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1979-05-08 第87回国会 参議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月八日(火曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      高平 公友君     塩見 俊二君  四月二日     辞任         補欠選任      野末 陳平君     有田 一寿君  四月二十五日     辞任         補欠選任      有田 一寿君     柿沢 弘治君  四月二十六日     辞任         補欠選任      柿沢 弘治君     有田 一寿君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         望月 邦夫君     理 事                 後藤 正夫君                 世耕 政隆君                 粕谷 照美君                 小巻 敏雄君     委 員                 亀井 久興君                 山東 昭子君                 高橋 誉冨君                 増田  盛君                 吉田  実君                 久保  亘君                 松前 達郎君                 宮之原貞光君                 安永 英雄君                 白木義一郎君                 田渕 哲也君    国務大臣        文 部 大 臣  内藤誉三郎君    政府委員        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省学術国際        局長       篠澤 公平君        文部省体育局長  柳川 覺治君        文部省管理局長  三角 哲生君        文化庁次長    吉久 勝美君    事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君    説明員        外務大臣官房領        事移住部領事第        一課長      池田 右二君        外務省経済協力        局政策課長    坂本重太郎君        外務省国際連合        局経済課長    寺田 輝介君    参考人        国士館大学工学        部長       岡澤 文一君        国士館大学教員        組合委員長    粕谷 慶治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○教育文化及び学術に関する調査  (国士館大学暴力問題に関する件)  (語学教育に関する件)  (国連貿易開発会議に臨む政府教育援助に対  する基本姿勢に関する件)  (私立大学経営者教育姿勢に関する件)  (国際バカロレア制度に関する件)  (養護学校の職業病問題に関する件)  (長期海外滞在者の子女の教育に関する件)     —————————————
  2. 望月邦夫

    委員長望月邦夫君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  教育文化及び学術に関する調査中、国士館大学暴力問題について、本日の委員会国士館大学工学部長岡澤文一君及び同大学教員組合委員長粕谷慶治君を参考人として出席を求め、その意見を徴することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  3. 望月邦夫

    委員長望月邦夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  4. 望月邦夫

    委員長望月邦夫君) 教育文化及び学術に関する調査議題とし、国士館大学暴力問題に関する件について質疑を行います。  まず岡澤粕谷参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、お忙しいところ急遽本委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございました。委員からの質疑には忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  これから質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 粕谷照美

    粕谷照美君 最初に、社会から非常に厳しい批判を浴びました国士館大学暴力的な体質及び管理機構あり方等に対しまして、文部省から八項目にわたる改善指示がされていると思います。それで、参考人の各位におかれましては、文部省指示改善指示事項が実効を上げたと、こうお考えになれる部分がありますでしょうか、最初にお伺いします。
  6. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) 答弁に先立ちまして、学長を補佐すべき学部長の一人といたしまして、いまだに自力で解決ができませず、皆様方に御迷惑をかけておりますことを深くおわびを申し上げます。  本日急にここに呼び出されますことにつきまして、昨日、各学部長電話連絡いたしまして、どういう答弁をしようかということを諮りましたところが、一切任せるから忌憚のないことを言ってくれ、ただ学校の恥をさらすので、それがつらいんだがと言ったら、この期に及んでもういたし方あるまいということで参りました。  それで、いまの御質問に対しまして、文部省勧告の中で実行されましたものは四項目ぐらいございますが、あとは実行されておりません。そして、それをさらに進めるような姿勢はとっておりますが、一向に、遅々として進んでおりません。
  7. 粕谷照美

    粕谷照美君 国士館大学では、その文部省指導もとにいたしまして、とにかく何とかしなければいけないという姿勢は見られたように思います。だからこそ学内問題対策委員会発足をしたと思いますけれども、この学内問題対策委員会というのは、理事者側は全然関係がないのですか、組合とか学部長とか、そういう方々だけの動きになっているのでしょうか、いかがでしょう。
  8. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) これは当然理事者側学校側の依頼でつくったものでございまして、そちらが関与しないどころでなく、大きい指導権を持っていなきゃいけないものなんでございまして、これには学部長は全部外されております。各学部教授会委員を出しまして、それから職員の方からも委員を出しまして、それで審議し、答申したものでございます。それに対しまして、第一次試案を出しましたが、一向に返事がないんです。それで、それをだんだん詰めてまいりまして、ことしの正月の初めに、あれを積極的に審議するというりっぱな答えがあったのですが、またその後延び延びになっております。  先日、学生暴力問題に関連して、学生部あり方、それから暴力問題についての学校側の案が示されましたが、それには学生部長並びに学生次長を、教学側でなく理事者が適宜に任命するということでございまして、これは恐らく対策委員会としても承認できないものだろうと思いますが、それはわかり切ったそういうものを出してまいりまして、結局延び延びに引っ張っていかれるんじゃないかという懸念が多分にございます。
  9. 粕谷照美

    粕谷照美君 粕谷参考人は、たしかこの対策委員の一員だと思いますけれども、学長から任命をされていらっしゃるわけですね。それであるとするならば、きょうまでのその委員会審議はどのような経過をたどってきているか、それからその委員会が機能を果たしたと考えられるか、その点についてお伺いします。
  10. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) ただいまの件について簡単に、明瞭に、なるべく私情をはさまないようにしてこれは申し上げたいと思います。  実は、私、組合代表ということで出席しておりますが、実はこの問題は、組合の問題というよりも、大学そのものがどのように改善されるかということについて、われわれの教育研究に関する非常に重要な部分が損われる、その結果、後ほど申し上げますが、学生にまで教育研究に非常にまずい条件が出ているということを含めて取り組んでいるのでありまして、通常教員組合  組合代表といいますと、いかにも組合大学側と対立する形で問題をとらえられがちなんですが、そうでないことをあえて申し上げておかなければいけないんではないか、こういうふうに思います。  そこで、学内問題対策委員会の件でございますが、まず第一に、これは昨年の五十二年八月四日に発足いたしまして、第一回の答申が八月二十三日に出されております。この八月二十三日に出された対策試案は、必ずしも十分でないということによりまして、さらに十月二十七日各学部教授会並びに職員の各部署部長に諮りまして、この対策試案、一次試案、これをどのように考えるかということの答申をいたしました。その結果、対策委員会に対しておおむねこれを了承をするというものが得られまして、その結果に基づきまして十一月二十七日、これを第一次決定案としまして、これら教授会並びに各職場部長意見を添付しまして理事会に提出いたしました。そうして、この第一次決定案に対してどのように大学が考えるか、十二月十日までに回答してほしい、こういうふうに要求しておりましたところ、相変わらず返事が返ってきません。そこで、五十四年の一月八日、実は金子対策委員長総長に直接会いまして、どのようになさるおつもりかということを問いましたところ、全くこれについては具体的な返答がなくて、後ほどこれについては触れたいと思いますが、全く見当違い回答が来たということによって、一月二十日その金子委員長報告もとにして、第十回総会を開き、大塚理事出席を求めて、どのようにするかというふうなことを要求いたしました。その結果、二月初旬までに大学側回答を出したい、すべてにわたってはむずかしいけれども、特に暴力問題など緊急を要するものについてはできるのではないか、これはゼスチュアではないんだというふうにはっきりと明言されておったわけでございます。ところが、それが結果的には出てきませんでして、三月の十四日再度第十一回総会を開くということになりまして、この大学側回答のないことについてどのように取り扱うかということが三月十四日の総会議題になりました。その結果、とりあえず三月末日まで待って、その内容を何らかの形で大学側に意思表示してほしいというふうに要求してきたわけでございます。その結果、三月三十一日付で学生部案というようなもの、学生部編成に関する件についてのみ回答が出されているようでございます。  このいるようでございますというのは実は問題がございまして、この四月に職員配置転換がございました。人事異動がありました。その結果、職域代表する者の欠員がといいますか、異動によって職域選出の母体が変わってきて、補充選挙をしなければならぬということを大学側から提案されました。その結果、選挙をすると、そうして新たにその職域代表という形での新しい委員選出して、配置転換された者と交代するというようなことが提案されたわけです。ところが、組合中心とする——この対策委員会は別なんですが、組合中心とする各教職員は、そもそも対策委員会というのは全学的に問題を考えるものであって、職域代表して利益代表となっているのではないから、改めて選出をする必要はない、こういう申し入れをしましたが、それが受け入れられないまま実は選挙が四月二十日行われました。そうして新たな委員選出されたわけですけれども、実は、どうもその内容大学の意に沿わなかったのかどうかわかりませんが、かつての旧委員といわれる方に対する解任辞令がいまだに出ておりません。それから、選出された新たな委員に対する嘱任辞令もまだ出ておりません。その結果、この取り扱いがどうなるのか大学側に聞きましたところ、大塚理事は、その取り扱いについて総長から何ら指示を受けていないということで、その嘱任辞令解任辞令も出ていないために、次期総会、第十二回総会が開かれないというのが現状でございます。その結果、実は三月三十一日に出されたと言われているその学生部編成に関する大学案というものが、われわれについてはまだ具体的には提示されていないといいますか、公式には提示されていないということになっております。  実は、公式ではなんですが、それらの文書が出された結果、それを見ましたところ、その内容が非常に遺憾な部分があるように見受けられます。この点について、私が理解した範囲において申し上げますと、実はすべての内容について非常に制限的な条項が多く、言論の自由に反するのではないかと思われるような部分も一部入ってございます。  それからもう一つ重要なことは、学生部というのは本来教員中心として、学生指導、助言をしていかなければならない部署でございますが、先ほど岡澤参考人から申し上げましたように、学生部長そのもの教授会の議を経て選任されるのではなくて、総長が直接的に嘱任をするという形をとっております。そうしてその配下にある者が実は学生部職員であって、教員がこの学生部管理運営に参与するという文言が一つも入っておりません。その辺が非常に問題ではないのかというふうに考えられます。ただし、これはあくまでも大学側の案でございますので、この十二回総会次期総会においてどのようにこれが取り扱われるかはまだわからないところでございます。  そうして、実はこの内容が出てきた点についてもう一つつけ加えなければならないことは、なぜ三月三十一日にこれが出てきたのか。文部省に対してはすでにこれについて事前に報告しているように聞いております。その結果、これは明らかに何らかの形で出さないと、本学助成金関係するものではないのか。すなわち、対策委員会というものが、文部省大学局長発言によりますと、これについて対策委員会理事会がどのように対応するか慎重に見守っていきたい、ここが非常に本学改善のポイントになるというふうにかつての国会で、この文教委員会で取り上げられておりますように、問題はその辺が非常に不対応でございまして、出てきたその三月二十日以降の点は、実は本学に対して助成金が交付された三月二十七日、最終決定内容を受けたその二十七日などをある一定のめどとしてせざるを得なかったんではないかという、非常に大学側の非積極的な、消極的な姿勢にほかならないというふうに考えられるものではないかと思います。  いま申し上げた内容と、それからこの時期と符合されますと、どうも対策委員会に対する大学側姿勢というのは非常に疑問だと言わざるを得ない。  それからもう一つ金子委員長との会談の中で、対策委員会総長自分でその委員嘱任しておきながら、どうも敵視する姿勢を示していると言わざるを得ない。すなわち、対策委員会が右傾化したならば国旗が立つ、左傾化したならば赤旗が立つんだと、私はどうなってもいいけれども、本学に対して赤旗が立つのは困るのだという発言をしたと、こういうふうに金子対策委員長委員会総会で述べておりますので、これも付言しておきたいと思います。
  11. 粕谷照美

    粕谷照美君 私、国士舘の資料だけでももうこれの何倍か来ているんで、ちょっと読みづらくて大変だったんですけれども、簡単に言えばこういうことですね、粕谷参考人。ここにあります第一次対策試案というものを皆さんは夏休みを返上して一カ月余りかかってつくり上げたと。したがって、そのつくり上げた対策委員会試案というものを全学の討議におろした。おろして十一回にわたる対策委員会もやったけれども、大学側対応は全然なくて、そして三月の末になって突如として出てきた。出てきたときと、六億数千万円の助成金が出された時期はまさに一致していた。そして出されたものは非常に非民主的な問題のある内容である。それと同時に、その対策委員会は、いままで任命された人たち対策委員であるのかないのかについても不明である。新しく選挙された人たち対策委員であるのかないのかについても疑問がある、こういうごちゃごちゃした条件にあると、こう理解してよろしいですか。
  12. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) その点についてお答えいたします。  実はこの対策委員会というのができるに当たりまして、非常に、全く申し上げにくいのですが、四十八年当時、実は私どものところでまた暴力問題によりまして国会で取り上げられるという不祥事がございました。その折にできた近代化委員会というものが、実はかなりの具体的な線を出しまして、ある程度の事項について実施をする、ただし、基本的な部分について実施をしなかったがために、今日でも独裁的な体制本学に残っている。実はそういうことが再び繰り返されては困るというので、対策委員会としましては実行力を持つ委員会にしたい、こういう意向で、実は八月四日に発足するまで、四回にわたって対策委員会規程そのものの検討が大学側と非常に慎重に行われたということなんでございます。その結果、実はこの対策委員会というのは諮問機関では困る。すなわち前回の二の舞を繰り返すのは困るので、諮問機関ではなく、具体的にその回答ないしは出てきた案を実行するという委員会にしたいという教職員の非常に強い要望がございましてできたものなんでございます。にもかかわらず、その結果というのでしょうか、逆にそういう非常に強い委員会であっては大学の意が反映されないということで、実は委員嘱任その他を行いながらも、一方において、先ほど申し上げましたように、非常に対策委員会そのものをいわゆる敵視するといいますか、その意を尊重しないという姿勢があらわれているのではないかというふうに感ずるわけでございます。その結果、幾らわれわれが努力をして、十一回も総会を開いて大学側に対して提示しても、それについて全く対策最終案として出したものとは異なるものを出してくるというような形で、非常に対立的な関係になってしまっている。すなわち、選ばれたところのわれわれは、一体何のためにこれだけの時間をかけて対策試案を出したのかという点において、非常にみんなが疑問に思わざるを得なくなって、委員長に至っては、もうこれ以上話し合っても、あるいは対策委員会を進めていっても困難なので、私の能力限界を超えると、辞任をしたいというくらいの発言があったこともございます。
  13. 粕谷照美

    粕谷照美君 私もこの学内問題対策委員会会議録というものを一つ一つ見せていただきました。きちょうめんに記録され、下部討議におろされたということがよくわかりました。あわせてそれに対して各学部長中心として審議、この試案に対する審議報告が出されていて、いろいろな意見はあったけれども、最終的にはそれでよろしいと、こういうふうに実に整然たる体制がとられていたということを確認いたしました。しかし、その対策委員会委員長であります金子藤吉さんが、無力感を感じて辞任されたいと、こう申されたといま粕谷参考人はおっしゃいましたけれども、しかし組合記録といいますか、新聞を見る限りにおいては、私はそれだけではないように思います。学内問題対策委員長金子さんが、身の危険を冒してまで委員長の職責を全うするつもりはないと、こうやめたい旨を発言しておられるというふうにありますね。一体これは何ですか、身の危険を冒してまでというのは一体何ですか。そして、その後安高理事にもこのような危険が起きたということがあったやに聞いていると、こう記録に残っておりますが、このような事実はあったのでしょうか、いかがでしょう。
  14. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) その件について申し上げます。  実は、金子委員長発言した内容につきましては、対策委員会の第十一回総会議事録に載っておりますので、その部分をちょっと読ませていただきますと、実は「金子氏の或る人物から脅迫を受けた問題について、次のように発言した。「当委員会発足のキッカケは暴力問題に端を発している。したがって暴力の根絶が当委員会の大きな任務の一つである。ところが現実委員長脅迫を受けたりして当委員会自体暴力の脅威にさらされている。これは重大な問題だ。本学暴力的体質を如実に物語っているのだ。当委員会としても、これに対しては声明文などの形でもいいから何らかの態度を明らかにしなければならないと思う」」と、こういう意見が出されているわけでございます。実はこの内容というのは、このような状態を打開することはもちろん自分能力ではもはや限界であると。三月一日には或る人から脅迫まで受けたと。その人は側近——これは総長側近ですが、総長側近と自称し・ある委員をやめさせろと。このある委員というのは、実は私も含まれているというふうに聞いております。ある委員をやめさせろと迫ったと。しかし、総長の任命した者を、対策委員会がやめさせることはできないと説示してやったが、いずれにしてもこのようでは身の危険さえ感じる。特にこれ以外に発言された内容につきまして、実は金子先生のお宅の方にも脅迫に近い電話が入っておるということも言われております。  それから、安高理事の件についてでございますが、実はこれも暴力問題にも関連するのではないか、こういうふうに思われますが、特にこういう問題を進めていきますと、すなわち対策委員会がいま出している具体的な内容というのは、寄付行為の改正、学則の改正、それから総長選出規程——学長理事長選出規程ですが、この学長選出規程などをやりますと、自分にとって不利であるということがうかがわれる。したがって、そのような対策委員会を積極的に進めるようなものに加担しないようにということがその意図であるやに聞いておりますが、安高理事組合などと話をして、その対策委員会をどんどん進めるというようなことをするならばということで、ある側近なる者を通して、安高理事に対して組合とは接触するなとか、あるいは団体交渉に応じるなとか、あるいはそういうことをするならばという形でおどすというようなことが行われているということでございます。そうして、これは安高理事御夫人も、それについては脅迫電話自分の家にかかっているというふうに発言していると聞いておりますし、家族ぐるみでおどかされているのだということについては、私と安高理事との話し合いの場合にも、安高理事が直接発言していることがございます。こういう形の中で対策委員会が進められているというのが現実でございます。
  15. 粕谷照美

    粕谷照美君 その電話の中に、総長引きおろしをするならばおまえを殺すと、次はおまえの番だ、血の雨が降るぞ、降るかもしれない、このようなことが言われたと、こういうお話を私耳にしておりますけれども、金子委員長だけではなくて、対策委員の三役にも、それから組合の役員にもそのような事実があったと、こういうことを伺つています。あなたにも何かあったはずです。その事実をお伺いしたい。  それから、その相手はあなたはある人——側近という名前を言われましたけれども、具体的に名前がわかっておりますか、もしわかっておるならば明確に教えていただきたい。  次になぜそのような危険を冒してまであなた方は闘うのですか。それは岡澤参考人にもお伺いいたしたい。
  16. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) では、いまの私の方に先に質問がございましたので、私の方からお答えさしていただきますが、実はこの暴力的なそういう内容に関しましては、本学に問題が起こりました時点において、国士館なるものを再建するのだということを前提にしまして、同志会というような会ができました。この同志会なるものは非常に本学とは関係ないものまで含めるというふうにその規約にうたっております。設立の趣旨にも書いてございますので、本学関係のない者まで入ることができる組織でございます。同時に、国士舘精神を発揚させるのだということを目的としておりまして、その同志会の副会長に実は中村誠という方が入っております。この方は本学を中途退学しておるわけでございますが、この方が来まして、非常に学校の−私もそうですが、教職員に非常に大きな暴力的圧力をかけているということでございます。たとえば安高理事の件に関しまして、実は五十四年の三月一日、本年の三月一日、同理事が理事室において執務中に、この中村誠なる人物が入ってきまして、何かいろいろやりとりがございましたようですが、そのときに非常に険悪な状態になったということがございまして、そばに居合わせました竹下という会計課長がとめに入りました。ところが、この竹下氏をこの中村誠なる人物が突き飛ばして転倒させるというようなことが、実際にわれわれの大学の職場において行われたということでございます。このほか組合員に対する、特に三役などに対する暴力発言、これは私も直接何回も受けておりますし、それからさらに職員組合の者に対してもかなりのそういう暴力的行為を含めた圧力がかかっていることが事実として存在します。
  17. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) それらにつきまして、少し話がそれるかもしれませんが、なぜそんなことになるかということを考えますと、総長はこの学校、この財産と血はおやじにもらったんだと、これを子々孫々に伝えたいという執着が非常に強うございます。その例を申しますと、去年側近の者に自分は下がって自分の子供を学長にしたいと言いましたから、三十そこそこの者では世間が承知しますまいと、もっと人生体験を積んで先でもいいんじゃないかと申しましたら、ここの理事長学長は柴田一族がやるんだと、それ以外の者がやったら殺されちゃうぞと、こう申しまして、その側近はそれから退けられました。  それから、この学位論文代作問題が出るきっかけになったのは、これは私の想像でございますが、これを審査し、許可したのは亡くなった竹内教授でございます。竹内さんが推薦し、その親しい山口さんが教授でおられたのですが、組合との問題が起きましたときに、総長は一人で山口さんを訪ねて、山口さんはこちらの顧問弁護士の恩師に当たりますから、顧問弁護士を押さえてもらうために行ったそうですが、その山口教授から、あなたは総長をおやめなさいと、どうも適任じゃないと、そして体育大学学長をしてたらどうですかということを言われましたので非常に腹を立てて、山口は自分学長になりたいなんということを流しまして、それを解雇いたしました。それで、非常な憤りを感じたと思うんです。それが竹内教授と親しいものですから、私はそこから学位論文代作問題の漏洩が出たのではないかと、こう私は推測しております。  それで、一体総長を支えているものは何かといいますと、先ほど申し上げましたように、これはおれの引き受けたもので、おれの物だと。そして、国士館精神を継承して、これを実行していくのは自分以外にないと、こう思い込んでいるようでございます。あるいは、はたがそういうふうにけしかけまして、それを非常にいいことにして思っているかもしれません。それを支えているのは良識でなくて、暴力的なものがそれを支えているように私は見ております。  すべてのいろいろな諸悪の根源はそこに発していると思います。いままでも非常に有能な人で、将来、学長理事長のライバルになるような人は退けてきていました。その一つの例としては、政経学部の大西さんを認めないで、自分の都合のいい者を立てたりしたこともございます。それは大西さんの財力を恐れたのじゃないかと思いますし、そういう例が多々ございます。これはもう生得のものであって、ちょっと直りようがないんじゃないかと、こう観察いたしております。
  18. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、岡澤参考人には、なぜあなた方はそのような身の危険を冒してまでこのような闘いを進めるのか、こういう質問をしたつもりですが、いまの御答弁で本当に国士舘を愛して、りっぱな国士舘にしたいと、こういうお考えでいらっしゃるということがよくわかりましたが、国士舘精神というのは、恥を知れというのが一つ入っているんじゃないですか。約束したことを守らないで、それは恥を知れという国士舘精神には反するものではありませんか。いかがでしょうか。
  19. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) それをおっしゃられると非常に痛いことなんですが、いろいろな項目を挙げておりますが、廉恥ということは挙げておりません。これは、いま倫理観が非常に多様化し、変わってきておりますが、すべての根幹はやはり恥を知ることだと思います。それがなかったら日本精神も成り立たないんじゃないかと思うくらいでございますから、言うには及ばないこととして言わなかったと思いますが、現在の国士舘の状態におきましては、学生にその点をやはり相当よく教育しなければならない事態にあると思っております。
  20. 粕谷照美

    粕谷照美君 よくわかりました。  工学部を初め、そのほか六学部におきまして、また三組合からも——組合というのは教員組合職員組合と中、高の教職員組合から、理事長学長の退陣要求が文書で正式に出されていますね。私は、皆さんの目的は大学の正常化が第一であると、柴田梵天氏を何が何でも退陣させるということが第一の目的ではなかったと思っておりますけれども、なぜこのような退陣要求が出されたのですか。それからその退陣要求というのはいまどのような状況になっておりますか。
  21. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) いろいろなことがございましたけれども、それが直接の動機になりましたのは、やはり学位論文の代作問題でございます。それが新聞紙上に発表されまして、総長は姿をくらまして学校にあらわれません、そして電話で情勢はどうかどうかということは始終聞いていたようですが。工学部でも八日間待ちました。何らの内部に対する釈明もないわけです。それで、創設者の二代目として忍びなかったのですけれども、まず工学部が退陣要求を出しまして、そして七学部のうち六学部が退陣要求を出しました。その後それに対して何らの応答ございません。理事者に聞きますと、答えがないということはノーと解釈してくれ、こういうことでございます。それで、全教員はこのまま出しっ放しでおくわけにはまいりませんが、当人は体育学部教授会には出ておるんでしょうか、その席でおれは死んでもやめない、すべて時が解決する、それからある一部に対しては証拠が挙がらないからあれでいける、こういうあれを持っているようですが、われわれとしましては、社会に恥をさらした人を上に飾っておくわけにまいりません。それでは教育もうまくまいりません。今後綱紀が締まりません、学校全体として。そういうことで、この退陣要求は決して下げません。もし下げるならば、あれを書きました新聞社に対して名誉棄損の訴えをして、謝罪をさせて、社会的な名誉を回復してもらったらあるいは下げるかもしれません。いまOBはみんな困っております。特に教職についている人は非常に肩身の狭い思いをいたしております。ですから、いま向こうは盛んに逃げておりますが、これはこのままでは済みませんし、あるいは最後の決断をしなければならない時が来るかもしれない、こう思っております。
  22. 粕谷照美

    粕谷照美君 最後の決断というのは、粕谷参考人、どういうことを指しますか。
  23. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) 先ほど私に対して粕谷委員から御質問がありました闘う目的とは何か、われわれがなぜそういうことをしているのかということにも関連しますので、これも付言してお答えいたしたいと思います。  私たちがそもそも総長に対して退陣要求を出したその理由の一つは、先ほど岡澤先生から御説明がありましたように、学位論文の代作問題が中心であることはもちろんでございますが、同時に、それ以前にありました教職員の人事の慎重な取り扱いという問題でございます。たとえば、問題の発端になりましたところの政経学部の四教員に対する一方的な身分変更、これは学則などの有効無効は別としまして、少なくとも教員の任免に関する部分については、文書をもってこれを通達するということになっておりますが、それもなしに、一方的に特別運営委員会なるもので専任教員を非常勤にする。そして本人には通知をしてきません。逆に、どうもそういううわさがあるけれども本当かというふうに言ったところ、本当だという回答大学側がしてきた、こういうような状況の中で人事が行われている。あげくの果てに、翌年の四月には、あなたは非常勤になったんだからといって、何らの通知もなく、振り込まれた給与の中に、非常勤給与のわずか九万円というものが振り込まれてくるというような実情でございます。一方、青木、工藤という両教授に対しては、あなた方は非常勤になったからといって退職金を送付する。退職金が送付されて、この二人は初めて専任教員を外されて非常勤になったということがわかったと、こういうような実態でございます。これを教員組合としては、組合の目的であるところの組合員の権利の擁護と、その点からどうしても闘わざるを得ないということになったのは、これは組合にあらずしても当然のことだと思うのでございます。  その後において起こってきたこの暴力事件、並びに学位不正取得問題、そして政経学部がこれに対して、政経学部教員でありました総長に対して釈明を求めたところ、相変らずいつまでたっても釈明がなされない。これでは大学教員たる者その資質に欠けるとして、教授職の解任を行っております。こういうような状況の中で、当然われわれとしましては、総長たる資質に欠けるのではないかというふうに判断しまして、退陣の要求を出してきたわけでございます。  その結果、今日に至るも相変わらずその反省の色もないままに、いろいろなことが行われております。特にこの四月の教職員に対する人事などは、反省の色どころか、むしろそれに対して反抗的にと言いますか、敵対的に対抗してくるというような姿勢まで進んできているのではないかというふうにわれわれは理解するわけでございます。  そこで、このような反省のない状況の中で、われわれが特に教育研究に関する条件が改悪されるということは好ましくない、それが改善される余地がないならば、少なくとも教職員としては総長に辞めていただく以外に方法がないのではないか、その辞めていただくという場合に、私は昨年の六月の十三日のときに、大学教員たる者、少なくとも世間に対してその非をみずから認めて、反省し、その出処進退は自分の力で明らかにすべきものではないのか、これが教育者の道であるというふうに申し上げたのですが、その反省もないまま今日に至った結果、それでは辞めさせる方法というものを具体的に考えざるを得ないという点で、少なくとも退陣要求が入れられないならば、法的に学長の、ないしは理事長の職務執行停止を裁判所に提出せざるを得ないのではないのかというふうに考えております。具体的な取り組みについてはまだ検討しておりませんけれども、もう教員職員に限らず、本学の者は全員やむを得ないという考え方にあるのではないかと思っております。
  24. 粕谷照美

    粕谷照美君 そこまで覚悟をしていらっしゃる方々ですが、先日も私どもお話ししたときには、なぜストライキでもって闘わないのかという御意見なんかもずいぶんあるやに聞いておりますが、しかし、それを皆さんが生徒のためにと、こう努力をされて、一生懸命に教育に励んでいらっしゃることについて、私は心から、教師というのはこういうものなのかと、こう思わざるを得ませんが、ここに三月二十二日付をもちまして、国士舘大学の文学部の史学地理学科東洋史学専攻学生一同としまして、全員のお名前が署名されております嘆願書なるものがあります。この嘆願書は一体なぜ出されたのですか。生徒が嘆願をするなんということは一体どういうことなんですか、お伺いします。
  25. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) 東洋史に関しまして、新しい専任の先生が二名ございませんと講義が行われない、そのために来年卒業できなくなるというおそれが出まして、学生が必死になってまず嘆願書を出したと思います。  それで、先ほど申し漏れましたが、近代化委員会が行われて、そしてその後中村宗雄教授がまだ生きておられるときは、総長を適当に抑えてきたのですが、中村教授が亡くなった後見ておりますと、すべての権限を自分に集中していくような方向にずっと動いてきまして、まずいなと見ておったのですが、現在は理事会におきましても、人事権はおれ一人にあるんだといって突っ張っておりまして、安高理事大塚理事に権限の委譲が何にもなされていないようでございます。したがって、組織においても、権限の委譲がございませんから、課長なども上から命ぜられないと何にも動けないような事態ではありますが、権限の委譲が行われない一つの例を申しますと、人事に関しまして、安高理事総長と激論があった翌日ですか、先ほど申した暴力事件が起きたのですが、おまえは梵天に勝てると思っているのかというようなことで、すぐ翌日脅迫がいくというようなことでございました。  それで、われわれが退陣要求を出しました後、学部長会議を開きません。再三開くように要求いたしましたが、退陣要求を出されているところに出られるかというあれですから、違うだろうと、退陣要求は出したが、とどまる限りは学長という機能そのものを否定しているわけでないのだから、それは開いて当然諸事を審議して進めなければいけないのじゃないかということを言いましたが、開きませんで、われわれの内部の連絡やその他のために、やむを得ず学部長が集まって相談しておりますが、それは私設学部長会議だという無礼なことを言っておったわけですが、最近東洋史の人事問題、先生採用問題で梵天氏一人でがんばっているようですが、そういうような問題を処理しなければいけないので、強く申し入れをいたしまして、じゃ開こうということになりまして、今月初めに、じゃまず懇談をしようと言いまして、学部長並びに総長大塚理事安高理事と会いました。そのときは、本当に懇談にして後味を残さないようにお互いに努めて別かれまして、先月の二十五日に開くことを要求しておったのですが、ストで延びるというから、じゃ前日にやってくれと言いましたら、連休明けにやろうということですが、いまだに通知がないのでまた延びるかもしれません。そこでいま言ったような人事問題を解決してもらうようにしようとは思っております。そういうことでございます。
  26. 粕谷照美

    粕谷照美君 こういうことですね。いまのお話をはっきり言いますと、教員を新採用してほしいと、こう要望したけれども、二年間ほったらかしにされていた。したがって、生徒は必要な単位を取ることができなくて、ことし卒業できるかどうかわからない。全く無責任きわまる学校だと思うのですが、ことし起きた問題じゃなくて、もう二年間放置されているわけですね。それは文学部の東洋史学専攻だけですか。
  27. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) 教員の人事については後ほど詳しく申し上げなければいけないかとは思っておりますが、ただいま御質問がありましたので、東洋史学の件について申し上げますと、実は、これはもう二年有余にわたって大学に対して申請している問題でございます。  実は、その内容を申し上げますと、本来東洋史の方では、特殊講義は十講座開講されなければならない、そうして、そのうちで五教科を選択するようになっておりますが、実際には七教科しか開講されていない。それからまた、演習  いわゆるゼミナールというものですが、六教科のうちから二教科を選択しなければいけないんですけれども、実はこれについても、三年と四年が合同で三教科しかとれるような講座が開かれていないということでございます。したがって、この演習が三教科しか開かれていないということになりますと、学生としてはほかの科目もとらなければならない関係上、この演習の時間にとらなければならない科目がぶつかりますと、演習がとれないという形になります。そうしますと、演習は必修でございますから、卒業できないという事態が起こってくる。確かに一つも開かれていないというわけではないんですけれども、実はいま申し上げましたように、本来開かれるべき講座数において、学生が勉学を進めていくということにならなければならないにもかかわらず、それができない結果、非常にまずい事態になっている。すでに本年度授業が始まっておりますが、いまだにそれが承認されていない。少なくとも文学部に関する限り、三名の専任教員を要請しております。そうしないと実際に行き詰まりが出てきます。史学科の場合には二名の補充が必要であるというふうに申請しておるところでございます。これに対して大学側が一部、現在教員として採用はしているけれども、給料だけ払って授業をやっていない教員がいるから、これを使えというふうに言っている部分もあるようでございます。しかしながら、それについては文学部教授会としては適当ではない。すなわち文学部教員として適当ではないという判断のもとに、従来からこれを採用しないという形をとっておりまして、一部対立的な関係があるやに聞いておりますけれども、本来大学教員の人事というのは、学部教授会に置かれるべきものであって、理事会が一方的に押しつけるべき問題ではないという線は守られなければならないのではないのかということで、実は、この教員の三名について早く承認しないと、来年度は、一昨年になりますか、百二十四単位卒業と同じような結果が再び繰り返されるという事態が起こってくるのではないのかというふうに考えられます。
  28. 粕谷照美

    粕谷照美君 それは大変なことで、文部省としても黙っているわけにはいかない状況だと思いますが、ところで、十年間も教員として採用されていながら、給料だけもらって授業をしないでいいなんていうのは、一体その人が何をしていらっしゃるんですか。十年間もなぜ文学部でもって拒否をされているんですか。一体どういう方なんですか。
  29. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) この方は藤井宏さんと申しまして、北海道大学から来られたというふうに聞いております。私はまだ日が浅いものですから、その当時のいきさつについては、詳しいことは存じ上げておりませんが、ただし、この方については文学部教授会並びに、できれば教養部の方にも採用してほしいというふうに理事者の方から要請があったようでございますが、どちらの学部もそれについて不適格という判断を下しているようでございます。しかしながら、大学側が雇用した以上、これを解雇するということはできませんので、給料だけ与えて、自宅待機の形をとって勉学ないしは研究なさっていらっしゃるのではないかと思われます。そういう状況でございます。これは何もお一人に限ったことではなくて、ほかの方の場合もございますので、一名だけではございません。
  30. 粕谷照美

    粕谷照美君 まことに不思議なことがあるんですね、天下の北大の先生であった方がそのようだなんということは。言いづらい部分もあると思いますから、私はこれはそれ以上お伺いしないことにいたします。  大体時間も参りましたので次に移りますが、柴田梵天総長の学位ですね、その学位問題について調査委員会が持たれたんですか。この私の手元に調査委員、武田正二政経学部教授及び調査委員、政経学部助教授粕谷慶治さんのお名前で、学部長の戸崎徹様あてに報告書が出ておりますね。この学位の問題は、あれはやはり新聞紙上に報道されたり、国会の中で追及をされたような実態があったという結論になったんですか。そして、それは学校当局としても認められたのですか、いかがですか。
  31. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) 実は、その調査委員の当事者が私でございまして、私が武田先生と一緒にやりました内容について、政経学部教授会に対して調査報告をいたしたわけでございます。  実は、学位の問題の審査に関しては、これは大学院の委員会が行うべき問題でありまして、学部がこれを行うということはできません。ただし、この問題に関して、なぜ学部が行ったかということになりますと、実は学部の教授であるところの柴田梵天氏に関して、学部の教授として適当であるかどうかという問題を中心にして、学部独自にその問題の調査を行ったということでございます。  したがって、本来学位そのものに関する内容については、大学委員会が行うべき問題なんでありまして、それについては文部省の方について御答弁がすでに何回かなされているように、相変わらず大学院としては、かつてやったものについていまさら取り上げる必要はないということで、報告されたままになっていると聞いております。その後文部省はこれでは十分ではないから、再度報告するようにというふうに要請されておったはずでございますが、その報告は再度なされていないというふうに聞いております。したがって、現在の段階では、その疑惑は残ったままであるというふうに言わざるを得ないと思います。政経学部教授会は、それに基づいて柴田梵天氏の教授職解任をいたしたわけでございます。
  32. 粕谷照美

    粕谷照美君 ところで、国士館大学の中には非常におもしろい雰囲気があるんじゃないですか、その学位問題に絡みまして。いわゆる総長代理とおっしゃる中山茂さんという方がいらっしゃいますね。その中山茂さんという方から学位を買わないかと、こう言われた弁護士さんだとか、先生方から私お話を伺ったんですけれども、事実そんなことがあるんですか。組合ニュースの中にも学位だとか、教歴だとか、履歴などについて中山さんという方、ちょっと疑惑があるという記事が載っておりますけれども、その辺のところはいかがなんですか。
  33. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) その辺の疑惑について、実は非常に大学としてこういうことは不名誉なことでございますが、本来、本学に就職する際にどの程度慎重にその採用の審議がなされたかという点において疑問が残るんではないかと思うのです。その辺が明確になっていたならば、今日のような事態は起こらなかったんではないかと思っております。  ここに岡澤学部長がおりますので、学部長会の中でも、実は、この中山先生については、政経第二部において、教授職はちょっとまずいという意見が出されたり、あるいは講師を一年間やった後に助教授程度というようなことが教授会で議論されたというやに聞いております。しかしながら、そのときにどうも論文の内容、ないしは学位論文そのものの提示を求めて審議したというふうには聞いておりませんので、その辺のあいまいさが今日に至りまして問題になってきているというところかと思うのでございます。  実は、読売新聞の本年一月一日号に、スイスのベルン大学というところで学位を乱発したというようなことについて、非常に問題になったと。ところが、実はこのスイスのベルン大学はそんなものは出していないと。インチキなものだということが社会の一面のトップに出ておりましたことは皆様も御存じのことかと存じますが、実はそれに絡むかどうかわかりませんが、この中山先生がベルン大学で学位を取られているということが、その履歴書に載っていることは事実でございます。それについてどのように取り扱うか、これは政経第二部の方で現在取り扱うように話を聞いております。
  34. 粕谷照美

    粕谷照美君 いま粕谷参考人、中山茂さんという方もそのベルン大学の学位を持っていらっしゃるとこう言われましたね。あの読売の記事が出まして、スイスのベルン大学は非常に怒りまして、そして厳重な申し入れがこちらの方にもあると、ちょっと司直の手も入っているやに伺いますけれども、その辺の情勢は御存じですか。
  35. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) その辺の詳しいことは私どもわかっておりませんけれども、実はそういう疑惑があったために、それでは中山先生についてその辺がどうなのかということの明確化が必要ではないのかという点で、政経第二部の方で問題になったというふうに聞いております。司直の手が入ったかどうか、それについては読売の一月一日付の新聞以外に私どもは聞いておりませんけれども、ただ、教員として、もしそれが事実であればまずいという点で、これも総長の学位と同様明確にする必要があるんではないのかということが政経二部の方で問題になっているということでございます。
  36. 粕谷照美

    粕谷照美君 では最後にお伺いをいたします。  事の発端は国士館大学暴力問題から発して、とにかく文教の中では、私学の内容について介入するのはやめようということではありましたけれども、やればやるだけに暴力だけでおさまらない問題点がありました。しかし、この暴力的な国士館の体質というものは、今回の人事異動をめぐって一掃された、あるいはされつつあると、こうお考えになりますか。御両者にお伺いして終わりたいと思います。
  37. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) 決して一掃されませんで、ますます混乱を深めていくように思います。
  38. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) まだこれ全部教員の人事についても申し上げておりませんが、特に教員の人事に関しましては、四十九名採用、ないしは昇格をしておりますが、このうち十二名程度にしか理事会の承認がなされていないという事実が一つございます。それから、職員の人事に至っては、現在不当労働行為で東京地方労働委員会に申し立てをしております。すなわち、文部省指導、助言を受けた段階から考えますと、少なくとも、この教職員の身分、人事の慎重な取り扱いということは、むしろ逆行する形でなされているんではないか、こんな不当労働行為で提訴するような事態が起こること自身が間違っている、むしろそういうこと自身がおかしいというか、大学側がむしろ歴史の歯車を後ろに回しているんではないかというふうに考えざるを得ないと、こういうふうに私は思っております。
  39. 粕谷照美

    粕谷照美君 終わります。
  40. 白木義一郎

    白木義一郎君 本来大学内部の問題は大学自体で、部内で解決が図られるべき性質のものであるということは当然なことでありますが、しかしこの国士館の問題の場合は、いまいろいろと伺っておりますと、教職員があえて文部省に上申書を提出せざるを得ないという事態、あるいは国会に陳情書を持って取り上げてほしいと、そうしなくてはならないというような現状は、伺っていてまことに異常な事態であると思います。で、暴力事件に関連して、四十八年から国会で取り上げられたという事実もございます。きょうお見えになったお二方、大学関係者の方々としては、こうした事態を招いているという原因がどこにあるかということをいまいろいろと御説明をいただいたわけですが、時間の関係もありますので、そのものずばりお答えいただきたいと思いますが、根本的な原因はどこにあるのか、またどうすればこの大学問題を災いを転じて福となすという方向へ結論づけられるのか、この二点を最初にお伺いしておきたいと思います。
  41. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) 先ほども申し上げましたように、これはおやじから受け継いだ自分のもので、これを子々孫々伝えたいというその執着に根本の根を発しておりますので、その考えが改まらない限り、これは次々に続くことと思います。その意味で創立者の二代目として、適当な処遇をして、そして実際の仕事を適任者に任せるということにしなければ改まらないと、こう思っております。
  42. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) その辺について私の方も一言申し添えさせていただきたいと思います。  一体その原因がどこにあるのかということについてでございますが、これについてはもういまも申し上げましたように、そもそもこの国士館大学という社会的、公的な機関を、私塾的といいますか、そういう私的所有物と考えているところに大きな原因があるのではないか。それを国士館精神という美名のもと自分の取り巻きが擁護する形の中で、その体制を維持していこうとしているところに非常に大きな問題がある。すなわち今回の職員の人事、あるいは教員に対するそういう一方的な押しつけ、ないしは不承認というようなことがその原因ではないか、その理由ではないかというふうに考えておるわけでございます。ですから、本来通常の大学としてあるべき姿勢というものはどこにあるのかということは、考えられる範囲においてこの学内問題対策委員会、これが検討しているわけでございますので、具体的に解決するというふうにするならば、教職員の総意を得て選出されたこの対策委員会とどのように大学側対応するかといいますか、この意向に従って運営されるべきものだというふうに考えておるわけでございます。それにもかかわらず、対策委員会を敵視するような形の中では問題は解決しないだろう。問題の解決というのは、大学は自治というものがございますので、その点においてこの対策委員会に非常に大きな期待が寄せられてきたわけでございますので、何とかこれを実現する方向で、大学側がこの対策委員会の対策案、ないしは決定案に対して、具体的に実行するという姿勢を示してほしいと、こういうふうに考えております。
  43. 白木義一郎

    白木義一郎君 岡澤先生にお尋ねいたしますが、先ほど御答弁の中で、文部省の方から改善の要求の六項目大学は受けている、そのうちの四項目は実行できていると、こういうお話がありましたが、それではあとの二項目がまだ実行できていないと。どういうことでしょうか。
  44. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) 文部省からの勧告は八項目ございます。そして、その中で政経学部教授会の正常化と、その上で学部長問題、それから、人事問題の解決というのは、これは大体解決しております。それから、入学者選抜の公正と入学を条件とする寄付金の徴収の廃止、これも今年は改正されております。それから、法学部教授会の正常化、これも一応正常化されました。それから、中学校、高等学校の円滑な運営という、これも大体いっております。それで、あと残っておりますのは、学内諸規程の整備、それから、教職員身分の慎重な取り扱いと手続の厳正、それから学生暴力行為の根絶について適切な処置を講ずること、それから法人全体の円滑な管理運営に十分配慮すること、この四点が残っております。
  45. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、大臣の方にお伺いしますが、この国士館問題の経過の中で、大学の方から数回にわたって上申書が出されているように伺っておりますが、この上申書に対する文部省のお考え、またそれに対してどのような対応をされたかということについて、文部省にお尋ねをいたします。
  46. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 国士館大学の事態に関しましては、昨年の四月以来、これまで六回にわたりまして、教職員の代理の方、あるいは教授会、さらには学部長の代理人から、文部大臣、あるいは担当局長あてに、学園の不正常な運営について、文部省の措置を求める上申書が提出をされております。これらの上申書で述べられております事柄につきましては、これまでもこの委員会において御報告をしてきたところでございますけれども、文部省としては、必要に応じて関係者から事情を聞く、あるいは改善すべき点につきましては理事長初め大学側の責任者にその都度指導を行ってきている、そういう経過でございます。
  47. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、大学の皆さん方はいままで上申書を出し、あるいは陳情書を提出したりして、何とかこの問題を解決をしたいというようなことで今日まで経過を、ときを過ごしているわけですが、いま伺っておりますと、大学当局は文部当局の改善要求についてもいまだ大事なところは改善をされていない。また、いま文部省からの説明のあったとおりでございますが、やはりいい結論の方向へ向かってないというようなことから、極端に言うと、文部省にいろいろと働きかけたけれども、文部省頼むに足らずというようなことで、今回不当労働行為救済の申し立てを地方労働委員会へ行ったと、こういうことに伺ってよろしいでしょうか。
  48. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) その件について、これは事実だけを申し上げますと、実はこの四月人事についての配置転換の発表は三月の二十七日に行われました。文部省並びに私学振興財団からの助成金の交付決定が同じく三月の二十七日でございます。どうもこれを見てますと、助成金をもらう以前には、そういう不当労働行為で訴えられるようなことをしてはまずいということで押さえに押さえてきたと、そして交付決定になった段階において同時発表したというふうに私どもはとっております、たまたまその事実が符合したという点において、そういう点でも、非常に大学側というのは、文部省から受けた指示改善事項に対してどのように取り組んでいるんだということについて疑問を持たざるを得ない、ということは、先ほど申し上げましたように、その不当労働行為として取り上げられるようなことが行われるということ自身において、すでに文部省指導改善の意を受けていないというふうに理解していいんではないかというふうに思っております。  それから、先ほど岡澤学部長の方から四項目と申し上げましたけれども、実は文部省の方は六項目という形で、最後の三つの方を一つにくくっておるようでございますが、私どもはそれを細分化しまして、さらに三つに分けて八項目ということになっておるわけですが、実はそのうちでも、たとえば政経学部などにおいても、相変わらず大西藤米治教授の問題は残っておりますし、それから特別運営委員会採用の教員の問題について、逆にそこで採用されたのに、いまさら再度助手採用試験をするのは不当であるというふうにして、教授会の決定に反する行動をとっている若い先生たちもおりますし、そういう点での問題がまだ非常にたくさん残っております。そのほか入学者の選抜に関する件につきましても、従来どおりの一応の方式をとっておりまして、学部が直接それに関与するという点においての欠如する部分がございます。たとえば、いま申し上げましたように、寄付金は取らないけれども、実は入学の試験の問題などの作成に関しては、教授会というよりは、入学課なるものが直接にそこに関与しましてやっているという点でございます。この点については各学部教授会は、来年度は教授会学部において独自にこれを進めたいという意向を持ってやっているようでございます。そのほか学生暴力の問題については解決しておりません。それから中学、高校の問題につきましても円滑にいっていない部分が相変わらず残っております。それは職員会議の議が尊重されないで、一年そこらぐらいしかたたない、まだ一年ぐらいしかたたない高校の先生が資格があるからということで採用されただけで、特にこの方は自衛隊の方から来た方でございますが、いままで自衛隊にいて、教員資格を持っているという形で、中学、高校の教員として採用されて、長い間教壇に立っていないままクラス担任をさせるというようなことで不都合が生じているとか、そういうような部分職員会議の議を無視している部分もまだ残っているという点から言いますと、最終的にまとめまして法人全体の円滑な管理運営というのは行われていないというふうに判断せざるを得ないんではないのかというふうに思っております。
  49. 白木義一郎

    白木義一郎君 最後に文部大臣にお尋ねしておきますが、この国士館問題について、頻発し、また暴露されてきた不祥な事件、この上申書に盛り込まれておりますが、学生暴力事件の問題、二番目は、政経学部、法学部学部長の問題、第三には、政経学部教員の一方的身分変更の問題、四、政経学部の特別運営委員会の是非の問題、五番目に政経学部の不正卒業の問題、六、学長総長の学位不正取得の問題、博士論文の代作、盗作、七番目には、入学を条件とした寄付金とその取り扱いの問題、八番目は、総長選挙運動の問題、九番目に給与、手当等に関する税法上の問題、十番目には、法人会計の使途不明金(国会対策費等の問題)、十一番目は、参考人として国会への出頭拒否問題、十二番目、教授会の自治と法人運営全般に関する問題、十三番目は、教職員の不正に対する処置の問題、十四、法人役員の発行文書の問題、十五、中・高校の運営と教頭の不正の問題、こういう問題を一つ項目として、不当労働行為の申し立てを行っておりますが、いまいろいろと伺っておりますと、大学の正常化という問題について、文部大臣としては長年のうんちくを傾けて、希望的な方向へどのように方向づけをされようとしていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  50. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 実は、私もいま詳細に承ってびっくりしたんですが、こういう学校が日本にあるのかと思って、私も驚いているわけですが、問題は、私学の根本は理事会ですから、理事会が何をしているかということなので、理事会が運営していないんじゃないかと私は思うので、やっぱり私学の運営は理事会が根本だから、理事会が健全な運営をしていただきたい、こう願っておるものであります。
  51. 白木義一郎

    白木義一郎君 大臣、何だかいまこの問題を初めてお聞きになったようなお話ですけれども、長い間あなたここに——そしてはからずも文部大臣になられたわけです。ですから、いまのようなお話はちょっと伺えない御返事です。ずっと関心を深くお持ちになっていらしたに違いないと思います。それで困っているのはみんな因っているわけです。そこで、最高責任者である文部大臣にどういう方向へ今後この問題を導いていかれるか、あるいは指導されていくかというお考えを最後にお伺いしたかったわけです。よろしくお願いします。
  52. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 私も承ったことは確かでございますけれども、こんなに詳細に聞いたのは私本当は初めてなんです、こちらでよく伺っていましたがね、あなたのおっしゃるとおり。しかし、これほど直接責任者から伺ったのは私は初めてだと、こういう意味で御理解をいただきたいと思います。  それから、私学の運営の根本は何といっても理事会ですから、理事会が正常に動いてないんですよ、この学校は。だから、根本は理事会が正常に動いて学内を統制するようにしないと、いつまでたっても私は解決しないと思うんです。文部省からたくさんの指導項目が出ていますけれども、これも十分に守られてない。その根本はどこだといったら理事会だと思う。その理事会が健全な運営してないと私は思うので、やっぱり総長学長の責任ももちろん大事ですけれども、一番大事な理事会が健全な運営をすることだと思うので、私ども今後一生懸命努力したいと思います。
  53. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 岡澤教授にお伺いをいたしたいと思うわけであります。  国士館大学と言えば、戦前からある、大変その名前は国内でよく知られておる大学——いまたくさん大学がございますから、ぼくも全部の大学名前言ってみろといわれたらそれは何点とれるのかと思うのですが、大変有名な大学だと思うのです。遺憾ながら昭和四十八年以降参議院並びに衆議院で二度にわたっておいで願うというようなことでございますが、私も心か、多くの——たしか一万五千人の学生が在籍をしておるかと承知しておるわけでありますが、多くの学生が在籍をするこの大学が、民主的に健全に発展されることを心から願ってお伺いをするわけでございます。  初めにお伺いするわけですが、いま志願者の数というのは、こういう状況の中でどういう状態になっているのか、通常のほかの大学と比較をして、非常にふえるというような状況になっておるのか、どうなのかというようなことをちょっとお伺いしたいと思います。
  54. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) ことしは六千人志願がございましたが、去年から見ますと約三割減でございます。
  55. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 とかくの話はあろうと、いわゆる戦前の校歴の古い大学は、非常に学生が殺到するというような状況の中で、私も六千人というふうに聞いて、やっぱり非常に少ないなあと思うわけです。普通一万五千人の在籍の大学というのは、同規模のもので戦前に出発しておるものは、大体五万人とか、あるいは四万人とかいうものが受験をするのが普通の状況であって、まあそれに比べると非常に少ないですね。健全な発展をされて、一日も早く多くの学生が、いま受験難のときでもございますし、喜んで進んで行って、そして充実をした教学が行われるというふうになるように願っております。  そこでお伺いをするわけですが、特に数回にわたって柴田梵天総長の御出席を本委員会として求めてきたわけですけれども、一向おいでにならぬ。これにかわる方もなかなか、柴田さんの承認のもとにかわる方が御出席になるということが実現しない。こういう状況の中で、教授会代表されまして先生に御出席を願ったわけであります。特に私がこれまで文部省に対しても質問をしてまいりましたこの中心問題は、何といっても大学というのは、学問を学び、研究をするところでありますから、教授会の位置づけが教育基本法、学校教育法に従って、りっぱに貫かれていなければならぬということだと思うわけでございます。学校教育法の第五十九条で、重要な事項審議するためには教授会を置かなければならない、法定事項になっておるわけであります。この教授会がどういうふうな重要事項審議することになっておるのか。この重要な事項について最近における総長との関係はどうなのか。この問題について簡潔にお願いをしたい。  あわせて、最近の教職員の人事の問題でございますが、教学側の役割りを十分に尊重しない大学は私は欠陥大学だと思うわけでありますけれども、この人事については、どういうシステムで大学では御決定になるのか、そしていまどうなっておるのか、この点簡潔にお願いしたいと思います。
  56. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) 教授会で扱いますもの、全体は覚えておりませんが、まず教員の人事問題でございます。それから教育に関する問題、それが主でございます。ところが、うちの学則では学部長会議教授会に優先するような形になっております。そのために学部長選出というものに非常に学校では力を入れます。自分の思うように運営できる学部長を選びたいということがございまして、前に文部省勧告にございました政経学部とか法学部、その他に関しましては、学部長選挙に裏では非常な干渉がございました。法学部におきましては総長みずから教授会に行って、今度はこの人にしてくださいよと、こう言って引き揚げると、途端に中では反対だと、こう言うわけです。すると、その指名された人は不安になってもう一遍総長を連れてきて、もう一遍言ってくれと。今度はこの人にしてくださいよと。また黙っていて、引き揚げると反対だと、こう言うわけです。ぼくはそれを聞いて、法学部の先生少し情けないんじゃないかというふうなこともございましたけれども、そういうようなことで前の学部長選出され、それが文部省勧告によって改められたわけでございます。  教員人事の採用に関しましては、いまでは各教授会が審査いたしまして、業績その他を見て申告をいたします。それに対して理事——といっても人事権はおれ一人にあるんだというところの理事会でそれを決めるんですが、それ以外に先ほどの問題になった中山教授や何かは、教授会にかける前にもう教授に辞令出しちゃっているようなことじゃなかったんですか。そんなような人事をやっているわけです。
  57. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 そこで、今年度の、四月一日に発令をされた人事についてお伺いをするわけでございます。  すでに昨年以来文部省からも人事については教授会の意向を尊重して、慎重に行うように指導をしておると言われておるさなかにおける人事でありますから、私も非常に注目をしておったわけでございますけれども、これは決してスムーズに行われたと言えないと思うわけであります。この点について粕谷さんの方から、今年の四月人事について、実情と問題点についてお伺いをしたいと思います。
  58. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) お答えいたします。  まず、教員の側の方から申し上げますと、先ほども申し上げましたように、四十九名の採用を要求しておりますが、私どもの把握している限りにおいて、十二名程度しか採用されていない。その十二名のうちも、特に、実は教養部の方において七十七歳以上九十二歳に及ぶ方々が九名入っております。これは実は学生にとって非常に高年の方ですと、授業を進める上においてまずいし、それと、もうこの方々にはおやめいただきたいということで、教養部教授会で決定しましたが、逆に大学側がそれを採用するという形で、いまだに採用されて勤めておる次第でございます。ですから実質的には三名程度の者が専任教員として採用されたにすぎないという実情がございますし、その不採用になって、理事会が認めていない部分についても、過去三年にわたってそのままにされている方がございます。これについては、もう人権問題だから、人権擁護委員会に出したいという、ある学部長意見がございます。それも申し上げておかなければいけないんではないかと思います。こういうような状況が教員において行われている。その期間が余りに長くて、本学に採用ということについて、実は総長と直接会って話をした方が、その年に採用されないために本年よその大学に行ってしまったという形のために、教授会の議がそこでまた無視をされた。そして本学では採用できずに困るという事態が生じているということもございます。  それから、職員の方に関して申しますと、これは、教員といいますか、教学に関する意見でございますが、実は昨年の六月に、事件が起きた当時問題とされまして、高校生の入学に際して五万円の賄賂を取るという中学・高校の教頭がございまして、刑事事件にも発展する非常にまずい問題であるから、これを解雇をするというように要求しておりましたが、組合としましては、これはまあ生活上の問題もあるから、閑職につかせるということで一応妥協したわけでございます。ところがその方が実は本年の四月の人事で、再び鶴川分校の主事に——この鶴川分校主事というのは、事務当局の最高責任者です。教養課程二年間ある鶴川分校の事務の最高責任者につかされたと。どういうふうになっているのか、私どももちょっと理解できないのでございます。  それからもう一つ、長谷川芳男という短大事務長がおりますが、この方はかつて学部学生の成績改ざんに伴って職員組合の方から異議が申し立てられて、大塚理事自身が、これは解雇に値するものだ、ただし、学生と直接接触しない部署に置くということで組合が妥協してくれるならば非常にありがたいことだということで、実は学生に直接接触しない部署につかせたんでございますが、昨年の八月一日、再びこの成績改ざんを行った主事を短期大学の事務長につける、こういうことをやったわけでございます。これで一体教育の場と言えるのかどうかということで、各組合とも大学そのもの教育の場としての非常に重要な部分を維持するために、三月の時点において大学にこの撤回を要求しております。そういう事態がまずあるということ。  それから同時に、不当労働行為で申し立てております内容の中には、非常に多くの問題がございます。それについて挙げますと、非常に切りがないんでございますが、非常に問題だと思われるところは、職員の人事協定というのが従来ありましたが、それは四十九年十二月一日の時点でございます。それが一年を期間として更新されることになっておりましたものが、大学側の一方的な事由によりまして、その締結をしないということが五十一年において起こったわけでございます。その同人事協定というものは、これは非常に教職員、特に職員ですが、職員の人事の円滑な運営のために、大学側職員組合とがその一つの方策として取り交わしたものでございまして、一方的な破棄に対して職員組合の方では申し入れをしましたところ、その精神は尊重するということで、五十二年十二月五日に再びこれを取り上げて、慣行として行ってきている事実がございます。それにもかかわらず、五十三年十二月に至りまして、今回の六十一名の職員の採用という問題が突如発表されたわけでございます。先ほど申し上げましたように、教員は四十九名中十二名しか採用していないにもかかわらず、職員を六十一名も採用するというこの考え方は、一体大学教育の場と考えているのか、大学職員によって管理運営教育される場と考えているのか、本末転倒しているのではないのかということで、この問題について考えなければいけないんだろうということになっておるわけでございます。  それからもう一つこの六十一名の採用に関しまして、先ほど内藤文部大臣が触れられましたのであえて申し上げますが、この採用に関して財務担当の理事である安高理事は直接的に関与しておりません。これは多くの場における発言において、われわれは確認をしております。それからもう一人、大塚理事に関しましても、相談は受けたらしいんですが、直接的には知らないというのが実情でございます。すなわち、柴田梵天総長によって決定された人事を、大塚理事がメッセンジャーボーイとして伝えてきたというふうになっておるわけでございます。  そこで、この内容でございますが、特に問題としなければならないのは、配置転換によって、人事の偏向が行われた。特に問題としなければならないのは、学生部に対して非常に多くの職員を配置する。特にその中には、かつて非公認クラブのクラブ員であった者、あるいはかつて学生時代に事件を起こして停学処分を受けた者など、こういう者が採用されて、配置されているという事実でございます。ですから、幾らわれわれががんばってみたところで、学生指導、管理がまともにできるわけがないというふうに申し上げなければならないんではないのかと思うんです。この学生部というものが非常に異常である点に関しましては、ここに本学に勤めて一、二年の者において、通常ですと七、八年かかる係長に抜てきしているというような事態も起こってきておるわけでございます。そういう中で、実は有能な、かつて十一年、十五年と勤めた教務部の松本、尾子という、こういう課長補佐及び課長代理、こういう方々が閑職——特に松本さんは自動車学校、これは非公認の自動車学校ですが、ここに、何の用事もないところにつけられたわけでございます。それからその尾子という次長は、十五年勤めたベテランでありながら図書館の閑職につかせられるとか、あるいは就職課の課長、この方も長いことお勤めになった方ですが、鶴川の図書館という平職員にされるとか、組合の三役の書記長、それから委員長、副委員長、これが同じく職場の要請がない、人事の増員の要請のないところへ配転されると、こういうふうになっている。すなわち本学においては六十一名の職員の採用は必要ないと。安高理事の言によりますと、本年退職者は約二十名おりますので、その補充分、二十名程度あればいいんだという発言もございますことをつけ加えて申し上げておきたいと思います。  その他、不当労働行為については非常に細かい部分についてたくさんございますので、申し上げれば切りがありませんけれども、要はこれらについて、安高、大塚理事が、理事会決定という表向きの内容とは別に、全くこれについて意見を異にしたり、あるいは発言を封じられたりしているという事実がございます。
  59. 望月邦夫

    委員長望月邦夫君) 粕谷さん、時間が短いものですから、なるべく簡潔に願いたいと思います。
  60. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 大体時間が来ておりますので、それでは最後に文部大臣にお伺いをしておきたいと思うんです。  お聞きのように、国会もこれを憂慮をして、そして四十八年、今回にわたって事情聴取をするというような状況であり、引き続いて文部省では、昨年来指導を重ねられておるわけであります。開いてみれば、先生方は一日も早く憲法あるいは学校教育法に即して、学生が喜んでやってくる大学にしようと思って努力を重ねられておるようであります。理事会もまた、理事の諸兄は、先生方とも連絡をとって、将来的にはこの問題を正常化をし、発展をさせるように、動揺の向きはあろうとも善意の努力を重ねられていると思うわけであります。  ところが先ほどからもつまびらかにされておる実情は、これは必ずしも教授会理事会の対立でないということですね。あるいは諸機関の中で意見の対立があって、紛争があるわけでもない。もし学長がこの多数の理事、あるいは教授を信頼をして、事態の善処と発展を望むならば、必ず日ならずして改善をされるという状況があるにもかかわらず、挙げて独裁的な立場から理事会を踏みつぶし、それから人事協定をじゅうりんをし、あるいは人事委員会の言うことを聞かず、学則を無視し、そして独走されるというところに私は問題があるように思う。しかも、国会に前中村理事等が来て約束をされた問題、あるいは指導に対して一定の対応答弁をされた問題——暴力体質を克服をするということ、教学内容については学生監等を廃止して、教育については教学と結びついた学生指導をやることと、採用等についても教授会の権能を強化しながら、改善を重ねていくというようなことについて、私は学長の誠意が疑われると思うわけであります。この点については、文部大臣であるとともに教育界で長く歩んでこられた文部大臣、特に私学については経営にもタッチをされて、裏表通じてよく御存じだと思うわけです。ひとつ柴田梵天総長にお会いになるかならないか、とにかく文部省で六項目指示事項を、以降これを完全に履行させるように努力をしていただきたいし、決意のほどをお伺いしたいと思うわけであります。  それとあわせて、前回にも補助金の問題についてお伺いをしたわけですけれども、補助金については慎重に検討しながら支払いを留保するとあったわけで、支払われた瞬間にまたもとのもくあみに返るというような憂いなきにしもあらず、この点についても一言御答弁をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  61. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 小巻先生の御意見、まことにごもっともでございます。私学は私も自分で経験がありますけれども、やっぱり教育の面は教授会中心でやると、それから管理運営理事会中心でやる。理事長が横暴をきわめるというのは、理事会が私は意気地がないと思うんですよ。理事会が何しているんだと言いたいんですよ。そこでやっぱり、しっかりした理事会がきちっとし、教育研究教授会に任せる、こういう体制を早く確立したいと思うんです。そうでなかったら、これは補助金やっても意味がないと私は思うんで、やっぱり、せっかく国の補助金を出す以上は、りっぱな健全な運営をしていただきたいと私は心から願っているのでございます。
  62. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 五十三年度の国士館大学に対する補助金は、二五%減額をされたということを聞いております。これにつきましてまず参考人にお伺いをしたいのですけれども、これはもちろん私学振興助成法第五条の規定に従ってなされたものだと思いますけれども、どのように解釈をしておられますか。どういう原因で減額されたというふうに受け取っておられますか、まずお伺いをしたいと思います。
  63. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) その点について私どもが聞いている範囲では、私学振興助成法の第五条第五号、すなわち「その他教育条件又は管理運営が適正を欠く場合」というふうに聞いております。先ほどから申し上げていますように、まさに私どもにはそれは本当に適用されてしかるべき問題ではないかというふうに考えております。
  64. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 文部省側にお伺いしますが、具体的にどういう理由で減額されたわけですか。
  65. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 国士館大学に対します五十三年度の経常費補助金の交付をどういうふうにするかにつきましては、日本私学振興財団におきまして慎重に検討をしていただいたわけでございます。同大学につきましては、教学並びに経営の両面にわたりまして問題点の指摘がずっと行われてきていたわけでございますが、今回の二五%減額の措置は、全体として私学振興財団の総合的な判断ではございますが、主として学校法人の経理処理に関連いたしまして行われたものでございます。  そのことでございますが、これはやはりさきに当委員会でも御指摘のありました国会対策費という問題がございます。これにつきまして、私どももいろいろ事情も聴取いたしておるわけでございますが、やはりこういった百万単位のお金の経理の処理につきまして、その出納の仕方というものが安易ではないかということが問題でございます。経費の使途につきましても問題がございますけれども、やはりこの出納の仕方が安易であるということから、ただいま御指摘のございました私学振興助成法第五条第五号にございます「管理運営が適正を欠く場合」、これに該当するというふうに判断いたしまして減額の措置を講ずることにしたわけでございます。
  66. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 国会対策費の使途の内容については十分つかまれた、把握されましたか。
  67. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) これにつきましては、私ども文部省といたしましても、それから私学振興財団におきましても、事情聴取を行った次第でございますが、まあ大学側のと申しますか、理事長側の言っておられることを要約して申しますと、国士館の問題が国会において取り上げられていた状況にかんがみまして、問題解決について種々の協議を行いますために、学内関係者による会合を開いた際に要した会議費、交通費、通信費等に使用したものであるというような説明でございまして、なおそれらの詳細な細目についての資料の提出、あるいは説明等を私どもは希望しておるわけでございますが、一方におきまして、理事長の横領といったようなことにつきまして告発が行われているというような状況も並行してありますことから、現時点においてそれ以上の詳細な説明は控えさしてほしいというふうな対応をわれわれに対してなさっておるわけでございます。したがいまして、それはそれといたしまして、学校全体の経理としてはきちんと行われておるという状況もありまして、それらを総合的に判断をして、実際に授業も行われておりますし、学生も勉強しておるというようなこともございますので、二五%の減額という判断を振興財団の方でいたしたというふうに理解をしております。
  68. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 結局いまの御説明を聞きますと、三百万円だと思いますけれども、国会対策費の使途というものは十分つかめていないということになると思うんですね。それで、これはやはり横領の疑いもあれば、政治資金規正法違反の疑いもあれば、あるいは贈収賄につながる可能性すらあるというきわめて犯罪性の強いものだと思います。したがって、私は文部省にやはりもう少し徹底的にこれを調べてもらわないと、本当の問題点というのはえぐり出せないのではないかという気がするわけです。  それからあわせて参考人にお伺いしたいことは、この国会対策費の面は、私は恐らく氷山の一角だろうと思うんですね。そのほか、一応経理的には処理されていても、ちょっとやっぱりおかしいという問題がかなりあるのではないかと思うんですけれども、この点について何か御意見があればお聞かせをいただきたいと思います。
  69. 岡澤文一

    参考人岡澤文一君) これは事実をつかんでおりませんが、内部で耳に入ったことなんですが、学位論文代作に二百万円の謝礼を払いましたが、これは学校の金で謝礼をしたという疑惑が残っております。そのもらった者はそれを返したそうです。しかし、これは私は返したか返さないかは問題じゃないと思っておりますが、それは私耳に入っております。あとの細かいことは私よく存じません。
  70. 粕谷慶治

    参考人粕谷慶治君) 私ども実は告訴するに当たりまして、いろいろ調べた部分もございますし、その内容について弁護士の方から口どめされておりますので、その詳しい内容を申し上げるわけにいきませんけれども、実は新聞紙上などに載りました金額については、約一千万を超える部分があります。いま田渕委員から出ました三百万円は別としましても、そのほかのお金についても、総長が使途を明確にしないまま支出しているという部分についての内容が非常にたくさんあると。どうも聞き及ぶところによりますと、ある理事が一部自分たちの体制擁護のための運動資金に使ったというふうに発言しているというふうにも聞いております。そういうものを含めて、非常に明確でない部分が約一千万近くあったということを承知しております。
  71. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いまの参考人の御発言のように、ほかにもまだまだ不明朗な部分が非常に多いと思うんです。私はそれに対して文部省調査とか、監督とか、どうも生ぬるいような気がするんですけれども、いまおっしゃったような点については、文部省は調べられておるわけですか。
  72. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 先ほどの学位論文の謝礼の問題につきましては、これは学校側としては学校法人会計から支出した事実はないという報告をもらっておりますが、一方において、この点については国税庁に対する告発ということが並行してやはりあるわけでございます。私どもはやはり状況に応じてさらに事情聴取を必要とする場合には進めたいと思っております。  それから、先ほどの一千万円の話でございますが、これはその中には柴田理事長が、いわば国士舘の場合には何と申しますか、学校の予算上、交際費といったようなものでございますとか、あるいは機密費的なもの、そういうものは計上しておらないので、それを個人で支弁するという一応前提に立たざるを得ないので、借り入れを行なったと。これはまあ所要の時期に清算の上、借り入れた部分は返すという前提であるという説明を受けておるわけでございます。  それら全体の経理の処理につきましては、私学振興財団でも調査をいたしますし、それから、状況に応じてそういう帳簿類等の調査文部省も一緒になって進めたいというふうに思っておるわけでございます。  なお、先ほど補助金の支出について御説明申し上げたわけでございますが、いわゆる国会対策費の使途につきましては、今後私どもなお公認会計士の監査報告の結果なども待ちたいと思っておりますし、一方におきまして、検察庁への告発の事実もあるわけでございますので、なお私どもが現在承知していないような新たな事実が認められるような場合には、再び私立学校振興助成法等に照らしまして、私学振興財団において適切な所要の措置が講ぜられるように検討をするという前提に立っておる次第でございます。
  73. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まあ二五%減額されたとはいえ、五十三年度でも六億円を超える補助金が出されておるわけです。したがって、国税庁の調査もあるでしょうけれども、国税庁の調査はやはり税の捕捉という観点から調査されるわけでありまして、必ずしも学校の経理が適正かどうかということではないし、また調査の結果というものは知らされないわけですから、やはり文部省が主体的にもう少し厳密な調査をやってもらいたい。以上要望したいと思います。  それから、続いて先ほどからの御意見を聞いておりますと、この学校の正常化についても、文部省からの改善要求の項目も余り進捗をしていない。進捗をしていないどころか、一つの壁にぶち当たりつつあるというような印象を受けるわけであります。しかも、その原因というのは総長の考え方にある。総長の考え方にあると言う私らも、総長自身がネックになっておるとしか考えられないわけです。だからこそ、その総長解任要求を出されておるんだと思いますけれども、こういう事実と、文部省側の考え方との間に若干ずれがあるのではないかと思いますが、まあ大臣も、この理事会がしゃんとせぬからいかぬと言われましたけれども、理事会がしゃんとしない原因にやはり総長というものの存在がある。この点についてどうお考えですか。文部省側にお伺いします。
  74. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) わが方からの改善要求について、大学側もまた理事会側もそれぞれ努力をして対応をしようとしているということは私は認められると思うのです。ただ、結局いま問題で残っていることは、指摘した問題点に対して、いわゆる学内問題対策委員会というものを設けて、大学側がこれに対して対応をしようということで審議をし、案を決定をしている。それに対して当然理事長、あるいは理事会側がそれを受けとめて、全学的な見地からそれをどのように処理をしていくかということを考え、そしてその検討した結果をさらに対策委員会の方へ戻していくと、そういう形で、全学のいわば意思の疎通が図られ、全学的な改善の方向が求められていかなければ、やはり前進ができないところにいま残っている問題はあるわけでございます。  結局先ほども大臣からお答えを申し上げましたように、国士舘大学のこれまでの問題の背景と申しますか、それは基本的にはやはり組織体である学園の運営に当たって、理事長、あるいは理事会側と、学園内の教授会その他の諸部門との意思の疎通が十分でない。全学的な合意の形成が適切に行われ得がたい状況にあるというところにあるわけでございます。これをどのように処理をしていくかということについては、そう直ちに効くような薬があるわけではない。やはり教学に関する事項については教授会の意向を十分に尊重をする。さらに法人の運営については理事会あるいは評議会の機能というものを十分に発揮をするように大学の全体の体制を整えていく。両方でもう少し前向きに意思の疎通を図っていくという体制をとっていく以外にない。そのことは、私はこれまでの経緯からして、必ずしも絶望的な状況にあるわけではない。理事会側も、一部の事項について、先ほど教学側はそれは受け入れがたいという御発言ではございましたけれども、暴力関係の対策についての理事会側の意見というものも出てきているわけでございますから、そういったことを契機にしながら、やはりいま申しましたような全学的な合意の形成のための努力というものを、さらに両者の間でお続けいただく、それ以外に方法はないという認識を持っているわけでございます。
  75. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 確かにこれは大学の問題でありますから、文部省の介入といいましても限度があると思うんです。限度があるとは思いますけれども、いまのような不正常な運営が行われておる、それから、経理の面においてもきわめて不正な面がある。とするならば、私は国民の気持ちとしては、この大学に何億円もの補助を出すことは恐らく納得がいかないと思うんですね。したがって、私は文部省にもう少し積極的に大学の正常化について手を打ってもらいたいわけです。大学のこれは自治だからといって放任して、双方の話し合いに任すといいましても、諸問題対策委員会自体が機能していない。その機能しないようにしておるのが総長であるということも、先ほどの参考人の御意見からうかがわれるわけでありますから、もう少し強い手を打っていただかないと、国士舘大学はこれはもうつぶれてしまう以外にないのではないか、こう思うわけです。最後に大臣の所信をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  76. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) いま御指摘のとおり、私学というものは、私は非常にむずかしいと思うんで、これはあなたのおっしゃるように、ずいぶんりっぱな私学がつぶれることがあるんですよ。そこはなぜかということを考えなければならぬ。やはり学長総長になったら、理事会というものの運営というものを十分尊重しなきゃいかぬし、一方には教授会があるんだから、教授会の運営も尊重して、教授会理事会、これが完全に意見を一致して、そして学内を振興させないと、私は大変な目になると思いますので、私も私学振興財団に任せっ放しじゃなくて、これはやっぱり文部省が直接指導監督して、そして国民の期待にこたえるようにして、国士舘大学が今後ますます発展するように、及ばずながら私も努力したいと思いますから、御指導願いたいと思います。どうぞよろしく。
  77. 望月邦夫

    委員長望月邦夫君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  岡澤粕谷参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。どうぞ御退席いただいて結構です。  午後は二時から再開することとして、これにて休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      —————・—————    午後二時七分開会
  78. 望月邦夫

    委員長望月邦夫君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育文化及び学術に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  79. 松前達郎

    ○松前達郎君 きょうは語学教育についてお伺いをいたしたいと思います。  最近日本の立場というものも、次第に国際的な中における活動というものが非常に重要な時代になってきたと思うのです。もちろんこれは日本だけじゃなくて、世界各国が完全に相互依存の時代に入ってきた、こういうふうに考えざるを得ない、そういう時代になったと私は思うわけですが、こういった時代の変化とともに、あるいは文明の進歩とともに、教育内容についても改善が重ねられていくのが当然じゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけです。  外国語と言いますか、語学教育と言いますと、たくさんの種類がありますが、特にわれわれの経験してきた、中学からずっと英語教育を受けてきた、こういうふうな中で、これは最近大論争があったばかりなんですが、実際に使える英語が果たしてその成果としてあらわれているかどうかという問題があるわけなんです。それと同時に、これは英語だけではなくて、海外におけるニーズと言いますか、日本語のニーズですね、これが最近非常に高まってきている。私の経験でも、各国から日本語の教師を派遣してもらいたいという要望が非常に多く来ておりますけれども、国内において留学生教育をやるだけで手いっぱいであって、なかなか外国に送り込むような余裕がない、こういう状況であろうと思います。それと同時に、国際的な活動が盛んになってくればくるほど、海外における子女教育という問題がやはり大きな問題としてクローズアップされてくる。この中でも特に日本語教育ですね、これが非常に大きな分野を占めているのじゃないかと、かように思うわけなんです。  そこで、私たちはこれからの将来を展望する中で、われわれの将来生きる道というのを考えていきますと、資源もなければエネルギーもない。人口は一億一千万以上いる。土地は狭い。いろいろな条件、余り恵まれた条件でない。こういう条件の中に生きていかなければならない。こういうことであろうと思いますし、それならばその条件の中で生きるためにはどういうことが必要か。これはやはり教育による頭脳の育成というものが基本的な問題であろう。石油が出るなら、それの売り食いでもって経済を維持できるかもしれませんが、それもできないわけですから、やはり独創的な頭脳というものを養成していくのが将来のわれわれ日本にとっても重要なことだろう、こういうふうに思っておるわけなんです。  ちょっと話それますけれども、たとえば最近の東京ラウンドにしても、ただ自動車を買うとか、ミカンを輸入するとかいう問題と違って、いわゆる頭脳の集大成であるノーハウを売ろうというんですから、これについても、そういう面から考えますと、いま申し上げたようなことから言いますと、大変な大きな問題がその裏にあるというふうに解釈していいと私は思うんです。  そこでまずお伺いしたいのは、現状で英語教育   中学、あるいは高等学校を通じ、実際の英語教育というのがどのぐらい行われているか、それについてちょっと御説明いただきたいと思います。
  80. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 中学校、高等学校でもそれぞれ外国語の履修は選択科目になっておるわけでございますが、事実上は、ほとんど大部分の中学校、高等学校では英語を選択し、大部分の生徒が英語を勉強しておるという実態でございます。そして、その授業の時間等は、中学校では一年から三年を通じて毎週三時間というのが標準であり、高等学校では毎週一時間一年間やりまして一単位という計算をしますが、その単位で言いますと、三年間に九単位から十五単位というのが普通の履修の実情でありまして、英語科と称して、職業科における農業のように英語を専門にやる学科がございますが、こういう学科の生徒は三十単位、あるいは四十単位近く英語を履修するというものも中にはあるというのが実情でございます。
  81. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、相当の時間を割いて、選択であるかもしれませんが、事実上はほとんど行われておると、中学で恐らく十時間近く行われてるんじゃないかと思うんですね。したがいまして、これ四十週とすれば四百時間以上、高等学校では、まあこれは大学の受験の問題もあるかもしれませんが、五時間やるとすると四十週で二百時間、三年間で六百時間、合わせていきますと相当の時間、千時間以上、この中学、高等学校の時代に英語を履修をしていると、こういうことになるんですが、これだけの時間をつぎ込んでいるにもかかわらず、どうもその成果が上がってないという声が、これは新聞あたりの投書欄にもたくさん出ております。果たしてその英語の教育の効果が上がっているものかどうか、あるいはその逆に年々ダウンしてるんじゃないかというふうなことすら言われておるわけですけれども、これについてはどうお考えでしょうか。
  82. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 英語の勉強としてどういう能力を身につけさせるかという、まずその問題があるわけでして、これ先生ただいまおっしゃったように、この点について、戦前の旧制高等学校における英語の授業のようなやり方、あるいはもっと簡単に言いますと、もっと実用的な英語の勉強というようなことがいろいろ専門家の間で論争があったのは御承知のとおりでございますが、まあ私どもは率直にいまの英語教育を反省しました場合に、従来ややもすると訳読とか、あるいは作文とかというのにちょっと重きを置き過ぎて、日常のコミュニケーションとしての英語というものに必ずしも十分な効果を上げていないという点は率直に反省するわけでありますが、そういうことからいたしまして、昨年、一昨年と、中学校、高等学校の学習指導要領を改定するに当たっては、英語の教育の目的を読み、書き、聞く、話すという、いわゆる四領域についてひとしく最も必要な基礎的な能力を身につけようということを主眼として改正をしたわけでございまして、それに伴って幾つかの実際上の問題として、たとえば、先生の能力でございますが、これも現在の教員養成の実態などからすると、やはり聞く、話すという能力はかなり十分でない点もあるというようなことから、そういう面を主体とした先生の現職教育、あるいはやはり英語の勉強というのは、直接向こうの人についてやるというのが非常に効果があるわけですから、そういう意味で向こうの若い人を中・高等学校の現場で教える機会をつくる。逆に、日本の英語の先生をアメリカや、イギリスの大学等に夏休み中二カ月ぐらい留学させる。これはことし初めての試みで、約百人くらいやる予定でおりますが、そういうことをやって、英語の先生の、いま申しました四領域の能力というものをできるだけ高めるようにしたいということ、あるいは最近の教育機器の発達に伴いまして、英語でありますとLLを中心にした器材の活用ということも一つの大きな効果を上げておるようでありますから、そういう点について、これもことし初めて中・高等学校についてモデル校を指定して、LL等の設備の助成を図るというようなことを考えておるわけでございます。
  83. 松前達郎

    ○松前達郎君 昭和四十九年だったと思うんですが、中教審の答申でもその英語教育に触れておるわけですね。コミュニケーションの手段としての外国語の能力と、これが一般的に非常に貧弱であるから、これについて国際交流活動を進める上で大きな障害となる、これを改善をしていくべきだというふうな答申があったんじゃないかと思うんです。そういったことも踏まえて、何のために英語教育をやるのか、大学入学試験のためではなくて、それ以外に何か英語教育はこういう目的でやるのだという、一つの大きな目標があってしかるべきじゃないかと私思うのですが、その点についてはこれは目標をはっきりと設定されておられますか。
  84. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 中学校、高等学校の外国語の学習指導要領における取り扱いで、外国語学習の目標というのを掲げておるわけですけれども、そこで私どもが今回の改正でいろいろ考えて書いた趣旨は、一つは、先ほど申しました、英語による理解と、英語を通しての表現、つまり英語の読み、書き、聞く、話すという基礎的能力を培うということであり、もう一つは、その学習を通して言語に対する関心を持たせ、外国人の生活や物の見方について、基礎的な理解を得させるということでありますから、言ってみれば、実際に役に立つような英語の基礎的な技術、能力というのを身につけさせるとともに、それを通してこれから国際社会に生きる日本人としてのいわば教養、知識というものの幅を広げていこうと、こういう趣旨を掲げて、関係者の理解を図っておるところでございます。
  85. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういった努力が続けられておるということは、いま御説明でわかりますけれども、一般的にレベルがダウンしていると言われておるわけですね。これはダウンするというのは、どういうことで評価をしてダウンすると言っているのか、これはいろいろあると思いますけれども、年々レベルダウンしているというふうに一般的に言われている、これについての対策というのをお持ちでしょうか。
  86. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) これは、たとえば中学校で言いますと、いま申しましたように、ほとんどすべての子供が実際問題は英語を勉強しておる。そこでいまのまた指導要領に返りますけれども、今回の改正のとき考えましたのは、中学校段階ではできるだけ基礎、基本にしぼるということにしますと、勉強する基礎的な単語の数とか、あるいは基本文型のようなものもかなりいろんなものが入っているのですね。それを結局消化不良になったまま高等学校へ行くということは、一面ではレベルダウンにつながるわけですから、そういう内容をやはり精選するということでひとつ対応するというのがございます。  それから、高等学校になりますと、今日九〇%以上の子供が高等学校へ入るということは、英語の学習などでは、その能力、適性がきわめて多様化しているというのは、これは否定できないと思うんですね。そこで実際に一つのグループで英語を教えても、子供に進度あるいは理解度の非常な差があるということをどうするか。そこでそれをクラスに分けて、そのクラス分けの際に、習熟度や理解の度に応じてクラス分けをするというのは、これは差別だというような意見もございましたけれども、私はそうじゃないと。これは、こういう問題はやっぱり子供の進歩の度合いに応じてグループ分けをして教育をするというようなことも必要だということで、関係者の理解を願ったんでありますが、すでに相当の高等学校でそういうことをやっているところもあるということでございまして、全般的に見ますと、先生御指摘のように子供の数がふえておりますから、言うところのレベルダウンといいますか、十分吸収、そしゃくをしてないまま学校を出てしまうという子供があることは否定できないと思いますが、それらをいま申しましたような内容の精選という見地、あるいは子供の進度に応じた適宜な指導というようなことで、できるだけカバーをしていきたいというふうに考えております。
  87. 松前達郎

    ○松前達郎君 英語の学習の基本が、私はできたら小学校あたりからやればもっと吸収がいいんじゃないかと思うんですけれども、現在の段階では中学校の段階での履修課程にあると、こう言われているわけですね。こういうふうに言われておるんですが、現在の学校教育の中で、先ほどおっしゃいましたように、原則として選択科目にしている。語学教育に対する考え方といいますか、選択科目にするというのが私ちょっと腑に落ちない面もあるんです。その点ちょっと不徹底じゃないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  88. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) これは、外国語を選択にするというのは、戦後の中学校、高等学校発足したときの学習指導要領を定める際にも議論があったようでございますが、要するにこの段階の学校で教える中身は、言ってみれば国民として共通に必要とされる教養を身につけさせると。それでどうしてもつけさせなきゃならぬものが必修だという見地に立って、そう見た場合に、外国語というのは選択でよろしかろうというのがそもそもの議論の起こりだと思うんです。それで、毎回指導要領改正のたびにそういうことを議論して、先般の改正の際にも四十九年から五十二年にかけて、教育課程審議会でやはり同じような議論をお願いしたわけでございます。そこでいま先生がおっしゃるように、これはもう必修にした方がいいという意見ももちろんあったんです。あったんですけれども、やはり高等学校の実態などを見れば、確かに大部分はとっているんだけれども、しかし、すべての子供が将来必ずその語学を必修してなきゃならぬということでもあるまいというような御意見もございまして、結果的には教育課程審議会の意見としては、従来どおり選択でよろしいということに落ち着いた経緯があるわけでございます。
  89. 松前達郎

    ○松前達郎君 選択といいましても、いまおっしゃったような理由で選択ということであれば、その理由というのはある程度わかるんですけれども、選択必修というのがありますね。選択した上ずっとやっていけというふうな考え方、そういう考え方も一つあるんじゃないかと。どうやらかつての時代と違って、最近は英語をやりたいという若い人たちが非常にふえてきたんじゃないかと思うんですね。それが逆に外国に各種学校みたいな英語教育学校があって、たとえばアメリカの西海岸あたり、株式会社でやっているところですね、そこに行って、それでどうも約束が違うとか、いろんな問題を起こしているようですけれども、かつては観光旅行で行ったのが、最近は英語の学習のために行くというちゃんとした目的を持って行く人も若い人の中でふえてきているんではないか、これもやはり国際的な交流といいますか、そういうものが盛んになってきた、その裏づけがあるんじゃないかと思うんですけれども、そういう意味から言って、やはり英語というものは、これから大いにこれを促進をしなきゃいけない。そういう教科じゃないかと私は思っておるわけなんですが、レベルダウンがあるという話から、授業時間の削減というのが行われたわけですね。中学校では大体高校に進学するというのは九〇%以上あると言われているのですが、英語の履修時間はその反面削減をされてきていると。かつて恐らく最低一週間に五時間ぐらいあった時代があるんじゃないかと思うのですが、これは必修じゃありませんので、これ一概に言えないかもしれませんが、現行では週三時間。削減されているというふうな声もあるわけなんです。こういう問題すべて含めて、どうもレベルダウンという問題につながってきているんじゃないかという感じもしないではない。その点はどういうふうにお考えでしょうか。
  90. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 授業時間の問題は、今度の学習指導要領の改正で、一週間当たりの中学生の授業時数というのを、現行の指導要領では一年と二年が週三十四時間、それから三年が三十三時間という基準でやっておるわけでございます。ところが、できるだけ学校における負担過重にならぬようにしようと、学校教育活動をゆとりのあるものにしようというので、約一割、あるいは一割ちょっと減らしまして、一年から三年まで通じて、毎週の最高授業時数を三十時間に押さえたわけでございます。そこで、英語だけではないので、たとえば体育なんかも、いまの指導要領では毎週三時間プラス年間二十時間という基準なんですけれども、その二十時間落としているわけです。そういうことで、各教科ともみんな時間を削減しましたので、外国語に充てるべき選択教科の履修時間というのが、従来は一年から三年まで通じて毎週四時間ずつあったわけですが、それが一年、二年は三時間、三年は四時間と、こういうことになって、したがって、その選択時間をまるまる使えば、一年、二年は一時間ずつ減るという勘定になるわけですけれども、これは確かに語学の教育には集中的に若い時期に時間をうんとかけて勉強させるのがいいんだということからしますと、時間の問題、一つの課題ではありますけれども、やはり学校教育全体としてそういう削減を図り、逆に内容の精選基礎、基本の重視ということを掲げたわけでございますので、私どもは英語についてもやはり同じような考え方で、ひとつ定められた時間の中で十分身につくような学習をさせる方向でやってほしいと、こういうふうに指導しているわけでございます。
  91. 松前達郎

    ○松前達郎君 時間数の問題はそれぐらいにいたしまして、内容の問題なんです。これは私は非常に重要な問題だろうと思うのですね。私どもの経験では、かつて英語を習ったときに、真っ先に教師が持ち出したのがシェークスピアだった。このシェークスピアというやつは、それ自身を理解するのもなかなか簡単にはいかない。簡単にいかないというか、そうやさしい問題ではないですね。ところが、それにまた英文で書いたものをやらせると。どうも文法とか、さっきおっしゃったように、そういったようなものが先行して、いわゆるコミュニケーションの道具であるという問題がどこかに飛んでしまっているんじゃないだろうか。われわれの体の発育過程から見ても、最初に子供が覚えるのは言葉なんですね。話すことを覚える。字を覚えて言葉を覚えるのじゃなくて、まずしゃべり出すと、それから字を覚えると、それからその言葉の仕組みを覚えていくと。そういうふうなことで、成長の過程から言っても順序があるんじゃないかという気がするんですね。ですから、そういったことも含めて考えると、やはり今後の英語教育というものが、いわゆるコミュニケーションのための使える英語にするのか。あるいはそうじゃなくて、頭脳訓練用の英語にしていこうとするのか。その点でいろいろな論争がかつてあったんじゃないかと思うのです。  ところが問題は、大学の入学試験で英語が出るわけですね。この英語というのは、全くコミュニケーションの材料として話せる英語とか、会話とか、そういうものじゃなくて、いわゆる文章そのものの編成とか、訳だとか、つくり上げる力とか、あるいは単語の記憶だとか、そういうものを対象にする試験になってきている。ですから、高等学校あたりですと、どうしてもそのために、そういった方面に力を入れざるを得ない。こういうふうな欠陥が私あるんじゃないかと思うのですね。ですから、まず最初に英語を何のためにやるかということと、その目的が設定されればそれに向かってどういう内容の英語をやったらいいのかということと、それを中学から高等学校大学に続けて一貫性を持たして教育を続けていくというふうな考え方が確立されなければ、なかなかこれうまくいかないんじゃなかろうか。私自身も現場の先生に聞いてみると、何のために一体やるのかと頭ひねっていた先生もいるわけなんですね。その点がどうも明確にされてない。これは恐らくいろんな議論があると思いますが、やはりその点は十分議論する中で、はっきりした一つの目標を打ち出してしかるべきであろうと、こういうふうに考えるんです。  まあこっけいな話なんですが、受験目標の英語じゃないかということなんで、恐らく皆さんもかつてずっと英語勉強されて、それじゃいま国際会議に行って英語をしゃべる連中の言葉を聞いて十分理解し、それに反論できるかというと、なかなかこれはできないだろうと、できる方もおられると思いますが。そういうことなんで、やはり英語そのものの内容ですね、どういう方向に向かって進めるかというこの内容そのものを検討する必要があろうと、かように私思うんですが、その点を分けて考えていきますと、実用英語なのか、あるいは教養英語という言葉があるかどうか知りません、あるいは受験英語なのか、そういった分類に、まあこれだけじゃないと思いますが、分類に分けたとすると、いわゆる中学校、高等学校の英語教育の目的というのは一体何であろうか。読み書きの英文講読を中心にするのか、あるいは和文英訳、もちろんこれも含めて重視するか、聞いたり話したりする実用的な活用能力を重視するのか、その辺の目標を文部省としてはどういうふうにお考えになっておられるか。
  92. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃるその教養英語というのが、まあ高等学校の教科書なんかを見ましても、私自身が余り英語できないで言うのもおこがましいんですが、相当むずかしい文章で、試験なんかも文法の細密なルールを駆使して分析的な解釈をすると、これはどこに係るんだとか、そういうやり方も確かに戦前ではありましたし、一つの頭の鍛練ではあろうと思いますけれども、そういうことではなくて、今日小・中学校、高等学校教育が大衆化した時代ですから、先ほど来もたびたび申し上げましたように、読み、書きというだけでなしに、聞く、話すという能力もできるだけ身につけて、コミュニケーションの手段としてできるだけ役に立ち得る英語の勉強を主眼にしようというのが今度の改正の趣旨であり、また、そういうことを指導要領の説明書の中にも織り込んでありますし、また、そういう趣旨で先生方の聞く、話すの能力向上のための現職教育というようなことも考えておるわけでございますが、ただ、一般的に申しますならば、そうかといって、それでは高等学校を出ればすぐ聞く、話すの能力がすっかり身について現実に役立つかというと、私は必ずしもそこまでは要求できないと思うんですけれども、やはりそういう能力の基礎を培うということによって、それから以後、実社会に出ても、あるいは大学に入っても、その能力をさらに伸ばすことによって、現実に日常生活にも、あるいは外国とのコミュニケーションにも役に立つような能力が伸ばせるようにしていきたいということで考えておるわけでございます。
  93. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、そういったことも含めて、恐らく、さっきも申されましたけれども、文部省でLL教室ですとか、これは中学校で百校ということだということですが、高等学校で四十七、それから金額にすると五億一千五百万円ですか、計上されていると。また、さらに教員の問題もありますから、教員の資質向上という目標で海外研修に百名以上の人を出していこうと。これは海外研修の人数、非常に少ないんで残念なんですが、これもまたグループで出したって意味ないと、一人で私は出すべきだと思うんですが、そういったような努力もされておるんですが、まだまだこれはこれだけじゃだめじゃないかと私は思うんです。しかし、そういう方向に向けて改善を目標として進めておられるということはわかるんですが、これは将来これをさらに続けていかれるつもりであるのか、あるいは最近はランゲージラボラトリーという機械を使うそういう手段と、あるいは語学そのものをコンピューターでもって訓練するという機械もできておるんですね。そういった機械化といいますか、機械が血が通わないと言えばそれっきりですが、そういうものも使う中で、さらにこの実用英語の分野といいますか、そういう分野も推進していきたい、そういうふうにお考えでしょうか。
  94. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃるとおりの方向で考えておるわけでございまして、そのために英、米から若い先生を招致して、教育委員会学校に配置するというようなこともやっているわけですが、ことしなどはある県では一人配当するのもむずかしいというのに、七人ぜひ回してくれというようなところもあったりしまして、県自体もやはりそういう外人の教師を直接使いたいということは、即生きた英語を学ばせたいという意欲だろうと思うんですけれども、そういう意向に燃えておりますので、そういうことにこれからできるだけこたえてまいりたい。  それから、おっしゃったようなししなどの教育器材というのはますます発達して、いろいろな使い方もあるようでございますし、また、その価格などもかなり合理化されてきている面もありますので、そういうものを見ながら、できるだけ財政援助も拡大していきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  95. 松前達郎

    ○松前達郎君 英語教師の質の問題ですね、現在質が悪いとかそういうことを言っているんじゃなくて、いまのような方向に向けて英語教育改善していくといった場合に、要求される質というのがあるはずですね。その質の転換というのが非常に重大な問題であろう。と言うのは、これは大学あたりで教員の免許状を取って、いろいろと英語教育に将来当たっていこうという学生諸君の授業、どういう授業を受けているのかということを見てみますと、いわゆる英文学なんですね。これはもう英文学と英語そのものは質が違う問題だと私は思うんですけれども、現状では英語の教師というのは大学の英文学科の卒業生が多い。しかし、その大学では実際に英語教育のための教育は行われていないだろうと私は思っているんです。これを専門としてやるコースもないことはないでしょうけれども、そういったような面も含めて、質の転換というものを図っていかなければいけないんじゃないか。かように思うわけなんで、そういう点で非常にこれから大学教育の中に英語の——英文学じゃなくて、英語教育のための教育コースというものを設定していかなければいけないんじゃないか、こういうふうに思っておるんです。  そういったような教員の質の問題の改革というか、これについて私はいま私の考え方を申し上げたのですが、文部省としては何か具体的なビジョンをお持ちでしょうか。
  96. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 現在はおっしゃるように免許法上、英語の免許状を取るためには教職単位というのも若干ございますけれども、英語に関する専門科目ということで、文学部などでは、おっしゃるように英文学のようなものをとにかく取っていれば単位にカウントできるというような実態が教員養成大学以外のところではかなりあるようでございますから、そこで、大学自体の問題は大学局長がまた答弁されると思いますが、現職教育の場では、先ほど申しましたように、そういう点を補う意味での教育というのを、実は英語の教師だけを対象にして毎年教育会館の筑波分館で小、中それぞれ二百三十名ぐらいずつ、二週間ですか、講習会をやって、再教育をいたしておりますが、こういう点をさらに今後とも強化をしていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  97. 松前達郎

    ○松前達郎君 いま英語のことをいろいろと口すっぱく申し上げているんですけれども、これは私自身の経験から言って、これは全部じゃありませんが、大学でセミナーをやったりする、大体洋書講読というのがあるわけですね。その講読をやらしてみると、小さな本の一ページを当てがっているのに二日間ぐらい徹夜して字引きを引いて調べている。ひどいのになるとビー動詞引いてるんですね。そういった状況がときどき見られるものですから、一体いままで中学、高等学校、これだけエネルギー使って英語一体何やってきたんだろうかというふうな気をかねがね持っておったわけなんです。ですから、これ、私の考えとしては、大学の中の一般教育でやる英語ですね、ああいうのも単位から外しちまって、あれが何点何点という点のつけ方じゃなくて、認定するかしないかぐらいの単位の決定のやり方に切りかえて、しかも、外したものは語学研修センターというのをつくって、四年間そこでやっていくと、そういうふうな考え方で、実験的にやってみたらどうかというふうな提案もしておるわけなんですが、こういったいろいろな面からの努力、改善をしながら、やはり英語教育というものを見直してみないと、どうもいつまでたってもただやっているだけで改善されない、しかも、だんだん低下していってしまう、こういうことになるんじゃないかと思うんです。それで、これいろんな例があるんですが、たとえば外国に行ったときに汽車の切符を買うにしても、英語の先生と私一緒に行ったことがあるんですが、一生懸命考えて、結局買えないんですね。切符を一枚書うのにどういう言い回しをして、物すごく長い文章考えておられたようです。私は行き先だけちょこっと言ったら切符を売ってくれたわけですけれども。そういったような、何というんですかね、どうも資質の問題というか、実際に言葉というものは相手に話が通じなければ意味がないんだという、そういうことから考えますと、やはりこの点も十分配慮しながら、今後の英語教育改善をしていかなきゃいけないんだろう。必ずしも会話だけに徹底しろということじゃございません。会話もある程度できる、相手が言っていることも理解できるという能力をつける基礎を、中学、高等学校のとき養成することが必要じゃないか、こういうふうに感じたものですから、いまいろいろと御質問申し上げたわけなんです。  それと、冒頭に申し上げましたように、海外子女の教育、これも語学が非常に関連があるんで、たとえば小学校に行くような子供さんを持っている方を外国に派遣する場合、一番心配になってくるのは教育問題。恐らく長期に行ってますと、事情によっては、環境によっては、日本語は覚えていかない環境もある。そういった中で、じゃ一体義務教育として、海外における義務教育の年代の子供たちを教育するのに、いろんなところが日本語学校、あるいは日本の教育をやる教育機関も設けているようですけれども、これもまだ非常に少ないわけですね。これらについても、やはり積極的にこれから対処していかなきゃならない問題だろうと思うんです。  それと同時にもう一つは、外国人が日本語を勉強したい、こういうふうな要望が非常に強いわけですね。この要望に対して、それじゃ日本語の先生がいるかというと、そう多くはない。先ほども申し上げましたように、たとえば留学生を教えるので精いっぱいだと、外国まで派遣して、外国人のために外国の大学なり何なりで教育を行う日本語の先生というのはなかなかいない。こういった語学に関して、日本というのは非常にこの点は不得手だというか、なかなかその面がスムーズに行われていないような気がしてならないわけです。そういった面を含めて、特に日本語を教える先生方の養成については、これは大学の分野かもしれませんが、何か案がありますか。それとも今後、その方向、それに対する施策があるかどうか、その点ちょっとお伺いしておきたい。
  98. 篠澤公平

    政府委員篠澤公平君) 外国人に対する日本語教育の問題につきましては、東京外国語大学、あるいは大阪外国語大学に日本語の課程があるわけでございます。そこで大学院レベルまでいたすわけでございます。さらに、そのほかに国立国語研究所におきましても、外国人に対する日本語教育の教師の研修コースといいましょうか、そういうものを設けて、定期的に研修を実施いたしておる実態でございます。  ただ、問題は、それぞれそういう資格を得ましても、一つうまく機能しない点というのが率直にございまして、これはもう十分外務省の方とも連絡しながら、必要な所に必要な人材が送れるというようなシステムをもっと円滑にやるようなことを現在協議いたしているところでございます。
  99. 松前達郎

    ○松前達郎君 それにしても非常にその教師の数が少ないわけですね。ニーズにこたえられないぐらい要望は来ている、こういうことですから、その点はまあ今後推進していただきたいと思うんです。これはやはり、これから国際間で相互理解をすると、非常に重要な問題になってくるはずですから、その一つの大きな原動力になるんじゃないかとも考えております。そういう意味も含めて、この日本語を教える教師の養成、これもひとつ大いに肩を入れていただきたい、かように思っておるわけでございます。  それと、もう一つは、これはもう最後になりますが、さっき冒頭に申し上げましたように、語学に対する関心、若い人の関心が非常に強まってるという、こういう事実を反映するものとして、いろんな学校がアメリカであるわけですね。特に西海岸を中心として、いろいろな各種学校的な学校が、語学教育学校がある。業者が間へ入ってまして、そこに送り込んでいくと。大体二万人ぐらい行ってるんじゃないかと言われてる。ところが、約束がどうも、行くときは非常にうまくつるものですから、それにあこがれて行くわけですが、行ってみると現実は非常に厳しいものがあって、新聞によればまあ貧民窟みたいな所に押し込められて、授業料も払ってくれない。授業料も払うはずだったのが、送ってないとか、いろんな問題があって、非常に在外公館が苦慮してるという話もあるわけなんですが、これは文部省の範疇じゃないかもしれませんが、そういったような問題も起こってるということは、やはり語学に対する関心というのが非常にふえてきてるんだという、その証拠になるだろうと私は思うんです。  ですから、今後の問題として、まあ英語に限らないと思いますが、特にいま英語が一番多いわけですから、この英語教育というものについてひとつ、これは私は試行錯誤は多少あってもいいと思うんです、これはやってみなきゃわからぬ話ですが、そういうことを、英語教育の推進については積極的にお考えいただいて、まあさっき申し上げましたLLですとか、そういうふうな設備も含めて推進をしていただきたい、かように思うんですが、そういった全体的な英語教育に対する今後の文部省の考え方といいますか、推進に対してのお考えをちょっと大臣からお聞かせいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  100. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 松前先生御指摘のとおり、日本の国は資源がないんだから、あるのは人間だけですからね、これが世界じゅうの人と交流することが私は一番大事だと思うんで、先ほど来いろいろ議論されましたが、確かにある意味で教養も大事なんですよね、外国人の物の見方、考え方も大事であります。しかし同時に、話す、聞くということ、国際交流するためにはやっぱり話す、聞くがなきゃだめなんですから。私は外国語教育は非常に大事だと思うんで、私、自分のことを言ってはなはだ恐縮ですが、私は英文学を専攻したんですよね。それで、終戦直後、私がアメリカと全部交渉した、六・三制やるときは。私一人でやったんだけど、私だけは首にならぬで、ほかのやつはみんな首になったけれども、これは外国人の物の見方、考え方がわからなかったですよ。私は首にならぬ、しゃべったからね。それで、六・三制やるときの、いまの学校教育法、全部私つくったんですけどね。やっぱりこれからは、占領下じゃないんだから、世界じゅうの人と交流しなきゃならぬだから、私は外国語教育というのは非常に大事だと思ってますからね、御指摘のとおりこれを大事にして育てていきたいと、こういうふうに思っておりますから、よろしくお願いします。
  101. 安永英雄

    ○安永英雄君 昨日から始まって、六月の一日まで行われます国連貿易開発会議の問題、特にその中の教育問題について質問をいたします。  十日には大平総理も総会出席をされて、そして日本の立場を演説で主張されるというふうになっておるわけですが、もちろん日本が一番関心の深いASEAN、その中のマニラで行われるわけですから、当然なことだとも思いますし、それから東京サミットの会議の中にも、この会議は大きな影響を持ってくることは必至でありますし、また、日本がやはりいろいろ今日まで南北問題で努力はしたけれども批判が非常に大きい、こういった問題を抱えておるわけですから、当然総理が出席をされて、ここで明確な日本の立場を主張されることは、これはもう私としても賛成です。  問題は、その中に教育問題があるものですから、私はあえて文教委員会で取り上げたわけですけれども、この演説の内容いかんでは、いわゆる後進国の注視をしている中での演説ですから、これを落胆をさしたり、反感を持たしたりという危険性もこれは多分にあると私は思うのです。  そこで、多少報道機関には発表になっておるようでありますが、正式に大平総理が十日に述べられる代表演説の主張といいますか、骨子でも結構ですが、こういったものについて文部大臣御承知ですか。
  102. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) まだ、私、総理からその話は聞かなかったんです。ただ、新聞で見たところによりますと、やっぱり根本は人づくりであるという意味で、大いに教育協力に資したいという言葉は私は伺いましたが、きょうの閣議でも発言がなかったんですがね。
  103. 安永英雄

    ○安永英雄君 後でいろいろ文部大臣の御意見を聞きますけれども、実際それは困ったことなんですね。外務省の方で発表できる範囲でひとつその骨子をお願いしたいと思います。
  104. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) 御答弁申し上げます。  総理演説でございますが、これは六月の十日、UNCTAD総会で行われる次第でございますが、いま最後の詰めの段階に入っておりますので、全容をこの場で御説明いたすのはいささか困難と存じますが、大略と申しますか、概要を簡単に申し上げますならば、一つはこの演説の中で日本として今度のUNCTADをどういうふうに評価するのか、こういう点をまず触れる考えでございまして、その次にこのUNCTADといいますと、何はともあれ、やはり二月に開かれましたところの、南側の会合、アルーシャ会議がございますので、こういったアルーシャの会議にも若干触れてみる。それから、今度のUNCTADにおきましては、一つは南側が主張しているテーマでございまして、その中には相互依存問題というものがある。これについてもこの演説の中に触れていく。続きましては、このUNCTADといいますのは、基本的には南北問題を扱う問題でございますので、したがいまして、南北問題における主要課題に関しての日本がいかに貢献を行っているかと、こういった点を具体的な実例を挙げつつ説明するということを考えております。  最後に、これは一つの目玉といたしまして、人づくりといいますか、一般的に国づくりの基礎は人づくりにあるということで、この人づくりの問題に触れる、こういうことでございます。
  105. 安永英雄

    ○安永英雄君 南北問題、あるいは相互援助問題その他につきましては、ちょっと委員会としての性格がありますから、一番最後に述べられた途上国の国づくりの基本になる人づくりと、こういったもので国際協力をやろうという、このところは確かに目玉だろうと思うんですが、ここに一つ私は問題があると思って少し聞きたいんですが、いまさきの文部大臣のお話によると、この問題については文部省具体的に人づくり構想を発表される、その教育問題についての外務省なり、どこが担当したか知りませんが、これについての内容御存じですか、知っておったら文部省の方から答えていただきたい。タッチしておったら。
  106. 篠澤公平

    政府委員篠澤公平君) ただいまの総理の演説の草稿につきましては、非公式にその草稿の要綱と申しましょうか、そういうものを拝見はいたしました。文部省に正式に意見をということではございません。
  107. 安永英雄

    ○安永英雄君 いや、私は演説の原稿をというので、タッチしたか、しないかじゃなくて、具体的に一つの目玉として、教育問題ひっ提げて出るんですよ。その教育問題の部面においてタッチしたか、しておれば内容を知らしてほしい、こういうことです。
  108. 篠澤公平

    政府委員篠澤公平君) いたしておりません。
  109. 安永英雄

    ○安永英雄君 外務省の方で、これ相当報道機関にもう出ておるようですが、この協力の具体的な内容、これはもう一国の総理が行って、少なくとも目玉としてぶつわけですから、その内容、裏づけというのは当然なければならぬはずですし、迫力もないと思うんですが、その内容についてお知らせを願いたいと思います。
  110. 坂本重太郎

    説明員坂本重太郎君) ただいま御指摘の人づくりのための経済協力、または国際協力の内容でございますが、実はまだこれは最終的に固まっておりませんけれども、一応外務省レベルといたしましては、大体次の五本柱くらいを考えております。  第一点は、科学職能技術者の教育及び訓練、これは従来わが国の技術協力が主として行ってきております専門家の派遣、研修員の受け入れ、それから青年協力隊等々の派遣、これを拡充してまいりたいというのが第一の柱でございます。  それから第二は、いろいろ技術を移転する際に非常に問題なのは、発展途上国側において基礎教育というものがないので、したがって、その移転された技術が普及されないという面がございますので、そのところに着目いたしまして、やはり発展途上国が希望すれば、教育協力等、基礎的な学力の向上というものにも協力してまいりたいと、こう考えております。そのためには、たとえば教材とか、それから教育用器材、または学校用のいろいろ機材、医療機械、巡回車、場合によっては学校を建ててやるケースもございますでしょうし、それからまた文房具がない発展途上国もございますので、そういう国には文房具工場をつくってやるというようなことも検討してまいろうかと、こう考えております。  それから第三番目の柱は、やはり学校教育の充実とあわせまして、より幅広い基盤の社会成人教育と申しますか、そういうものにも発展途上国が希望すれば協力してまいりたい。たとえば文盲の撲滅の問題とか、それから家族計画とか、それから農村の青年活動等、地域社会発展のためにいろいろ協力をする、そのためのセミナーとか、場合によっては公民館とか、青年センターというようなものも建設してあげようかと、こう考えております。  それから第四の柱といたしましては、文化協力面でございます。これは発展途上国において、非常に健全な文化を育成するため、さらにはまたその交流を目指すために、スポーツを含めまして、非常に幅広い文化活動をこれから行っていくと、そのために協力したい、そういう意味では体育とか、音楽の指導員を派遣したり、それから文化、スポーツ活動のために必要な資・機材を供与するとか、こういうようなことも考えております。  それから最後に、これはちょっと次元が違いますけれども、今後発展途上国がいろいろそういう基礎的な学力と申しますか、そういうもの、それからまた健全な地域社会を発展させるためには、やはりもう少しマスメディアというものを利用すべきではなかろうかと。たとえば日本などでは非常に大変多くの科学技術のドキュメンタリーフィルムなんかを持っておりますが、これは日本語だけでつくられておりますので、それが発展途上国には活用されておらないと。したがって、必要があればそれを英語、フランス語、スペイン語、さらには現地の言葉に訳してあげまして、そしてそういうものを供与するとか、それからまた文盲退治その他のために、テレビ、さらにまたはラジオの放送局等をつくってあげることによって協力していこうかと。大体こんなことを実は考えておりますけれども、これも先ほど申しましたように、まだ完全に詰まっておりません。したがって、総理が一応今後の方向として、人づくりという方向を打ち出されまして、これからこういうものについてはわれわれ関係省庁間で詰めてまいりたいと思います。  なお、ちなみに私は一週間ほど前でございますが、文部省の方にも参りまして、この辺の説明は一応いたしております。
  111. 安永英雄

    ○安永英雄君 そうすると、結局演説としてはいまおっしゃった程度のあれですか。私の聞いたところでは、相当金額その他も五カ年計画で云々というその問題は詰まってないんですか、やろうとするこの五項目、これは一応詰まっているわけでしょう。
  112. 坂本重太郎

    説明員坂本重太郎君) まず金額の点でございますが、これは全然詰まっておりません。  それから、いま申しました五本柱につきましても、外務省レベルの考え方でございまして、まだこれを関係省庁とは詰めておりません。こういう段階でございます。
  113. 安永英雄

    ○安永英雄君 内容はわかりました。いまから詰めるということですから、文部省としてもこれは相当の関心を持たなきゃならぬし、当委員会としても大きな関心があるし、むしろこの面については外務委員会よりもこの文教委員会で相当詰めていかなきゃならぬ問題だとも私は感じるんです。と申しますのは、結局問題は教育行政、これはもう各国にとっては内政上これは一番重要な政策なんですよ、この問題は。わが国の方で人づくりということで協力しましょうということで教育問題で乗り込んでいくこれは事と次第では内政干渉にもなりかねない問題を含んでいるわけですよ。また、相手側がこれを欲しているかどうかという問題も私は非常に大きな関心を持っているわけです。そういった意味で、よほど考えていかないと、これはいいことずくめみたいな形で演説をされるととんだことに私はなると思います。私自身も狭い経験ではありますけれども、東南アジア、こういった開発国の実情を見てまいりましたけれども、私は一番いわゆる開発途上にある国々としては、これはちょっと唐突な日本の行為と受け取るような気がしてならないんですよ。場合によってはこれは不満を買うという点も私は非常にあると思うんです。時間がありませんから詳しくは申しませんけれども、外務省あたりはよく知っていると思うんです。そこで、この問題についての特に発展途上国における在外公館の意見、これはお聞きになりましたか。これは目玉として打ち出すという場合にはあれですが、出先の方の意見はこれは十分尊重しなきゃならぬと思うし、私自身が聞いている範囲では、顔をしかめている公館もあるんですよ。この点どうですか。
  114. 坂本重太郎

    説明員坂本重太郎君) ただいま先生御指摘の点、特にやり方いかんによっては非常に内政干渉になりかねない。それからまた、発展途上国が果たして希望するのかどうか、この辺は確かに御指摘のとおりでございます。われわれ外務省といたしましても、非常にこの点は慎重に配慮しながら、今後進めていかなければならないと、こう考えておりますので、ただいま先生がおっしゃった点を十分留意さしていただきまして、進めてまいりたいと思います。ちなみに現在在外公館から、この人づくり関係でいろいろな案件がすでに寄せられております。実はこの人づくりと申しますのは、新しく聞こえますけれども、いままでの技術協力、それからこういう分野での協力要請というのは非常にいろんな国から参っております。私どもいま集計してきておりますのはこのペーパーでございますけれども、全部で七十数カ国からこの人づくりに該当するような経済協力の要請案件が参っております。したがって、こういう中で最も相手国が希望するもの、しかもこれは非常に口幅ったい言い方でございますが、こちらが強制するんじゃなくて、うちの方が、日本の方がメニューを出しまして、向こうに選ばせるという感じの経済協力になろうかと思いますけれども、七十数カ国参っておりますので、その中から最も相手国が喜ぶような、しかも相手国が希望しているようなプロジェクトを拾いまして協力してまいりたいと、こう考えております。
  115. 安永英雄

    ○安永英雄君 私はいまの五項目を見た場合に、いわゆる技術協力、こういった面で専門家の派遣、研修員の受け入れ、あるいは青年協力隊、こういった一番目の項目、これは従前からやってきた問題なんで、ここの点は非常に私は要求が大きいと思うし、妥当と思うんですよ。これが大きいのはいいと思う。これは実績を上げていると思うんですよ。問題はそれ以降の四項目なんですよ。いかにメニューを出しましてね、それでどれでもおとりなさいとこう言っても、これはメニューの出し過ぎじゃないか。たとえば基礎教育という問題について、日本の方からの考え方で入っていって、あなたのところは基礎教育ができていない、小学校建てなさい、こうまでは言わないかもしれないけれども、これはちょっと考えなきゃならぬ、慎重を要する。私はいまここでだめとは言いません。非常に先ほど言った国内干渉になっていく面なんですよ。あるいは公民館とかいう問題とか、テレビ、ラジオの問題まで考えているというんですからね。ここらあたりは日本のいわゆる発展途上国じゃない国、そこらの感覚で考えていっておったら、これは総スカンを食う。しかも、日本の教育という問題についての批判まで食らいますよ、これ。ただ単なる外務省のサービス精神という問題ではない問題を私は起こしてくると思うんで、特にこれは先ほどおっしゃったように各方面、特に文部省、こういったところの意見というのは、もう主体的に聞いてもらわにゃならぬし、私の考え方ではこの五項目の設定そのものもここから出発してもらいたかった。しかし、このくらいは持っていかないと、私は今度の演説の迫力全然ないし、金の問題だって私はある程度持っていかなきゃならぬと思うんですよ、もうこうなると金の問題ばかりなんですよ、この会議は。これだけ目玉で売っておいて、どれだけの金を出すんだと、こう分科会に分かれていったときには、言わなきゃならぬ問題なんで、私は金の問題も詰めておく必要があると思うんですよ。金の問題だけが詰まってないと私は見ているんだけれども、この点大蔵との話し合いがきょうあたりついていると私は思ったから質問したんですけれども、そういう点でぜひ注意をしてもらいたい。  それと教育そのものという問題とまた別な観点から、今度のマニラ会議での南の方の要求というものの大体焦点というものはいろいろあると思うんです。これは分科会見ましても八つぐらいつくってやるわけですから出てくるとは思うんですけれども、どこが焦点なのか、これちょっとお聞きしたいと思う。
  116. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) お答え申し上げます。  これはすでに二月のアルーシャで開かれましたところの閣僚会議、ここでアルーシャ宣言というものが採択されておりまして、その中には非常に膨大な問題点が扱われているわけでございますが、現実にそこで出されています非常に広範囲にわたる要求項目というもの、これがすべて今度のUNCTADで取り上げるかという点につきましては、現実に今後交渉をしてみませんと定かではございません。しかし、あえて現時点でわれわれの立場でいろいろ考えてみますならば、やはり今度のUNCTADの場におきましては、たとえば貿易面における保護主義の防遏、これは特に南側の国が最近強く主張をしております。そのほか南側としましては現在の国際経済体系を改めるためには産業調整というものを行わなければいかぬ、こういう主張もしておりますので、こういう点も問題があるかと思われますし、また、政府開発援助の質、量の拡充問題というもの、あるいは一般の国際金融制度の改革問題、こういう問題があろうかと思います。  ただし、今度のマニラにおきますUNCTADを考えますと、前回ナイロビで開かれましたUNCTADと違いまして、一つの大きな問題はないと、これは先生御案内のとおりだと思いますけれども、前回のナイロビのUNCTADにおきましては、共通基金の設立問題というのが大きな問題であったわけでございますが、今度のマニラ総会におきましては、それに匹敵するような大きな問題は見当たりにくいと、むしろ非常に広範囲にわたった問題が散在していると、こういうことで、一つ中心的な問題として取り上げることはやや困難かと存じます。
  117. 安永英雄

    ○安永英雄君 私もアルーシャ会議の、全般ではないですけれども、一応読んでもみたんですけれども、新国際経済秩序の実現と、こういうふうにまとめてとにかく出しておるようでございますけれども、だから、目玉が今度はないということではありますが、私は、少なくとも日、米、西独の三年間の援助というものについて倍増せよという要求、これあたり端的に出てくるのじゃないかと思うし、特に、一次産品の共通基金ですね、特に第二の窓、これあたりの義務化あたりは強く出てくるんじゃないかと思うんですけれども、この点今度どういう態度で出られますか、この二つは。
  118. 坂本重太郎

    説明員坂本重太郎君) 第一点のその援助の倍増の方でございますけれども、これにつきましては、確かに先生が御指摘されたような、われわれに対して非常に発展途上国が援助の倍増を迫ってくるようなシーンも想定されます。これにつきましては、総理みずから一応、今後とも非常に日本としては積極的に、量の拡大のために積極的な姿勢を維持すると、そして、GNP比の改善にも一層努力をしたいと、それとともに質の面におきましても一層の改善を図っていきたいと、こういう形で答えられる所存でございます。  共通基金の点につきましては寺田課長からお答えいたします。
  119. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) 共通基金についてお答え申し上げます。  これも先生すでに御承知のことかと存じますけれども、先般三月に共通基金の設立に関します交渉が開かれまして、そこで、共通基金の設立に関します基本的合意が成立しております。そこで同時に決まりましたことは、共通基金の設立に関する細目につきましては、九月以降ジュネーブで会議をするということになっております。しかしながら、今度のUNCTADにおきましては、共通基金の問題におきましては、大きな問題があるとは思われませんが、その中で、先生の御指摘のありました第二の窓について、自発的拠出を呼びかけると、こういう決議が三月の際に採択されておりますので、それに応じて各国から第二の窓に対してどのような貢献をするのかという態度の表明があろうかと思います。その点に関しましては、日本としても前向きに、積極的な態度を表明したいと、かように考えております。
  120. 安永英雄

    ○安永英雄君 余り、この問題が外務委員会みたいになりますのでもう大抵でやめますけれども、ここ非常に関係があるんですよ、人づくりの問題と。結局、積極的な態度でこの第二の窓の態度は出るとおっしゃるが、拠出するというふうにはっきり言い切って出る態度でしょうか、どうでしょうか。アメリカは出さないと言うんでしょう。西ドイツの方は今度ははっきりしないんでしょう。しとるのは西欧だけという話をちょっと聞いているんですが、日本はどういう立場でしょう。
  121. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) この第二の窓に対します自発的拠出金の問題に関しましては、これは三月の再開会議におきまして総額三億五千万ドルと、こういう額が決まっておりまして、そのうち二億八千万ドルが一応任意拠出の目標額にはなっております。しかしながら、この共通基金全体に関しましていまだ細目が十分詰まっていない、こういうことから考えまして、具体的にどれだけの額を出したらいいかという基準がまだ定まっておりません。したがいまして、先生の御指摘がありましたように、アメリカは一応何も申さないというふうに聞いておりますし、他方、西ドイツ、あるいは他の西欧諸国は一応応分の拠出を表明するということで、具体的な額を表明しないと、かように聞いております。日本につきましても、やはり応分の協力をするという表明はいたしますが、具体的な額を表明する時期ではないと、かように考えております。
  122. 安永英雄

    ○安永英雄君 そこなんですよ。私は人づくりという問題については魅力はないと私は見ているのですよ、南の方は。むしろ、このいまの問題をはっきり出した方がいいんじゃないかという私の意見なんです、教育問題と外れた話ですけれども。しかし、教育問題と非常に関係がある。内政干渉のおそれさえあるし、やり方次第では反発を食らう。教育問題を援助の形で持ち出すというのはよほど慎重を期しなければならぬ。そういったことが私は目玉にはならぬと思うんですよ。日本の大平総理の演説の中の目玉と言えば、いまの第二の窓のはっきりとした態度、しかも、アメリカとか、西独をリードするような、そういった積極的な態度こそ、今度の会議が成功するかしないかの私は決め手になるような気がする。そこのところを必ず見きわめるべきだと思うのですよ、人づくりの問題と。私はそこのところに非常に危険を感じる。極端な場合は、すりかえておりはせぬかというように受け取られるような気がするのですよ。こちらの方としては何かこう鳴り物入りで喜ぶだろうと持っていっても、私の経験した範囲では反発を食らう。むしろ、人づくりは出さない方がいいんじゃないかと。そうしてこちらの方の、第二の窓の方こそはっきり日本がリードするというふうな形で出た方がいいのではないかと私は感じるわけです、これは私の考え方ですから。だからいま直ちに引っ込めろとか、何とかいうことじゃないが、意見として聞いておいてもらいたいと思う、まだ日にちもありますし。まだこれはっきりしないという立場で出るとするなら、私は非常に人づくりの方が圧迫を食らうというふうに感じます。特に、アルーシャ宣言の人間生活の基本的要請を重視するという大スローガンがありますね。このスローガンとこの人づくりとの関係を私は考えた場合、先進諸国、私ども日本みたいな立場における人間生活の中の教育という問題と、後進国における教育という問題とはおよそ感覚が違うんですよ、これは。このアルーシャ宣言の人間生活の基本的要求というのは切実な問題なんですよ。生きるか死ぬかのいわゆる生活なんですよ、ぎりぎりのところの。これが一番先決だと、こう決定したのですよ、宣言したのですよ。私はそれの中に教育が必要でないとは言いません、必要です、それは。こちらが幾ら援助したところで、言葉が通じないし、文字も書けないと、この突破口は教育ということはわかります。わかるけれども、現在の、いまの南北問題とか、あるいは後進国に対する援助というふうな問題のときには、私はいまの時期における人づくりという問題を目玉にして持っていく、これがちょっと早過ぎる。受け取る方ではそれ以前の問題、これについての私は要請というものが強い。私は人づくりは発展途上国には歓迎されない。これは一部メニューを出すというのですから、要るところは取りなさいという言い方もあろうけれども、しかし、一国の、これはこの種の会議で、先進国のいわゆる最高首脳部、総理が出ていって演説をするというのがありましたか、いままで。ないと私は聞いているんですけれども。初めてなんですよ、これ。日本の総理がこの会議に出てやるというのは。その総理の口からこの教育、人づくりという問題を差し上げましょう。こういった態度というのは、私は反発を食らう。そういった意味からも、私は、この内容については慎重を期すべきである。また、これを引っ込めなさいとは言わないけれども、発言のときに、あるいは演説の草稿の中でも、相当やっぱり考えた表現をし、いまさっきじゃないですけれども、これが目玉ですと言うような立場をわれわれはとるべきでないというふうに考えます。  そこで、文部省の方にもお聞きしたいんですけれども、私は、どうもこれは外務省のいまの発想ということらしいんですけれども、それぞれ、それなりに各省に連絡をしながら、お知恵は拝借したという話もいまお聞きをしたんですが、もしも、日本の経済の発展の歴史というものから見て、この重要な基盤というのは教育だ、人づくりだ、こういう自負をした発想であるとするならば、私は非常に危険だと思うんですよ、この点は。これは特に教育専門家じゃない外務省の発想とすれば、それなりに私はうなずけると思う。しかし、本当に教育を、小学校をつくろうというんですから、文盲退治をやってやる、もう少しテレビやラジオも入れてやろう、言葉の指導もやろうじゃないかというふうな、まさに教育が後進国の方に入っていくというふうなこの基盤の中に、わが国の明治以降のこの重工業の発達、富国強兵、殖産興業、追い越せ、追い抜け、こういった中で、百年ばかりで日本のいまの工業を中心にした産業が発達をした。これを見習いなさい。そのためには、日本は教育の問題に力を入れたんだ。だから教育をおやりなさい、それについて援助しましょう、こういう思い上がった考え方でこの発想が出発しておるとするならば、私は非常に危険だと思う。これは、今度の国会の劈頭に、大平総理自身も、明治以降の、この間のいわゆる教育という問題と、日本の産業の発達という問題と、現在の教育、あるいは日本人のいまの精神的なこの不安定さ、これを深刻に反省されておるはずなんであって、日本の今日の、百年の、何といいますか、焦りに焦った、こういった教育という問題と産業、こういう関係の問題はいま行き詰まりに来ておる。これはもうこの前も文部大臣もはっきりうなずかれた点であります。いまこそ、やはり豊かな日本人を取り戻さなければならないということで、教育の問題も出発をしなきゃならないという反省もあったはずだ。それにかかわらず、まず教育が大事ですよという形で追いまくり、これを自分の方としてはいいこととして送っていって、相手側にやはりそういった日本のいわゆる恥部として出てきておる面を結局持ち込んだという形は、これは決して親切な援助にはならない。私はそう思うんですが、文部大臣の見解を聞きたいと思います。
  123. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 日本も今日これだけ発展したのは教育のおかげだと。六・三制も御承知のとおり、本当に貧しかったときに、六・三制のおかげでこれほど今日発展してきたわけですから、教育が一番大事なことは安永先生もおわかりだと思うんで、東南アジア諸国でも、たとえば留学生を派遣したいとか、あるいは技術者の交流をしたいとかという御希望があれば、私は、日本も積極的に御協力すべきだと思うんです。
  124. 安永英雄

    ○安永英雄君 私は教育を否定しているわけじゃない。いまの現実の問題を言っているわけです。十日の日に発表される、人づくりという形で日本が教育の問題で援助しましょうという形の中で、そういった日本にとってもすべてがいいわけではなかったわけだから、そういう欠点の問題もあるんだから、考えなきゃならぬということを私は言っているわけです。この点はそういう意味です、私の言っているのは。  これは、教育の問題というものは当然にいまから発展途上国としては必要だということは、私はわかる。ただ、時期的に早い。またこのばらつきが非常に大きいわけですよ。中程度に進んでいるところ、まだ全然未開発なところ、いろいろある。それを十把一からげで大演説をやって、教育の問題をやっていくと言っても、日本の経験というものからいいですよと言って、とにかく押しつけるものではないというふうに私は思うがどうかという問題なんです。それをいま聞いたわけです。それはもう私はわかっている。  そこで、いままでの後進国の方でひもつきというのが日本の援助では一番いやだということを私はどこに行っても聞かされるんですが、教育問題、いわゆる教育という問題の一つの援助という枠をつくりまして、これはやっぱりそういった意味でひもつきというふうな感じを受け取られやせぬかという気がするんですが、どうでしょうかね。もっとも、日本のいままでのひもつきの批判は、金をやっておっても日本で全部つくるとか、日本との関係でその金を消費するというふうな形をきらわれたんですけれども、私はそういった批判も非常に多いということで、ちょっと危険性を感じるわけですが、そういう批判はないでしょうかね。外務省の方、どうでしょう。
  125. 坂本重太郎

    説明員坂本重太郎君) ただいまのそのひもつき援助の関係でございますが、この点につきましては、過去におきまして確かにそういう批判が日本の援助についてございました。そこで、政府といたしましても、この点に鋭意努力いたしまして、これは一般アンタイ化と申しますけれども、その一般アンタイ化の比率を非常に進めております。たとえば、七七年の数字でございますが、援助の大体四四%が完全に一般アンタイ化されております。それをその前の年の数字と比べますと、ちょうど倍近く改善されたことになっております。それから七八年の数字はまだ出しておりませんが、これも相当、恐らく半分以上は一般アンタイ化されたというぐあいにわれわれは考えておりますが、問題は、この人づくりに関しまして、そういう批判もございますので、今後これをどういう形でもし発展途上国が望むんであれば、実施していくかにつきましては関係省庁とも協議しながら、それからまた先生の御指摘の点も十分勘案しながら進めてまいりたいと、こう考えております。
  126. 安永英雄

    ○安永英雄君 これ以上はお聞きしません。  あとは注文なんですが、先ほどから私が言っておったように、やっぱり目玉という力み方は、私はどうもぐあいが悪いんじゃないかという形で、ぜひひとつあなた方のおっしゃるように、望むならばというふうな形の、これは十分やっぱり気をつけて発言をしてもらいたい。  それから先ほどの五項目、私は結構なことだと思うし、取捨選択が非常にむずかしいですし、また在外公館あたりのそれぞれの国という、どうぞお取り下さいという形にしたところでこれは計画が要るということで、特に文部省とのこの点についての細案の打ち合わせ、これあたりはぜひやってもらいたい。これは外務省ペースというよりも、むしろこれは教育の問題ですから、文部省あたりもこれは相当タッチをしながら、長い将来の問題ですから、後で責めを負うのは、恐らく教育の問題でとやかく言われるのは外務省ではなくて文部省になってくると思うんですよ。この点は十分ひとつ打ち合わせをやっていただきたい、慎重を期していただきたいというふうに思います。  最後に時間もありませんので、わが国との関係の深いアジア諸国を中心に留学生の受け入れと研究者による共同研究の拡充を図るというのがことしの文部省としては重点になっているわけです。特に中国との交流については意を用いているということですが、その後この点、よく私どももやられていることはわかるのですけれども、その実績あるいは計画、そういったものについて報告を願いたい。
  127. 篠澤公平

    政府委員篠澤公平君) まず留学生の概要をごく簡単に御説明さしていただきたいと思います。  五十三年の五月現在でございますが、八カ国からの五千八百五十人の留学生が日本におるわけでございますが、外国人留学生がおるわけでございます。そのうち国費留学生が千七十五人、残りが私費留学生で約四千八百人になるわけでございます。  そこで五十四年度の予算でごらんいただきますと、単年度の受け入れの国費留学生の数は、五十三年度は五百四十五名でございました。五十四年度は百五名の増員をいたしまして六百五十名ということでございます。おおむね二カ年の留学期間がありますので、数字といたしましては昨年の五月では千七十五名でございますが、大体その倍ぐらいの留学生が常時滞留するということが今後予想されるわけでございます。  そこで処遇につきましては、毎年奨学金の引き上げをいたしまして、学部学生は十万七千円から五十四年度は十一万三千円、研究学生は十四万六千円から十五万四千円へとそれぞれ奨学金も引き上げておるわけでございまして、この奨学金の額につきましては、日本の現在の物価その他住宅事情等もございますので、各国に比較いたしますと、一番高い額になっておるわけでございます。  それから、来日いたします留学生に対しまするいろいろな手当でございますが、これは従前国費留学生の場合と私費留学生の場合と若干差がございました。これを漸次詰めてまいりまして、国立大学におります私費留学生につきましては、国費留学生とほとんど同じということに現在五十四年度ではいたしたわけでございます。特に医療費の補助につきましては、八割をカバーするというところまで引き上げてまいりました。  それから、受け入れにつきまして問題になりますのは宿舎の関係でございますが、宿舎の関係につきましても、従前から各大学に整備をいたしてまいりまして、五十四年度にもさらに横浜国立大学、あるいは神戸大学と、文部省といたしましても大学の方になるべく宿舎を積極的に整備するように指導もしてまいりますし、今後とも宿舎の増設を図ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それからさらに、留学生関係では国際教育協会という財団法人でございますが、これに対しまする補助、諸手当、あるいは五十四年度から国際学友会が外務省から文部省に移管されましたので、これに伴います補助金の措置等につきましても十分意を用いてまいったわけでございます。  大変簡単でございますけれども、留学生は以上のとおりでございまして、次に、研究者の共同研究の点について。
  128. 安永英雄

    ○安永英雄君 いや、そっちはいいです。中国の部分
  129. 篠澤公平

    政府委員篠澤公平君) 中国との交流につきましては、昨年、中国の代表団が参りまして、外務省と合同で教育代表団と会ったわけでございます。そのとき先方から五百人の留学生を引き受けてもらいたいというお話がございました。一方、その当時の情報でも、アメリカ、イギリス、フランス、カナダ等、西欧諸国も約五百人のオーダーで留学生を引き受けるという情報もあったわけでございますが、種々検討いたしました結果、十二月にこちらから中国に参りまして、最終的に両国の政府で一応合意いたしましたのが四百二十五名でございます。内訳を申しますと、三百八十五名が進修生と申します、大学を卒業いたしまして、現在研究者でほぼ十年以上の研究歴のある者、それが三百八十五名でございます。それから、四十名が研究生と先方では言っておりますが、これは日本に来まして、できることならば大学院の正規学生になりたいということで、向こうの大学を卒業して間もない人たちのグループでございます。さらに、四百二十五名のほかに、来年度学部学生を約百名という話もございまして、これにつきましても事前の予備教育等について具体的な打ち合わせをいたしたわけでございます。そういうことで、本年の三月から若干参りましたが、現時点におきまして、百八名の進修生及び研究生がすでに四月中に来日いたしました。それぞれの大学ですでに研究室等に入りまして研究活動に入っております。  それから、研究生につきましては、秋の大学院の入試を試みるということで目下勉強中でございます。  語学の方につきましては、日本語はおおむね勉強してきておるようでございますので、総体的に見ますれば、日常生活は可能であろうかと、ただむしろ、英語の力は非常に個人個人ばらばらでございますので、日本の大学研究いたします際には、さらに英語の力をつけていただく必要があろうかというのが現在の印象でございます。  宿舎につきましても各受け入れ大学が、それぞれ心配をいたしまして、現在の時点では心配ございません。  なお、先ほどの留学生の点で触れませんでしたけれども、登録宿舎制度というものを考えておりまして、これから参ります国費留学生、あるいは中国の留学生も含めまして、登録宿舎制度を拡充して、これは国から補助金を出すわけでございますが、下宿を確保してまいりたい。五十四年度中に四百二十五名来るかどうかわかりませんけれども、向こうでは申請書がまとまり次第、逐次こちらに送ってくる予定になっておりますので、それを受け付けて、各大学に照会をいたしまして受け入れを決めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  130. 安永英雄

    ○安永英雄君 終わります。
  131. 久保亘

    ○久保亘君 私は、午前中の参考人に対する質問に関連をして、少しお尋ねをいたします。  最初国士舘大学に対する文部省は八項目の勧告を行われたわけでありますが、先ほど参考人のお話によりますと、これらの項目については必ずしも勧告は実行されていない、こういうことなのでありますが、文部省としては、この国士舘大学に対する勧告の結果について、その後関係者から事情を聴取されたり、御調査になったりして、勧告した後の措置について、文部省として十分な対応をされてきたのかどうか、そのことが第一であります。  それから、参考人の公述された内容などについて、午前中盛んにメモをとっておられましたけれども、あれらの事実については今日まで御承知になっていなかったのかどうか。  なお、文部省が五十三年度の助成金を交付されるに当たって、この勧告に基づく問題は解決したという判断に立って行われたものかどうか、それらの点についてお答えをいただきたいと思います。
  132. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 五十二年の六月七日に、私から柴田総長に六項目、最後の項目を三つに割って八項目大学側はおっしゃっておりますが、六項目について改善方の要請をいたしました。この事柄がどのように進展をしているかということにつきましては、もちろんわが方としても十分な関心を持って見守っておりますし、それぞれの時点で大学側の理事等から事情を聞いておりますし、また大学の教学関係の方々からも、事情を伺うというようなことをいたしているわけでございます。私どもも先ほどの参考人のお話と同じように、六項目の中で前進をかなり示しているものもございますし、それ以外の点について、学内問題対策委員会の機能が活用されないということから、いわば停滞状況にあるものがあるということは承知をしております。これからもそういった状況については事態の進展を見ながら、さらに大学側に対して指導をしていかなければならないと考えております。  先ほど参考人の方々がここでお述べになったことについては、もちろん大綱的な点については私どもも承知をしておりますけれども、具体の内容については私たちが知らないこともございますし、またわれわれの知っていることとの間にそごのあることもございますので、注意をして拝聴したわけでございます。
  133. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 経常費補助金の交付につきましては、これは久保委員がおっしゃいましたような意味合いで、指導改善項目のすべてについて問題が片づいたという観点から交付したということではございませんで、なお問題がたくさん残っておるという認識を持っております。ただ、先ほど来のお話にもありましたように、授業が正常に行われておりまして、そして多くの教職員学生が活動しております。そういう観点に立ちまして、補助金を交付したということでございます。
  134. 久保亘

    ○久保亘君 もっともな言い方のように聞こえるんですけれども、国士舘大学に対する勧告というのは、これは私立大学に対する文部省の勧告というようなやり方では異例のことなんでありますね。先ほど公述人の学部長の方の御意見を聞いておりまして、私は非常に驚くのでありますが、その勧告の一つ一つ項目をとってみれば、その中には確かに改善が行われたものもある。しかし、全体を通しては、大学はなお前よりも混乱がひどくなったのではないかというような御発言がありましたですね。こういうことをお聞きいたしますと、これは根本的な解決は何もないんじゃないか。だから、その問題が解決されないのに文部省が、まあ大体この辺でいいでしょうというふうな判断をして助成金の交付も行う。こういうことになるから、助成金の交付を受けるとすぐ人事上の問題が数多く発生をしたりするのではないか、だから、ここの大学の問題については、勧告をそのまま放置しないで再勧告を行うなり、根本的な問題が何も解決していないということなんだから、文部省として改めて必要な措置をおとりになることがいま重要なのではないかと思うんですが、大臣いかがお考えでしょうか。
  135. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 御指摘のとおりどうも私も聞いておりまして、これは一体これでいいんだろうかと思って非常に心配したんです、将来大学としてこれが発展できるだろうかと。一番いかぬのは理事会ですよ。理事長学長が一人で切り回していて、理事は何やっているんだと私は聞きたくなるんです。理事会がしっかりしていないんですよ。それから教授会理事会との調整もとれていないし、これは困ったなと私も思った。それから同時に、文部省の補助金に対しても、私学振興財団に任せておいてはよくないんで、文部省自分でチェックして、悪かったら悪いと言って呼びつけてやらなきゃいかぬ。もっとやっぱり私は文部大臣として、文部省として監督は厳重にすべきだということをしみじみ思ったのでございます。
  136. 久保亘

    ○久保亘君 ぜひそういう、いま文部大臣が言われたその姿勢で、この国士館の問題については、管理局長学生のことや教職員のことを考えれば助成金の交付をしなければならないと思ったと、それも一つの考えです。しかし、学生のことや教職員のことを考えれば、むしろいまこの大学の混乱を解決することの方が先決であって、それをそのままにして文部省が甘い態度に出るから、幾らでも理事長の方は自分の方がやればやれるんだということで混乱を増幅させる、こういうことだと私は思うんで、この点については、大臣が言われたように、ひとつ厳しい大学に対する注意なり、それから改めて必要な措置をとるなり、そういうことをやっていただきたいと思います。  それから、この大学では教授会が必要な欠員補充のための助手の任用を全員一致で決めたにもかかわらず、三年間それに対して理事者の側が発令をしない。そのまま宙づりになっている人もおるんです。一方では、十年間何の大学の講義にも出ない人に給料を払われている。こんなばかなことはないと私は思うんですね。そういう点についても十分調査をして、そして、もういまの理事者大学としての正常な経営能力がないということになれば、これは抜本的な手術をしないと、それこそ学生教職員が迷惑です。だからそういう立場で国士館問題にひとつ取り組んでいただきたい。お願いをしておきます。  きょうは関連で申し上げましたので、時間がありませんから、国士館の問題はそれだけお願いをしておきます。  同じように、私立大学の問題について、もうあちこちに経営者の教学の姿勢とか、経営の問題とかでトラブルが起きて、そしていま一体このままでいいんであろうかというようなことが次々に出てまいりますと、やっぱり文部省としては、私学の経営者あり方というものについて、もっと文部省の行い得る範囲内で最大限の指導を行う必要があるのではないかと思われる点について、ひとつお尋ねをしておきたいと思うんです。  大東文化大学の付属第一高等学校の入学式で、金子理事長が新入生、父兄を前にして発言をされたことについて御存じでしょうか。
  137. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) いま御指摘の話につきましては、先ごろ新聞にも報道されましたので承知いたしております。
  138. 久保亘

    ○久保亘君 この人は、あなたは知っておられるということだけれども、新入生と父兄を前にして、戦争が起こるかもしれないと言われたとも言われておりますが、戦争は起こる、そのときには君たちが武器をとって戦うのだ、その鍛練をせにゃいかぬという話をされて、教職員や父兄はもとより、新入生に対しても非常な衝撃を与えた、こういう報道があります。そのことについて、文部大臣、私学の経営者自分の個人的な思想に基づいて、およそいまの日本の教育の立場とは、教育の基本精神とは異なるような、そういう訓示を行うということについて、これは問題があるとお考えになりますか。
  139. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 問題があると考えます。
  140. 久保亘

    ○久保亘君 そしてこの理事長は、さらに、新たに大東文化学園の教職員として任用された人たちを集めて、戦争が一九八五年に起こる、まあこういう人にしては珍しく元号をお使いになっておりませんけれども、一九八五年に起こる。そのときには武器をとって戦うような青年を教育してほしい、そういう意味のことを御発言になってるようでありますけれども、これはもう私は私学だからといって許される問題ではないのではないか、こう思うんです。当然にこういうような理事長発言に対して、合同教授会が退任の勧告を行っております。本学教育の方針に反する発言であるという立場から、退任勧告の決議をされて提出をされておると聞いておるんですが、このことがいま学園の中では経営者教職員との間の一つの対立になっておるわけです。これは私は非常に問題が多いと思うんです。幸いなことに、この訓示を聞かれたこの付属高等学校の校長さんは、教職員ともいろいろ話し合われた上、全父兄に対して、理事長発言は本校の教育の方針に反すると、こういうことで、校長の意見を書かれて、釈明の文書を各父兄に配布されたようです。これは大変結構なことだと思う。しかし、こういうようなことが行われて、それが学内の紛争になっている。そして理事長の退任勧告が行われても、理事長はいろいろな力を背景にしてがんとして居座って動かない。これは私はもう非常に大きな問題だと思うんですが、少なくとも学長を含めて合同教授会が一致して退任の勧告を行うというような、そういう経営者というのは、理事長として不適格なんじゃないでしょうか。大臣どうお考えですか。
  141. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) やはり理事長は、学校経営者というのはまず教育者でなきゃいかぬです。もちろん政治家であっても私は構いませんけれども、教育者であるということが根本ですから。そこでいまお話のように、やはり非常に誤解を与えるようなことは、これは避けて、慎重な発言をしなきゃいかぬと思うんです。非常に行き過ぎだと思います。
  142. 久保亘

    ○久保亘君 きょうは私が与えられている時間非常に少ないので、この問題については改めて、詳細私どもの方に資料を寄せられておりますので、機会をいただいてまたお話をしたいと思うんですが、新たに採用された先生の一人がある人に寄せられた手紙を見て私も非常に気になるんです。この大学は国士を養成する大学である、そしてたしか八五年に戦争が起こると言われたようです。そして理事長の顔を見つめていましたら、戦争になったとき、銃をとって戦場に赴く愛国の士を養成するべく先生方はしっかり教育してほしい、これは先生たちに対する話です。こんなことを言われたり、学園の機関紙に投稿されたものの中に、日本国憲法は空念仏というようなことを書かれたり、これは私は非常に問題があることだと思うのです。それで退任勧告が出ているのは当然のことであって、しかも私いろいろお聞きしましたら、そういう発言に先立って、すでにこの理事長は不正入学をやらせたことによって、この合同教授会から退任勧告を二回にわたって昨年受けているんです。ここに「五十一年度不正入学問題に起因した理事長への「退任勧告」に至る今日までの経緯」大東文化大学学長学長名で出されたパンフレットです。この中を読んでみますと、これは驚きますよ。五十一年度に関する調査だけで六十二名の不正入学が理事長の圧力によって行われ、しかも、その中にはあたりまえの試験を受けない無試験入学というのがもぐり込まされているというような報告を見ますと、これは文部省国士館大学になされた勧告以上の強い勧告を行わなければ、これは学長がこういう調査報告を出して退任勧告をされるというような事態なんですから、これは容易ならぬことだと私は思うのです。その上に、この大学は学園の経理についても非常に問題をはらんでいるようであります。私もいま詳細は調査中でありますから、きょうは問題点だけを申し上げておきますから、ひとつぜひ監督官庁として、文部省はこの問題について学園の責任者を呼んで、厳重な調査を行われたいと思うのであります。  一つ学校法人大東文化学園安全互助会、これは学生が納付する資金を集めておるのでありますが、ここのお金が学園の学長の諮問委員会としてつくられた正常化委員会調査に基づいて、役員会に諮らず知人の不動産会社へ四千万出資をしたり、一億に上る会社債の購入を行ったり、そういうようなことが行われて、この経営について正常化委員会が問題提起をいたしております。それから大東文化学園後援会と称するものがありまして、これは関係者の間では通称岸後援会と呼ばれているんだそうであります。この大東文化学園後援会の会長は岸信介という人だそうでありますが、同じ名前の人が昔総理大臣におられたので、私同じ人かどうかよくわかりませんが、多分そうであろうと思います。この大東文化学園後援会は、入学者に対して納入金を納めさせるときに、この後援会に対して同じように金を納めさせるんだそうであります。ところが、不思議なことに、入学者に対する納付金等の一件書類を送られるときに、ほかのいろいろな納入金については入試事務室で行うんだそうでありますが、この大東文化学園後援会に対する納入金の告知の書類だけは、どういうわけか秘書課でその封筒の中に入れられて、そこから送られるんだそうであります。そしてこの学園後援会の集められた資金は、数字に支出されずに、経理は必ずしも明らかでない、こう言われております。これはもう寄付金に関して文部省がいろいろと指導された観点からしても、きわめて問題の多いことだと私思っております。そのほかにも大東文化大学振興会というのもあります。それからこの大学経営者は事業もお好きなようでありまして、大東施設株式会社、株式会社厚生社、こういうものも学園と深い関係で設立をされておりまして、そこにいろいろな学園の経理が複雑に絡み合っておる。こういうことはいま生徒や父兄からできるだけ負担も少なくして、そしてそのかわり私学の正常な運営ができるように、二分の一を目指す経常費の助成もやっていくという文部省の私学振興の方針に反するきわめて遺憾なことだと思っております。こういう一連の不正入学とか、経営の疑惑とか、経理の疑惑とか、こういうものを背景に持ちながら、今度この大学教育方針にも反するし、文部省が考えられても、文部大臣もきわめて問題であると言われるような、そういう発言理事長から子供を前にして平気で行われる、こういうことは退任勧告などでとまるような問題ではないのではないか、私はこう思っておりまして、この大学学長以下が、すでにこの一年にわたって理事長の退任を要求をされていることはきわめて当然のことだと考えております。ぜひひとつ文部省として、大東文化学園のこの経営者の教学の姿勢、それから不正入学、経理の疑惑、こういう問題について詳細御調査をいただいて、本委員会に御報告をいただきますよう、そしてその報告をいただいて、私はこれらの問題について詳細に関係者にも、文部省にもお尋ねをいたしたいと考えておりますので、御調査をいただけるかどうか、この点について大臣の御回答をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  143. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 調査いたします。
  144. 白木義一郎

    白木義一郎君 初めに先ほど松前委員からもちょっと触れられましたが、先日、語学留学という名のもとにあっせんをして、送金トラブルを起こした株式会社世界教育交流協会が事実上倒産いたしました。   〔委員長退席、理事世耕政隆君着席〕 アメリカで四十七人の留学生が立ち往生しており、この協会の倒産で留学生たちは大変苦しい立場に追い込まれている、そのような新聞報道によりますと、留学生のメンバーは学生、OL、観光客等で構成されております。本人たちの不安もさることながら、内地にいる父母の方々も大変心配されております。文部省としてこの事件について、先日、関係省庁である運輸省、これは旅行業者に関して。また公正取引委員会、誇大広告の疑い。外務省等が事務レベルで。ともかく協会関係者を探して、対策を練るために協議をされたと伺っておりますが、その協議の内容、あるいは実態、これからの方針等を概略まず伺っておきたいと思います。
  145. 篠澤公平

    政府委員篠澤公平君) 四月の末でございますが、私どもも外務省から出先の総領事館からの電信によりまして事実を知ったわけでございます。それと前後いたしまして、新聞等にも報道され、各紙が取り上げたわけでございます。その実態でございますけれども、まさに先生御指摘の世界教育交流協会——WEESと呼んでおりますが、という団体が新聞、雑誌等を通じまして募集しました。米国において家庭に滞在し、英語学校に通って英語を学ぶためということで、留学に関係するわけでございますが、これによりまして渡米いたした日本人は約四十名ということでございます。御指摘のとおり、現地の状況が渡米前に同協会から説明を受けたものとは大分違っておる。さらに、問題になりました全納済みの授業料等の送金も事実行われていないようでございまして、予定どおりの授業が受けられない、さらにはホテルからも追い出されるという事態になったわけでございます。  ただいま先生のお話の中にも、私どもその四十名の身分と申しましょうか、どういう方々がおられるのか、まだ判然といたしておりません。学生もおりますし、職業についているOLの方その他もおるようでございます。私ども、そういう意味では関心を持っておるわけでございまして、外務省、運輸省等とも事務レベルでの相談をいたしたわけでございます。いずれにいたしましても、それ以上の詳細な状況につきまして、私どもなお把握に困難を感じているわけでございます。外務省の方もさようでございますが、私どももその協会の方に連絡をいたしまして、責任者に出頭するようにといいましょうか、文部省に来て十分話を聞きたいということを再三連絡をとるわけでございますが、いまだまだ文部省には参りませんので、実情を伺うことができないということでございます。このような、これは協会という名前でございますが、任意団体のようでございますし、まあ数百というような機関が同様なことをやっておる。英語留学を一つの商品として送り込むというようなことで、まさに営利事業となっているわけでございまして、そのこと自身が問題であろう。そういうことで、文部省のといいましょうか、文部省、外務省、運輸省三省通じまして、なかなかその実態の把握が困難でありますし、また行政的な意味での指導もなかなかできない点があるわけで、まさに隔靴掻痒の感がいたしておるわけでございます。留学という言葉を使っておりますけれども、正規の学習研究を行うという意味でのまさに留学生という言葉は、私は必ずしも当てはまらないのではないかという感じもいたしておりますが、いずれにいたしましても、その実態をさらに究明する必要があろうというのが三省協議の結果でございまして、いろいろな団体の中には、運輸省にそういった登録を受けている団体もありますし、このような登録も受けないで、もぐりといいましょうか、任意団体でやっておるのもあるようでございます。考え方といたしましては、海外での生活体験をするということ自身は、青少年の国際性の啓培といいますか、そういう観点から大変結構なことだという見方もあるわけでございます。ただ、今回のように外国の関係機関と十分な連携もとれないままに、営利主義が先行いたしまして、このような結果になったことを大変遺憾に思うわけでございます。十分私どもも実態を調べ、今後このような団体の実態も包括的にもし可能ならば調べてまいりたい。と同時に、関係機関を通じまして適宜指導するということも考えなくてはいけないというふうに思っているわけでございます。
  146. 白木義一郎

    白木義一郎君 いずれにしましても、この協会は、いま御説明がありましたように、性格のはっきりしない任意団体であるため、所管の官庁もはっきりしない、もぐりである、まあ一つの行政の谷間みたいなところで商売を行って、今日の事件を起こしたようなことと承知しておりますが、いわゆる語学、あるいは留学というような甘いえさで、希望者を募っていくというこれらの、この種類の業者が、いまの御説明によりますと数百種類あるということで、今後本格的にこの調査指導、監督を進められていくということを伺いまして、まだまだこれは犠牲者の出てくるような心配を抱いている一人でございますが、この風潮はその底流に外国に対してのあこがれとか、あるいは留学を強く望んでいる人がたくさんいると言っても過言ではないと思います。また、一言で言えば、現在教育の国際化が叫ばれておりますし、また真の国際自由化はいまだその緒に入った程度の状態であると考えておりますが、いわゆる今回の浮き彫りにされたこれらの協会のもぐりの業者の被害者は、この世界の国際教育の自由化という陰の犠牲者の方々だと私は考えております。したがいまして、何とか文部省としても運輸省等の関係省庁に積極的に働きをかけていただいて、速やかな処置をとり、再びこれらの犠牲者のないようにしていただきたい、このように要望をいたします。  したがって、これらの風潮を踏まえて、私は、国際大学入学資格試験制度、いわゆるインターナショナル・バカロレア——IB制度について質問を続けたいと思います。  この四月の二十五日に文部省はIB制度を公認したことを告示をされておりますが、このことは大変な成果であり、あるいは、わが国の教育行政としては、将来大きく評価をされるべき問題であると私は受けとめております。  そこで、さらに今後具体的にこの制度をどう運営し、活用していくかということが大変重大な問題のように思っておりますが、最初にお伺いいたしますのは、わが国がこの制度を公認した、それを告示したということについて、IB本部へわが国の意思を伝えられたかどうか、最初にお伺いをいたします。
  147. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 外務省を通じまして、インターナショナル・バカロレア資格を有する者について、わが国の大学入学資格において、高等学校卒業の者と同等の者として取り扱うという取り扱いにしたということと、もう一つは、今年度予算においてIBに対する拠出金を計上いたしておりますので、その拠出金のいわば払い込みの手続、方法等についての照会をあわせていたしております。
  148. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、今後、わが国がこの制度を導入し、公認をしたということは、この結果各大学が今年度から同制度を利用して、入学者の選抜を行うことができるようになった、このように端的にとらえてよろしいでしょうか。
  149. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 四月二十五日付で、国・公・私立の大学学長あてに通知をいたしまして、インターナショナル・バカロレアの取り扱いについて、いま御指摘のような告示をもってその取り扱いを明らかにしたということを周知するように措置をいたしております。  御指摘のように、これはいわば入学資格の問題でございますから、各大学がこれを運用をして、それぞれの大学における入学者選抜を実施をするわけでございます。一番最近の機会からは、いわゆる九月入学の時点から、この新しい措置を大学側が使うことができるわけでございます。
  150. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、日本IB情報センターのパンフレットによりますと、IB認定大学と、こういうことになっておりますが、この政府の、文部省の公認によって、わが国の大学は、このIB合格の資格を持っている人たちは、どの大学でももう二十五日以降入学の選抜をしてもよろしいと、このように受けとってよろしいか。あるいはまた各大学が検討をして、そして、これを受け入れるかどうか、あるいは、IB本部へ登録した上で公認の認定大学としての資格が生ずるのかどうか、この点お尋ねしておきます。
  151. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 日本の場合には、国際バカロレア資格証書を持っている者、これは各大学が特段の手続等をとることなしに、わが国の制度として大学入学資格を認められる、つまり大学をこれによって受験をすることができることになるわけでございます。
  152. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、そういう文部省の推進によって、先日四月の六日ですか、国立大学協会第二委員会で、いわゆる共通一次テストの総括が行われ、その中でこのIB制度、国際大学入学資格検定制度を今後どのように取り扱い、位置づけていくかという議論がなされたと伺っておりますが、そのときの議論の内容をお聞かせ願いたいと思います。
  153. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 四月六日に開催されました国大協の第二常置委員会におきましては、御指摘のように、五十五年度の国立大学の入学者選抜方法についての検討が行われておりますが、その際に第二常置委員会の専門委員から、インターナショナル・バカロレアの内容、程度についての調査報告が行われまして、インターナショナル・バカロレアをわが国の大学の入学資格として認めるということは適当であるという第二常置委員会の見解が取りまとめられております。しかし、IB資格取得者に対する選抜方法、特に共通一次をどのように取り扱うかという問題についての議論は、この第二常置委員会では出ておりません。
  154. 白木義一郎

    白木義一郎君 私が聞き及んでいる段階では、この制度を熟知していらっしゃる教授は、世話人であった大阪大学教授の扇谷先生ぐらいであり、他の先生方はまだ詳しくこの制度の内容、あるいは活用等について、認識が非常に浅いというか、ほとんどないというように聞き及んでおります。そういたしますと、そのような状況では、この制度がせっかく文部省の積極的な考え方で公認をされた現状におきましても、前途に非常に消極的な結果を生むのではないかと、ひそかに心配をしているわけですが、この制度をさらに大きく発展させ、あるいは諸外国ではどのように対応され、また生かされているかということをぜひとも研究をし、推進をしていく必要があると思います。また、国民全体に対しても、この制度を大きく認識させるために、PRに努めていくべきだとかねてから考えておりますが、その点はいかがでしょうか。
  155. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、国大協の第二常置委員会なり、あるいはIBを大学入学資格として認めることの御審議をいただいた大学設置審議会の基準分科会等においては、かなり突っ込んだ御議論が行われておりますし、また御審議をいただくに先立っては、専門家の御協力も得て、いわゆるインターナショナル・バカロレアにおけるカリキュラムのレベル、内容等についても、十分な検討をしたわけでございますが、それらのことを含めて、いわゆるIBというものの内容について、各大学に対してより周知をさせていくという努力はしなければいけないと思います。インターナショナル・バカロレアによってわが国の大学を受けるというような方、これは外国人留学生の場合もございましょうし、帰国子女の場合もございましょうけれども、特に帰国子女の場合には、各大学の推薦入学というような制度を活用することによって、IB資格とあわせてわが国へ受け入れるということが、具体の課題としては考えられるわけでございますし、その場合にも各大学がIBということについて、十分に理解をもってもらうということは必要なことでございますので、今後いろいろな機会をとらえて、IBのいわゆるPRにつきましては努力をしてまいりたいと思います。
  156. 白木義一郎

    白木義一郎君 その具体的な推進の方法ですが、現在ではわが国においては、日本IB情報センターから文部省としてもいろいろな資料を、あるいは情報を取り入れて、参考にせざるを得ない現状じゃなかろうかと思います。  そこで、いま局長が言われたように、大いに推進をしていかれるということでございますので、ちょっとその情報センターに対する文部省の考え方をこの際承っておきたいと思います。
  157. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 情報センターの方と文部省との間には、現在接触と申しますか、公式の接触はございません。情報センターが今後どのような活動を展開をしていかれるのかということを、私どもも注意をして見守ってまいりたいと存じますが、目下のところは、両者の間に公式な接触はございません。IB関係のさまざまな必要な情報というのは、主としてジュネーブにございますわが方の在外の代表部を経て入手をしているわけでございます。
  158. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、私はこのIB制度に関心を持ったのは、海外帰国者の子女が大学受験問題の打開に非常に困難を感じているというようなことを知って、そして、この問題の解決をしなければならないということ、それが動機で実はこの制度に関心を持ったわけでございますが、現在までいろいろと勉強してみますと、単にそれだけにとどまっていくならば、わが国の政府が非常に諸外国、世界に対して利己的な、閉鎖的な姿勢を続けていくと。こういうように受けとめられ、あるいは他の加盟国との歩調の乱れを生じていくんじゃないかと、このような心配をしております。教育の国際自由化というものは、どんどんこれは促進をしていくことは当然でありますが、この制度は世界の人が共同して、次の時代に地球上で生活する人々を教育しようと、大きな世界的な立場に立った、その方向によってカリキュラムをつくり、また評価をし、多くの世界じゅうの大学がその評価を認めていこうという、非常に画期的な運動だととらえておるわけでございます。  そこで、いままでの御説明は受け入れ側の文部省としての考え方、IB制度のとらえ方、このように説明を受けたわけですが、いま申し上げたような国際的、世界的な問題点としてこれをとらえていったならば、やはりそのメンバーになった以上は、わが国も積極的に外国の子弟、あるいは留学生等にこの制度を活用していかなければならない。受け入れ体制をはっきりしていかなければならない。このように思います。その点、今度は外国の学生が、日本の学校でこのIB制度の資格をどう取っていけるのかどうか。その点、文部省のお考えを伺っておきたいと思います。
  159. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) あるいは御質問をとり違っているかもしれませんが、インターナショナル・バカロレアの試験を受けることができるのは、御案内のように、インターナショナル・バカロレアの事務局に登録をいたしまして、参加を認められた、いわゆる参加国際学校が該当するわけでございます。わが国には二校IBに参加をしている国際学校がございますが、これらはいずれも参加登録のみで、IBカリキュラムを実施しておりません。IB資格を得るためには、その学校がIBの定めるカリキュラムを実施する必要がございますが、これらの二校はまだそこまで至っていないわけでございます。このうちの一校はIBカリキュラムの実施について積極的な検討を始めているということは承知をしております。そのほかに、さらにわが国における国際学校が二校、ことしの三月にIB本部に対して参加申し込みを提出をしているということがございます。これらの国際学校においてIBカリキュラムが実施をされるということになれば、その国際学校で学ぶことによって、IB資格を取得することが、わが国の国内においても可能になるということでございます。
  160. 白木義一郎

    白木義一郎君 と言いますと、その国際学校というのは、IB加盟校ということになるわけですね。そうすると、これはあくまでもその学校単位にIB本部へ加盟を申し込み、オーケーを得て資格を取り、その後にIB本部の規定に従って整備をしていくと。こういうことになるんじゃないかと思いますが、概略それでよろしいでしょうか。
  161. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) IBに参加する国際学校は、御指摘のように、それぞれの国際学校がIBに参力の申し込みをし、参加のための審査を経て登録が行われていく。さらにその上でIBカリキュラムを実施する国際学校になった場合に、そこでIBの資格取得が可能になるということでございます。
  162. 白木義一郎

    白木義一郎君 いま御説明いただきました方面へも、文部省としては積極的に働きかけを始められたかどうか。国際学校にもっと積極的に参加をするようにというようなお考えを実践なさったかどうか。
  163. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在の参加国際学校、聖心インターナショナルスクールと横浜インターナショナルスクールでございますが、このうちの聖心インターナショナルスクールがIBカリキュラムの実施について積極的に検討をしているということを承知をしていることは先ほど申し上げたとおりでございます。  なお、そのほかに新たに三月に参加申し込みを行ったアメリカンスクール・イン・ジャパンとセントメアリーズ・インターナショナルスクールにつきましては、いずれも非公式に事情を伺っております。
  164. 白木義一郎

    白木義一郎君 その方の面も先ほどから申し上げ、また大学局長も認識を非常に深められ、積極性をお持ちになっているようですから、大いに推進をしていっていただきたい。このように思います。  続いて率直にお尋ねしますが、このIBの合格証を取得した学生が、わが国の国・公立の大学を受験する場合、ここに本年から共通一次テストという問題が出てまいりましたが、この共通一次テストの免除という問題があり得るかどうか。私の承知する限りにおいては、今回の共通一次テストの始まる前に、数人の学生がIBの合格証を持って、大学入試センターに対して共通一次テストをパスさせてほしいという要望を出したということを伺っていますが、簡単に門前払いをされたということでございますが、明快な御意見を伺うことは現段階では無理かと思いますが、さしずめ現段階での大学局長の御意見をお尋ねをしておきたいと思います。
  165. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) IBの取得者がわが国の大学を受験する場合につきまして、ことに国・公立大学を受験する場合につきましては、その人が外国人の留学生であるのか、あるいはわが国の帰国子女であるのかによって事柄が違うわけでございます。外国人の留学生であれば、共通一次の学力試験については課さなくてもいいという取り扱いが現在行われておりますし、現実に多くの大学で、外国人留学生については共通一次を免除しているところが多いわけでございます。しかし、帰国子女につきましては、そのような取り扱いが行われておりません。一般の受験生との均衡もございますし、共通一次を受験をするということが前提になっているわけでございます。しかし、この点につきましても、いま申しました一般学生、一般の受験生とのバランスの問題等検討すべき問題が多いわけでございますけれども、今後の問題として国大協等の意向も聞いて検討してまいりたいと考えております。  なお、当面帰国子女につきましては、推薦入学の方法によって共通一次を免除する、そういう方法をとっている大学もあるわけでございます。こうした方法について、ほかの大学におきましても検討されることが望ましいと考えております。
  166. 白木義一郎

    白木義一郎君 先日の第一回の共通一次テストの分析あるいは総括等によりますと、難問奇問を避けてということもありまして、一般的に問題の内容は予想よりもやさしかったという声も聞いております。それに比較しまして、このIBの資格試験ははるかにレベルが高いという評価もありまして、重ねてこの共通一次テストを受ける理由はないのじゃないか、このようにも思います。外国人であった場合はいま御説明のとおりである、しかし、日本人であった場合はむずかしいというようなお考えもわかることはわかるわけですが、この制度の発展してきた基本的な考え方から言えば、すでに相当程度の高い勉強をしてきて、その試験に合格した合格証を持っている学生に対しては、日本人の子女であろうが外国人であろうが、同じような扱いをして、そしてその子女、学生の資質を大きく伸ばし、また世界的な人材に、世界人としての成長を望むということから考えれば、ちょっとそういうことはすんなり認めたくないというお考えも、保守的な面から言えばわからないわけではありませんが、近い将来にできるだけ検討をされて、そして積極的なわが国の教育行政、国際自由化の面に乗り出すという趣旨から、ぜひともひとつこの面も検討し、実施を図っていっていただきたいと思います。ただこのままに終わりますと、世界の国々から要望されて、それでは仕方がない、おつき合いをしましょう、まあ一万五千ドル程度の拠出金ならば安いものだというようなことで終わってしまうと大変意味のないことになります。  そこで、最後に大臣にお考えを伺うわけでございますが、久しぶりのプロの文部大臣が登板されたわけです。先ほど伺っておりますと、かつては非常に勇ましい成果を上げてこられた。ここでひとつでき得れば長期間文部大臣の席にあって、まあ先ほどから伺っておりますと、何とか大学、何々大学内容というのは非常に情けないというか、次元の低い問題ばかりでありますが、その改良、改善は当然のこととして、日本の教育行政は大きく世界のフットライトを浴びていかなければならないという立場から、ぜひひとつ、かつて情熱を、六・三制に命をかけた大臣のことでございますので、ぜひともひとつこのIB制度を世界平和に貢献できるように活用をしていただきたいと、切実に要望を申し上げるものでございますが、御所信をお伺いしたい。
  167. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 白木先生のお説のとおり、IBというのはこれは国際的な問題でございますから、日本だけが余り変なことをしたら、これは国際的に物笑いになると思うんで、やはりIBの趣旨を生かして、御指摘のとおりするのが私はこれからの行く道ではなかろうかと、それが国際的に日本が信頼を得るゆえんではなかろうか、日本の生きる道は国際的に信頼と尊敬を得るしかないと私は思いますから、私も及ばずながら一生懸命やりますから、よろしく御指導を賜りたいと思います。
  168. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まず大臣にお伺いをするわけであります。  朝以来、国士舘大学の問題が参考人を招致をして調査されたわけでございますし、先ほどの久保質問の中では、大東文化大学の問題についての質問があったわけであります。大東文化大学と言えば、一九二三年というようなときに、長い校歴を持って建学をされておる、上海に大東文化学院を置き、姉妹校として院議も経て建設をされた大学が母体であったかというふうに私は承知をしておるわけです。しかし、これらのところでなかなかすかっとした答弁を文部大臣はされているわけですけれども、効果を上げてもらわないと期待を裏切ることになると思うわけです。特にここで具体問題について概して触れられてまいりましたから、私は少しく今日の政治風潮と、これらのものがエスカレートする状況にある問題について、ひとつお伺いをしたいと思うんです。  特に国士舘大学にしても、大東文化大学にしても、その背景には、民主主義をきらい、憲法を敵視をし、そして右翼的な背景に助けを求めるというような甘えがあると私は思わざるを得ないわけであります。特に大東文化大学の問題につきましては、久保議員の方から、後援会長には岸信介という方がおられる、副会長には福田赳夫というような方も五十年史を見ると名を連ねられており、以下賀屋興宣、ずっとこう並んでおられるわけであります。こういう風土がと申しますかね、右翼的な風土があれば学則ぐらいは踏みつぶしてもいいというようなことになればゆゆしき問題だと。特にこれに対して、私は、急速に昨年から今年等に問題が多発するということは、元号法制化とか、あるいは有事立法とかという状況の中で、右翼が鼓舞され、勢いづいて、憲法なんぞは空念仏だというような社会風潮が非常に広がっていく状況とかかわりがあると思うわけであります。特に文部大臣は学校教育に責任を持たれる。学校教育、子供たちの人間形成に対して、これは悪しき影響を与えるものだろうと私は思うわけです。元号法制化にしても、これは本委員会も連合審査等で審議にかかわらなくちゃならぬと思うのですが、元号問題にしても明らかに私の考えでは憲法理念の定着を妨げ、歴史認識について否定的な役割りを果たすと私は思うわけです。こういう点、根本的にひとつ文部大臣は、大東文化大学についても、国士舘大学についても、憲法の理念を定着せしめ、そうして現代にふさわしい学校教育法に沿った大学を発展をさせるという考え方で御指導を願いたい。いやしくも右翼が鼓舞され、暴力が容認され、そして規則や規定がじゅうりんされるというような状況については、これは指導、そうして助言をする立場から、筋を正していくというふうにやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  169. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) 御指摘のとおり、私はやっぱり、いま日本の教育教育基本法、学校教育法ですね、その他もろもろの法律があるわけですから、憲法はもちろんでございます、その基本線に沿って学校運営をしっかりやっていくというのが、私は文部省の役目だと思って、私も及ばずながら一生懸命努力するつもりでおります。
  170. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私は、国士舘大学にも、そして大東文化大学にも、新しい今日にふさわしい大学として成長をし、発展を望む教職員がおられ、おかしいことを言えば正当に反応をする父母、生徒がいるわけでありますから、自治と自主が暴力や怪しげな力におどかされることがなければ、私はこれは正しく発展していくであろうし、その方向で文部大臣は助成をするという決意を述べられたものとお伺いをして、この問題については、また報告を聞いた上で審議に加わりたいと思うわけであります。  いま一つ、私は、この右翼的な風潮の反応と思わざるを得ないような、こういう乱暴な教育行政が最近に行われているという点についてお伺いをしたいわけであります。  それは静岡県と山梨県にかかわる問題であります。静岡県、山梨県ではクリーン富士山の美名で、県当局と教育委員会が号令を発して、通達を出して、高校生を自衛隊の諸君とともに一日行動というようなことで天下り、上から下へと特活の名のもとに駆り立てていくというようなことが最近に起こっているわけですが、文部省としては状況を承知しておられますか。
  171. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃる富士山クリーン作戦というのは、静岡県と山梨県、それに環境庁が共同で計画を立てられたようでありますが、要するに、いまの富士山の汚れているその現状からして、それぞれの県の自衛隊の職員、あるいは地元の市町村の職員、あるいはボランティアの人々、それにまじって高等学校の生徒に参加してもらって、六月の下旬に南と北から一斉に富士山に登って、富士山の清掃作業をやろうと、こういう計画でございます。  ただ、先生いまおっしゃったように、これは、それじゃあ県や環境庁が一方的に決めて高等学校へ押しつけたのかと、通知を出してやらせていると、こうおっしゃるわけですけれども、この通知を見ましても、このクリーン作戦なるものをやる趣旨を説明しまして、「下記の実施の概要などを参考にして具体的な計画を立て、地域環境美化推進に積極的に参加協力するよう配慮願います。」とこういう趣旨でございまして、事前の相談としては、それぞれの県の校長会にこの問題を持ち出して、ひとつやり方を十分検討してくれと、こういうことを言っているようでありますから、要するに、関係団体への通常やる参加勧誘の方法をとってやっているというように私は見ているわけでございまして、その点はそう一方的なものではないだろうと。また、実際に自衛隊も参加するわけですが、仕事の分担なども、高校生は五合目ぐらいのところをひとつみんなでやってもらう、自衛隊は頂上の付近だと、それは危険防止ということもあるから自衛隊は高いところで清掃をやらせようというようなことで、細かいことをいろいろ相談してやっているようでありますから、われわれとしては高等学校、特に普通科の生徒はいわゆる勤労体験学習というものを今度の学習指導要領でも推奨している立場でございますから、これが詳細な事前の準備と計画のもとに的確に運営されますならば、それなりの効果があるんじゃないかというふうに考えておるわけです。
  172. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 勤労体験学習であれば、これは明らかに学習指導要領にも書かれた教育課程編成の一般方針にもあるこれは教育活動であります。同時に、このようなことは、もし集団で行われるとすれば学校行事ということになろうと思うわけですけれども、そういうものとしてふさわしいものだというふうに考えておられるわけですか。
  173. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 勤労体験学習というのは、実際に学習の場としてはおっしゃるように学校行事なり、あるいはクラブ活動なりとして行うわけであり、具体的にどういうことをやりなさいというのは、文部省でも、たとえば植物の育成とか、動物の飼育とか、環境の美化とか、いろいろ例示をしておりますけれども、富士山のような山がまさに今日行ってみると非常に汚れておる。そこでそれをきれいにしようというのは、私は勤労体験学習として非常にいいことだと思います。また、それに参加するということになりますと、何しろ掃除する場所が広いですから、高校生だけじゃいかぬ。たまたまそれぞれの県が関係者に呼びかけて協力してやろうということですから、勤労体験学習の趣旨からしてもいろいろな人が協力して、そういう公共的な清掃の場を設けるというのは、私はまた教育的に見ても意義があることだと、こういうふうに考えております。
  174. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 学校教育という場に、学校教育にふさわしい条理と方法を尽くさないで、よいことであればやらせてもよろしいということになるのかどうかということなら問題だと思うんですね。私の聞いたところでは、昨年の夏、環境庁の長官が職員、ボランティア等とともに富士登山をなさって、これは汚い、きれいにしようというので、山梨県、静岡県の両県の知事に相談をなさったら、よし、やってやろうというので、上から下へと、まさに富士山の頂上からすそ野に天下るごとくこの問題の計画が立てられ、そして、県は何ら学校に相談することなく参加するという方針を決めて学校に押しつけているわけですね。特に富士山は御殿場高校、同南高校、富士宮北高校と同じく農業高校等二千五百人が参加するというようなことを決めて押しつけておるのであって、よいことであったら、行政が命令をして学校を動かすということが許されるなら、再び戦時中の勤労奉仕のようなことをやらせても、したのは掃除であり、松根油を掘り、松の根を掘るのは皆よいことだというようなところに、安易に返ってしまうことにならないでしょうか。
  175. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) そこのところの事実の認識でございますけれども、先ほど私が読みましたのは、県の教育長から県立高等学校長に出した通知でございますが、その中にありますように、すでにこういうことを決めたから参加しろというのではなくて、静岡県の場合は、勤労体験学習として、富士山の清掃のほかに、広い県でございますから、富士山まで行って作業できない高等学校の子供は、地域の公共施設などの清掃に参加するということで、いわば校長会などの議論も経た上で、県下の高等学校の生徒が六月二十三日にはそれぞれ周囲のいろいろな公共施設等の清掃等に参加をすると、その一環として富士山で清掃作業に従事する学校もあると、こういうことのようでございまして、私は、いまの高等学校で、県の教育長などがこういうことをやるからみんなおまえのところの学校出せと、理屈も何もなしにそんなこと言ったって、学校が言うこと聞かぬと思うんです、それをやるだけの合理的理由がなければ。そういう意味で、決して先生がおっしゃるように、この問題は一方的に富士山の頂上からすそ野に流れるごとしというようなことではないんではないかというふうに思うわけでありますが、なおそういう点はよく調査はいたしてみますけれども、まずそういう心配はないんじゃないかというふうに思います。   〔理事世耕政隆君退席、委員長着席〕
  176. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 調査をすると言われるのでしたら、調査の結果を期待したいと思うのですが、事実をつぶさに見られるならば、このやり方は、はなはだもって非教育的な方法で押しつけられようとしておるということ。  もう一つ調査をするためには文部省の主体的な姿勢が確立されておらなければならぬと思うわけです。初中局長はいま学習指導要領の中にある勤労体験の学習と、これは今度の学習指導要領では総則の第一款の第四の項目に、大きくうたったわけでありますが、それに合致するかのごとく言われたのですけれども、これの具体的実施については、同じ学習指導要領に指導計画の作成と内容取り扱いについて何と書いておりますか。ここで指導中心になる学習指導要領に書かれた原則について、それを明らかにしておいてもらいたいと思います。
  177. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) いま手元に持っておりませんからはっきり記憶をしていませんが、私の記憶では、勤労体験学習といったようなものは、具体的に何をやれというふうにはっきり言うておるんではないんで、地域や学校の実態に応じてそれぞれ工夫をしてやるようにと、こういう趣旨であったかと思います。
  178. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 それは総則のところで出てくるのであって、具体的な取扱方がちゃんと書いてあるのでありますから、私はあなたにいまお示しをしておきたいと思いますが、これ全学行事のような特別活動としての勤労生産的行事を行うためには、指導計画の作成と内容取り扱いについて、特別な指導の文書があります。これはそれの第二項に「特別活動の指導計画の作成に当たっては、次の事項に配慮するものとする。」、第一に、「学校の創意を生かすとともに、生徒の発達段階や特性を考慮し、教師の適切な指導の下に、生徒自身による実践的な活動を助長すること。」、内容取り扱いにおいても「生徒相互の人間関係を密にする」、それで、学校が何よりも生従と連絡をとりながら主体的に発想することというふうになっておるわけです。そして、自発性を備えて勤労体験学習をさせる、それとえらい違いじゃないですか。  これらのグランドオペレーションというのはどういうふうに行われるかというと、四つの高校は二千五百人出せ、三千六百人は、これ静岡側ですがね、ボランティアでやる、千四百人は五市町村から拠出をする、二千五百人は自衛隊が参加をする、バスは八十台行く、ヘリとブルドーザーが参加をすると。こういうことで、これから先、全県美化清掃について教育委員会ではこれを受け入れて富士関係四校にやらすとともに、七万八千八百名の全県の生徒たちにはそれぞれの地域でふさわしいことをやるようにと、その命令を受領した範囲内で創意工夫を発揮せよ、こうなっておるのでありますから、これはまさしく時代逆行であります。幾たびかここで国歌、国旗の学習指導要領の記入等で聞いても、いままでと取り扱いは変わりませんと言われますけれども、こういうものがスプリングボードになって戦前型に、これをスプリングボードにして復古的な方向へ鼓舞激励が行われているというのは、結果から見て明らかでありますから、そういう点につきましては、いまから指導される点で厳格に、学習指導要領の中に書かれた民主的、あるいは教育的、そして自発活動の条項を厳格に守って御指導をいただきたいと思うわけです。その点局長どうですか。
  179. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) この注意事項は、先生おっしゃるところは、「生徒自身による実践的な活動を助長すること。」というのを強調されたと思いますけれども、ここにありますように、「学校の創意を生かす」ということもありますし、「生徒の発達段階や特性を考慮」する、それから「教師の適切な指導」をするということでありまして、私は、高等学校段階もまだ心身ともに未発達ですから、その生徒の特別活動といっても、全く生徒の創意工夫に任せて、生徒の自発的意思にまつというんではなく、やはり活動自体をどういう計画でやるかというのは、学校自身が責任を持って立てるべきであって、その中で生徒が十分にいろいろ工夫してやれるように配慮するのが高等学校教育だと思いますから、いまの中身も、富士山のクリーン作戦というのも、恐らくそういう趣旨を念頭に置いて学校はやっておられると思うんで、私はちょっと先生がおっしゃる意味がよく理解できないんです。
  180. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 それは現地を見ないでそう言っておられるからで、現実にこういう状況が来れば鋭敏に現地の先生方も反応をいたしますから、現地の教育長と当該学校の先生方、もしくは教職員組合等はすでに話し合いをしておるんです。その中で、みずから担当の課長は、これは確かに戦時体制に似ておるという危惧は私自身も皆無でないというふうに教育課長は言いながら、県民全体でやろうというのに、組織的に生徒を動かせる高校生が参加しないじゃまずいと、まあ三百六十五日のうちの〇・五日分ぐらいいいじゃないか、参加を断ることは認めませんと、こういう態度で置かれておるのでありますから、学校が発想したものでも何でもない。少なくとも断る自由は保障されなければならぬ、学校としてですね。こういうような点で非常に問題があるものだ。しかし、それを事情を調査する前からすでにそういうふうに言いくるめようとなさるところが右寄りの姿勢に対して甘いですね。文部省指導の、憲法に忠実でない要素であろうと私は思いますので、それはわからぬというようなことはない。厳格に、文字どおりここに書かれた民主教育的条項を遵守をして御指導をいただきたい、こう申し上げるわけであります。  時間も不足しておりますので次の問題に移るわけでありますが、養護学校の義務化と並行しながら起こっておる事象についてお尋ねをするわけであります。  私は、養護学校の義務化が行われれば、これにあわせて条件整備を十分に行わなければならぬということは、従来から建物の問題その他について申し上げてきたわけであります。いま、職業病の発生という問題が飛躍的にふえてくるのではないかという危惧が多くの関係者の中で持たれておるわけであります。  ここに、都教委の行った調査を含む都教組の資料を持っておるわけでありますが、東京ではすでに数年前から全員就学を目指して重度の子の収容を行ってきた。それと比例をして腰痛、頸腕症あるいは膀胱炎、腎臓炎というような問題が異常に発生をしておるわけであります。また、私は埼玉県の川口市にある川口養護学校についても調査をしてみたわけでありますけれども、非常に激しい状況で、この問題、特に養護学校開設して重度の子を受け入れを初めてから数年というのは、従来経験したことのない姿でこの問題に対応しなければならない。文部省でどれだけの対応があるのかと思って、これらの統計数字、発生率、その他についてお伺いしたのですけれども、よくわからぬのですね。ただ、その中でわずかに知ることができた状況について見ると、文部省の持っておる数字の中では、少なくとも養護学校教職員の腰痛、これの発生率の数は押さえられていないですね。義務教育全般と、そして非義務教育というふうな姿で押さえられておるわけですね。これについて、数字だけを述べていただきたいと思うんです。
  181. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 重度の心身障害児が就学しております養護学校における教職員の腰痛の実態につきましては、各県におきましてそれぞれ特別健診等を行いましてその実態を把握し、かつその上に立ちまして所要の事後措置、あるいは施設の改善措置を講ずる等の施策を講じてきておるというように了知しておるわけでございますが、その全体の実態につきまして、特別に文部省として報告を求めて、その把握をしたということはございませんので、いま実態の把握につきまして、数字としてお答えする数字を持っておりません。
  182. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私は、自治省の方でも聞いてみたんです。そうすると、自治省では一応義務教と義務教外と分けてその数字を持っておったですね。昭和四十四年に義務教育教職員で発生をした腰痛は五十一人なんですね。これが十年弱、八年後の五十二年になると二百二十四人に激増をしておるわけであります。一般教職員の場合には三十七人程度から六十五人へと、約倍程度にふえているんです。警察職員というのを見ますと、これは腰痛になりそうな職業だと思って見たら、人数との比例もあるでしょうけれども、出現率などはわからないんですね。五百三十八人であったものが二百二十九人に減っておるんですね。恐らく作業が機械化されるとか、何がしかの改善が行われたものではなかろうかと。一般の職員全体を見ますと、二百五十四人から四百四十六人になっておりまして、機械の作業なり、形の違いなり、全体的には大体倍ぐらいにふえてきていると。それがいままで黙っておったものが報告書に上がるということにもなったかと思うんです。ところが、その中で、ここにあらわれただけでも五十一人から二百二十四人というような、四、五倍という大きな激増をやっておるわけであります。  ここで都教組の資料、都教委の資料を見ますと、重度の子の入学状況というのは、すでに東京都では早くから準備を開始しましたから、昭和四十二年には全面介護を要する子供が入学児のうちで一二・一%であったものが、四十九年、五十年になりますと、大体四〇%を超え五〇%に接近をしてくるわけであります。また、知恵おくれ学校の状況を見ましても、同じ年度に二〇%弱から六〇%近くまで重度の子が入っている。これが皆全面介護を要する子供であります。これは正比例をして腰痛患者、もしくは神経障害、その他膀胱炎、腎盂炎、さらに頸腕症というようなものを呼び起こしておる。私は時間がございませんので、かなりの資料もあるのですが、ここで十分に披露することはできませんが、川口養護学校ではことし五年目を迎えるわけですね。初年度に二十代の人ばっかりで学校が開校されたわけですね。翌年の一学期になりますと、この中ですでに病人があらわれ始めておるわけで、五十年開校して、五十一年九月、二十三人の腰痛、五〇%が出てきておるわけです。熱心にやればそうなる、まあ出ないところは不熱心だなどと言おうとしておるのではないわけです。現実に避けがたく思われる。これは発熱、頭痛、目まいから始まって、この中で通院が八人、マッサージ、針、きゅう等に通っておりますけれども、余り保険の恩恵にも十分に浴することができない。そして処置に通っておる者が二人、病休が一人で、もうそのときからすでに公務災害の認定をもらっておるわけであります。翌年の一学期になりますと、一学期に病気で休む人が四人出てきておるのです、通院が七人。そして、七人のうちの五人は公務災害の認定を受けておる。二学期に戻ってきたけれども、少しやるとまた悪くなるというようなことがあります。三年目になりますと、開校以来いた人が二十二人いるんですけれども、その中でまあ支障がないと個人差もあるでしょうが、それは二人というようなことになっておるのですね。東京の全体的なアンケートの結果を見ても、七〇%を超えて症状がある。多くは女性であります。こういう中に、結婚をすれば産休前の妊娠をしたような方もおられる。しかし、この勤務状況というものは、朝打ち合わせをして、九時にスクールバスがやってくる。全員がかかって午後二時にバスが出ていくまで無休ですね、全く休憩時間もそういう子供たちですからないというような状況なんです。職業病として、自治省や保険の担当者や、労働者に任せておくのではなくて、いままで猶予、免除をして、こういう方は学校の手に負えませんというのを受け入れたら、それにふさわしいだけの教職員保護と施設問題、それから定員問題について、手当てをしてもらう必要があると思うわけです。大臣、その点についてどう思われますか。
  183. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) まことにそのとおりでございまして、できるだけ手当てをしたいと思います。
  184. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私も実際に大阪の学校と、それから滋賀県の学校と、まあ埼玉県の学校はわが党で参加をして秘書等も含めて見ておるわけですけれども、これは大変なものです。ただおしっこをさせるぐらいでどうして腰がおかしくなるのか、それは本人が悪いか、やり方が悪いんだろうと、そういうものでもないですね。必ず自分はしゃがんでおむつを取りかえたり、子供がおしっこしている間でも、両肩を引っ張って自分のひざを上げて背中を押しているわけですからね。五分間かかれば五分そういう姿勢でいるわけです。こういうやり方を変えるという方法は早急には出てこないだろうと思うわけであります。  それで、定数の方は一体どうなったかと思って見ると、四十八年に養護学校義務化を決定して、四十九年から養護学級の方は十三人を十二人に一人減らしましたが、しかし、養護学校については、定数上の別段の措置は行われていないと思うわけであります。それだから、少なくとも私は、これは第五次定員計画の中で、ことしから発足することになっておりましたから、義務化の発足の年と一緒だから、この中で行われるものかと思ったら延ばされておるわけですね。こういう状況について、少なくとも第五次計画の中では重度をすべて受け入れる、一〇%に満たなかった重度が五〇%になるというのにふさわしい定数上の措置、それから三階から子供を抱えて便所に行くなんというのは、施設上の措置もしなければならぬでしょうけれども、こういうふうな点についてひとつ十分に行ってもらいたいと思うわけです。局長どうですか。
  185. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 定数の問題につきましては、現在の標準法の基準では、先生御承知のように、養護学校の一般の学級は八名をもって一クラスと、それから重度重複は五名というのが限度でございますが、実績負担主義でございますから、五名を割って一クラスにしておっても、定数の実績があれば予算補助をするということになっておるわけでございます。そこで、この五名、八名をどうするかということは、今後の五カ年計画をつくる際のこれは一つの検討課題にさしていただきたいと思うわけでございます。  それと同時に、いまの養護学校におきましては、御指摘のような、子供を抱きかかえておしっこをさせるというようなことについて、それもすべて教育活動と見て先生に担当してもらうか、あるいは、もう少し介護職員のようなものをふやして、そういう人に教室の移動や排便のようなことを手伝ってもらうか、という考えがあるわけでございますが、いま予算上の措置として、これは負担法の対象にはなってませんけれども、介護職員の給与費の半額負担という制度があって、これも年々人数をふやしておるというような実績もございますので、それもひとつあわせて考えてみたいというふうに定数の問題は考えます。  それから、いまの施設設備の問題につきましては、おっしゃるように、階段のスロープ化だとか、あるいは手洗いを各階につけるとか、いろいろ改善すべき点はあろうと思いますので、そういう点も教育委員会にできるだけ指導をしてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  186. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 この問題は、少し県の方で私は調べておったのを文部省の方でお尋ねすると、これは県任せであって、重度受け入れに伴う新しい事象ということについての実態掌握が、お尋ねした限りでははかばかしい答弁がもらえないわけです。チームでもつくって検討中なのかもしれませんけれども、この点はひとつ実態把握を十分にやってもらいたい。現地では、先進県で、東京なり、あるいは京都、大阪もそのうちに入ろうかと思いますが、これらのところでは、やむなき対応として、定数も増加して当たっておりますから、養護学校の法定数に対して、かなりの先進県では上回って定数を配置しておるわけであります。この数字はようやく文部省の方で聞くことができましたから、聞いてみますと、盲・聾・養護学校の定員は、第四次計画の終了に対して、法定数よりも現状の方が、現員の方がプラスになっておるわけですね。いわば単費で持ち出したり、あるいは無理をして、工夫をして認めてもらったり、いろいろやっておると思うんです。こういう状況をこの第五次計画の中で速やかに裏づけをして、そして、いやしくもこの問題で法定以上のものを抱えているところは、それを包み込んでいくぐらいの、緊急に定数増を図ってもらう必要がある。  これに関連して、一つ不十分な県が放置されておるという点を申し上げておく必要があると思うんです。現状をトータルしますと、二万一千七百八十五人という法定に対して、四十八人ばかり実員が上回っておりますが、法定に達しない、それも一〇%程度も法定より下回っておる県が六県相当あるということですね。私はこの点では福島県から訴えを受けておるわけです。  福島は率直に言って教育委員会姿勢がよくないと私は思わざるを得ぬです。以前にも、促進学級という名で障害児学級を設けたら、せっかく十二名も定員があるのに三人や四人ではもったいない、七名になるところまでは、健常児でもできの悪いのをひとつ入れて、たしなめの足しにしろというような指導をしたことがあるんですね。定数に極端に渋い。いつでもおくれて出発をしておるわけです。ここのところで、現地の教職員諸君は、それこそ重度も受け入れてやろうと思うから、一生懸命やって交渉をするのでありますけれども、県に聞き合わせたって、県は学級数と生徒数だけを言いまして、教員数を出さぬです、その数字を。現実には大きく下回っていると私は承知をしておるわけです。これは八二%程度の充足率だと思うんです。この点については実情を承知しておられますか。
  187. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) ただいま先生のお示しになりました、全国的に見ると定数より実員の方が四十八名上回っておるが、福島などは相当定数を下回っているじゃないかという御指摘のその数字は、去年の五月一日現在の数字で、御承知のようなとおりでございます。これはもちろん私どもとしては今後できるだけ早急に標準法どおりの定数を埋めるように指導いたします。いたしますが、ただ養護学校については、御承知のようにことしの四月から義務制実施ということで、実は五十三年度じゅうに百五十校ぐらい新設があるんですね。去年もたしか四、五十校新設があったはずなんです。そうすると、どういうことかと言いますと、五月一日までになかなか教員を大量に——去年は恐らく二千何百名か、ことしは四千名も教員の増がありますと、四月一日から学校が始まって、五月一日までに完全に先生を埋めるということができにくいというような事情もあったんではないかというふうに思うわけでありまして、そういう点をよく調べた上で、この点は先生御指摘のとおり、できるだけ定数どおりに教員を埋めるように指導します。
  188. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 それではこれで終わりますが、私は第四次五カ年計画が完了しましたという報告を聞いて、それがいやしくも障害児教育というような、いまから特にふやさなければならぬというような領域で、定数割れをしておる県があろうなどとは予想していなかった。ところが、現地の方では交渉しても、いつまでに四次計画を完了するかということさえも、どうしても明らかにしないというようなことでありますから、少なくとも今年度内に完了させるためのやっぱり御指導をなさって、その報告をきっちりと求めて、私の方にも御通知いただくというふうにお願いをしたいと思います。よろしいですか。
  189. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) はい。
  190. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 大分時間も経過しておりますから、私は海外滞在者の子女の教育の問題につきまして、二、三の点について簡潔に質問をさしていただきたいと思います。  最近は、政治においても、経済においても、さらには文化学術の面におきましても、国際化が進捗しておることは御承知のとおりであります。これに従いまして、長期海外滞在者の日本人の数も非常にふえておるわけでありまして、昭和四十六年に比べて、昭和五十二年では約倍増という結果になっております。そして、さらにこれから将来にわたってこの傾向は増大されるものと考えられるわけであります。これに対しまして、海外における日本人学校の設置とか、あるいは補習授業校の設置とか、こういう問題もかなり意欲的に進められておるわけではありますけれども、しかし現在の状態におきましても、海外へ出張する者、あるいは海外へ長期滞在する者の一番頭痛の種は子女の教育の問題だろうと思います。  したがって、この問題に関連をしてお尋ねをしたいのでありますけれども、先日五月六日付の新聞報道で、オーストリアのウィーンにある日本人学校が財政的に窮乏に陥っておる、これは新設の場合は半額補助が出るわけですけれども、あとの半額は寄付とか、そういうものに頼らざるを得ない、ところがその寄付が目標どおり集まらないというので財政的にピンチに陥って、そしてこのままでは閉校もやむなしというような事態に陥っておると、こういう報道であります。まずこの問題について、この事態をどのように受けとめ、どのような対策を考えておられるのか、これ直接の担当は外務省だと思いますけれども、まず外務省にお伺いすると同時に、続いて文部大臣の見解もお伺いをしたいと思います。
  191. 池田右二

    説明員(池田右二君) お答えいたします。  ウィーンの日本人学校は、現地在留邦人社会の熱意と努力で開設準備が進められ、政府は昭和五十三年度予算において、これに対して援助を行うことを決定いたしまして、昨年九月以降、全日制による授業を開始したものであります。同校につきましては、校舎購入費一億二千八百万円の半額に相当する六千四百万円を国が負担し、残りの半額及び校舎改装等に必要な経費約九千八百万円を企業等の募金に仰ぐこととしておりますが、この募金につきましては去る三月、指定寄付の手続を了し、本格的募金を始めたところであります。現在、現地関係者及び海外子女教育振興財団で鋭意努力中でありますが、この目標のうち、すでに約八千四百万円につき、募金のめどが立っております。外務省といたしましては、当面募金の成り行きを見守っていきたいと考えておりますが、目標額が達成されるよう、海外子女教育振興財団を通じまして、指導方を努力していきたいと考えております。
  192. 篠澤公平

    政府委員篠澤公平君) ただいま外務省から御報告がありましたとおりでございまして、新聞の記事によりますと、募金が非常にままならないので閉鎖もやむを得ないということで、当初私どもも驚いたわけでございます。実態を調べますと、募金の目標額にも相当近づいてきておると、しかも、なお三月から募金を始めたという状況でございますので、そちらの問題は遠からず解決するのではなかろうかというふうに期待をしているわけでございます。
  193. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は基本的な問題として、やっぱり半額の費用を募金に頼らざるを得ないところに非常に不安定性があるんではないかと思うのです。したがって、現地に有力な大企業がたくさんある場合には、そういうことも可能でありますけれども、そういう状態、状態によっては、非常にむずかしい状態に陥るわけでありまして、現在の海外の日本人学校に対する補助というものは、大体どのようになっておりますか、お伺いをしたいと思います。
  194. 篠澤公平

    政府委員篠澤公平君) 後ほど外務省の方からのお話もお願いしたいと思いますが、文部省といたしましては、すでに歴史的にも日本人学校の問題は古い問題になってまいりまして、近年とみに日本人学校に対する援助の内容を充実してまいったわけでございます。いささか具体的になりますが、申し上げさせていただきたいと思います。  すでに御案内のように、在外教育施設に教員を派遣いたしておりますが、その派遣教員の給与につきましては、五十三年度、五十四年度、五十五年度の三カ年で、これを全額交付金という形で措置をするということによりまして、公立の学校の先生の協力も非常に得やすくなったという事態に非常に著しく改善されたわけでございます。  それから、いままで問題でありましたそれぞれの日本人学校、あるいは補習学校の教材の整備事業でございますが、これにつきましては、特別なそれぞれの個々の日本人学校の実態に応じました個々の手当てを従前はいたしてまいりました。しかしながら、それではきわめて教材の整備が不十分でございますので、五十四年度からは国内の公立小中学校と同じレベルにおきまして、教材の整備計画を、初中局の教材基準に合わせまして同じようにいま整備していくということで、教材整備事業につきましても、日本人学校に対する特別な教材のほかにといいましょうか、ほかにそのようなことで教材整備を年次的に進めていくということにいたしたわけで、金額的には五十三年度四千三百万を、五十四年度は一億を超える額にいたしたわけでございます。これは年々今後日本人学校がふえますと、当然のことながら、あるいは単価等の増につきましても初中局と同じでございますので、増額されていくことと思います。  それから、それ以外に海外子女教育振興財団の方に対しまして、通信教育事業をいたしておりますので、それに対する補助を行いますとか、相談事業に対する補助をいたしますとかいうことをいたすほかに、教科書については従前から無償で供与しているという実態がございます。さらに日本人学校の各校長さんを集めての研修会も開催する、その他これは日本人学校との関連でございますが、帰国子女に対するいろいろな諸施策を講じているわけでございまして、特に私学で帰国子女を積極的に受け入れようという私学に対しまして、その施設費の補助を国内で認めていくということ等をやってまいっておるわけでございます。
  195. 池田右二

    説明員(池田右二君) 外務省といたしましては、従来より文部省と協力いたしまして、外務省設置法に基づく広い意味での在留邦人の保護という観点から、この海外子女教育の問題に取り組んでいるわけですが、外務省関係予算からの援助の概要を申し上げますと、まず日本人学校の校舎を借用したり、建設したりする場合のいわゆる施設費、こういうものを外務省が担当しております。これが五十四年度予算で約六億七千万、それから教員を派遣する際の経費ですが、国内の本俸分につきましてはただいま文部省の方から御説明があったとおりですが、海外におけるいわゆる在勤俸及び住宅手当、それから派遣の際の往復旅費、その他の経費、これが約三十六億七千万というふうになっております。そのほか現地で採用する教員の給与の補助、その他教員による巡回指導の旅費等、もろもろの経費を補助しております。それから補習授業校についても、教員を一部派遣する経費、それから現地での講師の謝金の補助等を援助しておりまして、締めて五十四年度で総額四十六億六千八百万程度という援助を行っておる次第であります。
  196. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 徐々に補助にしても充実されてきておることはわかるわけですけれども、日本の憲法二十六条では、国民に教育を受ける権利、それから義務教育の無償ということをうたっておるわけです。もちろん、外国に行った場合には、法律属地主義のたてまえから、日本の憲法は適用されない。しかし、だからといって、私は、同じ日本人であるのに、国内におれば保障されておるものが、外国へ行った場合には保障されない。それも自分の意思で行く人はともかくとして、大部分はそうではなくて、政府の仕事で行ったり、あるいは経済的な活動のために行ったりするわけでありまして、だから法律属地主義はあっても、やはり少なくとも義務教育につきましては、全額公費で負担するという体制をとるべきではないか、このように考えるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  197. 篠澤公平

    政府委員篠澤公平君) 現時点では先ほど申し上げましたような財政の援助の状況でございます。属地主義というお話がございまして、先生御指摘のとおりでございます。私ども文部省といたしましては、少なくとも義務教育段階の日本人子女に、国民教育の機会を確保するという観点に立って、種々の財政措置を講じてまいったわけでございます。その充実のためにはさらに一層努力するということをここで申し上げたいと思うわけでございます。
  198. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 新設の場合の国庫負担も中小規模については二分の一から三分の二に引き上げられたというふうに聞いておるわけですけれども、この場合、どの程度なら三分の二が該当し、どの程度なら二分の一になるのか、その基準というものはあるわけですか。
  199. 池田右二

    説明員(池田右二君) ただいま先生がおっしゃったとおり、実はこれまで日本人学校の校舎を新築または買い取るような場合には、校舎の二分の一を援助してきたわけでございますが、五十四年度より一部の学校につきまして、これを三分の二に引き上げるという措置をとったわけであります。どういうものが三分の二の援助を受けるかと申し上げますと、中小規模の学校であって、進出企業等の当事者が困っておると、困窮度が高いというようなところの学校については、こういうものは当事者の負担をできるだけ軽減して、できるだけ安く義務教育に近い教育を受けるという精神にのっとりまして、できるだけ援助をしてやろうということで、こういうものに対しては、援助率を三分の二にしてやろうと。非常に企業の数も多くて、まあ大企業も進出しておるというようなところでございますと、従来どおり二分の一の補助率で、これまでも募金が集まっておりましたしということで、五十四年度の措置といたしまして、ただいま申し上げたようなことを行っておる次第であります。
  200. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 一挙に全額負担というふうにはなかなかむずかしいかもわかりませんけれども、私は、やっぱり徐々にこの負担の割合を上げていく方向で努力をすべきだと思うんです。  それから、有力企業のあるところは楽だけれども、それでないところは非常に困って、父兄にそのしわが寄るということはやっぱり避けるべきではないか。だから、何かのやっぱり基準を設けて、財源がないなら財源は別のことで調達してもいいと思うんですね。海外に出ている企業に特別の税金を課するとかしてもいいけれども、何とかその教育というものをできる限り保障していくと、そういう努力はすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  201. 内藤誉三郎

    ○国務大臣(内藤誉三郎君) まことに同感でございまして、やっぱり憲法で言う義務教育無償の原則は、確かに日本国内には原則でございますけれども、海外にいる人についても同様な措置をすることが日本の将来の発展のためにも私は必要だと思いますので、今後とも一層努力をさして、一遍にというわけにはいかぬけれども、徐々に改善して御期待にこたえたいと思います。
  202. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 余り時間がなくなりましたけれども、最後にもう一つの問題は、海外で教育を受けた子女が、日本に帰って大学等に入学する場合の問題であります。どうしても入学試験その他ではハンディキャップがつくわけで、非常に重大な問題でありますけれども、現在一部の私立大学におきましては、この海外で教育を受けた子女に対する受け入れについて、便宜が図られておるというふうに聞いております。その実情をまずお伺いをしたいと思います。
  203. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、入学資格については問題がないわけですが、一つは入学の時期の問題がございます。わが国の学期の区分と外国の場合と違いますので、これについては五十一年に省令を改正しまして、学年の途中であっても学期の区分に従って学生を入学させ、あるいは卒業させることができる措置をとりました。いわゆる九月入学も可能にしたわけでございます。こういったことを前提として、幾つかの大学で御指摘のような措置がとられております。たとえば国立では筑波大学が五十三年度から第二学期入学を実施しておりますし、また、四月入学につきましても、外国の高校を卒業した者については、推薦入学の制度を設けております。私学では慶応義塾大学が五十四年度から外国の高校を卒業した者に対して、別枠——これは入学定員の五%程度を目途にしておりますが、別枠で特別の選考を行っております。また、国際基督教大学でも、外国の高校を卒業した者を対象としまして、九月入学を実施をしております。大体百五十名程度を目途に募集をしてるようでございます。そのほか早稲田とか、上智あるいは青山学院大学等におきましても、これらの外国の高校を卒業した者についての選抜の方法について、特別な工夫が行われております。
  204. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いま若干の例を挙げられたわけでありますけれども、こういう問題は単にそれぞれの大学の自主性に任せるのではなくて、ある程度ガイドラインと言いますか、文部省としても指導すべきではないか。特に国立大学の場合は−筑波大学は学期の途中で入学を認めるという制度があるようですけれども、国立の大学においても、何らかの便法を講ずべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  205. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先般、インターナショナル・バカロレアを大学入学資格として認める措置をとったことを各大学学長に通知する際にも、外国人留学生なり、あるいは帰国子女の場合の入学者選抜については、各大学がこれらの者の実情に配慮をして、工夫をしてほしいということを特に書き加えてございます。これからもいろいろな機会をとらえて、こういう状況にある生徒のための入学者選抜のあり方というものを大学にも検討していただきたいし、私たちもさらに検討したいと思っております。
  206. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  207. 望月邦夫

    委員長望月邦夫君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十六分散会      —————・—————