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1980-02-14 第91回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月十四日(木曜日)     午後一時五十七分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 奥田 敬和君 理事 佐野 嘉吉君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 野間 友一君 理事 渡辺  朗君       上草 義輝君    木村 俊夫君       工藤  巖君    栗原 祐幸君       小坂善太郎君    佐藤 一郎君       東家 嘉幸君    中山 正暉君       岡田 利春君    浅井 美幸君       玉城 栄一君    金子 満広君       榊  利夫君    林  保夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君  出席政府委員         外務政務次官  松本 十郎君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     池田 久克君         外務大臣官房調         査企画部長   大塚博比古君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 一月三十一日  辞任         補欠選任   野間 友一君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     野間 友一君 二月七日  辞任         補欠選任   榊  利夫君     不破 哲三君 同月九日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     榊  利夫君 同月十四日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     工藤  巖君   中川 一郎君     上草 義輝君 同日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     中川 一郎君   工藤  巖君     石原慎太郎君 同日  理事野間友一君一月三十一日委員辞任につき、  その補欠として野間友一君が理事に当選した。     ――――――――――――― 二月九日  原子力の平和的利用における協力のための日本  国政府カナダ政府との間の協定を改正する議  定書締結について承認を求めるの件(条約第  一三号)(予)  廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止  に関する条約締結について承認を求めるの件  (条約第一四号)(予)  廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止  に関する条約の紛争の解決に関する改正の受諾  について承認を求めるの件(条約第一五号)(  予)  日本国ポーランド人民共和国との間の通商及  び航海に関する条約締結について承認を求め  るの件(条約第一六号)(予)  日本国政府フィンランド共和国政府との間の  文化協定締結について承認を求めるの件(条  約第一七号)(予)  所得に対する租税及びある種の他の租税に関す  る二重課税の回避のための日本国ドイツ連邦  共和国との間の協定を修正補足する議定書の締  結について承認を求めるの件(条約第一八号)  (予)  千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約締結について承認を求めるの件  (条約第一九号)(予)  千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約に関する千九百七十八年の議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第二〇  号)(予)  特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に  関する条約締結について承認を求めるの件  (条約第二一号)(予)  南極のあざらしの保存に関する条約締結につ  いて承認を求めるの件(条約第二二号)(予) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 一月三十日  朝鮮の自主的平和統一推進に関する陳情書外八  件(第一〇  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  去る一月三十一日理事野間友一君の委員辞任により、理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、理事野間友一君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 中尾栄一

    中尾委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、昭和五十五年度外務省関係予算について、その概要説明を聴取いたします。外務政務次官松本十郎君。
  5. 松本十郎

    松本(十)政府委員 昭和五十五年度外務省予算重点事項を御説明いたします。  昭和五十五年度一般会計予算において、外務省予算としては、二千八百五十九億九千百万円が計上されております。これを前年度予算と比較いたしますと、四百三十八億二千万円の増加となり、一八・一%の伸び率となっております。  次に内容について御説明いたします。  昭和五十五年度においては、特に定員の増強と機構整備を図るとともに、在外職員勤務条件改善の諸施策を強力に推進し、外務省責務遂行に遺漏なきを期することといたしました。  外務省定員につきましては、本省及び在外公館新規増七十八名、他省振りかえ増三十六名、計百十四名の増員となりますが、他方定員削減が三十四名ありますので、純増員としては八十名となります。この結果五十五年度外務省定員は、合計三千四百八十三名となります。  本省機構整備につきましては、中近東アフリカ局アフリカ第二課を設置すること、経済局海洋課を設置することが予定されております。  また、在外公館関係では、ブラジルのクリチバ市に総領事館の設置が予定されており、これが実現いたしますと、わが国在外公館実館は百六十四館となります。  このほか、セント・ビンセントセント・ルシア及びキリバス国に兼館の大使館を設けることとしております。  不健康地勤務条件改善関係経費は、三億七千八百万円であり、前年度予算三億二千九百万円と比較いたしますと、四千九百万円の増加であります。  本経費は、勤務環境の厳しい地に所在する在外公館に勤務する職員健康管理福祉厚生施設等改善を図るためのものであります。  次に、国際協力拡充強化に関連する予算内容を御説明いたします。南北間の相互依存性がより深まっております今日、政府開発援助、すなわちODA重要性はますます高まっております。政府としては、ODA三年倍増の方針を実施しておりますが、五十五年はこの中期目標最終年に当たっていることもあり、ODA事業予算としては、政府全体で八千四百二億円が計上され、その対GNP比も前年度の〇・三一%から、〇・三四%へと上昇しております。  また、ODA事業予算中の贈与予算増加したことにより、事業規模に占める贈与の割合が五〇・一%となって、わが国が戦後本格的に経済協力を開始して以来、初めて五〇%の水準を超えました。  外務省所管ODA関係予算積極的拡充が図られており、五十五年度分としては、総額一千九百五十三億三千万円が計上され、五十四年度当初予算と比較いたしますと、三百七十六億五千五百万円の増加となり、二四%の伸び率となります。  特に、二国間無償資金協力外交の円滑なる推進に重要な役割りを果たしており、その予算は、前年度より百億円増の七百五十億円が計上されております。  技術協力拡充は、人づくり協力の柱として外務省ODA事業予算要求の最重点事項一つとして掲げられておりましたが、国際協力事業団事業費は、前年度に比べて、一五・八%増の五百七十九億二千六百万円が計上されております。特に、海外技術協力事業費は、二〇%増の四百三十三億二百万円へと拡充されております。  なお、国際協力事業団移住事業関係予算も、対前年度比約二〇%増の三十一億七千三百万円となっております。  国連機関に対する出資拠出については、分担率増加、円安及びインドシナ難民救済に関する国連機関への拠出金増加等により、前年度に比して五一%増の三百八十九億二千八百万円が計上されました。  次に広報文化活動推進でございます。  海外広報活動拡充強化のための経費は、二十六億六千百万円で、これは前年度予算に比し三億二千五百万円の増加でありますが、五十五年度においては、特にワシントンに広報文化センターを設置することとしております。  国際文化交流事業充実強化のための経費は四十八億六千七百万円であります。このうち、一般文化事業費につきましては、前年度予算に比し四一%増の七億七千三百万円でありまして、特に、ASEAN青年のための奨学金につきましては、十年計画の初年度分として百万ドルを計上いたしております。  また、国際交流基金に対しましては、すでに出資済みの四百五十億円に加え、さらに、二十五億円の追加出資を行うこととしております。これに伴い同基金年間事業規模は、三十七億二千百万円となり、前年度予算に対し四%の伸び率となりますが、新たに中国に対する日本語普及特別事業を開始するなど一層その事業内容充実を図ることとしております。  重点事項の第四の柱であります日本人学校の新設を初めとする海外子女教育充実強化のための関連予算としては、五十三億三千四百万円が計上されております。現在、海外在留邦人同伴子女義務教育年齢にある者は、およそ二万四千人に達しており、これらの子女教育がきわめて切実な問題となっているので、昭和五十五年度においても引き続き海外子女教育充実強化のための諸施策推進するものであります。  具体的施策としては、アラブ首長国連邦のドバイ、チェコスロバキアのプラハ、ブラジルのピトリア及びインドネシアのメダンの四都市に全日制日本人学校を新設するほか、台湾の台中にある日本人学校分校独立校に昇格することとし、この結果全日制日本人学校数は台湾三校を含み、六十七校となります。このほか、教員七十九名の増員を行い、教員の待遇についても必要な改善を行うこととしております。  以上が、外務省昭和五十五年度予算重点事項概要であります。
  6. 中尾栄一

    中尾委員長 以上で概要説明は終わりました。
  7. 中尾栄一

    中尾委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  8. 土井たか子

    土井委員 きょうは、八〇年に入りまして当外務委員会では初めての国際情勢に関する質疑の日でございますから、ひとつ基本的なことを大来外務大臣に私は御質問したいと存じます。  政治的なことなので、局長後ろの方に控えていらしてまことに御苦労さまでございますが、ひとつ大臣の方から御答弁をその都度いただくことができますように、まず申し上げたいと思うのです。  外務大臣大平内閣総理大臣施政方針演説をなさいましたが、その中で、八〇年代の国際社会は複雑な要素が交錯し、一歩その対応を誤まると破局を招来しかねない岐路に立っているというふうにお述べになっているのですね。大来外務大臣も、ここに私持ってまいっておりますが、外交演説の中で、国際情勢の厳しさとわが国の置かれた地位考えると、わが外交にとり、まさに試練の時期と言っても過言ではないというふうにおっしゃっております。  確かに考えてみると、七〇年代というのはエネルギー危機に代表される、そしてまたアメリカ地位の低下ということにおいても代表される、そしてまた社会主義国家間の対立など、いままでにない大きなうねりがうねっている中で、そのツケがいま八〇年を皮切りに八〇年代に回されたかっこうだというふうに申し上げていいと思うのです。まことにわが国外交は、戦後初めて味わう国際政治の中での厳しい現実と試練に立たされているのじゃないか、このように申し上げて過言じゃないと私も思うんですね。そうであるからこそ、これからの八〇年代におけるわが国外交基本方針ということをひとつ明確に打ち出すという必要があるのではないかと思います。その中で国際環境のこういう厳しさを日本国民が理解をいたしまして、そして八〇年代の試練に正面切って立ち向かうというふうなことを考えてまいりますと、この政府外交に関する演説というのをもう一度私は読み返してみたのですが、どうも総花的で抽象的でよくわからないのです。  まずそこでお伺いしたいのは、大平内閣外交基本方針というのを、もう一度端的にここで大来外務大臣見解を通してお述べいただけませんか。
  9. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま土井委員から御指摘がありましたように、今国会の総理及び私の演説の中で国際情勢をかなり厳しく見ておるわけでございます。一つには、日本外交が、これまではバイラテラルといいますか二国間の関係が大きかったように見られるわけでございまして、たとえば従来の主要な外交問題と申しますと、日米、日中、日韓日ソ、必ず「日」がついておるわけでございますけれども、昨年の暮れ以来の事件は、イラン問題とかアフガニスタン問題という、「日」がつかない世界的な国際的な問題で日本外交がいろいろな選択の判断をしていかなければならない、そういう意味でも日本外交一つの新しい転機に差しかかっておるのではないか。  なぜそういうことになったかということを考えてみますと、一つには、先ほど土井委員の御指摘もありましたが、第二次大戦以来アメリカが圧倒的といいますか非常に大きな力を、世界の問題、国際問題について、経済の面、軍事力政治力を含めて持っておりましたけれども、これが世界の他の地域の経済成長発展影響もありまして、相対的にアメリカの力というものが下がった面がある。そういう点で、従来アメリカ自身が判断し行動し、そのかわり責任も自分でとるという行き方が必ずしも従来どおりにいかなくなりまして、ヨーロッパなり日本なり友好国協力を求めるという姿が出てまいっておるんじゃないか。  それから一つには、やはり日本経済力、特に経済力を中心にいたしまして、世界の中に占める比重、重要性が上がってまいりまして、従来であれば他の世界に起こるいろいろな問題について日本は知らないということで済まし得た場合が多かったと思うのでございますが、最近になりますと、世界GNPの一割近くを日本が持つ、アメリカ経済力の半分に近いところまで来たということになりますと、やはり世界全般の問題について日本が重要なメンバーの一つとして考えられる。そういう情勢のもとでいろいろな世界の問題に日本態度日本の政策というものが問われる段階に入ってまいったんじゃないか。そういう意味で八〇年代は、一方において世界のいろいろな動きがございますが、他方におきまして日本役割りの増大に伴う外交面における発言をより多く求められていく。そういう意味での試練に立たされておると考えておるわけでございます。
  10. 土井たか子

    土井委員 どうもわかったようなわからないような御説明のように私は失礼ながら思うのですね。  昨年の十二月の十二日でございましたか、パリから大来外務大臣帰ってこられました。そして、そのときに記者会見の席でおっしゃったことは、日本は四方八方に気を配らなきゃならない立場がある。そういう立場上もう一つはっきりした態度がとりにくい。いわば谷間外交にならざるを得ないということを言われております。谷間外交というのはうまい表現だなと思って私は新聞記事を拝見した一人なんでございますが、そう言っちゃ失礼ですが、パリにおいてバンス国務長官に言われっ放しみたいなかっこうで帰国された外務大臣とされましては、どうもわが国外交方針というものが谷間外交にならざるを得ないというふうにおっしゃるお気持ちというのは何かわかるような気も私自身はしたのですけれども、この谷間外交とおっしゃる外務大臣のそういうお立場と、福田総理福田内閣当時に言われたあの全方位外交というのがありますね、これは同じ意味なんでございますか、違うんですか、中身は。一体、大来外務大臣谷間外交とおっしゃる真意というのはどういうことなんでございますか。これをもう一度御説明いただきたいと思います。
  11. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私、谷間外交と申したかどうか、あるいは新聞記者が名前をつけたのかもしれませんけれども、一方におきまして日本が先ほど申しましたような経済力で大きな地位を占めましたけれども、資源の点では、食糧、エネルギー、その他を含めて大部分海外に依存している状態にございますし、防衛力の方も国の安全を守る最小限でやってまいっておるという条件がございますので、絶えず諸外国との関係に注意していく必要がある。  考えようによりますれば、非常に歯切れのいいことをなぜ外交で言えないのかという御意見もいろいろ受けるわけでございますが、やはり日本国民の安全を守る、経済発展を図っていくという場合には、必ずしも歯切れのいいことを言うことが適当かどうかという場合もあるわけでございまして、そういう状況谷間外交と言えば谷間外交世界の各国がお互いに友好的であり平和であれば日本は非常に外交もやりやすい条件にございますが、日本友好国と思っている国々の間に争いが始まってくるという場合に、相当むずかしい立場に置かれる。しかし、余り一方的な立場をとることは日本の安全なり経済影響が出てくる。そういう事情をたしか当時申したように思います。  全方位外交についてお尋ねでございましたが、これは私の考えでございますが、全方位と言うと、世界じゅうのあらゆる国と同じように仲よくつき合うという響きもあるわけでございますが、これはやはりどうしても国によってその親しさ、友好の度合いがある程度違うということは当然現実問題としてあるわけでございまして、私、申しておりますのは、いまのような日本資源なり防衛という面から考えて、日本外交は少なくとも世界じゅうに深刻な敵をつくらないという努力はしていかなければならないのじゃないか。そういう意味で全方位外交と言うならそういうことになるのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  12. 土井たか子

    土井委員 どうもやはり谷間外交というのは一面では歯切れの悪い外交を指しているがごとく、御説明になる御説明歯切れが悪い御説明になっているわけでありますが、これは考えてみると、しかし、歯切れの悪い外交谷間外交と言い切れるかどうかということになると、私はそうは思わないのですね。歯切れが悪いだけではどうも日本の国益を守っていくということはとてもできるはずはございません。  そういう点からすると、追い打ちをかけるようなかっこうになるかもしれませんが、例のイラン米国大使館占拠事件について、すでに私の属しております社会党も、外交関係に関する一九六一年のかのウィーン条約で言うところの公館不可侵外交官不可侵、あの条項に反する国際法違反だ、人道的な見地から人質の解放を求めて早急な解決を望むというふうな態度を早々と表明したのですね、あの当時。ところが、そういうふうなことについて、どうも外務省態度というのは煮え切らなかったいきさつが実はあるということは周知の事実であります。十二月二日の国通安保理演説西堀大使演説についてもどうも歯切れが悪いというふうな非難、物足りないというふうな非難を受けるということでもありましたし、そしてまた、イランの原油について、対米禁輸分の半分に相当する二千万バレルというものを日本の商社六社が買いあさったというふうな実情が報道されるに及びまして、人質問題でいち立っている米国だけではなくて、どうも外国から不信を買ろということに当時日本立場というのはなったのじゃないか。そういうときに、案の定、大来外務大臣パリバンス国務長官から無神経過ぎるというふうなことが言われて、あわてて、初めてと言ってもいいかもしれません、十二月の十二日になって国際法違反であるというふうな見解を出したといういきさつが実はございます。  こういうことを考えていくと、どうもアメリカイラン制裁に対して、日本は後追いをしながらそれに対して同意せざるを得ないような状況というふうなことになったのじゃないか。つまり、客観的に見た場合には、米国の圧力に屈したという印象がどうしてもぬぐい切れない、どう日本が弁解しようと、これはぬぐい切れないということが、日本国民の目にも映りましたし、しかも外国から見た場合には、これはやはり映ったのじゃなかろうか。相手方に対して言わなければならないことも一言わない、言いたいことも言わない、顔色をうかがいながら言いたいことを言わない、言うときには歯切れの悪いことしか言わないというふうなことは、私は谷間外交とは思わないのであります。右に軍事大国、左に資源大国という、この大国にはさまれて、そういう条件からすれば谷間に位置している軍事小国であり資源小国であるという日本の国情から考えると、正しいことは正しい、間違っていることは間違っているというふうにはっきり言うことが、やはり国際社会に対する信頼をかち取ることになるというふうに考えるわけでありますが、この点は、大来外務大臣はどのようにお考えでございますか、ひとつ端的にお答えをいただきたいと思うのです。
  13. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 当時、私も外務大臣就任早々相次いで事件が起こってまいりまして、多少戸惑う面もあったわけでございますが、イランの問題については、振り返ってみますと、ただいま土井先生が言われたように、外国大使館を占領して館員を人質にとるということは国際的な秩序の破壊でございますし、単にアメリカイラン関係ということじゃなくて、世界全体の秩序を保つという意味からいって賛成できないということを、もう少し早く、もう少し強く言うべきであったのかもしれないと思います。  しかし、この日本立場は、いまお話しのように、資源小国という面での資源外交ということが従来から非常に重視されてまいっておりまして、同時に、経済面外交面を集中すると申しますか、経済外交ということも言われておりまして、最近になりまして、経済だけじゃいかぬ、政治的、文化的な面をあわせて国際関係をもっと考慮していかなければならないという考え方が、だんだん日本の国内にも強まってきておるわけでございますが、ある意味では、イラン事件というのがそういう意味での戦後外交一つ過渡期に起こった現象であったのかもしれないと思います。  もちろん、当時といたしましても、イラン政府日本の在イラン大使館を通じまして、人質問題に対しての日本側からの意見も伝えております。それから、当時の安保理事会における西堀代表発言も、言葉を非常に選んではおりますけれども、内容的には人質問題に対する抗議になっておるわけでございます。ただ、その表現が他の国に比べて少しやわらかかったのじゃないかというような問題があったわけでございますが、いまお尋ねの件につきましての私の見方は以上のとおりでございます。
  14. 土井たか子

    土井委員 時宜として適切なやり方を欠いていたのかもしれないというふうな、その当時の取り扱いについてのいまの御見解も含めての御答弁なんですが、いま現に問題になっていることについてさらにお尋ねを進めますと、例のソビエトのアフガンに対する軍事介入の問題です。  社会党は、すでにこの問題に対して、国連憲章平和五原則に違反するものとして、ソ連軍即時全面撤退を党として強く要求をいたしております。大平さんのあの施政方針演説の中でもその趣旨のことは述べておられるわけですが、このソビエトのとった行為というのは国際的に決してペイするものじゃない、こういう行為に対しては非常に高くつくものだということを具体的にしなければならないと思うのですが、大平総理の場合は、わが国にふさわしい努力を重ねていくというふうに演説の中では述べておられます。そしてまた、これは非常に強く、それがたとえわが国にとって犠牲を伴うものであっても、それを避けてはならないと考えますとさえ言われているわけでありますが、ソ連に対してこういう不快感を示す方法、特にきっぱり言い切られる、それがたとえわが国にとって犠牲を伴うものであっても、それを避けてはならないと考えますとおっしゃっている中身について、一体どういうものがあるのですか、どういう措置を講ずるということを具体的に考えられているのですか。いかがでございますか。
  15. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題につきましては、ソ連のアフガニスタン軍事介入からすぐその後に日本政府見解を出しまして、これを外務省でポリャンスキー大使に伝えるということをいたしたわけでございますが、具体的措置につきましては、これはやはり世界的に非常に大きな影響のある問題でございますし、アメリカ、西欧諸国の立場あるいは第三世界立場、こういう立場も見ながら検討を重ねていくという立場でございます。とりあえず、総理演説の中では、高度技術製品の輸出抑制についてココムの場で協力しながら実行していくということが挙げてあるわけでございまして、その他の手段については現在検討中、いまだ具体的な政策についてはっきり申し上げる段階には来ておらない。もう一つは、人事交流について一部抑制的な措置がとられた面がございますが、今後の具体的な内容は検討中であるということでございます。
  16. 土井たか子

    土井委員 検討中検討中というのがえらい続くわけですけれども、これは考えてみると、そもそもソビエトとの関係について言うならば、日本政府アメリカとの基軸外交を行ってきたということがどうしてもこれにも関係をいたしますために、従来ソビエトだけに一方的利益を与えるような恩恵的な措置というのは一切行っていないはずなんですね。日ソ双方が相互利益を得られるような考え方でやってきたというのが実情だと思います。そういうことからすれば、互恵の関係というものがそこであったのじゃないかというふうに考えられるわけですけれども、そうであるならば、具体的な対応をすればするほどみずからも制裁をするというふうな側面を皮肉にも持たざるを得ない。したがって、検討中検討中とおっしゃるのは、少なくとも大平総理が、犠牲を伴うものであっても避けてはならないというふうに大みえを切られても、例の六八年のチェコ事件の制裁のようにそれが線香花火に終わってしまった場合、ばかをみるのは関係者だけだという実情も出てくるかもしれないわけであります。  だから、いま日本としては、単にアメリカの戦略に追随すべきでないと言うだけではなくて、自主的な判断というものもおくればせにやったのじゃ意味がないと思うのです。自主的な判断というものは、検討中検討中でいつまでも検討しているわけにはいかない。やはりそれにはタイミング、時を外してはならないという鉄則があるだろうと思うのですが、この点は、幾らかの決断も含めて、外務大臣考えのところがあろうかと思うのです。いかがでございますか。
  17. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本の置かれている立場は、ソ連、大きな隣国といいますか、地理的にも非常に近いわけでございますし、資源の面における相互依存関係もございますし、日ソ関係と米ソ関係は全く同じものとは言えない面がいろいろあるわけでございまして、日本としては、やはり日本の国益、日本立場を重要視、中心に据えて対応策を考えていかなければならないと思うわけでございます。同時に、このアフガニスタン問題は、全世界を含む、第三世界をも含めての世界的な問題外ございまして、特にやや日本と似た立場にございます西欧諸国の対応策、これも日本としては十八に考慮に入れる必要がある。そういう意味では日本は余り先走ることはどうだろうかという考慮も一面あるわけでございまして、その結果として日本自身が大きな危険を招くということは避けなければいけないという点で対応策については慎重にならざるを得ない面があるように考えております。
  18. 中尾栄一

    中尾委員長 速記をやめて。     〔速記中止〕     〔委員長退席、佐野委員長代理着席〕     〔佐野委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 中尾栄一

    中尾委員長 速記を始めて。  土井たか子君。
  20. 土井たか子

    土井委員 先ほど外務大臣は、ソビエトに対する制裁もこれは慎重にひとつ進めるというふう九意向をここでお述べになったわけですが、大平総理は米ソのデタントにも微妙な変化が見られるというふうな演説をなさるにとどまっておりまして、どうもそこのところもう一つ迫力に欠けているという向きがあるわけですが、私はどういうふうなことがあってもデタントというのは維持していかなければならない、そういう基本線というのはやはりきちっと持つべきだと思うのですね。そういうことからすると、アメリカの方がさきに発表いたしております大統領の年頭教書、それからさらに国防報告などについて、公式に何の反応もいままで出していられない状況でありますけれども、このソビエトに対する制裁とデタントの維持についての調和というものをどういうふうにしていこうというふうなお考えを、外務大臣としてはお持ちなんですか。
  21. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ソ連のアフガン軍事介入につきましては、これは軍事力をもって第三世界の独立国に介入するということになっておりまして、この問題につきましては日本政府も厳重な抗議を発しておるわけでございますが、この一つの対応策としては、このような他国への軍事介入がコストのかかるものであるということ、さらにそういう介入の範囲が広がることのないように、それからすでに介入した地域からは速やかに撤退するように、そういうことについて国際社会の多数の国々が要求しておるわけでございまして、このような軍事介入のコストが高くつくということについて各国が協力して対策を講ずるというのが一つの面でございます。  もう一つの面は、デタントの維持と申しますか、デタントの将来についてでございますが、これはカーター大統領の一般教書の中でも、米国とソ連は世界の二大国として世界の平和の維持に対する大きな責任を持っておるのだ、したがって、SALTIIの交渉の継続等を通じまして世界の大きな破局的な状態を防がなければいかぬ、これはカーター大統領も教書の中で述べておる点でございます。一方、ブレジネフ書記長もこのアフガン事件の後におきましての記者会見で、このデタントは世界の各国ともその継続を願っているものだということを言っておるわけでございます。また、最近開かれましたドイツとフランスの首脳会議のコミュニケにおきましても、この両国がデタントの継続を願う、一方においてソ連のアフガンからの撤退を求める、他方においてデタントの継続を願うという意見を出しておりまして、世界的に見ましてこのアフガンを契機としてデタントの線が全く消えてしまったということではないと私どもは解釈いたしておるわけでございます。
  22. 土井たか子

    土井委員 どうもその解釈とコメントだけに終わっておりまして、いままさに私が御質問を申し上げた、ソ連制裁とデタントの維持との調和をどのように図ろうとなさるのかという点についてのお答えはいただけなかったようであります。この点はどのようにお考えになるのですか。
  23. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最初に申し上げましたような今回のような軍事介入が高い値段につくということについての国際的な措置、それからデタントを全く破壊するようなことにならないような国際的な努力、この両者のバランスをとりながら進めていくというのが日本立場であろうと考えております。
  24. 土井たか子

    土井委員 優等生的答弁に終わっているわけですが、さきに、日米安保体制を基礎とした日米友好協力関係の維持強化は引き続きわが国の礎であります、これは、いまの調和の問題についてお答えになる場合でも恐らく基本線だろうと思うのですね、わが国外交の礎なんですから。外務大臣自身がそのようにお述べになっていらっしゃるわけですからね。  そこで、お尋ねを進めますが、ならば、カーター・ドクトリンを含めまして、アメリカ世界戦略に対して日本は是認をするということなんでごいますか。この点はいかがでございますか。
  25. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほども申しましたように、日本アメリカ立場がすべてのことで一致するということではありませんで、日本日本自身の国益を中心にして考えていかなければならないわけでございますが、アメリカの場合に、自由な民主社会、そういう議会制度、こういうものを共通にいたしておりますし、これは単に日米関係ということだけでなくて、人間の社会で自由な社会、議会制度に基づく政治制度というものを維持していくということに日本自身の関心と要求があると思いますので、そういう立場をともにするという日米関係がございます。  同時に、日米安保条約を通じて日本の安全を守るということについての関係がございますのは御承知のとおりでございます。ことに、日米安保条約というのは、日本の領土、領海が攻撃されたときにアメリカが守るという約束でございまして、アメリカが攻撃されたときに日本は守る義務がない、言ってみれば片務的な関係を持っておりまして、日本の安全は戦後の平和憲法、その最低限の防衛支出ということで、日本の安全を守る上に、この日米安保条約の抑止力ということは、非常に重要な意味を持っておると思います。  第三には、日米経済関係は、日本の主要穀物の輸入の七割はアメリカから来ておりますし、日本の輸出製品市場の四分の一は米国である。日本経済、個々の日本人の雇用、所得、あらゆる点から見て日米経済関係が大きな比重を持つ、そういう点等を考えまして、日米関係日本外交の基軸であるということは言えると考えておるわけでございます。
  26. 土井たか子

    土井委員 この点もう一度お尋ねをいたしますが、お答えの中ではなるべく余分なことは差し控えていただけたらありがたいです。  いまの大臣のお言葉をそのまま申し上げますよ。日本の安全を守るということのために日米安保体制を基礎とした日米友好協力関係があるのです、ということは、すなわち、わが国アメリカ世界戦略に対して協力をするという立場考えてよいかどうか。ということは、すなわち協力をしていくということがわが国の国益にかなうことだというふうに大臣自身はお考えになっていらっしゃるのかどうか。この点はいかがなんですか、この点についてだけお答えください。
  27. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日米安保条約は、極東の平和と安全のために協力することを言っておるわけでございまして、その面での協力は当然でございますが、世界のあらゆることについて、すべて同一政策をとるということではございません。
  28. 土井たか子

    土井委員 この安保条約で認められている中身について、日本が、日本さらには極東の安全、平和のために日米間の協力体制を緊密なものにしていくということが、すなわちアメリカ世界戦略に対して協力をするという立場になるのではないか、こういう点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  29. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 極東の現状を見ます場合に、いま御指摘のようなことになると思います。
  30. 土井たか子

    土井委員 さあ大変ですよ、外務大臣アメリカ世界戦略に対して日本協力関係を持つことが、すなわちアメリカとの日米安保体制を基礎とした日米友好協力関係の維持強化を引き続き行うわが国の礎だということになるわけですから、アメリカ世界戦略に協力をするわが国立場からすると、日本の軍事基地を利用して海外にアメリカ軍が面接戦闘作戦行動に出るについても、その間、事前協議ではイエスしかないわけですよ。論理的にそうなります。事前協議をやる意味がない、すなわちイエスしかないのだから。こういうかっこうになりますが、外務大臣、そのことを是認なさるわけでありますね。
  31. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほどの答弁が少し短過ぎたのかもしれませんけれども、私はそういう趣旨で申し上げたのではなかったつもりでございまして、日本の安全を守る上に米国協力がこの地域におきまして、極東の地域において有効な力になっておるということを申し上げたわけでございまして、世界じゅうのあらゆる事件について全面的に、一〇〇%アメリカ協力するということではないということを申し上げたっもりでございます。
  32. 土井たか子

    土井委員 それについてさらにいろいろ確認の仕方があるかと思いますが、それならばひとつこういうことについて御質問を進めましょう。  先般、予算委員会で、何回となく極東の範囲並びに極東の周辺という問題について質疑が繰り返されました。その間、伊達局長は大変御奮闘のさまでございましたけれども、その予算委員会の席で、結局安保条約には極東の周辺地域という言葉はない、極東の周辺という言葉は使われていない、極東の平和と安全に脅威が生じたときに、米軍がこの脅威に対処するために行動する範囲は極東の範囲より広い、そうしてこの地域は、極東の安全と平和への脅威または武力攻撃の性格によって決まるものであって、この地域をあらかじめ明らかに定めることはできない、ここまでがいわばお互いの質疑の中から出てきた外務省の物の考え方の基本にあるところであります。  しかし、周辺地域というのは際限なく広がるものてはないわけてありまして、やはりこれには一定の限界がなければならないはずなんです。初めはペルシャ湾は含まれるがごとくにお考えになっていたのが、後に変更されて、外務大臣答弁でペルシャ湾は含まれないというふうなことになったわけでありますが、そのいわゆる際限なく広がらない、これには限界があるという、一体何が限界になるのでありますか。この点、まずお答えください。
  33. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 極東の安全と平和に対する脅威の性質、内容によるわけでございますが、同時に物理的な距離、この脅威は経済的な脅威ではなくて軍事的な脅威を意味しているわけでございますから、そういう点から考慮すれば、事実問題としてペルシャ湾は極東の周辺という観念に入ってこないというのが私どもの解釈でございます。
  34. 土井たか子

    土井委員 いまペルシャ湾についてだけのお答えをされたわけですが、具体的にそれがこの間うちから討議の対象になっていたということでありますが、いま外務大臣は、事を軍事的に考えて、その性質からして、その内容からして、脅威になるかならないかということを判定するという意味の御答弁をされました。一体これはだれが、ある地域における紛争について、いま外務大臣がおっしゃったように軍事的に、その性格からして、内容からして、極東の平和と安全に脅威を生ずるというふうに判断をし判定をするんですか。これはだれがやるんですか。
  35. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題は、日米安保条約第四条にございます随時協議というような場で、日米両国が話し合って決めることができると思います。
  36. 土井たか子

    土井委員 そうすると、日米両国が話し合って、これは極東に対して脅威となるかどうか、安全と平和を脅かすということになるかどうかということを協議なさるわけなんですね。そうすると、まずペルシャ湾というものは含まれるというふうにお答えになって、さらにペルシャ湾は含まれずというふうに今回返答が変わったわけですが、ペルシャ湾に対する認識も、日米間でいろいろと協議なさった末、国会での答弁がこのように変質したというふうに受けとめてよろしゅうございますね。何月何日、どこで、アメリカとこういうことについて協議なさったんですか。
  37. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この場合には協議をいたしておりません。日本側の独自の判断でございます。
  38. 土井たか子

    土井委員 日本側の独自の判断とおっしゃるなら、日本のどこの機関がそういうことを判断するんですか。判断する機関日本にございますか。
  39. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本が判断いたしましてアメリカ政府に対して照会をいたしました。アメリカもこれに合意いたしたわけでございます。
  40. 土井たか子

    土井委員 日本側が判断されるというのは、どこにそういう判断の機関があるんですか。軍事的に、性格から考えて、内容から考えて、極東に対する脅威になるかならないかということを判断する機関日本にあるんですか。
  41. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最終的には総理大臣の判断だと存じます。
  42. 土井たか子

    土井委員 総理大臣おひとりで判断なさるわけじゃないでしょう。しかも、総理大臣おひとりの判断でないこともいまの御答弁ではっきりしています。アメリカと協議の末、日本側の意向をアメリカ側にただし、アメリカもよかろうと言って、初めてそのことが極東における脅威になるかならないかということの判定結果として出てくるんじゃないですか。  そうすると、さらに申し上げますが、いまアメリカ側との合意でそういうことになる、先ほどの御答弁の筋をずっと推し進めればなるようでありますが、一九六五年に椎名さんがベトナムを極東の周辺というふうに解釈をされたということがございました。これはもうすでにだれでも知っているわけでありますけれども、このことについては、恐らくはいま外務大臣の御答弁からすると、アメリカ側と協議をしてこのような御答弁が出てきたに違いないと思うわけですが、何月何日、どこで、だれとだれとがこのことについて協議を日米間で進めたのでございますか。
  43. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 事実関係でございますので私から答弁させていただきますけれども、当時国会でもいろいろ議論がございまして、極東とは何か、あるいはその周辺は何かという議論がございました。その際に、ちょうどベトナム戦争がたけなわでございまして、ベトナムの状況が極東の安全と平和にとって脅威になるというのが政府考えでございました。その政府考えに基づいて国会においても答弁してきたのが事実でございます。
  44. 土井たか子

    土井委員 政府考えとおっしゃいますが、これはある時点における、先ほど外務大臣がおっしゃったことをもう一度申し上げれば、軍事的に、その性格から、その内容から、極東に対して脅威になるということを判断する日本政府機関というのは具体的にはどこなんです。
  45. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 政府全体でございます。
  46. 土井たか子

    土井委員 政府全体は、脅威になるかならないかということの判断資料というのはどこに求めてそれをおやりになるのですか。
  47. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 実質的には先ほど申し上げました内閣総理大臣が判断いたしますが、その判断に必要な資料は外務省防衛庁等それぞれの関連の機関が提出するという形になると思います。
  48. 土井たか子

    土井委員 ただ、いずれにいたしましても、大来外務大臣が先ほど、安保条約に基づいて日米両国間でこのことについて討議をするというふうな御答弁をされました。そうすると、アメリカの意向に反して極東の範囲並びに極東の周辺ということについて考えるという余地は恐らくは出てこない。好むと好まざるとにかかわらず、アメリカ世界戦略体制に対して、日本日米安保条約を基軸として、そのことを礎とした日本の安全、平和、外交ということを考えていく限りは、組み込まれざるを得ないと思うわけであります。どうですか、外務大臣
  49. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 たとえば事前協議の場合を考えましても、これはノーと言うことがあり得る、ノーということを言い得るということで事前協議というものがあるわけでございますし、その他の安保条約の枠を超える問題につきましても、これは両国間の政府の合意がなければ事実問題として行い得ないことでございますから、自動的にアメリカ世界戦略に巻き込まれるということはないと考えます。これはまた、日本政府自体がそういうことにならないように、協力すべき面は協力する、協力できない面は協力しないというのが、日本政府自体の役割りでもあると考えるわけでございます。
  50. 土井たか子

    土井委員 そうすると、それからすると日本が独自でこの極東並びに極東の周辺に対しての判断をする。しかしながら、外務大臣の先ほどの御答弁によれば、日米間でそのことについての協議をする。しかしその節、日本立場についてはアメリカ側の立場の中に組み込まれないという保証というのがはっきりございますか。日本独自の立場で極東並びに極東の周辺について判断をすること、すなわち安保に言うところの極東並びに極東の周辺の範囲ということになるのだという約束事項ですね、確認事項と申しましょうか、そういうものが何かの形においてはっきり確約され明示されているのですか、いかがですか。
  51. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 事前協議につきましては、御承知のように明文化されておるわけでございます。随時協議についてはそういう明文化されたものはございませんけれども、そもそも日米安保条約というのが両国の信頼関係に基づいてできておるものでございまして、一方の国の意思を無視して他方の国が自己の主張を押しつけるということはできないたてまえでございます。
  52. 土井たか子

    土井委員 そういうことに対して日本として本当に独自の立場ということをきっぱりと責任力を持って表示できるかどうかということになると、いままでのいきさつからするとまことに心もとないのですよ。  さらにもう一つ聞きたいのは、公海の場合、特に最近日本の三つの国際海峡についての問題が出てまいっておりますけれども、国際海峡における公海の海上封鎖というのは、国際法上認められますか、いかがですか。
  53. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 国際法上の一般論としての御質問でございますが、一般論といたしましては、現在どういうような状況のもとに海上封鎖というものが正当化されるかという問題に帰着すると思うのでございます。それは、現在の国際法におきましては、自衛権の行使とその限界内でいろいろな侵害に対する排除行為が正当化されるということでございますので、自衛権の範囲内においては公海におきましても侵害を排除する措置がとれるということは言えると思います。
  54. 土井たか子

    土井委員 それは一般論としての問題ですね。ただしかし、一方で、公海条約の三条、四条からすると、公海航行の権利について明白な保障がございます。また、これは言うまでもなく御承知だと思いますが、第三次海洋法会議におきまして、その草案にも公海自由の原則というのが盛り込まれております。おおよその国際間のコンセンサスもこれに対しては得ております。こういう側面から考えるといかがですか。
  55. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  確かに、公海条約におきましても、それから、ただいま土井先生がお話しになりました現在海洋法会議におきます国際海峡の議論にいたしましても、そこに一つの無害通航ではない——公海の場合は当然のことながら、あるいは領海を十二海里にすることによって公海部分がなくなるような国際海峡におきましても、従来の無害通航よりもより自由な通航を確保しようというような考え方で、現在の海洋法会議が行われているわけでございます。  ただ、この問題と、どうも封鎖ということが盛んに問題になっているので、その間の御質問でございますので、あえて仮定の問題として申し上げるわけでございますけれども、自衛権ということの考え方からいたしますれば、いわゆる国際海峡におきまして第三国の全面的な通航禁止がされるような事態というものは通常考えられないのではないか。いずれにいたしましても、自衛権の限度においてといいますのは、どうしても侵害を排除するのに足るだけの実力行使のみが正当化されるわけでございますから、第三国の船舶の通航までも直ちに禁止できるかということになりますれば、それは第一段階としてはなるべく第三国船の通航などは通航させるようにするべきであろうということが言えると思います。  ただ、究極的に、全くこれは状況によるわけでございまして、その国の状況によりましてどうしても自衛権の範囲内におきましてその措置をとるということになってきますれば、それは第三国船もとめざるを得ないという事態があるかもしれません。これは一般論でございますので、何とも一般論として申し上げるわけにいかないと思います。
  56. 土井たか子

    土井委員 私が申し上げているのは、そういう事実関係は結構です。仮定の事実関係を想定して、そういう場合もあろう、こういう場合もあろうというのは結構です。国際法上こういうことに対してどうなのかということをまずお尋ねをしましたが、特に日本の——外務大臣、これからお聞きいただきたいと思います。先般来問題になっております宗谷、津軽、対馬の三海峡につきましては、大臣も御承知のとおり、領海十二海里宣言を日本が行うときに、わざわざこの三海峡については領海三海里としたわけであります。つまり、公海の部分を残しているわけなんですね。公海の部分を残すという選択を、わざわざ領海三海里にしてしたということは、すでにこのときからこの公海について自由航行ということを保障するという選択をしたということに等しいと思うわけでありますが、この点はいかがでございますか。
  57. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いずれにいたしましても、三海峡封鎖というようなことが起こります場合は、日本の場合は自衛権の行使という範囲に限られるわけですから、日本に対する武力攻撃があった事態ということでございまして、平時に突然三海峡を封鎖するということはあり得ないと考えるわけでございます。
  58. 土井たか子

    土井委員 それもアメリカから要請を受けてこの三国際海峡についての封鎖問題が最近いろいろと取りざたをされているわけでありますが、断じて日本としては、三海里宣言をこの国際海峡についてなしたときにいま私が申し上げたような趣旨を選択したというこの日本立場というのを、アメリカに対しても鮮明にはっきりすべきだと思うのです。このことは、外務大臣、よろしゅうございますね。はっきりすべきだと思いますよ。
  59. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本自体が海峡封鎖をする場合というのは、ただいま申しましたように武力攻撃を受けた段階、自衛権の行使という段階でないとできないと思いますが、仮にアメリカが独自で封鎖をしようというような場合に、日本の安全にとって非常に重大な影響のあることでございます。もちろんこれは日本の基地から発進すれば事前協議の対象になりますが、そうでない場合でも、当然このような重大なことは両国の協議と合意がなければできないことだと考えております。
  60. 土井たか子

    土井委員 いずれも外務大臣は両国の協議と合意ということを言われるわけでありますが、この国際海峡は日本の領海にはさまれた公海なんですよね。したがいまして、いま、その場所についての封鎖の問題までもアメリカと協議をし、やるべきかやるべきでないか事を決めるのに日本独自の立場でいろいろ判断するということもむずかしいようであります。いよいよ私は、先ほどからアメリカ世界戦略に対して日本は組み込まれざるを得ないのではないかという憂慮が非常に強まる。  私はやがて、これは先般ここで要求をした資料でありましたけれども、ついにいままでのところ手元にいただいておりませんリムパック80についての資料というのも、恐らく入手できるであろうと思っております。その節は具体的に、これは集団自衛権の行使ということに日本としてはもう打ち破って踏み出したのだということを証左できると思います。これを予告しておきますよ。リムパックについて指揮権はいずれにあるかといったら、すでにアメリカの指揮下で訓練をいま現にやろうというのじゃないですか。いろいろな具体的な判断についてアメリカと協議するときに、いずれに主導権があるか、いずれの判断が重きを置いた判断になるか。理の当然、これはもう明々白々の問題だと言わざるを得ません。  そういうことからして、日本独自の判断と日本の独自のそれに対する判定というのはどの程度保障されるかといえば、まことに心もとない話だと言わざるを得ないのです。先ほど来の外務大臣の御答弁でいよいよその心配を私は強くするわけでありますが、この三月半ば過ぎにアメリカ外務大臣はいらっしゃるやに承っておりますけれども、何のためにアメリカにいらっしゃるわけでありますか。
  61. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最初のリムパックの問題については、しばしば予算委員会等で防衛庁から答弁をいたしておりますが、これは戦術技量の向上のためであって、集団自衛権のためでは絶対にないというのが政府見解でございます。  お尋ね米国訪問の件につきましては、これは、私まだ就任以来一度もワシントンに参っておりませんで、もしも国会で御同意をいただければできるだけ早い機会に訪問いたしたいと考えておるわけで、まだ仮定の問題でございます。もしそういうことでありましたら、日米経済問題、特に自動車問題などもいろいろ雲行きが怪しくなっておる点がございますし、それから全般的な国際情勢、特にイラン、アフガニスタン等に関連した問題等から国会におけるいろいろな安全保障の問題についての御議論、こういうものを含めて意見交換をいたすべきだと考えておるわけでございます。
  62. 土井たか子

    土井委員 アメリカの今回のカーター・ドクトリンなどの問題をめぐって、またアメリカ側からすれば、アメリカの国内においてすらいまの大統領選挙に絡んでカーター政権の対ソ制裁というものが過剰反応であるということを憂慮しつつある声があるときに、アメリカにいらっしゃるということは、事大変重大だと言おざるを得ないのです。いらっしゃること自身大変政治的意味外交意味とを持たざるを得ないわけですね。  特に、大臣御承知のとおりに、二月六日にアメリカ側から七カ国の外相会議構想というのが示されて、これが西欧側が消極的であったためにまず流れて、次いで西ドイツ政府の調整による非公式協議が五カ国で持たれるという中にもちろん日本は含まれない、そういうことが問題にされたのも、また流れてしまった。そのいきさつとしては、御承知のとおりに、西欧は米国の対ソ過剰反応にブレーキをかけて緊張緩和政策に引き戻そうという思惑があるのではないかと言われている。特にフランス、西ドイツあたりはその中心的な考え方を持っている。つまり、デタントに対してこれを最優先して欧州デタントの防衛というものを強めていきたい、維持していきたい、こういう思惑があるのではないか。それからすると、どうも日本という立場アメリカと一緒になって違和感があるというふうに受けとめられているのじゃないか。  このときにアメリカにいらっしゃるというふうな意味は、このデタント促進を考えている側からすれば、いろいろ誤解を招くおそれも十分にあると私は思うのですよ。外務大臣とされてはその点についていろいろ誤解を来さないような配慮をどういうふうになさるおつもりですか。
  63. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘のように、誤解をもたらさないように話し合う必要がある。ことにいろいろな情勢が動きつつあることでもございますし、それから日本協力し得る問題と協力し得ない問題についても話し合っておく必要がある。  ヨーロッパの情勢につきましては、その後いろいろ事情が判明してまいっておりますが、二月二十日にバンス国務長官がボンを訪問する計画がございまして、その前の日にEC各国の閣僚会議がある。それで、その機会をとらえて十九日の晩にディナーをボンでやろうという案になっておったようでございますが、アメリカの一部の報道によりまして、これがアフガンをめぐる対ソ措置の会議だというふうに報道されたために、それまで夕食会に出席を同意しておりましたフランスも、そういう趣旨では出席できないという話になりまして、結局、現在五カ国の晩さん会が当面流れたという状況でございまして、その段階は、いま申しましたようなことで、ECの会議に集まる機会を利用するという趣旨で、そういう趣旨であれば当然日本も含まれない、カナダも含まれないということになるわけでございます。
  64. 土井たか子

    土井委員 まだ少し御答弁ははっきりしませんが、予定されていた時間ですから一応ここで質問を打ち切りまして、各党の理事の御了解を得て、最後に少しあと一問二問残っているところを質問させていただく時間を与えていただくようにお願いしたいと思います。  それではひとまずこれで……。
  65. 中尾栄一

    中尾委員長 玉城栄一君。
  66. 玉城栄一

    ○玉城委員 私は、昨年の二月二十一日の予算委員会におきまして、極東周辺の問題について議論をいたしたわけであります。いわゆるベトナムは極東周辺に入るのか入らないのかという問題について時間をかけて議論をいたしました。そのときに外務省答弁は、結論的に言いまして、まだ入っているのだというようなことのように当時私は理解をしておったわけであります。そのときに、最後に当時の園田外務大臣はこのように私並びに予算委員会に約束をいたしておるわけであります。そのときの会議録でありますが、「極東並びにその周辺であるという認識はいまも変わりはない、しかし脅威を受けるような事態ではない、こう思いますけれども、大事なことでありますから、仮に認識を変えたとすれば、これは日本だけではなくて、日米安保条約の問題でありますから、アメリカとも話し、そして国会にこういうふうに変えますということで手続上も言わなければならぬ問題でありますから、的確なることを後でまたよく検討して、玉城委員並びにこの委員会で」委員会というのは予算委員会ですね。「御報告することにいたしますが、それで御勘弁願えればありがたいと存じます。」当時の園田外務大臣の御答弁であります。あれからもう一年になりますけれども、何の報告もないわけですけれども、この件一体どうなったのでしょうか、お伺いいたします。
  67. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、極東とか極東の周辺地域についての基本的考え方については従来と変わるところがなく、ただベトナム戦争終結後の事態の変化等からして、ベトナム地域が極東周辺地域として認識されなければならないようなことは現実の問題として考えられないということにすぎないのでありまして、改めて米側と協議する必要はないという考えになっております。
  68. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そのことはちゃんと報告をするという約束になっているわけですね。そういう報告は何もないわけです。しかも、予算委員会にも正式にきちっと報告をしますということを当時の予算委員会の場において大臣が約束をしているわけです。いまそういうことをおっしゃられても、私は本当にこの一年間待っておりました。
  69. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も当時の事情を承知しておらないのでございますが、外務省の方としては、先生のところに御説明に上がって、公式の場で発言する機会がいままでになかったということのようでございます。
  70. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういういいかげんなことではちょっと困るわけです。この質疑は相当のいきさつがあるわけです。長い時間をかけてやったわけです。そして大臣は、ちゃんと御報告しますと。ちゃんとありますでしょう。この件は日米安保条約に関することであるから、アメリカとも話をして、その結果について予算委員会並びに私に報告をします、このような約束になっておるわけです。ですから、いやしくも国会におきまして大臣が約束したことを、一年になる今日、いまごろになってそういうことをおっしゃられても、これはどういうことなんですか。結局、大臣の国会に吹ける答弁というものはそういう程度のものと受け取っていいわけですね。どうなんですか。
  71. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外務省としては、先ほど読み上げましたように、ベトナムの極東の周辺の範囲という問題について、特にアメリカ側と打ち合わせをする必要はないという見解に達して、そのような事情を先生に御説明申し上げたけれども、その後委員会で御説明する機会がなかった。その点は、いまお話しのような点が、そういう事情があったといたしますれば、これは政府側としても考慮をすべきことだと考えます。
  72. 玉城栄一

    ○玉城委員 私がなぜあえてこの問題をいまここで申し上げるかといいますと、最近の外務大臣並びに外務省の国会答弁を聞いておりますと、私の目から見ますと、大変とんでもないことを平気でおっしゃっておられる。いやしくも約束事というものは、これはお互いの人間間でも同じです、きわめて基本的なことであり、きわめて基礎的なことであると思うわけですね。いやしくも外務大臣予算委員会の場においてちゃんと、そういうことを報告します、予算委員会に対しても正式に報告をするということを約束しておいて、一年にもなる今日、何ら報告がない。私は、そういう外務省の姿勢にまず大きな問題があると思うのです。これからの厳しい国際情勢の中で、国会の場において、いやしくも国権の最高機関と言われる、しかも予算委員会において、議員に対して約束をしたことに対して、一年もそれが履行されないというその外務省外交の基本的なもののあり方について、私は重大な問題があると思うのです。  それは、大臣は、私は詳しいことはわからないということをおっしゃられましたけれども、大臣も三カ月になられるわけですから、そういうことについて知らない、わかりませんでしたということでは済まされない。幾らどんなことを国会の場において外務省説明されようと、そういうきわめて初歩的な、基礎的なあるいは事務的なことすら満足にされないことについて、私は大きな危惧を抱きます。重大な警告を発しておきます。  そこで私は、最近沖繩における米海兵隊がいわゆるペルシャ湾に対する有事即応体制にあるんだ、そういうことで、これは移動であるかりどうのこうのという議論がされておるわけですけれども、私は、これは言葉の遊びでは決してない、あるいは言葉の遊戯ではない、これはへたをすると、わが国の将来において重大な問題を醸すのではないかという危惧を抱くわけであります。  そこで私、大来さんにちょっとお伺いしておきたいわけですが、大来さん、自分の土地を、大臣、よく聞いてください、外国の、いわゆる他国の軍隊に踏み荒らされて、そして激化する軍事演習のそういう基地のそばに、常に生命、財産を脅かされて、そういう生活をされた経験がございますか、どうですか。
  73. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も戦争中東京におりましたので、たびたび空襲を受けた経験はございます。  先ほどの御説明の問題については、予算委員会説明については、なおよく調べまして落ちのないようにいたしたいと考えております。
  74. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほど私のお伺いしておりますのは、日夜そういう巨大な軍事基地のそばで生命、財産を脅かされて、常に不安あるいは脅威にさらされて生活をしている百八万の国民が沖繩にはいるわけですね。もう御存じのとおり、あの第二次大戦のときに、県民の三分の一、約二十万近い方々がとうとい犠牲を受けた。そしてその後二十七年間米軍の軍事——いわゆるそういう施政権のもとに置かれていた。そのときに、ベトナム戦争がありました。いわゆる核兵器もあったわけです。毒ガス兵器もあったわけですね。そして、復帰して八年になりますけれども、なお五三%の巨大な基地を抱えているわけです。  さらに今回、あるいはカーター・ドクトリン、ペルシャ湾に有事の際には、沖繩の米第三海兵師団を主力部隊として、ペルシャ湾に即応体制にあるんだ、必要な事態に備えているんだ。そういうことについて、これまでの外務省の国会における答弁を聞きますと、それは安保条約上問題ではない、こういうふうな御答弁であります。  沖繩の県民は非常な不安を覚えているわけですね。そういう県民の方々に対して、この海兵隊の沖繩から出ていく問題について、どのように大臣説明をされますか、説明してください。
  75. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまお話がございました沖繩に米軍の基地が集中して存在しておることにつきまして、決して問題がないというふうに考えておるわけではございませんで、この点が沖繩県民のいろいろな意味での御心配の種になるということは十分認識しておるわけでございます。そういう意味では、事故防止その他の対策にもできるだけの対策を講じてまいるということが必要だと感じておる次第でございます。
  76. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣は今月の八日に、マンスフィールド米駐日大使とお会いになっておられるわけです。そのときの会談の場面の写真が大きく報道されております。大臣がにこやかに大使と握手をされている場面が写っております。私はこのことを見まして、本当に腹立たしく思いました。といいますのは、その会談の内容を報道の中で概略見ますと、大臣の大使に御説明のその意味は、沖繩から海兵隊がペルシャ湾にどんどん出ていってよろしいですよ、あるいはじゃんじゃん出ていってよろしいですよ、別に差し支えありませんよ、そのために沖繩にどんどん入ってきても構いませんよ、あるいはじゃんじゃん入ってきても構いませんよ、あるいは演習もどんどんやって構いませんよ、そういう意味のことを私は国会において答弁しておりますよ、簡単に言えばそういう内容になっておりませんか。その件、大臣のお答えをお願いします。
  77. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私はマンスフィールド大使との話の中で、いまいろいろな御指摘もございました、日本国民の間にさまざまな形での不安がある、いまの急速展開部隊の問題その他を含めて、そういう国会での議論の状況あるいは日本国民の持っておる心配を率直に大使にお話ししたわけでございまして、そのいまのお話のような意味で申し上げたわけではございません。  ただ、基本的には、日米安保条約というのは、やはり日本の安全のために日本が同意して結ばれた条約でございまして、先ほど申しましたように、日本人が武力攻撃を受けたときにはアメリカ人が自分の生命を犠牲にしても日本を守るという約束でございます。同時に、アメリカ側が攻撃を受けた場合には日本は責任はないといいますか、協力、援助の責任はないという性質の条約でございまして、これはアメリカ側から言えば非常に虫のいい条約だという解釈もあり得るわけでございまして、一面におきまして日本が基地の使用を認めておる、しかし、その使用については極東の平和と安全という枠がかかっておる、事前協議という枠もかかっておる、そういう日米双方の理解のもとにできた条約でございまして、私はこの条約は決して一方的なものではないと考えておるわけでございます。
  78. 玉城栄一

    ○玉城委員 私が伺っているのはそういうことではありません。いわゆるペルシャ湾に有事の際に米海兵隊が、あるいはその予備行動として沖繩から出て行くことは構わないということですね。そういうことですね。全然制約は受けません、どうぞ御自由に使ってください、そのためにどんどん入ってきても構いませんよ、あるいはどういう演習をやっても構いませんよ、どうぞそういうときには出て行ってください、いわゆる移動ということだから構いませんよ、こういう御説明をされているわけですね。
  79. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 軍隊の性格から申しまして、アメリカ側が自己の軍事力を最も効率的に活用するという面がございまして、基地からの移動につきまして特に安保条約の中では何らの規定がないわけでございます。しかし、日本立場からすれば、日本自身が好まない条件のもとで世界的な紛争に巻き込まれるということはやるべきことではない。そういう意味での両国間の協議というものは当然存在すると考えております。ですから、日本立場からすれば、そういう危険にできるだけ引き込まれないような努力というものが必要であると同時に、日本の安全をアメリカの軍隊が守っておる面、特に基地の存在が外敵の侵入といいますか、そういうものに対する、あるいは日本に対する攻撃の抑止力として働いておるという面も同時に評価しなければならないと考えておるわけでございます。
  80. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、私の聞いているのとは全然合わないのです。端的に伺いますと、アメリカの議会証言等でもいまはっきりしておりますとおり、緊急展開戦力の主力部隊として在沖米海兵隊が沖繩から出て行くことについて、大臣は何か物が言えるわけですね。どういうことなのですか、その点はっきりしてください。
  81. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 単なる移動でございますればこれは安保条約に規定もございませんし、アメリカ軍事力を効果的に利用するという見地でのことだと考えるわけでございます。ただ、それなら何でもやっていいかということになりますと、一つは安保条約、これはアメリカ自身の集団安全保障、それから国連に規定する安全保障という枠が一般にかかっておるわけでございまして、いかなる行動についても軍事力を使うということではない。これは日米安保条約の中にも規定されておることでございます。さらに、日本の将来について重大な関係のある問題であれば、これは安保条約の枠を超えても二国間の話し合いが当然あると私どもは理解しておるわけでございます。
  82. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういうことはしっかりやっていただかないと大変困るわけです。  そこでお伺いしておきたいわけでありますけれども、ちょっと最初に戻りますけれども、先ほどペルシャ湾地帯については、安保条約上言うところの極東の周辺ではないということを日米間で合意をされている、こういうお答えがあったやに承っておりますが、これは現時点においてはそうかもしれませんが、将来において変更もあり得るのか、あり得ないのか。どういう事態が起きても変わり得ないというふうに理解していいのかどうか、その辺をはっきりさせてください。
  83. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 先ほど大臣からお答えいたしましたことをもう少し補足させていただきますと、沖繩から海兵隊が戦闘作戦行動に……
  84. 玉城栄一

    ○玉城委員 ちょっと待ってください。私のいま伺っているのは、ペルシャ湾一帯は日米安保条約上言うところの極東の周辺にいま入っておらない、これは日米間で合意されているというお答えがありましたので、現時点においてはそうかもしれませんけれども、これは永久不変といったらおかしいですが、将来においても変わり得ないと理解してよろしいか、そのことをお聞きしているわけです。
  85. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 実はそのことを御説明する前段が必要だったので申し上げたのでございますけれども、現在の時点では、ペルシャ湾の事態がいわゆる安保条約上極東の脅威になるような事態でないということは政府の理解でございまして、これはアメリカ側も確認しているということでございます。
  86. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですからそれはわかっているわけですよ。その後の質問について答えてください。
  87. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 お答えいたします。  将来の事態、いろいろな事態が予想されますので、いまここでお答えすることはできかねます。
  88. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、私は大臣にもう一回お伺いをしたいわけでありますが、八日にマンスフィールド米駐日大使とお会いになった。簡単に申し上げますと、私たちの目から見れば、にこやかといったらおかしいですが、握手をしている場面が写真として載っておった。沖繩の県民は非常にこのことを——またいざ何かあると大変な目に遭うぞという不安感がますます増大している。今後考えられることはまず演習の激化、いろいろなトラブルの発生ですね。あるいは被害の続出と申しますか、不安の増大、危険度の増大、そういうことを非常にはだ身で感ずるわけです。ですからそういうことからしまして、大使に会われるときに、条約上はそうかもしれないけれども、沖繩における演習はもう少しちょっと遠慮してもらえないかとか、あるいはもっと危険を伴わないような形で、そういうことを言うとなんですけれども、なぜそういうことがわが国大臣として言えなかったのか。どうぞお使いくださいというような意味のことをしていらっしゃるような感じがしてならないわけです。  先ほどから私申し上げました。戦争のころから、これは何も沖繩に限ったことではありません。ですからペルシャ湾の有事即応体制の主力部隊だということはいま明確にわかっているわけです。それは移動だから構いません、確かに条約上はそういうことも言えるかどうかわかりませんが、しかし実態的にはあるいはこれは敵性国の基地だ。もし万一仮に不幸にして武力衝突が生じた。沖繩から出ていった軍隊は、その衝突の当事者である相手側から見れば、その軍隊はどこから出てきたのか、敵性国だ、こう言われた場合にどうなるのかというそこまで心配するわけです。その点いかがですか。
  89. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 マンスフィールド大使との写真は、実は会談の始まる前に写真を撮る習慣になっておるようでございまして、まだ深刻なお話をする前でございましたので、どうも友好的な表情をいたしておったわけでございますが、いまの沖繩につきましての御心配の点は十分理解いたすわけでございます。具体的な問題がありましたときには、またそれに従って米側に申し入れるということにしてまいりたいと思いますが、ただ、基本的に日米の友好関係というものを大きく損なうようになりますと、これは日本国民全体の安全というものに大きな危惧が出てまいるわけでございますし、ことに最近のアフガニスタンのようなケースが出てまいりますと、そういう点も同時に考えざるを得ないという事情もあわせて申し上げたいと思います。
  90. 玉城栄一

    ○玉城委員 日米友好ということは百も承知で、そうしなければならぬことは私もそう思っております。であるがゆえに、連帯は当然やる。しかし、追従してはいけない。しかもそのために国民に大きな不安を与えてはいけない。今度また来月アメリカに行くようでありますけれども、これはまだ決まったわけではないようですが、そういうことをされると沖繩の場合特にかなわないのです。そのことを強く申し上げておきます。  先ほどの敵性国の話、条約局長でもどなたでもよろしいのですが、それについての見解。これは四十年に、当時の椎名外務大臣がベトナム紛争のときに、わが国は北ベトナムから見れば敵性国と見られてもしようがないというような御答弁があったわけです。  時間がありませんので、先ほど申し上げた敵性国問題についてのお答えと、もう一点は、ソ連のサハロフ博士の流刑の問題について、簡単で結構です。それから、今後のアフガンの見通し、この三点、簡単にお願いします。
  91. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 第一の点を私からお答え申し上げたいと思うのでございますが、私がお話しいたしますと若干話がかたくなるので申しわけないのでございますけれども、いずれの場合にいたしましても、日米安保条約の運用において日本の施設、区域というものが極東の周辺に向かって使われるような場合と申しますのは、当然のことながら国連憲章上定められている自衛権の行使として行われているわけでございまして、その場合に相手の国、仮にただいまの先生の例を引きますとベトナムということになるわけでございますが、ベトナム側から見まして確かに敵であるということにはなるかもしれませんが、法律的に申しますと自衛権の行使でございます以上、相手側に侵略があったということでございまして、その侵略国の側からしてそれがけしからぬと言ってさらに反撃してくるというのは、法律的に申せばそれは自衛権ではなくてやはり侵略の加重的な行為になるのではないかと思うわけでございます。  以上でございます。
  92. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 サハロフの問題につきましては、人権問題として重大なことだと受け取っておりますが、ただ、わが国と西ヨーロッパ諸国との一つの違いは、ヘルシンキ条約におきまして人権問題が論議されまして、サハロフの扱いというものが一つの人権を尊重するかどうかの判定材料と申しますか、そういうような受け取られ方が、ヘルシンキ条約に加盟いたしました西側諸国の間にあるわけでございます。日本は直接の、ヘルシンキ条約に加盟している国でございませんので、一般的にサハロフ問題を受けとめておるわけでございますが、人権尊重という点から見て望ましくない遺憾なことだというふうに、私どもは受けとめております。  それからアフガンの将来につきましては、これは全く予断がむずかしいわけでございまして、私どもも各方面からの情報を集めておるわけでございますが、なかなか予断いたしにくい。ソ通例の、たとえばブレジネフ書記長の記者会見の中にはできるだけ早く撤退するというような表現もございますし、ほかの情報によれば、なかなかそう簡単には撤退できないかもしれない。いろいろの見方がございまして、的確な判断をいまの段階で申し上げることは困難と存じておるわけでございます。ことに政府立場として申し上げるということは非常にむずかしいように感じております。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上であります。
  94. 中尾栄一

    中尾委員長 午後五時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後三時五十七分休憩      ————◇—————     午後五時六分開議
  95. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野間友一君。
  96. 野間友一

    野間委員 私は、先般発表されましたアメリカの一般教書の報告あるいはカーター大統領の演説、さらにブラウン国防長官の国防報告に関連して幾つか質問をしたいと思います。  この一連の演説とか報告の特徴を一言で言いますと、まさに力の政策、これが露骨に出ておるというふうに私は感じました。すなわち、ペルシャ湾岸を支配しようとする外部勢力のいかなる試みも米国の死活的な利益に対する攻撃とみなされるであろう、そうした試みにわれわれは軍事力を含む必要な手段を行使して撃退する。これはカーター大統領の演説でありますけれども、大変にオクターブを上げて述べております。そして、核戦力を含む軍事力の強化と軍事力の行使の表現、あるいはRDF、緊急投入部隊の創設とか、さらにソ連に対する封じ込めのために同盟国に対して軍事的、政治的、経済的な同調と分担を強く求めておるというのが特徴ではなかろうかと思うのです。特にカーター大統領は、イラン大使館の占拠問題やあるいはソ連のアフガニスタンへの介入、これを口実に、また世界の警官の復活をねらっておる。もちろん大使館の占拠あるいはソ連のアフガンへの介入については、わが党は一貫してこれに反対してきたわけでありますけれども、しかし、それだからと言って、アメリカは、政府がしばしば答弁してきましたように、外部勢力が支配しようとする場合にはこれを排除して中東諸国を守ってやるというような趣旨のことを述べたわけですけれども、私はとうていそれには賛成することができないばかりか、逆に中東に対する新たな干渉政策をやりつつあるというのが率直な現状だと思うのです。  このソ連のアフガン介入について中東諸国の批判、これはあることは私もよく承知しておりますが、同時にアブダビあるいはクウェート等のいろいろな新聞報道を見てみますと、中東諸国はアメリカの一般教書演説等、これにつきまして論評しておりますけれども、多くの国が中東の石油資源支配をねらうものだというふうに、この一般教書演説を批判しておることは御承知のとおりだと思います。  そこで、まずお伺いするわけですけれども、そもそも一国の進路はその国、その国民が決定すべきもので、いかなる国も介入あるいは敵視、干渉、これをしてはならない、民族自決権は何物にも侵されない権利だと私は承知しておりますけれども、まずその点の見解大臣から伺いたいと思います。
  97. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問の点の民族自決権については、いかなる場合も尊重されるべきものだと考えております。米国のこのカーター大統領の一般教書等にあらわれております考え方、ただいま御指摘の点でございますけれども、また一方ではその地域の国の要請があった場合にという歯どめが入っておるように私ども承知しておるわけでございまして、一方的に軍事力をもって政府をかえるというような趣旨は見受けられないと考えております。
  98. 野間友一

    野間委員 それでは、それらの点についてさらに突っ込んでお聞きしたいと思います。  一月二十三日のカーター演説、この中に、アメリカに重大な挑戦を突きつけている、この基本的な要因の一つとして、イラン革命によって例証されたような、多くの発展途上諸国における社会的、宗教的、経済的、そして政治的変革の圧力、これを挙げておるわけであります。そして、われわれは米国に対する脅迫を断じて許さないであろう、こう強い調子で述べておるわけであります。  つまり、アメリカは一九五三年イランにおいてCIAを介しまして軍事クーデターをやりました。後押しをしたわけであります。そして、モサデク政権にかわるパーレビ腐敗体制を守り立ててきたことは歴史的に明らかであり、その外交は昨年のイラン革命によって完全に失敗をしました。このカーター大統領の演説を見ますと、これはいま指摘した点から明らかなように、発展途上国がアメリカの干渉あるいは支配、これから脱却し、民族自決あるいは経済的な自立、これの確立を目指すことをまさに敵視しておるではないですか。いかがですか。
  99. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはアジア、アフリカ、中東あるいは中南米、世界の開発途上国の地域、いろいろな国の立場があるように考えます。開発途上国におきましても、米国立場と協調しながら経済開発を進めていこうという立場の国もあるわけでございまして、イランの場合には宗教革命というものが非常に強い反米的な色彩を持っておったことば事実でございますが、世界のあらゆる途上国がそういう立場をとっておるとは言えないように思います。
  100. 野間友一

    野間委員 いや、答弁になっていないですよ。私が申し上げたのは、カーター演説の中に、アメリカに対する挑戦をもたらした基本的な要因の一つに、イラン革命によって例証されたような、云云と、もう繰り返しはしませんけれども、つまり先ほど外務大臣は民族自決権、これは当然だ、尊重しなければならぬ、こういうふうに言われました。少なくともイランあるいはその他の国々におきまして、それらの国あるいは民族がみずから自分の国をつくり、また方針を決め、そしていろいろな政治を行う、これは当然のことですね。これはイランに限らずどこでも、発展途上国におきまして現在そういう動きを示しておるのは明らかであります。しかし、問題はカーター大統領のこの演説の中に、こういうふうなイランの革命を一つの例証として引用しながら述べておりますように、このような文言は、それぞれの国が自決して国を立て、また政治を行うという権利の侵害であることは明らかではありませんか。
  101. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イランの場合につきましては、人質問題、大使館の占領問題が起こりまして、これに対するアメリカ国民一般の感情的な高ぶりというものが非常にあったわけでございますし、それまでの段階におきましては、イランに存在しておった政府、革命以前に存在していた政府アメリカ協力しておったということでございまして、アメリカが別に政治的変革を起こしたというわけではないと思います。これに対する評価は、革命後のイラン政権にいろいろ厳しいものはあると思いますけれども、その以前の状態においては、特に武力をもって介入したというようなことはなかったわけでございます。
  102. 野間友一

    野間委員 いま大臣も言われましたけれども、アメリカのやり方を支持する国は確かにアメリカ自身が敵視はしないかもわかりません。それは当然です。しかし、少なくともこのように、開発途上国におきましていまどんどんと民族解放闘争あるいは民族自決権に基づくいろんな動きがある。しかし、これ自体を演説の中では敵視しておるわけですね。これは、イラン革命後のこういう情熱に対する位置づけですよね。  時間がありませんので次に進みますけれども、この一月二十五日付のアサヒイブニングニュースがワシントン発AP電として伝えているところによると、アメリカの高官が、カーター大統領が言う軍事力の行使の対象には中東諸国の内部の反面府勢力、これも入るというふうに説明しておるわけです。  さらにブレジンスキー大統領特別補佐官も、米国への挑戦の一つとして、突然の政治的目覚め、これを挙げておるわけであります。これは七九年のUSニューズ・アンド・ワールド・レポートの中にあるわけでありますけれども、これは明らかに、内部の反政府勢力すらも軍事力の行使の対象になるとか、あるいは挑戦の一つとして突然の政治的目覚めも入る、こういうことまで言っておるわけですね。ですから、私いま申し上げたように、このこと自体がまさに民族自決権に対する侵害ではないか、敵視ではないかというふうに言うのは当然ではないでしょうか。  さらに、昨年のイラン革命以後米国は、ブラウン国防長官の発言もありますけれども、中東の石油供給はアメリカにとって死活的な意味を持つ、これを確保するために、われわれは武力を含むいかなる手段も行使する用意がある。これは七九年二月二十五日、イランの革命直後ですが、CBSテレビで述べておるわけでありますが、これを事始めに、軍事干渉の言動は目に余るものがたくさんあるわけであります。  こういうような事実について、大臣は御承知かどうか、まずお聞かせ願いたいと思います。
  103. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御指摘の点については、一部承知しておるものもありますし、全部承知しておるわけではございませんけれども、基本的には現在の米国立場というのは、相手国の要請があった場合に協力するという立場でございまして、その意味では受動的というかデフェンシブ、そういう立場であると考えております。
  104. 野間友一

    野間委員 どうもうまくかみ合っていないですね。これ以上ここで問答していても時間がたつばかりですけれども、私が言いましたように、一連の言動、とりわりイラン政変後、革命後のアメリカイランに対する対応、内部的な反政府勢力すら軍事力行使の対象になる。そして、御承知のように、フォートレスゲール、沖繩での大規模な訓練、あるいは去年の十一月に中東油田地帯を軍事制圧する大規模な演習をペルシャ湾入口で行っておる。しかも、これらは、日本を根拠地にしているアメリカの第七艦隊あるいは海兵隊がその中心部隊になっておるじゃありませんか。したがって、中東地域を勝手にアメリカにとって死活的であるというふうに位置づけまして、力でこれをみずからのくびきのもとに置こう、こういうことを私は支持してはならないと思うのです。やはり、われわれ日本の民族の利益とか日本の国益を考えて、自主独立の立場で、アメリカにすべて追随し、そしてこれを支持するという態度は絶対とってはならない、こういうふうに私は申し上げたいと思うのです。  そこで、本当に時間がないので次に進みますけれども、カーター戦略の中身として、同盟諸国への期待と同調、こういうことが強調されております。  国防報告の中に、米国日本、それから西欧における共同の計画努力が必要だ、こう述べておりますが、しかもこのことは、定期的な両国の会談で日本の指導者に対して訴えてきたとも述べております。これは果たして事実かどうか、その中身は一体何なのか、これらの点についてお答えを願いたいと思います。
  105. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 事実問題でございますので、私から御答弁させていただきます。  国防報告の中に共同努力あるいは合同防衛計画という言葉がございますけれども、この意味するところは、日本が自衛力を高めていく際に、アメリカあるいはヨーロッパの国防力の増強の方向を念頭に入れてやってほしいということでございます。この点につきましては、ブラウン長官が来日の際に同様な趣旨を述べておりまして、これはブラウン長官の意見の表明でございます。  さらに、つけ加えさせていただけば、その合同防衛計画ということではないということは、国防報告が発表された後に日本政府の方からアメリカ側に照会いたしまして、その点は確認済みでございます。
  106. 野間友一

    野間委員 定期的な両国の会談で日本の指導者に対して訴えてきたということで、きょうやきのうに始まった問題ではないと思う。しかも問題は、単にそんな抽象的な問題じゃなくて、いろいろ具体的な話し合いがされてきた、これは当然だろうと思う。  たとえば、先般も論議になったと思いますけれども、装備補給面での画一化の問題はどうなのか、あるいは中東石油の輸送について船団護衛の問題等々、こういうものが共同の計画努力の中に入るのじゃないか、こういうことは討議されたのじゃないかと私は思うのですけれども、いかがですか。
  107. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 私たちの承知している限りでは、そういうことはございません。
  108. 野間友一

    野間委員 それじゃ、具体的な問題としてどういうことが話し合われた、しかもこれは西欧が入っているわけでしょう、西欧、日本アメリカというふうに。
  109. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 先ほど御答弁いたしましたとおり、日本はそれ自身自主防衛に努力してまいるわけでございますが、その際に、アメリカあるいはヨーロッパが防衛の努力をしている方向を念頭に入れてやってほしいという一般的な願望の表明でございまして、それ以上の点について日米間で細かいやりとりあるいは具体的なやりとりがあったということは、私は承知しておりません。
  110. 野間友一

    野間委員 しかし、それは子供だましですよ。定期的な両国の会談でこれはずっと訴えてきたというわけでありますから、単にいまあなたがおっしゃるようなそういうことなら、定期的な会議でこんなものをとりたてて論議をするはずがないと私は思うのです。リムパックも私はそれの一環だというふうに思っておるわけであります。  そこで、続いて聞きますけれども、実際にいまのお話では、日本、西欧間の具体的な措置について、そういう措置をとったかどうかという点については、いまの答弁からは否定されると思いますけれども、近い将来そういう計画があるのかないのか、つまり、いま申し上げたように西欧、日本アメリカ、この三つの間で共同の計画についての話し合いをする、そういう具体的な何かがあるのかどうか、あるとすればそれにどう対処するのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  111. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 そういう計画は全然ございません。
  112. 野間友一

    野間委員 防衛計画について、将来もし西欧、日本米国三者で話し合え、努力しなさいというようなアメリカからの圧力なり要請があった場合、どう対応しますか、大臣
  113. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは防衛の問題については主として防衛庁の所管でございますけれども、協力すべきところは協力するという点で、たとえばガイドラインというようなものもございますが、あくまでも基本は、日本自身の国益のために協力すべきものは協力する、協力できないことはできないとはっきり言ってまいることが必要だと思っております。
  114. 野間友一

    野間委員 問題はその中身なんです。それはあたりまえな話なんですよ。協力する必要があれば協力する、必要がなければ協力しない、そんなことば当然のことです。問題は、西欧が入っていますからね。少なくとも西欧防衛も含むアメリカ世界戦略に加担することは、どんなに考えても許されない、これは当然の話であります。  そこで、次に聞くわけでありますけれども、国防報告の中に、ソ連の海軍力の拡充に対抗して、一つはソ連の海軍を、大西洋ではグリーンランド、アイスランド、英国を結ぶラインの北で阻止する、さらに太平洋では、アメリカとその同盟国はオホーツク海と日本海の主要な出口を封鎖できるであろう、こういうことが国防報告の中には述べられております。しかも、これは日米間の実務者レベルの中で何年も話し合ってきた、こういうことが書かれておりますけれども、これは事実かどうか。さらに、主要な出口とは一体どこを指すのか、答えていただきたいと思います。
  115. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 国防報告の中で、いまおっしゃいましたように、アメリカの海軍がヨーロッパでは英国の北、それから地中海で制海権を確保できる、あるいは日本海から出ていくソ連船を封じ込めることができるということを述べておることは事実でございますが、そのことについて日本側と話し合ったということはございません。
  116. 野間友一

    野間委員 しかし、実務者のレベルで話し合いがされたということが書かれておるわけですね。主要な出口という表現も実はあるわけですけれども、だから、その主要な出口、恐らく三海峡のことじゃなかろうかと思うのですけれども、それらに対する封鎖の問題について話し合いをしたのではありませんか。
  117. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 まずそういう話はございませんし、いま御指摘日米間で話をしたという個所が、国防報告の中で、私たちの理解しているところでは見当たらないのでございます。
  118. 野間友一

    野間委員 しかし、国防報告の補足説明とかあるいはそれを受けた米議会の予算局の報告書ですね、この中には明らかに出ておるわけです。つまり、三海峡の封鎖について日本に対して責任を持たせる具体的な注文だ、こういうふうに私たちは解しておりますけれども、それと違いますか。
  119. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 アメリカ議会予算局長が、「八〇年代の米海軍に関する報告」ということで、「制海権に関する同盟国の貢献」「日本の諸海峡」ということで、いま先生御指摘になりましたように、その部分を読み上げますと、「日本の諸海峡を抵抗を受けることなく通過できると期待することはできない。これらの諸海峡、南の対馬海峡、本州及び北海道間の津軽海峡及び宗谷海峡は、短期間のうちに船、航空機及び潜水艦による機雷敷設によって封鎖され得よう。」ということは書いてあります。それ以上の記述はございません。
  120. 野間友一

    野間委員 この国防報告の補足説明の中でも、具体的に日本に対してこういうものを注文するというようなことが書いてあるわけですね。  そこで、時間がありませんので、関連して防衛庁に一言だけ聞きたいと思いますけれども、防衛庁の五十五年度の業務計画を見ますと、魚雷とか機雷を実装する施設の新設に関しまして、「即応能力を向上するため、魚雷・機雷の管理体制の整備を図る」、こういう計画を位置づけておるわけでありますけれども、これは具体的には魚雷、機雷の保管、調整あるいは装備、このための施設の新設を意味するのではないでしょうか。
  121. 池田久克

    ○池田説明員 現在われわれは、おかげさまをもちまして、逐年、機雷、魚雷等を整備してまいっております。しかし、機雷庫や魚雷庫が不足しておりますために、すぐ使える状況で保管することができません。したがいまして、函体とか信管とか炸薬をばらしてあるわけです。使うような状況に持っていくにはどうしても時間がかかる。こういうことになりますと、せっかく国民の皆様から機雷、魚雷を買っていただきまして使える状況に置いておかないということは、われわれとしてもざんきであります。したがいまして、そういう批判のないように今後逐年整備してまいりたいと考えている次第であります。
  122. 野間友一

    野間委員 設備の新設ですね、防衛庁へ聞きますと、北の方にこういう施設をつくるのだという話ですけれども、これは海上自衛隊の大湊総監部、そこらあたりに恐らくつくるのではないかというふうに私は推測しておるのです。五十五年度に約十億円予算要求をしておるということも聞いておるのですけれども、これは事実ですか。
  123. 池田久克

    ○池田説明員 機雷、魚雷の即応体制を整備するためには、御指摘のように機雷庫、魚雷庫等の整備が必要であります。また、それを調整するための技術者も養成する必要があります。各般の事項が関連してまいりますけれども、とりあえず一番不足しておりますのは機雷庫でございます。機雷庫等につきましては、航空基地とか艦艇基地に現在あるものもございますけれども、不足しておりますので整備してまいりたいと思いますが、五十五年度のおっしゃいました十億につきましては、現在八戸地区でわれわれの航空群が展開しておりますが、その中を整理してつくりたいと思っております。
  124. 野間友一

    野間委員 もう時間が来ましたのであと一問だけにするわけですけれども、先ほど申し上げた国防報告、三海峡封鎖の問題について言いましても、これはワンセットと申しますか、ソ連の海軍の封じ込めのために大西洋ではどうするか、太平洋側ではどうするかと、これはまさにアメリカの軍事戦略の一環なんですね。しかも、これはワンセットなんです。したがいまして、この三海峡の封鎖についても、これは日本の安全というよりもアメリカの戦略の中での一環、こういう位置づけをせざるを得ないと思うのです。しかも、このことが緊張を激化することは当然だろう、私はそう思うわけであります。  もう時間がありませんのでなにですけれども、冒頭にも申し上げたように、カーター演説やあるいは国防報告、一般教書、こういうものを一貫して貫いておるものはまさに世界の警官の復活、力の政策を前面に打ち出す、しかも中東に対する対応は先ほどからるる申し上げたとおりでありますし、スイング戦略とかあるいはRDF、緊急投入部隊の創設、こういうもので世界戦略をアメリカが立てておるわけですけれども、この中に巻き込まれて、そしてわが国の国益あるいは利益、こういうものを損なうということが、これから大きな課題として追及していかなければならぬ問題だろうと思います。時間がありませんので、最後にそのことを申し上げまして質問を終わりたいと思います。
  125. 中尾栄一

    中尾委員長 林保夫君。
  126. 林保夫

    ○林(保)委員 国際情勢が一九八〇年になって、というよりももう前年から大変流動的になっておる、むしろ緊迫した情勢になっておると思います。去る十二月十四日の当委員会におきまして、八〇年代外交をどうなさるのだと、こういうことで大来外務大臣の御懇切な御返事をちょうだいしたわけでございますが、国民的な関心から申しますと、どうも今日いろいろな国際情勢の動きが仮空な議論、さらには各種の情報をもとに、必ずしもファクトに基づいて行われておらないような感じがしてなりません。この点につきましてきょうはひとつ、これからの日本外交が当面するとりあえずの日程、たとえば三月には外務大臣御苦労でありますけれどもアメリカへ行かれるとか、あるいは園田特使が中近東へ行かれるとか、先を見通しますとベネチアサミットなどもございます。その日程につきまして、一般の国民にわかりやすいように、ひとつ当面予定されるものを御報告願いたいと存じます。
  127. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外交日程につきましては、いま確定しておりますのはこのベネチアサミットだけでございまして、私の訪米につきましても、これは国会の御承認を得なければ決めることができませんので、いまそのようなことをお願いしておる段階でございます。それ以外の日程につきましては、やはり五月まで国会審議中でございますし、適当な間を縫ってということはまた改めて国会側にお願いして御承認を得れば考えるということで、いまのところ、このベネチアの問題と、それからワシントンについていま国会側に御連絡申し上げておるというのが実情でございます。
  128. 林保夫

    ○林(保)委員 園田特使の派遣はどういうことになっておるのでございますか。
  129. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 園田特使の派遣は政府としては決定しておりまして、現在の予定では二月の十九日に御出発願うということで、南西アジア及び中東数カ国を回られる予定でございます。
  130. 林保夫

    ○林(保)委員 それではまず、園田特使が中東へ行かれる。イランへ行くとか行かぬとかという新聞報道もございました。どういう一的でどちらの国々を訪問する予定なのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
  131. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 目下のところ、予定はインド、パキスタン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オーマン、シリア、イラン、イラク、こういうところでございます。
  132. 林保夫

    ○林(保)委員 この園田特使の中東諮問と関連いたしまして、最近緊迫するイランあるいはアフガン情勢、ソ連の日本国政府の言う潜在的脅威ですが、これに伴いまして、紛争周辺国に、軍事援助は日本はできないけれども経済援助をやろう、こういうことが伝えられておりますが、大臣の御真意並びに、すでに報道されておりますがパキスタンの援助は倍増する、このことを園田前外相が同国を訪問した際にわが国の意向として正式に伝える、こういう報道が出ておりますが、この点につて外務省の御見解をお聞きしたいと思います。
  133. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 紛争周辺国になるわけでございますけれども、一般的には中東の安定と和平に対して日本がどういう面で役立ち得るかということ、それからインド、パキスタンの情勢意見交換ということでございますが、まだパキスタンにどの程度の援助を提供するというようなことは具体的になっておらないわけでございます。
  134. 林保夫

    ○林(保)委員 何がしかの援助増加を決める御予定でございますか。
  135. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいままでのところはUNHCR高等弁務官を通じます難民救済二十億円を拠出することは決定いたしておりますが、それ以外の援助は各国とも相談しながらこれから検討してまいる過程でございます。
  136. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございません。次へ移ります。  大来外相、きょうの理事会でも訪米の日程が議論され、先ほども同僚委員の質問に対しまして、日米経済問題、イラン、アフガン問題、さらには日米安保問題について協議する、こういうことでございますが、まず第一の日米経済の問題、これは多分摩擦の問題だろうと思います。自動車が大変緊迫した情勢になっていることは御承知のとおりでございますし、さらには鉄の問題、電子部品の問題、これらがあろうかと思いますが、外相が訪米になられましてどういう解決策を持っていかれますか、また解消の期待があるかどうか、この点について確信を承りたいと存じます。
  137. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 経済問題につきましては、私どもも日米間にともすれば火がつきやすい条件があるというふうに承知しておりまして、片貿易問題あるいはハイテクノロジーの問題等々がございますが、自動車問題につきましては昨日もフレーザー米国自動車労働組合委員長とも会談いたしまして、これは日本の自動車の対米投資をできるだけ早く踏み切ってほしいという強い要望でございます。ただ、これは民間の企業がみずから決定することでございまして、政府自体が決定できないことでございますが、これからもし三月にお認め願えれば、出かけるまでの間に関係方面の意向もよく確かめまして、できるだけこの経済問題が政治的、外交的な問題にならないように話をいたしたいと考えております。
  138. 林保夫

    ○林(保)委員 ベテランの外務大臣でございますので、ぜひそれを解決していただきたいと思います。過般、昨年十二月の委員会でも提起しておきましたように、外務省、国が、民間の罪までかぶる手はない。そういう仕分けもひとつきっちりとやっていただきまして、ぜひ友好関係を損なわないような解決方策を見出していただきたい、このことを希望しておきたいと思います。  イラン、アフガン問題、時間がございませんので、日米安保協議ということを言われましたけれども、どういう点が問題になるのか アメリカ側の期待並びに日本アメリカと話さなければならぬどういう点があるのか、お答えいただきたいと存じます。
  139. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは御承知のように今国会で、本日もそうでございますが、いろいろ安全保障問題についての御意見が出ております。また御心配も出ておるわけでございまして、一方アメリカ側からもいろいろなものが出ておるという状況で、この辺は十分に話し合って、相互に相手側の理解を深めることがきわめて重要だと考えておりますので、そういう今国会における安全保障の問題について出ております日本側の各種の意見、こういうものを紹介する。それから向こう側でいろいろ出ておりますことについての真意を尋ねるというようなことを中心にして、意見交換をいたしたいと考えております。
  140. 林保夫

    ○林(保)委員 重ねて恐縮ですが、三、四点お尋ねしたいと思います。  率直に答えていただきたいと思いますが、先ほどの御答弁の中で、極東の範囲その他について一体だれがこれを判断するのだ、こういう問題があったかと思います。国民全体で判断するのだ、いや総理大臣だ、こういう議論も御意見、お答えとして出たかと思いますが、聞きますと、アメリカ政府にこの範囲の点を照会してすでに返事が来ておる、こういうことでございますが、いつ、どのような返事が来たか、お差し支えない範囲でお答えいただきたいと存じます。
  141. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまお尋ねの一番最後の点でございますけれども、緊急展開部隊が日本の施設、区域を利用してペルシャ湾に戦闘作戦行動のために出撃するということは安保条約が予想していないし、そういうことはまた現実としてあり得ないという日本側の認識について、アメリカ側から、国防教書の発表された翌日というように私は記憶しておりますけれども、日本側のその理解どおりであるという確認が来ております。
  142. 林保夫

    ○林(保)委員 重ねてお尋ねします。  それは日本側の質問に対してアメリカ側の国防省からの回答、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  143. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 日本側の質問に対して国防総省及び国務省両方からの回答でございまして、日付は一月三十一日でございます。
  144. 林保夫

    ○林(保)委員 もっと詰めたいのでございますが次にいきます。  沖繩海兵隊の中東への発進問題、先日来新聞でいろいろと報道されているとおりでございます。国民は大変このことを懸念もし、またどうなるだろうかと見守っていることは御承知のとおりでございます。そしてなお、新聞報道によりますと、外務省首脳部は、本日は十四日でございますが、本日のサンケイ新聞に出ておりますが、十三日、「中東に派遣される米海兵隊は、沖繩からではなくカリフォルニアの第一海兵師団に所属した部隊である。これは米側から通告を受けている」、こう語っておると出ておりますが、この事実はいかがでございましょうか。いつまた回答が来ているのか、お答え願いたいと存じます。
  145. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 十三日に国防総省が発表いたしまして、第七艦隊所属の四隻の船に海兵隊員千八百名が乗り込んで西太平洋に展開している、その西太平洋に展開しているこの水陸両用部隊がいずれペルシャ湾に展開するであろうというのが、アメリカ時間の十三日、国防省の広報担当官から発表されました。それに先立ちまして、十二日にアメリカ側から、アメリカは水陸両用作戦部隊を乗せた第七艦隊の船四隻をインド洋に展開する、そしてそのインド洋展開は、現在アメリカがインド洋におけるプレゼンスを増強しておりますけれども、その一環であるということでございまして、さらにどの海兵隊が乗るかということに対しては、ハワイからの海兵隊ということで、カリフォルニアというのは船の母港がカリフォルニアでございまして、船が「カリフォルニア」、それから部隊はハワイの部隊でございます。
  146. 林保夫

    ○林(保)委員 局長の御説明のように、いずれも日本、特に沖繩、これは関係ございませんか、兵隊、第七艦隊の四隻ともに。念のためにひとつ。
  147. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいま申し上げましたように、今回は沖繩とは全然関係ございません。
  148. 林保夫

    ○林(保)委員 これは情報なのか、あるいはまたこれを書いた人がジョージ・ボールという知日家の元の国務次官でございますので、あるいは日本政府にある程度合意もあるのかどうか、この点をはっきり承りたいのでございますが、例の、日本に空母二隻をつくらせて、それをリースしたらどんなものだ、スイング戦略によって日本防衛が希薄になるところを、あと一隻だけはこっちに残すんだ、こういう話が、話だと思いますが、出ておりますが、外務省の公式ルートで、あるいはまた情報でも結構でございますが、関知するところをお聞きしたいと思います。
  149. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ジョージ・ボールという人は私も存じ上げておりますが、今回の意見は全く個人の意見と了解しております。政府ベースでは何らそういう意図の連絡がございません。前にもテキサスインスツルメントのチェアマンが、シェパードという人ですが、日本が軍艦をつくってアメリカ側に貸与するということは考えられないかということを、昨年の五月でしたか、読売新聞のシンポジウムで発言したことがございまして、こういう考えアメリカの一部に存在しているということは事実でございますし、そのバックグラウンドとしては、日本経済力が非常に大きくなった段階で、日本側がただ乗りをしている、フリーライドだという気持ちが底流にあるように感じておるわけでございます。
  150. 林保夫

    ○林(保)委員 率直な御意見でよくわかると思いますが、この種の問題をどうかひとつしっかりけじめをつけた話し合いとして、世界平和の追求、さらには国の安全、さらにはまた国益の追求もございますので、しっかりやっていただきたい、こう思います。  重ねまして、先ほど質問に出ておりました津軽、対馬、宗谷、この三つの海峡に対する機雷封鎖でございますか、こういう要請が、防衛庁も含めて聞きたいのでございますけれども、外務省ルートではっきりと出ているかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  151. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 そういうアメリカの要請は全然ございません。
  152. 林保夫

    ○林(保)委員 新しい時代に対応する外交でしっかりがんばってもらわなければならないと思いますその前提として、いろいろな事情があったにいたしましても、本年度外務省予算はよそと比べて大変多くついている、こういうことを省内の方々から御説明も聞きまして、それなりのがんばりを見せてくださるんだろう、このように思うのでございますが、一つ承りたいのは、ここに「海外政経情報」「国際情勢の近況」外務省情報文化局、五十五年一月号、ナンバー三四七号というのがございます。それをじっくりと読んでみますと、「本号は、昨年十二月二十四日の時点で一九七九年の世界の主な動きを総括したものである。」公文書と言っていい、半ば公文書だと思います。その六ぺ−ジに、「八〇年の米ソ関係においては、米国議会によるSALTIIの批准が当面の焦点であり楽観を許さないものがある。また米国においては大統領選挙の年であり、他方」この後でございますが、「ソ連についてもブレジネフ書記長の健康問題もあり、米ソ関係が大きく変化する可能性は少なく、基本的には競争関係とともに現在のデタント追求路線が継続されるものと考えられる。」こう出ております。これは、先ほど申しましたように、十二月二十四日の時点での外務省の公式判断だと思います。にもかかわりませず、二十七日、三日後にはソ連のアフガン進駐があったわけでございます。  このことについてどのような申し開きをなさいますか。また、どういう情勢判断でこういうことを文書で公表されたのか、ひとつ承っておきたいと思います。
  153. 大塚博比古

    ○大塚説明員 お答えを申し上げます。  ただいま先生御指摘になりました資料は、恐らく私ども、すなわち調査企画部で編集いたしまして、一般の新聞ですとか世論関係、そういった方に全くの御参考までにお送りする資料、「国際情勢の近況」というものからの御引用だと思います。このペ−パーの性質はあくまでも私どもが私どもの名前で出すペーパーでございまして、外務省全体の公的な立場を反映するものではないということは、これを発表するに当たって明らかにしてございます。
  154. 林保夫

    ○林(保)委員 これが外務省全体の公的な見解を表明するものではないと言われるその理由はどういうことでございましょうか、大臣からひとつ答えていただきたいのでございます。国費を使って、外務省が、一体何でございますか。
  155. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 調査企画部で作成した資料でございまして、省内全体の討議を経たものではないという意味では正式な外務省見解とは言えないと考えます。
  156. 林保夫

    ○林(保)委員 とても承服できるお話じゃございませんけれども、どうか国民をミスリードしないように外務省さん、しっかりひとつがんばっていただかなければ、とてもじゃありませんけれども、予算の増額なんか認められぬ、こういうことになろうかとも思います。どうか御健闘をお祈りいたしまして、時間がございませんので、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  157. 中尾栄一

  158. 土井たか子

    土井委員 先ほど私の質問の中で、極東の周辺を決定するのは安保条約第四条の随時協議であるというふうな御答弁が、外務大臣の方からございました。そこで、今後論議を発展させていくという上から考えましても、二、三ここでちょっとはっきりさせておきたいことがございます。  従来の国会答弁から考えてまいりまして、この安保条約第四条の随時協議の形式には別に取り決めはないというふうにされてまいりました。しかし、いやしくも極東の周辺というものを決定するのはきわめて重大事だと言わざるを得ません。単に事務的レベルの応酬で済む問題じゃございませんし、事の性質上外務省のみで行うこともできないはずであります。そこで、過去のただ一つの例と申し上げてよい、ベトナムが極東の周辺ということを決定した具体的なこの問題について、第四条に基づいてお互いが随時協議をいつ、どこで、日本側がだれで、アメリカ側がだれで、具体的に協議を詰められたかということをお尋ねをしておきたいのです。いかがでございますか。
  159. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 大分以前の問題で、私、正確に日にちは記憶しておりませんけれども、随時協議の形式としては外交チャネル、あるいは一番正式なのが安全保障委員会という委員会がございまして、この委員会の構成は先生御承知のとおりでございますが、このベトナムの周辺の問題は、そのときの国会の論議を踏まえまして外交チャネルで行ったというふうに私は記憶しておりますが、具体的な日にちについては、現在のところここに手持ちの資料がございません。
  160. 土井たか子

    土井委員 それは手持ちの資料がなければ、後日具体的にひとつお示しをいただきたいと思います。よろしゅうございますね、委員長。具体的にそれを……。
  161. 中尾栄一

    中尾委員長 後で理事会でひとつ……。
  162. 土井たか子

    土井委員 いや、それは理事会で諮る問題じゃないですよ。これは外務省として具体的にわかっているんだから。
  163. 中尾栄一

    中尾委員長 これは理事会でひとつ、あした討議いたします。
  164. 土井たか子

    土井委員 それは討議する問題じゃないと思うのですよ。現にわかっているんですよ。それははっきり示してください、いまここでわからないだけの話でしょうから。
  165. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 記録を記憶しておりませんので、現在すぐ出せるかどうかということをここでお答えすることはできませんけれども、帰りまして調査いたします。
  166. 土井たか子

    土井委員 それは日本側からアメリカ側に申し出たのですか、アメリカ側から日本側に対して協議の申し出があって行われたのですか。いかがですか。
  167. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 これは事の性格上、日本側の発議ということだと思います。
  168. 土井たか子

    土井委員 そうして、最近伊達局長発言といたしまして、ベトナムは極東周辺でなくなったという御発言がございます。これについてやはり随時協議というものが具体的にあったと存じますが、同様にいつ、どこで、日本側はだれで、アメリカ側がだれで、こういうことについての協議がなされたかという、この点はいかがでございますか。
  169. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  極東の周辺であるという認識、つまり極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたということについては、両国の認識が合致する必要があるわけでございますけれども、ベトナムの事態といいますものは、七五年の事態によってすでに戦火はおさまってしまったという事実があるわけでございますから、その点についてはもはや何も協議をする必要がないわけでございます。
  170. 土井たか子

    土井委員 そういう実情についていまるる御説明をいただきたいという趣旨の質問をしているわけじゃないので、あったかなかったかということを、質問についてはひとつ端的にお答えいただいたらいいと思いますが。
  171. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 そういう事実はございません。
  172. 土井たか子

    土井委員 最近、国会の予算委員会の席で問題になってまいりました例のペルシャ湾の問題について、これを周辺と認めるか認めないかという問題について、これは随時協議の対象ということにきょうの外務大臣の御答弁からすると当然なると思いますが、この問題に対して、この周辺と考えるという伊達さんの予算委員会での御答弁にまず先立って具体的な協議をなすった日時、場所、そして日本側アメリカ側の協議された当事者というのは一体どういうことになりますか。
  173. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  私が一月三十一日の予算委員会答弁を申し上げたところは、ペルシャ湾が極東の周辺地域となっているという認識を持っているということは毛頭お話ししたつもりがないのでございまして、むしろ私は、およそそのような事態というものは、つまりペルシャ湾における事態というものが極東に脅威を及ぼすような事態というのは実際問題として考えられないということを申し上げたわけでございます。
  174. 土井たか子

    土井委員 いやいまの質問については、そうするとそういうことがなかったのかあったのかという点についてはいかがですか。
  175. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 沖繩の基地を使用してペルシャ湾に戦闘作戦行動に米軍が出動するというようなことは安保条約上予想されないし、また現実の問題でないということを、一月三十一日、日本側アメリカにおいて米側に確認済みでございます。
  176. 土井たか子

    土井委員 日本側アメリカにおいて確認済みということをいま言われていますけれども、それは具体的には日本側はだれが、アメリカ側のだれに対して、その確認をされたというかっこうになっているのですか。
  177. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 言葉が足りなかったと思いますけれども、ワシントンの大使館員がアメリカの国防省の日本担当課長に確認しております。
  178. 土井たか子

    土井委員 先ほど御答弁の中で、そのペルシャ湾について極東の周辺というふうには考えないということについて、これも安保条約上の随時協議の対象として話し合われたような向きの御答弁がございましたが、これはいかがですか。安保条約上の外務大臣が言われている協議の対象ということにされたという事実があるのですか、ないのですか。いかがですか。
  179. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまの御質問はさきの御答弁で尽きているかと思いますけれども、もう一つ同じような質問、すなわち沖繩の施設、区域を使って米軍がペルシャ湾に直接戦闘作戦行動に出るようなことは安保条約は予想してないし、また現実の問題としてもあり得ないという点については、大臣がマンスフィールド大使に会ったときにこちらからそういう意見を述べて、先方は理解を示したということであります。
  180. 土井たか子

    土井委員 では外務大臣、先ほどそのペルシャ湾の問題について日本側からこれを極東の周辺というふうに理解しないという趣旨をアメリカ側に通じアメリカ側もそれを了承したという旨の御答弁をされたのは、いま局長から御答弁になったその具体的事実を指して御答弁になったということなんですか。
  181. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの一月三十一日の外交チャネルを通じた確認と、それから私がマンスフィールド大使にその話をいたしました両方を含めて、そう考えております。
  182. 土井たか子

    土井委員 そうすると、そのこと自身が、きょう外務大臣が御答弁になりましたこの安保条約第四条に言う随時協議というふうに認識していいわけですか。
  183. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 大使と大臣との会談は、いわゆる日米間で緊密な協力及び意見交換を行っている一環でございます。ただ、強いて安保条約と関連したらどうかというお尋ねでございますれば、随時協議というふうに了解しても差し支えないと思いますけれども、もっと広い意味意見交換ということで大使と大臣の会見は行われたわけでございます。
  184. 土井たか子

    土井委員 しかし、そうなってくると、これは随時協議というのが非常にあいまいなものですね。いま極東並びに極東の周辺というのばどう考えるかということは、日本の国益上、安全上、まことに重大な問題なんです。軽々しくそれは考えられてよい問題じゃないということは、だれしももう十二分に承知している問題なんですね。これについてどう思うかということを一体だれが判定してだれが判断するかについてお尋ねしたところ、外務大臣は、いや安保条約第四条に言う随時協議ということで日米間で話し合うという御答弁をきょうされたわけでありますが、その中身についてこんなあいまいなことでは、ちょっとこれはわけがわからなくなってきます。  大臣、こんなものでいいんですか。
  185. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 極東の周辺という考え方は、その起こった事態に対応する、地理学的な観念でございませんものですから、その生じた事態に対応して考えられることであろうかと思いますので、随時日米間で緊密な話し合いを維持していくということが両者の意思を疎通する上にきわめて有効だろうと考えておるわけでございます。
  186. 土井たか子

    土井委員 それではお答えにならないのです。このことについては、きょう二、三ここで確認をしたことに引き続いて、さらに質問を詰めていきたいと思います。さっきのはよろしゅうございますね。ベトナムのときは昔のことなので帰って少し検討してみるとおっしゃいましたが、それはそのようにひとつお願いをして、あともう一問だけ大臣お尋ねをしたり、そしてこのことに対しての御見解を賜りたいと思うのです。  最近、朝鮮においては南北対話や南北直通電話が実に三年五カ月八日ぶりに再開されるという実情や、伝えられるところによりますと、崔圭夏大統領と与党代表との会談で、金大中氏の復権についても政府も前向きの姿勢で多角的に検討しているというふうな話し合いが伝えられてまいります。すでに昨年、在日韓国人の政治犯で受刑中の八人の方が釈放されたといういきさつは、大臣御承知のとおり、よく御存じでございますが、私どもは、この朴政権の後を継いだ崔新政権が旧体制を清算して民主化を進めようとするならば、在日韓国人の多くの政治犯を釈放するということがその具体的な前提条件に恐らくなるであろう、逆に言うなら、政治犯に対する新政権の姿勢が、いわばその民主化の内容というものを見る場合の試金石とも言えるのじゃないかというふうにも考えられるわけでございますが、いま、多くの在日韓国人の政治犯の中で、特に徐きょうだいの問題をきょうは取り上げて問題にしたいと思うのです。  徐きょうだいは、一九七一年の四月に、朴大統領と金大中氏との間で戦われていた激しい大統領選挙のさなかに、国家保安法、反共法の違反容疑で逮捕されました。お兄さんの徐勝さんの方は無期に、そして弟の徐俊植さんの方は七年の刑に処せられたわけであります。この七年の刑期が満了するときに私は外務委員会でこの問題を取り上げて、刑期が満了するので、釈放されたときには必ず日本に帰りたいと言われるのに、日本としてもそれだけの受け入れ措置を十分に考えていくようにというふうな意味も含めて質問をしたことを覚えております。ところが、一九七八年の五月二十七日がその日だったのですが、懲役七年の刑期を満了いたしましたところ、社会安全法によって保安監護処分を受けまして、二年たった現在まだ監護所に収容中でございます。  ところが、この九年の間、裁判の傍聴や面会と、数を数えて何と六十回以上も日本と韓国の間を往復されましたお母さんが、実はいま重病の床に伏せっておられるわけでありまして、一日も早くこのきょうだいの釈放を祈りながら、わけても弟の方の徐俊植さんの釈放に強い期待をかけて、重い病の床で待っておられるという実情が実はございます。  このことに対しましては先日いろいろ具体的に外務大臣に申し入れをいたしまして、外務大臣もそれなりの御努力を払っていただいたことに感謝を申し上げますが、この問題について外務大臣がいろいろ御努力をなすったその途次どういう感触を得ておられたか、このことについてひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  187. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 在日韓国人の政治犯の問題でございますけれども、基本的にはこれは韓国の国内問題でございますので、日本政府としてこれに介入するという立場にはないわけでございますが、わが方といたしましてはその点には十分注意を払いながら、人道的観点から韓国政府が理解ある配慮を払うことは日韓友好関係に資するものであると信ずる旨を韓国政府に折に触れて申し入れておるわけでございまして、過去一年の間にも十数回の申し入れをしておるわけでございます。  ただいまお話しの徐きょうだいの特に弟さんの方の点につきましては、先般土井委員から直接お話がございましたので、早速在日韓国大使金大使来訪の折に、具体的にこういう問題があるのだ、何とか考慮をしてほしいということを申し入れしたわけでございます。これに対して即答はございませんでした。しかし、一般的な友好関係の上から考えてほしいということを私から直接大使に申し上げたわけでございます。
  188. 土井たか子

    土井委員 事情がいま申し上げたようなことでございますので、なお一層の御努力をひとつ外務大臣にお願い申し上げて質問を終えたいと思いますが、よろしゅうございますね。
  189. 中尾栄一

    中尾委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十七分散会