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1980-03-18 第91回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月十八日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 中尾栄一君    理事 奥田 敬和君 理事 佐野 嘉吉君    理事 志賀  節君 理事 高沢 寅男君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君    理事 野間 友一君 理事 渡辺  朗君       石原慎太郎君    上草 義輝君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐藤 一郎君    中山 正暉君       久保  等君    柴田 健治君       渋沢 利久君    武藤 山治君       浅井 美幸君    玉城 栄一君       金子 満広君    榊  利夫君       林  保夫君    山口 敏夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君  出席政府委員         外務大臣官房会         計課長     松田 慶文君         外務省アジア局         外務参事官   三宅 和助君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君  委員外出席者         外務省国際連合         局外務参事官  中村 泰三君         大蔵省主計局主         計官      長島 和彦君         大蔵省関税局企         画課長     岩崎  隆君         厚生省薬務局審         議官      山田 幸孝君         農林水産省経済         局国際部長   古谷  裕君         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     山崎 皓一君         農林水産省農蚕         園芸局果樹花き         課長      畑中 考晴君         通商産業省通商         政策局国際経済         部長      柴田 益男君         通商産業省通商         政策局国際経済         部国際経済課長 村岡 茂生君         通商産業省通商         政策局国際経済         部通商関税課長 内村 俊一君         通商産業省機械         情報産業局自動         車課長     横山 太蔵君         工業技術院標準         部標準課長   小野 雅文君         資源エネルギー         庁公益事業部技         術課長     松田  泰君         運輸省自動車局         整備部公害防止         課長      金田幸二郎君         労働大臣官房審         議官      北村 孝生君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   中川 一郎君     上草 義輝君   岡田 利春君     久保  等君   勝間田清一君     柴田 健治君   河上 民雄君     渋沢 利久君 同日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     中川 一郎君   久保  等君     岡田 利春君   柴田 健治君     勝間田清一君   渋沢 利久君     河上 民雄君     ————————————— 三月十七日  日本国フィリピン共和国との間の友好通商航  海条約締結について承認を求めるの件(条約  第二三号)  日本国政府アルゼンティン共和国政府との間  の文化協定締結について承認を求めるの件(  条約第二四号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国イタリア共和国との間の条約を改  正する議定書締結について承認を求めるの件  (条約第二五号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国とグレート・ブリテ  ン及び北部アイルランド連合王国との問の条約  を改正する議定書締結について承認を求める  の件(条約第二六号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ハンガリー人民共和国との間の条  約の締結について承認を求めるの件(条約第二  七号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ポーランド人民共和国との間の条  約の締結について承認を求めるの件(条約第二  八号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国フィリピン共和国  との間の条約締結について承認を求めるの件  (条約第二九号)  航空業務に関する日本国とニュー・ジーランド  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第三〇号)  航空業務に関する日本国バングラデシュ人民  共和国との間の協定締結について承認を求め  るの件(条約第三一号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税及び貿易に関する一般協定譲許表変更  に関する第四確認書締結について承認を求め  るの件(条約第三号)  関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議  定書(千九百七十九年)の締結について承認を  求めるの件(条約第四号)  関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件(  条約第五号)  関税及び貿易に関する一般協定第六条、第十六  条及び第二十三条の解釈及び適用に関する協定  の締結について承認を求めるの件(条約第六  号)  関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件(  条約第七号)  関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に  関する協定議定書締結について承認を求め  るの件(条約第八号)  貿易技術的障害に関する協定締結について  承認を求めるの件(条約第九号)  輸入許可手続に関する協定締結について承認  を求めるの件(条約第一〇号)  民間航空機貿易に関する協定締結について承  認を求めるの件(条約第一一号)  政府調達に関する協定締結について承認を求  めるの件(条約第一二号)      ————◇—————
  2. 中尾栄一

    ○中尾委員長 これより会議を開きます。  関税及び貿易に関する一般協定譲許表変更に関する第四確認書締結について承認を求めるの件等ガット東京ラウンド関係協定十件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。久保等君。
  3. 久保等

    久保(等)委員 私は、政府調達に関する協定に関連して、電電公社資材調達問題をめぐって一昨年来日米間において非常に大きな問題になっておりますが、これに関連して若干お尋ねをいたしますと同時に、もう一昨年来国会の各委員会の場でも議論せられておりますように、電気通信というものの性格からいたしまして、これが単に貿易の収支問題という観点から論議せられるということは、通信の持ちます使命なり性格から申しましてまことに不適当だと考えるわけでありまして、これは恐らく私ひとりのみならず、関係者というよりもむしろ日本国民全体の非常に共感を得る問題だと思っております。そういう立場で、昨年来また外務省筋でも非常に精力的に交渉しておられること、私もその御努力には心から敬意を表したいと存じます。しかし、まだまだ山が見えるという状態でもありませんので、特に最近における状況等を私はお尋ねしたいと思うのです。  昨年の六月二日、例の牛場ストラウス会談でそれまでの交渉経過について一応共同発表が行われました。その以後もうすでに大分日時経過しておるわけですが、今日までのこの経過とそしてまた現状はどうなっておるのか、最初に外務省の方から、ひとつお答えを願いたいと思います。
  4. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 牛場ストラウス共同発表合意されました交渉の枠組みに従いまして、すでに四回にわたってこの事務レベル会議が行われておりますが、そのごく概要につきまして政府委員からお答え申し上げます。
  5. 手島れい志

    手島政府委員 お答え申し上げます。  昨年の七月第一回の会合をやりまして、その後九月、十一月、さらにことしの二月の末、都合四回事務レベル会合を行いました。そうしてこの会合には、外務省代表だけでなくて関係の省庁、すなわち郵政省、場合によりましては通産省、さらに電電公社の方にも御出席を願いまして、関係者一体となりまして先方との話を進めてきたわけでございます。  現在までの主な討議事項について申し上げますと、両国の電気通信事業を行っている機関のその事業体の内容、構成、それからその調達実態解明ということをやってきております。日本側から特に関心を持って質問をいたしましたことは、アメリカベルシステム組織構成、それからそのベルシステムにおける調達の方法、手続等、あるいは連邦政府州政府電気通信事業規制の法制の実態というようなものについていろいろ質問をいたしたわけでございます。また、日本の方からは、公社の制度をとっているゆえん並びにその調達等につきまして説明を加えたわけでございます。  それで、このような作業はいわば地ならしの作業と申しますか、交渉のやりとりの実態にまだ入っておりませんで、これまでの交渉経過を通じまして双方の電気通信事業体組織とか調達についての実態解明というのをかなり進めてきた、現段階はそういうところでございます。
  6. 久保等

    久保(等)委員 現在、もちろん交渉は継続中でありますが、明日あたり大外務大臣も訪米をせられる、あるいはまた安川代表もお出かけになるような日程もあるようでありますが、当然この問題も一つの重要な課題としていろいろ話が行われるのじゃないかと思っておるのです。  私、もともとこの問題は、申し上げるまでもなく主たる原因はやはり国際貿易の収支問題、特にアメリカ側立場からすれば赤字をいかにしてなくしてまいるかということから持ち上がったと理解をいたしておるのですが、この国際収支関係で特に日米関係収支状況、これはごく最近、昨年あるいは一昨年、そこらあたり状況についてお伺いいたしたいことと、それから同時に、通信機器の問題について日米間における収支状況通信機器の問題に限って一体どういう状況に推移してまいっているか、お答えを願いたいと思います。
  7. 柴田益男

    柴田説明員 御質問の最近の日米貿易収支状況でございますが、数字を申し上げますと、過去三カ年について申し上げますと、五十二年につきましては、輸出が百九十七億ドル輸入が百二十四億ドルでございまして、貿易収支は七十三億ドル黒字でございました。五十三年は、輸出が二百四十九億ドル輸入が百四十八億ドルで、百一億ドル黒字でございます。昨年、五十四年につきまして見ますと、輸出が二百六十四億ドル輸入が二百四億ドルで、黒字幅は六十億ドルと減少しております。  この中で先生質問通信機器輸出入はどうなっているかということでございますが、これは大変恐縮でございますが単位が億円に変わりますけれども、五十二年につきましては、通信機器の対米輸出は四百九十三億円、輸入が百十一億円。五十三年は、輸出が六百二十七億円、輸入が二百四十六億円。五十四年は、輸出が七百二十四億円、約三億ドルかと思いますが、それに対して輸入が九十三億円、ざっと四千万ドル弱、そういう状況になっております。
  8. 久保等

    久保(等)委員 国際収支の面、一昨年に比べますと昨年あたりアメリカ側立場から言えば非常に赤字幅が減ってまいった、こういうこともいまの御説明でうかがえるわけでありますし、さらに、特に通信機器の場合について申しますならば、金額的には総額きわめて大した金額にはなっておりません。いま通信機器の問題についてのお話では、ドルに換算すればいずれも一億、一・五億ドルあるいは二億ドル少し超える程度金額になるようです。同時にこれもいろいろ数字とり方、資料のとり方によって大分違ってくると思うのですが、例の一昨年の暮れにアメリカから日本に参ったジョーンズ委員長あたりが、昨年の一月でしたか、いわゆるジョーンズ・レポートなるものを発表いたしておりますが、これなんかを見ますと、アメリカジョーンズ報告ですからこれは十分に信用できるのかもしれませんが、指摘しておりますることは、日本の方から参っておりまする金額が三千五百万ドルアメリカ側から日本に来ておりまする金額は四百五十万ドル、したがって、このドルを円に換算すれば、まことに金額といたしましても、約百億円程度日本から行っておるのに対して、日本の方に入ってきているのが約十億円、確かに格差の点では相当開きがありますが、金額そのものが一億ドル分にもはるかに及ばない程度のものが日本からアメリカ輸出せられておるということが言われておるわけであります。  そういう点から見ますると、金額そのものはまことに大した金額ではないわけですが、しかし、なおかつ日本電電公社資材調達についてこれが開放を迫る、そこらがわれわれ一昨年来どうも腑に落ちない、かように考えておるわけですが、この点についてはどういうふうにアメリカ側の真意を理解しておられるのか、外務省の方からなおお答え願いたいと思うのですが。
  9. 手島れい志

    手島政府委員 先生の御指摘のとおり、確かに電気通信機器関係だけの金額をとりますと、それほど大きな貿易の量にはなっておらないわけでございます。しかしながら、他方日米間の貿易のバランスは、先ほど通産省の方からも話がありましたように、昨年、特に一昨年が非常に大きくなりまして、その後昨年非常に改善の後は当然示されておるわけでございますけれども、それにしてもアメリカ側の統計で八十数億ドルというようなアメリカ側から見た赤字というものがございます。したがって、そういう状況アメリカ側といたしましては何とか改善をしたいという一般的な希望というものは持っているのだろうというふうに思われるわけでございます。  その場合、改善の方策といたしましては、日本市場開放と申しますか日本輸入を増加するということで、むしろアメリカの方で日本からの輸入を制限するよりも貿易拡大する上において、その拡大をしながらこのアンバランスを解消していきたいという一般的な希望は、アメリカ側として持っているというふうに考えます。
  10. 久保等

    久保(等)委員 この政府調達コードの問題についてすでに昨年の四月十二日に妥結をいたしておるわけですが、これについて特にEC側態度、これは昨年来国会でも私ども取り上げて、昨年二回ばかり衆議院の逓信委員会で二月二十二日、四月二十五日と二回にわたって私もお尋ねをいたしておるわけです。その当時EC態度についてすでに国会でもわれわれ確認をいたしたところですが、この政府調達コードの中には通信機器は含めない、こういう態度がすでにECの中では決定せられておる、ただ日本がこれにどう対応するかは今後の問題だというふうな御答弁があったのですが、このECのそういう通信機器除外をするという態度、これは私、従来から申しておりまするような通信性格なりまた実態から考えて、まことに当然の主張だと思いますし、決定だと実は理解しておるのですが、昨年お尋ねした当時、日本側としてまだこのEC問題についての態度は決めていない、こういうような答弁であったと思うのです。それは結局アメリカとの問題もあるからということであったのだろうと思いますけれども、しかし、ECが明確な態度決定をしておることに対して、日本も当然そのEC問題については明確に態度決定すべきではないかと当時思っておったのですが、今日この問題についてはどういう態度でおられるのか、お尋ねしたいと思うのです。
  11. 手島れい志

    手島政府委員 先生の御指摘のとおり、コードが成立をいたしましたときにECは、電気通信関係機器調達は、これをこのコードの中に含めないという態度をとっておるわけでございます。この交渉を通じてEC側が申しておりましたことは、ECの中にもいろいろな国によりましてその調達方式ないし電気通信事業を行っている調達体形態が違うとか、なかなかEC一本としてまとめ切れないのだというようなことの説明をしておったわけでございます。日本の現在の考え方といたしましては、これは昨年六月二日にできました牛場ストラウス共同声明というものがございますけれども、そこでは電気通信調達市場を含みますその市場相互進出機会について、これは単に日米だけでなくて、そのほかの主要国も含んだところで相互主義というものが確立されることが望ましい、そういうふうな考えでおるわけでございます。
  12. 久保等

    久保(等)委員 ですから私のお尋ねしているのは、少なくともEC側のいろいろ内部事情はあるにしても、一応とにかく通信機器除外をするのだという態度決定しておるその態度そのものが今日何か変化でも見られるというのですか、その態度態度として今日もEC側としては堅持をしておられるのか、そこの情勢をちょっとお聞きしたいと思うのです。
  13. 手島れい志

    手島政府委員 現在のところ、ECコードができ上がったときに決めました、電気通信関係調達はこの調達コードに含めないという態度をそのまま続けております。
  14. 久保等

    久保(等)委員 したがって、それに対する日本ECに対する対応はどうされておるのか、あるいはどうされようとしておるのか、お尋ねします。
  15. 手島れい志

    手島政府委員 先ほど申し上げました牛場ストラウス共同発表にございますように、「日本国、合衆国及び他の主要国の間で電気通信分野における市場を含む相互市場への進出機会に関し相互主義が適用される」ことが望ましいということを、日本と米国とは相互に認識をし合っておるわけでございます。
  16. 久保等

    久保(等)委員 そのECの、政府調達の中に含めないという理由、主たる理由はどういったところにあると理解をしておられますか。
  17. 手島れい志

    手島政府委員 先ほど申し上げましたように、EC側説明は、EC域内各国電気通信事業事業体形態が違うのでなかなか共同歩調がとれないのだということでございますけれども、しかし、その背後には、この電気通信事業調達方式というものをその調達コードに載せるということに対して、なかなか彼らとして賛成できないという意向もあるのではないかと思いますが、これは私どもの推測でございます。
  18. 久保等

    久保(等)委員 その政府調達コードに含めないという最大の理由一つは、やはり何といっても通信事業の持つ特殊性、すなわち非常に高度な技術あるいはまた安定した信頼度の高いものでなければならぬといったような性格から、一般市場でもって容易に調達できるような性格のものではございません。したがって、そういうそれぞれの国の通信というものはそれぞれの歴史と伝統があるわけですから、どこの品物を持ってきてもこれを十分に通信回線の中でこなし得るという性格のものではないわけでして、非常に技術が高度になればなるほど、これは普通素人が考えてもわかるわけですが、簡単な車一つとってみても、アメリカ製の車にいきなり日本の車の部品でもって間に合うかということになると、なかなかそういうことをやってもうまくいかないことは常識でもわかるわけです。  特に今日通信というものがだんだん技術的に発達をし、広域化してまいっております。したがって、日本の場合も最近ではどこからでもダイヤル一つ回せば国内のみならず外国の主要なところには通話ができる、しかも東京都内から電話をしておるのとほとんど変わらない程度に、音量といい音質といいきわめて明瞭な通話ができる、今日の通信拡大化、それからさらに広域化、そういったことを考えますと、おのずから通信機調達問題については、競争入札とかなんとかと言われておりますが、実際問題としてこの競争入札等品物調達している国というのはないわけですし、アメリカの場合につきましても、直接ATTが自分の子会社あるいは関連の傘下のメーカーから購入をしておるというのが実態のようですし、この問題についてもなお若干突っ込んだお尋ねをしたいと思うのですが、いずれにしても、そういう事情から、ECの場合にもちろんそれぞれの国の内部事情はございましょうけれども、やはりこれが競争入札といったような形での調達になじまない、あるいはまた一般的な政府調達の中に含めることは適当でないという判断が非常に大きな理由ではないかと実は私は思います。  それに対して当然日本側の方では、ECに対する問題は問題として、対応せられる時期は一体いつごろになると判断をしておられるのですか。
  19. 手島れい志

    手島政府委員 私どもは昨年の牛場ストラウスの六月二日付の合意に基づきまして、ことしの暮れまでに相互納得のいくような解決をつくり上げたいというふうに考えて、話を進めておるわけでございます。
  20. 久保等

    久保(等)委員 そうすると、日米関係の問題が合意に達する時期、その時期にECとの問題についても同時に決着をつける、対応をするというふうに理解してよろしいのですか。
  21. 手島れい志

    手島政府委員 牛場ストラウスのコミュニケにおきましては、将来の目標といたしまして、先ほど申し上げましたような日、米、そのほか主要国、特にECだろうと思いますけれども、そこにおける進出機会相互主義ということがございます。先ほど私、答弁をちょっと勘違いしまして、日米間の話し合いのことについて申し上げたわけでございますが、ことしの暮れまでに何か日米間で納得のできる合意に到達したいと思いますけれども、その到達する段階におきまして、やはり同じようにECに対してもできる限り相互市場進出機会が同等になるように働きかけを行っていきたいというように考えております。
  22. 久保等

    久保(等)委員 EC態度が明確ならば、ECの問題はECの問題として合意に達するということはできないのですか。
  23. 手島れい志

    手島政府委員 政府調達コード交渉関係から申し上げますと、これは必ずしも電気通信関係だけを取り上げましてお互いの間の相互主義、レシプロシティーを図るというものではございません。しかしながら、他方電気通信関係におきましても、先ほど申し上げましたような主要国間における相互主義というものがわれわれの究極の目標でございますから、この目標は今後とも続けて追求をしていくべきものであろう。つまり、ことしの十二月三十一日までという限定をすることなく、さらにその後でも三者間において相互進出機会の平等さということを確保していくように努力すべきだろうと思います。
  24. 久保等

    久保(等)委員 どうしても私、EC関係について日本自体態度があいまいというか、合意に達しないというのは一体どういう意味で合意に達することができないのか、またそういう意思表示をすることができないのか、非常に疑問に思います。  それならば、政府調達コードの問題について電気通信以外に何か問題があるのかどうなのか、これはECとの関係だけについての話ですが、相互主義ということをたてまえとしてECとの関係について合意に達することができない要因がほかにあるのかどうか、電気通信機器除外してなお政府協定合意しようということで日本都合が悪いことが何かあるのですか。
  25. 手島れい志

    手島政府委員 ECとの間では特にそういうことはございません。  ただし、日本コード条件つきで署名をいたしましたときに、日本といたしましては電電公社調達体の対象としては出すけれども、この署名の段階におきましては電気通信機器は含まない。しかし、注釈の(iii)の方におきまして、今後牛場ストラウスの共同声明に基づいて日米間で合意が成立し、その中でこの調達体調達コードの対象とすることで合意した場合には、さらにその部分もコードの対象にしますというようなことを留保をいたしまして、その留保は各国とも承認をしておるところでございます。
  26. 久保等

    久保(等)委員 どうもその態度理解できません。せっかくECがそういう政府調達コードの中に電気通信機器は含めないのだという態度をとっておることに対して、そのままなぜ日本が受け入れることができないのか。アメリカとの間で相互主義でもってこの通信機器を含めるというようなことになった場合には、ECとの関係においてもそういう条件で合意をしよう、話をしようというふうに、わざわざそういうアメリカとの合意事項の効果を同じようにECの方にも波及をさせるふうなことは、日本立場にとってどうして必要なのか、私はそのことが理解できないのですが、外務省はどう考えていますか。
  27. 手島れい志

    手島政府委員 先生のおっしゃったとおりでございまして、日米間におきまして、電電公社調達物品のうちでコードの対象とするものについて、その範囲について合意が成立した場合には、これはECにも均てんをするわけでございます。わが国はECに対して、その均てんが実現する場合には相互主義を要求するものであるという態度をすでに申し入れて明らかにしてございます。  また、先ほどから申し上げているように、昨年の日米の共同声明で、日米両国はECをも含めて電気通信分野において相互主義の原則が適用されるべきことに合意をしておりますので、日米両国としては、今後の交渉の過程においてECに対してもこの分野での門戸開放を働きかけまして、またこれはコードの中にあります規定でございますけれどもコードの発効後三年後の見直しということが規定されておりますけれども、この見直しの時期にこれが完全に実施をされるということを目指して作業をすることになっております。この一環といたしまして、ECに対して、相互主義の原則に基づいて門戸を開放するようさらに働きかけて、これの実現のために努力をしていく所存でございます。
  28. 久保等

    久保(等)委員 どうも私は話がよく理解できません。開放をすることがいいのだという主張の上に立てば、これは私わからないでもないです。しかし、先ほど来申し上げまするように、またかねがね議論になっておりまするように、通信というものの性格から言って、そういったような開放ということは決して好ましいことではない。特にアメリカ側が主張しておりますることは、中枢部分であるとかというようなことがよく言われておるのですが、具体的にそういう実体がどういうものか、だんだん話を煮詰めていかなければならぬ問題だと思うのですが、そういったようなことでは、これは通信の本当の性格から言って、私は非常に重要な禍根を今後に残すのではないかと思っておるのです。  あの昨年の六月二日の共同声明というものは、日米間における共同声明なのですが、確かに言葉の中には、日米その他の主要国というような言葉がうたわれているのですが、しかし、そのときには、この問題についてECその他の主要国を交えての声明になっておるのでしょうか。
  29. 手島れい志

    手島政府委員 声明自体は、日米間のみで話し合って決めたものでございます。
  30. 久保等

    久保(等)委員 しかし、日米間だけで決めたのですが、日米間だけではなくて主要国を含むといったようなことが言われておるのです。だからそういう点では、当事者外の第三国を入れた声明になっておる点、これもちょっと理解しにくい点だと思うのです。  しかし、いずれにいたしましても、このことについてはEC側としても、いま説明のあったような問題を含めて十分に合意に達しておるのでしょうか。
  31. 手島れい志

    手島政府委員 EC側としてこれに合意をしたということはございませんけれども日米の共同声明が発表されました後で、直ちにEC代表に対しまして、日米はこういうふうに考えており、日本側としてはECに対しても相互主義を要求するものであるということを申し入れております。
  32. 久保等

    久保(等)委員 去年の四月二十五日逓信委員会で、私もこの問題についてお尋ねしております。その中で国広説明員のお話では、「わが方として合意するしないの前に、ECはその方針」というのは、要するに含めないということなのですが、「その方針をもう変えないということでございます」云々というように言われておるのです。あるいはまた、電気通信施設をEC政府調達の提案の中に含めないということは、EC決定でございます、その決定に対してわが方がいかなる態度をとるかはいま決めておらないのだというように答弁をしておるわけです。したがって、EC態度というものはきわめて明確に決められておると思うのですね。  そうだとすると、何かECのそういう態度にもかかわらず、日本側の方はアメリカとの交渉の推移によって、その結果によってECにどう対応するかの態度を最終的に決めよう、こういう態度のように見受けられます。この問題の解決を、逆にEC問題そのものを何か遷延をしておる。しかも、それは日本都合で、アメリカとの交渉関係があるからそれによって考えていくのだという態度、これは本末転倒で、むしろECがそういう意思であるなら、日本もそれに対応して同じ方針でもって合意に達する、そういう態度をとるべきだと私は思うのです。  一体この通信機器を含めるか含めないかという問題は、世界各国同時決着を図らなければならない問題ですか。また、同じような方針で決定しなければならないものですか。私は恐らくそうじゃないと思うのです。枠組みは決まった。枠組みは決まったが、中にさらにいま言った電気通信機器を含めるか含めないかは、それぞれの国々の事情もありましょうし、それによって決められるべきものだと思うのですが、外務省としてはどんなふうにお考えですか。
  33. 手島れい志

    手島政府委員 確かに先生の御指摘のとおり、仮にその電気通信の分野におきまして、その調達方式なり対応なりについてこういったものが望ましいのだという世界的なルールと申しますか合意というものがあれば、これはまたそれに従うということで結構だというふうに思いますけれども、ただ、実際問題といたしましては、それぞれ国によりまして民営のところもありますし、政府直営のところもありますし、また公社のようなところでやっているところもありますし、一つのルールだけというようなことで決めていくのはなかなかむずかしいのではないだろうかというふうに考えます。  また他方、これは電気通信事業調達の問題であると同時に、政府調達一般の問題でもございまして、この面におきましては、政府調達コード交渉との関連で申しますと、各国が調達体として出しておりますものがすべて一対一で見合うというかっこうには必ずしもなっておらないという面もございますので、ここの間の調和をどういうふうに考えながら交渉をしていくかというのが一つのポイントではあるまいかというふうに考えます。
  34. 久保等

    久保(等)委員 時間の関係で余りお尋ねを煮詰めてまいることはできかねるのですが、どうも私はそこのところがすっきり理解できないのです。  一昨年来、あれだけいろいろと折衝が行われて、なおかつ今日継続をして今後も一層の努力をしていかなければならぬという状況の中にあって、片づけられるものから片づけていくという、しかもそのことは日本のとる基本的な態度からいって好ましいとすれば、なおさら私はそういう立場で片づけていくべきだと思うのです。そしてアメリカとの未解決の問題については、なお精力的に交渉を重ねていく。しかし、でき得れば、いまECとの関係における問題のような形で決着がつけられるならばなお好ましいことですが、しかし、とにかくいずれにしろ、ECの問題をペンディングにしておく、それはアメリカとの交渉が煮詰まらないからということでペンディングにしておくというのは、外交技術上もいかがなものかと疑問を持たざるを得ないのです。  先ほど来、同じような質問で同じようなお答えで一向にどうも話が前進をいたしませんが、しかし、アメリカとの関係について申しますならば、とにかく具体的な市場調査、実態調査、そういったようなことをいろいろ重ねられておると思うのですが、これは非常に結構なことであります。特に、ジョーンズ・レポートなどを見ましても、大変な誤解に基づく考え方というものが表明せられておりますが、実態を十分に理解し合うということがすべての前提だと存じます。そういう点では、決して拙速をもって合意に達すべき性格ではなくて、十分に時間をかけて、お互いに、国がそれぞれ違うわけでありますから、国情も違いますし、また特に電気通信の企業形態そのものが、アメリカは民営、こちらは公社経営ということになっておりますだけに、非常に大きな違いがあります。そういったことについての理解を深めてまいることがきわめて重要だと存じます。  そこで、その通信の本体の開放、本体の開放ということを従来から盛んに私ども耳にするのですけれども、少なくとも中枢部門についての開放ということは、通信政策の面からいってもとるべきでないと私は思うのですが、その点についてはいかがですか。少し話が抽象的ですけれども、しかし、非常に重要な、原則的な問題でございますので、お尋ねをしたいと思います。
  35. 手島れい志

    手島政府委員 現在まだアメリカとの間では、昨年の七月以来について申しますと、具体的な交渉に入っておりませんので、その交渉の内容にわたりますことにつきましては、恐縮でございますが、答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども、この電気通信の持つ特殊性につきましては、私ども、郵政省なり電電公社なりと密接に御相談をしながら、何とか日本側にとっても納得のいく解決を見出していくように努力をしておるわけでございます。
  36. 久保等

    久保(等)委員 中身の具体的な細かい問題についてお尋ねすることは、時間の関係もあって差し控えたいと私は思うのですが、結局、この通信調達問題そのものについても、非常に技術的な面でもむずかしい問題があろうと思います。そういったことについても、私は、相互主義という原則の上に立って、十分にバランスのとれたものでなければならぬと考えるわけです、これは当然のことなんですけれども。  しかし、昨年あたりまでの経過を見ていると、どうもそういうふうにはなっておらないように考えられるわけですが、昨年の六月二日を契機にしてああいう共同声明を発表したのですから、そういう立場にのっとって、あくまでも相互主義、したがって、金額的な面あるいは品質的な面、そういった問題についてはすべて相互主義という原則は、私は、絶対に客観的に見て譲れない重要な問題と思うのです。そういう点については、細目等についてもそういう立場をあくまでも堅持をしてまいるべきだと思うのですが、いかがですか。
  37. 手島れい志

    手島政府委員 私どもといたしましては、昨年の共同発表にございます政府調達及び関連市場に関する牛場ストラウス合意に基づきまして、これを基礎に交渉を続けていくという意図に変化はございません。
  38. 久保等

    久保(等)委員 私は、日本相互主義という立場に立って、日本側納得できない限り合意に達するということはないと思うのですが、その点間違いないでしょうね。
  39. 手島れい志

    手島政府委員 ただいま申し上げましたように、相互納得がいくものでない限り、合意をすることはございません。
  40. 久保等

    久保(等)委員 同時に、この問題は、日本の国内における雇用問題にも非常に重要な関係があるわけです。先日も当委員会における参考人等の意見をお聞きいたしておりましても、全体の二〇%程度をもし仮に開放するとするならば、それだけでも約七千人ぐらいの雇用問題に重大な影響が出てくるのではないかと陳述をせられました。あるいはまた、電気通信機器のメーカーということになりますと、大手もありますし、中小企業ないしは零細企業もございますが、そういうものを含めますと七、八千社と言われております。そういった点を考えますると、特に通信のきわめて高度な技術を要する機器の場合には大手メーカーということになるでありましょうが、そうでない場合には、これはきわめて零細な企業等もこういった通信機器のメーカーになっておるわけでして、そういう点からいたしますると、雇用問題もきわめて重要な問題だと存じます。  余り細かいことは申し上げませんが、電線関係あるいはまた通信機械の関係についても、中小企業あるいは零細企業、こういったようなもの等に及ぼす影響というものは、まことに大きなはかり知れないものがあると私は思うのです。こういった問題については今後やはり具体的な対応をしていかなければならぬと思うのですが、関係者の問で十分に御相談を願うなり、あるいはまた、対アメリカとの関係においても、折衝しなければならぬような問題も出るかと思うのです。この雇用問題について、今後そういった点についてはひとつ時期を失することなく適切に対応してもらいたいし、また、関係者で協議をする、対策を考える、こういったようなこと等も今後十分に対処してまいらなければならぬと思うのです。  これは労働省の方にお尋ねをしたいと思うのですが、その点について今後十分に配意を願いたいと思います。
  41. 北村孝生

    ○北村説明員 電電公社の資源調達問題が関連企業や雇用へ及ぼす影響ということにつきましては、今後の日米交渉におきまして具体的な調達内容についての協議がどうなるかということにかかっておると思います。  労働省といたしましては、まずそういう日米交渉の成り行きにつきまして重大な関心を持っておりますけれども、同時に、この電気通信機器関連産業を含めまして、雇用への影響につきまして、現在実情把握に努めているところでございます。今後とも、雇用等への影響が予想される場合につきましては、機動的に対処できますように、関係省庁とも十分な連携を保ちながら対策に万全を期してまいりたいと考えております。
  42. 久保等

    久保(等)委員 今後の問題ですが、ひとつ十分に取り組んでもらいたいと思います。  実は時間がなくなってまいりましたので、外務大臣お尋ねをいたしたいと思うのです。  昨年も四月二十五日、大平総理がアメリカに出かける直前に実は委員会に御出席を願って、日米交渉についての基本的な態度の問題等についてもお尋ねをしたりまた強く要望申し上げておいたわけです。  外務大臣も明日あたり御出発になるようなお話を承っておるのですが、この問題がいま言う約両三年にわたっての日米における経済摩擦の問題の一つとも言われておるわけなんですけれども、しかし、外務大臣は特にこの事業そのものについても十分に御認識、御理解を持っておられると思うのですけれども、私は事の性格上、いまも相互主義という話がありましたが、大平総理も互譲の精神でとにかく取り組むんだという話がございました。そういう点から申しましても、この問題についてはぜひ十分に日本納得をしまた理解のできるいわゆる相互主義の上に立って解決を図る。したがって、きわめて長期的な将来の通信事業の問題の観点からこの問題について取り組んでもらいたい。単に一つの個々の品物貿易収支といった問題ではなくて、日本通信事業に及ぼす影響ということを十分にひとつお考えをいただいて慎重に対処していただきたい。そういう意味では、最近よく政治決着をつけるということが言われておりますが、あくまでも合理的にそして相互主義の上に立って問題を解決するという基本線を絶対曲げることのないように、格別の御配慮を願って折衝に当たっていただきたいと思うのですが、外務大臣の決意のほどをお伺いをいたします。
  43. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 明日から米国に行ってまいりますが、今回は日米関係の全般的な問題あるいは国際情勢等の話し合いでございまして、電電公社の問題を具体的に詰めるというところまでは参らないかと存じますが、なお安川政府代表も同じころに参りましていろいろ向こう側との話し合い、まだ交渉という段階ではないように考えておりますが、いまの御指摘相互主義の点については十分配慮してまいりたいと存じます。  もともとこの問題、日本からの対米輸出が従来からテレビその他あるいはコンシューマーエレクトロニクスの急激な進出とかあるいは鉄鋼あるいは最近は自動車、次々に従来アメリカが心臓部と考えていたような産業分野に日本の製品が競争力を持ってアメリカ市場に大量に入っていく。それに対してアメリカの製品が日本市場になかなか入らないじゃないか。これは何か日本側がいろいろな意味での人為的な制限を加えているために入れないんじゃないかという考え方がアメリカ側に根強くございます。これは私どもから言わせれば、こういう商品についてのアメリカの産業の競争力に一つ問題があるというふうにも思うわけでございますけれども貿易というのはやはり総合的なものでございますので、また日本市場拡大いたしませんと今度は日本からの通信機器を含めて対米輸出がだんだんむずかしくなるというはね返りも出てまいりますので、両者のバランスを考えて、世界貿易拡大という点から言えば両方で輸入輸出を大きくするということが両方で縮めるよりは全体的に見て有利なわけでございますので、そういう相互貿易拡大、それによって相互に雇用の機会もふえるというような見地も含めましてこの問題に対処してまいりたいと考えております。
  44. 久保等

    久保(等)委員 関連質問が土井委員の方からもあるようですから私の質問は最後にいたしたいと思いますが、確かにその貿易でのバランスをとるという意味でお互いに市場開放なりあるいは拡大ができる面は、これは私大いにやるべきだと思います。  しかし、先ほど来申し上げますように、また大臣に申し上げなくとも御理解願えると思うのですが、要するに日本通信施設ないしは通信回線、こういったもののあり方という立場から考えた場合に、開放すべきものと開放すべからざるものとがあると思うのです。したがって、アメリカ自体が御承知のように契約方式をもって言うならばいわゆる随意契約、これはアメリカの場合にはほとんど八〇%程度がATTのいわば子会社に直接発注をしておるわけですから、開放も何もないので、自分の子会社につくらせる。残された二〇%程度が部外と言われますが、その部外も日本そのものに開放しておる部面と言えばまことに、これは先ほどもジョーンズ報告のところで申し上げたのですが、アメリカ側の認識でもわずか三千五百万ドルか、その程度だということなんですから、そういう点ではほとんど問題にならぬ。したがって、言葉の上でも何か競争的調達ということが言われておるようですが、競争的調達というものは日本のわれわれから理解すれば随意契約の一種だと思います。したがって、そういう点では文字どおりの競争入札という方法によって通信機器調達を行っておらない。これがアメリカのいまの実態じゃないかと思うのですが、外務省当局としては、一体私のいま申し上げた認識というものが間違っておるかどうか。私は今日まで明らかにせられた経過の中で、一般的にはいま申し上げたようにATTはみずからの子会社からほとんどのものを調達する。残ったものは競争的調達といった形で事実上随意契約的な形で調達をしておるのだ、こういうふうに理解して間違いないと思うのですが、いかがですか。
  45. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘の点は私も大体承知いたしておりまして、あくまでもこれは双方の合意に基づくことでございますから、基本的な点については十分心得て今後の交渉を進めてまいりたいと考えております。
  46. 久保等

    久保(等)委員 ありがとうございました。これで終わります。
  47. 中尾栄一

    ○中尾委員長 関連質問を許します。土井たか子君。
  48. 土井たか子

    ○土井委員 けさのニュースで、唖然とするニュースでありますが、例のKDDの汚職問題でついに郵政幹部の中に二人の収賄容疑者が出るということに相なりました。郵政大臣ここに御出席でございますからお尋ねをしたいのですが、こういう事態について郵政大臣としてはどのようにお考えになっていらっしゃるか。御所信のほどを承りたいと思います。
  49. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えをいたします。  私もけさほどそういう事実を知ったわけでございます。現在その人は警視庁に任意出頭をいたしまして事情聴取を受けておる、このように聞いております。したがいまして、事件の内容等については私どもまだ把握をいたしておりません。取り調べの進展によりましてはそれ以上の問題が起こってくるかもわからぬ、こう思っておりますが、いまにわかに逆睹しがたいところでございます。  いずれにいたしましても、郵政省からKDD問題について事情を聞かれるといった特定の人が出ましたことはまことに残念なことでございまして、国民の皆さんに対して心からおわびを申し上げたいと存じております。  郵政省としてはこのことを、事態が明らかになってくると思いますが、その推移に従いまして、昨年の十一月以来綱紀粛正については全般的に通達を出しまして自粛をするようにという通達をいたしておったところでございますが、さらにこのことに対しまして一層自粛といいますか、綱紀の粛正をしていかなければならぬと思っておりますので、この事態の推移をもう少し見守らしていただきまして、これに適切な処置をとっていきたいと考えております。
  50. 土井たか子

    ○土井委員 郵政大臣の方からはただいまのような御答弁でございますが、実は、時期的に見ましたら、インマルサット条約、これは当委員会において審議をいたしました条約でございますが、この条約の署名と、それに伴う運用事業体としてKDDが指名をされるというふうな時期に当たっておりますし、それからマリサットによる通信サービス開始の認可についての時期にもこれはばっちり当てはまるというふうなときでございます。そういうことからいたしますと、この収賄の中身というのは、もし事実このとおりであるということになってまいりますと、ゆゆしい問題だろうということははっきり言うことができるのではないかというふうに私たちは思うわけです。  これは外務大臣、今回われわれが審議をいたしております東京ラウンドの中にも、きょう社会党の先輩である久保議員の方からの御質問にございました政府調達の問題、これは内容は実は情報産業ということにかむ問題でございまして、いろいろノーハウや、日本の国の国益という立場からしたら外部に出すことのできない秘密事項などもございます。そういうことからすると、この取り扱い方については慎重に慎重を期しても慎重過ぎてはいないというふうにも考えられるわけであります。  今回の郵政幹部については、大臣の方から、まだ事情が進展中であるけれども、容疑者を出したということに対してはまことに遺憾であるというふうな、きょうは御表明でございますが、取り扱い方について、こういうふうな収賄というふうな問題が役所の中にある、役人の中に出てくるというふうなことになると、どうも安心できないということにもなるわけであります。今回のこの東京ラウンドにも政府調達の問題がばっちりございますから、大臣としてひとつ御所信のほどを、外務大臣としてどうお考えになっていらっしゃるかというのを一音承りたい気になります。いかがでございますか。
  51. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 KDDの問題につきましては、私もきょうの新聞で拝見いたしたわけでございまして、先ほど郵政大臣からの御答弁がありまして、外交全般を扱う、特にKDDは国際関係もいろいろございますので、いろいろな点で疑惑が出てまいるということは私どもとしても遺憾なことだと思います。いま司直の手でいろいろ調べが進められているわけでございまして、こういうことが全般的な戒めになりまして、今後そういうことの再発が防げるということを切に希望いたしておる次第でございます。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 具体的には、その所管の逓信委員会の方で、明日から恐らく質疑応答がさらに展開されるであろうと思いますから、きょうは関連質問で、緊急な問題でもございますから一言質問をさせていただきました。ありがとうございました。
  53. 中尾栄一

    ○中尾委員長 柴田健治君。
  54. 柴田健治

    柴田(健)委員 今国会にかかっておる東京ラウンドに関連する国際条約の中で、農産物の交渉経過並びに協定の中身についてお尋ねをしたいと思うのであります。  先ほど久保委員からも御指摘がございましたように、政府調達の中では電電の機械の開放、一方では農産物の輸入拡大という立場での条約でありますから、私らの立場から申し上げると、近代国家の頭脳は電気工学だ、こう思っておる。その電気工学を外国に握られるということは、日本の頭脳をさらしものにするということになると思う。非常に残念だ、こう思っておるわけです。もう一つは、日本人の命を外国に操られるということは独立国として大変なことだと思う。国の安全の基本をなすのは食糧問題だ、こう思っておるわけです。食糧とこの電気工学、そして油というものを全部外国に操られるということは、独立国としてどんなものだろうか。非常に心配をし、危惧を持っておるわけです。そういう立場から私は、農産物の輸入に関連する問題についてお尋ねをしたい、こう思っておるわけであります。  まず、日本は法治国家としてそれぞれ大臣もできておるわけであります。私は農林委員を長い間やっておるわけでありますが、農林省の立場からわれわれは申し上げるのではなしに、日本の農業というものは、日本の産業の中でどう位置づけるべきかというのが当面の重要な課題でありまして、農業を守るということは日本の安全を守るということでありますので、そういう立場から物をとらえてわれわれは判断をしておるわけであります。  そういう立場から、まず農業を守る一つの基本の法律があります。それは農業基本法であります。この農業基本法の十三条にはどんなことを書いておるのか、まず外務省の当局にひとつ聞かしてもらいたい。
  55. 古谷裕

    ○古谷説明員 農林省の所管法律でございますので、私の方から申し上げますが、農業基本法十三条は「輸入に係る農産物との関係の調整」という規定でございまして、「国は、農産物にっき、輸入に係る農産物に対する競争力を強化するため必要な施策を講ずるほか、農産物の輸入によってこれと競争関係にある農産物の価格が著しく低落し又は低落するおそれがあり、その結果、その生産に重大な支障を与え又は与えるおそれがある場合において、その農産物につき、第十一条第一項の施策」これは価格施策でございますが、「施策をもつてしてもその事態を克服することが困難であると認められるとき又は緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとする。」という規定でございます。
  56. 柴田健治

    柴田(健)委員 いま十三条を読まれたわけでありますが、十三条には、日本の農産物の価格の変動なり農業全般に与える影響が多い場合には輸入の調整をする、そういうものが一方では法律として明記されておりながら、こうして国際的な面から貿易の自由化論に基づいてどんどん輸入してくるということは、何としても理解ができないわけであります。われわれは農業政策をどう守り、どう発展させていくのかということから考えて非常に心配をしておるわけであります。  今月、畜産物の価格、牛肉なり豚肉なりそして加工原料乳の価格が決まるわけでありまして、いま議論の最中であります。どうしてもネックになってくるのはこの畜産物の輸入であります。この輸入日本の畜産農家に心理的、物質的全般にわたって重大な影響を与えておる。これらを外務省はどう理解しておるのか、この点をひとつお聞かせ願いたい。
  57. 手島れい志

    手島政府委員 まず先ほどの農業基本法十三条と外交関係、特にガットとの関係についてでございますけれども、基本的には私どもといたしましては、ガットの原則に沿いながら、これを強化する方針でございますけれども、農業につきましてはその特殊性というものがございますし、また農業の実態との関係においてそのあたりの調整に取り組んでいく必要があるのではないかと思っておるわけでございます。したがいまして、具体的に申しますと、国内施策によって生産性の向上を図るなり競争力を高めることが国民経済の上からいっても利益になると考えております。ただ、またいろいろな基本的な制約要因もございまして、そういった長期的な施策が早急にできないというようなものもあるのではないかと思います。その場合、国内で自給が効率的にできるものについては大いにこれを促進することといたしましても、またそれ以外のものについては、輸入を何とか安定的に確保することも考えていかなければならない分野もあるわけでございます。したがいまして、このところを考えまして、国内の農家経営に被害を及ぼさないように考慮しながら、外国からの安定的な輸入も考えていかざるを得ないだろうと思っております。  また、これとの関連におきまして、畜産物についての御質問でございますが、日本側の特殊な条件を考慮に入れた上で、他方、できる限り安定的な方法で輸入を継続し安定的な拡大を図っていくことが、私どもの対外交渉を行う場合の目的であろうかと考えております。
  58. 柴田健治

    柴田(健)委員 外務省お尋ねしたいのですが、人口一億以上の独立国で国内の食糧自給率が四〇%以内という国はどことどこがあるのか、御承知ですか。
  59. 手島れい志

    手島政府委員 申しわけございませんが、きょうちょっと数字を持ってきておりません。
  60. 柴田健治

    柴田(健)委員 外務省は、日本の一億一千五百万人の生命に関する問題を常に頭に置いてもらっておかないと困るのです。人口一億以上の国で、日本の場合は総合自給率が三七%。こんなばかな国にしたのはだれかということですね。そして国内で米の生産調整、畜産物、特に牛乳の生産調整、果樹の生産調整、これだけ生産調整をどんどんして、一方では輸入をふやしていかなければならない。なぜこんなことをしなければならないのか、正直言ってわれわれには理解できないのです。輸入というものは補完的なものだと思っている。それが、輸入がもうほとんど基軸になってしまうというやり方。こんなばかな国が果たして独立国と言えるのかどうか、われわれ非常に疑問を持っております。この点、外務大臣はどう理解しているのか。
  61. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本の自給率につきましては、総合自給率は大体七〇%、オリジナルカロリーで大体五〇%、主要穀物で三六、七%というふうに私ども従来聞いておったわけでございますが、これだけ世界が小さくなりまして有無相通ずる世界でございますので、消費者の利益、消費者ができるだけ安いコストで必要な商品を手に入れることは経済政策の一つの大きなねらいでございますので、日本でつくることが困難なものあるいは日本で生産すると非常にコストが高いものについてある程度輸入がふえてくることは、広く消費者全体の利益のためにやはり必要なことだと考えるわけでございます。  ただ、農業については、農業の御指摘のような事情がございますから、全く市場原則に任せるわけにいかない。現に米のようなものについては日本の農業の基幹的な産物でございますので、国際価格の四倍、五倍でも、これは消費者がそれだけ高いものを払うことになりますけれども、国の農業の基幹を守っていく、農村の安定を図るという広い意味での政策的考慮からやはり自給が必要だということになっておるのだろうと理解しております。  ただ、あらゆる農産物を自給しなければいけないのか、農産物の中にも必需的な農産物と非必需的な農産物があるわけでございまして、非必需的な農産物については消費者の利益、安くていいものが手に入るという面の考慮も払っていかなければならないように考えておりまして、ガットや貿易をお互いに拡大していく、それがそれぞれの国の生活水準の上昇につながるという意味で、農産物のあるものについては貿易が行われてもそれが非常に困るということではない、むしろ消費者の利益になる点があると考えておるわけでございます。
  62. 柴田健治

    柴田(健)委員 外務大臣の認識は価格論で消費者がプラスかマイナスか、メリットがあるかないか、ただそれだけにこだわっておるわけですね。食糧問題というものはそういう受けとめ方ではいけないのじゃないでしょうかね。あなたも大東亜戦争というかあの戦争を経験された年代だと思うのですね、われわれもそうなんですが、長崎、広島に原爆が落ちただけで負けたのではない。食糧がもう底をついて、もう一カ月戦争を続けたら一千万人の餓死者が出るというところまで追い込まれた。ベトナム戦争でも、アメリカがなぜ負けたか、食糧問題ですよ、兵器じゃない。食糧があるかないかで運命が決する。  昔、こういう言葉があった。土方殺すには刃物は要らぬ、雨が三日降ればいい、こう言った。日本を殺すには兵器も何も要らない、船をとめさえすればいい。船がとまる、とまらぬという問題がある。ペルシャ湾、マラッカ海峡が封鎖されて海が非常に危険性が高まってくれば、どこの国の船も動かぬようになってくる。そういうおそれなしと言えない。どんなことが起きるかわからない。その場合に食糧問題をどうするのか。ただ嗜好品で、価格論で、消費者論という立場で得だとか損だとかいうだけで物を見るべきではないのではないか、これがわれわれの判断です。  外務大臣の考え方は、一国の外務大臣としては非常にお粗末だと私は思う。もっと腹を据えて、食糧問題がどんなに重要なものか、国の安全保障にとって一番大事なのは何か、それを十分踏まえて外交折衝をしてもらわないと困るとわれわれは思う。その点、もう一遍確認しておきたい。
  63. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど、農産物の中にも必需的な農産物、人間が生きていくために必要なもの、これは経済性をある程度度外視しても自給率を高く保つことが必要だろうということを申し上げたわけでございます。米などがその典型的な例だと考えておるわけでございます。が、それであらゆる農産物ということでは必ずしもないだろうという意味で申し上げたわけでございます。  もう一つは、これは余談にわたるかとも思いますけれども、大分前に、私、東畑精一先生から伺った話がございますが、第一次大戦が始まったときに、イギリスの食糧自給率は三分の一だった。あと当時の植民地、オーストラリア、カナダその他から船で運んで持ってきた。ところが戦争が始まりまして、ドイツの潜水艦が穀物船を次々に撃沈するということで、イギリスに着く海外の食糧が減ってくる。ところが国内には非常に大きな休閑地がございまして、戦争が終わるときには自給度が三分の二になった。結局、穀物船が沈められたけれども、食糧はどうやら間に合ったということで、経済の問題面から考えますと、常に平時に自給しておくということが必要なのか、あるいはいざというときに自給するポテンシャルを保持するということが大事なのか。平時からあらゆる農産物を自給しようとしますと、物によっては非常に高い農産物を消費者が消費することになるわけでございまして、やはり食糧安全保障ということは、人間の生存に必要な基本的な農産物の自給率を高めるという問題と、それから何か有時の場合に国内で生産をふやすポテンシャルを維持する、そういう面からも考える必要がある。同時に、国際貿易、こういう世界でございますので、貿易拡大という面についての考慮も平時には必要ではないか。これは有事のときには別な状況になると考えております。
  64. 柴田健治

    柴田(健)委員 外務大臣答弁はどうもはっきりしないんで、ぼくら理解ができないわけですが、まず非関税措置のグループの中に、数量制限、関税評価、そして技術貿易障害、補助金・相殺関税政府調達、こういう五つのグループがあるわけですが、このグループの中で農業グループというのがある。農業グループで穀物、食肉、酪農品の三つのグループがあるわけですが、これは要するに世界貿易に利するための国際的枠組みと認めておる。これは一つの国際的な枠組みに穀物や食肉や酪農品が入っている。そうすると、日本の農業政策、食糧政策は、もうこの枠組みの中に入っておるとみなすわけですか。
  65. 手島れい志

    手島政府委員 穀物につきましては、先生御承知のように国際小麦協定というものがございまして、現在、経済関係の条項につきましては合意がありませんけれども、機構と情報の交換という状況が続いておるわけでございます。  この穀物につきましては、このたびの東京ラウンドの交渉におきましても、ケネディ・ラウンドのときにちょうど穀物協定ができましたように、今回も国際協定をつくろうではないかという意向が当初ございまして、その後実態交渉は国際小麦理事会のもとで行われましたが、関係国の間で合意が成立いたしませんで、この東京ラウンドの全体のパッケージの中には入っておらないわけでございます。  今後この交渉をどういった手順で再開するかということにつきましては、たしか四月であったかと思いますけれども、小麦理事会の枠内で検討がされることになっております。  それから酪農品と牛肉に関しましては、今回の東京ラウンドの枠内におきまして、情報の交換と協議ということを中心といたします一つの仕組みがガットの枠内に設けられまして、それぞれ各国から必要な情報を提出いたしまして、中で酪農と牛肉の貿易の安定的な拡大について協議をしよう、そういう合意が成立をいたしたわけでございます。
  66. 柴田健治

    柴田(健)委員 この点われわれ非常に関心を持っておる点なんですね。国際条約というものは国内法規より優先権がある、そういう判断をわれわれはしておるわけですから、国内でどんな法律をつくってみたところで、改正をしてみたところで、国際条約で束縛を受けて、枠組みの中にかっちり組み込まれたら、これはどうにもならぬということになるのです。この点明確にもう一つ答弁してもらいたいんです。  だから、国際法規の方が国内法規よりか優先権がある。たとえば地方公共団体の法律よりか国の法律が優先権があるのと一緒で、国際法規に優先権があるとするなら、こういう条約で枠組みの中に食肉も酪農品も穀物もみんな入れた、それならその国際的な条約の枠組みの中でわれわれは国内の生産を考えなければならないのか。需要拡大と言いながらも、人口がにわかにふえるわけじゃないのですよ。結局、どこかで生産調整しなければならぬ。それが現実にいま米の生産調整——とにかくどのくらいいま輸入しているか、外務省知っているのですか、農産物の輸入
  67. 手島れい志

    手島政府委員 私どもがこのたびの東京ラウンドの交渉のときに、各国共通の数値が出る年として使いました年が七六年でございますけれども、その年の総輸入額は百五十三億ドルでございます。
  68. 柴田健治

    柴田(健)委員 七六年て、いつだ。ことしは何年。そんな古い資料を持って——アメリカには毎月毎月情報を提供しているはずですよ、日本の消費問題。日米の情報交換はずっとしておるはずですから、日本の国民には四、五年前のものを言うなどと、そんなばかな答弁がどこにある。
  69. 手島れい志

    手島政府委員 先ほど、交渉の参考のために交渉参加国の各国が共通に使える数値としての七六年の数字を申し上げたわけでございますけれども、七九年の数字で申しますと、千百六億ドルでございます。  ただいま申しわけございません。農水産物だけの数字を申し上げますと、二百八十九億ドルでございます。
  70. 柴田健治

    柴田(健)委員 いまわれわれは乳価の問題で論議をしておるのですが、いま国内の搾乳量は約六百三十万トン。それでいま輸入しておるのを生乳に換算すると二百四十七万八千トン、約二百五十万トンほど入っている。国内の六百三十万トンの搾乳量プラス二百五十万トン輸入するのですから、どう考えても国内の生産調整をせざるを得ない。  それから、日本の酪農家は、飲用乳にしろ加工乳にしろ、いま大変な苦しみをして借金をし、借金の返済もできない。日本の畜産農家がどれだけ借金をしておるか、養豚農家、養鶏農家、そして酪農家また肉畜振興の農家全体を含めて、一兆六千億からの借金をしているのですよ。その借金政策を日本政府はみずからさせた。そしていま生産調整をしなければならない。それは、原因は輸入の数量が膨大になっておるからですよ。  果樹でも、今度の協定でオレンジが、七八年が四万五千トン、今度八〇年、ことしが六万八千トン、八三年は八万二千トン、こういうわけで倍近くなるわけですね。オレンジジュースにしても、三千トンが五千トンなり六千五百トンになっていく。グレープジュースは千トンが三千トンなり六千トンになっていく。高級牛肉は一万六千八百トンが四千トンプラスして二万八百トン、そして八三年、ことし八〇年ですからもう三年先は、三万八百トンになっていくという。普通牛肉でも八二年まで十三万五千トン。そういうのとまた別に馬肉がある、羊肉がある。膨大な畜産物が輸入されてくるわけですね。日本の畜産農家がどれだけ苦しまなければならぬときかということを考えてもらいたい。  それぞれの産業、これから雇用問題が大きな社会問題であり、政治課題だ。農業から失業者をどんどん出すようなことをして雇用問題を国全体として解決できるのかという問題がある。雇用問題からとらえても、これ以上日本の農業を締めつけてはならない、痛めつけてはならない、こういうことが言えるのですが、外務大臣、雇用問題からこの貿易政策をどう考えておられるのか、お考えを聞かしていただきたい。
  71. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 農業労働力は従来年々減少いたしてまいっておりますので、やはり農業は国の基幹的な産業でございますから、こういう減少がどこまでも続くということでは問題があるかと存じます。日本の場合は、私の記憶が正しいかどうかわかりませんが、全体の労働力の一二%ぐらいが農業だったかと思います。イギリスでは二%とか、アメリカでは四、五%とか、ドイツでも五、六%とか、工業国一般に農業の雇用が大体数%から一割というのが世界的な情勢でございますけれども、工業なりその他の産業が十分に雇用を吸収してまいります段階では、比較的円滑に農業の労働力がそちらの方に移動していく形で、大きな失業問題を起こさないでいままでやってまいったと思いますけれども、これから非農業部門の成長というのも遅くなってまいりますと、やはり農業の持つ雇用の役割りということは常に注目してまいらなければならないと考えておるわけでございます。
  72. 柴田健治

    柴田(健)委員 一国の外交を背負うて立つその窓口の大臣は大体国内の実情を十分知り尽くしていかないと、それぞれの国との話をする中で相手国にどうしてもつけ込まれるし、そしてまた強要される。それで、日本政府が、日本の国民に向かっては日米協力協調だ、こう言って協力協調の精神だけ植え込んでいく。アメリカはそう考えていないのじゃないか。日本アメリカとが協力協調しなければならぬのは、都合のいいときだけ協力協調の言い分で、彼らの言い分は日本国に対しては強制もするし、強要もするし、恐喝もするし、この文章を見ても、読んでみると、「農産物の主要輸出国である米国は、日本の農産物の輸入拡大措置を強く要求し、特にオレンジや果汁、高級牛肉等については輸入拡大を要求してきた。」国内のこの状況というものを十分認識して、どんなに要望、要求が出てこようと、それをはねのけるだけの十分な腹構えが必要だ。それは外交をする者の重大な責任だと思うのです。  それから、アメリカがなぜ日本に強要してくるのか、強制してくるのか。恐喝までしてくるかどうか知らぬが、われわれの目から見ると恐喝しておるように見える。ストラウス通商代表のあの傲慢無礼な態度なんというのは許せないという気がする。なぜアメリカがこれだけ強要してくるのか、原因は何か、外務大臣、それを聞きたい。
  73. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカ日本も基本的には自由経済をとっておりまして、ビジネスといいますか仕事をやっていれば、その生産物を他に売りたいという要望がございます。それで、先ほど来申し上げておりますような消費者の立場という点も、生産者の立場と同時に考えなければならないので、国際貿易というのはやはり有利なところで生産して有利な市場に売るということで貿易の流れが基本的に行われておるかと思いますので、アメリカがオレンジを売りたい、その他の農産物を売りたいというのは、アメリカ側の理屈としては、つくった物を売りたいということと同時に、日本の消費者に自分たちがよくて安い物を供給できるんだ、そのかわり日本はいろいろな工業製品をわれわれに売っている、そういう工業製品をアメリカはできないわけではないけれども日本品物がよくて安いからアメリカの消費者としては日本の物を買うという、これは相互互恵的な関係がこういう面にはあるように考えておるわけでございます。
  74. 柴田健治

    柴田(健)委員 アメリカだけ責めるというのはわれわれもどうかと思うのですけれども、考えてみると、ベトナム戦争を十年もして兵器産業は非常に進んだ国である。けれども、平和産業はおくれておるのではないか。そのおくれた点を日本へ持ってきてくれたのでは困る。  それからアメリカというのはやはりアメリカ流の考え方がある。たとえば濃縮ウランは世界で七〇%ぐらい握りたい、こういう腹もあるでしょう。食糧も、世界制覇を目指すためには七〇%ぐらいは握りたい、こういう考えがあるだろう。それはその国の政策ですから。けれども、やはり日本日本の国の方針というものを持たなければならぬと私は思う。  それから、食糧問題はいかに重要なものかということを認識してもらわないと、われわれ農業に関係する者はたまったものではない。常に不安、もう展望も何もない、こういうことになる。もうその都度その都度、今度は隔年おきに協議をやっていくわけでしょう。この協議は、輸入縮小でなしに拡大でしょう。そうでしょう、大臣。拡大でしょう。お答え願いたい。
  75. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 相互貿易拡大を図るということが基本的な、ガットなり東京ラウンドの精神だと思いますので、方向としては拡大と思いますが、ただ、東京ラウンドにつきましては、農産物に対する影響を極力少なくするために、お説のような点がいろいろございますから、十分な考慮が払われておると私ども理解いたしておるわけでございます。
  76. 柴田健治

    柴田(健)委員 この両国政府は需要拡大に努力しなければならぬと義務づけられておるのですね。その需要拡大はどういうふうにするのか。ただ日本政府は外国製品だけをどんどん拡大政策するのか。この条約から言えば輸入農産物ということになるでしょう。国内で生産された農産物は需要拡大しない。米の消費拡大もやらない。外国の物だけは一生懸命政府の責任でやる、こういうことになると片手落ちになるという気がするわけですね。それから需要拡大の方法はどういうふうに考えてこういう文書にしているのか、外務大臣の見解を聞きたい。
  77. 古谷裕

    ○古谷説明員 いまのお話は高級牛肉の需要開発のお話だと思いますが、この場合には具体的には畜産振興事業団の輸入牛肉の売買に際しまして指定店に対して高級牛肉を売り渡す、あるいは新しい高級牛肉の部位の買い入れ売り渡し等の配慮を払う、さらにはアメリカ側日本市場で高級牛肉のフェアを行うというようなことも含めまして、相互に需要開発に努力していきたい、こういう趣旨でございます。
  78. 柴田健治

    柴田(健)委員 外務省にお聞きしたら農林省が答弁したのですが、次にお尋ねしたいのは、国際酪農品取極について、酪農品の安定価格と貿易拡大を図るために情報の提供というのは、どういう情報を、毎月やるのか、毎週どうするのか、年に何回か、こういうことで情報の提供のあり方を聞いておきたいのです。問題の解決策の探求のために、こういうのですね。問題は、売れないものはどういう点で売れないのか、どういう方法で情報提供するのか、この点をちょっと聞かしていただきたい。
  79. 古谷裕

    ○古谷説明員 情報の中身といたしましては、各産品ごとの生産、消費、価格、在庫あるいは貿易の実績、現状、見通し、さらには国内政策等々になろうかと思います。  ただこの情報につきましては、すでに公表いたしましたデータあるいは発表した政策につきましてその範囲内で行うという考えでございます。  なお、見通しにつきましては数字でなくて文言でやるということになろうかと思います。
  80. 柴田健治

    柴田(健)委員 第三国貿易とよく言われるのですが、たとえばアメリカECならECの国々へ何か工業製品を売った、ECの加盟国から農産物を引き取らなければならぬ、その農産物を日本に買いなさい、こういうことがあり得ると思うのですが、そういう点は余り心配ないですか。
  81. 手島れい志

    手島政府委員 私どもはそのような事態を想定しておりません。
  82. 柴田健治

    柴田(健)委員 植物検疫についてなんですが、検疫体制、たとえばこの条約関係から見ると、AとBとの国が取引をした。これはもう万全であります、安全であります、こういうことで確認をした。今度は日本にこの品物を買いなさい。そうしたら確認しなくても、これはもうAの国にちゃんと確認しました、こういうことで、検疫体制のこの問題でわれわれは非常に心配しておるわけです。ところが、この条約の中を見ると、検疫をもう完全に開放しなさい、緩めなさい、こういうことになっておるわけですが、この点は何ら心配ないですか。
  83. 手島れい志

    手島政府委員 ただいまの御質問が酪農ないし牛肉に関する協定ということでございましたら、この二つの取り決めの中にはそのような規定はございません。  ちなみに、この東京ラウンドのパッケージの一つとして御審議をお願いしておりますスタンダード、技術関係の検査手続その他のコードがございますけれども、このコードの中におきましては、たとえば人の生命ですとか健康に関するような事項については各国はそれぞれ規則を設けることができるというふうになっておりますので、御懸念のことはないかと存じます。
  84. 柴田健治

    柴田(健)委員 植物、動物の防疫体制の強化は日本は独自でやったらいいわけですね。それはもう門戸開放ということはあり得ないですね。日本的に完全に植物の検疫体制は強化する、そういうことを独自でやってもいいですな。国際的には何も制約を受けませんな。
  85. 古谷裕

    ○古谷説明員 植物防疫につきましては、先生御承知のように現在農林省が所管しております法令に基づいて、それぞれ輸入の際の検査を行っておるわけでございますが、各国から植物等を輸入される場合には、わが方の規格に従って十分に消毒その他の措置がとられておるかどうかというわが国独自の体制に、向こう側も納得して協力していただくというふうなことで、進めておるわけでございます。
  86. 柴田健治

    柴田(健)委員 酪農製品やなんかは、われわれから申し上げると、擬装乳製品という位置づけをしておるわけですが、どうもまやかしがある。このまやかしの乳製品をなるべく輸入しないようにしてくれ、こういう生産農民の意見もあるわけですが、いろいろ冷凍食品その他がたくさん入ってくる。これらについて栄養価の問題はどうなのか、そして本当に消費者である国民に対して、外国から入ってくる食肉製品なりまたは果物なりも完全に栄養価値はあるのだということが責任持てるのかどうかということが第一点。栄養価値というものから本当に優秀であるかどうか、その点をまず聞かせてもらいたい。それぞれ品目ごとに聞かせてもらいたい。
  87. 古谷裕

    ○古谷説明員 私は直接の所管でございませんけれども、いまお話しのような件は、厚生省の所管する食品衛生法の規定によりましてそれぞれチェックがなされておるものと考えます。
  88. 柴田健治

    柴田(健)委員 大体日本人は戦後舶来にかぶれて、外国製品でありさえすればいいのだということで、そういう先入観がいまだに続いておるわけですが、日本の国内で生産されたものもそんな悪いものはないわけです。いま世界で優秀だ、われわれはそういう自信を持っておるわけですね。この優秀な農産物、栄養価値もある、それを生産調整をしなきゃならないし、それを外国から自由化促進でという、これからも自由化の一層促進という言葉でくるわけですが、ますます輸入増大をされてくる。国内の農業生産というのはだんだん減産しなければならぬ。これで果たして独立国としていいのかどうか、非常にわれわれは心配しておるわけです。これ以上ふやしてくれてはならないというのが生産農民の声であります。その声は外務省に届いてないのではないか。そういうものを十分認識してないところに、外務省は安易な考えで常に日米の摩擦を避ける、摩擦論からだんだん追い込まれてくる。  それから、何が原因なのか。ただ貿易の自由化論だけでそこへ追い込まれてくるのか、外交の力が弱いのか、国内の認識が足らないのか、日本の工業製品を余りに外国に売り過ぎるのか、何が原因でこうなってくるのか、その点を明確にひとつ外務大臣からお答え願いたい。
  89. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 一つは、世界じゅう交通通信も発達しまして経済交流が大きくなってまいりますと、商品の交換がいろいろな分野でふえてまいるという点は一つあるかと思います。私ども立場としては、対外的な関係をできるだけ円滑に持っていく、広い意味での国益を守る。国内の問題といたしましては、生産者の立場と消費者の立場と双方を考慮しながら国民の福祉に役立つ面での対外政策を考えていかなければならない。そういうような点のバランスと申しますかということで、特に農業につきましては各国ともそれぞれ事情もございますし、貿易の自由化という場合に、農産物については特別な考慮が払われる場合が多いと了解しておりますし、また今度の東京ラウンドでも、そういう農業分野についてかなり特別な考慮が払われていると私の方では了解いたしております。
  90. 柴田健治

    柴田(健)委員 どうもわれわれは理由がようわからぬのです、本当は。あなたいまバランス論と言うた。一番最初は消費者のメリット論、どう考えてもその理由がはっきり明確にならない。たとえば食糧を依然として嗜好品という立場でとらえておるのか、戦略物資としてとらえていかなければならぬものか、食糧問題というものはどの道を選ぶのか、まずその点を外務大臣はっきりしてもらいたいのです。
  91. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもはやはり米とか大豆とか小麦とか、こういうものは人間の生存に欠くべからざるものでございまして、戦略物資ということは適当かどうかわかりませんが、そういう穀物について最近米国が対ソ輸出制限を行うというような例もございますので、場合によると食糧輸出が外交的な手段に使われる場合もあり得るということは考慮してまいらなければならないと思います。  しかし、あらゆる農産物が戦略物資ということではないと思いますので、特に必要な農産物、重要な農産物ということで考えていくべきだと思いますが、そういう主要穀物の世界最大の輸出国は米国でございまして、あとカナダ、オーストラリア、こういうところと日本は友好的な関係を持っておるということが、こういう食糧の供給の一つの保障になっておるかと考えておるわけであります。
  92. 柴田健治

    柴田(健)委員 資本主義の国だろうと共産主義の国だろうとどこの国だって、食糧問題が安くてできるという国はないと私は思う。コストを安くつくるというのはない。どこも何らかの形で保護政策をとっている。アメリカがなぜ食糧生産に力を入れておるか、その点はどう理解しておるのか。どこの国だって食糧生産には力を入れておる。日本だけが生産調整をしなければならぬ。  それから条約があろうとなかろうと、これは国の外交政策に食糧問題が使われてきた歴史もあるし、現在も使われておるわけです。たとえばアフガニスタンに関係したソ連とアメリカの例のように、あの穀物の売買契約がなされておっても取り消しをするかもしれない。常に食糧問題というものは外交政策に操られる重要な品目ということは間違いないと私は思うのです。それを常に頭に置かないと将来大変なことになりますよと私は申し上げているわけですね。だから、全部が全部戦略物資にしなさいと言っているわけではないが、もうこの辺で日本政府も食糧の重要な穀物については品目別に戦略物資として位置づけをすべきだ、こうわれわれは思っておるわけですが、その点は外務大臣、どうです。
  93. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その辺になりますと農林省の所管になるかと思いますのですが、私の解釈から申しますれば、米の自給というのはやはり日本にとって必要な政策だ、コストは高くなりますけれども。それはやはり日本国民の安全感というものの代価でもあるかと思います。それに次いでやはり、これもコストは高くなりますけれども、大豆や小麦がかつては国内消費の三、四割は自給しておったのが三、四%に落ちた。最近少し上がってきたようでございますが、こういう小麦や大豆のようなものについても、コストは高くなるとは思いますけれども、もう少し自給率を上げるという政策があってもよろしいのじゃないかというふうに考えております。
  94. 柴田健治

    柴田(健)委員 いまバターでも脱脂乳でも在庫品が大分あるわけですね。その在庫品がある上にまだ輸入する。いま畜産物の価格を決めるときになっておる。片一方ではえさがどんどん上がってくる可能性が出てまいりましたが、いまたとえば養豚の農家の飼料はほとんど外国脱粉を使っているわけですね。ちょうど戦後脱脂粉乳を学校給食に使って水ぶくれの子供をつくった。ちょうどいま豚がそのとおりやっているのですよ。水ぶくれの豚をつくっているわけです、脱粉食わして。もうハムにも使えない。日本の豚肉は非常に質が下がった。質を下げてまでなぜ外国からえさをどんどん輸入しなければならぬのか。そういう飼育管理する農林省にも責任があるが、外務省もそういう点も考えてもらわないと、本当にまじめにやっているのは、だまされてもだまされても買っているのは畜産農家なんです。そういう実態をよく知って外交の面ではっきりしてもらわないと困ると思うのです。  農林省は都合のいいことばかり外務省に報告しているのでしょう。日本人ならもうちょっと腹を据えてやってもらいたい。もう民族意識もなければ責任感もなければ知恵もなければ何もないという外交折衝では困る。腹を据えてやってもらいたい。日本の民族にとって一番重要なのは食糧問題だとわれわれは考えている。  あす外務大臣は行かれるわけですが、先ほどから答弁をずっと聞いてみて、余りにも腹がなさ過ぎる。対等の立場で外交をしているとは思えない。どこかひけ目を感じておるのではないか。ひけ目の外交はもうこの辺でやめてもらいたい。戦後三十五年たっておる。今度の折衝でこの条約を結んで、国会承認されたら、何としても全国民に責任を負わなければならない、それは国内法規以上の権限を持っていますから。われわれは畜産問題でいま盛んに農林委員会で論議をしておる。家族労働賃金がどうだとか、利子がどうだとか、飼育管理労働費がどうだとかといって細かいことを論議しているのですよ。そんな細かいことばかり論議しておる農林委員として、外務省は大ざっぱに貿易の自由化論で、ただ国際価格論で、消費者の立場で考えるとか、ただその範囲で折衝してもらったのでは困る。これは農業全体の立場から、悲痛な叫びとして意見が集約されて、いま中央に上がってきておる。それを外務大臣が本当にどこまで理解して、国際舞台で貫き通すか。もっと堂々とやってもらいたいという気がするわけですね。  あす行かれるそうですが、そういう決意を十分聞かしてもらいたい、こう思います。その決意を聞いて、大ざっぱな質問を申し上げましたが、私は農林の立場から申し上げたので、お答えを願いたい、こう思います。
  95. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 対外的な問題は、ただ肩を怒らすだけが、何といいますか自主的な外交というものではないし、それから国内だけで通用する言葉で外国に話しても、これは相互理解が得られないわけでございます。また、国内の国民全般の利益を考慮する必要がございますから、農民、生産者の利益というものも十分考慮しながら、同時に消費者一般の利益というものを守っていかなければならない。私も、そういう意味で、言うべきことを言わないとか、卑屈な態度ということは決してとらないつもりでございます。
  96. 中尾栄一

    ○中尾委員長 渡辺朗君。
  97. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 質問に入る前に、外務大臣、零時半までには会議にいらしていただきたいと思いますので、大臣に先に幾つか御質問をさしていただきたいと思います。  長期にわたった難交渉でございます東京ラウンドをようやくまとめ上げられたわけでありますけれども、これにつきましては、関係者の御努力に敬意を表したいと思います。  ただ、そうした御努力をされた割りには、どうも国民の間には、開放貿易体制の基礎固めがこれによってできたとか、あるいは八〇年代の新しい世界貿易ルールがほぼ確立したんだというような満足感といいますか充足感といいましょうか、そういったものが足らないように思われてならないわけであります。これは一体どうしたわけだろうか。政府としては、この東京ラウンドで八〇年代の世界貿易は祝福された、またそのようなものになっていくというふうにお考えでございましょうか。まずその点、御所見を聞きたいと思います。
  98. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 確かに今度の東京ラウンドの成果が一〇〇%のものであるかどうか、問題がございますが、一つには、いまの時点におきます国際環境、やはり根強い保護主義的な考え方が先進諸国の中にございますし、また世界的なインフレーションがある、あるいはアフガニスタンに対するソ連の軍事介入がある、いろいろな問題がございまして、一体世界経済が平穏無事に行くんだろうかというような基本的な心配が多数の人の気持の中にあるようにも思われまして、この東京ラウンドの取り決めが、果たしてそういう世界の中でどれだけの役割りを果たすのだろうかというような雰囲気から、ただいま渡辺委員のおっしゃったような、何となく物足りないというか、そういう気持ちも出てくるかと思うのでございます。  ただ、客観的に見まして、そういう自由な貿易というものに反対といいますか、その形勢がいろいろ出ている中で、とにかくここまで自由貿易の精神を貫いた。仮に東京ラウンドの交渉がなかったとすれば、各国はもっと保護主義の方にのめり込んでいったのではないかという気もいたしますので、この交渉が果たしました歯どめの意味というものを積極的に評価すべきだろうと思いますし、また関税についても、ケネディ・ラウンドに次いでかなり大幅な引き下げが特に工業製品については行われたわけでございますし、さらに、従来余り取り上げられておりませんでした非関税障壁の分野にも相当東京ラウンドでは各国は話し合いを進めるということで、十分とは言えないと思いますけれども、かなり評価してよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  99. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま大臣が懸念されました根強い保護主義の傾向が存在しているという問題についてでありますけれども、私も、これからの世界経済、世界貿易の見通しの中でその点が非常に心配でございます。石油価格の継続的な上昇が続いている現状のもとでは、先進国、途上国を問わずして各国の経済が深刻な不均衡に悩まされていくでありましょうし、それがまた保護貿易の広がりを促しているのが実情ではあるまいか。それだけに国民の中には、欧米諸国からの通商取引面でいま以上に犠牲と、それからまた忍耐が強いられるのではあるまいかというような不安感が根強いわけであります。  政府は、いまおっしゃいましたように、この東京ラウンドの交渉で保護貿易への傾斜に対して歯どめはかかったんだ、あるいはそれが期待できるということを言っておられますけれども、いま問題点である保護主義の傾向というものはこれからまだまだ強くなってくるのではあるまいか、成長率の鈍化であるとかあるいは貿易赤字の増大というような状況が保護主義の再燃をこれからも促すことになりはしないだろうか。大臣、その点での見通し、御所見というものを聞かしていただければと思います。
  100. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 確かに世界経済の成長率、特に先進工業国の成長率は六〇年代、七〇年代、さらに八〇年代に向かってある程度低下の傾向がございます。これはまた世界経済全体の成長率を低下させる結果にもなるかと思うのでございます。一方におきまして、中進国あるいは低開発国の発展も見られるわけでございますし、先進諸国におきましても国内の雇用問題あるいは産業を維持していくという政策から、保護貿易に頼りたいという気持ちが各国にかなり強いと思うのでございますけれども、同時に、各国が保護貿易になれば、世界経済、世界貿易全体が縮小してしまう、いわゆる分業の利益も失われて各国が貧しくなっていくということは、第一次、第二次大戦の間の時期に経験してまいったわけでございまして、保護貿易に走れば結局その国全体の福祉が妨げられるということについては相当強い認識があると思いますし、それがありますからこういう情勢のもとでも東京ラウンドが締結に至ったのではないか。見通しは決して容易ではないと思いますけれども、これだけ狭くなった地球の上で物資の交流も拡大してまいっておるわけでございまして、はなはだしい保護貿易主義に各国が陥りますことは、各国の経済的な自殺行為ということにもなるのじゃないか。  そういう意味では、何とか話し合いをしながら自由貿易を維持していこう、ただ、いろいろな形での歯どめをつけて、国内の社会的なあるいは雇用の面に対する影響などが一時的、集中的に出てこないようにというような意味での規制とか取り決めというのはこれからある程度ふえてくる可能性もあると思いますが、基本的には自由貿易が極端な保護貿易に変わっていくことは起こり得ないだろうと思っております。
  101. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その問題につきましてはさらに後ほどお聞きしたいと思っておりますが、大臣には、いまもお話が出ました途上国の問題、そして今度の東京ラウンド、こういう観点から幾つかお尋ねをしてみたいと思います。  昨年の東京ラウンドの仮調印のすぐ後でございますけれども、UNCTADのマニラ総会が開かれました。そのときに、聞くところによりますと、途上国の側から東京ラウンドに対する不満が噴き出したということが伝えられております。これは一体どういうような問題点があったのか。個々にはたくさんの問題がありましょうけれども、やはり東京ラウンドのシステムが相変わらず先進国に有利な仕組みになっているというふうに途上国が受けとめているからではあるまいか。  この問題につきましては、大臣、どのようにいま認識していらっしゃいますでしょうか。
  102. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 開発途上国、特にUNCTADの場等で言われます意見といたしまして、途上国の輸出関心品目、これは農産物、一次産品のほかに最近ではいろいろな工業製品も出てまいっておるわけでございますが、こういうものに対して先進諸国が十分に国内市場開放しない、いろいろな形で輸入障壁を築いているという意味での不満がある。つまり、先進諸国市場開放が十分に行われていないという不満があるように思います。  ただ、この点につきましては、もうすでに、たしか二十幾つかの途上国がガットの協定に調印いたしておりますし、多数の途上国を含むガット全般としても東京ラウンドを承認する立場にあるわけでございまして、途上国はいまの東京ラウンドの成果を決して十分なもの、満足なものとは思っていないと思いますけれども、とにかく一歩前進だということは考えておるのではないかと存じます。
  103. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ちょっとその点、正確な調印国の数なんかも知らしていただきたいと思います。ガットの加盟国は幾つで、そして途上国は幾つで、今回は幾つが調印をしたでしょうか。
  104. 手島れい志

    手島政府委員 お答え申し上げます。  今度の交渉に参加いたしました国は全部で九十九でございます。そのうち合わせて二十二の発展途上国が関税引き下げのジュネーブ議定書、それからそれの補足をする議定書、そのほか若干の政府調達コードに署名をしております。
  105. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまガット加盟国のうち二十二とおっしゃいましたですね。関連してお尋ねいたしますが、東京ラウンド、特に東京宣言では、発展途上国の貿易に対する利益を確保するのだということがうたわれておりました。そしてまた、この東京ラウンドに調印するように働きかけるということも言われておりましたが、その御努力をなされた結果がこれであるということでございましょうか。
  106. 手島れい志

    手島政府委員 先ほどお答え申し上げました九十九という数は、ガットの加盟国のほかに、ガットに加盟をしていなくても交渉に参加することを認めるということで入ってきた国も含んでおりまして、ガットの加盟国の数字としては八十五でございますので、訂正させていただきます。  それから発展途上国との関係においては、先生御承知のように東京宣言におきまして発展途上国のために追加的利益を確保するのだということがうたわれております。このために、交渉におきましては、たとえば熱帯産品についてはほかの一般的な交渉に先駆けて交渉を行いまして、大部分の国は熱帯産品についての譲許を、東京ラウンド交渉全体の終結を待たずにすでに実施に移しているところでございます。そのほか、発展途上国との間の交渉におきまして、先方の関心のある品目をできる限りたくさん譲許の中に入れるように努力をしたという事実がございます。  先ほど先生がおっしゃいましたマニラのUNCTADにおきましては、発展途上国がそのときまでの交渉の進展ぶりについて必ずしも満足をしておらなかったわけでございますけれども、その後ジュネーブにおきまして、発展途上国側に対してこの交渉がいかに発展途上国の利益にもなるのかということを説明もいたしましたし、またそれに伴い発展途上国側も、ただ単に関税の引き下げとか——熱帯産品に関します関税あるいはその特恵制度の改善等というものにつきある程度の利益が確保できたというふうな認識を持ってきたと思います。と同時に、関税以外のいろいろな非関税障壁、非関税措置につきましてのコードにおきましても、発展途上国に対する特別な措置を各コードにそれぞれ盛り込んでおりまして、発展途上国がこのコードに参加しやすいような状況にしてまいったわけでございます。  このような情勢を前にいたしまして、先ほど大臣からも御答弁のありましたように、十一月末のガットの締約国団会議、総会でございますが、この総会におきましては、東京ラウンドの結果というものを満場一致で承認したという経緯でございます。
  107. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 大臣、確認させていただきたいと思いますけれども、国連貿易開発会議マニラ総会では、東京ラウンドの評価については先進国、途上国の間で合意には達しなかったけれども、その後合意に達したのだというふうに認識してよろしいのでしょうか。
  108. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 マニラ会議段階ではまだ東京ラウンドは最終段階に入っておりませんでしたし、ただいま局長から申し上げましたように、その後かなり途上国関心の分野でのメリットというものが理解されてまいった。それから、一般的な関税の引き下げが途上国にとってもやはりプラスになるということについての了解も進んでまいったかと思いますが、、ただいま渡辺委員のおっしゃったように、マニラ会議のころにはまだかなり不満がくすぶっていたけれども、最後の段階では満場一致。ただ、全般に将来にまだ問題が大分残されておるということは事実かと思います。     〔委員長退席、奥田委員長代理着席〕
  109. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ガット加盟国あるいは会議に参加した国々が九十九で、そのうち八十が途上国だと私は聞いておりましたのですけれども、そのうち二十二が調印をされたということになりますと、残された六十近い国々というものはまだまだ十分納得をしておらない、こういう状態であろうと思います。  大臣、先進国と途上国の問題というのはこれからも非常に重要になってくることはわれわれ認識しているところでありますけれども、今後どのように途上国の発展という問題と東京ラウンドというもののメリットを結びつけていくのかということについて、今後の方針についてのお考えがありましたら聞かせていただきたいと思います。
  110. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 途上国の要求の中には、先ほど申しました先進国市場開放に対する要求、それから主として途上国が輸出いたします特産物の価格安定、より大きな開発援助、いろいろな面があると思います。  また最近は、産業調整といいますか、先進諸国が賃金が高くなってまいりまして競争力を失ってまいるような産業分野はだんだん貧しい国々、途上国に譲り渡していくべきだ、そういう先進国側における産業調整というものに対する要求も強まってきておるわけでございます。これはやはり、先進国側は技術が進歩し、生産性が高まる、新しい先端分野に産業も労働力もだんだん移っていく。比較的単純な製品、単純な工業、あるいは物によりましては農業関係もあると思いますが、これをより貧しい国々がだんだん有利に生産するようになってまいるわけでございますから、そういうことで分野の調整というものが進んでまいりますと、貧しい国々でも仕事がふえ、輸出がふえ、所得がふえる、これがやはり南北問題の将来の一つの大きな課題になるかと思います。  さらに、こういう世界のエネルギー情勢、食糧問題の将来などを考えますと、途上国におけるエネルギーの転換とか食糧増産、その他基礎的な国づくり、生産の土台をつくるような仕事に先進国がより積極的な協力をするということは、今後の南北問題の大きな方向になるかと考えております。
  111. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ことしの一月に発表されました国際開発問題独立委員会、いわゆるブラント委員会であります。外務大臣も御関係をお持ちのはずでございます。その報告書の中には、東京ラウンドに対して途上国は不満であるということがはっきりと書かれております。この点については、外務大臣、どのように御認識をしておられますか。
  112. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 実は私、ブラント・コミッションには直接関係ございませんで、前のピアソン委員会のときの委員をやったわけでございます。  いまのような不満が出ておること、ブラント委員会報告書に途上国側の不満が記載されておることは承知をしておりますけれども、先ほど来申しましたように、いろいろ問題が積み残されておる。産業調整、開発援助、いろいろな面で先進国の努力が不十分だという点がやはり不満の大きな原因になっておる。もちろん先進国の方から言わせれば、途上国自体の自助努力あるいは経済を改善していくための努力が必ずしも十分でないということも指摘できるかと思いますけれども、これからの世界を考えますと、南北問題が、豊かな国が貧乏な国を助けるというような一方的な好意じゃなくて、むしろ南と北が一緒になって世界の将来をどうするかということを考えなければならない。これは石油問題、イスラム世界の問題、いろいろな問題を考えましても、そういう段階にだんだん入ってきつつあるのではないか。そういう意味でブラント・コミッションが、先進国だけのサミットではなくて重要な途上国を含めたサミットも考えるべきだということを申しておりますのも、やはり南と北が共同して世界の運営、これは経済問題だけではないと思いますが、その運営に当たっていかなければならないという一つの大きな時代の方向、考え方を示しておるように見ておるわけでございます。
  113. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、あのブラント委員会のレポートの中で、ガットとUNCTADの協力が必要だという点も指摘しております。そして、長期的には国際貿易機構とでも言うべきものをつくる必要性があるのではないかということを指摘しておりますけれども、大臣としての御所見はその点についていかがでございましょう。
  114. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは第二次大戦後間もなく、ハバナチャーター、そこでITO、インターナショナル・トレード・オーガニゼーションというものをつくる決議があったわけでございますが、この条約が一部の国で批准を見なかった、その代用品としてとりあえずガットができたというような経緯もございます。さらに、その後、途上国の立場を基本にしましてUNCTADができてまいったというような経緯がございまして、将来のある段階には、やはりハバナチャーターの精神に関連いたしましたITOといいますか、世界の貿易——UNCTADは、主として世界の途上国の貿易問題、そのほか援助その他の広い問題を扱っておりますが、しかし、やはり先進国の問題も含めて、世界的な貿易機構というものが必要になってくるのではないか。先ほど申しました産業調整というようなことも、途上国だけの努力ではなくて、先進国自身の国内政策の調整ということを含んでまいりますので、将来の方向としては、貿易機構の必要性はだんだん強まってまいるかと考えております。
  115. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは、関係省庁の方々にいろいろお尋ねをしたいと思います。  七三年の東京宣言では、東京ラウンドの交渉目的を、「世界貿易拡大と一層の自由化及び世界の諸国民の生活水準と福祉の改善を達成すること。」を挙げております。国民の関心が一番深い生活水準の改善という問題について、この交渉が具体的成果をどのように持っているのかという点についてお尋ねをしたいと思います。  本交渉の結果、わが国の場合には、鉱工業製品の二千六百品目、農林水産物二百二十品目についての関税譲許がなされております。したがって、理論的に輸入品の価格は関税の引き下げ分だけ安くなり、国民の消費生活へ何らかの寄与をするはずであります。今回の関税引き下げに伴う消費者物価への影響を、政府はどのように試算をしておられますでしょうか。ございましたら、お聞かせ願いたい。
  116. 岩崎隆

    ○岩崎説明員 消費者物価への影響という御質問でございますが、物価の問題は経済企画庁の所管でございますので、私、大蔵省関税局の者としては、その御質問へのお答えは残念ながらできないわけでございますけれども、一般的に国民生活にどういう影響があるというように考えておるかということとしてお答えをさせていただきます。  先生指摘ございましたように、今回の東京ラウンドによりましてわが国が譲許いたしました品目は、非常に広範に及んでおります。しばしば出ておりますように、この品目数にも出ておりますように、わが国は東京ラウンドに積極的に取り組んできたわけでございます。ただ一方、これまたよく言われておりますように、農産物の分野でございますと、この分野の特殊性から、国内的に問題のある品目につきましては、原則として譲許税率の引き下げを行わないというようなことも多かったわけでございます。あるいはまた鉱工業品でございますと、たとえば繊維とか皮革等の中小企業関連品目等国内的に特に問題のございます分野につきましては、特段の配慮を加えました上で譲許を行ったような事情もあるわけでございます。  そういうことから考えますと、今回のわが国の関税の引き下げは、どちらかと申しますと輸送機器でございますとか機械とか、そういうわが国の国際競争力が強い分野では大きかったわけでございますけれども、繊維、履物あるいは食品等国民生活に直結する分野におきましては、比較的小さい形になっておるということは、やはり否定できないところではないだろうかと考えているわけでございます。  しかしながら、ただいま申し上げましたのは直接の分野でございまして、直接、間接の差はございましてもやはり終局的に言えば、今回の東京ラウンドの成果は何らかの形で国民生活に大きな影響を持つはずのものだというように考えている次第でございます。
  117. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 農林省の方はいらっしゃいますね。——今回、日米間で合意したオレンジだとか牛肉の輸入枠の拡大が正式に確定したわけでありますが、国民の一人として、これら品目の輸入増が直ちに価格に反映するのではないかというふうに考えております。また、考えるのは当然だろうと思います。政府としては、消費者への還元という原則的な立場から、値上がりムードの強い現在においては、いまの牛肉の一つをとりましても価格の据え置きくらい国民に対して約束すべきではないか。そうでないと、幾ら東京ラウンドに対する理解を求めようとしましても、何か直接的に訴えるもの、理解をさせるものがないということになりはしないだろうか。その点農林省としてはどのようにお考えでございましょう。
  118. 古谷裕

    ○古谷説明員 価格の引き下げというお話でございますと私直接の担当ではございませんが、いまお話ございましたたとえば牛肉あるいはオレンジというものが、目標あるいは枠の拡大に伴いましてだんだんふえてくる、そうすれば当然国民生活にとってはプラスの方向に働くというふうに考えております。  いま、たとえば価格自体を余り上げないようにしろというふうなお話かと思いますが、これは多分に各商品の流通過程の問題が大きいのではないかと思います。私ども立場からいきますと、各農産物の流通段階での合理化を進めるということで、その施策が効を奏しますれば、当然外国からの良質のものが国民生活に裨益する結果になるというふうに考えております。
  119. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間の関係もありますから、先に進ませていただきたいと思います。  政府は、今度の東京ラウンドの特色について、ケネディ・ラウンドに比べて非関税障壁の面で幅広い分野で交渉が行われたんだということを説明しておられます。ところが、この非関税障壁ということについては一連の協定の中で明確にされておらないわけであります。何か国際的な合意なり定義なりというものが確立されているのでありましょうか。この点につきましてお聞かせいただきたいと思います。
  120. 手島れい志

    手島政府委員 非関税障壁について特にまとまった国際的な合意のある定義というものはございません。ただ、東京ラウンドで交渉いたしました結果できてまいりました、ただいま御審議願っておりますコード類は、この非関税障壁に相当するものではないだろうかというふうに考えております。
  121. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま国際的な合意やら定義がないということでございましたけれども、そうすると、日本政府としては、非関税障壁あるいは非関税措置でございますか、それをどういうふうに理解をしてこの交渉に臨まれたのですか、そこら辺ちょっと聞かしてください。
  122. 手島れい志

    手島政府委員 貿易をやります場合に、関税以外のいろいろな措置があるわけでございます。ただ、その措置自体が貿易と何らかの関係で絡まりを持ってきまして、それが貿易の円滑なる運用ないし貿易の阻害要因となっているというようなものがあるとすれば、その措置自体のメリットはそれとして、その貿易に何らかの影響を与えている限度において何らかの改善ないし国際的な調和というのが図られ得ないだろうかというような観点から各国がいろいろ考えました結果、こういった措置については国際的な合意をつくろうということになってきたわけでございます。
  123. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 非関税措置というものについてはいろいろなものがあるだろうと想定されますけれども、今回の交渉で国際ルールになじまない性格のそういった措置も出てきているのではないかと思いますけれども、それについてはどのような交渉あるいは処理をされたのでございましょう。
  124. 手島れい志

    手島政府委員 国際的なルールになじまないものというのがどのようなものがあるか、ちょっと思い浮かびませんけれども、東京ラウンドで交渉いたしましたものにつきましては、国際的に多角的に何らかの規範をつくるべきだということで出てきたものがコードとしてまとめられておるわけでございます。したがいまして、非関税の措置でありましても、仮に多角的なルールになじまないというようなものにつきましては、東京ラウンドでは交渉の対象として取り上げておらないわけでございます。
  125. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 さて、東京ラウンドが、今後の貿易情勢がいまもお話が出ておりましたように悪化するというような場合、どの程度歯どめをかけてその効果を発揮するのであろうかということについては、何かまだまだ問題が残されているように思えてならないわけであります。特に気がかりなのは米国の態度でございます。  アメリカは七九年の七月にいわゆる七九年通商協定法を制定しております。相殺関税の認定やASPなどについてはガット規約に即した法律に改正されたから、これは東京ラウンド交渉におけるメリットだというふうに政府は言っておられますけれども、このことによって米国が逆に公正な、フェアトレードの名において貿易制限を図ることはないのでありましょうか。その点は全然懸念はありませんか。
  126. 手島れい志

    手島政府委員 貿易相互に互恵の立場に立ちまして円滑に発展していくということは、日本を含めて世界すべての国の利益になるところでございます。したがいまして、今度の幾つかのコードでできました国際的なルールというものは非常に重要であろうと思います。  先生が御指摘になりましたいまの公正なる貿易というものについて、アメリカ側がこれをどういうふうに解釈してどういうふうに運営していくかということにつきましては、先ほど大臣からの発言もありましたように、これは世界各地に保護主義的な動きもあることでございますから十分注意をしていかなければならないことだろうとは思います。その意味におきまして、今回東京ラウンドで非関税措置につきましていろいろなルールが決まり、かつ紛争が起こりましたときにこれを解決するための仕組みができたということは非常に意義のあることだと考えておりまして、これからアメリカなりそのほかの国の国内法の運用ぶりを十分注視していきたいというふうに考えております。
  127. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 次に、ダンピング問題についてもお尋ねしたいと思います。  ダンピング問題については、調査期間の短縮や仮決定の時期での供託金など、これまで以上に厳しく適用される方向で改正されているというふうなことが指摘されています。その運用次第では、これはガット規約違反とは言えないにしても、このダンピング規制が非関税障壁として機能するおそれが多分にあるのではあるまいかと思いますが、いかがでございましょう。
  128. 手島れい志

    手島政府委員 御指摘のように、アメリカの新しいダンピング制度におきましては、調査期間が短縮をされております。  ただ、この調査期間の面につきましては二つ問題があると思います。  つまり余りに短縮して、急ぐ余り十分なる検討もできないで早急に間違った措置がとられるというおそれがあるという面でございます。また他方、不当に長い期間調査が継続するということになりますと、これは輸出業者にとっても相当な負担になるのではないだろうかという問題もございます。  それからもう一つの点でございます現金の供託を新しくアメリカは認めることにしたわけでございますけれども、これによります輸出者の負担がふえるということは否定し得ないところでございます。しかし、新法におきましても従来どおりボンドによる道も封じていないわけでございまして、全体としての評価は、これも今後の運用いかんによるところだろうと思います。  また、新しいアメリカの法律によりましても、今度の東京ラウンドでできましたコード承認してこれを実施するんだということを宣明いたしておりますので、このコードに署名をし、コードに参加している国からは、仮に問題があった場合にはアメリカに対して二国間の協議を求め、さらに国際的な場において問題の解決を図る道が開かれてくるわけでございます。
  129. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 次に、選択的セーフガードについては積み残しになっております。この問題についてお尋ねをしたいと思いますが、今後この選択的セーフガード交渉はどのように扱われるのでございましょうか。
  130. 手島れい志

    手島政府委員 セーフガードの発動の条件その他につきまして、東京ラウンドの交渉におきまして、新しい仕組みをつくろうじゃないかということの努力が払われてきたわけでございますが、ただいま先生おっしゃいましたように、主としてこのセーフガード措置の選択的適用を認めるか否か、仮に認めるとすればどういう条件のもとで認めるべきかということにつきまして、関係国間に合意が成立いたしませんでしたので、セーフガードの問題は切り離して、東京ラウンドのパッケージというのをつくり上げたわけでございます。  今後、しからばどういうふうな手順でガットでこの問題が取り扱われていくかということについて申し上げますと、まず、東京ラウンドの終結後もこの件に関します交渉を継続するということと、新しいルールができ上がるまでは従来の手続ないし慣行、ガットで積み上げてきたところがございますので、これをそのまま継続するということが合意をされております。それを受けまして、昨年の十一月のガットの総会におきましては、新しい委員会をつくりまして討議、交渉を続けまして、ことしの六月にその進渉状況について報告をするということが決定をされております。
  131. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 聞くところによりますと、ECは選択的セーフガードの発動に強い関心を持っているということでありますが、これを対外行動に表面化させないように自制を求めていく努力が非常に大切だと私は思いますけれども、政府としては、この問題についてはどのようにお考えでございますか。
  132. 手島れい志

    手島政府委員 先ほど申しましたように、新しいルールができますまでには、既存のルール、つまりガット十九条に基づく手続をとっていく問題でございます。日本といたしましては、今後の検討に当たりましては、輸出国の立場輸入国の立場の双方に配慮しながら慎重に検討をしていきたと考えておりますが、当面は、従来どおりガットのルールに従った対処をしていくこととなります。
  133. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 次に、先ほどもお尋ねいたしましたけれども、途上国との関係で幾つか質問をいたしたいと思います。  東京宣言に盛り込まれた交渉目標、目的の中には、「先進国と開発途上国との問のより良い均衡を達成できるように開発途上国の国際貿易にとっての追加的利益を確保すること。」これが言われております。この追加的利益について、東京ラウンド交渉の具体的な成果として挙げられるものは一体どんなものなのか、これをひとつ教えていただきたいと思います。
  134. 手島れい志

    手島政府委員 まず第一に、先ほどもちょっと触れましたけれども、熱帯産品についての措置があるというふうに考えます。熱帯産品は、東京ラウンドの交渉の中でも優先的な分野として交渉を早急にまとめようということになりまして、この結果、日本はすでに昭和五十二年の四月一日から、熱帯産品を中心といたしまして、約八十品目の関税の引き下げないし特恵制度の改善というものを実施に移しております。これは日本だけでございませんでEC等の国もやりましたが、ただ、アメリカにつきましては、米国の国内の手続等関係もありましてその実施がおくれておりましたけれども、ことしの一月一日から、ほかの関税引き下げと同時に実施に移されております。  また、関税分野において、わが国がいろいろ努力いたしまして、発展途上国の関心産品を関税引き下げの対象に加えるように努力をいたしました。たとえばASEAN諸国について申しますと、エビ、イカ、切り花、木材その他の品目につきまして、できる限りのオファーをしたところでございます。  ただ、発展途上国との関係では、非常に残念ながら、発展途上国の関心の産品のかなりの部分は日本の農業なりあるいは中小企業なりとの関連がありまして、国内的な理由で、必ずしも発展途上国にとり満足のいくようなオファーができなかったという事実がございまして、それが、先ほど大臣も申しておりましたように、発展途上国として必ずしも今度の東京ラウンドの結果に満足していないということの原因であろうかというふうに存じております。しかしながら、私どもとしては、国内のそういった事情が許す限り、最大限の努力をしたつもりでございます。  そのほかに、各種の協定の中には、特別な発展途上国に対する配慮条項というものがございまして、その各条項の内容に入ることは差し控えますけれども、スタンダードの協定におきましても、補助金・相殺措置のコードにおきましても、関税評価におきましても、その他のコードにも、発展途上国に対する援助ですとかあるいは義務の若干の猶予ですとか、そういったようなことが含まれております。  また、これはコードではございませんが、昨年の十一月のガットの総会におきまして、発展途上国に対する関税上の特恵その他若干の特別待遇につきましては、これは本来ガットの最恵国待遇の例外のものであり、それを与える場合には一々例外の許可を要するということになっておりましたのを変更いたしまして、最恵国待遇の規定にかかわらず、たとえば関税上の一般特恵は発展途上国に与えてよろしい、そういったような決定をいたしました。  このように、各種の分野におきまして、発展途上国の利益を尊重するように努力をしてまいった次第でございます。
  135. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間も参りましたから、最後に要望をいたしまして、質問を終わりたいと思います。  いま大臣も指摘しておられたし、経済局長もおっしゃいましたが、世界の貿易構造が、やはり以前のような先進国主導型ではなくて、途上国の問題を非常に重要視する、そういう形に変わりつつある。今日の世界の貿易構造というものは、七九年の通商白書に分析もしておりますけれども、先進国と途上国の間の貿易あるいは途上国相互間の貿易あるいは東西貿易というものにそれが非常に大きな比重を持ってくる、そういう構造への変容を遂げつつあるのだというふうに思います。一九八〇年代の通商産業政策ビジョン、これが出されておりますけれども、その中にも言われておりますように、やはり政府開発援助であるとか輸出信用、直接投資、それに加えて新たに開発途上国からの輸入、これをやはり総合経済協力の方向として強力に推し進めていく、これがビジョンの中にも強調されておりますけれども、わが国として特に経済安全保障の観点からも開発途上国に対する経済協力、これをひとつ積極的に進めていただきたい。この点を要望いたします。  その点について経済局長、特に一言何か御所見がありましたら聞かしていただきたいと思います。
  136. 手島れい志

    手島政府委員 発展途上国と日本ないし先進国との間の関係が円滑にいきますことは、きわめて重要なことであろうというふうに考えております。先ほど大臣の答弁にもありましたように、ガットとUNCTADをどういうふうに今後結びつけていくのか。これはガットの中におきましても発展途上国の問題はきわめて重要視されておりまして、すでに数年前にガットの中に発展途上国との協力に関する条文が追加されておりましたところですが、その後発展途上国のガットに対する参加国が非常にふえましたこともあり、交渉を通じてあらゆる機会に発展途上国との協力というのがきわめて重視をされております。ガットの中にも貿易開発委員会という委員会がございまして、そこでは発展途上国の問題を中心として研究及び交渉、協議を行うようになっておりまして、先ほどのお話にもありました、たとえばUNCTADの決議をこの委員会においてフォローアップをしようじゃないかという決定も、ガットの中で行われておるわけでございます。  日本の置かれている立場から言いましても、南北間の問題はきわめて重要でございますので、今後とも発展途上国の立場理解し、可能な範囲においてこれと協力を進めていくという方向でやっていきたいと思います。
  137. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。
  138. 奥田敬和

    ○奥田委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後一時三分休憩      ————◇—————     午後四時三十四分開議
  139. 奥田敬和

    ○奥田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林保夫君。
  140. 林保夫

    ○林(保)委員 一九七三年九月のガット東京閣僚会議で東京宣言が採択されてから、実に六年かかっての大変大きな、史上最大の貿易交渉であった、このように言われておるわけですが、この結果、世界貿易に与える影響も少なくございませんでしょうし、わが国もまたそれなりの対応をこれからしていかなければならぬ。もっとも、すでに実行されているものもございますけれども、なお新しいページを切り開くことになりますので、大来外相からわが国の新しい体制に臨む決意といいますか、そういったものを前向きでひとつ御披露をお願いしたいと思います。
  141. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この東京ラウンドの交渉は、世界の貿易のより自由な発展ということを基本的にはねらっておると思いますし、日本のような経済構造を持つ国におきましては、やはり自由な貿易という環境が日本の経済の発展にとっても非常にプラスになる面が多いと存じます。  日本は特別の資源を持っておるわけではございませんで、すぐれた労働力によって製品をつくり出して海外に売るわけでございますので、ほかの国でもつくれるようなものを日本がつくっている場合が多い。ただ、品質がよくて値段も有利だから海外に売れる。これには、やはり自由貿易という国際環境がないと、日本のような製品輸出国は非常に苦しい立場に置かれるわけでございます。日本もかつては国内産業保護育成ということに相当重点が置かれてまいりましたが、競争力も相当強くなっておりますので、これからはむしろ世界の自由貿易体制を守る旗頭のような立場に置かれてきておるかと思います。そういう意味では、日本対応といたしましても足踏みをしているわけにはいかない。やはり常に新しい技術を開発し、新しい製品をつくり出し、よりよい物を生産して世界の市場に出していく、その見返りに食糧だとか石油だとか原料を買う、あるいは工業製品も買うというような形でまいらねばならないのではないかというふうに考えております。
  142. 林保夫

    ○林(保)委員 大変御苦労願ったのは、事務方の皆さんだと思います。本当に六年間の長期にわたる御苦労だったやに聞いておりますが、先ほど大臣がおっしゃったプラスになる面が多いということでございますが、一体どういう点がプラスになるのか、ひとつ国民一般によくわかるようにこの際お答えをいただいておきたいと思います。
  143. 手島れい志

    手島政府委員 東京宣言で掲げられました目標あるいは東京ラウンドの目標につきましては、ただいま大臣から話があったとおりでございますけれども、一応この宣言に従いましてその結果を取りまとめてみると、次のようなことになるのじゃないかと思います。  まず、工業製品の関税につきましては、主要国の工業製品全体の引き下げ幅は、これはガットの事務局の計算でございますけれども約三三%でございます。これはケネディ・ラウンドのときの引き下げ幅が三〇から三五%ということでございましたので、それに匹敵する成果を上げたというふうに考えております。もっとも、ケネディ・ラウンドのときは引き下げの期間が五年でございましたけれども、今回は八年間、より遅いテンポで引き下げるというような差はございます。  同じく関税面につきまして、ただいま申し上げましたのは工業製品でございますけれども、農産品について申しますと、全体で百五十億ドルの品目、これは同じくガットで数字を計算いたしました七六年の輸入実績でございますけれども、この品目について関税が引き下げられることになったわけでございます。  また、けさほどからの御審議の中でもたびたび出ておりましたように、最近ややもしますと保護主義的な傾向が各地で強まっておるわけでございますが、この保護主義的な傾向に対処するため、国際貿易を一定の規律に従って行っていこうという観点から、幾つかの非関税措置につきまして、その軽減、廃止ないし国際的な調和というものにつきまして八つの協定が作成をされましたわけでございます。その協定につきましては今回御審議願っておりますので、一々名前をここで申し上げることは差し控えさせていただきます。  それから、その次に農産物の分野でございますけれども、農業に関する交渉につきましては、工業産品が一律の一定の法則に従った関税引き下げを原則といたしましたのに比べまして、むしろ各国の要望をお互いに出し合って、それに応じてできるものは相手側の要請に応ずるというかっこうで交渉をいたしましたものでございますけれども、そのほかに、お互いに情報の交換あるいは協議をするための場等をつくることを目的といたしまして、酪農品取極、牛肉に関する取極等ができております。  そのほか、東京ラウンドの大きな目的でありました開発途上国との関係でございますが、この開発途上国との関係につきましては、まず最初に、熱帯産品についての交渉がございます。これは最初の東京宣言のころから優先的な分野として定められまして、その交渉を鋭意進めました結果、一九七六年中にこの交渉はすでに終わっておりまして、先進諸国は合計九百四十品目の関税引き下げないしその特恵制度の改善等を決めて、七七年からすでに実施をいたしております。  また、今後の貿易を律する枠組みの改善、これは私どもはフレームワークというふうに呼んで交渉をしておりましたのですが、この枠組みの改善に関しましては、たとえば低開発国に与えます一般関税特恵制度等の特別優遇措置を容認するとか、あるいは国際収支目的でとられる貿易措置のルールと手続を決めるとか、あるいは開発途上国が開発目的でとる保護措置の条件及び手続の緩和等々の諸点につきまして、これは昨年十一月のガットの総会の折に、合意がガット締約国団の決定として成立をいたしております。  以上でございます。
  144. 林保夫

    ○林(保)委員 ただいまの協定条約の結果としてはそういうことだろうと思いますが、果たしてこのファンデーションを踏まえまして日本貿易はどのような形になるのか、伸びるのか伸びないのか、あるいはどういう構造変化が起きるおそれがあるのか、この点について率直にひとつ見通しをお伺いしておきたいと思います。
  145. 手島れい志

    手島政府委員 まず最初に申し上げておきたいことは、先ほど触れました非関税面におきます幾つかのコードでございますけれども、これによって各国の貿易に関連した行動の規律について一定のルールができました。これは従来ともガットが権利義務関係を有する唯一の国際機関として活動をしてきておりましたのですけれども、この活動を一層強化することになるというふうに考えますので、日本のように貿易に依存するところの大きい国にとっては非常に大きなプラスであろうというふうに思います。  また、しからば関税の引き下げによりまして、それがどれだけ貿易の創造効果があるかということでございますけれども、これは関税の価格面に及ぼす影響のほかに、そのときどきの景気の動向ですとかそのほかの問題もありますので計算をすることはきわめてむずかしいわけでございますが、たとえば輸送関係機器ですとかそのほかの機械ですとか、関税の引き下げ幅が大きいものについては、日本側から申しますと輸出をしやすい環境ができてくるということが言われると思いますし、また、同じように日本側におきましてもこのような分野におきましてはかなりの関税の引き下げをしておりますので、その面から申しますと輸入がしやすいような分野がそこにあるわけでございます。  他方、工業製品の関税の引き下げにつきましては、各国の関税のハーモニゼーションをも一つのねらいといたしまして一律の引き下げという大原則を掲げたわけでございますけれども、その中にはかなりと申しますかある程度の例外品目というのもあったわけでございます。したがいまして、日本の場合も日本の国内の経済にとって被害が大きいと思われるような分野、たとえば繊維等の構造的な問題を抱えている分野やあるいは中小企業の関心のある分野等につきましては、これを一律の引き下げの例外として全くオファーをしなかったりあるいは現在の関税の水準をそのまま固定するというようなオファーをいたしましたので、したがいまして、こういった分野においては輸入の増加の効果というものは考えられないというふうに思います。
  146. 奥田敬和

    ○奥田委員長代理 通産当局、何か答弁ないのか、国際経済部長
  147. 柴田益男

    柴田説明員 通産省でございます。  貿易面に対する影響はいかんという御質問でございますが、いま経済局長から御説明がございましたように工業製品を中心として大幅な引き下げが行われておりますので、現在わが国の工業製品は非常に競争力が強くなっておりまして、全般的には価格相場とかインフレとかそういう要件が変わらなければ非常に輸出環境がよくなってきている、そういうふうに判断しております。
  148. 林保夫

    ○林(保)委員 ただいまのお言葉、どうも効果の測定ができないというのかしてないというのか、それじゃちょっと怠慢のように思うのでございますが、外務省通産省とも、これからの日本の発展については何しろ日本貿易立国ではございませんので自信を持っている、このように理解してよろしいのでしょうか。聞くところによると、先ほど御指摘のような繊維産業そのほかございますし、それからまた農産物に対する被害の問題も先ほど来当委員会でいろいろ指摘がなされているようなことでございますが、自信を持ってこれを批准していいのかどうか、その点に関しまして改めて大臣から、どういう展望が日本に開けているのか、ひとつこの点をお聞かせいただきたいと思います。
  149. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 貿易の自由化をいたしますれば、やはり競争にまってある程度影響を受けるあるいは被害を受ける部面も出てまいりますが、一方また相手国の市場に入りやすくなるわけでございまして、全体としての効果、プラス・マイナスの差し引きプラスが相当出れば日本にとっても有利なことになると思うのでございます。けさもいろいろお話がございましたが、一部のものについては多少のマイナスが出る可能性がある。しかし、農産物、中小企業について、そういう面の影響を極力避けるような努力をしてきておるわけでございますし、結局日本の場合にはプラスの方が大きいだろうというふうに考えております。  それから、日本より貧しい国々、開発途上国との貿易については、やはりさらに日本がこれらの国々からの輸入をふやす必要があるわけでございますが、もし日本輸入をふやせばこれらの国の所得も上がり、外貨もふえて、さらに日本から物を買う力ができてくる、こういう点も含めて考えれば、全般としてプラスになると見てよろしいと思います。
  150. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございませんので、矢継ぎ早で恐縮ですが、それでは、これを批准した後、わが国が貿易上心がけていかなければならぬ、あるいは障害になっていくであろう、こういう問題についてひとつ率直に通産省の方からお答えいただきたいと思います。
  151. 柴田益男

    柴田説明員 このMTNの協定が、その協定どおりに各先進国が十分実施し得るかどうか、その運用状況については十分ウォッチしていくという姿勢が必要だろうと思います。午前中からも御議論ございましたように、先進国の中に保護主義的な動きが出ておりまして、そういうことによって運用がゆがめられることのないように、その運用について十分注視していくという心構えが必要だろう、そういうふうに認識しております。
  152. 林保夫

    ○林(保)委員 九十九カ国がこれに参加して、そしてきょう現在何カ国が実際に批准し実行に移しているか、この点ひとつお答えいただき、また九十九カ国が一斉にそろうのは一体いつごろなのか、大ざっぱで結構ですが、見通しをお願いします。
  153. 手島れい志

    手島政府委員 参加した国は九十九カ国でございますが、ことしの二月一日現在の署名国の総数を申し上げますと三十七カ国及びEC委員会でございます。この中には、先進国二十カ国及びEC委員会、東欧圏が二カ国、途上国が十五カ国入っております。このほかに、ジュネーブの議定書に自国の譲許表を添付している、つまり自分としては関税を下げる用意があるけれども、まだ署名をしていない国が四カ国ございますし、また、この議定書の補足議定書譲許表を添付している、つまり自分は関税を引き下げる用意があるという意思を表示しながら、まだ署名をしていない国が九カ国等々ございまして、それらの国も全部合計いたしますと四十七カ国とEC委員会がこれらの諸協定に入ってくることが予想されるわけでございます。  九十九カ国のうちの半分ぐらいになるではないかという御趣旨だと思いますけれども、主要の先進国はすでに条件つき、あるいはもうそのまま受諾というかっこうで入っておりますし、発展途上国につきましても、ガットの中で平生から活動をしておりますような主要な国は大体この中に入るという意思を表明しておるわけでございます。  そのほかの発展途上国に対しましても、これから引き続き東京ラウンドの成果に参画することが彼らの利益になるということを説明して、さらに参加国がふえることを期待しておるわけでございます。
  154. 林保夫

    ○林(保)委員 今回の協定また批准で、あるいは批准以前にもうすでに実効上法律改正をやっておるものもございますが、国内法との関連でこれを完全実施するために外務省通産省あるいは大蔵省はどういう体制をとろうとしておられるのか、その辺のことをひとつきちっとお話しおきいただきたいと思います。
  155. 手島れい志

    手島政府委員 とりあえず国内法として改正をいたさなければならないものは関税定率法、それから規格に関する法律で工業標準化法と申しましたか、通産省所管の法律がございます。
  156. 柴田益男

    柴田説明員 通産省関連で申し上げますと、この協定の批准に伴いまして手直しすべき法律といたしましては工業標準化法がございます。これは現在商工委員会の方で御審議を願っておりますが、それ以外にも標準化に関する法律が十本程度ございます。これはいずれも運用で適合していくということで考えておりまして、法律改正といたしましては工業標準化法でございます。
  157. 林保夫

    ○林(保)委員 結局政府としては貿易と産業との調和、関連を十分考えていかなければならぬと思いますが、特にダンピング防止法とか相殺関税法などについて、従来実際に仕事をしている連中が申しておりますところでは、国内的にはっきりしたけじめなり何なりが、政令あるいは省令によってでも結構なんですが、決められなかった分野がかなりあるので、今回の東京ラウンドの一括交渉が成立したのを基盤に、法律はもちろんのこと、そういった国内法上の細かい規定までやる意思が政府としてあるのかどうか。これは、せっかくでございますので、通産省から聞かせていただきたいと思います。
  158. 内村俊一

    ○内村説明員 ダンピングあるいは相殺関税につきましては、従来から規定はございましたけれども、御指摘のとおり若干簡単な規定であった部分もございます。これにつきましては、現在、大蔵省の方の法律でございますが、関税定率法その他関税関係三法の改正案を御審議いただいておりまして、その中で、国際コードに沿いましてかなり詳細な規定を設けることになっております。また、これに伴いまして政省令も改正する予定でございますが、政省令の段階でもさらに詳細な規定ができるものと考えております。
  159. 林保夫

    ○林(保)委員 東京ラウンドは、今後八年間、毎年各年均等に関税引き下げを行っていくという条項などもございますが、期間の途中でどのような節目を見つけてそれを実行に移されていくのか、その点ちょっと御説明おきいただきたいと思います。
  160. 手島れい志

    手島政府委員 日本といたしましては、八年間、毎年八分の一ずつ関税を引き下げていくというのを基本的な原則にしております。なお、御審議願っております議定書の中では、八年にわたる引き下げについての例外の品目も幾つか掲げてございますので、これは例外ということになります。  ちなみに、この関税の引き下げは本来本年の一月一日から開始されるべきものでございまして、一月一日よりおくれて七月一日までに関税の引き下げを開始する国につきましては、これは議定書の中におきまして、最初の年に八分の二、二年分一度に引き下げをするようにという規定がございますので、最初の年だけはそういう例外的な引き下げを行うこととなります。
  161. 林保夫

    ○林(保)委員 これから大変厳しい八〇年代を迎えて、保護主義の思想が高まる一方、インフレ問題も出てまいりまして、これら多国間交渉の結果を成果あるものにするためにはかなりな外交努力が必要だろうと実は思うわけでございますが、中でも特に日本と米国との関係におきましては、外交上大変友好的な関係にある一方、また障害がいろいろ出てきております。明日、大臣御苦労いただいて訪米されるわけでございますが、今日新聞報道にも言われますように、自動車さらには政府間調達、本日も議題になっておりましたような問題あるいは電子部品の問題ももうすでに表面化しているというような実態。私も実は先般ワシントンにも行って実情を勉強させてもらったわけですが、どういう態度でお臨みになるのか、この機会に大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  162. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日米間にはすでに往復四百億ドルというような大きな貿易が行われておりまして、これだけ大きな貿易でございますからあちこちに摩擦の種もあることは事実でございますが、基本的には双方の利益になっておるわけでございます。今度参りましても、できるだけ日本の国益という立場を土台にいたしまして、両国間の貿易拡大均衡と申しますか、そういう方向で話してまいりたいと思いますし、また、それぞれの国が持つ国内の事情についても理解を深めるということによりまして、余り極端な摩擦が起こることを未然に防止するための努力が必要かと思っております。  自動車とか電電公社問題が当面日米間の大きな問題になりかかっておるわけでございますが、今回私が参りますのは交渉という意味ではございませんので、今後の交渉——物によっては交渉にならないものもあるかと思いますけれども、できるだけ双方の言い分を相互理解し合うような機会を持ちたいと考えておりまして、それをまた今後の日米間の話し合いの土台にしてまいるということが今回の使命であろうかと考えておるわけでございます。
  163. 林保夫

    ○林(保)委員 時間が来ましたのでこれで打ち切らせていただきますが、日米間は非常に長い、しかも太いきずなで結ばれておるということが国民一般の、あるいは外務省の公文書を見ましても、どれを見てもいっぱい出ておるのでございますが、なおかつ十分な理解ができていないような面があったやに実感してまいりました。先般、十二月十四日の国際情勢の審議のときに、余りショックだけは受けないような状態に外交努力をぜひやってもらいたいという御提議を含めて質問申し上げたのでございますが、最初のエネルギーショックのときに一夜にして百億ドルが吹っ飛んで外貨が半分になった。今度のエネルギーショックでも、三百四十億ドルまでいっておるものが一晩にして三分の一も吹っ飛ぶというような状況にあったことを実は説明いたしました。資源のない国の日本立場が非常にわかってくれたやの感じを受けました、これは私のひとりよがりの受け方かもしれませんけれども。なお、そういった国民の本当に心配しておるようなものに根差した訴えを、如才ない大臣でございましょうが、ひとつぜひお願い申し上げておきたいと思います。  ありがとうございました。これをもって終わらせていただきます。
  164. 奥田敬和

    ○奥田委員長代理 渋沢利久君。
  165. 渋沢利久

    渋沢委員 東京ラウンドの評価に当たって、外務省は、ガットこそがこれからの世界貿易秩序の強力な基軸である、今後長きにわたって世界貿易、新たな国際経済秩序の核の役割りを果たし、そして開放貿易体制の基盤がこのことで固められたという手放しの評価をされておるわけであります。まず、こういうラウンドの評価、認識にかかわって幾つかお尋ねをいたしたいというふうに思います。  いま林さんからもお尋ねがありましたが、この東京ラウンドの調印参加諸国の数字が示されておりましたが、九十九カ国のガット加盟諸国の中で、きわめて不十分な状況しかいまの段階では示されておらないように思います。とりわけ途上国の調印拒否といいましょうか、そういう趨勢が顕著であるということが非常に気になる部分であります。しかし、いま途上国の中で十五カ国がすでに調印をしているあるいは了承している、こういうふうな報告でございました。九十九カ国の中で、途上国と言うべき諸国の数はトータルで幾つでございましたでしょうか。
  166. 手島れい志

    手島政府委員 ちょっといま途上国ということで計算をしたものがないのでございますけれども、今回の東京ラウンドの結果に署名をしております先進国が二十カ国でございまして、そのほかに東欧圏の国が若干ございましたので、その残り七十前後が今度の交渉に参加したのじゃないかと思いますが、より正確には勘定をした後で御報告をしたいと思います。
  167. 渋沢利久

    渋沢委員 開発途上国七十七カ国グループによる言うところのアルーシャ宣言、あるいは第五回の国連貿易開発会議、マニラ会議、これらの会議、取り組みの中で見られます途上国の新国際経済秩序を求める動き、世界経済の構造変革を目指すというこれらの動向というものについて、まず政府はどういう認識をお持ちになっていらっしゃるのだろうか、これはぜひ大臣に伺っておきたいと思います。
  168. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アルーシャ会議は、マニラの第五回UNCTADに備える七十七カ国の会議として開かれたわけでございますが、お話しのように、新国際経済秩序というものの実現を目指した開発途上国の動きがいろいろな形で出ておるわけでございます。  一つには、特に途上国は特産物輸出国が多いわけでございますから、特産物の価格の安定、それに関連したコモンファンド、共通基金の設立、商品協定締結等がいろいろ要請されておるわけでございます。また、途上国から輸出いたします製品、半製品に対する特恵関税の適用の延長とか範囲の拡大、あるいは先進国からの資本及び技術の提供、流れの拡大、いろいろな要求がございます。  それに対して必ずしも先進国側が十分に対応しておるとは言えないように思いますけれども、先進国の中では日本は比較的前向きといいますか、途上国の立場理解した方向で最近はこの政策を考慮しておると考えております。たとえば、いまの共通基金の設立などについても、日本はこれを推進する側に立って働いてまいっておりまして、この点は途上国側からもかなり評価されておるように考えております。
  169. 渋沢利久

    渋沢委員 南の国々は、工業生産力を強化して、先進国が産業政策を調整する、これに協力をしていく、こういうものを非常に強く求めておる。あるいはまた、世界不況の中で先進国が強めがちな保護主義をやめて、途上国製品の輸入に努力するように求めている。  いま大臣のお話がありましたように、確かに政府の最近の取り組みに一定の変化もあり、大平総理がマニラ会議に行かれた演説などは大変受けたということが報道されておるわけでありますけれども、しかし、いまの状況の中で歴史的な地理的な条件から言いましても、まさに日本が先進国と途上国とをつなぐ橋渡しの役割りをより積極的にやる、これはいまやアメリカの代弁ではなしに、途上国の代弁の立場をいま少し鮮明にして、この激動の国際経済秩序の再編成、そういう言い方が当たっているかどうか知りませんけれども、こういう状況の中で日本の経済外交の果たす基本的な立場といいましょうか、これがやはり求められている部分ではないかと思うのであります。やや姿勢が前向きになってきたというような評論家的な言い方だけでは、ちょっとにわかに手をたたくわけにいかない。大平さんの演説だって、あのときは受けたそうですけれども、自来、途上国が日本の果たしている行動、役割りに対して高い評価を送っているというふうには理解しておらないわけであります。  この辺、いま一つ大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  170. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は、私も日本の置かれる立場から考えまして、途上国の立場理解者として、できるだけの努力を国際的にもいたすべきだと考えますが、具体問題になりますと、ことに産業構造調整という、最近途上国側が強く要請しておりますことは、先進国の中で不利になった産業をだんだん途上国に譲り渡せというようなことも含まれておりまして、これは国内にいままであります産業にとりましては相当厳しい問題も出てまいります。そういう点で、日本は一方におきましてアジアの一国でありますが、同時にOECDのメンバー、世界の主要先進工業国の一つという立場がございますので、完全に途上国側と立場を一にするということもむずかしい面もあるかと思いますが、その中で、日本は先進国の中でも途上国の問題に大きな理解を示すメンバーでありたいということを私常々考えるわけでございます。これは国内経済の政策との調整を考えながら、一足飛びにはいけないことでございますが、大きな方向としては、途上国とともに経済を発展させていくという態度で臨むことが望ましいのではないかと考えております。
  171. 渋沢利久

    渋沢委員 日本が途上国と全くその立場を一にするということはできないという部分についても、もちろん十分理解をするわけでありますけれども、しかし、いま世界経済が当面している課題の大きな一つは、先進国間だけの協調じゃなしに、やはり南北間の協調あるいは東西のそういう多角的な新国際経済秩序の確立、ここがいま一番大きな課題として求められていることではないのかということで考えますと、私ども先進国のサミットにいたしましても、七カ国の七番目にぶら下がって歩いているわが国総理大臣の姿は必ずしも——金持ちクラブなどといろいろ言われておりますが、やはり一つの限界を持っておる。東京サミットで途上国問題、あるいはエネルギーの問題が石油ショック以後の状況を踏まえて積極的に取り上げられてきたということは一つの特徴だと思いますけれども、まさに取り上げざるを得ないという状況がつくり出されているということは事実だろうと思うのです。この認識が大事なのではないかというふうに思うわけであります。  IMF、ガット体制というものは、従来は、その本質においては生産力、貿易、金保有量とアメリカの圧倒的な、絶対的な優位性に支えられてきた時代の、アメリカ中心の世界経済の秩序というものであったと思うのですけれども、いまやこの秩序は崩れてきた。ただ、これにかわり得る新しい国際経済秩序の枠組みがまだでき上がっていないといいましょうか、そういう過渡期にある。ここに世界経済が危機的、流動的、不透明、混迷と言われるような、そういう表現で表明されるような一つの特徴的な状況にあるというふうに思うわけであります。  しかし、新しい世界経済秩序の姿というものは、かつてのアメリカ中心の構造と同じものであろうはずがないと思うわけであります。  東京ラウンドの評価にいたしましても、こういう状況の変化、流れ、背景というものをどうとらえていくかということに非常に問題があるというふうに思います。ガットの崩壊を回避させている国際相互協力、この国際的な相互依存の関係にも一つの問題と限界があるというふうに思うわけでありまして、こういう状況の中で東京ラウンドの評価を、先ほど外務省からいただいたメモにはもう手放しに評価だけが、自己賛辞が繰り返されておるのですけれども、一体こんな受けとめ方でよろしいんだろうかという心配をするわけであります。大臣の所見をちょっと伺っておきたい。
  172. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ケネディ・ラウンドのころまでに比べてみますと、確かにアメリカ一国の圧倒的な強さといいますかリーダーシップ、これはアメリカの経済が世界経済に占めるウエートというものからも考えられたわけでございますけれども、また先ほどお話しのようにIMFを支える大きな柱でもあったわけでございますが、相対的にヨーロッパ経済の復興と日本経済の高度成長あるいは途上国の中で特に中進国と言われるような国々の急速な発展等がありまして、世界経済の多極化といいますか、アメリカ一国で世界経済を引っ張っていくという力は以前に比べてかなり下がってまいっておる。それだけに各国が協力しながら世界経済の秩序を維持していく必要性が高まってきておるかと思いますので、東京ラウンドの場合には、アメリカ日本EC諸国の三つが主たる原動力といいますか推進役になってこの東京ラウンドの話し合いの取りまとめに働いてきたように思います。  しかし、いまお話しのように、これからの世界経済を考えます場合には、開発途上国、いまの中進国を含めましてその存在がますます重要なものになるわけでございまして、一九七五年のUNIDOの決議でも世界の工業生産の比重を、現在開発途上国が七、八%のものを紀元二〇〇〇年には二五%までに持っていくのだというような、これは実現できるかどうかわかりませんが、そういうことで、経済力がかつての先進国だけに集中していないで広く世界にだんだん分散する傾向がある。これは東側の経済力のウエートもある程度上がってきておりますし、そういう多極化した世界の中で経済を運営していくための秩序というものは確かに必要だと考えられるわけでございまして、南北問題をけさも申しましたが、豊かな北が貧しい南を助けるというような意味だけではなくて、共同のパートナーとして世界経済の運営に当たるという意識がだんだん必要になってきておる。これは石油問題一つ考えてもすでにそういう面が非常に出てきておるかと存じます。
  173. 渋沢利久

    渋沢委員 そういう状況と認識の中で、日本アメリカ関係は実際には必ずしも改善されているのではなしに、むしろ悪化の懸念すらある。そのためにわざわざ大臣もあした訪米されるということのようでありますが、今回の訪米に当たっては、たとえば言われているところの日本の自動車企業の工場進出というようなことについて具体的にお話をされてくる、意見交換をしてくるお考えですか。
  174. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 自動車問題につきましては、まだアメリカ国内にも大分いろいろ違った意見もあるようでございます。基本的にはこういう石油の情勢の中でアメリカの自動車メーカーが大型車から小型車に切りかえる体制のおくれがこういう状態になった。アメリカでも小型車が去年一年で四六%売り上げがふえておる。日本からの車の登録台数は約三〇%ふえて、アメリカでも大型車が余って売れないで困っているのですけれども、すでに小型車をつくっている部面では手が足りない、供給が足りないという状況でもございます。さらに、アメリカとしては省エネルギーということを大きな政策といたしておりますし、今回の緊急対策でもエネルギーに、石油に課税をするというような、上乗せをするというようなこともございまして、こういういろいろな面をにらみながら、今回の場合には主としてアメリカの各方面の見方、考え方を聴取してくる。ことに、あした、あさって、両日にわたりましてアメリカの下院及び上下両院合同経済委員会での公聴会がございますので、その結果もよく聞いてまいりたいと考えておりますし、日本状況も必要があれば先方にも伝える、しかし結論を出すという段階ではないと考えております。
  175. 渋沢利久

    渋沢委員 通産も見えておると思うので、ちょっと参考までに聞いておきますが、たとえば今度安川さんも行っているか、これから行くか、あるいは天谷審議官もこの間行っておりましたが、通産は日本の自動車メーカーにもうすでに具体的な説得というのですか指導めいたことをやっておるようでありますが、このことについては政府としては一定の方針を持って、国内のメーカーにもあるいはアメリカとの打診なり意見交換なりに向かう、こういう立場であるのか、どうですか。
  176. 横山太蔵

    ○横山説明員 お答え申し上げます。  日米の自動車問題におきましては、ただいまのところ、アメリカ側で、日本の自動車メーカーがアメリカにおいて現地生産をするということが多くの方面から期待をされておるわけでございます。他方、私どもは、日本の自動車メーカーの長期的な国際戦略と申しますか国際的な展開の上で当然のことながら海外投資というのもその一部に位置づけられるであろう、かように考えておりますので、そういった立場から自動車メーカーといろいろと意見の交換を行っておるところでございます。
  177. 渋沢利久

    渋沢委員 大臣、いずれにいたしましても、先ほど申し上げ、また大臣からもお話しのあったような状況の中で、特にこれはいま通産省からも答弁がありましたが、通産省が出しました七九年の通商白書を見ましても、ここにも、世界貿易構造は、石油危機以後、それ以前の先進国間主導の貿易構造から、先進国と途上国間の貿易や途上国相互間の貿易あるいは東西貿易の重要性が高まるという新しい貿易構造へと変容を遂げている、こういう指摘をしておりますように、非常に変わってきている。こういう中での日米交渉、東京ラウンド自体が、言うところのアメリカのいろんな事情を反映して取りまとめられた部分が非常に多い。日本はそういう点ではかなりの譲歩も背負い込んでいるのじゃないかという評価もこれあり、しかし、いずれにいたしましても、日米関係は単にきわめて従順なパートナーの関係からより賢い友人の関係にやはり踏み込んでいく、そういう時期に来ていることだけは間違いがないわけで、その辺そういう立場でこれからの日米折衝というものがあってほしいと考えているわけでありますが、どうもやっぱり新聞の見出しを見れば政治の圧力で追い込められるというような部分だけが多いわけでして、そういう印象が強いわけでございます。ぜひこの点についての大臣の決意といいましょうか認識を、いま一度伺っておきたいと思います。
  178. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本も高度成長を何年かやっておりますうちに、経済の規模そのものも非常に大きくなりまして、アメリカのGNPの半分近くという巨大な経済力を持つようになってまいりました。他方アメリカにつきましても、以前ほどの圧倒的な力はない、しかし依然として世界で一番大きな力を持つ国だということは否定できないわけでありますし、また、国土、資源、食糧、エネルギーの点も含めまして高い自給度を持っておる。こういう点を含めますと、やはりアメリカの持っておるポテンシャル、力というものは、以前ほどではないにしても、依然として世界の中の重要な要素であるということは無視できないと思います。日本もその意味では日本自体の経済の発展がございますので、過去におきまして占領下から独立に向かったというような点の惰性もいろいろあったと思いますのですが、ここまでまいりますと、いよいよ平等のパートナーという立場、これは文句だけでなくて実質的にそういう立場をとる必要が出てくる。時には日本側からアメリカを助けなければならぬというような場合も出てまいるかと思いますので、私どもとしても、できるだけ、協力の問題にしましても、日本としてできることとできないこと、また、世界全体の情勢から見て日本なりアメリカなりがとるべき政策の方向等についても、対等な立場から意見交換をするというふうに努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  179. 渋沢利久

    渋沢委員 東京ラウンドの過程でも事あるごとに問題にされてきた貿易不均衡の問題あるいは市場閉鎖性は、おおむね日本に向けて言われた部分だろうと思うのであります。こういう開放経済貿易体制ということの中で日本がいま当面改善を急がなければならない課題は、やっぱり国内のありよう、日本の企業のありよう、国内経済の構造政策を含めてこれはいま一度洗い直しをしなければならないところに実は来ておるのではないだろうかという気がするわけであります。  ある意味では非常に従順な日本の大企業の輸出第一主義、低い労働賃金、合理化のあらしの中で労働者の大変な犠牲、あるいは劣悪な条件の押しつけに忍従している中小企業、こういう日本の構造の中で日本の大企業は国際経済の中で手を伸ばし足を伸ばして力を蓄えてきました。こういう国際開放経済体制という新しい展開の中では、一方では日本の国内整備、産業構造の改革というものも当然あわせて検討されなければならない課題だと思います。週休二日制というような問題もありますが、労使の近代的な関係、やはり日本の労働者の問題、中小企業の問題というものを改めて問い直していくという部分がないと、開放貿易体制の中で日本輸出が伸びるとか世界の日本になるとかいうことよりはむしろ世界の孤児になる懸念すらあると言わなくてはならないというふうに思うわけであります。そういう立場で幾つかお尋ねをしたいと思います。  今度の国際協定政府調達協定などによりまして、日本の官公需の発注等についてもいろんな変化が起こってくるというふうに思うわけでありますけれども、これは具体的にはどういう状況の変化を想定されておるか、まずそこから伺いたい。
  180. 手島れい志

    手島政府委員 政府調達と中小企業との関係につきましては、交渉に当たりまして日本の中小企業の現状に十分な配慮を加えてきたつもりでございます。その例といたしまして挙げさせていただきますと、一つ政府調達コード協定の適用は下限額十五万SDR以上の契約に限られるということに交渉の結果合意をいたしました。この下限額を定めました理由は、一つには余り小口の契約まで一々国際コードの対象にすることが煩わしいという面もございますけれども、その私どもが考えました大きな目的は中小企業の調達の面でございます。また、日本がこのコードに署名するに当たりまして、日本調達機関の表に注釈をつけまして、中小企業関係の組合からの調達協定の対象の外にする、つまり従来どおり随意契約により調達し得るようにしたことでございます。
  181. 渋沢利久

    渋沢委員 外務委員会お尋ねするのは初めてですからちょっと伺っておきますが、政府は官公需の中で中小企業発注の促進を積極的にとっておりますが、閣議決定をやったり、いろいろ各省への努力を求めておりますが、それで見ますと外務省が一番悪いのですね。ひどいようです。余り中小企業問題などには日本外務省は御理解がない感じで、この部分だけで見ますと、各省相当な努力をしておるんだけれども、年々決してよくない数字を示しておる。ここだけで外務省のこの種の理解を断定するわけにもいきませんけれども……。  一つお尋ねをいたしますが、たとえば日本の官公需の中で、中小企業かかわりで一つ問題がありますのは、銘柄指定、こういう風習がありまして、非常にこれが障害になっている。つまり、材料を事前にすでに指定してしまうということによって、もうこれは大手企業の契約を決めてしまう、その他の契約の参入の機会を失わしめる、こういう構造がありまして、これは中小企業庁なども大変問題にして、こういうものはひとつ改めてもらいたいというようなことをやっているわけです。  今度の国際協定によりますと、その点は非常に鮮明になっておりまして、たとえば第四条の技術仕様にかかわる3項などでは、これは非常に鮮明にこの辺の契約のあり方を明示しております。これはその限りにおいて大変結構なことだと思うのですが、しかしこの種のものは、国内体制、国内の長年の慣習や弊風、そういう仕組みを改めるということの上で具体的にはどういう作業が行われるのでしなうか。これは大蔵にも来ていただいておるので、わかればどなたでも結構ですが……。
  182. 松田慶文

    松田(慶)政府委員 ただいまの先生の後段のお尋ねに答えさせていただく前に、外務省の中小企業調達率が低いという御指摘がありました点、一言答弁させていただきます。  御指摘のとおり、私ども調達率は三十数%で、各省の中で低位にございますけれども、実は外務本省約五十億の調達額のうち、十数億は旅券、冊子の調達でございまして、この旅券の印刷は特殊印刷でございまして、大蔵省印刷局でまとめて印刷する関係がございます。あともう一つ外務省独自の電信機器調達がかなりございまして、この二件を除きますと、おおむね五五%程度の中小企業調達率になっている点を御理解を賜りたいと思いますが、なお今後とも一層努力させていただきたいと思っております。
  183. 長島和彦

    ○長島説明員 銘柄指定の関係につきましてお答えを申し上げたいと思います。  銘柄指定は、言ってみますと契約の手続の上で技術仕様についてどういう扱いをしていくかという問題でございまして、これは先生のお話がございましたように、予定価格を算定いたします上で、あるいは履行の適正を期していくという意味できわめて重要なものであるというふうに思っておるわけでございますが、ただ、その内容というのがきわめて技術的なものでございますし、一つ一つの契約の内容によって、それに応じて必要なものを考えていかなければいけないという事柄でもございます。したがいまして、この点については、格別法制的にどうということはしていないわけでございます。  ただ、お話がございましたように、中小企業の受注機会を確保するという意味では、この銘柄指定というのはいろいろな点で問題も少なくないわけでございまして、その辺も考慮いたしまして、官公需法のもとにおきまして、官公需法第四条の中小企業者に関する国等の契約の方針というものの中で、特定銘柄の指定をできるだけ避けていくというようなことをその内容として取り込んで、実際には各省において指導をされているという状況でございます。
  184. 渋沢利久

    渋沢委員 先ほどの局長説明でありましたように、この国際協定政府調達協定の中でも、日本の中小企業の立場というものを損なわないという点はかなり厳しく対応しているという説明を評価するわけであります。  同時に、むしろ、単に損なわないというような消極的なことだけではなしに、やはり政府を挙げて、一層国際競争が厳しくなるであろう、こういう状況の中で、日本の中小企業の健全な育成あるいは日本における労使関係の質的な改善、前近代的な、諸外国によって指弾を受けるような、そういうおくれた部分の改革というものもあわせて十分な留意をしていかなければならぬところだというふうに思うわけでして、そういう点を指摘をしておきたいと思うわけであります。  最後に、スタンダード協定関係して一点伺っておきます。  この協定ができる過程では、かなり日本の工業規格のありように対して批判がアメリカ等から加えられておったというふうに聞いておるわけですが、この協定ができ上がる一つの背景に、特にそういう日本のありように対しての批判というものがかなり背景になっておったということでしょうか。まずその辺、わかっておったらちょっと説明してください。
  185. 手島れい志

    手島政府委員 ただいまの先生の御質問が、今度のスタンダード協定をつくる上において、日本の規格ないしその検査の方法についての外国からの注文があったことがこの協定ができるに至った理由ではないかというような御質問であるとすれば、それはそういうことではございません。  今回の協定の目的は、規格をつくりますときには、たとえば国際規格のあるものについてはできるだけそれに準拠すべきこととか、あるいは外国におけるその検査をできる限り尊重すべきこととか、そのほか規格を変更する場合には事前にこれを一般の関係者に明らかにするとか、そういいました仕組みの透明性と申しますか公開性と申しますか、そういうことを明らかにするためにつくられました協定でございまして、個々の規格についての仕様を決めておるものではございません。
  186. 渋沢利久

    渋沢委員 この協定一つの特徴は、国際規格に準拠させるという、国際規格を非常に重視するという面で特徴があるというふうに思うわけです。これらの規格を制定をする仕組み、構造として幾つか国際機関がありますけれども、まあ承知している範囲で言えば必ずしも日本立場が十分にここに反映をできるような仕組みになっておらない。あの国際機構の中で細かくいろいろ専門委員会などがたくさんつくられて、その理事会がいろいろ制定に当たっておるようですけれども、ほとんど細かい部分で言うと日本は参加しておらない、理事国にもちろんなっておらない、たしか一つ二つくらいでしょう。     〔奥田委員長代理退席、佐野委員長代理着席〕 ですから、いまの段階で見ますと、JISの——よそから見れば閉鎖性というのでしょうか、外国のものを扱わない、輸入品に扱わないという従来の日本の方針と合わせて、こういう国際化に対応できるような日本の体制ができておらない。外国から出たものを今度はちゃんと厳しく検査をして、それで制定するというような仕組みになっていますけれども、そういうものも果たしてどこまで的確にやり切れるかどうか、必ずしも十分であるというふうには思わない。ぜひこれはやはり日本の実情が、日本立場が十分反映できるような体制づくりといいましょうか、そういうものに積極的に政府は対応を示すべきではないだろうかということをひとつ申し上げておきたいと思います。何かその点についてはいかがでしょうか。
  187. 手島れい志

    手島政府委員 先生指摘のように、国際的な規格をつくる機関はISO初め幾つかございまして、その中でどこまで日本が参画をしておるかと、いう問題はあるかもしれないというふうに存じております。  ただ、ISOの規格のうちのある部分につきましては、これをそのまま日本のJIS等の規格としても採用をいたしておりますし、日本としても日本の実情に合致する限り、その採用に努めておるところでございます。  また、このコードとの関係で申しましても、先生の御指摘のとおりに国際規格をできるだけ尊重しろということになっておりますが、これが国際的な貿易の円滑化に資するという理由でそういうことになっておるわけでございます。しかしながら同時に、このコードでは前文におきまして、人、動物の生命、健康の保護、環境の保全、安全保障その他幾つかの目的のために必要な措置をとることは妨げられないということを明らかにしてございます。したがいまして、日本の独自の必要がある場合には日本の独自の規格を定めることができるわけでございます。
  188. 村岡茂生

    ○村岡説明員 補足説明申し上げたいと思います。  国際標準規格等の作成作業にわが国の参加が足りないのではないかという御下問かと思います。現在、国際的に最も大きなこのような国際規格をつくっております機関といたしましては、ただいま経済局長答弁のとおりISO、IECというのがございます。わが国も積極的にこれに参加するという努力を重ねております。その結果、ISOにおきましては昭和四十四年度から、IECについても四十九年度から日本理事国ということになっております。  また、具体的にこの規格等の作成のための専門家会議への出席状況でございますが、五十三年度一年間について例をとりますと、全部参加するというわけにはまいりませんでしたけれども、ISOにつきましては百三十五の会議につきまして延べ三百五十九人の人間が、またIECにつきましても百九の会議に延べ百九十人が参加しておる、こういう状況にございます。必ずしもまだ十分だとは言い切れませんが、可能な限り参加し、積極的に日本事情を反映させるという努力を積み重ねているつもりであります。
  189. 渋沢利久

    渋沢委員 補助金・相殺関税について一つだけ伺っておきますが、これは補助金を受けた産品の輸入がふえて国内産業が損害を受けると輸入国がその補助金の範囲で相殺関税を課することができる、こういうことですね。しかし、輸入国が立証する損害とか補助金の因果関係というもので、その実証材料のとり方いかんで幾らでも保護主義的な処置がとれるというふうにも言われておるわけです。これでは貿易の公正化どころか保護主義に利用される協定になるという言い方もあるようですけれども、いかがなものなんでしょうか。
  190. 手島れい志

    手島政府委員 補助金が与えられました結果、損害を輸入国の方で起こしておるという場合には、相殺関税を課することが認められるわけでございますけれども、それには先生の御指摘のありました損害というものが実証されなければいけない。つまりコードの言葉に従って申しますと、マテリアルインジェリー、実質的な損害がなければならないということが規定されております。  しからば何がマテリアルな損害であるかという点がございますけれども、これの判定の基準といたしましては、たとえば輸入の量とかあるいは価格とかと並びまして、それが国内の産業にその結果どのような影響を与えておるかということを十分因果関係をも明らかにしなければならないわけでございます。そう申しましても依然として抽象的な御返事になりますので、この点、どういうふうに今後事実上運営されていくかということは私どもとしても注目して見ていくべき点であろうかと思っております。
  191. 渋沢利久

    渋沢委員 時間でありますので、最後に大臣、いまの世界政治の中でジスカールデスタン大統領の果たしている役割りとか、それから先ほど申し上げました南北問題の中で果たし得る日本立場とか、まさに変わりつつある世界の経済秩序の変転の時期に当たって、日本の外交あるいは経済外交の基本的な立場というものは、いま少し鮮明なしかも独自的なそういうものが打ち出されなければならない。また打ち出し得る絶好の機会でもある。大平内閣の姿勢の中にはいままでは少なくとも私どもはそういうものをいささかも感じることができない。途上国の問題でも、これ政府の関係者ではありますけれども、かなり鮮明に日本のあるべき立場をうたい上げておられる方があります。「いかに日本が正しい主張をしたって、並んでいる国がみんな日本に反感を持っていたらだめなのです。これがもう世界の現実です。そういう点からいって、いま一番数の多いのは開発途上国です。日本としてこの国との関係を特に大事にするのは当然のことでしょう。八〇年代を通じての一つ日本の忘れてはならない重要政策であるというふうに考えます。」これは牛場さんの演説の一節なんですけれども、まさにこれはもう政府の関係者でもこの程度のことは最低の常識になっておるということではないでしょうか。  外務大臣は、大臣になられる前の講演など私聞いたこともありますけれども、やはり大臣になられるとちょっと歯切れが変わってこられるのはやむを得ないかどうか知りませんけれども、やはりこういう点ではいま少し毅然とした、しかも世界の変化に対応する立場というものを堅持していただきたいものだというふうに申し上げて、私の質問にしたいと思います。
  192. 佐野嘉吉

    ○佐野委員長代理 玉城栄一君。
  193. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣に最初の方だけお伺いいたします。  東京ラウンドについての評価の問題なんですが、このことにつきましてはこれまで各委員の方方から御質疑がなされ、またお答えがあったわけであります。  実は去る十四日のこの東京ラウンドに対する参考人の御意見の中にも大変厳しい御意見がありました。また、マスコミ等にもあるわけでありますが、とにかく大幅に譲り過ぎたのではないか、あるいは伴うところの犠牲が大きいのではないか、あるいは全く評価に値せずというような、極論かとも思うわけでありますが、そういう御意見もありました。あるいはまた人類史上最大の経済交渉であった、何度か決裂の危機を経験しながらここまで曲がりなりにも合意されたということについてはその意義は大きい、あるいはこれからもこういう大規模な経済交渉貿易交渉というものは行われないであろうということで、意義も大きいという評価もあるわけであります。  したがって、さっき申し上げました余りにも譲り過ぎたということ、あるいは伴うところの犠牲が大きいということ、あるいはわが国として評価に値しない、こういうことについて、大臣の方から改めて御反論と申しますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  194. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 東京ラウンドにつきましていろいろな評価が確かにあり得ると思いますけれども、世界経済の将来という点から申しまして、やはり各国がこの狭い国境の中に閉じこもって自給自足の方向に向かうというようなことがございますと、これはかつて第一次大戦後に一時ブロック主義というようなこともございましたが、世界経済が停滞し、場合によると縮小し、各国に失業がふえ、さらに経済問題が政治的、軍事的な摩擦に発展していくというようなことを一九三〇年代に世界は経験いたしたと思うのでございまして、戦後の一つの大きな反省は、やはり世界経済、特に世界の貿易をできるだけ自由な姿にしておいて、相互に有無相通ずる状態、風通しをよくしておくということが世界の平和、各国の福祉の増進に役立つのではないか、そういう基本的な認識はいまでも各国に存在しておると思いますので、東京ラウンドが七〇年代の石油危機その他いろいろ困難な情勢のもとに、難航いたしましたけれどもとにかくでき上がったということは、やはり各国がそれぞれ内向きに保護主義になれば結局世界の経済というものは麻痺してしまうし、また各国の経済もうまく動かなくなる、これはどうしても避けなければならないという認識が多数の国にあるということが、これを成立させた原動力になっていたのではないかと思います。  そういう意味で、いろいろ批判の立場はあると思いますけれども、また百点とは言えないと思いますけれども、そういう自由貿易といいますか、各国が保護主義に内向きになっていくという傾向を阻止する歯どめとしての今度の東京ラウンドは、一応評価すべきものだろうと考えております。
  195. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、評価をすべきであるということでありますが、本当に評価できるのかどうかということは、やはりこの東京ラウンドの今後のいわゆる運用というものが非常に大事になってくると思うわけですね。したがって、現在の国際経済社会というものが、エネルギー問題とか通貨の問題とかいまの通商問題等とまさに危機的な状況にあると言っても過言ではない。そういう危機意識というものがあって、いまも大臣のお答えのように、この東京ラウンドの足かけ七年に及ぶ交渉というものが妥結、合意を見た、そういう背景があるということだと思うわけであります。  そこで、今後の運用というものがもし仮に失敗と申しますか、これだけの合意を見て、その運用がまるきしうまいぐあいにいかなかったということになると、これはまたえらいことになると思うわけです。ですから、その運用の問題についてどのように考えておられるのか、非常に抽象的になりますけれども、決意と申しますか、そういう点、あわせてお答えいただきたいと思います。
  196. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは東京ラウンドが成立した現在と成立をしなかったらどうなっただろうということと、これは仮定の問題でございますが、比較してみれば明らかになる点があると思うのですけれども、たとえばある国が保護主義をとろう、しかし東京ラウンドには調印しているということになれば、やはり自分の国が参加した国際的な協定に反する行為をすることになりまして、そのこと自体に相当ブレーキがかかる。それからそういう自分の調印した約束を自分で破るということになれば、他国からある程度報復的な措置を受けても文句は言えない。そういう意味でも実行の面での縛りがこの協定を通じてかかっておる面があると思います。  また、今度の場合にはかなりいろいろ手続的な面についての規定も含まれておるわけでございまして、貿易の自由の線から外れてまいります場合に、これに対するいろいろな制約といいますか、国際的な制約措置がとられるようになってまいる。そういう意味で実行が可能になっていくのではないか。余りこれを外れた行動というものはそういう外れた行為をする国自身にマイナスが降りかかってくるという場合が多いのではないか、それがやはり実行の一つの原動力といいますか、裏づけになるのであろうというふうに考えるわけでございます。
  197. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう一点だけ大臣の方にお伺いしたいのですが、この六年、足かけ七年交渉にかかったわけでありますが、必要以上にこのように交渉が長引いた、いろいろな理由があろうと思いますが、それをちょっと概略御説明いただきたいと思いますが、これは局長さんでもよろしいです、もう一点だけ大臣の方にお伺いいたしますから。
  198. 手島れい志

    手島政府委員 東京宣言によりましてこの交渉が開始されましたのは一九七三年の九月でございます。ところが、その年の秋に石油危機が起こりまして、このために世界各国ともその対処に忙殺をされていたわけでございます。この石油危機を契機といたしまして、世界的な景気の後退ですとか、あるいは国際収支上の問題ですとか経済環境に厳しいものがありまして、そのために交渉がなかなか進まなかったということもあったのだろうと思います。しかしながら、その後、米国、EC日本等の各国がこの交渉を推進して、当時あらわれつつありました保護主義に打ちかとうではないかということで、サミット等の場におきましてもこの東京ラウンドを推進しようということを何回か首脳同士が申し合わせました結果、一昨年の正月ごろから急速にこの交渉が進展をいたしまして、昨年の春から夏にかけましてその妥結に到達したわけでございます。  このほかに、ケネディ・ラウンドは約三年間で交渉が終わっておるわけでございますけれども、今回の交渉がそれよりも長くかかりましたもう一つ理由は、ただいま申し上げましたような世界経済等の理由ではなくて、特に非関税措置につきましてこれほどたくさんの協定をつくり上げる、これは非常に技術的に複雑なものでもございますので、そのための交渉に長い時間を要したという事情が同時にございました。
  199. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこでこの交渉の長引いた理由につきましての御説明があったわけですが、こういうようなのが一つは考えられませんか。それは形の上ではどのようにあらわれるかわかりませんけれども、背景の一つとして、アメリカの経済力の低下と申しますか経済力の弱体化と申しますか、一つの長期的な視野に立ったアメリカの経済政策そのものが打ち出されない、非常に場当たり的なそういうことに対する各国の反発と申しますか、そういうものが絡み合いながら来ていて、それが交渉に影響したという側面は考えられないのかどうか、その点いかがでしょうか。
  200. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたが、ケネディ・ラウンドのときにはまだかなり強いアメリカのリーダーシップがありましたけれども、東京ラウンドになりますと、アメリカEC日本、この三者が引っ張っていくといいますか、そういう共同の力を発揮しなければならない、そういう点も多少は暇がかかった原因にはなるかと思います。ただ主な理由としては、先ほど局長から申し上げた点であろうかと考えております。
  201. 玉城栄一

    ○玉城委員 次に、開発途上国のこの点もこれまで何回も質疑が交わされておるわけでありますが、この東京ラウンドに対する今後の運用についてどういう協力体制が得られるかということについて、るるお答えをいただいておるわけです。  そこで、ちょっと農林省の方いらっしゃいますか。済みませんが、途上国がわが国に対して、いわゆる熱帯産品八十品目ですか、引き下げのあれがあるわけですね。これをもう少し具体的にはっきり申し上げますと、たとえば鹿児島であるとか沖繩県という場合は熱帯産品というものに非常に深くかかわり合いがあるわけですねパインであるとかあるいはタピオカとかでん粉とか、それはそれぞれの県の主要産物になっているわけですから、そういう農産物に関する途上国のわが国に対する要求、その交渉過程と申しますか、その辺を少し御説明いただけたらと思いますが。
  202. 山崎皓一

    ○山崎説明員 お答えいたします。  わが国は東京ラウンド交渉におきまして、延べ約四十カ国ぐらいのいわゆる開発途上国からリクエストを受けております。そのリクエストを受けました総品目数というのはちょっと数え上げておりませんが、一口に申し上げますとこれらの国が輸出関心を持っております農産物につきましてはほとんどすべての品目につきましてリクエストを行ってきた、こういうふうにお考えいただいて結構かと思います。  これにつきまして私どもはもちろん輸出国のリクエストの状況というものも勘案いたさなければいけませんが、それと同時に、先生指摘のございましたようにわが国の農業と競合するものにつきましても十分に配慮を払わなければいけないということで、たとえばでん粉でありますとかそういうものにつきましては一切オファーからは外してございます。結果的にオファーいたしましたものは、約百六、七十品目がいわゆるLDCからのリクエストに対してこたえたものということになっております。  なお、このほかいわゆる熱帯産品交渉におきまして約四十品目、農林省所管物資でオファーを行っておりますが、これらにつきましても当然のことながらわが国の農業生産等々十分配慮を行いながらオファーを行っております。
  203. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまの件ですが、今後の問題としまして、今回はこういう形ですが、やはり国内農産物の保護という基本的な立場に立ちまして、要求はいろいろとございましょうけれども、その点配慮を十分していただきたい、このように要望するわけです。  次に、この問題に関連しまして日中通商問題、貿易問題についてちょっと伺っておきたいのですが、中国はこのガットに対してどういう立場をとっておるのか、この点をまず最初にお伺いします。
  204. 手島れい志

    手島政府委員 中国がガットに対してどのような関心を有しているかについては、私どもはつまびらかにしておりません。
  205. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この日中間の貿易について、現在双方の関税関係はどういうふうになっているのか、伺いたいと思います。
  206. 岩崎隆

    ○岩崎説明員 まず、わが国の中国に対する関税上の取り扱いでございますが、昭和四十九年に日中貿易協定締結されまして、この協定によりまして相互に最恵国待遇を与えることとされておることに基づきまして、ガット加盟国と同一の取り扱いを中国に対して行っているというのが現状でございます。  他方、中国はわが国に対してどういう関税上の取り扱いを行っているかということでございますが、その前に、そもそもの中国の関税制度でございますけれども、中国は御承知のような計画経済でございます。輸入につきましても、いわば計画輸入を行っているわけでございますけれども、その中にありましても、国内産業の保護あるいは財政収入の確保等の見地から、関税を課しているようでございます。その場合に、化学品とか鉄鋼、機械等の国内生産が不十分な物品につきましては低い税率、片やたばことか酒といった奢侈品等につきましては高い税率、こういうことになっておると聞いております。  また、中国の関税体系には二つの税率体系がございまして、一つは普通税率の体系、これは低いものは七・五%の税率から高いものは四〇〇%の広い範囲に及ぶ税率体系のようでございます。それからもう一つは最低税率、これは低いものは五%から高いものは二〇〇%までという税率体系でございますが、この二つの税率から成っていると聞いております。この場合に、普通税率は中国との間に貿易互恵条約あるいは互恵協定のない国に対して適用される税率でございまして、貿易互恵条約あるいは互恵協定のある国に対しては最低税率が適用されているというのが中国の一般的な関税制度でございます。  そこで中国は、わが国に対しましては、先ほど申し上げましたように、相互に最恵国待遇を与えることを規定しております昭和四十九年の日中貿易協定によりまして、この協定締結以来最低税率が適用されているというのが現状でございます。
  207. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまの問題ですが、中国との貿易は、国交正常化当時年間往復二十億ドルであったのが、七八年には五十億ドルを超え、正常化後五年間で二倍半の伸びを示した。  そこで一点は、対中国貿易の今後の展望について。それから二番目に、すでに合意している商社駐在員事務所の相互設置の件は現在どう進捗しているのか、お伺いします。
  208. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  御承知のように、中国はこの三年間経済調整をやっておりまして、現在のところ一応の成果をおさめているという状況でございます。それから七九年の農業生産は四%、それから工業生産八%ということで、少なくとも順調に伸びてきております。八一年から新たな十カ年計画に入ります。したがいまして、中国の経済が順調に進展するに応じまして、現在の日中の友好関係を背景にいたしまして、今後相当増大していくということが期待されると思います。  それから第二点の御質問でございますが、商社の駐在員事務所の問題でございますが、これは七九年の八月に、相互に滞在一カ年の査証を与えるということに合意されまして、その合意の中には、事務所構成員に対する特権、免除は認めないが、一年間の査証をお互いに認め合っていくという内容がございます。その以降、お互いの駐在員の事務所がふえまして、現在では日本側では五十七社、一年の長期ビザを与らえれているのは九十余名になっております。片や中国側の日本における公司の数は六社でございまして、数にいたしまして二十三名ということで、これまた順調にそれぞれ事務所が開設されている状況でございます。
  209. 玉城栄一

    ○玉城委員 日中貿易関係については以上であります。  次に、条約の方に戻りますが、東京ラウンドで新しい非関税コード類の妥結がされているわけです。これはいままで二国間でもめていた貿易に関連する紛争事案を国際ルールのもとで処理していこうという方向を示しているわけでありますが、わが国としてはいままで欧米諸国から圧力に近い形で個別要求が突きつけられるケースが多かったのでありますけれども、たとえば今回のダンピング防止協定等により今後の紛争事案について合理的に対処し得る道が開かれたというふうに考えておられるのか。  また、これら事案についての取り組み方がわが国としては従来よりもより効率的に対処し得ると考えておられるのですか。お伺いします。
  210. 手島れい志

    手島政府委員 今回のダンピング防止協定等非関税措置に関する一連の協定ができたわけでございますけれども、この協定によりまして、各国がこれらの措置をとりますときに従うべきルールというものが定められたわけでございます。したがって、このルールを相互に忠実に実施をしていくことによりまして、貿易の流れ、それに対する障害というものはかなり減少していくはずでございます。さらにその上に、各協定におきまして、国際的な協議とか紛争解決の手続強化というものが図られておりますので、今後貿易上でそういったような問題が生じました場合には、このルールに従ってわが国の主張を行い、合理的な解決を図る道ができたものというふうに考えております。
  211. 玉城栄一

    ○玉城委員 アメリカは、東京ラウンドの実施を図るために、七九年通商協定法の中でアンチダンピング法の改正を図り、調査期間の短縮、推定、ダンピング税の徴収など厳しい規定も盛り込まれているということであります。この点につきましてはこれまでも御説明がございましたけれども、しかも米国内では、貿易収支改善を目指し保護貿易への傾斜を強めるとともに、アンチダンピング法の発動、強化が叫ばれているような実情から、この七九年通商協定法の適用はわが国にとって一層厳しいものになると思うわけであります。  政府はこの点どのようにお考えでしょうか。そこでプラス面、マイナス面、両面あるというお話がございましたね。その程度説明でいいのかどうか、その辺もう少し厳しいという認識はないのかプラス面もあるのだということでいいのか。
  212. 手島れい志

    手島政府委員 アメリカ自体の国内の動きがどうなっていくかということにつきましては、これは今後のアメリカの国内法の運用いかんだということが言えるのじゃないかと思います。先ほどプラス面、マイナス面、両方あるというふうに申し上げましたのは、たとえば調査期間の短縮につきましても、これも輸出国の立場から見てもいい場合と悪い場合とがございますので、一概にお答えすることができないということでございます。したがって、やはり今後の運用を見ていかなければいけないとは思います。  ただし、今度のコードで、紛争が起こりまして日本側アメリカ側の措置に満足しないときには、これを国際的な場に持ち出しまして、そこで正式の協議なりあるいはほかの国の意見を聞く等々の場ができましたことは、これは非常に大きなプラスであろうというふうに考えております。  なお、最近、アメリカにおけるアンチダンピングの税を課せという件数がずっとふえてきているのではないかということも、アメリカの国内の状況から見て、あるいは今後どういうふうになっていくかという点につきましては、まだはっきりとわかりません。ただ、最近数年間の件数を見ておりますと、一九七七年が九件、七八年、七九年が同じく四件ずつということで、まだ三月の中旬でございますけれども、ことしに入ってからはまだ提訴が実際上行われていないということでございます。
  213. 玉城栄一

    ○玉城委員 今後ふえるという予想ですか、それともふえないということなんですか。その辺はいかがでしょうか。
  214. 手島れい志

    手島政府委員 その点に関しましては、現在特にふえてくるだろうとか、あるいはふえないだろうとかいう予測を立てるのは困難でございます。  ただ現在、たとえば鉄鋼、特にこれはヨーロッパから入ってくる鉄でございますけれども、これをめぐりましてダンピングの提訴を行うか行わないかというような話がアメリカの国内で行われていることは承知をいたしております。
  215. 玉城栄一

    ○玉城委員 次に、ガットの第十六条第四項は国内価格より低い価格で輸出することになるような補助金を交付することは終止する旨を規定しております。しかるに一九六二年十一月十四日にガットは、ガット十六条第四項の規定に効力を与えるための一九六〇年十一月十九日の宣言を発効せしめる措置がとられているわけですが、その理由について簡単に伺いたいと思います。  それから、同じく一九六〇年十一月十九日の宣言によりどのような輸出補助金を廃止することになったのか。  また次に、この宣言を受諾したのは、ガット加盟国すべてが受諾することになったのか。  それから合わせてもう一点ですが、宣言受諾国がガット加盟国の一部の国だけにとどまっていたのではその効果は望めないのではないか。これまでの状況を合わせてお伺いします。
  216. 手島れい志

    手島政府委員 御指摘のように、十六条の四項にはそういった趣旨の規定がございます。規定の上では、一九五八年までに工業製品については輸出補助金を終止するというふうに書いてあったわけでございます。ただ実際上は、各国ともこの規定を遵守して五八年までに輸出補助金の交付を終止することが困難でございましたので、その後六〇年にその規定を実施する宣言、これは通称A宣言というふうに言っておりますけれども、このA宣言をガットの締約国団が採択をいたしまして、六二年に発効をいたしました。  日本について申しますと、六二年発効の当初は参加をいたしませんでしたけれども、その後二年たちまして、六四年三月に至りましてこれを受諾した次第でございます。そうしてこのときに受諾に先立ちまして、当時日本が持っておりました輸出所得控除制度、この制度が輸出補助金に該当するのではないかという疑いをほかの国が持ったこともありましたので、この制度を廃止をした上で日本としてもこのA宣言に参加をしたわけでございます。  その次の御質問は、このA宣言の受諾国はどこであるかという御質問でございますけれども、昨年の末現在、日本のほかアメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、カナダ等々、全部で十八カ国でございます。この十八カ国はもちろんガットの加盟国の中で言えば限られておるわけでございますけれども、この中には主要先進工業国のほとんどが含まれておりますので、したがって十六条四項の目的というものはおおむね達成されているというふうに考えます。
  217. 玉城栄一

    ○玉城委員 次に、ガットの十六条は補助金について、補助金一般と輸出補助金とに分けて、それぞれ異なる規定をしておるわけですが、その理由。  それから次に、国内補助金は国家政策を促進すべき重要な政策手段であり、各国とも等しく補助金制度を活用しております。その政策手段を国際的に規制するということはガットといえども行き過ぎではないかという議論もあるわけです。そういうことから、輸出を促進させるおそれのある国内補助金について国際的な規制措置をとるよりも、現行ガットに規定する「通報、討議」手続により処理する方法を考える方が妥当であるという考え方もあるわけですが、この点についてお考えを示していただきたいと思います。
  218. 手島れい志

    手島政府委員 一般の補助金と輸出補助金とを区別した理由でございますけれども、ガット一般協定とこの新しくできました協定とは、まず最初に、補助金につきましては各国の国内政策の重要な手段であって、これを一律に禁止したり制限したりすることは妥当でない、他方輸出補助金につきましては、やはり国際貿易における競争条件を・人為的にゆがめる可能性が高いという認識を持ったわけでございます。  しかしながら、その輸出補助金の中でも農産物などの一次産品に対するものは、各国とも経済的、社会的に特殊な事情がございますので、工業製品とは区別をする必要があるというふうな考慮のもとに、それぞれ異なった規定ぶりをとったわけでございます。  ちなみに、一般の国内補助金は一国の政策の問題であるので国際規制をするのは行き過ぎではないかという御質問でございますけれども、これも先生の御指摘のとおり、国内の補助金というのは先ほど申しましたような経済的な社会的な非常に重要な国内の政策手段でございますので、今度御審議を願っております協定におきましても、この署名国が国内補助金を交付する権利を制限する意図を有しないということを本文中に明文の規定を置いているわけでございます。しかし同時に、国内の補助金が正常な競争条件に悪影響を及ぼし得る場合もあり得ますので、したがって署名国はそういった事態を回避するように努めろ、そういうふうな書き方になっております。
  219. 玉城栄一

    ○玉城委員 次は政府調達協定問題について伺いたいのですが、その前に、基本的な問題を一、二点お伺いしたいと思います。  そもそも政府調達というものは、当然各国の予算制度や国内政策に密接な関係があると思うわけです。ですから、ガットでも、政府用として購入する産品の政府機関による調達を規制する法令または要件には内国民待遇を適用しないことになっており、また、政府が直接消費するための産品の輸入には無差別待遇の原則を適用しないことになっているわけです。  しかるに、今回政府調達についてこのような国際約束ができたのでありますから、わが国の予算制度や国内政策の関係からいって、政府はいかなる考えのもとにこの協定交渉に応じたのか、これが一点です。  二点目。本来政府調達というものは、各国それぞれ固有のやり方でやってきたと思うわけです。日本もそれなりのやり方でいままでやってきて、それなりの効果を上げてきていると思います。今後、この政府調達協定に従うことになれば、予算制度や国内政策のあり方について大幅に変わっていくのかいかないのか。二点お伺いします。
  220. 手島れい志

    手島政府委員 御指摘のとおり、ガットの本協定においては、政府の調達というのは内国民待遇、無差別待遇の例外というふうにされておったわけでございますが、この点につきましては、かなり前から政府調達についてもガットの原則を及ぼすのが望ましいのではないかという考え方が存在をしておったわけでございます。たとえばOECDの場におきましては、一九六〇年代の半ばごろからその可能性についての検討が行われてきておったわけでございます。     〔佐野委員長代理退席、委員長着席〕  東京ラウンドにおきましては、このような経緯を踏まえまして、非関税障壁の撤廃、軽減という観点から、この分野においても内外無差別で実施をしていくべきであろうという原則に基づきまして、国際的なルールをつくるというふうに決められたわけでございます。日本といたしましても、ガットの原則というものが貫かれますことは基本的には望ましいことであるというふうに考えておりまして、特にアメリカが持っております米国の産品の優遇措置、いわゆるバイアメリカン法律を廃止させるということにより公正な国際貿易拡大を図ることができるということも考えまして、この交渉に参加した次第でございます。  なお、国内において政府の調達方式が今後変わるのかどうかということにつきましては、私どもの承知しておりますところでは、予決令か何か政令を一つ改正する必要があるというふうに聞いております。
  221. 玉城栄一

    ○玉城委員 大蔵省の方、いらっしゃいますか。その点もう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。
  222. 長島和彦

    ○長島説明員 お答え申し上げます。  今回の政府調達協定によりましてわが国の契約制度あるいは入札の制度、そういう仕組みの面で相当大きな変革があるかどうかというような点も御心配になっていらっしゃるのかと思うわけでございますが、まずその点について申し上げますと、今回の政府調達協定によりまして、現在私どもが持っております会計法令、これの改正は基本的な部分については何ら変更を必要としないということになっておるわけでございます。言いかえますと、現在の制度の延長線の上でそれに若干の手直しをしていくという程度でよろしいかというふうに思っております。  もう少し具体的に申し上げてみますと、たとえば一般競争の場合の入札の公告期間の延長というようなものがございます。一般競争でございますから国民に広くその入札の内容を公告するわけでございますが、現行制度でございますと、これは入札までの期間として十日以上おきなさいということになっておるわけでございますが、今回の協定の発効によりますと、この期間は三十日以上おくようにというような内容になってまいるわけでございます。  似たような点でございますが、今度は指名競争契約、指名競争入札というような場合には、指名競争に必要な資格要件というものにつきましては、現在ですとこれは公示していない、政府の部内だけで持っているというものでございますが、これを公示するというような形にいたします。  さらに、具体的な個々の入札に当たりましては、これも従来は指名競争でございましたので、指名参加人に単に通知をすればよろしかったのでございますけれども、これをそれだけではなくて、こういう指名競争を行いますよという形で公示をするというような仕組みを今度取り入れることになるということでございます。  そのほか、以上の公示の仕方といたしまして官報を利用することになりますし、さらにはガットの公用語のうちから一つ、いまのところ多分英語になるだろうと思いますが、そういうものを用いて公示をしていくというような改正でございます。  そのほかに、随意契約の対象の範囲をできるだけ広げていくというような改正もございますが、いずれにいたしましても、現在の制度の延長線の上で若干の手直しをしていく。それは外国から入札競争に参加するということを現状以上にやさしくすることではございますけれども、同時に、こうした措置は国内の業者につきましても同様に均てんさせるという性格のものでございます。  なお、関連いたしまして予算につきましてお尋ねがあったわけでございますが、いま申し上げましたような制度の改正になるわけでございますので、予算制度には何ら影響を及ぼすものではないわけでございます。どちらかと言いますと、むしろ競争の範囲が広くなるという意味では、国にとりましては場合によりますとより安い価格で入札することもできるというようなことになるという性格のものかと思っております。
  223. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、いま政府調達の問題をちょっと伺っているのですが、いらっしゃいましたのでちょっと伺いたいのです。  いままで政府調達の大半が行政指導によったり、また、随意契約が国内では多かったわけです。この協定が発効したら、すべてガラス張りで、内国民待遇、無差別の原則で十五万SDR以上の調達について外国の企業もどんどん入札をすることができる、こういうことになるわけですが、これに関連をしまして、園田前外務大臣は、これは参議院の外務委員会でのお答えなんですが、「開放と申しましてもこれはアメリカから買うということでなく、入札を許す、こういうことでありまして、私は入札を許した場合に、ほとんど大部分は、日本の国際競争力が強くて米国の入札が実現するとは考えておりません」これは簡単に言いますと、入札は許すが結果的に見て契約まで全部できるかどうかはわかりませんということなんですが、政府調達協定交渉の根源からいって、この前の外務大臣のおっしゃったことについて、入札は開放するが、しかし契約まではいまの実情からいってどうかということについてはどのようにお考えになられるでしょうか。
  224. 長島和彦

    ○長島説明員 失礼いたしました。ただいまお答えの中で随意契約の対象を広げるというふうに私うっかり申し上げましたが、一般競争の対象を広げるという意味でございましたので、おわびをして訂正いたしたいと思います。
  225. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 園田前大臣がそういう答弁をなさったことを伺っておりますけれども、入札を許すということは、結局その中から品質、価格等の面で一番競争力がある適当なものを発注者が落とす、購買することになると思いますので、いろいろな設備の種類、機材の種類による点があると思いますが、一般的には、園田前大臣が言われましたように、機械あるいはエレクトロニクス等は日本の競争力が相当強いわけでございますし、かなりの程度日本側に落ちることはあり得ると思います。しかし、全部が落ちるというのではまたこれは入札の意味が失われることもございますので、物によって、時によって、外国のものもよくて安いものがあれば入るというたてまえだろうと存じます。
  226. 玉城栄一

    ○玉城委員 この政府調達協定は、一年後にはその実施及び運用について検討するということになっているわけです。そういうことで、いまの大臣のお話にもございましたけれども、大半は国内に落ちるというようなことでありますが、これは結果を見ないと何とも言えないと思うのですが、実際に、前の外務大臣もそういう意味のことをおっしゃっておられるわけですから、極端に、せっかく開放したけれども入札する実績は少なかったということで、一年後は検討、見直し、こうなってくるような協定になっているようですけれども、そうなってきて果たしていいのかどうか。そこで、これからの国際貿易のルールという基本的なこういう協定ができ上がったわけですから、合意ができ上がったわけですから、政府として、そういう国際的な貿易秩序を今後も維持強化していこうという立場から、やはり何らかの配慮でもって、外国のそういう企業の入札者に対しては政治的な配慮と申しますか、そういうものが行われる可能性があるのかないのか、その辺はいかがですか。
  227. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 それはたてまえとしてないと思います。
  228. 玉城栄一

    ○玉城委員 たてまえとしてないということは、あり得るということですか。なぜたてまえという言葉がついているわけですか。
  229. 手島れい志

    手島政府委員 ちょっと補足させていただきますけれども政府調達コードの対象にいたしますと、その規定に従いまして調達を行うということでございますから、その結果としてたまたま特定国の産品の調達がゼロという事態が生じましても、この協定の違反という事態は生じません。  ただ、この調達コードで定めておりますことは、外国産品にも内国産品と同じ条件で競争する機会を与えるということでございまして、その競争に敗れた産品が調達されないのは当然のことでございます。
  230. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは大蔵省になるのでしょうか。中央官庁による物品の購入額は年々膨大なものとなっているわけですが、昭和五十三年度における中央官庁の調達額は大体どのぐらいになっているのでしょうか。それとあわせて、電電公社、国鉄、専売の五十三年度の調達額は大体どのぐらいですか。そして、その中で十五万SDR以上の調達額はどのくらいでしょうか。
  231. 手島れい志

    手島政府委員 ただいまの御質問につきましては、いまなお米国との間で協議が続けられておりまして、今後具体的な交渉をするということになっておりますので、ただいまの質問についてお答えいたしますとこちらの手のうちを示すことにもなりますので、恐縮でございますけれども答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。
  232. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上で終わります。
  233. 中尾栄一

    ○中尾委員長 榊利夫君。
  234. 榊利夫

    ○榊委員 きのうこの席でお伺いしていたのでございますが、渡部委員質問に対しまして大来外務大臣はこういうふうに答弁なさっておられました。東京ラウンドの自己評価として、世界貿易の自由化の基調が維持されるということは、日本経済の今後に重大な影響を持っている、多少積み残しの問題等もあるけれども、こういう御答弁でございました。  そこで、冒頭にお尋ねしたいのでございますが、最近一般的には公正貿易という呼び方で、どうも自由貿易というのは強い者勝ちだという語感も伴いますし、実際そういう面もあるわけで、御承知のように国際貿易の分野では大体公正貿易という用語法の方が最近は広がっているわけでございますけれども、あえて外務大臣貿易の自由化というお言葉を使われたということと、それから、積み残しの部分等の、この積み残しの部分というのはどういうふうな御理解なのか、この二点をお尋ねいたします。
  235. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 公正貿易、フリートレードだけではいけないのでフェアなトレードが必要だという言い方は、これは近年アメリカでかなり広く言われるようになったわけでございます。ダンピングというようなことはアンフェアトレードだ、あるいは補助金をつけて人為的に値段を安くしてほかの市場に売り込むこともアンフェアだという考えは、これは当然成立すると思いますし、何でも自由だということではないと思いますのですが、一般にフリートレードと言うときには、そういうアンフェアなやり方は想定しないといいますか、それは当然抑えられるべきものだという解釈になっているのではないかと思います。  それから、積み残しの問題としましては、このセーフガードの問題、つまり他国から非常に急激に輸入品が入ってきて国内の産業、雇用等に大きな影響を与える、その場合のセーフガードを特定の国に対してやれるかやれないか、そういう問題につきまして、これは同意が得られなかったと聞いております。  あともう一つ、たしか小麦の貿易問題があったと思いますが、あるいはもう一つぐらい積み残しの大きな項目があったかと思います。この点は政府委員からお答えさせたいと思います。
  236. 手島れい志

    手島政府委員 東京ラウンドで、積み残しと申しますか解決できなかった問題は、ただいま大臣が答弁いたしましたセーフガード、それから穀物の貿易のほかに、輸出規制及び不正商品の問題というのがございます。  以上につきまして簡単に御説明をさせていただきますと、セーフガードにつきましては、大臣も触れられましたように、緊急の場合にガットの十九条に基づいた手続をとることがすでにガットで規定をされておるわけでありますけれども、この緊急な輸入制限をする場合にこれを選択的に適用することができるかどうか、すなわち、特定の国からの輸入だけに限定した措置をとることができるかどうかという問題でございますが、この点につきましては、関係国の間で合意が成立いたさなかったわけでございます。したがって、この点はさらにガットの中で、今後どういうふうにするか、協議と交渉を続けることで合意が成立し、また同時に、新しいルールができるまでは従来どおりの手続と慣行に従っていくということになっております。  それから第二番目の穀物の貿易につきましては、ケネディ・ラウンドのときに穀物協定というものを同時に交渉してつくり上げた先例もございまして、今回も小麦について交渉をするという意向が各国の間で出てまいりました。ただ、この交渉はジュネーブで、東京ラウンドの枠内で行うというよりも、ロンドンにあります国際小麦理事会の主催ということで交渉が進められてきたわけでございます。この協定の柱の一つであります小麦の貿易の規約につきましては合意が成立いたしませんで、食糧援助規約の方についてのみ合意ができたわけでございます。  それから三番目の輸出の規制につきましては、貿易拡大という観点から見ますと、輸入面での制限と同じように輸出面での制限も同じような阻害効果を持っておるということで、何らかの枠組みを設定するための検討が行われたわけでございますけれども、特に資源輸出国の方から、輸入国の市場開放度と結びつけたかっこうでこの問題を討議しようという考え方が強く、輸入国側はこれに同意をしなかったものですから、結局妥結に至らなかったものでございます。しかし、この件は重要な問題でございますので、ガットにおいても今後の優先課題として取り組んでいくということが決められております。  最後に、不正商品の問題がございますが、これは東京ラウンドの終盤の段階で、商標権の侵害をした商品の国際的な取り締まりの強化に関する協定をつくろうということになったわけでございますけれども、目的については大方の賛同を得ましたけれども、実際の取り締まりの方法とか手続等、細目につきましては各国の間でいろいろな相違がございましたので、結局東京ラウンドのパッケージからは切り離して今後話を継続しよう、そういうことになったわけでございます。
  237. 榊利夫

    ○榊委員 時間が限られているものですから、私もなるべく簡明にお尋ねいたしますので、お答えもひとつ簡単にお願いいたします。  いまのお話で、積み残しの中に穀物、小麦等々の問題も含まれているということが述べられておりますけれども、この問題について、私、少し角度を変えてお尋ねしたいと思っているわけでございます。  これはしばしば言われてきたところでもあるのでございますけれども貿易拡大していく、自由に伸ばしていくというのが一番根本にある発想だと思いますが、同時に、今度の東京ラウンドのそれをいろいろ検討さしていただきますと、日本の経済構造の問題と密接不可分であるということを非常に痛感するわけであります。  言い方を変えますと、八〇年代の国際貿易というものは八〇年代の日本の経済構造のあり方を抜きにしては考えられない。すなわち、工業あるいは農業、貿易も含めた商業ですね、内外商業、こういった調和のとれた、総合的でしかも立体的な日本経済のこれからの行き方、あらゆる点で偏りはよろしくないわけでございまして、民族的な自立あるいは独立という点からも、大変つり合いのとれた経済発展ということが重要な意味を持っていると思うわけでございます。  国際貿易取り決めが逆に国の経済構造にはね返って逆規制をするという面、これはあれこれの場合に避けがたいわけでありますけれども、特にその点で、今度の東京ラウンドの中で中小企業やあるいは農業などが受ける影響と申しますか、この点について政府はどういう御認識をお持ちなのか、あるいは現状及び将来の問題についても簡単に御所見をお聞きしたいと思います。
  238. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 農業及び中小企業につきましては、今度の東京ラウンドの交渉に当たりまして、国内に及ぼす影響を考慮して、できるだけ影響を少なくするような配慮が行われたと承知いたしております。
  239. 榊利夫

    ○榊委員 御存じのように、中小企業の倒産というのは猛烈な勢いで進んでいまして、負債一千万円以上の企業倒産だけで月に一千件を超える月、そういうのが五十四カ月連続しておりますし、それから農業の場合には、これはもう農業危機という言葉がこれは日常語になっておりまして、しかも八〇年代、九〇年代、大体その境目あたりから、世界的に間違いなく食糧危機が起こるだろうというふうに言われておるわけでございますけれども、特に日本の農業危機、これは非常に深刻な事態になっているわけでございますね。農業労働力はもう半減しておりますし、いわゆる三ちゃん化しております。農地の減少、荒廃。食糧自給率は、六〇年から七八年の間に御承知のように半分以下、大体四割、四〇%を切るような状態でございます。  そういうときに、この東京ラウンドによる外国農産物の輸入の増加ということは目に見えるわけでございますけれども、その点についてはどういうふうに考えておられますか。
  240. 手島れい志

    手島政府委員 今回の東京ラウンドの農産物についての交渉につきましては、工業産品と違う方式をとりまして、一律な関税の引き下げというようなことは考えなかったわけでございます。そうして、日本に対しても大多数の国からかなり多くの品目につきまして要望が出てきたわけでございますけれども、これは昨日から御説明申し上げておりますとおり、日本として、日本の農家の経営基盤に被害を与えない限度におきまして、日本の農産物総輸入額の約二二%に相当するものについて関税の譲許をしたわけでございます。  またそのほか、外国からはたとえば柑橘ですとか牛肉とかにつきまして非常に強い自由化の要求があったわけでありますけれども、これは日本の国内事情も考えまして、一定の輸入の枠の拡大をということを日本政府の意図ないし見通しといたしまして先方に通報するというような措置をとり、日本の国内農業に大きな被害が及ばないように交渉を行ってまいりました。
  241. 榊利夫

    ○榊委員 できたら農林省の方にお尋ねいたしますが、大体この二十年ぐらいを例にとりまして、農産物輸入は何倍ぐらいになっていますか。それで、その何倍になったうちのアメリカからの穀物の輸入はどれぐらいになっていますか。
  242. 山崎皓一

    ○山崎説明員 ただいま二十年という統計はちょっと手元に持ち合わせていませんが、最近五年間の農林水産物の輸入額というものを見てまいりますと、一九七四年の輸入額が百六十五億ドルでございまして、それが昨年は二百八十九億ドル、この間に一・七倍になっております。  それからアメリカからの穀物につきましては、やはり同じ時期について申し上げますと、小麦は七四年が三百二万トンでございまして、七九年が三百三十万トン、この間に約一割のアップでございます。  それから、トウモロコシにつきましては、これは国内の畜産業が発達いたしましたために、えさとしての需要が非常に伸びているということがございまして、一九七四年が六百十六万トンでございましたのが、七九年が九百八十三万トンと、この間に約五割強の増加になっております。
  243. 榊利夫

    ○榊委員 ありがとうございました。  いまの説明でも五年間に一・七倍という大変なふえ方でございますが、私ども調査したところでも、大体二十年間に農産物は五、六倍にふえております。この農産物の輸入増と、それから日本の農業が受ける打撃というものは並行して進んでいるというのが実情でございます。  率直に言いまして、国によりましては、輸出は自由貿易のたてまえで、輸入は保護貿易主義だ、それが本音だ、そういうこともしばしばあるわけでございます。あるいは選挙区等との関係でも、農業関係者の声を外に向けるとかいろんなことがあることはもう常識でございますけれども、兵器なんかもそのたぐいでありますが、その中で農産物に関して言いますと、すでに七八年春から農産物だけで三十品目、全体で百二十四品目の関税につきましては前倒し引き下げを行っておりますし、今度のラウンドによりまして、二百三の品目に及ぶ農林水産物の関税引き下げ、こういうふうにこの資料で拝見させていただいたわけでありますが、その農産物の輸入枠の拡大あるいは関税の引き下げ、これはわが国の場合一番低いレベルになっておるわけでありますけれども、それが現在の農業危機にどれほど地すべり的な影響を与えるか、その不安というものはつきまとうわけでございます。  この点については農水省ではどういうふうに御判断なのか、お聞かせ願います。
  244. 山崎皓一

    ○山崎説明員 先生指摘のように、農林省所管物資につきましては、約二百の品目につきまして、関税の据え置きまたは引き下げのオファーを行っております。これは一見大変多量の農産物につきまして輸入増大の機会を与えるという印象を与え、あるいは農業者の方に大変な懸念をもたらしているのではないかということにつきましては、私も同感でございます。  ただ、この中身を見てまいりますと、実際にいま農産物につきましては、品目数で千品目ぐらいございまして、実際にこの交渉の過程におきまして、関税引き下げの要求を受けましたものが六百五十品目ぐらいございます。このような要求の中で、私どもといたしましては、農業も日本経済の重要な一分野でありますので、現在及び将来の農業に対して基本的に悪影響を与えてはいけないという観点から交渉に臨んでまいりました。  したがいまして、オファーを行うにいたしましても、国内の農業生産なり農家経済に悪影響を与えないということに最重点の配慮をいたしまして、具体的には、たとえば乳製品でございますとか、あるいはでん粉関係でございますとか、砂糖でございますとか、対外的に非常に要求があったものにつきましても、そういうものは一切オファーをいたさない、あるいはオファーをいたすものにつきましても、たとえばいま二百品目と申し上げましたが、このうち約三分の一の七十品目ばかりにつきましては、実際には現在の税率をそのまま据え置きのオファーをしているというような配慮をいたしまして、結果的には日本の農業生産に悪影響を及ぼさないように十分に配慮したというふうに私どもは考えております。
  245. 榊利夫

    ○榊委員 ここで名前を挙げるのは差し控えますけれども、政府関係者の中でも、自由貿易推進のためには、弱い部分、泣かされる部分が出てもやむを得ない、これは近代化のために必要だ、農業しかり、中小企業しかり、こういうふうにおっしゃっている方もあるわけでありますけれども、これは公式の発言ではないと私は解しておりますが、いまの説明を聞きますと、打撃は受けない、影響を受けないようにしたつもりだ、私は後者を信用したいと思うのでございますけれども日本の農業に対するこのラウンドの、そういう意味合いでの外国農産物の輸入拡大による悪影響というものは防げるというふうに本当に思っていらっしゃるのでしょうか。
  246. 山崎皓一

    ○山崎説明員 今後の国内の需要動向によりまして、農産物の輸入がふえてくるということはもちろんあり得るかと思いますが、東京ラウンドの結果として農業が悪影響を受けるということは私どもはないというふうに考えております。
  247. 榊利夫

    ○榊委員 私は、それはあえて言いますけれども、やはり甘いと思うのです。と申しますのは、これまでの二十年、十年、五年、こういうふうに見てみましても、いま幾つかのデータを私も言い、また、農水省の側、政府の側からも述べてもらいましたように、厳然として後退しているわけであります。しかも、それをとどめる措置がなくて、農産物の輸入、明らかにこれは拡大しているわけでございますから、それに強力な施策がとられていかない限りは、農業の破滅的な打撃、衰退といった歩みというものが一層加速化される心配がある。したがって、さらにこれから詰めようとは思いませんけれども、そこはよく考えてもらわなくちゃいけない、このことをあえて申し述べさしていただきたいと思うのであります。  その点で、たとえばきのう発表されました産業構造審議会の答申、「八〇年代の通商産業政策ビジョン」と名乗っておりますけれども通産省にこれを提示されたわけですが、これによりますと、経済安保ということを称しながら、柱となるべき食糧、農業問題の展開はほとんどないわけです。ただ、食糧の備蓄や農地の宅地化を推進するということを述べているだけであります。こういうのを読みますと、政府は、八〇年代の日本の産業構造の中で食糧農業というのはもう大したことない、不要だ、こう思っていらっしゃるのかという疑問さえわくのであります。  ここには通産省の方もいらっしゃいますので、直接ラウンドとは関係ありませんけれども、基本的なあり方という点で質問したいわけでございます。
  248. 柴田益男

    柴田説明員 先生質問通産省の八〇年代のビジョンでございますが、全体のトーンがやはり産業構造の高度化、特に中小企業製品の高級化ということを志向して書いてございますが、御指摘の農業問題につきましては、当省の所管ではございませんで、農林水産省で十分検討されているということで、そちらの方にお譲りしているわけでございまして、決して農林水産問題をないがしろにしたわけではございません。
  249. 榊利夫

    ○榊委員 それこそまさに逃げの答弁でして、確かにそれは通産省と農水省じゃ分野が分かれているかもしれません、分担は。しかし、日本の産業構造、産業ビジョンという場合に、農業を抜きにして、食糧を抜きにして考えられませんよ。だから、それは政府省庁間のセクショナリズムをあらわすものであっても、日本の経済の前途という点から言うならば、明らかにこれは重大な問題を提起しているわけであります。農産物輸入の問題も、私はそういう角度から言いたいのです。農産物が不足している、だから持ってくる、それだったら話がわかるのです。しかし実際は、どれをとってみましても、いま現に見られるのは過剰ですよ。しかもそれについて、わが国の過剰米の処理やあるいは自給率向上の策にもいろいろな外部からの圧力がかかってきている。残念ながら、それにどうも従っているのではないかというふうな疑惑もわくようないろいろなプロセスがあるわけであります。  しかし、ここでお尋ねいたしたいのでございますけれども、まあ世間の言葉で言えば、鉄はどんなに生産をしても食べるわけにいきません。工業も貿易も大事だけれども、やはり食糧、一億一千万の国民の胃袋をいかなるときにあっても確保する、これは最低の政治の要件だ、目指すべき要諦だと思うわけでございます。そういう点で、私は、やはりこの狭い輸出第一主義、一種の企業家的な視点に国の政治全体が行っちゃいけないと思う。企業家はそう考えるでしょう。商売をやっている人はその人の立場から考えるでしょう。農家は農家の立場から考えると思います。それらを総合して、八〇年代日本の経済はいかにあるべきか。私は、やはり国際貿易の点での取り決めという点でも、このよって立つところを忘れてはならぬ。それは、やはり日本の食糧、こういう点で糧道や胃袋を外国に預けるようなことは避けるべきでありまして、食糧輸入が何かの機会に、天災やあるいはどこかの部分的な戦争等々の理由で来なくなったとき、寝ておればいいということでは済まない、まさに飢えでありますから。そういう日本の国の独立、主権、民族的な生存、こういうこととも絡んでこの国際貿易の問題も考えていくべきではないか、こう私は思うのでございますけれども、見解を伺うことができればと思います。
  250. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 食糧は、エネルギーと並んでその国の存立に欠くべからざるものでございます。ただ、そのために自給を常にしなければならないかということは、また別に考えてみる必要があると思うのでございます。  現実に、日本に食糧の供給が来なくなるというような場合にどういう場合があるか。戦争が起こって海上輸送が断たれるような場合、あるいは農産物が世界的に非常に不作になって入手が困難になる場合、あるいは日本輸出競争力が衰えて他の世界に食糧が余っても買う外貨がない場合、いろいろな場合があると考えられますけれども、幸いに、いままでのところは不足分を海外から輸入することが可能であった。先ほども申し上げたのですけれども、米は自給をしてまいりまして、これは私も、ある程度高くなっても国民の安全感、セキュリティーを買う値段だと考えるべきだろうと思うのでございます。そのほか、最近農林省も、大豆や小麦のようなものをもう少し国内で増産できないか、これはコストは高いけれども、やはり食糧の安全という面で必要だというお考えもあるように聞いておりますが、そういう意味で、どうしても必要なものについての国内生産は、多少コストが高くても維持する。  それから、何か一朝有事の場合に、増産する余地をつくっておく。ふだんから非常にコストの高い国内生産に依存いたしますと、これは全体としての労働コストも上がってまいりまして、経済も非能率な面が出てまいりますし、また、一朝有事の場合に、トウモロコシ、いまのお話でも約一千万トン、小麦その他の食糧、合わせて穀物、大豆も入れれば二千万トンぐらいの輸入になるかと思いますが、こういうものが常時入っておる。そのランニングストックがある。何かのときは、家畜の飼料も人間の食糧にするというような可能性もございまして、余りにぎりぎりな状態で平時からやっておりますと、いざというときの弾力性がないという意味の心配もございますので、その辺の兼ね合いでこの国内生産と輸入を考えていくべきではないかと考えるわけでございます。
  251. 榊利夫

    ○榊委員 この問題で最後ですが、いずれにいたしましても、石炭の場合、やはり同じようなことで、六〇年代、七〇年代を通じまして壊滅的な道をたどりまして、炭鉱は、いま現在では二十六鉱しか残っておりません。ところが、そのやさきに、いまや石炭の輸入が叫ばれなければならなくなっております。日本の農業をこういう炭鉱の二の舞をさせてはいけない。安易な国際分業論の罪でもありますけれども、それはやはり苦い教訓として今後の貿易政策及び経済政策に生かさなければならないことだと思うのであります。  東京ラウンドがいま日本の農業、食糧問題をより悪化させない保障と申しますか、あるいはそうさせてはいけないということは、恐らく政府当局はお考えのことだろうと思う。また、考えてもらわなくちゃ困りますけれども、そういう決意と申しますか態度と申しますか、それをいただけたらと思います。
  252. 山崎皓一

    ○山崎説明員 私ども先生指摘のような立場交渉に臨んでまいりましたし、今後ともそういう方向で対処いたしたいというふうに思っております。
  253. 榊利夫

    ○榊委員 次は、貿易技術的障害に関する協定でございますが、スタンダード協定ですね、少し細かく御質問させていただきたいのですが、製品の規格、標準というのはどういうふうに概念規定をしたらよろしいのでしょうか。     〔委員長退席、志賀委員長代理着席〕
  254. 小野雅文

    ○小野説明員 規格につきましては一応三種類ございます。  一つは、製品といいましょうか商品等の形ですとか性能ですとか大きさですとか寸法等を決めたようなもの、これが一つの種類でございます。  それからもう一つは、いろいろな方法論を決めた規格もございます。たとえば検査方法ですとかあるいは製造方法ですとかいったようなものでございます。  それから三つ目は、もう少し基本的なことを決めた、たとえば記号ですとかそれからマークといいましょうか印のようなものですとか、そういうふうなものを決めたもの等もございます。  大きく分けて大体三つ、規格にはございます。
  255. 榊利夫

    ○榊委員 いずれにいたしましても、その規格や検査といったものはそれぞれの国でいろいろな違いがあるわけであります。自然環境の違いからくるものもあれば、あるいは健康や生活慣習等々からくるものもあります。そういう点大変具体的だろうと思いますが、言うまでもなくこの規格が外国の規格と一致しない場合、これはよくあり得ることでありますけれども、そういうことは現在でも少なくないと思うのですが、どうでしょうか。
  256. 小野雅文

    ○小野説明員 私ども通産省で扱っておりますのは主として工業製品の規格でございますが、この工業製品の規格につきましては、おっしゃるように国際規格と必ずしも合っていない分がございます。
  257. 榊利夫

    ○榊委員 そういう点ではこの規格というのは大変各国的であります。それが貿易要求と合わない場合に障害と見るのはどうでしょうか。貿易技術的障害、うまく一致しないというのはどちらを主体に置くかで違ってくるわけで、同じくそれを逆に見れば、国内規格の側から見れば貿易こそ障害だということもあり得るわけです。ですから、そういう規格の問題を貿易のサイドからだけ見るというのじゃなくて、もともと規格とか標準といったものは国民の生命や健康や安全や生活環境、こういったものを守るために必要なものだと私は思うのであります。  したがいまして、お尋ねしたいのですが、仮にある特定の規格が貿易要求と合わない場合でも、それに対しては守らなければならないものは守る。それを決めるのはあくまでも日本の主権に属している国民的な利益、要求、それを基礎にして決まるんだということではないかと思うのですけれども、そういうふうに理解していいでしょうか。
  258. 小野雅文

    ○小野説明員 これも私どもの工業製品の規格であるJISの話でございますが、おっしゃいますように、基本的には国内の事情をもとにつくっておりまして、私ども、工業標準調査会というのがございますが、そこで経済界の方あるいは消費者の方、学者の方々の意見を聞いて、主として日本の実情等に即してつくっておるわけでございますが、最近におきましては国際規格づくりにも日本として参加をしておりまして、その日本が参加しました国際規格に合わせるような努力も一方ではしております。
  259. 榊利夫

    ○榊委員 協定の二条一項で強制規格、任意規格の適用が国際貿易に不必要な障害をもたらすことのないよう確保する、こうなっております。この際、「不必要な障害」とは一体どういうものでしょうか。あるいはまた、どれが不必要かということはどんな基準でだれが判定するのでしょうか。
  260. 手島れい志

    手島政府委員 この協定におきましては、特に「不必要な障害」というものについての具体的な定義というものはございません。したがいまして、今後のこの協定の運用を通じて個々のケースに応じて判断をされていくことになると思います。
  261. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、たとえば日本なら日本が規格を立案しようとする、これは不必要な障害をもたらすことはないというふうにいろいろ研究して判断をすればそれはそれでいい、こういうことでしょうか。
  262. 手島れい志

    手島政府委員 各国でつくります規格というものがばらばらであります場合には、これは確かに貿易の上から申しますと不便な点があるわけでございます。したがいまして、もうすでにISOその他国際関係の機関ができておりまして、そこで国際的な規格の統一のための努力が行われておるわけでございます。  しかしながら、他方、それぞれの国の事情によりまして独自の規格をつくらなければならない場合というのも十分考えられるわけでございます。したがいまして、この協定におきましては、二条の二項におきまして、できるだけ国際規格があるものについてはこれに準拠するようにということを進めながらも、他方において人の健康とかあるいは安全の保護、動植物の生命、健康、生育の保護、環境の保全そのほかの問題についてはその国が独自の規格をつくることを妨げていないわけでございます。
  263. 榊利夫

    ○榊委員 独自の規格をつくることは妨げていない。そうすると、他方考えてみまして、たとえば協定二条五項その四、これで行けば九ページですけれども、ここでも強制規格について他の締約国より「要請があった場合にその意見について討議し、また、書面による意見及び討議の結果を考慮する。」こういうふうにここでなっておりますが、この場合の「考慮」というのは意見を反映した何らかの対策を義務的に講じなければならないということでしょうか、あるいは考慮はするけれども実行はそれぞれの国に任されているということでしょうか。
  264. 手島れい志

    手島政府委員 考慮は当然真剣に行われなければならないわけでございますけれども、この協定の規定に照らしましても、日本がとり得ないものまで採用することを強制されることはないわけでございます。したがって、合理的な理由がある場合にはわが国が独自の規格を作成し、これを維持することは妨げられません。
  265. 榊利夫

    ○榊委員 もっとほかに聞きたいことがあるんですが、時間があれなんで、少しはしょりますけれども、二条五項の場合には除外規定がないんですね。二条二項の場合は、国の安全保障上の必要、人の健康、安全保護など当該国によって適当でない場合は除外規定が設けられているわけでありますけれども、この二条五項の場合はそういう除外規定がないんですが、これはどういう理由でしょうか。
  266. 手島れい志

    手島政府委員 二条五項の例外規定は、その次の二条六に書いてございますが、「安全上、健康上、環境の保全上又は国家の安全保障上の緊急の問題が生じている場合又は生ずるおそれのある場合には、」云々と例外規定が書いてございます。
  267. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、これは二つ連動的に考えるわけですか。
  268. 手島れい志

    手島政府委員 そのとおりでございます。
  269. 榊利夫

    ○榊委員 一つ疑問が出てくるのは、普通協定とか条約の場合には、検討するとか協議するとかそういう表現が使われているように思うんですが、この場合は特に「考慮」というような言い方をしたわけですが、それはどういうこと。  つまり私が聞きたいのは、「考慮」というのが義務的なものであるということになった場合には自分の国でいろいろ自主的に決定していくということがそれによって逆に縛られるようなことにならないかという心配が一つと、それから、そういう協定が、たとえば「考慮」ということを明記した協定がほかにあるかどうか。特に東京ラウンドで、この技術協定だけで「考慮」というふうに使ったのはどういうことかということです。
  270. 手島れい志

    手島政府委員 ちょっとほかの条約で「考慮」という字を使った例があるかどうかということについては、私つまびらかにいたしませんけれども、この協定について見ますと、諸外国の意見が出てまいりましたときに、一国が考慮するということを申しましても、考慮の前提といたしましては、協定の前文の規定が働くわけでございます。協定の前文には、人、動物等の生命、健康の保護云々ということについて必要な措置をとることは妨げられないと書いてございますので、考慮の結果、その規定に照らしまして、日本としてとり得ないものまで採用することを強制されることはございません。
  271. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。相手から言われれば、考慮することはいわば義務的である、しかし実行ということは義務的ではない、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  272. 手島れい志

    手島政府委員 外国からの要請につきましては、これを真剣に考慮するのは、当然協定からくる義務でございます。しかしながら、日本の特別な事情によりまして、合理的な理由がある場合に、日本が必要とする独自の規格を作成することは妨げられません。
  273. 榊利夫

    ○榊委員 では具体的な問題ですが、日本のいろいろな規格について、さまざまな外国からの意見も出ております。たとえば、電気用品などについても、アメリカEC等々から出ておりますし、他国の検査を受け入れるための協議も行うというふうに政府側も述べておられるわけでありますけれども、他国の検査を受け入れるという場合に、日本政府も何かチェックはするのでしょうね。
  274. 松田泰

    松田説明員 いま電気用品の例が出ましたので、担当しております者としてお答えいたします。  電気用品につきまして、外国の検査結果を受け入れるかどうかにつきまして、そういう申し出のあった国といま協議をしている、これは国の公式の協議というよりは、担当している者として、どういうふうに具体的にやったらいいか相談をしているところでございますが、もちろん日本といたしまして、実際に検査を行っているものは法律でいたしております検査機関でございますので、その検査機関が相手の検査機関の検査の内容を見まして、これは信頼に足るものであるかどうかということをある程度チェックいたします。そのチェックした内容につきまして、われわれは報告を受け、それによってこれは十分やっていけると思った段階で、その方法を法律上オーソライズするということを考えております。
  275. 榊利夫

    ○榊委員 医薬品はどうでしょうか。アメリカの下院での、ジョーンズ委員会での報告、いわゆるタスクフォース報告などを見ましても、医療機器についてもさまざまな意見が出ているわけです。たとえば、肝炎検査試薬、これは日本では非常に日本品購買のあれが根強い、しかも国民健康保険の給付の対象許可を得ようと試みたけれどもとれずに終わってしまった、こういうことをもっと変えろとか、あるいは腎透析フィルターの問題でも、日本の診療報酬算定方式を見直せとか、あるいは食品添加物についても防腐剤についても日本の場合基準が高過ぎる、これを改めろとか、そういう趣旨のいろいろな要求が出ているわけでございますけれども、こういう要求につきまして、どういう対応をこれまでしてこられたか、またこれからされようとしているのか、お尋ねします。
  276. 山田幸孝

    山田説明員 医薬品あるいは医療機器などにつきましては、直接国民の生命、健康にかかわるものでございますので、これらのものの安全性の確保ということは強く要請されておるわけでございます。  厚生省といたしましては、従来から、国民の生命、健康を守るという見地から規格あるいは基準というものを定めておるわけでございまして、こういう規格あるいは基準に対します貿易上の観点からの諸外国の批判に対しましては、合理的な理由がある場合はその改善を従来もやってまいりましたし、今後とも国民の健康あるいは生命を守るという立場から対処してまいりたい、かように考えております。     〔志賀委員長代理退席、佐野委員長代理     着席〕
  277. 榊利夫

    ○榊委員 ぜひそういう態度で臨んでいただきたいと思いますが、この種の日米貿易の中で出てきている問題、これはいろいろな分野にわたっているわけです。電気製品、医薬品、自動車あるいはJISマーク等々、それぞれ性質も異なるわけでありますけれども、非常に際立っているのは、たとえば自動車などの場合は、日本の場合には大変土地が狭い、車が多い、人も多い、そういうところから、当然環境基準というのは厳しさを要求される。ところが、これにつきましても、自動車の保安基準、排ガス基準が厳し過ぎるという意見がこれまでも出てきていたわけでありますけれども、これについてはどういうふうに対応されているでしょうか。     〔佐野委員長代理退席、委員長着席〕
  278. 金田幸二郎

    ○金田説明員 先生いま御指摘のように、たとえば昭和五十二年度の排出ガス規制を決定するに際しまして、諸外国から外国車の事情を考慮してほしいというような要望があったわけでございますけれども、これに対しましては、輸入車の技術水準といいますか、あるいはその情報伝達に、国産車に比べましてどうしても若干おくれが出る、そのような事情を考慮いたしまして、関係省庁とも慎重に検討いたしまして、適用時期を若干延期するといったようなことで問題を解決したわけでございますけれども、今後作成いたします規制基準につきましても、そういう要望がありましたような場合には、技術的な根拠でございますとか、その妥当性というものについて十分検討することは必要でございますが、一方におきましては、やはり規制強化の必要性といいますか背景といいますか、そのようなものにつきましても十分加味いたしまして、総合的に判断いたしまして対処してまいりたいと考えております。
  279. 榊利夫

    ○榊委員 外国からの輸入の乗用車について、来年の四月一日までの三年間適用を猶予されていると思いますが、しかしその期限も切れる、その先どうするのかという問題もあるわけでございますけれども、やはり適用を延期したというのは、客観的に見ますと、外国などの要求があったのでそれを延期したというふうに判断せざるを得ないわけです。つまり、日本の排ガス基準というのは厳としてあるわけでございますので、外国の車が入ってきたら、日本の排ガス基準ではなくて、実際は外国のそのままで走るわけでしょう。それは大変矛盾しているわけですけれども、どうもその間要求に、言いかえれば圧力に従ったのではないか、こういう見方があるわけでありますけれども、どうでしょうか。
  280. 金田幸二郎

    ○金田説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、技術的な水準を考慮いたしまして、さらに国内における外国車の公害面におきます寄与率等も加味いたしまして、総合的に判断いたしまして対応したわけでございまして、決して外国からの要請に対してうのみといいますか、要請があれば何でもそのとおりするということではございませんし、今後とも総合的に判断して対処してまいりたいと思っております。
  281. 榊利夫

    ○榊委員 要するに、また最初に戻りますけれども、やはり日本人の健康というのは、日本の国土の上での条件、これから出発していろいろ考えていかなくちゃいけませんし、排ガス規制にいたしましても同様であります。したがいまして、貿易上の要求があってある特定のものをそういう国内の規制の適用外に置く、こういったことはやはり原則として好ましいことではないわけでありますので、公害基準というものは、人口や面積等々、日本の国民の健康を守っていく、こういう立場から、緩めることに走ったりあるいは例外を設けたり声が大きく聞こえてくればそれに従うといったことは、避けるべきである。  と申しますのは、やはりいま私はこのラウンドとの関係でも言いたいわけでありますが、今度のこの東京ラウンドで基礎にあるのは貿易拡大ということで、技術的障害をどう取り除くかというふうに構成がなっております。それが逆に、そういういま心配されるようないろいろな日本の規格や標準や、あるいは検査の方法やといったものを緩和する、後退させる口実にそれが使われる危険というのがありはしないか、こういう心配があるからいまの問題を尋ねているわけであります。その点いかがでしょうか。
  282. 手島れい志

    手島政府委員 このたびの協定では、国際的な規格のあるものについてはできる限りこの規格を採用することが進められておるわけでございまして、そういうことが日本としても可能であれば、私どももできる限り国際規格に準拠した規格を国内でつくっていくのが望ましいと思います。  しかしながら、同時に日本の種々な事情によりまして日本独特の規格を必要とするようなものにつきましては、これはあくまで先方の、外国からの関心の表明がありました場合には先方にその旨を説明をして納得を得るようにしていくべきだろうと思いますし、この協定に入ること自体が、日本の規格等に関するやり方を弱めるということにつながるとは考えておりません。
  283. 榊利夫

    ○榊委員 つながるとは考えていないとおっしゃるような方向で、ぜひ運用されていただきたい。しかし同時に、これまでのいろいろないきさつを見ますとやはりそういう不安はぬぐい切れないということも、あえて一言つけ加えさせていただきたいと思います。  時間がそろそろ参りましたけれども、あと二、三分ください。  一つ二つですが、今度の協定承認を求める提案理由の中に、こういうふうに説明されております。「開放貿易体制の基盤を揺るぎないものにしておく」、これに関してでございますけれども他方現実問題で考えてみまして、日本はいわゆるココムに従っております。これには膨大な禁輸のリストがあるわけですが、このいわゆるココムといったもの、あるいはその禁輸リストといったもの、これも開放貿易という見地から見るならば、一つの障壁と言えないでしょうか。実際上、四十数億の世界人口の約三分の一がこの点では貿易的な差別を受けるという結果にもなるわけですが、この点はどういうふうにお考えでしょうか。
  284. 手島れい志

    手島政府委員 現在の東西関係におきまして、現実の世界政治の本質というものが依然として相対的な力のバランス関係というのを基礎にして成り立っていることは否定できないところでございますけれども、この関連におきまして、ココムは、自由主義諸国が安全保障に悪影響を及ぼすおそれのあると考えております戦略物資の輸出につきまして、これを規制をしておるものでございます。したがって、安全保障上の利益ということでございますので、このためにとる措置につきましては、自由貿易体制上の例外として広く認識されているところでございます。
  285. 榊利夫

    ○榊委員 実は七四年の十二月に国連で、諸国家の経済権利義務憲章という決議が採択されております。これは公正貿易を目指すということ、新国際経済秩序をうたって、第四条では、貿易上の無差別原則ということをうたっているのですが、これに反対六カ国、棄権十カ国なんです。日本政府は、このとき棄権十カ国の中に入っていたわけでございます。これは恐らく第四条の貿易上の無差別原則等々を念頭に置いたものであったと思いますし、その当時もそういうふうにコメントされておりました。  言いかえるならば、いわゆるココム派というものが、国連では少数派なわけであります。実際これは一九四九年の冷戦の産物でありまして、一種の軍事ブロックの所産と申しますか、最近ではずっと発展途上国、社会主義諸国を含めまして、経済協力、経済交流の輪というものは非常に広がっております。そういう点では、貿易を広げていくという点からも明らかに時代おくれになっておりますし、政府が世界開放貿易を言われるならば、その貿易障害の除去ということも検討をされていいのではないか、少なくとも研究していいのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  できたら外務大臣にひとつ考えを、基本的な点ですから……。
  286. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ココムの問題は、いまの安全保障上の見地から始められたものでございまして、これはやはり東西間の緊張といいますか、これとも関係しておるわけでございまして、ある程度年次的には適用が緩和されてきた面もあったように思うのでございますが、最近ソ連のアフガニスタン軍事介入というようなことがやはりこのココムの適用について影響を及ぼしてきておる、そういう点はあると思います。もし世界がより平和に向かうならば、こういうココムの必要性も減っていくのだろうと考えるわけでございます。
  287. 榊利夫

    ○榊委員 最後ですが、イラン革命の問題、それから最近のソ連のアフガン介入問題、これについては私たちは一日も早く撤退しなさいということを要求しているわけでありますけれども、それはそれ。同時に、世界的な立場で見まして、やはり貿易という点で東京ラウンドで開放貿易をうたっている、そういう点から見るならば、やはり差別貿易というものは好ましい状態ではないので、矛盾していることは事実なわけです。やはり大きな方向といたしまして、軍事ブロックでいがみ合うのではなくて、発展途上国や社会主義諸国を含めて、地球上の広く自主あるいは平等、互恵、これを尊重しながら貿易、経済関係がノーマルに発展する、こういう方向を目指していくべきだ、こういうふうに思いますし、まさにそういう点で東京ラウンドの問題もうたわれていることと、それから個々の中身の問題というものも、大いに検討されなければならないもの、研究されなければならないものを提起しているように私ども思っているわけであります。  そういう点では、答弁をあえて求めはいたしませんけれども、もし言ってくださるならば結構ですけれども、そういう自主、平等、互恵の世界貿易への姿勢と申しますか、どういうふうに、つまり前向きで考えているのか、お考えを聞かせていただければと思います。
  288. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもも、緊張緩和の世界、さらに一層の軍縮ができる世界に向かうことが非常に望ましいと考えておるわけでございます。大きな方向としてはそういうことに人間の社会というのは行かなければならないものだろうと感じておるわけでございます。
  289. 中尾栄一

    ○中尾委員長 野間友一君。
  290. 野間友一

    ○野間委員 大来大臣初め大変遅くまで御苦労さまでございますが、きょうは私が最後のバッターになっておりますのでしばらくごしんぼういただきたいと思います。  最初にお聞きしたいのは農業問題です。農水省。  「かねや太鼓で踊らされ、とれたミカンがこのとおり」、数年前に私が和歌山県の農協主催のミカン農家危機突破大会に行ったときのスローガンであります。大変強烈であります。いま榊委員の方からも話がありましたけれども、穀物の自給率が大変低下している、食糧の危機、それだけではありませんで、昭和三十六年に始まりました農業基本法による選択的拡大、転作奨励、この中で酪農と同じようにミカン農家の経営もいま大変な危機であります。  そこでまず最初に農水省にお伺いしたいのは、五十四年度、今年度の温州ミカンの生産者手取りの価格、それから生産者のコスト、これは一体どのくらいか、ひとつお答え願いたいと思います。
  291. 畑中考晴

    ○畑中説明員 五十四年の温州ミカン、御承知のように大変な豊作でございまして、品質の低下等もございまして大変に価格が安くなるという事態になっております。そういうことでございますので、中央市場の卸売価格も大変安い。また、加工原料にたくさんひしめきましたのでそういった安い原料価格のもとで出荷をしなければいけないというような状況がございまして、ことしは恐らく農家手取りが全国平均をいたしますと五十円に満たないぐらいの価格になるのではないかというふうに思っております。一方生産費の方は、農水省で調査をしておりますのがまとまるのはまだ先のことでございますけれども、これは恐らく七十円から八十円ぐらい、キログラム当たりでございますが、そのぐらいになろうか。ですから、ことしは生産費に比べますと赤字の年になるのではないかというふうに考えております。
  292. 野間友一

    ○野間委員 おっしゃるとおりでありまして、大変深刻な状態です。今年度はたしか、まだ確定はしておりませんけれども、三百六十数万トンというふうに聞いておりますけれども、大体そんなものでしょうか。
  293. 畑中考晴

    ○畑中説明員 ことしは三百五十九万トンでございます。六十万トンにちょっと欠ける数量でございます。
  294. 野間友一

    ○野間委員 先ほど申し上げたように、つくれつくれでミカンをつくった、ところが大豊作、大暴落と、いま大変危機的な状況でありますけれども、この中で農水省の施策、大変苦労はされておると思いますけれども、実際に農民の中に入っておりますと、いまの農水省、政府というのは全く何をしているのか、これで一体農政なのか、いま激しい怒りが出てきております。  私の友人で那賀町というところに農民組合をつくりました中山という青年がおります。これは三十歳の青年であります。なぜ名前を挙げるかといいますと、彼は三町歩のミカン農家を経営しているわけですね。それでまじめに若い者が農家に居つくように一生懸命努力をしてきた。すればするほど、言ってみれば農水省が言う逆の方向をたどる以外にないのだというようなことを、これは一つの皮相的な見方ですけれども、言うわけです。いまの農政のもとではどうにもならぬというわけですね。私はいろいろ話を聞きまして、そのとおりだと思いました。そしていま温州ミカン農家が考えておりますのは、もう温州はだめだ、新興産地がどんどんできてきた、したがって晩柑に変えたいということで改植がいま盛んに行われております。  そこでお聞きしたいのは、晩柑類、これはハッサクとか夏柑あるいは甘柑、ネーブル、いろいろありますけれども、雑柑類ですね、これらを含めていま年間の生産量はどのくらいか、そしてここ将来の伸びをどのように見ておられるのか、この点についてお聞かせ願いたいと思います。
  295. 畑中考晴

    ○畑中説明員 いま温州ミカンは大変に苦しい事態だということを私どもも十分に認識をしておるわけでございますが、いま先生のお話のようにミカンの中から一部改植をいたしまして晩柑類等に振り向けているわけでございますけれども、大体六十万トンから七十万トンが現在の国産のいわゆる晩生柑橘の生産量でございまして、年により相当振れがございます。これは需要の面から言いますとまだもう少し伸びるんではないかということでございまして、現在私どもの方で長期見通しの見直しというようなことを六十五年を目標にして検討いたしておりまして、まだ数字が固まっているわけではございませんけれども、なお需要拡大の余地があるというふうに考えておる次第でございます。
  296. 野間友一

    ○野間委員 ハッサクについて言いますと、和歌山はシエアが約五割、こういうふうに言われております。たしか全国の生産量が十六、七万トンですね、ハッサクに限って言いますと。これがいまあなたも認めたように少しでも値のいいものということでどんどん改植が進んでおる、こういうことであります。しかもミカン等の相場を考えてみますと、一割その需要より少なければ価格は上がる、逆の場合には価格が暴落する、これはいままでの推移が端的に証明しておると私は思うわけですね。  そこでお聞きするわけですけれども、五十三年十二月の日米の特に柑橘についての合意でありますけれども、この中身についてひとつ説明をしていただきたいと思います。
  297. 畑中考晴

    ○畑中説明員 五十三年十二月に実質的な日米農産物交渉の妥結をしたわけでございますけれども、その内容といたしましては、自由化をしろというアメリカ側の強い要求があったわけでございますが、いま御承知のような柑橘の状況でございますのでこれはできないということで、段階的に輸入枠の拡大をするということで決着を見たわけでございます。  オレンジにつきましては、現在四万五千トンの輸入量でございますけれども、これを八〇年度に六万八千トン、八三年度に八万二千トンというところまで段階的にふやしていくというような形になっております。そのほか果汁につきましては、現在オレンジ果汁が三千トンでございます。これを八〇年度に五千トンにいたしまして、最終的な八三年度には六千五百トンというようなことにするようになっております。またグレープフルーツのジュースは、現在千トンでございますけれども、これを来年度に三千トンにいたしまして、八三年度には六千トンというようなことになっております。そのほか中に付帯するいろいろな事項がございますけれども、数量的なことを申し上げれば以上のようなことでございます。
  298. 野間友一

    ○野間委員 年間のトータルの数字はそのとおりであります。ただ、これも要するに年間の数量と、いわゆるオフシーズン、六月から八月の内訳をオレンジについて言いますと、八〇年度はオフシーズンが三万五千トン、オフシーズンを除いたシーズンが三万三千トン、こういう内訳でありますけれども、これはこのとおりですね。
  299. 畑中考晴

    ○畑中説明員 一九八〇年度につきましては、そのとおりでございます。
  300. 野間友一

    ○野間委員 これが八三年まで取り決めをしておりますけれども、年々この輸入する量が増加しておるというのがこれの持つ問題であるわけであります。六月から八月までいわゆるオフシーズンといいましても、先ほど私言いました晩柑類とはかなり競合する。あるいは晩柑類でなくてもスモモとか桃とか季節的な果物とやはりかなり競合すると思うのですね。たしかブドウもそうです。  そこで、それらも含めてお伺いしたいわけでありますけれども、このオフシーズン、昨年までは晩柑類はたしか四万五千トンのオレンジによって、価格の面において大して影響を受けなかったというふうに私も聞いておるわけでありますけれども、その量が一割ふえるか減るか、これによって心理的にも相当影響します。それもありまして相当価格が高騰したり下落したりする。特にこれだけたくさん入ってくると大変な下落をするのじゃないかと心配なんです。三万五千トンですね。昨年度が二万二千五百トンですか、そうですね。だから一万トン以上の輸入の増加ということになります。  そこで、競合する晩柑類はどういうものがあるかということ。同時に、果たしてこのような輸入拡大、枠の拡大が、特にオフシーズンに限って言って、実際いまの晩柑類をつくっておるミカン農家に影響があると考えるのか、ないと考えるのか、どうでしょう。
  301. 畑中考晴

    ○畑中説明員 ただいまのオフシーズンの月というのは六月から八月の三カ月でございますけれども、この期間に柑橘類全体といたしましては大体二%から三%ぐらい、国産の柑橘類の出回り総量の中に占める六−八月の出回り量は大体二、三%ということでございます。特に晩柑類につきましては、六月から八月といいますよりはむしろその前の三、四、五月というところに非常に出まして、特に四月、五月というところに全体の晩柑の出荷量の半分が出るという大変に多い時期でございますが、六月になりますと比較的少なくなりまして、いわゆる酸味の非常に強い普通夏ミカンというのがございます。昔、夏ミカンと言っていたものでございますけれども、こういうものが中心に出回る程度でございまして、柑橘としては比較的少ない月でございます。  そういう関係もございますので、私どもの方は年間の全体をそのまま伸ばしていくといいますか、拡大をしていくということではなくて、できるだけ柑橘類の出回りの少ない時期にウエートをかけて枠の拡大をやってきたわけでございまして、六−八のいまの程度の枠拡大であれば、柑橘についてはそう大きな影響はないのではないか、またスモモとか桃とかブドウとかいろいろな果物が出ますけれども、その辺は若干嗜好の差等もございまして、そういうものに対しては柑橘類よりは影響の度合いが少ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  現実に、昨年あるいは一昨年六月、七月ごろ月に一万トン程度入ったこともございますけれども、ほかのものが比較的順調に売れているというような状況を見ても、まずまずこれでいけるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ、非常に甘く考えているわけでは、こざいませんで、特にこの期間輸入が集中をいたしますので、輸入業者から計画を出させたり、それを適正な配分になるように指導したり、そういう国産への配慮ということは十分にやっておりますし、また今後もやるようにしていきたいというふうに考えております。
  302. 野間友一

    ○野間委員 私の心配が杞憂であれば幸いなんですけれども、実際農民は非常に深刻に考えておるわけですね。  そこで別の角度からお伺いしますけれども、いわゆるオフシーズンを除いた年間の枠ですけれども、たとえばことしは三万三千トン、八三年になりますと三万六千五百トンというようになりますけれども、この年間の枠の輸入する時期はどうやって決めるわけですか。
  303. 畑中考晴

    ○畑中説明員 この時期はいわゆる上期と下期という二つの時期に分けまして、通常の輸入の割り当て物資というのはそうでございますけれども、二つに区分をして輸入の割り当てをするという方法をとっておりますが、それぞれどの月にどれだけ入れなさいというような指導はしておりません。二つの上、下に分けて入れるということでございます。
  304. 野間友一

    ○野間委員 上期というのは四月から九月を指すわけでしょう。
  305. 畑中考晴

    ○畑中説明員 四月から九月の半年でございます。
  306. 野間友一

    ○野間委員 農林省あたりでのいろいろな情報を聞いてみますと、もうすでに上期の枠を決められたというふうに私は聞いておるわけであります。それによりますと、たとえばこの六万八千トンについて、上期に二万トン、それから下期に一万三千トンですか、そういうふうに聞いておるのですけれども、そうですか。きのう決めたというふうに聞いたのですが。
  307. 村岡茂生

    ○村岡説明員 現在、具体的な割り当ての方法について検討中でございます。近い一週間ぐらいの間に正式な輸入発表ができるように取り進めております。上、下の傾斜につきましては、やや上期にウエートがかかるような方法を従来ともとっておりますが、そのやり方を踏襲したいと思っております。  なお、誤解のないように申し上げたいと思いますが、上期に発券した分は上期に入るということではございません。先生御存じのとおり外貨割り当て証明書は有効期間四カ月、それが……(野間委員「いいです、それは」と呼ぶ)それでは省略します。
  308. 野間友一

    ○野間委員 つまり、いま通産省もいみじくも認めたように下期よりも上期の方が多いわけですね。これは私がいま挙げた数字二万トン、これが恐らく上期の数字になるというように思います。後でまた、そのことについてももう一遍お答えいただきたいと思います。  そこで私が心配するのは、この間の参考人の質疑のときでも農協の常務理事からも出ておりましたけれども、四月、五月に集中されてはたまったものじゃない、こういうことを言うわけですね。いま畑中課長も言いましたけれども、確かに晩柑類で三月、四月、五月、これは大変な量になるわけですね。したがって、もし上期にたくさん入るということになりますと、これはまさに壊滅的とまでは言いませんけれども、相当な打撃を受けることは事実だろうと思うのですね。なぜそのようなことを知りながら上期にウエートを置くのか。特に四月、五月に集中しないという保証はあるのかないのか、このあたりについてお聞かせ願いたいと思います。
  309. 畑中考晴

    ○畑中説明員 上、下の区分なりあるいは入れる時期というのは非常にむずかしいわけでございますけれども、柑橘類全体を考えますと、温州ミカンの生産量が三百五十万トンあるいは三百万トン、生食用に出てまいりますのでもやはり二百万トンぐらいの数量がございます。それに比べまして晩柑類は六十万から七十万トンということでございますので、数量的に言えば晩柑類が出てくる時期は三月、四月、五月というのが非常に多いわけでございますけれども、やはり全体の柑橘類の出回りの状況ということを考えますと、下期の十一月から二月ぐらいまでというのが非常に柑橘類の出回りが多いものですから、従来からそういうものをできるだけ避けて割り当てをするというようなことをやってまいりまして、そういったようなものを踏襲して今後もやっていこうということでございます。いつの時期でも、六、七、八は確かに柑橘類は少ないわけですけれども、いつでもある程度のものがございますので、そこでできるだけ柑橘の少ない時期に輸入をしていただくようにしようというようなことで配慮をしてやっている次第でございます。
  310. 野間友一

    ○野間委員 端的に答えてくださいよ。農民はいま切実に思っております。六月からオフシーズン、それと同じように四月、五月に集中するのじゃないか。これは集中しないという保証はあるのかないのか、このことです。端的に。
  311. 畑中考晴

    ○畑中説明員 四月、五月に集中して入れてはいけないというようなことで指導をすることはなかなかむずかしいわけでございます。いままで季節枠をつくりまして四万五千トンのときもいろいろな形でやってまいりましたが、そういうような状況を見ていますと、四、五月に特に集中をして入ってくるというようなことではなくて、全体の国内の柑橘の出回り状況ども見ながら輸入業者の方が輸入してくるということでございますので、私どもも生産者の方の心配は非常によくわかりますし、生産者団体等ともいろいろ話し合いをしながら、その辺は十分理解をしていただくようにお話をしているところでございます。
  312. 野間友一

    ○野間委員 通産省、ちょっと答えてください。上期は一週間ぐらいの間に決めるというお話ですけれども、しかも上期にはウエートがかかっておる。約二万トンということを私は聞いているのです。数字にほぼ間違いがなければ、その旨お答えいただきたいと思います。
  313. 村岡茂生

    ○村岡説明員 まず数字についてでございますが、実は実際に担当しておるのは輸入課及び農水産課でございまして、私つぶさに存じませんが、ほぼそのくらいの数字のように聞いております。  なお、現実の入着時期は、従来もそうでございましたが、年間枠につきましては比較的平均して輸入される。四月、五月に集中して入れられるということは余り考えられないことかと思っております。
  314. 野間友一

    ○野間委員 ところが、アメリカが要求しておるのはそうでしょう。四月、五月をオフシーズンにしようという強い圧力がかかっておるわけですね。したがって、私はそういう懸念を大変に持っておるわけです。  そこで続けるわけでありますけれども、この合意なんです。これは国会の中でもかなり論議もされておりますが、玉虫色というふうに表現がよく言われておりますけれども、「日本国政府はオフシーズンにおける開放的な市場状況をもたらし、かつ柑橘の貿易機会拡大する目的をもって、以下の計画に従って」云々というように、柑橘についてはこういう記載があります。これからしたら、オフシーズンにおける開放的な市場状況をもたらす、貿易機会拡大する目的でということ、これが貿易の自由化、柑橘類の自由化につながるんじゃないか、とりわけいま八三年度までの数量についても大変に脅威を感じておりますけれども、この時期で見直しということが言われておるわけであります。この合意の中身にそういうことが書かれておるわけですね。そうすると、このように年々量をふやして枠の拡大をして、そしてさらに自由化に突っ込むんじゃないか。アメリカの方では、再々ジョーンズ・レポートが引用されますけれども、そのことを猛烈に、日本における柑橘類の門戸の開放ということを直接に彼は要求しているわけですね。  だから農林省は、そういうことに対して今後の方針、特にいま申し上げました晩柑類はどんどんふえておるという状況の中で、どのような八三年——これは先のことでありますけれども、推移を見ていくというようなそういう官僚的な答弁でなしに、真剣に考えていかねばならぬ。当然だろうと思いますけれども、このあたりについてどういう方針を持っておるのか。まああなたではお答えにくいかもわかりませんけれども、答えられる範囲でお答えいただきたいと思います。
  315. 畑中考晴

    ○畑中説明員 私も大変長い間果樹の担当をしておりますし、また日米の農産物の交渉の中にずっとあったわけでございまして、アメリカ側の自由化に対する要求が非常に強いということもはだで感じておる次第でございます。また、国内の柑橘の状況、これも先生指摘のように大変な状況であるということをよく認識をしているつもりでございますが、どこかで折り合っていかなければいけないということで、現在八三年までのいまのような取り組みができたのだろうというふうに思います。八三年、八二年度末ごろに協議をするということになっておりまして、その後二年間ごとにやるわけでございますけれども、それはその時点におきまして、国内の柑橘類あるいは他の果実、そういったものの生産の状況、需要の動向、そういったものを十分見きわめた上で、その時点その時点でどうやって最善の道を見つけていくかということで真剣に考えていく問題であろうというふうに思いますが、現在のような状況から申しますと、これを自由化するというようなことは、私ども立場から見てもそう容易なことではない、またそういうふうに安易に枠の拡大がつながっていくものでもないというふうに考えている次第でございます。
  316. 野間友一

    ○野間委員 オレンジについて、アメリカの年間の生産量がどのくらいなのか。私の記憶では八百数十万トンというふうに聞いておりますが、どのくらいなのか。そして国内の消費と海外輸出はどのくらいなのか、それをお答えいただきたいと思います。
  317. 畑中考晴

    ○畑中説明員 アメリカでの生産量はいま先生の御指摘になりましたぐらいの数字でございます。  それから海外に出しております生の、いわゆるフレッシュのオレンジは、大体四十万トンぐらいを輸出をしているというのが通常でございます。
  318. 野間友一

    ○野間委員 ある農協の組合長が昨年の夏にカリフォルニアのオレンジ畑へずっと見学に行ったそうであります。日本のような山あり海ありというああいう地形のところにつくるのじゃなくて、灌水で、ずらっと見渡す限りオレンジの果樹園ですね。そして昨年度産とことし産とアベックでずらりと並んでいる、みごとな商品だ、こういうわけです。どうしてもこれを日本にもっと買ってくれという強い要求が出てきて、そこで議論もしてきたという話も聞いたわけです。  榊委員の方からも話がありましたけれども、本当に農産物、特に穀物に次ぐ大問題にいまなっております柑橘については慎重に、しかも自由化は絶対するべきじゃないと思うし、枠の拡大も私はするべきじゃない、こう思います。  大来大臣、いらっしゃるわけですけれども、そういう認識をお持ちなのかどうか、認識のほどを外務大臣にお聞きしたいと思います。
  319. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今晩いろいろお話を承りまして大変参考になりました。これは全体の日米貿易の枠の中で考えなければならない問題でございまして、アメリカ側も御承知のように非常に輸出要求が強い。最近聞くところによりますと、カリフォルニア以外にフロリダの方も輸出したいというような要求もあるようでございますが、国内の情勢もよく踏まえて今後対処してまいりたいと思います。
  320. 野間友一

    ○野間委員 補助金の相殺関税との関係について、この点についてひとつお聞きしたいと思います。  私どもは、かねてから農民の要求でありますいわゆるミカンなどの主な農産物に対する価格保障制度の確立ということ、これを主張し、要求をしてきたわけです。辛うじていま加工用のミカンについては、わずかですけれども一応のそういう措置もとられておるわけでありますが、こういう場合とか、あるいは生食用のミカンについてこれも価格保証制度をつくるということと、この補助金・相殺関税コードとの関係で、今度のコードを見ますと、輸出補助金だけではなしに、いわゆる国内補助金、一般補助金についてもいろいろと規定があるわけであります。この点についてはコードとの関係でどうなるのか、お答えいただきたいと思います。
  321. 手島れい志

    手島政府委員 補助金・相殺関税協定を受諾するに伴って国内で改廃を要する補助金はございません。
  322. 野間友一

    ○野間委員 それでは、同じことを今度は中小企業関係についてお聞きしたいと思います。  資本力とか規模とかいろいろな面からしても、中小企業は大変脆弱であります。そこで何とか国とかあるいは自治体で補助をしてこれらの産業を振興してほしいという要求が非常に強いわけでありまして、下請中小企業振興法とか、産地中小企業対策法とか、円高対策法等々についてきのうもお伺いしたわけでありますけれども、補助金・相殺に関しての交渉の中で、中小企業に対して国内でとっておるいろいろな施策や措置、これらで問題となったものがあるのかないのか、それに対して日本の政府はどのような対応をしてきたのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  323. 手島れい志

    手島政府委員 この協定交渉の過程におきまして、この協定の特定の条文との関係で中小企業関係のことが問題となったことはございません。
  324. 野間友一

    ○野間委員 いま挙げました円高対策法とかその他中小企業の市場開拓準備金あるいは産地中小企業対策臨時措置法、こういうものは問題になっていないわけですか。
  325. 手島れい志

    手島政府委員 中小企業の海外市場開拓準備金制度につきましては、御承知のとおりこの制度は、わが国の中小企業が海外市場の開拓に要する費用の支出に備えて、もって経営の安定化を図ることを目的としたものでございます。この制度が今回できました協定の附属書の(e)項との関係で特に議論をされたということではございませんけれども、このような制度は諸外国でも、制度の目的はさまざまであると思いますけれども、それぞれの事情から維持をされておりまして、しかも直ちにその再検討に進み得ないというのが実情であろうというふうに了解しております。
  326. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、補助金コードに関して言いますと、いまある日本の中小企業関係に対するいろいろな施策あるいは法律、こういうものは全く関係ない、当然そうあるべきだと思いますけれども、そのとおりでしょうか。
  327. 手島れい志

    手島政府委員 ございません。
  328. 野間友一

    ○野間委員 それでは次に進みたいと思います。  ダンピング防止協定について一言お伺いしたいと思うのです。アメリカで改正されましたアンチダンピング法ですけれども、これはコードでは実質的な損害、こういうふうに明確に記載があるわけでありますけれども、ところがアメリカの改正された法律によりますと、実質的でないことはない損害とか、あるいは重要でないことはない損害、わけのわからないようなことが、国内法では注として解釈の中身としてそういうものが書かれておるわけですね。そうすると、かつて問題になりました取るに足らない以上の損害、これまたわけのわからないものですけれども、取るに足らない以上の損害と実質的でないことはない損害、あるいは重要でないことはない損害、これと実質的損害と一体どのようなかかわりになるのか、全くわけがわからぬと思うのです。  ですから、コードの実質的な損害というのは私は一つの歯どめとして評価をするわけでありますけれども、しかし、アメリカの国内法によりますと、このような解釈ではどうにもならぬわけですね。この点について論議になったのかならなかったのか、これに対して日本はどう対応するのか、これについての見解を聞きたいと思います。
  329. 手島れい志

    手島政府委員 先生指摘のとおり、アメリカの法律では実質的なということの定義がきわめて不明確であるということが言えると思いますが、これももとの法律にはその実質的なという字すらなかった、単なる損害だということだけしか書いてなかった点から見ますと、これはかなりの進歩であろうというふうに考えます。また、しからばガットのつくりましたコードにおける実質的な損害というものが具体的にどういう損害であるかということにつきましては、これからのコードの運用を通じまして次第に確定をしていくこととなると思います。  ただ、ダンピングの国内の産業に与える影響といたしまして、ダンピング輸入以外の要因に起因する損害をダンピング輸入の責めに帰してはいかぬ、つまり、ダンピング自体から来ている損害だけを考慮しろということがコードには明確に記述されておるわけでございまして、この二つの点から、今後ダンピング委員会等の場におきまして解釈が確定していくことになると思います。
  330. 野間友一

    ○野間委員 コードでりっぱなものをつくっても一方では国内法で崩してくるということになりますと、ゆゆしき問題だろうと思うのです。この間も参考人の意見開陳のときに東京経済大学の北沢教授が、二国間の問題として今後いろいろ出てくるであろうというふうに言っておりましたけれども、これ一つとりましても、いままでからも、たとえば一九七〇年から七八年までに約七十件これらに関するクレームが米国からつけられた。現在ポータブル電動タイプライターとか電子レンジ、四品目がまだ未解決、こういうふうになっておるそうでありますけれども、せっかく約束してつくったわけでありますから、これをきちっと守らせる、これに即した国内法の改正をさせるということが私は必要だろうと思うのです。  いま局長はこれからの運用上の課題としてとらえておるようでありますけれども、いままでつけられたこのようなクレームが今後なくなるかどうかという点になりますと、やはり危惧の念を否定することができない、私はこう思うわけであります。  時間の関係で、一言これについてもう一遍答弁いただきまして、次の質問に移りたいと思います。
  331. 手島れい志

    手島政府委員 アンチダンピングのコードの中で前のコードとの相違の一つは、以前のコードでは、締約国に協定の運用に関する協議の機会を与えるための委員会というものがつくられておったわけでございますが、この新しいコードでは、定期的に協定の運用等を検討するほかに、二国間協議で解決されない問題の調停、紛争処理に当たるという任務が追加されたわけでございます。したがいまして、アメリカその他の国でダンピングに関しまして私どもが疑義があります場合には多国間の協議に付し、かつそこでの調停ないし紛争処理を要請することができるようになりますので、それだけダンピング関係の法律の運用につきましては、これが厳格に行われるようになるというふうに考えます。
  332. 野間友一

    ○野間委員 きょうはそういうふうにお聞きしておきます。  次に、最後の問題になりますけれども日米合同通商円滑化委員会について、これは管轄は通産省ですか。  米国の対日批判としては、七九年一月に出しました米国議会下院の歳入委員会ジョーンズ報告ですね、これで米国商品に対する日本市場開放を求めているが、そこで問題になる点として幾つか指摘してあります。その中で、「日本市場をさらに自由化することは、米日貿易ギャップを数十億ドル縮小する一助となるだろう。」とか「近年日本はその市場をかなり開放し」また日米両国間には「日米合同貿易円滑化委員会」いわゆるTFCですね、これが設置されておる。徐々に問題は改善の方向に向かっておるが、「まだ多くの障壁が残っている。」なかんずく「公式ないし非公式の輸入カルテル、外国銀行に対する差別、製品の販売を妨げるいろいろな規則や標準、日本品優先調達政策、牛肉、かんきつ類、たばこ、皮製品といった農産物に対する輸入制限などがあげられる。」こういうような指摘から東京ラウンドをながめてみますと、どうも背景にはこういうものがあるということがうかがわれると思うわけであります。  そこでお聞きするわけでありますけれども日米通商円滑化委員会はいつ、何のためにつくられたものなのか、まずこの点から……。
  333. 村岡茂生

    ○村岡説明員 大変恐縮でございますが、手元に資料がないのでございますが、四年ぐらい前に、通産大臣が米国におきまして米国の商務長官と会いましたときに設置が合意されたものと記憶しております。この委員会の目的は、当時アメリカにおきまして、日本事情がよくわからないというようなこともかなり手伝いまして、日本輸入障壁について過大の評価といいますか、過大のイメージを持っていた時期に相当いたします。この時期に向こうから、個々具体的にケースごとに日本輸入障壁は何だと考えているかということをクラリファイ、明確にいたしまして、かつ、それが合理的な要望であるならばわれわれもそれに沿って所要の措置をとるというような、貿易を円滑にするという目的でできたものと承知しております。
  334. 野間友一

    ○野間委員 外務省答弁を……。
  335. 手島れい志

    手島政府委員 私も、いつできたかということにつきましては、現在ちょっと資料を手元に持っておりませんのではっきりとした御答弁はできませんけれども、目的はただいま通産省の方から言われたとおりでございまして、その後今日まで相当な成果を上げてきております。
  336. 野間友一

    ○野間委員 外務省から資料をもらっておるわけですよ。これの「設置目的」に何と書いてありますか。そこにお持ちじゃないでしょうか。「日本の対米輸入増大に資するため」、こう書いてありますよ。これは外務省の文書ですよ。「名称は日米通商円滑化委員会」。ところが設置目的は、はっきり外務省の書類に書いてあるのですよ、「日本の対米輸入増大に資するため」。こんな委員会がありましょうか、実際に。どうでしょうか。そうでしょう。
  337. 村岡茂生

    ○村岡説明員 先ほどのTFCでございますが、設置は一九七七年九月でございます。目的は、米国の対日輸出促進プログラムに協力するとともに日本市場開放努力等について意見交換を行うということになっております。
  338. 野間友一

    ○野間委員 いまのが正確であります。通商円滑化委員会と名前がありますけれども、まさにその目的は「対米輸入増大に資するため」、外務省の表現はこうなっております。  そこで、一体どういう活動をしたのかということを若干調べてみました。これは時間がありませんので私詳細をここで申し上げることはできませんけれども、これはたしか通産省からいただいた資料だろうと思います。五十五年三月十四日付の資料、これは通産省のでしょう。——では、それはそれとして、概略ここでかかった件数が、七七年九月二十七日以降いままで解決したのが十四件、未解決の件数が六件ですね。こうありますけれども、時間がありませんので、端的にこの数だけひとつ確認していただきたい。
  339. 村岡茂生

    ○村岡説明員 おっしゃるとおりでございます。
  340. 野間友一

    ○野間委員 これは榊委員も若干指摘をしたわけでありますけれども、この中にはどういうものがあるのかちょっと調べてみましたら、たとえば燐安肥料——実は、これについては五十三年五月十五日に産業構造審議会が通産大臣に答申した「今後の化学肥料工業の進むべき方向及びその施策の在り方」というのがありますけれども、ここで、「りん酸二次製品の輸入水準は、おおむね二〇%程度を目途とすることが望ましく、」こう指摘したわけであります。これは通産省公報にもちゃんと出ております。ところが、これが出るや否や直ちにアメリカ側から異議の申し立てがある。そして、その結果どうなったかと言いますと、このいただいた資料には、制限していない、あれは単なるガイドラインにすぎない、拘束力はないんだ、これはジョーンズ・レポートにも出ておりますし、通産省からいただいた資料の中にも「制限していない旨回答。」というのがあります。  これは一つの例でありますけれども、このいただいた資料をずっと見ましたら、全部アメリカから出してきたいわばクレームですね。これは日米両国間の貿易の円滑化をうたいながら、まさしく目的に書いておりますようにアメリカの物をどれだけ日本輸入をふやしていくかということに資するためにあるわけで、先ほど局長も、これでうまく成果が上がっておると言いましたけれども、これはアメリカ側から見た成果なのであって、あなたが言うべきものじゃない、こう思うわけであります。  しかも、これはジョーンズ・レポートが出て初めてわれわれはこういうものがあるのかとわかったわけであります。これはどこの管轄に層するのですか。通産省ですか。−通産省の管轄に属するようでありますけれども、こういうものをなぜいままで公表しなかったのか。これは大事な問題ですから、ぜひこれからこれを公表するようにして、われわれも審議の資料としてぜひとも使いたいと思うわけであります。ロッキードじゃありませんけれどもアメリカから出て初めてこういうものがあるということがわかる、これじゃどうにもならぬと思うのです。  したがって、こういうものの存在あるいは中でどういう問題があるのかを明らかにするためにこれから公表してほしい、こう要求しますけれども、いかがでしょう。
  341. 村岡茂生

    ○村岡説明員 TFCを設立いたしましたときにもかなり当時の日刊紙は記載いたしましたし、開催された都度私ども通産省のクラブにおいて公表をしております。なお、記事になり方はやや小さいときも多かったと存じております。  また、このTFCのそもそもの経緯は、当時の膨大な百億ドルを超します日本貿易黒字というものを解消し、かつ、アメリカの企業に現実にいかに日本輸出をできるかということを教えたいということにつきいろいろな努力を重ねてまいったわけでございます。
  342. 野間友一

    ○野間委員 正式にやってないですよ。これは後でまたいろいろ論議したいと思いますけれども、もしそうだとすれば、これは日米通商円滑化委員会なんて名前は変えるべきだと思うのです。これはたしかジョイント何とかかんとかという正式な名称だったと思いますけれども、こういう問題があるわけですね。もっとやはり日本の方も主体的にこの貿易、取引の問題についても取り組むべき必要があるんじゃないか、こう思うわけであります。  大来大臣は午前中の答弁で、いたずらに肩を怒らして云々というふうな、そういう表現の答弁がたしかあったと思いますけれども、それはそれとしても、やはりこういう日米間の取引について、いま申し上げた一方通行ではなしに、日本のそういう立場を踏まえた上でのこういう貿易の円滑化ということなら私は話はわかるわけでありますけれども、この点について、ぜひそのような立場でこれからの取引、これは外務省通産省もそのとおりでありますけれども、この点についての答弁を大来大臣からお伺いしたい。  ただ、時間がありませんので、一言言いますと、あと関税定率の引き下げの問題とかあるいは関税評価の問題等々いっぱい問題があるのですけれども、きょうはこの程度で終わらせていただきたいと思います。  最後に、大臣から答弁をいただきたいと思います。
  343. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 当時の情勢におきましては、先ほど通産省からもお話がありましたように、日本の非常な対米輸出黒字日米の通商を不円滑にしておったわけでございますから、日本輸入を促進することは日米間の通商円滑化に役立つことでございまして、そういう背景のもとにおいて、ことにアメリカ日本市場は閉鎖的であるという批判が非常に強いものでございますから、こういうことも日米の通商円滑化の非常に重要な方法だと考えておりまして、決してこれは一方的なものではない、双方の利益に役立つものだというふうに思います。
  344. 野間友一

    ○野間委員 きょうはそういうふうに答弁を聞いて、終わりたいと思います。どうも御苦労さまでした。
  345. 中尾栄一

    ○中尾委員長 次回は、明十九日水曜日午前九時四十分理事会、九時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時五十三分散会