○吉田忠三郎君 私は、
日本社会党を代表して、
租税特別措置法の一部を改正する
法律案につき、反対の討論を行うものであります。
わが国の
財政危機は、
予算の三九・六%を
国債収入に頼る膨大な借金
予算にあります。この
国債依存の
財政運営によって、
政府の
財政収支試算によっても来
年度末の
国債残高は五十九兆円の巨額に達し、将来にわたって重荷を背負ったことになるわけでございます。このような深刻な
財政危機をもたらした
原因は、一言で言えば、成長優先の放漫
財政運営にあるのは明らかであります。
それは
歳出面で見れば、公共事業、特に道路投資中心の
景気対策をとり続けてきたことに代表されています。
歳入面では、資本蓄積のための多くの減免税政策であり、その端的なものが
租税特別措置法そのものの存在でございます。したがって、今日の
財政危機の
克服は、
歳出と歳入の両面にわたって全面的な洗い直しと、今日両者を含めた
財政改革に着手すべき
段階に至っているのであります。
かかる観点に立って今回の
租税特別措置法の改正案を
検討した結果、
財政改革のための中期的
展望を見出すことができません。若干の前進面もうかがえますが、大胆な
転換を図るという発想はどこにも見ることができないのであります。のみならず、物価調整減税さえも実施しないような、いわば安易な大衆
負担を求めているのであります。
第一に、
医師の社会保険診療報酬
課税の
特例措置についてでございます。
この件につきましては、実に二十五年ぶりに手直しをするとしながらも、その内容は
政府の
税制調査会の答申から後退しているだけではなく、収入
段階別一律控除という必要経費論に反する制度を恒久的なものにしようとしていることは断じて許されないのであります。概算経費控除制度それ自体が不公平な制度であり、公平な
税制が求められている現在、早急に実額控除制度に移行すべきであり、百歩譲っても、今回の改正内容は時限立法とすべき性格のものであり、
政府は、
医師会という利益団体の圧力に屈し、
税制をゆがめるべきでは断じてないと私は思うのであります。
第二は、土地
税制の緩和
措置についてであります。
現行制度の来
年度の適用
期限の
期限切れを待つことなく積極的に改正するには、それなりの政策目標を持ち、かつ、その具体的政策効果を計算した上での施策でなければなりませんが、
政府の対応を見る限り、土地関連業者に迎合しているにすぎないと言っても過言ではないのであります。
十年前に
導入された土地譲渡
所得課税の優遇
税制が宅地の供給増加を目的にしながら、一方において土地成金を生み、
他方に企業の土地投機をもたらしただけに終わり、肝心の
国民大衆の住宅問題はいまなお未解決である実態を反省するならば、公共用地の確保と住宅難の解決の具体策を伴った
税制の活用でなければならないのであります。
今回の
措置は、最近の地価の上昇、土地投資の動きを見るならば、逆に、かつての地価暴騰、土地買い占めの再現を起こしかねないのであります。いわゆる
不公平税制を拡大するのであることからして、土地、住宅問題の
責任官庁たる国土庁、建設省等の
関係官庁からは、
税制緩和と住宅問題解決についての具体的なデータの提示があって当然であります。それが
税制の政策効果の判断につながるのでありますが、それらの基礎資料のないままの今回の
措置は、
国民のとうてい納得するところではございません。
第三には、揮発油税及び
地方道路税の
引き上げについてであります。
今回の
値上げの理由は、投資
規模二十八兆五千億の第八次道路
整備五ヵ年計画を実施するための財源
対策の一環であり、来
年度のガソリン税収二千三百二十億円も道路につぎ込まれるのであります。これでは、
財政危機克服のための
増税措置及び
歳出の
改革の面から言っても適切妥当とは言えません。石油資源の乏しい
わが国では省エネルギー
対策として税
負担の
引き上げを
考える余地はあるにしても、使途を道路
整備に特定した目的
税制度の継承ではその効果は上がらず、かえって道路
整備と自動車の増加の悪循環を来すおそれが強いのであります。
第四として指摘したいことは、法人
課税の
改革でございます。
政府も、価格変動準備金の積立率の
段階的引き下げを図り、交際費
課税の
強化を進め、さらに加えて、貸し倒れ引当金の繰入率の一律二〇%引き下げなどに着手してはまいりましたが、積立率の引き下げに十年間の経過
措置を講じ、交際費は原則非
課税に立っているなど、抜本的改正とは言えない内容になっておるのであります。
しかも、法人
課税の
基本である
法人税率には一切触れていないのは、まことに心外にたえないところであります。
わが国の
法人税率の低いことは周知のことであり、
政府の
税制調査会ですら
引き上げの可能なことを認めているのであります。同時に、
わが国の百二十万を超える法人企業の中には、資本金が百万円の零細企業から二千億を超える巨大企業までが存在しているのであります。これに対する
法人税制のあり方を根本から見直すのは当然であります。これには手をつけていないとあっては、
財政危機のもとでの
税制改革としては全くの片手落ちと言わざるを得ません。この法人
課税については、大きな内部留保となっている退職給与引当金について
適正化を図るべきですが、これまた見送っているのは、企業の手に過剰資金が蓄積されていることからして見ても許されないのであります。
以上、今回の改正案に即して主な内容について述べたわけでございますが、不公平な
税制の是正が行われ公正な
税制に向かっての
展望は持てないと言っても、あえて過言でないと思うのであります。
政府の試算でも、来
年度の
租税特別措置による減収見込み額は、国税で九千二百億円、
地方税へのはね返り三千百億円で、合計で一兆二千三百億円の減免税が行われるのであります。
利子配当所得の総合
課税化を含めた大胆な
改革を実施すべきでありますが、
政府の対応はいまなお小手先の域にとどまっていると言わざるを得ないのであります。
最後に強調したい第一の点は、公正な社会を実現するために
税制を活用し、富裕税、土地増価税などの資産税を新設することが必要ですが、
政府にはその姿勢が見られないことであります。
第二の点は、
財政再建の方策として大衆
課税を
強化するための
一般消費税を
導入しようとしている
政府の
考え方は、
国民の
税制に対する信頼が欠如し、不公平感の強い
現状ではとうてい受け入れられないということです。しかも、
わが国では
一般消費税導入のいわば条件とも言うべき社会保障の充実がおくれていることと、この期に及んで
政府自民党はみずからの
財政運営の失敗を何ら反省することなく一方的に
国民にその
責任を
転嫁することは、断じて許されないと私は思う次第であります。
第三の点は……