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高橋(元)
政府委員 税制調査会で、五十二年の
中期答申以来、
富裕税の問題は継続的に勉強していただいておるわけでありますが、一昨年九月の
一般消費税特別部会の報告の中では、
富裕税は単独で
導入の是非を論ずるよりも、新税の
導入との組み合わせで
検討することが適当であるという
意見もあるから、
執行面における諸問題について引き続き
検討を重ねた上で結論を得べきであろうという
お答えでありました。現在でもこの観点で、新税との組み合わせということは別にいたしましても、
富裕税の
導入について勉強を続けておるわけであります。
そこで、竹本
委員には、四十八年でございますか、前回の
相続税法の
改正の際にも、この
委員会で詳細な御質疑をいただいて
お答えをしておるわけでございますけれ
ども、
富裕税問題で、資産の把握の問題というのは確かに非常にむずかしい問題でございます。
グリーンカードシステムというのが効果を発揮することができるようになりますために今後とも努力をしていくわけですが、そうなりました場合には、
富裕税の中で無記名の金融資産に対する把握につきましては、より一層前進すると思います。ただ、それ以外の動産の把握がどこまでできるかという
意味で、資産の把握の問題というのは
一つ解決の
方向で前進を続けることはできると思うわけでございますけれ
ども、もう
一つ評価の問題というのが非常に強く出てまいります。たとえば、土地、非上場会社の持ち株、こういうものの
評価を経常的にどうやっていくのかという問題であります。
富裕税の納税者というのはそう大きな数ではございませんでしょうから、したがって
評価の問題も、技術的には大変むずかしいし、手間がかかることでありますけれ
ども、それは絶対の支障ではないという御
指摘であれば、それは極力努力をいたして
評価の問題は解決していかなければならないと思います。
三つ目の問題は、経常的な財産税として、
所得税の
補完税として性格づける場合に、
日本の
所得税の
税率の累進度がかなり急である。最高
税率は限界で九三%、平均で八〇%まで来ておりますから、その上に経常的な財産税を入れるといたしますと、
所得税、
住民税、それから
富裕税を合わせました場合の賦課制限というものをどうするかということが非常にむずかしい問題として残るわけであります。現在経常的財産税をやっております国が、私
どもOECDについて調べますと九つばかりあるわけでございますけれ
ども、
税率のいかんはありますけれ
ども、比較的古くからやっておりますドイツ、オーストリアなどをのけますと、大体八割という賦課制限をしております。
所得課税と経常的財産税と合わせまして八割のところで賦課制限にしてしまうということが多いようであります。一番賦課制限の高いノルウェーで八五でございますが、そうなりますと、経常的財産税が財産の運用利回りその他を考えますと
税制として機能し得る範囲が非常に狭い、つまり税源が非常に小さいということになります。九三%の限界
税率は八千万のところから働いてくるわけでございますから、その場合に平均
税率が七〇%ぐらいになりましょうか、その後賦課制限で入る
余地はほとんどなくて、五億を超えますと、たしか、正確に覚えておりませんけれ
ども、計算させましたときの私の記憶で申しますと、新しい経常的財産税が入る
余地がないということになるわけであります。経常的財産税という性格を前提として考えますと、
所得税の
税率構造、それから
住民税の
税率構造、そういうものとあわせて経常的財産税としての
富裕税をどういうふうに位置づけるかということは、
税体系を考えます私
どもの立場といたしますと一番むずかしい問題としてなお残ってくるわけであります。したがいまして、
所得税の最高
税率を下げて
富裕税に置きかえる、これはたしかシャウプの
税制勧告がそういう形をとったわけでございますが、そういうことがいいかどうか。その場合に
所得税として把握される
所得よりも
富裕税の対象として把握される資産がより捕捉度が低いといたしますと、そこで税の公平上の問題というのが登場してくるかというのが私の現在の考え方でございます。