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1979-12-14 第90回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年十二月十四日(金曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 稲垣 実男君 理事 奥田 敬和君    理事 佐野 嘉吉君 理事 志賀  節君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 野間 友一君    理事 渡辺  朗君       佐藤 一郎君    中山 正暉君       勝間田清一君    武藤 山治君       玉城 栄一君    金子 満広君       榊  利夫君    林  保夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君  委員外出席者         警察庁警備局参         事官      武士  孝君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁防衛局防         衛課長     池田 久克君         国土庁地方振興         局特別地域振興         課長      桝原 勝美君         法務大臣官房参         事官      山本 達雄君         法務省民事局第         五課長     田中 康久君         外務政務次官  松本 十郎君         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務大臣官房領         事移住部長   塚本 政雄君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         厚生省保険局保         険課長     川崎 幸雄君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       浜岡 平一君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 十二月十一日  一、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大来外務大臣
  3. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 本日この外務委員会は十時半から開会の予定でございましたが、きょう実は閣議がいままでかかりまして、大変お待たせをいたしまして、申しわけ。ございません。  まず、私から最初に概要の御報告を申し上げたいと思いますが、今回、国会のお許しを得まして、十二月五日から八日まで大平総理中国訪問に随行いたしました。次いで十二月十日パリで開催されました国際エネルギー機関閣僚理事会に出席いたしまして、十二日に帰ってまいりました。ここではそれぞれにつきましてごく簡単に御報告申し上げまして、またいろいろ御質問によってお答えいたしたいと思います。  中国訪問でございますが、中国滞在中に大平総理華国鋒総理と二回、鄧小平副総理と一回会談されたほか、その他の中国指導者と懇談の機会を持たれました。その際、日中関係を初め国際情勢、なかんずくインドシナ情勢、朝鮮半島の問題についても話し合われましたが、話し合いは率直で真剣なものであり、双方の間に理解を深める上に役に立ったと存じます。  大平総理は、中国近代化への努力に関連して、わが国中国政府要請七つプロジェクトに対し、わが国財政事情等を勘案の上、できる限り協力を行う意図があるということを伝えられました。この七つと申します中には、北京の病院のプロジェクトも含めてでございます。これに対し華国鋒総理は、わが国積極的姿勢を高く評価しておりました。  また、今次中国訪問機会に、両国政府間において日中文化交流協定が署名されました。今後この協定を基礎として、双方当事者の創意と工夫よろしきを得て、この面での交流が一層活発になることを期待しております。  次に、パリで開かれましたIEA閣僚理事会でございますが、十日にパリで開催されまして、これは第四回のIEA閣僚理事会でございます。私は佐々木通産大臣とともに同会議に出席いたしましたが、私はまず冒頭演説を行いました中で、OPEC総会を控えたこの時期にIEA諸国の団結を内外に示すことの重要性及びOPEC諸国との建設的協力関係発展必要性を訴えるとともに、先進消費国が目下直面している石油需要抑制推進重要性等について申し述べたわけでございます。  私は、サミット及びECにおける合意を踏まえまして、IEA加盟国が八〇年及び八五年の国別目標合意し、これを強固な政治的なコミットメントとして約束したこと、また来年の石油需給状況の進展に照らしまして、IEA加盟国が一致協力して目標値調整を含む対応策をとることに合意したこと、さらに石油価格の高騰により深刻な影響を受けております開発途上国への配慮及び産油国との建設的協力関係発展について協調行動をとることを合意したことの意義は大きいと存じます。  わが国といたしましても、国別輸入目標を確実に達成することを初め、右合意実施のための最大限の努力を傾ける必要があると思います。国別輸入目標達成ということは、今回の会議で、この輸入目標八〇年については天井と認める、それを超えないということがその達成という意味でございます。  次に、日ソ漁業交渉に関してでございますが、日ソソ日漁業暫定協定延長交渉進捗状況について一言御報告いたします。  政府は、一九七七年の日ソ及びソ日漁業暫定協定有効期間を再延長する議定書締結につき、ソ連側との間に十一月二十日以来モスクワにおいて鋭意交渉を行ってまいりました。この結果、一九八〇年末日までの両協定延長につき、このほど実質的合意に達しましたので、可及的速やかに所要の手続を進め、近く両政府代表者間で署名を行う予定にいたしております。漁獲割り当て量等具体的内容につきましては、なお双方の主張に隔たりがありますが、目下最終段階交渉を鋭意行っているところでございます。  この日ソソ日漁業暫定協定延長議定書につきましては、来るべき通常国会冒頭に御提出いたしますので、その速やかな御審議、御承認につき、従来同様特段の御配慮をお願い申し上げます。  次に、東京ラウンドについてでございますが、次期通常国会冒頭には東京ラウンド関係協定の提出を予定しております。  約六年間にわたる東京ラウンドの諸協定締結につきましては、本日の閣議におきましてわが国積極的姿勢政府意図表明として明らかにしたところでありますが、この交渉主要推進国一つであったわが国といたしましては、これら諸協定を早期かつ誠実に実施に移すことが重要と考えます。これら諸協定の上程の上は速やかな御審議を賜りますよう、本委員会各位の御理解と御高配を特にお願い申し上げる次第でございます。  以上でございます。     ―――――――――――――
  4. 中尾栄一

    中尾委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  5. 土井たか子

    土井委員 まず、外務省お尋ねを進めたいと思うんですが、従来安保条約関係審議で再三これは問題にされてきたところなんですが、まず国際法上にいうところの集団的自衛権というのは一体何なんですか。どういうことを指しているんですか。
  6. 伊達宗起

    伊達説明員 お答え申し上げます。  集団的自衛権と申しますのは、御承知のように国際連合ができましたときに、その国際連合憲章の五十一条におきまして初めて条約的な表現を与えられたものでございます。ここで述べておりますところは、国際の平和及び安全の維持に必要な措置を安全保障理事会がとるまでの間は、国際連合加盟国に対しまして武力攻撃が発生したような場合、その攻撃された国際連合加盟国は「個別的又は集団的自衛固有権利を害するものではない。」ということでございまして、この「個別的」というのは自明でございますが、「集団的自衛」と申しますのは、その国連加盟国攻撃を受けた国一国のみならず、その他の国連加盟国集団としてその攻撃された国連加盟国とともにその武力攻撃の排除に当たるということを「集団的自衛固有権利」ということで表現をされているものと考える次第でございます。
  7. 土井たか子

    土井委員 わが国集団的自衛権を持っているのですか、持っていないのですか。持っていないとすれば、それの法的な理由というのはどの辺にあるのですか。
  8. 伊達宗起

    伊達説明員 これもかねがねいろいろと問題になった点でございますけれども、わが国憲法第九条の制約によりまして、国際紛争解決する手段として武力行使は行わないということを決めているわけでございます。そこから出てきます結論といたしまして、わが国武力行使国際紛争解決手段として用いない、しかし最小限自衛権はあるということになっているわけでございまして、その最小限自衛権とは何かということでございますれば、わが国攻撃を受けた場合にこの自衛の問題に関しては自衛の三条件というものがございまして、急迫不正のものであってそれがほかの手段をもって排除できない場合、そしてその場合にはその侵害を排除する限度におきまして自衛権利行使できるということでございます。  したがって、わが国憲法から申しますと、わが国以外の他国攻撃をされた場合に、先ほど申し述べました憲章第五十一条の集団的自衛権行使して、わが国攻撃を受けていないのに別の攻撃を受けた国に対して応援をしてその攻撃を排除するということは、わが国憲法上できない、その意味におきまして、わが国個別的自衛権しか持っていないものであるということになっていると思います。
  9. 土井たか子

    土井委員 憲法第九条の解釈からすると、私はいろいろいまの伊達解釈に対しては異論がございますけれども、きょうはそういう憲法解釈は他の機会に譲りたいと思うのですが、いま先ほど国連憲章の五十一条の「集団的自衛固有権利」についてここで伊達局長からの御理解解釈についての披瀝がございましたが、他国侵略を受けているときに他国協力して武力をその紛争解決のために行使をするということは認められない、と同時に自国が他国から攻められたときにも他国協力をしてその侵略を排除するということを武力行使によってすることはできないという、そういう意味を「集団的自衛固有権利」の中に含めて先ほど理解をされていたように思うのです。  もう一度尋ねますが、この国連憲章五十一条の「集団的自衛固有権利」というのは果たしてわが国にあるのですか、ないのですか。
  10. 伊達宗起

    伊達説明員 国連憲章に定めます集団的自衛権利というものは、先ほども申しましたように、わが国は持っていない。ただし、わが国攻撃を受けた場合にその他の国が集団的自衛権利行使いたしましてわが国応援に駆けつける。もちろんこの場合に、わが国がそれを受けるか否かの判断の問題はございます。これはわが国独自において判断をする。しかし、危急存亡のときにわが国がそれを受け入れるということはあり得ることであるということでございます。
  11. 土井たか子

    土井委員 大変微妙な御答弁ですが、ひとつここのところをもう一度明確にお答えください。国連憲章五十一条に言う「集団的自衛固有権利」というのはわが国にはあるんですか、ないんですか。いかがですか。
  12. 伊達宗起

    伊達説明員 一般国際法上から申しますれば、また国連憲章という協定上から申しますれば、わが国国連加盟国として理論上は持ち得るものであろうと思います。しかし、わが国は、先ほども申し上げましたように憲法というものがございます。したがって、憲法のもとにおいては、国際法上も存在するべきであるかもしれぬ集団的自衛権というのはわが国はないということでございます。
  13. 土井たか子

    土井委員 アメリカ集団的自衛権というのを持っておりますか。どうですか。
  14. 伊達宗起

    伊達説明員 他国のことでございますので、私から有権的なことはお話しできないかもしれませんが、アメリカわが国のような平和憲法というものを持っていないということになっておりますので、アメリカ集団的自衛権があると考えられます。
  15. 土井たか子

    土井委員 わが国アメリカ集団的安全保障体制発展させる、そして維持する、そういう義務が日米安全保障条約上生じていると思われますけれども、この辺はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  16. 伊達宗起

    伊達説明員 安全保障条約は、先生もよく御承知のとおりに、そのようなものではございません。つまり、安全保障条約というのは、日本アメリカ集団的自衛権を補強するために結んだものではございませんで、むしろ日本は、わが国攻撃を受けた場合に、アメリカ集団的自衛権行使によって、わが国独力では守れないような場合にわが国を守ってもらうということを決めた条約でございます。
  17. 土井たか子

    土井委員 先ほど伊達局長の方からの御答弁で、日本武力攻撃に遭った場合、他国が共同してその武力攻撃を排除することに当たるか当たらないかというのは、緊急の場合は日本としてはそれにゆだねるということもあり得るがごとき御発言もあったわけでありますが、日本武力攻撃がなされた場合に日米共同対処行動をとるということは、集団的自衛権行使になるのじゃないですか。いかがですか。
  18. 伊達宗起

    伊達説明員 これも長い間政府が御説明申し上げているところでございますけれども、日本は、日本攻撃を受けた、まさに安全保障条約第五条にも書いてありますように、わが国攻撃を受けた場合にわが国固有個別的自衛権を発動してそれに対処する、それに対してアメリカは、集団的自衛権行使いたしまして日本の救援に赴く、日本一緒になってそのわが国に対する攻撃を排除するということでございまして、その場合においてわが国アメリカ一緒になってわが国に対する攻撃を排除するからといって、これが集団的自衛権でなければ、つまりわが国集団的自衛権でなければ説明できないというようなものではないと思います。
  19. 土井たか子

    土井委員 この十二月十一日に防衛庁から「リムパックへの海上自衛隊参加について」という見解が発表されているわけですが、これは外務省ともいろいろ連絡をとり合った上で、こういう「リムパックへの海上自衛隊参加について」という文書がつくられたというふうに理解してよろしいですか。外務省どうですか。
  20. 中島敏次郎

    中島説明員 仰せのとおりでございます。
  21. 土井たか子

    土井委員 この文書の中で、項目から言うと五という場所なんです。「自衛隊外国との間において訓練を行うことができることの法的根拠は、防衛庁設置法第五条第二十一号の規定である。すなわち、同号は、「所掌事務遂行に必要な教育訓練を行うこと」と規定しており、この所掌事務遂行に必要な範囲内のものであれば、外国との間において訓練を行うことも可能であると解している。」こう書いてあるんですが、「必要な範囲内」、ここが非常に問題だろうと思うのですね。必要な範囲を超えるもの、この基準は一体何なんですか。
  22. 佐々淳行

    佐々説明員 お答えいたします。  設置法五条の二十一号「所掌事務遂行に必要な教育訓練を行うこと。」というのは防衛庁権限として与えられておるものでございますけれども、ただいまお尋ね所掌事務とは一体何であるかという点からまず御説明を申し上げたいと存じます。  所掌事務とは、条理上、自衛隊法三条で言っておりますところの自衛隊任務であろうかと存じます。この自衛隊法三条設置法五条によって認められている権限でございますが、その任務とは、自衛隊法三条で言うところの、自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、その安全を保つために直接ないし間接の侵略に対し、わが国防衛することを主たる任務とする云々という規定がございますが、このわが国防衛、すなわち日本に対して加えられました外国からの武力攻撃に対し、先ほど条約局長から御説明のございました自衛権の三要件、急迫不正な侵害に対し、他に手段がない場合に、その侵害を排除するに必要な限度において自衛隊法八十八条による武力行使を行う、すなわち個別的自衛権行使をする、これがこの所掌事務遂行任務であろうかと思います。すなわち、わが国を守るということでございます。  必要な限度とは何かという御質問でございますけれども、この必要な限度とは、他の国といわゆる集団的自衛権行使前提とする条約を結び、たとえばアメリカ攻撃をされた場合、確かに日米安保条約はございますけれども、アメリカに対する武力攻撃わが国に対して加えられた攻撃とみなして、アメリカに対し援助を行う、これはこの必要な範囲を超えておる、あるいは核兵器であるとかICBMであるとか、わが国憲法上、あるいは政策上、保有を認められていない戦略的攻勢武器を使用することを前提とした訓練、これなどはこの所掌事務に必要な教育訓練、その必要性を超えておるというふうに判断をいたしております。
  23. 土井たか子

    土井委員 範囲を超える基準というのは、一体どういうことかということをお尋ねしているんですがね。もう一度そこのところを明確にお答えくださいませんか。
  24. 佐々淳行

    佐々説明員 まず一番明確な基準は、個別的自衛権行使のための教育訓練であるかどうか、すなわちわが国防衛するために必要なものであるかどうかということでございます。それからもう一つは、その訓練内容が特定の国に対する核攻撃あるいはICBMによる攻撃等攻撃前提とした教育訓練であるということ、この二点がやはり大きな区別のメルクマールであろうかと考えております。
  25. 土井たか子

    土井委員 メルクマールは結構なんですが、基準というのはその二つに尽きるんですか、いまのメルクマールとおっしゃった二つ
  26. 佐々淳行

    佐々説明員 御質問の趣旨は、もっと細かいほかの基準があるのかどうかということであろうかと存じますけれども、大きな基準はいま申し上げたような点であろうかと存じます。
  27. 土井たか子

    土井委員 いま大きな基準について二つあるというふうな御発言なんですが、そうすると、そういう範囲を超えているか超えていないかということは、一体だれが解釈してだれが判断するのですか。これは非常に事が大きいですよ。いま二つメルクマールとおっしゃったけれども、まさにメルクマールです。だれが判断するのですか、そしてだれがそのことの解釈をやるのですか。
  28. 佐々淳行

    佐々説明員 第一次的には、防衛庁設置法五条によりまして防衛庁に与えられた権限、これに基づき防衛庁長官判断をすることであろうかと存じます。  しかしながら、その防衛庁長官判断につきましては、当然関係省庁等の十分な調整、あるいは先ほど申し上げましたような法的な解釈が政策的に妥当であるかどうかという、シビリアンコントロール原則に基づくところの時の政治判断というものがこれに加わってまいるであろうかと存じます。  先ほど答弁申し上げましたのは法律的な根拠ということでございまして、この法的な根拠に基づいて第一次的な判断をいたしますのは防衛庁長官、さらにその妥当性判断につきましては、シビリアンコントロール原則により政治判断をすることであろうかと考えております。
  29. 土井たか子

    土井委員 この「リムパックへの海上自衛隊参加について」という文書を見ますと、カナダオーストラリアニュージーランド海上部隊米海軍のほかに参加をするということが述べられております。カナダNATOに入っておりますね。外務省NATO集団的自衛権を認めている条約でありますか、どうですか。
  30. 中島敏次郎

    中島説明員 お答え申し上げます。  NATO条約は、NATO条約加盟国の間でそれぞれの持っている集団的自衛権行使する、もちろん個別的自衛権行使するでありましょうけれども、加盟国同士がその集団的自衛権行使してお互いに援助し合う、基本的にはそういう性質条約であるというふうに理解いたしております。
  31. 土井たか子

    土井委員 オーストラリアニュージーランドANZUS条約加盟をしておりますね。ANZUS条約というのは集団的自衛権が認められている条約ですか、どうですか。
  32. 中島敏次郎

    中島説明員 先ほどNATO条約につきまして述べましたところと基本的には同じものであろうというふうに理解いたしております。
  33. 土井たか子

    土井委員 そういたしますと、最初アメリカについて聞いた節、伊達局長集団的自衛権を認めていると言われた。そしていま、カナダについても集団的自衛権行使すべくNATO加盟をいたしております。オーストラリアニュージーランドについても、集団的自衛権行使のために、むしろそう申し上げていい、ANZUS条約加盟をいたしております。そうなってまいりますと、このリムパックそれ自身集団的自衛権行使前提とした訓練であるとしか言いようがない。幾らそこに個別的自衛権だけをもって臨むと言ったって、そうはならないと思います。訓練そのものがそうなんです。こういう訓練には参加できない、こう言わざるを得ません。いかがですか。
  34. 中尾栄一

  35. 土井たか子

    土井委員 外務省に聞いています。
  36. 中尾栄一

  37. 伊達宗起

    伊達説明員 お答え申し上げます。  これは戦技訓練を目的とする共同訓練でございまして、その相手の国が日本とかかわりのないどのような条約を結んでいるかということとは、何ら関係がないことだと考えます。
  38. 土井たか子

    土井委員 リムパックは総合的な訓練ですよ。それぞれがどういう体制の中でこの訓練を行うかということは全く無関係とは絶対言えない。関係がないと言い切られるけれども、それはまことに無責任な答弁だと私は思います。リムパック集団的自衛権行使前提とした訓練、これは参加するそれぞれの国の立場からすると、当然に、客観的に考えられることであります。考えてみると、このこと自身が、今回日本リムパック参加をすることが認められない大きな一つの見逃してはならない問題だと私は思います。どうですか。
  39. 中島敏次郎

    中島説明員 先ほど条約局長から御説明申し上げておりますように、まず、わが国自身集団的自衛権行使憲法上認められていないわけでございます。したがいまして、わが国が、いまお示しになられましたような国、具体的にはカナダとかオーストラリアとかニュージーランドに対してわが国集団的自衛権行使して何らかの行動をとるということは憲法上あり得ないわけでございます。他方、これらの国々カナダにしても、豪州、ニュージーランドにしても、彼らが彼らの集団的自衛権行使して、日本に対して武力攻撃がある場合に日本を救援するというような意思は全くないわけでございます。わが国とそれらの国とは何らの条約関係にもございません。したがいまして、それらの国々の間に集団的自衛権行使し合うという関係があるのだという前提に立ってお考えを発展させられるという点が、そもそも根本的に事情が違うわけでございます。わが国はなし得ない、彼らはやるつもりがない、そういう関係に立っている国々との関係でございます。  訓練そのものは、先ほど防衛庁からお話ししておりますように、戦術技術向上を図るということで、別に集団的自衛権とかなんとかそういう共同対処前提にしたような訓練ではない、戦技向上訓練であるということでございますから、訓練性質そのものからしてそもそも先生御議論のようなことは出てこないわけでございますが、他方、それは別において、集団的自衛権なりの関係を見ただけでも、先ほど申しましたように、わが国憲法上なし得ないし、彼らはそういうことを考えてもいない、全然そういう意思もない、こういう関係になっているわけでございます。
  40. 土井たか子

    土井委員 彼らはそういうことを全然考えていない、そういうことをなそうという意思もない、それは何によって確認されたのですか。過去のリムパックというのは集団的自衛権行使のための訓練であることは一目瞭然、だれしもこれは認めるところです。日本はそれに参加するのですよ。何によって確認されたのですか。
  41. 中島敏次郎

    中島説明員 先ほど来も御議論がございますけれども、たとえばアメリカ集団的自衛権を、もちろん国際法上も認められておりますし、憲法上も制約がなくて、わが国に対して武力攻撃があった場合にそれを行使してわが国を守るという決意を固めて、それを日米安保条約という形でわが国条約関係に入っているわけでございます。他方、いま申しましたような国々わが国とは何らそのような関係にないわけでございますから、彼らが集団的自衛権行使して日本を守ってくれるのだというようなことを前提にすることは全く誤っているのじゃないかと考えるわけでございます。
  42. 土井たか子

    土井委員 ちょっといまのはお答えがすれ違いもいいところですよ。的外れの御答弁です。集団的自衛権行使して日本を守ってくれるのかくれないのか、そんなことを私は聞いているのじゃないですよ。集団的自衛権をそれぞれ持っている国々が集まって集団的自衛権行使のための訓練を行う場所に日本参加するなどということは、集団的自衛権を保育していない日本としては許されないじゃないかということを言っているのです。どうですか。もう一回。
  43. 中島敏次郎

    中島説明員 先ほど来申し上げておりますように、わが国集団的自衛権行使は認められていないわけでございます。そのようなことは全く考えていないわけでございます。したがいまして、そういうような事態はそもそもあり得ないわけでございます。  他方リムパックの演習は何だという点につきましては、先ほど防衛庁からお答えがありますように、戦術技術向上を目的にしてやられている訓練である、そしてわが国日米安保条約を結んでおります相手方の米国との訓練ということを念頭に置いて、この戦術技術向上訓練参加しておる、こういうことが防衛庁からお示しになられた紙の中にもはっきりと書いてある、こういう関係になるわけでございます。
  44. 土井たか子

    土井委員 防衛庁の言われることをそのまま防衛庁の下請のように外務省はいま御答弁されているわけで、私は、外務省独自の確固たる立場での御答弁とはとても承ることができないわけであります。  今回のリムパック80というのはスイング体制だ、その中での訓練だと言われています。したがいまして、これは核を使用する訓練であるということは必定なんですね。そこに日本参加をするということになってくると、先ほどおっしゃった二つメルクマール一つの要件を欠くことになるのです。その点から考えても参加は本来認められるはずがないと思っていますが、いかがですか。
  45. 佐々淳行

    佐々説明員 リムパック参加の第一次的な判断をいたしましたのは防衛庁長官でございますので、防衛庁からリムパックの性格について一音御説明させていただき、かつただいま御質問の点についてお答えいたしたいと存じます。  リムパックとは、先生がおっしゃるように核兵器を使用してアメリカの軍事体制のもとで集団的自衛権行使するためのいわば共同対処行動前提とした訓練ではございません。過去において行われました訓練アメリカの第三艦隊が主催をいたしまして、第三艦隊の調整のもとに、いままで参加しております外国カナダオーストラリアニュージーランドでございますけれども、それらの外国艦艇の参加を認めておるいわば総合訓練の一種でございます。  アメリカ海軍の訓練には三段階ございまして、個艦訓練としての基礎訓練、さらに応用訓練がございまして、第一線の艦隊に配備する直前の段階の各艦艇の能力評定、その練成の度合いを評定するための訓練を総合的に行うのがこの艦隊レベルの訓練承知をしております。  この訓練内容は、洋上における補給あるいは艦隊の陣形運動、さらには対空、対水上、対潜、総合的な、立体的な訓練あるいは電子戦訓練等を総合的に行うレベルの高い訓練でございます。  この訓練そのものには戦略的な想定はございません。たとえば特定の国が特定の国を攻撃することに対して共同してこれを守るとか、ただいま御指摘のように核兵器を使用している特定の国を攻撃する訓練であるとか、こういう性格がございません。  この参加を決定するに当たりましては、防衛庁といたしましては当然慎重に検討したわけでございますが、五十一年以来これまで海上自衛隊は予算をお認めいただきまして、護衛艦二隻と対潜哨戒機八機を毎年ハワイに派遣して訓練をしておったわけでございます。この訓練の相手になってくれたのが第三艦隊でございまして、決してただいま御指摘のような第七艦隊が西の方に行ってしまうからそのかわりに今度は第三艦隊とスイング戦略の埋め合わせとしてやるのではございません。従来ずっと第三艦隊と訓練をやっておったところでございます。  なお、このハワイ派遣訓練の充実強化という答弁を再々いたしておりますけれども、ハワイ派遣訓練で従来私どもが二隻八機でやっておりました訓練では個艦訓練ないしは若干の応用訓練にとどまっておりまして、程度の高い訓練ができなかったわけでございます。二年に一度くらいのベースでやっております外国艦艇の参加を許すこの総合訓練に今度入れていただいて、アメリカの最も新しい戦術技量を学ぶことによって自衛隊に課せられました任務すなわちわが国を守るという任務のために役立てようというのが、今回の教育訓練の目的でございます。  なお、もう一つ集団的自衛権行使の当然の訓練ではないか、それが当然前提ではないかというお話でございますけれども、お言葉を返して申しわけございませんが、御指摘のように、カナダアメリカNATO条約がございます。アメリカニュージーランドカナダの間にはANZUSがございます。しかしながら、カナダニュージーランドオーストラリアの間には軍事同盟条約はございません。
  46. 土井たか子

    土井委員 いま、軍事同盟条約がないということを言われた点、一点だけをまず申し上げて、さらに質問に入りますが、日本カナダの間には軍事条約はないのです。カナダニュージーランドとの間には軍事条約はないのです。カナダオーストラリアとの間にも軍事条約はないのです。それぞれ軍事条約のないもの同士が参加をして訓練をするのだけれども、日本を除いてほかの参加をするそれぞれの国々締結している条約それぞれを見ると、集団的自衛権に基づく訓練としか考えられない条約にそれぞれが加盟しているのです。こういう関係からすれば、そういう集団的自衛権のために締結をしている条約下にある国々ばかりが寄ってやるリムパックという訓練の中に日本参加をするわけですから、こういう場所に参加をすることは、集団的自衛権が認められていない国としては、参加をする資格はないと申し上げてもいいし、参加をすることは絶対許されない、こういうことは客観的にはっきり言えるのじゃないかということを言っているのです。だから、いまおっしゃったような論法というのは私は無理だと思いますよ。  それから、先ほどハワイ派遣訓練の充実強化というふうなことをおっしゃいましたけれども、ハワイ訓練というのは何年から始めたのですか。
  47. 佐々淳行

    佐々説明員 日本共同訓練全体について、まず申し上げます。  日米共同訓練は、実は昭和三十年から、海上自衛隊アメリカ海軍はすでに八十四回実施をいたしております。航空自衛隊は昨年からすでに十回実施をしておるところでございまして、ただいま御指摘のハワイ派遣訓練は、潜水艦あるいは海上自衛隊の艦艇等によってそれぞれ始まった年度が違います。昭和三十九年から始まっているのもございますが、いまのような形で毎年護衛艦二隻と対潜哨戒機八機が行くという訓練は、昭和五十一年からでございます。
  48. 土井たか子

    土井委員 いまのような訓練とおっしゃいますが、それ以前の訓練も含めまして、毎年これには訓練についての想定がありますね。あるでしょう。いかがですか。
  49. 佐々淳行

    佐々説明員 先ほど来申し上げておりますように、わずかに二隻の八機でございますので、個艦訓練、あるいはせいぜい二隻、もしくは向こうの若干の船と、ターゲットとして飛んでくる航空機を対象としたところの訓練、非常に戦術技量の向上を目的としたところの初歩的な基礎訓練から応用訓練の段階でございました。
  50. 土井たか子

    土井委員 応用訓練であり、基礎的な訓練である、そんなことは私が問うている対象じゃないのですよ。こういう訓練について想定があるでしょうと聞いているのです。
  51. 佐々淳行

    佐々説明員 たとえば航空機が高度何度でやってきて、それに対してどういう対空戦闘をやるかとか、あるいは潜水艦がどういう形で接近してくる、それに対して捜索活動をどういうふうにやるかという戦術想定は当然あろうと存じます。
  52. 土井たか子

    土井委員 あろうと思いますじゃなくて、あるでしょう。
  53. 佐々淳行

    佐々説明員 失礼をいたしました。訓練想定と戦術想定はございます。
  54. 土井たか子

    土井委員 毎年そういう想定のもとに訓練実施されている。この委員会に想定を出してくれませんか。  委員長、それを要求します。そうでないと、必要な範囲内であるかどうかという判定は一体何で決めるのですか。やはり具体的なそういう想定内容について当たらないと……。検討する対象がそこにあるのじゃないですか。
  55. 佐々淳行

    佐々説明員 軍事技術にかかわる想定というのは、当然、万か一わが国にどこかの武力攻撃かあったときに対抗するための戦術技量向上のためでございますので、この戦術技量を公表するということは差し控えさせていただきます。
  56. 土井たか子

    土井委員 そうすると、これは必要な範囲内であるのかないのかという判定は、この「シビリアンコントロールについて」という防衛図上研究問題等予算小委員会防衛庁か提出した文書にもとりますね。ここの中では「防衛に関する国政は国会調査を受けること」と明記されていますよ。
  57. 佐々淳行

    佐々説明員 防衛に関する国会の御調査あるいは御審議、これを活発に行うことはむしろ防衛庁といたしましても大変望んでおるところでございまして、もちろん先生御指摘のとおりでございます。今後も十分審議をしていただきたいと存じておりますけれども、軍事機密にかかわる秘密部分、特にアメリカの戦術技量を学んでくるわけでございますから、アメリカの戦術技量として秘文書として指定されておるような文書、こういうものの提出は国際信義上もいかかかと存じますので、差し控えさせていただきます。可能な限りにおいて、今回の共同訓練を初めといたしまして、この国会のあらゆる委員会防衛庁といたしましては説明を申し上げ、国民のコンセンサスを得たい、かように存じております。
  58. 土井たか子

    土井委員 今回のリムパックの問題というのは非常に事か大きいのですよ。集団的自衛権というものかないわが国としてはこんなものに参加できるのかどうか、核保有国でない日本としてこういべ訓練参加できるのかどうか、きょうお答えになったメルクマールだけについて言ったって、その辺は大変な疑義があるところなんです。そういう問題を晴らそうとすれは、やはり具体的にそれを裏づける資料を提出なさらないと無責任というものですよ。  いまここの文書を見れば「ハワイ派遣訓練の充実強化になると考え、」と書いてあるのだから、充実強化になるのかならないのかという判定は、ハワイ派遣訓練の中についてそれを取り決めている想定を問題にしないと問題にならない。出さないと言われたって、これは現にあることぐらい私は知っているのです。横文字ですか、ちゃんとありますよ。これは日本としては非常に大事な問題であり、しかもシビリアンコントロール原則からしてこの点は非常に大事なポイントだと私は思う。  委員長、どうですか。資料について、防衛庁からの提出を強く要求します。いかかですか。
  59. 中尾栄一

    中尾委員長 資料の取り扱いについては、後で理事会を開きますから、そのときに討議いたします。
  60. 土井たか子

    土井委員 さらに、今回のリムパック参加できるという防衛庁根拠というのは一体何なのですか。今回のこの文書を見ますと、「防衛庁としては、この訓練の目的等について米側に確認する等慎重に検討した結果、」と書いてあるのですか、そのリムパック内容の資料を要求いたしましても、これに対しては全く資料はございませんと言われるのですね。何にもございませんと言われるのです。わざわざ部屋にまでお越しいただいていろいろ尋ねてみたって、ございませんの一点張りなんですよ。しかし、「米側に確認する等慎重に検討した結果、」「いわゆる集団的自衛権行使前提として特定の国を防衛するというようなものではなく、」云々と書いてあるわけですから、こういうふうなことには当たらないということを、慎重に検討した結果確認されているがごとき文書になっているんですね。何も材料がないのにこういうことができたんですか。「慎重に検討した結果、」と言われるその慎重に検討された対象、その資料をお出しにならないと、防衛庁の出されたこの「リムパックへの海上自衛隊参加について」という文書は全く国会では意味をなしませんよ。国民に対しては意味をなしませんよ。いかがですか。
  61. 佐々淳行

    佐々説明員 リムパックは昭和四十六年以来六回行われておりますが、わが国参加いたしておりません。したがいまして、アメリカ参加をしなかった国に詳細な資料等は交付をしていないのはあたりまえのことだろうと思いますが、防衛庁にも、過去において参加をしなかったためにリムパックに関する公式の資料がございません。これは、従来のたびたびの資料要求についてお答えをしておるとおりでございます。  確認をしたのに内容がわかっていないのはおかしいではないかというお尋ねでございますが、私どもこの三月にアメリカ側から、程度の高いリムパック訓練というのに参加をする意思があるかないかの意向打診があった際に、アメリカ側に十分この共同演習の性格、目的等について問い合わせをし、その確認を得たわけでございます。  その結果、まず私どもとしては、核兵器を使うような訓練はやるのかやらないのか、過去においてそういうことをやったのかやらないのかという点については、これはやらないという回答を得ております。また、集団的自衛権行使するようなそういう想定を持った訓練であるならば、先ほど先生御指摘のように、わが国としてはこれに参加をすることに大変疑義があるので、その点はいかがであるかというのに対しましては、特定の国を特定の国からの攻撃に対して共同して守るという想定はないという確答を得ております。また、わが国の個別自衛権行使前提によるところの戦術技量の向上のための訓練であるということであるけれどもそれで間違いないか、過去のリムパックの性格はどうかという点につきましては、アメリカ側は、先ほど申しましたように、第一線配備直前の艦艇の最終的な能力評定を行うための総合訓練であって、魚雷発射訓練等も含めまして、対空、対水上、対潜総合訓練を行うものであって、戦術技量向上のためのきわめて純技術的な訓練であるという回答を得た、その上でもって十分関係省庁とも協議をいたしまして最終決定をした、こういうことでございます。
  62. 土井たか子

    土井委員 いまおっしゃっているのは、それは協議の段階でしょう。協議の段階であって、私が幾らお尋ねをしても、今回のリムパックに対する具体的な想定はございません、まだこれから考えるんでございます、このようなことなんですね。ところが、もうすでに、想定もないうちにこのリムパック参加をしてよろしいという決断を大平総理にこの四月末に仰いでいるわけですね。前防衛庁長官山下さんがこの四月末に大平総理リムパック参加についての決断を仰いでいるわけです。一体この大平総理に決断を仰いだときの根拠は、何を示してリムパック参加について決定の決断を仰いだんですか。
  63. 佐々淳行

    佐々説明員 四月に大平総理に決断を仰いで決定をしたというのは、恐らく新聞記事であろうかと存じますが、私ども国会でさような答弁はいたしておりません。四月の時点で前長官が意向を打診をいたしましたのは、アメリカ側からそういう意向打診があり、それについてこれに参加することの可否について前向きで検討することの御了解を得たものと私は承知いたしております。最終的な決断は十月に下った。これも防衛庁長官の責任と権限において決定をし、念のため総理の御了承をいただいたものというふうに聞いております。  なお、詳細がわからないのにというお尋ねでございますけれども、訓練参加をするかしないかの意思表示があって初めてその具体的な内容を教えてくれるというのがやはり筋であろうかと存じます。なぜならば、従来過去に六回参加しておる国なら別でございますが、アメリカ側の立場に立ってみますと、主催国として、今回初めて日本が来るわけでございますので、参加意思をまず確認をし、しかる後にその内容、性格、目的等について十分打ち合わせをし、そうして細部的な打ち合わせに入るというのが当然の手順であろうかと存じます。現在、計画の細部についてはそれぞれ事務レベルにおいて打ち合わせ中でございます。  そういう意味で、計画その他の詳細はないけれども、その目的、性格についてはアメリカ側の意向を十分打診したというふうに御答弁申し上げているわけでございます。
  64. 土井たか子

    土井委員 お互いが意向の打診ばかりをやっているその段階で、事重大なこういう問題についてもう参加を決めてしまうというようなことは、少し早計過ぎるのじゃないですか。想定はまだこれからでしょう。その中身によれば、きょう二つメルクマールを「必要な範囲内」ということについてお示しになったことを超えるかもしれないですよ。それに反するかもしれないですよ。  いままでのところの、しかし少なくともそれを超えることはないということの確認をされたごとき表現で書かれている「米側に確認する等慎重に検討した結果、」と言われる中身の具体的な資料を、まず御提示願いましょう。
  65. 佐々淳行

    佐々説明員 二国間でいろいろ交渉をし協議をいたします事項につきましては、両国の合意がない限りこれを発表しないというのが国際的な礼譲であり信義であろうかと存じます。この詳細が決定をした段階で主催国であるアメリカが発表すべき筋合いのものであり、アメリカの発表をもって私どもも――現時点においては実は、カナダオーストラリアニュージーランドは過去六回は参加をいたしておりますけれども、第七回目に参加するかどうか、公式の意思表示はまだございません。私どもといたしましてこれらの国は当然参加するのだろうとは予想しておりますけれども、まだその意思表示もない段階であり、主催国が発表いたしておりませんので、私どもといたしましては公表は差し控えさせていただきたいと存じます。
  66. 土井たか子

    土井委員 日本というものはアメリカの国の事情に全部何もかも隷従しなければならないのですか。日本の国内事情としては、厳然としてシビリアンコントロールという原則を踏み外してもらっては困るのですよ。これは防衛庁設置法の五条二十一号の規定からして防衛庁としては大丈夫だと言われるけれども、一体何が大丈夫なのか、われわれにとってさっぱり資料がないのです。防衛庁が大丈夫と言われたら大丈夫なのだというのは、少なくともまともな国民はだれ一人そんなことは思っていませんよ。  シビリアンコントロールからすれば、防衛庁の考えについて国会の中でそれを確認をして、いいか悪いかという判断を国民の名において国会でやるということがシビリアンコントロールの中でも重要であるがゆえに、「シビリアンコントロールについて」というわざわざ防衛庁が用意された文書の中にも、国会でこれを対象として調査をするということが明記されているのじゃないですか。そういうことからすれば、何の資料も提示しないで「確認する等慎重に検討した結果、」大丈夫だと言われてみても、われわれとして大丈夫とは絶対言いがたいです。この間の資料というものを国会に提示するというのは当然の義務だと思います。いかがです。  委員長、このことについて要求しますよ。大変大事な問題だと思います。
  67. 佐々淳行

    佐々説明員 やりとりの内容文書につきましては、先ほど申し上げました理由で提出は差し控えさせていただきますが、やりとりの内容については、国民のコンセンサスを得るためあるいは国会の御審議をいただくために、私どもとしては最大限申し上げているつもりでございます。
  68. 土井たか子

    土井委員 これは最大限にならないです。最低限にもならないです。中身から言うたら一番重要なところを何も言ってないんだから。一番重要なところは何も言わないでおいて、結論として防衛庁はどう考えるかだけをこれは提示しているのじゃないですか。防衛庁の考え方だけを聞いて、その考えの根拠にあるものを示されずに、われわれ、このことに対していろいろと国会としてなすべき仕事をすることができませんよ。国会として当然やるべき権限行使することができないですよ。  委員長、どう思われますか。これは当然国会として提示を要求すべきであるし、防衛庁としては提示する義務があると思います。いかがです。
  69. 中尾栄一

    中尾委員長 先ほど申し上げましたように、取り扱いについては理事会で後ほど二時から討議したいと思います。  時間ですが……。
  70. 土井たか子

    土井委員 ほかの大事な案件があったわけですけれども、きょうはこのリムパックの問題で質疑を続けてまいりまして、最後に大来外務大臣に、きょうお聞きになったような経緯で、このリムパックの問題については、過去なかったことをこれから日本がやろうという非常に大事な瀬戸際なんです。参加をするかしないかというふうな問題は、単にいままでのハワイ派遣の訓練延長であるとは言えない中身ですよ。大臣としては、こういうことについて当然提示すべき資料も提示しないで、そしてすでに決めてしまったものだから参加については強行するという態度は厳に慎むべきだと思います。きょうのこの委員会で、質問に対して、このリムパックについて集団自衛権行使でないという確証がない限り、核使用は一切ないという保証がない限り、少なくともきょう防衛庁が提示された二つメルクマールだけからしても、そのことの具体的な証拠となる資料が国会に提示されない限り、このことに対する参加というのは間違いだと私は申し上げなければならないと思いますが、大臣、どのようにお答えになりますか。
  71. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 政府委員から回答ございましたように、この問題につきましては第一次大平内閣のときに方針を決定いたしたことでございます。私といたしましては、ただいま土井委員からの御懸念の点はないという当時の政府判断で決定されたことと存じますので、従来の方針に従うのがよろしいのだろうと考えております。
  72. 土井たか子

    土井委員 約束の時間が経過しましたから、一応これで午前中の質問を終えます。
  73. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、午後二時三十分まで休憩いたします。     午後零時三分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十一分開議
  74. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  75. 土井たか子

    土井委員 午後の冒頭に、イラン問題について少し大来外務大臣お尋ねをしておきたいと思うのです。  大平総理は、日本は必要なだけ石油を買うというふうな発言をされた。そしてさらにその石油をごく最近第三国に転売してもうけているというふうなアメリカでのテレビや新聞での記事、報道によりまして、アメリカでは一種の居直りというふうに受け取られておるというふうなことがいろいろ聞こえてまいっております。大来外務大臣は、マンスフィールド大使と会談をされたようでありますが、アメリカ側は、日本の政策で必ずしもはっきりしなかった点がはっきりしたというふうに、わが国の立場に対して理解を示されたということも報道されておりますが、この大平総理発言についても、また第三国に対して転売をしていたという事実についても、アメリカとしては十分なる理解をその節持たれたというふうにわれわれは見ていていいわけですか。いかがですか。
  76. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 総理の御発言は、私まだ日本に帰る前だったようでございますけれども、多少新聞に誤り伝えられた筋もあるようでございます。昨日マンスフィールド大使とも会談いたしまして、石油問題につきましてはアメリカ側にもいろいろ誤解をしておる点もあるのじゃないかという点をかなり率直に私どもからも申し上げましたし、これはパリでバンス長官にも申し上げた点でございますが、そういうことを通じてアメリカ側もだんだん事情理解してきておるように考えております。
  77. 土井たか子

    土井委員 だんだん事情理解してきているようにお考えになっていらっしゃるわけでありますが、そうすると、大平総理の御発言といい、第三国に転売していた事実といい、これは誤解であったというふうにアメリカ側としては理解をされたというふうに考えていいのですか。
  78. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 転売問題は、実は通産省の指導といいますか、高値で買い付けたものを第三国に売るようにといいますか、そういう考え方で対処したようでございまして、アメリカ側では日本の会社が第三国に転売することによって大きな利益を上げたんだというような報道がございましたが、事実は、日本の石油輸入業者は第三国に転売することによってかなり損失を招いている。買った値段よりもむしろ安い値段で売らなければならない場合がかなり多いようでございまして、アメリカ側の、転売によって日本の石油業者がもうけているという判断は間違いである、そういう点も私どもは申して先方に伝えておるわけでございます。
  79. 土井たか子

    土井委員 先日IEA会議外務大臣がいらした節、パリでバンス国務長官と会談をされたわけでありますが、その節、五つにわたるいわば金融についてのいろいろな申し入れがあったようであります。  一つは、日本が持っている対イラン債権について債務不履行宣言をしてほしい。二つは、日本国内にあるイラン資産の凍結に同調してほしい。三つは、イランに対して新規の融資はストップしてほしい。四つ目は、ドル預金の他通貨へのシフトはやめてもらいたい。五つ目は、石油代金の支払いについてはドル以外の通貨は避けてほしい。こういうふうな五つの項目にわたるような申し入れがあったと聞いておりますが、事実でございますか。
  80. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの五つの点につきましては、日本の一部の新聞に出ておりますけれども、バンス長官と私の話では、そういう細かい点まで話は出ませんで、多分新聞の方でいろいろな方面の情報を記事にされたのだろうと思いますが、バンス長官との話ではそこまで細かい話にはなりませんでした。
  81. 土井たか子

    土井委員 しかし、細かくなるかならないかは別として、こういう趣旨のことをバンス長官から申し入れられたという事実はございますね。
  82. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 一般的にアメリカがイランの大使館の問題を平和的に解決しようとしていろいろな努力をやっておる、その努力一つが経済的な政策、対策なのであって、ただ、アメリカがとっておる経済対策に対して日本及び西ヨーロッパに協力してもらえないと底抜けになる、効果が上がらない。そういう状態になると、アメリカとしてはもう一段厳しい対策を講じなければならないかもしれない。そういう趣旨の話がございまして、個々のただいまお挙げになった点についてのケースは、バンス長官からの話には含まれておりませんでした。
  83. 土井たか子

    土井委員 しかし、パリ会談でバンス長官自身がこういう趣旨のことを言われたかどうかは別として、アメリカ側からこれに似たようなことあるいは具体的な申し入れというのを、外務大臣お受けになったという事実はございませんか。
  84. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 バンス長官に会いました前日にカズウェル財務副長官及びクーパー国務次官と会談いたしました際に、やや詳しい話が、これは金融面での話でございまして、ございましたが、いまの五つの点と全く同一ではございません。この問題については余り詳細に入りにくい。いろいろな関係がございますので、はね返りもございますので、ヨーロッパ各国とも余り表に出してないようでございますので、もうちょっと成り行きを見てまいりたいと思っております。
  85. 土井たか子

    土井委員 言いづらいことではございましょうけれども、この五つの項目それぞれに関連がある、つまりこれに似たような中身の申し入れがあったというその点の感触だけはおっしゃっても差し支えなかろうと思うのです。いかがでございますか。
  86. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私の印象では、五つというよりもむしろ三つでございまして、一つは、アメリカ政府が凍結措置をとったわけでございますが、これは日本にはそういう法的裏づけがございません。  それから第二には、民間銀行がクロスデフォルトの宣言をする、アメリカはしておるわけですが、ヨーロッパや日本でそれについてある程度の共同的な措置がとれないかどうか。これは私どもとしては市中銀行が独自に判断すべきものだというふうに申しておるわけでございます。  あとは、イランと日本なり西欧との貿易に伴う商業金融がございますが、これも結果的にイランを助けることになるのではないかという意見がございました。しかし、これはやはり貿易に伴って起こる金融措置でございますから、貿易をとめる決意をしなければ、金融の面からとめるわけにいかないというふうに私の方としては申したわけでございます。
  87. 土井たか子

    土井委員 それに対する対応のいかんによっては、いまアメリカは非常な強硬策までも用意いたしておりまして、御承知のとおりに懲罰関税というものでもって臨む、しかも非協力国ということの中には念頭に日本という国を置いて考えられつつあるということは、もうだれの目にも鮮やかであります。そういうことからいたしますと、わが国の打撃ははかり知れないということになるわけですが、これについても一体どのような対処の仕方ということを御用意されているか。  日本の外交問題については、時期に対して適当な措置をとることがいつもおくれるというふうな取りざたがよくされておりますし、今回のこのイラン問題につきましても、御承知のとおりに、国際法違反であるというあの大使館についての問題を取り上げる節の時期が、アメリカから強く言われてから言ったようなかっこうに受けとめられているという向きもございます。したがって、そういうことからすると、日本の外交姿勢というのはおくればせに、いつも後追いのようなかっこうで場当たり主義でやっているというような印象を非常に強く受けるという向きもあったりいたします。外務大臣の責任というのは重大だと思いますが、ひとつ、アメリカがいま懲罰関税というものをとろうといたしておりますやさき、どういうふうにこれに対処されるお覚悟がおありになるか、また、それに対する措置としてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、それをお伺いして終わります。
  88. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本は、アメリカとの友好関係というのはやはり外交政策の一つの大きな柱にしておりますし、同時に産油国との友好関係の維持、これは日本に必要なエネルギーの確保という問題も含めて大きな柱にしておりまして、その際、アメリカとイランの間で非常に重大な紛争が起こっておる。この間私ども日本の外交がどうやって対処していくか、ある意味では非常にむずかしいといいますか苦悩に満ちた面もあるわけでございまして、余り歯切れのいい、割り切ったことが言いにくいという事情一つございまして、できれば当事者の間で円満に話が解決する、緊張状態が解消する、あるいは国連等の努力によってそういう解決がもたらされるということを期待しておるわけでございます。  ただ、いろいろと長引いてまいるに従いまして、両側にもかなり強い感情的な要素が出てまいるわけでございまして、ただいま御指摘の立法等も新聞紙上に報道されておるわけでございますが、私どもの方としてはいろいろなルートを通じて、アメリカの方にも従来誤解があったのではないか、たとえばメジャーの供給がこの一年間に百万バレル・パー・デー減少した、それに対して日本側が何らか他のルートから調達しなければならないというような事情等についても十分向こうに説明いたしました。こういう状況についての理解アメリカ側で深まってまいりますと、ただいま挙げられましたような立法は多分避けられるのじゃないかというのが私どもの期待でございますし、アメリカ側におきましても、基本的にこの問題で日米関係に害を与えることは望ましくないという考え方がアメリカ政府の中にもございますようで、私どももできるだけ努力をしてまいりまして、そういう重大な関係に至らないようにやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  89. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  90. 中尾栄一

    中尾委員長 高沢寅男君。
  91. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、午前中の土井委員質問リムパックの問題でずっと集中的に行われた、それに加えて一問だけお尋ねして、それが済みましたら防衛庁は結構でございます。  土井委員質問もそうであったのでありますが、いま、リムパック訓練演習参加のポイントが、これが日本自衛隊集団自衛権行使につながるようなものになるんじゃないのか、こういう点から問題になっていることは御承知のとおりです。そこで、そのことの判断のために土井委員は午前中の質問で、従来ハワイでやっていたアメリカ日本自衛隊の二国間の訓練演習の資料とか、あるいはまた今回のリムパックへの参加アメリカ側との間における話し合いの内容等の資料を要求されたわけです。これは後ほどまた理事会でその資料の提出をどうするかということが議論されるわけですが、私は、理事会の議論を待つまでもなく、この点を明らかにするためにはむしろ防衛庁から積極的にこの資料の提出をお願いしたい、こういうふうに考える立場であります。しかし、先ほどあなたの御答弁では外国との関係もあるということでの答弁があったわけですが、それならば今度のリムパックの演習に、もちろん私たちは参加することに反対の立場でありますが、なおかつ参加された場合に、参加してのその演習の状況、訓練の状況、どういう訓練をやったか、またその訓練の結果防衛庁としてどういう一つ判断を得られたかというようなことについても、機会を改めてこの外務委員会あるいは内閣委員会等、国会でひとつ御報告をお願いをしたい、こういうふうにも考えるわけです。  私の考えでは、従来六回行われたというそのリムパックカナダや豪州、ニュージーランド参加がどうかまだわからぬ、この段階で真っ先に日本に対してアメリカの誘いがあった、日本は真っ先に参加します、こういうふうな態度を出しておるというようなところにも、われわれかねてから心配してきた、こういう過程を通じて集団自衛権という枠の中へ日本がだんだん入っていこうとしておる、またアメリカ日本を入れようとしておるというような点について、私たちは大変疑いを持つし、また心配も持っているわけでありますが、そういう点をそうでないと言うならば、ないことを客観的に証明するためにも、先ほど言った資料の提出、そして演習がもし行われたとすればその後にその報告をひとつはっきりとやってもらいたい、こういうことでありますが、あなたの御見解をお聞きしたいと思います。
  92. 佐々淳行

    佐々説明員 午前中御答弁申し上げましたように、現在まだ細部にわたっての打ち合わせを実施いたしておりまして、演習の内容につきましてはいずれある程度アメリカが主催国として発表をするであろうと考えております。すなわち、カナダオーストラリアニュージーランドその他の国の参加艦艇の規模等についてのお問い合わせがいろいろな委員会でもございましたが、同様の御答弁を申し上げておりますが、現時点において私ども承知をいたしておりません。そういうような問題を含めましてどのような規模でいつからいつまでというような演習の概要は、いずれ主催国の発表が行われる時点においては明らかにすることができるのではないだろうかと考えております。  また、演習の内容につきましてもアメリカ側が発表するだろうと思います。主催国であるアメリカと話をいたしまして、わが国は今回のリムパックは御承知のように初めての試みでございますので、先生御指摘のように国会においても十分御審議をいただかねばいけませんし、国民のコンセンサスを得なければいけないという立場から、その国際的な打ち合わせの結果、私ども許される範囲でできる限り御報告をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  また、リムパック参加後、どういう訓練でどんな成果があったか。いわゆる戦術技量向上ということが目的でやるわけでございますが、純然たる戦闘技術の部分につきましては、先ほど来申し上げておりますように、これを公開するということは、何もアメリカから言ってはいけないと言われるから言わないということでなくて、わが国防衛の任に当たる海上自衛隊といたしましても、その戦術技量を公表してしまうというのは軍事的な意味では常識ではございませんので、これは差し控えさせていただくかもしれませんけれども、国民の御懸念を解くためにあるいは国会で十分な御理解をいただくために、これが集団的自衛権行使前提としたものでなかったということは、できる限り御説明を申し上げたいと考えております。
  93. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、その説明をされる機会を当然国会として待つ次第でありますが、この演習の結果、こういう飛行機の採用が必要だとかこういう兵器の採用が必要だとかいうような、そういうことにも発展する可能性があると私たちは考えているわけですが、そういう面を含めてひとつ客観的な御説明をお願いしたい、こう思います。  以上で防衛庁は結構でございます。  それでは、大来大臣にお尋ねいたしますが、外務大臣に就任されて初めての質問でありますので、大臣はまことに有能にしてかつ有名なエコノミストでおられたわけでありますからその立場で、外務大臣に就任されたということで、外交の中における経済の位置づけといいますか重要性、もともとそうだとは思いますが、最近のような情勢の中では国際外交の中で経済関係というものがいよいよその重要性を増しておる、こういうように考えますが、この点についてのまず大臣の識見と申しますか、そういうものをお聞かせをいただきたい、こう思うわけであります。
  94. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私、長らく経済問題を手がけてまいりまして、また同時に国際関係の方にもいろいろかかわってまいりましたが、従来から考えておりましたことの一つといたしまして、日本という国は高度に発達した工業国で、しかも資源が極度に不足していて、食糧、エネルギー、その他鉱物資源等を大量に海外からの供給に依存しなければならないという点から見まして、第一に、日本の外交の役割りは日本国民の生活と安全を守るという役割りが大切ではないかというふうに考えております。  それから、対外的には、日本の経済力もだんだん大きくなりまして世界経済全般に大きな影響力を持つようになってまいりましたし、海外諸国も日本が世界の中である程度の役割りを果たすことについての期待も高まっておるわけでございますが、日本の外交は対外的には世界の平和と建設に役立つ外交、そういう役割りを持つべきじゃないか。  対内的には国民の生活の充実と安全、対外的には平和と建設への貢献、そういうことが基本的には大切だと私は考えておるわけでございます。
  95. 高沢寅男

    ○高沢委員 いまお答えになったその限りでは私も全く同感であります。  そこで、いま資源というふうな問題も大臣のお答えの中にもあったのですが、それに関連をいたしまして、ここで外交の基本的な物差しと申しますか、それを経済関係という観点にいまや大きく移しかえるべき段階じゃないのか。外交の基準と言えば一国の安全を守るということできたわけです。安全を守るとなれば、軍事的にアメリカ協力するとか、あるいは自衛隊を強化するとかというふうな面でもっていままで考えられてきたわけですが、いまはもう安全ということを考える場合にいわゆる石油その他資源の問題あるいは食糧の問題、こういうふうな面において国民生活の安定を確保していく、国民生活に不安を招かない、こういう関係が安全という問題の一番大きな柱になってきておる、こういうことではないかと私は思います。  そうなってまいりますと、いよいよ大来外務大臣の役割りも大きくなる、こういうことではなかろうかと思うのですが、そういう点においてむしろ私は結論的に言えば文字どおりの全方位外交――全方位外交という言葉が福田前総理がお使いになった後一つのはやり言葉になっておりますが、私は文字どおりの全方位外交というものをひとつお願いをいたしたいと思うのであります。  かつて、ソビエトの石油を日本へ導入したらという話が出る、そうすると赤い石油を入れると日本も赤くなるという議論があったり、その石油に依存して急にとめられたら日本はどうなるんだというふうな議論があったことは私も承知しておりますが、それでは安全なはずであった中近東の石油にああいうふうなイランの革命が起きる、もし万一イランと同じようなことがその隣のサウジアラビアで起きたらどうなるんだ、こういうふうなことを考えますと、この安全というものは非常に不安定なものの上に乗った安全じゃないのかというふうに私は考えざるを得ないわけであります。そうすると、そういうふうな資源関係を、われわれのすぐお隣である、ここにはソ連がある、また中国がある、あるいはまたベトナムもある、ASEAN諸国もある、もちろんずっといままでのアメリカ日本関係もあります、そういう全体の関係の中で日本が必要な資源を得ていく、食糧も得ていくというようなやり方がいまや一番確実な安全の道だ、こういうふうに私は言うべきじゃないかと思います。  もっとも、そのためには今度はわれわれは外国から資源をもらうという一点張りではいかぬので、当然今度は日本としてはさっき大臣の言われた外国に対して資本や技術の協力というものを全面的にやるべきであるし、またその前提としてそれらのすべての国との間に平和的な、友好的な外交関係国際関係を進めるというふうなことが必要だと思いますが、重ねてこういうふうな今後日本の外交の立脚すべき基本的な立場について、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  96. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまお話のございます点で、一つの考え方は、安全保障というのを広い意味解釈するという意味で、狭義の直接の防衛の問題のほかに、食糧、エネルギー、その他の日本人が生きていくために必要な資源を支障なく入手するための方策という問題とか、あるいは一方的にただ資源をくれと言ってもこれは十分な取引力になりませんので、日本は資源がないけれども非常にすぐれた技術、能力を持っておるので、これを高度化することによって、世界の国々はやはり日本から設備を入れたい、プラントを入れたい、いろいろな工業製品を日本から買うといいものが買えるというような状態を維持してまいりまして、それによって相手に与えるものがある、同時にこちらも必要なものを受け取るという立場を維持していくということが広い意味での日本の安全にもつながってまいるのではないか、あるいは南北問題について日本が積極的な態度をとることもこの広い意味での日本の安全に通ずるのじゃないかというふうに私ども考えておるわけでございます。  全方位外交というものをどういうふうに解釈するかにもよりますけれども、従来から資源的に全世界からの供給に依存していかなければ日本人の国民生活は維持できない、日本の経済活動も維持できないという状態にあるわけでございますから、できるだけ他の国々と平和な関係を世界じゅうの国々と平和な関係を維持していくということが日本にとって、日本の国民にとっても経済的に必要であるというふうに考えておるわけでございます。  御指摘のソ連につきましても、輸出入銀行を通ずる約十五億ドルの借款を提供しております。中国も最近、御承知のように経済協力の話がいろいろ出ております。そのほか、世界じゅうの国々ととにかく比較的良好な経済関係を維持しておることは、日本国民の生活、生存のために必要な条件だと考えておるわけでございます。
  97. 高沢寅男

    ○高沢委員 いままでお答えいただいたことを一応総論にいたしまして、あと各論に入りたいと思います。  先般、大平総理一緒に中国を訪問されました。それで今年度五百億円の円借款を、北京の病院も含めて七つプロジェクトを中国との間で約束を結んでお帰りになったわけです。  私は、今度の大平総理の訪中の最大の具体的な課題はここにあったのじゃないかと思うのです。中国の長い間の毛沢東時代あるいは四人組時代、そして現在の政権、そういうふうな歴史的な経過を振り返って、いまこの段階でわが国政府が対中国のこうした関係を結ばれたことについては、私は高度な政治的な判断が当然あったと考えるわけですが、今回の訪中に当たっての政府としての高度な政治判断というものの概略をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  98. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 近年になりまして中国が外側に開かれた政策をとる、技術の面、工業発展の面等についても外国の進んだものを取り入れたいという態度に変わってまいったわけでございますが、世界の人口の四分の一を持っております中国が経済的な条件を改善することは、世界全体からも貧乏を少なくしていくということ、特にアジアにとっては日本の隣の大国でございまして、経済的な進歩が起こり政治情勢も安定するということは、日本自身にとって、またアジアの全般にとっても長期的にプラスになるという判断が基本的にはあるかと思います。  それから借款問題については、大平総理から繰り返し申しておることでございますが、三つの原則といいますか、中国の経済発展に対する協力は欧米諸国と協力のもとにやる、日本が一人占めにするようなことはやらないのだ、第二に中国に対する借款は他のアジア諸国、特にASEAN諸国に対する援助とのバランスをとって考える、第三に日本の援助は軍事的な面に関係しない、これが三つの原則かと思うのでありますが、そのような方針を中国側にもはっきり申し述べまして、中国側もこれに同意して借款の要請をしてまいり、それに対して日本側がこたえ、今回もまた北京で繰り返しいまの三つの点について強調してまいったわけでございまして、中国側もそれを了解の上で日本側からの借款を受け入れることになっているように思います。
  99. 高沢寅男

    ○高沢委員 しばらく前にアメリカのモンデール副大統領が中国を訪問した際に、副大統領は強い中国はアメリカにとって有利である、このようなことを言われたと聞いておるわけであります。この場合のアメリカの言う強い中国というのは、経済的な面あるいは社会的な面のみならず軍事的に強い中国はアメリカにとって有利である、こういうふうな対ソ戦略の立場に立った意味をモンデール副大統領の言葉は含んでいると私は思うわけです。  しかし、いまの大臣の御説明では、わが国の立場はそれとは違う。大平総理大臣が対中国の援助の三原則の中に軍事的な協力はしないということを明らかにされた、また中国もそれを了としたということからすれば、私は日本政府はそういう立場にはないというふうに当然考えるわけです。  ただ、現実に中国の要人が世界の各国を訪問したりアプローチするのを見ると、行く先々でいろいろな兵器の購入を求めるということがあるやに伝えられております。日本に対しては恐らくそういうことはあり得ない、こう思うわけですが、この点については日本政府の立場として、仮にそういうことがあっても当然問題にはならない。あるいはまた、一時日本の経済界の中にも、もうここまで来れば対中国の兵器の輸出をやっていいではないかという議論が出ておるやに聞いております。これは民間の動きであるとしても、政府としてはあの武器輸出に関する原則があるわけですから、当然そういうことは対中国の関係ではあり得ないというふうに私は理解をするわけですが、大臣にその点の見解をお尋ねしたいと思います。
  100. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまお話しのとおりだと思います。日本の立場は、この点について必ずしもモンデール副大統領あるいはアメリカの態度と同一ではございませんで、軍事力に対する援助は行わないという基本方針は堅持していかなければならない点だと思います。
  101. 高沢寅男

    ○高沢委員 中国へ訪問されて後、外務省から関係の各国に訪中の説明をされたとあるわけです。その中にはソビエトも入っておれば韓国も入っておる。ASEAN諸国はこれから行かれるのですか、もう行かれましたか。  そういう各国へ説明された経過、それに対して相手側がどういう対応であったかというふうなことを御説明いただきたいと思います。
  102. 武藤利昭

    武藤説明員 まず御質問のうちソ連の反応について、欧亜局の方が担当でございますので御報告をいたします。  ソ連に対しましては、十二月十日東京で、鹿取外務審議官から在京のポリャンスキー大使に対しまして、それからまた翌日、モスクワにおきまして、魚本駐ソ大使からソ連外務省のソロビヨフ第二極東部長に対しまして、それぞれ総理の訪中の概要について説明を行ったわけでございます。  その際のソ連側の反応でございますが、おおむね次のとおりでございます。第一番に、日本政府が非常に早い時期にわざわざ説明してくださったことに対して深く謝意を表明するということ。第二点といたしましては、中国の近代化のねらいがどこにあるか考える必要があるけれども、日本側は軍事面では協力しないということを言っておられる、その言明はテークノートする、ただ大規模な経済協力が中国の軍事強化につながるのではないかという疑念は持っているということ。第三点は、この説明を行いましたときに、日本としては今後ともソ連との関係はできるだけ前進させたいと考えているということを付言いたしましたのを受けまして、日本政府日ソ関係を前進させたいとおっしゃったその点は歓迎する、おおむねそのような反応でございました。
  103. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 ASEANについてお尋ねでございますが、鹿取外務審議官が総理に同行いたしたので、これが現在ASEAN諸国五カ国を回って、それぞれ通報をしているところでございます。  韓国につきましては、同じ鹿取外務審議官がソ連と同じ日に、今週の月曜でございますけれども、金大使を呼びまして経緯を説明した次第でございます。それに対して、金大使は若干のコメントをしておりました。その一、二を御紹介いたしますと、華国鋒総理は南の民主化ということを言ったようだけれども、韓国の立場から言えば北こそ民主化の問題があるのではないかということを言ったという点と、それから、北から南への侵攻という危険については韓国は常に不安を持っているので、そういうことが日本総理によって北京において提起されたことは喜んでいるというような応対があった次第でございます。  なお、そのほかに米国に対する通報も当然いたしたわけでございます。
  104. 高沢寅男

    ○高沢委員 先ほど全方位外交ということを私御要望申し上げたわけですが、日本と中国の関係がこういうふうに非常に進んできておる。こういう状況との関係で言えば、あと残された大きな課題としては、日本としてはやはり対ソ連の関係じゃないのかな、このように私は考えるわけです。  それで、つい最近、十二月の四日、五日ですが、御承知かと思いますが、東京で日ソ円卓会議というものが行われたわけであります。恐らく外務大臣、もし民間人であられたら、こういうところへ参加されることになったのじゃないかと思うのですが、この会議で赤城宗徳先生ですね、これは日ソ親善協会の会長をしておられますが、赤城先生が基調報告をされた。その中で、日ソ関係でこういうことを言っておられるのですね。日ソ両国政府が、両国関係のより一層の発展を目指す平和条約あるいは新しい条約、それに準ずる国家間原則の確立を目指して協議の場をつくることが必要じゃないか、こういうふうな意味のことを基調報告の中でやっておられるわけです。これは、つまり政府間の関係で、対ソ連の関係で相手もこちらの日本政府もともに大きく一歩踏み出すべきだ、こういうふうな意味だと思います。  そこで、それについて外務大臣の見解をお聞きしたいわけですが、その場合どうしても浮かび上がってくるのは、善隣協力条約という、かねての問題になっているものであるわけです。これについては、ソ連側の案が日本側へ手交されて、ソ連側はその内容を発表したということで私たちもその内容は知っているわけでありますが、その円卓会議に来たソ連の代表の発言によれば、自分たちの案は一応そうやって日本に手交したけれども、その名称あるいはその内容はこれでなければいかぬという考え方を持っているわけじゃない。むしろ逆に日本側からこの種の条約について日本側はこういうものを望ましいと考えるというような、日本側の考えや案を待ち望んでおるのだというふうなことが表明された、こう聞くわけでありますが、私は、いま対ソ連の関係を一歩進めるには、どうしてもこの問題を避けて通れない、ここに一歩触れていくということが必要ではなかろうか、こう考えるわけです。  それで、もう質問の時間がありませんので、一々お答えいただいてまたしゃべるとなると時間が余分にかかりますから私の考えをざっと述べて、それで見解をお聞きしたいと思うのです。  そこで、私はいまの経済情勢、資源情勢等々も含めて考えますと、日本とソ連との間において一つの柱はいわゆる平和共存あるいはデタント、こういうふうな大原則を大きくうたう。それから、もう一つの柱は、日本とソ連との間の全面的な経済協力あるいは技術協力、文化協力というようなことを大きな柱としてうたう。そして、もう一つの柱で、これはこちらの希望であるわけですが、少なくも歯舞、色丹の返還の処理というようなことについてこの中において結論をつける。こういうふうなことでもって日本側からの一つの提案があってもいいのではないのか、こういうふうに私は考えるわけです。  そういう一つ根拠は、ソビエト側としては実はいまやっている五カ年計画は来年で終わります。再来年からまた次の新しい五カ年計画にかかる。その五カ年計画の内容の非常に大きな部分は、さらにシベリアの開発を進めるということになります。そうすると、この面において日本に対するそうした協力を求めるというソ連側必要性、向こう側の意欲というものもいま非常に大きい、こう私は判断して間違いないと思います。したがって、これを日ソ政府の間の大きな課題として両側から取り上げていくということが、いまちょうどタイミングとしても最も適切だ、こう思います。  同時にまた、過去における日ソ条約関係を考えてみますと、あの日ソ共同宣言の中では戦争終結という課題は終わっているわけです。両国の国交回復という課題も終わっているわけです。あるいは賠償請求権の処理もあれで終わっているわけです。したがって、あと平和条約が残っているといっても、その平和条約で、あと何が残るかといえば、結局領土問題の扱いだけが具体的には残っているということになるわけです。したがって、この領土問題というものをどうほぐして解決していくかということがこれからの日ソ関係の大きな課題だと私は思いますが、これがいままでのところではなかなかそのとびらがあけにくい、こういう状況の中であえてそのとびらをあけていくためには、いま言ったような平和共存、デタントということを思い切ってうたい、同時に経済協力を思い切ってうたい、それとの関連において、少なくも歯舞、色丹――私の見解では、この歯舞、色丹は実は領土問題ではない。千島というものはサンフランシスコ条約から出てきた領土問題ですが、歯舞、色丹は千島とは違うわけです。したがいまして、領土問題とはまた違った性格を持つ、北海道の一部である、こういうふうな性格から見ても、歯舞、色丹を先にまず何らかの形で解決をして、そうしてその後に本格的な領土問題の解決に向かって進む、こういうふうな進み方をいま模索すべき段階ではないのか、こういう意味において日本政府から対ソ連への積極的なアプローチというものが出てもいいのじゃないのか、こう思うわけですが、結論的にそれに対してひとつ大臣の御見解をお聞きをしたいと思います。
  105. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまのお説、拝聴いたすわけでございますが、従来日本政府のとっております基本的な態度、北方領土に関する基本的な態度、四島一括返還の考え方と別な行き方になるかと思うわけでございますが、この点については国民感情を考えますとなかなか困難な点があるように考えるわけでございます。  さらにその四つの島、特に色丹にも軍事基地を設けるというような行動は、やはり日本国民として、日本に対する友好的な態度であるというふうにはどうもなかなか受け取れない。善隣友好条約ということを検討する必要はあると思いますが、ただ、やはり北方領土で問題になっている地域に軍事基地を設けるというような点について、言葉でなくて行動でもって日本国民の納得を得る対策を示していただかないと、なかなかその次のステップには動けないというのが多数の日本人の気持ちではないかと考えるわけでございます。  これは長い将来の問題でございますし、日本国民の将来にもかかわる問題でございますが、この基本的な領土問題については日本政府としては一貫した態度をとり続ける。根気強く、粘り強く主張すべきものは主張していく以外に別の道はとりがたいのではないかというふうに、私としては考えておるわけでございます。
  106. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、やはりまだ外務大臣は、そう言っては失礼ですが外務官僚のいままでの事なかれの非常に消極的な立場でお答えになった、こう思うわけですが、われわれ社会党は、千島の問題は全千島の返還という立場です。政府・与党は四島返還、こう違いますね。しかし、それにしても、政府・与党は平和条約で四島返還を実現する、こう言っておられるわけです。しかし、このことは、そうは言ってもなかなか現実に動かぬというこの現実もまた否定できないわけです。そこをどうやって動かしていくか、どうやってそのとびらをあけていくか。しかも、いま日本の立場からすれば、あの北海道の周辺地域における漁業の安全操業とか非常に大きな課題が緊迫しておるというふうなことも含めて、われわれの原則を変えることなく、その平和条約四島返還よりも一歩先に善隣友好で二島返還を先に実現してしまうという点においては、後退ではなくて、私はむしろ一歩問題の解決を前へ引き出すというふうに思うわけですが、しかしこれについてこれ以上答弁を求めても時間が迫っておりますので、これ以上求めません。私の見解として申し上げます。  最後に、もう時間がありませんから、どうしても聞きたい問題として二つ三つ言いまして、答弁者がそれぞれ違うかもしれませんが、ひとつ一括してお答えいただきたい。  一つは、あのベトナムの関係ですが、この五十四年度のベトナムに対する援助、これはもう当然一つの結論を出さなくてはならぬ時期に来ております。中国において大平総理は、これは日本の立場で援助はやるということを言明されておりますが、それはいつごろどういう処理になるか。それから、来年度の援助はどういう扱いになるか、これを一点。  それから第二点といたしましては、実はリビアの関係になります。と申しますのは、日本リビア友好協会という立場で私もつい最近リビアへ行ってまいりまして、それでリビアの政府当局やあるいはリビアにいる日本の各企業の、向こうで経済協力でいる日本人たちの意見も聞いてまいりましたが、政府当局も望んでいることは、日本とリビアの政府間の技術協力協定というようなものを結びたいという非常に積極的な意欲があります。それで、向こうにいる日本人も、いままで各個別企業で、民間で協力努力はしてきたが、もう一歩前へ質的に進むには、そういう政府間の協定はぜひやってもらいたい、こういう強い希望があるわけです。  われわれの考えでは、結局この中国との平和友好条約にしても、このものができたことで大きくいま日中関係が進む。対リビアの関係でも、技術協力協定と言っても技術というのは言葉の問題で、実際はそういう政府間の協定ができることでリビア側としてはもっと日本との関係を積極的に進めたい、こういう意欲がある。これにこたえるべきじゃないのか。また、向こうはもっと端的に、日本の現職の大臣がリビアへぜひ来てもらいたい、そういうことがあればこれもまた大きな日本とリビアの関係の積極的な前進のきっかけになり得る、こう言っているわけですが、そういう点にぜひ私は外務省としてはこたえてもらいたいということ、これがまた質問一つです。  そうしてもう一つは、最後に、それらの在留の邦人から強く訴えられたのは子供たちの教育の問題です。結局子弟はリビアのトリポリではアメリカンスクールへ行っています。それで足りない点を何とか現地の日本人の先生を見つけて、そして補習教室をやって、少なくも国語と数学の勉強をやっておる。その補習教室に頼んでおる先生の費用を本国の外務省からぜひ補償してもらいたい、それに援助をしてもらいたい。そして、行く行くはちゃんとした先生もひとつ派遣してもらいたい。こういう教育上の切実な要求があります。これはあえてリビアじゃなくて、世界各地に駐在している外務省の職員の人たちあるいはまた商社の人たちのやはり大きな希望だと思いますが、これについてもひとつ前向きな答えをお願いをしたい。  以上、二つ三つ連ねて言いましたけれども、それぞれお答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  107. 梁井新一

    ○梁井説明員 まず、先生の御質問のベトナムに対する援助につきましてお答え申し上げます。  対ベトナム援助につきましては、昨年十二月グエン・ズイ・チン・ベトナム外務大臣が東京に参りまして、そのとき園田外務大臣と会談を行いまして、園田外務大臣よりベトナムに対する援助を引き続き供与するという意図を表明しております。政府といたしましては前回と同様の援助を供与する方針でございますけれども、援助の具体的な実施の時期につきましては現在検討中でございます。それ以降の援助につきましてはまだ決まっておりません。(高沢委員「間もなく今年度は終わりますが、今年度のものはどうなりますか」と呼ぶ)現在検討中でございます。
  108. 千葉一夫

    ○千葉説明員 ただいま御指摘のございましたリビアの件でございますが、わが国は一般的に経済技術協力協定締結につきましては、これまでは原則といたしまして経済技術協力実施に際しこのような協定がなければいろいろ支障ないし不便がある、こういったようなときに限って提起していく、こういうふうな方針をとっておったわけでございます。現在、アジア、中南米、アフリカ等の幾つかの国からも御同様の申し出が出ておるわけでございまして、その点についてもわれわれとしてはいろいろ再検討せねばならないことになっているわけでございます。  そこで基本的に言いますと、さっき冒頭に申し上げましたような点から検討しておるわけではございますけれども、ただいま高沢先生が御指摘のように現地におきましてもまたいろいろ事態が動いておるわけでございまして、われわれとしましてもそれに応じて、また従来だけの観点にとらわれずに検討していきたいと思っております。ただし、そうは申しましても、やはり二国間関係、わが方の事情、相手国の事情もこれありますので、これは非常に慎重にやらなくてはなりませんし、また役所でございますから外務省だけということもそれはまたできないわけであります。そういうわけで、このリビアの問題は特にいままで国会でも御質問はございませんでしたし、その点では余り深くは検討してなかったことは事実でございますが、またもう一つ事情としては、向こうが何を欲しているのかよくわからないというのもございました。しかし、ただいまの御指摘もありますので、一層検討を進めてまいりたいと存じております。
  109. 塚本政雄

    ○塚本説明員 最後の三つ目の、海外子女教育の問題でございます。外務省といたしましては、海外子女教育の問題につきましてはこれを重点施策といたしまして、ただいままで全日制の学校六十二校、それから補習学校、リビアにまさにございます土曜学校が七十校、予算四十数億をもって人的に、これは教員の派遣とか、物的には校舎の建設といったような意味合いにおいて重点的に施策してまいりました。リビアにつきましては在留邦人三百名中ただいま生徒九名と伺っておりまして、講師三名の方が御指摘のとおりの土曜学校を開いておるそうでございますが、来年度の予算を目がけましてこれらの講師謝金、一人わずか百二十ドルの補助でございますが、この補助を差し上げるべく予算要求をいたしたい、かように考えております。  以上でございます。
  110. 高沢寅男

    ○高沢委員 それは年ですか、月ですか。
  111. 千葉一夫

    ○千葉説明員 月でございます。
  112. 高沢寅男

    ○高沢委員 わかりました。  それでは以上で、私、時間を超過しまして済みませんでした、質問を終わります。
  113. 中尾栄一

    中尾委員長 奥田敬和君。
  114. 奥田敬和

    ○奥田委員 大臣、私は今日の国際情勢ほど流動、かつ緊張をはらんだときはないという認識の上に立っております。日本のいま置かれでおる立場というものはまことに微妙で前途波乱に満ちておる、外務大臣の責任たるやまさに重大であると思っております。大臣の国際人としての多彩な経歴と御経験を生かしていただいてこの大役を無事果たされるように、私たちは強く期待を申しております。  さて、先ほど質問のありましたようなイラン情勢あるいはPLOをめぐる中近東情勢、これらはもう世界の火薬庫に火がつくおそれのある問題でございます。また、ASEAN諸国を初め東南アジアの安全保障の基盤を揺るがしておると言っても過言でない難民問題、これらはタブー視されておりますけれども、戦争と紛争の拡大につながる重大な要因をはらんでおります。わが国の当面の外交課題は、私は集約して言うならば、このエネルギー問題、そして難民問題、この二つにしぼられると言ってもいいと思っております。  そこで私は、質問の時間の制約も受けておりますので、難民問題、特に今日マスコミで伝えられておるカンボジア難民に的をしぼって、二、三の問題をお伺いいたしたいと思います。  つい最近、一週間ほど前に私は民社党の常任顧問である春日議員と一緒に、このバンコク北東百五十キロの地点のサケオ地区に設営されている難民キャンプを視察いたしました。一言で印象を申し上げますと、まことにこの世の生き地獄と申しますか、悲惨の一語に尽きております。随行した外務省職員によると、いやこれでもよくなったんだ、一カ月前はこんな状態ではなかったということでございましたけれども、まさに悲惨の一言に尽きる状態でございました。  タイが大量のカンボジア難民、いま現在収容済みが二十万と言われておりますけれども、もっと事態を恐れておるのは、国境地帯に五十万人という難民予備軍が、国境線すれすれのところにいるという状態でございます。すでにタイに入っておるラオス難民、これは二十万を超えておるとも言われておりますけれども、タイはこのようにラオスあるいはカンボジア等々から流入してくる難民に大変な負担をこうむっておるわけです。  こういった客観的な事実に加えて、タイの識者あるいは国民がいま一番恐れておることは、インドシナ三国のベトナム化、共産化に次いでこの難民の次に来るものは、タイの大きな意味で安全保障にも絡むベトナム軍の侵攻についても、非常に大きな脅威を感じておるわけでございます。タイ国民から見ると、カンボジア難民発生の難民メーカーと申しますかその原因は、言ってみればカンボジアに進駐したベトナム二十万の軍隊である。クメールのカンボジアが結局ベトナムのカンボジアに化しつつあるのだ。したがって、難民メーカーはベトナムであるという単純な認識の上に立っておるわけでございます。これも一理あることだと思います。  そこで、いまの高沢委員と観点を異にしますけれども、こういったタイへの難民流入の状況下において、タイを初めASEAN諸国は、わが国の対ベトナム援助について非常に大きな関心と、もしそれを実施されることになった場合に関して非常に懸念を持っておるということを否定することはできません。私たちは友邦国であるASEAN諸国、そして自由国家群であるASEAN諸国家群の猛反発を越えてまで対ベトナム援助供与についてどういう態度に出るのかということを憂慮をしておるわけでございますけれども、いまほどお話がありましたように、このベトナム援助に関して私たちは慎重な態度でかかるべきだと思います。いま局長答弁にありましたように、現在まだ続々とカンボジアから流出しておる難民の状況を考えるときに、原因であるベトナムにさらに力をかすような援助というものは、私たち日本の立場は非常に微妙な立場にあるということを考慮されていただきたいと思うわけですが、さて、この対ベトナム経済援助についてどういうお考えであるのか、いま一度お伺いいたしておきます。
  115. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもも、タイにつきましては従来から非常に重要視しているわけでございまして、経済援助におきましても重点国の一つといたしております。今度のカンボジア難民につきましても、タイ側に大きな負担になるわけでございまして、その上難民の生活状態、ただいま奥田先生から御指摘のように非常に悲惨な状態だということもございまして、かなり早い時期からとりあえず資金的な援助をやってまいったわけでございますが、せんだっては緒方貞子さんを団長といたします調査団を出しまして現地の状況もいろいろ調査し、日本側としてなすべき具体的な内容についても検討いたしておるわけでございます。現地を奥田先生も見てこられたわけでございますので、私ども報告を受けておりますが、何とか悲惨な状態を少しでも早く、少しでも軽くするということが人道上から見ても必要だと考えております。  経済的にも、タイの北東地域につきまして、これはタイの中でも最も貧困な地域でございますので、北東地域の農村開発に対して日本も借款の面で低利、長期の融資を行う約束ができておりまして、これも実施段階に入っておるわけでございますが、タイがASEANの中でも直接戦乱地域と国境を接しておりまして、将来東南アジアの運命にも大きな影響があるわけでございますので、私どもとしては、将来も特にタイの問題について十分な注意を払ってまいりたいと思います。  御質問のベトナムの援助問題は、先ほど局長の方からも答弁いたしましたが、政府としては昨年十二月に約束をしておるわけでございます。実施については、その後のいろいろな情勢を見てまいっておるわけでございますが、まだ開始いたしておりません。いつ開始できる状態になるか、全体の情勢の安定化というものが必要ではないかと考えるわけでございますが、御説のように、実施につきましては今後も慎重に取り扱ってまいりたいと考えておるわけでございます。
  116. 奥田敬和

    ○奥田委員 二国間の約束のこともあるでしょうけれども、特にこういった流動的な難民問題というのは後に非常に大きな問題が。ございますので、慎重にやっていただきたいと思います。  いまほど大臣答弁で、私が聞こうと思ったこともお答えになったような形ですけれども、そういった難民援助との兼ね合いから、これからますます世界各国のボランティアの活動等々あるいは国連機構の救済等々で難民に対する食糧給付あるいは医療の面が整っていくと思います。ところが、問題なのは、タイの北東部というのは非常な貧困地帯です。御存じのとおり焼け畑で、もう砂漠化しておるといったような状態で、この辺の貧困な農民層はむしろ難民より医療給付なりいろいろな面が悪いという形の中で、大きな不満の種になっておるということも聞いております。ですから、かかる状況から勘案して、難民の援助はもちろん日本として果たすべき責任は十分果たしていただきたいわけですけれども、タイへの二国間援助、特に農業面あるいは医療面あるいは教育面に関する北東地域に関する二国間援助、グラントエレメントに関して積極的にがんばっていただきたいし、応援をしてやっていただきたいと思うわけでございます。  そこで、一つお聞きしますけれども、いま大臣がお話しになりましたけれども、なるほどベトナム難民に関し、あるいはカンボジア難民に関し、日本は難民救済に関しては確かに資金協力の面ではやっておるわけでございます。しかし、わが国が難民に関して非常に冷たいじゃないかと言われる原因は何かと言えば、結局受け入れについて数が非常に少ないということでございます。これは向こうが希望を募っておるけれどもできない等々のいろいろな原因もあるようでございますけれども、私はそればかりではないと思います。定住条件が非常に厳しいということもある。それはやはり親類があるのかどうかとか、あるいは知己が日本に滞在しているかどうか、あるいは日本との交流関係で身元保証人がしっかりしておるのかどうか、あるいは職業技術を持っておって日本の国内で生活していけるかどうか等々、定住条件は私は非常に厳しいと思う。したがって、これらの定住条件に緩和を含めて前向きに取り組む意思があるかどうか、そのことで、まず定住条件緩和について簡単にお答えください。
  117. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いま御指摘の点は確かにそういう面もございまして、日本の社会がわりあいにそういう意味では閉鎖的な面があるようにも思われますが、政府の方としても従来この受け入れの枠を広げるということ、それから実際に難民の受け入れ状況も増加しておりますし、そのほか日本におりました留学生の定住を認めること、一歩一歩この枠を広げるように努力してまいっておるわけでございまして、その点はお説のとおりだと考えておるわけでございます。  なお、もし詳細につきまして必要でございましたら政府委員から……。
  118. 奥田敬和

    ○奥田委員 五百人という受け入れを世界に向かって言っているわけですから、できるだけ五百人くらいは入れるようにある程度の条件を緩和されて、そして日本定住希望者を日本に受け入れたのだということが一つでも世界に向かって発表でき得るような体制をつくっていっていただきたいと思います。これは非常にむずかしい問題だと思うのです。言語がむずかしい、日本の教育程度が高い、こういう中でなかなか生き抜いていく自信がない等々の問題点も私はあると思います。  ところが、難民問題は総理府の方で対策室でやっているのかもしれませんが、これは大臣も新聞でお読みになったこともあると思いますが、沖繩の西銘知事が、これは別に難民という形に限らなくて、将来は大きく南北センターと申しますか、東南ア諸国の人たちも研修する、技術研修も含めてそういった言語も研修するような、しかも南北のかけ橋になるような形の施設がもしでき得るならば、私の方としては進んで受け入れてもいいという積極的な発言をなさっておるわけです。こういった形は難民研修の即効的なことにはならないかもしれませんけれども、知事のそういった意欲的な意向表明があったわけですから、これらに前向きにこたえ得るように外務省としても積極的にこういった問題点に取り組んで、どういう名称がいいかわかりませんけれども、東南アの、あるいは難民も含むこういった人たちの技術研修センター的なものを沖繩というような日本の接点の中で、南北のかけ橋になっているようなところでやられるということも、御一考願いたい、これを強く外務大臣から提唱願いたいと思います。  それと、これらの問題点と少し論拠を異にしますけれども、実はきょう一、二点ちょっと問題点がありましたので指摘したいと思います。  イランのああいった情勢、緊張感の中で、別にいまイランがどうのこうのなるという問題ではありません、この難民地域においてもあるいは中東地域においても、いわば世界の緊張をはらんだ中で外国にたくさん行っている邦人生命というものを大切にしていくという立場の中で、これらを緊急かつ万一のときに避難させる、そういったときの輸送関係というものは、いまのところ民間に頼らざるを得ない状態です。私は、このことは、外交活動を続ける上においても邦人生命を預かっている在外大使館においても、非常に心配の種だと思います。こういったときに貨客専用機というか、どこが保持するかは別として、こういった邦人生命というものを緊急地から避難させるというときの輸送機くらいは何機か政府としてどこかに待機させて、平生から常にパイロット訓練も含めてやっておく必要があるだろう、そういったことも、大臣として新しいアイデアとしての政府実施事項、将来可及的速やかにやる問題点として指摘しておきます。  それと、いま一つは、実は二十年前の一九五九年、昭和三十四年十二月十四日、つまり正確に二十年前のきょう、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国へ渡った第一次帰還船が出たわけです。したがって、それから二十年の歳月を経ておるわけでございます。そのころ一緒に渡った日本人妻が約六千名と推定されておるわけですけれども、これらは大半は音信不通の状態であります。これは国交がないと言われればそれまでであります。しかし、音信がわずかあったにしても、その人たちの大半の人は故国へ里帰りされる希望を切実に訴えておられるわけでございます。国交がないといっても、スポーツや文化で朝鮮民主主義人民共和国との間の交流、相互訪問という形は最近活発になってきておるわけでございますし、赤十字を通じての安否照会等々も強い要望としてなされておるわけですけれども、やって余りいい結果が出ていないというのが実態でございます。  両国の国交がそういった形で閉ざされておりますけれども、この安否調査あるいは里帰り実現、これらを人道的見地から、ひとつ担当のアジア局長としても、朝鮮赤十字なりに問い合わせてみる形はどうか、そういう形はあらゆる手だてを尽くして、第三国経由でいいですから、そういった点について二十年たった今日の日本人妻の里帰り実現というような方向で努力をされたいということを、特に要望をいたしておきます。  ちょうど七分でやめろということで七分になりましたけれども、できれば大臣、一言、一括一分間で答弁していただきたいと思います。
  119. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 避難機の問題がございまして、この点は私どもとしても真剣に検討すべきことだと考えております。  北鮮の日本人妻の問題につきましても、人道上の問題でもございますし、できるだけお話のございましたような消息を調べる、できることならば里帰りのできるような手段について努力をいたしたいと考えます。
  120. 奥田敬和

    ○奥田委員 ありがとうございました。
  121. 中尾栄一

    中尾委員長 渡部一郎君。
  122. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まず質問に先立ち、外務大臣、御就任をお祝いいたします。錬達の外交官がこの難局の時期に外相のポストに座られたことに対し、深い好意と期待を寄せているものであります。  さて、現在アメリカ及びイランの紛争についてわが国外交及び通産省等の基本的方針が混乱しているやに見受けるのであります。このような事態は決して得策ではないということについては一致をいたしているのが日本国世論ではございますが、とかく政府の方針が明示されず右往左往しておるように見えるのでございます。私は次の六点ばかりにつきお伺いいたしますので、わが国外交の基本的方針をまず明示していただきたいと存じます。  第一は、イランにおいて現在アメリカの外交官が人質にとられているという点について、日本政府はどのような態度をとられているか。  第二は、アメリカ側の報復措置として行われているイラン原油の購入抑制の問題について、どういうふうに考えておられるか。  また、同じくアメリカ政府の金融面における制裁について、政府はどう考えておられるか。  また、多くの国際的な不評を買っている日本の商社の行動について、政府は今後どういうふうに指導されるおつもりであるか。  また、今回のこうした事件に対するアメリカ側の反応というものは多分に誤解に基づき、あるいは感情的な側面もあるやに見受けるのでありますけれども、これに対してどう考えておられるか。どの点を誤解と見られているか。  また、今後の政府のとるべき行動というものはいかがなものであるか。  以上、六点につきまして御説明を承りたいと存じます。
  123. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの渡部委員の御質問につきまして、まず日本の外交の方針でございますが、これは先ほども申しましたが、一方において日米関係というのは日本の外交の重要な柱でございます。同時に、日本の経済の生存のために海外からの資源が円滑に入手できるような条件をつくってまいる、これもまた日本の外交にとってきわめて重要な柱になるわけでございまして、たまたまそのアメリカとイランがきわめて緊張した状態になっておるということは、現在の日本の置かれた立場にとってまことにむずかしい問題を提起しておると思うわけでございます。  イランにおける米大使館の人質問題につきましては、従来も外務省からイラン政府に対する申し入れを行ってきておりますし、また国連安保理事会における日本代表の発言等も行ってまいったわけでございますが、基本的に、大使館を占領して大使館員を人質にとることは国際法に反する行為でございますし、また人道的に見てもきわめて望ましくないやり方だと考えるわけでございまして、政府も従来からそういう立場を外務省としてもとってきておるわけでございますが、その点についての誤解を避けるために昨日も外務省見解というものを出しておるわけでございます。  第二の、原油の禁輸についてどう対処するか。これはアメリカがイランからの輸入を禁止し、イランが対米輸出を禁止しておるということでございますが、日本としてもエネルギーの確保というのは、先ほど来申しましたように国民生活、経済にとって欠くべからざるものでございますから、何とかして必要量の入手をしなければならないわけでございますが、同時に、その入手の仕方につきましては、現在のような米国とイランの厳しい対立状態のもとで十分な注意を払っていかざるを得ない。それから、ことしの六月の東京サミットにおいて、各国、高値のスポット買いを自制、自粛するという申し合わせが首脳会議でも行われておりますので、この申し合わせを守っていかなければならない。そういう点を考慮しながら日本の必要とする油をできるだけ入手しなければならない。そういう考慮になってまいるわけでございます。  この点については、特に日本の置かれている立場に困難な面がございまして、従来かなりの量をいわゆる国際石油資本、メジャーに依存してまいったわけでございまして、このメジャーの対日供給がこの一年間に急激に減少するという事態に対処しなければならない。この点は後ほどの御質問の中にありますアメリカの誤解に基づくと――この点は誤解かあるいは理解不足かわかりませんが、日本側としては再三アメリカに申し入れるといいますか、話をする必要のある点だと考えております。  第三の金融制裁にはどう対処するか。これは先般アメリカ政府もカズウェル財務副長官あるいはクーパー国務次官、ソロモン財務次官、こういう人たちをヨーロッパに派遣しまして、各国を回っております。で、その一環として私もパリでカズウェル財務副長官、クーパー国務次官と会談いたしたわけでございますが、金融問題につきましてはアメリカ側が凍結措置を行っておるわけでございまして、世界の金融問題というのは国際的にいろいろな形でつながっておりますから、アメリカのイラン資産の凍結が世界各地に影響を及ぼしてまいるわけでございまして、これについてそれぞれの国の立場、国益というものを当然考慮しなければならない。同時に重要な友好国としてのアメリカの立場に対するある程度の理解も必要なわけでございますが、いまのところ、政府の内部でも金融面における問題点の検討をやっておる段階でございます。  資産凍結という問題については、日本政府としては、法的な裏づけも不十分でございますし、なかなかとりにくいことでございます。民間金融機関がクロスデフォルトの宣言をすることも、これは各銀行、金融機関の判断にまたなければならない点がございますし、また物の流れ、貿易の流れに伴う一般金融について、これはどちらかというと受け身の金融になるわけでございまして、これに対して特別な手を打つということもなかなか困難であるという状況でございますから、政府の方としてもこういう日本事情を率直にアメリカ側に話をしておるわけでございます。  商社の行動につきましては、これは企業経営者のそれぞれの判断があるわけでございますが、こういう微妙な世界情勢のもとにおきまして、やはりできるだけ大局的な立場からの判断をしていただきたい、全般的な日本国際関係に対して与える影響というようなものも経営者の面でもできるだけ御考慮願いたいということが私どもの希望でございます。  アメリカの対日非難に誤解に基づくところがあるのではないか。これはすでに申し上げましたが、私どもとしても、こういう点についてできるだけ先方に率直に話をいたしまして、対日非難を少しでも減らすようにいまもやっておりますが、今後も努力を続けてまいりたいと思います。  先ほど申しました国際石油資本からの日本に対する、日本の独立系の石油会社に対する原油の供給が、昨年の暮れには百四十万バレル・パー・デー程度ありましたものが、最近では四十万バレルに、その間に約百万バレル、七〇%の減少を起こしたわけでございますし、来年に入るとこれがほとんどなくなる。これは国際民間企業のことだから仕方がないというわけでございますが、しかし、こういう点については余り日本の責任ではないことでございまして、やはりこういう実情についても十分他の外国に周知をし、理解をしてもらわなければいけない。  今後のとるべき方向としては、そういう努力を積み重ねて日米関係等につきましての出てまいりました緊張を少しずつ緩和していく、この努力を続けてまいると同時に、日本と中東地域の関係、これにつきましても、重要な産油地域でございまして、できるだけ円満な関係を維持していくように努力してまいる、それが今後の対策の方向だろうと考えるわけでございます。
  124. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大局的なお立場からの御答弁をいただきましたので、細目については今後具体的にかつ率直に実効のある措置をとっていただくように希望したいと存じます。  私は、ここで旅券と査証に関する新しい提案を約二十項目ばかり申し上げたいと思います。すでに内容については御説明をある程度いたしておりますが、時間が余りありませんので全部を申し上げることはできないかもしれませんから、できる部分だけまず申し上げたいと思います。  現在、日本人が一年間に外国に旅行される数は、大ざっぱにいいまして四百万人というような巨大な数字に上っております。ところが、交付される旅券あるいは査証に対して非常に多くの不便あるいは問題点が山積しておりますが、関係各省庁間の具体的な協議が少ないため、むしろ現在の状況に適応しないため、さまざまな問題が発生をいたしております。  そこで、一つずつ申し上げたいと思います。短くかつ的確にお答えをいただければ幸いであります。  まずは一つ目、日本の旅券は各ページが一枚ずつはがれる仕掛けになっておりまして、長期外遊している方の場合には、糸の縫い目のところがぼろぼろになってきて落っこってしまう。ひどい場合には中を差しかえて変造をすることも非常に簡単にできる。こうした状況については、アメリカ政府等においては旅券の各ページに穴をあけまして、所持者がだれであるかを明示するような刻印が行われていると承っているわけでありますが、わが国においても、何らかの形で所持者を明からしめるような印刷あるいは刻印等を押すということが当然検討されてしかるべきであると思いますが、いかがですか。
  125. 塚本政雄

    ○塚本説明員 お答え申し上げます。  一括的に旅券の印刷を依頼しております大蔵省の印刷局とも御指摘の点につきましていろいろと研究いたしました。印刷当局側は一応技術的には可能としながらも、印刷作業が著しく複雑となり、またロスが多く生じるといったような財政的負担のことも申して、なかなか実行には至っておりません。しかしながら、御指摘のとおり、その種の番号を付することは旅券の偽造、変造使用を防止する上においてきわめて有効なことと思いますので、今後とも機会あるごとに印刷局側と協議いたしまして研究を進めてまいりたい、かように考えております。
  126. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日本にビザを持ち込まないまま入国してくる者が最近とみにふえており、そのふえてきた入国者に対してビザを確認した段階で送還その他の業務が発生するというのは、余り適切な処置ではないと思われます。したがって、航空会社に対してあるいは船舶会社等に対して日本人国者に対するビザを事前に確認する義務を負わせるべきではないか。従来わが国でも行われており、またアメリカにおいてもそうしたことが一部行われているやに承るのでありますが、これらは検討する余地がないだろうか。
  127. 塚本政雄

    ○塚本説明員 確かに義務化しているということはございませんけれども、旅行者の少ない段階におきましては、御指摘のとおり各航空会社が切符とそれからパスポートのビザの点を十分に確認いたしまして、旅行者が当該国に入るときのトラブルをなくすような事前のチェッキングをしていたことは事実でございます。しかしながら、確かに旅行者がふえていることでもございますので、その辺について何らかの義務的な措置ができるかどうか、これもまた将来の検討問題として研究させていただきたいと考えております。
  128. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日本への入国ビザについては現在、外交、公用、通過、観光、商用、特定等のビザの区別があるそうでありますが、現在一番問題になるのが就労関係のビザの取り扱いであります。この就労関係、仕事につく場合のビザが非常に妙なやり方になっておりまするため、まず入国の際の在留資格で決めることになっているので、自分の行動事情によって、観光で来ていた者が勉強したいとか、勉強に来ている者が仕事をしなければならぬというような場合、一々外国へ追い出されてしまう。つまりビザの変更ということが国内で認められない。したがって、一々出国を要求される。出国のできない者に対しては法の弾力的運用とかいうことで、伺うところによると、外国人が六千名とか法律によらざる形で居住しておる。こうしたことはきわめておもしろくない事態を発生しているのではないか。したがって、入国ビザの資格変更については国内で認めるように処置することがすでに必要な段階に来ているのではないか。それに対する処置をおとりになる用意があるかどうか、その辺を伺いたいと思います。
  129. 山本達雄

    ○山本説明員 御指摘のとおり、現行の出入国管理令は、通過客や観光客など一定の者について在留資格の変更を認めない立場になっておりますが、これは、観光客等は、短期間滞在してその入国目的が達せられたならば直ちに出国することが予定されているため、比較的簡易な手続により入国を認めていることによるものでありまして、それを他の在留資格に変更し、わが国での滞在を長期化するような措置を認めることは相当でないとの考え方を現行の入管令はとっているものであります。  もっとも、先生御指摘のような問題がございますので、これは現在、出入国管理法の制定問題と関連して、当局で検討しておるところでございます。
  130. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ベトナム留学生が日本において仕事をしようというような場合、全く官憲を避けて移動しながら仕事をしなければならない。日本国民の難民に対する扱いの悪さを表示する一つの重要な要因にもなっており、こうしたことは速やかに検討を得られるように希望したいと思うのです。  次に、日本の受け入れ側企業が外国人を就労させる場合に、ビザの提示を求めないで就労させる場合が非常に多く、問題点が多い。たとえば日本の風俗営業等において、東南アジア等の諸国から多数の女性が観光ビザで入国し、そしてお金をもうけ、逮捕され、送還される。こうしたことの絶え間がない。これらに対して、ある意味では取り締まりはやわらかく、また受け入れ企業が、事前にこうしたビザ等をチェックすることが要請されていないという状況がある。したがって、ある意味では法が存在しない形であり、そして法網をくぐって不正なことをする者だけが得をするというような形になり、ある意味では日本の卑わいな産業を支える重要な要件にもなっておる。こうしたことはわが国の名誉にもかかわる問題であるから、就労させる企業に対しても適切な行政指導をすべきであると思いますが、いかがですか。
  131. 山本達雄

    ○山本説明員 資格外活動の問題が起こってくるにつきましてはいろいろな事情があると考えておりますが、御指摘のとおり企業に対して指導をするはもちろん、資格外活動の取り締まりも強化して行っていく必要があると考えております。  なお、取り締まりにつきましては、現在限られた職員で、全国的な規模でこれを実施しなければならないという困難な問題があるわけでございますが、二つ以上の入国管理事務所が合同して捜査班を編成して摘発に当たるなど、この種違反の摘発に努力しているところでございます。
  132. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 遺憾ながらいまのは答弁になりませんね。今後新しいやり方を考えなければ――東京においてもそういう件数は物すごくたくさんあるわけです。そして、それに対して何ら適切な手が打たれていない。この際、外国人を雇うためにどういうことが必要なのかを企業に対して事前によく教え、事故を起こしたところにもよく教え、そして正当なルートで仕事ができ、報酬をもらい、故国に晴れ着を飾るということでなければならぬ。それが全部脱法、違法のやり方で行われ、日本の暗い部分との接触がそういう形で行われ、日本のイメージを損壊する。これは決して賢明なことではない。  いまのあなたの答弁は、人数が足りないからできないという弁解だけにしかすぎない。あなたが御答弁しにくいのはわかりますけれども、あなたは説明員なのでしょう。あなたは政府委員ですか。(山本説明員「説明員です」と呼ぶ)説明員ならしようがないから、帰って、政府委員によく言いなさい。こんなのは答弁にならない。したがって、いま答弁を求めませんが、あなたの局の方を呼び出してもう一回同じことを聞くから、ちゃんと答弁していただきたい。よろしゅうございますか。――首を振ってないで返事しろよ。
  133. 山本達雄

    ○山本説明員 承知いたしました。
  134. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、外務省員についてでありますが、わが国の外交官の中に混血児あるいは帰化人等が従来とも多く採用されてきたのは具体的な事実で明らかでありますが、最近、各地域を回っておりますると、外交官が結婚する場合に、外国人の女性をめとった場合将来の出世の道が断たれるのではないかとか、将来の出世の道が断たれるからそのようなことはしない方がいいぞとかいうような話が内部的に行われているやに耳にしているわけであります。そういうことは実際にあるのかないのか、外国人との結婚に対して、外務省は省員に対してどういう指導体制にあられるのか、その方針を明示していただきたい。
  135. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 結婚は憲法のもとにおいて自由でございまして、もちろん外国人と結婚することもできるわけでございます。ただ、外務公務員法という法律がございまして、これによりまして、外国籍を有する者を配偶者とする者は、その配偶者が一年以内に日本国籍を取得しない限り当然失職するという規定がございます。これは、外交上の機密保持その他の関係上設けられておる規定かと存じますが、仰せのとおり、実際に外務省には多くの者が外国人を妻としておりまして、そういう人が、外国人を妻とすることによって外務省における昇進その他において不利な待遇を受けているということは全然ございません。この点だけは申し上げておきたいと思います。
  136. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 最近、数次旅券というのがふえてまいりましたが、一次旅券については、帰国の際に表紙に穴をあけてボイドすることが必要ではないかと思われます。というのは、それが使われない表示、ボイドがされていないため、それをかき集めて旅券の変造等に利用される可能性が多い。この一次旅券についてのみは、こうした使われない旅券を何の印もなく当人に持たせるということは手落ちではないかと思われますが、いかがですか。
  137. 塚本政雄

    ○塚本説明員 現行の旅券法に基づきますと、帰国いたしまして失効しましたその旅券につきましては、遅滞なく都道府県知事に返納しなければならないことになっております。しかしながら、帰りましてからそれを忘れてしまったり、依然持っていたということで紛らわしいことは確かに事実でございますので、帰国した空港において直ちにボイドの判を押して失効にするということは、それなりの意義があることでございますが、これを入管当局でするといってもいろいろと問題もございますし、その実行上につきましては、今後さらに一層検討してまいりたい、かように考えております。
  138. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、旅券を持って外国へ行く場合に、わが国の制度上、わが国国民としての権利が一時停止する、あるいは消滅するというような場合があるように思われます。逆に、わが国へ戻ってくるとそれらの権利が復活するものがあると思われます。たとえて言いますと、国民健康保険とか国民年金等の制度は、海外居住の間には中断され、しかもその貴重な権利を喪失する可能性があります。しかも、日本へ帰ってきた場合に、これらの権利がもうないものと思って、届け出をしないまま権利を喪失するケースが最近目立ってまいりました。  またもう一つ、出国するに当たって、健康保険あるいはその他運転免許証等の書類を旅券の発給の際に確認のため提示あるいは提出させられる場合があります。この提出という文言があるため、地方自治体の一部では健康保険の書類等を提出させて、引きかえに旅券を交付するため、当人は健康保険の番号も不明になり、永久にこうした権限はなくなったものと錯覚するケースも生まれているのであります。  こうしたケースについてどういうような処置が必要であるか。さまざまな工夫があるとは思いますけれども、まず第一には、旅券法にある提示あるいは提出と書いてある発給の際の身分の確認の場合に、こうした書類を提示で済ませる、提出しなくても済むというような行政指導をするべきではないか、これが第一点です。  第二点は、出国の際に喪失し、入国の際、帰国の際に復活する諸手続について、何らかの形で整理をする必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。
  139. 塚本政雄

    ○塚本説明員 御指摘のとおり、確かに権利権限の問題が出国によって一時中断される。これは詳細には、たしか厚生省の方がお見えだと思いますので、健康保険その他については後に厚生省側から御説明いただきたいと思いますけれども、その種の注意書きがないために思わざることが起こっておるということにかんがみまして、その種の注意を何らかの形、たとえばパスポートの末記にいろいろの注意事項がございますが、しかし、これはパスポートの最小限のいろいろなことが書いてございますので、果たしてこの注意欄に書くのが妥当か否かという点については、今後十分検討しなければなりませんけれども、何らかの注意指示書、注意書きというものを旅券発給時に添付いたしまして、そういうような注意を喚起するという必要性というものは十分認められると思います。  なお、第二の御指摘の点の、確かに旅券法施行規則、これは省令でございますが、住民票の写し、運転免許証、健康保険証等の提示または提出を求めることができると規定がございます。これは提示にして必要にして十分なわけでございますが、提出という字義を誤解と申しますか、それなるがゆえにそういう運転免許証なんかを取り上げてしまいまして返さなかったために、思わぬ損害とか迷惑というものをこの旅券申請者にかけるというようなことは、提出なる言葉が悪いとすればこれを提示一本に改めるなりして、今後、改善の方向に持っていきたいと思います。  まずその前に、とにかくそういったような実情があるかないかという事実問題、事実関係を十分に調査いたしたいと思います。
  140. 川崎幸雄

    ○川崎説明員 ただいま御指摘のございました健康保険証でございますけれども、健康保険証と申しますのは、本来、保険給付を受けることを目的としたものでございまして、これが便宜的に旅券の発行のために使用されているということはあろうかと思いますけれども、そのために本来の目的に支障を来たすような使用のされ方をするということは、これはあってはならないことでございまして、そこらはやはり交付の手続に際しまして適切な処理をしていただきたいというのが私どもの考え方でございます。
  141. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 外務大臣、ここから少し議論がややこしくなりますから聞いておいていただきますが、さて、日本国民が外国へ出かけたといたします。出かけた瞬間に日本国内にいないわけであります。日本国内にいないのですから、当然選挙権を失うわけであります。そして国民健康保険の権利も失うわけです。年金の権利も失うわけです。そして出国します。帰ってきたら復活するわけであります。帰ってきたときには、住民基本台帳に登録したと同時に、長い場合、それから六カ月を経て選挙権は回復し、そして帰ってきた瞬間に健康保険や年金は復活するたてまえになっております。どうもお話を詰めてみるとそういうことになるわけです。  ところが、何日出国していたらそれらの権利がなくなるのか、当人がおれはなくなるんだと思っていたらなくなるのか、お役所がなくなったと思ったら、なくなるのかなくならないのか、この点が大変あいまいでありまして、むしろこの辺を詳しく論争すると、哲学的、神学的論争に突っ込む可能性があるのではないかと思われます。  従来、わが国の国民がほんの少数水杯をして海外に出かけるときには、この現行の法律制度は何ろ支障なく運用されたものと思われますが、四百万人も出かけると、早い話が、出国して三年も五年もたっているのに住民基本台帳を消していかなければ選挙権があるわけです。現に選挙権がある。そうして残っていた家族に選挙の投票用紙を送ってもらえば、堂々投票することは可能です。また、年金の権利も継続します。  しかし、おかしなことがあります。イギリスに行った人たちは、通過するメンバーであったとしても、その人たちに対して健康保険制度が適用されています。そこで、わが国から出ていく人がイギリスでも健康保険の適用を受け、日本の健康保険制度も出国の申請をしなかったために適用がある。日本とイギリスとの両方の制度の適用を受ける可能性があるわけであります。この場合はむしろ過重な措置と言うべきだと思います。  このように、わが国の旅券の発給に関して、わが国国民の権利権限は出国と同時に失われるのか失われないのか、当人の意思が関与するのかしないのか、住民基本台帳という、言ってみればある種のいいかげんなもので、登録されるかどうかで全部の問題が集約されてしまって、問題が詰められないやり方でやっていくのがいいのか悪いのか、私は、わが国国民の権利権限を考えますとき憂慮にたえないのであります。四百万の海外旅行者に対する権利権限を全部停止することは必ずしも賢明でないことは理論的に明らかです。そしてその四百万人の人々が半年後にならなければ選挙権を回復しない、これもまたオーバーだと思います。しかしながら、この人たちが何年も届け出をしないものに限って権利権限が全部保障されているというのも、これまた珍妙きわまる事実であります。  私は、この問題について各省庁からばらばらに意見を求め、各省庁がいかにいいかげんに対応されたかをこの場で明らかにしようかと意地悪く思ったのでありますけれども、これはそんなことを言っても何の意味もないことでありまするから、この問題に対して重大なポイントがあることを示唆いたしました上、御検討の上、政府の統一的な取り組みをしてここに御返答を賜りたいと思いますが、いかがでございますか。
  142. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまこちらでいろいろ渡部委員の御質問を伺い、政府側の答弁も聞いてまいっておりまして、かなり複雑で重要な問題が含まれておるということを感じておりますので、関係部局とも十分打ち合わせをして、御質問のような点をできるだけ明らかにするように私どもも努力いたしたいと考えます。
  143. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの御意見で私は大変うれしく思っているわけであります。  最後に、もっとたくさん細かいのがございますが、細かいのはその御答弁の中に含まれたものと解釈いたしまして、今後御返事をいただきたいと思います。  日本のパスポートの中で、北朝鮮に対する旅行者に対しては、旅券によるわが国民の生命、財産に対する保護はアボイドされております。この北朝鮮への旅行もようやく活発化いたしまして、ある種の小国よりもはるかに多人数の方々が朝鮮民主主義人民共和国に入国をいたしているわけであります。私は、このような旅券の中にある北朝鮮に対する旅行者に対して保護をアボイドするような表示はやめるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。  世界じゆうで未承認国は多数ございます。相互の未承認国のエリアをしてアボイドするというならまだわかります。日本もまだほかに未承認国を幾つか持っておるわけでありますが、その未承認国に対してはアボイドをしないでおいて、北朝鮮だけを鋭く名指して言うということは、わが国の全方位外交と言われました、多数の国々、周辺の国々と仲よくしていこうという本旨から外れたものではないかと私は思うのであります。もちろん、韓国政府よりこの問題に対する鋭い意見の開陳があることは私は知っているのでありますが、その韓国政府もいまや民主化と大国としての度量を踏まえつつある現在、こうした形で小さなワンポイントだけを表示することは、わが国の旅券の信用あるいはその光輝ある存在に対して傷をつけるものではないかと思います。これは御検討の余地があるべき時期に来たのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  144. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘のように、旅券の渡航先を地域名をもって包括記載する場合に、北朝鮮が渡航先から除外されていることは事実でございます。しかし、同地域への渡航が禁じられているわけではなくて、北朝鮮へ渡航する者については、別途北朝鮮を渡航先とする一往復用旅券を発給しております。これは、わが国が北朝鮮をいまだ承認しておらず、自国民保護等の見地より、そこへ入域できることを証明する書類、たとえば招請状とか会議の通知状等を提出させて個別に審査し、その都度一往復用旅券を発給することが必要と考えられたためでございます。  現在こういう状況になっておりますが、ただいま渡部委員から御指摘の点、もっと広い見地で検討してみる必要があるのではないかという御趣旨につきまして、私どもも十分検討してみたいと考えます。
  145. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 最後に法務省にお伺いするのですが、日本に帰化を希望される外国人に対する帰化条件といたしまして、一つ日本国内での滞在年数、二つは納税義務の遂行あるいは経済的な履歴、三番目は犯罪歴の有無が挙げられているということを聞いておりますが、現在その犯罪歴の内容は、過去にさかのぼって駐車違反、立ち小便に至るまで含むという厳しいものであります。  モータリゼーションの進行した現代社会にありまして、帰化申請の様子を見ておりますと、しばしば駐車違反とかスピードオーバーとか一時停止違反というような名目のもとに、せっかくの帰化要件をそろえておるにもかかわらず抹殺されている悲惨な実例が非常に多くあるわけであります。しかも、コンピューターにこうしたものが記載されておるため、お目こぼしなどということが一切なく排除されていくということは遺憾であります。このようなことはもう犯罪歴の中から外されていいのではないか。したがって、最近の親切な法務省の担当官におかれましては、申請した以上はしばらく自動車に乗りなさるなよなどと指導されている方もあるようであります。ところが、自動車を失えば仕事ができない人にとっては、これは非常に残酷な助言である。親切のようで残酷な助言になりかねないのであります。私はこの点は修正されてしかるべきではないかと思います。  もう一つは、帰化の申請書の中に帰化後の氏名という欄がございまして、明らかに日本風の名前をつけることが強制され過ぎている気配がございます。これは、帰化後の名前は日本風でなければいけないとは一行も書いてございません。しかし、帰化後の氏名として書かれている内容のところに対して、そこをちゃんと書かないと受け付けない。あるいは、金さん、あなたは金田さんと書きなさいよとか、実質的にはそういう助言が行われております。わが国におけるそういう創氏改名を迫るという行き方が、周辺の諸国に対して非常に大国主義的なニュアンスを持って受け取られているやにも私は伺っておりますし、事情によって名前まで変えさせられるなら帰化しないとか、現場で小さなもめごともあるようでございます。  こういうような点も少し配慮をしてはいただけないものかと私は思いますが、両点あわせてお伺いさせていただきます。
  146. 田中康久

    ○田中説明員 お答えいたします。  まず第一点の、道路交通法違反の関係について申しますと、私どもの国籍法の帰化の要件として、素行が善良であることということが要件になっております。この素行が善良であることということは、一つには、これから日本人になる人についていわば遵法精神があるかどうかという点が問題になるわけでございます。この遵法精神があるかどうか、法をよく守るかどうかという点の検討をするためには、その人のいわば前科前歴一切を判断するわけでございますが、その中で特に問題のありますのは、御承知のように前科と言われます犯罪歴があるということが一つには問題になります。  ただ、そのほかにも、いまおっしゃいましたような道路交通法違反ということも一つの遵法精神のあらわれということで、私どもとしてはどうしてもこれを判断の資料にせざるを得ない。確かに駐車違反ということになりますと大したことはないじゃないかという御指摘もあろうかと思いますが、この駐車違反ということも、場合によっては道路交通の渋滞の原因にもなりかねませんし、場合によっては交通事故の原因にもなる。また、その駐車違反を数多くやっているということは、その人が遵法精神に欠けているかどうかという点の問題にもなるわけでございまして、私どもとしては現在のところ、道路交通法違反があること自体についてはある程度重きを置いて考えざるを得ないと考えております。  それから第二の点の、帰化後の氏名の関係について申しますと、氏の関係と名前の関係二つ問題がございます。  まず、氏の問題から申しますと、外国人が日本に帰化しますと、帰化後は日本人として日本社会に溶け込んでもらうことになるわけでございますので、いままでと違いまして、外国人としてでなくて日本人として溶け込んでもらうためには、その本人のためにも、それから受け入れる日本の現在の社会情勢から考えて、やはり日本人らしい名前を使っていただくのがよろしいのじゃないかということで、私どもの方は氏の関係ではなるべく日本人らしい名前を使うように指導しているわけでございます。  それから、名前の関係につきましては、日本人になりますと戸籍に記載することになります。戸籍に記載しますと、名前のつけ方につきましては、戸籍法五十条の規定で必ず常用平易な文字を使わなければいけない。常用平易な文字の範囲につきましては、現在のところ当用漢字と人名用漢字という範囲に限られておりますので、その限られた範囲以外の名前を使われますと戸籍に記載できないわけでございます。そのために、名前につきましても一応常用平易という戸籍法五十条の範囲内の文字を使うように指導しておるわけでございます。
  147. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いまの御答弁を聞いていてもわかりますけれども、人権に対する理解がなさすぎますね。人の名前を取りかえてあなたのためになるなんということをお役所が決めるというのは人権侵害と言うべきものであって、それは検討すべき余地があろうかと思います。  これもあわせまして、駐車違反をするのは遵法精神がないと力説されましたが、この部屋の中にも遵法精神がないのはたくさんおるわけでありまして、われわれは日本国民の要件をそろえていない可能性がきわめて高いわけでございます。そういうようなレトリックが通用する時代は終わったと私は思いますが、どうでしょうか。  きょうは法務大臣が来ていないから、あのおもしろい法務大臣を呼んでくればずいぶんおもしろいことを言うだろうが、きょうはおられないから、外務大臣国務大臣として、こういう前近代的なやりとりというのは議事録に載せるのも恥ずかしいのであって、国籍あるいは旅券査証とはちょっと関係も離れてきましたけれども、こうしたこともあわせて御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。お願いします。
  148. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私もいろいろ諸外国の例を見てまいっておりますし、また日本の置かれております国際的な条件、経済的な条件から見ても、国際化時代ということがよく言われておりまして、人の国際化というようなこともございます。たとえば外国の学者が日本の大学で正教授になれないというようなことなども、諸外国の実例を見ますとやはり非常に特殊な状況だと思うわけでございまして、だんだん世界の人々がまじり合う時代に入っておるわけでございます。私個人の見解といたしましては、こういう点はそういう新しい情勢に応じてできるだけ改めていくということが必要かと思いますので、私ども何か機会がございましたら、他の各省なり閣僚の方々にもそういうことをお願いしたいと考えます。
  149. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ありがとうございました。
  150. 中尾栄一

    中尾委員長 玉城栄一君。
  151. 玉城栄一

    ○玉城委員 簡単にお伺いをいたしますが、最初にイランの問題につきまして一点、ちょっと心配になる点がありますのでお伺いをしておきたいわけであります。     〔委員長退席、佐野委員長代理着席〕  大来外務大臣は一昨日IEA閣僚理事会からお帰りになられて、イラン、いわゆるテヘランの米国大使館占拠事件、人質事件に対する見解を早速発表しておられるわけであります。そのことにつきましてはこれまでの質疑で大体わかりましたけれども、ちょっと場当たり的な感じがしてならないわけであります。  それはそれといたしまして、その見解の中に、一刻も早く事態が平和的に収拾されることを強く希望し、わが国解決努力を続ける、こういう意味の御見解が表明をされておるわけであります。これ以上このアメリカ大使館の占拠事件が長期化をいたしますときに、きわめて憂慮されておりますところのいわゆる武力紛争と申しますか、そういう事態に発展をしていったときに――そうしないように、そうさせないようにわが国努力するのだ、こういう御見解であるわけであります。  そこで、実は在沖米海兵隊がこの問題に関連をいたしまして出動態勢をとっておるわけであります。これは沖繩の米軍基地でホワイトビーチというところがございますが、米艦船が兵器、弾薬、食糧等を積み込む作業をして、地域住民あるいは県民に大変大きな不安を与えているわけであります。そこで、万々が一にもそういう事態が起こらないように最善の努力わが国としてされるわけでありますけれども、そういう事態にならないように、当然外務大臣も見解表明の中にありますとおり最善の努力をされると思います。  そこで、日米安保条約に言うところの「極東」の周辺地域の中にイランというのは入っているのか、入っていないのか、それを簡単に伺っておきたいわけであります。
  152. 中島敏次郎

    中島説明員 お答え申し上げます。  これは先生よく御承知のとおり、日米の安保条約には「極東」という言葉はございますけれども、別にそれの周辺地域というような概念規定があるわけではないわけでございます。また現にそういう言葉も使われていないわけでございます。日米安保条約で申しておりますのは、日米両国が極東における国際の平和及び安全及び日本国の安全に共通の関心を持っておるという考え方が書いてある。かつて安保国会以来、そこに言うところの「極東」とは何かという御質問が出まして、その極東の範囲に関する統一見解というのが出て、その中で日米両国が極東の平和、安全に関心を持つのだけれども、日本の施設、区域を用いて米軍の行う行動というものが極東に限局されるわけではないということを御説明いたしまして、そしてそれは極東の周辺地域における脅威との相対的な関係で米軍が極東よりも外に出ていくということはきわめてあり得ることである。ただし、その場合に戦闘作戦行動を基地から発進させるというようなことであれば事前協議の対象になるし、米軍自身も勝手に何でも行動するというわけではなくて、侵略に対処するために行動するというのが国連憲章上のたてまえであるというような説明があったかと思います。  いまお尋ねのイランでございますけれども、日米安保条約が直接イランとの関係で概念的に何か関係があるというようなことはないというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  153. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういうことで、特に沖繩にあります米軍基地が常にそういう国際情勢に敏感に反応してただいま緊迫下にあるわけでありますから、先ほど申し上げました外務省の見解にもありますとおり、決してこれが不幸な軍事的あるいは武力的な紛争に発展しないように、そしていわゆる在沖繩の米軍基地を中心とした在日米軍基地がそういう事態にかかわりのないように、ぜひそれはやっていただきたいと思いますが、外務大臣いかがでしょうか。
  154. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの点は、私どもも非常に心配しておる点でございまして、いろいろな機会を通じて平和的解決努力してほしいということを申し入れておるわけでございます。
  155. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がございませんが、外務大臣初めて御就任で――いまも申し上げましたとおり、いわゆる在日米軍基地の五三%が一沖繩県に集中をしておるわけであります。したがって、そういう巨大な基地の存在によって沖繩の振興開発等にも大きな支障があり、同時にまた米軍の演習等に伴ういろいろな事故の続出等で、地域住民はもとより県民全体に大きな不安を与えているわけです。そういう立場から考えまして、外務大臣とされて沖繩の基地のあり方についてどのような見解を持っておられるのか、お伺いいたします。
  156. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 従来から沖繩が、ただいま御指摘のように、安保関係でも重要な地位を占めておりますことは承知いたしております。したがいまして、この基地をめぐるいろいろな住民との問題等につきましても、日本政府の立場からできるだけこれを解決してまいるように努力をする、沖繩経済の発展につきましても、ただいま御指摘のような条件を考慮して、各省の施策の面においても考慮していくことが必要だと私は考えておるわけでございます。
  157. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで最後に一点だけ、これは具体的な問題でありますけれども、大臣のお考えを伺っておきたいわけであります。  これは基地の問題に関連してでありますけれども、沖繩に読谷補助飛行場という米軍への提供施設がございます。この基地で米軍のパラシュート降下演習が常に行われておるわけでありますが、米軍のパラシュート降下演習に伴いまして、周辺には住宅地域がありますし、また学校もありますし、ずっと事故が相次いでおるわけであります。高校の校庭にパラシュートが落ちてきたり、先月の六日にはパラシュートがその地域をはみ出してきて住宅地域に落ちてきたり、過去においては学生がおりてきたトレーラーによって圧殺をされるという悲惨な事故等もあったわけであります。  したがって、こういう住宅地域を抱えて、物理的に演習をすることにきわめて不適当な演習地域については、当然外務省とされても検討されなくてはならない。現地の防衛施設局におきましては、日米合同委員会に移設等について提案する用意があるというところまできているわけであります。  もう一点は、この地域は大蔵省管轄の国有地扱いになっているわけですが、従来所有権争い等でいろいろトラブルがあるわけです。したがって、大蔵省としては、現地から利用計画等がきちっと出され、県の振興開発にのっけることができるならば払い下げてもいいというところまできているわけでありますから、そういう点について、特に事故の問題等、今後の問題を考えますときに、当然再検討がされるべきである、このように思いますが、大臣いかがでしょうか。
  158. 中島敏次郎

    中島説明員 まず、事務的に私からお答えさせていただきます。  これはいまさら玉城先生に長々と申し上げることではないと存じますけれども、読谷村の事故につきましては、周辺の住民の方々がいろいろ不安を感ぜられたということは私どももよく理解をしておるつもりでございます。事故発生以来、合同委員会を通じ、あるいは直接に、あるいは現地でその安全対策の万全を期するようアメリカ側に累次善処を要望してきたわけでございます。他方、読谷村における訓練そのものは、米軍に駐留を認めて米軍の即応体制を常に整えさせる必要性、いわば安保条約上の必要性から見て、これまた大事なことであるというふうに私どもは考えているわけでございます。  しかしながら、先ほども申し上げましたように、基地周辺住民の方々のお気持ち、それからそれらの方々に対する影響をできる限り少なくするということが基地の安定的な使用のためにも重要であるということをふだんから私ども考えておりまして、その二つの要請ができる限り調整され、充足されるということのために、私どもとしてはいままでも努力をしてまいりましたし、今後もしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  本件につきましても、周辺住民の方々のお気持ちがわからないわけではございませんけれども、私どもといたしましては、米側が安全確保のため、事故の再発防止のために今後ともいろいろ配慮をしていく、こういう姿勢でやっておりますので、この安全確保のための対策が効果的に運用されていくよう、この事態を注視していきたいというのが基本的な考え方でございます。
  159. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまの御答弁ですけれども、そういうお答えは何回もこれまで聞いてきているわけでありますが、移設も含めて検討するのかしないのか、その点もう一回御答弁をお願いいたします。
  160. 中島敏次郎

    中島説明員 周辺の方々からそういう御要望があるということはよく承知いたしております。問題は、いま申しましたように、事故が再び起こらないように米側も万全の措置をとっていきたいということでやっております。私どももそれを願っているわけでございます。この状況が効果的な安全対策の履行という形で実現していくことを私どもは注視していきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  161. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りました。いまの問題は時間がございませんのでちょっと議論できませんけれども、また次の機会に譲って御質問したいと思います。  以上でございます。
  162. 佐野嘉吉

    ○佐野委員長代理 榊利夫君。
  163. 榊利夫

    ○榊委員 私は、去る三日の本委員会で大平首相、大来外相の訪中に関しまして自主的な態度をとってもらいたいということを一言要請しておきました。ところで、先ほどいただきました日中の共同新聞発表によりますと、「日中両国がそれぞれの立場からアジア及び世界の平和と安定の維持・確保のため引き続き努力することを確認した」と述べられております。もしも、これが中国の対外政策を基本的に肯定するものである、そういう意味合いを持っておりましたならば、大変重大な内容だと思います。  そこで第一にお聞きしたいのでありますが、大平首相は十二月七日の北京の記者会見で、必ずしも国際問題に対する対応が完全に一致しているわけではない、こう述べておられます。何が一致しなかったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  164. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 国際関係で日中間の意見が必ずしも一致してない主な分野は、朝鮮半島の情勢とベトナム情勢でございました。
  165. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、アメリカ日本、中国の関係強化という点では一致したわけでございますか。
  166. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては大平総理が、日本にとって対米外交は外交の重要な柱であるということを先方に申しまして、先方からはそれに対して特別の意見は出なかったわけでございます。
  167. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、一致してない問題の一つの柱というのはベトナムとの関係であるということのようでございますが、それについて大平首相は記者会見で同じよべに、ベトナムに関しまして紛争解決は話し合いでやってほしい、ベトナムとの関係で自重を求めてきたというふうに言われております。この話し合いに関して後ろ向きなのは中国の方なのかベトナム側なのか、どういう判断をお持ちなのか。また、自重を求めたというのは、春の中国のベトナム侵攻を批判し、いまも続いている再懲罰論に反対の意見を述べられて中国側の確言でも得たということなのか、そのあたりのことをお聞かせ願えればと思います。
  168. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ベトナムにつきましては、中国側はきわめて厳しい見方をいたしております。あの地域の安定を崩す要素であるという見方をしておるわけでございますが、日本側としては日本の外交政策があくまでも平和的な紛争解決を求めているんだということを先方に伝えておるわけでございまして、将来の問題についての態度表明ということは特別に明確な形で先方から得ているわけではございません。ただ、印象として、武力行使を避けようとしているという印象を私どもは得ておるわけです。
  169. 榊利夫

    ○榊委員 それでは、その話し合いの中で自重あるいは話し合いと言う際、中国のベトナム侵攻の問題を念頭に置いて、あるいはそれを言葉にしてそういうことを述べられたわけでございますか。
  170. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本側の発言としては、日本はいかなる場合におきましても紛争を武力手段によって解決することに賛成しないという言い方をしたわけでございます。
  171. 榊利夫

    ○榊委員 そういうことで、いわば言っただけと申しますか、そういう点でアジアの平和と独立に努力するということでは、現在再侵攻を口にしている、あるいは現に今年春にやったというのは中国側でございますので、やはりアジアの平和のためには言うべきことは言うということが必要ではないかと私は思います。その点で特に華国鋒主席が、大平首相のベトナムに関する発言を受けまして、ベトナムの地域覇権主義に対してはっきりとした態度をとらなければいかぬというような発言をしておられます。このはっきりした態度というのは、武力を全く含まないものというふうに政府理解されたのでありましょうか、お聞かせ願います。
  172. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 中国側の立場といたしましては、武力を含まないという発言はございませんでした。
  173. 榊利夫

    ○榊委員 とすれば、やはりこのはっきりした態度ということの中には武力をも含むものだという解釈が成り立つ、こう思うのでありますけれども、どうしてそういう向こうの態度に対しまして反論されなかったのかという気がするのです。この春の武力侵攻に照らしましても、やはりそういう危険、再懲罰論、そういったもとで、はっきりした態度をとらなければいかぬと言ったことに対しては、それこそはっきりと物を言うことが望ましいのではないかというふうに私どもは考えるわけであります。  それと関連いたしまして、中国の春のベトナム侵攻や再懲罰論というのは、日本との関連でとりわけ重要なのは、日中平和友好条約で明らかに覇権行為に反対しているわけでありますが、日中平和友好条約で反対している覇権行為に該当するのじゃないかというふうに私は思います。だからこそ政府は自重を求められたのだろうと思うのです。だとするならば、そういう再懲罰論に反対しないで、明確に物を言わないでそのまま三十六億ドルの借款を与えるということは、結局現在の中国の覇権行為を激励することになるのではないかというように私どもは思うのでありますけれども、政府はどういうようにお考えでございましょうか。
  174. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 大平総理としては、国際的な紛争に軍事力を使うことに日本は反対であるということをはっきり言ったわけでございます。  それから、この借款につきまして初年度五百億が正式の約束でございますが、六つのプロジェクトの全体の合計の現在の見積もりは約十五億ドルということでございますが、この点について三つの条件といいますか原則日本側からはっきり中国側に伝えたわけでございまして、第一が、中国の経済建設に対する協力は欧米諸国と共同してやる、日本が独占するという考えはない、第二に、他のアジア諸国、特にASEAN諸国に対する援助とのバランスを考えてやる、第三に、軍事的援助はこれを行わない、この点を明確に向こう側に話しまして、それに対して向こう側も異議がなかったわけでございます。
  175. 榊利夫

    ○榊委員 それはそのくらいにいたしまして、第二回の会談で大平首相が、対ベトナムの援助については日本として本年度分の約束は守る、それから実施時期については日本政府として自主的に判断する、こう述べられたのに対しまして、華国鋒主席は事態の進展を見て決めてほしいというふうに述べたそうであります。他国のそれについて事態の進展を見て決めてほしいなどと言うこと自体が内政干渉的な発言だと言わなければなりませんけれども、先ほどの高沢議員の質問への政府答弁では、ベトナム援助の問題では慎重に検討という姿勢に終始しております。それが大平首相の言われる自主的態度というものかという疑問がわくわけでありますけれども、本当に政府が自主的だとすれば、日本、ベトナム双方政府間で約束した経済援助なんですから、国際的、人道的な義務を速やかに果たすべきではないか、こう思います。日本政府はこの援助約束では当事者なんです。第三者ではありません。したがって、第三者に気がねする必要はないのではないかと思うのでありますけれども、あえてこの点について再質問させていただきます。
  176. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は、その実施につきましては情勢を見つつ判断するというたてまえでやってまいっておるわけでございます。一般的に情勢が、インドシナ地域での安定が図られるということを見きわめつつ実施については考えていくということでございます。
  177. 榊利夫

    ○榊委員 その点ではあくまでも他国が、第三者がどう言うかということではなくて、国際的な信義を守る、約束を守る、こういう常識にのっとって事を運んでいただきたいと要望をいたします。  同じく今度の会談では韓国の民主化についても取りざたされたようであります。ところで、政府は朴大統領の射殺からきのうの国防相解任に至る最近の韓国の事態をどういうふうに見ておられるのでしょうか。
  178. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 きのうきょう、また新しい動きが出ておりますので、この辺の状況につきましては、私ども現在非常に流動的だと考えまして情勢を非常に注目しているところでございます。  一昨日鄭昇和参謀総長が逮捕されたということにつきましては、現在の報道では、これは朴大統領射殺事件に関連してそういう自白があったので、それに関連して逮捕したのだ、このように発表されているわけでございますけれども、これがそれだけのことなのか、それ以上に何か根があるのかという点は、現時点ではまだ判明いたしておりません。  本日になりまして、先ほどソウルにおきまして、申鉉稿新国務総理のもとの新しい内閣が成立、発表されたようでございます。その中で、注目されておりました国防部長官、当初の予定と変わっているようでございまして、その辺がきのうからの動きの中でどのような背後の経緯があったか、この辺ももう少し情勢を見ませんとわかりません。  そういう意味におきまして、一両日中の動きについてはなおかなり流動性が高いのではないか、きょうあたり、きのうに比べますと若干ソウル市内も平静だと伝えておりますけれども、その辺もなお流動性があるかというふうに現在見ております。
  179. 榊利夫

    ○榊委員 情勢が流動的だという判断のようでありますけれども、それとの関連で、金大中の問題に触れさしていただきます。  東京にいた金大中氏の拉致事件、これは五、六年前起こりましたけれども、これは人権と日本の主権にかかわる重大事件でありますが、この金大中拉致事件が韓国の公権力、すなわちKCIAの犯行であったことは、もうすでに明白になっております。     〔佐野委員長代理退席、志賀委員長代理着席〕 ところが、日本政府は、韓国政府が対日主権侵害を認めないということを主な理由として、これまでいわゆる政治決着の見直し、さらに金大中氏の原状回復については非常に消極的であった。むしろそれを拒む態度をとってきております。しかし、韓国の新しい事態、かなり流動的でありますけれども、そういう新しい事態の中で、政府も金大中氏の来日を拒まぬとの態度に変わってきたように思われます。青地農氏ら四十八名の昨日の政府申し入れでも述べられていることでありますけれども、私、いま重要なことは、いわゆるその政治決着を見直すということ、そして金大中氏の原状回復のための外交交渉を直ちに始めることだと思います。その点いかがでしょうか。
  180. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 二点申し上げたいと思います。  最初は、この金大中事件につきまして、日本政府は、わが国の主権侵害が韓国によって行われたのではないと断定するには至っていないという立場に立って今日まで来ているわけでございますが、この点は朴大統領死亡事件が発生した今日においてもなお同じ立場をとっている次第でございます。  他方、来日の点でございますけれども、金大中氏が自己の意思で出国し、韓国政府がその出国を認めた場合に、日本に来日することについては何ら異存がないという立場は、従来から一貫して変わらないところでございます。
  181. 榊利夫

    ○榊委員 そこの従来から云々ということにつきましては、別の見方もあろうかと思います。必ずしもそうではないと思いますけれども、さて、本当に金大中氏が日本に来た場合、やはり金大中さんは事件の被害者ですから、事件の内容を一番詳しく知っている人はこの人だろうと思うのです。捜査当局はこの金大中さんが日本に来られたら話を聞くつもりはあるのでしょうか、ないのでしょうか。あるいはまた、捜査当局は、事件の全容を日本国民の前に明らかにするために、捜査資料全体をマスコミ等々を通じて、もちろん国会でも、公表すべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。そのつもりはありますでしょうか。
  182. 武士孝

    ○武士説明員 事件の被害者から事情を聴取するというのは、これは当然の捜査の常道でございます。それから現在まだ捜査が終結いたしておりません。十分今後捜査を進めてまいりたいと思っております。
  183. 榊利夫

    ○榊委員 それじゃ次に移ります。一言ですが、資源外交の問題です。  報道によりますと、日本のイランからの石油買い付けにつきましてアメリカ政府は外交ルートを通じて強い対日不満を伝えてきているようであります。私は、イランの米大使館人質事件などを是とするものではもちろんありません。しかし、少なくともアメリカの対イラン経済断交は日本の問題でありません。あちらの問題であります。日本に直接責任がかかる問題ではないはずであります。アメリカ政府日本の石油取引について外交ルートで抗議してくるというようなことは、やはり国際的な常道から見まして他国の主権に対する干渉的な態度であると言われるだろうと思います。この点につきましてはどういうふうに外務省はお考えなのでしょうか。
  184. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまの紛争はイランと米国の間の紛争でございます。その点はお説のとおりでございます。ただ、日本の立場といたしましては、イランが大使館を占領して外交官を人質にとるということは理由のいかんを問わず反対であるという立場をとっておるわけでございます。アメリカ側は、平和的手段によってこの人質の解放を実現したいという努力を続けているので、その平和的手段が成功するために西欧諸国あるいは日本協力を求めたい、そういう立場でございます。
  185. 榊利夫

    ○榊委員 平和的に解決したいから云々という説明でございますけれども、他国の石油のいわば商取引について政府ルートを通じて抗議云々というのはきわめて異例のことでありまして、私がここで心配するのは、そういうアメリカ政府の態度に対して日本政府が対応を検討してイランとのDDオイル取引の交渉まで中断する意向であることが新聞紙上で伝えられております。しかし、一方、アメリカのメジャーは対日原油供給の日量百万バレル削減をもうとっくに通告してきているわけであります。数日来のマスコミ等々でも、なぜアメリカにわけを話して堂々と買わないのか、こういう声は再三出ております。私は、政府が卑屈な政治姿勢をとっていたのじゃ国民必需の原油を確保することはむずかしいのじゃないか、こういうことを感じるわけでありますけれども、政府はこの点についてどういうお考えでなんでしょうか。
  186. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほども申し上げましたが、一方におきまして日本の外交の基本的な柱といたしまして日米の友好関係の維持という問題がございまして、他方において日本の必要とする資源の確保という問題がございます。この場合、アメリカ側の最近の動きにつきましては、日本側の実情について必ずしも認識が十分でないと考えられる点もございまして、ただいま御指摘のありましたメジャーからの日本の独立系の石油会社に対する供給がこの一年間に急激に減少しておるという点は、私どもの方からも再三にわたってアメリカ側に申し入れているわけでございまして、基本的には日米の友好関係を維持しつつ、日本に必要な資源、特に石油の輸入を確保する、そういう道を求めて目下いろいろ対外的な話し合いをしておるわけでございます。
  187. 榊利夫

    ○榊委員 私は、いまの答弁を聞きながら、それではなかなかいまの石油問題の解決はむずかしいという気がします。アメリカの方が日本に対する石油のイラン等々からの供給、これにいわば圧力をかけているような状態、一方ではメジャーも削減している、そこの非常に複雑な情勢はよくわかります。しかし、その中で筋を通して自主的な態度でこの石油問題、エネルギー問題、資源問題の解決に外交の面で取り組んでいかないと、これはなまやさしいことで解決できる問題ではないと思います。もう八〇年代に入りますが、この問題はこれ以上質問いたしませんけれども、あくまでも日本の民族的な利益、国民的な立場、ここをしっかりと踏まえてこの問題に取り組んでもらいたい、こう思います。これは要望であり、また要求でもございます。  次に移りますけれども、KDDの問題です。KDDの問題に関して、政府の見解をただしたいと思います。外務委員会でKDDと何の関係があるか、こう言われるかもしれませんけれども、実はかかわりがあるのです。  大来外相、あなたは大平首相とともにせんだっても訪中されました。その際、政府代表団にKDDの社員が随行していなかったでしょうか、随行していたでしょうか。また、随行していたとしたら、目的や理由はどういうものでございましょうか。
  188. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 大平総理の訪中にKDDの職員の随行はございませんでした。
  189. 榊利夫

    ○榊委員 それは政府随員として随行していないという意味ですか、それともKDDの社員は同じ時期に中国に行ってないという意味ですか、どちらですか。
  190. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 私どもの承知しているところでは、政府の一行として特別機に搭乗したかという点では、もちろんそういう事実はないということを申し上げたわけでございます。また、その時期に現地にKDDの職員が滞在していたという事実も承知しておりません。
  191. 榊利夫

    ○榊委員 私たちの調査範囲内で言えることは、やはり同行しています。今度だけじゃありません。このKDD、いわゆる国際電信電話会社が政界や官界にばらまく贈答品を海外で買い付けて国内に密輸した事実は、いろいろすでに明らかになっています。これは現在関税法違反、物品税法違反として捜査を受けておりますけれども、この事件に関して外務省はどういうふうにお考えなのでしょうか。外務省もKDDとさまざまな関係を持ってきておられたのではないでしょうか。
  192. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 私からちょっとお答えいたしますが、総理の外遊に当たりましては往々にしてたくさんの報道関係者が同行されますので、現地から東京へ迅速に総理行動等を報道するためには、電話回線の増設とかその他臨時の専用回線の設置というようなことが往々にして必要になるわけでございます。そういう目的のためにKDDの関係者が先発されたりあるいはほかの、訪米のときのことはちょっと私は存じませんけれども、あるいは同じ時期に現地に滞在するということはあるのではないかと思います。  総理訪中について先ほどお尋ねがありましたので申し上げますと、この場合は、私どもの承知しているところでは、事前に東京から西安、上海を回って帰国するということで、総理訪中に同行する報道関係者の中国からの報道の回線の調査、それから臨時専用回線の開設のための準備に行かれて、私どもの記録では十一月二十七日、すなわち訪中出発前にこれらの関係者は帰国しているということを承知しております。
  193. 榊利夫

    ○榊委員 いまの説明で、同時期にKDDの社員が政府代表団とあれこれの外国に滞在する、行っていることはあるということだ津解しますが、KDDの海外事務所と現地の大使館との間には密接な連絡があって、互いに便宜を図ってきたということもあるようであります。そしてたとえば大臣だとか皇族などが他国を訪問される場合、問題のこのKDD社長室のメンバーも随行しているという事実があるわけであります。その名目はいろいろあるようです。通信の確保とか、いまおっしゃいましたように、宇宙中継等々のこともあるでしょう。  ところが、ここで一つ具体的な例を挙げます。  昨年の一月、当時の園田外務大臣日ソ外相定期協議のため訪ソされましたが、その際、例の久野村欣也氏、これは故人でございますけれども、KDDの社長室員で、後社長室の次長となり、密輸と海外での贈答品購入の指揮者と言われた人物でございます。これは御承知のことであります。この人が随行しておられます。広報室が行くんじゃなくて、社長室から随行者が出るということ自体が大変不明朗、技術者でもない、という気がいたします。この久野村氏は、これまで何回そういう政府代表団に随行する形で海外に行っておられるでしょうか。もしわかりましたら教えていただきたいと思います。
  194. 塚本政雄

    ○塚本説明員 お答え申し上げます。  外務省側はパスポートの発給官庁でございまして、成田とか羽田を出入国している、そういう者のチェックは、入国管理事務所、つまり法務省の所管になりますものでありますから、私どもといたしましては出入国を何回したかといった点は承知しておりません。
  195. 榊利夫

    ○榊委員 わかりました。  それで、この久野村氏の随行に関しまして問題なのは、今回成田税関に密輸の疑いで摘発されたKDD関係の書類の中に、KDD社長室の「前渡し金精算書」というものが含まれておりました。これには「園田外相訪ソに伴って」と書き込まれております。そしてその金額は約百九十万円でございます。また、精算書にはかの地での買い物の領収書もつけられておりました。久野村氏が園田外相の訪ソに同行して物品を買い付けていたことは明らかであります。こういう点では外交上の便宜を利用した密輸の疑いがあるわけであります。  こうした外務大臣の海外出張に伴う一つの重大な事実を外務省は御存じなんでありましょうか、どうなんでしょうか。
  196. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外務省の事務当局はそういうことを全然承知しておりません。  それから、先ほど説明員から申しましたように、今回の訪中には同行者はおらなかったわけでございます。
  197. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、いま申し上げたところからも、やはり問題は非常に重大であります。しかも、この久野村氏が実際上外相などに随行したケースはこれだけではございません。同種のケースがほかにも連続しているわけであります。私はここで全部答えろということは言いませんけれども、こうした一連の疑惑について外務省として速やかに厳重調査をして、当委員会に報告していただきたい、このことを要望しておきます。どうでございましょうか。それはやっていただけますか。
  198. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 従来の外務大臣の海外旅行にKDDの人が随行していたかどうかという事実は、調査いたして御報告申します。
  199. 榊利夫

    ○榊委員 最後でありますが、硫黄島問題について質問いたします。  いろいろな報道によりますと、防衛庁は東京都下小笠原村の硫黄島の自衛隊基地を、米本土、ハワイ、マリアナ、フィリピンを結ぶ米太平洋航路帯から日本本土に向けて北上する南東航路のかなめとして海上交通防衛の拠点基地とするため、百億円の経費を投入する計画で、来年度予算で三億円の調査費を要求していると伝えられています。硫黄島の基地拡充整備はアメリカの太平洋戦略に沿った動きと見られますけれども、硫黄島の百億円基地拡張計画とは一体どういうものでしょうか。国民の前に明らかにしていただきたいと思います。
  200. 池田久克

    ○池田説明員 硫黄島の整備についてわれわれの考え方を申し上げます。  硫黄島につきましては、現在海上自衛隊の基地分遣隊がございまして、輸送機が飛んでいっております。これは南鳥島の気象観測等のためにも必要なものでございます。  それから、年に数回程度でございますけれども、対潜哨戒機が飛来いたしまして洋上の飛行訓練を現在やっております。  現在飛行場がございますけれども、この飛行場が非常に傷んできております。ガスも噴出するというようなことで、どっちみちこれを整備しなければいかぬとわれわれ考えております。  また、救難機を置いておきまして、これは現在国際民間航空の救難のためにもわれわれが努力することになっておるわけでありますけれども、こういうものの整備格納庫を整備するということを考えております。  さらに、現在航空自衛隊海上自衛隊が本土で飛行が非常に制限されております。たとえば夜遅くは飛べませんし、また飛行ルートも非常に制限されております。そこで何とか硫黄島を使って練度を維持していきたい、こういうのがわれわれの考えでございまして、米軍との戦略的な展開とかそういうふうには考えてございません。  それから、われわれ現在全体計画についてしっかりしたものができておるわけではございません。とりあえず五十五年度に三億の要求をいたしまして、飛行場の滑走路の傷みぐあいを調査するとか、あるいは給水施設をつくるとか、先ほど申し上げました救難機の整備格納庫をつくるということを要求してございます。  今後の計画につきましては、逐年予算をいただいて整備していきたいと考えております。
  201. 榊利夫

    ○榊委員 時間がありませんのではしょってお聞きしますけれども、この硫黄島基地の整備は、いまもロランC基地があるのですけれども、拡大強化されたとき自衛隊だけが使うのですか、あるいは米軍も使うのですか。
  202. 池田久克

    ○池田説明員 われわれは現在使っている地積の中でいろいろな施設を整備したいということでございまして、拡大するとは考えてございません。そして現在アメリカのコーストガードがロランという洋上の、これは通常の船舶も使っているわけですけれども、そのロラン局を維持するために使っておりますが、これはわれわれとは全然別の場所でございまして、われわれは先ほど申し上げました目的のために、航空自衛隊海上自衛隊訓練のために活用したいと考えております。
  203. 榊利夫

    ○榊委員 硫黄島は、御存じのように第二次大戦のとき二万人の方が玉砕された悲劇の島であります。平和の島にすることこそ国民の願いだと思います。それをアメリカの大きな太平洋世界戦略の中で基地として強化していくという方向が出ている。これは国民感情からは非常に複雑だと思います。この基地の拡充整備計画という点については、重大な問題であるし中止していただきたい、私はこういうことを要望するわけであります。  と申しますのは、こういうことがあります。平和の島にするということだけじゃなくて、お聞きしたいのですけれども、硫黄島には自衛隊員のほかに日本国民は居住していないのでしょうか。
  204. 池田久克

    ○池田説明員 私の方からお答えするのが適当かどうかわかりませんけれども、現在は自衛隊員が約五十名と、先ほど申し上げました米国のコーストガードの要員が三十人弱居住しております。
  205. 榊利夫

    ○榊委員 実際には東京都民でもあったこの硫黄島の住民約千二百名の方々は、昭和十九年に戦時強制疎開によって島を追い立てられて今日まで三十五年間も帰島できないでおられます。硫黄島にとりましては、戦後はおろか戦時さえ終わっていないわけであります。この間の苦労は聞くも涙、語るも涙であります。戦後三十年たったこの状態について、担当官庁、政府としての所見というよりも、日本人としてこの事態をどう考えるのか、お聞きしたい。
  206. 桝原勝美

    ○桝原説明員 硫黄島の問題につきましては、御指摘のように戦後三十五年間いまだ帰島は実現を見ていないわけでありますが、政府あるいは東京都におきましても、復帰以後、四十三年以降、復興計画あるいは復興計画を修正いたしました現在の振興計画におきましても、今後総合的な調査の上、帰島、開発の可能性について検討するという段階になっておるわけでありますが、この間何もやっていなかったのかという御指摘につきましては、東京都を初め各所管官庁におきまして、それぞれ火山活動でございますとかあるいは不発弾の調査でありますとか、所要の調査は行ってきておるところでございます。
  207. 榊利夫

    ○榊委員 戦後三十五年、いわゆる小笠原返還後だけでももう十一年もたっておりますよ。硫黄島民への何といってもこの冷たい仕打ち、態度、これは憲法の基本的人権を政府が侵している問題であるだけじゃなくて、国際人権規約あるいは世界人権宣言にも違反するものだと思います。ことし六月に批准をいたしました国際人権規約は「合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する。」とうたっております。すべての国連加盟国が守るべき世界人権宣言も同じ趣旨を述べております。だからこそ、あの核実験で汚染されたビキニ島のわずか百数十名の住民の強制移住でさえも、国連その他であれだけの大問題になったのであります。硫黄島の千数百名の島民の方々が三十五年間も戦時疎開のままにして帰郷を阻害されている、これは国連提訴さえ考えられる深刻な問題であります。国際世論からも厳しく非難を受けることは避けられないでしょう。政府はこの重大問題について一体どういう責任をお感じになっておるのか、お聞かせを願いたい。
  208. 桝原勝美

    ○桝原説明員 現在までのところ、先ほど説明いたしましたが、二、三点今日まで実現を見ていない事情がございまして、御案内のように激戦地であったということから、遺骨の収集もまだ五千体余り残しておるというような特殊な事情がございますし、さらに、火山活動、地盤隆起というものが戦前と異なって非常に大きな差を見ておるという点もございましょうし、あるいは住民の方々の帰島の意向調査におきましても、東京都で過去二回やられましたけれども、帰りたい、帰りたくないあるいはわからないというのがそれぞれ大体三分の一ずつになっておるというような状況もございますけれども、東京都におきましても、今後地方自治体として、小笠原村を含めて一体どういうコンセンサスを得られるのかということもございましょうが、国土庁におきましては、早速明年度から現地の実情調査を行うとか、あるいは本年六月から、小笠原諸島振興審議会におきまして硫黄島問題小委員会というようなものを設けまして、早速この問題について調査審議に入っておる段階でございます。
  209. 榊利夫

    ○榊委員 それは責任回避だと思うのです。強制疎開させたのは東京都がさせたのではない、政府なんです。その当時の軍隊なんです。したがって、これは全面的に政府が責任を持たなければならないことです。生活用の水がないとか火山活動だとか不発弾といった理由というのは、これは明治以来のことであります。不発弾の問題は新しい問題でありますけれども、現にアメリカ軍や自衛隊はりっぱに生活しているじゃありませんか。また不発弾の処理は、政府がその気にさえなれば、技術上はさして時間のかかる問題じゃないんです。このことは沖繩の例からも明らかです。沖繩は硫黄島以上に猛烈な砲弾爆撃のあった地域であります。百万がいま生活しているじゃありませんか。  そういう点では、政府は帰島促進ということでは、昨年の参議院地行委で神谷議員の質問に対して、あるいは本年五月の上田耕一郎議員の質問主意書に対してそれぞれ約束しながらも、具体的な措置という点ではほとんどとられてきていない、これはもう私は率直に指摘したい。本当に政府は、そういう点では帰島の援助措置に不熱心であります。そういう不熱心さの背後には、やはり硫黄島、基地拡充の計画、その下心があるんじゃないか、こういうように疑われてもしょうがないと思うのですね。もしも、基地の拡充と整備、これが島民を締め出したままで、戦時疎開のままにしておいて、そして島民の土地を事実上接収していく、横取りするようなものになるならば、事は一層重大だと言わなければなりません。  私は、軍事基地の整備に百億円もの予算をかけるより、旧島民への帰島援助や慰謝を優先すべきだと思います。もちろん千二百人の方、それは、もう三十五年たっておりますから、息子さんやお孫さんを合わせれば関係者は数千名になります。その中で、いま帰りたい、いろいろあると思います。しかし、一人でも帰りたいという方がおるならば、自分のふるさとなんですから、国連憲章に照らしても、人権宣言あるいは人権規約に照らしても、それは手を差し伸べて温かい援助をやる、補償する、これがやはり私は政府のとるべき態度だと思うのであります。帰島の援助とその間の長期の疎開者の方々の物質的、精神的な労苦への慰謝、この措置を政府として早急にとられることを約束していただきたいと思います。いかがでしょうか。
  210. 桝原勝美

    ○桝原説明員 国といたしましては、明年度、開発の可能性、帰島の可能性ということにつきまして予算要求をいたしておる段階でございまして、御了解を賜りたいと思います。
  211. 榊利夫

    ○榊委員 時間が参りましたので終わりますけれども、いま申しましたように、硫黄島の問題、これは戦後が終わっていないということです。国民的な課題だと思います。どうかひとつそういう点で、しっかりとこの千数百名の方々の帰島が一日も早く実現できるように、政府としての実のあるその点での施策を希望いたします。  終わります。
  212. 志賀節

    ○志賀委員長代理 林保夫君。
  213. 林保夫

    ○林(保)委員 時間の制約がございますので、ポイント主義になりますが、お尋ねいたしたいと思います。  もう言うまでもございません、来年は一九八〇年でございますが、先ほど来御質問も多々出ておりますように、国際情勢はなかなか複雑でございます。そしてまた、多元化の時代と言われますが、国民、さらには世界の人類のニードもいろいろな形で出てきておりますが、これに対応します大平総理、さらにはまた大来外務大臣、そしてまた御列席の外務省の皆さん方、大変多くの問題を抱えて困難な時期にあろうかと思いますが、それにつきまして、一体、新しい事態に対応する外交の原則、さらには基調、こういったものをどこに置かれるか、この点についてお伺いいたしたいと思います。  まず認識についてでございますが、過去十年間、一九七〇年代は、何かこうニクソン・ショック、ドルショック、石油ショック、さらにはまた円高、円安ショックまでショックに上がりまして、本当にショックの連続であったと思われます。まさに激動でございました。そして、これに対応するわが国の外交は、どうも常にそのショックに踊らされて、ショックがあるからもうお手上げなんだ、こういうような状態に終始したような印象を国民一般は受けておると思うのでございます。いわゆる日本が十年間びっくり列島だった、こういうことじゃないかと思うのでございますが、やはりこれはそれなりに原因があったと思われるのでございます。  新しい事態に対して、一番接触面も多く、日ごろから不断の努力をされております外務省を中心とする外交関係に携わっている皆さん方が、本来ならこれをなろうことなら予見し、またそれに対応する認識、さらには処方せんを出すべきであったと思うのでございますが、それが十分にできなかったのではないだろうか、このように思う次第でございます。何か外務省体制に問題があったのかどうか。この面ではまさにわが国国際経済問題のベテランでいらっしゃいます大来外務大臣は、在野でございましたけれども、どういう御認識をお持ちだろうか、お伺いしてみたいと思います。
  214. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私も外務大臣に就任しまして一月ちょっとでございまして、その間いろいろな事件が相次いで起こってまいりました。世界の情勢、短期の問題、中期の問題、長期の問題いろいろ起こりまして、特に短期的な問題について、中には予測しがたいような事件が起こる場合もございます。私の印象では、やはり長期の方向を考えながら外交の政策と枠を考えていくことで、次々に起こってまいります国際的な事件なり現象に対して対応していかなければならない。それから、いろいろと利害の相反すると申しますか要請の間で身を処していかなければならない。  今回の米国とイランの紛争というのは、その意味日本の外交にとっても非常に困難な問題を提起しておると強く感じておりますけれども、その情勢を的確に予見して手を打つということができれば私どもとしてもやりたいと考えておるわけでございますが、まだそこまで十分にいかない。いろいろな情勢判断が、外務省の中でも現地出先等から送られてまいりますし、本省でも分析しておるわけでございますが、一つには、ある事態が出てきて初めて手が打てるというような場合もございまして、この点は、もっと事態発生以前に手が打てれば一番よろしいと思います。  また、日本のような開放社会といいますか民主的な社会におきましては、いろいろな方面の判断がまじり合うといいますか、どこか一カ所で判断し、政策を実行するという強度な集中的な組織には必ずしもなってない点もあるわけでございますので、この点賛成あり、反対あり、別の見方あり、いろいろな見方が事実の動きの中で調整されていくという点がございますのと、特に日本は資源の問題、経済の問題と外に対する関係が深いものですから、外の動きによって中の政策が影響を受ける、あるいは調整をされていくというプロセスはどうもある程度避けられないような印象も持っております。ただ、そういうプロセスで日本の国益に重大な損失を与えないように対応していくということが必要だろう、やや抽象的でございますが、いままでの印象でございます。
  215. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。非常に貴重な御反省を含めての問題提起を逆に私が受け取ったわけでございますが、過般もわが党を代表しての代表質問の中で、率直に、「外務官僚組織が古い世界秩序に相応する枠組みの中に定着しておって、旧秩序の崩壊や第三勢力の台頭という国際情勢の激変に敏感に対応する体制に欠くるところがあったのではなかろうか。」このようなことも、先般私どもの委員長からも指摘しておるような次第でございますが、新しい事態に対応しては、やはり旧来の陋習を打ち破って新しい制度を整備する必要があろうかと思います。幾つかの点の問題があろうかと思うのでございますが、経済に対する積極的な役割りはそれなりにある程度果たしていると思います。しかし、なおこれを推進していかなければいかぬという相互依存の時代になっていることもまた事実だろうと思います。  しかし、それ以外にまたやる方法があるのではないだろうか。政治的な役割り、あるいは防衛的な役割り、いろいろございましょうが、時間がございませんのではしょりますが、たとえば政府が、外務省が非常に多くのことを抱え過ぎたがゆえにかえって対応を誤ったという事例があるのではないだろうか、このような感じも、今日のイランの問題一つとりましても私なりに感ずる次第でございます。民間でやるべきことを政府がつい前に出ておるために日本国全体が非難を受ける、こういった場合もあるやに思われますので、民間あるいは政府の役割りの分離、これを考える時期に来ているのではないだろうか。今日日本の経済的な力をつける、あるいは繁栄、その中に、一口で言われるような日本株式会社、政府と民間が一体になってやった、こういう問題があろうかと思いますけれども、なお今日の新しい事態になってまいりますと、全部がすべて国の責任にかかってくる。このことが、私ども短い経験ではございますけれども、たとえばフランスにおける政治と経済の使い分け、民間と政府の使い分け、そのほかいろいろとまた教訓もあろうかと思うのでございますが、そういう点につきまして、新しい八〇年代に対応する外交の問題で、御専門の大来外務大臣の御所見をちょっと伺っておきたいと思います。
  216. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 せんだって衆議院の本会議佐々委員長の御質問に答えた中で、私もこういう事態に対応する外交というのは、やはり開かれた外交といいますか、単に外務省の外交だけではなくて、いろいろなチャンネルを通ずる国際的な交流が必要だろう。それに対して外務省の方もできる限りの、できる範囲での協力をしていくというようなこと、それから内外の専門家の知識をできるだけ組み入れていくという立場、そういうことも含めまして、開かれた外交といいますか、たとえば今日ここでお話が出ました日ソ円卓会議などというのも一つの大きな外交の活動ではないか、そういうことで、広い立場でこれからの日本の外交活動を進めていくことが必要だと私は考えておるわけでございます。
  217. 林保夫

    ○林(保)委員 実は、私どもこういう質問をいたしても大変困っておることがございます。と言いますのは、総選挙が終わってもう二カ月半になりますのに、外務大臣の外交演説一つ出てきてないという状態でございます。来年を迎えますのに、一体どういう感覚で外交を進めていかれるのかわからない。これは政治の問題でもございますけれども、非常に困った状態になっておりまして、その中で何か新しいものはないだろうかといってこれを探してみましたところ、一つ、耳新しいと申しますか、外務省さん本当に積極的にやるのかな、こういう咸じになっているものがございます。  それは、この外交白書の十二ページに書いてございますが、「わが国としては、その持てる経済力と政治的影響力を振り絞つて、世界の平和と繁栄のために」寄与していく旨の決意を表明をしておられる。  戦後の外交は、申すまでもございませんが、なかなかこの政治的なものが出てこなかったという印象を一人の国民の立場からは禁じ得ないのでございますが、ここにはっきりと「政治的影響力を振り絞って」ということがございますが、これは何を意味するのか、お答えをいただきたいと思います。
  218. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 本日の委員会最初に申し上げたことでございますけれども、日本の外交の役割りの大きな柱は、内において、国民の生活を守り安全を守るということに外交が働いていかなければいけない、対外的には、平和と建設のために日本のなし得る役割りを果たしていく、そういう意味での外交が日本にとって必要だというふうに私としては考えておるということを申し上げたわけでございます。  日本はもう少し政治的な役割りを持つべきだという点でございますが、私もそういうふうに考えておるわけでございます。一体政治的役割りというのは政治と独立してあるのかどうか、政治自体であるのか、あるいは経済力というものをバックにした政治的役割りとか、あるいは道理に訴える考え方を通じての政治力とか、あるいは軍事力をバックにした政治力とか、イデオロギーをバックにした政治力とか、政治力という、政治的役割りというものにつきましていろいろな形があると思いますが、私は、やはり日本の外交の政治的な役割りは、経済力の裏づけと、それから道理といいますか、リーズンといいますか、これに基づいた主張というものを裏づけにした政治的役割りというものがこれから日本にとって必要になってきておる、国際的にもそれが求められているんじゃないかというふうに感じておるわけでございます。
  219. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。その御所見をぜひひとつ明年度からの外交に、どういうふうにできますか、ぜひ生かしていただきたい、このようなことも要望を申し上げておきたいのでございます。  時間がございませんので、最後に一つだけ。先ほど奥田委員からもお話しがありました、例の昭和三十四年からちょうどきょうが二十年目だという北朝鮮の日本人妻の問題でございますが、私どもの党の同僚議員からもすでに八回にわたりまして御質問申し上げ、善処が約束されております。一体どういう形でそのことが外交チャンネルを通じて、あるいは民間ルートを通じてできておるのか、またできていくのか、この辺のところを最後に一言、御専門の立場で、実際的な解決をしなければ言葉だけではこれはどうにもなりませんので、ぜひひとつ承っておきたい、また、御努力も要請しておきたいと思います。
  220. 柳谷謙介

    ○柳谷説明員 この問題は、御指摘のとおりしばしばこの国会でも御討議がありまして、たしかことしの通常国会でも予算委員会で民社党の塚本委員からも御指摘があって、当時の外務大臣、法務大臣から御答弁があったところだと記憶いたします。私がいま申し上げることはその繰り返しになるかと思いますけれども、やはり人道問題だという側面がございますので、政府としてもできるだけの努力をするという姿勢は間違いないところでございます。  ただ、北鮮帰還が実施されたときの、すなわち二十年前の経緯から見ましても、この衝に当たりましたのは日本では日本赤十字社でございますので、やはりこの日本赤十字社を通じて安否の照会を行うというのが適切なルートではないかというのがいまも政府の考えでございまして、関係者からの照会、御相談等に対しては、日赤につなぎ、日赤と御相談いたしまして、日赤を通じて先方に安否照会を行っております。  最近も一回そのようなことを日赤がされたと聞いておりますが、遺憾ながら、これまでのところ北朝鮮側からは何らの回答を得ていないという実情でございます。  なお今後も努力を引き続き行うということについては、当然と心得ております。
  221. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございませんので要望になってしまうと思うのでございますが、お答えのとおり、やはり国際赤十字を通じましてのルートが一つあろうかと思います。それから、そのほかにまた朝鮮半島も南北でかなり融和の姿勢が出ておりまして、南北間の交流はすでに一部できている、このような報道も耳にいたしております。わが国と韓国との関係を考えましてもそのルートが一つ開かれないものだろうかどうだろうかという問題があろうかと思います。  と同時に、今回訪中されまして、日中間で南北朝鮮問題、韓国との問題を御討議なさいましてその道もできているのではないだろうかという希望的な観測もいたされなくはないような状況にあろうかと思います。  あらゆる手を尽くしてやられますよう、さらに第三国を通じての問題もございましょうが、要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  222. 志賀節

    ○志賀委員長代理 渡辺朗君。
  223. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は、米国とイランのいま非常に対峙した関係ができておりますが、これに関連しでお聞きすること、それからもう一つわが国のこれからの中東政策、これにつきまして、PLO問題も含めてお聞きしたいと思います。時間が大分過ぎておりますので外務大臣もお疲れだと思います、またいろいろ日程もあろうかと思いますが、ぜひお願いを申し上げます。  外務大臣、人命は地球より重いと言ったのは、これは日本政府の方でございました。イランにおいてアメリカ大使館の館員が人質になった、やはりこれは人道問題で、人命は地球より重いという次元でとらえて、早急にあの時点で政府としての発言があってしかるべきだと思っておりましたが、私は寡聞にしてまだそのようなことがあったと聞いておりません。先般大来外相がこれを公式に発表されたというふうな点は評価いたしますけれども、なぜ一カ月もたってからあのような発言が行われたのか、大変遅かったのではあるまいかということを感じております。  これについては後からまたお聞きをしたいと思いますが、実は米国とイランの関係の問題、そして日本との関係、これに入る前に、通産省からちょっとお聞きしたいと思うのです。時間の関係もございますから、非常にはしょって私も聞かせていただくし、お答えの方も簡略にお願いしたいと思います。  一つは、わが国の原油輸入というのはメジャールートで来ていたものが多かったのですけれども、最近それが大幅に落ち込んでいっております。そうしてそれをDDでカバーしてきた、こういうのが実態であろうと思います。この点につきまして、一番最近の何かデータ、統計がありましたら、メジャールートがどのぐらいで、DDルートがどのぐらいになったのか、これをひとつ教えていただきたい、これが第一点であります。  一つ一つでは時間があれですから、一遍にお聞きしておきます。  第二点としては、中東原油の絶対輸入量、これは日本がパー・デーで幾らぐらいであるのか、それからアメリカの場合はその依存度がどのぐらいであるのか、第二点として聞かせていただきたい。  それから三番目に、イランにおいて日本側からのイラン石化のプラントがほとんど完成するというところまでいっておりました。現状は一体どうなっているのか、そしてまた、通産省としては、これは今後とも推進をしていくという考え方であるのかどうか、ここら辺を聞かしていただきたい。
  224. 浜岡平一

    ○浜岡説明員 御説明申し上げます。  第一点でございますが、日本のメジャー依存度につきましては、五十年代の初頭におきまして七〇%台でございましたが、最近になりまして急速に低下の傾向を見せております。五十三年度におきまして、三分の二ぐらい、六六%ぐらいでございます。五十四年度上期になりまして五五%程度、今年度、今年の十-十二月につきましては、五〇%すれすれぐらいではないかと思っております。来年になりますと、五〇%を割ることは不可避なのではなかろうかというぐあいに思っております。これに見合いまして、産油国との直接取引というもののウエートは次第に上がってきておりまして、五十年代に入りまして一四、五%のレベルでございましたが、五十三年度になりまして二〇%台、五十四年度上期では全体の三分の一ぐらいというようなレベルに到達をいたしております。  なお、わが国の自主開発原油は全体の約一〇%前後でございます。産油国からの直接取引の中にいわゆるスポット取引が大部分含まれております。五十年代に入りまして、約五%前後で推移いたしておりましたが、五十四年度上期になりまして、次第にウエートが上がってきております。特に、ことしの十-十二月になりますと、一〇%をかなり上回るというようなレベルになっておるわけでございます。  それから第二点の、中東への依存度でございますが、大ざっぱに申し上げまして、わが国の原油の約四分の三、七五%を中近東に依存をしておるという状況でございます。  それから第三点の、アメリカにおける中近東依存度でございますが、大変申しわけございませんが、いま私手元に資料を持っておりませんので正確な感じは申し上げられませんが、やはり半分を上回っておるのではないかというぐあいに思っております。この辺は後日調べまして資料をお届け申し上げたいと思います。  それから第四点でございますが、御指摘の石油化学プラントはやはり日本とイランの間の友好関係一つのモニュメントという位置づけを与えられておるものというぐあいに考えております。いろいろと歴史の紆余曲折はあろうかと存じますが、長い目でこのプロジェクトを見守り、また取り上げていくべきものではなかろうかというぐあいに基本的に考えております。
  225. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 通産省の方、ありがとうございました。また改めてお時間をいただきたいと思います。     〔志賀委員長代理退席、委員長着席〕  ところで、外務大臣お尋ねをしたいと思います。  アメリカ側で、日本に対して非常に怒っている、憤慨をしているということが伝えられておりますけれども、これはイラン原油のスポット買いを高値で買ったということがいけなかったのでしょうか。イラン原油そのものを買うことが、アメリカの立場からすると、いけないのでしょうか。あるいはまた、他の理由があるのでしょうか。まず第一番目に、そこら辺をちょっとお聞きしたいと思います。
  226. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イラン原油問題につきましては、高値で買うということは従来から、東京サミットの経緯もございまして、非難の対象になり得るわけでございます。イランの原油を買ったこと自体に対して批判をしておるかどうかという点になりますと、実は、時間的に申しますと、イランの人質問題が始まりましてしばらくの間は、日本側に対して直接イランの石油の買い取り、買い増しを避けてほしいというような申し入れはございませんでした。ただ、アメリカの人質問題で非常に困難な立場にあるので、でき得る限りのこの問題解決についての協力を期待したいという連絡はございました。一方、アメリカのエネルギー担当の方では、アメリカが取引をやめた七十万バレル・パー・デー、これがどこかに買い取られることは、ある意味ではやむを得ないだろう、世界の石油需給から見てもあるいはやむを得ないことかもしれないというような発言がございまして、そういうアメリカのエネルギー担当者の発言が、多少日本側にも影響を与えた点があるのではないかと考えられます。  その後になりまして、とにかくこれだけ人質問題でアメリカとしては苦しんでおる。その問題をアメリカとしては平和的手段で何とか解決したい。平和的手段というのは、結局、国際世論に訴えるということと、経済的な方法によってイラン側に人質解放を求める、そういうような立場がだんだん強められてまいりまして、その経済的な手段につきましては、やはり西側諸国及び日本協力してもらえないとしり抜けになる、効果が出てこないというような考え方がアメリカの中で強まってまいったように思います。  イランの大使館の人質問題については、日本外務省といたしましても、これは国際法上、人道上許されるべきことではないという考え方をしておりましたが、一方、石油確保という立場もございまして、私どもの方からイラン政府に申し入れを何度かいたしておりますが、多少表現がやわらかいといいますか、という点はあったのかと思います。国連の安保理事会でも西堀大使が発言しておりまして、これも人質問題に対して批判する立場をとっておりますが、ただ、その表現等につきまして、もっと明確に言えないものかどうかというような印象もアメリカの一部にはあったように思われます。  私どもとしては、やはり先ほども申しました日米関係に余り悪い影響を与えたくないという立場と、エネルギー資源の確保を図りたいという立場、両方をにらみながら、その間平和的にできれば紛争が解決をしていくことを希望する立場をとってまいったわけでございますが、もうすでに三十数日間たちまして、なかなか解決のめどが出てこない。この際、日本としても人質問題について、これは国連の安保の全会決議もございますし、この点についてのイラン政府行動を是認する国は世界じゆうにほとんどないわけでございます。日本としても改めてその立場を明らかにするということが望ましいというふうに考えたわけでございまして、確かに渡辺委員の御指摘のように少し遅いじゃないかという点はあるかもしれませんですが、いまのような考慮とか情勢の変化から、各方面を考慮しながら手を打ってまいったという点がございます。  今後の問題についても、先ほど質問のありましたDDオイルの問題、メジャーの急激な減少等がございまして、この点についてはアメリカのエネルギー担当官は理解しておるようでございますけれども、一般の政策担当部門で必ずしも十分に認識されていないのではないかという印象もございますので、最近の機会、たとえばバンス長官との会談とかマンスフィールド大使との会談の機会にも、特に私どもの方からも強調しておるわけでございます。
  227. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、外務大臣が、日本の国としていまアメリカとイランの板ばさみということもありまして大変苦労をしているし、デリケートな段階であることはよくわかりますが、やはり国民の方も大変心配をしておるのは、これから一体どうなるのか。たとえば、きょうの閣議においては、アメリカのテヘランにある大使館の占拠事件以前の六十二万バレル・パー・デー以内にこれから抑えるんだという閣議決定が石油輸入に関しては行われたというようなニュースがある。実際問題として、メジャーからも来ない、だんだん少なくなる、来年度あるいは再来年度という展望は一体どういうことになるだろうか、大変不安があります。それだけに一番いい方法を見出さぬといけません。けれども、むずかしいことはむずかしいで率直に言ってもいいのではあるまいか。  そしてまた、特に感じられることでは、イランの事件が起こったときに、対処するのにちょっとテンポが遅過ぎた。こういうことと同時に、それから後のわが国の対応の姿勢というのは、何か弁解するとか釈明に全力を尽くすとかいうような場当たり、その場その場で何か処理していく、ごまかしとも言える糊塗的な方法みたいなことしか目につかない。それだけによけい心配をいたしております。  時間の関係で、この問題についてはまたゆっくりいろいろと御質問をさせていただきたいと思っておりますけれども、そういう角度から実はお聞きしているわけであります。  いまの石化プロジェクトにいたしましても、日本としてはこれは進めたらよろしいのか。通産省の方は、長い目ではやはり進めるべきだと言っておられますけれども、これもまた、アメリカ側から見るならば、イランに対するわれわれの行動に対して非協力的だというテーマにアイテムとして挙げられるかもわからぬ。その場合、外務大臣どのようにお考えでございましょう。
  228. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまのお話の前段の部分で、閣議決定で六十二万バレルというお話がございましたが、これはございませんでした。閣議の前に私と通産大臣と二人で話し合ったことの内容でございます。  それから、御指摘の点につきまして、対応が遅いということもございますが、日本の立場として、歯切れのいいことが私どもも言いたいのですけれども、なかなか歯切れのいいことが言えない、あるいは言ってはならない場合もあるように思います。  いろいろな事態が起こっておりますが、しかし、もう少し長期的に見て、いままでの日本側の行き方が誤っていたのかどうか、必ずしもいまの段階では判断できない点もあるように考えておりますし、もう一つは、そのイランとアメリカの紛争が将来も無限に続くかということになりますと、これはやはりある時点で解決の道が見つかるのではないか。かなり長期間かかるかもしれませんけれども、こういう紛争がいつまでも無期限に続くということは、私はあり得ないと思っております。  イランの工場の問題なども、いまの段階で、これだけイランとアメリカ関係が緊張した段階ではどうにもならない状況も出ておるかと思いますが、将来両国間の紛争が何らかの形で解決した段階には、また取り上げるという可能性もございますでしょうし、また、基本的に産油地域の工業化に協力することは、長い目での日本の資源政策からいってもやはり必要な政策であるように考えておりますので、そういう点で、現在イランとアメリカがぶつかり合っておる最中の問題と、これが何らかの形で解決した場合のことも含めて考えていく必要があるように思っております。
  229. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その苦衷の状態というのは非常によくわかります。ただ、先ほども通産省の方のデータから見ましても、わが国の中東原油依存度というのは大変高い、これはアメリカよりもずっと高いわけであります。にもかかわらず、日本というのは日米協力というものもこれは軸にして進まなければならぬ。この苦しみは大変なことだと思うのです。  ただこの際、素人考えでございますけれども、アメリカが本当に日本に対して協力を求めてきて、イランに対して経済制裁をやるとか、いまもまた国連安保理事会でそういう決議をしようというような根回しもされているようでありますけれども、日本側に対して何らかの協力を求めるというような場合に、わが国として、そんなことをやったら日本としては大変な石油危機がやってくる。したがって、アメリカが持っている備蓄を取り崩してでも、戦略備蓄を取り崩してでも日本には保障するというようなことを、石油問題、エネルギー問題については言わせるくらいのことが必要ではないかと素人考えで思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  230. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点はなかなか困難な問題があると思いますが、私どもの一つの考え方としては、西ヨーロッパ諸国とできるだけ密接な接触を持ちながら、その立場でアメリカとの話し合いもしていくということが一つの行き方ではないかと考えております。
  231. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 西ヨーロッパとの話し合い、これは非常に重要なことだと思いますが、その中で、ちょっと先に進ましていただきます。  わが国の中東政策といったものは本当にあるのであろうか。何か幾つかの原則があり、それにのっとって動いていくというようなものがなければ、アメリカに話をする場合でも、あるいはヨーロッパと話し合いをする場合でも、大変困ったことになりはしないだろうか。  聞くところによりますと、中近東の大使会議がこの数日間行われたようであります。新しい提言もなされたやに聞いております。この際ですから、どのような中東政策を持ってこれからわが国としては臨んでいくのか、大綱でも示していただきたいと思います。
  232. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 昨日、中近東大使会議が終了いたしまして、その大使会議から提言が出ておりますが、これはいまの外務省の立場におきます政策的方向づけを大体しておると思いますが、多少長くなりますので、これをあるいは配付いたしましょうかしら。
  233. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 では、そのようにしていただくとして、外務大臣、じゃ一つだけここで教えていただきたいと思います。  PLOに対して、わが国としてどのような方針で臨むのか。私は、アラブの世界という問題に対処するに当たって、これから日本外交で一番大事なのはPLO問題であろうと思います。それはどのような基本方針を持って臨まれようとしているのか、これについてお願いをいたします。
  234. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 わが国は、パレスチナ問題が中東和平の問題の核心をなしておる、PLOがパレスチナ人を代表するものであり、中東和平の早期の実現のためには、イスラエルとPLOが相互に相手の立場を認めることにより、PLOの和平交渉への参加の実現が不可欠であるという立場を従来よりとってまいっております。わが国といたしましては、このような立場を踏まえて、相互理解を深めるために、従来よりわが国が行ってきておりますPLOとの対話を今後とも強化してまいりたい、そういう認識でございます。
  235. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その際に、PLOをわが国として承認するとか、あるいは、たとえばアラファト議長が来日するという場合には、どのような待遇になるのか、ここら辺を外務大臣として御見解を知らしていただきたいと思います。
  236. 千葉一夫

    ○千葉説明員 ただいま先生がおっしゃいました承認でございますが、もとよりPLOと申しますのは政府でも国家でもございませんので、国際法上の承認という意味でおっしゃったのではないことはもとよりわかっておりますが、これはやはり政治的な言葉でございまして、PLOというものをいかに見ていき、またいかにこれを現実的に扱っていくか、そういうことであるかと存じます。  そこで、政治的な言葉である以上は、非常に幅の広い内容を持っておりまして、またはそのときどきの時期、国際情勢その他の要素に左右されるものかと存じます。しかしながら、われわれとしましては、PLO発足当時に比べれば日本としてはるかに深くかかわり合いを持っておりますし、その意味ではずいぶん進展しておると思います。しかしながら、なお今後もいろいろと進んでいく余地があるかと存じます。  次に、アラファト議長が日本に来た場合はいかがかという御質問でございますが、これは御存じのとおり、こちらの国会におきまして日本・パレスチナ友好議員連盟というのがございまして、すでにアラファト議長ほかに御招待を出しておられると承知しております。それに対しましてまだ同議長から御返事が出ていないというふうに聞いております。われわれとしましては、実は一九七六年にカドウミ政治局長、これも御存じのとおりのPLOの幹部でございますが、当時のアラブ友好議員連盟に招待されまして日本に来られましたときに、外務省は側面的に協力したわけでございます。そのような前例もございますので、もしアラファト議長がこの議員連盟の御招待を受けられまして見えるということであれば、その先例を参照しながら、しかるべく行動いたしたいと思っている次第でございます。
  237. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間も参りましたので、要望だけして終わりたいと思います。  私、最近アラブ諸国を回らせていただきました。そして痛感したのは、やはり確固としたわが国の中東政策が必要だ。これは中東政策のみならず、今日ではたくさん問題が、わが国の内部にもそうでありますけれども、外で起こっている、しかもむずかしい問題ばかり。そうしたものを推進するには、やはり有為の人材がたくさんいないといけない。その点で、私どもの党あるいは私個人、外務省の人材というものはもっともっとふやすべきだ、広い意味でこれは広義の安全保障だというふうに考えております。そうした考え方で新大臣のこれからの活躍を大いに期待しておりますので、がんばっていただきたいと思いますが、何か一言ありましたら、抱負のほどでもおっしゃってください。
  238. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま渡辺議員のおっしゃったことで私も非常に責任の重大なことを感ずるわけでございますが、先ほど答弁の中で申しました、開かれた外交といいますか、各方面の人材が日本と外の世界との関係についての対話の道を開いていく、それを結び合わせてわが国の外交の全体としてのかじをとっていくという行き方が必要だろうと考えております。
  239. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。
  240. 中尾栄一

    中尾委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十七分散会