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1980-02-06 第91回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月六日(水曜日)     午前九時五十二分開議  出席委員    委員長 増岡 博之君    理事 稲村 利幸君 理事 高鳥  修君    理事 綿貫 民輔君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 坂口  力君    理事 正森 成二君 理事 竹本 孫一君       大村 襄治君    熊川 次男君       椎名 素夫君    白川 勝彦君       谷  洋一君    中村正三郎君       林  義郎君    藤井 勝志君       坊  秀男君    村上 茂利君       毛利 松平君    山口シヅエ君       山崎武三郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    伊藤  茂君       川口 大助君    島田 琢郎君       堀  昌雄君    山田 芳治君       柴田  弘君    古川 雅司君       宮地 正介君    多田 光雄君       渡辺  貢君    玉置 一弥君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  小泉純一郎君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         農林水産大臣官         房審議官    塚田  実君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         水産庁長官   今村 宣夫君  委員外出席者         農林水産省農蚕         園芸局果樹花き         課長      畑中 孝晴君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業共済保険特別会計における果樹共済に係  る再保険金及び漁船保険及漁業共済保険特別  会計における漁業共済に係る保険金支払財源  の不足に充てるための一般会計からする繰入金  に関する法律案内閣提出第二号)      ————◇—————
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより会議を開きます。  農業共済保険特別会計における果樹共済に係る再保険金及び漁船保険及漁業共済保険特別会計における漁業共済に係る保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。竹下大蔵大臣。     〔委員長退席稲村(利)委員長代理着席〕     —————————————
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました農業共済保険特別会計における果樹共済に係る再保険金及び漁船保険及漁業共済保険特別会計における漁業共済に係る保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、農業共済保険特別会計果樹勘定におきましては、昭和五十四年における暴風雨、低温等によるリンゴナシ等被害の異常な発生等に伴い、再保険金支払いが著しく増大するため、支払い財源不足が生ずる見込みであります。  また、漁船保険及び漁業共済保険特別会計漁業共済保険勘定におきましても、昭和五十二年以降のイカ、サケ・マス等の著しい不漁、同年及び昭和五十三年における異常な赤潮及び魚病による養殖ハマチ大量死亡等に伴い、保険金支払いが著しく増大するため、支払い財源不足が生ずる見込みであります。  この法律案は、これらの支払い財源不足に充てるため、昭和五十四年度において、一般会計から、農業共済保険特別会計果樹勘定に七十八億千四百五十万八千円、漁船保険及び漁業共済保険特別会計漁業共済保険勘定に百十二億七千九十六万二千円を限り、それぞれ繰り入れることができることとしようとするものであります。  なお、これらの一般会計からの繰入金につきましては、将来、農業共済保険特別会計果樹勘定におきまして、決算上の剰余が生じ、この剰余から再保険金支払基金勘定繰り入れるべき金額を控除して、なお残余がある場合及び漁船保険及び漁業共済保険特別会計漁業共済保険勘定におきまして、決算上の剰余が生じた場合には、それぞれこれらの繰入金に相当する金額に達するまでの金額一般会計に繰り戻さなければならないことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 稲村利幸

    稲村(利)委員長代理 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 稲村利幸

    稲村(利)委員長代理 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  6. 島田琢郎

    島田委員 ただいま提案のありました一般会計からの繰り入れと繰り戻しの法案につきまして若干の質問をいたしたいと思います。  まず最初に、現在の繰り入れをしなければならない状態に立ち至った状況を御説明いただきたいと思いますが、質問果樹漁業と分けていたしたいと思いますので、先に果樹共済の方からお答えをいただきたい。
  7. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  果樹共済につきましては、昭和五十四年の台風十六号、これは昨年の九月三十日から十月一日にかけまして日本列島にやってまいりました非常に強い台風でございましたが、これと台風二十号、十月半ばのこれも非常に強い台風でございました。このような台風のほか、昨年の春に凍霜害等がございまして、リンゴナシブドウ等被害が異常に発生したことから、再保険金見込み額収穫共済につきまして九十一億九千万円、樹体共済につきましては五千五百万円、計九十二億四千五百万円となっている次第でございます。このため、農業共済保険特別会計果樹勘定の再保険金支払いが当初予算を上回りまして、再保険金支払い財源不足を来すということになりまして、その不足額が七十八億一千五百万円見込まれるために、この不足額につきまして一般会計からの繰り入れを必要とする事態になりました。このために今回の法律案の御審議をお願いしているという次第でございます。
  8. 島田琢郎

    島田委員 さらに繰入金額の算出の基礎となっている問題はどこにあるのでしょうか。
  9. 吉野良彦

    吉野政府委員 果樹共済についてでございますが、果樹勘定におきましては、昭和五十四年度の当初予算におきましては再保険金支払い額といたしまして二十四億三千七百万円を見込んでいたわけでございます。ところが、先ほど経済局長からお話がございましたような異常な災害によりまして、五十四年度中の再保険金支払い所要額といたしまして、当初予算を上回ります九十二億四千五百万円程度支払いが必要になるという見込みになりましたために、差し引き歳出の面におきまして六十八億八百万円の不足が生ずるということになったわけでございます。  また、ただいまのは歳出の面でございますが、一方、歳入面におきましても、実は当初予算におきましては、この果樹勘定におきまして四十八億五千四百万円の歳入予定していたわけでございます。その中で実は再保険金支払基金勘定というのが別途ございますが、この支払基金勘定からの受け入れが五十三年度の決算結了に伴いまして当初の予定よりも減少いたしました。そういうこともございまして、歳入面で十億七百万円の歳入不足ということが見込まれるようになったわけでございます。  そこで、先ほど申しました歳出面での六十八億八百万円の不足と、それから歳入面でのただいま申しました十億七百万円の不足、合計いたしまして七十八億一千五百万円が支払い財源不足額に相なったわけでございます。
  10. 島田琢郎

    島田委員 手持ち財源中身についていまお話があったわけでありますが、基金勘定そのものに問題がありはせぬかという気がいたしますが、これは後ほど触れるといたしまして、そういたしますと、繰り入れ事由としてはいまお話しになった点でおおよそ了解ができるのでありますけれども、正確な繰り入れ事由についての御答弁をもう一度いただいて、その後実態等について若干質問をいたしたい、こう思いますが、もう一度繰り入れ事由といいますか、そういう点について御答弁をいただきたい、こう思います。
  11. 吉野良彦

    吉野政府委員 先ほど答弁申し上げましたとおり、五十四年度の果樹勘定におきまして、異常な災害発生に伴いまして再保険金支払い所要額が当初予定に比べまして大幅に上回る事態になったわけでございます。一方、歳入面におきましても、金額はそう多くはございませんが、先ほど申しましたように、十億程度歳入不足という事態になったわけでございます。  そこで、いずれにいたしましても、農業災害補償法に基づきまして、この果樹勘定におきましては再保険金のいわば支払いの義務を負っているわけでございます。そこで、この再保険金支払いを円滑にと申しますか、確実に行い得ますように何らかの形で支払い財源の確保をしなければならないわけでございますが、そのために、特別に一般会計から支払い財源としてのいわば資金をこの特別会計繰り入れをいたしまして再保険金支払いに支障なからしめる、これが繰り入れ事由でございます。
  12. 島田琢郎

    島田委員 先ほど大臣説明の中にも、五十四年度における異常な災害発生に伴い、こういう説明がなされているわけでありますし、また、松浦局長からもこの点については触れておりますが、再度聞いておきたいのは、異常な発生ということでありますが、このような繰り入れが必要とされるのは、五十四年度だけではこれだけの額にはならぬと思うのでありますが、五十四年、五十三年、五十二年の三カ年で結構でありますが、この間における災害状態というものを若干克明に聞いておきたいと思います。
  13. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 お尋ねは毎年の果樹勘定収支状況であろうというふうに思うわけでございますが、発足当時からの数字を持っておりますので、簡単に御説明をいたしたいと思います。  果樹勘定につきましては、四十八年度の設置時におきまして、すでに四十七年度以前におきますところの試験実施当時の損失額八億六千五百万円を承継いたしておったわけでございますが、その後連年異常な災害発生いたしまして、四十八年が七百万円、四十九年が六億二千万円、五十年が二十一億七千三百万円、五十一年度が五十四億五千六百万円、五十二年度が十九億四千六百万円、五十三年度が八十億四千八百万円の損失が生じました。さらに、五十四年度におきましても六十八億四千六百万円の損失が見込まれますので、累積損失見込み額は二百五十九億六千一百万円という状態になるわけでございます。
  14. 島田琢郎

    島田委員 特に農業にかかわります災害に限らず、災害は連年いろいろな形で起こってくるわけでありますが、とりわけ果樹に与えます災害実態というのは、いま御説明のありましたように、連年大変な額に達している。それだけに果樹共済の持つ意義というのが大きくなりつつあるわけでありますが、しかし、実態を見ますと、制度のあり方として、このように一般会計からの繰り入れを繰り返していくというような事態は必ずしも正常とは言えない、むしろ異常な状態だということが言えると思うのです。これから先もこうした災害は十分予測されるところでありますし、この際、やはり制度の面からこれに対応できる形というものを整えておく、いわば制度完熟化を目指すことが非常に大事だということも一つ言えるのではないか。  そういたしますと、特別会計法に基づいて損金繰り入れできることにはなっておりますし、また、剰余金が生ずれば繰り戻しができることになっていますから、そういう面においては国庫に直接大きな被害を及ぼすようなことがないということが一応この制度のたてまえになっておるわけでありますが、しかし、いま御説明のあったように、必ずしもたてまえと実態とはそのとおりいっていない、こういうことであるとすれば、制度上にやはり十分配慮を加えていかなくてはならない段階にあるような気がいたします。この際、大蔵省見解農林省見解、両方あわせて聞きたいと思うのですが、この制度に対する考え方というものはどのようにお持ちですか。制度というのは、共済制度の話であります。
  15. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 ただいま御質問のございましたように、また私が御答弁申し上げましたように、果樹勘定につきましてはかなり累積赤字が出てくる、収支状態が必ずしもよくないということが実態であるということで申し上げたのでございますけれども、一方におきまして、このような果樹勘定不足金が生じました原因につきましては、制度の問題もございますけれども、やはり異常な災害が連年続いたということは一つおわかりをいただきたいというふうに考えておるわけでございます。  本格的に制度実施いたしました後におきまして、昭和四十九年産につきましては、北日本一帯の記録的な豪雪あるいは干ばつ等による被害もございましたし、その際の共済金支払いも全体として三十五億、再保険金にして二十二億の損害が出る、あるいは昭和五十年産につきましては、ひょう害あるいは凍霜害等による被害がございまして、共済金で四十七億、再保険金で二十九億、さらに五十一年産につきましては、低温と日照の不足によります授精障害あるいは果実の肥大抑制並びにひょう害及び台風による被害といったようなかなり大きな被害が生じておりまして、共済金にして百二億、再保険金にして七十一億の損害が生じておるという次第でございます。また、昭和五十二年産につきましても、干害、異常低温による授精障害あるいはひょう害長雨等による被害といったようなものがございまして、共済金で六十一億、再保険金で三十三億、さらに五十三年産については、異常気象による異常落果干ばつ等による被害ということで、共済金にして百五十億、再保険金で百三億の被害が生じておるわけでございます。また、五十四年産につきましては、先ほど申し上げたように、凍霜害ひょう害台風等による被害といたしまして、共済金で百四十三億、再保険金九十二億という大きな被害が生じておるわけでございまして、これらの被害は、制度発足いたしまして後におきまして異常な気象が続いたということがやはり何よりも第一の原因であったというふうに考えるわけでございます。  しかしながら、ただいま島田先生おっしゃられますように、制度面につきまして必ずしも十分ではないという御指摘でございますが、その点は確かにこれらの赤字と関連いたしまして制度面での問題点というものを究明をいたしておかなければならぬという事態になっているのではないかというふうに私ども考えておる次第でございます。  その中で特に私ども考えておりますのは、制度発足後七年たつわけでございますけれども、ところが五十四年度におきまして、果樹共済に係りますところの加入率がまだ二六・四%といったような状態にとどまっておるわけでございまして、特にその加入が期待されますところのいわゆる専業的な果樹農家につきましての加入が伸び悩んでおるという実情がございます。このことは、やはり制度果樹農業果樹裁培農家実態に必ずしも即応しない面があるという点があるのではないかというふうに考えておるわけでございまして、このような加入率の現状のもとにおきましては、やはり危険程度の高い農家加入してくる、つまりいわゆる保険の世界で申しますところの逆選択現象というものがあるのではないか。そのような傾向がございますと、逆に災害が多発いたしまして共済掛金率が上昇いたしますと、さらに危険程度の低い農家加入したがらないという状態が出てくると思います。このようなことからやはり赤字発生一つ原因があるのではないかというふうに考えるわけでございます。  また同時に、この果樹共済につきましては、試行錯誤を繰り返してまいりまして、制度発足以来ずっと今後どう対処すべきかということも考えてまいったわけでございますけれども、その中でも特に引き受けあるいは損害評価といったような実務面におきましてやはり改善をすべき点があるのではないかという感じがいたします。  特に、基準収量というのは共済制度の基幹になるわけでございますけれども、この基準収量をわりあい早い時期、つまり花芽形成の時期の前に、しかも非常に短期間ですべての樹園地につきまして設定するということになりますために、労力的にも相当無理がございます。また同時に、果樹は御案内のように収穫量が豊年と不作が一年おきに来るといういわゆる隔年結果の現象がございます。このような問題等を抱えておりまして、技術的な面におきましても、やはりよりこの基準収量の設定には他の共済よりもむずかしい点があるのではないかというふうに考える次第でございます。  また、損害のことにつきましても、果樹共済につきましては現在のところ全部全相殺方式でやっておりますために、園地評価につきましては、収穫量を把握する地域につきましては、無被害園地につきましても損害評価をやらなければいかぬというようなことがございまして、収穫期短期間損害評価を行うということが実務的にもむずかしいというようなことがございまして、このような点で制度実態にそぐわないという問題があるというふうに考えております。  このような点につきましては、これから私どももこの通常国会に、共済制度の、特に果樹共済を中心といたしました共済制度を見直しまして、それによります改正法案を用意して御審議願いたいというふうに考えておりますので、さような中でこのような問題も解決していきたいというふうに考えまして、現在検討を進めているという段階でございます。
  16. 島田琢郎

    島田委員 農林省側から果樹共済制度の、率直に言えば欠陥といいますか、そういう点についての御所見があったわけでありますが、今国会改正案を提出したい、こういう考え方が明らかになったわけでありますから、後ほどまたいまお考えになっているその中身について若干質問をいたしてまいりますが、その前に、大蔵省としては、この特別会計法という法律の中で、先ほど私が申し上げましたように、損失補てん、そしてまた剰余金が出た場合にはもとに戻すことができると、こうはなっておりますが、ちょっとほかの共済制度の中でも欠陥がありますから果樹制度のみを取り上げるということは間違いかもしれませんけれども、しかし、お聞きのように、きょうの御説明の中での果樹共済実態というものは、明らかに制度発足以来まだ数年しかたってないのにすでに相当の繰り入れが行われる、その後において繰り戻しできるような条件というものはまさに出ていない、来年度以降のことを考えても私は大変これは心細い、むしろ繰り入れが大きくなっていくだけだろう、こういうふうに実は見ているわけであります。  そういたしますと、この制度に対して、金の責任を持っている大蔵省としても御意見があると思うのでありますが、いかがですか。
  17. 吉野良彦

    吉野政府委員 先ほど農林水産省の方から御答弁がありましたように、私どもも基本的には、やはり不幸にして制度発足後四十九、五十、五十一、五十二、五十三、五十四年と実は連年異常な災害があったというところに基本的な原因があったと存じます。しかし同時に、これも先ほど経済局長から御答弁ございましたように、いわゆる加入率の低さ、それとの関連での逆選択といったような制度的な欠陥もやはり一つ原因になっているという面があることは私ども否定できないと思うわけでございます。それから、ただいま委員指摘のように、いずれにいたしましても、年々赤字が出てこれが累増をしていく、特別の立法をお願いをして一般会計から繰り入れをせざるを得ない、そういうような状況が好ましくないことはこれまた申し上げるまでもないところでございます。  そこで、もし制度的に何らかの欠陥がありとすれば、やはりその欠陥是正をしていくことが必要であろうと考えます。いずれにいたしましても、農業共済制度は一種の保険制度でございますから、長期間にわたりましては収支相償うべきものでございますし、またいわゆる保険設計も長期間にわたって収支均衡すべきものとして設計されているはずでございますし、そこに実態とのそごを来しているといたしますならば、やはり収支均衡いたすように制度的な改善合理化をやはり考えていくべきものであろうと、かように考えております。
  18. 島田琢郎

    島田委員 そこで経済局長先ほど加入率が非常に低いということを言いました。実態はどうなっていますか。
  19. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 加入率状態でございますが、果樹共済は御案内のように温州ミカンとかあるいはリンゴとかブドウナシ、モモ、桜桃、ビワ、カキ、クリといったようないろいろな共済種類ごと収穫共済及び樹体共済実施しているわけでございますが、必ずしも加入率は各樹種ごとに同じではございません。いろいろばらばらでございます。また同時に、四十八年に本格的な実施をして以来、収穫共済につきましては加入の促進を図りまして、引受率も上昇していることは事実でございます。  一例を申し上げますと、たとえば温州ミカンにつきましては四十八年の引受率は一一・七%でございましたが、いろいろと指導を加えました結果、その引受率は五十四年で二二・三%と約倍までいっているというのも実態でございます。また、リンゴも一七・七%が四七・五、ブドウも一一・六が二五・六、ナシが三五・九が四六・四といったようなぐあいで、かなり引受率は上がっているということは事実でございます。また、ただいま申し上げました数字でおわかりのように、リンゴとかあるいはナシといったようなものはほぼ半分近くまで引受率が達しているということで、樹種によってはかなり引受率を持っているというものもございます。  しかしながら、総体として見ますると、先ほど数字で申し上げましたように、収穫共済につきましてはまだ引受率が二六・四%、四分の一強という状態でございまして、さような意味では引受率が必ずしも高いということが言えないという状態でございます。また樹体共済につきましては、ナシのように二七・二%の引受率まで達しているものもございますけれども、しかしながら、全般的に非常に低い状態でございまして、総体の平均といたしましては樹体共済ではまだ七・七%といったような状態でございまして、引受率が高くないということは否めない事実でございます。
  20. 島田琢郎

    島田委員 私はいまのお話を聞いておりまして、なかなか加入率を上げていくというのは容易なことではない、保険制度そのもの欠陥といったようなものは是正できるとしても、農家自身がどこまでこれに理解を示すか、先ほどのように逆選択といったようなものはなかなか果樹共済に限らずいろいろな保険制度について回るものであります。とりわけ制度そのもの任意加入方式が柱になっているわけでありまして、強制加入というようなやり方をするということは末端においてはなかなか至難なことでありますし、そういう意味では、先ほど幾つか制度中身について是正を必要とするというふうな前提に立ってのお話があったわけでありますが、第一には、共済制度そのもの農家に対する説明が非常に足りない点があるのではないだろうか。制度が十分理解されないとなかなか加入に対して積極的な考えを持つということはできない。一体、いままでにこうした果樹共済制度PRというものをおやりになったことがあるのかどうか。連合会とか単なる組合の幹部とかの意見だけ聞いておって、末端加入者農家の本当の意見というようなものをじかに聞くといったようなことが果たしていままであったかどうか。私自身末端におって、この種の共済制度説明というのはなかなか聞いていてもむずかしいものですから、わかりづらくて、めんどうくさい、もうそんなのだったら入らないと、すぐなりがちであります。その点、もっとわかりやすいPRの仕方、そういうことがあっていいのではないか。それから、具体的には世論調査みたいな形で各戸の農家意見を聞くといったようなことをおやりになってみてはどうだろうか。そういたしますと、どこにどういう欠陥があるかということが末端のところからよくわかる。連合会とか、組合の立場でもいろいろ意見が出されておると思いますから、それが間違っておるという意味ではございませんけれども、やはりもっと根っこの、底辺のところから理解をして加入してもらうというようなことに力を入れてまいりませんと、なかなか加入促進といったってかけ声だけで実効が上がらぬではないか、私はこういう感じがいたします。この点の私の意見に対してはいかがですか。
  21. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 ただいま島田委員のおっしゃいます果樹共済制度についてのPRをもっと徹底すべきじゃないかという御意見でございますけれども、このような果樹共済、なかなか仕組みその他につきましても理解が非常にむずかしい制度でございますので、そのPRの必要性がございますことはもう当然のことでございます。従来までも制度発足の当初におきましてはパンフレット、リーフレット等もかなりわかりやすいものをつくりまして、いわば引き受けができるだけ多くなるようにPRにも努めた経緯もございますし、また、農業共済の協会がございますので、そこが非常に努力をいたしましてこの制度の理解というものにも努めてまいったわけでございますけれども、必ずしもそれが十分徹底していないということがやはりこの引受率にあらわれているのじゃないかというふうに考えます。ただ、その場合に、やはり今後どういう対応の仕方をするかということは、今後の制度の問題というのもあわせ考えながらPRをしていく。つまり、このように今回はより加入しやすい制度になりますというようなことも含めまして、下部にこの制度のメリットというものをPRしていくということも必要であると思いますので、従来もPRはやってまいりましたが、今回の制度改正を機会にさらにこのPRには努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  22. 島田琢郎

    島田委員 そこで、制度改善という面についての先ほど局長お話に触れて若干の御質問を申し上げておきます。  収穫共済というのはそれなりに一つの進歩が見られるようでありますけれども、それをさらに改善をしていく、こういうことでありますから、この点について、私はいま政府がお考えになっている点については評価をいたしたいと思っております。これは遅きに失したわけで、当初果樹共済制度発足するときにも、いろいろな点の不備や欠陥指摘をされておったわけでありますが、なかなか長い実験を経て踏み込む段階で、政府側もわれわれの率直な意見をそのまま取り入れるというようなことについては固執をされておられたという経過がありまして、私はいまになってみればまさに言ったとおりではないかという気がいましているわけでありますが、急いでこれを改正していくという点について私は賛意を表しておきたいと思います。ただ、たとえば半相殺方式を取り入れていくというふうなこともお考えのようでありますけれども農家の気持ちとしては園地単位、つまり一筆方式まで踏み込んでもらわないと、果樹というのはなかなか一本一本が大事でありますから、全相殺でなんというようなやり方ではもちろんだめだというのは当初私どもが強く主張した点でありまして、せめて半相殺方式を取り入れる。しかし、私は、せっかくここまでお考えになるのなら、P方式といいますか、そういうものも組み込んだ園地単位の一筆方式まで踏み込んでみてはどうなんだろうという感じがするのですが、まずこれが一つであります。  それから、全体的には何といってもいまのように赤字が出てくる。異常な災害発生すればとてつもない大型な繰り入れをしなければやっていけない。こういったようなことが起こるわけでありますから、政府の持つ責任というのがここに一つ——特別会計でこういうふうに補てんをするのだからいいではないか、こういうふうに言われるかもしれませんけれども、私はそうではなくて、そこはそことして異常災害に備えて、異常な基金の破綻を来すようなときには政府がてこ入れをするということでこの法律というものは生かしていくべきではありますけれども、全体的に言えば、もっと端的に加入者のふところにきちっと受けとめることのできるような、そういう感じがぴりっとするようなやり方をするとすれば、私は、政府の負担部分というのはいまの五割から六割に上げるくらいの思い切った措置をとられるべきではないか、こういうふうに思うのです。これはいかがですか。
  23. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 まず、園地単位にいわゆる一筆引き受けと申しますか、そういうことをやってはどうかという御意見でございますけれども、これはある意味ではこの農業災害補償制度の持っておる長い長い論争の歴史があるわけでございまして、これは島田委員もよく御承知のとおりであろうと思います。確かに園地単位の引き受けということをやりますれば、支払いの機会も多くなりますし、その意味では農家の側が満足するということがあると思いますけれども、一方では、非常に少額の共済金が支払われる機会が多くなるということでございまして、やはり経営上から見まして余り効果のないような共済金支払いが多くなるということがあり得ると思います。これは農作の共済につきましても一筆であるか農単であるかということで長い長い論争をやってきた点でございます。私どもといたしましては、確かにそのような農家の方の御要望、つまり、できるだけ支払いの機会が多い方がいいというお考えがあろうかと思いますけれども、やはり深い災害に対して十分な補てんをするということ、これも念頭に置いて共済制度を仕組んでいくということ、これが共済の基本的な考え方じゃないかというふうに考えているわけでございます。さような観点から、今回は半相殺方式を導入いたしまして、ある程度までそのような支払い機会の増大ということに対応するということを考えてまいったわけでございますが、今回の制度改正におきましては、それをさらに進めまして、園地単位というところまで組み込むことは考えておりません。全相殺方式の持っている問題点というものは半相殺方式によって是正をしていくということで今回は対処してまいりたいというように考えておる次第でございます。  それから、いま一つの御質問でございますところの国庫負担の問題でございますが、確かに畑作共済等につきましては、果樹共済よりも高い国庫負担を実施しているということは事実でございます。しかしながら、このような共済制度の国庫負担のあり方につきましては、おのおのの共済の持っておりますところのいろいろな状態といいますか、そういうものによりまして国庫負担というものは決まってまいっておるわけでございまして、たとえば畑作共済につきましては、食糧総合自給力の強化といったような観点から畑作農家の経営安定を図るという観点もありましたし、また水田利用再編成との関連ということもございまして、特に国庫負担率を高くするというようなこともございました。また、一つの大きなポイントとしましては、一般的に畑作経営というものは他の部門に比較いたしまして収益性が低いという点もございます。さような点から畑作共済につきましては現在六割の国庫負担をいたしておるわけでございまして、このような諸点が果樹共済については必ずしも当てはまらないんじゃないかという感じを私どもは持っているわけでございます。  特に、収益性の点を比較いたしますと、果樹共済の場合には、畑作よりも高い収益性を持っているということが諸種の統計からも明らかでございますので、さような意味で、果樹共済につきましては国庫負担割合をこの際改正するという必要性は現在は必ずしもないんじゃないかと考えている次第でございます。
  24. 島田琢郎

    島田委員 国庫負担をもっとふやせという話に対して言えば、畑作は六〇%でそれなりの理由があります、果樹にはその要件がないんだというふうに聞こえるわけであります。きょうはそういうことでおさめておきますが、一言言わしてもらえば、昨年から始まりました畑作共済あるいは園芸施設共済、それからその前に家畜共済というのが始まっておりますが、家畜共済だって肉豚は三分の一、種豚は四割、馬が四割といったようにずいぶん格差がありますね。こうした各種保険制度共済制度というものは、それなりの理由等がありましょうけれども、本来、国の負担率に格差があるというのはおかしいというのが私の一つの持論なんであります。この国庫負担という問題についてはまた別の機会に議論をする場所があると思いますから、きょうはこの程度においておきますけれども、そもそも果樹共済で言えば、約八十億からの繰り入れを今回しなければならない。繰り入れするのと、加入率を高めて、そしてノーマルな、ややノーマルに近い保険制度というものを確立していくことによってお互いに担保できる条件がそこに備わってきて、いわゆる国庫の支出が少なくなっていく。これは、返せるんだからいいんだと言ったって、いまの状態ではとても返せるような仕掛けじゃありませんね。ですから、そうなれば、やはり喜んで加入してもらえるような制度中身に思い切って変えていくということに勇断をふるうべきだ。  逆選択という問題がありますけれども、これだって、今度の制度改正の中で無事戻しといいますか無事故戻しといいますか、こういうものを割引方式でやりたい、こういうことを持ち出されてこられました。これも、当初、保険制度発足するときに、私は、逆選択ということが一番問題になりますよ、だから、それを防いでいくためにも、何年か無事故であったものに対してそのままにしておくというのは、加入者にとってみればばかばかしいという気持ちになって入らなくなってしまうよ、入っているものでもやめてしまうよ、この点をしっかり考えておかないといけないのではないかということを言いましたが、まさにそのとおりになっているわけです。これも今度制度改正の中で取り上げられるようでございますから、この点については、割引の額についてまだ恐らく固まっていないのでしょうから、私はいまここでそこまで踏み込んでお話を聞こうとは思っておりませんけれども、幾つかのそういう問題点は、今度の改正をやろうとお考えになっている政府の腹のうちにおありの案と、私ども考えていることではかなりまだ隔たりがありまして、ですから、必ずしも考えておられるような加入の促進がなされるかどうか、私はまだ疑問なしとしない。  そこで、この際こういう保険制度全部についてでなくて、この果樹共済制度についてだけで結構でありますが、加入率はどれぐらいのところまでいけば、大体理想としていいとお考えになっていますか。
  25. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 加入率がどの程度までいけば安定するかということは、おのおのの共済制度実態によりましていろいろと差がございますので、必ずしも一概に、たとえば五〇%でいいとか、あるいは六〇%がいいとか、あるいは九〇%必要だというようなことを申し上げるわけにはまいらないと思います。しかしながら、できるだけとにかく加入率を上げていくということは、ただいま先生の御指摘のとおり、逆選択を防ぐという点から非常に重要なことでございますので、私どもとしましては、この果樹共済が安定できるような状態に達するまでできるだけ加入率を伸ばしていくということを考えてまいりたいと思います。  ちなみに、これからやろうと思っております今回の改正内容として目下検討中の、加入の伸び悩みを解消する方策を申し上げますと、ただいま先生の御指摘がございました、いわゆる無事故割引制度、これはぜひ検討の対象にいたしたいと考えて、いろいろとやっております。また、従来までは暴風雨だけが事故除外の制度になっておりましたけれども、これに対しましては、たとえばひょう害だけの保険をつくってみるとか、あるいは病虫害を除いた共済制度を検討してみるとか、そういった点も検討してみたいと思います。また、先生もよく御承知のように、果樹の単位当たりの価額につきましても地域別にもう少し細分化しなければいけないということもございまして、たとえばブランドの非常に売れている地域につきましては特別の共済価額を設定する、あるいはリンゴの中でふじと国光とが一緒の共済価額を設定しているというようなことにも問題があると思いますので、そのような意味での共済の単位当たり価額設定の細分化といったようなこともやってみたい。それからまた半相殺方式の導入あるいは全相殺方式における支払い開始割合の引き下げ、あるいは災害収入方式の導入といったような諸般の検討をいたしておりまして、このような手段によりまして加入の伸び悩みを解消していくということを考えている次第でございます。  何と申しましても、共済一つの商品でございますから、なるべく農家の方々も飛びつきたいような制度に改めていくということが肝心であると思いますので、さような観点から私どもは検討いたしているということを申し上げておきたいと思います。
  26. 島田琢郎

    島田委員 もうすっかり時間がなくなってしまいまして、せっかく今村長官が来ていて、答弁したくてうずうずしているだろうに時間がなくなってしまいました。  最後のところで漁業の関係をひとつお尋ねしておきます。  状況原因というものについては、もう時間がないので、改めてここでお述べいただくということになりませんが、いま果樹共済制度上の問題について私申し上げましたが、長官として、漁業共済制度上に何か改善すべき点、あるいはこうしたいというお考えがあるとすれば、なければあれでありますが、私はあると思うので、あるとすれば、どのようにお考えになっているか、そこを聞いておきたいと思います。
  27. 今村宣夫

    ○今村政府委員 漁業の関係の共済はまだ制度発足して若うございますし、農業のようになかなか体制が整備されておるわけではございません。したがいまして、漁業共済につきましての全体的な制度改正をもっと充実させていくということが一番大切なことではないかと思いますが、同時に、制度内容につきましても、逆選択が行われておるとか、あるいは共済加入率が非常に低いとか、あるいは共済掛金が非常に高いとか、いろいろ問題がございます。全体的に見まして、現在の漁業共済が果たして漁家の方々にとって魅力があるものであるかどうかという点を考えてみますと、これは制度的になかなか問題があると思います。したがいまして、私たちといたしましては現在研究会を発足をいたしまして、制度内容全体につきましての検討をいたしております。この検討の成果を踏まえまして将来制度改正について取り組んでいきたいというふうに考えておる次第でございます。
  28. 島田琢郎

    島田委員 いま水産庁の考え方が示されたわけでありますが、いみじくもいまお話にありましたように、漁民の皆さんの話を聞いたら、全く魅力ない、もうにべもなくこういう答えであります。それは何か。さらに重ねて聞きますと、もう掛金が高くて話にならぬ、災害が起こったって、不漁になったって、ちっともめんどう見てくれるという制度になっておらぬ。まあ、こっちが説明する以前に全く聞く耳持たぬというほど、この制度に対して忌避状態を示すのであります。これはもう私は、制度としては本当にここまで来ちゃったんじゃ話にも何にもならぬなという感じが強くいたします。ですから、やはり早くみんなに喜んで加入してもらえるような制度に変えていかなかったら、この制度はまさに空文化してしまう。しかし、現に災害も起こっておりますし、いろいろな点で共済の力が必要だという事態は全国各所に起こっているわけでございますから、研究会を開いて必要によって制度改善を手がけたい、こういうお話でありますけれども、これはなかなか手ぬるいようなお話で、ことしや来年の話になるのかどうかちょっと私もその辺疑問に思うわけでありますが、ともかく改善を図っていくということによって漁民の人たちに魅力ある共済制度だというふうに感じてもらえるような懸命な努力が政府当局に必要だ、とりわけ水産庁長官にはこの責任はあるよ、こういうふうに最後に申し上げておきたいと思います。  いろいろ申し上げたいことがたくさんありましたが、この法律案そのものは私ども基本的に反対の法律ではございませんで、一刻も早くやはり払うべきところは払って、安心してことしの再生産ができるような、そういうことにしてほしいという希望が十分ある中で、若干共済制度そのものに対する欠陥の部分を今後どう直していくのかについてのお尋ねをしたわけでございますが、必ずしも私の満足のいくような一〇〇%の答えは返ってきておりませんけれども、しかし、これに取り組む意気込みについてだけはよくわかりましたから、その意気込みを失わず、さらに前進の姿勢で取り組み、即刻改善を図って、喜んでみんなに加入してもらえるような共済制度に改められるよう漁業の方も含めて要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  29. 稲村利幸

    稲村(利)委員長代理 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。山田芳治君。
  30. 山田芳治

    山田(芳)委員 いまの問題に関連をしまして、保険制度がいまのように少し災害が続くと繰り入れをしなければならぬ、こういうことであってはならないし、制度改善をするという話が出ていました。そこで私は、ひとつ提案をいたしたいと思いますし、ひとつ真剣に考えてほしい、こういうことを一言だけ申し上げておきます。  いま七十数億なり百十数億それぞれ繰り入れをする、これはあるとき払いの催促なしで、無利子で、大蔵に返るのはいつかわからぬ、こういうことですね。大体歳計現金がたくさんあるときならこれも結構なんですが、大蔵当局としては、金がなくなれば一時借り入れを日銀なり何なりで利子をつけて借りている、片一方には催促なしの金を貸す。これは大蔵サイドから言うといろいろ問題があるのではないか。私は、農民や漁民のためにはそのことは決して悪いことではないと思うけれども、財政の問題としてみれば問題がある、こういうふうに思います。  それから、もし共済の方で余ったら、これは預金部資金に回す、これは利子がある、こういうかっこうになっておりますね。預金部資金に預託をすると書いてあります。しかも運用等もして、またある程度利子をかせぐ、こういうことになっている。これでは大蔵当局としてはいろいろ問題があるんじゃないかと私は思います。そのためにも、また農林省サイドから言えば、累年、災害が起こるといろいろ大蔵省と交渉して金をもらわなければいかぬ、こういうかっこうになります。それを少し制度改正意味で、私は、保険がいま国が掛金半分、農民、漁民が半分、こういうふうになっていますが、そうじゃなくて、府県及び市町村をこれにかませて、そして共済の総額をふやす。農民の負担がいま重いから、あるいは漁民の負担が重いから、それに補助金を出させるという方式でなくて、総体保険金額をふやしていくという形の中で、一方では農産物、特産物を府県や市町村というのは果樹園芸その他奨励をし営農を指導しておるのですから、そこをかませることによって、いまお話のあった二五%程度加入率というものをもっと上へ上げる必要もあるだろうし、それがまたできる。そのためにも府県及び市町村をかませていく。掛金総額は聞いてみますと三十億かその程度でありますから、地方財政計画で単独の事業費というのは数兆に及んでおるのですから、その程度のものを地方財政計画の中で消化することはきわめて簡単である、私はそう思います。  どうして府県や市町村をかませないのか。国と農民、漁民では、余りにもこの制度自身がどうも農民、漁民に密着をしていない。だからこそ、府県や市町村をかませていくというような制度をこの際、それほど財政負担にならないわけです。また、実際この共済を運営していくためにも府県や市町村がかんでいくことの方が加入率も上げるし、また保険金総額が上がっていくという制度考える意思はないかどうか、考えるべきではないか、こういうふうに思います。  もっといろいろ質問したい点がありますが、早う上げろという話ですから、この一問だけ質問しておきます。大蔵省もひとつ考えておいていただきたい。
  31. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 農業災害補償制度の対象には、最近地域特産物的な作物も多数取り入れられてまいりまして、地方の利害と申しますか、それに非常に密接に関連のある作物が対象としてふえてきているわけでございます。このようなことから農災制度が地方公共団体の産業政策とより密接に関連してくるという面は確かにあるというふうに思います。また、制度を効果的に、かつ円滑に実施するというためには、ぜひ地方公共団体の御協力を得ることも必要になってきたということも事実だろうと思います。  このようなことから、実は農家に対する掛金の補助あるいは最終的な組合の損失に対する補てんといったような面で、地方公共団体が農業共済事業の推進に積極的に参加してくださっているという事例もございまして、そのような面ではそのような実例がございますこともございまして、私どもも望ましいものというふうに考えておるわけでございますが、ただ、これを制度的に仕組むということになってまいりますと、もちろん現段階で市町村が農業共済組合にかわりまして事業を実施しているところがあるわけでございますけれども、しかしながら、やはり仕組みとしましては組合、さらに連合会、そして政府の再保険という形で仕組んでおりまして、また同時に、地方財政と国の分担区分ということも、制度問題として考える場合には当然その仕分けということも考えてまいらなければならぬということもございまして、いま直ちにこれを実現するというふうなことにつきましては、なお相当検討を要するのじゃないかという感じがいたしまして、ここでは今後の検討課題としてひとつ考えさせていただきたいという御答弁をさせていただきます。
  32. 吉野良彦

    吉野政府委員 ただいまの御提案でございますが、農林省の方から御答弁ございましたように、確かに、この共済制度もそれぞれの地域のいわば農政上の要請とも密接に絡んでおります。それからまた、いずれにいたしましても、地方公共団体の御協力なしにはなかなか円滑には実効を期しがたいという面もございます。ただ、いわば制度として地方団体の負担、これを組み込むということにつきましては、これも農林省から御答弁ございましたが、一つには現在の農業災害補償制度というものの基本にかかってくる問題でもございます。それからまた、地方財政と申しますか、国と地方との間の関係ということになりますと、大げさに申しますと、国と地方との間の事務配分の問題という問題にもかかわってまいる面もございます。これはよほど慎重に考えていかなければならないのではないかというふうな感じがいたします。
  33. 山田芳治

    山田(芳)委員 最後に一言だけ。  次長さん、私は大蔵省のバックアップをしているのですよ。これを拒否しちゃだめですよ。それから、農林省もそうですよ。大体、府県、市町村をかまして額を大きくしたり、——私は補助制度にしなさいと言っていません、はっきり言って。あるいは漁民の方が非常に高いから、その場合はどうかわかりませんが、加入率は少ないわ保険金の総額が少ないわというので、こんなことをやっていないで、もっと府県も市町村も枠組みを少し思い切って頭の切りかえをやって、考えてやりなさい。私は、現地で、府県で農林部長もやっていましたし、財政もやっているし、自治省におった人間ですから、そういう場合はよくわかっています。答弁としてはそう言うだろうけれども、私は内容はわかっているから、具体的に提案しているのですから、もっと真剣に考えていただくことを提案して私の質問を終わります。
  34. 稲村利幸

    稲村(利)委員長代理 坂口力君。
  35. 坂口力

    ○坂口委員 農業共済にしましても漁業共済にいたしましても、私、素人ですので、基本的な問題を幾つか聞かせていただきますので、ひとつお願いをしたいと思います。  いまも農業共済の、特に果樹共済加入率お話が出ておりまして、まだ二四、五%台に低迷しているという議論が続いていたわけでございますけれども、いま出ております農業共済の方とそれから漁業共済の方とを比べてみました場合に、この果樹共済の方はいまお話がありましたようにまだ二十数%の加入率しかない。片や漁業共済の方は、たとえばハマチ共済なんかを見ますと、その中の、たとえばある地域で三十軒ならば三十軒ハマチの養殖をやっている。その中で一人でもそこにもう私は加入をしないという人があると、全体にそれは共済に入れないのですね。だから、どこにでも一人ぐらいは風変わりなやつもいまして、どうしても入らない、私は全然入らぬ、こういうのがいるわけなのですよ。そうすると、残りの二十九人が何としても入りたいと申しましても、共済には入れない。ここに共済もいろいろございますけれども、並べてみますと、片方はそうして一人でも入らないとだめだという共済があり、また片方の果樹共済のようにわずか二四、五%しか入らないでも、それで一生懸命になっている共済もあるということで、比較いたしますと非常にアンバランスな感じがするのです。たとえば、養殖共済のように、一人でも入らないという人があったらだめだという、これも私はちょっとどうかと思うのです。  原則はわかりますけれども、中にはいろいろな事情のあるのもありますから、一人や二人こぼれるのがあっても、それは原則として認めるという態度が私は必要じゃないかと思いますし、また、農業共済の方も、余り地域的に少なければ、何%ぐらい入ったときにそれはするとか、何かその辺の歯どめも必要なのじゃないだろうか。まことに素人の考えでございますけれども、二つ比べましてそう思いましたので、まず先にそれをお答えいただきたいと思います。
  36. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 ただいまの坂口先生の御質問でございますが、確かに私どもも同じ省の中で二つの共済をやっておりますけれども、おのおのの制度発足後の歴史、そういうものからおのおのが別に独立して動いてまいりましたので、双方を比較してみるというようなことをつい怠ってまいりまして、その意味では非常に重要な点を御指摘を受けたのではないかという感じはいたすわけでございます。その意味で、私ども今後両方の共済制度を比較しながら、その長所、短所をいろいろ検討してみなければならぬという気持ちは持つわけでございます。  ただ、いまの御質問に対しまして私ただいまどんなふうに感じるかということを申してみますると、実は果樹共済漁業共済との加入方式が異なっているのは、やはり基本的に漁業というものとそれから農業というものの経営の差と申しますか、そういうところから出発したのじゃないかというふうに考えるわけでございます。  と申しますのは、漁業の場合には、漁業権を中心にいたしまして非常に強固な地縁的な結合体と申しますか、そういう共同体というものを形成している漁業関係というものを前提にいたしまして集団的なとらえ方をする、そこで初めて共済というものに乗ってくる、そういう被保険対象というものを考えたのじゃないかというふうに考えるわけでございます。     〔稲村(利)委員長代理退席、綿貫委員長代理着席〕 ところが、果樹共済の方は、これはおのおの独立の経営体というものが独立の採算をいたしておりまして、その上で一つ一つ農家が被保険対象になっているという点に大きな違いがあるのじゃないかという感じがいたします。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕  それからまた、保険技術の面で考えてみますると、やはり基本的な保険技術として成立するためには、損害評価の面でこれがうまく仕組めないといけないわけでございますけれども果樹共済では個々の農家の園地で客観的な損害評価ができるわけでございます。つまり、現実にそこで見て、どれだけの被害があったかということをつかむことができるということがございます。漁業共済では、一つは企業的な経営が必ずしも行われていないということがございますけれども、さらに損害評価の面では、どうしても水揚げを確保するという、水揚げで押さえるのじゃないということがあると思います。そうしますと、どうしてもそこで集団的な販売というものが行われておりますところの漁業協同組合を中心としました連帯関係、これを基盤にいたしました一つの取引関係というもの、そこをとらえて損害評価をやっていくということが必要ではなかったかというふうに考えられまして、このようなことから、やはり漁業農業の差異というものがこのような共済の仕組みにあらわれてきているのではないかという感じがいたします。  特に果樹共済につきましては、逆選択の防止という観点から義務加入制度もできておりまして、一定の要件のもとに組合が議決をいたしますと、義務的に加入しなければならぬという制度も設けられているわけでございますが、これがまだ徹底を欠いておるということは事実でございます。しかしながら、もしも加入をしない、加入を希望しないという農家までも強制的に申し込みをさせるということは、もちろん農作のような形で実施するというわけになかなかまいらないと同時に、また希望しない農家があるからといって、その地域の全体の果樹農家につきまして共済制度実施しないというわけにいかない。やはり個別に経営体としてとらえる場合には、その経営体としてとらえ得る農家をできるだけ組み込んでいくというような制度でもってこの制度は仕組んだというふうに考えるわけでございます。したがいまして、むしろわれわれの方の制度から申しますと、できるだけ加入を促進していくという方向に向かうわけでございまして、加入しない農家が若干あるということからその地域で制度実施しないというわけにいかない、これがわれわれの方の実態であるというふうに考えます。そのような前提の上で果樹共済を仕組んでいるというふうに考えている次第でございます。
  37. 坂口力

    ○坂口委員 両方ともお答えいただいたわけですか。簡単に……。
  38. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ただいま経済局長が申し上げたようなことでございまして、私たちの共済の組み立て方は、やはり一つの漁場をとらえる、あるいは水揚げの段階でとらえていく。したがいまして、漁業協同組合のそういう共同的な基盤をベースにしてつくり上げておるということは先ほど経済局長が申したとおりでございますが、ハマチにつきましても、一定の水域ごとに養殖業を営む全員が一括して申込書をまとめて提出していただくという形になっておりますが、これは、ハマチの災害が起きましたときには災害時に非常に漁場が混乱をする。したがって、モラルリスクが発生することが考えられます。したがいまして、その漁場単位で全体的に加入をしていただくという扱いをいたしておるわけでございます。
  39. 坂口力

    ○坂口委員 それはよくわかるのです。いままでの歴史的な経緯としてはそうなっているということはよくわかるのですが、両方とも極端過ぎるんじゃないか。リンゴとイワシと違うんだ、海と陸と違うんだと言われればそれまででございますけれども、しかし、われわれから考えれば、経営という面から見ればさほど大きな違いはない、大きな立場に立って見ます場合に。農家果樹で収益を上げ、あるいは漁業をやっている人がたとえば養殖で収益を上げという、そういう観点からすれば、共済保険というものについての考え方も、そう大きな違いが出てくるということ自体ちょっと納得しかねる面があるわけです。歴史的な違いがあるということはよくわかりますけれども、しかし、現実問題といたしまして問題になっておりますのは、果樹共済の方はなかなか加入者が、努力はされているけれども少ないという現実があるわけです。そこで、なかなか共済としてその内部でのやりくりができないという現実があることも事実であります。  また一方において、漁業の方の養殖の方あたりは、入りたくても、そういう人が一人あればなかなか入れないという現実があることも事実であります。だから、これを一体どうするのですか。いままではこうでございますという話はもう十分よくわかりました。しかし、これを一体どうするのですか。いままでの経緯がこういうふうな歴史でありますから、こういたしますと言うんだったら、全然これから変わらないわけです。だから、現在ありますこの現実をどう改革するんですかということを私はお尋ねをしておるわけでございまして、それを聞いておりますと私の持ち時間がなくなりますので、もう言いっ放しで終わりますけれども、ひとつ考えていただきたい。漁業の方もひとつ考えていただきたい。原則はわかります。原則はわかりますが、まあとにかく一人ぐらいそういう人があっても、それは救うべき道を考えるということを私はやはり一応御検討いただきたい。それが一つでございます。  建物共済、まあ火災共済ですね、というものと、それからたとえば水稲の共済、それから果樹共済等を比較して見ました場合に、たとえば料金水準の基礎になりますところの金額被害率というものを比較いたしますと、果樹共済は、これは五年平均でございますけれども、一二・九%ということになっておりますし、水稲の方は三・四%であるし、建物の方は〇・一二三%ということで、これは非常に違いがあるわけでありまして、その点からいきますと、料金水準というものが果樹共済あたりは非常に厳しいということはこの数字を見ましても理解ができるわけでございます。それだけに、加入者が非常に少ないということは非常にまた苦しいということにもなるわけでございまして、そういう面からもぜひより多くの人が加入できる改正をとるということに——いま申しましたように、やはりここではある程度、何%加入をしていただければ共済というものをやりますよという形にしていきませんといけないんじゃないだろうか。入りたい人は入って入りたくない人は入らなくてという形だけで、しかし条件は大変悪くて、そんな悪い条件でもなおかつ入ってくださいという人だけを求めていたのでは上がらないという気がいたします。  それからもう一つ果樹共済のときの基準のとり方ですけれども、たとえば平年度として額があって、これ以下であったときには共済の対象になるという基準がありますね。その平年のとり方というのは非常にむずかしいと思うのですけれども、これはどうとってみえるのですか。簡単で結構でございます。
  40. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 まず、果樹共済の方から御説明いたしますと、確かに先生おっしゃられますように、基準収量のことだと思いますが、基準収量を設定いたしますのはなかなか技術的にむずかしゅうございます。特に隔年結果がございますので、その点が非常にむずかしいわけでございますが、現在とっております制度は、過去の五年の収量の中で三年を平均いたしまして、樹勢の伸びをそれに加味いたしまして設定をしておるということでございます。
  41. 坂口力

    ○坂口委員 その場合に、これは農林水産委員会あたりではいつもよく議論になっているのだろうと思いますが、量を確保することなのか。たとえば、リンゴならリンゴ共済でやっておるとしますね。その場合に、リンゴの量があればいいのか。あるいはリンゴの量は少なくとも、値段は上がることだってあるわけでありまして、あるいは品質のいいものを少数精鋭でつくるのか。あるいは、質は少々落ちてもいいけれども量をたくさんつくるとするのか。これは農家の経営方針によって非常に違ってくると思うのです。その辺のところは保険の中でどういうふうに加味されるのか。
  42. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  二つのことが考えられるわけでございますが、一つは、確かに品質のいい、たとえばリンゴでございますれば、品質のいいリンゴはできるだけ共済の価額を高くするということによってその損失のてん補の度合いを高めていくということができると思います。さような意味では、従来の果樹共済の中でも、リンゴの品種の品質によりまして価額を違えているということをやってまいりましたが、まだまだそれが細分化されていないという問題がございまして、農家の魅力がないという点がございます。そこで、その点につきましては、先ほど島田委員お答えをいたしましたように、さらにこれを細分化していくということを考えてまいりたい。それは品種別に、たとえば先ほど申しましたふじと国光とが一緒の価格というのはいかにもおかしいということがございますので、それをさらに分けて考える。あるいは、地域で非常に名の通ったブランドがあるというような場合には、その場合の共済価額を高くしていくというようなことをいたしまして、それで先生のおっしゃるような問題をカバーしていきたいというふうに考えている次第でございます。  それからいま一つは、今回の改正の中に災害収入方式ということを一つ考えておりまして、これは実験的にやってみようかということで検討いたしておるわけでございますが、これは被害がございました農家、つまり物的な被害があった農家についてでございますが、その場合に収入を補償していく、そういう観点の共済の方式を取り入れて、これは実験的に実施してみたいということを考えておりまして、さような面から先生のおっしゃられるような問題にアプローチしていきたいというように考えておる次第でございます。
  43. 坂口力

    ○坂口委員 それじゃ、ひとつそういうことで御検討をいただきたいと思います。  それから、漁業共済の方でございますが、特に養殖共済の場合に、たとえば魚ならば魚が非常にたくさん死にました場合に、それがどういう原因で死んだかということが非常に共済の判定の基準になるというようなことで、私、昭和四十九年でございましたか、魚医制度というものを提案いたしまして、いままでのように獣医さんにすべてを任しているというのではなくて、やはり養殖業である以上は魚の病気あるいは予防ということについても診断をしあるいは予防する、そういったことを専門的にやる人が必要じゃないかという提案をいたしまして、魚病診断技術者というカテゴリーの人をつくってもらいつつあることに非常に敬意を表しております。ぜひ、これからその専門的な知識をより持った人をつくって各地域に配置をしていただきたいと思うわけです。文部省あたりの考え方もございますし、なかなか前進しにくいようでございますが、ことしもある程度予算化をされておりまして、渋い大蔵省にしてはたくさんつけてもらったということでございますので、私からも敬意を表しておきたいと思いますが、まだ緒についたばかりで、これからでございますので、来年から本格的な予算大蔵省の方に出していただいて、大蔵省の方はそれをスムーズに通していただく。ぜひひとつお願いをしておきたいと思います。  その漁業共済の中で特に赤潮が問題になるわけでありまして、これは養殖のあり方にも非常に関係していると思うのです。たとえば、えさのやり方とか、薬の使い方とか、あるいは密度とか、そういったことが非常に影響しておると思うのですが、赤潮が非常に多くなってきている。これをただ起こったからその結果について共済で賄うということだけでは、どれだけお金を投入いたしましてもなかなか済まないということになってくるわけでありまして、どうしてもそういった原因を取り除くという態度を明確にしながら、共済の運営も並行してやっていくということでなければならぬと思うのです。赤潮をどうしてなくすかということをここで議論しましても、なかなかお答えも返ってこないと思いますので、きょうはやめますけれども、赤潮が発生をしたときに、暇があれば生けすを赤潮のないところに移すわけですね。ところが、急に来ることがあるのです。夜中に来ることだってある。そうすると、移すに移せないときに、業者はふたを取りまして、全部死なすよりは逃がした方がいいということで逃がしてしまうことがある。ところが、逃がしてしまうと対象にならないと思うのです。これはどうですか。ほっておけば必ず全部死ぬわけです。共済のお金をもらうことを中心にすれば、逃がさずにそのままみんなそこに置いておいて死なした方がいいのでしょう。だけれども、生きている以上かわいそうだ、死なすよりも何とかして逃がしてやった方がいい、そういう気持ちで逃がしてやるという場合には、入らない。この辺の考え方を何とか統一していただいて、ぜひその辺のところも情状酌量の道をつくってあげるべきじゃないかと思いますけれども、どうですか。
  44. 今村宣夫

    ○今村政府委員 赤潮につきましては私たちもできる限りのことはいたさなければならないと思いまして、予知事業とか予報事業とかいろいろやっておるわけでございます。  ただいま御指摘の、急に発生した場合に死なすより逃がしてやった方が、気持ちとしては確かにそういう気持ちになるわけでございますが、これが保険として仕組み得るか、保険の対象となり得るかということになりますと、なかなかいろいろと問題が多いだろうと思います。したがいまして、これを保険に仕組むのか、あるいはまた別途の対策として考えるのかという問題もまたございます。その辺を踏まえまして十分検討いたしたいと思います。
  45. 坂口力

    ○坂口委員 そのときに赤潮という現実のものがそこにあるわけでございますし、調査をしていただければ、そのほかの状況から判断をいたしまして、これは故意にほかへ逃がしたものではない、赤潮で逃がしたものはすぐ判断のつくことでございますし、また、せっかくそうして養殖しておるわけでございますから、何も理由のないのに放してやるというばかなことをする人はいないわけでございまして、その辺のところも余りしゃくし定規を当てた形での判断でございますと、運営上非常にいろいろ問題が起こってくるのではないか。それならば、かわいそうだけれども、後もう食べられないけれども、とにかく全部そのままで殺してしまえということになってしまうわけでございまして、全体の漁業資源という面かちいたしますと、これもいかがなものかという気もするわけでございます。ぜひ御検討をお願いしたいと思います。  それから、養殖の中にも現在共済の中に含まれているものもございますし、たとえばアジでございますとか、フグでございますとか、こういったものにつきましてはまだ含まれていないわけでございますが、アジやフグあたりもこれからどんどん養殖をすることになってくれば、これらもひとつ共済の中に含めていただいてもいいのではないか、かように思いますが、いかがでございます。
  46. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御提案のアジとかフグでございますが、アジの養殖業、フグの養殖業でいまから経営台数が一体どうなっていくのかという一つの問題がございまして、危険分散として必要な数の加入が見込まれるかどうかというところが一つの問題であろうと思います。したがいまして、私たちとしましては、経営台数の推移を見ながら危険分散に必要な数の加入が見込まれるという段階を踏まえまして対象に追加するかどうか十分に検討いたしたいと考えております。
  47. 坂口力

    ○坂口委員 そうしますと、その段階になったらそれは加える方向に進めるということでございますね。
  48. 今村宣夫

    ○今村政府委員 いま申し上げましたように、危険分散に必要な数の加入が見込まれるような段階になりましたならば、十分検討いたしたいと思います。
  49. 坂口力

    ○坂口委員 アジやフグも喜んでいるだろうと思います。  きょうは政務次官も御出席をいただきまして手持ちぶさたのようでございますので、最後に一言だけお聞きをしまして終わりにしたいと思います。  こういうふうに、今回の法律におきましては共済に対する繰入金というものがここにこうして認められて法案として提出されているわけでございまして、これは私どもも賛成をするわけであります。しかしながら、共済であります以上、できることならば共済内部で片がつけばそれにこしたことはないと私も思う一人でございます。したがいまして、いま果樹共済それから漁業共済双方についての基本的な問題の幾つかを私お聞きをしたわけであります。この問題は、これからまた大蔵委員会に来年も再来年もあるいは出てくるかもしれません。現在までの制度を踏まえて大蔵政務次官としてどのようにしていったらいいとお考えになりますか。総論的なことで結構でございますので、御拝聴しまして終わりにしたいと思います。
  50. 小泉純一郎

    ○小泉(純)政府委員 財政当局としては、財政負担ができるだけ少ない方がいい、これは決まっております。しかし、農林水産業というのは国民にとって大事な産業でありますし、真に農林水産業振興のために必要な措置であるという要求に対しては、また、それが国民の利益に合致するものであるということならば財政負担を惜しむものではないと思います。
  51. 坂口力

    ○坂口委員 吉野次長も何か一言言いたそうな顔をしておりますので、どうぞひとつ。
  52. 吉野良彦

    吉野政府委員 ただいま政務次官からお答えがあったとおりでございますが、御承知のような財政事情が特に最近はございますので、やはり一つの大きな要素として、財政負担の観点からの慎重な検討も常に必要だということを私の立場からは申し上げさせていただきたいと存じます。
  53. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。
  54. 増岡博之

    増岡委員長 渡辺貢君。
  55. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 まず第一に、基本的な問題から御質問いたしたいと思います。  いま日本の農業はきわめて重大な岐路に直面しているわけでありますけれども、たとえば、減反の問題でも一九六〇年から今日まで約百三十七万ヘクタール、今回当初目標に三七%の上乗せということでありますから、そうなりますと、一九六〇年に比べて水田の耕作面積はほぼ三分の一は減らされる。東北六県と、関東でも埼玉、栃木、茨城三県を含めたくらいの水田面積がなくなるわけですが、そういう中で転作が奨励されて、また生産農家も大変な苦労をされていらっしゃる。今回の果樹共済でもそうでありますけれども、とりわけグレープフルーツあるいはオレンジ、レモンなどの輸入が増大をする、そういう外圧の中で大変苦労して生産をされているわけです。また、漁業を見ましても、二百海里時代の中で近海漁業あるいは養殖漁業の占める位置が大変高くなってきている。日本列島は周辺海に囲まれているわけですから、そういう意味で家庭の食卓に生鮮な魚介類を供給する上でも、沿岸、養殖業の占める位置が大変高いというふうに考えるわけです。そういう観点から見た場合に、この共済制度が単に損害を救済するというだけでなくて、果樹農家の場合でも、あるいは農業経営者の場合においても、その損害を救済すると同時に、再生産について意欲を持って取り組むことができる、こういう制度が必要ではないか、このように考えるわけなんです。そういう点で、まず基本的な考え方について経済局長、長官から御答弁をいただきたいと思います。
  56. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 ただいま御指摘のように、日本農業が非常に厳しい状況下にあるということは事実でございます。米の過剰等の関係から、需要の実態に即したような農業生産構造をつくっていかなければならぬということが非常に大きな課題でございまして、さような意味から、ただいま農林水産省といたしましても農政審議会の御審議をお願いいたしまして、今後のあるべき農業の姿、またその政策というものを現在検討中であるということは御承知のとおりでございます。  さような非常に厳しい現状から申しまして、農業災害補償制度につきましても、災害対策といたしまして農政における重要な柱になっております関係上から、今後とも適確な運用に努めていくということが必要であることは申すまでもないことでございますが、また同時に、その制度内容を充実いたしまして、農家からも魅力のあるような制度にいたしまして、農家災害の補てんに万全を期するということは当然のことであるというふうに考えております。  このような観点から、昭和五十四年度からすでに新たに畑作共済というものを実施いたしておりまして、また園芸施設共済といったような分野にもこの制度が広がってきたということはさような方向を志向しているということでありますけれども、さらに果樹共済につきましても制度の充実を図るべく、先ほどから申しておりますように、今通常国会に農災制度の一部改正法案を提出いたしたいと考えておりまして、目下準備を進めているという段階でございます。
  57. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のように、本格的な二百海里時代を迎えまして、私たちは沿岸漁業及び養殖業のためのその執行につきましては特段に留意をする必要があるし、またしてまいっておりますが、幸いにしてわが国周辺水域というのは非常に漁場条件に恵まれた水域、生産力の高い水域でございますから、この水域をできる限り利用して沿岸漁業、養殖業の振興を図っていく必要があるというふうに思います。  そういう観点に立ちまして、漁業共済につきましても、先ほどお話がありましたように、漁家の方々に魅力のあるような、また喜んで加入していただけるような制度に発展をさせていかなければいけない問題であろうと思います。私たちは、そういう観点から沿岸漁業、養殖業の振興に努めますと同時に、共済制度につきましても、この見直しにつきまして鋭意検討いたしておるところでございます。
  58. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 そうしますと、第二にお聞きしたいのですけれども、今回被害が非常に重大であり、両会計で約百九十億の繰り入れをしなければならないということでありますけれども、五十四年度の当初予算においては、農業共済全体で八百二十二億、漁業共済関係では八十二億、約九百億が組まれておるわけです。これを五十年で見ますと五百億前後ですから、つまり倍に近い共済掛金の国の負担分あるいは事務費の負担分、こういうふうになっているわけです。今回の百九十億を加えると合計で五十四年度は一千百億を超えるかなりの大きな金額になるわけで、そういう意味でも財政の効率的な活用が必要ではないかというふうに思うのです。  その場合に、被害が起きた、たとえば台風等被害の場合には激甚災害の指定が行われる。これは早い方がいいわけなんですけれども、そういう指定が行われれば損害認定が早く実行できる。この場合に、一つ問題点があると思うのですけれども損害評価員の体制ですね。この損害評価員の日当はいま幾らなのでしょうか。
  59. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 実額で申し上げますと、現在連合会段階損害評価員の支払い実態は六千八百一円、それから組合等が六千五百五十八円でございます。
  60. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 そうなりますと、これは決して十分だというふうには言えないわけです。つまり、損害評価員が具体的に歩いて目で見て評価をしていく、そういう意味ではその結果が最終的には損害の認定額になってくるわけなんですけれども、これは迅速で公正に適確に行われなければならないという意味でも損害評価制度の充実改善の余地があるのではないだろうかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  61. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに、損害評価員の方々には大変な労力を使っていただきまして、共済金の適正かつ公平な支払いのために大変に御尽力を願っておるということは事実でございます。そのような方々の労苦に報いなければならぬということは当然のことであると思うわけでございますが、確かに農業共済組合あるいは市町村の損害評価員の方々は、末端ではやはりこの事業というものは自分たちの事業ということでございまして、そのような御自覚を持っていただいてこの仕事をやっていただいておるわけでございます。いわば共済の基礎でございますところの共済の相互扶助の精神というものに基づきまして、農家の方々の中から委嘱いたしまして地元の損害評価業務に従事していただくということになっております。したがいまして、その経費につきましては、これは国が実費弁償をするというようなところまで考えるということはちょっと制度的には当たらないのじゃないか。やはりそこは皆さん方のお気持ちということで共済精神でやっていただくことも必要じゃないかというふうに考えております。  ただ、その損害評価員の手当そのものにつきましてはできるだけ引き上げの努力をしていきたいということで考えてまいりまして、四十九年度から補助の対象にいたしておりまして、五十五年度予算におきましても、大蔵省とも十分にお話をいたしました上で、ただいま一〇%の引き上げということで予算を要求中でございます。
  62. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 そういう御答弁ですけれども、一層充実をしていただきたいと思います。  それから、先ほども論議されておりましたけれども漁業問題の中で特に赤潮、さらにハマチの場合に、連鎖状球菌症というのですか、そういう病気が、資料を見ますと、ここ数年来連続的に発生しておるわけです。ですから、損害が起きたから共済を適用するというだけではなくて、特に漁業資源の確保、保護という立場からも、こうした赤潮問題に対する対策あるいは養殖ハマチ等の連鎖状球菌症と言われている病気を事前に予防していく、そういうものも共済制度をもっと充実していくし、国庫の負担を軽減していく上でも重要じゃないかというふうに思うのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  63. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のとおり、養殖ハマチ魚病発生が増加の傾向にございます。どうもこれは多少過密養殖をやっておりまして、漁場の水質でありますとか、海の底も悪くなっておる。そこで養殖魚の健康度が低下をしてきておるのではないかということが一点でございます。それから同時に、種苗を相当広範囲に移動いたしますので、病原体が伝播しやすくなっておるということもあろうかと思いますが、いずれにしましても、こううい漁業環境の悪化防止を織り込みました魚病対策あるいはそれに対する指導ということは御指摘のとおり非常に重要なことでございまして、私たちとしましても、魚病発生、蔓延の防止等の防疫対策でございますとか、あるいは予察対策でございますとか、あるいは情報の収集、分析に関する諸般の事業等につきまして今後とも完璧に整備をしてまいりたいというふうに考えております。
  64. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 第三に、この制度の充実と活用の問題ですけれども、すでにいろいろの観点から御質問がございましたが、果樹共済加入率が非常に低い。これは埼玉の場合でも、ナシは二十世紀、長十郎、ブドウは巨峰という銘柄生産品がございますけれども、平均して二四%。私は、共済関係者や農家お話を聞いてみても、先ほどから問題になっているような全相殺方式、いろいろ矛盾がある。三〇%の足切りがありまして、たとえば一筆三アールとして五筆つくっている、台風被害等を非常に受けやすい地勢にある部分二筆被害を受けて、五〇%、五〇%合計一〇〇%で、全筆から見ると二〇%にしか相当しない、これでは適用されないというふうに、いわゆる相殺方式あるいは三〇%足切り問題など、農家がこぞって参加をして、そして共済が再生産にとってもきわめてプラスになる、そういうものにしていく必要があろうかと思うのですけれども、これはすでに答弁がございましたけれども、改めてお尋ねしたいと思います。
  65. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 お答えいたします。  園地単位の引き受けにつきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、従来までは全相殺方式でやってまいったわけでございます。これを園地単位までいたしますと、やはり少額の共済金支払いという形になりますので、経営の安定ということから見ますれば必ずしも効果的ではないのではないかということでございます。したがいまして、一方において、農家の方々にはできるだけ支払いの機会もふやしてほしいということがあろうと思いますから、その点をいろいろと調整いたした形で、実は今回半相殺の農家単位方式ということを導入したいというふうに思いまして、検討を進めているという段階でございます。  なお、足切りの問題がただいま先生から出たわけでございますが、この点につきましては、従来から実施中の全相殺方式につきましては足切り三割でございますけれども、これを引き下げるということでいかがなものかということで検討いたしている次第でございます。半相殺方式につきましては、これは当然三割ということで足切りの水準は変わらないことで、ただ、この場合には支払いの機会が増すという形になるかというふうに思いますが、さような方向で目下検討中ということでございます。
  66. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 検討中ですけれども、今国会にも農業災害補償法提案されるというふうに聞いておりますので、一層充実を望みたいと思います。  第四に、先ほどお話がございましたように、畑作などへの転作が非常に奨励されている。畑作共済あるいは園芸共済等が設定されているわけですが、たとえば指定品目の問題なんですが、お茶ですね。京都の宇治茶、静岡のお茶、埼玉の狭山茶というふうにありますけれども、お茶をどこに品目指定をして入れるかという問題もあろうかと思うのですが、この点についての御見解をひとつ。
  67. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 お茶についてでございますが、共済制度をお茶にも適用してほしいという声はかなり大きく広がっておりまして、特に去年の凍霜害がございました結果、そのような御要望が非常に強いということはよく存じております。ただ、これがうまく共済制度に仕組めるかどうかということを検討いたさなければいけませんので、現在、地域特産物に関する調査の一環といたしまして、全国の主要県において昭和五十一年から試験調査をやっているところでございます。  なお、この共済制度化につきましては、昭和五十四年度から本格実施になりました畑作共済の中で共済対象とする農作物を政令で指定するという道はあるわけでございます。  ただ、先ほどから申しましたように、共済化をいたしますためには何分にも調査を十分にいたしまして、果たして共済として仕組めるかどうかということを検討しなければならぬわけでございます。特に損害評価の技術的な方法、これは一般の共済作物と違いまして、お茶の場合には一番茶、二番茶、三番茶、四番茶と、摘む時期も違いますし、摘み方によってまた損害が違ってくるという非常にむずかしい問題がございまして、このような技術的な検討を相当深めなければならぬということがございます。また、全国各地にお茶の栽培地がございまして、たとえば静岡のお茶と鹿児島のお茶とをどのような仕組みにするかという場合には、地域地域の実情によりましてやはり違った御意見が出てまいっておりまして、その御意見の調整ということも必要でございます。したがいまして、主要県あるいは主要県の共済団体の担当者を集めまして研究会を重ねておりまして、そのような検討段階ということで申し上げておきたいというふうに思います。
  68. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 時間がないので最後にお聞きしたいのですけれども果樹共済の場合には発足してまだ六年程度で、いろいろの問題点があろうかというふうに思います。幾つかの点について指摘をしたわけですが、いずれにいたしましても、果樹共済を含めての農業共済全体を見た場合に、やはりこれからの日本農業の発展という展望に立って、そして共済制度も充実をしていく、再生産についての農家の生産意欲が持てるようなものにしていかなければならないというふうに考えるわけであります。そういう点で、これは農業もそうでありますし、漁業の場合でもたん白源を魚介類に相当依存するという日本の国民の食生活からいってもそうだと思うわけでありますけれども、ひとつ一層の充実を要望いたしたいというふうに考えております。  最後に、先ほども触れましたように、一般会計でそうした負担金、補助金等で約九百億、今回を含めて一千百億、こういうふうな一般会計からの繰り入れもありますけれども、そういう点について先ほど質問もございましたが、最後に小泉政務次官からの御見解を伺って質問を終わりたいと思います。
  69. 小泉純一郎

    ○小泉(純)政府委員 渡辺委員の御指摘というのは、単に共済制度だけではなくて、日本が農産物あるいは水産物の振興のために積極的に取り組めというような御指摘だと思うのですけれども、やはりいま日本の国策としてもできるだけ自給力を高めるような方向に持っていっている。確かに日本は石油だけではなくて、食糧も米を除いてアメリカ初め海外に全面的に依存している。そういうことから考えて、できるだけ自給力を高めていく政策と同時に、国民全体の経済の効率化ということから考えますと、生産性の向上と言いますが、国際情勢も考えなければいかぬ。そういう中で農家なり水産業を保護する、両方をうまく調整さして、できるだけ国民の食糧供給に不安のないようにしていかなければならぬ。ですから、単に農業漁業という狭い視野だけでなくて、国際情勢あるいは全体の財政事情、そして国民全体の、産業構造をどうやって効率化を高めていくか、そういう視点からこの一次産業の振興のために、財政当局のみならず政府全体が考えていかなければいけないと思うのです。  私は感ずるのですが、日本国民は石油だけではなくていろいろな危機に対処するのがうまいと思います。水産業にしても、一時はサケ・マスは公海で全面的に禁止するというときには、これからサケは食えなくなるぞという論調で満ちておりました。ところが、沿岸漁業なり養殖なり、川をきれいにしようという対策というものがいま成功している。こういうことから見ますと、危機に対処する日本の能力というもの、日本人の努力といいますか技術といいますか、能力というのはなかなかすばらしいものがある。そういう努力を重ねながら政府全体としても大事な農林水産業の振興のために積極的に対処していかなければならない、そういうふうに考えております。
  70. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 終わります。
  71. 増岡博之

    増岡委員長 玉置一弥君。
  72. 玉置一弥

    ○玉置委員 今回、農業共済に関して、共済制度の基金自体の枠といいますか、それから大きくはみ出た結果、一般会計から費用を持ってくるという事態になったと思いますけれども、そもそも共済制度がつくられたねらい、そして効果、それと、われわれ非常に心配しているのは、収入補償であるか、あるいは利益補償、原価補償、いろいろな補償の形態がございますけれども一つは、農家自体あるいは漁業のそういう方たちを甘やかすことにならないかということと、逆に、いろいろな被害を受けられるところが非常に集中している、そういうふうに思うわけであります。だから、一回受ければそこが絶えず受けている状態になる。日本の食糧政策といいますか、そういう面からいっても、必要と思われるところが現在ほとんどそういうところしか残っていないということでございますから、そういう観点からいまの共済制度そのものでどういう補償をされているのか、そして当初のねらいの効果が順当に出ているのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  73. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 幾つかの御質問が中に含まれていると思うのでございますが、まず保険の設計としてうまくいっているだろうか、特定の地域、特定の農家だけが常に共済金をもらえるようなそういう状態になっていないかということが第一の御質問内容じゃないかと思います。これにつきましては、やはり試行錯誤を繰り返しながら、農業災害補償制度も長い歴史を持っておりますので、その過程におきまして料率の調整その他をやってまいりまして、被害が集中的に起こりますと、当然そこの料率が高くなるわけでございますから、さような自動的な調整機能を農業災害補償制度というのは持っておりますので、さような中で徐々に改善をしてきているのではないかというふうに考えておる次第でございます。  第二の御質問は、恐らく、特に果樹共済を中心にいたしまして果たしてきちんとしたてん補が行われているであろうか、つまり、補償水準が適正なものであるかどうかというお尋ねではないかというふうに思うわけでございますけれども、この補償水準につきましては、やはり農業災害補償制度である以上、農家の再生産を確保するということが目的であるわけでございまして、そのような意味では、全損を受けました場合にはやはりその農家のおおむね生産費程度は補てんできる水準ということを目安にいたしまして、通常の保険でございますと七割程度までは共済に付することができるという形にしているわけでございます。このような補償の水準につきましては、おのおの果樹共済共済対象ごとに若干そのてん補の率の違いはございますけれども、おおむねその辺のところを目安にしているということでございます。  さらに、先生も十分に御案内のように、保険においては当然道徳的危険というものを避けなければならぬわけでございまして、そのためには一定の自家保険部分というものを持たなければいけないわけでございます。さような点から三割程度は自家保険に掛けていただくということが保険の設計上もどうしても必要でございますので、さような点も含めまして補償水準というものを考えながら共済制度を仕組んでいるということでございます。
  74. 玉置一弥

    ○玉置委員 集中して同じ場所に被害を受ける農家がある。そうした場合に、たとえば共済の掛金がどんどん高くなるわけですね。逆に見れば、いつも被害が出るということはその農産物にとってその地域が不適当なのではないか、そういうふうに考えられるのですけれども、そういう場合には何か農林省として御指導はあるわけですか。
  75. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 これは農業災害補償制度の枠内で解決すべき問題ではなくて、広範な農政上の配慮という点から解決をすべき問題であるというふうに考えます。たとえば、農作物共済におきまして逐年被害が出るというような地域につきましては、やはり当該地域の農業の生産基盤が弱い、さようなためにこれが起こるということが考えられます。そのような場合には、当然基盤整備といったようなことで土地改良事業をやっていくというようなところから根本的に生産の安定性を確保することがやはり必要であろうと思いまして、さような面では、農林水産省全体といたしまして非常に大きな金をつぎ込んでいるわけでございます。また、台風常襲地帯といったような地域につきましても、その地域につきましては、たとえば品種をかえていくとか、あるいは早期栽培を実施させるとかというような非常に広範な農政上の問題としてこれを解決してまいっているわけでございまして、私も昔この保険制度に事務官で携わったことがございますが、当時の保険実態と今日とを比べてみますと、果樹共済等にはまだ問題がございますけれども、農作、蚕繭その他の基幹的な共済部門につきまして、特に歴史の古いものにつきましては、さような農政全般の手当てとというものも効果をあらわしてまいりまして、共済制度としても非常に安定し、また充実したものになっているというふうに考える次第でございます。
  76. 玉置一弥

    ○玉置委員 たとえば台風の風水害で畑が押し流されたとした場合に、いま補償対象となるのはどの辺ですか。  もう一つは、たとえばこの作物には不向きだ、何回かやってそういう結論が出たときに、共済制度として何かの適用があるわけですか。
  77. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 お答えいたします。  まず第一の御質問は、耕地についての被害をどうするかということだろうと思いますけれども、この点につきましては、農業災害補償制度はあくまでもその耕地においてとれた農産物の物的な損害について共済の対象とするという形になっておりますので、耕地の災害災害復旧その他の土地改良制度の中においてこれを見ていくという形になっております。  第二点でございますが、特に被害値の高い地域を除外するというような制度は設けてはおりませんけれども、しかしながら、そのような地域につきましては、その地域がどうしても日本の農業の生産のために必要であるという場合には、当該地域の土地改良事業なり、あるいはそこでの栽培方式の転換なりということをやらせておるわけでございます。さらにまた、今回の転作その他の状況等を見ましても、やはり常に作付が安定するような地域を中心にしまして日本の農業というものが仕組まれていくという形になっておりまして、そのような面では、農政全般の自動調節といいますか、そういう中でこの問題が解決されていくというふうに考えるわけでございます。
  78. 玉置一弥

    ○玉置委員 先ほどちょっとお茶の話が出ましたけれども、たしか五十四年度で調査が完了していますね。五十三年度ですか。
  79. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 先ほどお答えを申し上げたとおりでございまして、実はすでに何回か研究会を開いて調整をいたしているわけでございますけれども、まだ研究会を続けて検討をいたしておる段階でございます。
  80. 玉置一弥

    ○玉置委員 お茶の話でいろいろ聞くのは、要するに、凍霜害が必ず大体同じ場所で起こるということでございまして、先ほど申し上げたように、常時被害をこうむる地域とほとんど被害を受けない、そういう地域があるわけでございまして、その辺で共済制度そのもの加入を勧めるにもむずかしいし、掛金を決める場合にも非常にむずかしいと思うのです。これが本当に共済制度の拡大のネックだと思うのですけれども、こういう場合に農林省としては何かお考えがございますか。
  81. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 先ほどからいろいろと御議論の対象になっております逆選択という問題は、一つその問題があるわけでございまして、やはり掛金の高い地域だけが共済金をもらうチャンスが多いために入ってきやすいということがございます。そのための対策というのは、やはり掛金をできるだけその地域の実態に応じたかっこうで配分をすると申しますか、掛金に差をつけるということが一番重要なことだと思います。このために共済掛金につきましては、掛金率を算定いたします場合に、まず被害率は県単位のものを用いてその被害率を算定いたしまして基準共済掛金率を設定しているわけでございますけれども、その際に、県の中におきましても特に危険階級に応じまして一つの指数をつくりまして、共済金額をウエートにしながら県全体の被害率をさらに大体市町村段階くらいにおろしまして、その結果、地域的に被害率の高いところは当然掛金率も高くする、また低いところは低くするというようなことで差をつけてまいるということにいたしてございます。さような状態にいたしますれば、当然低いところでも安い掛金率で入ってまいりますので、さような掛金率の設定をできるだけ合理化するということによりましてこれに対応していきたいということで考えておりまして、果樹共済につきましても同じような考え方で進めておる次第でございます。
  82. 玉置一弥

    ○玉置委員 そうなりますと、当然掛金の高いところ、高いとごろの方が逆に入るかもわかりませんけれども、ほとんど被害を受けないところの方は入る気持ちが非常に少ないと思うのです。そうなりますと、要するに、被害を受ける人ばかりがお金を出し合って集まるということで、割りますと絶えず掛金しか当たらないということになると思うのですけれども
  83. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 この農災制度そのものはやはり自然の災害を相手にしているものでございますから、その意味では、災害発生の仕方そのものが、たとえば通常の火災保険とかそういうものと比較いたしますと、やはりいろいろな地域的なばらつきその他が出てくる、そういう制度であることは事実であると思います。  しかしながら、共済掛金率を適正に設定いたしますれば、安い掛金率で入ってこられるというところに魅力が出てまいると思いますし、またそのような農家にいたしましても、この日本列島の中でいつ災害が起こるかわからないということは事実でございまして、掛金率が低い状態で入っておいて、万が一の際には非難に重厚なてん補が受けられるというメリットもあるわけでございますから、そのような意味で、果樹共済につきましても、掛金率の低い農家も入っていただける基盤があると思います。  むしろ、加入が現在のところ果樹共済につきまして低い理由は、先ほど申しましたような余り魅力が乏しいような形で現在の制度がまだ改正されていないという点にあろうかというふうに考えまして、先ほどから申しておりますように、たとえば何回も掛金を払いながら払い損になっている、払い損と言うとちょっと言葉が悪いのでございますけれども、一向に共済金がもらえないというような農家につきましては、先ほど鳥田委員からも御指摘ございましたように、たとえば無事戻しとか、あるいは掛金の割引をやるといったようなことで、さらに魅力を深めていくというようなことで加入の増進を図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  84. 玉置一弥

    ○玉置委員 いままではどちらかと言うと原価補償といいますか、農家が払い出した分くらいは補償しようということで大体七割くらいを払われているようですね。  聞くところによると、農林水産省の方の管轄の方では収入補償といいますか、ある一定限の漁獲量がない場合には要するにその足りない分を補償しようということになっていると思うのですけれども、そういうことを考えると、全く考え方が違うのですけれども、その辺はどういうふうになっていますか。
  85. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 確かに漁業共済におきましては、いわゆるPQ方式と申しまして、Pは価格、Qは量、その双方につきまして被害が起こった場合にこれをてん補するという制度があるわけでございます。ただ、この漁業共済考え方は、たとえば混獲率——混獲をいたしていろいろな魚の種類をいろいろな形でとってくるということがございますので、最終的には価格でもって被害を推さないと被害がわからないといったような実態がございまして、さような漁業共済の特殊性からこれが出ているということがあろうかというふうに考えるわけでございます。  ただ、果樹共済につきましても、Pの要素、つまり、価格が低落した場合に、それを被害としてとらえてそれでこれに共済金を支払ってもらえないかというような考え方もございますので、先ほどもちょっと御説明いたしましたが、PQ共済そのものを導入いたしますことにつきましては、保険の設計上、あるいは大数法則に乗るかどうかというような問題がございまして、これを実施することはなかなか困難であると思いますけれども、一たん被害が生じた農家につきましてPの要素も加味いたしましたいわゆる災害収入方式といったような共済制度を実験的に仕組んではどうかということで、ただいま先生の御指摘になりましたような要素も加味いたしました保険を実験的に実施してみてはどうかということで、今度の改正で検討いたしている次第でございます。
  86. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまの要するにPを補償するという話は、野菜で言いますと、価格安定基金といいますか、そういう分野になるわけですか。それをまた果樹にも拡大してほしいということなんですけれども、そういう考えがあるかないかということと、それと価格安定基金と共済制度の掛金のプール、その辺の融通がつくのかつかないのか、その辺をお伺いしたい。
  87. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 果実の場合には、野菜と異なりまして永年性の作物という特性がございます。そういう意味で、基本的には非常に長期の需給の見通しを立てまして、それに従って植栽の指導をする、そういうことで全体の需給バランスをとることによって価格の安定を図るというようなことをいままでやってまいりまして、温州ミカンを除きましてほかの果実についてはおおむね価格もほかの農産物と同じように動いているということでございます。ただ、ミカンにつきましては、御承知のように非常に供給過剰の状態でございますので、いま果汁工場を整備いたしましたり、あるいは学校給食にジュースを回したり、そういう需要拡大をやりながらほかの作物への転換、そういう基本的な需給調整対策をやっておりまして、そういうものを通じて早く価格の安定を図っていきたいというようにしております。ただ、私どもの方で、ジュースなりかん詰めに回す加工原料のものにつきましては、果実の基金の制度を持っておりますけれども、野菜とは多少性格の違う基金であります。
  88. 玉置一弥

    ○玉置委員 いま米からの転作奨励ということでいろいろな動きがあるわけなんですけれども、その中で非常に問題なのは、野菜も含めて、米以外に価格が非常に不安定だということだと思うのです。一つは、共済制度による安定化ということもありますし、また価格安定を流通部門も含めて考えていかなければならないと思うのですけれども、それについて共済制度の拡大とかあるいは価格安定基金の拡大、そういうものを将来構造を含めて一言簡単にお願いしたいと思います。
  89. 松浦昭

    松浦(昭)政府委員 農業災害補償制度はあくまでも自然の災害というものを補てんするという考え方でございますので、経済変動による価格の変化というものの被害というものにつきまして、これは全くそのものとして受けとめて保険制度を仕組むということは法的にもなかなかむずかしいというふうに考えております。したがいまして、このような野菜とかあるいは果実とかそのほか畑作物全般の価格制度全体として、共済制度もあわせまして農家の所得補てんあるいは所得の確保ということに努めてまいらなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  ただ、災害を受けました農家につきまして、特にPの要素も加味した状態保険というものが仕組めないかということで実は検討を進めておりまして、さような面では新しい共済の方向でございますが、そのような面も実験として今度やってみたいということで、できるだけ前向きに処理するということで考えておる次第でございます。
  90. 玉置一弥

    ○玉置委員 ほとんどこちらが期待している内容でいま進んでいただいていると思うのですけれども、いま農家は四百二十数万軒と、非常に人数が少なくなっているわけですけれども、やはり食糧の自給というのがこれから非常に大きなウエートを占めてくると思うので、ぜひその辺を考え農業の近代化あるいは価格安定、それと将来必ず諸外国との価格差という話がまた出てくると思うので、その辺もぜひ農業政策の一環として考えていただきたいと思います。  では、これで終わります。
  91. 増岡博之

    増岡委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  92. 増岡博之

    増岡委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  農業共済保険特別会計における果樹共済に係る再保険金及び漁船保険及漁業共済保険特別会計における漁業共済に係る保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  93. 増岡博之

    増岡委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  95. 増岡博之

    増岡委員長 次回は、来る十二日火曜日午後零時三十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二分散会