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1980-03-27 第91回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月二十七日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 瀬野栄次郎君   理事 小沢 一郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 塚原 俊平君 理事 石野 久男君    理事 上坂  昇君 理事 貝沼 次郎君    理事 中林 佳子君 理事 吉田 之久君       狩野 明男君    椎名 素夫君       玉沢徳一郎君    中村 弘海君       船田  元君    田畑政一郎君       日野 市朗君    木内 良明君       瀬崎 博義君    林  保夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     下邨 昭三君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    井口 武夫君         外務省条約局国         際協定課長   浅井 基文君         水産庁研究部漁         場保全課長  伊賀原弥一郎君         運輸省船舶局首         席船舶検査官  野口  節君         特別委員会第二         調査室長    曽根原幸雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律及び放射性同位元素等による放射線障  害の防止に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第四八号)  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律及び放射性同位元素等による放射線障  害の防止に関する法律の一部を改正する法律案  (石野久男君外四名提出衆法第六号)      ――――◇―――――
  2. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律の一部を改正する法律案及び石野久男君外四名提出核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上坂昇君。
  3. 上坂昇

    上坂委員 ただいま議題になりました原子炉等規制法及び放射線障害防止法の改正のことについて質問をいたしますが、私たちも、社会党の方から同じ法案で、別な立場での法案提出いたしております。そのことを一応明らかにしておいて質問に入りたいと思います。  ウラン燃料核分裂をしたときに発生する放射性物質にはどのような種類があるかをお答えいただきたいと思います。
  4. 牧村信之

    牧村政府委員 ウラン235に中性子が当たりまして核分裂を起こすわけでございますが、この核分裂による生成物の数は、私、いま正確に何種類と覚えておりませんが、数十以上の放射性同位元素ができるわけでございます。そのときにいろいろ安全規制上問題になる核種というのは、たとえば気体状のものであればクリプトンであるとかキセノンあるいは沃素、こういうものがございます。またコバルト60等、ガンマ線を放射して、安全規制上重要な核種としてはそういうものがございます。また人体に入りまして障害を起こすというようなものの代表的なものといたしましては、ストロンチウムであるとかセシウムであるとか、あるいは235の分裂によらずに原子炉等で同時に出てまいります235に中性子が吸収されましてプルトニウムができる、そういうようなプルトニウム等アルファ線を出す核種、こういういろいろなものが出てくるわけでございます。それぞれの放射性を持った核分裂性生成物は、性質といたしましてアルファ線を出す核種あるいはベータ線を出す核種あるいはガンマ線を出す核種、この三つに大きく仕分けができるかと思います。それぞれの放射線によりまして、人体等への影響もそれぞれ異なった影響を持っておるわけでございます。
  5. 上坂昇

    上坂委員 数十のうちで特に有害な元素あるいはその中でも非常に半減期の長い元素、そういうものがあると思いますが、いまお話になったストロンチウム90あるいはセシウム137、沃素コバルトキセノン、不活性ではクリプトン、こういうものが一体人体のどういうところに影響を及ぼしてくるか、それから、その影響を受けた人体は、これが濃縮されてたくさん体内にたまるとどういう結果になるかということ、それからもう一つ、超ウラン元素としてプルトニウム、ネプツニウム、アメリシウム、キュリウムというふうに四つの核種があるといわれておりますが、これらが人体にどういう影響があるかということについて御説明をいただきたい。
  6. 牧村信之

    牧村政府委員 まず、ガス状通常出てまいりますクリプトンキセノンあるいは沃素でございますが、これらのものは、特にクリプトンキセノンベータ線を放出するガスでございます。これは、しかも他の元素等化学反応等を非常に起こしがたいものでございます。出す線量も、主としてベータ線でございますので、これは通常原子力発電所等でも気体廃棄物として放出されておるものでございますが、人体に対する影響はきわめてわずかなものであろうかと思います。  それから、コバルト60などのように強いガンマ線を出す核種がございます。これらは主としてコバルト60等から出てまいりますガンマ線が、外部被曝を受ける場合の影響を考慮しなければいけない核種であろうかと思います。  それから、先生指摘プルトニウムであるとかあるいはストロンチウム等核種につきましては、たとえば体内に入りますと沈着する場所が特定されます。たしかストロンチウム等は骨に吸着されやすいということでございます。これらのものは、吸着されますと当然骨に沈着いたしますので、脊髄に対しての影響等を考えなくちゃいけない核種でございます。  それから、アルファ線を出す、先生指摘プルトニウムであるとか超ウラン元素、これは放射線の力としては非常に弱いわけでございますけれどもアルファ線というのは、放射線性質一つ元素でございます。これがアルファ線と言われているわけでございまして、体内に入りますと、一つ電磁波等と違いまして、物のかたまりでございますので、体内組織を破壊するということで、たとえばプルトニウム等を急に吸引いたしますと、肺に沈着して肺のがんの原因になるというようなことでのいそれぞれ線量によりましての人体に対する影響はあるわけでございますが、一般的な影響として大きく仕分けいたしましたときに、放射線を受けたときに直ちにあらわれる変化と、あるいは受けた後時間的におくれて出てくる変化の二つに分かれるかと思います。最初の方を早発効果と言っておりますが、たとえば放射線人体が受けますと、皮膚がまずやられるわけでございますが、そういうときにあらわれる放射線障害として皮膚紅斑が出てくるというような障害、あるいは目に当たりますと白内障を生じる、こういうものを通常発効果と言っております。しかし、この早発効果があらわれますのは、いままでの研究では比較的高い線量でございまして、二十五ラド程度放射線を浴びますとそのようなものがあらわれてくるということが研究的に確かめられております。  それから、晩発効果としてあらわれてまいりますのが、遺伝的な影響も含めました白血病等があるわけでございます。これらの効果というのは、放射線を受けてからある期間、潜伏期は通常数年から数十年と言われておりますけれども白血病を含みます悪性腫瘍であるとか皮膚障害、あるいは物によりますと大量の照射によって寿命が縮まってくる、あるいは胎児などの発生や成長に及ぼす影響があらわれると言われておるところでございます。特に生殖腺に与える影響で突然変異を起こしますと、これが次の世代へ与える影響として遺伝的な影響が出てくるというようなことで、多くの分類がされると思うのでございます。  このような障害に対処するために原子力では、先生御存じのように、できるだけ低い線量で、従業者等線量を受けないようにということで、ICRPでそれらの研究を踏まえた上で国際的な基準がつくられておるわけでございます。したがいまして、それらの基準等を遵守することにより、また、できるだけさらにそれよりもALAPの精神で下げることによって、障害を起こす度合いというものは十分防げるということで、原子力規制が行われておると私は理解しております。
  7. 上坂昇

    上坂委員 広島、長崎に原子爆弾が投下されてもう三十数年になりますが、いまだにずっと病床にいる人あるいは毎年毎年亡くなっていく人がおるわけでありますが、その人たちが主として受けている放射能、その核物質ストロンチウム90、セシウム137、これが一番多いのではないかと聞いておりますが、その点はいかがですか。
  8. 牧村信之

    牧村政府委員 原子爆弾によりまして受けた被害につきましては、これは一時的に大量の放射線を受けたことが一番大きな原因であろうというふうに考えられます。先生指摘の灰の中に入っておったストロンチウム等を吸収された方が相当ある可能性が多いわけでございます。そういうような点で骨に沈着するというようなことでの被害も当然あると考えられますが、ただいまその辺の資料を私、手元に持っておりませんので、この程度で御容赦願いたいと思います。
  9. 上坂昇

    上坂委員 もう一つお聞きしますが、いまの早発性のもの、それよりも放射線の力は弱いけれども、いわゆるアルファ線元素一つなので、体内に入った場合にはそのまま付着する、そういうように解釈してよろしいのですか。
  10. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のとおり、アルファ核種は、放射線としては非常に弱いわけでございますので、体内に入った影響というのを最も注目しなければならない核種であると思います。
  11. 上坂昇

    上坂委員 次にお伺いしますが、原子炉廃棄物を永久処分する場合、現在考えられている方法について御説明をいただきたい。
  12. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 お答えいたします。  現在の考え方は、昭和五十一年に原子力委員会が決定いたしました一つ方針がございまして、高レベル廃棄物につきましては、将来安定な形態に固化をし、一時貯蔵をした後、永久に処分する、こういうことでございまして、現在のところ、高レベル廃棄物につきましては地層処分を考えているわけでございます。また低レベルのものにつきましては陸地処分海洋処分の両方の方法を考えている、こういう方針になっております。
  13. 上坂昇

    上坂委員 海洋それから海底処分といいますか、これが一つ。それは五十一年十月の原子力委員会方針。それからもう一つは、陸上では地質構造への処分、こうなりますね。それからあとシベリアやなんかの氷原地帯というのですか、南極、北極あたりのそういうところへこっちから持っていくというのは、人の国に持っていくわけですからそう簡単にいかないと思いますが、そういう処分がある。それからもう一つは、地球外への処分というものがあると思いますが、この地球外への処分という場合には、いわゆる宇宙研究開発によってわが国においても可能ではないか、こう思いますけれども、これについてはいま国際的にはどういう評価が行われておるかということについて御説明をいただきたいのです。
  14. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 先生ただいま御指摘シベリアあるいは南極大陸といったような考え方、考えとしては十分あり得るし、魅力的な案だと存じますけれども、何分にも違う国ということでございますので、現実的な困難が非常にあろうかと思っております。  それからもう一つの、地球圏外に放出するという考え方につきましては、確かに人類から永久的に遮断するという意味では非常にいい方法だと考えられるわけでございますけれども、実際には量は大したことないとは申しながら、それをロケットで宇宙の外へ放り出すということになりますと、そういう観点では相当大量な話になるわけでございますので、そういう意味で大量なものを地球の重力を断ち切って宇宙空間に放り出すということは、非常に技術的にむずかしい、またコストも相当かかる話になるかと思います。それで現在、そういう観点から現実的な検討各国ともまだ加えていない段階でございます。しかし将来、宇宙技術が格段の進歩を遂げて、そういうことも可能になるという時代はあるいは来るのかもしれませんが、現在のところ、まだ具体的な検討は加えられていないという状況でございます。
  15. 上坂昇

    上坂委員 今度の法案は、ロンドン条約批准とうらはらになって出てきていると思いますが、このロンドン条約批准した国で海洋投棄をやっている例があるかどうかということ、それからもう一つは、アメリカは現在これを中止していると聞いておりますが、もし中止しているとすれば、その理由はどういうものか、お伺いいたします。
  16. 牧村信之

    牧村政府委員 条約に入っておりまして、海洋投棄を現在時点で実施しておりますのは、オランダ、スイスイギリス等が挙げられます。また条約に入っていないで海洋投棄を実際に実施している国としてはベルギーがございます。スイスも従来やっておりましたが、つい最近この条約に加盟いたしました。  それから、アメリカ海洋投棄を過去にはやっておりましたが、現在中止している理由につきましては、私どもの承知しておるところでは、海洋投棄実施しておりましたが、その後国内に数カ所の処理処分をする陸地サイトができまして、原子力発電所等から出てまいりました低レベル廃棄物をそこに持ち込んで処分しておると聞いておるところでございます。海洋処分を中止した理由としては、そういう処分地ができたということ並びにアメリカ原子力施設が内陸に相当ございますので、そういうような処分地に輸送した方が安いということ、サイトから港まで運びまして、また船に積んで海洋処分するときにかかる経費よりも陸地処分の方が経済的に安いということで、現在海洋投棄が行われていないと聞いております。  そのような国は、ヨーロッパではフランス、ドイツが例として挙げられております。またアメリカでは最近、海洋処分ということにまた関心が持たれておりまして、アメリカ環境庁等も再開に当たってのいろいろな調査を始めたやに聞いております。
  17. 上坂昇

    上坂委員 いまのように海洋投棄をやっている国が実際にあるし、それからアメリカもまたいろいろ調査をしているということになりますと、自国内貯蔵あるいは処分については、国際的な監視機構というのは及ばないと思いますが、海洋の場合には国際的な監視をしなければならないというふうに思いますが、その国際的監視機関組織と、どういう方法でこれを監視するのかということについてお答えをいただきたい。
  18. 牧村信之

    牧村政府委員 この海洋処分につきましての国際的な動きをまず御説明させていただきますが、ロンドン条約ができまして、それの国際的な海洋投棄基準というものが、国際原子力機関IAEAで定められまして、この条約による放射性物質基準等IAEA基準によると言われておるわけでございますが、そういう動き一つあるわけでございます。  それから、ただいま先生の御指摘の国際的な監視機関はどういうものがあるかということでございますが、これはOECDの下部機関NEAという原子力機関がございますが、その中に国際的な監視機構が一九七七年に設立されております。これはヨーロッパ諸国が過去十年近く海洋投棄を実際に実施しました経験を踏まえまして、その蓄積された技術等をこの国際監視機関に集約いたしまして、各国が行います海洋投棄を国際的に監視しようではないかという考え方のもとに生まれたものでございまして、現在、ヨーロッパ諸国海洋投棄しております海洋投棄実施に当たりまして、この国際機関監視をしておるところでございます。  その仕組みでございますけれども、まず締約国計画を立案いたしますと、その計画をこの監視機関提出いたします。そういたしますと、直ちにその計画について加盟国に全部通知をすると同時に、この監視機構では、その国が行いました安全評価についてチェックをいたします。その安全性に対する考え方が十分であるかどうか、これをチェックして、意見があればそれを修正させるというふうな形での行為がまず行われます。そういうことで了解がとられた計画が実際に実施に移されるときには、この機関から監視員海洋投棄実施に当たりまして出されまして、現実投棄を、船上も含めまして、投棄行為を含めまして監視員監視するという形になるわけでございます。  私どもも、こういうような海洋投棄というのは、先生指摘のように、国際的な問題、広がりを持っておるわけでございますから、私どもこの条約国内法をお認めいただいて条約に入るときに、ほぼ同様の時期にこのNEAに入りまして、日本海洋投棄実施する、日本自体規制を十分行うわけでございますけれども、この監視機構の国際的な規制を受けて進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  19. 上坂昇

    上坂委員 昭和五十一年の十月にできました原子力委員会の「放射性廃棄物対策についての方針」の中で、低レベルのもので作業衣等可燃物については焼却をする、そして処分をするというふうに出ておりますが、焼却をした場合、フィルターで完全に放射性物質大気圏放出が防げるかどうかということについて、ひとつお答えをいただきたい。
  20. 牧村信之

    牧村政府委員 たとえば原子力発電所等で出てまいります低レベル固体廃棄物は、いろいろな固体状の手袋であるとか作業衣で汚染されたもの等があるわけでございます。そのほかにも、作業上使った紙その他の可燃物があるわけでございます。現在、そういう廃棄物施設内に安全に保管しておくことになっておるわけでございます。電気事業者等可燃物については、敷地内で焼却して、その量を減らしまして、それを所定の容器等に入れて保管管理をしているのが現状でございます。その焼却場の設置につきましては、原子力発電所の場合には、その付帯する重要な施設といたしまして、計画をつくりました段階行政庁審査並びに安全委員会ダブルチェックを受けて、先生御懸念の外部に対する影響が出ないように管理できる施設であるかということについて審査が行われております。当然、そういう施設でございますので、法令に定めた技術基準もすでに確立しております。また、それを運転するに当たりましては、法律に基づいて定められております電気事業者保安規程に従って廃棄物処理のための焼却施設等規制が行われておるわけでございます。  そこで、たとえば粉じん等フィルターでろ過するというようなことにつきまして、外部放射線が可能な限り出ないようにということで、その辺の施設につきましては、特に厳重な設計上の審査、あるいは建設に当たってそれが十分設計どおり行われておるかということが確認されるような体制で規制が行われておるところでございます。
  21. 上坂昇

    上坂委員 そこで、この海洋処分の問題について「国の責任のもとに、昭和五十三年頃から、試験的海洋処分に着手し、安全性を確認したうえで、本格的な海洋処分実施する。」と六項にあるわけでありますが、この「試験的海洋処分」というのは、どういうことなのか、また着手したのかどうか、もし着手したとすればどういう手順で始めたのか、その辺についてお答えをいただきたい。
  22. 牧村信之

    牧村政府委員 この試験的海洋処分計画につきましては、先ほど原子力局長からお話がございましたように、原子力委員会が五十一年に定めました方針に沿ってこのプロジェクトがスタートしておるわけでございます。この中で、まず事前試験研究というのがあるわけでございますが、これは海洋投棄をいたします固化体が、現実に数千メートルの海底投棄したときに壊れると困るわけでございますから、そういう健全性が確保できるかというような耐圧試験が行われております。それから海洋投棄実施しようとする候補地点につきまして、海洋調査がすでに行われておるわけでございます。そのような研究実績を踏まえまして、ほぼその研究が終了しておりますので、それをもとにいたしまして、実は科学技術庁安全評価をしたわけでございます。それについて安全評価の結論を安全委員会ダブルチェックをしていただきまして、安全は確保できるということで御意見をいただいておるわけでございますが、実際の海洋処分に当たりましての計画は、これから進めていく段階でございます。その進めるに当たりましての条件といたしましては、何といいましても、海洋投棄という、海を使うわけでございますので、漁業に携わる方々の理解を賜った上で推進すべきであるということで私ども考えておりまして、その点につきまして現在、数多くの漁業者団体に、われわれの計画並びに計画実施しても、どういうふうに安全が保てるかということにつきまして御説明を行っておる最中でございます。  それで、そういうような御理解を賜った上で海洋投棄を実際に実施したい、その時期は、私どもとしては、一応の計画として五十六年の春ごろに実施したいということで、いま鋭意漁業者団体等お話を進めておる、それから国際的には、この条約批准をするための国内法整備をお願いして批准し、NEAにも入るというようなことで、総合化されたそういう準備が整った上で実際に投棄をするという形に相なろうかと考えております。
  23. 上坂昇

    上坂委員 そうしますと、この試験的海洋処分というのは、事前のそうした容器耐圧試験とか候補地の選定であるとかいうことを踏まえて、それが大丈夫だという自信の上に立って、実際にこれはある幾らかの数量海洋投棄する、そういうことなんですか。  それからもう一つは、もしそういうことですと、ある一定の数量というものを深海底に沈めていかなくちゃならぬということになりますと、その結果というものを待たないでも、投棄の仕方が成功したと判断をすれば、それで今度はもう実施段階に入る、こういうふうに解釈していいですか。
  24. 牧村信之

    牧村政府委員 試験的な海洋処分の中身についてまずお答えいたします。  この海洋処分の目的は、実際に電力会社等から出ております低レベル廃棄物をある数量海洋投棄いたしまして、その安全性を確認し、また海洋処分にいろいろな作業があるわけでございますが、それにかかわる安全管理手法を確立したい、それから当然、規制上どういうふうに規制したらば一番よろしいかというようなことを確認したいということで、この試験的な海洋処分は、国が立案しまして行わせようというふうに考えておるものでございます。  処分量は、いまの計画では、セメント固化体にいたしまして、五千本から一万本程度の量を実際に海洋投棄したい、放射能数量で申しますと、約五百キュリー程度のものを投棄したいと考えております。  それから、処分海域につきましては、実際の実施に当たりまして、科学技術庁長官処分地域を指定することになりますが、これはまだ指定されておりません。漁業者団体等の御理解を得た上で指定したいと思っておりますが、そのうち四地点調査をやっておりますが、深さの関係で一地点が適格ではないので三カ地点候補の中に上がっておるところでございます。  実施をする機関は、公益法人をこのために官民でつくっておりまして、原子力環境整備センターというところが、この準備を数年前から進めておりますが、そこへ委託をしてやらせたいということでございます。  先生指摘の最後の御質問でございますが、私どもとしては、この実施計画は三年程度を考えておりまして、初年度に当然投棄するわけでございますが、あと二年ぐらい投棄後の海洋調査を十分にいたしたいというふうに考えております。この海洋調査につきましては、従来からも運輸省の海上保安庁それから農林省の水産庁等の各研究機関等でやっていただいておるわけでございますが、引き続き、そういう国の機関海洋調査の専門機関に行っていただくというようなことで計画を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  25. 上坂昇

    上坂委員 一つ耐圧試験、これは容器が深海において壊れないような状況というのが一番大切だと思います。  もう一つは、腐食の問題があると思うのですが、この腐食についても、現在の容器でそれに耐えられるという確信ができているのかどうか。
  26. 牧村信之

    牧村政府委員 実物につきまして、その実際の海洋深海底でのそういう耐食試験というのは現実にはできないわけでございます。したがって、日本では部分的な試験として、健全性の補完にそういう投棄物が海水中でどういうような腐食をするかというようなことでの実験等も踏まえまして、健全性は保てるという結論を出しておるわけでございます。  それで、現実の問題としては、アメリカがいまから三十年前から約十年前までいろいろ海洋投棄実施して、その後十年ぐらい前から中止しておるわけでございますが、アメリカはその海洋投棄しましたものがどういう状態にあるかという調査研究を最近開始しておるわけでございます。日本もその調査研究研究者が参画させてもらっておりますが、相当期間海底にあったものを実際に引っ張り上げまして調べましたところが、ほとんどドラムかん等の腐食は起きていなかったというデータが、すでに、日本では得られておりませんけれどもアメリカでは得られているというようなことでございますので、先生御懸念の耐食性についても十分確保できると私どもは考えておるところでございます。
  27. 上坂昇

    上坂委員 もう一つ、この方針の中で陸地処分のうちで、地中処分を「昭和五〇年代半ばから実証試験を行い、」こう書いてあるわけでありますが、これはすでに開始されているものかどうかお答えいただきたい。
  28. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 先生指摘陸地処分についての研究の開始ということにつきましては、これは高レベル廃棄物を対象にした方針であるわけでございますけれども、現在その地層の調査をやっているというのが現状でございまして、たとえば日本におきます地層の賦存状態の調査、あるいはいろいろな岩石を対象にいたしました岩石の特性の試験評価、あるいはそういう岩石がある種の核種に触れた場合に、その岩石内を核種がどのように移動するのであろうかといったような研究検討を進めているということでございまして、まだ現実地層処分研究に取りかかるという段階に至っておりません。そういう意味では、五十一年に示されました原子力委員会方針に若干おくれが出ているというのが現状でございます。
  29. 牧村信之

    牧村政府委員 ただいま高レベル放射性廃棄物処理処分につきましてのお話原子力局長からいたしたとおりでございますが、低レベルにつきましては、これを地中処分したい、そういう考え方でございますので、これは規制の仕方をどういうふうに考えたらいいかという観点調査研究が私どもの方でやられております。  現在やっておりますのは、秋田県の尾去沢の鉱山の跡地でございますが、そこで海洋処分と同じようにパッケージされました固化体を実際に地中処分したときに、たとえば地下水等によってどういうふうな影響を受けるか、受けるとすれば、どういうふうな構造の倉庫と申しますか、入れるものをつくったらいいかというようなことにつきましての条件をいろいろ想定しまして、その試験をやり、また、それらのものを国がどう規制していけばいいかというような調査研究が行われておるわけでございます。そういうような調査研究を踏まえまして、実際に処分地電力会社等が確保いたしまして、そこで試験的な処分をまずやらせ、十分安全確保ができるということを確認した上で、本格的な地中処分と申しますか陸地処分をやらせていきたいというふうに考えておるところでございます。
  30. 上坂昇

    上坂委員 そうしますと、ここに書いてある「回収可能な状態で処分しておく必要のあるもの」というのは、いわゆる一度貯蔵しておいて、また何年かたって取り出して、そしてその状況がどんな影響を持っているか、こういうことを研究するという意味に解釈してよろしいのか。
  31. 牧村信之

    牧村政府委員 低レベル廃棄物陸地処分に適したものと、それから海洋処分をしてもいいようなものと、それぞれ性格的には仕分があるかとも思いますが、特に先生いま御指摘のように、現実にちょっとこういうものはというのは、いまちょっと頭にございません。と申しますのは、電力会社から出てきておりますただいまのところの低レベルというのは、それほど特異性があるものではございません。ですから、そういうようなものは、確かに先生指摘のように陸地処分しておいた方が、何かありましたときに再度取り出して、もっと厳重な規制をする、処分の仕方をするとかいうことが可能でございますので、陸地処分の対象になるものは、そういうものが当然含まれるのじゃなかろうかと私どもも考えておるところでございます。
  32. 上坂昇

    上坂委員 この高レベルについては、局長の方から先ほどお答えいただいたわけでありますが、液体廃棄物の場合、現在、まだ日本では再処理工場がないので外国に頼んでおるわけでありますが、その使用済み燃料の再処理を頼んだ場合、そこで出てきているいわゆる抽出済みの廃液と申しますか、これをどうするかということが問題になると思うのです。  もう一つは、使用済み燃料の被覆管、ジルカロイとか何かの被覆管だと思いますが、そういうもののくずといいますかスクラップ、これはこちらが頼んだ再処理工場ではどういう処分をするのか。そのことについて日本は、これをもう一度日本に持ってきて処分をする、あるいは監視をする、そういう必要はないのかどうか、この辺についてのお答えをいただきたい。
  33. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 ただいまの御質問二点あったわけでございますが、まず、わが国の場合、東海の動燃事業団に設置されております再処理工場が、まだテストの段階ではございますけれども、すでに動いておりまして、三十一トン処理をしたわけでございます。そこで約六十六立米の高レベル廃液が現実に発生しております。初期でございますので、ちょっと発生量が多いわけでございますがそれは廃液タンクに貯蔵されておりまして、ここ数年その状態で保存する、冷やすという計画にたっております。その後はガラス固化計画しているわけでございます。  それから、第二の御質問の点でございます英国のBNFLあるいはフランスのCOGEMAに頼んでいる分でございますが、大部分はまだ運ばれた段階で、プールにつけられているわけでございまして、これから処理が行われるということでございます。そこで発生いたすであろう高レベル廃棄物をどうするのかということでございますが、発生し処理をした段階日本に戻すというその選択権は相手国側に、すなわち英国及びフランスにあるという状況になっております。でございますので、あちらの選択によりまして、ある時点で日本に引き取ってもらいたい、ただし、それは処理をされた段階で引き取ってもらいたいという話が起こり得るわけでございます。その時点につきましては、少なくとも昭和六十五年以降に起こり得る状況でございまして、まだ十年先の話であるということでございますが、そういうことでありましても、あり得るケースでございますので、それに備えて、そういう事態になっても困らないようにという対策は講じておく必要があると考えております。  それから、御指摘の燃料の被覆管についてはどうかということでございますが、そのものについては、一緒に処理されるのか、あるいはその分は別途処理されるのかは、いまの時点で私、明確に理解しておりませんので、後刻これは御報告させていただきたいと存じます。
  34. 上坂昇

    上坂委員 放射性廃棄物処理対策費というのがありますね、その中に処理処分研究開発費というのがありまして、五十四年度で九十八億六千八百万円ですか、これに百十一億八千六百万円の国庫債務負担がついているわけであります。これらの研究開発費というものは、先ほど局長がお答えになったいわゆる海洋候補地調査であるとか、容器の耐圧、耐食性の研究であるとか、そういうものに使われている、こういうふうに考えていいのですか。
  35. 牧村信之

    牧村政府委員 低レベル廃棄物を安全に処分するための研究につきまして、まず私からお答えいたします。  五十二年度は、先ほども説明申し上げましたように、海洋処分につきましては、ほとんどの研究がある成果を挙げてきておるわけでございますが、現在、最後に残りました固化体投棄いたしましたときに、どういう状態で落下していって、どういう状態で健全性を保てるかという海底カメラの研究を行っておるところでございます。すでに固化体と一緒に撮影する装置につきましては、一部成功しておるわけでございますが、さらに進んだ、求める時期に海上に取り出してきて回収するというふうな撮影をする改善のための研究が一億二千五百万円計画されております。そのほか、海洋候補地海洋調査の金が関係省庁の試験研究機関に計上されております。それから陸地処分関係の予算につきましては、来年度六千万円を計上しておりまして、先ほど御説明申し上げました模擬廃棄物を用いましての試験の実施に関する研究とか、それから実験に実証試験をする候補地はどういうところがいいかというようなことに関します調査のための経費を計上しております。経費として六千万円でございます。
  36. 上坂昇

    上坂委員 私がもらった資料では、処理処分研究開発というので原研、動燃、国立試験研究機関放射能調査研究所、理研、各所にまたがっておりまして、そのトータルとして先ほどの金額が出たわけですね。私が言った金額については一応間違いありませんか。
  37. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 放射性廃棄物処理処分に関する研究といたしまして、五十五年度にお願いしている金額は約百三十二億円でございます。  それで、ただいま低レベル関係で御説明があったわけでございますが、実際に百三十二億円のうち非常に金を食いますのは、高レベル廃棄物処理処分研究のために多額の出費をお願いしているわけでございます。  その主なものは、高レベル廃棄物のガラス固化研究のために約七十二億円を計画しているわけでございます。これはガラス固化の技術が、わが国におきましては、実験室規模での試験の段階を終わりまして、工学的試験規模での試験に移りたいという状況でございますので、そのための試験設備をつくっておりますために、相当額の支出をお願いしているという状況でございます。
  38. 上坂昇

    上坂委員 先ほど私が申し上げたのは五十四年度の予算額でありますが、いま局長から説明がありましたのは五十五年度の予算額ですね、そのうち、先ほどの処理処分研究開発というので百十二億九千万円ですね、それで、債務負担行為として六十八億五千五百万円、これはここでは少し減っておるわけであります。それから原研の予算、動燃の予算を見ますと、いわゆる債務負担行為の方は少し減額になっているわけですね、この件については、五十四年度と比較しまして、これで差し支えないということなのかどうか。
  39. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 先ほど高レベル廃棄物処理を中心に申し上げたわけでございますが、実は低レベルのものでアスファルト固化研究いたしておりまして、そのための研究施設の建設を行っていたわけでございますが、それが一段落いたしましたので、金額的に減ってきているということでございます。
  40. 上坂昇

    上坂委員 次に、別な観点からちょっと質問いたしますが、この間、石野先生を団長にして東電の福島第一原発一号炉のノズルのひび割れの修理現場を視察してきたわけでありますが、原発というのは、事故あるいは故障が非常に多くなって、修理が長くなればなるほど、それだけ放射性廃棄物、ローレベルのものであろうと思いますが封これが非常に多くなって、また労働者の放射能被曝も非常に多くなる、こういうふうに思います。  そこで、いま日本で一番設備利用率の低い原発、これを一番低い方から非常に悪いのをひとつ挙げていただきたい。
  41. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 お答えいたします。  五十三年度におきましては、美浜の一号でございます。それから五十二年におきましては、美浜の一号、それから福島の二号、福島の一号、高浜の一号というかっこうになっております。
  42. 上坂昇

    上坂委員 美浜の一号というのは、五十二年、五十三年と続けて一番、これは余り名誉な一番じゃないんだけれども。福島も五十二年度は一番になっているわけでありますが、これはもう寿命が来たからではないのか。幾ら修理しても、すぐにまた稼働率が悪くなっちゃう、そんな炉ではないのかと思いますが、この点についてはいかがですか。十分修理をすれば、また六〇%なり七〇%なりの設備利用率には回復する、こういうふうに見ておられるかどうか。
  43. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 ただいま先生からお話のありました稼働率の悪い発電所につきましては、ただいま申し上げましたように、非常に固定されたといいますか、特定の発電所について非常に稼働率が悪いわけでございまして、この悪い理由につきましては、おのおのその技術的な対策をいまとっておるところでございます。  たとえて申しますと、福島の一号及び二号につきましては、これは応力腐食割れのための予防的処置ということで配管の大幅な改造をしております。そういうことで、この際、徹底的に直しておいた方が、今後出るかもしれないというような問題について予防できるということで、非常に時間をかげながらやっているのが実態でございます。  それから、美浜の一号でございますが、これは御承知のとおり、蒸気発生器におきます細管の漏洩でございますが、これにつきましても、水処理の問題について解決の策のめどがつきましたので、それについて対策を立てているところでございます。  また、高浜の一号が五十二年非常に低いわけでございますが、これは制御棒案内管の支持ピンが折れたという問題がありまして、それの対策、これもまた熱処理またはそのクラスタ案内管の構造を変えるというような対策を立てまして、それも各発電所、PWRの発電所についても支持ピンの取りかえをしておりますので、そういうことで今後は、こういう対策が進みましたならば、十分に稼働率高く運転できるものと期待をしております。
  44. 上坂昇

    上坂委員 何とか需要に応じられるだろうと期待していると言われているわけでありますが、そうしてそういうことで成長率に見合う電力量を確保しようという努力をしているのだと思うのですが、われわれから見ると、とてもその期待に沿えるようなものではない、どうもこんなふうな感じがいたしますね。  ちょっと調べてみましたら、一九七八年度で各原子力発電所の労働者被曝の状態を見ますと、総被曝線量は、各電力会社の社員とそれから下請、請負会社の労働者、この合計で一万二千五百八十八人レムになっているわけですね。そのうちで福島第一原発が大体六四%を占めておりまして、八千四十七人レムになっています。これは下請労働者だけの総被曝線量を見ますと、全発電所で一万一千八百六人レムで、そのうち福島第一原発は七千七百四十八人レムと、約六六%を占めておるわけであります。こういう状況というのが非常に地域住民に不安を与えているということも事実であります。  そこへもってきて、今度の電力料金の値上げが行われて、半年も一年もとまっているいわゆる原子炉、発電を全くやらないような美浜のいわゆる炉、そういうものも含めた電気料金の値上げというものが行われるというところに非常に大きな疑問を持たざるを得ないわけであります。  こういう年がら年じゅう故障、事故ばかり起こしている原子炉というのは、これはもう思い切って廃棄処分にして、もう発電をしない、廃炉にする、そういうふうにしないと、国民の負担というのはますます大きくなってくると私は思うのです。  これからまた、いろんな公共料金の値上げを初めとする物価の値上げが行われまして、インフレが高進するということになると、また早晩、電気料金の値上げが起こってくるかもしれない、そういうときに、これが加算をされていくということは、全くこれは不合理な話だ、こう私は思うのです。  そういう意味で、これは国民の被曝の状況をやはり勘案しながら、労働者被曝にいたしましても、修理が長くなって、年じゅう修理をやっていれば、そこに働いている人たちの被曝線量というのはどんどんふえるばかりでありますから、そういう意味で、私は、こういう欠陥炉といいますか、こういうのは思い切って廃炉にする、こういう方針というものをどうしてもいま立てる必要があると思っているわけであります。  これをなぜ実際にやらないのかということについても、私は非常に疑問を持っておりますが、今後こういう形のものをやっていくというお考えがあるかどうか、この点については、これは大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  45. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 大臣からの御答弁の前に、ちょっと事務的にお答えさしていただきたいと思いますが、ただいまの福島一号それから美浜一号というように、現在の稼働率の悪い発電所につきましてのお考えと思いますが、これはいずれも運転を開始いたしましてからまだ七、八年ぐらいしかたっておりませんで、各発電所ともまだ相当な寿命がございますので、非常に短期な観点から、いまのように今後とも使えないのではないかというようなことではなく、ひとつ長い目で見ていただきたい、こう思っております。  したがいまして、その対策、それから今後の運転にたえ得るかどうかという検討もわれわれ十分やっておるところでございますので、この修理が終わった後の稼働率で、またいろいろと温かい目で見ていただきたい、こう思っております。
  46. 長田裕二

    ○長田国務大臣 原子力発電所の中で、稼働率が悪くて故障が多い、修理関係の人の被曝の量も少しずつふえてきているとか、あるいはまた経営上大きな問題になって、料金の面にも圧力を加えていくとか、そういう面というものもいずれはだんだん全般として起こってくるべき問題かと思います。それをいつごろ、どの程度の状態のときにどういうふうにしていくかということにつきましては、なお関係省庁あるいは事業者などの見解も、また被曝の問題なども十分あわせ検討いたしまして、結論を出すようにしてまいりたい、そのように思っております。
  47. 上坂昇

    上坂委員 いま大臣からお答えをいただいたことについては、できるだけ早く実施をするような方向で努力をされた方がいいのじゃないかと私は思うのです。ただ、答えを聞いていて、どうも疑問に思うのは、六、七年ぐらいにしかならないからもう少し温かい目で見てくれ、こう言われても、年じゅう故障していれば、温かい目でなんか見られる道理がないのです。故障が起きてとめれば、そのときに放射能はたくさん出てくるし、そこで働かなくちゃならぬわけでありますから、いろいろな障害というのが非常に多くなってくるというふうに思うのです。  しかし、そういう炉であっても、いま一生懸命修理をして、悪いところを研究して、それを直している段階だから、こういうふうに言われてしまうと、何かこれはまるで研究開発の試験をやっているような感じがしてならないわけですね。これが本当に実証炉と一体言えるのか。いわゆる悪いのを幾ら直しても直しても一年も二年もストップをされているという炉で、どんなに研究したって、これは、だめなんだという研究しか出てこないのではないかというふうに私は考えざるを得ないわけです。  そんなことならば、そんなところに金をかけるのならば、しかも景気回復だ、だから金をかけるんだなんて言われてしまえば、電力の問題ですからおしまいですが、そんなところへ金をかけていくのならば、もっと有効なところへ投資をしていくことの方が、経済効果はあるし、いろいろな面で国民生活に利益するところが多いのじゃないか、こういうように思います。  そういう意味で、先ほど発表になったような非常に稼働率の悪い炉というのは、これはそんな研究をしている段階じゃなくて、もうストップさせるように電力会社にはっきり物を言う、こういうのが原子力委員会の立場であり、科学技術庁の立場ではないか。そういうことが国民の不安をなくす、それから被曝線量をできるだけ少なくしていく方向であると私は思うので、そのことについてもう一度お答えをいただきたい。
  48. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、稼働率よく、かつ被曝線量を少なくということでございますけれども、われわれも、まさにそういう意味原子力発電所が実用にたえ得るように持っていきたい、こう考えております。  先ほど来出ております発電所の問題につきましては、これは特定の発電所でそういうことが起こっておりますが、そういうところで起きました知見につきましては、その後建設いたしました発電所においては、事実上そういうような問題は起こっておりません。ですから、修理をすれば、現存非常に好調に動いております発電所と同じように実用に供することができる、こう考えております。
  49. 上坂昇

    上坂委員 これで質問を終わりますが、海洋投棄については、私たちの立場ではまだまだ納得のいかない問題がたくさんあります。投棄された場合に、一体それがどうなるかという問題について、いま低レベル廃棄物でも二十一万三千本もあるというふうに言われておる、日本だけでこれでありますから、これだけの量のものをどうしても廃棄処分にしていかなくちゃならぬということになりますと、海洋に対する影響というのはかなり大きくなるのじゃないか、こういう感じがいたします。したがって、われわれとしては、なかなか納得ができないということを申し上げます。ただ、いろいろな面で非常に努力をされて、そして研究開発に取り組んでおられる姿勢については、これは私、高く評価をしていきたいと思います。  これで私の質問を終わらせていただきます。
  50. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時四分開議
  51. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日野市朗君。
  52. 日野市朗

    ○日野委員 現在審議中の法律案についての質問をいたします。  この法律案で従来の改正点、これはほぼ一点にしぼられるような感じがいたします。つまり従前の法制では一応野放しになっていた非事業者について、これは海洋投棄を禁止する、このような方向であるというふうに読んでよろしいかどうか。
  53. 牧村信之

    牧村政府委員 ロンドン条約批准に当たりまして、国内法整備の改正点の主要の眼目は、ただいま先生が御指摘ございましたとおりでございまして、規制法におきましては、事業者の行うことの規制につきましては、すでに法的にも整備されておるということでございまして、一般人の行うことをも条約では禁止することを要請しておりますので、一般人は捨てられないという形にさせていただきました。  それから、障害防止法につきましては、政府の確認行為の規定がございませんので、それにつきましては、障害防止法は確認規定を設けるということも加えさせていただきまして、同様の改正を行うということでございます。
  54. 日野市朗

    ○日野委員 非事業者、一般人という点で非常に留意をなさった点はよくわかるのですが、従来の原子炉等規制法、これかもかなり厳しいものでありますし、放射線障害防止法の方にも一応の規制がございました。こういう経緯から見て、この非事業者と言われるものは現実にはさほど多くなかろうというふうにも思うのでございますが、非事業者というものには現実にどういう人たちが存在しているのか、そこのところを御説明いただきたいのです。
  55. 牧村信之

    牧村政府委員 国内におきましては、先生指摘のように、規制法あるいは障害防止法によりまして、核燃料物質等を使う者あるいはRI等を使う者は、事業者のみしか現実的にはないわけでございますが、法律的にはその他の者も使うということが全くあり得ないわけではないということがまず第一点です。したがいまして、現実にはあり得ないと私は考えております。  それからもう一点は、条約の方から、たとえば外国が外国の船を持ってきまして、日本の領土の中で投棄をするということは、現在の規制法では規制できないわけでございますが、今回の改正によりまして、そういうものも規制し得る体制になるわけでございます。
  56. 日野市朗

    ○日野委員 現在の法制の中では、日本国内ではまずこれはほぼあり得ないというふうに理解され得るかと思いますし、外国からこのような物を持ち込む、または外国の船舶が日本の領海内にそういった物を持ち込んできて投棄をするというような、これは放射能関係の廃棄物ですが、そういった物を投棄するということは、現在の日本における出入国管理の体制、また領海等の警備の体制から見て、これもほとんどあり得ないことではないかというふうに私には考えられてならないのですが、この点いかがお考えでしょうか。
  57. 牧村信之

    牧村政府委員 私どもも、先生おっしゃるとおりであると思いますけれどもロンドン条約自体にそれに関する規定がございますので、ロンドン条約に入るということになりますと、やはり国内法で、それも仮定の問題であっても規制ができる、禁止できるような措置をとっておくことが必要であるという見解のもとに、今回の法改正をお願いしておるところでございます。
  58. 日野市朗

    ○日野委員 特に外国船舶が日本の領海内においてこのような投棄をするということ自体、それはむしろその当該船舶の所属する船籍国の法規制によって規制すべきなんで、日本法律によって規制することは適当でもなかろうし、余り実効性を期待することもできないのではないかと思いますが、この点いかがでしょう。
  59. 牧村信之

    牧村政府委員 確かに先生おっしゃる御趣旨よくわかるわけでございますけれども、そういうことを行うすべての国が必ずロンドン条約に入るかどうか、また入っていない国も現実にあるわけでございます。そうなりますと、その条約に基づいて外国が国内法でそういうことを規制しておれば、先生おっしゃるとおり、そういうことはなかろうかと思いますけれども、一方日本としては、そういうものを禁止して規制をしなければいけない、そうなりますと、やはりこういう規定を設けさしていただきまして、それに違反する者は、担当、警備する省庁におきまして厳重な規制あるいは摘発等が可能になるように措置しておく方がベターであるということでございますので、その辺御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  60. 日野市朗

    ○日野委員 実は私がそこのところをしつこく伺ったのは、現在進行している放射性廃棄物海洋投棄のプロジェクトがございますが、本法案の可決、国会通過ということによって、それが非常にスピードアップをされる、加速されるというようなことが一部で非常に危惧の目をもって見られているところであります。  御承知のとおり、この放射性廃棄物投棄については、全く投棄すべきでないという考え方から、いろいろな段階を経ましてかなり緩いところまで考える、いろいろな考え方があるわけでありますが、中には、現在進捗しているプロジェクトが、この法案の通過によって途中の慎重な手続であるとか慎重な調査研究、その段階を素通りして一気に放射性廃棄物投棄実施に突き進んでいくのではないかという懸念を持つ向きがございます。私なんかも、この法案を見てみまして、少なくとも国内においてはさほど実効性のある法案ではなかろう、新たに規制する範囲というのは理念的には考えられても、現実の問題としてはさほどなかろうというふうに考える者の一人として、むしろ科学技術庁あたりがこの法案を急いで通過をさせるということが、海洋投棄プロジェクトを加速させる、こういう目的を持っているのじゃないかという疑いの視線を全くなくすわけにまいりませんので、その点について念を押して伺いたいのですが、いかがでしょう。
  61. 牧村信之

    牧村政府委員 私ども、この条約に参加するための国内法整備によりまして海洋投棄計画を促進するという考え方は全然持っていないところでございます。現在の規制法によりまして、日本の事業者が行う海洋投棄につきましては、十分規制手段が整っておりますので、法律的には、条約に入る入らないにかかわらず、海洋投棄ができるわけでございます。しかしながら、海洋投棄というのは、国際的にも広がりのある海洋投棄をするわけでございますので、私どもとしては、ロンドン条約にも参加し、またOECDの国際監視機構にも参画した上で、国内はもとより国外の御理解を得て進めたいという考え方でこの問題に対処してきております。  また、試験研究等の必要なものは、過去数カ年にわたりまして相当の成果を上げておりますので、その面からは国内の事業者が行う海洋投棄が十分安全に行えるものと確信しておりますけれども国内的にはなお海洋投棄をいたしますときに漁業者の方々の御理解を賜ることがきわめて大切であるということで、そういう意味での慎重なアプローチもしつつ、今後、試験的海洋投棄を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  62. 日野市朗

    ○日野委員 くどいようですが、ちょっと念を押させていただきますが、この法案の成否と海洋投棄のプロジェクトの進捗、これは全く関係ない、そのように伺ってよろしゅうございますか。
  63. 牧村信之

    牧村政府委員 全く関係ないとおっしゃられますと、私ども、先ほど申し上げましたように、いろいろなところの御理解を得るためには、特に国際的な観点では、この法律を通していただいてロンドン条約に参画することがベターであると思っております。しかし、先生おっしゃるように、私どもの試験的海洋投棄のプロジェクトが、この条約に加盟することによって、だからいいということでアクセレレートするという考え方は毛頭持っておりません。
  64. 日野市朗

    ○日野委員 外務省の方にちょっと伺いたいのですが、このいわゆるロンドン条約廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の第四の末尾のところ、第三項を拝見しますと「この条約のいかなる規定も、締約国廃棄物その他の物であって附属書Iに掲げられていないものの投棄を自国について禁止することを妨げるものと解してはならない。」、こういう記載がございます。この条約は、本条約の附属書のI、IIにかかわらず、こういった物を海洋投棄すること自体が本当は望ましいことではないという理想に立っているのではないかというふうにも読めるのですが、いかがなものでしょうか。
  65. 浅井基文

    ○浅井説明員 お答えいたします。  本件に関しましては、条約の立法趣旨と申しますものは、必ずしも禁止をしなければならないということでできているものではないと思います。  それで、お尋ねのこの三項に関しましては、この条約の一般論といたしまして、各国国内法において、条約よりもより厳しい措置をとることについては何ら妨げがないということを確認的に規定する、そういう趣旨であろうかと存じます。
  66. 日野市朗

    ○日野委員 この条約から見て、私は、この条約の理想も究極的にはできるだけ海は汚すな、こういうことだろう、そういうふうに思うわけです。  ところで、いまこの条約の関連法として原子炉等規制法その他の改正の法律案が審議されているわけですが、いま外務省の方もお聞きになったように、現実には、日本国内においては、その規制の範囲が新たに広がることはまずほとんどないと見ていいのだろうと思うのです。それでいても、なおかつ、このような関連法規の整備を、この条約に関連してしなければならないものかどうか、外務省のお考えいかがでしょう。
  67. 浅井基文

    ○浅井説明員 お答えいたします。  いまのお尋ねの点に関しましては、私ども政府部内でもいろいろ検討いたしたところでございますが、この点につきましては、先ほど政府委員から答弁がございましたように、七条三項の例の管轄権の問題ということが、この条約採択に当たりまして非常に論議された点でございます。それで、この管轄権の範囲ということについて条約会議に参加した国の間で一応の合意ができたということでいまの規定ぶりになっておるわけでございますけれども、そういたしますと、その最もイシューとなった点に関しまして国内法上の整備が行き届いていないということになりますと、対外的には問題が起こるであろう、それから、あくまで理論的ではございますけれども条約の趣旨としてこういうものを規定しておくべきである、国内的にも担保しておくべきであるというのが条約社会の意思であったであろうと思いますので、こういう国内法整備を行うことは必要であろうと私は考える次第でございます。
  68. 日野市朗

    ○日野委員 それでは、ちょっと質問を変えますが、私は根本的には、この放射性廃棄物を環境中に投棄をするということに反対であります。そういう立場から、現在政府が進めておられる投棄方法等について若干の質問をまずしたいと思うのでありますが、たとえ低レベル放射性廃棄物であったとしても、これを環境中に投棄をするということは好ましくないのだ、これは厳重に管理ができるような体制で常に保管をすべきではないか、そういう見解が有力に主張されていることはもう言うまでもないところであります。海洋投棄についていろいろ研究もしておられるようで、後でまた私、そっちの方も伺いたいと思いますが、まず根本のところで、海中に投棄をして管理できないような状況になる、そのことに対するおそれというものについてどのように考えておられるか伺いましょう。
  69. 牧村信之

    牧村政府委員 海洋投棄をいたします海域は、国際的には、四千メートル以上の深さを持った海域ということが条約上言われております。また私どもは、五千ないし六千メートルぐらいの海洋投棄をしたいと考えておるところでございます。したがいまして、ただいま先生のおっしゃいますように、海洋投棄をいたしました投棄物は、その投棄後引き揚げる等の管理ができないということになるわけでございますが、その点につきましては、事前のいろいろな試験研究等で、十分投棄したものが健全性を保ち得る、また腐食等もそれほど受けないで相当長い期間安定した状態で投棄できることを確認しておるところでございます。また、かつて十年前から三十年前にかけてアメリカ投棄しておりますが、その投棄物の一部を引き揚げて健全性がどうであったかというような調査が行われておりまして、その調査結果によりましても、投棄物が、ドラムかんでございますけれども、腐食されたというようなことがほとんどないというデータからも推測いたしまして、十分に安全に投棄できるものと考えておるところでございます。  そのような考え方は、このロンドン条約におきましても、低レベルのものを一定技術基準に従って投棄するならば安全に確保できるという観点から、低レベル廃棄物は政府の特別の許可を受けて投棄する、こういうことが認められておるところでございますし、また国際原子力機関等におきましても、そういう考え方のもとに所要の技術基準あるいは放射性廃棄物レベル基準等が示されておるものというふうに理解しておるところでございます。
  70. 日野市朗

    ○日野委員 いま安全局長さんの方から、安全性の確認をしたとか理論的にも安全だという考え方のもとに条約が成り立っているのだとか、いろいろな話がありましたが、しかし、これは安全だとか危険だとか言ったって、しょせんは頭の中だけの作業なんですよ。安全だという考え方だって、どの辺で安全だと言うのか、その線引きの問題についてもいろいろ問題があります。それから人体あるいは環境に対するどういう影響が安全であって、どういう影響が危険なのかということについてもいろいろ考え方があるわけですね。ですから、これを環境中に放出してしまうのか、それとも十分に管理できるような状況にとどめ置くのか、ここらについては、かなり高度の政策的な判断だと私は思うのです。  この原子力の、特に放射能の問題というのは、まだまだ解明されない部分が非常に多いわけですから、いまこれを環境中に放棄してしまうということは、私の言葉で言えば非常に危険だというふうに感じます。まだ日本の国は、幾ら狭いといっても、こういったものを管理するだけの敷地が取得できないはずはないと思うので、これを陸上できちんと管理しておくというような考え方に立つことができないのかどうか、できないとすればなぜできないのか。そこらは大臣の高度の政策決定の問題だと思いますので、大臣に直接伺っておきたいと思うのです。
  71. 長田裕二

    ○長田国務大臣 私どものところにおきまして、低レベルの廃棄をどうするかということにつきましては、陸上、海洋ともに考慮の対象にはしておりまして、考え方として、すべて海洋の方にだけ依存するという考え方は持っておらないのでございます。また、いろいろな見地から見まして、陸上保管もしくは投棄に適している物、あるいは海洋投棄に適している物等のあれもあるようでございますけれども、御承知のように、日本では、アメリカや西ドイツ、フランスなどと違いまして、原子力発電所等がすべて海洋に面したところにあるというようなことで、技術的ないしは経済上の問題もございましょうし、また海洋投棄につきましては、すでに各国ともそれぞれ相当の経験を持っている、あるいは国際的な監視機構等も、先ほどお答え申し上げましたようにいろいろと整っている、そういうところですっかり軌道に乗っている、多くの国が数多い経験をし、共通のここなら大丈夫だという確信を持っているという点と、日本の地形上の特殊性などもあわせ考えまして、当面、海洋投棄の問題につきまして、関係漁業団体等の理解も得ながらやっていく、体制も国際的に十分認め得るようなものにしっかり固めてと、そういうのがただいまの私ども考え方でございます。
  72. 日野市朗

    ○日野委員 それはある見方からすれば、いまおっしゃったように、何は陸上に適する、何は海中に適する、場合によってはこれは大気中に捨ててもいいというようないろいろな考え方があると思うのです。まあ、ガスのようなものは、また別の観点からも見なくてはいけませんでしょうけれども、しかし、少なくとも陸上で置いておけるものはできるだけ陸上に置いた方がいいのだ、その方がベターだというふうにお考えになりませんか。
  73. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘の点につきましての私ども考え方は、当面、原子力発電所等から出てきます低レベル廃棄物は、一定の基準に従いましてその敷地内に保管させておるわけでございます。しかしながら、原子力開発が進んでまいりますと、そういうものが非常に大量に敷地に保管されることになるわけでございますが、一方、地元の方々から見ますと、こういう廃棄物はいずれかの時点で安全に最終処分をしてほしいというふうな要望の強いこともまた事実でございます。そういう点を踏まえまして、原子力委員会でかつていろいろ御議論がされまして、日本としては、アメリカとかソ連とかあるいはヨーロッパのドイツ等のように、広大な敷地面積を持っておるところ、あるいはこういう廃棄物陸地処分するのに非常に適した地層等を持っておる国と違いまして、日本陸地処分だけで始末をするということには、国土等の狭小あるいはその候補地の選定ということもそう容易ではございませんので、組み合わせて処分をするのがいいではないかということでの方針を決めて、その方針に基づく諸計画をいま鋭意進めておるということでございますので、私どもとしては、関係する漁業者団体等の御理解も得て、全部を捨てるということではなくて、ある割合をもちまして、あるいは海洋投棄の方が適しておるものにつきまして海洋投棄を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  74. 日野市朗

    ○日野委員 先ほどから大臣にしても安全局長さんにしても、原子力委員会昭和五十一年十月八日の「放射性廃棄物対策について」という中で言っているのだということを言っておられるわけですね。では、この原子力委員会の五十一年十月八日決定の「放射性廃棄物対策について」に盛られている思想を私の方で少し聞かしていただきたいと思うのです。  この決定は、高レベル廃棄物と中・低レベル廃棄物それぞれの対策についてずっと見解を打ち出しているわけですが、政府のこれからの廃棄物に対する対策は、この原子力委員会の決定に沿って行われていく、政策決定は行われていく、このように伺ってよろしいですか、大臣。
  75. 長田裕二

    ○長田国務大臣 日本原子力関係の問題、研究、開発、利用等につきましては、原子力委員会方針に従っていく所存でございます。
  76. 日野市朗

    ○日野委員 えらく一般論に聞こえたのですが、もっと具体的に、私がいま指摘しました「放射性廃棄物対策について」という昭和五十一年十月八日の原子力委員会決定、これにのっとっていくのかという質問です。
  77. 牧村信之

    牧村政府委員 大臣のただいまのお話の趣旨は、先生指摘のとおり、高レベル、中レベル、低レベルのそれぞれの原子力委員会考え方に沿って進めていくという御趣旨であると私も思っております。特に低レベルにつきましては、先ほどから御説明しておりますような考え方でやってまいりたい。私ども安全規制を担当する者としては、本格海洋投棄の前に試験的な海洋投棄を行いまして、十分安全規制がし得るよう本格的な処分に備えたいということで試験的な海洋投棄計画を進めておるところでございます。
  78. 日野市朗

    ○日野委員 原子力委員会方針について、中身に立ち入って少しく質問をしてみたいと思います。  高レベル放射性廃棄物について「安定な形態に固化し、一次貯蔵した後、処分する。」という大まかな方針が示されていますね。そしてそのための調査及び研究開発を推進するのだ、このように書いてありますが、具体的に現在どのような固定の方法貯蔵方法処分方法、これをいま研究開発されておられるのか、その方向をお示しいただきたい。
  79. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 お答えいたします。  まず、高レベル廃棄物考え方でございますが、現実に高レベル廃棄物が出てまいりますのは、再処理工程から出てくるわけでございます。その再処理から出てまいりました高レベル廃棄物、これは液体の状態になっていますが、この液体の状態での保存ということも、ある期間、恐らく五年ぐらい冷やすという期間を考えまして、その後、あと処理処分に好都合のように固体化するという方向で研究開発が進められているわけでございます。  現実的には、ガラス固化ということでガラスと一緒に固めてしまう。まず、その液体の状態を乾かしまして、高レベル廃棄物を固体の状態にし、それをガラスと一緒に溶かし込んでガラス固化という工程を行う、そのガラス固化を行いました状態でこれをある期間貯蔵するわけでございます。これは恐らく二、三十年という期間を考えております。その後、処分をする。処分といたしましては、安定した地層に処分したらよかろう。この事態は、したがって、まだあと三十年ほど出てこないわけでございますけれども地層処分ということを考えております。研究段階といたしましては、現在ガラス固化の基礎的な研究が大体済みまして、やや工学的な研究に移ろうとしている事態でございます。それから地層につきましては、日本にどんな適地、適した地層があるかという賦存状態の調査を行っているというのが現状でございます。
  80. 日野市朗

    ○日野委員 その立地については、まだ具体的に候補地の選定も行っていないという状態ですか。
  81. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 対象として考えられる地層といたしましては、花崗岩層等が日本にはあるわけでございますが、外国の実例では、いわゆる岩塩層を一つ候補とし、これは現実にそこに試験的な貯蔵が行われているという実態がございますが、世界的にやはり花崗岩層あるいは頁岩層等の非常に安定した地層が対象であるという程度でそれぞれ調査が行われているという状況でございます。わが国においても、その図上における調査を行っているという状況でございまして、まだそれ以降の段階に進んでおりません。
  82. 日野市朗

    ○日野委員 私がいま聞きましたのは、具体的にたとえば同県の何郡の何町あたりという質問です。
  83. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 まだそういう段階には至っておりません。まだ当分先のことになるかと思います。
  84. 日野市朗

    ○日野委員 わが国でもかなり高レベル放射性廃棄物が出ているわけですね、たとえば原子力発電所からの第一次冷却水が漏れたとか、それから再処理工場のジルカロイの燃料棒の被覆管、こういったもののくずなんかも出ているわけですが、これについての取り扱いはどのようになっておるのですか。
  85. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 先ほど申し上げましたように、高レベルというのは、文字どおりの高レベルを対象に考えておりまして、御指摘のように再処理工場で現在六十六立米、まず三十一トンの燃料を処理いたしましたが、その結果として六十六立米の高レベル廃棄物の液体が出ておりますが、それはステンレス製の容器に入れまして保存しているということでございます。それからいわゆる燃料棒の被覆管につきましても、これは十分隔離した状態で保存をしているという状況でございます。
  86. 日野市朗

    ○日野委員 原子力発電所から漏れた第一冷却水ですね、これはどうなっています。
  87. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 一次冷却水等の放射能レベルにつきましては、現在、御報告申し上げております高レベル廃棄物とは違った、はるかに低いレベル放射能のものでございます。
  88. 日野市朗

    ○日野委員 私、ちょっと気になりますので、原子力委員会方針の中で、この高レベルのものについての点をちょっと聞いておきたい点があるのですが、永久的な処分やこれにかわる貯蔵については国が責任を負うのだ、そして必要な経費については発生者負担の原則によるのだ、こういうふうに書いてございますね、この国が責任を負うということは、どういうことを意味するのでしょう。
  89. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 御高承のように、高レベル廃棄物はきわめて長期間にわたって放射能を保有するわけでございます。したがいまして、永久処分した後も何らかの形でそれを監視する必要があるかと考えております。その場合に、もし国もしくはその他のものというふうに分けますと、結局、その長期間という点に着目いたしますと、一番責任体制が長期間にわたって保障できる、責任を持てる者といたしましては国が最適であろう、こういう考え方でございます。
  90. 日野市朗

    ○日野委員 これは結局、民間にはちょっと任せておけないのだという思想の裏返しでしょうかね。  それから、これについてトラブルが発生したという場合の損害賠償責任というようなものなんかも含めて考えていることでしょうか。
  91. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 安全の監視の責任という意味では、責任を持つという意味で国が一番永続性があるということでございまして、先生の御指摘のとおりかと存じます。  それから、もし何らかのトラブルが起こった場合には、当然、発生者にその責務が及ぶ、戻るというふうに考えております。
  92. 日野市朗

    ○日野委員 発生者に責任が戻るというのはどうなんでしょうね。ちょっと私、いま聞いていてよくわからなかったのですが、もう少し法律的に整理をしてお話しいただけませんか。
  93. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 とんでもない事故が起こることがないように貯蔵するというのが、現在進めている研究開発の方向でございますが、何かそれによってトラブルがあり、被害が生じたという場合には、一応国が責任をとって処理するけれども、そのためにいろいろ費用が生じた場合には、それは発生者である当面の電気事業者ということになるということでございます。
  94. 日野市朗

    ○日野委員 ここいらは非常に問題のあるところですね。たとえば薬事訴訟でもいま製薬会社の責任と国の責任との関係はどうなるのだというような問題がありますし、それから、そのほかの国の設備なんかについても同じような問題ができるので、ちょっといまの御説明では私、どうもぴんと来ませんですね。少しこの問題については保留をしておきたいと思います。また別の機会に、この点については少し詰めた論議をいたしたいと思いますので、ひとつ御用意をお願いいたしたいと思います。  それから、やはり私が非常に気になるのは、わが国の原子力政策の一つの整合性として、これはやはり廃棄物をどのように処理するかということが非常に重要なポイントだと思うのです。ここのところがすとんと決まりませんと、トイレのないマンション論が起きるわけですね。いま国の方では一生懸命トイレづくりのまず下の方から始めているような感じがするわけでありますが、トイレをつくるにしても、かなりの予算が、実はかなりの部分がここのところに投入されなければならないだろうというふうに考えるわけです。  けさの上坂委員質問の中でも若干予算の点が出たようですが、どうも私も納得いかないのは、全体の予算の中で、ここいらのところの予算の規模が余りにも少な過ぎやしまいかという問題なんです。  これが最大の放射性廃棄物ということになれば廃炉ですね。大体原発の廃炉なんか最大の廃棄物です。これの廃棄なんかどういうふうにするのかというような構想、それから、これについての試験研究の予算づけ、これがどのようになっているか、概略をひとつ教えてください。
  95. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 廃炉の問題でございますが、現実の商業用の発電炉の廃炉という事態は、まだ当面起きないわけでございますけれども、すでにいろいろ注意は払っておりまして、研究あるいは調査を始めているところでございます。たとえば過去におきまして、原研のJRR1あるいは同じく原研のJPDRの大幅な改造といったこと、あるいは民間の原子炉の廃炉、これはいずれも小さいものではございますけれども、そういう経験を持っているわけでございますが、これらを対象にいたしまして、廃炉につきましての研究あるいは調査を進めていこうということにしております。  また、海外におきましては、全体で三十五基の運転を終了した炉があるというふうに言われておりますが、それも一部はそのままいわゆる遮蔽隔離といった密閉管理された状態にあるもの、あるいはさらに、それを完全に解体したというようなケースもございまして、例は出てきているわけでございます。  それらの事態を踏まえまして、従来から原子力委員会が原研に委託いたしまして、関連事業者を含めまして、廃炉時における解体あるいは除染、廃棄技術その他の調査研究を進めているということでございます。  なお、この原子力委員会調査活動につきましては、さらに強化をしてまいりたいと考えております。  それから、同じような観点から、通産省もいろいろ調査研究を進めようとしておられるというふうに承知をいたしております。  ただいまの調査費用でございますが、五十三年度七百六十万円、五十四年度三百万円、いずれも原研に対する調査委託費でございますが、同じく通産省から廃炉技術の基準等の確立の調査ということで約一千万円の調査費を支出したという実績でございます。
  96. 日野市朗

    ○日野委員 どうも伺っていますとここいらに――伺っていますとというよりも、私が前にも予算なんかを見た関係から言いますと、ここいらが余りにもしり抜けになっていやしないかというふうに思うんですよ。  どうですか、これは大臣、来年あたりは、私は原子力の開発そのものに好意的ではありませんよ、しかし、一たん手をつけた以上、ここのところをきちんと押さえなくちゃいけない、現在の予算規模で満足だとお思いですか。来年なんかどうなさるつもりですか。来年まで大臣でおられるかどうかちょっとわかりませんけれども、御覚悟のほどを教えていただきたいですな。
  97. 長田裕二

    ○長田国務大臣 金額等につきましては、担当局長からお答えいたしますが、私の感じといたしまして、この廃棄に関連する予算、先ほど御説明した中で、たとえば高レベルのものについてガラス等に固化していくとか、そういうものの経費が相当大きな比重を占めております。そして低レベルのものについては、確かに金額がかなり少ないような感じも受けたわけでございます。詳しい数字は担当から申し上げますけれども、一応低レベルのもののたとえば海洋投棄等につきましては、各国もずっとそれぞれ経験を積んでいる、日本も相当研究を積んでいる、この面では研究開発段階はほぼ完了に近いというような状態で、そういうようなことから、科学技術庁あるいはその関係機関などが支出する金額がかなり減ってきているのではないか、そのような感じを持っているわけでございまして、先の方にばかり力を入れて、肝心の目の前の、足元の方をおろそかにしているということはないのじゃないか、私はそのように思っておる次第でございます。
  98. 石渡鷹雄

    石渡政府委員 若干数字的な補足をさせていただきますが、まず放射性廃棄物処理処分までの研究開発予算といたしましては、五十四年度が百十四億、来年度は百三十二億の支出を予定している次第でございまして、大分強化してきているつもりではございますけれども、さらに一方、廃炉といったことまで含めまして、いわゆる最終のプロセスまでしっかりやれという御指摘につきましては、全く賛成と申しますか、そうあるべきであると私どもも考えておりますので、今後、必要でもあり、十分強化してまいりたい、こういう方針でいる次第でございます。
  99. 日野市朗

    ○日野委員 どうも大臣と私との間にはかなり、これは哲学の違いですかな、大きな差があるようですが、その点ばかり余り突っ込んでいても話が進みませんから、さらに質問を進めたいと思います。  低レベル放射性廃棄物ですが、これの処理も民間の責任で行うのだというふうに原子力委員会方針の中で出しておりますが、これについては国の方はもう責任は負わぬぞということなんでしょうか。
  100. 牧村信之

    牧村政府委員 一般的に申しまして、低レベル廃棄物は、その処理が適切であれば、十分安全に処理処分ができると考えておりますので、国の役割りとしては、事業者が行います処理処分に対して万全の安全規制をするということで対処したい。しかし、この処分の問題、陸地処分もそうでございますし、海洋処分もそうでございますが、試験的な処分をまず国のプロジェクトとして行って、国の規制手段も確立するのに役立てると同時に、安全に本格的な処分に移行し得るように、こういう試験処分を考えておるところでございます。
  101. 日野市朗

    ○日野委員 私、ちょっと気になりますのは、低レベル廃棄物海洋処分に適するものと適さないもの、回収可能な状態で処分しておく必要があるものという幾つかのカテゴリー的な分類が、この基本方針の中に示されているのですが、これをもっとわかりやすく説明してもらえませんか。区別のメルクマールは一体何だという点です。
  102. 牧村信之

    牧村政府委員 具体的に、いまどういうものを海洋処分した方がいい、あるいは陸地処分した方がいいということにつきまして申し上げますと、海洋投棄に適する廃棄物としましては、一般的に言えると思いますのは、原子力施設の廃水を浄化した際の残渣であるとか、衣類、紙のような可燃物焼却した後の灰などをセメントで固化した状態にあるもの、ドラムかんにセメント固化したもの、こういうものは海洋処分に適したものであると考えております。それから陸地処分が適当なものは、施設で使用したビニールシートのように比重の軽いものであるとか、使用済みの機器のような大型のもの等、あるいはまた原子力発電所で出てまいります廃棄物の中で樹脂を多量に使っております、放射性物質をろ過するために樹脂を使っておりますが、やや高いレベル、いわゆる中レベルというようなもの、これを私どもとしては低レベルのものという定義から外しまして、陸地処分が適当なものではないかと考えておるところでございます。
  103. 日野市朗

    ○日野委員 民間にここらの処理を任せるということで、財団法人原子力環境整備センターという構想がありまして、そしてこれはもう現実に発足しているようでありますが、この財団法人に対する寄付行為はどんなふうになっているのか、そしてだれがやっているのか、それからその監視体制ですね、その機構の概略を御説明いただきましょう。
  104. 牧村信之

    牧村政府委員 原子力環境整備センターの概要でございますが、これは財団法人でございまして、いわゆる公益法人でございます。これが設立されましたバックグラウンドは、先ほども先生指摘がございました原子力委員会方針を決定いたします際に、このような廃棄物処理処分を行う機関として、個々の事業者に任せるよりも中立性の高い機関をつくって行うということで、官民協力いたしまして設立された機関でございます。  これは五十一年十月に設立されておりまして、事業の内容といたしましては、放射性廃棄物処理処分に伴う環境保全等に関する調査研究を行う等々でございまして、調査研究のほかに民間から委託を受けて実際に廃棄物海洋投棄する、あるいは陸地処分するというような事業を行い得る機関として設立されております。したがいまして、私ども試験的海洋処分のプロジェクトにつきましても、このセンターをして試験的海洋処分を行わせたいと考えておるところでございます。  それから、現在の基本財産は約十二億でございます。  それから、理事長以下常勤の理事が全部で七名でございまして、総務部、企画部のほかに試験第一部、試験第二部がすでにつくられておりまして、科学技術庁あるいは通産省の委託調査費等を使いまして調査研究を行っておるのが現状でございます。職員数は本年三月現在で三十四名でございます。
  105. 日野市朗

    ○日野委員 これは寄付行為電気事業者がやっておりますね。それから、その役員も電気事業団体からの出向ではありませんか。
  106. 牧村信之

    牧村政府委員 このセンターの設立に当たりまして寄金を関係原子力機関から得ております。その中心は電気事業者が非常に多いところでございます。また寄付行為の規定によりまして、理事は二十名以上三十名以内と定められておりまして、現在は二十五名の方がおるわけでございます。常勤の七名につきましては先ほど申し上げました。非常勤はしたがいまして十八名でございます。この非常勤の理事さん方に、関係業界の方々が、電力のほかにたとえば原子力研究所等中立的な機関あるいは研究機関の方も入っておるわけでございます。なお、この常勤の七名の方の比率は、四名が官界、それから原研等の研究機関から出しました方が従事しております。それから電力関係は二名でございます。
  107. 長田裕二

    ○長田国務大臣 ただいま安全局長から、団体の方についての御説明をいたしましたが、投棄の前の政府側の確認につきましては、公務員、科学技術庁の安全局の係官が確認をする、そういうふうになっておりますので申し添えます。
  108. 日野市朗

    ○日野委員 いわゆる第三セクター式のやり方がいま非常に流行をしているわけですが、ややもすれば、その中立的なということがむしろ隠れみのになっているということが非常に多いように私には思われるのですが、この原子力環境整備センターも、そういうような形で、ややもすれば一般の住民とか国民とか、そういった観念を抜きにして、廃棄作業の能率化とかそんな方にだけ走るのではなかろうかという危惧を私、持たざるを得ないのです。  特に、この原子力環境整備センターは、その業務の内容で、試験的海洋処分実施についての作業方法の管理に関する検討等の調査研究もやっているようでありますね、ここいらに対する安全面からのチェックはどのようにやっておりますか。
  109. 牧村信之

    牧村政府委員 現在、整備センターでやっております研究は、安全の規制をいかに効率的に行うかについての基礎資料を得るための調査研究をやらせておるわけでございます。その成果を踏まえて、私ども安全規制に反映していこうということを考えておるところでございます。したがって、その成果を得て、実際の海洋投棄等の実施に当たりまして、科学技術庁規制する際のいろいろ技術的な蓄積をふやすために、このセンターにいま調査研究をやらせておるということでございます。
  110. 日野市朗

    ○日野委員 だんだん時間がなくなってまいりましたので、ちょっと質問観点を変えたいと思います。  先ほど上坂委員から質問がありまして、現在海洋投棄をやっていない国、特にアメリカの例についての説明がありました。そして海洋投棄をやらない理由として、かなり国が広くて、いろいろなところに捨てるところがあるのだという話だったのですが、これは一時、海洋投棄をやったときに、カナダとかアメリカ西海岸の漁民からかなりの反対運動が起きた、そういうことが一つの見直しの理由にもなったのじゃないでしょうか。  それから、海洋投棄そのものの危険性というものに対するそういうアプローチはなかったのかどうか、アメリカに関して教えていただきたいと思います。
  111. 牧村信之

    牧村政府委員 私どもが得ております情報では、約十年前にアメリカ海洋投棄を中止しましたのは、国内に廃棄施設ができたということで、その方が全体として電気事業者等の経済的な負担が少ないということで、実際に投棄をする者がいなくなったというふうに聞いております。  カナダのお話がございましたが、確かにカナダは、海洋投棄実施することにつきましては批判的な国であるやに私どもも聞いておるところでございます。
  112. 日野市朗

    ○日野委員 わが国は、多国間協議監視機構に現在入っていないわけでありますが、これは将来入るのでしょうね。当然入らなくちゃならぬと思いますが、現在までこれに入らなかった理由ですな、これはどうしてなんでしょう。これはロンドン条約と関係なく、やはりこのような機構についてはきちんと入っていて、その中の一員としての活躍をする、そしてそれによる監視をも受ける、こういう形をとるべきだったと思うのですが……。
  113. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のように、このOECDの監視機構に入ることにつきましては、私ども一貫して、ここに入った上で国際的な監視のもとに海洋投棄を進めていきたいということを基本方針としておるわけでございます。この加盟につきましては、その加盟の時期がおくれておることは事実でございますが、この段階でございますので、私どもとしては、ロンドン条約に加盟をして、さらにNEAにも加盟するということで対処したいというふうに考えておるところでございます。
  114. 日野市朗

    ○日野委員 現在、投棄予定地といいますか、予定地の候補地にはA、B、C、Dとあって、Aはそこから落ちているようですね。  きょうは水産庁にもおいでいただきましたので、この投棄の予定候補地、ここは漁場としてどんなものなのかということを伺いたいと思います。特に、こういった海域はかなり深いところですが、これは回遊魚の漁場としてどうなのか、また深海魚の漁場としてどうなのか、現在どのように使われているのか、将来の開発の見込みですな、ここらは水産庁の方でどのようにつかまえておられるか、伺いたいと思います。
  115. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 どうも大変幅が広い御質問でございますので、簡単にお答えするのはむずかしいわけでございますが、一口に申しますと、先生、漁場の問題でございますから、ちょっと地図を頭に思い浮かべていただきたいと思いますが、日本列島がございまして、御承知のように、黒潮が南の方から沖繩とかそういうところを回りまして日本列島に接近して、金華山沖あたりで離れていくわけでございますけれども、その黒潮の流軸の前後、日本側の周辺にカツオ、マグロが回遊してくるわけでございます。ちょうどこの場所は、その大きく回遊します、日本近海はクロマグロが主でございますが、そのクロマグロの分布の区域の少し外れたところに該当いたします。それからピンチョウマグロなんかは広くおりますのでその中には入りますが、総体申し上げまして、いろいろなカツオ・マグロ漁業がございますが、操業いたしますのは、日本列島にずっと沿って主体がございまして、それの一番外れのところでございます。もっと南の方になりますと大きな漁場がございますが、ちょうど全体の空白と申しますか、比較的少ない地帯だというぐあいに御理解いただきたいと思います。  それからこの場所は、六千メートルとか四千メートルとか非常に深いところでございますので、引っ張りましても、ハダカイワシとか幾つかの魚種が出てくるわけでございますけれども、御承知のように真っ黒な頭の大きい魚種だとかそういう形が出まして、量的にも少のうございますし、商業漁獲の対象には現在なっておりません。また五千、六千という非常に深いところでございますから、それは遠い将来まではわかりませんけれども、ちょっと商業漁獲の対象になるような場所ではないというぐあいに考えております。
  116. 日野市朗

    ○日野委員 深海魚そのものは、少ない数ではあっても、かなり深海まで生息している、そこらで漏れ出た放射能核種が、食物の連鎖によって、これがだんだん上の方を回遊する魚類、また海流に運ばれて他の地域に生息する魚類に濃縮をされていくという可能性可能性として考えられるか考えられないか、そこいら、いかがでしょうか。
  117. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 一般的に食物連鎖で順番に濃縮されていくということだと思いますけれども、理論的にはあり得るのだろうと思いますが、何分にも、ここで対象になっているのはカツオ・マグロ漁業でございますし、沈みますのは深海底の部分でございます。そして生物的な密度も薄い区域でございますから、考えられるとは言えますけれども、その先の問題につきましては、科学技術庁の方で慎重な検討をされまして、問題がないというような結論をいただいておるというぐあいに聞いております。
  118. 日野市朗

    ○日野委員 この点について漁業者、特に水産業界はかなり反対が強いわけでございますが、どうでしょう大臣、先ほどから牧村局長は、漁業者の方々の理解を得てということを繰り返し言っているのですが、投棄実施漁業者の理解を得ることが前提であるというふうにお考えになりますか。
  119. 長田裕二

    ○長田国務大臣 関係漁業者の理解を得た上でやってまいりたい、そのように考えております。
  120. 日野市朗

    ○日野委員 理解を得た上でということですが、漁業者との間に話がまとまらない限り試験投棄はやらない、このように伺ってよろしゅうございますね。
  121. 長田裕二

    ○長田国務大臣 十分に話し合いまして、よく事情を御説明して御理解を得て、その上で実施をする、そういうふうに考えております。
  122. 日野市朗

    ○日野委員 原子力安全局で「試験的海洋処分の環境安全評価に関する報告書」をまとめられたわけでございまして、これについては、安全委員会ダブルチェックをやったわけで、同じアセスをやっているわけですが、原子力安全局がやった報告書の中で、一つ非常に気になってしょうがないところがあるのです。評価に当たってのモデルづくりをおやりになったその中で「海水中に溶出した放射性核種の物理化学的挙動(沈降、海底土への吸着、保持等)はないものとした。」、このような一つ方法を立てて、いろいろな分析をやられたようでありますが、これは一つのパッケージの中の核種がぱっと全部海水中に広がったという危険性がある最悪の場合として考えられたのだろうし、一つ方法として、それはそれでいいと私は思うのです。そういう可能性を見られたということは、一つ方法としてはいいと思うのですが、しかしここで、海底土への吸着などはまるっきりないとしてしまったことについて、私は非常に疑問を感ずるのです。これがもし全部海水中に出ていかないで、沈降したり底にたまって重なっていき、それが食物連鎖でさらに凝縮されていく、こういう可能性についての御検討はなさったのでしょうか。
  123. 牧村信之

    牧村政府委員 ただいま御指摘の点は、私どもの行いました安全評価におきましては、たとえば私どものいままでの実験結果では、セメントで固化しましたドラムかんが六千メートルの海底に行きましても、健全に投下できる、しかも、それが長期にわたって健全性を保つということを実験的にも確かめておるわけでございますけれども安全評価に当たりましては、これらの投下物がすべて破壊されて、その中に含まれる放射性廃棄物が全量海水中に流出することを考えておるというきわめて厳しい条件で想定をしておるわけでございます。  ただいまの御指摘は、海底に沈着する等の仮定をしていないということでございますが、現実の問題として海底投棄物が壊れて放出されますと当然、若干沈着があるわけでございますけれども、そういう想定をいたしますと、いわゆる食物連鎖で、人間が食べる魚にまで来る食物連鎖の可能性を考えます場合に、むしろマイナス効果と申しますか、時間的にも量的にも、それらの沈着したものが食物の方へ移る量が減るという形、あるいは時間的におそくなるという効果の方へのマイナス効果になりますので、むしろ評価に当たりましては、全部海水中にできて、直ちにプランクトン等に吸収されていくという方の悪い条件を強調するがために、そういうのを落としておるということでございますので、その辺御理解を賜りたいと思います。
  124. 日野市朗

    ○日野委員 安全局でやられたものも、それから安全委員会でやられたものも、私、この点非常にどうかなと思うのは、湧昇流の動きであるとか渦の動きであるとか、こういう非常にまれなもの、しかも続いたにしたって短時間で切れてしまうもの、こういうふうな見方を立てておられるわけですね。しかし、これは外国での資料になってしまうのですが、一たん海底に落としたものは、これは時間的にはかなりの時間がたつのかもしれませんが、必ず海上表面近くにまで浮き上がってくるのだという調査もあるわけですね、ここいらについては私は非常に疑問に思います。そのほかアセスを見ると、どうも数々疑問があるのですが、私に残された時間はあと二分くらいなので、その点はまた別の機会に徹底的に学者先生もお呼びして伺いたいところですが、この試験投棄が一応なされる、そしてそこからいろいろデータを集められると思うのですが、そのデータを集めた後で、安全委員会がさらにそれをチェックするということは考えておいでなのかどうか、そしてチェックをするとすれば、どの部会がおやりになることになるのか、それを教えていただきましょう。これは必ずダブルチェックをやるということがお約束いただけるのかどうかという点も含めて伺います。
  125. 牧村信之

    牧村政府委員 試験的な海洋処分実施するということは、そういうような試験後にいろいろな環境調査、特に海洋調査も含めまして二年ぐらいにわたりまして調査をするつもりでございます。そういう評価の結果を試すのがまさにこの試験的海洋処分でございますので、それで得られた成果等は、当然、科学技術庁、私どもも真剣に評価をし直すつもりでございますし、安全委員会放射性廃棄物安全技術専門部会にもお諮りし、それぞれの御専門の方々に御意見を賜り、本格処分に備えるという考え方で進めたいと考えております。
  126. 日野市朗

    ○日野委員 特に問題になるのは、アルファ核種は一応半減期もかなり長いですし、こういったものは一切放出する可能性を断ってしまうということが必要だと私は思うのです。投下した場合、これは一切出ないように、こういうことが技術的に可能なのかどうか、ひとつ教えていただきたいのです。私もこれはよくわかりませんので……。
  127. 牧村信之

    牧村政府委員 先生の御指摘アルファ核種、特にプルトニウム等を代表しての御懸念であろうかと思いますが、原子力発電所等から出てまいります低レベル廃棄物では、そのアルファ核種というのはほとんどあり得ない、あり得ないと言うと間違いでございますが、ほとんどない、ごくレアケースではなかろうかと思いますので、海洋投棄あるいは陸地処分します低レベル放射性廃棄物の中には、余りアルファ核種が含まれていないことは事実でございます。  それから、特殊な例といたしまして、たとえば現在日本では高速増殖炉の開発をやっておりますが、それらに使います燃料の製造等で若干のアルファ核種の含まれた廃棄物がございます。また再処理工場等から出てくる低レベル廃棄物の中にも、アルファ核種が含まれることが可能性としてあるわけでございます。このようなものを処分しますときには、先生指摘のように、きわめて慎重な態度で臨まなければいけないと考えておるところではございますけれども、国際的な基準でも、アルファ核種につきましてはIAEAの定めがございますが、他の核種と比べましてきわめて厳しい規制を行う必要があるというふうに指摘されておるところでございますので、その辺の精神をくんで今後私どもも慎重に対処したいというふうに考えておるところでございます。
  128. 日野市朗

    ○日野委員 時間が過ぎましたので、これで終わります。
  129. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 貝沼次郎君。
  130. 貝沼次郎

    貝沼委員 質問に入る前に、私は初めに言葉の意味を伺っておきたいと思います。  廃棄という言葉なんですけれども放射性廃棄物の廃棄、それから、それを廃棄するときによく廃棄という言葉、それから海洋投棄という言葉を使いますが、この廃棄というのは、一体どういうことなのかということであります。つまり廃棄というのは、管理をしておる範囲なのか、人間の手から離れるのか。こういう放射性廃棄物の廃棄、それから廃棄業者とかいう廃棄、廃棄するという廃棄、これはどういう意味に受け取ったらよろしいですか。
  131. 牧村信之

    牧村政府委員 規制法等に言っております廃棄の中には、いわゆる人間が管理しながら廃棄するという概念と、それから海洋処分のように、人間の管理の手を離れる廃棄と、二つの意味を持って言われております。
  132. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういたしますと、今回のこの海洋投棄というのは、人間の手から離れるのですか、それとも管理するという内容のものに入るのですか。
  133. 牧村信之

    牧村政府委員 私ども海洋投棄につきましては、人間の管理の手から離れる投棄の仕方だと考えております。
  134. 貝沼次郎

    貝沼委員 じゃ、これは人間の手から離れる、要するに管理ではないということですね。したがって、この廃棄の中には、いま局長の答弁にもありましたように、管理をする範囲と人間の手から離れる範囲とある、今回のこの海洋投棄は、人間の手から離れることを意味するということですね。離れるということは、もう捨てちゃったら終わりということですね、要するに離れるわけですから。  それから、さらに管理する方について伺っておきたいと思いますが、この放射性廃棄物の管理は、どういう方法で管理されますか。
  135. 牧村信之

    牧村政府委員 低レベル放射性廃棄物を例にして御説明したいと思いますが、低レベル陸地での処分に当たりましては、二つの廃棄の仕方をいま考えておるところでございます。  一つは、先生指摘の人間の手で管理できるような状態で廃棄するケースをまずスタートさせようと考えておるところでございまして、これはいわゆる保管廃棄と申しますか、そういう形のものでございます。  それで、調査研究等が進みます段階に応じまして、私どもは、それよりも一歩進んだ、これは人間の手から離れるわけでございますが、地中処分というものを今後考えてまいりたいということで、所要の調査研究を進めておるところでございます。
  136. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、管理するやり方としては、こういう廃棄物が発生源においてすでに少なくなるということが一つあると思うのです、少なければこれは管理しやすいわけでありますから。それからもう一つ処理ですね。要するに減容濃縮であるとか固化包装であるとか処理の問題がある。さらに処分の問題がある。この処分にいまお話がありましたように、貯蔵の部分とそれからいわゆる処分してしまう、取り出し不可能というやつですね、貯蔵するということは、私は取り出しが可能なように処分する場合に、これが恐らく貯蔵になると思うのですけれども、この私の考えがこういう考えでよろしいかどうか、まず、これを伺っておきたいと思います。
  137. 牧村信之

    牧村政府委員 先生の御指摘のとおりであろうかと思います。  そこで、発生源をできるだけ減少させる努力、これは大いにこれからもしなければいけない、当然やるべき方法でございますし、処理方法、減容するというようなことにつきましても、十分対処していかなければいけない問題であろうかと考えております。
  138. 貝沼次郎

    貝沼委員 したがって、今回のこの海洋投棄という処分は、これは要するに貯蔵ではない、あくまでもこれは処分することなんですね。いま当面の問題としては、試験投棄ということになっておりますから、この試験投棄については、これは処分考え方でやるのですか、貯蔵考え方でやるのですか。
  139. 牧村信之

    牧村政府委員 試験的海洋投棄につきましては、先生指摘のように処分考え方で行うわけでございます。
  140. 貝沼次郎

    貝沼委員 処分考え方でいく、それじゃ、たとえばドラムかんが粉々になったとか何かあった場合に、取り出し不可能な方法で初めから試験をするわけでありますから、これは取り出しは不可能ですね。
  141. 牧村信之

    牧村政府委員 先生の御指摘のとおりでございます。したがいまして、海洋処分を行うというときに、事前の環境アセスメントと申しますか安全評価を十分するということ、そしてそれに当たりまして、さらにこの投下物が安全評価では全部壊れて海中に放散されるということを想定いたしますが、気持ちの上では一個たりとも壊れないようなものをつくって投棄していくのだという考え方試験研究実施してきたところでございますし、また投棄に当たりましては、そういう容器健全性について十分規格どおりにつくられておるかということを確認するという手段でもって、想定される最悪の事態を防止していくという姿勢で臨んでいきたいというふうに考えておるところでございます。
  142. 貝沼次郎

    貝沼委員 したがって、それは試験投棄といえども、実質的に投棄されるものであるという考えからいけば、普通試験というのはうまくいくかいかないかということを調べて、ああこれはまずいなという場合には、やり直しをやるとか別の対策を考えるとかということが考えられると思うのですが、この場合は、初めからもう取り出し不可能の状態で試験をするわけでありますから、これは実質的な投棄になるわけですね、その辺いかがですか。
  143. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のとおりでございます。
  144. 貝沼次郎

    貝沼委員 したがって、言葉では試験的投棄というふうな言葉になっておりますが、これは本当は実質的な投棄で規模の小さいものである。しかも後で手を打つことはできないが、その経過をよく見ていくという程度のものだと思いますが、この点はいかがですか。
  145. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のように、この海洋投棄の一番の目的は、投棄海洋の汚染が起こらないことにつきまして十分海洋調査等を行いまして、確認することが非常に大きな役割りで、そのための期間を約二年ぐらい持ちまして、投棄後の状況を確認したいというふうに考えてプロジェクトを組み上げておるものでございます。
  146. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいまの答弁で約二年間というお話がございますが、これはかなり長期にわたって放射能はあるわけでありますし、さらに後で問題にいたしますが、責任の問題などを考えた場合に、果たしてその事業体がそのときあるかどうかという問題もありますので、かなり長期ということが考えられておる。それにもかかわらず、二年間でその観測というものがわかるのかどうか、長期というのは大体どれぐらいを考えておるのか、それに対して二年間というのは妥当な年数であるかどうか、これを伺っておきたいと思います。
  147. 牧村信之

    牧村政府委員 この海洋調査を二年間やったらもう後はまるっきりやらないという意味合いで申し上げているわけではございませんが、環境の評価を行う際の一応の目安として二年間ということでございます。  それから、そういうようなことで大丈夫であろうという根拠につきましては、別途安全研究を行いまして、投棄体の健全性、特に腐食の問題等がこの際問題になるところでございますけれども投棄後も相当長期間にわたって健全性を保ち得るという、実際の深海中での実験ではございませんけれども、そういう研究が行われておるところでございます。  また、先ほどのお尋ねのときにもお答えしたのでございますが、かつて実際に行った投棄投棄物を、アメリカにおきまして最近引っ張り出しまして、その容器がどうなっておるかというようなことについてのデータ等も現在得られておるところでございますので、そういう点を勘案いたしますと、一応二年間の海洋調査等を行うことによって、このプロジェクトの試験的海洋投棄影響というものは評価し得るものというふうに考えておるところでございます。
  148. 貝沼次郎

    貝沼委員 二年間というのは、私はどうも短いような気がするわけであります。それで、この質問をしておるわけでありますが、二年たってもなおかつそれを見守っていくという意味のようでありますから、それはきちっとやっていただきたい。  それから、アメリカの場合に、いま引き揚げて、そして腐食の状況その他を見て、問題はこれぐらいであったということは大体わかるという話でありますが、わが国の場合はこれを引き揚げることはもうできないんですね、これはもう環境から隔離した状態で、取り出し不可能の状態で実験をやるわけでありますから、これはできないわけですね、これがアメリカと違う点ですか。
  149. 牧村信之

    牧村政府委員 アメリカの場合のかつて行いました海洋投棄は、水深九百メートルから三千八百メートルぐらいの比較的浅い海域に棄てておるわけでございます。日本の現状からいたしますと、日本はそれよりももっと深い五千メートルないし六千メートルのところへ投棄しようということでございますので、一般的に申し上げまして、一たん投棄いたしましたものをまた拾い上げるということは、日本の現状におきましては不可能でないかと思います。
  150. 貝沼次郎

    貝沼委員 そのことはわかりました。要するに一たん入れたものはもう拾ってくることはできない、そういう試験であるということであります。  それから、先ほど地中処分という言葉が局長の口から出ておりましたが、これは高レベルなど陸地処分をすることを考えておるようですね。最近は花崗岩層あるいは安山岩層にかなり有望なところがありそうだ、まあ場所を決めればまたなかなかできないでしょうけれども、要するに日本でもありそうだということから恐らくその言葉が出たのだろうと思いますが、それも局長の先ほどの話では、私の聞き違いかどうか知りませんが、いわゆる取り出し不可能な処分の部分に入るように聞こえましたが、これは管理しながらやるのとは違いますか。
  151. 牧村信之

    牧村政府委員 先ほど私が地中処分というのを申し上げたのは、低レベル廃棄物についての地中処分でございまして、高レベル廃棄物を、いま考えておるような地層の中に埋め込むという考え方よりは、低レベルでございますし、通常半減期が三十年前後のものでございますので、平均いたしましての話でございますが、そういう厳重な処分をしなくてもいいのではないかという考え方もあって、その辺のことにつきまして、いま鋭意調査研究をやっておるところでございます。  それで、大体管理の手を離れることを考えておりますが、それほど深いところでなくて、安全な場所の土中に埋没させるということを中心にいま検討されております。  なお、高レベル等で行うような優良な地層の地点が見つかり、しかも、こういう低レベルのものを廃棄できる十分なスペースがとれるものであれば、たとえばドイツの岩塩坑でやっておりますようなことでやれるのが望ましいかと思いますが、日本の場合、なかなかそういうことはむずかしかろう、やはり地層の中に埋没させてしまうのは、高レベルを中心に考えざるを得ないのではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  152. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういたしますと、逆に言うと、いま低レベルの分については海洋投棄あるいは地中処分の分もある、それから高レベルの分については地層処分といいますか、そういう方向でむしろ考えるという方向だと理解してよろしいですか。
  153. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のとおりでございますが、低レベル廃棄物については、もう一つその前段階の廃棄を考えております。先ほど私が保管廃棄と申しましたけれども、保管廃棄をまずやった上で地中処分健全性を確認して、さらに地中処分に進んでいくというふうな段階を経てやりたいというように考えております。
  154. 貝沼次郎

    貝沼委員 わかりました。  それから、実はその保管廃棄で今度の問題が出てきておるのだろうと思うのですが、原子力発電所に、もうたくさんの低レベル放射性廃棄物がたまったために、こういう話が出てきたのだろうと思うのです。  そこで、今回のこの法律が出てくる背景といいますか、何のためにこの法律が必要なのかということでありますが、要するに海洋には物は捨てない、ごみ捨て場にはしない、捨ててはいけません、しかしながら、こういう厳重な監督のもとに、この程度のものは許可いたしますというのが本当なのか、それとも低レベルのものがたまってたまってしょうがないので、それで、みんな捨てようとする、捨てようとするけれども、これ以下のものでなかったら捨ててはいけませんという、捨てることが主になっての法律なのか、捨てさせないということが主になっての法律なのか、この点はどっちなんですか。
  155. 牧村信之

    牧村政府委員 ただいま御審議いただいております規制法並びに障害防止法の改正案は、ロンドン条約にわが国が加盟するための国内法整備でございまして、これは投棄する計画とは法律的には全く違った観点法律の改正のお願いでございます。  特に原子炉等規制法におきましては、基本法の改定をお願いしました際に、すでに事業者が行う投棄につきましては、所要の整備が完了しておりまして、事業者が行う限りは、何ら法律の変更が必要とされていないわけでございます。ただ、条約上の要請からは、一般の人の海洋投棄もあわせて禁止せざるを得ない条約でございますので、その整備を行うということでございます。したがいまして、海洋投棄の試験的なプロジェクトの計画自体は、このロンドン条約に仮に入らなくても法律的には可能なものでございます。しかし私どもは、やはり海洋という国際的な広がりを持った場で投棄をするわけでございますので、ロンドン条約日本も参加して、その上で捨てていくというふうなことでの国際的な御理解を得る上で、非常に有効な手段であろうかというふうに考えておるところでございます。
  156. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうしますと、わが国としては、すでに既定の方針として、海洋投棄あるいは陸地処分、これが決められておるわけだから、ロンドン条約に関係なく海洋投棄は進めるのである、これは別にロンドン条約に関係したことではない、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  157. 牧村信之

    牧村政府委員 私が申し上げましたのは、法律的にはそういうことが可能であるということでございまして、実際に投棄をする行為は、やはり国際的な条約にも入り、国際的な監視機構にも入って、その上でやることが当然望ましいわけでございますので、特にOECDの国際監視機構等に入らないで、日本試験的海洋処分をしようというようなことは毛頭考えていないところでございます。
  158. 貝沼次郎

    貝沼委員 五十一年の原子力委員会の決定した方針で、すでに低レベル放射性廃棄物海洋処分陸地処分というふうに決まっておるわけでしょう、ただし海洋処分については、海洋環境調査の結果と、それからIAEAの勧告と、OECD・NEAの十年間に及ぶ海洋処分の経験と、環境安全専門部会の提言、これらに基づいて環境への影響に関する事前評価、まあこれはこの前やったわけでございますが、それで国の責任のもとにおいて行う、こうなっているわけですね。ですから、ロンドン条約は、さらに非事業者も含めたという意味はあると思いますし、ほかの国との関連で結構なことだとは思いますが、わが国の廃棄物処分の方向としては、これはもうすでに決定されておるわけでありますから、実際問題としてロンドン条約がなくてもやれることはやれるわけなんですね。これはどうなんですか。
  159. 牧村信之

    牧村政府委員 おっしゃるとおり、私どもも、法律的にはできることであると考えておりますが、実際に試験的海洋投棄実施するに当たりましては、こういう条約にも入り、国際的な理解を得るような手段を講じた上で投棄をしていくというふうに進めていきたいと考えておるところでございます。
  160. 貝沼次郎

    貝沼委員 外務省の方、おいで願っていると思いますが、このロンドン条約の根本的な精神でありますが、海洋投棄、特にいろいろ決められておる油であるとか放射性廃棄物であるとかを含めての話でありますが、こういうものは投棄しないようにしよう、ごみ捨て場にしないようにしようということが本当の基本的な考え方なのか、それともこの放射性物質については、各国原子力発電所で低レベルのものが物すごくふえてきておる、あるいはラジオアイソトープ等が相当ふえてきて捨てられておるというようなところから、条件を求めて、捨てるならばここに捨ててもいい、あるいはお互いに海に捨てようとする考えから、許容する範囲を定めたと見てよろしいのか。この辺はどういうふうになっているのですか。
  161. 井口武夫

    ○井口説明員 お答え申し上げます。  この条約は、基本的な精神といたしましては、ただいま先生が言われました後者の方ではないかと思います。と申しますのは、そもそもこの条約がストックホルムの人間環境会議ででき上がりました経緯は、公海の自由というのがございまして、海洋の利用は基本的に主権国が自由にできるという考え方があったわけでございますけれども、それによって海洋環境が十分に保全されない、あるいは海洋汚染が非常に進行するということがございまして、旗国主義で各国が自由に海洋を利用できるということではなくて、むしろそこに国際的な共通の基準をつくり、国際協力によって海洋環境を保護しようという考えでございます。  しかしながら、全面的な禁止ということではございませんで、非常に有害なもの、たとえばまさに放射性物質に関しましては、高放射性のものは禁止ということでございますが、低放射性のものは、一定の条件のもとにおいて、しかも、たとえば国際原子力機関の勧告を考慮すればやってよいということでございまして、そこに従来海洋を自由に利用していたという立場と、海洋環境を保護する立場との調整という形でこの条約ができていると理解しております。
  162. 貝沼次郎

    貝沼委員 恐らくそうだろうと思うのです。したがってこれは、ただきれいごとで、捨てない精神からだけではなく、当然利用する意味からも出ておるわけであります。こういうところにいろいろ議論があるのだろうと思いますが、それをまずはっきりしておきたい。  それからまた、外務省にお尋ねいたしますが、ことに放射性廃棄物海洋投棄という問題について、たとえば太平洋に関係する国々、たくさんあると思いますが、こういうような国々の反応はいかがでしょうか。
  163. 井口武夫

    ○井口説明員 太平洋の国々、実はいろいろございまして、この海洋投棄規制条約に関しましても、たとえばフィリピン、ニュージーランド等は入っております。それからオーストラリアは入る意思を表明して署名しております。それからまだ入っていない国もございます。また御存じのとおり、国によって工業あるいは農業が非常に発達している国もあれば、そうでない国もある、あるいは国土が非常に広いということで陸上の処理で済む国もございますし、いろいろであると思います。ただ基本的に、わが国は非常に高度な産業が発達している国でございまして、産業廃棄物が多い、そういう国がこの条約に入りまして、国際的な枠組みの中で、海洋投棄というものの国際的な規制を全面的に受けるということは、太平洋の諸国にとって歓迎するところでこそあれ、それについて悪い反応は現在予想されないと思います。それから、たとえばタンカーの事故等に対しまして、御存じのとおりかなり敏感な反応を示しておる国もございますので、わが国自身がこういう条約に入ることは、わが国の姿勢としても歓迎されるというふうに考えております。  また、海洋投棄規制条約では、いろいろ国際的な協力、汚染のモニタリングあるいは技術の開発等ございまして、わが国のような国からの汚染防止あるいは海洋環境の保護についての技術援助を途上国では期待する空気が強いというふうに見ております。わが国自身が今度入るということは、基本的には、すでに太平洋諸国で入っている国もございますし、そういう国から歓迎を受けると思われます。
  164. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、このロンドン条約に未知盟国がありますね、現在のところ、日本、中国、韓国、オーストラリア、イタリア、スイス等、こう書いてありますが、この未加盟国がたとえば低レベル放射性廃棄物海洋投棄した場合、これはどういう扱いをされるのでしょうか。
  165. 井口武夫

    ○井口説明員 国際法上の立場から申し上げれば、五八年の公海条約というのがございまして、そこでは海洋投棄というものは、決して禁止してないわけでございます。海洋に対する故意の投棄というのは、今度のこの条約で初めて国際的には一般的な形ででき上がるわけでございまして、もちろん地域によっては、ヨーロッパで地域的により強い規制をしているところもございましたが、従来太平洋ではそういうことがなかったわけでございまして、太平洋の未加盟国は、この条約そのものには、そういう意味で国際法的には縛られないということでございます。  ただ、いま第三次海洋会議というものが進行しておりまして、それが今後成立すれば、御存じのとおり二百海里あるいは大陸棚における投棄は沿岸国の許可がなければできない、沿岸国は許可をしないだろうということでございまして、国際的な規制はだんだん進んでおりますけれども、公海上の投棄というものは、この条約に加盟していない太平洋の国は拘束されない、こういうことであろうかと思います。
  166. 貝沼次郎

    貝沼委員 そうすると未加盟国が、たとえば太平洋のど真ん中に投棄しても何も拘束されない、こういうことですね。したがって、加盟する国が積極的に国際法を守っていくということでありますから高く評価される、こういうふうに理解してよろしいのでしょうか。
  167. 井口武夫

    ○井口説明員 そのように理解して差し支えないのじゃないかと思います。
  168. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、わが国の海洋投棄に対する基本的な政策、方針といいますか、こういうものがいまはっきりと決まっておるのかどうかということです。  たとえば試験投棄を五十五年度の後半からですかやりたいというふうになっておるようでありますが、この試験投棄は五十五年度にやったものについては二年間ぐらい監視をしながらやるのでしょうけれども、これが一遍で終わるのか、何回にも分けてやるのか、あるいはそれはある期間を置いてやるのか、連続的にやるのか、そういうようなところがよくわからないわけでありますが、こういう計画はどうなっておりますか。
  169. 牧村信之

    牧村政府委員 私ども、いまこの試験的海洋処分を進める一応のタイムスケジュールを持っておるところでございますが、五十六年の春ごろに捨てたい、まず捨てるということを考えております。それで、その捨て方は、五百キュリー程度でございますので、ドラムかんの量にいたしまして五千本から約一万本を考えております。それを数回に分けて投棄をしたい。そしてその投棄をいたしました後、五十六年、五十七年、五十八年にかけて海洋調査実施していきたいというふうに考えております。数回に分けるのも、それほど期間を置かないで投棄するということでございます。
  170. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、技術的な問題でございますが、恐らく固化方法でやるのでしょうけれども、こういう技術的な方法としてはどれぐらい考えておられるのか。たとえば方法一つだけでいくということなのか、それとも、いろいろなことを言われておりますが、いろいろな方法を試験しながらやるということなのか、その辺はいかがでしょう。
  171. 牧村信之

    牧村政府委員 低レベル廃棄物固化する方法として、先生指摘のように、セメントで固化する、しかもドラムかん詰めのセメント固化あるいはセメントだけで固化する方法、あるいは最近の技術的な発展でアスファルト固化をするもの等があるわけでございますが、この試験的海洋処分で行いますのは、セメント固化、ドラムかんの中にセメント固化するものを私ども考えております。
  172. 貝沼次郎

    貝沼委員 そのセメント固化種類だけの方法でこれからやるということですか。
  173. 牧村信之

    牧村政府委員 試験的海洋処分に当たりましては、その一種類を考えております。
  174. 貝沼次郎

    貝沼委員 方法はそれでわかりましたが、今度はそれを持っていく船ですね、この船は現在あるわけですか、これからつくるのですか、あるいは何かを利用するとか、その辺はどうなっていますか。
  175. 牧村信之

    牧村政府委員 これから船をチャーターいたしまして、海洋投棄に適した構造に改造をした上で試験的海洋処分に臨みたいと思っております。したがって、予算的には改造費が計上されておりますが、実施時期が若干ずれ込んでおりますので、契約の時期等、実際に実施できるあれに見合って改造工事を進めたいというふうに考えておるところでございます。
  176. 貝沼次郎

    貝沼委員 その船の構造とかあるいは運航の仕方とか警備の問題であるとか、こういうことについては、すでにその方法計画は決定しておるわけでありますか。
  177. 牧村信之

    牧村政府委員 環境整備センターの方に検討をさせておりまして、船を改造する基本的な設計はすでに完了しております。
  178. 貝沼次郎

    貝沼委員 その基本的設計あるいはそこへ持っていくまでのいろいろな警備の問題や検査の問題があると思いますが、それらが完了しておるとすれば、そういうものを含めて、たとえば漁民団体であるとかあるいは運輸方面の意見であるとか、そういう方々と調整をとったことはありますか。
  179. 牧村信之

    牧村政府委員 船でございますから、当然、運輸省の規制を受けるわけでございますので、この改造船をつくります段階では、私ども運輸省の御意見等を常時取り入れまして、それをもとに基本設計を進めたということでございます。  なお、その船の構造がどうあるべきかということにつきましては、水産会と話し合ったことはございません。
  180. 貝沼次郎

    貝沼委員 船はただ飛んでいくわけじゃありませんで、海の上を行くわけでありますから、そこには漁場もあるわけでありますし、しかも、その途中で何も起こらないという保証はまたないわけであります。したがって、水産会から見れば捨てる場所だけではなく、その途中の航路についても関心が払われておるはずでありますから、これは水産会とよく合意する必要があるのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  181. 牧村信之

    牧村政府委員 実際に船ができ上がりまして、海洋投棄をするために廃棄物を積んで投棄地点に行くまでにいろいろ予想されることにつきまして、漁業を操業しているところで支障ないようにしてほしいというような一部の意見漁業者の方からすでに出ておることも事実でございますし、この実行の段階に当たりましては、ただいま先生が御指摘のような点については、しかるべき漁業者の団体とよく話し合って進めてまいりたいというふうに考えております。
  182. 貝沼次郎

    貝沼委員 その話し合いはいつごろ、どういう形で行われるわけですか。
  183. 牧村信之

    牧村政府委員 水産会との話し合いは、まず、その試験的な海洋投棄をやりたいということでの御理解を得ることでいまスタートして盛んにやっておるわけでございますが、先生指摘のような事柄につきましては、その御理解を得た上で、実際の実施計画を決めます事前お話し合いをするのが適当でないかと考えております。
  184. 貝沼次郎

    貝沼委員 先ほどの日野議員の質問のときにも、水産会その他の方々の理解を得てやるという話でありましたので、その辺は間違いなくきちっとやっていただきたい、こう思います。  それから、この投棄をする実施主体でありますが、これは財団法人原子力環境整備センター、こういうふうになっておるわけであります。この原子力環境整備センターというのは、投棄に関する責任はあるのですか、ないのですか。
  185. 牧村信之

    牧村政府委員 当然、国の考えておりますプロジェクトをここにやらせるわけでございますし、また低レベル廃棄物は電力業者から出たものが中心になると思うのでございますが、そういう者から投棄の委託を受けるという形で行われるわけでございますので、その責任は、実施するという点ではこのセンターが中心的に負うべきものだというふうに考えております。
  186. 貝沼次郎

    貝沼委員 実施するという範囲で責任があるということはどういうことですか。船に積んで投棄するところまで持っていって、投棄が終わるまでの間は責任があるということですか。それはどうなんでしょうか。
  187. 牧村信之

    牧村政府委員 私が申しましたのは、電力会社等から出た廃棄物は、現在の法規制におきましては、事業者のみが行えるわけでございます。そこで、その事業者にかわって委託を受けて投棄する形になるわけでございますから、その委託をする国であるとか電力会社が、違った意味での委託を申し上げておるわけでございますけれども、責任を逃がれるわけにはいかないわけでございます。そういう意味で一義的には、この投棄行為につきまして国のプロジェクトを委託を受けてやる、また廃棄物の方の観点から言えば、事業者がこの者に委託をして投棄を行わしめるわけでございますので、それぞれの責任が生ずるわけでございますが、一義的な投棄行為というものは、ここが責任を持ってやってもらおうということで考えておるところでございます。
  188. 貝沼次郎

    貝沼委員 一般的に事業責任者として、たとえば公害だとかあるいは廃棄物の問題を事業者にやらせるのがよいということはそのとおりなんですね。たとえばラジオアイソトープについては、放射線障害防止法第四条の二において廃棄業の許可制がとられておる。それから廃棄物の集荷、貯蔵、これはラジオアイソトープ協会がやっているわけですね。それから処理貯蔵は原研がやっている。そして廃棄についての責任は廃棄業者が負う、こうなっているわけですね。いまの局長の話でそれはわかるわけであります。また規制法の五十八条の二では、原子炉設置者が責任を負うことになっている、これもいま話があったとおりであります。しかし実際には、廃棄するのは整備センターに委託して実施する、こうなっておるということですね。  この関係を考えてみると、やはり事業者の存続期間とそれから有害度持続期間、この問題がありますので、果たしてその事業者がいつまで続くものやらわかりません、何か事が起こった場合に、その事業者はおりませんでしたというようなこともあり得るので、この海洋投棄、いわゆる処分については国が責任を負う、こういうふうになるのですか、ここのところはどうなりますか。
  189. 牧村信之

    牧村政府委員 ただいまの規制法の法規制では、国が責任を負うのではなくて、電気事業者等原子力事業者が負うべきものと私どもは考えております。
  190. 貝沼次郎

    貝沼委員 いや、そのとおりなんですが、その事業者がずっとあればいいけれども、とにかく放射性物質は寿命が長いわけですから、会社の寿命と比べたら、果たして比べることができるのかどうか知りませんが、かなり長い。したがって、後で何かトラブルが起きた場合に、その事業者の責任といっても、発生者負担といっても、発生者がいなければこれまた困るのですが、この辺はどう考えたらよろしいのですか。
  191. 牧村信之

    牧村政府委員 この低レベル廃棄物の中心になります核種は、平均的に見ますと三十年前後でございますので、中心になります日本の電力会社がそれほど寿命が短いとも考えられないところでございますことは、御理解いただけると思うのでございます。一方、障害防止法等から出てまいります廃棄物につきましては、これは非常に零細な、数多い事業所があって、そこから出てくるものでございますので、障害防止法では廃棄業者というのを法律に明定して、そこに責任を持って行わせるという形をとっておるところでございます。それらの者が投棄後も十分責任を持ち得る体制になし得ると私は考えておるところでございます。
  192. 貝沼次郎

    貝沼委員 日本の電力会社が何年続くか私は知りませんけれども、まあ話としてそういう期間の問題があるということを言っているわけです。  それから、たとえばラジオアイソトープなんかの場合は、いろいろな病院とか、そういうところから集まってきておるわけであります。そしてラジオアイソトープ協会が集荷、貯蔵をやっておるわけでありますが、このラジオアイソトープもこの低レベルの中に入っておるわけですから、そのものがもし後で事故を起こしたような場合の責任、それはだれが持つのですか。
  193. 牧村信之

    牧村政府委員 障害防止法の関係でのRIを使用する施設等から出てまいります廃棄物は、現在の法体系ではもちろん事業者が許可をとれば行えるわけでございますが、先ほども説明申し上げましたように、廃棄事業者というのを定めさしておりまして、現在アイソトープ協会がその業に許可を受けておるわけでございます。そこが当面、この環境整備センターに委託をするという形がとられるものと考えておるところでございます。
  194. 貝沼次郎

    貝沼委員 と申しますのは、ラジオアイソトープ協会が責任を持つ……。
  195. 牧村信之

    牧村政府委員 そう考えております。
  196. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、この財団法人原子力環境整備センターを通さなければならない、これによってするものとするというふうに資料には書いてありますが、この財団法人整備センター一つにしぼったわけはどういうわけですか。
  197. 牧村信之

    牧村政府委員 いまの段階で各事業者がてんでんばらばらにそれぞれの責任において海洋投棄実施するよりは、関係業界が協力してこの整備センターをつくらせて、現在はできておるわけでございますか、そういうところで慎重に海洋投棄を進めた方がより安全に推進ができるという観点、また関係するところの御理解を得る上でもよりよい方法ではなかろうかということで、このセンターが原子力委員会の決定にも書いてございますような趣旨で、ただいま申し上げましたような趣旨でつくられたという経緯があるわけでございます。したがいまして、当面、国並びに関係業界がここをサポートする形でここをして行わせるのが最も妥当な考え方でないかというふうに考えておるところでございます。
  198. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは将来ともこれ一つでもって廃棄していくという考え方ですか。それとも将来はたとえば許可制にして別の業者も入り得る可能性があるとか、その辺はどうなっておりますか。
  199. 牧村信之

    牧村政府委員 このような海洋投棄であるとか陸地処分というものが将来定着化して、十分安全を確認できるような方法でいろいろなところがやっても十分できるというようなふうに将来なった場合には、たとえば規制法でも廃棄事業者の制度を設けるというようなことは十分考えられるわけでございますけれども、ここ当分の間は、むしろそういうことよりも、ここに集中させて、試験的な処分並びに今後予想される本格処分を行わさせた方がいいのではないかというふうに私どもは考えております。
  200. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、この財団法人原子力環境整備センターというのは、いま局長からの話にもちらっと出ておりましたが、高レベルのものもこのセンターでやるということですか。
  201. 牧村信之

    牧村政府委員 高レベル廃棄物処理処分に当たりまして、このセンターを使う考え方は現在ございません。
  202. 貝沼次郎

    貝沼委員 では、これは低レベルのみということですね。  それからもう一点だけ、責任の問題でお尋ねをしておきたいと思いますが、原子炉設置者等も、それから実際投棄する業者も、すべて法現どおりに、定められたとおりに行った、それについては何ら手落ちはない、しかし、それにもかかわらず、事件が起こったという場合ですね、たとえば放射能を帯びた魚があらわれたとか、あるいは海水が汚染されたとか、こういう確率というのは非常に少ないかもしれませんけれども、要するにこういうことが起こった場合に、その損害賠償というのはどういうふうに考えたらよろしいのですか。
  203. 牧村信之

    牧村政府委員 そのような場合におきましても、原子炉等規制法上の廃棄物につきましては、先生御承知の原子力損害賠償法の適用が受けられるわけでございます。  それから、ラジオアイソトープ等の投棄に当たって、そういうようなものが出てきた場合には、やはりこれは民法に基づいて解決を図らなければならない問題であろうかと考えております。
  204. 貝沼次郎

    貝沼委員 たとえば放射能そのものが直接の問題ではなしに、そこに捨てられたというところから、その海流付近の魚が値下がりをした、あっちから来るのはもういやだということで魚が値下がりをするとか、非常に売れなくなったというような場合に、これを何か補償する方法というのはあるのですか。
  205. 牧村信之

    牧村政府委員 原子力損害賠償法のたてまえでは、ただいま先生の御指摘の件は、補償することは不可能ではないかと思います。
  206. 貝沼次郎

    貝沼委員 こういうのは不可能なんですね。しかし、こういう問題はほうっておいていいものでしょうか。これはむしろその魚とかあるいは海水とか、それそのものではなしに、買う方が全然この魚を買わない年ということで捨てたために、実は損害を受けるのは漁連とか水産業界になるのですけれども、この辺はどう考えたらよろしいですか、大臣。
  207. 牧村信之

    牧村政府委員 そういう点、わが国は水産国でございますので、この候補地点を選びます際には、先ほども水産庁の方からも御説明がありましたが、できるだけ漁業活動の少ないところ、あるいは稚魚等が生息すると申しますか、そういうところでないところを、水産庁等の専門の方々の御意見を聞いた上で、そういう水産活動のきわめて少ないところを選んでおるつもりでございます。  また、海洋投棄をするに当たりましては、先ほどから安全評価を十分やっておるということでございますが、仮に投棄したものが全部壊れて海水に行ったとしても、放射線の人間が受ける影響というのは、人間が受けております自然放射線の、試験的海洋処分では一千万分の一、仮に十万キュリー程度投棄する本格的な投棄に当たりましては、一万分の一程度のあれで、人間に影響を与えることはまず考えられないということでございますので、そういう御懸念をなくすように、水産会とこれから十分御説明をしていきたいというのが私どもの立場といいますか、態度でございます。
  208. 貝沼次郎

    貝沼委員 水産庁の方、おいで願っていると思いますが、こういうような問題は、私は、幾ら数字でもって安全だ安全だと言っても、なかなか理解しにくいものがあるわけでありますので、その辺は水産庁としてはどういうふうにお考えですか。
  209. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 先生から風評による魚価の低落等の問題のお話があったわけでございますが、御承知のように、漁業界といたしましては、過去にビキニの被曝事件等の事件がございまして、それによりまして非常に手痛い経営に関する打撃を受けております。そういう点からいろいろな評価があるわけでございますけれども、やはりこういう放射性廃棄物海洋処分につきましては、相当大きな不安を持っておるということは事実でございます。
  210. 貝沼次郎

    貝沼委員 恐らくそういう不安があるだろうと思うので私は聞いておるわけですが、それに対して水産庁としては何か対策がございますか。
  211. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 御承知のように風評による魚価の低落というのは、本当につかまえどころのない問題でございまして、たとえ非常に安全だというような場合でも、わずかないろいろな形の間違ったといいますか、風評が流れることによってがたっと下がったり、予測しがたい問題がたくさんございます。  しかしながら、こうした不安に対処するためには、こういうことが起こらないような非常に緻密な、いろいろなケースを考えまして、関係先とか何かに事前に話をしておくとか、そういうことが何かの拍子で増幅されまして大きく出てくることがないような手を、あらゆることを考えてやっていくという以外にないものだというぐあいに考えておるわけでございます。
  212. 貝沼次郎

    貝沼委員 それは水産庁と科学技術庁とたとえば具体的にそういう話はしたことがありますか。詰めたことはありますか。
  213. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 まだ漁業界といたしましても水産庁といたしましても、試験投棄処分実施ということについて了解をしているという段階でございませんので、仮定の問題になりますけれども科学技術庁といろいろお話をしている中に、将来投棄という問題が実際の投棄という場面になってくれば、この種の問題については細かく検討する必要があるということは相互に理解しておるところでございます。
  214. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういうふうな問題について細かく相談をするということでありますが、これについて大臣はどのようにお考えですか。
  215. 長田裕二

    ○長田国務大臣 現実に損害といいますか害悪が出るということがはっきりしておらない段階で、心理的な要素などから魚価に影響を与えるというようなことに対しましてどういう措置をとるかということにつきましては、さらに私どもも、関係の農林水産省その他とよく相談をしてみたい、そのように思っております。
  216. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、海洋投棄多国間協議監視機構というのがありますね、OECD・NEA、これにはわが国はいま参加はしておるのですか、していないのですか。
  217. 牧村信之

    牧村政府委員 日本はOECDに加盟しておりますが、NEA監視機構にはまだ参加しておりません。
  218. 貝沼次郎

    貝沼委員 今後は参加するのですか、しないのですか。
  219. 牧村信之

    牧村政府委員 できるだけ早く加盟したいと思っております。
  220. 貝沼次郎

    貝沼委員 できるだけ早くということは、たとえば今回の国内法整備ができた場合とか、そういう意味でよろしいですか。
  221. 牧村信之

    牧村政府委員 御指摘のように国内法整備でき、ロンドン条約に加盟され、その上でできるだけ早くNEA監視機構にも入るように考えたいと思っております。そういう点について、今後、外務省とよく協議して、できるだけ早く入れるようにしていきたいと考えておるところでございます。
  222. 貝沼次郎

    貝沼委員 できるだけ早く入るということですが、この海洋投棄多国間協議監視機構、いわゆるOECD・NEA、これに参加しなくても海洋投棄はできるのですか、それともこれに参加しなければできないのですか。
  223. 牧村信之

    牧村政府委員 このOECDの監視機構は、加盟国に対しましてそういう義務づけを与えたものでございませんので、入らないでも海洋投棄をすることはできるわけでございますが、私どもの姿勢としては、入った上で国際的な監視も求めつつ海洋投棄実施するという方針で臨んでおるところでございます。
  224. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういたしますと、ここに参加するまでは海洋投棄はやらないということになりますか。試験投棄の方はどうなりますか。
  225. 牧村信之

    牧村政府委員 試験的な海洋投棄を含めまして、ただいま先生がおっしゃられましたように入った上で実施したいと考えております。
  226. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、これも事務的な話でありますが、もしここに入った場合に、投棄計画の詳細ということがありまして、それをNEAへ通知する、それから助言をいただいて、それを考慮して投棄作業に入る、こうなっておりますが、この投棄計画の詳細の中に、容器数量とか仕様、これは大体わかりますが、投棄船の仕様、これもいまやっておる最中だそうでありますが、エスコーティングオフィサーの、氏名はいいけれども、資格とかこういうものが求められておるようでありますね、この点についてはどういうふうに考えておられますか。
  227. 牧村信之

    牧村政府委員 実際の投棄に当たりまして、OECDの確認官と申しますかが実際に船に乗りまして、日本が約束したとおりのものをそのとおりに投棄しておるかをチェックするたてまえになっております。そういう確認官を日本としても受け入れていきたいというふうに考えておるところでございます。もちろん規制当局の検査官も、投棄に当たりましては、海洋投棄実施の場所まで随行いたしまして検査をするというたてまえで、両建てで進められることになるわけでございます。
  228. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから最後に、低レベル放射性廃棄物、低レベルということから放射能が非常に弱いという感じを受けるのですけれども、しかし、これがいかに低レベルであっても、実はこれからさらに考えていかなければならないのじゃないか、もっと注意していかなければならないのじゃないか、こういう感じが私はするわけでございます。  そこでたとえば、これは通産省資源エネルギー庁が昨年「実用発電用原子炉施設における従事者の被曝状況」、これを発表しておりますが、年度別被曝状況は、原発発電量の増加とほぼ比例関係を示してふえておるわけでございます。昭和四十五年度から五十三年度まで数字が出ておりますが、従事者の数は四十五年で二千四百九十八人、そのうち請負等社員外従事者というのが千六百七十五名であったわけでございます。それが四十六年になりますと全体が五千二百四十三名、それに対して請負等の方々が四千二百七十九名、四十七年は五千八百九名のうち四千七百五十三名が請負等ですね。そういうふうに四十八年も八千四百七十二名のうち六千九百六十名、四十九年は一万二千三百五十八名中一万二百八十二名、それから五十年が一万六千八十名に対して一万三千七百九十八名、五十一年が二万一千七百五十九名に対して一万七千二百四十一名、五十二年度が二万五千三百六十二名に対して二万二千百二十九名、五十三年度三万四千百五十五名のうち三万五百七十七名と、これが請負の方々なんですね。  ところがその中で、総被曝線量を人レムでもって見た場合に、たとえば昭和四十五年は全体が五百六十一人レムにもかかわらず、この請負等社員外従事者の場合は三百二十六人レム、こっちの方が非常に率が高いわけです。途中の数字は飛ばしますが、五十三年を見ましても、一万三千二百一人レム、これに対して一万二千四百十八人レム、これが請負等社員外従事者となっております。これをずっとトータルいたしますと、いままでに従事者の数は十三万一千七百三十六名であって、そのうちの十一万一千六百九十四名が請負等社員外従事者となっております。八四・八%の人がそうなっている。さらに総被曝線量で見ますと、トータルで四万二千百十二人レムでありますが、請負等社員外従事者の方は四万一千八百六十三人レム、したがって、九九・四%がこの請負等社員外従事者の方になっておるわけですね。  こういうふうな状況でふえてまいりますと、これはもう非常に大変なことになってくるわけでありまして、しかも社員従事者に対する総被曝線量の比率というのは三一・九七%であるにもかかわらず、請負等社員外従事者の場合は三七・四八%と多いわけですね。  その問題が一つありますし、そのほか、たとえば「長期エネルギー需給暫定見通し」というものをもとにして見ますと、昭和六十年三千万キロワットということを考えると、年間約三万五千人レム、あるいは六十五年に五千三百万キロワット、これに対しますと年間約六万人レム、七十年になりますと七千八百万キロワット、まあ恐らくこんなことはもう不可能でしょうけれども、それにいたしましても、九万人レム、こう増大してくるわけであります。  これを現在の平均被曝線量、約〇・三二レムで割ってみるわけですが、実際は〇・三二レムというよりは、多いところは、たとえば日本原子力発電敦賀発電所の場合なんかは〇・三六であり、あるいは東京電力の福島第一原子力発電所なんかの場合は〇・七一になっていますし、それから中部電力の浜岡原子力発電所の場合は〇・四二ということになって、多いのもありますけれども、平均〇・三二レムで割ってみても、被曝従事者は年間二十八万人程度という数字が出てくるわけであります。  したがって、昭和七十年ごろまで累積で考えると、昭和四十五年から二十五年間で見ても、四百万人以上の被曝従事者が生産されることになるわけであります。あるいは累積被曝線量は、これも単純に計算いたしますと、およそ百五十万人レムということになってまいります。  ところが、低レベル廃棄物というのは、いわゆる閾値というものがありまして、まあ問題ないだろうと言う人もおるし、いや、その閾値そのものが実は疑問であると言う。あるいはさらに、がん発生の問題、遺伝の問題等、この低レベルをもっともっと真剣に研究すべきであって、閾値などというのは存在しない、こういう議論もあるわけでございます。今後、こういうような低線量被曝の問題について、もっとシビアに研究していかなければならないのじゃないか。日本国じゅうの人口ぐらいがふえてくるのじゃないかという感じがいたしますので、これは重大な問題として受けとめて、今後シビアにこれを研究すべきであると考えますが、この点について当局はどのようにお考えですか。
  229. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のように、低線量の被曝の影響研究というのは、きわめて重要な課題であろうかと思います。そのために世界各国、また日本でも、最近非常に力を入れて研究を進めているところでございます。  なお、前段の従事者、特に下請の従事者の被曝の増大ということが御指摘されたわけでございますが、われわれとしても、この従事者の被曝量をできるだけ下げるというような観点からの改善を、今後とも重点的に進めていく必要があるというふうに考えておるところでございまして、安全委員会の安全研究観点からの計画にもいろいろな計画がすでに予算化されておるところでございますし、電力会社の被曝の低減化のためには、現在、通産省が標準型の原子炉の開発ということで、今後つくられます原子炉は、従業員の被曝の低減という観点からも鋭意努力しておりますし、定期修理等に当たりましては、できるだけ遠隔操作が可能なような装置をつくるとか、遮蔽をしやすいようにして作業を進めるというようなことも重要な施策であろうかと考えております。  現在、原子力発電関係で働いておる、過去からずっとでございますけれども、約十万人の方が登録センターに登録されておりまして、これらの方々が法律規制しております量以上に受けないような、その従業員の被曝登録センター制度をつくっておるわけでございまして、現在、事故で被曝した以外はその許容値を超えたという例はないわけでございますが、なお、低減化というような問題に対しまして、積極的に取り組んでいくべき事柄であるというふうに認識しております。
  230. 貝沼次郎

    貝沼委員 いままでの数字では特別大きなものはもちろんないわけでありますが、ただ、少ないからといって大丈夫だというものではない。特に遺伝の関係とかあるいはがんの関係とか、この辺はいろいろな論文を、私は、いま一々ここで出す必要もないので、ここへしまったのですけれども、要するにそういうような問題、これは原子力発電所だけでなく、核燃料サイクル全体にわたる場合もありますし、試験研究施設の従事者の被曝の問題もある、あるいは周辺住民に対して、微々たるものかもしれませんが、影響があるわけでありますから、そういうようなことをも含めて、ただ、低レベルであるから、閾値内だから大丈夫という考え方ではなしに、どんな微量なものでも、あるいはどんな弱いものであっても必ず影響はあるのだ、だから、それに対する体制というものを整えておかないといけないという考え方で進まなければならないと私は思うのです。いままで基準に合っていたからというだけでは済まない事態が来るのじゃないか、こういう感じがするわけですが、もう一度答弁を願います。
  231. 牧村信之

    牧村政府委員 ICRPで各種の被曝に関します基準ができておるわけでございまして、それを日本も採用しておるわけでございます。低線量の被曝、特に遺伝的な影響を考えますときには、できるだけ低い線量ということですでに考えられておるわけでございます。また、そういう影響というのは、まだ確証はされておりませんけれども、直線的な影響を仮定して置いておることも事実ではございますけれども先生指摘の御趣旨の、できるだけ被曝を従業員が受けないように、あるいは一般公衆に与える被曝線量を少なくするということについては、きわめて重要なことであると思いますので、今後とも、そういう精神にのっとって規制の充実を図ってまいりたいと考えております。
  232. 貝沼次郎

    貝沼委員 海洋投棄も低レベルでありますから、私はいま、その低レベル問題を申し上げたわけでありますが、今後とも、その方向で注意をしていただきたい、こう思います。  終わります。
  233. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 瀬崎博義君。
  234. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まず第一に、試験的海洋処分について伺います。  この試験的海洋処分では、具体的にどんなテスト、あるいはどんな調査研究を予定しているのか、まずお答えをいただきます。
  235. 牧村信之

    牧村政府委員 この試験的海洋処分の目的として考えておりますのは、試験的海洋処分を行いまして、その海洋処分したものが環境に影響を与えないという安全性を確認することと、海洋処分日本で行うというのは何せ初めての作業でございますので、安全管理手法を確立するという二つの目的で実施したいと考えておるところでございます。
  236. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そんなことはわかっているのです。その目的のために、具体的にはどんなテスト、あるいはどんな調査研究を予定しているのか、こうお尋ねしているわけです。
  237. 牧村信之

    牧村政府委員 お答えいたします。  この海洋処分に当たりましては、まず海洋処分をする海洋投棄船というものを改造してつくるわけでございますが、そこで従事される方々の放射線に対する管理の仕方がまず必要であろうかと思います。それから作業をする方々の被曝の量をできるだけ減らした上で、海洋投棄ができるように作業手順を改善していくということが挙げられると思います。  それから、投棄後は、投棄後二年でございますから、都合三年間にわたりまして海洋調査を行いまして、海底土あるいは海水のサンプリングを行いまして、放射性物質の有無等の調査実施するということを考えております。また海洋生物等の採取もあわせて行いまして、従来のデータと比較して安全性を確認したいというふうに考えておるところでございます。
  238. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 海水をサンプリングしていろいろ濃度測定を行うという話なのですが、放射性廃棄物の深海処分による海水の汚染状況を調べる場合、濃度がきわめて低いことから非常に困難であるということを学者は指摘するのですが、具体的にはどういうふうな方法でそういうきわめて低い濃度を測定しようとしているのですか。
  239. 牧村信之

    牧村政府委員 まだ最終的には投下地点を決めておりませんけれども、現在、実施可能な投下地点が三カ所選定されております。そこの現実のバックグラウンド等はすでに調査が行われておるわけでございますので、投下後そういう数値に変動があるかどうかということを調べるわけでございますけれども先生指摘のように、変動があったとしてもきわめて少ないはずでございますので、実質的には変動がないということを確認するという形になるものと私どもは思っております。
  240. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 変動がないということを確認するにしても、私が聞いているのは、その具体的方法はどうかということです。皆さんもよく御存じの三宅泰雄博士の論文では「この種の低濃度の放射性物質を正しく分析するためには、一回に一トン以上もの海水を深海から汲み上げる必要がある。」、それから「低濃度の放射性物質を分離濃縮する操作が必要になってくる。これは現在の技術では相当困難なことである。」という指摘があります。     〔委員長退席、貝沼委員長代理着席〕 それからもう一つは「世界の海洋はすでに核兵器実験に由来する放射性物質で相当汚染されている。それを海洋投棄物に由来する放射性物質の汚染と区別することは不可能に近いのではないか。」という指摘もあるのですが、政府はこういう学者の指摘を一体どういうふうに見ておりますか。
  241. 牧村信之

    牧村政府委員 三宅先生の御指摘は、それを現実海洋調査等に適用するのはきわめて困難な面も持っておるわけでございますが、私どもとしては、現在行っている方法では、たとえば海水であればその海底の水を二百リットルぐらい一遍にとるというようなことで、できるだけそういう量をふやして、測定の精度を上げていくという努力はしてきておるつもりでございます。  また、今回の海洋調査実施方法あるいは安全評価に当たりましては、三宅先生には専門家としての御参加をいただいてはおりませんけれども、かねてから三宅先生のお弟子さんなどから、二、三、私どもの、科学技術庁の方の専門家としていろいろ御意見をいただいておりますし、可能な範囲で科学者、学者の御意見も入れつつ計画を立案しておるつもりでございます。
  242. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ある程度放射性物質の分析を行うとすれば、一トンぐらいの水の採取が必要だと言われているが、いま局長が言っているのは二百リットルでしょう。けた違いなんですね。  そういうふうな点から、われわれが政府にしっかり受けとめてほしいのは、試験投棄をやれば、後二年ほど追跡調査をすれば万全なのだという単純な結論は出しにくい問題だ、そういう認識を持って事に当たってもらわなければいけない、学者の意見をよく聞いてやってもらいたい、こういうことです。  それから、先ほど牧村局長は言わなかったけれども原子力環境整備センターのパンフレットによれば、試験投棄は「処分後には、処分されたドラム缶の健全性を、深海テレビカメラなどで追跡調査する。」ということも挙げているのですが、これも具体的にはテスト項目に上がっているのじゃないですか。
  243. 牧村信之

    牧村政府委員 投棄した後の投下物の健全性を確認するためのカメラの改良研究をすでにやっております。一応、撮影等ができるようなカメラができまして、さらにそれを改良する研究をやっておりますので、実際の投棄に当たりましては、可能であればその改良されたもので十分観察するということをやろうと思っております。
  244. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その場合、先ほど五百キュリー、五千本を数回に分けて投入すると言われたのですが、その試験投棄五千本に対して何本のドラムかんをそのカメラで観察しようとしているのですか。
  245. 牧村信之

    牧村政府委員 まだ確実な計画はできておりませんが、五千本から一万本の範囲で捨てられて、それを数回に分けるわけでございますので、その回数ごとに十ないし二十本くらいはカメラで確認しようという計画で進めておるところでございます。
  246. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣、五千本投棄して、そのうちの十本程度をカメラで観察すると言うんですね、これで果たしてその五千本全体の安全を確認したということになるだろうか、どうでしょうか、大臣。
  247. 長田裕二

    ○長田国務大臣 局長は、十本くらいあるいは二十本くらい、そういうお答えをしましたが、そこらの点については、まだはっきり結論を出しているところではございませんし、それから先ほど管理と投棄というように分けての御質問でございましたが、私ども、この試験投棄の問題につきましては、投棄投棄ということになりますけれども、非常に心にかけての投棄、そういう意味では管理に近いような気持ちでいる、そういうことも申し上げさせていただきたいと思います。撮影等についても、そういう気持ちを絶えず反映させるようなやり方にしていきたい、そのように考えております。
  248. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 科技庁長官としては、まことに失礼だけれども、科学認識を疑いたくなるんですね。まだ十本と決まったわけじゃないと言われたけれども、いま予定しているのが十本なら、最大限努力したって一けた上がればいいところでしょうが、とてもそんなことには私はならないと思いますよ。  そうしますと、ここにも三宅博士の指摘があって「政府の試験投棄計画の一部には、着底したあとの固装体を水中テレビジョンで観察し、その健全性をたしかめたいという構想があると聞いている。海底上の固装体の模様を観察した例は最近、潜水艇による写真撮影や、付近の海水、土壌の採取と分析が米国の環境保護庁の手でおこなわれている。その観測結果は興味のふかいものではあるが、観測例は少数で、それから深海処分安全性に関する一般的な結論を引き出すことは困難である。」、こう述べられているのです。  だから、私もここで特に懸念するのは、そういう五千本のうちのわずか十本をカメラで撮影して、その安全性を確認したからと言って、直ちにこれを五千本全部の安全性に置きかえる、こういう短絡的なことをして国民のPRに使われることは非常に危険だ、この点を十分政府は押さえて、やってむだだとは学者も言ってないのだから、やるのならやる、そういう心構えだけは十分持ってほしいと思うのです。そういう学者の指摘を尊重してやられますね。
  249. 牧村信之

    牧村政府委員 この海洋投棄のカメラによる観察の問題につきましては、日本がこういうことをやるということは、世界的にも非常に注目を集めておるところでございます。諸外国はそういうことをせずにやっておるわけでございますが、日本はいかに慎重かということではなかろうかと思います。  それから投棄前に、そのために投棄物が数千メートルの気圧下で健全かどうかの試験は十分行われているところでございますので、先生、そのうちのわずか十本とおっしゃいますけれども、世界的にも行ったことのないやつをそういう努力をしてやっておるし、また、この結果を十分今後の本格的な処分にも反映できるわけでございますので、十分に科学技術的な意味合いを持っておるものと私どもは確信しておるところでございます。
  250. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私の言っていることにまともに答えてほしいと思うのです。何も三宅博士もむだだとは言っていない。そういう測定には興味深いものがある、こういうふうに言っておるわけです。だけれども、わずか十本程度の結果をもって五千本全部の安全性に置きかえる、こういうことは危険だぞ、こういう指摘ですね。これは十分わきまえてやりなさいよと、こう言っているのです。局長、再答弁を求めます。
  251. 牧村信之

    牧村政府委員 先生の御指摘は十分尊重させていただきますが、そのために私どもは、安全評価におきましては全部壊れても十分安全を確保できるということの評価等もやり、慎重にやっているところと思っております。
  252. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それと、先ほどどなたかの議員への答弁では、試験的海洋投棄は五千本のドラムかんを数回に分けるのだ、そう長期ではない数回に分けるのだ、こういう話だったのですが、いま私が質問をすると、五千本ないし一万本、こういうふうに言われたように思うのですが、一体五千本が正しいのか、場合によっては一万本になるということなんですか、どっちですか。
  253. 牧村信之

    牧村政府委員 私ども計画では、放射能の量で五百キュリーということを基準に考えておりまして、ドラムかんの数にいたしましては五千本ないし一万本の間で投棄したいと考えておるということでございます。先ほども私はそうお答えしたつもりでございます。
  254. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は先ほどから、試験的海洋投棄後の海洋調査あるいはまたカメラによる固装体の撮影をしたとしても、なかなかそれだけで学問的に安全性の確認と言うにはやはり無理がある、それほどこういうものの追跡調査は困難だという学者の指摘をして政府に慎重な態度を求めておるわけなんですね。  四十八年の六月に、原子力委員会の中の「放射性固体廃棄物分科会報告書」というのがあるわけなんですけれども、この中で「処分後において固体廃棄物を管理することは不可能なので、慎重に対処することが必要である。」、こういうふうにも述べておるわけですね。一たん投棄してしまった物をいろいろそういうふうに観察するという努力はするにしても、全体としては実質管理不可能あるいはモニタリング不可能、こういうふうに見るのが正しいのではないんですか。
  255. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のように、海洋投棄をした後の管理というのはきわめてむずかしいことでございます。先ほどもお答えしましたように、現実的には人間の管理を離れるということでございます。そのために試験的な海洋処分というものを計画して、可能な限り投棄後も海洋調査等を実施したいということで計画を立てておるところでございます。     〔貝沼委員長代理退席、委員長着席〕 先生指摘のように、何せ数千メートル下の海洋のことをいろいろ調査するというのは、技術的にもなかなか進んでいない面があるわけでございますが、その時点において可能な技術でもって海洋調査等を推進したいというふうに思っております。まあ、プロジェクトでございますので、二年間の結果を評価して、今後の本格処分に備えるような計画ではございますけれども、従来から私どもは、関係省庁にお願いいたしまして海洋調査を進めておるわけでございますから、二年で後全く海洋調査をしないということではございませんが、その後は一般的な海洋調査として放射性廃棄物投棄された海域の調査を引き続きやることはもちろんでございます。
  256. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その投棄したものは、結局人間の管理の手を離れるというのみならず、実際問題として、その投棄したものが海洋をどう汚染しているかということを科学的に厳密に追跡調査することそのものも困難であるというのが、やはり専門家の指摘だと私は思うのです。先ほどのように、五千本投入した投棄物からの放射性物質による汚染なのか、あるいはまた、いろいろな水爆実験等から来る汚染なのかの区別は現状技術レベルではきわめてしにくい、そういうふうにも言われているぐらいなんです。ですから先ほど、試験的海洋投棄は五千本ないし一万本と言われたけれども、試験的海洋投棄の名のもとにそれがさらになし崩しで繰り返される、こういうことは絶対にしてはならない、このことをまず政府は断言できるかどうかということ。  それからさらに、一応追跡調査が二年間と言うけれども、その二年間現在規模の、現在水準の調査ではなかなか調査が完結しにくいのではないかと私は思うのです。だから学者の、なお疑問あり、試験的海洋投棄の結果をさらに期間を延ばして調査しなければならないというふうな意見があるならば、そういうものを十分尊重して本格的投棄を急がない、こういうことを政府ははっきり約束できるか、この二点をただしておきたいと思います。
  257. 牧村信之

    牧村政府委員 この計画を立てましたときに、科学技術庁なりに関係します学者の方々の御意見を承りつつ計画をつくっておるところでございまして、一応、試験的な海洋投棄は一回限りで十分であろうと考えておりますので、試験的海洋処分を何遍もやるという考え方はいまのところ全く持っておりません。そのプロジェクトが終了後、海洋調査等で十分安全が確認された後に本格的な処分に入っていきたいというふうに考えておるところでございます。  なお、学者のもっと長期間調査しなくてはいけないという御意見先生の御指摘にございましたけれども、これはたとえば現在アメリカが過去に行いました海洋処分のその後の調査等をやっておりますが、すでに十年以上たちました投棄物が健全性を保っておるというようなデータも得られておるところでございますので、日本もそういう調査にすでに研究段階では参画しておりますし、また、そういうデータもいま政府間で交換をしようという話し合いも進んでおりますので、そういう点につきましてのデータも踏まえまして、今後、海洋投棄安全性の確保ということに不断の努力を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  258. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第二の問題は、この海洋投棄候補地選定に当たっての海洋調査の問題です。  今回の試験投棄の四つの候補地事前調査についてですが、海水の流動、拡散等の事前調査はどこの機関が担当しておりますか。
  259. 牧村信之

    牧村政府委員 ただいま先生の御指摘の海流の問題につきましては、気象庁と理化学研究所にお願いしております。
  260. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その調査結果については、原子力安全局が五十一年八月に出した「試験的海洋処分の環境安全評価に関する報告書」に出ているわけなんですが、これを見ますと、底層流に関しては「流向、流速ともかなりのばらつきがある。得られた記録は最大二週間であり、その数も限られているので、底層流の実態把握にまでは至らない」、このことが一つ指摘され、「しかし各点とも流れの構造は複雑でかなり速い流れの存在することがうかがえる。」、断定はなかなかここではできていないわけですね。こういう点から、こうした海の流動、拡散の調査もまだまだ緒についたばかりで、これから本格的にやらなくちゃいけない、こういう段階ではないかと思うのですが、いかがですか。
  261. 牧村信之

    牧村政府委員 深海底の海水の流動状況につきまして科学技術庁安全評価をいたしましたときには、先生指摘のとおり、一週間程度の測定結果に基づいてやっておったわけでございますが、その後、海洋調査につきましては、第二次五カ年計画を発足させまして、参画機関も理化学研究所を加える等といたしておりまして、現在段階で約一年以上に及ぶ測定結果が得られております。この測定結果につきましては、従来行いました値とそれほど異なる値ではないということが確認されておりますし、そのデータにつきましては、安全委員会安全評価をいたしましたときには報告し、先生方の御検討をいただいたということでございます。なお引き続き、そういう点につきましての観測を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  262. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 しばしば政府のいろんな機関にも参画してこの問題の研究をやったり指導もされている三宅博士なんですが、その論文の中は「深海処分のための海洋学的事前観測調査」の項目を六項目にまとめて挙げていらっしゃいますね。これはもちろんこの論文だけじゃなくて、政府部内で初めて海洋投棄の問題が論じられました昭和三十九年の「廃棄物処理専門部会報告」の中にも述べられていることなんですが、その六項目というのは、第一が一般海洋観測、海上気象観測、第二が海底地形と堆積物、第三が海底付近の生態系、第四が海底付近とその上の移流、第五が海底付近とその上の渦拡散、第六が放射能バックグラウンド調査、こうなっているわけですね。  こういうものを挙げた上で、その一つの項目でありますが、「水平方向のうず拡散係数を求めるには、処分候補海域を中心に、広域的な観測が必要である。この観測の目的は、海洋の立体構造と、三次元的運動を把握することである。このためには観測船のほかに、自動測器による長期観測を行なうことが必要である。一方、観測の迅速化のため、ヘリコプター等の使用も準備すべきである。」と言っているわけですが、ヘリコプターは別として、こういう自動測器による長期の連続観測、こういうことが行われているのですか。
  263. 牧村信之

    牧村政府委員 理化学研究所が候補地点のうち一番有望なB地点につきまして、一年以上三地点に観測装置を置きまして測定を実施しております。すでに一年以上にわたっております。
  264. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それはやはり定点に自動測定装置を置いてと、そういうことですか。
  265. 牧村信之

    牧村政府委員 さようでございます。
  266. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 さらに、移流の精密測定についても「一〇〇キロメートル四方くらいの海域内の数十点に自動測器を立体的に配置し、少なくとも一年間の観測データを収得すべきであろう。」、こういうふうに言われているんですね。  先ほど言われたのは、一体水平方向の渦観測のことを言われたのか、あるいは移流のことを言われたのかによって、観測地点数の問題が出てくるのですが、一体どちらであるかということと、それから移流の測定のために百キロメートル四方に数十点の自動測器が必要だ、これはやっているのか、やっていないのか、お答えをいただきます。
  267. 牧村信之

    牧村政府委員 先生おっしゃるような数十点についてはやっておりません。先ほど申し上げましたように、三点の自動測定器による測定でございます。渦と深さも四千メートルと五千メートルに分けて自動測定をやっておるということでございます。
  268. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一地点といえども相当広い範囲のものですから、そこで三点の一年間の自動測定をやったからといって、それで果たして精密な測定と言えるのかどうか、この点も今後の検討課題ではないかと思うのですが、いかがですか。
  269. 牧村信之

    牧村政府委員 この海底流、水の流れと申しますか、これは深海底では学術的にも非常に興味を持たれ、また一生懸命研究しようとしておるところでございますので、先生指摘のように、今後も引き続き、こういう現象の調査というものに力を入れるべき事柄であるというふうに考えます。
  270. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 現在のB地点というのは、とりあえず試験海洋投棄候補地なんですが、その後、本格的な海洋投棄の場合、再びそこが候補地になる可能性だってあると思うのです。そうだとしますとなおのこと、特にこういう権威ある専門家の指摘している観測方法、測定方法、これはやはりぜひ早期に取り入れる必要があると思うのです。  大臣、予算を伴うことでもありますが、ぜひとも今後の測定調査を、こういう専門家の指摘に沿って充実されるように要望したいと思うのですが、いかがでしょう。
  271. 長田裕二

    ○長田国務大臣 関係者がなお最も適切な方法というものを検討してくれると思いますので、そういう方向に沿いまして私も努力はしてまいりたい、そのように考えております。
  272. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第三番目の問題は、水産資源に対する影響で、これは朝ほど来ずいぶん論議をされております。  先ほど申し上げました、初めて本格的に廃棄物処理の問題が論議された廃棄物処理専門部会の報告にもあるのですが、その中で、基本的な考え方の柱の一つに「わが国における海洋利用の特殊性を十分に考慮するものとする。」というのがありますが、ここで言う「わが国における海洋利用の特殊性」とは、どういうことを指しているわけですか。
  273. 牧村信之

    牧村政府委員 日本人は、非常に海産生物を多量にとるということが中心の事柄であるというふうに考えております。
  274. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まさに海洋投棄の問題が考え始められかけた一番最初から、この問題は基本的な考え方の根底、こういうふうに言われておるわけですね。これは終始ついて回る問題だと思うのです。  そこで、水産庁がこの放射性廃棄物海洋投棄に対して基本的にどういう見解を持っていらっしゃるのか、科学技術庁その他の考え方にとらわれないで一遍言っていただきたいと思います。
  275. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 御承知のように、水産庁は、国民の食糧生産を担います産業を管理している部門でございますので、当然のことながら、その生産物は漁場から上がってまいるものでございますから、漁場の保全あるいは漁場が汚染されることについては、特に意を用いていかなければいかぬということを常々考えているわけでございます。  放射能の問題につきましては、そのほか、先ほども申し上げましたように、漁業界にとりましては、やはり二つほど、特殊なと申しますか、事情がございます。一つは、過去に放射能汚染によって手痛い打撃を受けたという経験を有していること、それから海で操業し、かつ海で生育するものをとりまして業としている産業であるという性格からいたしまして、自分たちが操業する海が汚されるのは基本的に反対と申しますか、そういう性格の産業であるということでございます。  そうしたことも頭に置きまして、水産庁としましては、やはりこの放射能投棄がやられるとすれば、一つは、先ほど申し上げましたように、海洋を汚染することにならないようにやっていただくということ、それから海洋処分だけを推進するような政策をおとりにならないこと、それから関係業者の了解を得てやっていただくこと、そういうような考え方で行わるべきであるというぐあいに考えております。
  276. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほど牧村局長の方は、数多くの漁業者団体に御理解を求めている、こういう話だったのですが、これはいわゆる中央レベル漁業者団体ということなのか、さらに地方レベル漁業者団体ども接触しているのか、どういうふうな団体であるかということ、それから、いま率直な話が水産庁からあったのですが、科技庁がこの漁業者団体からいろいろ聞いている意見をどうまとめているのか、聞いておきたいと思います。
  277. 牧村信之

    牧村政府委員 私ども漁業者団体お話を進めておるわけでございますが、これは水産庁の御指導もいただきまして、まず大日本水産会を窓口にさしていただいております。御存じのように大日本水産会は、全国の漁業者団体の総取りまとめの機関でございます。そこにまずお話をいたしまして、そこの御了承をいただいて、現段階は、全漁連を初めといたしまして、関係するたしか二十四の協会あるいは組合に説明をしておるところでございます。  主なものを申し上げますと、カツオ・マグロ漁業関係では十幾つ、これは各県単位のものもございます。そういうものも含めまして十幾つの連合会あるいは協同組合、船主組合、協会、県段階の組合等にもお話をしておるところでございます。  それから、底びきの漁業者関係では、全国の連合会あるいはトロール、底びき協会等の三機関お話を進めております。また、まき網漁業界につきましては、全国まき網漁業協会を初めといたしまして、その傘下あるいは関係する三団体にお話をしております。そういうことで全部で二十四、五にわたる漁業者団体に、私ども計画並びに安全評価の結論等を御説明して回り、近々、全漁連あるいは大日本水産会等に意見を集約さしていただくような方向でお話を進めておるところでございます。
  278. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 再び水産庁の方に伺いますが、「試験的海洋処分の環境安全評価に関する報告書」にも海産生物に関する事前調査の要約が出ております。それを見ますと「表層と深層との生物によるつながりを示唆する事実がいくつかみられたことに注意しなければならない。」、これは「示唆する」でありますから、確認ができたという意味ではないのだと思うのです。少なくとも今後、この種の研究の必要性をむしろここで示唆しているのではないかと思う。それからまた、別のところでは「現在のところこのような生物を媒体とする物質輸送の速度および量を明らかにすることは難しいが、三、〇〇〇メートル以浅ではかなり速やかに行われているように推察される。」と、ここでもまだ、生物を媒体にして放射能物質がどのように伝わっていくのかということの調査はできていないこと、あるいはまた「推察」というふうな表現をとっているわけですね。  そういう点で、やはり海産物の実態調査というのは、特に深くなればなるほど非常に困難だということがここにあらわれているのではないかと思うのですが、そういう意味で、水産庁が水産界の意見を背負って、今後特に、実際に海洋投棄が行われるとした場合、こういう研究調査面で強めなければならぬとお考えになっている分野、あるいは調査項目等があればお答えいただきたいと思うのです。
  279. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 放射能投棄に関係いたします海洋調査とか一切の調査研究は、科学技術庁の予算におきまして、その全体の計画の中で、水産庁もいわゆる予算の移しかえをいただきまして、一部分担をしているという関係でございます。したがいまして、先生指摘お話につきましては、おいでになりますけれども科学技術庁の方によくお話をして、検討していただくということにしたいと思います。
  280. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣、これは大事なことだと思うのです。先ほどの水産庁の話をお聞きになったと思うのですが、漁業界は二つの特殊な事情があって原則的には海洋投棄反対なんですね。しかし、事情やむを得ず認めようか、こういうことなんです。それだけに今後の安全について一番懸念をしているのもまた漁業者、こういうことになります。この面での研究予算が、いまの話では、科技庁によって枠を縛られておるということなんですから、やはり科技庁でこの面に重点的に予算を配分して、水産界の心配のないような研究調査ができるようにしてあげる、こういう責任があると思いますね。  大臣、ちゃんとそういうことを実行されるかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  281. 長田裕二

    ○長田国務大臣 科学技術庁の方の立場といたしましては、海洋投棄物による被害現実に起こらない、あるいはゼロにきわめて近いという状態を実現するために全力を挙げ、そういう事態と申しますか結果をよく御理解していただくということがまず第一ではなかろうか、そのように考えております。
  282. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それの第一であることはよくわかるのですが、いま大臣の言われたことを一方で科学的に証明しない限り、やはり漁民は納得できないわけですね。そのために、これまでやられた調査の結果を見てみますと、これは科技庁の報告書なんですが、まだまだ不十分な、ようやく関係がわかりかけたところだというようなことになっているわけですから、今後の調査をさらに深め拡大していくために、水産庁が必要だという予算については、科技庁からもらうという仕組みになっているようですから、科技庁でちゃんとがんばって水産庁につける、こういうことにならないとやれないと思うのです。ここを聞いているわけですから、もう一遍答弁をはっきりお願いしたいと思います。
  283. 長田裕二

    ○長田国務大臣 いままで科学技術庁の方でいろいろやってまいりました調査の結果も、私は、相当なものだとは思っておりますが、水産庁側におかれます御心配というものが、現在のところ、何といいますか、私どもの方の成果というものが相当上がってまいりますと、心理的な影響という面が多分に多くなってこようかと思います。しかし、そういう心理的な御心配といいますか、そういう影響も極力少なくしていただくということについては、海洋投棄物の安全性というものについての十分な御理解をいただくことが先決でございますから、そういうことにつきましても、私どもも今後十分に気をつけてまいりたい、そのように思っております。
  284. 牧村信之

    牧村政府委員 大臣の御答弁を補足させていただきますが、原子力関係予算のうち、関係各省の試験研究に必要な経費というのは、原子力委員会が一括計上をいたしまして、それで、その要求の形は、確かに科学技術庁が大蔵に要求するという制度があるわけでございまして、取れた上で関係省庁に予算を移しかえるという制度で長年やってきておるところでございます。  先生の御指摘のように、なおまだ不十分な面が必ずしもないとは言い切れないと思いますし、今後のこういう海洋調査というものについての経費につきましては、水産庁を含めましてできるだけ関係省庁の要望を入れるような努力を私どももしてまいりたいというふうに考えております。
  285. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それと海産生物に対する影響なんですが、心理的だというふうに決めつけるのは、私、間違いだと思いますよ。  再び三宅博士の論文を引用いたしますが、「深海の動植物が海洋全体の生態系の中で、どのような位置をしめているかは、まだ十分にわかっていないし、また、放射性物質が生物自体にあたえる影響についても、定説がない。したがって、生物への影響評価については、慎重の上にも、慎重を期さなければならない。」、これはそう軽率に判断してはいけないということが基本にあるわけですね。  ですから、科技庁の方も水産庁の方も十分心して、こういう水産生物に対する影響というものを今後考慮してもらいたい、こう思うのですが、いいでしょうね。
  286. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘の食物連鎖に関します調査研究の国の専門機関としては、農林省の関係機関が最もすぐれた組織であるということは、おっしゃるとおりでございますので、私どもも、今回の安全評価に当たりましては、これらの機関調査研究された成果を、できるだけ安全サイドに評価するような姿勢で安全評価をしたつもりでございます。したがって今後、こういうような問題についてさらに研究を進めるべきであるという先生の御指摘、いろいろまだ不明な点があるわけでございますので、できるだけ推進していくべきことと私どもも考えておるところでございます。
  287. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第四の問題は、国際的合意といいますか協調の問題です。  先ほども少し出ておりましたが、この海洋投棄を予定している場所は、いずれにしても公海なんですね、そういうことを考えますと、国際法上の拘束があろうとなかろうと、一国の都合だけあるいは一部の国々の合意だけで投棄してよいというものではないと思うのですが、いかがでしょう。
  288. 牧村信之

    牧村政府委員 先生の御指摘のとおりだろうと思います。したがいまして、私どもも可能な限り、国際間の合意を取りつける必要があると思っております。  その手段といたしましては、まず、ただいま御審議をいただいておりますロンドン条約加盟のための条件を整えさせていただく、こういうことによりまして、日本も国際的な基準その他に基づいてやるということに対する御理解を高めていく必要があろうかと思います。  またもう一つ、経済協力開発機構の下部機関でございます原子力機関の中に設置されております国際的な監視機構にも入りまして、日本が国際的にも認められた基準によって、また厳正な規制によってやっておるのだということを身をもって示して、そういうような関係国の了承を得る努力を引き続きする必要があるというふうに考えております。
  289. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま牧村局長が言われたOECD・NEAの中の多国間協議及び監視機構の主催による北東大西洋における現行投棄場所の適合性を検討するための専門家会議が、五十三年の十一月にパリで開かれておりますね、このときの会議の結論はどういうことだったのですか。
  290. 牧村信之

    牧村政府委員 日本はまだこの監視機構に加盟してはおりませんけれども、オブザーバしという立場で放射線医学総合研究所の市川という方に出席をお願いして、その会議の中身をフォローしておるところでございます。  その結論は、一言で申しますと、あの場所であと五年くらいは投棄を行い得るということであったかと聞いております。
  291. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 政府側としてそういう受けとめ方は、私はまことに心寒いものを感ずるのです。この会議には、確かにいま言われましたように、オブザーバーとして市川さん外三名、全部で四名の専門家が日本から参加していらっしゃるでしょうが、その参加したお一人である猿橋勝子博士の報告では「いままでも協同海洋投棄に積極的に参加し、今後もまた、海洋投棄をつづけたいと考えているイギリスとオランダの代表と、海洋投棄には参加せず、しかも大西洋でかなりの漁獲をあげているポルトガルとカナダの代表との間には、大きい意見のくいちがいがあった。現行海域に放射性廃棄物を、投棄しつづけることの可否をきめるには、資料が不十分であるとして、一致した見解をもつにはいたらなかった。一応の妥協案として、一九七九年には、いままでくらいの量の放射性廃棄物投棄をみとめることとし、一年以内にふたたび専門家を招集し、資料をととのえて検討をしなおすこととなった。」、これがこの会議の大体の要約ではなかったのですか。
  292. 牧村信之

    牧村政府委員 大変失礼いたしました。五十三年の会議の結論は、ただいま先生おっしゃられたとおりでございます。  その後、五十四年に再度開かれたわけでございまして、そこで、先ほど私が申し上げましたような、あと五年は大丈夫だという結論が出たということでございます。
  293. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 参加した猿橋氏は、会議の模様からこういう一つの結論を出していらっしゃるのです。「十年以上も以前に、不十分であったとはいえ、一応の事前評価をおこない、その後十年余の間、深海投棄をつづけることを許してきたOECD・NEAのグループがこのような討議を展開し、結論を一年後にのばすとは、」、延ばした結果、去年またそういう暫定的な結論にしかなってないんですね。「筆者は当初予想していなかった。このことは、放射性廃棄物海洋処分実施には、いかに困難な多くの問題があるかを物語るものであろう。」、現在、国際的な共通認識というのは、とにもかくにも放射性廃棄物海洋投棄には非常に多くの困難があるのだ、こういうことではないかと思うのですが、いかがですか。
  294. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のように、この会議におきましても、関係国の中で、海洋投棄実施することに反対の立場をとっておる国もあることは事実でございます。そういう観点からいきますと、国際的な合意を得るということは、そうやさしいことではないことであろうと思うわけでございます。  したがいまして、私どもは、このロンドン条約に加盟し、OECDにも加盟して、国際的な合意を得る土俵をまずつくりまして、日本海洋投棄実施に当たりましての理解を深めるような努力をしてまいる必要があるというふうに考えておるところでございます。
  295. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 現在、ソ連もまた海洋投棄には強く反対している国の一つではないのですか。
  296. 牧村信之

    牧村政府委員 ソ連も確かに批判的な立場をとっておる国の一つであるというふうに理解しております。  しかしソ連の場合に、いま原子力開発を一生懸命やろうという計画でやっておりますけれども、何せ広大な国土を持っておるということでございますので、海洋投棄をする地理的な条件もソ連は非常に不利な位置にあるということもまた事実ではなかろうかと思っております。
  297. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ソ連も参加している放射性廃棄物投棄に関する科学会議、これがIAEA、ユネスコ、モナコ公国共催で行われたときに出席しておりましたソ連の代表は「放射性廃棄物海洋処分には、終始、つよい反対の姿勢をしめした。」、こういう記録もあるわけですね。ですから、決して、自国が海洋に捨てる必要がないから反対しているのではなくて、やはり科学的あるいは基本的な立場での反対、こういうのがソ連の現在の態度ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  298. 牧村信之

    牧村政府委員 私どもは、現在までのところ、先生がおっしゃられるようなことでの断定をするまでの資料は、残念ながら持ち合わせがございません。
  299. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 こういう国際間の状況のもとで、では、わが国の国際間の協調のあり方について、これまたこれまでいろいろな専門部会あるいは審査会等がありますが、その報告書には、すべて、国際的合意を基本にすべきだという強調があるのではないかと私は思うのです。  一番最初の報告書であります、再々引用しております「廃棄物処理専門部会の報告書」、この中でも、考え方の基本として「国際的に密接な関係があるので、国際見地からの配慮を十分に払うものとする。」、これは原子力委員会の中でこういう報告が出ているのですから、当然政府も、またこれには一定の拘束を受けているはずだと思います。なお、その中では「海洋処分の国際性に鑑み、国際的なとり決め等について十分考慮を払う必要がある。」、こういうものに留意しないで勝手にやっちゃいかぬぞという歯どめがかかっていると思うのです。  さらに、その後の四十八年六月の「放射性固体廃棄物分科会報告書」、この中でも、さらに明確に「このような情勢のもとで海洋処分実施するには、国際社会の理解に基づいて行なわなければならない。処分海域の条件、処分可能量、処分に関する技術的基準処分方法の要件等について国際的な意見の統一に努力する。」、こういうことをちゃんとここでもうたっているわけです。  そういう点で、これはまさに政府部内に設けられた分科会の報告書ですから、政府としても、これを尊重し、具体化する、この努力がまず第一でなければならないと思いますが、どうですか。
  300. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のとおりでございますので、関係各省庁と協力しつつ国際協調の実を上げるように今後とも努力してまいりたいと思います。
  301. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それだとすれば、先ほどソ連が批判的ないしは反対の立場をとっている、これは重視すべきことだというのは三宅博士の指摘でありました。それから太平洋は決して日本だけの海ではないということも、これは自明のことですね。それからさらに、先ほど牧村局長自身が、ロンドン条約に入ってなくても国内法だけで投棄できるが、しかし国際的理解を深めてやっていくべきだということで条約に加盟したのだ、こういう趣旨の答弁をされているわけですね。それらを総合すれば、少なくとも私が思いますのは、太平洋を囲む諸国間で十分な意見交換、協議、研究の交流を行って、まさに先ほど私が引用いたしました分科会の報告書にあるとおり、国際的な意見の統一にまずわが国が努力をする、こういうことが必要ではないかと思うのです。  そういう努力をしているのかしていないのか、あるいは今後する用意があるのかないのか、いかがですか。
  302. 牧村信之

    牧村政府委員 このロンドン条約に加盟し、それからOECDの監視機構に入るというようなことをまずやりまして、その上で関係各国理解を求めるような努力を進めていきたいというふうに考えておりますので、現在時点では、関係諸国に何のアプローチもしていないのが現状でございます。今後やっていきたいということでございます。
  303. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういう状況だから当然だと思いますが、現在、太平洋に投棄計画しているのは日本だけではないかと思うのです。ある意味では、日本が独占的に投棄する場所に太平洋がなっていると思うのですが、余り好ましいこととは思いませんけれども、他の国々が太平洋での投棄に加わる場合がないとは言えないと思うのです。こういう場合は、やはりわが国の前提が崩れてきまずから、わが国自身の計画も見直していかざるを得ないという場合も起こってくるのじゃないですか。
  304. 牧村信之

    牧村政府委員 日本のように、試験的海洋処分をした後、本格的処分をしたいということでいろいろ計画を立案している国はございませんけれども、太平洋を囲む国の中で原子力開発が比較的進んでおる韓国であるとか台湾であるとかいうような国につきましては、この海洋投棄について非常に注目しておるやに聞いておるところでございます。したがいまして、今後は、そういうような国でいろいろな計画が持たれるとすれば、日本計画も国際間で調整し合うというようなことは当然考えなければいけないことではなかろうかというふうに考えて対処してまいりたいと思っております。
  305. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第五番目の問題は、人命に危険がある場合は、例外的に海洋投棄が総理大臣の許可がなくても許されますね、この問題であります。  廃棄物の運搬船が目的地に着くまでに事故を起こした、目的地点以外で投棄せざるを得なくなった場合はどういうことになるわけですか。
  306. 牧村信之

    牧村政府委員 条約上は、そういうような場合には許可を受けないでも投棄するのは許されるとされておるわけでございます。しかし、私どものいまの考え方は、できるだけ季節が安定したと申しますか、船が遭難するようなことがないような条件のいいときにしか出航させないような指導をすることによって、そういうことが万々一にもあり得ないようにできるだけ指導してまいりたいというふうに考えております。
  307. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それが大原則だと思います。しかし万一の場合には、一応これは条約上も例外措置になるわけですね。そういう場合、投棄が行われた後の海洋安全性の確認等はどういうふうにするのか、計画は立っているのですか。
  308. 牧村信之

    牧村政府委員 私どもの基本的な考え方は、先ほども申し上げましたように、そういうことが起こりそうな時期に絶対出さないという線でまずやることが第一条件だと思っておりますが、そういう態度にもかかわらず、船が災難に遭うことは全くゼロだとは言い切れないわけでございます。したがって、投棄地点以外のところで投棄せざるを得なかったというような事態が起きたときには、具体的な計画はまだできておるわけではございませんけれども、現在の海洋調査等の組織を臨時的に強化して、そういう地点影響につきまして十分調査する必要が出てこようかというように考えております。
  309. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 気象的にもできるだけいい条件のときを選ぶ、これは当然でありますが、先ほどの答弁の中で、船をチャーターして改造してということでしたね、しかし、何よりも船自身もそういう海難等を起こさない信頼性の高い船でなければならないと思うのです。そういうことが第一条件ではないかと思うのです。安易なチャーターではよくないのではないか、そう思いますが、いかがですか。
  310. 牧村信之

    牧村政府委員 考え方は、現在のところ、私どもは貨物船をチャーターいたしまして改造するという方針でございますが、安全性の高い船であるべきだということについての考え方につきましては、運輸省の指導に待ちたいというように考えておるところでございます。
  311. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 運輸省、来ていると思いますが、この運搬船について何か特別なお考えはお持ちですか。
  312. 野口節

    ○野口説明員 御説明いたします。  ただいまの先生のその安全性の問題でございますが、御承知のように、船は、これは一概ではありませんけれども、大体四年ごとに私ども国の方が厳重に検査をしております。構造、設備、そういう面で安全性の確保を図っておるところでございます。
  313. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 つまり、そういう一般的な定期検査等で十分安全は担保できる、それ以上のことを放射性廃棄物の特別運搬船だからといって考える必要はないというのが当面の運輸省の方針なんですね。
  314. 野口節

    ○野口説明員 船に積みます危険物の程度によりまして、船の構造その他は基準によって決まるわけでございますけれども、そういう特別の要求がなければ通常基準で十分だと考えております。
  315. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 科技庁は運輸省の指導をもらってと言うが、いまのところ、運輸省にはこの廃棄物運搬船について特別な指導はないようですね。これは大臣、検討をしなければならないことだと思いますよ。  それから、原子力船が海難に遭遇するとかあるいは故障を起こして危険な状態になった場合、これもまた例外に該当するのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  316. 牧村信之

    牧村政府委員 ただいま御審議いただいておりますロンドン条約の要のための国内法整備でございますので、先生指摘原子力船の問題は、ロンドン条約で要求しておるものとは別の事柄で、ロンドン条約ではそういう点について何らの規定がなされておりません。
  317. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ということは、今回のロンドン条約並びにこれに基づく法改正では、原子力船については何ら拘束を受けていない、こう考えていいわけですか。
  318. 牧村信之

    牧村政府委員 先生の御説のとおりでございまして、原子力船が運航されまして、そこで生じる廃棄物投棄するということについては、ロンドン条約では対象外の問題として取り扱っております。陸上等の原子力施設で低レベル廃棄物を廃棄する、海洋投棄する、あるいは海上で施設を使って燃焼させるということでございまして、そういうような施設からの直接の廃棄物は、ロンドン条約では規制の対象にしていないところでございます。
  319. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしますと、私が尋ねておりますような、原子力船が万が一不幸にして海難事故を起こすとか、あるいは故障で船内にクローズしておる放射性物質廃棄物等をどうしても海中に廃棄せざるを得ないという場合は、いまのところ何ら拘束を受けるところなし、こういう理解でいいわけですか。
  320. 牧村信之

    牧村政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。原子力船は、日本の「むつ」につきましては、廃棄物等が出ましても、それは全部保管するというたてまえで原子力船の事業所の中で扱うわけでございますが、事故の場合も可能な限り出さないようにすべきであろうと思いますが、この条約の対象外の問題でございます。
  321. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうであればあるだけに、私は、原子力船の安全性については厳格でなければならぬということをいま痛感いたしました。  そこで、スリーマイルアイランド事故、これは満一年たつわけでありますが、陸上のPWRについては、定検中のものはもちろん、当時一基動いておりました大飯原発についても、最終的には安全委員会がストップをして特別な点検を施したわけですね。本来なら原子力船「むつ」の場合も、PWRなんですから、この特別な点検の行われる対象になっているはずだと私は思うのですが、「むつ」をその対象にしなかった特別の理由が何かあるのですか。
  322. 牧村信之

    牧村政府委員 先生御存じのように、原子力船「むつ」は、遮蔽改修工事のために当分の間動かすつもりはないわけでございます。したがいまして、いま直ちに動くわけでございませんので、特別な改造をさせる、たとえばECCSの起動状態を改造させるというようなことをいままでやっていないわけでございますが、実は原子力船が放射線漏れを起こしましてから、遮蔽改修工事と並行いたしまして総点検をすることになっておるわけでございます。それで、その総点検の検討の項目の中には、当然、軽水炉の安全性ということで、TMIの事故を教訓にした点検を加えて実施したいというふうに考えておりまして、現在、原子力船開発事業団が、その対応につきまして鋭意検討を進めておるところでございます。
  323. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ということは、簡潔に言えば、一般的に言えば、PWRであるからスリーマイルアイランド事故直後の一斉点検の対象であったのだけれども、当分動かす見込みが立っていないから点検から外したのだ、こういうことなんですね。
  324. 牧村信之

    牧村政府委員 全くやっていないということではないのですが、たとえば運転員が事故に対応する訓練をやらなくてはいけないというようなこと等は実際に行っておりますけれども、運転が再開されるのはまだ先の話でございますので、ほかの原子力発電所等に比べてテンポが遅いことは事実でございます。
  325. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 われわれは決してやれと言っているのではないけれども、それでは、運転を再開する前には、陸上のPWRで行ったようなスリーマイルアイランド事故を教訓とする特別な点検を必ずやる、それをやってからでなければ動かさない、こういうことなんですね。
  326. 牧村信之

    牧村政府委員 そういうような措置をとってから運転するという姿勢でおります。
  327. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 同時にまた、原子力軍艦も今回のロンドン条約並びにこの法改正の規制の対象外ですね。
  328. 牧村信之

    牧村政府委員 おっしゃるとおり対象外でございます。
  329. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、この点が一番大きな弱点ではないかと思うのです。アメリカ原子力潜水艦その他の原子力艦船が日本にやってくる、これに対して規制が及ばない。この間も沖繩で原潜からではないかと思われる異常放射能が出されている。こういうわけですから、こういう原子力軍艦を日本法律による規制の対象外に置いているそのことの危険、これはいかに理由をつけたところで科学的な危険性の点では全然変わらないわけでありますから、こういう機会に再検討をすべき問題だと思いますが、いかがですか。
  330. 牧村信之

    牧村政府委員 原子力軍艦が通常原子力船の運航等を規制する国際条約等から除外されておる例は、国際慣行上すでに認められたものでございますので、このロンドン条約では、当然、原子力船を対象外にしておるということでございます。そういうような国際的な慣行も踏まえ、また日米安保条約の線から日本アメリカ原子力軍艦が入ってきておるわけでございまして、それにつきまして日本政府がアメリカ規制を及ぼすということは、全く不可能な状況にあることは事実でございます。したがいまして、私どもとしては、入港に当たりまして事前、事後の環境のモニタリング等を、県等の協力を得まして実施しておりますし、入港に当たりまして、アメリカ政府が日本に約束したことを厳守させるように努力していく、この努力によりまして安全を確保するということではなかろうかと思っております。
  331. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 国際的な慣行があるからとか、あるいは日米安保条約があるからと言っても、原子力軍艦の危険性が他の原子力施設に比べてやわらぐというものではないわけなんですから、そういう点では、国民サイドに物を考える場合、これはいずれ改めなければならない問題だと私は思っております。     〔委員長退席、貝沼委員長代理着席〕  第六番目の問題は、廃棄物の輸送、荷役の問題なんですが、放射性廃棄物の陸上輸送の可能性はあるのでしょうか。
  332. 牧村信之

    牧村政府委員 わが国の原子力発電所はすべて海岸に接してつくられておりますし、その海洋投棄に当たりましては、どこかに集荷して行われるわけでございます。いずれにしても、船を使い得るわけでございますので、敷地内の輸送は十分考えられるところでございますが、一般的に道路を相当の距離使うということは、原子力発電所から出る低レベル廃棄物については余りなかろうかと思っておりますが、放射性同位元素等を使っております事業所等から出てまいります低レベル廃棄物の輸送ということは十分考えられるところでございまして、それらにつきましては、輸送を行いますときに守るべき技術基準等がすでに定められておりまして、一定の規制条件のもとで輸送が行われるシステムになっておるところでございます。  なお、この国会に別途障害防止法の改正をお願いしておりますけれども、その中では、輸送につきまして、さらに厳格な規制を行うために、科学技術庁長官並びに運輸大臣の確認制度を設けるような法制度の改正もお願いしておるところでございまして、汚染廃棄物等の輸送に当たりましては、安全が十分確保できるようにこれからも鋭意努力してまいりたいと考えております。
  333. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 わが国の原子力発電所の場合は、すべて構内に船積みが可能な岸壁を持っているのですか。
  334. 牧村信之

    牧村政府委員 日本原子力発電所で岸壁を持っていません発電所は、中部電力の浜岡原子力発電所だけでございます。
  335. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういう場合は、どうしても一般の港を使わざるを得ないと思うのです。それと先ほどの原子力発電所以外の場合の運搬とがあるわけですが、そういうふうにして陸上から運んできたものを、港といいますか岸壁に一時保管するという状態が起こった場合、その岸壁は管理区域になるのですかならないのですか。これは運輸省からお答えいただくということで、科技庁答えられないということでおいでいただいたのですが、運輸省いかがですか。
  336. 牧村信之

    牧村政府委員 海洋処分がしょっちゅう連続的に行われるわけではないわけでございますので、そういう輸送の際、積みかえ等を行う場合には、一時的に管理区域を設定して、その管理区域内の被曝管理等を行うことはもちろん、関係者以外は出入りできないような立ち入り制限区域を設ける等のことを行いまして、安全の措置を講ずることになっております。
  337. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから、運搬船については、その船の管理区域、非管理区域というのはどういうふうに定められていくわけですか。
  338. 野口節

    ○野口説明員 運搬船につきましては、船舶安全法の中の危険物船舶運送及び貯蔵規則というのがございまして、放射性物質等の輸送もこれで規制されるわけでございますが、こういう放射性物質等を積載した場所及びその周囲には、必要に応じて立ち入り制限区域というのを設けるように規定してございます。そこに関係者以外の者は立ち入らないようにということは、船長の義務として規定されてございます。
  339. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 さらに、その運搬、港湾での荷役それから船員の方、この中で、いわゆる従事者とみなされる人と一般人とみなされる人と、どこで区別するのかを聞いてみたいのです。
  340. 牧村信之

    牧村政府委員 物を運搬いたしますときに、それぞれ何人かの担当があるわけでございますが、その投棄物、廃棄物等に、いろいろな作業によりまして直接手を加える方は、当然通常の管理区域内で言われております常時立ち入る従事者として管理いたしますし、たとえば運転だけをやるような人であれば、それは一時立ち入る者として管理すべき問題であろうかと思っております。それぞれ規制法では、その被曝線量限度というものは、一時立ち入り者の方に厳しく規定されておるところでございます。
  341. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから船の方……。
  342. 野口節

    ○野口説明員 船内におきます被曝管理は、船員その他区別してございません。船内にある者はすべて同じように被曝管理を受けることになります。
  343. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 船の方は、これではっきりするのですが、陸上の方は相当不明確な部分もあるのではないかと思うのです。たとえば荷役に当たる場合に、直接その荷物にロープをかける人、当然のことながら、常時立ち入る従事者になると思いますが、では、クレーンの運転なんかをしている人はどうなるのだろうかという懸念が持たれますね。そういうふうな実際これを実行するとなった場合、つまり試験的に海洋投棄を実行するとなった場合、現在の法律や制度を具体化する上でやはり相当問題は出てくるだろう、これが専門家の指摘一つであります。だから、試験的海洋投棄をするというならば、模擬的に海洋投棄の全システムについてリハーサル、こういうものがやはりやられてしかるべきではないか、こういう意見も聞いてまいりました。こういうことを、政府としてはやはり耳を傾けて実行に移すべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  344. 牧村信之

    牧村政府委員 規則等で管理区域に常時立ち入る者を従事者として一律的に規制するのは、先ほど申し上げたとおりでございます。管理区域に余り立ち入らない、一時的、臨時的に立ち入る者につきましては、また別の規制で厳重にやるということでやってまいるわけでございますので、規定上ははっきりしておるわけでございますけれども先生指摘のように、大量の低レベル廃棄物を輸送する際に実態に合わない点がもし仮にあるとすれば、直すべきところは直していくような姿勢で臨むべきだと私も考える次第でございます。
  345. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第七番目の問題は、廃棄物チェック、点検の問題であります。  何十万本もの、本格投棄の場合ですが、ドラムかんについて、その中にどういう核種が入っているか、あるいは表面線量はどれくらいあるか、こういったことが正確に調査できるのだろうか、こういう疑問に政府はどのように答えますか。
  346. 牧村信之

    牧村政府委員 低レベル放射性廃棄物につきましては、現在海洋投棄していないわけでございます、保管しておるわけでございますが、その際にも、どういう核種が入っておる、その中にはどの程度のあれが入っておるということ、それを記録にとどめておりますし、一定レベル以上のものは、容器に表示をするような義務づけをしておるところでございます。海洋投棄に当たりましても、そのための運搬あるいは船に積み込むときにそういうことを一々確認し、また記録をとり、実施することになっておるところでございます。
  347. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そのいわゆる確認が問題なんですが、故意かあるいは過失かによって記録の誤りということも起こるだろう、扱いの誤りもあるだろう、そういうときに、じゃ、実際中にはどういう核種が入っていたのか、後になって確認はできるのだろうか、数がこれだけ多くなりますと。その点はどうかということです。
  348. 牧村信之

    牧村政府委員 それを一々役所が、詰められた後確認することは、確かに先生おっしゃるように確認できないわけでございますけれども一つ方法としては、表面線量を義務づけておりまして、また役所の検査官がその投棄物等の表面線量を測定するということで相当程度の確認はできるものと思います。また事業者には、こういう操作をやるときに、法律に基づく保安規定等によりまして、そういう作業を義務づけておりますので、もしそういうことが起これば違反になるわけでございますので、その辺は厳重に実施させるという姿勢で臨みたいと思います。
  349. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一般廃棄物放射性廃棄物が混入した場合、これはもう海洋汚染防止法の範囲に入ってくると思うので、放射性物質チェックはできなくなってしまうのではないかと思うのですが、いかがですか。
  350. 牧村信之

    牧村政府委員 現在の原子力二法によりまして、放射性物質によって汚染されたものを一般廃棄物の中に入れることは厳に禁止されておりますので、そういうことが起きることはまずなかろうかと考えます。
  351. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 五十一年七月六日の科学技術の特別委員会、本委員会で私が指摘したことなんですが、昭和四十六年に住友原子力工業が臨界実験装置を解体したのです。そのとき、その構成材料であったステンレス棒が放射化されておったにもかかわらず、放射化されていないという住友原子力工業の届け出を科学技術庁が十分チェックしなかったために、スクラップにされてしまったのです。ところが、それから五年たって、そのステンレスが加工品として出回った段階コバルト60が検出されて大問題になったことがあるのです。この委員会でも私がただしまして、大臣がおわびをされたことがあるのです。  大量の一般廃棄物があるわけですし、現にこういう事例もあることですから、こんな大層な間違いは別として、故意か悪意か、放射性物質が混入しないという保証は私は全くないと思うのです。そのときにやはりチェックができる関門がないと、下手をすると一般廃棄物として相当量の放射性廃棄物が海に投じられることなきにしもあらずだと思うのです。やはりチェックはどこかで考えなければならないと思うのですが、いかがでしょう。いま制度がなければ将来考えるとか……。
  352. 牧村信之

    牧村政府委員 原子力関係二法におきましては、事業所から外に廃棄いたしますときには、一定の基準を定めてございまして、それを守らなくちゃいけない、また守っていないときには守らせるような措置命令をとることができる。それから今般の改正によりまして、障害防止法を含めまして主務大臣の確認を受けなければならないというふうな非常に厳重な規制をやっているところでございまして、先生から過去の点につきましての御指摘を賜ったわけでございますが、今後とも、その法律にのっとって厳正に処理処分が行われるようにすべきであると思いますし、私どもも努力してまいりたいというふうに考えます。
  353. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 法律や規則で縛るのは当然のことなんですよ。だけれども、それでもやはり間違いは起こってくる。だから、それはもう大量の一般廃棄物の全面チェックはできないでしょうけれども、しかし、やはり抜き取り検査等で放射性物質の有無を確認する、こういうふうな道ぐらいは考えておかなければならないのじゃないか。一般廃棄物と名がつけば一切放射性廃棄物の場合の点検はないということはちょっと危険じゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  354. 牧村信之

    牧村政府委員 先ほど申し上げましたけれども放射性廃棄物を保管あるいは廃棄する場合に、いろいろな規定によりまして種別をし、また記録をとるということをやらしておるわけでございますので、先生指摘のように、今後、そういう点について、たとえば立入検査でそういうことが十分行われておるかというようなことを私どもも努力していかなければならないと思いますので、関係省庁ともよく協議しまして、そういう点についての配慮もさらに加えたような姿勢で具体化を検討してまいりたいと思います。
  355. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 第八の問題は、研究予算並びに研究体制の問題であります。  放射性物質海洋投棄に関連して四十七年から本格的に海洋調査が行われているわけでありますが、この海洋投棄を前提とした海洋調査に国の費用はこれまでどのぐらい使われていますか。大まかに機関別に、そして合計をお答えいただきたいと思います。
  356. 牧村信之

    牧村政府委員 昭和四十七年以降五十五年予算まで含めましてお答えさせていただきます。  水産庁にお願いしております海産生物、海洋環境、漁場、海産生物の放射能バックグラウンド調査ということで二億九千万円でございます。それから気象庁には、深層流あるいは表層の流れ等の調査をお願いしておりますが、現在まで一億七千七百万円を計上いたしました。それから気象研究所には、海底付近の鉛直拡散というテーマにつきまして調査をお願いしておりまして、五十五年度までに五千九百万円でございます。それから理化学研究所に、中心層における流速の測定ということで五十三年度から研究を始めていただきまして、五十五年までに一億三千五百万円を計上いたしました。それから海上保安庁は、海底地形、地質、海水、海底放射能のバックグラウンドの測定をお願いしておりまして、一億二千万円をいままでに計上しております。トータル七億八千万円でございます。
  357. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣、現在、五十四年度の原子力の安全研究費の総額は二百五十億ほどなんですよ。この海洋調査に使われている費用というのは微々たるものですね。この点でもやっぱり学者は強い要望をしているのです。三宅さんはこう言っています。先ほど挙げました海洋学的事前観測調査の六項目ですが、「上記の六つの観測項目については、それぞれ関係研究機関の専門家を動員して、研究組織をつくり、周到な観測計画を樹立し、それぞれ分担を定めた上で、国が短期、長期のナショナル・プロジェクトとしてとり上げるのでなければならない。予算規模は計画ができなければ、正確にはわからないが、おおよその見当としては、年間、数十億円の程度となろう。これは国の原子力予算の総額にくらべれば、微々たるものである。しかし、最少限度この程度研究観測調査事前におこなわれていなければ、国内的にも国際的にも、放射性廃棄物の深海処分が容易に受け入れられるとは思えない。」、先ほど少し漁業に関連したときにも要望いたしましたが、こういう点で本格的に政府も海洋投棄しようというのですから、海洋調査に対する予算を思い切ってふやすということに踏み切っていただきたいと思うのです。大臣の答弁をいただきたい。
  358. 長田裕二

    ○長田国務大臣 どういうことをしなければならないかということにつきまして、しっかり構想を練り、それに必要な予算は大いに獲得すべく努力をしてまいりたい、そのように存じております。
  359. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから研究体制の問題としては、先ほど来いろいろ答弁がありましたように、あるいはまた、いま研究予算の説明がありましたように、気象庁とかあるいは気象研、それから海上保安庁の水路部、水産庁、こういうところで分かれていまやっているわけですね。それはそれなりにいいことなんですが、皆やはり本業を持っており、副業としてわずかな予算を科技庁からもらってやっているにすぎない。これではとてもじゃないが、大きな海を相手にして期待されるような成果は上げにくい。そういう点では、やはり専門的に海洋調査研究する機関が必要なんだ、たとえば海洋研究所のようなものの設立が望ましい、こういう声もあります。政府は、あるいは原子力環境整備センターがそれだと言うかもしれませんが、学者、専門家は、あれは何といいますか大がかりな実験という事業をどこかに下請させるトンネル機関にすぎないというふうに酷評している人もあるぐらいなのです。決して研究者、学者の満足を買っているものではないと思うのです。  こういうふうな点の検討、それから専門の海洋調査船もぜひ必要ではないかという意見もありますが、この研究所体制の問題と、それから調査船の問題について政府側の見解を聞きたいと思います。
  360. 長田裕二

    ○長田国務大臣 ただいま、主として投棄物に対する海洋調査観点からのお話でございましたが、海洋開発全般として、政府として広く総合的な見地からの体制をつくれということは、かねがね申されてきたところでもございますし、審議会からの答申もございます。そういうことも含め、あるいは潜水調査船の「しんかい」をどう使っていくかということなどのそれの使途などにつきましても、先ほどからの御議論の点などもよく含めまして、今後の開発に関連させてまいりたい、そのように思うところでございます。
  361. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 最後に、原電敦賀発電所で主蒸気弁が故障して原子炉が緊急停止をしたという情報を受けているわけであります。多分科技庁あるいは安全委員会にも入っていると思いますが、これがいつどういう内容の事故として起こっているのか、わかっておれば答えていただきたいと思います。これをお答えいただいて終わります。
  362. 牧村信之

    牧村政府委員 資源エネルギー庁からけさ連絡をいただいております。その内容は、敦賀発電所でけさ九時九分ごろ、主蒸気隔離弁の閉の信号によりまして自動停止したということでございます。若干バックグラウンドを聞きましたところが、この隔離弁の点検をやっておりましたときに閉になってしまって原子炉が停止したということでございます。その点検の内容は、主蒸気隔離弁の五%の閉鎖試験を行っておったところ、隔離弁が一〇%閉鎖したために原子炉はスクラムしたということのようでございます。現在、原因調査中でございまして、それ以上のことにつきましては、私どもの方には何も連絡を受けておりません。今後連絡を受けて、その事象につきまして安全委員会等にも報告していきたいというふうに考えておるところでございます。
  363. 貝沼次郎

    貝沼委員長代理 吉田之久君。
  364. 吉田之久

    ○吉田委員 初めに大臣に申し上げたいのですが、いまやこの核物質というものは、われわれと深いかかわりを持ってきております。その平和利用を可能な限り追求し、かつ安全性を高めて、同時に、それを解決していこう、それにしても一番悩ましい問題は、この廃棄物処理でありまして、歴代の科学技術庁長官が、国民の関心とともにこの問題の結論を出すべく非常に努力してこられた。たまたま長官時代にこの国会でこの法案が成立するとするならば、まさに画期的な一つの節に差しかかったと思うのです。  いまもいろいろトラブルが起こっておることを聞きましたけれども、仮に核燃料サイクルの途中の利用の工程がどれほど完璧であっても、最後の終着駅と申しますか、しかも、それが煮ても焼いてもどうにもならない核物質でございまして、一番悩ましい問題ですね、この処理が完結しないと、われわれは原子力を平和利用することはできなくなると思うのです。  そういう点で二、三問題点をただしていきたいと思うのでございますけれども、最終段階処理を決める時期において、長官がよほどの決意と使命感をもって対処していただかないと、将来に対して非常に問題を残す。原子力船「むつ」がそうでございました。せっかくみんなが注目しておったけれども、あんなつまずきをしてしまった。それが将来に大変甚大な影響を与えていることは御承知のとおりでございます。  そういう点で、改めてひとつ、長官の決意と申しますか、信念と申しますか、そういう点を伺っておきたいと思います。
  365. 長田裕二

    ○長田国務大臣 原子力の開発につきましては、従来のエネルギー源と違いまして、放射能等の問題があることは御承知のとおりでございます。私どもは、その安全を確保していくことが、ある意味では、別の面ではすばらしいエネルギー源、これを人類が研究開発、利用していく上の大きな前提だ、そのように考えておりますし、その安全性を確保するということは、ただいま御指摘のとおり、廃棄処分のところまでみごとな解決方法をしていかなければ、われわれの次の世代に悪影響を及ぼしていくということにもなるわけでございますので、これにつきましても、私どもは、開発と全く同じような、同等の力を入れまして、この問題に取り組んでまいりたい、そのように考えている次第でございます。
  366. 吉田之久

    ○吉田委員 いま長官の御決意でも承りましたように、最後の着地と申しますか、一番最後の方の大事な局面であります。私は、そういうことでできるだけ完全な検討を重ねていかなければならない、決して焦ってはならないと思うのです。  そこで、まずお聞きしたいのですけれども、試験投棄でまずは五千本ないし一万本投棄しようということのようでございますけれども、その前段階において具体的にどのようなテストをきょうまで積み上げてこられたか。あるいは実際法律ができてそれを実施されるにしても、一挙にそこまでいくのか、その間に何かの過渡的な段階といいますか、テストが試みられるのか、もう少し明らかにしていただきたいと思います。
  367. 牧村信之

    牧村政府委員 この海洋投棄の試験処分を行いますに当たりまして、その前段階としていろいろな研究を進めてきたわけでございますが、その主要な問題を申し上げますと、まず固化体健全性を確認する試験を行っております。模擬固化体によりまして海洋実験を実施する、これは科学技術庁の傘下の研究機関でございます海洋センターに依頼して行っております。  また原研は、模擬固化体を五千メートルの海底までつり下げまして、これをまた回収して健全性の保たれることを確認するような試験も行っております。  それから、同じく健全性を確認するための試験といたしまして、高圧水槽を用いまして、加圧試験を行いまして、固化体健全性を保つかどうかの試験を、電力中央研究所におきましては、七百気圧までの加圧を行ってのいろいろな試験をやっております。  また原研は、基準どおりにつくりました固化体を五百気圧まで加圧を行いまして、放射能の漏れないことの確認をいたしておりますほか、セメントの一部が仮に露出した場合、どの程度核種が浸出するかというような試験も実施をしておりまして、最も浸出しやすいセシウム等につきましても行いまして、もしドラムかんが破壊されてきたときにも、どのくらい浸出するかというような実験も行われております。  それから、固化体健全性の試験のさらに取りまとめと申しますか、海の中に落下していくときに、どういう状態で落下するかということで、カメラを固化体に取りつけましての試験を行っておりまして、二千メートルの実験あるいは六千メートルの実験等が海洋センターにおいて行われております。  そのほか、陸上での輸送の安全というようなことを考慮いたしまして、これは電中研でございますが、四メートルあるいは九メートルの落下試験をいたしておりますが、変形はするけれども、内容物の飛散はないというような確認も行っておるところでございます。  また、一番心配されます投棄後腐食をしてしまうというようなことにつきまして、海水中での耐食試験を原研に依頼いたしまして行っておるところでございます。  そのほか、投棄候補地点海洋調査につきましては、あるいは放射線のバックグラウンドの調査につきましては、関係省庁の御協力を得て鋭意現在も進めておるところでございます。
  368. 吉田之久

    ○吉田委員 その辺が私どもも一番気になるわけでございますけれども、まず、これは一たん沈めてしまえば、まさに未来永劫沈まっているはずのものでございますね、だとするならば、ドラムかんというようなものは、これはもう完全に腐食してしまうはずでございます。したがって、下に沈めるまでの間のドラムかんの役割りはあっても、それ以降長い年月がたっていけば、これはもうかんそのものが存在しない。よしんば存在したって、ほとんどそれはかんの体をなしていないと考えるべきが常識であると思うのです。  したがって、このかんそのものが全然存在しなくても、それは何ら影響がないものであるかどうか、やはりこの辺が一つの問題点だと思います。まず、その点がどうか。ないしは、いろいろテストをされているようでございますけれども、そんなに長い時間をかけたテストではないと思うのです。したがって水の深さ、これはまあ加圧することによっていろいろテストは試みることができますけれども、時間的な経過というのはちょっと簡単なテストでは類推できないと思うのです。その辺の検討はいかがでございますか。
  369. 牧村信之

    牧村政府委員 いろいろな腐食試験等の実験の結果、あるいは先ほどもお答えしましたが、米国における実際の海洋投棄をしたものの十年以上たったものを回収しての観察によりますと、ドラムかん自体は、海中に投棄されっぱなしになっておりますと、それほど腐食しないということのようでございます。通常腐食しますのは、ぬれたり乾いたりとかいうようなことでの地上における現象の場合には、鉄は非常にさびやすいもののようでございますけれども、相当の長年月ドラムかんは腐食しないようでございます。しかし、安全性をさらに高めますためには、やはりそのセメント固化体自体から放射性物質が出てこないようなことにしなければいけないわけでございますので、それの廃棄物をどういうふうに封じ込めるかという研究もきわめて重要でございまして、現在でも、いろいろな試験研究が原研等を中心に行われておるところでございます。
  370. 吉田之久

    ○吉田委員 よほど腐らないように加工したドラムかんだったのだろうと思いますけれども、しかし十年の歳月でございますね、現に戦争が終わって三十五年、あの当時沈んだ軍艦や潜水艦がもう完全に原形をとどめていないんですからね。ドラムかんがそんなにもつはずがないと私は思うのです。したがって、それが限られた年数の貯蔵やそういうものではないのですから、これは地球とともにそこで死滅してもらわなければならない固化体でございますから、やはりその辺の科学的な詰めというものも一層きちんとしておいてもらわなければいけない。まずはドラムかんには何ら期待できない。  その次に、セメントでございますけれども、このセメントの歴史というのも短いのですよ、まだ。セメントが強いとかわれわれは信じておりますけれども、だんだん風化すればするほど、強いのだけれども、しかし、いつどんなに壊れるかもしれない、もろくなるかもしれない。この辺はまだなぞの部分があるように私どもは思っております。一体、セメントに詰め合わせた固型化したそういう核物質というものが、未来永劫に安全を保ち得るのかどうか、この辺の検討はいかがでございますか。
  371. 牧村信之

    牧村政府委員 セメントと申しますかコンクリートでございますが、これは一般的な建築物におきましては、すでに数十年の健全性を保つ、あるいは環境によりましてどのくらい強度等が落ちていくかという研究が種々あるわけでございますが、こういう海底下の挙動というようなものにつきまして、あるいは陸地処分をするような場合でも、土の中の地下水等による影響というようなものにつきまして完全に解明されたということはなお言い切れない面がございます。そのためにいろいろな過酷的な試験等を行いまして、健全性がどうかというようなことでいろいろな試験を行っておるわけでございますが、これもある一定の条件のもとに加速試験的なことでやっておりますので、実際に海底で何十年かかったらどうかということは、先生指摘のように、なおはっきり言えない面があることは事実でございます。
  372. 吉田之久

    ○吉田委員 ですから、この投棄と申しますか永久の貯蔵の仕方につきましては、われわれの現在の人知の及ぶ範囲でまずは確実だろうと思ってやっていらっしゃることには、それはそれなりに私は同意するものでございますけれども、しかし、やはり重要な部分でかなり未知の要素がまざり合っていると思うのです。したがって、そんなに遠い何千年先のことはわれわれは論じ得ないわけでございますけれども、少なくとも本当にもう回収できない、そんな四千メートル、五千メートルの深海に置くまでの間の一つのプロセスとして、場合によればいつでも回収できるようなその辺のところでまず置いてみて、そしていま申しましたドラムかんの腐食であるとかあるいはコンクリートの変化が起こるのか起こらないのか、いろいろそういう措置を経て処理するということがより完全ではないかというふうに思いますが、その辺は御検討なさいましたか。
  373. 牧村信之

    牧村政府委員 そういう意味では、今後とも、いろいろな研究開発がきわめて重要であろうかと存じます。  先ほどの、構築物で現存するコンクリートの健全性というものは五十年近くの経験があるということもまた事実でございます。これは橋梁等海水にさらされるところの構築物等のデータも全くないわけではないわけでございます。また一般的に、原子力発電所から出てまいります廃棄物で低レベルのものと申しますのは、半減期が長いものでも平均して三十年以下のものが多いわけでございますので、現在の知見から、コンクリート固化し、さらに、その外側にドラムかんがあるということで、海洋投棄しました場合に、いままでの試験研究の成果も踏まえますと、相当長期間十分健全性は保てるものというふうに判断し得ることは、ある程度確信を持って言えるのではなかろうかと考えておるところでございます。
  374. 吉田之久

    ○吉田委員 この放射性物質のただ一つの救いは、だんだん時間とともに放射能が減衰していくことでございます。ですから、逆に私は、コンクリートの寿命が三十年以上はあると思いますが、しかし、それが非常に加圧された深海において、しかも、その海水の中でどうであるかというようなことも若干危惧な点がありますから、まず三十年ないし五十年の間、万々一おかしい場合には回収できるようなその辺のところに置いておいて、その間にもいろいろ測定できまずから、これは微動だにしない、いささかの不安もないということがわかれば、さらに深いところに完全に廃棄するというふうなワンクッションは置けないものでしょうか。これは物理的に置けないのでしょうか、経済的に置けないのでしょうか。どういうことなんでしょう。
  375. 牧村信之

    牧村政府委員 海洋投棄という観点から考えますと、現在のロンドン条約規制されておりますのは、四千メートル以上の深海に投棄することでございます。わが国の規制法等も四千メートル以上の深さのところへ捨てなければいけないという規定がございまして、投棄という行為では、そういうような研究をだんだん浅いところからというわけにはまいらないかと思います。  それで、先ほどもちょっと申し上げましたが、短期間の実験ではございましたけれども、二千メートル、六千メートルというような試験はしておるわけでございます。したがいまして、先生の御指摘のような点につきましては、今後の課題として、実際の海を使ってやるのがいいのか、あるいは加速試験のやり方等に工夫をこらして、同等の成果を短時間に得るような試験方法等につきましては、さらに検討を進めていくべきことだというふうに考えております。     〔貝沼委員長代理退席、委員長着席〕 実際に三十年間そういう試験をやってからでないと海洋投棄できないということでは、増加してまいります放射性廃棄物処理処分というのが、さらに問題になってくることも予想されるわけでございますので、両々試験研究も進めつつやっていくというような姿勢で今後対処していきたいというふうに考えております。
  376. 吉田之久

    ○吉田委員 いま完璧主義をとる立場から申しましても、あるいは本当に原子力の最終的な段階を世界にリードして、その安全性を実証していく意味でも、ロンドン条約等でいろいろそういうことが決まっておるからそうするのだということは、一応行政上はわかりますけれども、やはり浅い部分で、それが一つの試験的な海中貯蔵だと言えば言えないこともないでしょうし、また浅いところに置いておけば危ないものだというならば、これは深いところも本当に危ないわけでございまして、その辺をわれわれはかけをしない、未知の部分を飛び越えはしないのだ、特に日本はそうなんだというようなことで、一度改めて、そういう角度からの実験やアプローチを話し合ってなさってもいいのじゃないかというふうな気がいたします。  それから、これは四千メートルないしそれ以上の深海に投棄されるわけでございますけれども、その場所は三カ所程度予想なさっているようではありますが、それは日本の領海内なんですか、公海になるのですか。
  377. 牧村信之

    牧村政府委員 検討しております候補地点は、すべて公海でございます。
  378. 吉田之久

    ○吉田委員 公海ということになりますと、漁業補償との関係はどういうふうになるのですか。漁業補償の問題については、いまのところどうお考えになっておりますか。
  379. 牧村信之

    牧村政府委員 この候補に挙げております地点は公海でございますが、私ども、その候補に挙げますときに、地点の条件というものをいろいろつくりまして、その上で候補地点を決めたわけでございます。  まず、沿岸での重要魚種の稚仔等の分布域を避けるというようなこと、それから深海漁業が行われていない地域を選ぶというようなこと、そのほか、海水の流動等が非常に静かな海底であること、あるいは平たんなやわらかい海底で、できれば、投下した後で海底土の中にもぐり込めるようなところを選びたい、そういうようなときに、深層水の流動であるとか、わき上がってくる流れができるだけ少ないようなところ、こういうようなことをいろいろ想定して選んだわけでございます。もちろん、その予想海域でマグロあるいはカツオの漁業が全くないかと言えば、日本漁業者が操業しておる海域の中ではございますが、できるだけそういう影響の少ないところを選んだつもりでございます。
  380. 吉田之久

    ○吉田委員 そういう条件を満たす場所というのは、かなりあるのですか、非常に限られてまいりますか。  時間がございませんので、ちょっとかためて申し上げますが、最初の試験投棄、試験投棄と言ったって、五千本とか一万本と言えば、単なる試験じゃないと思うんですね。かなり本格的な投棄の第一段階だと私どもは思いますけれども、それが仮に問題がなかったとして、あと大体何年間ぐらいに、この本数で何万本ぐらいが捨てられていかなければならないのか、その辺の見通し。  それからいま一つは、この五千ないし一万本を一挙に投棄するのか、あるいはかなり時間をかけてなさるのか。ちょっとかためて御答弁ください。
  381. 牧村信之

    牧村政府委員 候補地点として日本が得られるところがどのくらいあるかということでございますが、日本から非常に離れれば、遠隔地になるということをいとわなければ相当あるかと思っております。  それから、投棄の見通しでございますけれども、現在の低レベルの発生は、本年度あたりで大体六万本程度でございます。過去の開発成果によりまして出てまいりましたのが、昨年末で二十五万本でございますので、本年度未にはおおむね三十万本ぐらいになるわけでございます。この試験的海洋投棄に当たりましては、大体五百キュリー程度投棄して調査をしようとしておりまして、その本数は五千本から一万本でございますが、本格的な投棄になりますと、恐らく数万本くらいの量を一年間のある期間にまとめて投棄するというようなことが考えられるわけでございます。しかしながら、それはまだ具体的に決定したとかということではございません。ヨーロッパ諸国が十万本程度のものを捨てておるという実績等をにらんでのことでございます。  なお、海洋投棄陸地処分を組み合わせて行うわけでございますので、現在、年間数万本ずつ出ておりますけれども、それの組み合わせになりますので、全量を海洋投棄に頼るというようなことを考えておるわけではないことはもちろんでございます。
  382. 吉田之久

    ○吉田委員 いまおっしゃったある時期を選んで一年間に数万本を投棄される、その投棄される一つのユニットと申しますか、そこのグロスのキュリー数はどのぐらいになりますか。
  383. 牧村信之

    牧村政府委員 現在ヨーロッパは、毎年七万ないし八万キュリーぐらいを投棄しておるようでございます。日本の場合は、それよりもはるかに少ないことになると思っておりますが、いまのところ、暫定的な計画では、本格的な海洋投棄というのは、一万キュリーぐらいということでいろいろな安全評価を進めております。  なお、一万キュリーくらいと考えておりますのに使う想定キュリー数として、その十倍の十万キュリーを一度に投下してどうなるかというような安全評価をやっておるのが実態でございます。
  384. 吉田之久

    ○吉田委員 もう時間がありませんので、これは長官にお願いをいたしておきますが、いまお聞きのとおり、最初の試験投棄は、かなりいろいろ考えて慎重にやられるようでございますが、それはきわめて部分的な、かつ発生するキュリー数も格段に低いものでございますね。それを二年間ほどいろいろフォローされて、そしてこれでいいということになれば、いまおっしゃったような本格的な投棄になるわけでしょう。この辺が少し飛んでいると思うのです。もちろん諸外国にいろいろ例があるわけでございますし、われわれも、何も簡単に異議を唱えるわけではありませんけれども、やはり物事は最初が一番大事でありますので、最初にあらぬミスやトラブルをやって、それが大きな破綻につながらないように、したがって、最初の部分では慎重にも慎重を期し、可能なる限りのテストを行い、そして本当にこれで大丈夫だと国民のすべての人たちからの合意と信頼が得られるよう、あらゆる努力を払っていただきたい。間違っても拙速をとうとばれるというふうなことは、この局面にあっては断じてあり得てはならないということだけ申し上げ、また長官の決意のほどを一言お伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  385. 長田裕二

    ○長田国務大臣 ただいまの御意見につきましては、私ども関係者として、試験投棄段階あるいは本格投棄段階等につきましても十分心にとめまして、措置してまいりたい、そのように考えております。
  386. 吉田之久

    ○吉田委員 ありがとうございました。
  387. 瀬野栄次郎

  388. 石野久男

    石野委員 私どもの党は、本法に対しましては意見がありまして、対立の法案を出しておるわけでございますが、この法案の意図するところは、先ほど来同僚議員がいろいろ御質問しておりますように、試験投棄の問題が非常に重要な課題になっていると思うのです。そこで、先ほど吉田議員からもお話がありましたが、投棄しようとする物体の問題についての実験検査が、どの程度までの成果を上げているかという問題が、一番最初に問題になると思うのです。  お尋ねしますが、この物体は、たとえばガラス固化とかあるいはアスファルト、あるいはセメント、そういうものが海中においてどのくらいの期間予期される安全度を確保できるのかどうかという問題、まず、それからひとつ聞かせていただきたい。
  389. 牧村信之

    牧村政府委員 現在、試験的な海洋投棄実施しようとしております固化体は、ドラムかんの中にセメントで放射性廃棄物をまぜ合わせまして固化したものを投棄することを考えておるわけでございます。したがいまして、そのほかの先生指摘のアスファルトを固化したものであるとか、高レベルで言われておりますガラスを固化したようなものを海洋投棄するということは、いまの段階では全く考えていないわけでございます。  それから、アスファルト固化体等につきまして、低レベル固化体がこれから原子力施設でできてくるわけでございますが、これを将来海洋投棄するかどうかにつきましては、海洋投棄に当たっての必要な基準を満たし得るかどうか、しかも、それが長期にわたって安全に健全にそれを保つかどうかという試験研究に待つ問題でございますので、その成果が出るまでは私どもセメント固化体一本やりで行くつもりでおるわけでございます。  そこで、セメント固化体につきましては、先ほども吉田先生から御質問ございましたが、まずドラムかんの健全性につきましては、これは鉄製でございますが、現在、原研等でいろいろな腐食試験等をやっておりますが、最低十年間は十分もち得る、十年を過ぎると、場合によっては腐食が進むということも考えておかなければならないということは試験結果で出ておるわけでございます。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、アメリカが九百メートルから三千メートルぐらいのところに過去三十年から最近十年ぐらい前まで海洋投棄をしておりまして、その実物を回収して観察しております。そういう計画をいまアメリカは進行中でございますが、すでに取り出しましたもののデータでは、十年以上たちましても、ドラムかんの健全性は十分保たれておったという実証のデータもあるわけでございます。そういう点からも、ドラムかんの健全性というものは相当長期にわたって確保できると考えております。万一、そのドラムかんが破裂するなどしてセメントが露出することも考えておかなければいかぬわけでございますが、その点につきましては、基準どおりにつくりました固化体を五百気圧まで加圧して、放射能がセメントからどのくらい漏れるかというふうな研究につきまして原研で研究を進めまして、セメントの一部が露出した場合にどの程度核種が出てくるかということにつきましての実験でございますが、最も浸出しやすいセシウム137を使いまして実験した結果では、露出した場合に浸出するものはせいぜい一〇%ぐらいであろうというような実験データも出ておるところでございます。  こういうような研究を踏まえまして、いろいろな投棄計画を進めておるわけでございますが、これらの基礎的な研究等も含めまして、引き続き、重要なものについてはさらに研究を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  390. 石野久男

    石野委員 実験では五百気圧のところでのセシウム137の浸出が一〇%くらいだ、これは六千メーターくらいおろしたときには気圧はもっとかかりますね、そういうときの予測というものはどういうふうにされておるのですか。
  391. 牧村信之

    牧村政府委員 この五百気圧というのを想定しましたのは、海底の五千メートルに相当するあれを予想して実験したわけでございます。原研で行いましたデータでは、この浸出の度合いというのは、どうもそれほど圧力に影響されないというようなデータが出ておると聞いております。
  392. 石野久男

    石野委員 圧力に影響されるかどうかわかりませんけれども、とにかく一〇%くらいは出るということになれば、量が多くなれば相当なものになるだろうということだけは予測できるわけです。  私は、この海洋投棄という問題について問題になるのは、それを深海に入れた場合には、局長が何遍も言われておるように、回収不可能であり、管理不可能であるという状態になってしまうのだ、そういうような状態になっていくものを、試験という名のもとで対象になるのかどうかということがまず第一番に問題があると思う。もう回収も何もできないものを試験ができるのだろうか、あるいはまた実験をするについてどういう方法をするのかということも一つありますけれども、仮に何かの事故があって、それを回収しようとしてもできなかった場合の実験というものの意味はどういうことなんだろうということを実は感ずるのですが、あえて試験と言うのはどういうことなのか。
  393. 牧村信之

    牧村政府委員 先生指摘のように、一度深海底セメント固化体投棄した場合に、回収はまず不可能でございます。そのために試験海洋投棄というのはどういう意味を持つかという御指摘でございますけれども、私ども考え方は、この海洋投棄の目的として、あるまとまった量を、この試験では現在五百キュリーということを考えておるわけでございますが、ドラムかんの本数にして恐らく五千ないし一万本の範囲の中に入ると思いますが、そのドラムかんのセメント固化体海洋投棄して、それが周辺の海洋影響を及ぼさないように投棄し得るかどうかの確認をするということ、それから、この投棄を行う諸作業の標準化と申しますか放射線管理の観点を含めました作業の、あるいは放射線管理の合理的な進め方のあり方を研究することを二番目の目標にしておるわけでございます。  そこで、この固化体が五千メートルあるいは六千メートルの海中において健全性を保ち得るということは別の試験で確認をしたわけでございますので、投下後も十分健全性を保つものと私どもは確信しておるわけでございます。その例としては、先ほども申し上げましたが、アメリカは実際に捨てたものを回収しておる、そういうようなことからもバックアップされているのではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  394. 石野久男

    石野委員 投棄しようとする低レベル廃棄物核種につきましては、どういう制限を持っておりますか。
  395. 牧村信之

    牧村政府委員 原子力発電所等から出ます低レベル放射性廃棄物の代表的な核種は、コバルト、マンガンあるいはストロンチウム等でございます。
  396. 石野久男

    石野委員 それ以外のものは、この中には低レベル廃棄物としては投棄しない、こういう意味ですか。
  397. 牧村信之

    牧村政府委員 そういうことを申し上げたつもりでございませんで、代表的な核種で申し上げたわけでございます。核燃料物質によって汚染されたもの、あるいは原子炉等運転中に出てくる低レベル廃棄物でございますから、可能性としてはウラン等もあることは当然考えておかなくてはいけないわけでございます。それから核燃料加工工場では、まさにウランを加工しておりますので、ウラニウムが若干は入るというようなことで、いろいろな核種が入っておることは事実でございます。それからRIの利用施設から出てくる廃棄物につきましては、それぞれの主要施設で使っております核種のものが、低レベルではございますけれども、混入しておることを考えて対処しなければいけないわけでございます。
  398. 石野久男

    石野委員 核種の問題が海洋投棄する場合に非常に重要だというふうに私は思っております。いまお話しありませんでしたが、先ほどの答弁の中には再処理工場の問題もございました。だから、プルトニウムとかなんかいうようなものが幾らかでも入ってくるということなども、低レベルということと核種とはまた別ですから、そこについて、明確に投棄対象になるものがどういうものなのか、もう押さえ切れないのかどうかということをこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  399. 牧村信之

    牧村政府委員 低レベル固体廃棄物が出てくる発生源は、先生指摘のように、原子力発電所だけではなくて、燃料加工施設あるいは原研、動燃のような研究開発段階での施設等があるわけでございます。  そこで、ただいま御指摘プルトニウム等が混入するおそれが多分にあるのは、特に動燃事業団から出てくる廃棄物でございます。そのうち、再処理から出てまいります低レベルも若干はあるわけでございます。そういうところからのプルトニウム可能性、あるいは動燃が持っておりますプルトニウム加工施設から出てくるものも、低レベルの中には若干あるというようなことが当然考えられるわけでございます。それで、アルファ核種につきましては、国際的な規則基準も、その他のべーター、ガンマに比較いたしまして飛び離れた厳しい基準が設けられておるわけでございます。しかしながら、私ども日本では、国際的な基準に合わせて規制基準はつくられておりますけれども、実際に廃棄物として現在貯蔵されておりますもののその中に入っておるいろいろの核種は、その基準から十分の一ないしは百分の一くらいの比較的低いレベルで管理されておるところでございます。したがいまして、御懸念の点につきましては、今後、その海洋投棄等を進めるのに当たりましての運用によりまして、特にアルファ核種については慎重な配慮をもって臨まなければいけないというふうに考えておりますので、御指摘の点よくわきまえて今後に対処したいというふうに考えております。
  400. 石野久男

    石野委員 もう時間がありませんので、あとまとめてお尋ねしますが、深海投棄をやる場合に、もしそれが可能であり安全であるとするならば、投棄したものが余り動かないというところがまず第一番に大切だと思うのです。それから腐食したり、あるいは破壊したりしてそれが散逸しないという、この二つのことが絶対に必要なんだろうと思うのですが、そういうようなことについてのしっかりした自信があるのかどうかということがどうしても疑問になります。その場合に、太平洋は最近特に地殻変動が激しいということが言われておりますので、この深海における地殻変動の問題の関係についてはどういうふうになっているのかということが一つ。  それからいま一つは、これはどうしても水産庁にお聞きしておきたいのですが、やはりイタイイタイ病がありましたときに問題になって、その後水俣の問題が出たときに、許容量以下で放出しているのだから大丈夫だということで、私は何遍も言いますけれども、実は調査に行ったわれわれは会社と労働組合に追い出されてきた経過がございます。その後十数年たってからイタイイタイ病が出てまいりました。それは結局、私たちの一番心配している食物等を通ずるところの伝播ですね。だから、やはりそういう魚や何かを通じて私たちが汚染の度合いを一層強く深めていくというようなことがあってはいけない。要するに海洋連鎖から濃縮汚染をするというようなことがあってはいけないということを水俣の問題でもうしみじみと感じておるわけです。今後、大量のものが投棄されていきますると、いま試験研究という段階ではございませんから、膨大な量が出てくる、投棄される。それに諸外国も、韓国だとか台湾も相当原発の仕事をやっておりますから、そういうところから、公海であろうともどんどん海洋投棄が行われたときに、一番食物連鎖の被害を受けやすい食生活を持っている日本、そういうようなところで、皆さんの立場からして、水産行政の上から言って投棄が認められるのかどうなのか、いいのかどうなのかという問題について心配をします。その点についてひとつ所見を聞かせておいていただきたい、こう思うのです。  それから外務省には、私が先ほどもちょっと申しましたように、各国がみんな公海に投棄し始めたときに、一番打撃を受けるのは日本だと思うのです。しかるに日本から一番最初に国内法で、こういうような太平洋において大量にやるというようなことが出てまいりました場合に、諸外国に対して恐らく外交交渉上から言ってもなかなか折衝がしにくい問題をしょい込んでしまうのではないかという、こういうことなどについて、外務省はどういうふうに考えておるか、こういうような点をひとつお聞きいたしたいと思います。  大臣には、私は、この法案は率直に言って、もう陸上にドラムかんが積み重なってきたのでどうにも処理ができないから、処理する方法としてつくられるものだという認識を持っているんですよ。もし固化体放射能に対しては大丈夫だというのなら、何も海中に投棄しないで陸上に積めばいい。それで大丈夫ならば、場所がないというのなら十階建てぐらいの建物を建てて、それへ詰め込んだらいいじゃないか、それの方が人類に対しては安全だと私は思うのです。回収不能なところに押し込むよりも、十階建てでも二十階建てでもいいから大きなものをつくって、それに詰め込んだらいいだろう、こういうふうに私は思いますけれども、なぜそういうことを考えないか。そこらのところについて、最後にひとつ大臣のお考えを聞かせてください。
  401. 牧村信之

    牧村政府委員 まず、最初のお尋ねの海洋投棄を考えておる地点の地殻変動等の考え方でございます。  先ほども海洋投棄を選ぶときに、事前にそういういろいろなことを想定して選びましたと申し上げたわけでございますが、特に地震等の問題があって、その地殻変動等によりまして投棄物が壊れてしまうということは確かに望ましいことではございません。そのために投棄海域の選定に当たりましては、先ほど申し上げましたように、中心的な漁場等を避けておるというような選定理由のほかに、地震帯を避けて選定しております。この地震帯であるかどうか等の判断につきましては、一番日本で権威のある気象庁の専門家の御意見を賜りまして、この地点であればということで選んだつもりでございます。それから、安全評価に当たりましては、そういうようなこと、あるいは考えられませんけれども、全部が破壊されてしまって、それが海水中に放出されるということを想定しての安全評価を行ったことでございます。その結果は、人間に対しまして非常にわずかな影響しかないという結果が出ておることは先生御承知のとおりだと考えております。  以上でございます。
  402. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 先ほど水俣を例に挙げてのお話がございましたが、大変不幸な事件であったわけでございますが、これは御承知のように、非常に大量のものが沿岸のたくさんの魚を採捕しています区域で出されまして、それが高度に蓄積されて出てきた事件だというぐあいに考えております。確かに先生のおっしゃるとおり、重要だと私ども考えておりますが、本件につきましては、その後、非常にたくさんのデータが出ておりまして、そのデータを踏まえまして科学技術庁で十分な検討をされて、問題がないという結論が出ているというぐあいに承知いたしております。  なお、先生御注意ございましたので、今後も勉強させていただきたいというぐあいに思っております。
  403. 井口武夫

    ○井口説明員 ただいま先生から公海における廃棄の問題で、国際的にもわが国として十分に注意しなければならないという御趣旨の発言がございまして、その点仰せのとおりだと思いますし、条約におきましては、旗国がいろいろ取り締まりをするという以外に、さらに今後は新しい海洋条約で、経済水域あるいは大陸棚というものに関しては沿岸国が管轄権を及ぼすということが予想されておりますし、さらに公海における投棄に関しましても、実は七条の三項で「この条約を特に公海において効果的に適用するための手続の作成に協力することに同意する。」ということでございまして、すでに昨年十月の第四回締約国会議で相互にいろいろ効果的な通報制度を確立するとか、そういう問題についての打ち合わせを開始しております。  また第十条で、この公海あるいは国際海底というような国家の管轄権の外にある海洋の環境の損害というものに関しましても、国家責任というものを新しい国際法でさらに明確にしていごうという約束がございます。そういう意味で、公海に関する投棄規制する条約でございますから、国際協力あるいは新しいこの国際法のさらに具体的な制定というものが予想されております。
  404. 長田裕二

    ○長田国務大臣 低レベル廃棄物処分につきましては、私どもは、考え方としては、陸上投棄あるいは陸上保管ということも十分考えているところでございます。  ただ、日本の地況と申しますか、そういうこと、あるいは各国ですでに海洋投棄につきましての経験というようなものなども相当ございますし、そういうような観点から、長い将来のことなども考え合わせまして、担当の部門で、私どもからすれば相当慎重な検討を経た末での一つの結論が出ておりまして、そういうことも込めましての当面の試験投棄、さらに一定の段階あるいは検討を経ました後に本格投棄ということへ参るわけでございまして、考え方といたしまして、ただいまお話の陸上投棄あるいは陸上保管という考え方を決して捨てていない、顧みないということでは毛頭ございませんので、その点はひとつ御理解を願いたいと存じます。
  405. 瀬野栄次郎

    瀬野委員長 これにて内閣提出核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。  次回は、来る四月二日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会