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1980-01-22 第91回国会 衆議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年一月二十二日(火曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 高田 富之君    理事 井原 岸高君 理事 津島 雄二君    理事 原田昇左右君 理事 森下 元晴君    理事 井上 一成君 理事 新村 勝雄君    理事 林  孝矩君 理事 庄司 幸助君    理事 永末 英一君       天野 光晴君    石田 博英君       小里 貞利君    羽田  孜君       小川 国彦君    藤田 高敏君       春田 重昭君    岩佐 恵美君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久保田円次君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 原   徹君         厚生省環境衛生         局長      榊  孝悌君         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房経理課長   渡邊 信作君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         食糧庁長官   松本 作衛君         食糧庁次長   小野 重和君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君  委員外出席者         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         大蔵省主計局主         計企画官    藤原 和人君         厚生省薬務局審         議官      山田 幸孝君         農林水産省農蚕         園芸局繭糸課長 松岡  将君         会計検査院事務         総局第四局長  岡峯佐一郎君         会計検査院事務         総局第五局長  小野光次郎君         農林漁業金融公         庫総裁     中野 和仁君         参  考  人         (日本中央競馬         会理事長)   武田 誠三君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 一月二十二日  辞任         補欠選任   上田  哲君     小川 国彦君 同日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     上田  哲君     ————————————— 十二月二十五日  昭和五十三年度一般会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十三年度特別会計予備費使  用総調書及び各省庁所管使用調  書(その2)  昭和五十三年度特別会計予算総則  第十一条に基づく経費増額調書  及び各省庁所管経費増額調書  (承諾を求  (その2)           めるの件)  昭和五十三年度一般会計国庫債務負担行為総調  書(その2) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十二年度政府関係機関決算書  昭和五十二年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十二年度国有財産無償貸付状況計算書  (農林省所管農林漁業金融公庫)      ————◇—————
  2. 高田富之

    高田委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、旧農林省所管及び農林漁業金融公庫について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本中央競馬会理事長武田誠三君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高田富之

    高田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 高田富之

  5. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 昭和五十二年度の農林省決算につきまして、大要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入につきましては、収納済歳入額は一千五百八十八億八千三百三十万円余でありまして、その主なものは日本中央競馬会法に基づく納付金であります。  次に、一般会計歳出につきましては、支出済歳出額は二兆八千六十八億二千五百二十七万円余でありまして、この経費の主なものは、国民食糧安定的供給確保といたしまして八千三百三億三千七百十万円余、農業構造改善地域農業振興といたしまして一千百六億二千九百二十二万円余、農産物の価格の安定と農業所得確保といたしまして八千百四億三千二百九十四万円余、農山漁村の福祉の向上といたしまして五百四十一億四百五十七万円余、食品流通加工近代化消費者対策充実等といたしまして三百八十億三千六百四十四万円余、農業技術の開発と普及といたしまして七百五十八億四千九百四十万円余、農林金融の拡充といたしまして八百六十億三千四百十五万円余、農業団体整備といたしまして二百十三億七千七百五十七万円余、森林林業施策充実といたしまして二千三百十八億二千九百六十五万円余、水産業振興といたしまして一千六百五十二億八千五百三十八万円余、その他災害対策等重要施策といたしまして二千七百六億九千四百九十二万円余の諸施策実施支出したものであります。  続いて、各特別会計につきまして申し上げます。  まず、歳入につきましては、収納済歳入額食糧管理特別会計勘定合計において八兆三千八百二十六億三千二百八十八万円余、国有林野事業特別会計勘定合計において四千七百四十二億六千四百九十六万円余、農業共済保険特別会計勘定合計において七百五十六億五千百四十九万円余、漁船保険及漁業共済保険特別会計勘定合計並びに森林保険自作農創設特別措置及び特定土地改良工事の各特別会計の総合計において一千六百六十八億四千五百七十五万円余であります。  次に、歳出につきましては、支出済歳出額食糧管理特別会計勘定合計において八兆三千七百七十二億一千十五万円余、国有林野事業特別会計勘定合計において四千七百二十七億一千八百三十六万円余、農業共済保険特別会計勘定合計において四百六十四億九千七百八十八万円余、漁船保険及漁業共済保険特別会計勘定合計並びに森林保険自作農創設特別措置及び特定土地改良工事の各特別会計の総合計において一千三百七億三千七百七十一万円余であります。  これらの事業概要につきましては、お手元にお配りいたしました昭和五十二年度農林省決算概要説明によって御承知を願いたいと存じます。  これらの事業の執行に当たりましては、いやしくも不当な支出や非難されるべきことのないよう、常に経理等の適正な運用について鋭意努力をしてまいりましたが、昭和五十二年度決算検査報告におきまして不当事項等として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。指摘を受けた事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後とも指導監督を一層徹底いたしまして、事業実施適正化に努める所存であります。  何とぞよろしく御審議のほどをお願いを申し上げます。
  6. 高田富之

  7. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 昭和五十二年度農林水産省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告掲記いたしましたものは、不当事項三十件、意見を表示しまたは処置を要求した事項三件及び特に掲記を要すると認めた事項一件であります。  まず、不当事項について説明いたします。  検査報告番号一九号は、旭川営林局ほか七営林局において、造林等各種事業用及び庁用のシート、安全ロープ等の不当な価格での売り込みに対して、適切な処置を講じないままその購入を繰り返していたため、購入価額市販価格等に比べて著しく高価になっていると認められるものであります。  検査報告番号二〇号から三四号までの十五件は、公共事業関係補助事業実施及び経理が不当と認められるものであります。  これらは、土地改良、農道、林道の整備及び災害復旧等公共事業関係補助事業施行するに当たりまして、工事設計または工事費積算が適切でなかったり、工事の施工が設計と相違していたり、補助目的を達していなかったりしていたものであります。  検査報告番号三五号から四八号までの十四件は、公共事業関係を除く補助事業実施及び経理が不当と認められるもので、事業実施するに当たりまして、計画が適切でなかったり、補助対象とは認められないものを含めていたり、補助目的を達していなかったりなどしていたものであります。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  その一は、管水路等建設に伴う地上権設定について処置を要求したものであります。  東北農政局ほか六農政局直轄事業として、また、北海道ほか十三県が補助事業として、昭和五十一、五十二両年度中に実施しました土地改良事業等に伴う管水路等及びトンネル設置個所設定した地上権設定状況について検査いたしましたところ、農林水産省では、一応、設定幅施設の最大幅に両側〇・五メートルから一メートルを加えたものを標準とすることとして指導していますが、実際の取り扱いを見ますと、各農政局では、それぞれに設定基準等を定めて〇・三メートルから一メートルとし、一方、各道県では、農政局設定基準等を準用したり、独自の取扱基準を設けたりなどしている状況でありました。  しかし、土地改良事業等に伴う管水路等及びトンネル農地法等によって農地転用等が制約されている農業振興地域内に主として設置されているのでありますから、地上権施設を保全するのに必要な最小限の範囲内で設定すべきであると認められますし、また、同種の地下埋設物等について地上権設定事例が多い他団体の例を見ましても、設定幅については、管水路等基礎幅で、トンネル施設の外側から左右それぞれ〇・五メートルを加えた幅で設定している状況でありますので、土地改良事業等工事におきましても、この程度の範囲設定すれば施設保全目的確保されるものと認められます。これにより地上権設定したとすればそれに支払われた対価支払い額を相当程度節減できたと認められます。  つきましては、管水路等建設に伴う地上権設定は今後も引き続いて多数見込まれますので、農林水産省において地上権設定範囲を検討して統一した基準整備するとともに、都道府県に対しましても、指導監督を行いまして、工事費または国庫補助金の節減を図る要があると認められるものであります。  その二は、農業近代化資金利子補給補助金経理について処置を要求したものであります。  農林水産省では、農業近代化資金助成法に基づいて、農業協同組合等融資機関農業者等に対しまして、資本装備高度化等に役立てるため貸し付け農業近代化資金につきまして、その融通を円滑にするため、都道府県融資機関との契約によって利子補給を行うのに要する経費の二分の一相当額を、農業近代化資金利子補給補助金として都道府県交付しております。  この補助金交付対象となりました農業近代化資金貸付金支出状況について調査いたしましたところ、この資金貸し付けが実行されてから借り受け者により最初の払い出しが行われるまで相当期間が経過しているものが非常に多く見受けられる状況でありました。  しかし、農業近代化資金に対して都道府県が行う利子補給に対する国の助成は、この資金融通を円滑にするために行われるものでありますから、ただいま申し上げましたように、貸し付けられた後長期にわたって滞留しているものに対して国の助成が行われているのは、国庫補助金支出効率が上がっていないものでありまして、適切とは認められないものであります。  したがいまして、農林水産省においては、農業近代化資金利子補給に対する助成を今後も引き続き行うのでありますから、道県に対しまして適期貸し付けができるよう所要措置を講じさせるとともに、融資機関に対して借り受け者の実際の資金所要時期を的確に把握させるなどの指導を行わせて、適期資金貸し付けが行われるようにし、ひいては利子補給補助金効率性確保する必要があると認められるものであります。  その三は、水田買い入れ事業実施及び一時貸し付け水田に係る水田総合利用奨励補助金交付についてであります。  農林水産省では米の生産調整及び稲作転換対策の推進を図ることなどを目的として農地保有合理化法人水田買い入れ事業実施させまして、水田の畑への転換、または、水稲以外の作物を栽培する農業者等買い入れ水田を売り渡すことにしておりますが、国はこの事業に対する助成として、農地保有合理化法人水田買い入れに要する資金借入金によって調達した場合その利子相当額の全額を補助しており、その額も相当多額なものとなっております。  そして、農地保有合理化法人買い入れ保有中の水田は、農業者等に売り渡すまでの間は、水稲以外の作物を栽培することが確実な農業者に原則として無償で一時貸し付け、残余は休耕地として管理することになっています。  一方、農林水産省農業者が米の生産調整に協力して水田転作等実施した場合、水田総合利用奨励補助金交付していますが、農地保有合理化法人の一時貸し付け中の水田転作実施した場合であってもこれを交付対象としてこの奨励補助金交付することにしております。  本院で農地保有合理化法人水田買い入れ事業実施状況について検査いたしましたところ、次のような事態が見受けられました。  その第一点は、農地保有合理化法人買い入れ水田売り渡し管理についてでありますが、買い入れ水田売り渡しが進捗せず長期間同法人において保有する結果となっているばかりでなく、中には無断で水稲が栽培されていたり、一時貸し付け中の水田水稲が栽培されていたり、また、売り渡し後の水田水稲が栽培されていたりなどしていまして、買い入れ事業目的が十分達成されておらず、買い入れ後の管理につきましても適切ではない事例が多く見受けられまして、ひいては、国が利子助成を行っている制度の趣旨に沿わない結果になっていると認められるものであります。  したがいまして、農林水産省において、農地保有合理化法人保有している水田について速やかにその実態を調査の上、土地条件等の実情に応じた売り渡し促進措置を講ずるとともに、道県農地保有合理化法人をして売り渡しや一時貸し付けの際には用途指定条件を付させて契約条項整備を行うなど管理適正化を図らせるように指導し、この事業効果を上げる必要があると認められるものであります。  その第二点は、農地保有合理化法人保有の一時貸し付け中の水田に係る水田総合利用奨励補助金交付についてであります。農地保有合理化法人では、買い入れ保有している水田の大部分農業者に一時貸し付けていますが、これらの水田で借り受け者により転作実施された場合には水田総合利用対策実施要綱等によりまして奨励補助金交付されることになっております。  しかし、一時貸し付け中の水田水稲以外の作物を栽培することを条件として無償としているものであり、しかもこれらの水田につきましては、農地保有合理化法人買い入れて売り渡すまでの間、国の利子助成を受けていますので、借り受け者はもともと水稲を栽培することができないものであるにもかかわらず、この一時貸し付け中の水田まで含めて転作が行われたとして奨励補助金交付しますことは同一水田に対し重複した助成が行われることになりまして適切とは認められないものであります。  したがいまして、農林水産省におきまして、奨励補助金対象となる水田について本件一時貸し付け中の水田に係る分を除外する措置を講ずる必要があると認められるものであります。  次に、特に掲記を要すると認めた事項について説明いたします。  これは国営静清庵灌漑排水事業ほか二事業施行に関するものでありまして、農林水産省直轄施行している静清庵西濃用水及び東播用水の各灌漑排水事業について見ますと、事業着手以後十年ないし七年を経過した現在なお事業の大部分が未施行となっていたり、主要工事施行がとんざしていたりしている状況であります。すなわち静岡県下で実施している静清庵灌漑排水事業は、五十二年度末までに揚水施設等の一部を施行した段階で、計画に再検討の必要が生じて五十三年度からの新規工事実施を見合わせております。  岐阜県下で実施している西濃用水灌漑排水事業は、五十二年度末までに取水施設の一部を施行していますが、工事予定土地所有者等との話し合いが進展していないため、取り入れ口水路工事施行することができないままとなっております。  また、兵庫県下で実施している東播用水灌漑排水事業は、水利権者との話し合いがつかないため、五十二年度末までにダム建設関連工事等施行しただけで、ダム建設に着手することができないままとなっております。  このような事態につきましては、投下した多額の事業費が長期間にわたって休眠し、事業効果の発現が著しく遅延するばかりでなく、これらに対する対策を講じないまま推移いたしますと、さらに、事業費増加金利の累増となりまして、国の負担だけでなく、事業関係する県及び事業受益者負担増加することになりますので、特段の配慮が望まれるところであります。  なお、以上のほか、昭和五十一年度決算検査報告掲記しましたように、農用地造成工事における掘削運土費積算国営印旛沼干拓事業事業完了都道府県が行う市町村等への補助に対する国庫補助金交付農地保有合理化促進特別事業費補助金経理農業協同組合等補助事業実施する農業施設等建設製造請負契約における最低制限価格制補助事業により導入した施設等利用農業改良資金貸し付け製品生産事業実施について、また、四十九年度決算検査報告掲記しましたように水路トンネル工事設計積算についてそれぞれ処置を要求しましたが、これらに対する農林水産省処置状況についても掲記いたしました。  以上が昭和五十二年度農林水産省決算につきまして検査をいたしました結果の概要であります。  次に、昭和五十二年度農林漁業金融公庫決算につきまして検査いたしました結果を説明申し上げます。  検査の結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  以上、簡単でありますが説明を終わります。
  8. 高田富之

  9. 中野和仁

    中野説明員 昭和五十二年度における農林漁業金融公庫業務概況について御説明申し上げます。  昭和五十二年度においては、国によって、食糧安定的供給確保を基本とする総合的な食糧政策が強力に展開されるとともに、内外の厳しい諸情勢に対応した諸施策が積極的に推進されました。こうした国の諸施策に即応して、当公庫は、業務の運営に当たりまして、関係機関との密接な連携のもとに、農林漁業生産基盤整備及び経営構造改善のための融資を一層推進するともに、多様化する資金需要に対処して、融資条件改善も含めて融資円滑化に特に配慮してまいりました。  昭和五十二年度における貸付計画について申し上げますと、当初貸付計画額は五千五百七十億円を予定しておりましたが、その後、北洋漁業救済対策及び総合経済対策の一環として、貸付計画額を五百六十億円追加いたしました。  これに対する貸付決定額は五千五百八十六億千四百六十四万円余となり、前年度実績と比較して五百六十四億百七十九万円余、一一・二%の増加となりました。  この貸付決定実績農業林業漁業に大別して申し上げますと、農業部門三千七百四十九億九千九百五十八万円余、林業部門六百二十七億九千八百千万円余、漁業部門千百四十七億九千九百九十二万円、その他部門六十億千六百九十四万円でありまして、農業部門が全体の六七・一%を占めております。  また、この貸付決定実績委託貸し付けと直接貸し付けに分けて申し上げますと、委託貸し付けによるものが、全体の六一・二%に相当する三千四百二十一億千二百九十二万円余であり、直接貸し付けが残りの三八・八%二千百六十五億百七十二万円になっております。  次に、昭和五十二年度の貸付資金交付額は五千六百二十億千四百二十八万円余でありまして、これに要した資金は、資金運用部からの借入金四千八百億円、簡易生命保険及び郵便年金積立金からの借入金二百億円並びに貸付回収金等六百二十億千四百二十八万円余をもって充当いたしました。  この結果、昭和五十二年度末における貸付金残高は二兆七千五百五十六億八百十一万円余となりまして、前年度末残高に比べて三千九百二十三億九千四百五十九万円余、一六・六%の増となっております。  貸付金延滞状況につきましては、昭和五十二年度末におきまして、弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は三十六億七千六百十六万円余でありまして、このうち一年以上延滞のものは三十億八千七百五十六万円余となっております。  次に、昭和五十二年度の収入支出決算状況について御説明申し上げますと、収入済み額は、収入予算額千八百六十二億千五百十三万円余に対し千八百六十一億九百六十三万円余となりました。また、支出済み額は、支出予算額千八百九十八億八千百二十一万円余に対し千八百五十二億二千四百五十万円余となり、支出に対し収入が八億八千五百十三万円余多くなっております。  最後に、昭和五十二年度における当公庫損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は二千四百六十八億三千八百三十九万円余、借入金利息等の総損失は二千四百六十八億三千八百三十九万円余でありまして、利益損失が同額となりましたため、利益金はなく、国庫納付はありませんでした。  以上が昭和五十二年度における農林漁業金融公庫業務概況であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  10. 高田富之

    高田委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  11. 高田富之

    高田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島雄二君。
  12. 津島雄二

    津島委員 農林水産省は、日ごろ農民あるいは漁民という零細な生産者対象にいたしまして、しかも内外環境が大変厳しい中でいろいろな施策を進めておられる大臣以下事務当局の御苦労は大変なことだと拝察しております。私自身農林水産委員会委員をやっておりますので、そのような厳しさというものを身にしみて感じておるものでございますが、そのように農林水産省を取り巻く多くの関係者の方々が、厳しい環境の中でそれこそどろまみれになって苦労しておられればおられるほど行政の姿勢が適正でなければならない、行政あるいは政治の倫理が貫かれていなければならないということになると思うのでございます。そのような意味で、非常な御努力を各般の問題で積み重ねておられる中でも、間々問題になるような行政上の疑問あるいは問題点が提示をされていることは非常に残念だと思うわけでございます。先般農林水産委員会でも議論になりました問題でございますけれども、高度成長期に非常に人気を得て伸びてまいりました競馬に関連をいたしまして、中央競馬会及びそれを取り巻くいろいろな組織に明朗を欠く点があるのではないかという疑問が、日本発馬機株式会社の問題を通じて浮き彫りにされてきたような気がするわけでございます。そこで、農林水産省の仕事がいままでよりもさらに適正であってほしいという願いを込めてこの問題を取り上げて御質問させてもらいたいと思うのでございます。  農林水産委員会で、すでに日本発馬機株式会社を取り巻く問題については二度の質疑がされておりますし、同社の元専務等については特別背任罪に当たるのではないかという意味で捜査が行われていることは承知をしております。そこで、これからの質疑の参考として、その後の状況について何か参考になる点がありましたら、事務当局から簡単にお話をお願いしたいのでございますが、特に発馬機株式会社の経理内容、脱税を発端として追及されてきたわけでありますけれども、経理内容に使途不明金が大分あるという話も聞いておりますし、その使途によっては政界にも流れているのではないかというような話も聞いておりますけれども、その実態とか使途について、その後の調査で判明した点があれば御報告願いたいわけでございますし、それから、これはもう少し細く後で伺いますけれども、発馬機株式会社の発馬機のリース料が、ほかの地方競馬に貸している場合に比べて中央競馬会に貸したものは非常に高いということから不当な利益が発馬機株式会社に蓄積され、そしてそれが今度はトンネル会社を通じてよそに流れたんだという筋書きを述べる人もあるのでありますけれども、そのリースの実態についてもお話を願いたいと思います。  まず、事実関係について御説明をいただきたいと思います。
  13. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 本件につきましては、中央競馬会の指導監督の立場にある農林水産省といたしまして、まことに遺憾な事態と存じており、事態の究明を進めますとともに、明らかになった状況に応じまして所要の善後措置をとるよう督励をしておるところでございます。  本件事態の究明につきましては、競馬会におきまして、本問題に関する調査委員会を設けて調査実施し、その結果判明した不正経理、水増し操作の事実に基づきまして、ただいま御発言のございましたような、実行着たる発馬機会社の専務理事の告訴を行っております。  その後の状況でございますが、使途不明金の究明につきましては捜査当局で捜査が行われておるものと存じておりますが、競馬会並びに当省といたしましていろいろ努力をしておりますけれども、核心を握る本人と直接の接触をすることもなかなかむずかしいという状況で、現在のところは捜査当局の究明にまたざるを得ないものというふうに考えております。  なお、発馬機作業は競馬の開催にとってどうしても必要なものでございます。したがって、発馬機作業の実施を引き続き日本発馬機会社をして行わしめるという方針のもとに、当該会社の業務運営につきまして競馬会と発馬機会社との間で種々協議が行われておるように承知をしておりまして、契約につきましては、昨年度の契約の見直しを行いまして所要の変更を加えておるところでございます。
  14. 津島雄二

    津島委員 ただいまの御説明によれば、事態の究明は捜査当局の捜査にまつ以外にないというような感じに承ったわけでありますが、この問題は単純に発馬機株式会社という一社の不正という問題よりももっと根は深いところにあると私は思っております。基本的には競馬というきわめて特殊な仕事であって、そしてそれを身内の人たちがやっておるということから、よほどの注意をしない限り身内だけのなあなあ式の、注意を欠く仕事の運営になっていくのではなかろうか。特に最近まで十年間、競馬の大変な人気の伸びがあったことが背景で、どんどんと国庫納付金を払いましても収入金額がふえていくという中で、注意を欠く仕事が行われたのではないか、そういうふうに思っておるわけであります。  注意をしていただきたいのは、やはり中央競馬会のあり方でございますが、きょうは競馬会の理事長さんわざわざおいでになっていただいて大変御苦労さまでございますが、この不正の実態をいままでほかの委員会で議論があった点を伺ってみますと、取引先であるところの日本発馬機株式会社に発注をしておる。注文を出しておりますから、当然仕入れ伝票をしっかりと念査をしてそれを保管しておくのは経理の基本でございます。ところが、調べてみたらその伝票がほとんど白紙のようなかっこうで出されたという疑いがあり、発馬機株式会社の方で適当につくった伝票が、発注者である、お金を払う立場にあるところの中央競馬会にはなくて、いつの間にか発馬機の方にみんないっていた、こういう話を聞いておりますが、そのようないいかげんな不正経理がまかり通っているところにいま私が申し上げた身内同士のなあなあ取引の色彩が非常に強くあらわれているのではないかと思うわけでございます。もしそのようなことが事実であるとすれば、これをこの機会にしっかりと改めておかなければまた同じような問題が起こるおそれがある。そういう意味で、その後中央競馬会の方で事実をお調べになってこの点でどのような改善措置をいま考えておられるかということ。  それから昨年十二月二十一日の農林水産委員会で、きょうは政務次官も出ておられますが、一応今月いっぱいで、そのようないいかげんな経理をやったということに関連して中央競馬会の担当者について責任の所在と処分の方策を明らかにするという答弁をしておられますが、月末も近くなっておりますので、おおむねどのような状態になっているか、伺いたいと思います。
  15. 武田誠三

    武田参考人 お答えをいたします。  私どもといたしまして、今回このような不祥事件が起きましたことにつきましてはまことに申しわけないことであったと思っております。いま先生からお話しのような、関連会社等といわば大変ななれ合い的なことがあったのではないかというお話でございますが、私どもといたしましてはできるだけそういうことに陥らないようにということで、平生極力内部の綱紀の粛正なり厳正な仕事の取り扱いということを常々注意してまいってきたところでございますが、たまたまこういうことが起こりまして、そういった意味での皆様からの信頼を裏切るようなことになって、まことに申しわけなく思っております。競馬事業そのものがきわめて特殊な事業でございまするし、また一般のファンからの多額のお金を処理する仕事でもございますしいたしますので、今後ともこういった点についての不始末が起こりませんように一層の注意を払っていきたいと思っております。  今度の事件に関しましては、これはちょっと長くなりますが、この契約は請負契約に相なっております。それで、一番初めに現在使っております四八型の発馬機を使います際には、これが特殊な初めての機械でもございますし、補修機材その他がどの程度かかるかということにつきましては不明な点がございます。そこで発馬機会社と私どもの担当者との間で相談をいたしまして、修理部品を使いましたものにつきましては、現実にその機械を使いますスターターがどの程度の修理が行われたかということを確認をいたしまして、年度末においてどの程度の機材を使ったかということを集計、チェックをいたしまして、その上で適正な翌年度の請負契約をする、そういう仕組みにいたしておったわけでありますが、まことに残念なことでありましたが、その集計をいたしました修理の証票につきまして発馬機会社の方で改ざん、偽造をいたしましたことについて、私どもとしてそれを見抜けなかったというところがまことに申しわけなかったと思いますし、かつまた決算書類等につきましても非常な巧妙な改ざんが行われておりまして、そういった面からもこういった不正を発見できなかったということでございました。  そこで、今後これらの問題につきましては、いまの証票書類につきましてのチェックの方法も厳正に改めることにいたしまして、当方におきまして一部保管をし、それを集計したものと発馬機会社の方から出てくるものとを相互に対応、チェックできるようなシステムといたしましたのと、また全般といたしまして私どもの経理部門についての陣容の強化と、さらに別途監査室を設ける等のことをいたしまして、今後こういった事態の再び起こることのないように組織の強化をしてまいりたいと考えております。  また、今回の事件に関連いたします処分のお尋ねでございますが、近日中に厳正な処分をいたすつもりで監督官庁の方ともいま御相談を進めておるところでございます。
  16. 津島雄二

    津島委員 処分については、一月末日までということでありますから、きょうはそれ以上お答えを期待するのも無理だと思いますが、先ほど理事長も認めておられますように、非常に特殊な仕事で内輪だけのやりとりになりがちであるという点については、これからも十分気をつけていただきたいのでございます。  もう一つ、中央競馬会に関係する会社として、今度は発馬の方ではなくて、入着した場合の着順表示装置等をつくる日本トータリゼータという株式会社がありますが、これも中央競馬会と関係のある特殊な仕事をやっている会社であります。この会社と中央競馬会の取引の実績がもしいまわかれば報告していただきたいのです。
  17. 武田誠三

    武田参考人 取引の実績数字をただいま持ってきておりませんので、御必要でございますれば後ほど文書で御提出いたしたいと思います。
  18. 津島雄二

    津島委員 取引の実績を後ほどいただきたいと思うのですが、私の手元では五十三年で四十三億円近い取引をしておられるようでありますが、たとえば、この場合でも、着順表示装置等を販売、賃貸しするのが日本トータリゼータの仕事でありまして、トータリゼータ株式会社自体はこのものを製作はしていないわけであります。この会社が年間四十三億円の取引を中央競馬会とやって純益を上げておられる、この実態についても果たして適正なものかどうか。いまの発馬機の場合と並べて厳しく念査をしていただきたいと思うわけでございます。  時間がありませんので、この問題について二つばかり伺っておきたいのですが、一つは中央競馬会の仕事の運営に、いまの日本発馬機株式会社の破産しているような現状でこれからの仕事に支障がないかどうかということが一点。それからもう一つは、中央競馬会のいまの組織について法律で納付金制度が定められておりますけれども、第一国庫納付金は売上金に対して一〇%、第二納付金は純益の半分ということに相なっていると思いますが、私の受ける印象では、かつて競馬の売り上げがどんどん伸びたときには純益も非常にふんだんに出てきた。したがって、それを施設等改善に充てる余裕があったのである。これからは安定成長に入ってまいりまして、ここ一、二年間の競馬の売り上げを見ると、かつてのような二けたの伸びは見られておりませんので、よほど引き締めてやっていただかないと必要な設備投資も借入金でやらなければならないというところから経営が悪化をしていくという心配もあるんではないかと思うわけでございます。  そのような意味で、監督官庁農林水産省の方から、将来を考えてどのような感触をお持ちか簡単に御答弁をいただきたいと思います。中央競馬会の方から、支障があるかないか。それから、農林水産省の方から、今度のこのことに関連をして中央競馬会の今後の運営についてどのような見通しを持っておられるかお伺いしたいと思います。
  19. 武田誠三

    武田参考人 先生御指摘のように、かつてのような売り上げの伸びは最近はございませんけれども、ここ二、三年の経過を振り返ってみますと、五十一年、五十二年はほぼ一〇%前後の伸びを示しておったと思っております。その後五十三年が伸びが非常に少のうございまして、三%程度の売り上げの伸びであったわけでございますが、それに伴います剰余金につきましても、五十一年、五十二年はほぼ順調に、売り上げの伸びに相応して出ておったと思いますし、五十三年はややそれが低下をいたしましたが、売り上げの伸びが少なかったということのほかに、ちょうど美浦のトレーニング・センターへの移転の問題がございまして、平常とは違った支出増加が見られたわけでございます。その後、昨年度の決算はまだできておりませんけれども、売り上げの方はほぼ一割余りの伸びを示しておりまして、剰余金の方もほぼそれに見合った程度の剰余金は出てくるというように考えております。  今後の運営につきまして、もちろん私ども、予算のもとに執行してまいるわけでございまして、できるだけ冗費は省き節約を旨としてまいりたいと思いますが、これだけ大ぜいのファンの方のためのサービスの施設その他老朽化した施設等につきましては、やはり積極的に投資をしていかなければなるまいというように考えております。なお、借入金等をもって充てなければならないというような事態は当分ないものというふうに考えております。
  20. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 最近の中央競馬会におきます収支状況、ただいま武田理事長からお答えしたとおりでございますが、売得金額の伸び率は昭和五十年まではほぼ二けた、一一〇%以上でございましたが、五十年以降一一〇%内外ないしば伸び率が一けた台に落ち込むという状況で、収支差の純収益は、かつては売上金額に対しまして六%台でありましたものが最近におきましては五%前後、五十三年度におきましては四・五%程度ということになってまいっております。  そうした収支状況からいたしまして、一方では支出面におきます経費の節減、効率化ということが当然必要でございますが、他方、競馬の公正な実施並びに競馬施設その他周辺施設環境整備等を考えますと、施設の投資につきましてはなお引き続き実施する必要がある、競馬会におきましては、毎年支出予算のおおむね一〇%程度をこれに充てたいという計画をしておると承知をいたしておるところでございます。  しかし、仮に今後売り上げが伸びない、あるいは低落をするという事態になった場合には、その投資ができるかどうか危ぶまれるところでございますが、投資そのものは、これは取りやめるわけにはまいらないというふうに考えますので、どうしても他の経費をできるだけ抑制をするということで、その合理化を図るように監督官庁としても指導をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 津島雄二

    津島委員 大いに適正にやっていただきたいと思いますが、競馬には、先ほどからのように、多くの競馬ファンの方にサービスをするという面のほかに、馬産地を中心として軽種馬を育てる、それから畜産を振興するという農林水産省にとっては大事な本来の役割りがあるわけでございます。その関係で、いまの中央競馬会でおやりになっている競馬場のほかに、馬産地を中心として、もう少し馬産地に近いところに競馬場をつくりたい、またそうすることによっていわゆるのみ行為も減少させることができるのではないかという意見がかなりあるわけでございます。自慢ではございませんが、昨年の暮れのグリーングラスは私の県の出身でございまして、大変いい成績を上げたわけでありますが、このような機会に、たとえば青森県の馬産地あたりで、かつて長沼答申という答申で、公営競馬について非常に厳しい線が出されていたのが、昨年の公営競技問題懇談会の意見書で弾力的な考え方も打ち出されております現状に顧みて、ぜひとも畜産の振興という意味で競馬場を新設したいという希望が強いわけでございます。このような要望が具体化され県や地元の努力がさらに固まってきた場合には農林水産省で前向きの方向で取り上げていただきたいという希望があるわけでございますが、この点について農林水産省の御意見を賜りたいと思います。
  22. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 競馬の施行につきましての目的の一つに畜産振興がございます。その中には当然馬事振興も含まれておるわけでございまして、ただいまの御質問の趣旨につきましては十分理解できるところでございますが、一方、競馬その他の公営競技の新設につきましては、いまお話しのように、昨年七月の公営競技問題懇談会の意見書で、弾力的にこれを行うという報告がなされておりますけれども、現状といたしましては、昭和三十三年七月の閣議了解事項として、なおこれを認めない方針が存続をいたしております。  昨年七月の懇談会の意見書を踏まえて今後どうするかということで、関係各省庁連絡会議を設けましてただいま検討を進めておるところでございます。したがいまして、ただいまのお話しの件につきましては、この懇談会の意見書をどう取り上げ、政府といたしましてどう対応するか、その全体の中で検討すべきものと考えますが、今後の検討課題として取り上げさせていただきたいと考えております。
  23. 津島雄二

    津島委員 時間が参りましたので、中央競馬会の運営あるいは競馬場の設置等について、新しい時代の要請に合ったような、また厳しい姿勢で取り組んでいただきたいということを要望して、私の質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。
  24. 高田富之

  25. 原田昇左右

    ○原田委員 私は、過酸化水素問題とミカン対策問題について質問させていただきます。時間がございませんので、ひとつ答弁を要領よくやっていただくようにお願いしたいわけでございます。  まず、過酸化水素の問題でございますが、一月十一日に厚生省は突然過酸化水素に発がん性が認められるということを公表いたしまして、これで世間は大騒ぎになったわけです。私がいま手元に持っておる新聞でもこんなに厚く切り抜きがございますが、過酸化水素に発がん性という大見出しで出る、またテレビでも報道されるということになりまして、関係の消費者あるいは生産者に対して非常な衝撃を与えたということでございます。  これに応じまして、わが国の水産加工業界は直ちに過酸化水素の使用を取りやめることにしまして、一月十二日には全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会が過酸化水素の使用中止を決定し、この旨を公表しました。また、全国水産加工業協同組合連合会におきましても、一月十七日使用中止を決定いたしました。このように、業界が迅速な対応措置をとることによりまして、現在生産されている食品につきましては、過酸化水素の添加されているおそれはまずないものと言えるのではないかと思います。  しかしながら、消費者にとって、この問題をめぐってさまざまな混乱、不安が見られまして、消費が大幅に減退する、それに伴って、関連する中小零細企業の中には、深刻な経営不安に見舞われているのも数多く見られるわけでございます。  これはなぜかというと、この問題をめぐって、所管省である厚生省の情報提供のあり方、消費者や関連業界に対する指導あるいはこれに対する対策等について問題があったからだと思います。以下、このような問題の幾つかを取り上げてみたいと思います。  まず、発表の仕方でございますが、一月十一日に環境衛生局長から過酸化水素の発がん性について発表が行われた中で、四ページにわたる同局長の発言要旨を拝見しますと、過酸化水素のマウス動物実験において過酸化水素に発がん性が証明されたと判断すべきである、こう書いてあって、「食品加工上可能な限り使用しないよう関係省庁の協力を得て食品加工業者にとりあえず要望する」とされております。  このような発表がされた以上、消費者としては、過酸化水素が残存している主要な食品として例示されました、たとえばゆでかまぼことか、しらすとか、ゆでめん、こういったものの購入とか消費を差し控えるのは当然であると思うのです。同日からこれらの消費は激減しまして、大量の返品が行われまして、たとえばゆでかまぼこ類等については焼却処分をせざるを得ないという事態に追い込まれておるわけでございます。  しかし、この発表をさらに後段において見ますと、食品に使用されている過酸化水素はごく微量であって、この程度のレベルのものであれば、食品の保存、調理とかそしゃくによって実質上胃の中に過酸化水素の形で入ることはほとんどない認められるから、いま直ちに過酸化水素使用食品が危険であるとは考えられないということも書いてあるわけで、前段の評価を全く否定するようた書き方になっておる。  そこで、このようなあいまいな文章では、消費者や生産者は一体納得できるのだろうか、国民はどう行動したらいいのか、これについて厚生省の明確な見解を聞きたいのであります。
  26. 榊孝悌

    ○榊政府委員 お答えいたします。  御設問の問題ですが、前段につきましては伊藤教授の動物実験についての学者の評価結果を述べたものでございまして、後段につきましては、評価結果に基づきます行政側のとりあえずの対応を述べたものでございます。そういった意味で、私どもとしては矛盾はないというふうに考えております。
  27. 原田昇左右

    ○原田委員 いま矛盾がないとおっしゃるけれども、この厚生省の食品業界に対する指導方針自体もきわめてあいまいなのです。「食品中に過酸化水素が残留することは好ましくない」と言っておきながら、「加工上可能な限り使用しないよう」要望するというような表現。それから一月十一日の段階で厚生省は、発表すると同時に各都道府県に通達をしました。それは電話で行われておりまして、各県によって末端に出てくる指導がきわめてあいまいである。ばらばらです。あるところは使用を禁止します。あるところは自粛してくざさい。あるところはまあやっても大したことはない、しかし使わない方がいいでしょう、こういう話。しかも同じ県の中でも保健所によってまたばらばらである。こういうことになっておるわけであります。厚生省の指導内容、指導方法に基本的な問題があるんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  28. 榊孝悌

    ○榊政府委員 御承知の一月十一日の発表につきましては、とりあえず製造業者に対しまして、可能な限り過酸化水素を使わないように求めたものでございます。この結果につきましては、いまお話がございましたように、即日自治体に通告しております。各都道府県指導は、その発表の趣旨に基づきまして実情を勘案して行われたものでございます。いまお話ございましたような、発表の内容につきまして自治体の理解に差異が生ずるといったようなことにつきましては、御指摘の点も踏まえまして今後十分連絡指導に当たりたい、このように思っております。
  29. 原田昇左右

    ○原田委員 いやしくも国民の健康、保健にかかわるものが各県とか各保健所の管内によって対応がまちまちであっていいというはずはないと思うわけです。日本のすべての消費者、すべての生産者が十分正しい理解と対応が得られるように指導すべきであって、こういうようなあいまいな指導措置では、国民の健康と生命に関する責任官庁としての厚生省のとるべき姿勢ではないと考えられますが、どうですか。
  30. 榊孝悌

    ○榊政府委員 ただいま、先ほど申し上げましたように趣旨を十分生かした形で、実情を勘案して指導するような形になったわけでございますが、今後そういった御指摘がないように十分指導に努めてまいりたい、このように思っております。
  31. 原田昇左右

    ○原田委員 各保健所とか何か、趣旨を生かしておるからまちまちになるのですよ。趣旨がおかしいのだ。いやしくもこれは、本当に中小零細業者なり漁業、あるいはゆでめん業者、こういったところに非常な影響がある。どういうように弁解しようとしても、一たん過酸化水素に発がん性があると公式に発表した以上、消費がそこでストップすることはわかっているはずです。したがって、食品加工上可能な限り使用しないようにというようなことを言ったって、およそ過酸化水素を使用した食品は事実上販売はできないということになるのはあたりまえだと思うのだね。そこでまた消費者に過酸化水素の不安があるということなら、それを使用しておった食品は、問題は、使用を停止しても相当期間販売が困難になってくるということを厚生省は十分予測し、関係各省ともこれに対する対応を協議しなければならぬと思うのです。そういうことをやったのですか。
  32. 榊孝悌

    ○榊政府委員 この決定が行われましたのは実は十一日でございまして、このような形でいろいろ検討が行われるということにつきましては、生産関係をいろいろ指導されています農林水産省とも事前に連携をとっております。
  33. 原田昇左右

    ○原田委員 事前に連携をとられたって、いつですか。
  34. 榊孝悌

    ○榊政府委員 五日の日だったと思います。
  35. 原田昇左右

    ○原田委員 農林省は五日にそれを連絡を受けましたか。
  36. 森実孝郎

    森実政府委員 内密の話として非公式に連絡は受けております。
  37. 原田昇左右

    ○原田委員 それじゃ、農林省はどういう措置をとられたのですか。
  38. 森実孝郎

    森実政府委員 事柄は発がん性物質に関連する問題でございまして、専門家の鑑定結果が大体出てきている。それをやはり食品衛生調査会にかけて正式に決定しなければならないけれども、それまでの間において公表せざるを得ないという経過のお話があったわけでございます。私どもこれは御指摘のように水産物の加工品それからもう一つはゆでめん等に影響のある問題でございますので、それぞれ物資を所管しております各局とも相談し、また非公式な形でございますが関係業界の専門家等とも相談したわけでございます。しかし今日の社会経済情勢のもとでは、やはり毒性が弱体なものであっても、専門家の鑑定として発がん物質があるということが公にされれば、まさに先生御指摘のようにやはり大変市場評価は変わってくるし、影響は受けるわけでございますので、私どもといたしましては、そういった専門の部局並びに一部専門家との相談をベースにいたしまして、厚生省の発表されました直後にとりあえず使用を自粛するということを各関係団体を通じてお願いをしたわけでございます。これは自粛でございます。  また、対応につきましては、極力日配ルートに切りかえる問題、低温流通に切りかえる問題等について各業界と相談し、指導してまいってきたわけでございます。
  39. 原田昇左右

    ○原田委員 私は、大臣にお伺いしたいのですが、五日に通告を受けておって十一日に発表するまで、農林大臣として何も指導してないというのは大変遺憾だと思うのです。人体に直接影響はない、こういうことなんですから、その間十分調整するなり、あと代案を考えるなり、農林省として当然やるべきことをやってないじゃないですか。どうしてこういうことになったのですか。
  40. 森実孝郎

    森実政府委員 私から事前に事務的な意味で御説明申し上げたいと思います。後ほど大臣から御答弁あると思います。  問題は、厚生省が公表されるということは、もちろん社会的に広がるわけでございますが、私どもが公の立場で関係県、関係業界を指導するということは、厚生省が発表されると社会的には同じ結果になるわけでございます。したがって私どもといたしましては、専門の官庁である厚生省の御判断が発表される時点までにできるだけ専門家の意見を集めて対応のあり方を考える、そういう指導の準備をするということ以外にないわけでございまして、そういう意味で、準備期間としていろいろ意見を伺い、また指導方針を決めてきた、こういう意味でございます。その意味で、先ほど申し上げましたように、十一日に発表されました後、直ちに私どもも、自粛でございますが、自粛を関係業界に要望すると同時に、高温処理の問題とか日配ルートへの切りかえの問題とか、あるいは低温流通に乗せる問題等について個別な指導を行っているということでございます。
  41. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先生のおっしゃるお気持ちもよくわかるのでございます。ただ、いま局長が申し上げましたように、私どもは五日にいろいろ事務当局との間で非公式に話し合いをいたしまして、いま御指摘のあったように発がん性があるということをどうも十一日に発表せざるを得ないという厚生省の立場、そして私どもは、それではそれを事前にこちらで発表してしまってそれこそ業界に混乱を起こしてもこれもまたいけないのではなかろうか。それで、なるべくそれまでの間は隠密のうちにある程度業界の指導者にだけは話をし、こういうことがある、それにはどう対処したらいいかお互いに研究しようではないかということで話をしたわけであります。その中で、いま話がございましたように、殺菌方法をひとつ新たに考える、あるいは日配方式をとる、いろいろなこと、それから実態についても、御承知のとおり、かまぼこ全部がやっているわけじゃないし、ゆでめんについても全部というわけでもございませんので、その辺についても、それはいまやっておられる方々にとっては大変問題があろうかと思いますけれども、できる限り漂白をしなくてもいいように、消費者にもこれからかまぼこは多少色があっても食べていただけるようにわれわれもっと指導しなければならないと思いますし、そういうふうなこともできるだけやっていこうじゃないか、あるいはまた、どうしてもこれから出てくるものについてはいろいろ融資面その他でできるだけお手伝いすることも考えていかなければならない、こういう考え方に立ちながらいろいろいままでやってきたということでございます。
  42. 原田昇左右

    ○原田委員 こういう混乱が起こらないような措置を何かもう少し工夫していただかないと、本当に血の通った行政とは言えないんじゃないかと思うのです。  業界の実情を聞いてみますと、五日から十一日くらいの間に大量の包装材量を、油が上がるというので、きっと石油製品だからこれは大変だというわけで手当てをした、そして印刷しちゃったというわけですね。これは全部パアになる、こういうようなことも聞いております。したがって、何らかの形で所管省として血の通う行政をひとつぜひ考えていただきたいと要望しておきます。  まだ食品添加物というのは二十一種類もたな板の上にのっているそうですから、今後こういう混乱のないように。しかし今度の場合は、こうなっちゃうと消費者は買わないわけですから、確かに私もおかしいところあると思うのです。マウスに食わした。じゃあどういう量だというと、人間に換算すると毎日数トンずつ食べて一生食べなければならないような量である。それで発がん性があるそうだ、ラットはまだわからないのだ、こういうことでございますので、これはいろいろ医学的な、理論的な実証の方法があるのかないのか、きょうは余りそういう医学の問題を議論する場ではございませんのでやめておきますけれども、私どもも非常に疑問なんです。要するにいま流通しておる程度のものを食べてすぐ発がん性が出てくるとかなんとかいう話じゃないんだ。すぐ毒があるというならこれは直ちに使用停止しなければならぬと思うのです。いかに犠牲があってもやらなければならない。しかし、こういう問題はちょっと違うと思うのですね。それならそれに伴って血の通った行政をやってもらいたいということをぜひ要望しておきます。  そこでさらに、厚生省は干しエビについて発表しておりますけれども、私の方に静岡県特産でサクラエビというのがありますが、これは過酸化水素を使ったらサクラエビのきれいな色が飛んじゃうのだ。だから絶対使わないのですよ。それがこの干しエビの中に入っちゃっている。そこでサクラエビの販売が激減しておる。これは一体どういうことですか。
  43. 榊孝悌

    ○榊政府委員 ただいまの御質問でございますけれども、御指摘のサクラエビにつきましては、私ども、関係県を通じて調査をいたしました。その回答によりますと、いまお話しのように、過去過酸化水素が使用されたことがないということは確認いたしております。
  44. 原田昇左右

    ○原田委員 使用してないのはわかっているんだ。そうじゃない、厚生省が間違って発表したためにサクラエビ業界のサクラエビが売れないという問題になっているんです。厚生省は責任があるんじゃないですか。どういう責任をとるつもりですか。
  45. 榊孝悌

    ○榊政府委員 私どもの方で各食品について例を挙げまして申し上げておりますことは、その中の一部ということで申し上げておるわけでございます。御指摘の乾燥エビということで包括してお話ししてその中にサクラエビというものが実は含まれておったということでございまして、先ほど農林省の方のお話もございましたが、ゆでめんあるいはその他いろいろなものにつきましても、すべてに過酸化水素が使われているというふうなことを申し上げてはおりません。
  46. 原田昇左右

    ○原田委員 いや、そういうことを聞いているんじゃなくて、とにかく切り捨て御免というのは困るということを申し上げておるわけで、はっきり訂正してください。
  47. 榊孝悌

    ○榊政府委員 先ほど申し上げましたように、サクラエビは過酸化水素を使用いたしておりません。
  48. 原田昇左右

    ○原田委員 それでは、発表の仕方が悪かったのでしょう。はっきり取り消してもらいたい。
  49. 榊孝悌

    ○榊政府委員 乾燥エビということで包括的に申し上げましたので、そのためにいろいろ誤解を招きましたことについてはここで訂正をさせていただきたいと思います。
  50. 原田昇左右

    ○原田委員 そこで、正確な情報を関係機関に伝える、国民に提供するということは行政機関として重要な任務だというのはよくわかります。しかし、その情報が一部の国民にだけ伝わるというのじゃ大変不公平だと思うのだ。何か大手業者の中にはすでにその情報を知っておって、一方中小零細企業は全く寝耳に水だ、こういうことで著しく不公平だと思うのです。これについてどう思いますか。
  51. 榊孝悌

    ○榊政府委員 先ほども申し上げましたように、この過酸化水素について、動物実験の結果につきましては実は本年の一月十一日に確定したわけでございまして、厚生省といたしましては一部の企業に対して事前に情報を伝えるようなことは一切行っておりません。
  52. 原田昇左右

    ○原田委員 新聞に出ておるじゃないですか。ある業者は、われわれは前から知っておった、だから使ってないのだ、こういうことが新聞に出ているのです。
  53. 榊孝悌

    ○榊政府委員 私どもとしては、先ほど申し上げましたように、決定が一月十一日でございますので、当省からこのような情報が流れることはあり得ないと思っております。
  54. 原田昇左右

    ○原田委員 厚生省はあり得ないとおっしゃるわけですが、新聞には明確に書いてある。あるいは業者が非常に努力して情報取りをやったのかもしれませんけれども、いやしくもこういう面で不公平が絶対にないように、これから厳重に注意していただきたいと思います。  さらに具体的な問題についてお伺いしたいのですが、食品衛生調査会の検討を待ってこれからの取り扱いを法制的にはやるんだ、こういうことになっておりますけれども、仮に食品に過酸化水素を使用しても残留しなければ当然人体に影響がないわけですから、製造工程で過酸化水素を使って残留しないように完全に処理したらどうですか。それは認められるわけですか、どうですか。
  55. 榊孝悌

    ○榊政府委員 お答えいたします。  私どもとしては、確実に過酸化水素がなければ人体には影響はないというふうに思っております。ただ、行政上の取り扱いにつきましては、今月三十日に開催を予定しております食品衛生調査会に諮りまして決定いたしたい、このように思っております。
  56. 原田昇左右

    ○原田委員 それじゃ、残留ゼロならいいという見解だということですね。  そこで、ついでに伺いますが、うがい薬の過酸化水素ですね、オキシドール、あれはどういうことになりますか。
  57. 山田幸孝

    ○山田説明員 オキシドールは医薬品といたしまして、現在、口内——口の中でございますが、口内あるいはのどの手術処置後の消毒、洗浄という医療上の必要性から使っております。しかもこの使い方は非常にごく短期間の使用でございまして、オキシドールを使う場合の注意といたしましては、現在、これを内服しないという注意と、それから口の中で使った場合には連用すると口内の粘膜を刺激することがあるという注意が記載されております。  したがいまして、私どもといたしましては、この使用上の注意を守って使う限りは現在のところは問題はないというふうに考えております。
  58. 原田昇左右

    ○原田委員 連用しないと言ったって、うがいでやったら中に残るわけでしょう。残留するんでしょう。それは水と一緒に入っているじゃないですか。そんな保証ないじゃないですか。
  59. 山田幸孝

    ○山田説明員 オキシドールを医薬品として使う場合は、ただいま申し上げましたように、医療上の必要性から非常に短期間使うということが非常に重要なことでございまして、それから口内に使った場合も、体内に飲み込まれちゃう量はほとんどないんじゃないかというように私どもは考えているわけです。
  60. 原田昇左右

    ○原田委員 これは十分御検討いただきたいと思います。  ところで、過酸化水素のかわりになるもの、過酸化水素がもうとてもこういうことでは使えないということになりましたので、いずれにしてもかわりのものを考えなきゃいかぬということなんですが、厚生省は代替殺菌剤、代替漂白剤につきまして何か具体的な案をお持ちですか。  それから、もう一つ伺います。  これは業界としても死活問題ですから、どうしてもやらなければいかぬ。いま私どもの方で言いますと、県の水産試験場が一生懸命業界の相談に応じてやってくれておって、大変私も評価しておるわけでございますけれども、そもそもこれは厚生省の所管じゃないかと思うのです。一番大事な代替殺菌剤、これなら大丈夫といった——もっとも厚生省の大丈夫というのは一〇〇PPmで大丈夫だと言っておったものが突如としてだめになってしまうのですから、大変慎重に大丈夫と言ってもらわなければ困るわけです。またこんなことになっては大変ですが、それをひとつぜひ厚生省として責任を持ってやってもらいたい。  それから新しい設備投資、いま考えておりますのは、あるいは真空包装が必要かもしらぬ。一台買うのに三千万円もかかる。これに対する低利融資の道といったものも、これは農林大臣から伺いたいのですが、ぜひ農林省として責任を持って対処していただきたい。  それから、消費者に対しましても不安、動揺を解消する措置を早急に講じてもらいたい。一つの具体的な例を挙げますと、過酸化水素は合成殺菌剤という表示にしろとなっているのです。ところが、ソルビン酸など過酸化水素以外のものは合成保存料と表示してあるわけです。消費者は過酸化水素を保存料としておかれたのでは、何か過酸化水素を包含しておるような印象を与えるのではないか。この辺の表示の仕方もひとつぜひ考えていただきたい。以上、要望しておきます。ひとつ御答弁願います。
  61. 榊孝悌

    ○榊政府委員 ただいまのお尋ねの合成保存料の問題でございますが、食品添加物の使用目的から言いまして、合成殺菌料と保存料というものは異なっているものでございます。ただ、一部の消費者に誤解が生ずるというふうなことも御指摘のようにあるかもわかりませんので、この表示につきましてはやはり今後とも国民の理解を得るような努力をできるだけ払ってまいりたい、このように思っております。
  62. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私も先ほどちょっと触れたのでございますが、食品衛生調査会の結論が今月中には出るはずでございますので、その結論と、それから業界の実情をよくお聞きをいたしまして、いま御指摘のようないろいろの資金についてはできるだけ前向きで取り組みたい、こう考えております。
  63. 原田昇左右

    ○原田委員 いまの過酸化水素の問題、私は、行政としてぜひ血の通った行政をやっていただけるように要望しておきます。特に厚生省にお願いしたいのは、殺菌剤について過酸化水素の代替のものばこういうのがある、こういうのはどうだという程度の指導をぜひしてもらいたいと思いますので、要望しておきます。また、これは農林省と十分御協議いただいて、中央官庁としてひとつ生産者に責任のある指導をしていただきたい。また、消費者についてもぜひひとつこういう混乱の起こらないように配慮していただきたいと存じます。  それから最後に、委員長、申しわけありませんが、ミカンの問題で一言お願いしたいのです。  実は五十四年度、温州ミカンがいま大変生産がふえまして、生産者の手取り価格、キロ当たりで四十五円前後となりまして、生産費の六割にも満たないという情勢であります。静岡県では前年を三〇%上回る三十六万トンのミカンが越年しておると言われておるわけですが、結局この対策として当局で前にお示しいただいた五十六年度を目標とした「果樹農業振興基本方針」というのがありますが、これではもうとても実情に合わなくなってきておるのじゃないかと思うのです。まず今年度じゅうにもこれを改定していただきたい。そこで具体的にその作業をやっていただきたいということが一つ。  それから第二は、結局、過剰ミカンの処理について当面どうするかというと、ジュースとかかん詰めにせざるを得ない。そうするとジュース工場を積極的に整備を推進しなければいかぬということになるわけですが、当面するミカンの過剰対策として、当初計画を三〇%以上上回るジュース量、各県全部総合しますと百二十万トンぐらいを果汁とか委託加工、かん詰め加工にせざるを得ないということに追い込まれておる。したがって、果汁の調整保管事業対象数量を拡大してもらいたい、さらに果汁貯蔵保管機材についても援助をしてもらいたい、またかん詰め加工品についても調整保管事業対象とするような措置を講じてもらいたい、こういうことが私の提案でございます。ぜひひとつこの点を御配慮いただきたいと思いますが、大臣から御答弁いただきたい。
  64. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず第一点の「果樹農業振興基本方針」の見直しの関係でございますが、これはすでに五十四年度の当初から所要調査を進め、また果樹農業振興審議会の専門委員会において検討を進めておりまして、取りまとめ等も現在鋭意やっておる段階でございます。  そこで、いつの時点にこれを公表するかということになりますと、実は「農産物の需要と生産の長期見通し」の改定も農政見直しの一環として現在農政審議会の方にお諮りして検討願っていただいております。したがいましてその辺との整合性というものもよく考えまして、ことしの春、五月ごろになろうかと思いますが、その辺には「農産物の需要と生産の長期見通し」並びに「果樹農業振興基本方針」の見直し等も公表の運びにいたしたいという心組みで作業を進めております。  それから第二点は、果汁なりかん詰め等についての調整保管数量を拡大をすべきではないかという点でございますが、果実の消費の方がなかなか伸びておりませんので、やはり果汁に仕向けていく、加工仕向けをしていくということがどうしても必要であろう、こう考えております。現在のところ五十四年度及び五十五年度の予算措置によりまして、果汁の方につきまして一万五千トン分の調整保管に要します所要経費を計上をいたしております。  ただ、ただいま先生からお話ございましたように、それだけでは、一万五千トンだけでは足らたいではないかという御指摘でございます。これにつきましては農業団体等とも相談をいたしますが、二月の末ごろになれば搾汁実績等も出ます、需要の見通し等も一応の線が出てくると思います。その辺を踏まえまして所要の予算措置といいますか、こういうものも講じたい、こういう考えでおります。これはかん詰めについても検討していきたい、こう思っております。  それから、果汁工場の機材等の整備でございますが、これにつきましては五十三年度から進めておりますが、この五十五年度におきましても引き続き七工場につきまして三億三千万円ほどの補助金を計上いたしております。これによりまして果汁工場の近代化のための所要施設等整備を図っていきたい、こういう心組みでおります。  以上でございます。
  65. 原田昇左右

    ○原田委員 いま農林行政は非常に厳しいときでございます。アメリカからのオレンジ輸入という問題もありますし、何とかミカン経営の安定策をこれから総合的に進めなければいかぬと思います。いま局長からの御答弁、努力は認めますが、もう少し踏ん張ってもらわなければいかぬという感じがいたしますので、大臣からひとつミカンにつきまして総合的な御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  66. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま局長から御説明を申し上げましたように、いま農政審議会におきまして農産物全体の需給の見直しをやってもらっておるわけでございます。私どもも極力連絡をとりながら、何とかひとつ日本の農民の皆さんができる限り希望を持って、いつも余って困るというようなことのないような形に需給の見直しをひとつやっていきたい、こう考えておりまして、当然温州ミカンについてもその一環に考えておりますし、特に温州ミカンについては相当飽和状態であることは御承知のとおりでございますので、晩柑にしていただきたいとか、私どもそういう指導もいろいろ行っておるわけでございまして、やはり果樹全体についての見直しというものも考えていかなければならないと私は思っておるわけでございます。できるだけそういう方向でいきたいと考えております。
  67. 原田昇左右

    ○原田委員 ありがとうございました。
  68. 高田富之

    高田委員長 暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時二十九分開議
  69. 高田富之

    高田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新村勝雄君。
  70. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 農林行政の幾つかについてお伺いいたしますが、まず先に中央競馬会の問題についてお伺いをいたします。  日本中央競馬会は競馬法によって競馬を行うことが許されておるわけであります。そして、日本中央競馬会法二十条によってみずから競馬を行うことが、これは競馬会としては本来の任務であるわけであります。そういう点からいいますと、これは競馬についてはすべての点について責任を持って中央競馬会が行うべきでありますけれども、そういうような形になっておるかどうか、まずお伺いをしたいと思います。
  71. 武田誠三

    武田参考人 私どもといたしましては、法律に定められております競馬の開催を私どもの責任において円滑に執行するということで業務を行っておりますが、業務の中に、外部に委託をした方が適切な部分につきましては、直接私どもが行わずに外部に委託しておる分野もございますが、基本的にはすべて私どもが責任を持って取り仕切るという態勢で行っておるわけでございます。
  72. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 中央競馬会法二十条によりまして、日本中央競馬会は競馬を行う、こういうふうに明記をされておるわけでありますけれども、実際には非常に重要な部分、むしろ中枢的な部分をほとんど全部請負あるいは委託によって実施をされておるようであります。これはある意味からすれば中央競馬会法二十条に照らして大変疑問のある運営の仕方ではないかと思いますけれども、その点について再度お伺いをいたします。
  73. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 競馬の開催につきましては競馬法に基づき、また中央競馬につきましては中央競馬会法に基づき実施をすることと定められております。中央競馬につきましては日本中央競馬会がこれを開催するということで、中央競馬会みずからが開催主体になるということは当然でございます。開催の業務の中にありまして、基本的には競馬会みずからが直営でやるたてまえではございますけれども、これを外部に委託することが業務運営上円滑適切に実施する上で望ましいというものについてはそういうものに限って外部に委託するということは、これも程度問題がございますけれども、必要かつ適切であろうというふうに考えております。
  74. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 現在の日本中央競馬会のやり方は、これは度を超えておるように思われるわけであります。競馬に必要な中枢的な非常に重要な部分を請負あるいは委託をしているということは、これは競馬法によって、競馬というのは特殊の事業でありますが、そういう特殊な事業を特別の法をつくって中央競馬会に許し、そしてまたこれを行わせるということになっておるわけでありますから、そういう点からいたしましても、これはできる限り重要部分についてはみずからやるべきが当然だと思います。そういう点で大変疑問があると思いますけれども、それでは一体競馬の開催に必要な業務をどういう部門をどういう団体に委託をしているのか、その関係団体は幾つあるのか、お伺いをしたいと思います。
  75. 武田誠三

    武田参考人 競馬を開催してまいりますためにいろいろな業務があるわけでございますが、ただいま私どもの業務の中で外部機関に委託をしておる、あるいは仕事の一部をやってもらっております主なものは、一つは午前中も問題になりました発馬関係業務、特に発馬機につきましての整備、輸送を中心とした業務であります。それからもう一つは、私どもの馬券の発売並びにそれの集計、配当金の計算その他を電子計算機をもって行うわけでございますが、それに関します機器類の整備、補修関係業務、それから競馬の公正を確保してまいりますために馬に特殊の興奮剤等を与えたりいたしますことは禁止されておりますが、その関係検査をいたしますために、研究機関に委託をいたしまして採尿をし、そういう特殊な物品を使ったかどうかというようなことの検査を委託をいたしております。また、私どもの仕事は大ぜいのファンがお集まりになりますし、その間にはのみ行為その他の問題のある行為も発生することが間々ございますので、いろいろな意味におきましてそういった面の取り締まりでございますとかあるいは交通混雑等を整理をするというようなことに関連をいたしましての仕事を一部外部にお願いをいたしておるわけでございます。そういったものが主なものと考えております。
  76. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 競馬でスタートあるいはフィニッシュの状況を正確に把握をするということ、あるいはレース途中の管理等は、これは競馬の最も重要な部分だと思いますけれども、これがいずれも委託あるいは請負という形で行われておるわけですね。そうすると、競馬会は確かに最終的には責任は持つでありましょうけれども、実際の競馬そのものの最も重要な部分をみずからはやらないということでありまして、これは大変疑問のある運営の方法ではないかと考えます。そして競馬法あるいは日本中央競馬会法の精神から逸脱をする無責任な運営の仕方ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  77. 武田誠三

    武田参考人 競馬のスタート、発馬に関しましては、その機械の整備その他は発馬機会社にお願いをしてやっておりますが、馬がゲートに入りましてその一番大事なスタートの合図、操作、これは全部競馬会の職員が担当して責任を持って行っております。
  78. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そのほかに、共栄商事という会社があるようでありますけれども、ここで勝馬投票券をつくっていらっしゃるようですね。この勝馬投票券、馬券は、これは国で言えばあるいは紙幣に相当する、それこそ競馬開催の最重要な資材でありましょうけれども、これをしもみずからやらずに委託をするあるいは外注をする——外注ではなくて、これは共栄商事に委託をして共栄商事がさらにほかの会社に委託をして製造しているというふうに聞いておりますけれども、これではまるで競馬会さんが無責任だと言われてもいたし方がないと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  79. 武田誠三

    武田参考人 勝馬投票券の用紙並びにそれの印刷等の問題についての御質問であると思いますが、御承知のように、現在、勝馬投票券の発売業務のうち電子計算機を主体といたします機器の保守、管理等につきましては、きわめて専門的な技術が必要でございます。そういうようなことから、日本トータリゼータ株式会社に業務を請け負わせておりますが、いまの勝馬投票券の発売その他に関連をいたしまして、投票券は非常に特殊な紙であることを必要といたしております。これは機械の専門家と紙会社の研究機関の方とのいろいろ苦労をいたしまして開発をいたしました紙を使っておるわけでございますが、そういった意味で、これの途中の製作過程における検査あるいは検収等につきましては、専門家であります人々を抱えておりますトータリゼータをして常時監視をせしめ、大事な紙でございますので間違ったものができないようにということに心がけておるわけでございます。そういったものをさらに印刷会社に委託をいたしまして印刷をさせ、でき上がりましたものを本会で厳重に検収をしてこれを使っておる、こういうやり方をやっておるわけでございます。したがいまして、この勝馬投票券そのものの製造過程並びに発券につきましては私どもとしても十分監視をいたしておりますし、間違いのないように責任を持って処理をいたしておるつもりでございます。
  80. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、勝馬投票券の製造の技術、これは特殊な技術だと思いますが、これは共栄商事が持っておるのですか。
  81. 武田誠三

    武田参考人 共栄商事ではございませんで、いまトータリゼータの方に行わせております。
  82. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、共栄商事を通じてさらにトータリゼータ、こういうことですか。
  83. 武田誠三

    武田参考人 現在は共栄商事は全く間に入っておりません。かつて一時そういう経路で取り扱われたことがあったようには聞いております。
  84. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 投票券については共栄商事はいま関与しないということですか。
  85. 武田誠三

    武田参考人 馬券を手売りいたしておりました当時は共栄商事を使っておったようでありますが、現在のトータリゼータシステムによります発券をいたすようになりましてからは共栄商事は使っておりません。
  86. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、共栄商事のかわりにトータリゼータが今度は投票券もやっておる、こういうことですか。
  87. 武田誠三

    武田参考人 いまの勝馬投票券の発売の機械が非常に精巧なものでかつ能率のいいものを開発をいたしておるわけでありますが、したがいまして、それに適した紙質の紙というものを、先ほど申し上げましたように製紙会社の方とトータリゼータが共同開発をいたしまして、それが適当であるというように私どもも認めまして、その紙を使っておるということでございます。そういう意味で、トータリゼータにその紙のことに関しましては処理をさせておるということでございます。
  88. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、共栄商事がトータリゼータにかわったということであって、やはりこの委託という形は同じわけですね。  そうしますと、こういう重要部門を請け負わせるあるいは委託をさせる、そういう運営の仕方は法の精神からして大変疑問だと思いますけれども、どこにその根拠があるのか。諸法令の中でどこにそういう根拠があるのか伺いたいと思います。
  89. 武田誠三

    武田参考人 どこに根拠があるかという御質問でございますが、私どもの業務を私どもの責任のもとにおきまして最も合理的にかつ円滑に遂行していくということのために、たとえば馬券の製造からどういう馬券をつくるかということにつきまして私どもの方でそれを全部やったのでは、これはむしろ常識に反するといいますか、非常に不合理なことになるわけでありまして、どういう馬券をつくり、それをどれだけの数量をつくり、かつ適正にそれを収納し発売をしていくという検収以降の業務につきましては私どもが責任を持ってやっておりますし、どういう馬券をトータリゼータにつくらせるかということにつきましても私どもが責任を持って発注をしておるということでございますので、馬券の用紙の製造から印刷に至るまでのことをトータリゼータの方に委託をいたしておりますが、それにつきましては全部私どもとして監視の上、話し合いの上やっておることで、責任としてはすべて私どもが負っておるということで、特にこのことについて問題があるというようには考えておりません。
  90. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 問題のあるなしはいろいろ議論を進めていくうちでわかると思いますが、こういう委託運営の仕方をすることについて監督官庁である農林水産省とどういう話し合いをしているのか、また許可を得てあるのか、その経過を伺いたいと思います。
  91. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、中央競馬につきましての開催主体は中央競馬会でございます。その開催業務の中にいろいろな仕事があろうかと思いますが、開催主体としてのみずから行わなければならないものといたしまして、競走の実施それから勝馬投票券の発売、払戻金及び返還金の交付、こういったことは競馬会がみずから行わなければならないものと考えております。いまお話しのような競馬の施行に関して必要な業務の一部を特定の業務として外部に委託することは、いま申し上げたことと矛盾しない限りはこれを認めるということで、これは競馬会の事業計画あるいは収支予算につきまして農林水産大臣が承認をいたしておりますが、それらを通じ、また業務検査を毎年実施をいたしておりますが、その検査を通じ、適正に行われておるかどうかのチェックをいたしておるところでございます。
  92. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 現在、中央競馬会に直属をするいわゆる外郭団体、これは十三以上あると思います。こういうふうに各専門分野をそれぞれの会社、団体へ委託をすることが合理的なのだというふうに理事長さんはおっしゃっておりますけれども、これはまさに逆ではないかと思うのです。いま中央、地方の行政改革が論議をされておりますけれども、やはりそれと同じような問題がここにあるのではないかと思うのですね。本来中央競馬会がみずからやるべき問題をたくさんの部門に分けてわざわざそこに団体をつくり、請負あるいは委託をするということは、これはだれが考えても冗費、よけいな経費がそこから生まれてくるし、また責任の分野も明らかでない。中央競馬会が全責任を持ってやるべき競馬の運営についての責任の問題も当然そこから起こってくるわけでありますが、こういういわば無原則的な委託について、大臣はどうお考えですか。あるべき姿としてこれで理想的なのだ、将来ともにこれでやっていくのだというお考えであるのか、あるいはまた、この機構を再検討してより合理的な姿に改めようというお考えもお持ちであるのか、お伺いしたいと思います。
  93. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど来いろいろお答えをいたしておりますとおり、どうしても直接競馬会が責任を持ってやらなければならない問題、しかしながらいろいろ競馬を運営するに当たりましては専門的な技術あるいは専門的な機械、こういうものが必要なことはよく御承知のとおりだと思いますが、そういう面についてはかえって委託に出した方が効率的であるとか経費が安くつく、そういうことでいま委託に出されておると私は思うのでございます。もし万が一そういう趣旨でないならば、やはり委託というものについては考え直しをしなければいけないと思うのでございますが、私は、少なくともいままでのところはそういう趣旨が生かされておって委託に出されておった、こういうふうに判断をいたしておりますが、この発馬機の問題に絡みまして、いま中央競馬会について私どもいろいろメスを入れさせていただいておりまして、そういう点も今後検討の課題として考えていきたい、私はこう思っております。
  94. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 大臣がいま触れられたように、いままではそれでよかったという考えでおやりになったかと思いますけれども、発馬機の問題を初めいろいろの不合理な点が指摘をされておるわけですね。ですから、こういう点について中央競馬会のあり方あるいは競馬の運営についてもひとつ十分に再検討を願いたいと思うわけです。  それで、さらにお伺いしたいのですが、競馬会の資金運用の問題ですけれども、多額の貸付金があるということでありますが、その実態をひとつ伺いたいと思います。
  95. 武田誠三

    武田参考人 私どものところからいわば貸付金のような形で支出をされておりますものの一番大きなものは建設協力金でございます。これまで場外発売所の建設その他、本会の業務を遂行してまいりますために必要な施設建設に限定いたしまして建設協力金、貸付金をその都度予算に計上いたしまして支出をしてまいりました。現在、敷金あるいは建設協力金、そういった形で私どもが支出をしておりますものが大体百五十億程度に相なると思っております。
  96. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そこでこの建設協力金、これは性質は明らかに貸付金でありますが、その経理の方法が大変明らかでないと思うのです。その経理の仕方については、たとえば貸借対照表五十三年度によりますと、百五十四億の協力金があるわけですけれども、それが「その他の固定資産」ということで分類をされておるわけです。これはどういう考え方であるのか。この協力金は固定資産になってはいるでしょうけれども、固定資産の所有者は別でありまして、競馬会さんはその債権をお持ちになっているということだと思うのです。ところが、固定資産の中に入っておる。日本中央競馬会会計規程によりますと、その第三条に「本会の財政状態及び経営成績について、真実な内容を明りょうに表示すること。」というふうに規程にはあるわけですが、これはまさにそうでありまして、日本中央競馬会は全額政府出資の団体でありまして、これは国民の共有財産であるということであります。ですから、競馬会の皆さん方が十分おわかりになっていると同時に、国民に対してもこれはその経理状態が明らかでなければいけないわけであります。そういうことを意味しているわけだと思うのです、この中央競馬会会計規程は。真実な内容を明瞭に表示するということをみずからうたっておるわけでありますけれども、その経理の仕方は必ずしもそうなっていない。悪い言葉で言えば、この貸付金が「その他の固定資産」という形で隠れているような印象を与えるわけでありますけれども、その点はどうお考えでしょうか。
  97. 武田誠三

    武田参考人 建設協力金等につきましては、長期の貸付金と同様の取り扱いということで、貸借対照表上定められております様式に基づきまして「固定資産」の中に含め、その中で「その他の固定資産」という表示で明らかにしてきたつもりでおるわけでございます。昨今この協力金の金額等が、場外発売所等を多数つくってまいりましたようなことから大きくなってまいりました。したがいまして、この貸借対照表上の表示の方法につきましては、一般から誤解等を受けないように、先生からのお話もございますし、十分検討いたしまして、これについてより明らかになるようなことを検討いたしたいというように考えます。
  98. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 その点についてはひとつ十分の御配慮を願って、国民の目から見て明らかになるような経理の仕方を特にお願いをしたいわけであります。  次に、発馬機の問題でありますが、発馬機会社が、御承知のような経過でいま注目を集めておるわけでありますが、その契約の内容が残念ながら大変にずさんであったと言わざるを得ないわけであります。他の発馬機会社に比較をしても大変に高い。しかも、中央競馬会さんが審査をされるその内容についても大変甘いという印象を受けるわけであります。  請負金額の内容は機材の損料、補修機材費、人件費、旅費、特許料、輸送費等となっておりますが、そのうち特に補修機材費の査定が大変に不適切であった、こういうことが反省をされたんだと思いますけれども、最近になってこれが契約の変更をされたようであります。ところが、その契約の変更を拝見いたしますと、たとえば中山競馬場一日当たりの請負費が三百一万六千五百円であったものが百八十二万二千三百円と、約四割程度安くなっておるわけでありますが、その内容を拝見いたしますと、補修機材費、これが大変に問題があった。この補修機材費が実はこの契約の変更の中で六分の一程度に変更をされているわけですね。これはどういうわけであるのか。二割や三割安くするのであれば、これはわかるのですけれども、六分の一に減額されておる。全体としても四割安くなっておるということでありまして、こういう点、これは大変残念なことを予想せざるを得ないわけですけれども、その辺の事情はいかがになっておりますか。
  99. 武田誠三

    武田参考人 ただいま先生から御指摘がございました点がそもそも今回の事件の根幹であったと思うのでございますが、過去の実績、いわゆる補修機材の使用数量並びにその単価につきまして水増しの請求がされておりましたものを私どもとして十分にそれを発見できなかった、その偽造されておったことを発見できなかったということからいろいろな問題が出てまいったわけでございます。そこで、五十四年度の契約につきまして、これは前のまま経過いたしますことはどうしても避けなければなりませんので、十二月の下旬にその補修機材につきましての数量並びに単価について、実際の納入単価等に基づきまして改めて一年間の所要金額を出し、それによって契約を改定をいたしたわけでございます。その結果お話のような差が出てきたということで、これにつきましては、今後さらにいろいろな点につきまして五十五年度の契約につきましても適正に契約が結べますように努力をいたしてまいりたいというように考えておる次第でございます。
  100. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 発馬機会社の方でいわゆる裏金をつくったとか、あるいは別会社をつくったというようなことが言われておりますけれども、いま理事長さんのお話で、ここに問題があったというお話でありますけれども、いわゆる裏金がつくられたその手口といいますか経過といいますか、これをもう少し詳しく伺いたいと思います。
  101. 武田誠三

    武田参考人 いまお話しの裏金の問題でございますが、これは発馬機会社の小山専務その他がどういう動機で、かつまたどういうふうにやってきたかという経過、あるいはその裏金がどうなったかということにつきましては、いま捜査当局の手にゆだねておりますので、具体的には私どもとしては把握いたしかねておるわけでございますが、そういう大きな差額が出てきたということは、四八型の発馬機を採用をし、それを使っていきます際に、これは初めての機械でございますので、どの程度の補修機材が必要かということについて全く初めての経験でございますので、それがどのくらいかかるかということをチェックして翌年のあるいはその年の契約単価に誤りなきを期したいということで、補修機材につきましての使った数量あるいは単価等をチェックする方法をとったわけであります。その間におきまして、そのチェックシステムが不備であった、あるいはまた私どもの方として体制が不十分であったというようなこともあり、また発馬機会社の方から、その点につきましてわれわれの信頼を裏切ってきわめて巧妙な偽造をされたというようなことの結果起こってきたものでございます。このお金の額、あるいはそれがどういうふうに使われておるか、どうなっておるかということにつきましては、司直の捜査をまちたいというように思っておるわけでございます。
  102. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 見逃したというお話でありますが、これは中央競馬会さんから出る金と発馬機に入る金は一致していなければならないわけでありますから、そのくらいのことがわからない、長期にわたってわからなかったということは、これはちょっと理解がいかないわけであります。しかも中央競馬会さん及び発馬機にしても、幹部はいずれも優秀な方々がそろっておるわけでありまして、農林行政にも競馬運営にも練達の士がそろっておるわけでありますが、こういう中でそれが行われたということはちょっと理解ができないわけであります。そういう点で、発馬機に関して中央競馬会さんはどの程度の指導をし監督を常時やっておられるのか、やってこられたのか、伺いたいと思います。
  103. 武田誠三

    武田参考人 この発馬機関係の今回の事件につきましては、決算報告書まですべてきわめて巧妙に偽造されておったというようなことがございまして、私どもとしてもその間のからくりを見出すことができなかったということでございますが、今日まで私どもとして、外郭機関等につきましては監事の調査その他のことを通じましたり、あるいはまた当方から競馬会関係の出身の役職員等も出ておりますので、そういう線を通じたり、いろいろな面で、あるいは株主となっております株主権の行使というようなことから、できるだけそういうようなことのないようにというつもりで行動はしてまいったつもりであるのでございますが、いろいろとこういった問題が出まして、反省させられるところも多いわけでございまして、中央競馬会の内部の監査機構あるいは契約関係の人員、能力の充実、さらにまた私どもの外郭機関に対します検査監督といったことの強化を今後一層強めてまいりたいというように考えておるわけでございます。
  104. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 競馬会の幹部にしてもあるいは発馬機の社長さんにしても、これは農林省のえらいお役人さんだった方ですね。そういう方々がお互いに連携、協力をしながら運営しているわけですから、その程度のことがわからないというのはちょっと理解ができないですね。競馬の合理的な運営をされるためにそういう機構をおつくりになってやっておったわけでありますが、たまたまそういう合理的な機構の中からこういう大失敗が起こったということでありまして、そういう点からもやはり現在のあり方を再検討していただかなければならないと思うわけでございます。  五十四年度の契約を変更されたということでありますが、これは五十四年度の一月一日から実施をされることだと思いますが、さらに五十三年、五十二年、五十一年と大体同じような手口で裏金がつくられたということが推定されるわけでありますが、そういたしますと過去の責任は果たしてどうなるのか。それだけ国に対して理屈から言えば損害を与えておるわけでありますね。五十四年度で二億七千七百十六万、これだけよけいに水増しをしてあったということを競馬会でも認めておるわけでありますから、前年度あるいは前々年度その前と同じようにこういう水増しがしてあったはずでありますが、そういった点の責任あるいはどう処理をされるのかを伺いたいと思います。
  105. 武田誠三

    武田参考人 恐らく五十三年度、五十二年度等におきまして、相当額の金額が本来結ばれるべき契約額以上に発馬機会社の方に渡ったというように私も思います。過去から今日までの責任等につきましては、現在中央競馬会に勤務をいたしております役職員につきましては、近日中に厳正なかつ公正な処分をいたしたいというように考えております。
  106. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 さらに特許権の問題があるわけですが、発馬機会社が使っておる発馬機については幾つかの特許あるいは実用新案が含まれておりますけれども、そしてこれらの特許権に対しては発馬機会社の方からそれ相当の特許料を支払っておるはずであります。ところが、この特許権が競争馬用の発馬機を初め四件の特許と実用新案がある中でそのうちの二件について、競走馬用発馬機JSG四八型、それから発馬機用後扉のかかりどめ装置、この二つの実用新案については当初は会社が持っておったものを小山氏個人に名前を変更しておるという事実があるようであります。これはどういう事情あるいは経過によるものでございますか。
  107. 武田誠三

    武田参考人 特許権に関します名義が小山の方に二件について移っておりますのはいま先生のお話のとおりでございますが、これが発馬機会社名義から小山名義に移りました経緯につきましてはいろいろと調べてはみておるのでございますが、小山とも接触ができませんし、その間のいきさつにつきましては、まことに遺憾ながら現在の段階では不明でございます。
  108. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 発馬機会社とそれから中央競馬会は、人脈からしても組織の上からしても一体のような緊密さがあると思いますね。なおかつ、そういう状況の中で、特許権の所在がわからないということはこれはどういうことでしょうかね。特許権というのは、これは重要な財産権の一部であるし、また契約の内容の重要な部分をなすわけだと思います。その特許権の所在がわからないままに会社から個人に移っておる。こういうことについて果たしてどう認識をされておるのか、伺いたいと思います。
  109. 武田誠三

    武田参考人 今度の事件に関しましては、はなはだ不明をおわびするわけでありますが、私どもとしても実は大変にびっくりしたようなことが多いのでございます。競馬会の出身者が社長として就任をいたしており、また監査役としても入っておったわけでありますが、それ以外の小山専務以下いわば一かたまりになって、どうも競馬会から参りました人たちを上手にだましていたというようにしか考えられないことがきわめてたくさんあるわけでございます。そういう仕組みの中でこのようなことが起こりまして、私どもとしては、はなはだその間に不明であったことをいまさらびっくりもすると同時に、強く反省をしておるということでございます。先生のおっしゃいますように、常識ではどうもおかしいと思われるようなことが現実に起こりましたことにつきまして、まことにどうも何とも釈明のできない形であるというように考えております。
  110. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 不明とおっしゃいますけれども、それでは済まない問題ではないかと思いますが、これについては今後ともひとつよほどの反省と、運営についても再検討を願わなければならないと思うんですが、そうしますと、先ほど申し上げた五十四年度の契約の変更にいたしましても、新しい契約はどういう検討を経てどういう根拠のもとに、たとえばこの補修機材費で言えば、三億三千二百七十五万であったものが五千五百五十九万になった。これはどこの何を根拠にして前の査定をされたのかあるいは後の査定をされたのか、両方の査定ともにまた疑わざるを得ないという事態になるわけですけれども、何を根拠にこの五千五百五十九万という新しい査定をされたのか、これを御説明いただきたいと思う。
  111. 武田誠三

    武田参考人 改定をいたしましたのは補修機材に関する部分でございまして、これの現実に使われた数量並びに仕入れ単価と考えられますものを基礎にいたしまして改定をいたしたわけでございます。  五十五年度の契約を締結するにつきましては、補修機材の数量なりそれら機材の市場価格というものを改めて精細に検討いたしまして、適正な契約にいたしてまいりたいというように考えております。
  112. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 仕入れ単価とおっしゃいましたけれども、そうしますと、これは発馬機会社が仕入れをするその価格ですか。そうしますと、仕入れ先のメーカー等についてはどういうことになるのですか。
  113. 武田誠三

    武田参考人 これは、発馬機会社がエス・イー・エスから機材を購入した形になっておりますので、そのエス・イー・エスが各部品メーカーに発注をしてつくらせました場合の単価を私どもの方で掌握をいたしましたので、それに基づいて算定をしたということでございます。
  114. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、中央競馬会は発馬機会社にその調達を命ずる、発馬機会社はエス・イー・エスから仕入れて、エス・イー・エスを通じて調達する、エス・イー・エスは発馬機会社から注文を受けて、それをどこかの会社にさらに発注をしてその資材を調達する、こういうことですか。  そういたしますと、実際に、現実に部品、機材等を調達するのは、製作をするのはどこでやりますか。
  115. 武田誠三

    武田参考人 発馬機のいろいろな修理部品でございますので、これは小島製作所その他きわめて多数のメーカーでございます。
  116. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 そうしますと、先ほどからも問題になっておりましたように、中央競馬会は合理的な運営をされておるとおっしゃいますけれども、明らかに二つの無用な仲介者がいるんじゃないでしょうかね、エス・イー・エスあるいは発馬機会社。そうじなくて、仮にじかに中央競馬会さんがメーカーに発注をして、そしてしかるべき技術者にこれを担当させる、管理をさせるということであれば、経費も安くなるし、こういう問題も起こらずに済んだはずでありますが、そういう点についての御反省はございませんか。
  117. 武田誠三

    武田参考人 発馬機に関します仕事につきましては、いまの新しい発馬機を開発するということで、現在の日本発馬機会社にそういった機械の開発を行わせたわけでございますが、それについての各種補修、維持管理ということを中心に日本発馬機会社に今日まで委託をしてまいったわけでございます。今後これをどういうふうにしてまいりますかということにつきましては、競馬の発馬をいたします機械でございますので、いまの姿で当面これを維持し、かつ遂行していく以外にないと思っておりますが、将来どういう形がいいかということにつきましては、さらに十分な検討をいたしたいと思っておりますが、発馬に関します仕事あるいはこれの補修その他、業務はきわめて特殊な業務でございますのと、専門的な知識も多分に必要でございます。かつまた、この機械を十の競馬場並びに二つのトレーニングセンターを通じまして、始終適正な状態で輸送、配備その他をしてまいります関係上、これを私どもの中央競馬会の職員で直接担当してやる方がよろしいのか、あるいはこういう特殊な業務あるいは特殊な労務等につきましては、いままでのような形あるいはそれに準ずるような形の方が合理的、かつ経済的にも各種管理の上からも適正であるかということにつきましては、十分検討をさしていただきたいというように考えております。
  118. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 まだ特許の内容あるいは特許権の移動の経緯、あるいはまた新しく査定をされた金額の根拠等、不明な点がたくさんあるわけでありまして、時間がありませんので、それらの点についてはさらに別の機会でお願いを申し上げたいと思います。  一応発馬機の問題、中央競馬会の問題については、以上で終わりたいと思います。  あとわずかしか時間がございませんけれども、農政本来の点について若干お伺いをいたしますが、ことしの農林省の発表によりますと、農家の農業所得は三年間連続伸び悩みということでございます。そして、他の産業はかなりの好調を回復しておるにもかかわらず、農業生産、農業所得は依然として停滞をしておるということでありますが、これについての基本的な認識、あるいはその原因について、大臣はどうお考えになっておりますか。
  119. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもといたしましては、やはり農業を一生懸命やっていただける方々の所得がより高まっていくように努力をしなければいけないのは当然でございまして、どうもここ数年来農業がどちらかというと後ろ向きの状態にございますので、何とかそれを前向きの方向に持っていきたいということで、いま農政審議会にもその見直しをお願いしておるということでございますし、私ども、いろいろ議論がございましょうけれども、この国会で農地法の改正その他を持ち出していろいろと御審議を願いたいと考えておりますのも、一つには、これからの農業の新しい方向としては、ある程度経営基盤の拡大をしていかなければ結果的に所得の増大につながらない、こういう考え方を持っておるわけでございまして、そういう考え方で、これからできる限り農業所得の増大を図るように私ども努力をしていかなければならぬと考えております。
  120. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 世界的には食糧の絶対的な不足という状況があるわけであります。そして、農家の生産力も、これは本来ならば積極的に開発をしていかなければならないわけでありますけれども、日本の農業、特に米という大きな問題がありまして、生産力を政策的に抑制をしておるという非常に矛盾したあり方、これはやむを得ない事情がありますけれども、こういう状況の中にあるわけであります。農業生産力を全体として増強し、そして米についてもその中で問題を解決しながら全体の生産力は上げていくという方向を強くとっていかなければ、これは国の百年の大計のために非常に心配だと思うのですが、そういった点についての大臣のお考えはいかがですか。
  121. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 世界的に人口が増加をし、食糧の将来の需給関係についても、私はタイトになっていくと思います。ただ、日本の国内の現状を見てまいりますと、いま先生も御指摘のとおり、どうもお米は過剰ぎみになり、一方において小麦その他については非常に自給率が低い、こういう状態があるわけでございまして、将来を考えれば、強制的にお米を食べていただきたいというわけにはまいりませんけれども、できる限り私どもは、やはり日本人の主食は米でございますので、できる限り今後とも米の消費拡大を図りながら、しかしそれにもある程度は限度があろう、そしてやはり食生活の多様化にはある程度は応ぜざるを得ないだろう、こういうことで、米を含めた全体的な食糧の自給力をどうすべきかということで、先ほども私申し上げましたが、農政審議会にその辺の見直しもお願いしておるわけでございまして、そういう方向で今後、先ほど申し上げたように、水田利用再編対策も、後ろ向きというよりは前向きに私どもは取り組んで、そういう方向に持っていきたい、こう考えておるような次第でございます。
  122. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 時間でありますが、あと一問だけお願いしたいと思うのですが、政府は消費者米価を上げようとする考えがあるのか、むしろこれは引き下げを図るべきではないかと思うのですが、その点。  それから、水田転作ということがいま要請をされておりますが、この転作については、もう少し政策的な価格政策、特に支持価格の制度をもっと整備をする必要があるのではないかと思います。この転作部分についてだけ特に支持価格設定をするお考えはあるのかどうか。  それから、基盤整備ということを、かなりこれは言われておりますが、基盤整備がややもすると水田の方にウエートがかかりがちである。むしろ現在の水田は埋め立てをするなり何なりをして、畑の基盤整備を重点的に考えていくことが現在の実態からして必要ではないかと思いますけれども、その方向性でございます。  それからこれはしばしば言われておりますけれども、対外援助に米を十分に充てることができない隘路はどこにあるのか。  それから学校給食についても、米食化が実際は遅々として進まないようでありますが、その隘路はどこにあるのか。  それから米食をこれはもちろん強制はできませんけれども、米食率を高めるいろいろな施策があるはずでありますけれども、それがかけ声倒れで余り進んでいないようでありますけれども、それらの点についてのお考えと今後の方針をお伺いをいたしたいと思います。
  123. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  価格政策の問題につきましては、現在、転作作物の定着を図る上から価格政策が重要な意味を持っておりますことば御指摘のとおりでございます。私どもは、価格政策の適正な運用とあわせまして、生産性の向上、規模拡大等の観点から生産構造政策も進めていくというような観点に立ちまして、現在、農政審議会に総合的な検討をお願いしているということでございます。  水田の畑地化につきましては、基盤整備事業等で特別な事業を組んでおりますのと、特に基盤整備事業の中では五十五年度予算におきましても、予算要求におきましては排水事業等を中心にいたしまして、水田条件整備していくということに配慮いたしております。  また、米自体の対外援助の関係でございますが、過剰米の処理の計画の一環としてすでに輸出米等の扱いがされておりますが、計画よりも相当大幅に上回り、五十四年度におきましてはおよそ九十万トン近くに達するのではないか。予定よりはかなり進めておりますが、これは国際的な条件の中でさらに検討し、進めてまいりたいと思います。  学校給食につきましては、五十四年から大幅な値引き制度を実施いたしまして、さらに五十五年度につきましては、米価の引き上げに伴います学校給食に関しましても上昇分があるわけでございますが、これも据え置くことにいたし、学校給食のさらに拡大を図りたいと思いますし、現実にも相当普及状況は進んでおるように私どもとしてはとらえております。  なお、消費一般についてのことにつきましては、五十五年度予算におきましても地域ぐるみの米消費対策ということで、市町村を中心にいたしまして農業団体等、それぞれ市町村段階で地域ぐるみで米の消費を拡大、確保していくという運動を起こすようになっておりまして、国としましてもそうした運動に対しまして適切な助成をいたしていきたい、このように考えております。
  124. 新村勝雄

    ○新村(勝)委員 終わります。
  125. 高田富之

    高田委員長 春田重昭君。
  126. 春田重昭

    ○春田委員 最初に私は、国際情勢をめぐるわが国といいますか農水省の対応について、若干御質問したいと思います。  まず第一点は、国際問題になっておるアフガニスタンの問題です。この問題につきましては、わが国に対して全く影響がなしということは言えない要素をはらんでいると思います。また、いつの間にか出てまいりました防衛庁に絡むスパイ事件、こうした問題が農水省関係において、特にこの春行われる予定であります日ソのサケ・マス漁業交渉にどういう形であらわれてくるか。わが国としてはソ連に抗議をしておるわけですから、そういう点で関係者の間ではずいぶん心配されておるわけでございますけれども、この問題に対しまして農水省の考え、またソ連側からどういう実際の出方があるのかどうか、その辺の問題をまずお尋ねしたいと思うのです。
  127. 今村宣夫

    ○今村政府委員 アフガニスタンの問題に関連をいたしまして、漁業の分野でソ連から何らかの意向の表明をいたしておることはございません。したがいまして、現段階でこの問題が日ソのサケ・マス交渉にどういう影響を与えるであろうかということを申し上げる段階ではないわけでございますが、私たちとしましては、今後とも北洋におきますわが国の漁業の維持、安定ということに十分の配慮をし、そういう方針で対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  128. 春田重昭

    ○春田委員 この日ソサケ・マス交渉の割り当て量でございますけれども、昨年は四万二千五百トンですか、その前も四万二千五百トンであったと聞いております。その前は六万二千トンであったと聞いております。そういう点で昨年は前年と同じ量であったわけでございますけれども、その前からしてはやはり減ってきているわけですね。年末に行われました漁業交渉でも、割り当て量は一緒だったけれどもスケトウが一万減ってきたということで、交渉においては常にわが国としては守勢に立っているわけですね。  そういう点で、この問題につきまして大臣にお答え願いたいと思うのですが、今回のスパイ事件においては、わが国は被害者の立場であるわけですよね。その点では、この交渉で向こうがどういう形で出てくるかわかりませんけれども、恐らく強い姿勢で向こうは出てくるでしょう。それに対して農水省としては、この問題は実際は防衛庁の問題でございますけれども、農水省としてはやはり強い姿勢でこの問題をひとつ絡めていく必要があるのじゃないかという一つの案を私は持っておるわけでございますけれども、大臣としてはどのようにお考えですか。
  129. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま水産庁長官からもお答えをいたしましたように、私ども現時点でどういう影響が出てきておるということはまだございません。しかしいま先生御指摘のとおり、現在のいろいろな情勢を踏まえて想定をいたしますれば、ことしのサケ・マス漁業交渉においては相当強い姿勢で出てこられるし、こちらはいままで以上に守勢の立場に立たざるを得ないということは十分予想されるわけでございます。しかも昨年暮れのあの日ソの漁業協定を結びますときにおいても、どうも魚族資源の評価の問題においては、サケについては相当不漁であるというようなことがすでにソ連から指摘をされておるということで、それでなくてもことしのサケ・マス交渉は相当厳しい情勢下で行わざるを得ないと思っておりましたときにこういう事態でございまして、私どもそういう点を非常に憂慮いたしておりますが、しかし北洋漁業に携わる漁民のことを考えれば、私どもできる限りの努力を今後ともしなければならないという気持ちは十分持っておるつもりでございます。
  130. 春田重昭

    ○春田委員 それからもう一点は、アメリカの対ソ制裁措置の一つとして穀物の輸出停止をソ連側に対してやったわけですね。聞くところによりますと、一千七百万トンぐらいあるらしいのですが、この浮いた分を日本で当然買え、肩がわりしろという話が、アメリカ側からちょっと打診があったように聞いているわけでございますけれども、この点はどうでございましょう。
  131. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだ私どもには正式には何もございません。この間来日いたしましたアメリカの議員団の一人が総理にそういう話をしたということは新聞報道でも承知をいたしておりますが、私自身、フォーリー農業委員長とお目にかかる機会が非公式にございましたが、その席においても正式には何もございません。そういうことで、いまの段階においては私どもとしてこれに対してコメントする立場にございませんので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  132. 春田重昭

    ○春田委員 それでは本題の質疑に入ってまいりたいと思います。  まず、会計検査院の方にお伺いいたしますけれども、午前中も報告のあった五十二年度決算報告の中で、特に掲記を要すると認めた事項の中で、灌漑排水事業の三地区についてその概要説明があったわけでございますが、再度この問題につきまして具体的に御説明いただきたいと思います。
  133. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 御説明申し上げます。  五十二年度の決算検査報告に特に掲記を要する事項として掲記したのは、ただいま先生がおっしゃったとおりでございますが、これは御承知のように、特定土地改良工事特別会計経理によりまして農林水産省直轄によって実施しております灌漑排水事業に関するものでございます。  その事態を申し上げますと、一つは静岡県下で施行されております静清庵灌漑排水事業でございます。この事業は、四十六年度に総額二百九十四億二千万円で着手したものでございますが、五十二年度末までに揚水施設等の一部を六十五億三千七十万余円で施行した段階におきまして、御承知のようなミカン営農の採算悪化、こういったことが原因となりまして計画の再検討という段階に至ったわけでございます。五十三年度からの新規の着工を見合わせておりまして、建設いたしました施設、水路等が遊休しているという事態でございます。  その二は、岐阜県下で施行されております西濃用水灌漑排水事業でございます。四十三年度に総額百七億六千万円で着手したものでございますが、五十二年度末までに頭首工等の一部を七十四億七百七十三万余円で施行しましたものの、工事予定土地所有者等との話し合いが進展しませんで、このため取り入れ口水路工事を施工することができずに頭首工等の施設が遊休しているというものでございます。  最後の兵庫県下で実施されております東播用水灌漑排水事業は、四十五年度に総額三百十八億八千万円で着手したものでございますが、水利権者との話し合いがつかないために、五十二年度末までにダム建設関連工事等を百二十四億五千八百九十三万余円で施行しましたが、ダム建設に着手することができない、こういう事態でございます。  この事態につきましては、投下した事業費が長期間にわたって休眠し、事業効果の発現が著しく遅延するばかりでなく、これに対します対策を講じないまま推移いたしますと、さらに事業費増加金利の累増となりまして、国の負担ばかりでなく、事業関係されております県及び受益者負担増加するものでございますので、特段の配慮が必要という事態でございます。
  134. 春田重昭

    ○春田委員 この種の事業特別会計になっておるわけでございますけれども、会計検査院の指摘の中で、こうした特別会計実施する事業はおおむね七年以内で完了することが要請されるという形になっておりますけれども、この根拠は何かあるのですか。
  135. 杉山克己

    ○杉山政府委員 一般的に事業はなるべく早期に完成することが望ましゅうございます。ただ、特別会計実施いたします事業は、規模が大きいのと、したがってこれに伴う負担額、これが国におきましても、公共団体におきましても、地元の農業者におきましてもかなり大きな額になる。それからまた技術的にもかなり検討を要する大規模な工事ということにもなりますので、実際の可能性等を考えましてある程度の期間を見込まざるを得ない。一般的には七年ないし八年といったようなことが目途になりますけれども、現状は地区数がなかなか多いというようなこともございまして、それよりも若干長期化して工事が完成するというような現状にあるわけでございます。
  136. 春田重昭

    ○春田委員 特に検査院から指摘されたこの三地区、いわゆる静清庵が四十六年でしょう。西濃用水が四十三年にかかっている。東播用水が四十五年ですから、おおむね十年近くかかっているわけですね。そういう点から言ったら、非常に長期間かかっているということで、非常に能率が悪い、効率が悪いわけでございますけれども、この時点では五十二年でございますが、現在五十四年度に入っているわけです。現時点ではこの三地区の進展状況はどうなっているのか、簡単で結構でございますから、お答えをいただきたいと思います。
  137. 杉山克己

    ○杉山政府委員 現状につきまして、またそれに対する御意見は、会計検査院からその説明があったとおりでございまして、私どもその御指摘も受けまして、その後事業の促進方に努力してまいっているところでございます。  まず第一の静清庵地区の問題でございますが、これはミカン価格が低迷しているというようなこともございまして、現地でもってなかなか負担が受け入れ切れないというような事情が生じてまいったわけでございます。これらの事情を検討いたしまして、五十三年の十一月に静岡県知事から事業計画についての再検討方要請が出されております。そこで、所管しております関東農政局静清庵地区事業計画検討委員会というものを設けまして、そこで灌漑方式それから施設計画を検討した上、事業計画の内容の見直しを行うということにいたしております。それから一方、静岡県におきましても、これは単にこの用排水事業工事の問題だけでない、ミカン経営農家の経営問題も絡むわけでございますので、担当課におきまして、対策室を設置いたしまして地域果樹振興計画を策定しているところでございます。今後は、ただいま申し上げましたような国の計画自体の見直し、それから県の振興計画について総合的に調整を行いまして、関係方面と協議した上で、できるだけ早い機会に工事再開に持ってまいりたいというふうに考えております。  それから西濃用水灌漑排水事業でございます。これは、揖斐川から水を取り入れるということでございますが、その幹線水路が通ります途中、そこの土地を持っている権利関係者、利害関係者から通過するについての権利調整問題についての要望が出されております。この点についての交渉がいままで長いことかかっておったわけでございますが、会計検査院から指摘を受けました事項につきましては、その後、五十三年の十二月に地元の国営西濃用水協議会の会長とそれから利害関係者の代表である下岡島区長との間でもって交渉の妥結を見ております。覚書も締結されましたので、これに基づきまして現在個々の地権者との間で用地補償交渉が行われているところでございます。したがって、近いうち本水路の完成が見込まれるというふうに私ども見ております。  それから、東播用水灌漑排水事業でございますが、これは既存の畑あるいは開畑、こういったところに対する用水補給として水源を加古川水系に求めて事業着工にかかったわけでございますが、何分にも利水の形態が非常に複雑で、多方面にわたっております。その関係水利権者との権利調整、同意取得に時間がかかったわけでございますが、その後、会計検査院の検査を受けました以降処理に努めまして、五十三年九月時点では未同意、同意の得られなかったものが十六件でございましたが、五十四年九月には六件、現在時点では三件と減少してまいっております。残された三件についても見通しが立っておりますので、本年度中には解決して、本格的な水源施設工事実施するという予定にいたしております。
  138. 春田重昭

    ○春田委員 ただいまの説明では、西濃と東播につきましてはある程度めどがついたみたいでございますけれども、静清庵がちょっとむずかしいような話でございます。五十五年度に事業開始ができるのかどうか、その辺の見通しはどうなんですか。
  139. 杉山克己

    ○杉山政府委員 率直に申し上げまして、五十五年度中に事業を再開する、工事を続行するということはむずかしいと考えております。もう少し時間がかかると見ております。
  140. 春田重昭

    ○春田委員 先ほども言ったように、四十六年から事業を開始しているわけですよね。今日、ほぼ八年たっているわけですけれども、五十五年度もむずかしいとなったら、これは相当長期化するんじゃないかと思うのです。工事の進捗状況は、この静清庵につきましては現在どれぐらいいっているのですか。何%ぐらい進んでいるのですか。
  141. 杉山克己

    ○杉山政府委員 比率にしまして二三%程度現在までできております。
  142. 春田重昭

    ○春田委員 八年かかって二三%、約四分の一でしょう。それは主要点がある程度解決したら一挙に進むのではないかと思いますけれども、それでも残りは四分の三、これは相当長期化するわけですね。そうしたら、先ほど検査院からの報告もあったように、かなりの資金運用部資金を使っておるわけですから、金利も相当かさむでしょうし、効率が悪い。最終的にはそれが全部県や受益者負担になってくる。国の持ち出しも当然増加してくると思うのですね。こうした事業、もうあと何点か指摘いたしますけれども、こうした事業というのは地元交渉がありますから非常に難交渉もあると思いますけれども、非常に甘いやり方になっているということを指摘せざるを得ないのですね。  この問題はさておきまして、実は、そういう点でこれと同じたぐいのものがかなりあるわけです。同じく五十二年度の決算報告の中にあります「特定土地改良工事特別会計」の中で五十二年度の業務実績が出ておりますけれども、「かんがい排水事業四十地区、干拓事業六地区、農用地開発事業四地区の実施である。」その次から問題なんですね。「このほか、本年度に工事を休止し又は未着工となっている地区が四地区あり、」また「事実上事業は完了したが負担金を徴収するに至っていない地区が六地区ある。」こうさらりと書いてありますけれども、これは非常に問題だと思うのですね。  そこで、この地区についてさらに御質問したいわけでございますけれども、当然負担金を徴収すべき地区が六地区ありながら取っていない。これが検査院の報告の中にあるわけです。この六地区の名前を挙げて、それからその負担金は大体どれぐらいなのか、当然取るべきお金はどれぐらいなのか、あわせてお答えいただきたいと思います。
  143. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 お答え申します。  六地区と申しますのは、印旛沼干拓事業、大和平野灌漑排水事業、王喜・埴生干拓事業、阿知須干拓事業、有明・福富干拓事業、横島干拓事業の六地区でございます。そしてそれぞれの地元負担金でございますが、五十三年度末現在で、印旛沼は二十一億三千五百八十九万余円、大和平野灌漑排水事業は三十一億四千七百八十五万円、王喜・埴生干拓事業は一億四千二百五十万円、阿知須干拓事業は四億四千七百八十八万円、有明・福富干拓事業は八億三千万円、横島干拓事業は七億五千三百八十二万余円、合計で七十四億五千七百九十五万余円でございます。このうち五十三年度末で事業完了の手続を了しまして、負担金額を確定いたしたものは印旛沼干拓事業と横島干拓事業の二地区でございます。その負担金確定額は合計で二十八億八千九百余万円でございます。その他の四地区の負担額につきましては五十三年度末までの事業施行額によって概算したものでございます。
  144. 春田重昭

    ○春田委員 会計検査院から報告があったように、この六地区の負担金未収額が合計したら何と七十四億あるのです。五十三年度時点で印旛沼と横島が解決して、二十八億差し引いたとしても四十六億ぐらいあるんですね。当然徴収すべきお金が取られていない。相当多額の投資をし、完成しながら、取っていない。これはどういう点に原因があるのかと疑うわけでございますけれども、印旛沼と横島は五十三年度に解決したということでございますから、あと残り四地区の見通し、またなぜそういう負担金が徴収されないのか、その辺の原因等につきまして御説明いただきたいと思います。
  145. 杉山克己

    ○杉山政府委員 四地区ございますが、そのうちの山口県の王喜地区は実は干拓地の、これは埋め立てたところで新しくできた土地なものでございますから、その境界をどう設定するかという問題があったわけでございます。そこで下関市と山陽町の間でこれが懸案になっておったわけでございますが、この問題は解決を見ました。そこで早急に農地としての土地利用が行われるよう土地配分にかかわる調整を進めているところでございます。その意味で見通しが立っております。  それから阿知須地区は、これも山口県でございますが、当初見込みました入植の申し込み者の数が、その後の水田抑制そのほかの一般的な条件の悪化等もございまして、きわめて少数であった、適格者が少なかったというようなことで、なかなか実際の配分が行われないという状況になっております。そこで、その地区で対象者を求めておりましてもなかなか見通しが立ちませんので、もちろん農業的土地利用が基本ではございますが、その一部について、農業利用だけではなく、多目的な土地利用も含めた検討を行う、そして全体の土地の利用を具体的に進めていきたいということで、関係県、山口県でございますが、それから町と協議を進めているところでございます。  それから佐賀県の有明地区でございます。この地区は、やはりいま申し上げました阿知須地区と同じような条件の変化等に伴いまして積極的な入植者がなかなかみつからない、特に水田から畑利用へ土地利用計画を変更するということをやっております間、希望者が出ないというようなこともありまして、選定作業を中止するということになったわけでございます。これらの問題につきましては、さらに土地利用計画、土地配分について地元との調整を求めまして、新しい入植、増反希望者等を募りまして、その調整が終わり次第早急に土地配分を行いたいというふうに考えております。  それから大和平野地区、奈良県でございます。これは、和歌山県と奈良県との間の紀ノ川をめぐる水利権問題が絡んでおります。それから、水路敷地に係る地上権設定の点についても問題が残っておりますので、まだ五十三年度までは負担金を徴収することができなかったわけでございます。しかし、五十三年度に、これは県と国との間のことでございますが話がつきまして、五十四年度から負担金の償還については県が責任を持って行うというようなことになりまして、県は五十四年度予算にも計上しているという状況になっております。  そういうことで、進行度合いに差はありますが、いずれも解決方に向かって一歩を進めてきておるところでございます。
  146. 春田重昭

    ○春田委員 ただいまの説明では、大和平野と王喜につきましてはある程度めどが立ったということでしょう。ところが阿知須と有明というのは調整中ということですね。調整中ということは、大体まだはっきりした見通しが立っていないわけでしょう。その点、もう一回明らかにしてください。
  147. 杉山克己

    ○杉山政府委員 阿知須の方につきましては、農業だけで完全に利用するということについては見通しは立っておりません。そこで、多目的、多用途に充てることも含めまして、干拓地の利用計画をつくるということで県、町といま協議をしておるところでございます。そういう全体的な方向を示せば、早急にとはまいりませんが、これはめどが逐次立ってまいるというふうに考えております。なお若干の時間を要することと考えております。  それから、有明地区については新しい入植、増反希望者との調整を図っておるわけでございますので、条件等についての検討を行って、これら入植者の数が満たされるように努力するということでいま努力いたしておるところでございます。なお若干の時間はかかりますが、できるだけ早目に調整を終わって、早急に土地の配分を行いたいというふうに考えております。これは農業者だけで何とか配分を終えたいというふうに考えております。
  148. 春田重昭

    ○春田委員 結論から言えば、まだ見通しが立っていないということですね。  ところで、この特別会計事業資金の内容、内訳ですけれども、どういう資金が使われているのですか。
  149. 杉山克己

    ○杉山政府委員 特定土地利用特別会計は、国の一般会計からの繰り入れと財投資金の借り入れということによって事業費を賄っております。そして受益者はこれを長期にわたって負担分について償還を行っていくということで事業の執行、資金の償還を行うということになっておるわけでございます。
  150. 春田重昭

    ○春田委員 この国と地元と受益者負担割合は何%なのですか。
  151. 杉山克己

    ○杉山政府委員 原則的に国七五%ということになっております。
  152. 春田重昭

    ○春田委員 そうすると、残り二五%が県と受益者となるわけですね。その県と受益者負担割合は明確にはないのですか。
  153. 杉山克己

    ○杉山政府委員 資金調達としては、その二五%が財投資金によるわけでございますが、これは借入金ということで受益者が償還することになります。その場合、これは売り渡しでございますから、買い手が全額負担するというのが本来でございましょうが、実際問題としては県等の公共団体が一部について補助を行う、負担をするということも行われております。
  154. 春田重昭

    ○春田委員 その割合ははっきりしてないということですね。わかりました。  そこで、この借入金の財投ですけれども、この利子は大体%くらいになるのですか。
  155. 杉山克己

    ○杉山政府委員 時期によりまして一定ではございませんが、平均しておおむね六%程度でございます。
  156. 春田重昭

    ○春田委員 ということで、財投から借りているお金といっても利子がつくわけでございますから、それだけ負担金の徴収時期がおくれれば当然金利が増していくわけですよ。最終的にはそれが受益者負担になってくるという形になるわけです。この会計検査院の報告の中でも、五十二年度末における借入金の現在高は二千百五十八億となっております。したがって、六%掛けても年間大体百二十億の金利がかさんでいるわけですよ。そういう点で、当然取るべき時期に来ていながら取ってないということは、やはりそういう点では後の事業に非常に差し支えるし、金利がそれだけかさむわけですから、高くなっていくわけですから、そういう点では努力をしていただきたいと思うのです。  さらに、先ほど指摘しました事業を中止したり、また未着工になっている地区が四地区ということでこの検査報告に載っておりますけれども、四地区の名称とその原因につきましてお尋ねしたいと思います。
  157. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 お答えいたします。  まず事業を休止している部分がございますが、それは三地区でございます。その内訳は、高浜入、佐賀、羊角湾の三干拓事業でございます。  その内容を申し上げますと、高浜入干拓事業は茨城県下でされている事業でございますが、五十二年度までの支出額は二十四億四千三百万円でございます。この事業は四十二年度から六十年度までの予定工期で着手いたしましたが、一部漁業補償を終了し、工事に着手しましたところ、漁民等の反対運動が強く、県知事からの条件整備を図る期間が欲しいという要請がございまして、五十年度以降工事を休止している事態でございます。  また、佐賀干拓事業は、五十二年度までに二億五千万円を支出しております。この事業は、昭和四十二年度から五十四年度までの予定工期で着手いたしましたが、漁業補償について地元関係者との調整がつかずに、一部測量を実施しまして、四十九年度以降工事を休止している事態でございます。  もう一つの羊角湾干拓事業でございますが、五十二年度までの支出額は十二億八千二百万円でございます。この事業は、四十四年度から五十六年度までの予定工期で着手いたしましたが汚濁補償について地元関係者と調整がつかず、締め切り堤の一部を実施いたしまして、四十八年度以降休止しているという事態でございます。  もう一つの事態でございます、事業に着手してない事態でございます。これは一地区でございますが、長崎南部干拓事業でございます。この事業は、五十二年度から六十二年度までの工期で事業を予定しましたが、漁業権問題が未解決で着手に至ってないという事態でございます。
  158. 春田重昭

    ○春田委員 検査院の報告では、現在、事業そのものが休止になっている地区は、高浜入、佐賀、羊角湾、それと長崎南部が未着工ということでございますけれども、現時点におけるその状況はどうなっているのか、その見通しですね、これは農水省の方からお答えいただきたいと思います。
  159. 杉山克己

    ○杉山政府委員 お尋ねのようなことで、四地区が事業が休止あるいは未着工ということで、大変残念な事情にあるわけでございます。私どもとしても、努力の足りないところ、大変申しわけなく思うわけでございます。  このうち、高浜入を除く三地区は、いずれも漁業補償に係る漁業者との間の問題が懸案となっておるわけでございますが、その解決を図るべく関係者と協議している段階でございます。  それから、高浜入地区につきましては、トラブルが起こったということもございますが、むしろこの地域の水については工業用水、上水道それから農業用水含めまして、新しく水資源として活用するのが妥当であるというような意見もございまして、干拓事業としては廃止するという方向で検討中でございます。  それから、すでに投資しておりますところの額につきましては可能な限り回収するということで、現在各方面と折衝しているところでございます。  地区別に申し上げてまいりますと、羊角湾地区でございます。これは熊本県でございますが、ただいま会計検査院の方からも説明がありましたように、四十四年度に事業を着手して、以降、漁業補償を解決して、堤防工事実施してきたのでございます。しかしながら、四十六年度におきまして海水汚濁問題が発生したため、この汚濁補償交渉の問題がきわめてむずかしい事態として新しく起こったわけでございます。結局、この件をめぐりまして漁業関係者から訴訟が起こされたということで、先日まで解決を見ておらなかったわけでございます。ただ、五十三年六月、九月公判の際に、裁判長から和解勧告が行われております。その後関係者間で調整を進めた結果、現段階におきましては大筋内諾も得られた状況になっております。そこで、この件についての補償協定を早期に締結できるよう手続を進めて、事業再開に踏み切りたいというふうに考えているところでございます。  それから、佐賀地区でございます。これは四十三年三月に干拓事業所を開設して以来、当初から有明漁連だとか関係漁協との間でもって漁業補償交渉を行っておりますが、いまだにその調整を見ておりません。そこで、四十九年四月に干拓事業所を閉鎖して以来休止した状況にあるわけでございますが、地元県及び関係市町村の意向もありますので、これらと調整した上で今後の方針を決定する必要があるというふうに考えております。  それから、長崎南部総合開発事業でございます。これは直接その地域、その水域に関係する漁業者との漁業補償問題はおおむね内諾を得ている状況にあるわけでございますが、湾外の漁業補償につきまして、長崎県海域につきましては一部、それから佐賀、福岡、熊本海域につきましては全体についての了解がまだ得られないでおるわけでございます。そういうことから着工に至っておりませんが、しかし、この事業は長崎南部地域の多目的な総合開発事業としてきわめて重要なプロジェクトである、それから地元において工事関係者の向きはきわめて熱望しているというようなこともございまして、関係県知事の協力のもとに今後関係者の理解を得て、それほど時間をかけないで事業に着手できるよう努めてまいりたいというふうに考えております。
  160. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、高浜入の干拓事業についてお尋ねしてまいりたいと思うのですが、いまの局長の御答弁では、さらりと廃止してそれから水資源の事業に入っていきたいという形で言っておられますけれども、相当の事業費をつぎ込んで長期間たっているわけですよ。そんな干拓事業を簡単にやめてしまって、水資源にかえるなんということは、相当な理由がなかったらできないことでありますし、もう少し詳しく説明いただかないとちょっと了承できませんね。もうちょっと具体的に説明してください。
  161. 杉山克己

    ○杉山政府委員 高浜入干拓事業につきましては長い経過があるわけでございますが、昭和四十年度から——大分以前、十五年ほども前になるわけでございますが、全体実施設計を進めて、四十二年に干拓事業所を開設、それ以来漁業補償交渉を行い、それから事業着手の手続を進めてまいったわけでございます。そして、四十九年一月、六年ほど前から事業に着手したのでありますが、しかし、一部漁民等の反対行動がきわめて激しかったため、工事の継続が困難となった事情がございます。  一方また、茨城県におきましては、霞ケ浦の水を有効に上水道なり工業用水なりあるいは農業用水に総合的に利用したいという意見も出てまいりまして、五十年十一月に茨城県知事から、当面は高浜入の事業について諸条件整備を図る期間としたいとの意見もありまして工事を休止したのでございます。  その後、いま申し上げましたような事情も踏まえて、五十三年九月に茨城県知事から、それからまた県議会の意見もありまして、干拓事業を中止して水資源開発を行いたいという要請が正式に出てまいりました。そのことから、再開の見通しが立たないまま放置するのはいかがかということで、中止することもやむを得ない、切りかえを考えて干拓事業所を閉鎖したものでございます。  この閉鎖に伴って、当然幾つかの問題が出てまいるわけでございます。現在、その検討、調整を進めている段階にあるわけでございます。特に、既投資額の回収という問題がございます。具体的な個々の関係者との話し合いを詰めた上で、できるだけこれの回収に努めて干拓事業を収束することに持っていきたいと考えております。
  162. 春田重昭

    ○春田委員 いまの話では、地元県側の意向で事業そのものを変更するような言い方でございますけれども、これは国の直轄事業でしょう。国の直轄事業でありながら、県の意向で干拓を簡単に水資源にかえるということができるのですか。
  163. 杉山克己

    ○杉山政府委員 お尋ねのように、国の直轄工事でもあるということもありますが、これだけ大きな事業を途中で切りかえるということについては簡単ではございません。いろいろ長い間の検討、調整を経て関係者と協議した結果そういう方向に持っていくということで結論を見出しつつある状況なわけでございます。こういう事態になったことについては、私どもも大変残念に思っているところでございます。
  164. 春田重昭

    ○春田委員 もう一度はっきりと確認しておきたいのですけれども、事業開始のいわゆる全体設計に入ったのはいつなのか。第二点としては、事業を開始したのはいつなのか。第三点としては、実際工事にかかって中止したのはいつなのか。最後に、事務所を閉鎖したのがいつなのか。時期を四点に分けて明確にしていただきたいと思います。
  165. 杉山克己

    ○杉山政府委員 全体実施設計に取りかかったのは四十年でございます。それから、干拓事業所を開設したのは四十二年でございます。それから、事業に着手したのは四十九年でございます。それから、工事の休止になりましたのは五十年でございます。それから、干拓事業中止の申請がありましたのは五十三年九月でございます。
  166. 春田重昭

    ○春田委員 結果的に五十四年度からいわゆる廃止していく、休止を廃止にしていく、こういうことですね。
  167. 杉山克己

    ○杉山政府委員 その中止の要請を受けまして、五十四年度中はそのまま推移したわけでございますが、五十五年度において調整をした上で廃止に決定いたしたい、こういう予定でおるわけでございます。
  168. 春田重昭

    ○春田委員 いま説明があったように、要するに事業を開始したのが四十二年ですから、今日まで約十二年かかっているわけですね。全体設計にかかったのが四十年ですから、それから積算すれば十四年たっているわけです。この間の投資は、先ほど検査院からも報告があったように二十四億になっているわけです。私の手元にあります一番新しい資料では五十三年度の決算が出ておりますけれども、五十三年度決算では二十五億二千八百十六万円がすでに投資されているわけですね。莫大な金が投資され、結論から言ったら要するに廃止になっていったわけでございます。こうした本当にかなりの額が投資されながら最終的にたな上げになって廃止になっていくということは、それなりの理由があるかもしれませんけれども、国の大きな損失につながっているわけです。  そこで、この問題に対しまして、大臣もお聞きになっていると思いますけれども、どういうお考えを持っておられるのか。農水省にはこうした干拓事業にかかわらず、先ほど言ったように灌漑排水事業その他いろいろな事業等において非常にむずかしい問題が絡んでおりますけれども、多額の金をつぎ込んでいながら最終的に廃止になり、また現在とまっているという問題に対しまして、大臣としてどうお考えになっているのか、お尋ねしたいと思います。
  169. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大変残念なことと思いますが、できるだけこういう事業については、本当は最初からもう少しきちんと根回しをしながらやっていかなければならなかった点も多々あるのじゃないかと私は正直思います。今後ともこういういろいろな問題の反省の上に立って、決算指摘をされることが将来起きないように、できるだけ根回しと申しますか、それぞれの地元の知事を通じてなり、いろいろ地元の人たちとの話し合いの上で工事を決定していかなければいけないと考えております。
  170. 春田重昭

    ○春田委員 こうした補償問題というのは利害が絡むだけにむずかしことはわかりますけれども、私が調べてみても、どの事業でもいわゆる事業を開始する前に大体三年ないし四年くらいは全体実施計画といいますか、設計があるわけですよ。大体三年ないし四年かけて、この事業そのものがどういう形で進展していくのか、見通しがついているのかということが事業にかかる前からあるわけですよ。調査といいますか、計画に相当お金をつぎ込んでおりますけれども、この段階である程度めどが立たなかったら事業にかからないというのが筋じゃないかと私は思うのですね。事業にかかった、ある程度補償した、ところが一部の方が反対して最終的には挫折したという形が事業に相当見受けられるということで、相当なむだが出ているわけです。その面で、いわゆる全体実施設計の段階である程度見通しを立てる必要が今後あるのじゃないか。当然立てられると思いますよ。この点をきちっとやっていかなければ、こうした事業は相当なマイナス点が出てくるのじゃないか、デメリットが大きいのじゃないかと思いますが、この点についてどうお考えになりますか。
  171. 杉山克己

    ○杉山政府委員 灌漑排水事業にいたしましても干拓事業におきましても、規模の大きなものを進める際、事前に地元の意向を十分調整を図る、根回しを行って進めなければいけない、しかもその期間はかなりあるから十分努力すれば何とかできるはずであるというのは御指摘のとおりでございます。そういうことでわれわれもできるだけ努めてまいったわけでございますが、結果的に工事中止あるいはいまだに着手に至らないというような事態が生じたこと、まことに遺憾に思うわけでございます。  ただ、弁解になりますが、一〇〇%絶対安全だということまで見きわめてからということになりますと、常に利害関係相対立するものを含んでおりますので、いつまでたってもなかなか着工できないという事情もございます。着工して、その間できるだけ事業状況も見ていただき、全員の御同意を受けるということも事実上あるわけでございます。その点では、問題を起こした地区については十分な吟味が足りなくて見通しを誤ったと言われてもやむを得ないかもしれません。今後とも私どもさらに一層努力して、新しいそういう事態が起こることのないよう、また起こった事態については極力最善の解決を図るよう努めてまいりたいと思います。
  172. 春田重昭

    ○春田委員 厳しい言い方になるかもしれませんが、こうした事業で中止したりまた廃止になっていくのは、やはり根底に親方日の丸的な存在があるのじゃないか。民間だったらこんなことはできませんよ。あらゆる根回しをやって事業の推進をやっていきますよ。そういう点で私は猛省を促すわけでございます。  最後に、もう一点だけ確認したいわけでございます。漁業補償費が出されております。この漁業補償費はどれくらい支払われているのか。それで廃止になったわけでございますから、この補償費をどういう形で処理していくのか、この点だけ確認しておきたいと思います。
  173. 杉山克己

    ○杉山政府委員 先ほど先生も御指摘になりましたように、全体として、調査設計それから漁業補償といったものを含めまして総体の投資額は二十五億二千八百万円でございます。そのうち漁業補償に出されました金額は十一億七千二百万円でございます。これはそのままむだにしてしまうのはいかにも忍びませんのと、それから、不幸中の幸いといいますか、この地域の水につきましては埋め立てよりもむしろ総合的に活用した方がいいということで、先ほど申し上げましたように、上水道、工業用水、農業用水の向きに向けるということで、現在、水資源開発のための事業の取り進めが行われております。そこで、こちらの方からいずれ改めての漁業補償の問題が起こってくるわけでございますので、この漁業補償をそちらへ振り向ける、転換を図るということでの解決を図りたい。そしてこの金がむだにならぬような措置をとりたいと考えております。そのことにつきまして目下関係機関と協議を進めているところでございます。
  174. 春田重昭

    ○春田委員 以上でもってこの種の問題の質問を終わらせていただきます。  続いて補助金の問題につきまして御質問を展開してまいりたいと思いますが、その補助金に入る前に、行政改革の第一弾として特殊法人の統廃合が昨年末に行われたわけでございますけれども、第二次大平内閣の最大の目玉だったわけでございますが、国民の期待から大きくかけ離れた形で厳しい批判が起こっておるわけでございます。農水省としてはこの特殊法人の統廃合についてはどういう形でいどまれたのか、まずその点からお尋ねしてまいりたいと思います。
  175. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 特殊法人につきまして私どもの関係は十四ございますが、それについていろいろとそれぞれにメスを入れてみましたけれども、なかなかいますぐ廃止するわけにはいかないものばかりでございます。ただ、漁業共済基金については、漁業共済制度と非常に有機的な関係を持っておりますので、これを他の仕組みで何らかのものを考え得れば廃止をしてもいいという結論になりまして、これにつきましては五十七年の間に廃止をしたい、こういう方向にあるわけでございます。それから蚕糸事業団と糖価安定事業団につきましては、それぞれ外国から入ってくるものについてやっておる業務でございますし、また畑作振興といいますか、これからの新しい農政の中でサトウキビにつきましてもあるいは蚕糸業につきましても、これは米からの転作についてより努力をしていかなければならぬ部門だ、こう考えておりまして、そういう点においては大変共通したものを持っておりますので、ひとつこれは統合しようではないか、こういうことになりまして、これは大体五十六年十月、来年の十月をめどにしてひとつ統合していきたい、こう考えておるようなことでございます。
  176. 春田重昭

    ○春田委員 漁業共済基金が五十七年度中、それから日本蚕糸事業団と糖価安定事業団の統合が五十六年の十月、こういうことでございます。この種の特殊法人というのは、過去にも問題になったのは大臣も御存じだと思うのです。五十年、五十二年の閣議了解、また決定でも決まっているわけですよね。そういう点で、果たしてその昨年暮れの閣議決定がそのまま進んでいくかどうかというのを疑問視する人もあるわけですね。果たして実行されるかどうか、こういううがった見方もあるわけでございますけれども、それは過去の例からいって、現在もこうして残っているわけですから、そういう点で条件が整えばということでございますけれども、大臣、はっきりとここで五十七年度中に廃止する、そして日本蚕糸と糖価安定は五十六年十月に統合する、こう決めて条件整備をやっていかなかったら、またもとのとおりにやって、いろいろ理由をつけられて残っていくわけですよ。そういう点で、大臣としては確たる方針のもとで決意も新ただと思いますけれども、もう一回、間違いなくこれはやっていくんだ、そういう決意表明をここでしていただきたいと思うのです。
  177. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 実は、正直申しますと、総理からは特に、何とかもっと早く、今国会中にでも法案を提出をして、そしてひとつ五十五年度において何とかやってくれないか、こういう強い要請もあったわけでございます。しかし、いま御指摘のとおりで、法律を出してみても結果的にそれが実行できないことは過去のケースにもあるわけでございまして、私といたしましては、やはり実際に実行できることでないと保証できない、自信がない、こういうことで特に総理の了承をとりましてやったという経緯もございますので、これについては、農林水産省挙げて必ず実行する、こういう方向でまいるということをここではっきり申し上げさせていただいておきます。
  178. 春田重昭

    ○春田委員 そこで、行政改革の特殊法人の統廃合が第一弾とするならば、今後第二弾、第三弾の行政改革が必要であると思いますけれども、私はここで補助金の整理合理化の問題につきましてお尋ねしていきたいと思うのです。  大蔵省の方がお見えになっておりますので、まずそちらの方からお尋ねしてまいりたいと思いますが、ここ数年来の補助金の整理合理化のいわゆる推移といいますか動き、五十年ぐらいからで結構でございますから、一番新しい時点でどういう形でおさまっているのか、この全体の額と、その中で農水省はどれくらい整理合理化されているか、この二段階に分けて御説明いただきたいと思います。
  179. 藤原和人

    ○藤原説明員 補助金の整理につきましては、補助金といいますのは国の政策な実施する上での有意義な政策手段でございますけれども、既得権化するというような弊害も指摘を受けておりまして、私どもといたしましては、常に補助金を見直してまいりまして、整理合理化を積極的にやっていくというような方針で臨んでまいっております。  ただいま御指摘補助金の整理合理化額の推移でございますけれども、全体的な数字を申し上げますと、五十年度以降で申し上げますと、五十年度が五百三十一億円、五十一年度が七百八十一億円、五十二年度が七五二億円、五十三年度が千四百二十二億円、五十四年度が千二百七億円ということになっております。このうち農林水産省の所管分が幾らかという点でございますが、五十年度につきましては所管別の内訳がございませんので省略させていただきますが、五十一年度につきましては二百五十七億円、五十二年度は二百五十二億円、五十三年度は四百九十二億円、五十四年度は七百六億円、このようなことになっております。
  180. 春田重昭

    ○春田委員 五十五年度では大体千五百億ぐらいですか、大蔵省としてはやりたいというお話を聞いておりますけれども、どれくらいなのか、そのうち農水省としてはどれくらいの整理合理化をやっていくのか、方針が決まっておれば御答弁いただきたいと思います。
  181. 藤原和人

    ○藤原説明員 五十五年度の予算編成に当たりましては、ただいま御指摘のように、補助金等の整理合理化につきまして従来以上に積極的に取り組むということで予算編成に取り組んでまいりました。結果につきましては、私どもかなりの結果が出たものと期待しておりますけれども、現在まだ計数につきまして整理中でございまして、現段階で計数を申し上げるまでに至っておりません。したがいまして、農林水産省の分につきましても、現在計数的に申し上げる段階でないということで御了承いただきたいと思います。
  182. 春田重昭

    ○春田委員 いま補助金の整理合理化の額を示していただいたわけでございますけれども、さらに補助金の総額はどういう推移になっているのか、これを全体額と農水省に分けて説明いただきたいと思います。
  183. 藤原和人

    ○藤原説明員 補助金の総額でございますが、五十年度以降の数字で申し上げますと、五十年度が六兆八千二百億円、五十一年度が八兆千八百十六億円、五十二年度が九兆五千六百六十四億円、五十三年度が十一兆三千二百十九億円、五十四年度が十二兆八千八百五十一億円でございます。このうち農林水産省の分でございますが、五十年度が八千四百八十二億円、五十一年度が一兆百三十二億円、五十二年度が一兆二千三百十六億円、五十三年度が一兆五千七百九十億円、五十四年度が一兆八千二百十五億円、こういうことでございます。
  184. 春田重昭

    ○春田委員 それで農水省にお伺いいたしますけれども、いま大蔵省の方から御説明があったように、補助金の整理合理化というのは年次ごとにかなり進んでいっておるわけです。額もふえていっております。ところが補助金総額そのものは、合理化をやった割りにはふえていっておるわけですね。これは新しい事業とか、またいろいろな自然増があると思うのですけれども、合理化をやる一方で片方では自然増やいろいろな新規事業でふえていっている、こういう珍現象が起こって、いわゆる実際の整理合理化が全然進んでいないと私は見ておるわけでございますが、農水省としては、この補助金というのが全体の割合では、件数としては三分の一ぐらいを占めておるわけですね。金額的には十数%でございますけれども、そういう点からいったら補助金と言えば大体農水というぐらい非常に行政が多いわけでございますが、この辺のところ、農水省としては、いわゆる整理合理化をやりながら実際ふくらんできておる、こういう点をどうお考えになっておるのか、お答え願いたいと思います。
  185. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま御指摘のようなこともあるかもしれませんが、先ほど大蔵省からの説明にもありましたように、たとえば五十四年度を見ておりますと半分以上、農水省の関係補助金が整理されておるわけでございまして、相当積極的に必要でないものについてはやめていく方向に来ておると私は思うのでございます。しかし、いま農業、林業、水産業を取り巻く状況というのがなかなか大変なことは先生御承知のとおりでございまして、やはりそういう中で新しくまた一つ補助金制度をつくっていかなければならないということも御理解いただけるのじゃなかろうかと思います。  そこで、今後の問題でございますけれども、昭和五十五年度以降は、やはり行政改革の一環として補助金整理も従来以上に強力に進めていこうということで、大体四年間に、平均すれば約四分の一を整理するんだ、こういうことになっておるわけでございまして、私どもといたしましては、それにこだわることなく、必要でなくなったもの、あるいは相当古くなったものについては極力見直しをしていきたいと思っております。また、今後新しく補助金を考えていかなければならない場合も、従来以上にやはりサンセット方式で、それではいつまでそういう制度を続けるのかということもある程度見込みながら補助金制度というものを考えていく、こういうような姿勢で対処していきたいと考えているわけでございます。
  186. 春田重昭

    ○春田委員 当然農水省としてはそれなりの見直しをやっておられると思いますけれども、私から言わせれば、もっともっと徹底的にやってほしいというのが希望でございます。  その補助金のむだ遣いという点につきまして、いま五十二年度でございますけれども、昨年暮れ五十三年度の決算報告が出ておるわけです。会計検査院が指摘している中で、農業構造改善事業の中で農機具の格納庫について補助金が約一億一千万のむだ遣いがされている、こういう指摘がされております。内容を見ると、格納庫があって、それを二百八十一棟検査したらしいのです。そのうちの百八棟、何と約三分の一ですが、三棟に一棟が改善の必要性を要求しているわけです。こういうように、見直しているといいながら、やはりかなりそういう検査院からもむだ遣いが指摘されているわけでございますけれども、これにつきましての農水省の見解といいますか、お考え、方針、今後どうしていくのか、一括してまとめて御答弁いただきたいと思います。
  187. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 ただいま御指摘のありましたように、五十三年度の決算検査報告におきまして、各種補助事業にわたりますが、御指摘の農機具格納庫の規模につきまして改善処置要求を受けました。まことに遺憾に存じております。この内容審査に当たりましては、指摘の趣旨に沿いまして、当面とりあえず補助事業の内容審査の体制が整備されますように、各それぞれの担当の部署におきまして指導の徹底を図るということをしておりますのと、もう一つ、この点につきましては、現在基準におきまして明確でない点もございますので、昭和五十五年度におきまして農業機械化促進法に基づきます高性能農業機械導入基本方針を見直すことにしておりますので、これによりまして標準的な統一基準設定いたしまして、これを具体化しまして事業の適正な執行に努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  188. 春田重昭

    ○春田委員 それは一つの例なんです。  そこで、こうした補助金関係の批難件数というのが会計検査院から報告されておりますけれども、五十年から五十三年にわたる批難件数そして金額、これを全体と農水省を合わせて二段階でまた御報告いただきたいと思います。
  189. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 いま手元に農林水産省補助金、公共補助それから非公共補助のデータしか持っておりませんので、お許しをいただきたいと思います。  五十年度は三十三件、金額七千五百二十八万円でございます。五十一年度は二十三件、一億八千二十八万円、五十二年度は二十九件、一億三千五百七十七万円、それから五十三年度は三十五件、一億五千七百九十一万円でございます。
  190. 春田重昭

    ○春田委員 いま資料がお手元にないということでございますけれども、私の方には検査院から出された資料があるわけでございます。これは大臣に聞いていただきたいのですが、要するに補助金関係の批難件数が会計検査院から報告されています。いまお話があったように、四十九年度は全体で七十件、そのうち農水省が四十件あるのです。五十年度が六十四件のうちの三十三件、五十一年度が五十件のうち二十三件、五十二年度が六十一件のうち二十九件、五十三年度が六十七件のうち三十五件ということで、件数では約半分を農水で占めているわけです。金額的にいったら約三分の一を占めているわけでございまして、こういう点からいって、農水の補助金行政というのは非常に大きなウエートを占めているわけです。それだけに農水省が補助金整理をやるかどうかによってこの政府全体の比重も相当変わってくるわけですよ。そういう点で、私は補助金そのものを否定するわけじゃないですけれども、予算全体の三分の一を補助金で占めている、いま十二兆ありますか。そういう三分の一の予算を占めている中でも農水省が非常にウエートが大きいわけです。そういう点で、先ほど言ったようにもう一回徹底的に洗う必要があるのじゃないか。  昨年からも問題になっております特殊法人、特に鉄建公団、これは運輸省でございますけれども、昨年だけでも九百億円の補助金が出ているわけですね。そしてああした問題を起こしている。また、政策的目的を終わったものでも出しているところがあるわけで、また、他省庁と共管しているようなところの補助金、こうしたものを見直せばかなり出てくるのじゃないか。  こういうことで、補助金制度が一番多い農水省としては、私は提案でございますけれども、この補助金の洗い直しのために委員会なり協議会を持って、他省庁に先鞭をつけてやっていかれたらどうか。大臣も就任間もない忙しい立場であろうと思いますけれども、非常にお若いわけでございますし、やる気満々だと思いますから、そういう点でいわゆる特殊法人の第一弾があったわけでございますから、次いで第二弾としてこの補助金の洗い直し、徹底的な見直し、これを私は要望するわけでございますけれども、大臣の御見解をいただいてこの補助金問題については終わりたいと思います。
  191. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、毎年毎年、会計検査院から補助金の問題で農林水産省が一番件数が多いというようなことでは大変申しわけなく思うし、まことに残念に思います。  私といたしましても、やはり今後こういうことがとにかくなくなるように努力するのは当然でございまして、そういう面においてはいま御指摘のような、われわれ全体的な補助金の見直しをしなければならないことになっておりますので、特に農水省としてはそういう点に力を入れてひとつ洗い直しをやり、また同時に、都道府県知事にいろいろお願いをしておるものの方が多いわけでございまして、こちらが直接ではなくて、都道府県知事を通じていろいろ補助申請がなされておる件数の方がずっと多いわけでございますので、都道府県知事においてもその辺を十分徹底してやっていただく必要もあろうかと思いますので、そういう点についてもいろいろ機会をとらえて私ども努力をしてまいりたい、こう考えております。
  192. 春田重昭

    ○春田委員 あと五分でございます。  最後に、行政改革の一端として農水省は食糧庁に属する食糧事務所職員、いわゆる農産物の検査官の他省庁への配置転換をお考えになっているみたいでございますけれども、現段階でどこまで進んでいるのか、その取り組む姿勢といいますか、この辺の問題を、簡単で結構でございますから御説明いただきたいと思います。
  193. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 現在五十五年度の予算では、大体五百四名の食糧検査官におやめいただくのを考えております。それ以外にも、もし配置転換であればできるだけ配置転換をしていただきたいと思っておりますが、これは御承知のとおり年齢がある程度、食糧検査官は相当年輩の方がいらっしゃいますことと、それから、土着と申しますか、わりあい地方に定着している方が多いものでございますから、いま各省間でいろいろ希望のあるところもあるようでございますから、その辺の各省間の配置転換も含めていろいろ検討さしていただいておる、こういうことでございます。
  194. 春田重昭

    ○春田委員 以上でもって終わります。
  195. 高田富之

    高田委員長 井上一成君。
  196. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、最初に競馬問題について基本的な姿勢、とりわけ場外馬券売り場の現状と今後の計画、さらに各地域での反対運動についての認識等について、大臣からお聞かせをいただきたいと思います。
  197. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 場外馬券の問題でございますが、私どもは、いま御指摘の三番目におっしゃいましたいろいろ反対運動というものもあるわけでございましょうから、そういう点においては、積極的に場外馬券をつくっていくということはどうかという問題もあろうかと思います。しかし一方、また、のみ行為とかなんとか言われるのがあるようでございまして、そういうものを防ぐためには場外馬券をつくることも一つの方法であろうということも言われておるわけでございまして、その辺をどうにらみ合わせていくかというのが、これから場外馬券をつくっていくかどうかという問題について考えていかなければならない問題ではなかろうかと思っております。
  198. 井上一成

    ○井上(一)委員 昭和三十六年の長沼答申との関係については、それをどういうふうに位置づけられますか。
  199. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 三十六年の長沼答申は、現状凍結だというふうに私ども判断しております。
  200. 井上一成

    ○井上(一)委員 ということは、それは今後ふやしていかないということを意味するんじゃありませんか。
  201. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 昨年、公営競技の懇談会において、ある程度、多少それと違ったニュアンスのようなことが出てきておるものでございますから、先ほど私が申し上げたような答弁になったわけであります。
  202. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ大臣、昨年までは三十六年の長沼答申を尊重した中で凍結、今後ふやしていかないという方針で取り組んできたというふうに理解してよろしいですね。
  203. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 三十六年の答申には、原則としてという表現がたしか入っておるわけでございますから、原則としてはそういう方向で来た、こういうふうで御理解いただければ結構かと思います。
  204. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ大臣、原則としてそういう形でふやしていかない、しかし現実にはふえてきました、そしてそういうことが設置されております、そういうことで、一般的に設置の基準というのか、そういうものの一定の基準を持っていると思うのです。その基準は何なのですか。
  205. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 設置基準については、細かい点でございますから畜産局長から御報告させていただきます。
  206. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 事務的なことでございますので、答弁させていただきます。  場外馬券の設置につきましては、地元の競馬場並びに場外馬券の混雑の態様、それからもう一つは、地元の協力関係が得られるかどうか、さらには、先ほど大臣からお答えいたしましたように、競馬にかかわるのみ行為その他の弊害の防止上必要であるかどうか、それらを総合的に判断をいたしまして、設置するかどうか、これは競馬会の方で判断する問題でございますけれども、監督する農林水産省としては、競馬会の意見を聞きながら指導をしていくということでございます。
  207. 井上一成

    ○井上(一)委員 中央競馬会の場外馬券売り場を建設する場合に、協力金という形で支出をされております。このことについては大臣も御承知ですか。
  208. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 そういうものがあることを承知いたしております。
  209. 井上一成

    ○井上(一)委員 この資金についてはだれの監督であるいは権限で、どのようにして決められかつ執行されていくのか、大臣からお答えをいただきたいと思います。
  210. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどの質疑の中にもございましたように、私どもへ固定資産の収支予算並びに決算で出てくる中にあるわけでございまして、それ自体については競馬会でやっておる、こういうことでございます。
  211. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、この協力金については、大臣は、事前あるいはまた事後においても十分な御承知をいただいてないというふうに理解していいのですか。
  212. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 仕組みといたしましては、予算、決算の中の先ほども申し上げましたような形で入っているものは私どもの認可になっております。それから、競馬会がそういう協力金を出すときには、その都度農林水産省に対して協議を求めてきておる、こういう形になっております。
  213. 井上一成

    ○井上(一)委員 大臣は十分、協議を求められるのだから御承知でなければいけないですね、大臣。私は大臣にお答えをいただきたいので、御相談をなさることは結構ですけれども、お答えは大臣から下さい。というのは、後でこれは非常に重要な問題にかかわっていくと思うのです。  だから、場外馬券売り場の建設協力金については、最終的には大臣の権限であるということですね。中央競馬会から協議は持たれるわけですけれども、それを決定するというかそれに承認を与えるのは大臣の権限でございますね。
  214. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大臣として最終的には承認を与えるということになっております。
  215. 井上一成

    ○井上(一)委員 これは大臣の権限である、こういうことなんです。もちろん中央競馬会の方で事前の協議がなされ、大臣に認可をいただくということであります。  さて私は、大阪における場外馬券の設置について具体的に尋ねていきます。  大阪市南区東櫓町いわゆる大阪の道頓堀の場外売り場、このことについて、この設置はいつごろに協議をなさいましたでしょうか。
  216. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 道頓堀の場外馬券の設置について、農林大臣として承認をいたしましたのが五十一年の九月十日でございます。
  217. 井上一成

    ○井上(一)委員 中央競馬会は、この設置についてはいつごろからかかわり合いを持ちましたか。
  218. 武田誠三

    武田参考人 道頓堀の場外馬券売り場に関しましては、五十年の十一月に道頓堀に場外馬券売り場を設置するよう誘致をいたしたいという申請を受け取っております。
  219. 井上一成

    ○井上(一)委員 もう一点、この設置については、具体的にだれが、いつ、どのような方法で中央競馬会の方にアプローチをされたのですか。
  220. 武田誠三

    武田参考人 五十年の十一月に、道順堀に土地を所有しております巽興業株式会社から、当該所有地において場外馬券売り場を設置したいという旨の申請がございました。
  221. 井上一成

    ○井上(一)委員 それ以前には、この設置については何ら中央競馬会は、正式あるいは非公式は別として、話は持たれていませんか。
  222. 武田誠三

    武田参考人 それ以前には、この道頓堀につきましては特段の話は聞いてなかったようでございます。
  223. 井上一成

    ○井上(一)委員 ここに設置することが妥当である、いわゆる長沼答申を尊重した中で、かつ一般的に客観的に妥当であるというふうに中央競馬会は御認識になったのですか。
  224. 武田誠三

    武田参考人 当時、御承知のように競馬に関しますファンの方も非常に激増してまいりまして、大阪地方におきますそれまでに設置をしてございました各場外馬券売り場等の混雑も大変ひどくなりまして、多くのファンの方々をさばく、あるいは馬券を売るということについても、いろいろな困難あるいは心配も生じてまいっておりまして、長沼答申の趣旨はございますわけですが、そういった一方でいろいろな混乱というようなことが起こりましても困りますわけで、どこか適切なところに場外馬券を設置することができれば、地元の了解も得て、また監督官庁の理解も得て設置をしたいというように考えておったわけでございます。
  225. 井上一成

    ○井上(一)委員 この周辺に中央競馬会としてそういう場外馬券売り場の必要があると認められたのですか。この、いわゆる俗に言う大阪南、難波の繁華街、その中にこういう場外馬券を売る売り場を設置することが妥当であり、それが競馬に関心を持つ大衆のメリットになるのだというふうに考えられたのですか。そしてぽこんと五十年の十一月にそういう巽興業から申し入れがあったのだ、それまでは話がなかったのだ、そういうことなのですか。
  226. 武田誠三

    武田参考人 それまでは特に道頓堀につきましての誘致のお話は伺ってなかったわけでございます。場外馬券売り場につきましては、ある一定の何町の何番地というふうに特定できるわけのものでもございませんので、広く、そういう場外馬券売り場として適当なところがあり、また設置をすることが先ほど申し上げたような条件緩和等に資するものであるということでありますれば、いろいろ検討いたしまして、その中で、地元の了解も得られるし好条件であるというところに決定をしていくというようなやり方を今日までとってまいったわけでございます。
  227. 井上一成

    ○井上(一)委員 中央競馬会が適当である、そして地元の了解を得られるのだ。私の調べでは、すでに十一月以前にここに対する設置賛成、設置反対の運動が展開されているわけなんです。そんな事実もわからないで、十一月にぽこんと申し入れがあったからそれを適当だと認めて設置をしたのだ。私はそれは非常におかしいと思うのです。そんなばかな話は通らないのですよ。中央競馬会はそれを常識だと考えられるのですか。
  228. 武田誠三

    武田参考人 地元におきまして事前にいろいろとどういうお話がございましたか、詳しくは存じませんけれども、巽興業がそこへ場外馬券売り場を誘致したいということについては、恐らく私どもの方へ申請してまいります前に、地元の方々との接触はおありになったかと思っております。
  229. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ中央競馬会に聞きますが、巽興業とは一体どのような組織、いわゆる法人格を持った会社、そして代表者はどなたで、定款はどういうような会社、どういう営業内容の会社だと御認識になっているのですか。
  230. 武田誠三

    武田参考人 巽興業株式会社につきましては、昭和三十一年に創立され、資本金は二百万円、社長は池田喜一氏、大阪方面において料理店、旅館、サウナなどのレジャー施設を経営する会社であるというふうに承知をいたしております。  なお、池田氏の信用その他につきましては、私どもの方の調査では、信用もあり、資産関係も健全であるというような情報を得ておるわけでございます。
  231. 井上一成

    ○井上(一)委員 ここで農林大臣に。私は個人のということの指摘は避けたいのでございますが、一般論として、資本金二百万円、主たる業務キャバレー業務、そういう業務をしている私企業に、中央競馬会が十億からの金を出して場外馬券売り場を設置をさせていくということが妥当なのかどうか、そういう常識を私はむしろ疑わざるを得ないのですが、大臣いかがですか。あなたは、当時別にそれの権限を持っていらっしゃらなかったわけですけれども、この問題を横に置いて、一般論としてそういうことがふさわしいのかどうか、いかがでしょうか。
  232. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大変むずかしい御指摘でございますが、世の中では資本金が多い方がより安全だというのが普通の常識だろうと思います。ただしかし、中には非常に過去の累積があって、資本金にそれが加算されていない会社もないことはないわけでございまして、そういう場合もあろうかと思いますし、また職業といたしましても、レジャーというものが全く悪であるという判断もいかがかと思うわけでございまして、そういう職業だけでとらえるということはいかがか。しかし、それでは大きな不動産業とそういうキャバレーをやっているのとどちらが健全であるかと言えば、大きな不動産業が健全であるということは一般的には言えるかと思います。ですから、一般論とおっしゃればそういうことでございますけれども、ケースとして特殊なケースもあるわけでございますので、一概には言えないのではないかと思うわけでございます。
  233. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は競馬会にさらに尋ねていきたいのですが、この巽興業は五十年十一月に申請に来られたというか、協議に入ったというのですが、ただぷらっと来たのか。ただふらりと、地元で協力を得てこういう施設をつくりたいのだが、いかがなものであろうかということでこんなものは来るものじゃないわけなのです。中央競馬会の方から物色をしていらっしゃって、池田さんという適当な人がいらっしゃったのだというのか、池田さんの方から中央競馬会にアプローチがあったのか、この一点を聞かせてもらいたい。それから、道頓堀の場外馬券の設置を許可した農林大臣はだれですか。
  234. 武田誠三

    武田参考人 前半の方だけお答えいたしますが、これは巽興業の方からアプローチがあったわけでございます。
  235. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 五十一年九月当時の農林大臣は安倍晋太郎大臣でございます。
  236. 井上一成

    ○井上(一)委員 当時の安倍農林大臣が適当だということで、その認可をされたということでございます。  さらに私は中央競馬会に伺いますが、あなたの方に話が入るまでの事情、事実、そういうものは十分御承知なのでしょうね。話を持ってきて、十分調査をなさったのでしょうね。いま言われるように、五十年十一月に話があったということはお答えをいただきました。話があったからすぐに、はいよろしゅうございますというわけにはまいりませんね。事前の調査、あるいはいろいろな角度から、信用の問題だけでなく地域の問題も含めて調査をされましたね。そして、そこに何点かの問題点が出てきたはずです。あなたの方が受けとめていらっしゃる問題点あるいは事実関係を簡略に申してください。
  237. 武田誠三

    武田参考人 当然先生のお話のように、巽興業からの申請がございまして、私どもの方としては、まず第一に地元の反対がないかどうか、協力が得られるかどうかということが大事なことでもございます。また、先ほどお話しの巽興業並びにその社長である池田さんについての信用その他の問題も調査をいたさなければなりませんし、また一般的に当該地域がそういう場所として適性を持っているかどうかというような地理的な条件あるいはいろいろな環境関係等も調べてみるということも必要でございまして、これらの点については十分私どもの方としての調査もいたさせたわけでございます。
  238. 井上一成

    ○井上(一)委員 さて、その結果はどうなんですか、調査した結果は。
  239. 武田誠三

    武田参考人 調査をいたしました結果、地元の方からもその設置につきましての賛成の同意書もいただきましたし、また環境条件あるいは先ほど申し上げました巽興業ないし池田社長についての信用その他も特に問題にすべき点はないというふうに判断をいたしまして、ここに場外馬券売り場を設置するという方向を決めたわけでございます。
  240. 井上一成

    ○井上(一)委員 あなたは本当にそれだけしか承知していないのですか。
  241. 武田誠三

    武田参考人 一部御反対の向きがございまして、それが、最後までと申しますか、そこに場外を設置する時点までいろいろと反対の動きを示された方があったことは承知をいたしております。
  242. 井上一成

    ○井上(一)委員 もう少し親切な答えをしないといけませんよ。私の方ではちゃんとわかっているのですから。この接触をなさる以前、すでにあなたの方は、五十年九月十八日、東櫓町会長、その設置賛成、いわゆる促進派から、建設促進の陳情を受けているのですよ。翌日素早く設置反対同盟が結成されて、反対の陳情も九月十九日に受けているのですよ。さっき私には、十一月初めての接触だと言われた。こういう事実関係をだましちゃいけない。そんなことをだますようでは、私自身は中央競馬会の答弁を信じられない。  さらに、大阪市議会は、五十一年ですけれども四月に、場外の設置の請願も設置反対の請願もともに不採択にしているのです。俗に言う同士打ちなんです。  そういうことと、さらに、この土地は以前どこが持っていた土地なんですか。そんなことを御承知なんですか。——時間がないから素早く答弁をしてくれなければだめですよ。私が言いますからね。昭和四十七年に巽興業がこれを入手しているわけです。もとは大阪市の土地なんですね。御存じですか。そういうことも知らずに調査をしたのですか。  さらに、巽興業の池田社長、この方の住所はどこなんですか、まずお聞きしましょう。
  243. 武田誠三

    武田参考人 いま手元に住所につきましては持っておりませんので、後ほど調べましてお答えをいたします。
  244. 井上一成

    ○井上(一)委員 ここに中央競馬会が十億の協力金を出す、その建物を建てさす、その土地の権利者がだれであり、所有者がだれであり、どこの住まいの者であるかもわからぬようなことで、適当で厳正に、そんな話が通るのですか。どうなんですか。
  245. 武田誠三

    武田参考人 いまお話しのような点につきましては、競馬会としては全部、住所その他は調査をいたし、またはっきりいたしておるわけでございますが、ただいま私が持っておらないということでございます。
  246. 井上一成

    ○井上(一)委員 では農林大臣、やっぱりあなたが最高の権限ですから、あなたの御判断を……。  私から指摘します。いま申し上げたように四十七年にこの用地を大阪市から六億余りで買っているのです。さらに、四十六年に巽興業の社長である池田さんはその町会の町会長をやっているのですよ。みずから町会長をやって地元工作に等しいとも受けとめられるような行動にそれから出るわけなんです。この人の住所は兵庫県であります。さらに、四十八年五月に巽興業は会社の目的を変更いたしております。初めてこのときに、不動産の賃貸及び管理業並びにそれに付帯する一切の業務ということを、定款変更してつけ加えております。こういう経緯があるわけなんです。私はその経緯から考えて、すでにこのときに何らかの事前の接触があったという判断をするわけなんですね。ないということであれば仕方のないことだけれども、常識的に、私は、この問題についてどうもその辺が理解に苦しむわけなんです。大臣の方で、こういう事情があって、農林省は当時としてはもちろんこれは経過を聞いておると思うのですが、安倍農林大臣の折ですけれども、農水省の業務の中では十分にそういうことを聞いた上でこれは許可を与えると思うのですけれども、こういうことを十分に聞かれているという理解をしてよろしいでしょうか。
  247. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまの経緯を承っておりまして、私は多少疑問に思いますのは、まず第一に、大阪市の土地であったということですね。そうしますと、市が払い下げをするときには、やはりその目的がはっきりしないとそう簡単には払い下げはできないんじゃないかと思うのでございますが、その辺ちょっと疑問があるのでございます。そしてもう一つは、いま御指摘のようなことでございますと、私は池田さんという人もよく知りませんし、その会社がどうかも全く知らないのでございますが、本当に作為的に初めから計画的にそういうことがあったのかどうかということも私よくわからないものでございますから、なかなか判断がむずかしいと同じように、常識的に、もし私がその当時の大臣であったといたしましたときに、片方においては、先ほど申し上げるようなのみ行為問題やいろいろ困っておって、大阪では何とかもう一つどこかに設けなければいけないというときに、たまたま大変手ごろな土地があったということになりますと、その会社を調べるということは当然あると思いますけれども、ずっと過去の経緯までさかのぼって、相手が本当に作為的であればこれは調べるのは当然でございますが、善意に考えた場合には果たしてそこまでいくのかどうかという点についてはなかなか疑問があるんじゃないか、私はこういうふうに判断いたします。
  248. 井上一成

    ○井上(一)委員 この問題は、私はまださらに深く質問を続けます。しかし、外務大臣がいま出席をされましたので、外務大臣にかかわる問題、さらに防衛庁長官にかかわる問題を一、二点、中間で大変恐縮なんですけれども、尋ねていきたいと思います。  外務大臣、きょうの閣議を終えて、率直にいまの御心境はいかがでございますか。
  249. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イランの問題、きょうの閣議では別に何も討議ございませんでした。
  250. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務大臣、日本の外務大臣ですよ。いまわが国が抱える国際情勢、国際問題に対して、あなたはいまたった一言、それだけですか、現在の心境は。
  251. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 大変恐縮でございまして、いま御質問をちょっとイランの問題と聞き違えたものですから、いまの問題とおっしゃったのであればもっといろいろ申し上げるべきだと思います。  いまの問題といたしましては、やはり防衛庁のスパイの問題が大きな問題でございます。この問題は防衛庁長官からの発言がありまして、なお後藤田大臣の方からも警察庁側の調査状況についての発言があったわけでございます。外務省といたしましては特に発言したわけではございませんが、これが対外的にどういう影響があるのか、外務省としては深く憂慮しておる問題でございますが、現在のところ、警察庁の連絡によりますと、まだ捜査中で余り具体的なことが判明いたしませんので、事態の進行、捜査の進行をにらみまして、外務省としてももし必要な措置があればとってまいりたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  252. 井上一成

    ○井上(一)委員 大臣、あなたは非常にのんきなことを言うてはるわけです、捜査中で、必要なことがあればやるんだと。もっと先手先手といかなければ日本の外交はだめなんですよ。  総理からあなたには何も話がなかったのですか。あるいはあなたから総理には何も話をされませんでしたか。
  253. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この事件につきましては、総理と御一緒にちょうど豪州、ニュージーランド訪問中でございましたから、出先に、ニュージーランドにおりますときに電信で連絡がございまして、その電報、電信を受けて総理と話し合いました。その出先での簡単な電報だけでございましたから、これは困ったことだ、帰ったらよく検討しなければならぬ、それだけの話はございました。
  254. 井上一成

    ○井上(一)委員 帰られてからは……。
  255. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 けさの閣議で先ほど申しましたようなお話が出たわけでございます。
  256. 井上一成

    ○井上(一)委員 あなたは、在ソ連邦日本大使館に何らかの訓令を出されましたか。
  257. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私はまだ在外中でございましたが、十九日に外務省の方でも措置をとりましたので、これは政府委員ないし担当官から回答させたいと思います。
  258. 井上一成

    ○井上(一)委員 大臣は知らないのですか。大臣は報告を受けてないのですか。そして、大臣が帰られてからどのような指示をなさいましたか。
  259. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そのとった措置については、中途電信で連絡を受けましたのと、帰ってから早速報告を受けております。外務省としては早速ソ連大使館に申し入れをして、コズロフ大佐の件も警察庁の要請を受けて申し入れをしたわけでございますが、まさに本国に成田から出発する時期でございまして、本人に直接の連絡はつかなかったというのが土曜の状況でございます。帰りましてから、この事態やはり重要な問題でございますから、正確な事態の把握をしなければならない。警察庁の方は目下鋭意捜査中である。その捜査の進行に伴って逐次外務省も連絡を受けることになっておりますので、現在の段階で指示するだけの十分な、確実な事実が明らかになってない。明らかになった段階におきまして必要な措置をとりたいと考えております。
  260. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ外務大臣は、在日ソ連大使館の武官と現職自衛隊員を含む三人の犯罪、いわゆる今回のスパイ事件ですね、それはまだしっかりとした、それは具体的なすべての全容についてはまだではあろうかもわかりませんけれども、そういうことがあったという事実は明確になっておるわけでしょう、そういう事件があったということは。その事実が明確になっている今日、外務省はモスコーの日本大使館の大使に対して、ソ連に遺憾の意を表明したとか、あるいはそれに対していろいろな関係者の事情を聴取するとか、そういうようなことをやらなければ、日本の外交というのは何をしているのですか、大臣。あなたは何をし、何をしようとしているのですか。
  261. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはただいま申し上げましたように、外に申し入れるにいたしましても正確な事実に基づかなければ、その根拠が十分にございませんので、警察庁との連絡をとりながら、必要な段階で申し入れをする。これは早い方がいいのかもしれませんが、早いために不正確な情報に基づいて誤った申し入れをするということになりますと、やはり国家間の問題でございますから将来に問題を残すと考えております。
  262. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、いままで何か後に一歩下がった中で外交を進めているような感があるわけです。これはイラン問題、アフガニスタン問題すべてを含めてそういうことが言えると思うのです。そうして、すべての外国に対していい顔をしようとする全方位外交だ、こういう論理を展開する。まさにこれは日本の外交の主体性のない貧弱さを暴露しているんだ、こういうふうに思うのです。もっとわが国は、軍事大国でもなければ資源大国でもない、しかしながら平和を基軸にした日本の外交というものをあらゆる分野に推し進めていかなければいけないわけであります。  そういう意味では、大臣は、まだ何にも手を打ってないんだ、それは、かえって中途半端な事態で打つことは外交問題上よろしくない。事件が起こったことそれ自体で一定の所信を出さなければいかぬわけですね。そういうことを強く銘記されて、これらの外交はもっとしっかりしたものをやるんだというぐらいの強い決意を持っていらっしゃるのかどうか。
  263. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘の点で、日本の将来の長期的な国益というものを考えまして、これに対応する外交を進めていきたい。私は、日本の外交の重要な役割りは国民の生活と安全を守るということが非常に重大な外交の役割りだと考えております。  この場合に、日本の置かれました立場、非常に重要な資源を海外からの供給に大部分を仰いでおるという基本的な条件とか、この平和憲法のもとで国際的なつき合いをしていくというたてまえ、こういうものを踏まえた上での外交を、国民の生活と安全を守るためにできるだけ有効に進めていくという考えでやってまいりたいと考えておるわけでございまして、ただいまの御指摘の点も十分今後考慮いたしたいと考えるわけでございます。
  264. 井上一成

    ○井上(一)委員 余り時間がありませんので、大臣が、きょうは私の要求した予定の時間、十分御出席いただけないですから、二十四日さらに決算委員会で大蔵省関係がありますから、そのときに信用供与についての、いわゆる第三次極東森林資源開発等も踏まえた中で——この問題は大臣御承知ですね。
  265. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 対ソの極東の森林問題でございますね。
  266. 井上一成

    ○井上(一)委員 そのことについて——いや、お答えは後でいいですから。これは昨年の九月の日ソ経済合同会議で取り交わした問題等、これらの問題について、いま現在の心境ですね、外務大臣は何らかのお考えをお持ちなのかどうか。
  267. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは国内の関係各省にもわたっておる問題でございまして、現在、政府全体として、このアフガニスタンの事件発生以後の日本側の立場について、あるいは対策について検討中でございまして、いまの段階では、いまの森林問題に特定した対策というものはまだ固まっておらない段階でございます。
  268. 井上一成

    ○井上(一)委員 私はさらにサハリンの紙パルプ工場だとか、あるいは日ソ漁業協定の問題だとかいろいろあるわけです、外務大臣。まさに外交チャンネルでの対ソ関係を、わが国の国益を考えた上で対応しなければいけないと思うのですよ。そういう意味で、大臣のいまの答弁では、何や本当に国民は国益を守ってくれる基本的な平和外交を推し進めてもらえるのかどうか、これはもっとしっかりやらないと、むしろ信頼が揺らぐような気がしますよ。  そういう意味で、時間がありませんから、次の委員会でさらに私は外務大臣に質問を続けていきます。  さらに、防衛庁長官がお見えをいただきました。  防衛庁長官、いまも外務大臣に御心境を聞かせていただいたのですが、いまわが国を取り巻く国際情勢は非常に厳しゅうございます。その中で、とりわけ自衛隊を巻き込んだ中でのソ連スパイ事件、防衛庁長官も御心労でしょうけれども、率直にいまの御心境を語っていただけないでしょうか。
  269. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 先生の、今回起きましたスパイの問題につきましての心境はどうかという点でございますが、まず私といたしましては、今回のこの不祥事件は、いやしくも平和と安全を守るところの、国防の一線に立っておるところの自衛隊から、しかも現職二人が出ておるというところにびっくりいたしました。  かような点から推しまして、まず私は国民に対しまして申しわけなかった、これを第一番に心境として申し上げる次第でございます。  かような点から推しまして、今後この対策についてどうするかということが私どもに課せられた大きな問題でございまして、この対策につきましては、再びこの問題が起きてはならない、こういうふうに私は考えます。  かような原点に立ちましたときには、現行制度においてあるいはやらなかった点もあるのではないか、こういうふうにも考えます。こういうふうな中に立ちまして、私といたしましてはこれを厳しく受けとめまして、早速今週発足するわけでございますけれども、事務次官を長といたしまして、この秘密を守るために委員会を発足させた次第でございます。  これらの問題を通しまして、今後捜査当局にも十分協力をいたしまして、あれがこれがということでなくて、一致協力をいたしましてこの真相の究明に当たりたい、かように存ずる次第でございます。
  270. 井上一成

    ○井上(一)委員 今回の問題を長官が報告を受けられたのは、事件発覚後どれほどの時間を要したわけですか。
  271. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 十八日の八時ごろと記憶をしております。
  272. 井上一成

    ○井上(一)委員 陸幕長との連絡がとれたのはその後何時間ぐらいを要したのでしょうか。
  273. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 これは事務次官からの連絡でございました。
  274. 原徹

    ○原政府委員 そういう問題でございますので、事務方の最高責任者である事務次官から御報告をいたし、そして当時長官は群馬県の方に行っていらっしゃいましたから、事情を事務次官から逐一報告をいたし、そして翌日帰京されて、そのときに幹部を全部集めましたので、陸幕長も当然その中に含まれておったわけでございます。
  275. 井上一成

    ○井上(一)委員 時間がないということで御出席をいただいているんだが、陸幕長から長官が連絡を受けたのはいつだったのですか。それは長官がこの事件を知ってからどれくらいの時間がかかっておったのですかと聞いておるのですよ。これはしっかりと答弁をしなければだめですよ。質問を理解してしっかりと答弁しなければいけない。まる一日かかったということでしょう。そういう体制、これは防衛庁長官、さっきのあなたの心境を聞きまして、今後二度と起こらないように国民に強い陳謝の念と反省の意を表する、そして内部体制を確立していくのだということは、それなりに私は評価もしたいと思うのです。私がここで指摘をしておきたいことは、いわゆるシビリアンコントロール、自衛隊の運営自体にシビリアンコントロールという一つの歯どめがあるわけですね。にもかかわらず、事が起こって、この件だからこれでいいというわけにはまいりません。何が起こるかわからない。そのときに一日もあるいは半日も容赦できない、待てないということなんです。そういう体制の改革をやらなければだめだということです。そういうことを防衛庁長官は考えていらっしゃるのかどうか、こういうことです。こんなことが起こったから、機密保護法をつくって非常に強く罰して、すべての法律で縛りくくっていこう、そんなお考えは持っていないということも巷間私は承知しておりますけれども、そういうことじゃなく、私の言っているのは、何千億円も内部の整備に金をかけたり、あるいは有事立法を云々する以前に内部体制をしっかりと確立しなさい、こういうことです。そういうことで何かをなさる用意があるのか、なされたのかということです。
  276. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 先生の御指摘どおりで、私といたしましては、秘密保護の特別立法をするとかなんとかというようなことは現在毛頭考えておりません。やはり現行制度の中におきまして当然やるべきものはたくさんあります。こういうふうな問題を考えましたときには、今回の事件というものは何か欠けているところがある。その欠けているところを、いまの制度の中でもって組織をつくりまして究明いたしたい、かように存ずる次第でございます。
  277. 井上一成

    ○井上(一)委員 防衛庁長官、お忙しいのに少し時間を割いて出席をしていただいて、どうもありがとうございます。まあ所管外ではないわけでありまして、北洋漁場で操業する漁民の安定と安全操業、いろいろな意味を考えたら、やはりすべて関連して、それぞれの分野でがんばってほいということですから、そういう点を要望しておきます。  さて、少し中断をいたしましたけれども、さらに引き続いて道頓堀の場外馬券売り場の問題に質問を戻します。  さっき申し上げたように、巽興業の社長は、みずから町会長という形の中でこの設置を着々と進めてきたわけであります。さらに、反対の請願、賛成の請願ともに不採択になった、そういう実情も指摘をしました。  それから、巽興業は昭和五十一年の一月九日に建築確認を大阪市に申請をしました。そのとき中央競馬会とはどのような約束をしておったのでしょうか。
  278. 武田誠三

    武田参考人 先ほど先生から御指摘がございました十一月以前の接触につきましては、私の理解違いでございまして、先生のおっしゃいますように九月十八日前後に接触がございました。  いまのお話の建築確認申請書に関連いたしまして、私どもの方として特別なあれはなかったように聞いております。
  279. 井上一成

    ○井上(一)委員 建築確認を申請した折に、あなたの方に何ら相談がなかったのですか。——これは議事進行で、質問をやりながら大変恐縮なんですけれども、こんなでたらめな答弁なんというのはないですよ。  農林大臣、あなたの主管の中央競馬会、こんなことで大臣として許されるのですか。注意を喚起しなさい。  では、私から指摘をすることに否定か肯定かをしなさい。  五十一年一月三十一日に、大阪市からは、この建築確認が出たときに、農林大臣の承認がなければ着工できない条件つきで建築確認を許可されるということで、農林大臣の許可条件、一月三十一日付で大阪市からそういう指示を巽興業が受けているわけです。そしてあなたの方に早速話があったわけなんです。これは中央競馬会もしくは農林省、このように受けとめてほしいと思います。中央競馬会もしくは農林省にこの話があったわけです。この事実関係、否定されますか、そのとおりだとおっしゃいますか。
  280. 武田誠三

    武田参考人 お話のとおりでございます。
  281. 井上一成

    ○井上(一)委員 委員会審議がスムーズにいくためにも、ちゃんと正しく正直に答えてもらわないと、これは時間がありませんからね。  まあ、そういうことで一月の建築確認ではそういう付帯条件がつけられたわけです。そして五十一年九月に、巽興業は大手建設会社と請負契約を結んでいます。このことは御承知ですか。御承知なら御承知だ、そして、総請負金額をあなたの方からおっしゃってください。
  282. 武田誠三

    武田参考人 大林組と契約を結んだということは承知をいたしておるようでございます。  請負金額としては二十一億五千二百万円余ということで、これはそのときにわかっておったかどうか、ちょっとはっきりいたしませんが、そういう建設工事費に相なっております。
  283. 井上一成

    ○井上(一)委員 私がいま指摘したのは五十一年九月の請負契約ですよ。あなたの方にはその金額で出ていますか。それ以外の契約は出ていませんか。
  284. 武田誠三

    武田参考人 いま先生のお話しの件につきましては、申しわけございませんが的確な資料をいま持ち合わせておりませんので、ずばりとしたお答えができませんで申しわけございません。
  285. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、中央競馬会のこの質問に対する答えは非常にふまじめだと思う。私は指摘しておきます、十八億七千四百万円、そしてこれには保証人もつけずに、あなたの方の関係の了解があったのだというふうに私は理解をしております。  この十八億七千四百万円に対して、あなたの方は協力金として何億出されたのですか。
  286. 武田誠三

    武田参考人 協力金は十億を出しております。
  287. 井上一成

    ○井上(一)委員 十億円は、当初いつ出されましたか。
  288. 武田誠三

    武田参考人 第一回を五十一年の十一月二十二日、三億円でございます。第二回は五十二年の九月三十日で二億円、第三回は五十二年十二月十二日で二億円、第四回は五十三年の九月十三日に三億円、合計十億円を出しております。
  289. 井上一成

    ○井上(一)委員 その十億の金を出すために覚書を交わされましたね。そしてさらに、その覚書の中で賃料については、覚書の四項の(ハ)「契約額は三カ年間据え置くものとする。」こういう覚書を交わされていますね。
  290. 武田誠三

    武田参考人 お話のような覚書を交わしております。
  291. 井上一成

    ○井上(一)委員 いま、大阪の宏和という場外馬券売り場建設に絡んで十億の金が焦げついていますね。
  292. 武田誠三

    武田参考人 ただいまそれの返還を請求中でございます。
  293. 井上一成

    ○井上(一)委員 焦げついているかということだから、焦げついていますということですね。  こういうことなんですよ。宏和を例に出したということは、三億円の金を出したときには、賛成、反対ということ以前の問題で、まだ見通しが非常に暗かったわけです。この問題については五十二年、地元住民から工事差しとめの仮処分申請が出されて、そして和解が成立しましたけれども、やはりこれが和解が成立してなかったら、この三億はひょっとしたら宏和の二の舞になる可能性もはらんでいたということを私は指摘するわけなんです。さらに、十億以外に地元対策費として一億二千三百万円が支払われましたね。これはどこがどういう権限で負担をしたのですか。
  294. 武田誠三

    武田参考人 道路の建設補修に一億を出しております。
  295. 井上一成

    ○井上(一)委員 どこへ。
  296. 武田誠三

    武田参考人 大阪市の方に出したと思っております。
  297. 井上一成

    ○井上(一)委員 二千三百万円は……。
  298. 武田誠三

    武田参考人 私どもの方が出しましたのが一億で、地元の負担分が二千三百万というように聞いております。
  299. 井上一成

    ○井上(一)委員 この工事が完成し、この建物に対する賃貸料は幾らなんですか。
  300. 武田誠三

    武田参考人 賃料は年額で四億二千五百万円でございます。
  301. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、先ほど指摘をした覚書、さらに賃貸契約書の写しを持っております。そして、いま言われた四億二千五百七十五万というのは現在の賃料ですけれども、当初の賃貸料は、少しですけれども下回っているわけなんです。私が指摘をしたいのは、これが余りにも高いということなんです。五十三年八月、完成と同時に契約を結んで、付近の通常のビルでは一階のフロアで坪八千円くらいだと思う。二階以上になればこれは五千円あるいはその間をとる場合もあるでしょう。競馬会が借りているその面積、私はその資料を持っておりますが、屋上まで借りているということで賃貸料の中に入れているわけなんです。さらに通常除外されるべき共用部門等についても、階段、エスカレーター、全部含めて加算をしている。許されないことは、裁判をして、巽興業の方から大阪地裁に提出された建物区分表という床面積、その中で中央競馬会の使用分としては六千九百七十七・二二平米、こういうことなんですけれども、中央競馬会の方では八千二百二十八・〇五平米、年額四億二千五百七十五万円、坪当たり一万四千百二十円、倍に近い金額でこれを借りているわけなんです。これは通常であれば含まれないであろう、そういうところも何らかの名目で含み、いわゆる水増し家賃。さらにいま指摘をした六千九百七十七、これは裁判所へ巽興業が提出した競馬会が使用している部分だということで争いの中で提示をした面積です。これに対して競馬会の方では八千二百二十八ですから、差額千二百五十一平米、これはざっと計算いたしますと年間六千四百七十五万円、まさにこれは空家賃であります。中央競馬会が空家賃ともとれる法外な家賃を支払っている、こういう事実関係を私は指摘をしたいわけです。この背景には政治的な何かがあったのではないか、こういうことなんです。こういうことを私から指摘をするわけなのです。いま申し上げた数字に間違いがあれば指摘をしてください。
  302. 武田誠三

    武田参考人 あそこの建物の利用につきましては、巽興業の方の専用部分の面積と私どもの方の専用部分と、さらに両者の共用部分がございます。われわれの方の専用部分と共用部分を加えましたものが八千二百二十八平米、こういうことでございます。
  303. 井上一成

    ○井上(一)委員 私の指摘をした数字、いわゆる金額に間違いはありませんね。
  304. 武田誠三

    武田参考人 平米当たりの賃料は四千二百円ということで契約をいたしております。
  305. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は坪で言ったのですけれども。あなたの方は平米当たりの単価で契約していないのですよ。何をおっしゃっているのですか、あなたは。月額幾ら幾ら、私がいま指摘をしました。  さらにもう一点、あなたの方、中央競馬会は三年間据え置きであると言いながら、毎年、額の問題でなく、賃料を上げてきましたね、五十二年九月二十九日、五十三年九月七日、五十四年二月八日と。金額よりも、覚書で三年間上げないという一つの約束事を毎年毎年このように変えていくというこの姿勢にも問題があるということですね。施設の拡充だとかあるいは整備等については両者協議の上で負担をしていこう、だから何かを増築したとかあるいは新しいもの、さらにつけ加えたというものに対する費用については甲乙両者で協議をしていこう、こういうことが書かれています。私はそれはそれなりにいいと思う。家賃を上げるというようなことはどこにも書いてないわけです。三年間賃料を上げない、据え置く。三年間で物価の上昇とにらんで改定をしていこう、こういう含みのある覚書、契約書があるわけなのです。だから、あなた方はこういう契約をし、覚書を交わしても、これはただ単なるその場限りの問題だというような認識しか持っていらっしゃらない。こんなことが中央競馬会の実態なのか、こういうことなのです。二十億に及ばない建物に対して十億の金を七年間無利息で貸し、それ以後は二%という非常に低額。  農林大臣、いま私が詳しく指摘をしましたこの家賃、いわゆる賃貸料、常識的にどうお考えですか。常識的に高い、これが常識だというのだったら私もうなずきもしますし、そして契約が、いま指摘したように三年間変えないという覚書がありながら毎年変えた、増築をしたものに対しての負担なら私はよくわかる。そういうことで大臣の素直な意見、どうも後ろから何か言おうとしておる。だから、あなたが、これは高いか安いか常識で判断して——十八億の建物に対して十億の金を出し、そして四億二千万といったら三年半で返るのですよ。そういうようなことが常識だとおっしゃるのかどうか、まず率直なお考えを聞かせてください。
  306. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは大阪のことでございまして、あなたは大阪でございますからよく御承知だと思うのですが、私は大阪の家賃というのはよくわからないものですから、家賃が高いか安いかというのは一概に私もちょっとお答えできませんが、ただ、いま私ちょっと奇異に感じたのは、覚書で三年間据え置きということがはっきり明示してあるにもかかわらず、もしそれが上がっておるということが事実であれば、その辺は、どうしてそういう覚書が書いてあったにもかかわらずそういうことをやっていたかということに対して、大変申しわけなかったのですが、私もいま初めてそういうことを承知いたしましたので、それは一遍よく調べてみたいと思うわけでございます。
  307. 井上一成

    ○井上(一)委員 もう一つ。  大臣、別に大阪だから、東京だから、名古屋だからということはないんですよ。一つの建物、家屋、不動産を賃貸する場合に、その原価が十八億。土地も含めて二十四億としましょう。十億の金が協力金で出ているわけなんです。十四億といったら三年半かからぬのですよ。こんな高利な、いわゆる利率のいい、利回りのいい投資なんてないでしょう。常識的な話をしておるのですよ。建てられているその会社を指摘するのじゃなく、すべてにそういうことがあるということで、巽さんには大変気の毒かもわからぬけれども、私は一つの事例を申し上げたのであって、大臣、どうなんですか。
  308. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私ども、そういう事業をやっているものはよくわからないのですが、たとえばもしマンションなどを想像するならば、これはやはり少しいい率だなという感じは私は正直受けております。
  309. 井上一成

    ○井上(一)委員 少しではなく非常にいい、こういうことです。それで、大臣、過去は過去として、いま財政元年あるいは財政の立て直し、こういう厳しいときなんです。中央競馬会の過去のいろいろないきさつも私はわかりませんけれども、過去について鋭くとがめようという気もなく、それよりもむしろ反省の上に立って将来やはり健全に民主化してほしいという強い願いがあるわけであります。そういうことで私は決して妥当だとは考えないので、賃貸料について今後検討の余地がある、こういうことなんですよ。大臣、私は何ぼというような額は出しませんけれども、今後検討の余地があるという私の見解、このことについて大臣のお考えを、そのとおりだ、検討の余地があるとか、いや、そんなことは検討する必要がないとおっしゃるのか、私は検討の余地があると思うが、どうですか。
  310. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 そういう御意見をいろいろ先生からおっしゃったのでございますし、いまいろいろ聞いていて私自身も少し、実際問題どういう覚書になっておるのか正直見直してみたいと思いますので、私が検討させていただきます。
  311. 井上一成

    ○井上(一)委員 そういう素直な答弁をいただければ順次質問が進むのです。中央競馬会理事長、あなたも非常に苦しいだろうと思います。しかし、まだまだ指摘をする点があるのです。協力金のプールというのでしょうか、五十三年度末で百四十億まだ協力金の残額があるわけです。こんなことも含めてやはり今後検討してもらわなければいけない。  もう一つ、一定の法のもとで配当等については十分国庫に収納されてそれなりの財源には位置するわけですけれども、やはり大衆の願いというのでしょうか、そういうこともあって配当率をよくしていくとかあるいは国庫納付金をもう少し比率を上げていく。私は、中央競馬会が余り金がもうかり過ぎるから、あり過ぎるからこういうようなことになっていく、これは悪い循環になるからそういう点ではひとつ検討の中にぜひ加えていただきたい、こういうことであります。大臣から検討の余地があるというお答え、今後に期待します。  さらに、これは巽興業一社だけの問題でない、こういうことであります。京阪神不動産株式会社、ここに対する協力金は総額幾ら出していますか。
  312. 武田誠三

    武田参考人 総額で八億四百五十万円出しております。そのうち現在までの返還額が三千二百九十万円で、現在残高としては七億七千百六十万円ということに相なっております。
  313. 井上一成

    ○井上(一)委員 賃貸料として年額で幾ら払っていますか。
  314. 武田誠三

    武田参考人 総額で八億八千六百万円でございます。
  315. 井上一成

    ○井上(一)委員 きょうはもう時間がありませんので、この京阪神不動産に支払っている投下資本と、中央競馬会が京阪神不動産と取り交わした覚書、賃貸契約書等、さらに、いま指摘をしましたけれども、八億余りの賃貸料を支払っている物件等については、後刻私の手元に資料として御提示を願いたいと思います。時間が参りましたので、私はこの問題については二十四日の大蔵省所管の中でさらに追及をいたしたいと思います。  これで終わります。
  316. 高田富之

    高田委員長 庄司幸助君。
  317. 庄司幸助

    ○庄司委員 農林省並びに会計検査院、それから競馬会にお伺いしたいのでありますが、いま井上委員からも指摘がありましたが、この中央競馬会の収支決算の問題、私も改善する必要があるというような観点から質問したいと思いますし、それから場外馬券場の問題については重複を避けて質問したい。そのほか、場外馬券場が新たに設置されようとしている仙台市の問題についても若干お伺いしたいと思うのです。会計検査院にも後から質問します。ひとつやりとりを聞いていて、所信を後で述べていただきたいと思いますからそのつもりで。  第一番目にお伺いしたいのは、中央競馬の売上額が年々歳々急速に伸びているわけです。これは先ほど来数字も提示があったようでありますが、たとえば十年前は三千二百二十九億円だったものが昨年度では大体一兆二千六百三十八億円に伸びている。約四倍近くであります。それから五年前と比べても六三%くらいの売り上げの伸びが示されております。この売り上げのおおむね一五%は中央競馬会に入るわけでありますから、それを調べてみても、十年前は四百八十四億円だったものが昨年は千八百九十五億円くらいになるのじゃないか。ですから十年前と比べると千四百十一億円くらい売り上げがふえている。五年前と比べても七百三十一億円ふえております。これだけ急激に額がふえている現在、この利益配分について、従来の比率ですと、いわゆる馬券をお買いになった方々に七五%、それから政府上納金が一〇%、それから競馬会一五。もっともその一五の中に第二上納金も入っておりますけれども。こういった比率をそろそろ検討する時期に来ているのではないか、こういうふうに思うのですが、その辺、これは大臣、急に聞かれてもなかなか大変でしょうから、畜産局長からひとつ。
  318. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 お答えいたします。  中央競馬におきます売り上げは、いま御指摘のとおり、十年前と比べますと大幅な増加でございます。しかし、その伸び率の状況を見ますと、昭和五十年ごろまでは大体対前年比十数%という二けた台の伸びでございましたが、その後の伸び率は一〇%ないしそれを下回る伸び率ということで低下傾向にございます。一方、競馬の施行に伴う諸経費は、馬を使うということもございまして、他の公営競技に比べまして経費増加割合は比較的多いという状況でございます。したがいまして、その収支差につきましては漸次低下傾向にございます。  今後の問題といたしましては、このような売り上げの増加はやはり経費の動向とも関連をいたし、かつてあったような伸びを期待することはなかなか困難でございましょうし、経費増加傾向も現在だんだん多くなっておる傾向というのは今後も続くであろうということからいたしますと、他方競馬の施行に必要な施設整備についても金を投資していかなければならぬという状況からいたしますと、今後の方向といたしましては経費の節減をできるだけ図っていく必要があろうかと考えております。  国庫納付金あるいは配当率の引き上げ等についての言及もございましたが、ただいま申し上げましたような状況も考え合わせながら、今後の検討は当然してまいらなければならないというふうに考えております。
  319. 庄司幸助

    ○庄司委員 これはひとつ検討課題にしてもらいたいと思います。  大臣、いまどこかへ雲隠れしたようですね、いるのですか。——それでは、これは明確にひとつ大臣に言っておいてください。  それから、特別積立金の問題なんです。この特別積立金が年々歳々非常にふえているわけです。これは四十八年度末で九百十八億円だったものが、五十三年にはもう累積で二千百九十四億円にふえております。平均すると毎年二百五十億円前後これが積み上げられるわけですが、この特別積立金については、一般的に言って競馬会の予算が農林大臣の認可を受ける、こういうこと以外には運用については規制がなされていないと思うのですが、規則か何か農林省としてつくってこの特別積立金運用をやっておられるのかどうか。これをひとつ畜産局長から。
  320. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 特別積立金につきましては、いま御指摘のように毎年度損益計算上出てきました剰余金の二分の一を第二国庫納付金として納入した残りが積み立てられるものでございます。その処理につきましては、貸借対照表の上で資本の部に資本金と並べて計上をいたします。また、財産目録の上におきましても同様、資本の部として計上いたしておりまして、これらの財務諸表につきましては農林省、われわれの監査、業務検査を受けておりますし、また会計検査院の検査も受けておるということでチェックをいたしておるわけでございます。
  321. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は、この特別積立金運用をどうしていくのか、この二千百九十四億円の運用の方向についての指導、これをやっているのかどうか、これを聞いたわけです。  そこで、この問題もひとつ答えてもらいますが、去年の十二月六日にわが党の津川議員が積立金の国民への還元を要求したわけですが、局長はこの際、大部分は固定資産化している、競馬施設そのものを処分しなければならなくなるのだからできません、こういった答弁をなすっていますが、そうすると、二千百九十四億円の特別積立金、この固定資産と流動資産の内訳はどうなっているのか、ひとつお答え願いたいと思うのです。
  322. 武田誠三

    武田参考人 五十三年度末で、お話のように二千百九十四億円の特別積立金がございますが、このうち固定資産化されております額は千六百三十六億円でございます。(庄司委員「それから流動資産は」と呼ぶ)流動資産は五百五十八億円ほどでございます。
  323. 庄司幸助

    ○庄司委員 実は、これは後でも触れますけれども、こういった特別積立金の固定化しているものの中にいろいろ問題も出てくるわけです。たとえば場外馬券場の協力金の問題やその他になっていったりする。それから、この流動資産として挙げられている分、やはりこの分の運用というのは非常に私は大事だと思うのです。その点で、私は、この点の大臣監督権限を使って、そしてこれらが本当に国民の役に立つように運用すべきだろう、こういうふうに思うのですが、ひとつ大臣答えてください。
  324. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 ただいま武田理事長から特別積立金の固定資産部分と流動資産対応分につきましてお答えがあったわけでございますが、いまの流動資産対応額五百五十八億円の中には五十四年度の資産に充当する分、それから繰越工事の支払いに充てられるもの二百四十五億円が含まれておりますので、それを差し引きます純流動資産対応額は三百十三億円でございます。これは年度を越す際の競馬会の手持ち流動純資産としてはこの程度は必要ではなかろうかと考えられますけれども、一方いまお話しのような、また先ほどお答えいたしましたような経費の節減等の要請にもこたえ、できるだけ経費を節減をして流動資産対応額をふやし、それを将来の投資に向けていくという必要があるものというふうに考えておるわけでございます。
  325. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま局長から答弁をいたしましたように、流動資産の、特に流動的に使えるお金として三百十三億という話があったわけでございまして、それぐらいはやはり持っていないといけないという事務当局の判断でございます。しかし、私といたしましては、日本発馬機の問題もございましたし、またきょういろいろ話を聞いておりましても、いろいろまだまだ見直しをしなければならぬ点が多々あるように思いまして、実は私自身がこの間から畜産局長に指示をいたしまして、中央競馬会だけでなく、競馬界そのものが一体どういう形で運営され、それが本当に公正に行われ、国民の大衆的な娯楽として本当に喜ばれておるのか、こういう観点からもう一回見直してみようではないかということをやっておりまして、実はその流動資金をいまもう少し国庫納付金に入れたらどうかとか、いろいろの意見があるわけでございますけれども、ひとつ、どういう方向かはともかくといたしまして、一体それだけのものを常に持っていなければならないのかという点についてはもう少し検討してみたい、こう考えておるわけであります。
  326. 庄司幸助

    ○庄司委員 四十九年から五十三年の五年間の特別積立額は一千二百七十六億円なのです。一方、翌年度に入りますけれども、五十年から五十四年の間に資産充当したものが六百二十九億円です。一方、四十九年から五十三年の収支決算の方を見ますと、剰余が、繰越分は別として、一千九十四億円あるわけです。翌年度資産充当するものが六百二十九億円としても、四百六十五億円の余裕、剰余金が出るはずなんです。ですから、こういったものをやはり現状からすれば、これぐらいは何らかの形で国民に返せるはずだというのが私の要求なんです。その点、大臣の答弁もあったようですから、ひとつよく検討して対処していただきたい、こう思います。  それから、四十九年度から流動資産を資産充当として収支予算に繰り入れた。資産の固定資産化が急速に進められているわけです。その結果、建物などが相当ふえているわけですが、その多くが場外馬券場などの建設協力金に化けている。化けると言うと語弊がありますけれども、転化している。この賃料の問題は後で私も問題にしますけれども、こういう建設協力金が非常にふえてくる問題、これは長沼答申にかんがみても私はやはり相当考えなくちゃいけない問題ではないかと思うのです、この場外馬券場の拡大の問題も含めて。その辺、大臣どうお考えでしょうか。
  327. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 きょういろいろ議論がございましたので、先ほども申し上げますように少し検討させていただきたいと思いまして、ここですぐどうという御返事を申し上げられないのはまことに恐縮でございますけれども、賃料なども含めてひとつ検討させていただきたいと思います。
  328. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから、さっき局長の答弁だと、大分経費もふえてきた、こういう答弁ですが、この経費のふえる問題について、私一言伺いたいのですが、これは会計検査院にも聞いておいていただきたいのです。  四十九年対比で五十三年の損益上の収益、これは四六・六%ほどふえております。ところが純利益の方は一五・二%しかふえておりません。その間に費用が四八・五%も増加しているというのが競馬会の決算から出てくる数字なんです。そして、この費用で高率でふえている主なものを見ますと、開催労務費とか税金とかあるいは賃料とかあるいは公正確保費であるとか、そういうものがふえているわけです。そして、このうち相当部分が、馬主相互会であるとか調教師会であるとかあるいは関連企業の支払いがふえている中身なんです。そういう中で発馬機の事例も一つ出てきたわけですね。だから、いままでは検査院の検査を受けなかった関連団体利益がさまざまな形で移されている形跡も感じられるわけです。     〔委員長退席、新村(勝)委員長代理着席〕 しかも、これらの団体にいわゆる農林省の高級官僚の天下りや競馬会からの横滑りが相当あるわけです。  そういう点で私は、競馬会の問題に絡んで会計検査院も相当この問題には関心を持たれておられるだろうと思いますが、少なくとも発馬機会社であるとか馬匹輸送とかトータリゼータとか、こういうところは会計検査院の検査対象にすべきじゃないか、こういうふうに思っているわけですが、その点、検査院の御答弁を願いたいと思います。
  329. 小野光次郎

    小野会計検査説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございました日本発馬機株式会社、それから日本馬匹輸送自動車株式会社、日本トータリゼータ株式会社、これが中央競馬会が出資をしている法人でございます。この法人につきましては、いずれも資本金の五〇%を超える出資をいたしております。そしていろいろ競馬会の業務の一部を行わせたり、円満な効果業務の遂行を期待して出資したものでございまして、密接な関係にある会社でございます。したがいまして、私どもの方の会計検査院法の二十三条の第一項第五号の規定に基づきますと、いわゆる国が資本金の金額を出資している会社がさらに出資している会社については、こういう密接な関係があるものについては検査をすることができることになっております。したがいまして、この三会社につきましては、特に昨年来日本発馬機株式会社で発生いたしました一連の不正事件もございますので、そのほかの二会社もあわせまして、御指摘のように検査を指定いたしまして、検査個所に加えて十分検査をしてまいりたい、こう考えて、今月の十一日に検査指定を行いまして検査対象といたしました。今後厳重に調査することにいたしております。
  330. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで私は、賃料の問題で少し具体的にお伺いしたいのです。  賃料は、四十九年の予算では三十九億二千五百万円計上されております。ところが五十四年になりますと、これも予算ですが、百二十五億四千五百万円計上されています。約三・二倍になっているわけですね。     〔新村(勝)委員長代理退席、委員長着席〕 もちろん賃料というのは全部場外馬券場ではありません。しかし、百二十五億のうち相当部分が場外馬券場に計上されている。大体半分くらいじゃないかと思うのです。それで、賃料が、私が調べた結果では、先ほども御指摘ありましたが非常に高い。この点をひとつ指摘いたしますから、聞いておいていただきたいと思うのです。これは会計検査院も聞いておいていただきたい。  たとえば五十四年二月に建築が完成した、そして五十四年三月二十四日から業務開始した札幌の南三条ですね、あそこの中央競馬場外センターは四千九百四十一坪です。私は坪で言います、それに三・三掛ければ平米が出ますから。賃料が年七億九千百四十九万円払われております。約八億円です。これは坪当たりに直しますと毎月一万三千三百四十九円になるのですね。ところが私が札幌の不動産関係のこういう相場を調べているところに聞いてみました。そうしたら、あの辺なら一カ月一坪大体六千円から六千五百円だ、高くても。まあ六千円から六千五百円が相場だ、こういうふうに返事が返ってきたわけです。そうしますと、これは年に直しますと、相場といいますか近傍類地の値段ですね、六千五百円と計算して三億三千八百四十万円ぐらいが妥当な値段だ。そうしますと、一年間の賃料の差額が一般に比べて四億五千三百九万円になる勘定です。  これは競馬会の方はいろいろな理由は述べられるだろうと思うのです。あるいは特殊な建物であるとか、一平米当たり人が二人くらい詰め込むとか、床が抜けないようにとか、あるいは間仕切りがどうのこうのおっしゃるだろうと思うのです。しかし、そういうものを計算してみても、この建物の坪当たり単価が百一万円ほどかかっておりますが、これも高いし、それから近傍類地から言っても高い。こうしますと、もし二十年契約したとすれば、差額だけでもってもう九十億円超すのですね。これは先ほどの委員指摘された非常に高い家賃に映るわけです。この調子でまいりますと、これは建築費が五十億円ちょっとですから、家賃の差額だけで十年間で元を取っちゃう、こういう状況があるのですね。  それから、先ほど御指摘があった京阪神不動産の神戸市の生田区元町通り三丁目の場外馬券場、これは八百二十一坪です。この賃料は年間四億二千五百七十四万円、そうしますと、一カ月一坪四万三千二百十四円です。一カ月一坪四万三千二百十四円という賃料は、私は全国未曽有の賃料じゃないかと思うのですよ。ところが、これも神戸市にある不動産調査の会社に聞いてみますと、大体相場は一カ月一坪当たり一万円というところがいい相場だ。これでまいりますと、相場と賃料の差額は一年間で三億二千七百二十二万円出てくる。これは二十年だとすると、六十五億四千万円ぐらいになっちゃうのですね。しかも、これは改装した馬券場なんです。この京阪神不動産の有価証券報告書を見ますと、五十三年の価格で帳簿価格が六億六千万ぐらいですよ。だから、こういうところへこんなに高い賃料を払っているという問題、この辺はどういうわけなんだろう。  それから、京都の東山区の場外馬券場、これなんかも調べてみますと、相場と比べて一年間で大体八千万円近くの差が出てくるようです。これは帳簿価格でいくと二億六千六百万ぐらいです。だから、こういう場外馬券場について、いわゆる世間の常識から見てきわめて高い家賃が支払われている問題について、武田理事長さん、一体どういう理由なのか、国民に納得いくようにひとつ教えてもらいたいと思うのですよ。
  331. 武田誠三

    武田参考人 先生からいろいろな理屈をおまえ述べるだろうというお話でございますが、場外馬券売り場につきましては、その構造その他が特殊なものでございますし、私の方で占用するというような形のものでございます。そういうようなことから建設経費も相当高くかかる面もございますしいたしますが、それの賃料につきましては、私の方といたしまして、いろいろとそういった建設経費あるいは私の方から出しております協力金の関係、その他近傍類地の価格等も頭に入れながらオーナーの方と折衝いたしまして月額単価を決めておるわけでございます。  先ほど札幌の月当たりの単価等につきましてのお話がございましたが、私の方の算定では坪当たり札幌では八千七百円、それから神戸の場外は一万一千九百円、京都は一万八千七百円というようなのが坪当たりの月額単価に相なっております。一々細かく申し上げるのは時間がかかりますので、大体私の方としては周りに比べて、あるいはほかのビルのテナント代に比べまして特段に高い価格、賃料を払っておるというふうには考えておりません。
  332. 庄司幸助

    ○庄司委員 農林大臣、疑惑と言うとオーバーですが、とにかく常識よりも相当高いという質問を私はしているわけですから、これも納得のいくように農林大臣監督でひとつ調べていただきたい、いかがですか。
  333. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私も資料をこの間うちからいろいろ見ておりますが、多少——しかし民間のをいろいろとってやっていることは事実なんですね。それから、いま理事長の申しましたように、いろいろと民間のをとって、しかも相手方のオーナーとの協議をいろいろして、なるべく安くという努力をしておることは、私は決してやっていないとは言わない。本当にそれは認めてやっていただきたいと思いますが、ただ資料の中の民間のとり方が、いろいろとり方があるわけでありますから、その辺のとり方が最初から間違っておれば、相手と交渉するときに、最初のところで高い資料をとっていれば高い価格で交渉してしまうわけですから、その辺のところに多少問題があるのじゃないかと私も思っておりまして、できるだけいま検討を進めておるところでございます。先ほどから申し上げておりますように、御指摘の賃料を含めて、私、検討をできるだけ早いうちにやらしていただきたい、こう思っております。
  334. 庄司幸助

    ○庄司委員 会計検査院、この点は御関心をお持ちになっていらっしゃるのですか。これは競馬会の国庫納付金にも響く問題だし、まさに国民の血税の問題ですから、その辺いかがでございますか。
  335. 小野光次郎

    小野会計検査説明員 お答え申し上げます。  場外馬券の発売所の賃借料につきましては、投下資本金利、国定資産税、火災保険料、減価償却費、維持修繕費、管理費、こういうものの合計額から建設協力金の運用利益を差し引いたものを賃借料の予定価格といたしまして、そして折衝を重ねてその予定価格範囲内で契約しているものでございます。したがって、ビルの構造、立地条件等で賃借料が決められていくのでございます。  ただ、先ほど来、本委員会における御審議を承っておりますと、いろいろ疑問の点がございます。私どもの方といたしましても、この問題については建設協力金と賃借料の関係あるいは賃借料の内容、こういう点について今後十分注意して検査してまいりたいと存じておる次第でございます。
  336. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで協力金の問題にちょっと触れますけれども、札幌の場外の事例で私、計算してみたのです。二十二億五千万円協力金を出しています。これは七年間無利子で据え置き、それからその後は八年間二%の利子で均等返還ですね。これも、たとえば周辺の保証金の相場と比べてみたら、保証金は大体坪当たり二十万から三十万だ、こう言っているのです。四千九百四十一坪ですから、三十万にしても大体十四、五億円くらいなんです。二十万とすれば十億足らずです。この保証金の関係で比べても、二十二億五千万というのはやはり倍くらい高い。  それから利子の優遇分ですね。たとえば市中金利、安く見積もって八%と仮定します、実際はそれ以上でしょうが。八%と仮定して七年間の無利子分、これは単利計算しても十二億五千万円のメリットがあるんですね。それから、八年均等償還で二%で逓減方式で計算してみますと、これは若干の数字の違いはあるかもしれませんが、六億ちょっとになります。何だかんだで十八億五千万円くらい利子優遇のメリットが出てくる勘定になるのです。実は私、二十二億五千万円、年八%で複利計算してみたら、十五年だけですが、大体七十一億を超しちゃうのですね。だから、競馬会はこういう利子のメリットも計算に入れて賃料も当然設定すべきじゃないか。そうでないと、こういう場外馬券場を誘致する人はもうかって笑いがとまらないというかっこうになって、そういうのがえてして政治家なんかと結びついて誘致運動をやるわけなんですよ。そうして往民の反対運動を食って後でもめる、こういうことになりかねない。ですから、札幌場外なんかこういう計算でまいりますと、建築費が五十億一千九百三十六万円ですが、これからいまの利子優遇分を引きますと結局三十一億円ぐらいで建っちゃった、これを毎年七億九千万の家賃をちょうだいしますと、賃料だけで四年間で元を取っちゃう、こういう計算が出てくるのですね。これは後楽園についても言われる措置です。  時間がありませんから事例はこれぐらいにしますけれども、こういう協力金の優遇措置と賃料、両方絡み合わせて場外馬券場が利権の対象にならないように、私は競馬会をがっちりと監視する必要があるのじゃないかと思うので、農林大臣の決意と、それから、会計検査院はこのような観点で今後どのような決意で臨まれるか、それぞれ一言ずつ御答弁願いたいと思います。
  337. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 賃料と協力金は非常に関連があるものでございますから、私先ほど申し上げましたように、もちろん賃料についての検討をするというときには協力金も含めて検討させていただきます。
  338. 小野光次郎

    小野会計検査説明員 建設協力金と賃借料の関係につきましては、重大な関心を持って検査してまいりたいと存じます。
  339. 庄司幸助

    ○庄司委員 それから、農林大臣、これはあなたが自民党の農林大臣として私聞くのですが、さっき話題になりました巽興業ですね、あそこから政治献金をもらっている方がおたくの中にいらっしゃるのですね。実は、この間官報を調べておりましたら、五十四年三月一日に中正政治懇話会というところへこの話題の巽興業から百五十万円ですが政治献金が出ているのです。この中正政治懇話会の先生はどなたかというと、これは調べてみたら航空機特別委員長の中山正瞳さんなんですね。だから、とかくの物議を醸しているこういう会社からこうやって政治献金までもらうとなれば、私はやはり疑われてもやむを得ないのじゃないかというような感じもするのですよ。これは農林大臣として、また同僚議員の問題でもありますから、ひとつこういうことは慎むように、指導の立場はあるかどうかわかりませんけれども、私はやはり身を正していただきたいなと思うのです。その辺、大臣にひとつお答え願いたいと思います。
  340. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは同僚議員のことでもございますし、その事実関係がはっきりしない間に私がここで答弁することはできません。
  341. 庄司幸助

    ○庄司委員 中正政治懇話会に五十四年三月一日に百五十万の政治献金が巽興業からあったというのは官報の記載であります。  それで、私はいまから少し仙台の場外馬券場の問題で具体的にお伺いしたいんですが、大臣昭和三十六年七月に内閣総理大臣に対する答申があったわけです、公営競技調査会長の長沼弘毅さんから。この文章は、本調査会としては「少なくとも現状以上にこれを奨励しないことを基本的態度とし、その弊害を出来うる限り除去する方策を考慮した。」こういうふうに答申なすっております。それから五番目の項に「馬券、車券等の場外売場については現在のものを増加しないことを原則とし、設備及び販売方法の改善に努力する。」これが先ほどの大臣答弁の原則としてというくだりだと思うのです。ところが、こういう答申が三十六年にあって、しかも三十六年以降場外馬券場が設置されたのは相当の数です。こういう答申とこの場外馬券場がどんどんふえていく関係ですね、矛盾しないのかどうか、この辺ひとつ大臣に御答弁願いたいと思います。
  342. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほども答弁をいたしましたけれども、場外馬券の問題については、いろいろとその周囲に反対のある場合もあるわけでございまして、そういうものをふやしていくことは、いまの話で原則として好ましくないということは三十六年にございました。しかし、その後また公営競技調査会においては多少ニュアンスの違う表現が出てきておったと私は思います。その辺を踏まえて現在対処しておるわけでございますが、いずれにしても一つは、先ほど申し上げましたように、のみ行為が非常に横行するので、それを防ぐ一つの方法としては場外馬券も必要ではないか、こういう考え方もあるものでございますから、何もどんどんふやすのが好ましいことであるとは私は決して思いません。しかし、ある程度やむを得ないところは、原則は原則として、認めていかざるを得なかった、こういうことではなかろうかと思います。
  343. 庄司幸助

    ○庄司委員 それで、いわゆる巽興業の事例でも見られるとおり、一部の反対を——一部だか相当部分だか私はわかりませんよ。そういうものを押し切っていろいろな形で工作されてああいうものを強引に進められた結果、ああいうふうな状況になる。これは一つの事例です。  それから地元住民が何といっても主体でありますから、この地元住民の意思をどう尊重していくかというやり方ですね。この点で、実は仙台の場外馬券場の問題をめぐって非常に私も困惑しているんです。というのは、これは一遍昭和五十一年に競馬会に対して誘致請願が出されました。これは名前は申しませんが、ある会社です。これが設置したい。そうして何か同意書みたいなものが町内会長さんからとられた。ところが、これは町内会長の個人名は確かに書いてあります、会長だれだれと十六人くらい書いてあります。しかし、これは町内会で機関決定した節が見当たらないんですよ。そういうものを盾にして、周辺住民も希望しているからひとつ誘致さしてくれという請願が出る。仙台の市議会にも請願が出されて、これは一遍否決されましたよ。五十二年だったと思います。ところが、去年、また今度御丁寧に中央競馬会から仙台市市議会あてに、今度は設置さしてもらいたいという陳情が出されておる。この陳情をめぐって、仙台市議会が相当てんやわんやの問題になってきたわけです。しかも、今度の競馬会の陳情には、地元の町内会の同意というものが付されていないわけですよ、前のやつは否決されてしまったわけですから。そうやって基本計画まで添えて陳情が出されて、市議会でこれを採択するかしないか、本当に骨肉相はむような論争が起きる。それに誘発されたわけではありませんが、仙台市内でも誘致か反対かをめぐって相当の論戦がかんかんがくがくと闘われる。そういう中で、仙台市長から農林大臣に一月十八日付で意見書が行っているはずです。市長は反対だ、市長の計画はこれこれかくかくである、それからこういう影響がある、こう言っています。仙台市長もまた仙台市民から直接選挙された仙台市民の代表者です。こういう事態にあるとき、競馬会がいまいろいろ協力金の積算から、あるいは建築確認申請の方向やら進めておられること自体、私は非常にけしからぬと思っておるのです。農林大臣、いまのような事態にかんがみて、この問題について、私、大臣として慎重にひとつ検討していただきたい、慎重な態度を御要望したいのですが、いかがでございますか。
  344. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 慎重に対処してまいります。
  345. 庄司幸助

    ○庄司委員 競馬会に伺いますが、いわゆる地元同意と称するものは、あなたの方では正式には何が一体地元同意なのか。市長なのか市議会なのか、町内会であるとか周辺のいろいろな団体なのか。その場合、議会ならこれは議決ですから、どっちでもいいのです。町内会なんかだったとした場合は、一体町内会長名の連名だけでいいのか。あるいは町内会の機関決定ですね、これは総会です、こういうものも必要なのか必要でないのか、これをひとつ明確に答えてもらいたいのです。
  346. 武田誠三

    武田参考人 それぞれの条件によっていろいろ違う面もあろうかと思いますが、私どもとしては、第一に地元の町内会の方々の御賛同を得たいというように考えております。なお、その形式につきましては、こういう議決とかこういう形とかいうことを特に決めておるわけではございません。
  347. 庄司幸助

    ○庄司委員 私は、これは農林大臣指導して、きちっと決めてもらいたいと思うのですよ。私はだれとは言いませんよ、あるいは仙台とも言いませんけれどもね、町内会長が個人で、独断で、町内会長だれのだれそれ、こういう名前を出した場合、後で必ず町内で物議を醸して大騒動になるのです。地域住民にそういう迷惑を競馬会は与えてはならない、私はこう思います。  それからもう一つは、やはり地方自治体の首長ですね、首長の意見を聞かないで、町内会だけの意見でもって事足りる、これは私は地方自治の趣旨をかんがみない競馬会の独断ではないかと思うのですよ。この辺の指導について、ひとつ農林大臣に答弁願いたいのです。
  348. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほども申し上げておりますように、議会で議決をされましても、市長の方はこれは反対ということでございますので、私どもは競馬会に対しても、その辺十分慎重に対処していくように指導しておるつもりでございます。
  349. 武田誠三

    武田参考人 先ほど申し上げましたのは、第一に地元の町内会というふうに申し上げましたので、市御当局なり何なりの御意向は十分に尊重してまいらなければならないというように考えております。
  350. 庄司幸助

    ○庄司委員 終わります。
  351. 高田富之

    高田委員長 永末英一君。
  352. 永末英一

    ○永末委員 武藤農林水産大臣は、かつて自民党の商工部会長とされまして、生糸を使用して生産をしている人の心をよく御存じであったと思います。いまこの生糸の所管大臣として、生糸をつくっておる日本の養蚕家の立場も、よく御存じでございますので、一見この利害相反する、養蚕家とそれから生糸を使って生産をいたします業者、この利害の調和、統一の秘策をお持ちでしょうか、伺います。
  353. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 もし私に秘策があれば、現在のような生糸も基準糸価以下に糸価が低迷をし、また絹織物が現在のように一年近くも在庫を抱えるというようなことはないわけでございまして、大変残念ながら、秘策がないためにいま非常に苦慮いたしておるようなことでございます。
  354. 永末英一

    ○永末委員 ひとつお互いに協力いたしまして秘策を考えねばならぬと思いますが、さて、生糸の国内相場というのは、最近のことを申し上げますと、昨年の九月をピークにいたしましてどんどん下がってきておる。基準糸価の近辺まで昨年は下がってきておる。農林省とされましては、これからこの生糸の国内相場というのはどういうぐあいになっていくと予測されておられますか。
  355. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 生糸相場をどう見ているかということでございますが、五十四生糸年度、昨年の六月から五十四生糸年度に入ったわけでございますが、それに入りましてから糸価が低迷をいたしております。これは基本的には織物の過剰在庫によるものではなかろうか。昨年の十一月では一億平米の在庫がある、こういう状況でございまして、前年同期比二割ほど織物の在庫がふえておるという状況でございます。基本的にはそうではなかろうかということでございます。  今後の推移につきましては、ただいまのような在庫が多いわけでございますが、絹の需要増進といいますか、そういう面等も配慮して、この過剰在庫をはいていくというような努力をしなければならぬと思いますが、右から左に非常に簡単にはけるということではないと思います。したがいまして、やはり相場は相対的な面からすれば当分低迷の状況が続くのではなかろうか、かように考えます。
  356. 永末英一

    ○永末委員 絹織物の需要が不振である、在庫が多い、こういうことが新しい生産に対して動きが鈍い、したがって生糸の需要もはかばかしくない。これは相場が低迷でございますが、八〇年代になったからといって絹織物の需要がうんと伸びる原因がいまありそうにはないと一般には言われております。そういうことを考えますと、これからもなお下降してきた傾向、これは直らない、こう見ていいですか。
  357. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 現在糸価が低迷をいたしておりますけれども、この糸価の動向につきましては、やはり需給の均衡を図るという面での努力あるいは末端消費の拡大の努力ということに努力を傾注しなくちゃならぬと思いますけれども、先ほど申し上げましたようなことで、簡単に右左にいくということではないと思いますので、基本的にはやはり相当低迷をするということは避けられない事態ではなかろうか、かように思います。
  358. 永末英一

    ○永末委員 国内相場が下がってきたので、しかもその基準糸価にどんどんと近づいてくる、基準糸価を割りますと政策的に価格の買い支えをやるというので、事業団は買い支えられたと思うのです。いつごろから買い支えられて、いまどのぐらい買われておられますか。
  359. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 昨年の七月から日本蚕糸事業団の中間買い入れの道を開きました。その後買い入れが進んでおりまして、現在の段階では約一万二千俵の買い上げをいたしております。
  360. 永末英一

    ○永末委員 金額にしてどれぐらいですか。
  361. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 約九十億円に相当すると思います。
  362. 永末英一

    ○永末委員 大体半年で九十億円程度の金を出して買い支えた。市況はなお低迷をいたしておる。まだ今後も買い支えはされますか。
  363. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 中間買い入れの枠三万俵ということで道を開いておりまして、ただいま申し上げましたように一万二千俵程度の買い上げをやっておるわけですが、今後も買い上げの道は継続してやっていきたい、こう思っております。
  364. 永末英一

    ○永末委員 三万俵に達するまで買うたら何ぼぐらい金が要りますか。
  365. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 約三百億になろうかと思います。
  366. 永末英一

    ○永末委員 その金は十分あるのですか。
  367. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 買い上げの資金でございますが、これにつきましては農林中央金庫等の借り入れをもって措置をいたしております。
  368. 永末英一

    ○永末委員 わが国は事業団が一元化輸入と称しまして輸入生糸を入れておるわけでございまして、その輸入生糸のさばき方につきましては、事業団で入札みたいなことをやることもありますし、いわゆる実需者割り当てをすることがございますが、この実需者割り当ての考え方はどういうところに基づいておりますか。
  369. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 輸入生糸の実需者割り当てでございますが、これにつきましては、五十一年の八月に、絹業安定緊急対策というものが、大蔵、農林、通産の了解事項として、決定を見たわけでございます。その際に、いろいろな対策がございますけれども、その絹業安定対策の一つといたしまして、日本蚕糸事業団から実需者売り渡し方式によりまして糸価安定及び絹業の経営安定を配慮して可能な限りの多くの数量を輸入価格所要経費を加えた額で速やかに実需者に渡るよう生糸一元輸入制度を運用するという了解事項がございまして、この線にのっとりまして五十一年の十月以降実需者売り渡しというのをやっておるわけでございます。
  370. 永末英一

    ○永末委員 五十四年度の実績はどうなっておりますか。
  371. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十四年度につきましては、五十四年の五月に六千五百俵、五十四年の十月に七千五百俵の輸入発注をいたしております。合計いたしまして一万四千俵に相なるわけでございます。ただ、この際に、輸入発注の枠はそうでございますが、この一月十九日現在、糸価が低迷しているという問題もございまして、売り渡しを停止をいたしていますのが九千九百俵ということでございます。したがいまして、実需者売り渡しということで、実需者に、お手元に渡ったというものが、約四千百俵が渡っておる、こういうふうに五十四年度分については見ております。
  372. 永末英一

    ○永末委員 なぜ一万四千俵も輸入しておいて必要としている業者には四千百俵しか売り渡さないのか、なぜその四千百俵に比べますと九千九百と二倍以上それを押さえておるのか、その理由を伺いたい。
  373. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 現在売り渡し停止分九千九百俵ということを申し上げたわけでございますが、この内訳を申しますと、事業団が在庫しておるのが五千俵ほどございます。それから、先ほど申し上げた一万四千俵というのは輸入発注でございますので、輸出国の方の事情等によるものと思いますが、まだ入着してないもの、これが四千八百俵強ございます。  そこで、事業団がいま在庫しています五千俵ほどのものが、いま売り渡し停止処分ということで停止をいたしておりますが、輸入生糸につきましては、売り渡しによりまして基準糸価を割るおそれがある場合には輸入生糸は売ってはならぬという規定がございます。この実需者売り渡しも、輸入生糸でございますので、現在基準糸価を支えておりますために中間買い入れ等も、先ほど来申し上げておりますように行っておる段階でございますので、現在停止をいたしておる、こういう状況にあるわけでございます。
  374. 永末英一

    ○永末委員 繭糸価格安定法の第十二条の十三の三の二項に、いまあなたが言われたようなことが書いてある。つまり、基準糸価というものを定めて、それを割った場合には、これはもう輸入生糸の放出をやめるということはだれの目にも明らかであるけれども、「おそれがある場合」と法律には書いてございますが、どういう場合が「おそれ」なのですか。
  375. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま申し上げましたように、輸入生糸の売り渡しの際、国産生糸価格基準糸価を下回っておる場合とか、その輸入生糸を売り渡すことによって基準糸価を下るおそれがある場合、売り渡してはならぬということに規定上なっておるわけでございます。そこで、実需者売り渡しの分についてもこの条項が適用されることは先ほど申し上げたとおりでございます。問題は、この「おそれ」というところをどう見るかということでございますが、これを恣意的な判断によりまして運用するということは避けるべきではなかろうかというふうに考えております。そういうために事業団の方で客観的な運用基準を決めております。俗に下べそ価格というふうに言われております。現在はキロ当たり一万四千七百円という価格を設けておるわけでございますが、これがいわゆる客観的な運用基準ということで考えておるわけでございます。
  376. 永末英一

    ○永末委員 客観的な基準という言葉が出ましたが、基準糸価というのはどういう計算で決めるのですか。それから下べそが一万四千七百円ということでございますが、下べそと称するものはどういう考え方で決めるのですか。
  377. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず、基準糸価をどう決めるかということでございますけれども、基準糸価につきましては、繭糸価格安定法の規定によりまして、「生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情からみて適正と認められる水準に生糸の価格を安定させることを旨として」定めるということになっておるわけでございます。したがいまして、基準糸価決定の勘案要件といたしましては、一つは「生産条件」でございますとともに、他方「需給事情その他の経済事情」というものと、この二つではなかろうかと思います。  このうち、生産条件の指標といたしましては、生糸の生産費が軸になると思っております。繭の生産費に製糸工場の生糸製造販売経費をプラスしたものが生糸の生産費ということになろうかと思いますが、これを重要な指標として考えております。そういうことで基準糸価を算定いたします。現在は一万四千四百円という基準糸価に相なっております。そういう基準糸価を安定帯の下限といたしまして、さらに安定帯の上限も決めておりまして、標準中間売り渡し価格というのを上限として決めておるわけでございます。そういう下限と上限の中間安定帯の中に糸価を安定させたいということで需給対策、糸価対策をやるわけでございますけれども、その際に国産生糸と輸入生糸とございますけれども、特に輸入生糸の、ただいま先生がおっしゃっておられます需要者割り当て売り渡しの生糸、これにつきましては、一応下べそ価格という運用基準でございますが、これは事業団が理事会に諮って決めまして、売り渡しの要領の細則で決めておるわけでございますけれども、一応その面で大体基準糸価の三百円アップというような過去の運用もございますので、その辺の水準で現在下べそ価格を決めております。
  378. 永末英一

    ○永末委員 基準糸価を定めておいて、それから三百円上がったところに下べそなるものを設定しておりますが、五十二年度は三百五十円上がったところで下べそを決めておる。下のへそと上のへその真ん中で中べそというのがございますが、つまり基準糸価を決めておきながら、そういう下べそ、中べそ、上べそを決めておる。そうして実際は基準糸価ではなくて下べそで売り渡さない、放出しないということを決めておる。そうしたら一体何のために基準糸価を決めておるのですか。三百円超えたらいかぬ——百円まで待てないのかどうか。三百円の理由は何ですか。
  379. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 基準糸価は、ただいまも申し上げましたように、中間安定帯の下限でございます。したがいまして、この基準糸価を割らないように維持しようということで需給操作をやるわけでございます。したがいまして、糸価が低迷いたしております際に基準糸価を若干、二百円とか三百円糸価が上回っておる、その際に輸入生糸等を売ることによりまして国産生糸の基準糸価を割り込んでは困るわけでございます。そこで、ある程度売れば下がるということがございますので、若干、三百円程度の上の線というのを考えておる。これも恣意的にぐるぐる動かしてはおかしいので、そこは事業団において細則にも規定をしまして、現在は三百円アップの一万四千七百円を決めておる、こういう次第でございます。
  380. 永末英一

    ○永末委員 私が申し上げておるのは、二年前には基準糸価から下べそまで三百五十円の開きがあったわけです。それが五十三年から三百円になった。それで三百五十円とか三百円とかいうのはどれぐらいのものか知りませんけれども、客観的標準というものと違うのでしょう。どういうことか知らぬが、そういうことで考えておる。それならば、これが二百円になったって百円になったって同じことではないか。理論的にはそうなんです。したがって、あなたの方の蚕糸事業団の理事会で決めた、それは手続の問題であって、理論の問題ではないわけです。その考え方を、なぜそういうことをやっているかということを聞いておる。そうして、三百円が動かしがたいものであると思われているらしいのだけれども、なぜ動かしがたいと思っているかということを聞いている。糸の欲しい方は、そこの下べそのところにきたら、もう糸があっても売らない、必要としておっても手に入らぬ、こういう現象が起こるわけでしょう。だから、話は違いますけれども、ちょうど三年ほど前に日本の防衛費はGNPの一%をめどだということを言っておいて、このごろは〇・九%で現内閣はやっておるけれども、そんなような話によく似ていますが、基準糸価でやるなら基準糸価でやったらいい。それをまた素人にはわからぬようなへそみたいなものを持ってきて、三百円を金科玉条みたいにしてやらねばならぬと考えている考え方、そこのところを説明してください。
  381. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 基準糸価を下がるおそれがある場合は売ってはならぬということですから、売れば、市場に出れば糸価が下がるという問題がございますので、基準糸価を若干でも、五十円でも百円でも超えておればという、ぴたりというわけにはいかないのではないかと私は思います。ただ、その際に、売れば下がるという際にどの程度の余裕を見たらいいのかということは、確かに問題はあろうと思います。したがいまして、それは三百五十円とか三百円とか、そういう問題があろうかと思いますが、その辺は、最近におきましては三百円幅で考えてみるのが至当ではないかということでの運用基準を決めておるということでございます。  なお、われわれといたしましては、やはり基本的には需給の均衡といいますか、安定といいますか、こういうことを図っていく、そして糸価を上げていくというのが先決ではないか、そういうふうに上がってくれば、それはそういうへその上の方にも行くわけでございますから、むしろそれが先決ではないかということで、需給の関係等の操作におきましても、そういう感じで対処をいたしておるわけでございます。
  382. 永末英一

    ○永末委員 中国糸のリヨン相場が昨年の半ば以来上がってきておって、いま一万円ぐらいのところにいっておる。ところが、その中国の国内価格基準はなお五千円程度のところにある。いまあなたの話で、糸価を上げるのが目的だと言いましたけれども、糸価を上げるのが目的ではなくて、もともとこの制度は、法律の名前に書いてあるように糸価を安定させるのが目的だというだけのことである。しかも糸価というものは、あなたが最初言われたように需要がなければ糸価なんか上がるわけはないのであって、基準糸価を決めておきながら、なぜ三百円上のところで物がありながら売らないのか。欲しい方は困るのですね。なぜそれなら売らないのだ、こういう疑問が出てくるのは当然でしょう。しかし、基準糸価という制度を認める以上は、それを割ったときにはもう出てこない。それはみんなしようがないと思っていますよ。勝手に三百円上で切って——それならあなた方の計算で、二百五十円まで下がったときに、つまり三百円以内になったときにどの程度の糸が売られれば基準糸価が下がる、そういう計算はされておるのですか。されておったらお示しを願いたい。何俵売ったら下がる、その計算がなければこんなものは理論的に意味がないですよ。
  383. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 基準糸価を下るおそれがあるというときに輸入生糸を売る、その際に、そのおそれがあるという幅をどう見てその線を決めるかということでございますが、もちろん売り渡す量との絡みもございましょうし、そのときの状態におきます全般的な市況との絡みもあろうかと思います。  具体的にどういうような試算をやっているかというお話でございますが、ここでこういう試算をやっておりますと申し上げるほどの試算はやっておりません。ただ、いままでの過去の例なりそういうようなものも参考にしながら三百円というので現在はやっておりますが、その辺が至当ではなかろうかということで、事業団の判断で一応運用基準として決めておる、こういうことでございます。
  384. 永末英一

    ○永末委員 農林大臣、この価格安定法は数々の改正が議員立法等でなされて今日に至っておるのでございますが、普通承知しておったのは、要するに、基準糸価というものを三月の末に農林省の方で決めて、それをめどにして、それから下がれば事業団が買い入れるし、というようなぐあいに理解しておった。ところが実際の運用はいまみたいに、初めは三百五十円上のところで売り渡すのを、これは輸入生糸だけですよ、もうやめた。それは法律上の根拠は法律の十二条の十三の三の二項にある、こう言うのですが、その根拠はそうだけれども、実際に線を引いているのは行政措置でやっておるわけですね。そうしますと、なぜ三百円なのかということはだれにもわからぬ。いま話を聞きますとそうきっちりやったわけではないという話で、コンピューターもございましょうしシミュレーションもあるわけだから、やるならやるで、どの程度の分量が動けば基準糸価から百円なら百円必ずけ込んでしまうということはできると私は思う。そうでなきゃ糸の欲しい人は納得しませんよ。この辺をひとつ御研究になるお気持ちがあるかどうか、大臣から御答弁を願いたい。
  385. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、いま御指摘の点で、ただ法律でも「おそれがある」という表現はあるわけでありまして、その「おそれがある」のが、いまのへそが三百円の差が果たして客観的に妥当性があるのかどうかということが問題だろうと思うのでございます。今度三月末に基準糸価を決めなきゃならぬわけでございますが、そのときにはできる限り理解のあるような方向で線が出てくるように、いまのお話でコンピューターもあるわけでございますから、ひとつ、ぜひはじいてみたい、こういうふうに考えております。これはなかなかむずかしいかと思いますが、やはり妥当性のある数字を出さないことには、欲しい方からいけばなかなか納得がいかない、こういうことでございましょうから、その辺はひとつ努力をしてみたいと思っております。
  386. 永末英一

    ○永末委員 すべての人がやはり簡単にわかる方法で行政が運営されるということが行政の理想ではないかと私は思いますので、御検討願いたいと思います。  いまお話ございましたが、基準糸価を三月末にはまた上げますか。
  387. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 基準糸価につきましては、先ほども申し上げましたように繭糸価格安定法の規定によりまして「生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情からみて適正と認められる水準に生糸の価格を安定させることを旨として」定めるということに相なっておるわけでございます。そこで、ことしの三月末に五十五生糸年度に適用します基準糸価、これを決定することに相なるわけでございますけれども、これにつきましては、先ほど申し上げましたような「生産条件及び需給事情その他の経済事情」という法の定める要件等も勘案しながら、蚕糸業振興審議会の御意見も聞いて適正に決定をいたしたいというふうに考えております。
  388. 永末英一

    ○永末委員 生産の要件と需給の要件とは違うわけだ。そこでこの問題があるわけなんだ。いままではこの基準糸価を四十九年以来ずっと引き上げてきて、それを基準にしながら国内の生糸価格は決まってきておる。それが国際的な国外の生糸の値段と余りにも離れておるから問題が起こってきておるわけでございまして、適正というのはどっちを向いて適正だということもこれは考えざるを得ない。そこで、いまみたいに不景気になって需要が少なくなって、そのために五十四年度で決めた、昨年の三月に決めた基準糸価まで相場が落ちてきておるときに引き上げるという理屈はないでしょうな、どうですか。
  389. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま申し上げましたように繭糸価格安定法の要件といたしましてはやはり「生産条件」というのもございます。それから「需給事情その他の経済事情」というのもございます。したがいまして、この法の定める要件というものを勘案しながら決めるということしかいまの段階では申し上げかねるわけでございます。
  390. 永末英一

    ○永末委員 三月のことでございますから、これからまだ二カ月いろいろなことがございましょう。しかし、相場というのは正直なものでございますから、やはり生産の要件だけではなくて需給の関係というものも見て決められるべきであると私は提言をいたしておきます。  さて、日本蚕糸事業団の五十二年度の決算を見ておりまして、御説明願いたいのですが、その中の「中間安定等勘定」で「費用」「収益」というのが借方、貸方で出ておりますけれども、ありますか——その中で一番最初のところ、費用の方での長期保管生糸期首たな卸しと当期買い入れを足したものが六百億幾らである、今度は収益の方の計算で、その右の方で、長期保管生糸の売渡高と期末たな卸し高を足したものが六百億で、完全に数字が一致しておる。これは何で一致するんですか。御説明願いたい。
  391. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 申しわけありませんが、もう一度ちょっとお願いいたしたいのでございますが……。
  392. 永末英一

    ○永末委員 この五十二年度の四月一日から五十三年三月三十一日までの蚕糸事業団の決算中、中間安定等勘定の損益計算書、その費用と収益の一番初めのところで、要するに持っている生糸をたな卸ししたもの、それからこの期で買い入れたものの合計が六百億幾ら、それからそのときに売り渡したものと期末たな卸し高を足したものが六百億幾らで、これが全く一致しておる。私が思いますのに、買い入れたときの値段と売り渡したときの値段が変わっておるはずだから、ここで変わらねばならぬと思いますが、これを合わしておられる理由を聞きたい。
  393. 松岡将

    ○松岡説明員 この点につきましては、いわゆる裸価格で、期首たな卸し高は買い入れ価格にコスト価格をオンしたものを計上しておる、こういうふうに承知しております。
  394. 永末英一

    ○永末委員 要するに、買い入れ価格に何ほどかのことをつけ加うればそれは上がってくると考えるのが普通であって、普通の商品を買い入れてそれを売る場合には、販売価格買い入れ価格が違うのが本当だと思うのです。そうすれば、ぴしっと同じ数になるなんてことは、手品でもせぬ限りできぬわけだと思いますが、同じ値段でやっているんですか、この数字は。  何でこんなことを聞いているかというと、あなたの考え方では、その次の事業収益五十億幾らというものが書いてございまして、これを見ていてわからぬのは、収益の方で事業収益が五十億ある、それは、つまり値段を上げて売ったから上がっているに決まっていると思うが、長期保管生糸売り渡し差金と書いてある、十九億幾ら、だから確かに上げておると思う。ところが同じその差金の中で、事業団所有在庫分が三十一億と書いてある。これはすでに在庫しておるものも値段をつり上げているからそうなっているんだと私思いますが、そういうやり方と、質問いたしました一番初めの期末たな卸しというのは一体どういう関連があるのかわからない。それと関連をして、この費用の方で長期保管生糸諸掛かりというのが三十五億も金を使っているが、これは何に使っているんですか。
  395. 松岡将

    ○松岡説明員 この点につきましては、先ほど局長が国内生糸の買い入れについて申し上げましたけれども、輸入生糸の買い入れにつきましても、農林中金から借り入れをして、その資金買い入れている、こういうことでございます。そういった金利、それから倉敷、そういったものが保管生糸にかかっていく、こういうことが経費として計上されておる、こういうことでございます。
  396. 永末英一

    ○永末委員 そうすれば、そこにございます三十五億の内訳を出してください。いまみたいな金利とか倉敷料が三十五億もあるわけないでしょう。
  397. 松岡将

    ○松岡説明員 ただいま資料を持ち合わせておりませんが、先ほど申し上げましたように、ただ、外国生糸五万俵とか六万俵とかいった在庫を持っているわけでございまして、それの金利は相当な額に実際達しております。それから保管料というもの、これも相当な金額に達する、こういうことでございます。
  398. 永末英一

    ○永末委員 いまの答弁でいきますと、安い輸入生糸が入ってくる、しかしそれはへそがどうだこうだと言って売らなくて持っておる、しかしその金は農林中金から借りておる、だから金利や倉敷料を払わなくてはならぬので金がかかる。これはおかしいですな。  結局のところ、この中間勘定によりますと、当期利益金十億幾らと書いてある。結局こういう金は生糸を買う人が払う金でしょう。払った金がここへ出てくるわけですね。そうですね。
  399. 松岡将

    ○松岡説明員 事業団の収入といたしましては、一つは、資本金がございます。それから積立金もございます。そういったものの運用益ということがございます。  それから、ただいま御指摘の輸入生糸の売買差金というものも収入に上がってまいります。それから、国産生糸によりましても、時によっては益が出てくることがございます。
  400. 永末英一

    ○永末委員 私はこの五十二年度の決算について聞いているのですから、資本金があるからどうだと言うが、六十九億しか資本金がないのにそんなにもうかるわけないですよ。あなたのところ有価証券も持っていますが、もとは結局生糸の差金ですよ。この損益計算書はそう見るのが至当で、ほかにそんなに利益を上げる商売をしていますか。どこでやっているのか教えてください。
  401. 松岡将

    ○松岡説明員 資本金が六十億ばかりございます。それから積立金も、五十二年度当時は双方合わせまして全体の資本が百二十億ばかりございますので、そこからの運用益というものも当然入ってまいるわけでございます。
  402. 永末英一

    ○永末委員 あなたの見ている紙とぼくの見ている紙とは違うのか知らぬが、ぼくの見ている紙、蚕糸事業団から出したのは、事業外収益が九億と書いてある。そんなもので、山ほどあるわけではない。私の言いたいのは、したがって、主たるあなたの方の収入になっているのは差金なんだ。差金だとすれば、それはこの生糸を買ってそれを自分たちの機業で生産をしている人々の金なんだ。そうなんでしょう。それはちょびっとであって、何かほかにその運用益みたいなものが山ほど出ているのですか。どっちですか。
  403. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま繭糸課長の方から申し上げましたようなことで、利益金がどういうものから出るかというのはいろいろあろうと思います。ただ、その資本金なり積立金、こういうものの運用益といいますものは、それは全体の利益金が出ました際のウエートとしては、五十二年度等をとった場合は少なかろうと思います。ただ、この差益といいますか、売買に伴う差益等につきましては、いわゆる糸価安定をやるということにおいて、国産糸の買い入れ売り渡し、あるいは輸入糸の買い入れ売り渡しというようなことをやっております、それの一つの反射的といいますか、形で出てまいるものでございます。蚕糸事業団という特殊法人がやっております仕事でございますので、そういう意味ではきわめて公共性の強い、そういう差益であろう、こういうふうに考えております。
  404. 永末英一

    ○永末委員 いまの答弁、ようわかりませんが、要するにこの損益計算書からすれば、事業収益が五十億くらいあって、あとの事業外収益が九億だ、こうなりますと、費用を差し引いたところで——費用の中身は後でいただきたいと思いますので、委員長、よろしく取り計らっていただきたいのですが、当期利益を十億なんて出しておる。しかし、その金はだれが一体出したかと言えば、もともと生糸を買うてそれでもって生産する人、機屋さんですな。そうしますと、その利益はだれに還元するかというと、この機屋さんに還元すべきだと思います。養蚕家に対していろいろなことの金を出しておりますが、五十二年度の決算でいきますと、繭生糸生産流通合理化事業費として二億円くらい出しておる。私はこれは少ないと思うのだな。だから、これは五十三、四年から少し予算ではふくらんでおりますから、しかし、この金が出てくる原因が機屋さんのふところから出てくるとしますと、流通改善あるいは生糸の製品の消費拡大、大いにその方面に還元すべき金であると思いますが、大臣、どう思われますか。
  405. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは年々増額はしてきておるわけでございますけれども、できるだけこれから増額をし、特に先ほどの話で、やはり絹織物その他の絹業者が栄えないことには、そちらの消費が伸びないことには、結果的に日本の養蚕農家はどこの国へも生糸は売れないわけでございます。これだけ高い生糸は世界にないわけなので、その生糸は国内の業者にしか売れないわけでございますから、結果的に絹業者がより栄えるようなことを考えていかなければいけないわけで、その点においてはできるだけそういう点に重点を置きながら配分は考えていかなければならないだろうと思っております。
  406. 永末英一

    ○永末委員 昨年の十二月二十八日の閣議で、日本蚕糸事業団と糖価安定事業団は昭和五十六年十月を目途に統合するのだ、これは蚕と砂糖とを統合ずる、つまり、要するに農林水産省関係の扱う物について、その価格等の安定化を目指しながらできたようなものは一緒にしたらいい、こういう思想だと思いますが、この思想は一体どこにあるのですか。
  407. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 取り扱っているものが、砂糖にいたしましても、いまの生糸にいたしましても、たまたま外国から入ってきているものを取り扱い、いろいろいまの価格関係においても国内産と両方ともいろいろ関連がございまして、性格的に非常に似通っているということがございますので、こういうものはまとめてやっても特に行政に支障がないだろう、こういう観点から、できるだけ関係者の理解を深めながらやらなければなりませんけれども、統合に踏み切った、こういうことであります。
  408. 永末英一

    ○永末委員 似たようなものに畜産振興事業団というのがあるのですね。やはり輸入もしておるし国内産もある。そして価格安定のために売ったり買ったりやっておる。これもあわせて三つ一緒にしたらどうですか。
  409. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は正直、今度の特殊法人の整理統合の間におきましては、実はそれは一つの考え方としてどうかということで省内で議論をいたしましたけれども、その規模から申しますと、畜産振興事業団というのは大変な規模のものでございます。こちらの方は生糸あるいは砂糖、こういう単品でございますけれども、畜産関係においては牛から豚からいろいろあるわけでございまして、それまで一緒にするというのは大変な冒険だということで、私自身が、それはこの際はそれじゃやめよう、こういう判断をしたわけであります。
  410. 永末英一

    ○永末委員 わが党といたしましては、三本を一つにしてやるべきだ、それから大体蚕糸事業団はだんだん縮小してもうやめにした方がいい、そういう考えでございまして、その手がかりとしては、「おそれがある」というようなあいまいな法律はひとつ各党と相談をいたしまして削除をしたい、このように思っておりますので、御検討願います。  質問を終わります。
  411. 高田富之

  412. 小川国彦

    小川(国)委員 時間の制約がございますので、早速質疑に入らしていただきます。  最初に、中央競馬会の理事長にお伺いをいたしますが、先般の国会で約束されました、今回の日本発馬機の不祥事に関する内部の責任の処理の問題については一カ月以内に明らかにする、こういうことでございますが、そうしますと、大体一月中ということになりますが、一月中に結論を出す、このことは約束どおり履行できましょうか。
  413. 武田誠三

    武田参考人 先般申し上げましたようなことで、今月中に必ず処分をいたすことにいたしております。
  414. 小川国彦

    小川(国)委員 その点については理事長自身をも含めてお考えになっておりますか。
  415. 武田誠三

    武田参考人 私自身を含めてと申しますよりも、本件に関連をいたしました者につきましては、責任をとるべき者についてはすべて責任をとるという考え方でやっております。
  416. 小川国彦

    小川(国)委員 本件に関連している者ということは、私は最終的には理事長の責任もあろうと思いますが、その点はさらに論議の中で明らかにしていきたいと思います。  次に、先ほど同僚の新村委員から、今次の契約改定に対する問題について質疑がございました。昨年末において、中央競馬会は日本発馬機との間に発馬機作業の請負契約書の契約改定を行ったわけでありますが、この中におきましては、従来三億円であった補修機材について一挙に二億四千四百万円を減じて五千六百万円という価格契約改定を行った。これはエス・イー・エスの仕入れ価格をもとにしたということでございますが、そのとおりでございますか。
  417. 武田誠三

    武田参考人 そのとおりでございます。
  418. 小川国彦

    小川(国)委員 そうしますと、この部品の購入については約二百五十種類、それぞれメーカー別に分かれているのですが、その各メーカーからの仕入れ価格そういうものの照合、引き合わせ、そしてそのエス・イー・エスの仕入れ価格が妥当なものであるかどうか、その点の検討は行われましたか。
  419. 武田誠三

    武田参考人 お話のように関係業者がたくさんあるわけでありますが、一応それからの仕入れ価格をそのまま使っております。  これにつきましての妥当性等につきましては、早急の間でございまして、直ちに一般市価と比較するとかそういういとまがございませんでしたので、とりあえずそれをそのまま採用した、こういうことでございます。
  420. 小川国彦

    小川(国)委員 少なくとも問題が起こって三億から一挙に五千六百万に非常な思い切った引き下げの契約改定を行ったわけですから、私ども当然それなりのことを行っているというように判断したのですが、これではいわゆるメーカーサイドのものをそのままうのみにしたという形であって、契約改定としては厳正さを欠いているのじゃないか。少なくともこの二百五十種類のメーカーから入れている部品の五つでも十でも選別して、それは妥当な価格であったのか、しかも特殊機材を除いて一般的な機材については当然比較検討する余地があったはずだと思う。それをエス・イー・エスの仕入れ簿価をそのまま改定の根拠にしたというのは、きわめてあいまいなものを根拠にしていると言わざるを得ないのです。
  421. 武田誠三

    武田参考人 御承知のような特殊部品の多い関係もございまして、それをそのまま採用いたしたわけでありますが、一般的な部品につきましては、従来から私どもとしても発馬機会社との間その他で部品についての市価の調査も、一方で、一部については行っております。そういったものももちろん担当者としては参考にしたものと考えております。
  422. 小川国彦

    小川(国)委員 一部というのは何種類でございますか。
  423. 武田誠三

    武田参考人 三十点ほどのものは少なくともそういう比較をいたしたようでございます。
  424. 小川国彦

    小川(国)委員 その結果はいかがでございましたか。
  425. 武田誠三

    武田参考人 簿価は市価よりもかなり低目の状態にあったようでございます。
  426. 小川国彦

    小川(国)委員 それについては資料として提出いただきたいと思います。
  427. 武田誠三

    武田参考人 後ほど提出をいたします。
  428. 小川国彦

    小川(国)委員 部品の問題はそういうことで三十点おやりになったそうですが、これは私、さらに検討させていただきたいと思います。  もう一つ、この発馬機請負契約の改定に当たっては、輸送費の契約改定を行っております。当初の契約では一般管理費を含めまして八千五百十四万円のものを一億五百一万円余に改定をして、約二千万近く増額をいたしております。一方において部品代は三億から五千六百万円に引き下げたのに、この発馬機の輸送の方では逆に八千五百十四万から一億五百万に値上げをしている。伺うところによると、この差額は美浦のトレセンターで行う重整備に行くための輸送計画の変更による増で、それ以外のものは勘案されていないということですが、そのとおりに理解してよろしいですか。
  429. 武田誠三

    武田参考人 お話しのとおりに御理解いただいて結構でございます。
  430. 小川国彦

    小川(国)委員 ところが、私の調査によりますと、この日本発馬機が輸送を行っているのは、自社が直接行っているのではなくて、築地にございます和興運輸機工というところに輸送を行わせしめている。その間には、昭和四十八年から五十三年は鈴祐、昭和五十四年はエス・イー・エスと、いずれもトンネル会社として指摘をされている会社を通して輸送請負をしておる、こういうことを私は和興運輸の溝田社長から直接伺っているわけです。  しかも、この和興運輸の溝田社長から伺ったところによりますと、五十四年度の運送費は七千二百万、五十三年度は五千百六十九万、五十二年度は四千四百三万、五十一年度は四千九十一万、五十年度が三千四百六万、四十九年度が一千七百三十二万、こういう歴年の契約内容がずっとあるのですが、現実には契約書はなく、輸送指示書一本で、契約予算がこう決まったからということで運送を行ってきている。  そうしますと、五十三年度を例にとりますと、中央競馬会と発馬機では、八千八百万を中央競馬会が発馬機に払っているのに、現実は、輸送をしております和興運輸は五十三年度においては五千百六十九万しか受け取っていない。その差額三千六百万というものは一体どこへいったのか。トンネル会社である鈴祐あるいはエス・イー・エスが取得していたものなのか、あるいは発馬機が取得していたものか、この間の事情についての調査はどういうふうに行われたか、ひとつ御説明願いたい。
  431. 武田誠三

    武田参考人 輸送に関する経費につきましては、輸送料は、発馬機会社所有のものについては燃料費、人件費、フェリー料金、道路通行料等により算出をいたしております。またトラック、レッカー車等については陸運局の貨物自動車運賃、料金並びに東京建設重機協同組合で決めております移動式クレーン標準作業料金を参考にして決定をいたしたものでございます。  いま先生から運輸会社と発馬機ないしそのトンネル会社を経由いたしましての金額のお話がございましたが、発馬機会社自身として償却費とか投下資本金利その他管理費等が必要なわけでございます。したがいまして、お話しの差額がそのまますぐ発馬機会社なりの過剰な利益になるというふうには必ずしもならないものと思いますし、私どもとしては、契約料金は通常の考え方に基づく契約料金であるというように考えております。
  432. 小川国彦

    小川(国)委員 そこで中央競馬会は、この鈴祐なりエス・イー・エスにおいて取得している金額は幾らであるかということは把握しておりますか。
  433. 武田誠三

    武田参考人 その点については、まだ把握をいたしておりません。
  434. 小川国彦

    小川(国)委員 おかしいじゃないですか。あなた方は部品についてはエス・イー・エスの購入価格を採用しているわけです。ところが輸送費についてはエス・イー・エスがやはりトンネル会社として入っておるにもかかわらず、エス・イー・エスから和興運輸が一体幾らでこれを請け負っているのか、そしてエス・イー・エスが幾らでまた発馬機の運送を行っているのか、この実態を把握しなくては片手落ちではないですか。
  435. 武田誠三

    武田参考人 資材費等につきましては、たまたまエス・イー・エスの資料を私どもが押さえることができまして、それを使うことができたわけでありますが、輸送関係につきましてはそのような証憑関係を入手することができなかったわけで、その間の克明な点については、私どもとしては承知をいたしておりません。
  436. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、これはきわめてずさんな変更契約ではございませんか。部品の方ではエス・イー・エスの原価をもとにしておりながら、運送もエス・イー・エスが間に入っているのに、エス・イー・エスから幾らで運送会社がこれを引き取っているのか、そこのところまで調査をした上で変更契約を結ぶべきが当然じゃないですか。
  437. 武田誠三

    武田参考人 私どもといたしましては、運送契約につきましても、あるいは発馬機についての請負契約につきましても、通常考えられる単価というものを基準にして契約を結んでいくという考え方に立っていままでまいったつもりでおります。たまたまその間に御承知のような水増し等のことがございましたので、発馬機に関します材料費につきましては裸の価格と考えられるものがわかりましたので、それを一応採用したということでございます。輸送の請負の方につきましては、先ほど申し上げましたように、陸運局の公定料金その他、一般に考えられます妥当な料金を基礎にして算定をいたしたつもりでございます。
  438. 小川国彦

    小川(国)委員 一般の運送会社で協会の決めた料金とか標準料金表でこれは商売をするはずがないわけで、企業努力によって何割差し引いてひとつ契約しましょうということは当然行われるわけです。ですから、皆さんが発馬機とした契約高と、現実に今度発馬機からエス・イー・エスを通り、それからその下の運送会社との契約には倍近い開きがあるわけです。そこには当然使途不明金と思われる金が存在するのじゃないか。そこを調査せずに再契約を結んだというのは、きわめてまたずさんな再契約を行っているのじゃないか。  監督官庁として、監督大臣として農林大臣、実態をどのように把握されますか。それから農林大臣として発馬機の請負の契約変更をお認めになるわけですか。
  439. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 とりあえず緊急的な措置としてやったということで認めたわけでございますが、五十五年度については、また改めて契約について十分私どもチェックをしたいと思っております。それまでにいまお話しのようなことがまたございましたので、もう一回そういうことを競馬会で——競馬会もどうも承知してないようでございますので、競馬会においてもう一度そういうことをやり直すかどうか、ひとつ検討してみたいと思います。
  440. 小川国彦

    小川(国)委員 畜産局長なり競馬監督課長として、この契約更改に当たってトンネル会社が介在したという事実は確認されていますか。
  441. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 契約更改の内容について事前の相談がございました。その時点におきましては介在をしたというふうには聞いておりません。
  442. 小川国彦

    小川(国)委員 中央競馬会の理事長、介在の事実はお認めになりますか。
  443. 武田誠三

    武田参考人 いまの輸送関係契約を変えましたのは、先生のお話のように、オーバーホールみたいな総点検をやるために美浦トレセンあるいは栗東トレセンに一度機械を集結するというふうなことをやりましたので、契約の更改をいたしたわけでありますが、その際には、昨年の四月でありますが、こういう中間のトンネル会社が介在したことは存じませんでした。その後事件が起こりまして、そういう会社があったということはその後において判明をいたしたわけでございます。
  444. 小川国彦

    小川(国)委員 うそを言ってはだめだと思うのですね、理事長。あなたの方では、この運送会社を現実に中央競馬会では調査をしているのじゃないですか。運送が幾らで行われたかということは中央競馬会から調査を受けましたという報告を受けていますよ。
  445. 武田誠三

    武田参考人 事件が起こりましてその後に和興運輸と接触をいたしましたが、具体的な数字につきましては、私どもとしては向こうから聞き取ることができなかったということでございます。
  446. 小川国彦

    小川(国)委員 おかしいですよ。私が調査してこうした契約の金額がわかるのに、中央競馬会が調査をしてこの実態を知らない、この数字を確認できなかったということが存在するのですか。
  447. 武田誠三

    武田参考人 私の言い方がちょっとまずかったのでありますが、運輸会社の方からの数字とそれから発馬機会社が支払ったという金額との確認が、発馬機会社が幾ら払ったかということがつかめませんでしたので、どうしてもその間においてチェックができない、正確な数字をわれわれとしては把握ができなかったということでございます。
  448. 小川国彦

    小川(国)委員 大臣、もう一度伺いますが、こうした実態で行われた契約農林省はお認めになるのかどうか。これは当然大臣監督責任の問題として、こうしたずさんな根拠のままに行われた契約をお認めになるということは農林大臣監督責任にも重大な問題が発生すると思う。
  449. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、五十五年度については新たに契約をするようにこれはやりまして、そのときには十分チェックをいたします。  それから今回の場合は、緊急的にそういう事態が発生をして、間違いがわかって直したということで、私ども認めたわけでございますが、いままたその機械関係、機械の部品関係だけでなくて運賃関係についてもそういうことがあるという御指摘がありましたので、私どもは私どもなりにその辺はひとつ検討いたしまして、もしいまの時点で緊急的にできるようならば、ぜひそれはもう一回契約の更新ということも十分検討しなければならぬ、こう考えております。
  450. 小川国彦

    小川(国)委員 五十四年度のこの契約改定について再検討する用意がある、こういうように受け取ってよろしゅうございますか。
  451. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 できる限りそういうことにしたい、そういうことでございます。
  452. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、私は、先ほど来こうした中央競馬会のずさんな運営が——これは農林大臣残念ながら私の二回の農林水産委員会での質疑には御参画を願えなかったので、きょうはその一端だけをまず知っていただいたわけですが、こうした中央競馬会という巨大な組織の運営がなぜ農林大臣監督指揮権下にありながらスムーズにいかないのか。これはやはり組織の運営それから態様についてもっと検討すべきところがあるのじゃないか。それは一つは特殊法人としての、国際電電も同じですが、非常に紊乱した待遇なり支出が行われている。そういう意味では、中央競馬会の役職員の待遇問題も私は貴族的な待遇ではないかいうふうに思うのです。  ひとつ参考に伺いたいのですが、農林大臣の月額の給与はお幾らでございますか。
  453. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 正確なのを私は見たことがないものでございますから、通帳へ入っているようでございまして、百万ちょっとで、そこから税金が引かれる、こういうことではないかと思っております。
  454. 小川国彦

    小川(国)委員 大臣になるとふところも大きいから正確には御把握でないようでございますが、百十三万円なんでございます、大臣。  それから参考のために畜産局長、給与を伺うのは大変失礼なんですが、畜産局長が受け取っておられる給与は何号でございましょうか。
  455. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 指定職俸給表の七号でございます。
  456. 小川国彦

    小川(国)委員 それから参考までに、農林大臣の五十四年のボーナスはお幾ら受け取られたか、本来的には幾ら受け取るはずであったかということは御存じでございましょうか。
  457. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これも先ほどの話で通帳の方へ入っちゃっているものでございますが、私がなりましてから賞与の時期はたしか一月ちょっとだったものでございますから、衆議院議員との差額はそんなになかったのではなかろうかと私は思っておるわけでございます。確かな数字をどうも私承知をいたしておりませんので、恐縮でございます。
  458. 小川国彦

    小川(国)委員 たしか昨年は大臣まだ二カ月なんで、いただかれた額は少額であったわけなんです。ただ、本来的に農林大臣が受け取るべきボーナスは五百七十九万なんです。五十五年末はそういうことになるわけなんです。ところが、中央競馬会の理事長が受け取っておられるボーナスは農林大臣を上回っておりまして、農林大臣は、大変失礼なんですがことしは二十万しか受け取っておられなくて、正式には五百七十九万、五十四年末に受け取るはずであったのですが、中央競馬会の理事長さんが受け取っている賞与は、五十三年の実績でございますが六百十五万六千円、副理事長さんが五百五万三千円、それから常務理事さんが四百四十一万円であります。給与は理事長は百万で農林大臣より低うございますが、その他の賞与は農林大臣よりも上回る、こういう実態にあるわけですね。  それから畜産局長さん、先ほど七号と承ったのですが、これは監督官庁の畜産局長がいずれも副理事長さんや常務理事さんよりは給与は号俸でまいりますと実態は下回っているというふうに思うわけなんです。そういうふうに考えてみますと、特殊法人理事長、副理事長、常務理事、各理事を含めまして現職の公務員よりも上回る給与ないしは賞与を受けている、こういう実態にあるわけです。これはやはり高級官僚組織のOB意識が給与の中に支配している。そういう形の中で農林省が、大臣初め理事長よりボーナスが低いのですから、そういう大臣が、局長にしてもそれを上回るこうした特殊法人の役職員を監督指導できるのだろうか、それは給与の上の考え方ですけれども。しかも一般的にはこの中央競馬会というのは現職の農林次官なり局長なりを退任された方が行って、いわば第二の職場なんですね。第二の職場につかれた方々が第一線にいる農林大臣、次官、局長よりも上回る待遇や条件確保している。こういうところに特殊法人の経営に見合った放漫なこういう給与体系の問題なり待遇が出てくるのじゃないか。  それから、もう一つ言うならば、これらの方々は農林省を退職されるときに退職金を受け取っておられて、今度は中央競馬会を退職するときに、現職の方々は別にして退職される方々、理事長、副理事長クラスの方は平均二千万、三千万の退職金を受け取っておられる。それを受け取って、さらに今度はいま問題になっている日本発馬機を初めトータリゼータとか共栄商事とかさまざまな子会社へまた役員で行ってそこで退職金をもらう。一生のうちに三回退職金を受け取られる。こういう形が出ているわけですね。こうした外郭団体がさらに次の外郭会社を生んで、そして綱紀の弛緩した形が出てくる。こういう点について農林大臣としては是正の考え方をどういうふうにお持ちになるか、その辺の所見を承りたい。
  459. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 御承知いただいておりますように、大平内閣が発足いたしまして、行政改革、これは綱紀の粛正とともにぜひやらなければいけないということで、その中で特殊法人のそういう賞与その他についても見直しをしていこうということになっておりますし、特にいま御指摘の退職金につきましては、過去に受け取った分は差し引いて支払うという方向で、たしかそういう方向に検討しておるはずでございますので、私自身もぜひそういうような形にいくように努力をしたい、こう考えておるわけでございます。
  460. 小川国彦

    小川(国)委員 その点については大臣指摘のように、政府の方でそういう改革の方向、「公団、事業団等特殊法人の役員の給与及び賞与については、国家公務員の指定職と同一の算定方式による」、こういうことになっているのですが、現在、中央競馬会については昨年末あるいは昨年一カ年を通してこの指定職と同一の算定方式で行われたかどうか、その点は農林省はいかがですか。
  461. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 中央競馬会の役職員の給与につきましては、ただいまお話しの昨年十月二十三日の閣議了解、さらに昨年十二月二十八日の閣議決定の趣旨を踏まえまして、また同時に中央競馬会の業務の特殊性を配慮して指導してまいったところでございます。  具体的には、役員の給与につきましては五十四年は据え置きをいたしますとともに、他の特殊法人と同様、賞与の月数を国家公務員並みの年間三・八カ月とする等の改正措置を講じさせたところでございます。  職員の給与につきましては、今後中央競馬会におきまして労働組合との間で折衝する事項ではございますが、農林水産省としては上記の方針に沿いまして指導してまいりたいと考えております。
  462. 小川国彦

    小川(国)委員 いま局長のおっしゃるようには行われていないですね。期末手当は三・八カ月とするという指導に対して現実には昨年末は四・三五支給されておりますから、局長の言う指導のとおりには行われておりません。それから給与も、指定職の最高というのは十二号で、東大の総長と京大の総長が八十四万円、事務次官が十一号で八十一万七千円、それから十号が警視総監とか筑波大学、千葉大学の学長で七十七万二千円、こういうふうに見てまいりますと、いずれも理事長の給与は東大、京大の総長の指定職の最高十二号よりも二十万円近く上回っている。副理事長においても十一号の事務次官よりも上回っている。専務理事においても同じく現職の局長の七号よりは十万円以上上回っている。こういう実態にあるわけで、給与の体系も期末の賞与の体系もいずれも政府の方針には沿っていないという実情にありますが、農林省としてあるいは農林大臣としてこうした実態にそぐわない体系、これを是正するどういうようなお考えをお持ちなのか。是正されていないのですね、この政府の方針どおりいっておりませんから。
  463. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 昨年末の賞与につきましては、それまですでに賞与が六月期に出ておるわけでございまして、それとの通算関係がございまして経過的な問題を含むわけでございますが、五十五年度につきましては先ほどお答えいたしましたような三・八カ月となるように指導をいたしておるところでございます。  なお、給与水準につきましては、他の特殊法人との均衡もございますが、同時に中央競馬会の業務の特殊性も配慮して指導するという旨を先ほどお答えいたしましたけれども、そうした特殊性を配慮いたしまして従来の給与水準との変更の程度を考慮しながら妥当な線にするよう指導をしてまいったところでございます。
  464. 小川国彦

    小川(国)委員 簡単に言えば、政府の決めた指定職と同額ないしはそれに準ずるものにする、そういう方針どおりおやりになりますか、こういうことなんです。
  465. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 特殊法人にもいろいろございますが、すべての特殊法人の役員、理事長、総裁の給与が一般職の公務員の最高額以下であるということにすることにはなってないというふうに承知をいたしております。中央競馬会につきましてもそれとの均衡でそのようなことになっておるというふうに承知をいたしております。
  466. 小川国彦

    小川(国)委員 局長の理解が違っているのですが、「公団、事業団等特殊法人の役員の給与及び賞与については、国家公務員の指定職と同一の算定方式によるものとする。」、結論的に言えば同額にするという考えですね、そこまでこれを読み取っているという考え方があるのですが、皆さんの方では、少なくも、畜産局長の言いわけは別にして、現実に農林大臣や畜産局長よりも総額で上回る、こういう実態を是正していくという考え方を根本に持たなければ、私はこの閣議決定の解釈をどうする云々じゃないのです。根本的に、常識的に考えてみて、そういうものを是正していく考え方というのは持たなければならないのじゃないか。その辺大臣からひとつ。
  467. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 閣議で決めましたのは算定方式でございますので、必ずしも額ということではないと思いますけれども、しかし、趣旨といたしましては極力先生のおっしゃるような方向に私は努力をしていかなければならないと考えておりますので、できるだけ、私、努力をさしていただきます。
  468. 小川国彦

    小川(国)委員 それからもう一つ。大臣先ほど答弁の中で、退職金については通算するというお考えがあったのですが、ここに御本人おられて大変恐縮ですが、武田誠三理事長については、農林次官を退職なすったときに一千百七十三万四千円、それから農林漁業金融公庫総裁を退職なすったときに四千二十五万二百五十円、合計五千百九十八万四千二百五十円、こういう農林次官のときの四倍の退職金を農林漁業金融公庫総裁として、わずか七年間、その前は二十数年間と思いますが、受け取っておられる。そして、今後、中央競馬会の従来の理事長の算定を見ると、大体一年間の退職金は四百万か五百万の計算で加算されていっているわけです。二年なら八百万から一千万、三年ならそれをまた上回っていく。そうすると、普通の勤労者が一生働いても六百万か七百万、あるいは上級の幹部であってもせいぜい一千万円をやや上回る程度という常識的な退職金の線から見て、国民の税金の上に、公務員的な立場に準ずる方々が、この計算方式の退職金をまた上乗せしていく、そういう特殊法人の方向というものを、大平内閣の大臣として、先ほどそれは減額する方向にあるのだとおっしゃいましたが、それはどのように減額されるのか、その方向をひとつ明示していただきたい。
  469. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 あれは閣議の席であったかあるいは閣僚協議会であったか私ちょっと忘れましたが、とにかく、あちらへ行ってこちらへ行ってという渡り鳥人事というものについては、これからわれわれはできるだけ慎重にすべきである、なるべくそういうことはなくすべきである、ついては、それについての退職金についてもひとつそういう渡り鳥の場合には当然過去に支給したものは差し引くべきではないか、こういうことで閣僚間で話をいたしまして、それはいいことだからひとつぜひ検討しよう、こういうことになっておりますので、先ほど申し上げたように、私、検討させていただこう、こう言ったわけでございます。
  470. 小川国彦

    小川(国)委員 時間が大変経過して恐縮に存じますので、いま農林大臣おっしゃられた減額の方向というのは、この委員会の席上ですから、ただ大臣の間で私語的にささやかれたということでは困るわけなので、やはり大平内閣の閣僚として、少なくともまず農林官僚の渡り鳥の中で出てきているこういう退職金、こういうものを根本的に改革するという考え方を農林大臣自身がしっかりお持ちになっているのか、あるいは内閣の方針としてあるのか、その辺をあいまいな答弁ではなくて、大臣がこういうものを変えていくという決意を閣議の中でおやりになるのか、あるいはいままでそういう方針が出されているのか、これからやるのか、その辺を大臣の決意として、一国の大臣ですから、その辺の方針をもう少し明確に承りたい。それをもって終わりたいと思います。
  471. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだ政府としては決めておりません。しかし、私は大臣という立場においては、そのときに出席をしておった大臣も非常に理解をお互いに示しておりますから、そういう方向でわれわれは努力をしていきたい、こういうことでございます。
  472. 小川国彦

    小川(国)委員 それについては農林大臣から、私も農林水産委員ですからお伺いする機会もあると思いますが、できるだけ早い機会にこうした問題に対する是正の方向、行政改革、経費節減、こういう厳しい財政緊縮の中でこういうところからひとつ改革していく、そういう方向を早期に農林大臣が出される、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  473. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは政府全体の問題になりますので、特殊法人というのは政府全体でございますから、私のところだけでやるというわけにはいかない、こう思います。しかし、私は、努力はしなければいけない、こう考えておるということで御理解をいただきたいと思います。
  474. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  475. 高田富之

    高田委員長 次回は、明後二十四日木曜日、午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十七分散会