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国務大臣(大平正芳君) それは全然後退したとは考えていないのです。
予算案をめぐりまして、野党との間に私は年々歳々
理解が深まってきておると思いまするし、また政策を共通にする分野が広くなってきておると思うのでございます、実質的に。で、去年、おととしは、それでもなお依然として大幅の減税政策というのは隔たりがございましたけれども、ことしはそういう若干の物価調整減税を野党の方は主張されましたけれども、大きな政策減税というようなことは断念されたようでございまして、ようやく
予算を中心にいたしまして、与野党の間の距離というものはだんだんと私は実質的に狭まってきておると思うのであります。
ただ一点、この形式修正をやるか、やらぬかということでございまして、ちょうど円周の接点においての処理の仕方、技術的な問題でございまして、それは確かに賛成される、賛成されないということは大事なことに違いはございませんが、けれども、民主政治はそういう結論も大事でございますけれども、過程も大事でございまして、
予算委員会が終始円滑に、
予定どおり充実した審議を展開していただいたということ、そして先般も申し上げましたように、暫定
予算を各政党が避けるべきであるということで一致していただいたこと、これは大変な私は前進であったと思っておるわけでございまして、接点における形式的な処理という点だけからこの問題は評価してはいけないのじゃないか。そのことももちろん大事でございます。
それで、ことしの場合、おととしの場合と
両方とも、形式修正が問題になったわけでございますが、おととしの場合は、野党のお話が決まりましたのがたしか三月九日であったと思います。三月九日で、これから修正案をつくりまして、本
会議を経て参議院へ送るということになりますと、もう暫定
予算必至でありました。で六百三十四億の低所得者対策というものを、予備費で特定するか、しないかだけですから、私は勘弁してもらいたいということを再三主張したのですけれども、民社党さんの方でなかなか御
承知になりませんで、それだけのことをすればいい、それを特定するんだから、正直に
予算を直したらいいじゃないかと。それが相当時間はかかりますけれども、もうすでに暫定
予算のあのかきねを越えてしまっておりましたので、もうそれではそういうことはあえて仕方がなかろうと観念したわけでございますけれども、ことしは、この問題は、暫定
予算が必要かどうかという非常に際どいところで問題になっておりましたから、もしそういう修正案を出しまして、
国会の運営が円滑にまいればよし、万一支障が起こった場合には暫定
予算にならざるを得ないという
懸念もございまして、ことしは多少私わがままだったかもしれませんけれども、形式修正はひとつ勘弁してもらいたいということを申し上げたにすぎないので、それまでの経過を見ますと、
予算案の審議、
予算案の実体につきまして与野党の間の距離はうんと狭まってきておると思います。これにつきましては
予算編成前から野党の御意見もいろいろ聞くことに努めてまいりましたし、また、とりわけあなたの政党、あなたの属する政党との間では、去年のいきさつもございまして、その後も終始公党の間の連絡はとってきたつもりでございます。したがって、後退したということでなくて、相当与野党の間の
理解は前進したというように私は考えております。