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1980-04-26 第91回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月二十六日(土曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 坂田 道太君    理事 有馬 元治君 理事 大坪健一郎君    理事 三原 朝雄君 理事 箕輪  登君    理事 川崎 寛治君 理事 前川  旦君    理事 市川 雄一君 理事 寺前  巖君    理事 吉田 之久君       石原慎太郎君    浦野 烋興君       江藤 隆美君    大城 眞順君       國場 幸昌君    玉沢徳一郎君       辻  英雄君    中村 弘海君       長谷川 峻君    船田  元君       水平 豊彦君    石橋 政嗣君       上原 康助君    嶋崎  譲君       玉城 栄一君    二見 伸明君       東中 光雄君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 細田 吉藏君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         国防会議事務局         長       伊藤 圭一君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁長官官房         防衛審議官   友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁総務         部長      菊池  久君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         防衛施設庁労務         部長      伊藤 参午君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者         国防会議事務局         参事官     畠山  蕃君         国防会議事務局         参事官     西谷 浩明君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       浜岡 平一君         安全保障特別委         員会調査室長代         理       麻生  茂君     ————————————— 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     中村 弘海君   國場 幸昌君     大城 眞順君   藤尾 正行君     船田  元君   堀之内久男君     江藤 隆美君   水平 豊彦君     浦野 烋興君   金子 満広君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     水平 豊彦君   江藤 隆美君     堀之内久男君   大城 眞順君     國場 幸昌君   中村 弘海君     石原慎太郎君   船田  元君     藤尾 正行君   東中 光雄君     金子 満広君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 坂田道太

    坂田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  まず、現下の国際情勢わが国安全保障及び防衛政策について、外務大臣及び防衛庁長官からそれぞれ説明を求めます。大来外務大臣
  3. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 衆議院安全保障特別委員会が開催されるに当たりわが国安全保障問題につき所信一端を申し述べます。  本年は現在の日米安全保障条約昭和三十五年に締結されて以来二十周年に当たります。この条約の締結二十周年目に際会し、また、安全保障問題の重要性が最近の国際情勢に照らし内外でも改めて認識されているこの時期に、国民総意を代表する国会において安全保障問題に取り組むための本委員会の発足を見たことはまことに時宜を得たものであると考えます。  今日の国際社会において国家が独立を維持し、自主的な外交を進めていくためには、何よりもまずその安全が確保されていることが不可欠であります。そして国の安全は本来、まずそれぞれの国が自分で守るよう努めるべきは当然でありますが、現在の世界において独力で自分の国の安全を確保することは困難であります。そこで、再び軍事大国の道を歩まぬことを誓ったわが国としましては、自衛に必要な限度の防衛力整備するとともに、米国との安保条約によってわが国の安全を確保することとしております。  もとより、国の安全を守るための努力ひとり軍事力分野のみに限られるものでなく、紛争を軍事的に抑止するための軍事力とともに、紛争を政治的に抑止し、また、資源エネルギーの確保を含め総合的な安全を確保するための積極的な外交努力が必要であることは言うまでもありません。この意味軍事的抑止力と右のような積極的な外交努力とはわが国の安全にとっては、車の両輪のごときものであると考えます。  政府といたしましてはこのような考え方に立って安全保障政策の柱として第一に、日米安保体制の円滑で効果的な運用、第二に、わが国自衛力質的向上、第三に、アジアを初めとする世界の平和と安全のための日本の積極的な外交努力という三つの分野において努力してきておりますが、この機会に第一の柱である日米安保体制の現状につき一言御説明申し上げたいと思います。  日米安保体制については、わが国内においていろいろな論議のあったことは御承知のとおりでありますが、戦後わが国が今日までの平和と繁栄とを享受できましたのは、日米安保体制を基礎とする揺るぎない日米友好関係があったからであることについては、いまや異論のないところと考えます。最近の官民を通ずるほとんどあらゆる世論調査を通じて、安保体制への支持が過半数を優に上回っていることは御承知のとおりでございます。  さらに、近年安全保障分野における日米両国協力関係はかつてないほど良好に進展しております。  第一に、日米防衛協力に関する基本的枠組みとなる「日米防衛協力のための指針」が一昨年十一月の日米安全保障協議委員会で了承され、現在これに基づき共同作戦計画研究中心とする具体的研究自衛隊米軍との間で進められております。  第二に、わが国には現在約四万五千の米軍が駐留しており、米国はそのための経費として毎年十数億ドルの支出を行ってきております。政府としてはこの経費の面において地位協定の枠内でなし得る限りの協力を行ってきておりますが、このことは安保体制安定的運用の面で大きな役割りを果たしております。  次に、日米安保体制の円滑で効果的な運用を期する上において米軍によるわが国施設区域の安定的な使用が重要であることはいまさら指摘するまでもありません。このためには国民理解、なかんずく施設区域周辺地域の住民の方々の理解支持を得ることが不可欠であります。このため政府としては従来より施設区域整理統合計画推進するとともに安全対策騒音防止等各種の施策を通じ、周辺環境への影響を最小限にとどめ得るよう努力してきている次第であります。  さらに、日米安保体制は、今日広く国際政治の与件として定着し、現在のアジアにおける国際政治枠組みの重要な柱としてわが国安全保障のみならず、アジアひいては世界の平和と安全の維持に寄与するものとなっていることも指摘しておきたいと思います。  さて以上に申し述べた安全保障政策わが国の直面する国際情勢についての的確な判断に基づいて進めて行くことが必要であります。そこで次に最近の国際情勢について申し述べたいと存じます。  今日の国際関係は、多元化への傾向を見せておりますが、安全保障観点から見る限り、国際情勢の帰趨に最も重要な影響を与えるのは、依然として米ソ関係中心とする東西関係であります。  米ソは基本的には核戦争回避の点で利害を同じくしており、そのための相互の関係の調整の努力が行われてまいりました。SALT交渉はその典型的な例であります。  その間にあって最近、注目されているのはソ連軍事力の着実かつ著しい強化であります。ソ連は過去二十年間一貫して核及び通常戦力の双方の分野において、軍事力強化努力を続けていることは周知の通りでありますが、これに対し、米国及び他の西側諸国軍事バランス西側に不利とならないよう、防衛努力強化を図るに至っております。  ソ連は一方で国際緊張緩和を唱えつつ、他方でこのような軍事力強化をも背景としてアジアアフリカ中近東などの地域に対する影響力の拡大を試みており、最近のアフガニスタンに対する軍事介入もかかる観点からとらえることができると考えられます。米ソ中心とする東西関係対立協調の二面性を有していますが、最近では以上のごとく対立の側面がクローズアップされるに至っております。  このような東西関係の推移と並んで現在の国際政治においては、最近イランを初めとする中東地域アフリカ、さらにインドシナ中南米等世界各地において不安定な情勢が見られるごとにも注目する必要があると思います。  わが国の安全にきわめて重要な地位を占める東アジア地域においては、米国プレゼンスが同地域の平和と安定を支える基本的な要素でありますが、米国は在韓米地上軍撤退計画の凍結、米比軍事基地協定の改定、マニラ条約に対するコミットメントの再確認等この地域に対する米国コミットメントを遵守する意向を明示しております。  他方ソ連はグローバルな軍事力強化一環として、アジア地域においても軍事的プレゼンス強化しており、ベトナムに足がかりを築かんとする動きを示しつつある一方、特に極東においては、わが国固有領土たる北方領土においてもその軍備強化していることはわが国として重大に受けとめざるを得ないところであり、潜在的な脅威が増していると言わざるを得ません。  中国は、現在国の近代化を最大の国家目標としてこれに全力を傾注しております。対外的には近代化を進める必要性もあり、わが国を初めとする西側諸国との交流協力を深めつつありますが、これに対し、ソ連及びその後押しを受けたベトナムに対しては強い対決姿勢をとり続けております。  朝鮮半島においては、南北間の対立という現実に基本的変化は見られないものの、米韓両国による有効な抑止力維持向上努力、また、わが国及び米国中国等関係諸国間の対話の努力等もあり、大規模軍事衝突危険性はそれほど大きくないと見られます。  また、東南アジアにおいては、ASEAN諸国が連帯と強靱性強化への自主的努力を着実に進め、地域安定勢力としての地歩を固めつつある一方、インドシナ情勢については、今後の関係国出方いかんにもよりますが、安定回復までには時間を要するものと思われます。このように、東アジアにおいては平和と安定を目指す動きとともに、紛争対立をはらんだ厳しい不安定要因が並存、錯綜していると申せましょう。  以上に申し述べたとおり、国際情勢ソ連世界的な軍事力強化イラン情勢にも示されるような世界各地における不安定な情勢の増加により厳しさを増してきております。このような国際情勢に効果的に対処し、国際の平和と安全の維持を図っていくためには、守るべき共通の価値と利益を有する先進民主主義諸国協調しつつ、それぞれが与えられた条件のもとでなし得る最大限の努力を払っていかなければなりません。米国及び西欧諸国において、現在国防努力強化必要性が官民一致して強く叫ばれているのはこのような事情によるものです。そして、今日主要先進民主主義諸国の一員としてのわが国に対し国際的に期待されているのも、まさにこうした努力にほかなりません。わが国は、現在わが国が置かれているこうした状況を直視し、このような状況においてわが国として何をなすべきかをわが国自身の問題として真剣に考えるべきであります。いわゆる日本有事の際、米国わが国に来援するかという点について最近時として疑問が呈せられておりますが、この問題は、いま申し上げたわが国努力という文脈で考えられるべき問題であると思います。政府としては、わが国民主主義という米国と同じ政治信条を共有しており、また、現在の日米友好関係、貿易、経済を初めとする各分野における緊密な両国関係米国にとっての意味を考えれば、米国は、米国日本を守るのは米国国益でもあることを十分認識しており、したがって、米国日本に来援することを確信しております。ただ、この確信をより強固なものとするためには、わが国としては、一朝有事の際、米国が来援しやすいような体制をふだんから整備しておくこととともに、米国わが国を守ることは米国の基本的な国益に沿うものであることを、米国民にふだんから認識させ得るような日米関係の実体を確保する努力をする必要があるということであって、その意味では、この問題は、わが国努力あり方にもかかることであると考えるものであります。政府としては、このような観点からもわが国自衛力整備を進めるとともに、日米安保体制の一層円滑かつ効果的な運用を図るための自主的な努力を今後一層真剣に進めていく決意でございます。  以上わが国安全保障問題につき所信を申し述べました。  国家安全保障を効果的に図っていくためには、変遷していく情勢に対応しつつ長期的な視野に立って、一貫した、かつ、持続的な努力を行っていくことが必要でございます。このような努力を行っていくに当たり国民の不断の理解支持が不可欠であることは改めて申すまでもありません。この特別委員会において、坂田委員長を初め委員各位が、その高い識見と豊かな経験に基づき、わが国の直面する国際情勢を踏まえ、安保防衛問題について自由濶達にして建設的な審議を行われていくことにより、これらの問題に対する国民各位理解認識が一層深まり、これを通じ、この特別委員会国民総意に基づく安全保障を確保していく上で重要な役割りを果たしていくことを強く期待する次第であります。(拍手)
  4. 坂田道太

  5. 細田吉藏

    細田国務大臣 このたび、衆議院安全保障特別委員会が設置されましたことは、わが国安全保障問題について広く関心が高まりつつある折から、まことに有意義かつ時宜を得たものであると存ずる次第であります。  今後は、坂田委員長を初め委員各位安全保障問題に対する高邁なる御識見と豊富なる御経験に基づく幅広い御審議を通じ、国民安全保障問題に対する関心を高め、その理解を深めるとともに、政府安全保障政策推進の上に有益なる指針を本委員会からお示しいただけるものと確信いたしておるところでございます。  本日、委員会の御審議が開始されるに当たり、私から国際軍事情勢に対する認識及びわが国防衛政策に関し、所信一端を述べさせていただきます。  まず、国際軍事情勢に対する認識について申し上げます。  第二次大戦後の世界を概観すると、圧倒的な軍事力を持つ米ソ両国を軸とする東西集団安全保障体制が厳しく相対峙する反面、米ソ両国ともに、全面核戦争とそれに至るような事態は回避しなければならないとの点で認識が一致し、対立協調という二面的性格を持って推移してきたと言えましょう。  しかしながら、ソ連軍事力増強の結果は年を追って顕著となり、これに対し西側諸国対抗措置を余儀なくされるに至って対立関係の面が強くなり、特にソ連アフガニスタン軍事介入以降は、東西間の不信、対立の様相が深まっております。  米国は、総合的な国力では依然としてソ連に対し優位に立っており、また信頼するに足る多くの同盟国を持っている強みはありますが、米ソ軍事力に限って見る場合、ソ連は過去二十年近くの間、西側をはるかに上回るペースで軍備増強を進めてきた結果、地上兵力において従来から優位であったのに加え、いまや、核戦力海空軍力等分野においても米国に迫りつつあり、一部はすでに対等となっていると見られます。  このようなソ連世界的規模軍事力増強一環として、わが国周辺においても、極東ソ連軍質量両面にわたる増強とこれに伴う行動活発化には顕著なものがあります。すなわち、量的には十五年前と比べて地上軍及び太平洋艦隊は倍増、作戦機も四割以上の増となっております。特に太平洋艦隊は、過去一年間にトン数が一割近くも増加している状況であります。また、質の面も、空母ミンスク揚陸強襲艦イワン・ロゴフのほか、カラ級巡洋艦等大型新鋭艦戦闘爆撃機ミグ27の配備等に見られるような著しい向上に加え、SS20中距離ミサイル及びバックファイア爆撃機配備による戦域核戦力の大幅な増強も見られます。さらに、ソ連は、わが国固有領土たる北方領土にも地上軍部隊配備し、基地建設を続けており、現在、部隊規模師団規模に近づきつつあります。  このほか、昨年二月の中越戦争を契機にベトナム海空軍基地使用を開始し、最近は、航空機の滞在期間長期化し、艦艇の入港及び南シナ海におけるプレゼンスの隻数が増加しており、ソ連はいまや基地の常時使用の状態に至っているものと思われます。このことは、外洋への出口が海峡によって扼されているという、ソ連太平洋艦隊が抱えている制約を緩和し、西太平洋、インド洋へのプレゼンス能力を飛躍的に向上させるものであり、有事におけるわが国海上交通路の安全に大きな影響を及ぼす可能性があります。  これらに示される極東ソ連軍増強と活発な行動は、わが国に対する潜在的脅威の増大として重大な関心を抱かざるを得ないものであります。  このような中でソ連と強い対立関係にある中国は、西側への接近を図り、米中間では国防関係要人交流技術協力等が進められる等、世界及びアジア軍事情勢影響を及ぼす可能性のある動きが生じています。  一方、わが国と一衣帯水の間にある朝鮮半島の平和と安定は、わが国の安全、東アジアの平和と安定にとって重要な要素でありますが、この地域では南北間の軍事的対立が依然として続いており、特に、北朝鮮は七〇年代に少なくとも二〇%以上の大幅な軍事力増強を行ったと見られます。米国は、このような情勢をも踏まえ、昨年七月、在韓米地上軍撤退計画を一九八一年まで凍結する措置をとり、その間に韓国軍増強と半島の緊張緩和のための努力が進められることとなっております。この地域における事態は、予断を許さないものもありますので、今後とも注意深く見守ってまいる所存であります。  また、インドシナでは引き続きポル・ポト軍ベトナム軍及びヘン・サムリン軍とがカンボジア内で戦闘を続けています。この紛争に関連して、タイ、カンボジア国境においてもかなりの緊張が生じており、今後の動向には引き続き注意を払う必要がありましょう。  さらに、中東、ペルシャ湾、インド洋地域では、ソ連アフガニスタンへの軍事介入イランにおける米大使館員人質事件等をめぐって緊張が高まっていることは、この地域資源に大きく依存するわが国としても、重大な関心を持たざるを得ないものであります。  かねてから西側諸国は、東側との軍備管理交渉を進めてまいりましたが、ただいま申し上げたような諸情勢も踏まえ、一昨年五月のNATO首脳会議において長期防衛計画に合意するとともに、防衛費実質、年三%を増加する等の決定を行い、昨年十二月のNATO閣僚理事会において戦域核近代化を決める等、それぞれ困難な政治経済情勢下にありながら国防努力強化を図っております。中でも米国は、いまや将来にわたってソ連に優位を保ち続けるか否かを決定すべき歴史的転換点に立っているとして、みずから国防支出の持続的な実質増に着手するとともに、西ヨーロッパ日本等同盟国に対し、より一層の国防努力を求めている状況にあります。  以上、国際軍事情勢に対する認識を申し上げましたが、このような国際環境の中にあって、わが国は、御承知のようにみずから適切な規模防衛力整備するとともに、米国との安全保障条約によってわが国の安全を確保することとしております。そこで、次にこのわが国防衛政策について御説明したいと思います。  まず第一の柱であるわが国防衛力整備についてでありますが、政府は、昭和五十一年十月、昭和五十二年度以降に係る「防衛計画大綱」を国防会議及び閣議において決定しております。従前、政府は、四次にわたる防衛力整備計画に基づき、段階的に防衛力整備を図ってまいりましたが、第四次防衛力整備計画昭和五十一年度をもって終了するのに伴い、当時の国内外の諸情勢を考慮して、昭和五十二年度以降の最も効率的な防衛力あり方を示すものとして、この大綱が作成されたものであります。  この大綱では、わが国が保有すべき防衛力あり方として、防衛上必要な各種機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼とし、これをもって平時に十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模侵略事態に有効に対処し得、さらに、情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配意されたものとする必要があるとの考え方を示しております。  わが国は、昭和五十二年度以降、この大綱に従い、質的に充実向上した防衛力整備具体的実施を進めておりますが、大綱の策定以来、特に最近わが国をめぐる国際情勢が厳しさを増しつつあることにもかんがみ、この大綱に定められている防衛力水準を可及的速やかに達成することが必要であると考えております。  防衛庁は、昨年七月、昭和五十五年度から五十九年度までの五年間における陸海空各自衛隊の主要な事業についての見通しを得るため中期業務見積もりを作成いたしました。  この作成に当たりましては、「防衛計画大綱」に示されている基幹部隊早期整備装備質的向上中心にした各種防衛機能整備充実及び有効な防衛力の発揮に資するための後方支援教育訓練態勢等整備充実を特に重視いたしており、これが予定どおり達成されると、わが国防衛力相当向上することが期待されますが、それでも「防衛計画大綱」に示す防衛力水準を達するにはなお努力を要する状況にあります。現在防衛庁といたしましては、こうしたことを踏まえつつ、この見積もり早期に達成するよう見直し作業を実施しているところであります。  また、私は、防衛力整備に当たっては、研究開発推進についても十分配慮していかなければならないと考えております。  わが国国土国情に適した質の高い装備は、みずからの手で研究開発し、国産することにより、初めて得られるものであり、また、これにより長期にわたる維持補給が安易となるのみならず、技術力維持育成及び防衛生産基盤の確立を図ることもできると考えております。  世界主要国装備研究開発に、相当の予算と人員を投入し、絶えず装備の高度化、近代化を図っているところであります。  防衛庁においても、民間技術力の活用を図りつつ研究開発推進してきたところでありますが、今後とも、研究開発態勢のなお一層の充実に努力していかなければならないと考えている次第であります。  次に、第二の柱である日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用体制整備について申し述べたいと思います。  わが国は、安全保障の基調を日米安全保障条約に置いておりますが、かつては、米国との間で軍事面を含めた協力態勢に関する研究、協議は行われてきておらず、たとえば、わが国に対して武力攻撃が発生した際に日米両国協力してとるべき措置の内容、範囲等についても、具体的な協議が行われたことがないという状態でありました。  このような状態を改めるため、一昨年「日米防衛協力のための指針」がまとめられ、現在、この指針に示された基本的枠組みを踏まえ、共同作戦計画、情報交換に関する事項及び後方支援に関する事項等に係る各種研究を在日米軍当局との間で鋭意進めているところであります。  日米防衛協力あり方についてこのような指針が作成され、この指針に基づいて所要の研究が行われることは、安保条約の円滑な運用整備を図る上できわめて有益なことであり、同条約の有する抑止効果を高め、もってわが国の安全及び極東の平和と安全を一層効果的に維持することにつながるものと信じております。  次に、日米共同訓練についてでありますが、自衛隊においては、これまで海上及び航空自衛隊が、戦術技量の向上を目的として、米国との共同訓練を実施してきております。  昨年度は、特に海上自衛隊が初めてリムパックに参加し、これまでの対潜戦のほか、防空戦、水上打撃戦、電子戦を含む総合的な訓練を実施し、米海軍の最新の戦闘技術を習得する機会を得ましたが、このことは海上自衛隊の戦術技量の向上を図る上で大きな前進であったと考えております。  防衛庁といたしましては、今後とも、米国との間の共同訓練を着実に推進してまいる所存であります。  最後に、在日米軍の駐留経費防衛施設の問題でありますが、在日米軍の駐留を真に実効のあるものとして維持することは、日米安全保障体制防衛の基調とするわが国にとってきわめて重要なことであります。  政府は、このような立場から、在日米軍の駐留経費の負担については、地位協定の枠内においてできる限りの努力を行ってきておりますが、今後とも、この努力を続けてまいる所存であります。  また、防衛施設は、自衛隊の活動と在日米軍の駐留の基盤をなすものであり、その安定的使用は、わが国防衛にとって必要不可欠なものであります。この防衛施設の安定的使用は、関係地方公共団体、住民等の理解協力なしには行い得るものではありません。同時に、防衛施設使用によってその周辺住民のみが特別の犠牲を強いられることがあってはならないのであります。  このため、政府は、防衛施設の設置、運用とその周辺地域の発展や関係住民の民生の安定との調和を図るため、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する諸施策を講じてまいりましたが、さらにこの諸施策を充実して、防衛施設の安定的使用について関係者の一層の理解協力を得たいと考えております。  以上、防衛政策に関する最近の諸問題について申し述べました。今後、坂田委員長初め委員各位におかれましても格段の御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  6. 坂田道太

    坂田委員長 この際、昨日のイランにおけるアメリカによる人質救出活動について外務大臣より説明を求めます。大来外務大臣
  7. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イラン領内における入質救出活動につきまして、一言所感を申し述べたいと存じます。  昨四月二十五日、ホワイトハウスが発表いたしました在テヘラン米国大使館人質救出活動とその中止問題につきましては、いまだ詳細な報道を得ておりませんので論評は避けたいと存じますけれども、概要について申しますれば、米国がこれまで人質の解放について半年にわたって実現しないということに深く苦悩していたこと、したがって、このような非常手段まで講じて人質の救出を図ろうといたしましたことは、人道的な見地から見て、心情的には理解し得る面があると存じます。  日本及びヨーロッパといたしましては、あくまでも平和的手段によるイラン問題の解決を目指しまして従来もいろいろ努力してまいりました。米側にも自制を求めてまいりまして、いわゆる軍事制裁行動に出ることのないように訴えてきたわけでございます。  いずれにしても、カーター大統領は発言の最後において、友邦及びイランのオフィシャルとともに、平和的かつ外交的手段により、人命を損なうことなくこの危機を早急に解決したいと述べております。日本としても、欧州諸国等と協調しつつ、平和的手段による人質の早期解放を目指して努力を続けてまいることにいたしたいと存じます。  特に、昨日の行動につきましては、いわゆる軍事的制裁行動ということではなくて、人質救出のための行動であったというふうにその後のいろいろな情報から判断しておるわけでございまして、そういう意味では、イランに対する武力制裁というような性質のものではない、人質救援の活動であったと了解いたしておるわけでございます。
  8. 坂田道太

    坂田委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  9. 坂田道太

    坂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋政嗣君
  10. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 本日は、安全保障特別委員会のいわば店開き、最初の質問の日でございますので、私は当初安全保障防衛に関する基本的な問題についてお尋ねをしたいと思っておりました。しかし、いま御報告もございましたように、昨日非常に重大な事態が発生をいたしておりますので、このことを抜きにするわけにはまいりません。それに、こういった危局を背景に大平首相が訪米をするということでもございますし、この面から言っても当面の問題から離れて質問をするわけにもまいらない、このように思うわけです。そこで、当面の問題に焦点を合わせながら、そしてできるだけ基本的な視点を踏まえて質問をしてみたい、このように考えております。  最初に取り上げたいと思いますのが、イラン問題、特に今回アメリカが行いまして失敗をした人質救済作戦についてお尋ねをしたいわけですが、何と言ったらいいのか、安保特別委員会のいわば店開きを前にしてこのような事態が起きたということは、ふさわしいというのではなくて、非常に不吉なスタートを意味しているのじゃないか、私は率直にそんな感じがいたします。これから心を引き締めてこの委員会審議に臨まなければいけないのではないか、こういう考えのもとに質問に入りたいと思うのです。  外務大臣いま概要を報告したことになるのでしょうけれども、ポイントには何も触れてないわけですね。これじゃ報告にも何にもならない。新聞の報道はもっと詳しいですよ。私はやはり質問をする前に事実関係というものをしっかりと踏まえる必要があると思いますので、私なりに報道機関を通じて入手した材料をもとに最初にお尋ねをしてみたいと思うのです。特に重大なのは、この作戦に使用された部隊、すなわち装備も人員も日本からそれが出ておる、私はこの点からお尋ねをしたいと思うのです。  防衛庁長官、あなたは第五空軍に所属する第一特殊戦飛行隊というものが沖繩にいたことをお認めになりますか。この作戦に使われたというC130ハーキュリーズ、これが沖繩にいたのです。この作戦に使われたと私は推定いたしております。さきに国会で、極東の範囲が中東にまで及んでしまいました。それが単なる条約論、法律論ではなくて、実際に行動によって示された可能性があるのです。この愚かな行為が、日本領土の中で訓練が行われて、そして実施された可能性があるんです。それだけにこの事態をまず最初にしっかりと把握していただきたい。この委員会としても把握する必要があると私は思います。いかがですか。
  11. 細田吉藏

    細田国務大臣 非常に重大な問題でございまして、私は一般論としてのことは承知しておりますが、ただいまの御発言の中身は非常に重大なことでございますので、専門の政府委員から一応答えさせていただきたいと存じます。
  12. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 これは非常に細かい技術的な問題がございますので、政府委員から申し上げます。  まだ正式の連絡ではございませんが、ブラウン長官が事件の経緯を正式に報告したということをニュースで言っておりまして、それによりますと、空母ニミッツから出ましたRH53というヘリコプターを八機、及びC130を使った、そういうふうに言っております。  そのC130が、沖繩において訓練された部隊インド洋において移動して使用されること、そのことについての法律的な問題につきましては、これは外務省の問題でございますのでお答えは避けさせていただきますけれども、ニミッツと申しますのは第六艦隊所属の米空母でございます。機動部隊でございます。喜望峰を回りましてインド洋に来ております部隊でございまして、RH53、またそれに乗りました部隊も、第六艦隊のニミッツ所載のヘリコプターであるというふうに考えております。
  13. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 役人が出てくるのは、必要な場合はやむを得ませんけれども、聞かないことばかり答えて、ばかにしないでくださいよ。私が聞いているのはC130の話なんです。C130が航空母艦に載っかるんですか。あなたに聞いているんじゃない、大臣に聞いているんです。  日本におったC130、沖繩の部隊がこの作戦に使われておる可能性が非常に強い。いまおらないんです。このC130が沖繩におったのに消えちゃっているんですよ。いかがですか、この沖繩の部隊が使われている可能性については。
  14. 細田吉藏

    細田国務大臣 輸送機C130は航空母艦から飛び立つというようなものでないことは私どももよく承知いたしております。  沖繩にいたというふうな可能性がある、あるいは疑いがあるというようなことにつきましては、これは非常に重大なことでございまして、私どもはそのようなことはないと考えておるわけでございますが、こういう点について私どもがいまいろいろ御答弁を申し上げるほどの情報を私どもつかんでおりませんので、お答えをすることを控えさせていただきたいと思います。
  15. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 この作戦についての国民の最大の関心事ですよ。日本基地が使われているんじゃなかろうか。これに答える責任が政府にはないというのですか、いま直ちに調べなさいよ。これはすっぱ抜きでも何でもない、一般公刊されている資料に全部出ているのですよ。  第五空軍の中に第三一三航空師団というものがある。そしてそれに属する第一八戦術戦闘航空団、それにさらに属する飛行隊として第一特殊戦飛行隊というものがある。第五空軍に所属する第一特殊戦飛行隊というものが、これがC130大体四機で編成されている。この部隊がいま沖繩から消えているのです。これが行っているんじゃないか。いますぐ調べたらどうですか、私が質問している間に。
  16. 細田吉藏

    細田国務大臣 非常に国民関心を持っておるということについては、私どもも一般国民同様非常に関心を持っておるわけでございまして、関心がないかのごときことではもちろんございません。これは申し上げるまでもございません。で、そんなことであるから、いま直ちに答えろ、こういうことのように承るわけでございますけれども、事が重大でありますし、昨日の夕方、私どもへ第一報が入ったという事柄でございますので、いますぐにお答えをしなければならぬと言われましても、実はお答えができない、こういうことでございます。  それから、いまの輸送機につきましては、これは米軍は非常にたくさんのものを持っておりますし、各地に持っておるわけでございますので、そういう点から申しましても、そういう点についていまお答えをするという段階ではない。ただ、いまおっしゃるような点につきまして調べろということでございますから、私ども今後十分調査はしてまいらなければならぬとは思っております。
  17. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 在日米軍がどの程度の範囲で使用されるのか、条約論でなくなってきたわけですよね。どうもこういう危険な、世界の平和を脅かすような作戦に使われた可能性が強い。現実の問題になってきたわけです。特別委員会としてはどうしたって解明しなくちゃならない問題だと思いますから、できるだけ早くひとつ調査してください。この訓練が早くから行われたと大統領も言っております。私は沖繩でこの訓練が行われた可能性は十分にあると思う。日本領土の中でこういう訓練がずっと行われておった。いままで発表されましたものによると、発進地も定かじゃないんですね。一カ所だけ名前が出ているのが、カイロ周辺の軍用の空港から出発したんじゃないか、こういうふうに言われているわけですが、沖繩から移動して、そしてカイロからスタートしたというようなことになるのかなと私は見ているわけです。  そこで使用された飛行機はハーキュリーズ大体三機、それからさっき話のありました航空母艦から発進したと思われるヘリコプター十一機ですか、この点は確認されているのですか。一体どういうものが使われたのか、いま知っておる範囲でお答え願いたいと思うのです。
  18. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ブラウン長官の記者ブリーフによりますと、ヘリコプター八機及び輸送機C130六機が参加いたしたわけでございます。
  19. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 新聞報道によると砂漠で十一機確認したというのもあるわけですが、その八機はそれじゃ確定ですね。  人員はわかりますか。
  20. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 人員は九十名、そのほかに航空関係の人員、数字は申しておりませんが、それだけブラウン報告で言っております。
  21. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 中止した原因というのは、救出用ヘリコプターの装備上の不備、機具の故障だというふうに言われているわけですが、これは間違いありませんか。
  22. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはブラウン国防長官のブリーフにそういう点もいろいろ書いてございます。このブラウン国防長官の記者ブリーフでは、ヘリコプターの故障によって中止したと申しております。
  23. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は、このようなまことに危険きわまりない作戦が行われたということを非常に重視したいと思うのです。特に四月二十一日、二十二日、ルクセンブルクでEC外相理事会が開かれた。その席で、アメリカが軍事行動に出ないようにするために、どうしてもこの際アメリカの要請に応じて政治的、経済的な制裁措置をとることが必要だという確認が行われた。あなたもそれに賛成された。こちらにお帰りになってからも外務委員会で、ECの決定で米国の軍事行動は遠のくだろうという見通しすらあなたは述べておられるわけです。それなのに、その直後にこのような行為に出る。一体どういうことだ。まずその点、外務大臣のこの点に関する御意見、御感想をお伺いしたいと思う。
  24. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は、私もこのニュースを最初に聞きましたときに大変疑問に思ったわけでございまして、EC諸国及び日本も共同して平和的な解決を求める、それに対して米国側の好意的な反応もあったわけでございまして、その辺の事情がわからなかったわけでございますが、ワシントンにおきまして、日本時間の二十六日午前五時十五分、けさの五時十五分になりますが、クリストファー国務副長官が、EC大使、日本大使、豪州、ニュージーランド大使、スペイン大使等を招きまして説明をいたしたわけでございます。  この説明によりますと、第一に、秘密保持のために事前連絡をしなかった点に了解を願いたい。かかる結果となったことにいたく失望しておる。第二に、この時期に計画を実施したのは、物理的には、今後は季節風が強くなり、人員輸送が困難になること。気温が上り、夜が短くなるので、隠密行動が困難になること。また人質の状態が必ずしもよくなく、イラン、イラク関係の悪化に基づく治安の悪化にも不安が持たれること。イラン国民議会の開催がいつになるかわからぬこと等を考慮し、人道的観点から実施に踏み切ったものである。米国としては、今後とも、平和的、外交的に人質の解放に向けて努力をするので、同盟国におかれても、経済、政治制裁の継続をよろしくお願いしたい。またイランに対しても、解決が長引くことはイランのためにも不利になること及び人質の拘束状態改善のための働きかけをお願いしたい。これがクリストファー国務副長官の各国大使に対するブリーフィングでございまして、米国側はこういう事情を挙げて、このいまのタイミングを選んだということと考えられます。
  25. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 アメリカから釈明があったというその内容はいまわかりました。  私がお尋ねしているのは、日本政府がアメリカのこの行為に対してどういうふうに見ておられるのかということなんです。容認するのかどうか。何をされてもアメリカのすることならすべて認めるということなのか。しかもあなた方は国会でも説明した。軍事行動に出ないようにするためにも、この程度の経済措置はやむを得ないのですから、御承認願いたいと国民に訴えた。信じておられたのでしょう。信じておったということはアメリカを信じてもおったわけでしょう。そのあなたの信頼を裏切って突如こういう行為に出た。しかもそれはもう最初から、早くから計画しておった、訓練もしておったという。そういう仕打ちに対してどのような御見解をお持ちなのか。そんなことをされてもなお、アメリカのすることだから容認いたします、認めます、国際法上も当然の権利を行使したまでですとお考えなのですかと聞いておるわけですよ。
  26. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その点につきましては、先ほど最初に概略を申し述べたわけでございますけれども、今回の人質救出行動というのがいわゆる軍事行動とは解釈されない、軍事的制裁行動とは解釈されない。これは従来も、エンテベ飛行場とかモガジシオ飛行場に対する人質救済行動が西独やイスラエルによって行われましたけれども、当時これは軍事行動とは一般には見られなかったわけでございまして、アメリカの大使館に拘禁されている人質の救済活動、一般的な軍事活動とは解釈されないということでございます。
  27. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 これは作戦が失敗した、中止されたから、あなたのそういった詭弁も何か三分の理があるように聞こえるけれども、実際にこれが中止されずに行われておったらどうなんですか。テヘランで戦闘が行われるわけでしょう。人質だけおるわけじゃないですよ。武装した集団が千人から二千人、大使館の周辺にはいるわけですよ。ここで戦闘行為が行われるわけです。これが武力行為じゃないのですか。しかも領空侵犯ではないのですか。その点についてはどのようにお考えなんですか。これはアメリカの個別的な自衛権の発動とでもおっしゃるのですか。いかがです。
  28. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは最初に、アメリカのテヘランの大使館が占領されて大使館員が人質にとられておるという、最初の国際的な不法行為があるわけでございまして、その人質の救済という限定された行動であったと思います。そういう意味で、先ほど申した解釈をいたしておるわけでございます。
  29. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 イラン側が大使館を占拠して人質をとっているなんというのは、全く不法、無法な行為ですよ。そういう行為があるから何をやってもいいということにはならないでしょう。あなた方も武力行使はやめてもらいたい、そう思っておられる、その努力もしたとおっしゃってきたわけです。もし、そういう不法、無法な行為があるから一切が許されると言うのであるならば、イラン側にも言い分はあるわけでしょう、御承知のとおり。長い間のパーレビ時代に、アメリカの大使館を中心にどういう行為が行われたか、人民に対してどういうことが行われたか、その恨みつらみがあってのことなんですよ。だから謝れ、過去のそういう悪業について謝れと言って、占拠して迫っているんでしょう。彼らにも原因があるわけです。そういう不法、無法な行為が現実にあれば、それに対抗するために何をやってもよろしいということにならない。そういうことを言えば、イラン側の主張をも肯定することになる。  そういう前提に立って私はお伺いしているわけですが、明らかにこれは領空侵犯ですね。いかがですか。
  30. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は条約局長に回答させます。
  31. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えいたします。  アメリカの航空機が人質救出を目的といたしましてイランの領域に入ったという事実以上には詳細が不明でございますけれども、確かに、現実の問題としてイラン領域に入ったということだけをとらえますれば、領空侵犯ということも言えないことはないと思います。ただ、この事件は、イラン側によります米大使館員の人質事件という全体の枠の中でやはり考えなければならない性格のものでございまして、今回の米側の行動だけを取り出してその是非を論じるということはできないものだと考えるわけでございます。
  32. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そういう非常に悪い慣例を残すような解釈をしちゃいけませんよ。過去においてあるじゃないですか。ソ連から不法に日本に入ってきた。亡命が目的であった。しかし、亡命が目的であろうと、それはパイロット自身の意思であって、ソ連の飛行機が日本に来ておるという事実はどうにもならない。その飛行機を返せと言ったときになかなか返さなかった。返さないからそれじゃ領空侵犯してもいいという理屈が成り立ちますか。成り立たないでしょう。条約局長ともあろうものが、そういう便宜的な解釈をしちゃいけませんよ。もっと法に忠実であるべきです。  もう一つ私が聞いているのは、アメリカの自衛権の発動ということになるのかということです。  けさのニュースを聞いておりましたら、国連に報告したそうです。これは国連憲章五十一条に基づく報告じゃないかと私は思ったのですが、その点に関連して、日本政府としてはアメリカの個別的自衛権の発動と受け取るのかどうか、この点についてもお伺いしておきたいと思います。
  33. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  アメリカが国連に報告をしたという事実は私も承知しておりませんので、その点に関する私の御答弁は差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、在外の自国民が在留国において不当な侵害を受けたような場合、これは一般論でございますけれども、当然その者の生命の安全については当該国、その居留地のある国の政府が責任を持つということが第一義的なものでございます。ところが、その当該国の政府が何ら人質と申しますか、その在留外国人の生命の保護について責任を持ち得ない状況になったような場合、その場合には、その在留民の本国がその自国民を救出する、ないしは自国民の安全に対する侵害を排除するために、自衛権の行使ということで、救出ないしは武力の行使ということを行い得るということは国際法上も考えられることでございまして、もとよりこれは自衛権というものでございますから、その自衛権の無制限な拡大ということは許されないわけでございまして、自衛権における必要最小限度の行使ということが要件となってあるわけでございます。恣意的に非常に広げるわけにはいきませんけれども、自衛権の行使ということが外国に在留する自国民を保護するためにも正当視されるということは言えると思います。
  34. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私けさ、国連に報告をしたとNHKのニュースで聞いたわけです。だから、アメリカとしてみれば、国連憲章で許された範囲の行為、個別的自衛権の発動という解釈をとっておるのかな、こう思ったわけですが、あなたその点については避けられた。これも質問中に調べていただきたいのですよ、これがはっきりするわけですから、もうニュースで流れているわけですから。いかがです、いますぐわかりますか。
  35. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま御質問のアメリカが国連に報告したかどうかについてはわれわれは未確認でございますので、早速調査をいたします。
  36. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は報告したことそのものをどうこう言うわけじゃないですけれども、国連憲章五十一条で定められた権利の行使というには幾ら報告しても当てはまらないと思うのですよ、御承知と思いますけれども、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合に許されるわけですからね。アメリカに対して武力攻撃が行われたわけじゃない。それなのにこういう行為がとられたからといって、これは国連憲章で許された範囲の自衛権の発動というのは無理だというような解釈をとっておるわけです。至急調査していただきたいと思います。  ここで非常に心配なのは、今回の作戦の失敗によってさらにアメリカが強硬な軍事行動に出るおそれが出てきたということですよ。これだけは何としても食いとめなければならない。その点については、思いは同じかどうか、外務大臣
  37. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その点は日本もEC諸国も同じ考え方をしておると存じます。
  38. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 さきの対イラン制裁措置と、それから同盟国に対する同調要請が行われたときにもアメリカは何も相談はしてないわけですね。日本に対しては少なくとも相談がなかった。それでも武力行使に出られてはかなわぬからというので、ECと語らってこの政治的な経済的な制裁措置に同調したわけだ。そして日本としては大変な被害をこうむっているわけですよ、日本国民としては。イランの対日原油の積み出し停止という報復措置を受けているわけです。これが長引いたら日本経済に、日本国民生活にどのような大きな影響があらわれてくるか、私がここで言うまでもないことです。しかし、とにかくこれ以上危険なことをアメリカにやらせないためには、この程度のことはひとつしんぼうしてくださいと言ったのは日本政府なんだ。ECの各国なんだ。やらしておいたら、今度はもう一段エスカレートする。本当に心配しなければおかしいですよ。しかも同盟国同盟国と言うけれども、どこに信頼関係があるのですか。あなた方は何かといえば一番信頼関係が必要だと言う。われわれが非常に危険を予想して、こういう場合どうするんだと言ったら、事前協議と言って逃げる。こういう事態に何の相談もしない。そういうことで事前協議などという制度が成り立つんだろうかとすら私は思います。相談なんか何もない。ただ、これもニュースの報道によると、イギリスにだけはちょっと話しておったんじゃなかろうか。イギリスと西ドイツにはほのめかしておったのじゃなかろうか。それは可能性としてはあると思うのです。なぜならば、政治経済制裁に同調してくれなければわれわれはこういう作戦をやりますぞということをどこかに言わなければ協調が得られないという条件があったわけですから、私は、一、二の国にほのめかしたという可能性は十分にあると思う。差をつけられたと言って怒っている国もあるようですけれども、怒るとか怒らぬとかいう問題じゃない。ここまでいけば、さらにしようがないからまたどんどんエスカレートしていくこの状態を目のあたりに見て、どうしたら歯どめが本当にかかるんだろうかと考えるのが、お互い日本国民に対して、世界の平和に対して責任を持つ者の立場です。私はその立場でお尋ねしているわけなんです。一体名案があるだろうか。  大平さんがアメリカへ行くわけですから、タイミングとしてはいいのか悪いのか。逆に、この危険きわまりない事件が起きたことによって、多少はこれをメリットのある訪米にする可能性も出てきたと私は思うのです。こういう状況がないままに行ったら、何もかにも背負わされて約束させられて帰ってくるんじゃないかと心配しておりました。それくらいなら訪米はやめた方がいいとすら思っておりました。しかし、こういうむちゃくちゃな作戦をやった、しかも失敗したという背景があって訪米となれば、生かしようによって、やりようによってはプラスに転化できる、私はそういう気持ちになってきたのです。本来ならば、私はここに総理に出てきてもらって、やりますという決意のほどをお伺いしたいくらいの気持ちなんですが、出ておられませんから外務大臣からぜひ進言していただきたい。むやみやたらにアメリカの言うことに同調することが必要なんじゃない。アメリカのためにも。世界のためにはもちろんのこと。ここはがっちりと言うべきことは言う。どう言ったらいいのか。カーター大統領に対するいまヨーロッパを中心世界じゅうのもろもろの批判のポイントは何かというと、選挙を余りにも意識し過ぎている、この一点ですね。もっと高い次元で物を考えろ。世界の大国ならば慎重にやってもらいたい。資格がない。凡庸な大統領といういまだかつてない異例ともいうべき批判すら起きておると報道されております。ここで何を言うべきか。私はジョンソン大統領の例にならうべきだと思うのです。ジョンソン大統領は自分がもう立候補しないということを決意し、表明する中でベトナム戦争の終結に導きました。それぐらいの決意なしにこの事態を解決する方法はない。その程度のことは——直接ストレートに言うことはそれはできません。しかし、そういう事例を踏まえて建言するぐらいのことでなければこの事態の解決はありませんよ。そのことについてひとつ大平さんに私の意のあるところをお伝え願えるかどうか、お答え願いたいと思います。
  39. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も大平総理に随行してまいりますので、石橋委員の御発言のことは確かに伝えるつもりでございます。ただ、その問題については友好国の国内の問題もかなりかかってくるわけでございまして、どういう形になるかはこれはまた検討さしていただきたいと思いますが、私の一存では、とにかく世界平和の維持ということにお互いに努力すべきだということは言うべきことであろうかと思います。  なお、先ほど事前連絡につきまして、イギリスでございますが、これは英国の下院緊急審議の中でギルモア国璽尚書が答えておることで、米国から事前に協議は受けていないが、人質救出作戦の可能性はインフォームされていたという答弁をいたしております。ドイツにつきましては、政府スポークスマンから、事前通報は全然なかったという発表をいたしております。
  40. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 日本には、とにかく前の経済制裁、政治制裁の措置の段階でも、今度の作戦遂行の段階でも、事前の連絡はなかったのですね。
  41. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 前の経済措置、これは四月七日にアメリカが国交断絶をいたしたことについてのお尋ねと思いますが、このことについては、従来から、米国日本側との各種の話し合い、チャンネルの中で、アメリカとしては極力人質解放——当時国連の仲介等もございましてかなり希望が見えた時期でございまして、話し合いによる人質解放に極力努力する、その努力が成功しない場合には次のステップを考えなければならないかもしれない、そういう程度の話はございました。しかし、四月七日の断交そのものについての事前連絡はなかったわけでございます。
  42. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は今度のこの事件を通じて、軍事同盟というものの持つデメリットの側面というものが浮き彫りにされたと思うのですよ。さっき外務大臣の発言を聞いておりますと、いざというときにアメリカの来援を請わなくちゃならぬ、必ず応援に来てくれると信ずる、しかし必ず来てもらうようにするためには日ごろが大切だ、その日ごろが大切だというところに、多少の無理はというよりはどんな無理でも聞かざるを得ないのですよ、皆さんわかってくださいよというニュアンスが込められている。これが条約上も名実ともに双務的な軍事同盟ならばそうまで言わないで済むでしょう。ECの国のように。NATO加盟国のように。いざというときにはこっちも助けに行きます、これが憲法上できない。それだけに私が言っているのは、それが言えない以上は大抵の無理は聞かざるを得ないのですから御承知願いたいというニュアンスありありですよ。(「そんなことありませんよ」と呼ぶ者あり)それじゃ態度で示しなさいよ。これは、アメリカに追随していけば、安全保障どころか、いざというときに助けを求めるなんという以前にひどい目に遭うのだ、その可能性があるのだということを一つ一つ証明している。冒頭に申し上げたように、日本のこの領土の中で訓練された部隊が使われるという事実が一つ出てきた。また、制裁行為というものに同調した途端に油がとめられた。大変な被害を受ける事実が発生しておる。軍事同盟というものにはそういう大変危険な側面、デメリットがあるということを現実に裏づけておる、このことを私は強調しておきたいのです。  私はさっき言ったようにその苦しい立場も頭の中だけではわかるのですよ。名実ともに双務的じゃないというそこから来ているわけですから。とはいっても、万事追随じゃいけません。こういう事態が起きたらなおさらのこと、もう少し自主性を回復していただきたい。イランに対する対応も柔軟にすべきじゃないか。そういう点からお尋ねしたいのですが、和田大使は予定どおりきょう帰任させるわけですか。それから、その他の制裁措置についてももう少し柔軟に考えていく、そういう考慮がおありかどうか、この辺についてお尋ねしておきたいと思います。
  43. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 和田大使は本日の夕刻予定どおりに任地に帰任させる予定にいたしております。  それから、ただいまのお話の中で自動的にというお話がございましたが、これは、この国会でもたびたび答弁いたしておりますように、日本基地使用する艦船、これは日本の周辺に、極東地域にとどまるということは軍隊の属性としてそれは不可能なことだ、軍艦、航空機は世界じゅうに行動する、しかし日本基地を使って直接戦闘作戦行動に出る場合には事前協議の対象になるわけでございます。また、極東の周辺ということが先ほどの御質問の中にございましたけれども、これはたびたび条約局長も答弁しておりますが、極東の周辺というのはそのときに起こる事態情勢で判断することでございますから、正確に地理的な範囲を定義することはできないけれども、中東はこれに距離その他の関係から考えて含まれないと思いますということも答弁いたしておるわけでございます。  もう一つはイランの石油の問題でございますけれども、これはIEA、国際エネルギー機関の申し合わせに基づきまして、シャープリー・ディファレント、国際的な石油価格と大幅に違う価格で買うことは、世界の石油価格の上昇につながるから自制しようという申し合わせがございまして、イランから二ドル五十セントの値上げの要求がありましだのを、それに対して日本側は断った。その結果いま一部船積みがとめられておる。これは制裁行為の一部では全然ないわけでございまして、そういう措置としてとられたわけでございます。
  44. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 もう一つお尋ねしておきたいのは、イランはアメリカ及びその同盟国の政治経済制裁に対応するためにどういう行動に出ているかと言えば、一つにはソ連、東欧に接近しておりますね。聞くところによると、もし海上封鎖が行われた場合には、ソ連領を使って物資の輸送を図るというような話し合いも進められているとすら言われています。軍事的な行動に出れば、私は軍事的にも接近せざるを得ないというような状況も出てくると思うのです。これはどんどんエスカレートしていきます。大変な事態を迎えます。そういう事態をあなたもすべてをかけて阻止するという気持ちでひとつアメリカに行っていただきたい。  アメリカ自身も過去においては隠忍自重した例があるじゃありませんか。一九六八年のあの情報収集艦プエブロ号事件のときには十一カ月粘っていますね。今度は大使館。あのときは軍艦です。人員は大使館の方は五十人ばかり、軍艦のときには八十二名、しかも死者が一人出ているわけですね。そのウエートにおいても私は大差ないと思いますよ。どうしてその慎重さというものが今度は失われたのだろうか、ここにやはり問題があると思うのです。  いろいろな背景、後で私質問に入りますから重複しない分をひとつ抜き出して言うならば、やはり大統領選挙、選挙というものが重くのしかかっていると判断せざるを得ません。そういう面から私先ほども申し上げたわけです。  それからもう一つ、今度のソ連アフガニスタンに対する軍事介入も含めて言えることですけれども、最近のイランアフガニスタンの問題が示しているもう一つの特徴は、いかなる軍事大国軍事力をもってしてはいかんともしがたいところまで世界情勢は進んできている、こういう側面も指摘できるんじゃないでしょうか。  私は非常に重要だと思いますが、この二つの点についてのお考えをひとつ両大臣からお伺いして、イラン問題は一応終わりたいと思います。
  45. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イラン問題を契機といたしまして、アメリカが大規模な軍事行動に出るということは、これはやはり世界の平和あるいは日本及びEC諸国を含む友好諸国の将来等も考えましても、きわめて危険なことだと言わざるを得ないと思います。そういう意味では、私どもとしてもできるだけそういう立場から米側にも話をする必要があると考えておるわけでございます。  それから第二の御質問でございますが、これはやはり世界情勢、特に第三世界、イスラム世界、いろいろな新しい勢力の台頭があるわけでございまして、世界のさまざまな問題を強大国だけで動かしていくということは次第に困難な時代になりつつあるということは、私も基本的にそういうふうに認識しておるわけでございます。
  46. 細田吉藏

    細田国務大臣 軍事力の行使、そのエスカレートということについては絶対避けるべきである、避けてもらわなければ困る、かように存じております。  第二点につきましては、軍事力増強することによって何でも事を解決するというような態度は、世界の人類が全部そういうことではないんだということを皆感じておる、かように存じております。
  47. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 次の質問に入ります。  最近アメリカのわが国に対する軍事力増強の要請というものは、要請の域をはるかに超えて強要と言っていいほど性急さを増しておるわけですね。これは一体どこから来ているんだろうか。遠因、背景、いろいろあるでしょうけれども、一つには、やはりアメリカが特にソ連に対して軍事的な優位性を失った、その焦りというものを見逃すことはできないんじゃないかと思うのです。ここでイランの問題あるいは、パキスタンの問題というものが、具体的にその優位性の喪失というものを直視せざるを得ないような事件にもなるわけですが、そこからいら立ちが増してきた。それで経済的にもまだゆとりがあると見られておる日本に対して、もっとふやせ、もっとふやせという要求になってきたんじゃないかと私は思うのです。GNPに対して国防費が幾らというこの数字が、いかにもゆとりのあるように見える数字でもあるわけですよ。〇・九%。欧米並みにもっとふやしたらどうだ。この数字というものが、私は非常に危険な使われ方をしておると実は思います。  それからもう一つは、優位性を失ってきたために何としてもこれを回復したい。回復するためにどうしたらいいか。一つには、中ソが激しく対立しているので、この中国を陣営に取り込んでいくということも考えられてきた。しかし何といっても同盟国に対して総結集を図る。先ほども私申し上げたように、条約上の義務をもっと積極的に果たせ、ただ乗りは許さぬという形で厳しい要求になってきておる。これを受けて日本側もじりじりと既成事実を積み重ねていっているような気がするのですよ。いわゆる同盟国総結集、とりあえず日米のいわゆる共同作戦遂行を前提にしたいろんな準備、その一つがガイドラインの作成だと思うのです。それからリムパックもその象徴的な事件だと私は思うわけです。  そこで、今度外務大臣も訪米なさるわけですが、軍事問題というものも大きな話し合いのテーマになる。ここでどういう要求がなされてくるか。あなたが先に行って感触を得てきておるわけです。一つには、いま言うように、何としても防衛費をふやせ。具体的にはいま防衛庁の段階でまとめておる中期業務見積もりを一年短縮するくらいのスピードでやりなさいという要求が出てくるんじゃないか。それから太平洋シーレーンの防衛分担の拡大、対空防衛力向上を迫ってくるんじゃないか。それから有事の際の宗谷、津軽、対馬三海峡の封鎖ということについても準備を整えろ、体制を整えろ、こういうことが言われてくるんじゃないか。弾薬備蓄の増量による継戦能力の強化についても言ってくるのじゃなかろうか、いろいろ言われているわけです。あなたは言わば斥候の役割りで行って把握しておられるわけです。大平さんはその回答を迫られるわけですね。われわれ国民としても重大なる関心を持たざるを得ない。大平首相はどう対応するんだろうか、みんな注目しているわけです。その点について次はお尋ねしてみたいと思うわけです。  まず第一、私はどうも腑に落ちないのですが、幾ら同盟国とはいえ、外国が防衛力増強しろ、国防費をふやせ、こういう態度をとることはおかしいんじゃないですか。私がさっきから何か言えば、内政干渉だみたいなことをおっしゃるけれども、こういうときにこそ言っていただきたいのですよ。私はこのごろはなれてしまって、おかしいという気持ちすら失っているのじゃないか。いかがですか、こういう態度は許されることなんですか。まずそこからお尋ねしたいと思います。
  48. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ヨーロッパにはNATOがございまして、アメリカ政府は再三NATO諸国が国防費を年率実質三%でふやすことを求めるという要請を繰り返ししてまいりまして、NATO諸国もそれを受け入れて防衛費の増加に踏み切っておるわけでございます。日本の問題につきましては、米側は日本の憲法、専守防衛というような基本的な条件は十分承知している。ただ、極東情勢から考えると、日本自身の安全のためにもう少しやることがあるのではないか、そういう面で努力をしていただけないだろうかという基本的な話であると了解しております。
  49. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 あなたはアメリカから帰ってこられて予算委員会なり外務委員会なりで、しばしばブラウン国防長官との話し合いの内容に触れておられるわけです。その中で、最近の情勢、特に極東におけるソ連配備増強あるいは中東における緊張という情勢にかんがみまして、日本側も着実かつ顕著な防衛費増強を図っていただけないだろうかと要請された、こういうことを繰り返し繰り返しおっしゃっているわけですよ。この防衛力増強をやってもらえぬだろうかということを外国が言うということについて何らの問題はないんだろうか、当然のこととならされてしまっていいほどの問題なんだろうかと私は疑問を呈しているわけです。防衛庁長官、どうですか。
  50. 細田吉藏

    細田国務大臣 アメリカの国会や世論につきましてはいろいろまた別なことが言われておることをよく承知しております。が、アメリカの政府は、日本防衛費については日本がお決めになることであり、そしていろいろな制限もあるということは十分承知しておる。私どもの方では「防衛計画大綱」とか、あるいは国民総生産の一%を超えないことをめどとしてとかいうことを政府の方針としても決めておるわけでございますが、その範囲の中で防衛費についてステディーに、そしてシグニフィカントにひとつ努力してもらえないか、こういうふうに慎重に物を言っておるというふうに私は了解しておりまして、やはり防衛費の問題はわが国が決めるべきである。しかしアメリカがそういうことについて全然——いま私どもの立場、日本政府の立場を尊重しながら物を言っておるわけでございまするので、そういうこともけしからぬ、内政干渉であるということは、日米安保体制というものがある以上は、必ずしもそうは言えないのじゃないかというふうに私は考えておるわけでございます。しかし、基本は日本が決めることである、かように了承しております。
  51. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私がお尋ねしているのは、当然だという考え方がおかしいんじゃないですかと言っているのですよ。いかがですか。
  52. 細田吉藏

    細田国務大臣 当然という言葉がよくわからないのでございます。いま私が申し上げたとおりだと思うのでございますが、そこで、どういうふうな意味に当然ということがなるかということを、私ども当然そうであるというふうには申し上げてはおらないわけでございますし、いま答弁を申し上げたことがすべてでございます。
  53. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 アメリカのこの要求に誠実にこたえるのが当然だとおっしゃっているじゃありませんか。
  54. 細田吉藏

    細田国務大臣 こういうことだと思います。誠実にということがまた入ってきますと、話が——私の答弁の中でも、向こうが自主的に日本が決めるという前提において、しかも、いますでに決めておる方針の中でのいろいろな話をされるということについては、これは日米安保体制がありますから、こういうことに耳を傾ける、できるできないは別としまして、誠意を持ってこれについて考えるということは、私は決して否定されるべきことであるとは考えておりません。
  55. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 あなたは参議院の予算委員会で、誠意を持ってこたえなければならぬことは当然だと存じておりますと言っているわけですよ。私はそれがおかしい。アメリカに言われたら何でも誠意を持って当然これはやらなければいかぬ。  それじゃお尋ねしますが、いま具体的に向こうは、防衛庁の段階で作成している中期業務見積もりを短縮して早く目的達成を図れというふうに要求してくると伝えられているのですが、その要求には誠意を持ってあなたはこたえるのですか。
  56. 細田吉藏

    細田国務大臣 先般、大来外務大臣が行かれましてそのような話があったということも聞いております。今回大平総理が行かれてどういうことが出てくるか私も存じませんけれども、どういう表現でどういうことになるかわかりませんが、中期業務見積もりなんという言葉は恐らく出てこないのじゃないかと思いますけれども、とにかく防衛力増強については話が出るんじゃないか、こう思っております。したがいまして、アメリカが言ったから何でもかんでもというお言葉もありましたが、そういうことではないのでございまして、日本の立場から見て防衛力はいかにあるべきか、かような点は当然考える。防衛そのものが基本的に反対であれば別でありますが、私どもは日本防衛というものはいまの情勢からは必要である、増強することは必要である、こう考えておるわけでござまいすから、「防衛計画大綱」に定められておることやら、また閣議決定の一%をめどとすることやら、あるいは中期業務見積もりというのは、これは固定的なものじゃありません、その範囲内において中期業務見積もりをできるだけ入れていくことについては努力をするということは私ども考えておるわけでございます。ただ、これが実現できるかどうかということにつきましては、そう簡単な問題ではございませんので、これはすでに閣議決定もなされておりますように、国力、財政、いろいろなことが入ってまいりましょう。でありまするから、この点は防衛庁長官が単独で決めるような性格のものではない、かように承知しておるわけでございます。
  57. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 安全保障という問題は軍事力だけの問題じゃない、いろいろな条件、情勢というものを勘案しながら考えていかなければならない問題だということはかねがねあなた方もおっしゃっておるわけです。いまの段階で日本軍事力増強、軍事費の増額というものがどういう影響国民にもたらすか、日本の財政にもたらすかということは、あなたも国務大臣の一員として十分に御承知のはず、そういう前提で私はお尋ねしているわけなんです。  いままでも、そういうすべての条件を勘案した結果「防衛計画大綱」ができ、あるいは防衛庁段階であろうと、中期業務見積もりができているわけでしょう。それをアメリカが不満だから改めろ、ピッチを上げろと言ってくると、どこかに無理がいくのですよ。  これは私が言っているのじゃない。大平総理大臣が認めていますよ、あなた、首を幾ら振ったって。これは参議院の予算委員会で大平さんがはっきり言っている。いま国防費の増額ということを受ければ、三つの選択を迫られる。常識ですよ、これは国会議員としても。いいですか、赤字国債の増額、あるいは国民関連公共事業、私たちに言わせれば福祉予算も教育予算も入る、そういう部分の削減、あるいは増税、いずれかの道を選ばないことには国防費の増額はできない、三つの選択を迫られる問題でございますと答えている。このとおりなんです。だから、ここでアメリカの要求に応じていくということは、この三つの選択を、やむなしということに結論としてなるわけですよ。あなた自身は、国務大臣としてやむなしというお考えですかということでもあるのです、私の質問は。
  58. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答えいたしますが、私が首を振りましたのは前段のところでございまして、アメリカが「防衛計画大綱」を超えてやれ、あるいは一%を超えてやれということを言っておるというように私は聞きましたので、それはさようではございません、防衛計画の範囲内であり、GNPの一%程度以内を破れというような話にはなっておらない、少なくともアメリカの政府はそういうことになっておらない、そこのところは違うと申し上げたので、総理の答弁については、私は承知しております。  それから、日本の財政の事情が苦しいというようなこと、あるいは総理の答弁については、もうそれはそのとおりだと思っております。ですから、防衛費について今後いかがいたすかということについては、これはもう十分論議をして、あらゆる角度からお決めいただくことでございまして、私どもはいま、この閣議決定の線を崩そうとか、「防衛計画大綱」をこの際改定しようとか、そういうことを言っているわけじゃないのでございまして、いままで決まっておる範囲の中でどうするかということを言っておるということなんでございます。  これにつきましては、これは恐らく、私は、当委員会等でも、各党におかれましてまたいろいろな御意見が出てくるのではございませんでしょうか。政府政府としていろいろな、財政を担当する者もございます。安全保障はもちろん軍事だけ、国防だけ、防衛だけというようなことでないことも十分承知しております。ですから、そういうところで総合的に判断して決まる、かように思っておるわけでございます。防衛庁長官としましては、防衛の立場からはかように考えますということを強く申し上げておる、こういうことでございます。
  59. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは、総理と一緒に訪米をされる外務大臣にお伺いしたいのですが、あなたが一番、アメリカの強い意思といいますか、そういうものも御承知なわけですからお伺いしたいのですが、防衛費の増額を迫られておる、防衛力増強を迫られておる、しかしそれを受けるということは、先ほど私が指摘した大平首相の三つの選択につながる、だから、この際はどうも受けがたい、日本には日本の事情がございますから、アメリカの希望はよくわかりますけれども、そういうわけにはまいりませんと言えるのだろうか、またそういう意思があるんだろうか、この私たちの疑問にひとつ可能な範囲でお答え願いたいと思うのです、非常に重大な問題ですから。  大平さんも一番この事態をきちっと把握しているということは、私は答弁で知っているわけです。いま財政再建のときだ、自然増収でもあればそれは国債償還の方に回さなければならぬ時期だ、だから、非常に要求は要求としてわかるけれどもこたえにくいんだというニュアンスでいままで答えているのですが、そのまま言って対応されるのだろうか、そうしてもらえば幸いだがという、そういう願望を持った国民にどう答えられるのか、私はお答えを願いたいと思うのです。
  60. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 やはり一国の存立ということを考えますと、国民の福祉と安全ということが基本だと思います。もしも安全が脅かされれば、福祉は砂上の楼閣になるかもしれないわけでございまして、一つの国民世界の中でで立っていく場合に、やはりこの両者を考えなければならない。福祉だけあれば、安全の方は余り考えないでもいいというわけにはいかない問題だろうと思います。アダム・スミスの「国富論」の中にも、国防は富裕よりも大切であるという一節——これは二百年も前の世界のことですから別の世界でございますけれども、やはり日本国民の福祉を守っていくためにも、安全というものが必要だという考慮は基本的にあるべきだと思うわけでございます。  ただ、防衛庁長官が重ねて申しておりますように、日本のいまやれることというのは、防衛の面で大きな枠があるわけでございまして、その枠を超えてやるようなことは決して考えるべきではないというたてまえでアメリカ側からの要請に射しても従来から対処しておりますし、これからも対処すべきだと考えております。
  61. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 非常に重要な問題です。私は、先ほどから申し上げておりますように、国民生活の安定、こちらの方にウエートを置いて考えていただきたい。  アメリカの要求、これがどこから出てきているかと言えば、先ほども私が申しましたように、極東におけるソ連配備増強というものを理由にしている。しかし、そんなものはもうすでにいままで策定されたすべての計画なり予算なりの中に織り込み済みじゃないのですか。きのうきょうの問題じゃないわけですよ。私に言わせればそういうことです。そういうこともわかった上で、諸般の事情を勘案して計画も決まった、予算も決まったということじゃないかと思うのです。ここでアメリカの無理な要求に屈するということは、私は、長い目で見ても決して利益にならないということを申し上げておきたいと思うのです。  そこで、防衛問題の基本問題に入っていくわけですが、いまも申し上げましたように、極東ソ連軍増強というものを非常に強調される。最近の防衛白書を読んでも何を読んでも、すべては、ソ連を意識してそれに備えろという一大キャンペーンが展開されておるといってもいいと思うのですが、俗に言う仮想敵国、防衛対象国、それはいまではもう完全にソ連にしぼられてきたのではないかという感じすらするわけです。その辺から質問をしてみたいと思うのですが、いかがですか、防衛庁長官
  62. 細田吉藏

    細田国務大臣 わが国は、もうすでに石橋さん、申し上げるまでもなく御承知のとおりの専守防衛でございます。仮想敵国というようなものを決めてどうこうするということ、そういう態度はとらない、こういうことでございます。  ソ連が問題になるというふうにおっしゃいますし、先ほども、たとえば極東ソ連軍でもすでに織り込み済みでもう決まっておったことではないか、わかっておったことではないかというお話もございましたけれども、これは極東だけの問題ではなくて、ソ連軍事力が、世界的な規模において非常に大きな比率で年々それこそ顕著に増強されておることは、もう世界の人、皆さんが否定しておらない具体的な事実なのでございまして、予算の見方が、ソ連のような国でございますから、いろいろな見方があるようですが、少なくとも年々一一ないし一四%確実に増強されておる事実がある。したがって日本海におきましても、インド洋におきましても、あるいは太平洋等におきましても、たとえばソ連の海軍なども、十年前あるいは五年前と現在は非常に変わってまいっておる、これは事実だろうと思います、かように存じておるわけでございます。  なお、いま比率と申しましたが、大変どうも失礼いたしました。実はGNPの一一ないし一四%、日本がことしは〇・九%でありますが、一一ないし一四、計算の仕方によって違うようですが、この点は謹んで訂正さしていただきます。
  63. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私の質問しておるのは、仮想敵国などという言葉をストレートに使うことがふさわしいとは思いません。私が言ったのは、防衛対象国と言おうと構わないのですが、あなた自身も、就任第一声でソ連脅威ということを言ったわけです。そのまま本音を出したわけです。ソ連に焦点はしぼられてきたのですかという質問をしているわけです。というのは、最近発表された元国防会議事務局長の海原さんの論文などを読んでみましても、ソ連が最大の脅威ではあるが、対象国ということになるとやはり共産圏だという事実があるわけです。それから栗栖さんの著書を読んでみましても、第一はソ連だが、次いで中国だ、最近まで統幕の議長をやられた方の最近の著書にもそういう表現があるわけです。いわゆる防衛論ではなくて、われわれがいつも言う体制論じゃないか、それを裏づけるような発言が現実にあるわけです。ソ連が最大の脅威ではあるが、共産圏そのものが脅威なのだ。栗栖さんの手法でいくと第一がソ連、第二が中国なのだ、中国は日中平和友好条約を締結しているからしばらくはいいだろう、こういうような論文が書かれているわけです。それで私はお尋ねしているわけです。しぼられてきているのですか。
  64. 細田吉藏

    細田国務大臣 そういう御意見があることも、私も読ませていただいて承知いたしております。ソ連にしぼられておると申さないわけでございますから、そういう御意見があることも承知しております。
  65. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 一応日本防衛問題に深くかかわりを持ったというよりは、いわば最高の責任者という地位を占めた人、代表的な二人の例を持ってきたわけです。一人はシビルのトップの国防会議事務局長の意見、一人はユニフォームのトップ栗栖さんの意見、この二人の意見が大体一致しているわけです。現職のときには口にしなかったけれども、やめたら本音を吐いていることになるのだろうか、そういう意味でしぼられたのか、依然として脅威の対象は共産圏というこちらの方が基調なのか。どちらに基調を置いてあなた方は防衛計画を立て、訓練を積み上げてきておられるのですかと私は聞いているわけです。
  66. 細田吉藏

    細田国務大臣 先ほども申し上げましたように、私どもの方は仮想敵国をどこと決めていろいろやっているわけではない、こう申し上げておるわけでございますので、海原さんなり栗栖さんなりのお話が全く間違っておるとか、いろいろなことを言っておるわけでもなんでもございません。したがって、ソ連にしぼってどうこうしておるということではいまないわけでございますので、どうお答えしてよろしいのか、前提のところが私と多少食い違っておるような感じもいたしますので、そういうふうに特に決めておるわけではないということを申し上げておるわけでございます。
  67. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 栗栖さんなんかずいぶんやめてからストレートに意見を述べていますよ。軍備、国防を考える上で仮想敵国のない国はない。軍事戦略上これがないことは世界常識に反することにもなる。日本では仮想敵国というと、すぐにその国と戦争をするような解釈がされがちだがそうではない。国防を考える上で対象となる力がなければその目標も定まらない。そこで一つの対象としての前提をつくる、それが仮想敵国になるわけだ。以上のことを考えると、日本の仮想敵国としては、第一にソ連、次いで中国ということになる。これは「いびつな日本人」という最近の著書に書いてある一節です。これは軍事を論ずる場合には私も当然なことだと思うが、政治家がこの公の場で公然と言いにくい、言わない方がいいということであるならば、これ以上お尋ねするつもりはございません。ちょっと角度を変えてお尋ねしてみたいと思うのです。  いわゆる日米安保条約を基礎にして、かつて佐藤・ニクソン会談で共同声明の中に織り込まれた台湾条項、韓国条項というのがあるわけですが、まず第一に、台湾条項は完全に廃棄されたものと考えていいわけですね、アメリカと台湾との関係がなくなったわけですから。
  68. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  六九年の佐藤・ニクソン共同声明に掲げられました台湾についての認識というものは、その後いろいろな、日中国交正常化もございましたし、米中国交正常化もございましたし、いまやあの地域に武力紛争が起こる公算はきわめて少なくなっているということにおきまして、政府認識は変わっているわけでございます。ただいま先生は破棄したのかということでございますが、そういう認識は変わってきたわけでございますけれども、特に過去の六九年の声明の当該部分を破棄したというようなことはございません。別に破棄する必要もないことだろうと思います。
  69. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは、はやりの言葉で言えば、名存実亡ですか。
  70. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 共同声明と申しますのは、条約と違いまして、有効期限というようなものがついているわけでもございませんので、六九年当時の日米両国首脳の当時における認識を述べたものでございます。
  71. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 米華相互援助条約が発動されることはなくなったわけでしょう、その発動のために日本基地が使われるということもなくなったわけでしょう、その点はどうなんですか。
  72. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  米華相互援助条約というものは昨年末をもちまして効力を失ったわけでございまして、それが発動される余地はなくなったことはそのとおりでございます。
  73. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 したがって、その条約の義務履行のために、アメリカが日本基地から出動することもなくなったわけですね。
  74. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 その条約の履行をする義務はアメリカにはないわけでございますから、その条約の履行のために日本基地を利用するということもないわけでございます。
  75. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでいてなお台湾条項というものが残ったような残らぬようなというのが私にはわからない、どういうことですか。
  76. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 台湾条項と申しますのは、六九年の佐藤・ニクソン共同声明における当時の両国首脳の認識を述べたものでございまして、私が先ほど御説明申し上げましたように、現在においてはその認識変化したものであるということでございまして、それが残っておるというのは、条約でもございませんし、別に残っておるというわけでもございません。文書には確かに残っておるかもしれませんけれども、両国の認識はすでに変化しておるわけでございます。
  77. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 台湾地域に何か起きるのじゃなかろうか、日本の安全、平和に非常にかかわり合いの深い台湾に依然として何か起きるのではなかろうかという不安が残っているということなのでしょう、それじゃ。  韓国条項の方についてお尋ねしたいのですが、私はさっきの質問と違った側面からいまお尋ねしているわけなのです。朝鮮半島を見た場合に、それでは条約面から見ていったらどういうことになるのだろうか、少し整理してみる必要があるのじゃないかと最近思い出したのです。というのは、中国は日米安保条約支持していますね、このごろ。日米安保条約というものには、いわゆる韓国条項もある。それから米韓の相互援助条約というものも依然としてある。この辺の関係はどうなのだろう。いざとなればチームスピリットで駆けつけていくから心配するなということまでやってみせておりながら、日米安保条約はもういいと言う。今度は北の方との間を見ると、やはり中朝の相互援助条約があるわけですね。それから中ソの同盟はなくなったけれども、ソ朝もある。条約は全部あるのにどういうふうに整理したらいいのだろうか。日本の立場、日本防衛対象国ということをいま違った側面から私お尋ねしているわけです。どういうふうに理解してどういうふうに整理されているのだろうか、この条約関係を。どれかが名存実亡という解釈に立っておやりになっているのだろうか。どれもこれもみんな有効だと言ったらこんなに矛盾したことはないですから。そこのところを明快にひとつわかるように説明していただきたい。
  78. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ちょっと私質問の御趣旨が実はよくわかりませんので、あるいは見当違いの御答弁になるかもしれませんけれども……。
  79. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それではもう一回質問するからいいです、見当違いされては困る。  中国は、朝鮮民主主義人民共和国にもしものことがあるときにはこれを支援する、朝鮮戦争のときのように一緒に戦いますという約束をした条約があるわけです。これは当然韓国との関係を示唆していると私は理解している。その韓国は今度アメリカとの間で米韓相互援助条約を結んでいる。もしものときにはアメリカは支援に立つという約束をしている。これは朝鮮民主主義人民共和国を防衛対象国として、仮想敵国として考えた上につくられた条約理解している。それから、日本とアメリカにも日米安保条約というものがあって、そして韓国条項というものは韓国の安全、平和、これは日本の安全、平和に重大に結びついている、よそごとではありませんという理解を持っておられる、これはあなた方がいつも言っている。だから、アメリカがこの米韓相互援助条約を進める上について支障のないように協力するという体制もとっておられる。そうすると、これは矛盾しないはずはないのじゃないですか。中国が日米安保条約支持するということと朝鮮をいざというときに応援するということと、矛盾しませんか。割り切っておるなら、割り切った割り切り方を説明してくださいと言っているんですよ。
  80. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 中朝間に相互援助条約がございます。それから米韓間にもやはり共同防衛のための条約がございますが、それは条約関係としては別に矛盾したものでもございませんし、特に中国が米韓ないしは日米安全保障条約支持しておるというのは、これは全く政策的に国際関係の変転に応じて支持しているものでございましょうし、法律関係といたしましては別に米国中国との間に相互援助条約になるようなものはないわけでございます。日米安保条約との間におきまして韓国条項があるのではないかということでございますが、日米安保条約、先生の御趣旨はもちろん日米安保条約の条文の中に韓国が入っているものではないことは御承知のとおりでございまして、そのことは私も承知いたしておりますが、韓国条項と申しますのは、確かに日本の安全にとって韓国、朝鮮半島の安全というものが大事なものである、緊要であるということを言っているだけにすぎないわけでございまして、米韓の相互防衛条約は米韓間の相互援助条約でございまして、日米の安保条約との間に別に法的な関係があるわけではございません。日米安保条約の第六条というものによりまして、アメリカ軍は極東の平和及び安全の維持に寄与するためにわが国施設区域使用することをいま認められているわけでございますが、この条約に従いましてわが国施設区域使用いたしますアメリカ軍が韓国に赴くようなことがあったといたしましても、このことによってこの両条約が法的に結びついているものでもなければ、また矛盾するものでもない、そのように考えているわけでございます。
  81. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 時間がありませんから、もう私それ以上この問題についてお尋ねはしませんけれども、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であるという見解を述べたということは、アメリカが米韓相互援助条約の義務を履行する場合に日本施設区域を使うというときにはできるだけの便宜を図ります、よそごとじゃないんですから、日本の安全そのものだと考えて協力いたしますというふうに理解しているんですよ。そうなると、ちょっと矛盾するんじゃないんですかと私はお尋ねしたのですが、これはこれから十分時間をかけて討議するわけですから改めてやるといたしまして、私ここで、それでは違った側面から申し上げてみたいと思うのです。  米ソ関係であれ中ソの関係であれ、関係が改善される、両国間の緊張が緩和の方向に向かう、平和共存体制が現実のものになる、そういうことはわが国にとって望ましいこととお思いになっておられるのか、激化した方がいい、そういう考え方の上に立っていろいろお考えになり準備をなさっておるのか。それではこのポイントだけ両大臣からお伺いしておきます。
  82. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 緊張緩和が望ましいと考えております。
  83. 細田吉藏

    細田国務大臣 米ソ両超大国が仲よくやってもらうということが望ましい、絶対にさように思っております。
  84. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私、もう一つ中ソを聞いているのです。防衛白書の内容も踏まえながら、防衛大臣、ひとつお答え願いたいと思います。
  85. 細田吉藏

    細田国務大臣 中ソ間についても同様でございまして、大きな紛争がない、平和が維持されるということが絶対望ましい、かように存じております。
  86. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは防衛白書の中に、「中ソ関係は、当分、大幅に改善される見込みはないとみられるが、最近の中ソ間の話し合いの気運もあり、今後、中ソ間において何らかの関係修復が図られる可能性は排除できず、常に留意していく必要がある。」というのは、この関係が続けばいい、関係修復というものが望ましくないという意味で書いたんじゃないということですね。
  87. 細田吉藏

    細田国務大臣 さようでございます。
  88. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 この文章では、そういうふうにとれませんけれども、念を押しておきます。  時間が残り少なくなりましたから、あとはポイントだけ、それじゃお尋ねしていきます。  一つは、シーレーンの安全確保についてです。海上交通路の安全確保、もう貿易立国日本にとっては非常に重要なことだということが強調される。この安全確保のためならば海上自衛隊はどこまででも法的に行くことが可能なんですか。
  89. 原徹

    ○原政府委員 わが国自衛のために領海、領空のみならず、自衛のため必要な限度におきまして、公海にも及ぶわけでございます。私どもはいま防衛力整備のために、大体航路帯でございますれば千マイル程度というふうに考えております。周辺でありますれば、数百海里、そういうふうに申しておりますが、法律論としてどこまでかということは、そのときの状態によって個別的に判断をすべきものであり、自衛のために必要であるということの具体的な適用の問題でございまして、一概にどこまでであるというふうに申すわけにはまいらない、そういうふうに考えております。
  90. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 能力の面から言ったら、そんなにはできるはずないわけなんで、日本の海上自衛隊に能力がないというだけじゃなくて、第七艦隊にすらないということを海原さんなどは、はっきり言うているわけですね。しかし能力の問題はまたいずれやるとして、私が聞いているのは法律的な面ですよ。それこそマラッカ海峡であろうとペルシャ湾、インド洋であろうと、能力さえあればどこにでも行けるような議論が横行しているので、私はお聞きしているわけです。法律的には限界はないのですか。
  91. 原徹

    ○原政府委員 そういうことになりますと、結局自衛のための必要な範囲ということがどこかということでございますから、わが国が侵略を受けないように、あるいは受けた場合にそれを排除できるというところが、具体的な場合にどこでどういうふうになるかという、そういう事情によって自衛権の行使の限界というものは決まるべきものであろうと考えますので、一概にどこまでであるということは言えないもの、具体的なケースによって判断せざるを得ない、そういうふうに思うわけでございます。
  92. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 もう全く憲法もなければ法律もない考え方だと私は思いますよ。油なんというのは八割近くペルシャ湾から来ているじゃないですか。守らにゃいかぬというなら、とことん中東の港を出るときから守らなければいかぬということになるのじゃないですか。こっちの方だけで守って向こうでやられたらおしまいじゃないですか、安全確保にならないじゃないですか。そんなに何でも許されているんだろうかという私の疑問にそれは答えることにならないですよ。どうぞ。
  93. 細田吉藏

    細田国務大臣 もうすでに専門家である石橋さん御存じのとおり、インド洋からマラッカ海峡からペルシャ湾から全部、日本の船がたくさん行ったり来たりしておるわけでありまして、それを守るということになると膨大な海軍力でございますので、そのような海軍力を持つということは日本は許されておらない、こういう意味なんでございまして、その個々のものを守る、守らぬということではなくて、全体の日本の持つことが許されておるのが何隻で幾らだということでは決まるわけではありませんけれども、自衛力ということから日本の海軍力にこれは非常に限られた限界があるということになりまするので、この議論はインド洋やマラッカ海峡やる、やらぬというような能力の問題というよりも、むしろそういう海軍を持つことが日本ができるということは考えておらない、こういうふうに御理解いただきたい、私ども、さように思っておるわけでございます。
  94. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃもう一つ、この海上交通路の安全確保ということになると、三海峡封鎖というのは大前提になるのじゃないかと私思うのですね。自由に三海峡の航行を許しておいて、そして安全確保というのはちょっとナンセンス、ここを封じてしまえばというのが前提になるのじゃないかという気がしますが、その点はどうですか。
  95. 細田吉藏

    細田国務大臣 三海峡封鎖、対馬、津軽、宗谷の三海峡封鎖の問題、しばしば予算委員会等でも議論されたところでございますが、これは私、その都度申し上げておりまするように、日本が攻撃を受ける、あるいは攻撃を受けるおそれがはっきりしているというときに限って、どのような態様下において海峡を封鎖するという問題でございまして、一般的に何かどこかから話があるから海峡を封鎖するとかせぬとかいうような問題とは私ども理解しておりません。海峡封鎖といいましても、一海峡だけでも大変な準備と力が要るだろうと思いますし、またいろいろな態様もあると思うわけでございまして、ただいまの問いに対するお答えにはあるいはなっておらないもしれませんけれども、私どもとしましては今後、機雷の能力の増強等はいま申し上げたような特別な場合にはいろいろ考えなければならぬということで、やるつもりでおるわけでございます。
  96. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 自分でお答えになっておらぬとおっしゃっているのですから何をか言わんやですけれども、海上の交通路の安全確保となれば、三海峡封鎖というのは当然大前提の作戦だということになるのだろうと思うのです。しかし、そのことのもたらす影響というのは大変なことになるわけです、日本にとっては。外務委員会でしたかの質疑を聞いておりましたら、だから事前協議の対象になるのだと外務省言っておりますが、それは日本基地使用する場合だけですよ、事前協議の対象なんて言ったって。直接航空母艦から出動するとか韓国の領域から出動するとかになれば、事前協議の対象にもならないわけです。その点はお認めになりますね。
  97. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 安保条約上事前協議の対象になる事態として、日本施設区域から発進した戦闘行為ということでございまして、機雷の敷設が戦闘作戦行動一環というふうに認められる場合には事前協議の対象になるということでございまして、それ以外の場合に事前協議の対象になるということではございません。
  98. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 ということは、米軍がやろうと思えば実質的にチェックの方法はないということを意味するわけです。  最後に、とにかく最近、もう憲法もなければ法律もないというような行為の積み重ね、既成事実の積み重ねが私はあちらこちらに見られる。それを具体的な例を挙げながらやるつもりでしたが、イラン問題で時間がなくなりましたから一つだけここで取り上げたいのですが、米軍と航空自衛隊の共同訓練、これがガイドライン調印以後頻繁に行われているわけです。しかもその訓練が正式に米軍に提供された空域でないところで、航空自衛隊の訓練空域で行われている。これは問題じゃありませんか。  事前に資料も出してもらったわけですが、この資料の中で指摘できますのは、五十三年十一月二十七日から十二月一日にかけて三沢基地中心に行われた日米の共同訓練、それから五十四年四月二日、これも同じく三沢基地中心に行われた共同訓練、五十四年の八月二十七日から八月三十日にこれまた三沢を中心に行われた共同訓練。最近の例でいいますと、五十五年の二月十六日から二月二十日、新田原の基地を使って行われた日米の共同訓練、五十五年三月四日から三月七日、五十五年四月七日から四月十一日、いずれも三沢基地中心に行われた日米の共同訓練、これは米軍に正式に日本側が提供した空域じゃないところで訓練やっている。こんなことが許されていいんですか。
  99. 細田吉藏

    細田国務大臣 許されていいことと考えておりますが、政府委員から補足して答弁をさせたいと思います。
  100. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御質問のように、五十三年の十一月以来、米空軍とは十五回共同訓練を実施をしております。そのうち御指摘のような訓練があったことは事実でございますが、アメリカに提供した訓練空域をアメリカ空軍が使っておるわけでございまして、今回の日米共同訓練はいずれも自衛隊の訓練空域におきましてアメリカ軍の協力を得て異機種間戦闘機訓練を実施したものでございまして、別に違法な行為だとは考えておりません。
  101. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 米軍が訓練を行う空域というのは、合同委員会の議を経て正式に提供された空域であるはずです。それを航空自衛隊が認められた空域だから、航空自衛隊と一緒にやるときには米軍に正式に提供したところでなくとも構わぬ。そんなばかな理屈がどうして通るのですか。そんなことで通りますか。
  102. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  航空自衛隊に提供された空域において米軍が訓練を行うということになると御指摘のとおりかもしれませんけれども、航空自衛隊が日米共同訓練を実施する場合に、異機種間戦闘訓練をやるためアメリカの協力を得ておるわけでございますから差し支えないと考えております。
  103. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私が言っておるのは、どこで行われたかという問題です。正式に提供された空域以外でどんな理由で米軍が勝手に振る舞えるのですか。そんなばかなことはないじゃないですか。アメリカには正式提供された空域というのは決まっておるわけでしょう。十四カ所。それ以外で行われていいという理屈は成り立つはずはないじゃないですか。
  104. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 ただいまの勝手に使用しておるということでございますが、航空自衛隊の要請に基づいて協力をしていただいておるわけでございますので、問題ないと思います。
  105. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃまたこれは引き続きやることにいたします。  終わります。
  106. 坂田道太

    坂田委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後一時五分開議
  107. 坂田道太

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。箕輪登君。
  108. 箕輪登

    ○箕輪委員 先ほど来、社会党の石橋先生の質問を聞いておりまして、お互いに国のことを考えながら心配しているということについては同じであります。特に、昨日起きたイランの問題について、アメリカのC130ハーキュリーズが沖繩から行ったんじゃないか、あるいは沖繩でその特殊部隊の訓練をやっておったのではないかという御質問がございました。私は、これはおかしいなと思っているのでありますが、ああいう砂漠地帯に特殊部隊が隠密裏に入っていこうというような訓練をするのに、沖繩が適地だとは思わないのであります。アメリカには砂漠地帯がたくさんありますから、やはりそこに着地する訓練等においてはそういう砂漠地帯を使うのではないだろうか。前から訓練をしておったとするならば、アメリカ国内のそういう地域で訓練をやるべきであろう、常識的に見てもどうしてもそう考えられるのであります。  けさ、私のところでとっております新聞を全部読んでみたのですが、果たせるかなブラウン長官が記者会見でそういうことを言っていたようであります。アメリカ国内の砂漠地帯で何回か訓練をやったというような情報が書いてありました。これはあくまでも新聞情報でございます。石橋先生も新聞情報だということで質問しておったようでありますけれども、私も質問する上において、それ以外の資料がございませんから、そう思うのであります。しかし、ブラウン長官が記者会見で言ったというニュースを政府があるいは持っているかもしれない、確認の意味でそれをお尋ねしたいと思います。ブラウン長官のことでございますから、これは外務大臣でも結構ですが、防衛庁長官、ひとつ御答弁をいただきたいと存じます。
  109. 細田吉藏

    細田国務大臣 ブラウン国防長官の記者会見のテキストが私どもの方に入りましたので、ただいまの御質問の条項について申し上げます。  われわれは米国における似たような条件の地形において訓練を行った、かように明確に申しておるところでございます。(「米国内とは言っておらぬ」と呼ぶ者あり)
  110. 箕輪登

    ○箕輪委員 済みません、米国内と言っておりますか。
  111. 細田吉藏

    細田国務大臣 米国におけると言っております。
  112. 箕輪登

    ○箕輪委員 米国における、これは米国内ということであります。したがって、沖繩から飛んだのではないということが公式に明らかになったわけであります。また、沖繩で訓練を行ったのでないことは事実でございます。このことだけは一つはっきりわかりましたので、私も了解をいたします。  さて、先ほど両大臣のお話を、御発言を聞いておりまして、外務省も防衛庁も、国際環境情勢把握についてずいぶん詳しく、しかも正しい認識を持ってこられたなと私は感じたのであります。  そこで、私がここで御質問申し上げたいことは、わが国防衛を考える場合に、わが国自体が持っている自衛隊と、日米安保条約におけるアメリカの軍事力と、その二つが上手に絡み合っていって初めて日本防衛というものができ上がる、また、それが抑止力になると考えております。  そこで、本日御発言いただいた両大臣の発言はこれを了承いたすものでありますが、私が問題としたいのは、昨年の防衛庁発表によるわが国の「日本防衛」という本であります。これはきわめて国際情勢の把握が食い違っておるのであります。アメリカが数カ月後に出したアメリカの国防白書と余りにも違うということを御指摘申し上げないわけにはいかないのであります。国際情勢の把握がアメリカと日本と違った場合に、防衛力整備等においても違ってくるのはあたりまえであります。その意味において、アメリカの情勢把握とわが国情勢把握が、国際情勢に関する限りにおいては大体同じような把握でなければならないのでありますけれども、残念ながら数カ月の違いはあるにしてもこれが違う。(「びっくりしたことを言うなよ」と呼ぶ者あり)目の覚めることを言っておる。  そこで申し上げます。五十四年版の「日本防衛」の七十一ページに、「国際情勢は、東西関係においては四次防策定時」、四次防策定時でありますから昭和四十五、六年、すなわち十年前ということになります。「四次防策定時と比べて大きな変化はない」と書いてあります。こういう感覚で平時の防衛力あり方、すなわち「平時において十分な警戒態勢をとり得るという観点から、防衛力規模を追求する」、これは七十一ページから七十三ページに書いてあります。十年前の国際環境と変わりないという見方をしているのであります。だから、それに見合う防衛力をつくっていけばいいんだという考え方であります。こういう国際環境の把握は防衛庁限りで把握するのではなくて、私も防衛政務次官をやったので知っておりますが、これは外務省と相談の上でこういう把握をするのであります。  それから半年後に出されたアメリカの国防白書は国際情勢をこのように見ております。いまや時代は変わりつつある。ソ連は東欧に駐とん済みの大兵力を削減することなしに極東における兵力量を三倍に増大してしまった。それは東欧からの兵力の引き抜きではなくて、新規追加である。さらに、ソ連は本国の境界のはるかかなたに作戦し得るような海軍その他の能力を発展させつつある。したがって、アメリカとしては、ソ連世界の相異なる若干の個所において同時に作戦を行うという可能性をもはや排除し得ない。アメリカは今日確かに死活的な転換点に立っておるのであろう。われわれは決断に直面しており、これをもはや引き延ばすことはできない。これは国防白書の七ページから十四ページに書いておることの要旨であります。このアメリカの情勢把握と、わが国の「日本防衛」の十年前の国際環境変化ないという見方と大変な違いがあるのであります。  なぜこういうことを言うかといいますと、今日アメリカはこういう認識のもとにわが国防衛力増強を求めているのであります。わが国は十年前と国際環境変化がないんだという認識で、そんなにやる必要がないだろうということであるならば、防衛考え方情勢把握の基盤が異なっている状態のもとで、日本とアメリカの整合的な協調ができるわけがないのであります。これはできないのであります。しかし、そのことを指摘してもやむを得ないと私は思います。そう書かれていることだけは事実で、認識の違いがあったことだけは事実なのです。  そこで問題になってくるのは、大来さんがアメリカに行ったときに、ひとつ中業のテンポを速めてほしいというような要請を受けてきた。これは国会でも答弁されているし、新聞にも出ておりますから大体そうだと思うのです。そこで、いまの中業というものは、こういう十年前の東西関係が全く平和であって、これからデタント時代であります。十年前と申しますと、ちょうどSALTIが締結されたころでありまして、東西デタントに入る状態なんです。その状態のままでもってずっと今日まで続いている。去年の時点で防衛庁や外務省は、そういう状態がずっと続いておったんだと見ておったわけですね。その中でわが国防衛力を考える場合に、中業というものがその中から出てきたわけです。それで、私は今度は認識が変わったんです、きょうの御発言ですっかり変わったんです。  そこでお尋ねしたいことは、そういうデタントの時代がずっと続いておるんだという認識のもとにつくった中業のテンポを速めることのみによってわが国防衛ができるだろうか、テンポを速めるだけでできるだろうか。国際情勢が変わっているんです。すでに両大臣のお話にもありましたように、わが国周辺においても、われわれがわれわれの領土だと主張しているところに、北方領土に、ソ連の機甲師団一個師団が配備されております。その他極東ソ連軍の情勢は御承知のとおりであります。そういうことを踏まえて、現実と十年前と比べて違っているんだということを認識なさったんですから、中業のテンポを速めることは結構でありますが、中業のテンポを速めるだけでわが国防衛というものができるかどうかということについて、新しい認識に立った今日、両大臣からそのお考えを聞いておきたいと考えるわけであります。
  113. 細田吉藏

    細田国務大臣 箕輪さんが先ほど御指摘になりました、最初にお述べになりました、この昨年出しました「日本防衛」の中の文言、これは「防衛計画大綱」の中にあるものでございます。この「防衛計画大綱」が生きておる。これは現在の情勢、きょう私が冒頭に申し上げた状況と非常に変わっておるのではないか、これはいろいろ変わった点を私どもいろいろ先ほど来御説明を申し上げたわけでございますので、理論的に言いますとそういうことも言い得ると思いますが、私どもは、現在のところはこの「防衛計画大綱」の線の中で、これはやはり大きくは一応東西協調していくという基本線である、しかし協調だけではなくて競争の面もある、その競争の面が、状態が大いに変わってきておる、こういうふうなことであります。それともう一つの理由は、「防衛計画大綱」の線まで私どもまだまだ到達いたしておりませんし、その到達もなかなか容易でないという実際上の点もございます。そういった点から、この点についてただいま直ちにこれを改定するというようなことを考えておらないということでございます。  しかし、いま御指摘がありましたように、世界情勢は非常に変わってまいった。しかも、アメリカの国防白書のお話もございましたが、わが方のいわゆる防衛白書「日本防衛」も、これは五十四年の七月に出しましたが、五十三年六月から五十四年五月までの資料で書かれております。もっとも「防衛計画大綱」のほかにこの白書にも、冒頭のところで世界情勢はいろいろ述べておりますから、先ほどお読みになったものよりはもう少し詳しく書いてはありますけれども、それでもなおかつ、昨年の五月までの資料で書いておるものでございまして、アメリカの国防白書は本年一月、アフガンの侵攻もあった後で出たものでございます。このようなことでございますので、五十五年版の「日本防衛」をいまわれわれはつくっておるわけでございますが、おっしゃるように情勢は非常に変わっておる、かように存じております。したがいまして、そういう情勢に対応するように私たちは考えていかなければならぬ。  そこで、中業の問題でございますが、申し上げるまでもなく、中業は「防衛計画大綱」を実施する中で基本的な装備、その他重要なアイテムについて、私どもが五年間の見積もりを立てたものでございますので、これを私ども一貫して申し上げておりますことは、できるだけ早く到達したい。これは早く到達しても「防衛計画大綱」の線までまだ至らない。したがって、「防衛計画大綱」の線までも、いまの情勢ではとにかくできるだけ早く達するようにしたい。その上の話は、私どものところはいま直ちには考えておらない、こういうことでございます。したがいまして、中業につきましては、どのようなあり方がいいのかということについて、いま前倒しも含めていろいろ検討をいたしておるようなわけでございます。
  114. 箕輪登

    ○箕輪委員 外務大臣のお答えの前に、ただいまの長官の御説明によりますと、「日本防衛」五十四年度版はアフガンの事件が起きる前に書かれたものでありまして、もちろんそうであります。ところがアメリカの国防白書は、本年一月に発行されたものだから、アフガンの侵攻の後に書かれたものだというような印象のお話をされたわけでありますが、長官、それはお間違いであります。発行されたのは一月でありますが、原稿を締め切ったのはアフガンの事件の始まる前であります。両国の国防白書はアフガンの事件が始まる前に書かれたものであります。そこはお間違いであろうと思いますが、アフガンの事件のあるなしにかかわらず、先ほど申し上げたように、国際情勢の把握が日米で全く異なった、天地の差もあるような情勢の把握であって、日米で本当に共同作戦でわが国防衛ができるのかということに私は疑問を持つのです。  確かに発行は一月です。活字になって議会に報告されたのが一月でありますけれども、原稿はアフガンの事件が起きる前にすでに書かれている原稿であることに御留意をいただきたいと思います。その上で、そういう事態の中で両国がそれぞれ国際情勢の見方が違うということで日本防衛が両国でやれるのかという、そこに私は心配と疑問を持つわけでありますので、いま一度御答弁をいただきたいと思います。
  115. 細田吉藏

    細田国務大臣 大変恐縮でありますが、一月二十九日に国防白書が出ておりまして、アフガンの問題は、国防白書の中には後から若干補足したんだろうと思いますが入っております。それで申し上げましたが、しかし、これは事柄の本質ではありませんので、アフガンは一つの事例として申し上げただけでございまして、全体としてアメリカの国防白書の指摘しておる世界情勢は、わが方で去年出しました「日本防衛」よりもはるかに厳しい状態であると指摘しておるということについては先生のおっしゃるとおりである、かように存じております。アフガン云々は一つの例で申し上げただけでございますので、そのほか全般的に情勢が非常に厳しくなっておる、こういうことであるというふうに御理解を賜りたいと思います。
  116. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの点につきましては防衛長官の言われたところと私も同様でございます。  この機会をおかりしまして、午前中石橋委員から御質問のございました国連安保理事会の件でございますが、ただいま外務省の方にも情報が入りましたが、以下のようなことでございます。  米代表部は、二十五日、安保理議長あて、同日早朝行われた人質救出に関するカーター米大統領の声明文をカバリングレターを付して提出した。右レターでは、人質救出のミッションは米国自衛権の発動であり、安保理に対し、憲章第五十一条に基づき通報する旨述べているという趣旨でございます。
  117. 箕輪登

    ○箕輪委員 私は日米の認識の違いを指摘したのでありますが、その意味で、中業見積もりをテンポを速めて達成するという防衛庁長官の願望はよく理解をいたします。ただ非常に心配なことは、その中業見積もりのテンポを速めることだけによってわが国防衛が全きを期することができるのかどうか。御承知のとおり、中業見積もりは陸海空の自衛隊装備の要するに買い物手帳であります。これが古くなったからこういう新しいやつにかえたいということであります。そのテンポが速まっただけで日本防衛を全うすることができるとは私は考えられないのです。長官のごあいさつでも「現在防衛庁といたしましましては、こうしたことを踏まえつつ、この見積りを」——中業見積もりであります。「この見積りを早期に達成するよう見直し作業を実施しているところであります。」と述べておられます。  なぜかと申しますと、たとえばいま北の脅威を言われております。北海道が危ないのじゃないかということを言われているわけであります。  さて、北海道の防衛を考えてみますと、北方領土に先ほど申し上げたソ連の機甲一個師団が配備された。新しい事実ができました。私は、決してソ連を仮想敵国として考えるわけではありませんが、攻撃的な兵器をそこにたくさん置いてある関係で、どうしてもこれを脅威と考えなければならないという立場で申し上げたいと思いますが、もしもソ連が第一撃を加えてくるとするならば、私はやはり空から来るだろうと思うのです。これは常識であります。島国でありますから、空か海から第一撃を加えてくるのでありましょうけれども、仮に空からと断定して考えた場合に、どうでしょうか、根室にはレーダーサイトがあるだけです。来たぞということを確認するだけのものしかないのであります。これに対処するための対空火器は、道東には一つもありません。また、北の方から、樺太から稚内に向かって来たと想定した場合に、これは稚内にもレーダーサイトがあります。来たぞという知らせだけであります。これを迎え撃つ対空火器はございませんよ。だから、中業見積もりのテンポを速めるだけで、それじゃ抑止力になるのか、これでもって排撃できるのかという疑問を私は全く根本的に持たざるを得ないのであります。これはいかがでしょうか、長官。
  118. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答えいたします。  「中期業務見積り」というのは、私は非常に賢明なやり方で計画が組まれておると思います。ということは、五十五年度から五十九年度までの五カ年間にかくかくのことをやるということが計画に出ておる。しかし、三年ごとに見直すと言っておる。そのほかに各年度ごとにまたこれを見直すと言っております。  先ほど私が、前倒しも含めて見直すというふうに申しましたが、情勢変化に対応して、現実にこれに書いてあることよりももっと早くやらなければならぬ問題が起こる可能性もあるわけでありまするので、そういう問題も含めて新しい情勢に対応して検討しておる、こういうことでございます。
  119. 箕輪登

    ○箕輪委員 長官、答弁がちょっと——私は、長官の書いたやつを読んでいるのです。文章に、この見積もり早期に達成できるように見直しするというように書いておられるのですから、それだけではだめですよ。  じゃその問題、ちょっと置いておいて進めてみたいと思いますが、とにかく第一撃は、常識的に考えて空から来るであろう。対空火器は一つもないということでありますから、これは爆撃されっ放しであります。レーダーサイトで来たぞというと、さてそれから何分か後に千歳の二空団にスクランブルがかかるわけでございましょう。そこまで行く間、二十分かかるのです。根室まで行く間に二十分、稚内に行くまでの間に二十分、爆撃されっ放しでもって二十分たって、そして日本自衛隊機が飛んでいったら、これは逃げていった。追跡権がないというのは、今日の解釈でございましょう。これは全く困るのです。だから、中業見積もりのテンポを速める見直しをやると同時に、他のことも考えてもらわなければならないということを私は強調したくて申し上げているのです。——何か原さんあるのですか。
  120. 原徹

    ○原政府委員 先ほど御質問がありましたレーダーサイトにつきまして、対空火器が確かにないということがございまして、中業見積もりでは基地の抗たん化の問題もございますけれども、レーダーサイトにいわゆる短SAMというのを入れよう、それはそういう計画になっております。  それから、いまのレーダーサイトの点でございます。私ども、例のE2Cでございますけれども、あれをまたあと四機くらいは中業でお願いしようと思っております。そういたしますと、いま来るんでございますれば、低空侵入が主体になろうかと思いますが、その低空侵入に対しては、非常に早期に発見ができるだろう、そうすればいまの千歳から舞い上がって、それで間に合うようになり得るのではないか、そういうふうに思っておりますので、その点だけちょっとつけ加えさせていただきます。
  121. 箕輪登

    ○箕輪委員 いまの防衛局長の短SAMは存じ上げております。存じ上げておりますけれども、低空で入ってくるやつを迎えることができるであろう、E2Cが整備されるとE2Cで見られるでしょう。さて、千歳から行くのに二十分かかるのですよ。二十分弱かもしれません。滞空時間で二十分近くかかるはずです。それにスクランブルいたしますと、乗り込むまでの時間がありますから、おおむね二十分くらいだと私は思うのです。一方北方領土から、国後、択捉から飛び上がったときには、見えたときにはもう領空の中に入っちゃうわけです。飛び上がり切れないうちに、わが国の領空へ入ってしまうわけです。これが千歳から飛んでいくんです。その二十分間、どうするんですかということを聞いているのです。  だからやはり、中越紛争なんか見ましても、中国のあの航空機がベトナムに入っていけなかった。あれは七十基もあるんですね、アメリカが置いていった対空ミサイルが。そうすると、入っていけないのです。私ども、戦争するのはいやなんです。何と言ったって戦争はしたくないんです。抑止力を持ちたいんです。その抑止力を、道東なり道北なり、危険だと言われているところに現在持っていないんですから、これらも含めて検討しなければなりませんよ。中業の見積もりであなたの言ったことだけじゃ、北海道の防衛が完璧とは言えないと思うのです。私は、やっぱり危ないところには危ないような抑止力を持っておくことが、本当の防衛力整備になるのではないか、そう考えるのです。御答弁要りません。しづらいでしょう、こんなことは。できたらやってください。
  122. 原徹

    ○原政府委員 おっしゃいますように、私どもも防衛計画水準にできるだけ早く持っていきたい、中業だけではまだ「防衛計画大綱」の水準にも至らない、そういう認識を持っておりますので、おっしゃいますことは非常によくわかります。やはりいろいろと国内事情等もございますので、いまの段階ではそういうことを考えておるということでございまして、御意見は非常にごもっともであろうと存じます。
  123. 箕輪登

    ○箕輪委員 私は、日米安保条約というものを非常に力といたしておりますし、その点、長官や外務大臣の御意見と同じでありますが、この日米安保条約の絡みと自衛力整備と、両々相まってわが国抑止力ができるし、防衛力ができるんだと認識しておりますが、さて、これが上手な絡み合いをしているかどうかということになると、もう一つ工夫が要るのではないかなという感じを持っているわけであります。これはひとつ外務大臣もよくお聞きになっていただきたいのであります。  なぜかというと、私どもNATOへ行ってみますと、NATOの正面には強力なアメリカの軍隊が入っております。隣の韓国に参りましても、米韓の条約で、アメリカの陸軍の第二師団が、三十八度線すれすれのところに入っております。これが抑止力になるんです。  ソ連は、私の考えですけれども、アメリカとはいまなおやっぱり正面衝突は避けたいと考えていると思うのです。北海道が危ない、危ないと言われておりますけれども、私は、その意味においては、直ちにソ連が北海道に何か押しかけてくるというようなことは考えていないのです。どうもソ連外交史を見てみまして不思議に思うことは、自分条約を結んでいる国にだけ軍事介入をしているからであります。不思議です、これは。一九三九年、四〇年にかけての、あのバルト三国の併合の歴史を見てもそうであります。ドイツ軍が入ってくるかもしらぬぞ——ちょうどポーランドに入った後でありますから。それはラトビアでも、エストニアでもそうです。戦々恐々としている、おれが守ってやるという条約を結んでから数カ月後に入っていった。それから、五六年のハンガリーのときもそうであります。六八年のチェコスロバキアのときもそうであります。条約を結んでいる国に入っているのです。アメリカと条約を結んでいる同盟国、アメリカの同盟国には入っておりません。今度のアフガンもそうであります。アフガンとソ連は、以前から不可侵条約を結んでいたのであります。不可侵条約ですから軍事介入できないのです。そこでもう一つ条約を結ぼうといって結んだのが一九七八年のソ連アフガニスタンで結んだ善隣友好条約なんです。その善隣友好条約の中にたった一言軍事協議ができると書かれているから、それで軽々と協議したのかわかりませんけれども、それにかこつけて入っていったのが今回のアフガン事件であります。一九五〇年の韓半島の動乱を見ても、アメリカが途中から入っていきました。ソ連は当時仲のよかった毛沢東の軍隊を入れたのです。自分は入ってこないのです。  こういう歴史の経過を見ても、日米安保条約があり、日本とアメリカの関係がしっかりしていれば、ソ連は直ちに介入できない。アメリカと正面衝突は絶対に避ける。アメリカが介入しないという計算が十分できてアフガンに介入したに違いないのであります。  そういう観点から見まして、北海道が直ちに危機にさらされるとは考えておりませんけれども、世の中いつ何が起きるかわからぬときですから、きのうの事件だってだれも想像できなかったのです。ですから、万々が一に備えてやはり抑止力を高めておくということでなければならないと思いますよ。そういう意味で、中業のテンポを速めるだけでなしに、さらにこれでいいかこれでいいかということを十分見直し、検討をこれから防衛庁もやっていただきたい、かように考えるわけであります。  そこで、日米の絡み合いが上手にいっているかどうかということを考えますと、いま言いましたように、NATOの正面にもアメリカが入っているし、韓国の正面にもアメリカが入っているけれども、わが日本防衛を考えるときに、いま北海道、北の脅威が言われているときでありますけれども、アメリカ軍はどこにおるかというと、一番南の沖繩におるわけであります。(「沖繩のを持っていってよ」と呼ぶ者あり)私は考えるのであります。当時沖繩に集中的に米軍配置をやったときには、そのときの国際情勢があったと思うのです。当時は、日米共通の脅威は中共であったわけであります。そして、アメリカは日本とも約束をしておりますし、韓国、台湾ともコミットメントを持っておりました。そうした共通の脅威に対して軍事配置を厚く沖繩にした当時の国際情勢から見るというと、私は適当であったと思うのです。しかし、皆さんの、両大臣の見解も変わってきた今日の情勢に照らして見るというと、いま不規則発言がありましたが、濃密に沖繩にだけ置くのは私は解せない。ですから、NATOで事が起きてもあるいは中東で事が起きてもスイングしていく。三月にはチームスピリット80ですか、韓国で合同演習で行っております。  わが国基地を提供しているのです。そうして脅威から一番離れたところに米軍がおることにわれわれは気がつかなければならないのではないだろうか。直ちにこれを北海道に持っていくことにも問題がたくさんあるだろうと私は思いますけれども、本当に戦争したくない、抑止力をつくるのだということであれば、北海道に国有林野がたくさんありますから、内閣が決心して、これを開放してそこに基地をつくっておくことであります。そしてドイツ等にならうわけでありますけれども、西ドイツと同じように、常時米軍装備をそこに置いておく。平常はそこで合同訓練もやれる少し広範な演習場くらいつくっておく必要があるのではないだろうか。武器弾薬もそこに置いておく。そうして、七十七条で防衛出動待機命令を長官がお出しになるというようなときには、直ちに北の方にスイングする。平常、日章旗と星条旗をかけておいて、武器防護の一個中隊くらいはアメリカが置いておけばいい。せめてその程度やれば、かなりの抑止力になるような気が私はいたすのです。御提案であります。  これはさっき外務大臣所信で言われているように、わが方もできるだけのことを、ここまではやるのですよ、わが国みずからが考えて、ここまでやるのだが、抑止力を高めておかなければなりませんし、アメリカに、どうですかということで、日米で話し合えばできないことではないのです。  そういうふうに、日米安保条約運用も含めて考えなければならない。自衛隊そのものの運用も、北の方に対空火器がないならば、どこか別な部隊をこっちに運用で移すようなこともこれからは考えていかなければ、北の脅威に対処できないのではないか。中業見積もりのテンポを速めるということは賛成であります。それだけではだめなんです。自衛隊運用日米安全保障条約運用も改めてここで検討し直すというようなことを考えていかなければならない時代ではないかな、かように考えるわけであります。御所見をいただきたいと思います。
  124. 細田吉藏

    細田国務大臣 大変貴重な御意見をお聞かせいただきましたが、日米安保条約運用というような点につきましては、私どもいろんな点で十分考えていかなければならぬと思います。いまお話しのありました具体的な点につきましては、いまここでこれについてお答えをするということまでは申しませんけれども、十分そういった面も参考にさせていただきたい、かように存じておる次第でございます。
  125. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは防衛の問題でございますが、日米安保関係は外務省も関係しております。先般三月にワシントンに参りましたときに、ブレジンスキー大統領補佐官とも会談いたしましたが、その中で、日本で北海道が危険であるという議論が相当出ておるということが話題になりました。ただ、ブレジンスキー氏の話の中に、何かそういう事態があったときに、安保条約に基づいて米軍が出動するという想定が入っていないのなら、それはおかしいということを申しておりましたが、やはり日米安保というものの抑止力としての働きは、いま御指摘のように非常に重要な意味があると考えております。
  126. 箕輪登

    ○箕輪委員 それでは質問を変えます。  いまの自衛隊法などを見まして、果たしてこれで日本防衛を全うすることができるかなという心配をかねがね持っております。たとえば自衛隊法の百三条であります。隊法ができたのは昭和二十九年でありますから、二十六年たったわけであります。これは有事に際しての物資の収用だとか食糧だとか、その運搬だとか、医療をどうしようというようなことを書いているのですが、すべて「政令で定める」こう書かれておるのです。すべて「政令で定める」と書かれて二十六年、今日までどういう政令をつくるかということを、本当は内閣の責任でやらなければならないこと。防衛庁限りではないのです、これは。内閣の責任で、各省庁間にわたる問題でございます。厚生省にも関係します。自治省にも建設省にも、そしてまた、運輸省にも関係するのです。これが一回も政令をつくるための会議をすらも持たれていない。何と平和な日本でしょうか。両大臣の所見にあるとおり、国際情勢は緊迫しております。私は、これは長官や、そしてまた外務大臣を責める気持ちはないのです。内閣全体でやらなければならないことを二十六年間放置して、一回の会合も持たない。こんな国があるでしょうか。恨み言を言いたいのです。これでは自衛隊が戦えないですよ。専守防衛をやりなさい、あなた方は専守防衛のあれだと言っても、できないじゃないでしょうか。どうかひとつ一ここで私の発言を頭の中に入れていただいて、これはひとつ閣僚のお二人が責任を持って内閣総理大臣に話をしていただき、速やかに政令の整備を行っていただきたいと御要望申し上げておきたいと思います。
  127. 細田吉藏

    細田国務大臣 法律で、政令で決めろということを定められておるわけでございますので、政令を決めることは内閣として当然の責任であると思います。二十数年間政令が決まらないというようなことは、これは非常によろしくない。一回も会合をというお話でしたが、最近は、有事法制ということの一環として、まず政令というようなものは内閣がやることでございますからということで、いろいろ各省の間で打ち合わせをいまいたしております。なるべく早い時期に、全部がまとまらなくても、政令というようなものができるように、私たちとしましては努力をいまいたしておるところでございます。せっかく、なるべく御趣旨に沿うようなことで考えたいと思っております。
  128. 箕輪登

    ○箕輪委員 そうすると長官、もうそういう各省庁間の話し合いを、百三条整備のための会合をしているということに解釈してよろしゅうございますか。
  129. 細田吉藏

    細田国務大臣 話がまとまっておるというわけではございませんので、そして、全部が全部まとめてからやるということになると、またまた時間が大変かかるというふうにも私ども事務当局から聞いておりまするので、まとまったものでもとにかく前進をさせなければいかぬというふうに、私が参りましてから実は指示もいたしておるような次第でございます。
  130. 箕輪登

    ○箕輪委員 それを聞いて少し安心をいたしました。どうか各省庁間で話し合って、専守防衛ということを考えますと、自衛隊もかわいそうだ。とにかく有事の際は、専守防衛ということは、この国が戦場になるということなんです。ですから、七十六条で防衛出動命令が下令されてからでは、間に合わないことがたくさんあります。たとえば、敵が上陸してくるであろうと想定される地点には、あらかじめ陣地をつくっておかなければなりません。土地収用ができません。民有地だったらどうしますか。できないのです、これは。裸でもって水際で自衛隊が守らなければならないというような、こんなことになります。やはりそういうことがこういう平和なうちに整備されておかなければならないことは、長官も先刻御承知で、そしてもう話し合いをしてくださっているということでありますから、早くこれが話し合いがまとまって政令整備が行われるように、強く御要望申し上げておきたいと思います。  いま自衛隊法の問題を出しましたので、さらにもう一つ、二つ聞いてみたいと思います。  法制局は来ていますね。自衛隊法九十五条、自衛隊法八十二条に関連してお尋ねをしたいのであります。八十二条は、これは海上警備の条項だと思っておりますが、この八十二条で、海の上で自衛艦が攻撃を受けたときに、自衛艦はこれに応戦できますか。武器使用できますか、お聞きいたしたいのであります。
  131. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 ただいまの御質問は、八十二条で海上警備活動が発令されて、自衛隊行動している場合の九十五条との関連における武器使用の問題についての御質問だと承知いたしますが、海上警備活動で活動している、そういう事態が九十五条の規定による武器使用の対象となる事態であるかどうかについては、これは若干実態問題もございますので、現在防衛庁の方から相談が私どもの方にございまして、私どもの方と防衛庁の間で現在検討しております。いまのところ、まだ結論は出ておりません。
  132. 箕輪登

    ○箕輪委員 これは、先ほど石橋先生の質問にも関連するのです。シーレーンの防衛の問題で石橋先生から御質問がありました。オイルタンカーに護衛艦がついていっても、この護衛艦が攻撃を受けた場合に、明快にこれに応戦できるという答えが出てこないのです。いま防衛庁と相談をしておりますということは、どこまで解釈できるかということを相談しているということでありましょう。  そこで九十五条です。九十五条は、長官御承知のとおり、武器防護の規定であります。そして武器、弾薬、火薬それから車両、航空機、液体燃料と書いておりますね。これを防護するのに当たりと、こう書いてあるのです。それで武器使用ができると書かれておりますが、ただし、刑法三十六条、三十七条のいわゆる正当防衛、緊急避難に値するものでない限りにおいては、人に危害を加えてはならないと書かれているわけです。武器使用はできるけれども、三十六条、三十七条、刑法で言うそれに適応するものでなければ、人を撃ってはならないということなんですね。その中に軍艦が入っていないのです。軍艦は、これは武器ではないのだろうかなと思うのです。そのころは、自衛艦があったのかなかったのかわかりませんけれども、レーダーサイトも入っておりませんね。これをやられたら、目つぶしにかかったようなものでしょう。だから、やはりこの九十五条もしっかりと整備しなければならないじゃないかな、解釈でもってやるだけではなしに。そのように私は考えております。ただ防衛庁と協議するというだけで、あなた方は、立法したらいいとか悪いとか言う権能がありませんから、おっしゃりずらいと思うのです。私どもは、それは問題であるから、協議する際にそういうことも含めてひとつ御検討いただきたい、御要望したいのです。  八十四条についてお尋ねをしたいと思います。これは領空侵犯でしばしば国会でも問題になるところであります。一時は、相手が撃ってきたら逃げろという話もあったり、撃ってきたら落とされるじゃないか、相手が撃ってきたら撃ち返せという意見があったり、昭和二十九年の自衛隊法制定当時、当時保安庁次長の増原さんは、国際法規、慣例に従って、命令に従わない場合には撃ち落としますという答弁をしておりますが、国会の答弁が、法制局長官がかわるごとにだんだん変わってしまう。いまはどのように解釈されておりますか、お尋ね申し上げたい。
  133. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 先ほどの九十五条に関連しての御質問の方から、まず補足的に答弁させていただきたいと思いますが、確かに御指摘のようにレーダーサイトが入っておりません。これは、あるいは当時そういうものを想定をしなかったんだろうと思いますが、これは解釈上、いまレーダーサイトというものが防護対象としてあそこに入っているということは無理だと思います。ただ護衛艦につきましては、これは私どもとしては、「武器」という九十五条で使われている言葉に入るというふうに解して差し支えないと思います。と申しますのは、これは例の武器三原則の統一見解でもそういうようなことを言っておりますから、政府としての考え方は、武器という場合にはそういうものは入っていいと思います。  次に、八十四条についての御質問でございますが、八十四条につきましては、確かにいま御引用になりました増原長官の答弁がございます。ただ、その後いろいろな経過がございまして、当然御承知のことと思いますけれども、昨年の三月に一応八十四条についての政府見解を明らかにしておるところでございまして、私どもの考え方としては、いまのところあの見解というものを維持しておるということでございます。
  134. 箕輪登

    ○箕輪委員 昨年の国会答弁のあの線を維持しておりますという答弁でありますが、これは具体的な事例を引用してお尋ねしたいんですが、第三国の偵察機がたとえば北海道なら北海道十カ所の偵察をせよという命令を受けて十カ所に飛んでくる、二機編隊で二十機。そうすると、今日の自衛隊法からいきますとスクランブルで二十機が上がっていく。域外に退去せよ、わが国の空域から退去せよ、聞かなければ強制着陸命令を出す。これは大変なんですよ。言うことを聞かないんです。相手が撃ってきたならば、職務権限で撃ち返してもいいというのが去年から言っているあなた方の法解釈なんだ。ところが退去もしない、着陸もしない、いつまでもくっついて歩くだけなんだ。国際法規慣例では、その場合は撃ち落としてもいいことになっている。ところが、あの解釈でかなり前進したなと私は思っていたんだけれども、いま言ったようなことを考えますというと、一緒に飛んで歩いて、相手が偵察の任務を全うして帰るまで一緒についていてあげるということにすぎないんですね。そうすると、向こうは偵察目的を全部達成して帰れる。日本の国の自衛隊法はそういうふうになっているんだから、絶対攻撃を受けないと思えば撃つ必要がないわけでしょう、偵察だけが職務なんですから。こんなことで国が守れるかなと本当に心配でたまらないんです。  時間がなくなってまいりました。一つだけ長官にお尋ねします。  先般来問題になっておりますリムパック——柔道でもいまオリンピックへ行きたいと言っている選手諸君もそうなんだ。他流試合は非常におもしろい、こちらの力もつくんですから。だからリムパックで大変教訓を得たと思うんですが、どんな教訓を得たか、ひとつここで御答弁をいただきたいと思います。  それを聞いて私の質問を終わります。
  135. 細田吉藏

    細田国務大臣 リムパックは非常にたくさんの教訓を私どもの出かけました者に与えてくれたということでございますが、実は、まだ海上幕僚長から正式にまとめての報告はもらっておりません。そこで、行きました者の一応の口頭の報告がございますが、これは事務当局から、政府委員からお答えをさせていただきたいと思います。
  136. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  リムパックの成果につきましては、従来のハワイ派遣訓練では得られなかったところの艦隊レベルにおける対潜、対空、対水上打撃戦及び電子戦訓練にかかわるアメリカの最新の戦闘技術を習得することができ、非常に成果があったと聞いております。  また、この訓練の最後の段階におきまして、誘導武器評価施設を利用してのミサイル、魚雷等の発射訓練がございましたが、ミサイルにおきましては、ダイレクトヒットということで、基本的な技術力においてはかなりな水準に達しておるということが確認されたのも一つの成果であったと存じます。  しかしながら、いわゆる電子戦能力におきまして、特に対電子戦能力ECM、エレクトロニクス・カウンター・メジャーという相手方が目つぶしをかけてきたときに、それに対してそれを見破る力等におきましては、大変装備等今後改善の必要があるという点を感じて帰ってきた、かように承知をいたしております。
  137. 箕輪登

    ○箕輪委員 ありがとうございました。終わります。
  138. 坂田道太

    坂田委員長 次に、玉沢徳一郎君。
  139. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 当委員会の開会の冒頭におきまして、外務大臣は、ソ連は、わが国固有領土たる北方領土においてもその軍備強化しておることは、わが国として重大に受けとめざるを得ないところであり、潜在的な脅威が増していると言わざるを得ない、このように述べました。本院におきましても同様の認識のもとに第八十七国会、昨年の二月の二十日、北方領土の解決促進に関する決議を上げておるわけでございまして、速やかに軍事的措置ソ連において撤回されるように要望いたしておるわけでございます。ところが、それに対しましてソ連は、何らの反応を示さざるどころか、本年になりまして、引き続きわが国の固有の領土であります色丹島に軍事基地を構築しているということが明らかと相なりまして、本年におきましても、三月の十三日の本会議におきまして、全国民の意思を代表いたしまして、ソ連に対しまして速やかにこの軍事的な措置を撤回するように望んだわけでございます。  択捉、国後、色丹島がわが国の固有の領土であるのは本来からのわれわれの主張であります。さらにこれに対して軍事的な基地を構築しておる。この本院の決議に対しまして、外務省を通じまして送られましたこの措置に対しまして、ソ連政府はどのような反応を示しておるか、まず御質問をいたしたい。
  140. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この国会の御決議につきましては、先般、魚本駐ソ大使を通じてソ連政府に正式に伝達いたしたわけでございますが、その内容、反応等については欧亜局長から答弁させていただきたいと思います。
  141. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答え申し上げます。  本院においてなされました御決議につきましては、四月十一日でございますけれども、モスクワにおきまして魚本駐ソ大使よりフィリュービン外務次官を通じましてソ連政府に伝達をした次第でございます。  その際の先方の反応ぶりはおおむね次のとおりでございました。  第一点は、このような問題を審議されることはこれはもちろん日本の国会の問題であり、日本の内政問題である。ただ、ソ連にとって北方領土問題なるものは存在しない。したがって、この問題について話し合うつもりはないというのが先方の反応でございました。
  142. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 ソ連におきましてはいかなる領土問題も存在しない、また日本政府ソ連に対して領土要求を持ち出すことは、ソ連日本の真の友好と善隣関係を樹立することにはならない、これがソ連の見解であると思うのでありますが、このソ連領土に対する見解、私はここにソ連脅威の実態が存在をすると考えるのであります。この実態を、歴史的な背景あるいはまた今日のソビエト政府の物の考え方、私なりの考えを述べてみたいと思うわけであります。     〔委員長退席、箕輪委員長代理着席〕  ロシア帝国が中央アジアを越えまして侵略を開始してきたのが十六世紀の末であると言われております。そして、中央アジアからシベリア、カムチャツカ半島に参りまして、一六九九年にはカムチャツカ半島の先端におきまして日本人と初めて遭遇をしました。大阪の漂流者である伝蔵という人物をロシアに連れてまいりまして、日本語学校を設立をいたしまして、アジアにおける覇権を樹立する準備に取りかかったと言っても過言ではないと思うのであります。また一方、べーリング海峡を発見をしまして、現在のアラスカからカナダの沿岸を通りまして、カリフォルニアまでその勢力を拡大をしていった。こうした当時の帝国主義の一つの物の考え方にのっとって行動してきたロシア帝国の実態、さらにはまた、当時の帝国主義であるところのイギリスとかフランス、その他ヨーロッパ諸国が領土的な野心というものを放棄した今日におきまして、ロシア帝国が消滅をいたしました後にできたソビエト政府というものは、イデオロギー的な背景のもとに全世界を征服をする、形を変えた帝国主義というものを実施しようとしているのではないかと私は思うのであります。  たとえば、一九六三年におけるプラウダ、ソ連の全党組織と全共産党員にあてたソ連共産党中央委員会の公開状におきましては「われわれは、資本主義の不可避的な滅亡を信じているだけでなく、さらに階級闘争によって一刻も早くこの滅亡が実現されるように全力を尽くしている。」あるいは「わが国で社会主義が完全かつ最後的に勝利し、われわれが共産主義のすばらしい建物を着々と築きつつある現在、わが党と全ソ連国民は、マルクス・レーニン主義の偉大な思想が全世界で勝利することを、ますます確信している。」こういうように、一つのイデオロギーのもとに全世界に革命を輸出し、共産主義のもとに征服するという意図があると見て間違いがないと私は思うのであります。つまり、イデオロギー的な背景を通じまして、領土的、帝国主義的な野心を満足せしめるというのが、残念ながら今日のソ連の意図ではないか、目的ではないかと考えるわけであります。  また、デタントが一般には西側陣営と東側陣営が話し合いを通じて平和を探る、われわれの方におきましてはそう信じられておりますが、しかし、たとえばソ連の一九七六年の十二月のインターナショナル・アフェアーズという本における論文におきましては「デタントは社会主義、資本主義間の平和的闘争の基盤として世界的規模で役立っている。そして、それは両者間の階級闘争の特殊な型なのである」つまり、デタントそのものも両陣営間の階級闘争として利用しておる、ここに私は問題があると考えるのであります。  そこで、われわれが資本主義体制をとろうが、どのような政治体制をとろうが、これはわれわれ日本国民が決定すべきことでありまして、もしそれを破壊しようとするような、あるいは武力でもってそれを占領するというようなことに対しましては、どんなことがあってもまず守り抜いていかなければならないと考えるのであります。私は、日本の基本的な防衛の価値観というものはそこに求めなければならないと考えるわけでございます。  そこで、先般、ソ連アフガニスタンに対しまして軍事的な侵攻を行いました。これは当然、国家の主権、領土保全、政治的独立を破壊する行為でありまして、当然本院におきましても本年の三月十三日に、みずからの政府の形態を選択することは、それぞれの国民固有の自主的権利であり、いかなる国もアフガニスタンに対し干渉介入すべきではないとした国連緊急総会の決議を支持いたしまして、ソ連軍のアフガニスタンからの即時、無条件、全面撤退を要求いたしたわけでございます。  その際、私は問題にいたしたいのは、先ほど箕輪委員も問題にいたしましたが、ソ連アフガニスタンに介入したその理由を、ソ連アフガニスタンの善隣友好条約に基づいて、そのアフガニスタンからの要請に基づいて介入をしたというふうに言っております。しかしながら、当時の政府ソ連軍の侵攻によって消滅をいたしたわけでありますから、果たして要請があったかどうかというものは疑わしいのであります。それで、その条約を見ますと、両国が協議するという条項があるわけでありますが、ここに最大の問題があると私は思うわけであります。  ソビエトは、日本政府に対しましても日ソ友好善隣条約なるものを提案した、こう言っておるわけでございますが、われわれはその事実があるかどうかを明確に知りません。しかしながら、五十四年二月二十四日のイズベスチヤにおきましては、このような条約を提案したということを言っておるわけでございます。  たとえば、それによりますと、第三条におきましては「ソビエト社会主義共和国連邦と日本国は、締約国の一方の安全に損害を与え得るいかなる行動のためにも自国の領土使用させない義務を負う。」そのねらいとするところは、つまり日米安保条約という体制を破棄させ、中立化構想というものを目標としてきているのではないか。いろいろなねらいが考えられるわけでありますが、この条約が提案されたのかどうか、わが国政府としましてはどういうような対応をしておるのか、この点につきまして御質問をいたしたいと存じます。
  143. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは、ソ連側からの話がございましたが、日本側では正式にこれを受け取らないということの関係になっておりますが、その辺の詳細の点は政府委員から答弁させたいと思います。
  144. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のございました日ソ善隣協力条約につきましては、一九七八年、二年前でございますが、一月に当時の園田外務大臣がモスクワを訪問されましたときに、先方から提案があったわけでございます。ただ、その際当方より、わが方として考えておるのは、あくまでも日ソ平和条約の締結であるということでございまして、このソ連が提案いたしました日ソ善隣協力条約については検討する用意がないということをその場で回答した次第でございます。その後、ソ連側が一方的にその内容を公表したということは、ただいまお示しのとおりでございます。
  145. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 この点に関しましては、われわれが今後当委員会におきまして十分検討し、世界情勢の中でどのような方向をたどるべきかということにつきましては、今後討論をする価値があるものだと思うわけでございます。  そこで、この世界情勢の中におきまして、ソビエトはアフガニスタンに侵略をし、あるいは現在イラン情勢をめぐりまして非常に激しい世界情勢の展開があるわけでございます。場合によってはソ連イランに侵入するかもしれない、あるいはその世界戦略というものが、さらに有事の場合におきましては極東に出てくるかもしれない。そういう点を見た場合におきまして、ソ連が非常にわが国の三海峡の動向につきまして関心を持っておるわけでございます。私は、ソ連世界戦略というものは、先ほど申し述べましたように全世界の征服をする、こういうところに一つの問題があると思います。つまり三海峡につきましても、すでに一九五一年のサンフランシスコ平和会議の際にソ連が非常に興味ある提案を行っておるわけでございます。たとえば、「対日平和条約草案に対するソ連側の修正点」というものの第十三でありますが、「宗谷海峡、根室海峡の日本側全沿岸及び津軽海峡及び対馬海峡を非武装化する。右の諸海峡は、常にあらゆる国の商船に対して開放されるものとする。(2)本条一項に挙げた諸海峡は、日本海に隣接する諸国に属する軍艦に対してのみ開放されるものとする。」私は、ソビエトは、今日まで三十年間たっておるわけでありますが、あくまでもこの三海峡の軍艦の自由通航というものを求めてくるであろうと思うのであります。そうした点がこれからの防衛問題における大きなわれわれといたしまして討議しなければならない問題だと思うのであります。しかし、日本はこの急迫した国際情勢の中におきまして、まず自主的な判断による自主的な外交、国防政策を打ち立てていかなければならないと思うのであります。     〔箕輪委員長代理退席、委員長着席〕 そうした点におきまして、たとえばフランスのかつてのドゴールが言いましたが、ある一国が何らかの重大な契機で他国に依存し始めるとなかなかそれから抜け切らない、とりわけ依存の相手が同盟国や友好国であった場合、根本的に対決するチャンスが少ないので、ますます依存から抜け出しにくい、このように述べておるわけでございます。したがいまして、われわれはこの世界の現状の中におきまして、日本の存立というものは、単にアメリカの判断に負うとか、その判断をのみ重視するというのではなくして、日本人自身の判断でやらなければならないということを私はまず強調いたしたいと思うのであります。そうした点におきまして、ソ連わが国に対しまして日ソ友好善隣条約というものにおきましても、これは中央公論の五十三年の五月号に、当時の社会党の所属議員である岡田春夫氏が論文を載せておるわけでございますけれども、この日ソ友好善隣条約というもののねらいというものは何であるか。たとえば「この条約を締結するならば、あきらかに対ソ従属関係が確立されていくことは眼にみえている。それはとりもなおさず「フィンランド化」を意味しているといえるだろう。」こう言っておるわけでございます。社会党の国会議員の方であっても、こうしたソ連脅威ソ連の意図するものをよく分析しておると私は考えるわけでございます。そうした点におきまして、三海峡の防衛も含めまして、今日その三海峡の二つを扼しております北海道の防衛が最大の問題点に相なっておるわけでございますが、いま日本国民は、この日本防衛というものが果たして日本政府によって十分できるのかどうか、こういう点を非常に不安を持って見ておると思うのであります。どうかそういう意味におきまして、まずもって国を守ることは、武器やあるいは体制というよりも、一人一人の国民の国を守る気概であると考えるのであります。そうした点におきまして、国を守る最高の任にあります防衛庁長官の御見解を賜りたいと思います。
  146. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答え申し上げます。  国を守るということについて一番大事なものは何だということであれば、いま御質問の中にもありましたように、国民自分たちの生命、財産、文化、いわゆる国の長い間の生命、国は生命を持っておるわけでありますから、これを守るという気概といいましょうか、心組みといいましょうか、そういうものが一番大切である、かように存じます。  さらに、どのような形でこれを守るかということにつきましては、申し上げるまでもなく、日本の場合は前の戦争が終わりましてから特別な状況で、世界に例を見ないような防衛の態度をとっておるわけでございますが、先ほどの御質問によると、これでは心配だといろいろ言う国民もあるというような御質問がございましたが、私は、国民の皆さんがどうすべきかということについて問題を避けることなく、十分に御議論をいただいて、このようにする——もちろん一〇〇%の方のコンセンサスというようなことはなかなかできないだろうとは思いますけれども、これは十分御議論をいただいて決めるということが大切であろうと思うのでございます。かように実は存じておりまして、国会は国民の代表でございますから、いよいよ国会でもそういった点から御議論が十分出ることと、かように期待をしておる次第でございます。
  147. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 防衛に対する認識をもう一度御確認をいたしたいと思うのでありますが、第二次世界大戦を引き起こした日本といたしましては、いままでたとえば自衛隊を形成する場合におきましても、外国を侵略するものではないということで、専守防衛というものをたてまえといたしてまいったわけでございます。しかしながら、どうも物の考え方というものが、専守防衛の実態というものは一体どういうものであるかということをまだ十分認識しておらないような気がするのであります。たとえば軍隊は外国に行っても戦争できるわけでありますけれども、しかし、専守防衛ということに相なりますと、これは外国が戦場になるのではなくして、日本の国内が戦場になるということでございます。日本の国内が戦場になるということは、日本国民の生命、財産がまず第一に脅かされるということを意味すると思うのであります。ですから、自衛隊そのものが単に外敵に対して戦うというのではなくして、政府全体としましては、日本国民の生命というものを一人でも多く損しないように万全の体制を講じなければならぬのではないか。これは防衛庁だけではできないと思うのであります。つまり、災害救助に準じた国民を避難させる方法であるとか、あるいは放射能から国民を守るための防備体制をどうするか、こういうものに対してやっていかなければいかぬ。専守防衛意味というものは、単に言いわけではなくして、これは重大な問題を抱えておる、こういう点につきまして今後検討する必要があるんではないか。防衛庁長官の御見解を賜りたいと思います。
  148. 細田吉藏

    細田国務大臣 私が先ほど申し上げましたようなことの当然の帰結といたしまして、いま御質問にございましたように、日本の国を守るということのためには自衛隊あるいは防衛庁の力だけでは決して十分でございません。特に、ただいまおっしゃった、私ども通常言っているいわゆる民間防衛といいましょうか、この民防問題というものは大変大切な問題でございまして、この点については世界じゅうで日本は大変な立ちおくれになっておるのではないかと思います。これは防衛庁の所管というわけではございません。全政府の責任であり、また政府のみならず地方公共団体も、国民が本当に一体になっていわゆる民間防衛というものを考えなければならぬ、かように存じておる次第でございまして、私ども国の防衛をお預かりしておる立場からも、こういう点につきましては推進をしてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  149. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 終わります。
  150. 坂田道太

    坂田委員長 次に、有馬元治君。
  151. 有馬元治

    ○有馬委員 時間がございませんので政府側も要点だけ簡単に答えていただきたいと思います。  まず第一点は、午前中も質疑がありました昨日のイランの人質救出事件に関連する問題でございますが、いままであの種の事件が幾つか起こっております。けさのサンケイに出ておるだけでも、プエブロ号事件、米軍捕虜救出作戦、オリンピック村の襲撃事件、エンテベ作戦、幾つか出ておりますけれども、これが今回のように軍事行動と非常に混同されやすい、しかも軍事紛争に発展しやすいきわどい場面と、いろいろありますけれども、これは軍事行動とか戦闘行為とは違いまして、一つのゲリラとか暴徒に対する鎮圧行動であったり救出行動でございますから、これらの行動について自国で処理される場合は問題ないと思いますが、他国に出向いてこれらの行動をする場合の国際的な、条約はないと思いますけれども、慣行が今日までどの程度確立しておるのか、この点についてお尋ねいたします。
  152. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  各国の慣行ということでございますが、今回のイランにおきます人質を救出するためのアメリカの救援活動というものにかなり類似しているものとして挙げられますのは、たとえば一九六〇年にコンゴにベルギーが軍事介入と申しますか、兵員を送りまして、現地におきます婦女子、ベルギー人を救出したということがございます。もう一つ、七五年にマヤグエス号事件というのがございまして、これはカンボジアのところで行われたもので、七六年にはエンテベ空港事件というのがございまして、これはイスラエルがエンテベで人質を解放したというようなことでございます。こういうものが一つの例として挙げられるわけでございまして、いずれの場合も、大体におきまして当事国は自衛権の行使ということでもって国連にも報告をいたしているわけでございます。ただ、国連におきまして審議された場合もございますし、安保理で審議が行われなかった場合もございまして、いろいろな議論が行われたことはそのとおり事実でございますが、結局においてそこでは自衛権の行使でないとか、自衛権の行使であるということの判定は下らなかった。ただ、その議論の過程におきましては、自衛権の行使として支持する国の数が多数であったという経緯はございます。
  153. 有馬元治

    ○有馬委員 今回の事件に当たりまして、今度の人質問題は、EC並びに日本側としては経済制裁を共同で考える、そのかわりアメリカ側には武力軍事行動を自制してもらう、これが一つのバランスであったと思うのですが、昨日の事件以来、この問題は従前以上に解決がしにくい場面になっておると思います。したがいまして、訪米される外務大臣あるいは総理、カーター大統領にお会いになったときにこの点ははっきりと物を申していただきたい。そしてまた、いままでこっちは経済制裁をやる、大統領の方は軍事行動を自制する、これだけじゃなくて、やはり本論の人質問題を平和裏に解決してやる、そこを日本側としては積極的に考えていかないと、ただわれわれはこれをやる、大統領は自制してくれ、これでは物は解決しないと私は思うのです。かつて国連に調停機関もあったようでございますからこれを活用するなり、あるいはまた別の方法があるならば、あらゆる努力をして本論を解決しないとこの問題は解決しないと思いますので、その辺のお気持ちをひとつ外務大臣からお聞かせ願いたいと思うのです。
  154. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま有馬委員からお話ございましたように、日本政府としてもECと協力、連携をとりながら、一方において人質の早期解放、他方においてアメリカの武力行使の自制ということを求める立場をとってまいったわけでございまして、今後そういう努力をさらに一層強化していく必要があるかと考えておるわけでございます。
  155. 有馬元治

    ○有馬委員 何か国連の調停機関を活用するおつもりはございませんか。
  156. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ワルトハイムの調査委員会がございますが、これは私の了解ではまだ解散したことにはなっておらないわけでございまして、そのことも含めていろいろな方途を検討、探ってみたいと思います。
  157. 有馬元治

    ○有馬委員 防衛の問題に入りたいと思いますが、私は防衛費の問題を中心にお尋ねをしてみたいと思います。  その前提といたしまして、最近のソ連極東における軍備増強ぶりということが皆さんの脅威の対象になっておるわけでございますけれども、一番新しい増強ぶりというのは必ずしもわかっておらないようでございますので、この一番新しい時点における増強ぶりについて御説明願いたいと思います。
  158. 細田吉藏

    細田国務大臣 極東ソ連軍の顕著な増強が近年引き続いて行われておりますことは客観的な事実でございます。防衛庁といたしましては、逐次情報を得まして御報告をいたしておるところでございますが、最近、昨年と本年とを比較する作業を完了いたしましたので、取りまとめてこの件につきまして、政府委員より数字的な点も含めて御報告をさせたいと存じます。
  159. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 極東ソ連軍増強につきましては、逐次必要に応じて御報告しておりますけれども、最近まとめの作業が完成いたしましたので、昨年の白書時点ごろにおきます数字と現在の数字と比べまして、まとめて御報告いたします。  地上兵力につきましては、昨年は三十二個師団、三十万人以上であろうと見ておりましたけれども、本年は三十四個師団、三十五万人、このうちの増加しました二個師団分は、極東関係であるというふうに推定しております。  ソ連太平洋艦隊につきましては、総トン数が昨年百三十八万トン、ことしは百五十二万トンと考えております。十四万トンの増加でございます。隻数は七百七十隻から七百八十五隻、十五隻の増加でございます。内訳としましては、潜水艦が百二十五隻から百三十隻にふえておりますが、この増加はすべて原子力潜水艦でございます。この結果、原子力潜水艦は五十五隻から六十隻になっております。  また、主要の水上艦艇につきましては、御存じの空母ミンスク、イワン・ロゴフ等でございますけれども、その結果、ミサイル搭載の巡洋艦、これはカラ級巡洋艦が二隻新たに配備されまして、これはソ連の持っております最新、最強の巡洋艦でございます。これによりまして、ミサイル搭載巡洋艦が五隻から七隻に増加いたしました。駆逐艦もクリバックII型、I型の新型駆逐艦が配備されまして、これは古い型の駆逐艦が退役しておりますので隻数は変わっておりませんけれども、全体といたしまして、ミサイル搭載の巡洋艦、駆逐艦が二十隻から二十四隻に増加しております。  極東ソ連軍の航空兵力は、全作戦機二千四十機と申し上げておりましたけれども、ことしは二千六十機というふうに改定いたします。この増強は、主として海軍哨戒機の増大によるものでございます。この結果、海軍哨戒機は百四十機から百六十機。  それから、あと戦域核戦略、これはもう御報告申し上げましたけれども、日本及び中国を初めとする東アジアの大部分を射程におさめる移動式のIRBMのSS20ミサイル及びバックファイア、これはいずれも可能性があるという程度のことを申し上げていたのでございますけれども、配備を確認しております。  ごく簡単に、これはどういうことかというあれでございますけれども、こうして見ますと、この一年間の増大というのは非常に大きいものがございまして、一年間だけをとってもそうなんでございますけれども、過去、特にこの二、三年間の増大というものは非常に大きくなっております。先ほど石橋先生から、ソ連増強というのは織り込み済みだという御指摘があったのでございますけれども、ソ連防衛力が逐増しておることは間違いないのでございます。ここ二、三年特別大きくなっておりまして、一九七六、七年ごろの推計では、太平洋艦隊のトン数はふえていないのでございますが、その後三年間で八万トン、五万トン、今回十四万トンでございますから、二十数万トンふえております。わが海上自衛隊のトン数を上回る分量がふえております。  それから地上軍の増加にいたしましても、昨年約見通しを三万人増加いたしましたけれども、その前にもまた一万人ほどふえておりまして、これもこの二、三年間の増強でございます。この理由は明らかではないのでございますけれども、七〇年代中ごろに比べまして、七〇年代の後半あるいは末期に至りまして、ちょっと極東における増加が際立って多くなっているように見られます。
  160. 有馬元治

    ○有馬委員 さしあたり訪米されましたときに問題になるのは、わが国防衛費の問題だろうと思いますので、昨年つくりました中業、中期業務見積もり、これは私も参画してつくったのでございますが、最近防衛庁限りのものがアメリカとの間においてもまた政府の段階においても、これが中業、中業ということで評価されてきておるようでございます。結構なことでございますが、この中業自身、五十二年の防衛計画大綱と比べると大分下回っておる。私のざっと見たところでも、航空自衛隊の作戦用の航空機のトータルにおいても九十機下回っておる。また海上自衛隊の作戦航空機についても四十機下回っておる。水上艦艇については約二隻という表現になっておりますけれども、これは三隻を意味するのだろうと思います。  そういうことで大綱を下回ってつくらざるを得なかった。昨年の事態はそうであったのでございますが、その後にアフガン問題が出てまいって、大きな状況変化が出ておりますので、この大綱なりあるいは中業自体についても徹底的に見直せ、こういう意見が非常に強いのでございます。しかし、防衛力整備というのは、素人の思いつきでいろいろ意見を出してみても、もともと積み上げ作業でがっちり仕組んでいって五年先、十年先を見て初めて実現するわけでございますから、そう素人がとやかく言ってみても、大きな防衛力整備にはならないのでございます。  そこで私は、やはりじみちにわが国防衛を考えた場合には、この大綱を基礎にし、中業を現実的な物差しにしてわが国防衛を考えなければならぬ。そこに新しいアフガン問題というような大きな情勢変化あるいは極東ソ連軍の増強、こういうことを考えて手直しをすることは考えなければいかぬと思いますけれども、基調はやはりこの中業なりあるいは大綱を基礎にして考えなければいかぬと思います。  そこで、いろいろな意見があったわけでございますけれども、自民党の中で、この中業を基礎にして、そして五カ年計画を一、二年繰り上げようじゃないか、これが御承知のように自民党の考え方でございます。繰り上げながら新しい事態に即応した手直しをやっていく、それからまた次の長期計画を考える、これがやはり手順だろうと思います。幸いなことに、アメリカ側にもこの中業が評価されておるようでございますので、話は大体われわれの考えておる防衛計画と、また政府が考えておる防衛計画、アメリカ側がいろいろな思いつきの個人的な意見はありましたけれども、大体落ちついてきておる考え方、これはやはりこの中業を基礎にして日本防衛力増強を考えなければいかぬのだ、こういうことになってきつつあると思います。  そこで、私どもの考え方は御承知のとおりで、この中業をできれば二年繰り上げてくれ、少なくとも一年は繰り上げてくれ、これが党の最大公約数でございますので、その辺を念頭に入れられて、首脳会談で具体的な数字が出ることはないと思いますけれども、やはりアメリカ側の増強の要請、先ほど石橋さんは強要、強要と言っておりましたけれども、決して強要ではなくて、われわれが考えても最小限度このぐらいの整備はやらなければいかぬ、そして一%の、政府自身が上限として設けたGNP対比一%でございますから、これはやはりなるだけ早い時期に達成する、これが一、二年の繰り上げということにつながるわけでございますから、ぜひこれは日本側の自主的な判断で考えていただきたい。これはもう十分御承知のこととは思いますけれども、ぜひお考えをいただきたい。この点の見解を長官にお尋ねいたしたいと思います。
  161. 細田吉藏

    細田国務大臣 防衛庁といたしましては、先ほども申し上げましたが、ただいまの国際情勢から考えて、日本防衛費がどのようにあるべきかということについての考え方、これは予算委員会でも衆参両院通じ一貫して申し上げておりますが、「防衛計画大綱」並びに閣議決定になっております一%を超えないめどでという、この大綱並びに閣議決定の線を、私たちとしましてはできるだけ速やかに実現をいたしたい。なお、これの一つの方法であります中期業務見積もりにつきましては、できるだけ早く、少なくとも五年は四年ぐらいで何とかできないものだろうかということで、私どもとしましては今後当面する五十六年度予算とも立ち向かいたいと考えておるわけでございます。  ただ、これは、私どもが防衛の立場からそういうふうに強く考えておるということでございまして、国の方針がそのように決まることを強く望んでおるわけでございます。
  162. 有馬元治

    ○有馬委員 〇・九%というのは本当にコンマ以下の話でございまして、普通の先進国の標準からいきますと、三%ないし四%というのが常識であることは専門家は皆御承知のとおりでございます。わが国自衛隊の場合に、人並みの三、四%ということは望むべくもないと思いますけれども、最近いろいろと議論が出ております。財界方面では一・九%、これはどうして出たのかわかりませんけれども、スイスあたりがその辺の比率である、こういうことかと思いまするが……。これは、かつて昭和三十年ごろの対GNP比率を見ますと、一・七三%ですか、その辺まであったわけでございます。それがだんだんと下がってきて、一時は〇・七%台までに下がってきた。それで最近〇・九%まで盛り返してきておる。そういう状態で、しかも極東脅威というものがひしひしと感ぜられる時期でございますから、これはひとつ防衛庁長官、要求元としてはぜひ強い姿勢で国内あるいは対アメリカ関係においても、これぐらいなければわが国防衛は最小限度ですらできないのだ、こういうつもりで腹を固めていただきたい。要求元がしっかりしないと応援団の応援のしようがありませんので、ぜひひとつ強い姿勢で臨んでいただきたいと思います。これはお答えは要りません。  そこで、この防衛費の問題と関連いたしまして、自民党の防衛対策を議論して私感ずるのでございますが、わが国防衛力整備を考える場合に、一番必要なのは海空の増強だろうと思います。海空の増強と言えば大体中身はおわかりだと思いますけれども、先ほど岡崎参事官からソ連極東増強ぶりの説明がございましたが、その中でもやはり一番気になるのは足の速いバックファイアじゃないかと思うのです。これが新しく極東内陸部に配備されておることを確認している以上は、やはりこのバックファイアが攻撃可能な範囲と射程距離というものをよく考えて海空の増強をやっていかなければならぬ。これは先ほど防衛局長から、海の守備範囲はどこまでかという質問に対して、シーレーンは一千海里ですか、周辺海域は数百マイル、こういうお答えがありましたけれども、いまの海上自衛隊は、このバックファイアの攻撃に対して、私どもの感じからすればまる裸ではないか、全然防空能力を持っていない。したがって、どこまで守備範囲を広げていこうとも、その必要性があっても、防空能力を持たなければ海上兵力というものは力にならないということは常識でございますから、この辺がちぐはぐにならぬように、いまの守備範囲は守備範囲でいいのです、私はいますぐ空母をつくれということを言っているのではなくて、いまの守備範囲ですら、空から見たらまる裸でしょう、エアカバーは全然ない、そういう状態をほうっておいていいのか。この辺は、いままで航空自衛隊は陸とわずかな海の周辺だけを対象に、防空圏内に考えておったようでございますけれども、海上自衛隊を、水上艦艇を裸にしてちぐはぐな状態を続けておくということは、これはもう防衛になりませんので、その辺のことをひとつ防衛局長からよく説明をしていただきたいと思います。
  163. 原徹

    ○原政府委員 御指摘のように、いま対空ミサイルを持っておる護衛艦は三隻、先般一つできましたので四隻になりましたが、四隻しかないわけでございます。そういうことでは、御指摘のように非常に立ちおくれておりますので、護衛艦の近代化中期業務見積もりで考えておるわけでございまして、いま護衛隊群四群ございますが、その三群につきましては中期業務見積もりが終わればミサイル化が終わる、一応近代化が終わるということに考えております。確かに太平洋の真ん中でと申しますか、千マイル行くにいたしましても、その間の対空防御システムということには非常に欠けておりますので、その点は十分認識してやりたいと考えておるわけでございます。
  164. 有馬元治

    ○有馬委員 もう一つ、くどいようですが、海空の増強の必要な場面は、先ほど同僚の箕輪委員から御指摘がありましたように、北海道を中心とする北の守りでございます。元の統幕議長の栗栖さんがこの一月号にきわめて詳しく敵の侵攻地点を想定しながら防衛の見解を述べておりますが、あの議論を見ましても、やはり陸だけを前提とした防衛論議でございまして、北海道を守るのは海空を増強しないと、上陸をさせてしまえばなかなか容易ならぬことなんです。陸は上陸後のことを中心にして考えておりますけれども、水際で一兵も上げないという姿勢を固めていかないと、北海道の守りは、上げてしまえば地形その他から考えてそれはもう栗栖さんの言うとおりなんです。したがって、海空の増強というのは、南の方に対する防衛だけじゃなくて、北海道自身に対する防衛にもやはり必要なんだ。北の守りは陸だけに任せる、南の方を海空でやる、こういう考え方はよくない。統幕議長をやられた人にしては陸のことしか論じてない。もしあれだけ論ずるんだったら、海空がもしこの程度に増強されておれば陸は大丈夫だ、そういう点をなぜ指摘しないのか。これはやはり三自衛隊を統幕する議長としてはぼくは片手落ちじゃないか、こう思います。これは北の守りの点から言っても海空の増強をぜひやってもらいたい、これをお願いいたしまして、時間がないようでございますから……(「答弁、答弁」と呼ぶ者あり)御要望がありますから、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  165. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答えいたします。  非常に足りない防衛費をどのように使うかということでございます。わが国防衛の立場から、海陸空にどのように配分をすべきかというのは基本的に大変大切な問題だと思います。参考になる御意見を伺いましたが、海陸空三つのバランスということを十分考えて私ども対処いたすべきだ、かように考えておる次第でございます。
  166. 有馬元治

    ○有馬委員 ありがとうございました。
  167. 坂田道太

    坂田委員長 次に、市川雄一君。
  168. 市川雄一

    ○市川委員 最初に外務大臣にお尋ねしたいと思いますが、午前中の質疑でもございましたけれども、イランをめぐる問題で最初にお伺いしたいと思います。  今回の米軍による、イラン米大使館員の人質救出作戦は失敗に終わりましたが、この事件の反響は非常に大きいと思うのですね。率直に言って、無謀というか暴挙というか、本当に理解に苦しむアメリカの措置であったというふうに思います。  そこで、先ほど大臣は、人道的な立場でアメリカのやったことについては心情的には理解はする、こういう趣旨のことをおっしゃっておられましたが、日本政府として、あるいは外務大臣として、今回のこのアメリカの措置に対してどう思っているかという点については明確な御答弁がなかったと思いますが、その点どういうふうにお考えですか。
  169. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本政府といたしましては、これまでも申し上げましたように、イランの人質問題の平和的な交渉による解決が望ましい、この点はEC諸国も同じ考え方をいたしておるわけでございまして、昨日の事件につきましては、私どもも意外な印象を受けたわけでございますが、その後次第に、けさまでに情報が入ってまいりますところによれば、今度の行動が純粋に人質を救出するということに限定された試みであったようでございますし、その意味では、これが大きな軍事的な行動あるいは紛争に発展していくという性質のものでもないように見受けておりますのと、それからカーター大統領あるいは国務次官その他の発言を通じまして、今後の平和的解決に努力したいということを言っておりますので、そういう方向をできるだけ日本としても強める方向で努力を続けるべきであろうと考えております。
  170. 市川雄一

    ○市川委員 いまの御答弁を伺っておりましても、驚きであるとか当惑していらっしゃるだけで、遺憾だとか、そういうお気持ちは全然感じられないのですが、どうなんですか。今回の米国のとったことについては支持していらっしゃるのですか。それとも好ましくないとお考えになっていらっしゃるのですか。どうですか。
  171. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは先ほど申しましたように、もしこの問題が将来の人質問題解決に非常に困難な結果になっては困るわけでございますが、この辺の情勢はもう少し見届ける必要があるわけでございまして、日本の立場から言いますれば、これはヨーロッパも同じでございますが、自由主義陣営と申しますか、これの連帯的な動きということは、世界情勢全般を見た場合に重要な面でもございますから、先ほど申し上げたように、今後の情勢をさらに見てまいりたいということでございます。
  172. 市川雄一

    ○市川委員 全然お答えになってないと思うのですね。要するに、人道的立場でやった、そういう心情的理解の気持ちはよくわかるのですけれどもね。一方では、平和的に解決してほしいということを今後はアメリカに言っていきたい、平和的に解決してほしいということをアメリカにきちんとおっしゃるには、今回のアメリカのとった行動について遺憾だと言うくらいのはっきりした気持ちがなければ言えないんじゃないでしょうか。そういう立場でいまお聞きしているのですが、お答えできませんか。どうですか。
  173. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これが純粋に人質救援のための行動に限られている場合には、必ずしも軽々にそういう判断を下すべきでないと思っております。
  174. 市川雄一

    ○市川委員 人質救出だけに限られたものであったとしても、もし行われておれば明らかに戦闘行為に突入せざるを得ない。仮にイランの人が殺害されておれば米国の人質が殺害される、こういうことでかなり国際的に緊張する。もちろんイランのやったこともけしからぬかもしれませんが、だからと言って、超大国である米国は軽々しく行動すべきではないと思うのですね。そういう意味で、ただ人道的な立場だけならばいいんだという御発言はきわめて、何というか、不穏当だと思うのですね。  そこでお伺いしますが、先ほど御報告がございましたが、カーター大統領が国連に報告をした。その報告したということは、国連憲章で言う五十一条に該当する行為としてやったのだということで報告をしたのだ、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  175. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 安保理事会に対して国連憲章第五十一条に基づき通報をする、これは、人質救出のミッションは米国自衛権の発動であるというカバーリングレターをつけて提出しておるわけでございます。
  176. 市川雄一

    ○市川委員 そうなりますと、国連憲章の五十一条では、「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、」という前提で個別的な自衛権の行使が認められているわけでございます。今回のイランの事件でとった米国のなにはこれに該当しますか。どうですか。
  177. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 国連憲章の第五十一条の解釈というものにつきましては、従来とも国会において御論議が行われておりまして、政府側の解釈といたしましては、国連憲章五十一条に、武力攻撃があった場合には、国連の加盟国は個別的または集団的自衛の固有の権利を有しているのであるというふうに書いてあるわけでございますが、ここで申しておりますこの「武力攻撃」というのは、組織的、計画的な武力攻撃である。そして、それではこの組織的、計画的な武力攻撃以外の侵害に対して集団的ないし個別的自衛権の発動が許されないものであるかということにつきましては、それはやはり許されるものであろう、それが排除されているものではないであろう。なぜ「武力攻撃が発生した場合」と五十一条に特定してあるかと申しますと、それは第七章に、「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵害行為に関する行動」ということの章の中に、この五十一条が設けられている関係で、「武力攻撃が発生した場合」という特定があるわけでございまして、それ以外の侵害に対して自衛権の発動が排除されているものとは解されないということは、この国会の御審議におきまして政府側が従来御説明しているところでございます。
  178. 市川雄一

    ○市川委員 そこでお伺いしますが、それではこの五十一条によってとった米国の今回の行動は、また先ほどの議論に戻って申しわけないのですけれども、軍事行動なのか、そうでないのか、その点についてはどうですか。
  179. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 とりあえずアメリカが安保理事会の議長国に対しまして出した通報でございますが、そのカバーリングノートを読んでみますと、手続的に五十一条の手続を踏んでやってあるということがうかがえること、これは明らかでございますが、そこに固有の自衛の権利を行使して行ったということでございまして、これが五十一条に基づきます自衛権の行使であるのかどうか、その辺のところは実はこの文章では明瞭ではございません。いずれにいたしましても、五十一条の手続を踏んで安保理事会に通告をしたということは、アメリカ自身も、今回の行動が武力の行使の態様を含んでいたものであると認識していたものであろうということは推察できると思います。
  180. 市川雄一

    ○市川委員 そうすると、午前中の答弁とちょっと違いますね。大平首相はきょう、福井において、米国の今回の行為について軍事行動ではないというふうに言っておるわけですが、午前中の答弁、また大平総理の見解、ちょっと政府側で混乱しておられるのではないかと思いますので、統一的な見解を示していただきたいと思います。
  181. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 私が武力の行使といま御説明の際に使いました言葉と、それからわが国がECとの関連におきましてへ米国に軍事行動はやめてほしいと言ったこととには若干の差があると思うのでございます。と申しますのは、わが国がECとの関連におきましてアメリカ側に軍事行動の自制を求めていたという場合には、別に軍事行動の定義があるわけではございませんけれども、それはイラン港湾の封鎖でございますとか、あるいは油田の爆撃でございますとか、あるいは上陸進攻というようなことをやめてほしいという意味で使われていたものと了解しているわけでございます。
  182. 市川雄一

    ○市川委員 国連憲章の解釈を幾らやってもあれですが、今回のイラン問題でわが国がECと共同歩調をとったこのこと自体は、一応妥当な措置であったというふうに私たちも評価をしておりました。しかし、制裁措置によってイラン問題が解決するのかという点については強い疑念を持っております。ですから、制裁措置は極力慎重であるべきだ、そういう立場からお尋ねいたしますが、報復や制裁を強めて問題が解決するのかという、そこに一つの本質があると思うのですね。イランで起きたのは革命ですよね。革命が起きるような、あるいはまた、ほかの中東諸国でもまた同じような革命が起きるかもわからない、そういう非常に不安定な中東日本は事実として依存しているわけですね。ですから、そういうことがあるたびごとに制裁だ、報復だと言っていたのでは、日本なんというのはやっていけなくなるのではないか。そういう意味でもっと冷静な対処が必要だと思うのです。まず、お尋ねいたしますが、報復や制裁を強めることがイラン問題の解決につながるというお考えをお持ちですか。どうですか。
  183. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 EC九カ国のルクセンブルクの会議の決定におきましても、五月十七日までは報復とか制裁とか言っておらないわけでございまして、とりあえずの措置をとる。それで、五月十七日に至ってもイラン側から人質解放についての何らかの表示がない場合には、その段階で制裁措置に移るということを申しておるわけでございます。  まあ、EC諸国の考え方、私も数名の外相と直接話し合ったわけでございますが、できればその五月十七日までに何らかの反応があることを期待する。一つには、イランの国会、第二回の国民議会選挙が五月九日に行われる予定になっております。かつてホメイニ師が、この人質の問題は新しく選ばれた議会が決めることだという言明もいたしておりますので、そのような含みがあるわけでございます。もう一つは、五月十七日にEC九カ国外相会議の次回をナポリで開催することを決めたという両者の関連があると思うわけでございますが、そういう意味では、こういう措置に期待をしておると申してよろしいかと思います。
  184. 市川雄一

    ○市川委員 要するに問題は、報復や制裁ではないとおっしゃるが、アメリカから経済制裁の同調呼びかけがあって、ECとわが国は協議して同一歩調ということで方針を決めた、第一段階はしかじか、第二段階はしかじか、こういうことですね。ですから、これからの訪米を控えていらっしゃって、今回のアメリカのとった行動に対しても遺憾とか遺憾でないとかという、何か当惑しているだけで、自分の気持ちがしっかり固まっていない、いまお話を伺いまして一つはこういうふうな印象を受けるわけです。  もう一つは、イラン問題の解決というものに対して、米国の政策の適否という判断も持たざるを得ないでしょうし、日本としての判断があっていいと思うし、そういう立場で考えますと、制裁を加えていけばいくほどイランは反米感情を高めるだけで、要するに解決の糸口は生まれてこない、こういうふうに思うのです。だからといって、アメリカの経済制裁にある程度同調しないと、アメリカのいら立ちを鎮静して軍事介入を防ぐことができない、だからECと相談してある段階まではやった、しかしアメリカはEC、日本のとったことについては歓迎しながら、翌日かなりの背信に近いことをやった、こういう状況の中で、どうですか。これから平和的解決の糸口を見つけていくということが非常に大事なことなのであって、そういう意味ではまず基本の考え方として、今回のイラン問題の解決は報復とか制裁という考え方に立った対イラン政策が成功するとは思わないのですが、外務大臣認識をお聞かせいただきたいのです。簡単で結構です。状況説明じゃなくて、どう思っているのかということを歯切れよく言ってもらいたい。
  185. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカの国内情勢というものも考えなければならないわけでございまして、非常ないら立ちがあることは事実でございます。御承知のように、ECなり日本がとった措置は平和的な解決へ道を開く、そういう道を見出すための努力でございます。
  186. 市川雄一

    ○市川委員 いまの点については関連がありますのでまた触れますが、もう一つの側面があると思うのですよ。  制裁とか報復による対イラン政策は、イランをしてますますソ連なり東欧諸国に結果として追いやっていく、これはアメリカの中東政策あるいは日本中東政策という観点から考えても決して好ましいことではないのじゃないのか、その辺はどう思いますか。
  187. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イランの中にもいろいろな勢力、いろいろな考え方があるようでございますし、大体の傾向としては、米ソ両大国に対する反発が強いという事情もあるようでございます。そういう中で、結局自国の宗教的な条件が非常に強いと思いますけれども、一つの革命の過程を踏んでおるということは私どもも認識しておるわけでございまして、ある程度の時間をかげながら話し合いによる解決の糸口をつかむということがとるべき態度であろうかと思うわけでございます。それに対して、余りに性急な直接行動がとられてはそういう話し合いによる解決の可能性が失われる、それは何とか防がなければならないということが、私どもなりEC主要国の考えだろうと思うわけでございます。
  188. 市川雄一

    ○市川委員 本当に答弁が余りよくわからないのですが、先ほど外務大臣は、今回ECと日本が共通してとった行為は、平和的解決の糸口をつかむためにやったのだ、こうおっしゃられた。あくまでも制裁による解決ができるかどうかということについては判断をずっと避けている。しかし、今回のEC、日本の共同歩調は、もし五月十七日までに人質問題で進展がない場合は第二段階の発動というものが予定されている。この第二段階の発動は明らかに制裁です。ですから、そういう制裁によって追い詰めておどかして、そして経済的に参ったと言わして、そして人質を出させようという発想は、もういままでの経緯で通用しない、これに早く気がつかなければいけないと思うのです。アメリカは当事国ですから、もちろん人道的な怒りもあるでしょうし、国民のいら立ちもあるだろうと思うのですが、日本は、第三国としまして、もちろんイランのやった行為は許せないかもしれませんが、そういう制裁とか報復手段による解決はもうだめなんだということをもうちょっと政府もしっかり自覚をされてアメリカに行きませんと、アメリカに平和解決の糸口をなんという呼びかけさえできないのじゃないか、こういうふうに私は思うわけでございます。その点、どうですか。
  189. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 このイラン人質問題が容易に片づくかどうかということはだれしも確実な見通しを持っておるわけではございませんけれども、しかし、あらゆるできる限りの努力をしてまいる。一方におきまして、アメリカの国内世論の動向等も見てまいりますと、アメリカの友好国、ECや日本というような国が制裁措置協力することを通じて、直接の武力的な行使にブレーキをかける、歯どめをかける、これが一つの選択であろうという判断でございまして、こういう政策で一〇〇%必ず人質の解放が行われるかどうかはわからない。イラン側の情勢もいろいろございますが、しかしこれがいまの段階に残された一つの努力の方向ではないかということを考えておるわけでございます。
  190. 市川雄一

    ○市川委員 そこで、今回イランとの交渉で一バレル三十五ドル、経済ベースで考えてみて高過ぎるから、経済的理由で拒否したのだ、こういうふうにおっしゃっているのですが、伊東官房長官は、記者会見で、広い意味での米国経済制裁への同調というふうに理解してもらっていいというようなこともまた同時におっしゃっているわけです。  そこでお伺いしますが、通産省の方、お見えになっていると思いますが、一バレル三十五ドルを拒否した理由、これは簡単におっしゃってください、大体わかっておりますが。  それから、イラン石油輸入の停止による今後日本への影響、短期的には九十五日分の備蓄を取り崩すということで半年ぐらいはやっていけるということが言われておりますが、特に長期的に日本の石油確保にどういう影響を及ぼすのかという点を、なるべく簡潔にお願いしたいと思います。
  191. 浜岡平一

    ○浜岡説明員 三十五ドルという値段でございますが、単にイラン一国にとどまらないと思っております。いまOPECの中で穏健派と強硬派の非常な綱引きが行われておるわけでございますが、こういう価格を易々諾々とのんでまいりますと、ほかの産油国にも広く広がりまして、日本経済のみならず、国際経済にも悪影響を与えるということを非常に強く感じておる次第でございます。  それから今後の対応でございますが、御指摘のように、短期的にはまず備蓄の弾力的な運用ということだと思っております。その間に次第にDD取引の拡大、新規締結等によって穴埋めをしていくということを考えておりますが、ただ中、長期的な目で考えますと、やはり日本にとりましては重要な供給源でございますので、何とかお互いに納得のいく線というものを見つけ出しまして、いわば雨降って地固まると申しますか、将来にわたりましては、やはりイランとの間の新しい関係を安定的につくり出していきたいというぐあいに考えている次第でございます。
  192. 市川雄一

    ○市川委員 アメリカが人質問題で苦悩しているときに日本がそのすきに乗じて石油確保に狂奔する、私はもちろんそういうことを申し上げているわけではないのです。ただ、ECと日本の立場というものはどこまで利害が一致し得るか、そういう立場でお伺いをしているのですけれども、いま通産省の方は、一バレル三十五ドルなんという法外な価格をのんだらというお話をされておりましたが、石油の質は違うにせよ、クウェート原油の交渉がまとまったということでございますけれども、この価格はプレミアムをつけて一バレル約三十一・五ドル。あるいは最近の産油国の方向性としましては、輸出削減という量の問題、それから一つは値上げという問題がございます。しかも、輸出削減とか生産削減で量で消費国に圧力をかけてくる。また同時に値上げという手段でやってくる。それだけではなくて、たとえばクウェートなんかでは、買った石油の半分はクウェートのタンカーを使わせろとかあるいは委託精製をやれとか、クウェートの石油資本の現地における資本参加をしろとか、こういう、言ってみれば産油国の経済開発なり経済政策に何らかの具体的な協力を条件につけてきている、こういう趨勢にあると思うのです。ということは、お金さえ持っていれば石油が買えるという時代はもう終わりつつある、石油を確保することは長期的には非常に困難だという中でこのイラン問題が起きてきた。したがって、日本長期的な立場で考えれば、イランのいわゆる日量五十三万バレルですか、これは当面は備蓄でしのぎ、何とか平和的に解決して、またイランとの新しい関係をとおっしゃっていますが、そんなふうにうまくいくのかどうか。したがってそういう日本が負わされている独自の立場というものも十分に承知していると思いますが、その辺はどうですか。長期的に石油の確保が非常に量、価格だけではなくて、向こう側の国の経済的な政策にもかなり条件をつけられてきている、こういう認識はございますか。
  193. 浜岡平一

    ○浜岡説明員 全く御指摘のとおりでございまして、産油国にとりましては現在最も重要な国家収入源でございますけれども、やはりいつの日か、これは長短の違いは国によってございますが、枯渇ということが大変懸念されておるわけでございますから、御指摘のような方向が出てくるということは当然だと思います。やはりいろいろな面で、日本のサイドでもおつき合いできるものとできないものといろいろあろうとは思いますが、しかし産油国の発展にできるだけ協力するということを追求しながら、日本の原油供給の確保を考えるということであると強く認識いたしております。
  194. 市川雄一

    ○市川委員 そういう長期的に見た場合の背景がこれあり、外務大臣、また先ほどの問題に戻りますが、イランを追い詰めること、すなわち報復や制裁措置を幾ら重ねても、反米感情を高めるだけで平和的な解決の糸口にはならない。しかし米国軍事介入米国民のいら立ちを鎮静して、軍事介入という手段に出ないようにまたやっていかなければならない。平和的解決、しかしアメリカは強硬路線を非常に崩さない、こういう中で平和的な解決の糸口ということなんですが、平和的解決という以上は、米国イランの話し合いが必要ですよね、最終的には当事者の話し合いが。ところがこの当事者は、米国イランの断交でパイプが切れてしまっている。当事者能力というか、当事者が話し合うというパイプがいま切れてしまっている。ですからそういう意味では、結局先ほども話が出ておりましたが、国連によるとかあるいは第三者の調停がありませんと、平和解決の糸口さえも生まれてこないんじゃないか、こう思うのです。ですから、先ほど外務大臣おっしゃったように五月十七日までに進展を期待していらっしゃるのでしょうが、ただ座って見ていただけでは、これはそういう糸口が生まれてくるという保証は全くないわけでして、日本としてももっと積極的に平和解決の糸口をつくり出す、こういう努力をすべきじゃありませんか。そういう決意はまずございますか。それから具体的に、日本がどういう努力ができるかという検討をしていますか。いま日本の国でこういう努力ができそうだ、これはやろうじゃないか、具体的にあったらお聞かせいただきたい。
  195. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先般現地の和田大使がEC九カ国、実際はルクセンブルクがおりませんで、八カ国の大使とともにバニサドル大統領に会見して、人質解放の期限、段取りを明示するように要請をしたわけでございます。その要請を行った上で各国それぞれ本国に戻って報告をし協議をした上で、さらに必要ならば再度の申し入れをするという段取りになっておりまして、和田大使も本日イランの方に帰任をさせることにいたしております。EC諸国の大使も大体今週中に帰任いたしまして、このルクセンブルクでの会議の結果等を踏まえまして、何らかの申し入れをすることになるかと考えております。とりあえずがそういう努力でございまして、私どもいろいろな情勢から考えて、一カ国の努力よりも主要な国々の共同努力というものが、イラン側あるいは対米、双方の関係でより効果的ではないかと判断しておるわけでございまして、お話しのように、だれかが間に入らなければならないわけでございますし、また必要ならば、先ほどの御意見もございましたが、国連の役割りというものも考えられるかと思うわけでございます。
  196. 市川雄一

    ○市川委員 大使というのも非常に重要な役割りを果たしていらっしゃるとは思いますが、ただ大使が帰任して呼びかける、いかにも何かいまの情勢から見ると非常にか細い感じですよね。迫力が全然感じられない。ECへあわてて飛んでいかれたぐらいの外務大臣なんですから、本当は外務大臣なり何なりがイランへ行かれたらどうですか。そのくらいの外交日本にあっていいんじゃないですか。英国やフランスなんというのは、閣僚級の方や、首相とか大統領が二、三カ月に一回ぐらい中東を回っていらっしゃるわけです。日本は一番中東に依存しているわけです。ふだんは行っていません。しかもこういうときがあっても行きません。大使が帰任してなんという、こんなことでいいのか。もちろん日本が行ったから簡単に解決するとは思いませんよ。だが、そういうやはり努力というもの、これは今後の日本にとって中東に対して非常に大事じゃありませんか。前向きに日本は本当に努力しているんだ、そういうものが全然いまのあなたの答弁やお考えからは生まれてこない。何か当惑して、ただうろうろ見ていて、申しわけないけれども、アメリカとECとはかりにかげながらやっていこう、そういう感じを受けるのですが、どうですか。
  197. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 まあ私も、必要があり、またある程度の効果が期待されるような場合があれば飛んで行くのにやぶさかでございません。ただイラン情勢、なかなか国内がむずかしい情勢がございまして、たとえばヨーロッパ諸国の外相、首脳は一人も行っておらないわけでございまして、周辺の国にはいろいろ各国の大統領、外相等が行っておりますが、イランにはいまだ行っておらないわけでございまして、いまの段階で大使の共同的な動きをとりあえず推し進める、さらにその上に、たって必要ならば次のステップを考えるということでまいりたいと思っております。
  198. 市川雄一

    ○市川委員 時間が迫ってきましたので、防衛問題の方に問題を変えたいと思います。  防衛庁長官にお伺いいたしますが、これは外務大臣にもちょっとお伺いしたいのですが、午前中以来の議論で触れられてはおりますが、外務大臣が先日訪米した折、着実にして顕著な増強という、米国から日本防衛力増強についての要請があった。具体的に何を要求しているのですか、アメリカは。その感触、外務大臣はどんなふうに得て帰ってこられたのか、それから防衛庁としては着実にして顕著な増強というのは一体どう理解されるのか、それをお伺いしたいと思います。
  199. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 三月の二十一日でございましたか、ワシントンでブラウン長官と会談いたしました際に、先方が申しましたことは、防衛庁中期業務見積もりが五年の案になっておるがこれを一年短縮することができないだろうか、そういう発言がございまして、私は、外務省としては何とも御返事ができない、その発言の趣旨を帰りましたら総理、防衛庁長官等にお伝えしますということを申したわけでございます。
  200. 細田吉藏

    細田国務大臣 ただいま外務大臣からお答えがございましたが、着実にそして顕著にということでございますけれども、これは非常に抽象的な形容詞というか副詞でございますので、顕著にというのがとにかく一番額としては問題だ、かように思ったわけでございますが、先般大来外務大臣が行かれまして中期業務見積もりを何とか五年のものを四年に縮まらぬか、こういうことであったということを私ども伺いましたので、これはいずれにしても「防衛計画大綱」の中での範囲のことでございますし、また、私どもの方針としてとっておるGNP一%の線の中の問題でもございますので、その意味での顕著にということであれば私どもとしてはこれは大いに努力したい、日本の実情から自主的にも防衛費は大いに増額しなければならぬ、こういうことで検討しておるところでございましたので、さように考えておるわけでございます。
  201. 市川雄一

    ○市川委員 防衛庁長官のこの委員会開会の冒頭の発言あるいは午前中の質疑を通して、米国が着実にして顕著な防衛力増強を要請している、日本もそれにこたえようというお考えのようですが、その背景なんですけれども、一つはソ連の著しい軍事的増強があった、こういう指摘が一つあったと思います。そしてそれが脅威を増しているんだろう。もう一つは、恐らく東西軍事バランスの中でアメリカの軍事力が相対的に低下した、したがってその低下した分をアメリカ一国では、いまのアメリカの経済力では埋められないのでEC、日本に呼びかけて何とか東西軍事バランスを埋めたい、こういう背景があるんだろうと思いますが、この点についてはどうですか、そういう御認識ですか。
  202. 細田吉藏

    細田国務大臣 おっしゃるとおりと考えております。NATOは御承知のようにおおむね年率三%ぐらいで増強するというような方向でございますし、アメリカも今後非常にインフレと苦しい財政の中で、かなり大幅な増強を考えておるというような実情でございます。これは単にそれだけで日本防衛力をと言っておるとは思っておりませんが、先ほど来申し上げたように、周辺の事情も大いに変わっておりますので、あわせて私どもの方へそういうバックグラウンドも含めまして防衛力増強という要請が参っておる、かように考えております。
  203. 市川雄一

    ○市川委員 中東対策としては一番いいのは省エネだ、基本的には。同じようにいま米国経済がまいっている。そのことが非常に米国自体のいら立ちを招いている大きな一つの原因だと思うのですよ。米国軍事力の相対的低下による東西バランスの空白ができた、それを埋めるんだと言う。しかし、いま米国は国内の石油消費量の半分近いものを輸入に依存している。しかもその石油が値上げしてくる、あるいは大幅な石油コストの値上げを吸収できないくらいの非常に低い労働生産率に置かれている。ちなみに申し上げますと、一九七九年で米国の労働生産性は、対前年度上昇率が一・七%、日本の鉱工業では一二・一%、あるいは政府部門における高い水準での福祉政策と国防支出の増大、個人部門における高水準の住宅取得とインフレマインドによる換物運動、あるいは自動車産業や第三次産業などの企業部門における高い設備投資、こうした諸要素が絡み合ってインフレを促進してきた。そのインフレが非常に高金利を生み出した。その高金利がまた海外から過剰流動性という状態を生み出した。ですから、こういう中で、しかも対インフレ政策が手詰まりで有効打が打てない。そこへこのイラン問題が起きてきた。イラン問題でも手詰まりで手が打てない。そこへアフガンが起きてきた。失礼な言い方かもしれませんが、イランでは米国もやろうと思っていたことをソ連はある意味では電光石火のごとくやってしまった。そういういら立ちがこれあり、大統領選挙を控えていてカーター大統領の人気がいま一つぱっとしない。そこで対外強硬路線をとって、国民的なナショナリズムに訴えて何とか切り抜けていこう、こういうどうも大統領選挙に焦り過ぎた感じを受けるわけです。ですから、そういう意味では、アメリカの対ソ政策は基本的にはアメリカみずからの経済を再建すること、このことは多くの方から指摘されているわけです。こういう認識は外務省にございますか、どうですか。
  204. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカが経済的にいろいろ悩みを抱えておることと同時に、二けたインフレが相当続いておりますし、御指摘のように生産性の上昇も非常に低い。確かに経済的にむずかしい課題を抱えておるということは私どもも考えておることでございます。国際情勢もいろいろむずかしい時代といいますかむずかしい局面を迎えておる。ただ、この点については、ベトナム戦以来のアメリカの動きとしてはむしろ受け身といいますか、ややむしろ内向きの傾向が強かったわけでございまして、その間に大きなおくれをとったという考え方がこの一両年大分出てきたというような事情もあるかと思います。大統領選の問題については、私の立場ではとやかく申し上げられないと存じます。
  205. 市川雄一

    ○市川委員 そこでもう一つの要素として、ソ連脅威ということが言われ、何かソ連が北海道に上陸したらどうするんだとかいう議論が行われておりますが、基本的に政府なり自民党は、日米安保条約というものを前提にして、しかも自衛隊という、ワンセットでお考えになっていらっしゃるわけでしょう。そういう立場で考えますと、ソ連が北海道に上陸するとか、ソ連日本を攻撃するということは、これはやはりソ連としてもそれなりの覚悟を決めて、国際的にも米ソ関係でもそれなりの覚悟を決めて、それなりの用意をして、ちゃちなやり方ではない、やるならという形でやらざるを得ないし、そうなればそれは当然米ソ戦ということになるわけですから、ソ連脅威ソ連脅威ということでございますが、もちろん軍事力が客観的に増強されたかもしれない。ソ連軍事力増強すると、それが直ちに日本脅威だというお考えなんですか。これは防衛庁長官の方がいいと思いますが、どうですか。
  206. 細田吉藏

    細田国務大臣 これは、私ども潜在的脅威は増大しておるということは、国民の皆さんの大方の御理解をいただけるのではないか、私どももさように考えておるわけでございます。  それから、先ほどの外務大臣に対する御質問の中にもございましたが、私からもちょっとお答えしておきたいと思いますことは、アメリカ政府の私どもに対する要請と、それからアメリカの国民世論、国会の要請とは大分程度が違います。アメリカの新聞にあらわれておるいろいろな論調でありますとか、国会の皆さん方は、政府よりもはるかに強い要請がありまして、アメリカの大統領なり国務長官、国防長官がわれわれに言っておられるのは、それよりはきわめて小さいものでございます。大統領選挙云々のお話もございましたが、議員さんが超党派でいろいろ政府以上のことをおっしゃっておることも、ひとつ御参考、まあ御存じのところでございますけれども、私どもとしては申し上げなければならぬと思っておる次第でございます。
  207. 市川雄一

    ○市川委員 国際情勢が厳しくなった。この国際情勢が厳しくなったという御認識の核心をなす事件、これはアフガン事件がその中に位置づけられていると思いますが、そのとおりですか。外務省、防衛庁、どうですか。アフガン事件とソ連軍事力増強、この二つの要素ですか。国際情勢が厳しくなった、いままでよりも厳しくなったというふうに判断している根拠なんですけれども、この二つですか。
  208. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答えいたします。  アフガニスタンソ連が出ていったということは、やはり世界的な問題の中の一つでございまして、それだけが世界情勢が厳しくなっておるということではないというふうに考えております。もちろんその重大な一つのあらわれである、このように考えておる次第でございまして、私どもはやはり、先ほども御説明をいたしましたが、極東ソ連軍配備とかいろいろな点を総合的に考えておる、かようなことでございます。
  209. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アフガニスタンも、ただいま防衛庁長官が申しましたように、一つの要素でございます。  昨年の十二月の初めに北京に参りましたときに華国鋒主席との会談の中で、自分たちは、八〇年代は世界情勢が不安定に向かう。かつて中国の指導者は天下大動乱というようなことを申したのですが、そういう表現は使っておりませんでしたけれども、世界情勢は不安定化に向かう可能性があるというような発言がございました。これは中国の指導部の判断だと思いますし、どういう情勢になるか、何ともむずかしいわけでございますが、七〇年代の末から八〇年代にかけて、多少いろいろ世界情勢の不安定な面が出てきておる。これは七〇年代の初め、あるいは六〇年代に比べてそういう傾向があることは事実だろうと感じております。
  210. 市川雄一

    ○市川委員 ソ連だけがけが軍事力増強しているわけではなし、アメリカも同時にやっているわけですし、西側もやっているし、日本も毎年毎年、定額じゃなくGNPに対するパーセントですからね、額はふえているわけでしょう。そういう意味では、ソ連だって、ある意味では、逆に言えば孤立した逆の脅威というものを感じている面もあるわけですからね、ソ連脅威だけを過剰に強調するという行き方には余り賛成できない。そういう立場で、外務省も防衛庁も、いまの国際情勢認識としては、協調と対決ということ、その二面性がある、それはそのとおりだと思うのです。協調と対決。いま米ソの対決というものが非常に表に出てきたというふうに見ていらっしゃるようでございますが、しかし、米ソ間というのはそういう一面的な見方でいいのかということですね。  米ソというのは、もっとしたたかな関係にあるのじゃないのかということで一つお伺いしたいのですが、カーター大統領が二月十五日全米の雑誌編集者協会代表との会合で演説をした。簡単にこの要点だけ申し上げますと、米国緊張緩和の方針を守ると述べ、ソ連アフガニスタン侵攻軍を撤退させ、軍事的脅威が取り除かれた場合、ソ連との軍備管理交渉を積極的に再開していきたい、こういうことをことしの二月十五日にカーター大統領は演説でしゃべったわけです。日本の新聞にも報道されておりますが、こういう事実は承知しておりますか。
  211. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま委員御指摘の点は、外務省としても承知しております。
  212. 市川雄一

    ○市川委員 この演説は二月十五日に行われた。  そこでお伺いしますが、いまジュネーブにおいて米ソ間で軍備管理交渉が始まっているというふうに新聞でも読みましたが、二月四日と二月十一日に行われた。二月四日は包括的核実験禁止の交渉、二月十一日が化学兵器の交渉、この事実も承知していますか。
  213. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 実は私の所管ではございませんけれども、一般論としてジュネーブにおいて軍縮交渉が継続して行われているという認識は、私も承知しております。
  214. 市川雄一

    ○市川委員 そこで申し上げたいのは、カーター大統領がアフガン撤退を条件にして、いいですか、アフガンからソ連が撤退し、軍事的威脅が取り除かれた場合に、ソ連との軍備管理交渉を積極的にやりたいと発言したのは二月十五日です。ところが、実際にジュネーブでの米ソ間の軍備管理交渉は、二月四日に始まっているのですよ。ということは、カーター氏の発言は事実と違うことをしゃべっている。最近カーター大統領が衝動的であるとか一貫性がないとか批判されておりますが、そういうことを申し上げたいのではなくて、申し上げたいのは、表では何か非常にイラン問題、アフガン問題で——イランというよりもアフガン問題で米ソは非常に激しいぶつかり合いをしている。しかし、米ソの利害が一致することでは、裏で平気で腕を組み、手を組む、こういうことをやる関係米ソ関係なんですね、考えてみると。ですから、アメリカの方のカーターさんが一面的にいま対決だ対決だと叫んでいるのを一方的に受け取っていると、これは判断を誤りますよということなんです。二月四日にはすでに軍備管理交渉が始まっているわけですよ。こういう面をもっとしっかり見ていま対処をしなければならないときではないのか。したがって、アフガン問題も、もちろんソ連のアフガン侵攻は許せません。これはもちろん早期に撤退すべきだ、こういう立場には立っておりますが、しかし西側では、アフガンはもうすでに一九七八年に善隣友好条約ソ連とアフガンが結んだ、あるいはそれ以前からソ連の勢力圏、東欧諸国についた勢力圏、こういう見方さえ指摘されております。しかも、時間がないので非常に残念なのですが、核防条約米ソの了解事項では、もちろん何もソ連の行為を許すという意味じゃないですよ。米ソ間の関係をいま言っている。感違いしないでください。米ソ間の了解では、核拡散防止条約でお互いの同盟関係にある国は侵さない、こういう了解が一つあるし、また同時に、第二次大戦で確定された東西の現状を力で変更しようとしない限りお互い米ソ同盟国は手を出さない、そういう核不戦という前提でそういうものができておる。その当時は、まだアフガンは米ソいずれの勢力圏ということははっきりしてなかった。しかし一九七八年の善隣友好条約によって、少なくともソ連世界に向かって、あるいは特にアメリカに対して、アフガンは私の勢力圏ですよということを言った。アメリカはそれに対して当時何もコメントしてない。そういう意味では、チェコ事件やハンガリー事件のときはアメリカはそんな過剰な反応はしてないのです。悪い言葉ですが、言ってみればなわ張りの中で起きたことだから、人道的には非難するけれどもという形で、そんなに過剰な反応はしなかった。そういう意味では、ソ連だって同じような論理をいま恐らく持っておると思うのですね。  こういう立場で考えますと、米国はそれをわかっているのだろうと思うのですよ。十分承知していると思うのです。もちろんそんなことは日本の立場では許せませんよ。許せませんが、これは超大国のエゴと言ってしまえばそれだけですが、言ってみれば超大国の外交というものはそういうものですよ。ですから、いま対決だけ、対決だけと対決だけを見ていたのでは本当の意味での米ソ関係を見ることはできないし、日本の本当の冷静な対応も生まれてこない。こういう点について、先ほどの事実を含めて外務大臣にお答えをいただきたいと思います。
  215. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アフガニスタンの事件の起こった間もない時期におきまして、ブレジネフ首相もデタントを放棄するものは世界じゅうにいないだろうというような発言がございましたし、カーター大統領も、この米ソ二国間の核戦力を含む戦力についての話し合いを誤れば、人類の滅亡につながるということの自覚は表明しておるわけでございまして、基本的な二大国の間の関係、特に核戦力についての直接の衝突を避けようという考え方は、依然としてこの両国の間にあると私どもも考えておるわけでございます。
  216. 市川雄一

    ○市川委員 時間があればもう少し具体的に突っ込んで議論したいのですが、時間が来たようです。  GNP一%というこの枠の問題と、中期業務見積もりの一年繰り上げ云々の話に関連しまして、最後に、最近日米安保条約とか自衛隊について、世論調査支持率が高まってきたということをよくおっしゃるのですが、しかし自衛隊についての評価も、災害出動時の評価というものを支持している方が多いわけでして、それがトータルになっているわけですが、また同時に国民は、憲法とか非核三原則とかあるいはGNP一%という予算の枠とか武器禁輸三原則とか、こういうものの中での現在の日本自衛隊なり安保条約というものを評価しているのであって、決してそういう背景を全く抜きにした安保条約自衛隊を評価しているわけではないということですね。ですから、これからの日本防衛力あり方を考える上において、そういう歯どめというものを性急に外そうとしますと国民世論の分裂を招くのではないか。やはり世論は、防衛力増強ということについてはまだかなり警戒的だと思うのです。ですから、歯どめというものをしっかり守っていくという考え方は、これからの日本安全保障というものを考えた場合に非常に大事だと思うのです。  それからもう一つは、先ほども出ておりましたが、財政再建という一つの絡みの要素もあるわけですから、先ほども申し上げましたように、米国ソ連脅威ソ連脅威、あるいは非常に対外的強硬路線、一面裏ではかなり協調的なことをやっている。そういうものをしっかり見ていただいて、この際、ソ連脅威を過剰に宣伝して、防衛力増強の地ならしをつくってしまおうとか、そういうことに乗らないで、もっと冷静にアメリカに対処していただきたいし、イランの問題では、アメリカに行かれた際に総理なり外務大臣から、ぜひ平和的解決でいくように、軍事力介入とか軍事的な手段によらないように、強く言っていただきたいと思います。  これについてのお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。
  217. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど来申し上げましたように、平和的な解決のためにできるだけの努力をいたしたいと存じます。
  218. 細田吉藏

    細田国務大臣 いろいろの世論調査がございまして、この世論調査のやり方もございます。時系列的にもいろいろ変わっておるというような点もございます。そういう点は過不足なく、十分世論調査を私どもは見てまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、非常に米ソ両国のことについて一方的にというようなお話がちょっとございましたが、私どもは決してさようなことはございませんので、したたかというお話もございましたが、大変したたかであってもらわないと困ると思っておりますので、基調はデタントであるということを先ほど来何遍も申し上げておるわけでございますから、ただ近時競争の面が非常に強まっておりますので困ったものですと言っておるわけでございます。  歯どめの問題につきましては、これは国民の皆さんの世論がどこにあるかということを考えまして、私どもはいまこの歯どめを外すというふうには考えておらないわけでございます。
  219. 坂田道太

    坂田委員長 次に、東中光雄君。
  220. 東中光雄

    東中委員 今回のアメリカのイラン人質救出作戦というのは、アメリカのきわめて冒険的な戦争挑発的なたくらみを全世界に示したものである、私たちはこう思います。実はこのアメリカの行動は、日米安保条約下の日本米軍基地と非常に深いかかわりを持っておるという重大問題があります。日本政府安保外交姿勢を示しておるということになると私は思うわけであります。  それで具体的な内容についてお聞きしますけれども、けさの質疑の中で、ブラウン国防長官が今度の作戦に米軍のC130輸送機が六機参加したということを言っているということが、ここでも答弁されました。しかし一口にC130と言っても、それこそずいぶんたくさん種類があります。使用目的に応じて、たとえば普通の輸送機としてはC130であります。しかしAC130、DC130、HC130あるいはJC130とかEC130とかLC130、WC130、KC130、少なくとも十種類以上の改良機種があるわけであります。今度の人質救出作戦で、こういう場合に使われるC130というのはいわゆる一般的な輸送機ではないということ、そうじゃなくて目的によって決められておる、ああこの飛行機だ、この型の飛行機だということが軍事専門家ならだれでもわかる問題であると思うのですけれども、この場合は防衛庁はどういう機種だと思っていらっしゃるのですか。
  221. 細田吉藏

    細田国務大臣 非常に専門的なことでございますので、政府委員から答えさせていただきたいと思います。
  222. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 C130につきましては、ブラウン国防長官の記者会見の結果が来ておりまして、その中に先ほど申し上げましたヘリコプター(東中委員「ヘリコプターは聞いていないんだ」と呼ぶ)、それから輸送機、両方の使用を言っております。  それで、輸送機につきましては、C130の前に何も特定の符号をつけておりません。それで一般的な説明も給油のためということになっておりまして、ヘリコプター、これは別にヘリコプターを御説明するのではないのでございますけれども、ヘリコプターにつきましては細かい機種までもしておりまして、これは実は掃海用の大型ヘリコプターであるけれども、これを別の用途に使ったものであるとわざわざ説明しておりまして、C130につきましてはごく一般的な名前だけでございますので、これは一般的なC130を給油のために使ったものと、そういうふうに考えております。
  223. 東中光雄

    東中委員 ブラウン国防長官がどう言うたかということじゃなくて、C130の中にも種類がたくさんあるんだから、防衛庁としてはどう思っているのかということを聞いているわけであります。それで、米空軍のことを実際知っているんだったら、軍事専門家ならだれでも、こういう救出作戦に使うのはMC130E、隠密特殊作戦機がやったとしか考えられぬということを言っています。MC130Eという隠密の作戦、特殊作戦機。これは十年前のベトナムのソンタイ捕虜収容所奇襲作戦の失敗から米空軍が特殊に開発したものだ。特にC130型の他の機種にはない地形追従レーダー、要するに地形の動きを、上下上がり下がりしているのをちゃんと追随して飛べる。だから非常に低空で、たとえば地面からわずか七十五メートルの高さで超低空飛行ができるということであります。もちろん夜間の捜索機能も持っておりますし、それからいわゆる救難捜索もするし、対地戦闘能力も持っていますが、特にこの機首からは前方に突き出したひげ状の回収用のロープ、これを用い、そのロープにはフックもついておる。飛行中、地上に長く延ばして、地上にいる人間を巧みに空中に引き揚げる、こういう装置を持っているわけです。まさに米空軍の捜索奪還とか、ゲリラ作戦とかのための特殊作戦用の特別の飛行機であります。しかも、こういうミステリアスな飛行機ですが、これは、いまここに私、ジェーン年鑑を持ってきているわけですが、世界でも最も権威のある航空機についてのジェーン年鑑です。ここにもこれはわざわざ載せていないという隠密的なものです。だからMC130E以外はこういう人質救出作戦なんということはできないんだということなんで、こういうMC130Eというのは一体米空軍に何機あって、世界のどこに配備されているか、防衛庁御存じでしょうね。知っておったら内容を言っていただきたい。
  224. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 そういう種類の特殊な飛行機があることは承知しておりますけれども、この飛行機が今回イランで使われたという証拠は全くございません。ブラウン長官の公式の報告によりますと、現地に非常に似た地理的状況及び環境のあるアメリカ国内におきまして、ヘリコプターを使って何度も何度も訓練をしたと、そう書いてございまして、それでC130につきましては、これは給油をしたということしか触れておりませんので、かかる種類の飛行機が今回の作戦に使われた証拠は全くございません。
  225. 東中光雄

    東中委員 MC130型のこの特殊な飛行機を米軍で何機持っておって、どこに配備されておるかということについて防衛庁は知っておるのか知っておらぬのか、知っておったら内容を明らかにしてほしい、こう言っているのです。
  226. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 編成上の数字といたしましては沖繩に四機配備されております。その他米本土あるいはその他の地域におきます配備については存じません。
  227. 東中光雄

    東中委員 沖繩に四機配備されておる。それから、これは五十三年六月六日にも防衛局長がある程度その事実は認めておるのです。それで、この国会では認めておるのだけれども、ジェーン年鑑にも載っていない、そういう非常に特別な隠密の飛行機だということであります。  そのほかのことは知らぬということですから、私の方で言っておきますが、米本国にはフロリダ州のハルバードフィールド空軍基地に六機います。それから日本の嘉手納基地に四機いる。それから西ドイツのラインマイン基地にやはり四機いるということであります。それだけしかいないということなんです。全米軍通じて十四機しかいないということであります。  この特殊作戦用のMC130Eがアジアでは嘉手納だけですから、そして日米安保条約によって、このMC130Eが自由に行動を保障されておるわけであります。どこに配属されていますか。第一八戦術戦闘航空団所属の第一特殊作戦中隊ファースト・スペシャル・オペレーションズ・スコードロン、いわゆるSOS部隊として配置されているのですが、そのことは御承知でしょうか。
  228. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 いま詳しく聞き漏らしましたので、あるいは同じことを繰り返すことになるかもしれませんが、第五空軍の第三一三航空師団第一八戦術戦闘航空団の第一特殊作戦飛行隊でございます。場所は嘉手納でございます。
  229. 東中光雄

    東中委員 この部隊は、ここに一九七九年度のアメリカの国防報告を持ってきておりますが、これによりますと、エアフォース・スペシャル・オペレーションズ・フォース、つまり嘉手納基地の第一特殊作戦中隊を初めとする米空軍特殊作戦部隊の任務を、敵地における乗員の取り戻し、リカバーなどのような特殊任務に従事するものであると、アメリカ自身がそう国防報告で言っているわけです。MC130Eは嘉手納基地を根拠にして盛んに戦術行動や他の部隊との合同演習をやっているのですが、昨年の十二月十日から十六日までの嘉手納基地第一八戦術戦闘航空団の使用整備計画ですが、これを見ますと、特殊作戦中隊のMC130E機のうち三機についての合同演習参加の計画なんかが詳しく書いてあります。昨年の十二月ですよ、時期は非常に重要になってくると思うのですが、嘉手納基地を使って人質奪還の作戦の訓練を秘密のうちにやってきておると言わざるを得ぬわけです。カーター大統領のきのうの人質作戦についてのあの声明を見ますと、十分訓練をし、リハーサルをし、万全の準備をしてやってきたんだと言うているのですが、まさにこの資料だけ見ても、嘉手納でそういう訓練をやっておるということでありますが、こういう飛行機、MC130E機がどういう訓練をやっておったか、そういうことについては防衛庁あるいは外務省全然知りませんか。
  230. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 十二月に具体的にそういう訓練を行ったという事実は承知しておりません。ただ、いまカーター大統領の演説を御引用いただきましたけれども、それをより詳しくいたしましたのがブラウン長官の演説でございまして、それによりますと、砂漠に非常に似た地形のアメリカ国内におきましてヘリコプターを使って何度も訓練をしたというふうに述べております。
  231. 東中光雄

    東中委員 このMC130Eというのはこれなんですね。非常に特殊な形をして迷彩も非常に特殊であって、これは七七年五月二十日に嘉手納基地で撮影した写真であります。これは救出作戦専門の飛行機で、国防報告にもそう書いておって、そして救出作戦に行くための訓練を前からやっておったんだと言っておって、そのやっておるのがまさに沖繩に四機、西ドイツに四機、それ以外にないわけですから、本国から持ってくれば別ですけれども。それでこの飛行機はいつも嘉手納におるのです。きょうは土曜日ですから、土曜日の午後になると全飛行機が帰ってくるのですよ。ところがきのうもきょうもいない。きのうは現地で、たとえば琉球新報は、二十五日夕確認したところ、第一八戦術戦闘航空団のMC130特殊作戦機が全機嘉手納基地から姿を消しているという報道がされております。  わが党が独自にきょう沖繩に連絡をして、午後一時現在、MC130機は依然として四機とも姿を見せていない、こういう調査結果が出てきております。いつもならおるのです。そして配備されていることは防衛庁も認めているのです。しかし現実にはきのうきょういない。どこへ行っているのですか、明白じゃないですか。ヘリコプターについては非常に細かいことを説明しながら、C130についてはなぜ何の説明もしないのか。全くのカムフラージュにしかすぎないということであります。こういう形で使われておるのだ。これは非常に重要なことであります。  朝の質疑の中に出てまいりましたけれども、防衛庁長官、もし沖繩に配備されておるこの隠密飛行機MC130Eが行っておるということになればきわめて重大だということ、先ほどはC130ということだけで言われたけれども、もしそういうことがあればきわめて重大だということでありましたが、私たちのわかる範囲でもこれは行っておるというふうに、人質作戦に参加したその飛行機は沖繩におる四機を含むものだということはもう十分推定できると思うのですが、その点について早急に調査をして明らかにすべきだと思いますが、どうですか。
  232. 細田吉藏

    細田国務大臣 私ども実は全く承知いたしておりません。いまなかなか詳細にいろいろお話がございましたが、私どもの方ではそういう情報を何らいま得ておりません。いろいろこれから情報が入ってくるのではないかと思うわけでございますが、いまのお話の点を十分参考にさしていただきたい、かように思っておる次第でございます。
  233. 東中光雄

    東中委員 調査をされないのですか。日本が提供している基地の中で、そこに世界に十四しかないうちの四機までがおって、それが救出作戦をやるための、あるいはゲリラ作戦もそうですけれども、そういうことを任務にしておる非常に少ない飛行機があって、それで大統領が直接いろいろ訓練をし、リハーサルまでしておったということまで言うているその人質作戦に——現に嘉手納にはおらない。われわれの調査で明らかになっている以上は、一般的なC130機についてももし関係があれば大変だから調査しますと午前中は言われた。いまもっと具体的に出しておる。それについて防衛庁調査しないのですか。
  234. 細田吉藏

    細田国務大臣 大変具体的にお出しになっておりまするので、それは私どもの立場から言いますと一応、私どもは何にもそれについてのあれを持っておりませんから、ある意味ではそうであったらというお話になっておるわけですよ。ですからこれにつきましてはいまお話を承ったばかりでございますが、改まって調査ということがいいのかどうか。問題は、午後ですか、箕輪さんにお答えしたように、アメリカ側はブラウン長官が、アメリカの似たような地形のところで訓練をしたということだけを言っておりますので、ですからそういういまのあなたのお話を伺いましたので、これはいろいろ私どもの方も情報は集めることにはなると思いますが、改まっての調査というふうに言われますと、どうも私どもさようには、すぐいたしますというところまでは至らない、こういうことでございますので御了承いただきたいと思います。
  235. 東中光雄

    東中委員 いま防衛庁は、嘉手納の一八戦術戦闘航空団の中にMC130E型機が四機配備されているということまでは言われたわけです。それがいま姿をあらわしてないと言っているのです。これについての調査ができないのですか。日本の国土で嘉手納基地中心にして作戦行動をやり、あるいは演習をやっている。それがいまいない。具体的なそういう指摘をしていっても、具体的であるからアメリカの言うたことを、きわめて抽象的だけれどもそれを言うておる以上は調べないのだ。これでは朝、石橋委員からの質問に対して調査しますと言ったのは、あれは全くのゼスチュアですか。当然調べるべきじゃないですか。日本におる米軍が出て行ったのかもしれない、そうなったら、出て行ったか行ってないか調べてくる、あたりまえのことじゃないか。もし出動したということになったらどうするんですか。あれは作戦行動ですから。どうするんですか。
  236. 細田吉藏

    細田国務大臣 沖繩の嘉手納基地にいる四機がいまいなくなったというのは、あなたがそういうふうに言ってらっしゃるわけですね。ですから、こういう点について、私たちがこれを積極的な意味での調査をするという言葉はこれはいかががと思うので、そういう情報をいろいろ私どもは集めます、こう言っていまお答えしているわけですから、それで私は十分だと思っておるわけでございますが……。
  237. 東中光雄

    東中委員 在日米軍イランの救出作戦に参加をした疑いはきわめて多いということを具体的に言うておるわけですから、それについてなぜ米軍にそのことを聞かぬのですか。聞けないのですか。それは聞くことさえも、そういう調査をすることさえもはばかられるのですか。いま世界じゅうはこのことで大問題になっているときですよ。なぜ調べませんか。人質救出作戦とアメリカが言っておるんだ。作戦と言っているんだよ。
  238. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは、従来ここの予算委員会その他等で論議がありましたところでございますけれども、基地使用につきましては、軍の属性からいっていろいろ世界じゅうに移動していくことは当然でございまして、中東地区については、直接日本基地を使って戦闘作戦行動を行うという範囲ではないということを申し上げておりますので、いろいろな艦船や航空機やあちらこちら移動するということは、移動という解釈にいたしておるわけでございます。
  239. 東中光雄

    東中委員 そんなことを聞いているのじゃないですよ。嘉手納に配備されておった四機が、しかも特殊任務を持っておる、しかもゲリラ作戦や救出作戦に使うんだ、そのために隠密部隊をつくっておるんだということが、国防長官の報告でも出ているんでしょう。そしていま世界を震駭させるようないわゆる救出作戦というのがやられた、沖繩にはいないということになったら、そのことについて事実がどうであったかというのを調べるのはあたりまえのことじゃないですか。そういうことを調べることさえもはばかられるくらいにアメリカ様には手もつけられない、聞くこともできない、こういうことなんですか。
  240. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 けさほど御質問いただきまして、私も大臣の命を受けまして資料を調べた結果、先ほど箕輪議員の御質問のとおりこれでもう疑問は、疑惑は晴れたというふうに……(発言する者あり)  失礼しました。いまの言葉は撤回いたします。MC130が今回のイランにおける作戦行動に使われた証拠は全くない。それからブラウン長官の、報告ではございません、記者会見で非常にはっきり言っておりますことは、米国内において訓練をした、その結果ヘリコプターが非常にうまく活動したということによって訓練に成功した、そう書いてございます。そういうことでございますから、沖繩におきますMC130と今回の事件とを結びつけるのが余りにつながりが薄いものでございますから、こんなふうなことをアメリカに直ちに聞くということははばかられるわけでございます。
  241. 東中光雄

    東中委員 日本配備されているこの穏密特殊部隊、しかも救出作戦用のためのそういう部隊行動について、堂々と聞いたらいいじゃないの。なぜ聞けないのですか。カーター大統領の声明文によると、「この計画を実行可能なものにするためには徹底的に計画を練り上げ、訓練を重ね、リハーサルを行うことが必要だった。」こう言っているのです。しかも国防報告では、七九年度ですけれども、そういうことについての救出をやるための訓練をやるんだとわざわざ十年前の失敗から、だから改造型につくって、そのための部隊をつくっておいて、それを日本配備しておいて、肝心のそういう世界を震駭さすようなこういう暴挙に出るときにはそれは使わないんだ、そんなことは普通通用しますか。そういうことについて疑惑が解消したというのですか。何の疑惑を持っておったのですか、そうしたら。解消する前の疑惑は何でしたか。
  242. 細田吉藏

    細田国務大臣 MC130を使ったということ自体も実はまだはっきり出ておるわけではありませんのでね。ですから、きのう私どもも午後、きのうのいまごろ第一報が来たぐらいでしょう。ですからもう少しいろんな点を、周辺のいろんな事情やいろんなことも——私どもいろんな情報が刻々またいろいろ入っているようですから、その上でいろいろやらないといかぬのじゃないか、こういうふうな意味で私は慎重を期してそういうふうに言っているわけなんでありまして、ですから、そういう意味で善処をいたしたいとこう言っているわけでございますから……。
  243. 東中光雄

    東中委員 アメリカの日本配備されているMC130Eがどうも姿がおらぬようだ、姿がないということ現地で——あれは大きな飛行機ですから、四機おったらわかるのですから。いつもなら帰ってくるのですよ。それが帰ってこないんですよ。そういう状態が起こっておる。任務はどうだと考えてごらんなさい。素直に聞くというぐらいのことはできないんですか。そういうことを聞くことさえも、向こうの言うこと以外は何にもこっちからはよう聞かぬのですか。それぐらい、神さんにさわるみたいなつもりでおるのですか。そうでなかったら聞いたらいいじゃないですか。何で聞けないのですか。
  244. 細田吉藏

    細田国務大臣 いまあなたのおっしゃっていることがもう実はテレビに出たり新聞に出たりしているというわけではございませんので、あなたが大変にいろいろ御調査になって、こういうことだ、こうおっしゃっておりまして、私どもも実はちょっとあなたのお話だとびっくりしておるわけですよ。ですから、それが新聞にも出ている、テレビにも出ている、どこでもそう言われているということでありませんので、私ども慎重にお答えをしておる。あなたの言われることを信頼しないとかなんとか、そういう意味じゃありませんけれども、やはり慎重にお答えするというのはお許しいただかないといかぬ、こう思っておるわけでございますから、よろしくどうぞ。
  245. 東中光雄

    東中委員 そういう事実があったということをいま認めろと言っているのだったら、それは慎重に答弁しなければいかぬというのはわかりますよ。びっくりするような事実を言われたから、だから調べないんだ、これは筋が通らぬじゃないですか。本当にまじめに日本の安全、安保条約の果たしている役割りということを考えるのだったら、当然調べるべきです。
  246. 細田吉藏

    細田国務大臣 言葉を使うのを日本語で使う場合にはいろいろございましてね。ですから、それは調査といいましてもいろいろあるわけですよ。ですから私は、そういう情報はいろんな情報がいま入りつつもありますから、情報をとりましょう、その上でいろいろ善処しても遅くはないんじゃないでしょうか、こう言って、そこまで言っておるわけでございますからね。
  247. 東中光雄

    東中委員 あなたはけさの石橋委員の質問に対して、もしそういうことがあれば重大だから調査しますと言うたんですよ。だから新聞だって「調査を約束」と書いてあるじゃないですか、現にそういうふうに言われたじゃないですか。いまも同じことを言っているのですよ。沖繩部隊が出動の可能性があるということをMC130とまで具体的に言うているわけですから。何でこのときになって、具体的にびっくりするような事実を言われたら、もう調査をしない、調査をするとは言わない、しかし余りびっくりせぬことだったら調査する、そんなばかなことがありますか。そういう姿勢が問題だというのですよ。
  248. 細田吉藏

    細田国務大臣 私は、けさほどのことはそういうことはないと思いますということを申し上げまして、しかし、そういうことであればと言ったわけでございます。あなたの場合は、きわめてもうずばりという話になっておりますから。御調査が大変綿密になっておるということかもしれませんけれども。ですから、やはりこれは、非常に重大なことだとあれだということじゃありませんけれども、それは少し違うのですよ、きわめて一般論とそのこととは。あなたのお考えになっていることを全面的に否定しているとかなんとかいうことじゃありませんので、その点は御理解いただいていいと思うのですがね。
  249. 東中光雄

    東中委員 私の言うていることを否定しているわけではない、しかし事実はどうかということはよくわからないから、慎重によく調査をしてからでなければ結論を出せないというのだったら、これは話はわかりますよ。ところが、調査するということを発言するのを、慎重にやるということはどういうことですか。そんな姿勢というのがありますか。  委員長、それはどう思いますか。朝は、沖繩部隊が出動しているかもしれない、調査しますと言った。今度は、時間的な都合でぼくらの方はその内容をある程度具体的に言うた。それについて調査しますと言うのはあたりまえじゃないですか。政府の態度としてそれはどうですか。この委員会は、シビリアンコントロールだとかいろいろ言っておるのだったら、そういうことについて調査をすべきじゃないですか。委員長、どう思います。
  250. 坂田道太

    坂田委員長 委員長から申し上げますが、いま防衛庁長官東中先生の御質問に対して、十分慎重に善処をいたします、こう申し上げておるわけでございますから、御了解できないのですか。そう思うのです。善処をいたしますと申し上げたわけですから。それでもしなにでなければ理事会ですけれども。——それでは理事会で預かっていただきましょうか。(東中委員「言われることがどうもよくわからぬ。」と呼ぶ)  ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  251. 坂田道太

    坂田委員長 それでは速記を起こして。  ただいまの東中さんの御質問に対しましては、事が重大でございますので、理事会でお預かりいたして御協議を願いたい、そのようにしていただきたいというふうに思います。そして審議を進めていただきたい。
  252. 東中光雄

    東中委員 この委員会は名称のいかんにかかわらず調査委員会だと私たちは理解しているのです。安全保障についての調査委員会。それで、安保条約によって沖繩に配備されておる部隊が行ったのではないか、単に私たちが断定するよりも、その根拠を、こういう任務を持っておった、こういう性能を持っておった、そして向こうに行っておる、そういうことをやるのが任務になっておる部隊がおったんだ、それがいま現におらないということがわれわれの調査から出ているのだということになったら、朝は、沖繩部隊が出動かという点について調査しますと言った防衛庁が、今度は、その内容は時がたつに従って具体的になってくるわけですから、それを指摘すると、今度は調査するとは言わない。情報を集めますと。情報を集めるのも調査の一つでしょう。あるいは直接聞くのも調査の一つでしょう。これは理事会運営の問題じゃなくて、防衛庁の姿勢の問題なんですよ。具体的な、いま防衛庁長官はびっくりするようなということを言われたのです。びっくりするような事実が指摘されたら、それについて調査をしますと。調べてみたらなかったと言うんだったら、なかったと言えばいいじゃないですか。なぜそれの調査ができないのですか。そういう調査もしないのだったら——私の方から指摘していることを信用しないということではないんだと、しかしよくわからぬから——わからなかったら調査をしたらいいじゃないですか。なぜ調査をしないのですか。
  253. 坂田道太

    坂田委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  254. 坂田道太

    坂田委員長 速記を起こしてください。  防衛庁長官
  255. 細田吉藏

    細田国務大臣 ただいまの件に関しましては、情報を集めまして確かめた上で報告いたします。
  256. 東中光雄

    東中委員 相手が隠密部隊であるから、だから調査をするということは言いにくいんだということであれば、それは大変な間違いだと私は思います。隠密部隊で、隠密行動をやっているような部隊日本におるんだということになったら、それこそよけいはっきりとさせなければいかぬのです。この部隊が沖繩から出ていくということについては、自衛隊はレーダーで全部知っておるはずなんですね。だから、どこへ出て行ったか、行ってないか、いつ出て行ったか、帰ってきてないのはどうかということは知っているはずなんです。しかし、この行動については自衛隊はレーダーでチェックしないようにというふうに言われているということをも私も聞いているのです。そういう性質のものですから、だからそれだけに、表現の仕方はとにかくとして、十分実態を調査をして、そしてこの委員会に報告されるように、この委員会の設立の趣旨から言っても私はそうされることを強く要求をしておきます。(「機密保護法が要る」と呼ぶ者あり)それで、こういうことを国民の前に明らかにされるのが、追及をされるのが困るから、機密保護法をつくるというのでは、これはいよいよもって機密保護法の意図がますます悪くなるということであります。  次の質問に入ります。  今度のいわゆる人質救出作戦について米国が、国連憲章五十一条に基づいて自衛権の発動であるという通報をやったということ、そういうことを先ほど言われたわけでありますが、このことは、イランにおける人質問題そのものを国連憲章五十一条に言う武力攻撃を受けたという範疇の中へ入れている。だから米軍は今度は自衛権を発動して、現在は人質救出という形をとったけれども、今度は封鎖もできるぞ、武力封鎖もするぞ、爆撃もすることができる、そういう立場に立っておるということを、わざわざ五十一条によって通報することによって世界に表明したということになると思うのですが、日本は、あの人質問題が国連憲章五十一条に言う加盟国に対する武力攻撃というものと評価をし、認識をしているのか。その点どうでしょう。
  257. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えを申し上げます。  先ほども御答弁申し上げたところでございますけれども、国連憲章の五十一条では、武力攻撃が発生した場合には、個別的または集団的自衛の固有の権利を行使できるという趣旨のことが書いてあるわけでございます。先ほども御答弁申し上げましたように、ここで武力攻撃が発生した場合以外、この場合の武力攻撃といいますのは、組織的、計画的な武力攻撃を考えているものだということは、これは従来の政府の解釈として御答弁申し上げているところでございますが、そういう武力攻撃以外のときに、個別的自衛権ないしは集団的自衛権と申しますか、この場合、自衛権と一言に総称しますが、自衛権の行使ができないものなのかということは、そうではないだろうということも、従来の政府の解釈として御答弁申し上げているところでございます。  アメリカは、安保理事会に報告しなければならないということが国連憲章の五十一条に書いてございますから、五十一条のこの規定に従って安保理事会に報告したのでございますが、先ほど私が申し上げたところでございますけれども、アメリカの固有の自衛の権利を行使したと書いてありますところに、五十一条に基づく武力攻撃が発生したから固有の権利を行使したのだという意味において五十一条を援用しているものではなく、一般的に、急迫な侵害が行われた場合に、自国民を救済するために自衛権の行使が行われるのだという国際法の原則に基づきました自衛権の行使を考えているのか、その辺のところは実はわかりません。  しかし、いずれにいたしましても、先ほども御答弁申し上げましたように、人質の救出ということは当然に武力の行使で、実際は未遂に終わりましたけれども、武器を携行していったものであろうということは想像できるので、一応、国連憲章上の武力の行使というものに対する安全保障理事会の報告ということで、五十一条を援用して報告をしている、このように解されるわけでございます。
  258. 東中光雄

    東中委員 一応という不正確な話はありませんよ。五十一条の報告でしょう。五十一条に該当するものとしてやっているのでしょう。五十一条の解釈について幅があるというのは、それはよろしいわ。
  259. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 いまの御質問のとおりでございまして、一応というのは取り消します。一応というのはなしにしていただきたいと思います。
  260. 東中光雄

    東中委員 条約局長がそんな不正確なことを言ったら困りますよ。いま世界じゅうで問題になっておることでしょう。だから、あの人質問題を、五十一条にいう自衛権発動をし、そしてそれの報告を安保理事会にしなければいけないような状態だと日本政府は考えているのか。アメリカがそう考えているということはいま聞きました。日本政府はあの事態をどう見ているのかということを聞いているのですよ。
  261. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 従来このような例と申しまして先ほども御答弁申し上げたところでございますけれども、一九六〇年のコンゴの際あるいはカンボジアにおけるマヤゲス号あるいはその後七六年に起こりましたエンテベというようなときには、やはり各国、行動を起こした国は、それが一般国際法上の自衛権の行使であるという論理を用いました場合でも、あるいは五十一条に基づく自衛権の行使であるという根拠に基づきましても、いずれの場合にも安全保障理事会に報告をいたしているということは各国のプラクティスになっております。私どもといたしましても、やはり自衛権の行使として武力が行使され、もしくはされ得るような状況にあったというような場合には、安保理事会に報告するのが適当なものであろうと考えるわけでございます。
  262. 東中光雄

    東中委員 報告するのが適当かどうかを聞いているのじゃなくて、イランの大使館人質問題という事態を、加盟国に対して武力攻撃を加えられたあるいはそれに類するものというふうな認識にアメリカが立っているということを今度表明したのだけれども、日本はそういう認識に立っているのか、そうじゃなくて、イランに対するいろいろな、パーレビ国王をつくるためにアメリカがずっと干渉してきたということに対して、今度はああいう措置をとっている、その措置自体は国際法上許されないことだ、これは間違いないです。しかし、その措置を、国際法上許されないからといって、すぐそれが国連加盟国に対する武力の行使あるいはそれに類するものというふうに日本は見ているのか見ていないのかと聞いているのですよ。
  263. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  一国の国民が外国にありまして急迫不正な侵害を受けたような場合、そして当該国がそれらの国民の安全についてとうていそれを確保する能力を失ってしまうか、もしくは、むしろそれとその安全を確保することについてリラクタントである、むしろ進んでそういうことを行わないというようなときには、その国民の本国は、自衛権を行使してその当該外国にある国民の救出を行い得るということは、これは一般国際法上の問題として正当化されるものであるということは午前にもお答え申したところでございます。私どもとしても、それはそのとおりであると考えまして、今回の場合にも、イランの場合に百六十日も拘留をされて人質の状態が続いておる。それに対していろいろな手が打たれたけれども、やはりどうにもうまくいかない。その場合に、一つの人質救出ということのみを目的として救出の活動が行われるということは自衛権の行使に該当するものであろうと考えます。
  264. 東中光雄

    東中委員 そうすると、人質のみを目的にしている行為ということで、国連憲章五十一条のたてまえからいって、武力での港湾封鎖、武力封鎖ですね、あるいは爆撃というふうなことは、国際法上は、この事態について言えばできないのだ、そういう政策に反対するという、武力解決しないような立場をとっていることはわかっているのですけれども、そうじゃなくて、国際法上できないのだという考えに立っているのですか、立っていないのですか。いま言われたことを逆に解釈すればそうなりますね。
  265. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 海洋封鎖でございますとか、あるいはさらに上陸進攻作戦というのが軍事行動というふうに私どもも使っておりますし、最近のアメリカの次の手段というようなものを指して軍事行動というふうに使っているわけでございます。ただこれは、人質救出の行動というのは、したがってこの軍事行動という範疇に入るものではない、やはり若干、港湾封鎖というような直接的な軍事行動とは異なった性格の行動であろうということは考えるので、ただいま人質の救出行動というものが問題となっていたので、私は、その人質の行動を目的とするものについて、人質を救出することのみを目的とした行動というものは許されるであろう、自衛権の行使として認められるであろうと申し上げたわけでございまして、これがもし、今回は失敗に終わりましたけれども、依然として人質の状態は変わりないということになりまして、いわゆる、先生がおっしゃいました軍事行動に移るという局面に到達いたしますその場合には、やはり究極の目的としては、人質を解放させるということが究極の目的として認められる限度におきまして、自衛権の行使と考えられる場面もあるであろうということは先ほども申し上げたところだと思います。
  266. 東中光雄

    東中委員 場合もあるだろう、そうでない場合もあるだろうということですが、カーター大統領があの政治、経済的な制裁を言った後、対イラン海上封鎖などを具体的に検討しているという趣旨のことを、これはもう非常な軍事脅迫だと思うのですけれども、それは許されない場合もあるだろうという中に入るというふうに私は聞いたわけですが、許す場合も許されない場合もあるだろう、こういうことですね。
  267. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 それは、私が先ほど来申し上げておりますように、自衛権の範囲内において行われるかどうかということが一つのメルクマールになるものだと思います。したがいまして、私が断定的なことを申し上げませんのは、実際問題として、どのような態様においてその軍事行動が行われるかについては全く見当がつかない問題でございますので、抽象的に申し上げることができないので、正当となる場合もあるし、ならない場合もあるだろうとお答え申し上げているわけでございまして、メルクマールと申しますか、基準はあくまで自衛権の範囲内であるかどうかということでございます。
  268. 東中光雄

    東中委員 時間ですので、きょうはほかの質問をしたいと思ったのですが、突発的な問題が起こりましたので、質問を終わります。
  269. 坂田道太

    坂田委員長 次に、永末英一君。
  270. 永末英一

    ○永末委員 衆議院の歴史上初めて安全保障特別委員会が開会されまして、わが国安全保障につき自衛権の行使、保有すべき自衛力の質ないし量等について国民の前で論議ができるということは、民社党といたしまして非常にうれしいことであります。われわれは十五年前以来、国会に防衛に関する委員会を設置せよと主張してまいりましたが、やっと実現した。われわれの国を取り巻くいろいろな情勢もございましょうが、この委員会として実のある成果を生まねばならぬと思います。  そこで、委員長、ひとつ最初にあなたの御決意を伺っておきたいのでございます。この委員会ではなるほど条約、法律等の解釈、いまも自衛権や武力の行使といったものはどっちだというような議論がいろいろございましたけれども、それも必要でございますが、それのみにとどまることなく、われわれの安全に関する現実をこの場の論議を通じて国民に知らして、国民に共通の事実認識をつくり、そして安全保障防衛に関する世論形成に資する、これがこの委員会の最大の任務であろうかと思います。だと考えますと、この委員会は、言うならば議会として文民統制の一つの機関として生まれたものでございますので、政府への質疑のみならず、わが委員会としてわが国安全保障防衛についての指針を各党が討議をしてこの大筋をつくり、これを政府に示すということもまたこの委員会のもう一つの大きな機能であるとわれわれ民社党は考えております。したがって、このためには、委員長は積極的にこの運営を志し、総意を起こしてやらなければならぬ、こう思いますが、委員長の御決意を承っておきたい。
  271. 坂田道太

    坂田委員長 お答えをいたしたいと思います。  永末さんのただいまの御提案というものは私も十分理解ができるわけでございまして、理事会等におきまして十分討議をいたし、そして結論を出し、その方向をも考えなければならないというふうに委員長は考えております。
  272. 永末英一

    ○永末委員 現在の防衛庁は五十一年の十月につくられました「防衛計画大綱」に従ってその仕事をやっているようでございまして、五十四年七月には中期業務見積もりをつくりましたが、これは五十五年から五十九年、五カ年にわたる防衛庁の仕事をこの「防衛計画大綱」に基づいてやるんだ、しかしこの中期業務見積もりによりましても、この見積りどおりやってみてもまだ大綱が示している線には到達しない、こういう認識のもとにやっているようでございまして、これは国民の立場からいたしますと、何か「防衛計画大綱」ができましたときには、ある分量を国民に示して、ふと振り返れば、自分自衛隊の所有している力は大体これにかなっておるというようなことを国民に申して、それからすでに五年たち、さらにまた五年たってもなおそこへいかぬということになりますと、一体防衛庁というのは何の仕事をしておるのかということに国民の立場からはなるわけでございます。  そこで、私はこのことをひとつ国民とともに考える契機といたしまして、この「防衛計画大綱」は国際情勢わが国周辺の政治構造が当分の間大きく変化しないという前提のもとでつくったんだ、こういうのでございまして、なるほどこれまでの議論を聞いておりますと、たとえばわが党が昨年の予算委員会で、北方領土におきますソ連基地造成、兵力の増強を取り上げて、これは脅威かとただしましても、なかなかもって脅威という認識政府はやらない。押し合いへし合いしているうちにだんだん脅威になりましたが、脅威脅威でも潜在的脅威である、だれか潜在的脅威脅威との差を知らんやというようなことでございますが、具体的に一体外務省や防衛庁はどう判断をしているのか。つまり、「防衛計画大綱」ができました昭和五十一年十月、その文句をつくる前、その半年前か三カ月前かの事実関係で判断をしたんだと思いますが、たとえばそのときに判断をしたソ連極東におきます軍事力の分量と質と、そして現時点におきます分量と質とに変化があるのかないのか、明らかにしていただきたい。
  273. 細田吉藏

    細田国務大臣 政府委員から答えさしていただきます。
  274. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 現在の細かい数字につきましては先ほど有馬先生の御質問に対してお答えいたしましたので、その部分、省略さしていただきまして、昭和五十一年と昭和五十五年における極東における米ソでございますか。(永末委員ソ連の力に変化があったかないか」と呼ぶ)どうも失礼いたしました。全ソ連の資料を持ってまいったものでございますから……。極東のがありました。それでは申し上げます。一九七六年、ソ連地上軍三十一万人と推計されておりましたけれども、それが一九五二年は横ばいでございまして、五三年が三十二万人——昭和です。(「落ちついて」と呼ぶ者あり)失礼いたしました。それでは昭和で申します。実は、昭和四十七年から昭和五十年まで三十万人で横ばいでございます。五十一年に一万人ふえて三十一万人でございますけれども、五十二年までまた横ばいでございます。その後、五十三年、五十四年と現在までに三十五万人にふえております。  それから、艦艇で申し上げますと、先ほど申し上げましたトン数でございますが、昭和五十一年、五十二年が百二十五万トンで横ばいでございます。それが五十三年に百三十三万トン、八万トンふえまして、その翌年五万トンふえまして、百三十八万トン、その次に十四万トンふえまして、百五十二万トンでございます。航空機につきましては、ほとんど横ばいで、微増でございますけれども、質的な改善はかなりあったようでございます。  この理由は、いまのところ推定のほかないのでございますが、一つは、こういう数字を防衛庁がこれなら自信を持って公表できるというふうに集計した数字でございまして、あるいは数年前から未確認ながら知っていたものでありましても、その後に集計しまして、これはもう確認したから出す、そういうこともございまして、出ました数字というのは、あるいは実際の年次よりも一、二年はおくれている可能性はございます。  ということで、非常に大ざっぱなこと、むしろ大ざっぱなことを申し上げた方が正確かと思うのでございますけれども、昭和五十年前後、七〇年代半ばごろと申しますのが、大体極東ソ連軍の力は横ばいでございます。横ばいないし微増になっております。それが七〇年代後半、五十四年近くになりまして、やや、ややというか相当急カーブに……(永末委員相当とややと大分違うよ」と呼ぶ)急カーブにふえております。一つの理由として考えられますのは、七〇年代初めごろのソ連増強というのが、ほとんど中ソ国境向けの増強が非常に多かったということが一つの理由であろうと思われます。それで、中ソ国境向けの手当てが一段落し始めて、それから極東方面あるいはヨーロッパ方面にも若干ふやし得るようになったというふうに考えられます。ちなみに、ミリタリーバランスの数字を使いましても、やはり七七年、七八年、七九年ごろからヨーロッパ正面における装備がかなりふえておるようでございます。
  275. 永末英一

    ○永末委員 ゆっくり御答弁いただいたらいいのですが……。  一九七三年の中東戦争のときに、ソ連はエジプト、シリアへ向けて相当な戦争用機材を空輸をいたしました。また、エチオピア・ソマリア紛争におきましては、一九七七年、条約を結びました直後、短期間にエチオピアへ向けて送りました。さらにまた、今回アフガニスタン紛争のときに、これもきわめて短期間にアフガニスタンに向けて人員、機材を送りました。その一番集中せられた期間、たとえば二日とか三日とか、一番山場にはどのくらい送る空輸能力をソ連は持っておりますか。
  276. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 ソ連の、その山場と申しますか、それではアフガニスタンの例だけ申し上げます。  アフガニスタンに対する軍事介入に際しましては、昨年の十二月二十五、二十六の両日、AN12及びAN22などの軍輸送機を百五十波ないし二百波によりまして、首都カブール周辺に兵員五千名ないし一万名を投入したと考えられます。
  277. 永末英一

    ○永末委員 エチオピアのはわかりませんか。
  278. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 確たる数字を持っておりません。
  279. 永末英一

    ○永末委員 世界は、このエチオピア紛争のときに、ソ連相当遠い距離であるにかかわらず、空輸によって人員、機材をエチオピアに急速に導入をいたしたという事実に驚いたわけでございまして、その遠距離空輸ができるということは、それを援護する能力ができるということであり、それはもう一つは、ソ連の艦隊を上空で支援する能力があるということもまた示す一つの材料であると私どもは考えます。そういうことが、もう一九七〇年代の終わりに当たってきわめて顕著にあらわれてきておる。それが「防衛計画大綱」がつくられた時点とははっきりと違った事象であると私は思いますが、防衛庁はどう思いますか。
  280. 細田吉藏

    細田国務大臣 おっしゃるように考えております。
  281. 永末英一

    ○永末委員 その空輸能力はきわめて大きく保有せられておる。その時点に、わが国北方領土に、最初は国後、択捉、次いで色丹島、ここに防衛庁の算定では一個師団程度の軍事力がおると、こういう判定をいたしましたら、この二つのものが結びついたら、一体どういうことが考えられますか。
  282. 原徹

    ○原政府委員 ただいまのお話で、一つは空輸能力、それからもう一つは、いまの北方領土の問題の二つでございます。  そういうことで、とにかくいわゆる軍事能力が非常にふえておる。しかも、それはグローバルである。グローバルのふえているものの一つの部面が、わが極東の方にもあらわれているということでございます。したがいまして、私どもは、これはまあ潜在的脅威の増大である、防衛努力は一生懸命しなければいかぬ、そういうふうな基本的な立場に立っているわけでございます。
  283. 永末英一

    ○永末委員 そういう徴候があらわれてから、たとえば北海道で何かしましたか。
  284. 原徹

    ○原政府委員 全般的に申しまして、いまの北方領土そのものの問題というのは、やはり全体の極東ソ連増強一環であると私どもは考えておって、それがいまの潜在的脅威の増大だというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、いま現在何をやっておるかということでございますと、たとえば第七師団の機甲化とか、あるいは中期業務見積もりにおきましても、北海道の師団の充足率を高めること、あるいはいろいろの陸上自衛隊について装備の更新をやるわけですが、それを北海道を重点にその増加した装備を配分すること、そういうことなどを考えているわけでございます。
  285. 永末英一

    ○永末委員 ある人は、極東ソ連軍は、きわめて短時間、たとえば数日間に四個師団ぐらいの兵力を空、海を使って輸送能力があると言う人もあります、真偽はわかりませんが。  さて、いまのお話は、北海道で第七師団をどうかしたとか話がございますが、たとえば国後、択捉、色丹に近い北海道の東について、いままでの兵力は約五千と承知をいたしておりますが、それらの保有する兵器やあるいはまた数について何か考えたこと、あるいは実施したことがありますか。
  286. 原徹

    ○原政府委員 第五師団は、師団としてはいわゆる七千師団でございますが、充足率の関係もあって、実力五千人ぐらいということであろうかと思います。そういうことでございますので、何か実効でできないかということを、たとえば充足率をほかのところを削ってもそっちに持ってくるとか、そういうようなことはただいま研究中でございますが、ただいまの段階では、火砲の充実を五十五年度も若干いたすことになっておりますが、その程度でございます。
  287. 永末英一

    ○永末委員 ソ連の戦の仕方につきましては、いろいろな人々が評価をしておりますが、要するに奇襲、火砲の集中、そして一正面を突破して奥へ突っ走っていくというのが特徴であるという評価をしている人がたくさんある。いまのあなたの話を聞いておりますと、火砲を若干と、若干で対抗できるようになるかどうか私は知りませんが、大来外務大臣は、アメリカの来援を頼むんじゃということをさっきごあいさつで申されました。このアメリカの来援というものを具体的に国民は知らない。それで、そこの委員長席におられます坂田さんが防衛庁長官のとき以来、アメリカとの間のいろいろな相談事が始まったわけでございまして、民社党はそれはいいことだと思っております。しかし問題は、われわれは、隣の韓国におきまして毎年チームスピリットと称する、いわゆる韓国で戦闘が起こった場合に、アメリカが何をどれだけの分量どういう速度で来援してくるかという演習を横目で見ておるわけであります。しかもアメリカの、これは少し傍流でございますが、米議会の図書館報告書の去年の分を読みますと、アメリカの輸送能力というのは考えられるほど十分でないのだという報告をいたしておるわけでございまして、そして船を使うなんというようなことになると、四週間以上の期間を所要の兵力を送るのにかかるかもしれぬ、こういうことになってきておる。こういうことを承知の上で、われわれの方のこの「防衛計画大綱」が練られておるのだろうかと私は心配しておるのですが、ちゃんと織り込み済みですか。
  288. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 事実だけ先に申し上げます。  チームスピリット演習の結果から判断します限りにおきましては、米本土におきまして、いわゆる緊急展開部隊として高度の即応体制維持しています旅団規模ぐらいの部隊であれば、発動後二日ないし三日で来援を開始できるだろうということになっております。
  289. 原徹

    ○原政府委員 その「防衛計画大綱」は、来援を待って、限定的小規模のものは独力で対処をし、それを超えるものについては来援を待ってこれに当たるということでございますので、もちろん来援ということを当てにしているわけでございます。  ところで、日米防衛協力指針というものができるまでは、一体どういうふうに共同で対処するのだということが決まっておりませんわけでございまして、したがって、五十一年の「防衛計画大綱」のときには、実はその安保条約があるという非常な安心感に基づいていることは間違いございません。したがいまして、いま、たとえば、そういうことは研究中でございますけれども、私どもは、やはり現在の情勢にかんがみれば、余りとにかく安保条約だけに頼り過ぎるという姿勢と申しますか、そういうことではやはりいけない。安保条約も非常に大事な条約でございますけれども、それでまた、安保条約に基づくコミットメントは守るということは信じてはおりますけれども、しかし余りに頼り過ぎるというような姿勢ではいけないのだというふうに私どもは考えております。
  290. 永末英一

    ○永末委員 いま、限定かつ小規模な侵略に対しては原則として独力で排除するのだということでございますが、第四次中東戦争の経験に徴しましても、戦が始まりますと、きわめて兵器の減耗率は多い、消耗率は多いわけでございまして、たとえば、大分前の戦争でございますけれども、飛行機などは一時間について一機消耗していく。戦車なども十五分に一台破壊されていく。イスラエルの第九旅団のごときは三分間に八十五両破壊されておる、これが現実の姿です。  そういうことを頭に置いて考えた場合に、われわれのこの五十一年に策定したような数量、そういうものが、こういうことをちゃんと織り込み済みで考えているのだろうか、毎年の予算書に出てくる弾薬の備蓄量を見ますと、カーブは下がっておるわけですね。前から少ない少ないと言われて年々更新していると言いながら、それがずっと上がってふえてという形になっていないのである。これは一体どういうことなんでしょうか。
  291. 原徹

    ○原政府委員 弾薬の点でございますけれども、私ども非常にずうっと下がってきているということをよく認識をいたしまして、私はやはりそういうことを大事に考えなければいけないと思いまして、五十四年、五十五年、そのカーブが上向きになるように予算折衝の結果、若干の備蓄ができるようになりました。中期業務見積もりでも、まあ数字は申せませんが、かなりの備蓄が——かなりと言っても、それもまた十分なところまではまいりませんけれども、備蓄はできるというようなところまで持っていきたい、そういうふうに考えております。
  292. 永末英一

    ○永末委員 先ほどこの委員会はもっと調査せいというような声がございましたが、先ほどの箕輪議員の質問を聞いてその答弁を聞いておりましたら、わが国自衛艦で、四十数隻あるが、四杯しか自力対空戦闘能力はないとか、これは、しかしながら中期業務見積もりにおきまして全部やるようなことを言っている。本当なら、一体わが方の護衛艦が全部自力で対空戦闘できるような計画ありますか。完全に皆持ちますか。何年かかりますか。
  293. 原徹

    ○原政府委員 先ほどお答えいたしましたように、現在では対空ミサイルを持っている護衛艦が四隻でございますが、そして四護衛隊群ございますわけですが、大体三個護衛隊群について対空ミサイルを持ち得るという状況にしよう、そういうことで、いまの艦艇の隻数は、艦艇の隻数の建造と、それからいまの、現在ある護衛艦を耐用年数を延伸するとともに若干艦体を改造し、その上にミサイルを搭載するという計画、FRAMと申しますが、そういう計画がありまして、その二つで、新型の建造といまのFRAMとあわせて、対空ミサイルは二十九隻持とうということでございます。
  294. 永末英一

    ○永末委員 何年計画です。
  295. 原徹

    ○原政府委員 これは中期業務見積もりでございますから、五十九年までの計画でございます。
  296. 永末英一

    ○永末委員 先ほどの来援と関係あるのでございますが、独力で排除が困難な場合に、あらゆる方法によって強靱な抵抗を継続する、こう読みますと、ちゃんとやるように読めますわね。問題は、そのどこかに、その「防衛計画大綱」に、あらゆる方法とは何と何かと書いてあるか、これは一字も書いてない。防衛庁長官、あらゆる方法というのは何ですか。
  297. 細田吉藏

    細田国務大臣 私はもう申し上げるまでもございませんが、「防衛計画大綱」は何年までにこれをやるということが書いてないわけでございます。そこで、これに対応する方法として、中期業務見積もりというものを五十五年度から五十九年度までで一応立て、これを三年ごとに見直す、さらに毎年の予算に際してこれを見ていく、こういうことでございます。これはもう御承知のとおりでございます。  したがいまして、いまいろいろ先生がおっしゃっているような見地から考えますと、私ども、情勢が非常に変わっておるわけでございますから、やりたい、やらなければならぬと考えられることが、しかも急いでやらなければならぬと思われることがたくさんあるわけでございます。しかし、それは、予算というようなものとの関係がありますので、なかなか思うようにいっていない。ですから、私ども防衛庁としては、できるだけ早く、「防衛計画大綱」の線まではなるべく早く到達したいということを終始私どもの基本的な考え方といたしておるわけでございまして、あらゆる方法と申しましても、これは予算の中で何を選んで急いでやるかということになろうか、かように思うわけでございます。
  298. 永末英一

    ○永末委員 われわれの方が五十一年度に立てた見込みでこれをあと五年かかって充足していこうというわけでございますが、相手方も動いておる。先ほどから御説明を受けておると、相手方のスピードはきわめて速い。われわれは五十一年度に考えたスピードであと五年やっていくスピードと考えました場合に、防衛庁長官は、相拮抗していくと思いますか、それとも、すでに抜かれているか、どんどん抜かれると思いますか。
  299. 細田吉藏

    細田国務大臣 いまのような状況でございますと、やはりおくれてまいるというふうに考えておりますので、私どもとしましては、「防衛計画大綱」を変えたらどうかという御意見もないことはないわけでありまするけれども、日本のいまのいろいろな情勢から考えて、大綱までまだ距離がございますので、できるだけ早く持っていきたい。しかし、これがどういうスピードになるかということにもよりましょうけれども、全般としては世界的ないろいろな情勢からは、自衛の見地からだけでも大変おくれがちであるというふうに思っております。
  300. 永末英一

    ○永末委員 われわれが持っているこの自衛力というのは使わぬために持っている、抑止力だというわけでございますけれども、使ったときに役に立たなければ何にもならぬのです。したがって、装備の更新等もそういう観点で急いでおられると思う。しかし、責任者のあなたがどうも抜かれるらしいという判断では、国民がもっと不安になるわけです。そうであるにかかわらず、ともかく「防衛計画大綱」の線に従って、基盤的防衛力構想に従ってやろうと固執しているから、私はそういうことになると思う。やはりこの委員会ができましてこれからいろいろな意見が各党からも出ると思いますが、そういうことに固執することなく——大体基盤的防衛力構想などという考え方がいいのかどうか。あれは、要するに、私の見解から言えば、どんどんオイルショックでインフレになってじゃんじゃんと金がかかる。四次防だって初めに計画したとおり船もつくれなければ戦車もできない、こういうところで何か安心感、めどを得たいという考え方から始まった、いわば決勝点をつくっておいて逆に理屈をつけたような気がするわけです。しかし、そんなわれわれの考え方と先方様とは関係がないわけでございます。先方様はもっと広いグローバルな観点からやり、必要に応じてどんどん極東に物を回してくればそれは抜かれっ放しになる。そこで、国民に実情を訴え、あなたがその国民の不安を解消しようとするならば、この「防衛計画大綱」をつくったあの考え方国民に率直に訴えて、いかぬのなら見直すという決意でやらなければいかぬと思います。いかがでございますか。
  301. 細田吉藏

    細田国務大臣 近時、国民の皆さんの防衛に対する関心の強まりというものは大変なものだと思っております。立場の相違を超えて大変なものだと思っております。いまおっしゃったように、自衛をする以上役に立たなければならぬ、これは大原則だと私も思っております。したがいまして、いまおっしゃったように、国民の皆さんのコンセンサス、これはいつも申しておりますが、一〇〇%でなくても、国民の皆さんの御意見というものをバックにしていかなければならぬと思いますので、私たちはいろいろな実情について十分のPRをする必要があると考えておりまするし、先ほど先生から劈頭にいろいろと委員会についての御意見もございましたが、十分御審議をいただいて、国民の代表として国会で十分御討議をいただきたいと思っております。私どもは、十分な資料も提供いたしたいと思っておるわけでございまして、いま本当にこの国の防衛をどうするかという大きな転機に立っておる、かように私自身信じております。
  302. 永末英一

    ○永末委員 それで、「防衛計画大綱」をつくったときの考え方にはこだわらずやりますということですか。
  303. 細田吉藏

    細田国務大臣 さしあたりとしましては、先ほど来申し上げておりますように、理想論と現実論とございまするので、現実論といたしまして「防衛計画大綱」というものにはまだまだ距離があるわけでございます。したがいまして、私どもは一年でも早く「防衛計画大綱」の線に到達いたしたい、こういうことを当面の目標として考えておるわけでございまして、いま、この閣議決定を無視するとかどうとかということではございません。その後にどうするかというような問題につきましては、先ほど来申し上げておりまするし、もちろんいろいろ御議論がいただけるものと私ども考えていかなければいかぬ、かように思っている次第でございます。
  304. 永末英一

    ○永末委員 一年早く計画をやれば、最初立てた計画を見直したと普通の言葉で言いますわね。調べるも調査も同じであるのと一緒でございます。  先ほど長官は、民間防衛について言及されました。一昨年の防衛白書から民間防衛についての記述が載るようになりました。五十四年度も載っております。一年たっても同じことが書いてある。そして、関連諸施策が講ぜられるべきであると結んでいる。ところが、だれがやるのかということが全然書いてない。先ほど防衛庁長官は、これは私の所管ではない、こう言われる。なるほどそうですね。何か一たん有事の場合に、国民が死に、国民の財産、家屋が破壊される、こういうことになるとえらいことでございまして、一体日本の自民党政府なんというものは、われわれの命やわれわれの財産を守ってくれることを政府の機構として考えておるのだろうかと心配している国民がおりますね。防衛庁長官、どうしたらいいとお考えになりますか。
  305. 細田吉藏

    細田国務大臣 いわゆる民間防衛は、私はわが国は大変なおくれであると思っております。恐らく世界で最もと言っては語弊がありましょうが、大変おくれておる方だと思っております。したがいまして、この民間防衛については十分考えていかなければなりません。防衛庁の所管云々ということは防衛庁だけがという意味でございまして、防衛庁は重大な関係があり、重大な関心を持っておることは事実でございます。政府といたしましては、これにつきましてはどの役所がよろしいか、ほとんどの各省に関係を持っておる問題でございますので、中心になる役所は早急に決める必要がある。これは私、防衛庁長官として、さように思っておる次第でございます。
  306. 永末英一

    ○永末委員 NATOは自分の組織の一つの柱として民間防衛委員会を持ち、そこで各国相互間の諸問題を考え、それに従って各国はそれぞれ民間防衛の機関を持って運営をいたしておる。昔の言葉で言えば、内務省的な感じを少々いたしております。わが国はこれはどうなっておるか、むずかしい問題でございますが、さて、しかし、いま防衛庁長官が言われた民間防衛は、わが国国民の命を守り、財産を保全するのに重要な問題、言うならば国防の重要事項ですね。法律を見ますと、防衛庁設置法六十二条には「国防に関する重要事項を審議する機関として、内閣に、国防会議を置く。」ということがあります。  国防会議の事務局長、来ておると思いますが、民間防衛のことを考えたことがあるのですか。
  307. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 防衛庁が五十二年の防衛白書において出しました後、これは所管の省庁がないわけでございます。国防会議の事務局というのは、法律に書いてございますように、国防会議の事務をやるところでございますが、国防会議でやるといっても、これは事務局がないわけです。担当するところがないわけです。したがって、内閣におきましていま審議官室が中心になりまして、それぞれの担当省庁の間で調整をしているという段階でございます。
  308. 永末英一

    ○永末委員 これは委員長、えらいことですね。先ほど申しておいたように、現実の問題です、安全保障防衛の問題は。だからよその国でやっておる。防衛白書にもスイスとかスウェーデン、アメリカ、ソ連中国、皆名前を挙げて、やっておると書いてある。わが国は所管省もない。これはえらいことでございまして、中期業務見積もりで飛行機の数、戦車の数、そんなものも必要でございましょうが、われわれ一人一人がぼかっとやられたら一体どうなるか。その辺を国民に知らせて考え、それをやはり政府が責任を持ってやっていく、これは防衛庁長官としては必要とお考えですな。
  309. 細田吉藏

    細田国務大臣 焦眉の急であると考えております。
  310. 永末英一

    ○永末委員 さて、その国防会議でございますが、国防会議は、まず、法律によりますと、「国防に関する重要事項を審議する」というのですが、総理大臣が諮る事項については、その二項に一から五まで書いてあるわけでございまして、そこで国防会議の議員というものがある。われわれは国防会議が何をしておるかというときには、ロッキードを買うときとか、P3Cを買うときとか、グラマンを買うときとか、後からここの航空機何とか特別委員会に出てくるような話ばかりでございまして、しかしそれだけなんだろうか。もっとやはり国防に関する重要問題を議論してほしいと思うにかかわらず、実態は各省から来た審議官の寄り集まりの雑居部隊みたいなもので、自主的に動けないような印象をいまの事務局長の御答弁で私は受けました。何とかこの辺はどこかでちゃんとしてもらわなければ、この国防会議防衛出動の可否について総理大臣の諮問に答える機関でございまして、防衛出動をするかしないかということは大変な問題でございまして、もしその材料がこの国防会議の事務局でできるとしますと、それはもっときちっとしたものをつくっておいていただかなければ、われわれが戦争に突入するかどうかという非常にむずかしいことを決定してもらう——どうも、いまみたいなところでこんなことを決定するのだろうかと思うと、背筋がぞっとするような感じでございまして、私は心配しています。  さて、その国防会議には各大臣がメンバーでございまして、防衛庁長官はもとよりでございまして、外務大臣もそうですが、大蔵大臣も出ておる。大蔵省には、国防会議のことは所掌事務でございますから、そういう観点でそれをやっている、所轄する場所がありますか。
  311. 畠山蕃

    ○畠山説明員 大蔵省の主計局の防衛係、つまり私のところが一応その問題を検討している係でございます。
  312. 永末英一

    ○永末委員 主計官でございますから、主計官は、防衛庁と大蔵省とが予算折衝して、あれを買おうか、これをやめようかというときに矢面に立っていただいておる方だと私は存じておりますが、それ以外のことはやられますか、いまの民間防衛とか。
  313. 畠山蕃

    ○畠山説明員 具体的にただいま例に挙げられました民間防衛ということにつきましては、実のところ、ただいま検討を加えているということはございませんが、しかし、数字的に何を買う、あれを買う、幾らにするということだけでなしに、それが可能な前提として、当然防衛力整備がどうあるべきかということは部内でも議論し、かつ防衛庁との間でも議論しているところでございます。
  314. 永末英一

    ○永末委員 経済企画庁長官もこの議員の一人でございますが、経済企画庁はどういうところで何をしておるのですか。
  315. 西谷浩明

    ○西谷説明員 御説明申し上げます。  経済企画庁におきましては、総合計画局の産業担当計画官がその窓口となっております。経済企画庁といたしましては、経済政策全般の中で国防に関与しておると思いますので、特定にそのことのために事務をするのではなくて、一般の経済計画の策定その他と経済全般に関する事柄がそれにつながるものだというふうに考えております。
  316. 永末英一

    ○永末委員 政府の仕事は国民の福祉を増進させる、そういう仕事をやっておるわけです。これを安全保障の目から見れば、すべて安全保障防衛に関するわけでございますから、経済企画庁は経済のことを考えておるから国防のこともやっておると言えば言葉はそうでございますが、たとえばこの六十二条の二号に、防衛計画大綱は、国防会議で総理大臣が諮ればこれはやるんだ、その次の三号に、防衛計画大綱または経済に関連する産業等の調整計画の大綱をつくるのだと書いてある。産業計画ですから、これは経済企画庁がどうかなるか。先ほどの「防衛計画大綱」でも、新しい事態が起きた場合にはそこへ円滑に移行するようにするんだと言うから、そんなことを一生懸命やっておられるのでしょうね。答弁願います。
  317. 西谷浩明

    ○西谷説明員 ただいま先生御指摘ございました産業間の調整ということでございますが、具体的に申しますと、これは、自衛隊装備品等の調達を行います場合に、その資材に対する自衛隊の需要と、それから民間の需要との間の配分を調整するということに相なろうかというふうに考えますが、現在におきましては、自衛隊の需要というものが民間の需要に大きな影響を与えるというような情勢ではないと考えておりますので、特にその点についての検討等は現在行っておりません。
  318. 永末英一

    ○永末委員 要するに何もやっておらぬという御答弁のようでございますが、いままでわが国がアメリカから飛行機を買ってはおかしな問題が起こっておる。だといたしますと、すでに七年か八年前でございましたか、防衛庁は、できるだけわが国経済、産業力でつくれる武器をそろえて防衛庁装備にしようというような方針を立てられたことがあります。その後、それをひっくり返したりもんだりしてやっておるのでありますけれども、やはり国を守るということはわれわれの力でもって守るのでございまして、よその人が守ってくれるわけではない。力といったって、腕っぷしだけではなくて、われわれが知力を尽くし、体力を尽くしてつくり得る兵器等を使いこなして守っていくというならば、そういうことを考えたから国防会議にはこういう規定があると思いますけれども、これをすらうまく使いこなしていないんではないか、事務局長、これをにらんでどんなお感じですか。
  319. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 国防会議の任務としていま御指摘がございました。国防会議がいままで果たしてきました任務の中で非常に重要なことというのは、やはり防衛問題に関連いたしまして防衛力整備関係だったと思います。その中で、国防の基本方針あるいは「防衛計画大綱」を決めてまいったわけでございますが、産業の調整に関する大綱につきましては、国防会議として従来からの認識というのは、平時におきましてどのような形で防衛力整備していくかということについてはそれほど大きな調整が要らない。しかし、非常に緊張が高まってまいりまして、「防衛計画大綱」を急速に充足しなければならない、そういうときには、そういった産業等の調整が必要になるだろうという認識をしているわけでございます。  それからもう一つの面では、いま御指摘がございましたように、いわゆる自衛隊行動の決心の場でございます。  ただ、国防会議をどう認識するかということでございますけれども、いま先生の御議論を聞いておりますと、常時、防衛の問題について、本来防衛行政というのは閣議で決定して実行されるものでございますけれども、そういうことをやれということであると、これは現在の国防会議の設置の趣旨と違うと思うのです。国防会議ができましたときの国会の御議論なんかを見てみますると、一方におきましてはシビリアンコントロールとしてわが国の国情にふさわしい、そして必要な防衛力をつくるという面が一つございました。同時にまた、自衛隊行動させるについて総理の権限というのは余りにも大きいではないか、だから、国防会議においてそういう面についても意見を述べるというようなことでいまできていると思います。したがいまして、諮問を受けてそれに対して適確な答申をするというのがたてまえになっているというふうに私は理解しているわけでございます。
  320. 永末英一

    ○永末委員 もうほとんど時間がございませんので結論に入ります。  国防会議というのは昭和三十二年でございましたか、国防の基本方針をつくろうというためにつくったんだろうなと私は推測をしているのでございますが、中身を見ますといろいろなことになります。しかし問題は、総理に権限が集中しておるからと言われましたが、まさにその点にこの国防会議的なもの、アメリカの言葉で言えば国家安全保障会議のようなものが必要なんだ、個人の能力には限界がある、したがって、国の運命を決するような防衛出動の可否とか、あるいはまた、日本の産業に重大な影響を及ぼすような防衛生産の考え方がもし生まれてくるとするならば、それが可能であるかどうか、同時に、日本国民が出してくる血の出るような税金の使い方がそれで決まるわけでございますから、そういう問題を、政府を構成するそれぞれの専門の長が集まって方針を決める、ここにやはりこの種の会議体で運営する機関の意味がある。これがすなわち政府のなすシビリアンコントロールの中心的なものでなくてはならぬ。そういう観点からながめますと、現在の国防会議はそれと相当の距離のある存在になっておるのではなかろうか。だから、いずれにいたしましても、国会でシビリアンコントロールの機関として委員会が生まれる、政府にもやはりそれに見合うものがなければならぬ。たとえば先ほど一つだけ例を挙げたのでございますが、この民間防衛という問題一つにしても、所掌がどこかわからぬということは、だれが発議するのか、防衛庁なのかいや官房長官なのか、そうではなくて、一番ふさわしいのはやはりこの国防会議の議題に供し、そうして問題が発展していくというのが私は当然ではなかろうかと思います。われわれ民社党は、現行憲法のもとで国民のコンセンサスをつくり、国民の負担を勘案しつつ国民の安全を保つ予算を通じて安全を図っていきたいと考えております。  きょうは最初でございますのでさらさらっとやったのでございますが、これからひとつぜひ、一つ一つの問題について深く、国民のこの委員会に対する期待にこたえる決意でございます。  終わります。
  321. 坂田道太

    坂田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会