○庄司
委員 ちょうど津波の予報を出す人が書いた手記があるのですよ。「一九七八年六月一二日一七時〇六分、仙台で震度二の地震を観測した。」その後のいわゆる判定を下す人の行動が書いてあるのですが、これをよく聞いていただきたいのですよ。十七時六分の前震、これで「震源地、震源の深さ、津波の有無、各地の震度などを地震情報として発表し、NHKを初め放送・報道機関、直庁、警察、消防などの防災機関をふくめると二〇ないし二三カ所へ連絡する。津波のおそれある場合は、地震が発生してから二〇分以内」これは
業務規定にありますね。「以内に津波予報を発表することが義務づけられている。」途中省略しますけれども、この仙台管区の建物は「戦後の
業務増大から何度かにわたる庁舎増築で、地上・地震・通信各現業室は別棟となり、」そのとおりなんです。「それぞれ一五〇から三〇〇メートル離れてしまい、地震・津波の緊急
作業をするためにはきわめて不便な
状態におかれてしまった。地震検測のために地上観測当番が地震計室へ走り、」これは協力ですね。「津波当番は情報、警報、管内への指示報を発表あるいは指示するため通信現業室へ走る」といった
状態で、流れが逆になるのです。つまり地震計をながめて判定する人が、二十分以内に津波の警報やなんか発表するため、逆な方向へ走り出して通信室へ行かなければならない、あるいは判定室へ行かなければならない。判定室が非常に離れている、こういう
状況です。「津波当番は情報、警報、管内への指示報を発表あるいは指示するため通信現業室へ走るといった現状となり、二十分という時間制約のなかでやる
作業にとっては
支障をきたす原因ともなりかねない。」ところが六分の前震で、
作業を進めるためいろいろやっていたわけですね。「津波当番と地震担当者一名とが、通信現業室へ移動した直後一七時一四分の地震が発生した。」そこで「一七時〇六分の地震にかんする
作業を中止し、一四分の地震について
作業を始めた。」この津波担当の人はそのときは通信室にいたわけですね。そこで十四分の本震、これは地震記録を見なければならないのですから、地震計室へ飛んで返した。走って一分半の
距離だったというのですね。「予報現業室入口にあった戸棚が横転しており、飛び越えて走った。レーダー塔と事務室とのあいだの水道管が破損し、天井から水が滝のように流れ落ちていた。地震計室では地震担当者一名と地上当番者二名がいて記録の読みとりをしており、飛び込むと同時に「地震計振り切れ、初動東、ピーエス一二秒」とデータを大きな声で連絡してくれた。数値を確認、津波判定室へとって返した。」
この人はこうも言っているのです。「十七時〇六分の地震と同じ宮城県沖と推定した。沿岸から近いところで発生しているので、十数分で津波が来そうであり、津波警報を急がねばと
作業をすすめた。一七時二一分「ツナミ」の警報を発表した。つぎの
作業はこれを各機関へ伝達することで、最も人手を必要とする
作業である。地震で停電となり、送画装置は使えなくなった。一般加入電話も話中音が入るだけで使えず、専用電話による各機関個々の伝達となった。」「一七時すぎから始まった一連の
作業が一段落したのは翌朝三時であった。」「津波警報の発表
作業は、津波当番一名だけでは不可能であり、応援者をどうするかに努力している。気象台には夜間でも予報課をはじめ、観測・通信・高層各課の当番者十数名がそれぞれの担当
業務をおこなっており、」これは長官おっしゃったとおり。ただ、「地震発生時の緊急時には各課も応援する体制をつくっている。」ここもおっしゃるとおりなんですね。「しかし大地震が発生すると、予想されない
事態が発生したり、台風・洪水予報などの緊急
事態と併行する場合には、それぞれの担当
業務の遂行が優先してしまうため、応援を確保することがむずかしい問題となる。」その日はちょうど日勤者と夜勤者の交代時間だったために十七名確保できた、こうは言っていますけれどもね。だから、いつでもこういう人員を確保することは困難なんだ、こう言っているのですよ。
私は何も東北、北海道だけが地震の巣だとは申し上げませんけれども、東北の三陸沿岸というのはリアス式海岸で一番津波の発生率の高い構造です。それから北海道だって同じような
個所があって、十勝沖の地震で津波で大分やられました。こういう点で、夜勤者を一人にしておいて、そういう体制にしておいて、もしこの夜勤者が何らか体の調子が悪い、あるいは下痢、腹痛をなすってトイレにいらしたときにベルが鳴ったらどうするんだ、これは非常に過酷な問題じゃないかと私は思うのです。その辺や
はり要員の確保の問題は、確かに行管がいろいろ言うだろうとは思いますけれども、どうしても必要なものは確保しておいていただいてやってもらわないと。津波の被害でどれだけ死んでいるか。明治二十九年の三陸の津波から三万二、三千人死んでいますよ。それから家屋の流失もあります。船の損害もあります。こういう損害の総体を金に換算したら一体何ぼの損害なんだ。これをや
はり未然に防止するために人件費はいろいろかかるだろうとは思いますけれども、この被害による損害と国が人件費を出す
経費と比べてみた場合は、はるかに
効率的なことじゃないか。だから、行政改革に当たっても、定員削減、定員削減、これはむだなところはいいですけれども、必要なところは確保していく、私はこの点が大事だと思うのです。
そういう点で、私は、
気象庁長官だけの判断でも大変だろうと思いますから、
運輸大臣、こういう
実態に照らして、地震、津波の観測なり判定
作業、こういうものに部下の一人や二人定員配置をふやすということは、国家的見地から見て非常にメリットのあることだと思うのですが、大臣の所感をひとつお伺いしておきます。