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1980-05-09 第91回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月九日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 河野  正君    理事 玉生 孝久君 理事 西田  司君    理事 八田 貞義君 理事 島田 琢郎君    理事 馬場  昇君 理事 古川 雅司君    理事 則武 真一君 理事 中井  洽君       池田  淳君    中村正三郎君       畑 英次郎君    吹田  愰君       宮下 創平君    野口 幸一君       竹内 勝彦君    森田 景一君       木下敬之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君  委員外出席者         運輸大臣官房審         議官      西村 康雄君         建設省計画局環         境管理官    岩本 章雄君         日本国有鉄道環         境保全部長   從野 武邦君         日本国有鉄道運         転局列車課長  小野 純朗君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ――――――――――――― 四月二十八日  二酸化窒素環境基準改定強化等に関する請  願(則武真一紹介)(第五〇二二号)  同(則武真一紹介)(第五一〇四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件      ――――◇―――――
  2. 河野正

    河野委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  3. 馬場昇

    馬場委員 私は、環境アセスメント法について御質問を申し上げます。  長官、これは総理予算委員会でこの国会提案をいたしますという約束をなさっているわけですし、さらに、五十五年度の予算の修正の話し合いの中で、社公民三党と自民党の中でも、アセス法をこの国会提案をするという申し合わせができているようでございます。せっかく関係閣僚会議もつくられたわけでございますが、今日の情勢では国会提出に至らずという情勢のようでございますし、また、いまから国会提案するなんというのは非常識なことだと私は思うのですが、国会提出にならない、こういう主な理由についてて長官からまず御意見を聞いておきたいと思う。
  4. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先生から、君も国会議員としてそのくらいわからないのかと言っておしかりを受けるかもわかりませんが、先ほど先生も御指摘になられましたとおり、総理も明確に今国会提出をしたいということを答弁申し上げており、私も今日まで終始この国会法案提出を念願して、微力でございますが努力いたしてまいった次第でございます。現在、環境影響評価法案につきましては、去る五月六日、与党の環境部会におきまして最終的な政府案なるものを提出いたしましていろいろ御審議をいただきました。その席上、早く国が統一的なルールを確立すべきであるといったような意見やら、また時期尚早であるといったようないろいろな意見が出たようなわけでございますが、昨日また、環境部会長の配慮によって環境部会を開いていただきまして、環境部会におきましては政府案が了承されたようなわけでございます。今後は手続の問題でございますが、政調審議会、それからまた総務会の了承をいただきましたならば、閣議の決定をいただいて、そして国会提出ということに相なるわけでございます。今朝来の新聞によりますと、八日の与野党の国会対策委員長会談におきまして、自民、社会、公明、民社四党が一致した法案以外は廃案とするとの合意が成立したような新聞報道がなされておるわけでございますが、私といたしましては、最後最後まで粘り強くがんばりまして、そしてどんなにおしかりを受けようが、何としても今国会提出をさしていただきたい、かように念願もし、最後まで最善努力をしてまいりたい、かように考えておるような次第であります。
  5. 馬場昇

    馬場委員 土屋長官の意気込みというのは、気持ちだけはわかるのですけれども現実国会だとか現実の政治の状況だとかいうことは、いまの答弁では全然マッチしていないわけですよね。気持ちだけはわかる。やはり私は、何でこういうぐあいに流産するのか、その辺をもういまの段階で長官反省をなさるべきだ、こういうぐあいに思うわけです。私も報道機関等でいろいろ知っておるわけですが、たとえば自民党の中の一部には、産業界意図でもって反対をするとかあるいは各官庁のなわ張りで反対をするとか、こういういろいろなことで反対意見があるのも知っておるわけです。そしてまた賛成の方も、素直に環境だとかあるいは健康被害を守るとかいうことではなしに、いまの状況では、開発に当たっていろいろな訴訟なんかが頻発してくるとか、あるいは産業界に不利な条例制定が行われるとか、あるいは東京都の鈴木さんを応援するとか、そういう気持ちで進めるというような意図もあるようでございますが、そのようないわゆる不純な気持ちというのが提案に至らない原因だと私は思うし、また、その不純な気持ちというのを国民はよく知っているわけでございます。このアセス法律土屋さんが中心にやっておられるこの法律というのが、環境と健康を守るという原点を見失った不純な法律案をつくるという作業、それを国民が知って、結局国民皆さん方の作業しておられるのを支持していない、それで世論が反発しておる。そういうところにこれが日の目を見ない原因があったのじゃないかと私は思うのです。だから長官、もう五度目ですから、そういう点について、なぜ日の目を見なかったのかということを、党内とか産業界とかあるいは官庁とかだけを見ずに、本当に原点国民の健康だとかあるいは環境だとか、そういうところに目を据えて考え直す必要があるのではないか、こういうことを実は考えまして、その辺がこれが上程できない原因じゃなかろうかと私は思うのですが、これに対して長官の御意見はいかがですか。簡単にお願いします。
  6. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先生の御指摘になられたような御意見党内にあることは事実でございますが、何と申しましても、わが国におきましては類例のない法律でございまして、政府部内におきましてもいろいろの意見がございまして、調整に対しまして日時を要したということは事実でございます。一例を申し上げますと、主務大臣の権限の問題とか、それからまた、環境庁長官意見をどの程度……(馬場委員内容は結構です」と呼ぶ)といったようないろいろな意見等がございまして今日に至ったわけでございますが、おかげさまで政府案がまとまりましたものですから、私は、最後の一兵になるまで国会に出していただきたいということでがんばってまいりたい、かように考えております。
  7. 馬場昇

    馬場委員 私が言う意見と全然違うのですよ。政府案がまとまったのを最後の一兵までやれというのではなくて、いまの政府案を出してはだめだという反省がないのかということも含めて言っているのです。だから、今後のアセスメント法の取り扱いについて、今度で五回流れるわけですから、同じような手法でやったって六回目も流れると私は思うのですよ。そういうことで、今時点では、いまの流れるこの法案というのは、もう破棄して――破棄しなければ、これが残っておりますと、やはりひな形になって、住民闘争を抑えるとか住民運動を抑えるとか、各自治体条例を抑えるとか、こういう逆の、マイナスの効果が働くと思います。だから、この法案をまず破棄しなさいという私の提案と、それからどうするかというと、アセス法というのは、もう一遍住民地方自治体に返しなさい、そこで本当に密着した地方自治体条例なりあるいは住民の知恵を出し合って、そこからもう一遍ずっと積み上げてこの法律をつくらなければだめだ、一遍住民自治体に返しなさい、こういう考え方を持っておるわけでございます。そういう手法をとるのか。そしてまた国会は何をするのか。実は、私ども社会党法律案を出しておるわけでございますから、皆さん方法律案日の目を見なかったわけですから、社会党のこの法律案をこの国会審議する、それに環境庁は全面的な協力をしていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思うわけでございます。  それからもう一つ、ここで長官にぜひお願いしておきたいと思うのは、このアセスメントを通したいという皆さん方気持ちはわかるのですけれども、そのことによって最近何と言われているかというと、環境行政は非常に後退しておる、そして本当に環境破壊を防止することを放棄して、産業界と密着してしまったのじゃないかとか、あるいは魂まで売った環境庁とさえ報道機関に書かれておるわけですし、また環境破壊庁だとか乱開発保護庁だとか、こういうぐあいに言われておる。アセス法を通すために、皆さん方の、環境行政のいままで積み上げてきた実績の魂まで売ってしまったのじゃないか、こういう批判があるわけでございます。また、金子局長なんかは、至るところ、産業界には手形を出しておる、各省庁には手形を出しておる、そして操を売っておるという批判さえあるのです。たとえばNO2の基準緩和にしてしかり、水俣病の促進の問題で新次官通達にしてしかり、健康被害補償法にしてしかり、非常に後退してきた。これが出なかったという反省の上に立って、後退した環境行政をもとに戻せ、この際、こういう体制の立て直しをする必要があろう、こういうぐあいに思うわけでございます。  実は、もう時間が来ましたので、後同僚がやるかもしれませんけれども、これはこの時点における長官に対する社会党意見として、私がいま言ったことを十分頭に置いて対処していただきたいということをお願いしておきたいと思うのです。一言答えてください。
  8. 土屋義彦

    土屋国務大臣 先生の御意見、私は身にしみるほどよく理解ができるのでございまして、私といたしましても、率直に言って、計画アセスから始まって手続アセスと申しましょうか、いま私どもが考えておりますようなそういう手順を経てやりたかったのでございますが、先ほど来申し上げておるような党内事情等もこれあり、ひとまず現在の法案を出させていただいて、そしてまたこの国会の場を通じまして十分御論議をいただきたい、こういうことを念願し、国会への提出を心から希望いたしておるような次第でございます。足らざるところはひとつぜひお力添えを賜りまして、私も環境行政と真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
  9. 馬場昇

    馬場委員 終わります。
  10. 河野正

  11. 野口幸一

    野口委員 私は、この際、環境庁長官に一言その所信を承りたいと思うのであります。  近年、静寂あるいは静ひつ、こういう言葉が何かなくなってきているような、しかもそれを大切にしようという心が失われつつある、こういう現状にありまして、騒音とか振動とかいうものを、人間社会生活と関連をいたしまして、その問題点に対して環境庁があるゆる立場から追い求めてみるという姿勢が存在しているのかどうかということを疑わざるを得ないのであります。その具体的な施策は、環境庁としてどういう方面から追求しておられるのか、この点をお伺いしたいのであります。  過日、朝日新聞の「天声人語」にこのようなことが書いてありました。「静寂、静謐、静思、そういったものを大切にするこころが、いまは急速に消えうせつつある。」「そんなことを思った。「しみじみとこの静けさのなかにして人のこころを感じるるなり」。」情熱の歌人といわれた中原綾子のこの歌が全くこの世では通じないのではないか、こういう文章が載っているわけであります。  私はこの一連の文章を読ましていただいて、本当に政策の中で、騒音に対する考え方振動に対するとらまえ方が余りにも軟弱、、ずさんに流れてきたのではないだろうか。過去何十回かこの委員会で、環境破壊の問題から振動問題についていろいろと論議がなされております。その都度の政府関係各位答弁もずっと読ませていただききましたが、どうもありきたりで、その場逃れで、何とか逃れればいい、そういった感じがするわけであります。  ひとつここで環境庁長官に、騒音振動、この種の問題について、人間生活をしていく上において一体どのような視点でこれを追求しようとしておられるのか、この点をまずお伺いをいたしたいと思います。
  12. 土屋義彦

    土屋国務大臣 ただいま野口先生が今日大きな社会問題となっておりまする騒音振動の問題をお取り上げになりましたが、私も先生の御意見と全く同感でございます。公害の中でも騒音振動の問題は、われわれ人間日常生活にとって深い関係があり、その発生源鉄道道路事業場また建設現場等々多岐にわたっておるような次第でございます。  私は、昨年の春長官に就任いたして以来今日まで、交通公害問題が一九八〇年代の環境行政の重要な課題であり、また騒音振動、大気汚染問題の解決が環境行政に課せられた使命であると考え、最善努力をいたしておる次第でございますが、今後とも、明るく豊かな環境づくりという原点に立って環境行政と真剣に取り組んでまいりたい、かように考えておる次第でございます。  先生御案内のとおり、公害等調整委員会の調べたところによりますと、騒音振動苦情件数が四〇・七%、半分近く出ておるわけでございます。さようなわけで、私は、これらの問題と今後真剣に、口先だけじゃなく取り組んでまいりたい、かように考えておる次第であります。
  13. 野口幸一

    野口委員 時間が十分ありますならば、その問題のとらまえ方について少しく議論をいたしたいのでありまするけれども一つ二つ例を申し上げますならば、騒音人間の寿命に対してどういう影響を与えるのかということなどを環境庁の方で御研究になったかどうかわかりませんが、すでに五十一年の十月三十一日の中日新聞でも報ぜられております。騒音が命を縮めるのだ。これは遺伝学会に報告されているものでありますけれども、そういったものも含めまして、今日、騒音問題が人間社会に及ぼす影響は大きなものが存在をしつつあるし、また、それが大きな社会問題となりつつあることは、もう長官もお認めのところであります。  しかし一具体的な施策としてはどうも後手後手に回っておりまして、これは環境アセスにも関係するわけでありまするが、この問題については、たとえば道路ができ上がってあるいは鉄道が敷かれてそこに物が走って音を発する。建設途上ではさほど感じなかったものが、それが始動することによって音がどんどんふえていく。新幹線を例に挙げますならば、当初、たとえば「ひかり」が東京から大阪を四時間程度で走っておったものを、途中で三時間に早めるということになった。しかも本数が当初の計画よりも倍増しておる。そういったことがどんどんと――もちろん社会の求めるところでありましょうから、ある意味ではやむを得ないのかもわかりませんが、それに関連する国民の苦痛というのは年を追うごとにどんどんと広がりつつある。この現状をいかに見るかということは、本当に大切なことでありまして、私は、過去十数年間この問題が国会で取り上げられておりながら、ある意味では、当局もそうでありますが、非常に怠慢で、対策が非常におくれているということを御指摘申し上げたいのであります。  この点について、具体的な課題として、どのような点を主体として今日の騒音問題について、特に新幹線中心としてその施策を進めようとしておられるのか、その点について大臣並びに大気保全局長でもいいですが、環境庁の方からお答えをいただきたい。
  14. 三浦大助

    三浦政府委員 先生指摘のように、騒音振動対策というのは、公害対策の中でも非常にむずかしい問題がございます。たとえばいま先生から新幹線のことで御質問をいただいたわけでございますけれども、私ども昭和五十年の七月に新幹線鉄道騒音にかかわります環境基準を設定いたしまして、既設新幹線鉄道沿線の中で八十ホン以上の地域につきしては三年以内に環境基準が達成されるように、具体的にはそういうように努力をしてきたわけでございます。しかし、その時点、五十三年の時点におきまして、音源対策というものは国鉄当局にも大変御努力をいただきまして、おおむね当面の目標に達したのではないかと考えておりますけれども障害防止対策の方は、まだ進展の緒についたばかりの状況にあった、こういうふうに私どもも認識をしておりまして、昭和五十三年八月に環境庁の方から運輸省に対しまして、さらにこの点の対策促進を図るようにというお願いをしてございます。その後は沿線自治体理解と御協力をいただきましてかなり進展を見ているようでございますけれども環境基準の速やかな達成に向けまして、私ども振動対策も含めて引き続き対策促進努力していきたい、こういうことで関係方面に現在も働きかけておるというのが実情でございます。
  15. 野口幸一

    野口委員 それは新幹線対策として環境庁運輸省並びに公社に対してなされたことでありますが、これに対応して国鉄では一体どのような今日の状況にあるのか、またその進展状況がどのようになっているのかということについて、特に新幹線名古屋地区中心としてこの問題はどのような実態としてございますか、お伺いをいたしたいと思います。
  16. 従野武邦

    従野説明員 お答えいたします。  新幹線騒音振動問題につきましては、先生指摘のようにいろいろな問題点を抱えておるわけでございまして、特に四十年代に入りまして、またその中でも四十年代後半になりまして非常に社会問題化してきたわけでございます。国の御指導の中にもすでに、たしか四十七年十二月だったと思いますが、騒音につきまして、特に著しいところについて対策を早急に打てという御指示が出たこともございます。その後、いま環境庁からお話のございましたように、環境基準というものも出たわけでございます。私ども当初からこの騒音振動問題につきまして無関心でいたわけではございませんで、建設に当たりましてもいろいろと配慮したわけでございます。ただ、それが十分であったかどうかということになりますと、社会状況の変化ということもございまして、先ほど申し上げましたような国の御指導もいただいたわけでございます。四十七年に勧告が出たわけでございますが、私どもそれ以前からいろいろと研究はしておったわけでございますが、まず何をおいても音源対策をきちんとやるということが第一義的でございます。そういった意味で、特に音が大きいところと申しますと、具体的には鉄橋の周辺、これが特に大きかったわけでございますが、こういったところからまず手をつける、けたを音が出ないようにやるということをいろいろ研究の結果実用化いたしまして、また、従来防音壁も若干低かったところを高く継ぎ足すとか、あるいはなかったところに新しくつくるとかいうようなことを進めまして、おおむね五十三年度にはそういったものの対策は終わっておるわけでございます。しかしながら、ここで得られました成果を取り入れましても、なおかつ八十ホンを下回るというようなことはなかなかむずかしいというのが現状でございます。そういった立場から、私たちは二義的なこと、これは環境基準にも示されておるわけでございますが、二義的な対策として障害防止対策家屋に対する防音工といったようなものを鋭意進めるべくいろいろと努力をしてまいったわけでございます。  現在どうなっているかという御指摘でございますが、現在、八十ホン対策というのをまず最初にやれという環境基準の御指示もございますので、それを進めておるわけでございますが、沿線東京から福岡まで約千キロ少々でございますが、対象家屋、要するに八十ホンをどうしても下回らなかった家屋はどの程度あるかと申し上げますと、約一万五千戸、こう言われておるわけでございまして、それに対して現時点でそういった防音工等の処置をやって終わりましたのが、五十四年度末で約七〇%、一万一千戸でございます。四千何がしぐらいは残っているわけでございますが、これにつきましては、今年度じゅうに何とか特殊な事情のある場所を除きまして終えたいと考えておるわけでございます。  また、特に名古屋の点につきましての御指摘でございますが、名古屋につきましては、これは言うまでもなくいろいろと社会問題化したこともございまして、特に四十七年の勧告が出たのを受けまして、一番目にまず手をつけた。これは振動も大きいということもございますし、それから特にあの地区高架橋鉄げたがかなりございまして、そういったものがかなり大きな音を出しているということもございまして、これは環境基準の出る前からすでに手をつけまして、特に振動もひどいということでございますので、名古屋でも七キロ区間と私たちは言っておりますが、名古屋から東の方、これにつきましては左右二十メートルかについては移転にも応ずるというようなことでやっておりまして、これも他に先駆けてやったものでございますから、それなりの進捗は見せておりまして、他より進んでいるという状況にあるわけでございます。  非常に簡単でございますが、現況を御報告させていただきたいと思います。
  17. 野口幸一

    野口委員 全くありきたりの御答弁でございますから、私もそれなりに聞きますが、環境庁政府並びに各方面から言われていることをどういう考え方でとらまえておられるのか知りませんが、当初の計画年数から言えば、もう大幅におくれておるわけであります。しかも、先ほど言われたように、建設当時からこの問題は考えていた、これは全くうそでありまして、建設当時にそのことが考えられておるならば、今日このような問題がなかったのではないか。少なくとも東海道新幹線、つまり東京-大阪間の建設当時においては、このような問題について深く追及がなされていたかということについて、私ははなはだ疑わしいものを感ずるのであります。先ほど建設当時からそのことを考えておりたのだと言われますけれども、私はそれは詭弁にすぎないと思うのです。たとえば名古屋の地点で申し上げますならば、南方線といいますか、引き込み線を新しく建設されましたが、それに対する打ち込みのくいの長さというものは、既設新幹線よりも数倍の打ち込みをして、その基盤固めをやっておるわけであります。いまそういう振動状況が非常に激しいということがわかって、初めてそのことをおとりになったとするならば、その当時はそのことを考えておられなかったということに逆に言えるのであります。また、その地区昭和十九年ですか、名古屋中心とする、名古屋を出た地先の海岸が震源地だったと思いますが、大地震がございました。あそこの地域地盤が軟弱なために倒壊戸数が非常に多く、名古屋市内の中でも一番被害の強かったところであります。そのことの事実をお認めになってあそこに新幹線建設を進められたのかどうか。そのことについても全然調査になっていない。これは私どもが調べて知っております。地盤がそういう状況にあるにもかかわらず、建設当時からずさんな工事といいますか、他の地区と同じような形でもって建設が進められたにもかかわらず、これは建設当時からこの問題も考えていたということは全く詭弁であります。その点はどうですか。
  18. 従野武邦

    従野説明員 お答えいたします。  私が申し上げた内容を、それではもうちょっとかみ砕いてお答えさしていただきたいと思います。  建設当時から考えておりましたと私が申し上げましたのは、これはもちろん高速運転でございます。したがいまして、それに対応するいろんな対策というものは当然やらなきゃいけない、そのことが即また騒音振動というものにも非常に効果のある施策であったということを申し上げたかったわけでございます。たとえば当初からロングレールの採用をするとか、あるいはバラストの厚さにいたしましても厚くするとか、若干専門的になりますが、ノーズ可動のクロッシングを採用するとかいったようなことで、従来の鉄道に見られないようなことをやったわけでございまして、これは騒音振動のためだけかとおっしゃいますと、そういうことじゃございませんで、両々が相まってということでございます。  それから、名古屋地区のルート等につきまして御指摘があったわけでございますが、私たちといたしましても、その辺の事情につきましてはいろいろと検討いたしまして、やはり新幹線の性格、名古屋の駅につけなければいけないというような前提のもとにいろいろ検討したという中で、あるいはまたカーブの制限もございます。そういったいろいろなものを含めながらルートを考えたわけでございます。したがいまして、他と同じようにやったという御指摘でございますが、たとえば先ほど先生からくいの長さというお話も出たわけでございますが、これは御承知のように、新幹線の軸重と貨物列車を引っ張ります機関車の軸重が違うというようなことで差が出てきておるわけでございまして、決してそういった点をないがしろにしたわけではございませんで、十分検討をしてやったというふうに私たちは考えております。
  19. 野口幸一

    野口委員 これは少しく時間をかけて専門的にやらなければ、ある一定の結論が出てこないだろうと思いますから、きょうは与えられた時間が非常に短いので、次に進ましていただきますが、いずれにしましても、特に名古屋地区中心にして申し上げますならば、当時この建設に当たっての地盤調査あるいは路線調査というものが、私はその後のいろんなものを見させていただきましたけれども、決して十分であったということは絶対に言い切れないものがあると確信しております。特に地盤調査に当たっては、先ほど申し上げましたように、東海地震の被害状況調査について一言一句も国鉄当局ではその配慮はなされていない、これは明らかであります。そういったことから考えましても、当時の路線選定に当たっての名古屋地区における問題点というのは当然あったと私は指摘をいたします。  次に、人家密集地域におけるところの高速運転騒音の特に大きな主因である、こういうことも言われておるわけでございまするが、それをお認めになりますか、どうですか。
  20. 従野武邦

    従野説明員 お答えいたします。  もちろん先生おっしゃるように、騒音の発生というのは列車が通ることによって起こるわけでございますので、人家がたくさんあれば影響範囲が大きい、少なければ少ないということでございまして、個々の音のレベルというものにつきましては、一般的な対応をすべきことだろうと私は思っております。
  21. 野口幸一

    野口委員 そこでちょっとお尋ねをいたしますが、以下この問題は若干名古屋地域中心として申し上げます。  名古屋付近におけるところの現行の「ひかり」「こだま」の時速、どのくらいで走っておるのかということが一つ。二つ目は、大阪東京間の全区間の平均時速、さらに全体のいわゆる余裕時分というものを持っているか持っていないか、持っているとすれば何分持っているか。それから五十四年一月以降、大阪東京間における一番おくれた事例の時分、それからそのおくれたものが全体の総トータルで一体何分あって、平均すれば「ひかり」「こだま」は一体何分で走っているかということを、ひとつ事務当局からお聞かせいただきたい。
  22. 小野純朗

    ○小野説明員 お答えいたします。  まず、名古屋付近の速度でございますが、御承知のように名古屋には「ひかり」「こだま」とも停車いたすわけでありますけれども、停車をする場合には名古屋駅の手前四キロ付近から時速二百キロよりだんだん速度を落としてまいります。これは実際にはATCのブレーキで自動的にだんだん速度が下がってくるわけでありますが、大体二百キロぐらいから名古屋付近の手前四キロぐらいになりましてから速度がだんだん下がっていく、こういうことでございます。それから名古屋駅を発車する場合は加速に約九キロを要します。そして九キロ過ぎてからようやく二百キロに達する、こういう状態でございます。  それから、全区間の平均時速でありますが、東京-新大阪間でとってみますと「ひかり」で約百六十六キロ、それから「こだま」で約百三十七キロでございます。  それから、余裕時分でございますが、列車がダイヤどおり走るようにするために多少ゆとりを持たしております。大体運転時分の八%程度設けておりまして、たとえば工事だとかあるいは線路の保守で徐行しても定時運転が極力できるようにということで、そういう余裕を持たしておるわけでございますが、東京-新大阪間で見まして「ひかり」で約十三分、「こだま」で約十七分でございます。これは全体のトータルでございますので、実際は駅間ごとにこれを割り振っておるわけであります。そしてそれぞれの駅の時刻を決めておるということでございます。それでこの余裕時分、たとえば十三分、十七分というのを一カ所でまとめて使うということは、定時運転をする手前上それはできないということでございます。  それから、五十四年一月以降五十五年三月までの運転状況でございますが、東京-新大阪間でこのおくれをとってみますと、一つの指標として新大阪の下り到着で見てまいりますと、一個列車当たりのおくれの平均は三・六分でございます。これは年々成績はよくなっておるのですが、これはあくまで平均でございまして、実際は定時運転が大体七割強ございます。そしてまた十分以内が大体二割ぐらい、十分以上が大体数%程度というようなかっこうでございます。それを平均しますと三・六分、こういう状態でございます。  一番おくれた例でございますが、五十四年度では、五十四年十月十九日、台風二十号でダイヤが混乱いたしたわけでございますが、その場合に「ひかり」七一号が新大阪に八時間四十七分おくれて到着する。それから上り列車では「ひかり」六〇号が東京駅に十一時間八分おくれて到着する。これは非常にレアケースでございますが、最大のおくれはそういう状態でございます。
  23. 野口幸一

    野口委員 時間を迫られておりまして、まことに申しわけないのですが、そこでちょっとはしょりまして、騒音をやわらげるために減速の問題に入りたいと思いますが、減速はできないのか、人家密集地域における減速は不可能なのかという問題について若干お尋ねをいたします。  いまお尋ねをいたしましたように、現行の状況をながめましても、人家密集地域におけるところの運転を少しくやわらげる、つまり平均時速を少し落としていくことは可能ではないかと考えられるわけでございますが、当局は再三国会答弁でも、それは不可能なんだということを繰り返しておられます。実際、私ども人間生活の中で、十分おくれる、あるいはまた十五分おくれるということが、一体人間社会あるいは社会生活上にどのような影響があるのか、私はこのことから発想しなければならぬと思う。国鉄は、どうしても東京-新大阪間を三時間十分で走らせなければ社会上大きな影響があるとお考えですか、三時間十分というのが最大至上の命令なんだということをお考えなのか。その辺のところからひとつお聞きをいたします。
  24. 小野純朗

    ○小野説明員 お答えいたします。  新幹線のスピードというのは、国の経済活動、社会活動との重要なかかわりを持っておるわけでございます。東京-新大阪間三時間十分運転と申しますのは、開業当初は、御承知のように若干時間が延びておりましたが、二年目からは三時間十分運転を続けて今日に至っておるわけでございまして、東京-大阪圏の日帰りビジネスといったようなこともこれによって可能になっておるわけでございます。したがいまして、この三時間十分というのは、われわれとして守っていきたい、かように考えております。  それから、先生のおっしゃいましたように、一地域の徐行で失う時間はほんのわずかではないか、こうおっしゃられておるのでございますけれども、類似した地域もほかにもございますし、そういったところでスピードダウンをして運転いたしますと、新幹線の運転時分というのは相当延びるわけでありまして、われわれが試算したところによりますと、類似地域の徐行をいたしますと、大体いまの倍ぐらいに時間がかかるということで、新幹線の使命を貫くためにも、その徐行というのはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えておるところでございます。
  25. 野口幸一

    野口委員 それも全く詭弁であります。たとえば三時間十分で走るということが十分間おくれて三時間二十分になると社会的にどれだけ大きな影響があるか、これは御答弁できないはずであります。日帰りビジネスがどうのこうのと言いますけれども、十分間延長して、その問題が大きな社会問題になることは考えられません。現に、先ほどお答えになりましたように、平均時分においては三・六分いつもおくれている、つまり四分程度はいつもおくれているということが言われているのであります。そうすると、たとえばあと十分延ばすとしたら、あと六分延長することによって名古屋付近なら名古屋付近の減速が可能になる時分であります。したがって、それを一番地盤が軟弱で、一番住民が問題にしているところだけでも、そのことをまず前もってやろうという姿勢が当局にあるのかないのか、このことが疑わしいのであります。  現に、東北新幹線の場合における新聞発表では、こういうことをお述べになっております。大宮-東京間においてはおよそ百十キロ程度で走らせたい、このことによって沿線住民の同意を得たいということを当局が言っておられます。最高速度を時速百十キロに抑える、上野駅を新設する云々、以下こういう条項があるわけであります。そうすると、後からできるところの沿線住民については、そういう沿線住民の福祉、騒音対策というものに対しては非常に考慮を払われるが、もうできたところはほっておけ、こういうことになるわけですか。そういった矛盾は全国の各地で起こるじゃありませんか。いまあなたのおっしゃるように、同類のものを全部おくらせていったならば新幹線の使命がなくなってしまう、倍以上の時間がかかるのだ、これはおっしゃるとおりになるかもわかりません。しかし、その中にあっても、少なくとも地盤が軟弱で、しかも被害状況が甚大で、住民から今日大きな社会的問題として取り上げられておる地域を二分や三分おくらすことによって、それが国鉄新幹線の運転にどういう影響があるのですか。社会通念上から考えてみても、そのことの対策国鉄でできないはずはありません。これは取り組もうという姿勢が全く――先ほど申しましたように、人間社会生活静寂、静ひつ、静けさというものに対する追求に対して、当局が非常に冷たい目を持っておられる。スピード、それを上げるだけが国鉄ではないはずであります。どうですか、その辺の矛盾をお考えになりませんか。
  26. 従野武邦

    従野説明員 まず、先生指摘の東北新幹線ではというお話に対してお答えをしたいと思います。  大宮から南につきまして、確かに速度が遅いということで建設されているわけでございますが、これはあくまでも地形状況、その他の諸要素から、線形上どうしてもそれ以上スピードを出せないという面があるということでございまして、これはたとえば東京で言えば、東京から多摩川の間というようなものと合致しているわけでございまして、その辺の御理解を賜りたいと思います。  それから、名古屋でひどいのだから、そこだけスピードを落としていいじゃないかという御指摘でございますが、私どもといたしましては、名古屋地区、確かに家屋もかなり多いということも承知しております。しかしながら、音の影響というものは、単に家屋が多いということだけで判断をするのはいかがか。やはり同じような地域――といいますのは、その多い少ないということももちろんございますが、それ以外の要素、どういう現在の市街、たとえば住宅地域に指定されているとかいないとかいうようなことも、もちろん考慮をしてやらなければいけないというふうに思っておるわけでございまして、先ほど申し上げましたのは、そういったことを考えますと、名古屋だけを減速ということは非常にむずかしい問題ではないかということを考えておるという意味でございます。
  27. 野口幸一

    野口委員 余り時間がないから、もう少し追及をしようと思いましたけれども、きょうの時点ではこれをやめますけれども、しかし、たとえば地域的な対策はとれないのだ、全体的に考えなければならないのだという、その議論は私はいただけないと思う。少なくとも今日までの対策においても、国鉄当局はたとえば新大阪付近あるいは名古屋駅付近ということで対策を講じられてきた事実もあるわけであります。そういう人家密集地帯ということと、特殊事情地盤状況、あるいは被害状況などを勘案して取り組んでおられることも事実であります。だから、全体的にやらなければ、全体的に及ぼすことだから、地域的なそういう事情を取り込んでの対策はとらないということは、私はいただけないと思います。しかしまた、たとえば名古屋地域なら名古屋地域において考えますならば、百キロに減速することによって要する時間は大体二、三分であります。二、三分おくらすことによってその地域の方々が非常に大きな喜びを得られるとするならば、この二、三分をどうして国鉄がスピードダウンできないのか、これははなはだ理解に苦しむものであります。  NHKがことしの三月二十八日に新幹線沿線住民アンケートというのをやりました。そこで、スピードダウンということが集点になっているこの今日の問題についてどうだと言いましたら、全部で合計百例でありますか、百例のうち八十二例の方がスピードダウンをしてくれ、こういう要求が出ているのであります。これは決して他意があって出されたものではなくて、NHKの中部本社が新幹線訴訟に関連をしての報道の中でおとりになったアンケートであります。住民がこぞっていまスピードダウンを願っている。しかも、地方の中にありまして、県も市もこのことを認め国鉄当局に陳情されている現状であります。こういった中にありまして、なおかつ国鉄がスピードという問題に固執をされるのか、そのことを私は非常に不思議に思うのです。いま人間生活をしていく上において、静けさというものを取り戻していきたいという願いを踏みにじるような今日の国鉄のあり方というものは、私は本当に糾弾せざるを得ないのであります。もう一度この減速問題について、可能なところから少しくお考えになる必要があるのではないか。この辺について最後にお答えをいただきたいと思う。
  28. 従野武邦

    従野説明員 お答えいたします。  私が先ほどお答えしたこととあるいはダブると思いますが、環境基準でもお示しをいただきましたような、地域類型別にそういった基準というものが示されたということでございまして、やはり私たちといたしましては、そういった点を十分考慮の上で物を考えなければいけないというふうに考えておるわけでございまして、そういった意味で、名古屋だけをどうこうするということは非常にむずかしいことだ、そのように考えておるわけでございます。
  29. 野口幸一

    野口委員 委員長にお願いします。  この問題は、きょうは特別に時間を縮められまして、結論といいますか、あるいはまた、もう少し当局に対して申し上げなければならない問題がございますので、引き続き、この問題については終了せずに、次回の委員会においてぜひとも機会を与えていただくようにお願いいたします。
  30. 河野正

    河野委員長 承知いたしました。  森田景一君。
  31. 森田景一

    ○森田委員 懸案となっております環境アセスメント法案、これが土壇場に来まして大きなもたつきを見せているといいますか、断念という状況にもなりかねない、こういう状況でございます。環境庁政府が公約してきた国会提出が果たして可能なのかどうか、土壇場での大きな問題だろうと思います。いままで国会提出がおくれてきておりましたのが、いろいろと各省庁の対立とかその他の問題、こういうことが問題になっておりました。それが結局まとまらないで今日まで来ました。この結果国会提出を断念する、こういうことになりますと、何よりも政府それから大平総理大臣のリーダーシップが問われることになるだろうと思いますし、また政府自身が環境アセスメント法案に、また環境の保全に何ら熱意がなかった、あるいはいままでの姿勢がまやかしであった、こういうことを天下に示すことになるのではないかと私は思うわけでございます。  また一方では、総評などの労働組合あるいは有志の学者、環境保護団体等が、政府でいままでまとめてきたような骨抜き法案であるならば逆に有害になる、これは国会提出を阻止しなければならない、あるいは廃案に追い込まなければならない、こういう運動を展開していることも事実でございます。これまでわが党は、この環境アセスメント法案の作成、取りまとめを行ってきました環境庁の苦労と熱意につきましては評価しております。仮にわれわれが要求するようなベストな法案ができないとしても、公害防止と環境保全の上で、あるいは住民参加という立場の上で、現状よりも一歩でも二歩でも前進したベターな法案が作成されるならば、その法案国会提出して、そしてその上でさらに改善を加えていくべきである、こういう態度をとってきたところでございますが、こうした政府部内のごたごたあるいは自民党内の調整不調、権限争い、こういうことでこのアセス法案の国会提出そのものが危ぶまれる事態となっております。果たして政府提出の意思があるのかどうか。また提出するというのは単なるポーズだけであったのか、このように私どもも思わざるを得ないわけでございます。新聞報道によりますと、環境庁及び環境庁長官は、これ以上の骨抜きあるいは各省庁が従来の主張にこだわるならば重大決意をせざるを得ない、あるいは国会提出断念も考える、こういうような重大決意をしたと言われて、このように報道されてもおりましたし、まして、きのう、きょうにつきましては、自民党環境部会あるいは政調審議会での意見がまとまらないからアセス法案の国会提出は見送られる、こういう公算が大であるというふうに報道されております。こうした点について私たちは非常に重大な関心を持って見守ってきたわけでございますけれども、残念ながら、先般骨子というのはいただきましたけれども政府案がまとまったとか、そういう内容については何ら知らされておりません。ましてや前回のわが党の古川委員の方からの質問には、四月末までには国会提出する、このような長官の力強い決意の表明があったにかかわらずどんどん来てしまいました。この際長官から、これまでの状況事情、こういうものについて明確に御説明をいただきたいと思うわけでございます。
  32. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま森田先生から、御意見を含めての大変力強い御激励のお言葉をちょうだいいたしましてまことにありがとうございました。環境影響評価法案につきましては、去る五月六日に最終的な政府案がまとまりまして、自民党環境部会提出をいたしましていろいろ御審議をいただきました。さらに昨日、再度環境部会を開いていただきまして、環境部会といたしましては政府案を了承していただいたような次第でございます。この後、党の政調にかけまして、党の政調の了承をいただきましたならば、その次は総務会、それが終わりましたならば、閣議で御決定をいただいて国会提出という段取りに相なるわけでございますが、先生も御指摘になられましたとおり、この種の法案は本当にわが国におきましても類例のない初めての法律でもございますし、率直に申し上げまして、関係各省庁の権限にも関係するような問題でもございまして、関係省庁間においてもいろいろな意見等があり、今日まで延び延びになってまいったようなわけでございますが、環境庁といたしましても、今回国会へ出すことができ得ないということになりますと、もう五回目でもございますし、環境庁の職員も本当に体を張ってと申しましょうか、不眠不休で、環境庁がやるのは当然でございますが、これに関連して関係各省庁も大変協力いただきまして、大体われわれが考えておったような、中公審の線に沿ったような法案ができたようなわけでございますが、私といたしましては、何といたしましても、一日も早く党の了承を得、正式に閣議の決定をいただきまして、そして国会提出をさせていただきたいと心から念願し、また現在私は党内を駆けずりめぐって関係の方々の了承を得るべく最善努力をいたしておるような次第であります。
  33. 森田景一

    ○森田委員 土屋長官の活躍といいますか、熱意は歴代長官の中でも一番すばらしい、このように評価されているようでございます。私も委員会でのいろいろな審議につきまして、長官の一生懸命取り組んでいらっしゃる姿はわかるわけでございます。しかし問題は、このアセス法案が長官のそういう努力にかかわらず本当にこの国会提出されるのかどうか。いつも長官は何とか出したい出したいという答弁の繰り返しでございます。私は、先ほど申し上げましたように、やはりベターな方向に持っていくためには、どうしても一遍この国会提出をしないと、また次の国会で同じことを繰り返して、結局はアセス法なんというのはつぶされるのだ、こういうふうに心配している一人でございます。だから、この国会で仮に継続審査になろうとも、政府の方は出した法案が継続審査になるのはメンツにかかわる、こういうこともあるかもしれませんけれども、やはり日本の環境を守るという大きな立場からいけばこの国会で出すべきだ、このように私は考えております。長官も、それから環境庁皆さん方もそういう方向で今日まで御苦労なさっていらっしゃるわけですから、どうかひとつそういう点で何とか出せる方向の明かりといいますか曙光といいますか、これが見えるのか見えないのか。私はよくわからないのですけれども新聞報道で知る範囲でございますが、せっかく環境庁でまとめた法案あるいは政府案自民党の部会の方でだめだ。この辺のところを見ておりますと、キツネとタヌキの化かし合いじゃないかと思わざるを得なくなるわけです。土壇場まで政府案はまとまらないできて、やっとまとまった、そうしたら今度は自民党の政調の方でだめだだめだ、時間切れだ。私は過去の審議状況は知りませんけれども、少なくとも今度のこういう動きを見ておりまして、タヌキとキツネの化かし合いなんじゃないだろうか、こういうふうに思わざるを得ないわけなんです。その点についてひとつ長官の決意といいますか、考えをもう一遍聞かせていただきたいと思います。
  34. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  この席にもわが党の環境部会先生がお二人おいでになりますが、昨日の環境部会におきましても、個人的にはいろいろな意見のある方もおられるようでございましたが、とまれ環境部会といたしましては、これを法案として今国会に出すべきであるという御決定をいただきまして、そこで私といたしましては、政務調査会の御了承をいただきまして、総務会、そして閣議の決定をいただいて、何といたしましても国会へ出させていただきたいということで、最後最後まで、私一人になりましても最善努力をしてまいりたい、かように固い決意を持って臨んでおります。
  35. 森田景一

    ○森田委員 それと、私が疑問に思うのは、先ほど長官もお答えになりましたように、このアセス法案は各省庁にいろいろと権限がまたがっているような状況でございまして、建設省とか運輸省とか、この辺もいろいろ主務官庁争いでごたごたしていた、こういうふうに伝えられておりまして、長官のお話ですと、これはまとまったんだというお話なんですけれども、このまとまったというのは上辺だけで、実際はまとまらないから、さっきの政府案だけは形をつくって自民党の政調の方に回して、そっちで流せ、こういうことも考えられないことはないと思うのですね。  それから、実は私も商工委員会の委員なのでございますけれども新聞を見ますと、余り自民党の中のことばかり言っては申しわけないのですけれども、なかなか日の目を見ないものですから申し上げるのですが、自民党の商工部会の方で発電所の建設ができなくなるから反対だとか、こういうことでもめている、こういう報道もされているわけでございますね。これは御存じでございますか。
  36. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  商工部会も開かれまして、この問題につきましていろいろ御討議がなされたということも聞いております。その席に通産省の立地公害局長も出席されまして、政府部内におきましては意見の一致を見ましたという発言もなされたということも聞いております。
  37. 森田景一

    ○森田委員 だから、そういうことはあれですけれども政府の方が説明したのは当然だと思うのですけれども、商工部会は反対だ。自民党の中でまとまらないとどうも法案は出てこないようでございます。そういうことでございますね。だから、両方でそういう作戦でアセス法案をどうしても今度は出すまいという決意をしているんじゃないかと私は考えざるを得ないわけなんですね。  運輸省建設省の方は、その政府案で本当に納得してまとまったのですか。関係の方おいでだと思いますから、ひとつそれぞれの立場で、わが省はこういうことで国民のためにもうこういう決意をしてまいりますとか、やはりそういうことをしないと、形だけまとまって、どうせ今度の国会ではアセス法案流れるのだから、ここで運輸省建設省が反対してどろをかぶせるよりは、協力して賛成しておいて流した方がいいなんという下心があってやったんじゃないでしょうね。その辺ちょっと説明いただきたい。
  38. 西村康雄

    ○西村説明員 ただいま先生から法案政府部内における検討につきまして、いろいろ関係各省がどういうふうな立場でいたか御質問をいただいたわけでございますが、私ども運輸省といたしましては、この法案の作成につきましては終始賛成する立場を基本といたしまして、積極的に環境庁と共同して問題点の検討に努めてきまして、文字どおり環境庁と一緒に昼夜を分かたず一生懸命法案の作成作業をいたしました。  私ども関係省庁が討議をいたしました点の多くの問題点は、先生からいま御指摘がありましたような各省の主管争いとか、そういうような次元の問題では全くありません。いかに法案の仕組みをよくしてアセスメントを適切、確実にやるか、そのための法的安定性はどうしたらいいか、そういった仕組みを全体として議論しました。したがいまして、当初いろいろと環境庁がお示しになったような原案、その原案を踏まえながら各省が本当に知恵を出し合って新しい法案としてよみがえってきたと私は理解しております。そういう意味では、権限争いのような次元の問題ではなくて、どのような仕組みがいいか、それは後々見ていただくと、これは理解していただけると私ども確信しておりますが、アセスメント法のあり方から言えば、数段の進歩をしていると私は理解しております。
  39. 岩本章雄

    ○岩本説明員 お答え申し上げます。  建設省としましては、環境アセスメント法案については、もう前々から前向きに対処するということでやってまいったわけでございます。建設省は事業官庁でございますので、事業の実施という点への配慮ももちろんございますし、あるいは現在建設省でもすでにアセスメントをやっておりますその方針とか、既存の制度でございます都市計画法との調整とか、そういうことの必要はあるとは考えましたが、前向きに対処したいということでやってまいったわけでございまして、現在政府部内の調整はほぼ終わっているというふうに理解しております。
  40. 森田景一

    ○森田委員 運輸省の御説明、本当に担当の方がそういう熱意で取り組んでいらっしゃったということならば、私どもはいろいろと報道される内容で判断しておりましたので、われわれの誤解であったかもしれません。そういうことで、運輸省も一生懸命取り組んでいらっしゃる。建設省も取り組んでいる。政府部内はみんな一生懸命取り組んでおる。それで出てこないというのは、長官、どうなんですか。
  41. 土屋義彦

    土屋国務大臣 環境部会といたしましては、先刻来申し上げましたとおり、正式に御決定をいただきまして、ともあれ一日も早く国会へ出していただいて、そして国会において十分御論議をいただくのがいいだろうというようなことから、昨日御決定をいただいたのでございます。これはすでに隠すまでもなく、新聞等でも報道されておることでございますが、商工部会の一部の方々の中に、時期尚早であるといったようないろいろ御意見等もこれあり、まだ意見の一致を見るに至っておらないのでございますが、いずれ近いうちに開かれる政調の政策審議会におきまして十分御論議がなされ、御決定がいただけるもの、かように確信をいたしておる次第であります。
  42. 森田景一

    ○森田委員 各省庁も一生懸命取り組んだ、自民党さんの中でも環境部会は出すべきだ、了承した、こうおぜん立てが整ってきたわけですね。このままいったらアセス法が出てくるわけです。われわれ出しなさいと言っているわけですけれども、ところが出してはぐあいが悪いというので、今度は商工部会がけちをつける、こうなると出しにくくなる、こうなるんじゃないかと私は思うのですよ。長官としては、これは自民党さんのことですからわかりませんけれども自民党さんの環境部会で了承されたこのアセス法案が、自民党の政策審議会、これを通ってとにかく閣議決定で出せる可能性はある、こう見ていらっしゃるのでしょうか。もうここまで来たら――新聞によりますと、来週長官は何かアセス法案断念宣言をするなんということが出ているのですね。もういまから決めているのなら、何も隠さないでここでやってしまった方がいいじゃないかと私は思うのですよ。その辺のところがどうも私たちよくわからないので、さっき変なたとえだったのですけれども、化かし合いじゃないんだろうかと疑わざるを得ない、こう申し上げたわけなんですね。
  43. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  私といたしましては、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、最後最後まで国会へ出していただきますように最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  44. 森田景一

    ○森田委員 わかりました。とにかくこのままでいけば、アセス法提出に非常に熱意を示し、努力をした土屋長官、こういう評価だけはずっと残るかもしれませんが、結論としては出なかったということになるんじゃないかと思うのですね。そういうことで、いまの長官答弁を聞いておりますと、政府アセス法案の提出には努力した、関係省庁も新聞その他の報道に伝えられるようなごたごたはなくして、アセス法のよりよい成案を得るために、それこそ昼夜を分かたず努力をした。結局そのアセス法が出せなかったのは自民党の責任である。こういうふうに理解してよろしいですね。
  45. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  党としてまだ決断が下ったわけじゃございませんで、まだ環境部会の上部機関である政調の審議会がいずれ開かれます。ここにおいていろいろ御論議をいただき、私といたしましては、一日も早く御決定をいただいて、総務会そして閣議の御決定をいただいて国会へ出させていただきたい、こういうことで、いま環境庁挙げて打って一丸となって最善努力をいたしておる次第でございます。先生方は先が見えているのにおかしいじゃないかとおとりになっておられるかと思いますが、私どもといたしましては、最後最後までがんばってまいりたい。
  46. 森田景一

    ○森田委員 いや、それは長官のお立場はわかります。ここで断念宣言したのでは、長官辞職をせざるを得ないだろうと私は思うのですよ。だから、会期延長になればなった期間、最後までやはり出すという努力を続けるというのがお立場だと思います。結論として、やはりアセス法案は提出が困難であろう、だめなのかもしれないと見ざるを得ないのじゃないかと思うのです。そのときには、さっき申し上げましたように、環境庁政府努力したけれども、結局自民党の圧力によって、アセス法案は五たび日の目を見なかったというふうにわれわれは理解し、国民もそういうふうに理解するようになるだろうと思います。そういうことで、長官ももうやむを得ない、こうお認め――いまのところはそれは言えない、まだ期間がありますから。結果として、そういう結果になったときには、そういうふうに理解してもよろしゅうございましょうか、こういうふうに私お尋ねしたわけなんです。
  47. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  大変くどいようでございますが、私は最後最後まで最善努力をいたしてまいりたいと思います。もし仮に提出ができないような場合でも、これは国会へ出したからといって、すぐに成果があらわれるようなものじゃないと思います。日本の将来を考えた場合に、十年、二十年先には必ず成果があらわれるもの、私はかように確信をいたしておるような次第でございまして、今後も続いて国会へ出させていただきますように最善努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  48. 森田景一

    ○森田委員 何回も提出をさせてもらうと言ったって、出ないのにいつまでたったってこれは見込みありません。そういうことで、最初に申し上げましたように、私たち長官を初め環境庁皆さん方が一生懸命努力してきたことは評価しておりますから、何とかこのアセス法案を、ベストでなくてもやむを得ない、ベターな法案をぜひこの国会に出してもらって、出したということがあれば、次はいろいろとまた方法があるわけですから、それが出ないということになれば、いつまでもこのアセス法案は日の目を見なくなるのじゃないだろうかということを非常に危惧しているわけでございます。そういう点を思うものですから、いろいろと耳ざわりな点も申し上げたかと思いますけれども、どうかひとつ残された期間、長官初め関係省庁の職員の皆さん方も、何とかこの法案提出ができるように努力をしていただきたい、こういうことを要望いたしまして、質問を終わります。
  49. 河野正

  50. 則武真一

    則武委員 アセスメント法案の問題について質問をさせていただきます。  今回の政府の案につきまして、私は前回の質問でいろいろお尋ねしましたところ、私どもが考えているような、また多くの国民が期待しているようなアセスメント法案になっていないのじゃないかというほぼ内容が明らかになったわけであります。そういう意味で、私は開発の免罪符になるようなアセスメント法ならば出さない方がいい、もう一度ゼロから考え直して本当に環境を積極的に守るに足るアセスメント法案を出せ、こういう趣旨の質問をしたわけでありますが、今回新聞報道によりますと、いよいよアセスメント法案が流産をする、こういう報道が出ております。先ほど来長官は、最後最後までがんばるの一点張りでありますけれども長官が一人最後最後までがんばっても流産するものはするわけでありますから、私はあなたの御返事のいかんにかかわらず、ほぼ決定的に流産するだろうという見通しを持つのですけれども、そういう意味でまさに国民もこのような法案は期待していないし、それ自体流産することは非常に結構だ、私はそういう角度から若干の質問をしてみたいと思うのです。  しかし、流産をして結構だと言いますけれども、本当に国民が期待するような、真にあるべき姿をしたアセスメント制度がいまだにできていないということについては、私は非常に残念に思うのです。こういう意味で、環境庁がつくっておられる中公審の答申にも、「速やかに環境影響評価の法制度化を図られたい。」となっているのですから、どうしても早急につくっていただきたい。その意味で、今回の五度目の流産目前という情勢の中で長官は一体何を反省なさっていらっしゃるのか。最後まで努力するということはもうさっき聞きましたから、流産必至の情勢の中で何を反省なさっていらっしゃるのか、そこのところをお聞かせください。
  51. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  まだ法案として出たわけでもございませんで、流産したわけではない、私はかように認識をいたしておるような次第でございますが、ともあれ昨年の四月に中公審の答申をいただきまして、その線に沿って法案が作成されたものである、私はかように確信をいたしておる次第であります。
  52. 則武真一

    則武委員 そこのところがそもそも間違いなんです。私から言わすならば、この中公審の答申に沿ってつくろうとするから結局ろくなものができないのです。そこで、五十一年に最初に法案作成に着手されていますね。その後一年ごとに、毎年環境庁が後退に後退を続けてこられたその結果が去年の答申になっているのではないですか。そこはどうですか。
  53. 金子太郎

    金子政府委員 中公審には当初環境影響評価部会がございませんで、公害防止部会の中に専門委員会をつくるという、いわばひさしを借りる形で御検討を始めていただいたのでございますが、その専門委員会の御意見によりまして、環境影響評価部会が五十年十二月に新しくつくられたわけでございます。この環境影響評価部会は、部会ないしは懇談会を含めまして五十一年に十回、五十二年中に四回、五十三年中に四回、五十四年の答申までに八回、合計二十六回にわたって審議がなされまして、昨年の四月に環境庁長官に対して答申をなされた、こういう次第でございます。
  54. 則武真一

    則武委員 そこのところをもう少しお聞きしたいのですが、五十一年に答申が出される予定ではなかったのでしょうか。環境庁は毎年毎年法案をつくっているのに答申は出ない、つまり事実上答申が三年間おくれた、ここのところが非常に疑問なのですが、なぜ三年おくれたのですか。三年間、実際に部会が開かれていたのですか。
  55. 金子太郎

    金子政府委員 ただいまも申し上げましたように、懇談会の形をとった場合が多かったわけでございますが、その間相当数の会合を開いていただいておりまして、なお意見がいろいろございましたようで、答申の段階に至らなかったというふうに承っております。
  56. 則武真一

    則武委員 将来のこともありますので、どういう懇談会をやられたか、部会がどういう論議をなさってこられたか、できたら一度資料を御提出願えればというふうに思うのです。これはひとつお願いをいたしておきます。  それで、やはり実態的には環境影響評価部会が十分機能していなかったのではないか、ないしは情勢待ちというふうな形で実質的な審議が中断していたのではないかと私は推測をするわけであります。一方では皆さん方の方は毎年毎年法案の準備をなさってきた、そしていよいよ後退し切った段階で去年の四月に答申が作成されるということになっているのですから、もとの論点へ戻りますが、中公審の答申に沿って今度法案をつくったということ自体が、いかにもこの後退の経過を決定的に裏づけているというふうに私は思うのです。  そこで、時間が余りありませんので、中心点をお聞きしたいのですが、五十年に出された環境影響評価制度専門委員会の「(検討結果のまとめ)」ですね、せっかく専門委員会で一定の方向を出されているのに、三年たって去年の四月に中公審として環境影響評価制度の答申を出された。この三年間に天地の隔たりがある、これは一体どこから起こったのかお聞きしたい。審議会の中に専門委員会をつくって、環境影響評価制度のあり方はいかにあるべきかということについて、専門家がかくあるべきではないでしょうかという文書を五十年の十二月に出していらっしゃるのに、この専門委員会意見を尊重しないで、中公審は去年の四月に、専門委員会意見とは百八十度違うような部分もたくさんあるのですが、答申を出されたということ自体が、中公審の内容に立ち入ってみるならば大きな矛盾じゃないかと思うのですね。せっかく専門委員会を設けて、そこで専門的に検討して出したものなんだから、中公審は総会を開いてこれを答申に盛り込まれたらいいはずなんです。ところがそれが大幅に後退をしたというところに、今日の五度目の流産必至、そしてその流産をする中身もだれも余り期待していない、こういう悲惨な状態があるのではないかというふうに思うのですが、この専門委員会の結論と中公審の答申の結論の違いがどこから起こったのか明確にしていただきたい。
  57. 金子太郎

    金子政府委員 中公審の審議内容は非公開ということになっておりますので、詳細については御容赦いただきたいと思いますが、前回も申し上げましたように、昭和五十年ないし五十一年当時、環境庁が構想として考えておりましたアセスメント制度というものが、なお検討が不十分な点もあり、各省との調整を得る可能性がない、こういう情勢の変化ないしは判断が五十一年ごろから五十二年ごろにかけてございましたので、その結果が審議会の御検討の内容にも反映したのではないかと推測いたしております。
  58. 則武真一

    則武委員 私は、五十年十二月の専門委員会意見と五十四年四月の中公審の答申の違いを一覧表にしてみたのですけれども、今日あなた方が答申のとおりにつくったという五度目の流産必至の法案が専門委員会意見からいかに離れているか、そして大体去年の答申のとおりになっているかということは、法案文章をいただいて読み直してみてよくわかりました。そういう点で、結局中公審の去年の答申自体が、年々後退に後退を重ねてこられたあなた方の姿勢を最終的に反映させた答申になっているんじゃないか。事実関係はそうなんですね。だから、私はこういう中公審の答申ではどうにもならないというふうに思うのです。  内容について余り触れられませんが、地域住民住民参加の問題でも、専門委員会は、住民参加は本制度の根幹をなす、アセスメント法という法律の性質上、住民参加が根本だとさえ強調しているのに、五十四年の中公審の答申やあなた方の今度の法案は、住民参加はきわめて限定された形ばかりのものになっている。条例による地方自治体の活動についても、中公審の答申とあなた方の法案は、法律どおりということで事実上これを禁止している。しかし、専門委員会意見は、地方公共団体がその地域の特性に応じて適切な方法をとるということはいいというふうに、条例の積極的な制定を期待しているというふうに、一つ一つ申し上げませんが、非常に天地の違いがあるのですね、同じ中公審の専門委員会と中公審の全体の結論が。この変化自体は、私は今日の事態を予測し予見しておるように思えてならないわけであります。  そういう点で、私はこういう答申に基づく限り結局ろくなものはできないだろうと思うのです。その意味で、私は中公審自体の答申を含めて、もう一回ゼロから出直すというぐらいなつもりで検討する必要があるんじゃないか。中公審に対してもう一回根本的にアセスメント法のあり方について再検討の答申を求めるつもりがあるのかないのか、そこら辺もひとつ流産必至の情勢の中で長官の方にお聞きしておきたいと思うのです。もし流産をしたらそういうふうになさいますか。
  59. 金子太郎

    金子政府委員 先に、技術的な問題もございますので、私から答弁させていただきます。  今回、政府内部でアセスメント制度についてようやくにして意思の統一を得られたということは、私どもとしては非常に貴重なコンセンサスであるというふうに考えておりますので、これをスタート台にして今後のアセスメント制度というものを考えていきたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  60. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど来先生がいろいろお述べになりましたとおり、今回私どもが考えております環境影響評価法案につきまして、御意見、御批判多々あると思いますが、ともあれ私どもといたしましては、今国会に出していただいて、そしてこの国会の場を通じ大いに内容を御論議をいただきたいと心から念願をいたすものであります。
  61. 則武真一

    則武委員 流産はしないんだという立場からお話しになっていらっしゃいますから、すれ違いになりますけれども、私は流産をするだろう、するからにはもっと根本から出直せ、出直すに当たっては、その根本は、答申自体が相当ひん曲がっているのだから、中公審のメンバーの洗い直し、そして中公審の再度の答申を求めるというぐらいな気持ちでやらなければいかぬのじゃないですかということを申し上げておるわけでありますから、よく御記憶をしておいていただきたいと思うのです。  私は、中公審のメンバー自体が国会の同意を得ないで、総理大臣の任命になっているのですかね、そういう中公審の運営についても検討をしていく必要があるのじゃないか。こういう重要な審議会のメンバーは、国会の同意を得てメンバーを任命するような、そういう制度に改めていく必要があるというふうに私は思うのです。そうでないならば、やはり三年前に、例の中公審の自動車の排ガス規制の専門委員会に自動車メーカーの代表が参加をしていらっしゃる。そして中公審の専門部会で論議されておる内容が、秘密会議だと先ほど局長はおっしゃいましたけれども、秘密でない、逐一自動車会社の方には筒抜けで、刷り増しをして、だれだれ委員はどんな発言をしたとか、全部自動車メーカーには流されていたということが国会で暴露されたのは御存じでしょう。そういう意味で、やはり私はこういう住民参加ということを内容とした科学的な法律でなければならない、その答申を出す中公審、またその専門委員、こういうものがもっと公開をされ、国会の場で任命をされるというような制度に改めていく必要があるというふうに思うのです。この点は私の意見でありますから、こういうこともひとつぜひ参考に、将来再検討をお願いいたしたいというふうに思います。  せんだって連休のときに、五月五日ですか、第二回日本環境会議というのが大阪で開かれております。弁護士の方や法律学者や科学者の方が千人ぐらいお集まりになって、環境アセスメント制度等をめぐっていろいろ御論議になっておりますが、そこで出てきた、これは大阪大学の林先生という方の資料を拝見しておりますと書いてありますが、大体アメリカの環境影響評価法、NEPAがタイの姿焼きとたとえるならば、環境庁の七六年に第一回の法案の要綱を出されたのが切り身の塩焼きだ。大きい骨がなくなっている。そしてちょうどNO2の環境基準の緩和をなさったころ、環境行政の後退が言われ出したころに出された七八年のあなた方の三回目の法案の中身は、もう骨がなくなってしまって刺身になっている。そしていよいよ流産目前の今回の八〇年の法案は、まさに骨がないどころか、もうタイの肉が腐りかけて、かまぼこにしようかなということで、いますり身にしておる、すり身のだんごだ、こういうふうに第二回日本環境会議の中で報告をされているのであります。  私はこれを見て、本当に情けないというか、アメリカのNEPAがタイの姿焼きなら皆さんの環境庁のいまの案は腐りかけたタイの肉でかまぼこをつくろうとしてすり身にしておるところだ、小骨も何もない、これでは環境は守れないということを科学者や学者は声を大にして言っていらっしゃるわけであります。そういう点で、私はやはり根本から出直すことがどうしても必要じゃないか。本当に環境を守るに足る真にあるべきアセスメント制度の追求というものをやっていただきたい。アメリカに比べれば十年もおくれているのですから、何としても、せめて、何でもアメリカのまねをなさるのが好きな方も大ぜいいらっしゃるじゃないですか。もっとこういうアメリカのアセスメント法のすぐれた点は、十年もおくれているのですから、急いで勉強をして、少なくとも学者の諸君が言っておるタイの姿焼きぐらいなアセスメント法にはしていただきたいと思うのですが、最後に、長官の決意を再度お伺いして、質問を終わりたいと思います。
  62. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  学者の中にもいろいろなお考えの方がおりまして、いろいろな御意見を述べておられると思いますが、私どもがまとめました環境影響評価法案は、昨年の四月中公審から答申をいただいた線よりも、さらに前進をしておる内容であると私は確信をいたしておる次第でございます。まあ私といたしましても、でき得れば、それは計画アセスから始まって手続のためのアセスといった仕組みができればもう満足でございますが、ともあれ今国会法案は出させていただいて、そしてこの国会の場を通じて、御意見がございましたならば、大いに御論議を賜りたいということを心から念願をいたしておる次第であります。
  63. 則武真一

    則武委員 終わります。
  64. 河野正

  65. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 本日は、各党の委員の皆さんによる環境アセスメント法案の成り行きをめぐっての質問が重なっておりますけれども、民社党といたしましても、本委員会における最重要問題として土屋長官質問いたしたいと存じます。  長官を初めとする環境庁の皆さんの昼夜を分かたぬ御努力には深く敬意を表するものでありますが、きのう、きょうの新聞で見ましても、提出決定と書いている新聞もあれば、提出断念と書いてある新聞もあります。一体どこがネックになってこのように難航しているのでしょうか。また、今国会提出は本当に可能だとお考えでしょうか。
  66. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  環境影響評価法案につきましては、五月六日に最終的な政府案を自由民主党の環境部会におきましていろいろ御討議をいただき、昨日また再度この環境部会を開いていただきまして、そして環境部会としての正式の御決定をいただいたようなわけでございます。あとは政務調査会の審議会にかけて、そこで了承いただきましたならば、続いて総務会、そして閣議の決定をいただいて国会提出ということに相なるわけでございますが、先ほど来繰り返し御答弁申し上げておりますとおり、私といたしましては、せっかく関係各省庁の大変な御理解、御協力をいただきましてできました法案でございますので、何としても今国会に出していただきたい、かように考え、この委員会終了後も関係者のところを回ってお願いをして歩こう、かように考えている次第であります。
  67. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 きょうの新聞によりますと、自民党環境部会は、商工族議員を除いたいわば抜き打ち採決の結果だというふうに報じられておるのですが、この点はいかがでしょう。
  68. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  実は私、昨日はテレビの録画撮りに午前中横浜の方へ参りまして、午後十二時半から新宿の方で知人の結婚式がございまして、そちらへ出ておりましたところ、佐々木部会長の方から、三時から環境部会を開くから大臣も出てくるようにというような御連絡が参りまして、それで私は三時からの党本部における環境部会に出席をいたしたような次第でございます。環境部会には正式の環境部会のメンバーが集まっておられました。
  69. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 まあどなたが商工族議員やらも知りませんし、こういった問題は、報道は報道でございますけれども、一応国民立場としましては、今回、四度流れた後に五度目も流産必至だという状況をとらえて、自民は自民党内で割れて流れた、自民党への種々の圧力によって流れた、政治を私物化しておるようにとっておるわけです。この点について、まあ流れてしまったわけではございますまいけれども国民批判というものを十分受けとめていただきたいと考えております。  こうやっておくれていった場合に、今回流れた場合のことを話すのもあれですが、現実にはおくれると相当の損失があると思いますけれども、おくれることによってどういった点が大変困るとお考えになっておられるでしょうか。
  70. 金子太郎

    金子政府委員 私どもが、今回ぜひ法案をまとめ、国会提出させていただいて成立を図っていただきたいと考えますゆえんのものは二つございまして、一つは四十七年の閣議了解に基づいて行われております公共事業等に関するアセスメントが精粗まちまちといいますか、必ずしも十分に画一に行われているとは言いがたい面もあるやに聞いておりますので、こういうものについてはより画一に行われるようにいたしたい、それは環境保全上きわめて重要なことだと考えているということ、それが一つでございます。  もう一つは、現在の閣議了解だけでやっているという制度のもとにおきましては、せっかくやっておりますアセスメントの成果を国の行政に適確に反映させるという手だてがない、その手だてをぜひこの法案によって手に入れることにいたしたい。それが端的には、許認可等の行政処分を行うに際しては、アセスメントがきちんと行われているかどうかを各省主務大臣がよく審査された上で、最終的な行政処分を行われるという仕組みでございますが、そういう仕組みを導入したい。そういうことによって予防的な環境行政というものは一歩でも二歩でも進むのではないか、こういう二点が非常に大きな点だと考えておりますが、その実現がそれだけおくれるというのは大変残念だと考えます。
  71. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 いろんなやり方の問題でそういった考え方もあるのでしょうけれども、この法案の成立というか、こういった考え方がはっきりと一本線でまとまることを待っている国民にとりましては、直接健康に関係のある、ある意味で、もっと大げさに言えば一分一秒を争うような、おくれることに対する損失というのは、もっと健康に直接響いた具体的なものであると考えております。そういった点におきましても、ぜひ最後最後まで御努力と言われております土屋長官努力に期待をいたしますが、どうか最後までがんばっていただきたいと思います。  また、いまだ出てきてない法案ではありますけれども、各省庁間の意見の一致というものはもう得られておるのでございましょうか。
  72. 金子太郎

    金子政府委員 今月の六日に自民党環境部会及び商工部会に提出いたしました政府案は、政府部内の意見の一致を見た上で提出されたものでございます。
  73. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 成立をしなかった、もしくは提出ができなかった場合でも、一応環境庁アセスメントに対する考え方というのは、今回出されておるような形がまとまった形での環境庁の基本的な考え方であるというふうにとらえておいていいわけでございましょうか。
  74. 金子太郎

    金子政府委員 環境庁だけでなくて、政府の基本的な考え方がここにまとめられているというふうに御理解いただいていいと思っております。
  75. 木下敬之助

    ○木下(敬)委員 もう時間が来ましたので、このくらいにいたします。どうもありがとうございました。
  76. 河野正

    河野委員長 次回は、来る十三日火曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時四十九分散会