○小山一平君 私は、
日本社会党を代表し、ただいま
議題となりました「
地方財政の
状況」、いわゆる
地方財政白書に関連して、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。
ここ数年来、
地方財政は、厳しい
状況下にあるにもかかわらず、国の景気回復政策を受けて、公共
事業を積極的に組み入れ、高い伸び率を示しておりますが、これに必要な公共投資の
地方負担はほとんど
地方債に依存し、その償還費は年ごとに激増をしているのであります。
地方財政計画による
地方財源不足額は、五十年度以来毎年二兆円を超し、五十四年度には四兆一千億の巨額となっております。
地方団体の借金は総額三十兆円にもなって、
地方財政は破綻の
状況に陥っているばかりでなしに、財政制度そのものが破綻していると言うことができます。
政府は、
地方交付税法が交付税率引き上げを義務づけている条件にあるにもかかわらず、財源不足に対して、一部を建設
地方債をもって充当し、あとは交付税
特別会計の借り入れによって
措置し、その原資の償還に当たっては当分の間国が実質二分の一を負担することを法定化して、交付税法が義務づけている制度改正を行ったと三百代言的な強弁をしておりますが、本来交付税の持つべき機能を完全に失っているのであります。いつまでも借金政策でその場しのぎを繰り返すことはもはや許されるはずはなく、行財政制度の抜本的改革は緊急課題であると思います。いかに対処する方針でございますか。
また、
地方行財政制度の改革に当たっては、現在の中央集権構造を
地方分権に向けて大きく転換を図らなければなりません。日本国憲法に
地方自治の一章が
規定されたことは、わが国政治制度の画期的改革でございまして、
地方分権、
地方自治確立の道筋が示されたのでありますが、三十年に及ぶ自民党
政府は、政官財の癒着を深めながら中央集権化を図って、
地方自治体を支配する構造と体制をつくり上げてまいりました。そして、生産第一主義、経済優先主義の政策によって高度成長を推進した結果、高度な工業社会と物質文明をつくり出したのでありますが、低成長時代を迎えた今日において、解決を迫られる難問が山積しているのであります。公害、自然破壊、資源・エネルギー、教育・医療の荒廃、
管理社会と人間疎外など、物質的豊かさの陰に精神的貧しさ、社会的貧困が顕在化し、国民の価値観は多様化の傾向を生み、生きがい、ゆとり、人間らしさなど、新たな
生活価値が重視されるようになって、人間復興福祉優先の社会が求められております。ここに、
地方、
地域が見直され、
地方自治復権の
必要性に気がつき始めたことを示していると思います。
「
地方の時代」が流行語となっておりますし、去る統一
地方選挙では、政党政派を超えて「
地方の時代」が強調されました。総理の田園都市構想も、
地方分権を言われるのも、そこにあると思います。中央集権から
地方分権への転換が大きな今日の政治課題であると思います。総理の現在におけるわが国中央集権構造に対する認識と
地方分権推進についての考え方をお示しいただきたいと思います。
分権と
地方自治強化を図るには、まず第一に、
地方自主財源の拡充と国庫補助金の
縮小が、欠くことのできない条件でございます。白書による五十二年度の租税収入は、国税が約六三%、
地方税は約三七%の割合でありますが、歳出におきましては、国が三四・三%、
地方が六五・七%と逆になっておりますから、
地方財政は約五〇%が国庫からの支出金によって賄われているのであります。この構造は、いまも少しも変わっておりません。
私は、国と
地方の税収を少なくとも五対五にし、交付税による調整財源もその中で支出するなど、
地方の自主財源の拡充を思い切った税制改革によって断行すべきだと思います。御所見を承りたいと思います。
次は、国庫補助金の整理
縮小について伺います。
シャウプ勧告、神戸勧告を初め、第十六次にわたる
地方制度調査会の答申も、国庫補助金の整理
縮小を繰り返し繰り返し強調しておりますが、
政府はそれを今日まで全く無視し続けてきたのは何ゆえでありますか。補助金行政は
地方支配の具であると同時に、陳情行政となって、膨大な人員と経費のむだ遣いを生んでおります。国庫補助金は大幅に
縮小すべきでございますが、これを実行する決意がございますか、お伺いいたします。
また、補助金には、
各省庁のセクト主義、縦割り行政による、まことにばかげた実態がたくさんございます。一例を挙げますと、余暇利用
施設補助金として、労働省の勤労青少年ホーム、勤労福祉センター、厚生省の国民宿舎、運輸省の青少年旅行村、環境庁の国民休暇村、文部省の国立公園自然の家、
農林水産省の自然休養村、建設省の広域公園等々、思い思いの補助金制度をつくっておりますが、これを受け入れる
地方団体は総合行政でございますから、大変迷惑をいたします。そこで、これらの補助金を一本にした総合補助金にすることが最も効率的利用ができる道だと主張しているのは、まことに当を得たことでございます。このような
事例は枚挙にいとまがないありさまであります。また、一件百万円にも満たない目薬のような零細補助金も、数え切れないほどあるのであります。
地方団体がその整理を要望しているにもかかわらず、あえてこれを存続しているのであって、全く無意味、さらに有害とさえ言えるのであります。大蔵省は、これらの補助金がそれぞれ必要な特定
施策の推進とでも考えていらっしゃるのでありますか。それとも、
地方財政に対するきめ細かな配慮とでも考えているのでありますか。
各省庁が補助金を通じて
地方団体の
施策のすみずみにまで細かく介入することは間違っています。こういうばかげたことは一日も早くやめなければいけません。補助金の実態を厳重に調査し、整理統合、廃止の
措置をとるべきであります。御見解を承りたいと思います。
白書は一般消費税の実施を強調しておりますが、悪名高い医師優遇税制を初め、大企業、富裕階層に対する不公正税制の是正については何ら触れていないのであります。一体不公正税制はこのまま放置するおつもりでありますか。このような姿勢では、国民が挙げて
反対している一般消費税が合意を得られるはずはありません。
政府は、この際、国民の声にこたえて、一般消費税の導入を断念すべきであると思います。いかがでありますか。
政府は
地方団体に対し、行政の簡素合理化を推進するよう強調しているのはよいといたしまして、国はみずから率先して範を示すべきであります。
地方団体は国に先んじて、かなりの実績を上げているのが実情であります。
福田
内閣のときにも行政改革を高らかに唱えたけれども、大山鳴動ネズミ二匹に終わりました。大平
内閣においても、中央行政機構の簡素化、出先機関や
特殊法人の整理、事務の再配分など、国の行政改革はほとんど進んでおりません。こんなありさまでは
地方を指導する資格はございません。困難なことはわかりますが、どのような方針と計画を持って取り組んでいかれるのか、お尋ねしておきたいと思います。
また、白書には、総理の唱えた田園都市構想の文字さえどこにもないのであります。総理の田園都市構想は、夏の夜空を華やかに彩って消える花火のような運命にあるように見えます。哲学だ、理念だ、ビジョンだと言うだけで、実体を示すことができておりません。国土庁の定住構想、あるいは自治省の新広域市町村構想を推進することによってそれが実現するのだとおっしゃるだろうと思いますけれども、中央集権主義、
各省庁のセクト主義、縦割り行政の枠組みと画一主義の範囲内では、この構想の実像を示すことも、実現を期待することも不可能でありましょう。
私は、
地方分権によって自主性や独自性を持った活力ある
地方自治に依拠しない限り、長い歴史の中で生まれた地場産業や個性に富んだ
地域社会、伝統文化を生き生きとよみがえらせることも、
住民のエネルギーを燃え立たせることもできないと思います。総理の田園都市構想の理念の根源は、ここにあるのではないでしょうか。また、国土庁はモデル定住圏を設定しようとしておりますが、これはいかにも官僚的発想でございます。特定
地域をモルモットにすることはおやめなさい。やめた方がよろしいです。今後の方針と具体策をお示し願いたいのであります。
最後になりますが、総理や自治大臣が
地方分権、
地方自治の確立を強調されましても、それに必要な条件である
地方自主財源の拡充、補助金の整理
縮小、権限の
地方移譲などの制度改革は実行できず、中央の行政改革や田園都市構想の具体化も阻害をしているものは何でありますか。それは、中央集権主義にこり固まって、現在握っている権限や組織をいささかでも減らすことを拒み、改革に抵抗する中央官僚と強大な官僚組織ではありませんか。
戦前の内務省に集中していた強大な組織と権限はことごとく
各省庁に分割され、縦割り行政となって、
地方行政をがんじがらめにしているこの支配体制と構造は、いまや悪質な、がんにも似た病根となっていると思います。総理の言う
地方分権は、この強大な組織と力を排除しなければ一歩も進みません。どのような決意と方針を持って、これら多くの改革を実行されるお考えでございますか。これをお尋ねして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣大平正芳君
登壇、
拍手〕