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高橋(元)
政府委員 しばしばお答えを申し上げておることでございますが、私
どもが土地税制を緩めたからといって、直ちに土地の供給がふえる、宅地の地価の安定が達成されるということにつながるものではないということを申し上げておりました。それは、こういう次元の話でございます。
現在、
租税特別措置法で土地のキャピタルゲインにつきましては、
所得税法の本則の二分の一の
総合課税を四分の三の
総合課税、若干下の方は緩和されておりますが、二千万円以上四分の三
総合課税になっておる、それをやめてしまうという御
提案、それから現在は、四十四年一月一日以降取得された土地は全部短期譲渡でございますから、通常の
総合課税の一割増しという
税率によっておりますが、それをやめて五年または十年で、以前に取得した土地、それにつきましては二分の一じゃなくて全額
総合課税、こういうような極端な現在の
租税特別措置法の加重規定を廃止して、
所得税法の本則に移れ、こういう御主張に対して申し上げてきたのが一番大きかったと思います。しかしながら、現在御
提案しております土地税制の
改正案は、
先ほどの御
質問にお答えしましたように、三大都市圏の宅地供給の促進という観点からの
改正案でございます。その場合、土地を売ろうとしても税負担を
考えるとなかなか売りにくいという御意見もあるし、また、売る場合でも切り売りになるという形をとらざるを得ないのではないかという御
指摘もあります。
そういう点につきまして、私
どもは、
昭和五十三年中に一都三県で土地の譲渡を行われた方の中から無作為抽出で、五十分の一ぐらいの割合でかなり大きな意識調査をいたしました。その結果が
先ほどお示しのありましたように、どのように税制を
改正しても、つまり
所得税だけではなくて固定資産税、都市計画税も含めてでありますが、
改正されても当分売りたくないという方が七二・五%あるわけであります。これに対して地主の意識調査という形で建設省がおやりになったのは、対象の地域、サンプル、母集団も違っております。これは現在百五十坪以上の土地を東京、横浜、川崎で持っておる人を無作為抽出して、三百人ぐらいでございますから、私
どものやりました意識調査のサンプルの十分の一ぐらいでございますが、それについてアンケートを求めて、そのときの、いまお示しのあった四割というのは、売却したときの
税金が高いから売りたくないというお答えが出た方が四五・五%。したがって、七二と四五の持っている
意味は若干違うと思います。それはサンプルも違いますし、アンケートの
質問も違うわけであります。したがって、直ちに対比するわけにいきませんけれ
ども、現在の土地の三大都市圏における売買
状況等を見ますと、二千万円以下の譲渡益で売っておるという方が全体の八五%であります。そうなりますと、一坪当たりの地価を
考えますと、大体二十坪から四十坪ぐらいの土地というものが三大都市圏、これは東京国税局の管内でございますが、その市街化区域内の取引の通常のスケールかと思います。二十坪、四十坪ぐらいの細かく区切られた土地というものがかなりたくさん、全体の取引の八割五分にも及んでおるということは、将来の都市像としてもかなり問題もございましょうし、居住環境としても問題をはらんでおると思います。そういう点を解決する
方法はないのかということであります。
それで、それを四千万円まで二〇%比例というふうに改めれば、土地の譲渡益が大きくなって
税率が累進で高くなってくるから、したがって
幾らで国税に取られてしまうかわからない、したがって売りたくないという
方々について、比例課税
部分を四千万円まで上げますれば、税負担
部分が明確になって売りやすくなるという効果をねらったわけでありますし、また八千万円のところまで二分の一
総合課税といたしましたのも、いま申しましたような、たとえば東京近郊の税務署について調べました売り控えの
状況、切り売りの
状況、それから地価ないし土地の譲渡面積の
状況等々から判断いたしまして、通勤圏内でテラスハウスなりマンションなり建てられる五百平米ぐらいの土地の供給が大体できるというのが八千万円というふうに思います。
したがいまして、二千万円から四千万円まで比例課税分を高め、四千万円から八千万円まで四分の三
総合課税を二分の一
総合課税に戻すということによって、私
ども、主として東京通勤圏を政策対象地域としては一番重要だと
考えておりますから、東京通勤圏を前提といたします限り、現在の切り売りないし売り控えというものがそこで解決されるのではないか。しかしながら、
全国一円について四分の三の
総合課税を二分の一に下げてしまう、それによって土地の譲渡者の負担が大幅に軽減されるということは、これは避けるべきであるというふうに思いますし、四十四年の一月一日以降はすべて短期取引として重課をするというシステムも変えないということで対処しておりますし、もう一つは、現在の租税
特別措置の土地税制というのが
所得税法の本則に対して
税率を重くしておる加重規定でございますから、適用期限が来たらいまに安くなるよということで人気的に売り控えが起こるということを阻止するために、
租税特別措置法の規定にはしますけれ
ども、期限の定めを取っ払ってしまって、今後こういう税制が安定的に推移するという前提で土地の供給ないし地価の安定ということを
考えてくださいということにしておるわけでございます。