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1979-12-11 第90回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年十二月十一日(火曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 木村武千代君    理事 中村  靖君 理事 保岡 興治君    理事 山崎武三郎君 理事 楯 兼次郎君    理事 横山 利秋君 理事 柴田 睦夫君    理事 中村 正雄君       上村千一郎君    亀井 静香君       白川 勝彦君    田中伊三次君       二階堂 進君    福田  一君       福永 健司君    井上 普方君       飯田 忠雄君    長谷雄幸久君       木下 元二君    岡田 正勝君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         法務政務次官  平井 卓志君         法務省刑事局長 前田  宏君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  武智 敏夫君         法務省大臣官房         司法法制調査部         参事官     岡崎 彰夫君         法務省民事局第         一課長     藤井 正雄君         国税庁長官官房         総務課長    小野 博義君         文化庁文化部宗         務課長     安藤 幸男君         最高裁判所事務         総局行政局長  西山 俊彦君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 委員の異動 十二月十日  辞任         補欠選任   亀井 静香君     山中 貞則君 同日  辞任         補欠選任   山中 貞則君     亀井 静香君     ————————————— 十二月七日  民法第十一条の改正に関する請願住栄作君紹  介)(第一三五号)  国籍法改正に関する請願外一件(川俣健二郎  君紹介)(第二二四号)  同外一件(久保三郎紹介)(第二二五号)  同(斉藤正男紹介)(第二二六号)  同外三件(土井たか子紹介)(第二二七号)  同外一件(武藤山治紹介)(第二二八号)  同(安井吉典紹介)(第二二九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関  する件      ————◇—————
  2. 木村武千代

    木村委員長 これより会議を開きます。  この際、申し上げます。  本委員会に付託になりました請願は七件であります。各請願の取り扱いにつきましては、理事会において慎重に協議、検討いたしましたが、いずれも採否の決定を保留することになりましたので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  3. 木村武千代

    木村委員長 次に、閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  第八十九回国会横山利秋君外五名提出政治亡命者保護法案  第八十九回国会土井たか子君外六名提出国籍法の一部を改正する法律案  第八十九回国会横山利秋君外五名提出最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案  第八十九回国会横山利秋君外五名提出最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案  第八十九回国会横山利秋君外五名提出、刑法の一部を改正する法律案  第八十九回国会横山利秋君外五名提出刑事訴訟法の一部を改正する法律案  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件 並びに  国内治安及び人件擁護に関する件 以上の各案件につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 木村武千代

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 木村武千代

    木村委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所西山行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 木村武千代

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 木村武千代

    木村委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  8. 横山利秋

    横山委員 過ぐる通常国会におきまして、真宗大谷派関連をいたします問題について、法務省並び文化庁意見を聞きました。  その際、結論としては、法務省としては、京都府警から京都地検書類送検をされておる問題について速やかに調査を行い、本年内結論を得るように努力するという趣旨の御答弁があり、文化庁としては京都府の判断を待つ段階であるが、しかし京都府としては真宗大谷派及びいわゆる法主側に対して意見照会がしてあるから、これに関する答弁が出なければ判断はできないと、京都府及び文化庁ともども同意をしておる趣旨の御発言がございました。しかるところ、東本願寺問題については二つの重要な問題が惹起をいたしました。  その一つは、報恩講の開催で大混乱が起こったということでございます。新聞によりますと、十一月の二十一日から始まります初逮夜に法主離脱寺院出仕者報恩講出席するに際して、本部の人々は、法主出席は当然であるけれども、真宗大谷派から離脱した人々がそれに参拝をするのはいかがなものかという問題が惹起をいたしまして、事前に十分な両者の討議が行われたようでありますが、遺憾ながらそれが混乱惹起いたしまして、「離脱寺院内陣出仕を阻止するため、お成り廊下や後堂周辺自主上山者が警備中、午后八時頃、明照院、」これは法主の四男だと思いますが、「不動産業者らが押しかけ強行突破しようとしたためガラス戸などが破壊された。」等を皮切りといたしまして、厳正なるべき報恩講が、全国東本願寺の門徒はもちろんでございますが、国民の中に大変衝撃を与えたのであります。  もう一つの問題は枳殻邸の問題であります。日本名勝一つであります真宗大谷派財産枳殻邸は、東本願寺の東約三百メートルにある別邸で、宣如上人徳川家光から寄進を受けた土地のうち百間四方を区切って別邸として、昭和十一年国の名勝に指定をされ、昨年修復工事を終えたものでございますが、これも争いの焦点になっておったわけでありますが、十一月二十六日、すでにこれが法主の独断で売却されていたことが判明され、枳殻邸所有権の一部が近畿土地株式会社に転売をされたという事実が発覚をいたしました。  これらの二つの問題は、私が本委員会におきまして申し上げたように、われわれ国会東本願寺内部紛争についてとやこう言うものではないけれども、日本歴史と伝統、宗教の最も深い歴史を持っておる真宗大谷派内部紛争関連をいたしまして、これが京都府警からの告発書類送検、そして京都地検のなすべきことが速やかに行われておるならば、あるいは問題解決に非常に資したのではないか。  私は当時申し上げたのでありますが、総理大臣であろうと、あるいは皇室に縁のつながる法主御一族であろうと、法律に触れたことはいけない。また、法律に触れる疑いがあるといって告訴された問題については遠慮なく、速やかに京都地検としては独自の立場からその理非曲直を明らかにすべきである、こういうことを再三申し上げておったのでありますが、これがいささか、京都地検のあり方についてはじんぜん日をむなしゅうするような感を免れないのであります。  まず第一に、本年の私の質問以来、京都地検としてはどのような調査を行い、どのような状況に今日あるか、御報告伺いたいのであります。
  9. 前田宏

    前田(宏)政府委員 御指摘事件につきましては、横山委員からのお話もございまして、先ほどお話しありましたように、京都地検におきましては前よりもといいますか、スピードを上げて捜査を進めておるところでございます。  御案内と思いますが、大変この問題は複雑でございますし、また関係者全国に多数おるというようなこともございまして、その内容については詳細は差し控えさしていただきますけれども、全国関係地検照会等をしまして、必要な関係人を調べるというようなことを最近まで続けておった次第でございます。  結論的なことになりますが、先ほども御指摘のように、一応年内結論を出すことをめどにということでやっていることは現在もそうでございますが、先ほどのようなこともございまして、あるいは年を越すおそれもあるかと思いますけれども、いずれにせよ速やかに結論を出したいということで努力していることは事実でございます。
  10. 横山利秋

    横山委員 全国調査を行われたというのでありますが、それは、私の承知する限りにおいては、この枳殻邸を含めて数々の宗門内部における違法行為疑い法主派のそれらの問題について事実関係を確かめるということであろうと思うのであります。  枳殻邸を初め数々の事業が行われ、その得た収益あるいはいろいろな事件を起こして得た金をもって、東本願寺役員選挙において、まあ金をばらまいて選挙を行わしたということが事実であるかどうかという調査でございますか。
  11. 前田宏

    前田(宏)政府委員 捜査内容につきまして、余り具体的なことを申し上げるのは適当でないと思いますが、御指摘のような選挙に関していろいろな動きがあったというようなことも含めて調査したはずでございます。
  12. 横山利秋

    横山委員 事実関係というものは二つの面にわたっておるわけでありますが、そういう集めた金がどういうふうに使われたかということについて、選挙に使われた面と、それから個人の消費に使われたという面と、二つの側面があると思いますが、いかがですか。  同時に、それが法律違反をするとするならば、どういう場合に違反をするとお考えでございますか。
  13. 前田宏

    前田(宏)政府委員 同じようなお答えになって恐縮でございますけれども、先ほど来申しておりますように、鋭意捜査を続けて、おおむね捜査終局段階に入っているというきわめて微妙な状態でございますので、どちらの方向に向くかというようなことに関します御答弁は、ちょっと御遠慮させていただきたいと思います。
  14. 横山利秋

    横山委員 私は、非常にデリケートな言い方を本年もいたしておるわけでありますが、法務省としては、私どもが申し上げますように、理非曲直をきわめて明白に、法に触れておることは触れておるというふうに敏速に処理をせよということの一面があるわけでありますが、同時に、この種の問題につきましては、東本願寺日本の信仰の大本山として国民の信頼を回復をいたしますためには、円満解決かなければならないと思うのであります。その円満解決に結果として京都地検なり検察の仕事が資する、こういう結果を私は実は期待をいたしておるわけであります。  このことにつきましては、私の承知する限りにおきましては、双方とも、この京都府警及び地検調査の結果が、また判断の結果が出ることを逆な意味からそれぞれ期待をしておる。何か筋が通らなければ、通って一本の道が開かれなければ、土俵場かそこで設定されなければ、双方話し合いがなかなか円満に成立しないという観点があることを法務省としては、法務省の所管の問題ではないけれども、お含みおきを願いたいと思うのであります。  いまあなたは、捜査上の問題であるから申し上げにくいとおっしゃいました。しかし、私がいま申し上げましたような観点でいけば、できる限り、それはあなたの方のできる限りではございますけれども、できる限りいまの地検作業状況なりその作業の結果なりというものを知らしめて、そして、それではひとつ話し合いをしようというような雰囲気ができることが、私は政治的に望ましいと思っておるわけであります。地検は一切秘密にしておいて結果だけ出せばいいという問題では、この問題に限ってはないと私は思っておるわけであります。  きょうは法務大臣がいらっしゃいませんから、その辺のあうんの呼吸をお話をすることができないのが残念でございますけれども、ちょうど何といいますか、例は悪うございますけれども、労働組合ストライキをやる。ストライキをやるのか目的ではないのであって、ストライキという背景のもとに、労使双方話し合いが行われる雰囲気を醸成するというところに目的があるわけであります。むしろ京都地検の結果が出る前の方が双方話し合いの余地があり得るのではないか。その京都地検の結果というものがどういう内容かは、それははかり知りがたいものかあるにいたしましても、少なくともこういう結果になるから、なりそうだから、こういう判断をして話し合いをしたちどうかという条件が出ることが望ましいと思うのであります。  その意味では、先ほどきわめて簡単な御報告ではございましたけれども、その間の状況をもう一歩突っ込んで御報告されることを私は望みたいと思います。
  15. 前田宏

    前田(宏)政府委員 この問題に関しまして、横山委員の御指摘のようなことは十分考えられるわけでございますけれども、先ほど申しましたように、検察庁の処理というのは起訴か不起訴かといういずれかになるわけでございまして、いまの段階起訴になりそうだとか不起訴になりそうだとかいうことを申すことは、やはり適当ではないのではないかと思います。
  16. 横山利秋

    横山委員 文化庁にお伺いをいたします。  十一月二十二日、京都府議会決算特別委員会で、社会党の山中高吉議員質問に答えて荒巻副知事が「“役員会のメンバーを差しかえたい”という申請受理して審査中に“独立したい”という両者相入れない申請が出された。認証事務としては審査できないから疑義のないよう手続きしてほしいと照会中で、回答があれば”独立申請”について受理、不受理のどちらかに決めたい」と言い、さらに再質問に答えて「「回答がなければ受理できない。したがって規則変更できない」と府としては現状のままでは束本願寺の宗派からの離脱は認証できないとの立場を初めて明らかにした。」とあります。これは文化庁へも連絡をしてこのような答弁をしたと思われるのでありますが、文化庁としては同意見でございますか。
  17. 安藤幸男

    安藤説明員 お答え申し上げます。  五十四年四月二十一日付の本願寺代表役員大谷光暢氏から真宗大谷派との被包括関係を廃止することを内容とする規則変更認証申請につきまして、前に同じ代表役員大谷光暢氏から四十九年二月七日付で申請がありました申請との関係につきまして照会をしておるところでございますが、これにつきまして、この二つ申請内容が全く相入れないものでございますので、その間の関係が明らかにならない限り受理できないということは、京都府が答弁したとおりでございます。
  18. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、現在のもとにおいては、離脱申請は出ておるけれども、それは許可になっていないのだから、真宗大谷派の枠の中に京都東本願寺はいまなお法的に存在をしておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  19. 安藤幸男

    安藤説明員 おっしゃるとおり、法律的には東本願寺真宗大谷派の一寺院としてあるわけでございます。
  20. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、東本願寺が単なる申請をしたということで、まだ認可もされていないのにかかわらず、いかにも独立をしたかのごとき行為をいろいろいたすことは無効である、こういうふうに判断できるのでありますが、刑事局長はどうお考えでございますか。
  21. 前田宏

    前田(宏)政府委員 この大谷派本願寺との法律関係と申しますか、これも、いま御指摘のような御議論がありましたように非常に複雑だと思いますし、いま当面のことで独立していないのに独立したごとき行為をすれば無効か、こういう端的なお尋ねでございますが、直ちにこれが無効と言えるかどうか、民事的な問題もありましょうし、明快なことは申しかねる次第でございます。
  22. 横山利秋

    横山委員 それでは枳殻邸のことについてお伺いをいたします。  枳殻邸は、ビル業者法主契約をされて、担保を偽造して、しかも念書を入れておる。要するに、これは売買なんですという趣旨念書が入っておるというのであります。念書というものは一体どういう法律的効果があるとお考えでございますか。表面的には単なるお金を借りるだけのものであるということでありながら、実際は、お金を払わなかった場合においてはこれはもう所有権が移転してあなたのものになるという念書が入っておったというわけでありまして、関係者の間にきわめて重大なショックを与えた。  国の名勝として指定され、国の税金をもって補修工事も行われておるものが、こういうように秘密裏売買をされておるとするならば、これは文化庁としても看過することのできない問題ではないかと思いますし、また、念書法律的な効果というものにも私は非常に疑問が生ずるわけであります。法務省文化庁、それぞれ御答弁を願いたいと思います。
  23. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいまの枳殻邸のことにつきましてのお尋ねでございますが、これもいわば捜査の中身と申しますか、対象になっておることでございますし、いろいろと経緯等もあってのことと思いますので、ここで結論めいたことを申し上げかねるわけでございますが、一般的に言えば、契約のことでございますから、その当事者の合意というものが念書とかいろいろな形で残されるということもあり得ることではなかろうかと思います。
  24. 横山利秋

    横山委員 ちょっと文化庁の前に。  それでは刑事局長伺いますが、当事者のことだから、仮に念書でも法律的効果があるというような趣旨でございました。しかし仮に、法主の権限につきまして、真宗大谷派及び東本願寺でいえば憲法とでも申しましょうか宗憲があり、内部規則がある、その宗憲内部規則にそういうことができないようになっておる。機関承認を得て行わなければならないにもかかわらず、そういう機関承認を得ずに契約をし念書を作成するという場合には、どういうことになりますか。
  25. 前田宏

    前田(宏)政府委員 だんだん具体的なお話に入ってきて、どの程度お答えしてよろしいかと迷っておるわけでございますが、内部的な規則等に反してやりました場合には、それなりに手続違背という問題が起こると思いますが、当事者、つまり相手方との関係では、直ちにそれが全部無効になるというふうには言いかねるのじゃなかろうかというふうには思います。
  26. 横山利秋

    横山委員 そうすると、内部の問題としては背任横領疑いが生ずる、こういうわけでございますね。
  27. 前田宏

    前田(宏)政府委員 これも直ちにそこの結論になるかどうかということは、捜査内容でもございますし、これも一般論でございますが、手続的な違背即実質犯的な背任とか横領ということにつながるというわけでもないというふうに思います。
  28. 横山利秋

    横山委員 文化庁はどうですか。
  29. 安藤幸男

    安藤説明員 本願寺が法人として普通財産である不動産を処分する場合には、責任役員会議決のほかに総代の同意参与会及び常務委員会議決が必要でございます。  今回の枳殻邸の処分は、これらの手続を経ていないというふうに報道されておりますが、事実であるとするならば、これは内部規則違反することになろうかと思います。
  30. 横山利秋

    横山委員 念のために念書を朗読いたしますと、念書には「昭和五十三年十月二十四日付貴殿と締結した別紙譲渡担保契約は、形式的なものであって、実際には右回日付の売買契約であり、従って貴殿より受領のすべての金員は売買代金の内金として受領したものである。右相違ないので念書一札差入れる。」とあります。末尾に大谷光暢法主のサインがあり、その下に押印されているわけであります。  時間の関係がございまして、もう少しお尋ねをしたいのでありますが、京都東本願寺に関する問題はこれで終わるわけでありますが、もう一度だけ、刑事局長結論的にお伺いをいたします。  本年中には結論がつきかねるかもしれないというお話でございましたが、それならば明年いつごろまでにはこの問題の御報告がいただけると思いますか。この前と違いまして、今度は少し確実なお話伺いたい。
  31. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、本年内ということをめどに努力しており、現在も努力しているわけでございますが、当時申し上げましたときよりは、やや思ったより手間がかかっているという感じでございますので、年を越すかもしれないということを念のために申したわけでございまして、いつ、何月何日までということになりますと、ちょっと明快には申し上げられないわけでございますが、(横山委員「大体のめどは」と呼ぶ)またこれで延びたではないかという御批判を受けてもあれでございますけれども、今度は年度内といいますか、なるべくその辺のところまでに結論を出したいと考えております。
  32. 横山利秋

    横山委員 年度内であれば、来年の通常国会には、ひとつしかと詳細にわたって御報告を受ける覚悟でございますから、さようお含みおきを願います。  次は、最近KDDを初め数々の汚職の問題が惹起をしておりまして、法務省としてもきわめてあれやこれやの問題がございます。きょうは時間がございませんので、御報告を受けるにとどまるかとは存じますけれども、一連の問題につきまして、関係主管委員会であります法務委員会にひとつ御報告をいただきたい。  御報告をいただきたいのは、まず第一はKDD事件、第二番目に大光相互銀行事件、第三番目に鉄道建設公団不正経理事件、第四番目に住宅公団職員の公金使い込み事件。いま私の承知しておるところによりますと、これらの問題を検察陣調査中であると承知をいたしておりますが、それらの事件について、まず現状を御報告願いたいと思います。
  33. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まずKDDのことでございますが、御案内のように、東京税関から東京地検告発がございました関税法違反等事件があるわけでございます。それにつきまして、東京地検におきまして警視庁とも協力の上で鋭意捜査を続けているところでございます。その具体的なあらわれといたしましては、過般警視庁におきまして、関係方面についての捜索をしたということでございます。  二番目の大光相互銀行関係でございます。この件につきましては一応処理済みでございまして、去る十一月一日に大光相互銀行の元取締役でありました者ら三名を、商法の特別背任罪証券取引法違反また相互銀行法違反ということで新潟地裁公判請求をしておるわけでございます。  三番目の鉄建公団でございます。この点につきましては、民間の弁護士さんあるいはサラリーマン同盟でございましたか等々から、東京地検に対して告発状も出されているわけでございますし、また決算委員会等で御議論がありましたように、会計検査院からのいわゆる中間報告も出されているところでございます。  そこで、東京地検におきましてこの扱いをしておるわけでございますが、先ほど申しました告発状というものも、新聞報道等を大体整理してまとめたというような内容のものでございまして、一般的な告発でありますと、告発人自体が犯罪事実を知っておられ、また証拠もある程度持っておられるというのが通常でございますけれども、若干趣を異にしている点もございます。そこで東京地検といたしましては、その告発状内容あるいは国会での御論議、新聞報道等いろいろな点を踏まえまして、これに取り組んでいるわけでございます。したがいまして、広い意味では捜査中ということになるわけでございますが、具体的にいまどのようなことをやっておるかということになりますと、これはちょっと御説明を差し控えさせていただきたいわけでございます。  四番目の日本住宅公団関係でございます。土路重昌という日本住宅公団の元職員につきまして、警視庁捜査をいたしまして東京地検に送致されましたので、罪名は詐欺ということでございますが、二回にわたって起訴をして公判にかかっている、こういう段階でございます。
  34. 横山利秋

    横山委員 最初のKDD疑惑関係でございますが、この疑惑は、法律上はどの角度からどの法律が適用される疑いがあるかということを、ひとつ整理して聞かしていただきたいと思うのであります。  承知いたしておりますのは関税法違反、刑法の業務上横領罪、商法の特別背任罪、贈収賄罪、法人税法違反、これらが関連をいたすかと思うのでありますが、その点はどういう角度でお調べになっていますか。
  35. 前田宏

    前田(宏)政府委員 お尋ねの件は、先ほど申しましたように、当面の問題としては関税法違反と物品税法違反がついておったと思います。  それも成田におきますいわゆる密輸の事実に関してでございまして、その他、いまいろいろと罪名等を御指摘になりましたけれども、これは捜査の進展と申しますか、今後の問題でございまして、もちろんいろいろな観点から検討をするということは考えられますけれども、いまの時点で、どういう方向に行くとか、どういう罪名になりそうだということは、まだ実際問題としてもはっきりしておりませんし、申しかねるわけでございます。
  36. 横山利秋

    横山委員 大光相互事件なり一連の関連の中で、きょうは民事局長おいでになっておらないのでありますけれども、われわれ法務委員会として商法改正を何回も議論をして、かなりな改正をしたのだけれども、少しもその改正趣旨が生きてこないというような感じがしてならないのでありますが、刑事局長として、これらの大光相互なりほかの問題で、商法の改正についてどこに問題があるだろうかとお気づきになったことがありますか。
  37. 前田宏

    前田(宏)政府委員 所管外のことでございますので、責任あることはちょっと申し上げかねるわけでございますが、まあ似たような事件がいろいろと起こるということで、企業内部の監査体制というかその辺が、前々から若干ずつ強化されておりますけれども、まだ不十分な点が残っているのじゃないかというようなことが言われておるわけでございます。  この前の航空機疑惑再発防止に関する協議会におきましても、提言の中でその点が触れられておるところでございまして、私、横から聞いておることでございますけれども、現在、法制審議会の商法部会におきまして、その関係での審議が進められているというふうに承知しております。
  38. 横山利秋

    横山委員 あわせてこの際伺いたいと思うのでありますが、ロッキード、グラマン、ダグラス等一連の航空機汚職に関連をして、政府は先般汚職防止政策の要綱について御発表になりました。  あれを見ますと、法務省関係がきわめて中心になっておる。私は、それに若干の異論があるわけでありますが、少なくとも法務省が刑事局のみならず各省にわたって鋭意これを作業をしなければならない状況にあると思うのでありますが、通常国会に向けて法務省としては、あの関係閣僚会議結論に乗せて、どんな法案提出の準備をなさっておられるのでありますか。刑事局関係ばかりではございません。御存じの点がありましたら、御報告を願いたいと思います。
  39. 前田宏

    前田(宏)政府委員 御指摘の航空機疑惑の再発防止に関する協議会といいますのは、関係閣僚会議ではなくて、性格的には総理の諮問機関というようなことに理解されておったと思いますが、その御提言の中で、いま御指摘の点がいろいろとあるわけでございます。  刑事局関係では、もう横山委員に改めて申し上げるまでもないかと思いますが、従来御提案して成立を見ておりませんでした刑法の一部改正法案、贈収賄の刑の引き上げを内容とするものでございますが、それを通常国会に出さしていただきたい、かように考えております。  あと法務省関係では、先ほど申し上げました商法関係一つの問題点としてあるわけでございますが、これは先ほど申しましたように、法制審議会の審議の進行状況関連いたしますので、通常国会に間に合うものかどうかということ、私も所管でございませんので明確なことを申し上げかねますけれども、そんな状況であろうかと思います。  あと制裁法規の関係では、直接法務省の所管ではございませんけれども、税金関係の脱税の法定刑の引き上げということが検討されておりまして、私どもも、罰則の関係でございますから大蔵当局と御相談をしておるということでございますので、これは間に合うのではないかというような感じでおるわけでございます。
  40. 横山利秋

    横山委員 いささか、いまの御報告の限りにおいては、汚職防止政策につきましての準備が、何かいままで本委員会に二年もたなづりになっております刑法の改正を通してくれというそらぞらしいお話のようでございまして、そのほかさしたる案件が、政府として汚職防止政策についての次の通常国会への提案がしっかりした土台のあるものがないように思われるのでありますが、そういうことでございますか。
  41. 前田宏

    前田(宏)政府委員 とりあえず法務省自体のものあるいは法務省に一番近く関係のあるものについて申し上げたわけでございまして、その他のことになりますと、所管外でございますので申し上げかねるわけでございますが、あの中にあります選挙制度の見直しであるとか政治資金規正の見直しであるとかいうような問題につきましては、それぞれの所管庁において検討が進められているように承知しているわけでございます。
  42. 横山利秋

    横山委員 きょうは大臣がお見えになりませんので、やや核心に触れた御質問をできないのが残念でございます。  ただ、最後に申しましたように、これは政務次官、局長からしかと法務大臣に申し上げておいていただきたいと思うのでありますが、この種の続出いたします行政官庁の綱紀の紊乱あるいは国際汚職に関連をいたします諸問題につきまして、何としても汚職防止の諸立法というものが次の国会におきましての重要な案件にならなければならないと私は痛感をいたしておるわけであります。その点では、きょうの御答弁では何か十分な準備ができていないように思われてなりません。次回、通常国会でその問題について十分政府との意見交換をいたしたいと思いますから、お伝えをお願いいたします。  以上で私の質問を終わります。
  43. 木村武千代

    木村委員長 飯田忠雄君。
  44. 飯田忠雄

    ○飯田委員 私は、憲法八十一条の違憲審査権の意義とか内容とかあるいは審判の範囲、それからこれに関連して最高裁が主張しておられます統治行為論、こういうものにつきまして本日は質問を申し上げます。主として最高裁、内閣法制局法務省の方に御質問を申し上げます。  まず、違憲判決の請求事件についての最高裁の態度についてお伺いをいたしますが、昭和二十七年の十月八日の大法廷判決、これは左派社会党が違憲判決を求めて最高裁に直接提訴をいたしました警察予備隊違憲訴訟につきまして、また、昭和二十八年の四月十五日の大法廷判決は、衆議院の解散無効確認訴訟、これにつきまして、要件を欠く不適格な訴訟である、こういうことにして却下いたしております。これは判例がそういう態度をとっておるということでありますが、この問題は、わが国の国家の基本的な問題についての重大な問題でありますので、国政調査の対象にいたしたいと思うものであります。  憲法の八十一条には「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」こう規定いたしております。ところで、この規定は最高裁判所の法的性格を規定したものではなかろうかと私は思うものでありますが、これに関しまして従来の裁判所の御見解は、私どもの理解に少し反しておるように思いますので、どういう御見解をとってきておられますか、お伺いをいたします。
  45. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 いまの御質問の点に関しましては、先ほどお示しになりました最高裁判所昭和二十七年十月八日の大法廷の判決及び昭和二十八年の四月十五日の大法廷の判決がございますが、いずれも、先ほど指摘になられましたように、具体的な事件を離れて抽象的に法律、命令等が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有するものではない、それが最高裁判所立場である。それから、憲法八十一条は最高裁判所が違憲審査を固有の権限とする始審にして終審である憲法裁判所たる性格をも併有すべきことを規定したものではない、こういうふうなことを判示しておるわけでございます。
  46. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いまの答弁の中で少しわからぬ点がありますのでお尋ねをしますが、八十一条は最高裁が憲法問題については始審にして終審の裁判所として規定されたものではない、こういうふうにおっしゃいましたか、初審にしてということはもちろん書いてないので、そのとおりだと思います。しかし、そのように最高裁が初審で終審だという、一審制ではないという、そういう問題としてこの問題を取り上げていくというのはおかしいのではないかと思われるのです。  なぜならば、「終審裁判所」と書いてありますので、終審裁判所であるならば前審があるではないか、こういう問題であります。前審、つまりその前に審査するものがあるはずなんです。そういうことは当然のことであるのに、それを無視した形の御答弁であると思いますが、その点はどうですか。
  47. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 憲法八十一条におきます始審、終審ということにつきましての最高裁判所の判例はございませんが、一般にはこの規定は、法令とか処分の憲法適合性の有無が下級裁判所で争われるときは、その点については常に最高裁判所への上訴が許されなくてはならないということを意味するものと解されているようでございます。そういたしまして、現行の訴訟法でも、合憲性の争いについては常に最高裁判所への上訴の道が開かれているわけでございます。
  48. 飯田忠雄

    ○飯田委員 時間がないので、こちらから少し申し上げます。  憲法八十一条の違憲審査権は、単なる司法作用の前提としての法令審査権、すなわち普通の裁判所が、具体的な訴訟事件を前提として、その手続の中で、その訴訟の解決に必要な範囲内で違憲審査を行う権限である、こういうふうに従来は解釈されておるように思われますが、そうでしょうか。
  49. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 ただいまの御見解のとおりであると考えます。
  50. 飯田忠雄

    ○飯田委員 憲法の七十六条から八十条までに司法権に関しての規定がございますが、七十六条では最高裁と下級裁について規定かございますね。その後続いてずっと、いろいろ司法の手続の規定だとか裁判官の態度の問題だとか権限内容について規定がしてあります。最高裁の問題も規定してあるのです。ところが、そういう問題が終わってしまってから、最後に八十一条で、最高裁は憲法違反を裁判する終審裁判所だ、こう規定してあるのですよ。  そうしますと、普通の裁判所の中で、普通の裁判において法令判断をしなければならないときに憲法問題が起こったら、それをやるのは裁判所で、しかも最終的に決定するのは最高裁ですよといったような、そういう解釈のためにこの八十一条の規定があるというなら、八十一条はむしろあってなきがごときもので、なくてもいいものですね。七十六条において最高裁と下級裁が決めてある。下級裁が行った裁判について、最高裁は最終的にその裁判について判断を下すのですから、その場合に、その普通の裁判の中で憲法問題が含まれておったなら、当然法律判断をするのは裁判所の任務でしょう。下級審においても判断をする。上級審においても判断をする。当然のことなんです。それであるならば、何も八十一条の規定を置く必要がないじゃありませんか。
  51. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 ただいま御質問の問題につきましては、いろいろの見解があり得るかと思いますが、最高裁判所の大法廷がとっております見解は、先ほど私が御説明したとおりでございまして、私どもとしましては、最高裁判所の事務総局といたしまして、最高裁判所の庶務をつかさどっている職務関係にございます。最高裁判所から出されました判決について論評を加える、あるいは判文の解釈や根拠を示したりするというふうな立場にございませんことを御了解いただきたいというふうに考えるわけでございます。
  52. 飯田忠雄

    ○飯田委員 この問題は憲法解釈の問題で、最高裁の憲法解釈か実は間違っている。間違っていることを最高裁の事務局に問うというのは残酷に当たりますので、これは事務局じゃなしに、内閣法制局の方でどういう御見解をとっておられるのかお答え願いたい。
  53. 味村治

    ○味村政府委員 憲法八十一条は司法の章に規定されておりまして、司法権の一態様としての違憲立法審査権というものを規定しているものであるということが最高裁の判決の御解釈でございますし、私どももそのように考えている次第でございます。  先生のおっしゃいますように、八十一条が特別の抽象的な違憲立法審査権を規定したものだという説も、もちろんあることは承知いたしておりますが、しかし違憲立法審査を抽象的に行うという権限は、これは裁判所の枠を超えるわけでございまして、もしもそのように憲法が考えているのであれば、明瞭にそのような抽象的な違憲立法審査権を有するのだというふうに規定をするということが当然考えられるわけでございまして、そのような規定がない以上は、やはり先ほどの最高裁判所の判決が示されているとおり、司法権の範囲内で違憲立法審査権を持っているのだ、このように解すべきであろうと思います。  それでは八十一条の趣旨がないじゃないかとおっしゃるわけでございますが、旧明治憲法におきましては、法律が憲法に違反しているかどうかにつきましては、裁判所審査する権限がなかったというふうに解釈されていたわけでございまして、そのことを明らかにしただけでも憲法八十一条は意味がある、このように考えるわけでございます。
  54. 飯田忠雄

    ○飯田委員 どうもいまの御説明は、お役人か自分の従来やってきた誤りをかばうために無理やりなされているような解釈に思われます。  憲法の規定を読んでみてください。憲法の規定はどう書いてあるか。憲法第八十一条には次のように書いてあります。「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」こう書いてあります。これは抽象的も具体的も何もない、すべて含んで、どのような場合でもすべての憲法問題について、たとえば行政府が行った行政が憲法に違反しているかどうか、また国会が行った立法が憲法に違反しておるかどうか、そうしたような問題すべてについて、あるいは命令、規則についても、あるいは内閣が行った処分、こういうものについても、それが憲法に適合しておるかどうかという争いが起こった場合に、その争いについて、憲法に適合しておるかどうかを決定する最後の決定権を持っているのが最高裁判所なんだよ、こういう規定じゃありませんか。抽象も具体的もないでしょう。どんな場合でもこれに含まれる。  もし、具体的な事件が起こって、その具体的な司法事件の中で法律判断の争いが生じた場合に、その法律判断をするというだけが最高裁の任務なら、八十一条は要らないものです。下級裁と最高裁があって、下級裁で起こしたいろいろ法律判断の誤りあるいは混乱、そういうものについて最高裁が最終の審判をするということは当然のことなのです。憲法七十六条の問題です。そこから出てくる問題じゃありませんか。  八十一条というのはそうした問題ではなしに、わが国における憲法を守ろうとする、憲法を守る手段がこの八十一条なのです。従来から、とかく内閣は憲法違反の処分をしがちなのです。しがちだから、そういうものに対して最高裁が最終的に抑えるという任務をしなければならぬ。そういうことをやるためにこの八十一条というものはある。たとえば、きょうは解散権はやりませんが、この次に残しておきますけれども、とにかくこれは従来の憲法に書いてないことを平気でおやりになることをとめるためのものなのです。  もっと具体的に言いましょうか。内閣で一つ法案を提出された、国会で審議が行われた、その法律案が憲法違反内容を含むのだけれども、多数党の力で無理やりに押し通して法律ができたといたしましょう。これは仮定の話ですよ。その場合に野党としては、最高裁にこの立法は憲法違反である旨を訴えることができる。そういうことの道を開いた規定がこの憲法八十一条じゃありませんか。それを閉じてしまうという従来の憲法の解釈は、わが国の国民主権制の憲法の精神に反するものであると思われます。この点についていかがですか。
  55. 味村治

    ○味村政府委員 憲法八十一条が、一切の法律規則、命令、処分等が憲法に違反するかどうかを審査する終審裁判所が最高裁判所だというふうに書いてある、私はそのことを否定するわけではございませんで、それは裁判所という枠の中で認められた権限であるというふうに申し上げているわけでございます。裁判所は、具体的な法律上の争訟に係る事件を裁判するものとして設置されているわけでございますので、その機能の枠内で、この八十一条の違憲立法審査権が与えられているのだというふうに申し上げたわけでございます。  これは先ほど申し上げましたように、明治憲法時代には違憲立法審査権はなかったわけでございますから、また、各国の法制でも違憲立法の審査権を裁判所に認めていないところもあるわけでございますので、決して、私どものように解釈したからそれが無意味になるとか、そのようなことはございません。
  56. 飯田忠雄

    ○飯田委員 いま私が説明しましたことをあなたははぐらかすような答弁をなさるのだが、これはよくないのです。これは昔からお役人の癖なのだ。そういうことではいかぬので、私が問うているのを率直に聞いていただきたい。  この八十一条という条文をなぜ憲法に置いたか。これは重要な問題です。日本の憲法を守るために、結局、ほっておけば権力を握っておる内閣の力でどうにでもなる問題ですね。たとえば現在、内閣に衆議院の解散権があるなどという条文は憲法の中のどこにもないのだけれども、平気で解散をなさる。これは憲法違反であるけれども、それを抑えるものはどこにもないじゃないですか。そういう憲法違反が行われてくることに対して、訴え出た場合に最終的に裁判をしてくれるのが最高裁だ。そして憲法を保障する、憲法を守る機能を最高裁に負わせている。それが憲法八十一条の意味なのです。もしそうでないとするならば、この八十一条は要らない、あってもなくてもいいものだということになりますが、憲法があってもなくてもいい条文を置くはずがないと私は思います。わが国をナチスの党が支配したような独裁国家にするかしないかの根本問題がここに含まれるから、私は申し上げるのです。  この問題につきまして、法制局は、いまここですぐ御返答をなさるには余りにも重大な問題なので、あなたにお聞きするのは残酷かもしれませんね。ですから、よく御検討願いたいのですが、この問題の答えについて、外国の例だとかあるいは旧憲法の例などは役に立たないのです。現在の憲法に書いてあるこの文言そのものずばりで議論しませんと、大変な間違ったことになると私は思います。この点についてもう一度、簡単でいいですが、おっしゃってください。そしてその次に進みます。
  57. 味村治

    ○味村政府委員 民主主義の基本は、やはり憲法に規定してあるところでございます。その憲法を守るということは、裁判所国会、行政府、すべてがその使命を持っているわけでございます。  したがいまして、それぞれが憲法を守るという意識のもとに行動しなければならないということは当然のことでございます。ことに違憲立法審査権につきましては、これは法律国会の御制定になったものでございまして、国会全国民から選挙されました国民の代表たる方々から成立しているわけでございますので、そのような国会が万が一にも違憲な立法をなさるということは考えられないわけでございますが、万一そういうようなことがございました場合には、やはり裁判所に訴え出まして、違憲であるということによる不利益を救済するという措置を講ずる、これは必要なことであるわけでございます。  そのために憲法八十一条が違憲立法審査権を認めているわけでございますが、これは決して、先ほど先生のおっしゃいましたように、何も具体的な争訟事件がないのにかかわらず抽象的に、この国会の制定した法律は違憲だということを決定する権限を裁判所に与えたのではないというふうに最高裁判所も判決されておりますし、私ども法制局も、従前からそのように答弁を申し上げていたわけでございます。  その理由は、先ほど申し上げましたように、これは裁判所という枠内での話であるという理由によるものでございます。もしもこのような枠の外でございますれば、これは憲法裁判所ということになりまして、いわば最高裁判所国会の立法をその上に立って審査をするということになるわけでございまして、そのような非常に重大な事項につきましては、明らかに明文をもって規定するのが当然ではないか、このように考えられる次第でございます。
  58. 飯田忠雄

    ○飯田委員 これは、だから明文で八十一条に規定があるのです。つまり、国会が行ったことであろうと内閣が行ったことであろうと、それが憲法違反であるならば、最高裁に最後の審判を任せて憲法を守るというのが八十一条の規定であるわけです。この八十一条に終審の裁判所とするという、その終審という意味は、司法部内だけの問題ではないのです。この前審としては国会も前審であり内閣も前審である。だから特に八十一条の規定を置く必要があったのです。もしそうでないなら、八十一条の規定なしに普通の裁判の規定だけで事は足りるわけです。  私どもがこの問題を重視いたしますのは、いまあなたが、国会が決めたことを裁判所が審判するのはおかしい、国会の上に裁判所を置くのはおかしいとおっしゃったが、そういう考え方はおかしいのです。憲法がもとなんです。憲法かもとで、憲法の規定によって行うことであって、国会であろうとも憲法の規定に従わねばならぬことは当然であります。ですから、国会でも神様でない以上は憲法違反法律をつくらないとも限らない。私は、憲法違反の立法かいままで全然ないとあなたがおっしゃるなら、一々指摘して憲法違反法律を例示してもよろしいですよ、どこが憲法違反であるということを。たくさんあります。  だから、そういう場合の問題について争いが起こった、これは普通の事件じゃなくて国会が起こす事件です。野党がこれを最高裁に訴え出ることもできるはずなんです。前に左派社会党が訴え出た、あれは決して憲法違反行為ではない。憲法に従っておるのだけれども、残念ながら、この八十一条の規定を裏づける立法がないから、訴訟法がないからの話ではありませんか。八十一条というものがあるならば、憲法裁判訴訟法という法律をつくってその道を開くのが当然であります、ところが、その道を開こうとしていなかった、そこに問題がある、私はそのように思います。  この点につきまして、そういう法律をつくることについてお考えになる意思があるかどうか、最高裁、法務省、それから法制局の御意見を承りたいと思います。
  59. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 最高裁判所の事務当局といたしましては、先ほど来問題になっております大法廷の判決に従っております関係上、そのような関係手続規則を設けるという考えは持っておらないわけでございます。
  60. 岡崎彰夫

    ○岡崎説明員 違憲立法審査権の点につきましては、先ほど内閣法制局の方から答弁されておりますのと同一の見解を持っておりますので、ただいま御指摘のような立法をする考えはございません。
  61. 飯田忠雄

    ○飯田委員 私がきょうお尋ねしました件は、国の根本問題に関する、国家組織の根本問題に関する問題でありますので、なおざりに放置できないと私は思います。国政調査権を持つ国会としても、こういう問題について今後正しい道を探求しなければならない問題であろうと思いますので、ここで皆さん方に結論を言うてもらうということはちょっとむずかしいかもしれぬので、きょうは一応この質問で保留しておきますが、将来この問題についてはやります。ここでは、きょうは時間がありませんので、この程度にしておきます。  そこで、この問題につきまして従来最高裁判所がとっておいでになる統治行為論につきまして、私は少しく御質問を申し上げたいと思います。  この最高裁判所のとっておいでになる統治行為論は、最高裁がそういう判決をしたから仕方がないではないかでは済まない問題です。この問題は、この判決がどんなに大きな影響をわが国政の上に及ぼしているかわからない。だから、これもまた国政調査の対象にしなければならぬ問題だと思うわけであります。したがいまして、きょうは簡単に質問しておきますが、今後しつこくどこまでも追及します。  昭和三十五年六月八日の最高裁大法廷判決の多数意見は次のように言っております。「衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきことは」云々として「あきらかである。」こう言っております。また、それに続きまして多数意見は、これは非常に重要なところですが、「政府の見解は、憲法七条によって、憲法上有効に衆議院の解散を行い得るものであり、」云々としまして、続きまして「裁判所としては、この政府の見解を否定して、本件解散を憲法上無効なものとすることはできないのである。」こう言っているのです。  これは非常に意味深長な言葉です。最高裁としては憲法違反だと思うのだけれども、憲法違反だというふうに最高裁が言ったならば国政上大混乱が起こるであろうから、そういうような問題については、最高裁としては何とも言えません、どうぞ御勘弁ください、そういう判決理由です。そういうふうに読めるのです。この問題は重要な問題だと私は思いますよ。解散が無効だから、同時にその次に行われた総選挙が無効ということにはならない、そういう形式論理的な解釈をとっておいでになるから、この問題は不安を感ぜられる。解散にしても、解散の形式手続は有効に行われておるのだけれども、問題は内閣の助言にあると思うのです。助言が間違っておる。これは後でまた追及しますが、きょうはやりません。  とにかく統治行為だ、つまり裁判所は、政治的な問題だから司法権の審判になじまない、だからどうぞ許してくれ、こういうあれなんですね。政治問題だから憲法判断ができないというのなら、このことはどういうことですか。よくお考えください。政治を憲法の上に置くことです。政治問題のために憲法を犠牲にすることです。そうじゃありませんか、政治問題だから憲法判断ができないというのなら。つまり、一体日本の政治は憲法の枠内で憲法の基礎の上で行うのか、あるいは憲法を超越して政治を行うことを許されておるのか、これは根本問題に触れる問題です。  この問題に関しまして、こういう判決に従って内閣法制局はおやりになるという意思なのか、こういう憲法判断よりも政治判断の方を有効にする、上位に置くという考え方をとっておるこの統治行為論、こういうものについて、本気になってこれを正しいと思っておられるのかどうか、お答えを願いたいと思います。
  62. 味村治

    ○味村政府委員 憲法は国の最高法規でございまして、すべての公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負うわけでございます。  したがいまして内閣といたしましては、憲法に違反しないように、あらゆる行為をするにつきまして細心の注意を払っておる次第でございまして、政治を行う、行政を行うについて、憲法に違反してよろしい、政治はもっと高度の問題でございますが、行政を行うにつきまして、憲法に違反してよろしいなどということは毛頭考えておりません。ただ最高裁判所は、ただいま先生の御指摘のように、統治行為につきましては裁判所判断は及ばないのだという趣旨のことをおっしゃっているわけでございまして、それは最高裁判所の御判断として私どもは尊重をいたしているという次第でございます。
  63. 飯田忠雄

    ○飯田委員 国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為を司法審査の対象から除く、こういう考え方、これはどうも大日本帝国憲法において論ぜられてきた統治権の法律理論を現在の憲法理論に持ち込むものじゃないかと思われるのです。  旧憲法では、天皇の統治権というものか根本であって、すべてのものはそれに従わなければならないという規定であった。つまり、旧憲法は決して民主国家じゃなくて、天皇独裁の法体制をとったものであったでしょう。そのところにおいては、統治権理論というものはあるのです。統治権理論というのは、統治者と被統治者を認めて、そして統治者に与えた権利、統治者が持っている権利を統治権と言うのでしょう、元来は、一口に言えば。外国のむずかしい学説なんか持ってくる必要はありません。そんなものはみんな私はわかっているのだから、聞く必要はない。そうじゃなしに、統治権とは一口に言えばそういうことでしょうが。統治者と被統治者があっての問題でしょう。  現行憲法は一体そういう統治者、被統治者の考え方を持っているかどうかの問題です。憲法の前文をごらんになってください。それには国政、つまり国の政治ですね、「國政は、國民の嚴肅な信託によるものであって、」と書いてある。国の政治というものは統治者、被統治者の関係において存在するのではなしに、国民の厳粛な信託によって行うものだ、こう書いてあるじゃありませんか。そういうことであるならば、憲法を正しく理解しておれば、統治行為といったような思想が出てくるはずがないのです。  最高裁判所が憲法理解をごまかされては困るわけです。なぜ正しく憲法をとらえて、政府などに遠慮しないでおやりにならないか、私はここに大きな問題があると思いますが、この統治行為論をとっておいでになる最高裁は、一体国の政治というものは国民の厳粛な信託によるものだということをお認めにならないのかどうか、統治者と被統治者の関係において政治が行われるというふうにお考えになっておるのかどうか、この辺についてお答えを願いたいと思います。これは法制局でも構いません。
  64. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 統治行為という言葉は講学上使われておるようでありますが、最高裁判所の判決は統治行為という言葉は使っておらないわけでございます。砂川事件の大法廷判決にしましても「わが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するもの」というふうな表現、それから苫米地事件につきます最高裁判決におきましては「直接国家統治の基本に関する」「国家行為」というふうな言葉を使っておるわけでございます。  これについて最高裁判所が憲法を無視するとかどうかというふうなことは、私どもといたしましては、事務当局として何とも申し上げることができない立場にあることを御了解いただきたいというふうに存じます。
  65. 飯田忠雄

    ○飯田委員 昭和三十五年の六月八日の最高裁の大法廷判決の多数意見先ほど私は読みましたが、お忘れになったでしょうから、「衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であって、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきこと」云々とありますね。この「国家統治の基本に関する行為」この言葉を省略して統治行為と言っているのです。ですから、最高裁が統治行為という考えを言うたことがないというのはおかしいので、判決文にちゃんとある。  ですから問題は、その言葉の問題よりも、こうした「極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為」という、そういう思想ですね。その思想が問題だ。国民の信託によって行う国政であるのに、国家統治の基本とは何事ですか。そんな国家統治といったようなものがあり得るはずはないのです。国民の信託によって行う政治でございましょう。そこを私は問題にしている。  ですから、たとえ政治性の高いものであっても、政治性なるがゆえに憲法を無視することは許されない。これがわが憲法のたてまえなはずであります。ところが最高裁の態度は、きわめて政治性の高い行為については憲法判断を放棄する、こう言っておるのです。このことは大変重大な問題だと思います。いかがですか。
  66. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 先ほどから何度も申し上げておりますように、私ども事務当局といたしましては、最高裁判所の庶務をつかさどっておる職柄でございまして、最高裁判所から出されました判決につきまして論評を加えたり、判文の解釈、根拠を示したりするような立場にございませんことを御了解いただきたいと思います。  したがいまして、いまの御質問につきましても、私どもが判決の判文に示された以上にその理由とされるところの根拠について何らかの見解を述べることはできないと考えておるわけでございます。ただ苫米地事件の判決におきまして、こういうふうな表現が使われております。「この司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきものである。」と述べられておるわけでございます。
  67. 飯田忠雄

    ○飯田委員 この問題につきましては、最高裁の事務当局に御意見を聞くということで私は言っておるのじゃありませんよ。国政調査立場から事態を明確にしたいということであるので、だから、最高裁で答えにくければ、当然これは内閣法制局の憲法解釈をするところで答えるべき問題だと思います。  そして、私がきょうここで質問している内容は、一口に言うと、憲法に基づく政治を行うのが正しいのか、政治で憲法を勝手に変えていいのかということです。憲法解釈で憲法を運用するというのであるならば、それは解釈で憲法改正を行うことです。そういうことは許されないということ。  それからもう一つ先ほど最高裁の方が御答弁になりました件ですが、その御答弁は、普通の司法事件についての問題なんです。芳米地事件というのは、普通の損害賠償請求事件、それにおける手続の問題でしょう。それはそれでいいわけだ。しかし私がここで言うておるのは、普通の裁判じゃなくて憲法八十一条の問題なんです。憲法八十一条というのは普通の司法裁判の問題とは別なんだ。だから、その点をよく認識されて、そして憲法裁判ができるような訴訟手続を早くつくるべきではないか、こういうことを言っているんですよ。しかも、これは国会においてやろうとしても、訴訟手続だから最高裁の規則制定権によってつくらねばならぬものだから申し上げているのです。もし最高裁で、これはとても自分のところでできないから、国会でつくってくださいという嘆願書を国会にお出しになるなら、国会でつくりましょう、そういうことをお聞きしたのです。  時間が来ましたので、関連質問をやっていただきますので、きょうは私はこれで終わりますが、後でまた質問しますよ。質問は留保しておきます。
  68. 木村武千代

  69. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 私は、衆議院の解散と憲法八十一条についてお尋ねをしたいと思います。  私は、衆議院の解散については、内閣もしくは内閣総理大臣には解散権はない、こう考えております。その理由は、憲法にその旨の明文規定がないからだ、こう考えております。つまり、三権分立の憲法原理は守られなければならない。これに対する例外的な場合については、憲法みずからが例外規定を設けておる。例外規定がない限り、原則に戻って憲法の文言どおりに解釈をしなければならない。ここに言う解散権の行使は、国会に対する内閣からの重大な制約であります。したがって、解散権の行使が合憲であるためには、これを認める憲法上の明文規定が必要であるからだと考えているのであります。  ところで、衆議院の解散それ自体の効力を争う訴訟につきまして、これまで最高裁では、いまも御答弁がありましたように、原告の具体的権利義務に関しないからだとし、すなわち憲法八十一条は憲法裁判所を規定したものではないからだとしております。また、解散の効力を前提問題として、原告の具体的な権利義務、たとえば解散なかりせば有すべかりし歳費の請求をした事案の場合でも、いわゆる統治行為論を盾に、いまもお話しになったように、解散の効力についての判断を回避してきております。これは、私はきわめて遺憾だと思うのです。  ここでまずお尋ねをしたいのは、解散の決定それ自体は行政権の行使の一態様であると私は思います。つまり、憲法八十一条に「處分」という文言がありますけれども、この処分というのは、行政機関を含めてすべての国家機関の処分を含むものだと私は考えております。そこで、解散の決定ということ自体は憲法八十一条に言う「處分」に当たると考えますけれども、この点についてはどうでしょうか、法制局に伺います。
  70. 味村治

    ○味村政府委員 ごく一般的に申し上げますと、処分と言いますからには、これは、政府の行いますいろいろな決定、処分、国民に義務を課する処分とかというような処分がすべて含まれるというふうに思うわけでございます。  したがいまして、文理の上からは、処分という中には、内閣の助言と承認によりまして天皇の行われました解散も入るというふうに考えられるわけでございます。しかし、先ほど引用になられました最高裁判所の大法廷の判決は、統治行為の基本に関するものであるから、したがって裁判権は及ばないのだということで、言ってみれば、八十一条の枠外であるというふうに御判断になったものと考えております。
  71. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 憲法の八十一条は違憲審査権についての規定でありますけれども、同じく九十八条には「この憲法は、國の最高法規であって、その條規に反する法律命令、詔勅及び國務に關するその他の行爲の全部又は一部は、その効力を有しない。」すなわち違憲、無効である、こういうように憲法は規定しておりまして、この九十八条によって、憲法が最高法規であることをみずから規定をいたしております。そして違憲であるか否かの判断は、先ほどの八十一条によることになっております。そして、この八十一条は九十八条と相まって、憲法が最高法規であることの担保になっているわけでございます。  この八十一条の規定による「處分」に当たる解散の場合について言いますと、解散無効の訴えに対しては、裁判所はこれを正面から取り上げて判断することが、先ほども飯田委員から話がありましたように、政治を憲法に基づかせることになると私は思っております。このことは、憲法が最高裁判所に課した重大な使命だし、また八十一条の本来的な意義がまさにこの点にある、私はそう考えております。  そこで、お伺いしますが、これまでのように、こうした訴えに対して憲法判断を回避することは、最高裁判所の責任の放棄だと思うのですが、最高裁はどうですか。
  72. 西山俊彦

    西山最高裁判所長官代理者 これは全くの私の推測でございますが、最高裁判所は責任を放棄するか否かというふうなことを考えて判決をしているのではないのではないか、もっぱら法律論の立場から判決を出しているのではないかと考えておるわけでございます。
  73. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 違憲審査権の行使につきましては、先ほども御答弁がありましたように、具体的争訟事件を前提としなければ行使を許さない、つまり本案判決をしない、こう言っているわけですけれども、要するに、そのことについては憲法上何ら規定がないわけですね。そういう制限規定がない。制限規定がないにもかかわらず、具体的な争訟事件の中でなければ憲法判断を示さないということ自体は、つまり憲法違反ではないか、こう思うのですね。  もう一つ、さっきの法制局の御答弁の中でちょっと気になっておるのですが、明治憲法には違憲審査に関する規定が何らなかった。だから、これで八十一条を規定したことに意味があるんだ、こうもおっしゃっておりますけれども、これはちょっと解釈が違うと思うのですね。それは、さっき私か九十八条と八十一条との関連で申し上げたとおり。また法制局は、裁判所は具体的争訟にかかわる事件処理する、その枠内でしか違憲審査をしない、こうもおっしゃっていますけれども、法制局、そういう規定がおありですか。
  74. 味村治

    ○味村政府委員 これは「司法」という章に規定があるわけでございます。  立法、行政、司法、こういうふうに三つ並んでおります三権分立のうちの一つの権であります司法権、これは、具体的な争訟事件につきまして、法律的な見地からそれを裁くというものを、言うのであろう。したがいまして、憲法の司法というのは、当然にそのことを予定しているのであろう、このように考えている次第でございます。
  75. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 具体的な争訟ということは憲法の条文のどこにも規定がないのです。にもかかわらず裁判所みずから、憲法の規定に違反しながら、そういう権限の枠の制約をするということは、裁判所としては司法権の範囲をみずから否定してしまうような、つまり自殺行為に当たるのではないだろうか、こうも私は思えるわけです。     〔委員長退席、横山委員長代理着席〕 そうした政府の憲法解釈というのは、いわば、裁判所法の三条に規定がありますけれども、具体的争訟事件について審判をするということですね、そういう規定や、これに類する民訴法等の規定がありますけれども、そうした規定に引きずられた解釈か、そういう解釈が根拠になっているのではないかと思うのです。  もしそういう解釈をとるとするならば、憲法の解釈に当たって、憲法の下位法であるこうした法律に憲法の条文の解釈を求めるということになって、これはきわめておかしな話で、さっきも申し上げた憲法九十八条に違反するのではないかと思うのです。逆に言いますと、いま現在具体的な法律上の争訟の存在を必要としないで、この法令の合憲性を抽象的に審査するための訴訟手続に関する規則というのはないわけです。     〔横山委員長代理退席、委員長着席〕  ところが、ここで、たとえばの話ですが、もしそういう規定が将来あったとするならば、直接に抽象的な法令の合憲性を審査することが、現在の憲法体制でできるのではないかと私は思うのです。それは、法制局どうですか。
  76. 味村治

    ○味村政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、やはり憲法八十一条は司法権の枠内での規定であると考える次第でございます。  司法と申します言葉は、これはもう古い沿革を持っている言葉でございますし、各国の三権分立の思想からいたしましても、司法という言葉が私の先ほど申し上げたような内容を含んでいるものであると考えて、これは別に民事訴訟法とか刑事訴訟法とかいう下位の法令を前提にしてというわけではございませんで、そういう成り立ちからそもそもがそうなんであると考えて、少しもおかしいことはないというふうに思うわけでございます。  そのような次第でございますので、抽象的な違憲立法審査権と申しますか、何ら争いのないのにかかわらず、この法律が憲法違反だというまでの裁判をする権限を最高裁判所に与えたものであるというふうには理解できないわけでございます。
  77. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 この議論は、いまここで早急に結論を出すことは不可能だと思いますので、先に進みます。  憲法七十七条は規則制定権を規定しておりますが、よくごらんになってください。この条文では  「訴訟に関する手續」こう書いてありますのは、民事、刑事に限らず、いま私が問題にしようとしている憲法裁判も、これが訴訟である以上は、憲法裁判に関する訴訟手続に関する規則は当然含むと私は思います。この憲法裁判の訴訟手続を除外するということはおかしいのではないか。この点、法制局どうですか。
  78. 味村治

    ○味村政府委員 これは前提が異なるわけでございまして、憲法八十一条は、私どもは先ほど申し上げましたように解釈いたしております。  したかいまして、この「訴訟に関する手續」の中には、そのような憲法裁判所における抽象的な、先生のおっしゃいますような抽象的な憲法裁判をするについての手続は入っていないというように考えております。
  79. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 先に進みますが、このことの関連で、先ほど飯田委員からの質問に対しまして納得のいく話がなかったので、もう一度私は聞いておきますが、最高裁判所は、いま私が申し上げた憲法裁判のための訴訟手続を、この七十七条に基づきましてその規則を制定すべき責任があると私は思うのです。その点ぜひ御検討願いたい。御答弁は要りません。  次に、私が冒頭申し上げました統治行為論でもって憲法判断を回避してきておりますけれども、この統治行為論については学説上いろいろなことを言われております。裁判所判断の中で示しておりますけれども、これまで一般的に言われている学説をまとめてみますと、統治行為論の根拠になっておりますのは、一つは、対象となる国家行為の高度の政治性のゆえに司法権の判断になじまない。二つには、権力分立のたてまえから、立法府の決定に対して裁判所はその判断を自制すべきだ。三つ目には、違憲審査により生ずる害悪の方が違憲状態を認容する害悪よりも大きいときには、大害を避ける必要から裁判所が自制をするのだ、こういうことを言っておりますけれども、これはまさに憲法八十一条の理解が足りない。あわせて憲法が国の最高法規であるとうたった九十八条の理解が足りない、こう私は思うのです。  したがって、私は、統治行為論を認めるというのは、まさに裁判所が与えられた司法権をみずから放棄しているに等しいのではないか、こう思うのですね。そういうことで、この点についてはまた時を改めてお尋ねをしたいと思いますが、一つだけ伺っておきますが、要するに、政治はあくまでも憲法に基づかなければならない、憲法が最高唯一のものだ、こう私は考えておるのです。したがって最高裁は、憲法に基づく政治、つまり憲法に基づく立法、行政、司法、こういうものが行われているかどうかを憲法に基づいて法律的に判断するための、最終にしてかつ最高の判断機関だと思うのです。にもかかわらず、最高裁がみずから統治行為論を認めて憲法の判断を回避することは、先ほど申し上げましたように最高裁判所の自殺行為だと思うのですが、どうですか法制局。
  80. 味村治

    ○味村政府委員 先ほども申し上げましたように、政治は憲法に従ってしなければならない。政治でもって憲法を改める、憲法に反する政治を行うということは許されないことは当然でございます。  したがいまして、仮に内閣において何らかのことを決するという場合におきましては、私ども内閣法制局といたしましては、法律上の意見を内閣に申し上げるという立場から、違憲なことが行われることが絶対にないように、細心の注意を払って御意見を申し上げておる次第でございまして、決して内閣は憲法に違反いたしました行為をしていいということではないわけでございます。たとえ最高裁判所が統治行為論をおとりになりまして、統治に関する基本的な行為については裁判権は及ばない、こういうふうにおっしゃったからといって、内閣といたしまして、では違憲なことをやってもいいのだというようなことで、そんなことを考えて内閣の決定を行っている、内閣の行為をしているということは決してございません。  最高裁判所のお立場としては、先ほどの大法廷の判決にもございましたように、三権分立の原則に由来するということで、やはり国民の直接の選挙を受けていらっしゃらない裁判所としては、ある程度の自制をもって行うということでございましょうし、それがアメリカあたりの考え、ポリティカル・クェスチョンの考え方とも一致するわけでございまして、それは三権分立の原則を規定したこの憲法に忠実な考えであると最高裁判所が御判断になって、そのような統治行為の理論を御採用になったものだというふうに理解しております。
  81. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 時間が参りましたので、この議論はやめますが、私は決していまの答弁に納得しているわけではありませんし、全く並行の答弁ですので、また次の機会に、これは非常に重要な問題ですから、時間をかけてじっくりやりたいと思います。  以上で終わります。
  82. 木村武千代

    木村委員長 木下元二君。
  83. 木下元二

    ○木下(元)委員 私は、まず民事法務行政分野における定員不足問題についてお尋ねをいたします。  近年、登記部門での事務量の増加はきわめて著しいものがあります。そのために、法務局における施策は登記部門に重点配分せざるを得ない現状に追い込まれ、登記以外の事務の処理体制の充実、整備が重大な立ちおくれを来しております。それとともに、登記事務それ自体の適正、迅速な処理すらできない、こういう深刻な事態も生まれております。その意味で、法務局における要員確保というものは、法務省みずからが「法務局を整備、強化するための総合計画」の中で認めておりますように、まさに法務局の緊急、基本的な課題になっております。  全法務労働組合の登記事件数及び担当職員数についての調査結果によりますと、昭和四十三年を一〇〇としますと、甲、乙合わせた事件数は五十三年度は二一四となっておるのに対して、登記従事職員数は一一五となっております。事務量の増加に対し職員の増加が追いつかない。職員の労働強化と国民への行政サービスの低下が進んでいるわけであります。職員不足による登記の過誤と職権更正件数は、年々増加の一途をたどっております。法務当局としても、こうした実態を詳細に把握していると思いますが、統計的にはどうなっておるでしょうか。  もう一つ、こうした事務量の増加に見合った定員が確保されないために、最近京都や盛岡で表面化しました地面師等による登記簿の抜き取り、持ち帰り、改ざん事件が依然として続発をしています。国民からの審査請求事件や国家賠償請求事件も年々ふえています。この点については、法務省自身、総合計画の中で「登記制度の信用を維持する上において看過しえない状況を呈している。」とか「弁解の余地のない遺憾な事務処理が、なお、後を断たない状況にある。」とか「不正登記の申請事犯が多発している。」と認めておられるわけでありますが、統計的にはどのような実情、傾向にありましょうか。今後どのような防止対策、改善策を進めていく考えでしょうか。
  84. 藤井正雄

    ○藤井説明員 法務局の所掌業務の中心をなしております登記事件につきましては、ただいま御指摘がございましたように、過去十数年来非常な経済の成長あるいは公共事業の活発化に伴いまして事件が増加してまいっておりまして、人員の手当てが必ずしも十分に行われておりませんために、ともすると事件処理に粗漏が生ずるという現象は、否定できないところであろうかと思われます。  ただいま御質問のございました登記における職権更正事件数でございますが、昭和五十三年度で申しますと一万六千七百件ほどでございます。この事件数自体、年を追ってわずかずつ増加してきているのが現状でございますが、ただ、登記の全事件数の中でその割合を求めてみますと、それは必ずしも異常に多いというほどのものではないのではなかろうかと考えております。  それから登記簿の紛失、改ざん等の事件が最近盛岡あるいは京都などで発生いたしております。これも、私どもの方の事務処理体制が人手不足等のために必ずしも十分でないということのために起こった現象でございまして、国民の方々に大変御迷惑をおかけしているところで申しわけないところでございますが、件数で申し上げますと、この種の事件は、昭和五十三年では発生件数は二件でございます。
  85. 木下元二

    ○木下(元)委員 登記簿の持ち帰り、抜き取り、改ざん事件が後を断たないのは、定員不足で法律で義務づけられた登記官の面前での閲覧が有名無実になっている、そういうところに最大の原因があるように思われます。法令違反という点では、乙号事件処理のための応急的暫定処置として行われております民事法務協会への下請化、これに伴って協会職員が書庫に出入りし、登記簿の出し入れをするという事態が常態化しております。土地家屋調査士や司法書士事務所の職員や他の官公署の職員などによる部外応援も常態化しています。法の番人ともいうべき法務省の現場で、こうした法令違反が長期にわたって放置されてよいとは思えないわけであります。  登記官の面前での閲覧は法令どおり行われているのでしょうか。部外応援者は年間延べどのぐらいの人数に達しておるのでしょうか。
  86. 藤井正雄

    ○藤井説明員 乙号業務のうち、登記簿の謄抄本の請求につきましては、その工程の一部を民事法務協会という団体に委託いたしまして行わせておるわけでございますが、その委託の内容は、登記簿の複写と、その前及び後に続きます登記簿の搬出及び搬入の手続について委託をしておるわけでございますので、協会の職員が書庫に出入りして登記簿を持ち出し、コピーを終わった後、さらにそれをおさめるというのは委託の範囲内の仕事でございますので、何ら違法なことではないというふうに考えております。  ただ、司法書士等のいわゆる業者が従来ややもすると書庫の中に出入りするという現象がなかったわけではないわけでございますが、これはいろいろと問題もございますし、また国民の方々からも不信の目で見られるおそれもなしとしませんので、登記簿の搬出あるいは搬入につきまして応援をさせるということはないように、厳しく指導をいたしておるところでございます。
  87. 木下元二

    ○木下(元)委員 登記関係部門の下請化とか部外応援というような事態は、少なくとも本来あるべき姿ではないということは否定できないと思うのです。正規の職員をもって見ているのが本来の姿でありましょう。少なくとも、現在応急的、暫定的対策として行っています民事法務協会への下請あるいは常態化している部外応援、こういうものは縮小すべきことは当然であります。法務局の整備、強化のための総合計画では縮小、廃止を目指すべきであると考えますか、いかがでしょうか。
  88. 藤井正雄

    ○藤井説明員 業務量に見合った増員数が必ずしも得られないために、乙号事務の一部下請を行っておるわけでございますが、この業務自体は本来は登記業務の一部をなすわけでございますから、定員内でこれを処理することか望ましいということは、御指摘のとおりであろうかと思われます。ただ現状では、非常にその定員措置を得ることかむずかしいために、このような方法を取り入れることによりまして、事務の円滑な推進に役立たせているというのか現状でございます。  それから部外応援と申しますのは、これはそういった職員あるいは委託をした協会の職員以外の方々が登記事務の一部の手助けをしてくださるということでございまして、私ども、これは決して望ましいことだとは考えておりません。登記事務の繁忙な折にやむを得ずこれを黙認しておるというのが現状でございますが、これは逐次改めていくべきであるというのは当然であろうというふうに考えております。
  89. 木下元二

    ○木下(元)委員 この法務局における定員不足問題は、戸籍や人権擁護事務などの分野でも深刻な事態を生んでおるようであります。国民の権利保全、擁護など国民生活に密着した民事法務行政の部門の定員については、民生安定に資する行政にふさわしく十分に確保すべきことであります。  大蔵省や行管庁あたりでは、来年度の予算要求に対し、これまでにない厳しい態度で臨むということも言われておるようであります。しかし、民事行政部門の定員増については、気がねすることなく堂々と要求すべきであると考えますが、いかがでしょうか。
  90. 藤井正雄

    ○藤井説明員 民事行政部門には、登記、それから戸籍、国籍、供託など各種の事務が含まれるわけでございます。  そのうち事務の大半を占めるのが登記でございますので、私どもは、もっぱら登記一本にしぼって増員の要求をしてまいりました。それ以外の部門について増員の必要性がないというわけでは決してございませんか、この非常に厳しい定員事情のもとにおきまして、あれもこれも要求するというわけにはまいりませんので、登記に重点を置いて要求をしてまいっているのが実情でございます。  私どもといたしましては、事務量の増に対処するために必要な増員数につきましては、現下の非常に厳しい定員抑制政策のもとではございますが、何とかこれについて御配慮いただけますように、極力お願いをしておるところでございます。
  91. 木下元二

    ○木下(元)委員 戸籍部門では、定員、予算が十分でないために、もっぱら受動的な事務に終始して、法務省自身が総合計画で認めておりますように、「法の本来予定している姿からは程遠いもの」というように言っておるわけであります。人権擁護部門でも、那覇局以外は支局に専従職員の配置が行われていないという驚くべき実情もあるわけです。だから、こういうものをほうっておくのではなくて、やはりきちんと予算要求はすべきであろうと思います。  行政管理庁としては、民事法務行政分野における定員不足の実態、不正常な事務処理の実態について、どのように認識をしておられるでしょうか。この分野の増員要求に対しては、民生の安定、向上に資する行政にふさわしく十分な定員を確保するように、査定に際しては特段の配慮を払うべきであると考えますが、いかがでしょうか。
  92. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  法務局、地方法務局等の民事行政部門におきましては、まさに戸籍なりあるいは人権擁護なりあるいは登記なりにつきまして、国民生活と非常にかかわりの深い部門を担当いたしておるわけでございますので、われわれといたしましても、従来から相当の増員措置を講じてまいっておりまして、四十四年度以降この十年間をとりますと二千六百五十六人、五十四年度で申し上げますと二百四人の増員措置を行ったところでございます。ただ先生御指摘のような、まだ部外応援に依存しておるというような問題もございますので、われわれとしても、今後ともそういう実態を認識して対応していきたいというふうに考えておるところでございます。  ただ、五十五年度について定員管理について考えてみますと、行財政の問題は非常に厳しい状況にございまして、従来よりも一段と定員管理については厳しくやれというような国民の声が非常に強くなっております。したがいまして、政府全体といたしましては、国家公務員の数を縮減する、削減数よりも増員数が上回らないというような方針のもとに、定員管理をやってまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、御指摘のような国民生活にかかわりの大きい部分については、特段の配慮をしてまいらなければならないというふうに考えておりまして、民事行政部門につきましても、その一環として検討ないし調整を進めてまいりたいというふうに考えております。
  93. 木下元二

    ○木下(元)委員 民主的な定員管理の実行、民事法務行政分野における増員要求に対する特段の配慮を重ねて要求をいたしまして、この点については終えたいと思います。  次の問題ですが、刑事局長来ておられますか。私は、増収賄をめぐる法律問題について見解を伺いたいと思います。  刑法百九十七条でありますが、「公務員又ハ仲裁人其職務二関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若クハ約束シタルトキハ」ということが構成要件になっておるわけであります。「其職務ニ関シ」とあるわけでありますが、これは本来の職務執行行為ばかりではなく、これと密接な関係のある行為に関する場合を含むと解してもよいのではないでしょうか。  たとえば議員、これは町会議員でも国会議員でも同じだと思いますが、議員にとっては、ある議案の賛成を得るために他の議員を勧誘、説得することは、職務行為ではないけれども、職務に密接な関係がありますから、これに関して賄賂を収受するときは本罪となると解してよいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  94. 前田宏

    前田(宏)政府委員 お尋ねの点でございますが、いま仰せになりましたように、職務に密接な関係のあるものを含むという理解でございますけれども、具体的に、それではどういうところまでがいわゆる密接な関係かということになりますと、個々の事案によっていろいろと違ってくるかと思います。
  95. 木下元二

    ○木下(元)委員 一般的な見解を伺いたいと思うのです。  国会議員の職務権限の点でありますが、議員は、自己の所属する委員会ばかりではなく、自己の所属しない委員会に属する議案の審議についても意思決定に参加できることになっておりますので、この点で職務権限を有すると見るべきであろうと思います。結局、国会議員の権限は、自己の所属する議院、衆議院なら衆議院の法案成否の意思決定に参加することができますので、議事一般について関与できることになるわけであります。この見地から、議案の審査一般について一般的な職務権限があると解してよいのではないでしょうか。
  96. 前田宏

    前田(宏)政府委員 非常に抽象的な一般論としては、おおむね仰せのようなことが言えるかと思いますけれども、やはり先ほど申しましたように贈収賄の成否というものはいろいろな要素が絡み合った複雑な問題でございますので、その御議論だけで直ちに結論が出るというわけにもまいらないかと思います。
  97. 木下元二

    ○木下(元)委員 それは具体的なケースによって、いろいろなほかの要素とか要件もプラスされて判断されるということは当然のことであります。  そういうことではなくて、私が聞いておりますのは、一般的な問題として議員の職務権限というものはどういう場合に認められるかということを聞いておるわけでありますから、認められるか認められないかでお答えいただいたら結構であります。  当該議案がかかる委員会委員である場合、いまさっき私が聞きましたのは、自己が所属をしない委員会の場合を伺ったわけでありますが、そうではなくて、当該議案がかかる委員会委員である場合には、最も直接的に、明確に職務権限が認められる場合であろうと思いますが、そういうふうに解してよろしいでしょうか。
  98. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まあ一言で言えば、そういうことになろうかと思います。
  99. 木下元二

    ○木下(元)委員 贈収賄が成立するかどうかの重要なポイントの一つは、公務員の職務行為や職務と密接な関連を有する行為に対する報酬という性格を帯びているかどうかという点であろうと思います。  報酬という性格を帯びている限りは、議員の場合、たとえ政治献金として公然と授受され、政治資金規正法による届け出がなされておりましても、賄賂であるということには変わりがないのではないでしょうか。そのように考えてよろしいでしょうか。
  100. 前田宏

    前田(宏)政府委員 これまた一般的、抽象的なお尋ねということでございますので、結論的にはそのように申し上げてよろしいかと思いますけれども、やはり報酬性といいますか、対価性とかいいますのもそう簡単には言えない点があるということ、また、これは改めて申すまでもございませんけれども、その点についての当事者の認識の問題が非常にかかわってくることであろうと思います。
  101. 木下元二

    ○木下(元)委員 賄賂性がどういう場合に認められるか、これはむずかしい問題があろうかと思います。  この賄賂というのは、職務に関する不法の利益というように言われておるわけでありますが、多くの場合には、いま対価性ということを言われましたが、職務に対する報酬または対価たる性質を有するわけでありますが、それは一般的な関係があればよくて、個々の職務行為とその利益との間に対価関係のあることを要しないというのが一般的な見解ではないでしょうか。
  102. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ちょっとお尋ね趣旨が、あるいは理解が不十分かと思いますけれども、余り漠然としたことではやはりまずいわけでございまして、一般的、個別的ということも、言葉の問題かもしれませんけれども、それなりの対価性がないといけない、かように考えます。
  103. 木下元二

    ○木下(元)委員 それは結構ですが、たとえば議員の場合に、あるグループから、ある法案の成立に協力をしてもらいたいという趣旨で金員が贈られた。その法案を通すために何ら不正を働くという必要はないのであって、議員としての適法、正当な職務活動を通じて法案成立に力をかす、そういう場合でも、これは職務に関して賄賂を収受するという限りは犯罪を構成する、こういうふうに理解してよいのではないでしょうか。
  104. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いわゆる構成要件的な意味ではそういうことになろうかと思いますが、それで直ちに御質問に対して肯定をいたしますと、いろいろ認識の問題を含めて積極の結論を申し上げたようなことになりますので、その点を念のために申し上げておきたいと思います。
  105. 木下元二

    ○木下(元)委員 ほかの要件とか、いろいろな要素が加味されて判断ということになると思いますが、それはそれで結構です。  一般論としまして、ある団体がある法律改正を目指して種々運動を行って、ようやく具体化した、その改正案の国会通過を図るという目的で、議員、ことに法案のかかる委員会所属の議員らに金を贈ったというケースがあるといたします。この場合には、金貝を贈った団体の役員について贈賄罪が成立するのではないでしょうか。
  106. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど来のお尋ねにも申し上げておりますように、贈収賄の成否というものは大変微妙なことでございますので、いまのお尋ねで、即一〇〇%成立するということになりますと、誤解を招くおそれがあろうかと思いますが、強いて申し上げれば、成立する場合もあり得るということだと思います。
  107. 木下元二

    ○木下(元)委員 贈賄罪が成立する場合があり得るという言い方をされましたか、贈賄罪が成立をすれば、それに対応して、金をもらった側は通常は収賄罪が成立をする、こういうことになるわけですね。
  108. 前田宏

    前田(宏)政府委員 再々お答えしている中で申していることでございまして、繰り返すようで恐縮でございますけれども、贈収賄というのは両方の当事者の意思の一致が必要なわけでございますので、贈賄罪が成立したからといって、即収賄罪が成立するというわけにはまいらないわけでございます。
  109. 木下元二

    ○木下(元)委員 それは直ちにということではありません、イコールではないということは当然ですね。しかし通常は、贈賄が成立をすれば、それに対応して収賄が成立をする、こういう関係ですね。
  110. 前田宏

    前田(宏)政府委員 細かい言葉遣いのことで反論するようで、まことに恐縮でございますが、通常という言葉がまたむずかしいことでございまして、贈賄罪が成立した場合に、相手方が収賄という問題が起こるということはあり得るかと思いますが、通常成立するというわけには直ちにまいらないと思います。
  111. 木下元二

    ○木下(元)委員 特定の法案を通したいという趣旨で金を贈った場合ならば、いまあなたが言われたように、贈賄あるいは収賄が成立をし得るということなんでありますか、そういう場合ならば、それは選挙の前にその収受があっても理屈は同じことであろうというふうに思うのです。その点はいかがでしょうか。
  112. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いまのお尋ねで、選挙の前というのはどういう意味かと思いますが、当時議員でおられないということでございましょうか。——これも一般論でございますか、将来の職務に関してということも、場合によってはあり得るということであろうかと思います。
  113. 木下元二

    ○木下(元)委員 今国会に提案、審議をされております税理士法改正案は、これを通すために大がかりな政界工作が行われていたことが明るみに出てきました。日税連関係だけで一億三千万円がばらまかれたと報じられております。  税政連財務委員会の安井徳次副委員長は、毎日新聞記者と会い「法案を一語一句変えないで通す工作のための献金だった」と重大証言もしているということであります。こういう金で法案を買収するようなことは、断じて許されてはならないと思うのであります。贈収賄罪が成立をする疑いは濃厚だと思います。昨日は、有志税理士が立って告発がなされたという報道もされております。  これに対して、どのように対処をされる方針でありましょうか。
  114. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいまも御指摘がありましたように、告発状が出たということでございます。  したがいまして、そういう意味では捜査の対象になっているわけでございますが、先ほど来何回か申しておりますように、贈収賄罪の成否ということにつきましては、いろいろな角度からの検討、吟味が必要であろうと思いますし、その中には職務関係あるいは金の授受の趣旨、また特に問題になるのは関係者の認識の問題、いろいろあるわけでございまして、そういう点を十分検討しないと、何とも申し上げかねるわけでございますけれども、検察当局といたしましては、告発状も出ておるわけでございますので、それなりに対処するもの、かように考えております。
  115. 木下元二

    ○木下(元)委員 新聞報道によりますと、日税連の幹部が問いに答えた形で報道されておるのですが、「今回の献金は税理士法改正法案の早期成立を促すための賄賂と見る声もあるが」という問いに対して「すでにこの法案は閣議決定され、国会にも上程されている。もう済んだ法案だ。つった魚にえさをやるばかはいない」こういう答弁をしているのです。このたとえがおかしいと思いますが、魚釣りにたとえるなら、これはまだつっていないと思うのです、法案がまだこの国会を通っていないわけでありますから。こういうやりとりをしておるわけであります。  しかし、いま私のいろいろな仮定的、一般的な質問に対して局長のお答えがあったように、この税理士法改正案をめぐる問題、これは贈収賄が成立をする余地というもの、可能性というものは十分にある。いまお答えになったように、いろいろな問題を検討、吟味する必要がありましょうが、その可能性は、これからよく検討して答えが出てくると思いますが、そういう問題であって、これはいまの新聞の報道にありますような、もうつり上げてしまって問題にならないというようなものではないのだということは明らかだと思いますが、その点さらに明確にしてもらいたいと思います。
  116. 前田宏

    前田(宏)政府委員 この件につきましては、再々申しておりますように、告発状も出されておる、またいろいろと御論議がされておるという大変微妙な段階でございます。  したがいまして、今後どのようなことになるかということにつきまして、見込みがあるとかないとかいうようなことを申し上げることは、いろいろな意味で適当でないと思いますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  117. 木下元二

    ○木下(元)委員 莫大な金を政界にばらまいて法案を押し通すということ、私は、こういうことがまかり通っては大変なことだと思うのです。  税理士会以外にもいろいろな多くの団体があります。公認会計士会、行政書士会、弁護士会、そのほかにもいろいろ業界団体があるわけでありますが、この税理士法改正案に見られるように、金で法案を買収するというような違法かつ不見識な行為を放置をするならば、これはだんだんそのような風潮がつくられてきます。  ですから、私は、告発もあることでありますから、断固厳正な捜査に乗り出すように、ひとつそういう方針で進めていただきたい、特に要請をいたしたいと思いますが、いかがですか。
  118. 前田宏

    前田(宏)政府委員 検察当局といたしまして、犯罪の疑いがあるということが認められました場合に、厳正な態度でこれに臨むことは当然でございます。
  119. 木下元二

    ○木下(元)委員 次は大蔵省に聞きますが、日税連が五十三年十月二十六日に臨時総会を開いて、税理士法改正問題などの法対策関係費として相当な資金が必要なところから、五十三年度で期限の切れる法対策特別分担金、会員一人当たり年二千円でありますが、これにかえて特別会費の規定を設けて、五十四年度、五十五年度に一人当たり年三千五百円を徴収することを決めております。これは知っていられるでしょうか。
  120. 小野博義

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  いま御指摘になりました臨時総会においてそのような会則の変更が行われたことは承知しております。
  121. 木下元二

    ○木下(元)委員 これは臨時総会を傍聴されたのか、傍聴か参加か知りませんが、直接この総会に行かれて知っていられるわけですか。
  122. 小野博義

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  総会の決議につきましては、税理士法四十九条の十一の規定によりまして、大蔵大臣に報告提出されることになっておりますので、それを通じて承知しておるわけでございますし、また当日、私ともの方の係官か総会に傍聴人として——傍聴と申しますか、来賓として出席しているということは事実でございます。
  123. 木下元二

    ○木下(元)委員 この十月二十六日の提案というのは突然出たものではなくて、たとえば五十三年八月二十五日に正副会長会が持たれて、そこで税理士法改正実現のための資金については対策を講じることになっておるようであります。さらに九月二十二日の理事会が開かれて、十月二十六日の臨時総会に出す原案を決めているということもあります。そういうことも知っていられますか。
  124. 小野博義

    ○小野説明員 総会の決議につきましては報告義務があるわけでございますけれども、正副会長会とか理事会につきましては特に報告義務はございません。ただ、そのときに係官が傍聴しておったようでございます。
  125. 木下元二

    ○木下(元)委員 そのときというのは、いまの理事会、正副会長会、両方ともですか。
  126. 小野博義

    ○小野説明員 仰せのとおりでございます。
  127. 木下元二

    ○木下(元)委員 それから「税理士界」というニュースがありますが、いまのような総会なりあるいは理事会あるいは正副会長会、そういったことについては税理士会のニュースで報道もされておるのですが、この税理士会のニュースは大蔵省の方に来ているわけですか。
  128. 小野博義

    ○小野説明員 参っております。
  129. 木下元二

    ○木下(元)委員 大蔵省としては、税理士法改正などのために特別会費の制度をつくる、その金集めに日税連が乗り出すということをどのように理解していたのでしょうか。
  130. 小野博義

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  昨年の十月二十六日の日税連の大会におきまして、法対策関係費二億円を徴収するということを決議したということでございますけれども、このときの会議につきましては、会則の一部を変更いたしまして、先ほど指摘がございましたように、税理士会が特別会費として会員一人当たり年三千五百円の割合で計算した金額を日税連に納付させる旨の規定を設けたということでございます。また、税理士法改正問題を初めとする一連の法対策関係費といたしまして相当程度の資金需要が見込まれるため、二億円以内の借入枠を設けるという決議がされたということは承知しておるわけでございます。  しかしながら、これにつきましては、日本税理士会連合会と申しますのは、税理士法に基づいて設立された特別な法人ではございますが、その活動につきましては、税理士法の目的及び趣旨に反しない限り、できるだけその自主性を尊重すべきものと考えておるわけでございます。特に昭和三十六年に、会則の認可につきましては、特別のものを除いて変更について認可が要らないというふうな法改正が行われ、これについては、税理士会の自主性を尊重するという趣旨のもとに当該法改正が行われたというぐあいに聞き及んでおりますが、そういうこともございまして、役員とか会費とか庶務等、会の運営に関する事柄については、日税連の自主性にゆだねられるというふうに考えておるわけでございます。
  131. 木下元二

    ○木下(元)委員 そうしますと、そういうふうに特別会費の規定をつくって金を集める、従前よりも金額をアップして新たな制度をつくって金を徴収する、そういうことになったわけで、それは結局政界工作と申しますか、この法案を通すために国会議員に金をばらまく資金だ、そういうことは大蔵省としては理解をして認めておったということですか。
  132. 小野博義

    ○小野説明員 特別会費につきましては、昭和三十年代の末ごろから徴収が開始されているわけでございまして、昭和四十八年度に、それまでの税理士一人当たり年一千円を二千円に引き上げて以来一現在まで据え置かれているわけですが、それを臨時総会において三千五百円に引き上げたわけでございます。これらにつきましては、従来の二千円を三千五百円に引き上げたというようなことでございますので、特に問題とするには当たらないというふうに当時考えておったわけでございます。  また、念のためちょっと申し上げますが、五十三年の十月の臨時総会において三千五百円に引き上げられたわけでございますけれども、この決議事項が実施される前の昭和五十四年七月二十七日の総会におきまして、また年二千円に戻すという修正決議が行われておりまして、結果的には、一人当たりの会費としては従来と変わっていないというふうに承知しております。
  133. 木下元二

    ○木下(元)委員 いや、後のことはよろしいですよ。そういうふうに新しい制度をつくって三千五百円にしたのは五十三年十月でしょう。いまあなたは後のことを言われますが、それは五十四年七月、ずっと後になってそういうふうにもとに戻した。しかもその戻したのは、いろいろ内部で問題があって、批判が出て、もとに戻ったのでしょう。  そういうことを聞いているのでなくて、そういうふうに三千五百円にしたときに、大蔵省としては、そのことを理解しておったのかどうか、政界工作の資金として資金が必要でそういう制度をつくるという理解をしておったのかどうか、ここを聞いているのですよ。
  134. 小野博義

    ○小野説明員 五十三年十月二十六日の総会におきまして、特別会費の引き上げ等が決議されたことは存じております。また、それによって調達されました資金の一部を税政連へ寄付するということは、予算書等で明らかであったわけでございますが、それ以上のことは、総会においては明らかにされていなかったわけでございます。  ただ、政治団体たる日本税理士政治連盟が、日税連からの寄付金、税政連の会費の中から政治献金を行うということはあり得ることかと思われますけれども、税政連については、日税連とは別個の団体でございますので、私どもの関知するところではないというふうに考えております。
  135. 木下元二

    ○木下(元)委員 日税連から税政連に金が行く、その税政連から政治献金が行われる。しかし、政治献金を行うのは税政連だから、つまり日税連ではないから、そこまでそういうことをタッチする必要がないというふうに聞こえたのですがね。  これは、私はおかしいと思うのですよ。あなたのところは税政連に監督権があるのかどうか私はよく知りませんが、少なくとも日税連に対して監督権があるわけでしょう。日税連は、法案を改正するために金が要る、その金を集めて、そして税政連に寄付をする、こういうことになるのですか。そうすれば、法案をつくるために、そういうような金を集めて寄付をする、これは私は自主権の問題ではないと思うのですよ。自主権はあくまで尊重しなければなりません。しかし、自主権を尊重して、一体そういうことがいいことか悪いことか、違法なことかどうか、ここが一番大事でしょう、監督権はあるのですから。そして、違法な場合とかあるいは公益に反する場合には、そういう行為を取り消すこともできる、こういう規定があるわけでしょう。どうしてチェックしなかったのですか。  その点について、あなた方の方では反省がないのかどうか、これは大蔵省として当然であって、別に何ら問題ないというふうにお考えなのか。私は、これは非常に問題がある、大蔵省がもう少しきちんとした態度をとっておれば、こういう問題は起こっていなかったと思うのですよ。いかがですか。
  136. 小野博義

    ○小野説明員 繰り返しの答弁になって恐縮でございますけれども、私ども存じておりましたのは、法対策関係費として相当の資金を調達するために、会則の変更を行って特別会費を増額したということでございますが、その調達した資金の一部が、政治団体たる日本税理士政治連盟に寄付されるということは存じておったわけでございます。  しかしながら日本税理士政治連盟、税政連と申しますものは、税理士を母体としておりますけれども、日本税理士会連合会とは全く別個の団体、別個の政治団体でございまして、当庁の監督権が及ぶものではないものでございますので、この行動について云々する立場にはないわけでございます。
  137. 木下元二

    ○木下(元)委員 日税連が税政連を通じて政界工作をする、こういうことになるのじゃないですか。それは結局、お金を集めてその資金を税政連に寄付をして、そして政界工作をする、こういうことなので、そのために、そういう目的で初めからこういう制度をつくって会費を取る、こういうことなんでしょう。  日税連が金を集めて税政連に寄付をする、これだけが目的でやったごとで、そしてさらに、それからの法改正のための政界工作というのは税政連が独自にやったことだ、こういうふうに考えておられるのですか。そうではないでしょう。そうではないことは、税理士会のニュースなどを逐一見れば明らかなんですよ。これはあなたの方で一々目を通しておられると思うのですよ。そうすれば、あなたの言われておることがいかにも形式的で、単につじつまを合わせるということだけであって、本当は何もかもよく御承知で、しかもこれをチェックしていない、こういうことが明らかになると思う。  この点、もう繰り返しませんが、大蔵省の方としては、これはどうなんですか。この点については何ら悪いとは思っていない、反省する必要はない、こういうことですか。
  138. 小野博義

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  当時私どもが考えておりましたことは、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますけれども、日本税理士会連合会の自主性をできるだけ尊重すべきであること、特に役員とか会費とか庶務等の会の運営に関する事柄については、三十六年に認可事項から外したというようなこともございまして、できるだけ自主性に任せるべきであるというふうに考えておりましたこと。また、日税連が日本税理士政治連盟に寄付したことについては、税理士業務の改善、進歩に資するためという会則に掲げる目的に照らしまして、その趣旨から必ずしも外れるものではないというふうに考えておりましたこと。それからまた、大蔵大臣の日税連に対する税理士法上の監督権と申しますものは、日税連の適正な運営を確保するため必要な限度において行使し得ると考えられておりましたこと。また一般的に申しまして、国家公務員と申しますものは、国家公務員法百二条の趣旨からいたしまして、政治的にはできるだけ中立な立場を維持する必要があるというふうに考えており、監督権の行使に当たりましても、そのような観点からの配慮が必要であるというふうに考えておったことによるものでございます。
  139. 木下元二

    ○木下(元)委員 もう時間がありませんが、その当時の時点で別にこれ以上のことはできなかったという趣旨で、現在こういう問題が起こってきて、当時もっときちんと監督をすればよかった、そういうふうにもお考えになっていないわけですか。
  140. 小野博義

    ○小野説明員 当時私どもがいたしました判断については、間違っていなかったと思っております。
  141. 木下元二

    ○木下(元)委員 現在は。
  142. 小野博義

    ○小野説明員 現在につきましても、特にその考え方を変えておりません。
  143. 木下元二

    ○木下(元)委員 もうこれで終わります。  あなた、自主権の尊重、自主権、自主権ということを言われますが、自主権と、それから違法な行為を行った場合に、あるいは違法な疑いのある、あるいは問題のある行為、そういう行為がある場合にどうするかということとは、やはりきちんと考える必要があると思うのです。自主権がありますから、あくまで尊重しなければなりませんが、自主権を尊重した上で、いろいろと指導をすることはできると思うのです。そういう指導をしない。だから、こういう問題が起こってきたと思うのですが、こういう点で私は非常に遺憾だと思います。  この問題は、きょうは大臣もおりませんし、時間も来ましたので、この程度にとどめまして、また改めて質問いたしたいと思います。
  144. 木村武千代

    木村委員長 これにて散会いたします。     午後零時四十七分散会