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1980-04-25 第91回国会 衆議院 決算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月二十五日(金曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 高田 富之君    理事 井原 岸高君 理事 津島 雄二君    理事 原田昇左右君 理事 森下 元晴君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 林  孝矩君 理事 庄司 幸助君    理事 中野 寛成君       石田 博英君    藤田 高敏君       春田 重昭君    岩佐 恵美君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐々木義武君  出席政府委員         通商産業大臣官         房長      杉山 和男君         通商産業大臣官         房会計課長   石井 賢吾君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君         通商産業省貿易         局長      花岡 宗助君         通商産業省立地         公害局長    島田 春樹君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         通商産業省生活         産業局長    児玉 清隆君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         中小企業庁長官 左近友三郎君  委員外出席者         環境庁大気保全         局交通公害対策         室長      加藤 三郎君         外務大臣官房外         務参事官    堤  功一君         外務省国際連合         局原子力課長  金子 熊夫君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         大蔵省主税局調         査課長     滝島 義光君         大蔵省銀行局中         小金融課長   小田原 定君         通商産業大臣官         房審議官    堺   司君         通商産業省立地         公害局工業用水         課長      岩城  彬君         消防庁技術監理         官       矢筈野義郎君         会計検査院事務         総局第四局長  岡峯佐一郎君         会計検査院事務         総局第五局長  小野光次郎君         中小企業金融公         庫総裁     船後 正道君         中小企業信用保         険公庫総裁   小山 雄二君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十二年度政府関係機関決算書  昭和五十二年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十二年度国有財産無償貸付状況計算書  (通商産業省所管中小企業金融公庫中小企  業信用保険公庫)      ————◇—————
  2. 高田富之

    高田委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫について審査を行います。  まず、通商産業大臣から概要説明を求めます。佐々木通産大臣
  3. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 昭和五十二年度通商産業省所管歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入歳出決算につきまして、御説明いたします。  通商産業省主管歳入につきましては、当初予算額は七十九億二千五百六十二万円余でありますが、予算補正追加額二十六億五千四百六十万円余の増加がありましたので、歳入予算額は百五億八千二十三万円となっております。  これに対しまして、収納済み歳入額は百十六億九千三百四十六万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと、十一億一千三百二十三万円余の増加となっております。  これは、アルコール専売事業特別会計から一般会計への納付金が予定より多かったこと等の理由によるものであります。  次に、通商産業省所管歳出につきましては、当初予算額は三千百七十四億九千八百七十九万円余でありますが、予算補正追加額四十億円、予算補正修正減少額二十九億五百六十万円余、総理府等省庁所管から移しかえを受けた額九十二億五千六百六十万円余、前年度からの繰越額百三十七億二千五百八十七万円余の増減がありましたので、歳出予算現額は三千四百十五億七千五百六十六万円余となっております。  これに対しまして、支出済み歳出額は三千二百三億八千百九十六万円余でありまして、その主なものといたしまして、中小企業対策費一千三百三十一億八千二百十万円余、科学技術振興費六百六億六百八十五万円余、経済協力費八十五億三千百八十五万円余、公共事業費二百五十億二千三百五十八万円余等となっております。  この支出済み歳出額歳出予算現額との差額は二百十一億九千三百七十万円余となっております。その差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は百十九億二千百二十三万円余でありまして、不用となりました額は九十二億七千二百四十七万円余となっております。  次に、通商産業省所管の各特別会計決算について御説明いたします。  第一に、電源開発促進対策特別会計であります。  収納済み歳入額は七百六十八億二千五百七十三万円余、支出済み歳出額は二百二十六億六千百二万円余であります。  収納済み歳入額支出済み歳出額との差額は五百四十一億六千四百七十一万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百九十一億一千九百三十二万円余、剰余金は三百五十億四千五百二十八万円余となっております。  第二に、石炭及び石油対策特別会計であります。  まず、石炭勘定であります。  収納済み歳入額は一千二百六十三億一千八百三十二万円余、支出済み歳出額は一千百五十九億四百十三万円余であります。  収納済み歳入額支出済み歳出額との差額は百四億一千四百十九万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は五十九億九千二百九十七万円余、剰余金は四十四億二千百二十一万円余となっております。  次に、石油勘定であります。  収納済み歳入額は七百二十八億五千三百二十一万円余、支出済み歳出額は四百五億三千五百八十二万円余であります。  収納済み歳入額支出済み歳出額との差額は三百二十三億一千七百三十九万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました額は百一億三百八十三万円余、剰余金は二百二十二億一千三百五十五万円余となっております。  第三に、アルコール専売事業特別会計であります。  収納済み歳入額は二百五十三億六千二百八万円余、支出済み歳出額は百九十五億六十八万円余であります。  この会計損益計算上の利益は六十一億二千七百五十二万円余でありまして、期末資産増加相当額三億二千四百四十四万円余を控除した残額五十八億三百八万円余を一般会計歳入納付することとなりますが、過年度において当会計運転資金増加に充て未納付となっていた益金十六億一千七百七十五万円余を本年度納付することとしましたので、七十四億二千八十三万円余を一般会計納付いたしました。  第四に、輸出保険特別会計であります。  収納済み歳入額は一千二百七十八億四百十二万円余、支出済み歳出額は二百九億八千六百九十三万円余であります。  第五に、機械類信用保険特別会計であります。  収納済み歳入額は四十六億八千七十一万円余、支出済み歳出額は十一億八百六万円余であります。  なお、一般会計及び特別会計事業の詳細につきましては、お手元にお配りいたしております通商産業省所管昭和五十二年度歳入歳出決算概要説明書に記述してありますので、ごらんいただきたいと存じます。  最後に、五十二年度通商産業省所管決算につきまして、会計検査院から不当事項として二件の指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘された事項につきましては、直ちに指摘金額の全額を返還させる等、その是正、改善措置を講じたところであります。  今後は、この種の事態の発生を未然に防止するため、より一層の指導、監督等を行い、かかる事態の絶滅に努力いたす所存でございます。  以上をもちまして、昭和五十二年度における通商産業省所管一般会計及び特別会計決算に関する御説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 高田富之

  5. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 昭和五十二年度通商産業省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二件であります。  これらは、中小企業者設備近代化に資するため、無利子で融資する貸付金の財源として国が都道府県に交付した中小企業設備近代化補助金に関するものでありまして、その貸し付け適否等について調査いたしましたところ、貸付対象事業費より低額で購入している者に貸付対象事業費どおりの価格で購入したとして貸し付けていたものなどでありまして、いずれも貸し付け補助目的に沿わない結果になっていると認められるものであります。  以上、簡単でありますが説明を終わります。
  6. 高田富之

  7. 小野光次郎

    小野会計検査院説明員 昭和五十二年度中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫決算につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。
  8. 高田富之

  9. 船後正道

    ○船後説明員 昭和五十二年度における中小企業金融公庫業務について御説明申し上げます。  当公庫は、昭和五十二年度の当初貸付金を一兆二千四百五十八億円と定められましたが、その後、五十二年十一月に下期中小企業金融対策として一千九百六十億円の貸付金追加が認められましたので、これにより、前年度実績に比較して、一二・二%増に相当する一兆四千百二十二億一千六百六十六万円余を中小企業者に対し貸し付けたほか、設備貸与機関に対して百九億三千百二十六万円余、中小企業投資育成株式会社に対して二十一億円の貸し付けを行い、総額一兆四千二百五十二億四千七百九十二万円余を貸し付けました。  中小企業者に対する貸し付けのうち、設備資金は、四三・三%に相当する六千百十八億七千九百十五万円余、運転資金は、五六・七%に相当する八千三億三千七百五十万円余となっており、また直接貸し付けは、五一・九%に相当する七千三百三十三億九千九百万円、二万二千五件、代理貸し付けは、四八・一%に相当する六千七百八十八億一千七百六十六万円、五万五千四十七件となっております。  年度末総貸付残高は三兆一千二百十三億六千百四十八万円余で、前年度末に比較して三千百四十九億五千八百二十五万円余、一一・二%の増加となっております。  貸付金延滞状況につきましては、昭和五十二年度におきましては、弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は二百七十三億四十七万円余でありまして、このうち一年以上のものは二百四億二千二百七十七万円余、総貸付残高の〇・七%となっております。  昭和五十二年度融資に当たりましては、需要構造変化開発途上国追い上げ等内外にわたる厳しい環境変化への対応を迫られている中小企業者に対し、その事業基盤の強化に資する資金について、前年度に引き続き積極的に対処してまいりました。特に、不況の長期化に伴って倒産が多発したため、倒産関連中小企業者に対して経営の安定に資するための緊急融資を実施し、また、為替相場の急激な変動に伴って受注の減少為替差損負担等の影響を受けている輸出関連中小企業者に対して経営の安定に資するための緊急融資を実施する等中小企業者経営の維持安定のための資金についてきめ細かい配慮を払ってしまいました。  また、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業に必要な資金流通機構近代化合理化のために必要な資金及び事業転換産業公害の防止、産業安全の確保等のために必要な資金等緊要な資金についても特に配慮してまいりました。  なお、昭和五十二年度におきましては、中小企業者の一層の便益に資するため、名古屋市熱田区に熱田出張所を新設いたしました。  最後に、当公庫昭和五十二年度収入支出決算及び損益計算について申し上げます。  収入支出決算について申し上げますと、貸付金利息等収入済み額は二千四百二十二億二千四十万円余、支払い利息等支出済み額は二千三百七十三億八千七百五十二万円余となりました。  損益計算について申し上げますと、貸付金利息収入等の総益金は三千四百十四億九千四百七十二万円余、借入金利息事務費、滞り貸し償却引当金繰り入れ等の総損金は三千四百十四億九千四百七十二万円余となりました。この結果利益金は生じなかったので、国庫納付はいたしませんでした。  以上、昭和五十二年度における中小企業金融公庫業務概況について御説明申し上げました。
  10. 高田富之

  11. 小山雄二

    小山説明員 中小企業信用保険公庫昭和五十二年度業務概況につきまして御説明申し上げます。  昭和五十二年度におきましては、円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法の制定に伴い、円相場高騰関連保証保険特例措置が新設されますとともに、国の一般会計から、保険事業の円滑な運営を図るための原資として保険準備基金三百二十億円、信用保証協会保証活動円滑化を図るための原資として融資基金二百三十億円、合計五百五十億円の出資が行われました。  まず、保険事業について見ますと、公庫が全国五十二の信用保証協会との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引き受けは、件数で百六万五千件余、金額で四兆一千六百六十億一千九百二十六万円余になっており、これを前年度に比較いたしますと、金額で九%の増加になっております。  この結果、昭和五十二年度末の保険引き受け残高は、件数で百八十四万二千件余、金額で七兆五千二百六十四億二千百六十九万円余となっております。  なお、保険金支払いは九百七十三億三千五百六十四万円余になりまして、これを前年度に比較いたしますと、三六%の増加になっております。  一方、信用保証協会に対する融資事業につきましては、昭和五十二年度に国の一般会計から新たに出資されました二百三十億円、及び既往の貸し付けにかかる回収金一千七十億一千九百万円、合計一千三百億一千九百万円をもちまして、長期貸し付け一千二百九十二億四千二百万円、短期貸し付け三億円、合計一千二百九十五億四千二百万円の貸し付けを行いました。  この結果、昭和五十二年度末における貸付残高は一千六百六十五億二千三百万円になっております。  次に、収入支出及び損益概況について申し上げます。  まず、収入支出について申し上げますと、収入済み額は五百四十六億九千三十一万円余、支出済み額は九百九十七億二千八百二十一万円余でありまして、差し引き四百五十億三千七百八十九万円余の支出超過になっております。  損益計算につきましては、さらに支払い備金等整理を行いました結果、総利益は六百三十四億二千五百七十八万円余、総損失は一千百八億六千四百六万円余となり、差し引き四百七十四億三千八百二十七万円余の損失金を生じました。  この損失金は、中小企業信用保険公庫法及び同法施行令の規定に基づき、保険準備基金を減額して整理いたしております。  以上、簡単でございますが、昭和五十二年度業務概況につきまして御説明申し上げた次第であります。
  12. 高田富之

    高田委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  13. 高田富之

    高田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 まず私は、IJPCイランジャパン石油化学、この問題の質疑に入る前に、まずアメリカイラン両国関係についての政府現状認識についてお尋ねしたいと思います。  すでにアメリカイランに対して外交関係を断絶する、同時に厳しい経済封鎖を行っているわけです。このようなアメリカイラン両国関係について、両国紛争状態にあり、両国紛争当事国であるというふうに認識をしておられるのかどうか、この点について、まず大臣から答弁をいただきたいと思います。
  15. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 貿易局長から御説明申し上げます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 私は、まず大臣認識について伺っておきたいと思います。
  17. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 外務省見解によりますと、紛争当事国でないというふうに解釈しているそうでございます。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 国交断絶紛争関係でないというふうに通産大臣は御認識でしょうか。
  19. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  アメリカイラン関係外交関係を断絶いたしておりますけれども、わが国の申します武器原則から申しますと、イラン日本にとりまして紛争当事国にはなっておらないということでございます。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 私はまだ武器原則のそこまで話を言っていないわけなんです。紛争当事国だという認識をしているのかどうかということなんです。大臣、いかがなんですか。国交を断交している、そういう状態をどういうふうに受けとめているかということですね。
  21. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 まだ戦端を開いているわけでもございませんので、紛争当事国とは見てないというのが外務省見解でございます。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 紛争関係にあるという状態はそれじゃどういうふうに認識をしていらっしゃるのですか。
  23. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 外務省側から説明させます。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 私は、通産大臣として、紛争状態というのは通常どういう状態を言うのか、国交を断絶している、そういう状態紛争当事国だというふうに理解しているのじゃないでしょうかと聞いているのですよ。
  25. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 通産省といたしましては、武器原則問題等はございますけれども、そういう外交的な定義あるいは判断等外務省見解に従います。
  26. 堤功一

    堤説明員 紛争というのはどういう状態であるかということは、その場合場合によって定義が異なることが可能だと思います。米国とイランとの間柄は現在国交断絶状態にございます。これを直ちに紛争と言えるかどうかということは、どういう筋合いで紛争ということが問題となっているかによると存じます。ある意味では、非常に広くとらえれば紛争状態にあると言うことも可能かと思います。いかなる目的紛争ということをとらえるかによると存じております。
  27. 井上一成

    井上(一)委員 外務省は、広い意味では紛争当事国である、こういう認識ですね。
  28. 堤功一

    堤説明員 非常に広い意味にとれば、そういうことも言えると存じます。
  29. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、アメリカイランによる人質の拘留に対して、昨年十一月に経済封鎖を行ったわけですね。今回のアメリカイラン状態をとらえるならば、この段階は第一次的変化とでも言えるのではないだろうか。この折には、イランわが国との特別な関係という、そういうことにおいてIJPCいわゆるイラン日本石油化学事業、このことについては、その完成までお互いに協力をしていく、そういう方針を明らかにし、アメリカもこれを黙認するという状態であったわけであります。ところが、本年の四月八日、いわゆる国交断交、広い意味での紛争当事国になってしまった。第二次変化だというふうに言いかえることができるわけですけれども、四月の外交断交以後、わが国に対してアメリカからイランに対する経済制裁を強く要請を迫ったわけであります。政府は、イラン向け輸出は抑制するが、いわゆる合弁企業だとか、建設中のプロジェクトに対する部品、原材料などのいわゆるナショナルプロジェクトとしての必要なものについては対象外としたいという方針を決定されたわけですけれども、その方針は現在もなお変わっていないのかどうか。この点について大臣からお答えをいただきたいと思います。
  30. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 IJPCに関しましては、従来のとおり維持していくつもりでございます。
  31. 井上一成

    井上(一)委員 わが国はすでに、イラン措置についてはECと協調する、そういう方針を選択したわけです。それはもうすでに広く世界の内外に明らかにしたわけですけれども、イランは、対イラン制裁措置に加盟した国に対しては石油の供給を停止する、同時に合弁事業についても拒否するとの意向を示している。とするならば、IJPC合弁事業について、わが国アメリカ要請に基づいてEC協調関係をとる以上は、事実上断念せざるを得ないのだというふうに思われるのですけれども、いかがでございますか。
  32. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  現在のIJPCにつきましては、ただいま大臣から御説明いたしましたように、従来の方針を維持するという方針でございますけれども、IJPCにつきましては、日本側としてもアメリカ側に十分に説明をいたしておりますし、アメリカ側もその実態について理解を示しておるというふうに私ども考えております。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 アメリカ側理解を示しているということですけれども、イラン側は、対イラン経済制裁措置をとったときには合弁事業等については直ちに停止する、協力しないということを発表しているわけです。そういうことから考えれば、これはスムーズに進行しないのではないだろうか、こういうふうに私は考えるわけですが、もう一度その点についてお願いします。
  34. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  このIJPCプロジェクトは、イランにおきましても革命のモニュメント的なものであるということで非常に重要視いたしておりまして、これを日本との協力のもとに存続させたいという非常に強い意図を従来から表明しておりますので、イラン政府の考え方も変わっておらないというふうに私どもは理解いたしております。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 そんな認識は非常に判断を誤る、こういうふうに私は思うのです。すでにECとの協調行動に踏み切ったという事態で、もう次の段階に踏み込んだのだ、こういうことですね。EC外相会議出席をし、そしてEC共同歩調をとるということで、もう次の段階わが国は踏み込んだのではないか。具体的には、EC外相会議では、五月十七日までにこの人質問題が解決しなかった場合にはそれぞれの国が立法措置を講じよう、このように非常に厳しい状態を打ち出しているわけです。わが国も、EC九カ国が申し合わせをした線に沿って取り組む手はずを整えるのかどうか、どのような行動わが国はとろうとしているのか、貿易管理令を発動するのかあるいは特別な制裁措置を講じるのか、その場合でも、なおかつIJPC合弁事業はいま通産省が考えているように進行が可能なのかどうか。
  36. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 イランとの貿易関係につきましては、昨日のイラン関係閣僚会議におきます決定に基づいて発表されましたとおり、今後の新規の契約につきましてはできる限り自粛するように要請をいたしておりますけれども、IJPCにつきましては、もうすでに八五%工事もでき上がっておるというプロジェクトでございますし、両国間の友好のシンボル的なものということで、イラン政府も重要視いたしておりますし、日本政府といたしましても重要視いたしております。五月の初めにはICDCの山下社長が現地に参りまして、向こう側と話し合いをすることになっておりますので、その際にイラン政府の考え方はより明確になるというふうに私ども考えております。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 EC協調関係を保っていくのだという中に、このIJPCは含まないのですか。別枠としてこれを位置づけているのですか。
  38. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  IJPCの問題は別として私どもは考えてまいりたいと思っております。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 IJPCについては別枠である、アメリカもそれは了解しているのですね。
  40. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 先ほど申し上げましたように、従来から本プロジェクトについては十分に説明をいたしておりますし、理解も示しておりますので、私どもはそのように考えております。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 そのことは、アメリカIJPCは別枠に位置づけるのだということに了解をしている、こういうふうに理解してよろしいですね。
  42. 真野温

    ○真野政府委員 ただいま貿易局長から御答弁申し上げましたが、そもそもIJPCはすでに成立している契約に基づくものでございまして、今回、御承知のように、イランに対する措置について新たなものを抑制するということをECとしても考え方を出しておりますから、本件はむしろ既存のプロジェクトとして引き続きやるということが可能と思われます。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 そういう状態であるからアメリカも了解している、こういうことですね。
  44. 真野温

    ○真野政府委員 本件につきましては、アメリカ側もそういう考え方に立っておると思います。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 今回のECの外相会議が、アメリカイランとの問題でとりあえず何をなしたか、この外相会議によってイランアメリカ関係変化したというか、どういうふうになったのか、これはひとつ大臣から素直な見解を聞かせていただきたいと思います。
  46. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 きのう関係閣僚が集まりまして、とりあえずの対策を決めたわけでございますけれども、それは第一段階と申しますか、五月十七日まではこういう措置でまいりますということで決めてあるわけでございまして、基本方針といたしましては、人質問題については従来からEC諸国と協調しつつイランを説得いたしまして、あくまでも平和的な解決へ向けて努力していくというのが根本でございまして、同時にまた米国に対しましても、ECと連帯をとりまして引き続き米国の忍耐を要請して、平和的な解決でない方向には向かないようにということを要請するということを基本方針といたしまして、とりあえずの措置といたしましては、ECのとる、外相会議で決めました点とほぼ同じでございまして、非経済的な措置あるいは経済的な措置と二つに分けておりまして、その措置を一応決定したわけでございます。それは、御承知かとも存じますけれども、大使館員の削減、それから査証の再導入の問題等でございまして、経済的な措置といたしましては、武器輸出禁止の問題と、イランとの間の輸出及び役務の新規契約についてこれを自粛するよう当面行政措置を行う、これが主でございます。
  47. 井上一成

    井上(一)委員 いま若干詳しく答えられたわけですけれども、まず第一、要はアメリカのはやる心、いわゆる軍事行動に出ようとする、それも辞さないということに外相会議によって何はともあれ歯どめをかけられた、こういうことだと思います。しかし、それは一方では五月十七日というタイムリミット、その期限が設定された。いわば五月十七日までは何とか事なきを得て平和的解決に努力をしよう、しかし半面、もし五月十七日までに問題解決が成らなかった場合には立法措置も講ずるあるいは貿管令を発動する、そういうことの非常に厳しい取り決めも片面ではあるわけです。私は、本当にわが国がそういう貿管令の発動まで考えているのかどうか、あるいはイランを対象国にするそういう根拠は何なのかということをここで聞いておきたい。さらに、イランに対する経済制裁措置に加担した場合、そういうことに取り組んだ場合に世界じゅうで一番損をするのは、国益の立場上から一番大きな打撃をこうむるのはわが国ではないだろうか。むしろ私はわが国であると言い切りたいわけです。さっき、IJPCについてはアメリカは了解している、しかし今後イランとの交渉である、このことは、継続が不可能になった場合には大変な国家的損失、ただ単なる三井物産の関連企業の合弁海外経済プロジェクトという立場から、国家プロジェクトとしての政府出資があった、そういう経過だけでなく、非常に大変な不利益わが国が受けるという背景がそこにある、こういうふうに思うのです。そういうことは私から指摘をしなくても通産としてはもう十分承知しておると思うのですけれども、そういう点についてもひとつ通産省に、背景なり、あるいはいま言った貿管令の発動なり、あるいは対象国とする根拠なり、あるいはそういうことを全くやらないとか、あるいはIJPCについての継続が不可能になった場合の非常な国家的損失、そういうことでどうしてもイランからの合意を得たいのだ、そういう理由、そのことについて答えていただきます。
  48. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 わが国といたしましては、いま御指摘もございましたように、この問題を平和裏に解決するということが一番国益に沿うゆえんでありまして、万が一のことになりますと大変なことになりますから、まずもって平和的な解決に努力すべきだ。したがって、それは米国の側にもひとつ自重を求め、半面イラン側にも、早く人質を解放するように、問題を平和裏に解決するようにということで、二十六日、和田大使がテヘランに帰任いたします、そういたしまして、EC側の大使も帰任しているわけですから、協議の上共同の申し入れをイラン側に恐らくするのじゃなかろうか。したがいまして、現段階といたしましては、あくまでも平和裏に問題が解決されるようにということを念願して行動を進めておるところでございます。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 私の質問に全く答えられてないわけなんです。イランに対する取り組みは、いま和田大使の帰任ということなんです。だから、立法措置、いわゆる経済措置に対するわが国の取り組み、貿管令の発動由対象国とする場合の根拠、あるいはIJPCが続続不可能になった場合、大変国益として困るのだという背景、だれが損失をするのか、もしIJPCが続継不可能になった場合どのような事態が生じるのだ、その損失は最終的にだれが負担をしていくのか、あるいは輸出保険の適用はどうなるのだ、こういうことを具体的に答えてください。
  50. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 十七日まではいまのような、先ほど申しました状況で進めてイラン側の善処を期待しておるわけでございますけれども、その後の措置が円満に解決すればそれで事なく済むわけでございまして、それを期待しているわけでございますけれども、そうじゃない場合には、十七日までに円満な解決がつかないという場合には、わが方といたしましては、EC諸国のとる措置を十分見きわめつつこれに同調することを基本方針といたしまして具体的な措置を検討しよう、こういうことになっております。
  51. 井上一成

    井上(一)委員 私の質問の答えが全然ありませんね。では具体的に一問ずついきましょう。貿管令の発動はどうなんですか。
  52. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 貿管令には貿管令の発動要件がございますので、現段階といたしましては貿管令のことは考えてございません。
  53. 井上一成

    井上(一)委員 貿管令の発動は考えない、それはそれでわかりました。それはECの決定に同調、協調という枠の中からはみ出るのではないだろうか。それはECとの関係でちゃんと了解を得ているのかどうか。
  54. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほど申しましたように、現段階は考えてございません。しかし、十七日以降の状況になった場合には、先ほど申しましたようにEC側の出方、措置等も見ながらこれに対する対策を考えていきます、こういうことでございます。
  55. 井上一成

    井上(一)委員 それでは大臣、今日、十七日までは検討に値しないけれども十七日以後についてはECとの協調の中で発動もあり得る、そういうことですね。
  56. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 くどいようでございますけれども、発動の条件がございますから、その時点で状況を判断して、政策としてこれを採用するかどうか、そのときに決めることと考えてございます。
  57. 井上一成

    井上(一)委員 それは根拠は何なのかということも尋ねているのですけれども、お答えがないわけです。発動する場合の根拠。その場合でもIJPCは継続できるとお考えになっていらっしゃいますか。
  58. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 その後の状況がどういう状況になりますか、いまのところまだ判断がつきませんので、その状況に応じて判断すべきものだと思っております。
  59. 井上一成

    井上(一)委員 私は、そういうような状態になって貿管令の発動がある、そういうことになれば、何ぼアメリカ理解をしても、了解をしておっても、イランはただごとでないと思います。そういうことが判断でき得ないという通産では、私は大変残念だと思うのです。  それではもう一つ、さっきから言っているIJPCが継続不可能になった場合の損失は最終的にはだれが負担する結果になるとお考えでしょうか。
  60. 真野温

    ○真野政府委員 IJPCにつきましてちょっと最初に補足させていただきたいのは、IJPC問題につきましては、これは何もわが国の側のみならず、イランの方も革命後の政権が非常に評価しているプロジェクトでございまして、いろいろな経済関係の中で、特に向こう側もこれを継続したい希望を非常に強く持っておるプロジェクトでございます。したがって、先ほどお話がございましたように、経済関係について何らかの措置が行われても、イラン側として直ちにこれについて何らかの報復措置をとるということは余りあり得ないのではないか。むしろ向こう側としても、かなり努力して継続したいという希望を持っておるようであります。  それから、ただいまお尋ねのIJPCが継続困難となった場合のいろいろな影響でございますけれども、これは、御承知のようにIJPCそのものの構成が民間の合弁企業であると同時に、先ほど申し上げましたように日本イラン両国の経済関係の一つのシンボルとして政府としてもいろいろ応援いたしてまいりました経緯もございまして、関連する企業それから政府関係の金融機関等によっていろいろな形でカバーされておりまして、最終的にこれがだめになったという事態というのは、私どもはいまのところそういう事態はあり得ないものと思って工事を進めてまいるつもりでおりますが、そういう仮定の御質問として承りますれば、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、民間の企業及び政府関係の金融機関等含めて負担してまいることになるかと思います。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 具体的に私はちょっと聞いておきたいのです。IJPC輸出保険にどれだけの額を保証され、そして不可能になった場合に輸出保険特別会計というものがその支払いをすればどういう状態になるのか。さらにこの特別会計が赤字になった場合には一般会計から繰り出しをしなければならない。その一般会計というのはやはり国民の税金である。そういうことで一体どれぐらいの額が、もちろんイランとの合弁ですからイラン側損失というものも当然でありますけれども、わが国IJPCが完成しない、継続でき得なかった場合のいわゆる損失というものをひとつ具体的に数字でもってお教えをいただきたい、お答えをいただきたいと思うのです。金融機関だとか民間企業だとか、そういうものでなくて、実際は国民の税金で補てんをしていかなければならぬ。私の計算でいけば三井関連の企業は、これだけ大きなプロジェクトだけれども、損失は五百億ぐらいで済むのじゃないか。これだけの大きなものが私の計算ではそうなっているのですよ。輸出保険がカバーをする、めんどくさいからむしろその方がいいというような、暴論に近いかもしれませんけれども、そういう論議もある。実際損失をするのは国民であり、いま言ったように一般会計から繰り出しをしなければいけない状態、それをおそれて、そういう事態になってはいけないから通産は最善の努力を払っていく、私はこういうように理解しているのですよ。いかがですか。
  62. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  IJPCに対します保険契約の問題につきましては、これは個別企業と輸出保険当局との間で締結されております私的な契約でございますので、こういった契約の内容とか保険金額は、保険の慣例といたしまして一応外には発表いたさないことになっております。一般論として申しますと、こういった当初保険につきまして、これが保険事故になりますのは、国有化をされましたり接収をされたりした場合でございますし、それに対して適当な補償なりが支払われておれば保険金支払いの必要は生じないわけでございまして、現在のイランとの関係から申しまして、これは平和的な解決が行われるということでございますので、私どもとしては保険事故の発生ということはいまのところ考えられないと思っております。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 いわゆるアメリカ追随の形の中で対イラン政策が強硬なものになってしまった場合に、イランも当然IJPCについては強い姿勢を示すであろう。その場合、いま言う輸出保険でカバーされる。そうなると、輸出保険特別会計がもう根底から崩れてしまう。そして一般会計からの繰り出しだ。こういう一つのパターンを私は指摘しているわけなんです。そんなことになるおそれがあるから、ならないように努力しなければいけない、こういうことなんですよ。私は何もそうなることを望むわけじゃないけれども、そういうためにも国益上IJPCはどうしても継続をしたいのだということだと思うのですよ。そうしようと思えば、対イラン対策の見直しを実は考えなければならぬ。ときには、アメリカの言うとおりであれば困りますよ、こういうことになるのですよ。こういうことについて、私の指摘している輸出保険特別会計というものがそういうものである、そしてそれは一般会計から補てんされていくものである、それは国民の税金である、だからいわば国民のとうとい税金がそういう形の中で使われていくことについては通産としても食いとめていかなければならない、こういうことがIJPCに対する取り組みなんだ、こういうことであると私は思うのですが、いかがでしょうか。
  64. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 多額の投資保険の問題の場合、大きな事故が発生いたしますと、先生おっしゃいますように保険会計支払いが非常にかさむ。これはお話しのように特別会計で運営いたしておりますけれども、もし現在の保険金支払いの積み立てております残高を超えます場合には、一般会計からの補てんということも考えなければならないということでございますから、私どもとしては、たとえばIJPCのような大きなプロジェクトについてはそういった非常な事態が生じないということは、当然政策の一環として考えておるところでございます。
  65. 井上一成

    井上(一)委員 ここでちょっとIJPCの建設に絡んだことを一つ問いただしておきたいのですが、パーソンズがいわゆるLPGの供給、そういうものに対して拒否をした、撤収をした。これはわが国の企業でこれにかわってでき得るような企業があるのかどうか、あるいは通産は、それはわが国の企業が請け負ってくれるであろう、あるいはわが国の企業でそういうものが完成された——本来全部でき上がったって、それが起動する整備が必要ですから、そのことについてはどういうふうにとらえているのでしょうか。
  66. 真野温

    ○真野政府委員 ただいまの件でございますけれども、これは本来IJPCプロジェクトに関連しましてNIOC、つまりイラン側の責任においてやるということになっておりまして、イラン側としてこれは責任を負ってやるということを日本側に申してきている点でございますので、これは向こう側がそれにしかるべき対応をしてまいるという形で動いてまいるものと現段階では考えております。
  67. 井上一成

    井上(一)委員 そこなんですよ。東欧圏にそれを発注する可能性だって幾分はあるわけなんです。わが国の企業ではこれは請け負うことが可能なのかあるいは不可能なのか、そういう認識は通産はどういうふうに持っていらっしゃるか、こういうことなんです。
  68. 真野温

    ○真野政府委員 この点につきましては、先ほど申し上げましたように、イラン側、NIOC側が責任を持ってやるということになっておりまして、政府としては、この点についてNIOC側がどういう考えを持っておるか、あるいはこれについて日本側に対して何らかの要請があるとかいう話は参っておりませんので、これは私どもの方からイラン側に対して差し出がましく言う事態ではございませんで、むしろ向こう側のイニシアチブなり考え方に従ってまいるところだと思っております。
  69. 井上一成

    井上(一)委員 それはわかっておるのですよ。イラン側の責任だということはわかっているけれども、わが国の企業でそういうことをパーソンズにかわってやれるような企業があるのかないのかということを聞いておるのですよ、私の聞いておるのは、あるのかないのか、どうなんだ、と。
  70. 真野温

    ○真野政府委員 この部分につきまして先ほどから再々申し上げておりますように、これはイラン側が考えており、プロジェクトの内容を決めておりますので、私どもとしてその内容その他については聞いておりませんし、日本側としてもそれについてどういう技術的な能力とか、あるいは工事遂行能力があるか、その辺についてはイラン側からの詳しい説明がないとわからないわけでございますが、一般的に申し上げて、これはそれほど高い技術を要するものではありませんので、日本と言わずいろいろの国においてもそういう技術的能力はあるというふうに考えております。
  71. 井上一成

    井上(一)委員 結論というわけじゃありませんけれども、そういうこともわが国では請け負うことが可能である、それはイラン側の意思による、こういうことですが、どんな事態が起ころうともこのIJPCの石化事業については続けていくのだ、さっきもアメリカとの話の中では石化だけは別枠に置いているのだということなんですね。そういうことが可能であるようにするためには政府は具体的にどういう対応をしていかなければいけないのか、この点について大臣からお考えを聞かしていただきます。
  72. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほど来くどく申し上げておるように、アメリカが武力的な勢力を用いるということでありますと、これは大変なことになります。したがいまして、その方は自重してもらいたい、抑制してもらいたい。そのかわりイランにはひとつ早目に人質を解放してもらいたい。これが問題をおさめる一番重要なポイントでございますから、まずその面に向かいまして、先ほど申しましたように、テヘランに帰りました大使が申し入れをするわけですから、その結果によるべきだと思います。ただいまの段階では、IJPCに関しましては既存の方針どおり進めるつもりでございます。
  73. 井上一成

    井上(一)委員 私は、ここで少し具体的な政府部内の意見も申し上げておき、かつまた、そのことを否定されるのかどうか、このことについても聞いておきましょう。  大来外相が急遽EC外相会議にオブザーバー的な形で訪欧したということは、むしろイランへの全面禁輸、最終的にそういうことにならぬようにということで、そういうことも一つの話としてパイプを通しておきたかった、こういうことがあろうかと思います。さらに政府部内にも、わが国アメリカと完全な同一歩調をとるべきでない、こういう意見があるわけなんです。なぜなのか。なぜアメリカと同一歩調をとってはいけないのか、ということは、まず第一は、わが国イランとは石油の供給を軸として死活的な依存関係にある、こういうことですね。さらに、人質問題は解決寸前にあったのに、それをいわばアメリカ側があわてた判断というのでしょうか、外交断絶、国交断絶という決定によってこれがぶち壊された。さらに、アメリカは最終的には機雷封鎖を考えている。しかし、機雷封鎖では人質の解放につながらぬ。むしろそこまで考えるなら、物騒な話だけれども、陸軍の投入でもしなければ人質解放には結びつかぬだろう。だからそういう意味では機雷封鎖なんというような考えは何ら人質解放には意味を持たない、つながらない。さらに四番目に、EC各国の大使とわが国の大使は現地でイランとの折衝を続けることがよりベターであった、そういう判断があるにもかかわらず本国からの訓令によって帰国をさせられた、こういうことです。しだがって、わが国の国益を考えた場合には、ただ単に日本アメリカに追随するのではいけない。むしろ独自の立場でイランと粘り強く交渉を継続していく、そのことがわが国のとるべき立場ではないだろうか。さらに、むしろアメリカイランとの仲裁役を買って出るべきだ、こういう意見が第一線を含めて政府部内にある、こういうことなんです。  これまでイラン問題についてわが国は、どうもアメリカイランとの両国の対立関係にのみ目を奪われておった、そのことは注視しておったけれども、この緊張関係を解きほぐすための主体的な努力に欠けていたのではないだろうかということなんです。きわめて困難な問題であろう、しかしながらわが国としては、このアメリカイランとの緊張関係の緩和を図るためにあえて第三の道を探るべきだと私は思うわけです。非常に困難なことかもわからない、しかし、そのことがわが国の国益になり、そして世界情勢の中での平和的な問題解決に結びつく、こういうように考えるわけなんです。  大臣アメリカにもべったりつくのではなく、イランにもべったりつくのではなく、いま私が申し上げたような、政府部内にもある意見でございますから、そういう意見を尊重しながら、第三の道をわが国としては探るべきだ、そのことがIJPCの継続を可能にすることにもつながる、すべての問題の解決につながっていく、私はこういうふうに思うのです。  このことについて、具体的に私からいま指摘をしましたし、私の意見も踏まえて問題を提起したわけです。大臣、否定をされるのですか。
  74. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 アメリカが本問題を解決する手段として平和的な解決以外の道を選ぶのは自制してもらいたいというわが国の主張は、決してアメリカに追随したものではございません。  そのこと自体が、わが国を含め、この問題の処理、ひいては将来の問題にいかに重大な影響を及ぼすかということを考えますと、私どもといたしましては、そういう平和的な解決以外の道は選んでもらっては困るという独自の主張をしておるわけでございまして、それをアメリカ側にもお話しして自制を促しているところでございます。  また、イラン側にも、先ほど来申しましたように、人質の問題は、これは何と申しましても国際法に違反した問題でもあり、あるいは世界秩序に対して非常な脅威を与える問題でもございますので、これはできるだけ早くひとつ円満裏に解放してもらいたい。  その時期、方法はどうであろうかということで、リスボンの外相会議の結論を踏まえまして、幹事国であるイタリー大使からわが方にも申し入れがございましたから、それはわが方としても応ずべきだということで、ヨーロッパ九カ国の大使とわが方の大使が一緒になりましてイラン大統領に申し入れたことは御承知のとおりでございまして、大使もそれぞれ各国に帰って、その結果を踏まえまして今後の対処方法をどうするかということで、ヨーロッパ側では、先ほど来お話がございましたような外相会議で最近の決議がなされまして、それに相応いたしまして、わが方もいろいろ考えました結果、先ほどのような措置をとった次第でございまして、別に第三の道とか第四の道とかいうのではなくて、こうするのが一番よろしかろうという道を政府としては選んでおるつもりでございます。
  75. 井上一成

    井上(一)委員 いま私が指摘した、政府部内にもこういう意見があるのだということは十分御承知で、そういう意見も大臣は承知した上で対応をしていく、こういうことですね。
  76. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 政府部内の意見というのがいろいろあるかもしれませんけれども、しかし、私どもの承知した限りでは、いまとりつつある政府方針に、それは違うという見解というものは見出しておりません。
  77. 井上一成

    井上(一)委員 もちろん政府見解というものはそれなりに出されているわけです。しかし、その見解に対して、こういういま私が申し上げたような意見が、政府部内、とりわけ実情に詳しい、そういう立場の人々がそういう意見を持っているということを十分認識をされていらっしゃいますかということです。
  78. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 不幸にして十分認識しておりません。
  79. 井上一成

    井上(一)委員 大変残念なことです。残念なことだけれども、いま私が詳しく申し上げましたこういう意見もあるということを、いまの時点で強く認識をしてください。よろしいですね。いままでは知らなかったけれども、こういう意見が政府部内にある、こういう意見に対してはもう耳をかさない、そういうようなお考えですか。こういう意見もまた聞くに値する、むしろそういう意見を尊重していきたいとか、別に第三、第四という、そういう第三の道はどれなんだという、そこまでは私は指摘してないのだけれども、アメリカ追随外交は、同一歩調をとることは国益上よろしくない、こういう意見もあるということです。
  80. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、アメリカのいまあるいはとるかもしらぬ危険な道は選ぶべきでないというわが国の主張は、決してアメリカに追随しているとは思っておりません。
  81. 井上一成

    井上(一)委員 あなたが思わないだけで、大多数の人はそう思っている、国民もそう受けとめているわけです。  時間がありませんから、この問題はまたいずれかの機会にさらに尋ねていきます。  今度は、武器輸出の問題について少し聞いておきたいと思います。  ソ連のアフガニスタン侵攻をきっかけに、財界の中でも非常にタカ派的発言が目立っているわけです。あえて具体的な個人名は避けますけれども、いわゆる防衛費を増額せよ、あるいは非常時に際しては徴兵制の研究も必要だ、非常に物騒な、全くもって憲法の精神を踏みにじる発言が随所に指摘をされ出したわけです。むしろそのことが、国防は大事なことだ、国防論議がそのことによって当然起きていくのだという、そういうような、これまた誤った反応が財界の一般的見方になろうとしている今日ですが、そういう財界の防衛強化論の中で、武器輸出に関する規制を緩和すべきではないか、こういうような意見もあるようであります。  これは将来にとって非常に危険な方向にあるわけでありますが、こういう見解について、私は、唯一の原爆被爆国であるわが国、戦力の放棄あるいは平和憲法を持つわが国が、戦争あるいは国際緊張を助長していく、そういうことにつながる武器輸出については、厳に慎み、絶対にこれを行うべきではないという考えなんですが、ここで大臣の考えを伺って、むしろ確認をしておきたいと思うのです。
  82. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 わが国は従来から武器輸出原則を設定いたしまして、この問題に対してはきわめて厳格な態度で進んでおることは御承知のとおりでございます。  さらにその態度を強化するために、昭和五十一年二月に武器輸出に関する政府方針を国会に報告いたしまして、その原則をさらに強めたということは御承知のとおりでございます。  その方針あるいは態度というものは、現在までも貫いてきましたし、今後ともこれを変更するつもりはございません。
  83. 井上一成

    井上(一)委員 武器輸出については従来の政府方針を変更しない、こういうことです。  さらに、ある新聞報道によれば、日本商工会議所会頭永野さんが、武器輸出原則は行政指導にすぎないという誤った発言をしているわけです。あるいは自民党三役と懇談した際ということもうたわれているわけですから、自民党の首脳ということになるわけですけれども、そういう認識があるということが報道されているわけです。これについては通産大臣はどう思われますか。
  84. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 これは決して単なる行政指導でどうという問題じゃございませんで、輸出貿易管理令等に準拠したものでございますから、国会に表明いたしましたわが国方針も、一通産省のみでなくて、閣議として、国策として、行政府として決めたものでございますから、単純な行政指導とは思っておりません。
  85. 井上一成

    井上(一)委員 たとえばアメリカは、ソ連に対してココムで、高度の工業技術なり利用技術はすべて禁輸の対象とする、あるいはコンピューターなど電子機器の輸出も規制を強化していこう、大規模なプラントはすべて規制をしよう、そういう骨子の新提案を示したということなんです。これはソ連のアフガン侵攻に対する経済制裁の強化しいうことと同時に、ソ連の軍事力増強を抑制しようというねらいがあるわけです。このアメリカの提案に賛成するとかしないとかとは別にして、わが国武器輸出に関する方針に電子機器及びその利用技術の問題をわが国も加味していかなければ、いわば世界の情勢から大きくかけ離れていくのではないだろうか、むしろいまの規制内容を強化していくべきではないだろうかという考えなんですが、いかがでございましょうか。
  86. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  わが国といたしましては、安全保障上の考慮及び自由主義諸国間の国際的な協力の観点から、ココムによる輸出規制を遵守いたしてきておるところでございますが、ただいま先生の御指摘のような御意見につきましてはココムの参加国と密接に協議をいたしまして、ココムによる輸出規制の強化というような結論になりました場合には適切な措置を検討してまいらなければならないというふうに考えております。
  87. 井上一成

    井上(一)委員 先日、これはコンピューターメーカーのトップで、世界的にも非常に高い評価を受けてきた富士通が機構改革をして、いわゆる防衛機器本部を新たにスタートさせよう、機器メーカーが防衛産業に変化をしていこうという、財界のトップあるいは自民党の首脳、そういう人たちに呼応するがごとく、やはり企業もそういうような考えを持ち始めてきたのではないだろうか、そういう心配もするわけなんです。ということは、戦前のように需要増加、いわゆる防衛力をいかに増強する目的といえども、そういう量的なものはもう期待できない、むしろ質的なものにしぼって取り組みがされようとしている。そういうことになると、現行の輸出貿易管理令別表一についての例示があるわけですけれども、それだけでいわゆるブラックリスト、いまのリストだけで完全にカバーできるのであろうかどうか。むしろ、灰色的なゾーン、そういう分野に置かれる——もちろん、行政指導なり厳しいチェック機能があるとお答えになるかもわかりませんけれども、このような時期にやはり見直しを検討する必要があるのではないだろうか、こういうことを私は考えるわけです。このことについて通産の考えを聞いておきたいと思います。
  88. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 先生のいま申された第一点の方でございますが、富士通で防衛機器本部というのを五十四年十二月につくった、それは従来ございました特殊機器本部を改組したものというふうに聞いておりますが、これは国内向けの防衛庁が調達いたします電子機器の開発、製造、納入を担当いたしておるところでございまして、輸出というようなことは全く考えておらないというふうに聞いております。  それから第二の点でございますが、現在わが国といたしましては武器輸出については特に厳格に対処をいたしておるわけでございまして、これは先ほど大臣がお話ししましたように、昭和五十一年の二月に国会で表明された政府方針ということによって、世界の中でも非常に厳格に扱っておるわけでございます。現状におきまして、現行の貿管令の運用によりまして武器輸出についての政府方針の趣旨というものは十分に確保されておるというふうに考えておりますけれども、今後大幅な技術の進歩だとかあるいは国際的な使用状況の実態の変化というようなことがございまして、もしそういうことが必要ということになりますれば、先生御指摘のように、その段階政府方針の趣旨に支障が生ずることのないよう対処してまいりたいと考えております。
  89. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、わが国として、これまで武器輸出認をめたことがあるのか、ないのか。
  90. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  先ほど申しましたように、昭和五十一年二月の政府方針に基づきまして、従来の武器輸出原則の対象地域以外でございましてもその輸出は慎むということになっておりまして、この政府方針にいいます武器輸出というものは、わが国において使用するために輸入したものであって、不用品があった場合の返品、いわゆるクレームの処理のための輸出という場合と、きわめて限られた場合以外は認めておりません。
  91. 井上一成

    井上(一)委員 私は、いまの法それ自体が非常にざる法になりつつあるという見解を持っているのですけれども、フィリピンに対して、フジインダストリアル社、これは密輸だということになっていますけれども、これもやはり何らかの法的なチェック機関が足らなかったためだと思います。あるいは佐伯建設工業がマレーシアに軍港をつくることに、しゅんせつ工事ということで発注を受けたわけですけれども、そういうことがある。あるいは三井物産を通して墨田川造船が、これは非常に古い話でありますけれども、韓国に軍艦を輸出した。こうした事実をどういうふうにとらえているのか、考えるのか。実質的にはもうざる法化しているのではないだろうかということなのです。さらに韓国への軍艦の輸出については、いわゆる韓国の貿易統計年報にも記載はされてありますし、わが国の大蔵省国税局の貿易輸出統計月報にも明確に「照明船、消防船その他の特殊船舶」そういう形で、トン数は少ないですけれども、これは両方ともトン数も金額も合致するわけであります。  そういうことで、古くは墨田川造船あるいは近くは佐伯建設のマレーシアの軍港問題、あるいは三井を通してのフジインダストリアルの取り組んだいわゆる武器が海外へ流れていく、そういうことについてどうとらえていらっしゃるのかということを聞いておきたいと思います。
  92. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 ただいま先生御指摘の点でございますが、まずフィリピンへの手りゅう弾部品輸出事件、フジインダストリアルの事件でございますが、これは法律上通産大臣の承認を得なければならない、必要とするという貨物である手りゅう弾部品を、通産大臣の承認を得ずに輸出をしたわけでございまして、これは法律違反でございますから、通産省は同社の社長を外為法違反で警視庁に告発をいたしたわけでございまして、その結果同年の十月に東京地検が外為法違反で起訴をいたしておりまして、五十四年の三月には東京地方裁判所で外為法違反といたしまして、罰金八百万円、それから社長の金沢某を懲役一年六カ月、執行猶予三年ということに処しておりまして、同社あるいは本人も控訴いたしておりませんので、刑は確定をいたしておるという事件でございます。  それから、墨田川造船の韓国に軍艦を輸出しているのではないかという問題でございますが、これは事実には反することでございまして、韓国の七一年の貿易統計の軍艦の項目に日本からの輸入が記載されておるということでございまして、それに見合うものといたしまして、わが国の貿易統計月報には「照明船、消防船その他の特殊船舶」の項目に韓国向けの輸出が記載されております。しかし、「軍艦」に分類される項目、七三五の一〇一及び七三五の一〇二には通関実績がございません。この墨田川造船が製造いたして輸出したものを、三井物産の話によりますと、当該舶船は韓国の調達庁との問で契約を締結いたしました化学消防艇、ケミカル・ファイヤー・ファイティングボート、火と戦う消防艇でございまして、これは確かに写真で見ますと、一見銃砲のように見えますが、これは水鉄砲でございまして、これは軍艦ではないということでございますので、先生おっしゃいますように、現行法におきましては、武器は流れておらないということでございます。
  93. 井上一成

    井上(一)委員 現在の法制が実質的にはざる法になっているのではないか、こういうことについても答えがないわけであります。  さらに、ここで念のために聞いておきますが、いわゆる返品、クレームとしてわが国が再輸出なした、そういう実績、その点についても、もしわかれば、特に防衛庁の中で、できれば航空機についでどれくらいの再輸出があったのかを聞かしてください。
  94. 花岡宗助

    花岡(宗)政府委員 後の方からまずお答えいたしますと、先ほど申しましたように、クレームによります返品のための輸出、これはほとんどすべてが防衛庁に納入される武器にかかわる部品につきまして、機能が不良であるとかあるいは外観が不良であるということによって返品されるものでございます。  クレームによる返品輸出のみの統計というものは作成いたしておりませんけれども、たとえば防衛庁の部品のクレーム輸出について申し上げますと、通関統計では、これは民間機を含めた航空機部品の輸出という中の一部としてその内数に入ってしまっておるわけでございますが、この通関統計上の民間航空機を含めた航空機部品の輸出というものは昭和四十五年には約百九十八トン、約七十七億円ということになっております。  それから、武器輸出につきまして、実質的にざる法ではないかという御指摘がございましたけれども、私どもはそう考えておりませんで、武器輸出につきましては、外国為替及び外国貿易管理法に基づきまして、輸出貿易管理令の別表第一にこれを特掲いたしまして、その仕向け地のいかんを問わず通商産業大臣輸出の承認にかからしめ、厳格に規制をいたしております。これに違反をしたものに対しましては、厳罰をもって対処するということにいたしておるわけでございまして、政府といたしましては、その運用に当たりまして、細心の注意を払いまして、厳しく規制をいたしていく方針でございます。
  95. 井上一成

    井上(一)委員 時間が参りましたので、最後の質問をいたします。  外務省に私は尋ねておきたいと思うのですけれども、核兵器開発を目指している、具体的にはパキスタンに対して。わが国にウラン濃縮工場に対する発注があった、こういうことなんです。そうして、装置は数億円もするという周波数の変換器ですね、非常に高速回転が可能である遠心分離機。このことについて、外務省はイギリスからあるいはアメリカから外交ルート等によって知らされたということです。未然に輸出を防いだ。結果はそうなっているのですけれども、ここで尋ねておきたいのは、どのような経路から外務省にそのような話があったのかどうか、たとえば在京のイギリス大使館とかアメリカ大使館とかあるいは駐英日本大使館からとかいろいろなことがありますけれども、そのことが一点。  それから、アメリカ国務省から、周波数変換装置など一連の遠心分離機構成機器のリストが作成され、そのリストに該当する品目は、いわゆるパキスタン向けには絶対に輸出しないよう、外交ルートを通じてわが国や欧州各国に申し入れがあった。そうして通産にはもちろんそれを外務省が報告をし、連絡をし、今回の問題は未然に防いだということです。それで、このリスト、アメリカから送られてきたいわゆる構成機器のリストに該当する品目、そういうものをぜひ提出をしていただきたい、こういうことです。リストについては委員長、後刻理事会でお諮りをいただいて改めてリストを提出していただくことでも結構でございますし、外務省にこの点を二点尋ねて、私の質問を終えます。
  96. 金子熊夫

    ○金子説明員 まず第一点でございますけれども、そもそもロンドン・ガイドラインというものがございまして、これをつくりましたグループがあるわけでございます。十五カ国ございまして、その中に、わが国、米国、イギリス等が入っております。このグループの中で、核拡散防止の観点から、随時、必要に応じて意見を交換し、情報を交換し、必要な協議をやっておるわけでございます。  そこで、お尋ねの周波数変換器に関する情報が英国からどのような経路で参ったかという御質問でございますけれども、この点は、やはりそのグループの中の情報交換ではございまするけれども、相手国の立場もございますし、第三国の立場もございますので、外交上のことということで、詳細を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。  それから第二点の、米国から先生のおっしゃったようなリストが来ているからということでございまするけれども、この点につきましても、やはり同様、外交上のことでございまするので、ひとつ詳細は御勘弁願いたいと思います。
  97. 高田富之

    高田委員長 新村勝雄君。
  98. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 最初に、中国の渤海油田の開発について、近いうちに大臣が訪中をしていろいろ折衝をされるということが伝えられておりますけれども、その概要について伺いたいと思います。
  99. 志賀学

    ○志賀政府委員 渤海の日中共同開発プロジェクトの現状について申し上げますと、昨年の十二月に、日本石油公団と中国側当事者との間で基本的な合意書が調印されたわけでございます。それで、昨日、このプロジェクト日本側の推進母体になります新会社が設立の運びになっております。今後の取り運びといたしましては、この新会社と中国側との間で具体的な最終的な探鉱開発のための契約を締結するということで、現在中国側と交渉が進められておるというのが現状でございます。私どもといたしまして、この渤海の探鉱開発という問題は、日本といたしましても安定的な石油の確保のためにきわめて重要であるというふうに思っておりますし、また、中国と日本との間の友好関係の推進という観点からも、積極的に今後推進してまいりたいというふうに思っております。
  100. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 いい考えだと思いますけれども、その資本の割合であるとか、あるいは成果について、どう分配するのか、それらの概要はどうなっておりますか。
  101. 志賀学

    ○志賀政府委員 日本側の新会社でございますけれども、これは公団が六〇%出資をいたします。民間側におきましては、日本の民間の石油開発企業、それから鉄鋼、電力といったような企業が参加をしておるわけでございます。  それから申し落としましたけれども、日本石油精製企業といったようなものも参加しておりまして、この公団の六〇%を除いて、民間の出資が四〇%であるわけでございますけれども、この四〇%の中の出資のシェアでございますけれども、四〇%のうち、この石油開発企業が六七・五%、それから石油精製関係の企業が二二・五%、それから電力会社、これが六%、それから鉄鋼関係の企業が四%、こういうような資本割合になっておるわけでございます。
  102. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 ついでに、日中の資本の割合それから技術の関係、それからまた成果の分配ですね。
  103. 志賀学

    ○志賀政府委員 このプロジェクトは、探鉱段階におきましては、これは日本がリスクマネーを負ってやるということでございまして、探鉱の関係で申しますと、所要資金量が大体二・一億ドルぐらいの資金量というふうに探鉱段階では考えられておりますけれども、これにつきましては、日本側の新会社が全部調達し、リスクを負うということでございます。それで、日本側のこの企業が探鉱を続けてまいります。したがいまして、その探鉱の技術的な面におきましても日本が責任を持って実施をするということになっております。それで開発段階に移行いたしますと、開発の資金量が、これは探鉱の結果を見ませんと最終的にはわかりませんけれども、大体総額としては二十億ドルぐらいになるのではないかというのが現状でございます。ただ、とりあえずの当面の問題としては、開発の所要資金としては、とりあえずの第一段階の開発としては十億ドルぐらいというふうに考えておるわけでございまして、この当初の開発段階におきます十億ドルについては、中国側が五一%、それから日本の新会社が四九%の割合で負担をする、こういうようなことになっております。  それから、出てきた油でございますけれども、出てきた油につきましては、日本側の報酬、コスト回収を含めまして、年生産量の四二・五%を日本側が受け取る、こういうようなことになっております。
  104. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、相当莫大な資金が必要なわけですけれども、探鉱の段階で間違いなく出るという見通しがついてから、これは本格的な事業に入るのだと思いますけれども、その確実に出るという見通しがつくまでの費用、これはどのぐらいかかるのか。
  105. 志賀学

    ○志賀政府委員 石油のことでございますので、確定的なことは、この探鉱の結果を待ちませんと、なかなか申し上げられないわけでございますけれども、現在までのいろいろな既存のデータその他を踏まえて一応推定いたしますと可採埋蔵量といたしましては大体一億一千万キロリットル程度があるのではないか。生産量といたしましては、十五年間ということで一応想定をして考えてみますと、大体生産量としては一億キロリットル。ピーク時の生産量としては大体年九百万キロリットルぐらいの生産量が期待できるのではないかというふうに思っております。いずれにいたしましても先生御指摘のように開発段階に移行するのは、これは探鉱の結果を踏まえて十分なフィージビリティースタディをやって、商業ベースに乗るという前提で、そういう判断ができた段階で開発に移行する、こういうことでございます。
  106. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 次に、日韓大陸棚の石油開発でありますけれども、この事業については現在の進捗状況あるいは見通しはどうなっておりますか。
  107. 志賀学

    ○志賀政府委員 日韓大陸棚につきましては、日本側の開発権者は日本石油開発それから帝国石油、この二社が参画をしております。  現状を申し上げますと、昨年第五小区域それから第七小区域、これは小区域が九つに分かれておりますけれども、第五小区域、第七小区域につきまして物理探鉱が行われております。ことしにおきましては、一応物理探査を行いました第五小区域及び第七小区域につきまして試掘を実施するという計画になっております。それから第八小区域につきまして、ことしは物理探査を行うということになっておるわけでございます。第五小区域、第七小区域の試掘につきましては、私どもといたしましては来月中にも試掘に着手できるのではないかというふうな期待を持って見ておるのが現状でございます。
  108. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、いままでのいろいろな調査のデータ、それから試掘の状況によって大体の将来の見通しがつくわけでしょうけれども、それはいつごろになりますか。
  109. 志賀学

    ○志賀政府委員 いま申し上げましたように、昨年から物理探鉱に入ったという状況でございますが、現段階におきます一応の計画としては、三年間かけまして探鉱を行うという一応の予定になっておるわけでございます。どの程度期待できるかということでございますけれども、これは先生御案内のようにエカフェの調査によって石油の埋蔵が非常に期待できる、有望地域という一応調査が過去においてあるわけでございまして、私どもとしては、この探鉱の結果その有望性というものが確認されれば日本石油の安定供給のためにも非常に大きな要素になるのではないかというふうに、期待を持って見ておるというのが現状でございます。
  110. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それでは、次に工業用水道の実施についてお伺いをしたいわけですが、この事業が五十年、五十一年、五十二年とずっと継続的に多額の繰り越しあるいは不用額を生じておるということで資金の効率的な運用上非常に遺憾な状況が続いておるわけでありますけれども、こういう多額の繰り越し、不用額が毎年出るということについての原因はどこにあるわけですか。
  111. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  いま先生御指摘のように、五十二年あたりを見ましても相当額の繰り越しが出ておるわけでございですが、これにつきまして、なぜかというお尋ねでございます。個々の事業について当たってみますと、工業用水事業費の補助につきまして繰り越しが生じました主な理由といたしましては幾つかございますが、その主なものを申し上げますと、一つは建設事業の実施に当たりまして、たとえば用地交渉等が非常に難航しましたということで事業がおくれてきたというようなこと、それからもう一つは、工事に入りましてから、たとえば地質条件等が悪いということが判明しまして設計変更を余儀なくされたというようなことで、やむを得ない事情が生じて年度内の事業執行が困難になったというのが主な理由でございます。また、不用を生じた主な理由といたしましては、用地取得費あるいは補償費等が当初の見込みよりも安価になったというようなことなどありまして、生産に伴いまして減額が生じたということが主な理由でございます。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、いま御指摘もありましたが、工業用水道事業の執行に当たりまして、従来からできるだけ地方公共団体に対しまして計画段階から補償交渉とか、あるいは工法等計画の確実性につきまして十分検討するように指導をいたしてきているわけでございますけれども、今後とも繰り越しあるいは不用というようなことを極力減少させますように、地方公共団体の指導に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  112. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 これが一年や二年ではなくて、継続的に繰り越し、不用が発生をしておるわけでありまして、用地交渉あるいは見込みよりも安くなったということは計画のずさんさをみずから表明するようなものであって大変残念でありますけれども、この事業は、国だけの事業ではなくて地方自治体とも深くかかり合いのある事業であるわけですね。そういった点で地方自治体に対しても少なからず迷惑をかけているのではないかと思いますけれども、地方自治体と国との関係補助関係なんかについて、ひとつ詳しく御説明をいただきたいと思います。
  113. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  私どもいまこの工業用水道の建設につきまして施策を講じておるわけでございますが、先生御案内のように、国庫補助をいたしております事業につきましては、地方自治体が事業を実施する、それに対しまして、事業の種類によりまして補助率は若干異なりますが、たとえば新産・工特整備地域でございますと三五%、一般地域でございますと三〇%、その他もございますが、そういったかっこうで、それぞれの補助率というものを前提にいたしまして国庫補助を行うというかっこうで事業を行うという仕組みになっておるところでございます。
  114. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 それでは具体的に伺いますが、房総臨海地区工業用水道という事業がございますが、これはどこの事業にも共通する事態を抱えていると思いますけれども、この具体的な事業について伺いたいと思います。ここの事業は計画から見れば大幅に実態は食い違っておるわけですね。ここの事業を阻害している要因は何でしょうか。
  115. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。房総臨海工業用水道事業でございますが、御案内のように、これは事業主体が千葉県ということでいま実施をしておる事業でございます。いまお話のございましたように、五十二年度にも繰り越しが出ておるわけでございます。なぜ五十二年度が繰り越しになったかという理由について御説明いたしますと、五十二年度につきましては、ここの工業用水道事業は、導水路トンネルの工事というのを予定しておったわけでございます。ところが、導水路の線と申しますか、その予定地のところにある山にトンネルをつくるというところが二カ所くらいございますが、その山の所有者との補償交渉が難航したということがございます。  それからもう一つ、国鉄線路の下を横断する計画になっておるわけでございますが、そこの部分につきまして、国鉄の運行に支障を与えないような工法というものにつきまして国鉄と協議を重ねたわけでございますが、その協議につきまして日時を要したというようなところから、着工がおくれた部分が出ました。そのために、五十二年度の工事につきまして五十三年度に繰り越されるという結果に相なったわけでございます。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、事業が計画どおりできますように計画の確実性について十分検討するよう、今後とも十分な指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  116. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 これは地方自治体とすればかなり大きな事業になるわけですけれども、そういった事業について用地の交渉ができない、あるいは国鉄との話し合いがつかない、予算措置が講ぜられて実際に仕事をする段階でそういう障害が起こるということは、地元の自治体の責任もあるでしょうけれども、もう少し確実な事業実施の見通しがついてから予算措置をする、あるいは仕事の実施に入るということでなければいけないと思うのですけれども、そこらの配慮はどうなっておるのですか。
  117. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、計画が狂ってくるということは、私ども予算をあずかる立場からいいましても、あるいは実際に事業を実施される地方自治体の立場からしましても、非常に困ることでございます。いま御指摘のように、毎年予算を検討する際に、事前に十分地方自治団体からの話を聞きまして、計画の確実性というものを見きわめるように努力しておるわけでございますが、現実にその段階で予測し得なかったような事態というものが起きまして計画が狂ってくるというような事態が、今後とも起き得ないというわけにはまいらないかと思いますけれども、少しでもそういうことがないようにということで、私どもさらに工天をし、地方自治団体ともよく打ち合わせをいたして、計画が確実にいけるように努力をするということにいたしたいと思います。
  118. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この房総臨海の計画を見ますと、房総導水路、亀山ダム、高滝ダム、この三つから成っているわけですけれども、合計して七十四万立方メートル・日ということでありますが、それが高滝ダムが中止になって六十六万立方メートル・日ということに変更されておりますね。これらの変更の事情はどういうわけですか。
  119. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  この房総臨海工業用水道事業の計画は、四十五年から六十年ということで計画されたものでございまして、いま先生御指摘のように、当初は七十四万トンの計画でスタートしたわけでございます。ところが、その後ちょうど石油ショックを契機にいたしまして、経済成長の低下に伴う設備投資の減少というような状況になってきたということ、それからもう一方、各工場の方でもできるだけ節水に努めて回収率を上げるというようなことになってきたところから、需要見込みが相当減少してまいったわけでございます。そこで、そういった事態に対処するために五十四年度に変更を行いまして、現在六十六万トンという計画に縮小したというのが経緯でございます。
  120. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 七十四万から六十六万に減ったという理由、内訳、これは進出会社の都合によってこういうことになったということですか。
  121. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  正確に数字では申し上げかねますが、この水道をつくりました計画というのが、いわゆる地下水転換に対する分と、それ以外にほかの用水から転換する分、それから進出してくる工場の需要、あるいは現在あります工場の増設に対する需要というものをベースにして、七十四万トンというのを推定をした。それが、そういったそれぞれのファクターにつきまして減少が見られる。特に節水の問題などもございますので、そういったことで全体に需要が減少をしたということで、もう一度需要につきまして検討いたしました結果変更した、こういうことでございます。
  122. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 最初の見通し、建設もくろみの段階で何社の進出が予定されておったのか、それが変更後には何社に変わったのか、進出会社の状況、これはどういうことになっていますか。
  123. 岩城彬

    ○岩城説明員 お答えいたします。  何社であったかという詳しいデータはいま手持ちがございませんが、大手企業の生産計画がやや縮小したということで水量が落ちた分が多うございまして、企業数としては、中小企業がそのかわりに入ってきたという分がありまして、たしか企業数にしては変化がないという状況になっておると思います。
  124. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 私の聞いているところでは、変更前、当初の見込みでは四十四社あったものが、変更後には、確かに中小企業がふえて会社の数はふえておりますけれども、大手の水需要の会社が減った、そのためにこういう計画の変更をせざるを得なかったというふうに聞いておりますけれども、それらの事情はいかがですか。
  125. 岩城彬

    ○岩城説明員 お答えいたします。  おっしゃるとおりでございます。特に大手企業につきましては、東京湾の環境規制の問題もございまして、水使用の合理化が著しく進んできたというようなことでございます。たとえば、鉄鋼なんかで申しますと、水使用の合理化、つまり回収利用率が九八%ぐらいまで高まっておるというふうな状況がございまして、そういう意味でも、大手企業の水使用が減ってきたということは言えると思います。
  126. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この事業は県事業でありまして、県もかなり経費の負担をしてやっておるわけですけれども、その計画あるいは工事の進行の過程で企業に振り回されておるというような実態がありはしないかと思うのです。大手の需要会社が辞退をしたことによって、この計画が大幅に変更せざるを得ない。こういうようなことになりますと、結局迷惑を受けるのは県民でありまして、そういう点で、ひとつ通産省はこういった事業について、地方団体に企業の都合によって負担を転嫁をさせざるを得ないというような事態を起こさないように指導していかなければいけないし、また、最初申し込んで、その申し込みによって計画を立て、工事を進めるわけでありますから、途中で辞退したら辞退したなりにやはり責任を持ってもらわなければいけないと思うのですけれども、そこらはどう考えていますか。
  127. 岩城彬

    ○岩城説明員 ただいまの件でございますが、各自治体は、千葉に限らず、それぞれ地域開発というのを大変熱心に進めておりました。特に、石油ショック以前は、むしろ自治体のそういう責任で用水を準備し、あるいは団地を準備しというふうなことでございまして、それに対して企業の張りつけがどういうことになっていたかと申しますと、先ほどお話ありましたように、正式に契約を結ぶという段階までは至っておりません、大分、十年も先の話をするわけでありますから。ただ、企業の意向を聞いて、申し込み程度のものをつかみまして、それで工業用水の事業計画を進めるというのが実態でございました。私どもとしては、できるだけその申し込みについても確度の高いものにするように昨今は十分努力をしているところでございますが、そういう正式契約に至らないというところで事業を始めるということでございますので、企業が情勢の変化で当初の申し込みどおり実現しないからといって、責任を厳しく追及するというわけにはまいらないというふうに思っておりますが、今後ともそういうことのないように、私どもとしてもできるだけ自治体、あるいは企業に対して指導をしていかなければいけないというふうに考えております。
  128. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 この計画そのものが、企業の申し込みあるいは水需要を予定をして計画をつくるわけでしょう。もちろん、これは自治体としては開発計画を持ってやるわけですけれども、計画の基本は、やはり企業の水需要、それに基礎を置いて計画を立て、莫大な県費を使い、住民の負担においてやるわけです。また、多額の国費を使うわけです。それが無定見なあるいは無責任な計画の変更、あるいは水需要を放棄するというようなことで、国あるいは特に地元が迷惑を受けるということについて、それについては責任を負わせることができませんということでうやむやに過ごすということが、やはりこういう問題を次々に起こす原因になると思うのです。そこで、そこらの点についてはひとつ通産としてもしっかりとした指導、あるいは計画をつくる当初の段階でもっと確たる見通しを立て、それを変更せざるを得ないしいう場合にはやはり責任を持ってもらうというような体制をつくらなければいけないと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  129. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃる御趣旨はよくわかるわけでございまして、私どもとしましては、できるだけ計画を立てる当初の段階で確実な計画になるように、今後とも十分地方公共団体とも話し合って、確度の高い計画で実施ができるように努力をいたしたいと思います。ただ、何分にも一面におきましてこの工業用水道の建設というのは一種の先行投資的な性格を持ちますので、ある程度不確実なところにつきましても見通しを持って全体計画を立てませんと、後になってかえって小刻み増設というようなことになりますと非常に効率の悪いことになるというようなこともございます。ある程度の見通しに基づいて計画を立てざるを得ないという一面もあるのは事実でございます。したがいまして、その辺のところと確実な見通しを立てるという、できるだけ確実な需要をつかむという両面を勘案いたしまして、十分地方公共団体の指導をしながら、御指摘のようにできるだけ計画が狂わないような努力というものは今後ともいたしたいというふうに思います。
  130. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 ここ数年続いているようなこういうことは、資金の効率的な使用上大変遺憾な事態だと思いますので、こういうことがないように、これから十分御注意をいただきたいと思います。  次に、中小企業の対策についてお伺いしたいのですが、中小企業はこのところしばらくの間経済界の沈滞によって厳しい状況を強いられていると思いますが、現在の中小企業の経営状況についてどういう認識を持っていらっしゃいますか。
  131. 左近友三郎

    ○左近政府委員 最近の中小企業の現状でございますが、実は御案内のとおり一昨年までは構造不況とか円高ということで、大変中小企業が苦労いたしました。ただ、昨年に入りまして景気も徐々に回復をしてまいりまして、そういう点で、昨年は中小企業も比較的状態として過去の不況からある程度立ち直ったということは事実でございます。ただ、やはり昨年の後半以来、原油の値上がり、そのほか原材料の値上がりというものが出てまいりましたし、それからまた、いわゆる金融の引き締めというようなことも徐々に今年に入って進んでまいりましたので、現在のところではことに一部の業種では大変苦しい状態でもございますし、将来にわたって非常に不安材料が多いということで、中小企業についても今後そういう不安に対して十分な対策をやっていかなければいけないというのが現在考えているところでございます。
  132. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 統計で見ますと、五十四年には前半で若干倒産件数が減りましてやや回復の兆があったわけでありますけれども、五十五年に入ってからは、これがまた逆に倒産件数がふえておるわけであります。そして危険ラインと言われる千五百件、これは負債総額が一千万以上のもので千五百件に迫っておるというのが実態です。こういったときに通産省としては、中小企業の対策として現在どういうことをお考えになっておりますか。
  133. 左近友三郎

    ○左近政府委員 御指摘のように、倒産件数が、昨年の十月以降いわゆる危機ラインと言われる月間千五百件を超えておりますし、今年に入りましてから千五百件よりは若干下回りましたけれども、これは例年一月、二月というのはわりあい倒産件数が少ないときでございますので、それでは安心できないということで、三月が千四百件強で千五百件を超えませんでしたが、しかし相当な件数になってくるということで、われわれといたしましてはこの倒産の増大を非常に憂慮しておるわけでございます。したがいまして、当面の対策といたしましては、こういう倒産が頻発しないような対策ということで、やはり金融対策を中心にやってまいりたいということでございまして、これについては、この連鎖倒産等の防止のための緊急融資制度というようなものも準備をいたしておりますが、全般的な対策といたしましては、政府系の中小三機関、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工組合中央金庫というふうな政府系の機関の資金枠を十分用意いたしまして必要な資金を供給いたしたいというふうに考えるわけでございまして、ことしの第一・四半期のこういう三機関の資金枠は合計では前年度の第一・四半期に比べまして大体三割以上高い枠を用意いたしておりまして、いざというときに備えていきたいというふうに考えております。また、民間の金融機関につきましても、金融引き締めになりますとどうしても中小企業にしわが寄るという事象が過去の実例ではございますので、そういう事態がないようにということで金融当局にも御連絡をしながら指導に努めておるところでございまして、こういう金融対策によりまして当面の対策を手を打ち、かつ、長期的にはいろいろな合理化対策等々によりまして中小企業の経営力を強めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  134. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 中小企業に対する主要な対策は金融でしょうけれども、この金融を行う中小企業金融公庫そのものの経営もなかなか大変なようでありまして、五十三年で赤字が八十八億、五十四年で百四十億の赤字が出ておるということであります。しかし、これはいわゆる金融ベースではなくて制度融資でありますから、金利差のいかんにかかわらず低利の資金を供給しなければならないと思うわけです。そうなりますと、やはり政府の出資をさらに大幅にふやすか、あるいは金利補給金というようなものを国が出すか、こういうこと以外にはないのじゃないかと思いますが、政府が大幅に出資をふやすというようなお考えはございませんか。それからまた、現在の中小企業金融公庫の赤字経営状態をどうお考えになっておるのかをお伺いします。
  135. 左近友三郎

    ○左近政府委員 中小企業金融公庫中小企業に対する資金貸し出しということで非常に中小企業対策の根幹になっておるわけでございますが、この公庫の収支状況につきましては、実は設立以来金利の利ざや、つまり、これは資金運用部資金を借り入れましてそして貸し付けをいたしますが、その相当な利ざやがあったということ、それから経営面で堅実に経営してきたというようなことから、五十二年度まではおおむね順調に推移をしてまいりましたわけでございます。五十二年度に入りまして約六十億の実質利益というもので終わったわけでございますが、五十三年度に入りましてからは赤字になりまして、結局八十八億ぐらいの赤字というものを計上いたしました。ただし、これは従来から積み立ててまいりました滞貨償却引当金を充当いたしまして、結果としては、最終決算では赤字になるということは防止し得えたわけでございます。  そこでその赤字になった理由でございますが、これは、一つは若干利ざやが縮小したこともございますが、さらに、ちょうど五十三年は、先ほど申しましたように、五十二年から引き続きまして円高が非常に進みましたので、円高緊急融資等の緊急融資、これは非常に金利の低い融資でございますが、こういうものを積極的にやったということが一点ございます。それからもう一つは、一般の民間金融機関はなかなかやらないのでございますが、既往貸付金利の引き下げ、これは御承知のとおり、第一次石油ショック後の金融引き締め時に相当金利が高くなりましたのでそのときの借り入れの金利について引き下げをやった、あるいは繰り上げ償還に応じたというようなことで、中小企業の経営の実態に即応していろいろな対策を講じました。その結果は公庫としては経理面ではマイナスになったということで、そういうことから、先ほど申しましたように、五十三年は期間損益が赤字になったということでございます。こういうこともございますので中小企業金融公庫経営基盤を強化するという必要があろうというように考えまして、五十五年度の予算では二十億の出資をするということを決めまして、そういうことを今後実施していきたいというふうに思っております。  将来にわたりましても中小企業金融公庫経営基盤が確保されることが必要でございますので、十分考えていきたいと思いますが、ただ先ほど申しましたように、五十三年度それから五十四年度も赤字になるようにわれわれ聞き及んでおりますが、こういうのは先ほどの緊急対策というようなものの影響がございますので、公庫の基本的な構造が赤字になるというようなことではございませんので、将来の状態を見ながら公庫経営基盤の強化ということを、出資等も含めて考えていきたいというのが現状でございます。
  136. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 現在の金利差はどのぐらいですか。
  137. 左近友三郎

    ○左近政府委員 現在は、実は中小企業金融公庫貸付金利は長期プライムレートに大体ならうというのが現状でございます。しかしながら、最近のように長期プライムレートが上がってまいりますと、それにすぐ追随するということは中小企業の方に非常にショックを与えますので、現在では、中小企業金融公庫の金利は若干プライムレートに至らない金利でやっておるというのが現状でございます。したがいまして例外的ではございますが現在においては非常に金利差が少のうございまして、ごく最近の時点では〇・六%しかないというような事態も起こっておりますが、ここ数年の状態は大体一%前後というのが現状でございます。
  138. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 先ほど公庫経営の悪化は一時的な現象だとおっしゃいましたが、これは一%あるいはそれ以上の金利差を確保した場合には回復ができるということでありましょうけれども、そういうことでは本来の中小企業対策としては適当ではないのじゃないか。できるだけ安い資金を供給することが本来の目的であるわけでありますけれども、恐らく〇・六の金利差では現在の赤字経営を克服することはできないのじゃないかと思いますね。そういった意味で、五十五年度では初めて二十億の出資を一般会計からもらうということでありますけれども、さらに将来とも出資を毎年ふやすかあるいは金利補給金等を出していかなければ本来の目的に沿わないのではないかと思うのですけれども、大臣どうですか、金利補給金等を中小企業対策としてお出しになるお考えはございませんか。大臣のお考えはどうなんですか。
  139. 左近友三郎

    ○左近政府委員 大臣のお答えの前に事実関係を申し上げます。  先ほど申し上げましたように、今年度二十億という出資をいたしたのでございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、最近の中小企業金融公庫経営基盤を強化する必要があるということでやったわけでございまして、今後につきましてもわれわれといたしましては、いろいろ今後の中小企業金融の状態をにらみ合わせてやってまいりたいということでございます。先ほど申しましたように、要因の中には一時的な要因もございますが、いま御指摘のように、非常に公定歩合等が高い時代にはどうしてもいまのような利ざやが縮小するという現象もございますので、今後の金融状態をにらんでいろいろ検討してまいりたいというようにわれわれ考えておるわけでございます。
  140. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 公庫法の一部改正の御審議をちょうだいいたす際にもこの問題がしばしば出たのでありますが、ただいまお話しのように、今度の法改正で二十億の出資を増加いたしまして幾分なりと経営の基礎を固めたい、今後さらにてこ入れと申しますか、政府として援助しなければならぬということでありますれば、その状況に応じまして対処いたしたいというふうに考えてございます。
  141. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 今後の状況によっては引き続き出資金を増額する、あるいは金利差補給金等も出すという用意はある、お考えはあるということですか。
  142. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 そういう問題も含めましてそういう事態に対処してまいりたいと思います。
  143. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 次に、中小企業の経営にとって非常に大きな関係があります官公需ですね。公共事業のうちの官公需の発注の比率、これは閣議で決定をされるのではないかと思いますけれども、ことし、五十五年度中小企業向け官公需の比率、目標、これらはどの程度にお考えになっていますか。
  144. 左近友三郎

    ○左近政府委員 法律に基づきまして毎年、官公需の発注の中小企業向けの割合というものを閣議決定をいたしておるわけでございますが、これはやはり前年度の実績を確定いたしまして、その上で、前年度はこれだが、さらにもう一歩前進させようという形で決めておるわけでございまして、毎年七月中に決定をするということでございます。  最近の事例から考えますと、中小企業に対するいわば需要を増大させるという意味において、官公需の中小企業向け契約をどうしても増大させていきたいということで、実はその七月の決定に向けまして最近も各省の担当官会議を開きまして、七月に決めるに当たっては十分中小企業向けの発注の増大に努力をしてもらうようにわれわれも連絡をし、いま検討をしてもらっているというのが現状でございます。
  145. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大変大ざっぱなお答えでありますけれども、これを決めるに当たって、現在の経済情勢をどう分析するのか、あるいはまた中小企業に対する経営の状況等をどう分析をし、これをどう反映していくのかということをもう少し具体的にお話し願えませんか。
  146. 左近友三郎

    ○左近政府委員 官公需に依存する中小企業は非常に多いわけでございまして、それに対処しまして、過去の比率を申し上げますと五十年ごろには大体全体の発注量の中で三二・六%という比率でございましたが、その後努力を続けまして五十三年の実績が三五%ということになっております。それから五十四年の目標は三六・二%ということを掲げまして鋭意努力をしていただいておりまして、それをいま集計中でございます。  それで、実は昨年の暮れ以降、景気対策ということで公共事業等の施行についていろいろな対策が講じられておりますが、それに当たっても、しかしそれがたとえば公共事業の施行の繰り延べというようなことがありましても、これが中小企業に大きな影響を与えては困るということで、これについては各省に対しまして、そういう中小企業の受注機会の確保はぜひやってもらいたいということで、この公共事業の予算の一部の留保というようなことが決まりましたときは必ずそういう要請をやっておりまして、中小企業向けの受注がダウンしないように、落ちないようにということで努力をしておるわけでございます。  五十五年度につきましても、先ほど申し上げましたように、景気につきまして先行きが非常に憂慮されておる時期でございますので、この官公需発注自身が中小企業に十分回りませんと中小企業の経営に対して将来非常に心配な点も出てくるということを考えておりますので、五十五年度の受注比率を決めるに当たっては十分現在の景気の動向等も考慮に入れて比率を決めていきたい。しかも全体的な比率ではなくて、各省別にそれぞれ特徴もございますので、各省別の特徴を生かして極力官公需発注比率を増大させたいというふうに考えております。  また、実は法律では直接決めておりませんが、地方公共団体の中小向け比率の増大というものも国の精神を生かしてやっていただいているということになっておりますので、これについても十分各地方自治体と連絡をとって官公需比率の増大に努めたいということで、いまいろいろ検討中でございます。
  147. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 過去の実績を見ますと、五十二年度が目標は三五・二でありますが、それが三四に実績は下がっておるわけですね。それから五十三年も、三五・五が実績は三五とやはり目標より実績が下がっておる。例年下がっておるということはどこに原因があるのか。それからまた、五十四年度は三六・二が目標でありますけれども、実績はこれよりどうなんですか、確保できますか。
  148. 左近友三郎

    ○左近政府委員 御指摘のように五十二年、五十三年は目標に対しまして実績が下回ったということでございます。これは一つには五十二年、五十三年というのは、景気対策として公共事業を非常に追加をしたりいたしまして公共事業を非常に増大させた時期でございますが、こういう時期は増大した事業のうち大企業向けの発注がふえるというような傾向がございましたので、結局こういう形になったということでございます。五十四年度につきましては、現在中間報告など受けております限りでは大体この目標は達成するのではないかと考えておりますが、御案内のとおり、この三月末までの施行の状況を確実に把握いたしませんと断定的なことは言いかねるというのが現状でございます。
  149. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 五十五年度はぜひひとつ、中小企業の状況が悪い時期でもありますので、比率を上げるように御努力をいただきたいと思います。  次に、産業の転換問題についてお伺いしますが、大企業については景気の変動あるいは若干の産業構造の変化がありましても一貫してその基盤は揺るがないのが普通でありますけれども、産業構造の変化によって転業を強いられるというのが中小企業の宿命だと思います。そういう意味からいたしまして、いま、ある意味では日本の産業構造が変化の過程にあるわけでありまして、こういう中で中小企業のかなりの部分が転業を強いられる、あるいは経営の内容を変えていかなければいけないという事態になっておるわけですけれども、これに対して、単に倒産件数が何件という把握をするだけではなくて、各企業が倒産をしたらその倒産した後にどういう更生の道をたどっているか、またどういう転業をしておるのか、それらを十分に追跡調査をする必要があるのではないか、これが中小企業を守る一つの方法でもあるのではないかと思いますけれども、そういった点について、倒産あるいは転業した企業についての事後の追跡調査をどのようになさっておるかを伺いたいと思います。
  150. 左近友三郎

    ○左近政府委員 御指摘のように、最近の産業構造の変化に伴いまして、中小企業がそれに対応するために新しい製品をつくったり、さらに事業を転換したり、また不幸にして倒産の憂き目に至ったという事情が頻発しておるということは事実でございまして、その事業の転換の状態については、実は先週の金曜日に閣議決定いたしまして国会に提出いたしました今年度中小企業白書にも、実例を挙げて内容を説明をしております。この事業の転換につきましては、それを促進し、かつ援助するために、いわゆる事業転換法というものがございまして、それに基づきますと、法律の指定を受けますといろんな財政上、金融上、税制上の援助を受けるということでございますが、現在まで転換法によりまして転換をいたしたものが大体百八十件ぐらい出てきております。製造業が別の製造業に移ったり、あるいは製造業から商業とかサービス業に移ったり、そういう実情が把握されておるわけでございます。今後もこういう法律を運用いたしまして、事業転換が円滑に行くようにいたしたいというように考えております。  それから、不幸にして倒産をした後どういうふうになっておるかということにつきましては、これは網羅的にはなかなか調査ができないのでございますが、たとえば五十三年度下期に倒産いたしました中小企業が倒産後六カ月どういうふうにしておるかというような調査をやっております。そういたしますと、倒産をしたけれどもやはり何らかの形で事業を継続しておるというのが大体四分の一ぐらいございます。それから、廃業したというのがやはり六割近くあるということ、それから、別会社で再発足したというのが大体一割あるというような事態がつかまれております。今後、われわれといたしましても、この倒産企業というものが新しい形で発足をしていくということについての援助も十分やらなければならぬというように考えておりますが、御指摘のとおり、まずこういう事後調査と申しますか、後づけを十分やりまして、その中からこういう方に適切な対策を講じていきたいというように考えております。
  151. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 普通、倒産の統計等についても、負債額が一千万を超えるというような一定の規模以上の中小企業についてしか把握をされていないようでありますけれども、それ以下の零細企業についてもやはり十分な把握をされることが必要ではないか。それからまた、そういう零細企業についての倒産の、あるいは転業の事後の追跡調査あるいは事後指導というようなものも必要ではないかと思いますが、そういった点についてもひとつ十分親切に御指導されるように、特にお願いいたしたいと思います。  最後に一つお伺いしたいのですが、これは二月二十二日に御答弁をいただいた件であります。いま日本の産業の中で非自由化品目がごくわずか残っておるわけですが、これは五品目と聞いております。そのうちで皮革が四品目残っておるということでありますが、これについては日本の特殊な事情、それから皮革産業の特殊な事情によって特に保護をする必要があるわけでありまして、それなりの十分な理由があってこれだけ残っておるわけであります。二月二十二日に御答弁をいただいたわけですけれども、その後の状況変化等がございますか、ございませんか、それからまた、政府方針変化があるかないか、あったかないか、それについてまず伺いたいと思います。
  152. 堺司

    ○堺説明員 お答え申し上げます。  さきに労働省所管の決算委員会におきまして御質問のあった件でございますけれども、二月二十二日以後特に変化はございません。  私どもといたしましては、皮革は、工業品の業種としては唯一の非自由化品目でございまして、御承知のように諸外国からの自由化の要請もございますけれども、同和地域の中の主要な産業ということでもこれあり、かつ、それが非常に零細であり、どちらかと言えばまさに生業に近い、生業的な産業であるということを踏まえまして、自由化の要請に対して諸外国に十分理解していただくように努力をしているということでございます。
  153. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、牛馬革、羊革、ヤギ革、これの原皮は自由化されているわけですね。これのいわゆるウェットブルーとレザー、それから皮ぐつの完成品、これが非自由化だということでありますけれども、これについては同和地区の産業を守らなければならない。それからまた、それ以外の皮革産業についても同じように基盤が脆弱なわけでありますから、これも当分守っていかなければならないということであります。大臣にお伺いしますけれども、いまこの問題については当時と状況が変わらない。当分の間非自由化の方針を守っていくという意味だと思いますけれども、大臣からひとつこれは将来とも非自由化を守っていくというふうにお答えをいただきたいわけであります。
  154. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 その所存でございます。おっしゃるとおり自由化を行うことは大変むずかしい問題だと思います。従来の方針どおり進みたいと思っております。
  155. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 終わります。
  156. 高田富之

    高田委員長 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後直ちに再開いたします。     午後零時五十七分休憩      ————◇—————     午後二時四十九分開議
  157. 高田富之

    高田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林孝矩君。
  158. 林孝矩

    ○林(孝)委員 最初に大臣に伺います。  大臣が今度訪中されるということを伺っておりますが、その予定はございますか。
  159. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、あさっての朝立ちまして、中国へ行ってまいります。
  160. 林孝矩

    ○林(孝)委員 政治会談でのテーマはどういうテーマが中心になりますか。
  161. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 主としてエネルギー問題が中心でございまして、あるいは技術の問題等も話題になるのじゃないかと思います。
  162. 林孝矩

    ○林(孝)委員 午前中も議論になっておりましたけれども、イランとの関係に関連する諸問題、なかんずく原油についての課題等については話し合う考え方はございませんか。
  163. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 イランとの問題は全然関係ございません。石油あるいは石炭の問題に関しましては、向こうとの問にいろいろテーマがございまして、その一つ一つをどうするか、話し合っていきたいということでございます。
  164. 林孝矩

    ○林(孝)委員 イランの問題に関して午前中議論がございましたが、わが国イランに対する制裁措置、非常に厳しい局面に立たされていることは事実でありますが、二十二日のECの対イラン制裁決議に同調するという政府の態度の決定、こういう経緯を経て、いよいよ日本政府としても、この問題に対して、五月十七日という一つの考え方はございますけれども、特に総理が訪米されるということについては、現地においてアメリカとの話し合いの内容を想定しますと、現在考えられている以上に厳しいものをアメリカ政府から要求されるのではないか、こういうことも考えられるわけであります。そういう総理等の訪米、そしてアメリカにおいて話し合われる内容、こういうものを通産大臣としてどのように想定されておるか。ことにアメリカ日本に対する対イラン政策、これを中心にして通産大臣が想定されておる受けとめ方、明快にお答え願いたいと思います。
  165. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 総理が米国でカーター大統領とお会いしたときどういう話をするのか、これは私どもと相談して決めているわけじゃございませんで、総理、官房長官等でそれぞれ話し合って決めているのじゃなかろうかと思います。したがいまして、私はどういう問題が中心かということは承知しておりません。
  166. 林孝矩

    ○林(孝)委員 関係閣僚として大臣は、そういう点に関して関係閣僚会議では議題にされることはなかったわけですか。
  167. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 閣議ではもちろんございませんし、イラン問題に絡んでの関係閣僚会議はありますけれども、その際もございません。
  168. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、あくまでも総理、官房長官、このお二方でそうした想定等は考えられる、他の閣僚に関しては、極言すれば言をはさむ余地がない、こういう状況でございますか。
  169. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 外務大臣はもちろん一緒に行かれますから御相談なさったのじゃないかと思います。私の方といたしましては、私自体じゃなくて、アメリカとのいままでいろいろございました両国間にまたがるいろいろな問題がございますので、その経過はどうなっておるかといったような説明はもちろんしてございますけれども、そういうものが主たるテーマになるかどうかといったようなことはわかりません。
  170. 林孝矩

    ○林(孝)委員 日本イラン原油価格引き上げ要求を拒否したということに対して起こってきている諸外国の反応、これに対して通産大臣はどのように受けとめておられるか。たとえばアメリカ、それからイギリス、アラブ首長国連邦、こうしたところの国などから原油を日本に供給するという動向が、いわゆるイランの停止分に関して供給するという動向が伝えられておるわけでありますが、これの情勢分析等は通産省としてなされておりますか。
  171. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 イランわが国の企業との間で現在価格交渉をめぐりまして大変な問題が起こっておるということでございまして、現実に四月二十一日以降の船積みは停止されているわけでございますが、これは全く価格交渉ということでございまして、商業ベースの話でございます。私どもは従来も、一月、二月と続いてイランの原油が値上げされまして、今回さらに二ドル五十の値上げをそのままのみますと大変な問題が起こる、国際的にも問題が起こりますし、国内的にも大変高い原油を輸入することになりますので、問題がある、こういう認識で価格交渉に臨んでいるわけでございます。  こういったわが国の基本的な考え方は、消費国におきましてもある程度同感であるという国々もございますし、そういった意味で、価格問題が商業問題としてクローズアップされているという認識は持っているわけでございます。  そこで、第二段で御指摘ございました、その他の産油国から供給をするという話があるやに私どもも仄聞いたしておりますけれども、これはイランとの油の問題ではなくて、日本といたしますと、できるだけ多くの産油国から油を買うという姿勢をとっていきたいということでございますので、その一環といたしまして、そういった問題につきましては対処をしていこう、イランの油が来なくなるから、そのほかのところに振りかえていくという考え方ではなくて、できるだけ供給先を多く分散していくという基本政策に従って対処していこう、こういう基本的な考え方を持っているわけでございます。
  172. 林孝矩

    ○林(孝)委員 日本としては、いわゆる供給する国の幅を広げて、できるだけ多くの国から油を買おう、今度は逆に、私が言いましたようなイギリスであるとかアラブ首長国連邦だとかあるいはその他の産油国、こういうところが日本に対して、イランの油が値上がりした、そういう高い油は買えないと日本が拒否したということに対して高く評価をして、それで、そういうことを前提で、じゃ日本に対していままで以上に多く売ろうじゃないか、こういうふうな表明をしているとしたならば、それは素直にそのとおり受け入れないのか、それとも、それはイランにかかわりある問題ではないという形での姿勢というものを日本が持っておるということを明確にするのか、その点はいかがですか。
  173. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 私ども、つまりエネルギー政策を担当している部局としての課題は、安定的に、しかも、できるだけ安い原油を買うということが基本的な課題であろうかと思います。したがいまして、先ほど申し上げましたように、イランの油につきましても、これは一割以上の比率におきまして日本がいま輸入をしておるわけでございますから、相当な安定的供給先という考え方を持っておりますけれども、ただ、ニドル五十ここで値上げが行われるということは、できるだけ安い価格で買うという趣旨にもとりますので、その点につきましての交渉をイラン側と続けているという現況でございます。  そこで、その他の産油国から安定的に、しかもより安い値段で買えるということになりますと、冒頭に申し上げました私どもの基本政策と合致するものでございますので、イランの問題とは関係なしに、できるだけそういった国々から油の供給を求めるということが必要であろうかと思いますし、それから、先生御承知のとおり、最近は原油の流通形態が相当大きく変わっておりまして、従来はメジャーによって供給をされるというパターンが、最近は直接取引に移行しつつあるという現況から考えましても、そういった産油国との直接的なパイプをつけていくという政策は、今後かなり大きなウエートを持った課題になってくるのではないか、そういう認識を持っておりますので、そういう認識のもとにおきましては、他の産油国から、量的にも安定し、かつ価格につきましても比較的低廉なものであれば、今後とも供給先としてその対象国を逐次広げていくという考え方につきましては進めてまいりたいというふうに考えております。
  174. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いまの長官の答弁は、いわゆるダイレクトDあるいはガバメント・ガバメント、そういう輸入形態というものが、メジャーからのものといまフィフティー・フィフティーという感じになってきておる、こういうことでございますが、価格というものが、たとえばイランにおきまして値上げされて一バレル三十五ドル。これは高過ぎるということで、そういう高い油は買えない。価格問題として考えた場合、これが一つの起爆剤になって、一つの問題ということになって、イラン日本との油の需給関係というものがストツプしてしまった。そうすると、他の国からそれを入れなければならない。他の国の油の値段というものは、価格だけで考えた場合は、いわゆる一バレル三十五ドルなら三十五ドル以下でないと買わない、このように考えておられるわけですか。
  175. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 油の価格は、その油質、油の性質によってかなり違うものでございますけれども、現在イランが主張いたしております三十五ドルと申しますのは、いわゆる軽質油、イラニアン・ライトと称するものの価格でございまして、これと同等程度の油質を持っておりますものは、御案内のとおりアラビアン・ライトでございます。このアラビアンニフイトは、現在二十六ドル・パー・バレルということでございますので、それとのバランスで考えますと、どうしてもイランニァン・ライトの三十五ドルは高過ぎるということでございますから、しからば、どの程度であればよろしいかという問題は、いまお答えいたしておりますとおり、油の性質によって変わるということでございますけれども、同質程度のものであれば、アラビアン・ライトの価格を考えながら検討していくということになろうかと思います。現実の問題として、四月一日の値上げ以前、イランの値上げ通告以前は、イラニアン・ライトにつきまして三十二ドル五十セントという価格で買っておったわけでございますので、その価格水準が一つの判断の基準になろうか、こういうふうに考えます。
  176. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、これはまあ仮定の話になりますが、アラビアン・ライトが値上がりする、イラニアン・ライトが三十二・五ドルの段階までにまだ至っていないということで、しかし、その段階でこのイランから原油を買っておったわけでありますから、このアラビアン・ライトが、もし万が一、いわゆる一バレル三十五ドルラインに上がるということが将来起こった場合は、イランから原油を買ってもおかしくないわけですね、価格の問題なんですから。いかがですか。
  177. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 いまの御質問に端的にお答えする前にOPECの考え方、私どもがつかんでおりますOPECの考え方を申し上げておきますと、御承知のとおり、OPECの中には、いわゆる穏健派グループと急進派グループがあるわけでございまして、昨年十二月のOPEC総会におきましては統一価格制が実施できなかったわけでございます。そこでOPECとしますれば、できるだけ早い機会に統一価格制を実施したいという念願があるのではないか、こういうふうに見ております。そこで、穏健派の代表と言われておりますサウジアラビア、こういった国々がどういう価格政策に出てくるかということによりまして今後の価格動向は決まってくるのではないかということでございます。一つの考え方は、いわゆる急進派と言われております国々、価格水準が現在、アラビアン・ライトに比べましてかなり高いわけでございます。そういったものにできるだけアラビアン・ライトを近づけていくという考え方が一つあろうと思いますし、その近づけ方には、高い油をできるだけ凍結しておいて徐々に安い油を上げていくという考え方と、安い油をできるだけ凍結して高い油の方を安い方にシフトさせていくという考え方と両方あろうかと思います。そういうことが恐らく六月に行われますOPECの総会等で慎重に議論されるのじゃないか、こういう見方をしているわけでございますので、いま御指摘のございました、仮にサウジアラビアのアラビアン・ライトを三十五ドルまで引き上げた場合にはどうだという御質問、大変むずかしい問題を提起されたわけでございますけれども、私どもはそういう急激なアラビアン・ライトの値上がりは、いまの段階では考えられないという感じでございまして、ただ、先ほどお答えいたしましたとおり、一つの標準油種がアラビアン・ライトでございますから、アラビアン・ライトの価格によってその他の価格が決められるような、そういう価格形成メカニズムがいずれ将来は確立されるのではないか、統一価格制の実施が決められる暁にはそういう状態になるのではないかということでございますので、幾つもの仮定の説でございますけれども、仮定の前提を置いた上の考え方でございますが、ある一定の水準までサウジアラビアの油の値段が上がってまいりますと、その範囲内でほかの油種も横並びと申しましょうか、価格的な調整が行われてくるというような感じがいたしますけれども、長々申し上げましたが、そういった価格形成メカニズムが確立されたときに初めてそういう状態になるということでございますので、たくさんの過程がございますから、的確なお答えはなかなかむずかしいということでございます。
  178. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そこで、今日の時点で物を考えますと、いわゆる対アメリカ優先といいますか、十日にアメリカ要請を受けて、対米協調を基軸とする基本方針政府が確認した、それが一つの外交姿勢になっているわけです。そういうところから、ずっと対イラン向け輸出のデータを見てみますと、先月は三億八千五百万ドルという輸出の量になっている。これは日本輸出のランクで言いますと、相手国別では第十位、対イラン輸出というものが相当急速に伸びてきた、こう思われるわけです。ところが通産省の自粛呼びかけ、こういうもので現在主要品目の新契約、これはもう事実上ストップしております。自粛の呼びかけという一つの行政指導、これがイラン側にとっては経済的な制裁、こういうふうに受けとめられる。二十一日の参議院の決算委員会で官房長官は、その点についても今回の値上げ拒否というものも含めて実質的な経済制裁という裏づけを言外に述べられておる。翌二十二日にECの外相理事会でイラン制裁を含めた六項目の声明が発表されるに及んで政府ECと同調していくという態度表明、これはどういう関係にあるかというと、やはりECが対イランに対して六項目の経済的な、あるいは軍事的なといいますか、制裁というものを決定したこの段階日本EC九カ国プラス一カ国ということで、グループ戦と言われるわけですけれども、そういう一つのグループとしてイランが物を考えておる。EC九カ国とプラス日本、この十カ国の決定事項は何か、これはEC九カ国が決定した六項目にわたるイランに対する制裁に日本が含まれておるという形での受けとめ方、これは事実イランにあるわけでして、こういうふうになってきますと、日本イランとの油の関係というものはもう想像を超えて厳しい情勢に現実になっていると受けとめなければならない、このように私は思うわけですけれども、この考え方に対して大臣はどのような評価をされますか。
  179. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 問題の御指摘日本イランの油の関係ということに集約されているというふうに思われますので、私からお答えを申し上げたいと存じます。  EC九カ国の外相会議におきましても、原油の問題、油の問題は全く触れられていないわけでございまして、これは日本側も全く同じような考え方でございます。と申しますのは、先ほどもお答え申し上げましたとおり、現在日本イランの間で油の問題に関していろいろ紛争が起こっておりますのは、あくまでも価格交渉が難航しておるということでございまして、純粋に経済問題、商業問題、こういう認識を持っておるわけでございます。これはイラン側も同じような考え方を持っておりまして、仮にイラン側が逆な観点に立っておるといたしますれば価格交渉に応じてないはずでございます。昨日まで三日間、日本側の第二グループが価格交渉を行っておりますし、また二十六日にはさらに日本側の企業もう一社が価格交渉をするということで、イラン側もそれを、交渉に応ずることにつきましてはアクセプトしておるという状況でございますから、イラン側も同じような考え方で対処しようとしているのではないか、こういう考え方でございます。したがいまして、EC外相会議の動向とは全く関係なしに日本イランの原油の交渉は価格問題として今後も続けられていく、こういうふうに私どもは理解いたしておりますし、またそういう方向で対処してまいるのが至当ではなかろうか、こういう考え方を持っている次第でございます。
  180. 林孝矩

    ○林(孝)委員 理解理解として私は否定するものではありませんけれども、バニサドル大統領に対する記者会見の内容、これが外電から伝わってきておりますが、その内容を見ますと、日本経済制裁に踏み切れば石油供給の全面中止だけではなくその他の対抗措置もとる、こういう会見をしております。これは価格の問題、これだけではとどまらない、いわゆる経済という広い幅を持つた受けとめ方ですね。今回の政府の決められた対イランに対する措置、こういうものもこの中に含まれているのではないかと私思うわけですけれども、そういう第一段階の時点でこういうバニサドル大統領の会見内容というものを見ますと、石油供給と完全にリンクされた形での話になっておるわけです。こういう内容というのは、いま答弁されてきましたあくまでも価格の問題だということと切り離して考えられないというふうに私はこの会見の内容からすると考えられるわけでありますが、通産省としてはどういう分析をされておりますか。
  181. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 イランに対する経済制裁と言われております考え方は、あくまでも平和的に人質問題を解決しようということの一つの手段だというふうに私どもは認識しておるわけでございます。そこで、経済制裁といった考え方がイラン側にどういうふうに伝わっておるかということが一つ大事ではないかということでございまして、日本イラン関係はあくまでも友好関係にあるわけでございまして、やみくもに経済制裁をするということはどうも筋が通らない。あくまでも人質問題の平和解決ということの手段といたしまして言われておりますところの経済制裁措置というものが考えられるのではないか、こういう基本的な認識を持っておるわけでございます。そこで、そう言われております経済制裁的なものの中に日本が原油の問題を考えておるかということになりますと、先ほどからお答え申し上げておりますとおり、原油の問題はあくまで商業上の問題でございますから、そういったいわゆる経済措置の中に入れるのはおかしいのではないか、仮にそういうことがあったとしても、原油の問題は別の次元で考える性格のものであるというふうに日本政府としてははっきりと割り切っておるわけでございますので、当方から原油を制裁的に、買うのはやめますというようなことを言う気持ちはさらさらない、こういう基本的な考え方を持っているということを御説明させていただきたいと思う次第でございます。
  182. 林孝矩

    ○林(孝)委員 通産省の場合にそういう考え方、十八日の衆議院の外務委員会で大来外務大臣は、場合によっては貿易管理令発動もやむなしという見解を発表されておる。午前中の審議では、通産省としては貿易管理令の発動というものは考えない、これ違うわけですね。事ほどさように、今日までの外務省のサイド、それから通産省のサイド、これのニュアンスの違いというものは、たとえば総理にも言えることなんですけれども、油よりはアメリカとの関係を重視するという発言をされております。こういうふうになってきますと、通産省サイドの考え方と、外務省サイドの考え方とのニュアンスの違い、これが明確になっているわけです。どちらの考え方が政府の考え方なのか、こういう点に関して大臣閣僚会議等でそういうふうなニュアンスの違いの調整等は全然なされずに今日まで来ておるのですか。
  183. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ちっとも違ってはおらぬのでございますけれども、私の方は、私個人的に申し上げましたのは、現段階のとりあえずの措置としての第一段階措置の中には、新しい輸出契約等はそれはやらぬことになっておりますけれども、さらばといって貿易管理令どうこうという問題はいまの段階では議論にも何にもなっていませんし、お話のように、五月十七日でございましたか、そういう期限が来て、その間に私の望んでおるような人質解放の問題が解決しなかった場合どういう手段をとるかということは、またそれぞれECの外相会議で態度を決定なされるでしょうから、その対応をよく見定めてこちらとしてはその後の措置を決めたい、こういうふうに言っているのでございます。ですから、その後の措置の中にはどういうものが含まれるかということは、そのときになってみませんと的確なことは言えないわけでございます。外務大臣はあるいはもっと強度なものを考えなければならぬと思っているかもしれませんし、それはそのときの情勢いかんだというふうに私考えておるのでございます。したがって、外務大臣の発言と私の発言は全然狂いはございません。同じことでございます。
  184. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、先ほど私が指摘したバニサドル大統領の会見内容を、大臣はどのように受けとめますか。
  185. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私どもは、きのう政府として決めました方針を遵守しておるだけでございまして、いまの大統領の話は、公電で受け取っているわけでもございませんし、いまここでそれに対してどうというお話をする筋合いのものではないというふうに考えておるわけでございます。
  186. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、このバニサドル大統領の会見内容、これは新聞にも報道されております。これについて確認をされるとか、あるいは確認をした結果そういう会見がなされたとした場合に、当然外交ルートを通して、日本政府の考え方は油に対してはこうなんだという説明を再度なされるという考え方を通産大臣としては持っておられるかどうか、いかがですか。
  187. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほども申しましたように、EC側と協力いたしまして、アメリカに対しては、手荒いと申しますか、武力的な行動には絶対に出てもらいたくない、自重してもらいたいという要請をし、イラン側には、人質問題は何と考えても国際法上許すべからざる問題であるので平和的な解決をしてもらいたい、早く解放してもらいたい、そういう要請をテヘランにおる九カ国の各大使とわが方の和田大使が参りましてしておるわけでございますから、その要請をした大統領側の反応を、それぞれ各国の出先の大使が持ち帰って本国に伝えるわけですね。私どもも和田大使が帰ってきましたから聞きましたが、これが一番正確な情報だと私は思います。その上で対処方法を判断したわけでございますから、ただいまの対処方法といたしましては、いまとりました暫定措置を踏まえて、各国の大使が帰りますし、わが方の和田大使も二十六日に日本を立ちます。そして、イランでまた会合をいたしまして、共同申し入れといいますか、どういう申し入れをいたすかは現地で相談の上、再度申し入れをするのだろうと思います。そういう段階事態を見守っている最中でございまして、お話のような申し入れはしてございません。
  188. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、向こうが大統領の発言の中で非常に気にしている、日本経済制裁に踏み切ればということですが、経済制裁とはどういうことを意味するか、具体的な内容について大臣はどのようにお考えですか。
  189. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 経済制裁とはというお話でございますが、これは非常に広範な内容を含んでおりまして、いろいろな段階別にあるかと思います。したがいまして、ある国を経済制裁いたします場合に、国連の決議によりまして、かつてローデシアに行われましたような武器の禁輸から始まりまして、諸般の物資の輸出入の封鎖あるいは食糧、医薬品に至るまでの封鎖とか、段階別にいろいろな範囲のものがあろうかと思います。一概にこういうものということは言えないかと思います。
  190. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま政府が、イランに対する新規の輸出契約は自粛するように言っておりますが、この行政指導というものは、いま説明がありました物資の輸出ということに対する歯どめ、すなわち経済制裁という内容にかかわるものではないでしょうか。
  191. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答えいたします。  定義の問題でございますから明確にどうと言うことはむずかしゅうございますが、自粛の要請ということでございまして、あくまでも強制力を伴っておるわけではございません。したがいまして、言葉の使い方からすれば、制裁というには当たらないのではなかろうか、むしろ反省を求めて平和的解決を望んでいるという心理的なものではなかろうかと思います。
  192. 林孝矩

    ○林(孝)委員 心理的なものだと思って自粛を呼びかけたところが、結果的に新規輸出契約がストップをしておる、こういう結果を生み出した、これは相手国に対して経済制裁だというふうに受けとめられないかという心配はされておらないですか。
  193. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 相手方から受け取られていないかというお話でございますが、この辺は相手方の考え方によるわけでございまして、私ども的確に申し上げるわけにいかないかと思いますが、現状で私どもがキャッチしております限りでは、それほどの受け取り方をされていないように感じております。
  194. 林孝矩

    ○林(孝)委員 今度は国民の側からこの問題を見ましたときに、今後の石油確保の見通し、これに対しは国民の不安を取り除かなければならない、これは当然の責任だと私は思うわけであります。これに対して、一つはインフレという心配がこれあり、それに伴って不況という懸念もあるわけです。今日、かかる問題に対しての国民に向かっての通産大臣としての責任あるアピールというものがなされていない、私はその点が欠落しておるのではないかと思うのですが、そういう考え方はございますか。
  195. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 国民の皆様方に安心感を与えるという観点からいたしますと、私どもがここで現在こういう政策を考えております、またこういう見通しになりますということをはっきり申し上げた方がよろしいというお考え方があろうかと思います。しかしながら一方におきまして、国民の皆様方に御安心いただくベースになりますものは、何と言いましても量的な確保と価格の安定、この両面の達成が行われて初めて安心をしていただくわけでございますが、率直に申し上げまして、私どもはその量的な確保と価格の安定のためのいろいろな対策を考えております。考えておりますが、これはあくまでも国際的な問題に絡まりが出てまいりますので、現在こういうことを考えておりますということを申し上げますと、それが、私どもが期待いたしております量的な安定確保あるいは価格の安定ということに必ずしも結びつかないおそれがございますので、国会の場でしばしば御質疑を受けておるわけでございますが、そのところは平に御勘弁をいただきたいというふうに申し上げ続けてきているゆえんでございまして、あくまでもいま先生の御指摘は、政策に誤りなきを期するように、国民の安心するような政策をとれ、こういうような御発言というふうに受けとめておりますので、そういった方向で現在着々といろいろな対策は考えておるという、大変抽象的な表現でございますけれども、その程度の表現で答弁を差し控えさせていただきたいという気持ちがあることをぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。  なお、備蓄が現在九十五日分ございますので、これが相当大きな心の支えになっておりますし、それから先ほど御質問のございましたように、ほかの産油国からの手当てというものもできてきておるではないかという御指摘もございました。そういうことにつきましても、いろいろそういう角度のアプローチはいたしておりますので、詳しく具体的に申し上げられないもどかしさを大変感じておるわけでございますが、御趣旨を体しまして、国民の皆様に結果的に安心していただけるような政策をとらしていただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  196. 林孝矩

    ○林(孝)委員 いま備蓄の話がございましたけれども、この備蓄取り崩しということを考える際に、一つの条件というものがそこにあろうかと思うのですが、その点はどのようにお考えですか。
  197. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 備蓄には、大きく分けましていわゆる民間備蓄と国家備蓄と両方あるわけでございまして、国家備蓄につきましては、原油の量的、価格的な問題につきまして相当な狂乱的な事態が起こる危険性があるという場合にこの備蓄を取り崩すという基本的な姿勢があるわけであります。それから民間備蓄につきましては、民間の方々が自己の責任で備蓄をしていただいておるわけでございますので、石油備蓄法という法律に基づきまして私どもはある程度の指導基準をつくっております。その指導基準を若干弾力的に運用するということによりまして備蓄の取り崩しが行われる、こういう段取りになろうか、こういうふうに思います。
  198. 林孝矩

    ○林(孝)委員 もう一つ国民の側から心配されること。先ほど、どういうふうにして確保して安定させるかということについては、非常にその具体的な内容については公式に表明することはいまむしろデメリットが多いという判断を示されたわけですね。それはそれとして、現実問題としてたとえばスポットマーケット、こういうところでの油の高騰というか、そういう現象が現に起こっていることも事実ですが、このスポット買いなんということに対しては、これはその影響が国民の生活に非常に重大なダメージを与える。ですから、こうしてやるから安心してくださいということはちょっと言えないにしても、現実起こっているスポット買い、非常に価格高騰しているスポットマーケットの油を買う、こういうようなことが現実に起こり、また将来続いて起こっていく、当然考えておかなければならない。これに対してはどういう対応の仕方を考えられておるか、また、すでにしておられるか。
  199. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 いわゆるスポット物に対します需要、これは昨年の暮れあたりで大体日本で一四%程度あったと思います。その後年が明けまして急速にスポット市場が冷えてまいりまして、昨年の暮れあたりに比べますと、現在は四分の一程度の荷動きというふうになっていると思います。これは世界の需給動向あるいは消費国の備蓄水準というものを反映いたしましてそういう状態が出現しておるわけでございます。価格は、そういった状況を反映いたしまして昨年末に四十一ドル程度にまで高騰いたしましたものが、現在三十四ドルないし三十五ドルという水準で横ばいというような姿になっております。日本イランとの間で価格交渉で難航しておるというニュースが伝わりまして、一時スポット市況がやや上がったという気配はございましたけれども、玉の動きは意外に伴っておりませんので、ちょっと上がりましたものが直ちにまたもとの状態に戻ったということでございまして、一番肝心なことは、ここでスポット物を急いで買いあさらないことが大事ではないかということでございます。私どもが従来からとっておりますスポット物に対する行政指導方針は、ロッテルダムで相場が立っておりますので、ロッテルダムの相場を下回る価格で買いなさいというのが基本的な行政指導の方針でございます。この方針は今後とも堅持していきたいと思っておりますので、先ほども申し上げましたように、現在は三十四ドルないし三十五ドルというのがロッテルダム相場でございますから、それを突き上げるようなあわてふためいた買い方は絶対因ります、いまここでじっとがまんをしている方がむしろスポット市場に対して悪い影響を与えないということにつながってまいるという判断を持っておりますので、スポット物の手当てにつきましては慎重にやる必要があるのではないかということで、従来の行政指導方針をそのまま踏襲をしていきたい、こういうふうに考えております。
  200. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、イランの原油といいましても、その依存度ということにつきましては一一%と言われておりますけれども、その個々の石油会社の依存度、これはまたばらつきがあると思うのです。そうしたばらつきが、いわゆる石油業界内でのばらつきが物価に与える影響等考えると、国民の生活に大きな影響を与えるのではないか。こういうことに関して、こういう事実を御存じかどうか、そしてまたそれに対して何らかの手だてを考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  201. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 御指摘のとおり各企業を見ますと、イランからの石油の輸入依存率が大変高いところもございます。二五%とか三〇%というような程度の依存率を持っている企業もございます。したがいまして、一般的に見ますと、イランの原油の依存度の高いところは大変困るのではないかということはそのとおりであろうかと思います。そこで、備蓄の弾力的な運用という問題とも関連してくるわけでございますけれども、先ほど私がお答えいたしました民間備蓄につきましての石油業法に基づきます指導基準を弾力的に行うという趣旨は、そういうことも絡んでおるわけでございまして、これを一律に弾力的な運用をするということでもなしに、イランの油の輸入依存率の高いところ等につきましてはより弾力的な運用を図るということを考える必要があるのではないかというふうに考えております。
  202. 林孝矩

    ○林(孝)委員 弾力的な運用というものをもう一歩具体的に説明をしていただきたいと思うのです。
  203. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 石油備蓄法によりまして、各企業の備蓄水準というものをある程度義務づけておるわけでございます。したがいまして、法律に基づく措置でございますから、企業はその私どもの基準を守らなければならないという義務が発生しておるわけでございますので、その義務を弾力的に行うということでございまして、特定の企業は少し低い備蓄水準の義務づけをする、こういうことになろうかと思います。
  204. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それから、後で備蓄問題に対して質問いたしますが、もう一点非常に心配な点がありますので、この点について大臣の所見を伺っておきたいのですが、アメリカの対イラン武力制裁、これが過去に幾たびか示唆された状態がありました。それは実際は行われておりません。もし仮にその結果ペルシャ湾が運航不能というような状態になった場合にわが国の原油輸入の実態というものが受ける影響、これはどういう影響を受けるのか。これは石油供給への影響が非常に大きいと思いますので、この点を御説明をしておいていただきたい。それから、そうなった場合の対応策といいますか、それを考えられておるかどうか、この二点を聞いておきたいと思います。
  205. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 油の問題につきましてお答え申し上げますと、ペルシャ湾の海上封鎖というような問題が起こってまいりますと、これは大変な大問題でございます。御承知のとおり現在七五%を中東に依存しておるわけでございますが、その三分の二程度をペルシャ湾から船積みをしておるということでございますので、仮にペルシャ湾の海上封鎖が行われますとその分の供給がストップされるということでございますから、その影響ははかり知れないものがあるのではないかということでございまして、そういう事態が起こらないような、問題の平和的解決に最大の努力をするということが当面の最大の課題ではないか、こういうふうに認識をいたしております。
  206. 林孝矩

    ○林(孝)委員 次に備蓄関係について伺いますが、五十五年三月末の民間備蓄の水準、これは何日分になっておりますか。
  207. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 昭和五十五年三月末の民間備蓄の水準は約八十八日分でございます。
  208. 林孝矩

    ○林(孝)委員 昨年四月に通産省が告示した石油備蓄目標、これによりますと五十五年度の初め九十日、このようになっておりますが、五十四年度末、そして五十五年度初めの目標が達成されていない。これは一体原因はどこにあるのかということについては明確になっておりますでしょうか。
  209. 志賀学

    ○志賀政府委員 お答え申し上げます。  先生御案内のように、例のイランの政変がございましてイランの生産がほとんどストップした時期がございます。それに伴いまして日本イランからの輸入も非常に低く落ち込んだわけでございます。その関係で、国内の石油の安定供給を図るという意味から、実はその時点におきましても備蓄の弾力的運用というものをやったわけでございます。その関係もございまして備蓄水準が、当初の九十日まで持っていきたかったわけでございますけれども、八十八日に終わっておる、こういうような状態でございます。
  210. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それでは、ことし発表された目標はどうなっておりますか。そしてその達成の見通しについてどういう確信を持っておられるか。
  211. 志賀学

    ○志賀政府委員 五十五年度末におきまして九十日まで持っていくということを目標にしておるわけでございます。ただ、先般来長官からもお答え申し上げましたように、現在イランからの石油の船積みが停止されておる、今後それがどういうふうに展開していくかということはございますけれども、それに対応するものとして備蓄の弾力的運用というものを私どもとして考えておるわけでございます。したがいまして、五十五年度末におきまして九十日目標を達成できるかどうかということにつきましては、その辺の事情が関連してくるというふうに思っております。
  212. 林孝矩

    ○林(孝)委員 九十日備蓄を維持するために必要な用地、資金等の規模を昭和六十年度末までについて試算しますと、毎年新たな用地が百八十万平米、タンクが三百六十万キロリットル、資金が二千億円弱等を要する、このように石油業界では言っているわけです。こういう民間備蓄の所要資金政府調達見通し、これはどういうふうになっておりますか。それから、長期的な財政負担のあり方について説明願いたいと思います。
  213. 志賀学

    ○志賀政府委員 現在私どもが民間備蓄を達成していくに際しまして石油企業に対しまして行っております助成といたしまして、一つは個々の会社がタンクを建設するという場合に開銀を通じて助成をしております。それから民間企業が何社か集まりまして共同で備蓄会社をつくって備蓄を行っていくという場合につきましては、石油公団から出資などの助成をやってそれを推進しておるという状況でございます。そのほか、そのタンクに入れます原油の調達資金につきましても必要な助成をやっておるわけでございます。五十五年度予算におきましては、たとえば共同備蓄に必要な助成措置といたしまして四十九億円の計上が行われておる、あるいは先ほど申し上げました油についての助成といたしまして百六十六億円の予算が計上されておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、先生からも御指摘がございましたように、この九十日備蓄を達成し維持していくためには、やはり相当な資金というものがかかるわけでございまして、私どもといたしまして、それに対して従来の方針に沿いまして財政的な助成というものを続けていきたいというふうに思っております。
  214. 林孝矩

    ○林(孝)委員 大臣、この民間備蓄というのは、政府の努力として大臣は基本的にどのようにお考えになっておりますか。
  215. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 民間備蓄には、たって分けますれば、流動的に自分の業務を運営するために必要なものと、あるいはめったに使えないといういわば本来の意味の貯蔵、備蓄と申しますか、この二つの種類があるのじゃないかと思います。
  216. 林孝矩

    ○林(孝)委員 それはわかるのです。それに対してその重要性というか、それからいま大臣が民間備蓄にどのような気持ちで汗を流しておられるのか、取り組み、姿勢というものをどういう形でお持ちになっておりますか。
  217. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まず九十日備蓄の意義でございますけれども、これは第一次の石油ショックが昭和四十八年に起こったわけでございますが、その後、石油を消費いたします主要先進国が集まりましてIEAの組織をつくったわけでございます。今後石油の問題というものを単に一つの国だけの問題として処理するのではなくて、国際的な問題として処理していこうという考え方が打ち出されたわけでございまして、そこで共通的に民間備蓄の九十日ということが一つのプリンシプルとして確立されたわけでございます。特に日本のように輸入石油の依存率がきわめて高いような国は、国際的に合意されましたある一定の水準を達成しておきませんと、日本の国内でも問題が起こりますし、一たん緩急ある場合に海外との国際的な摩擦が起こり得る危険性があるということでございます。つまり、備蓄が少ない状態石油危機が起こりますと、日本がまた油の買いあさりに出るというような非難も起きかねないものでございますから、そういった少なくとも国際的に合意された水準はぜひとも達成をしておきたいというのが九十日備蓄の基本的な考え方でございまして、先ほど石油部長から答弁を申し上げましたように、現在は八十八日分でございますけれども、できればこれを昭和五十五年度末には九十日という国際合意の線に近づけたい、達成いたしたいという念願に燃えているというのが九十日備蓄に対する私どもの基本的な考え方でございます。
  218. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、とにかく備蓄をさらに推進していく、推進するについては備蓄基地というものは必要になってきますね。国家備蓄の場合も私は同じだと思いますし、国家備蓄でも基地ができ上がるまでに非常にいろいろな問題があるわけでしょう、国家備蓄の実態を見ても。そういうものができるまでのつなぎ措置としてタンカー備蓄というものが現実にあるわけです。国が総力を挙げてやってもそういう実態なんです。ところが民間に九十日の備蓄を義務づける。この備蓄というものに対して、国でもなかなか大変なことを民間がそれをやるわけですから、これはもっと大変だと私は思いますね。そういう民間備蓄に対していろいろなルールを決めたりあるいは号令をかけたりするということだけじゃなしに、財政措置等も行われておりますね。ただ、現実の問題として、なかなかそれがうまく進んでいないというのが実態だと思うのです。たとえば奄美大島に民間備蓄基地というものがつくられる計画がございます。この実態についてどこまで通産省が進捗状況を掌握されておるか、いかがですか。
  219. 志賀学

    ○志賀政府委員 いま御指摘の奄美大島についての石油備蓄基地の問題でございますけれども、私どもとして現在までのところ正式には伺ってないというのが現状でございます。
  220. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうしますと、たとえばその地域の長、それから県、行政サイドではそういう形で積み重ねられている。いまどういう段階になっているか御存じですか。
  221. 志賀学

    ○志賀政府委員 正確には把握しておりませんけれども、地元の市町村でいろいろ御検討になっているのではないかというふうなことのようでございます。
  222. 林孝矩

    ○林(孝)委員 民間備蓄のことについて通産省はどの段階から関心を持ってその推進に努力をされるのですか。
  223. 志賀学

    ○志賀政府委員 私どもといたしましても備蓄の必要性というのは十分承知しておりますし、民間の九十日備蓄それから国家備蓄を達成すべく努力をしておるわけでございます。ただ、民間備蓄の場合に、やはり最初の段階におきましては個々の企業がよく地元の方とお話しをいただきまして、それである程度のめどがついてくるという段階におきまして私どもの方にお話が参りますれば、私どもといたしましてもできるだけの御協力をするということでやってまいっておるわけでございます。
  224. 林孝矩

    ○林(孝)委員 ある程度のめどというのは余りにも抽象的で理解しにくいわけですけれども、それについてはどうかということ。そのある程度のめどの内容について伺いたいのですけれども、それからその内容に来るまでに、国の場合だったら、すでに調査費を計上して調査をしなければいかぬ、いろいろな予算措置が講じられてくるわけですから。当然、民間備蓄についてもそうした予算措置が講じられてこないとそういうめどが生まれてこない。そのめどが生まれてくるまでに、当然政府関係機関融資が伴っている。そうするとそこまで来る過程で、民間備蓄を推進する以上は当然重大な関心、問題意識を持って、数限られたわずかの業界なんです、どの企業ではどういうところにどういう備蓄基地をつくろうとしているか、努力をしているか、今度は逆にむだな努力はやめた方がいいというものがあれば、すでに国家備蓄で日本列島を調査したが同じようなところで計画を立てておる、そこはもうすでに国家備蓄はあきらめた地域だ、こういうところがあれば積極的に、そこはもう国の調査においてはこうなっているからそういう計画を持たない方がいい、そういうところまでの話というものは全くなされていない、これが実態じゃないかと思う。だからある程度のめどというものはどういうものなのか、またそれまでにどうして関心が持たれないのか。先ほど、市町村で検討されておると思いますという答弁があった。じゃ、どういう検討をされておるのか、具体的な資料として提出していただきたいと思うのです。
  225. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいま先生から御指摘のことはよく私どもも理解できるわけでございまして、私どもは民間備蓄はもう民間の方で適当におやりくださいというような気持ちを持っておるわけじゃ決してないわけでございまして、私どもとは計画の初期の段階からいろいろと御相談にあずかっているという現状でございます。  ただ、ここで問題なのは、いわゆる民間備蓄の場合に、民間の企業の方が責任を持っておやりいただく、それに対しまして政府が財政的その他あらゆる助成手段を講ずるという考え方があるわけでございますので、やはり先行するのは民間の企業の方の意思というものがあるのではないかと思います。と申しますのは、民間の企業は自己の持つ製油所とのつながりの問題等々の関係もございますし、それから原油をどこから買ってくるかという問題等もございますから、その立地条件というものを国の意思で決めるという決め方はちょっとどうかなという考え方はございます。  国家備蓄になりますと、これは全く国の意思で決めるべき性格のものだ、こう思いますので若干民間備蓄とは違いますけれども、民間備蓄につきましてはいま申し上げたような考え方でございますので、あくまでも政府がサポートする側に行くべきではないか、余り最初から政府が出て行きまして、こういうところに立地した方がよろしいというふうに表立ってそういう指導をすることはむしろ行き過ぎた考え方ではないかという基本的な考え方を持っているわけでございます。  そこで、具体的にどの段階になって政府が乗り出すかということになりますと、一概には言えないわけでございますけれども、それぞれの立地地点におきまして問題の解決の困難さの度合いというものを見きわめながら、政府補助的にあるいはサポート的に出ていくという考え方ではないかと思います。ただ、先ほど石油部長がお答え申し上げましたように、国としての助成がたとえばタンクの底地の助成をするわけでございますから、少なくともそういう段階の前には、国の意思というものと当該民間企業との意思の整合性を図るということは必要であろうかと思いますけれども、それはあくまでも表に出てきた段階でございまして、全般的に申しますならば、先ほどお答えいたしましたとおり、計画の初期の段階からいろいろと私どもと御相談をしながら進めていく、その段階に応じた問題の複雑さ等に対応いたしまして政府が側面から援助をしていく、こういう基本姿勢を持つべきではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  226. 林孝矩

    ○林(孝)委員 計画の初期の段階から相談を受ける、それである程度民間独自の努力で、そして政府が助成をする。こういうところからサポートする。私は国の権限でもって民間に対してという意味で言っているのじゃないのですよ、あくまでも民間備蓄なんですから。むしろ逆にサポートのあり方が問題ではないかという指摘をしておるのです。  それからもう一つは、国の助成というものが、あるいは政府関係金融機関からの助成というものが、これがいまどういう段階から始まっていますか。
  227. 志賀学

    ○志賀政府委員 先ほど申し上げましたように、タンクの建設につきましては開銀から融資が行われております。したがいまして、そのタンクの建設が始まって資金需要が出てきた段階、そこで開銀から融資が行われるということになっておるわけでございます。
  228. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうすると、新たな基地をつくる場合に基地を確保する場所、こういうものはそれ以前の問題ですか。あくまでもタンクですよ。
  229. 志賀学

    ○志賀政府委員 お答え申し上げます。  土地の取得につきましては、個々の会社のタンクの建設については助成の対象になっていないわけでございますが、共同備蓄会社の場合には、さつき長官からもお答え申し上げましたように、土地の取得費につきまして公団が助成するという形になっております。
  230. 林孝矩

    ○林(孝)委員 そうすると、土地を確保するときに、もうこれは関心があるというよりはむしろ積極的に参加しておるわけですね。そう受とけめていいのでしょう。
  231. 志賀学

    ○志賀政府委員 共同備蓄の場合には、民間の企業がたとえば五、六社集まってタンクをつくる、こういう形態をとっておるわけでございます。この場合もあくまで主体は民間ということでございますけれども、できるだけ共同して備蓄をしていくということがある意味で効率的でもあるということから、公団も出資という形で、要するに底地の取得費につきまして出資という形で助成をしておるということでございます。そういう意味で、個々の会社の備蓄の場合に比べまして、国のかみ方というのは、先生おっしゃいますようにある意味で強くなっておる、こういう形になっております。
  232. 林孝矩

    ○林(孝)委員 共同でない場合、個々の場合ですね、この場合はどういう実態にあるのですか。
  233. 志賀学

    ○志賀政府委員 個々の会社の場合には、先ほど申し上げましたようにタンクの建設につきまして開銀が融資という形で助成をやっているわけでございます。したがいまして、さっき長官からも申し上げましたように、個々の会社の場合におきまして民間の企業がまず主体となって責任を負って計画を進めていく、その過程におきまして私どももいろいろ相談にあずかるわけでございますが、いずれにいたしましても計画の主体というのは民間ということでございます。ただ、開銀融資という形を通じまして国としてもいろいろな面で援助しあるいは助言をするというかっこうをとっておるわけでございます。
  234. 林孝矩

    ○林(孝)委員 その趣旨はわかるのですよ。ですから個々の会社の基地の場合はタンクから始まる、しかし計画の当初から相談を受けて援助ないし助言はする、こういうことでありますから、とにかく最初から相談があったら助言も得られる、また、財政的な支援も得られるのか、個々の会社の場合は全くそういうものはないのか、どっちなんですか。
  235. 志賀学

    ○志賀政府委員 もちろん個々の会社から私どもの方にお話が参りました場合に、私どもとしては当然いろいろ相談にも乗りますし、必要な指導ということもやってまいります。ただ、その場合に、個々の民間の備蓄の場合には主体は民間という考え方で私どもとしては対応しておるわけであります。
  236. 林孝矩

    ○林(孝)委員 もちろん主体は民間ということはわかっているわけです。それを前提としての話なんです。といいますのは、個々の民間と共同備蓄の場合に分けて、一番弱体な個々の民間の備蓄基地をつくる場合に相談をする、相談をすれば相談にも乗ってもらえる、また財政的援助というものも受けられる、こういう話と、タンク建設からでなければだめなんだという話と、二つ出てきているわけです。私は、民間備蓄をこれだけやかましく言う限りにおいてはもっと積極的に取り組んでいく、そういう姿勢、努力というものが個々の民間でやる基地の場合も必要じゃないか。そこまで積極的にサポートしていくという姿勢があって初めて先ほど私が取り上げた——たとえば奄美大島のことにしたって、市町村で検討しておると思いますというような、こういう問題意識にすぎない。現地はそうじゃないのです。もっと積極的なんです。もっと進んでいるのです。しかし、そういうサポートという動きが現地から起こってこないとこっちからはしない。どれだけ国が関心を持っているのかわからない。こういう不安な状況がある。だから、われわれ決算委員会で、現地の方は行かなかったですけれども鹿児島に石油基地を見に行ったときに、通産省関係の人にも会いましたが、どうも感覚が違う。そういうところに私は非常に矛盾を感じてきたわけでありますけれども、今後の問題として大臣、民間備蓄基地というものを九十日ということを義務づけて、九十日でいいかどうか、さらに百日としていかなければならぬのじゃないかというような将来的展望に立って考えた場合に、ある程度のところまでは知らぬ顔、こういうときになったら初めて顔を向けるというような冷たい態度ではなしに、絶えず情報交換しながら、連絡をとり合いながらやっていくということを言っておるわけでありますから、もっともっと積極的にこの問題と取り組んで有効な行政をやっていかれたらどうかと私は思うわけです。  それと最後にもう一問はタンカー備蓄、これは先ほど申し上げましたように一つのつなぎなんですね。国家備蓄についても政府としての目標達成のための見通しというものを明確にしていかなければならない。これも大変なことだ。計画しているところ、調査したところがどんどん崩れていっている、なかなか決まらない、こういう状況にあるわけです。  この二点について大臣の所見を伺って、さらにPCBについても質問する予定でございましたけれども、時間がございませんので別の機会にさしていただきます。この問題についてもまだ議論するところが多々ございますが、また別の機会にするとして、いま申し上げた二点について答弁をお願いしたいと思います。
  237. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 詳しくは長官から説明してもらいますけれども、私の感じでは、民間に、ランニングストックであればこれは会社の経営上当然のことと思いますけれども、いわゆるデッドストック的なものを義務的に持たすということは、補助金その他でいろいろ国で援助するにいたしましても、会社にとっては営業的に負担であることは明瞭なことかと思います。したがって、おのずから限度があるのではないか。そういうことを考えますと、九十日というラインはそういう点をにらんで会社側とも十分話し合いの上決めたものと考えております。したがいまして、それ以上の備蓄ということになりますと、国自体がためていくというのが当然の道筋かと思いますので、いまの九十日を基本にして、それ以上は国の備蓄にしていくというこの体制が一番正しい行き方ではないかと思います。  もう一つ、海上備蓄の件ですけれども、お話のように、できますれば陸上で備蓄をする。米国とかドイツ、ソビエトのように地下に岩塩等がありまして、天然に備蓄できるような地下構造でありましたら大変いいのでありますけれども、日本はそういうふうにできておりません。したがいまして、陸上の表面にこれを蓄えるとしますといろいろ御承知のようなトラブルがございます。なるがゆえに大変窮していまのタンカー備蓄という手段をとっておるわけでございますから、国民の皆様の御理解を深め、陸上備蓄が進められるようになればそれが一番よろしいのではないかというふうに私は考えております。
  238. 高田富之

    高田委員長 庄司幸助君。
  239. 庄司幸助

    ○庄司委員 イラン石油の問題について、私は通産大臣に冒頭にまずお伺いしたいと思います。  私は、イランとの友好を進める場合、油欲しさの外交ではだめだ、こういうふうに思うわけです。そこで、イランアメリカに対して抱いている感情あるいは問題点、やはりイランの国民の立場で物を考える必要も一つはあるのじゃないかと思うのです。そしてまた日本の立場での物の考え方、こういう立場に立たないと、本当のイランとの友好は、イランだけに限らずどんな国でも、果たせないだろうと思うのです。  その点で私は大臣に冒頭にお伺いしたいのですが、私も、イランが国際法を無視して人質作戦をやるということは、これはやはりあってはならないことだと思います。ただ、現在イラン政府当局がああいう人質作戦に出た背景の問題、これは日本として理解してあげる必要があるのじゃないかと思うのです。その背景は何かと言えば、直接的には例のパーレビの問題をめぐって、これはすでに一年ほどの経過があるわけですが、こういう問題がある。もう一つは、もうちょっと遠い原中になりますと、一九五三年にモサデク政権が倒された問題、これはクーデターによって倒されましたが、このクーデターはまぎれもなくアメリカのCIAが仕掛けたクーデターである。これはもはやイラン当局も公然と認めておりますし、アメリカのCIA当事者によっても認められたアメリカの仕掛けたクーデターであった。こうやってアメリカイランの内政に干渉して、乱暴にもああいうターデターをやった。ここにイランアメリカ外交関係の一番の基点があるだろうと思うのです。いま石油の問題が重要な問題になっていますが、それを担当している通産大臣として佐々木さんがその辺をどのようにお考えになっているのか、この辺の御理解があるのかないのか、これをひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  240. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 物の本でも読んでおりますし、また現地のアラブの各国から間断なくお客さんが見えます。いろいろ話もちょうだいしております。したがいまして、どういうことでああいうことになったのだろうというふうに想像もつくわけでございますけれども、しかし、そのせんさくをすることも重要でございますけれども、何はともあれ人質問題が起きていることは事実でございまして、原因がいかんであれ、この人質問題が国際法に違反しておることは明瞭でございます。したがって、世界の秩序に対して脅威を与えているわけですから、これは一日も早く平和裏に人質を解放してもらいたいという努力をするのが当然のことかと考えるわけでございます。
  241. 庄司幸助

    ○庄司委員 人質問題が起きたから、人質問題を起こしたイランが悪い、もっぱらイランだけが悪者だ、こういう態度になると思うのです。大臣が先ほど来の御答弁で、アメリカにも物は言うのだ、それは中身は平和的に解決しろ、こういうふうに物を言うのだとおっしゃっていますね。ただ、イランがなぜあのようにアメリカに対して怒っているのか、人質作戦までやらざるを得ないような状況になっているのか、ここのところを理解してあげないと、イランが人質作戦をやったからあなたが悪いんですよ、これでは私は日本イランとの本当の友好的な関係は進展しないのじゃないかと思うのです。だから、大臣、その辺も理解しながら、アメリカに物を言うときは、あなた方がやはり過去にこういう前歴があってイランがああいうふうな態度に出ている原因も一つあるのじゃないか、この辺あなた方が反省してみろ、こういう態度をとるのこそ、私はやはり独立した日本の外交態度じゃないかと思うのです。そういう点、閣僚のお一人として、あなた、どうお考えになっているか、ひとつ御答弁を願います。
  242. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 米国といたしましては、何と申しましてもそういう国際法に違反したような行為が発生したわけですから、この事象を一日も早くとにもかくにももとに復すという静かな世界を求めていることは事実かと思います。しかし、長い忍耐にもやはり限度があると見えまして最近は御承知のような手段に出、あるいはもっと激しい措置に出るかもしれぬということになりますと、あなたの言うように人質事件発生までの経過がどうだったといって吟味してみても、いまもう現実に危ないところに来ているわけですから、何はともあれその問題はしばらく自重してもらえないか。イランには、あなた方の方にもいろいろ言い分はあるだろうけれども、しかし、何はともあれ人質問題が一番問題になっているわけですから、これを解放してあげたらどうですか、こういうことでいまわが国がヨーロッパで必死になって動いているわけですので、お話のように原因がどうで民族問題がどうでとかいろいろありますけれども、それをいま論じておってもどうにもならぬのじゃないかというふうな感じがいたします。
  243. 庄司幸助

    ○庄司委員 私はやはりその辺がうんと大事なところだと思うのですね。おまえ腹も立つだろうけれども、とにかくいまはがまんして眠りなさい、こう言われればけんかの成敗にはならないのですね。だから、その辺の道筋を明確にして、イラン日本との友好関係も一層深めていく必要があると思うのですよ。この辺私の意見として大臣に申し上げておきたいと思ったのです。  いまイランから石油を買うのをやめたとかなんとかの問題は純経済的な問題だと先ほど来言われております。これも大分やりとりがあった問題で、蒸し返しになるかもしれませんが、四月十一日の大来外務大臣の発言は、イラン石油より対米協調が大事だ、こういう趣旨です。四月十二日大平さんが追認するような発言をなさいました。それからもう一つは、伊東官房長官が値上げ拒否というのは対米協調の一つなんだというような発言をなすっています。その上でアメリカにも石油供給を求めるのだ、こういう発言をやりました。これは「人質事件以来、イランからの原油輸入量、ドル建て購入とともに、国際的取り決め以上の価格は買わない方針をとっている、広い意味では(米側の制裁要求への)同調の一つだ」こういうふうに述べられました。さらに同長官は、「イランからわが国への原油供給が停止された場合、石油の消費節約、備蓄原油の取り崩しを行うほか「米国にも当然、石油の供給を求める」」こういうことをおっしゃっているわけですね。これに対して、新聞報道によりますと、「通産当局、泣きっつら」という表現で出されております。そういう点で閣議で統一見解として最終的には、純粋な経済的な問題だという意思を統一をなすったようであります。しかし、本音が大来さんや大平総理やあるいは伊東官房長官側から出てきた。それをすり合わせをやって意思統一をやったのがこの間の閣議の統一見解じゃなかったかと思うのですけれども、その辺、大臣、どうお考えになりますか。
  244. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、どこでそういう発言をしたかつまびらかに知りませんけれども、私どもといたしましては、エネルギー閣僚懇談会におきまして、油の問題に関してはこういう経過ですよと。いまのイランの値上げの問題はいますぐ始まった問題でもなし、アメリカ制裁措置云々の以前からしょっちゅう続いておる問題でございまして、去年の十月にも上げ、十二月にも上げ、二月に上げて、また四月に上げる、こういうことでございまして、油の状況が世界的に非常にタイトで緊迫しておるという需給関係であればまだわかりますけれども、いま油の関係はもう、新聞でも御承知かと存じますけれども、どちらかと言うと緩和する需給関係にある。冬場の需要期が過ぎまして、言うなれば非需要期になる。日本としてはいままでの油でも高くて、そしてこの前ここでもお話ございましたような、国内物価にもあるいは国際収支にも大変な影響を持って、これを切り抜けるのにどうしようかといって苦しんでおる最中でございますから、少しでも値を上げていただくのはありがたくないというのは当然でありまして、かてて加えてOPECの諸国に、それが上げたということになりますと、根本を上げるわけでございますから、ほかの国にもそれは波及していくだろう。将来とも油の価格に関しては大変なことになるのじゃないか。需給関係なんというものを全然抜きにした一つの政治的な、と申しますより恣意的な価格でやられるのではどうなるだろうかということを考えますと、幾ら契約がそういうふうになっておっても、これに対しては自重をすべきではなかろうかということで、買うのはもちろん私どもではないのでありまして、商社が向こうの公社との話し合いで経済的に、これは商売として値段の話をしていくわけでございまして、それに対しましては慎重な態度で臨むべきだという要望をして、ただいま交渉に入っている最中でございますから、私どもの立場といたしましてはこの油の問題は純経済的な問題として扱うべきじゃないか、また扱っておりますということで閣僚懇談会で長官に篤と実情を話しまして、それはそのとおりだということで了解を得たと考えてございます。
  245. 庄司幸助

    ○庄司委員 それは通産大臣はそういうお考えだったかもしれません。そうじゃなくて、私が言うのは、大来さんやあるいは伊東官房長官は、あのエネルギー関係閣僚会議をやる前まではさっきの新聞報道されたような発言をやっていたわけですから、発言というのは心の中の問題が出てくるわけですから、そういう本音があった。それが結局、これじゃうまくないという考えが通産にもあって、すり合わせをやって統一見解を出したのがこの間の閣議じゃなかったのか、こう聞いたのです。どうですか。
  246. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 反対の意見といいますか、そういう政治的な意図でどうというものであればすり合わせということもあり得るでありましょうけれども、私どもといたしましては、先ほどからくどく申し上げるような経過でここに至っておるわけでございますから、そのように事態をわれわれに関しては認識してもらいたい、こう経済閣僚会議で話しまして、そうだということでいまきておるわけでございます。現にそのままで交渉をイラン側とは続けておるわけでございますから……。
  247. 庄司幸助

    ○庄司委員 統一見解が出たというのは意見の相違があったからですね、すり合わして統一見解にしたのだ、こう思うのです。もう時間がありませんから、これ以上押し問答しませんけれどもね。  問題は、アメリカ側の受けとめ方ですね。こういう大平さんや大来さんの発言、伊東官房長官の発言をとらえてのアメリカ側の受けとめ方は、非常に歓迎的な受けとめ方をなすった。たとえば、国務省やホワイトハウスが相次いで高く評価して、新聞、テレビも大々的に報道した。だから、アメリカアメリカなりに、こういう大平さんの発言や大来さんの発言を歓迎した、アメリカが要求している制裁措置日本が同調したといって歓迎したと思うのです。だから、私は、外務大臣や総理大臣の発言というものは、やはり非常に大きな国際的な影響を及ぼすのだ、その辺で、この閣内の不統一があってはだめだということを強調しているのです。  それから、これはどうお考えになりますか。この二十日に、モインファル・イラン石油相が記者会見で一問一答なさいました。記者団の問いで、「日本の新価格拒否には政治的側面があると報じられているがどうか。」こう聞かれて、答えとして、「承知している。イラン国営石油会社と日本石油各社の関係と、両国政府の政治的関係は別物である。わが国は米国に追随するいかなる国にも石油輸出しないといっているが、日本がどんな態度をとるかは今後をみているわけだ。」今後の問題というのは、大来さんとECとのいろいろな話し合いの問題も含めて、ECが二段階制裁措置を決定しましたが、この二段階の経過を見ている、こういうふうにおっしゃっているわけです。それで「日本が米国に追随すれば全面カットである。」こうも言っております。それから後の方でも、「日本が米国に追従すれば、すべての石油輸出を切るということだ。」また、「日本国民にいっておきたいことはないか。」と聞かれて、「カーターに追従せず、カーターの脅迫にのらず、独立国として強くあって欲しいということである。」こういうふうにモインファル石油相は日本の記者団に言ったわけです。  このモインファル石油相の発言を通産大臣はどういうふうに受けとめておられますか。
  248. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 さっきもお話ししましたように、一々新聞の発表といいますか、記事を別にそれほど気にしておりません。  と申しますのは、この問題の扱いは、石油の問題に関しては、先ほど申しましたような経過で継続してやっておりますし、国全体の外交の問題といたしましては、平和裏に問題を解決するのがこの際一番重要なことだということで、アメリカには自制を求め、イランの方には、早く人質を、何はともあれ解放すべきではないかということで、ヨーロッパ側と力を合わせてただいま問題の処理に当たっておる最中でございますので、その間に処して、そういういろいろあっても、本質的な外交の進め方というのはそういう方向でいま進んでいる最中でございますので、それが、たとえば向こうの大統領に会ったてんまつ等はどうだったか、各大使がみんな帰って、その大使の報告を基礎にして今後の態度を決めようというので、いままたアクションを起こしておるわけでございますから、まず外交的な進め方としては、いま私どもがやっておりますのが一番ベターだと思います。  それと油とひっ絡めて、ああだろう、こうだろうと言ってみたって、これは別にどうということはないのでありまして、やはり油の方は油の方として従来から継続しておる問題でありますから、それはそれなりで進めるべきだし、外交問題は外交問題として進めていくべきである、こういうふうに考えております。
  249. 庄司幸助

    ○庄司委員 アメリカは、制裁措置が十分いかない場合は、今後の行動としていよいよ武力を発動する、カーターは、湾口封鎮も含めて、やると明確に言っております。同時に、きょうの報道を聞きますと、イラン政府当局者が、あそこの湾口封鎮も含めて他の石油産出国の油が出ないようにする措置もとる、こういうような発言を行ったと聞いております。これも、あなたの論法でいくと、これは報道だから信頼するに値しないとあるいはおっしゃるかもしれませんけれども、イランイランで、アメリカのああいう武力制裁措置に対して、やはりこういう報道がなされるような発言がもう出ている、これは私は非常に重大な問題だと思うのです。  だから、イランに人質解放を求めるのはもちろん結構です。平和的な手段で解決しなさいということを求めるのは結構ですけれども、アメリカにも、私はやはり、武力封鎖をやってみたり力でもっておどしつけるようなやり方はやめなさい、これは明確に独立国の日本の外交として要求してしかるべきだ、こう思うのですが、大臣どう思いますか。
  250. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ですからアメリカにはそういう武力行使というふうなことはひとつ自重してもらいたいということは、ヨーロッパとの連帯で力強くこれは反省を促しておるところでございます。反省と申しますか、自重を促しておるところでございます。
  251. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで、五月十七日という話が出ていますが、五月十七日まで待って、イランが人質問題での前進の方向を示さない場合は第二段の措置をとる、いわゆる経済制裁も含めてとることになっていますが、先ほど、この制裁という言葉の語源の問題で論議がありました。もう一遍私に聞かせてもらいたいのですが、経済制裁とは、中身ではなくて、一体どういうことを意味するのだ。制裁というのはやはり相手に言うことを聞かせるために何らかの行為をなすことが私は制裁だと思うのですが、そういうふうに思いませんか。
  252. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 先ほどもお答えしたわけでございますが、経済制裁、必ずしも法律的に概念のきちっと決まった言葉ではないと思います。国連で決議をいたしまして、特定の国に一定の幅で、その決議におきまして内容を決めて何らかの経済的な強制を加えるという意味合いであると思います。  したがいまして、一般的に言われる経済制裁というものと、法律用語的に概念規定します場合とは大分異なる面があろうかと思いますが、現在まあ俗に言われております経済制裁というのは非常に広い意味のようでございまして、必ずしも強制力を伴わないものまでも経済制裁というふうに、一応俗に使われておる、こういうことであろうかと思います。
  253. 庄司幸助

    ○庄司委員 だから、このイランならイランという国に対して、ある、外交方針とは言わなくとも、国の行為を変えてもらいたい、ただ、口で言ってはわからないから、具体的な行動で、態度で示そうよというのが制裁の意味だろうと私は思うのですが、そのとおりでしょう。そうするとイランの側からすれば、われわれは制裁を受けたのだ、各国が共同してある行為をやってわれわれに言うことを聞かせようとしているのだ、これに日本も加わっているのだ、こういうふうに受けとめてくるのは当然じゃないですか。どうですか。
  254. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 御趣旨のような御議論になりますと、実は通産省としてお答えするのが適当かどうか、やや疑問があるわけでございますが、要するにある特定の、たとえば人質をとっておるというふうな特定の国際法違反という明確なる事実がある場合に、その事態を解消するために心理的あるいは物理的な強制というものが加えられる、こういう趣旨であろうかと思います。したがいまして、抽象的な問題に抽象的に答えるという筋のものとは違うだろうと思います。
  255. 庄司幸助

    ○庄司委員 そこで、われわれは、西欧的な国際法という概念にはなじんでしばらくたちます。明治以来ですね。ただ、イランはあのとおりの回教国でありますし、イランの今度の革命も、いわゆる宗教的な色彩も相当あったやに聞いております。深部ではどういうことがなされていたかはまた別として、こういう一つの回教圏で、いままでわれわれがなじんできた西欧的な国際法の問題になじみにくいような、おくれというと語弊がありますけれども、そういうものもあるということも念頭に置かないと外交というのはうまく進まないのじゃないかと私は思うのですよ。だから、あなたは国際法違反しているんだぞと言うだけでは心は解きほぐれないだろうと思うのです。前からイソップにも風の神と太陽のけんかの話がありますけれども、そういう解きほぐすような努力もなすっていただきたいと私は思うのですけれども、大臣、その点どうですか。
  256. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 その努力は国連を通じ、国連自体も発動して、大変努力したのじゃないでしょうか。
  257. 庄司幸助

    ○庄司委員 そこで、もう少し範囲を広げてまいりますけれども、実はOPECの長期戦略というのがいま論議されて、恐らくこの十月ごろ正式のものになるだろうと言われております。このOPECの長期戦略を見ておりますと、これは案の段階かどうか私はよくわかりませんけれども、長期戦略閣僚委員会による長期戦略の要旨というのがあります。ここで非常に強調している問題というのは、いままでアメリカ日本その他を含めて西欧諸国に原油を売ってやってドルをもらった、このドルがアメリカ日本も含めた資本主義諸国のインフレによって目減りしてくる、これに対する懸念が非常に強く打ち出されていると思うのですよ。それとあわせて、資源についての民族的な主権をうんと強調している。私は、イランの問題を考えていく場合でも、わが国石油の長期安定的な確保のためにも、このOPECの物の考え方を重視する必要があると思うのです。  それから、OPEC諸国、たとえばリビアのカダフィ議長なんかの発言によく出てくるのですが、メジャーに対する相当の敵がい心があるようであります。そういう点で私は、資源エネルギーの問題、特にエネルギーの問題では、この資源に対する民族主権を尊重しながら、そして友好を保って互恵平等の輸出入を展開していくことが非常に大事だ、特に、それぞれの国のインフレを防いで、そして彼らに払った対価が安定的に推移する、こういうことが非常に大事だと思うのです。その辺、大臣どういうふうにお考えになりますか。  それからもう一つは、OPEC諸国の中には相当の回教国が含まれておりますね。イランもその一つでありますが、こういう回教国の国民の感情も大事にしながらわれわれおつき合いをしていかないと、そして同時に、メジャーの横暴を彼らと一緒になって規制していく、この立場に立たないと、わが国の長期的なエネルギー確保は困難じゃないか、こう思いますけれども、大臣どう思いますか。
  258. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 メジャーに対する見解がどうとかあるいはアメリカの態度がどうとかという問題を離れまして、お話のように、イスラム諸国あるいはアラブ諸国が特に石油資源に対して大変貴重なものとして、宝のようにこれを考えているということは私は事実だと思います。行ってまいりましても、そういう点は大変ひしひしと感ぜられるわけでございます。また、アラビア石油やなんかの日本の皆さんが出かけまして、ああいう発見をして採掘するという、そういう過程の苦労を聞いたり書類で読んだりしますと、これはやはりああいう諸国には諸国の慣習その他もございますから、そういう現地の考え方なりをよく理解して、そして相手の立場を傷つけぬように協調しながら、これから資源外交あるいはエネルギー外交をとっていかなければならぬというそのお話でございますれば、まことにそのとおりだと思います。
  259. 庄司幸助

    ○庄司委員 イランの問題は、いまのところはイランアメリカの問題になっていますけれども、これはいずればOPEC諸国ないしはアラブ回教圏の諸国の問題に発展していく可能性があると私は思いますから、なおさらこの問題では日本政府は、イラン石油相からアメリカの追随をやめなさいと言われるような状況を一刻も早くなくす、そして日本の自主的な外交を、しかも、あの辺もアジアの一角でありますから、こういうアジア諸民族の友好を土台に発展させていくことをひとつ強く要請して、この問題は終わりたいと思うのです。  あとは若干……。イラン石油がとまるという、これはいまのところは仮定でありますが、その場合のわが国イラン原油に対する依存度、これは去年の一月から九月までの統計ですと、八・一%でございますか、こういうふうになっておりますが、しかし、西欧の西ドイツであるとかその他の国と比較してみて、このイラン原油の各国の割合は、日本が八・一%、アメリカが五・四、カナダが五・四、西ドイツが九.四、イギリス八・五、フランス五・一、イタリーが一・八%、こういうふうになっておりますけれども、国全体のエネルギーの輸入石油に対する依存度、これは七八年度の統計ですが、日本が圧倒的に高くて七一・八%、西ドイツは五一・六、フランスが五九・四、アメリカは二一・三、カナダなんかは六・四、イタリアは若干高くて六六.一でありますが、イギリスなんかは北海油田も持っていますから一八・四です。こういうこれらの国々と比べて日本イラン原油のとまることによる影響というのはずば抜けて大きいと私は思うのです。全エネルギーに占める日本イラン原油に対する依存度は五・八%、こう伺っております。それから、その次に高いのは西ドイツの四・九、フランスが三・〇で、カナダなんかは〇・三、イタリーも一・二です。それから石炭はほとんど日本では掘れなくなった状況もありますし、そういう点私は、イランの原油がとまるということは他の各国と比べて比べものにならない打撃を与えるのではないかと思いますが、どう思いますか、大臣
  260. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 いま先生がお示しになりましたような数字、その姿から見ますと、イランの油に対する依存率は現在では一一%ということになっておりますので、その限りにおいては大変な問題だという認識を持っております。
  261. 庄司幸助

    ○庄司委員 だから私は、EC各国と共同歩調をとるのもいいのだけれども、EC各国より比べものにならない影響を受けるのは日本だということ、この認識大臣はお持ちだろうと私は思うのですが、どうなんですか。
  262. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 そういう比較、対照していろいろ考えるのも一つの方法かと思います。しかし、私が先ほど来繰り返し申すように、問題は非常に緊迫した状況になっておるわけでございまして、何はともあれ、この際は平和的に問題を解決するということを最優先に考えるべきかと思います。したがいまして、ただいまのような、きのう私どもが決めましたような措置がとりあえずとる措置としては最善じゃなかろうかというふうに考えてございます。
  263. 庄司幸助

    ○庄司委員 だから私、何回も言うのですが、それだけ大事だから、イランに制裁だけ加えてアメリカに物を申さないのはきわめて情けない姿だ、こう言っているのですよ。そういう乱暴なことを独立国日本になぜ押しつけるのだ、もっと話し合いなさい、武力侵略なんかとんでもないことだ、これはアメリカに対してもっと強硬に伝えてほしいと私は思うのです。  それからもう一つ、先ほど輸入の問題で、イラン原油に対する依存度についての企業間格差の問題が出ました。これは具体的な数字で言うと、私の聞いている範囲では、たとえば丸善石油は二〇%ぐらいだ、こう開いております。それから出光なんかは相当高いだろうと思います。これは具体的にたとえば出光なら何ぼだと主なところだけでいいですが、どれぐらいになっていますか。  というのは、私が心配しているのは、五、六月ごろからの石油不足で、農村だけのことを言っても、非常に困りました。トラクターを動かす軽油がない。それから麦を乾燥する重油もない。私の地元の宮城県なんかは出光の系統が多いのですね。この出光がまたイラン依存度が多いとすれば、これは非常に心配になってくるのですよ。また去年のような事態が起きやしないか。特に企業の行動は営利が主になりますから、そうすると、当分安定するまでは少し備蓄しておこうとか、売り惜しみをやろうとか、こういう心配があるわけです。現にわれわれの方の農家の方々はすでに心配なさっているのですよ。通産大臣の秋田だって心配しているのです。その辺でひとつ各石油会社の主なところだけでも、格差の問題、これは何ぼぐらいなのか、簡単にお知らせ願いたいのです。
  264. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先ほどもお答え申し上げたわけでございますけれども、各会社によりまして一それぞれ違うわけでございまして、いま御質問は、具体的に違うところを述べよという御指摘でございます。しかしながら、これは企業の秘密に関することでございまして、率直な答弁、端的な答弁は控えさせていただきたいと思うわけでございます。  一般的に言いますと、依存率の高いのは二五%ないし三〇%という会社が二社程度ございますけれども、その他はばらばらでございます。その中身につきましては答弁を控えさせていただきたいと存じます。
  265. 庄司幸助

    ○庄司委員 その点で、去年に輪をかけたような事態がもし起きたら、これは石油需給適正化法というりっぱな法律があるわけですから、これを発動なさいますか。
  266. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 私ども、昭和五十五年度の原油の輸入計画を二億七千九百万キロリッターというふうに考えております。そこで、いま御指摘の、企業間格差がございまして、ある会社はイランの依存率が高いから問題があるという御指摘もよくわかるわけでございます。しかし、全般といたしまして、何とか二億七千九百万という計画を達成しようという、いま最大の努力をしておるところでございますから、特定の会社を対象にいたしまして石油二法の発動をするという段階には至っていないという考え方を持っておりまして、何はさておいても、全体の供給量を確保することが先決問題、こういう認識でおります。
  267. 庄司幸助

    ○庄司委員 そうしますと、もし軽油が足りない、灯油が足りない、それから重油が足りないという問題が起きた場合は、直ちにこれを解決する措置はとってもらえますね。個々の地域ですね。
  268. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 それぞれの油種につきましての逼迫度合いに応じまして対策を講じていこうと思っておりますが、先ほどお答えいたしましたとおりに、全体としてのバランスを保つということに最重点の政策課題を置いておる。ただ、そうは言いましても、現実の問題といたしまして、特定の地域で特定の油種が足りなくなるという事態が起こりますれば、二法の発動ではなしに、行政的な措置によりまして手当てをしていくという考え方を持っておる次第でございます。
  269. 庄司幸助

    ○庄司委員 われわれは去年からの国会で、通産当局に何遍も、石油関係の原価公開の問題を含めて、値段が高過ぎる、このことは指摘してきましたが、もう森山長官はがんとしてこの事態をお認めになっていない。だから私は、この通産に一貫してあるのは、やはり石油会社の利益を重視する余り、それで値段は国際価格が上がったのだからやむを得ないのだ——上乗せ分は御調査なさろうとしない悪い癖があると思うんですよ。これは、これからもう公共料金はどんどん上がるでしょう、税金はどんどん上がる、インフレにはなってくる、こういう中で、石油は中心問題ですから、やはり腹を据えて国民生活を守る立場に立っていただきたい。場合によっては伝家の宝刀である石油二法を発動する、これぐらいのことをやはりぴしっと言っていていただかないと、ついつい去年のような石油の価格高騰が野放しみたいな状況が起こる。この点、通産大臣、ひとつ御決意を持って、国民生活の安定のため、場合によっては断固たる態度をとるということもひとつ表明していただきたいと私は思うのですが、どうですか。
  270. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ああいう原油価格が上昇している、世界的な非常なショッキングな事件が起きているにもかかわらず、わが国は、何はともあれ、ここまで冷静に経済の成長を伸ばしながら、大変ないま好景気で進んでおるのは、やはり私どものとってまいりましたエネルギー経済に対する対処の仕方というものがそれなりに作用したものじゃなかろうかと思います。そのことは、お話しのとおり、まず量を確保して.需給を均衡させよう、それが経済のもとだということで、需給関係を適正にすることを最大の眼目といたしまして、価格に関しましては、一方的な価格で押しつけられておったわけですから、それが値上がってまいりますと、どうしても国内の価格に反映せざるを得ない。したがいまして、卸の段階で便乗値上げ等のないように、リファイナーその他には十分警戒をいたしまして、審査をして、よく調査といいますか吟味をいたしまして、そしてそれが卸あるいは小売等の段階になってどういうふうな価格形成になってくるかと申しますと、それは市場の需給関係でおのずから決まっていくべきものではないかというふうに考えまして、いままでやってきたわけですけれども、幸い、輸入価格、CIF価格に比較いたしまして、卸価格も小売価格も低いわけでございますから、まずまず私どもの思うとおりにいっているのではないか。したがいまして、混乱もなしに、需給を一応適正にしながら日本の経済を保ってきたものだ、こういうふうに考えてございます。
  271. 庄司幸助

    ○庄司委員 もう一つ伺いたいのは、国際エネルギー機構、IEAですね。これは、もしも日本が、イラン原油がとまったり何かして非常に危機の状態に陥ったら何か融通してくれるような条項がありますが、私が見たところでは非常に厳しい条件ですね。加盟国が石油を融通し合う場合、七%の需要抑制をした上、供給削減が長期間続いた場合だ。十三条、十九条、これですと、つまりイラン原油が一一%占めている、これがとまった、一一%削減されても、七%は節約でしのぎなさい、残りの四%しか融通してあげませんよ、と。しかもこの七%以上の供給削減ですね、これを長期間にわたって受けたかどうかを認定しなければならない、十九条にあります。このためには数カ月の時間を要するだろうと思うし、この融通措置を実施するかどうかが検討されて確認されるという手続を経なければならない。そういう点で、原油の消費国が同時に供給削減を受けたような場合は、このIEAの規定、この活用はほとんど不可能になる可能性があるのじゃないかと思うのですが、その点、森山長官どうですか。
  272. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 IEAの緊急融通スキームは、大きく分けますと、いま御指摘のとおりでございまして、一つは、七%の供給削減を長期間にわたって受けた場合、それが一つと、それからその当該国が前年度に比べまして七%の消費節約をすることという二つの大きな条件があるわけでございまして、その他もろもろの条件がございますけれども、もう一つ、別にセレクティブトリガーという制度がございまして、そういった条項とは関係なしに、特定の国に対して特別の対策を講ずることができるというような考え方もございますので、そういうことに該当するのかどうか、これは別問題でございますが、制度といたしましてそういう制度はあるということでございます。ただし、これは一つのよりどころではございますけれども、私どもは余りにもこれに期待をし過ぎてけいかぬのではないか。あくまでも、現在イランと私どもの間で進めておりますのはコマーシャルベースでの価格交渉ということでございますので、そういった点につきまして、根気強く、粘り強く価格交渉を続けていって、円満に話が妥結して、イランから油を買う、これに全力を挙げることが必要ではないか、こういうふうに考えております。
  273. 庄司幸助

    ○庄司委員 時間もありませんので、せっかく消防庁からいらしておりますので……。  石油の備蓄がいろいろ言われておりますが、備蓄をするタンクの底が抜けたという事件が七八年、宮城県沖地震で発生したわけです。これは仙台新港にある東北石油のタンクですね。この底が抜けて、それで油が防油堤からあふれて、さらにギロチンダンパーを突破して海にまで流れていったという問題があるのです。これは調べてみたら、消防庁の調査でも、その他学者の調査でも一つ大きな問題は、底板、特に側板との継ぎ目のアニュラ板、これに腐食が起こっていた。厚さ八ミリだったものが四・三ないし四・七ミリ、半分以上も腐食が進んでいた。このタンクはいわゆるコンビナート防災法の適用以前のタンクです。このタンクができたのは、まだ六年ぐらいですよ。六年でこういうふうな底板腐食が起こって、ああいう地震で一揺すりに遭うと、どおっと流れちゃう。私は、今後石油タンク全体について総点検する必要があると思うのです。特に京浜とかあるいは仙台の東北石油のコンビナート以前の古いタンクが全国にいっぱいあるわけですから、しかも地震の防災強化区域の中にも相当あると思うのです。この対策ですね。通産省は消防庁任せの無責任な態度じゃなくて、通産省も一緒になって、ためる方は通産省、被害を防ぐ方は消防庁ですから、ためる方と防災の方と一緒になってこの対策を進めてもらいたいと思うのですよ。その点で、静岡あたりはもう地震予知の強化観測区域になっております。それから、この京浜地帯だって相模沖あたりのトラフが動けばこれも危ない。もう大阪だってどこだって同じです。そういう点で、石油タンク、それからガスホールダー、これは仙台で見事に倒れました。こういう問題を一体総点検やるのかどうかというのが一つです。そして、総点検の上であの東北石油のタンクの教訓に学んでしかるべき対策をとらせる。それから第三番目には、防油堤の問題です。現在のコンビナート法によっても、防油堤はその防油堤内の最大容量のタンクの一一〇%だけあればいいのだ。ところが仙台の場合はあのとおり三つぐらい壊れて、これがオーバーフローした。それでギロチンダンパーが全然役に立たなかった、こういう問題があるのです。この防油堤の基準、これはもう改正してもらわないとだめだ、こういうふうに思うのです。これは通産大臣も一生懸命心配している備蓄の問題から言っても重要な問題なんですよ。この点、点検と防油堤基準の見直し、あとはタンクの構造改善、これを全国至るところ全部やっていただきたい、この点について通産省と消防庁からそれぞれ御答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。
  274. 矢筈野義郎

    ○矢筈野説明員 御指摘のとおり、宮城沖地震で三基のタンクが破損いたしました。私ども非常に真剣にこれを受けとめまして技術的に解明をいたした結果、ようやく昨年の九月二十日に報告書をまとめるまでに至ったわけでございますが、それまでの間の審議を踏まえながら一昨年、五十三年十月には防油堤の改修基準を、さらに十一月には流出油防止堤の補修基準を出しまして、宮城沖地震の際の防油堤の欠陥、流出油防止堤の欠陥を是正指導しているところでございまして、最後のタンクの基準については基礎の部分、タンクの本体の部分、腐食の状況、その他総合的な観点から強化地域あるいは石油コンビナート地域の石油タンクを重点的に地震対策という面から具体的な基準を昨年十二月出した次第でございます。  したがいまして、御指摘のタンク総点検という形で現在各地のタンクの点検、補修に取り組んでおるわけでございます。もとより通産省とも事前にこの点については御相談申し上げている次第でございまして、きわめて重要な問題でございますので、消防庁、通産省一体となりまして企業の育成、協力及び消防機関の適切な行政指導に当たっている次第でございます。
  275. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま消防庁の方からお答えがございましたように、消防庁の方でもいろいろと今回の教訓にかんがみまして対策を講ぜられておるわけでございます。  石油タンクにつきましては、石油タンクを初めとする石油関連施設の保安の確保という問題につきましては、御案内のように、現在消防法とかあるいは石油コンビナート等災害防止法によりましていろいろ構造の規制とかあるいはレイアウトの規制あるいは防災施設の設置というような義務づけを行いまして安全対策をやられているわけですが、いまお話がございましたようないろいろな検討も進められておりますので、私どもの方としましても十分連絡をとりながら今後とも保安の確保という点に配慮していきたいと思っております。また、私どもの方といたしましても、地震対策といたしまして、たとえば業種別に、地震が起きた場合のいろいろな対策のマニュアルというようなものの検討もやっておりますし、また通産局ごとに地域防災対策本部というようなものを設けるというようなことで、私どもの方としてもいろいろと対策の強化を図っておる次第でございます。今後とも一層努力をいたしたいと考えております。
  276. 庄司幸助

    ○庄司委員 時間が参りましたので終わりますが、この問題は時間がなかったので十分やれませんでしたので、後で機会を見てじっくりひとつやりたいと思いますので、御協力お願いしたいと思います。
  277. 高田富之

    高田委員長 中野寛成君。
  278. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 まず石油の問題からお尋ねいたします。  いま日本イラン、ある意味ではがまん比べをしているわけでありますけれども、まず第一点、果たしてこの石油交渉どのくらいの期間が解決までにかかるものか。そしてまた、どのくらいならしんぼうできるか、余り言ってしまうと手の内を敵に示すことになってしまいますから問題ですが、どのぐらいこの解決のための時間というものはかかるだろうか。おおよそ見通しをどういうふうに考えておられるでしょうか。大変むずかしいお尋ねかもしれません。
  279. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 現在価格交渉が続いておるわけでございまして、ほぼ第一ラウンドが終わったところでございまして、二十六日にあと一社交渉が持たれるということでございますが、これまでの経過から見てまいりますと、日本側は二ドル五十のアップはとうてい認められませんという主張に対しまして、イラン側は価格はあくまでも産油国側が一方的に決めることができる、こういうことになっておるのだからぜひこの価格をのんでくれという全くの平行線でございまして、第一ラウンドは大部分が不調に終わっているということでございました。あと第二ラウンド、第三ラウンドの価格交渉がいつ行われるかにつきましては、まだ何らの手がかりもないということでございますので、いま先生がおっしゃいましたようにがまん比べという感じがしておりますので、私どもの方からいつ幾日までに解決をしたいという期限的なものを考えずに根気強く、粘り強く交渉を続けていきたいというふうに考えております。
  280. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 日本石油が供給がストップしますと、これは大変痛いわけですが、向こうも売らなければ生きていけないといいますか大変なわけであります。そういうことから、双方ともに一生懸命逃げ道をつくろうとしているわけで、日本の方は他の国から何とか助けてくれ、こういった工作をして、最近はカタール、クウェート、メキシコ、ナイジェリア、アラブ首長国連邦等々インドネシアも含めましていろいろな国々からも日本へ幾らかずつ石油を供給しようかということで、連日のように、希望的観測も含めてのような感じがいたしますが、新聞報道がなされているわけであります。また一方イランの方は、東欧諸国を中心にいたしまして何とか買ってくれ、こう売り込みをやりているわけであります。これが今後の交渉にどういう影響を及ぼしていくのか。日本の方も一〇%余りのイランからの買い入れ率でしたけれども、その他の国々からの新しい供給増によって肩がわりを果たさせるとすれば大体何%ぐらいの肩がわりがしてもらえるのか。そしてそれは問題解決まで続いてそれがやってもらえるのかどうか、そのことについてお聞きしたいと存じます。
  281. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 現在各報道機関で報道されておりますいろいろな産油国からのオファーと申しましょうか商談、これは実はイランの問題が起こって急にそういうふうに話が持ち上がったというわけじゃございませんで、昨年一年間の原油の流通ルートの変化を見てみますと、メジャーからDD、いわゆる直接取引へ大きく変わっていくパターンがございましたので、今後日本といたしましても、そういった流通経路の変化に対応した政策をとる必要があるということから、各産油国との直接取引交渉をずっと続けてまいったわけでございまして、それが一部実ったところもございますし、まだ話が進行中というところもあるわけでございます。たまたまそのさなかにイランの価格問題が持ち上がったわけでございますから、報道を見ますと、あたかもイランとの価格交渉がデッドロックに乗り上げたのでイランの原油をほかの産油国へ振りかえているというふうな印象でとられる向きもないではないわけでございますけれども、実態はいま申し上げたようなことでございます。したがいまして私どもは、イランとの交渉は交渉といたしまして続けていきたい、これは直接取引でございますから、大変貴重な販売ルートになっておるわけでございますので、この分をカットしてほかの方に振り向けるという考え方は全然持っていないわけでございます。できるだけDDなりGGなりの取引を拡大していくという思想からいたしますと、イランの問題と並行的に、ほかの産油国に対する直接販売のルートあるいは政府間取引のルートを開拓していく、こういうような考え方でいま進めておる次第でございます。
  282. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 本来OPEC機構のように、力を合わせてといいますか、連帯をして供給調整やコストを引き上げたりする、そういうふうなこと等をお互いにするであろう国同士で、イランの供給がとまったからそれではこっちが助けてあげましょうという甘い状態ではないことは私どもも当然わかるわけでありまして、最近イランからとまったからほかの国から新しく入ってくる、これは向こうから申し入れてくるはずもないことだし、どこが交渉してどうなっているのか、そういう疑問を持っておったわけでありますけれども、これは以前からの交渉というか工作の一つの成果としてというお話でございますので、それはそれなりに一つの筋道として理解できるような気がするわけです。  一方、イランの方なのですが、これはまさしく国際的な石油戦略の一環にもなるわけでございますけれども、東欧諸国と交渉して、向こうの方へ買ってもらうというふうな工作をしているようですけれども、これはソビエトを初めとして東欧諸国もすべて石油が欲しいわけですし、ソビエトも、CIA等々の調査によれば、数年たつかたたないかのうちに輸出国から輸入国へ転落をするというようなことの調査も出ているわけですから、この辺の石油戦略の絡みから、イランと東欧との関係というのはどういうふうにごらんになっておられますか。
  283. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先ほど私がお答え申し上げましたのは、日本の立場から見た見解を申し上げたわけでございまして、逆にイランのサイドから見た場合に、全く同じような考え方があるのではないかと思います。現在イランが長期契約といたしましていわゆるDDを契約いたしておりますのは約百三十万バレル・パー・デーくらいございます。それから国内で消費いたします部分が七十万バレルあるいは百万バレル、こういったものが国内へ振り向けられる。そういうことになりますと、イラン全体の生産規模にも関連するわけでございますけれども、できるだけ供給先を多角化したいという考え方があるのではないかと思います。したがいまして、日本あるいはBP、シェル等へ本来売るべき分を削減いたしまして、その分を東欧諸国に振り向けて売ろうとしているという考え方ではなくて、イランイランなりに日本とのパイプを大事にして、新たなる供給先といたしまして、場合によっては東欧圏とのアプローチをしているというふうに解釈をするのが妥当ではないかという気持ちを持っておるわけでございます。
  284. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 もちろん、こういう経済的な問題でもありますから、継続性があることは当然だと思いますが、しかし今回の問題とできるだけ違う他の要素、もしくは以前からの継続的なものとしての御説明を長官はされるわけであります。その方が、これはうがった見方かもしれませんけれども、対イラン関係においては無難な見方であるというか、政治的影響を考えますと確かに無難であることも事実だと思いますが、その辺は私はもっと深刻にわが国としては受けとめて、むしろ向こうへ行くのをできるだけ引きとめて、こちらの方へ長期にわたって安定供給がしてもらえるようにしていくというこれからの対策は十二分に講じていかなければいけないのではないか、そういう心配をなお持つわけでありますが、十分それはお考えになってやっていかれるものだと考えます。  ただ、原則的に、最近の特にOPECを中心として産油国の考え方は、実質的なコストを維持する、またはそれを引き上げていく、名目的な価格だけ上がって、実際はドル安その他で実質的な値打ちが下がっていくということでは困るわけですから、当然そのことを戦術的に考えている、これが特色だと思います。需要が減ずれば減産をして価格の維持と資源の保留を図る、需要がふえてくるとぱっと値上げをしていく、これから常にそういう彼らのやり方との闘いであろう、こう思うわけであります。  これに打ちかっていくといいますか、これに対応していくためには、どうしても脱石油を図っていく以外にない。そう考えますときに、省エネルギーという政策は大変重要な意味があると思います。今年度七%を目標にしているわけですが、長官は常々七%をオーバーする意気込みでとおっしゃっておられるようですけれども、現在の情勢から見れば、災いを転じて福となすといいますか、国民の石油問題に対する認識が大変高まってきて、ある意味では、政府の立場からすれば、国民に対するPRがしやすいというか、協力を求めやすい情勢ができつつあることは事実だと思います。七%達成が可能かどうかということよりも、七%以上の省エネルギーを考える。そしてそのことから、これから先どんなことが起こるかわからないわけですから、危機管理政策というものを確立するための、そこへの無理のない移行、軟着陸、そのことも可能になってくるのではないか。いろいろな意味合いから、省エネルギー政策というものはわが国にとって大変大きな意味があるのではないか、私はこう思うわけでありますが、この辺の見通しと、そして危機管理とまでは言いませんけれども、今日の状況の中で国民に対していかなることを具体的に要望しようとされているのか、また国民の立場からすればどう受けとめるべきなのか、端的にお答えいただければと思います。
  285. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 前段に仰せのございましたOPECの価格形成メカニズムに対しまして、消費国が一致して対策を講ずべきだという御主張は、私も全く同感だと思っております。先般OPECの長期戦略委員会で新しい価格形成メカニズムの議論が行われまして、それが恐らく六月の総会でオーソライズされるのではないかという見通しを持っているわけでございますけれども、まずそういった価格を形成するやり方も大事でございますが、いまのOPECの中の統一価格制への復帰という問題をどうとらまえるかということを考えておく必要があるのではないかと思います。  そこで、そういった問題に対応するための手段といたしまして、御指摘のございました石油代替エネルギーの開発の促進と省エネルギーの強化ということもまさしく同感でございまして、私どもが今国会に石油代替エネルギーの開発導入促進法案を提出させていただているゆえんもそこにあるわけでございます。  それから省エネルギーにつきましては、私どもは五十五年度七%の消費節約を呼びかけているわけでございまして、具体的な項目はそれぞれございますけれども、お話のございましたように私どもはその七%で甘んずることなく、さらに一層の節約をしていただきたい、こういう呼びかけをしておるわけでございますけれども、反面消費者の皆様方非常に賢明な対応をしておられると思います。現に昨年一年間の燃料油の消費実績を見ましても供給計画をある程度下回ったような実績になっております。これは、政府の呼びかけが必ずしも成功したということだけではなくて、消費者の方々が賢明なる対応をされたということも非常に大きな効果があったのではないかと思うわけでございまして、私どもは、政府といたしましてそういった省エネルギーの必要性のPRと申しましょうか、啓蒙、そういったことを引き続きやっていく必要があると思いますけれども、現実にエネルギーを消費されます消費者の方々の実践的な考え方と申しましょうか、身の処し方と申しましょうか、そういったことがより重要なことであるのではないかということでございまして、あるいは価格政策、あるいは量的な物の考え方等々を通じまして省エネルギーに努力をしてまいりたいというふうに考えております。ただ、ここで現在私どもがとっております政策はあくまで協力の呼びかけということでございまして、もうちょっとこれを強化して法律的な措置でやったらどうかというような御意見も中にはございますけれども、そういった法律的な措置をすることが果たしていいのかどうか。もう少し実感として国民の皆様方に省エネルギーの必要性を身をもって感じ取っていただくという政策の方がより大事なのではなかろうかという気持ちで、いまとっております政策を今後とも引き続き強化していくというやり方で取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  286. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 そういたしますと、例の緊急時に発動いたします石油需給適正化法ですとか、国民生活安定緊急措置法なんというものを発動するというような事態は当面ないであろう、また将来についてもまずそういう事態については目下のところ考えられない、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  287. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 石油関係二法の発動と原油の供給確保の問題は非常にリンクした考え方があると思うのです。先ほどもお答えしたところでございますけれども、現段階におきましてはイランの価格交渉が難航しているということもございまして、いかに五十五年度石油の原油の量を確保するかということに最重点を置くべきでなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、そのために必要なことはあらゆる手段を講じてやりたいということでございますが、私どもの基本的な考え方は、石油二法を発動することが現段階におきましては原油の安定供給にむしろ支障が出てくるのではないかという考え方をとっております。と申しますのは、石油と申しますのは国際市況商品でございますから、一定の価格が据え置かれまして、言ってみますと商売上のおもしろみがない。これはちょっと誤解を招く表現でございますけれども、そういったことで適正利潤の確保ができないようなところへ原油を持っていくよりも、そういう価格政策をわりに弾力的に行っているところの方へ石油を持っていった方がいい、こういうような考え方が国際的には通用しがちでございますから、そういった意味で二法の発動が逆に原油の供給に支障を来すおそれがある。こういう判断を現在いたしておりますので、当面二法の発動は考えられない。ただ、これは国民生活を犠牲にするという意味ではなくて、あくまでも供給確保をするための考え方として二法の発動は現在のところ考えていない、こういう意味でございます。
  288. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 先日報道されたのを読んだわけですが、IEAで「「石油消費を抑制するため、一九九〇年代初めまでに石油火力発電所を全廃する」ことを提案してきた。」こういう報道がなされたわけでありますが、これはすでにお聞きになっているのでしょうか。また、このことに対してわが国としては果たしてどういうふうな対応をしなければならぬということをお考えでしょうか。
  289. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 IEAよりもむしろサミットの準備会合がございまして、これはドイツのエンゲルマン・エネルギー総局長が議長になっておるグループの検討会でございますが、その場におきまして、いま先生御指摘のような問題が討議されたわけでございます。これは基本的には電気のような二次エネルギーにつきましては余りクリーンなエネルギーを使わない方がいいのではないかという考え方から、たとえば石油でございますとかLNGの使用をできるだけ抑制していこう、こういう考え方が出てきたわけでございます。その前にIEAの一応の合意で、新たに火力発電所をつくる場合には原則として石油火力の新設を禁止する、こういう国際的な合意がございまして、日本は現在その線に従って対処しているわけでございます。したがいまして、新たに火力発電所をつくる場合は当然のことながら石油は使わないということでございますけれども、現在日本が考えておりますのは、相当前、五年とか十年ぐらい前から火力発電所についての建設を準備中でございまして、その分がしばらくの間は石油に依存せざるを得ないということでございます。その分も含めまして、あるいは現在稼働いたしております石油火力発電所を含めましてすべて石炭へ、あるいはそれ以外のものへも切りかえていこうという動きが現実に出てまいっております。特にこれを強く主張いたしておりますのはドイツでございます。ドイツは火力発電所におきます石油の依存率が一〇%以下でございます。日本は御承知のとおり五七%ということでございますので、大分客観情勢が違っております。したがって、ドイツがそういう主張をするのはよくわかるわけでございますけれども、日本はなかなかそうもいかないのではないかという問題はございます。さはさりながら、そういった方向へだんだんと国際的な世論が進んでいくということも当然考えておかなくちゃならぬということでございますので、既存の火力発電所の石炭への転換ということも含めまして鋭意政策努力を続けてまいりたい、こういうふうに考えております。
  290. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私はこの問題はIEAが提案したからとかサミットでどうかというより以上に、やはりわが国の置かれた現状を考えれば、率先してこの脱石油への努力というものはなお一層進めていかなければいけない、こう思いますし、とりわけ私どもはそういう意味からも、たとえば原発の促進等々もあえて勇気を持って今日まで主張もしてきたわけであります。そういう意味でなお一層の御努力をお願いしたいし、そしてまたそのことが将来にわたって国民に安定したエネルギーを供給することにつながるのではないだろうか、こう思うわけでございます。これにつきましては以上で終わりたいと思います。  大臣に御答弁をお聞きしたいのですが、ちょっと時間がございませんのと、ときどき聞き取りにくくなりますので、そのまま先に進ませていたがきます。  それでは、こういうエネルギーの多様化そして脱石油ということを考えますときに、たとえば電力に使う石油というのが約二〇%、自動車が使っている石油というのが石油消費量全体の一七%ですか、ということになっているわけですね。こうなりますと自動車の問題というのは大変重大な関心を持たざるを得ないのではないか、私はこういう気がするわけであります。私も実は過年、例の電気自動車の問題を予算委員会で取り上げたことがあるのですけれども、先般環境庁長官がやはりこの電気自動車のことを改めていろいろ活用することについての検討を事務当局に指示した、こういう報道もなされておりますけれども、このような問題について、大変いいことでもございますし、ぜひとも大いに進めていただきたい、私はこう思うわけであります。環境庁としての取り組み、どのような決意とそして作業が進められておりますか、お聞きをしたいと思います。  なお、石油、またエネルギーの問題、以上で終わりたいと思いますので、長官初め御担当の方、結構でございます。
  291. 加藤三郎

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  先生いま取り上げていただきました問題は交通公害問題に関する懇話会というところから出た問題でございますが、この懇話会と申しますのは、私ども環境庁長官が交通公害行政及びこれをめぐる問題につきまして学識経験豊かな五人の先生方をお招きして御意見を拝聴したものでございまして、多岐にわたる有益な御発言をいただきました。その懇話会におきます御提言の一つに、ただいま先生がお取り上げになりました電気自動車の問題がございまして、この懇話会では、電気自動車の開発及び促進というものの御指摘があったわけでございます。  先生十分に御案内のように、電気自動車はそれ自身排出ガスもございませんし騒音もかなり低いものでございます。技術的にはたとえば充電に時間がかかるとかあるいは走行距離が少ないとか、そういった技術開発等の余地はございますけれども、少なくとも道路周辺の交通公害の防止の一助にはなるものではないかという観点からの御意見でございました。このような御提言を受けまして、環境庁長官から私ども事務当局に対しまして、電気自動車の開発の可能性なり利用促進の方途、さらにはそれらにかかわります諸問題につきまして検討会を設けて早急に勉強をするように指示があったわけでございまして、ただいま私ども、その検討会の運営、人選等につきまして鋭意準備を進めているところでございます。
  292. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 今度は通産省の方にお聞きいたしますが、たとえばアメリカの方では一九七六年に電気自動車研究開発普及法というふうなものを制定して、そしてまた五カ年計画で約一億六千万ドル、大変大きな費用をかけてその研究開発、そして普及、こういうことをやろうとしているわけであります。日本の場合にもかなり費用をおかけになってこられたことはよく承知をいたしておりますが、大体昭和四十七年、四十八年ぐらいをピークにいたしまして、その後予算措置的なものについてはほとんどなくなってきているわけでありますが、この電気自動車の普及、研究開発についてどのようにお考えになり、そしてまた進めていこうとされておられますか、お聞きしたいと思います。
  293. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 電気自動車の普及、開発につきましては、先生ただいま御指摘のように、私どもといたしましても、公害対策上先ほどお話がございましたように非常に効果があるという面のほかに、エネルギー対策上も必ずしも石油系の燃料に頼らずに済むということもございますし、燃料効率もいいという面もございますので、できるだけこれの普及、開発を図りたいという立場でございます。そういった意味におきまして、お話もございましたけれども、四十六年から五十二年まで五十七億円ほどかけまして工業技術院におきまして大型プロジェクトの一環としまして電気自動車の技術開発というものをやってまいったわけでございます。その結果、現時点におきましては電気自動車の技術面ではわが国が世界の最高水準を行くのではないかということが言われている状況でございますが、その技術水準の上に立ちましてさらにこの普及も図っていく必要があるということでございます。  これの問題点といたしましては、価格が高くなるというあたりのことが非常にネックになるわけでございますが、現在、できるだけ皆さんに使っていただくという意味合いにおきまして、財団法人日本電動車両協会というところを通じましてこの試用制度と申しますか、リース制度というものを実行いたしております。台数としましてはそれほど多くございませんが、昨年八十台、ことしは百台というような形でかなり安い価格で使っていただけるようなシステムも設けているということもございますし、さらにこれからの技術開発の問題といたしまして、標準的な自動車の技術開発といったような面につきましても現在、一般会計の中で研究開発を進めておるという状況にあるわけでございまして、そういった形でこれからも普及、開発を図ってまいりたい、かように考えております。
  294. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 その普及のあり方、やり方なんですけれども、いろいろなことが要素として考えられると思うわけです。一つはその普及可能分野への利用促進ということで、たとえば環境庁から大いに活用していこう、庁内のものはひとつ大いに電気自動車を使っていこうという考え方、また、たびたび指摘をされておりますように、郵政省の御協力をいただいて郵便の配達だとか、また運輸省に御協力をいただく面も当然あるでしょうけれども、そういうところへでき得る限り協力をいただくようなかっこう、形で、まず環境庁から始めるにいたしましても大いにその利用促進を図っていく、そのことが、まとまって車両をつくることによってコストの引き下げが図れるわけですから、その具体的な行為といいますか行動が特に必要だと私は思います。  それからもう一つは税制面の問題です。すでに税制上の優遇措置をとられておりますけれども、この際、時限立法ではありませんけれども、時限的な措置として、−たとえばある程度の普及ができ、そしてコストが引き下げられる、また国民の認識が高まってくる、こういう時期に至るまで、たとえばいままだ減税措置がとられていない重量税について考えるとか、物品税は一般車両の二分の一ということですが、これについてはいっそ思い切って四分の一にするとか、できれば全免にするとか、取得税、自動車税等々いろいろありますが、これらのことについて、むしろ通産省としてその必要性というものについてどうお考えで、かつその可能性というものは大蔵省の立場からすればとんでもないことなのか、検討の余地があることなのか、ひとつ前向きな姿勢で御答弁をいただければ、こう思うわけであります。  そのほかにいろいろな優遇措置、これはあくまでも電気自動車がいいものでありそれを普及させるという前提に立ってのことですけれども、たとえば購入に対する資金利子等の補給、償却期間の優遇、電気料の特別措置、有料道路の割引、保険類の料金の割引等々、思いつくアイデアとして幾つかのそういう優遇措置的なものが考えられると思いますが、これ以外に、たとえば環境庁でもいろいろ御検討なさるようですが、通産省も含めましていかにしたらその普及が図れるか、このことについてもう少し具体的にお答えいただけないだろうかと思います。
  295. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 ただいまお話しのございました優遇措置の特に税制の面でございますが、御承知のように物品税、これは二分の一になっておりますし、自動車取得税、自動車税、軽自動車税、こういった税につきましては軽減措置が図られておるわけでございます。  ただし、これは今年度いっぱいということになっておりますので、ひとっことしの段階におきましていろいろな条件、必要性等も踏まえまして、関係方面とも十分御相談しながら対応策を考えてまいりたい、かように存ずるわけでございます。  そのほか、いまいろいろな点を御指摘いただきましたけれども、私どもとしても十分研究させていただきたいというふうに思います。
  296. 加藤三郎

    ○加藤説明員 先生からの御質問は、環境庁が公用車として電気自動車を買ったらどうだというような御趣旨だろうというように私、解しますけれども、先ほど申しましたようにこの問題、先ごろの懇話会から環境庁と提示されまして、長官から事務当局で検討せよという指示をつい最近受けたわけでございます。それからまた、率直に申しまして、現在の電気自動車の性能を前提といたしますと、中央省庁で採用いたしますにはまだ幾つかの問題もあろうかというふうに考えられるわけでございます。しかしながら環境庁といたしましては、先ほど申しましたような電気自動車が持っております低公害性というものに注目いたしまして、これが道路交通公害の解決の一助になるという観点から、何らかの形で環境庁に電気自動車を導入することを含めまして、今後の利用促進の一つの課題といたしまして前向きに検討してまいりたいというふうに考えたわけでございます。
  297. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 大蔵省から御答弁いただく前に、先ほど栗原局長から御答弁あったのですが、税制の面、確かに今年度いっぱいと一応なっているわけですね。しかしこれを今日の情勢から考えれば、やはりどうしても延長していただかないとどうにもならぬと思いますし、その延長の際に、ただ機械的に現状そのまま延長するということではなくて、先ほど申し上げたように、前向きに、より一層の措置というものを検討し、進めていくという通産省サイドとしての御見解はいかがか、こうお聞きをしたいわけであります。
  298. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 このたびの期限切れの機会に当たりまして、やはり電気自動車の必要性あるいは電気自動車の税制にかかわりまして減税についての理由、根拠が税体系の方からもいろいろあると思います。そういった点の諸条件等も私ども十分勉強させていただきまして、御指摘のような方向で検討、研究させていただきたいというふうに思います。
  299. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 大蔵省いかがですか。
  300. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、ただいま今年度いっぱいの措置といたしまして、電気自動車に関する物品税を二分の一に軽減するという措置が講じられております。この期限が参りました後これをどうするかということにつきましては、関係省からの御要望のあるのを待ちまして検討することになろうかと存じます。  その際の検討の方向でございますが、あらかじめ中野先生から前向きにという御発言がありましたので、なかなかお答え申しにくいわけでありますけれども、税制当局といたしましては、あくまでも物品税は奢侈品とか、あるいはある程度高級な高価な便益品、これに担税力を認めて課税をするというものでございます。したがいまして、こういったものを買える人と買えない人との間の担税力の差、それを税制にも反映するという基本精神からできているものであります。したがいましてその税制の枠内で、たとえば公害の少ない、あるいはエネルギー消費の少ない電気自動車の普及を図るために特定の特別な措置をとる、これは考えられるのでありますけれども、あくまでもそういった物品税の基本的な精神が残されている範囲内での措置ということにとどまらざるを得ないのではないかと思われます。そういう意味で私は、現在とられております二分の一の軽減というものをさらに強くするということについては、ほかの物品に対する課税、あるいはくどくなりますが物品税の課税の基本精神というものからしてかなり慎重に検討しなければいけないのではないかと考えておる次第でございます。
  301. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 重量税はいかがですか。
  302. 滝島義光

    ○滝島説明員 重量税につきましても、これは非常に物理的といいましょうか、自動車を走行させることによって電気自動車であれあるいはガソリン自動車であれ、道路を損傷させる、建設、維持あるいは修理にお金がかかる、そのためのコストの二部を重量税という形でいただいているということでございますから、やはりこれにつきまして特別の軽減措置を設けることについては慎重な検討が必要であるというふうな感じがいたします。  私個人といたしましてはといいますか、前向きのお答えを申し上げたいのはやまやまでありますけれども、あくまでも税には税の原理がございますので、どうか御理解を賜りたいと存じます。
  303. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 大変大蔵省らしいお答えをいただきました。ありがとうございました。  しかしながら、結局これは大蔵省の理解と同時にやはり通産当局の熱意にもかかってくるか、このように思うわけでありまして、ひとつ大いに期待をし、せっかくの御努力をお願いしたいと思います。  なお、大臣に大変失礼いたしましたが、総論的にエネルギーの問題というのはいろいろな工夫をこらしながら、そして多様化したエネルギーを有効に、かつ、大切に活用していく必要があるだろうと思います。  私は、今度のイランの問題にいたしましても、イラン革命の際に石油がストップした、そしてその際に国民がどう対処するべきか、石油業界がいかに対処すべきか、政府がどうあるべきか、いろいろなことをやはり大変危険なことではありましたけれども学んだことが、今回国民が比較的冷静に受けとめていることにつながっていると思います。そういう意味では、やはりこういう不幸な出来事を将来に向かって貴重な教訓として生かしていく、そのことがとても大切なことではないだろうか。そういう意味で、省エネルギーと同時にエネルギーの多様化、このようなことについてなお一層御努力をいただかなければなりませんけれども、その基本的な姿勢について大臣からお聞かせをいただきたいと思います。
  304. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 あつものにこりると申しますか、少し石油などの情勢が変わりますと考え方がすぐ弛緩するのが、何も日本国民ばかりでなくて世界の傾向かとも存じますけれども、しかし、それにいたしましてもやはりお話しのように、省エネルギーとかあるいは代替エネルギーの開発といったようなものは日本として生き死にに関する基本問題でございますので、そういう意味に関しましては、議会の中あるいは各党間力を合わせまして、そして合意点を見つけて、どしどし政策を遂行していくという姿が一番望ましいと思います。お話しのとおりだと思います。そういうことで、いまの問題等よく参考にと申しますか、考えまして、これを将来の施策のために力強い転機にして前進すべきではなかろうかという感じがいたします。
  305. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 あわせて電気自動車のことも大臣御存じのことでございますから、ひとつ大臣からも御努力をお願いしたいと思いますし、また環境庁を含めましてこれらの促進策等々を、また成案ができましたらひとつ折に触れまして御提供いただければありがたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  最後に、時間がほとんどなくなってきましたが、中小企事業団のことについてお尋ねをいたします。  この会計検査院決算検査報告でも、中小企業振興事業団の措置につきまして、具体的に事例を挙げてその措置の不適正な部分について指摘がなされているわけであります。具体的に一つ一つ読み上げることはいたしませんけれども、私は大変これらの問題は重大なことだと思うわけであります。その事業の内容そのものは大変大切です。とりわけ石油の問題を中心にいたしまして、最近の日本の経済産業構造の変化、そして景気、不況、このようなことを考えますときに、中小企業対策というものは大変大切でありますし、そのことを私どもも強く望んでいるわけでありますが、だからといって少なくともその適用その他について甘さがあったり、甘えがあったりしてはならないことは言うまでもないと思います。大切な政府資金すなわち国民のお金を預かり、そしてそれを使うわけであります。限られたお金であります。困った中小企業がたくさん存在をしているときに、それを有効にそして幅広く活用することはきわめて重大であります。言うならば、不適正に使われた部分があって、そしてそれによって本来活用されるべきところにそれが運用されなかったとするならば、これも私どもは大変注意をしなければならぬことだと思うわけでございます。  ちなみに具体的な名前を出して失礼ですけれども、昭和五十三年十一月に、金沢の一村産業に政府支援ということで融資の返済についてのいわゆる償却猶予がなされたわけでありますが、これなどもいわゆる一村産業そのものに対しては、五つの会社そして八つの金融機関等が政府の決定を受けて金利、リベートの軽減措置、そして累積債務の分割返還の措置、第二会社の設立、いろいろなことがなされたわけでありますけれども、しかしながら特に繊維に関する産業等々は大変厳しい状態にあることは、なお同じことだと思います。加えまして、この一村産業に関連をする五つの関連会社があるわけでありますが、ところがこれにつきましては、五十四年、五十五年、五十六年、この三年間の返済額を五十七年度以降の返済額に上積みをするという形の方法しかとられていないわけであります。果たしてこういうことなどは本当に効果のあるものなのだろうか。中途半端な対策を講ずれば、せっかく持ち出したり猶予をしたりしたことが何の意味もなくて、それは結局政府資金の回収にも役立たない。それがまた悪質なこげつきになってしまうということにもなってしまう。やるならば徹底してやる、やらなければやらないでそれなりの理由がきちんと立てられるということでなければならぬ、このように思うわけであります。  なお、もうまとめて申し上げますが、その翌年五十四年の十月五日の朝日新聞に、事業団の業務融資部門で多数の償還不良による不良債権が発生しているということでの指摘が行われました。これなどを見ますと、約三百件その適用がなされているわけですけれども、実に五十一件が閉鎖または形態変更をしている。その率たるやきわめて高い状態にあるわけであります。こういう施策ですから、リスクが伴うこと、危険性があること、当然のことでありますけれども、やはり事前の十分な調査等的確な対応というものがなされなければ、結局は国民の財産をむだに使ってしまうということになるわけですし、その最も行き着いたところ、それが結局五十四年七月に発覚をいたしました事業団の職員が融資審査に手心を加えて、便宜を図って、収賄で逮捕されるというふうなことにもつながってきているわけであります。今回、事業団は中小企事業団として二つの事業団が合併をして新たに発足をする段取りになっているわけでありますけれども、いずれにいたしましても、こういう姿勢が改善されなければ、何をやったって行政改革にもならないし、十分な効果も上がらないということになるのではないか、このように思うわけでありますが、どのような御見解をお持ちでしょうか、お聞きしたいと思います。
  306. 左近友三郎

    ○左近政府委員 ただいまの御指摘まことにごもっともでございまして、われわれもそのような方向で十分考えてまいりたいと考えております。  会計検査院からも御指摘がありました、また新聞でもそういう記事が出ておりましたが、中小企業対策というのは中小企業の実情に応じてきめ細かい配慮をすることはもちろん必要ではございますが、その対策に使用する金というのは国民の税金からいただいたお金でございますから、これが最も効率的に運用されるということがまた一番必要なことでございます。そういう点におきまして、われわれも絶えず事業団に対しても指導しておるわけでございますけれども、外部からの御指摘もございます。われわれとしても、常に先生のおっしゃったような精神でもって今後的確な運営をやっていくということを実現をしてまいりたいというように考えております。  また、一村産業の関連のお話がございましたが、これにつきましては、再建のために民間の金融機関もいろいろな支援措置をいたしますし、それに応じて高度化資金についても支援措置でいま御指摘のようなことを決めたわけでございます。そして、現在の事態では決めた措置で大体乗り切れることになっております。しかし、先ほど申しましたように、この措置は、お話がありましたように、当面の元本の償還を将来に繰り延べたということでございます。それでございますので、そういう将来の時期におきまして、経営の実態に応じたいろいろな検討もしてまいりたいというように考えております。  いろいろ御指摘がございましたが、基本的には、中小企業対策の実行に当たっております振興事業団の運営も御指摘のありましたように的確、厳正にやっていく、そしてまた、なるべく広い範囲の方に資金を有効に利用していただくという精神で今後も努めてまいりたいというふうに考えております。
  307. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 時間が参りましたので終わりますが、大変恐縮ですが、最後に一問だけお尋ねさせていただきたいと思います。  中小企業も大変国際化が激しくなっているわけであります。そこで現在大蔵省の方で金融制度調査会の方に諮って、信用金庫法の改正について検討されているのではないかと思うわけでありますが、外為業務を信用金庫にもやらせよう、こういうことであります。これは輸出等をやっている中小企業者にとっては本当に待ち望まれている施策でもあろうと思うわけでありますが、その後いかがなっておりますか。また、今後の見通しを含めてお聞かせいただければと思います。
  308. 小田原定

    ○小田原説明員 金融制度調査会は昨年の十月から中小企業専門機関の相互銀行、信用金庫、信用組合それと労働金庫の問題を取り上げまして、検討を進めてまいっております。今日まで総会を六回ほど開きまして、その審議の過程で中小企業金融それから中小企業金融の専門機関の現状等について検討いたしておりまして、さらに検討を深めるために中小企業金融機関のあり方及びその具体的な問題を検討するために特別委員会をつくりまして、昨日第一回の特別委員会を開会いたしました。特別委員会といたしましては、今後月一、二回程度のスピードで検討を進めていこうかというふうに、事務当局としては考えております。  ただいま御質問の信用金庫の外為業務の件でございますが、信用金庫業界から、かねて今回の金融制度調査会の審議に当たって幾つかの要望が出ております。その中の大きな要望の一つとして、この外為業務を信用金庫もできるようにしてほしいということになっておりまして、第五回の総会で信用金庫業界の要望も御披露いたしまして、御検討いただいております。金融制度調査会の審議はでき得れば年内に御答申をいただけるようにということを事務当局としては期待しております。この外為業務につきましても、ただいま先生もおっしゃいましたとおり、信用金庫の会員である中小企業者輸出入の取引が拡大してまいっておりますので、答申ではそういう方向をいただけるよう期待しておりまして、その場合には信用金庫法の改正を次の通常国会には出せるようにしていただきたいと思っておる次第でございます。
  309. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 大変厳しい経済状態であります。石油、そしてとりわけストレートに影響を受ける中小企業問題、これからもなお一層関係の皆さん方の御努力を要望いたしまして終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  310. 高田富之

    高田委員長 次回は、来る五月七日水曜日午前十時理事会、午後二時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十三分散会