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1980-04-08 第91回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月八日(火曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 河野  正君    理事 玉生 孝久君 理事 西田  司君    理事 八田 貞義君 理事 島田 琢郎君    理事 馬場  昇君 理事 古川 雅司君    理事 則武 真一君 理事 中井  洽君       天野 公義君    池田  淳君       丹羽 雄哉君    畑 英次郎君       吹田  愰君    宮下 創平君       土井たか子君    野口 幸一君       竹内 勝彦君    森田 景一君       東中 光雄君    木下敬之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁長官官房         審議官     石川  丘君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁企画調整         局環境保健部長 本田  正君         環境庁自然保護         局長      藤森 昭一君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君  委員外出席者         建設省都市局下         水道部流域下水         道課長     伊藤 俊美君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ――――――――――――― 四月七日  公害健康被害補償法に基づく指定地域の解除反  対等に関する請願(榊利夫君紹介)(第三四七  一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件      ――――◇―――――
  2. 河野正

    河野委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野口幸一君。
  3. 野口幸一

    野口委員 私は、環境行政について、今日基本的な発想を少しく修正する時期に来ているのではないだろうか、こういう考え方を持つものであります。  現在まで公害防止自然保護につきまして、保護防止の標準だとか水準、全国一律また画一的なものを求められ、そのために努力をされたことにつきましては、一定の成果があったと思いますけれども、今後はさらに自然の環境保全及び未然防止について実を上げるとするならば、そのアプローチとして地域特性を重視する、また地域特性というものを優先してよりよい環境づくりを行う姿勢があってよいのではないか、こういうことを考えるのであります。さきに環境アセスメントの法案の内容等について、当委員会における政府姿勢を伺うわけでありまするが、地方特性を生かすという考え方にやや消極的であるような感じがするわけであります。地方時代という基本的な構想を政府自身が提唱しておられるこの八〇年代に当たって、特に私は環境行政の中にあって、この特性というものを地方時代という立場からもひとつお考え直しになるといいますか、それを優先をして考えるべき環境行政があってしかるべきではないか、かように思うわけでありますが、ひとつ大臣からこの問題についてお考えを拝聴いたしたいと思います。
  4. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、これまでの環境政策は、すでに発生をいたしておりまする公害や激化しておる環境汚染を防除することを中心といたしまして推進をされてまいったわけでございますが、これからの環境政策は、何と申しましても公害未然防止し、そしてまた自然環境保全を進めると同時に、いわゆるアメニティーと申しましょうか、人々の心に潤いを与えるような快適な環境づくりを行っていくことが環境行政に課せられました大きな課題である、私はかように確信をいたしておる次第でございます。今後、環境庁といたしましては、国民のための快適な環境づくりを進めるために、地域自主性を十分尊重いたしまして、積極的な施策推進を図ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  5. 野口幸一

    野口委員 私は、選出区が滋賀でございますので、話をいたしますると琵琶湖の話をするわけでありまするが、決してこれは単府県の問題ではなくて、琵琶湖という問題は、全国といいますか、政府自身がこの問題をお考えになるべきである、こういう基本的な観念を持ってお話をするわけであります。  琵琶湖問題の位置づけでございますが、たびたび私もこの委員会発言をいたしておりまするが、特にこの問題は今日的に考えましても、非常に多くの課題を持っているわけでございます。また、たとえば下水道施設早期達成だとか三次処理合成洗剤使用禁止という、程度の高いものを取り上げて滋賀県もがんばっておるわけでありまするが、全国に比類のない対応策をとっている、単県ではありまするけれども、これは県民立場あるいはまた県という形で対応することではもう追っつかないのでありまして、国が最重点県として、あるいは最重点地域としての位置づけをはっきりとしてもらいたい、こういう気持ちがあるわけであります。その点について、その琵琶湖問題の基本的な位置づけと申しますか、その点についてひとつお答えをいただきたい。
  6. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘になられましたとおりでございまして、琵琶湖近畿圏の千三百万人になんなんとする人たちのとうとい水がめでございまして、最近プランクトン等発生によりまして水道の水が濁ったり、またろ過障害等々が起きました。そこで県におきまして、県民の同意を得まして条例をつくられたわけでございますが、このことに対しましては環境庁といたしまして、水質保全立場から高く評価をいたしておる次第でございます。  しかしながら、琵琶湖につきましては、代表的な水質指標であるCOD等々を見ますと、北湖、南湖とも環境基準を達成するまでには至っておらないような状況にございます。そこで環境庁といたしましては、琵琶湖水質保全重要性にかんがみまして、昭和五十六年度をめどといたしまして総量規制を導入するような措置考えておる次第でございます。そして昭和五十五年度から具体的な調査を行うことといたしまして、四千三百有余の予算措置を行ってまいっておる次第でございます。
  7. 野口幸一

    野口委員 いま大臣お答えいただきましたことは、それなりに私も承知をいたしております。いま総量規制の問題の計画ということについてはお聞かせをいただいたのですが、学界等では、公害防止地域という中には入っていない、公害防止計画地域指定もやらないというようなことではどうもおかしいじゃないか、こういうことが実は「ジュリスト」の一月号に載っているわけであります。この問題の取り上げ方といいますか、大事な琵琶湖に対しての国の見方というのは、まだ少しく冷たいのじゃないか、こういう意見が散見できるわけであります。  いまの大臣お答えの中にもございましたように、県独自としては琵琶湖富栄養化防止条例などをつくりまして積極的にやっているということはお認めいただけるところであると思いますが、これは先ほども申しましたように、単県だけの問題ではなくて、国としてこの問題を解決をしていってもらわなければならないわけでありますので、その点についてくどいようでありまするけれども、最重点地域としての位置づけといいますか、この水質保全については、湖沼などの閉鎖性水域の中で、特に近畿一千三百万の水がめと言われておるところの命の水である琵琶湖の問題についての位置づけをはっきりと御評価いただくようにお願いを申し上げます。
  8. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  閉鎖性水域におけるわが国を代表する湖沼一つでございますので、国といたしましても富栄養化対策を含めまして、今後総合的な対策樹立のために、前向きで真剣に取り組んでまいりたいと思います。
  9. 野口幸一

    野口委員 ことしもまた淡水赤潮発生する時期が近づいてまいりましたが、大臣、実は私からもお願いをいたしますが、歴代大臣琵琶湖お越しをいただいておるわけであります。大臣もこの機会をとらえてぜひとも滋賀県にお越しをいただきたい、これは公式の場で私から御要請を申し上げます。
  10. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  私は昨年長官を拝命いたしまして早々、霞ケ浦、続いて東京湾視察いたしまして、閉鎖性水域における富栄養化対策重要性というものを身をもって体験をいたしたようなわけでございまして、いずれ機会を見まして、早い機会に喜んで視察をさしていただきたい、かように考えております。
  11. 野口幸一

    野口委員 この際、委員長にもお願いをいたしますが、昨年だったかと思いますが、琵琶湖お越しをいただいて、委員会としても琵琶湖視察をされております。しかし、非常に時間が短くて、十分琵琶湖実情というものを見ていただいておらないのではないだろうか。実は、私はその視察も参加をいたしたのでございまするけれども琵琶湖そのものを見ていただくだけではなくて、琵琶湖水質というものを保全するためにあらゆる施策というものが並行して行われなければならないわけでありまして、その琵琶湖水質を守っていくための諸施設を側面的に見ていただく、こういうような形の視察がぜひとも必要ではないだろうか、こういうように思いますので、委員会等でもひとつ御検討をいただきたい、お願いを申し上げます。
  12. 河野正

    河野委員長 野口君の発言につきましては、後ほど理事会においてそれぞれ御相談をいたしたいと思います。
  13. 野口幸一

    野口委員 そこで、琵琶湖の問題について若干関連をいたします問題について質問を申し上げます。  瀬戸内海等保全と同様に、水質保全立場からN、Pの高次処理を必要としますが、この際の多額の負担金を県が支出をしていることは余議ないことであるとして現在もそれをやっているわけであります。この建設費につきまして、建設省関係になると思いますが、補助対象にすべきではないか、このように思うのでありまするが、建設省考え方をひとつお聞かせをいただきたい。
  14. 伊藤俊美

    伊藤説明員 琵琶湖等閉鎖性水域におきます水質保全のためには、富栄養化防止ということが非常に重要でございます。そのために、比較的効果の上がる二次処理中心にいたしました面的整備をできるだけ早く拡大できますように努力をいたしておるところでございまして、そういった二次処理におきましても窒素、燐の問題につきましては二〇から四〇%程度除去効果が上がるということが考えられますので、相当の効果が出てまいるのではないかと思いますが、そういった面的整備状況を見ながら三次処理の問題については対処をしてまいるつもりでございます。  三次処理が現在補助対象になっておるかどうかという問題でございますが、BODと浮遊物質の問題を中心にいたしまして、さらに水質を高度化いたしますための制度は確立されておりますけれども窒素、燐の問題についてはまだ確立をされておりませんので、次の五カ年の問題といたしまして検討してまいりたいと思います。
  15. 野口幸一

    野口委員 それに関連しまして、この施設のいわゆる維持管理費負担制度でありますが、建設費は大体どういったものも補助対象によくあるのでありますが、維持管理というようになりますと、なかなか国費による負担制度というものがむずかしいと言われておるわけであります。またその施設改造の場合も補助対象としてはどうなのか、こういうようなことがあるわけであります。ただ、これは全国的に実施が望ましいということは言うまでもありませんけれども、少なくとも、別に私は琵琶湖に限ってとは申しませんが、閉鎖性水域対象とする場合は特筆して考えるべきではないだろうか。この辺の問題点を少しく建設省においても、差をつけてと言っては悪いですが、先に手をつけるべきではないだろうか、この辺のところのお考えはいかがなものでしょうか。
  16. 伊藤俊美

    伊藤説明員 三次処理維持管理の問題につきましては、先生指摘のように非常にむずかしい面がございます。二次処理維持管理につきましては、御承知のように料金で賄っておるという実態でございますが、三次処理の場合におきましては、水質保全に果たす役割りが非常に大きいという点、公共性が大きいというようなことを勘案いたしまして、国あるいは県、市町村、利用者、それぞれの役割り検討いたしまして、慎重にどうするかという問題を詰めていく必要があるんではないかと思います。  それから、改造の問題につきましては、耐用年限等の問題もございますので、そういった点が満足させられるようでございますれば、それに対応することができるのではないかと思います。
  17. 野口幸一

    野口委員 建設省お話を承っているついでと言っては悪いですが、続きに、下水道問題をちょっと話をします。  下水道整備促進につきましては、年々、皆さん方の御努力もありまして、進んではおるわけでありまするけれども、この下水道整備につきまして、基準的な考え方あるいは画一的な考え方をいわばやめてと申しますか、先ほども申しましたように、地域実情というものを考慮した整備計画として少しく調整をすべきではないだろうか、こういう考え方を持つものであります。  現在の実情を申しますと、もうすでに多くを申す必要ないかとも思いまするが、非常に多様であります。また複雑でございます。こういった考えを私が持つようになりましたのは、特に琵琶湖の場合なんかは、水質汚染という立場から下水道完備ということがまず一番大きな条件になりますが、いまのままの、いまの行政あり方で進めますと、とてもじゃないが、なかなか完成はしない。考え方によっては八十年から百年だと言われているわけでありまするけれども、そんなことではどうにもならないわけでありますし、また二十一世紀を迎えて、これからの社会を負担する国民皆さん方の一番大切な飲料水を確保する立場からも、特に閉鎖性水域、しかも飲料水確保という立場琵琶湖の周辺におけるところの下水道完備という問題は、これは他の地域も決して遅くてもよいというわけではありませんけれども、まずは飲料水確保という立場から考えますると急がれるわけであります。  そこで、行政あり方が、いま申しましたように画一的に進められておりまする考え方を少しく改めてみてはどうなのかと思うわけであります。工場地帯におけるどころの下水道施設あり方あるいは住居、準農村地帯におけるところの下水道施設あり方等は、行政の中で少しく幅を持たせてお考えになるべき時期ではないだろうか、これを思うのですが、いかがですか。
  18. 伊藤俊美

    伊藤説明員 琵琶湖等水質汚濁防止をいたしますためには、下水道整備の仕方としてどういうあり方がいいかということを、現在、流域別下水道整備計画というのがございまして、それによって細かく、地形の状況あるいは人口の配置の状況、それから土地利用の問題、そういった点を十分調査をいたしまして、それによりまして公共下水道実施をすべきところ、流域下水道実施をすべきところを割り振りをいたしておるわけでございます。  御存じのように、地域におきましては中小企業等工場が散在をいたしておるというような状況もございまして、一般的には公共下水道措置をするというのが普通でございますけれども、ただ中小工場等がまとまってありますような場合につきましては、現在の制度におきまして特定公共下水道という制度がございまして、そういったものは汚染者負担の原則に基づきまして資本費を回収するというようなことでやっております。そういう制度がございましたり、あるいは市街化区域外のところにつきましては、自然環境保全をいたす必要がありますところ、それから農山漁村、そういったところにつきましては特定環境保全公共下水道というようなものがあるわけでございます。琵琶湖等の問題につきましては、そういった点を地域状況に合わせるようにいたしまして検討しておるわけでございますが、琵琶湖の場合には湖沼という特性もございまして、流域下水道中心にいたしまして整備促進に当たっておる。その中には公共下水道のところもございます。それから特定環境保全公共下水道というようなところもございまして、そういったあらゆる施策を集中いたしまして琵琶湖水質改善に当たるということにいたしておるわけでございます。  それから、三次処理の問題、先ほどちょっと答弁漏れになっておりますけれども琵琶湖等、非常に重要な水域ですので特に重視をしてやるべきじゃないかということでございますが、先ほど窒素、燐の問題につきましては、そういう制度ができ次第琵琶湖等重要な水域から取り上げてまいりたいというふうに思っております。
  19. 野口幸一

    野口委員 いまおっしゃったのは、そういう対応をいまやっておる、そういうことでございます。それはそれで結構なのでありますが、たとえば国費補助率ども違うわけでありまして、いろいろ現地でそれを採用する際には、そういった意味で非常に混雑をしているということもあるわけであります。したがって、この際、国費補助については、下水道施設の場合は、その意味では画一化すべきではないだろうか、こういうような気がするわけです。いろいろなことをやるために、流域下水道の場合においてもあるいはまた公共下水道の場合においてもその補助率が違うというようなことではぐあいが悪いのではないだろうか、こういうふうに思うわけですが、違っておったらひとつ御指摘をいただきたいと思います。  それから、いま農山村に農村環境基盤整備事業というのがありまして、これも下水道行政関連をするわけであります。また地域屎尿処理施設、これは厚生省関係でありまするけれども、これらの問題が実は交錯いたしまして、この下水道問題をより複雑化させているわけであります。したがって、こういった問題も、一定のそれぞれの守備範囲はあろうかと思うのでありますが、下水道施設を強化させていくという立場からの横の連絡といいますか、非常に複雑でありますので、ひとつある意味におけるところの一元化といいますか、そういった指導建設省あたりがおやりになることが必要ではないのだろうか。それぞれの所掌範囲の中でそれぞれの施策が進んでいくことを、私は否定はいたしませんけれども、どうもいろいろな施設がそれぞれのばらばらな省庁で行われることによって、かえってそれぞれの事業が進まないということもございますので、その辺の一元化の問題について、建設省あるいはまた環境庁指導の中にありますところの問題との総合性をひとつその中で発揮をしていただきたい、こういうような気がするわけでございますが、その辺いかがでございますか。
  20. 伊藤俊美

    伊藤説明員 先ほど先生指摘になりました補助率の一本化ということでございますが、先ほど説明いたしましたように、公共下水道、それから流域下水道あるいは浸水を防除いたしまする都市下水路の問題、特定環境保全公共下水道の問題、いろいろそれぞれの役割りがございまして、それに従いまして補助率というものは決まっておるわけでございまして、その一律化の問題につきましては、非常に慎重に検討していく必要があるのではないかと思います。  それから、農山下水道等の問題、これは各省にわたるということでございますが、比較的まとまりましたものにつきましては、先ほど申し上げましたように、特定環境保全公共下水道によりまして農山村部あるいは漁村部の問題は下水道といたしまして取り上げてまいるような形になっております。ただ、現在各地に下水道計画がなされておるわけでございますが、非常に散りまして、昔の山村といいますか、そういうような問題がございまして、そういうところをどうするかという問題は、私どもとしても完全に詰め切っておらないわけでございますが、いろいろな効率化の問題あるいは維持管理をする等の問題を考えまして、できるだけ全体的に好ましい方向で考えていきたいと思っております。
  21. 野口幸一

    野口委員 そこで、閉鎖性水域における下水道整備という立場から、このリーダーはぜひとも環境庁がやってもらいたい。建設省に対して失礼な言い方かもわかりませんが、特に閉鎖性水域の場合における下水道というのは、他の地域における下水道と違うのだ、違うのだと言うよりも少しく進めて、進歩的に対処をしなければならない立場からも、ぜひとも環境庁リーダーとなって指導体制をとっていただきたい。それで建設省といろいろ総合性を発揮していただいて、いま言いましたいろいろな下水道行政の問題も含めて取り組んでいただきたい、こういうことをお願いいたしたいのでありまするが、環境庁はいかがなお考えでございますか。
  22. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど先生に御答弁申し上げましたとおり、私は霞ケ浦視察いたしまして感じましたことは、霞ケ浦水質汚濁の原因が、比率に分けてみますと、家庭雑排水が三〇%、それから農業、畜産の関係で約四〇%、それから産業排水が三〇%という説明を受けたわけでございますが、さようなわけで、工場等排水規制、それからまた生活排水等対策とあわせて、先ほど来論議がなされました下水道整備、これが緊急を要する大きな課題であるということを深く痛感をいたした次第でございます。  今後、この問題につきましては、御案内のとおり環境庁調整官庁でございますものですから、建設省等とも密接な連絡をとりまして、先生の御意思を体し、強力に事業推進してまいりたい、かように考えております。
  23. 野口幸一

    野口委員 そこで、これは水質保全関連をいたしまして、下水道完備されまするまでの間補完的な物の考え方として、いま家庭雑排水の問題が出ましたが、私は、この家庭雑排水をそれぞれの御家庭において、これは都会なんかではなかなかむずかしいかもわかりませんが、家庭庭すみに一平方メートル程度ため池をこしらえて、そこに一たん下水をためて、ためますと申しますか、昔は農山漁村では、どこの御家庭でもそれぞれためますというのがありまして、下水の落ちてきました水をそこに一たんためまして、上水が流れていくような形で流しておったわけですが、それを採用いたしまして、住宅開発におけるところの義務化などを考えて、下水道完備までの補完的な立場水質保全という立場から、特に湖沼を持っている府県対象にしてこれらの実施を図ってはどうだろうかという気がするわけでありますが、これに対して滋賀県の方は、一カ所ばかり試験的にためます方式をやってみたいということで、現在取り組んでいるようでありますけれども環境庁としてこういった対策についてはいかがなお考えをお持ちでしょう。
  24. 馬場道夫

    馬場政府委員 閉鎖性水域におきます水質保全を図るためには、特に家庭雑排水のウエートが大きいわけでございますので、その対策が重要になるわけでございます。そういう意味において、下水道整備を図ることがもちろん基本的に重要でございますが、これは長期にわたる、非常に金がかかるということで簡単にできないわけでございますので、その間の水質保全対策としていろいろな知恵をしぼらなければならぬと思うわけでございます。そういう意味において、いま先生のおっしゃいましたため池等をつくって、そこで自然の浄化機能等も活用しながら水質保全を図っていく。これは昔いろいろやられた方法でございますが、都会の中ではなかなかむずかしいかと思いますけれども農山漁村等においては一つ方法ではなかろうかと思うわけでございまして、その辺私ども今後いろいろ検討させていただきたいと思うわけでございます。  それにあわせまして、雑排水対策につきましては、私ども環境庁として屎尿処理とあわせて小規模の浄化槽の検討を行ってきたわけでございまして、現在、その実用化が進められている段階になってきておるわけでございます。  それからまた、湖沼等の閉鎖性の非常に強い地域におきましては、そういう浄化槽の機能をフルに発揮するために、特に富栄養化対策としては、土壌の自然浄化機能といいますか、これを活用することが非常に大事ではなかろうかと思うわけでございます。これはアメリカあたりでは非常に広範に、EPA等が取り上げてやっておるわけでございますけれども、私どももそういうような自然浄化機能を活用いたしました浄化槽といいますか、そういうものの検討をこれから強力に進めてまいりたいと思うわけでございまして、そういうものを、先生の御指摘の点等もあわせまして、環境庁としても検討を進めてまいりたいと思っているわけでございます。
  25. 野口幸一

    野口委員 その際に、またぞろの話でありますけれども、これもまたこの施設を早期に完成させるために、進めさせるために国費補助対象としてぜひお考えをいただきたいことをあわせてお願いをしておきたい。
  26. 馬場道夫

    馬場政府委員 国費の問題につきましては、関係省庁といろいろ打ち合わせしなければならぬ問題がございますので、そういう点も含めていろいろ相談させていただきたいと思うわけでございます。
  27. 野口幸一

    野口委員 これに関連しまして、いまもちょっとお話がございましたが、アメリカではノーポイントソースが問題になりましていろいろと話題をまいておるわけでございますが、環境庁はこの問題をどうとらまえていらっしゃいますか。
  28. 馬場道夫

    馬場政府委員 水質保全対策といたしまして、従来私ども工場事業場等の特定汚染源と申しましょうか、そういうものについては排水規制の強化なり下水道整備によって対処してまいったわけでございますが、特に閉鎖性水域等におきます水質汚濁防止を図るためには、それだけでは不十分でございまして、非特定汚染源と申しますかノンポイントソースと申しますか、そういうものの対策が非常に重要であると思っておるわけでございます。  降雨時の雨水とともに市街地なり山林田畑等から流出いたします非特定汚染源による汚濁が相対的にいま問題になりつつあるわけでございまして、先ほど先生おっしゃいましたアメリカなりOECDにおいてもいろいろ取り上げようとしておるわけでございます。そこで、こういうものの汚濁源の解明なり対策を考慮する必要があると考えておるわけでございます。  そこで、環境庁といたしましては、五十三年度から都市地域におきます実態調査を行っているわけでございますが、今後、山林田畑等からの流出についても実態調査をやることにいたしております。その結果に基づきまして所要の対策検討するというようにしておるわけでございます。  それから、日米間に環境保護協定がございますが、その日米の環境保護協定に基づきまして五十三年度に設置されました水質管理規制パネルというものがございまして、そこで富栄養化対策を含めました非特定汚染源対策についても日米間で情報の交換を行うようなことにいたしておるわけでございまして、そういう意味において、特定汚染源とあわせて非特定汚染源の調査検討を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  29. 野口幸一

    野口委員 また、特にその水質保全立場から、これは農林省に聞いた方がよかったかとも思うのですけれども、少し連絡が不十分でありまして、環境庁の方からお答えをいただきたいのでありますが、農薬施肥の適正化、用水の適正化それから用水の反復利用等について、当面環境庁立場から指導指針を示すことなどの対応策考えるべきではないだろうかということを私自身も考えておるわけでありますが、いかがなものですか。
  30. 馬場道夫

    馬場政府委員 農林水産業、特に農畜産業に起因いたします水質汚濁の問題もこれまた非常に大きな問題でございます。そこで私ども、先般富栄養化対策の総合的な対策といたしまして、基本的な考え方を発表したわけでありますが、その一つの項目として、農畜産業からの排水処理の適正化の問題について農林省当局に要請をいたしておるわけでございます。  そこで、おっしゃいましたような施肥の適正化なり全体の営農管理の適正化ということが大変大事であろうかと思うわけでございます。そういう意味において、特に水田等が非常に問題になろうかと思いますけれども、そういうものの適正化の問題、それからもう一つは、畜産の問題が非常に大きいわけでございまして、畜産の屎尿処理というか、そういうものの自然土壌還元等も含めて、土地に返すということも含めて、そういう対策をより強化する必要があるのではなかろうかと私どもは思うわけでございます。  そこで、これについては農林水産省でもいろいろ環境整備の予算等も計上して努力をいたしておるわけでございますが、私どもの方も、農林水産省の方と十分連絡をとりながら、その辺の対策を詰めてまいりたいと考えておるわけでございます。環境庁対策を立てて示すというよりも、むしろ両方一緒になって考えていくことの方がより現実的であろうと思いますので、そういう方向で進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  31. 野口幸一

    野口委員 いまもお話しになっておるわけでありますけれども、これは特に農林省の方に関係をすると思いますので、お答えはむずかしかろうかとは思いますが、おわかりになっておると思いますので、少しく御返事をいただきたいと思います。  低公害の肥料の開発が非常に言われておるわけであります。これの調査研究が水質保全対策上必要だ、積極性を持って研究をしていただきたいと思うわけでありますが、この取り組み状況というか、現在低公害と言われている肥料の開発はいかがな状況になっているか、おわかりになっておりましたら、その点をひとつ……。
  32. 馬場道夫

    馬場政府委員 私は詳細なことは存じておりませんけれども、農業技術研究所なり農林省関係の試験研究機関において、低公害のと申しますか、環境に対する影響の少ないような肥料の開発研究等は進められておるわけでございますし、また肥料ではございませんが、農薬につきまして、いわゆる合成物質ではなくて、天敵の利用であるとかいうような自然を利用した農薬の開発とか、そういう面もいろいろ進められておるわけでございまして、詳細にお答えできないわけでございますけれども、私どももその辺につきましては、今後十分把握をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  33. 野口幸一

    野口委員 そういった問題も含めまして、日本の人口の一割強でありまする一千三百万人の水資源である琵琶湖を守るということは、これは先ほど来の話ではありませんが、日本にとって、わが国にとって重要な問題である。そこで、琵琶湖を守るという立場から専門の研究所を琵琶湖畔に建ててもらいたい、私はこういうことを要請するわけでありまするが、琵琶湖特性から考えまして、学問的価値が多大であるということは言うまでもありません。水質汚濁のメカニズムの解明が非常に困難な状況であることから考えましても、湖沼の専門研究所といいますか、そういうようなものが琵琶湖畔にあるということは、私は決してむだではないと思うのであります。瀬戸内海の問題は水産庁が、あるいは霞ケ浦公害研究所等の現存する施設があるわけでありますけれども、この琵琶湖という非常に大きな湖、しかも日本の産業経済、また人間の総合的な環境整備という立場から考えましても、琵琶湖の問題というのは重要であると思いますので、その辺について環境庁のお考えを今日時点でお示しをいただきたい。
  34. 馬場道夫

    馬場政府委員 琵琶湖に何か専門の研究所をつくれという御提案でございますけれども環境庁といたしましては四十九年に国立公害研究所を設置いたしたわけでございますが、その中に水質土壌環境部を設置いたしまして、そこで五十一年に水環境の実験施設、アクアトロンと言うておりますけれども、そういうものが完成いたしまして、陸水域の富栄養化に関する研究を進めておるわけでございまして、そういうことで国の公害研究所の方で研究の充実強化を図っておるわけでございます。この研究は基礎的なメカニズムの解明に重点を置いたものでございまして、この成果につきましては、琵琶湖等にも十分活用いただけるものというように考えておるわけでございます。そこで、琵琶湖にも何かつくれという御提案、御趣旨はよくわかるのでございますが、長官からお答えいただいた方がいいかと思いますけれども、こういう時世でございまして、新しい研究所をつくるということも大変むずかしい状況でございますので、私ども国立公害研なりあるいはその他の機能を十分活用いたしまして、滋賀県におきますいろいろの研究につきまして側面から御協力を申し上げるということで対処してまいりたいというように考えておるわけでございます。
  35. 野口幸一

    野口委員 私が琵琶湖水質汚濁の専門メカニズムを解明するための研究所を設けろなんて言いますと、滋賀県選出だから滋賀県の話ということでどうも狭い視野で見られるようで、自分自身もそういうような考えがするのですけれども、もっと大きな目で琵琶湖というものをとらえていただきますと、これは非常に神秘的なといいますか、学問的にいろいろな立場から研究をしても研究し尽くせないほどの湖でございます。そういったことから、琵琶湖畔に湖沼の研究所を設置するということは、国の立場から考えましても決してむだではない。もちろん私は公害研究所等がありますことも存じておって、なおかつそのことを提唱いたしておるのであります。  特に琵琶湖というのは、もう私が言うまでもありませんけれども、非常に複雑な要素を持った湖であります。北湖と南湖では通常考えられないほどの差を持っているとか、あるいはまた湖ではほとんど考えられないような潮流といいまするか、水の流れというものが周期的に還元されていて、それが一定のルールの中で循環しているとはいいながら、気象の変化等によって、それがまた変わってくる。特に気象の変化等につきましては、湖北の方は完全なる北国の気象条件であるのに対して、南湖の方は、これは京都、大阪に近い関係もありまするが、非常に温暖な状況の中に湖が存在をしている。また深さのかげんの問題にしましても、北湖は非常に深いのですが南湖は非常に浅い。しかも、南湖は人口過密の状況の中に存在をして、北湖はまた過疎的現象の中に存在をしているとか、いろいろ複雑な条件を加味しながら広域に存在をしている琵琶湖であります。  いまさら私がこんなことを申し上げる必要もありませんけれども、この琵琶湖に近年、淡水赤潮発生を見ているわけであります。これは単に窒素、燐だけの問題ではなくて、総合的に解明をしなければならない問題が多々あることは言うまでもないと思うのであります。そういった意味で、琵琶湖畔に湖沼の専門研究所というものをぜひとも設立していただきたい。この点について長官からひとつお答えをいただきたい。
  36. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  琵琶湖重要性につきましては、私も十分理解いたしておりますし、これは国を挙げて取り組んでいかなくてはならない大きな問題である、かように確信いたしておる次第でございます。先ほど御答弁の中でも申し上げましたとおり、五十六年度をめどに総量規制を導入いたすべく、ただいま検討もなされておりますし、また先生御案内のとおり、琵琶湖につきましては、琵琶湖総合開発特別措置法に基づきまして下水道整備等も行われておるような次第でございます。ただ、この法律は昭和四十七年の六月に制定されまして、五十七年三月までの十カ年間の時限立法でございますので、期限後の取り扱いにつきましては、今後国土庁を中心といたしまして検討をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。先生の御趣旨、よく理解はできるのでございますが、財政的措置を伴う問題でもございますので、いま直ちにどうこうというようなわけにはまいりませんので、その点もぜひ御理解を賜りたいと思います。
  37. 野口幸一

    野口委員 いま長官お話にも出ましたように、琵琶湖の総合開発の関係法は時限立法でありまするので、やがて改定の時期が参りますが、この改定に当たっては、環境保全という問題についてぜひとも十分な御配慮がいただけるように、この際、長官からもこの点についてはっきりとした御答弁をいただいておきたい。
  38. 土屋義彦

    土屋国務大臣 関係当局とよく相談いたしまして、前向きで検討いたしてまいりたいと思います。
  39. 野口幸一

    野口委員 そこで、総量規制実施に踏み切っていただくようになったわけでありまするが、これに対応いたしまして、現在でも琵琶湖を持っているということで県民が非常に多くの負担を余儀なくされているわけでありますけれども総量規制実施によって県民の負担がなおふえてくるという側面性を持っておるわけであります。こういった問題については、いわゆる総量規制全体、これは国全体でありまするが、これを実施する立場に立つところの国の対応措置というものは、基本的にどのようなお考えをお持ちなのか、その辺ちょっと局長から……。
  40. 馬場道夫

    馬場政府委員 総量規制につきましては、現在東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の三水域につきまして総量規制実施をいたしておるわけでございますが、これに伴いましていろいろ経費を要することも事実でございます。そこで現在私ども考えておりますのは、削減目標量の達成のために、発生負荷量なりあるいはその削減の対策状況を把握する必要がございますので、そういう把握の問題あるいは事業者に対しまして測定の技術レベルの向上の指導等いろいろ自治体段階で経費を要するわけでございます。さらにまた監視のための水質テレメーターシステムとかいろいろな経費が要るわけでございますが、そういうものにつきましては、私ども県に対する一定補助金なりその他の経費を計上いたしておるわけでございます。琵琶湖総量規制が導入された暁におきましても、そういうことは当然考えなければならぬというように思うわけでございますが、あと総量規制実施いたしてまいります過程で、いろいろ排水設備の改善であるとか、その他の事業場等に対しまして設備の改善等の措置が必要になるわけでございますが、そういうものにつきましては、各種の制度融資、そういうものの活用によりまして、できるだけ関係機関と十分打ち合わせをいたしまして、そういうものが円滑に活用できるというようなことを考えてまいりたいというように思うわけでございます。
  41. 野口幸一

    野口委員 先ほどもちょっと話をいたしましたが、琵琶湖の総合開発というものが環境保全とはアンバランスの関係にございます。その是正のために、滋賀県としても琵琶湖富栄養化防止条例の制定というものなどに踏み切っているわけであります。問題は、これを実効あらしめんとするために要する経費というものが、非常に莫大なものになってくるわけであります。私どもというよりも県当局も真剣に考えておるわけでありまするけれども、いわゆる下流負担という問題、これはひとつ政策的に解決をしてもらわなければならない課題である。特に琵琶湖の下流でありますところの京都、大阪、近畿二府四県の問題として、こういう下流負担の問題、これが制度化の問題について環境庁はどのようなお考えをいまお持ちでございましょう。
  42. 土屋義彦

    土屋国務大臣 先ほど来御答弁を申し上げておりますとおり、琵琶湖近畿圏の千三百万人になんなんとする人たち水がめというばかりでなくいたしまして、その湖面は琵琶湖の国定公園の重要な一部をなしておりまして、環境庁といたしましては、その富栄養化対策を実効あらしめることはきわめて重要であると考えておる次第でございます。その費用の下流負担の制度化の問題につきましては、下流県にも関係があり、いろいろむずかしい問題もございますので、今後の研究の課題にひとつさしていただきたいと思います。
  43. 野口幸一

    野口委員 長官、単なる研究課題だということだけで片づけないで、ぜひとも積極的にこの問題については、琵琶湖富栄養化防止条例の制定ということに踏み切りました滋賀県の壮図も十二分に――先ほど来おほめをいただいたわけでありまするから、そういった面もお考えをいただいて、ぜひともその制度化について努力をいただきたい。さらに、現在の交付税制だけではどうにもならない、単県補助制度へ切りかえてもらってはどうなのかというような問題も実は言っておるわけでありますが、その辺のところはいかがでございますか。
  44. 馬場道夫

    馬場政府委員 非常に形式的に申し上げますと、条例で固有事務でやっておられるわけでございますので、交付税という形になろうかと思います。しかし、大変また負担もかかるということも事実でございますので、その辺を一体制度的にどう解決していくのかという非常にむずかしい問題があろうかと思います。私ども環境庁といたしまして、その辺非常にむずかしい問題だと思っておるわけでございますけれども先ほど長官も申し上げましたように、関係各省いろいろございますので、その辺とも十分打ち合わせをさせていただきたいと思っておるわけでございます。
  45. 野口幸一

    野口委員 重ねてお願いを申し上げておきまするが、先ほどから評価をいただいたこの富栄養化防止条例は、近畿二府四県というか日本の水質保全のためにという大上段に振りかぶった物の言い方をしては少しく大げさであるかもわかりませんけれども、そういった意味合いもありまして、大きな負担のあることを承知で県当局も踏み切っておることは事実であります。しかし、そうだからと言って、おまえのところ勝手にやれというのでは余りにも国としての対応は冷た過ぎるのじゃないだろうか。これは先ほど馬場水質保全局長お話にございまするので、十分もう私もその中身は理解をいたしておりまするが、ぜひとも交付税制だけではやっていけないような状況だということの現状の理解だけは十分してやっていただいて、そして単県補助制度へという願いがあるようでありまするけれども、それも含めてこの下流負担の問題を早急にひとつ制度的に解決してやっていただきたい。そのようにひとつ努力関係省庁と重ねてやっていただきたいということをもう一つつけ加えてお願いを申し上げておきます。それちょっとお答えをいただけますか。
  46. 馬場道夫

    馬場政府委員 大変制度的にはむずかしい問題があるわけでございますけれども、何かいい方法はないか検討させていただきたいと思います。
  47. 野口幸一

    野口委員 琵琶湖水質問題ちょっとおきまして、また機会がありましたらこの問題質問をさせていただきますが、合成洗剤の問題について若干お話を伺います。  いま合成洗剤を各都道府県において規制をしようといういろんな動きがございますが、各都道府県における規制の実態について環境庁は把握しておられますか。
  48. 馬場道夫

    馬場政府委員 琵琶湖におきます富栄化防止条例が制定をされまして以降、各自治体におきまして合成洗剤に対します何らかの措置がとられてきておるわけでございますが、私どもが把握をしておりますものは、現在時点で申し上げますと、合成洗剤対策推進要綱を決めるとかいうような形で何らかの対策を行っているところが内海、内湾、湖沼等の閉鎖性水域を抱えるところを中心にいたしまして三十三都道府県に上っております。
  49. 野口幸一

    野口委員 新聞でもいろいろと発表いたしておりまするから御存じだと思うのでありまするけれども、内容についてはそれぞれ各府県ともども合成洗剤の規制という問題は少しく違うようでありまするが、そういった面について詳しく環境庁の方では現状を把握しておられますか。
  50. 馬場道夫

    馬場政府委員 各県から報告を受けております。それは全体的に整理はされておりませんけれども、一番大きいのが県の施設におきます有燐の合成洗剤の使用の自粛というようなことでございまして、その他住民等に対します啓蒙指導ということで、パンフレットをつくったりポスターをつくったりというようなことでやっておられるところが多いようでございます。
  51. 野口幸一

    野口委員 この各県に出ております合成洗剤の追放という、まあ追放だとか規制だとかいろいろな言葉を使っておりますが、この状況について、国の視点としまして一体何をとらまえてこの問題を見ておられますか。
  52. 馬場道夫

    馬場政府委員 私どもといたしましては、閉鎖性水域におきます富栄養化防止ということを最大の視点といたしまして考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、いわゆる生活排水のウエートがだんだん大きくなってくる、生活排水の中で約四割程度合成洗剤による負荷の割合であるという点をとらまえまして、そういう富栄養化対策の一環といたしまして燐の削減を図っていくということでございます。したがいまして、現在の有燐洗剤の中で燐の含有率を低下させる、あるいは無燐洗剤を使う、あるいは粉石けんを使うという形の指導をいたしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  53. 野口幸一

    野口委員 これは三月十三日の中部日本新聞の中での大塩敏樹環境庁水質管理課長の話でありますが、ここで言われておりますのは、ただ、全体的な環境保全対策の面から考えてみるだけではなくて、予定を繰り上げて、ことしの夏までにまず湖沼について燐の濃度の目標基準をつくって行政指導したい、こういうことを言っておられますが、その内容について少しく御説明いただけますか。
  54. 馬場道夫

    馬場政府委員 私ども富栄養化対策を進めるに当たりまして、水域環境の中におきます窒素、燐の目標レベルを設定する必要があるというように考えておるわけでございます。そこで、昨年の十二月に学識経験者から成ります窒素水質目標検討会を設置いたしまして、鋭意検討を重ねてきておるわけでございます。  そこで、私ども当面最も緊急を要します湖沼におきます燐の水質目標につきまして、ことしの夏をめどに一定の結論を出すというようにいたしておるわけでございまして、それが終わりましたら、水域における燐の水質目標の結論を出す、その後窒素にかかりたいというスケジュールで現在鋭意検討を進めておる段階でございます。
  55. 野口幸一

    野口委員 いままで多くの先輩が、この合成洗剤についてはこの委員会を通じて、あるいはその他の委員会においても取り上げられておるわけでありますが、主として健康被害といいますか、人体の影響を課題としてこの合成洗剤というものをとらまえていらっしゃるように、私はいままでの先生方の質問内容などを読ませていただいたわけであります。私は、今後はさらに、人体影響もさることながら、環境問題という立場からこの合成洗剤の規制という問題を取り上げなければならぬと思うのでありますけれども環境庁長官として、いまこの合成洗剤という非常に重要な課題をしょっておるわけでありまして、洗剤がいまわが国において使われている量、この洗剤の使用量というものがいわゆる文明のバロメーターだと言われているようなことを考え方の中にお持ちなのかどうなのか。あるいはまた水質と洗剤というものは、どういう関係にあるのかということなどの基本的な問題なども十二分に対応の基盤としてお考えになっていただけるのかどうなのか。言うまでもありませんが、日本は軟水地域であり、外国の硬水地域とは基本的に異なる条件を持っておるわけでありまして、洗剤の使用量及びその質について基本的な考え方が、世界の合成洗剤の使用量との比較という中にありまして、検討する基盤というものがそもそも違うのだ、そういった基本的な考えをお持ちいただいているのかどうなのか、この辺のところをひとつ大臣の方から、どちらからでも結構ですが、お聞かせをいただきたい。
  56. 馬場道夫

    馬場政府委員 合成洗剤の使用の問題でございますが、世界的な、国際的な比較、必ずしも正確な最近時点のデータを持っておるわけではありませんが、若干古い一九七四年のデータで見ますと、日本が一人当たり五・七キログラムで、まあECの平均が七・八、アメリカが七・二でございますから、それより少ないわけでございますけれども、しかしながら一番少ないというところでもございません。そこで、やはり先生おっしゃいましたように、合成洗剤の使用が洗たく機の普及とともに飛躍的に伸びてきたわけでございますけれども、そういう歴史的経過はあるわけでございます。やはり各国におきます用水の硬度の違いであるとかあるいはその他いろいろ社会的な環境の相違等がございますので、一概に比較はできないわけでございますけれども、やはりそういう日本の置かれた条件の中で合成洗剤をどう考えるかということが大事であろうと思います。そういう意味におきまして、ヨーロッパあたりとは若干情勢を異にしているというように思うわけでございますし、またこのことが、私も文明論を語る資格はございませんけれども合成洗剤の使用量が文明の尺度ということもないはずでございますし、私ども、やはりそういう全体的な中で、一体合成洗剤なりあるいは環境問題というものをどう考えていくかということで謙虚に考えてまいりたいと思っておるわけでございます。
  57. 野口幸一

    野口委員 合成洗剤の問題につきましては、後日また改めて御質問申し上げることとし、私は、本日はこれで終わります。
  58. 河野正

  59. 土井たか子

    ○土井委員 懸案の環境影響評価法案について、きょうは主に土屋環境庁長官にお尋ねをしたいと思います。  いま作業は鋭意進行中だと存じますが、先日聞くところによりますと、この環境影響評価法案を作成することのために連日徹夜でいま課員の方々が御努力中であると聞きます。さらにその大変な御努力中の現場に土屋環境庁長官が激励に行かれているということを先日私は聞きまして、まことに感銘を新たにしたわけでありますが、局長か課長じゃなくて、現場で連日苦労を重ねておられるその課員に対しまして環境庁長官がわざわざ激励のために足を運ばれる、これは歴代の環境庁長官、それぞれいろいろございましたけれども、私は長官のその御努力たるや多としなければならないと考えているわけであります。  さて長官、三月二十八日に今回のこの国会に提出を予定されております環境影響評価法案を作成するために法案の要綱がまとめられたわけでございますけれども、これからの手順というのは一体どのように考えられているわけでございますか。
  60. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおりでございまして、さきの自民党と社公民三党との予算修正の話し合いによりまして、自民党の方から内閣に話がございまして、三月四日に内閣に閣僚協を設けていただきまして、第一回目の会合を三月十三日に開いていただきまして、あわせて関係各省庁の局長会議を十二回にわたって行い、内容についていろいろ話し合い、そして先生指摘のとおり三月二十八日に要綱を御決定をいただいたようなわけでございまして、この要綱に基づきまして、ただいま関係各省庁、あわせてまた法制局におきましていろいろ内容等につきまして詰めの作業が行われておるようなわけでございます。そこで一応成案を得ましたらば、自由民主党の了承を得まして、国会へ出させていただきたい、かように考えておる次第であります。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 種々調整中だというお話でございますが、そこで大臣一つお伺いしたいのは、この本法案の眼目と申しますか、だれを中心にしてアセスメントはなされるべきであるというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  62. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申します。  従来公害が起きた場合には、ただ単に公害防止に力が注がれたわけでございますが、これからは何と申しましても公害未然防止、これに今後力を入れてまいらねばならぬ、かように私は考えておる次第でございます。さような意味におきまして、環境アセスメント、この法案、是が非でも今国会に提出をして成立を図りたい、かように考えるような次第であります。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと大臣、いまの質問に対しての御答弁の趣旨がそれるのですが、本法案の眼目、だれを中心にアセスメントというのはなされるべきかということを私はお尋ねしているのです。
  64. 土屋義彦

    土屋国務大臣 国民のためでございます。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 その際、主務大臣の意見というのは、国民のためにアセスがなされるということに対してどのように反映されるのですか。特に環境行政の責任者でおありになる環境庁長官の関与というのは一体どのように考えておられますか。
  66. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、関係閣僚会議で御決定いただきましたこの要綱に基づきまして、成案を得るためにいまいろいろ内容の詰めが行われておるようなわけでございまして、詳細申し上げるわけにはまいりませんが、法案の要綱におきましては、環境庁長官は、環境影響評価の指針を定める場合に考慮すべき基本的事項を定めるほか、それからまた主務大臣が指針を定める際には環境庁長官に協議をする、こういうことに相なっておる次第でございます。  また、作成されました環境影響評価書につきましても、環境庁長官は意見を述べることができることといたしておりまして、さらにこれを受けまして、主務大臣による環境保全に対しての配慮等につきまして所要の規定を設けることができるということに相なっております。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 そういうふうに環境庁長官役割りを果たされるというお立場からされますと、再度お尋ねしますが、先ほどだれのためにということを私が御質問申し上げましたら、国民のためとおっしゃいました。国民のためというのは、それはおっしゃるとおりでありますけれども、まことに漠然といたしております。環境アセスメントということを、環境影響評価ということをなすべき場合には国民というわけにはいかないのでして、もう少しそこのところは主務大臣として、環境行政を担当する最高責任者として、やはりそこのところは国民の中のどういう人たちを主眼にお考えになるべきであるとお考えになっているか、そこをひとつ具体的にはっきりおっしゃってくださいませんか。
  68. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  いわゆる大きな開発をやるような場合に、その開発によってその地域に対してどういうような影響があるかということを事前に調査し、そしてその地域の住民の方々へお知らせをする、こういうことであります。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 地域の住民ですね、いまの御答弁からすれば。そうでしょう、長官。もう一度おっしゃってください。
  70. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えいたします。  さようでございます。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 さあそこで、先ほど関係各省庁と詰めをしているというふうなことを大臣お答えになりましたが、各省庁に詰めをなすっている中でひとつきょうは取り上げたい問題がございます。  先に私は確認をさせていただきたいのですが、二月十八日付で通産省の方から「環境影響評価法案について」という質問書が環境庁に参りまして、それに対しまして二月十九日付で環境庁の企画調整局の方から「環境影響評価法案について(五十五年二月十八日通商産業省)に対する回答」という肩書きで回答書を出されたと思いますが、これは事実でございますね。
  72. 金子太郎

    ○金子政府委員 事実でございます。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 二月十九日といえば、私、予算委員会で、例の企画調整局長が経済界、特に関経連に対して非常に思わしくない文書を配付されたことを取り上げた質問の日であります。私はあの文書の内容を見てあきれたわけでありますけれども、今回、その同じ日に、通産省に対して出された回答書の内容を見て、ただただあきれ果てたのです。驚くべき内容ですよ、読めば読むほど。どこからどうしても、これは大変な内容でありますけれども、私はこれからその論点を数点にしぼってお尋ねをしたいと思うのです。  まず、環境庁長官先ほどだれを中心にアセスメントをなすべきかということをお尋ねしたら、地域住民ということをおっしゃったわけでありますけれども、この回答書の内容を見ますと、その点がこういうふうに書かれているのです。「事業者の判断により、環境保全上適切な配慮がなされるという事業中心の手続を定めている。」こうなっているのですよ。問題は事業者なんです、この回答書では。地域住民じゃない。そうして「事業者がアセスメントをこの法定手続にそって行われないことをもって不許可にすることはできない。」たとえアセスメントを法定手続に従って行わない場合でも許可をする、逆に言ったらこうなるのです。これはまことにもっていまの環境庁長官の御答弁とは外れていくわけでありますが、この点はどうなんですか。
  74. 金子太郎

    ○金子政府委員 第一点でございますが、事業中心の手続という表現は確かに穏当を欠く点があろうかと思いますけれども、今回のアセスメント法案で私ども考えておりますのは、事業者によるセルフコントロールというものを中心として、それに加えて事業者の行ったアセスメントの結果を行政にどのように反映させるか、その場合は配慮というたてまえをとっておりますが、その二つを原則として組み立てたものでございます。  この考え方につきましては、たとえばアセスメントそのものを国みずからがやるべきであるとか、あるいは地方公共団体を含めたより広い国みずからが行うべきであり、あるいはアメリカのようにCEQというような委員会をつくって、そういうところが判定をするということを制度的に考えるべきだという意見もございます。しかしながら、わが国におきましては、昭和四十七年の閣議了解以来事業者が八年間やってきたという経験の積み重ねがございますし、また事業者と申しますが、大部分は国であり、地方公共団体であり、公庫、公団、事業団であり、一部は民間もございますが、これまた許認可等によって強く政府がコントロールをすることはできる。しかもかなり公益性の高い事業である。またこういう点をお考えになって中央公害対策審議会も、昨年いただきました答申におきまして、事業者がアセスメントを行うということは適当であろうという答申をされております。  二番目に、その事業者のセルフコントロールを柱にしているという点につきましては、確かに行政処分性を持たして許認可等に訴えるというかなり権限的なやり方もあろうかと思いますけれども、ちょうど経済政策におきまして、統制に訴えるほかに、所得政策とかジョーボーニング、スエージョンというようなものが行われているのと同じように、私ども環境法の中におきましては、公開というようなわが国にはめずらしいたてまえを一部取り入れる等の工夫をいたしまして、それによりまして誘導的に適正なアセスメントをやらせたい、その結果をできるだけ行政処分に反映させたい、こういう仕組みで法律をつくった次第でございまして、それにかかわる説明が舌足らずであった、こういうふうに考えておる次第でございます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 るる弁解がましく御答弁なさいますが、これは単に表現が舌足らずであったのかどうかということは、これからちょっと追及を進めたいと思います。  大臣先ほど、主務大臣である環境庁長官としての役割りということもお尋ねに従って御答弁の中でおっしゃいました。かつての原案では、環境庁長官というのは、一般的な形式で環境影響評価指針を定めるということのほかに、個別のアセスメント事例について一件審査を担当するということになっていたわけです。必ず事業者に対して意見を述べるということになっていたわけなんですね。今回は、この個別意見を通じて環境庁というのが環境審査の責めを果たそうとしてきた過去の事例からいたしますと、この点がずいぶんあいまいになってまいっておりまして、主務大臣の権限にその点が移ってしまって、環境庁長官の個別意見というのは直接事業者に対して行われるのではなくて、主務大臣に対して述べられるものとされて、しかも意見を述べない場合もあるということにもなるわけなんです、この要綱の中身をよく見ると。そういうことなんです。それは大臣、そのとおりでしょう、この点は。ちょっとまず大臣に確認しておきます。
  76. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えを申し上げます。  要綱におきまして、環境庁長官が主務大臣に対しまして、最後の方になりますが、評価書について意見を述べることといたしましたのは、地域の環境の保全の任に当たる都道府県役割りというものを重視いたしたものでございまして、実質的に私は中公審の答申の趣旨に沿ったものである、かように考えております。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 いま環境庁長官は、地方自治体の長に重点を置いたもので、それを重視するというふうなお気持ちを披瀝しながらいま御答弁なさいました。しかしながら、行政責任ということからすると、主務大臣の責任は重うございますよ。環境行政の責任ということになると環境庁長官の責任が最高責任なんです。その責任というのは、具体的に一体どういうふうに果たされるかということは、非常に重大な問題になってくると私は思うのです。  この点について、通産省に対する環境庁からの回答書の中でどういうことを言っているか。「評価書作成においては事業者は主務大臣の意見に拘束されないのであるから、必ずしも主務大臣の意見に従っているものではない。」こう書いてあるのです。事業者の言いたいほうだいですよ。これに対して大臣としてチェックのしようがないのです。主務大臣の意見に拘束されないんです、事業者は。「必ずしも主務大臣の意見に従っているものではない」、断言しているんです。これは大臣、いかがですか。
  78. 土屋義彦

    土屋国務大臣 国でやるような事業の場合もございます。たとえば建設大臣が主務大臣であって意見を述べるということはどうかなというようなことから、さようなことに相なったものであると思います。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 意見を述べる者がどうかなというのは、それはどういう意味ですか、いまおっしゃっているのは。環境庁長官環境行政についての責任を持ってもらわなければならない。環境影響評価というのは、環境行政についての責任をどこまでも問われますよ。関係住民、国民というのは環境庁に対して期待をかけている。環境庁長官のいまの御答弁は納得できませんよ。もう一度いまの点について御答弁をお願いします。
  80. 土屋義彦

    土屋国務大臣 中公審の答申におきましては、「環境庁長官は、個別の事業についても、事業計画決定に際し、環境保全上の配慮が適正になされるよう、必要に応じ主務大臣に対して意見を述べることが適当である。」とされているところであるが、要綱におきましては、個別の事業について主務大臣に対して意見を述べることとしており、また主務大臣に対しまして述べられた環境庁長官の意見が適正に配慮されるよう所要の規定を設けることとしておりまして、実質的には中公審の答申の趣旨に沿ったものである、かように考えておる次第であります。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 何が中公審の趣旨に沿っているんですか。いま中公審の内容についてお読みになったことからすると、今回の環境庁が通産省に出されているこの回答書の中身というものはまさに矛盾も矛盾、はなはだしい矛盾ですよ。主務大臣が意見を言っても、その意見に事業者が拘束されないのです。何言ったって事業者は主務大臣の意見に拘束されないのです。そうして評価書作成について事業者はその主務大臣の意見に従ってやらなくてもいいということを言っているのです。そう述べてあるのですよ。そういう主務大臣環境庁長官が意見をおっしゃったって無意味じゃないですか。まさに中公審が言っているところを具体的に披瀝しようといったらこんなことにならないですよ。環境庁長官立場、そして意見をどのように反映するかという配慮があってしかるべきなんだけれども、今回環境庁から通産省に対する回答書はこういうふうに書いてあるのです。「評価書作成においては事業者は主務大臣の意見に拘束されないのであるから、必ずしも主務大臣の意見に従っているものではない。」、こう断言しているんですよ。もう一度そこのところをじっくり理解していただいて、環境庁長官、再度御答弁をお願いします。これは私は中公審の答申を問題にしているんじゃないんです。――いいです、私は長官に聞いている。局長はもういいです。長官どうぞ。
  82. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えを申し上げます。  私は、法案の作成等に対する各省庁との折衝に当たりましては、やはり環境保全、環境を守るという精神に徹して、そして各省庁と折衝をせよというきつい厳命を出しておりまして、さような内容の話し合いがなされたということは、率直に申し上げまして、私、全然存じなかったような次第であります。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 これは驚くべきことを長官としてはいま御答弁になりました。これは大変な中身なんですよ。それ自身を長官が御存じないというのは、全くそれは長官の面目まるつぶれというかっこうだろうと私は思います。行政の最高責任者が御存じない間に担当の局長がこういうことに対して勝手な内容を回答として出すなんて、そして各省庁の詰めというのはこういうかっこうで行われているということになれば、もってのほかだと言わざるを得ないです。  これはまだまだこれから申し上げますけれもど、この内容については金子局長というのが恐らく担当者として作成に責任をお持ちになっていらっしゃるんでしょう。金子局長というと、いままで種々一つ一つの問題に対して思わしくないことが山ほどあると私は思うのだけれども、これは役人としてもってのほかですよ。私は環境庁の役人として恥ずかしい限りだと思う。いまの長官が御存じないということを聞いて、ただただ私はさらにあきれました。よろしゅうございますか、こういうことは……。  それではさらに申し上げましょう。先ほど環境庁長官は、都道府県知事に対してその立場を重視して、そうして都道府県知事がこういう問題に対してもいろいろチェック機能を果たすということに対して期待をかけていらっしゃるというふうな向きのことも御答弁の中でおっしゃいましたが、肝心かなめの「環境影響を及ぼすおそれのある地域」というのは一体だれがどういうふうに認定するのですか、判定は一体だれがやるのですか。
  84. 金子太郎

    ○金子政府委員 法律、政令の段階におきまして、何らかの基準を設けたいと考えております。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 局長、そういう逃げの答弁というのは、それは聞けないですよ。回答書には「環境影響を及ぼすおそれのある地域」の判断について、関係都道府県知事が意見を述べることができると規定されている場合でも、それは事業者の判断を法的に拘束するものではなく、その行為には行政処分性は認められないとちゃんと書いてあるのですから、これはまさに「環境影響を及ぼすおそれのある地域」というのは、一にも二にも三にも四にも、どこまでいったって事業者の自己判断で決めるべき中身になってくるのです。事業者が全部万事これについて、これが「環境影響を及ぼすおそれのある地域」だと言えば、それで事足りるというかっこうですよ。都道府県知事がこれに対して意見を述べたことがあったとしても、また述べることが現にできると規定されている場合でも、それは事業者の判断を法的に拘束するものではないとちゃんと書いてある。ないと書いてあるのです。長官、これはいかがです。
  86. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  二月の時点における問題であろうと思いますが、先生御案内のとおり、今回五度目なんですね。いままでは各省庁との話し合いも入口でシャットアウトされましたが、幸い今回はおかげさまでテーブルに着きまして、いろいろ話し合いが行われたようなわけでございまして、環境庁の諸君も今度こそ何とかひとつ実現をさせたいということでいろいろ意見を述べられたことは事実であろうと私は思います。その過程において行き過ぎの点があったことはまことに遺憾である、かように私は考えておる次第でございますが、すでに去る二十八日に要綱も決定いたし、ただいま原案の詰めに入っておるようなわけでございますので、その点はぜひひとつ御理解を賜りたいと思う次第であります。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 環境庁長官のお気持ちはわかりますが、この二月十九日段階から今日までの間に、こういう環境庁がもとにして考えて回答をお出しになったそのもとというのは、まるで違うものに変わっているのですか。同じものだと私は思っています。法案要綱に従って、また法案に従って通産省としたら質問書を用意して出している。それに対して環境庁としたら回答を出しておられる。今日、その要綱なり法案なりがまるで違うものを環境庁として討議を進められるなら問題は別ですよ。素地は同じなんです。そうすると、二月段階でございますからとおっしゃるその物の言い方は聞けない。  それと同時に、一生懸命の余り行き過ぎがあったというふうな御判断でおっしゃっているようでありますが、この節、申し上げましょう。法律を制定したいという一念から、法制定に反対をしている財界、開発者側、各省庁、その人たちに対して同意を取りつけるためになりふり構わず無原則な譲歩を重ねて、形だけでも法制化にこぎつけたいというのは間違っていますよ。やはり環境庁として譲っちゃならないという線がある。環境行政を全うするためには、住民本位でやりたいとさっき長官が御答弁になったとおりなんです。何もかも全部事業者の思うままに任せ切って、これに対してのチェックが一体どうなのかという点を考えていくと、この回答書についてはチェックがない。まるでないと申し上げてもいいのですよ。ですから、長官はいまその気持ちを察してほしいという意味も含めておっしゃったに違いないのです。環境庁長官の気持ちはわかります。だけれども、事実については、そのお気持ちをいろいろとしんしゃくして、曲がったものを、曲がっているけれどもしようがないといって認めるわけに私はいきません。この点はよろしゅうございますか。私はそう思いますよ。  それでは、さらに内容について少し質問を続けましょう。  もし事業者がアセスメントを法定手続に沿って行わない場合、また十分に行わない場合、それに対しての配慮はどのようになされますか。
  88. 金子太郎

    ○金子政府委員 先ほどから申し上げておりますように、この法律は事業者のセルフコントロールをスケルトンというか基本といたしております。したがって、法律的には事業者が主務大臣の意見を聞かないあるいは住民の適切な意見を取り入れないという場合に、それをもって何らかの罰則を科するとかということはいたしておりませんし、それから最初にお話のございました許可は、このアセスメントは許可前の手続をやらせているものでございまして、その後段階には、許認可等のそれぞれの法律に基づく主務大臣の権限が控えておるわけでございますが、その主務大臣の許認可の権限の中で覊束裁量に係るもの、すなわち許認可の要件が法律でA、B、Cというふうにはっきり書いてある場合で、しかもそのA、B、Cというものが、それぞれの条件を満たしている、残念ながら環境上の配慮条項が入っていないという覊束裁量については、法律的には不許可とすることはできない。ただ、その場合にも何らかの配慮が働くことはできるように何か工夫はできないかというようなことは考えておるわけでございますけれども、それは恐らく各省設置法に基づく行政指導的なものになろうということでございます。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 いろいろ弁解がましい御説明をされますけれども、文書を読めば、やはり事業者本位で、事業者が考えれば、どこまで読んでもそれで万事尽きているような内容なんです。  それではお伺いしますが、いま住民の意見を取り入れて、適切な意見を取り入れるようにするというようなことをおっしゃいましたが、それがなされていない場合に、関係住民はその問題にどういうふうに対応できるのですか。これは裁判に訴えることはできますか。いかがですか。
  90. 金子太郎

    ○金子政府委員 まず裁判の問題でありますけれども、この法律は行政処分性はございませんから、裁判の対象にはならないというふうに法学者に委託した検討会の方から報告をいただいております。  それから、住民の意見が取り入れられない、適切な意見があるけれども十分に取り入れられないという場合には、評価書は――逆でございますね。評価書ができて、その内容をよく見たところが住民の適正な意見が十分に取り入れられていないという場合が考えられますので、要綱におきましては、環境庁長官は評価書について意見を述べることができるというふうになっておるわけでございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 関係住民の意見が十分に取り上げられていない場合、これについて関係住民は、それでは具体的にどういうふうに争えばいいのですか。問題をどこに持っていって、どういうふうにすればいいのですか。
  92. 金子太郎

    ○金子政府委員 この法律におきましては、主務大臣の最終的な判断及び環境庁長官が意見を述べる際の意見の二つ、それからもう一つは、評価書を作成する過程で知事さんが県内の意見をまとめて意見を述べられますので、その過程で知事さんの意見に反映させるという三つの道があろうかと思います。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 幾らそういうことをおっしゃっても、この回答書の中にこう書いてある。「関係住民の意見書を事業者に提出することは、いわば情報への参加であり、いわゆる意思決定への参加ではないと位置付けている。」とちゃんと書いてあるのです。だから言いたいことは何でも言いなさい、聞きおきましょう、しかしそれまでのことで何の意味もありませんよ、これは簡単に言うとそういうことですよ。住民の方々、意見があったらどうぞ言いなさい、だけれども、それは環境影響評価について何ら意味のあるものではありません、意思決定についてあなた方が何を言っても、それは意思決定に参加をすることではないのですよということですよ。環境庁長官、これはどうですか。先ほど住民のためと最初におっしゃった。その住民の意思というものは「いわゆる意思決定への参加ではないと位置付けている。」のですよ。それでは何なんだと言ったら、聞きましょう、聞くだけだよ、住民の意見から情報を得るだけの話であって、そのことに対して尊重しようが尊重しまいが何ら問題にならないという中身じゃないですか、これは。いかがでございますか、長官局長はもういいです。
  94. 土屋義彦

    土屋国務大臣 先生がただいま御指摘になられておりますのは、二月の時点の通産省との話し合いの問題をお取り上げになっておられると思うのでございますが、去る三月の二十八日に決定されました要綱におきましては、先ほど金子局長からもるるお話がございましたとおりでございます。特に要綱におきましては、関係住民は、準備書の縦覧期間が一カ月ございますし、それからまたその満了の日の翌日から起算して二週間ございますので、その間に事業者に対しましていろいろ意見等がございましたならばその意見が述べられる、こういうことになっておりますし、また知事が必要に応じて公聴会も開けるといったようなことに相なっております。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 長官、それは幾ら意見をそういうふうに言ってもだめなんですよ。「関係住民の意見書を事業者に提出することは、いわば情報への参加であり、いわゆる意思決定への参加ではない」と言っているのですから、幾ら意見を言ってもだめなんですよ。縦覧期間にはるばる出かけて――事業者がその範囲を認定するのですから、はるばるにならないかもしれませんが、住民が出かけていって、貴重な時間を使って一生懸命にその内容をしんしゃくして、そしてこれはコンピューター相手の勝負になるだろうと思いますから、それぞれ時間を駆使して一生懸命に調査して意見を出したって何にもならないのです。意見は聞きおきましょうで終わってしまいますよ。こういう回答書の中身なんですが、長官、これについて何らか思われるところがあろうと思いますよ。いかがでございますか。
  96. 土屋義彦

    土屋国務大臣 私は折衝の過程におきまして金子局長から何回か説明を受けたのでございますが、そのとき、環境庁長官としてこの法案に対して物が言えないようなことであるならば私は出すつもりはありませんと金子局長に対しましても厳しく申し上げたようなわけでございまして、先生がお取り上げになっておる時点におきまして、さような誤解を受けるような話し合いがなされたということは、私は本当に残念に思っておるような次第でございますが、先刻来申し上げておりますとおり、最後の評価書の段階におきまして環境庁長官としてチェックができる、こういうことに相なっておりますので、その点もぜひ御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 長官は一生懸命にるる説明されますけれども、そんなチェックができるようになっていないのだ、この回答書では。どういうチェックがありますか。チェックできるようになっていないのですよ。いま申し上げたとおりに、関係住民の意見というものはいわゆる意思決定への参加ではない、情報参加だけにとどまるというふうなことを言って、さらに住民は裁判に訴えることもできないのですよ。その問題を持って法廷に行くことはできないよというふうに回答書では書いてあるのです。  その部分を言いましょうか。これは恐らく、法学者に委託をして、その内容を考えていただいたとさっき局長が答弁されたその部分だろうと思いますが、法学者にもいろいろございます。法学者にもいろいろな立場がございます。恐らくは局長から見ると、この人に頼めば、住民が裁判に訴える権利はないよということをいろいろとへ理屈を並べて理屈を組み立ててもらえるというふうに考えて頼まれたに違いないと思われる部分がある。「現在環境訴訟においては、被告となる事業者に事業実施が環境に及ぼす影響について主張、立証させる例が多いが、環境影響評価の実施により、訴訟の審理において事業者が環境影響評価書を提出すれば、それ以上の主張、立証の必要性は軽減され、原告に悪い影響についての主張、立証の必要があるとされるという事実上の効果が生ずるものと考えられる。」こういうように書いてあるのですよ。これは一体どうですか。裁判で争うときに、住民の意見というものは意思決定への参加ではない、まるで聞いても聞かなくてもいいような形になっている。意見としての取り扱いを受けながら、裁判の過程では、事業者が勝手につくった環境影響評価書を提出すれば、それ以上の主張も立証も事業者側は不必要なんだ、それ以上は住民の側にやらせなさい。恐らくはできっこないだろうという意味もこの中にあるに違いないと思うのです。ひどい話ですよ。どうですか、環境庁長官
  98. 金子太郎

    ○金子政府委員 最初に住民参加の件でございますけれども……
  99. 土井たか子

    ○土井委員 あなたは環境庁長官ですか。環境庁長官と私は言っているのです。
  100. 金子太郎

    ○金子政府委員 長官のお許しをいただきまして……
  101. 土井たか子

    ○土井委員 そんなことは勝手じゃないですか。
  102. 土屋義彦

    土屋国務大臣 先生、技術的な問題もございますので、ひとつ局長から御答弁をお許し願いたいと思います。
  103. 金子太郎

    ○金子政府委員 住民参加の問題でございますけれども、意思決定というのは、直轄の事業でいえば建設大臣事業決定をやる、あるいは許認可に係る事業であれば許認可を行う、こういう行政処分でございます。その行政処分そのものに住民の意見が入ってくる、参加するということは可能かということでございますれば、そうではない。もしもそういうことをしなければいけないということであれば、住民の入っている第三者決定機関というものを新たに設けて、その第三者決定機関が一つ一つ事業について、アセスメントの内容がいいから許可してよろしいとか、悪いから許可してはいけないということを新たにやらなければなりません。それで、現在私ども考えておりますアセスメント法案では、そこまで考えているものではございません。ですから、私どもは住民意見については、住民参加という表現は誤解を招くから情報参加という表現の方が適切であろう、こういうことを申し上げているわけでございます。
  104. 土井たか子

    ○土井委員 住民参加ということに対して一体だれが誤解するのですか。住民参加ということに対して誤解をするから情報参加に改めた、あなた何を言っているんですか。参加にもいろいろあって、住民参加といってもこれは包括的な意味でしょう。どういうふうに参加するのかというその中身が問題なんですよ。住民の意思は意見書で反映するということは、まず住民としては努力を払って結構だ、しかし、幾ら努力を払っても、そのことを意思決定するときには考えなくてよい、これは事業者に対して恩恵的に考えているんじゃないですか。事業者の立場をこういうふうに配慮しながら、事業者が意思決定するときに住民がいろいろ意見書というものを事業者に対して提出するだろう、しかしその参加の仕方は、意思決定をするときに、それをしんしゃくして意思決定しなさいという参加の仕方ではないよと言っているのです。そこが問題なんですよ。それでは住民の意思はどうして生かされるのですか。  それと同時に、これは少しわかりにくい方向に質問を進めることになるかもしれませんが、いまの御答弁で、行政事件としては構成し得ない、行政上の処分になり得ない、なぜかと言ったら行政処分じゃないからということをおっしゃいました。実は法学者に委託をしていろいろ考えていただく以前に、局長が用意されている環境庁の回答書を見ると、そういうふうな論理じゃないのですよ、よく読んでみると。どういうところにその論理があるかというと、行政事件訴訟法上の保護が住民に対して与えられていないという論理。「この住民の地位は、本法案に基づいて事業者が地域の範囲について判断したことにより生じる公法上の地位であるにとまり権利が発生するわけではない。この公法上の地位は、現行の行政事件訴訟法上は司法上の保護は与えられていない。」こう言っているのですよ。「司法上の保護は与えられていない。」こう言っているのですよ。行政処分云々の問題じゃないじゃないですか、これは。つまり事業者が、どの人たちを指して住民と言うか、どういう範囲を指して環境影響を及ぼすおそれのある地域というふうに言うかということを判断し決定する。事業者が決定するから、したがってその結果、公法上の地位であるということにその住民の地位はとどまるんだ。したがって、行政事件訴訟の対象にはなり得ぬ、こういう理屈を展開しているのであって、行政処分云々の問題じゃないのですよ。事業者にそれを認定する、判断する、決定するという権限があるがゆえに、裁判で争っても住民の方々はだめですよ。裁判に提訴するということがあなた方にはありませんよ、権利としてありませんよと言っているのです。その点、そうでしょう。
  105. 金子太郎

    ○金子政府委員 ただいま言われました点はそのとおりでございますけれども、私が申し上げましたのは、アセスメントの後段階に控えているいわゆる行政処分の意思決定に参加するという形をとるのは非常にむずかしい、こういうことでございます。
  106. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、住民は、立法、行政、司法、これを指して国政と申しますが、国政において保護されないのですね。憲法の三十二条では、すべて国民は裁判を受ける権利があるのです。この権利を環境庁の一局長が剥奪するのですか。憲法の十三条では、立法その他の国政の上で、国民の財産、生命、憲法が保障している権利に対しては最大限尊重を必要とする、こう書いてあるのですよ。国民の裁判権をこういうかっこうで奪うのですか。司法権に対する侵害もはなはだしいと思いますよ。長官、いままで住民訴訟というのは、全国大体約六十件ございます。いま約四十の工業開発が予定をされております。環境庁とされてはいままでぎりぎりのところでこういう訴訟に対しては中立の姿勢を保ってこられております。当委員会においても係争中の事件について質問をわれわれも差し控えてきた。たとえ裁判過程にある問題をここで取り上げて質問いたしましても、いま係争中の事件でございますから答えは差し控えたいと言って答弁はされなかったのです。万事裁判所にゆだねられるという姿勢でこられたというところは、最低限必要な姿勢として私たちは認めてきた。ところが、いまこの回答書を読むと、訴訟にならないようにいろいろと状況をつくり出していっていると言わざるを得ないのですよ。国民の裁判を受ける権利に対して侵害をやっているじゃないですか。ひいては裁判権、司法権に対する侵害ですよ、この中身というのは。幾ら学識経験者を駆使して考えてもらったと言われるかもしれませんけれども、その前提にある回答書のいま私が申し上げたようなところ、これは私はもってのほかだと言わざるを得ない。長官、お聞きになっていてどうお思いになりますか。もういいですよ、局長は。
  107. 金子太郎

    ○金子政府委員 説明さしてください。
  108. 河野正

    河野委員長 局長説明してください。その後長官の所信を聞きます。
  109. 金子太郎

    ○金子政府委員 私は土井委員の御質問はこの法案に対する若干の誤解があるのじゃないかと思うております。  と申しますのは、私どもはこの法案が成立したからと言って、そのために訴訟ができなくなるとかあるいは逆に訴訟がふえるとかそういうことはない、こういうたてまえでつくってきたわけでございますから、立法権や司法権に対しては何ら私どもさわっていない、そういう私ども立場を御理解いただきたい、こういうふうに思います。
  110. 土井たか子

    ○土井委員 国民の裁判を受ける権利についてとやかくそれに対しての侵害とおぼしき内容にわたることを環境庁としてお考えになるのは、司法権に対する侵害じゃないですか。これは裁判の事件がふえるとか減るとかそういう問題じゃ断じてないです。このことによって住民は裁判に訴えるということが場合によってはできなくなる、まことに不利な立場に立たされる。これはもう回答書の内容を見たら明々白々ですよ、先ほどから申し上げている記述の中身からして。環境庁長官、どういうふうにお考えになりますか。もう言いわけはいいです。
  111. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  開発に当たりまして地域の住民の理解と協力を得るということは、この法案の重要な柱でございます。さような意味におきまして、先刻来御答弁申し上げておりますとおり、説明会を開いて、そしてまた意見を述べていただくとかあるいはまた知事が必要とあらば公聴会を聞くとかいろいろそういう法的な手段が講ぜられているようなわけでございまして、決して地域の住民の方々を無視しておるというようなわけではございませんので、その点はぜひひとつ御理解を賜りたい、かように思います。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 幾ら大臣がいろいろとその辺について意を尽くしてお気持ちを披瀝されても、この回答書の内容とは、そのお気持ちがそぐわないのです。  それで、それじゃ基本的に長官にお尋ねしますが、この「環境影響を及ぼすおそれのある地域」とか住民の地位というのは事業者の判断と決定に万事ゆだねられてしまっていいものでしょうか、いかがですか。
  113. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  この法律自体がやはり環境アセスメント事業者みずからの責任とみずからの負担におきまして環境への影響を明らかにしていくことが基本であると考えております。事業者の行う環境アセスメント調査のやり方等につきましては、国が指針を示し、またこの手続の過程におきまして知事が関与するとか、環境アセスメントが適正に行われるような仕組みといたしておるような次第でございます。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 それは環境庁長官、そういうふうな仕組みをおっしゃっても、たとえば先ほども言ったとおり、繰り返しになりますが、「環境影響を及ぼすおそれのある地域」の判断については、各関係府県知事の意見は法的に事業者の判断を拘束しないんですよ。それからまたこの地域の住民の地位についても、事業者が地域の範囲について判断し決定するために、事業者がこれが住民だと言う人だけが住民なんですよ。これに対していろいろ指針をおつくりになっても、事業者が判断することに万事最終的には判断がゆだねられてしまうという点についてどのようにお考えになりますか。回答書にはそういうふうにちゃんと書いてあるんです。――いいです。長官に聞いています。
  115. 土屋義彦

    土屋国務大臣 先ほど来るる御答弁申し上げておりますとおり、このアセスメントを行う時点におきまして基本的事項、指針につきまして主務大臣といろいろ協議し、環境庁長官が行うことになっておりますし、また最終的に評価書の段階におきましても、主務大臣等に対しましても環境保全上の問題について十分意見が述べられるという仕組みになっております。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 その意見を述べることも結構、指針を用意することも結構、ただ、その指針や意見というのが事業者をどのように法的に拘束するかという点が問題になってくるのですよ。幾ら意見やそれから指針を用意しましても、事業者はそれに関係なく、自分で考え地域が「環境影響を及ぼすおそれのある地域」であると考え、また地域住民は自分たちが考える住民だけが地域住民だというふうに考えることをどういうふうにしてチェックするのですか。いま長官のおっしゃることに対しては、何ら法的拘束力がないということをこの回答書ではすでに通産省に対してお答えになっているようであります。いかがですか。
  117. 金子太郎

    ○金子政府委員 再三申し上げますように、法的拘束力はございません。ただ、この法律の仕組みでは、知事さんが意見を述べますから、その知事さんの意見というのは非常に重みを持っておると考えておりますし、かつ過去八年間の実績を見ましても、そういう問題は良識的に判断されていく、こういうふうに期待しておるわけでございます。
  118. 土井たか子

    ○土井委員 私はここに、環境庁がいまも、そしていままでずいぶんこの先生の意見を尊重し、いろいろと審議会の席においても、この意見について重視をされてきた学者、東京大学の原田尚彦教授の論文を持ってまいっております。昨年八月の「ジュリスト」の総合特集の中にある一文でございます。「環境影響評価」という表題でございますが、その中で、「川崎市の実績をみると、川崎市条例では、住民意見を聴取した後、事業者は修正報告書を提出することとされているが、修正報告書の段階ではそのほとんどが零回答であり、審議会での指摘を受けてはじめて報告書の欠陥を修正する事業者が大部分のようである。これをみても、事業者の良心に期待するだけでは、事業計画への住民意見の反映は覚束ない。」とちゃんと書いてあるのですよ。したがって「住民意見は事業者により聴きおかれるだけになりそうである。」とも書いてあるのです。これは自治体の知事の意見というものを尊重されるであろうなんて甘い考えを持っていたらとてもだめですよ。事業者をそれほど信用して、何もかも事業者任せで環境アセスメントができるとお考えなんですね、局長は。――いいですよ、局長。そうでしょう。
  119. 金子太郎

    ○金子政府委員 川崎市の場合はマンションの建設などについてもアセスメントをさせておりまして、政府、国などによる行政指導がほとんど行われていない業者の評価書、こういうものが多かったと聞いております。私どもは環境に著しい影響を及ぼす相当規模の事業を国のアセスメント法の対象事業として取り組んでおりまして、その大部分は、先ほども申し上げましたように、国や県のみずから行う公共事業でございますし、残りの一部民間事業もございますけれども、大規模な電源開発等許認可というものでかたく強く縛っているものでありますと同時に、主務大臣行政指導もいままでもかなり行われておりますし、今後法律を施行することができるようになりますれば、従来以上に強い行政指導が期待できる。したがって、法律でぎりぎり縛り上げて、許認可を新たに導入するようなそういうやり方をとるよりは、事業者のセルフコントロールというものを柱に据えたやり方でやれる。それがまた従来八年間やってきた実績を徐々に徐々に改善していく上でもいいやり方ではなかろうか、このように判断した次第でございます。
  120. 土井たか子

    ○土井委員 事業者を過信されて、そして自己規制ということに万事をゆだねようという基本姿勢で臨んでいらっしゃるということが、いまの局長答弁で非常にはっきりうかがい知れるのですが、それじゃだめだということで、実はアセスメントの法律が必要だということになってきたんじゃないですか、経過は。いままで事業者に任せてきたことのためにいろいろと住民側からの訴訟が、これは訴訟を起こすなんということはよくよくのことですよ。訴訟を起こしてまでその問題に対して住民側の意見を計画の中にきちっと据えてもらわなければならないということでこのことが起こり、そして全国的にそれが展開してきているということなんです。住民側からすれば、住民の意見というものが具体的にどのようにアセスの中で組み入れられるかということこそ一番中心課題ですよ。ところがその点は万事振り切って、事業者を信用して、万事事業者でやってください、何もかも事業者の判断に任せます、ひとつ事業者しっかりやってくださいということでは、これはアセスの意味がない。いろいろと行政指導の上で抑えをきかすとおっしゃいますが、それでは条例はどないになるのですか。
  121. 金子太郎

    ○金子政府委員 その前に、事業者の思うままでやれるようなお話でございますけれども、過去の実績を見ていただきましてもおわかりいただけますように、そこにはやはり事業者の良識があり、かつその評価書、準備書等を公告するあるいは説明会を開く、そういうようなプロセスを経ましてあるいは知事が関与する、意見を言う、あるいは環境庁長官が評価書について意見を言う、こういう仕組みを通じまして事業者が良識ある評価書を出す。あるいは先ほどからお話ございます訴訟につきましても、アセスメントの後段階に控えております許認可自体は全然変わりがないわけでございますから、それに関する訴訟、その適否等に関する訴訟は従来と変わりなく同じようにやれると考えている次第でございます。
  122. 土井たか子

    ○土井委員 くどくどといろいろ弁明されますが、一例を挙げましょう。  宮崎のアセスはどうなんですか。あれは小学生が見たって具体的に内容がでたらめだということがはっきりするようなアセスじゃなかったですか。そうして事業者側はコンピューターを駆使しているのですよ。住民側は素手です。何も持たない。専門知識にも乏しい住民ですよ。片一方はコンピューターを駆使して、アセスの会社を動員して、恐らく多額の費用をそれにつぎ込んで資料というものを用意していくのですよ。初めからこれは隔たりがある。したがいまして、そういうことからすると、住民にどれだけの保障を具体的に認めるかということを終始一貫考えないとアセスの意味がない。宮崎のあのアセスの一例を見たって、こういうことははっきり浮かび出ているのですよ。事業者の過信はやめてもらいましょう。恐らくこの法律が制定されると、これから続々アセス業者というのは出てくると思います。もうすでにコンピューターを駆使しながら、アセスメントの法制化が実現すると年率二〇%で需要が伸びて、五年後には一千億円市場になるということも取りざたされて、業者団体がいろいろこれに対して動いているという話も耳に入ってくる。そういうことに対しまして、これは住民側についてどれだけの保障があるかということを今回の回答書を見た場合に、全くこれはもう度外れて住民に対しての配慮というものはそっちのけ、事業者放任もいいところですよ。  条例について聞きますが、条例はどういうことになるのですか。
  123. 金子太郎

    ○金子政府委員 その前に、宮崎のアセスは計画アセスでございまして、この法律は対象とするものではない。それをいかにしてこの軌道に乗せるかということは、私どもの次の課題であるということをまず御理解いただきたいと思います。  それから、条例との関係でございますが、現在私ども関係省庁との間で固めました要綱におきましては、法律と条例関係は、基本的には憲法九十四条に基づいて従来の解釈論というものにゆだねる。したがって、法律が先占している領域について条例でこれを改めるとかなんとかということはできない。しかしながら、この法律が先占しない領域については条例を制定することを妨げるものではない、そういう立場をとりまして、他方で、地方公共団体の長がアセスメントについて行うもろもろの施策につきましては、この法律の精神を尊重することを期待している。こういうことでございます。
  124. 土井たか子

    ○土井委員 この法律の精神を尊重すれば条例で上乗せというのは認められることになるのですね。
  125. 金子太郎

    ○金子政府委員 上乗せという言葉を使ったのはいろいろ誤解を招くもとであったと反省をいたしておりますが、たとえばこの法律で縦覧期間等を決めておりますが、それを条例で長くするということはできない、あるいはこの法律で事業者に幾つかの義務を課しておりますが、その義務を加重することはできない。しかしながら、これは例としていいかどうかわかりませんが、公聴会の規定の入る前の段階での解釈論でございますけれども、仮にこの法律に公聴会の規定が入らなくても、都道府県知事さんが意見を述べるために公聴会を開くこと自体はできる。だから、その意味ではそれをしも上乗せと言うならば上乗せはできる、こういうことになるわけでございます。
  126. 土井たか子

    ○土井委員 いまその上乗せについて基本的にできないという御答弁をされているわけですが、先ほどちょっと私が参考に引用した原田教授の文章の中で「国がきわめて不十分なアセスメント法を作り、自治体のアセスメント条例の制定権を抑制しようとするのは、地方自治の本旨よりみても、またアセスメント技術の開発進歩を期すうえからみても、きわめて疑問な措置といわなければならない。」こう書いてあるのです。私はこれは本当にこのとおりだと思います。同感です。  ところが回答書を見ると、このアセスメントに対して上乗せということが行われた場合には、その「条例は法律、ひいては憲法に違反するものであり、無効であると考える。」と言って、そしてなぜ上乗せをできないかということについては、こういうふうな趣旨がちゃんと書いてある。「「この法律の趣旨に沿う」とは、法案で定める手続その他の行為について事業者に法案で定める以上の負担を課しえない」という意味であるから、したがって上乗せする場合の処置というのは、こういうことで事業者がこの法案で定める以上の負担を課すという意味になるので、これは認められない。つまりここも事業者本意なんですよ。事業者の立場をおもんぱかってこの法案ではしっかり事業者のめんどうを見てあります。したがって、ここで事業者について、ちゃんと法案で用意したところを事業者が行えばそれでいいのだから、それ以上の上乗せということを条例でつくるということは不必要だし、それは認めない、環境庁はこう言っているのです。まさにこれは自治権に対する侵害じゃないですか。問題は事業者じゃない、住民なんですよ。住民側がいかにこの環境影響のために将来の財産、生活、健康が変わるか、そういうことが問題として問われているのに、この法案以上のことを事業者に対しては負担かけないよ、だから条例の上乗せも認められないのだという論法なんですよ。これはもってのほかだと思います。  もう局長、答弁は要りません。長官、この点について御見解をひとつお聞かせください。
  127. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先刻来御答弁申し上げておりますとおり、折衝のさなかにおきまして大変行き過ぎのあった点につきましては、私、環境庁長官でございますから、深く反省をいたしております。
  128. 土井たか子

    ○土井委員 最後に申し上げたいのですが、これは開発をやる事業者が自分で何もかも判断をし決定をし、住民が意見を言ってもそれは聞きおきましょうで終わり、裁判に訴えることも住民としては認められない。事業者本位ももうこれはいいところなんです。何から何まで全部事業者がやれるようになっている。たとえて申しましょう、いわば大学受験をする学生が受験場に行って答案に記載をして、その試験内容を自分で採点するようなものであります。早稲田大学の不正入試どころの騒ぎじゃない。こういうことを環境庁として認めるというのは、まさに環境行政の放棄だと言わざるを得ない。通産省に対してこんなこびを売るような回答書を出すのでは、環境庁の看板をかけ直してもらわなければならないと思います。もはや環境破壊庁ですよ。  いま長官は御答弁で、思わしくない、これは行き過ぎた内容にわたるというふうなこともおっしゃいまして、遺憾の意も表されましたが、これは回答書としては撤回されますね。内容は、ゆゆしいものですよ。長官、いかがでございますか。
  129. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  土井先生、私は、長官就任以来、再三庁内を回ったりして、皆さんひとつ環境庁の職員たる誇りと自信を持ってもらいたい、私もやはりみずから先頭に立って姿勢を正して国民のための環境行政推進してまいりますということを訴えてまいっておる中にあって、ぼくは率直に言って、何としても今回は実現させたいという職員の熱意もあったこと、これはひとつお認めをいただきたいと思います。  行き過ぎのあった点につきましては、私は率直に反省をいたしておるのでございますが、通産省との折衝において出されたことにつきましては、ちょっと撤回というわけにはまいりませんが、足らざるところは今後ひとつ十分話し合いながら補ってまいりたい、かように考えます。
  130. 土井たか子

    ○土井委員 どういう話し合いをされるのですか。話し合いとおっしゃるのは、あの文章は思わしくないからひとつ改めてやろうという話し合いですね。
  131. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  すでに去る三月二十八日に要綱が決定されまして、そして法律案の原案の詰めに各省それからまた法制局においてただいま検討がなされておるわけでございまして、それは当初の時点においてそういうような話し合いがなされたものと理解をいたしておるようなわけでございますが、行き過ぎの点につきましては、重ねて申し上げますが、私を初めといたしまして、深く反省し、今後対処してまいりたい、かように考えておりますので、どうぞひとつ御理解を賜りたいと思います。
  132. 土井たか子

    ○土井委員 これは行き過ぎじゃないのです、足らないのです。環境行政としての基本姿勢がないという意味で足りないのです。断じて行き過ぎじゃない。もちろん中身からすれば司法権に対していかがかと思う中身もありますよ。まず何よりも住民に対して一体これは何だという中身ですよ。そういう点からいったら、行き過ぎという表現もあるかもしれないけれども、私は環境行政という意味においては全く基本姿勢を欠いているという意味で足りないと思っているのです。長官、単に言葉じりで誤解を招くことがあったとかなかったとか、そんな問題じゃない。だから、きょうは最初に私がお尋ねしたのは、一体だれを中心にアセスメントをお考えになりますかと言ったら、住民だとお答えになった。この回答は住民じゃないのです。中心考えているのは事業者なんです。どこからどうしても事業者なんです。きょうの大臣の御答弁にこの回答書は矛盾するのだ。したがって、そういうことからすれば、熱意の余り行き過ぎたこともある。それは部下のことですから、長官はかばってそういう答弁をされるかもしれないけれども、しかし、私は環境行政の基本問題を問いただしているので、事はそうなまやさしいことじゃないと思うのです。長官、どうですか。それは今国会に出したいという御執心のほどは私よく存じていますし、アセスメント法が必要であるということは、私たちもこの考えは人後に落ちません。けれども、開発のための免罪符をつくるということはいささかも考えておりませんよ。事業者が何をやってもいいということじゃないんです。万事事業者の判断に任せる、それじゃ困るので、それを住民の立場からどのようにチェックされるかということに対してわれわれが納得できる内容でなければならない、それこそアセスメント法だと私たちは思っています。長官、それからすると、撤回はむずかしいとおっしゃったけれども、改めて出直すようなつもりで通産省に対していろいろ折衝してもらわなければならない、環境庁という立場で折衝なさらないと困ると思うのです。通産省じゃないですよ、こちらは。だから、環境庁という立場環境行政に対して責任を持つ、一〇〇%責任を持つという姿勢でひとつ出直すということで話を進めていただきたいと思います。いかがでございますか。
  133. 河野正

    河野委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  134. 河野正

    河野委員長 速記を始めてください。  環境庁長官
  135. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  環境に著しい影響を及ぼす開発に対しましては、地域の住民の皆様方の理解と協力を得ること。何と申しましても地域の住民の皆様方はその地域の環境に対しましては十分熟知をされておりますので、それらの方々の意見を吸い上げて、そして環境影響評価を行うということは、この環境影響評価法案の重要な柱でございます。さような意味におきまして、先刻来御答弁申し上げておりますとおり、説明会を開き、説明会において意見を述べていただくとかあるいはまた都道府県知事の意見を述べよとか、そういう仕組みがいろいろなされておるようなわけでございまして、決して住民の皆さん方を無視しておるというわけではございませんので、その点はひとつぜひ御理解を賜りたいと思います。  また、先生の御意見を踏まえて、姿勢を正して今後も通産当局等とも折衝してまいりたいと思います。
  136. 土井たか子

    ○土井委員 最後に、環境庁長官のその決意のほどはいま承りましたが、ひとつこれは再度確認の意味も含めて申し上げます。  今回の通産省に対する回答書というのは、内容としては、非常に重大な時期に法案作成に当たる環境庁として意を決した回答書であるに違いないと私は思っているのです。この回答書の中身について、きょうの質問でもはっきりしたとおり、環境庁長官は御存じなかった。最高責任者である環境庁長官が御存じない間に――この回答書の中には思わしくない回答の内容がるるあちこちにあるわけですよ。環境庁長官とされては、御自身が御存じない間に出された回答書について、これの撤回を求めるのは、私は当然だと思いますけれども、いかがですか。環境行政の最高責任を全うされるという立場からなされば、私はそういう措置は当然だと思いますよ。そして今後、こういう問題に対しては、やはり大臣として直接責任を負っていただく、そういうことを重ねて申し上げたいと思います。いかがですか。
  137. 土屋義彦

    土屋国務大臣 折衝の過程においていろいろな話があったことは事実でございますが、すでに去る三月二十八日に要綱も正式に閣議において決定をされておるようなわけでもございます。私は、先生の御意見を踏まえ、今後も真剣に環境行政と取り組んでまいりたいと思いますので、その点はぜひひとつ御理解、御協力、御支援を賜りますようにお願いいたします。
  138. 河野正

    河野委員長 この際、午後三時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ――――◇―――――    午後四時七分開議
  139. 河野正

    河野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。則武真一君。
  140. 則武真一

    ○則武委員 私は、瀬戸内海環境保全特別措置法の実施後の問題点中心に若干の質問をさせていただきたいと思います。特にこれから赤潮の発生の時期を迎えますので、赤潮発生対策などを中心にお伺いをいたしたいというふうに思います。  まず第一に、瀬戸内海環境保全についての環境庁の基本的な姿勢についてお伺いをいたしたいのです。  御存じのように、五十三年六月に法律が改正されて、去年の六月から施行になって、約一年近くが経過をしたわけであります。瀬戸内海環境保全特別措置法、その法律の第三条には、基本計画の項で瀬戸内海についての大変重大な評価が述べられております。「わが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地として、また、国民にとって貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものである」、こういうふうに明記をされておるわけであります。  私も瀬戸内海の沿岸に住む者の一人といたしまして、瀬戸内海の環境保全には重大な関心を持つものであります。いまから三十年ぐらい前、昭和三十年以前のころの瀬戸内海は文字どおり白砂青松、魚介類の宝庫でありました。ところが、一九六〇年代から七〇年代にかけての高度成長時代で、三十年以前の瀬戸内海の姿は想像もできないような大変な環境破壊や環境汚染が進んできたのであります。  どういうことで瀬戸内海がそう急速に変貌させられたかということについてはいろんなデータがありますけれども、たとえばいま石油精製の基地が、日本の約四〇%の石油精製をする製油所が瀬戸内海に立地しているということ、もちろんそれには石油コンビナートという形で関連産業がつながっています。それから粗鋼の生産量で見ますと、全国の七〇%になっておりまして、特に鉄鋼、石油ということで公害企業がたくさん立地していることが海の汚染につながっているわけであります。臨海工業地帯を見ましても、水深が十メートル以内の海面はほぼ四〇%ぐらいが埋め立てられたのじゃないかと言われております。PCBの残留したままのヘドロがたくさんあっちやこっちの港にある。こういうふうな状況の中で、富栄養化が進んで赤潮が発生し、漁業に重大な影響が出ていると思うわけであります。  そういう状態を前提にしてまずお聞きしたいのですけれども環境庁長官は、この瀬戸内海環境保全特別措置法の運用をなさる責任者として、瀬戸内海をこれ以上汚さないということ、つまりこれ以上汚さないということは現状維持、こういうことを前提としてこの法律を進めていらっしゃるのか、それとも可能な限り現状よりもきれいな海にするのだということを前提にしていらっしゃるのか、ここのところで姿勢の二つの分岐があるわけであります。まず、そこの点をお聞きしたいと思います。
  141. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど先生が御指摘になられましたとおり、瀬戸内海はわが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝の地として、また貴重な漁業の宝庫として国民ひとしく享受し、また後世に継承すべきものであります。このような考え方に基づきまして、瀬戸内海の環境保全基本計画、それから府県計画の策定、現在策定中でございますが、水質総量規制の導入、それから富栄養化対策実施、自然海浜の保全等の諸施策を積極的に展開し、ただ単に瀬戸内海の環境の悪化を防止するにとどまらず、その状態を改善すべく努力をいたしておるような次第であります。
  142. 則武真一

    ○則武委員 ただ防止するのじゃなくて、さらに現状よりもよくするのだということをおっしゃったわけですけれども、後で関連してずっとお聞きします。  私ども共産党は、瀬戸内海環境保全臨時措置法ができたその後の後続法としての今日の特別措置法ができるに当たりまして、政府にもいろいろ申し入れもし、私どもの見解も発表してまいりましたが、残念ながらもう一つ瀬戸内海を長官が言われたようによりよくしていくという点での目標が不明確ではなかろうかと思うのであります。私どもは、少なくとも工業開発が本格的に始まる以前の昭和三十年ごろ、そういう状態以前の瀬戸内海の海や自然条件、その水準に戻す必要があると考えているわけであります。  そういう点でついでにひとつお伺いしたいのですが、よりよくするということについて、それでは瀬戸内海をどれぐらい、いつごろまでによくしようとなさっていらっしゃるのか、基本的な考え方として、まずそこのところを具体的にお聞きしておきたいと思います。
  143. 馬場道夫

    馬場政府委員 ただいま長官お答え申し上げましたように、単に現状維持ということだけではなくて、より改善していくという姿勢でやっておるわけでございますが、ただ、瀬戸内海は大変広い海域でございまして、そこにおきます産業構成なり人口の密集なりいろいろ問題があるわけでございます。したがいまして、非常に複雑な水質汚濁の要因を伴っておるわけでございまして、そういう面で、私ども粘り強く長期にわたって対策を着実に進めていく必要があろうかと思っております。  そこで、基本計画なりいろいろな計画をやるわけでございますが、五年、十年というような長いタームで見てやっていきたいと思うわけでございます。私どもも、環境が悪化する以前の状態に返したいというのが願望でございますけれども、やはり幾つかのステップを踏んでまいりませんと、なかなか一気にそこまで持っていくわけにもまいりませんので、そういう面で粘り強くやってまいりたいと思うわけでございます。
  144. 則武真一

    ○則武委員 粘り強くとか一定の期間がかかるということはわかるのですけれども、しからば、環境庁としては瀬戸内海をどこら辺の水準までに回復させようとなさっていらっしゃるのか。私は昭和三十年ごろということを明確に申し上げたのですけれども、その点どうでしょうか。
  145. 馬場道夫

    馬場政府委員 私どもも明確にいつごろと言うことは大変むずかしいわけでございますけれども、まあ最終というかたどりつくところは、やはりそういうところに目標を置いてもいいのだろうと思うわけでございますが、四十年代に高度成長の中で汚濁がかなりひどくなってきておりますので、その前の段階に返すのがその前のステップではなかろうか、これもなかなか大変なことであろうと思っておるわけでございます。したがいまして、まずその辺に照準を当てながらやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  146. 則武真一

    ○則武委員 それではあと一つ、具体的な問題を通じていまの環境庁の基本的な姿勢がどう貫かれているのかをお聞きしたいのです。  赤潮対策についてお伺いをしたいと思います。  瀬戸内海では、四十六年ごろから毎年大量の赤潮が発生をして、ハマチの養殖漁業などを中心に甚大な被害がもたらされているのであります。例年であると六、七月ごろから、また早ければ五、六月ごろというのが赤潮発生一つの周期のようであります。今年もいよいよ夏場が近づいてきておるわけでありますけれども環境庁としてこの赤潮対策にはどういう意気込みで臨んでいらっしゃるのか、まず赤潮対策の基本的な姿勢なり方針をお伺いしたいと思います。
  147. 馬場道夫

    馬場政府委員 瀬戸内海におきましては、赤潮が例年発生をいたしまして、このために養殖漁業等に大きな被害を与えておるわけでございます。  そこで、私ども赤潮対策といたしまして、四十八年以来水産庁を中心に防除対策なり被害の救済措置等が講ぜられてきたわけでございますが、環境庁としても、赤潮の予察技術の開発のための調査研究、あるいは燐の環境水質及び燐、窒素の排水処理技術等についての指導指針の策定調査等のいろいろ基礎調査を行ってきたわけでございますが、赤潮については、その発生機構が必ずしもまだ十分解明されている段階ではございません。そこでこれに本格的に取り組むということで、五十二年九月から水産庁と共同で、全国の試験研究機関なり大学の赤潮研究をやっておられる先生方をほぼすべて網羅をいたしまして赤潮研究会を開催して、赤潮発生機構の解明等について組織的な研究を進めておるという状況でございます。  この中で、赤潮発生機構の問題、赤潮の予察の問題、それから被害対策の問題あるいは赤潮生物の分類の問題とか、いろいろ各分野があるわけでございますが、そういった中で着実に進めておりまして、それなりの成果は上げつつあると考えておるわけでございます。  また、環境庁といたしましても、過去のいろいろな赤潮発生についてのデータ、これは環境庁だけではなくて、水産庁なりその他の機関においてあるわけで、そういうデータを全部集めまして、そこで電算処理等を行いまして、そういう諸データと赤潮発生との関係を赤潮のプランクトンの種類ごとに総合的に解析していこうということで、五十四年度から現在解析を続けておるわけでございます。  そういうことで取り組んでおるということと、それから先生承知のように、瀬戸内海環境保全特別措置法の中で燐の削減計画がございます。赤潮につきましては、富栄養化が基本的な要因である。燐、窒素が基本的な要因でございますが、その上にいろいろ日照条件であるとかあるいは生物特有のライフサイクルであるとかビタミンとか鉄とか、そういう微量要素が絡み合いまして赤潮が発生するのであろうというような定性的な関係につきましてはかなり解明をされておるわけでございますが、定量的な関係がまだ十分でないということで、現在そういう調査を急いでおる段階でございます。
  148. 則武真一

    ○則武委員 赤潮の発生の機構がなかなか複雑でわかりにくいということについては、いまの科学で十分解明し切られていないということのようでありますけれども、ちょっと確認しておきますが、要するに赤潮というのは、ある種のプランクトンが海中で異常発生する、その前提条件として窒素や燐がたくさん海水にある、いわゆる富栄養化ということがその前提であり条件になっている、こういう理解でいいのですね。
  149. 馬場道夫

    馬場政府委員 必ずしも学界あるいは学説等で完全に一致を見ているものではございませんけれども、燐、窒素等の富栄養塩類の流入等によりまして水域が富栄養化する、そういう基礎的な条件がございまして、その上にいろいろ日照であるとか降雨であるとかあるいはビタミンであるとかマンガンであるとか、そういう微量物質が加わって急激にプランクトンが浮上、上昇する現象を赤潮と言っておるわけでございます。したがいまして、その基礎にはやはり燐、窒素が過剰状態にならなければ恐らく赤潮は発生しないであろうということは逆に言えるかと思います。
  150. 則武真一

    ○則武委員 そこで、具体的な赤潮対策も含めてちょっとお伺いしたいのですが、最近私ども拝見しておりますと、たとえば香川県あたりでも、ハマチの養殖が甚大な被害を受けると、これからどうやって被害を少なくするかという研究をいろいろなさっていらっしゃる。発生をなるべく早くつかんで、赤潮に魚が汚染されないうちに生けすを持って移動させていくというような方法のようでありますけれども、言うならば、これは赤潮と立ち向かうのではなくて、早く逃げるという対策のようであります。しかし、大事なことは、先ほどからも出ておりますように、赤潮の発生を事前に予知して魚を持って逃げるのではなくて、やはり赤潮が発生しないような状態にしなければならない、こういうことになると思うのです。  いま言われた特別措置法ができるときに、わが党はCODに加えてBODとかSSなど有機汚濁や燐、窒素の規制を主張したわけであります。しかしながら、残念ながらこういう問題が明確にならないで、燐については、結局環境庁長官指導方針という形で削減の目標を定める、こういうことにとどまっておると思うのです。そういう点で、やはり赤潮の前提になったり条件になっておる燐や窒素を規制していくというような考え方から法律自体が一歩後退しているのじゃないかというふうに思うのですが、その辺はどうでしょうか。
  151. 馬場道夫

    馬場政府委員 燐、窒素につきまして何らかの強制力をもって規制をしていくということは、私ども将来的には必要であろうというふうに考えておるわけでございますが、そのためには、燐、窒素につきまして、環境基準なりあるいは排水基準の設定ということがどうしても必要になるわけでございます。そこで、その問題につきまして従来からいろいろ検討を重ねてきておるわけでございますが、現在までの段階ですと、まだそこまで、環境基準、排水基準を設定する段階までには残念ながら知見の収集等が十分でございません。なお検討すべき問題があるわけでございます。しかしながら、それを待っておったのでは現在のいろいろ当面しております問題に対処できないということで、瀬戸内海環境保全特別措置法におきましては、とりあえず行政指導による方式で削減方針を定めまして、知事さんが行政指導でこれを減らしていくというような形に落ちついたわけでございます。私どもも現在そういう環境基準なり排水基準の検討につきましてもいろいろやっておるわけでございます。したがいまして、まだ若干時間はかかりますけれども、そういうような成案を得れば、また別の形の規制の仕方に移行し得るのではなかろうかというように思うわけでございます。
  152. 則武真一

    ○則武委員 でき得れば燐や窒素の規制ということが望ましいとおっしゃるわけですが、赤潮発生の機構が全面的に解明されないとしても、燐や窒素が重大な条件になっているということはもうほぼ定説のようでありますから、やはりこの際、もっと燐や窒素についての規制が前面に出なければならぬのじゃないかというふうに私は思うのです。  私、ここに、環境庁が昨年七月にこの瀬戸内海法の第十二条の三に基づいて燐の削減についての指導方針のための指示を出していらっしゃる、この三つのタイプの文書をいただいておりますけれども、この内容を拝見すると、つまり三つのランクになっておって、Aのランクで言うならば削減、Bのランクでは現状維持、Cのランクでは極力現状維持をするが、ふえても仕方がない地域というような三つに分けていらっしゃる。これを全体として見て、どうも何となく、冒頭に長官もよりよくするんだとおっしゃったが、結局瀬戸内海の汚染されておるいまの状態を維持するというようなことに指導方針もなっているんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  153. 馬場道夫

    馬場政府委員 燐の削減の指示をいたしたわけでございますが、実は、先ほども申し上げましたように、環境基準を設定しあるいは排水基準を設定して強力に規制をしていくということが望ましいわけでございますけれども、その段階まで至ってない段階で何をすべきかということでございます。そこで私ども、まずは現状よりも増加させない、このまま放置しておきますと五年間で大体一割程度の増加になるわけでございまして、少なくともそれは抑えるということから始めようじゃないかということで始めたわけでございます。したがいまして、瀬戸内海環境保全特別措置法の政令でその考え方を明らかにしているわけでございますけれども、その際にも「指定物質の総量の増加を防止することを当面の目途として、」ということで、あくまで当面の措置であるということを明らかにしているわけでございます。したがいまして、私どもいろいろ知見の集積等を図りながら、事態の進展につれまして、さらにより充実した対策の方に移行するということも当然考えていかなければならないと思うわけでございます。  それからまた、A、B、Cのランクに分けまして、現状よりも削減するもの、現状維持あるいは若干増加してもやむを得ぬということをやっているわけでございますが、その中で大どころの、また汚染の程度の激しい大阪湾を中心にいたしまして、大阪、兵庫等につきましては減らしていただく、それから外洋に面しております徳島とか大分とか、これは水の循環も非常にいいわけでございますので、そういうところは当面としてはある程度ふえてもやむを得ぬのかな、しかし、全体としては減らしていく、増加させないというあれをとったわけでございます。ただ、その際にいろいろ赤潮等、富栄養化に伴います被害の出るような地域については十分注意してくれというような注文もつけましてやっているわけでございまして、県におきましては、私どもの方の考え方も十分そしゃくしていただきまして、現在まだ最終的にまとまっておりませんけれども、私ども考えておるよりも若干低目のところにいくのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  154. 則武真一

    ○則武委員 なかなか気の遠い話で、環境庁の方でおっしゃると、結局現状よりふえる、ほっておけばふえるのだから現状を維持することがまず当面の目標だみたいなことになるのですけれども、そうなると、結局五十九年度までは瀬戸内海はほぼ現在の状態が続くのだ、こういう理解でいいのですか。
  155. 馬場道夫

    馬場政府委員 現状を放置しておきますとかなりふえることになりますので、それは抑えなければならぬ。それから現状よりも増加させないということを現段階のめどにしておりますけれども、そういう中で極力減らしていく。したがいまして、現状が維持できればいいのだということではなくて、現状よりも極力減らしていくという努力はしていただくということでございますが、ただ、現在のいろいろな技術水準なりそういう面から申しますと、そう大幅に減らすというのには相当の努力を要するであろうと考えておるわけでございます。
  156. 則武真一

    ○則武委員 環境庁のこの指示の中には、五十九年度が目標となっています。そうしますと、結局五十九年度までは現状維持に抑えるのだということのようでありますが、赤潮の発生件数についての数字を私もいただいておりますが、昭和二十五年は四件、昭和三十年は五件、ところがそこからずっと高度成長でふえてきまして、今日、昭和五十四年で見ると百九十三件、約二百件前後というような赤潮の発生状況であります。燐の規制というような問題だけから見ても、現状維持が五十九年まで続くとすれば、ことしは一体どうなのかという瀬戸内海の漁民や沿岸の方々の心配の中で、大体この夏も二百件くらい赤潮が発生するだろう、また数十億円魚の被害が出るだろう、こういうことのようにとれるのですが、残念ながらやはりそういうことなのですか。
  157. 馬場道夫

    馬場政府委員 先ほど申し上げましたように、必ずしも発生機構なりその他の要因が明確でございませんので、何とも申し上げようがないわけでございますけれども、ただ、先ほど申し上げました赤潮研究会等で着実に成果を上げつつございますので、そういう面で予察の体制等につきましてはある程度前進をするような措置ができるのではなかろうかと思うわけでございます。それからまた、漁業関係者の間でも、昨年がそうでありましたけれども、赤潮の多発地帯でハマチ養殖は極力やめて、比較的赤潮の発生しにくい、水の流れのいいようなところでやるというような知恵もまたいろいろ出てきておるようでございます。したがいまして、私どもも何とかそういういろいろな施策を総合いたしまして、赤潮発生度、それに伴います被害を極力減少させるということのために、水産庁なりその他の関係機関とも十分連絡をとりながら、これは当然関係府県の御努力が要るわけでございますけれども、そういうところと連絡をとりながら対策を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  158. 則武真一

    ○則武委員 燐の削減値の妥当な値が決まらないから実質的な削減ができないのだというようなことを伺うのですが、そういうことで燐の規制という問題ができないのですか。
  159. 馬場道夫

    馬場政府委員 最大の理由はそういうことでございます。それともう一つは、燐の削減の処理技術の問題がございます。これにつきましても、産業系、生活系、若干ニュアンスは違うわけでございますけれども、現在やっております活性汚泥法では必ずしも十分でございませんので、それに加えまして凝集沈でん法、そういうものをやらなければならない。これは下水道につきましても同様でございますけれども、そういたしますと、また凝集沈でん法、これは薬品を投入してやるわけでございますけれども、その汚泥の処理をどうするかという問題、これも一つございます。それから特に下水道の場合には、それをやることのコストの問題、これは市町村財政の問題がございますので、その辺の問題も絡みまして、いかに効率的にそういう処理技術ができるかという問題も一つございます。そこら辺は、割り切り方の問題もあろうかと思いますけれども、そういう問題も一つあるわけでございます。
  160. 則武真一

    ○則武委員 いろいろな困難があるということはよくわかります。それからまたけさほどのアセスメントの問題も、他の省庁とのかかわり合いやいろいろあると思うのですけれども、やはり瀬戸内海環境保全特別措置法をつくって瀬戸内海を国策としてきれいにしていこうということであるし、また冒頭御決意をいただいたように、現状維持ではなくて、よくするのだということであるなら、遠いかなたでよくなるという話じゃなくて、積極的に、それがすぐある問題で実現できないということがあっても、環境庁としてもっと瀬戸内海をリードしていくような積極的な方針が必要なのじゃないか、こういうふうに思うのです。  その辺は、冒頭お話しいただいた決意と具体的な措置とがどうも若干違うので、ここのところはひとつ決意どおり具体化をどんどんして、いま言われたように、下水道の問題や市町村の財政の問題まで御心配いただいているなら、そういうところへ向けてもっと大きな目標を環境庁が出していけるようなことをお願いしたいし、中心になっておる燐の削減の問題について、いまのような指導指針にとどまらないで、さらに積極的な方法をやはり早く打ち出していただきたい、このことをお願いをしておきたいと思います。  次の質問に移りますが、有燐洗剤の追放が社会問題となっておりますし、環境庁土屋長官がこの先頭に立って使用しない、大きく新聞にも報道されたところでありますが、瀬戸内海を汚染している燐というのは、一体どういう状態でどこから出ているのか、体系別の問題、さらに有燐洗剤、そういう問題を含めて概括的なデータをひとつお知らせいただきたいと思います。
  161. 馬場道夫

    馬場政府委員 瀬戸内海の燐の排出の源泉でございますけれども、これは五十四年の推定の数字でございますが、それでまいりますと、生活排水が四一・九%、約四二%、産業系が四〇・六%、それからその他、これは農林畜産業あるいはその他多数のものでございますが、これが約一七・五彩というような形になっておるわけでございます。  そこで、この生活系、四二%程度でございますが、このうち約四割が合成洗剤に起因するものであろう。これは非常に大ざっぱな推定でございますけれども、そういたしますと、四二%の四割でございますから、全体の負荷量の中では一六、七%になりましょうか、その程度合成洗剤ではなかろうかと思うわけでございます。
  162. 則武真一

    ○則武委員 大体大づかみはできたのですけれども、そういたしますと、有燐洗剤をカットするという国民的な規模での運動を通じて瀬戸内海がどれぐらいきれいになるかという点では、二〇%ぐらいなウエートしか占めていないということになるわけですが、そうなると、やはり依然として産業系が四〇%を占めているということの意味合いというものが非常に大きいと思うのです。産業関係というのは一体どうなっているのですか。燐というのは二次処理、三次処理の進行状況と絡むと思いますけれども、産業系の燐は野放しになっているのですか、どういう状況なんですか。
  163. 馬場道夫

    馬場政府委員 産業系も産業の種類によりまして非常に違うわけでございますが、一般的な排水処理によりまして、ある程度燐の削減はできるわけでございます。私ども、瀬戸内海につきましても、東京湾、伊勢湾と並びましてCOD、いわゆる有機汚濁物質の総量規制をやっているわけでございますけれども、これは一般的な処理でございますが、これが、何といいますか、生活系もあわせまして、その一般的な処理だけでも四割近くは落ちるのではなかろうかと言われておるわけでございますけれども、ただ、産業系の中で燐の排出が比較的多いような産業、これは食品産業であるとかあるいは肥料関係であるとか、その他もろもろあるわけでございますが、そういうところにつきまして、私ども、できるだけ新設のものにつきましては、従来の活性汚泥に加えまして凝集沈でんの施設をつくってもらう、それからそうでないところ、既存のものにつきましては、でき得ればやはり新しい設備をやってもらうのがいいわけでございますが、とりあえずは、まず現在の施設の管理をよくするということによって燐の排出を少なくしてもらうというようなことも、段階的には考えていかざるを得ないんではなかろうかと思うわけでございます。と申しますのは、かなり食品産業等におきましては中小企業が多いわけででざいまして、零細企業のようなものもかなりございます。そういうところのものが比較的多いという関係もございますので、行政指導の中でそういう対策を徐々に充実をさせていきたいと思っておるわけでございます。
  164. 則武真一

    ○則武委員 燐を排出しておる企業は中小企業や食品関係が多いというふうなお話ですが、例示的な話としてはわかりますけれども、瀬戸内海の総汚染負荷量の中での位置づけで、もう少し正確にお答えをいただきたいのですが、燐の排出総量はどういう産業に多いのですか。私は、鉄鋼などは物すごい排水量ですから、小さな食品会社よりもよほど多いんじゃないかと思うのですけれども、化学、鉄鋼、石油等も含めて、その排出総量とのかかわり合いで、汚染物質の総量という立場から燐の放出状況をちょっと教えていただきたいのです。
  165. 馬場道夫

    馬場政府委員 産業系の中で、見てまいりますと、これは瀬戸内海の十三府県の全部のあれでございますが、それで見ますと、一番多いのが無機化学の工業でございます。それからその次が高炉の製鉄、それから化学肥料、医薬品等が大きい方でございます。
  166. 則武真一

    ○則武委員 ですから、どうも環境庁はいつも中小企業や食品――食品がいいか悪いかは別として、そういうところへ問題を持ってこられるけれども、やはり瀬戸内海を汚染しておる一番大きいのは石油や鉄鋼だということがそういうところからも出てきておると思うのですよ。私はそう思います。そういう点で、どうなんですか、洗剤まで使わないようにしようという国民運動が起こりつつある中で、瀬戸内海の汚染、とりわけ赤潮の引き金になるような燐を大量に放出しておる企業については、やはりもう少し、たとえばどういう企業がどれぐらい出しているとか、明確にしていくことはできないものでしょうか。そういう点でまず、いつもこういう場合に出発点になるのは、どういう企業がどれぐらい燐を出しているのだということを国民の前に公表なさったらどうですか。この辺について、ひとつ決意のほどをお伺いしておきたいと思うのです。
  167. 馬場道夫

    馬場政府委員 各業種ごとにどういう状況になっているかということは、これはある程度明らかにできるかと思いますが、個々の企業別なりあるいは事業場別等を公表するということになりますと、私どものこれからのいろいろな対策になかなか協力を得られないというようなことがございますので、大変むずかしい問題であろうと思っておるわけでございます。
  168. 則武真一

    ○則武委員 これは委員長からお諮りいただいてもいいのですが、こういうことを研究するためにも、少なくとも私ども委員にはそういうデータを提供していただけませんでしょうか。
  169. 馬場道夫

    馬場政府委員 先ほど申し上げましたように、業種等でございますれば、国会の御要請がございますれば御提出できると思いますけれども、個々の企業名につきましては御勘弁いただきたいと思っておるわけでございます。
  170. 則武真一

    ○則武委員 業種別でも結構ですから、後で委員長の方から御配慮をいただきまして、ひとつなるべく詳しいデータを、瀬戸内海をよくするためにはこういうところが汚染をしておる原因になっているのだということをみんなで確認する意味でも、そういうデータは必要だと思いますので、ぜひお願いを申し上げます。  引き続いて質問させていただきますけれども、自然海浜地区保全条例というのが瀬戸内海環境保全特別措置法の中で決められておるわけでありますが、この問題について若干質問させていただきます。  特別措置法は十二条の六で自然海浜保全地区を条例で定めることができ、そこで埋め立てを行うときには届け出を行い、関係府県が勧告、助言ができる、こういうふうになっておるわけですが、いま瀬戸内海を取り囲む十三府県の中で、この保全条例を制定した県やその動きのある県、どういう状況でしょうか。
  171. 馬場道夫

    馬場政府委員 自然海浜保全のための条例が現在時点で制定されておりますのが兵庫県、愛媛県、広島県の三県でございます。残りの八府県につきましても、現在条例を制定すべく内部で検討が進められていると聞いておるわけでございますが、必ずしもまだ明確ではないようでございます。大阪、岡山、徳島、香川、福岡、大分の六県につきましては、でき得れば六月県会に上程をしたいということ、それから山口と和歌山は十二月県会になるかもしれないというようなことでございます。
  172. 則武真一

    ○則武委員 この法律ができて一年近くたっておるわけでありまして、ぜひともひとつ強力に指導をしていただいて、沿岸十三府県がこぞってこの海浜保全条例を持ち、十分に瀬戸内海をきれいにしていく、こういうふうになるように御指導をいただきたいのです。  ちょっと、私は、待ちに待った法律ができたんだから、そういう条例をみんなこぞってつくるのかなと思ったのですが、関係府県でたった三つしかまだ条例ができていないということはどういうことが障害になっているのでしょうか。
  173. 馬場道夫

    馬場政府委員 私どもが通達で流しましてからまだそれほど時間がたってないという問題も一つございます。それからやはり初めての制度でございますので、どういう形でこれをやるかという、私どもも一応の考え方を示しておりますけれども、基本的には各県の固有事務でございますので、その辺の内部検討に若干の時間を食っているというように思うわけでございます。
  174. 則武真一

    ○則武委員 それで私も、環境庁の自然海浜保全地区条例環境庁案というのをちょっと見せていただいておりますけれども関係者の方や住民の方の御意見をいろいろ聞きますと、この条例は余り評判がよくないというふうなことを聞くのですけれども、そういう点で環境庁として何かつかんでおられますか。
  175. 馬場道夫

    馬場政府委員 私ども、評判がよくないという情報はつかんでおりません。
  176. 則武真一

    ○則武委員 そうなると、教えて差し上げなければならぬことになるのですが、要するに、指定の条件が非常に限定されておる、非常にいい海岸は守るようにしなさいというふうになると、大体瀬戸内海は壊してしまったわけですから、余り守るに足るものがないじゃないかみたいな要素が一つあるのじゃないか、こういうことが一つであります。それからまた、そういうことでぜひ明確にしておきたいのですが、条例が網をかぶせない海岸は、それでは壊したりますます埋め立てたり開発をすればいいのか、こういうことではないと思うのですが、そこら辺はどうでしょうか。
  177. 馬場道夫

    馬場政府委員 第一点につきましては、法律の方で、自然的な状態が維持されておるという地域がございます。それから海水浴なり潮干狩り等のレクリエーションに今後とも利用される見込みがあるものということが法律上の要件になっております。したがいまして、それで一応の制約はあるわけであります。ただ、瀬戸内海はいろいろ開発が進んでおりますが、現在条例の候補地としては二百カ所くらいはあるのではなかろうかというふうに思っておるわけでございまして、これの網のかかっていない地域、たとえば自然公園法であるとかあるいはその他のより強い規制のかかっているところもございます。したがって、今後保全をし、レクリエーション的に利用するようなところは、自治体がその気になればかなりやれるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  178. 則武真一

    ○則武委員 そこで、私もう時間がないからはしょりますけれども、今度の法律の前の臨時措置法ができてから許可された埋め立て件数とか面積をちょっと調べてみますと、臨時措置法ができた以前の三年間と比べてみてもほぼ同じぐらいな埋め立てがどんどんやられているわけであります。これでは自然海岸を守ったり環境を守るということになかなかならないのではないか。そういう点で、今後もこれが埋め立て規制の歯どめにならないのかどうか。先ほど条例とのかかわり合いになってまいりますけれども、私はもっと積極的に、もういま以上は埋め立てをさせないというような基本的な考えに立ってこの法律が進められ、それに基づく保全条例というものがどんどんできていかなければならないというふうに思うのです。特に海をきれいにするという点では、自然海岸の浄化力というものは抜群なわけでありまして、あれこれの方法よりも自然のなぎさ自体が海をきれいにしていく力を持っているわけでありますから、この点をぜひお願いをいたしたいと思うのです。  時間がありませんので最後に一点、これは環境庁長官にお伺いしますが、午前中の質問でも琵琶湖へ研究所をつくれ、琵琶湖を見に来い、こういうことでありました。今度私は、瀬戸内海を見に来い、瀬戸内海に研究所をつくれということを申し上げようと思ったのですが、午前中の委員さんの方から同じようなことがありました。特別措置法が制定をされておりますけれども、海はようやく何年かがかりでさらに悪化するのを防ごうというような水準であります。赤潮の発生機構についてはまだわからないというようなこともわかりました。したがって、もっともっと瀬戸内海をきれいにするために、国の総合的で体系的な研究ということが必要になってくるんではないか。十三府県にかかわり合いのある、世界に誇るこの瀬戸内海をよくしていくために、これまで水産庁の南西海区水産研究所とか通産省の呉の工業試験所とかいろいろなものがあるわけでありますけれども、本当に環境庁主導型といいますか、瀬戸内海をよくするための研究所というものはないわけであります。そういう点で、毎年のように十三府県の知事、市長、瀬戸内海を取り囲む県や市の首長さんの会議で「瀬戸内海環境科学総合研究所(仮称)の設置について」という要望書が長官の方へ出ておると思うのですけれども、こういう国家的な大きな目標に対して、ぜひともひとつ研究所設置の方向でがんばっていただきたい。特にそれぞれの研究者、香川大学、愛媛大学、広島大学等の研究者もいらっしゃいますが、研究をなさっていらっしゃる方は本当に瀬戸内海とともに暮らしながら瀬戸内海をよくする方針を出していただいておるわけでありまして、東京の公害研究所の中に瀬戸内海の担当者がいらっしゃるということではちょっと不十分じゃないか、こういうように思うのです。このことを最後にお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  179. 土屋義彦

    土屋国務大臣 先ほど来、先生の質疑をお伺いいたしまして、瀬戸内海の環境保全のためには、関係の県はもとより国が先頭に立ってこの問題と取り組んでまいらねばならぬという感じを深くいたしたような次第でございます。  研究所の問題につきましては、私なりによく理解はできるのでございますが、先ほど局長からも御答弁がございましたとおり、環境庁におきましてもいろいろ検討いたしておりますし、またわが国が世界に冠たる国立公害研究所、これは先生まだ御視察になっておらなかったらぜひ御視察を願いたいと私は思うのでございますが、そこにおきましても鋭意検討がなされておりますし、何しろ予算を伴う問題でございますので、はい、わかりましたとここで申し上げるわけにまいりませんが、いろいろ勉強さしていただきたいと思います。
  180. 河野正

    河野委員長 次回は、来る十一日金曜日午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時散会