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説明員(森永昌良君)
お答え申し上げます。
シカゴの事故が起こりまして早速に
アメリカの航空局は、この事故の原因が主として主翼とエンジンをつないでおります途中の支えているパイロンと称する部門の中のいわゆるエンジンの発生する推力を伝達する機構の中にございます二本のボルトの折損によるという判断をいたしまして、このボルトに重点を置いた点検を指示する、専門用語で言いますとAD、
日本語で耐空性改善命令というのを二十九日、これ
日本時間でございますが、深夜にまず出しました。この改善命令は、本来は
アメリカの国籍の飛行機に対するものでございますけれ
ども、私
どもとしても事の重大性にかんがみましてこれに準じた措置をとることにいたしまして、直ちに
日本航空に対しまして指示を発しまして、現在
日本航空が所有しております同型九機
——国際線用が三機、国内線用が六機ございますが、これに対しまして同様の点検を二十九日じゅうに行わせることといたしまして、さらにわが国としての
アメリカのADに相当するTCDというのを発令したわけでございます。これに伴いまして、
日本航空は二十九日の夜までにすべてのボルトの点検を完了いたしまして、現在ついておりましたボルトを全部新品に交換をいたしたわけでございます。取り外した部品についても、ボルトにつきましてもその後磁気探傷検査を現在かなりの程度やっておりますが、いままでの報告を受けたところ
一つも欠陥のものはないということでございます。ところが一夜明けまして、この世界じゅうに広がったいわゆるDC10についての点検の結果、
アメリカ国内最大の航空会社でございますユナイテッド・エアラインがシカゴ空港で同社の飛行機を点検しておりましたところ、DC10の中の一機にいわゆる先ほど申し上げましたパイロン構造の問題のありましたボルトの位置より少し後ろのボックス構造になっております水平の部分の板に約二十インチの長さのクラックがあったと、さらにはその板に大体百個ほどのボルトがついておりますが、径が約八ミリ程度、長さが二十七ミリ程度でございますが、その中で二十七個が脱落しておった、さらには六個に緩みがあったということが発見されまして、これをFAAに通報したものですから、いやこれは大変だということで、今度はやはりボルトが切れる前の段階に、むしろボックス構造のそういう亀裂なりボルトの脱落、緩みなりがまず
最初に起こって、その結果としてボルトが切れ、さらにはエンジンが落ちたのではないかというふうな考え方に少し変わりまして、二番目の命令として、今度はそういう方向に重点を置いた再度のADを出したわけでございます。これが
日本時間の昨日の午前二時でございまして、二時の段階にはどういうふうに整備していいかどうかFAA自体がわからないで、まあとにかくとめなさいと、そのうちに点検の方法は
日本時間の午前中に少なくともお知らせしますという状況でございまして、私
どもも朝そういうことを連絡を受けまして、昨日の朝から全機とめました。たまたま当時ニューヨークからアンカレジに一機飛んでおりましたけれ
ども、これは途中ちょうどカナダの上空でございましたので、九時過ぎにアンカレジまでは飛ばしまして、アンカレジでおろしたわけでございます。そうして大体昼ちょっと過ぎに具体的なADの中身が入りまして、これに基づきまして昨夜半までかなり時間をかけまして全機について二回目の、今度はその二回目の重点事項についての点検をすべてやったわけでございます。もちろん法的にも私
どもいわゆるADに相当するTCDを発令しまして作業をさしたわけでございます。そこでいろいろ調べました結果、一機実はこの機会にほかの整備事項をあわせて施行している飛行機が成田にございまして、これはいま現在まだいろんな整備をやっておりますけれ
ども、それを除く八機につきましては、昨日の夜半すべての点検が終わりまして、八機のうちで三機について若干のふぐあい事項が発見されましたけれ
ども、これはすべて直ちに修理をいたしまして完全な状態になったということを昨夜半、正確にはけさの午前一時でございますか、私
ども会社の幹部に来てもらいまして、十分その辺を確認した上でけさ早朝からのフライトの再開を許したわけでございます。
そこで、いま
先生からの御
指摘で、外国ではみんな全部とめているのに
日本だけ飛ばしたじゃないかというような御
指摘が若干ございましたけれ
ども、これは時差のせいでどこの国も夜が明ける時間が違いますので、飛び出す時間は違いますけれ
ども、私
どもが得ている
情報によりますと、まだ飛行機をたくさん持っているところではすべての点検が終わってないところもございます。また、
日本航空みたいに少ない機数のところは、比較的早く手の打ち方の早いところは終わっているところもございますが、いま現在かなりの部分が飛んでおりまして、
日本航空のいま一機整備中、これは別の整備を主としてやっているわけでございますが、それ以外に外国ではユナイテッド航空で例のカナダで発見された一機、それ以外に
アメリカンで一機、コンチネンタルで二機、それからフィリピン・エアで一機、さらにはベネズエラ・エアで一機、合計七機が現在グラウンドしているというふうに
情報を受け取りました。それ以外の飛行機は点検が終わり、またフライトを始めているというふうに聞いております。
一応いままでの経緯はこのとおりでございますが、あくまでもこれは
アメリカのADに基づく私
どもの同様の指示によって取りあえず緊急対策としてやったわけでございまして、そのADの中にはさらに十日もしくは百時間ごとに繰り返し点検するような指示が出ておりますし、さらにはベアリングの中の一部構造のものについては飛び出し始めました後、さらに十日もしくは百時間以内にある部品を新品とかえなきゃならぬという指示も来ておりますし、まだあくまでもこれで終わったわけじゃございません。引き続きそういう点検をしていかなきゃならない。それについては十分私
ども指導監督をしてまいりたい。しかし、それはあくまでもいままでの
説明でおわかりのように、
アメリカのFAAからの
情報あるいはそのFAAの
情報のもとになっている
アメリカの国家運輸安全
委員会、そこのいわゆる事故原因
調査の方から来ている、それを待っているだけじゃいかぬじゃないかという御
指摘もあろうかと思いますので、私
ども、それ以外のルートを通じ、いろいろ
情報をたくさん、少しでも取り入れて私
ども万全を期しておったつもりでございますが、やはりこういう事態も起きましたので、もっと漏ればないかというようなことでわが国独自の緊急のチェックの仕方をいまいろいろ検討しているところでございます。いずれにしても、まだ原因自体が
アメリカのその専門機関によって
調査の緒についたばかりでございまして、先ほど御
説明しましたように、
最初はボルトかと思ったのが次はこういうことになったということで、また三番目のことが起こる可能性もあるわけでございますので、その辺も十分注目しながら今後速やかに対応していって、利用者の方々に御不安が起こらないように私
ども万全を期してまいりたいと思っております。