でなし遂げると明らかにしております。  財政再建の推進に当たって、不公平税制の是正、既存税制の見直しは不可欠の要件であります。しかし、政府の財政再建策は、五十四年度当初に比べ四兆六千億円にも及ぶ税の自然増収のみで対処し、不公平税制に対しても中途半端な是正で事足れりとしております。このことは、五十五年度の税制改正による増収額が初年度で三千五百十億円であり、五十三年度の三千六百九十億円、五十四年度の四千八百四十億円に比べ、過去三年間で最も低い額であること、また、具体的な内容から見ても、利子配当所得の分雑課税の四年延長、法人税の税率引き上げ及び金融保険業の貸倒引当金縮小の見送り、土地税制の緩和など、不公平税制の温存と拡大を図り、しかも、所得税減税については顧みようとさえしていないことからも明らかであります。  こうした政府の税制改正は、さきの総選挙で示された取るべきところからきちんと取れという国民の期待に反するばかりか、逆に、五十五年度はともかく、五十六年度以降一般消費税の導入など本格的な大衆増税強行への志向を示すものと言わなければなりません。同時に、政府の言う財政再建策とは、経済や国民生活の実態を無視した単なる財政の帳じり合わせであることを改めて浮き彫りにするものであり、とうてい容認することができないのであります。  反対理由の第二は、われわれが日本社会党、民社党・国民連合と共同で、政府の五十五年度予算に対し、国民生活の擁護及び財政再建を推進する立場から修正要求を行い、税制面でも低所得者に対する所得税減税実施、不公平税制の是正などを要求したのでありますが、政府は、これに対してもかたくなな姿勢をとり、一切応じなかったことであります。  すなわち、昨年に引き続く所得税減税の見送りは、最近の物価高騰とあわせ、とりわけ低所得者層の生活を圧迫することは必至であります。  われわれは、低所得者層の生活防衛という観点から、必要最小限の所得税減税として、パートタイム勤労者の負担軽減を主目的とした所得税給与所得控除を現行五十万円から七十万円に引き上げること、年金非課税の立場から所得税の老年者年金特別控除対象年齢を現行の六十五歳から公的年金の支給年齢である六十歳に引き下げること、住宅取得控除の定額控除三万円を据え置くこと、また、住民税の標準世帯の課税最低限を百六十二万円に引き上げることなどを強く要求していたのであります。  同時に、われわれは、不公平税制是正の一環として、中小企業に配慮しながら、諸外国に比べて低率であり、かつ企業の収益動向から可能である法人税の引き上げ、原則非課税となっている有価証券譲渡所得課税の補完的な意味での有価証券取引税の引き上げ、実態が千分の一程度であるのに千分の五も認め、なお経過期間を置いて移行中の金融保険業の貸倒引当金の縮小、給与所得控除を年収入八百五十万円で頭打ちとすることを復活することなどを要求しておりました。  政府が、こうしたわれわれの税制改正要求をもし実施していれば、国民生活の擁護はもとより、国債発行額も政府案の一兆円減額に加えて三千八百五十億円の減額を可能とし、財政再建にも寄与できたものであります。  しかし、政府がわれわれの最小限の税制改正要求にすら応じようとしないのは、断じて納得することができません。  反対する理由の第三は、いわゆるグリーンカード制度の導入の時期等についてであります。  グリーンカード制度の導入は、われわれがかねてより強く要求してきた利子配当所得総合課税実施するために提案されております。  われわれも、政府が納税番号制のような極端な方法ではなく総合課税に向かって踏み出すことには、一定の評価を惜しむものではありません。  しかし、このグリーンカード制度そのものにも若干の問題を残しております。それは、利子配当所得総合課税実施が五十九年度からであり、今後四年間にわたって現行の分離課税による不公平税制が温存されることであります。しかも、この四年延長について、予算修正折衝、本会議及び委員会の質疑を通じ、早期実施を迫ったのでありますが、その根拠について政府はいまもって納得のいく回答をしておりません。  また、グリーンカード制度の導入は、課税の公平を確保するため、いわゆるマル優制度の利用者などにカードの交付について協力を余儀なくするものです。したがって、課税の公平化の実現については、政府もより厳格に対処すべきであります。  特に、郵便貯金は五十三年度の定額貯金だけを見ても、預け入れ限度額三百万円を超えるものは、政府資料の範囲でも件数で二万二百件、金額で二百十一億円を超えています。また、本人確認についても再調査等を行ってもなお未確認の過去三カ年の合計が七千件を超えております。これらの件数は、郵便貯金の名寄せ、本人確認等が二十八地方貯金局ごとの範囲でしか行われていないことから考えると、政府資料の件数と金額は氷山の一角とも推測されます。しかも、これら限度額を超えたり架空名義のものにも利子を支払い、なお所得税や贈与税の課税対象になっていないのが実態であります。郵便貯金が本来の目的である「国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進すること」を逸脱し、一部富裕者の脱税手段として利用されていると批判される理由もここにあります。  われわれは、グリーンカード制度の導入に伴って、郵便貯金も課税の公平を期するため、名寄せ、本人確認の励行はもとより、具体的な法改正などを提案したものでありますが、それに対し、政府は明確かつ具体的な対策を示さず、遺憾と言わざるを得ないのであります。  反対理由の第四は、土地税制の緩和であります。  土地税制の緩和が及ぼす宅地供給効果についてはきわめて疑問のあるところであります。大蔵省も政府税制調査会への提出資料や調査資料において、宅地供給の効果は余り期待できないものとしております。宅地供給に疑問が残る土地税制の緩和を、土地、宅地に関する総合政策とセットせずに単にひとり歩きさせることは、今日の物価動向とあわせて勘案すれば、逆に社会的不公正を拡大するものと言わざるを得ないのであります。  以上、四項目の反対理由に加え、昭和五十五年度税制改正が五十六年度以降の本格的増税への一段階とするならば、いわゆる一般消費税導入の意図を明確に否定し得ない政府の姿勢に大きな危惧を持つものであり、総選挙における国民の審判を尊重して、五十六年度以降のいわゆる一般消費税の導入を断じて行わないことを明確にするよう重ねて要求し、私の討論を終わります。(拍手)
  139. 増岡博之

    増岡委員長 渡辺貢君。
  140. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となりました所得税法並びに租税特別措置法の両改正案について、反対の討論を行います。  反対の理由の第一は、大企業、大資産家優遇税制の改廃がきわめて不徹底に終わっている点であります。  政府は、今改正で企業関係特別措置の見直しは一段落したと述べております。  しかし、廃止されたものはほとんど適用事例がないものに限られ、当初廃止予定の渇水準備金、航空機特別償却制度などは若干の縮減にとどめ、増加試験研究費税額控除制度など大企業にとって重要なものはほとんどそのままで、延長存続されているのであります。改正予定の退職給与引当金、貸倒引当金など引当金制度は、実績対比や国際比較から見ても、その是正は全く不十分であります。とうてい一段落などと言えるものではありません。  所得税制では一部手直しはありますが、利子配当課税の現行低率課税を三年間も据え置き、また、総合課税への移行で当然資産の逃げ込みが予想される株式等、キャピタルゲイン課税に何の対策も検討されていません。これでは、税の公平は全く確保されないのであります。  第二の理由は、いろいろな理由を口実に、主として大企業、大資産家救済となる不公平税制を拡大していることであります。  その一つは、宅地供給の促進を名目とした土地税制の三年連続緩和であります。  今回の措置が、果たして庶民の宅地供給の促進に資するかどうか大いに疑問であることは、本委員会の質疑でも指摘されたところであります。−  政府は、現在の異常な地価高騰の主要な原因である大企業の投機的取引、買い占め土地に対し何の対策も講ずることなく、もっぱら持ち家政策をあおる一方、公共住宅の建設を縮小しております。  そのもとで進める本措置は、結局、大手不動産企業と大土地保有者を救済し、不公平税制の是正や資産課税強化の政府の方針にも真っ向から逆行する以外の何ものでもありません。  その二つは、経済協力の名のもとに、海外進出大企業の大規模合弁事業に対し、海外投資損失準備制度を新たに拡充したことであります。  これらの事業には、もともと海外経済協力基金からの出資はもとより、輸銀からも低利融資がされるなど、多額の政府資金が投入されているのであります。本措置は、その上に税制上も軽減措置をとるというものであり、このような大企業への恩恵措置の拡大は、とうてい認めることはできないのであります。  第三の理由は、いわゆるグリーンカード制度が、実は国による国民への資産管理を進め、やがては、国民のプライバシー侵害に結びつく国民総背番号制への突破口となる可能性があるなど、重大かつ危険な問題を含んでいるからであります。  わが党は、もとより、利子配当所得分離選択課税の廃止、総合課税の本則に立ち返ることには賛成であります。  しかし、総合課税移行の手段として今回提案のグリーンカード制度は、すでに本委員会でわが党委員質問で明らかになったように、本来把握すべき利子配当所得の把握についてはきわめて不十分な制度であり、その体制についてもいまだ考えられていない状態であること。本来その把握については二義的であるべき庶民の非課税貯蓄、金融資産のみを電算機で集中管理するものであること。このカード番号を、納税申告書や源泉徴収票など国税に関する事務なら何でも使えることを否定せず、事実上、将来、納税者番号制の役割りをも果たす可能性が依然として残されていること。さらには、六千万人もの国民が番号化され、電算機に記録されるにもかかわらず、先行されるべきプライバシー保護策についてはきわめて消極的であることを指摘せざるを得ません。  最後に、来年度税制改正案は、国民には三年続きの所得税減税見送りによる実質大増税、中小企業増税を強要する一方、史上最高の収益を上げる大企業への法人税率引き上げは、財界の圧力であっさり見送ってしまったのであります。  不公平税制の是正も、依然として大企業、大資産家向けの特権的減免税、とりわけ所得税、法人税の本法及び租税特別措置法の基本的部分にはほとんどメスが入れられず、きわめて不徹底であるばかりか、むしろ不公平の拡大すらなされており、とうてい容認できないのであります。  以上の点を申し述べ、両改正案に反対の討論といたします。(拍手)
  141. 増岡博之

    増岡委員長 玉置一弥君。
  142. 玉置一弥

    ○玉置委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております所得税法の一部を改正する法律案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案に対して、一括して反対の討論を行います。  かねてより民社党は、責任野党としての立場から、財政再建問題に対して現実的かつ具体的な提言を行ってまいりました。  その基本方針は、まず第一に、増税を行う前に行政機構の簡素化、効率化、むだな経費の徹底した節約などの行政改革を断行することであります。  第二には、国民生活を圧迫する大衆増税は行わず、租税特別措置などの不公正税制の是正を徹底して行うことであります。  そして第三は、わが国経済の安定成長を維持し、税の自然増収を図ることであります。  このような立場から見て、政府の財政再建に対する姿勢は、行政改革の点においても、不公正税制是正の点においてもきわめて不十分であります。  民社党は、所得税における老年者年金特別控除対象年齢の六十五歳から六十歳への引き下げや、財政再建の前提となる不公正税制是正の具体策として利子配当所得源泉分離選択課税制度の廃止、退職給与引当金の繰入累積限度額の引き下げ給与所得控除頭打ち復活、交際費課税の強化、法人税率の二%引き上げ等の実施を強く主張してまいったわけでございます。  政府の昭和五十五年度の税制改正におきましては、租税特別措置、給与所得控除、退職給与引当金などの点で改善が図られてはいるものの、まだまだ不十分なものであります。  また、私どもがかねてより主張していました利子配当所得総合課税について、政府が昭和五十九年一月一日から実施する方向で対応され、同時に税務行政の合理化として少額貯蓄者カードシステムを取り入れられることは、一歩前進として評価するものであります。しかし、今後なお四年間現行の不公平な実態が温存されるということは、とうていがまんができず、一刻も早く総合課税に移行すべきであります。  一方、今回の租税特別措置法の一部を改正する法律案において、法人の準備金、引当金の引き下げが行われておりますが、中小企業関係租税特別措置の整理合理化については慎重に対処しなければなりません。  大蔵大臣は、今回の租税特別措置の整理合理化によって、おおむねその整理は一段落したと言ってよいというお考えを述べられておるようですが、今回の改正によっても、給与所得控除、交際費課税など、なお是正すべき点が残っているのであります。今後とも租税特別措置のみならず現行の税制全般の児直しを行い、税負担の公正を図ることが重要な課題であり、その実施を前提としてこそ財政再建も可能となるのであります。  政府に対して、以上の諸提案を早急に実施されんことを強く要望し、私の両案に対する反対討論を終わります。(拍手)
  143. 増岡博之

    増岡委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  144. 増岡博之

    増岡委員長 これより採決に入ります。  まず、所得税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  145. 増岡博之

    増岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  146. 増岡博之

    増岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  147. 増岡博之

    増岡委員長 ただいま議決いたしました両案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表して、綿貫民輔君外三名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。綿貫民輔君。
  148. 綿貫民輔

    ○綿貫委員 ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、簡単にその趣旨を御説明申し上げます。  この決議案は、まず、利子配当所得等の総合課税への移行とグリーンカード制度の導入に当たり、新制度の適正な運営を要請するとともに、鰥夫控除の実現を期待するものであります。  また、税制及び税務執行の基本であります負担の公平確保、中小所得者に対する所得税負担の軽減、土地政策の適正な運営並びに国税職員の処遇の改善等について政府の十分なる努力を求めるほか、引当金制度、法人税率の引き上げ及び法人税の仕組み、年金課税、脱税に対する除斥期間等について検討を要請するものであります。  個々の事項の趣旨につきましては、法案審査の過程において明らかにされておりますので、その説明は案文の朗読によりかえさせていただきます。     所得税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記の事項について、所要の措置を講ずべきである。  一 利子・配当所得等の総合課税への移行と少額貯蓄等利用者カード制度の創設に当たっては、各種金融資産の取扱いに公平を期するとともに、プライバシー保護の観点から預金者等に無用の不安を与えることがないようその取扱いに十分留意し、適正な運営を行うこと。  一 郵便貯金については、その利子の支払が最長十年にわたるという特殊性にかんがみ、新制度移行前においても預金者の本人確認と名寄せを厳正に励行し、他の貯蓄との間にアンバランスが生じないよう配慮すること。  一 鰥(かん)夫控除については、委員会における審議経過をふまえて、昭和五十六年度税制改正において実現を図ること。  一 退職給与引当金については、累積限度額が実情に即するよう今後さらに検討するとともに、貸倒引当金等については繰入率等につき引き続き見直しを行うこと。  一 財政再建の緊急性にかんがみ、昭和五十六年度においては中小法人の税負担を考慮しつつ法人税率引上げ検討すること。なお、法人税の基本的仕組みについては、早急に検討を加えてその結論を得るよう努めること。  一 社会福祉充実の見地から、年金に関する課税の合理化を検討すること。  一 宅地の円滑な供給の確保との地価の安定に資するため、今回の土地税制の改正と併行して用途地域の見直しを含む土地政策の適正な運営を図ること。  一 所得・物価水準の推移等に即応し、中小所得者を中心とする所得税負担の軽減合理化(配偶者控除の適用要件である配偶者の所得限度の引上げ、白色申告者の専従者控除引上げ等を含む。)に努めること。  一 医療費控除、雑損控除については、実情に即し適切な配慮をすること。  一 深夜労働に伴う割増賃金、寒冷地手当及び宿日直手当については、一定の非課税限度を設けることの是非について検討すること。  一 変動する納税環境の下において、複雑、困難で、かつ、高度の専門的知識を要する職務に従事している国税職員について、職員構成の特殊性等従来の経緯及び今後の財政確保の緊急かつ重要性にかんがみ、今後ともその処遇の改善、定員の増加等に一層配慮すること。  一 世論の動向にかえりみ、今後とも税制及び税務執行の両面を通じ負担の公平を確保するよう努めること。  一 悪質な脱税に対する批難が厳しい現状にかんがみ、その除斥期間の延長について検討すること。 以上であります。  何とぞ御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  149. 増岡博之

    増岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく両案に対し附帯決議を付するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣。
  151. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意いたしたいと存じます。  ありがとうございました。     —————————————
  152. 増岡博之

    増岡委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  154. 増岡博之

    増岡委員長 次回は、来る二十六日水曜日午後四時三十分理事会、午後五時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十時二十二分散会