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1980-03-17 第91回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月十七日(月曜日)     午後五時二十一分 開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 奥田 敬和君 理事 佐野 嘉吉君    理事 志賀  節君 理事 高沢 寅男君    理事 土井たか子君 理事 渡部 一郎君    理事 野間 友一君 理事 渡辺  朗君       石原慎太郎君    上草 義輝君       宮澤 喜一君    勝間田清一君       河上 民雄君    武藤 山治君       玉城 栄一君    金子 満広君       榊  利夫君    林  保夫君       田島  衞君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君  出席政府委員         外務省アジア局         外務参事官   三宅 和助君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         大蔵大臣官房審         議官      垂水 公正君         大蔵省国際金融         局次長     大場 智満君  委員外出席者         大蔵大臣官房調         査企画課長   岸田 俊輔君         大蔵省関税局企         画課長     岩崎  隆君         大蔵省関税局国         際第一課長   野崎 正剛君         厚生省薬務局審         査課長     代田久米雄君         厚生省薬務局生         物製剤課長   戸田  陽君         食糧庁業務部輸         入課長     羽鳥  博君         通商産業省通商         政策局国際経済         部国際経済課長 村岡 茂生君         中小企業庁計画         部下請企業課長 横堀 恵一君         運輸省自動車局         整備部車両課長 清水 達夫君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   中川 一郎君     上草 義輝君   山口 敏夫君     田島  衞君 同日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     中川 一郎君   田島  衞君     山口 敏夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税及び貿易に関する一般協定譲許表変更  に関する第四確認書締結について承認を求め  るの件(条約第三号)  関税及び貿易に関する一般協定ジュネーブ議  定書(千九百七十九年)の締結について承認を  求めるの件(条約第四号)  関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件  (条約第五号)  関税及び貿易に関する一般協定第六条、第十六  条及び第二十三条の解釈及び適用に関する協定  の締結について承認を求めるの件(条約第六  号)  関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件  (条約第七号)  関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に  関する協定議定書締結について承認を求め  るの件(条約第八号)  貿易技術的障害に関する協定締結について  承認を求めるの件(条約第九号)  輸入許可手続に関する協定締結について承認  を求めるの件(条約第一〇号)  民間航空機貿易に関する協定締結について承  認を求めるの件(条約第一一号)  政府調達に関する協定締結について承認を求  めるの件(条約第一二号)      ————◇—————
  2. 奥田敬和

    奥田委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長所用のためおくれますので、委員長の指名により私が委員長の職務を行います。  関税及び貿易に関する一般協定譲許表変更に関する第四確認書締結について承認を求めるの件等ガット東京ラウンド関係協定十件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 私は、まず大来外務大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、今度の東京ラウンド交渉は一九七三年九月十四日の東京宣言からスタートしているということでありますが、その東京宣言の中にはこういうふうな文章があるわけであります。   世界貿易自由化政策は、これまでのショッ  クや不均衡から世界経済を守る通貨制度をつく  る努力が並行してなされない限り、成功裏に進  めることはできない。   閣僚は、貿易分野で始まらんとしている努  力は、秩序ある状態を維持し安定した公平な通  貨制度を確立する努力が引き続き行われること  を想定しているということを忘れないであろ  う。   また、閣僚は、これから始めんとする貿易の  自由化の新しい段階通貨体制の秩序ある機能  を促進するものであることを認識する。  これは要するに、ガットの規定に基づいて自由な貿易を進める努力不離一体関係国際通貨制度の安定を進めていこうという考え方に立っているわけであります。  さて、現実に、この東京ラウンド交渉が始まり、足かけ七年かかって交渉はまとまって、それでいま私たちは国会で審議しているわけでありますが、その間、国際通貨体制は一体安定化してきたと言えるのかどうか。私の見解では、むしろもう不安定化の一途をたどってきた、こういうことではないかと思うのでありますが、このことについて、まず大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  4. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いま高沢委員のおっしゃったような文言がこの東京宣言にございます。貿易自由化促進国際通貨安定の努力が伴わなければならないということは御指摘のとおりでございます。国際通貨制度の面ではIMFの方で検討がこの間進められてまいりまして、七六年に暫定的に合意いたし、七八年四月にIMF協定の改正が行われて、この協定のもとで実際上のフローティング、変動相場制が追認をされたといいますか、そういう形になっておるわけでございます。しかし、現在の情勢は必ずしも安定を得ておるとは言えないわけでございまして、各国インフレーションというようなものも大きな不安定の要因になっております。しかし同時に、フロート制をやめてまた固定相場制に戻ることも現実問題として考えられない、むしろフロート制をできるだけ有効なものにしていこうという努力が行われておると思います。  こういう点では、不満足ではございますけれどもフロート制であったためにいろいろな調整が可能になったという面もあるように考えております。今後とも、各国通貨当局の間の協力を緊密にいたしまして、介入政策ども含めて現在のフロート制をうまく運営していく方向に向いておる、そういう意味では、御指摘のように通貨制度、必ずしも満足できる状態とは言えないと思いますが、セカンドベストといいますか、現在の状況で、ある程度世界貿易の混乱を防ぎながら世界経済が運営されておるというふうに見ておるわけでございます。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 いま大臣からはフロート制の果たしている役割り意味を御指摘になったわけですが、私もそのことは認めるわけでありますが、フロート制というのは一つシステム一つ制度であって、そのシステム制度中身がやはり問題じゃないかと思います。  その中身を考える場合に、国際通貨体制基軸通貨ドルである、そのドルに非常な問題がある、これが国際通貨制度不安定性最大原因になっておる、こういう立場で、われわれはわれわれの立場からドルの問題を考えていかなければいかぬ。日米経済関係通商関係もそこから出されてくる、こういうふうな立場が必要かと思います。  そこで、ドルの抱えている弱点といいますか、いろいろな要因はあると思いますが、私の見解としては、あえて一点にしぼって言えば、よく言われるアメリカドルたれ流し、こういうことがその弱点最大のポイントではないかと思います。ドル国際通貨であるということから、これはアメリカだけがそういうことができるわけですが、アメリカ国内的ないろいろな経済要因も織り込んでドルという通貨を発行する、そういう貨幣をつくり出す、そのつくり出したドルは、国際的な支払いに当てればどこでも国際通貨で通用するということから、たとえばいま問題の石油の輸入代金、あるいはまたアメリカは全世界軍事基地や軍隊を展開していますけれども、それには莫大な費用がかかります。こういうものもまたドルの大きな支出の要因になるでしょう。あるいは国際的ないろいろな投資、いわゆる多国籍企業を通じての投資とか援助、とにかくいろいろにドルアメリカから世界各国へ流れる要因はありますが、結局それを総合して、現在、全世界におけるドル残高は六千億ドルくらいあるだろうというふうなことも聞くわけであります。言うなればそういうことがドルを弱くさせる。しかもその間、ニクソンの政権の段階ですが、ドルと金の関係は切断されることにもなってくる。こうなればいよいよドルの信用はなくなるということにならざるを得ない、こういうことかと思います。  そこで、一九三五年のアメリカ金準備法で金一オンス三十五ドルと定めて、アメリカ以外の国の通貨当局が求めてくればとにかく一オンス三十五ドルという比率によってドルと金をかえるという仕組みによって公定相場が維持されてきたのが切断された、こうなってまいりまして、しかも世界各国ドル残高はたくさんあって、それがふえる一方であるというような状態、こういうところから、最近いわゆる金の価格が暴騰しあるいは暴落する、そういう金相場が出てきているというふうに私は思うわけです。  特にその中で、いわゆる産油国に対する莫大なドル支払い産油国は、その手持ちのドルが、結局ただ持っていただけでは目減りする、目減りするのを避けるためには金にかえようとか、いろいろなそういうことが出てきて、こういう不安定な金相場になる。それは裏返して言えば、ドルの値打ちが非常に不安定であるというようなことから、われわれの円の問題についても、日本の為替の問題についても、結局それが不安定な要因としてはね返ってくる、こういうことではないかと思います。この金とドルとの、あるいはオイルダラーとの関係を見ると、これは明らかに悪循環という状態になっている、こういうふうに見なければならぬと思うわけでして、それがIMF体制を要するに不安定にさせている最大要因である、私はそのように思うわけです。  さて、これは昨年の一月二十五日ですが、第八十七国会施政方針演説で、大平総理大臣は、こういうことも当然頭の中に置かれたと思いますが、こういうふうな演説をされております。「戦後四半世紀にわたって国際経済秩序を支えてきたガットIMF体制は、いまや、大きい地殻変動に見舞われており、世界は、そのための新しい対応策を模索いたしております。」こういうふうな言葉を述べておられるのですが、それでは、日本としてはどういう対応策を模索すべきなのか。これは、当然日本政府としての責任ある一つ考え方や判断があるべきだと私は思います。これは総理大臣演説であるわけですが、外務大臣に対して、エコノミストという立場も含めて、いまのこの問題についての基本的な御見解をひとつお尋ねいたしたいと思います。
  6. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 具体的な通貨問題になりますと、担当は大蔵省でございますので、後から大蔵省からもお聞き取り願いたいと思いますが、御指摘のように、ドルの不安定というのが国際通貨制度の安定を妨げる重要な原因であるというふうに私も考えております。やはり国内インフレーションが年とともに強まる傾向がある。ドルが減価を続けていくということ、一方においてドル基軸通貨としての役割りを持っておるということは、御指摘のようにいろいろな意味での不安定要因になってきておると思います。ただ、十年ほど前までは、アメリカ経済あるいはそれに裏づけされたドルが圧倒的な強さを持っておりまして、そういう意味では、ドル基軸通貨としての役割りを概して果たしておって、たれ流しの問題も当時は余り出ておらなかったように思うのでございますが、七〇年代に入りまして、一つには、アメリカ経済世界経済の中における相対的な地位が下がってまいったということ、それからアメリカ国内におけるインフレーションの問題、いろいろ出てまいりまして、それまでのようにドル世界通貨秩序を支えていくのに不十分になってきた、それがいろいろな点で出てきておると思うのであります。  これに対しての対策は、大平総理演説の中にもございました世界全体としての模索が行われておる。ドルにかわって、それじゃ世界通貨制度を支えるのをおれの方でやってやろうという志願者もいまのところあらわれておらない。結局は、この重要な通貨当局の間の協力を密接にして、共同して世界通貨制度を支えていかなければならない時代になりつつあるのではないかと考えておるわけでございます。  なお、この点につきましては通貨当局大蔵省から答弁をしていただきたいと思います。
  7. 大場智満

    大場政府委員 まず初めに、基軸通貨としてのドルの問題ですが、私どもドル基軸通貨としての役割りが徐々に後退していくという現実は認識しております。ただ問題は、基軸通貨としてのドルにかわる手段がないということでございまして、たとえば円について、われわれは基軸通貨としての役割りを担うほど自信もありませんし、またその負担は大き過ぎるわけです。それからマルクについても、ドイツの通貨当局も同じような見解ではないかと思っております。そうしますと、いまSDRの育成というような方法を通じてこのドル役割りを補っていこうということが考えられているわけでございますが、SDR決済通貨としてあるいは価値基準として、さらには準備通貨として使われるような、ドルと同じような役割りを担うまでにはなかなか至らないというのが現状だろうと思います。  そういう中でどうして通貨制度、端的には通貨間の相場の安定を図っていくかということになってくるわけでございますが、現在のように各国間にインフレ率格差あるいはGNPの格差がある段階では、どうしても固定的な相場制度はとり得ない、フロートしかないというふうに私どもは考えているわけでございます。ですから、そのフロートシステムの中でどのようにしたら通貨相互間の安定が図れるかということが問題であると思います。  いま外務大臣が御指摘になりましたが、私どもは、第一には、通貨当局間の政策の協調をできるだけ密接にしていく。第二には、介入について情報の交換を頻繁にし、また密接な協力をしていく。第三には、制度的な対応になりますけれども、たとえばECではEMSのような相場安定の仕組みをつくりつつあります。また、最近ではIMF代替勘定という新たな資産を創出しようとしておるわけでございまして、こういった新たな資産制度的な面で各国通貨相互間の安定に寄与するのではないかと思います。このような方法通貨相互間の安定を図っていくということが大事であろうと考えております。
  8. 垂水公正

    垂水政府委員 ただいま国際金融局次長の方からIMF体制についての先生の御質問に対してお答えを申し上げたわけでありますが、先生のお言葉の中にガット体制についての新しい対応策はどうしているのだという趣旨の御質問もあったと思いますので、その点について申し上げておきたいと思います。  御承知のとおり、また先ほど外務大臣も言われたとおり、第一次のオイルショックを契機といたしまして国際経済情勢というものは大変変化に富んでおりますし、かつまたわが国にとってかなり厳しいものになっているわけでございます。したがいまして、それに伴って主要国の中ですら、貿易の面について申し上げれば保護主義動きが台頭してきているということは御案内のとおりであります。こういう環境の中にありまして世界貿易の拡大と一層の自由化というものを進めてまいるのが東京ラウンド交渉の目標であったわけでありまして、このたび七年にわたる交渉が妥結をしたわけでございます。  この東京ラウンド交渉の結果、関税と非関税という両分野におきましてかなりの広範な貿易障害の軽減、撤廃に関する合意ができ上がった、かように私どもは考えておりますし、今後の国際貿易のあり方を律するいわばルールが形成されたものと、かように考えておるわけであります。したがいまして、これによって、貿易分野におきましてはガット機能が従来に比べて一段と強化、改善されるということが期待されておるわけでありまして、ガットがこの面で果たしていく役割りは大きくなっている、かように考えておるわけであります。  そういうこととの関連におきまして、まずもって主要参加国の一翼でありますわが国といたしましては、東京ラウンド交渉の成果の誠実かつ早期実施ということが、期待されている開放的な貿易体制の確立ということに貢献するところがまことに大きいものと、かように考えております。  一言あえてつけ加えますならば、この東京ラウンド合意の成立によってガットの面での作業のすべてが完了したと私はもちろん思っておりません。残されたガットの問題というのは、先生承知のとおり、ございます。それらについても対処して、ますますガット機能強化を図ってまいる必要がある、かように考えておるわけであります。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 先ほどの大場次長お答えの中で、結局ドル基軸通貨として弱くなったけれどもそれにかわるものがないというお話ですね。かつての大英帝国世界を制したそのころにポンドがそういう役割りを果たして、それが弱くなって後退したときには次にドルがあらわれた、こういうことだったわけですが、今度はドルが弱くなったときに、円がかわるわけにもいかぬ、あるいはマルクがかわるわけにもいかぬというような状態にあるわけです。ただ、その中で、私は、ヨーロッパ諸国動きはちょっと注目しなければならぬのじゃないかという感じが実はする。  あなたのお話の中にもあった欧州通貨制度、これが昨年の三月から発足しました。その通貨制度の中でECUという新しい欧州通貨単位をつくっている。そしてこの通貨単位欧州各国通貨表示単位とする、各国通貨を実際上このECuに結びつける、こういうふうなやり方ヨーロッパでは始めているわけですね。これは全世界じゃないけれどもヨーロッパという一つの範囲で見ると、実際上基軸通貨役割りを果たさせるというようなねらいがあるのじゃないかと思う。しかも、ヨーロッパ各国中央銀行の保有する金、ドル準備の二〇%ずつをお互いに拠出して、それをECU裏づけにするというようなやり方をしている。このやり方は、ヨーロッパという次元ではあるけれどもドルにかわる基準通貨をつくろうという一つ考え方があるのじゃないか、その基軸通貨裏づけとしてもう一度金というものを位置づける、いわゆる金の復権というような方向ヨーロッパは一歩踏み出してきたのではないのか、そんな感じがいたします。  したがって、それについての大場次長の評価をお聞きしたいということと、そういうものをヨーロッパではやっておるということをにらみながら、それではアジア日本は一体何ができるか、何をやるべきなんだというようなことに当然なると思いますが、この日本が一体何ができるか、やるべきかとなると、大変むずかしい問題だと私も承知はしておりますが、そういうことも含めて御見解をお聞きしたいと思います。
  10. 大場智満

    大場政府委員 高沢委員指摘のように、ヨーロッパ諸国の金(きん)を含めて外貨準備の二〇%を基準にして、欧州通貨基金というものがつくられている、これは事実でございます。しかしこれは、各国欧州通貨制度をつくるに当たって、参加国中央銀行がどの程度通貨基金に金(かね)を出していくかというときに、ドル等外貨のほかに、外貨準備の中に同じように含まれている金を取り上げて、その二〇%を一つ基準にしておるということだろうと思います。したがいまして、そのECU決済通貨としての役割りは進んでいくということは言えると思いますが、そこに、各国からの拠出の基準として使った金の役割りが高まるということとの間には一線が画されているのではないかというふうに私は判断しております。つまり、金が現実決済手段として使われるということ、そういうふうには考えてないわけでございます。  第二に、これは高沢委員承知のとおり、ECuそのもの価値各国通貨バスケットでできております。ですから、ちょうどSDRが十六通貨バスケット価値を決めているのと同じように、このECU価値参加九カ国の通貨バスケット方式マルクが一番大きくて三三、四%の比率だと思いますが、各国通貨バスケットで決められているわけでございます。したがって、その価値基準としてのECUを考えた場合に、これが金と関連づけられているとは言えないということが指摘できると思います。そのようなことで、私は、ECUの発行をもって直ちに金が復権というふうには考えていないわけでございます。  ただ、ヨーロッパでは日本、イギリス、アメリカに比べて金選好が強いことは事実でございます。これは、外貨準備中に占める金の比率が大きいということからもおわかりいただけると思いますが、金選好が高いことは事実でございます。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 いまのことにつながる問題としてもう一つお尋ねしたいわけでありますが、六月にベネチアサミットがありますね。これは新聞の報道ですからその信憑性というものはまだ確実なものではないかもしれませんが、そのベネチアサミットフランスジスカールデスタン大統領が金の復権につながるような提案をするのじゃないかというふうに観測されている、こう伝えられているわけです。それは、アジアにおいては円を中心一つ通貨圏をつくる、ヨーロッパではいま言ったこの欧州通貨単位ECU中心通貨圏、それからソ連のルーブルというものを中心に、社会主義のブロックはこれはこれで一つ通貨圏、そしてまた、全世界にまたがるでしょうがその他アメリカドル通貨圏、大まかに分けて四つの通貨圏というものを創設して、その相互の間では結局金を決済に使うというような方法で実際上の金の復権提案するというようなことが言われているわけですが、本当にそういう提案が出るのかどうか。もちろん私も確実なあれを持っているわけじゃありませんが、仮にそういうものが出てくるとすれば、今度はもう、通貨圏同士の間では金を決済に使おう、こういうことになってくれば、さっき欧州通貨制度で私の言ったよりもっと足を踏み出した金の復権というふうなことになるのじゃないのか、こう思います。  したがって、これは仮定の問題かもしれませんけれども、そういうことが論議された場合に、当然サミットには外務大臣総理と一緒に出席をされると思いますが、こういう問題についてのお考えを、大臣、また大場次長からひとつお聞きをしたいと思います。
  12. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま高沢委員お話のございましたようなアイデア、一部にあると聞いておりますし、フランス等でそういう研究が行われておるということも仄聞しておりますけれども、果たしてその案が今度のサミット提案されるかどうか、いままでのところはそういう連絡は聞いておらないわけでございます。また、そういう案が出ましてもサミット諸国が賛成するかどうかもわからないと考えるわけでございますが、なお、さらに具体的には大蔵省からお聞き取り願いたいと思います。
  13. 大場智満

    大場政府委員 ジスカールデスタン大統領国際通貨改革構想というのは、フランス通貨当局内で検討中というふうには聞いておりますが、私どもも現時点でどのようなものが勉強されているかわかっておりません。ですから、新聞等で伝えられているものが実際に浮かび上がってくるのかどうかについても、この時点でコメントできない状況でございます。  ただ、金の問題につきましては、金の復権ということが言われておりますけれども国際通貨としての役割りを金に求めるというようなときに、三つの観点から考えなければいけないと思います。第一は、決済通貨あるいは取引通貨としての役割りです。それから第二には、価値基準として使用されるかどうか。それから三番目には保蔵手段といいますか、通貨ですから準備資産として、つまり各国外貨準備として使用されるかどうか、こういう問題だと思います。  いずれにしましても、この三つの視点から考えた場合に、金というのは国際通貨としては適当ではないのではないかと私は考えております。  第一の、決済通貨なり取引通貨としての金を考える場合に、やはり流動性が不足しているということ、つまり金の産出量には限界がありますし、また現在保蔵されている金にも限度があるわけでございまして、取引通貨決済通貨として使用されるにはたえない手段ではないだろうかというふうに考えております。  それから第二の価値基準ですけれども、これは最近のように金が乱高下を繰り返している、つまり物としての金、しかもその動きが非常に激しい、このような手段価値基準として使うことは適当ではないのではないかというふうに考えているわけです。  それから三番目に、準備通貨としての役割りですが、これは先ほども指摘申し上げましたが、確かに各国通貨当局外貨準備の中で金というものを大事にしております。金廃貨の方向は決まっているわけですけれども各国外貨準備の中で金を大事に持っていることもまた事実でございます。しかし、この金が各国問で、各国通貨当局間ではかなり偏在しているわけでございまして、このように偏在している金というものの準備通貨としての役割りを余り高く評価することは適当ではないのではないか。  そういうことから、私どもとしては現在までの金廃貨の方向をそのまま踏襲し、進めていきたい、このように考えております。  なお、円を中心に何か通貨圏のようなものができないか、あるいはそういった構想はあるのかというお話でございますが、確かにEMSの場合にはEC諸国という一つの地域でございます。経済政策面でも協調が進んでおりますし、またインフレ率格差、GNP、そういった面でもできるだけ整合性を図っていこうという、そういう努力、共通の意思があると思うのですが、東南アジア諸国あるいは近隣の諸国と日本との状況を考えてみますと、やはりインフレ率格差とか相互のGNPの格差とか、余りにも開きが大き過ぎるのではないか。それからまたECのように統一を最終の目標にして、通貨の統一ということまで考えて、経済政策の整合性を図っているという事情にもないわけでございまして、一つのそういうECのような通貨圏をつくるのは、まだとても時期尚早、とても困難である、そういう時期にあると思っております。
  14. 高沢寅男

    高沢委員 いまの大場次長の御説明で金の偏在ということを指摘されましたが、しかしその偏在といった場合に、日本が金の保有はきわめて少ないというところにむしろその偏在の一番の問題があるのではないのかというような感じで私はお聞きしたわけです。  しかし、それにしても、たとえばアメリカはもちろん金とドルの交換を切断しましたけれども、あれは相当減ってきたから切断したわけであって、しかし減ったと言ってもやはりアメリカは持っていますね。それからヨーロッパ各国も相当の金準備を持っておる。少なくもこのサミット参加するような国で金の準備の一番少ないのは日本であるというふうな、こういうことを頭の中に置きながら言われたのではないかというふうな感じがしますが、そういう状態でもし国際通貨制度がやはりもう一度金へ戻るというようなことになってきたときに、日本の受ける不利な立場というふうなものは、これはいまの大平内閣がどうこうという問題よりもっとさかのぼって、戦後の三十年以上にわたる歴代自民党政権の経済政策の責任というものは私は大変重大じゃないかというふうなことも考えるわけですが、ただ、その点はいますぐ、だからこうするということには、なかなかそちらもお答えは出ないかと思います。  それからもう一つは、いまも御説明の中にあった各国のインフレの不均衡、これもまた大変むずかしい問題だと言われたのですが、私はむしろそれは日本が一番大事な経済の相手と見ているアメリカ、そのアメリカ日本の間のそういうインフレの不均衡というこの現状が大変重大じゃないか、私は実はこう思うのです。  ここに、大蔵省顧問の松川さんがアメリカを訪問したりまた世界各国を回って最近帰られた、それで新聞記者のインタビューに答えて談話をしておられる、それの新聞記事がありますけれども、そこでアメリカの経済について、米国のインフレマインドは物すごい、何でもいいから物を買っておく方が得だという心理が根づき、クレジットカードで商品を買い、その借金を払うために別なところから借金する自転車操業に陥っている人が多い、米国市場最大のデフレは一九二九年から始まった大恐慌のときだが、これだけのインフレは、現在のインフレは、これは南北戦争以来のことだ、こういうふうなのがアメリカのエコノミストの一致した意見であったというふうなことを、松川顧問は言っておられるのですね。  つまり、いまのアメリカのインフレは大変なものであるということを述べておられるわけでありますが、そういうアメリカのインフレの度合いと——私は日本の経済もいまやはりインフレ基調であって非常に重大な段階に来ていると思いますが、それでもアメリカのインフレの度合いと日本のインフレの度合いにはまだ格差があります。それは公定歩合の違いを見てもはっきりわかると思うのでありますが、さて、そういう状態で今回カーターのインフレを抑える総合政策が発表されたわけですが、一体これで本当にアメリカのインフレはおさまるというふうに見ることができるのか、そういう評価について私はお聞きをしたい、こう思います。それをまずお答えいただきたいと思います。
  15. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 確かに現在のアメリカで相当換物思想的な動き、これは不動産や物を買うというような形が出ておるように存じます。それで、当然何か総合対策が打ち出されるだろうということを諸外国も期待しておったわけでございますが、三月十五日に対策が発表になりまして、今度の対策は相当思い切った対策だろうと私どもとしてもその点は評価しておるわけでございます。  ただ、基本的に、アメリカ経済の生産性、成長率が非常に低くなっておるということが心配でございまして、このインフレ対策、今度の対策がある程度功を奏するといたしましても、一、二カ月のうちにということにはいかない、やはりかなり期間がかかるのではないか。アメリカ側でも、一けたインフレになるのはやはり来年に入ってからではないかという観測もあるようでございますので、必ずしも楽観はできませんが、しかしアメリカ政府が本格的にインフレに立ち向かおうとしておる意欲は、今度の施策の中でうかがわれると見ておるわけでございます。
  16. 大場智満

    大場政府委員 アメリカのインフレ率の問題と、それからもう一つは金の問題について若干補足させていただいて、その後アメリカの対策の評価について見解を申し述べたいと思います。  まず、金の問題ですと、各国通貨当局の金の保有の問題ですが、サミット参加国七カ国のうちで日本が一番少ないということではございませんで、英国とカナダの外貨準備中に占める金の保有は日本より少ないということになっております。  それからインフレ率の問題でございまして、米国のインフレは卸売物価、消費者物価とも、最近、前年同月比大体一三%前後でございますかで推移しております。これに対しましてわが国は、政府の見通しですと、卸売物価の上昇率は九%台ということですし、消費者物価の上昇率は六・四というふうに想定されているわけでございます。この一年間を暦年でとりましても、わが国と米国との間ではインフレ率に画然とした格差がある、つまり米国のインフレ率が高いという状況ではないかと思います。  問題は、これを為替相場が反映してないということがむしろ問題かとも思っているわけですけれども、現在の為替相場、これは円とかマルクもそうなんですけれども、今度のインフレ対策をもたらした原因である米国のインフレ率に着目しませんで、むしろその結果としての高金利、米国のドルの高金利ということに着目してドルが強くなっている。ですから、基礎的諸条件、ファンダメンタルズと言っておりますが、こういった基礎的諸条件からして、いまのマルクが弱い、あるいは円が弱いということは説明できないのではないかというふうに考えているわけでございます。  若干補足してお答えさせていただきました。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 アメリカでとられたインフレ対策、それに今度はこたえるということになりますか、あしたは何か公定歩合の引き上げが決められる、そしてその公定歩合は九%、日本の公定歩合としては過去最高のそういうところまで上げられる、こういうふうに新聞は報道いたしております。  それで、その効果がどうかということなんでありますが、私はさっき、ドルと金の関係が悪循環、ドルの値打ちが下がるから金は高くなる、金が高くなるからまたドルを金買いに回して一層またドルの値が下がる、そういう一種の悪循環というものにアメリカ経済がなっている、こう思うのですが、日本の経済を考えてみた場合でも、たとえば金利がずっと高くなってきましたね。その金利はアメリカが金利を高くするから日本も安い金利でいるわけにいかぬというふうな関係は確かにありますけれども、しかし、今度は日本が金利を上げるということが結果においては国債の値段を下げる、それを今度は下がったものを支えるためにはまた金利を上げなければいかぬ、ここに一つの悪循環が出ていると思います。  それから公定歩合を上げて金利を上げるということは、それで経済を抑えて物価を抑えるというようなねらいを当然持ってやられるわけですが、最近の日本の経済では、いわゆる減量経営ということで、各企業関係は切るべきところは切って相当の合理化を進めてきた、こういう段階で金利が上がりますと、その金利のコストの上昇を結局自分の企業でつくる製品の値段に転嫁するというようなことで、かえって値上がりする。私はある友人の経済学者からそういう危険も考えられるというふうなことを聞きましたが、そうなると、金利の引き上げと物価の上昇、これまた悪循環になってしまうというような段階までどうも日本の経済も来ているのじゃないのか。  そして、そういうことは結局、日本国内要因というようなものはもちろんありますが、対アメリカ経済との関係という面からそういうことを引き起こされているという面が非常に大きいのじゃないのか。そうすると、向こうから日本にインフレを、結局火をつけてくるという、アメリカ日本とのそういう関係をはっきりと切ることが必要なのじゃないか、こういうように思うのです。それについての御見解をお聞きしたいわけです。  それとの関係でもう一つついでに申し上げますが、これは特に外務大臣にお聞きしたいわけですが、最近アメリカから日本に対する軍事力の強化を求めるということが非常に来ております。これは軍事的な見地からアメリカ世界戦略あるいはアジア戦略の中で日本の自衛隊に役割りをさせよう、こういうねらいももちろん第一のねらいだと思いますが、もう一つのねらいは、その裏を見ると、とにかく日本が軍事予算を拡大するということになれば、それだけまたいま問題の国債発行がふえるということになる。そして、その国債発行がふえるということは日本のインフレをそれだけ促進することになるということで、アメリカ日本に軍事費の拡大を求めるということの中のもう一つの経済的ねらいは、自分はもうインフレで、これを自分自身は始末をつけられない、それならば日本に対して、自分と同じ程度のインフレにさせてやろう、自分よりもっとインフレ度の高いそういう経済に日本の経済をさせれば、日米貿易関係でそれだけアメリカはとにかく息がつけるというようなねらいも持って、こういう軍事力強化ということも出てきているのじゃないかというふうな感じがいたします。  皆さんの立場からすれば、そこまでの判断はないと言われるかもしれません。しかし、いずれにせよ、アメリカのそうした大変なインフレの進行と日本のインフレの進行をはっきり断ち切るということについての判断や決断がいま一番必要じゃないか、こう私は思います。  そういう立場からひとつ大臣の御見解、さらにはまた次長の御見解もお聞きしたいと思います。
  18. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問の最初の部分は、大蔵省からお答え願った方がいいかと思いますが、ちょっと付言いたしますれば、確かにアメリカにおけるインフレ、高金利が日本その他ヨーロッパ諸国等の高金利を誘発しておるという点はございますが、この点はアメリカの今度の緊急対策でも、金利そのものは、公定歩合そのものは上げないで、分野を限って高率適用するというようなことで、金利引き上げ競争の悪循環を避けようという意図が見られるように存じております。  また、アメリカが自分のインフレと同じようなインフレを日本に意識的に起こさせるという点につきましては、そういう意図を持ってやっておることはないだろうと思います。  防衛問題についての日本の負担増加というもの、これは政府から正式な要求はまだこないわけでありますが、いろいろな立場の人がそういう発言をしておりますが、これはこの数年間、ことに十年間、ソ連の急速な軍備拡充が行われて、その間にアメリカ及び西側はむしろ軍事支出を避けてきたことに対して、これではいかぬという考え方が一両年出てまいりまして、そこにアフガニスタンのソ連の軍事介入というものが出てまいって、一般的に西側の防衛努力を増強しなければいかぬ、その一端について日本協力してほしいというような考え方につながってまいったと思うのでございまして、日本が防衛費をふやす、それによってインフレになる、それによってアメリカのインフレと見合うというところまでの考え方はないのではないか。むしろ日本アメリカヨーロッパ協力して、何とかこの激しくなってまいりましたインフレをスローダウンしなければならないということで協力しようというのが基本的な立場ではないかと考えておるわけでございます。
  19. 大場智満

    大場政府委員 国内物価に関連する部分は、後ほど岸田調査企画課長からお答えさせていただきたいと思います。  金利格差と資本移動といいますか、対外水際面の問題について、一言外務大臣の答弁を補足させていただきたいと思います。  確かに金利格差が生じますと、短期、長期の資本移動が起きるわけでございますけれども、短期の場合には、金利裁定によりまして先物相場が動くということにつながってまいりますので、その間にきわめて大きな資本移動が起きると一概には言えないと考えております。  それからまた、長期資本移動の場合には、これまた対象となる資産の金利のほかに為替の先行きということを重視いたしますので、単に金利格差があるから資本移動が起きるという性格のものではないのではないかと考えております。  いずれにしても、今度の米国の措置、つまり金融政策につきましては、目玉は一二%のサーチャージをかけるということにあるわけでございますが、これはいま外務大臣が御指摘になった問題のほかに、米国通貨当局としては金利を上げないで信用調整といいますかマネーサプライの伸びを抑える手段として、三%のサーチャージを選択したのではないかと私は考えております。
  20. 岸田俊輔

    ○岸田説明員 国内物価と公定歩合の問題についてお答えをさせていただきたいと思います。  具体的な公定歩合の問題は日銀の所管でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。  一般的な公定歩合と物価の問題でございます。先生先ほど御指摘のように、公定歩合による金利の上昇が転嫁をされてぐるぐる回りが起こるのではないかということでございましたが、一部に若干金利の上昇を転嫁する部面もあるかと思いますが、総体的に見てまいります場合には、金利が上昇いたしますと結局は設備投資が停滞をする、それから在庫投資も減少する、それから住宅なんかも金利が影響いたしまして、全体として需要が減退をするという形にはなるのではなかろうか。その需給関係から物価の安定、鎮静という方向に向かうことは間違いないのじゃなかろうか。  この点につきましてはマクロ計算でもそういうような結果が出ております。特にマクロ計算でございますと、為替相場関係は大体組み込まれておらないのでございますが、この点からも、公定歩合が上がりました場合には相場の安定、円高傾向ということになりますれば、これは直接的に物価に好影響が与えられるということでございますので、ほかの国のように換物思想が進行いたしまして幾らやっても効かないというような状況が現出している場合もございますが、わが国の場合は企業、消費者ともに非常に健全なビヘーピアでございますし、公定歩合を上げましたときの物価への効果はより大きいのではないかと考えております。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 お約束の私の時間はあと五分しかないので、ひとつ具体問題に移りたいと思います。  通産省、お見えになっていると思いますが、最近わが国のアクリル紡績糸がアメリカ国際貿易委員会によってダンピングの判定を受けたということが報道されております。このことについて、一つは、このことをわが方としてはどういうふうに評価するか、それからそれに対する今後の対アメリカ対応を政府としてどうされるか。もちろん業界は業界でやりますが、政府としてどうされるか。  その政府としてどうされるかということの一つに、これは今度は外務省にお尋ねするわけですが、今度のアクリル紡績糸のダンピング問題、いまわれわれが審議しているダンピング防止協定がわれわれの批准が成り立って有効になってきた段階で、これを使って対アメリカ関係をどういうふうに外務省としては折衝されるか、そのことを、まとめた質問の形で済みませんが、それぞれ御説明をお願いをしたいと思います。
  22. 村岡茂生

    ○村岡説明員 御説明申し上げます。  日本の対米向けのアクリル繊維の輸出でございますが、五十一年の後半から五十二年にかけまして実は非常に急激に増加したわけでございます。このような事情を受けまして、米国の紡績業者協会は一九七八年の十一月にこれら日本から輸入されるアクリル紡績糸はダンピングであるということで財務省に提訴したわけでございます。財務省はこれを受けまして、翌年七九年一月に正式に受理いたしまして検討を進めてまいったわけでございますが、同時に七九年の七月には、イタリア産のアクリル紡績糸もダンピングであるという提訴を受けまして財務省でいろいろ議論いたしました。七九年の七月に財務省は、日本産のアクリル紡績糸についてクロの仮決定をいたし、その後いろいろ精査を経まして、同十月には二三%強に及びますダンピングマージンありというクロの決定をいたしまして、ITC、国際貿易委員会の方へ付託したわけでございます。これがついせんだって三月の六日にITCにおきまして被害ありという認定がありまして、ダンピングマージンあり、被害ありということに相なったわけでございます。  私どもといたしましては、いろいろ日米交渉あるいは長期繊維取り決め等に基づきまして、対米輸出につきましては、数量枠などを設けまして規制をしていたというような事実もあるわけでございまして、数回にわたりまして、アメリカにいろいろ抗議を申し入れてきつつあった、こういう状況に、ございます。  しかしながら、三月六日におきますITCの仮決定がいかなる内容による判定であるのかということにつきまして、われわれまだつまびらかにすることができない状況にございます。米国政府に対しまして、早急にこの内容を知らせていただくように話をしておるところでございまして、その内容がわかり次第、再度抗議をするなり、適当な措置をとってみたいと考えております。
  23. 手島れい志

    ○手島政府委員 ただいま通産省の方から御答弁がありましたように、従来とも政府はアメリカに対して関心のあるところを示し、いろいろ申し入れを行っていたところでございます。ただいまも、最近のITCの決定につきまして、その内容について照会中でございますが、その結果を検討の上、さらに納得し得ない点があれば、改めてアメリカ側と話をしたいと思っております。  また、新しく今度できましたアンチダンピングの協定では、必要があれば情報提供を求めるということもできますし、そのほか、二国間の協議あるいは国際的な場において、この問題を取り上げることができるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この協定を御承認いただき、日本も正式にこの協定の権利を要求できるということになりましたら、先ほど申しましたアメリカ側からの情報の結果いかんによりましては、この協定の場において、多国間の協議で取り上げることもできるのではないか、そういうふうに考えております。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、もう私予定いたしました質問の時間が尽きましたので——次の質問者から御了解をいただきましたから、もう一つ聞きたいと思っていたことをお聞きいたします。  性格の似た問題でありますが、最近わが国の米の輸出が、またアメリカから、これは不正取引である、こういうふうなことで、政治問題にどうもなりそうな気配になっておる、こう伝えられております。これについては、ひとつ農林省から、この事情の経緯の御説明と、今後どういうふうに対応するかということの御説明をいただき、同時に外務省からは、今度の補助金・相殺措置協定が成立した場合に、われわれのそれに対する対応の仕方をひとつお聞きをいたしたいと思います。
  25. 羽鳥博

    ○羽鳥説明員 お答えいたします。  私どもが過剰米処理の一環として実施いたしております日本米の輸出に対しまして、御指摘のように米国の関係業界は、これが不公正な取引であるとして、米(こめ)の国際市場を撹乱して米国の米の輸出に悪影響を与えるものであるとしまして、強い懸念を表明しているところでございます。しかし、私どもといたしましては、輸出は過剰米処理の重要な用途の一つでありまして、かつ、食糧不足に悩む開発途上国からの強い要請にこたえるという援助的性格のものであります。したがいまして、FAOの余剰処理原則等に即しまして、関係国と十分な連絡をとりながらこれまで取り進めてきたところであります。今後とも、米国を初めとする伝統的な輸出国との間に摩擦を生じないよう関係国と調整に配慮しながら、過剰米の輸出が円滑に行われますよう対処してまいりたい、かように考えておるところであります。
  26. 手島れい志

    ○手島政府委員 今度できました補助金・相殺関税のコードとの関係について御説明をさせていただきます。  今度できましたコードによりましても、あるいはもともとガット一般協定によりましても、一次産品に対する輸出補助金というものが何であるかということについては、実は具体的な定義がないわけでございます。したがって、日本の米の輸出が、この協定で言う輸出補助金に該当するかどうかということについて、協定の解釈をいまの段階で導き出すことは困難であろうと思います。  いずれにいたしましても、一次産品に対する輸出の補助金であって協定によって交付が禁止されているものは、幾つかの条件に合致したものだけなのでございますが、その条件を御説明いたしますと、一つは、自分の国の輸出の占拠率と申しますか、外の世界市場におけるマーケットのシェアが不当に増大することとなるものと、それから、特定の市場の価格を相当下回る価格で輸出したもの、非常に国際相場よりも安い価格での輸出ということでございます。  先ほど農林省の方からも御答弁がありましたように、日本の米の輸出は、過剰処理の一環として緊急的な措置としてやっておるものでございますし、また、食糧不足に悩んでおります発展途上国に対する援助ないし援助的な色彩が非常に強いものでございます。それに価格につきましても、国際相場を十分に参酌して決定をしておるわけでございます。したがって、先ほど申しましたその協定上の条件に照らして見る限り、わが国の過剰米の輸出が協定上禁止される輸出補助金には該当しないと十分主張できるものだというふうに考えております。  もちろん、その協定の中には、ほかの国からの異議申し立てがあった場合に協議をするような条項もございますので、外国から協議を要請されるようなことがあるかもしれませんけれども、そのときには、私どもとしては先ほど申し上げたような事情を十分説明いたしまして妥当な結論が得られるであろう、そういうふうに努力したいと考えております。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 ではもうこれで最後です。  いま手島局長の御説明がありましたが、この補助金・相殺措置協定の第十一条の1、ここには「輸出補助金以外の補助金」という形で、その署名国が、いわば国内政策としての社会政策あるいは経済政策上の目的を達成するための重要な手段としてこの補助金をやる場合は、輸出補助金とは性格の違うものだ、こういうこともきちんと規定されているわけです。よく日本の場合には、食管会計の買い入れ価格と売り渡し価格の関係でそういう補助金の性格が問題にされますが、私は日本の場合には、この十一条の一の規定に該当するものではないのか、こんなふうに思いますが、将来、これがそういう国際的な議論になる場合にも、そういうお立場が外務省としても当然あるのではないかと思いますが、ひとつそのことをお聞きをして、終わりたいと思います。
  28. 手島れい志

    ○手島政府委員 ただいま御指摘の十一条の規定は、輸出補助金以外の補助金についての規定でございまして、この点につきましては先生の御指摘のとおりでございます。先ほど私答弁いたしましたのは、一部に日本の米の輸出が、これは輸出補助金に該当するのではないかという意見がありますので、その点につきましては私が御答弁を申し上げたような次第でございます。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 以上で私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  30. 奥田敬和

    奥田委員長代理 渡部一郎君。
  31. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このたびガット史上空前の規模で行われました東京ラウンド全体の成果につき、政府はどのように評価されているか、まず自己採点といいますか、評価を聞かしていただこうと思います。
  32. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この東京ラウンド交渉は七年間を費やしてようやく妥結に至ったものでございますが、その間オイルショックその他、世界経済にいろいろな困難な問題が出まして、ともすれば保護貿易の傾向に走りそうでありました世界経済、これに対して東京ラウンド交渉が重要な歯どめとして働いてまいったと思いますし、これからの世界経済を考えます上にも、とにかくこの協定が成立に至ったことは、世界貿易自由化という大本を維持する上に大きな役割りを持つと思うわけでございます。特にわが国のように貿易の依存度が強い、諸原料を輸入に仰いで製品輸出に依存しておるという経済にとりまして、世界貿易自由化の基調が維持されるということは、日本の経済の今後にとりましても重大な意義を持っておるかと思います。  また、単に関税率の引き下げだけでございませんで、貿易の枠組みとか非関税障壁の問題、いろいろな周辺の問題といいますか、関連する問題についても今回同意を得られたということも、従来の協定から見て一つの前進だろうと考えておるわけでございます。  そういうことで、多少積み残しの問題等もございますけれども、全体としての評価は、とにかく国際的に比較的不利な環境のもとでこの協定成立に立ち至ったということは、わが国立場から考えましても、また世界経済全般の立場から見ても、評価すべきものだろうと考えております。
  33. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この東京ラウンド交渉参加した各国政府は、この条約の批准に関して国内的にどのような措置をとり、現在どこまでその措置がとられているか。また各国内においてこの十個の協定に関してどのような意思が表示されているか。その点を承りたい。
  34. 手島れい志

    ○手島政府委員 米国におきましては、東京ラウンド交渉結果を国内的に実施する法律をつくりまして、この法律は一九七九年の通商協定法と呼ばれておりますが、この協定法は、議会の承認を得まして昨年の七月二十六日に成立いたしまして、これによって東京ラウンド交渉結果が議会で承認をされておるわけでございます。  それからECにつきましては、昨年の十一月二十日に開催されました外相理事会におきまして、東京ラウンド交渉の結果が承認をされております。  また、そのほか北欧の各国については、スウェーデン、ノルウェーが昨年十二月に議会の承認を得ておりますし、またフィンランドにおいてはことしの二月に議会の承認を得たというふうに聞いております。  また、スイスにおきましても、同じように昨年十二月に議会の承認が得られておるようでございます。  また、カナダについては、いろいろたくさんあります協定の受諾のために議会の承認を要しないということでございまして、ほとんどの協定をすでに受諾済みでございます。
  35. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 各国国内における各党派の中で著名な反対論が展開された例があったら、ここで述べていただきたい。
  36. 手島れい志

    ○手島政府委員 各国国内の党派別にどのような意見が展開されたかということはつまびらかにしておりませんけれども、たとえばアメリカの例をとってみますと、新しい通商協定法が昨年の七月十一日に下院の本会議で可決されましたときには、賛成が三百九十五票、反対が七票でございます。引き続いて同じく七月二十三日に上院の本会議で可決されたときには、賛成が九十、反対が四であったというふうに聞いております。  また、ECの中におきましては、先ほど申し上げましたように、ECは去年の十一月の外相理事会で決定をしたわけでございますが、このときの決定はコンセンサス、すなわち満場一致と申しますか、全加盟国が賛成したというふうに聞いております。
  37. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 東京ラウンドにおける譲許が成立した総品目数はどのぐらいであるか。またその品目は貿易額にしてどのぐらいの金額になると予想されるか。こういうことを聞きますのは、日本の譲許を与えた品目数と獲得した品目数にバランスが欠けているのではないかと思われるふしがあるわけであります。  また、東京ラウンド関係協定の成立によって、日本の輸出入についてはどのような伸びあるいは減少が予想されるか。その点についてまとめて触れていただきたい。
  38. 手島れい志

    ○手島政府委員 まず、鉱工業製品につきまして日本がどれだけの譲許をしたかということから御説明をさせていただきたいと思いますけれども、鉱工業製品につきましては、日本は約二千七百の品目のうちで二千四百品目についてこのたび関税の譲許を行いました。また農産物の関税につきましては、総品目数約八百五十品目のうちの二百品目について譲許を行ったわけでございます。  ここで日本各国とのその譲許のバランスの問題でございますけれども、譲許のバランスをどういった基準によって比較するかということは、一義的な定義というか解釈というものは基準がないわけでございますけれども一つの目安としまして平均関税水準というものをとってみますと、今回の交渉の結果、日本の鉱工業品の関税の水準は、この東京ラウンドの結果が最終的に到達される八年後になるわけでございますが、日本では三%になります。これに対してアメリカは四%強、ECは五%に低下をするわけでございます。    〔奥田委員長代理退席、佐野委員長代理着     席〕  いま申し上げましたように、日本の平均関税水準はアメリカECよりも若干低くなりますけれども、これは日本の輸入構造、すなわち原材料の輸入のシェアで、もともと無税で入っておるものが多いということを反映したものでございます。このような無税あるいは低関税であります原材料ないし半製品というものを除いて製品だけで比較いたしてみますと、日本アメリカECの引き下げ後の関税水準は、日本が六%、米国が五・七%、ECが六・九%ということになりまして、ほぼバランスがとれているのではないかというふうに思います。  ただいま申し上げましたのは引き下げ後の関税水準でございますが、しからば、そこへ到達するのにどれだけ引き下げたかという関税の引き下げの幅で見ますと、日本の場合は基準税率、その引き下げをどこから引き下げるという基準税率からの引き下げ幅で見ますと、約五〇%ということになっております。これに比べまして米国は三〇%、ECは二五%でございます。しかしながら、日本がすでに七、八年前から実行しておりますいわゆる実行税率の面から見ますと、引き下げ幅は約二〇%ということで、この面から見ましても実際の引き下げ幅は米国、ECに比べて少なかったということではないかと思います。こういうところから見まして、主要国の間では譲許のバランスはほぼ平均をしてちょうどいいところであったのではないだろうかと思います。  それから、それじゃ関税を引き下げた後これからどういうふうに輸出入が伸びるのだというふうなことでございますけれども、御承知のように輸出入の水準というのは、単に関税だけ、つまり価格動向だけではなくて、景気ですとか為替の変動ですとか販売努力といろいろございますので、一概に輸出入がどれだけふえるかということを予測するのは困難でございます。しかし、大幅な関税の引き下げがあったという分野においてはそれだけ伸びやすい状況ができているということは言えると思います。  この観点からしますと、全世界ベースで関税が大きく引き下げられた分野といいますのは、ガットの事務局の試算でございますけれども、一般機械、これの引き下げ率が約四三%、化学品、写真用品が三九%、輸送関係の機器が三七%でございます。したがって、これらの分野ではわが国の今後の輸出が期待できるのではないだろうかと考えます。  また逆に、じゃ輸入増加の可能性のあるものは何かということになりますと、わが国関税の引き下げ幅の大きい分野といたしましては、輸送機器、これは現在の実行税率からいきまして五二%の引き下げ、機械、電気機器同じく四六%でございますけれども、これらの部門は日本の競争力が強いために輸入によりそれほど脅威を受けるようなことはないだろうと考えております。  また、日本にとって輸入によって被害を受けやすい農産物あるいは中小企業の産品というものにつきましては、例外品目の選び方やあるいは引き下げ幅を少なくするというようなことで種々の配慮を行ってきたところでございます。
  39. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いろいろおっしゃいましたけれども、肝心なところは余り言っておられない。  ちょっと話をかえまして、大臣高沢議員に対する御答弁の中で、関税の率を引き下げることによって世界の景気というのは非常によくなるということを先ほど不用意にぱっとおっしゃいましたね。世界のインフレに対する対策として効果的であると存じますということをすぱっと言われた。あなたは経済の専門家なのですけれども、そういうことを不用意におっしゃっていいものかどうか。日本関税定率の引き下げの問題がインフレ対策に役立つから一生懸命やったというのは一つの新説でございますので、先ほどはお言葉も足らなかったでしょうから、御説明をいただきたい。
  40. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私申し上げたのは、日本は原料輸入、資源輸入で製品輸出という貿易の構造を持っておりますので、東京ラウンドの成立、関税の引き下げが日本の将来の貿易にとって有利に働くだろう、そういう趣旨を申し上げたと思いますのですが……。
  41. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうですか。じゃ、また後で速記録でもゆっくりながめてお互いにその次の論争をしたいと思います。  経済に非常に通なお方だと承ったので、私ぼんやり聞いていたが、ときどきすごいことを言われるらしいというのが先ほどからよくわかりましたから、これから気をつけて承ることにいたしましょう。  さて、昭和五十五年度の一般会計歳入予算説明書によりますと、関税収入は昭和五十三年度五千三百八十億、五十四年度五千四百十億、五十五年度七千八百六十億、つまり五十三年度から五十四年度へかけまして三十億円の増、五十四年度から五十五年度の増は二千四百五十億円と大幅に増加になっているわけでございますが、これはいかなる理由によるものであるか。東京ラウンド実施を見込んでこうなったものであるか、東京ラウンド実施を見込めば、逆に減るはずでございますね。このお話の数字というのは一体どういうものであろうか。予算委員会が終わったところですから、大蔵省ももう真相をお話しになってもいい時期だと思いますから、この不思議な数字を御説明いただきたい。
  42. 岩崎隆

    ○岩崎説明員 五十三年度から五十四年度にかけましての一般会計の関税収入の増加がいかなる理由により生じておるかという御質問であったかと思いますが、これは一次産品その他を中心といたします海外価格の上昇と、それからもう一つは円安の進行、この二つが主たる要因であると考えております。御承知のとおり、関税には、一部は従量税率の品目もございますけれども、多くのものは従価税品目でございますので、ただいま申し上げましたような価格要因が大きく働いてくるわけでございます。
  43. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 政府は一般会計歳入予算の面におきまして関税収入をどのように位置づけて予算編成を行っておられるか。歳入予算の大宗を占めるのが租税収入であり、その中でも関税は、所得税、法人税、酒税、揮発油税、物品税に次ぐ金額でありまして、国家収入の面で大きなウエートを占めていると思うわけでございますが、関税政策という点からいくと、今回の協定によって関税政策というものをある意味で見直しをし、ある意味で比重の置き方を変えられたと思うわけでございますが、その御所見を承りたい。
  44. 岩崎隆

    ○岩崎説明員 関税というものの税収との関連でまず御質問がございましたので若干申し上げますと、関税も言うまでもなく国の税収の一部でありますけれども、特殊な機能を持っておるように思います。と申しますのは、今後のあるべき産業政策方向に沿いつつ、輸入品と関連する国内産業の保護をどのように図っていくかという機能、それを一つの重要な役割りとして持っておるように考えております。  それから同時に、今回の東京ラウンド交渉結果をいかに評価しているかという意味での御質問でもあったかと思いますので申し上げますと、わが国関税率体系につきましては、ただいま申し上げましたように、一般的に申しますと、わが国国内産業の長期的な視野のもとでの保護ということに一つのポイントがあるわけでございますけれども、同時に、関税というものは世界各国相互的な性格を持っているものでございますので、何と申しましても貿易に依存するところが大きいわが国におきましては、各国におきます保護主義の台頭を防ぎまして自由貿易体制の維持強化を図るためには、やはりこの東京ラウンドに積極的に参加し、その推進に努めていくということが長期的に見てわが国の国益に合致する、そのように考えて臨んだわけでございます。  そこで、関税率引き下げのやり方でございますけれども、鉱工業品の分野では、御案内のとおり、主要国間でいわゆるハーモニゼーション方式をとりまして、高い税率のものほどより大幅に引き下げるというアプローチをとったわけでございます。わが国もこのようなたてまえを踏まえまして、関税の実質的な引き下げを図ったわけでございます。  しかしながら、これは一つの原則でございまして、もちろん例外がございます。特にわが国の場合でございますと、繊維でございますとか、あるいは中小企業関連品目等国内的に特に問題を抱え、保護の必要な分野につきましては、十分な配慮を加えました上で最終的な譲許税率を設定いたしたわけでございます。  他方、農産物の分野につきましては、この分野の特殊性を考慮に入れまして、鉱工業品のような引き下げ方式は採用されなかったわけでございまして、相手国から要求を受けた品目につきまして個別に交渉を行い、可能かつ適当と考えられる引き下げ税率を設定するといういわゆるリクエストオファー方式がとられたわけでございます。わが国の場合も、その際に国内的に問題のある産品につきましては原則として引き下げを行わなかったわけでございますし、やむを得ず譲許をいたしました品目につきましても、現行税率の据え置きにとどめる等の特別の配慮を払ったわけでございます。  以上が関税率に関します東京ラウンドに臨みましての一般的な方針でもございましたし、私ども、大体ただいま申し上げましたような結果を得ることができたというように考えている次第でございます。
  45. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣がちょっと退席されましたから、その間に、厚生省の方が来ておられると思いますから、スタンダード協定に関連いたしまして医薬品の問題をちょっと先に承ろうと思います。  EC諸国等から、外国の当局による検査で合格している医薬品については日本でも改めて検査することなく外国の検査結果をそのまま受け入れてほしいという要請があるようですが、この間の事実関係はどのようになっておりますか。  また、戦後のペニシリン、ストレプトマイシン等、日本の化膿性疾患と結核に対して大きな効果を上げたものでございますが、この際においても現行薬事法第十四条または第二十三条のような審査を行われたのかどうか。その点も非常にバランスを欠いていると思うわけでございます。  また、このスタンダード協定には医薬品も含まれているのかどうか。  また今後直ちに予想される事態といたしましては、避妊薬の主流を占めつつあるピル等欧米で開発されている顕著な効果を示す薬品について、欧米における検査結果を全部そのままとはいかぬまでも、あるルールをもって承認し輸入を認めてもよいのではないかと思われますけれども、これはどう考えておられるのか。  また、医薬品が種類によってもそれぞれ関税率が違うという立場をとっておられるようでございますけれども、この表を見ておりましても、この関税率の違いというものは、医薬品が単品で成立していないことを考えますと、かなり不確かなる表になっているようにも見えるわけでございますが、一体どういう基準でこの医薬品一つ一つ基準のバランス、関税率の差をつけられたのか。その辺あわせてお答えいただきたいと思います。
  46. 戸田陽

    ○戸田説明員 ただいま御質問のございました前段につきまして、厚生省薬務局の生物製剤課長でございますが、私から答弁いたしたいと思います。  いま御指摘いただきましたように、諸外国からいろいろな医薬品を輸入いたしておりますが、特に医薬品の中でも高度な製造技術を要するもの、さらには医薬としての一定の品質を確保することが非常にむずかしいもの、たとえば先ほどお話の出ましたストレプトマイシンとかペニシリン等、いわゆる抗生物質と言っておりますけれども、そのような製剤につきましては、国内製造製品、輸入製品を問わず薬事法に基づいて国家検定を行う仕組みになっております。  輸入医薬品の場合に国家検定を経ずして使用された場合に保健衛生上危害を与えるおそれがあるということ等を考慮いたしまして、輸入製品にも公的機関によりますところの検定の義務を課しておりまして、現在国立予防衛生研究所または国立衛生試験所におきまして、それらの医薬品の検定を行っているのが現状でございます。  さらに、そのままというお話はなかったようでございますが、わが国の検定の方法と諸外国の国家検定の方法は若干異なっております。諸外国の場合には、わが国と違いまして全製品を対象とすることなく、抜き取り検査をやっておられます。抜き取り検査をやった上で、メーカーを信用するということになろうかと思いますが、メーカー自身つまり製造業者が自分のところで検査をやっております。自家試験と言っておりますけれども、その試験結果の記録をチェックするというようなことで、比較的わが国の検定よりは一般的には緩いようでございますが、わが国の国家検定では全製品を対象として国家検定を行っておりますので、外国政府の行いました検定結果をそのまま導入することはできないものと私どもは考えております。  第二点目に、ペニシリン、また抗結核薬ということでストレプトマイシンのお話が出ましたけれども、これらペニシリン、抗結核薬でありますストレプトマイシンにつきましても、先生指摘のように薬事法第十四条、第二十三条の規定に基づきまして、それぞれの製品の名称でございますとか成分でございますとか、分量とか用法、用量、使い方等でございますね、さらには、どのような病気に効くかという効能効果等につきまして、そういう基準に基づきまして、輸入なり承認の手続をとっております。それが現状でございます。
  47. 代田久米雄

    ○代田説明員 厚生省の審査課長でございますが、ただいま先生の御質問のスタンダードコードに医薬品が含まれているかどうかという点でございますけれども、このスタンダードコードにつきましては、いわゆる規格基準等につきましての国際取り決めでございますので、医薬品の規格基準というものもこの中に含まれているというふうに解釈をしております。  それから医薬品につきまして税率がいろいろあるということでございますが、基本的には関税率の比較的高いものあるいは国際貿易上優位にあるもののうち、中小企業製品の性格の濃いものあるいは極端な不況業種というようなもので国内的に問題が多いというものは除きまして、という考え方関税率の引き下げを行っておるわけでございますが、個々の医薬品につきましては、やはり国民医療上その医薬品の重要性、あるいはわが国における需給の現状等によりましてその差を生じているというふうにいま解釈をしております。
  48. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 医薬品の話ではこの場所では余りこれ以上申し上げるのを控えたいとは思いますが、医薬品の審査に関しわが国システムがとかく非常にレベルの低い機材等によって科学的に不安定な状態の審査が行われているのではないかという討議が、本国会においてもしばしば行われているところであります。そしてその内容は、ことごとくわが国の医療行政の根幹にある、薬務行政の根幹にあるこうした問題に対しての政府の取り組みの弱さというものが論じられてきているわけであります。スタンダード協定に関連いたしまして、世界の国々の中から、日本の医薬品に対する検定の仕方は妙なところに力こぶを入れて張り切っているけれども肝心なところはあいまいではないかという非難が多数あるわけであります。  いま、言葉じりをつかまえるようでありますけれども、私も科学技術を専攻した一人として、全数検査であるからわが方は厳しく、全数検査でない抜き取り検査であるヨーロッパ各国の検査は緩やかな検査であって受け入れることはできないと言われた。これは科学技術をちょっとかじったことのある方ですと反対の結果になるということを御存じにならぬと私はいけないと思います。ペーパーをつくられたのはどなたか知らないけれども、そんないいかげんなことを言ってはいけない。なぜかと言えば、全数検査というものは全部の薬品を検査しているようではありますけれども、その検査の一つ一つがえてしてあいまいに行われたり、そして全数検査するという緩みから一つ一つの検査が平均的な簡略なものになる可能性というのはきわめて高いからであります。抜き取り検査の方がかなり優秀なものであることはQOの一ページをかじった者にはよくわかることでないかと私は思うのですね。外務委員会をなめてはいけない、そういういいかげんな答弁で。ですから、私はこれは後でその当該委員会のところへ持ち込んでもう一回医薬品の検定の問題については論議を続けさしていただきたいと思いますよ。専門家もいなさ過ぎるのですから、きょうは。  第二番目に、私は輸入の自動車について触れたいと思います。輸入の自動車について運輸省の自動車の関係は来ておられますね。  輸入自動車の関税については現在どういうことになっているか。またジュネーブ議定書の新税率の適用について、一九八七年には何%になるのか。また輸入自動車の陸揚げ後ディーラーに渡るまでその価格は約二倍になると言いますが、この点を欧米の自動車メーカーは、日本関税でない関税類似の内国税を何重にも課して輸入制限を行っていると、もうやたらに攻撃するわけであります。外車の方が高くなるわけはどこにあるのか。  また、輸入自動車の車体検査については日本は厳重過ぎるという苦情がきわめて多いわけでありまして、追突検査とか落下検査なんというのが必要があるのかどうか。スタンダード協定締結後はこの検査はもう変えた方がいいのではないかと私は思っているわけですが、どうでしょうか。  というのは、これから実話で申し上げますが、私が先日アメリカへ行った際、日本はなぜ輸入してくる自動車を一台ずつ空中へつり上げてばかんとおっことすのか、日本の自動車については一つのモデルを落下試験やって、そして壊れなかったらそれでよし、壊れるのならそれでよしということで検査は完了するのに、輸入会社に関しては全部一遍空中につり上げては下へおっことしていく。波止場でそんなことをすれば大体シャシーが曲がるとか窓がへこむとかいうことになる。こんなのは漫画でしかない。  私はアメリカ人の聞いているところではこの話をしたくなかったので、きょうのような夜のだれも聞いていない外務委員会で小さな声で言うわけですけれども、こんなばかなことをやっているというのは、要するに運輸省の自動車の関係者の頭は外国があるということをわかっていないことを示している。つまりこれからの世界では自分だけのルールで物事をやっていればいいのではなくて、人の国、相手の国との関係が非常に問題になるのですから、そういうふうに国際的に通用しないような、人の国の自動車だけは空中にほうり上げて墜落さして裏返しにしてみて、まるでそれこそげたはいてあした天気になれというのでげたを空中にほうり上げて、どっちが裏返るかといって遊んでいた子供のように、そんなおもしろがってはいけない。自動車はがたがたするのはあたりまえだから多少落下させてみたいというお気持ちはわからぬじゃないけれども、何で外国の自動車を一台ずつおっことすのか。そういうことをすればそれがひいきの引き倒しになり、現在のような日米間の緊張関係はきわめてでかいことになると私は思いますが、自動車局に返事をさせるとけがをしそうだから、大臣、ひとつあなた答弁してください。
  49. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私もいまの自動車を上から落とすというのはエズラ・ヴォーゲルという人の本で見たのですが、最近は続けてやっておるのかどうか詳しく知りませんので、やはり担当の運輸省の方から御答弁願った方がよろしいと思います。
  50. 清水達夫

    ○清水説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から空中にほうり上げるというお話がございましたが、そういうことは具体的にどういうことか、ちょっと私どもそのレポートを見てないのでございますが、基本的に輸入車の審査につきましては、かねてより先生指摘のように日本の審査制度が非常に煩わしいという要望がございまして、私どもこれまでかなりの改善を図ってまいっております。  具体的に申し上げますと、第一点といたしましては、昭和五十二年度から私どもの審査官を外国メーカーに派遣いたしまして、現地で審査をやりまして審査期間の短縮に努めてまいっております。  それから第二番目には、安全基準につきまして、私ども日本基準とほぼ同等であると認められる外国の基準により試験をしたものにつきましては、私どもで試験をしないでその結果をそのまま受け入れております。    〔佐野委員長代理退席、奥田委員長代理着     席〕  それから第三点といたしましては、外国の公的機関によります試験、これの私どもが判断いたしまして試験能力が十分あると認めた場合におきましては、当該機関によりますテスト結果、これもそのまま受け入れております。  それからさらに実務的な話でございますが、私どものいろいろな規則、こういうものにつきまして英文の資料を作成いたしまして、輸入業者の便宜に供しておるわけでございます。  そういうことで制度的にはいろいろやっておるのでございますが、なお今後、私どもの運用上あるいは手続上につきまして技術的詳細につきましていろいろ要望がございましたら、これにつきましては真剣にひとつ検討して改善してまいりたい、かように考えております。
  51. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 えらいきちんと御答弁していただいたものだけれども、自動車を地面におっことすやつはやっているんですか、やってないんですか、ちゃんと言ってくださいよ。
  52. 清水達夫

    ○清水説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘お話は、私どもの陸運事務所に一台ずつ持ち込む話ではないかと思います。私ども制度が、いわゆる大量生産されるものとそれからそうでないものの二つに分かれておりまして、大量生産しないものにつきましては国産車もそれから外国車もともに陸運事務所に持ち込んでいろいろな車体検査をしている、これが私ども制度仕組みでございますので、その点の御指摘ではないかと考えておる次第でございます。
  53. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはあなた違いますよ。そんな不十分な答えじゃだめだな。それはすぐ調べてください。ぼくらがこの間アメリカへ行ったとき、アメリカの上院議員に、なぜ日本人は自動車をパチンコの玉のように地上に落下させるのがそんなに好きなのかと食いつかれて、われわれが必死になって答弁させられる羽目に落ち込んだ。そんなことを知らないじゃ済まない。  それに、聞いていればわかるけれども、たかが自動車と言ったら悪いが、その検査の項目分類が多過ぎてわからない。そして大量生産と大量生産でないのを分けてとおっしゃるけれどもアメリカの某自動車会社、それも世界の何大クラブの一つに入るような自動車でさえも最近台数が落ちてきたら一台ずつほうり込む方に入れたというので、向こうは激高して怒っておった。そういうのは話のはかなんですね。  だから、ここで変な答弁をするより先に、そういうように外国から異常に見える検査システム——検査というのは正義じゃないです。検査というのはいまや日本国民を対象にするだけじゃなくて世界に乗り出していって、異常がなくてお互いに納得性のあるものでなかったら、これから商売なんかできるものじゃない。そういう観点から自分たちの頭を洗い直して、みんなが外務官僚になったつもりでもう一回自分のやっていることを見直さなければならぬときに来ている。だから、あなた方が後ろで自動車一台ずつ地べたへおっことしてみて喜んでいる合間に、われわれは外国へ行ってはやっつけられ、商売人はみんな外国へ行ってやっつけられ、そうしておまけにアメリカの世論はどんどん反日化し、その責任が運輸省の自動車局にあるとしたら、あなたどう答えるのですか。ところが、あなた方はそんなことはお構いもなく、今度は上から落下した試験がうまくいったからこの次は逆さに落としてみようかとか、その次は三十度斜めに落としてみたらどうなるだろうなんという検査をまた発明するかもしらぬ、そういうのはナンセンスだと私は言っているわけです。  私、きょうはしつこく言っているのですよ。担当者を傷つけないように私はしつこく言っているわけです。大臣国務大臣はここの場に座っているのは一人です。外務大臣としてでなく国務大臣として、閣議出席者として答えてもらいたい。こういうばかげた攻撃をアメリカでいつもやっている。あなたはアメリカでそういう攻撃は何回も何回も聞いたことがあるはずです。あなたはその場その場で適当に愛想よく、例の賢人笑いとやらでごまかしながら今日までやってこられておる。名人だとは承っておる。だがあなた、それは相手がそうやって笑い顔で片づけばいいけれども日本国内へ向かっては、そういう笑い話で片づかない問題を解決するために働かなければいけない。よろしゅうございますか。あなたは外国へ向かって日本のことを弁解する弁護士であると同時に、日本国内の各種制度に対して、そんなことをやったら取引もかけ合いも世界での協力関係もできないなどと叫ぶ役があるんじゃないかと私は言おうとしているわけなんです。  一応担当局の実力のほどはもうわかりましたから、だからもうこれ以上あの人を余り追い込めば、運輸省へ帰ったときに運輸大臣から、おまえは外務委員会へ行って何をしかられてきたのだ、答弁がしっかりせぬからだなんということになりかねない。だから国務大臣はそういうときにかばって出て、総理にかわってここで答弁しなければいけない。そういう疑わしい事実があったら全部調べます、そしてそういうばかばかしい非難を浴びないように関係省令を訂正し、各省庁の行政指導を修正いたしますと言うのがあなたの役目じゃないですか。大臣、本気になって答弁してください、本気になって。
  54. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最近やはり聞きました話で、アメリカに対して日本が二百万台の自動車を一年に輸出しているのに、アメリカの自動車を日本は二万台しか買わないというようなことも聞きましたし、ただいま渡部委員の御指摘のようなことを私も従来しばしば経験してまいったわけでございます。外務省の立場から言えば、これはやはり国内官庁にお願いしましてそういう問題をできるだけ解決していただかなければならないわけでございますので、きょうのお話は、あしたできるだけ早く運輸大臣にまず申し入れをいたしたいと思います。
  55. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 がんばってください。いまのあなたの御発言は重大です。期待しております。  だから、これと同じようなタイプのいままで攻撃されたケースは、外務省の各大使館に集結しているはずです。それは経済担当官のところに全部あります。情報は本省にも、ある分は打電されていると思う。それをめくって見て、各省庁に、こんなやり方をしておったら貿易——このカットの交渉は、この東京ラウンドができたからいままでと違って、できる前はそういう問題に対して外務省は非常に敏感でいたけれども、できた瞬間にすっかりもうそういうことはげんなりしちゃって忘れてしまうと危険なんです。いま火が噴こうとしている寸前なんだから、そういうのを全部かき集めて、そして関係各省庁に対して、本省のこれとこれとこれの行政指導はまずい、本省のこれとこれとこれの法令はまずい、本省のこれとこれとこれは直してくれ、そういうことを外務大臣は発言しなければならない、指示しなければならない。運輸大臣だけではないと私は思いますよ。その点も含めて御検討いただきたいと、くどく申し上げますが、恐縮ですがもう一回御答弁をお願いしたい。
  56. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御趣旨よくわかりましたので、そのようにいたしたいと思います。
  57. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次は、きょうのぼくのハイライトを申し上げたい。いままでのは予告編です。ガットの二十一条、スタンダード協定二条等に安全保障措置の例外規定がございます。まずこの趣旨を御説明いただきたいと思います。  回りくどい言い方はしたくないから、もうさっさと申し上げますが、武器の輸出に関して、この協定のいろいろな関税率表であるとか、関税定率法別表の関税定率表であるとか、ジュネーブ議定書であるとか、いろいろいろいろあるわけでございますね。わが国の武器の輸出、輸入に関しては、輸出に関して例の武器輸出三原則というのが存在しているわけです。ところが、この交渉に関してそうした問題について余り配慮が払われていなかったのではないかという疑いがある。というよりも、わが国は積極的に、武器の輸出に関して世界の国々に対して自制を叫びかけ、こうした際にも粘るべきであったと思うのに、その点が弱かったのではないかと思われる節がある。で、私は伺おうとしているわけです。  それではもとへ戻りまして、ガット二十一条、スタンダード協定二条等に言う安全保障上の例外措置から御説明をいただきたい。
  58. 手島れい志

    ○手島政府委員 ガットの第二十一条そのものが安全保障のための例外措置でございまして、各国が自分の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認めた場合には、「武器、弾薬及び軍需品の取引並びに軍事施設に供給するため直接又は間接に行われるその他の貨物及び原料の取引に関する措置」というものをこのガットの規定の対象から除外して、各国がそれぞれ自由に決定をしてよろしいということが決められておるわけでございます。そうして、このたびできましたコードの幾つかにおきましても、この安全保障のための例外措置は同じように、コードに規定するところの対象から除くということが定められておるわけでございます。
  59. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 関税定率法別表の関税率表において、第一七部第八七類の〇八によれば、戦車、基準税率二〇%、特恵税率無税、第一九部第九三類によれば、大砲、爆弾、魚雷等、基準税率二〇%、特恵税率無税となっております。  自衛隊の使用するこれらの武器、弾薬の輸入に関して、基準税率二〇%の関税をかけているのか、それとも特恵税率を適用して無税としているのか、その辺の態度から伺います。
  60. 岩崎隆

    ○岩崎説明員 ただいま御指摘関税定率法によりまして確かに二〇%という関税率が設けられておりますけれども、これは、他方、関税暫定措置法によりまして基本税率の五分の四に軽減するという規定がございますために、御指摘の武器につきましては現在一六%の関税率が適用されているというのが現状でございます。  ただ、実際問題といたしましてこれらのものの輸入の実績があるかどうかというのはまた別問題かというように考えておりますが、もしある場合に適用すべき税率ということになれば、現在のところは一六%である、そういうことでございます。
  61. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの方に重ねて伺うわけですが、そうすると、日本の安全保障上の措置からいっても関税上の配慮からいっても、ちょうど一六%ぐらいをかけておくと日本の安全保障上からも税法の上からいってもうまくいくとお考えなのでしょうか。  別の言葉で言えば、先ほどあなたは関税というのは企業活動を擁護する面があるというふうに言われました。この場合、安全保障上の措置というのは、その言葉から類推いたしますと、まず、日本の安全保障のためには一六%くらいの税率をかけておくと日本に対してはプラスだと言っているように聞こえます。  第二に、日本の安全保障について、いま日本の自衛隊の保有する武器弾薬は極端に少なく、論者によってさまざまな表明はされておりますが、ある場合には全自衛隊が射撃を開始するとわずか五時間とか、長く言う人でも一週間以内に弾薬その他は全部撃ち尽くすと言っております。そういったことも含めて、一六%くらいを妥当と見られているのか。  第三番目、そういう配慮とは全然別に、たまたまさわっているうちに一六%になってそうなったのか。お答えいただきましょうか。
  62. 岩崎隆

    ○岩崎説明員 まず二〇%という基本税率を設け、それが先ほど申しましたようなことで五分の四に軽減されて二八%になっておる。その一般的な考え方は、やはりこれらの武器の類を製造している国内産業の保護という見地であっただろうというように私は理解をいたしております。  なお先ほど申し上げませんでしたが、これらの品目は同時にいわゆるIQ品目、輸入割り当て品目にもなっているわけでございます。そのような意味でもコントロールがされておるわけでございますから、その両者との兼ね合いというものを考える必要があるのではないかと考えております。  なお、後段におっしゃいました安全保障上の問題でございますけれども、私もそちらの方まではどうも詳しくございませんので、そこまでの意味合いが入っておるかどうかということにつきましては確かなお答えができませんが、あしからず御容赦をお願いしたいと思います。
  63. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に正直にお答えになったので、大臣、またあなたの番です。  この表を見ていると、これは非常にぐあいが悪いんだが、私は何も関税局の人をつかまえて安全保障のことを聞かなくてもいいわけなんだ。あなたはきっとそう思って聞いていたでしょう。外務委員会というところはひどいところだと思っておられるだろうと私は思う。ところが、日本の政治の場合で、現在やっている東京ラウンドはそうしたわが国政策のトータルがどうしても論議されてくるわけだ。ところが、関税局のそれこそばりばりの課長さんが、一六%でいいのかといわれると、日本の安全保障政策、これでいいのかと言われたら、ちょっと困るわけですよ。つまり、打ち合わせがされていないというだけではなく、そうした意味の行政機関同士のバランス感覚が欠けていることをこれは示している。  私は、自衛隊の装備が十分なのか、多過ぎるのか、あるいは不十分なのか、それらについて近く成立を予想される安全保障の特別委員会において冒頭からこういう議論が出てくることを申し上げておきたいのです。そして、いまの御答弁のように、いや実はそういうのは余りよく打ち合わせておりませんでしたという答弁、いままでは安全保障問題についての討議をする場所がなかったという制約もあって議論されていないけれども、これから議論されざるを得ない。まさか安全保障問題はわが省の所管でないなどと言いながら、みんながこういうことで困らなければならない。  大臣、みんな悪いのはあなたなんです。役人を皆ばらばらに配置しておって、そして答弁のときだけ山ほど皆並べておいて、つまり自分の分野を答弁することでは済まぬのだ。バランスをとって、わが国は安全保障をどうするかが決まってなかったら、IQにしていたのがいいのかどうか、税率が二〇%がいいのかゼロ%がいいのか、国産でいくのか輸入でいくのがいいのか、簡単に言えば何も決まってないんだ。そうしておいてお役人はこんなところへ夜遅く呼び出されて、これは適切かなんて聞かれたら、これは答えようがないじゃないですか。あなたはお役人を長いことされてこられたから、政策判断を持たない役人が、持ってはいけない役人が、説明員として招集されている人たちが政策判断を聞かれなければならぬ立場に追い込まれるつらさというのはおわかりいただけると思う。  私はこうした問題をもっと打ち合わせてもらいたい。安全保障の問題についてあなたはリーダーシップをとる役があります。なぜか。外務省は日本の安全保障の大きな柱の部分ですから。だからぼくは、あなたが立て板に水とお答えになるのを期待しているわけです。その大筋を答えてもらいたいと思っているわけです。この点についても、安全保障問題について今度御検討いただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  64. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いま御指摘の点は、確かに総合的な見地から検討しなければならない問題かと存じます。予算委員会等でも防衛問題、安全保障の問題、さまざまな角度で御質疑があるわけでございまして、いまのような問題につきましても政府のハイレベルで打ち合わせをすべき性質のものかと考えます。  さらに、いま委員の御指摘のように、今度国会の方にも委員会ができますればそういう場で御検討願うことかと存じます。
  65. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ジュネーブ議定書の第八八類及び第八九類には、飛行機及び船舶の税率が掲載されております。航空自衛隊の使用する航空機の導入についての関税関係はどうなっておられるのか。まさにロッキード事件以来、わが国はこの問題について——ロッキード事件以前からこの問題についてはきわめてナーバスになってきた問題でありますけれども、どうなっているか。また船舶についても税率が定められておりますけれども、海上自衛隊の使用される潜水艦及び各種船舶についてどうなっておられるのか。  私は、これに対する税率の判定の仕方、わが国のがんばり方の中に日本の安全保障に対する態度も日本の財政当局考え方も表明されてくると思いますから、伺っておるわけであります。
  66. 岩崎隆

    ○岩崎説明員 御指摘の航空機につきましては一二%の税率が適用されていると思います。これは軍用、民間を問わない税率になっております。それから船舶につきましては、これは御指摘のような船舶でございますとおおむね無税でございます。これも民間、軍用を問わない税率でございます。  なお、以上のほか、航空機につきましては、これまた民間、軍用を問わない制度でございますけれども、航空機及びその部分品につきまして、国産困難なものにつきましては、関税暫定措置法第五条の規定によりまして免税扱いの措置が講ぜられております。  以上でございます。
  67. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 防衛産業第一の一三菱重工の五十一年度の防衛機器契約高は九百八十一億四千九百万円で、三菱重工全体の売り上げの八%にすぎません。しかも、ベトナム戦終了後唯一の納入先である米軍もしくは防衛庁の注文が激減しているため、輸出解禁を望む声が社内に強く、内外の情勢は輸出解禁に傾いているのかどうかは別として、同社の上げるそうした意見はしばしば社の幹部から表明されているところであります。  そこで、米国政府より在韓米軍ないし韓国軍向けの武器の調達を要請されたことはないか、また、中東諸国からレーダー等武器輸出への要請を受けたことはないか、また、このような防衛産業を実際に運営され、経営される方々のこうした問題に対する発言に対してどういうふうに評価されておられるのか、お答えをいただきたいと存じます。
  68. 手島れい志

    ○手島政府委員 わが国は、先生もただいまおっしゃいましたとおり、武器輸出につきましては禁輸の三原則ということを決定をいたしておりますので、各国から時たま要望のあることもございますけれども、それは個々に日本側で武器に該当するかどうかということを判断いたしまして、武器に該当するものにつきましては輸出は行なわないというふうに先方の政府に対して理解を求めております。
  69. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ガットの場におきまして、譲許表がどういう形でできたとしても、安全保障上緊急な国家があるとして、その国が自分の国家財政の中から高額の関税をみずからの手でみずからに払いそして武器輸入をするということは、大体からして考えられないことであります。したがって、中東諸国等においては、主要の武器輸入国においては、いずれも関税というものをほとんど課さないで無制限に武器輸入をしているという事態がきわめてしばしば報道されているところであります。この状況はきわめて遺憾であります。  外務省の情報文化局の資料「海外政経情報」三百五十三号によりますと、一九七七年における武器輸出は、米国が六十五億ドル、ソ連が五十億ドルフランスが十三億ドル、イギリスが八億ドルということになっており、一方、輸入は、中東が四十六億ドル、南米が八億ドル、北アフリカが七億ドル、南アジアが六億ドルとなっております。自由貿易としては利益さえ上がればいいのか、また、オイルマネーを取り戻すためには武器弾薬を売りつけるのを放置してよいのか。こういうことは、道義上の問題として、世界平和の立場として、両面から言い得ることだろうと思います。  私は、このような大量の武器弾薬を売り込むということ自体が犯罪を構成する基盤になるものと思います。このガット譲許表をつくる場合、ガットシステムでは武器の輸入あるいは輸出に対してブレーキをかけるための条項をつくり得ないということは、この譲許表立場から見て明らかだろうと私も思います。だけれどもわが国としては、こうした譲許表をそのままのみ込んでくるだけではなく、武器輸出三原則、それを例にとるまでもなく、もう少し何とかこの際意思表示をする必要があったのではないかと思うわけであります。  特に、一昨年五月、国連軍縮特別総会の際、園田前外務大臣は、その一般討論演説において、わが国は従来から、といろいろ申されまして、その最終部分においては、通常兵器の国際移転の制限に関して主要武器供給国と需要国間で協議が行われるべきであると主張し、さらに三十二回国連総会に提出したワルトハイム国連事務総長の年次報告におきましても、巨額に上る世界各国の軍事予算は制限され、資源開発の部面に使用すべきであるということが示唆されております。  それでありますならば、この武器貿易の自粛ということが、ガット交渉の場において、現場において、交渉官たちが少なくとも日本外交の特色を示すものとして闘い、演説し、討議をし、説得をし、熱弁をふるい、あるいは駆け引きをすべきポイントではなかったか、こう思うわけであります。この点私は政府の御努力というものを何ら承ってはいないものでありますけれども、この点はどうだったのでしょうか。少なくともガット譲許表を見、そしてこの間におけるたとえば一群の留保あるいは付帯条件というものの中に、現在の日本政府の平和外交に対する、世界の戦争をさせまいとする、世界じゅうの武器弾薬を少なくさせようとする熱意というかポジションというのがうかがえないのではないか。私は残念に思っているわけであります。その点はいかがお考えか、明らかにしていただきたい。また、事実関係を示していただきたい。
  70. 手島れい志

    ○手島政府委員 安全保障に関する問題につきましては、これはもともと先ほど御説明いたしましたようにガットの例外ということになっておりますので、今回の東京ラウンド交渉におきましても、日本側からほかの国に対しまして武器等の兵器につきまして関税の引き下げを要請したこともございませんし、また、私どももそういうことはいたしませんでした。
  71. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣、あなたにその基本的な精神を言っていただかなければならない。要するに日本外交は大きなリーダーシップを持ち得ないのかもしれません。しかし、平和の問題について、あるいはこうした問題についてリーダーシップを持たなければ、世界の火種というのはだんだんだんだん大きくなる可能性がある。ですから、既存の書類の裁決を要する仕事が机の上に山積しているものをそのまま片づけるだけではなく、問題を提起し、問題点をとらえ、それにアプローチし、解析し、そして総合して解決するために手を打たなければならないのではないか。少なくとも武器の禁輸の方向へ向かって日本外交は進むべきではないか。当委員会に総理大臣外務大臣が登場される場合にしばしばかっこうよく言われるわけでありますが、遺憾ながらまだ一回もこうした問題について現大臣からの確たる御見識の表明はいただいたことがありませんので、お伺いしたいと思います。
  72. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本の外交の基本的な方針といたしまして、国際的な紛争は武力によらない平和的な解決を求めるという立場でございますし、そういう点から言えば、御指摘のような武器輸出ということは、国際的に、あるいは大きく言えば人類社会の将来にとっても望ましいことではないと考えます。やはりお話のありましたように、一昨年の国連の軍縮特別総会で園田外務大臣から通常兵器の移転問題についての発言をいたしておるわけでございまして、ガットが適当な舞台であるかどうかという問題はあると思いますけれども、適当な舞台でそのような方向への努力をいたすことが日本一つの国際的な役割りかと存じます。
  73. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、私の持ち時間はきょうはこれで尽きたようですから、この辺にしておきます。  だけれども、ちょっと残念なことがありますね。それはガットの細目の点について交渉委員の皆さんは全力を挙げてやった気配はうかがわれ、あらゆるペーパーを見ても条約文を見ても、一々精細にでき上がっていると私は思います。だけれども、何のためにこれをやったかという問題、そしてどういう効果をねらおうとしているかという問題、日本の外交はどこを選択しているかという問題について、余り明瞭でないように私は思います。武器輸出三原則の問題についてももっと強烈に突っ張ればよかったという反省は多いし、あるいは安全保障の問題についても、その他の問題についても、いろいろばらつきは多いし、世界の難問を——ここで明後日には外務大臣アメリカに送らなければならない。アメリカに送る前に、東京ラウンドを仕上げて、私どもは、少なくとも衆議院においては通りましたよという状況をつくっておいてあげなければ、アメリカに行ってまた何を言われるかわかりはしない。これは私ども外務委員の、表現は違いますけれども、おなかの中にある共通した心境であります。  そうは思っているのだけれども、今日に至るまで、その貿易のそれこそ非関税障壁の山をそのままに放置しておいて、自動車をおっことす問題一つについても何もしないで、この表だけ、東京ラウンドだけ持って出かけていってアメリカを説得しょうとしても、不誠意のそしりを受けてしまうだろうと私思うのですね。何のために外交をしているのか、何のために日本の外交はあるのか、何のために他の各省庁が外交に協力しなければならないのか、その点を十分お考えいただいて、今後の御施策に生かしていただくよう希望し、質問とさせていただきます。
  74. 奥田敬和

    奥田委員長代理 野間友一君。
  75. 野間友一

    ○野間委員 端的に、政府調達の問題についてお伺いをしたいと思います。  まず初めにお伺いしたいのは、いわゆる十五万SDR、こういう基準ができたわけでありますけれども、この十五万SDRというものがどういう理由、どういう根拠、基準によってつくられたのか、わが国の主張はどうであったのか、そのあたりからお伺いしたいと思います。
  76. 手島れい志

    ○手島政府委員 政府調達におきまして、できるだけ多くの調達の対象を相互に与えようではないかという基本的な考え方各国とも交渉に臨んだわけでございますけれども、さりながら協定の対象として小口の契約まで全部これを含めるということは、各締約国に過重な行政上の負担を負わせることとなるという観点で、一定の限度額を設けようじゃないかということが関係各国の間で合意をされたわけでございます。  しからばその限度額をどこに決めるかということになりますと、余り高くなりますと政府調達の対象となるものが少なくなり過ぎますし、さりとて余り低過ぎると、先ほど申し上げましたような行政上の負担という観点から見て問題ありということで、各国交渉いたしました結果、十五万SDRということで話が決着をしたわけでございます。    〔奥田委員長代理退席、佐野委員長代理着     席〕
  77. 野間友一

    ○野間委員 わが国立場からして、換算して四千九百万円、これらが適切であるという判断にお立ちなんですか。
  78. 手島れい志

    ○手島政府委員 日本は、できればもう少し高いところで話をつけたいというふうに考えておったわけでございますが、他方、一部の加盟国はかなり低いところまで出そうじゃないかというようなことになりまして、交渉の結果十五万SDR、この数字は先ほど先生がおっしゃいましたように、最近の数字でございますと約四千八百万円ということでございます。
  79. 野間友一

    ○野間委員 私がお聞きしたいのは、その金額がわが国にとって適切なものであるかどうか、どういう判断をされておるかということです。
  80. 手島れい志

    ○手島政府委員 特に私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、各行政機関の行政事務に対する負担、それから中小企業に対する配慮等もございまして、この数字についていろいろ検討したわけでございますが、この十五万SDRという数字ができますれば、この二つの目的がほぼ達成されるものというふうに考えまして、十五万SDRということに同意をしたわけでございます。
  81. 野間友一

    ○野間委員 この開放度の割合ですけれども、これはいままでの実績の上に立っての見通しになると思いますけれども世界で一体どのくらい開放されるのか、あるいはアメリカEC日本の場合にはどうなるのかということについて、いかがでしょうか。
  82. 手島れい志

    ○手島政府委員 開放度というものがどういうことを意味するのか、ちょっと私理解しかねますけれども、今度の政府調達コードの対象となっている調達額につきましては、米国については、これは米国の政府の方の関係者が申しておるところでは、百十億ドルに相当するものを政府調達コードの対象にするというふうに申しております。
  83. 野間友一

    ○野間委員 日本の場合にはどうなんでしょうか。どのくらいになるわけでしょうか。
  84. 手島れい志

    ○手島政府委員 日本の場合につきましては、一応政府調達コードの対象といたしまして、関係の中央の省庁を全部と、そのほか三公社五現業その他の若干の機関を調達の対象として出しておりますけれども、しからばその調達の対象になる金額が幾らかということにつきましては、この調達コードの中にも書いてございます留保によりまして、今後とも米国との間で話が進められていく関係もございますので、現段階におきまして幾らぐらいになっているということをお答えするのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  85. 野間友一

    ○野間委員 先ほどの答弁の中でも、要するに中小企業に悪い影響がないようにという配慮もしたというような趣旨の答弁があったと思いますけれども、だとすれば、よけい私どもは、この十五万SDRというものが果たして適切かどうか、これによってどのような影響を中小企業が受けるかということを判断する場合に、どうしてもいままでの実績から私どもは評価あるいは判断をせざるを得ないということになるわけですね。したがって、この中身が明らかにならないと私どもは審議もできないということになるわけですね。したがって、実績等についてはすでに各省庁間あるいはトータルの数字はわかっておるわけでありますけれども、これはぜひひとつ示していただきたい。再度答弁を求めたいと思います。
  86. 手島れい志

    ○手島政府委員 ただいまお答えいたしましたことにつけ加えまして、実はさらに日本側の譲許の注釈の中におきまして、中小企業関係の組合というものはこの協定の調達の対象から除外をするという留保を行っておりまして、この留保に各国とも注文をつけておりませんので、その面から申しましても非常に多くの部分、ほとんどそのすべてに近い部分の中小企業からの調達がそのコードの対象にならないというふうに考えております。
  87. 野間友一

    ○野間委員 あなたがそう判断されておるのはこれは自由なんですけれども、ただ国権の最高機関である国会で審議をする場合に、具体的な各省庁のそういう実績が明らかにならなければ審議のしようがないわけですね。あなたはいま中小企業にはさほど悪い影響がないようにといべそういうような趣旨のことを言われたと思いますけれども、ではお聞きしますが、これは各省庁あるいは公庫や銀行、公社も含めて全部そういう試算というか数字は持っておるけれども、これをいまこの場で公表することはできない。なぜこういうことになるわけでしょうか。
  88. 手島れい志

    ○手島政府委員 まだ完全な集計というものは行っておらないと思いますが、中小企業に対する被害がないだろうということにつきましては、中小企業庁の方からお答えさせていただきたいと思います。
  89. 横堀恵一

    ○横堀説明員 ただいまの四千五百万円以上の案件が中小企業の物品調達額にどの程度を占めるかという御質問かと存じますが、約数%でございます。具体的な数字を申し上げますのは、先ほど手島局長から申し上げましたとおりちょっと御勘弁願いたいと思います。
  90. 野間友一

    ○野間委員 それではもう一度、なぜ公表できないのか、その理由を納得できるようにひとつ説明してください。
  91. 手島れい志

    ○手島政府委員 これも先ほど先生からの開放度の御質問に対して私お答えしましたように、まだ今後交渉が行われていく問題でございまして、現段階ではこの数字が出ますといろいろ交渉の上で不利になることもあるということが危惧されますので、それでお答えを差し控えさせていただきたいと申しておるわけでございます。
  92. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、非公式の席ではこれを明らかにして納得を得てもらうというような姿勢はあるわけでしょう。
  93. 手島れい志

    ○手島政府委員 非公式に、かつこれが交渉の相手に伝わらないというような状況でございましたら、さらに御説明をさせていただきたいと思います。
  94. 野間友一

    ○野間委員 なぜこういうことをしつこく聞くかと言いますと、もう言わなくてもおわかりのとおりだと思いますけれども、みな大変心配しておるわけです。この間も、参考人からの意見開陳の中でも、電電公社の組合の方も大変危惧の念を述べられておりましたけれども、とりわけ政府の発注する物資等につきまして、一つは中小企業がダイレクトに取引するという場合と、それから大会社が受けまして、それを下請が仕事をする。特に下請関係日本の特徴的なそういう産業構造に根差しておるわけであります。したがって、先ほども中小企業庁の方から数%という話がありましたけれども、これも中身は一体どうなのかよくわからない。  ですから、委員長、非公式、非公開のところでは言ってもいいというようなことでありますから、理事会で一遍諮っていただきまして、しかるべく協議をお願いしたい。  続けますけれども、なぜ私聞くかといいますと、いま申し上げたようにダイレクトに注文する場合と、そうでなく下請が大会社の下に無数にある。そうなりますと、この四千九百万以上と申しますか、十五万SDRというものが直接にどれだけ影響するのか、あるいは間接に相当な被害を与えるのではなかろうかというふうに一般的にも危惧しておりますし、私もそう思うわけであります。そういう点から、いま局長も答弁されましたけれども、そういう機会をつくりますので、ぜひひとつ御説明いただきたい、こう思います。  かねて聞くわけでありますけれども、これは通産省中小企業庁でありますけれども、下請の受けるのであろう被害との関連で、たとえば下請中小企業振興法あるいは下請代金支払遅延等防止法ですね、そういうさまざまな下請の中小企業を守り発展させるというような法律があり、私どもも常に国会の中でも論議をしておりますし、あるいは下請でなくて一般的な中小企業の場合でも、例の中小企業に発注の機会を与えなければならぬという官公需法、これは私ども共産党では五〇%義務づけるというような提案法案もつくって国会に出したこともありますが、こういう点で打撃を受けるであろう。これは事実だと思います。  その点の確認と同時に、一方ではいま申し上げた通産省が下請あるいは中小企業を守り発展させるという立場で法律あるいは施策をとっておる。しかしながら、恐らくかなりの被害が出てくるんじゃないか。これは小森さんという電通の副委員長のこの間の発言でありますけれども、大体電電公社に限って言いましても、メーカーの関連下請中小企業数は百八十社ある。七万名の労働者が雇用されておる。もし仮に二〇%アメリカが調達するとなると約一万四千人の人員削減になる。したがって、中小企業関係だけではなしに、ここで働く労働者の雇用不安というようなことにも当然なってくるわけであります。したがいまして、このコードの整理と同時に、特段のそういう施策を検討しなければならない、これは当然だと思うのです。これらの点についてどのように対応されておるのか。  特に前段としては、被害、大変な影響を受けるというように私どもは考えておりますけれども、その点についての判断と対応策、そういうものをお考えになっておるとするならば、それを明らかにしていただきたい、こう思います。
  95. 横堀恵一

    ○横堀説明員 先生ただいま御指摘のとおり、私ども毎年官公需法に基づきまして、中小企業向けの官公需の発注比率の増大に努めておるところでございまして、その努力は引き続きやってまいりたい、こういうふうに思っております。  それから、本協定につきましては、協定中身を見ますと、たとえば銘柄指定の廃止の問題等ございまして、こういう点は、私ども毎年つくっております中小企業者に関する国との契約の方針という点とも合致して、中小企業者の受注機会の増大に資する面もございますので、そういうことで対処してまいりたいと思っております。
  96. 野間友一

    ○野間委員 そんなことは聞いていないですよ。そんなことはわかった上で質問しているわけです。  もし開放された場合に、それではいまの答弁は、いままでの対応で十分だという考え方なんですか。新たな対応は必要ないという判断でしょうか。  私が聞いておるのは、政府調達関係で聞いておるのです。いまのままでいいということでしょうか。
  97. 横堀恵一

    ○横堀説明員 先生の御質問の趣旨は、本協定の結果、外国企業が中小企業に比べて優遇されるのではないかということだと思いますが、本協定というのは、私どもの理解するところでは、外国企業の国内企業以上の優遇を求めるものではございませんし、先ほど申し上げましたように、中小企業の受注機会に資する面もございますので、私どもとしては、中小企業に対しまして大きな影響が必ずしもないというふうに考えております。
  98. 野間友一

    ○野間委員 どうもよくわからないのですが、要するに、開放して外国から物が入ってくる、この開放度合いが問題だろうと思いますけれども、その場合、あなたも答弁したように、国内では中小企業を、やはり産業を保護育成をしなければならぬ、そのためのいろいろな施策や法律があるわけでしょう、それで守り発展させる。ところが、外国から物が入ってくる。入ってくると、それによって、大企業もそうですけれども、中小企業は大変な影響を受けてくる。したがいまして、それだけ分の仕事は減るわけですから、先ほども参考人の意見開陳の中身を若干話したわけでありますけれども、特にこれに即した新たな対応が必要ではなかろうか、こういうように思うのです。したがって、通り一遍の一あなたはできないのかもわからぬけれども、いままでのそのような対応だけで済む、そういうことなのかどうか、やはりこういうことに際して新たな対応を考える必要があるんじゃないか、こう聞いておるわけですね。いままでの通り一遍と申しますか、いままでのことだけで済むというような見解なんでしょうか。
  99. 横堀恵一

    ○横堀説明員 中小企業の体質強化につきましては従来からいろいろ努力してきたことでございますし、その点については、今後とも私どもとして十分努力していきたいというふうに考えております。
  100. 野間友一

    ○野間委員 それでは、もうこれはこれであとは保留して、また別の機会にお伺いさせていただきたいと思います。  この三年後の見直しというのがありますね。これは恐らく限度あるいはその枠の拡大等々実績を踏まえた上でいろいろな問題が出てくるんじゃないか、特に、その下限額が下げられる、そういう圧力が加えられるんじゃないか、あるいは枠の拡大についても、いまの電電の例を見てもそうですけれども、見直しの時期にかなり大きな風圧が来るんじゃないかという懸念を私はするわけでありますけれども、適切かどうかという判断は別にしても、これ以上譲れないというような線を堅持していかれるかどうか、今後の方針についてお伺いしたいと思います。
  101. 手島れい志

    ○手島政府委員 確かに、三年後の見直しについてどうこうするという問題があるわけでございますけれども、この協定が実際に動き出すのは来年の一月一日でございまして、それから三年後に、たとえば十五万SDRという下限額を一体上の方にしようとすることになるのか、下の方にしようとすることになるのか、あるいは政府調達コードの対象になる機関をどういうふうに考えていくかということにつきましては、やはりこのコードが発効してから先の実際の経験に基づいてその時点において判断をすべきことではないかというふうに思います。
  102. 野間友一

    ○野間委員 それでは、質問を進めます。     〔佐野委員長代理退席、委員長着席〕  いま政府調達の問題の中心としてクローズアップされております電電の開放の問題について、少し質問を続けたいと思います。  この協定を見ますと、電電公社の「公衆電気通信設備は、含めない。」ということになっております。これはいま日米間で問題になっております中枢通信機器、いわゆる通信機の本体ですね、これについては例外なのかどうか、つまり、これは「含めない」の中に本体は入っておるのかどうかということです。
  103. 手島れい志

    ○手島政府委員 調達コードには電電公社を機関としては出しておるわけでございますけれども日本はここに対して留保をつけまして、日本電信電話公社について、「公衆電気通信設備は、含めない。」ということを書いてございます。したがいまして、この協定を署名している段階においては、先生の言われました本体というものは、ここには現段階では入っておらないわけでございます。  ただ、ここの注釈にさらにつけ加えて申し上げますと、そのほかに除外しているものといたしまして、「地方機関による調達は、含めない。」ということもありますが、三番目に、「この協定は、千九百七十九年六月二日に公表された日本国政府及び合衆国政府の交渉者による共同発表の1(A)に照らし千九百八十年十二月三十一日までに電気通信の分野におけるこの協定の適用範囲に関する合意が得られた場合には、その合意の対象となった調達について適用する。」というふうなことも書いてございますので、念のために申し上げておきます。
  104. 野間友一

    ○野間委員 ですから、この(b)の(i)には本体は入らない、ただし、その(b)の(iii)で、この合意の対象となり得ると。もし合意した場合には入ってくる、こういうことになるわけでしょうか。
  105. 手島れい志

    ○手島政府委員 日米間の話し合いの結果、特定の部分について調達コードの対象にしようという合意ができた場合には、先生のおっしゃるとおりでございます。
  106. 野間友一

    ○野間委員 これらは確かに大変な圧力がかけられておりますけれども、こういうものを開放すべきではない、こう考えておるわけであります。ずっとこれから十二月三十一日に向かって交渉が続くわけですけれどもアメリカからは通信機本体、これらの調達に対する非常に強い要請があろう。この交渉に臨む態度として、これらについてはアメリカの要求をのむべきではないというのが私の立場ですけれども、そういう立場を堅持して臨まれるのかどうか、その点いかがですか。
  107. 手島れい志

    ○手島政府委員 交渉の枠組みとかその時間的なセットアップにつきましては、昨年の六月二日に、先生承知の牛場・ストラウスの共同声明というものがございます。私どもはあくまでこの共同声明にのっとって交渉を進めていきたいというふうに考えております。
  108. 野間友一

    ○野間委員 いろいろな報道によりますと、またこの共同声明等もそうですけれども、実用化されている通信機本体を除き、これから新しく実用化するものについては、アメリカ側の企業との共同研究開発方式によって門戸開放を行う、こういうふうに言われておりますが、こういう考え方が基本にあるわけでしょうか。
  109. 手島れい志

    ○手島政府委員 先ほどの牛場・ストラウスの共同声明の中にも、お互いに高度の技術で役立つものがあれば、これを共同のRアンドDの対象としようということが盛り込んでございまして、私どもとしても電電公社もそのラインで考えておるというふうに聞いております。
  110. 野間友一

    ○野間委員 この共同研究開発それ自体についていいますと、アメリカの企業に日本の独自の技術を研究段階から把握させるということになるのではないかという危惧を持っておるわけですけれども、こういう点についての懸念はないのかどうか。
  111. 手島れい志

    ○手島政府委員 牛場・ストラウスの共同声明におきましても、すべての分野について相手側から要請があった場合には共同開発をするということではございません。電電の技術は国際的に見ましても相当進んでおりますけれども、すべての面ですぐれているというわけでもないというふうに思いますので、そういう外国の技術の方がすぐれているというような分野があるとすれば、あえてアメリカだけということではなくて、そのほかの国とも共同して開発をしていくことがしかるべきではないだろうかというふうに思います。
  112. 野間友一

    ○野間委員 他国のことはともかくとしても、共同で研究し開発するのですから、そういう懸念が実際あるのでしょう。
  113. 手島れい志

    ○手島政府委員 そこのところは、アメリカ側にも利益となる面もあるかと思いますけれども、また同時に日本側にとっても得るところがあるというふうに考えます。
  114. 野間友一

    ○野間委員 共同研究が具体化されれば結局そこから出てきた成果、これを調達せざるを得ない、こういうことにならざるを得ないと思うのです。これはそのとおりでしょう。共同研究し開発したものを政府が調達するということになってくるわけでしょう。
  115. 手島れい志

    ○手島政府委員 共同開発と申しましても、その対象あるいは共同開発のやり方等いろいろあると思いますので、必ずしも共同開発したものイコールその後の買い付けに結びつくものではないというふうに考えております。
  116. 野間友一

    ○野間委員 大変どうもすっきりせぬ答弁ですけれども、要するに必ずしもという表現がいまありましたけれども、そういう可能性はあるわけでしょう、そのために研究開発するわけですから。中には使わないものももちろんありますよ。しかしそういう可能性、道が現にあるわけでしょう。
  117. 手島れい志

    ○手島政府委員 可能性があることは先生の御指摘のとおりでございます。したがいまして、どういう対象を共同開発にするかということがまず一番最初に出てくる問題でございまして、したがって、アメリカの技術が仮に日本より進んでいる分野があるとすれば、そういった面において日本側がアメリカ側と共同開発を行うということは、日本側の技術の向上のためにも役に立つという点があると思います。
  118. 野間友一

    ○野間委員 結局私が大変懸念しておるのは、また少し戻りますけれども、要するに(b)の(i)で本体は含めないといいながら、(iii)のところではことしいっぱいまでに双方で話し合いをして合意をする、合意したものは当然開放の対象、調達の対象になる、こういう仕組みですよ。しかもこの開放の中身については、もちろん本体も含めていまアメリカの方はやっていますから対象になるということですね。  同時に心配なのは、もしも合意に達しないという場合でも、共同開発研究ということで、既存のいろいろなそういう本体なり設備についてはともかくとして、新たにこれから研究開発をしていくということになりますと、結局それが本体ですから、行く行くはそういうことで本体も開放の対象になるというふうに理屈からいったら入っていくわけでしょう。その点について非常に懸念をしておるわけであります。  外務大臣にお聞きしたいのですけれども、いま電電調達についていろいろな経緯なり問題点があると思いますけれどもアメリカへもいらっしゃるわけですけれども、向こうの風圧に屈することなく、本体等についてはやはり開放しないという線を守って交渉するべきであるというふうに私は思いますけれども外務大臣の認識はいかがでしょう。
  119. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この東京ラウンド交渉の性質として、相互貿易をできるだけ自由にして相互が利益を受けるということでございまして、政府調達について日本だけが門戸を開放するのではなくて相手国も門戸を開放するわけでございまして、日本からもそういう部門については輸出がふえる。それも大企業、中小企業ございましょうし、そういう輸出産業の中小企業は新たにその職場がふえるわけでございまして、やはり一方だけでなくてプラスマイナスを考えなければいけないと思いますが、従来日本貿易自由化によって大体において利益が多かったと私ども考えております。物によっては特定のものが外国より競争力が弱いために、先ほどお話しのような部門について失業が出ることもあり得ると思いますけれども、他の分野におきましても、輸出がいままでできなかったものができることによって雇用がふえるわけでございますから、これは国民経済全体の中で考えてまいる必要があると存じます。  電電公社の問題につきまして、いろいろ従来からの経緯もございますし、まだいまの段階では先方の考え方についていろいろ確かめる、相互に専門家レベルで、どういうことを従来やってきているかということを日米の間で詰めている段階でございまして、今回私が参ります場合も交渉までには至らないと考えております。この点もやはり相互的な点がございますので、日本が利益を受ける面、それから相手国が利益を受ける面、双方あると存じますので、一方だけが、日本だけが損するという性質のものではないと考えておるわけでございます。
  120. 野間友一

    ○野間委員 私、特に電電に関してお伺いしておるわけなんですね。相互主義というのは確かに共同コミュニケの中にもありますし、そのとおりだと思いますけれども、ただアメリカの場合には電気通信というものは、日本と違いまして民間なんですね。  それで、しかも私は特に心配するのは世界に冠たるIBMですね。これの世界の情報産業の支配戦略の一つとして、アメリカが特に電電に焦点を当てて猛烈な圧力をかけておる、こういうふうに私は思うわけですね。  そこで聞きたいのは、要するにこのIBMのシェアですね。各主要国に対する占有率は一体どのようなものであるか、これをひとつお答えを願いたいと思います。
  121. 村岡茂生

    ○村岡説明員 公式に調べたものではありませんが、あるアメリカの調査会社の調べによりますと、七六年十二月末現在におきますIBMのシェアは約五八%強と報告されております。(野間委員主要国に対するシェアです」と呼ぶ)国別のシェアはちょっときょう持っておりませんので、後刻申し上げたいと思っております。
  122. 野間友一

    ○野間委員 これはあしたもありますから、ぜひひとつ届けていただきたい。  IDCの調べですけれども、いま確かに世界的には五八・四%。アメリカでは七〇%ですね。西ドイツでは六二・二、英国は四八・四、イタリアが六八・九、オランダが五六・四、フランスが六二、日本の場合二八・九、こういうふうになっておると思うのですけれども、正確な数字はあしたいただくとして、大筋というか、こういうような割合には間違いないのかどうか。
  123. 村岡茂生

    ○村岡説明員 大筋においてそのとおりだと承知しております。
  124. 野間友一

    ○野間委員 ですから、一般的な開放体制なりあるいは貿易自由化というふうなことについて一般的な外務大臣お話もあったわけですけれども、特に電電に対する圧力が強いということの中には、いま申し上げたように、この主要な世界の発達した資本主義国の中でも比べまして、日本の場合には二八・九、言ってみれば大変に低いわけですね。したがって、ここに対して集中攻撃をかけてくるというのも、彼らの戦略の重要な目玉であることは明らかだと私は思うわけです。特にカーター政権のバンス国務長官とかあるいはブラウン国防長官さらにハリス住宅都市開発庁長官ですね、こういう人はIBMの取締役をしておるということであります。しかも、大統領選挙が目前に迫っておるということで一段と対日攻勢が強まってくるというふうに思っておるわけであります。  したがいまして、そういうような情勢も十分踏まえた上で、ことしいっぱいを一つのリミットにする交渉にひとつ臨むという態度が大変大事ではなかろうかというふうに思います。これはいかがでしょう。
  125. 手島れい志

    ○手島政府委員 政府調達コードの交渉そのものといいますのは、もちろん各国の政府に企業からのいろいろな要望が出ているということはあるかもしれませんけれども、政府同士の交渉といたしましては、特定の企業というものの利益の追求ということでなくて、やはり政府同士でいかに相互主義を確保しながらその開放を進めていくかというようなことで交渉をしてきているわけでございます。  確かに、IBMの元社外重役でありましたバンスなど三人の人がカーター政権のポストにいるというのは事実でございますけれども、さりとてこのカーター政権自体がIBMの主張、要望に押されてそれを目的として交渉に臨んでいるというふうに即断するのはちょっと無理ではないかというふうに私は感じております。
  126. 野間友一

    ○野間委員 特に、政府調達の核は何と言ったってやはり情報産業なんですね、まさに。ですから、アメリカとしてもこの中の一番目玉はこれだと私は思うのですね。  そこで、関連して聞くわけでありますけれども日本の郵政省あるいは電電公社、これに対応するものとして西ドイツや英国、イタリアあるいはフランスはどのような機関があるのか。協定の中で日本でいう郵政省とかあるいは電電公社、これに対応するものはいま申し上げた西ドイツとかあるいはイタリア、英国あるいはフランスですね、この協定の中にはどういう機関として対象となっておるのか、お答え願いたいと思います。
  127. 手島れい志

    ○手島政府委員 ECは、この政府調達コードの対象としては、電信電話に関するものはオファーをしておりません。
  128. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんからこちらから言いますけれども、コードを見ますと、西ドイツの場合は連邦郵便電気通信省、イタリアの場合には郵便電気通信省、イギリスが郵政庁、フランスは国家電気通信基金、こういうものがコードを見た上で大体日本の郵政省や電電公社に対応するものではないかというふうに私は理解したのですけれども、これは間違いないですね。
  129. 手島れい志

    ○手島政府委員 EC諸国におきましては郵便電信電話をつかさどっている省庁があるわけでございますけれども、これらの省庁のしております業務のうちで、このコードの対象としてオファーをされているのは郵便業務に限るということで出しているわけであります。
  130. 野間友一

    ○野間委員 まさにそうなんですね。これが問題なんですね。つまり、国家機密とか情報というのは大変重要な国の中枢神経になるわけですね。したがって、日本の場合には、いまストラウス・牛場の共同発表というようなことで詰めておりますけれども、これは本体が圧力で入れられるかどうか、いま政治的には大変な問題になっていますね。ところが、いまいみじくも局長が答えたように、日本の郵政省なりあるいは電電公社、これに対応するECのそういう省庁等を見ましても、そのほとんどが郵便業務に限るということになっておりまして、日本のように電電公社的な情報産業、こういうものが政府調達の対象になっていないというのが一つの特徴なんですね。したがって、ここに大きな問題がある。イギリスにしてもフランスにしても、いま指摘したように郵便業務に限るという、ここの意味を私は再三質問して、アメリカの圧力に屈して開放するなと言う理由はここにあるんで、各国みんなそういう位置づけをしておると思うのですね。  したがって、これはくどいようでありますけれども日本だけがと言っても過言ではないと思いますけれども日米交渉の対象にこういうものがされておる、ここに特異なアメリカの圧力の中心があるわけであります。したがって、そういう情勢を踏まえた上できちっと日本立場、中枢神経でありますからこういうものを守るという立場から、毅然とした立場交渉に臨むべきである、このことを私は要求するわけであります。  外務大臣いらっしゃるわけでありますけれども、重ねてこれらの点についてぜひひとつ答弁をいただきたい。
  131. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 昨年の牛場・ストラウスの合意に基づいた約束、これは国と国の間の約束でございますので、この方針に基づきましてただいまのような点について日本対応を決めてまいりたいと考えております。
  132. 野間友一

    ○野間委員 ジョーンズレポートの中でも、これ全部が全部事実だというようなことを私は毛頭思っておりませんし、言う必要もないわけでありますけれども、この中でもいま申し上げましたようなことについてこう言っていますよね。「一部の通信機材については米国の技術は進んでいるのだから、もしNTT幹線網への調達が研究開発段階で開放されるならば、米国はこの通信機材市場へ食い込むことができるだろう。換言すれば、あるシステムの早期開発に参加することによって、またそのシステムの研究開発で日本人に協力することによって、米国の供給業者はいつかはNTT通信網の顕著な部分に接近することができるだろう。」こべなっておるわけですね。したがって、本体部分をどうするかということと同時に、私は研究開発、こういうものが一体アメリカからしたら何をねらっておるのかということがこのジョーンズレポートでもはっきり出ておると思うのですね。  したがいまして、こういうことも踏まえた上で、ずるずるこういうもので寄り切られるというのではなくて、やはり積極的にいろんなそういうものを考えた上で交渉に臨み、そして毅然とした態度をとるべきである、こう思います。  最後にこの点について重ねて答弁を求めたいと思います。
  133. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 牛場・ストラウスの合意の中には日米間の相互主義ということをうたっておりますので、特にアメリカのATT側が認めないことを日本側が認める必要はないわけでございまして、そういう立場交渉してまいりたいと存じております。
  134. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ時間の切りが、あとたくさんありますけれどもあすに回しまして、これで終わりたいと思います。
  135. 中尾栄一

    ○中尾委員長 次回は明十八日火曜日、午前九時四十五分理事会、十時委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十五分散会