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1979-11-13 第89回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年十一月十三日(火曜日)    午後一時三分開会     ―――――――――――――   委員氏名     委員長         菅野 儀作君     理 事         稲嶺 一郎君     理 事         鳩山威一郎君     理 事         田中寿美子君     理 事         渋谷 邦彦君                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 徳永 正利君                 秦野  章君                 二木 謙吾君                 町村 金五君                 三浦 八水君                 小野  明君                 戸叶  武君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 藤井 恒男君                 田  英夫君                 河野 謙三君     ―――――――――――――    委員異動  十一月九日     辞任         補欠選任      藤井 恒男君     柳澤 錬造君  十一月十二日     辞任         補欠選任      立木  洋君     佐藤 昭夫君  十一月十三日     辞任         補欠選任      大鷹 淑子君     井上 吉夫君      安孫子藤吉君     山本 富雄君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     理 事                 稲嶺 一郎君                 田中寿美子君                 渋谷 邦彦君     委 員                 井上 吉夫君                 二木 謙吾君                 三浦 八水君                 山本 富雄君                 戸叶  武君                 塩出 啓典君                 佐藤 昭夫君                 柳澤 錬造君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  大来佐武郎君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省アジア局        長        柳谷 謙介君        外務省中近東ア        フリカ局長    千葉 一夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○調査承認要求に関する件 ○国際情勢等に関する調査  (韓国における朴大統領射殺事件とその後の情  勢についての報告)  (韓国情勢に関する件)  (イラン情勢に関する件)  (インドシナ難民問題に関する件)     ―――――――――――――    〔理事稲嶺一郎委員長席に着く〕
  2. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員長は所用のため、本日委員会に出席できないとのことでございますので、委託を受けまして、私が委員長の職務を行います。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る九月十四日、和田春生君が委員辞任され、その補欠として藤井恒男君が選任されました。  次いで、去る九日、藤井恒男君が委員辞任され、その補欠として柳澤錬造君が、また、昨十二日、立木洋君が委員辞任され、その補欠として佐藤昭夫君が選任されました。  また、本日、大鷹淑子君及び安孫子藤吉君が委員辞任され、その補欠として井上吉夫君及び山本富雄君が選任されました。  なお、上田哲君の議員辞職に伴い、本委員会は現在一名欠員になっております。     ―――――――――――――
  3. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 次に、調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国際情勢等に関する調査を行うこととし、その旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  まず、政府から韓国における朴大統領射殺事件とその後の情勢について報告を聴取いたします。柳谷アジア局長
  7. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) それでは、私から韓国情勢について簡単に御報告さしていただきます。  去る十月二十六日の夜発生いたしました、韓国朴正煕大統領死亡事件につきましては、十一月六日に戒厳司令部合同捜査本部から詳細な捜査の結果の発表がありました。  この詳細な内容は、すでに広く報道されておりますので、ここでそれを全部御披露することは控えまして、そのうちの特に気づく点、約五点だけを手短に御披露いたします。  その第一点は、金載圭前韓国中央情報部長は、同人の仕事ぶりについて大統領から叱責されたほか、大統領への報告意見具申車智澈警護室長によって阻まれることなどから感情的な対立も生じ、これが激化し、近く人事異動では更迭されるのではないかということを恐れるなどのため、朴大統領車警護室長の殺害を企図した。  第二点、金載圭は、軍首脳及び閣僚に対して、自分犯行を隠し、大統領死亡のみを伝えて、戒厳令をしき、事態をみずから掌握の上、軍事革命を達成しようとした。  第三点、本件事件は、誇大妄想にとらわれ、大統領になろうとの空虚な欲望がもたらした、内乱目的殺人事件である。  第四点、本件事件軍部または外部勢力が介入した事実はない。  第五点、金桂元大統領秘書室長は、金載圭が車警護室長を殺害する意図を知りながら、これに同調し、金載圭による大統領狙撃の事実を当初軍部首脳及び閣僚に知らせず、金載圭の事態掌握計画が成功しないと判断して初めて金載圭が犯人である旨国防部長官及び陸軍参謀総長に知らせた。これを受けて、国防部長官陸軍参謀総長は金載圭の逮捕を決心し、これを実行した。  要点だけを申し上げますと、以上が合同捜査本部の十一月六日発表の中身でございます。  この発表は、それまでいろいろ疑問視されておりました諸点、たとえば金載圭の逮捕に至るまでの経緯とか、夕食会に同席していた金桂元役割りとか、あるいは事件と軍との関係等について、ひとまずの回答を与えております。しかし、この発表をもって事件の真相あるいは全貌がすべて明らかになったとは必ずしも言い切れない面があろうかと思いますので、この点は今後、近く開かれると言われております軍事法廷における公開裁判の行方を注視してまいる必要があろうかと思っております。  今次事件は、金載圭の計画的殺人事件とされておりますが、このような犯行に至った背景といたしましては、本年五月末、金泳三新民党総裁誕生以来の政府・与党と野党との間の緊張の増大並びにいわゆる釜山騒擾事件に見られる社会的混乱等があり、これらにいかように対応するかについて、金載圭中央情報部長車智澈警護室長との間に政策上の意見対立があり、また、これが一部感情的な対立にもつながり、結果的には車智澈警護室長の主張する、どちらかというと強硬な路線について、大統領がこれを採用することが多く、その結果として金載圭の不満が今度の事件のような形で爆発したという側面も無視できないではないかと考えられます。  事件の後の韓国情勢は、これまでのところ、崔圭夏国務総理憲法の規定に基づき大統領の権限を代行する暫定体制のもとで比較的に平穏に推移しております。十一月十日には、崔大統領代行時局収拾に関する特別談話発表し、今後の大統領選挙及び憲法改正について、漸進的かつ合憲的な方法で措置していく方針を示しました。この談話の中の二点だけ要点を以下に申し上げます。  その第一点は、現行憲法のもとで同憲法に規定された期間内に大統領選挙を実施し、新しく選出された大統領政権を委譲する。  第二点は、新しく選出された大統領は、現行憲法に規定された前大統領の任期を満了することなく、現実的に可能な早い期間内に各界各層意見を聞いて憲法を改正する。次いで、改正された新憲法に基づいて選挙を行う、という内容でございます。  当面のところは、十一月六日に合同捜査本部から発表された、先ほど御披露いたしました捜査結果の内容、並びに、ただいま申し上げました崔大統領代行特別談話を踏まえて、今後の政局収拾が図られていくものと思われます。ただ、憲法改正という場合に、その内容がどのようなものとなるか、時期、速度等について、今後野党勢力との間にさまざまな意見調整が必要ではないかと考えられますので、この辺に関する今後の動向は引き続き注目してまいりたいところでございます。  なお、経済面につきましては、事件直後の十月二十七日に、申副総理経済企画院長官が、経済運営の基調は従来と不変である旨発表いたしましたほか、翌二十八日からは九人の閣僚による特別経済対策閣僚会議が設置されまして、政府としてはいち早くこのような措置をとっており、同国の経済情勢は現在のところ特段の混乱もなく平静を保っていると見られます。  最後に、わが国の対韓政策につきましては、事件の翌十月二十七日に大平内閣総理大臣談話発表され、その中で、今回の事件にもかかわらず、速やかに事態が平静に復し、朝鮮半島地域の平和と安定が引き続き維持されるよう強く祈念するとともに、日韓友好関係が今後とも変わることなく発展していくことを確信いたしますと述べられたところが現在のわが国姿勢でございます。  また、韓国側も、先ほど申し上げました崔代行特別談話において、今後とも友邦諸国との友好協力関係を強化していく旨を明らかにしております。  以上、簡単でございますが、韓国情勢について御報告申し上げました。
  8. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 以上で報告は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 田中寿美子

    田中寿美子君 ただいまの外務省の御報告は、新聞などで私どもが読んでわかることばっかり、大変公式的な形式的なものにすぎません。きょうは大来新大臣の御意見、これからの抱負など伺いたかったんですけれども大臣の御都合で出られませんので、外務当局のお考えを聞くよりほかないのでございますけれども、ただいまのような通り一遍のお話では余り意味がないと思います。  まず、私は、この事件に関連して外務省当局がいろいろと首脳とか当局という形で見解を述べていらっしゃいますが、それらに関連してまず第一点は、十月二十六日の午後七時三十分に起こったこの事件アメリカはすぐその直後に知っているわけですね、早過ぎるぐらいよく知っていたと。恐らく事前に察知していたんではないかというふうに想像できますし、それからもう直ちに米軍非常体制に入って、第七艦隊まで動員してくるという用意のよさでございますね。ところが、日本外務省は大変それをキャッチすることが遅くて、二十七日の朝の五時半に第一報が入ったというふうに報道されております。  それに対して、情報管理体制を今後どうするこうするというような御意見が出ているようですけれども、私がお尋ねしたいのは、このような事件が十月二十六日に突如として起こるに至った状況事前に全然把握していらっしゃらなかったのかどうかということを伺いたいのです。もう全く何もわかっていなかったというのでは余りにおかしいのではないか。予想はしていたけれども、それを発表することができないとか報道規制があったとか、そういうことなのかどうか。釜山における労働者の暴動、市民まで立ち上がっている、民主勢力が立ち上がっている。あるいは馬山でも労働者が立ち上がった。その前から新民党への弾圧に対する、それからその前のYH貿易婦人労働者の座り込み、そういうようなことが私ども新聞情報で見ますと、そこまでいっていたとはとうてい思えない程度にしか情報は知らされておりません。外務省出先が事ここに至るまで――韓国政府発表はあくまで金載圭というKCIA部長の私恨のような、私怨から発したかのような発表にされておりまして、それをそのとおり信じていらっしゃるのか。いや、事がここまで至って、朴大統領射殺するまでに至ったその背景について全然把握していらっしゃらなかったのかどうかということがまず第一点です。
  10. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) いまお尋ねの第一点の、このようなことが起こることを事前に全く把握していなかったかという点でございますが、あの時期にあのような金部長によるピストル発射拳銃発射による射殺により、車警護室長のみならず、朴大統領までが命を落とされるというような形でこういう事態が発生するということを何らかの形で予期、予想していたかということでございますと、そういう形では予期しておりませんでした。  ただ、いまも御指摘のありましたように、この二、三カ月来の韓国政局、たとえば野党に対する強い姿勢とかあるいはその後の釜山馬山における騒動事件に対して戒厳令等を少なくとも釜山地区についてはしいたというようなそういうような措置につきましては、ソウル及び釜山出先公館から事態の発展、経緯等につきまして種々報告がございまして、特に学生デモ一般市民が一部加わったと、またこのデモが派出所とか報道機関とか、あるいは官憲の支署等襲撃事件という形で発展したということは、従来の同種のデモには必ずしも常になかったことでございましたので、このような状況下において朴政権としては、政権発足以来最も厳しい時期を迎えようとしているんではないか。これに対して朴政権と申しますか、体制側としてはよほどこの事態を真剣に考えて対応しなければならないんではないだろうかというような報告は累次寄せてまいっておりましたので、外務省といたしましても、そういう意味では、まあよくこの種のデモ等あるわけでございますけれども、今度の特に釜山事件につきましては、従来にまして事態を注視する姿勢をとり、現地にもそのような指示を与えていたという経緯でございます。  それから韓国政府発表をまるのみしているんではないかという御指摘でございましたけれども、私さっき冒頭に読み上げました報告の中でも、韓国政府発表要点を御披露したと同時に、やはりこういう釜山騒擾事件等に当たっての、まあ具体的には金載圭と車智澈という形にあらわれたわけですけれども、非常に強い姿勢で臨まなければさらに連鎖反応事態が一層悪くなるということで直ちに非常戒厳令をとるというような、まあこの場合では車智澈によって代表された非常に強硬な路線と、それをやると逆効果であると、また内外のいろんな世論等から見ても、あるいは国民の感情から見ても、かえってこれはやり過ぎであるからもう少し柔軟に対応をしなければならないと、これがこの場合は金載圭によって体現されたとされておるわけですが、そういう二つの流れと申しますか、一概にこの強硬、柔軟と単純に分けることにはいろいろ問題があるかと思いますけれども、そういうような考え硬軟両様意見があったということが、やはりああいう――事件自体は突発的な非常に何人も予想しなかった事件ではありますけれども、その背景にはそういう事があったんではなかろうかという点を先ほど申し上げたのは、これは事件前からの韓国情勢についての私ども分析等を踏まえ、あるいは事件後に入りましたさまざまな情報もあわせてそのように申し上げた次第でございまして、私どもは別に必ずしも先方発表だけをうのみにするというつもりではございません。
  11. 田中寿美子

    田中寿美子君 ですから、外務省出先はもっと情勢を把握していたというふうにおっしゃっているかと思いますけれども朴体制自身維新体制朴大統領独裁体制そのものが極限まで来ていたと。そして学生労働者、それから市民まで立ち上がっていったという状況は、私どもには、われわれの得ている普通の情報ではわからなかったし、けれども外務省としてはもっとちゃんとした情報を把握していたというふうにおっしゃっているのかなというふうにいま思っておりますが、そして突発的に起こったにしてはそんなに簡単にあんなに大ぜいのKCIA人たちが動く、あるいは軍そのものも直ちに弾圧に出ておらない点からいっても、背後関係が想像されるということはいろいろいまになって言われておりますので、私はその辺について外務省はある程度情報を把握していらっしゃるかと思いますけれども。  それで、二十六日に起こったということは、二十九日にさらに釜山から馬山からソウルにまで及んで、そこで学生たちが立ち上がると市民総決起になりはしないかという情勢の中で、これもう朴体制ではだめだという側が起こした不発のクーデターではないかというふうに思っているわけでございますが、外務省判断として私はもう一つ問題だと思っておりますのは、十月三十一日にいろいろの新聞紙上発表されておりますが、外務省ソ連中国日本大使館に訓令を出して、中国ソ連影響力を行使して北朝鮮が南に対して武力侵攻することがないよう抑えてほしいという要請を行ったというふうに報道されておりますが、それは実際そうだったのかどうか。そしてそれは一体何を意味しているのか。つまり外務当局は北からの南進があるというふうに考えて、そしてソ連中国にお願いしたのか。あるいはアメリカからそういうふうに言われて、ソ連中国大使館を通じてそういうことを北の方に状況を聞いてみたのか。そして聞いてみたら心配がなかったと、だからいまのところ北からの南進脅威はないというふうな発表外務当局がなっているのですね。これは一体どういうことなんですか。
  12. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 前段で御指摘突発事件云々という点でございますけれども、これは事件の発生後の私ども判断で、その後も基本的には変わっていないわけでございますけれども、これがいわゆるクーデターと申しますか、軍当局なら軍当局が緻密に計画した一つの行動であったということであるよりは大統領遭難事件、確かに金部長自身は、先ほど発表にもちょっと出ておりますように、先方発表によれば空虚な欲望とか、いろいろ言っておりますけれども金部長なりに一つ考えがあったという面はその後の調査によってわかっておるわけでございますが、同時に、それにしては余りにも計画がずさんといいますか、あのようなことで恐らく成功されるような客観情勢はなかったんだろうということで、金部長判断の誤りか、甘い情勢分析かという面で多分にやはり突発性のある――本人の意識においてはある程度の計画はありましたけれども事件としては突発的な遭難事故というふうにとらえたわけでございます。  で、いま御指摘のように……
  13. 田中寿美子

    田中寿美子君 短かくお願いします。余り弁解しないで。
  14. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) いまの後段の御指摘のありました中ソに対することでございますけれども、これは米国米国立場から、朝鮮半島の安全に対する責任という立場から、やはり中国ソ連に対して米国の基本的な姿勢を早速伝えたと承知しているわけでございますけれどもわが国といたしましては、これは米国立場とはいろんな点で非常に違いますから、別に中ソを通して北朝鮮に対して南進をするかしないかとか、そういうような形で物を言うことは考えたわけでございませんけれども、やはり朝鮮半島を取り巻く国際環境から見ると、日本アメリカソ連中国と、この四カ国が非常に重大なかかわり合いを持っているということは事実でございますので、やはり北朝鮮との間に関係を持っております中国ソ連に対しましてわが国からも大平総理大臣談話を伝えつつ、わが国の持っている関心を披瀝すると、また先方が何らかの情報を持っていればそれについて情報を得たいという形で、一般的な形でわが方はそれぞれ北京及びモスコーでわが方の意図を表明したわけでございます。それに対するそれぞれの反応というのは当時皆さんに御披露したとおりでございまして、一言で申し上げますと、中国については……
  15. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう発表されているからわかっています。
  16. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 中ソそれぞれからは一応そのときに先方考え方説明を受けたということでございまして、それによって南進の危険がないという情勢がわかったとかいうようなそういう種類のものではなくて、むしろ朝鮮半島の平和と安定に対する日本の持っている重大な関心ということをこういう機会にやはり両国にきちっと伝えるという外交努力というふうに御理解いただきたいと思います。
  17. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまそういうことを議論している時間がありませんので、私は、だから、日本政府も北と直接接触できるような努力をするべきであると。ソ連中国を通して南進脅威を与えないようにとか――この南進脅威という言葉はアメリカも使い、朴政権が常に使って軍事強化をしてきている口実でもありますので、それをそのまま考えていたのか、あるいはただそれはゼスチュアとしてそういうやり方をしたのかというふうに思っているわけですが、それについてはちょっといまは触れません。  そこで、園田外務大臣が十一月八日に外務当局に対して注意を喚起した。そして、これまで韓国情勢アメリカから明らかにされてきたが今後はソウルから来る可能性がある。いままではアメリカから入ってきた情報ソウル朴政権が否定するとそのまま日本も否定してきたと、こんなようなことではいけないから柔軟に対処せよという注意をしたというんですが、これに対して外務当局はこれをどういうふうに受けとめていらっしゃるのですか。
  18. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 園田外務大臣、二年間御在任なったわけでございますけれども、さまざまな点について私ども指導を賜りました。その御指導を得ながら事務当局としては一生懸命に外交に当たったつもりでございます。  具体的な問題につきましては、これは朝鮮半島に対するわが国外交政策あるいは韓国北朝鮮に対する姿勢というものにつきましては、これは随時の総理演説あるいは外交演説において明らかにされた線の中でコレクトに対応するということでやってまいりました。その点におきましては外務大臣事務当局の間に食い違いとか考え方の相違はないものと思いますが、その上に立って大臣から随時私ども事務を進めるに当たってのいろいろな御指導を得ていたということでございます。
  19. 田中寿美子

    田中寿美子君 何か焦点がぼけているんですけれども、今後情報アメリカからもらう情報だけじゃなくてソウルから直接入ってくる可能性があるというのは、これはどういうふうに解釈していらしっしゃるのか。そして、いまは報道管制規制があると思うんですけれども、それでも外務省は直接自分たち判断において情報をとっていき、直接自分たちの主体性において判断をしなさいというような意味にとっていらっしゃるのかどうかということです。
  20. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 私どもは従来からも各方面から、この場合は特にアメリカとそれから現地韓国ということでございますが、もちろんそれ以外のソースも含めまして情報の収集に努力し分析いたしまして、それで少しでもより的確な判断を得ようと努力しているわけで、従来からも別にアメリカ情報だから信ずるだとか、ソウルからの情報は信じないとか、あるいは余り情報がないとかということではなかったと思います。ただ、同時に韓国においても先ほども触れましたように、これから政治情勢がいろいろ動こうとしているところでございますから、今後ともますます量質ともにすぐれた情報韓国から入手する、その入手の上に立って的確な判断をしようというその努力はなお今後とも拡大していきたいと、そのように考えております。
  21. 田中寿美子

    田中寿美子君 これまでの情報発表が本当に真実を語っていたというふうには私には思われません。これは金大中事件のことでもうさんざんこれまでの国会の中で皆さんと質疑してきたことなんですけれども、もっと日本が独自の情勢判断とかということが必要だと思いますが、今後のことでこれは大臣の意向もお聞きしなければならないんですけれども先ほどおっしゃったように、いま崔圭夏大統領代行が現在の維新憲法のもとで三カ月以内に大統領に指名される、そしてその後いわゆる統一主体国民会議といいますか、これは朴体制のもとでのみ存在するべきものなんですが、それによっていまの崔圭夏大統領代行が大統領に選出されると。そして、それからその後の大統領の任期五年以内に憲法を改正して新しい大統領を出すのだということが発表されておりますが、そのようなやり方で一体――今日まで釜山馬山、それからさらにソウルヘと大きな民衆の蜂起が予想されていた、民主勢力ですね、いままでの本当に独裁政権に対して非常に大きな不満が国民の中に起こっていた、その民主勢力側がそれで満足するとは考えられないですね。それで、一体そういう民主勢力に対して外務省当局はどういうふうに考えていらっしゃるのか。  いままでは朴大統領側の意見をそのまま受け入れ、そのまま報道していらっしゃったと思います。ですが、今度のようなことに至りましたそもそもの背景の中には、そういう人権抑圧とか非民主的な政治に対する不満とか、あるいは経済問題に対する不満とかいうものが大きく燃え上がったわけなんですけれども、そういう民主勢力側の要求がそんなことでがまんできるだろうか、黙っているだろうか、その辺を外務当局はどういうふうに把握していらっしゃいますか。
  22. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 先ほど冒頭の報告でもちょっとその点には触れたつもりでございますけれども、やはり基本的には、第三国の内政問題そのものにかかわりますので、外国の立場からどうなるであろうとか、どの立場意見が妥当であろうというような具体的なコメントはやはり私は控えなければならないと基本的には思っております。  ただ御指摘のように、この崔圭夏談話の中に個人の意見だがと断りながら示したラインと、これを受けて野党指導者の方が発言された談話との間にはやはりいろいろ食い違いがあることは御指摘のとおりでございます。その辺になりますと、崔圭夏談話の方も具体的な日取りとかあるいは憲法改正の中身とか、あるいはいつごろという期間とかということは余り明示しておりませんので、今後与野党の間でいろいろな話し合いがなされる中で、その辺のより具体的な問題として、野党といってもいろいろな意見の方があると思いますので、いろんな意見が闘わされて、その中から、この崔圭夏談話のラインそのものであるか、あるいはそれにある程度の色がつくか、いろんな形でこの収拾が進んでいくんではないかと思います。まだ、いまの時点でここまでやればみんなが納得するというような一つのラインが出ているとも思えませんが、この辺はまだ、御指摘の点はまさに今後の韓国政局を見る一番の重要な点としてわれわれも注視していきたいと、こう思っております。
  23. 田中寿美子

    田中寿美子君 いままでは民主勢力の動きということに対して、日本政府当局は非常に――なるたけ軽く見ていたと思います。それで、今度このようなことが起こってみると、本当に民衆の不満というものが大変なものであったということがわかり、もっと本当に的確に私どもは知らせてほしかったというふうに思うわけなんですが、特に日本政府としましては、たとえば金大中事件に関連しても政治決着をやってしまって、そういうことをするということは、金大中さんが拘束されて政治的活動の自由を奪われてしまう――そのほかたくさんの政治犯が入れられているわけですね、金芝河さんにしてもそうですが、そういうたくさんの民衆を弾圧していることに対する怒り、民主主義の要求ですね、こういうものがあるのに、金大中事件に関連しては、いま問題になっている金鍾泌さんと大平さんの間で話し合いをし、そして政治決着をしてしまって、金大中さんが政治的活動を拘束され自由を奪われることに日本は手をかしているわけですよ。このようなことをしていては、私は日本政府韓国の民衆に対して反対の立場をとっているということになると思う。日本だってそうですけれども、与党と野党があって、それぞれ全部が国民なんですね。ですから、日本政府韓国の与党だけじゃなくて、野党もそうですし一般大衆の立場もよくつかまえ、そして民主主義国家であるならば民主主義を守ることについての理解を示さなければいけないと思うんです。ところが、理解どころか反対に、金大中氏初めそういう民主的な人々の抑圧に手をかしてきたということについて私は重大な責任があると思うんですけれども、その辺のことが今後対韓政策に関しては問われていると思うんですね。これは大臣姿勢を伺わなきゃなりませんけれども外務当局先ほどのお話のように、二十六日にあの事件が起こったということの意味は、二十九日にあるいはもっと大きな民衆蜂起があるかもしれないというのを予防したものであるというふうにすら言われている。だから民主勢力を完全に拒否してしまうような、そういう日本政府の態度は――これはアメリカの場合に、アメリカは非常に大きくコミットしていて、韓国政府を、朴政権を支えた大きな力であるし、軍事力で支えていますけれども、しかし、アメリカ政府の中には、国務省の中にも民主的な人士、金大中さん初め、そういうものを支持する勢力があるでしょう。ちゃんとオープンにそういう意思表示もしている。ところが、日本はどういうわけか全く主体性がなくて、朴政権の言うなりの対応をしてきたという、こういう態度を改める必要があると思うんですが、外務当局はその辺はどう考えていらっしゃいますか。
  24. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 先ほど申し上げましたように、韓国内部に従来から野党学生その他、いま御指摘のお言葉によれば民主勢力というものがあって、それが一つの動きをなしてきたということ、御指摘のとおりであり、私ども出先の者もこれらの野党指導者あるいは学生指導者等ともできるだけ頻繁に接触して、これらの人たち考え方はそれとして聞く努力はしているつもりであります。今後もするつもりでございますが、ただ、この韓国の今後の政治がどういう方向に動いていくかということについては、これは韓国の国内問題でございますから、どういう形で収拾されるとか、どういう勢力のどういう意見が妥当であるということについて外からあれこれ具体的に言うことは控えたいということは、先ほど申した点でございます。  他方、日韓の外交関係ということになりますと、これはやはり個々の問題として、やはり政治問題、経済問題さまざまございますが、個々の問題としてとらえなければならないと思います。そういう意味におきまして、これまでの歴代の政府首脳あるいは外務当局は、それぞれの事件に関してはそのとき最も妥当だと考え判断の上に立って個々の案件を処理してきたわけでございまして、その点は現在の政府当局もこれまでのとられた措置というものを引き継いでいると、これは日韓の外交関係においてはそのように心得ております。
  25. 田中寿美子

    田中寿美子君 余りはっきりしませんが、金大中事件の正しい、本当の解決というのはまだ残されていると思います。それは日本にとって非常に責任のある問題だと思います。  じゃ最後に一点、大来外務大臣外交方針についての談話をなさった中に、「朝鮮半島における南北対話の環境づくりで日本外交としての役割を果たしたい」というふうにおっしゃっていますが、「南北対話の環境づくり」というのは、これまで園田外務大臣もしばしばおっしゃっておりますけれども、どのようなことを具体的に考えていらっしゃるのか。外務大臣がおっしゃったことですけれども、恐らく外務省当局がそういうようなことをブリーフィングなさったんだろうと思いますので、いかがでしょうか。
  26. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 大臣御就任以来、実はまだ十分ブリーフィングの時間もございませんで、非常にはしょっただけのブリーフィングを申した次第でございますが、大来外務大臣、いろいろ外交問題についてはすでに経験をお持ちでございますので、新聞のインタビューについては御自身のお考えを率直にお述べになったものと私ども伺っております。  一点は、お尋ねの南北朝鮮関係の環境づくりの問題でございますけれども、この点については、私どもの理解では、前大臣がたびたび御答弁したことと同じことが念頭にあろうかと思います。すなわち、やはり日本といたしましては、今日いろんな面で、外交上、米中ソを初めとして諸国の首脳等との接触の機会も非常に多いわけでございますので、そういう機会をとらえましてこの朝鮮半島における緊張の緩和、あるいは平和と安定の一層の確保ということについての日本政府の深い関心というものをあらゆる機会を利用して伝えると、あるいは先方意見を聞くというようなことがひいては――基本的にはこの朝鮮半島の問題というのは南北両当事者の努力によって解決すべきものではありますけれども、周辺において特に関係の深い国々もまたそれに貢献していくという意味において、やはり日本日本なりに環境づくりに果たす役割りがあると。そういう意味ソ連中国あるいはアメリカ等の首脳との会談の場等において前大臣もしばしばこの問題を、朝鮮半島の問題を提起された。そういうことが一つ大きな環境づくりの外交努力でございます。そのほか国際機関等の場においていろいろ、韓国北朝鮮双方が参加しているような国際機関もございますので、そういう場におけるいろいろな、日本側がそういうところでできるだけ両当事者の参加が可能になるように助言するというようなことも、やや技術的な点ではありますけれども環境づくりの一つ努力というふうに心得ております。
  27. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは終わりますけれども韓国の政治、政権がいま変わりつつあるわけですから、日本政府ももう一歩み出していただきたいということを要望しまして、またいずれ外務大臣に御要望したいと思います。じゃ、私終わります。
  28. 戸叶武

    戸叶武君 新しい外務大臣が生まれて、国際的なエコノミストをもって任じている大来さんからグローバルな時代における外交のあり方をまず第一に承りたかったんですが、今日では内閣が国会を軽視しまして、ほとんど外務大臣が国会との対話をおろそかにして自民党内部の紛争に翻弄されている状態で、政治の空白をつくらないという名のもとにとんでもない空白をつくってしまった大平内閣の、外交、経済、特にエネルギー政策に対する緊急を要する対策というものがゼロになっているのじゃないかということを私は心配しているんです。空白どころか、選挙も白けてしまい、そうしていま間が抜けた政治がむなしさを国民に与えているんですが、これは大臣に聞く以外に皆さん方にお聞きできないけれども、あなたたちからも篤と、国家とは何ぞや、ガバメントとは何ぞや、人民主権の、国民主権の国における国会というものをおろそかにして、解散権のない内閣が党利党略によって解散ができるというような間違った憲法上の解釈をするからこのような混乱が生まれたということを篤と究明してもらいたいと思う。  このごろはどうも官僚政治の時代で、政党のボスと大企業と官僚で日本をわけのわからないところへ引っ張っていき、堕落して醜態をさらけ出しておりますが、元来、軍部、官僚が政権を握ったときには必ずこのような一つの危機を倍加させていくんです。  で、いま韓国の問題は、すでに前に質問し、答弁もありましたが、私の尋ねたいのは、いま韓国の問題、イランの問題、ベトナムの問題、火を噴いているんです。救急車じゃ間に合わないほど、あすとも知れない、御岳山の爆発とは違って、正確な情報をキャッチしなければ対応ができない状態のときに、外務省というのはアメリカ回りのつんぼさじきに置かれて、われわれは新聞を通じてアメリカ情報をキャッチして、大体八分どおりわかったというころ、間が抜けたころ、向こう側の政府発表の、手心を加えたと思われるような、政治的にひん曲がった情報がいまのように報告されるのです。全く、日本外交の独立は、まず第一に情報の独立から入らなければならない。あるがままの事実の、ザインの客観的な観察と認識なしにはゾルレンの問題には入れない。われわれが外交上の論議をやるのには深入りできない。遠くの方から火事をながめていて、火事が済んだころ拍手木の音が聞こえてくるというのがいまの日本外交のぶざまな状態だと思うのです。こんな外交では外交になってない。激動変革の時代に先取りをしようというので急いでいるが、大平さんは、いわゆる単独内閣ではできない、連立の方向へというので、子供だましのような先取りの遊びに戯れておりますが、こんなことでは、国内政治においても、国際政治の中における日本のあり方というものをびしっと決めていないで、どこがへそかわからないやつを相手に、われわれは外交、防衛の問題やあるいはエネルギーの問題も明日の問題も論ずることはできないと思うんですが、あなた方に言ってもこれもせんないことですから、よく伝達して、外務省の独立は――財界のボスの思いつきの発言や、無知をさらけ出している既存政党のボスの、何かこの辺に利権があるんじゃないかというような形で、油と名のつくところにはあわてて手を突っ込み高い値で買ったり、要らぬことをやってはイランのような始末の後片づけを国家にやらせようというのだから。  ところで、イランの問題から集中的に聞きますが、イランには、政府は閣議で金を出すことに決まったんですか。三井グループの間違いか、時の通産大臣のはったりにひっかかった、中曽根君の時代から一貫しておりますが、そのしりぬぐいを同病相哀れむでやらなければならないのか、企業に問題があるのか、政府の要路と結んだ財界に責任回避があるのか、国がなぜそのしりぬぐいをしなければならないのか、疑問は幾つかありますが、そういう点をなるたけ、率直なことは言えない官僚の通癖ですけれども、大体あるがままの状態、経過、いまどうなっているか、われわれはお先真っ暗なところに置かれているんですから、そのことをひとつ片りんだけでも聞かしてもらいたいと思います。
  29. 千葉一夫

    説明員(千葉一夫君) ただいまの御質問にありますバンダルホメイニの石油化学コンプレックスの件でございますが、いろいろと長い経緯がございまして、これは省略さしていただきますが、革命がイランで起きましたときに、すでに平均して八五%までできておったという状況でございます。  そこで、この大きなプロジェクトは、これはイラン側と日本の会社との合弁事業であることは御承知のとおりでございますけれども、革命後イラン側は、これを続けてやってもらいたいという意向を、非常に早く、しかも公式に表明したわけでございます。で、イラン側の合弁社は、御存じのとおり、イランの石油化学公社といった公の機関でございまして、これが革命後もそのまま存続しており、ただいま申し上げましたように、非常に高いイラン側のレベルからそういう強い要望が出たわけでございます。そしてさらに、いろいろとイラン側の話を聞きますと、これはイランの革命というものの以前から着手されたものではあるけれども、イランの経済にとっての非常に大きな貢献等もあり、これはイラン革命の一つの記念碑的な存在としてぜひ完成してもらいたい、こういう要望でございました。  そこで、日本側としましてもこれに協力する、こういう方針でございまして、具体的には工事の再開をせねばならないということでございますが、何分、革命に付随しますいろいろな混乱等がございまして、工事は中断したまま日本側の人々は引き上げたわけでございます。そこでもう一度工事計画をやり直し、またそういうふうな日本の技術者等も現地に派遣してやっていかなければならない。あとわずか一五%ではございますけれども、非常に大きな工事であり、非常に大きな努力を要する。そのためには、日本側の会社の単独ではいろいろな意味で資金の負担が大変であるといったような状況もあったわけでございます。  他方、日本政府といたしましても、イラン政府のこの切なる考え方には全く同感でございまして、われわれはそれを約束したわけでございます。したがいまして、その約束を貫徹するためにも、先生御指摘のような決定が閣議において行われたわけでございます。  現在は、工事の再開式というのを十一月十一日にやるべくイラン側と一応合意したわけでございますけれども、御承知のとおりのバザルガン内閣の総辞職によりまして、これは再開式典といったようなものは改めてやらない、しかし具体的ないろいろな再開に向けての準備は進めていくというふうなことでやっております。  私どもが聞いております限り、現地では混乱もなく準備が着々と進んでおるやに聞いております。
  30. 戸叶武

    戸叶武君 その、私たちの聞くところではということは、どこから聞いてくるのかわからないけれども、そこいらが危ないので、やはり、前の通産大臣の中曽根君が石油ショックのときにいち早く、変わり身が早い人ですから、イランに突っ込んで、そして高い金でイランの石油を手に入れた。さらに、イランの王室は日本の皇室に似ているからもっと緊密な関係を結ばなければならないというようなことを衆議院の内閣委員会報告しているのを聞いて、これはイランの危機の現状というものを何にも知らないのだな、アメリカに留学生がいるしフランスにも留学生がいる。イランにおいてはやがて革命が起きるであろうという予測はアメリカもフランスも、世界で知っている。日本では何にも知らないで、今度は、彼らは改憲論者であるから、天皇というものをダシに使って、イランの王室と日本の皇室とを緊密な関係に結びつけなければならないなんという、国務大臣たる者かこういう軽率な言動をやっては後大変なことになると思いまして、私は、衆議院では内閣委員会、参議院では外務委員会報告を聞くことになっておったので、あんなばかな、無知な報告をやれば、大臣報告として、後で、参議院ではみんな何にも知らないでああいう報告をそのままうのみにしたかと思われてはいけないから、私は総理大臣じゃ若干遠慮するけれども、通産大臣は演壇から速記録へ載らないように引きずりおろすぞ、そうでもしなければみっともなくてしようがないと言ったら、自民党の外務委員会理事で、熊本の知事なんかやった人で非常にあのまじめな人から、戸叶さんは場合によってはそれをやるかもしれないぞ、大体田中正造さんを尊敬しているからそのくらいのことはやるだろうというので、参議院の報告ではずいぶん、中曽根さんも利口な人だから遠慮して表現しましたが、ああいうふうな不安定な状態で、特にバルカン、中近東に対してはソ連は日露戦争前から、古い時代から、海に出なければならない、バルテック艦隊が封じ込められているときに、黒海からやはりダーダネルス海峡を経て地中海からインド洋に出ようというのが中心の対策であり、問題は、やはりダーダネルス海峡をめぐる外交上の論争というものが国際法学者の中における中心課題であったことは御承知のとおりであります。  日露戦争を過って、アメリカの金融資本に金を借り、シベリア鉄道をしき東方政策をやってあのような大失敗をしたんですが、そういうわけで、ソ連はあの地域に目をつけているが、うっかり目をつけるとイデオロギーと宗教の違い、民族的なトラブル、それから貧困の差、いろいろなそういうことがあるから、うっかり手がつけられないところだというので、インドにも借款の様式で経済的援助、最近は反ソ感情の一番強いトルコにも金を大量に貸し与えるというような方式をして、いつでも中近東の中には手が入れられるような体制をつくっているが、日本では極東の危機、火のないところの危機なんかばかりを騒いでおって、あの地帯におけるソ連勢力が地中海からインド洋に出ようとするために、打つべき手だけは打っている。そしてペルシャはすでにソ連側の中になびき、最近ではインドが離れたけれども、パキスタンには勢力を打ち込んでいる、トルコも手なずけているというようなときに、簡単にアメリカソ連が正面衝突はしないであろうが、いまのような形において、お互いに拠点づくりをやっているところに何にも知らないで金持ちのどら息子みたいに迷い込んでしまうと、日本がこてんこてんにやられてしまう危険性も私はあると思うんです。  現に、けさのテレビでは、イランの学生たちアメリカの威信を傷つけて人質なんかをとっているから、断固としてこれに対抗するためにイランの石油は買わないことにする、大統領の命令だと言ってカーターさんはがたがた力んで演説をやっておりますけれども、正しい情報では、イランの方からアメリカには石油を売らない、メジャーに手玉にとられてひどい目に遭ったのが発展途上国における産油国の現状だということをやはり率直に暴露している。アメリカは民主主義国家であるから、どれだけ――石油ショック後においてアメリカのメジャーがべらぼうな金もうけをしたということが明らかになって、アメリカ国民ですらもびっくりしている状態です。こういう点を総合的に情報をキャッチしているのか、いま突っ込んでも大丈夫なのか、間をどうやって置くか。石油は必要だ。けれども石油の中に埋没してしまって、パールハーバーの事件も血の一滴に匹敵すると言って戦争に突っ込んじゃって無条件降伏してしまった。軍部のやることはあのようにそそっかしい。いま大蔵官僚と通産官僚と財界の金もうけ主義の人たちと自民党のボスの虎狼の群れにさいなまれて日本が危険地域に巻き込まれたらどうするのか。外務省だけでも少なくとも大蔵官僚や通産官僚のように、自分のなわ張りを広げるというようなけちな根性を持たないで、国の外交、防衛の問題に専念していろ骨のある人がいると思うんだよ。私はいまのままじゃ非常に危なくって、外交も防衛もいまのような政府やいまのような大蔵省や通産省や外務省では任せられないという機運が日本に起きたらどうなるんです。  韓国の状態は日本の五・一五事件の小型だというが、日本のまねをして、日本で教育された男が結局は維新体制という形の中にとぐろを巻いたが、ついに飼い犬に殺されてしまった。昭和七年の五・一五事件といまの日本状況というものは、あのときにおける三井のドル買いと保守党のインフレとデフレの論争の中に日銀総裁のときには金解禁は必要としないと言うたのに、井上さんが変節し、三井ではドル買いをやる、こういうような状態をほうふつさせる状態がいまの日本の中に内在しているじゃありませんか。どこからか事件が起きないとだれが保障できますか。少なくとも官僚は官僚としてもっとまともに国の忠実なる一つ外交担当者としての硬骨漢が必要であるし、大蔵だってそうだと思う。いつでも政治家に責任があるのでと言っていながら、つまみ食いのうまいんでは政治家も顔負けの状態で、いまの毎日の新聞を賑わしているのが、今度は大蔵省や通産省官僚のOBじゃないですか。人民には命令し、自分は勝手に悪いことやってもいいという憲法の精神がどこにありますか。外務大臣はエコノミストと言われているが、政治家はエコノミストではいけないんだ。政治経済は一体として哲学を持たなくちゃならない。ブレーンならば賢人グループで済むかしらないけれども、愚かと思っている大衆とともに苦悩し、模索し、現実的に具体的にものを打開しなければ、そんな大臣は要らない、そう思うんですが、あんた方に言えば幾らか向こうに響くだろうから……。  改めて今度は開き直って、私は大来君とはかなり親しい間柄であり、彼の本は全部読んでいますけれども、文字どおりいかないのが政治です。要らぬ忠告かもしらぬが、聡明な人ほど間違ったら危ない、悪いくせがついたらやくざよりひどい、どうぞそういう意味においてこのイランの問題は試金石です。イラン問題、韓国問題ついでにベトナムの問題もありますが、アメリカがあのような形においてベトナムを二分して爆撃まであえてし、それに協力した人たちが負けたときにはそれをおっ放して帰ってしまう。その力の外交の非情さの中に置き去りを食った人が難民で、人道主義的にこれを救えと言っても、問題の中心はそこから起きているのであって、難民は至るところにあるのであって、ただ単に、アメリカ自体がしりぬぐいをしなければならないことを率先してやらないで、世界に呼びかけてこれをやらないものは非人道だと言うが、アジアの民族の悲願は、鉄砲や大砲や原爆によってアジアの民族の魂をぶち破ることはできないんです。アメリカでもソ連でもそうです。そういう意味においてソ連だってばかじゃない。日本人はソ連政策をだれも好んでいないが、ソ連も危ないと思ったから、国際的孤立を避けて、急に戦術的にしろ何にしろデタントの方向へ行こう、デタントの方へ余り行かれちゃうと、アメリカの軍需産業なりメジャーのもうけが少なくなる。国際政治と外交がそういうどす黒い形で混沌として流れているときに、おざなりの外交では私はこの窮地は打開できないと思うんですが、そういう点で御決意の方はどういうふうになっているか、その点、現場の人たち一つの抵抗というか、抵抗というと当たりさわりがあるが、とにかく外交の基本路線というものはあんたたちが守っていくというだけの根性はできているかどうか。根性というのは聞くのはなかなかむずかしいんですが、まあひとつその心境を承りたいと思います。心境だけでいいです。
  31. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 戸叶委員のただいまの御発言、私ども傾聴させていただきました。いつもそうでございますけれども、きょうの委員の御発言につきましても、私ども深く勉強させていただきまして、過ちなきを期したいと思います。  なお、大来外務大臣にはただいまの御発言の内容をつぶさに御報告させていただきたいと思います。
  32. 戸叶武

    戸叶武君 時間がありませんから、大ざっぱな質問で少し荒っぽいんですが……。  私は、本当に危ないところへ来ているので、イランの問題でも一歩誤るとこれはえらいことになって、後になってからじゃ間に合わないというのが外交です。どうぞそういう意味において、先取りもいいが、田中さんも感覚はいいけどそそっかしいので失敗したけれども、大来さんも名前が大来だから、「おお、きた」って何でもOKやらないように、少し慎重にやってもらわれんことを希望します。  そういうわけですが、外務省で――いまのアメリカの大使、あの方は私と同じ年ですが、あの夫婦はりっぱです。なかなか、何でも心得て無理しない練達の士ですが、ああいうのをすぐいい例にして、民間人をと言うけれども日本の民間人というのにも偉い人もいるんだが、隠れていて、いまのような時代には表へ出てきません。そういう人を掘り出すのなら別ですけれども、やっぱりアメリカ大使は外務省で縄張りをするというのではないが、危ないから、いまのような危なっかしくてしようがない入ばかりがとにかく多いので、ゴキブリ退治とはいかないまでも、一つの君子危うきに近寄らずで、やはり大使の選定というものは外務省もがんばるところはがんばるべきだが、しかし外務省にも外務省なりの少し古風なマンネリズムが横溢していますから、やっぱり民間人の起用ということも考えているというところで妥協点はついたようですが、私らがマンスフィールドさんに会って感ずることは、あの人は耳がりっぱです。やっぱり聞く耳を持っています。ようく聞いて――あの奥さんだって、あれは三十ぐらいのときにほれて、学校の先生やって自分で金出して労働者上がりの、夢を持って苦労していた御主人を大学に入れて育てただけに、虚栄心がないです。笑いがいいです。無心です。無心というのは大切ですな。こういうそろった夫婦はなかなかないと思いますが、やっぱり庶民と接触して、いろんな人の意見を聞いて、それを消化して、あるところまでチェックし、あるときはやはりその人たち意見を排斥する。自分で独断でないけれども、伝達するというような形で、やはり国際政治関係の研究者でも、いわゆる強硬派、アメリカ追従、迎合主義者だけでなく、デタントの世界観を持っている若手の国際法学者などの意見もよく聞いてやっているようです。ああいうふうな形の、年輪が刻まれた一つの見識人なら別ですけれども外務省としても、ただ民間人の方が一番よく事情が通じていると言うけれども、通じ過ぎちゃって、とんでもないところへ通じたら困っちゃう場合もありますから、そういうところは後では取り返しがつかないし、比較的外務省で育った人の方が少し感度はにぶいけれども慎重にやっぱり物をはかっていくという習性がついているようですから、そういう点でよくその点は縄張り根性で民間人は入れぬぞというふうにとられちゃいけないけれども、守るべきものは守り、譲るべきものは譲り、そうしていままでの外務省のマンネリ的な外交に新風を入れるというだけの雅量を持ってもらいたいのです。  それで、緒方竹虎さんと古野伊之助さんがやはり情報室を独立した形においてつくらなければならないという見解を持っておりましたが、戦争中で誤解されてつぶされましたが、やっぱり国際関係で感覚もあり、それから活動もできるような余力を持つ人が至るところに私はいるし、外務省関係のOBでも、大使という位じゃなくてもやれる人はいっぱいいるのじゃないかと思いまして、野の賢才は外務省でもやはり採用していくという形をとらないと、どうも外務省は守りがかたくてかちかちでどうしようもないと。いまの大蔵省や日銀みたいになっちゃうとやっぱりみんなに憎まれるから、その辺憎まれない方がいいから、いまのうちにもう少し先手をとって新風をつくり上げるようにしてもらいたい。  これは注文だけで答弁は要りません。終わり。
  33. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 初めに、韓国の問題に少々触れてみたいと思います。  先ほど柳谷局長の方から、今回の朴正煕大統領射殺事件の経過についての御報告がございました。まあこれは率直に申し上げまして、われわれが新聞情報から得た範囲を出ていないという印象を受けるわけでございますけれども、非常に最近の国際情勢の激変というものにかんがみまして、今回の朴大統領射殺事件考えるにつけ、情報というものが大変おくれているのじゃないかということが一つ。それからこわいなと思うのが、やっぱりCIAの存在。こういうことが裏表になって、恐らく私のみならず、多くの日本国民はそういう印象というものが頭をよぎったんではないだろうかというふうに思えるわけです。恐らく外務省としても大変少ない大使館員をフル動員して、そして時には夜を徹しながらも情報収集に当たっておられると思うんです。また正確な情勢の分析、判断というものも絶えず出先から本省へも報告、連絡がなされているであろうと思うんですけれども、果たしていかがなものであろうかというような、まだ心配、不安というものが今回の事件考えてみてもやっぱり残るんではないだろうかというふうに思えてなりません。  まあ今回の事件を通して考えられることは、韓国というきわめて近接した日本にとってもさまざまな影響力を持つ国柄でございますだけに、日本国民にとっても今後の行方というものがどう変化していくであろうかと、恐らく関心を持って見守っているであろうことは想像にかたくないところでありましよう。  そうしたいろんないま細かいことのやりとりはいずれにしても、真相というものは将来五年先になるか、十年先になるかわかりませんけれども、そういう時点になって、初めてあのときはなんということの回想を交えての話というものが出て、ようやく真相というものが明らかにされるんではないだろうかと思えてなりませんけれども、そうしたいろんな論評の中で、やっぱり外務省首脳筋というのですか、私の記憶に誤りなければそういうような談話形式で発表になった、いわゆる決して偶発ではない、あくまでも仕組まれた、いわゆる二・二六事件の小型版であると。これはなかなか当を得て妙であるなというこれはだれが見ても説得力がある判断ではなかったろうかと。すでに外務省がそういうような判断を持っていたということについては、今日までの朴政権十八年の長い歴史の中で遅かれ早かれそういう崩壊の方向をたどるであろうという予想――予想してはいけないと思います。他国のことでございますから。しかし、それに伴って日本としていろいろ対応しなければならない取り組み方というものが当然起こってくるであろうというふうに思いますと、先ほども御答弁の中にちらっとそれに触れたような話があったようでございますけれども、この十八年間の圧政と言うと言い過ぎかもしれません。きわめて非民主的と言った方が通りがいいかもしれない。こういう韓国の政治体制の中で、いずれ遅かれ早かれ民主化というものを志向する学生を初めとする多くの韓国民の考え方というものが流れを変えるであろう。その時期は一体いつであろうか。こうしたことを背景にいたしますと、日韓関係というものはやはりこれからもどういう角度から今後の推移というものを見詰めつつ取り組んでいかなきゃならぬか、対応していかなきゃならぬか、いろんなさまざまな条件、要素、起こるであろうという予測、そういうものを整理しながら恐らく外交方針というものが貫かれていくであろうと、こう思うんです。ですから、いまこうしてなかなか言いにくい問題だろうと思うんです。あえてそれをいまここで確認をしたいとは思いません。けれども、いずれにしても大変言いにくいことですけれども、手の打ち方がいつも後手に回るという、この問題については依然として改まっていない。そこにいろんな背景があるだろうと思うんです。  さて、そこで、今回不幸にしてこういう事件が起こってしまいました。いまわれわれが一番気にしている問題はこれからの日韓関係、恐らくそう急激な変化はないだろうと、大平さんもそう言っていた。そう願いたいと思うんですけれども、全く変化がないと困るんです。はっきり申し上げると。変化してもらいたいわけです。たとえば、申し上げるまでもなく竹島の問題一体どうなるんだと、あるいは軍政下と申し上げた方がいいそういった中で、日本韓国とのいろんな外交というものが恐らくつながってきたであろう、あるいは非常に端的な、極端な物の見方かもしれません、あるいは漁業権益の問題を考えましても、これは竹島が当然中心になる問題でありましょう。あるいは北海道水域における漁業問題もございましょう。いろんなそういう問題が絡んでいまだに解決されないということは、ずうっと今日まで、むしろ恨みを招くような状態まで、特に島根、鳥取あたりの人あたりから言わしめれば、そういういま感情さえ持っておるわけです。こういったいままで日韓関係にあるネックになっているような問題が、今後維新憲法が改められるかどうかわかりませんけれども、きわめて円滑な、そしてわれわれがやはり望んでいるような民主体制というものが確立されるであろうという予測があるかどうか。もしそういう方向へ行った場合に、きわめて早い時期にいま申し上げたような日韓関係に横たわるさまざまな問題、あるいは将来きわめて円滑にいけば日韓癒着の問題なんかも浮き彫りにされてくる可能性すらあるかもしれないということで取りざたされているような昨今であります。  いずれにしてもその問題はさておきまして、いま竹島だとかいろんな未解決の問題があるわけです。そういったことが今日の政変を通じてわが国にとって好ましい方向にそれが動いていくかどうかということについて、さまざまな分析を外務省当局はいまなさっていると私思うんです。特にアジア局長のもとにおいて。どんなふうなこれからの展望をお考えになっていらっしゃるか、まず基本的に、言うべくしてなかなかむずかしい問題かもしれませんが、教えてくれませんか。
  34. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) いろいろな角度から問題の御指摘がありまして、一つずつお答えすることもいかがかと思いますが、御指摘のように確かに竹島問題一つをとりましても、漁業問題をとりましても、これは日韓間に長く、さかのぼれば李承晩時代からずっとつながる非常にむずかしい問題でございます。韓国政権の体質、形体が変われば即日解決するという問題とも思えない部分もあるかと思いますが、日韓間のこれらの非常にむずかしい問題はやはりそのときどきに両国の指導者、政府関係者が真剣に議論して一つ一つ解決するしかないだろうと思います。これまでもあらゆる努力が払われておりましたけれども、遺憾ながら未解決のものが多いことは御指摘のとおりでございます。  日韓関係が今後変化があろうかなかろうかという御指摘でございます。確かにこの辺は先ほど説明したようなことで、まだ私どもも正確にこうなっていくだろうと、どういう形で次の新憲法あるいはその後の政治体制がなっていくかということを的確に予見するところまでは実はいっておりませんし、それが私どもの希望するような非常に平穏な形でいくのか、いろいろそこらに問題が起こるのかということも含めて慎重に見きわめる必要があるかと思います。もちろん外交は常に積極的に解決に乗り出すとかする積極的な面と、それからやっぱり変化する環境に対応するという側面がございますから、そういう意味におきましては今後韓国側状況がどうなっていくかということは、日本がどういう外交を打ち出すかということについては確かに一つの予見と申しますか、一つの環境と思います。  で、それではこれからの展望はどうかという最後の御指摘でございます。まあ繰り返しで恐縮でございますけれども、やはりいまの段階で韓国の内政がどうなるかということを第三国の立場から具体的に申し上げることは控えたいと思いますけれども、私どものいろいろ聞いている限りにおきましては、与野党も含めいろいろいままでの政治体制について、その中にあった方も、それからその外にあり非常に批判的な立場にあった方も、こういう突発事故の後の非常に異常な状況の中でありますけれども、何とかよく話し合って、できればみんなのスタートをなるべく広い範囲の納得の得られるような方向で収拾し、なるべく平穏に収拾していこうという点においてはかなり皆さんがそう思っていると思いますから、そこからやはりおのずからなる一つの方向が出てくるだろうと思います。当面はそれがどういうふうに発展していくか。一説によりますと、ことしじゅうには大統領を選ぶという問題が具体化していくやにも聞いておりますが、やはりその辺はもう少し時間をかけて見守っていきたいというのが私どもの現在の気持ちでございます。
  35. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 おっしゃるとおり、あれだけの大きなショッキングな出来事でありますので、韓国として体制の立て直しということには時間もかかるでありましょうし、完璧に見通しなんていっても必ずしも見通されたとおりにいくものかどうなのかも予測がつかないというのが現状でありましょう。ただ、与党の総裁に金鍾泌氏が選ばれたということ、これからの一つのレールというものが、輪郭が、レールが敷かれて大体の方向性というものが考えられていくような――これはもうほんの感じでございますから、感じですべてを判断するわけにはいかないかもしれませんけれども、そうした場合にこちらとしては、いま申し上げた質問の中にもありましたように淡い期待感が一つあるわけですね。いままでの軍事優先というか、軍事優位というような体制からこれから大きく変革をして、民政優位と言った方がよろしいのか、そういったときに、やはり韓国における歴史上においても大きな変革であろうというふうに思いますけれども、もっと民間レベルでの漁業問題にしてもその他の問題にいたしましても、円滑な話し合いがなされて、日本のその既得権というものが認められるというきわめて常識的な判断というもの、話し合いというものができる、そういう可能性をぼくらは期待しておるために、あえてそのことを、今後の展望ということをいま伺ってみたわけです。  当然外務省としては、いろいろなさまざまな観点から、今回の事件を契機にして検討もされ、今後五年後あるいは十年後どういう形態をたどるかということの一つの青写真というものを持ちながら、そしてそれにこうなった場合こうであろうという幾つかの方法というものを考えられた上でこれからも取り組んでいかれるだろう。いずれにしても、日韓両国において、国民に不快感を与えるようなきわめて非友好的なそういうことがあったんではまずいであろう。むしろいままでのそういう案件について、こうした一つの変革を通して、特にその衝に当たられる外務省が中心になって、円滑なそういう問題解決への方向へ強力にやはり取り組んでいただくことが望ましいであろう、こういうことで、いずれまた近いうちに大来さんの所信を伺う機会もあろうかと思います。  次に、もう一つ、やはり今回の政変を通じまして、一番韓国民も願っていることは、共産主義勢力の南進ということよりもやはり同一民族の対話、そして願うことならば独立――統一ですね、ということを恐らく願っているであろう。そういったことを頭の中に置きながら、どうでしょう、今回のこうした事件を通じて、いままでの経緯というものを考えつつ、人的な交流、文化的な交流、経済的な交流というものが南北の間にこれから強力に進められるという機運というか芽生えというものが考えられるかどうか、そこらあたりも日本外務省としては当然予測し得る問題として、あるいは好ましい一つの方向として、あるいはそうあった方が願わしいとするならば、そういうことが考えられるかどうか、その点いかがでしょう。
  36. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 今後の外務省のとるべき心構え等についていろいろ貴重な御意見承りました。私どももこれら諸懸案の解決、決して容易とは思いませんけれども、いろいろな今後の情勢の発展も見ながら、できるだけその方向に努力していくという点については全く御指摘のとおり、仰せのとおりに心得ております。  最後に御指摘になりました南北対話、南北交流の問題でございますが、この過去の経緯等はここで繰り返さないといたしまして、いまの時点で見ますると、恐らく韓国としても従来からとっているようにいろいろなイニシアチブをとって、南北対話の開始等については考えているところがあるかと思いますが、現在やはりこの射殺事件によって生じた非常な不安定と申しますか、その問題を何とか平穏に収拾しようというのがいまの韓国内部における最大の努力目標であると思いますので、南北問題についてイニシアチブといいますか、何らかの姿勢をとるのは多少時間がかかるんではないかという感じは持っております。他方、北朝鮮の方も若干従来と同じような線の南北の対話を働きかけておりますけれども、特にこの事件以後、新しい動きとか考えが示されたとは見ておりません。何か私どもも基本的には朝鮮半島の統一というところへ、最終的な目標に到達するためには、当面やはり周辺の諸国による国際環境づくりも大事ではございますが、基本的にはやっぱり南北両当事者双方の間の話し合いということが先行すべきであるという認識でございますので、今後ともその辺の動きは注目したいと思います。多少韓国側からの動きというのは少し時間がかかるんじゃないかという印象を現在持っております。
  37. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 韓国の問題はまた機会を改めてお伺いすることにいたしまして、次にカンボジア難民の問題について若干触れたいと思います。  もう申し上げるまでもないことでありますが、連日のようにテレビの報道番組を通じましてもあの悲惨な光景というものがまことに痛ましい限りでございまして、同じアジア地域の、なかんずくアジア地域の人間として何とかできないものだろうかというような気持ちを抱かれている方が相当範囲にわたるんではないかと思います。で、特に日本として果たさなければならない役割りというものが十分であるのかどうなのかということも問題でございましょう。とにかく七百五十万のカンボジアの国民が、このままの状態でいって餓死していく、その速度が最近速まっているそうでありますので、近い将来これは絶滅の危機に瀕するんではないかという見方をされている方もあります。これは大変な、もう人道上から考えてみましても、こんな悲惨なことがこの世の中でまだ依然、平然として行われているのかということで、きわめて残念に思うわけでございます。  これは端的に申し上げれば、何とかならないかということなんですね。何とかならないかと言ってもあれなんですが、いま一番飢餓状況から救える方法としては、食糧と衣料品であろうというふうに思いますし、その中で一番地理的にも近距離に置かれている日本が果たせるであろうという、そういう役割りが一体どこまでいま果たせているのかどうなのか、外務省としても恐らく見逃がすことのできない、これまた重大事件として取り組んでおられると思いますけれども、まずその辺の事情からお話を願いたいと思います。
  38. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) まことに御指摘のとおり、世界どこにおいてもこの種の問題は重要でございますけれども、特にわれわれの位置するアジアの中に起きました問題として、当然わが国が特別に深い関心を持って対応し、積極的に協力するという点はまことにそのとおりでございまして、政府としてもそのためのあらゆる努力を払ってきたつもりでございます。先般来はむしろ海路難民がマレーシア等にたどりつくという問題からくる難民問題がずっとこの春以来大きな問題でございまして、ジュネーブにおける国際会議もそのために開かれたわけでございますが、その後、ここ二、三ヵ月になりますと、今度はカンボジア内部における情勢、特に食糧の危機ということからカンボジア国内に現在二百万とか二百五十万とも言われる飢餓状況にある人口がある上に、タイの国境を越えて大量に入ってくる難民がすでに十数万、いまにも入ってきそうなタイの国境の向こう側にいる難民がさらに十何万というふうにも言われているわけで、問題はそこ以外、最も緊急な問題となっております。  で、わが国がどのような協力をこれまでしてきたかということについてだけごく簡単に申し上げたいと思いますけれども、この辺の状況はカンボジアの非常に複雑な政治情勢もありまして、政府ベースというよりも、国際赤十字委員会あるいはユニセフあるいはWFP――国際食糧機構というような国際的な機関が中心になりまして、現状がどうなっているか、どういう援助が必要かということをひとまず現地に行きまして調べて、その辺からいろんなアピールが提起されるということで、話が具体化してまいったわけでございますけれども、そのような中で、わが国は最初、十月二日に――幾らとかいうようなことがまだはっきりしないで、一般的な形でアピールがなされていたときに、すでに他国に先駈けまして赤十字国際委員会に対して五億円、タイ政府に対して四億円の拠出を決定して、実施をしたわけでございます。その後さらに、そのほかにユニセフに対する拠出等、当時の時点におきまして九億六千五百万円のとりあえずの拠出をいたしたのがこの種の国際的な活動の中で先鞭をつけた努力でございましたが、その後に至りまして、国際赤十字とユニセフが合同でいろいろ現地調査し、特に救助物資が軍用に供されるのじゃなくて、真に飢えている民衆に確実に渡ることの保証とか、あるいはヘン・サムリン、ポル・ポトいずれの支配下の民衆にも均等に渡ることとか、幾つか諸外国が援助をするに当たってどうしても確保しなければならない要件がございましたが、その辺について現地当局との話し合いがある程度行われまして、十月から十一月にかけて国際赤十字とユニセフからこのアピールがさらに具体的な形でなされまして、向こう一年間に二億五千万ドル程度の拠出が必要であるというような非常に具体的なアピールがその後なされたわけでございます。それを受けましてわが国といたしましても、直ちにさきの九億円余りのものに加えて十億円相当の食糧品、医薬品、さらにはこれら物資を輸送するための輸送手段としてのトラック等の十億円相当の追加拠出を出す方針を決めて、現在国際機関との間で手続きを詰めているところでございます。さらに、これでも足りないだろうということは私ども実は考えておりますので、本年度じゅうにもさらにこれを追加する、上積みする必要はあろうかということも考えておりますとともに、来年度、これは暦年と予算年度といろいろございますけれども、来年一年間にわたりましてもさらにそのための予算措置を、来年度の予算その他において手当てしたいということで考えております。  そのほかに、いわゆる国連難民高等弁務官――UNHCRに対しましては、わが国は所要経費の約半分を負担するという方針を打ち出しまして、すでに相当部分の拠出を行い、さらに引き続いて拠出を行うわけでございますが、初めタイ国政府は、タイの領域内に来たカンボジア人民を難民と認定しないで不法入国者というような認定をし、そのためにUNHCRからの援助はむしろ受けないと、受けるとすれば二国間の援助だというような姿勢でございましたが、非常に難民の数がふえたこともあって、最近では少なくとも一部難民キャンプ等に対してはHCRの援助も受けるという姿勢をなしましたので、日本が大体ことし供与すると思われます合計しまして数千万ドルに達しますHCRに対する拠出金のうちのかなりな部分が、これまたタイに対する援助という形で現実にカンボジアからタイに流出してくる難民のために使われるということも、これに、さきに申し上げたことに加えて充てられるというふうに思います。  ただ、さらに二点ほどつけ加えたいと思いますのは、一つは、いま御指摘があったかと思いますけれども、こういう拠出のほかに現実にやはり人間が現地に行って救援に当たるという問題がだんだん非常に需要がふえておりまして、現在タイの国境地帯には各国から、主として赤十字関係者、あるいはいわゆるボランティアと申しますか、そういう関係者が逐次医療チームその他を組んで行っております。日本からは近く、きわめて近く日赤の医療チームが、とりあえず一チームでございますけれども現地へ行っていただくことに手配が進んでおります。ただ、この二、三週間、流出難民の数がさらにふえているということで非常に事態がより深刻になってきた、スケールも大きくなってきたということもありますので、いままでも気を配っているつもりではございますけれども、この機会にやはり日本からも現地の視察団というものを近々に派遣したいと、しかるべきハイレベルの方を団長といたしまして視察団を現地に派遣する、その視察団の報告を踏まえて、さらに広く日本国内のいろんな民間の救援活動等に関して、非常に本件に関心を持っている向きが多いものでございますから、それらの現地視察の結果を踏まえて、さらにこれは政府、民間両様でなりませんと動きませんので、そういうための活動をしたいということも考えております。  それから、ちょっとお触れになりました食糧の問題でございますけれども、これはタイにつきましては、タイ国政府自分の国への援助は拠出金、現金で欲しいと、お米は自国産米を充てたいと、こういうことでございますし、ある国がタイに食糧そのものを供与したに対してタイが辞退したという例もございますから、タイサイドからする援助については食糧は適当でないと思いますが、現在次第に拡大されておりますカンボジア自身に対する援助、二百万、二百五十万という方が本当に飢えているとすれば、これに対する援助は食糧ということが一つ大きな項目になろうかと思います。現在政府ラインにおきまして、日本からも食糧をという形で――拠出金もやるわけでございますけれども、それに加えて食糧という形における救援活動をしたいと考えまして、これはまあ食管会計の赤字をどう埋めるかというような財政上の問題がありますので、現在関係省庁で、しかしこの点は何とか前向きに解決したいということで進めるというようなことで、あらゆる手だてを講じまして、他国におくれをとらないように、むしろ他国に先がけてこの問題に対応するという姿勢努力を払っております。まだ必ずしも完全とは思いませんので、さらにこの努力の強化を必要と感じております。
  39. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 この問題はまだまだ簡単に解決のできる問題ではないだろうと思いますし、根本的にはポル・ポト軍とヘン・サムリン軍の和解というのか、とにかくその背景にはベトナムもある等々大変厄介な複雑な絡みの中で起こっているカンボジアの飢餓状況でございますので、まだ、打つべき手は必ずしも食糧問題あるいは医薬品問題に限定される、そういうものではないだろうというふうに思います。きょうは時間の関係もありましてそれ以上伺えないのが大変残念でありますが、今度はさっそうとして登場される大来さんを前にして伺うことにいたしましょう。  最後に、千葉さん、せっかくおいでになっておりますので、一つだけ確認しておきたいんです。  いまホメイニが――人質がとってありますね、あれ学生がやっているからわれわれは手を加えることができないんだと、こんなべらぼうな話はないんでありますけれども日本人がその中に含まれているかどうかという点については確認されていますか。
  40. 千葉一夫

    説明員(千葉一夫君) どうもいないんではないかという感じでございます。ただし、いるということは確認していませんし、したがっていないというのも確認しておりませんが、いろいろ調べた結果、どうもいないという公算が大であるということでございます。
  41. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 時間がありませんのでこれ以上立てませんから、次へ行ってもらいます。
  42. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 アジア局長、私が御質問したい点の関係の前に一つだけ、いま渋谷先生が御発言なさったことに対して大変大事なことを言っているんで、その関連で一点だけお聞きをしておきたいんですけれども、カンボジアの難民対策で他国に先駆けてお金も出した何もやってきたといって、いま局長、他国に先駆けてという言葉を二回も発言なさっているんです。私はその点だけは削られた方がいいと思うんですが、細かいことはきょうは触れません。ただ、これは私がもう三月二十六日の予算委員会でベトナム難民問題を取り上げたときもそうですけれども、難民条約もまだ日本は批准はしてないはずですね。明年の通常国会でやりますというのが外務大臣の答弁。それから、あのときは日本に永住を認めたのがまだ三人しかいなかったんです。その後でやっとあの五百人の永住の許可を認める形でやったり、お金をこれだけ出してやっているんだからいいじゃないかという言い方があのときもあったんだけれども、最後には三原総務長官が、この難民問題についてはいままでの考え方が間違ってました、根本的に考え直しますといっていろいろやっていただいて本当にありがたかったと思うんだけれども、いま私はここで聞いておって、渋谷先生の御質問に、日本政府が他国に先駆けてこうこうしてきたんだと言われるとちょっと、ああそうですかと言えなくなるんで、きょうはそこのところをやるんじゃないんだから、その言葉だけちょっと消しておいてくれませんか、どうですか。
  43. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 私が申し上げましたのは、御質問の趣旨が、カンボジアに乙の二、三カ月来難民が発生していると、これに対して食糧とか医薬品の援助、これが必要であるということがあるが、日本はどうだということでございましたので、カンボジア難民に対しての拠出は多くの国がやはりICRC――国際赤十字からの正式なアピールを待っていた段階でございましたけれども、非常に状態が深刻だということで、正式な具体的なアピールを待つ前に日本が出して、それが一つの呼び水になって多くの援助が出たという意味において実は申し上げたのでございまして、難民問題全体についての日本姿勢を申し上げたつもりはございません。それはいまも御指摘のとおり定住の受け入れを含めていろいろ手おくれがございまして、それを取り返すべくいま努力しているというのが実情でございまして、そのように御理解いただけたら幸いでございます。
  44. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 じゃ本論に入りまして、第一にお聞きしていきたいこと、十一月の三日に韓国朴大統領の国葬があったんですが、日本政府はこれに内閣総理大臣を出席させるということをお決めになって、向こうの方にも通知をしているんですが、これはいつお決めになったのか、どういう場で決められたのかということを……。
  45. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 事件が起こりました翌日――事件が二十六日の夜に起こりましたから、二十七日の朝、総理にこの事件のことを早速御報告いたしまして、その後間もなく韓国側から十一月三日に国葬をやるということが公式に伝えられてまいりましたので、たしかその日の夕刻だったと思いますが、さらに再度大平総理にお会いしましてこの間の事情を御説明いたしまして、そこで大平総理日本国の総理大臣が参加することが適当であるという御意向が示されました。そこで、直ちにその日じゅうに韓国側にその旨を通報したという経緯でございます。    〔理事稲嶺一郎君退席、理事田中寿美子君着席〕
  46. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 その後、今度は総理大臣が行けなくなって、欠席だということになって、岸さんを代理にということになったんですが、その辺のいきさつはどういうこと、だったんですか。
  47. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) その後大平総理大臣が、十一月三日の時点でも引き続き大、平総理大臣総理大臣であられるということが明らかになりましたので、日本国の総理大臣、すなわち大平総理大臣の訪韓ということで準備を進めてまいりました。ところが、御出発の前の日、十一月二日になりまして、国内の政局の動向にかんがみまして、大変遺憾ながら総理の訪韓は見合わさざるを得ないという御意向がおりてまいりました。その段階で韓国側に、これは二日の昼ごろ、東京とソウルにおきまして韓国側に丁重にこの間の事情を説明するとともに、これにかわって特派大使として岸元総理がお出かけになるということをあわせ通報した次第でございます。
  48. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理が行けなくなった、国内の政局の動向からと言うんですけれど、そのとき外務省としてはどういう見解をお持ちになったんですか。
  49. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 隣国の大統領の国葬でございますから、これにできるだけ高いレベル、まあ最高レベルの方が出席されるということが適当であるということは、国葬が決まった段階から政府首脳にもお話し申していたわけでございます。そういう意味で、総理はそれに対して、総理大臣が行くのが適当であるという御指示があったわけですが、その後非常に遺憾ながらこれが実現できなくなったということでございまして、これはやはり政府最高首脳のそういう御判断があったわけでございますから、非常に残念なことではございますけれども、よく事情を説明し、またこれにかわって元総理が行かれるというところのことを韓国側に丁重によく説明し、また大平総理からおわびしたいということがありましたので、それをあわせてお伝えしたわけです。
  50. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 いや、私が聞いているのはそうじゃなくて、外務省としてどういう見解をお持ちだったんですかと聞いているんです。
  51. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 実現しないことは大変残念であるという考えでございました。    〔理事田中野美子君退席、理事稲嶺一郎君着席〕
  52. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理が行けなくなったこと残念だと言って、それは外務大臣から総理大臣に言われたんですか、どなたからどなたに言ったんですか。そして総理がそれにどういう答弁したんですか。
  53. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) もちろん当時の園田外務大臣とは、この問題については常時御連絡し、外務大臣から実は総理大臣が行かれることが適当だという意見も述べられていたわけでございますので、総理の御意向がおりましたときに残念であるというのは外務大臣、外務事務当局いずれもそう考えたわけでございますが、総理が万般のことをお考えになってそのように御決定なさった以上は、これは残念ながらやむを得ないというふうに受け取りまして、直ちに、日が翌日でございましたから、直ちに岸特派大使の訪韓ということで手配を始め、また先ほどちょっと申しかけましたけれども韓国側には東京とソウルにおいてその事情をよく説明して納得していただくと、おわびの気持ちを伝えたいという総理の御意向も含めて、先方に伝えて納得してもらうという最善の努力を払ったわけでございます。
  54. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 政局の動向という表現を局長なさったんだけれど、今回の場合のことはいわゆる自民党の内紛でしょう。自民党という一つの党内の争い事というか、権力争いというか、そういうことのもめごとをしておったんであって、韓国大統領の国葬というのは韓国にとっては国家的な行事ですよね。日本の国の一つの政党内のもめごとでもって外国の国家的な行事に、しかも、内閣総理大臣が出席をいたしますという通知もしておきながら、その土壇場になって、そういう一党内のもめごとで出ていかないというそんなことが、外交上の大変な私は非礼だと思うんだけれども、許されることなんですか。私は、そこのところが外務省として――大平総理大臣がそういう万般考えてお決めになったんだから、残念だけれどもいたし方がなかったんですという、そんなことで外務省の仕事としては済んだんですか。
  55. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 繰り返すようでございますけれども、非常に残念ではございましたけれども、最高首脳総理大臣という政府最高首脳がいろいろお考えになって、そういう決定をお下しになったわけでございますから、それは残念ながらそのように承りまして、ただそれにかわって岸元総理が特派大使として行くということにまあすぐになったものですから、この辺の事情を全部韓国側説明いたしまして、これによって韓国側が非常にこれを非礼と考えたり、それによって日韓関係にいささかでもひびが入るということのないような、そういう対韓努力というのはその過程においていたしました。東京とソウルにおいてはそれをいたしました。先方も納得していただけたと思っております。これは岸特派大使御自身が崔圭夏代行に現地でお会いになったときにも同じことをお伝えになりまして、先方はよくわかりましたというふうに答えがあった次第でございます。
  56. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 向こうがわかりませんなんて言うわけないですよね。私はいかに総理大臣であろうとも、外務省が、あなた方がそういう判断外交上はきわめて遺憾なことであって、すべきでないんですという判断をお持ちになって、皆さん方が、外務大臣からもう絶対それは困るんですと、どうしても総理行ってもらわなけりゃという、そういうことの一言ぐらい言われてもよかったと思うんだけれども、そういうことは、いまのお話を聞いているとないわけだよね。私はあのときは三日の日にも、だからね、ちょうどお葬式をやっているころ、午前中、タクシーに乗ったが、タクシーの運転手からそんな話を聞かされて、きょうは韓国朴大統領の国葬の日ですねと言うから、それで私は、いまの日本政府ではまことにもってけしからぬ、総理大臣が行くと言っておいて党内の内輪もめでもって行かぬなんて、こんな失礼なことをしておくならばこれは必ず罰が当たるから見てなさいと言った。そうしたらタクシーの運転手が、いやもうその罰は当たっていますよ、岸さん行ったら飛行機が降りられないといっていま福岡に帰ってくるといまニュースで言っていました、と言う。それは局長考えてくださいよ。隣のうちでその一家のあるじが死んで葬式があるというときに、自分のうちで夫婦げんかやっているからそれじゃ葬式に行かないんだ、そんなことで済みますか。それがやっぱり一つの社会の常識ではないんですか。いまの局長のその答弁なんか、とてもじゃないけど納得できはせぬです。それで朝鮮半島の平和を何だとか、その環境づくりをするとか、日本政府がそんなことを言って、それを韓国政府が聞くと思いますかね。これは結婚式はいろいろの事情があって、それは私たちもそうだけれども、失礼するという場合はそれはあったってあれだと思うんですよ。お葬式の場合というものは違うんじゃないんですか。しかも、単なる国内の関係ではなくて、これだけ国家間の関係のそういう外交上の問題が、いまの局長のような考え方で扱っていていいんですかと言いたいんですよ。はっきり答えてください。
  57. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 仰せの点はよくわかりました。特に先ほど申し上げたことにつけ加えることございませんが、まあ決して好ましいことでなかったという御指摘についてはよく私どもわかるわけでございますが、万やむを得ない事情であるというふうな理解のもとに、次善の策と申しますか、元総理に行っていただいて丁重に弔問すると同時に、直前になって総理が行かれなくなったことについてよくおわびを言うと、そして何とか先方にも事情を理解していただこうという努力をされたわけでございます。それが実際に起こったすべてでございますので、そのように申し上げるしかないと思います。
  58. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 それ以上言っておったってしようがないからあれだけれども外交上大変な非礼をしたということはお認めになりますか。
  59. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) これは非礼をしたかしないかという御質問、ちょっと私ども、申しわけありませんが、イエス、ノーでなかなかお答えしにくいのでございますが、総理大臣からは、行かれなくなったからというときに、特に外交上非礼にならないように手を尽くすということをこれを総理も言われましたので、そこで、一つはすぐにソウルと東京でその事情を丁重に御説明するということと、それにかわって元総理という方に行っていただいて丁重に弔問するという努力をいたすことによって、外交上非礼にわたらないようなあの環境下における最善の努力を払ったというふうに申し上げるほかないかと思います。
  60. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 もう時間ないですから、最後に……。  そういうお役人的な答弁を私は聞いているんじゃないんだよ。内閣総理大臣が行かなかったというそのこと自体がもう私は外交上非礼じゃないかと言っているんだよ。非礼になるかならないかという、そういう言葉の出てくることではなくて、あくまでもこれはもう非礼であることは事実なんですよ。ただ問題は、皆さん方が、もうこれは起きちゃったことだから、後それをどうやって穴埋めをして、日韓関係なり、朝鮮半島日本関係なり、そういうものを償いをして穴埋めをする努力をいたしますという、そこまであなたが答弁しなけりゃ、そんなもの答弁になりゃせぬわ。  おしまい。
  61. 田英夫

    ○田英夫君 最初に、先ほど渋谷さんからも出た問題ですけれども、カンボジアの難民救済の問題で一つ伺っておきたいのは、先ほどもちょっと触れられたんですけれども政府として現地の事情を掌握すべきではないかというふうに私も考えていたわけです。そのためにはやはりしかるべき政府の方々が現地に行かれるということが必要じゃないか。場合によっては国会からも調査団が現地を視察する、そして日本の国民という立場から対応を考える、そういうことが必要な事態ではないだろうか。これは日本のアジアの中の立場、それから伝えられているカンボジアの現状からすれば、そういう対処が必要ではないかと考えております。とりあえず私どもも超党派的に、これから民間の多くの皆さん、経済界の皆さん、そうした方々とともに救援の民間の活動を興すべきではないか。これは外国からも、関係諸国からも、日本は冷たいと。ボランティアの現地での活動というようなことも一番少ない。ほとんどない状態のようですね。そういうことから考えてかねてそう考えていたわけでありますが、先ほど柳谷局長から現地調査考えているというお話がありましたけれども、これをもう少し具体的にいまお話しいただける段階ではないでしょうか。
  62. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) もう二週間ぐらい前から――やはり現地の大使その他館員は随時現地を見て、その辺の報告はいろんな意見とともに言ってきております。その中にも、日本人の姿がないということがさびしいというような趣旨の報告も来ている次第でございまして、そういうこともございまして、もちろん視察をしなくても着手すべきことはたくさんございますから、それにはいろいろ先ほどもちょっと申しましたようなことをしているわけですけれども、やはりこれは官民挙げての理解ということが必要である、そういうためにはやはり現地をよく見て、見た者が帰ってきて各方面に働きかける、説明もするということが必要であるという感じのもとに、実は二週間来いろいろ考えていたわけでございますけれども、実はいま、先ほどもちょっと御答弁いたしたわけですが具体的に詰めておりまして、できれば今週の日曜十八日から三日間ぐらいの予定で政府現地調査団を出したいと思っております。まだちょっと最終的ではございませんけれども、現在、団長には緒方元国連公使をお願いし、外務省のアジア局次長あるいは青年協力隊事務局長、あるいは日赤から現在現地に行っておられますので現地で参加していただくというような形で、数名の調査団を――視察団と言った方がいいかもしれませんが、視察団を出していきたいということを、ちょっとまだ最終的ではございませんけれども、ほぼそういう線で一両日中にも最終的に公表できょうかと思っているところでございます。
  63. 田英夫

    ○田英夫君 いまのその緒方貞子さんの団長で三宅アジア局次長その他行かれるということですが、タイ側に行かざるを得ないんでしょうか。カンボジアの中に入ることはできないでしょうか。
  64. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 現在考えておりますのはタイ側だけでございます。バンコクにおきましてはタイの赤十字関係その他とよく話をすることと、それからやはり現地を見て、キャンプその他を現地を見るという乙とで、中二日ということで考えております。他方、カンボジア国内の問題はこれまた必要なことと思います。これをどのように手当てをするかは別に考えていきたいというふうに考えております。
  65. 田英夫

    ○田英夫君 このカンボジアの問題も非常に大きな問題なんで、きょうは時間がありませんからこの程度にいたしますが、要は、いまカンボジアに侵攻しているベトナム軍を一日も早く撤退をさせるという環境づくりをすることが基本的に大事じゃないでしょうか。その意味では、国連でその決議に日本も参加をされたということを私も大変評価をいたします。さらに、そのベトナムの背後にソ連が存在をするという、そういう世界の構造に非常に問題があるということをやはり指摘せざるを得ないと思うんですが、この問題はいずれまたこの委員会で機会がありましたら御質問をしたいと思います。  で、韓国の問題について、先ほどアジア局長から朴大統領射殺事件経緯、いきさつといいますか、そういう御報告がありましたが、一つ伺っておきたいことのまず第一は、さっきの御報告にも一応その底流というようなものがありましたけれども、最近の韓国情勢というものは、先ほど局長が報告されたよりももっと厳しい形で朴大統領批判が民衆の中に渦巻いていて、それが釜山馬山デモに発展をすると同時に、体制の中に、これは最終的には金載圭KCIA部長がああいう行動に出たわけですからこれは明らかになったわけですけれども、それがすでにこの夏ごろからかなり顕在的な形で大統領府あるいは民主共和党の中で不協和音が出てきていて、その一部は朴大統領に対する批判という形に動き始めていたということをすでに私どもも耳にしていたんでありますが、こういう底流があるということが非常に大事ではないか。つまり、民衆の側とそれから体制内に不協和音が起こっていたと、このことはお認めいただけるでしょうか。
  66. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 先ほど釜山事件に関連してちょっと触れましたけれども、やはり釜山事件というのはその前に起こった与野党間の対立等幾つかの事件といろいろなかかわりのある一連の出来事であったと思います。それで、特に釜山において非常戒厳令というものがにわかにとられたということでございましたので、それまで私どもがいろいろ集めておりました情報とそこへ釜山事件があったということをあわせまして、当時私どもといたしましてもこれはよほど政府側がこの辺の状況の処理を適切に行わないと非常に事態が厳しい状態であるというようなことについては、その時点でも認識していたつもりでございます。
  67. 田英夫

    ○田英夫君 私はなぜこういうことをお聞きしたかというと、これからの韓国の政治がどうなるか、それが日本との関係でどういうふうに考えたらいいのかという、そこに非常に関連をするからです。これも時間がないので詳しいことを申し上げる時間がありませんけれども、たとえば金泳三新民党総裁を議員から除名するという民主共和党の会議があるところへ、恐らく殺された車室長でしょうが、大統領府の幹部が乗り込んで民主共和党の中の除名はひど過ぎるという穏健派を抑えて除名の決定をさせてしまったという、これはもう射殺事件より大分前の時点でそういうことが起こっている。そういう話を実は私どもでさえ事前に耳にいたしました。この射殺事件の前に耳にいたしました。こういうことがいま底流にあって起こった事件だということをしっかりつかんでいないと、これからの韓国の政情と日本外交ということの結びつきは間違ってしまうんじゃないだろうかと思うんですね。  金鍾泌さんが民主共和党の総裁になったわけですけれども維新体制というものがそのままで金鍾泌さんのような政治的にトップレベルにある人、つまり力を持っている人が新しい大統領に選ばれるというようなことを非常に体制内でも警戒をしているという話も最近聞くわけです。つまり、名前を挙げては失礼ですけれども、崔圭夏さんのような人が、いま代行ですが、今度維新体制のままで新大統領に選ばれる、その新大統領維新体制をどうするかということは決めるということでしょうが、結果として維新体制が変わらない、実力のある政治家が大統領に選ばれてはならないんだという話を聞くんです。つまり維新体制というのは、独裁体制体制的に固めているわけですから、朴大統領という人物が朴さんでない人にかわろうと機構上体制上ある一人の人物に、大統領にすべての権力が集中するようにできている。たとえば国会議員の三分の一をその人が、金鍾泌さんがなれば金鍾泌さんが任命できるわけですよ。それが仮に政治的に非常に軽い人が大統領になっているんなら、仮にそれが権力を握ってもほかからコントロールできるだろうけれども、金鍾泌さんクラスでは非常に困るんだ、こういう話を韓国の人から聞くのであります。そういうことも含めて私は注視、注目をしていた方がいいんじゃないだろうか。これはよけいなことかもしれませんけれども、私はこれからの韓国情勢という意味で、まあ釈迦に説法ですけれども申し上げたかった。その意味外務省がこの射殺事件背景をどういうふうにつかんでおられるかをお聞きしたわけです。  この点はまた後日に譲りたいと思いますが、それではこれから一体どうなるかということで、園田外務大臣が、どういう機会であったか忘れましたが、日韓関係を見直す時期に来ていると思うということを発言をされ、報道されておりました。これは担当のアジア局長としてはどういうふうに受け取っておられますか。
  68. 柳谷謙介

    説明員柳谷謙介君) 前段での御説明については私ども非常に同感で、よく見守らなきゃならない。現実に崔圭夏氏の談話がどのような形で具体的になっていくか、特に憲法内容がどうなるかという辺が一番の焦点であろうかと思いますので、御忠告のとおり慎重にこれは見守りたいと思います。  最後のお尋ねの点の日韓関係の見直し云々の点でございますけれども、これは大臣の正確な御発言の表現は実は必ずしもわかりませんけれども、私どもなりに理解いたしますところでは、やはり日韓関係は常にその時々の状況に応じてよく慎重に扱わなければならない、特に今回の事件があり、その後の政治的な収拾がいろいろいま動いている時期でありますから、やはりわが国としても、今後の対韓関係については、非常にコレクトな態度でよく諸般の要素を勘案しながら対すべきであるということを、大臣の政治的なお立場からこの時期に言われたものというふうに理解しておりまして、私ども同じ心構えでおります。
  69. 田英夫

    ○田英夫君 これは大来新外務大臣がおいでのときに改めてお聞きした方がいいと思うんですけれども、私の理解ではやはり園田外務大臣アメリカあるいは中国、そうした朝鮮半島をめぐる関係諸国の外交関係の責任者とのお話の中でそうしたことも実は話し合っておられるんじゃないだろうかとさえ思うわけです。一つは、たとえばアメリカの対韓姿勢というものは、明らかにここ数年間に大きく変わってきている。今度の朴大統領事件が起きた本当の底流には実はそれもあるだろう。つまり、朴大統領体制内にさえ朴大統領の民主主義を破壊するような強硬姿勢というものに反発が起こってきたというその一方には、まあ金載圭KCIA部長が私の後ろにアメリカがいると口走ったという話まで伝えられていますけれども、それはそのアメリカの変化を指しているんだと、こう見た方がいいんじゃないでしょうか。それは一言で言ってしまえば乱暴ですけれども、かつてはイデオロギー対立の中で自由陣営対社会主義陣営だ、反共だ、アメリカのすべての人がそう考えて、民主主義を破壊する政権であってもそれが西側陣営、自由陣営ならばこれは援助するんだということを、アメリカのほとんどすべての政治・外交に携わる人は言っていたろうと思います。それが明らかに変わってきている。こういうところを非常に注目しなけりゃいけないんじゃないでしょうか。これが今度の事件の底流にもある。ここのところを大来さんはどう受け取っておられるかわかりませんが、南北朝鮮の対話の環境づくりに努力をしたいと言われたのが、もしそうであるとするならば、大変いい御発言だと私は評価をしたいわけです。そういうことで、御本人がおられませんから御質問にならないんですけれども、この辺が、これからの日韓関係を正しい方向に持っていくために基本的に大事じゃないだろうか。  また、北朝鮮アメリカの議員を招待しているということが伝えられている。現に、そのリストの中に出てきているたとえばソラーズ上院議員などは、数年前から私に、北朝鮮へ行けないだろうかと、アメリカの議員の側からさえそういうことを言っていたことが、いまここに実現するかもしれない状況になってきた。こういう変化をやはりわれわれは注目をしていた方がいいんじゃないだろうか。まさに釈迦に説法でありますけれども韓国をめぐる、あるいは朝鮮半島をめぐる情勢というものは、アメリカ中国を含めて非常に変わってきている。一番おくれているのは日本の自民党政府じゃないだろうか、と私はあえて申し上げたいんで――ということを言って終わります。まあ、答弁は要りません。
  70. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 本日の調査はこの程度といたします。     ―――――――――――――
  71. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) この際、大来外務大臣から就任のあいさつがあります。大来外務大臣
  72. 大来佐武郎

    ○国務大臣(大来佐武郎君) このたびはからずも外務大臣の重任を仰せつかることになりました。  参議院外務委員会の先生方はそれぞれ外交問題について造詣の深い方々と承っております。本委員会におきましては、良識の府としての参議院にふさわしく、従来から、ひと味違った雰囲気のもとで、外交問題についていろいろ忌憚のない御意見、討議が行われてまいったというふうに伺っておるわけでございます。  国際情勢いろいろ多端の折、私、微力ながら、わが国外交を積極的に展開するために全力を尽くす所存でございますので、何とぞ皆様方の温かい御理解と御支援をお願い申し上げます。  本日は、外務大臣就任に際しましてごあいさつに参上した次第でございます。この機会に、かねがね考えておりますいわば外交の総論といったようなことにつきまして一言だけ申し上げまして、わが国外交が直面する具体的な問題につきましては、今後いろいろな機会に申し上げたいと存じておるわけでございます。  今日の世界の特色は、一言で言えば相互依存関係が非常に高まってきております。わが国のように軍事力を持たず、資源に乏しい国の場合、特に平和と安全ということと経済の繁栄ということは、世界の平和と繁栄に依存しておる度合いが強いと考えるわけでございます。  経済面について言えば、わが国はもはや世界経済秩序の単なる受益者であるにとどまらず、世界経済の安定的発展のために従来にもまして積極的に貢献することが求められておると存じます。わが国としては、世界経済の諸分野において主要な責任を有する米国、西欧諸国などとも協力し、八〇年代における世界経済の円滑な運営のために努力する必要があると思います。  南北問題におきましては、これまでわが国は開発途上国に対する経済協力を中心にかなりの仕事をやってまいりましたけれども、今後さらに一層の努力を傾けて、わが国の技術や資本を世界の開発、特に開発途上国の人づくり、食糧増産、エネルギー開発、経済・社会基盤整備などのために役立てていきたいと考えております。  さらに、わが国は広く政治外交面でもその国際的地位にふさわしい積極的、建設的な役割りを果たすことが肝要でございます。地域的にも、世界的にも経済的繁栄と政治的安定は不可分の関係にございまして、わが国はアジア、ひいては世界の平和と安定のためにその経済力と国際的地位に見合った努力をいたすべきだと考えるわけでございます。  八〇年代の内外情勢はいろいろな不安定要因を抱えてかなり厳しいことが予想されるわけでございます。わが国におきましてもインフレ抑制、財政再建、エネルギー対策等難問が山積しており、国民の関心がどちらかといえば内向きになっておるように思われるわけでございますけれども、このような状況のもとで積極的な外交を行うことは決してたやすいこととは思われませんけれども、しかし、八〇年代のわが国の活路は、世界とともに歩んでこそ開けるものであり、またそうすることによって外交は真に国民に奉仕するものとなるというのが信念でございます。このような見地から外務大臣としての責務を果たしてまいりたいと考えておる次第でございますので、今後よろしく皆様方の御協力、御鞭撻を得たいと思います。(拍手)
  73. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十七分散会