○野呂国務大臣 ただいま議題となりました
健康保険法等の一部を
改正する
法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御
説明申し上げます。
医療保険制度の基本的改革は、かねてから重要な課題となっておるところでありますが、
医療保険をめぐる諸情勢は、近年厳しさを加えております。
かつてのような高度経済成長が期待できない情勢のもとにおいては、
人口構成の老齢化や
医療の高度化等により
医療費の伸びが賃金の伸びを上回る
状況が続くものと考えられます。また、
医療費問題のみならず、救急
医療などの
医療体制の整備、
老人保健医療制度の整備等、早急に解決を図るべき諸問題が山積しており、
昭和五十二年度の健康保険
改正法案の国会審議の際、これらのもろもろの課題の解決に取り組むことをお約束いたしたわけでございます。
したがいまして、
医療保険制度の基本的改革に当たりましては、
医療保険制度のみにとどまらず、
医療制度、薬事
制度、健康管理対策等、関連各
分野においても逐次改善を図ってまいる考えであり、昨年の第八十八回国会におきましては、医薬品副作用被害救済
制度の創設、薬事法の
改正が実現したところであります。
医療保険制度の改革につきましてはその第一段階として、
給付の平等、
負担の公平、物と技術との分離、家計の高額な
負担の解消、
医療費審査の改善の五つの原則を柱として策定した
健康保険法等の一部を
改正する
法律案を第八十四回国会に提出し、その後第八十八回国会まで御審議を煩わしたのでありますが、成立を見るに至りませんでした。
しかしながら、
医療保険制度の改革は緊急の
国民的課題であり、一刻も早くその実現を図る必要があることから、さきの第九十回国会にこの
法律案も提案し、今国会におきまして引き続き御審議を煩わすこととなった次第であります。
以下この
法律案の内容について概要を御
説明申し上げます。
まず、健康保険法の
改正につきまして申し上げます。
第一は、
医療給付に関する
改正でありますが、被保険者と被扶養者との
医療給付の格差を是正して、同一水準の
給付を確保することを基本とし、このため患者
負担を適正なものにするとともに、高額療養費の支給等により、真に
医療費負担による家計の破綻を防止しようとするものであります。
患者
負担につきましては、初診時の
負担を千円とし、投薬、注射に係る薬剤または歯科材料に要する
費用の二分の一を新たに
負担願うことといたしております。ただし、高価かつ長期間連続して投与される薬剤や、検査、麻酔に使用される薬剤は、
負担の対象としないこととしております。さらに、入院の場合には一日につき給食料に相当する額を
負担していただくことにいたしております。
これらの患者
負担の額が著しく高額となったときは、高額療養費を支給することといたしており、患者
負担の限度額は、現行被扶養者に対する高額療養費
制度では月額三万九千円となっておりますが、今回は、その約半分の月額二万円
程度にする予定であります。
また、療養費の支給要件を緩和し、保険
医療機関または保険薬局以外の
医療機関等で療養を受けた場合でありましても、やむを得ない場合には療養費を支給することといたしております。
第二は、分娩費等の
給付に関する
改正でありますが、分娩費等の最低保障額や配偶者分娩費等の額を実情に即して
改定できるものとするため、政令で定めることといたしております。
第三は、保険料に関する
改正でありますが、保険料
負担の公平を図るため、賞与等についても保険料を徴収することとし、賞与等の支払いを受けた月においては、その月の保険料額は、標準報酬月額と賞与等の額を合算した額に保険料率を乗じて算定することといたしております。
なお、保険料徴収の対象となる賞与等の額は、その月に受ける賞与等の額につき、各被保険者の標準報酬月額の二倍に相当する額を限度とすることといたしております。
次に、給与の実態に即して標準報酬等級の上限を調整できることとするため、上限に該当する被保険者の割合が百分の三を超えた場合には、
社会保険審議会の
意見を聞いて政令をもって上限を
改定できることといたしております。
また、政府管掌健康保険の保険料率は、
厚生大臣が
社会保険審議会の議を経て千分の八十を超えない範囲内において定めることができることといたしております。健康保険組合の保険料率も同じく千分の八十を超えない範囲内において決定するものといたしております。
第四は、国庫補助に関する
改正でありますが、政府管掌健康保険についての保険料率の調整に連動した国庫補助率の調整規定を廃止し、国庫補助率は、主要な保険
給付に要する
費用の現行の千分の百六十四から千分の二百の範囲内において政令で定めることといたしております。
第五は、
財政調整についてであります。今後、全被用者
医療保険間において
財政調整措置を講ずることといたしておりますが、その措置が講じられるまでの間、健康保険組合間の
財政を調整するため、健康保険組合連合会は、政令の定めるところにより健康保険組合からの拠出をもって一定の健康保険組合に対し、交付金の交付事業を行うこととするものであります。
第六は、保険
医療機関等の登録・指定等に関する
改正でありますが、個人開業医については保険医の登録があった場合、保険
医療機関の指定があったものとみなすものとして手続の簡素化を図る規定、保険
医療機関等の指定を拒否できる事由を法定する規定、未払いの一部
負担金について、保険者が保険
医療機関等の請求により徴収処分をすることができるものとする規定を設けることといたしております。
その他、
給付の平等を図る
見地から健康保険組合の付加
給付を規制する規定を設けるほか、海外にある被保険者等に対する保険
給付の実施と保険料の徴収を行うための規定その他の規定の整備を行うこととしております。
次に、船員保険法の
改正について申し上げます。
船員保険の疾病部門につきましても
医療給付、分娩費等の
給付などについてさきに述べました健康保険の
改正に準じて
所要の
改正を行うものであります。
次に、
社会保険診療報酬支払基金法の
改正について申し上げます。
社会保険診療報酬支払基金における審査について再審査に関する規定を整備するものであります。
なお、この
法律の実施時期につきましては、公布の日から起算して六カ月を超えない範囲において政令で定める日から施行することといたしております。
以上が、この
法律案の提案の理由及び内容の概要であります。何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。