運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-04-18 第91回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十八日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 河野  正君    理事 玉生 孝久君 理事 西田  司君    理事 八田 貞義君 理事 島田 琢郎君    理事 馬場  昇君 理事 古川 雅司君    理事 則武 真一君 理事 中井  洽君       橋本龍太郎君    吹田  愰君       土井たか子君    野口 幸一君       竹内 勝彦君    森田 景一君       木下敬之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁企画調整         局環境保健部長 本田  正君         環境庁自然保護         局長      藤森 昭一君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君  委員外出席者         議     員 土井たか子君         農林水産省構造         改善局計画部資         源課長     高原  弘君         水産庁研究部漁         場保全課長  伊賀原弥一郎君         資源エネルギー         庁公益事業部火         力課長     廣瀬 定康君         建設省都市局下         水道部流域下水         道課長     伊藤 俊美君         建設省河川局河         川計画課長   渡辺 重幸君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ――――――――――――― 四月十五日  公害による被害根絶に関する請願多田光雄君  紹介)(第四一二一号)  二酸化窒素環境基準改定強化等に関する請  願(柴田睦夫紹介)(第四一二二号)  同(津川武一紹介)(第四一二三号)  同(則武真一紹介)(第四一二四号)  同(東中光雄紹介)(第四一二五号)  同(不破哲三紹介)(第四一二六号) 同月十六日  公害健康被害補償法に基づく指定地域の解除反  対等に関する請願三浦久紹介)(第四二四九  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境影響事前評価による開発事業規制に関す  る法律案土井たか子君外二名提出、衆法第一八  号)  公害対策並びに環境保全に関する件      ――――◇―――――
  2. 河野正

    河野委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古川雅司君。
  3. 古川雅司

    古川委員 私は、本日は流域下水道問題点、それから赤潮対策の問題、さらに公害健康被害補償にかかわる問題、そして最後環境アセスメント法案に関する問題、こういった点について、時間の許す限りお伺いを進めてまいりたいと思います。  最初に、流域下水道問題点でございますが、建設省からおいでをいただいておりますので、まず建設省に御質問申し上げます。  一般に、下水道整備事業公共事業の大幅な伸びに従いまして、五十一年度以降特に目立って伸びてきているわけでございますが、五十四年度の当初あるいは実績に比して、五十五年度の事業量はどのようになっているか、その点まず御説明をいただきたいと思います。
  4. 伊藤俊美

    伊藤説明員 五十四年度当初の下水道事業予算は、総事業費にいたしますと一兆六千六百九十四億円でございましたけれども、その後国土総合開発事業調整費等が加わりまして、結果的には一兆六千九百九億円ということになっております。  五十五年度予算でございますけれども、五十五年度は総事業費にいたしまして一兆七千八百十六億円ということでございまして、対前年比一・〇七、つまり七%増ということになっております。国費にいたしますと六千八百十億円ということでございまして、国費は対前年比一・〇〇、すなわち横ばいという形になっております。
  5. 古川雅司

    古川委員 いずれにいたしましても、この下水道整備に対しては巨額の経費を費やしながらいま推進をしておるところであり、なおかつ今後非常に需要が追っている、非常に需要が多い、それに追いつかないというのが実態であると私は思います。  この下水処理方式の問題でございますが、市町村単独にいわゆる公共下水道方式をとってきた形から、これに対して建設省が非常に強力な制度的な誘導を行いまして、これを大規模流域下水道方式に切りかえてきている、これが非常に目立っているわけでございますが、このいわゆる流域下水道方式実態でございますが、計画中のものあるいは現に工事を施行中のもの、すでにでき上がっている既設のもの、こうしたものの実態について御承知であれば御説明をいただきたいと思います。
  6. 伊藤俊美

    伊藤説明員 下水道整備考えます場合に、公共下水道実施をいたしますかあるいは流域下水道等広域下水道でやるかという問題につきましては、その地域における地形状況、それから市街地の配置の状況、それから幹線を入れてまいりますので、そういった集水の管を入れます道路がどういった整備がなされておるかというような状況、それから処理場計画が必要でございますが、適当な空地があるかどうかという問題、それから放流先河川水量水質の問題、そういった点を多角的に検討いたしまして、その水域に合ったもの、同じ水域でも相当離れております場合には単独公共下水道でやる場合もございますし、市街地等連権をいたします場合には流域下水道でやるというようなことにいたしておるわけでございますが、最も効果的な下水道整備ができるようなことで考えておるわけでございます。  そういった連権地域考えるということのほかに、御存じのように、下水道の場合は土木、建築、機械、電気といった、それに水質が加わりまして非常に多方面にわたる技術が必要でございまして、そういったものに精通した技術者がなかなか得られないということもございます。そういった技術者を有効に活用し、かつ、そういった人たちが喜んで業務を遂行していくというような人事的な面も考えていかなければならぬものですから、そういうものにつきましては、ある程度まとめまして共同施設、まあ流域下水道のようなものでございますが、そういったものでやる必要がある。これを決めます場合には、市町村長初めその地域における皆さん方の意見を十分入れまして、いろいろな検討が行われまして、流域下水道実施をするところは実施をするというような形になっておりまして、何が何でも流域下水道でやるということにはなっておらないわけでございます。  それから、個所数でございますが、五十四年度に実施をいたしております個所は六十六カ所ございます。そのうち一部完成をいたしまして供用開始をしております個所が二十一カ所ございます。五十五年度に新規個所三つばかり加わっておりまして、これにつきましては現在計画策定中でございまして、五十五年度中には着手できるのではないかというふうに考えております。
  7. 古川雅司

    古川委員 細かく御説明をいただきました。何が何でも流域下水道方式をとるように誘導しているわけではないということはよくわかりましたけれども、大体建設省それから自治体がこの方式を選択する、そういう傾向が最近非常に強いわけでございまして、この流域下水道そのものが非常に大規模化をしているということ、大都市から小都市周辺河川にもこれが非常に及んでいるという実態、これにはやはり一つ理由があるのじゃないかと思います。いまの御説明の中でかなり尽きていると思いますが、さらに建設費が比較的安く上がるという点や維持費の点で有利であるという点、あるいはまた河川や湖沼において水質保全計画のための流域の一体的な管理が非常にしやすい、そういう利点が挙げられるのじゃないかと思いますが、そういう点も含めて流域下水道方式の選択をとっているのじゃないか、そういう傾向に非常に傾いてきているのじゃないかというように考えるのですが、この点いかがですか。
  8. 伊藤俊美

    伊藤説明員 先生指摘のとおりで、経済性の問題につきましては、先ほど答弁で触れませんでしたけれども下水道事業も税金でやっておるわけでございますので、できるだけ経済的に実施するというようなことを考えておるわけでございまして、規模の利益と申しますか、そういう問題につきましては、建設費にいたしましても維持管理費にいたしましても相当大きなものがあるのでは、ないかと思います。たとえば一つの区域をとってみました場合に、二つにも三つにも分けて実施をいたしますと、共通部分でございます管理本館等二つ三つもできるということでございますので、ある程度まとめた方が経済的ではないかと思います。  そういった経済性のほかに、一つ都市だけで実施いたしますと、入ってまいります水の量といいますか、そういったものが相当波がございまして扱いにくい。まとめてやりますような共同施設になりますと、入ってまいります水の流入時差といいますか、そういうものがございまして、ある程度平たん化されてくる。そうしますと、建設費にも響いてまいりますし、維持管理費にも響く。維持管理のしやすさといいますか、そういう点にも相当大きな影響が出てまいりますので、できるだけ大きくということでは必ずしもないのですけれども、適切であれば非常に有効ではないかというふうに考えております。
  9. 古川雅司

    古川委員 この流域下水道方式をとることによっていま一つの問題が起こっているわけでありまして、それはいわゆる河川流水量が激しく減っているということです。御承知のとおり、これは河口の一カ所に下水を集めて、そこで巨大な処理場によって処理して海に放流するという形をとっているわけでございますから、その途中の河川流水量が減る、それが農業用水にあるいはその他の用途に供する取水に非常に支障を来している、そういう問題点が起こってきているわけでございますが、そういう実態について建設省は何らかの報告を受けていらっしゃいますか。
  10. 渡辺重幸

    渡辺説明員 お答え申し上げます。   いま流域下水道課長の方から御説明がありましたが、現在稼働しております流域下水道処理場というのは、これは処理場の数で申しますと全国で二十カ所ということでございます。そのうち河口部にありまして処理をしておるのが二カ所でございます。  それで、その処理量というのは、現在のところ平均日量で六万三千立方メートルでございます。毎秒に直しますと〇・七トンというようなことで、まだ非常に少ないわけで、このことが直ちに河口付近で問題を起こしているという事例はいまのところございません。  また、河川流況というのは非常に降雨に支配されておりまして、その年の雨の量によりまして変わっているわけで、経年的な流況変化だけで下水道影響だと直ちに判定することは非常にむずかしいことでございません。
  11. 古川雅司

    古川委員 これは下水を一カ所に集めて巨大な処理場処理するという方式と、もう一つは、従来とってきた、河川に沿って何カ所か処理場を設けて、その都度そこで処理をして、処理された水を川へ戻してやる、それがまた河川をずっと流れながらあるいは伏流水となり取水に有益になっていくというふうに考えられてきたわけでございますけれども、ただいまの御報告では、そういった支障は目立って起こっていないということでございますが、特に昨年あるいは一昨年のような水不足の事態になりますと、こういう問題が非常に表面化してくるわけでございまして、おっしゃるとおり、確かに降雨量によって河川流量の問題はとらえ方が違ってくると思いますけれども、今後こうした流域下水道方式中小都市に至るまで制度的な誘導によって強力に推進していくということについては、こういう点全く検討の必要はないか、問題がこれからさらに起こってくる心配はないかという点についてはどのように考えていらっしゃいますか。
  12. 渡辺重幸

    渡辺説明員 お答え申し上げます。  現在でも流総がすべて全部下流に集めてそこで放流するといべ計画ではございませんで、流総そのものも、処理場の数でいきますと、一級水系に係るものとして全体六十七カ所の処理場が現在計画されているわけです。そのうち河口部処理場が設置されるという予定のものが十九カ所で、残りは中流部とか上流部で放流する計画になっております。また、この十九カ所のうち直接海に排出する予定のものというのは十四カ所でございます。そういうことで、必ずしも全部がバイパスして海へ出すという計画にはなっておらないというのが一点でございます。  さらに、われわれの方は流域下水道計画を定めます場合に、下水道担当部局から協議を受けておるわけでございます。この場合も水量の問題あるいは既得の水利の問題、そういうものに支障を起こさないようにということで十分検討をしてまいりましたし、今後もまた検討してまいりたい、このように考えております。
  13. 古川雅司

    古川委員 この下水処理処理水農業用水への転用でございますが、建設省の方では積極的に進めているわけでございますけれども農林省の方としては非常に消極的である。ということは、処理水の中にかなりまだ重金属などの有害物質あるいはN分が過剰に含まれているという懸念が残っておりますし、それからウイルスの除去も自信が持てないというような理由からだと聞いております。きょうは農林省にもおいでをいただいておりますけれども、この下水道、特に流域下水道整備が進むに従って、農業用水取水支障を来しているという指摘農林省側からされているわけでございますけれども農林省の方からひとつ御説明をいただきたいと思います。
  14. 高原弘

    高原説明員 ただいまの御質問の点でございますが、私ども都市近郊におきます農業用水現状という点から申しますと、御質問にもございましたように、やはり量的な問題より質的な確保なり改善ということが一つの重要な問題でございます。  現在、私どもの方といたしましては、やはり都市汚水などの流入等に見られるような、こういう汚濁源を持つ被害地域につきましては、水源を転換していくとか、あるいは用水排水路を分離いたしまして、そういうことを内容とする水質障害対策事業というのを実施してきておるところでございます。  なお、先ほど御指摘のありました、特に水の確保が必要な地域で、下水処理水を利用するようなケース、こういうようなものにつきましても、一般には、わが国の下水道の多くが工場排水などいろいろなものと生活排水が一緒になって受け入れられておって、農業生産なりそういうものにとりまして、不要なあるいは有害なものも含んでおるという場合もあり得ますので、その安全性検討なり確認ということが重要であるというように考えておるわけでございます。  具体的には、処理水を長期的に使用した場合に、これの蓄積によって農業生産の基盤である土壌にどういう影響が起きるか、あるいはこの処理水を利用する上での農業者労働環境といいますか、そういうものへの影響なりあるいは作物の生育などに対する影響等、こういうものの水質管理を含めました利用技術なり利用体系というものにつきまして未解明、未解決の分野を持っておりますので、こういうものに関する研究検討が重要であろう、このように考えておるわけでございます。
  15. 古川雅司

    古川委員 再び建設省にお伺いをいたしますけれども、特に流域下水道は、下水を一カ所に集めて処理するという方式による工場排水との混合処理の問題であります。  一つには、重金属混入による処理能力の低下、BOD、SSといったもの、これは従来の活性汚泥式によっては処理し切れないという問題があるのであります。それから同じく重金属混入によって、スラッジ農耕地への還元ということに障害が出てまいります。さらに三番目に、工業排水中の重金属除去施設について、その実態がまだ非常に軟弱であるという点。こういう問題点をどう考えていらっしゃるか。これはいま推進していらっしゃる流域下水道方式をすべて否定するというわけじゃありませんけれども、集落的な排水処理工業排水の部分的な徹底した処理あるいは家庭での浄化槽の推進といったものもあわせて進めていかなければならないのじゃないか。どうも流域下水道方式、巨大な排水処理方式に傾き過ぎているのではないかという感じがするわけでございますが、この点どのように考えていらっしゃいますか。
  16. 伊藤俊美

    伊藤説明員 先生いま御指摘になりましたように、流域下水道、特に流域下水道工場排水の点で問題ではないかということでございますが、流域下水道は、関係いたします公共下水道を取り入れまして、それの根幹的な施設をやっているということでございますので、公共下水道流域下水道は一体であるということをまず御理解いただきたいと思います。  そういった工場排水等を受け入れて処理がしにくくならないかどうかということでございますが、下水道に受け入れます場合には、そういった有害物質につきましては除外規定がございまして、それを除外する形になっております。それで特に重金属の問題につきましては、公共用水系へ出してよろしいという程度まで厳しく除外をしていただいておる、そういう形で工場排水を受け入れるという形にしておるわけでございます。ただ、工場排水をやみくもに下水道に受け入れなければならぬということではございませんで、市域状況を見まして、市域の中に家内工業的中小工場がたくさんございますので、そういった点をおのおの処理をし、あるいは排水をするということになりますと、おのおのの工場が管をいけたり処理施設をつくったりということになりまして、道路はいつも掘り起こされるというようなことがあろうかと思います。そういったことを避けるために、市街地におきましては、工場排水除外施設をつくってもらって受け入れるというような形にいたしておるわけでございます。除外施設で取っておりますので、その後の処理という問題につきましては、現在のところそう支障がございません。問題は汚泥処理でございますが、汚泥処理十分チェックをして、還元できるものは還元していく、還元できないものは、埋め立てに使いましたりあるいはコンクリートで固めて処分するというようなことが行われておるわけでございます。
  17. 古川雅司

    古川委員 この問題の最後環境庁にお伺いをいたしますが、この下水処理の問題でございますけれども一つには水資源有効利用と申しますか、多くの段階で利用していくという問題。いままで建設省にお伺いした範囲では、河川流量が減少したとかあるいは地下水が枯渇したということは、この下水道方式によって顕著にはあらわれておりませんけれども、これは将来必ず起こってくる問題ではないか、十分注意をしなければいけない問題だと考えております。こういった点、環境保全の立場からどのようにお考えになっていらっしゃるか。  それから、ただいま建設省の方から御答弁がございました下水汚泥処理の問題でございます。この点についてどうお考えになっていらっしゃるか。特に科学技術庁の方では、都市ごみとの混合処理をいま検討しているというふうに言われておりますが、この辺、環境庁としてはどうとらえて、どのような見解を持っていらっしゃるか、この二点についてひとつお答えいただきたい。
  18. 馬場道夫

    馬場政府委員 下水道の問題でございますが、その第一点の流量等の問題でございますけれども、ただいま建設省の方から御説明ございましたように、下水道計画策定に当たりましては、その地域地形なりあるいは降水量なり河川流量放流先水利用見通し水質見通し等、いろんな条件を考慮して決めるわけでございまして、したがいまして、流域全体といたしまして水質保全上著しい影響を与えるというような河川流況変化は、一般的にはないものと考えるわけでございます。ただ、先生指摘のように、流量は大変大事な問題でございまして、流域内の河川流量は、水質あるいは水域環境と非常に密接なかかわり合いを持っておりますので、やはり適切な流量確保ということに、今後とも十分注意をしながら計画を進めていく必要があるんだろうというふうに私ども考えておるわけでございます。  それから、終末処理場におきますスラッジ問題等があるわけでございますが、やはりこれの有効利用ということは、今後非常に大きな問題でございまして、この処理というものが今後最大の問題になるわけでございます。それにはいろいろ、農地への還元という問題もあるわけでございますが、これは先ほど農林水産省の方からのお話もございましたように、重金属等の問題につきましても、十分究明しなければならぬという問題もあろうかと思います。いろんな問題を含んでおるわけですが、適切な処理が行われることが望ましいというふうに考えるわけです。  そこで、ただいま先生指摘のございました科学技術庁におきまして、都市ごみ下水処理によります汚泥をあわせて処理をするというような委託研究が進められておるわけでございますけれども都市ごみ下水汚泥の混焼によりまして、都市ごみの有します熱エネルギーを利用して下水汚泥処理を行うということで、この研究が成功いたしますと、下水汚泥処理に必要な重油燃料都市ごみで代替できるという、いわば省エネルギーにも役立つわけでございまして、また汚泥処理という両面、環境保全上からも重要な問題があるわけでございますので、私どももこの研究大変意義のあるものであると考えておるわけでございます。
  19. 古川雅司

    古川委員 この問題はこれで終わります。建設省農林水産省ありがとうございました。  次に、赤潮対策についてお伺いをいたします。水産庁からおいでいただいておりますので、環境庁とあわせてお伺いを進めていきたいと思います。  瀬戸内海環境保全については、御承知のとおり臨時措置法制定以来幾つかの施策がとられてまいりまして、五十三年の六月には特別措置法恒久法としてできたわけでございますが、燐の規制一つの大きな問題になっておりまして、これは現状維持か、あるいは積極的にこれから減らしていくことができるのかという問題、いま非常に大きな話題を呼んでおります家庭用合成洗剤規制だけで積極的に減らしていけるかどうかという問題これをどのようにとらえていらっしゃるか、大体かけ声だけで終わるのじゃないかという批判もあるわけでございますけれども、これは水質環境基準の設定が本当にできるのかという問題とあわせてぜひ明快な御答弁をいただきたいと思います。  特に、豊かな漁業資源を誇り、比類のない景観を誇ってきた瀬戸内海が、非常な危機的な状況になっているのは、すでに長い間言われてきたことでありますけれども、この水質であるとかあるいは景観であるとか自然の生態、これを一体どこまで戻す努力をしていくのか、その目標は何なのか、この点をひとつ長官の御決意も含めて御答弁いただきたいと思います。
  20. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  瀬戸内海は何と申しましても世界に誇る景勝の地でございます。これに対しましては、国を挙げて環境、自然を守っていかなくてはならないと、私は決意を新たにいたしておる次第でございますが、先ほど来御指摘のございました、赤潮発生機構はまだ十分に解明をされているとは言えない状況にあります。瀬戸内海富栄養化に伴う被害発生現状にかんがみまして、赤潮発生機構解明されるまで対策を行わないとすることは妥当でない、かように私は考えておる次第でございます。このために、瀬戸内海に排出される燐の総量を現在よりも増加させないということを当面の目標といたしまして、特別措置法に基づく燐削減対策を行っておるところでございます。環境庁におきましては、今後とも赤潮発生機構解明に最善の努力をいたすとともに、燐の水質目標についての検討を行い、これらの成果を踏まえまして、さらに燐の削減対策の充実を図ってまいりたい、かように考えております。
  21. 古川雅司

    古川委員 水産庁にお伺いいたします。  赤潮は近年依然として非常に広域化をし、長期化し、あるいは多発、悪質化をしてきておるわけでありますが、赤潮防止に対しましての対策費であるとか、あるいは情報交換や予察調査、そういった事業費の補助、それから技術開発試験委託などの費用、こういう形で予算を計上いたしておられるわけでございます。こうしたいわゆる赤潮対策予算の推移でございますが、五十四年度が六億五千八百十六万円、年々増額はしておりますけれども、五十五年度ではいかほどになっているかひとつ御答弁いただきたいのと、この中で環境庁の関係が、五十四年度の場合三千四百七十一万円とございます。これは大規模赤潮の形成及び赤潮被害抑止に関する研究というふうになっておりますけれども、この赤潮関連の予算の中で環境庁がちょびっと入っているのはどういうわけか、水産庁環境庁の両面から御答弁をいただきたいと思います。  水産庁の方としては、これは当然大きな期待を持っておられると思いますが、合成洗剤規制に対して、赤潮防止対策に取り組んでいらっしゃる以上、何らかの見解を持っていらっしゃると思います。これは可能と見ていらっしゃるか、ある程度有効なところまでいくとお考えであるかどうか。さらには発生のメカニズムがむずかしい、非常に厳しいということは、いま長官からも御答弁がございましたけれども、ホルネリア赤潮等についても、さらにそのメカニズムの解明が急がれておりますが、何か障害がないか、この解明は進んでいるのかどうか、そういった点についてあわせてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  22. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 御答弁申し上げます。  水産庁といたしましては、赤潮関係につきましては、特に漁業の被害をたくさん出していることでございますので、この数年間非常に力を入れてやってきております。  五十五年度の予算というお話でございましたので、内容をお話し申し上げますが、先生からお話がありましたように、赤潮の情報交換事業あるいは赤潮の予察調査事業につきましては、海面だけじゃなしに、内水面も対象に含めまして五十五年度はやろうといたしております。  また、赤潮発生及び被害を防止するための技術開発の試験につきましては、試験項目もふやしまして、さらに推進したいと考えております。、  それから、赤潮発生一つの原因といわれております、底にありますヘドロの関係の分布調査だとかそれから生物相との関係とか、そういう関係につきましてもふやしまして、事務費も含めて総計で六億二千七百万円を五十五年度計上をいたしております。  そのほか、赤潮による養殖魚介類の被害に対する救済対策といたしましては、従来からやっておりますように、養殖共済における赤潮特約事業によりまして、ハマチとかタイ等による共済の契約をするものに対しまして掛金の補助をいたしております。これは赤潮特約の内容でございますが、それを国と地方公共団体が補助いたしておりまして、これは約六億になります。  それからもう一つ先生の方からお話がありましたホルネリアの解明関係の点でございますけれども、私ども赤潮対策考えます場合に、やはり赤潮が大発生をいたします発生機構を根っこから検討してからやる必要があるということで、環境庁の方と共同で赤潮研究会というのを開催いたしまして、北は北海道から南は鹿児島に至るまでの赤潮に関係のあります先生方にお集まりいただきまして、熱心な検討をいたしているわけでござ  います。その結論を踏まえまして、先ほど環境庁はちょっぴりというお話がございましたが、大規模赤潮の形成及び赤潮被害抑止に関する研究を、赤潮発生機構研究する基本になる経費として位置づけをしてやっていただいているわけでございます。   そのほか、これだけでは十分じゃございませんので、個々のプランクトンの種類ごとにあるいは地域ごとにその生活史と申しますか、それを追求する経費を水産庁が別に項目を立てて補充をしてやっている。  両方相まちまして、赤潮関係の機構の解明を早急にやっていこうというやり方をしておるということでございます。
  23. 馬場道夫

    馬場政府委員 ここで私から赤潮関係の予算について、最初に全体のごく概略的なことを申し上げたいと思いますけれども、五十五年度の赤潮対策予算につきましては、各省庁におきまして計上しているわけでございますが、一つ赤潮発生機構解明がございます。これは主として環境庁を中心にいろいろやっているわけでございます。二番目に赤潮発生防止なり被害防止対策あるいは三番目に赤潮被害救済対策、これは水産庁がどちらかといいますと中心でございますけれども、そういうような予算を計上いたしておりまして、全体で約十三億八千万円になっております。なお、赤潮と非常に密接な関連を有します富栄養化対策を含めますと約二十四億円ということに相なっております。そのうちの六億がただいま御説明ございました漁業共済によります赤潮特約の水産庁関係分でございます。そこで、そのうちの環境庁予算でございますが、環境庁予算赤潮を直接対象にいたしたものは約一億四千万でございます。それから富栄養化対策を含めますと約三億四千万ということになるわけでございます。なお、そのほかに各省庁の試験研究機関に行くものでございますけれども環境庁の中で一括計上しておるものがございます。その予算が約九億五千万ということになっております。  そういうようなことで、赤潮対策につきましては鋭意取り組んでいるわけでございまして、環境庁におきましては、先ほど申し上げましたように、主として赤潮発生機構の総合解析を行うということとともに、琵琶湖等の湖沼におきます淡水赤潮対策検討するというようなことで現在鋭意検討いたしておるところでございまして、先ほど水産庁から御説明ございましたように、赤潮研究会を両省共催で開催をしているわけでございまして、発生機構その他の面におきまして、全国の専門家にお集まりいただきまして鋭意検討を進めておりまして、それなりの成果を上げつつある。非常にむずかしい問題でございますから、全体の解明はかなり年月を要すわけでございますが、やはり組織的な研究を始めましてから、それなりの成果を上げつつあるというふうに考えているわけでございます。
  24. 古川雅司

    古川委員 赤潮対策は以上といたしまして、水産庁ありがとうございました。  次に、去る三月十八日本委員会公害健康被害補償法の改正案が可決されました。同二十五日に衆議院の本会議を通ったわけでございます。これに関連して二つほどお伺いをいたします。  一つは、伝えられるところによりますと、日本医師会を中心といたしまして公害医療委員会が開かれたということであります。これは経団連の代表がメンバーになっておりまして、経団連が大気系公害病認定患者をしぼるという方向をとりつつあることはつとに知られているところでありますが、この公害医療委員会、五十三年三月から今回で十三回目と言われております。特に公害健康被害補償制度の問題点についていろいろ意見が述べられたと言われておりますが、一つには、汚染と疾病の因果関係は大気汚染の改善により希薄になっているので、公害医療制度についても他の制度とのバランスを図るべきだという意見が出たと言われております。もう一つは、肺気腫の認定患者のうち喫煙する者や平均寿命を超えた患者に対する補償給付の制度措置を検討すべきだという意見もあわせて議論をされたと言われております。  ここで一つ気になりますことは、環境庁の幹部が御出席になっていらっしゃるわけでございまして、当然オブザーバーとして発言はしていないということでありますが、いわゆる被害者の救済の立場で環境庁から御出席になったということ。これはお招きがあったから出席をされたんだとは思いますけれども、当然オブザーバーであり出席をしていれば、この委員会の意図しているところ、そうした方向性に誘導されるのではないかという懸念を私たち持つわけでございますけれども、この点ひとつ明確に御答弁をいただきたいと思います。  それから、時間の関係でもう一つあわせてお伺いいたします。この法律案が可決されました後、附帯決議がなされました。九項目あるうちの第七項目でございますけれども、「国立水俣病研究センターについては、その機能が十分に発揮されるよう研究者の確保等、早急に体制を整備するとともに、研究成果をふまえて水俣病の治療体制の充実についても検討する」というふうに決議をしたわけでございます。ここで問題になります国立水俣病研究センターでございますが、その現状についていろいろ指摘をされておりまして、完成以来まる二年になるわけでありますけれども、表現は悪いんですが、いわゆる立ちぐされというような実態になっている。会計検査院からも立入検査を受けるような実態であって開店休業というような状態。すでに十三億六千万円を投入していると言われておりますが、今年度の政府予算でも研究費、管理費として三億二千万円が計上されておるわけでございます。何よりも医師とか研究員を集めることが大変であるし、それに絡んでいろいろな複雑な問題が指摘をされているわけでございます、時間の関係で省略をいたしますけれども。この点、この研究センターの性格そのものをこのままにしておいて果たして立ち直らせることができるのかどうか、正常な研究成果等を期待できるのかどうかという点でございまして、本委員会における附帯決議の内容に盛り込まれました「治療体制の充実」ということに重点を移すとすれば、これは当然環境庁設置法の九条の二、これに対して何らかの追加規定をしなければならない、そういうことからまず手始めにしなければならないと私思うわけでございますが、そういった点も含めて、このセンターを将来どうするのか、どのようにしようと環境庁はお考えになっていらっしゃるのか。非常に長くなりましたけれども、以上二問よろしくお願いします。
  25. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  公害健康被害補償法の被認定者に対する医療は、率直に申し上げまして日本医師会の協力をいただきまして今日まで至っておる次第でございます。先生がいろいろお述べになりましたとおり、日本医師会の中に公害医療委員会というものがございまして、医療担当者の立場から公害医療の問題につきましていろいろと検討がなされておると聞いておる次第でございます。環境庁に対しましてもオブザーバーとして出席を求めてまいったような次第でございまして、環境庁といたしましても、制度の主管者といたしましていろいろな御議論もひとつ承っておきたい、かような意味におきまして要請にこたえて出席をいたしておるような次第でございます。環境庁といたしましてはオブザーバーというような立場でもございますので、正式な発言等は行っておらないような次第でございます。
  26. 本田正

    ○本田政府委員 水俣病研究センターにつきまして、確かに先生指摘のように発足いたしまして、まあ正式に発足いたしましたのは五十三年十月でございますが、実質的に発足いたしましたのは、開所式をいたしましたのは去年の七月でございました。御指摘のようないろいろな事情がございまして、所期の目的でございますところの臨床部、基礎研究部あるいは疫学研究部といったものの研究が相そろって発足できるような体制にいまだになってないのはまことに残念に思っております。ただ、基礎研究部におきましては、研究の幾つかはすでに着手されているわけでございます。そういうことがございましたので、去年の七月に開所式を行ったわけでございます。  附帯決議で御指摘いただきましたことは、私どもは当然附帯決議を尊重いたしまして、これからも引き続き検討いたしたいと存じます。しかしながら、当面は、第一期計画とでも申しますか、水俣病に関するところの調査研究、その中でも治療方法の開発、非常にむずかしい神経が冒される疾病でございますので、何とかそういった研究を通じましていい方法が見つかれば、それを地域医師会に還元する、そういった方法によりまして、第一期の目標であるところの調査研究ということに主眼を置きたい、こういうことでおいおい努力を続けているところでございます。申し上げるまでもなく、当委員会におきましてつけていただきました附帯決議については、今後とも尊重いたしまして検討を続けていきたいと存じております。
  27. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  国会は国権の最高機関でございまして、委員会におきまして御決定されました附帯決議に対しましては、その趣旨を体しましてその実現に最善の努力をいたしてまいりたいと思います。
  28. 古川雅司

    古川委員 ただいまお伺いした点について重ねてお伺いするわけでございますが、日本医師会のこの公害医療委員会の方にはオブザーバーとして出席したのであって、発言をしていないということだけでございましたが、さっき私は、その中で議論をされた問題の中で二点取り上げて申し上げたわけでございますけれども、この点は聞いて帰ってきた、聞きおいたというだけなのか、あるいはその点についてこれから環境庁内部で検討を進めるという方向になっているのか、その点は確認をしておきたいと思います。一つは、他の制度とのバランスを図るべきだという点、もう一つは、肺気腫認定患者のうちの補償給付の制限措置を検討すべきだという点、その点どうとらえていらっしゃるのか、確認をいたしておきます。  それから、水俣病研究センターの方につきましては、これは何よりも人集めが非常に大きな問題になっておるわけでございまして、現在でさえ定員十三のところ所長以下四名であり、今回予算措置によって定員十三から二十三にふやしておりますけれども、これは一体充足できるのかどうか。特にこれまで水俣病に関する研究を熊本大に頼ってきた。ところが熊本大自身が水俣離れを起こしておるというようなことが伝えられております。そういう人的な面でまず確保がむずかしいのじゃないか。さらに、その研究センターを設置する以前の議論として、初めから水俣病にまじめに取り組んできた、そして治療に当たってきた、いわゆる水俣市立病院の拡充に国庫補助をすべきだったという議論を抑えて、このセンターの設置に踏み切ったという経緯もございますので、そういうことを考えますと、やはり附帯決議で示されたように、これは治療体制に重点を置くように、重点を移していくようにこれから考えなければいけないのじゃないかという点を申し上げたわけでございまして、その点ちょっと不明確でございましたので、重ねでお伺いいたします。
  29. 本田正

    ○本田政府委員 日本医師会の公害医療委員会につきましては、これは御指摘のように五十三年から発足いたしておりまして、現在まで十三回行われております。その都度、長官からお答え申し上げましたように、オブザーバーとして私なり担当課長あるいはその担当の補佐が折に触れて出していただいておるわけでございます。  いろいろな意見があるというよりも、従来の議論を見てみますと、議論の内容はこれは向こうさんのことですから詳しくは申し上げられぬと思いますけれども、たとえば各地域医師会の代表から地域医師会ごとに行われたいろいろな健康調査なり公害に関する調査、そういったものを提出なさって、それの説明にいままでずっとかかっているようなことです。その間に、いま御指摘のような意見もいろいろ出たことは確かです。しかし、それについて私どもは見解を求められておりません。私どもがオブザーバーとして見解を求められているのは、大気の汚染状況が最近どのように推移しているのかとか、あるいは全国的な患者発生状況はどうであるかということをときたま御質問いただきまして、指名されてお答えする、そういったことで、議論の方向はまだまだ資料の分析といった段階だと私は解しております。  それから、研究センターにつきましては、当初性格につきましていろいろ問題があったために、設立委員会をつくっていただきまして、そこでいろんな学者の先生方を交えて検討が進められ、そして現在のいわゆる組織、規模というものがくみ上げられたわけでございます。御指摘のあったようなお金をいままでに投入いたしまして研究センターをつくったわけでございます。その際の検討委員会の中でも、治療というものは、やはり患者に密接な関係のある主治医、地域の医師会と申しますか、そういった者に任せるべきであって、研究センターにおいては、地域医師会の御推薦によって患者さん方を研究センターにお招きして、一日通所と申しますが、そこでリハビリテーション等を含めますところの治療といいますか、そういったことを行いながら治療研究の開発を行うといったことで発足いたしたわけでございます。附帯決議の御指摘にございますように、治療を中心にやるという意味は、いろいろ意味があると思いますけれども長官からも申し上げましたように、現在全く医師がおりませんので、治療はできておりませんけれども、リハビリテーションという機能は現在もう機能としてあるわけでございます。それを今後どういうふうにするかということにつきましては、鋭意検討いたしたいと存じております。
  30. 古川雅司

    古川委員 また今後もいろいろと伺っていきたいと思います。きょうはこの程度で打ち切らせていただきます。  最後に、環境アセスメント法案について若干お伺いをいたします。  今国会では、予算委員会において大平総理が法案提出に最大限の努力をするという答弁をされて以来、いろいろな経緯がございました。長官もそれこそ死にもの狂いで法案提出に向かって努力をしていらっしゃるということはよく理解できるわけでございますし、十分評価はさせていただきたいと思いますけれども、伝えられておりますことは、環境庁考え方がそれこそ日に日に後退をしているということでございまして、これは私たち非常に大きな気がかりでございます。あくまでも中公審の答申から一歩も後退してほしくないという願いを持って、私たちは推移を見守っているわけでございますが、去る三月二十八日に関係閣僚会議で法案の要綱はおまとめになりました。その段階で、すでに本委員会でも指摘をされましたとおり、いろいろ問題点が出てきているわけでございます。ただ私は、その要綱自体にも非常に微妙な要素が多分に含まれていると思います。いわばガラス細工みたいなものであって、下手にいじったのでは壊れてしまうということで、極力静かに見守らせていただいてまいりました。  けさの報道によりますと、昨十七日夜、担当省庁の局長会議をお聞きになって、それぞれ省庁間の最終的な詰めが行われたそうでございますが、ここでも、一々申し上げませんけれども、心配されておりましたかなり内容の後退がうかがえるわけでございまして、特に法案提出については、一体これはできるのかどうか。長官がそれこそ長官の立場をかけて、全力をかけて取り組んでいらしたにしては、非常に先行きの見通しも危ういという感を深くするわけであります。この点いかがでございましょう。  特に、私が指摘申し上げたいのは、こうした各省庁との内容の調整の中で、非常に環境庁が押し込まれて、内容を後退させているということは、これは関係住民団体やあるいは私どもから、そんなんじゃだめじゃないか、そんな内容じゃない方がいい、そんな法案は出さない方がいい、あるいは乱開発に対する免罪符を与えるもの以外の何物でもないじゃないか、そういう声を出さして、それを一つのかっこうの材料にして法案の提出を断念する方向に持っていこうとしている意図があるのじゃないかというふうにさえ私たち考えているわけでございますが、その点踏まえて、ひとつ現状の御説明、御報告をいただきたいと思います。
  31. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘にもございましたとおり、三月二十八日に閣僚協におきまして要綱を御決定いただき、続いて関係各省におきまして鋭意昨日まで努力をしてまいりました。不眠不休と申しましょうか、おかげさまで各省ともにそれぞれいろいろな意見等もございますが、大変な御努力をいただきまして、最終的に二、三の点について未調整となった問題がございまして、そこでけさの閣僚会議におきましてその点についていろいろ話し合いました結果、本日の閣僚協におきましては一応認めることに相なったような次第でございます。細部につきましては、法制局における法的な詰めもございますので、関係各省との間にいま作業が進められておるような次第でございます。  私といたしましては、従来委員会におきまして御答弁申し上げておりますとおり、今回何といたしましても五回目でございますし、昨年の四月に中公審から一日も早く法制度化すべきであるという答申もいただいております。また全国各自治体等からも、国において早く法制度化してもらいたいという八〇%以上の自治体からの強い要請も受けておりますし、さきの自民党と三党との話し合い等も踏まえまして、環境影響評価法案の原案を得ましたならば、自由民主党との折衝に入りまして、一日も早く国会に法案として提出をさしていただくべく最大限の努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  32. 古川雅司

    古川委員 私どもは、環境庁がいま鋭意検討していらっしゃるその法案の内容については、伝えられているところを通して、いろいろ指摘したい点もあるし、意見も持っております。あえてそれに私たち触れておりません。ということは、何よりもまず法案を提出していただきたい。そこで大いに議論をさしていただきたい。修正という手続もあるのだし、また附帯決議ということで私たちの今後への期待をそこに集めることもできます。何よりも今国会において流産をさせるということは、これはもうこの法案の提出あるいは成立を非常に遠のかせるという懸念を私たち持っているわけでございまして、何よりもひとつ初志を貫徹していただいて法案の提出に踏み切っていただきたい。  私たちはオール・オア・ナッシングという立場はとりたくないと思います。したがって、もう一度先ほど申し上げた点を確認することになるわけでございますけれども、内容の後退、これは決して意図的に環境庁が後退を続けているとは私たちは考えたくありませんけれども、政府案の欠陥であるとか後退を必要以上に攻撃をするということによって、法案の提出そのものをつぶすという、それをねらっている通産省サイドとかあるいは財界サイドにかっこうの反撃材料を与えるということになるのじゃないか、この点を一番心配しているわけでございまして、どういう事態があっても、これは法案提出が、時期的にも非常に迫ってまいりまして、その点も問題でありますけれども、できるのでありましょうか、きょうはひとつ明言をいただきたいと思います。  と申しますのは、これは最初にも申し上げましたとおり、総理みずからが最大限の努力をするという国会答弁をしているわけでございますし、長官みずからも繰り返し繰り返し最大限の努力をすると訴えてきておられるわけでございます。残るところは自民党内部の調整、自民党の環境部会の説得ということだけになるでありましょうけれども、総理の意思、環境庁長官の意思も無視して、自民党のこの環境部会の意思、もしその意思に従って法案提出を断念するということになると、私たちは現政府、また政府・自民党をどう理解すればいいのか、その点も含めてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  33. 土屋義彦

    土屋国務大臣 私は、今日まで各委員会におきまして、御質問の都度、環境庁長官といたしまして、この法律の国会提出に最大限の努力をいたしますということを御答弁を申し上げておるのでございますが、幸い官房長官がもう本当に真剣に国会提出に対しまして力を入れていただいておりまして、内閣官房長官、私ども、一体となって、原案ができましたならば、党の了承を一日も早く得まして国会へ出さしていただくべく最大限の努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  34. 古川雅司

    古川委員 このアセスメント法案、現在は環境庁検討していらっしゃる内容に従うわけでございますが、これは政府案として国会提出を断念するということになりますと、残された障害は自民党の意思というふうに私たち判断してもよろしいでしょうか。
  35. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  いま断念するとかなんとかということは毛頭考えておりません。もう国会へ提出いたすべく最大限の努力をいたします。
  36. 古川雅司

    古川委員 長官の意思はよくわかります。それでもなおかつ今国会で提出ができなかったという結果に陥った場合は、私たちは、自民党が長官に対してそのような判断をさせたと理解いたしますが、よろしいでしょうか。
  37. 土屋義彦

    土屋国務大臣 重ねて申し上げますが、私といたしましては、もう最大限の努力をいたしますので、御理解賜りたいと思います。
  38. 古川雅司

    古川委員 四月もだんだん迫ってまいります。連休の時期に入ります。いつまでを目標にしていらっしゃいますか。
  39. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  泣き言を言うわけじゃございませんけれど、なかなか各省庁間におきましてもいろんな意見がございまして、まあきょうここまで来るまでも大変だったのでございますが、私といたしましては、連休前に何とかひとつ国会に提出をさしていただきたい、かように考えており、また最大限の努力もいたしてまいりたい、かように考えております。
  40. 古川雅司

    古川委員 最後に、金子局長にお伺いいたしますが、私たちは、アセスメント法案に関する報道を読むたびに、一歩一歩後退しているような印象を受けているわけでございます。最初、先ほど申し上げました、昨日行われた担当省庁局長会議における取りまとめの結果、ここでも数項目にわたって、これはまた後退のまま引きずられるなという印象を受けたわけでございますが、一々内容を申し上げませんけれども、法案提出のためにはここまで後退を認めなきゃならないのか、後退を許さなきゃならないのか、非常に大変だと思いますけれども、その点ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  41. 金子太郎

    ○金子政府委員 後退と理解されるかどうかは皆様方の御判断でございますけれども、私といたしましては、二年前に発表されました第一次の原案及び昨年の四月にちょうだいいたしました中公審の答申に比べて、現在取りまとめ中の案は、プラス・マイナスいろいろございますが、結論的にはプラスの方が大きい。たとえば昨年までの幹事会で意見の一致を見ることができませんで、けさほどの閣僚会議で決めていただきました項目について見ていただきますと、一つは、当初からアセスメント法案の対象とするものは典型七公害であるということでやってきたわけでございますが、それに加えて日照障害地下水の枯渇あるいは電波障害、文化財保護、こういうものをあわせてこの法律の手続に乗せることはできないか、これが大きな問題でございまして、これは一歩進めようという問題がうまく調整ができなかった。それは残念ながらけさほどの閣僚協の御決定で、今後の検討にまついうことになりましたけれども、これは私は後退と思っておりません。  それから二つ目は、公告、縦覧の手続は従来事業者がやるというたてまえでまいりましたけれども、関係省庁の御寛容にいわば頼りまして、知事さんにやっていただくというように改めていただく。その点につきましては、閣僚会議でそのようにけさ決めていただきましたので、これは法定力というものは非常に高まった、むしろ改善されたものだと思います。  それから、関係地域の決定でございますが、この関係地域の決定も、今日までの案では、事業者が知事さんと相談して決めることになっておりましたが、これも関係省庁の御理解を得てひっくり返しまして、知事さんが事業者とも相談して最終的には知事さんが決める、こういうふうにしていただきましたから、いわゆる法律的な安定力は非常に高まった、このように考えます。  もう一つ、公聴会の規定を入れるかどうかについても、きのうまでは決まらなかったのですが、本日の閣僚会議で入れるということにしていただきました。これはことしの初めまでの案にもございませんでしたし、中公審の答申にもなかった点でございます。  以上でございます。
  42. 古川雅司

    古川委員 お約束の時間が参りましたので、これで終わりますが、最後長官、けさほどの関係閣僚会議は事実上これが最終的なものであったというふうに伝えられておりますが、けさほどの閣僚会議がこれは最後でございますか。その点を確認いたしまして、質問を終わります。
  43. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  さようでございます。
  44. 古川雅司

    古川委員 終わります。
  45. 河野正

    河野委員長 中井洽君。
  46. 中井洽

    ○中井委員 最初に、ただいまの公明党の古川委員と同じく、アセスメント法案について幾つかお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、私自身は環境庁長官を初めとする各位の今日までの法案提出のためのいろいろな努力に対しまして、心から敬意を表したいと思います。また今後とも一層御努力をお願いを申し上げたい、このように考えるわけでございます。  いまの議論ですでに明らかになりましたように、本日朝、最終的な関係閣僚会議が開かれて、これからいろいろな手続、法案提出に向かっての最終的な手続をとられるようでありますが、具体的にはあと政府内あるいは党内のどういう手続が残っておられるのか、この点をお尋ねをいたします。
  47. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  閣僚協におきましては、大筋につきまして合意に達しましたので、今後個々の法的な内容の詰めを法制局を中心にして行いまして、そこで原案なるものができましたならば、自由民主党と相談をいたしまして、まず自由民主党の環境部会、それから政策審議会、それから総務会等々の了承を得て閣議決定、こういう運びになろうかと思います。
  48. 中井洽

    ○中井委員 要綱が過日政府内で決定をしたのがたしか四日ぐらいであったと私は記憶しておるのでありますが、それから第三次の案が出てくるまで十四、五日かかっているわけであります。これから詰められて原案をつくられて、そして調整をされる、こういうことであります。そして一方ではできる限り連休までに法案を提出したい、まあ二十五日であります。官房長どうでございますか、日程的に間に合いますか。先ほど官房長はずうっと提出のためにがんばっておられると言うものですから……。
  49. 金子太郎

    ○金子政府委員 企画調整局長でございますが、現在までのところ法律案原案というものは一応できております。そしてけさほど詰まっていない問題点につきまして決めていただいたということが一つございます。それから残っているいわば事務的に詰めるべき問題はきょうじゅうにも詰めてしまいたいと考えております。そして来週早々には正式な政府原案というものを固めたいと思っております。  その政府原案は、はなはだ申しわけないのですが、法制的な検討は全部は終わっていないという状態でございますが、なおかつ、法制的検討に基づく字句の修正があるだけのものでございますから、その政府原案に基づいて来週の初めから精力的に与党との調整に入っていただく、こういうスケジュールになっております。したがいまして、その与党との調整の時間等にもよりますが、調整済み次第閣議決定をしていただけるものと期待いたしております。
  50. 中井洽

    ○中井委員 詰まっていない点をけさ詰めた、こういうことであります。先ほど大臣のお答えにも、二、三の相違点があった、それを調整した、こういうお答えがございました。それは先ほど金子局長が御答弁になった点でございますか。
  51. 金子太郎

    ○金子政府委員 そのとおりでございます。
  52. 中井洽

    ○中井委員 それらの点は私どもの手元にもお配りをいただきました過日決定をした要綱とは違う点が幾つかあると思うのであります。それをもう一度御説明をいただきたいと思います。
  53. 金子太郎

    ○金子政府委員 お答えいたします。  公害の定義を広げる問題につきましては、広げたいということで努力をいたしておりましたけれども、先般の要綱を決めていただいたときにはまだ詰まっておりませんでしたので、典型七公害だけということで要綱を決めさしていただいておりますから、その点は変わりはございません。  それから、第二点の公告、縦覧、それから関係地域の決定につきましては、要綱におきまして事業者が行うあるいは事業者が決めるということになっておりましたが、その点は要綱決定を改めていただきまして、知事さんが決めるというふうにしていただいたわけでございます。そこが違う点でございまして、公聴会の点は先般の要綱とほぼ同じということでございます。     〔委員長退席、島田委員長代理着席〕
  54. 中井洽

    ○中井委員 五回目の提出ができるかどうかの攻防でありますから、新聞、マスコミあるいはいろいろなサイドから後退だとかまあまあいろいろな議論がなされております。先ほどの古川さんと同じく、私どもも要綱だけを取り上げても議論したい点がたくさんあるわけであります。しかし、何といってもお出しをいただくことがまず第一だと私ども考えて、議論を一切行わずに早くお出しをいただきたいというお願いをしてまいりました。そしてそういう形でようやくまとまった要綱をさらに詰めて、加えて、最終段階にかかってまいりました。  私は、過日もこの委員会局長に、どの点とどの点とどの点が削られたり曲がったら出さない方がいい、これだけは譲れない線があるのだとお考えか、こういうお尋ねをして、三つほどお挙げをいただいたように思うのであります。そういった点が最終的ないまつくられておる案で曲げられていないかということ、それから、こんな段階でお尋ねするのは酷かもしれませんが、いまの案を局長自身あるいは長官自身はどのように評価なさっておるか、率直なところをお伺いしたいと思います。
  55. 金子太郎

    ○金子政府委員 私どもといたしましては、二年前に発表されております原案、第一次案とも申しますが、それに比べ、あるいは三月二十八日に決めていただきました要綱に比べまして、いまつくりつつあります第四次案は、これは恐らく法律案原案という名前になると思いますが、プラス・マイナスいろいろございましょうが、プラス・マイナスいたしますとプラスの方に出るというふうに確信をいたしております。  たとえば、アセスメントの結果について意見を言う問題にいたしましても、原案においては、準備書の段階で環境庁長官が主務大臣、事業を行う大臣でございますが、主務大臣に意見を言うにとどまりまして、その主務大臣がさらに事業者に対してそのとおり言ってくれるかどうかの保証はなかった、かつそれ以上法的にアセスメントについて環境庁長官が関与することはなかったわけでございますが、これが要綱及び今回の法律案原案においては、でき上がった評価書について環境庁長官が意見を述べる、それは必要に応じ述べるわけでございますから、必要な場合は必ず言えるわけでございまして、この結果、事業者は評価書をつくる段階では環境庁長官指摘をされないように良心的につくらざるを得ないという仕掛けになっていると思います。  それから、環境庁長官が意見を述べる問題につきましても、事業官庁の側においては政令等で、言う条件を厳しくつけて、言えないケースをつくりたいという考え方でおられたわけでございますけれども、こういう法律をつくって、環境庁長官が必要と判断したときに意見を言えないのはおかしいということで、今日までがんばってきたわけであります。時間がかかったのは、そういうようなことが幾つかあったからでございますが、幸いにして、そこは私ども考えどおり、また中公審の考えどおりに決めていただいた、こういうことでございます。
  56. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  私は、金子局長に対しましても、折衝の過程において、環境庁長官として意見が述べられないような法案であったならば出さない方がいい、そこをしかと心にとめて折衝してもらいたいということを繰り返し要請してまいりましたところ、おかげさまで、一〇〇%とは申し上げませんが、先ほど金子局長から御答弁がございましたような線に沿って了承が得られたようなわけでございます。中公審の線にも大体沿っておるものと考えておる次第であります。
  57. 中井洽

    ○中井委員 各人各人あるいは各党各党それぞれアセスメント法案に対する一つの期待やイメージがいろいろあって、いろいろな議論が出ているわけでありますが、結局私ども、要綱等いろいろ漏れ聞いて、大体こんなものじゃないかという判断をいたしておるのですけれども、こういう形の法案だという理解でいいかどうか、これだけを御確認申し上げたいと思います。  前のときに金子さんから御答弁いただいたように、事業の実施の前の開発段階で環境への影響をよく吟味して、環境に対する悪い影響があるところはそれを修正をさせていく、そしていま政府各機関がばらばらにいろいろやっているけれども、しかし、それを環境庁一つにまとめて、法案として統一して、環境庁公害に対する主管の省庁として意見を言っていくのだ、そういう法案をつくるのだという理解でよろしゅうございますか。
  58. 金子太郎

    ○金子政府委員 この法律で環境庁長官が出てくるところが二カ所ございます。  一つは、基本的事項をつくること、また主務大臣が基本的事項に基づいて、事業ごとに、事業特性に応じて指針をつくる際に協議を受けることでございまして、その基本的事項及び指針の作成を通じて、事業ごとにバランスのとれた、またかなり確度の高いアセスメントが行えるようになる、これが一つのメリットであると考えております。  それから第二点は、必要に応じ環境庁長官が評価書について意見を述べるということは非常な重みを持つ。ただいま中井委員から言われましたように、アセスメントはいわば許可前手続あるいは事業決定前手続でございますが、そのアセスメントの成果が、事業決定または許認可等の行政処分になるべく的確に反映されるような仕組みがこれでできる。もちろん、より理想的な立場から言えば、いろいろつけ加えたいと思うものは私どもの方でもございますけれども、従来ややともすれば閣議了解だけで、内容について精粗まちまちであり不確実な点もかなりあったアセスメントが、この制度が礁立されればかなり確実に行われるようになることを期待している次第でございます。
  59. 中井洽

    ○中井委員 冒頭申し上げましたように、私どもとしてもこの法案が今国会にぜひ提出されることを強く望んでいるわけでございます。いろいろな議論あるいはいろいろな御苦労がこれから出てまいろうと思いますが、期日も迫っております。要綱ができたということは、これまでの過程を考えますと、それだけでも大変なことであったと思いますし、またおおよその原案ができ上がったことも、私は大変な御努力であったとこれも評価をいたします。しかし、今国会が絶好のチャンスでもあろうか、このようにも野党の立場としても判断をいたします。そういった観点からも、大臣からぜひこの国会に間に合うように法案を提出する最大の努力をするのだ、こういうお約束をもう一度していただきますようお願いをいたします。
  60. 土屋義彦

    土屋国務大臣 これから環境庁職員一体となって、国会に法律として提出でき得ますように最大限の努力をいたしますとともに、党の関係者の皆様方の御理解を得るためにも、私自身が先頭に立って回って最大限の努力をしてまいりたいと思います。
  61. 中井洽

    ○中井委員 次に移ります。  環境庁にお尋ねをいたしますが、昭和四十七年三月に環境庁の自然保護局長と通産省の公益事業局長、この二つ局長の間で結ばれました「国立公園及び国定公園内における地熱発電の開発に関する了解事項」というのがございます。この了解事項は現在も生きておると理解してよろしゅうございますか。
  62. 藤森昭一

    ○藤森政府委員 そのとおりでございます。
  63. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、この了解事項は二つの項目から成っておりまして、一項目は六地点にしぼるのだ、二項目は「当分の間」これ以外においては「新規の調査工事及び開発を推進しないものとする。」こうなっておるわけであります。しかし、承りますと、この六地点以外でも通産あるいは環境庁の間で地熱発電あるいは地熱発電の開発に関して相談が行われているように聞いておるわけでありますが、事実ですか。
  64. 藤森昭一

    ○藤森政府委員 お答え申します。  代替エネルギー開発の一分野といたしまして地熱開発が進められようとしているという事態は、私どもよく認識をいたしております。この線に沿いまして通産省が計画を立てまして、これに基づいて年次的に計画を進めようとされている事実も私ども承知をいたしております。  しかし、この計画そのものは、もちろん私ども環境庁が関与をして御相談にあずかって決めたものではございません。したがって、これからの開発につきましては、ただいまお尋ねのございました覚書のラインと、それから昨年十二月に自然環境保全審議会が提出されました御意見、これは国立、国定公園内における地熱開発の計画地の選定に当たっては、自然環境保全上重要な地域を避けることを基本とすべし、こういう枠組みの中で、個別に通産省のお話を伺いながら対処をしていくということでございます。しかし、そのラインに沿いまして、いま具体的に発電所立地を計画するということでお話を伺っているわけではございません。
  65. 中井洽

    ○中井委員 通産省にお尋ねをいたしますが、代替エネルギーの一つの部門を受け持つ地熱発電の調査、開発ということですが、この了解事項に載っております六カ所以外に具体的に調査を進めよう、あるいは調査をやりたいと考えている地域が何カ所かございますか。
  66. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 お答えいたします。  昭和六十年までに開発目標として公園内六カ所、約三十万キロワット、公園外九カ所、四十五万ないし五十五万キロワットの地熱開発計画予定しております。  そのうちで、現在公園内の六カ所について予定しておりますもの、既設発電所の増設が二カ所、それから普通地域の開発一カ所、その他三カ所となってございます。このうち現在三カ所について環境庁と御相談をして調整を了したものと考えております。残り三カ所、うち一カ所については現在調整中でございます。その他については環境庁との調整はまだ行われておりません。各地域とも有望な地域でございますので、環境庁とも十分な調整の上、特に環境保全にも留意して、私どもとしては代替エネルギーの開発の早期実現に努めてまいりたいと思っております。  以上でございます。
  67. 中井洽

    ○中井委員 当分の間やらないということですが、やるやらないは別にして、何カ所かすでに話し合いが行われているということであります。これはいま通産省からお答えがあったように、代替エネルギーの開発が日本の国にとって急務である、そういう大きな理由もあると思いますが、また技術的に、地熱発電の技術環境に与える影響を少なくしてきておるという進歩の跡がはっきりしているわけですか。その点は環境庁、どうでございますか。
  68. 藤森昭一

    ○藤森政府委員 ただいまのお尋ねの件でございますが、現在地熱開発は六カ所で行われているわけでございまして、これに関連して、技術開発の面でいろいろな改善なり進歩が行われているという事実は、私どもも十分承知をいたしております。  しかしながら、地熱発電所が自然公園内において行われた場合の一番の問題点というのは、何といいましてもこの発電所が持っております特性、すなわち発電施設はもちろんでございますけれども調査井、生産井、還元井というようなものをたくさん掘削をする、パイプラインを相当長く敷設をする、それから発電の量のわりあいには土地改変の面積が非常に大きいというふうな問題とか、何よりもそうした各種の工作物の複合体が自然景観というものとなかなかなじみにくい性質のものであるというふうな点がございます。こうしたものに含めまして、ただいまお話のございましたような各種の環境へのダメージというものもございます。技術的にカバーできるものもありますし、まだ開発上のものもあろうと思いますが、そうしたものがございますので、私どもとしましては、この地熱発電所につきましては、もちろんその趣旨は十分了解しておりますけれども、自然環境保全上重要な地域は避ける、この考え方は、開発する場合にはぜひとってもらわなければならないことであるというふうに考えておるわけでございます。
  69. 中井洽

    ○中井委員 通産省にお尋ねいたします。  私は技術的なことは余りわからないものでありますが、たとえば地熱発電に有望な地点がある、こういたしますと、きょうびは三千メートルくらい掘るらしゅうございますが、そういう広い地域の中でそこ一点じゃないとだめだ――たとえば境庁が、ここは景観をどうしても損ねるから少しずらせと言ったときに、そういう形でずらして所期の発電の目的が達成できるものですか。
  70. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 お答えいたします。  いま環境庁からお話がございましたように、地熱発電を代替エネルギーとして、貴重な国産のエネルギーとして位置づけてやってまいります場合にも、環境の問題は重要な問題でございます。私どもとしては、この環境保全対策あるいは技術開発に鋭意努力をしておるところでございますけれども、御指摘の位置をずらすということについてでございますが、――その前に一点申し上げますのは、特に地熱について改変面積が比較的大きくなるということが問題になりまして、これについては極力発電所を基地化する。要するに、一つの基地からいろいろな方向に傾斜をつけて傾斜掘りをしているあるいは曲げ掘りをするという形で、これも最近開発された技術でございますが、そういったことで少しでも景観の地を避けるというような方向あるいは景観地へのインパクトを縮小するというような方向で対応してございます。  二つ目の先生の御質問、ポイントを避けることができるかということに関してでございますけれども、これは個別のケースでないとちょっと申し上げにくいのでございますが、一般議論として言いますと、ペリーポイントというのがあるわけでございますけれども、それに当たる範囲といいますか、そのポイントをずらさない、技術的に外さない範囲において山の陰に移すとか谷間に移していくというような形での立地は可能かと思います。  以上でございます。
  71. 中井洽

    ○中井委員 もう一つお尋ねをいたしますが、先ほど、六十年までに公園内で三十万キロワットですか、自然公園外で四十五万キロぐらい、こういうことであります。現在二十万ぐらいだと私は思うのでありますが、六十年までに、いわゆる「長期エネルギー需給暫定見通し」の中では何百万キロワットを地熱発電に日本のエネルギー分担を求めるという形になっているのですか。
  72. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 現在の長期需給暫定見通しによりますれば、昭和六十年度百万キロワット、昭和六十五年度三百五十万キロワット、昭和七十年度七百万キロワットを予定してございます。
  73. 中井洽

    ○中井委員 ことしから先ほど通産省がおっしゃった地熱発電所を建設することを許可されたとして、六十年には発電が可能でありますか。調査をして、建て始めて発電ができるまで大体何年ぐらいかかるのですか。
  74. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 これもその地点によりまして、非常に地表徴候の強いところ、簡単にいいますと調査が簡単なところとか、非常に深部にわたって調査に時間がかかるところがございまして、一概に申し上げられませんが、大体六年から八年というオーダーになるかと思います。
  75. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、現時点では、この六十年の見通しというのは地熱に関しては全然見込みがないわけでございますね。
  76. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 六十年度百万キロワットについての御質問かと思うのでございますが、正直申し上げまして開発までに非常に努力を要するかと思います。ただ、これは全く不可能というわけではございませんで、これからの加速といいますか、促進にかかっているということは言えると思います。
  77. 中井洽

    ○中井委員 大臣にお尋ねをいたします。  いま国会の方に代替エネルギーの新機構の法案がかかっております。もしこの法案が通ったといたしますと、年間千数百億円のお金を使ってこれからずっと、しかも電源開発の促進税を八円五十銭から三十円まで上げて財源として代替エネルギーの開発をやろう、こういうことであります。その代替エネルギーの開発目標というのは、いま出されておる「長期エネルギー需給暫定見通し」、これが基礎になるわけであります。ところが、これから先の六十年度をとりましても、たとえば地熱一つをとっても、いま通産省はああいうお答えであったけれども、現実にはもうできないわけです。六年も七年もかかるのに、いま昭和五十五年ですから、できないわけです。また、たとえば海外炭に頼る、こういうことがありますが、海外炭を一億百万トン輸入するのだ、こうなっておるわけであります。しかし、六十年に世界の石炭の貿易量は幾らだと言ったら二億トンなんです。日本は半分入れられるか、絶対私は入れられないと思うのであります。それから原子力三千万キロワット、こうなっていますが、せいぜいできて二千七百万キロあるいはもっと下回るのじゃないか。せっかくそういう形で、二回目のエネルギー危機を迎えて、政府は今度こそはエネルギー元年だということで新しい法案をつくり、新しい機構までつくってこういう見通しをやろうとするのだけれども、初めから狂おうとしておる。それを何も環境庁長官に文句を言っておるわけじゃないのです。  そういう中で、国内のエネルギーとして、また比較的公害の少ないエネルギーとして、地熱というのは、非常に少ない部門でありますけれども、重要な役割りを持つわけであります。この地熱の開発がこれから行われようとすればするほど、環境問題との調和をどう図っていくかが一番むずかしいところでございます。この国家的なエネルギーの開発という使命、そして自然公園というものを守っていく環境庁との調和をどう守っていこうとお考えか。四十七年のように、当分六カ所だけで、あとやらない、こういう形でぽんとうっちゃったままでは、国家的な使命は達成できない。しかし、むやみやたらと全部許可したのでは、これまた環境庁の使命は達成できない。このところ、どういうふうに話し合いをされようとするのか、そこのところを率直な御意見を承りたいと思います。
  78. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  私も先生の御意見に全く同感でございまして、石油にかわる代替エネルギーの利用の拡大、これは何と申しましても、国を挙げて強力に推進をいたしてまいらねばならぬと思いますが、あわせて、えてして忘れがちな自然環境の保全、これに対しましても十分な配慮をいたさねばならぬ、かように考えておる次第でございます。  地熱発電に対しましても、私は決して否定するわけではございません。近いうちに地熱発電の視察にも行ってこようと思って、いま事務当局に計画を命じておるようなわけでございますが、この地熱発電、先生も御案内と思いますが、地形によって違いますが、五万キロワットの発電をやる場合には一大体後楽園の六、七倍の場所を要するというようなことも聞いておるようなわけでございまして、これをむやみやたらに許可するということになりますと、自然破壊につながりまして、大変なことに相なるようなわけでありますので、先ほど局長の方からも御答弁がございましたが、国立公園、それからまた国定公園等の自然環境保全上重要な地域につきましては、開発を避けるということを基本といたしておるのでございます。先ほど通産省の方からも、いろいろ技術的な面につきましても御答弁がございましたが、地熱発電と自然保護との調整を十分図ってまいりたい、かように考えております。
  79. 中井洽

    ○中井委員 今度できます新エネルギーの機構の法案の中には立地対策室というのがあって、七人ほど人をつけることになっているのです。これは何のための対策室だ、こう言いますと、いろいろと言いますが、結局は私は、地熱発電をやるときのいまおっしゃったような用地の確保等いろいろな問題に対処する要員であろうと考えているわけであります。通産省がやっとこういうことに、まあちょっと遅いような気もするのですけれども、もっと早くから気がついてやってくれればいいわけでありますが、対策を真剣にやろうとしているのも結構なことだと思います。どうぞひとつ十分な話し合いを、この了解事項は了解事項として、先ほど生きておるというお話がございましたけれども、もう一つ次の段階での話し合いというものを進めていただきますようお願いを申し上げておきます。  次の問題に移らせていただきます。  大臣は三月二十四日に記者会見をされて、その席で、環境庁とその出先機関が有燐の合成洗剤を使わないということを決める、あるいは職員のお家にも自粛を求める、こういう決定をなさいました。また各省庁においてもそれにどうぞ協力してくれということで、かなり新聞等に大きく取り上げられました。それに相前後して、各地の地方公共団体においてもそういう動きが、あるいは決定が続々となされたわけであります。  まず最初にお尋ねしたいのは、環境庁や中央省庁でそういう追放しようということを決められて、その後確実に有燐の合成洗剤の追放というものが実施されておるかどうか、その点をお尋ねをいたします。
  80. 馬場道夫

    馬場政府委員 お答え申し上げます。  三月二十四日に発表し、同時に環境庁内部なりあるいは関係省庁に要請をしたわけでございますが、環境庁関係では、少なくとも関係機関におきましては確実に実行されておるというように考えておりますし、職員にも十分徹底をいたしておるところでございます。  さらに、各省庁に対しましても文書で要請をし、担当官を派遣いたしたわけでございますが、先般、付属機関あるいは出先機関等で非常に大きいような省庁につきましては、集まっていただきまして、そこでいろいろ協力を要請いたしまして、各省とも十分御協力をいただけるというような心証を得ているわけでございます。さらにこれを拡大いたしまして、今後とも徹底を図ってまいりたいと思うわけでございます。一それから、地方公共団体でございますが、これは各地域によりまして、閉鎖性水域の程度の問題等いろいろございますので、それぞれの地域の実情に応じまして、ブロック会議等を開催いたしまして、たとえば東京湾につきましてはきょう午後やるつもりでございますし、伊勢湾は来週、その他湖沼を抱える県とか、そういう同じような性格の県に集まっていただいて、富栄養化対策全般につきまして御説明をし、御協力を得る、その中で合成洗剤の問題につきましてもそれなりの指導をしてまいるというようにいたしておるわけでございます。
  81. 中井洽

    ○中井委員 いま局長のお答えになった来週伊勢湾をやるというのは、例の数値を決めていく会議ですか。それが一つ。それは先ほどのお答えでちょっと気になったものですからお尋ねをしただけであります。  もう一つお尋ねをいたしますが、滋賀県のように条例化あるいは法制化をせずに、環境庁もそういう追放運動に協力をいたしますよ、こういう、悪いことを言えばPRにとどめて、そして合成洗剤というものを正式に追放していかない、その大きな理由はどこにあるわけですか。
  82. 馬場道夫

    馬場政府委員 第一点でございますが、伊勢湾につきましては、本年度予算で伊勢湾の富栄養化の関係の調査をいたして、燐の削減対策を立てることになっております。それにも関連するわけでございますが、その問題が一つと、それから先般発表いたしました富栄養化対策について、関係府県三県、それから名古屋市でございますけれども、そこにお集まりをいただいて、徹底を期するという趣旨でございます。  第二点につきましては、私ども富栄養化対策の充実を期するという意味で、現在、環境中におきます燐の目標レベルを設定するということで、学識経験者に集まっていただいきまして、夏ごろまでに結論を出す予定でございます。行政指導でまずやってまいりたい。その後環境基準なり排水基準等の検討もいたしまして、必要な規制もしなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  そういう形で進みたいと思っているわけでございますが、合成洗剤につきまして全国一律に法制的にこれを規制するということは、立法上非常にむずかしい問題を含んでいるのではなかろうかというように思うわけでございます。燐というものは、全く有害物資であるということではございませんで、やはり環境中にはある程度必要でございます。したがいまして、それを一体どのレベルに設定をするか。それから合成洗剤だけではなくて、いろいろな燐の排出源もあるわけでございますので、そういう中で総合的な対策を立てていくということが必要であろう。したがいまして、合成洗剤だけを法律によって製造を禁止し、あるいは使用を禁止するということは、琵琶湖のような特殊的な条件を抱えているところは別でございますけれども、全国的にやるのは非常にむずかしい問題を含んでいるであろうというふうに考えているわけでございます。
  83. 中井洽

    ○中井委員 しかし、合成洗剤富栄養化一つの原因となっておる、このことについては間違いないとお考えでしょう。
  84. 馬場道夫

    馬場政府委員 富栄養化の最大の基礎的な要因は、燐、窒素等の栄養塩類にあるわけでございまして、このこと自体は間違いのないところでございます。
  85. 中井洽

    ○中井委員 私どもは、本当に、海をきれいにしていくためにいろいろな運動を、あるいはいろいろなことをどんどん進めていけばいいと考えているわけでありますし、各地で起こっております合成洗剤の追放運動にも積極的に賛成をし、その先頭に立ってやっているわけであります。いまの法制化という問題につきましては、かなり議論がありまして、なかなかむずかしいということは十分理解しております。したがって、環境庁がああいう形でしかやれないということもよくわかります。そういう状態であること、なかなか立法がむずかしいということを理由に、洗剤のメーカーのサイドでいろいろなことを言っておる、私どもはこのことを聞いておるわけであります。  特に、四月一日に、長官もお読みいただいたと思うのですが、サンケイ新聞の「直言」という欄に、花王石鹸の社長がかなり勝手なことを言っているわけであります。これをお読みになって、長官としてどういう感想をお持ちになっておるか、率直なところをお尋ねいたします。
  86. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど馬場局長の方からるる御答弁がございましたとおり、富栄養化対策の一環といたしまして、これまでの調査の結果を踏まえて、環境庁といたしましての態度を表明いたしたようなわけでございますが、実は、先般日本石鹸洗剤工業会の会長一行が私のところへ見えましたものですから、そのときも、思いつきやはったりでやったのではなくて、昨年長官を拝命直後、霞ケ浦、それからまた東京湾等々を視察いたし、また事務当局からもいろいろ意見も聞き、その結果打ち出したのであって、一切私の責任でやったのでございますということも明確に私は申し上げたようなわけでございまして、新聞に報道されたような意見は必ずしも当を得たものではない、かように考えておる次第であります。
  87. 中井洽

    ○中井委員 私、これを読んで、環境庁のやったことはもうスタンドプレーで、科学的には何も原因がわかっておらんのだ、合成洗剤を犯人にするのはけしからぬ、環境庁は真の国民の声を聞かずに、「スタンドプレー的な政治や行政が横行することは、一国民としても許せない。」全体の政治のことを考えれば、言うていることもわからぬではありませんが、合成洗剤の追放問題に関しては、業界の態度あるいはこの会社の社長の態度は少しおかしいのじゃないか、私はこのように考えるわけであります。この業界を行政指導なさるのは厚生省ですか通産省ですか、どこか知りませんが、呼んでいただいて十分御指導いただきたいし、同時に合成洗剤の有燐性というものを減らしていく行政指導を強めていただきたい、このことを強くお願いいたします。この点に関して御答弁をいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  88. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  環境庁といたしましては、今日まで通産省並びに石鹸洗剤工業会に対しましても低燐化、無燐化等につき強く要請をしてまいりまして、すでに八%ぐらいまでに低燐化されておるのでございますが、今後先生の御意見等も踏まえまして、強く要請をいたしてまいりたいと思います。
  89. 中井洽

    ○中井委員 ありがとうございました。      ――――◇―――――
  90. 島田琢郎

    ○島田委員長代理 この際、土井たか子君外二名提出の環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案を議題とし、提案理由説明を聴取いたします。土井たか子君。
  91. 土井たか子

    ○土井議員 ただいま議題となりました環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。  われわれ人間は、自然の生態系の一部であり、自然環境との調和なくして生存できないのであります。この厳然たる自然の法則に逆らい、目先の繁栄と便利さを追うならば、いずれは手痛い報復を受けること必定であります。  ところが、わが国におきましては、人間の生存と自然環境との調和を忘れて、自然の浄化能力を無視した高度経済成長政策の遂行を急いだため、不可逆的な自然の破壊と汚染が進行し、日本は世界に類を見ない公害実験国と言われているのであります。  今日の公害環境破壊をこのまま放置し、これまでのように無分別な開発行為が実施されるならば、わが国のような狭隘な国土という環境上の制約のもとでは、人間の生存の基盤が危機にさらされ、現在及び将来の国民がこの国土に生き残ることすら困難な事態に立ち至るのは、時間の問題と言えるのであります。胎児性水俣病の例は、まさに厳しい警告と言えるのであります。一たび進行し始めた環境破壊は、とどまることなく進行し、一たび失われた自然や健康は、今日の人間の英知をもってしても、回復することがきわめて困難であることは事実が証明しているのであります。  かくして、限られた国土の中で、後代の国民の生存をかけ、開発事業規制していくためには、どうしても、開発事業実施前に、自然的、社会的諸条件の分析や、事業実施過程における環境への影響予測、事業完成後の施設の操業や交通事情の変化、人口の移動など将来における環境への影響予測などを、計画段階で多角的、科学的に判断し、環境への悪影響が生ずるおそれがないもののみを許すという方途を講ずることが必要になるの  であります。  他方、開発行政は、本来、国民や住民の利益のためになされるべきものであり、その大方の合意なくして行われることは許すべからざるものであります。しかるに、従来の開発行政は、行政庁が勝手に判断したものを公共性の名のもとに無理やり国民や住民に押しつけるというやり口がまかり通り、開発こそは善であり、これに逆らうことは悪であると強弁してきたのでありますが、その実は、国民や住民の利益など眼中になく、ときには人の生命、健康すら犠牲にして、終局的には開発利益を受ける企業の立場のみを代弁してきたというのが行政庁の開発行政の実態に対する評価であります。また、たまたま、環境アセスメントを行ったとしましても、国民や住民の目の届かないところで、形ばかりの調査を行い、おざなりの評価をしたため、実施後、日ならずして大きな環境汚染が発生し、農漁民の生活や住民の健康を脅かしておりますし、ときには、いわゆる沼津・三島コンビナートの例にも見られますように、政府の権威ある科学者を動員して行われた調査結果が、高等学校の一教師によるじみちな調査でひっくり返ったという実績もありまして、国民の行政不信は抜きがたいものとなっているのが実情であります。  これに加えまして、水俣病の例に見られましたように、企業は有機水銀中毒の発生を実験で知りながら、これを長期にわたって放置しただけでなく、実験結果をも秘密にして自己の責任を否定し続け、ついに大量の生命を失わしめ、今日なお被害発生が引き続き、広範囲にわたる関係住民の生活と健康を不安に陥れているというようなことから、国民の企業に対する不信感も、また根強いものがあるのであります。  このような行政不信、企業不信のもとでは、真に国民のため、住民のために必要な開発事業すら行えなくなっているのが今日の現状でありまして、国民、住民の大方の合意を取りつけつつ、本当の公共性を持った開発事業のみを進めていくことが必要なのであります。そして、このためには、開発事業の事前評価に当たりまして、できる限り、国民、住民が参加できる方途を開き、これによって国民、住民の大方の合意と真の公共性の実現とを期さなければならないのであります。  本法案は、以上のような観点に立ちまして、開発事業実施に先立って、これに伴う環境の汚染と破壊を未然に防止するため、国民、住民をできる限り参加させつつ、また、公開の場で論議をさせつつ、多角的、科学的に環境に対する影響を評価する手続を整備し、その結果に基づいて開発事業実施規制し、現在及び将来の国民の生存と快適な生活を確保しようとするものであります。  以下、本法案の概要につきまして、御説明申し上げます。  まず第一に、この法律案におきまして行おうとする環境影響事前評価とは、開発事業実施前における関係地域の自然的、社会的諸条件の調査、その開発事業実施によって生ずる環境に対する影響の予測、その開発事業実施によって完成した施設もしくは土地及びその土地に設けられると予定されている施設の利用等によって将来生ずる環境に対する影響の予測、その環境に対する悪影響の防止策の効果についての予測等に基づいて、開発事業実施前に、その開発事業の事業計画及びその代替案を多角的に検討して評価することをいうものといたしておりまして、これを経て、開発事業実施の認可、不認可が決定されるわけであります。  第二に、この法律案におきまして、適用対象とされる開発事業とは、工業用地の造成、土地区画整理事業、新住宅市街地開発事業市街地開発事業、新都市基盤整備事業、住宅街区整備事業、流通業務団地造成事業、公有水面の埋め立てまたは干拓、飛行場の設置またはその施設の変更、鉄道、軌道または索道の建設またはこれらの施設の変更、道路または自動車道の新設または改築、林道の開設または改良、廃棄物処理施設の設置またはその施設の変更、下水道の設置または改築、電気工作物の設置または変更、原子炉施設の設置または変更、熱供給施設の設置または変更、石油精製設備の新設、増設または改造、石油パイプラインの設置または変更、ゴルフコース等の建設、河川工事、港湾工事、海岸保全施設の新設または改良、鉱物の試掘または採掘(これには、付属する選鉱または製錬を含みます。)、岩石の採取のほか、環境に悪影響を及ぼすおそれのある事業で中央環境保全委員会規則(以下では、中央委員会規則と略称いたします。)で定めるものをいうものといたしておりまして、これらの実施について環境影響事前評価を行うのであります。  第三に、本法案に基づく規制実施機構でありますが、まず、国には、別に法律で定めるところにより、内閣総理大臣の所轄のもとに両議院の同意を得て任命される委員七人から成る中央環境保全委員会(これは以下では、中央委員会と略称いたします。)を設置し、さらにその機関として、科学者等の学識経験者の中から両議院の同意を得て任命される五十人の審査員から成る中央環境影響審査会(以下では、中央審査会と略称いたします。)を設置することといたしております。  また、都道府県には、国と同様に、それぞれ議会の同意を得て、委員五人から成る地方環境保全委員会(これは以下では、地方委員会と略称いたします。)と審査員三十人から成る地方環境影響審査会一以下では、地方審査会と略称いたします。一とを設置することといたしております。  この中央委員会または地方委員会が、中央審査会または地方審査会による環境影響事前評価の結果に基づく意見を踏まえて、開発事業実施の認可、不認可を決定するわけであります。  なお、中央と地方の事務分担は、環境に対する影響が二都道府県以上にまたがる場会や飛行場、原子炉の設置、変更等や五十ヘクタール以上の工業用地の造成のほか環境に著しい影響があるとして中央委員会規則で指定した開発事業については中央が所管し、その他の開発事業については地方が所管することといたしておりますが、地方はみずから所管する事案を中央に移送する方途も講じております。  第四に、開発事業実施しようとする事業者は、その事業計画またはその代替案について中央委員会または地方委員会(以下、委員会と略称いたします。)の認可を受けなければならないものといたしております。  第五に、委員会によって認可または不認可の処分がなされるまでの手続の概要を述べますと、手続は、大きく分けまして環境影響事前評価のための調査計画の承認の手続と、その調査計画に基づいて事業者が行った調査結果による環境影響事前評価と、開発事業実施についての認可のための手続という、三つの段階に分かれます。  まず、開発事業実施しようとする事業者は、その環境影響事前評価を行うのに必要な資料収集のための調査計画について、委員会の承認を受けなければなりません。  事業者は、調査事項、調査方法、調査期間等について計画を作成し、委員会に承認の申請をし、委員会はこれを審査会に送付します。この送付を受けた審査会は、これを公告し公衆の縦覧に供した上、説明会を開催します。この説明会は、おおむね人口二万人ごとに、少なくとも一回は開き、そこで事業者が事業計画調査計画説明を行います。その説明を聞いた上で、関係住民や環境保全を目的とする団体など開発事業実施等に関し環境保全上の意見を有する者(これらを「関係住民等」と略称いたします)は、審査会に意見を提出することができます。  審査会は、これらを踏まえて公聴会を開き、関係住民等の意見を聞かなければなりません。この公聴会は、やはり人口二万人ごとに少なくとも一回開催し、意見を述べようとする関係住民等には必ず意見陳述の機会を与えるとともに、陳述時間等について不当な制約をしてはならないことといたしております。公聴会がすべて終わった段階で、審査会は調査計画の可否について意見を決定し、これに基づいて委員会が承認をすることになります。  次に、事業者は、この承認を受けた調査計画に基づいて調査実施し、その結果に基づいて環境影響事前評価を行い、これを環境影響事前評価報告書に作成することになります。これで、初めて開発事業実施について認可の申請ができることになります。なお、この事業者の行う調査には、関係住民等の立ち会いも認められております。  認可の申請を受けた委員会はこれを審査会に送付し、審査会は、これを公告し公衆の縦覧に供した上、審査の手続を開始することになります。審査の手続は、期日に、公開して行われ、関係住民等の代表者もこれに出席して、意見陳述、質問、物件提出をすることができることになっております。また、審査会は、この審査手続の中途で、おおむね人口二万人ごとに二回以上公聴会を開き、関係住民等の意見を聞かなければならないことになっております。この場合においても、関係住民等の意見陳述権は保護されることになっております。  以上の手続を経た上で、審査会は、審査の手続を終了し、事業者の事業計画またはその代替案について、環境影響事前評価報告書の記載、みずから行った調査の結果、審査手続中に明らかになった事実と意見及び公聴会における意見を基礎として、みずから環境影響事前評価を行い、認可すべきかどうかの意見を決定し、これを委員会に文書で送付することになります。なお、事業者は、審査の手続の中途で、事業計画の変更を申し出ることも認められております。  審査会の意見書の送付を受けた委員会は、その意見に基づいて、認可、不認可の処分をすることになりますが、良好な環境確保支障が生ずるおそれがあると判断したときは、認可をすることはできないことになっております。  委員会は、認可の処分をするときは、条件を付することができることになっておりますが、この条件につきましては、関係市町村の住民は希望する条件案を住民投票に付することができることになっており、委員会は、この住民投票の結果を配慮して条件を付するわけであります。  なお、ここに述べました調査計画承認の手続及び認可のための手続に要する費用は、すべて事業者の負担とし、その細目は、別に法律で定めることといたしております。  第六に、以上のような手続を経て、認可を受けた後、実施の段階で事業者が事業計画を変更しようとする場合には、第五で述べましたのと同じ手続を経て、事業計画の変更についての認可を受けなければならないことといたしております。  第七に、第五及び第六で述べました手続は、いわゆる適正手続、デュー・プロセス・オブ・ローの要請にこたえるためには必要不可欠のものでありまして、本来は、法律に詳細な規定を設けなくとも、そのように実行されなければならないのでありますが、わが国におきましては、行政も企業も法律で書かない限りは、できるだけめんどうなことを避けようとする風潮が顕著でありまして、この弊害を除去するためには、やむを得ないことと判断したわけであります。したがいまして、このような手続に手続違背がありました場合には、それを理由として、すべての手続が無効となるように不服申し立て及び訴訟の制度を整備することといたし、関係住民等にも訴えの提起を認めることといたしております。  第八に、偽りその他不正な手段によって認可を受けたり、条件違反のあった場合に認可の取り消しがなされることはもちろんのこと、無認可の開発事業や条件違反の開発事業については、委員会は、停止命令、原状回復命令等の命令をすることができることとしております。また、たとえ認可を受けたといたしましても、その後、開発事業実施によって良好な環境確保支障が生じたり、生ずるおそれがあると認めるときは、委員会は、審査会の意見に基づいて、認可の取り消しをしたり、停止命令や原状回復命令等の命令をすることができることといたしております。なお、関係住民等も委員会に対して、このような処分をするよう申し立てることができることといたしております。  第九に、委員会及び審査会は、関係行政機関の長や、地方公共団体の長に対して、資料の提供等の協力を要請できることといたしております。また、国は、この環境影響事前評価の制度の充実のため、試験研究体制の整備、手法の開発、専門技術者の養成等の措置を講じなければならないことといたしております。  以上が本法律案の提案の理由及びその概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  92. 島田琢郎

    ○島田委員長代理 以上で提案理由説明は終わりました。  次回は、来る二十二日火曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十七分散会