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橋口政府
委員 出版業界と
公正取引委員会の
関係でございますが、
昭和二十八年に法律改正によりまして
再販制度が認められたわけでございまして、それ以前はいわゆる法律上の
再販制度というものはなかったわけでございます。それ以後は、やはり
再販制度のもとにある
出版物の
価格とかあるいは
流通の状態につきましては深い関心を持ってきたわけでございますし、また
再販を励行するための
組織というものを
出版界は持っておったわけでございます。そういう点から申しまして、
公正取引委員会の数少ない
業界との接触の形態を持っておりましたのが
出版界でございます。
途中経過は省略いたしますが、いま小
委員長からお話がありましたように、
昭和五十二年に
調査したわけでございますが、これは
昭和四十八年、九年の狂乱物価の際に本の
定価が急激に
上昇する。しかも
上昇する
定価につきまして、本体に表示しないで、カバーとかあるいはサックに表示をするということに対する
消費者の苦情が強かった経緯等もありまして
調査をしたわけでございます。実際にまとまりましたのは五十二年ではございますが、
調査の対象となっておりますのは狂乱物価からやや後の事態を反映したものでございます。したがいまして、五十二年の
調査の中にも実は
再販売
制度につきましての提言もあるわけでございまして、
一般的に
再販が強制されておるような
実態は好ましくないという判断も示しております。ただ、おっしゃいますように、狂乱物価の際の本の
定価が、本の
マージンとかあるいは利益率等から見まして不適正なものではなかったということを言っておるわけでございまして、逆に申しますと、
再販制度がありますがゆえに公権力が
価格に介入する必要が生じてまいるわけでございまして、これは
著作物以外の、たとえば指定
商品であります化粧品等につきましても、
価格の問題に対して
公正取引委員会は物を言うことがどうしても要請されるという性格でございます。これは、市場経済のたてまえから申しまして、
価格に対して公権力が介入するということはよほどの場合に限定されるべきでございますし、ことに
書籍のように
文化的な
商品であります場合に、国が
価格に介入せざるを得ないというような
システムそれ自体には基本的に問題があるというのが私
どもの
見解でございます。
ただ、五十二年に
調査をいたしました以降の変化といたしましては、
昭和五十二年の十二月に改正法が施行になったわけでございまして、私
ども独禁
政策の
立場で申しますと、
昭和五十二年十二月二日を境としまして事態は一変したというふうに
考えております。同時にまた、産業構造の変化等の事態を
考えますと、従来独禁
政策の目がともすると製造業に強く向けられておりましたのを、製造業以外の非製造業にも向ける必要がある、こういう時代的な認識を持っておるわけでございます。非製造業の中でもなかんずく
流通問題が一九八〇年代を控えての大きな課題だというふうに
考えておるわけでありまして、そういう点から申しまして相当な品目につきましての
流通機構、
流通過程の
改善について検討をいたしておるわけでございます。その中の一環として
出版物を取り上げたわけでございまして、
出版物に関しましては、われわれの従来の行政体験から申しまして、あるいは個人の生活体験から申しまして、生産、
流通、
販売、すべてに問題があるのではないか、こういう問題意識で出発したわけでございまして、したがいまして五十二年の
価格についての
調査のとりまとめの後も、一切それによって
出版物についての問題はなしというふうに判断したわけではございませんで、それ以後も実は三つの
調査をいたしております。
第一は、
昭和五十三年に行いました消費モニターに対するアンケート
調査でございまして、これは八百名を超えるモニターに対しまして
書籍の
出版の
状況についての
調査をいたしたわけでございます。
調査の
内容につきまして申し上げる時間がございませんが、その中にも約一割
程度のモニターから、
書店において値引き
販売を受けているという報告が来ております。いずれにしましても
消費者モニターに対する
調査というものをいたしましたのが第一点でございます。
それから第二点は、
主要国における
出版物の
流通の
実態調査をしたわけでございまして、これは
再販問題につきましていろいろ問題が議論として出ます際に、
出版界の方からよく言われますことは、スウェーデンにおきまして
再販制度を
廃止したために非常な
混乱が生じたということを言われるわけでございます。われわれとしましても
再販制度を
廃止するというふうに決めたわけではございませんが、
書籍の
流通について
調査いたします場合には諸
外国の
実態を
調査する義務があるわけでございますから、これは
昭和五十三年から約一カ月かけまして英、米、独、仏、スウェーデンの
実態を
調査したわけでございます。この
実態調査の後もいろいろ進展がございまして、最近の
情報によりますと、フランスにおきましてはいわゆる推奨
販売価格制度というものを設けておったわけでございまして、これは一種の
定価でございますけれ
ども、この
程度の
価格で売ってほしいという推奨
販売価格制度がございましたものが、最近ではそれすら
廃止された。メーカーの仕切り
価格のみを決めるということで、末端の
定価について生産者が物を言うということは最近なくなったようでございます。いずれにいたしましても諸
外国の
調査を行いましたのが第二点でございます。
それから第三点は広範な
調査でございまして、版元、
取次、それから
書店に対しましてアンケート
調査をいたしたわけでございまして、この取引
実態調査につきましておおむね分析が終わっておるわけでございますし、その
実態調査の結果に基づきまして、現在
出版社と
取次の間、
取次と
書店との間の取引につきましてヒヤリング
調査をいたしておる
段階でございます。
この第三番目に行われました広範な
調査の結果を見ますと、
出版界におきましてはすべての
出版物が
再販契約の対象になっていなければいけないという、義務
再販と申しますか包括
再販と申しますか、そういう誤った
考え方が強く浸透いたしておるわけでございまして、小
委員長がおっしゃいましたように、法律の規定に基づきまして
再販契約をいたします場合には生産者の意に反してはいけないということでございますから、あくまでもこれは版元である
出版社の意思によって左右さるべきものであるにもかかわらず、
出版界の意識としましてはすべての
著作物が
再販制度による
定価販売でなければいけない、こういう意識が浸透いたしておるわけでございまして、これは戦後二十八年にできましてから四分の一世紀を経過いたしておりますだけに、かなり根強くそういう意識があるようでございます。したがいましてわれわれとしましては、
再販制度を決めております
独禁法の精神に立ち返って、まず生産者の意思に反して
流通段階で
再販制度を行うということは、これは原則的にやめてもらうことが必要だという
考え方を持っております。それからまた、
一般消費者の利益を害するような
再販は適当でないということでありまして、これも小
委員長最後におっしゃいましたような、たとえば
割引券の問題等にも関連があるわけでございます。そういう法律の二つの原点に立ち返ることと、それから
再販を維持するためには何をしてもいいということではないわけでございまして、さっきもちょっと触れましたように、約一割
程度の値引きの事実があるわけでございますが、仮にある
書店がきわめて小範囲に値引きをいたしました場合に一切の出荷を停止するというような、そういうバランスのとれないような制裁行為を行うようなことは好ましくないわけでございまして、これは五十二年の
調査ではそういう事態はないということになっておるわけでございますからその点は杞憂であると思いますが、要するに
再販を維持するために許される正当な行為に限定すべきである、こういう基本的な
考え方に基づきまして、
現状におきまして
出版の
流通について何がしかの前進を行うことが必要であるし、また可能であるという
考え方のもとに、おおよそ五つの提案をいたしておるわけでございます。
第一点は、
再販励行
委員会の名称を変更することということでございます。これは励行という言葉に問題があるわけでございまして、
再販励行
委員会というのが、本部が東京にございますし、各県には地区の
再販励行
委員会というものがあるわけでございまして、これは
書店が
中心になって運営されているようでございますが、この
再販を励行するというのは、いままで申し上げましたような趣旨から申しまして励行するというのは本来適当でないことでございます。また同時に、共同で
再販を維持するというのは、これは当然法律違反でございますから、したがいまして励行という名称について変更してほしいという提案をいたしておるわけでございます。
それから第二点としましては、
出版社の意思を尊重するというのが法律の趣旨でございますから、すべての
出版物が
再販の対象になっているというのは適当でない、その点について考慮すべきであるということを提案いたしております。これが第二点でございます。
それから第三点としましては、
出版社によって
再販商品にすべきである、そういう意思表示がありました場合には、そのことを
書籍に何らかの表示をしてほしいということでございます。これは現在化粧品等につきまして、千円以下のものにつきましてはマル再という表示をいたしておりまして、
再販商品であることを明らかにいたしております。千円超のものにつきましては非
再販でございますから、それと区別するという意味でマル再という表示をいたしております。こういうことも念頭に置いて何らかの表示ができないかということを申し上げておるわけでございます。
それから第四点は、
再販に期間を設定できないかということでございます。これは現在の
再販制度はいわば永久
再販でございまして、一たん
書籍が
出版されますと、一たん
消費者の手に渡って、
消費者から古本屋に安く払い下げられた、それによって古本屋で
書籍を手にする場合に初めて値引きが行われているということでございます。つまり永久
再販でございます。それに対しまして何らかの方法で
再販に期間を設定することはできないか。イギリス等ではそういう
制度があるわけでございまして、
再販制度のもとにおきまして
一定期間たちまして
書籍が売れない場合に、
一定の
価格で買い取りを
出版社に請求しまして、
出版社がそれに応じない場合には値引き
販売をして差し支えないというような
制度がございます。したがいまして、
再販に期間を付することはできないかということが第四点でございます。
それから第五点は、
景品つき販売の規制をやめることということでございまして、これは小
委員長からおっしゃいました問題に関連いたしまして、多少詳しく御説明申し上げますと、われわれは
定価販売と
景品とは別のものだというふうに
考えております。つまり
景品は値引きにあらずという
考え方を持っておるわけでございまして、これは同じような
再販商品であります
雑誌につきまして
景品の制限という行為をいたしております。つまり過大な
景品をつけないようにという制限行為を現にいたしておりますし、同じような
再販商品である
新聞につきましても、
景品の制限をいたしておるわけでございますから、
再販制度あるいは
定価販売と
景品というものは両立し得る、
景品は値引き
販売じゃないという
考え方を持っておるわけでございます。
以上が提案をいたしております五点でございまして、小
委員長から詳しく御質問がございましたので一応
お答えいたしましたが、あるいは抜けている点があろうかと思いますから、御指摘があればさらに
お答えいたしたいと思います。